▶ オイレス工業株式会社の特許一覧
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023109667
(43)【公開日】2023-08-08
(54)【発明の名称】バタフライ弁
(51)【国際特許分類】
F02D 9/10 20060101AFI20230801BHJP
【FI】
F02D9/10 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022086264
(22)【出願日】2022-05-26
(62)【分割の表示】P 2022011067の分割
【原出願日】2022-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000103644
【氏名又は名称】オイレス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002343
【氏名又は名称】弁理士法人 東和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野口 拓馬
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 栄治
(72)【発明者】
【氏名】大川 丈典
【テーマコード(参考)】
3G065
【Fターム(参考)】
3G065AA09
3G065CA35
3G065HA16
(57)【要約】
【課題】高背圧下であっても排気管外へ排気ガスが漏出しにくいバタフライ弁を提供すること。
【解決手段】排気管EP内に設けられる弁板110と、排気管EPを横断して弁板110を保持する弁軸120と、この弁軸120を内挿する環状の封止ブッシュ141と支持ブッシュ142とをそれぞれ別体に有して弁軸120を摺動自在に軸支する軸受ユニット140と、排気管EPに取り付けられて排気管EPの外部に配置された軸受ユニット140を収容するハウジング150とを備え、支持ブッシュ142が、ハウジング150と封止ブッシュ141との間に配置されて支持ブッシュ142の外周面142Aでハウジング150と当接し、封止ブッシュ141が、この封止ブッシュ141の外周面141Aでハウジング150と当接すると共に封止ブッシュ141の弁軸対向面141Bで弁軸120の鍔121と当接する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの排気口に連通する排気管を開閉するバタフライ弁であって、
前記排気管内に設けられる弁板と、
前記排気管を横断して前記弁板を保持する弁軸と、
該弁軸を内挿する環状の封止ブッシュと支持ブッシュとをそれぞれ別体に有して前記弁軸を摺動自在に軸支する軸受ユニットと、
前記排気管に取り付けられて前記排気管の外部に配置された前記軸受ユニットを収容するハウジングとを備え、
前記軸受ユニットの支持ブッシュが、前記ハウジングと前記軸受ユニットの封止ブッシュとの間に配置されて前記支持ブッシュの外周面で前記ハウジングと当接し、
前記軸受ユニットの封止ブッシュが、該封止ブッシュの外周面で前記ハウジングと当接すると共に前記封止ブッシュの弁軸対向面で前記弁軸の鍔と当接することを特徴とするバタフライ弁。
【請求項2】
前記軸受ユニットの封止ブッシュが、前記軸受ユニットの支持ブッシュより軟質であり、
前記封止ブッシュの内径の大きさが、前記支持ブッシュの内径の大きさ以上であることを特徴とする請求項1に記載のバタフライ弁。
【請求項3】
前記支持ブッシュの軸方向の長さが、前記封止ブッシュの軸方向の長さより長いことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のバタフライ弁。
【請求項4】
前記封止ブッシュが、金属線で編まれた網状の金属製骨材と、該金属製骨材に充填された黒鉛とから形成され、
前記金属製骨材が、前記封止ブッシュの軸方向で繰り返し折曲した状態で形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のバタフライ弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バタフライ弁に関するものであって、特に、エンジンの排気口に連通する排気管を開閉するバタフライ弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動二輪車のエンジンの排気口と連通する排気管内の排気ガス流を制御する排気デバイス(バタフライ弁)として、排気管内に配置された弁体(弁板)と、この弁体に固着又は一体に形成されると共に排気管を横断するように配置された弁軸と、この弁軸の軸長方向の両端部を回動自在に支持した一対の軸受部材と、を備え、弁体を弁軸芯回りに回動する排気デバイスが知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-169797号公報(例えば、
図5参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のようなバタフライ弁を自動四輪車のエンジンの排気口と連通する排気管に設置すると、背圧が自動二輪車における背圧よりも大きくなるため、弁体が排気管を塞いだ際に軸受部材が背圧によるラジアル荷重に耐えられない虞がある。
そこで、自動四輪車のエンジンによる背圧に耐えるために、軸受部材を硬質材に変更すると、軸受部材の封止性能が低下して排気ガスが軸受部材と弁軸との間の隙間等から外部に漏出したり、軸受部材と弁軸との間に排気ススが堆積したりする虞がある。
この排気ススの堆積問題は、エンジンの燃料がバイオディーゼル燃料になると、従来の石油燃料に比べて排気ススが発生しやすくなるため、より深刻な問題になる。
【0005】
したがって、本発明は、前述したような従来技術の問題を解決するものであって、すなわち、本発明の目的は、高背圧下であっても排気管外へ排気ガスが漏出しにくいバタフライ弁を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、エンジンの排気口に連通する排気管を開閉するバタフライ弁であって、前記排気管内に設けられる弁板と、前記排気管を横断して前記弁板を保持する弁軸と、該弁軸を内挿する環状の封止ブッシュと支持ブッシュとをそれぞれ別体に有して前記弁軸を摺動自在に軸支する軸受ユニットと、前記排気管に取り付けられて前記排気管の外部に配置された前記軸受ユニットを収容するハウジングとを備え、前記軸受ユニットの支持ブッシュが、前記ハウジングと前記軸受ユニットの封止ブッシュとの間に配置されて前記支持ブッシュの外周面で前記ハウジングと当接し、前記軸受ユニットの封止ブッシュが、該封止ブッシュの外周面で前記ハウジングと当接すると共に前記封止ブッシュの弁軸対向面で前記弁軸の鍔と当接することにより、前述した課題を解決するものである。
【0007】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載されたバタフライ弁の構成に加えて、前記軸受ユニットの封止ブッシュが、前記軸受ユニットの支持ブッシュより軟質であり、前記封止ブッシュの内径の大きさが、前記支持ブッシュの内径の大きさ以上であることにより、前述した課題をさらに解決するものである。
【0008】
請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に記載されたバタフライ弁の構成に加えて、前記支持ブッシュの軸方向の長さが、前記封止ブッシュの軸方向の長さより長いことにより、前述した課題をさらに解決するものである。
【0009】
請求項4に係る発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載されたバタフライ弁の構成に加えて、前記封止ブッシュが、金属線で編まれた網状の金属製骨材と、該金属製骨材に充填された黒鉛とから形成され、前記金属製骨材が、前記封止ブッシュの軸方向で繰り返し折曲した状態で形成されていることにより、前述した課題をさらに解決するものである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明のバタフライ弁によれば、軸受ユニットの封止ブッシュが、この封止ブッシュの外周面でハウジングと当接すると共に封止ブッシュの弁軸対向面で弁軸の鍔と当接することにより、ハウジングと軸受ユニットとの間が封止されると共に弁軸と軸受ユニットとの間も封止されるため、排気管内を流動する排気ガスがハウジングを介して排気管外に漏出することを防ぐことができる。
また、軸受ユニットの支持ブッシュが、ハウジングと軸受ユニットの封止ブッシュとの間に配置されて支持ブッシュの外周面でハウジングと当接することにより、支持ブッシュが、弁板に排気管内を流動する排気ガスに起因するラジアル荷重を支持するため、弁板が排気管を塞いだ際に弁板に高荷重が負荷されたとしても、封止ブッシュの変形や異常摩擦などを防ぐことができる。
したがって、高背圧下であっても排気ガスの排気管外への漏出を防ぐことができる。
【0011】
請求項2に係る発明のバタフライ弁によれば、請求項1に係る発明のバタフライ弁が奏する効果に加えて、軸受ユニットの封止ブッシュが、軸受ユニットの支持ブッシュより軟質であることにより、封止ブッシュが支持ブッシュより硬質である場合に比べて、封止ブッシュがハウジングあるいは弁軸の鍔の形状に追従して変形しやすくなるため、ハウジングと軸受ユニットとの間だけでなく弁軸と軸受ユニットとの間を確実に封止することができる。
また、封止ブッシュの内径の大きさが、支持ブッシュの内径の大きさ以上であることにより、弁軸が封止ブッシュの内周面と当接するよりも先に封止ブッシュより硬質の支持ブッシュの内周面と当接するため、弁板が排気管を塞いだ際に弁板に高荷重が負荷されたとしても、確実に支持ブッシュで弁軸を支持することができる。
したがって、高背圧下であっても排気ガスの排気管外への漏出を確実に防ぐことができる。
【0012】
請求項3に係る発明のバタフライ弁によれば、請求項1または請求項2に係る発明のバタフライ弁が奏する効果に加えて、支持ブッシュの軸方向の長さが、封止ブッシュの軸方向の長さより長いことにより、支持ブッシュの軸方向の長さが封止ブッシュの軸方向の長さより短い場合に比べて、弁板が排気管を塞いだ状態で弁板に高荷重が負荷された際に支持ブッシュに加わる面圧が小さくなるため、軸受ユニットの耐ラジアル荷重性能をさらに向上させることができる。
【0013】
請求項4に係る発明のバタフライ弁によれば、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に係る発明のバタフライ弁が奏する効果に加えて、封止ブッシュが、金属線で編まれた網状の金属製骨材と、この金属製骨材に充填された黒鉛とから形成され、金属製骨材が、封止ブッシュの軸方向で繰り返し折曲した状態で形成されていることにより、封止ブッシュが径方向よりも軸方向に膨張しやすくなって封止ブッシュの軸方向のクッション性が高まるため、封止ブッシュと弁軸の鍔との間のシール性をより向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第1実施例であるバタフライ弁が組み込まれた排気管の斜視図。
【
図5】本発明の第2実施例であるバタフライ弁の要部拡大断面図。
【
図6】本発明の第3実施例であるバタフライ弁の要部拡大断面図。
【
図7】本発明の第4実施例であるバタフライ弁の要部拡大断面図。
【
図8A】本発明の第5実施例であるバタフライ弁の要部拡大断面図。
【
図9A】本発明の第6実施例のバタフライ弁における軸受ユニットの斜視分解図
【
図9B】
図9AのIXB-IXB断面におけるバタフライ弁の要部拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、エンジンの排気口に連通する排気管を開閉するバタフライ弁であって、排気管内に設けられる弁板と、排気管を横断して弁板を保持する弁軸と、この弁軸を内挿する環状の封止ブッシュと支持ブッシュとをそれぞれ別体に有して弁軸を摺動自在に軸支する軸受ユニットと、排気管に取り付けられて排気管の外部に配置された軸受ユニットを収容するハウジングとを備え、軸受ユニットの支持ブッシュが、ハウジングと軸受ユニットの封止ブッシュとの間に配置されて支持ブッシュの外周面でハウジングと当接し、軸受ユニットの封止ブッシュが、この封止ブッシュの外周面でハウジングと当接すると共に封止ブッシュの弁軸対向面で弁軸の鍔と当接し、高背圧下であっても排気管外へ排気ガスが漏出しにくいものであれば、その具体的な実施態様は、如何なるものであっても構わない。
【0016】
例えば、本発明におけるバタフライ弁は、自動四輪車のエンジンの排気口に連通する排気管に設けられているが、本発明のバタフライ弁が設けられるのは自動四輪車に限らず、自動二輪車であってもよいことはもちろん、自動四輪車はガソリン車であってもよいしディーゼル車であってもよい。
すなわち、排気管が連通するエンジンは、ガソリンエンジンであってもよいし、ディーゼルエンジンであってもよい。
なお、一般に乗用車に使われるガソリンエンジンに比べトラックに使われるディーゼルエンジンは背圧が高くなるが、本発明に係るバタフライ弁であれば、十分に排気管外への排気ガスの漏出を抑制することができる。
【実施例0017】
以下、
図1乃至
図4に基づいて、本発明の第1実施例であるバタフライ弁100を説明する。
【0018】
<1.バタフライ弁の設置環境>
まず、本発明の第1実施例であるバタフライ弁が組み込まれた排気管の斜視図である
図1に基づいて、バタフライ弁100が設置される環境について説明する。
【0019】
本実施例のバタフライ弁100は、自動四輪車のディーゼルエンジンの排気口(不図示)に連通する排気管EPを開閉するものであり、
図1に示すように、円筒状の排気管EPの途中に配置されている。
【0020】
<2.バタフライ弁の構造>
次に、
図1乃至
図4に基づいて、バタフライ弁100の構造を説明する。
図2は
図1の縦断面図であり、
図3は
図2のIII拡大図であり、
図4は
図3のIV拡大図である。
【0021】
<2.1.バタフライ弁の主要構成>
バタフライ弁100は、
図1および
図2に示すように、排気管EP内に設けられる円盤状の弁板110と、排気管EPを横断して弁板110を保持する弁軸120と、弁板110と弁軸120とを結合する結合ボルト130と、弁軸120を摺動自在に軸支する軸受ユニット140と、排気管EPに取り付けられて排気管EPの外部に配置された軸受ユニット140を収容するハウジング150とを備えている。
【0022】
<2.1.1.弁板>
弁板110は、
図2に示すように、弁軸120よりも上流側に設けられている。
これにより、弁板110に排気ガスEGの背圧が負荷されたとしても、弁板110が弁軸120に押しつけられるため、弁板110が弁軸120から脱離しにくくなっている。
【0023】
<2.1.2.弁軸>
弁軸120の両端側には、
図2に示すように、径方向に突出する鍔121が形成されている。
この鍔121の直径φFは、
図3に示すように、排気管EPに形成された軸挿通孔EP1の直径φPよりも小径になっている。
また、鍔121より外方の弁軸120の直径は、
図3に示すように、端部まで一定となっている。
さらに、弁軸120の一端(
図2における上端)側には雄ネジが形成されている。
【0024】
<2.1.3.軸受ユニット>
軸受ユニット140は、
図2に示すように、弁軸120を内挿する環状の封止ブッシュ141および支持ブッシュ142から構成されている。
【0025】
封止ブッシュ141は、
図2および
図3に示すように、支持ブッシュ142とは別体の部材であり、支持ブッシュ142より軟質(例えば、ヤング率が0.15~0.5GPa以上であり、ポアソン比が0.2~0.3程度、圧縮強さが46MPa以下)になっている。
そして、封止ブッシュ141は、外周面141Aでハウジング150と圧接し、弁軸対向面141Bで弁軸120の鍔121と当接している。
したがって、封止ブッシュ141とハウジング150との間は封止され、封止ブッシュ141と弁軸120の鍔121との間も封止されている。
また、封止ブッシュ141の内径φsは、支持ブッシュ142の内径φbより僅かに大きくなっている。
なお、封止ブッシュ141の内径φsは、支持ブッシュ142の内径φbと等しくてもよい。
【0026】
封止ブッシュ141は、
図4に示すように、金属線(本実施例では、ステンレス線)で編まれた網状の金属製骨材141aと、この金属製骨材141aに充填された黒鉛141bとから形成されている。
金属製骨材141aは、封止ブッシュ141の軸方向(すなわち、弁軸120の伸びる方向;
図4における上下方向)で繰り返し折曲した状態で形成されている。
したがって、金属製骨材141aは、軸方向に膨張しやすくなっている。
黒鉛141bは、金属製骨材141aの隙間に入り込みやすくするために、膨張黒鉛である。
【0027】
支持ブッシュ142は、本実施例ではハウジング150と同じステンレス製であり、ハウジング150とほぼ同等の線膨張係数となっている。
これにより、排気ガス等によりバタフライ弁100が高温になった際、ハウジング150に追従して支持ブッシュ142も膨張するため、支持ブッシュ142とハウジング150との間を封止しつづけることができる。
【0028】
そして、この支持ブッシュ142は、
図2および
図3に示すように、ハウジング150と封止ブッシュ141との間に配置され、外周面142Aでハウジング150と圧接している。
また、支持ブッシュ142の軸方向の長さLbは、封止ブッシュ141の軸方向の長さLsより長くなっている。
【0029】
<2.1.4.ハウジング>
ハウジング150は、排気管EPの軸挿通孔EP1を覆う部材であり、
図2に示すように、排気管EPの下方側に取り付けられる鍔付きの有底円筒状の固定側ハウジング151と、排気管EPの上方側に取り付けられる鍔付きの有底円筒状の脱着側ハウジング152とから構成されている。
【0030】
固定側ハウジング151は、排気管EPとの間から排気ガスEGが漏出しないように溶接等によって排気管EPと一体化されている。
【0031】
脱着側ハウジング152は、排気管EPと当接しており、
図3に示すように、弁軸120を挿通する貫通孔152aが底面に形成されている。
この貫通孔152aの直径φhは、
図3に示すように、弁軸120の直径φdよりも僅かに大きくなっている。
【0032】
また、ハウジング150の内面直径(すなわち、固定側ハウジング151の内面直径および脱着側ハウジング152の内面直径)φiは、
図3に示すように、弁軸120の鍔121の直径φFよりもやや大きく、排気管EPの軸挿通孔EP1の直径φPよりも小径になっている。
【0033】
<2.2.バタフライ弁のその他の構成>
さらに、バタフライ弁100は、脱着側ハウジング152を排気管EPに押し当てるコイル状の押付バネ160と、弁軸120を回動する弁軸回動機構170とを備えている。
【0034】
<2.2.1.押付バネ>
押付バネ160は、
図2に示すように、捩りコイルバネであり、脱着側ハウジング152と弁軸回動機構170との間に配置され、脱着側ハウジング152を排気管EPに向けて付勢している。
この押付バネ160により、脱着側ハウジング152は排気管EPとの間から排気ガスEGが漏出しないような状態で当接する。
【0035】
<2.2.2.弁軸回動機構>
弁軸回動機構170は、
図1に示すように、押付バネ160の他端側と当接する円環状の回転板171と、この回転板171を弁軸120に固定する固定ナット172と、排気管EPから立ち上がり回転板171の回り止めとなるストッパー173と、弁軸120を回動させる不図示の弁軸駆動アクチュエーターとを有している。
【0036】
なお、
図1に示すような弁板110が排気管EPを塞いでいる状態では、弁軸駆動アクチュエーターにより押付バネ160が捩れている。
換言すると、押付バネ160が捩れていない状態、すなわち、弁軸駆動アクチュエーターが作動していない状態では、弁板110は排気管EPを塞いでおらず、排気ガスEGが排気管EPを流動自在となっている。
【0037】
回転板171は、弁軸120と一体になって回動し、
図1に示すように、回転板171から立ち下がって押付バネ160の一端側の先端部分と当接するバネ抑え部171aと、ストッパー173と当接する2つの腕部171bとを有している。
【0038】
バネ抑え部171aは、L字状であり、押付バネ160の一端側の先端部分と2辺で当接している。
【0039】
腕部171bは、水平方向に延びる水平部分と、水平部分の先端から立ち下がりストッパー173と当接する垂下部分とから形成されている。
なお、腕部171bが2つ形成されていることにより、弁軸120(すなわち、弁板110)は、この腕部171bに挟まれた角度範囲で回転自在となっている。
【0040】
固定ナット172の内面には、弁軸120に形成された雄ネジと螺合する雌ネジが形成されている。
これにより、弁軸120を回転板171に内挿した状態で、固定ナット172を弁軸120に螺合させることで、押付バネ160が縮み、脱着側ハウジング152が排気管EPに押し当てられる。
【0041】
ストッパー173は、
図1に示すように、回転板171の腕部171bと当接することに加え、押付バネ160の他端側の先端部分と当接している。
【0042】
<3.効果>
以上説明した本実施例のバタフライ弁100によれば、軸受ユニット140の支持ブッシュ142とは別体の封止ブッシュ141が、この封止ブッシュ141の外周面141Aでハウジング150(固定側ハウジング151、脱着側ハウジング152)と当接すると共に封止ブッシュ141の弁軸対向面141Bで弁軸120の鍔121と当接することにより、ハウジング150と軸受ユニット140との間が封止されると共に弁軸120と軸受ユニット140との間も封止されるため、排気管EP内を流動する排気ガスEGがハウジング150を介して排気管EP外に漏出することを防ぐことができる。
また、軸受ユニット140の支持ブッシュ142が、ハウジング150と軸受ユニット140の封止ブッシュ141との間に配置されて支持ブッシュ142の外周面142Aでハウジング150と当接することにより、支持ブッシュ142が、弁板110に排気管EP内を流動する排気ガスEGに起因するラジアル荷重を支持するため、弁板110が排気管EPを塞いだ際に弁板110に高荷重が負荷されたとしても、封止ブッシュ141の変形や異常摩擦などを防ぐことができる。
したがって、高背圧下であっても排気ガスEGの排気管EP外への漏出を防ぐことができる。
すなわち、一般に耐荷重性能と封止性能とはトレードオフの関係にあるため、本実施例のバタフライ弁100のように、軸受ユニット140を2つの部材から構成することで、耐荷重性能と封止性能との両立を実現した。
【0043】
さらに、仮に封止ブッシュ141と弁軸120の鍔121とが錆等によって固着したとしても、封止ブッシュ141と支持ブッシュ142とが摺動しつつ封止ブッシュ141の外周面141Aとハウジング150とが摺動するため、バタフライ弁として機能し続けることができる。
また、封止ブッシュ141がハウジング150との間を封止することにより、支持ブッシュ142に排気管EP内の凝縮水が侵入しにくくなるため、支持ブッシュ142に錆が発生しにくくなっている。
【0044】
また、軸受ユニット140の封止ブッシュ141が、軸受ユニット140の支持ブッシュ142より軟質であることにより、封止ブッシュ141が支持ブッシュ142より硬質である場合に比べて、封止ブッシュ141がハウジング150あるいは弁軸120の鍔121の形状に追従して変形しやすくなる。
また、封止ブッシュ141の内径φsの大きさが、支持ブッシュ142の内径φbの大きさ以上であることにより、弁軸120が封止ブッシュ141の内周面と当接するよりも先に封止ブッシュ141より硬質の支持ブッシュ142の内周面と当接する。
したがって、高背圧下であっても排気ガスEGの排気管EP外への漏出を確実に防ぐことができる。
【0045】
また、支持ブッシュ142の軸方向の長さLbが、封止ブッシュ141の軸方向の長さLsより長いことにより、支持ブッシュ142の軸方向の長さLbが封止ブッシュ141の軸方向の長さLsより短い場合に比べて、弁板110が排気管EPを塞いだ状態で弁板110に高荷重が負荷された際に支持ブッシュ142に加わる面圧が小さくなるため、軸受ユニット140の耐ラジアル荷重性能をさらに向上させることができる。
【0046】
また、封止ブッシュ141が、金属線であるステンレス線で編まれた網状の金属製骨材141aと、この金属製骨材141aに充填された黒鉛141bとから形成され、金属製骨材141aが、封止ブッシュ141の軸方向で繰り返し折曲した状態で形成されていることにより、封止ブッシュ141が径方向よりも軸方向に膨張しやすくなって封止ブッシュ141の軸方向のクッション性が高まるため、封止ブッシュ141と弁軸120の鍔121との間のシール性をより向上させることができる。
さらに、
図4に示すように、封止ブッシュ141の表面に金属製骨材141aよりも摩擦係数の小さい黒鉛141bが露出していることにより、弁軸120を回転させるトルクが低トルクとなり、弁軸駆動アクチュエーターを小型化することができる。
そして、金属製骨材141aがステンレス線で編まれていることにより、封止ブッシュ141がクッション性を有するようになるため、封止ブッシュ141をハウジング150に圧入する際に封止ブッシュ141が削れにくくなったり、弁軸120が多少傾いていたとしても安定して弁軸120を支持したり、自動四輪車の走行時の上下振動に対し振動を吸収したりすることができる。
【実施例0047】
次に、本発明の第2実施例であるバタフライ弁の要部拡大断面図である
図5に基づいて、本発明の第2実施例であるバタフライ弁200について説明する。
なお、第2実施例のバタフライ弁200は、第1実施例のバタフライ弁100における軸受ユニット140の形状を変更したものであり、多くの要素について第1実施例のバタフライ弁100と共通するので、共通する事項については詳しい説明を省略し、下2桁が共通する200番台の符号を付すのみとする。
【0048】
図5に示すように、第2実施例の軸受ユニット240では、封止ブッシュ241の支持ブッシュ対向面241Cは、弁軸220の中心軸Cに向かう方向かつ弁軸220の鍔221に向かう方向に傾斜している。
なお、支持ブッシュ対向面241Cは、弁軸220の中心軸Cに向かう方向かつ弁軸220の鍔221から遠ざかる方向に傾斜していてもよい。
【0049】
支持ブッシュ242の封止ブッシュ対向面242Cも、封止ブッシュ241の支持ブッシュ対向面241Cに対応して弁軸220の中心軸Cに向かって傾斜している。
【0050】
このように形成された第2実施例のバタフライ弁200は、封止ブッシュ241の支持ブッシュ対向面241Cと支持ブッシュ242の封止ブッシュ対向面242Cとが互いに対応するように傾斜していることにより、封止ブッシュ241と支持ブッシュ242との径方向の位置決めが容易となるため、軸受ユニット240を効率よく組み立てることができる。
【実施例0051】
次に、本発明の第3実施例であるバタフライ弁の要部拡大断面図である
図6に基づいて、本発明の第3実施例であるバタフライ弁300について説明する。
なお、第3実施例のバタフライ弁300は、第1実施例のバタフライ弁100における弁軸120および軸受ユニット140の形状を変更したものであり、多くの要素について第1実施例のバタフライ弁100と共通するので、共通する事項については詳しい説明を省略し、下2桁が共通する300番台の符号を付すのみとする。
【0052】
図6に示すように、第3実施例の弁軸320の鍔321における封止ブッシュ当接面321Aは、弁軸320の中心軸Cに向かう方向かつ排気管EPから遠ざかる方向に傾斜している。
なお、封止ブッシュ当接面321Aは、弁軸320に向かう方向かつ排気管EPから近づく方向に傾斜してもよい。
【0053】
封止ブッシュ341の弁軸対向面341Bも、弁軸320の封止ブッシュ当接面321Aに対応して弁軸320の中心軸Cに向かって傾斜している。
【0054】
このように形成された第3実施例のバタフライ弁300は、弁軸320の封止ブッシュ当接面321Aと封止ブッシュ341の弁軸対向面341Bとが互いに対応するように傾斜していることにより、軸受ユニット340に対して弁軸320が位置決めされるため、弁軸320と軸受ユニット340との間を確実に封止できると共に弁軸320を確実に支持することができる。
【実施例0055】
次に、本発明の第4実施例であるバタフライ弁の要部拡大断面図である
図7に基づいて、本発明の第4実施例であるバタフライ弁400について説明する。
なお、第4実施例のバタフライ弁400は、第1実施例のバタフライ弁100における弁軸120および軸受ユニット140の形状を変更したものであり、多くの要素について第1実施例のバタフライ弁100と共通するので、共通する事項については詳しい説明を省略し、下2桁が共通する400番台の符号を付すのみとする。
【0056】
図7に示すように、第4実施例の弁軸420の鍔421における封止ブッシュ当接面421Aが、弁軸420の中心軸Cに向かう方向かつ排気管EPから遠ざかる方向に傾斜している。
【0057】
封止ブッシュ441の弁軸対向面441Bも、弁軸420の封止ブッシュ当接面421Aに対応して弁軸420の中心軸Cに向かって傾斜している。
また、封止ブッシュ441の支持ブッシュ対向面441Cは、弁軸420の中心軸Cに向かう方向かつ弁軸420の鍔421に向かう方向に傾斜している。
なお、封止ブッシュ441の弁軸対向面441Bの傾斜角は、封止ブッシュ441の支持ブッシュ対向面441Cの傾斜角と等しくなっている。
【0058】
支持ブッシュ442の封止ブッシュ対向面442Cも、封止ブッシュ441の支持ブッシュ対向面441Cに対応して弁軸420の中心軸Cに向かって傾斜している。
【0059】
なお、弁軸420の封止ブッシュ当接面421Aは、弁軸420に向かう方向かつ排気管EPから近づく方向に傾斜してもよい。
また、封止ブッシュ441の支持ブッシュ対向面441Cは、弁軸420の中心軸Cに向かう方向かつ弁軸420の鍔421から遠ざかる方向に傾斜していてもよい。
【0060】
このように形成された第4実施例のバタフライ弁400は、封止ブッシュ441の支持ブッシュ対向面441Cと支持ブッシュ442の封止ブッシュ対向面442Cとが互いに対応するように傾斜していることにより、封止ブッシュ441と支持ブッシュ442との径方向の位置決めが容易となるため、軸受ユニット240を効率よく組み立てることができる。
さらに、弁軸420の封止ブッシュ当接面421Aと封止ブッシュ441の弁軸対向面441Bとが互いに対応するように傾斜していることにより、軸受ユニット440に対して弁軸420が位置決めされるため、弁軸420と軸受ユニット440との間を確実に封止できると共に弁軸420を確実に支持することができる。
さらに、封止ブッシュ441の弁軸対向面441Bの傾斜角は、封止ブッシュ441の支持ブッシュ対向面441Cの傾斜角と等しくなっていることにより、封止ブッシュ441の軸方向の方向性がなくなるため、封止ブッシュ441の誤組み付けを抑制することができる。
【実施例0061】
次に、
図8Aおよび
図8Bに基づいて、本発明の第5実施例であるバタフライ弁500について説明する。
図8Aは本発明の第5実施例であるバタフライ弁の要部拡大断面図であり、
図8Bは
図8AのIIIVB拡大図である。
なお、第5実施例のバタフライ弁500は、第1実施例のバタフライ弁100における軸受ユニット140の形状を変更したものであり、多くの要素について第1実施例のバタフライ弁100と共通するので、共通する事項については詳しい説明を省略し、下2桁が共通する500番台の符号を付すのみとする。
【0062】
図8Aに示すように、第5実施例の軸受ユニット540では、封止ブッシュ541に支持ブッシュ542が内挿されている。
【0063】
<1.封止ブッシュ>
封止ブッシュ541は、円筒状の基部541cと、この基部541cから軸方向に突出する円筒状の突出部541dとから形成されている。
【0064】
突出部541dの外周面541d1は、
図8Aに示すように、基部541cの外周面541c1と面一になっている。
また、突出部541dの内径φs1は、
図8Aに示すように、基部541cの内径φsよりも大きくなっている。
さらに、突出部541dの軸方向の長さLs1は、
図8Aに示すように、基部541cの軸方向の長さLsよりも大きくなっている。
【0065】
また、本実施例の封止ブッシュ541は、
図8Bに示すように、金属製骨材541aが内径側に一部露出している。
したがって、封止ブッシュ541に内挿された支持ブッシュ542は、封止ブッシュ541の金属製骨材541aに係合している。
【0066】
<2.支持ブッシュ>
支持ブッシュ542は、円筒状の基部542aと、この基部542aから軸方向に突出する円筒状の突出部542bとから形成されている。
【0067】
突出部542bの内周面542b1は、基部542aの内周面542a1と面一になっている。
すなわち、突出部542bの内径φbは、
図8Aに示すように、基部542aの内径と等しく、封止ブッシュ541の内径φsよりも僅かに小さくなっている。
【0068】
突出部542bの外径φbo1は、
図8Aに示すように、基部542aの外径φboよりも小さくなっている。
そして、突出部542bの外径φbo1は、
図8Aに示すように、封止ブッシュ541の突出部541dの内径φs1とほぼ等しくなっている。
【0069】
突出部542bの軸方向の長さLb1は、
図8Aに示すように、基部542aの軸方向の長さLb2よりも大きくなっている。
また、突出部542bの軸方向の長さLb1は、
図8Aに示すように、封止ブッシュ541の突出部541dの軸方向の長さLs1とほぼ等しくなっている。
【0070】
なお、本実施例において、支持ブッシュ542の突出部542bは封止ブッシュ541の突出部541dよりも弁軸520側に位置していたが、封止ブッシュ541の突出部541dは支持ブッシュ542の突出部542bよりも弁軸520側に位置してもよい。
【0071】
このように形成された第5実施例のバタフライ弁500は、支持ブッシュ542が封止ブッシュ541に内挿されていることにより、軸受ユニット540が一体の部材として取り扱いやすくなるため、バタフライ弁500を効率よく組み立てることができる。
【実施例0072】
次に、
図9Aおよび
図9Bに基づいて、本発明の第6実施例であるバタフライ弁600について説明する。
図9Aは本発明の第6実施例のバタフライ弁における軸受ユニットの斜視分解図であり、
図9Bは
図9AのIXB-IXB断面におけるバタフライ弁の要部拡大断面図である。
なお、第6実施例のバタフライ弁600は、第5実施例のバタフライ弁500における軸受ユニット540の形状を更に変更したものであり、多くの要素について第5実施例のバタフライ弁500と共通するので、共通する事項については詳しい説明を省略し、下2桁が共通する600番台の符号を付すのみとする。
【0073】
図9Aに示すように、第6実施例の軸受ユニット640では、封止ブッシュ641の突出部641dの内周面から突条641d2が突設されている。
支持ブッシュ642を封止ブッシュ641に内挿する際、封止ブッシュ641が支持ブッシュ642よりも軟質であるため、
図9Bに示すように、支持ブッシュ642を封止ブッシュ641に内挿すると封止ブッシュ641の突条641d2が潰されて、支持ブッシュ642は封止ブッシュ641の一部と当接する。
【0074】
このように形成された第6実施例のバタフライ弁600は、封止ブッシュ641に突条641d2が形成されていることにより、突条641d2が封止ブッシュ641に支持ブッシュ642を内挿する際の挿入ガイドとなるため、軸受ユニット640の組み付け性を向上させることができるだけでなく、仮に封止ブッシュ641が弁軸620の鍔621に固着したとしても、弁軸620の固着した封止ブッシュ641が支持ブッシュ642に対して摺動するため、バタフライ弁の機能を長期に亘って維持することができる。
【0075】
<変形例>
以上、本発明の実施例であるバタフライ弁についてそれぞれ説明したが、本発明のバタフライ弁は、上述した実施例のバタフライ弁に限定されるものではない。
【0076】
例えば、上述した実施例において、金属製骨材はステンレス線で編まれていたが、金属製骨材は金属線で編まれていれば、何れの金属線であってもよいが、ハウジングと封止ブッシュとの間を確実に封止するためには、ハウジングの材質と同程度の線膨張係数を有する金属線で編まれていることが好ましい。
【0077】
例えば、上述した実施例において、弁板が弁軸よりも上流側に設けられていたが、弁板の位置はこれに限定されるものではなく、弁板が弁軸よりも下流側に設けられていてもよい。
【0078】
例えば、上述した実施例において、支持ブッシュはハウジングと同じステンレス製であったが、支持ブッシュの素材はこれに限定されるものではなく、例えば、硬質カーボンやセラミックスであってもよい。
【符号の説明】
【0079】
100、200、300、 400、500、600 ・・・ バタフライ弁
110 ・・・ 弁板
120、220、320、 420、520 ・・・ 弁軸
121、 321、 421 ・・・ 鍔
321A、421A ・・・ 封止ブッシュ当接面
130 ・・・ 結合ボルト
140、240、340、 440、540 ・・・ 軸受ユニット
141、241、341、 441、541、 641 ・・・ 封止ブッシュ
141A ・・・ 外周面
141B、 341B、441B ・・・ 弁軸対向面
241C 441C ・・・ 支持ブッシュ対向面
141a、 541a ・・・ 金属製骨材
141b、 541b ・・・ 黒鉛
541c ・・・ 基部
541c1 ・・・ 外周面
541d、641d ・・・ 突出部
541d1 ・・・ 外周面
641d2・・・ 突起
142、242、342、 442、542、 642 ・・・ 支持ブッシュ
142A ・・・ 外周面
242C 442C ・・・ 封止ブッシュ対向面
542a ・・・ 基部
542a1 ・・・ 内周面
542b ・・・ 突出部
542b1 ・・・ 内周面
150 ・・・ ハウジング
151 ・・・ 固定側ハウジング
152 ・・・ 脱着側ハウジング
160 ・・・ 押付バネ
170 ・・・ 弁軸回動機構
171 ・・・ 回転板
171a ・・・ バネ抑え部
171b ・・・ 腕部
172 ・・・ 固定ナット
173 ・・・ ストッパー
EP ・・・ 排気管
EP1 ・・・ 軸挿通孔
EG ・・・ 排気ガス
C ・・・ 弁軸の中心軸
φF ・・・ 鍔の直径
φi ・・・ ハウジングの内面直径
φP ・・・ 排気管の軸挿通孔径
φs ・・・ 封止ブッシュ(基部)の内径
φs1 ・・・ 封止ブッシュの突出部の内径
φb ・・・ 支持ブッシュ(突出部)の内径
φb ・・・ 支持ブッシュ(基部)の外径
φbo1 ・・・ 支持ブッシュの突出部の外径
φh ・・・ 脱着側ハウジングの貫通孔の直径
φd ・・・ 弁軸の直径
Ls ・・・ 封止ブッシュ(基部)の軸方向の長さ
Ls1 ・・・ 封止ブッシュ(突出部)の軸方向の長さ
Lb ・・・ 支持ブッシュの軸方向の長さ
Lb1 ・・・ 封止ブッシュ(突出部)の軸方向の長さ
Ls2 ・・・ 封止ブッシュ(基部)の軸方向の長さ
【手続補正書】
【提出日】2022-05-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの排気口に連通する排気管を開閉するバタフライ弁であって、
前記排気管内に設けられる弁板と、
前記排気管を横断して前記弁板を保持する弁軸と、
該弁軸を内挿する環状の封止ブッシュと支持ブッシュとをそれぞれ別体に有して前記弁軸を摺動自在に軸支する軸受ユニットと、
前記排気管に取り付けられて前記排気管の外部に配置された前記軸受ユニットを収容するハウジングとを備え、
前記軸受ユニットの支持ブッシュが、前記ハウジングと前記軸受ユニットの封止ブッシュとの間に配置されて前記支持ブッシュの外周面で前記ハウジングと当接し、
前記軸受ユニットの封止ブッシュが、該封止ブッシュの外周面で前記ハウジングと当接すると共に前記封止ブッシュの弁軸対向面で前記弁軸の鍔と当接することを特徴とするバタフライ弁。
【請求項2】
前記軸受ユニットの封止ブッシュが、前記軸受ユニットの支持ブッシュより軟質であり、
前記封止ブッシュの内径の大きさが、前記支持ブッシュの内径の大きさ以上であることを特徴とする請求項1に記載のバタフライ弁。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バタフライ弁に関するものであって、特に、エンジンの排気口に連通する排気管を開閉するバタフライ弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動二輪車のエンジンの排気口と連通する排気管内の排気ガス流を制御する排気デバイス(バタフライ弁)として、排気管内に配置された弁体(弁板)と、この弁体に固着又は一体に形成されると共に排気管を横断するように配置された弁軸と、この弁軸の軸長方向の両端部を回動自在に支持した一対の軸受部材と、を備え、弁体を弁軸芯回りに回動する排気デバイスが知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-169797号公報(例えば、
図5参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のようなバタフライ弁を自動四輪車のエンジンの排気口と連通する排気管に設置すると、背圧が自動二輪車における背圧よりも大きくなるため、弁体が排気管を塞いだ際に軸受部材が背圧によるラジアル荷重に耐えられない虞がある。
そこで、自動四輪車のエンジンによる背圧に耐えるために、軸受部材を硬質材に変更すると、軸受部材の封止性能が低下して排気ガスが軸受部材と弁軸との間の隙間等から外部に漏出したり、軸受部材と弁軸との間に排気ススが堆積したりする虞がある。
この排気ススの堆積問題は、エンジンの燃料がバイオディーゼル燃料になると、従来の石油燃料に比べて排気ススが発生しやすくなるため、より深刻な問題になる。
【0005】
したがって、本発明は、前述したような従来技術の問題を解決するものであって、すなわち、本発明の目的は、高背圧下であっても排気管外へ排気ガスが漏出しにくいバタフライ弁を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、エンジンの排気口に連通する排気管を開閉するバタフライ弁であって、前記排気管内に設けられる弁板と、前記排気管を横断して前記弁板を保持する弁軸と、該弁軸を内挿する環状の封止ブッシュと支持ブッシュとをそれぞれ別体に有して前記弁軸を摺動自在に軸支する軸受ユニットと、前記排気管に取り付けられて前記排気管の外部に配置された前記軸受ユニットを収容するハウジングとを備え、前記軸受ユニットの支持ブッシュが、前記ハウジングと前記軸受ユニットの封止ブッシュとの間に配置されて前記支持ブッシュの外周面で前記ハウジングと当接し、前記軸受ユニットの封止ブッシュが、該封止ブッシュの外周面で前記ハウジングと当接すると共に前記封止ブッシュの弁軸対向面で前記弁軸の鍔と当接することにより、前述した課題を解決するものである。
【0007】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載されたバタフライ弁の構成に加えて、前記軸受ユニットの封止ブッシュが、前記軸受ユニットの支持ブッシュより軟質であり、前記封止ブッシュの内径の大きさが、前記支持ブッシュの内径の大きさ以上であることにより、前述した課題をさらに解決するものである。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に係る発明のバタフライ弁によれば、軸受ユニットの封止ブッシュが、この封止ブッシュの外周面でハウジングと当接すると共に封止ブッシュの弁軸対向面で弁軸の鍔と当接することにより、ハウジングと軸受ユニットとの間が封止されると共に弁軸と軸受ユニットとの間も封止されるため、排気管内を流動する排気ガスがハウジングを介して排気管外に漏出することを防ぐことができる。
また、軸受ユニットの支持ブッシュが、ハウジングと軸受ユニットの封止ブッシュとの間に配置されて支持ブッシュの外周面でハウジングと当接することにより、支持ブッシュが、弁板に排気管内を流動する排気ガスに起因するラジアル荷重を支持するため、弁板が排気管を塞いだ際に弁板に高荷重が負荷されたとしても、封止ブッシュの変形や異常摩擦などを防ぐことができる。
したがって、高背圧下であっても排気ガスの排気管外への漏出を防ぐことができる。
【0009】
請求項2に係る発明のバタフライ弁によれば、請求項1に係る発明のバタフライ弁が奏する効果に加えて、軸受ユニットの封止ブッシュが、軸受ユニットの支持ブッシュより軟質であることにより、封止ブッシュが支持ブッシュより硬質である場合に比べて、封止ブッシュがハウジングあるいは弁軸の鍔の形状に追従して変形しやすくなるため、ハウジングと軸受ユニットとの間だけでなく弁軸と軸受ユニットとの間を確実に封止することができる。
また、封止ブッシュの内径の大きさが、支持ブッシュの内径の大きさ以上であることにより、弁軸が封止ブッシュの内周面と当接するよりも先に封止ブッシュより硬質の支持ブッシュの内周面と当接するため、弁板が排気管を塞いだ際に弁板に高荷重が負荷されたとしても、確実に支持ブッシュで弁軸を支持することができる。
したがって、高背圧下であっても排気ガスの排気管外への漏出を確実に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1実施例であるバタフライ弁が組み込まれた排気管の斜視図。
【
図5】本発明の第2実施例であるバタフライ弁の要部拡大断面図。
【
図6】本発明の第3実施例であるバタフライ弁の要部拡大断面図。
【
図7】本発明の第4実施例であるバタフライ弁の要部拡大断面図。
【
図8A】本発明の第5実施例であるバタフライ弁の要部拡大断面図。
【
図9A】本発明の第6実施例のバタフライ弁における軸受ユニットの斜視分解図
【
図9B】
図9AのIXB-IXB断面におけるバタフライ弁の要部拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、エンジンの排気口に連通する排気管を開閉するバタフライ弁であって、排気管内に設けられる弁板と、排気管を横断して弁板を保持する弁軸と、この弁軸を内挿する環状の封止ブッシュと支持ブッシュとをそれぞれ別体に有して弁軸を摺動自在に軸支する軸受ユニットと、排気管に取り付けられて排気管の外部に配置された軸受ユニットを収容するハウジングとを備え、軸受ユニットの支持ブッシュが、ハウジングと軸受ユニットの封止ブッシュとの間に配置されて支持ブッシュの外周面でハウジングと当接し、軸受ユニットの封止ブッシュが、この封止ブッシュの外周面でハウジングと当接すると共に封止ブッシュの弁軸対向面で弁軸の鍔と当接し、高背圧下であっても排気管外へ排気ガスが漏出しにくいものであれば、その具体的な実施態様は、如何なるものであっても構わない。
【0012】
例えば、本発明におけるバタフライ弁は、自動四輪車のエンジンの排気口に連通する排気管に設けられているが、本発明のバタフライ弁が設けられるのは自動四輪車に限らず、自動二輪車であってもよいことはもちろん、自動四輪車はガソリン車であってもよいしディーゼル車であってもよい。
すなわち、排気管が連通するエンジンは、ガソリンエンジンであってもよいし、ディーゼルエンジンであってもよい。
なお、一般に乗用車に使われるガソリンエンジンに比べトラックに使われるディーゼルエンジンは背圧が高くなるが、本発明に係るバタフライ弁であれば、十分に排気管外への排気ガスの漏出を抑制することができる。
【実施例0013】
以下、
図1乃至
図4に基づいて、本発明の第1実施例であるバタフライ弁100を説明する。
【0014】
<1.バタフライ弁の設置環境>
まず、本発明の第1実施例であるバタフライ弁が組み込まれた排気管の斜視図である
図1に基づいて、バタフライ弁100が設置される環境について説明する。
【0015】
本実施例のバタフライ弁100は、自動四輪車のディーゼルエンジンの排気口(不図示)に連通する排気管EPを開閉するものであり、
図1に示すように、円筒状の排気管EPの途中に配置されている。
【0016】
<2.バタフライ弁の構造>
次に、
図1乃至
図4に基づいて、バタフライ弁100の構造を説明する。
図2は
図1の縦断面図であり、
図3は
図2のIII拡大図であり、
図4は
図3のIV拡大図である。
【0017】
<2.1.バタフライ弁の主要構成>
バタフライ弁100は、
図1および
図2に示すように、排気管EP内に設けられる円盤状の弁板110と、排気管EPを横断して弁板110を保持する弁軸120と、弁板110と弁軸120とを結合する結合ボルト130と、弁軸120を摺動自在に軸支する軸受ユニット140と、排気管EPに取り付けられて排気管EPの外部に配置された軸受ユニット140を収容するハウジング150とを備えている。
【0018】
<2.1.1.弁板>
弁板110は、
図2に示すように、弁軸120よりも上流側に設けられている。
これにより、弁板110に排気ガスEGの背圧が負荷されたとしても、弁板110が弁軸120に押しつけられるため、弁板110が弁軸120から脱離しにくくなっている。
【0019】
<2.1.2.弁軸>
弁軸120の両端側には、
図2に示すように、径方向に突出する鍔121が形成されている。
この鍔121の直径φFは、
図3に示すように、排気管EPに形成された軸挿通孔EP1の直径φPよりも小径になっている。
また、鍔121より外方の弁軸120の直径は、
図3に示すように、端部まで一定となっている。
さらに、弁軸120の一端(
図2における上端)側には雄ネジが形成されている。
【0020】
<2.1.3.軸受ユニット>
軸受ユニット140は、
図2に示すように、弁軸120を内挿する環状の封止ブッシュ141および支持ブッシュ142から構成されている。
【0021】
封止ブッシュ141は、
図2および
図3に示すように、支持ブッシュ142とは別体の部材であり、支持ブッシュ142より軟質(例えば、ヤング率が0.15~0.5GPa以上であり、ポアソン比が0.2~0.3程度、圧縮強さが46MPa以下)になっている。
そして、封止ブッシュ141は、外周面141Aでハウジング150と圧接し、弁軸対向面141Bで弁軸120の鍔121と当接している。
したがって、封止ブッシュ141とハウジング150との間は封止され、封止ブッシュ141と弁軸120の鍔121との間も封止されている。
また、封止ブッシュ141の内径φsは、支持ブッシュ142の内径φbより僅かに大きくなっている。
なお、封止ブッシュ141の内径φsは、支持ブッシュ142の内径φbと等しくてもよい。
【0022】
封止ブッシュ141は、
図4に示すように、金属線(本実施例では、ステンレス線)で編まれた網状の金属製骨材141aと、この金属製骨材141aに充填された黒鉛141bとから形成されている。
金属製骨材141aは、封止ブッシュ141の軸方向(すなわち、弁軸120の伸びる方向;
図4における上下方向)で繰り返し折曲した状態で形成されている。
したがって、金属製骨材141aは、軸方向に膨張しやすくなっている。
黒鉛141bは、金属製骨材141aの隙間に入り込みやすくするために、膨張黒鉛である。
【0023】
支持ブッシュ142は、本実施例ではハウジング150と同じステンレス製であり、ハウジング150とほぼ同等の線膨張係数となっている。
これにより、排気ガス等によりバタフライ弁100が高温になった際、ハウジング150に追従して支持ブッシュ142も膨張するため、支持ブッシュ142とハウジング150との間を封止しつづけることができる。
【0024】
そして、この支持ブッシュ142は、
図2および
図3に示すように、ハウジング150と封止ブッシュ141との間に配置され、外周面142Aでハウジング150と圧接している。
また、支持ブッシュ142の軸方向の長さLbは、封止ブッシュ141の軸方向の長さLsより長くなっている。
【0025】
<2.1.4.ハウジング>
ハウジング150は、排気管EPの軸挿通孔EP1を覆う部材であり、
図2に示すように、排気管EPの下方側に取り付けられる鍔付きの有底円筒状の固定側ハウジング151と、排気管EPの上方側に取り付けられる鍔付きの有底円筒状の脱着側ハウジング152とから構成されている。
【0026】
固定側ハウジング151は、排気管EPとの間から排気ガスEGが漏出しないように溶接等によって排気管EPと一体化されている。
【0027】
脱着側ハウジング152は、排気管EPと当接しており、
図3に示すように、弁軸120を挿通する貫通孔152aが底面に形成されている。
この貫通孔152aの直径φhは、
図3に示すように、弁軸120の直径φdよりも僅かに大きくなっている。
【0028】
また、ハウジング150の内面直径(すなわち、固定側ハウジング151の内面直径および脱着側ハウジング152の内面直径)φiは、
図3に示すように、弁軸120の鍔121の直径φFよりもやや大きく、排気管EPの軸挿通孔EP1の直径φPよりも小径になっている。
【0029】
<2.2.バタフライ弁のその他の構成>
さらに、バタフライ弁100は、脱着側ハウジング152を排気管EPに押し当てるコイル状の押付バネ160と、弁軸120を回動する弁軸回動機構170とを備えている。
【0030】
<2.2.1.押付バネ>
押付バネ160は、
図2に示すように、捩りコイルバネであり、脱着側ハウジング152と弁軸回動機構170との間に配置され、脱着側ハウジング152を排気管EPに向けて付勢している。
この押付バネ160により、脱着側ハウジング152は排気管EPとの間から排気ガスEGが漏出しないような状態で当接する。
【0031】
<2.2.2.弁軸回動機構>
弁軸回動機構170は、
図1に示すように、押付バネ160の他端側と当接する円環状の回転板171と、この回転板171を弁軸120に固定する固定ナット172と、排気管EPから立ち上がり回転板171の回り止めとなるストッパー173と、弁軸120を回動させる不図示の弁軸駆動アクチュエーターとを有している。
【0032】
なお、
図1に示すような弁板110が排気管EPを塞いでいる状態では、弁軸駆動アクチュエーターにより押付バネ160が捩れている。
換言すると、押付バネ160が捩れていない状態、すなわち、弁軸駆動アクチュエーターが作動していない状態では、弁板110は排気管EPを塞いでおらず、排気ガスEGが排気管EPを流動自在となっている。
【0033】
回転板171は、弁軸120と一体になって回動し、
図1に示すように、回転板171から立ち下がって押付バネ160の一端側の先端部分と当接するバネ抑え部171aと、ストッパー173と当接する2つの腕部171bとを有している。
【0034】
バネ抑え部171aは、L字状であり、押付バネ160の一端側の先端部分と2辺で当接している。
【0035】
腕部171bは、水平方向に延びる水平部分と、水平部分の先端から立ち下がりストッパー173と当接する垂下部分とから形成されている。
なお、腕部171bが2つ形成されていることにより、弁軸120(すなわち、弁板110)は、この腕部171bに挟まれた角度範囲で回転自在となっている。
【0036】
固定ナット172の内面には、弁軸120に形成された雄ネジと螺合する雌ネジが形成されている。
これにより、弁軸120を回転板171に内挿した状態で、固定ナット172を弁軸120に螺合させることで、押付バネ160が縮み、脱着側ハウジング152が排気管EPに押し当てられる。
【0037】
ストッパー173は、
図1に示すように、回転板171の腕部171bと当接することに加え、押付バネ160の他端側の先端部分と当接している。
【0038】
<3.効果>
以上説明した本実施例のバタフライ弁100によれば、軸受ユニット140の支持ブッシュ142とは別体の封止ブッシュ141が、この封止ブッシュ141の外周面141Aでハウジング150(固定側ハウジング151、脱着側ハウジング152)と当接すると共に封止ブッシュ141の弁軸対向面141Bで弁軸120の鍔121と当接することにより、ハウジング150と軸受ユニット140との間が封止されると共に弁軸120と軸受ユニット140との間も封止されるため、排気管EP内を流動する排気ガスEGがハウジング150を介して排気管EP外に漏出することを防ぐことができる。
また、軸受ユニット140の支持ブッシュ142が、ハウジング150と軸受ユニット140の封止ブッシュ141との間に配置されて支持ブッシュ142の外周面142Aでハウジング150と当接することにより、支持ブッシュ142が、弁板110に排気管EP内を流動する排気ガスEGに起因するラジアル荷重を支持するため、弁板110が排気管EPを塞いだ際に弁板110に高荷重が負荷されたとしても、封止ブッシュ141の変形や異常摩擦などを防ぐことができる。
したがって、高背圧下であっても排気ガスEGの排気管EP外への漏出を防ぐことができる。
すなわち、一般に耐荷重性能と封止性能とはトレードオフの関係にあるため、本実施例のバタフライ弁100のように、軸受ユニット140を2つの部材から構成することで、耐荷重性能と封止性能との両立を実現した。
【0039】
さらに、仮に封止ブッシュ141と弁軸120の鍔121とが錆等によって固着したとしても、封止ブッシュ141と支持ブッシュ142とが摺動しつつ封止ブッシュ141の外周面141Aとハウジング150とが摺動するため、バタフライ弁として機能し続けることができる。
また、封止ブッシュ141がハウジング150との間を封止することにより、支持ブッシュ142に排気管EP内の凝縮水が侵入しにくくなるため、支持ブッシュ142に錆が発生しにくくなっている。
【0040】
また、軸受ユニット140の封止ブッシュ141が、軸受ユニット140の支持ブッシュ142より軟質であることにより、封止ブッシュ141が支持ブッシュ142より硬質である場合に比べて、封止ブッシュ141がハウジング150あるいは弁軸120の鍔121の形状に追従して変形しやすくなる。
また、封止ブッシュ141の内径φsの大きさが、支持ブッシュ142の内径φbの大きさ以上であることにより、弁軸120が封止ブッシュ141の内周面と当接するよりも先に封止ブッシュ141より硬質の支持ブッシュ142の内周面と当接する。
したがって、高背圧下であっても排気ガスEGの排気管EP外への漏出を確実に防ぐことができる。
【0041】
また、支持ブッシュ142の軸方向の長さLbが、封止ブッシュ141の軸方向の長さLsより長いことにより、支持ブッシュ142の軸方向の長さLbが封止ブッシュ141の軸方向の長さLsより短い場合に比べて、弁板110が排気管EPを塞いだ状態で弁板110に高荷重が負荷された際に支持ブッシュ142に加わる面圧が小さくなるため、軸受ユニット140の耐ラジアル荷重性能をさらに向上させることができる。
【0042】
また、封止ブッシュ141が、金属線であるステンレス線で編まれた網状の金属製骨材141aと、この金属製骨材141aに充填された黒鉛141bとから形成され、金属製骨材141aが、封止ブッシュ141の軸方向で繰り返し折曲した状態で形成されていることにより、封止ブッシュ141が径方向よりも軸方向に膨張しやすくなって封止ブッシュ141の軸方向のクッション性が高まるため、封止ブッシュ141と弁軸120の鍔121との間のシール性をより向上させることができる。
さらに、
図4に示すように、封止ブッシュ141の表面に金属製骨材141aよりも摩擦係数の小さい黒鉛141bが露出していることにより、弁軸120を回転させるトルクが低トルクとなり、弁軸駆動アクチュエーターを小型化することができる。
そして、金属製骨材141aがステンレス線で編まれていることにより、封止ブッシュ141がクッション性を有するようになるため、封止ブッシュ141をハウジング150に圧入する際に封止ブッシュ141が削れにくくなったり、弁軸120が多少傾いていたとしても安定して弁軸120を支持したり、自動四輪車の走行時の上下振動に対し振動を吸収したりすることができる。
【実施例0043】
次に、本発明の第2実施例であるバタフライ弁の要部拡大断面図である
図5に基づいて、本発明の第2実施例であるバタフライ弁200について説明する。
なお、第2実施例のバタフライ弁200は、第1実施例のバタフライ弁100における軸受ユニット140の形状を変更したものであり、多くの要素について第1実施例のバタフライ弁100と共通するので、共通する事項については詳しい説明を省略し、下2桁が共通する200番台の符号を付すのみとする。
【0044】
図5に示すように、第2実施例の軸受ユニット240では、封止ブッシュ241の支持ブッシュ対向面241Cは、弁軸220の中心軸Cに向かう方向かつ弁軸220の鍔221に向かう方向に傾斜している。
なお、支持ブッシュ対向面241Cは、弁軸220の中心軸Cに向かう方向かつ弁軸220の鍔221から遠ざかる方向に傾斜していてもよい。
【0045】
支持ブッシュ242の封止ブッシュ対向面242Cも、封止ブッシュ241の支持ブッシュ対向面241Cに対応して弁軸220の中心軸Cに向かって傾斜している。
【0046】
このように形成された第2実施例のバタフライ弁200は、封止ブッシュ241の支持ブッシュ対向面241Cと支持ブッシュ242の封止ブッシュ対向面242Cとが互いに対応するように傾斜していることにより、封止ブッシュ241と支持ブッシュ242との径方向の位置決めが容易となるため、軸受ユニット240を効率よく組み立てることができる。
【実施例0047】
次に、本発明の第3実施例であるバタフライ弁の要部拡大断面図である
図6に基づいて、本発明の第3実施例であるバタフライ弁300について説明する。
なお、第3実施例のバタフライ弁300は、第1実施例のバタフライ弁100における弁軸120および軸受ユニット140の形状を変更したものであり、多くの要素について第1実施例のバタフライ弁100と共通するので、共通する事項については詳しい説明を省略し、下2桁が共通する300番台の符号を付すのみとする。
【0048】
図6に示すように、第3実施例の弁軸320の鍔321における封止ブッシュ当接面321Aは、弁軸320の中心軸Cに向かう方向かつ排気管EPから遠ざかる方向に傾斜している。
なお、封止ブッシュ当接面321Aは、弁軸320に向かう方向かつ排気管EPから近づく方向に傾斜してもよい。
【0049】
封止ブッシュ341の弁軸対向面341Bも、弁軸320の封止ブッシュ当接面321Aに対応して弁軸320の中心軸Cに向かって傾斜している。
【0050】
このように形成された第3実施例のバタフライ弁300は、弁軸320の封止ブッシュ当接面321Aと封止ブッシュ341の弁軸対向面341Bとが互いに対応するように傾斜していることにより、軸受ユニット340に対して弁軸320が位置決めされるため、弁軸320と軸受ユニット340との間を確実に封止できると共に弁軸320を確実に支持することができる。
【実施例0051】
次に、本発明の第4実施例であるバタフライ弁の要部拡大断面図である
図7に基づいて、本発明の第4実施例であるバタフライ弁400について説明する。
なお、第4実施例のバタフライ弁400は、第1実施例のバタフライ弁100における弁軸120および軸受ユニット140の形状を変更したものであり、多くの要素について第1実施例のバタフライ弁100と共通するので、共通する事項については詳しい説明を省略し、下2桁が共通する400番台の符号を付すのみとする。
【0052】
図7に示すように、第4実施例の弁軸420の鍔421における封止ブッシュ当接面421Aが、弁軸420の中心軸Cに向かう方向かつ排気管EPから遠ざかる方向に傾斜している。
【0053】
封止ブッシュ441の弁軸対向面441Bも、弁軸420の封止ブッシュ当接面421Aに対応して弁軸420の中心軸Cに向かって傾斜している。
また、封止ブッシュ441の支持ブッシュ対向面441Cは、弁軸420の中心軸Cに向かう方向かつ弁軸420の鍔421に向かう方向に傾斜している。
なお、封止ブッシュ441の弁軸対向面441Bの傾斜角は、封止ブッシュ441の支持ブッシュ対向面441Cの傾斜角と等しくなっている。
【0054】
支持ブッシュ442の封止ブッシュ対向面442Cも、封止ブッシュ441の支持ブッシュ対向面441Cに対応して弁軸420の中心軸Cに向かって傾斜している。
【0055】
なお、弁軸420の封止ブッシュ当接面421Aは、弁軸420に向かう方向かつ排気管EPから近づく方向に傾斜してもよい。
また、封止ブッシュ441の支持ブッシュ対向面441Cは、弁軸420の中心軸Cに向かう方向かつ弁軸420の鍔421から遠ざかる方向に傾斜していてもよい。
【0056】
このように形成された第4実施例のバタフライ弁400は、封止ブッシュ441の支持ブッシュ対向面441Cと支持ブッシュ442の封止ブッシュ対向面442Cとが互いに対応するように傾斜していることにより、封止ブッシュ441と支持ブッシュ442との径方向の位置決めが容易となるため、軸受ユニット240を効率よく組み立てることができる。
さらに、弁軸420の封止ブッシュ当接面421Aと封止ブッシュ441の弁軸対向面441Bとが互いに対応するように傾斜していることにより、軸受ユニット440に対して弁軸420が位置決めされるため、弁軸420と軸受ユニット440との間を確実に封止できると共に弁軸420を確実に支持することができる。
さらに、封止ブッシュ441の弁軸対向面441Bの傾斜角は、封止ブッシュ441の支持ブッシュ対向面441Cの傾斜角と等しくなっていることにより、封止ブッシュ441の軸方向の方向性がなくなるため、封止ブッシュ441の誤組み付けを抑制することができる。
【実施例0057】
次に、
図8Aおよび
図8Bに基づいて、本発明の第5実施例であるバタフライ弁500について説明する。
図8Aは本発明の第5実施例であるバタフライ弁の要部拡大断面図であり、
図8Bは
図8AのIIIVB拡大図である。
なお、第5実施例のバタフライ弁500は、第1実施例のバタフライ弁100における軸受ユニット140の形状を変更したものであり、多くの要素について第1実施例のバタフライ弁100と共通するので、共通する事項については詳しい説明を省略し、下2桁が共通する500番台の符号を付すのみとする。
【0058】
図8Aに示すように、第5実施例の軸受ユニット540では、封止ブッシュ541に支持ブッシュ542が内挿されている。
【0059】
<1.封止ブッシュ>
封止ブッシュ541は、円筒状の基部541cと、この基部541cから軸方向に突出する円筒状の突出部541dとから形成されている。
【0060】
突出部541dの外周面541d1は、
図8Aに示すように、基部541cの外周面541c1と面一になっている。
また、突出部541dの内径φs1は、
図8Aに示すように、基部541cの内径φsよりも大きくなっている。
さらに、突出部541dの軸方向の長さLs1は、
図8Aに示すように、基部541cの軸方向の長さLsよりも大きくなっている。
【0061】
また、本実施例の封止ブッシュ541は、
図8Bに示すように、金属製骨材541aが内径側に一部露出している。
したがって、封止ブッシュ541に内挿された支持ブッシュ542は、封止ブッシュ541の金属製骨材541aに係合している。
【0062】
<2.支持ブッシュ>
支持ブッシュ542は、円筒状の基部542aと、この基部542aから軸方向に突出する円筒状の突出部542bとから形成されている。
【0063】
突出部542bの内周面542b1は、基部542aの内周面542a1と面一になっている。
すなわち、突出部542bの内径φbは、
図8Aに示すように、基部542aの内径と等しく、封止ブッシュ541の内径φsよりも僅かに小さくなっている。
【0064】
突出部542bの外径φbo1は、
図8Aに示すように、基部542aの外径φboよりも小さくなっている。
そして、突出部542bの外径φbo1は、
図8Aに示すように、封止ブッシュ541の突出部541dの内径φs1とほぼ等しくなっている。
【0065】
突出部542bの軸方向の長さLb1は、
図8Aに示すように、基部542aの軸方向の長さLb2よりも大きくなっている。
また、突出部542bの軸方向の長さLb1は、
図8Aに示すように、封止ブッシュ541の突出部541dの軸方向の長さLs1とほぼ等しくなっている。
【0066】
なお、本実施例において、支持ブッシュ542の突出部542bは封止ブッシュ541の突出部541dよりも弁軸520側に位置していたが、封止ブッシュ541の突出部541dは支持ブッシュ542の突出部542bよりも弁軸520側に位置してもよい。
【0067】
このように形成された第5実施例のバタフライ弁500は、支持ブッシュ542が封止ブッシュ541に内挿されていることにより、軸受ユニット540が一体の部材として取り扱いやすくなるため、バタフライ弁500を効率よく組み立てることができる。
【実施例0068】
次に、
図9Aおよび
図9Bに基づいて、本発明の第6実施例であるバタフライ弁600について説明する。
図9Aは本発明の第6実施例のバタフライ弁における軸受ユニットの斜視分解図であり、
図9Bは
図9AのIXB-IXB断面におけるバタフライ弁の要部拡大断面図である。
なお、第6実施例のバタフライ弁600は、第5実施例のバタフライ弁500における軸受ユニット540の形状を更に変更したものであり、多くの要素について第5実施例のバタフライ弁500と共通するので、共通する事項については詳しい説明を省略し、下2桁が共通する600番台の符号を付すのみとする。
【0069】
図9Aに示すように、第6実施例の軸受ユニット640では、封止ブッシュ641の突出部641dの内周面から突条641d2が突設されている。
支持ブッシュ642を封止ブッシュ641に内挿する際、封止ブッシュ641が支持ブッシュ642よりも軟質であるため、
図9Bに示すように、支持ブッシュ642を封止ブッシュ641に内挿すると封止ブッシュ641の突条641d2が潰されて、支持ブッシュ642は封止ブッシュ641の一部と当接する。
【0070】
このように形成された第6実施例のバタフライ弁600は、封止ブッシュ641に突条641d2が形成されていることにより、突条641d2が封止ブッシュ641に支持ブッシュ642を内挿する際の挿入ガイドとなるため、軸受ユニット640の組み付け性を向上させることができるだけでなく、仮に封止ブッシュ641が弁軸620の鍔621に固着したとしても、弁軸620の固着した封止ブッシュ641が支持ブッシュ642に対して摺動するため、バタフライ弁の機能を長期に亘って維持することができる。
【0071】
<変形例>
以上、本発明の実施例であるバタフライ弁についてそれぞれ説明したが、本発明のバタフライ弁は、上述した実施例のバタフライ弁に限定されるものではない。
【0072】
例えば、上述した実施例において、金属製骨材はステンレス線で編まれていたが、金属製骨材は金属線で編まれていれば、何れの金属線であってもよいが、ハウジングと封止ブッシュとの間を確実に封止するためには、ハウジングの材質と同程度の線膨張係数を有する金属線で編まれていることが好ましい。
【0073】
例えば、上述した実施例において、弁板が弁軸よりも上流側に設けられていたが、弁板の位置はこれに限定されるものではなく、弁板が弁軸よりも下流側に設けられていてもよい。
【0074】
例えば、上述した実施例において、支持ブッシュはハウジングと同じステンレス製であったが、支持ブッシュの素材はこれに限定されるものではなく、例えば、硬質カーボンやセラミックスであってもよい。
【符号の説明】
【0075】
100、200、300、 400、500、600 ・・・ バタフライ弁
110 ・・・ 弁板
120、220、320、 420、520 ・・・ 弁軸
121、 321、 421 ・・・ 鍔
321A、421A ・・・ 封止ブッシュ当接面
130 ・・・ 結合ボルト
140、240、340、 440、540 ・・・ 軸受ユニット
141、241、341、 441、541、 641 ・・・ 封止ブッシュ
141A ・・・ 外周面
141B、 341B、441B ・・・ 弁軸対向面
241C 441C ・・・ 支持ブッシュ対向面
141a、 541a ・・・ 金属製骨材
141b、 541b ・・・ 黒鉛
541c ・・・ 基部
541c1 ・・・ 外周面
541d、641d ・・・ 突出部
541d1 ・・・ 外周面
641d2・・・ 突起
142、242、342、 442、542、 642 ・・・ 支持ブッシュ
142A ・・・ 外周面
242C 442C ・・・ 封止ブッシュ対向面
542a ・・・ 基部
542a1 ・・・ 内周面
542b ・・・ 突出部
542b1 ・・・ 内周面
150 ・・・ ハウジング
151 ・・・ 固定側ハウジング
152 ・・・ 脱着側ハウジング
160 ・・・ 押付バネ
170 ・・・ 弁軸回動機構
171 ・・・ 回転板
171a ・・・ バネ抑え部
171b ・・・ 腕部
172 ・・・ 固定ナット
173 ・・・ ストッパー
EP ・・・ 排気管
EP1 ・・・ 軸挿通孔
EG ・・・ 排気ガス
C ・・・ 弁軸の中心軸
φF ・・・ 鍔の直径
φi ・・・ ハウジングの内面直径
φP ・・・ 排気管の軸挿通孔径
φs ・・・ 封止ブッシュ(基部)の内径
φs1 ・・・ 封止ブッシュの突出部の内径
φb ・・・ 支持ブッシュ(突出部)の内径
φb ・・・ 支持ブッシュ(基部)の外径
φbo1 ・・・ 支持ブッシュの突出部の外径
φh ・・・ 脱着側ハウジングの貫通孔の直径
φd ・・・ 弁軸の直径
Ls ・・・ 封止ブッシュ(基部)の軸方向の長さ
Ls1 ・・・ 封止ブッシュ(突出部)の軸方向の長さ
Lb ・・・ 支持ブッシュの軸方向の長さ
Lb1 ・・・ 支持ブッシュ(突出部)の軸方向の長さ
Ls2 ・・・ 封止ブッシュ(基部)の軸方向の長さ
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