(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023109660
(43)【公開日】2023-08-08
(54)【発明の名称】アコースティック弦楽器用サドル
(51)【国際特許分類】
G10D 3/02 20060101AFI20230801BHJP
G10D 3/04 20200101ALI20230801BHJP
G10D 3/22 20200101ALI20230801BHJP
【FI】
G10D3/02
G10D3/04
G10D3/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2022021651
(22)【出願日】2022-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】520098730
【氏名又は名称】八賀 祥司
(72)【発明者】
【氏名】八賀 祥司
【テーマコード(参考)】
5D002
【Fターム(参考)】
5D002CC08
5D002CC18
5D002DD06
(57)【要約】 (修正有)
【課題】簡単な構造で音色を落とすことなく弦の振動の減衰を押さえ、さらに増幅させて、豊かな音量を実現する弦楽器のサドルを提供する。
【解決手段】アコースティック弦楽器の弦の振動を直接ブリッジ4に伝える金属ホーン1をサドル2の内部に埋め込む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アコースティック弦楽器の弦の振動を直接ブリッジに伝える金属ホーンを内蔵することを特徴とするサドル。
【請求項2】
請求項1に記載のサドルを使用することを特徴とするアコースティック弦楽器。
【請求項3】
振動を増幅する機能を発現させるため、弦接触部側の端面の面積は、ブリッジ接触面側の端面の面積と同等あるいは、より大きくし、両者の端面をつなぐ側面外周形状は、縦断面方向で直線や指数関数曲線、および、それらの複合形状であり、横断面方向は、円、楕円、四角、および、それらの複合形状である金属ホーン。
【請求項4】
金属ホーンの材質は、減衰率の低い金属、例えば、チタン合金、黄銅、青銅等であり、その金属ホーンを支えるサドルの材質は、逆に減衰率の高い材質、例えばプラスチック樹脂、木材、空気(サドル中空による)等を使用する。
【請求項5】
金属ホーンの外周面の表面粗度を、Ra0.2以上に光沢仕上げを行い、振動の内部乱反射を防ぐ金属ホーン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アコースティック弦楽器のサドルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
アコースティック弦楽器は、弦の振動をサドルで受け、ブリッジに伝え、ブリッジから楽器胴体の表板に伝え、胴体を構成する表板、裏板および側板で共鳴増幅させるものである。しかし、弦楽器は、弦の振動エネルギーの数%しか音に変換されていないという定説がある。本発明は音色を落とすことなく弦の振動の減衰を押さえ、さらに増幅させて、豊かな音量を実現するものである。
【従来技術】
【0003】
アコースティック弦楽器において音量を増幅させるものとしては、特許文献1の弦楽器本体の中に共鳴板を設けるものや、特許文献2の弦楽器本体の力木による棹振動と駒振動との同調構造の発明がある。また、特許文献3の弦の振動エネルギーの伝達効率よく胴体の表板に伝える発明がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のサドルは、ギターであれば6本の弦を支え、6本の弦の振動を同時に受けブリッジに伝えるものであり、6本の弦の振動がサドル内で干渉する課題がある。また、特許文献1および特許文献2の発明は、どちらも弦の振動をサドルで受けたそれ以降の振動伝導の発明であり、サドル自身の伝導効率を問題にしていない。一方、特許文献3は、サドル(文献ではブリッジ)で受けた振動をレバー機構で増幅させるものであるが、梁、ピン、レバー、ブリッジで構成される複雑な機構であるという課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【特許文献1】特許2903041 音響孔を有する弦楽器
【特許文献2】特許2864013 弦楽器の力木による棹振動と駒振動との同調構造
【特許文献3】特許3553059 ギター
【0005】
本発明は、上記課題を解決させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、弦の振動を増幅させる機構として金属ホーンを使用するものである。また、弦1本に1本の金属ホーンを配置させ、金属ホーンをサドルの内部に埋め込む構造を見出した。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、弦の振動を金属ホーンの上面で受け、その振動をブリッジに伝達させるものである。金属ホーンの効果は、弦の振動伝達の減衰率を押さえること、さらに、弦の振動を増幅することができることである。また、1弦ごとに1本の金属ホーンを独立させて配置する構造であるので、ブリッジへ振動が伝達する途中で、複数弦から同時に発する振動の干渉が起こらない。金属ホーンはサドルの内部に埋め込む簡単な構造のため、外観は従来のサドルと同等のものが提供できる。そのため、従来のサドルと交換して使用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態における金属ホーンを内蔵させたサドルの概念図である。
【
図2】本実施形態における実施事例の外観図である。
【
図3】本実施形態における金属ホーンの縦断面図である。
【
図4】本実施形態における金属ホーンの横断面図である。
【
図5】本実施形態における中空サドルの概念図である。
【実施例0009】
図1に6弦のアコースティックギターにおける実施例を示す。ギター胴体の表板5に接着されたブリッジ4にサドル2を装着させ、弦3を配置させる従来の方法に、弦3とブリッジ4を直接接合させるための金属ホーン1を、弦3とブリッジ4の中間に配置させる。弦の振動は金属ホーン1の上面に伝わり、金属ホーン効果により金属ホーン下面では振幅が増幅されブリッジ接触面に伝わる。金属ホーンは減衰率の低い金属で作られているため、振動は金属ホーンの中を優先的に伝わり、さらに、金属ホーン表面の表面粗度を向上させているため、金属ホーンを支えるサドル本体への振動の漏れが少ない。
【0010】
図2に6弦のアコースティックギターに装着した外観図を示す。既存のサドルを取り外し、本発明品を差し替えることで使えるため、ギター本体の改造は必要ない。
【0011】
金属ホーンの形状は、弦接触部側の端面面積A1は、ブリッジ接触側の端面面積A2と同等あるいは、より大きく(A1≧A2)なるように、縦断面の形状は直線や指数関数曲線、および、それらの複合形状で形成させる(
図3)、横断面の形状は金属ホーン側面の表面積が小さい形状、例えば円、楕円、四角、および、それらの複合形状で形成させる(
図4)。金属ホーンの材質は、減衰率の低い金属でかつ密度が低い方がよい。例えば、チタン合金、黄銅、青銅等を使用する。
逆に、その金属ホーンを支えるサドルの材質は、相対的に減衰率の高い材質、たとえばプラスチック樹脂、木材等を使用する。
【0012】
減衰率の高い物質として空気を利用する目的で、金属ホーンを支えるサドルの一部を中空にすることも伝達効率から有益である。サドルの一部を中空にした事例を
図5に示す。