(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023109659
(43)【公開日】2023-08-08
(54)【発明の名称】風味改善剤
(51)【国際特許分類】
A23L 27/10 20160101AFI20230801BHJP
A23L 27/00 20160101ALI20230801BHJP
A23L 5/00 20160101ALI20230801BHJP
【FI】
A23L27/10 C
A23L27/00 Z
A23L5/00 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2022021650
(22)【出願日】2022-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000210067
【氏名又は名称】池田食研株式会社
(72)【発明者】
【氏名】中村 直樹
(72)【発明者】
【氏名】佐野 優一
【テーマコード(参考)】
4B035
4B047
【Fターム(参考)】
4B035LC02
4B035LG04
4B035LG15
4B035LG37
4B035LK12
4B035LP22
4B047LB03
4B047LB09
4B047LF10
4B047LG06
4B047LG37
4B047LP01
(57)【要約】
【課題】 本発明は、飲食品の風味を改善することができる風味改善剤、該風味改善剤を含有させる風味改善方法、及び風味が改善された植物性タンパク質含有飲食品を提供するものである。
【解決手段】 クルクミノイドを含むウコン抽出物が風味改善効果を有することを見出し、本発明を完成した。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クルクミノイドを含むウコン抽出物を有効成分とする、風味改善剤。
【請求項2】
ウコン抽出物と分散剤との混合物である、請求項1に記載の風味改善剤。
【請求項3】
植物性タンパク質臭マスキング用である、請求項1又は2に記載の風味改善剤。
【請求項4】
請求項1~3の何れか1項に記載の風味改善剤を、飲食品に含有させることを特徴とする、飲食品の風味改善方法。
【請求項5】
クルクミノイドを含むウコン抽出物と分散剤との混合物を含有する植物性タンパク質含有飲食品であって、植物性タンパク質100重量部に対してクルクミノイドを0.001~0.4重量部含む、風味が改善された植物性タンパク質含有飲食品。
【請求項6】
植物性タンパク質臭がマスキングされた、請求項5に記載の植物性タンパク質含有飲食品。
【請求項7】
クルクミノイドを含むウコン抽出物と分散剤との混合物を植物性タンパク質含有飲食品に含有させる、植物性タンパク質含有飲食品の製造方法であって、植物性タンパク質100重量部に対してクルクミノイドを0.001~0.4重量部含有させることを特徴とする、風味が改善された植物性タンパク質含有飲食品の製造方法。
【請求項8】
植物性タンパク質臭がマスキングされた植物性タンパク質含有飲食品の製造方法である、請求項7に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風味改善剤、風味改善方法及び風味が改善された植物性タンパク質含有飲食品等に関する。
【背景技術】
【0002】
これまでに各種素材による風味改善剤が開発されており、例えば、バガスの分解抽出物を含有する風味向上剤(特許文献1)や、クロロゲン酸を含む味覚改変剤(特許文献2)等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-5608号公報
【特許文献2】特許第5085632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、飲食品の風味を改善することができる風味改善剤、該風味改善剤を含有させる風味改善方法、及び風味が改善された植物性タンパク質含有飲食品を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明者らは、クルクミノイドを含むウコン抽出物が風味改善効果を有することを見出し、本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明は、以下の[1]~[8]の態様に関する。
[1]クルクミノイドを含むウコン抽出物を有効成分とする、風味改善剤。
[2]ウコン抽出物と分散剤との混合物である、[1]記載の風味改善剤。
[3]植物性タンパク質臭マスキング用である、[1]又は[2]に記載の風味改善剤。
[4][1]~[3]の何れかに記載の風味改善剤を、飲食品に含有させることを特徴とする、飲食品の風味改善方法。
[5]クルクミノイドを含むウコン抽出物と分散剤との混合物を含有する植物性タンパク質含有飲食品であって、植物性タンパク質100重量部に対してクルクミノイドを0.001~0.4重量部含む、風味が改善された植物性タンパク質含有飲食品。
[6]植物性タンパク質臭がマスキングされた、[5]に記載の植物性タンパク質含有飲食品。
[7]クルクミノイドを含むウコン抽出物と分散剤との混合物を植物性タンパク質含有飲食品に含有させる、植物性タンパク質含有飲食品の製造方法であって、植物性タンパク質100重量部に対してクルクミノイドを0.001~0.4重量部含有させることを特徴とする、風味が改善された植物性タンパク質含有飲食品の製造方法。
[8]植物性タンパク質臭がマスキングされた植物性タンパク質含有飲食品の製造方法である、[7]に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によって、飲食品の風味を改善することができる風味改善剤を提供することができるようになり、該風味改善剤を含有させることで、飲食品の風味を改善できるようになった。また、風味が改善された植物性タンパク質含有飲食品の提供が可能になった。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の風味改善剤は、クルクミノイドを含むウコン抽出物を有効成分として含有する。ウコン抽出物としては、クルクミノイドを含有する市販のウコン抽出物を利用でき、還元型ウコン抽出物が好ましい。クルクミノイドは、ウコン抽出物中に含まれるクルクミノイドであればよく、クルクミン、デメトキシクルクミン、ビスデメトキシクルクミン、還元型ウコン抽出物中に含まれるテトラヒドロクルクミノイド等が例示できる。
【0009】
本発明の風味改善剤は、ウコン抽出物と分散剤との混合物であるのが好ましく、該混合物は、例えば分散剤を水に溶解した分散剤溶解液にクルクミノイドを含むウコン抽出物を分散させて得られ、減圧濃縮、膜濃縮、ドラムドライ、エアードライ、噴霧乾燥、真空乾燥若しくは凍結乾燥、又はそれらの組み合わせ等により、濃縮品や乾燥品としてもよい。
【0010】
分散剤は、分散剤溶解液中にウコン抽出物を分散できれば特に限定されないが、水溶性高分子が好ましく、平均分子量1万以上の水溶性高分子がより好ましく、平均分子量5万以上がさらに好ましく、例えば、アラビアガム、ペクチン等の増粘多糖類等が例示でき、2種類以上の分散剤を組み合わせて用いてもよい。
【0011】
分散処理は、一般的な方法で行うことができ、高圧ホモジナイザー、コロイドミル、超音波乳化機、ホモミキサー、ホモディスパー等の装置を使用した処理を例示でき、二種類以上の装置を組み合わせてもよい。また、加熱するのが好ましく、例えば40~200℃、50~150℃等の加熱が例示でき、好ましくは120℃以下、より好ましくは100℃以下、さらに好ましくは95℃以下である。
【0012】
本発明の風味改善剤は、各種飲食品に添加することで、飲食品の風味を改善することができ、特に飲食品の不快な味を低減することができるが、植物性タンパク質臭のマスキング用として用いるのが好ましい。飲食品は特に制限されないが、例えば植物性タンパク質を使用した、プロテインサプリメント、プロテインバー、プロテインゼリー等のタンパク質補給用食品、豆乳等の飲料、植物性タンパク質を含むスープ類、肉様食品等の植物性タンパク質含有飲食品が例示できる。
【0013】
本発明の植物性タンパク質含有飲食品は、クルクミノイドを含むウコン抽出物と分散剤との混合物を含有し、植物性タンパク質100重量部に対してクルクミノイドを0.001~0.40重量部、好ましくは0.002~0.35、より好ましくは0.005~0.30、さらに好ましくは0.01~0.25含む、風味が改善された植物性タンパク質含有飲食品であって、植物性タンパク質臭がマスキングされた植物性タンパク質含有飲食品であるのが好ましい。該植物性タンパク質含有飲食品は、クルクミノイドを含むウコン抽出物と分散剤との混合物を植物性タンパク質含有飲食品に添加して前記割合で含有させることで製造でき、添加時又は添加後に例えば20~120℃、30~100℃程度に加熱してもよいが、好ましくは100℃未満、より好ましくは95℃以下、さらに好ましくは90℃以下である。植物性タンパク質としては、大豆タンパク質、エンドウタンパク質、ソラマメ蛋白質、ヒヨコマメタンパク質、インゲンマメタンパク質等の豆類タンパク質、小麦タンパク質、米タンパク質等の穀類タンパク質、ゴマタンパク質等の種実類タンパク質等が例示でき、酵素処理、熱処理、アルカリ処理等により加水分解された植物性タンパク質でもよい。
【実施例0014】
以下、実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の例によって限定されるものではない。
【0015】
[試験例1]
水道水210gにアラビアガム(FIBREGUM(登録商標)B、Nexira株式会社製)80.1gを加えて溶解し、90℃まで加熱した後、還元型ウコン抽出物(ホワイトクルクミノイド(登録商標)、株式会社サビンサジャパンコーポレーション社製、テトラヒドロクルクミノイド含有量:95%(w/w))9.9gを投入し、高圧ホモジナイザー(LAB-1000、SMT株式会社製)を用いて均一に分散させた。次に、スプレードライヤーを用いて噴霧乾燥することで、還元型ウコン抽出物粉末70g(テトラヒドロクルクミノイド含有量:10.45%(w/w))を得た。
【0016】
水29.6gに、還元型ウコン抽出物粉末0.04g(実施例1-1)、0.08g(実施例1-2)又は0g(比較例1)、及び食塩0.24gを溶解させた後、植物性タンパク質として粒状大豆たん白(ニューフジニック(登録商標)-51、不二製油株式会社製)10gを添加して調製した植物性タンパク質含有食品(実施品1-1、1-2又は比較品1)を試料として、訓練された5名のパネラ-により、官能評価を行い、結果を表1に示した。官能評価は、植物性タンパク質臭が強いものを5、植物性タンパク質臭が弱いものを1として、植物性タンパク質臭の強度を五段階で評価し、5名の平均値を算出して、数値が1.0以上2.3未満を「○」、2.3以上3.6未満を「△」、3.6以上5.0未満を「×」として、結果を表1に示した。
【0017】
【0018】
評価試験1より、実施品1-1及び1-2は何れも植物性タンパク質臭が抑えられており、テトラヒドロクルクミノイドを含むウコン抽出物を植物性タンパク質の風味改善剤として利用できることが分かった。