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特開2023-109714中間体、その調製方法及び薬物の調製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023109714
(43)【公開日】2023-08-08
(54)【発明の名称】中間体、その調製方法及び薬物の調製方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 233/70 20060101AFI20230801BHJP
   C07F 5/02 20060101ALI20230801BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20230801BHJP
【FI】
C07D233/70
C07F5/02 A CSP
C07B61/00 300
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023006052
(22)【出願日】2023-01-18
(31)【優先権主張番号】63/303,978
(32)【優先日】2022-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】112101650
(32)【優先日】2023-01-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】518296517
【氏名又は名称】禾榮科技股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】HERON NEUTRON MEDICAL CORP.
【住所又は居所原語表記】No.66-2, Shengyi 5th Rd., Zhubei City, Hsinchu County, Taiwan
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】謝 登山
(72)【発明者】
【氏名】游 於後
(72)【発明者】
【氏名】林 宗逸
【テーマコード(参考)】
4H039
4H048
【Fターム(参考)】
4H039CA91
4H039CD20
4H048AA02
4H048AA03
4H048AB84
4H048BA25
4H048BA48
4H048BE01
4H048VA22
4H048VA30
4H048VA77
(57)【要約】      (修正有)
【課題】悪性腫瘍の治療に使用するホウ素含有薬物の中間体を提供する。
【解決手段】下記式(1)に示す構造を有し、

は、-Cl、-Br、-I、-OSOCF-、-B(OH)又は下記に示すピナコールボロン酸エステル基

であり、Rは、-F、-18F、-Cl、-Br、-I、-SnMe、-SnBu、-B(OH)又はピナコールボロン酸エステル基であり、Aは、キラル補助剤である中間体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)に示す構造を有し、
【化1】
は、-Cl、-Br、-I、-OSOCF、-B(OH)又は
【化2】
であり、Rは、-F、-18F、-Cl、-Br、-I、-SnMe、-SnBu、-B(OH)又は
【化3】
であり、Aは、キラル補助剤である中間体。
【請求項2】
Aは、
【化4】
であり、Aは、C1~C8のアルキル基、C7~C10のアラルキル基又はフェニル基であり、Aは、C1~C8のアルキル基であり、Aは、C1~C8のアルキル基である請求項1に記載の中間体。
【請求項3】
Aは、イミダゾリジノンキラル補助剤又はビスラクチムエーテルキラル補助剤である請求項1に記載の中間体。
【請求項4】
前記中間体は、下記式(2)、式(3)、式(4)、式(5)、式(6)、式(7)又は式(8)に示す構造を有する請求項2に記載の中間体。
【化5】
【請求項5】
アルカリ性環境で第1の反応物と第2の反応物を反応させて、第1の中間体を得ることを含む中間体の調製方法であって、反応温度は-80℃~0℃であり、
前記第1の反応物は、下記式(9-1)に示す構造を有し、
【化6】
は、-Cl、-Br、-I又は-OSOCF-であり、Rは、-F、-Cl、-Br、-I、-SnMe、-SnBu又は-B(OH)であり、Xは、-Br又は-Iであり、且つ、
前記第2の反応物は、下記式(9-2)又は式(9-3)に示す構造を有し、
【化7】
は、C1~C8のアルキル基、C7~C10のアラルキル基又はフェニル基であり、Aは、C1~C8のアルキル基であり、Aは、C1~C8のアルキル基である中間体の調製方法。
【請求項6】
前記第2の反応物は、下記式(10)、式(11)又は式(12)に示す構造を有する請求項5に記載の方法。
【化8】
【請求項7】
アルカリ性環境で前記第1の反応物と前記第2の反応物を反応させることは、前記第1の反応物、前記第2の反応物と有機金属塩基を混合することを含み、前記有機金属塩基は、リチウムジイソプロピルアミド、n-ブチルリチウム、リチウムビス(トリメチルシリル)アミド、リチウム2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、ナトリウムメトキシド、リチウムtert-ブトキシド、ナトリウムtert-ブトキシド、カリウムtert-ブトキシド、ナトリウムエトキシド及びそれらからなる群から選択される請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の反応物は、下記式(13)又は式(14)に示す構造を有する請求項5に記載の方法。
【化9】
【請求項9】
前記第1の反応物、前記第2の反応物と非プロトン性溶媒を混合することを更に含む請求項5に記載の方法。
【請求項10】
前記非プロトン性溶媒は、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジクロロメタン及びジオキサンからなる群から選択される請求項9に記載の方法。
【請求項11】
パラジウム触媒の存在下で、前記第1の中間体をビス(ピナコラート)ジボロンと反応させて、第2の中間体を得ることを更に含む請求項5に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の中間体、前記ビス(ピナコラート)ジボロンと非プロトン性溶媒を混合することを更に含む請求項11に記載の方法。
【請求項13】
請求項1に記載の中間体をフッ素化試薬とフッ素化反応させ、第1の化合物を生成することを含む薬物の調製方法であって、
前記中間体において、Rは、-Cl、-Br、-I又は-OSOCFであり、Rは、-Cl、-Br、-I、-SnMe、-SnBu、-B(OH)又は
【化10】
である薬物の調製方法。
【請求項14】
請求項1に記載の中間体を前記フッ素化試薬と前記フッ素化反応させることは、
銅触媒の存在下で、請求項1に記載の中間体をK18Fと反応させることを含む請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記第1の化合物をホウ素化試薬とホウ素化反応させ、第2の化合物を生成することを更に含む請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記第1の化合物を前記ホウ素化試薬と前記ホウ素化反応させることは、
パラジウム触媒の存在下で、前記第1の化合物をビス(ピナコラート)ジボロンと反応させることを含む請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記第2の化合物を加水分解することを更に含む請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示内容は、中間体及びその調製方法、並びに中間体による薬物の調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
悪性腫瘍は、ヒトの生命や健康を深刻に害する重大な疾患であり、現在、悪性腫瘍に罹患している患者を放射線療法によって治療する方法が開発される。例としては、ホウ素中性子捕捉療法(Boron Neutron Capture Therapy;BNCT)のプロセスとして、ホウ素含有薬物を患者体内に注射して腫瘍細胞内に選択的に蓄積させ、続いて、中性子線で照射した後、腫瘍細胞内のホウ素と中性子とが核分裂して、α粒子及びリチウムイオンを生成することで、腫瘍細胞を正確に破壊するものである。BNCTを行う際に、BNCTを行う際に正常な細胞を損傷しないように確保し、且つ所望の治療効果を達成するために、陽電子放出断層撮影法(Positron Emission Tomography;PET)によってホウ素含有薬物の患者体内での分布位置及び濃度を確認することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ホウ素含有薬物の悪性腫瘍の治療に対する重要性に鑑み、新規で効率的なホウ素含有薬物の調製方法を開発する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示内容は、下記式(1)に示す構造を有し、
【化1】
式(1)
は、-Cl、-Br、-I、トリフルオロスルホネート基(-OSOCF)、-B(OH)又はピナコールボロン酸エステル基(pinacol boronic ester group、
【化2】
)であり、Rは、-F、-18F、-Cl、-Br、-I、-SnMe、-SnBu、-B(OH)又はピナコールボロン酸エステル基(
【化3】
)であり、Aは、キラル補助剤である中間体を提供する。
【0005】
幾つかの実施形態において、Aは、
【化4】
であり、Aは、C1~C8のアルキル基、C7~C10のアラルキル基又はフェニル基であり、Aは、C1~C8のアルキル基であり、Aは、C1~C8のアルキル基である。
【0006】
幾つかの実施形態において、Aは、イミダゾリジノンキラル補助剤又はビスラクチムエーテルキラル補助剤である。
【0007】
幾つかの実施形態において、中間体は、下記式(2)、式(3)、式(4)、式(5)、式(6)、式(7)又は式(8)に示す構造を有する。
【化5】
【0008】
本開示内容は、アルカリ性環境で第1の反応物と第2の反応物を反応させて、第1の中間体を得る操作を含む中間体の調製方法であって、反応温度は-80℃~0℃であり、第1の反応物は、下記式(9-1)に示す構造を有し、
【化6】
は、-Cl、-Br、-I又は-OSOCF-であり、Rは、-F、-Cl、-Br、-I、-SnMe、-SnBu又は-B(OH)であり、Xは、-Br又は-Iであり、第2の反応物は、下記式(9-2)又は式(9-3)に示す構造を有し、
【化7】
は、C1~C8のアルキル基、C7~C10のアラルキル基又はフェニル基であり、Aは、C1~C8のアルキル基であり、Aは、C1~C8のアルキル基である中間体の調製方法を提供する。
【0009】
幾つかの実施形態において、第2の反応物は、下記式(10)、式(11)又は式(12)に示す構造を有する。
【化8】
【0010】
幾つかの実施形態において、アルカリ性環境で第1の反応物と第2の反応物を反応させることは、第1の反応物、第2の反応物と有機金属塩基を混合することを含み、有機金属塩基は、リチウムジイソプロピルアミド(Lithium diisopropylamide;LDA)、n-ブチルリチウム(butyllithiu;n-BuLi)、リチウムビス(トリメチルシリル)アミド(Lithium bis(trimethylsilyl)amide;LiHMDS)、リチウム2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、ナトリウムメトキシド、リチウムtert-ブトキシド、ナトリウムtert-ブトキシド、カリウムtert-ブトキシド、ナトリウムエトキシド及びそれらからなる群から選択される。
【0011】
幾つかの実施形態において、第1の反応物は、下記式(13)又は式(14)に示す構造を有する。
【化9】
【0012】
幾つかの実施形態において、方法は、第1の反応物、第2の反応物と非プロトン性溶媒を混合することを更に含む。
【0013】
幾つかの実施形態において、非プロトン性溶媒は、テトラヒドロフラン(Tetrahydrofuran;THF)、2-メチルテトラヒドロフラン(2-MeTHF)、ジメチルホルムアミド(Dimethylformamide;DMF)、ジクロロメタン(Dichloromethane;DCM)及びジオキサン(Dioxane)からなる群から選択される。
【0014】
幾つかの実施形態において、方法は、パラジウム触媒の存在下で、第1の中間体をビス(ピナコラート)ジボロン(Bis(pinacolato)diboron;(Bpin))と反応させて、第2の中間体を得ることを更に含む。
【0015】
幾つかの実施形態において、方法は、第1の中間体、ビス(ピナコラート)ジボロンと非プロトン性溶媒を混合することを更に含む。
【0016】
本開示内容は、前述した中間体をフッ素化試薬とフッ素化反応させ、第1の化合物を生成する操作を含む薬物の調製方法であって、中間体において、Rは、-Cl、-Br、-I又は-OSOCFであり、Rは、-Cl、-Br、-I、-SnMe、-SnBu、-B(OH)又は
【化10】
である薬物の調製方法を提供する。
【0017】
幾つかの実施形態において、中間体をフッ素化試薬とフッ素化反応させることは、銅触媒の存在下で、中間体をK18Fと反応させることを含む。
【0018】
幾つかの実施形態において、方法は、第1の化合物をホウ素化試薬とホウ素化反応させ、第2の化合物を生成することを更に含む。
【0019】
幾つかの実施形態において、第1の化合物をホウ素化試薬とホウ素化反応させることは、パラジウム触媒の存在下で、第1の化合物をビス(ピナコラート)ジボロンと反応させることを含む。
【0020】
幾つかの実施形態において、方法は、第2の化合物を加水分解することを更に含む。
【0021】
理解すべきなのは、前記一般的な叙述及び以下の具体的な説明は、ただ例示的且つ解釈的なものに過ぎず、要求される本開示内容の更なる説明を提供することを意図していることである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本明細書では、「ある数値~別の数値」で表される範囲は、明細書において前記範囲内の全ての数値を一々列挙しないようにするための概要的な表現形態である。従って、ある特定の数値範囲の記載は、前記数値範囲内の任意の数値及び前記数値範囲内の任意の数値によって定義されたより小さい数値範囲を網羅し、明細書において前記任意の数値と前記より小さい数値範囲を明確に記載していることと同様である。
【0023】
下記で一連の操作又は工程を用いてここで開示される方法を説明するが、これらの操作又は工程に示す順序は、本開示内容を制限するものとして解釈すべきではない。例えば、一部の操作又は工程は、異なる順序で行われるか、及び/又は他の工程と同時に行われてよい。また、必ず図示される全ての操作、工程及び/又は特徴を実行してこそ本開示内容の実施形態を実現できるとは限らない。また、ここに記載の各操作又は工程は、複数のサブ工程又は動作を含んでよい。
【0024】
本開示内容は、薬物の調製方法を提供する。より詳細には、本開示内容は、18F標識2-フルオロ-4-ボロノ-フェニルアラニン(2-fluoro-4-borono-phenylalanine;FBPA)の調製方法を提供し、18Fで標識したFBPAは、ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)及び陽電子放出断層撮影法(PET)に適用可能なホウ素含有薬物である。18Fの半減期が2時間よりも短いので、如何に薬物を合成する中間体に18Fを標識した後に、簡単なプロセスで18Fで標識したFBPAを製造することは、相当に重要である。本開示内容は、中間体及びその調製方法を提供し、簡単なプロセスでこの中間体によって18Fで標識したFBPAを調製し、18Fで標識したFBPAの合成効率と収率を効果的に向上させることができ、且つ18Fで標識したFBPAは優れた比活性(specific activity)を有する。以下、本開示内容の各種の実施形態をそれぞれ説明する。
【0025】
本開示内容は、下記式(1)に示す構造を有する中間体を提供する。
【化11】
は、-Cl、-Br、-I、-OSOCF-、-B(OH)又は
【化12】
であり、Rは、-F、-18F、-Cl、-Br、-I、-SnMe、-SnBu、-B(OH)又は
【化13】
であり、Aは、キラル補助剤(chiral auxiliary)である。幾つかの実施形態において、Aは、イミダゾリジノン(imidazolidinone)キラル補助剤(Seebachキラル補助剤(Seebach’s chiral auxiliary)とも呼ばれる)又はビスラクチムエーテル(bis-lactim ether)キラル補助剤(Schollkopfキラル補助剤(Schollkopf’s chiral auxiliary)とも呼ばれる)である。幾つかの実施形態において、Aは、

【化14】
であり、Aは、C1~C8のアルキル基、C7~C10のアラルキル基又はフェニル基であり、Aは、C1~C8のアルキル基であり、Aは、C1~C8のアルキル基である。C1~C8のアルキル基は、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基又はイソペンチル基である。「アラルキル基」は、少なくとも1つの水素原子がフェニル基により置換されたアルキル基を指す。C7~C10のアラルキル基は、例えば1つの水素原子がフェニル基により置換されたC1~C4のアルキル基である。幾つかの実施形態において、Aは、
【化15】
である。本開示内容では、特定の構造を有するキラル補助剤を利用し、薬物を合成するための不斉補助前駆体、即ち薬物を調製するための中間体が開発された。幾つかの実施形態において、本開示内容のキラル補助剤は、18Fで標識したFBPA不斉補助前駆体を開発するために用いられ、即ちFBPAの中間体を調製するために用いられ、簡単なプロセスでFBPAを調製することができる。
【0026】
幾つかの実施形態において、中間体は、下記式(2)、式(3)、式(4)、式(5)、式(6)、式(7)又は式(8)に示す構造を有する。
【化16】
上記の式(2)、式(3)、式(4)、式(5)、式(6)、式(7)又は式(8)に示す構造を有するものは、18Fで標識したFBPAを調製する中間体とされてよい。
【0027】
本開示内容は、アルカリ性環境で第1の反応物と第2の反応物を反応させて、第1の中間体を得る操作を含む中間体の調製方法を提供し、反応温度は-80℃~0℃である。反応温度は、例えば-80℃、-78℃、-76℃、-74℃、-72℃、-70℃、-60℃、-50℃、-40℃、-30℃、-20℃、-10℃又は0℃である。第1の反応物は、下記式(9-1)に示す構造を有する。
【化17】
は、-Cl、-Br、-I又は-OSOCF であり、Rは、-F、-Cl、-Br、-I、-SnMe、-SnBu又は-B(OH)であり、Xは、-Br又は-Iである。第2の反応物は、下記式(9-2)又は式(9-3)に示す構造を有する。
【化18】
は、C1~C8のアルキル基、C7~C10のアラルキル基又はフェニル基であり、Aは、C1~C8のアルキル基であり、Aは、C1~C8のアルキル基である。従って、第1の中間体は、下記式(9-4)又は式(9-5)に示す構造を有する。
【化19】
幾つかの実施形態において、第2の反応物は、下記式(10)、式(11)又は式(12)に示す構造を有する。
【化20】
【0028】
幾つかの実施形態において、第1の反応物は、下記式(13)又は式(14)に示す構造を有する。
【化21】
【0029】
幾つかの実施形態において、アルカリ性環境で第1の反応物と第2の反応物を反応させることは、第1の反応物、第2の反応物と有機金属塩基を混合することを含み、有機金属塩基は、リチウムジイソプロピルアミド(LDA)、n-ブチルリチウム(n-BuLi)、リチウムビス(トリメチルシリル)アミド(LiHMDS)、リチウム2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、ナトリウムメトキシド、リチウムtert-ブトキシド、ナトリウムtert-ブトキシド、カリウムtert-ブトキシド、ナトリウムエトキシド及びそれらからなる群から選択される。
【0030】
幾つかの実施形態において、中間体の調製方法は、第1の反応物、第2の反応物と非プロトン性溶媒を混合することを更に含む。幾つかの実施形態において、非プロトン性溶媒は、テトラヒドロフラン(THF)、2-メチルテトラヒドロフラン(2-MeTHF)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジクロロメタン(DCM)及びジオキサン(Dioxane)からなる群から選択される。
【0031】
幾つかの実施形態において、中間体の調製方法は、パラジウム触媒の存在下で、第1の中間体をビス(ピナコラート)ジボロンと反応させて、第2の中間体を得ることを更に含む。より詳細には、第1の中間体におけるRは、第2の中間体を形成するように、ピナコールボロン酸エステル基に置換される。パラジウム触媒は、例えば[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)(Pd(dppf)Cl)である。幾つかの実施形態において、中間体の調製方法は、第1の中間体、ビス(ピナコラート)ジボロンと非プロトン性溶媒を混合することを更に含む。非プロトン性溶媒について、前述した実施形態を参照されたく、ここで繰り返して説明しない。幾つかの実施形態において、第1の中間体をビス(ピナコラート)ジボロンと反応させる温度は、50℃~120℃であり、例えば50℃、55℃、60℃、65℃、70℃、75℃、80℃、85℃、90℃、95℃、100℃、105℃、110℃、115℃又は120℃である。
【0032】
本開示内容は、中間体をフッ素化試薬とフッ素化反応させ、第1の化合物を生成することを含む薬物の調製方法を提供し、中間体において、Rは、-Cl、-Br、-I又は-OSOCFであり、Rは、-Cl、-Br、-I、-SnMe、-SnBu、-B(OH)又は
【化22】
である。幾つかの実施形態において、フッ素化試薬は、K18Fなどの金属フッ素化物である。幾つかの実施形態において、中間体をフッ素化試薬とフッ素化反応させることは、銅触媒の存在下で、中間体をK18Fと反応させることを含む。銅触媒は、例えばCu(OTf)(py)である。幾つかの実施形態において、方法は、第1の化合物をホウ素化試薬とホウ素化反応させ、第2の化合物を生成することを更に含む。ホウ素化試薬は、例えばビス(ピナコラート)ジボロン((Bpin))である。幾つかの実施形態において、第1の化合物をホウ素化試薬とホウ素化反応させることは、パラジウム触媒の存在下で、第1の化合物をビス(ピナコラート)ジボロンと反応させることを含む。幾つかの実施形態において、方法は、第2の化合物を加水分解することを更に含む。
【0033】
本開示内容は、以下の操作を含む18F標識2-フルオロ-4-ボロノ-フェニルアラニン(FBPA)の調製方法を提供する。中間体をフッ素化反応させ、第1の化合物を生成し、中間体は、下記式(1)に示す構造を有し、
【化23】
は、-Cl、-Br、-I又は-OSOCFであり、Rは、-Cl、-Br、-I、-SnMe、-SnBu、-B(OH)又は
【化24】
であり、第1の化合物は、下記式(X)に示す構造を有する。
【化25】
第1の化合物をホウ素化反応させ、下記式(XI)に示す構造を有する第2の化合物を生成する。
【化26】
第2の化合物を加水分解し、下記式(XII)に示す構造を有する2-フルオロ-4-ボロノ-フェニルアラニンを生成する。
【化27】
【0034】
幾つかの実施形態において、中間体をフッ素化反応させることは、銅触媒の存在下で、中間体をK18Fと反応させ、芳香環上のR18Fに置換されるようにし、換言すれば、中間体の芳香環が18Fによりフッ素化されるようにすることを含む。上記の銅触媒により触媒されるフッ素化反応は、銅媒介芳香環フッ素化反応と称される。銅触媒は、例えばCu(OTf)(py)である。幾つかの実施形態において、フッ素化反応の温度は、100℃~120℃である。温度は、例えば100℃、105℃、110℃、115℃又は120℃である。幾つかの実施形態において、フッ素化反応の反応時間は、5分~60分である。K18Fは、ピナコールボロン酸エステル基(
【化28】
)との反応性が最も高く、-Cl、-Br、-I、-SnMe、-SnBu又は-B(OH)などの他の基との反応性がその次である。幾つかの実施形態において、K18Fは、加速されたプロトンでH 18Oを照射し、18O(p,n)18F反応によりフッ素化水素酸(H18F)を合成してから、H18Fをイオン交換カラムに通してそれをカラム内に吸着し、カラムに吸着されていないH 18Oと分離させるといった操作により得ることができる。KCO水溶液でカラム内のH18Fを析出させることで、K18Fが得られる。幾つかの実施形態において、フッ素化反応時に、中間体、K18F及び銅触媒をジメチルホルムアミド(DMF)などの非プロトン性溶媒に溶解する。非プロトン性溶媒の材料について、前述した実施形態を参照されたく、ここで繰り返して説明しない。
【0035】
幾つかの実施形態において、第1の化合物をホウ素化反応させることは、パラジウム触媒の存在下で、第1の化合物をビス(ピナコラート)ジボロン((Bpin))と反応させることを含み、それにより、芳香環上のRがピナコールボロン酸エステル基により置換される。上記のパラジウム触媒により触媒されるホウ素化反応は、宮浦(Miyaura)ホウ素化反応と称される。ビス(ピナコラート)ジボロンは、-Brとの反応性が最も高く、-Cl、-I又は-OSOCFなどの他の基との反応性がその次である。パラジウム触媒は、例えばトリシクロヘキシルホスフィン(P(Cy))をリガンドとしてよいトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(Pd(dba))である。幾つかの実施形態において、Pd(dba)をジオキサンに溶解してよい。パラジウム触媒は、例えば[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)(Pd(dppf)Cl)である。幾つかの実施形態において、PdCl(dppf)を酢酸カリウム(Potassium acetate;KOAc)に溶解してよい。幾つかの実施形態において、ホウ素化反応の温度は、70℃~120℃である。温度は、例えば70℃、75℃、80℃、85℃、90℃、95℃、100℃、105℃、110℃、115℃又は120℃である。幾つかの実施形態において、ホウ素化反応の反応時間は、5分~60分である。幾つかの実施形態において、ホウ素化反応時に、第1の化合物とビス(ピナコラート)ジボロンをジメチルスルホキシド(DMSO)又はジオキサン(Dioxane)などの非プロトン性溶媒に溶解する。非プロトン性溶媒の材料について、前述した実施形態を参照されたく、ここで繰り返して説明しない。
【0036】
幾つかの実施形態において、第2の化合物を加水分解することは、第2の化合物を酸と反応させることを含む。酸は、例えば塩化水素(HCl)、臭化水素(HBr)、ヨウ化水素(HI)又はそれらの組み合わせである。酸は、第2の化合物のピナコールボロン酸エステル基(
【化29】
)を開き、それを-B(OH)に加水分解することができ、第2の化合物のキラル補助剤Aをアミノ酸基に加水分解することもできる。幾つかの実施形態において、加水分解の温度は、130℃~170℃である。温度は、例えば130℃、140℃、150℃、160℃又は170℃である。幾つかの実施形態において、加水分解の反応時間は、5分~60分である。
【0037】
以下、実験例を参照しながら、本開示内容の特徴をより具体的に叙述する。以下の実験例を叙述するが、本開示内容の範疇を超えていない限り、使用される材料、その量及び割合、処理の細部及び処理プロセスなどを適切に変えてよい。従って、以下に記載の実験例によって本開示内容を限定的に解釈すべきではない。
【0038】
実験例1:式(5)及び式(2)を有する中間体の調製
【0039】
まず、式(5)を有する中間体を調製し、調製プロセスは、以下の反応式を参照されたい。
【化30】
【0040】
以下、調製プロセスを詳細に説明する。100mlの反応フラスコに式(10)を有する化合物(3.0g)及びTHF(40ml)、即ち(S)-2-tert-ブチル-3-メチル-4-オキソイミダゾリジン-1-カルボン酸tert-ブチル((S)-tert-butyl 2-tert-butyl-3-methyl-4-oxoimidazolidine-1-carboxylate)及びTHFを加え、℃で溶質が完全に溶解するまで溶液を撹拌した。窒素ガスで溶液の温度を-75℃~-70℃に下げた。LDA溶液(14.0ml)を溶液に滴下し、温度を-75℃~-70℃に制御し、LDA溶液で、LDAの濃度は1Mであり、且つLDAをTHF/ヘキサンに溶解した。溶液の温度を-75℃~-70℃に維持しながら、混合液を30分撹拌した。4-ブロモ-1-(ブロモメチル)-2-ヨードベンゼン(4-bromo-1-(bromomethyl)-2-iodobenzene)(4.8g)とTHF(5ml)の混合液を溶液に滴下し、溶液の温度を-75℃~-70℃に制御した。溶液を室温(本明細書における室温は約25℃である)まで回復させ、溶液を16時間撹拌した。飽和塩化アンモニウム水溶液(50ml)及びジクロロメタン(60ml)で溶液を抽出し、第1の有機層及び水層を得て、水層を更にジクロロメタン(30ml)で2回抽出し、第2の有機層を得た。第1の有機層と第2の有機層を合わせて有機層抽出液とし、有機層抽出液を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過してから濃縮し、濃縮液を得た。濃縮液をフラッシュカラムクロマトグラフィ(酢酸エチル(Ethyl ethanoate;EA):ヘプタン=1:5)により精製し、生成物(4.2g、65%)を得た。生成物の1H-核磁気共鳴(Nuclear magnetic resonance;NMR)スペクトル(H-NMR(400MHz、CDCl))の化学シフト(δ)(単位:ppm)は、0.99(s,9H)、1.31(s,9H)、3.01(s,3H)、3.38(dd,1H,J=16.4,6.8Hz)、3.52(dd,1H,J=16.4,3.2Hz)、4.35(dd,1H,J=6.0,4.0Hz)、5.06(s,1H)、6.78(d,1H,J=8.4Hz)、7.35(dd,1H,J=8.4,2.0Hz)、7.97(d,1H,J=1.6Hz)であった。H-NMRスペクトルにより、実験例1では、前述した本開示内容の式(5)を有する中間体を調製できることが証明され、その構造は(2S,5S)-tert-butyl 5-(4-bromo-2-iodobenzyl)-2-tert-butyl-3-methyl-4-oxoimidazolidine-1-carboxylateと命名された。
【0041】
続いて、式(5)を有する中間体で式(2)を有する中間体を調製し、調製プロセスは、以下の反応式を参照されたい。
【化31】
【0042】
以下、調製プロセスを詳細に説明する。25mlの反応フラスコにDMSO(5ml)を加え、アルゴンガスで30分バブリングした。式(5)を有する中間体(580mg)、ビス(ピナコラート)ジボロン(588mg)、酢酸カリウム(KOAc)(313mg)及びパラジウム触媒Pd(dppf)Cl(38.5mg)を加え、持続的にアルゴンガスで10分バブリングした。アルゴンガスで溶液を加熱し、溶液の温度を80℃に制御しながら、溶液を24時間反応させた。溶液の温度を室温まで降温させた。水(15ml)及びジクロロメタン(20ml)で溶液を抽出し、第1の有機層及び水層を得て、水層を更にジクロロメタン(15ml)で2回抽出し、第2の有機層を得た。第1の有機層と第2の有機層を合わせて有機層抽出液とし、更に水(15ml)で有機層抽出液を抽出した。有機層抽出液を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過してから濃縮し、濃縮液を得た。濃縮液をフラッシュカラムクロマトグラフィ(EA:ヘプタン=1:9)により精製し、生成物(211mg、36%)を得た。生成物のH-NMRスペクトル(H-NMR(400MHz、CDCl))の化学シフト(δ)(単位:ppm)は、0.93(s,9H)、1.36(s,6H)、1.37(s,6H)、1.40(s,9H)、2.77(s,3H)、3.69(dd,1H,J=15.0,2.6Hz)、3.83(br,1H)、4.29(t,1H,J=3.6Hz)、4.77(s,1H)、6.82(d,1H,J=8.4Hz)、7.37(dd,1H,J=8.4,2.4Hz)、7.82(d,1H,J=2.4Hz)であった。H-NMRスペクトルにより、実験例1では、前述した本開示内容の式(2)を有する中間体を調製できることが証明され、その構造は(2S,5S)-tert-butyl 5-(4-bromo-2-(4,4,5,5-tetramethyl-1,3,2-dioxaborolan-2-yl)benzyl)-2-tert-butyl-3-methyl-4-oxoimidazolidine-1-carboxylateと命名された。
【0043】
実験例2:式(6)及び式(3)を有する中間体の調製
【0044】
まず、式(6)を有する中間体を調製し、調製プロセスは、以下の反応式を参照されたい。
【化32】
【0045】
以下、調製プロセスを詳細に説明する。100mlの反応フラスコに式(11)を有する化合物(3.9g)及びTHF(40ml)、即ち(S)-ベンジル 2-tert-ブチル-3-メチル-4-オキソイミダゾリジン-1-カルボキシレート((S)-benzyl 2-tert-butyl-3-methyl-4-oxoimidazolidine-1-carboxylate)及びTHFを加え、溶質が完全に溶解するまで溶液を撹拌した。窒素ガスで溶液の温度を-75℃~-70℃に下げた。LDA溶液(16.2ml)を溶液に滴下し、温度を-75℃~-70℃に制御し、LDA溶液で、LDAの濃度は1Mであり、且つLDAをTHF/ヘキサンに溶解した。溶液の温度を-75℃~-70℃に維持しながら、混合液を30分撹拌した。4-ブロモ-1-(ブロモメチル)-2-ヨードベンゼン(5.6g)とTHF(5ml)の混合液を溶液に滴下し、溶液の温度を-75℃~-70℃に制御した。溶液を室温まで回復させ、溶液を16時間撹拌した。飽和塩化アンモニウム水溶液(50ml)及びジクロロメタン(60ml)で溶液を抽出し、第1の有機層及び水層を得て、水層を更にジクロロメタン(30ml)で2回抽出し、第2の有機層を得た。第1の有機層と第2の有機層を合わせて有機層抽出液とし、有機層抽出液を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過してから濃縮し、濃縮液を得た。濃縮液をフラッシュカラムクロマトグラフィ(EA:ヘプタン=1:5)により精製し、生成物(5.5g、70%)を得た。生成物のH-NMRスペクトル(H-NMR(400MHz、CDCl))の化学シフト(δ)(単位:ppm)は、0.98(s,9H)、3.00(s,3H)、3.32(dd,1H,J=15.6,6.4Hz)、3.53(d,1H,J=15.2Hz)、4.40(t,1H,J=5.2Hz)、4.89(d,1H,J=12.0Hz)、5.09(s,1H)、5.15(d,1H,J=12.0Hz)、6.82(d,1H,J=8.4Hz)、7.21-7.32(m,6H)、7.90(s,1H)であった。H-NMRスペクトルにより、実験例2では、前述した本開示内容の式(6)を有する中間体を調製できることが証明され、その構造は(2S,5S)-benzyl 5-(4-bromo-2-iodobenzyl)-2-tert-butyl-3-methyl-4-oxoimidazolidine-1-carboxylateと命名された。
【0046】
続いて、式(6)を有する中間体で式(3)を有する中間体を調製し、調製プロセスは、以下の反応式を参照されたい。
【化33】
【0047】
以下、調製プロセスを詳細に説明する。25mlの反応フラスコにDMSO(5ml)を加え、アルゴンガスで30分バブリングした。式(6)を有する中間体(500mg)、ビス(ピナコラート)ジボロン(477mg)、酢酸カリウム(254mg)及びパラジウム触媒Pd(dppf)Cl(31.3mg)を加え、持続的にアルゴンガスで10分バブリングした。アルゴンガスで溶液を加熱し、溶液の温度を80℃に制御しながら、溶液を22時間反応させた。溶液の温度を室温まで降温させた。水(15ml)及びジクロロメタン(20ml)で溶液を抽出し、第1の有機層及び水層を得て、水層を更にジクロロメタン(15ml)で2回抽出し、第2の有機層を得た。第1の有機層と第2の有機層を合わせて有機層抽出液とし、更に水(15ml)で有機層抽出液を抽出した。有機層抽出液を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過してから濃縮し、濃縮液を得た。濃縮液をフラッシュカラムクロマトグラフィ(EA:ヘプタン=1:7)により精製し、生成物(246mg、49%)を得た。生成物のH-NMRスペクトル(H-NMR(400MHz、CDCl))の化学シフト(δ)(単位:ppm)は、0.88(s,9H)、1.37(s,12H)、2.78(s,3H)、3.64(d,1H,J=12.8Hz)、3.88(br,1H)、4.35(t,1H,J=3.2Hz)、4.69(s,1H)、4.93(d,1H,J=11.6Hz)、5.20(d,1H,J=12.0Hz)、6.72(d,1H,J=8.0Hz)、7.25-7.36(m,6H)、7.79(d,1H,J=2.4Hz)であった。H-NMRスペクトルにより、実験例2では、前述した本開示内容の式(3)を有する中間体を調製できることが証明され、その構造は(2S,5S)-benzyl 5-(4-bromo-2-(4,4,5,5-tetramethyl-1,3,2-dioxaborolan-2-yl)benzyl)-2-tert-butyl-3-methyl-4-oxoimidazolidine-1-carboxylateと命名された。
【0048】
実験例3:式(7)を有する中間体の調製
【0049】
式(7)を有する中間体の調製プロセスは、以下の反応式を参照されたい。
【化34】
【0050】
以下、調製プロセスを詳細に説明する。100mlの反応フラスコに式(10)を有する化合物(200mg)及びTHF(5ml)、即ち(S)-ベンジル 2-tert-ブチル-3-メチル-4-オキソイミダゾリジン-1-カルボキシレート及びTHFを加え、溶質が完全に溶解するまで溶液を撹拌した。窒素ガスで溶液の温度を-75℃~-70℃に下げた。LDA溶液(0.94ml)を溶液に滴下し、温度を-75℃~-70℃に制御し、LDA溶液で、LDAの濃度は1Mであり、且つLDAをTHF/ヘキサンに溶解した。溶液の温度を-75℃~-70℃に維持しながら、混合液を30分撹拌した。4-ブロモ-1-(ブロモメチル)-2-フルオロベンゼン(4-bromo-1-(bromomethyl)-2-fluorobenzene)(209mg)とTHF(2ml)の混合液を溶液に滴下し、溶液の温度を-75℃~-70℃に制御した。溶液を室温まで回復させ、溶液を16時間撹拌した。飽和塩化アンモニウム水溶液(10ml)及びジクロロメタン(15ml)で溶液を抽出し、第1の有機層及び水層を得て、水層を更にジクロロメタン(10ml)で2回抽出し、第2の有機層を得た。第1の有機層と第2の有機層を合わせて有機層抽出液とし、有機層抽出液を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過してから濃縮し、濃縮液を得た。濃縮液をフラッシュカラムクロマトグラフィ(EA:ヘプタン=1:5)により精製し、生成物(105mg、30%)を得た。生成物のH-NMRスペクトル(H-NMR(400MHz、CDCl))の化学シフト(δ)(単位:ppm)は、0.95(s,9H)、1.41(s,9H)、2.87(s,3H)、3.31(dd,1H,J=15.0,2.2Hz)、3.54(br,1H)、4.31(s,1H)、4.83(s,1H)、6.96(t,1H,J=8.2Hz)、7.13-7.17(m,2H)であった。H-NMRスペクトルにより、実験例3では、前述した本開示内容の式(7)を有する中間体を調製できることが証明され、その構造は(2S,5S)-tert-butyl 5-(4-bromo-2-fluorobenzyl)-2-tert-butyl-3-methyl-4-oxoimidazolidine-1-carboxylateと命名された。式(7)を有する中間体は、更にビス(ピナコラート)ジボロンと反応し、F基をピナコールボロン酸エステル基に置換することができ、生成物は、FBPAを調製するために用いられてよく、反応プロセスは、実験例1又は実験例2を参照してよい。
【0051】
実験例4:式(8)を有する中間体の調製
【0052】
式(8)を有する中間体の調製プロセスは、以下の反応式を参照されたい。
【化35】
以下、調製プロセスを詳細に説明する。100mlの反応フラスコに式(11)を有する化合物(200mg)及びTHF(5ml)、即ち(S)-ベンジル 2-tert-ブチル-3-メチル-4-オキソイミダゾリジン-1-カルボキシレート((S)-benzyl 2-tert-butyl-3-methyl-4-oxoimidazolidine-1-carboxylate)及びTHFを加え、溶質が完全に溶解するまで溶液を撹拌した。窒素ガスで溶液の温度を-75℃~-70℃に下げた。LDA溶液(0.83ml)を溶液に滴下し、温度を-75℃~-70℃に制御し、LDA溶液で、LDAの濃度は1Mであり、且つLDAをTHF/ヘキサンに溶解した。溶液の温度を-75℃~-70℃に維持しながら、混合液を30分撹拌した。4-ブロモ-1-(ブロモメチル)-2-フルオロベンゼン(185mg)とTHF(2ml)の混合液を溶液に滴下し、溶液の温度を-75℃~-70℃に制御した。溶液を室温まで回復させ、溶液を16時間撹拌した。飽和塩化アンモニウム水溶液(10ml)及びジクロロメタン(15ml)で溶液を抽出し、第1の有機層及び水層を得て、水層を更にジクロロメタン(10ml)で2回抽出し、第2の有機層を得た。第1の有機層と第2の有機層を合わせて有機層抽出液とし、有機層抽出液を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過してから濃縮し、濃縮液を得た。濃縮液をフラッシュカラムクロマトグラフィ(EA:ヘプタン=1:4)により精製し、生成物(77mg、23%)を得た。生成物のH-NMRスペクトル(H-NMR(400MHz、CDCl))の化学シフト(δ)(単位:ppm)は、0.91(s,9H)、2.84(s,3H)、3.19(d,1H,J=14.0Hz)、3.65(dd,1H,J=14.0,3.2Hz)、4.38(s,1H)、4.81(s,1H)、4.96(d,1H,J=12.0Hz)、5.26(d,1H,J=12.0Hz)、6.96(t,1H,J=8.0Hz)、7.08-7.14(m,2H)、7.35-7.39(m,5H)であった。H-NMRスペクトルにより、実験例4では、前述した本開示内容の式(8)を有する中間体を調製できることが証明され、その構造は(2S,5S)-benzyl 5-(4-bromo-2-fluorobenzyl)-2-tert-butyl-3-methyl-4-oxoimidazolidine-1-carboxylateと命名された。式(8)を有する中間体は、更にビス(ピナコラート)ジボロンと反応し、F基をピナコールボロン酸エステル基に置換することができ、生成物は、FBPAを調製するために用いられてよく、反応プロセスは、実験例1又は実験例2を参照してよい。
【0053】
実験例5:式(2)の構造を有する中間体による18Fで標識したFBPAの調製
【0054】
調製プロセスは、以下の反応式を参照されたい。
【化36】
【0055】
以下、調製プロセスを詳細に説明する。式(2)の構造を有する中間体を出発物質とし、銅触媒Cu(OTf)(py)の存在下でフッ素化反応させ、中間体をK18Fと反応させることで、芳香環上のピナコールボロン酸エステル基を18Fに置換した。フッ素化反応では、溶媒はジメチルホルムアミド(DMF)であり、K222はアミノポリエーテルであり、反応温度は110℃であり、反応時間は20分であった。続いてホウ素化反応を行い、パラジウム触媒Pd(dba)の存在下で、フッ素化された中間体をビス(ピナコラート)ジボロン((Bpin))と反応させることで、芳香環上の-Brをピナコールボロン酸エステル基に置換した。パラジウム触媒Pd(dba)は、P(Cy)をリガンドとする。ホウ素化反応では、Pd(dba)及び(Bpin)は、ジオキサン(Dioxane)に溶解可能であり、溶媒は、酢酸カリウム(KOAc)及び水であってよく、反応温度は110℃であり、反応時間は15分であった。続いて加水分解反応を行い、中間体を臭化水素(HBr)と反応させ、HBrは、ピナコールボロン酸エステル基(
【化37】
)を-B(OH)に加水分解し、且つキラル補助剤をアミノ酸基に加水分解することができる。加水分解反応では、反応温度は150℃であり、反応時間は20分であった。
【0056】
実験例6:式(3)の構造を有する中間体による18Fで標識したFBPAの調製
【0057】
調製プロセスは、以下の反応式を参照されたい。
【化38】
【0058】
以下、調製プロセスを詳細に説明する。式(3)の構造を有する中間体を出発物質とし、18Fで標識したFBPAを調製する。実験例6の反応条件は、上記実験例5を参照されたく、実験例5と実験例6の相違点は、出発物質が異なることにあるため、ここで実験例6の反応プロセスを繰り返して説明しない。
【0059】
以上を纏めると、本開示内容は、薬物の調製方法、薬物を合成するための中間体及び中間体の調製方法を提供する。特に18Fで標識したFBPAの調製方法、FBPAを合成するための中間体及び中間体の調製方法に関する。本開示内容のFBPAの調製方法は、プロセスが簡単であり、FBPAの合成効率と収率を効果的に向上させることができ、且つ、FBPAは、優れた比活性を有することができる。
【0060】
幾つかの実施形態を参照しながら本開示内容を相当に詳しく叙述したが、他の実施形態も可能である。従って、添付される特許請求の範囲の精神と範囲は、ここに含まれる実施形態の叙述に限定されるものではない。
【0061】
当業者にとって、本開示内容の範囲又は精神から逸脱しない限り、本開示内容の構造に様々な修正と変更を行えることが明らかである。前述した内容に鑑み、本開示内容は、添付される特許請求の範囲内にある本開示内容の修正と変更を包含することを意図している。
【外国語明細書】