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特開2023-109730デッキプレート固定方法及びデッキプレート固定装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023109730
(43)【公開日】2023-08-08
(54)【発明の名称】デッキプレート固定方法及びデッキプレート固定装置
(51)【国際特許分類】
   E04B 5/40 20060101AFI20230801BHJP
   E04C 5/06 20060101ALI20230801BHJP
   E04G 21/16 20060101ALI20230801BHJP
   E04G 21/12 20060101ALI20230801BHJP
【FI】
E04B5/40 E
E04C5/06
E04G21/16
E04G21/12 105D
E04B5/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010352
(22)【出願日】2023-01-26
(31)【優先権主張番号】P 2022011169
(32)【優先日】2022-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】500337266
【氏名又は名称】株式会社富士昭技研
(71)【出願人】
【識別番号】000110789
【氏名又は名称】日本パワーファスニング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 文太
(72)【発明者】
【氏名】野崎 精華
(72)【発明者】
【氏名】新田 泰生
(72)【発明者】
【氏名】飯島 孝幸
【テーマコード(参考)】
2E164
2E174
【Fターム(参考)】
2E164BA02
2E164BA12
2E164BA22
2E164BA42
2E174AA01
2E174BA01
2E174DA17
2E174DA34
2E174DA63
(57)【要約】
【課題】高所での溶接作業をなくし、デッキプレートを梁上に安全にかつ効率的に固定できるデッキプレート固定装置を提供する。
【解決手段】デッキプレート固定装置2は、L形の端部材11を備えるデッキプレート1の端部を梁9上に固定するための装置であって、固定金具3と鋲7とを含む。固定金具3は、一端部に端部材11の水平部11bを係止することが可能な係止部4、他端部に鋲7が打たれる鋲打ち部5を有している。固定金具3は、デッキプレート1の端部が梁9上に載せられ、端部材11の水平部11bが梁9上へ突出するとき、端部材11の水平部11bを係止部4により係止した状態で鋲打ち部5を梁9上に位置決め可能である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
L形の端部材を備えるデッキプレートの端部を梁上に固定するための方法であって、
前記デッキプレートの端部を梁上に載せ、前記端部材の水平部を梁上へ突出させる工程と、
前記端部材を係止することが可能な係止部と、鋲が打たれる鋲打ち部とを有する固定金具を用い、前記端部材を前記係止部により係止した状態で前記鋲打ち部を梁上に位置決めする工程と、
前記鋲打ち部に鋲を打って前記固定金具を梁の上面に固着することにより前記デッキプレートの端部を梁上に固定する工程と、
を順次実施してデッキプレートを固定するデッキプレート固定方法。
【請求項2】
L形の端部材を備えるデッキプレートの端部を梁上に固定するための装置であって、
固定金具と鋲とを含み、
前記固定金具は、前記端部材の水平部を係止することが可能な係止部と、鋲が打たれる鋲打ち部とを有しており、
前記固定金具は、前記デッキプレートの端部が梁上に載せられ、前記端部材の水平部が梁上へ突出するとき、前記端部材の水平部を前記係止部により係止した状態で前記鋲打ち部を梁上に位置決め可能であるデッキプレート固定装置。
【請求項3】
前記固定金具は、互いに直角をなす水平板部と垂直板部とを含み、前記垂直板部には前記係止部が設けられ、前記水平板部には前記鋲打ち部が設けられる請求項2に記載のデッキプレート固定装置。
【請求項4】
前記鋲打ち部は、鋲打ち機のヘッド部が位置決めされる凹面部と、前記凹面部の中心位置に設けられる鋲打ち孔とを含む請求項2又は3に記載のデッキプレート固定装置。
【請求項5】
前記係止部は、前記端部材の水平部の上面に所定の長さにわたって接する上板部と、前記端部材の水平部の両側面に所定の長さにわたって接する側板部とを一体に備える請求項2又は3に記載のデッキプレート固定装置。
【請求項6】
前記係止部は、前記端部材の水平部の外周面に周縁部が一周にわたって接する篏合孔を含む請求項2又は3に記載のデッキプレート固定装置。
【請求項7】
前記係止部は、前記端部材の水平部の外周面に周縁部が半周にわたって接する篏合孔を含む請求項2又は3に記載のデッキプレート固定装置。
【請求項8】
前記篏合孔は、前記水平板部が所定の幅及び長さにわたって切り起されて形成される開口部と連通しており、前記開口部の開口端縁に、切り起されて形成される当たり片が起立する請求項7に記載のデッキプレート固定装置。
【請求項9】
前記水平板部は、幅が前記垂直板部の幅よりも長く設定され、幅方向の両側の位置に前記鋲打ち部を設けることが可能になっている請求項3に記載のデッキプレート固定装置。
【請求項10】
前記固定金具は、
帯板状をなし、一端部に前記係止部、他端部に前記鋲打ち部を有しており、
前記係止部は、端部において起立し前記端部材の垂直部に沿う起立板部と、
側縁が切り欠かれて形成された篏合孔とを含む、
請求項2に記載のデッキプレート固定装置。
【請求項11】
前記鋲打ち部は、前記係止部に対して両側へ延びる帯板部の両側位置に設けられる請求項2に記載のデッキプレート固定装置。
【請求項12】
L形の端部材を備えるデッキプレートの端部を上面に段差のある梁上に固定するための装置であって、
固定金具と鋲とを含み、
前記固定金具は、一端部側に前記端部材の垂直部を係止することが可能な係止部、他端部側に鋲が打たれる鋲打ち部を有しており、
前記固定金具は、前記デッキプレートの端部が梁上の段差の低位置に載せられたとき、前記端部材の垂直部を前記係止部で係止した状態で前記鋲打ち部を梁の上面の段差の高位置に位置決め可能であるデッキプレート固定装置。
【請求項13】
前記固定金具は、帯板状をなし、前記係止部は、側縁が切り欠かれて形成された篏合孔を含む請求項12に記載のデッキプレート固定装置。
【請求項14】
基板と、鉄筋トラスと、前記基板上に長さ方向に沿って所定の間隔で配置され前記鉄筋トラスを吊持する複数の吊り材とを有する鉄筋トラス付きデッキプレートを梁上に固定するための装置であって、
固定金具と鋲とを含み、
前記固定金具は、一端部側に前記吊り材を係止することが可能な係止部、他端部側に鋲が打たれる鋲打ち部を有しており、
前記固定金具は、前記デッキプレートの幅方向の端部が梁上に載せられたとき、前記吊り材を前記係止部により係止した状態で前記鋲打ち部を梁上に位置決め可能であるデッキプレート固定装置。
【請求項15】
デッキプレートの端部を梁上に固定するための装置であって、
固定金具と鋲とを含み、
前記固定金具は、一端部側に前記デッキプレートの基板を押さえることが可能な押さえ部、他端部側に鋲が打たれる鋲打ち部を有しており、
前記固定金具は、前記デッキプレートの端部が梁上に載せられたとき、前記基板を前記押さえ部により上から押え付けた状態で前記鋲打ち部を梁上に位置決め可能であるデッキプレート固定装置。
【請求項16】
L形の端部材を備えるデッキプレートを幅方向に複数並設し、前記端部材の水平部同士を幅方向に延びた連結棒材で連結した複数の前記デッキプレートを梁上に固定するための装置であって、
固定金具と鋲とを含み、
前記固定金具は、一端部側に前記連結棒材を保持することが可能な保持部、他端部側に鋲が打たれる鋲打ち部を有しており、
前記固定金具は、前記デッキプレートの端部が梁上に載せられたとき、前記連結棒材を前記保持部により保持した状態で前記鋲打ち部を梁上に位置決め可能であるデッキプレート固定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、L形の端部材を備えるデッキプレートの端部を、例えばプレキャストコンクリート梁(以下「PCa梁」という。)上に固定するのに用いられる方法及び装置に関するもので、この発明は特に、複数枚の鉄筋トラス付きデッキプレートを、基板が幅方向に連なるようにして、両端部をPCa梁上や鉄骨梁上にそれぞれ載置して固定するためのデッキプレート固定方法及びデッキプレート固定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄骨造や鉄筋コンクリート造の建造物の各階の床を施工するのに、デッキプレートを用いた工法が実施されている。この工法は、例えば、梁上に複数枚のデッキプレートを横並びに敷設し、その上に配筋を施した後、デッキプレート上にコンクリートを打設して鉄筋コンクリート床構造体を構築するものである。
【0003】
上記した工程中に、デッキプレート上で作業者が歩行したり作業を行ったりすることによりデッキプレートに水平方向の力が作用したり、風によりデッキプレートに上向きの力が作用したりすると、デッキプレートが当初の位置から移動するおそれがある。この移動を防止するには、各デッキプレートの両端部を梁に固定する必要がある。
【0004】
例えば、鉄筋トラス付きデッキプレートは、基板の両端部に、棒鋼を直角に曲げて形成されたL形の端部材が設けられている。この端部材は、鉄筋トラスを基板の端部位置で支持するためのもので、基板の両端部を梁上に載置された状態のとき、ほぼ垂直なす部分(以下「垂直部」という。)とほぼ水平をなす部分(以下「水平部」という。)とを有する。垂直部は鉄筋トラスの鉄筋に溶接により固着され、水平部は先端部が基板の端縁より梁上に所定の長さだけ突き出る。
【0005】
梁が鉄骨梁の場合は、水平部の突出した部分が鉄骨梁のフランジにアーク溶接される。梁がPCa梁の場合、フック筋の一端がPCa梁のスターラップ等に引っ掛けられ、他端が端部材に溶接される(例えば、特許文献1の背景技術の欄参照)。これにより、鉄筋トラス付きデッキプレートの両方の端部が梁に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2021-165472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記した固定方法では、高所で溶接作業を行う必要があり、溶接に伴う火の粉が落下して階下の作業員が火傷したり、可燃物の引火を招いたり、隣家や公道へ火の粉が落下したりして、第三者を火災や事故に巻き込むおそれがある。また、溶接機は電源を必要とし、その電源からキャップタイヤを引いてくるなどの段取りが必要となる。大規模倉庫のような工事では、電源に発電機を使用することがあり、この場合、給油が必要であり、燃料コストが高くつき、環境問題も生じる。また、クレーンで発電機を作業現場付近まで移動させる手間がかかり、作業者の身体が燃料で汚染された場合、高所で清掃作業を行うことのリスクを伴う。
【0008】
この発明は、上記の問題に着目してなされたもので、高所での溶接作業をなくし、デッキプレートを梁上に安全にかつ効率的に固定できるデッキプレート固定方法及びデッキプレート固定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明によるデッキプレート固定方法は、L形の端部材を備えるデッキプレートの端部を梁上に固定するための方法であって、デッキプレートの端部を梁上に載せ、端部材の水平部を梁上へ突出させる工程と、端部材を係止することが可能な係止部と、鋲が打たれる鋲打ち部とを有する固定金具を用い、端部材を係止部により係止した状態で鋲打ち部を梁上に位置決めする工程と、鋲打ち部に鋲を打って固定金具を梁の上面に固着することによりデッキプレートの端部を梁上に固定する工程とを順次実施してデッキプレートを固定するものである。
【0010】
この発明によるデッキプレート固定装置は、L形の端部材を備えるデッキプレートの端部を梁上に固定するための装置であって、固定金具と鋲とを含む。固定金具は、端部材の水平部を係止することが可能な係止部と、鋲が打たれる鋲打ち部とを有する。固定金具は、デッキプレートの端部が梁上に載せられ、端部材の水平部が梁上へ突出するとき、端部材の水平部を係止部により係止した状態で鋲打ち部を梁上に位置決め可能である。
【0011】
上記した構成のデッキプレート固定装置によりデッキプレートを梁上に固定するには、複数枚のデッキプレートを、基板が幅方向に連なるようにして、各基板の両端部を平行な梁上にそれぞれ載置した後、デッキプレート毎に、端部材の基板より突き出る部分を固定金具の係止部により係止した状態で鋲打ち部を梁上に位置決めする。次に、鋲打ち機を用いて鋲打ち部に鋲を打って固定金具を梁の上面に固着する。各端部材は、基板より突き出る部分が固定金具により梁上に保持され、固定金具の鋲打ち部が梁の上面に鋲により固着されるので、デッキプレート固定装置により端部材が梁上にしっかり固定され、各デッキプレートは梁上に固定される。
したがって、デッキプレート上で作業者が歩行したり作業を行ったりしてデッキプレートに水平方向の力が作用したり、デッキプレートに風による吹上力が作用したりして、それらの力が鋲打ち部分に引張力及び剪断力として作用しても、鋲打ち部分が断絶するおそれがなく、デッキプレートが当初の位置から移動するおそれがない。
【0012】
好ましい実施形態においては、固定金具は、互いに直角をなす水平板部と垂直板部とを含む。垂直板部には係止部が設けられ、水平板部には鋲打ち部が設けられる。
【0013】
鋲打ち部は、好ましくは、鋲打ち機のヘッド部が位置決めされる凹面部と、凹面部の中心位置に設けられる鋲打ち孔とを含む。
【0014】
係止部は種々の態様のものが考えられ、1の態様の係止部は、端部材の水平部の上面に所定の長さにわたって接する上板部と、端部材の水平部の両側面に所定の長さにわたって接する側板部とを一体に備える。
【0015】
この実施態様においては、係止部は両側の側板部の下端が開放されているので、固定金具を端部材の上方位置から下方へ移動させることで、固定金具の側板部と上板部とで囲まれる空間に端部材の水平部が入り込んで篏合し、係止部が端部材の水平部を係止する。
【0016】
他の態様の係止部は、端部材の水平部の外周面に周縁部が一周にわたって接する篏合孔を含むものである。なお、篏合孔は、端部材の水平部の外周面に周縁部が半周にわたって接するものであってもよい。
【0017】
これらの実施態様では、固定金具を端部材の先端側の位置から端部材に向けて移動させることで、固定金具の係止部の篏合孔に端部材の先端部が挿入されて篏合し、係止部は端部材の水平部を係止する。
【0018】
好ましい態様の篏合孔は、水平板部が所定の幅及び長さにわたって切り起されて形成される開口部と連通しており、開口部の開口端縁に、切り起されて形成される当たり片が起立する。
【0019】
この実施態様では、係止部は開口部を有するので、固定金具を端部材の上方から下方へ移動させることで、固定金具の係止部の開口部より篏合孔へ端部材の水平部が入り込んで篏合するとともに、当たり片に端部材の先端が当たり、係止部は端部材の水平部を係止する。
【0020】
好ましい態様の水平板部は、幅が垂直板部の幅よりも長く設定され、幅方向の両側の位置に鋲打ち部を設けることが可能になっている。
【0021】
この実施態様では、水平板部の幅は垂直板部の幅よりも長いため、水平板部に鋲を打つ際、端部材の水平部を避けた位置に鋲を打つことができる。このため、鋲打ち機のヘッド部が端部材に干渉しにくくなり、作業性の低下を軽減できる。
【0022】
好ましい態様の固定金具は、帯板状をなし、一端部に係止部、他端部に鋲打ち部を有している。係止部は、端部において起立し端部材の垂直部に沿う起立板部と、側縁が切り欠かれて形成された篏合孔とを含む。
【0023】
この実施態様では、固定金具を端部材の垂直部の側方位置から端部材に向けて移動させることで、固定金具の係止部の篏合孔に端部材と基板との接合部分が入り込み、係止部は端部材を係止する。このとき、起立板部が垂直部に沿うため、端部材に対して固定金具を位置決めした状態で、鋲を打つことができる。
【0024】
この発明による他のデッキプレート固定装置は、鋲打ち部は、係止部に対して両側へ延びる帯板部の両側位置に設けられる。
【0025】
この態様では、係止部の両側で鋲を打つことができるため、鋲打ち部が他の部材に干渉することを軽減できる。
【0026】
この発明による他のデッキプレート固定装置は、L形の端部材を備えるデッキプレートの端部を上面に段差のある梁上に固定するための装置であって、固定金具と鋲とを含む。固定金具は、一端部側に端部材の垂直部を係止することが可能な係止部、他端部側に鋲が打たれる鋲打ち部を有する。固定金具は、デッキプレートの端部が梁上の段差の低位置に載せられたとき、端部材の垂直部を係止部で係止した状態で鋲打ち部を梁上の段差の高位置に位置決め可能である。
【0027】
上記した構成のデッキプレート固定装置によりデッキプレートを上面に段差のある梁上に固定するには、複数枚のデッキプレートを、基板が幅方向に連なるようにして、各基板の両端部を平行な梁の上面の段差の低位置にそれぞれ載置した後、デッキプレート毎に、端部材の垂直部を固定金具の係止部により係止した状態で鋲打ち部を梁上の段差の高位置に位置決めする。次に、鋲打ち機により鋲打ち部に鋲を打って固定金具を梁上の段差の高位置に固着する。各端部材は、固定金具により保持され、固定金具の鋲打ち部が梁上の段差の高位置に鋲により固着されるので、端部材がデッキプレート固定装置によりしっかり固定され、各デッキプレートは梁上に固定される。
【0028】
このデッキプレート固定装置の好ましい実施態様においては、固定金具は、帯板状をなし、係止部は、側縁が切り欠かれて形成された篏合孔を含む。
【0029】
この実施態様では、固定金具を端部材の垂直部の側方位置から端部材に向けて移動させることで、固定金具の係止部の篏合孔に端部材の垂直部が入り込んで篏合し、係止部は端部材の垂直部を係止する。
【0030】
この発明による他のデッキプレート固定装置は、基板と、鉄筋トラスと、基板上に長さ方向に沿って所定の間隔で配置され鉄筋トラスを吊持する複数の吊り材とを有する鉄筋トラス付きデッキプレートを梁上に固定するための装置であって、固定金具と鋲とを含む。固定金具は、一端部側に吊り材を係止することが可能な係止部、他端部側に鋲が打たれる鋲打ち部を有する。固定金具は、デッキプレートの幅方向の端部が梁上に載せられたとき、吊り材を係止部により係止した状態で鋲打ち部を梁上に位置決め可能である。
【0031】
上記した構成のデッキプレート固定装置によりデッキプレートを梁上に固定するには、複数枚のデッキプレートを、基板が幅方向に連なるようにして、各基板の両端部を平行な梁上にそれぞれ載置した後、幅方向の両端部のデッキプレートにおける吊り材の少なくとも1つを固定金具の係止部により係止した状態で鋲打ち部を梁上に位置決めする。次に、鋲打ち機を用いて鋲打ち部に鋲を打って固定金具を梁の上面に固着する。吊り材は、固定金具により梁上に保持され、固定金具の鋲打ち部が梁の上面に鋲により固着されるので、デッキプレート固定装置により梁上にしっかり固定され、各デッキプレートは梁上に固定される。
【0032】
この発明による他のデッキプレート固定装置は、デッキプレートの端部を梁上に固定するための装置であって、固定金具と鋲とを含む。固定金具は、一端部側にデッキプレートの基板を押さえ付けることが可能な押さえ部、他端部側に鋲が打たれる鋲打ち部を有している。固定金具は、デッキプレートの端部が梁上に載せられたとき、基板を押さえ部により上から押え付けた状態で鋲打ち部を梁上に位置決め可能である。
【0033】
上記した構成のデッキプレート固定装置によりデッキプレートを梁上に固定するには、複数枚のデッキプレートを、基板が幅方向に連なるようにして、各基板の両端部を平行な梁上にそれぞれ載置した後、デッキプレート毎に、基板を固定金具の押さえ部により押さえ付けた状態で鋲打ち部を梁上に位置決めする。次に、鋲打ち機を用いて鋲打ち部に鋲を打って固定金具を梁の上面に固着する。基板が固定金具により梁上に保持され、固定金具の鋲打ち部が梁の上面に鋲により固着されるので、デッキプレート固定装置により基板が梁上にしっかり固定され、各デッキプレートは梁上に固定される。
【0034】
この発明による他のデッキプレート固定装置は、L形の端部材を備えるデッキプレートを幅方向に複数並設し、端部材の水平部同士を幅方向に延びた連結棒材で連結した複数のデッキプレートを梁上に固定するための装置であって、固定金具と鋲とを含む。固定金具は、一端部側に連結棒材を保持することが可能な保持部、他端部側に鋲が打たれる鋲打ち部を有している。固定金具は、デッキプレートの端部が梁上に載せられたとき、連結棒材を保持部により保持した状態で鋲打ち部を梁上に位置決め可能である。
【0035】
上記した構成のデッキプレート固定装置によりデッキプレートを梁上に固定するには、複数枚のデッキプレートを、基板が幅方向に連なるようにして、各基板の両端部を平行な梁上にそれぞれ載置し、端部材の水平部同士を連結棒材で連結し、連結棒材を固定金具の係止部により係止した状態で鋲打ち部を梁上に位置決めする。次に、鋲打ち機を用いて鋲打ち部に鋲を打って固定金具を梁の上面に固着する。連結棒材が固定金具により梁上に保持され、固定金具の鋲打ち部が梁の上面に鋲により固着されるので、デッキプレート固定装置により端部材が梁上にしっかり固定され、各デッキプレートは梁上に固定される。
【発明の効果】
【0036】
この発明によれば、高所での溶接作業が必要でなく、デッキプレートを梁上に安全に、かつ効率的に固定できる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】複数枚のデッキプレートがデッキプレート固定装置により梁上に固定された状態を示す平面図である。
図2】デッキプレートの端部材がデッキプレート固定装置により梁上に固定された状態を示す側面図である。
図3】固定金具の一実施形態を示す斜視図である。
図4図3の固定金具の製作に用いる帯板材を示す平面図である。
図5】デッキプレートの端部材が図3の固定金具を用いたデッキプレート固定装置により梁上に固定された状態を示す側面図である。
図6図5のA-A線に沿う断面図である。
図7】固定金具の他の実施形態を示す斜視図である。
図8】固定金具の他の実施形態を示す斜視図である。
図9】固定金具の他の実施形態を示す斜視図である。
図10】固定金具の他の実施形態を示す斜視図である。
図11】固定金具の他の実施形態を示す斜視図である。
図12】(A)デッキプレートの端部材が図11の固定金具を用いたデッキプレート固定装置により梁上に固定された状態を示す側面図である。(B)図12(A)のB-B線に沿う断面図である。
図13】デッキプレートの端部材がデッキプレート固定装置により上面に段差のある梁上に固定された状態を示す側面図である。
図14図13に示すデッキプレート固定装置に用いられる固定金具の実施態様を示す斜視図である。
図15】固定金具の他の実施形態を示す斜視図である。
図16】(A)図15の固定金具を用いたデッキプレート固定装置により、水平部を係止することで梁上に固定された状態を示す側面図である。(B)図15の固定金具を用いたデッキプレート固定装置により、垂直部を係止することで梁上に固定された状態を示す側面図である。
図17図15の固定金具を用いたデッキプレート固定装置により、吊り材を係止することで梁上に固定された状態を示す斜視図である。
図18】固定金具の他の実施形態を示す斜視図である。
図19】デッキプレートの基板が図18の固定金具を用いたデッキプレート固定装置により梁上に固定された状態を示す側面図である。
図20】デッキプレートの連結棒材が図18の固定金具を用いたデッキプレート固定装置により梁上に固定された状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図1は、建造物の床施工階に複数枚のデッキプレート1を、基板10が幅方向に連なるようにして敷設された状態を示す。図中、91は大梁、92は小梁であり、以下の説明では、梁9と総称する。梁9は、プレキャスト梁(PCa梁)であるが、この発明はこれに限らず、鉄骨梁に対しても実施できる。図2に示すPCa梁の実施例では、梁9の平坦な上面にスターラップ93が突き出ている。なお、図2は、梁9の上面に、幅方向に連ねられた一の列(図中、左側の列)のデッキプレート1の一方の端部と、幅方向に連ねられた他の列(図中、右側の列)のデッキプレート1の反対側の端部とが、それぞれ固定された状態を示す。
【0039】
各デッキプレート1は、両方の端部が平行な梁9,9の上面に載置され、それぞれの端部がデッキプレート固定装置2によって梁9上に固定されている。なお、デッキプレート1の梁9上への乗せ掛け長さは30mm程度とする。
【0040】
図示例のデッキプレート1は、鉄筋トラス付きデッキプレートであり、溶融亜鉛メッキ鋼板よりなる基板10と、基板10上に一定の間隔(例えば150mm間隔)で並設された複数の鉄筋トラス12とを備える。
なお、以下の説明において、鉄筋トラス12が延びる方向を「長さ方向」、長さ方向と直交する方向を「幅方向」という。図1では、各デッキプレート1の鉄筋トラス12は二点鎖線で示してあり、基板10上に3列乃至4列の鉄筋トラス12を備える。
【0041】
基板10は、例えば、厚みが0.4mm、幅が600mm、長さが600~7000mmのものが用いられる。基板10上には、長さ方向に沿って所定の間隔で複数の吊り材16が平行に配設されている。吊り材16の下端部は、基板10の上面に沿って折れ曲がっており、基板10上に溶接されている。各吊り材16の頂部に各鉄筋トラス12の上端筋13がスポット溶接により固着され、これによって各鉄筋トラス12が基板10の上方位置に吊持される。
【0042】
鉄筋トラス12は、真っ直ぐな上端筋13と、上端筋13と平行に配置される真っ直ぐな下端筋14と、上端筋13と下端筋14との間に設けられる波形のラチス筋15とを含んでおり、平面視において長さ方向と直交して配置される複数の吊り材16によって支持される。
基板10の長さ方向の両方の端部には、鉄筋トラス12毎に、L形の端部材11がそれぞれ配設される。また、基板10の側縁(幅方向の端部の縁)には、図示していないが、隣のデッキプレートと繋ぐための継ぎ手部が一体に形成される。
【0043】
端部材11は、鉄筋トラス12を基板10の端部位置で支持するもので、断面形状が円形の棒鋼を直角(L形)に曲げて形成される。端部材11の垂直部11aは鉄筋トラス12の上端筋13及び下端筋14と直交し、上端筋13及び下端筋14との直交位置でスポット溶接されている。端部材11の水平部11bは基板10の上面にほぼ接した状態で長さ方向へ延び、先端部が基板10の端縁より梁9上に突き出る。基板10の端縁より突出した端部材11の水平部11bは、梁9上に載置され、デッキプレート固定装置2により梁9上に固定される。
【0044】
図1に示される例では、3本乃至4本の鉄筋トラス12のうち、両側位置の鉄筋トラス12の端部材11がデッキプレート固定装置2により固定されている。
デッキプレート固定装置2は、端部材11の基板10より突き出る部分を梁9上に固定するもので、端部材11を保持する固定金具3と、固定金具3を梁9の上面に固着する金属製の鋲7とで構成される。
なお、デッキプレート固定装置2は、全ての鉄筋トラス12の端部材11の各位置に設けてもよく、また、中央位置の鉄筋トラス12の端部材11の位置にのみ設けてもよい。
【0045】
図3は、固定金具3の一実施形態を示す。図3に示される固定金具3は、端部材11の水平部11b上に被さるようにして設置される。固定金具3は、一端部側に端部材11の水平部11bを係止することが可能な係止部4、他端部側に鋲7が打たれる鋲打ち部5を有するもので、図4に示す矩形状の帯板材6を曲げ加工して形成されている。帯板材6は、厚みが1.6mm程度の溶融亜鉛メッキ鋼板よりなり、図4において、実線で示した切込線65a,66aに沿って切断し、破線で示した折曲線61a~64aに沿って直角に折り曲げることにより固定金具3が形成される。
【0046】
固定金具3は、互いに直角をなす水平板部31と垂直板部32とからなり、折曲線61aに沿って直角に谷折りすることで、水平板部31及び垂直板部32が形成される。垂直板部32には係止部4が一体に設けられるもので、折曲線62aに沿って直角に山折りし、折曲線63a,64aに沿って直角に山折りすることで、係止部4が形成される。
【0047】
係止部4は、図5及び図6に示すように、端部材11の水平部11b上に被さる上板部40及び左右両側の側板部41,42を一体に備えている。上板部40の幅d1は、側板部41,42の内面間の対向距離tが端部材11の水平部11bの直径rにほぼ一致するように設定される。側板部41,42の幅d2は、各側板部41,42の下端が端部材11の水平部11bの中心Oより低い位置に達するように設定される。これにより、上板部40の内面が端部材11の水平部11bの上面に係止部4の長さにわたって線接触し、側板部41,42の内面が端部材11の水平部11bの両側面に係止部4の長さにわたって線接触する。
【0048】
固定金具3は、デッキプレート1の端部が梁9上に載せられ、端部材11の水平部11bが梁9上へ突出するとき、端部材11の水平部11bを係止部4により係止した状態で鋲打ち部5が梁9の上面に面接触する状態で梁9上に位置決めされる。
【0049】
鋲打ち部5は、水平板部31にプレス加工及び穿孔加工を施すことにより形成されるもので、リング形状をなす凸面部50の内側に、鋲打ち機のヘッド部を位置合わせすることが可能な凹面部51と、凹面部51の中心位置に鋲7が打ち込まれる鋲打ち孔52とが設けられたものである。なお、図5において、71は鋲7の頭部の下側に嵌まる合成樹脂製の座金である。
【0050】
固定金具3の係止部4は、上記した実施形態のものに限らず、図7図9に示す実施形態のものであってもよい。
いずれの実施形態の固定金具3も、溶融亜鉛メッキ鋼板により製作され、互いに直角をなす水平板部31と垂直板部32とを有している。垂直板部32には異なる態様の係止部4が設けられ、水平板部31には図3に示した実施形態と同じ態様の鋲打ち部5が設けられている。
【0051】
図7に示す実施形態の係止部4は、端部材11の水平部11bの外周面に周縁部が一周にわたって接する嵌合孔43を含む。この嵌合孔43は、端部材11の断面形状と同じ円形であり、その円の直径Rは端部材11の直径rとほぼ一致させてある。係止部4の嵌合孔43に端部材11の水平部11bを挿入して嵌合させることで、端部材11は係止部4により係止される。
【0052】
図8に示す実施形態の係止部4は、端部材11の水平部11bの外周面に周縁部が半周にわたって接する篏合孔43を含む。この篏合孔43の上半分は半円形であり、その半円の直径Rは端部材11の直径rとほぼ一致させている。篏合孔43の下半分は矩形であり、その矩形の横幅L2は端部材11の直径rとほぼ一致し、縦幅L1は端部材11の直径rの半分の値に設定されている。係止部4の篏合孔43に端部材11の水平部11bを挿入して篏合させることで、端部材11は係止部4により係止される。
【0053】
図9に示す実施態様の係止部4は、図8に示す実施態様と同じ形態の篏合孔43を含んでいる。篏合孔43は、水平板部31を所定の幅(図示例では直径Rと一致する幅)及び所定の長さにわたって切り起こすことにより形成された矩形状の開口部44と連通している。切り起しにより形成された当たり片45は、水平板部31と直角をなし、開口部44の開口端縁に起立している。係止部4の篏合孔43に端部材11の水平部11bを挿入して篏合し、水平部11bの先端面を当たり片45に突き当てることで、端部材11は係止部4により係止される。
【0054】
固定金具3は、上記した実施形態のものに限らず、図10図11に示す実施形態のものであってもよい。図10に示す実施態様の固定金具3は、図9に示す実施態様と同じ形態の篏合孔43を含んでいる。ただし、当たり片45は有さない。
図10に示す固定金具3では、水平板部31の幅W1は、垂直板部32の幅W2よりも長い。水平板部31は、端部材11の水平部11bが嵌合孔43に嵌合された状態で、水平部11bに対して幅方向にずれた位置に鋲7を打てるように形成されている。水平板部31の幅W1は、水平部11bの直径r(又は嵌合孔43の直径R)に対して、例えば、5倍以上であることが好ましく、より好ましくは5.5倍以上であり、更に好ましくは6倍以上である。また、水平板部31の幅W1は、垂直板部32の幅W2に対して、1.5倍以上であることが好ましく、より好ましくは2倍以上であり、更に好ましくは2.5倍以上である。このように構成することで、端部材11の水平部11bが嵌合孔43に嵌合された状態で、水平部31に対する両側の位置に鋲7を打つことができる。
鋲打ち部5は、幅方向に直線状に延びた一対の凸面部50と、凹面部51と、を有する。一対の凸面部50は、長さ方向に凹面部50を介して配置されている。一対の凸面部50が幅方向に直線状に形成されていることで、鋲打ち機のヘッド部を、長さ方向に位置合わせしながら、幅方向に適切な位置に移動させることできる。なお、鋲打ち部5は、図3等に示すような、リング形状の凸面部50、凹面部50及び鋲打ち孔52を有するものであってもよい。また、鋲打ち孔52は、製造工場で予め形成されてもよい。
【0055】
図11に示す固定金具3は、係止部4と、鋲打ち部5を形成するための帯板部48と、を一体に備える。係止部4は、図12(A)に示すように、端部材11の水平部11b上に被さる上板部40及び左右両側の側板部41,42を一体に備えている。上板部40の幅d1は、側板部41,42の内面間の対向距離tが端部材11の水平部11bの直径rにほぼ一致するように設定される。側板部41,42の幅d2は、各側板部41,42の下端が端部材11の水平部11bの中心Oより低い位置に達するように設定される。上板部40は、山形状に形成されているが、水平面にほぼ平行な平板状に形成されてもよい。
図12(A)に示すように、長さ方向において、係止部4の長さL1は、水平部11bの長さ以下であることが好ましい。このように構成することで、水平部11bの先端面に対向して他の部材がある場合であっても、固定金具3が他の部材に干渉することを回避できる。
帯板部48は、図11及び図12(B)に示すように、係止部4から梁上に向かって延びており、平面視で幅方向に延びている。帯板部48は、鋲打ち部5を有する。鋲打ち部5は、複数の鋲打ち孔52を含む。複数の鋲打ち孔52は、端部材11の水平部11bに対し、幅方向の両側に配置されている。鋲打ち孔52に鋲7が打ち込まれることで、端部材11の水平部11bに対して、幅方向の両側に鋲7を打つことができる。
【0056】
図13は、デッキプレート1の端部を、上面に段差のある梁(以下「段付き梁」という。)9上に固定するためのデッキプレート固定装置2を示す。
段付き梁9は、上面の幅中央部が全長にわたって上方へ突出しており、この凸部94の平坦な上面位置(以下「高位置95」という。)と、凸部94を挟む両側の平坦な上面位置(以下「低位置96」という。)とが段差になっている。デッキプレート1の端部は段差の低位置96に載せられており、固定金具3の係止部4で端部材11の垂直部11aを係止した状態で、鋲打ち部5が段差の高位置95に位置決めされて鋲7により固定される。
【0057】
固定金具3は、溶融亜鉛メッキ鋼板により帯板状に形成されており、図14に示すように、一端部側に端部材11の垂直部11aを係止することが可能な係止部4、他端部側に鋲7が打たれる鋲打ち部5を有する。係止部4は一方の端部の一側縁が切り欠かれることにより形成される。鋲打ち部5は他方の端部の板面にプレス加工、穿孔加工を施すことに形成される。
【0058】
係止部4は、半円形の篏合孔46と、篏合孔46と連通するガイド孔47とを含む。篏合孔46は、端部材11の直径rとほぼ同じ直径Rに形成されるもので、端部材11の垂直部11aが篏合することで係止される。ガイド孔47は、対向する孔縁47a,47b間の距離fが篏合孔46の直径Rよりやや大きな値に形成されるもので、端部材11の垂直部11aの通過を許容し、垂直部11aを篏合孔46へ導く。
なお、この実施例の固定金具3は平板状であるが、これに限定されるものではなく、鋲打ち部5に対して、係止部4を一定角度だけ曲げた形態のものであってもよい。
また、この実施例の係止部4は側縁を切り欠くことにより形成しているが、端縁を切り欠くことにより形成することも可能である。
【0059】
また、固定金具3は、図15に示すような態様であってもよい。図15に示す固定金具3は、溶融亜鉛メッキ鋼板により帯板状に形成された水平板部491を備える。水平板部491は、平板状に形成されており、一端部側に端部材11を係止することが可能な係止部4、他端部側に鋲7が打たれる鋲打ち部5を有する。図15に示す固定金具3は、図16(A)(B)に示すように、端部材11の水平部11bと垂直部11aとのいずれかを選択的に係止できる。
係止部4は、一方の端部の一側縁が切り欠かれることにより形成された、半円形の篏合孔46及び篏合孔46と連通するガイド孔47を含む。また、係止部4は、起立板部492を含む。起立板部492は、水平板部491の長さ方向の端部から、水平板部491に対してほぼ直角となるように起立する。起立板部492の角部は、C面取り加工が施されている。なお、面取り加工は、C面取り加工に限らず、R面取り加工であってもよい。
鋲打ち部5は、水平板部491において起立板部492側とは反対側の端部の板面にプレス加工、穿孔加工を施すことにより形成される。
端部材11の水平部11bに係止部4を係止させる場合、図16(A)に示すように、係止部4には、水平部11bと基板10との接合部が差し込まれる。係止部4が、水平部11bと基板10との接合部に差し込まれることで水平部11bを係止し、鋲打ち孔52に鋲7が打ちこまれることで、鋲打ち部5が梁9上に位置決めされる。
端部材11の垂直部11aに係止部4を係止させる場合、図16(B)に示すように、係止部4には、垂直部11aが差し込まれる。水平板部491から起立板部492が下方に突き出るように、固定金具3が配置される。なお、水平板部491から起立板部492が上方に突き出るように、固定金具3が配置されてもよい。
【0060】
図1及び図2において、デッキプレート固定装置2によりデッキプレート1を梁9上に固定するには、デッキプレート1の端部を梁9上に載せ、端部材11の水平部11bを梁9上へ突出させる工程と、デッキプレート固定装置2の固定金具3を用い、端部材11の水平部11bを係止部4により係止した状態で鋲打ち部5を梁9上に位置決めする工程と、鋲打ち部5に鋲7を打って固定金具3を梁9の上面に固着することによりデッキプレート1の端部を梁9上に固定する工程とを順次実施するものである。
【0061】
より具体的に説明すると、図3に示す固定金具3を用いたデッキプレート固定装置2によりデッキプレート1を梁9上に固定するには、複数枚のデッキプレート1を、基板10が幅方向に連なるようにして、各基板10の両方の端部を平行な梁9上にそれぞれ載置した後、デッキプレート1毎に、端部材11の水平部11bの基板10より突き出る部分を固定金具3の係止部4により係止した状態で鋲打ち部5を梁9上に位置決めする。
【0062】
図3及び図11に示す固定金具3は、係止部4は左右両側の側板部41,42の下端が開放されているので、固定金具3を端部材11の水平部11bの上方位置から下方へ移動させることで、固定金具3の側板部41,42と上板部40とで囲まれる空間に端部材11の水平部11bは入り込んで篏合し、係止部4は端部材11の水平部11bを係止する。
【0063】
図7及び図8に示す固定金具3の場合は、端部材11の水平部11bの先端側の位置から端部材11に向けて移動させることで、固定金具3の係止部4の貫通孔43に端部材11の水平部11bの先端部が挿入されて篏合し、係止部4は端部材11の水平部11bを係止する。
【0064】
図9及び図10に示す固定金具3の場合は、係止部4は開口部44を有するので、固定金具3を端部材11の水平部11bの上方から下方へ移動させることで、開口部44より篏合孔43へ端部材11の水平部11bが入り込んで篏合する。とくに、図9に示す固定金具3では、当たり片45に端部材11の水平部11bの先端が当たって係合する。これによって、係止部4が端部材11の水平部11bを係止する。
【0065】
次に、鋲打ち部5の凹面部51に鋲打ち機のヘッド部を当て、鋲打ち孔52に対して鋲7を打って固定金具3を梁9の上面に固着する。鋲打ち機として、例えば、バッテリ駆動のもので、ガスを燃焼させた圧力で鋲を打つ方式の鋲打ち機を用いる。各端部材11の水平部11bは、デッキプレート1の基板10より突き出る部分が固定金具3により梁9上に保持され、固定金具3の鋲打ち部5が梁9の上面に鋲7により固着されるので、梁9上に端部材11がしっかり固定され、各デッキプレート1は梁9上に固定される。なお、鋲7は、梁9の端から50mm以上離れた位置、望ましくは70mm以上離れた位置に打ち込むようにする。
【0066】
したがって、デッキプレート1上で作業者が歩行したり作業を行ったりしてデッキプレート1に水平方向の力が作用したり、デッキプレート1に風による吹上力が作用したりして、それらの力が鋲打ち部5に引張力として作用しても、鋲打ち部5が断絶するおそれがなく、デッキプレート1が当初の位置から移動するおそれがない。
【0067】
図14に示す固定金具3を用いたデッキプレート固定装置2によりデッキプレート1を段付き梁9上に固定するには、複数枚のデッキプレート1を、基板10が幅方向に連なるようにして、各基板10の両方の端部を段付き梁9上の段差の低位置96にそれぞれ載置した後、デッキプレート1毎に、端部材11の垂直部11aを固定金具3の係止部4により係止し、鋲打ち部5を段付き梁9上の段差の高位置95に位置決めする。
【0068】
図14に示す固定金具3の場合は、端部材11の垂直部11aの側方位置から端部材11の垂直部11aに向けて移動させることで、ガイド孔47から係止部4の篏合穴46に端部材11の垂直部11aが入り込んで篏合し、係止部4は端部材11の垂直部11bを係止する。
【0069】
図15に示す固定金具3の場合は、端部材11の水平部11bと基板10との接合部の側方位置に向けて移動させることで、水平部11bの一部が、ガイド孔47を通して篏合穴46に入り込んで篏合し、係止部4は水平部11bを係止する。また、固定金具3によって、垂直部11aを係止する場合は、端部材11の垂直部11aの側方位置から、固定金具3を端部材11の垂直部11aに向けて移動させることで、ガイド孔47から係止部4の篏合穴46に端部材11の垂直部11aが入り込んで篏合し、係止部4は端部材11の垂直部11aを係止できる。
【0070】
次に、鋲打ち部5の凹陥部51に鋲打ち機のヘッド部を当て、鋲打ち孔52に対して鋲7を打って固定金具3を段付き梁9上の段差の上位置95に固着する。固定金具3の鋲打ち部5が段付き梁9上に鋲7により固着されるので、梁9上に端部材11がしっかり固定され、各デッキプレート1は段付き梁9上の段差の下位置96に固定される。
【0071】
なお、図14及び図15に示す固定金具3は、デッキプレート1を段付き梁9上に固定するのに使用される他、上面に段差のない標準的な梁9(図2に示す梁9)上にデッキプレート1を固定するのにも使用することができる。この場合、鋲打ち部5に対して係止部4を一定の角度だけ曲げた形態の固定金具3を用いるのが望ましく、曲げ角度は端部材11の垂直部11aに対する係止部4の係止位置に応じて適宜設定する。
また、図17に示すように、図14及び図15に示す固定金具3の係止部4によって、複数のデッキプレート1のうちの幅方向の両端部のデッキプレート1の吊り材16を係止し、鋲打ち部5を梁9(大梁91)に位置決めすることもできる。これによって、デッキプレート1の長辺部を梁9上に固定することもできる。
【0072】
また、固定金具3としては、上述したように、端部材11を係止するものに限らず、図18に示すような固定金具3であってもよい。
固定金具3は、押さえ部61と、保持部60と、鋲打ち部5とを備える。固定金具3は、帯板状の金属板にプレス加工することで形成される。押さえ部61は、図19に示すように、梁9に対して、デッキプレート1の基板10を押さえ付けることができる。押さえ部61は、固定金具3の長さ方向の端部に形成されている。押さえ部61の下面は、鋲打ち部5の下面とほぼ同じ高さ位置となるように形成されている。
保持部60は、鋲打ち部5と押さえ部61との間に配置されている。保持部60は、上向きに凸となるように湾曲しており、断面逆U字状に形成されている。また、保持部60の断面形状は、幅方向に同一である。保持部60は、図20に示すように、デッキプレート1の水平部11b同士を連結する連結棒材17を保持することができる。
連結棒材17は、長さ方向に延びており、断面形状が円形の棒鋼である。連結棒材17は、水平部11bの上端に載り、水平部11bに溶接により接合されている。固定金具3は、保持部60に対して連結棒材17が下から嵌め込まれ、鋲打ち部5が梁9上に位置決めされる。これによって、デッキプレート1を梁9上に固定できる。この固定金具3によれば、連結棒材17の長手方向の任意の位置に設置できるので、設置スペースに応じた位置に固定金具3を設置することができる。
【0073】
上記実施形態では、PCa梁の実施例に基づき固定金具3を説明したが、図3、7,8,9,10,11,18に示した固定金具3は、PCa梁だけでなく、鉄骨梁に対しても好ましく使用することができる。
【符号の説明】
【0074】
1 デッキプレート
2 デッキプレート固定装置
3 固定金具
4 係止部
5 鋲打ち部
7 鋲
9 梁
10 基板
11 端部材
11a 垂直部
11b 水平部
31 水平板部
32 垂直板部
40 上板部
41,42 側板部
43,46 篏合孔
44 開口部
45 当たり片
51 凹面部
52 鋲打ち孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20