(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023109742
(43)【公開日】2023-08-08
(54)【発明の名称】低圧縮永久ひずみを有する減衰パッド
(51)【国際特許分類】
C08J 9/04 20060101AFI20230801BHJP
【FI】
C08J9/04 101
C08J9/04 CEZ
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023012814
(22)【出願日】2023-01-31
(62)【分割の表示】P 2022068814の分割
【原出願日】2022-04-19
(31)【優先権主張番号】111103627
(32)【優先日】2022-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】521228802
【氏名又は名称】合泰材料科技股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100220917
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 忠大
(72)【発明者】
【氏名】林明輝
(72)【発明者】
【氏名】▲ゴン▼松煙
【テーマコード(参考)】
4F074
【Fターム(参考)】
4F074AA76
4F074BA32
4F074BA33
4F074CB52
4F074CC22Y
4F074CC34Y
4F074DA02
4F074DA24
4F074DA40
(57)【要約】
【課題】低圧縮永久ひずみを有する減衰パッドを提供する。
【解決手段】低圧縮永久ひずみを有する減衰パッドは、以下の(1)熱可塑性エーテルエステルエラストマーを含み、特定のメルトフローインデックス、ショアD硬度、引張弾性率、密度、及び破断伸びを有するポリマー材料を提供する工程、(2)ポリマー材料を溶融して溶融ポリマー材料を得る工程、(3)窒素ガス又は二酸化炭素を溶融ポリマーに添加して混合物を得る工程、(4)混合物を超臨界状態にし、混合物を混和して、超臨界流体ブレンドを得る工程、及び(5)超臨界流体ブレンドを注入、成形して圧縮永久ひずみ40%以下、減速度値20以下、反発弾性50%以上の低圧縮永久ひずみを有する減衰パッドを得る工程、を含む方法により調製される。
【選択図】
図3A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
低圧縮永久ひずみを有する減衰パッドであって、以下の、
(1)熱可塑性エーテルエステルエラストマーを含み、4g/10分~18g/10分のメルトフローインデックス(230℃)、20D~48DのショアD硬度、20MPa~70MPaの引張弾性率、1.0g/cm3~1.3g/cm3の密度、300%以上の破断伸びを有するポリマー材料を提供する工程、
(2)前記ポリマー材料を溶融して溶融ポリマー材料を得る工程、
(3)窒素又は二酸化炭素を前記溶融ポリマー材料に添加して混合物を得る工程、
(4)前記混合物を超臨界状態にし、前記混合物を混和して、超臨界流体ブレンドを得る工程、及び、
(5)前記超臨界流体ブレンドを注入、成形して前記低圧縮永久ひずみを有する減衰パッドを得る工程、を含む方法により調製され、
前記低圧縮永久ひずみを有する減衰パッドは表面層及び発泡内層を含み、
前記発泡内層は前記表面層で覆われ、
前記表面層の厚さは前記低圧縮永久ひずみを有する減衰パッドの全厚さの0.05%~1.50%であり、
前記発泡内層は複数の気孔を含み、
前記発泡内層に含まれる前記気孔は複数の閉気孔及び複数の開気孔を含み、
前記開気孔は30%~90%の割合であり、
前記低圧縮永久ひずみを有する減衰パッドはショアC硬度30C~60C、平均密度0.10g/cm3~0.35g/cm3、圧縮永久ひずみ40%以下、減速度g値20以下、反発弾性50%以上であることを特徴とする、
低圧縮永久ひずみを有する減衰パッド。
【請求項2】
前記ポリマー材料は、5g/10分~18g/10分の前記メルトフローインデックス(230℃)を有することを特徴とする、請求項1に記載の低圧縮永久ひずみを有する減衰パッド。
【請求項3】
前記ポリマー材料は、30D~45DのショアD硬度を有することを特徴とする、請求項1に記載の低圧縮永久ひずみを有する減衰パッド。
【請求項4】
反発弾性が60%以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載の低圧縮永久ひずみを有する減衰パッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、低圧縮永久ひずみを有する減衰パッド(damping pad)、特に超臨界流体を用いて射出成形により調製される減衰パッドに関する。
【背景技術】
【0002】
最近では、減衰パッドに応用されるポリマーは、エチレン酢酸ビニル(EVA)、ポリウレタン(PU)、ポリオレフィンエラストマー(POE)、オレフィンブロックコポリマー(OBC)などを含む。
【0003】
従来、多くの減衰パッドはゴム、PU又はEVAなどの熱硬化性材料で作製されており、EVA減衰パッドは衝撃吸収性を有する軽量パッドであり、各種産業で広く応用されている。しかし、これらの熱硬化性材料で作製される減衰パッドの製造では、化学添加剤が必要とされ、これらの化学添加剤の低減に起因する副生成物が減衰パッドに残存し、人体及び我々の環境に損害を引き起こす場合がある。また、架橋剤を添加するため、架橋反応が上記製造プロセス中に起こり、これは最終製品を再生利用できない問題を引き起こす。
【0004】
POE及びOBCなどの熱可塑性エラストマー(TPE)は、柔軟性、耐久性があり、柔らかく、再生利用可能である。しかし、POEの製品は、接着性及び圧縮永久ひずみが低く、圧縮永久ひずみを改善するためにやはり部分的架橋反応が必要である。従ってPOEの製品は再生利用できない。また、OBCの製品も接着性に乏しい。OBCの製品の圧縮永久ひずみはPOEの製品よりわずかに良好であるが、不十分であり、改善する必要がある。
【0005】
他の熱可塑性エラストマーとしては、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、熱可塑性ポリオレフィン(TPO)、熱可塑性加硫物(TPV)、熱可塑性スチレン(TPS)、熱可塑性ゴム(TPR)及び熱可塑性アミド(TPA)が挙げられる。しかし、これらすべての熱可塑性エラストマーは過度に高い圧縮永久ひずみを有しており(40%超)、減衰パッドには不利である。
【0006】
上記熱可塑性エラストマーにおいて、TPUは高い強度、靭性、耐摩耗性及び耐油性を有し、EVAよりも良好な反発弾性及び耐久性を有し、天然ゴムよりも良好な耐摩耗性を有するため、減衰パッドの材料として広く応用されている。しかしながら、TPU減衰パッドは利点を有し、再生利用できるが、やはり材料自体の性質に起因するいくつかのデメリットがあり、以下を改善することができない。
(1)圧縮永久ひずみが劣る(40%超)。減衰パッドが長期使用後に変形して、パッドがへこみ、反発弾性が低下する。
(2)黄変及び加水分解、減衰パッドの耐候性が劣り、太陽光下で容易に老化又は分解する。これは抗酸化剤及び光安定剤が製造プロセス中に添加されているとしても、経時的に避けることができない。
【0007】
TPUの置換材料がいくつか提供されている。大きな可能性を有する材料の1つがコポリエステルエラストマー(COPE)であり、ポリブチレンテレフタラート(PBT)及びポリエチレンテレフタラート(PET)などのポリエステルハードセグメント、並びにポリカプロラクトン(PCL)などの脂肪族ポリエステルソフトセグメント、又はポリエチレングリコール(PEG)、ポリオキシプロピレングリコール(PPG)、ポリ(テトラメチレンエーテル)グリコール(PTMEG)などの脂肪族ポリエーテルソフトセグメントなどで構成される。COPEは良好な機械強度、反発弾性、耐衝撃性、屈曲耐久性、耐薬品性及び耐候性を有し、主に自動車部品、軌道パッド、工業製品、スポーツ及びレジャー製品、電気部品、ケーブルワイヤなどに応用される。
【0008】
既存のTPU減衰パッドは、圧縮永久ひずみが劣るため(40%超)、依然として低圧縮永久ひずみ、高い減衰性及び高反発弾性を同時に有する減衰パッドを調製するためのポリマー材料を見出す必要がある。また、優れた性質を有する再生利用可能な材料を用いて減衰パッドを調製し、減衰パッドの性能を改善するために、減衰パッドの調製方法も改善する必要がある。
【0009】
様々なソフト及びハードセグメントで構成されるCOPEにおいて、PBT及びPTMEGで構成される熱可塑性エーテルエステルエラストマー(TEEE)が重要である。しかし、TEEEは高い結晶化度を有し、容易に発泡させることができないため、TEEEは減衰パッド又は他の関連製品にほとんど応用されない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
これらの欠点を克服するため、本発明の一つの目的は低圧縮永久ひずみ、高い減衰性(つまり低い減速度g値を有する)及び高反発弾性を同時に有する減衰パッドを提供することである。
【0012】
本開示の別の目的は、再生利用可能なポリマー材料を用い、減衰パッドを調製することであり、これにより廃プラスチック材料を新しく価値の高い製品とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本開示は低圧縮永久ひずみを有する減衰パッドを提供する。この低圧縮永久ひずみを有する減衰パッドは、以下の工程、(1)熱可塑性エーテルエステルエラストマーを含み、4グラム/10分(g/10分)~18g/10分のメルトフローインデックス(230℃)、20D~48DのショアD硬度、20×100万パスカル(MPa)~70MPaの引張弾性率、1.0グラム/立法センチメートル(g/cm3)~1.3g/cm3の密度、300%以上の破断伸びを有するポリマー材料を提供する工程、(2)ポリマー材料を溶融して溶融ポリマー材料を得る工程、(3)窒素又は二酸化炭素を溶融ポリマー材料に添加して混合物を得る工程、(4)混合物を超臨界状態にし、混合物を混和して超臨界流体ブレンドを得る工程、及び(5)超臨界流体ブレンドを注入、成形して低圧縮永久ひずみを有する減衰パッドを得る工程、を含む方法により調製される。
低圧縮永久ひずみを有する減衰パッドは表面層及び発泡内層を含み、発泡内層は表面層で覆われ、表面層の厚さは低圧縮永久ひずみを有する減衰パッドの全厚さの0.05%~1.50%であり、発泡内層は複数の気孔を含み、発泡内層に含まれる気孔は複数の閉気孔及び複数の開気孔を含み、開気孔の割合は30%以上であり、低圧縮永久ひずみを有する減衰パッドは、30C~60CのショアC硬度、0.10g/cm3~0.35g/cm3の平均密度、40%以下の圧縮永久ひずみ、20以下の減速度g値、50%以上の反発弾性を有する。
【0014】
本開示は、特定の範囲のメルトフローインデックス、ショアD硬度、引張弾性率、密度及び破断伸びを有するポリマー材料を選択又は再生利用し、ポリマー材料と、超臨界流体を用いた射出成形技術とを組み合わせて、特定の割合で開気孔を含む構造を有し、低圧縮永久ひずみ、高い減衰性及び高反発弾性を同時に有する減衰パッドを得ることに成功している。
ポリマー材料は再生利用したTEEE又は市販のTEEEでよく、ソフト及びハードセグメントの割合を意図的に調節する必要はない。また、超臨界流体を用いた射出成形技術は減衰パッドを発泡するのに使用され、ペンタンなどの高揮発性化学発泡剤は必要ない。従って、毒性物質は生じず、耐火性又は汚染の懸念は引き起こされず、製品をさらに広く応用できる。所望のポリマー材料をそのメルトフローインデックス、ショアD硬度、引張弾性率、密度及び破断伸びに応じて選択してよく、又は混合することにより調製してよく、これにより本開示の低圧縮永久ひずみを有する減衰パッドが得られると理解される。
【0015】
いくつかの実施形態において、熱可塑性エーテルエステルエラストマーは以下の式(1)及び式(II)で表されるモノマーを含む。
【0016】
【0017】
式中、式(I)で表されるモノマーは10重量パーセント(wt%)~45wt%であり、式(II)で表されるモノマーは55wt%~90wt%であり、nは3から35の整数である。
【0018】
いくつかの実施形態において、式(II)のnは4、5、6、7、8、9、10、20、30でよい。
【0019】
いくつかの実施形態において、ポリマー材料は100wt%の熱可塑性エーテルエステルエラストマーでよい。いくつかの実施形態において、ポリマー材料は変性熱可塑性エラストマーを更に含む。いくつかの実施形態において、変性熱可塑性エラストマーは熱可塑性ポリウレタン、熱可塑性ポリ(エーテル-ブロック-アミド)コポリマー又はこれらの組合せでよい。好ましくは、変性熱可塑性エラストマーは熱可塑性ポリウレタンでよい。
【0020】
いくつかの実施形態において、熱可塑性ポリ(エーテル-ブロック-アミド)コポリマーは市販品のペバックス(登録商標)でよく、これはハードポリアミドセグメント及びソフトポリエーテルセグメントから構成される熱可塑性エラストマーである。
【0021】
いくつかの実施形態において、熱可塑性ポリウレタンは、80A~95AのショアA硬度を有する。いくつかの実施形態において、熱可塑性ポリウレタンを増泡剤として使用できる。
【0022】
いくつかの実施形態において、ポリマー材料は70wt%以上~100wt%未満の熱可塑性エーテルエステルエラストマー、及び0wt%超~30wt%以下の熱可塑性ポリウレタンを含む。いくつかの実施形態において、ポリマー材料は80wt%以上~100wt%未満の熱可塑性エーテルエステルエラストマー、及び0wt%超~20wt%以下の熱可塑性ポリウレタンを含む。
【0023】
いくつかの実施形態において、ポリマー材料は1つ又は複数の添加剤を更に含み、添加剤は粘着付与剤、シリカ又はタルクなどの加工助剤、抗酸化剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン化合物、潤滑剤、充填剤、難燃剤、難燃添加剤、離型剤、帯電防止剤、過酸化物などの分子変性剤、金属不活性化剤、有機又は無機核形成剤、中和剤、酸中和剤、殺菌剤、蛍光増白剤、有機又は無機色素、難燃性又は熱安定性を与える有機又は無機化合物などでよい。
【0024】
いくつかの実施形態において、ポリマー材料は、4.5g/10分~18g/10分、又は4.7g/10分~16g/10分、又は5g/10分~10g/10分のメルトフローインデックス(230℃)を有する。
【0025】
いくつかの実施形態において、ポリマー材料は、30D~45DのショアD硬度を有する。
【0026】
いくつかの実施形態において、ポリマー材料は、20MPa~50MPa、又は20MPa~30MPa、又は23MPa~28MPaの引張弾性率を有する。
【0027】
いくつかの実施形態において、ポリマー材料は、1.0g/cm3~1.25g/cm3、又は1.0g/cm3~1.10g/cm3、又は1.03g/cm3~1.07g/cm3の密度を有する。
【0028】
いくつかの実施形態において、ポリマー材料は300%以上、又は300%~600%、又は300%~500%の破断伸びを有する。
【0029】
いくつかの実施形態において、工程(3)で窒素を添加し、工程(4)で混合物を窒素の超臨界状態、つまり窒素の臨界温度より高い温度である-147℃(126.2Kに相当)、窒素の臨界圧力より高い圧力である3.4MPa(34バールに相当)にする。いくつかの実施形態において、工程(3)で二酸化炭素を添加し、工程(4)で混合物を二酸化炭素の超臨界状態、つまり二酸化炭素の臨界温度より高い温度である31℃(304.1Kに相当)、二酸化炭素の臨界圧力より高い圧力である7.38MPa(73.8バールに相当)にする。いくつかの実施形態において、工程(4)は温度190℃~230℃、圧力127バールで実施される。
【0030】
いくつかの実施形態において、金型で工程(5)を実施し、金型におけるベント時間の遅延は0.0秒(秒)~0.8秒である。
【0031】
いくつかの実施形態において、調製方法は金型中で低圧縮永久ひずみを有する減衰パッドを冷却する工程(6)を更に含む。いくつかの実施形態において、調製方法は低圧縮永久ひずみを有する減衰パッドを冷却する工程(6)を更に含む。
【0032】
いくつかの実施形態において、低圧縮永久ひずみを有する減衰パッドは、縦型射出成形機又は横型射出成形機により調製される。いくつかの実施形態において、低圧縮永久ひずみを有する減衰パッドは縦型射出成形機により調製される。
【0033】
いくつかの実施形態において、表面層は複数の気孔を含み、表面層に含まれる気孔の長径は5マイクロメートル(μm)~100μm、又は10μm~95μm、又は20μm~90μm、又は30μm~80μm、又は40μm~70μm、又は50μm~60μmである。本開示において、表面層に含まれる気孔は不規則に形作られ、「長径」という用語は、表面層に含まれる気孔の最長の内径を指す。
【0034】
いくつかの実施形態において、表面層の厚さは、低圧縮永久ひずみを有する減衰パッドの全厚さの0.05%~1.00%、又は0.10%~0.50%、又は0.15%~0.45%、又は0.20%~0.40%、又は0.25%~0.35%、又は0.30%~0.35%に等しい。
【0035】
いくつかの実施形態において、発泡内層に含まれる気孔(つまり、閉気孔及び開気孔)の長径は100μm~400μm、又は150μm~350μm、又は200μm~300μm、又は250μm~300μmである。発泡内層に含まれる気孔の長径が小さいほど、反発弾性に有利であり、発泡内層に含まれる気孔の長径が長いほど、減衰効果に有利である。
【0036】
いくつかの実施形態において、発泡内層における開気孔の割合は40%以上、50%以上、60%以上、70%以上又は75%以上でよい。いくつかの実施形態において、発泡内層における開気孔の割合は30%~90%でよい。本開示において、発泡内層に含まれる気孔は不規則に形作られ、発泡内層に含まれる気孔の長径は、発泡内層に含まれる気孔の最長の内径を指す。
本開示において、低圧縮永久ひずみを有する減衰パッドの発泡内層に含まれる気孔は空気で満たされる。「閉気孔」という用語は単一の核形成点から形成される気孔を指し、「開気孔」という用語は、2つ以上の閉気孔により形成され、閉気孔間に形成される1つ又は複数の貫通孔を有する気孔を指す。閉気孔の割合が高い場合、低圧縮永久ひずみを有する減衰パッドは高反発弾性を有するが、減速度g値も上昇し、これは減衰効果に不利である。
【0037】
いくつかの実施形態において、低圧縮永久ひずみを有する減衰パッドの全厚さは約2センチメートル(cm)であり、表面層の平均厚さは約30μm~150μmである。
【0038】
いくつかの実施形態において、低圧縮永久ひずみを有する減衰パッドは、30C~50CのショアC硬度を有する。
【0039】
いくつかの実施形態において、低圧縮永久ひずみを有する減衰パッドは、0.1g/cm3~0.3g/cm3、0.1g/cm3~0.2g/cm3、又は0.2g/cm3~0.3g/cm3の平均密度を有する。
【0040】
いくつかの実施形態において、低圧縮永久ひずみを有する減衰パッドは、13%~27%、又は13.5%~26.5%の圧縮永久ひずみを有する。
【0041】
いくつかの実施形態において、低圧縮永久ひずみを有する減衰パッドは、13.5~19の減速度g値を有する。減速度g値はシュー材料に関する減衰効果の指標であり、低い減速度g値は良好な減衰効果を意味する。
【0042】
いくつかの実施形態において、低圧縮永久ひずみを有する減衰パッドは、60%以上、又は50%~80%、又は65%~68%の反発弾性を有する。
【0043】
いくつかの実施形態において、本開示で開示される方法により調製される減衰パッドは、40%以下の圧縮永久ひずみ、20以下の減速度g値、60%以上の反発弾性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】本開示の実施例で用いる縦型射出成形機の概略図である。
【
図2A】本開示の実施例1で得られる低圧縮永久ひずみを有する減衰パッドにおける発泡内層の断面のSEM写真であり、倍率50xである。
【
図2B】本開示の実施例1で得られる低圧縮永久ひずみを有する減衰パッドにおける発泡内層の断面のSEM写真であり、倍率100xである。
【
図2C】本開示の実施例1で得られる低圧縮永久ひずみを有する減衰パッドにおける発泡内層の断面の別のSEM写真であり、倍率100xである。
【
図2D】本開示の実施例1で得られる低圧縮永久ひずみを有する減衰パッドにおける発泡内層の断面のSEM写真であり、倍率200xである。
【
図2E】本開示の実施例1で得られる低圧縮永久ひずみを有する減衰パッドにおける表面層の断面のSEM写真であり、倍率1000xである。
【
図3A】本開示の低圧縮永久ひずみを有する減衰パッドの概略図である。
【
図3B】本開示の低圧縮永久ひずみを有する減衰パッドの部分拡大の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
本発明の他の目的、利点及び新規特徴は、添付図と合わせて、以下の詳細な説明からより明らかになるであろう。
【0046】
[減衰パッドの調製]
本開示の減衰パッドは
図1に示す縦型射出成形機10を用いて調製されるが、一般的な横型射出成形機も調製に使用できる。射出成形機10は第1スクリューバレル11、ガス導入部12、第2スクリューバレル13、インジェクタ14及び金型15を含む。
【0047】
まず、熱可塑性エーテルエステルエラストマーを含むポリマー材料を提供した。調製のために、4g/10分~18g/10分のメルトフローインデックス(230℃)、20D~48DのショアD硬度、20MPa~70MPaの引張弾性率、1.0g/cm3~1.3g/cm3の密度、300%以上の破断伸びを有するポリマー材料を選択した。
【0048】
表1に示すように、実施例1及び4で使用したポリマー材料は熱可塑性エーテルエステルエラストマー(TEEE)であり、実施例2及び3で使用したポリマー材料は熱可塑性エーテルエステルエラストマー及び熱可塑性ポリウレタン(TPU)で構成される組成物である。本発明で使用した熱可塑性エーテルエステルエラストマーは、市販の熱可塑性エーテルエステルエラストマーであるデュポン(登録商標)4068又はデュポン3078である。本発明で使用した熱可塑性ポリウレタンはBASF1185Aである。
【0049】
実施例1~4で使用したポリマー材料の性質を以下のように試験した。結果を以下の表1に記載する。
A1.メルトフローインデックス(MI):標準法ISO1133に準拠して試験する。
A2.ショアD硬度:標準法ISO868に準拠して試験する。
A3.引張弾性率:標準法ISO527に準拠して試験する。
A4.密度:標準法ISO1183に準拠して試験する。
A5.破断伸び:標準法ISO527に準拠して試験する。
【0050】
図1に示すように、実施例1~4のポリマー材料をそれぞれ供給ホッパ110から第1スクリューバレル11に供給した。第1スクリューバレル11の圧力及び温度をそれぞれ33バール及び190℃~230℃に設定した。第1スクリューバレル11の前半部分(
図1の第1スクリューバレル11の左側)において、ポリマー材料を溶融して溶融ポリマー材料を得、その後、第1スクリューバレル11中の溶融ポリマー材料にガス導入部12を通して窒素ガスを添加し、溶融ポリマー材料及び窒素ガスを第1スクリューバレル11の後半部分(
図1の第1スクリューバレル11の右側)で均質に混合して、混合物を得た。
その後、混合物を第2スクリューバレル13に導入した。第2スクリューバレル13の圧力及び温度をそれぞれ窒素の超臨界条件である127バール及び190℃~230℃に設定して、第2スクリューバレル13中の混合物を超臨界状態にすることができ、その後混合物を混和して超臨界流体ブレンドを得た。
【0051】
第2スクリューバレル13の末端でインジェクタ14に超臨界流体ブレンドを導入し、射出成形のために圧力127バール、温度190℃~230℃で金型15に超臨界流体ブレンドを注入して、減衰パッドを得た。表1において、ブレンドの量は金型15に導入された超臨界流体ブレンドの重量を指し、投入時間はインジェクタ14に超臨界流体ブレンドを投入する時間を指し、注入時間はインジェクタ14から金型15に超臨界流体ブレンドを注入する時間を指す。
【0052】
金型15に超臨界流体ブレンドを注入するとき、圧力は127バールから23バール又は15バールまで劇的に低下し、窒素ガスが直ちに超臨界流体ブレンドから放出されて多数の核形成点が形成された。その後核形成点の窒素が膨張して炭酸飲料ビンを開けたときに形成される気泡のような極小さな気泡が形成された。
実施例1~4において、ベント孔を金型15の上部及び下部壁(
図1に図示しない)に配置した。実施例1~4の射出成形において、金型15のベント孔を開くのと同時に、超臨界流体ブレンドを金型15に注入するため、金型におけるベント時間の遅延は0.0秒であった。最後に、冷却するために金型15に減衰パッドを放置して、低圧縮永久ひずみを有する減衰パッドが得られた。
【0053】
【0054】
実施例1~4の減衰パッドを上記の調製方法に従って調製し、実施例1~4の減衰パッドの断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。実施例1で得られた減衰パッドにおける発泡内層の断面を
図2A~2Dに示す。
図2Aは倍率50x、
図2B及び2Cは100x、
図2Dは200xである。実施例1で得られた減衰パッドにおける表面層の断面を倍率1000xで
図2Eに示す。
【0055】
図3Aは本開示の減衰パッド20の概略図であり、
図3Bは
図3Aの部分拡大の概略図である。
図3A及び3Bに示すように、減衰パッド20は表面層21及び発泡内層22を含み、発泡内層22は表面層21で覆われる。表面層21及び発泡内層22は、熱可塑性エーテルエステルエラストマーを含む材料で作製される。表面層21は表面層21に含まれる複数の気孔210を含む。表面層21に含まれる気孔210の長径は5μm~100μmであり、表面層21の厚さは減衰パッド20の全厚さの0.05%~1.50%である。
発泡内層22は発泡内層22に含まれる複数の気孔220、221を含み、発泡内層22に含まれる気孔220、221の長径は100μm~400μmである。発泡内層22に含まれる気孔220、221は、複数の閉気孔220及び複数の開気孔221を含み、開気孔221のいずれかは開気孔221及び別の開気孔221を連結する少なくとも1つの貫通孔222を含む。開気孔221の割合は30%以上である。気孔の形状は選択されるポリマー材料と、インジェクタ14及び金型15間の圧力差との影響を受ける。
【0056】
実施例1~4で得られる減衰パッド20の厚さ、及びこれらの表面層21の厚さをそれぞれ計算する。更に、実施例1~4で得られる減衰パッド20それぞれの性質を試験する。結果を以下の表2に記載する。
B1.開気孔の割合:標準法ASTMD6226に準拠して試験する。
B2.ショアC硬度:標準法ISO868に準拠して試験する。
B3.平均密度:標準法ISO1183に準拠して試験する。
B4.圧縮永久ひずみ:標準法CNS3560に準拠して試験する。
B5.減速度g値:標準法SATRATM142に準拠して試験する。
B6.反発弾性:標準法ASTMD2632に準拠して試験する。
【0057】
上記計算及び試験の結果を表2に記載する。
【0058】
【0059】
上記から、表面層21の厚さが、低圧縮永久ひずみを有する減衰パッド20の全厚さの0.05%~1.50%であり、開気孔221の割合が30%以上であり、低圧縮永久ひずみを有する減衰パッド20は、ショアC硬度30C~60C、平均密度0.10g/cm3~0.35g/cm3、圧縮永久ひずみ40%以下、減速度g値20以下、反発弾性50%以上であることが明白である。このような減衰パッドは低圧縮永久ひずみ、高い減衰性及び高反発弾性を同時に有し、これにより優れたダンピング効果が得られる。
【0060】
本開示の減衰パッドは、超臨界流体を用いて射出成形技術により調製され、化学発泡剤を使用しない。従って、毒性物質は生成されず、耐火性又は汚染の懸念はない。製品は低圧縮永久ひずみ(≦40%)、高い減衰性(減速度g値≦20を有する)及び高反発弾性(≧50%)を同時に有し、優れた減衰効果が得られる。また、本開示の減衰パッドは市販の熱可塑性エーテルエステルエラストマー樹脂又は再利用物質を用いて調製できるため、生成閾値及びコストを明らかに低下させることができ、減衰パッドを多くの製品に応用できる。