(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023109718
(43)【公開日】2023-08-08
(54)【発明の名称】電池パック、電気機器、及び充電システム
(51)【国際特許分類】
H02J 50/80 20160101AFI20230801BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20230801BHJP
H02J 50/12 20160101ALI20230801BHJP
【FI】
H02J50/80
H02J7/00 301D
H02J50/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】29
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023008971
(22)【出願日】2023-01-24
(31)【優先権主張番号】P 2022011325
(32)【優先日】2022-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005094
【氏名又は名称】工機ホールディングス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504203572
【氏名又は名称】国立大学法人茨城大学
(74)【代理人】
【識別番号】100136375
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 弘実
(74)【代理人】
【識別番号】100079290
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 隆
(72)【発明者】
【氏名】石川 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】松浦 生
(72)【発明者】
【氏名】田中 正志
(72)【発明者】
【氏名】内田 晃介
(72)【発明者】
【氏名】篠塚 遼太郎
【テーマコード(参考)】
5G503
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BA01
5G503BA02
5G503BB02
5G503GA01
5G503GB04
5G503GB06
5G503GB08
(57)【要約】
【課題】電気機器本体が動作していない状態、無負荷又は低負荷の状態での適切な制御が可能な電池パック及び電気機器を提供する。
【解決手段】電池パック100Gにおいて、Hブリッジ161は、二次電池セル115の出力する直流を交流に変換して電池側コイル118に出力する。制御部164は、Hブリッジ161の駆動を制御する。電気機器本体2において、機器側コイル28は、電池側コイル118と磁気的に結合する。ダイオードブリッジ56及び平滑コンデンサC3は、機器側コイル28の出力する交流を直流に変換してインバータ回路55に出力する。電池パック100Gにおいて、制御部164は、Hブリッジ161のデッドタイム制御により二次側出力電圧V
outを制御する。
【選択図】
図37
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池部と、
前記電池部に接続される電池側スイッチ部と、前記電池側スイッチ部に接続され電気機器本体に電力を送電する電池側コイル部と、を有する送電回路部と、
前記送電回路部を制御する電池側制御部と、
接続される電気機器本体の操作に関する信号を受信する操作検知部と、
を備え、
前記電池側制御部は、前記操作検知部が前記信号を受信すると前記電池側コイル部の出力を増加するよう構成される、
ことを特徴とする電池パック。
【請求項2】
請求項1に記載の電池パックであって、
前記電池側制御部は、前記信号を受信すると前記電池側コイルの出力をゼロ又はゼロより大きい所定値から増加するよう構成される、
ことを特徴とする電池パック。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電池パックであって、
前記信号は、電気機器本体に流れる電流に関する電流信号、電気機器本体の駆動を開始するために作業者に操作される操作部の操作に関する操作信号、電気機器本体に電源を供給するために作業者に操作される電源スイッチのオン操作に関するオン信号、前記電気機器本体の負荷の動作に関する動作信号のいずれかを含む、
ことを特徴とする電池パック。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の電池パックであって、
前記操作検知部は、接続される電気機器本体の負荷部が動作しているか否かを検出するよう構成され、
前記電池側制御部は、前記操作検知部からの信号に応じて前記電池側コイル部からの出力を抑えるよう前記電池側スイッチ部を制御するか否かを切り替えるよう構成される、
ことを特徴とする電池パック。
【請求項5】
請求項4に記載の電池パックであって、
前記電池側制御部は、前記操作検知部からの信号によって電気機器本体の負荷部が動作していないと判断すると前記電池側コイル部からの出力を抑えるよう前記電池側スイッチ部を制御し、前記操作検知部からの信号によって前記負荷部が動作していると判断すると前記電池側コイル部からの出力を増加するよう前記電池側スイッチ部を制御するよう構成される、
ことを特徴とする電池パック。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の電池パックであって、
前記操作検知部は、前記電池側コイル部又は前記電池部に流れる電流を検出する電流検出部を有し、
前記電池側制御部は、前記電流検出部からの信号に基づき前記電池側コイル部からの出力を抑えるよう前記電池側スイッチ部を制御するか否かを切り替える、
ことを特徴とする電池パック。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の電池パックであって、
前記電池側制御部は、電気機器本体の負荷部が動作を停止すると、前記電池側コイル部からの出力が減少するよう前記電池側スイッチ部を制御するよう構成される、
ことを特徴とする電池パック。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の電池パックであって、
前記電池側スイッチ部は、少なくとも1つのスイッチング素子を有し、
前記電池側制御部は、前記操作検知部からの信号に基づいて、前記スイッチング素子に印加するPWM信号のデューティ比及びスイッチング周波数の少なくとも一方を変更するよう構成される、
ことを特徴とする電池パック。
【請求項9】
請求項8に記載の電池パックであって、
前記電池側スイッチ部は、前記電池部の正極側に接続された複数の第1スイッチング素子と、前記電池部の負極側に接続された複数の第2スイッチング素子と、を有し、前記複数の第1スイッチング素子のそれぞれと前記複数の第2スイッチング素子のそれぞれとは互いに直列に接続され、
前記電池側制御部は、前記第1スイッチング素子と前記第2スイッチング素子がともにオフとなるオフ区間が生じるよう前記電池側スイッチ部を制御するよう構成され、
前記電池側制御部は、電気機器本体の負荷部が動作していない状態では前記負荷部が動作している状態よりも前記オフ区間が長くなるよう前記電池側スイッチ部を制御するよう構成される、
ことを特徴とする電池パック。
【請求項10】
請求項9に記載の電池パックであって、
前記電池側制御部は、前記負荷部にかかる負荷の上昇に伴い前記オフ区間が短くなるよう、又は、第1のオフ区間と前記第1のオフ区間より短い第2のオフ区間との比率を前記第2のオフ区間が増加するよう前記電池側スイッチ部を制御するよう構成される、
ことを特徴とする電池パック。
【請求項11】
請求項10に記載の電池パックであって、
前記電池側制御部は、前記負荷部にかかる負荷の下降に伴い前記オフ区間が長くなるよう、又は、前記比率を前記第1オフ区間が増加するよう前記電池側スイッチ部を制御するよう構成される、
ことを特徴とする電池パック。
【請求項12】
請求項1又は2に記載の電池パックと、
前記電池パックに接続される電気機器本体と、
を備える電気機器であって、
前記電気機器本体は、
前記電池側コイル部から電力が供給される機器側コイル部と、
前記電力により駆動する負荷部と、
前記負荷部の起動及び停止を指示する指示部と、
前記指示部の指示に基づいて前記負荷部を制御する機器側制御部と、
を備え、
前記電池側制御部は、前記操作検知部からの信号に基づいて前記指示部の操作を検出するよう構成される、
ことを特徴とする電気機器。
【請求項13】
請求項12に記載の電気機器であって、
前記電池側制御部は、前記操作部の操作を検出すると前記電池側コイル部からの出力が増加するよう前記電池側スイッチ部を制御する、
ことを特徴とする電気機器。
【請求項14】
請求項13に記載の電気機器であって、
前記電池側制御部は、前記操作部の操作の解除を検出すると前記電池側コイル部からの出力が減少するよう前記電池側スイッチ部を制御する、
ことを特徴とする電気機器。
【請求項15】
電池部と、
前記電池部に接続される電池側スイッチ部と、
前記電池側スイッチ部に接続され充電装置から受電する電池側コイル部と、
前記電池側スイッチ部を制御する電池側制御部と、
を備えた電池パックであって、
前記電池側制御部は、充電電流を検出すると、前記電池側スイッチ部と前記電池側コイル部とを含む第1電流経路であって前記電池部を含まない第1電流経路を構成するよう前記電池側スイッチ部を制御するよう構成される、
ことを特徴とする電池パック。
【請求項16】
請求項15に記載の電池パックであって、
前記電池側制御部は、充電電流を検出して前記第1電流経路を構成するよう前記電池側スイッチ部を制御した後、前記電池側スイッチ部と前記電池側コイル部と前記電池部とを含む第2電流経路を構成するよう前記電池側スイッチ部を制御するよう構成される、
ことを特徴とする電池パック。
【請求項17】
請求項15に記載の電池パックであって、
前記電池側制御部は、充電電流を検出して前記第1電流経路を構成するよう前記電池側スイッチ部を制御した後、充電率が所定値未満の場合、前記電池側スイッチ部と前記電池側コイル部と前記電池部を含む第2電流経路を構成するよう前記電池側スイッチ部を制御し、充電率が所定値以上の場合、前記第1及び第2電流経路を交互に構成するよう前記電池側スイッチ部を制御するよう構成される、
ことを特徴とする電池パック。
【請求項18】
請求項15から17のいずれか一項に記載の電池パックであって、
前記電池側コイル部は、電気機器本体への送電にも利用でき、
前記電池側スイッチ部は、前記電池部から電力を出力するときはインバータ回路として機能し、前記電池部を充電するときは整流回路として機能するよう構成される、
ことを特徴とする電池パック。
【請求項19】
請求項18に記載の電池パックであって、
前記電池側スイッチ部は、前記電池部の正極側に接続された複数の第1スイッチング素子と、前記電池部の負極側に接続された複数の第2スイッチング素子と、前記複数の第1及び第2スイッチング素子のそれぞれに並列に接続される整流素子と、を有し、前記複数の第1スイッチング素子のそれぞれと前記複数の第2スイッチング素子のそれぞれとは互いに直列に接続される、
ことを特徴とする電池パック。
【請求項20】
請求項19に記載の電池パックであって、
前記電池側スイッチ部は、
前記電池側スイッチ部が前記インバータ回路として機能する場合には、前記複数の第1スイッチング素子の1つと前記1つの第1スイッチング素子に直列に接続された前記第2スイッチング素子以外の他の前記第2スイッチング素子の1つをオンするとともに、前記第1及び第2スイッチング素子の他の1つをオフし、前記オンされる前記第1及び第2スイッチング素子を介して電力を出力するよう構成され、
前記電池側スイッチ部が前記整流回路として機能する場合には、前記複数の第1及び第2スイッチング素子をオフし、前記整流素子を介して前記電池部を充電するよう構成され、
前記電池側スイッチ部が前記第1電流経路を構成する場合には、前記複数の第1スイッチング素子と前記複数の第2スイッチング素子の一方をオンし、他方をオフするよう構成される、
ことを特徴とする電池パック。
【請求項21】
電池パックと、
前記電池パックを充電する充電装置と、
を備えた充電システムであって、
前記電池パックは、
電池部と、
前記電池部に接続される電池側スイッチ部と、
前記電池側スイッチ部に接続され充電装置から受電する電池側コイル部と、
前記電池側スイッチ部を制御する電池側制御部と、
を備え、
前記電池側制御部は、充電電流を検出すると、前記電池側スイッチ部と前記電池側コイル部とを含む第1電流経路であって前記電池部を含まない第1電流経路を構成するよう前記電池側スイッチ部を制御するよう構成され、
前記充電装置は、
充電装置側スイッチ部と、
前記充電装置側スイッチ部に接続され前記電池側コイル部と磁気的に結合する充電装置側コイル部と、
前記充電装置側コイル部に印加される電圧を検出する電圧検出部と、
前記充電装置側コイル部に流れる電流を検出する電流検出部と、
前記充電装置側スイッチ部を制御する充電装置側制御部と、
を備え、
前記充電装置側制御部は、前記電池側スイッチ部が前記第1電流経路を構成している場合における、前記電圧検出部で検出された前記電圧と前記電流検出部で検出された前記電流とに基づいて、前記電池部への充電を停止又は禁止するか否かを判断するよう構成される、
ことを特徴とする充電システム。
【請求項22】
請求項21に記載の充電システムであって、
前記電池側制御部は、充電電流を検出して前記第1電流経路を構成するよう前記電池側スイッチ部を制御した後、前記電池側スイッチ部と前記電池側コイル部と前記電池部とを含む第2電流経路を構成するよう前記電池側スイッチ部を制御するよう構成され、
前記充電装置側制御部は、前記電池側スイッチ部が前記第2電流経路を構成している場合における前記電池パックの負荷インピーダンスに基づいて前記電池パックの種類を判別するよう構成される、
ことを特徴とする充電システム。
【請求項23】
請求項21に記載の充電システムであって、
前記電池側制御部は、充電電流を検出して前記第1電流経路を構成するよう前記電池側スイッチ部を制御した後、前記電池側スイッチ部と前記電池側コイル部と前記電池部とを含む第2電流経路を構成するよう前記電池側スイッチ部を制御するよう構成され、
前記充電装置側制御部は、前記電池側スイッチ部が前記第2電流経路を構成している場合における前記電池パックの負荷インピーダンスが閾値以上か否かに応じて、前記電池部への充電電流を所定範囲内にする第1充電制御を行うか、前記充電装置側スイッチ部への入力電圧を一定にする第2充電制御を行うかを決定する、
ことを特徴とする充電システム。
【請求項24】
請求項21に記載の充電システムであって、
前記電池側制御部は、充電電流を検出して前記第1電流経路を構成するよう前記電池側スイッチ部を制御した後、前記電池側スイッチ部と前記電池側コイル部と前記電池部とを含む第2電流経路を構成するよう前記電池側スイッチ部を制御するよう構成され、
前記充電装置側制御部は、前記電池側スイッチ部が前記第2電流経路を構成している場合における前記電池パックの負荷インピーダンスに基づいて前記電池パックの種類を判別してから、前記電池側スイッチ部が前記第2電流経路を構成している場合における前記電池パックの負荷インピーダンスが閾値以上か否かに応じて、前記電池部への充電電流を所定範囲内にする第1充電制御を行うか、前記充電装置側スイッチ部への入力電圧を一定にする第2充電制御を行うかを決定し、
前記閾値は、前記電池パックの種類に応じて異なる、
ことを特徴とする充電システム。
【請求項25】
請求項23又は24に記載の充電システムであって、
前記充電装置側制御部は、前記第1充電制御の実行中に、前記充電装置側コイル部に流れる電流が切替閾値以下になると、前記第2充電制御に切り替えるよう構成される、
ことを特徴とする充電システム。
【請求項26】
請求項23又は24に記載の充電システムであって、
前記充電装置は、外部電源から入力された電圧を変換して前記充電装置側スイッチ部に印加する電圧変換部を備え、
前記充電装置側制御部は、前記第1充電制御において、前記電圧変換部の制御により前記充電装置側スイッチ部への入力電圧を調節することで前記充電電流を前記所定範囲内にするよう構成される、
ことを特徴とする充電システム。
【請求項27】
電池パックと、
前記電池パックを充電する充電装置と、
を備えた充電システムであって、
前記電池パックは、
電池部と、
前記電池部に接続される整流回路と、
前記整流回路に接続され前記充電装置から受電する電池側コイル部と、
を備え
前記充電装置は、
充電装置側スイッチ部と、
前記充電装置側スイッチ部に接続され前記電池側コイル部と磁気的に結合する充電装置側コイル部と、
前記充電装置側スイッチ部を制御する充電装置側制御部と、
を備え、
前記充電装置側制御部は、充電する前記電池パックの負荷インピーダンスに基づいて前記電池パックの種類を判別するよう構成される、
ことを特徴とする充電システム。
【請求項28】
請求項22、24、又は26に記載の充電システムであって、
前記充電装置は、複数の特性変更素子を備え、
前記充電装置側制御部は、前記電池パックの種類に応じて前記複数の特性変更素子のいずれを前記充電装置側スイッチ部と前記充電装置側コイル部との間に接続するかを切り替えるよう構成される、
ことを特徴とする充電システム。
【請求項29】
電池パックと、
前記電池パックを充電する充電装置と、
を備えた充電システムであって、
前記電池パックは、
電池部と、
前記電池部に接続される整流回路と、
前記整流回路に接続され前記充電装置から受電する電池側コイル部と、
を備え
前記充電装置は、
充電装置側スイッチ部と、
前記充電装置側スイッチ部に接続され前記電池側コイル部と磁気的に結合する充電装置側コイル部と、
前記充電装置側スイッチ部を制御する充電装置側制御部と、
複数の特性変更素子と、
を備え、
前記充電装置側制御部は、前記電池パックの種類に応じて前記複数の特性変更素子のいずれを前記充電装置側スイッチ部と前記充電装置側コイル部との間に接続するかを切り替えるよう構成される、
ことを特徴とする充電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池パック、電気機器、及び充電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電源として電池パックを着脱可能に装着できる電気機器、例えば電動工具が知られている。電池パックと電動工具は、互いの端子同士の接続により、電池パックから電動工具への放電を可能にしている。また、電池パックは充電装置にも取り付け可能であり、互いの端子同士の接続により、充電装置による電池パックの充電を可能にしている。
【0003】
下記特許文献1は、接続端子を無くしたワイヤレス給電に関する技術を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1には、電気機器本体(電動工具)が動作していない状態や、無負荷又は低負荷の状態での電池パックの出力制御については記載されていない。
【0006】
特許文献1は、電動工具と電池パック、或いは、電池パックと充電装置の具体的な取付構造や制御内容は記載されていない。
【0007】
特許文献1では、電池パックと電動工具間、電池パックと充電装置間の非接触端子に位置ずれが発生した場合については考慮されていない。
【0008】
特許文献1では、充電装置から定格電圧の異なる電池パックを充電することは考慮されていない。
【0009】
本発明の目的は、次の課題1~4の少なくとも一つを解決することである。
・課題1…電気機器本体が動作していない状態、無負荷又は低負荷の状態での適切な制御が可能な電池パック及び電気機器を提供すること。
・課題2…部品点数を抑え、大型化を抑えた電池パック、電気機器、及び充電システムを提供すること。
・課題3…送電側コイルと受電側コイルとの位置ずれが発生した場合に適切な制御が可能な電池パック、電気機器、及び充電システムを提供すること。
・課題4…異なる定格電圧を有する電池パックを充電可能な充電システムを提供すること。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のある態様は、電池パックである。この電池パックは、
電池部と、
前記電池部に接続される電池側スイッチ部と、前記電池側スイッチ部に接続され電気機器本体に電力を送電する電池側コイル部と、を有する送電回路部と、
前記送電回路部を制御する電池側制御部と、
接続される電気機器本体の操作に関する信号を受信する操作検知部と、
を備え、
前記電池側制御部は、前記操作検知部が前記信号を受信すると前記電池側コイル部の出力を増加するよう構成される。
【0011】
本発明の別の態様は、電気機器である。この電気機器は、
前記電池パックと、
前記電池パックに接続される電気機器本体と、
を備える電気機器であって、
前記電気機器本体は、
前記電池側コイル部から電力が供給される機器側コイル部と、
前記電力により駆動する負荷部と、
前記負荷部の起動及び停止を指示する指示部と、
前記指示部の指示に基づいて前記負荷部を制御する機器側制御部と、
を備え、
前記電池側制御部は、前記操作検知部からの信号に基づいて前記指示部の操作を検出するよう構成される。
【0012】
本発明の別の態様は、電池パックである。この電池パックは、
電池部と、
前記電池部に接続される電池側スイッチ部と、
前記電池側スイッチ部に接続され充電装置から受電する電池側コイル部と、
前記電池側スイッチ部を制御する電池側制御部と、
を備えた電池パックであって、
前記電池側制御部は、充電電流を検出すると、前記電池側スイッチ部と前記電池側コイル部とを含む第1電流経路であって前記電池部を含まない第1電流経路を構成するよう前記電池側スイッチ部を制御するよう構成される。
【0013】
本発明の別の態様は、充電システムである。この充電システムは、
電池パックと、
前記電池パックを充電する充電装置と、
を備えた充電システムであって、
前記電池パックは、
電池部と、
前記電池部に接続される電池側スイッチ部と、
前記電池側スイッチ部に接続され充電装置から受電する電池側コイル部と、
前記電池側スイッチ部を制御する電池側制御部と、
を備え、
前記電池側制御部は、充電電流を検出すると、前記電池側スイッチ部と前記電池側コイル部とを含む第1電流経路であって前記電池部を含まない第1電流経路を構成するよう前記電池側スイッチ部を制御するよう構成され、
前記充電装置は、
充電装置側スイッチ部と、
前記充電装置側スイッチ部に接続され前記電池側コイル部と磁気的に結合する充電装置側コイル部と、
前記充電装置側コイル部に印加される電圧を検出する電圧検出部と、
前記充電装置側コイル部に流れる電流を検出する電流検出部と、
前記充電装置側スイッチ部を制御する充電装置側制御部と、
を備え、
前記充電装置側制御部は、前記電池側スイッチ部が前記第1電流経路を構成している場合における、前記電圧検出部で検出された前記電圧と前記電流検出部で検出された前記電流とに基づいて、前記電池部への充電を停止又は禁止するか否かを判断するよう構成される。
【0014】
本発明の別の態様は、充電システムである。この充電システムは、
電池パックと、
前記電池パックを充電する充電装置と、
を備えた充電システムであって、
前記電池パックは、
電池部と、
前記電池部に接続される整流回路と、
前記整流回路に接続され前記充電装置から受電する電池側コイル部と、
を備え
前記充電装置は、
充電装置側スイッチ部と、
前記充電装置側スイッチ部に接続され前記電池側コイル部と磁気的に結合する充電装置側コイル部と、
前記充電装置側スイッチ部を制御する充電装置側制御部と、
を備え、
前記充電装置側制御部は、充電する前記電池パックの負荷インピーダンスに基づいて前記電池パックの種類を判別するよう構成される。
【0015】
本発明の別の態様は、充電システムである。この充電システムは、
電池パックと、
前記電池パックを充電する充電装置と、
を備えた充電システムであって、
前記電池パックは、
電池部と、
前記電池部に接続される整流回路と、
前記整流回路に接続され前記充電装置から受電する電池側コイル部と、
を備え
前記充電装置は、
充電装置側スイッチ部と、
前記充電装置側スイッチ部に接続され前記電池側コイル部と磁気的に結合する充電装置側コイル部と、
前記充電装置側スイッチ部を制御する充電装置側制御部と、
複数の特性変更素子と、
を備え、
前記充電装置側制御部は、前記電池パックの種類に応じて前記複数の特性変更素子のいずれを前記充電装置側スイッチ部と前記充電装置側コイル部との間に接続するかを切り替えるよう構成される。
【0016】
本発明の「電気機器」は「作業機」や「電動工具」等と表現されてもよく、そのように表現されたものも本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、上記課題1~4の少なくとも一つを解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施の形態1に係る電気機器1の一部の側面図。
【
図4】電気機器1の電池パック100のラッチユニット106周辺の斜視図。
【
図5】電池パック100のラッチユニット106の斜視図。
【
図6】電池パック100の上ケース102に対するラッチユニット106の取付説明図。
【
図7】電気機器1の本体と電池パック100を分離した状態の斜視図。
【
図9】本発明の実施の形態2に係る電気機器1Aの一部の側面図。
【
図10】(A)は、電気機器1Aの一部の側断面図。(B)は、
図10(A)のB部拡大図。
【
図12】電池パック100Aのラッチ部材103A近傍の斜視図。
【
図13】電気機器1Aの本体の切欠部27A近傍の斜視図。
【
図14】電気機器1Aにおける電池パック100Aの着脱時のラッチ係合部105Aの弾性変形の説明図。
【
図16】本発明の実施の形態3に係る電気機器1Bの一部の側断面図。
【
図17】(A)は、電気機器1Bの電池パック100Bの一部の斜視図。(B)は、電池パック100Bの上ケース102Bの前部を下方から見た斜視図。
【
図18】(A)は、電気機器1Bのラッチユニット106Bの斜視図。(B)は、ラッチユニット106Bの斜視断面図。
【
図19】電池パック100Bの上ケース102Bに対するラッチユニット106Bの組付け説明図。
【
図20】本発明の実施の形態4に係る電気機器1Cの側断面図。
【
図21】電気機器1Cの本体と電池パック100Cを分離した状態の斜視図。
【
図22】本発明の実施の形態5に係る電池パック100Dの斜視図。
【
図26】電池パック100Dの右ケース203及び放熱板147を分離した状態の下方から見た斜視図。
【
図27】本発明の実施の形態6に係る電気機器1Eの一部の側断面図。
【
図28】電気機器1Eの本体と電池パック100Eを分離した状態の一部の斜視図。
【
図29】本発明の実施の形態7に係る電気機器1Fの正面図。
【
図34】電池パック100Fのスライドロックパネル154の斜視図。
【
図35】電気機器1Fの本体と電池パック100Fを分離した状態の一部の斜視図。
【
図36】本発明の実施の形態8に係る電気機器1Gの回路ブロック図。
【
図37】電気機器1Gのより具体的な回路ブロック図。
【
図38】(A)は、Hブリッジ161のデッドタイムd
deadを1μsに固定した場合の二次側負荷抵抗と電気機器本体2への入力電圧との関係をHブリッジ161の駆動周波数毎に示したグラフ。(B)は、二次側の過大電圧を抑制するための制御の種類の各々について、監視する電流、定格負荷時の二次側電圧、無負荷時の二次側電圧、制御パラメータの切替時の二次側電圧波形、異常電圧の有無、異常電流の有無をまとめた表。
【
図40】
図39の出力制御(S13)の第1例であるデッドタイム制御を示すフローチャート。
【
図41】(A)は、Hブリッジ161のモード1におけるスイッチング素子S1~S4のオンオフの説明図。(B)は、Hブリッジ161のモード2におけるスイッチング素子S1~S4のオンオフの説明図。(C)は、Hブリッジ161のモード3におけるスイッチング素子S1~S4のオンオフの説明図。(D)は、Hブリッジ161の駆動制御の1周期におけるモード1~3間のモード遷移とそれに応じた一次側出力電圧の一例を示すグラフ。(E)は、デッドタイムd
deadの調整により一次側出力電圧を調整できることを示す式。
【
図42】(A)は、Hブリッジ161のデッドタイムd
deadと二次側負荷抵抗に応じた二次側出力電圧V
outをマッピングするシミュレーションに使用した回路図。(B)は、シミュレーションに用いたパラメータをまとめた表。(C)は、デッドタイムd
deadと二次側負荷抵抗に応じた二次側出力電圧V
outをマッピングしたグラフ。
【
図43】(a)は、二次側負荷が上昇していく過程における二次側電流I
outの時間変化を示すグラフ。(b)は、同過程において
図40に示すデッドタイム制御を行った場合のHブリッジ161のデッドタイムd
deadの時間変化を示すグラフ。(c)は、同過程においてデッドタイムd
deadを1μsに固定した比較例における二次側出力電圧V
outの時間変化を示すグラフ。(d)は、同過程においてデッドタイムd
deadを1μsに固定した比較例における一次側電流I
1の時間変化を示すグラフ。(e)は、同過程においてデッドタイムd
deadを
図43(b)のように制御した場合の二次側出力電圧V
outの時間変化を示すグラフ。(f)は、同過程においてデッドタイムd
deadを
図43(b)のように制御した場合の一次側電流I
1の時間変化を示すグラフ。
【
図44】(a)は、二次側負荷が減少していく過程における二次側電流I
outの時間変化を示すグラフ。(b)は、同過程において
図40に示すデッドタイム制御を行った場合のHブリッジ161のデッドタイムd
deadの時間変化を示すグラフ。(c)は、同過程においてデッドタイムd
deadを1μsに固定した比較例における二次側出力電圧V
outの時間変化を示すグラフ。(d)は、同過程においてデッドタイムd
deadを1μsに固定した比較例における一次側電流I
1の時間変化を示すグラフ。(e)は、同過程においてデッドタイムd
deadを
図44(b)のように制御した場合の二次側出力電圧V
outの時間変化を示すグラフ。(f)は、同過程においてデッドタイムd
deadを
図44(b)のように制御した場合の一次側電流I
1の時間変化を示すグラフ。
【
図45】(a)は、モータ3の無負荷運転時における二次側電流I
outの時間変化を示すグラフ。(b)は、
図45(a)の横軸の目盛りを拡大したグラフ。(c)は、モータ3の無負荷運転時においてデッドタイムd
deadを1μsに固定した比較例における二次側出力電圧V
outの時間変化を示すグラフ。(d)は、モータ3の無負荷運転時においてデッドタイムd
deadを1μsに固定した比較例における一次側電流I
1の時間変化を示すグラフ。(e)は、モータ3の無負荷運転時に
図40に示すデッドタイム制御を行った場合の二次側出力電圧V
outの時間変化を示すグラフ。(f)は、モータ3の無負荷運転時に
図40に示すデッドタイム制御を行った場合の一次側電流I
1の時間変化を示すグラフ。
【
図46】(a)は、モータ3の有負荷運転時における二次側電流I
outの時間変化を示すグラフ。(b)は、
図46(a)の横軸の目盛りを拡大したグラフ。(c)は、モータ3の有負荷運転時においてデッドタイムd
deadを1μsに固定した比較例における二次側出力電圧V
outの時間変化を示すグラフ。(d)は、モータ3の有負荷運転時においてデッドタイムd
deadを1μsに固定した比較例における一次側電流I
1の時間変化を示すグラフ。(e)は、モータ3の有負荷運転時に
図40に示すデッドタイム制御を行った場合の二次側出力電圧V
outの時間変化を示すグラフ。(f)は、モータ3の有負荷運転時に
図40に示すデッドタイム制御を行った場合の一次側電流I
1の時間変化を示すグラフ。
【
図47】
図40のフローチャートのS37、S38におけるHブリッジ161の1秒停止が繰り返される場合(モータ3が停止している場合)の二次側出力電圧V
outの時間変化を示すグラフ。
【
図48】電気機器本体2におけるトリガスイッチ6のオンオフ情報を電気機器本体2から電池パック100Gに伝達可能とする変形例の模式図。
【
図49】(A)は、
図39の出力制御(S13)の第2例である周波数制御を示すフローチャート。(B)は、
図39の出力制御(S13)の第3例であるデッドタイム制御を示すフローチャート。
【
図50】
図39の出力制御(S13)の第4例であるデッドタイム制御2を示すフローチャート。
【
図51】本発明の実施の形態9に関し、充電器300Aに電池パック100(又は100A、100B)を接続する前の状態の模式図。
【
図52】充電器300Aに電池パック100(又は100A、100B)を接続した状態の模式図。
【
図53】本発明の実施の形態10に関し、充電器300Bに電池パック100C(又は100D、100E)を接続する前の状態の模式図。
【
図54】充電器300Bに電池パック100C(又は100D、100E)を接続した状態の模式図。
【
図55】本発明の実施の形態11に関し、充電器300Cに電池パック100Fを接続する前の状態の模式図。
【
図56】充電器300Cに電池パック100Fを接続した状態の模式図。
【
図57】本発明の実施の形態12に関し、電池パック100G及びそれを充電する充電器300Dの回路ブロック図。
【
図59】本発明の実施の形態13に係る充電システムの概念図であり、電池側Hブリッジ172がアクティブ整流動作を行う場合のシステムの概念図。
【
図60】実施の形態13に係るシステムの概念図であり、電池側Hブリッジ172がインバータ動作を行う場合のシステムの概念図。
【
図62】(A)は、電池パック100Hの回路図。(B)は、電池側Hブリッジ172がチャージモードの場合(全波整流動作を行う場合)の電池側Hブリッジ172の等価回路図。(C)は、電池側Hブリッジ172がショートモードの場合(短絡動作を行う場合)の電池側Hブリッジ172の等価回路図。
【
図63】(A)は、実施の形態13に係る充電システムの概念図であって電池側コイル173と充電器側コイル321の位置ずれが無い場合の充電システムの概念図。(B)は、実施の形態13に係る充電システムの概念図であって電池側コイル173と充電器側コイル321の位置ずれがある場合の充電システムの概念図。
【
図64】実施の形態13に係る充電システムの概念図であって、充電器300Eが定格電圧の異なる電池パック100H-1、100H-2、100H-3を接続可能かつ充電可能であること、及び電池パック100H-1、100H-2、100H-3はそれぞれ定格電圧が対応する電動工具2-1、2-2、2-3に装着されて電源となることを示す図。
【
図65】(A)は、コイルに流れる電流の実効値がX[A], Y[A], Z[A](Z>Y>X)の各場合におけるコイルの温度の時間変化を示すグラフ。(B)は、充電器側Hブリッジ319への入力電圧を可変とする制御(間接制御)における、充電器側コイル321に流れる電流、電池側コイル173に流れる電流、二次電池セル171に流れる充電電流の時間変化を示すグラフ。(C)は、充電器側Hブリッジ319への入力電圧を40Vで一定にする制御における、充電器側コイル321に流れる電流、電池側コイル173に流れる電流、二次電池セル171に流れる充電電流の時間変化を示すグラフ。(D)は、充電器側Hブリッジ319への入力電圧を30Vで一定にする制御における、充電器側コイル321に流れる電流、電池側コイル173に流れる電流、二次電池セル171に流れる充電電流の時間変化を示すグラフ。
【
図66】(A)は、充電器300Eに電池パック100Hを接続した状態において充電器側Hブリッジ319から出力側を見た等価回路であって、電池側Hブリッジ172がチャージモードの場合の等価回路。(B)は、充電器300Eに電池パック100Hを接続した状態において充電器側Hブリッジ319から出力側を見た等価回路であって、電池側Hブリッジ172がショートモードの場合の等価回路。(C)は、電池側コイル173と充電器側コイル321の結合係数kの推定式、充電器300E側から見た電池パック100Hの負荷インピーダンスZ
Lの推定式、電池側コイル173に流れる電流I
2の推定式、並びに各式中の定数及びパラメータの説明をまとめた表。
【
図67】(A)は、充電器300Eから電池パック100Hへの充電動作の全体のフローチャート。(B)は、充電器300E側における
図67(A)の充電開始検出(S101)のフローチャート。(C)は、電池パック100H側における
図67(A)の充電開始検出(S101)のフローチャート。
【
図68】(A)は、充電器300E側における
図67(A)のコイル位置ずれ検知(S103)のフローチャート。(B)は、電池パック100H側における
図67(A)のコイル位置ずれ検知(S103)のフローチャート。
【
図69】充電器300E側における
図67(A)の電池パック判別及びCC/CV判別(S105)のフローチャート。
【
図70】(A)は、充電器300E側における
図67(A)のCC/CVモード(S107)のフローチャート。(B)は、
図70(A)のI
1_battery、I
1CC/CVの一例を電池パック100Hの定格電圧ごとにまとめた表。(C)は、電池パック100H側における
図67(A)のCC/CVモード(S107)のフローチャート。
【
図71】(A)は、充電器300E側における
図67(A)の充電終了判断(S109)のフローチャート。(B)は、電池パック100H側における
図67(A)の充電終了判断(S109)のフローチャート。
【
図72】(A)は、二次電池セル171に流れる充電電流の時間変化の一例を示す簡易グラフ。(B)は、二次電池セル171に印加される充電電圧の時間変化の一例を示す簡易グラフ。(C)~(E)は、定格電圧36V、18V、10.8Vの電池パック100H-1、100H-2、100H-3の各々の電圧と負荷インピーダンスの関係を示すグラフであって、推定値と理論値を併せて示すグラフ。
【
図73】(A)は、本発明の実施の形態14に係るシステムの概念図であり、充電器側キャパシタ320としてキャパシタC
a1、C
a2、C
a3のいずれかを選択して接続可能とした場合のシステムの概念図。(B)は、充電対象の電池パックの定格電圧と最適負荷Z、共振周波数f、キャパシタンスCの関係をまとめた表。
【
図74】
図73のシステムの充電器側における電池パック判別及びCC/CV判別のフローチャートであって、
図69との共通部分を適宜省略したフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下において、各図面に示される同一または同等の構成要素、部材等には同一の符号を付し、適宜重複した説明は省略する。実施の形態は、発明を限定するものではなく例示である。実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0020】
(実施の形態1)
図1~
図8は、本発明の実施の形態1に関する。本実施の形態は、電池パック100及び電気機器1に関する。
図1及び
図2に、電池パック100及び電気機器1における互いに直交する前後、上下、左右の各方向を示す。前後方向は、電気機器1における電池パック100の着脱方向と平行な方向である。電池パック100の装着方向が後方、取外し方向が前方である。上下方向は、電池パック100の左右一対のレール部120を含む仮想平面と垂直な方向である。
【0021】
電気機器1は、インパクトドライバである。電気機器1において、ハンドル部22から上側の機械構成は周知であり、本実施の形態では図示及び説明を省略する。なお、後述の
図20に示す電気機器1Cのハンドル部22から上側の機械構成は、本実施の形態の電気機器1にも適用できる。電気機器1のうち電池パック100を除く部分が、電気機器本体に対応する。
【0022】
電気機器本体は、ハンドル部22及び電池パック装着部23を有する。ハンドル部22及び電池パック装着部23は、電気機器本体のハウジングの一部を構成する。ハウジングは、例えば左右二分割構造の樹脂成形体をネジ止め等により互いに固定、一体化したものである。電池パック装着部23は、ハンドル部22の下端部に接続される。電池パック装着部23は、前後及び左右方向において、ハンドル部22の下端部に対して拡大された寸法を有する。
【0023】
図7に示すように、電池パック装着部23は、左右一対のレール部26を有する。一対のレール部26は、電池パック装着部23の左右両壁部の下端部からそれぞれ内側に突出した凸条部であり、前後方向に延びる。各レール部26は、自身の前端寄りの部分に、凹部27を有する。凹部27は、電気機器本体に対する電池パック100の装着時に電池パック100の後述のラッチ爪部105が入り込む(係合する)部分である。
【0024】
図3に示すように、電気機器本体は、電池パック装着部23内に、機器側コイル28を有する。機器側コイル28は、中心軸が上下方向と平行な姿勢で保持される。機器側コイル28は、一対のレール部26より上方に位置する。機器側コイル28は、電池パック100の後述する電池側コイル118から非接触で電力供給を受けるための受電コイルである。
【0025】
電気機器1は、電池パック100を有する。電池パック100は、下ケース101及び上ケース102を有する。下ケース101及び上ケース102は、それぞれ例えば樹脂成形体であり、ネジ止め等により互いに固定、一体化され、電池パック100の外装ケースを構成する。
【0026】
図3に示すように、電池パック100は、下ケース101及び上ケース102によって形成される内部空間に、二次電池セル115、セパレータ116、制御基板117、及び電池側コイル118を有する。
【0027】
二次電池セル115は、例えばリチウムイオン二次電池セル(蓄電池セル)である。図示の例では、10個の二次電池セル115が、上下5個ずつに二段に分かれて前後方向に配列される。セパレータ116は、例えば樹脂成形体であり、下ケース101に対して固定される。セパレータ116は、二次電池セル115を所定の配列となるように支持して二次電池セル115の位置を定める。制御基板117は、セパレータ116の上方に位置し、上下方向と垂直な姿勢でセパレータ116にネジ止め等により固定される。制御基板117は、電池側コイル118のスイッチング制御に必要な回路部品を搭載する。
【0028】
電池側コイル118は、制御基板117の上方に位置し、中心軸が上下方向と平行な姿勢で保持される。電池パック100を電池パック装着部23に装着した状態で、電池側コイル118は、機器側コイル28と同軸となる。電池側コイル118と機器側コイル28の内径及び外径は互いに略等しい。電池側コイル118は、左右方向、又は、左右方向及び前後方向において、後述の一対のレール部120の間に位置する。上下方向において、電池側コイル118と一対のレール部120の存在範囲が少なくとも部分的に重複する。
【0029】
図3に示すように、電池パック100を電池パック装着部23に装着した状態で、電池側コイル118は、上ケース102の平坦な上面部と、電池パック装着部23の平坦な下面部とを挟んで、機器側コイル28と同軸的に対向する。この状態で電池側コイル118と機器側コイル28は互いに磁気的に結合しており、電池側コイル118から機器側コイル28に電磁誘導方式による非接触で電力を供給できる。
【0030】
図4、
図6、
図7、
図8に示すように、電池パック100は、左右一対のレール部120を有する。一対のレール部120は、上ケース102の左右両壁部において内側に凹んだ凹状部であり、前後方向に延びる。各レール部120は、後述のラッチケース107まで跨がって延在する。
【0031】
電池パック100は、左右一対のラッチユニット106を有する。各ラッチユニット106は、ラッチ部材103を有する。各ラッチ部材103は、例えば樹脂成形体であり、ラッチ操作部104及びラッチ爪部105を有する。ラッチ爪部105は、レール部120内に突出する。ラッチ操作部104は、ラッチ爪部105をレール部120から上ケース102の内側に向けて引っ込ませ、ラッチ爪部105と凹部27との係合を解除するための操作部である。
【0032】
図5、
図6、
図8に示すように、ラッチユニット106は、左右一対のラッチケース107及びラッチ蓋112を有する。ラッチケース107及びラッチ蓋112は、共に例えば樹脂成形体である。
【0033】
ラッチケース107は、ラッチ操作部104及びラッチ爪部105を外部に露出させた状態でラッチ部材103を収容保持する。ラッチケース107は、
図8に示す円柱状のゴム114をラッチ部材103と共に収容保持する。ゴム114は、ラッチ操作部104を外方に向けて付勢する付勢手段である。ラッチ蓋112は、ラッチケース107の下部開口を閉じる。ラッチ蓋112は、接着や係止等によりラッチケース107に固定される。
【0034】
図6及び
図8に示すように、上ケース102は、ラッチケース107を配置するための切欠部121を左右両壁部にそれぞれ有する。切欠部121には、
図6に示すように凸条部122が設けられる。これに対応してラッチケース107には溝部108(凹状部)が設けられる。
【0035】
上ケース102の凸条部122をラッチケース107の溝部108に嵌め込むことで、上ケース102に対してラッチケース107が位置決めされる。この状態で下ケース101と上ケース102とを互いに固定することで、ラッチケース107が下ケース101と上ケース102に対して固定される。ラッチケース107は、下ケース101の上端部の図示しない凹状部と嵌合する凸条部111を有する。同様にラッチ蓋112は、凸条部113を有する。
【0036】
下ケース101及び上ケース102に対するラッチケース107の固定には、上述の嵌め込み(嵌合)に加えて接着剤を併用してもよい。この場合、嵌め込みと接着剤によって下ケース101及び上ケース102とラッチケース107との間の密閉性(シール性)を向上させることができる。
【0037】
図8に示すように、上ケース102は、内面にコイル支持部119を有する。コイル支持部119は、電池側コイル118の外周部の少なくとも一部に沿う形状の部分であり、電池側コイル118の外周部の少なくとも一部を支持する。コイル支持部119は、ここでは円弧状内面部である。
【0038】
ラッチケース107は、コイル支持部110を有する。コイル支持部110は、上ケース102のコイル支持部119と連なる。コイル支持部110、119は、電池側コイル118の外周部の少なくとも一部に沿う形状の部分であり、電池側コイル118の外周部の少なくとも一部を支持する。コイル支持部110、119は、ここでは円弧状内面部である。コイル支持部110、119の支持により、電池側コイル118の前後及び左右方向における位置が定められる。
【0039】
図5に示すように、ラッチケース107は、コイル支持部109を有する。コイル支持部109は、上下方向と略垂直な平面部であり、電池側コイル118の下面部の一部を支持する。コイル支持部109の支持により、電池側コイル118は、上ケース102の上面部に向けて押し付けられ、上下方向における位置が定められる。
【0040】
電池パック100の組立手順は次のとおりである。まず、上ケース102のコイル支持部119に電池側コイル118を位置合わせする。次に、上ケース102の左右の切欠部121にそれぞれラッチケース107を嵌合させ、ラッチ部材103及びゴム114をラッチケース107に組み付け、ラッチケース107の下部開口をラッチ蓋112で閉じる。次に、互いに固定された二次電池セル115、セパレータ116、制御基板117を内包するように下ケース101と上ケース102とを互いに固定、一体化する。
【0041】
本実施の形態によれば、電池パック100から電気機器本体に非接触給電が可能な電池パック及び電気機器を提供することができる。電池パック100は、電磁誘導方式による非接触給電で電気機器本体に電力を供給する構成のため、電気機器本体との接続のためにケース外に露出した端子を有さない。このため、下ケース101及び上ケース102は、端子を露出させるための開口部を有さない。また、下ケース101及び上ケース102は、吸排気用の開口部(風窓)も有さない。更に、上ケース102の切欠部121がラッチケース107及びラッチ蓋112によって閉じられる。このように、電池パック100は、全体としてケース内外を連通させる開口部を有さない密閉構造となっている。よって、電池パック100は、防水性、防塵性が高い。
【0042】
また、電池パック100と電気機器本体はレール同士の係合による固定のため、電池側コイル118と機器側コイル28との相対的な位置ずれ発生しにくいため、給電効率が良い。また、電池パック100は電気機器本体に対して着脱式のため、作業途中で電池パック100の残容量が無くなっても別の電池パック100に交換することで作業を継続できる。また、電池パック100は、種々の電気機器本体に使い回せるため、多機種に展開しやすい。また、電池側コイル118は、一対のレール部120の内側に位置するため、電池パック100の上下方向の寸法を抑えることができ、電気機器の上下方向の寸法を抑えることができる。また、電池側コイル118は、上ケース102の上面、コイル支持部109及び110によって支持されるため、電池側コイル118の上ケース102に対する移動を抑制することができる。ラッチケース107を上ケース102に取り付けるだけで電池側コイル118を容易に位置決め(固定)することができる。
【0043】
(実施の形態2)
図9~
図15は、本発明の実施の形態2に関する。本実施の形態は、電池パック100A及び電気機器1Aに関する。電気機器1Aは、主にラッチに関する構成が電気機器1と相違する。以下、電気機器1との相違点を中心に説明する。
【0044】
電気機器1Aの本体(電気機器本体)は、電気機器1の本体の電池パック装着部23が電池パック装着部23Aに替わったものである。電池パック装着部23Aは、電池パック装着部23のレール部26がレール部26Aに替わったものである。
【0045】
図13に示すように、レール部26Aは、自身の前端寄りの部分に、切欠部27Aを有する。切欠部27Aは、電気機器本体に対する電池パック100Aの装着時に電池パック100Aの後述のラッチ係合部105Aが嵌まる(係合する)部分である。切欠部27Aの前方、すなわちレール部26Aの前端部は、係止片部29となっている。係止片部29がラッチ係合部105Aと係合することで、電池パック100Aが電池パック装着部23Aに係止される。
【0046】
電池パック100Aは、電池パック100の上ケース102が上ケース102Aに替わったものである。上ケース102Aは、左右一対のレール部120Aを有する。レール部120Aは、電池パック100のレール部120に対応する部分であり、レール部120と同様に前後方向に延びる。
【0047】
図15に示すように、上ケース102Aは、レール部120Aの前端部に臨むように、ラッチ収容部121Aを有する。ラッチ収容部121Aは、レール部120Aに開口し、上ケース102Aの内壁部によって囲まれた空間である。ラッチ収容部121Aは、下方に開口し、当該開口から後述のラッチ部材103Aを挿入可能となっている。
【0048】
電池パック100Aは、左右一対のラッチ部材103Aを有する。ラッチ部材103Aは、電池パック100のラッチユニット106に対応する部材である。ラッチ部材103Aは、例えば樹脂成形体であり、ラッチ係合部105A及びラッチ蓋部112Aを有する。
【0049】
ラッチ係合部105Aは、レール部120A内に突出する。ラッチ係合部105Aは、自身が上ケース102Aの内側に向けて押されることでレール部120Aから上ケース102Aの内側に引っ込むように弾性変形可能である。すなわち、ラッチ係合部105Aは、自身と切欠部27A及び係止片部29との係合を解除するためのラッチ操作部としても機能する。
【0050】
電池パック装着部23Aに電池パック100Aを装着する際には、ラッチ係合部105Aが
図14に示すように内側に向けて弾性変形しながら(しなりながら)、係止片部29を乗り越える。電池パック装着部23Aから電池パック100Aを取り外す際には、ラッチ係合部105Aを内側に向けて押し込んで弾性変形させ、ラッチ係合部105Aと切欠部27A及び係止片部29との係合を解除し、電池パック100Aを前方に引き抜く。
【0051】
ラッチ蓋部112Aは、
図15に示すようにラッチ収容部121Aの下部開口を塞ぐ部分である。ラッチ部材103Aは、嵌め込み(嵌合)により上ケース102Aに固定される。上ケース102Aに対するラッチ部材103Aの固定には、必要に応じて接着剤を併用してもよい。この場合、嵌め込みと接着剤によって上ケース102Aとラッチ蓋部112Aとの間の密閉性(シール性)を向上させることができる。
【0052】
図15に示すように、上ケース102Aは、円筒部124を有する。円筒部124は、上ケース102Aの上端部から下方に延びる。円筒部124は、電池側コイル118の内周部を支持するコイル支持部である。円筒部124は、先端部(下端部)に係止凸部125を有する。
図10(B)に示すように、係止凸部125は、電池側コイル118の内径よりも僅かに大きな外径を有し、電池側コイル118が円筒部124から抜けないように係止する。電池側コイル118を円筒部124に組み付ける際には、電池側コイル118の内周部が係止凸部125を乗り越えるように軽圧入する。
【0053】
本実施の形態のその他の点は、実施の形態1と同様である。本実施の形態も、実施の形態1と同様の効果を奏することができる。また、円筒部124及び係止凸部125により電池側コイル118の位置決め及び抜け止めを容易に行うことができる。
【0054】
(実施の形態3)
図16~
図19は、本発明の実施の形態3に関する。本実施の形態は、電池パック100B及び電気機器1Bに関する。電気機器1Bは、主にラッチに関する構成が電気機器1と相違する。以下、電気機器1との相違点を中心に説明する。
【0055】
電気機器1Bの本体(電気機器本体)は、電気機器1の本体の電池パック装着部23が電池パック装着部23Bに替わったものである。電池パック装着部23Bは、ラッチ凹部27Bを有する。ラッチ凹部27Bは、電気機器本体に対する電池パック100Bの装着時に電池パック100Bの後述のラッチ部材129が嵌まる(係合する)部分である。
【0056】
電池パック100Bは、電池パック100の上ケース102が上ケース102Bに替わったものである。上ケース102Bは、左右一対のレール部120Bを有する。レール部120Bは、電池パック100のレール部120に対応する部分であり、レール部120と同様に前後方向に延びる。上ケース102Bは、
図10に示す上ケース102Aと同様に電池側コイル118を保持する。
【0057】
図17(B)に示すように、上ケース102Bは、貫通孔136、137、ラッチ保持部134、135を有する。貫通孔136は、後述のラッチ操作部130が挿入され、ラッチ操作部130を上ケース102Bの外側に露出するための孔である。貫通孔137は、後述のラッチ部材129が挿入され、ラッチ部材129を上ケース102Bの外側に露出するための孔である。ラッチ保持部134は、後述のラッチケース133の前部を保持する部分である。ラッチ保持部135は、ラッチケース133の背面上部を保持する部分である。図示は省略するが、ラッチ保持部134、135は、爪係合や嵌合によりラッチケース133を係止し、これによりラッチケース133が上ケース102Bに対して固定される。上ケース102Bに対するラッチケース133の固定には、必要に応じて接着剤を併用してもよい。この場合、爪係合や嵌め込みと接着剤とによって上ケース102Bとラッチケース133との間の密閉性(シール性)を向上させることができる。
【0058】
電池パック100Bは、ラッチユニット106Bを有する。ラッチユニット106Bは、電池パック100のラッチユニット106に対応する部材である。ラッチユニット106Bは、一対のギヤ127、ラッチ部材129、ラッチ操作部130、ラッチケース133を有する。
【0059】
ラッチ部材129は、電池パック装着部23Bに電池パック100Bの装着した状態において、電池パック装着部23Bのラッチ凹部27Bに嵌まる部分である。ラッチ操作部130は、ラッチ部材129を下降させてラッチ凹部27Bとの係合を解除するための操作部である。一対のギヤ127は、ラッチ操作部130の操作をラッチ部材129に伝達する部材である。ラッチ操作部130の下面には、前側のギヤ127と噛合するラック部131が設けられる。ラッチ部材129の前面には、後側のギヤ127と噛合するラック部128が設けられる。
【0060】
ラッチ操作部130を前方斜め下にスライドさせると、それに連動するギヤ127の回転によりラッチ部材129が下降する。ラッチ操作部130を後方斜め上にスライドさせると、それに連動するギヤ127の回転によりラッチ部材129が上昇する。ラッチケース133内には付勢部材132が設けられ、ラッチ操作部130を後方斜め上方向に付勢する。これによりラッチ操作部130は、外力がなければ後方斜め上側に位置し、ラッチ部材129は上昇位置にあってラッチケース133から上方に突出する。
【0061】
本実施の形態のその他の点は、実施の形態1と同様である。本実施の形態も、実施の形態1と同様の効果を奏することができる。また、ラッチ操作部130とラッチケース133との間にゴム等のシール部材を設ければ、ラッチユニット106B内への異物の侵入を抑制することができる。また、ラッチ操作部130のラッチケース133に対する摺動動作を支持するための支持部をラッチケース133に設ければ、ラッチ操作部130を円滑に操作することができる。
【0062】
(実施の形態4)
図20及び
図21は、本発明の実施の形態4に関する。本実施の形態は、電池パック100C及び電気機器1Cに関する。電気機器1Cは、主に自身の本体(電気機器本体)への電池パック100Cの装着構成が電気機器1と相違する。電池パック100Cは、電池パック100の上ケース102が上ケース102Cに替わったものである。
【0063】
電気機器1Cは、電動工具であり、具体的にはインパクトドライバである。電気機器1Cは、ハウジング20を有する。
【0064】
ハウジング20は、モータ収容部21、ハンドル部22、及び電池パック装着部23Cを含む。モータ収容部21は、中心軸が前後方向と略平行な筒状部である。ハウジング20は、モータ収容部21の前部に接続される例えば金属製のハンマケース11を備える。
【0065】
ハンドル部22は、上端がモータ収容部21の前後方向の中間部に接続されて前記中間部から下方に延びる。電気機器1は、ハンドル部22の上端部に、トリガスイッチ6及び正逆切替レバー13(正逆切替ボタン)を有する。
【0066】
トリガスイッチ6は、ユーザがモータ3の起動及び停止を指示する(モータ3の駆動状態を切替え可能な)指示部である。トリガスイッチ6は、無段変速スイッチである。正逆切替レバー13は、ユーザがモータ3の正転と逆転、すなわち後述のアンビル10の正転(右回転)と逆転(左回転)を切替え可能な回転方向切替部である。
【0067】
電池パック装着部23Cは、ハンドル部22の下端に設けられ、電池パック100Cを着脱可能に装着できる。電気機器1Cは、電池パック100Cの電力で動作する。ここでは一例として、電池パック100Cは、定格電圧が36Vで、満充電時の出力電圧が40Vであるものとする。電気機器1Cは、電池パック装着部23Cの前部上面に操作パネル24(スイッチパネル)を有する。電気機器1Cは、電池パック装着部23Cの内部に制御基板25を有する。制御基板25は、モータ3の駆動制御用のマイコン(マイクロコントローラ)等を搭載する。
【0068】
電気機器1Cは、モータ収容部21及びハンマケース11内に、負荷部としてのモータ3、減速機構4、スピンドル5、ハンマ8、スプリング9、及び先端工具装着部としてのアンビル10を有する。減速機構4、スピンドル5、ハンマ8、及びスプリング9は、モータ3の駆動力(回転力)を回転打撃力に変換してアンビル10に作用させる回転打撃機構を構成する。
【0069】
モータ3は、インナーロータ型のブラシレスモータである。減速機構4は、モータ3の回転を減速してスピンドル5に伝達する。スピンドル5はハンマ8を回転駆動する。スプリング9は、ハンマ8を前方に付勢する。ハンマ8は、アンビル10を回転ないし回転打撃する。すなわち、アンビル10は、モータ3の駆動力で駆動される。アンビル10は、ハンマケース11に回転可能に支持される。
【0070】
電気機器1Cは、モータ収容部21内の後部に、センサ・インバータ基板15を有する。センサ・インバータ基板15は、モータ3の回転位置を検出するためのホールICや、モータへの電力供給用のインバータ回路45を搭載する。センサ・インバータ基板15は、モータ3の本体部(モータ3のうちモータ軸3aを除く部分)の前方においてモータ軸3aと略垂直な姿勢で支持される。
【0071】
電池パック装着部23Cは、下面に電池装着凸部30及び一対のロック穴部31を有する。電池装着凸部30は、下端部の左右に大径部32を有する円筒形状である。電池装着凸部30及び一対のロック穴部31に対応して電池パック100Cは、本体装着穴部144及び一対のロック凸部143を有する。本体装着穴部144は、電池装着凸部30の下面と略同型で僅かに大きい開口形状を有する。本体装着穴部144は、上ケース102Cの一部である。ロック凸部143は、係止部材としてのロックパネル139の一部である。ロックパネル139は、例えば単一の樹脂成形体である。ロックパネル139は、左右方向と平行なロックパネルシャフト142によって上ケース102Cの上部に上下揺動可能に設けられる。ロックパネル139は、付勢手段としてのバネ140により、上ケース102Cに対して上方に付勢される。
【0072】
電池パック装着部23Cに電池パック100Cを装着するには、電池装着凸部30の下端部の大径部32と本体装着穴部144の上端部の大径部145とを位置合わせして電池装着凸部30を本体装着穴部144に挿入し、電池パック100Cを電池パック装着部23Cに対して上下方向を軸に90度回転させて
図20の状態とする。これにより、ロック凸部143がロック穴部31に嵌まり、電池パック100Cの回転位置が定まる。また、電池装着凸部30の大径部32が本体装着穴部144の開口部のうち大径部145でない部分に引っ掛かり、電池パック100Cが下方に抜けなくなる。
【0073】
電池パック装着部23Cから電池パック100Cを取り外すには、ロック操作部141を下方に押してロックパネル139を下方に揺動させ、ロック凸部143とロック穴部31との係合を解除する(ロック凸部143をロック穴部31の外に出す)。この状態で電池装着凸部30の下端部の大径部32と本体装着穴部144の上端部の大径部145との位置が合うように電池パック100Cを電池パック装着部23Cに対して上下方向を軸に90度回転させて、電池パック100Cを下方に引き抜く。
【0074】
機器側コイル28及び電池側コイル118は、電池装着凸部30と同軸、すなわち電池パック装着部23Cに対する電池パック100Cの回転嵌合の回転軸と同軸となる配置である。
【0075】
電池パック100Cは、電源スイッチ138を有する。電源スイッチ138は、制御基板117に搭載された電源回路やマイコンのオンオフをユーザが切り替えるためのスイッチである。電源スイッチ138は、下ケース101の背面に設けられる。電源スイッチ138は、前述の各実施の形態の電池パックにも同様に設けてもよい(図示省略)。
【0076】
電池パック100Cは、電池側コイル118と制御基板117との間に、シールド材146を有する。シールド材146は、電池側コイル118や機器側コイル28の発生する磁界が制御基板117に及ぼす影響を抑制する磁気シールド材である。シールド材146は、前述の各実施の形態の電池パックにも同様に設けてもよい(図示省略)。
【0077】
本実施の形態のその他の点は、実施の形態1と同様である。本実施の形態も、実施の形態1と同様に、電池パック100Cは全体としてケース内外を連通させる開口部を有さない密閉構造となっている。よって、電池パック100Cは、防水性、防塵性が高い。また、ロックパネル139と上ケース102Cとの間にゴム等のシール部材を設ければ、電池パック100Cの防水性、防塵性を一層高くできる。
【0078】
(実施の形態5)
図22~
図26は、本発明の実施の形態5に係る電池パック100Dに関する。電池パック100Dは、電池パック100Cに放熱板147を追加したものであり、放熱板147の追加に関わる構成以外は電池パック100Cと同じである。
【0079】
電池パック100Dは、下ケース201、左ケース202、右ケース203、上ケース204を有する。下ケース201、左ケース202、右ケース203、上ケース204は、それぞれ例えば樹脂成形体であり、ネジ止め等により互いに固定、一体化され、電池パック100Dの外装ケースを構成する。
【0080】
下ケース201、左ケース202、右ケース203、上ケース204によって形成される内部空間に、二次電池セル115、セパレータ116、制御基板117、電池側コイル118、シールド材146、放熱板147が設けられる。放熱板147は、例えば金属製である。放熱板147は、セパレータ116と下ケース201とに挟み込まれ、電池パック100Dのケース内に保持される。
【0081】
図24及び
図26に示すように、下ケース201、左ケース202、右ケース203、上ケース204を組み合わせたケースの底面部には、4つの開口部205が形成される。開口部205により、放熱板147が電池パック100Dの下方に露出する。放熱板147は、開口部205を塞ぐように保持されるため、電池パック100Dのケースは、開口部205があっても密閉構造となり、防水性、防塵性が高い。
【0082】
本実施の形態によれば、放熱板147により、二次電池セル115の冷却性が高められる。また、開口部205により放熱板147を部分的に露出させているため、放熱板147による冷却効果が高められる。本実施の形態のように放熱板147を設けることは、実施の形態1~3の変形例としても有効である。
【0083】
(実施の形態6)
図27及び
図28は、本発明の実施の形態6に関する。本実施の形態は、電池パック100E及び電気機器1Eに関する。電気機器1Eの本体(電気機器本体)は、電気機器1Cの本体の電池パック装着部23Cが電池パック装着部23Eに替わったものである。電池パック100Eは、電池パック100Cの上ケース102が上ケース102Eに替わったものである。
【0084】
電池パック装着部23Eは、下面に電池装着穴部35を有する。電池装着穴部35は、左右一対の係止部37を有する。係止部37は、左右方向に弾性変形可能なバネ部である。電池装着穴部35に対応して電池パック100Eは、本体装着凸部150を有する。本体装着凸部150は、上端部の左右に大径部151を有する円筒形状である。本体装着凸部150は、上ケース102Eの一部である。
【0085】
電池パック装着部23Eに電池パック100Eを装着するには、電池装着穴部35の下端部の大径部36と本体装着凸部150の上端部の大径部151とを位置合わせして電池装着穴部35に本体装着凸部150を挿入し、電池パック100Eを電池パック装着部23Eに対して上下方向を軸に90度回転させて
図27の状態とする。これにより、電池装着穴部35の係止部37が本体装着凸部150の係止穴部152に嵌まり、電池パック100Eの回転位置が定まる。また、本体装着凸部150の大径部151が電池装着穴部35の開口部のうち大径部36でない部分に引っ掛かり、電池パック100Eが下方に抜けなくなる。
【0086】
電池パック装着部23Eから電池パック100Eを取り外すには、上下方向を軸とする所定以上の回転力を電池パック100Eに加え、係止穴部152と係止部37との係合(嵌合)を解除し、電池装着穴部35の下端部の大径部36と本体装着凸部150の上端部の大径部151との位置が合うように電池パック100Eを電池パック装着部23Eに対して上下方向を軸に90度回転させて、電池パック100Eを下方に引き抜く。
【0087】
本実施の形態のその他の点は、実施の形態4と同様である。本実施の形態も、実施の形態4と同様の効果を奏することができる。
【0088】
(実施の形態7)
図29~
図35は、本発明の実施の形態7に関する。本実施の形態は、電池パック100F及び電気機器1Fに関する。電気機器1Fの本体(電気機器本体)は、電気機器1Cの本体の電池パック装着部23Cが電池パック装着部23Fに替わったものである。電池パック100Fは、電池パック100Cの上ケース102が上ケース102Fに替わったものである。
【0089】
図35に示すように、電池パック装着部23Fは、下面に電池装着凸部40を有する。電池装着凸部40は、略直方体形状である。電池装着凸部40は、左右の二側面のそれぞれ前後に引っ掛け部41を有する。引っ掛け部41は、電池パック100Fの後述の爪部157を引っ掛ける部分である。
【0090】
電池パック100Fにおいて、上ケース102Fは、左右二分割構造の例えば樹脂成形体をネジ止め等により固定、一体化したものであり、下ケース101Fにネジ止め等により固定される。
図35に示すように、上ケース102Fは、パネル収容部148を有する。パネル収容部148は、
図34に示すスライドロックパネル154を収容する部分である。パネル収容部148は、上方に開口する一方、下方には閉じられた空間である。
【0091】
スライドロックパネル154は、例えば樹脂成形体からなる係止部材であり、スライド操作部155、枠状部156、4つの爪部157、バネ部158を有する。スライド操作部155は、
図35に示すように上ケース102Fの前部において前上方向に露出する。枠状部156は、スライド操作部155の後方に連なる正方形ないし長方形の枠状部分である。4つの爪部157は、枠状部156の左右二辺のそれぞれ前後内側から上方に立ち上がる。バネ部158は、枠状部156の後方に連なる。バネ部158は、前後方向に伸縮するように弾性変形可能である。スライド操作部155を後方に押すことで、バネ部158が前後方向に収縮し、爪部157を後方に移動させることができる。
【0092】
電池パック装着部23Fに電池パック100Fを装着するには、電池装着凸部40をスライドロックパネル154の枠状部156の内側に嵌め込んでいく。すると、電池装着凸部40の引っ掛け部41の下端部が爪部157を後方に押し、バネ部158の弾性変形により爪部157が後退する。引っ掛け部41が爪部157を乗り越えると、バネ部158の弾性変形が元に戻り、
図32に示すように爪部157が前進し、爪部157が引っ掛け部41に引っ掛かる。これにより、電池パック100Fが電池パック装着部23Fから下方に抜けなくなる。電池パック装着部23Fに対する電池パック100Fの前後及び左右方向の位置は、電池装着凸部40の外周部が枠状部156の内周部と当接することで定められる。
【0093】
電池パック装着部23Fから電池パック100Fを取り外すには、スライド操作部155を後方に押すことにより爪部157を後退させ、爪部157と引っ掛け部41との係合を解除した状態で、電池パック100Fを下方に引き抜く。
【0094】
本実施の形態のその他の点は、実施の形態4と同様である。本実施の形態も、実施の形態4と同様の効果を奏することができる。スライドロックパネル154は、バネ部158を一体に有する樹脂部品のため、低コストで構造簡易化による信頼性の向上が図れる。
【0095】
(実施の形態8)
図36~
図50は、本発明の実施の形態8に係る電池パック100G及び電気機器1Gに関する。ここで説明する内容は、前述の各実施の形態のいずれにも適用できる。
【0096】
図36は、電気機器1Gの回路ブロック図である。電気機器1Gは、電池パック100G及び電気機器本体2を有する。
【0097】
電池パック100Gは、電池部としての二次電池セル115、電源スイッチ138、送電回路部としての送電回路160、残量表示部163を有する。電源スイッチ138は、ユーザが制御部164のオンオフを切り替えるスイッチである。送電回路160は、二次電池セル115に接続され、二次電池セル115の出力電力を電池側コイル118から電気機器本体2の機器側コイル28に非接触で送電する回路である。送電回路160は、電池側スイッチ部としてのHブリッジ161、キャパシタ162、電池側コイル部としての電池側コイル118、電池側制御部としての制御部164を含む。
【0098】
Hブリッジ161は、二次電池セル115の出力する直流を交流に変換してキャパシタ162及び電池側コイル118に出力する。制御部164は、マイクロコントローラ等を含む。制御部164は、二次電池セル115の電力で動作し、二次電池セル115の出力電流あるいはHブリッジ161の出力電流を監視しながらHブリッジ161の駆動を制御する。制御部164は、二次電池セル115の出力電圧(以下「電池電圧」)により二次電池セル115の残量を検出し、残量表示部163の表示を制御する。
【0099】
電気機器本体2は、受電回路52、全波整流平滑回路51、インバータ回路55、モータ3、制御部54、トリガスイッチ6を有する。受電回路52は、送電回路160から非接触で受電する回路である。受電回路52は、機器側コイル28及びキャパシタ53を含む。機器側コイル28は、電池側コイル118と磁気的に結合する。
【0100】
全波整流平滑回路51は、受電回路52の出力する交流を直流に変換してインバータ回路55に出力する。インバータ回路55は、例えば三相ブリッジ接続されたスイッチング素子を含み、全波整流平滑回路51の出力する直流電力をモータ3の駆動用の交流電力に変換してモータ3に供給する。制御部54は、マイクロコントローラ等を含む。制御部54は、全波整流平滑回路51からの供給電力で動作し、トリガスイッチ6の操作に応じてインバータ回路55の駆動を制御する。
【0101】
図37は、電気機器1Gのより具体的な回路ブロック図である。残量表示部163は、複数の発光ダイオードを含む。コンデンサC0は、二次電池セル115の正極と負極との間に接続される。コンデンサC0は、ノイズ除去用であるが、電池パック100Gの充電時には平滑コンデンサとして機能する。
【0102】
Hブリッジ161は、スイッチング素子S1~S4を含む。スイッチング素子S1、S3は、第1スイッチング素子に対応し、二次電池セル115の正極側に接続される。スイッチング素子S2、S4は、第2スイッチング素子に対応し、二次電池セル115の負極側に接続される。スイッチング素子S1、S2は、互いに直列に接続される。スイッチング素子S3、S4は、互いに直列に接続される。
【0103】
スイッチング素子S1、S2の相互接続部と、スイッチング素子S3、S4の相互接続部と、の間に、キャパシタC1(
図36のキャパシタ162に対応)及び電池側コイルL1(
図36の電池側コイル118に対応)が直列に接続される。キャパシタC1は、共振回路を構成するコンデンサで、力率補償用である。
【0104】
電流検出部165は、電池側コイルL1に流れる電流I1(以下「一次側電流I1」)を検出する。電流検出部166は、Hブリッジ161への入力電流Iin(以下「入力電流Iin」)を検出する。電流検出部165、166は、後述の制御の種類に応じていずれか一方のみが設けられてもよい。電流検出部165、166は、モータ3が動作しているか否か(負荷の有無や大小)を検知する動作検知部(操作検知部)に対応する。制御部164は、電流検出部165からの信号又は電流検出部166からの信号によりモータ3が動作しているか否か、及びモータ3に係る負荷を判断(検出)する。また、電流検出部165、166ではなく、トリガスイッチ6の操作を検出する操作検知部や、電気機器本体(二次側)の電源のオンを検出する操作検知部を設けてもよい。すなわち、二次側(電気機器本体側)の状態を検出することで一次側(電池パック側)の制御を切り替えることができればよい。
【0105】
機器側コイルL2(
図36の機器側コイル28に対応)及びキャパシタC2は、ダイオードブリッジ56の入力端子間に直列に接続される。キャパシタC2は、共振回路を構成するコンデンサで、力率補償用である。ダイオードブリッジ56の出力端子間に、平滑コンデンサC3が接続される。ダイオードブリッジ56及び平滑コンデンサC3は、
図36の全波整流平滑回路51に対応する。平滑コンデンサC3の両端の電圧(全波整流平滑回路51の出力電圧)、すなわちインバータ回路55への入力電圧が、二次側出力電圧V
outである。全波整流平滑回路51の出力電流、すなわちインバータ回路55への入力電流が、二次側電流I
outである。インバータ回路55は、ダイオードブリッジ56の出力端子間に、平滑コンデンサC3と並列に接続される。
【0106】
図38(A)は、Hブリッジ161のデッドタイムd
dead(以下「デッドタイムd
dead」)を1μsに固定した場合の二次側負荷抵抗と電気機器本体2への入力電圧との関係をHブリッジ161の駆動周波数毎に示したグラフである。二次側負荷抵抗は、インバータ回路55及びモータ3を簡易的に抵抗としてシミュレーションした。デッドタイムd
deadは、後述の
図41(D)に示されるもので、スイッチング素子S1~S4が全てオフとなるオフ区間の長さである。負荷抵抗は、大きくなるほど軽負荷(低負荷)となる(無負荷状態に近くなる)。デッドタイムd
deadを1μsに固定した場合、
図38(A)に示すように、軽負荷状態(低負荷状態)において過大電圧が発生する。
【0107】
図38(B)は、二次側の過大電圧を抑制するための制御の種類の各々について、監視する電流、定格負荷時の二次側電圧、無負荷時の二次側電圧、制御パラメータの切替時の二次側電圧波形、異常電圧の有無、異常電流の有無をまとめた表である。
【0108】
周波数制御は、一次側電流I
1を監視対象とし、
図49(A)に示す出力制御を行うものである。周波数制御では、定格負荷時の電圧は30V程度で安定し、無負荷時の電圧は23V程度で安定した。また、異常電圧、異常電流の発生は無かった。
【0109】
デッドタイム制御は、一次側電流I
1を監視対象とし、
図40に示す出力制御を行うものである。デッドタイム制御では、定格負荷時の電圧は30V程度で安定し、無負荷時の電圧は33~28V程度で振動した。また、異常電圧、異常電流の発生は無かった。
【0110】
デッドタイム制御2は、入力電流I
inを監視対象とし、
図50に示す出力制御を行うものである。デッドタイム制御2では、定格負荷時の電圧は30V程度で安定し、無負荷時の電圧は10V程度で安定した。また、異常電圧、異常電流の発生は無かった。
【0111】
図39は、電気機器1Gの制御フローチャートである。電池パック100Gの電源スイッチ138がオンされると(S11のyes)、電池パック100Gの制御部164が起動して送受電が開始される(S12)。制御部164は、一次側電流I
1によりモータ3の駆動状態を検出する(S14)。制御部164は、モータ3が高負荷状態の場合、電池側コイル118からの出力抑制を行わない(S15)。制御部164は、モータ3が低負荷状態の場合、電池側コイル118からの出力抑制を行う(S16)。制御部164は、モータ3が停止状態の場合、出力を停止し(S17)、所定時間待機し(S18)、出力を再開する(S19)。S14~S19は、制御部164による出力制御(S13)を構成する。一次側電流I
1は、二次側の状態と連動して変化する。この二次側の状態の情報、例えば、モータ3に流れる電流信号(二次側電流)、後述のトリガスイッチ6の操作信号、電気機器本体側に電源を供給するための電源オン信号とし、この信号に基づいて変化する一次側の信号(一次側電流I
1)を制御部164で受信(検出)することにより、制御部164は二次側の状態を検出することができる。
【0112】
電気機器本体2の制御部54は、トリガスイッチ6の状態を検出し(S21)、トリガスイッチ6がオンであればモータ3の駆動制御を行い(S22)、トリガスイッチ6がオフであればモータ3を停止する(S23)。電源スイッチ138がオフされると(S24のno)、制御部164が停止して送受電が停止される(S25)。電源スイッチ138がオンの場合(S24のyes)、出力制御(S13)に戻る。
【0113】
図40は、
図39の出力制御(S13)の第1例であるデッドタイム制御を示すフローチャートである。制御部164は、現在のデッドタイムd
deadが1μsの場合(S32のyes)において一次側電流I
1が12.5A以下の場合(S33のyes)、デッドタイムd
deadを1μsに設定する(S40)。制御部164は、S33において一次側電流I
1が12.5A以下でない場合(S33のno)、デッドタイムd
deadを7μsに設定する(S36)。
【0114】
制御部164は、現在のデッドタイムddeadが1μsでない場合(S32のno)において一次側電流I1が8A以下の場合(S34のyes)、デッドタイムddeadを1μsに設定する(S40)。制御部164は、S34において一次側電流I1が8A以下でない場合(S34のno)、一次側電流I1が11A以下であれば(S35のyes)、デッドタイムddeadを7μsに設定する(S36)。制御部164は、S35において一次側電流I1が11A以下でない場合(S35のno)、Hブリッジ161をオフし(S37)、1秒間待機し(S38)、デッドタイムddeadを7μsとしてHブリッジ161をオンにする(S39)。
【0115】
図40のS40(デッドタイムd
deadを1μsに設定すること)は、
図39のS15(出力抑制を行わないこと)に対応し、具体的には出力抑制を行う場合と比較して電池側コイル118からの出力を増加するようHブリッジ161を制御することに対応する。
図40のS36(デッドタイムd
deadを7μsに設定すること)は、
図39のS16(出力抑制を行うこと)に対応し、具体的には電池側コイル118からの出力を抑えるようにHブリッジ161を制御することに対応する。
図40のS37(Hブリッジ161をオフすること)は、
図39のS17(出力を停止すること)に対応する。
【0116】
図41(A)は、Hブリッジ161のモード1におけるスイッチング素子S1~S4のオンオフの説明図である。モード1では、スイッチング素子S1、S4がオン、スイッチング素子S2、S3がオフである。
【0117】
図41(B)は、Hブリッジ161のモード2におけるスイッチング素子S1~S4のオンオフの説明図である。モード2では、スイッチング素子S1、S4がオフ、スイッチング素子S2、S3がオンである。
【0118】
図41(C)は、Hブリッジ161のモード3におけるスイッチング素子S1~S4のオンオフの説明図である。モード3では、スイッチング素子S1~S4は全てオフである。
【0119】
図41(D)は、Hブリッジ161の駆動制御の1周期におけるモード1~3間のモード遷移とそれに応じた一次側出力電圧の一例を示すグラフである。Hブリッジ161の駆動制御の1周期において、Hブリッジ161のモードは、モード1、モード3、モード2、モード3と順に遷移する。この1周期における1回目のモード3の時間、及び2回目のモード3の時間が、それぞれデッドタイムd
deadである。デッドタイムd
deadの調整により一次側出力電圧V
1を調整できる(
図41(E))。なお、デッドタイムd
deadを調整すること(デッドタイム制御)は、スイッチング素子S1~S4に印加するPWM(Pulse Width Modulation)信号のデューティ比を調整すること(PWM制御)といえる。Hブリッジ161の駆動周波数は、PWM信号のスイッチング周波数に対応する。
【0120】
図42(A)は、デッドタイムd
deadと二次側負荷抵抗に応じた二次側出力電圧V
outをマッピングするシミュレーションに使用した回路図である。
図42(B)は、シミュレーションに用いたパラメータをまとめた表である。
図42(C)は、デッドタイムd
deadと二次側負荷抵抗に応じた二次側出力電圧V
outをマッピングしたグラフである。
【0121】
図42(A)の回路図において、r1、r2は、それぞれ電池側コイルL1及び機器側コイルL2の内部抵抗を示す。二次側負荷抵抗RLは、
図37のインバータ回路55及びモータ3を簡易的に固定抵抗としたものである。ダイオードD1~D4は、
図37のダイオードブリッジ56に対応する。
【0122】
図42(B)に示すように、Hブリッジ161(スイッチング素子S1~S4)の駆動制御の1周期は、21.7μs(周波数約46kHzに対応)とした。この場合、デッドタイムd
deadを1μs~7μsの範囲とすることで、電池電圧が40Vのときに、二次側負荷抵抗RLが40Ω以下の広い範囲において二次側出力電圧V
outを40V以下にできることが分かった。
【0123】
図43(a)は、二次側負荷がゼロまたはゼロより大きい所定値から上昇していく過程における二次側電流I
outの時間変化を示すグラフである。
図43(b)は、同過程において
図40に示すデッドタイム制御を行った場合のデッドタイムd
deadの時間変化を示すグラフである。
図43(b)に示すように、二次側負荷が低い間(二次側電流I
outが小さい間)は、デッドタイムd
deadは7μsで一定であり、二次側負荷が上昇するにつれて(二次側電流I
outが大きくなるにつれて)、デッドタイムd
deadが1μsである時間の比率が増えていき、最終的にデッドタイムd
deadは1μsで一定となる。なお、
図43は、例えば電気機器本体がインパクトドライバの場合、トリガスイッチ6をオフからオンにして相手材にねじを締め付け始める状態である。
【0124】
図43(c)は、二次側負荷が上昇していく過程においてデッドタイムd
deadを1μsに固定した比較例における二次側出力電圧V
outの時間変化を示すグラフである。
図43(d)は、同過程かつ同比較例における一次側電流I
1の時間変化を示すグラフである。これらの図に示すように、デッドタイムd
deadを1μsに固定した比較例では、二次側負荷が上昇していく過程の特に前半において二次側に100Vを超える過大電圧が発生し、一次側に25Aを超える過大電流が発生する。
【0125】
図43(e)は、二次側負荷が上昇していく過程においてデッドタイムd
deadを
図43(b)のように制御した場合の二次側出力電圧V
outの時間変化を示すグラフである。
図43(f)は、同過程においてデッドタイムd
deadを
図43(b)のように制御した場合の一次側電流I
1の時間変化を示すグラフである。これらの図と
図43(c),(d)との対比から明らかなように、デッドタイムd
deadを
図43(b)のように制御した場合、二次側の過大電圧と一次側の過大電流が抑制される。
【0126】
図44(a)は、二次側負荷がゼロ又はゼロより大きい所定値まで減少していく過程における二次側電流I
outの時間変化を示すグラフである。
図44(b)は、同過程におけるデッドタイムd
deadの時間変化を示すグラフである。
図44(b)に示すように、二次側負荷が高い間(二次側電流I
outが大きい間)は、デッドタイムd
deadは1μsで一定であり、二次側負荷が低下するにつれて(二次側電流I
outが小さくなるにつれて)、デッドタイムd
deadが7μsである時間の比率が増えていき、最終的にデッドタイムd
deadは7μsで一定となる。なお、
図44は、例えば電気機器本体がインパクトドライバの場合、トリガスイッチ6をオンからオフにしてねじ締め作業を終了する状態である。
【0127】
図44(c)は、二次側負荷が減少していく過程においてデッドタイムd
deadを1μsに固定した比較例における二次側出力電圧V
outの時間変化を示すグラフである。
図44(d)は、同過程かつ同比較例における一次側電流I
1の時間変化を示すグラフである。これらの図に示すように、デッドタイムd
deadを1μsに固定した比較例では、二次側負荷が低下していく過程の特に後半において二次側に100Vを超える過大電圧が発生し、一次側に25Aを超える過大電流が発生する。
【0128】
図44(e)は、二次側負荷が減少していく過程においてデッドタイムd
deadを
図44(b)のように制御した場合の二次側出力電圧V
outの時間変化を示すグラフである。
図44(f)は、同過程においてデッドタイムd
deadを
図44(b)のように制御した場合の一次側電流I
1の時間変化を示すグラフである。これらの図と
図44(c),(d)との対比から明らかなように、デッドタイムd
deadを
図44(b)のように制御した場合、二次側の過大電圧と一次側の過大電流が抑制される。
【0129】
図45(a)は、モータ3の無負荷運転時(或いは低負荷運転時)における二次側電流I
outの時間変化を示すグラフである。
図45(b)は、
図45(a)の横軸の目盛りを拡大したグラフである。
図45(a)及び(b)は、無負荷運転時(或いは低負荷運転時)において、二次側(例えばモータ3)に実際に流れる電流の時間変化を示している。二次側電流I
outは、約2Aを中心に振動する波形となっている。なお、無負荷運転時、低負荷運転時は、例えば電気機器本体がインパクトドライバの場合、ねじ締め作業を行わないでトリガスイッチ6をオンにしてモータ3を回転させた状態、又は、負荷が大きくならないような柔らかい相手材にネジ締め作業を行う状態である。
【0130】
図45(c)は、モータ3の無負荷運転時(或いは低負荷運転時)においてデッドタイムd
deadを1μsに固定した比較例における二次側出力電圧V
outの時間変化を示すグラフである。
図45(d)は、同比較例における一次側電流I
1の時間変化を示すグラフである。
図45(c)及び(d)は、デッドタイムd
deadを1μsに固定した場合に
図45(a)及び(b)に示す二次側電流I
outを流すために必要な二次側出力電圧V
out及び一次側電流I
1のシミュレーション結果を示している。これらの図に示すように、デッドタイムd
deadを1μsに固定した比較例では、モータ3の無負荷運転時に二次側に100Vを超える過大電圧が発生し、一次側に25Aを超える過大電流が発生する。
【0131】
図45(e)は、モータ3の無負荷運転時に
図40に示すデッドタイム制御を行った場合の二次側出力電圧V
outの時間変化を示すグラフである。
図45(f)は、モータ3の無負荷運転時に
図40に示すデッドタイム制御を行った場合の一次側電流I
1の時間変化を示すグラフである。
図45(e)及び(f)は、デッドタイム制御を行った場合に
図45(a)及び(b)に示す二次側電流I
outを流すために必要な二次側出力電圧V
out及び一次側電流I
1のシミュレーション結果を示している。これらの図と
図45(c),(d)との対比から明らかなように、
図40に示すデッドタイム制御を行った場合、二次側の過大電圧と一次側の過大電流が抑制される。
【0132】
図46(a)は、モータ3の有負荷運転時における二次側電流I
outの時間変化を示すグラフである。
図46(b)は、
図46(a)の横軸の目盛りを拡大したグラフである。
図46(a)及び(b)は、有負荷運転時において、二次側(例えばモータ3)に実際に流れる二次側電流I
outの時間変化を示している。二次側電流I
outは、約7Aを中心に振動する波形となっている。なお、有負荷運転は、例えば電気機器本体がインパクトドライバの場合、相手材にねじを締め付ける状態である。
【0133】
図46(c)は、モータ3の有負荷運転時においてデッドタイムd
deadを1μsに固定した比較例における二次側出力電圧V
outの時間変化を示すグラフである。
図46(d)は、同比較例における一次側電流I
1の時間変化を示すグラフである。
図46(c)及び(d)は、デッドタイムd
deadを1μsに固定した場合に
図46(a)及び(b)に示す二次側電流I
outを流すために必要な二次側出力電圧V
out及び一次側電流I
1のシミュレーション結果を示している。これらの図と
図45(c),(d)との対比から明らかなように、有負荷運転時は、無負荷運転時と比較して、デッドタイムd
deadを1μsに固定した場合においても、二次側の過大電圧と一次側の過大電流が抑制される。
【0134】
図46(e)は、モータ3の有負荷運転時に
図40に示すデッドタイム制御を行った場合の二次側出力電圧V
outの時間変化を示すグラフである。
図46(f)は、モータ3の有負荷運転時に
図40に示すデッドタイム制御を行った場合の一次側電流I
1の時間変化を示すグラフである。
図46(e)及び(f)は、デッドタイム制御を行った場合に
図46(a)及び(b)に示す二次側電流I
outを流すために必要な二次側出力電圧V
out及び一次側電流I
1のシミュレーション結果を示している。これらの図と
図46(c),(d)との対比から明らかなように、
図40に示すデッドタイム制御を行った場合、二次側の過大電圧と一次側の過大電流が更に抑制される。
【0135】
図47は、
図40のフローチャートのS37、S38におけるHブリッジ161の1秒停止が繰り返される場合(モータ3が停止している場合)の二次側出力電圧V
outの時間変化を示すグラフである。モータ3が停止している場合、デッドタイムd
deadを7μsにして出力を抑制していても、二次側出力電圧V
outは上昇していく。二次側出力電圧V
outが約60Vとなった時刻xにおいて制御部164は、Hブリッジ161をオフ、すなわちスイッチング素子S1~S4を全てオフにして1秒間待機する。この間、制御部54の電力消費により平滑コンデンサC3の電荷が消費されることにより、二次側出力電圧V
outは緩やかに低下する。時刻xから1秒が経過した時刻x+1において制御部164は、デッドタイムd
deadを7μsとしてHブリッジ161の駆動を再開する。その後、モータ3が停止している限り、制御部164は、二次側出力電圧V
outが約60Vとなる度にHブリッジ161をオフして1秒間待機し、デッドタイムd
deadを7μsとしてHブリッジ161の駆動を再開する、という動作を繰り返す。なお、二次側出力電圧V
outの60Vは、Hブリッジ161のスイッチング素子S1~S4の耐圧である。
【0136】
図48は、電気機器本体2におけるトリガスイッチ6のオンオフ情報を電気機器本体2から電池パック100Gに伝達可能とする変形例の模式図である。本変形例では、トリガスイッチ6の操作に連動して動く(例えば回転する)磁石59を電気機器本体2に設け、磁石59の発生する磁界を検出する磁気センサであるホールIC168を電池パック100Gに設ける。磁石59は、永久磁石でも電磁石でもよい。本変形例では、制御部164は、トリガスイッチ6のオフ情報を受信した場合に、Hブリッジ161をオフにしてもよい。
【0137】
図49(A)は、
図39の出力制御(S13)の第2例である周波数制御を示すフローチャートである。制御部164は、現在のHブリッジ161の駆動周波数が46kHzの場合(S52のyes)において一次側電流I
1が11A以上の場合(S53のyes)、Hブリッジ161の駆動周波数を37kHzに設定する(S55)。制御部164は、S53において一次側電流I
1が11A以上でない場合(S53のno)、Hブリッジ161の駆動周波数を46kHzに設定する(S56)。
【0138】
制御部164は、現在のHブリッジ161の駆動周波数が46kHzでない場合(S52のno)において一次側電流I1が10A未満の場合(S54のyes)、Hブリッジ161の駆動周波数を37kHzに設定する(S55)。制御部164は、S54において一次側電流I1が10A未満でない場合(S54のno)、Hブリッジ161の駆動周波数を46kHzに設定する(S56)。
【0139】
図49(A)のS56(Hブリッジ161の駆動周波数を46kHzに設定する)は、
図39のS15(出力抑制を行わないこと)に対応し、具体的には出力抑制を行う場合と比較して電池側コイル118からの出力を増加するようHブリッジ161を制御することに対応する。
図49(A)のS55(Hブリッジ161の駆動周波数を37kHzに設定すること)は、
図39のS16(出力抑制を行うこと)に対応し、具体的には電池側コイル118からの出力を抑えるようにHブリッジ161を制御することに対応する。なお、
図49(A)の制御では、
図39のS17(出力を停止すること)に対応する処理は無いが、当該処理を追加してもよい。なお、
図49(A)では、デッドタイムを固定している(例えば1μsに固定)。そのため、周波数(周期)を変更するとデューティ比も変更される。
【0140】
図49(B)は、
図39の出力制御(S13)の第3例であるデッドタイム制御を示すフローチャートである。制御部164は、現在のデッドタイムd
deadが1μsの場合(S62のyes)において一次側電流I
1が12.5A以下の場合(S63のyes)、デッドタイムd
deadを1μsに設定する(S65)。制御部164は、S63において一次側電流I
1が12.5A以下でない場合(S63のno)、デッドタイムd
deadを7μsに設定する(S66)。
【0141】
制御部164は、現在のデッドタイムddeadが1μsでない場合(S62のno)において一次側電流I1が8A以下の場合(S64のyes)、デッドタイムddeadを1μsに設定する(S65)。制御部164は、S64において一次側電流I1が8A以下でない場合(S64のno)、デッドタイムddeadを7μsに設定する(S66)。
【0142】
図49(B)のS65(デッドタイムd
deadを1μsに設定すること)は、
図39のS15(出力抑制を行わないこと)に対応し、具体的には出力抑制を行う場合と比較して電池側コイル118からの出力を増加するようHブリッジ161を制御することに対応する。
図49(B)のS66(デッドタイムd
deadを7μsに設定すること)は、
図39のS16(出力抑制を行うこと)に対応し、具体的には電池側コイル118からの出力を抑えるようにHブリッジ161を制御することに対応する。なお、
図49(B)の制御では、
図39のS17(出力を停止すること)に対応する処理は無い。当該処理を追加したフローチャートが、
図40に対応する。
【0143】
図50は、
図39の出力制御(S13)の第4例であるデッドタイム制御2を示すフローチャートである。制御部164は、現在のデッドタイムd
deadが1μsの場合(S72のyes)において入力電流I
inが11A未満の場合(S73のyes)、入力電流I
inが10A未満であれば(S74のyes)、デッドタイムd
deadを1μsに設定する(S81)。制御部164は、S74において入力電流I
inが10A未満でない場合(S74のno)、デッドタイムd
deadを6μsに設定する(S82)。制御部164は、S73において入力電流I
inが11A未満でない場合(S73のno)、デッドタイムd
deadを7μsに設定する(S83)。
【0144】
制御部164は、現在のデッドタイムddeadが6μsの場合(S72のnoかつS75のyes)、入力電流Iinが2.5A以上(S76のYes)かつ3A未満であれば(S77のyes)、デッドタイムddeadを6μsに設定する(S82)。制御部164は、S77において入力電流Iinが3A未満でない場合(S77のno)、デッドタイムddeadを7μsに設定する(S83)。制御部164は、S76において入力電流Iinが2.5A以上でない場合(S76のno)、デッドタイムddeadを1μsに設定する(S81)。
【0145】
制御部164は、現在のデッドタイムddeadが7μsの場合(S72のnoかつS75のno)、入力電流Iinが1Aを超えていれば(S78のyes)、デッドタイムddeadを7μsに設定する(S83)。制御部164は、S78において入力電流Iinが1Aを超えていなければ(S78のno)、デッドタイムddeadを6μsに設定する(S82)。
【0146】
図50のS81(デッドタイムd
deadを1μsに設定すること)は、
図39のS15(出力抑制を行わないこと)に対応し、具体的には出力抑制を行う場合と比較して電池側コイル118からの出力を増加するようHブリッジ161を制御することに対応する。
図50のS82(デッドタイムd
deadを6μsに設定すること)及びS83(デッドタイムd
deadを7μsに設定すること)は、
図39のS16(出力抑制を行うこと)に対応し、具体的には電池側コイル118からの出力を抑えるようにHブリッジ161を制御することに対応する。S82とS83は、いずれも出力抑制であるが、出力抑制の強さはS83のほうが大きい。
【0147】
本実施の形態によれば、下記の効果を奏することができる。
【0148】
(1) 一次側(電池パック100G側)での出力抑制制御により、モータ3に加わる負荷が小さいときやモータ3が停止しているとき(負荷がないとき)の二次側(電気機器本体2側)の過大電圧と一次側の過大電流を好適に抑制できる。これにより、電池パック100Gから電気機器本体2への非接触給電によるモータ3の駆動を好適に実現できる。また、高耐圧の部品を選定する必要がなく、コスト安である。また、電気機器本体2側に電圧制御用回路(チョッパ)が不要なため、電気機器本体2が小型軽量かつ安価になり、回路構成も簡単で済む。
【0149】
(2) 一次側での出力抑制制御は、入力電流Iinや一次側電流I1を使用し、二次側電流Ioutや二次側出力電圧Voutの情報が不要なため、電池パック100Gから電気機器本体2に非接触で給電する構成に好適である。
【0150】
(実施の形態9)
図51及び
図52は、本発明の実施の形態9に関する。本実施の形態は、前述の電池パック100(又は100A、100B)及びそれを充電するための充電器300Aに関する。
図51は、充電器300Aに電池パック100(又は100A、100B)を接続する前の状態の模式図である。
図52は、充電器300Aに電池パック100(又は100A、100B)を接続した状態の模式図である。
【0151】
充電器300Aは、1次コイル(機器側コイル)301、充電スイッチ302、レール303を有する。1次コイル301は、レール303の下方に設けられる。充電スイッチ302は、充電器300Aに電池パック100(又は100A、100B)が接続されているか否かを検出するスイッチである。レール303は、充電器300Aに対する電池パック100(又は100A、100B)の装着ガイドである。
【0152】
図52に示すように充電器300Aに接続した電池パック100(又は100A、100B)の電池側コイル118と、充電器300Aの1次コイル301とが、同軸に対向する。
図52に示すように充電器300Aに接続した電池パック100(又は100A、100B)により、充電スイッチ302が押されてターンオンする。これにより充電器300Aは電池パック100(又は100A、100B)の充電を開始する。充電器300Aから電池パック100(又は100A、100B)への充電電力の供給は、1次コイル301から電池側コイル118への非接触給電によって行われる。
【0153】
(実施の形態10)
図53及び
図54は、本発明の実施の形態10に関する。本実施の形態は、前述の電池パック100C(又は100D、100E)及びそれを充電するための充電器300Bに関する。
図53は、充電器300Bに電池パック100C(又は100D、100E)を接続する前の状態の模式図である。
図54は、充電器300Bに電池パック100C(又は100D、100E)を接続した状態の模式図である。
【0154】
充電器300Bは、1次コイル(機器側コイル)301、充電スイッチ305を有する。1次コイル301は、電池パック100C(又は100D、100E)を配置する部分の下方に設けられる。充電スイッチ305は、充電器300Bに電池パック100C(又は100D、100E)が接続されているか否かを検出するスイッチである。電池パック100C(又は100D、100E)は、
図53に示すように所定角度で充電器300B上に配置した後、
図54に示すように90度回転させることで充電器300Bに接続される。
【0155】
図54に示すように充電器300Bに接続した電池パック100C(又は100D、100E)の電池側コイル118と、充電器300Bの1次コイル301とが、同軸に対向する。
図54に示すように充電器300Bに接続した電池パック100C(又は100D、100E)により、充電スイッチ305が押されてターンオンする。これにより充電器300Bは電池パック100C(又は100D、100E)の充電を開始する。充電器300Bから電池パック100C(又は100D、100E)への充電電力の供給は、1次コイル301から電池側コイル118への非接触給電によって行われる。
【0156】
(実施の形態11)
図55及び
図56は、本発明の実施の形態11に関する。本実施の形態は、前述の電池パック100F及びそれを充電するための充電器300Cに関する。
図55は、充電器300Cに電池パック100Fを接続する前の状態の模式図である。
図56は、充電器300Cに電池パック100Fを接続した状態の模式図である。
【0157】
充電器300Cは、1次コイル(機器側コイル)301、充電スイッチ307を有する。1次コイル301は、電池パック100Fを配置する部分の下方に設けられる。充電スイッチ307は、充電器300Cに電池パック100Fが接続されているか否かを検出するスイッチである。充電器300Cは、電池パック100Fの爪部157と係合して電池パック100Fを係止する構成を有さない。充電器300Cは、電池パック100Fの爪部157が挿入される穴又は溝を有する。
【0158】
図56に示すように充電器300Cに接続した電池パック100Fの電池側コイル118と、充電器300Cの1次コイル301とが、同軸に対向する。
図56に示すように充電器300Cに接続した電池パック100Fにより、充電スイッチ307が押されてターンオンする。これにより充電器300Cは電池パック100Fの充電を開始する。充電器300Cから電池パック100Fへの充電電力の供給は、1次コイル301から電池側コイル118への非接触給電によって行われる。
【0159】
(実施の形態12)
図57及び
図58は、本発明の実施の形態12に係る電池パック100G及び充電器300Dに関する。ここで説明する内容は、前述の実施の形態9~11のいずれにも適用できる。
【0160】
図57は、電池パック100G及びそれを充電する充電器300Dの回路ブロック図である。電池パック100Gの回路構成は、
図36に示したものと同じである。受電回路160Aは、
図36に示した送電回路160と共通の回路であるが、各部の動作は異なる。受電回路160Aは、二次電池セル115に接続され、充電器300Dの1次コイル301から非接触で受電する回路として機能する。電池側コイル118は、1次コイル301と磁気的に結合する。Hブリッジ161は、スイッチング素子S1~S4の各々のボディダイオード(寄生ダイオード)が全波整流回路として機能する。Hブリッジ161により全波整流され
図37に示すコンデンサC0によって平滑された電力により二次電池セル115が充電される。
【0161】
充電器300Dは、送電回路310、充電スイッチ314、充電表示部315を有する。送電回路310は、1次コイル301、ACコンバータ311、1次キャパシタ312、制御部313を有する。充電スイッチ314は、充電器300Dに電池パック100Gが接続されているか否かを検出するスイッチである。充電表示部315は、制御部313の制御により充電の進行状況を示す。ACコンバータ311は、商用電源等の外部交流電源から入力される交流100Vに電圧変換を行い、1次キャパシタ312及び1次コイル301の直列接続回路に供給する。制御部313は、1次コイル301の電圧及び電流を監視しながら、ACコンバータ311の駆動を制御する。
【0162】
図58は、充電器300Dの制御フローチャートである。制御部313は、充電スイッチ314がオンになると(S91のON)、充電制御を開始する(S92)。制御部313は、1次コイル301に流れる電流(充電器電流)を検出する(S93)。制御部313は、充電器電流が異常電流でない場合(S94のNO)、二次電池セル115の電圧を導出する(S95)。制御部313は、二次電池セル115の電圧が満充電電圧の場合(S96の満充電)、充電制御を停止する(S97)。制御部313は、二次電池セル115の電圧が満充電電圧未満の場合(S96の満充電未満)、S93に戻る。制御部313は、S94において充電器電流が異常電流の場合(S94のYES)、充電制御を停止する(S97)。
【0163】
(実施の形態13)
図59~
図72は、本発明の実施の形態13に係るシステムに関する。
【0164】
本実施の形態の充電システムでは、
図59に示すように、電池パック100Hが充電器300E(充電装置)で充電される場合、電池側Hブリッジ172はアクティブ整流動作を行う。アクティブ整流動作は、後述のチャージモードとショートモードを適宜切り替える動作である。電池パック100H及び充電器300Eの具体的な回路構成は、後述の
図61、
図62(A)に示される。
【0165】
図60に示すように、電池パック100Hが電気機器本体2に電力供給する場合、電池側Hブリッジ172はインバータ動作を行う。インバータ動作の場合、電池側Hブリッジ172はインバータ回路として機能し、電池側コイル173は電気機器本体2への送電用コイルとなる。電気機器本体2の具体的な回路構成は、前述の
図36、
図37に示される。
【0166】
図61は、充電器300Eの回路図である。充電器300Eは、全波整流平滑回路317、DC/DC変換回路318、充電装置側スイッチ部としての充電器側Hブリッジ319、充電器側キャパシタ320、充電装置側コイル部としての充電器側コイル321、電流検出部322、電圧検出部323、実効値検出回路324、位相差検出回路325、充電スイッチ326、充電表示LED327、充電装置側制御部としての充電器側制御回路328、電圧検出部337を備える。
【0167】
全波整流平滑回路317及びDC/DC変換回路318は、外部電源から入力された電圧を変換して充電器側Hブリッジ319に印加する電圧変換部を構成する。
【0168】
全波整流平滑回路317は、外部電源としての交流電源316から供給される交流を直流に変換するAC/DC変換回路である。全波整流平滑回路317は、ダイオードブリッジ329と、ダイオードブリッジ329の出力端子間に設けられたキャパシタ330と、を含む。
【0169】
DC/DC変換回路318は、全波整流平滑回路317の出力する直流電圧をレベル変換(降圧)して充電器側Hブリッジ319に出力する。DC/DC変換回路318は、トランス332、トランス332の一次側に直列接続されたスイッチング素子331、トランス332の二次側に接続されたダイオード333、334、コイル335、キャパシタ336を含む。電圧検出部337は、DC/DC変換回路318の出力電圧V0、すなわち充電器側Hブリッジ319の入力電圧V0を検出し、充電器側制御回路328に送信する。
【0170】
充電器側Hブリッジ319は、DC/DC変換回路318の出力する直流を交流に変換して充電器側キャパシタ320及び充電器側コイル321の直列接続回路に供給するDC/AC変換回路である。充電器側Hブリッジ319は、スイッチング素子S5~S8を含む。
【0171】
スイッチング素子S5、S7は、DC/DC変換回路318の正側出力端子に接続される。スイッチング素子S6、S8は、DC/DC変換回路318の負側出力端子に接続される。スイッチング素子S5、S6は、互いに直列に接続される。スイッチング素子S7、S8は、互いに直列に接続される。
【0172】
スイッチング素子S5、S6の相互接続部と、スイッチング素子S7、S8の相互接続部と、の間に、充電器側キャパシタ320及び充電器側コイル321が直列に接続される。充電器側キャパシタ320は、共振回路を構成するコンデンサで、力率補償用である。
【0173】
電流検出部322は、充電器側コイル321に流れる電流I1(以下「充電器側コイル電流I1」)を検出し、実効値検出回路324、位相差検出回路325、充電器側制御回路328に送信する。電圧検出部323は、充電器側Hブリッジ319の出力電圧V1、すなわち充電器側キャパシタ320及び充電器側コイル321の直列接続回路への入力電圧V1を検出し、位相差検出回路325及び充電器側制御回路328に送信する。
【0174】
実効値検出回路324は、電流検出部322の出力信号により、電流I1の実効値を検出し、充電器側制御回路328に送信する。位相差検出回路325は、電流検出部322の出力信号及び電圧検出部323の出力信号により、電流I1と電圧V1の位相差を検出し、充電器側制御回路328に送信する。
【0175】
充電スイッチ326は、ユーザが充電の開始を指示するためのスイッチである。充電スイッチ326の出力信号は、充電器側制御回路328に入力される。充電表示LED327は、充電状態をユーザに報知する報知部である。
【0176】
充電器側制御回路328は、マイクロコントローラ等を含み、充電器300Eの全体の動作を制御する。
【0177】
充電器側制御回路328は、DC/DC変換回路318のスイッチング素子331のオンオフ制御(PWM制御)によりDC/DC変換回路318の出力電圧を制御(調節)する。
【0178】
充電器側制御回路328は、充電器側Hブリッジ319のスイッチング素子S5~S8のオンオフを制御し、充電器側Hブリッジ319のインバータ動作を制御する。具体的には、充電器側制御回路328は、スイッチング素子S5、S8のオンかつスイッチング素子S6、S7のオフの組合せと、スイッチング素子S5、S8のオフかつスイッチング素子S6、S7のオンの組合せと、を交互に繰り返す。充電器側Hブリッジ319のインバータ動作により、充電器側コイル321から電池側コイル173への送電(充電電力の供給)が行われる。充電器側コイル321と電池側コイル173は互いに磁気的に結合する。
【0179】
充電器側制御回路328は、充電表示LED327の点灯状態を制御し、充電の進行状況やエラーの有無をユーザに報知する。
【0180】
図62(A)は、電池パック100Hの回路図である。電池パック100Hは、電池部としての二次電池セル171、電池側スイッチ部としての電池側Hブリッジ172、電池側コイル部としての電池側コイル173、電池側キャパシタ174、電流検出部175、残量表示部176、キャパシタ177、電圧検出部178、電源スイッチ179、電池側制御部としての電池側制御回路180、実効値検出回路181を備える。
【0181】
電池側Hブリッジ172は、スイッチング素子S1~S4を含む。スイッチング素子S1、S3は、第1スイッチング素子に対応し、二次電池セル171の正極側に接続される。スイッチング素子S2、S4は、第2スイッチング素子に対応し、二次電池セル171の負極側に接続される。スイッチング素子S1、S2は、互いに直列に接続される。スイッチング素子S3、S4は、互いに直列に接続される。
【0182】
スイッチング素子S1~S4の各々は、自身と並列な整流素子としてのボディダイオード(寄生ダイオード)を有する。これらボディダイオードは、電池側Hブリッジ172が後述のチャージモード(スイッチング素子S1~S4が全てオフ)の場合に全波整流回路として機能する。なお、ボディダイオードとは別に、スイッチング素子S1~S4の各々と並列にダイオードを設けてもよい。
【0183】
スイッチング素子S1、S2の相互接続部と、スイッチング素子S3、S4の相互接続部と、の間に、電池側キャパシタ174及び電池側コイル173が直列に接続される。電池側キャパシタ174は、共振回路を構成するコンデンサで、力率補償用である。電池側コイル173は、充電器側コイル321から送電される電力を受電する。
【0184】
電流検出部175は、電池側コイル173に流れる電流I2(以下「電池側コイル電流I2」)を検出し、電池側制御回路180及び実効値検出回路181に送信する。実効値検出回路181は、電流検出部175の出力信号により、電流I2の実効値を検出し、電池側制御回路180に送信する。電圧検出部178は、二次電池セル171の正極、負極間の電圧V2を検出し、電池側制御回路180に送信する。
【0185】
残量表示部176は、電池パック100Hの残量をユーザに報知する報知部である。キャパシタ177は、二次電池セル171の正極、負極間に設けられる。キャパシタ177は、ノイズ除去用であるが、電池パック100Hの充電時には平滑コンデンサとして機能する。電源スイッチ179は、ユーザが電池側制御回路180を起動するためのスイッチである。電源スイッチ179の出力信号は、電池側制御回路180に入力される。電源スイッチ179は、電池パック100Hから電気機器本体2等に放電する場合にユーザが事前に操作する。一方、充電器300Eから電池パック100Hへの充電の際には、後述のように電池側制御回路180は自動的に起動するため、ユーザは電源スイッチ179を操作しなくてよい。
【0186】
電池側制御回路180は、マイクロコントローラ等を含み、電池パック100Hの全体の動作を制御する。
【0187】
電池側制御回路180は、二次電池セル171の電力で動作する。電池側制御回路180は、二次電池セル171の正極、負極間の電圧V2により二次電池セル171の残量を検出し、残量表示部176の表示を制御する。
【0188】
電池側制御回路180は、電池側Hブリッジ172のスイッチング素子S1~S4のオンオフを制御し、電池側Hブリッジ172の動作をインバータ動作とアクティブ整流動作との間で切り替える。
【0189】
電池側Hブリッジ172にインバータ動作を行わせる場合、電池側制御回路180は、スイッチング素子S1、S4のオンかつスイッチング素子S2、S3のオフの組合せと、スイッチング素子S1、S4のオフかつスイッチング素子S2、S3のオンの組合せと、を交互に繰り返す。インバータ動作を行う電池側Hブリッジ172は、二次電池セル171の出力する直流を交流に変換して電池側キャパシタ174及び電池側コイル173に出力する。
【0190】
電池側Hブリッジ172にアクティブ整流動作を行わせる場合、電池側制御回路180は、スイッチング素子S1~S4を全てオフにするチャージモードと、スイッチング素子S1、S3をオフかつスイッチング素子S2、S4をオンするショートモードと、を適宜切り替える。チャージモードとショートモードにおける電池側Hブリッジ172の等価回路を
図62(B),(C)にそれぞれ示す。
【0191】
チャージモードでは、電池側Hブリッジ172と電池側コイル173と二次電池セル171とを含む閉ループ(第2電流経路に対応)が構成される。チャージモードでは、電池側Hブリッジ172は整流回路(全波整流回路)として機能し、充電器300Eから二次電池セル171への充電が可能となる。
【0192】
ショートモードでは、電池側Hブリッジ172と電池側コイル173とを含む閉ループであって二次電池セル171を含まない閉ループ(第1電流経路に対応)が構成される。ショートモードでは、電池側Hブリッジ172は充電器300E側から見て短絡状態となり、充電器300Eにおいて電池側コイル173と充電器側コイル321との係合係数の推定が可能となる。ショートモードでは、スイッチング素子S1、S3をオンかつスイッチング素子S2、S4をオフにしてもよい。
【0193】
図63(A)は、電池側コイル173と充電器側コイル321の位置ずれ(以下「位置ずれ」)が無い状態(位置ずれが許容範囲内の状態)を示す。
図63(B)は、位置ずれがある場合(位置ずれが許容範囲外の状態)を示す。本実施の形態のシステムは、位置ずれが許容範囲内の場合は充電器300Eから電池パック100Hへの充電を許容し、位置ずれが許容範囲外の場合は充電器300Eから電池パック100Hへの充電を禁止する(充電を開始しない、又は中止する)。充電器側制御回路328は、電池側コイル173と充電器側コイル321の結合係数により、位置ずれが許容範囲内か否かを判定する。
【0194】
図64に示すように、充電器300Eは、定格電圧36Vの電池パック100H-1、定格電圧18Vの電池パック100H-2、定格電圧10.8Vの電池パック100H-3を接続可能かつ充電可能である。電池パック100H-1、100H-2、100H-3は、それぞれ定格電圧36Vの電動工具2-1、定格電圧18Vの電動工具2-2、定格電圧10.8Vの電動工具2-3に装着されて電源となる。電池パック100H-1、100H-2、100H-3は、いずれも
図62(A)に示す回路構成を有し、定格電圧が異なる点を除き互いに同構成である。電動工具2-1、2-2、2-3は、いずれも
図36、
図37に示す電気機器本体2と同等の回路構成を有する。充電器側制御回路328は、電池側Hブリッジ172がチャージモードのときの負荷インピーダンスにより、電池パック100Hの定格電圧を判定する。
【0195】
図65(A)は、充電器300Eのコイルに流れる電流の実効値(以下「コイル電流実効値」)がX[A], Y[A], Z[A](Z>Y>X)の各場合におけるコイルの温度の時間変化を示すグラフである。このグラフに示すように、コイル電流実効値が大きいほどコイルの温度は高温になる。このグラフの例では、コイル電流実効値がY[A]以下の場合はコイルの温度が許容値T℃を超えないものの、コイル電流実効値がY[A]より大きくなるとコイルの温度が許容値T℃を超える。電池側コイル173と充電器側コイル321の過熱を抑制するためには、電池側コイル173と充電器側コイル321に流れる電流の実効値をY[A]以下に制御することが望ましい。
【0196】
図65(B)は、充電器側Hブリッジ319への入力電圧を可変とする制御(間接制御)における、充電器側コイル321に流れる電流、電池側コイル173に流れる電流、二次電池セル171に流れる充電電流(以下「充電電流」)の時間変化を示すグラフである。間接制御の場合、充電器側制御回路328は、充電器側Hブリッジ319のスイッチング素子S1~S4をデューティ100%で制御する。間接制御では、充電器側コイル321に流れる電流と電池側コイル173に流れる電流はいずれも実効値がY[A]以下となり、電池側コイル173と充電器側コイル321の過熱を抑制できる。また、充電電流は目標値1~3のいずれにも制御できる。
【0197】
図65(C)は、充電器側Hブリッジ319への入力電圧を40Vで一定にする制御における、充電器側コイル321に流れる電流、電池側コイル173に流れる電流、二次電池セル171に流れる充電電流の時間変化を示すグラフである。この制御の場合、充電器側コイル321に流れる電流の実効値はY[A]以下となるものの、電池側コイル173に流れる電流の実効値がY[A]を超えることがあり、電池側コイル173の過熱抑制の点で改善の余地がある。充電電流については、目標値1~3のいずれにも制御できる。
【0198】
図65(D)は、充電器側Hブリッジ319への入力電圧を30Vで一定にする制御における、充電器側コイル321に流れる電流、電池側コイル173に流れる電流、二次電池セル171に流れる充電電流の時間変化を示すグラフである。この制御の場合、電池側コイル173に流れる電流の実効値はY[A]以下となるものの、充電器側コイル321に流れる電流の実効値がY[A]を超えることがあり、充電器側コイル321の過熱抑制の点で改善の余地がある。また、充電電流を目標値1まで高めることができず、充電の高速化の点でも改善の余地がある。
【0199】
図65(C),(D)に示すような充電器側Hブリッジ319への入力電圧を一定にする制御制御では、充電器側制御回路328は、充電器側Hブリッジ319のスイッチング素子S1~S4をPWM制御することで充電電流を制御する。
【0200】
図66(A),(B)は、充電器300Eに電池パック100Hを接続した状態において充電器側Hブリッジ319から出力側を見た等価回路であって、
図66(A)は電池側Hブリッジ172がチャージモードの場合、
図66(B)は電池側Hブリッジ172がショートモードの場合をそれぞれ示す。
【0201】
図66(C)は、電池側コイル173と充電器側コイル321の結合係数kの推定式、充電器300E側から見た電池パック100Hの負荷インピーダンスZ
L(以下「負荷インピーダンスZ
L」)の推定式、電池側コイル電流I
2の推定式、並びに各式中の定数及びパラメータの説明をまとめた表である。
【0202】
図66(C)中の結合係数kの推定式の右辺において、Z
inとsinθ以外の各値は既知量である。Z
in及びsinθは、充電器側コイル電流I
1、及び充電器側Hブリッジ319の出力電圧V
1の検出値から導出できる。なおsinθは、充電器側コイル電流I
1と充電器側Hブリッジ319の出力電圧V
1を位相差検出回路325に入力することで導出できる。このとき、電池側Hブリッジ172がショートモードのときの電流I
1と電圧V
1を用いることで、電池パック100Hの定格電圧によって異なる二次電池セル171のインピーダンスの影響を受けずに結合係数kを推定できる。
【0203】
図66(C)中の負荷インピーダンスZ
Lの推定式の右辺、及び電池側コイル電流I
2の推定式の右辺は、電池側コイル電流I
2や二次電池セル171の正極、負極間の電圧V
2を含まない。このため、これら推定式により充電器側制御回路328は、電池パック100Hとの通信によらずに取得できる情報のみで電池パック100Hの負荷インピーダンスZ
L及び電池側コイル電流I
2を推定できる。電池側Hブリッジ172がチャージモードの場合、負荷インピーダンスZ
Lは、定格電圧によって異なる二次電池セル171のインピーダンスを反映した値となる。このため、負荷インピーダンスZ
Lにより電池パック100Hの定格電圧を判別できる。
【0204】
図67(A)は、充電器300Eから電池パック100Hへの充電動作の全体のフローチャートである。充電動作では、充電開始検出(S101)、コイル位置ずれ検知(S103)、電池パック判別及びCC/CV判別(S105)、CC/CVモード(S107)、充電終了判断(S109)を順次実効する。
【0205】
図67(B)は、充電器300E側における
図67(A)の充電開始検出(S101)のフローチャートである。充電器側制御回路328は、充電スイッチ326が押されるまで待機する(S111のNo)。充電器側制御回路328は、充電スイッチ326が押されると(S111のYes)、DC/DC変換回路318の出力電圧V
0の目標値をV
startとし(S113)、プレチャージを開始し(S115)、所定時間(例えば500ms)後にプレチャージを停止し(S117)、次の処理に進む。V
startは、例えば21Vであり、実験的に定められる。プレチャージは、充電器側Hブリッジ319を駆動して電池パック100Hに一時的に充電電流を供給し、電池側制御回路180を起動させる処理である。
【0206】
図67(C)は、電池パック100H側における
図67(A)の充電開始検出(S101)のフローチャートである。充電器300E側でのプレチャージにより電流I
2が流れると(S121のYes)、電池側制御回路180が起動する(S123)。電池側制御回路180は、電池側Hブリッジ172をショートモードとし(S125)、次の処理に進む。
【0207】
図68(A)は、充電器300E側における
図67(A)のコイル位置ずれ検知(S103)のフローチャートである。充電器側制御回路328は、DC/DC変換回路318の出力電圧V
0の目標値をV
startとし(S131)、充電器側Hブリッジ319を駆動する(S133)。このとき、後述のように電池側Hブリッジ172はショートモードとなっている(S151)。充電器側制御回路328は、S133における充電器側Hブリッジ319の駆動中の、充電器側コイル電流I
1、及び充電器側Hブリッジ319の出力電圧V
1の検出値を利用して、電池側コイル173と充電器側コイル321の結合係数kを推定する(S135)。
【0208】
充電器側制御回路328は、結合係数kが0.3以上かつ充電器側コイル電流I1が20A未満の場合(S137のYes)において、結合係数kが0.5以上の場合(S139のYes)、位置ずれが許容範囲内と判断して次の処理に進む。充電器側制御回路328は、S139において結合係数kが0.5以上でない場合(S139のNo)、S135に戻る。充電器側制御回路328は、S137において結合係数kが0.3以上でない又は充電器側コイル電流I1が20A未満でない場合(S137のNo)、位置ずれが許容範囲外と判断し、充電器側Hブリッジ319を停止し(S141)、充電表示LED327を点滅させてユーザにエラー報知し(S143)、充電制御を終了する。なお、電池パック100Hが充電器300Eにセットされていない場合、充電器側コイル電流I1が過大となり(20Aを超え)、S137のNoに進むことになる。
【0209】
図68(B)は、電池パック100H側における
図67(A)のコイル位置ずれ検知(S103)のフローチャートである。電池側制御回路180は、電池側Hブリッジ172をショートモードとし(S151)、電池側コイル電流I
2がI
2a≦I
2≦I
2bでない場合(S153のNo)はショートモードを継続し(S151)、電流I
2がI
2a≦I
2≦I
2bの場合(S153のYes)は電池側Hブリッジ172をチャージモードに切り替え(S155)、次の処理に進む。I
2aは例えば4A、I
2bは例えば6.6Aである。I
2a、I
2bは、充電器300E側で結合係数kの推定が可能となる電流範囲を示す電流値であり、それぞれ実験的に定められる。
【0210】
図69は、充電器300E側における
図67(A)の電池パック判別及びCC/CV判別(S105)のフローチャートである。充電器側制御回路328は、DC/DC変換回路318の出力電圧V
0の目標値をV
startとし(S161)、充電器側コイル電流I
1が12A以下の場合(S163のYes)、負荷インピーダンスZ
Lを推定する(S165)。
【0211】
充電器側制御回路328は、負荷インピーダンスZLが4.0Ω以上の場合(S169の「4.0Ω以上」)、電池パック100Hの定格電圧を36Vと判断する(S171)。充電器側制御回路328は、充電器側コイル電流I1が12A以下の場合(S173のYes)かつ負荷インピーダンスZLが閾値の一例である7.5Ω以上の場合(S175のYes)、DC/DC変換回路318の出力電圧V0を調節して電池側コイル電流I2を所定範囲内(目標範囲内)に制御する第1充電制御としての定電流制御(CC制御、CC:Constant Current)に設定し(S197)、次の処理に進む。充電器側制御回路328は、S175において負荷インピーダンスZLが7.5Ω以上でない場合(S175のNo)、DC/DC変換回路318の出力電圧V0を一定にする第2充電制御としての定電圧制御(CV制御、CV:Constant Voltage)に設定し(S199)、次の処理に進む。
【0212】
充電器側制御回路328は、負荷インピーダンスZLが1.8Ω以上4.0Ω未満の場合(S169の「1.8Ω以上4.0Ω未満」)、電池パック100Hの定格電圧を18Vと判断する(S181)。充電器側制御回路328は、充電器側コイル電流I1が6A以下の場合(S183のYes)かつ負荷インピーダンスZLが閾値の一例である2.8Ω以上の場合(S185のYes)、定電流制御(CC制御)に設定し(S197)、次の処理に進む。充電器側制御回路328は、S185において負荷インピーダンスZLが2.8Ω以上でない場合(S185のNo)、定電圧制御(CV制御)に設定し(S199)、次の処理に進む。
【0213】
充電器側制御回路328は、負荷インピーダンスZLが1.8Ω未満の場合(S169の「1.8Ω未満」)、電池パック100Hの定格電圧を10.8Vと判断する(S191)。充電器側制御回路328は、充電器側コイル電流I1が6A以下の場合(S193のYes)かつ負荷インピーダンスZLが閾値の一例である1.6Ω以上の場合(S195のYes)、定電流制御(CC制御)に設定し(S197)、次の処理に進む。充電器側制御回路328は、S195において負荷インピーダンスZLが1.6Ω以上でない場合(S195のNo)、定電圧制御(CV制御)に設定し(S199)、次の処理に進む。
【0214】
充電器側制御回路328は、S163もしくはS173において充電器側コイル電流I1が12A以下でない場合(S163のNoもしくはS173のNo)、又はS183もしくはS193において充電器側コイル電流I1が6A以下でない場合(S183のNoもしくはS193のNo)、コイル位置ずれ検知(S103)の処理に戻る。
【0215】
図70(A)は、充電器300E側における
図67(A)のCC/CVモード(S107)のフローチャートである。
【0216】
充電器側制御回路328は、定電流制御(CC制御)の場合(S211の「CC」)、充電器側コイル電流I
1が異常電流閾値I
battery以下であれば(S213のYes)、負荷インピーダンスZ
Lの推定(S215)、及び電池側コイル電流I
2の推定(S217)を行い、電池側コイル電流I
2が所定範囲内、例えば6A~8Aの範囲内となるようにDC/DC変換回路318の出力電圧V
0を制御する(S219)。充電器側制御回路328は、充電器側コイル電流I
1がCVモード移行電流閾値I
1CC_CV以下でない場合(S221のNo)、S215に戻る。充電器側制御回路328は、充電器側コイル電流I
1がCVモード移行電流閾値I
1CC_CV以下になると(S221のYes)、S223に進む。
図70(B)に、異常電流閾値I
battery及びCVモード移行電流閾値I
1CC_CVの一例を電池パック100Hの定格電圧ごとにまとめて示す。
【0217】
充電器側制御回路328は、定電圧制御(CV制御)の場合(S211の「CV」)、又は定電流制御において充電器側コイル電流I1が切替閾値としてのCVモード移行電流閾値I1CC_CV以下になった場合(S221のYes)、DC/DC変換回路318の出力電圧V0の目標値をVstartとし(S223)、定電圧制御(CV制御)を実行する。充電器側制御回路328は、充電器側コイル電流I1が異常電流閾値Ibattery以下であれば(S225のYes)、次の処理に進む。
【0218】
充電器側制御回路328は、S213又はS225において充電器側コイル電流I1が異常電流閾値Ibattery以下でない場合(S213のNo又はS225のNo)、コイル位置ずれ検知(S103)の処理に戻る。
【0219】
図70(C)は、電池パック100H側における
図67(A)のCC/CVモード(S107)のフローチャートである。電池側制御回路180は、充電率(SOC:State Of Charge)が0.9以下の場合(S231のYes)、定電流充電(CC充電)と判断する(S233)。電池側制御回路180は、定電流充電(CC充電)の場合において充電率が0.9以上になった場合(S235のYes)、又はS231において充電率が0.9以下でない場合(S231のNo)、定電圧充電(CV充電)と判断し(S237)、次の処理に進む。
【0220】
図71(A)は、充電器300E側における
図67(A)の充電終了判断(S109)のフローチャートである。充電器側制御回路328は、負荷インピーダンスZ
Lを推定し(S241)、充電器側コイル電流I
1が1.8A以下又は負荷インピーダンスZ
Lが実質的に0Ωの場合(S243のYes)、充電制御を終了する(S245)。充電器側制御回路328は、充電器側コイル電流I
1が1.8A以下でなく、かつ負荷インピーダンスZ
Lが実質的に0Ωでない場合(S243のNo)、S241に戻る。
【0221】
図71(B)は、電池パック100H側における
図67(A)の充電終了判断(S109)のフローチャートである。電池側制御回路180は、電池側コイル電流I
2が充電終了電流(例えば1A)未満に低下し、又は二次電池セル171の正極、負極間の電圧V
2が充電終了電圧を超えると(S251のYes)、電池側Hブリッジ172をショートモードとする(S253)。充電終了電圧は、例えば、電池パック100Hの定格電圧が36Vの場合は41V、電池パック100Hの定格電圧が18Vの場合は20V、電池パック100Hの定格電圧が10.8Vの場合は11Vである。
【0222】
電池側制御回路180は、電池側コイル電流I2が実質的に0Aでない場合(S255のNo)、S253に戻る。電池側制御回路180は、電池側コイル電流I2が実質的に0Aの場合(S255のYes)、充電器300E側で充電制御が終了したと判断し、ショートモードを解除し(S257)、シャットダウンする(S259)。
【0223】
図72(A)は、二次電池セル171に流れる充電電流の時間変化の一例を示す簡易グラフである。充電器側制御回路328は、充電電流が小さい状態で電池パック100Hの定格電圧の判断やCC/CVモードの判別を行う。その後、定電流制御(CC制御)において、充電電流を段階的に高めていく。その後、定電圧制御(CV制御)では、二次電池セル171の正極、負極間の電圧V
2の上昇により、充電電流は0A付近まで低下する。
【0224】
図72(B)は、二次電池セル171に印加される充電電圧の時間変化の一例を示す簡易グラフである。充電電圧は時間の経過と共に上昇する。充電電流が大きいほど充電電圧の上昇率は高くなる。定電圧制御(CV制御)では、充電電流の低下に伴い、充電電圧の上昇が緩やかとなる。
【0225】
図72(C)~(E)は、定格電圧36V、18V、10.8Vの電池パック100H-1、100H-2、100H-3の各々の電圧と負荷インピーダンスの関係を示すグラフであって、推定値と理論値を併せて示すグラフである。これらのグラフに示すように、定格電圧の高い電池パックほど負荷インピーダンスが大きい。また、電圧が満充電電圧に近くなるまでは、電圧の上昇に伴い負荷インピーダンスが緩やかに上昇するが、電圧が満充電電圧に近くなると、電圧の上昇に伴い負荷インピーダンスが急低下する。
図70(A)のS221の判断、すなわち充電器側コイル電流I
1がCVモード移行電流閾値I
1CC_CV以下か否かの判断は、この負荷インピーダンスの急低下を検出したか否かの判断となる。電池パック100Hの負荷インピーダンスが急低下すると、電池側コイル電流I
2を目標範囲(例えば6A~8A)にするために必要な充電器側コイル電流I
1が低下してCVモード移行電流閾値I
1CC_CV以下となる。なお、電池パック100H-1、100H-2、100H-3の負荷インピーダンスの変動範囲は互いに重複しないため、定格電圧の誤判断のリスクは抑制される。
【0226】
本実施の形態は、下記の作用効果を奏する。
【0227】
(1) 電池側制御回路180は、充電電流を検出すると電池側Hブリッジ172をショートモードとし、電池側Hブリッジ172と電池側コイル173とを含む閉ループであって二次電池セル171を含まない閉ループ(第1電流経路に対応)を構成するよう電池側Hブリッジ172を制御するよう構成される。一方、充電器側制御回路328は、プレチャージにより電池パック100Hに一時的に充電電流を供給した後、電池側Hブリッジ172がショートモードの場合における充電器側コイル電流I
1及び充電器側Hブリッジ319の出力電圧V
1の検出値を利用して、
図66(C)中の結合係数kの推定式により電池側コイル173と充電器側コイル321の結合係数kを推定する。このため、充電器側制御回路328は、電池パック100Hの定格電圧によって異なる二次電池セル171のインピーダンスの影響を受けずに、精度良く結合係数kを推定できる。よって、充電制御の信頼性が高められる。
【0228】
(2) 充電器側制御回路328は、結合係数kに応じて電池側コイル173と充電器側コイル321の位置ずれが許容範囲内か否かを判断し、位置ずれが許容範囲内の場合は充電を許容し、位置ずれが許容範囲外の場合は充電を停止又は禁止するよう構成される。これにより、充電器側コイル321に過大な電流が流れたり、スイッチング素子S1~S4や充電器側キャパシタ320等の素子に過大な電圧が加わったりすることを抑制でき、高耐圧の部品を選定する必要がなく、低コスト化及び小型化に有利である。また、伝送効率が低い状態での充電が抑制され、省電力化が図れる。
【0229】
(3) 充電器側制御回路328は、充電電流を検出して電池側Hブリッジ172をショートモードとした後、電池側Hブリッジ172をチャージモードとし、電池側Hブリッジ172と電池側コイル173と二次電池セル171とを含む閉ループ(第2電流経路に対応)を構成するよう電池側Hブリッジ172を制御するよう構成される。チャージモードでは電池側Hブリッジ172は全波整流回路として機能するため、結合係数kの推定の後、充電器300Eから二次電池セル171に適切に充電が可能となる。
【0230】
(4) 電池側Hブリッジ172は、電池側制御回路180の制御により、送電時にはインバータ動作を行い、充電時にはアクティブ整流動作を行う。インバータ動作では、電池側コイル173から電気機器本体2に送電させることができる。アクティブ整流動作では、充電器300Eからの充電を可能とする整流機能(チャージモード)と、充電器300Eから見て短絡状態となる短絡機能(ショートモード)とが電池側制御回路180によって切り替えられる。ショートモードでは充電器300E側において高精度の結合係数kの推定が可能となり、チャージモードでは充電器300Eから二次電池セル171への充電が可能となる。電池パック100Hは、単一の電池側Hブリッジ172がインバータ動作とアクティブ整流動作を行う構成のため、部品点数を減らすことができ、低コスト化及び小型化に有利である。
【0231】
(5) 充電器側制御回路328は、電池側Hブリッジ172がチャージモードの場合における電池パック100Hの負荷インピーダンスZ
Lを、
図66(C)中の負荷インピーダンスZ
Lの推定式により推定し、負荷インピーダンスZ
Lの推定値に基づいて電池パック100Hの種類(定格電圧)を判別するよう構成される。よって、充電器側制御回路328は電池パック100Hの種類判別のために電池パック100Hと通信する必要がないため、部品点数を減らすことができ、低コスト化及び小型化に有利である。また、充電対象の電池パックの定格電圧に応じた適切な充電制御が可能となる。すなわち、単一の充電器300Eで定格電圧36V、18V、10.8Vの電池パック100H-1、100H-2、100H-3の充電が可能となり、利便性が高い。
【0232】
(6) 充電器側制御回路328は、定電流制御(CC制御)において電池側コイル電流I
2を所定範囲内に制御する際に、電池側コイル電流I
2を
図66(C)中の電池側コイル電流I
2の推定式により推定する。よって、充電器側制御回路328は電池側コイル電流I
2の取得のために電池パック100Hと通信する必要がないため、部品点数を減らすことができ、低コスト化及び小型化に有利である。
【0233】
(7) 充電器側制御回路328は、スイッチング素子331のオンオフ制御(PWM制御)により充電器側Hブリッジ319への入力電圧を可変とする制御(間接制御)により、定電流制御(CC制御)において電池側コイル電流I2を所定範囲内に制御する。このため、充電器側コイル電流I1及び電池側コイル電流I2の双方を、それぞれ充電器側コイル321及び電池側コイル173が過熱しない電流値以内に制御でき、充電器側コイル321及び電池側コイル173の過熱を抑制できる。また、間接制御では充電器側Hブリッジ319のスイッチング素子S1~S4をデューティ100%で制御するため、充電器側Hブリッジ319の出力波形のひずみを抑制し、伝送効率の低下を抑制できる。
【0234】
(実施の形態14)
図73(A)は、本発明の実施の形態14に係るシステムの概念図であり、充電器側キャパシタ320としてキャパシタC
a1、C
a2、C
a3のいずれかを選択して接続可能とした場合のシステムの概念図である。
図73(B)は、充電対象の電池パックの定格電圧と最適負荷Z、共振周波数f、キャパシタンスCの関係をまとめた表である。以下、実施の形態13との相違点を中心に説明する。
【0235】
本実施の形態は、充電対象の電池パックの定格電圧により異なる最適負荷Zに応じた共振周波数fを実現するために、充電器側のキャパシタ320としてキャパシタC
a1、C
a2、C
a3のいずれかを選択して接続可能とするものである。キャパシタC
a1、C
a2、C
a3は、特性変更素子の例示である。なお、特性変更素子は、充電器側キャパシタ320及び充電器側コイル321を含む共振回路に負荷する抵抗(図示省略)であってもよい。また、
図73(A)に示すようにいずれかのキャパシタを選択して接続する方式ではなく、共振キャパシタンスの値を満たすことができれば、複数のキャパシタを組み合せて(並列接続させて)もよい。容量の大きいキャパシタは体積が大きいので並列接続することで小型化を図ることができる。
図73(B)の表に対応し、C
a1は0.44~0.53μF、C
a2は3.3~4.2μF、C
a3は5.4~7.2μFとする。容量選択スイッチ338は、充電器側Hブリッジ319の出力側にキャパシタC
a1、C
a2、C
a3のいずれを接続するかを切り替える。充電器側制御回路328は、容量選択スイッチ338の制御により、キャパシタC
a1、C
a2、C
a3のうち充電対象の電池パックの定格電圧に適したものを充電器側Hブリッジ319の出力側に接続するよう構成される。
【0236】
図74は、
図73のシステムの充電器側における電池パック判別及びCC/CV判別のフローチャートであって、
図69との共通部分を適宜省略したフローチャートである。
【0237】
充電器側制御回路328は、電池パック100Hの定格電圧を36Vと判断すると(S171)、充電器側Hブリッジ319を停止し(S172a)、充電器側Hブリッジ319の出力側にキャパシタC
a1を接続し(S172b)、駆動周波数f
a1(例えば46~50.5kHz)で充電器側Hブリッジ319を駆動し(S172c)、
図69のS173に進む。
【0238】
充電器側制御回路328は、電池パック100Hの定格電圧を18Vと判断すると(S181)、充電器側Hブリッジ319を停止し(S182a)、充電器側Hブリッジ319の出力側にキャパシタC
a2を接続し(S182b)、駆動周波数f
a2(例えば16.5~18.5kHz)で充電器側Hブリッジ319を駆動し(S182c)、
図69のS183に進む。
【0239】
充電器側制御回路328は、電池パック100Hの定格電圧を10.8Vと判断すると(S191)、充電器側Hブリッジ319を停止し(S192a)、充電器側Hブリッジ319の出力側にキャパシタC
a3を接続し(S192b)、駆動周波数f
a3(例えば12.5~14.5kHz)で充電器側Hブリッジ319を駆動し(S192c)、
図69のS193に進む。
【0240】
S172c、S182c、S192c以降の充電器側コイル電流I1や電池側コイル電流I2、負荷インピーダンスZLの閾値は、それぞれ実施の形態13と異なる値としてもよい。
【0241】
本実施の形態によれば、キャパシタCa1、Ca2、Ca3のうち充電対象の電池パックの定格電圧に適したものを充電器側Hブリッジ319の出力側に接続するため、充電対象の電池パックの定格電圧に応じた最適負荷、共振周波数にすることができ、充電効率が高められる。
【0242】
以上、実施の形態を例に本発明を説明したが、実施の形態の各構成要素や各処理プロセスには請求項に記載の範囲で種々の変形が可能であることは当業者に理解されるところである。以下、変形例について触れる。
【0243】
実施の形態8で具体的な数値として例示したデッドタイムやHブリッジ161の駆動周波数、入力電流Iin、一次側電流I1、二次側電流Iout、二次側出力電圧Vout、Hブリッジ161をオフする待機時間等は、発明の範囲を何ら限定するものではなく、要求される仕様に合わせて任意に変更できる。モータ3は、ブラシ付きモータとしてもよい。この場合、インバータ回路55は不要である。Hブリッジ161は、ハーフブリッジ等の他の回路方式に置換してもよい。
【0244】
実施の形態13、14で具体的な数値として例示した種々の電流、電圧、容量、結合係数、インピーダンス、時間、周波数、充電率等は、発明の範囲を何ら限定するものではなく、要求される仕様に合わせて任意に変更できる。
【符号の説明】
【0245】
1、1A~1C、1E~1G…電気機器、2…電気機器本体、3…モータ(負荷部)、3a…モータ軸、4…減速機構、5…スピンドル、6…トリガスイッチ、8…ハンマ、9…スプリング、10…アンビル、11…ハンマケース、13…正逆切替ボタン、15…センサ・インバータ基板、20…ハウジング、21…モータ収容部(胴体部)、22…ハンドル部、23、23A~…電池パック装着部、24…操作パネル、25…制御基板、26、26A…レール部、27…凹部、27A…切欠部、27B…ラッチ凹部、28…機器側コイル、29…係止片部、30…電池装着凸部、31…ロック穴部、32…大径部、35…電池装着穴部、36…大径部、37…係止部、40…電池装着凸部、41…引っ掛け部、51…全波整流平滑回路、52…受電回路、53…キャパシタ、54…制御部、55…インバータ回路、56…ダイオードブリッジ、59…磁石、100、100A~100G…電池パック、101…下ケース、102…上ケース、103、103A…ラッチ部材、104…ラッチ操作部、105…ラッチ爪部、105A…ラッチ係合部、106、106B…ラッチユニット、107…ラッチケース、108…溝部、109、110…コイル支持部、111…凸条部、112…ラッチ蓋、112A…ラッチ蓋部、113…凸条部、114…ゴム、115…二次電池セル、116…セパレータ、117…制御基板、118…電池側コイル、119…コイル支持部、120、120A…レール部、121…切欠部、121A…ラッチ収容部、122…凸状部、124…円筒部、125…係止凸部、127…ギヤ、128…ラック部、129…ラッチ部材、130…ラッチ操作部、131…ラック部、132…付勢部材、133…ラッチケース、134、135…ラッチ保持部、136、137…貫通孔、138…電源スイッチ、139…ロックパネル(係止部材)、140…バネ、141…ロック操作部、142…ロックパネルシャフト、143…ロック凸部、144…本体装着穴部、145…大径部、146…シールド材、147…放熱板、148…パネル収容部、150…本体装着凸部、151…大径部、152…係止穴部、154…スライドロックパネル(係止部材)、155…スライド操作部、156…枠状部、157…爪部、158…バネ部、160…送電回路、160A…受電回路、161…Hブリッジ(電池側スイッチ部)、162…キャパシタ、163…残量表示部、164…制御部、165、166…電流検出部、168…ホールIC、171…二次電池セル(電池部)、172…電池側Hブリッジ、173…電池側コイル、174…電池側キャパシタ、175…電流検出部、176…残量表示部、177…キャパシタ、178…電圧検出部、179…電源スイッチ、180…電池側制御回路、181…実効値検出回路、201…下ケース、202…左ケース、203…右ケース、204…上ケース、205…開口部、300A~300C…充電器、301…1次コイル(機器側コイル)、302…充電スイッチ、303…レール、305、307…充電スイッチ、310…送電回路、311…ACコンバータ、312…1次キャパシタ、313…制御部、314…充電スイッチ、315…充電表示部、316…交流電源、317…全波整流平滑回路(AC/DC変換回路)、318…DC/DC変換回路、319…充電器側Hブリッジ、320…充電器側キャパシタ、321…充電器側コイル、322…電流検出部、323…電圧検出部、324…実効値検出回路、325…位相差検出回路、326…充電スイッチ、327…充電表示LED、328…充電器側制御回路、329…ダイオードブリッジ、330…キャパシタ、331…スイッチング素子、332…トランス、333、334…ダイオード、335…コイル、336…キャパシタ、337…電圧検出部、338…容量選択スイッチ。