(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023109811
(43)【公開日】2023-08-08
(54)【発明の名称】獣医用抗IL-31抗体
(51)【国際特許分類】
C07K 16/24 20060101AFI20230801BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20230801BHJP
【FI】
C07K16/24
C12N15/13 ZNA
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023076588
(22)【出願日】2023-05-08
(62)【分割の表示】P 2019545292の分割
【原出願日】2018-02-09
(31)【優先権主張番号】62/463,543
(32)【優先日】2017-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】PCT/US2017/023788
(32)【優先日】2017-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】517299032
【氏名又は名称】キンドレッド バイオサイエンシズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】リー, シー ジアン
(72)【発明者】
【氏名】グェン, ラム
(72)【発明者】
【氏名】チャン, ハンチュン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】イヌ、ネコ、及びウマ等の伴侶動物のIL31に誘導された状態を処置し又は細胞におけるIL31シグナル伝達機能を低減させる方法を提供する。
【解決手段】イヌIL31に結合する単離された抗体であって、特定の配列を有するアミノ酸配列を含むエピトープに結合する抗体を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イヌIL31に結合する単離された抗体であって、配列番号23のアミノ酸配列を含むエピトープに結合する抗体。
【請求項2】
イヌIL31に結合する単離された抗体であって、PSDX1X2KI(配列番号45)のアミノ酸配列を含むエピトープに結合し、ここでXは任意のアミノ酸残基である、抗体。
【請求項3】
X1が疎水性アミノ酸であるか、又はX1がA、V、I、及びLから選択されるか、又はX1がV及びIから選択され、X2が親水性アミノ酸であるか、又はX2がA、R、K、Q及びNから選択されるか、又はX2がR及びQから選択される、請求項2に記載の単離された抗体。
【請求項4】
X1がVであり、X2がRであるか、又はX1がIであり、X2がQである、請求項2又は請求項3に記載の単離された抗体。
【請求項5】
配列番号88のアミノ酸配列を含むエピトープに結合する、請求項2から4のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項6】
バイオレイヤー干渉法で測定して5×10-6M未満、1×10-6M未満、5×10-7M未満、1×10-7M未満、5×10-8M未満、1×10-8M未満、5×10-9M未満、1×10-9M未満、5×10-10M未満、1×10-10M未満、5×10-11M未満、1×10-11M未満、5×10-12M未満、又は1×10-12M未満の解離定数(Kd)でイヌIL31に結合する、請求項1から5のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項7】
STAT-3のリン酸化の低減によって測定して伴侶動物種のIL31シグナル伝達機能を低減させる、請求項1から6のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項8】
伴侶動物種がイヌ、ネコ又はウマである、請求項7に記載の抗体。
【請求項9】
イムノブロット解析及び/又はバイオレイヤー干渉法によって決定して、ネコIL31又はウマIL31に結合する、請求項1から8のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項10】
イヌIL31への結合においてモノクローナルM14抗体と競合する、請求項1から9のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項11】
ネコIL31への結合においてモノクローナルM14抗体と競合する、請求項1から10のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項12】
イムノブロット解析及び/又はバイオレイヤー干渉法によって決定して、ヒトIL31に結合しない、請求項1から11のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項13】
モノクローナル抗体である、請求項1から12のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項14】
イヌ、イヌ化、ネコ、ネコ化、ウマ、ウマ化抗体、又はキメラ抗体である、請求項1から13のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項15】
マウスの可変重鎖フレームワーク領域又はマウスの可変軽鎖フレームワーク領域を含むキメラ抗体である、請求項1から14のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項16】
重鎖及び軽鎖を含み、
a)重鎖が、配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は少なくとも98%の配列同一性を有するCDR-H1配列;配列番号2、62、89又は87のアミノ酸配列と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は少なくとも98%の配列同一性を有するCDR-H2配列;及び配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は少なくとも98%の配列同一性を有するCDR-H3配列を含み、且つ、
b)軽鎖が、配列番号8又は配列番号63のアミノ酸配列と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は少なくとも98%の配列同一性を有するCDR-L1配列;配列番号9のアミノ酸配列と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は少なくとも98%の配列同一性を有するCDR-L2配列;及び配列番号10のアミノ酸配列と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は少なくとも98%の配列同一性を有するCDR-L3配列を含む、
請求項1から15のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項17】
a)(i)配列番号1のアミノ酸配列を含むCDR-H1;(ii)配列番号2若しくは配列番号89のアミノ酸配列を含むCDR-H2;及び(iii)配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含む重鎖、又は
b)(i)配列番号1のアミノ酸配列を含むCDR-H1;(ii)配列番号62若しくは配列番号87のアミノ酸配列を含むCDR-H2;及び(iii)配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含む重鎖
を含む、請求項1から16のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項18】
a)(i)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L1;(ii)配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR-L2;及び(iii)配列番号10のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含む軽鎖、又は
b)(i)配列番号63のアミノ酸配列を含むCDR-L1;(ii)配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR-L2;及び(iii)配列番号10のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含む軽鎖
を含む、請求項1から17のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項19】
(a)配列番号4、70若しくは79の可変領域重鎖フレームワーク1(HC-FR1)配列;(b)配列番号5、71若しくは80のHC-FR2配列;(c)配列番号6、72、73若しくは81のHC-FR3配列;(d)配列番号7、74若しくは82のHC-FR4配列;(e)配列番号11、75若しくは83の可変領域軽鎖フレームワーク1(LC-FR1)配列;(f)配列番号12、76若しくは84のLC-FR2配列;(g)配列番号13、77若しくは85のLC-FR3配列;又は(h)配列番号14、78若しくは86のLC-FR4配列
のうちの1つ又は複数をさらに含む、請求項16から18のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項20】
a)(i)配列番号24のアミノ酸配列と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、若しくは少なくとも98%の配列同一性を有する可変軽鎖配列;(ii)配列番号25のアミノ酸配列と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、若しくは少なくとも98%の配列同一性を有する可変重鎖配列、又は(iii)(i)の可変軽鎖配列及び(ii)の可変重鎖配列、あるいは
b)(i)配列番号16のアミノ酸配列と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、若しくは少なくとも98%の配列同一性を有する可変軽鎖配列;(ii)配列番号15のアミノ酸配列と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、若しくは少なくとも98%の配列同一性を有する可変重鎖配列;又は(iii)(i)の可変軽鎖配列及び(ii)の可変重鎖配列、あるいは
c)(i)配列番号32のアミノ酸配列と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、若しくは少なくとも98%の配列同一性を有する可変軽鎖配列;(ii)配列番号33のアミノ酸配列と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、若しくは少なくとも98%の配列同一性を有する可変重鎖配列;又は(iii)(i)の可変軽鎖配列及び(ii)の可変重鎖配列
を含む、請求項1から19のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項21】
配列番号24、配列番号16又は配列番号32の可変軽鎖配列を含む、請求項1から20のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項22】
配列番号25、配列番号15又は配列番号33の可変重鎖配列を含む、請求項1から21のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項23】
配列番号24の可変軽鎖配列及び配列番号25の可変重鎖配列、配列番号16の可変軽鎖配列、及び配列番号15の可変重鎖配列;又は配列番号32の可変軽鎖配列及び配列番号33の可変重鎖配列を含む、請求項1から22のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項24】
伴侶動物に由来する定常重鎖領域又は定常軽鎖領域を含む、請求項1から23のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項25】
(a)IgG-A、IgG-B、IgG-C及びIgG-D定常領域から選択されるイヌ重鎖定常領域;(b)IgG1、IgG2a及びIgG2b定常領域から選択されるネコ重鎖定常領域;又は(c)IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgG5、IgG6及びIgG7定常領域から選択されるウマ重鎖定常領域を含む、請求項1から24のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項26】
a)(i)配列番号26の軽鎖アミノ酸配列;(ii)配列番号27の重鎖アミノ酸配列;若しくは(iii)(i)の軽鎖アミノ酸配列及び(ii)の重鎖アミノ酸配列、又は
b)(i)配列番号30の軽鎖アミノ酸配列、(ii)配列番号31の重鎖アミノ酸配列、若しくは(iii)(i)の軽鎖アミノ酸配列及び(ii)の重鎖アミノ酸配列、又は
c)(i)配列番号34の軽鎖アミノ酸配列;(ii)配列番号35の重鎖アミノ酸配列;若しくは(iii)(i)の軽鎖アミノ酸配列及び(ii)の重鎖アミノ酸配列
を含む、請求項1から25のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項27】
配列番号21の軽鎖アミノ酸配列を含む、請求項1から26のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項28】
配列番号17、配列番号18、配列番号19又は配列番号20の重鎖アミノ酸配列を含む、請求項1から27のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項29】
Fv、scFv、Fab、Fab’、F(ab’)2、及びFab’-SHから選択される抗体断片である、請求項1から28のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項30】
二重特異性であり、IL31と、IL17、TNFα、CD20、CD19、CD25、IL4、IL13、IL23、IgE、CD11α、IL6R、α4-インテグリン、IL12、IL1β又はBlySから選択される1又は複数の抗原とに結合する、請求項1から29のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項31】
請求項1から30のいずれか一項に記載の抗体をコードする単離された核酸。
【請求項32】
請求項31に記載の核酸を含む宿主細胞。
【請求項33】
請求項32に記載の宿主細胞を培養することと、抗体を単離することとを含む、抗体を産生する方法。
【請求項34】
請求項1から30のいずれか一項に記載の抗体及び薬学的に許容される担体を含む薬学的組成物。
【請求項35】
抗IL31抗体及び薬学的に許容される担体を含む薬学的組成物であって、薬学的に許容される担体がL-ヒスチジン、塩化ナトリウム及びポリソルベート80を含み、薬学的組成物が5.0~6.2のpHを有する、薬学的組成物。
【請求項36】
5.0~6.0、又は5.3~5.7、又は5.5のpHを有する、請求項35に記載の薬学的組成物。
【請求項37】
5mM~100mM、10mM~50mM、20mM~30mM、10~30mM、又は20mMのL-ヒスチジン濃度を有する、請求項35又は請求項36に記載の薬学的組成物。
【請求項38】
80~200mM、100~175mM、120~150mM、又は140mMの塩化ナトリウム濃度を有する、請求項35から37のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項39】
0.005mg/mL~0.5mg/mL、0.01mg/mL~0.1mg/mL、又は0.05mg/mLのポリソルベート80濃度を有する、請求項35から38のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項40】
薬学的に許容される担体が少なくとも1の糖を含む、請求項35から39のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項41】
0.5%~20%、1%~10%、1%~5%、又は1%~3%の糖濃度を有する、請求項40に記載の薬学的組成物。
【請求項42】
薬学的に許容される担体がスクロース、トレハロース、D-マンニトール、マルトース及び/又はソルビトールを含む、請求項35から41のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項43】
抗菌剤を含む、請求項35から42のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項44】
m-クレゾール又はメチルパラベンを含む、請求項35から43のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項45】
0.2%のm-クレゾール及び/又は0.9%のメチルパラベンを含む、請求項35から44のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項46】
抗IL31抗体が請求項1から30のいずれか一項に記載の抗体である、請求項35から45のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項47】
IL31によって誘導された状態を有する伴侶動物種を処置する方法であって、治療的有効量の請求項1から30のいずれか一項に記載の抗体又は請求項34から46のいずれか一項に記載の薬学的組成物を伴侶動物種に投与することを含む方法。
【請求項48】
伴侶動物種がイヌ、ネコ又はウマである、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
IL31によって誘導された状態が掻痒症又はアレルギーの状態である、請求項47又は請求項48に記載の方法。
【請求項50】
IL31によって誘導された状態が、アトピー性皮膚炎、掻痒症、喘息、乾癬、強皮症及び湿疹から選択される、請求項47から49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
抗体又は薬学的組成物が非経口的に投与される、請求項47から50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
抗体又は薬学的組成物が筋肉内経路、腹腔内経路、脳脊髄内経路、皮下経路、動脈内経路、滑膜内経路、髄腔内経路又は吸入経路によって投与される、請求項47から51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
抗体又は薬学的組成物と組み合わせてJak阻害剤、PI3K阻害剤、AKT阻害剤又はMAPK阻害剤を投与することを含む、請求項47から52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
抗体又は薬学的組成物と組み合わせて、抗IL17抗体、抗TNFα抗体、抗CD20抗体、抗CD19抗体、抗CD25抗体、抗IL4抗体、抗IL13抗体、抗IL23抗体、抗IgE抗体、抗CD11α抗体、抗IL6R抗体、抗α4-インテグリン抗体、抗IL12抗体、抗IL1β抗体、及び抗BlyS抗体から選択される1又は複数の抗体を投与することを含む、請求項47から53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
細胞におけるIL31シグナル伝達機能を低減する方法であって、請求項1から30のいずれか一項に記載の抗体又は請求項34から46のいずれか一項に記載の薬学的組成物を、細胞外IL31への抗体の結合を可能にする条件下で細胞に曝露し、それにより、IL31受容体への結合を低減し、且つ/又は細胞によるIL31シグナル伝達機能を低減することを含む方法。
【請求項56】
細胞がex vivoで抗体又は薬学的組成物に曝露される、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
細胞がin vivoで抗体又は薬学的組成物に曝露される、請求項55に記載の方法。
【請求項58】
細胞がイヌ細胞、ネコ細胞又はウマ細胞である、請求項55から57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
伴侶動物種からの試料中のIL31を検出するための方法であって、請求項1から30のいずれか一項に記載の抗体又は請求項34から46のいずれか一項に記載の薬学的組成物を、IL31への抗体の結合を可能にする条件下で試料に接触させ、抗体と試料中のIL31との間に複合体が形成されるか否かを検出することを含む方法。
【請求項60】
試料がイヌ、ネコ又はウマから得られた生物学的試料である、請求項59に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、それぞれがあらゆる目的のために全体が参照により本明細書に組み込まれる、2017年3月23日出願の国際出願PCT/US第2017/023788号の利益を主張し、2017年2月24日出願の米国仮特許出願第62/463,543号の利益を主張する。
【0002】
本発明は、例えばイヌIL31に結合する単離された抗IL31抗体、並びにそれを用いる方法、例えば、イヌ、ネコ、及びウマ等の伴侶動物のIL31に誘導された状態を処置し又は細胞におけるIL31シグナル伝達機能を低減させる方法に関する。
【背景技術】
【0003】
インターロイキン31(IL31)は、主としてTh2細胞によって産生されるサイトカインであり、掻痒症及びその他の形態のアレルギー疾患(例えばアトピー性皮膚炎)等の皮膚疾患の促進に関与していると理解されている。IL31はその受容体と結合して、JAK1の活性化等、下流の活性を活性化する機能があり、皮膚炎及びその他の障害に関連する臨床的問題の多くを引き起こすと考えられている。
【0004】
ネコ、イヌ、及びウマ等の伴侶動物は、アトピー性皮膚炎等のヒトの皮膚疾患と同様の多くの皮膚疾患に罹患する。しかし、IL31の配列はヒト、ネコ、イヌ及びウマの間で相違している。したがって、IL31に誘導された状態を処置し、IL31のシグナル伝達を低減するため、伴侶動物のIL31に結合するように特異的に用いることができる方法及び化合物へのニーズが存在する。
【発明の概要】
【0005】
いくつかの実施形態では、イヌIL31に結合する単離された抗体が提供される。いくつかの実施形態では、抗体は配列番号22のアミノ酸34~50を含むエピトープに結合する。いくつかの実施形態では、抗体は配列番号23のアミノ酸配列を含むエピトープに結合する。いくつかの実施形態では、抗体はPSDX1X2KI(配列番号45)のアミノ酸配列を含むエピトープに結合し、ここでXは任意のアミノ酸残基である。いくつかの実施形態では、X1は疎水性アミノ酸である。いくつかの実施形態では、X1はA、V、I、及びLから選択される。いくつかの実施形態では、X1はV及びIから選択される。いくつかの実施形態では、X2は親水性アミノ酸である。いくつかの実施形態では、X2はA、R、K、Q、及びNから選択される。いくつかの実施形態では、X2はR及びQから選択される。いくつかの実施形態では、X1はVであり、X2はRである。いくつかの実施形態では、X1はIであり、X2はQである。いくつかの実施形態では、抗体は配列番号88のアミノ酸配列を含むエピトープに結合する。
【0006】
いくつかの実施形態では、抗体はバイオレイヤー干渉法で測定して5×10-6M未満、1×10-6M未満、5×10-7M未満、1×10-7M未満、5×10-8M未満、1×10-8M未満、5×10-9M未満、1×10-9M未満、5×10-10M未満、1×10-10M未満、5×10-11M未満、1×10-11M未満、5×10-12M未満、又は1×10-12M未満の解離定数(Kd)でイヌIL31に結合する。
【0007】
いくつかの実施形態では、抗体はSTAT-3のリン酸化の低減によって測定して伴侶動物種のIL31シグナル伝達機能を低減させる。いくつかの実施形態では、伴侶動物種はイヌ、ネコ、又はウマである。
【0008】
いくつかの実施形態では、抗体はイムノブロット解析及び/又はバイオレイヤー干渉法によって決定して、ネコIL31又はウマIL31に結合する。いくつかの実施形態では、抗体はイヌIL31への結合においてモノクローナルM14抗体と競合する。いくつかの実施形態では、抗体はネコIL31への結合においてモノクローナルM14抗体と競合する。いくつかの実施形態では、抗体はイムノブロット解析及び/又はバイオレイヤー干渉法によって決定して、ヒトIL31に結合しない。
【0009】
いくつかの実施形態では、抗体はモノクローナル抗体である。いくつかの実施形態では、抗体はイヌ、イヌ化、ネコ、ネコ化、ウマ、ウマ化、又はキメラ抗体である。いくつかの実施形態では、抗体はマウスの可変重鎖フレームワーク領域又はマウスの可変軽鎖フレームワーク領域を含むキメラ抗体である。
【0010】
いくつかの実施形態では、抗体は重鎖及び軽鎖を含み、
a.重鎖は、配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも85%の配列同一性、少なくとも90%の配列同一性、少なくとも95%の配列同一性、又は少なくとも98%の配列同一性を有するCDR-H1配列、配列番号2、62、89、又は87のアミノ酸配列と少なくとも85%の配列同一性、少なくとも90%の配列同一性、少なくとも95%の配列同一性、又は少なくとも98%の配列同一性を有するCDR-H2配列、及び配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも85%の配列同一性、少なくとも90%の配列同一性、少なくとも95%の配列同一性、又は少なくとも98%の配列同一性を有するCDR-H3配列を含み、
b.軽鎖は、配列番号8又は配列番号63のアミノ酸配列と少なくとも85%の配列同一性、少なくとも90%の配列同一性、少なくとも95%の配列同一性、又は少なくとも98%の配列同一性を有するCDR-L1配列、配列番号9のアミノ酸配列と少なくとも85%の配列同一性、少なくとも90%の配列同一性、少なくとも95%の配列同一性、又は少なくとも98%の配列同一性を有するCDR-L2配列、及び配列番号10のアミノ酸配列と少なくとも85%の配列同一性、少なくとも90%の配列同一性、少なくとも95%の配列同一性、又は少なくとも98%の配列同一性を有するCDR-L3配列を含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、抗体は(a)配列番号1のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(b)配列番号2又は89のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(c)配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含む重鎖を含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、抗体は(a)配列番号1のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(b)配列番号62又は87のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(c)配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含む重鎖を含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、抗体は(a)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(b)配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び(c)配列番号10のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含む軽鎖を含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、抗体は(a)配列番号63のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(b)配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び(c)配列番号10のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含む軽鎖を含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、抗体は(a)配列番号4、70、若しくは79の可変領域重鎖フレームワーク1(HC-FR1)配列、(b)配列番号5、71、若しくは80のHC-FR2配列、(c)配列番号6、72、73、若しくは81のHC-FR3配列、(d)配列番号7、74、若しくは82のHC-FR4配列、(e)配列番号11、75、若しくは83の可変領域軽鎖フレームワーク1(LC-FR1)配列、(f)配列番号12、76、若しくは84のLC-FR2配列、(g)配列番号13、77、若しくは85のLC-FR3配列、又は(h)配列番号14、78、若しくは86のLC-FR4配列の1又は複数を含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、抗体は、
a.(i)配列番号24のアミノ酸配列と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、若しくは少なくとも98%の配列同一性を有する可変軽鎖配列、(ii)配列番号25のアミノ酸配列と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、若しくは少なくとも98%の配列同一性を有する可変重鎖配列、又は(iii)(i)の可変軽鎖配列及び(ii)の可変重鎖配列、あるいは
b.(i)配列番号16のアミノ酸配列と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、若しくは少なくとも98%の配列同一性を有する可変軽鎖配列、(ii)配列番号15のアミノ酸配列と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、若しくは少なくとも98%の配列同一性を有する可変重鎖配列、又は(iii)(i)の可変軽鎖配列及び(ii)の可変重鎖配列、あるいは
c.(i)配列番号32のアミノ酸配列と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、若しくは少なくとも98%の配列同一性を有する可変軽鎖配列、(ii)配列番号33のアミノ酸配列と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、若しくは少なくとも98%の配列同一性を有する可変重鎖配列、又は(iii)(i)の可変軽鎖配列及び(ii)の可変重鎖配列
を含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、抗体は配列番号24、配列番号16、又は配列番号32の可変軽鎖配列を含む。いくつかの実施形態では、抗体は配列番号25、配列番号15、又は配列番号33の可変重鎖配列を含む。いくつかの実施形態では、抗体は配列番号24の可変軽鎖配列及び配列番号25の可変重鎖配列、配列番号16の可変軽鎖配列及び配列番号15の可変重鎖配列、又は配列番号32の可変軽鎖配列及び配列番号33の可変重鎖配列を含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、抗体は伴侶動物に由来する定常重鎖領域又は定常軽鎖領域を含むキメラ抗体である。
【0019】
いくつかの実施形態では、抗体は(a)IgG-A、IgG-B、IgG-C、及びIgG-D定常領域から選択されるイヌ重鎖定常領域、(b)IgG1、IgG2a、及びIgG2b定常領域から選択されるネコ重鎖定常領域、又は(c)IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgG5、IgG6、及びIgG7定常領域から選択されるウマ重鎖定常領域を含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、抗体は、
a.(i)配列番号26の軽鎖アミノ酸配列、(ii)配列番号27の重鎖アミノ酸配列、若しくは(iii)(i)の軽鎖アミノ酸配列及び(ii)の重鎖アミノ酸配列、又は
b.(i)配列番号30の軽鎖アミノ酸配列、(ii)配列番号31の重鎖アミノ酸配列、若しくは(iii)(i)の軽鎖アミノ酸配列及び(ii)の重鎖アミノ酸配列、又は
c.(i)配列番号34の軽鎖アミノ酸配列、(ii)配列番号35の重鎖アミノ酸配列、若しくは(iii)(i)の軽鎖アミノ酸配列及び(ii)の重鎖アミノ酸配列
を含む。
【0021】
いくつかの実施形態では、抗体は配列番号21の軽鎖アミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗体は配列番号17、配列番号18、配列番号19、又は配列番号20の重鎖アミノ酸配列を含む。
【0022】
いくつかの実施形態では、抗体はFv、scFv、Fab、Fab’、F(ab’)2、及びFab’-SHから選択される抗体断片である。
【0023】
いくつかの実施形態では、抗体は二重特異的であり、抗体はIL31及び、IL17、TNFα、CD20、CD19、CD25、IL4、IL13、IL23、IgE、CD11α、IL6R、α4-インテグリン、IL12、IL1β、又はBlySから選択される1若しくは複数の抗原に結合する。
【0024】
いくつかの実施形態では、本明細書で上に述べた抗IL31抗体をコードする単離された核酸が提供される。いくつかの実施形態では、本明細書で上に述べた抗IL31抗体をコードする核酸を含む宿主細胞が提供される。いくつかの実施形態では、本明細書で上に述べた抗IL31抗体をコードする核酸を含むそのような宿主細胞を培養すること、及び抗体を単離することを含む、抗IL31抗体を産生する方法が提供される。
【0025】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載した抗IL31抗体及び薬学的に許容される担体を含む薬学的組成物が提供される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載した抗IL31抗体及び薬学的に許容される担体を含む薬学的組成物が提供され、薬学的に許容される担体はL-ヒスチジン、塩化ナトリウム、及びポリソルベート80を含む。
【0026】
いくつかの実施形態では、薬学的組成物は5.0~6.2のpHを有する。いくつかの実施形態では、薬学的組成物は5.0~6.0、又は5.3~5.7、又は5.5のpHを有する。
【0027】
いくつかの実施形態では、薬学的組成物は5mM~100mM、10mM~50mM、20mM~30mM、10~30mM、又は20mMのL-ヒスチジン濃度を有する。
【0028】
いくつかの実施形態では、薬学的組成物は80~200mM、100~175mM、120~150mM、又は140mMの塩化ナトリウム濃度を有する。
【0029】
いくつかの実施形態では、薬学的組成物は0.005mg/mL~0.5mg/mL、0.01mg/mL~0.1mg/mL、又は0.05mg/mLのポリソルベート80の濃度を有する。
【0030】
いくつかの実施形態では、薬学的に許容される担体は少なくとも1つの糖を含む。いくつかの実施形態では、薬学的組成物は0.5%~20%、1%~10%、1%~5%、又は1%~3%の少なくとも1つの糖の濃度を有する。いくつかの実施形態では、薬学的に許容される担体はスクロース、トレハロース、D-マンニトール、マルトース、及び/又はソルビトールを含む。
【0031】
いくつかの実施形態では、薬学的に許容される担体は抗菌剤を含む。いくつかの実施形態では、薬学的組成物はm-クレゾール又はメチルパラベンを含む。いくつかの実施形態では、薬学的組成物は0.2%のm-クレゾール及び/又は0.9%のメチルパラベンを含む。
【0032】
抗体及び薬学的組成物の使用
いくつかの実施形態では、IL31によって誘導された状態を有する伴侶動物種を処置する方法であって、治療的有効量の本明細書に記載した抗IL31抗体又は本明細書に記載した抗体を含む薬学的組成物を伴侶動物種に投与することを含む方法が提供される。いくつかの実施形態では、伴侶動物種はイヌ、ネコ、又はウマである。いくつかの実施形態では、IL31によって誘導された状態は掻痒症又はアレルギーの状態である。いくつかの実施形態では、IL31によって誘導された状態はアトピー性皮膚炎、掻痒症、喘息、乾癬、強皮症、及び湿疹から選択される。
【0033】
いくつかの実施形態では、抗IL31抗体又は薬学的組成物は非経口的に投与される。いくつかの実施形態では、抗IL31抗体又は薬学的組成物は筋肉内経路、腹腔内経路、脳脊髄内経路、皮下経路、動脈内経路、滑膜内経路、髄腔内経路、又は吸入経路によって投与される。
【0034】
いくつかの実施形態では、方法は抗IL31抗体又は薬学的組成物と組み合わせてJak阻害剤、PI3K阻害剤、AKT阻害剤、又はMAPK阻害剤を投与することを含む。いくつかの実施形態では、方法は抗IL31抗体又は薬学的組成物と組み合わせて抗IL17抗体、抗TNFα抗体、抗CD20抗体、抗CD19抗体、抗CD25抗体、抗IL4抗体、抗IL13抗体、抗IL23抗体、抗IgE抗体、抗CD11α抗体、抗IL6R抗体、抗α4-インテグリン抗体、抗IL12抗体、抗IL1β抗体、及び抗BlyS抗体から選択される1若しくは複数の抗体を投与することを含む。
【0035】
いくつかの実施形態では、細胞におけるIL31シグナル伝達機能を低減する方法であって、本明細書に記載した抗IL31抗体又は薬学的組成物を、細胞外IL31への抗体の結合を可能にする条件下で細胞に曝露し、それにより、IL31受容体への結合を低減し、及び/又は細胞によるIL31シグナル伝達機能を低減することを含む方法が提供される。いくつかの実施形態では、細胞はエクスビボで抗体又は薬学的組成物に曝露される。いくつかの実施形態では、細胞はインビボで抗体又は薬学的組成物に曝露される。いくつかの実施形態では、細胞はイヌ細胞、ネコ細胞、又はウマ細胞である。
【0036】
いくつかの実施形態では、伴侶動物種からの試料中のIL31を検出する方法であって、本明細書に記載した抗IL31抗体又は薬学的組成物を、IL31への抗体の結合を可能にする条件下で試料に接触させ、抗体と試料中のIL31との間に複合体が形成されるか否かを検出することを含む方法が提供される。いくつかの実施形態では、試料はイヌ、ネコ、又はウマから得られた生物学的試料である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1A】M14、M18、M19、及びM87マウスモノクローナル抗体クローンの可変軽配列のアラインメントである。
【
図1B】M14、M18、M19、及びM87マウスモノクローナル抗体クローンの可変重配列のアラインメントである。
【
図2A-B】キメラM14抗体の濃度を変化させたイヌIL31結合解析のグラフである。
【
図3A-B】イヌ化M14抗体の濃度を変化させたイヌIL31結合解析のグラフである。
【
図4】イヌ化M14抗体の濃度を変化させて阻害されたイヌIL31シグナル伝達を示すイムノブロットである。
【
図5A-B】それぞれM14抗体及び抗GST抗体でプローブしたGST-イヌ-IL31欠失のイムノブロットである。
【
図6A-B】それぞれM14抗体及び抗GST抗体でプローブしたGST-イヌ-IL31欠失のイムノブロットである。
【
図7A-B】それぞれM14抗体及び抗FC抗体でプローブしたヒトFcに融合したネコ及びウマのIL31タンパク質のイムノブロットである。
【
図8】抗イヌIL31抗体(上のパネル)及び抗GST抗体(下のパネル)を用いた成熟イヌIL31エピトープの精細なエピトープマッピング及びアラニンスキャンニングのイムノブロット解析を示す図である。
【
図9】抗イヌIL31抗体(上のパネル)及び抗GST抗体(下のパネル)を用いた成熟イヌIL31エピトープの精細なエピトープマッピング及びアラニンスキャンニングのイムノブロット解析を示す図である。
【
図10】抗イヌIL31抗体(上のパネル)及び抗GST抗体(下のパネル)を用いた成熟イヌIL31エピトープの精細なエピトープマッピング及びアラニンスキャンニングのイムノブロット解析を示す図である。
【
図11】抗イヌIL31抗体(上のパネル)及び抗GST抗体(下のパネル)を用いた成熟イヌIL31エピトープの精細なエピトープマッピング及びアラニンスキャンニングのイムノブロット解析を示す図である。
【
図12】抗イヌIL31抗体(上のパネル)及び抗GST抗体(下のパネル)を用いた成熟イヌIL31エピトープの精細なエピトープマッピング及びアラニンスキャンニングのイムノブロット解析を示す図である。
【
図13】抗イヌIL31抗体M14のセイウチIL31へのイムノブロット交差反応性である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
特定の配列の説明
表1は本明細書で参照する特定の配列のリストを提供する。
【0039】
特定の実施形態の説明
イヌIL31、ネコIL31、又はウマIL31と結合する抗体が提供される。IL31と結合する抗体を形成することができる抗体重鎖及び抗体軽鎖も提供される。さらに、1又は複数の特定の相補性決定領域(CDR)を含む抗体、重鎖、及び軽鎖が提供される。イヌIL31に対する抗体をコードするポリヌクレオチドが提供される。イヌIL31に対する抗体を産生し又は精製する方法も提供される。イヌIL31に対する抗体を用いて処置する方法が提供される。そのような方法には、それだけに限らないが、伴侶動物種におけるIL31に誘導された状態を処置する方法が含まれる。伴侶動物種からの試料中のIL31を検出する方法が提供される。
【0040】
読者の利便のため、本明細書で用いる用語の下記の定義が提供される。
【0041】
本明細書で用いる場合、Kd等の数値的用語は科学的測定に基づいて計算され、したがって適切な測定誤差を免れない。いくつかの場合には、数値的用語は最も近い有効数字に丸められた数値を含み得る。
【0042】
本明細書で用いる場合、「1つの(「a」又は「an」)」は、他に特定しない限り、「少なくとも1つの」又は「1若しくは複数の」を意味する。本明細書で用いる場合、用語「又は」は、他に特定しない限り、「及び/又は」を意味する。多重従属請求項の文脈においては、他の請求項に遡って引用する場合の「又は」の使用は、選択肢における請求項のみを意味する。
【0043】
抗IL31抗体
IL31に対する新規な抗体、例えばイヌIL31、ネコIL31、及び/又はウマIL31に結合する抗体が提供される。本明細書で提供される抗IL31抗体は、それだけに限らないが、モノクローナル抗体、マウス抗体、キメラ抗体、イヌ化抗体、ネコ化抗体、及びウマ化抗体を含む。いくつかの実施形態では、抗IL31抗体はM14、M18、M19、及びM87等の単離されたマウスモノクローナル抗体である。
【0044】
モノクローナル抗体M14、M18、M19、及びM87は、以下のようにして単離した。簡単には、マウスをイヌIL31で免疫し、標準的なハイブリドーマ技術によってマウスモノクローナル抗体クローンを得た。IL31結合抗体を産生するハイブリドーマクローンをスクリーニングするために酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を用いた。本明細書に記載した結合親和性及び細胞に基づく機能アッセイに基づいて、モノクローナル抗体M14、M18、M19、及びM87を産生するハイブリドーマクローンを、さらなる検討のために選択した。4つのクローンのそれぞれの可変重鎖(VH)及び可変軽鎖(VL)をシーケンシングし、配列アラインメントによって解析した(
図1)。
【0045】
モノクローナル抗体M14のアミノ酸配列も本明細書に提供される。例えば、モノクローナル抗体M14について、可変重鎖CDR(配列番号1~3。配列番号89はCDR-H2の代替の定義である)、可変軽鎖CDR(配列番号8~10)、可変領域重鎖フレームワーク配列(配列番号4~7)、及び可変領域軽鎖フレームワーク配列(配列番号11~14)が提供される。モノクローナル抗体M14の可変軽鎖、軽鎖、可変重鎖、並びに可変及びヒンジ重鎖のアミノ酸配列が提供される(それぞれ配列番号24、36、25、及び40)。
【0046】
さらに、モノクローナル抗体M18、M19、及びM87のCDR、フレームワーク配列、可変軽鎖、可変重鎖のアミノ酸配列が提供される(例えば
図1を参照)。モノクローナル抗体M19について可変重鎖CDR(配列番号1~3。配列番号89はCDR-H2の代替の定義である)、可変軽鎖CDR(配列番号8~10)、可変軽鎖(配列番号65)、軽鎖(配列番号38)、可変及びヒンジ重鎖(配列番号42)、並びに可変重鎖(配列番号68)が提供される。モノクローナル抗体M18について可変重鎖CDR(配列番号1、62、及び3。配列番号87はCDR-H2の代替の定義である)、可変軽鎖CDR(配列番号63、9、及び10)、可変軽鎖(配列番号64)、軽鎖(配列番号37)、可変及びヒンジ重鎖(配列番号41)、並びに可変重鎖(配列番号67)が提供される。モノクローナル抗体M87について可変軽鎖(配列番号66)、軽鎖(配列番号39)、可変及びヒンジ重鎖(配列番号43)、並びに可変重鎖(配列番号69)が提供される。
【0047】
モノクローナル抗体M14、M18、M19、及びM87に由来するキメラ、イヌ化、ネコ化、及びウマ化抗体も本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、配列番号15~21及び70~78等の、イヌ化モノクローナル抗体M14のアミノ酸配列が提供される。いくつかの実施形態では、配列番号32~35及び79~86等の、モノクローナル抗体M14に由来するネコ化抗体のアミノ酸配列が提供される。いくつかの実施形態では、配列番号26、27、30、及び31等の、モノクローナル抗体M14に由来するキメラ抗体のアミノ酸配列が提供される。
【0048】
用語「抗体」は、本明細書において最も広い意味で用いられ、所望の抗原結合活性を示す限り、それだけに限らないがモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば二重特異性(二重特異性T細胞エンゲージャー等)及び三重特異性の抗体)、並びに抗体断片(Fab、F(ab’)2、ScFv、ミニボディ、ダイアボディ、トリアボディ、及びテトラボディ等)を含む種々の抗体構造を包含する。イヌ、ネコ、及びウマの種は、多くの哺乳動物によって共有される異なる多様性(クラス)の抗体を有する。
【0049】
用語「抗体」は、それだけに限らないが、抗原に結合することができる断片、例えばFv、単鎖Fv(scFv)、Fab、Fab’、di-scFv、sdAb(シングルドメイン抗体)、及び(Fab’)2(化学的に連結されたF(ab’)2を含む)を含む。抗体のパパイン消化によって、それぞれが単一の抗原結合部位を有する、「Fab」断片と称される2つの同一の抗原結合性断片、及びその名称が容易に結晶化する能力を反映する残りの「Fc」断片が産生される。ペプシン処理によって、2つの抗原結合部位を有し、なお抗原を架橋させる能力を有するF(ab’)2断片が得られる。用語「抗体」は、それだけに限らないが、キメラ抗体、ヒト化抗体、及びマウス、ヒト、カニクイザル、イヌ、ネコ、ウマ、その他等の種々の種の抗体も含む。さらに、本明細書で提供した全ての抗体コンストラクトについて、他の生物体からの配列を有するバリアントも意図されている。したがって、マウスの抗体のバージョンが開示されれば、当業者はマウスの配列に基づく抗体をどのようにネコ、イヌ、ウマ、その他の配列に変換するかを理解するはずである。抗体断片は、単鎖scFv、タンデムdi-scFv、ダイアボディ、タンデムtri-sdcFv、ミニボディ、その他のいずれかの配向も含む。抗体断片はナノボディ(sdAb、重鎖の可変ドメインのペア等の、軽鎖を有しない単一のモノマー性ドメインを有する抗体)も含む。抗体断片は、いくつかの実施形態では、特定の種であると称することもできる(例えば、マウスscFv又はイヌscFv)。これは、コンストラクトの源というよりむしろ、非CDR領域の少なくとも一部の配列を意味する。いくつかの実施形態では、抗体は標識を含むか、又は第2の部分にコンジュゲートしている。
【0050】
用語「標識」及び「検出可能な標識」は、特定の結合ペアのメンバーの間の反応(例えば結合)が検出可能になるように、抗体又はその被分析物に結合された部分を意味する。特定の結合ペアの標識されたメンバーは、「検出可能に標識された」と称される。したがって、用語「標識された結合タンパク質」は、結合タンパク質の同定を提供する標識が組み込まれたタンパク質を意味する。いくつかの実施形態では、標識は目視又は機械的手段によって検出可能なシグナルを産生することができる検出可能なマーカー、例えば放射標識されたアミノ酸の組込み、又はマークされたアビジン(例えば光学法若しくは比色法によって検出可能な蛍光性マーカー又は酵素活性を含むストレプトアビジン)によって検出可能なビオチン化部分のポリペプチドへの結合である。ポリペプチドのための標識の例には、それだけに限らないが、以下の、放射性同位体若しくは放射性核種(例えば3H、14C、35S、90Y、99Tc、111In、125I、131I、177Lu、166Ho、又は153Sm)、色素原、蛍光性標識(例えばFITC、ローダミン、ランタニド燐光体)、酵素標識(例えばホースラディッシュペルオキシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ)、化学発光マーカー、ビオチニル基、二次リポーターによって認識される所定のポリペプチドエピトープ(例えばロイシンジッパーペア配列、二次抗体のための結合部位、金属結合ドメイン、エピトープタグ)、及びガドリニウムキレート等の磁気薬剤が含まれる。イムノアッセイのために一般に採用される標識の代表的な例には、光を発生する部分、例えばアクリジニウム化合物、及び蛍光を発生する部分、例えばフルオレセインが含まれる。これに関して、部分それ自体は検出可能に標識されていなくてもよいが、さらに別の部分との反応によって検出可能になってもよい。
【0051】
用語「モノクローナル抗体」は、実質的に均一な抗体の集団の抗体を意味する。即ち、集団を構成する個々の抗体は、少量存在してもよい可能な天然産生の変異を除いて、同一である。モノクローナル抗体は高度に特異的であり、単一の抗原部位に対している。さらに、典型的には異なった決定基(エピトープ)に対する異なった抗体を含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、それぞれのモノクローナル抗体は抗原の上の単一の決定基に対している。したがって、モノクローナル抗体の試料は抗原の上の同じエピトープに結合することができる。修飾語「モノクローナル」は、実質的に均一な抗体の集団から得られるという抗体の性質を示し、何ら特定の方法による抗体の産生を必要とすると解釈すべきではない。例えば、モノクローナル抗体は、Kohler及びMilstein、1975年、Nature 256:495頁によって最初に記述されたハイブリドーマ法によって作成することができ、又は米国特許第4,816,567号に記載されているような組み換えDNA法によって作成することができる。モノクローナル抗体は、例えばMcCaffertyら、1990年、Nature 348:552~554頁に記載されている手法を用いて生成されたファージライブラリーから単離してもよい。
【0052】
いくつかの実施形態では、モノクローナル抗体はクローンM14、M18、M19、及びM87から選択される、単離されたマウス抗体である。
【0053】
「アミノ酸配列」は、ペプチド又はタンパク質におけるアミノ酸残基の配列を意味する。用語「ポリペプチド」及び「タンパク質」は相互交換可能に用いられ、アミノ酸残基のポリマーを意味し、最小の長さに限定されない。そのようなアミノ酸残基のポリマーは天然又は非天然のアミノ酸残基を含んでよく、それだけに限らないがペプチド、オリゴペプチド、アミノ酸残基のダイマー、トリマー、及びマルチマーを含む。この定義には、完全長のタンパク質及びその断片の両方が包含される。本用語は、ポリペプチドの発現後の変性、例えばグリコシル化、シアリル化、アセチル化、リン酸化、その他も含む。さらに、本開示の目的のため、「ポリペプチド」は、タンパク質が所望の活性を維持する限り、未変性の配列への変性、例えば欠失、付加、及び置換(一般には本質的に保存的である)を含むタンパク質を意味する。これらの変性は部位特異的突然変異誘発のように意図的であってもよく、タンパク質を産生する宿主の変異、又はPCR増幅によるエラーのように偶発的であってもよい。
【0054】
「IL31」は、本明細書で用いる場合、細胞内におけるIL31の発現及びプロセシングから生じる任意の未変性のIL31を意味する。本用語は、別途指示がない限り、霊長類(例えばヒト及びカニクイザル)及びげっ歯類(例えばマウス及びラット)、及び伴侶動物(例えばイヌ、ネコ、及びウマ)等の哺乳動物を含む任意の脊椎動物源からのIL31を含む。本用語は、天然に存在するIL31のバリアント、例えばスプライスバリアント又は対立遺伝子バリアントも含む。
【0055】
いくつかの実施形態では、イヌIL31は配列番号22又は配列番号44のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、ネコIL31は配列番号28のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、ウマIL31は配列番号29のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、ヒトIL31は配列番号46のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、セイウチIL31は配列番号47のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、マウスIL31は配列番号61のアミノ酸配列を含む。他の実施形態では、IL31は配列番号49、配列番号51、配列番号52、配列番号53、配列番号54、配列番号55、配列番号56、配列番号57、配列番号58、配列番号59、又は配列番号60のアミノ酸配列を含む。
【0056】
用語、抗体の「IL31結合ドメイン」は、IL31に結合する、抗IL31抗体の軽鎖及び重鎖によって形成された結合ドメインを意味する。
【0057】
いくつかの実施形態では、IL31結合ドメインは、ヒトIL31に結合する場合よりは大きな親和性をもってイヌIL31に結合する。いくつかの実施形態では、IL31結合ドメインは他の伴侶動物のIL31、例えばネコIL31又はウマIL31に結合する。いくつかの実施形態では、IL31結合ドメインはヒトIL31に結合しない。
【0058】
本明細書で用いる場合、用語「エピトープ」は、抗原結合分子(例えば抗体、抗体断片、又は抗体結合領域を含むスカフォールドタンパク質)が結合する標的分子(例えばタンパク質、核酸、炭水化物、又は脂質等の抗原)の上の部位を意味する。エピトープは、アミノ酸、ポリペプチド、又は糖側鎖等の分子の化学的に活性な表面グループを含むことが多く、特定の3次元構造特徴、並びに特定の荷電特徴を有している。エピトープは、標的分子の近接した、又は並置された近接していない残基(例えばアミノ酸、ヌクレオチド、糖類、脂質部分)の両方から形成され得る。近接した残基(例えばアミノ酸、ヌクレオチド、糖類、脂質部分)から形成されたエピトープは、典型的には変性溶媒への曝露で保持される一方、三次折り畳みによって形成されたエピトープは、典型的には変性溶媒での処理によって失われる。エピトープは、それだけに限らないが、少なくとも3残基、少なくとも5残基、又は8~10残基(例えばアミノ酸又はヌクレオチド)を含み得る。いくつかの例では、エピトープの長さは20残基(例えばアミノ酸又はヌクレオチド)未満、15残基未満、又は12残基未満である。2つの抗体が抗原に対して競合結合を示す場合には、これらは抗原の中の同じエピトープに結合し得る。いくつかの実施形態では、エピトープは、抗原結合分子のCDR残基へのある最小の距離によって同定することができる。いくつかの実施形態では、エピトープは上記の距離によって同定され、さらに抗体残基と抗原残基との間の結合(例えば水素結合)に関与するそれらの残基に限定される。エピトープは種々のスキャンによっても同定することができ、例えばアラニン又はアルギニンのスキャンは、抗原結合分子が相互作用することができる1又は複数の残基を示すことができる。明示的に注記しない限り、エピトープとしての残基の組は、その他の残基を特定の抗体に対するエピトープの一部であることから排除しない。むしろ、そのような組の存在は、最小限のシリーズ(又は種の組)のエピトープを表わす。したがって、いくつかの実施形態では、エピトープとして同定された残基の組は、抗原上のエピトープの残基の排他的なリストというより、抗原に関連する最小のエピトープを表わす。
【0059】
いくつかの実施形態では、エピトープはアミノ酸配列PSDX1X2KI(配列番号45)を含み、ここでXは任意のアミノ酸残基である。いくつかの実施形態では、X1は疎水性アミノ酸である。いくつかの実施形態では、X1はA、V、I、及びLから選択される。いくつかの実施形態では、X1はV及びIから選択される。いくつかの実施形態では、X2は親水性アミノ酸である。いくつかの実施形態では、X2はA、R、K、Q、及びNから選択される。いくつかの実施形態では、X2はR及びQから選択される。いくつかの実施形態では、X1はVであり、X2はRである。いくつかの実施形態では、X1はIであり、X2はQである。いくつかの実施形態では、エピトープは配列番号88のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、エピトープは配列番号23のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、エピトープは配列番号22のアミノ酸34~50の中にある。いくつかの実施形態では、エピトープは配列番号22のアミノ酸34~50を含む。
【0060】
用語「CDR」は、当業者への同定の少なくとも1つの様式によって定義される相補性決定領域を意味する。いくつかの実施形態では、CDRはチョチア番号付けスキーム、カバット番号付けスキーム、カバットとチョチアの組合せ、AbM定義、接触定義、又はカバット、チョチア、AbM、若しくは接触定義の組合せのいずれかに従って定義することができる。抗体の中の種々のCDRは、限定するものではないがCDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2、及びCDR-L3を含む適切な番号及び鎖の種類によって表わすことができる。用語「CDR」は、本明細書では超可変ループを含む「超可変領域」又はHVRをも包含して用いられる。
【0061】
いくつかの実施形態では、抗IL31抗体は、(a)配列番号1のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(b)配列番号2、配列番号62、配列番号89、若しくは配列番号87のアミノ酸配列を含むCDR-H2、又は(c)配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含む重鎖を含む。いくつかの実施形態では、抗IL31抗体は、(a)配列番号8若しくは配列番号63のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(b)配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR-L2、又は(c)配列番号10のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含む軽鎖を含む。
【0062】
いくつかの実施形態では、抗IL31抗体は、(a)配列番号1のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(b)配列番号2若しくは89のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(c)配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含む重鎖、並びに(a)配列番号8若しくは63のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(b)配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び(c)配列番号10のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含む軽鎖を含む。
【0063】
いくつかの実施形態では、抗IL31抗体は、(a)配列番号1のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(b)配列番号62若しくは87のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(c)配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含む重鎖、並びに(a)配列番号8若しくは63のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(b)配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び(c)配列番号10のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含む軽鎖を含む。
【0064】
用語「可変領域」は、本明細書で用いる場合、少なくとも3つのCDRを含む領域を意味する。いくつかの実施形態では、可変領域は3つのCDR及び少なくとも1つのフレームワーク領域(「FR」)を含む。用語「重鎖可変領域」又は「可変重鎖」は相互交換可能に用いられ、少なくとも3つの重鎖CDRを含む領域を意味する。用語「軽鎖可変領域」又は「可変軽鎖」は相互交換可能に用いられ、少なくとも3つの軽鎖CDRを含む領域を意味する。いくつかの実施形態では、可変重鎖又は可変軽鎖は少なくとも1つのフレームワーク領域を含む。いくつかの実施形態では、抗体は、HC-FR1、HC-FR2、HC-FR3、及びHC-FR4から選択される少なくとも1つの重鎖フレームワーク領域を含む。いくつかの実施形態では、抗体は、LC-FR1、LC-FR2、LC-FR3、及びLC-FR4から選択される少なくとも1つの軽鎖フレームワーク領域を含む。フレームワーク領域は軽鎖CDRの間、又は重鎖CDRの間に並置されてもよい。例えば、抗体は以下の構造、(HC-FR1)-(CDR-H1)-(HC-FR2)-(CDR-H2)-(HC-FR3)-(CDR-H3)-(HC-FR4)を有する可変重鎖を含んでよい。抗体は以下の構造、(CDR-H1)-(HC-FR2)-(CDR-H2)-(HC-FR3)-(CDR-H3)を有する可変重鎖を含んでよい。抗体は以下の構造、(LC-FR1)-(CDR-L1)-(LC-FR2)-(CDR-L2)-(LC-FR3)-(CDR-L3)-(LC-FR4)を有する可変軽鎖を含んでもよい。抗体は以下の構造、(CDR-L1)-(LC-FR2)-(CDR-L2)-(LC-FR3)-(CDR-L3)を有する可変軽鎖を含んでもよい。
【0065】
いくつかの実施形態では、抗IL31抗体は、(a)配列番号4の可変領域重鎖フレームワーク1(HC-FR1)配列、(b)配列番号5のHC-FR2配列、(c)配列番号6のHC-FR3配列、(d)配列番号7のHC-FR4配列、(e)配列番号11の可変領域軽鎖フレームワーク1(LC-FR1)配列、(f)配列番号12のLC-FR2配列、(g)配列番号13のLC-FR3配列、又は(h)配列番号14のLC-FR4配列の1若しくは複数を含む。いくつかの実施形態では、抗IL31抗体は、(a)配列番号16、(b)配列番号24、又は(c)配列番号32の可変軽鎖配列を含む。いくつかの実施形態では、抗IL31抗体は、(a)配列番号15、(b)配列番号25、又は(c)配列番号33の可変重鎖配列を含む。いくつかの実施形態では、抗IL31抗体は、(a)配列番号16の可変軽鎖配列及び配列番号15の可変重鎖配列、(b)配列番号24の可変軽鎖配列及び配列番号25の可変重鎖配列、又は(c)配列番号32の可変軽鎖配列及び配列番号33の可変重鎖配列を含む。
【0066】
用語「定常領域」は、本明細書で用いる場合、少なくとも3つの定常ドメインを含む領域を意味する。用語「重鎖定常領域」又は「定常重鎖」は相互交換可能に用いられ、少なくとも3つの重鎖定常ドメイン、CH1、CH2、及びCH3を含む領域を意味する。非限定的な例示的重鎖定常領域には、γ、δ、α、ε、及びμが含まれる。それぞれの重鎖定常領域は、抗体のアイソタイプに対応する。例えば、γ定常領域を含む抗体はIgG抗体であり、δ定常領域を含む抗体はIgD抗体であり、α定常領域を含む抗体はIgA抗体であり、μ定常領域を含む抗体はIgM抗体であり、ε定常領域を含む抗体はIgE抗体である。特定のアイソタイプはサブクラスにさらに細分割することができる。例えば、IgG抗体は、それだけに限らないが(γ1定常領域を含む)IgG1、(γ2定常領域を含む)IgG2、(γ3定常領域を含む)IgG3、(γ4定常領域を含む)IgG4抗体を含み、IgA抗体は、それだけに限らないが(α1定常領域を含む)IgA1及び(α2定常領域を含む)IgA2抗体を含み、IgM抗体は、それだけに限らないがIgM1及びIgM2を含む。用語「軽鎖定常領域」又は「定常軽鎖」は相互交換可能に用いられ、軽鎖定常ドメインCLを含む領域を意味する。非限定的な例示的軽鎖定常領域には、λ及びκが含まれる。機能を変化させないドメイン内の欠失及び変化は、他に指定しない限り、用語「定常領域」の範囲内に包含される。イヌ、ネコ、及びウマは、IgG、IgA、IgD、IgE、及びIgM等の抗体クラスを有する。イヌIgG抗体クラスの中にはIgG-A、IgG-B、IgG-C、及びIgG-Dがある。ネコIgG抗体クラスの中にはIgG1a、IgG1b、及びIgG2がある。ウマIgG抗体クラスの中にはIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgG5、IgG6、及びIgG7がある。
【0067】
用語「キメラ抗体」又は「キメラ」は、重鎖又は軽鎖の一部が特定の源又は種に由来する一方、重鎖又は軽鎖の残りの少なくとも一部が異なる源又は種に由来する抗体を意味する。いくつかの実施形態では、キメラ抗体は、第1の種(例えばマウス、ラット、カニクイザル、その他)からの少なくとも1つの可変領域及び第2の種(例えばヒト、イヌ、ネコ、ウマ、その他)からの少なくとも1つの定常領域を含む抗体を意味する。いくつかの実施形態では、キメラ抗体は少なくとも1つのマウス可変領域と少なくとも1つのイヌ定常領域を含む。いくつかの実施形態では、キメラ抗体は少なくとも1つのマウス可変領域と少なくとも1つのネコ定常領域を含む。いくつかの実施形態では、キメラ抗体の可変領域の全てが第1の種からのものであり、キメラ抗体の定常領域の全てが第2の種からのものである。いくつかの実施形態では、キメラ抗体は伴侶動物からの定常重鎖領域又は定常軽鎖領域を含む。いくつかの実施形態では、キメラ抗体はマウスの可変重鎖及び軽鎖、並びに伴侶動物の定常重鎖及び軽鎖を含む。例えば、キメラ抗体はマウスの可変重鎖及び軽鎖、並びにイヌの定常重鎖及び軽鎖を含んでよく、キメラ抗体はマウスの可変重鎖及び軽鎖、並びにネコの定常重鎖及び軽鎖を含んでよく、あるいはキメラ抗体はマウスの可変重鎖及び軽鎖、並びにウマの定常重鎖及び軽鎖を含んでよい。
【0068】
いくつかの実施形態では、抗IL31抗体は、
a.(i)配列番号26の軽鎖アミノ酸配列、(ii)配列番号27の重鎖アミノ酸配列、若しくは(iii)(i)の軽鎖アミノ酸配列及び(ii)の重鎖配列、又は
b.(i)配列番号30の軽鎖アミノ酸配列、(ii)配列番号31の重鎖アミノ酸配列、若しくは(iii)(i)の軽鎖アミノ酸配列及び(ii)の重鎖配列を含む、キメラ抗体を含む。
【0069】
「イヌキメラ」又は「イヌキメラ抗体」は、イヌに由来する重鎖の部分又は軽鎖の部分を少なくとも有するキメラ抗体を意味する。「ネコキメラ」又は「ネコキメラ抗体」は、ネコに由来する重鎖の部分又は軽鎖の部分を少なくとも有するキメラ抗体を意味する。「ウマキメラ」又は「ウマキメラ抗体」は、ウマに由来する重鎖の部分又は軽鎖の部分を少なくとも有するキメラ抗体を意味する。いくつかの実施形態では、イヌキメラ抗体は、マウスの可変重鎖及び軽鎖、並びにイヌの定常重鎖及び軽鎖を含む。いくつかの実施形態では、ネコキメラ抗体は、マウスの可変重鎖及び軽鎖、並びにネコの定常重鎖及び軽鎖を含む。いくつかの実施形態では、ウマキメラ抗体は、マウスの可変重鎖及び軽鎖、並びにウマの定常重鎖及び軽鎖を含む。いくつかの実施形態では、抗体はマウスの可変重鎖フレームワーク領域又はマウス可変軽鎖フレームワーク領域を含むキメラ抗体である。
【0070】
「イヌ抗体」は、本明細書で用いる場合、イヌで産生された抗体、イヌ免疫グロブリン遺伝子を含むか、若しくはイヌ免疫グロブリンぺプチドを含む非イヌ動物で産生された抗体、又は抗体レパートリーがイヌ免疫グロブリン配列に基づいているファージディスプレイ等のインビトロ法を用いて選択された抗体を包含する。用語「イヌ抗体」は、イヌ配列である配列の属を意味する。したがって、この用語は抗体を創成するプロセスを表わしているのではなく、関連する配列の属を表わしている。
【0071】
いくつかの実施形態では、抗IL31抗体は、IgG-A、IgG-B、IgG-C、及びIgG-D定常領域から選択されるイヌ重鎖定常領域を含む。いくつかの実施形態では、抗IL31抗体は、イヌIgG-A、IgG-B、IgG-C、又はIgG-D抗体である。いくつかの実施形態では、抗IL31抗体は、(a)配列番号17の重鎖アミノ酸配列を含むイヌIgG-A抗体、(b)配列番号18の重鎖アミノ酸配列を含むイヌIgG-B抗体、(c)配列番号19の重鎖アミノ酸配列を含むイヌIgG-C抗体、又は(d)配列番号20の重鎖アミノ酸配列を含むイヌIgG-D抗体である。
【0072】
「ネコ抗体」は、本明細書で用いる場合、ネコで産生された抗体、ネコ免疫グロブリン遺伝子を含むか、若しくはネコ免疫グロブリンぺプチドを含む非ネコ動物で産生された抗体、又は抗体レパートリーがネコ免疫グロブリン配列に基づいているファージディスプレイ等のインビトロ法を用いて選択された抗体を包含する。用語「ネコ抗体」は、ネコ配列である配列の属を意味する。したがって、この用語は抗体を創成するプロセスを表わしているのではなく、関連する配列の属を表わしている。
【0073】
いくつかの実施形態では、抗IL31抗体は、IgG1、IgG2a、及びIgG2b定常領域から選択されるネコ重鎖定常領域を含む。いくつかの実施形態では、抗IL31抗体はネコIgG1、IgG2a、又はIgG2b抗体である。
【0074】
「ウマ抗体」は、本明細書で用いる場合、ウマで産生された抗体、ウマ免疫グロブリン遺伝子を含むか、若しくはウマ免疫グロブリンぺプチドを含む非ウマ動物で産生された抗体、又は抗体レパートリーがウマ免疫グロブリン配列に基づいているファージディスプレイ等のインビトロ法を用いて選択された抗体を包含する。用語「ウマ抗体」は、ウマ配列である配列の属を意味する。したがって、この用語は抗体を創成するプロセスを表わしているのではなく、関連する配列の属を表わしている。
【0075】
いくつかの実施形態では、抗IL31抗体は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgG5、IgG6、及びIgG7定常領域から選択されるウマ重鎖定常領域を含む。いくつかの実施形態では、抗IL31抗体はウマIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgG5、IgG6、及びIgG7抗体である。
【0076】
「イヌ化抗体」は、非イヌ可変領域の一部における少なくとも1つのアミノ酸がイヌ可変領域からの対応するアミノ酸で置き換えられている抗体を意味する。いくつかの実施形態では、イヌ化抗体は少なくとも1つのイヌ定常領域(例えばγ定常領域、α定常領域、δ定常領域、ε定常領域、μ定常領域、又はその他)又はその断片を含む。いくつかの実施形態では、イヌ化抗体はFab、scFv、(Fab’)2、その他の抗体断片である。用語「イヌ化」は、キメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖、又は非イヌ免疫グロブリンの最小の配列を含むその断片(Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2、若しくは抗体のその他の抗原結合配列等)である非イヌ(例えばマウス)抗体の形態をも意味する。イヌ化抗体は、レシピエントのCDRからの残基が所望の特異性、親和性、及び能力を有するマウス、ラット、又はウサギ等の非イヌ種のCDRからの残基(ドナー抗体)によって置換されたイヌ免疫グロブリン(レシピエント抗体)を含んでよい。いくつかの例では、イヌ免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非イヌ残基によって置き換えられる。さらに、イヌ化抗体は、レシピエント抗体にも導入されたCDR又はフレームワーク配列にも見られないが、抗体の性能をさらに改良し最適化するために含有される残基を含んでもよい。
【0077】
いくつかの実施形態では、マウス可変重鎖又はマウス可変軽鎖の部分における少なくとも1つのアミノ酸残基は、イヌ可変領域からの対応するアミノ酸で置き換えられている。いくつかの実施形態では、修飾された鎖は、イヌ定常重鎖又はイヌ定常軽鎖に融合している。いくつかの実施形態では、抗IL31抗体は、(a)配列番号15の重鎖配列、(b)配列番号17の重鎖配列、(c)配列番号18の重鎖配列、(d)配列番号19の重鎖配列、(e)配列番号20の重鎖配列、(f)配列番号16の軽鎖配列、又は(g)配列番号21の軽鎖配列を含むイヌ化抗体である。
【0078】
「ネコ化抗体」は、非ネコ可変領域の一部における少なくとも1つのアミノ酸がネコ可変領域からの対応するアミノ酸で置き換えられている抗体を意味する。いくつかの実施形態では、ネコ化抗体は少なくとも1つのネコ定常領域(例えばγ定常領域、α定常領域、δ定常領域、ε定常領域、μ定常領域、又はその他)又はその断片を含む。いくつかの実施形態では、ネコ化抗体はFab、scFv、(Fab’)2、その他の抗体断片である。用語「ネコ化」は、キメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖、又は非ネコ免疫グロブリンの最小の配列を含むその断片(Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2、若しくは抗体のその他の抗原結合配列等)である非ネコ(例えばマウス)抗体の形態をも意味する。ネコ化抗体は、レシピエントのCDRからの残基が所望の特異性、親和性、及び能力を有するマウス、ラット、又はウサギ等の非ネコ種のCDRからの残基(ドナー抗体)によって置換されたネコ免疫グロブリン(レシピエント抗体)を含んでよい。いくつかの例では、ネコ免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ネコ残基によって置き換えられる。さらに、ネコ化抗体は、レシピエント抗体にも導入されたCDR又はフレームワーク配列にも見られないが、抗体の性能をさらに改良し最適化するために含有される残基を含んでもよい。
【0079】
いくつかの実施形態では、マウス可変重鎖又はマウス可変軽鎖の部分における少なくとも1つのアミノ酸残基は、ネコ可変領域からの対応するアミノ酸で置き換えられている。いくつかの実施形態では、修飾された鎖は、ネコ定常重鎖又はイヌ定常軽鎖に融合している。いくつかの実施形態では、抗IL31抗体は、(a)配列番号32の軽鎖配列、(b)配列番号34の軽鎖配列、(c)配列番号33の重鎖配列、又は(d)配列番号35の重鎖配列を含むネコ化抗体である。
【0080】
「ウマ化抗体」は、非ウマ可変領域の一部における少なくとも1つのアミノ酸がウマ可変領域からの対応するアミノ酸で置き換えられている抗体を意味する。いくつかの実施形態では、ウマ化抗体は少なくとも1つのウマ定常領域(例えばγ定常領域、α定常領域、δ定常領域、ε定常領域、μ定常領域、又はその他)又はその断片を含む。いくつかの実施形態では、ウマ化抗体はFab、scFv、(Fab’)2、その他の抗体断片である。用語「ウマ化」は、キメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖、又は非ウマ免疫グロブリンの最小の配列を含むその断片(Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2、若しくは抗体のその他の抗原結合配列等)である非ウマ(例えばマウス)抗体の形態をも意味する。ウマ化抗体は、レシピエントのCDRからの残基が所望の特異性、親和性、及び能力を有するマウス、ラット、又はウサギ等の非ウマ種のCDRからの残基(ドナー抗体)によって置換されたウマ免疫グロブリン(レシピエント抗体)を含んでよい。いくつかの例では、ウマ免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ウマ残基によって置き換えられる。さらに、ウマ化抗体は、レシピエント抗体にも導入されたCDR又はフレームワーク配列にも見られないが、抗体の性能をさらに改良し最適化するために含有される残基を含んでもよい。
【0081】
いくつかの実施形態では、マウス可変重鎖又はマウス可変軽鎖の部分における少なくとも1つのアミノ酸残基は、ウマ可変領域からの対応するアミノ酸で置き換えられている。いくつかの実施形態では、修飾された鎖は、ウマ定常重鎖又はイヌ定常軽鎖に融合している。
【0082】
用語「IgX Fc」は、Fc領域が特定の抗体アイソタイプ(例えばIgG、IgA、IgD、IgE、IgM、その他)に由来することを意味し、ここで「X」は抗体のアイソタイプを意味する。したがって、「IgG Fc」はγ鎖のFc領域を意味し、「IgA Fc」はα鎖のFc領域を意味し、「IgD Fc」はδ鎖のFc領域を意味し、「IgE Fc」はε鎖のFc領域を意味し、「IgM Fc」はμ鎖のFc領域を意味する、等である。いくつかの実施形態では、IgG Fc領域はCH1、ヒンジ、CH2、CH3、及びCL1を含む。「IgX-N-Fc」はFc領域が抗体のアイソタイプの特定のサブクラス(例えばイヌIgGサブクラスA、B、C、若しくはD、ネコIgGサブクラス1、2a、若しくは2b、又はウマIgGサブクラスIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgG5、IgG6、又はIgG7、その他)に由来することを意味し、ここで「N」はサブクラスを意味する。いくつかの実施形態では、IgX Fc又はIgX-N-Fc領域は、イヌ、ネコ、又はウマ等の伴侶動物に由来する。いくつかの実施形態では、IgG Fc領域は、IgG-A、IgG-B、IgG-C、若しくはIgG-D等のイヌγ重鎖から単離される。いくつかの例では、IgG Fc領域は、IgG1、IgG2a、若しくはIgG2b等のネコγ重鎖から単離される。IgG-A、IgG-B、IgG-C、若しくはIgG-DのFc領域を含む抗体は、組み換え産生系において高い発現レベルを提供し得る。
【0083】
用語「親和性」は、分子の単一の結合部位(例えば抗体)とその結合パートナー(例えば抗原)との間の非共有相互作用の全合計の強さを意味する。分子XのそのパートナーYに対する親和性は一般に解離定数(KD)で表わすことができる。親和性は、当該技術分野で公知の一般的な方法、例えばイムノブロット、ELISA KD、KinEx A、バイオレイヤー干渉法(BLI)、又は表面プラスモン共鳴デバイスによって測定することができる。
【0084】
用語「KD」、「Kd」、「Kd」、又は「Kd値」は相互交換可能に用いられ、抗体-抗原相互作用の平衡解離定数を意味する。いくつかの実施形態では、抗体のKdはオクテット(登録商標)システム(Pall ForteBio LLC、Fremont(CA))等のバイオセンサーを用いるバイオレイヤー干渉法を用い、供給業者の指示書に従って測定される。簡単には、ビオチン化した抗原をセンサーチップに結合して、抗体の会合を90秒間モニターし、解離を600秒間モニターする。希釈及び結合ステップのためのバッファーは20mMのリン酸塩、150mMのNaCl、pH7.2である。ドリフトがあればそれを補正するためにバッファーのみのブランクカーブを差し引く。データは、会合速度定数(kon)、解離速度定数(koff)、及びKdを決定するためのForteBioデータ解析ソフトウェアを用いる2:1結合モデルにフィッティングする。平衡解離定数(Kd)は、koff/konの比として計算される。用語「kon」は抗原に対する抗体の会合の速度定数を意味し、用語「koff」は抗体/抗原複合体からの抗体の解離の速度定数を意味する。
【0085】
抗原又はエピトープへの用語「結合」は当該技術分野でよく理解されている用語であり、そのような結合を決定する方法も当該技術分野で周知である。分子が特定の細胞又は物質と反応し、会合し、又はそれへの親和性を有して、その反応、会合、又は親和性が当該技術分野で公知の1若しくは複数の方法、例えばイムノブロット、ELISA KD、KinEx A、バイオレイヤー干渉法(BLI)、表面プラスモン共鳴デバイス、その他によって検出可能であれば、その分子は「結合」を示すと称される。
【0086】
「表面プラスモン共鳴」は、例えばBIAcore(商標)システム(BIACore International AB、GE Healthcare Company、Uppsala、Sweden及びPiscataway、N.J.)を用いるバイオセンサーマトリックス内のタンパク質濃度の変化の検出によるリアルタイム二重特異的相互作用の解析を可能にする光学的現象を表わす。さらなる説明には、Jonssonら、(1993年)、Ann.Biol.Clin.51:19~26頁を参照されたい。
【0087】
「バイオレイヤー干渉法」は、バイオセンサーチップ上の固定化されているタンパク質の層及び内部参照層から反射された光の干渉パターンを解析する光学的解析手法を意味する。バイオセンサーチップに結合した分子の数の変化が干渉パターンを変化させ、これをリアルタイムで測定することができる。バイオレイヤー干渉法の非限定的な例示的デバイスはオクテット(登録商標)システム(Pall ForteBio LLC)である。例えばAbdicheら、2008年、Anal.Biochem.377:209~277頁を参照されたい。
【0088】
いくつかの実施形態では、抗IL31抗体はバイオレイヤー干渉法で測定して、5×10-6M未満、1×10-6M未満、5×10-7M未満、1×10-7M未満、5×10-8M未満、1×10-8M未満、5×10-9M未満、1×10-9M未満、5×10-10M未満、1×10-10M未満、5×10-11M未満、1×10-11M未満、5×10-12M未満、又は1×10-12M未満の解離定数(Kd)で、イヌIL31、ネコIL31、又はウマIL31に結合する。いくつかの実施形態では、抗IL31抗体はバイオレイヤー干渉法で測定して、5×10-6M~1×10-6M、5×10-6M~5×10-7M、5×10-6M~1×10-7M、5×10-6M~5×10-8M、5×10-6M~1×10-8M、5×10-6M~5×10-9M、5×10-6M~1×10-9M、5×10-6M~5×10-10M、5×10-6M~1×10-10M、5×10-6M~5×10-11M、5×10-6M~1×10-11M、5×10-6M~5×10-12M、5×10-6M~1×10-12M、1×10-6M~5×10-7M、1×10-6M~1×10-7M、1×10-6M~5×10-8M、1×10-6M~1×10-8M、1×10-6M~5×10-9M、1×10-6M~1×10-9M、1×10-6M~5×10-10M、1×10-6M~1×10-10M、1×10-6M~5×10-11M、1×10-6M~1×10-11M、1×10-6M~5×10-12M、1×10-6M~1×10-12M、5×10-7M~1×10-7M、5×10-7M~5×10-8M、5×10-7M~1×10-8M、5×10-7M~5×10-9M、5×10-7M~1×10-9M、5×10-7M~5×10-10M、5×10-7M~1×10-10M、5×10-7M~5×10-11M、5×10-7M~1×10-11M、5×10-7M~5×10-12M、5×10-7M~1×10-12M、1×10-7M~5×10-8M、1×10-7M~1×10-8M、1×10-7M~5×10-9M、1×10-7M~1×10-9M、1×10-7M~5×10-10M、1×10-7M~1×10-10M、1×10-7M~5×10-11M、1×10-7M~1×10-11M、1×10-7M~5×10-12M、1×10-7M~1×10-12M、5×10-8M~1×10-8M、5×10-8M~5×10-9M、5×10-8M~1×10-9M、5×10-8M~5×10-10M、5×10-8M~1×10-10M、5×10-8M~5×10-11M、5×10-8M~1×10-11M、5×10-8M~5×10-12M、5×10-8M~1×10-12M、1×10-8M~5×10-9M、1×10-8M~1×10-9M、1×10-8M~5×10-10M、1×10-8M~1×10-10M、1×10-8M~5×10-11M、1×10-8M~1×10-11M、1×10-8M~5×10-12M、1×10-8M~1×10-12M、5×10-9M~1×10-9M、5×10-9M~5×10-10M、5×10-9M~1×10-10M、5×10-9M~5×10-11M、5×10-9M~1×10-11M、5×10-9M~5×10-12M、5×10-9M~1×10-12M、1×10-9M~5×10-10M、1×10-9M~1×10-10M、1×10-9M~5×10-11M、1×10-9M~1×10-11M、1×10-9M~5×10-12M、1×10-9M~1×10-12M、5×10-10M~1×10-10M、5×10-10M~5×10-11M、1×10-10M~5×10-11M、1×10-10M~1×10-11M、1×10-10M~5×10-12M、1×10-10M~1×10-12M、5×10-11M~1×10-12M、5×10-11M~5×10-12M、5×10-11M~1×10-12M、1×10-11M~5×10-12M、又は1×10-11M~1×10-12MのKdで、イヌIL31、ネコIL31、又はウマIL31に結合する。いくつかの実施形態では、抗IL31抗体はイムノブロット解析で決定して、イヌIL31、ネコIL31、又はウマIL31に結合する。
【0089】
いくつかの実施形態では、抗IL31抗体はイムノブロット解析及び/又はバイオレイヤー干渉法で決定して、ヒトIL31に結合しない。
【0090】
いくつかの実施形態では、IL31への結合について本明細書に記載した抗IL31抗体(例えばM14、M18、M19、又はM87)と競合する抗IL31抗体が提供される。いくつかの実施形態では、本明細書に提供した抗体のいずれかとの結合について競合する抗体を作成し又は使用することができる。いくつかの実施形態では、イヌIL31又はネコIL31との結合においてモノクローナルM14抗体と競合する抗IL31抗体が提供される。
【0091】
「バリアント」は、配列を整列させ、配列同一性百分率を最大化するために必要な場合にはギャップを導入した後で、配列同一性の部分として保存的置換があっても考慮せずに、未変性の配列ポリペプチドと少なくとも約50%のアミノ酸配列の同一性を有する生物学的に活性なポリペプチドを意味する。そのようなバリアントには、例えばポリペプチドのN末端又はC末端に1又は複数のアミノ酸残基が付加され又は欠失したポリペプチドが含まれる。
【0092】
いくつかの実施形態では、バリアントは未変性配列のポリペプチドと少なくとも約50%のアミノ酸配列同一性、少なくとも約60%のアミノ酸配列同一性、少なくとも約65%のアミノ酸配列同一性、少なくとも約70%のアミノ酸配列同一性、少なくとも約75%のアミノ酸配列同一性、少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性、少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性、少なくとも約90%のアミノ酸配列同一性、少なくとも約95%のアミノ酸配列同一性を有する。
【0093】
本明細書で用いる場合、ぺプチド、ポリペプチド、又は抗体の配列に関する「アミノ酸配列同一性百分率(%)」及び「相同性」は、配列を整列させ、配列同一性百分率を最大化するために必要な場合にはギャップを導入した後で、配列同一性の部分として保存的置換があっても考慮せずに、特定のぺプチド又はポリペプチド配列におけるアミノ酸残基と同一の候補配列におけるアミノ酸残基の百分率として定義される。アミノ酸配列同一性百分率を決定する目的でのアラインメントは、例えばBLAST、BLAST-2、ALIGN、又はMEGALINE(商標)(DNASTAR)ソフトウェア等の公共で入手可能なコンピューターソフトウェアを用いて、当該技術分野内の種々の方法によって達成することができる。当業者であれば、比較される配列の完全長にわたって最大のアラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、アラインメントを測定するための適切なパラメーターを決定することができる。
【0094】
アミノ酸置換は、それだけに限らないが、ポリペプチド中の1つのアミノ酸の別のアミノ酸による置き換えを含み得る。例示的な置換を表2に示す。アミノ酸置換は目的の抗体に導入してよく、生成物は所望の活性、例えば抗原結合の保持/改善、免疫原性の低下、又はADCC若しくはCDCの改善についてスクリーニングされる。
表2
【0095】
アミノ酸は共通の側鎖の特性に従って分類され得る。
(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;
(2)中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;
(3)酸性:Asp、Glu;
(4)塩基性:His、Lys、Arg;
(5)鎖の配向に影響する残基:Gly、Pro;
(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe。
【0096】
非保存的置換は、これらのクラスの1つのメンバーと別のクラスとの交換を伴うことになる。
【0097】
いくつかの実施形態では、抗IL31抗体は重鎖及び軽鎖を含み、
a.重鎖は、配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも85%の配列同一性、少なくとも90%の配列同一性、少なくとも95%の配列同一性、又は少なくとも98%の配列同一性を有するCDR-H1配列、配列番号2、配列番号62、配列番号89、又は配列番号87のアミノ酸配列と少なくとも85%の配列同一性、少なくとも90%の配列同一性、少なくとも95%の配列同一性、又は少なくとも98%の配列同一性を有するCDR-H2配列、及び配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも85%の配列同一性、少なくとも90%の配列同一性、少なくとも95%の配列同一性、又は少なくとも98%の配列同一性を有するCDR-H3配列を含み、
b.軽鎖は、配列番号8又は配列番号63のアミノ酸配列と少なくとも85%の配列同一性、少なくとも90%の配列同一性、少なくとも95%の配列同一性、又は少なくとも98%の配列同一性を有するCDR-L1配列、配列番号9のアミノ酸配列と少なくとも85%の配列同一性、少なくとも90%の配列同一性、少なくとも95%の配列同一性、又は少なくとも98%の配列同一性を有するCDR-L2配列、及び配列番号10のアミノ酸配列と少なくとも85%の配列同一性、少なくとも90%の配列同一性、少なくとも95%の配列同一性、又は少なくとも98%の配列同一性を有するCDR-L3配列を含む。
【0098】
いくつかの実施形態では、抗IL31抗体は重鎖及び軽鎖を含み、
a.(i)配列番号24のアミノ酸配列と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、若しくは少なくとも98%の配列同一性を有する可変軽鎖配列、(ii)配列番号25のアミノ酸配列と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、若しくは少なくとも98%の配列同一性を有する可変重鎖配列、又は(iii)(i)の可変軽鎖配列及び(ii)の可変重鎖配列、あるいは
b.(i)配列番号16のアミノ酸配列と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、若しくは少なくとも98%の配列同一性を有する可変軽鎖配列、(ii)配列番号15のアミノ酸配列と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、若しくは少なくとも98%の配列同一性を有する可変重鎖配列、又は(iii)(i)の可変軽鎖配列及び(ii)の可変重鎖配列、あるいは
c.(i)配列番号32のアミノ酸配列と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、若しくは少なくとも98%の配列同一性を有する可変軽鎖配列、(ii)配列番号33のアミノ酸配列と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、若しくは少なくとも98%の配列同一性を有する可変重鎖配列、又は(iii)(i)の可変軽鎖配列及び(ii)の可変重鎖配列、あるいは
d.(i)配列番号64のアミノ酸配列と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、若しくは少なくとも98%の配列同一性を有する可変軽鎖配列、(ii)配列番号67のアミノ酸配列と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、若しくは少なくとも98%の配列同一性を有する可変重鎖配列、又は(iii)(i)の可変軽鎖配列及び(ii)の可変重鎖配列、あるいは
e.(i)配列番号65のアミノ酸配列と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、若しくは少なくとも98%の配列同一性を有する可変軽鎖配列、(ii)配列番号68のアミノ酸配列と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、若しくは少なくとも98%の配列同一性を有する可変重鎖配列、又は(iii)(i)の可変軽鎖配列及び(ii)の可変重鎖配列、あるいは
f.(i)配列番号66のアミノ酸配列と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、若しくは少なくとも98%の配列同一性を有する可変軽鎖配列、(ii)配列番号69のアミノ酸配列と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、若しくは少なくとも98%の配列同一性を有する可変重鎖配列、又は(iii)(i)の可変軽鎖配列及び(ii)の可変重鎖配列。
【0099】
用語「ベクター」は、クローン化されたポリヌクレオチド又は宿主細胞中で増加することができるポリヌクレオチドを含むように操作され得るポリヌクレオチドを記述するために用いられる。ベクターは以下の要素、即ち複製開始点、目的のポリペプチドの発現を規制する1若しくは複数の調節配列(例えばプロモーター又はエンハンサー等)、又は1若しくは複数の選択可能なマーカー遺伝子(例えば抗生物質耐性遺伝子及び比色アッセイで用いることができる遺伝子等、例えばβ-ガラクトシダーゼ)の1又は複数を含み得る。用語「発現ベクター」は、宿主細胞中で目的のポリペプチドを発現させるために用いられるベクターを意味する。
【0100】
「宿主細胞」は、ベクター又は単離されたポリヌクレオチドのレシピエントであってよいか、又はそうであった細胞を意味する。宿主細胞は原核細胞又は真核細胞であってよい。例示的な真核細胞には、霊長類又は非霊長類動物細胞等の哺乳動物細胞、酵母等の真菌細胞、植物細胞、及び昆虫細胞が含まれる。非限定的な例示的哺乳動物細胞には、それだけに限らないがNS0細胞、PER.C6(登録商標)細胞(Crucell)、293細胞、及びCHO細胞、並びにそれらの誘導体、例えば293-6E、DG44、CHO-S、及びCHO-K細胞が含まれる。宿主細胞には単一の宿主細胞の子孫が含まれ、天然の、偶然の、又は意図的な変異のため、子孫は必ずしももとの親細胞と(形態学又はゲノムDNA相補性において)完全に同一である必要はない。宿主細胞は本明細書に提供するアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドをインビボでトランスフェクトされた細胞を含む。
【0101】
用語「単離された」は、本明細書で用いる場合、典型的にはそれとともに天然に見いだされるか又は産生される成分の少なくともいくつかから分離された分子を意味する。例えば、ポリペプチドは、それを産生した細胞の成分の少なくともいくつかから分離された場合、「単離された」と称される。ポリペプチドが発現の後に細胞から分泌された場合には、ポリペプチドを含む上清を、それを産生した細胞から物理的に分離することは、ポリペプチドを「単離する」ことと考えられる。同様に、ポリヌクレオチドは、これが典型的には天然にその中で見いだされる、より大きなポリヌクレオチド(DNAポリヌクレオチドの場合には例えばゲノムDNA又はミトコンドリアDNA等)の部分でない場合、又は、例えばRNAポリヌクレオチドの場合に、それを産生した細胞の成分の少なくともいくつかから分離された場合には、「単離された」と称される。したがって、宿主細胞の中のベクターに含まれるDNAポリヌクレオチドは、「単離された」と称し得る。いくつかの実施形態では、抗IL31抗体は、サイズ排除クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、プロテインAカラムクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、及びCHTクロマトグラフィー等のクロマトグラフィーを用いて精製される。
【0102】
用語「伴侶動物種」は、ヒトへのコンパニオンであることに適した動物を意味する。いくつかの実施形態では、伴侶動物種は小哺乳動物、例えばイヌ(canine)、ネコ(feline)、イヌ、ネコ、ウマ、ウサギ、フェレット、モルモット、げっ歯類、その他である。いくつかの実施形態では、伴侶動物種はウマ、ウシ、ブタ、その他の家畜である。
【0103】
用語「IL31シグナル伝達機能」は、IL31がその受容体又は受容体複合体に結合した際に発生する下流の活性の任意の1つ又はその組合せを意味する。いくつかの実施形態では、IL31シグナル伝達機能は、Janusキナーゼ(Jak)1又はJak2シグナル伝達分子の活性化を含む。いくつかの実施形態では、IL31シグナル伝達機能は、STAT-3又はSTAT-5タンパク質のリン酸化を含む。いくつかの実施形態では、IL31シグナル伝達機能は、ERK1/2 MAPキナーゼシグナル伝達経路を活性化することを含む。いくつかの実施形態では、IL31シグナル伝達機能は、PI3K/AKTシグナル伝達経路を活性化することを含む。いくつかの実施形態では、IL31シグナル伝達機能は、Jak1/2シグナル伝達経路を活性化することを含む。
【0104】
「STATリン酸化」は、STATタンパク質の発現後のリン酸化による変性を意味する。例えば、「STAT-3リン酸化」はSTAT-3のリン酸化を意味し、「STAT-5リン酸化」はSTAT-5のリン酸化を意味する。いくつかの実施形態では、STAT-3のリン酸化はイムノブロット解析で測定される。例えば、細胞(例えばイヌ単球DH82細胞)を、15%の熱不活化ウシ胎児血清、2mmol/LのGlutaMax、1mmol/Lのピルビン酸ナトリウム、及び10nm/mLのイヌインターフェロン-c(R&D Systems、Minneapolis、MN、USA)を含む増殖培地(例えばMEM、Life Technologies(登録商標))中で、1×105細胞/ウェルの密度で96ウェルの細胞培養プレートに、本明細書に記載した抗IL31抗体の存在下、37℃で24時間播種する。抗ホスホSTAT-3抗体及び抗STAT-3抗体(R&D Systems)を用いる細胞溶解物のイムノブロット解析を用いて、リン酸化STAT-3と非リン酸化STAT-3の互いに相対的な濃度を検出し、β-アクチンのコントロールと比較した。イムノブロットによるタンパク質の定性的又は定量的な濃度の決定法は、当業者には理解されている。いくつかの実施形態では、相対的濃度はイムノブロットの目視により定性的に決定される。いくつかの実施形態では、リン酸化STAT-3及び非リン酸化STAT-3の濃度は、イムノブロットをデジタルイメージ化し、バンドの強度を決定し、既知濃度のSTAT-3タンパク質の直線的標準線を用いて試料中のリン酸化又は非リン酸化STAT-3の濃度を逆算することによって、定量的に決定される。
【0105】
「低減させる」又は「阻害する」は、活性、機能、又は量を参照と比較して減少させ、低減させ、又は停止させることを意味する。いくつかの実施形態では、「低減させる」又は「阻害する」は、20%又はそれ以上の全体の減少を引き起こす能力を意味する。いくつかの実施形態では、「低減させる」又は「阻害する」は、50%又はそれ以上の全体の減少を引き起こす能力を意味する。いくつかの実施形態では、「低減させる」又は「阻害する」は、75%、85%、90%、95%、又はそれ以上の全体の減少を引き起こす能力を意味する。いくつかの実施形態では、上記の量は、同じ期間にわたるコントロール用量(プラセボ等)と比較して、ある期間にわたって阻害され、又は低減される。「参照」は、本明細書で用いる場合、比較の目的のために用いられる任意の試料、標準、又はレベルを意味する。参照は健常な又は非疾患の試料から得てよい。いくつかの例では、参照は伴侶動物の非疾患又は非処置の試料から得られる。いくつかの例では、参照は試験され又は処置されている動物でない特定の種の1又は複数の健常な動物から得られる。
【0106】
用語「実質的に低減した」は、本明細書で用いる場合、数値及び参照数値によって測定される生物学的特性の文脈の中で2つの値の間の相違が統計的に有意であると当業者が考えるほど十分に高い、数値と参照数値との間の低減の程度を表わす。いくつかの実施形態では、実質的に低減した数値は、参照値と比較して約10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、90%のいずれかより大きく、又は100%低減している。
【0107】
いくつかの実施形態では、IL31抗体は、STAT-3リン酸化の低減によって測定して、抗体が存在しない場合のIL31シグナル伝達機能と比較して少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、又は100%、伴侶動物種のIL31シグナル伝達機能を低減し得る。いくつかの実施形態では、IL31シグナル伝達機能の低減又はSTAT-3リン酸化の低減は、10%~15%、10%~20%、10%~25%、10%~30%、10%~35%、10%~40%、10%~45%、10%~50%、10%~60%、10%~70%、10%~80%、10%~90%、10%~100%、15%~20%、15%~25%、15%~30%、15%~35%、15%~40%、15%~45%、15%~50%、15%~60%、15%~70%、15%~80%、15%~90%、15%~100%、20%~25%、20%~30%、20%~35%、20%~40%、20%~45%、20%~50%、20%~60%、20%~70%、20%~80%、20%~90%、20%~100%、25%~30%、25%~35%、25%~40%、25%~45%、25%~50%、25%~60%、25%~70%、25%~80%、25%~90%、25%~100%、30%~35%、30%~40%、30%~45%、30%~50%、30%~60%、30%~70%、30%~80%、30%~90%、30%~100%、35%~40%、35%~45%、35%~50%、35%~60%、35%~70%、35%~80%、35%~90%、35%~100%、40%~45%、40%~50%、40%~60%、40%~70%、40%~80%、40%~90%、40%~100%、45%~50%、45%~60%、45%~70%、45%~80%、45%~90%、45%~100%、50%~60%、50%~70%、50%~80%、50%~90%、50%~100%、60%~70%、60%~80%、60%~90%、60%~100%、70%~80%、70%~90%、70%~100%、80%~90%、80%~100%、又は90%~100%である。
【0108】
薬学的組成物
用語「薬学的製剤」及び「薬学的組成物」は、活性成分の生物活性が効果的であることを可能にする形態にあり、製剤が投与されることになる対象に許容できないほど毒性を有する追加の成分を含まない調製物を意味する。
【0109】
「薬学的に許容される担体」は、対象への投与のための「薬学的組成物」を共に含む治療剤とともに用いるための技術における従来の非毒性の固体、半固体、又は液体の充填剤、希釈剤、カプセル化材料、処方助剤、又は担体を意味する。薬学的に許容される担体は、採用される用量及び濃度でレシピエントに対して非毒性であり、製剤の他の成分との適合性がある。薬学的に許容される担体は採用される製剤に好適である。薬学的に許容される担体の例には、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、ヒト血清アルブミン、イヌ若しくはその他の動物のアルブミン等の血清タンパク質、リン酸塩、クエン酸塩、トロメタミン、若しくはHEPESバッファー等のバッファー類、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、プロタミン硫酸塩、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイダルシリカ、若しくはマグネシウムトリシリケート等の塩又は電解質、ポリビニルピロリドン、セルロース系物質、ポリエチレングリコール、スクロース、マンニトール、又はそれだけに限らないがアルギニンを含むアミノ酸が含まれる。
【0110】
薬学的組成物は凍結乾燥した形態で保存することができる。したがって、いくつかの実施形態では、調製プロセスには凍結乾燥ステップが含まれる。凍結乾燥された組成物は次に、イヌ、ネコ、又はウマへの投与に先立って、典型的には非経口投与に好適な水性組成物として再製剤化され得る。他の実施形態では、特に抗体が熱及び酸化による変性に対して高度に安定である場合には、薬学的組成物は、液体として、即ち直接又は適当に希釈してイヌ、ネコ、又はウマに投与することができる水性組成物として、貯蔵することができる。凍結乾燥された組成物は滅菌注射用水(WFI)によって復元することができる。抗菌剤(例えばベンジルアルコール等の静菌性の薬剤)を含ませてもよい。このように、本発明は固体又は液体の形態の薬学的組成物を提供する。
【0111】
薬学的組成物のpHは、投与する際にpH約5~pH約8の範囲であってよい。本発明の組成物は、治療目的のために用いる場合には無菌である。無菌状態は、滅菌濾過膜(例えば0.2ミクロンの膜)による濾過を含む当該技術分野で公知のいくつかの手段のいずれによっても達成することができる。無菌状態は抗菌剤の存在下又は非存在下で維持してよい。
【0112】
いくつかの実施形態では、薬学的に許容される担体又は薬学的組成物は、5.0~6.2、5.0~6.0、又は5.3~5.7のpHを有する。いくつかの実施形態では、薬学的に許容される担体又は薬学的組成物は、5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、6.1、又は6.2のpHを有する。
【0113】
いくつかの実施形態では、薬学的に許容される担体又は薬学的組成物は、L-ヒスチジン、塩化ナトリウム、及びポリソルベート80を含む。
【0114】
いくつかの実施形態では、薬学的に許容される担体又は薬学的組成物は、80nM~200nM、100nM~180nM、100nM~175nM、110nM~170nM、120nM~160nM、120nM~150nM、130nM~150nM、130nM~160nM、100nM、80nM、110nM、120nM、130nM、140nM、150nM、160nM、170nM、180nM、又は200nMの濃度で塩化ナトリウムを含む。
【0115】
いくつかの実施形態では、薬学的に許容される担体又は薬学的組成物は、0.005mg/mL~0.5mg/mL、0.01mg/mL~0.1mg/mL、0.1mg/mL~0.5mg/mL、0.005mg/mL~0.01mg/mL、0.1mg/mL、0.2mg/mL、0.3mg/mL、0.4mg/mL、0.05mg/mL、0.06mg/mL、0.07mg/mL、0.08mg/mL、0.09mg/mL、又は0.1mg/mLの濃度でポリソルベート80を含む。
【0116】
いくつかの実施形態では、薬学的に許容される担体又は薬学的組成物は、5mM~100mM、10mM~50mM、20mM~30mM、10mM~30mM、20mM~80mM、30mM~70mM、40mM~60mM、10mM、15mM、20mM、25mM、30mM、40mM、又は50mMの濃度でL-ヒスチジンを含む。
【0117】
いくつかの実施形態では、薬学的に許容される担体又は薬学的組成物は、m-クレゾール又はベンジルアルコールを含む。いくつかの実施形態では、m-クレゾールの濃度は約0.2%、約0.1%~約0.3%、約0.08%~約0.25%、又は約0.05%~約0.25%である。いくつかの実施形態では、ベンジルアルコールの濃度は約1%、約0.5%~約2%、約0.2%~約2.5%、約1%~約5%、約0.5%~約5%、又は約1%~約3%である。
【0118】
いくつかの実施形態では、薬学的に許容される担体又は薬学的組成物は、糖を含む。いくつかの実施形態では、糖はスクロース、トレハロース、D-マンニトール、マルトース、及び/又はソルビトールである。いくつかの実施形態では、薬学的に許容される担体又は薬学的組成物は、0.5%~20%、1%~10%、1%~5%、1%~3%、0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、又は10%の濃度で糖を含む。
【0119】
いくつかの実施形態では、薬学的に許容される担体又は薬学的組成物は、抗菌剤を含む。いくつかの実施形態では、薬学的に許容される担体又は薬学的組成物は、m-クレゾール又はメチルパラベンを含む。いくつかの実施形態では、薬学的に許容される担体又は薬学的組成物は、0.2%のm-クレゾールを含む。いくつかの実施形態では、薬学的に許容される担体又は薬学的組成物は、0.9%のメチルパラベンを含む。
【0120】
抗体及び薬学的組成物の使用
本発明の抗体又は抗体を含む薬学的組成物は、IL31に誘導された状態を処置するために有用であり得る。本明細書で用いる場合、「IL31に誘導された状態」は、IL31濃度の上昇したレベル又は変化した勾配に関連する、又はそれによって引き起こされる、又はそれによって特徴付けられる疾患を意味する。そのようなIL31に誘導された状態には、それだけに限らないが、掻痒性疾患又はアレルギー性疾患が含まれる。いくつかの実施形態では、IL31に誘導された状態は、アトピー性皮膚炎、掻痒症、喘息、乾癬、強皮症、又は湿疹である。IL31に誘導された状態は、それだけに限らないがイヌ、ネコ、又はウマを含む伴侶動物に現われることがある。
【0121】
本明細書で用いる場合、「処置」は、有益な又は所望の臨床的結果を得るための手法である。「処置」は、本明細書で用いる場合、伴侶動物を含む哺乳動物における疾患の治療の任意の投与又は適用を包含する。本開示の目的のため、有益な又は所望の臨床的結果には、それだけに限らないが、1若しくは複数の症候の緩和、疾患の程度の軽減、疾患の伝播の防止又は遅延、疾患の再発の防止又は遅延、疾患の進行の遅延又は遅らせること、病状の改善、疾患又は疾患の進行の阻止、疾患又はその進行を阻止し又は遅らせること、その進展を停止させること、及び寛解(部分的又は完全)のうちの任意の1つ又は複数が含まれる。増殖性疾患の病理学的帰結の低減も「処置」に包含される。本明細書で提供される方法は、処置のこれらの態様の任意の1つ又は複数を意図している。上記に一致して、処置という用語は、障害の全ての態様を100%除去することを必要とはしていない。
【0122】
いくつかの実施形態では、抗IL31抗体又はそれを含む薬学的組成物は、IL31に誘導された状態を処置するための本明細書の方法に従って利用することができる。いくつかの実施形態では、抗IL31抗体又は薬学的組成物は、IL31に誘導された状態を処置するために、イヌ、ネコ、又はウマ等の伴侶動物に投与される。
【0123】
物質/分子、アゴニスト、又はアンタゴニストの「治療的有効量」は、処置すべき疾患の種類、病状、疾患の重篤度及び経過、治療目的の種類、あれば過去の治療、病歴、以前の治療への応答、担当の獣医の裁量、動物の年齢、性別、及び体重、動物から所望の応答を引き出す物質/分子、アゴニスト、又はアンタゴニストの能力等の要因によって変動し得る。治療的有効量は、物質/分子、アゴニスト、又はアンタゴニストの治療的に有益な効果がいかなる有毒な又は有害な効果をも上回る量でもある。治療的有効量は1又は複数の投与で送達してよい。治療的有効量は、必要な用量及び期間で所望の治療又は予防の結果を達成するために有効な量を意味する。
【0124】
いくつかの実施形態では、抗IL31抗体又は抗IL31抗体を含む薬学的組成物は、非経口的に、皮下投与で、静脈内注入で、又は筋肉内注射で、投与される。いくつかの実施形態では、抗IL31抗体又は抗IL31抗体を含む薬学的組成物は、ボーラス注射として、又はある期間にわたる連続的注入で、投与される。いくつかの実施形態では、抗IL31抗体又は抗IL31抗体を含む薬学的組成物は、筋肉内、腹腔内、脳脊髄内、皮下、動脈内、滑膜内、髄腔内、又は吸入経路で投与される。
【0125】
本明細書に記載した抗IL31抗体は、用量あたり0.1mg/kg体重~100mg/kg体重の範囲の量で投与してよい。いくつかの実施形態では、抗IL31抗体は、用量あたり0.5mg/kg体重~50mg/kg体重の範囲の量で投与してよい。いくつかの実施形態では、抗IL31抗体は、用量あたり1mg/kg体重~10mg/kg体重の範囲の量で投与してよい。いくつかの実施形態では、抗IL31抗体は、0.5mg/kg体重~100mg/kg体重の範囲、1mg/kg体重~100mg/kg体重の範囲、5mg/kg体重~100mg/kg体重の範囲、10mg/kg体重~100mg/kg体重の範囲、20mg/kg体重~100mg/kg体重の範囲、50mg/kg体重~100mg/kg体重の範囲、1mg/kg体重~10mg/kg体重の範囲、5mg/kg体重~10mg/kg体重の範囲、0.5mg/kg体重~10mg/kg体重の範囲、又は5mg/kg体重~50mg/kg体重の範囲の量で投与してよい。
【0126】
抗IL31抗体又は抗IL31抗体を含む薬学的組成物は、単回で、又は一連の処置にわたって、伴侶動物に投与することができる。例えば、抗IL31抗体又は抗IL31抗体を含む薬学的組成物は、少なくとも1回、2回以上、少なくとも2回、少なくとも3回、少なくとも4回、又は少なくとも5回投与してよい。
【0127】
いくつかの実施形態では、用量は少なくとも2週又は3週連続して週1回投与され、いくつかの実施形態では、この処置のサイクルが、任意選択で1又は複数の処置しない週を挟んで、2回又はそれ以上、繰り返される。他の実施形態では、治療的に有効な用量が2~5日連続して1日1回投与され、いくつかの実施形態では、この処置のサイクルが、任意選択で1又は複数の処置しない週を挟んで、2回又はそれ以上、繰り返される。
【0128】
1又は複数のさらなる治療剤「と組み合わせた」投与には、同時の(並行した)投与及び任意の順序の連続した又は逐次の投与が含まれる。用語「並行して」は、本明細書では投与の少なくとも部分が時間的に重複するか、又は1つの治療剤の投与が他の治療剤の投与に対して短い期間内に行なわれる、2つ以上の治療剤の投与を意味して用いられる。例えば、2つ以上の治療剤がほぼ特定した数分以下の時間的分離で投与される。用語「逐次に」は、本明細書では1若しくは複数の薬剤の投与が1若しくは複数の他の薬剤の投与が中断した後に継続するか、又は1若しくは複数の薬剤の投与が1若しくは複数の他の薬剤の投与の前に始まる場合の、2つ以上の治療剤の投与を意味して用いられる。例えば、2つ以上の治療剤の投与は、ほぼ特定した数分を超える時間間隔で投与される。本明細書で用いる場合、「と併用して」は、別の処置様式に加えた1つの処置様式の投与を意味する。したがって、「と併用して」は、動物への他の処置様式の投与の前、その間、又はその後の1つの処置様式の投与を意味する。
【0129】
いくつかの実施形態では、本方法は、抗IL31抗体又は抗IL31抗体を含む薬学的組成物と組み合わせて、Jak阻害剤、PI3K阻害剤、AKT阻害剤、又はMAPK阻害剤を投与することを含む。いくつかの実施形態では、本方法は、抗IL31抗体又は抗IL31抗体を含む薬学的組成物と組み合わせて、抗IL17抗体、抗TNFα抗体、抗CD20抗体、抗CD19抗体、抗CD25抗体、抗IL4抗体、抗IL13抗体、抗IL23抗体、抗IgE抗体、抗CD11α抗体、抗IL6R抗体、抗α4-インテグリン抗体、抗IL12抗体、抗IL1β抗体、又は抗BlyS抗体を投与することを含む。
【0130】
本明細書では、IL31への抗体の結合を可能にする条件下で、抗IL31抗体又は抗IL31抗体を含む薬学的組成物を細胞に曝露する方法が提供される。いくつかの実施形態では、細胞はエクスビボで抗体又は薬学的組成物に曝露される。いくつかの実施形態では、細胞はインビボで抗体又は薬学的組成物に曝露される。いくつかの実施形態では、細胞は、細胞内IL31への抗体の結合を可能にする条件下で、抗IL31抗体又は薬学的組成物に曝露される。いくつかの実施形態では、細胞は、細胞外IL31への抗体の結合を可能にする条件下で、抗IL31抗体又は薬学的組成物に曝露される。いくつかの実施形態では、細胞は、それだけに限らないが対象への腹腔内、筋肉内、静脈内注射を含む本明細書に記載した投与方法の任意の1又は複数によってインビボで、抗IL31抗体又は薬学的組成物に曝露されてよい。いくつかの実施形態では、細胞は、抗体又は薬学的組成物を含む培地に細胞を曝露することによってエクスビボで、抗IL31抗体又は薬学的組成物に曝露されてよい。いくつかの実施形態では、細胞膜の透過性は、抗体又は薬学的組成物を含む培地に細胞を曝露する前に、当業者に理解される任意の数の方法(例えば細胞を電気穿孔法に供すること、又は塩化カルシウムを含む溶液中に細胞を曝露すること)の使用によって影響され得る。
【0131】
いくつかの実施形態では、結合によって細胞のIL31シグナル伝達機能が低減する。いくつかの実施形態では、IL31抗体はSTAT-3リン酸化の低減によって測定して、抗体の非存在下におけるIL31シグナル伝達機能と比較して少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、又は100%、細胞中のIL31シグナル伝達機能を低減させ得る。いくつかの実施形態では、IL31シグナル伝達機能の低減又はSTAT-3リン酸化の低減は、10%~15%、10%~20%、10%~25%、10%~30%、10%~35%、10%~40%、10%~45%、10%~50%、10%~60%、10%~70%、10%~80%、10%~90%、10%~100%、15%~20%、15%~25%、15%~30%、15%~35%、15%~40%、15%~45%、15%~50%、15%~60%、15%~70%、15%~80%、15%~90%、15%~100%、20%~25%、20%~30%、20%~35%、20%~40%、20%~45%、20%~50%、20%~60%、20%~70%、20%~80%、20%~90%、20%~100%、25%~30%、25%~35%、25%~40%、25%~45%、25%~50%、25%~60%、25%~70%、25%~80%、25%~90%、25%~100%、30%~35%、30%~40%、30%~45%、30%~50%、30%~60%、30%~70%、30%~80%、30%~90%、30%~100%、35%~40%、35%~45%、35%~50%、35%~60%、35%~70%、35%~80%、35%~90%、35%~100%、40%~45%、40%~50%、40%~60%、40%~70%、40%~80%、40%~90%、40%~100%、45%~50%、45%~60%、45%~70%、45%~80%、45%~90%、45%~100%、50%~60%、50%~70%、50%~80%、50%~90%、50%~100%、60%~70%、60%~80%、60%~90%、60%~100%、70%~80%、70%~90%、70%~100%、80%~90%、80%~100%、又は90%~100%である。
【0132】
本明細書では、IL31によって誘導された状態の検出、診断、及びモニタリングのための抗IL31抗体、ポリペプチド、及びポリヌクレオチドを用いる方法が提供される。本明細書では、伴侶動物が抗IL31抗体治療に応答するか否かを決定する方法が提供される。いくつかの実施形態では、本方法は、動物がIL31を発現する細胞を有しているか否かを抗IL31抗体を用いて検出することを含む。いくつかの実施形態では、検出方法は、試料を抗体、ポリペプチド、又はポリヌクレオチドと接触させること、及び結合の程度が参照又は比較の試料(例えばコントロール)と異なるか否かを決定することを含む。いくつかの実施形態では、本方法は本明細書に記載した抗体又はポリペプチドが対象動物に適切な処置であるか否かを決定するために有用であり得る。
【0133】
いくつかの実施形態では、試料は生物学的試料である。用語「生物学的試料」は、生体又は以前生体であったものからの物質の量を意味する。いくつかの実施形態では、生物学的試料は細胞又は細胞/組織の溶解物である。いくつかの実施形態では、生物学的試料は、それだけに限らないが、血液(例えば全血)、血漿、血清、尿、滑液、及び上皮細胞を含む。
【0134】
いくつかの実施形態では、細胞又は細胞/組織溶解液を抗IL31抗体と接触させ、抗体と細胞との間の結合を決定する。試験細胞が同じ組織型の参照細胞と比較して結合活性を示す場合には、対象が抗IL31抗体による処置によって恩恵を受けるであろうことが示される。いくつかの実施形態では、試験細胞は伴侶動物の組織からのものである。
【0135】
特定の抗体-抗原結合を検出するための当該技術分野で公知の種々の方法を用いることができる。実施し得る例示的なイムノアッセイには、蛍光分極イムノアッセイ(FPIA)、蛍光イムノアッセイ(FIA)、酵素イムノアッセイ(EIA)、比濁阻害イムノアッセイ(NIA)、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、及びラジオイムノアッセイ(RIA)が含まれる。インジケーター部分、又はラベルグループは、対象抗体に結合させることができ、アッセイ装置の入手可能性及び適合するイムノアッセイ手順によって決定されることが多い種々の方法の使用の必要性に合致するように選択される。適切なラベルには、限定するものではないが放射性核種(例えば125I、131I、35S、3H、又は32P)、酵素(例えばアルカリホスファターゼ、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、ルシフェラーゼ、又はp-グラクトシダーゼ)、蛍光性部分又はタンパク質(例えばフルオレセイン、ローダミン、フィコエリスリン、GFP、又はBFP)、又は発光部分(例えばQuantum Dot Corporation、Palo Alto、Calif.によって供給されるQdot(商標)ナノ粒子)が含まれる。上記の種々のイムノアッセイを実施する際に用いられる一般的な手法は、当業者には公知である。
【0136】
診断の目的には、抗体を含むポリペプチドは、それだけに限らないが当該技術分野で公知の放射性同位体、蛍光性ラベル、及び種々の酵素-基質ラベルを含む検出可能な部分で標識することができる。ラベルを抗体にコンジュゲートする方法は当該技術分野で公知である。いくつかの実施形態では、抗IL31抗体は標識されている必要はなく、その存在は、第1の抗IL31抗体に結合する第2の標識化抗体を用いて検出することができる。いくつかの実施形態では、抗IL31抗体は、競合結合アッセイ、直接及び間接サンドイッチアッセイ、並びに免疫沈降アッセイ等の任意の公知のアッセイ法に採用することができる。Zola、Monoclonal Antibodies:A Manual of Techniques、147~158頁(CRC Press,Inc.、1987年)。抗IL31抗体及びポリペプチドは、インビボイメージング等のインビボ診断アッセイにも用いることができる。一般に、抗体又はポリペプチドは、目的の細胞又は組織の位置がイムノシンチオグラフィーを用いて特定されるように、放射性核種(例えば111In、99Tc、14C、131I、125I、3H、又は本明細書に概略を示したものを含む他の任意の放射性核種ラベル)によって標識される。抗体は当該技術分野で周知の手法を用いる病理学における染色剤としても用いられる。
【0137】
いくつかの実施形態では、第1の抗体は診断用に用いられ、第2の抗体は治療のために用いられる。いくつかの実施形態では、第1の抗体と第2の抗体は異なる。いくつかの実施形態では、第1の抗体と第2の抗体は別々のエピトープに結合することによって、両方とも同時に抗原に結合することができる。
【0138】
以下の実施例は本開示の特定の態様を説明するものであり、いかなる様式でも本開示を限定することを意図するものではない。
【実施例0139】
実施例1:イヌIL31に結合するマウスモノクローナル抗体の同定
IL31タンパク質(配列番号22)をコードするイヌIL31遺伝子を、C末端のポリ-Hisタグとともに合成し、哺乳動物発現ベクターにクローニングした。イヌIL31遺伝子を有するプラスミドを、293細胞にトランスフェクトした。
【0140】
イヌIL31タンパク質を含む上清を収集して濾過した。Ni-NTAカラム(CaptivA(登録商標)Protein A Affinity Resin、Repligen)を用いて、イヌIL31をアフィニティ精製した。
【0141】
免疫原として293細胞によって産生されたイヌIL31を用いる標準的な免疫化を用いて、マウスモノクローナル抗体を同定した。免疫化の間に異なる2つのアジュバントを用い(Antibody Solutions、Sunnyvale、CA)、標準的なハイブリドーマ技術によってモノクローナル抗体を得た。IL31結合抗体を産生するクローンをスクリーニングするため、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を開発した。最初にイヌIL31をビオチン化し、次いでこれをストレプトアビジン被覆ウェルに導入した。次いで免疫化した血清をウェルに加え、洗浄して、HRPコンジュゲート抗マウス抗体で検出した。イヌIL31結合抗体の存在により、陽性のシグナルが生じた。ELISAによって試験した数千のクローンのうち、シグナル強度に基づいて最大の結合親和性を有する170クローンを選択し、バイオセンサーアッセイ(Forte Bio Octet)によってさらに試験した。ビオチン化したイヌIL31をセンサーチップに結合させ、スローオフレート(抗体とリガンドとの解離の速度)に基づいて、抗イヌIL31抗体を含むハイブリドーマクローンの上清を選択した。上位19種の候補の結合親和性を単一濃度で測定し、Biosensor Octetを用いるプロテインAの力価アッセイによって抗体濃度を測定した後、平衡解離定数(Kd)として報告した。上位19種の候補のKdはそれぞれ10nM未満であった。
【0142】
さらに、ELISAに基づいて高い結合活性を有する170クローンのそれぞれを、中和活性について試験した。イヌDH82細胞を用いるイヌIL31媒介pSTATシグナル伝達の低減における上位候補の活性を評価するため、実施例4において以下に記載する細胞に基づく機能性アッセイを実施した。上位4種のクローン(M14、M18、M19、及びM87)をさらなる検討のために選択した。特に、ELISAによって同定された高親和性のバインダーの大多数は機能的でなかった。
【0143】
実施例2:モノクローナル抗体のVH及びVLをコードするDNA配列の同定
M14、M18、M19、及びM87を産生するハイブリドーマ細胞をペレット化した。RNAを抽出し、マウス免疫グロブリン(Ig)可変ドメインを増幅するためのオリゴヌクレオチドプライマーを用い、標準的な手法を用いてcDNAを得た。4つのクローンのそれぞれの可変重鎖(VH)及び可変軽鎖(VL)をシーケンシングし、配列アラインメントによって解析した(
図1、配列番号36~43)。特に、4つの活性な抗体のうち3つ(M14、M18、及びM19)は、M18のCDR-L1が14位にイソロイシンを有する(配列番号63)一方、M14及びM19が14位にメチオニンを有し(配列番号8)、またM18のCDR-H2が9位にチロシンを有する(配列番号62及び配列番号87)一方、M14及びM19が14位にアスパラギン酸を有する(配列番号2及び配列番号89)ことを例外として、同じ6個のCDR配列を共有している。CDR配列の類似性は、M14、M18、及びM19が共通のエピトープを共有していることを示唆している。
【0144】
実施例3:CHO細胞からのマウス-イヌキメラ及びイヌ化IL31mAb M14の発現並びに精製
マウスのM14VH(配列番号25)及びマウスのVL(配列番号24)をイヌの定常重鎖及びイヌの定常軽鎖に融合させるため、キメラ抗体をコードするDNA配列を設計した。ヌクレオチド配列を化学合成し、CHO宿主細胞へのトランスフェクションに適した発現ベクターに挿入した。CHO細胞へのトランスフェクションの後、軽鎖若しくは重鎖のタンパク質又は両方が細胞から分泌された。例えば、イヌIgG-Bを用いるキメラM14を、単一ステップのプロテインAカラムクロマトグラフィーによって精製した。
【0145】
CDRグラフト化のためのテンプレートとしての正しいイヌ生殖系列の抗体配列を検索して選択し、タンパク質モデリングを行なうことにより、マウスのM14のVH及びVLをイヌ化した。イヌ化M14IgG-B(配列番号18及び配列番号21)は容易に発現し、これをプロテインAカラム又は他のクロマトグラフィー法、例えばイオン交換カラムクロマトグラフィー、疎水性相互作用カラムクロマトグラフィー、CHT等の混合モードカラムクロマトグラフィー、又はCaptoMMC等のマルチモーダルモードカラムクロマトグラフィーによって単一ステップで精製した。低いpH又はその他のウイルス不活化及びウイルス除去ステップを適用することができる。精製したタンパク質を賦形剤と混合し、濾過滅菌して、本発明の薬学的組成物を調製する。薬学的組成物を、IL31に結合してこれを阻害するために十分な量で、アトピー性皮膚炎を有するイヌに投与する。
【0146】
次いでベクターを用いて、FreestyleMax(商標)トランスフェクション試薬(Life Technologies)を用いるCHO-S細胞におけるパイロットスケールトランスフェクションを実施した。馴化培地を清澄化することによって、上清を収穫した。単一パスのプロテインAクロマトグラフィーステップによってタンパク質を精製し、さらなる検討に用いた。
【0147】
実施例4:IL31結合活性の実証
本実施例は、キメラM14(配列番号26及び配列番号27)及びイヌ化M14(配列番号18及び配列番号21)で表わされる本発明の抗体が、治療活性のために必須の動力学でイヌIL31に結合することを実証する。
【0148】
バイオセンサーOctetを用い、以下のようにして結合解析を実施した。簡単には、イヌIL31を、EZ-Link(商標)NHS-LC-Biotin(ThermoScientific、カタログNo.21336)を用いて一級アミン基で、又はEZ-Link(商標)Biotin-LC-Hydrazide(ThermoFisher Scientific、カタログNo.21340)を用いてグリカン基で、製造元の指示書に従ってビオチン化した。大規模な透析によって遊離の未反応ビオチンをビオチン化IL31から除去した。ビオチン化イヌIL31をストレプトアビジンセンサーチップに捕捉した。4つの異なった濃度(400、200、66.6、及び33nM)のキメラ及びイヌ化M14抗体とヒト及びイヌのIL31(アミン-コンジュゲート-ビオチン)との会合、並びに100nMのイヌ化M14抗体とイヌIL31(グリカン-コンジュゲート-ビオチン)との会合を、90秒間モニターした。解離は600秒間モニターした。ドリフトがあれば補正するため、バッファーのみのブランクカーブを差し引いた。データは、kon、koff、及びkdを決定するためのForteBio(商標)データ解析ソフトウェアを用いる2:1結合モデルにフィッティングした。希釈及び全ての結合ステップのためのバッファーは、20mMのリン酸塩、150mMのNaCl、pH7.2であった。
【0149】
C末端にポリHisタグを有するイヌIL31をCHO-S細胞から発現させ、精製した。ヒトIL31はSino Biologicalから入手し、ストレプトアビジンバイオセンサーはForteBioから入手した(Cat.#18-509)。結合動力学は下記の通りであった。リガンドであるイヌIL31(アミン-コンジュゲート-ビオチン)について、キメラM14のKd(M)は<1.0×10
-11(
図2)、イヌ化M14では<1.0×10
-11(
図3)であった。リガンドであるイヌIL31(グリカン-コンジュゲート-ビオチン)について、イヌ化M14のKd(M)は<1.0×10
-12、k
off(1/s)は<1.0×10
-7であった。
【0150】
キメラM14及びイヌ化M14はヒトIL31には明らかな結合シグナルを有さなかった。したがって、Kdは測定できなかった。
【0151】
実施例5:M14がイヌIL31のシグナル伝達を阻害することの実証
そのIL31受容体への結合の後、IL31はJanusキナーゼ(Jak)1及びJak2シグナル伝達分子を活性化する。続いて、活性化されたJakが下流のシグナル伝達STAT-3及びSTAT-5のリン酸化を刺激する。無細胞培地のプロテインAによる精製画分からの抗IL31活性を検出するために、抗ホスホ-Stat3イムノブロット解析を用いた(Gonzalesら、Vet Dermatol、2013年、24、48~e12頁)。簡単には、イヌ単球DH82細胞(アメリカンタイプカルチャーコレクション、Manassas、VA、USA)を、15%の熱不活化ウシ胎児血清、2mmol/LのGlutaMax、1mmol/Lのピルビン酸ナトリウム、及び10ng/mLのイヌインターフェロン-c(R&D Systems、Minneapolis、MN、USA)を含むMEM増殖培地(Life Technologies)中、ウェルあたり1×10
5細胞の密度で、37℃、24時間、96ウェルの平底細胞培養プレートに播種した。この実験では、イヌIL31-Fcの濃度は5ng/mL(8nM)であった。抗ホスホSTAT-3抗体及び抗STAT-3抗体は、R&D Systemsから購入した。抗βアクチン抗体はSigma-Aldrichから得た。
図4に示すように、細胞に曝露されたイヌ化M14の濃度が増大するとともに、イヌIL31のシグナル伝達は(STAT-3のリン酸化の低減によって証明されるように)減少した(レーン1:抗IL31抗体なし、レーン2:3.3nM、レーン3:6.6nM、レーン4:9.9nM、及びレーン5:13.2nM)。
【0152】
実施例6:M14イヌIL31結合エピトープの同定
M14によって認識されるイヌIL31エピトープを同定するため、多重GSTイヌIL31断片融合分子を生成させ、大腸菌(E. coli)の細胞内でタンパク質を発現させた。GST融合タンパク質を膜に転写した後、キメラM14を用いて膜をプローブした。IL31断片がエピトープを含む場合には、陽性シグナルが得られた。
【0153】
図5と
図6を組み合わせることにより、M14が最小の断片(配列番号23)を認識し得ることが実証された。
【0154】
実施例7:M14がネコIL31と交差反応することの実証
M14抗体がネコIL31(配列番号28)又はウマIL31(配列番号29)を認識するか否かを検討するため、それぞれのタンパク質をヒトFcと融合させ、哺乳動物の293細胞中で発現させた。部分精製したタンパク質を膜にブロットし、M14抗体でプローブした。
図1のイムノブロットは、M14がネコIL31に結合することを実証している。イムノブロットアッセイはM14とウマIL31との結合を検出しなかった。しかし、バイオレイヤー干渉解析により、M14抗体は、親和性は低いがウマIL31と結合することが明らかになった。センサーに固定化されたビオチン化ウマIL31を用いる予備的なKd測定により、親和性(Kd)はほぼ10~50nMであることが明らかになった。
【0155】
実施例8:ネコ化M14
M14可変軽鎖を(配列番号32)としてネコ化し、M14可変重鎖を(配列番号33)としてネコ化した。最初に、マウスの重鎖可変配列及び軽鎖可変配列を用いてネコのVH及びVLの正しいバリアントを検索した。CDRをグラフトするために正しいネコフレームを選択した。構造モデリングを用いて、これらをさらに最適化した。ネコ化したVH及びVLを、ネコのIgG重鎖定常ドメイン(CH1、CH2、及びCH3)並びにネコの軽鎖定常ドメイン(CL1)に融合した。
【0156】
ネコM14キメラ抗体(配列番号30及び配列番号31)又はネコ化M14抗体(配列番号34及び配列番号35)は、IL31で誘導された状態の処置のためにネコに投与することができる。
【0157】
実施例9:M14イヌIL31結合エピトープの同定
M14によって認識されるイヌIL31エピトープのアミノ酸残基をさらに同定するため、アラニン変異を有する多重GSTイヌIL31エピトープ断片融合分子を大腸菌で発現させた。
図8~12に、抗イヌIL31-mAb(M14)又はイヌ化M14(上のパネル)及び抗GST抗体コントロール(下のパネル)でプローブしたイヌIL31-GST融合タンパク質の精細なエピトープマッピングのイムノブロットを示す。それぞれのレーンで試験したエピトープ断片を、イムノブロットの下に列挙する。断片名は、試験した成熟イヌIL31(配列番号44)のアミノ酸の範囲、及びもし含まれていればアラニン変異の位置を示す。IL31断片が野生型エピトープを含む場合には陽性シグナルが生じ、IL31断片が抗体-リガンドの相互作用に重要な残基にアラニン置換を含む場合には陰性シグナルが生じた。
【0158】
エピトープマッピング研究の結果を以下の表3にまとめる。結果は、成熟イヌIL31(配列番号44)のP12、S13、D14、及びK17が抗体M14の結合に関与していること、並びにR16及びI18がM14の認識に部分的に関与していることを示唆している。まとめると、この研究の結果は、抗体M14のCDRに結合するIL31ポリペプチドのモチーフがPSDX
1X
2KIであり、ここでX
1及びX
2は可変である(配列番号45)ことを示唆している。
表3.
【0159】
実施例10:M14はPSDX1X2KIエピトープモチーフを有する他の種のIL31に特異的に結合する。
M14によって認識されるIL31のエピトープモチーフ(PSDX1X2KI、配列番号45)は、ヒト(配列番号46)又はマウス(配列番号61)のIL31アミノ酸配列には存在しない。しかし、このモチーフは、ネコ科の
イエネコ(Felis catus)(XP_011286140.1; 配列番号28)
セイウチ(Odobenus rosmarus divergens)(XP_004395998.1; 配列番号47)
アヌビスヒヒ(Papio Anubis)(XP_003907358.1; 配列番号49)
ホッキョクグマ(Ursus maritimus)(XP_008687166.1; 配列番号51)
ウェッデルアザラシ(Leptonychotes weddellii)(XP_006746595.1; 配列番号52)
アムールトラ(Panthera tigris altaica)(XP_007079636.1; 配列番号53)
チーター(Acinonyx jubatus)(XP_014919275.1; 配列番号54)
カニクイザル(Macaca fascicularis)(EHH66805.1; 配列番号55)
アカゲザル(Macaca mulatta)(EHH21279.1; 配列番号56)
ドリル(Mandrillus leucophaeus)(XP_011819882.1; 配列番号57)
ミドリザル(Chlorocebus sabaeus)(XP_008003211.1; 配列番号58)
スーティーマンガベイ(Cercocebus atys)(XP_011926625.1; 配列番号59)
キンシコウ(Rhinopithecus roxellana)(XP_010366647.1; 配列番号60)
を含むいくつかの他の種で同定された。
【0160】
セイウチIL31(配列番号47)及びアヌビスヒヒIL31(配列番号49)は、抗体M14によって認識可能なPSDX
1X
2KIエピトープ(配列番号45)を保有している。タンパク質の精製を容易にするため、セイウチIL31(配列番号48)及びアヌビスヒヒIL31(配列番号50)にC末端Hisタグを加えた。ウェスタンブロット解析により、M14がセイウチIL31に結合することが確認された(
図13)。M14抗体又はその誘導体は、上に列挙した種のいずれにおいてもIL31によって誘導された疾患のための治療剤及び診断薬として用いることができる。
【0161】
実施例11:イヌ化M14抗体の熱安定性
イヌ化M14抗体の熱安定性を、市販の抗IL31抗体であるZoetisのCYTOPOINT(商標)と比較して、示差走査蛍光(DSF)を用い、広範囲のpHにわたって解析した。種々のpHにおける各抗体の融点(Tm)を、下の表4に列挙する。CYTOPOINT(商標)及びイヌ化M14抗体の両方を、PD Minitrap(商標)G-25カラム(GE Healthcare)を用いて表4に列挙したアッセイバッファーにバッファー交換した。同じバッファーとタンパク質の濃度を用いて、各抗体のTmを評価した。イヌ化M14抗体は、広範囲のpHにわたって、CYTOPOINT(商標)と比較して改善された熱安定性を示した。さらに、抗体0.22mg/ml、55℃、2日間のストレス条件下でCYTOPOINT(商標)は沈殿したが、イヌ化M14抗体では沈殿は観察されなかった。
表4.
【0162】
実施例12:イヌ化M14抗体バッファー製剤
種々のバッファー製剤中におけるイヌ化M14抗体の熱安定性を解析した。リン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、又はL-ヒスチジンを含むバッファーを考慮した。その他の製剤変動項目には、異なるpH(pH 5.2、5.5、6.0、6.5、及び7.0)、異なる塩化ナトリウム濃度(50mM及び140mM)、異なるポリソルベート(ポリソルベート20及びポリソルベート80)、及び異なる抗菌剤(m-クレゾール及びメチルパラベン)が含まれていた。各バッファー中のイヌ化M14抗体の融点(Tm)は、20℃~95℃の示差走査蛍光(DSF)手法で測定した。表5に、試験した種々のバッファー中のイヌ化M14抗体のTm値を列挙する。
表5
【0163】
以下の糖類(1%)、スクロース、トレハロース、D-マンニトール、マルトース、及びソルビトールのそれぞれの1つの存在下における処方D1、D2、D3、D4、D5、及びD6のTmをDSFを用いてさらに試験した。
【0164】
糖類の存在下及び非存在下における製剤を、40℃で1日、次いで45℃で1日、次いで55℃で4日のストレス条件下でも試験した。サイズ排除HPLC解析を用いて、ストレス条件に供した後の種々の製剤中のモノマー形態及び凝集形態の抗体を検出し定量した。試料をSHODEX(商標)KW803カラム(8mm×300mm)にロードし、KW-Gガードカラムに取り付けた。Agilient1100クロマトグラフィーシステムを用い、ランニングバッファーとして2倍PBS(270mM NaCl、5.4mM KCl、8.6mM Na2PO4)、pH7.2、定常流量0.5mL/分とした。サイログロブリン、ウシγ-グロブリン、ニワトリオブアルブミン、ウマミオグロビン、及びビタミンB12からなるBIORADゲル濾過標準(カタログNo.151-1901)(分子量1,350~670,000)を用いてカラムを較正した。溶液中に残存したモノマー抗体の量を、214nm又は280nmのUV吸光度を測定し、曲線下ピーク面積を計算することによって決定した。
【0165】
DSF及びHPLC解析に基づいて、処方D1、D2、D3、D4、D6、D7、D10、及びD12等の、L-ヒスチジン、塩化ナトリウム、ポリソルベート80を含み、5.0~6.2のpHを有する製剤が、より望ましいと考えられた。例えば、単回投薬に望ましい製剤は、20mMのL-ヒスチジン、140mMの塩化ナトリウム、ポリソルベート80(0.05mg/mL)、pH5.5であり、(防腐剤の存在下の)多回投薬に望ましい製剤は、
1.20mMのL-ヒスチジン、140mMの塩化ナトリウム、ポリソルベート80(0.05mg/mL)、スクロース(1~3%)、m-クレゾール(0.2%)、pH5.5及び
2.20mMのL-ヒスチジン、140mMの塩化ナトリウム、ポリソルベート80(0.05mg/mL)、トレハロース(1~3%)、メチルパラベン(0.9%)、pH5.5
である。