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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023109828
(43)【公開日】2023-08-08
(54)【発明の名称】置換ピラジンの選択的形成方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 241/12 20060101AFI20230801BHJP
   A24B 15/26 20060101ALI20230801BHJP
   A24B 15/36 20060101ALI20230801BHJP
【FI】
C07D241/12
A24B15/26
A24B15/36
【審査請求】有
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023077060
(22)【出願日】2023-05-09
(62)【分割の表示】P 2019552150の分割
【原出願日】2018-03-23
(31)【優先権主張番号】15/468,665
(32)【優先日】2017-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】594112886
【氏名又は名称】アール・ジエイ・レイノルズ・タバコ・カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・フランシス・デュベ
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム・モンロー・コールマン・ザ・サード
(57)【要約】      (修正有)
【課題】置換ピラジンを選択的に形成する方法を提供する。
【解決手段】本発明の方法は、少なくとも1つの炭素源及び少なくとも1つの窒素源を含む反応溶液を入手すること、反応溶液を反応温度まで加熱し、少なくとも1つの置換ピラジンを含む反応生成物を生成するのに十分な時間にわたって反応温度にて反応溶液を保持することを含むことができる。炭素源は、ヒドロキシケトン、少なくとも1つの緩衝剤で処理した糖及びその組合せからなる群から選択することができる。置換ピラジンを組み入れたタバコ製品も提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピラジンを形成する方法であって、
少なくとも1つのα-ヒドロキシケトン及び少なくとも1つの窒素源を含む反応溶液を入手すること、並びに
前記反応溶液を反応温度まで加熱し、少なくとも1つの置換ピラジンを含む反応生成物が生成するのに十分な時間にわたって、該反応溶液を該反応温度に保つことを含む、方法。
【請求項2】
少なくとも1つのヒドロキシケトンがアセトールを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも1つの置換ピラジンが、2,3-ジメチルピラジン;2,6-ジメチルピラジン;2-エチル-6-メチルピラジン;2-エチル-5-メチルピラジン;トリメチルピラジン;フラネオール;2,5-ジメチル-3-エチルピラジン;2-エチル-3,5-ジメチルピラジン;テトラメチルピラジン;2,5-ジメチル-3-プロペニルピラジン;2,3,5-トリメチル-6-イソプロピルピラジン;2-アセチル-4,5-ジメチルピラジン;3,5-ジメチル-2-メチルプロピルピラジン及びその組合せからなる群から選択される、請求項2記載の方法。
【請求項4】
少なくとも1つのヒドロキシケトンが、アセトインを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1つの置換ピラジンが、テトラメチルピラジンである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも1つのヒドロキシケトンが、1-ヒドロキシ-2-ブタノンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも1つの置換ピラジンが、2,6-ジエチルピラジン;2,5-ジエチルピラジン;2-エチル-3,5,6-トリメチルピラジン;3,5(3,6-ジメチル)-2,N-プロピルピラジン;2,5-ジエチル-3-メチルピラジン;2,3-ジエチル-5-メチルピラジン;2,3-ジエチル-5,6-ジメチルピラジン;トランス-3-メチル-2,n-プロピル-6(1-ブテニル)ピラジン;2,5-ジメチル-3-エチルピラジン;及びその組合せからなる群から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
窒素源が、アミノ酸、アンモニウムイオン及びその組合せからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
フリーのアミノ酸を反応溶液に添加することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
少なくとも1つのアルデヒドを反応溶液に添加することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
反応生成物から少なくとも1つの置換ピラジンを単離することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
反応生成物から少なくとも1つの置換ピラジンを単離するステップが、前記反応生成物の液-液抽出、前記反応生成物の液-固抽出及び前記反応生成物の単純蒸留のうちの少なくとも1つを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
反応温度が約90℃~約150℃である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
少なくとも1つの置換ピラジンが、2,6-ジメチルピラジン;2,5-ジメチルピラジン;2-エチル-5-メチルピラジン;2-エチル-6-メチルピラジン;2,3,5-トリメチルピラジン;2-エチル-3,5-ジメチルピラジン;2-エチル-2,5-ジメチルピラジン;2,3,5,6-トリメチルピラジン;2,3,5-トリメチル-6-エチルピラジン;2,6-ジメチル-3-プロピルピラジン;2,5-ジエチル-3,6-ジメチルピラジン;2,6-ジメチル-3-(2-メチルブチル)ピラジン;2,5-ジメチル-3-(2-メチルブチル)ピラジン;2,5-ジメチル-3-(3-メチルブチル)ピラジン;2,5-ジメチル-3-プロピルピラジン;2,5-ジメチル-3-シス-プロペニルピラジン;2-イソプロペニル-3,6-ジメチルピラジン;2-(2-メチルプロピル)-3,5-ジメチルピラジン;2,6-ジメチル-3-イソブチルピラジン;2-(2-メチルプロピル)-3,5,6-トリメチルピラジン、2,3-ジメチルピラジン;トリメチルピラジン;フラネオール、2,5-ジメチル-3-エチルピラジン;テトラメチルピラジン;2,3-ジエチル-5-メチルピラジン;2,5-ジメチル-3-プロペニルピラジン;2,3,5-トリメチル-6-イソプロピルピラジン;2-アセチル-4,5-ジメチルピラジン;3,5-ジメチル-2-メチルプロピルピラジン;2,6-ジエチルピラジン;2,5-ジエチルピラジン;2-エチル-3,5,6-トリメチルピラジン;3,5(3,6-ジメチル)-2,N-プロピルピラジン;2,5-ジエチル-3-メチルピラジン;2,3-ジエチル-5,6-ジメチルピラジン;トランス-3-メチル-2,n-プロピル-6(1-ブテニル)ピラジン;2,5,7-トリメチル-6,7-ジヒドロ-5H-シクロペンタピラジン;及び2,5-ジメチル-3-エチルピラジン;並びにその組合せからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
少なくとも1つの置換ピラジンが2置換されている、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
少なくとも1つの置換ピラジンが3置換されている、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
少なくとも1つの置換ピラジンが4置換されている、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
少なくとも1つの置換ピラジンが、2個以上の炭素原子を有する少なくとも1個の置換基を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
少なくとも1つの置換ピラジンが、3個以上の炭素原子を有する少なくとも1個の置換基を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
反応生成物が、ピラジン分子及びメチルピラジン分子を実質的に含まない、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
少なくとも1つの置換ピラジンをタバコ製品に組み入れることをさらに含む、請求項1~20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
タバコ製品が、喫煙品又は無煙タバコ製品である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
ピラジンを形成する方法であって、
少なくとも1つの糖及び少なくとも1つの緩衝剤を含む炭素源溶液を入手すること、
前記炭素源溶液を少なくとも窒素源と混合して、反応溶液を形成すること、並びに
前記反応溶液を反応温度まで加熱し、少なくとも1つの置換ピラジンを含む反応生成物が生成するのに十分な時間にわたって、前記反応溶液を該反応温度に保つことを含む、方法。
【請求項24】
少なくとも1つの糖が、グルコース、フルクトース、ラムノース及びその組合せからなる群から選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
窒素源が、アミノ酸、アンモニウムイオン及びその組合せからなる群から選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
緩衝剤が、水酸化ナトリウム、リン酸緩衝液及びその組合せからなる群から選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
緩衝剤が、約6.5~約7.5のpH範囲で緩衝する、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
アンモニウムイオンを反応溶液に添加することをさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項29】
反応生成物から少なくとも1つの置換ピラジンを単離することをさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項30】
反応生成物から少なくとも1つの置換ピラジンを単離するステップが、前記反応生成物の液-液抽出、前記反応生成物の液-固抽出及び前記反応生成物の単純蒸留のうちの少なくとも1つを含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
反応温度が約90℃~約150℃である、請求項23に記載の方法。
【請求項32】
少なくとも1つの置換ピラジンが、2,6-ジメチルピラジン;2,5-ジメチルピラジン;2-エチル-5-メチルピラジン;2-エチル-6-メチルピラジン;2,3,5-トリメチルピラジン;2-エチル-3,5-ジメチルピラジン;2-エチル-2,5-ジメチルピラジン;2,3,5,6-トリメチルピラジン;2,3,5-トリメチル-6-エチルピラジン;2,6-ジメチル-3-プロピルピラジン;2,5-ジエチル-3,6-ジメチルピラジン;2,6-ジメチル-3-(2-メチルブチル)ピラジン;2,5-ジメチル-3-(2-メチルブチル)ピラジン;2,5-ジメチル-3-(3-メチルブチル)ピラジン;2,5-ジメチル-3-プロピルピラジン;2,5-ジメチル-3-シス-プロペニルピラジン;2-イソプロペニル-3,6-ジメチルピラジン;2-(2-メチルプロピル)-3,5-ジメチルピラジン;2,6-ジメチル-3-イソブチルピラジン;2-(2-メチルプロピル)-3,5,6-トリメチルピラジン、2,3-ジメチルピラジン;トリメチルピラジン;フラネオール、2,5-ジメチル-3-エチルピラジン;テトラメチルピラジン;2,3-ジエチル-5-メチルピラジン;2,5-ジメチル-3-プロペニルピラジン;2,3,5-トリメチル-6-イソプロピルピラジン;2-アセチル-4,5-ジメチルピラジン;3,5-ジメチル-2-メチルプロピルピラジン;2,6-ジエチルピラジン;2,5-ジエチルピラジン;2-エチル-3,5,6-トリメチルピラジン;3,5(3,6-ジメチル)-2,N-プロピルピラジン;2,5-ジエチル-3-メチルピラジン;2,3-ジエチル-5,6-ジメチルピラジン;トランス-3-メチル-2,n-プロピル-6(1-ブテニル)ピラジン;2,5,7-トリメチル-6,7-ジヒドロ-5H-シクロペンタピラジン;及び2,5-ジメチル-3-エチルピラジン;並びにその組合せからなる群から選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項33】
少なくとも1つの置換ピラジンが2置換されている、請求項23に記載の方法。
【請求項34】
少なくとも1つの置換ピラジンが3置換されている、請求項23に記載の方法。
【請求項35】
少なくとも1つの置換ピラジンが4置換されている、請求項23に記載の方法。
【請求項36】
少なくとも1つの置換ピラジンが、2個以上の炭素原子を有する少なくとも1個の置換基を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項37】
少なくとも1つの置換ピラジンが、3個以上の炭素原子を有する少なくとも1個の置換基を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項38】
反応生成物が、ピラジン分子及びメチルピラジン分子を実質的に含まない、請求項23に記載の方法。
【請求項39】
少なくとも1つの置換ピラジンをタバコ製品に組み入れることをさらに含む、請求項23~38のいずれかに記載の方法。
【請求項40】
タバコ製品が喫煙品又は無煙タバコ製品である、請求項39に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、置換ピラジンを形成する方法に関する。特に興味深いのは、標的置換ピラジンを選択的に形成する方法である。
【背景技術】
【0002】
ピラジンは、炭素源と窒素化合物、例えばアミノ酸及び塩基(例えばジアンモニウムホスフェート(DAP)、NaOH)との反応(例えばメイラード反応)によって生成される。ピラジンの生成を目的とする多くの従来の反応経路では、糖(例えばフルクトース、グルコース、フルクトース/グルコース混合物、ラムノース)が炭素源として使用される。これまで、加熱時にピラジンが豊富な配合物をもたらすモデル反応及び強化天然物の大部分は、配合物の炭素源構成要素としてフルクトース、グルコース、フルクトース/グルコース混合物及びラムノースなどの糖を使用してきた。これらの糖は、ピラジン芳香環構造を形成するための炭素源として作用することが示されている。例えば、それぞれその全体が参照により本明細書に組み込まれている、Colemanの米国特許出願公開第2004/0173228号、Colemanらの米国特許出願公開第2010/0037903号、Dubeらの米国特許出願公開第2012/0152265号、Colemanらの米国特許出願公開第2012/0260929号、Dubeらの米国特許出願公開第2013/0125907号、Anuradhaらの米国特許出願公開第2013/0337418号、Dubeらの米国特許出願公開第2015/0040922号及びChenらの米国特許出願公開第2015/0122271号;Andersonらの米国特許第5,258,194号、Colemanの米国特許第6,298,858号;Colemanの米国特許第6,325,860号、Dubeらの米国特許第6,440,223号、Colemanの米国特許第6,499,489号;Whiteらの米国特許第6,591,841号、Dubeらの米国特許第6,695,924号、Chenらの米国特許第8,434,496号、Brinkleyらの米国特許第8,944,072号、Colemanらの米国特許第8,955,523号、Chenらの米国特許第8,991,403号、Dubeらの米国特許第9,010,339、Byrdらの米国特許第9,254,001号、Junkerらの米国特許第9,265,284号及びColemanらの米国特許第9,402,415号並びにColeman III,On the synthesis and characteristics of aqueous formulations rich in pyrazines,in Flavor Fragrance and Odor Analysis,Second Edition,Ray Marsili,ed.,Chapter 7,pp135-182,CRC Press,Boca Raton,2012を参照のこと。
【0003】
大半の場合、糖及び窒素源のこれらの反応は、ピラジン構造内の窒素結合を提供する窒素源として、水酸化アンモニウム及び/又はフリーのアミノ酸を用いてきた。例えばEffect of time,temperature, and reactant ratio on pyrazine formation in model system,T.Shibamoto,R.A.Bernhard,J.Agric.Food Chem.,24,(1976)p.847を参照のこと。この反応により、多くの置換ピラジンの錯体混合物が生成される。ピラジン生成反応において糖が唯一の炭素源として作用する場合、ピラジン分子及びメチルピラジン分子は生成される主要なピラジンであり、総ピラジン収率の60%を大きく上回ることが多い。生成されるピラジン分子及びメチルピラジン分子の量を低減する試みにおいてフリーのアミノ酸が共試薬として使用される場合でも、この傾向は明白である。
【0004】
感覚の観点から、ピラジン分子及びメチルピラジン分子は、タバコ製品で使用するための望ましい感覚的香調も、許容される揮発性特性も有していない。したがって、ピラジンの混合物におけるその存在は、特定の用途にとって所望の特性よりも劣っている。
【0005】
したがって、ある所望の置換ピラジンをより大量に選択的に製造する方法を提供することが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第2004/0173228号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2010/0037903号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2012/0152265号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2012/0260929号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2013/0125907号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2013/0337418号明細書
【特許文献7】米国特許出願公開第2015/0040922号明細書
【特許文献8】米国特許出願公開第2015/0122271号明細書
【特許文献9】米国特許第5,258,194号明細書
【特許文献10】米国特許第6,298,858号明細書
【特許文献11】米国特許第6,325,860号明細書
【特許文献12】米国特許第6,440,223号明細書
【特許文献13】米国特許第6,499,489号明細書
【特許文献14】米国特許第6,591,841号明細書
【特許文献15】米国特許第6,695,924号明細書
【特許文献16】米国特許第8,434,496号明細書
【特許文献17】米国特許第8,944,072号明細書
【特許文献18】米国特許第8,955,523号明細書
【特許文献19】米国特許第8,991,403号明細書
【特許文献20】米国特許第9,010,339号明細書
【特許文献21】米国特許第9,254,001号明細書
【特許文献22】米国特許第9,265,284号明細書
【特許文献23】米国特許第9,402,415号明細書
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Coleman III,On the synthesis and characteristics of aqueous formulations rich in pyrazines,in Flavor Fragrance and Odor Analysis,Second Edition,Ray Marsili,ed.,Chapter 7,pp 135-182,CRC Press,Boca Raton,2012
【非特許文献2】Effect of time, temperature,and reactant ratio on pyrazine formation in model system,T.Shibamoto,R.A.Bernhard,J.Agric.Food Chem.,24,(1976)p.847
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ある置換ピラジンを選択的に形成する方法を提供する。ピラジンを選択的に生成する方法は、少なくとも1つのタバコ由来炭素源(例えばヒドロキシケトン及び/又は緩衝剤で処理された少なくとも1つの糖)及び少なくとも1つのタバコ由来窒素源(例えばタンパク質及び/又はアミノ酸)を含む反応溶液を入手し、反応溶液を反応温度まで加熱して、少なくとも1つの置換ピラジンを含む反応生成物を生成するのに十分な時間にわたって、反応溶液を反応温度に保持することを含む。窒素源は、アミノ酸、アンモニウムイオン及びその組合せからなる群から選択することができる。
【0009】
各種の実施形態において、少なくとも1つの置換ピラジンは、2,6-ジメチルピラジン;2,5-ジメチルピラジン;2-エチル-5-メチルピラジン;2-エチル-6-メチルピラジン;2,3,5-トリメチルピラジン;2-エチル-3,5-ジメチルピラジン;2-エチル-2,5-ジメチルピラジン;2,3,5,6-トリメチルピラジン;2,3,5-トリメチル-6-エチルピラジン;2,6-ジメチル-3-プロピルピラジン;2,5-ジエチル-3,6-ジメチルピラジン;2,6-ジメチル-3-(2-メチルブチル)ピラジン;2,5-ジメチル-3-(2-メチルブチル)ピラジン;2,5-ジメチル-3-(3-メチルブチル)ピラジン;2,5-ジメチル-3-プロピルピラジン;2,5-ジメチル-3-シス-プロペニルピラジン;2-イソプロペニル-3,6-ジメチルピラジン;2-(2-メチルプロピル)-3,5-ジメチルピラジン;2,6-ジメチル-3-イソブチルピラジン;2-(2-メチルプロピル)-3,5,6-トリメチルピラジン、2,3-ジメチルピラジン;トリメチルピラジン;フラネオール、2,5-ジメチル-3-エチルピラジン;テトラメチルピラジン;2,3-ジエチル-5-メチルピラジン;2,5-ジメチル-3-プロペニルピラジン;2,3,5-トリメチル-6-イソプロピルピラジン;2-アセチル-4,5-ジメチルピラジン;3,5-ジメチル-2-メチルプロピルピラジン;2,6-ジエチルピラジン;2,5-ジエチルピラジン;2-エチル-3,5,6-トリメチルピラジン;3,5(3,6-ジメチル)-2,N-プロピルピラジン;2,5-ジエチル-3-メチルピラジン;2,3-ジエチル-5,6-ジメチルピラジン(dimethylpryazine);トランス-3-メチル-2,n-プロピル-6(1-ブテニル)ピラジン;2,5,7-トリメチル-6,7-ジヒドロ-5H-シクロペンタピラジン;及び2,5-ジメチル-3-エチルピラジン;並びにその組合せからなる群から選択することができる。
【0010】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つの置換ピラジンは、2置換、3置換又は4置換されている。ある実施形態において、少なくとも1つの置換ピラジンは、2個以上の炭素原子を有する少なくとも1個の置換基を含む。各種の実施形態において、少なくとも1つの置換ピラジンは、3個以上の炭素原子を有する少なくとも1個の置換基を含む。
【0011】
各種の実施形態において、ある置換ピラジンを選択的に形成する方法は、反応生成物から少なくとも1つの置換ピラジンを単離することをさらに含むことができる。反応生成物から少なくとも1つのタバコ由来ピラジンを単離するステップは、例えば反応生成物の液液抽出、反応生成物の液固抽出及び反応生成物の単純蒸留のうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0012】
本発明の方法は、少なくとも1つの置換ピラジンをタバコ製品に取り込むことをさらに含むことができる。ある実施形態において、タバコ製品は喫煙品であることができる。いくつかの実施形態において、タバコ製品は無煙タバコ製品であることができる。
【0013】
本発明の各種の実施形態において、ピラジンを形成する方法であって、少なくとも1つのα-ヒドロキシケトン及び少なくとも1つの窒素源を含む反応物溶液を入手し、反応物溶液を反応物温度まで加熱し、少なくとも1つの置換ピラジンを含む反応物生成物を生成するのに十分な時間にわたって反応物温度にて反応物溶液を維持することを含む、方法が提供される。本方法の各種の実施形態は、反応物生成物から少なくとも1つの置換ピラジンを単離することをさらに含むことができる。ある実施形態において、少なくとも1つのヒドロキシケトンはアセトールを含むことができ、少なくとも1つの置換ピラジンは2,3-ジメチルピラジン2,6-ジメチルピラジン;2-エチル-6-メチルピラジン;2-エチル-5-メチルピラジン;トリメチルピラジン;フラネオール;2,5-ジメチル-3-エチルピラジン;2-エチル-3,5-ジメチルピラジン(dimethylypyrazine);テトラメチルピラジン;2,5-ジメチル-3-プロペニルピラジン;2,3,5-トリメチル-6-イソプロピルピラジン;2-アセチル-4,5-ジメチルピラジン;3,5-ジメチル-2-メチルプロピルピラジン及びその組合せからなる群から選択することができる。いくつかの実施形態において、少なくとも1つのヒドロキシケトンはアセトインを含むことができ、少なくとも1つの置換ピラジンはテトラメチルピラジンであることができる。各種の実施形態において、少なくとも1つのヒドロキシケトンは1-ヒドロキシ-2-ブタノンを含むことができ、少なくとも1つの置換ピラジンは、2,6-ジエチルピラジン;2,5-ジエチルピラジン;2-エチル-3,5,6-トリメチルピラジン;3,5(3,6-ジメチル)-2,N-プロピルピラジン;2,5-ジエチル-3-メチルピラジン;2,3-ジエチル-5-メチルピラジン;2,3-ジエチル-5,6-ジメチルピラジン(dimethylpryazine);トランス-3-メチル-2,n-プロピル-6(1-ブテニル)ピラジン;2,5-ジメチル-3-エチルピラジン;及びその組合せからなる群から選択することができる。
【0014】
本発明の各種の実施形態において、方法は、少なくとも1つのα-ヒドロキシケトン及び少なくとも1つの窒素源を含む反応溶液に、フリーのアミノ酸を添加することをさらに含むことができる。いくつかの実施形態において、方法は、少なくとも1つのα-ヒドロキシケトン及び少なくとも1つの窒素源を含む反応溶液に、少なくとも1つのアルデヒドを添加することをさらに含むことができる。
【0015】
本発明の各種の実施形態において、ピラジンを形成する方法であって、少なくとも1つのヒドロキシケトンの最適量が少なくとも1つの糖から供給されるように、少なくとも1つの糖及び少なくとも1つの緩衝剤を含む炭素源溶液入手すること、炭素源溶液を少なくとも窒素源と混合して、反応溶液を形成すること、反応溶液を反応温度まで加熱し、少なくとも1つの置換ピラジンを含む反応生成物を生成するのに十分な時間にわたって反応温度にて反応溶液を保持することを含む、方法が提供される。本明細書の方法の各種の実施形態は、反応生成物から少なくとも1つの置換ピラジンを単離することをさらに含むことができる。少なくとも1つの糖は、グルコース、フルクトース、ラムノース及びその組合せからなる群から選択することができる。ある実施形態において、緩衝剤は、水酸化ナトリウム、リン酸緩衝液及びその組合せからなる群から選択することができる。ある実施形態において、緩衝剤は約6.5~約7.5のpH範囲で緩衝することができる。本発明の方法は、少なくとも1つの糖を含む炭素源及び少なくとも1つの緩衝剤を含む反応溶液にアンモニウムイオンを添加することをさらに含むことができる。
【0016】
本発明には、以下の実施形態が含まれるが、これに限定されない。
【0017】
実施形態1:ピラジンを形成する方法であって、少なくとも1つのα-ヒドロキシケトン及び少なくとも1つの窒素源を含む反応溶液を入手すること、反応溶液を反応温度まで加熱し、少なくとも1つの置換ピラジンを含む反応生成物を生成するのに十分な時間にわたって反応温度にて反応溶液を保持することを含む、方法。
【0018】
実施形態2:少なくとも1つのヒドロキシケトンがアセトールを含む、実施形態1に記載の方法。
【0019】
実施形態3:少なくとも1つの置換ピラジンが2,3-ジメチルピラジン;2,6-ジメチルピラジン;2-エチル-6-メチルピラジン;2-エチル-5-メチルピラジン;トリメチルピラジン;フラネオール;2,5-ジメチル-3-エチルピラジン;2-エチル-3,5-ジメチルピラジン(dimethylypyrazine);テトラメチルピラジン;2,5-ジメチル-3-プロペニルピラジン;2,3,5-トリメチル-6-イソプロピルピラジン;2-アセチル-4,5-ジメチルピラジン;3,5-ジメチル-2-メチルプロピルピラジン及びその組合せからなる群から選択される、実施形態1又は2に記載の方法。
【0020】
実施形態4:少なくとも1つのヒドロキシケトンがアセトインを含む、実施形態1~3のいずれかに記載の方法。
【0021】
実施形態5:少なくとも1つの置換ピラジンがテトラメチルピラジンである、実施形態1~4のいずれかに記載の方法。
【0022】
実施形態6:少なくとも1つのヒドロキシケトンが1-ヒドロキシ-2-ブタノンを含む、実施形態1~5のいずれかに記載の方法。
【0023】
実施形態7:少なくとも1つの置換ピラジンが、2,6-ジエチルピラジン;2,5-ジエチルピラジン;2-エチル-3,5,6-トリメチルピラジン;3,5(3,6-ジメチル)-2,N-プロピルピラジン;2,5-ジエチル-3-メチルピラジン;2,3-ジエチル-5-メチルピラジン;2,3-ジエチル-5,6-ジメチルピラジン(dimethylpryazine);トランス-3-メチル-2,n-プロピル-6(1-ブテニル)ピラジン;2,5-ジメチル-3-エチルピラジン;及びその組合せからなる群から選択される、実施形態1~6のいずれかに記載の方法。
【0024】
実施形態8:窒素源が、アミノ酸、アンモニウムイオン及びその組合せからなる群から選択される、実施形態1~7のいずれかに記載の方法。
【0025】
実施形態9:フリーのアミノ酸を反応溶液に添加することをさらに含む、実施形態1~8のいずれかに記載の方法。
【0026】
実施形態10:少なくとも1つのアルデヒドを反応溶液に添加することをさらに含む、実施形態1~9のいずれかに記載の方法。
【0027】
実施形態11:反応生成物から少なくとも1つの置換ピラジンを単離することをさらに含む、実施形態1~10のいずれかに記載の方法。
【0028】
実施形態12:反応生成物から少なくとも1つの置換ピラジンを単離するステップが、反応生成物の液液抽出、反応生成物の液固抽出及び反応生成物の単純蒸留のうちの少なくとも1つを含む、実施形態1~11に記載の方法。
【0029】
実施形態13:反応温度が約90℃~約150℃である、実施形態1~12のいずれかに記載の方法。
【0030】
実施形態14:少なくとも1つの置換ピラジンが、2,6-ジメチルピラジン;2,5-ジメチルピラジン;2-エチル-5-メチルピラジン;2-エチル-6-メチルピラジン;2,3,5-トリメチルピラジン;2-エチル-3,5-ジメチルピラジン;2-エチル-2,5-ジメチルピラジン;2,3,5,6-トリメチルピラジン;2,3,5-トリメチル-6-エチルピラジン;2,6-ジメチル-3-プロピルピラジン;2,5-ジエチル-3,6-ジメチルピラジン;2,6-ジメチル-3-(2-メチルブチル)ピラジン;2,5-ジメチル-3-(2-メチルブチル)ピラジン;2,5-ジメチル-3-(3-メチルブチル)ピラジン;2,5-ジメチル-3-プロピルピラジン;2,5-ジメチル-3-シス-プロペニルピラジン;2-イソプロペニル-3,6-ジメチルピラジン;2-(2-メチルプロピル)-3,5-ジメチルピラジン;2,6-ジメチル-3-イソブチルピラジン;2-(2-メチルプロピル)-3,5,6-トリメチルピラジン、2,3-ジメチルピラジン;トリメチルピラジン;フラネオール、2,5-ジメチル-3-エチルピラジン;テトラメチルピラジン;2,3-ジエチル-5-メチルピラジン;2,5-ジメチル-3-プロペニルピラジン;2,3,5-トリメチル-6-イソプロピルピラジン;2-アセチル-4,5-ジメチルピラジン;3,5-ジメチル-2-メチルプロピルピラジン;2,6-ジエチルピラジン;2,5-ジエチルピラジン;2-エチル-3,5,6-トリメチルピラジン;3,5(3,6-ジメチル)-2,N-プロピルピラジン;2,5-ジエチル-3-メチルピラジン;2,3-ジエチル-5,6-ジメチルピラジン(dimethylpryazine);トランス-3-メチル-2,n-プロピル-6(1-ブテニル)ピラジン;2,5,7-トリメチル-6,7-ジヒドロ-5H-シクロペンタピラジン;及び2,5-ジメチル-3-エチルピラジン;並びにその組合せからなる群から選択される、実施形態1~13のいずれかに記載の方法。
【0031】
実施形態15:少なくとも1つの置換ピラジンが2置換されている、実施形態1~14のいずれかに記載の方法。
【0032】
実施形態16:少なくとも1つの置換ピラジンが3置換されている、実施形態1~15のいずれかに記載の方法。
【0033】
実施形態17:少なくとも1つの置換ピラジンが4置換されている、実施形態1~16のいずれかに記載の方法。
【0034】
実施形態18:少なくとも1つの置換ピラジンが、2個以上の炭素原子を有する少なくとも1個の置換基を含む、実施形態1~17のいずれかに記載の方法。
【0035】
実施形態19:少なくとも1つの置換ピラジンが、3個以上の炭素原子を有する少なくとも1個の置換基を含む、実施形態1~18のいずれかに記載の方法。
【0036】
実施形態20:反応生成物が、ピラジン分子及びメチルピラジン分子を実質的に含まない、実施形態1~19のいずれかに記載の方法。
【0037】
実施形態21:少なくとも1つの置換ピラジンをタバコ製品に組み入れることをさらに含む、実施形態1~20のいずれかに記載の方法。
【0038】
実施形態22:少なくとも1つの置換ピラジンをタバコ製品に組み入れることをさらに含み、タバコ製品が喫煙品又は無煙タバコ製品である、実施形態1~21のいずれかの方法。
【0039】
実施形態23:ピラジンを形成する方法であって、少なくとも1つの糖及び少なくとも1つの緩衝剤を含む炭素源溶液を入手することと、炭素源溶液を少なくとも窒素源と混合して、反応溶液を形成すること、反応溶液を反応温度まで加熱し、少なくとも1つの置換ピラジンを含む反応生成物を生成するのに十分な時間にわたって反応温度にて反応溶液を保持することを含む、方法。
【0040】
実施形態24:少なくとも1つの糖が、グルコース、フルクトース、ラムノース及びその組合せからなる群から選択される、実施形態1~23のいずれかに記載の方法。
【0041】
実施形態25:窒素源が、アミノ酸、アンモニウムイオン及びその組合せからなる群から選択される、実施形態1から24のいずれかに記載の方法。
【0042】
実施形態26:緩衝剤が、水酸化ナトリウム、リン酸緩衝液及びその組合せからなる群から選択される、実施形態1から25のいずれかに記載の方法。
【0043】
実施形態27:緩衝剤が、約6.5~約7.5のpH範囲で緩衝する、実施形態1~26のいずれかに記載の方法。
【0044】
実施形態28:アンモニウムイオンを反応溶液に添加することをさらに含む、実施形態1~27のいずれかに記載の方法。
【0045】
実施形態29:少なくとも1つの置換ピラジンを反応生成物から単離することをさらに含む、実施形態1~28のいずれかに記載の方法。
【0046】
実施形態30:反応生成物から少なくとも1つの置換ピラジンを単離するステップが、反応生成物の液液抽出、反応生成物の液固抽出及び反応生成物の単純蒸留のうちの少なくとも1つを含む、実施形態1~29に記載の方法。
【0047】
実施形態31:反応温度が約90℃~約150℃である、実施形態1~30のいずれかに記載の方法。
【0048】
実施形態32:少なくとも1つの置換ピラジンが、2,6-ジメチルピラジン;2,5-ジメチルピラジン;2-エチル-5-メチルピラジン;2-エチル-6-メチルピラジン;2,3,5-トリメチルピラジン;2-エチル-3,5-ジメチルピラジン;2-エチル-2,5-ジメチルピラジン;2,3,5,6-トリメチルピラジン;2,3,5-トリメチル-6-エチルピラジン;2,6-ジメチル-3-プロピルピラジン;2,5-ジエチル-3,6-ジメチルピラジン;2,6-ジメチル-3-(2-メチルブチル)ピラジン;2,5-ジメチル-3-(2-メチルブチル)ピラジン;2,5-ジメチル-3-(3-メチルブチル)ピラジン;2,5-ジメチル-3-プロピルピラジン;2,5-ジメチル-3-シス-プロペニルピラジン;2-イソプロペニル-3,6-ジメチルピラジン;2-(2-メチルプロピル)-3,5-ジメチルピラジン;2,6-ジメチル-3-イソブチルピラジン;2-(2-メチルプロピル)-3,5,6-トリメチルピラジン、2,3-ジメチルピラジン;トリメチルピラジン;フラネオール、2,5-ジメチル-3-エチルピラジン;テトラメチルピラジン;2,3-ジエチル-5-メチルピラジン;2,5-ジメチル-3-プロペニルピラジン;2,3,5-トリメチル-6-イソプロピルピラジン;2-アセチル-4,5-ジメチルピラジン;3,5-ジメチル-2-メチルプロピルピラジン;2,6-ジエチルピラジン;2,5-ジエチルピラジン;2-エチル-3,5,6-トリメチルピラジン;3,5(3,6-ジメチル)-2,N-プロピルピラジン;2,5-ジエチル-3-メチルピラジン;2,3-ジエチル-5,6-ジメチルピラジン(dimethylpryazine);トランス-3-メチル-2,n-プロピル-6(1-ブテニル)ピラジン;2,5,7-トリメチル-6,7-ジヒドロ-5H-シクロペンタピラジン;及び2,5-ジメチル-3-エチルピラジン;並びにその組合せからなる群から選択される、実施形態1~31のいずれかに記載の方法。
【0049】
実施形態33:少なくとも1つの置換ピラジンが2置換されている、実施形態1~32のいずれかに記載の方法。
【0050】
実施形態34:少なくとも1つの置換ピラジンが3置換されている、実施形態1~33のいずれかに記載の方法。
【0051】
実施形態35:少なくとも1つの置換ピラジンが4置換されている、実施形態1~34のいずれかに記載の方法。
【0052】
実施形態36:少なくとも1つの置換ピラジンが、2個以上の炭素原子を有する少なくとも1個の置換基を含む、実施形態1~35のいずれかに記載の方法。
【0053】
実施形態37:少なくとも1つの置換ピラジンが、3個以上の炭素原子を有する少なくとも1個の置換基を含む、実施形態1~36のいずれかに記載の方法。
【0054】
実施形態38:反応生成物がピラジン分子及びメチルピラジン分子を実質的に含まない、実施形態1~37のいずれかに記載の方法。
【0055】
実施形態39:少なくとも1つの置換ピラジンをタバコ製品に組み入れることをさらに含む、実施形態1~38のいずれかに記載の方法。
【0056】
実施形態40:少なくとも1つの置換ピラジンをタバコ製品に組み入れることをさらに含み、タバコ製品が喫煙品又は無煙タバコ製品である、実施形態1~39のいずれかの方法。
【0057】
本開示のこれら及び他の特徴、態様及び利点は、以下に簡単に説明される添付の図面とともに以下の詳細な説明を読むことから明らかになる。本発明は、上記の実施形態の2つ、3つ、4つ又はそれ以上の任意の組合せ並びに本開示に記載の2つ、3つ、4つ又はそれ以上の特徴又は要素の組合せを、このような特徴又は要素が、本明細書の特定の実施形態の説明において明示的に組合されているか否かに拘わらず、含む。本開示は、その各種の態様及び実施形態のいずれにおいても、開示された本発明の分離可能な特徴又は要素は、文脈が別途明確に指摘しない限り、組合せ可能であるものと解釈されるように全体的に読まれるものである。
【0058】
本発明の実施形態の知識を提供するために、必ずしも縮尺通りに描かれたわけではない、参照番号が本発明の例示的な実施形態の構成要素を示す、添付図面を参照する。図面は例示にすぎず、本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0059】
図1】置換ピラジンを選択的に形成する方法を説明するフローチャートである。
図2】置換ピラジンを選択的に形成する方法を説明するフローチャートである。
図3】リン酸緩衝液と140℃にて60分間反応させて、ジクロロメタン(DCM)によって抽出したグルコースのGC/MS分析を示す。
図4】(40%リン酸緩衝液25mLと140℃にて60分間反応させたグルコース1グラム)とNHOH 1mLとの反応混合物からDCMを使用して、140℃にて17時間抽出したピラジンの、GC/MS分析を示す。
図5】NHOH 1mLと反応させた(グルコース0.5グラムと140℃にて60分間反応させた0.1N NaOH)の反応混合物25mLからDCMを使用して、140℃にて抽出したピラジンの、GC/MS分析を示す。
図6】喫煙材、包装材構成要素及び紙巻タバコのフィルタ要素を示す、紙巻タバコの形態を有する喫煙品の分解斜視図である。
図7】タバコ材料を充填した外側パウチを示す、製品の幅方向から見た、無煙タバコ製品の実施形態の上面図である。
図8】本開示の例示的な実施形態による、カートリッジ及び制御本体を備え、リザーバハウジングを含む電子喫煙品の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0060】
以下では、本発明をより十分に説明する。しかし、この本発明は、多くの異なる形態で実施され得るもので、本明細書に記載の実施形態に限定されると解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、この開示が徹底的かつ完全となり、本発明の範囲が当業者に十分に伝わるように提供されている。本明細書及び特許請求の範囲で使用する場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈上別途明確に示さない限り、複数の指示対象を含む。「乾燥重量パーセント」又は「乾燥重量基準」という場合、乾燥成分(即ち水を除くすべての成分)に基づく重量を示す。
【0061】
本発明は、選択されたピラジンを形成する方法を提供する。ピラジンは、ロースト香調、トースト香調、ナッツ香調を含む多くの様々なフレーバープロファイルを示すが、これらに限定されない。例えば、シクロペンチル誘導体を含むピラジンは、非常に低レベルのppbにおける、正の官能特性で知られている。ピラジンは、炭素源と窒素源の混合物を加熱することにより形成される。本発明の方法は、ピラジン分子及びメチルピラジン分子の形成を最小化するだけでなく、他の所望の置換ピラジンを制御された様式で生成することができるように反応の調整を行う。
【0062】
糖以外の炭素源を使用するピラジンの選択的形成
従来、糖は、ピラジンを形成する反応の炭素源として使用されてきた。糖を使用してピラジンが豊富な配合物を生成するいくつかの反応経路は、当分野で既知であり、1)タンパク質のフリーのアミノ酸への加水分解と、後続のこれらのフリーのアミノ酸と糖、例えばグルコース及び/又は高フルクトースシロップとの反応;並びに2)グルコースと窒素(例えばアンモニウムイオン)を用いる、フリーのアミノ酸のバイオ技術合成と、後続のこれらのフリーのアミノ酸と糖、例えばグルコース及び/又は高フルクトースシロップとの反応を含む。糖が無傷の分子として用いられて、窒素源(例えば水酸化アンモニウム、アミノ酸)と反応すると、主要なピラジンとしてのピラジン分子及びメチルピラジン分子、はるかにより少量のジメチルピラジン分子、並びに著しくより少量の高分子量ピラジン分子を含む、一連のピラジンが生成される。
【0063】
本明細書で使用する「ピラジン分子」という用語は、化学式Cの複素環式有機化合物を示す。これは、炭素源と窒素源の反応から生成された化合物群を示す、本明細書で使用する一般用語「ピラジン」とは異なる。
【0064】
本明細書で使用する場合、「窒素源」という用語は、炭素源と反応して少なくとも1つのピラジンを形成する窒素含有化合物を示す。各種の実施形態において、窒素源は、アンモニウムイオン(NH )、アミノ酸、タンパク質又はその組合せを含むことができる。いくつかの実施形態において、水酸化アンモニウム、ジアンモニウムホスフェート(DAP)などの化合物によってアンモニウムイオン(NH )を提供することができる。アミノ酸は、例えばタンパク質の加水分解から誘導することができる。いくつかの実施形態において、参照により本明細書にその全体が組み入れられている、2016年1月28日に出願されたDubeらの米国特許出願公開第15/009,199号で論じられているように、アミノ酸は、タバコ由来タンパク質の加水分解から誘導することができる。当分野で公知であり、炭素源と反応性であり、少なくとも1つのピラジンを形成する、他の窒素含有化合物も、本明細書で開示する本発明の実施形態において窒素源として使用できる。
【0065】
本発明の各種の実施形態において、炭素源はヒドロキシケトンを含むことができる。ヒドロキシケトンは、ヒドロキシル基が隣接するケトンの官能基である。ヒドロキシケトンの2つの主要なクラスにおいて、ヒドロキシル基はα位(即ち、式RCR’(OH)(CO)Rを有するα-ヒドロキシケトン)又はβ位(即ち、式RCR’(OH)CR(CO)Rを有するβ-ヒドロキシケトン)で置換することができる。α-及びβ-ヒドロキシケトンの構造を以下に示す。
【0066】
【化1】
【0067】
本発明の各種の実施形態において、炭素源は少なくとも1つのα-ヒドロキシケトンを含むことができる。本発明の各種の実施形態において、少なくとも1つのヒドロキシケトンのR及びR’官能基は、H又はハロ(例えばCl、F又はBr)、OH、任意に置換されたC1-10アルキル、任意に置換されたC1-10アルコキシ、任意に置換されたC2-4アルケニル、任意に置換されたC2-4アルキニル、NR、NRCOR、NRCO、CROR、CONR、CO、CN、CF、NO、N、C1-3アルキルチオ、RSO、RSO、CFS及びCFSOからなる群から独立して選択された置換基であることができる。本発明のある実施形態において、R及び/又はR’官能基はC1-6アルキルである。
【0068】
「アルキル」という用語は、本明細書で使用する場合、飽和直鎖、分枝又は環状炭化水素基(即ちシクロアルキル基)並びに飽和例の不飽和版(例えばプロペニル)を意味する。特定の実施形態において、アルキルは、1~10個の炭素原子を含む基(「C1-10アルキル」)を示す。さらなる実施形態において、アルキルは、1~8個の炭素原子(「C1-8アルキル」)、1~6個の炭素原子(「C1-6アルキル」)又は1~4個の炭素原子(「C1-4アルキル」)を含む基を示す。他の実施形態において、アルキルは、3~10個の炭素原子(「C3-10アルキル」)、3~8個の炭素原子(「C3-8アルキル」)又は3~6個の炭素原子(「C3-6アルキル」)を含む基を示す。具体的な実施形態において、アルキルは、メチル、トリフルオロメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、ブチル、イソブチル、t-ブチル、ペンチル、シクロペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、シクロヘキシル、シクロヘキシルメチル、3-メチルペンチル、2,2-ジメチルブチル及び2,3-ジメチルブチルを示す。
【0069】
置換基に関して「任意に置換された」とは、例えばハロ(例えばCl、F、Br及びI);アルキル(例えばC1-10アルキル)、ハロゲン化アルキル(例えばCF、2-Br-エチル、CHF、CHCl、CHCF又はCFCF);C2-4アルケニル、C2-4アルキニル;ヒドロキシル;アミノ;アミド;カルボキシレート;カルボキサミド;カルバメート;カーボネート;尿素;アセテート;アルキルアミノ;アリールアミノ;C1-10アルコキシ;アリール;アラルキル、アリールオキシ;ニトロ;アジド;シアノ;チオ;アルキルチオ;スルホネート;スルフィド;スルフィニル;スルホ;サルフェート;スルホキシド;スルファミド;スルホンアミド;ホスホン酸;ホスフェート;及び/又はホスホネートからなる群から選択される1つ以上の部分によって任意に置換された置換基を示す。
【0070】
「アルケニル」という用語は、本明細書で使用する場合、少なくとも1個の飽和C-C結合が二重結合によって置換されたアルキル部分を意味する。特定の実施形態において、アルケニルは、2~10個の炭素原子を含む基(「C2-10アルケニル」)を示す。さらなる実施形態において、アルケニルは、2~8個の炭素原子(「C2-8アルケニル」)、2~6個の炭素原子(「C2-6アルケニル」)又は2~4個の炭素原子(「C2-4アルケニル」)を含む基を示す。特定の実施形態において、アルケニルは、ビニル、アリル、1-プロペニル、2-プロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、1-ペンテニル、2-ペンテニル、3-ペンテニル、4-ペンテニル、1-ヘキセニル、2-ヘキセニル、3-ヘキセニル、4-ヘキセニル又は5-ヘキセニルであることができる。
【0071】
「アルキニル」という用語は、本明細書で使用する場合、少なくとも1個の飽和C-C結合が三重結合で置換されたアルキル部分を意味する。特定の実施形態において、アルキニルは、2~10個の炭素原子を含む基(「C2-10アルキニル」)を示す。さらなる実施形態において、アルキニルは、2~8個の炭素原子(「C2-8アルキニル」)、2~6個の炭素原子(「C2-6アルキニル」)又は2~4個の炭素原子(「C2-4アルキニル」)を含む基を示す。特定の実施形態において、アルキニルは、エチニル、1-プロピニル、2-プロピニル、1-ブチニル、2-ブチニル、3-ブチニル、1-ペンチニル、2-ペンチニル、3-ペンチニル、4-ペンチニル、1-ヘキシニル、2-ヘキシニル、3-ヘキシニル、4-ヘキシニル又は5-ヘキシニルであることができる。
【0072】
「アルコキシ」という用語は、本明細書で使用する場合、酸素原子によって結合された直鎖又は分枝アルキル基(即ち-O-アルキル)を意味し、アルキルは上記の通りである。特定の実施形態において、アルコキシは、1~10個の炭素原子を含む酸素結合基(「C1-10アルコキシ」)を示す。さらなる実施形態において、アルコキシは、1~8個の炭素原子(「C1-8アルコキシ」)、1~6個の炭素原子(「C1-6アルコキシ」)、1~4個の炭素原子(「C1-4アルコキシ」)又は1~3個の炭素原子(「C1-3アルコキシ」)を含む、酸素結合基を示す。
【0073】
「ハロ」又は「ハロゲン」という用語は、本明細書で使用する場合、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素を意味する。
【0074】
「アミノ」という用語は、本明細書で使用する場合、構造NRによって表される部分を意味し、第1級アミン並びにアルキル又はアリールで置換された第2級及び第3級アミン(即ち、それぞれアルキルアミノ又はアリールアミノ)を含む。したがって、Rは、2個の水素原子、2個のアルキル部分、2個のアリール部分、1個のアリール部分及び1個のアルキル部分、1個の水素原子及び1個のアルキル部分又は1個の水素原子及び1個のアリール部分を表し得る。
【0075】
アルキル(アミノ)は、構造-RNRで表される部分であり、上で定義したアミノ基に結合した上で定義したアルキル基を含み、この部分はアルキル基を介して分子の別の部分に結合している。
【0076】
「シクロアルキル」という用語は、炭素原子及び水素原子を含む非芳香族、単環式又は多環式環を意味する。
【0077】
「誘導体」という用語は、本明細書で使用する場合、別の分子又は原子を開始化合物に結合することによって、類似の開始化合物から形成される化合物を意味する。さらに、本発明による誘導体は、1個以上の原子若しくは分子の付加又は2個以上の前駆体化合物の組合せにより、前駆体化合物から形成される1つ以上の化合物を含む。
【0078】
本発明の一実施形態において、アセトインは、テトラメチルピラジン(TMP)を生成するための前駆体としての使用が成功している。具体的には、アセトインを水酸化アンモニウム及びリン酸(又はジアンモニウムホスフェート)との反応が成功し、本質的に定量的収率(80%を超える収率)にて、付随する相当の純度でテトラメチルピラジン(TMP)が生成されている。アセトインと水酸化アンモニウムの反応によって、ほぼ排他的にTMPが生成され、ピラジン分子及びメチルピラジン分子の量はほぼ又は全く検出できない。本明細書で使用する場合、「量はほぼ又は全く検出できない」、「実質的にない」及び「実質的にゼロ」という用語は、同定された化合物が、反応生成物の総重量に対して1.0重量%未満、0.5重量%未満又は0.1重量%未満の量で存在することを示す。
【0079】
理論に制限されることなく、炭素源としての糖とアセトインとの反応から合成されて生じた種々のピラジンによって、驚くべきことに、炭素源と窒素源(例えばアンモニウムイオン及び/又はアミノ酸)との反応におけるピラジンの分布が、炭素源によってかなりの程度まで決定されることが示されている。特に、ピラジンを形成する反応で炭素源として異なるヒドロキシケトンを使用すると、一連の特定の置換ピラジンを制御された方法で生成することができることが驚くべきことに見出されている。
【0080】
ある実施形態において、本明細書に記載の方法に従って生成された少なくとも1つの置換ピラジンは、2置換されている。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法に従って生成された少なくとも1つの置換ピラジンは、3置換されている。各種の実施形態において、本明細書に記載の方法に従って生成された少なくとも1つの置換ピラジンは、4置換されている。各種の実施形態において、本発明の方法に従って生成された少なくとも1つの置換ピラジンは、2個以上の炭素原子を有する少なくとも1個の置換基を含む。ある実施形態において、本発明の方法に従って生成された少なくとも1つの置換ピラジンは、3個以上の炭素原子を有する少なくとも1個の置換基を含む。
【0081】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法に従って生成された少なくとも1つの置換ピラジンは分枝ピラジンである。本明細書で使用する場合、「分枝ピラジン」という用語は、本質的に直鎖状ではないピラジン環上のアルキル基を含むことを示す。例えば、n-ブチル基の代わりにイソブチル、sec-ブチル及びtert-ブチル基(これはプロピル基及びペンチル基にも同様に当てはまる)。以下により詳細に説明するように、α-ヒドロキシケトンを変えることにより、生成されたピラジンの分布を決定できることが驚くべきことに見出された。例えば、反応にアセトインを使用すると、テトラメチルピラジンのみが得られる(約99.5%以上の純度)。反応にアセトールを使用すると、主にジメチル置換ピラジンが得られる(約95%以上のピラジンの収率)。
【0082】
図1に示すように、例えば窒素源と少なくとも1つのヒドロキシケトンを含む加熱配合物は、ピラジンを生成することができる。ピラジンが豊富な溶液は、各種の方法で調製できる。例えば1つの方法は、少なくとも1つのアミノ酸と少なくとも1つのヒドロキシケトンを含む溶液のマイクロ波熱処理を含むことができる。例えば図1の操作100に示すように、少なくとも1つのアミノ酸と少なくとも1つのヒドロキシケトンを含む水性反応溶液を形成することができる。例えば図1の操作104に示すように、反応溶液を反応温度まで加熱し、反応物がピラジンを形成する反応を受けるのに十分な反応時間にわたって反応温度に保持することができる。例えば図1の操作106に示すように、次いで、ピラジンは、単純蒸留又は当該分野で公知の他の分離技術を使用して、反応生成物から任意に単離することができる。
【0083】
一実施形態において、最初に、ほぼ水及びピラジンを含む留出物を与える単純蒸留を使用することにより、ピラジンを反応生成物から単離する。次に、この留出物をシクロヘキサンによる液液抽出に供することができる。液液抽出で使用するシクロヘキサンの量は、使用する留出物の量の約半分に等しいことが可能である。例えば、留出物10Lを使用する場合、シクロヘキサン5Lを使用できる。シクロヘキサンによる留出物の液液抽出は、複数回反復することができる。いくつかの実施形態において、シクロヘキサンによる留出物の液液抽出を少なくとも5回反復することができる。液液抽出の後、抽出されたピラジンを含むシクロヘキサンを当分野で既知の任意の脱水剤によって脱水することができる。例えばナトリウムサルフェート、水酸化マグネシウム、及び/又はモレキュラーシーブを使用して、シクロヘキサンを脱水することができる。脱水後、単純蒸留及び/又は回転蒸発によりピラジンを単離することができる(即ち、シクロヘキサンを除去できる)。
【0084】
上で論じたように、ピラジンを形成する反応の炭素源として異なるヒドロキシケトンを使用すると、一連の特定の置換ピラジンを生成することができる。ある実施形態において、炭素源はアセトインを含む。以下の実施例1で詳細に説明するように、例えばアセトインが窒素源(例えば水酸化アンモニウム(NHOH)及びリン酸(HPO)、ジアンモニウムホスフェートなど)との反応で唯一の炭素源として作用してピラジンを生成する場合、生成された唯一のピラジンはテトラメチルピラジンである。さらに、イソプロピルピラジンなどの分枝ピラジンは、アセトイン、NHOH及びHPOを含有する反応に、アミノ酸(例えばロイシン又は加水分解F1タンパク質からのフリーのアミノ酸)の添加によって合成されない。反応物を高温にて又は長時間にわたって加熱しても結果は変わらない(即ち、テトラメチルピラジン(TMP)がアセトインから合成される唯一のピラジンである)。したがって、この合成手法からTMP以外のピラジンが必要な場合は、アセトイン以外の炭素源を合成することができる。
【0085】
いくつかの実施形態において、炭素源は、1-ヒドロキシアセトン(1-OH-アセトン、アセトール又は1-ヒドロキシ-2-プロパノンとも呼ばれる)を含むことができる。α-ヒドロキシケトンであるアセトールは、最も単純なヒドロキシケトンである。以下で詳細に説明するように、アセトールは各種の糖の分解によって生成することができる。例えば、アセトールはメイラード反応(即ち、ピラジンを形成するための糖とアミノ酸の反応)の中間体として形成でき、次いでアセトールはさらに反応して他の化合物を形成することができる。本発明のいくつかの実施形態において、炭素源は1-ヒドロキシ-2-ブタノンを含むことができる。1-OH-アセトン及び1-OH-2-ブタノンの構造を以下に示す。1-OH-アセトンの場合、メチル基がカルボニルの片側に結合し、1-OH-2-ブタノンの場合、エチル基がカルボニルの片側に結合していることに留意されたい。理論に制限されることなく、2つのα,β-ヒドロキシケトンのこれらの構造的特徴により、生成されるピラジンの構造を決定することができる。
【0086】
【化2】
【0087】
以下の実施例2に示すように、例えば炭素源としての1-ヒドロキシアセトンと、塩基及び窒素の源としてのNHOHの反応により、一連のピラジンを生成することができる。1-ヒドロキシアセトン(アセトール)が炭素源として作用する場合、一連の特定のアルキル置換ピラジンを生成することができる。例えば、1-ヒドロキシアセトンとNHOHとの反応から提供される例示的なピラジンとしては、2,6-ジメチルピラジン、2,5-ジメチルピラジン;2-エチル-5-メチルピラジン;2-エチル-6-メチルピラジン;2,3,5-トリメチルピラジン;2-エチル-3,5-ジメチルピラジン;2-エチル-2,5-ジメチルピラジン;2,3,5,6-トリメチルピラジン;2,3,5-トリメチル-6-エチルピラジン;2,6-ジメチル-3-プロピルピラジン;2,5-ジエチル-3,6-ジメチルピラジン;2,6-ジメチル-3-(2-メチルブチル)ピラジン;2,5-ジメチル-3-(2-メチルブチル)ピラジン;2,5-ジメチル-3-(3-メチルブチル)ピラジン;2,5-ジメチル-3-プロピルピラジン;2,5-ジメチル-3-シス-プロペニルピラジン;2-イソプロペニル-3,6-ジメチルピラジン;2-(2-メチルプロピル)-3,5-ジメチルピラジン;2,6-ジメチル-3-イソブチルピラジン;2-(2-メチルプロピル)-3,5,6-トリメチルピラジン、2,3-ジメチルピラジン;トリメチルピラジン;フラネオール、2,5-ジメチル-3-エチルピラジン;テトラメチルピラジン;2,3-ジエチル-5-メチルピラジン;2,5-ジメチル-3-プロペニルピラジン;2,3,5-トリメチル-6-イソプロピルピラジン;2-アセチル-4,5-ジメチルピラジン;及び3,5-ジメチル-2-メチルプロピルピラジンを挙げることができる。
【0088】
1-ヒドロキシ-2-ブタノンを唯一の炭素源として使用すると、エチル基が結合したピラジンを生成することができる。例えば、以下の例4に示すように、1-OH-2ブタノンとNHOHを使用した反応から合成されるピラジンとしては、2,6-ジエチルピラジン、2,5-ジエチルピラジン;2-エチル-3,5,6-トリメチルピラジン;3,5(3,6-ジメチル)-2,n-プロピルピラジン;2,5-ジエチル-3-メチルピラジン;2,3-ジエチル-5,6-ジメチルピラジン(dimethylpryazine);トランス-3-メチル-2,n-プロピル-6(1-ブテニル)ピラジン;及び2,5-ジメチル-3-エチルピラジンを挙げることができる。
【0089】
窒素源との反応において、1-ヒドロキシアセトン(アセトール)、2-ヒドロキシ-3-ブタノン(アセトイン)及び1-ヒドロキシ-2-ブタノンが炭素源として使用される場合、ピラジン及びメチルピラジン分子は、一連の生成された構造及びピラジンには出現しない。他のヒドロキシケトンを使用して、代わりの一連のピラジンを生成できることに留意されたい。ピラジンを生成する反応の炭素源として異なるヒドロキシケトンを使用すると、ピラジン及びメチルピラジンの形成を最小限に抑制できるだけでなく、他の望ましい置換ピラジンが制御された方法で生成されるように反応を調整することもできる。
【0090】
例えば、図1の操作102に示すように、少なくとも1つのヒドロキシケトン及び窒素源を含む反応溶液に、アミノ酸及び/又はアルデヒドを任意に添加することができる。以下の実施例3に示すように、例えばアミノ酸又は選択されたアルデヒドの添加は、合成ピラジンの数を増加させるだけでなく、ピラジンの収率も増加させることができる。例えば、ある実施形態において、反応溶液は、セリン、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、スレオニン、フェニルアラニン及びその組合せからなる群から選択されるアミノ酸を含むことができる。同様に、合成ピラジンの数並びにピラジンの収率を高めるために、任意のアルキルアルデヒドを用いることができる。例えばある実施形態において、反応溶液は、アセトアルデヒド、プロパナール、イソプロパノール、ブタナール、イソブタナール、secブタナール及びその組合せからなる群から選択されるアルキルアルデヒドを含むことができる。
【0091】
反応時間の延長及び温度の上昇により、黒色タール物質が生成される時点までピラジンの収率が向上する。反応温度は、例えば約30℃以上、約90℃以上、約100℃以上、約120℃以上又は約140℃以上であることができる。いくつかの実施形態において、反応温度は約90℃~約150℃又は約120℃~約140℃であることができる。反応時間は、例えば約4時間以上、8時間以上、約12時間以上、16時間以上又は約24時間以上であることができる。各種の実施形態において、反応時間は約4~約24時間又は約12~約20時間であることができる。ある実施形態において、反応時間は約16時間であることができる。
【0092】
各種の実施形態において、窒素源に対するヒドロキシケトンのモル比は、ピラジンの収率に影響を及ぼすことがある。ヒドロキシケトン:窒素源(例えばNHOH)のモル比は、例えば約1:0.5、約1:1、約1:2又は約1:2.5であることができる。ある実施形態において、ヒドロキシケトンと窒素源の比は、約1:0.5~約1:2.5又は約1:1~約1:2であることができる。ある実施形態において、ヒドロキシケトンと窒素源の比は約1:2であることができる。
【0093】
反応溶液のpHの上昇によっても、ピラジン量の増加が生じることもある。好ましいpH範囲は、約7.5~約10.5又は約8.5~約9.5であることができる。いくつかの実施形態において、反応溶液のpHは、約8.0以上、約8.5以上、約9.0以上又は約10.0以上であることができる。例えばNaOH又はKOHの少量添加を使用して、反応溶液のpHを上昇させることができる。
【0094】
炭素源として糖を使用するピラジンの選択的形成
本発明の各種の実施形態において、置換ピラジンの選択的形成は、炭素源としての少なくとも1つの糖(例えばグルコース、高フルクトースタバコシロップ(HFTS))並びに窒素源としてのアンモニウムイオン、タンパク質及び/又はアミノ酸を使用して最適化されている。上で論じたように、糖を炭素源として使用してピラジンを製造するために、ピラジンに富む配合物への各種の反応経路が以前から使用されている。例えば、参照によりその全体が本明細書に組み入れられている、2016年1月28日に出願されたDubeらの米国特許出願公開第15/009,199号を参照のこと。しかし、ピラジンを生成するために窒素源(例えば水酸化アンモニウム)との反応で糖を唯一の源として使用する場合、ピラジン分子及びメチルピラジン分子が生成される主要なピラジンとなることがある。フリーのアミノ酸を共試薬として用いる場合でも、この傾向は明らかである。窒素源に導入する前に炭素源のpHを調整することにより、置換ピラジンを選択的に生成できることが、驚くべきことに見出された。
【0095】
例えば図2に示すように、アミノ酸と糖を含む加熱配合物はピラジンを生成することができる。例えば、参照によりその全体が本明細書に組み入れられている、Coleman IIIらの米国特許出願公開2010/0037903号及びColeman III,On the synthesis and characteristics of aqueous formulations rich in pyrazines,in Flavor Fragrance and Odor Analysis,Second Edition,Ray Marsili,ed.,Chapter 7,pp135-182,CRC Press,Boca Raton,2012を参照のこと。ピラジンが豊富な溶液は、各種の方法で調製できる。例えば1つの方法は、少なくとも1つのアミノ酸及び少なくとも1つの糖を含む溶液のマイクロ波加熱処理を含むことができる。例えば図2の操作120に示すように、少なくとも1つのアミノ酸及び少なくとも1つの糖を含む水性反応溶液を形成することができる。例えば図1の操作124に示すように、反応溶液を反応温度まで加熱し、反応物がピラジンを形成する反応を受けるのに十分な反応時間にわたって反応温度に保持することができる。
【0096】
上で論じたように、ヒドロキシケトンであるアセトールは、各種の糖の分解によって生成することができる。さらに、窒素源との反応において炭素源として使用すると、ピラジン分子及びメチルピラジン分子を含まない、一連の置換ピラジンを生成することができる。したがって、アセトールは、糖とフリーのアミノ酸及び/又はアンモニウムイオンとの反応における重要な中間体となり、分枝アルキル側鎖を含むピラジンを生成することができる。
【0097】
文献によって、1-ヒドロキシ-2-プロパノン(アセトール)は、グルコース及びグルコースの誘導体であるソルビトールなどのC6糖から生成するできることが示されている。例えば、参照によりその全体が本明細書にそれぞれ組み入れられている、M.H.Mohamad,et.al.,“A review of acetol:application and production”,Amer.J.Appl.Sci.,8,1135-1139(2011);M.A.Dasari,“Catalytic conversion of glycerol and sugar alcohols to value added products”,Univ.Missouri-Columbia,ISBN-10,0549727582,pp,264;W.Yan,“Gas phase conversion of sugars to C3 chemicals,PhD Thesis,University of Missouri-Columbia,2008;J.Hayami,Mechanism of acetol formation”,Bull.Chem.Soc.Japan,34,927-932(1961);P.F.Shaw,et.al.,“Base catalyzed fructose degradation”,J.Agric.Food Chem.,16,979-982(1968);H.Weenen and W.Apeldoon,“Carbohydrate Cleavage in the Maillard Reaction”,Flavor Science,Recent Developments,A.Taylor and D.Mottran,eds.,Royal Society of Chemistry,Special Publication #197,Cambridge,1996を参照のこと。これらの参考文献は、高温におけるリン酸緩衝液、還流下でのpH11.5のNaOHなどの強塩基、水素圧下でのNi及びパラジウム触媒並びに不均一反応の気相における銅クロマイト触媒を使用する、糖の1-ヒドロキシ-2-プロパノンへの変換について記載している。銅クロマイトは最良の触媒と考えられてきた。大半の反応で、基質の変換率は91%を超えていた。グリセロールを炭素源として使用した場合のアセトールの収率は、220℃にて32.2%であった。ソルビトールを炭素源として使用した場合、最高収率は280℃にて11.8%であり、グルコースを炭素源として使用した場合、アセトールの最高収率は280℃にて8.99%であった。
【0098】
セルロースは、Sn系触媒系を使用して、30%の収率でアセトールに変換されている。例えば、参照によりその全体が本明細書に組み入れられている、F.Chambon,et.al.,Process for transformation of lignocellulose biomass or cellulose by catalysts based on Sn oxide and/or Sb oxide and a metal that is selected from Groups 8 to 11、米国特許出願公開第US2013/028174A1号、2013年を参照のこと。
【0099】
近年、Novotnyら(参照により本明細書に組み入れられている、Czech J.Food Sci.,25,119-130,2007)は、単糖類の分解を介してα-ヒドロキシカルボニル化合物及びα-ジカルボニル化合物を合成した。彼らは、カリウムペルオキソジサルフェートの水溶液、カリウムペルオキソジサルフェートのアルカリ溶液及び水酸化ナトリウムの溶液でそれぞれ構成される、3つの異なるモデルを使用した。GC/MSを使用して、合計6つのα-ヒドロキシカルボニル化合物及び6つのα-ジカルボニル化合物を同定した。グルコース又はフルクトースが水酸化ナトリウムと反応したときのα-ジドロキシカルボニル(グリコールアルデヒド、アセトール、ラクトアルデヒド、グリセルアルデヒド、1,3-ジヒドロキシアセトン及びアセトイン)の最大収率は約4%であった。収率は、カリウムペルオキソジサルフェートの水溶液(0.32%)及びカリウムペルオキソジサルフェートのアルカリ溶液(1.1%)では、はるかに低かった。アセトール及び1,3-ジヒドロキシアセトンは、水酸化ナトリウムを使用した場合に、最高の収率(それぞれ2.52%及び1.02%)を示した。
【0100】
以下の実施例6に示すように、糖からα-ヒドロキシケトン(例えばアセトール)を生成して、最終的に糖アンモニア反応の炭素源として使用することができる。アセトールは、蒸留及びカラムクロマトグラフィーの両方によって分離して、次いで本明細書に記載の反応にて炭素源として使用することができる。しかし、どちらの手法も時間がかかり(蒸留)、高価である(クロマトグラフィー)。したがって、ピラジンを生成するために窒素源との反応にてこれらのヒドロキシケトンを使用する前に、糖源に由来するヒドロキシケトンを単離する必要を回避することが好ましい場合がある。
【0101】
例えば以下の実施例7に示すように、糖の分解から形成されたヒドロキシケトン(例えばアセトール、アセトインなど)を最初に単離せずに、置換ピラジンを糖炭素源から選択的に形成できることが、驚くべきことに、発見された。例えば図2の操作110に示すように、糖を窒素源と合わせる前に糖を緩衝剤で処理することにより、緩衝剤及び窒素源によって前処理されていない糖の反応から生成された一連のピラジンとは異なる、一連のピラジンを生成することができる。最大量のアセトール及びアセトール様化合物が糖炭素源から生成されるように、反応を最適化することができる。理論に制限されることなく、緩衝剤の役割は、糖の分解から最大量のヒドロキシケトン(アセトール、アセトインなど)が生成されるようにpHを制御することである。
【0102】
いくつかの実施形態において、緩衝剤は、約12のpHを有するナトリウム水素ホスフェート/水酸化ナトリウム緩衝剤であることができる。各種の実施形態において、緩衝剤は、約6.5~約7.5のpHを有するカリウムリン酸緩衝液を含むことができる。ある実施形態において、緩衝剤は、ナトリウムカーボネート、ナトリウムサルファイト、ペルオキソジサルフェート、ナトリウムホスフェート又はその組合せを挙げることができる。緩衝剤の種類、緩衝能、pH及び反応温度の選択は、糖炭素源からのヒドロキシケトンの合成に影響を与える可能性があり、したがって、一連の生成されるピラジン並びに後続の窒素源との反応から生成されるピラジンの量に影響を及ぼすことがある。
【0103】
各種の実施形態において、緩衝剤は、ほぼ中性又はアルカリ範囲のpHにて、例えば約6より高い、約8より高い又は約10より高い(例えば約6~約12の)pHにて緩衝することができる。例えばある実施形態において、糖炭素源のpHは約11~約12に緩衝することができる。いくつかの実施形態において、糖炭素源のpHは、約6.5~約7.5に緩衝することができる。
【0104】
例えばグルコースは、ピラジン生成のための既知の炭素源である。無傷の分子として用いられて、水酸化アンモニウムと反応すると、主要なピラジンとしてのピラジン分子及びメチルピラジン分子、はるかにより少量のジメチルピラジン分子、並びに著しくより少量の高分子量ピラジン分子を含む、一連のピラジンが生成される。グルコースをpH12にてNaOHと事前に反応させた後、水酸化アンモニウムと反応させると、極めて類似した一連のピラジンが生成される。しかし、グルコースをpH6.5のカリウムリン酸緩衝液で処理し、続いて水酸化アンモニウムと反応させると、ジメチルピラジンと高分子量ピラジンのみが生成され、それによりあまり所望でないピラジン分子及びメチルピラジン分子の生成が除外されることが、驚くべきことに発見された。
【0105】
緩衝された糖炭素源と窒素源との反応時間の延長及び温度の上昇により、黒色タール物質が生成される時点までピラジンの収率を上昇させることができる。反応温度は、例えば約30℃以上、約90℃以上、約100℃以上、約120℃以上又は約140℃以上であることができる。いくつかの実施形態において、反応温度は約90℃~約150℃又は約120℃~約140℃であることができる。反応時間は、例えば約30分以上、約60分以上、約90分以上又は約120分以上であることができる。各種の実施形態において、反応時間は約30分~約150分又は約60分~約120分であることができる。
【0106】
反応溶液のpHの上昇によっても、ピラジン量の増加が生じることもある。好ましいpH範囲は、約7.5~約10.5又は約8.5~約9.5であることができる。いくつかの実施形態において、反応溶液のpHは、約8.0以上、約8.5以上、約9.0以上又は約10.0以上であることができる。例えばNaOH又はKOHの少量添加を使用して、反応溶液のpHを上昇させることができる。
【0107】
本発明の各種の実施形態において、例えば図2の操作122に示すように、アミノ酸/糖反応溶液にNHOHを添加することによって、ピラジンの収率を向上させることができる。NHOH/糖のモル比は、ピラジンの収率に劇的な影響を有することができる。例えば、約6:1~約1:1又は約5:1~約2:1(例えば約5:1、約2.5:1、約2:1又は約1.5:1)の糖のNHOHに対するモル比と、後続の熱処理によって、ピラジンに富んだ配合物を生成することができる。いくつかの実施形態において、NHOH水溶液を、反応の間にアミノ酸/糖溶液にゆっくりと添加することができる。
【0108】
異なる糖及びアミノ酸は、形成されるピラジンの種類に影響を及ぼす。例えば、参照によりその全体が本明細書に組み入れられている、Coleman and Steichen, 2006,Sugar and selected amino acid influences on the structure of pyrazines in microwave heat treated formulations,J.Sci.Food Agric.,86,380-391を参照されたい。例えばロイシン及びバリンによって、高度に置換された副分子鎖及びより低い臭気閾値を持つ分枝ピラジンが、より多く生成される。高置換ピラジンは、それほど分枝していないピラジンよりも比較的効力が高いため、一部の用途では望ましい場合がある。ピラジンの置換は、反応に使用したアミノ酸の結果であり得る。したがって、分枝して高度に置換された副分子鎖を有するアミノ酸を選択することが有利であり得る。糖に関しては、ラムノースがピラジン形成に理想的な糖であり得て、フルクトース、グルコースがこれに続く。
【0109】
例えば図2の操作126に示すように、反応後に、任意に、単純蒸留、回転蒸発又は当分野で既知の他の分離技術を使用して、ピラジンを反応生成物から単離することができる。ある実施形態において、回転蒸発は、タバコ由来ピラジンを誘導するスケールアップ工程における好ましい単離技術であることができる。
【0110】
タバコ製品における置換ピラジンの使用
上述のように、本発明に従って生成されたピラジンは、例えばタバコ製品に含まれる構成要素(例えば香味料)として有用であってもよい。本発明の材料が添加されるタバコ製品は多様であり、タバコ又はそのある構成要素を製品使用者に送達するように構成又は適合された、任意の製品を含むことができる。例示的なタバコ製品としては、喫煙品(例えば紙巻タバコ)、無煙タバコ製品及び使用中に燃焼しないタバコ材料又は他の植物材料を含有するエアゾール生成器具が挙げられる。
【0111】
本発明の各種の実施形態において、ピラジンは、タバコ組成物及び/又は喫煙品のフィルタ要素に香味料の形態で喫煙品中に組み入れることができる。例えば、ピラジンはタバコ製品のトップドレッシング又はケーシングに組み入れることができる。図6を参照すると、紙巻タバコの形態であり、本発明のセルロース系糖材料に由来する製品を含有することができる喫煙品のある代表的な構成要素を有する、喫煙品10が示されている。紙巻タバコ10は、周囲包装材料16に含有された喫煙可能充填材(例えばタバコ材料などの喫煙可能充填材約0.3~約1.0g)の装填物又はロールのほぼ円筒形のロッド12を含む。ロッド12は、従来「タバコロッド」と呼ばれる。タバコロッド12の端部は開放され、喫煙可能充填材が露出している。紙巻タバコ10は、包装材16に適用された1つの任意のバンド22(例えばデンプン、エチルセルロース又はナトリウムアルギネートなどのフィルム形成剤を含む印刷コーティング)を有し、このバンドが紙巻タバコロッドを、紙巻タバコの縦軸を横切る方向に包囲している。バンド22は、包装材の内面(即ち、喫煙可能充填材に面して)又はあまり好ましくないが、包装材の外面に印刷することができる。
【0112】
タバコロッド12の一端には点火端部18があり、口端部20にはフィルタ要素26が配置されている。フィルタ要素26はタバコロッド12の一端に、フィルタ要素とタバコロッドの端部同士が軸方向に一直線に並んで、好ましくは互いに接するように、隣接して配置される。フィルタ要素26は、一般に円筒形状を有し得て、その直径は、タバコロッドの直径と本質的に同等でよい。フィルタ要素26の端部は、空気及び煙をフィルタ要素に通過させることができる。プラグラップ28はフィルタ要素を包み、チップ材料(図示せず)はプラグラップとロッド12の外側包装材16の一部を包み、それによりロッドをフィルタ要素26に固定する。
【0113】
本発明のフィルタ要素は、通例、複数の縦方向に延在するセグメントを備える。各セグメントは多様な特性を有することが可能であり、粒子状物質及び/又は気相化合物の濾過又は吸着が可能な各種材料を含み得る。通例、本発明のフィルタ要素は、2~6個のセグメント、多くは2~4個のセグメントを含む。好ましい一実施形態において、フィルタ要素は、口端部セグメント、タバコ端部セグメント及びその間のコンパートメントを含む。このフィルタ配置は、「コンパートメントフィルタ」又は「プラグ/スペース/プラグ」フィルタと呼ばれる場合がある。以下でより詳細に説明するように、コンパートメントは2個以上のコンパートメントに分割され得る。
【0114】
各種の実施形態において、フィルタ要素は、活性炭材料の形態の吸着剤を備えることができ、活性炭は、フィルタ要素に取り込まれた主流煙の少なくとも1つの気相構成要素を除去することができる。ある実施形態において、フィルタ要素26は、チップペーパー(図示せず)及びプラグラップ28を通じて延在する通気孔30を含むことができるため、主流煙が空気希釈される。通気孔30は、フィルタ要素26周囲に円周方向に延在する一列の穿孔として構成され得るか、又は複数列の穿孔列を備え得る。理解されるように、通気孔30の正確な数及びサイズは、所望の空気希釈のレベルに応じて変わる。
【0115】
本発明の各種の実施形態において、本明細書に開示される方法により得られたピラジンは、無煙タバコ配合物中の香味料の形態で無煙タバコ製品に組み入れることができる。本発明の無煙タバコ製品の形態は多様となり得る。特定の一実施形態において、製品は、粒子状タバコ材料及び本発明の方法により得たピラジンを含む香味料を含有するスヌース型製品の形態である。スヌース型タバコ配合物を配合する様式及び方法は、スヌースタバコ製品製造の当業者には明らかとなる。例えば図7に示すように、例示的なパウチ製品300は、経口使用に適合した微粒子混合物315を含有するパウチの形態の外側透水性容器320を含むことができる。本明細書に示す外側透水性パウチの向き、サイズ及び種類並びに経口使用に適合した組成物の種類及び性質は、それらを限定するものとして解釈されない。
【0116】
各種の実施形態において、透湿性パケット又はパウチは、内部で組成物を使用するための容器として機能することができる。図7に示す実施形態における容器パウチ320などのパケット又はパウチの組成/構造は、本明細書に記載するように変更され得る。例えば、本発明に従って改変することができる無煙タバコ製品の製造に使用される種類の好適なパケット、パウチ又は容器は、CatchDry、Ettan、General、Granit、Goteborgs Rape、Grovsnus White、Metropol Kaktus、Mocca Anis、Mocca Mint、Mocca Wintergreen、Kicks、Probe、Prince、Skruf及びTreAnkrareの商品名で入手できる。本明細書に記載のパウチ製品の各種の実施形態と形状及び形態が類似したパウチ型製品は、ZONNIC(Niconovum ABによって販売)として市販されている。さらに、パウチ製品の各種の実施形態に形状及び形態が一般に類似しているパウチ型製品は、参照により本明細書に組み入れられている、AxelssonらのPCT WO2007/104573の実施例1に、本明細書に記載のパウチ製品の製造に使用できる賦形剤成分及び加工条件を使用して製造される、スナフバッグ組成物E~Jとして記載されている。
【0117】
各パウチに含まれる材料の量は異なり得る。より小規模な実施形態において、各パウチ内の材料の乾燥重量は、少なくとも約50mg~約150mgである。より大規模な実施形態において、各パウチ内の材料の乾燥重量は、約300mg~約500mgを超えないことが好ましい。
【0118】
いくつかの実施形態において、各パウチ/容器は、参照により本明細書に組み入れられている、Holton、Jr.らの米国特許第7,861,728号により詳細に記載されているように、内部に配置された風味剤部材を有することができる。風味剤部材は、上述のように、本発明の方法により誘導されたピラジンを含む香味料を含むことができる。必要に応じて、各パウチ内に他の構成要素を含めることができる。例えば、風味付けされた水分散性又は水溶性材料の少なくとも1つの風味付けされたストリップ、ピース又はシート(例えば口臭消臭食用フィルム型材料)が、少なくとも1個のカプセルと共に、又はカプセルなしで各パウチ内に配置され得る。そのようなストリップ又はシートは、パウチ内に容易に組み入れるために、折り畳まれ得るか又はしわくちゃにされ得る。例えば、参照により本明細書に組み入れられている、Scottらの米国特許第6,887,307号、Leungらの米国特許第6,923,981号及びThe EFSA Journal(2004)85,1-32に記載されている種類の材料及び技術を参照されたい。
【0119】
各種の実施形態において、外側透水性パウチは、PLA又は当分野で既知の他のパウチ材料を含むことができる。スヌース型製品及びその構成要素の各種の構成要素の説明は、参照により本明細書に組み入れられている、 Lundinらの米国特許出願第2004/0118422号にも記載されている。例えば、それぞれ参照により本明細書に組み入れられている、Lindenの米国特許第4,607,479号;Nielsenの米国特許第4,631,899号;Wydickらの米国特許第5,346,734号;及びDerrの米国特許第6,162,516号並びにHanssonらの米国特許出願公開第2005/0061339号も参照のこと。参照により本明細書に組み入れられている、Kjerstadらの米国特許第5,167,244号に記載されている種類のパウチも参照のこと。スヌース型製品は、Merz Verpackungmaschinen GmBHからSB 51-1/T、SBL 50及びSB 53-2/Tとして入手可能な機器などを使用して製造ですることができる。スヌースパウチは、個別のパウチとして提供することができるか、又は単一のパウチ若しくは個々の部分を、使用するためにパウチのワン・ピース・ストランド又はマトリックスから容易に取り外すことができるように、複数のパウチ(例えば2、4、5、10、12、15、20、25又は30個のパウチ)を共に(例えば端から端まで)結合又は連結することができる。
【0120】
本発明は、スヌース型無煙タバコ製品に限定されない。例えば、タバコ材料及び本明細書に記載の方法で得られた少なくとも1つのピラジンを含む香味料の混合物は、各種の無煙タバコ形態、例えばルース湿式かぎタバコ、ルース乾燥かぎタバコ、噛みタバコ、ペレット化タバコピース、押出しタバコストリップ又はピース、粉末化ピース又は構成要素の微粉化又は粉砕凝集体、(例えば流動床でタバコ配合物構成要素を凝集させることにより形成できる)フレーク状ピース、(例えばコイン、円筒、豆、立方体などの一般的な形状で形成された)成形タバコピース、タバコ含有ガムピース、タバコピース及び/又はタバコ抽出物と組み合せた食用材料の混合物を含む製品、固形非食用基材に担持された(例えばタバコ抽出物の形態の)タバコを含む製品などに組み入れることもできる。例えば、無煙タバコ製品は、圧縮タバコペレット、多層押出しピース、押出し若しくは形成ロッド若しくはスティック、異なる種類のタバコ配合物に包囲された1種類のタバコ配合物を有する組成物、テープ状フィルムのロール、易水溶性若しくは水分散性フィルム又はストリップ(例えばChanらの米国特許出願公開第2006/0198873号を参照のこと。)又は(例えば透明、無色、半透明又は本質的に濃く着色された、柔軟性又は硬質外殻であることができる)外殻を有するカプセル状材料及びタバコ若しくはタバコの風味(例えばある形態のタバコを含むニュートン流体又はチキソトロピー流体)を有する内部領域の形態を有することができる。
【0121】
いくつかの実施形態において、本発明の無煙タバコ製品は、ロゼンジ、錠剤、マイクロタブ又は他の錠剤型製品の形態を有することができる。例えば、参照により本明細書に組み入れられている、Shawの米国特許第4,967,773号;Acharyaの米国特許第5,110,605号;Damの米国特許第5,733,574号;Santusの米国特許第6,280,761号;Anderssonらの米国特許第6,676,959号;Wilhelmsenらの米国特許第6,248,760号;及び米国特許第7,374,779号;Wilhelmsenの米国特許出願公開第2001/0016593号;Liuらの米国特許出願公開第2004/0101543号;Mcneightらの米国特許出願公開第2006/0120974号;Chauらの米国特許出願公開第2008/0020050号;Ginらの米国特許出願公開第2009/0081291号;及びAxelssonらの米国特許出願公開第2010/0004294号に記載された、ロゼンジ配合物の種類及びロゼンジを配合又は製造するための技術を参照のこと。
【0122】
加工される無煙タバコ製品の種類に応じて、タバコ製品は、タバコ材料及び本発明の方法から誘導された少なくとも1つのピラジンを含む香味料に加えて、1つ以上の追加構成要素を含むことができる。例えば、タバコ材料及びタバコ由来香味料は、他の材料又は成分、例えば他のタバコ材料又は香味料、充填剤、結合剤、pH調整剤、緩衝剤、塩、甘味料、着色料、崩壊助剤、保湿剤及び防腐剤(そのいずれかがカプセル化成分であってよい)と共に加工、ブレンド、配合、組合せ及び/又は混合することができる。例えば、それぞれが参照により本明細書に組み入れられている、Muaらの米国特許出願公開第2011/0315154号及びHolton,Jr.らの米国特許出願公開第2007/0062549号並びにHolton,Jr.らの米国特許第7,861,728号に記載された、それらの代表的な構成要素、構成要素の組合せ、タバコに対するこれらの構成要素及び成分の相対量並びにこれらの構成要素を使用する方法を参照のこと。
【0123】
各種の実施形態において、本明細書に記載の方法から誘導された少なくとも1つのピラジンを、電子喫煙品の香味料の形態で無煙タバコ製品に組み入れることができる。電気エネルギーを利用して揮発性物質を揮発させる若しくは加熱する、又はタバコをかなりの程度まで燃やさずに紙巻タバコ、葉巻又はパイプ喫煙の感覚を提供しようとする、多数の喫煙製品、風味発生器及び医用吸入器が提案されている。例えば、参照によりその全体が本明細書に組み入れられている、Robinsonらの米国特許第7,726,320号、Griffith Jr.らの米国特許出願公開第2013/0255702号、Sebastianらの米国特許出願公開第2014/0000638号、Collettらの米国特許出願公開第2014/0060554号、Searsらの米国特許出願公開第2014/0096781号、Ampoliniらの米国特許出願公開第2014/0096782号及びDavisらの米国特許出願公開第2015/0059780号に記載された背景技術に述べられている、各種の代替喫煙品、エアゾール送達器具及び発熱源を参照のこと。
【0124】
電子喫煙品200の例示的な実施形態を図8に示す。図8に示すように、制御本体202は、制御構成要素206、流量センサ208、バッテリ210及びLED212を含むことができる制御本体シェル201で形成することができる。カートリッジ204は、リザーバハウジング244を包囲するカートリッジシェル203で形成することができ、リザーバハウジング244は、リザーバハウジング244に格納されたエアゾール前駆体組成物をヒーター234に吸い上げるか、さもなければ移送するのに適した液体輸送要素236と流体連通している。カートリッジ204から形成されたエアゾールを排出させるために、カートリッジシェル203に開口部228が存在し得る。そのような構成要素は、カートリッジ内に存在し得る構成要素の代表するものであり、本開示によって含まれるカートリッジ構成要素の範囲を制限することを意図するものではない。カートリッジ204は、制御本体突起224とカートリッジレセプタクル240との間の圧入係合により制御本体202と係合するように適合され得る。そのような係合によって、制御本体202とカートリッジ204との間の安定した結合を促進するとともに、制御本体内のバッテリ210及び制御構成要素206とカートリッジ内のヒーター234との間の電気接続を確立することができる。カートリッジ204は、IC、メモリ構成要素、センサなどを含み得る、1つ以上の電子構成要素250も含み得る。電子構成要素250は、制御構成要素206との通信に適合され得る。本開示による電子喫煙器具の各種の構成要素は、当分野で記載され、市販されている構成要素から選択することができる。
【0125】
各種の実施形態において、エアゾール前駆体組成物は、本発明の方法に従って誘導された少なくとも1つのピラジンを含む香味料を含むことができる。本開示に従って使用することができるエアゾール前駆体材料の例示的な配合物は、その開示がその全体が参照により本明細書に組み入れられている、Robinsonらの米国特許第7,217,320号;Zhengらの米国特許出願公開第2013/0008457号;Chongらの米国特許出願公開第2013/0213417号;Collettらの米国特許出願公開第2014/0060554号;及びSebastianらの米国特許出願公開第2014/0000638号に記載されている。本明細書に記載のタバコ由来ピラジンを含むことができる他のエアゾール前駆体としては、R.J.Reynolds Vapor CompanyによるVUSE(R)、Imperial TobaccoによるBLU(商標)製品、Mistic EcigsによるMISTIC MENTHOL製品及びCN Creative Ltd.によるVYPE製品に組み入れられているエアゾール前駆体が挙げられる。Johnson Creek Enterprises LLCから入手可能である電子タバコ用のいわゆる「スモークジュース」も望ましい。
【0126】
実験
本発明の態様は、本発明のある態様を説明するために記載され、その限定として解釈されるべきではない、以下の実施例によってより十分に説明される。
【実施例0127】
[実施例1]
ピラジンは、アンモニアとの反応において、炭素源として糖の代わりにアセトイン(3-ヒドロキシ-2-ブタノン)を使用して生成される。
【0128】
アセトイン、水酸化アンモニウム(28~30%)、ロイシン、ジクロロメタン及びリン酸(HPO)は、Sigma-Aldrich(ミズーリ州セントルイス)から入手する。F1タンパク質は、R.J.Reynolds Tobacco Co.(ノースカロライナ州ウィンストンセーラム)から入手して加水分解する。すべての加水分解された溶液中の加水分解されたアミノ酸の重量パーセントは、50~55%の範囲である。すべてのピラジン合成反応は、40mLパール(Parr)容器内で行う。各反応において、アセトイン0.8グラムをNHOH 1.8mL及びHPO 0.6mLと混合し、次いで十分な加水分解F1タンパク質(20mL)を添加して、アミノ酸の質量を0.4グラムとする。例えば、F1タンパク質40グラムを溶液1リットル中で加水分解する場合、溶液中のアミノ酸の重量パーセントは50%に等しく、これは溶液1リットル中アミノ酸20グラムに相当する。アミノ酸0.4グラムを反応に使用するために、上記溶液20mLを反応容器に添加する。一部の反応では、加水分解F1タンパク質の代わりに、ロイシンをアミノ酸源として使用し、体積を調整するために水20mLのみを添加する。すべての溶液のpHを8.0に調整してから、反応を開始する。各反応の完了後に、混合物をジクロロメタン(DCM)30mLによって抽出する。次に、DCMを使用してDCM抽出物200μLを希釈して1mLとして、GC/MSによって分析する。
【0129】
すべてのGC/MS分析は、Agilent(デラウェア州ウィルミントン)の5973質量選択検出器(MSD)を装備した6890 GCを使用して行う。分離物は、J&W(デラウェア州ウィルミントン)のDB-WAXTERキャピラリーカラム(長さ30m×内径250μm、膜厚0.25μm)を使用して得る。各分析には、次の操作パラメータを使用する。
【0130】
注入ポート温度 260℃
パージ弁 3mL/分
パージ時間 1分
全流量 24mL/分
定流量 1mL/分
注入量 2μL、スプリット1:20
カラムオーブン初期温度 50℃
カラムオーブンの初期時間 3分
カラムオーブン傾斜速度 15℃/分
カラムオーブン最終温度 250℃
カラムオーブン最終時間 1分
MSD転送ライン温度 260℃
MS Wileyライブラリを使用して、各ピラジンを同定する。
【0131】
最初の反応では、アセトイン(0.8グラム)をNHOH(1.8mL)及びHPO(0.6mL)とpH=8を90℃にて12~15時間反応させる。90%を超えるアセトインがテトラメチルピラジン(TMP)に変換される。次に、同一条件を使用して反応を反復するが、90℃にて12~15時間加熱する代わりに、120℃にて4時間のみ加熱する。結果は、90℃及び12~15時間で得られた結果と同様である。
【0132】
次に、分枝ピラジンの合成の可否を判断するために、反応試薬混合物にアミノ酸(ロイシン)を添加する。この目的のために、アセトイン0.8グラム+NHOH 1.8mL+HPO 0.6mL及びロイシン0.25グラムをHO 20mLと混合し、pHを8に調整する。次いで反応物を120℃にて18時間加熱し、次に反応混合物をDCM 30mLによって抽出し、GC/MSによって分析する。TMP(t=8.2分)及び一部のアセトイン(t=6.1分)のみが検出される。分枝ピラジンは検出されない。
【0133】
次に、同様の反応を行うが、ロイシンとHOの代わりに、加水分解F1タンパク質20mLを反応に使用する。反応は、パール(Parr)容器内で120℃にて18時間行う。反応物の冷却後、DCM 30mLを使用してピラジンを抽出する。再度、分枝ピラジンは認められず、TMPのみが認められた。
【0134】
アンモニアがすべてのアセトインを消費して、したがってアミノ酸がアセトインと反応するのを防止するか否かを判定するために、NHOHの代わりに別の塩基源(NaOH)を使用して、塩基性、pH>8の反応条件が維持されるようにする。この目的のために、2つの反応を行う。最初の反応では、アセトイン0.8をロイシン0.25グラム及び0.1N NaOH(pH=12)20mLと混合し、第2の反応では、HPOを使用してpHを8.2に調整する。両方の反応物を、パール(Parr)容器を使用して120℃にて8時間加熱する。反応物の冷却後、反応物をDCMによって抽出し、GC/MSで分析する。TMPでさえ、ピラジンは検出されない。
【0135】
上記の反応は、アセトインとNHOHの反応へのアミノ酸の添加によって分枝ピラジンが生成されないことを示す。さらに、アセトインは、分枝アルキル側鎖を含むピラジンを生成するための、糖とフリーのアミノ酸との反応における重要な中間体ではないことが分かる。
【0136】
[実施例2]
TMP以外のピラジンを選択的に生成するために、アセトイン以外のヒドロキシケトン炭素源を利用する。
【0137】
1-OH-アセトン、1-OH-2-ブタノン、水酸化アンモニウム(28~30%)、リン酸(HPO)、イソロイシン、スレオニン及びイソバレルアルデヒドをSigma-Aldrich(セントルイス、ミズーリ州)から入手する。ニコチアナ属の植物に由来するF1タンパク質は、R.J.Reynolds Tobacco Co.(ノースカロライナ州ウィンストンセーラム)から入手し、加水分解してアミノ酸を形成する。加水分解されたすべての溶液中の加水分解されたアミノ酸の重量パーセントは、50~55%の範囲である。
【0138】
すべてのピラジン合成反応は、40mLパール(Parr)容器内で行う。各反応において、1-OH-アセトン又は1-OH-2-ブタノン1グラムをNHOH 0.25、0.5、1及び1.25mL並びにHO 10mLと混合する。各反応は、異なる温度(100~140℃)にて4~24時間にわたって混合及び加熱される。反応の大半でpHレベルは約11である(調整は行わない)。しかし、pHレベルを8に調整する反応では、濃HPOを使用してpHを低下させる。
【0139】
各反応の完了後、混合物をジクロロメタン20~25mLによって抽出する。各抽出では、重水素化2-メチルピラジン250μgをすべての定量の内部標準として使用する。すべての反応について、反応工程中に磁気撹拌器を使用して混合物を撹拌する。
【0140】
すべてのGC/MS分析は、上記の実施例1で使用したものと同じ機器及び操作パラメータを使用して行う。MS Wileyライブラリを使用して、各ピラジンを同定する。定量分析では、ピラジンはシングル・イオン・モニタリング・モードを使用して定量される。各ピラジンを、抽出溶媒に添加した内部標準(250μg)の質量に対して定量する。
【0141】
最初に、1-ヒドロキシアセトンを異なる比率、温度、pHレベル及び反応時間でNHOHと反応させて、ピラジンのパーセント収率を最大化する。1-OH-アセトンとNHOHの反応で検出されるピラジンとしては、2,6-ジメチルピラジン;2,5-ジメチルピラジン;2-エチル-5-メチルピラジン;2-エチル-6-メチルピラジン;2,3,5-トリメチルピラジン;2-エチル-3,5-ジメチルピラジン;2-エチル-2,5-ジメチルピラジン;2,3,5,6-トリメチルピラジン;2,3,5-トリメチル-6-エチルピラジン;2,6-ジメチル-3-プロピルピラジン;2,5-ジエチル-3,6-ジメチルピラジン;2,6-ジメチル-3-(2-メチルブチル)ピラジン;2,5-ジメチル-3-(2-メチルブチル)ピラジン;2,5-ジメチル-3-(3-メチルブチル)ピラジン;2,5-ジメチル-3-プロピルピラジン;2,5-ジメチル-3-シス-プロペニルピラジン;2-イソプロペニル-3,6-ジメチルピラジン;2-(2-メチルプロピル)-3,5-ジメチルピラジン;2,6-ジメチル-3-イソブチルピラジン;2-(2-メチルプロピル)-3,5,6-トリメチルピラジンが挙げられる。
【0142】
この検討の最初の部分では、2つの異なるpHレベル(8.0及び11.0)で反応を行い、どちらのpHレベルがピラジンの最大収率及び最大数を与えるかを判定する。最初の反応において、1-OH-アセトン1mLをNHOH 0.5mL及びHO 10mLと反応させる。この反応のpHレベルは約11.0と測定される。第2の反応において、同量の反応物を混合するが、濃HPOを使用してpHレベルを8.0に調整する。両方の反応物を120℃で12時間加熱する。ピラジンのパーセント収率は、pHレベルが約11.0の場合により高い。このため、後の実験のpHレベルを調整せず、反応をpH11以上で行う。
【0143】
O 10mL中、1:2のC:Nのモル比で1-OH-アセトン(1g)及びNHOH(1g)を使用するピラジンの合成(反応時間12時間)に対する温度(100、110、120、130、140℃)の効果について、次に記載する。温度が上昇するにつれてピラジンの収率が上昇し、温度が140℃に達したときに、なおピラジン収率の上昇が見られる。
【0144】
O 10mL中、1:2のC:Nのモル比で1-OH-アセトン(1g)及びNHOH(1g)を使用するピラジンの合成に対する様々な反応時間(4、8、12、16及び24時間)の効果について試験を行う。反応時間が16時間の場合、ピラジンの最大収率が得られる。
【0145】
120℃にて12時間後のピラジンの収率に対する、HO 10mL中での1-OH-アセトン:NHOHモル比(1:0.5、1:1、1:2、1:2.5、...1-OH-アセトン及びNHOH)反応を変化させることの効果について試験を行う。最適な比率は1:2であり、1-OHアセトン1グラム及びNHOH 1mLに相当する。より多量のNHOHを反応に使用すると、反応の収率が10%を超えて低下する。
【0146】
要約すると、反応条件(温度、時間、C:N比、pH)が最適化されると、ピラジンの量が最大化される。結果により、最適化された条件(C:N=1:2、温度=120℃、反応時間=16時間、pH=11~12)にて、ヒドロキシアセトンを唯一の炭素源として使用して、少なくとも19~20種類のピラジンが合成されることが示された。合成ピラジンから検出可能な量のピラジン分子及び/又はメチルピラジン分子が存在しないことは、炭素源(即ち、α,β-ヒドロキシケトン)が炭素源と窒素源との反応から生成されるピラジンの構造に効果を及ぼすという発見を裏付けている。
【0147】
[実施例3]
120℃にて12時間にわたる、HO 10mLと混合したC:N比1:2を用いた、上記の実施例2のパラメータによる、1-OH-アセトン及びNHOHの個別の反応へのアミノ酸及びアルデヒドの添加の効果を測定する。
【0148】
追加の窒素源として2つの異なるアミノ酸の試験を行う。各反応において、アミノ酸0.2グラムが各反応に個別に添加されるため、追加のアミノ酸のピラジン合成及びその収率に対する効果を検討することができる。別の反応において、最適化された反応にイソバレルアルデヒドを添加して、ピラジン合成及び収率に対する効果を検討する。加水分解F1タンパク質を追加の窒素源として使用する場合、(別のアミノ酸約0.2グラムを含む)加水分解F1タンパク質10mLを使用した。この反応において、加水分解F1タンパク質がHO 10mLに含まれるため、HOを添加しない。
【0149】
考えられる追加の窒素源としてイソロイシンを使用すると、2,5-ジメチル-3-(2-メチルブチル)ピラジン及び2,5-ジメチル-3-(3-メチルブチル)ピラジンの濃度が上昇することが認められている。別の反応において、トレオニンを追加の窒素源として使用すると、2,5-ジメチル-3-(2-メチルブチル)ピラジン及び2,5-ジメチル-3-(3-メチルブチル)ピラジンの濃度が上昇し、2,6-ジメチル-3-(2-メチルブチル)ピラジンの収率が上昇する。スレオニン又はイソロイシンを反応に添加する場合、ピラジンの総収率が同様であることに留意することは興味深い。どちらの化合物も、ピラジンの総収率を、7%を超えて上昇させる。
【0150】
1-OH-アセトン及びNHOHの別の反応にイソバレルアルデヒドを添加すると、2,5-ジメチル-3-(2-メチルブチル)ピラジン及び2,5-ジメチル-3-(3-メチルブチル)ピラジンのパーセント収率がそれぞれ0mgから14mg及び13mgに上昇する。ピラジンの総収率は20%を超えて上昇する。
【0151】
純粋なアミノ酸の代わりに、F1タンパク質の加水分解から調製されたアミノ酸の混合物を反応に使用する。加水分解F1タンパク質はすでに水溶液中にあるため、混合物に水を添加しない。この目的のために、アミノ酸約0.2g及びHO 10mLを含有した加水分解F1タンパク質10mLを、120℃にて16時間にわたって、C:N比が1:2の-1-OH-アセトン及びNHOHと反応させる。2,5-ジメチルピラジンの収率は80%を超えて上昇し、2,5-ジメチル-3-(2-メチルブチル)ピラジン及び2,5-ジメチル-3-(3-メチルブチル)ピラジンの収率は0mgから1mgを超えて上昇する。理論に制限されることなく、アミノ酸のアルキル部分はストレッカーアルデヒドに変換され、ストレッカーアルデヒドは水酸化アンモニウムと反応してイミンを形成し、イミンは次にピラジン構造に組み入れられる。
【0152】
追加のアミノ酸/アルデヒドの存在下で1-OH-アセトンとNHOHを使用したピラジンの合成に対する、異なる温度及びC:N比(1:1及び1:2)の効果について試験を行う。これらの研究では、温度を100から120℃に上昇させ、C:N比を上昇させると、ピラジンの収率が上昇する。
【0153】
要約すると、アミノ酸、選択されたアルデヒド又は加水分解F1タンパク質を追加すると、あるピラジンのパーセント収率が上昇するだけでなく、合成ピラジンの数も増加する。
【0154】
[実施例4]
1-OH-アセトンの代わりに1-OH-2-ブタノンを炭素源として使用することを除いて、上記の実施例2及び3に従ってピラジンを合成する。
【0155】
この目的のために、1-OH-2-ブタノン1グラムをNHOH 1mL及びHO 10mLと120℃にて16時間反応させる。メチルピラジンは形成されない。形成されるピラジンはすべて、エチル又はそれ以上の分枝アルカンを含有する。しかし、ピラジンの収率は、1-OH-アセトンを使用した場合ほど高くない。120℃にて16時間にわたって、C:Nが1:2で1-OH-2-ブタノン及びNHOHを使用する反応から合成されたピラジンとしては、2,6-ジエチルピラジン;2,5-ジエチルピラジン;2-エチル-3,5,6-トリメチルピラジン;3,5(3,6-ジメチル)-2,n-プロピルピラジン;2,5-ジエチル-3-メチルピラジン;2,3-ジエチル-5,6-ジメチルピラジン(dimethylpryazine);トランス-3-M-2,n-プロピル-6(1-ブテニル)ピラジン;2,5-ジメチル-3-エチルピラジンが挙げられる。
【0156】
前述のように、炭素源として1-OH-アセトンを使用すると、ピラジン分子及びメチルピラジン分子は生成されない。1-OH-2-ブタノンを使用すると、ピラジン分子、メチルピラジン及びジメチルピラジンは生成されず、炭素源がピラジンの構造を圧倒的に支配していることが確認される。結果により、炭素源を1-OH-アセトンから1-OH-2-ブタノンに変えることにより、合成されるピラジンの種類を制御できることがさらに示されている。
【0157】
[実施例5]
上記の実施例2による1-OH-アセトンとNHOHの反応は、反応容積がより大きい、より大型のパール(Parr)反応装置を使用して、より大きな規模で実施する。
【0158】
1.5リットルのパール(Parr)高圧容器内で、1-OH-アセトン100グラムをNHOH 100mL及びHO 1000mLと120℃にて16時間反応させる。反応の完了後、混合物を冷却し、ガラス瓶に移す。
【0159】
容器の底部にMeOHにのみ溶解する相当量のタール状物質があることに留意されたい。この材料の上にHOを添加することによって、材料が硬くなる。濃度がタール様物質の有無に重要な役割を果たすことが見出される。すべての最適化検討で、反応容器の底部のタール量は少ない。このため、すべてを溶解させて、残りの反応物質を包含させるには、少量のメタノール(1mL)で十分である。大規模な反応の場合、タールの質量はより大きく、それを溶解するには少なくとも100~200mLのメタノールが必要である。
【0160】
反応の完了後、水溶液を130~140℃で蒸留する(3×375mL)。各蒸留(375mL)時に、様々なピラジンを含有する水溶液約175mL(淡黄色-総量約500mL)を収集する。次に、水からピラジンを除去するために、蒸留した材料(3×175mL)を合わせ、C18カラム(SPE材料を充填した15×2.5cm)に通過させる。C18カラムから水を除去した後、捕捉されたピラジンを、エタノールを使用して溶離する。次に、回転蒸発及び真空を使用してエタノールを除去する。最終製品に多少の水が存在するため、ピラジンをMTBE中に抽出して、ナトリウムサルフェートで乾燥させる。次に、回転蒸発器及び真空を使用してMTBEを除去する。溶液1ラベルの付いたバイアルは、MTBE除去後のピラジンの大部分を含有する。
【0161】
重要なのは、ここで3つのピラジンが、沸点が高いため、蒸留されずに反応生成物に残存していることに留意することである。これにより、収率が低下した。これらのピラジンは、2-(2-メチルプロピル)3,5-ジメチルピラジン(12.57分)、2,6-ジメチル-3-イソブチルピラジン(12.74分)及び2(2-メチルプロピル)3,5,6-トリメチルピラジン(12.95分)として同定される。
【0162】
DCM(200~250mL)を使用して、蒸留後の反応溶液から残りの3つのピラジンを抽出する。次に回転蒸発器及び真空を使用して、DCMを溶液から除去し、一方、濃暗色の溶液を後で第2のバイアルに移し、溶液2とラベル付けする。図3は、このサンプルのクロマトグラムを示す。
【0163】
反応溶液1200mL(1-OH-アセトン100グラム+NHOH 100mL)の蒸留による総ピラジンの収率は、反応物12mL(1-OH-アセトン1グラム+NHOH 1mL)と比べて、約60%である。この収率は、蒸留後の反応混合物に残存する3つのピラジンは含まない。
【0164】
上記の溶液1をガスクロマトグラフィー・オルファクトメトリ(GCO)評価に使用する。5975C MSDを有するAgilent 7890AシリーズGC及びSPME機能を有するGerstel多目的サンプラを装備したODP3を使用して、ピラジンサンプルを分析する。ピラジンのより良好な分離と嗅覚分析者に適した分析時間を得るために、サンプルのための機器方法が開発される。ODP3の移送ラインを260℃に加熱する。2滴のサンプルを20mL SPMEスクリューキャップバイアルにピペットで取り、サンプルを調製する。空のバイアルをサンプルの前後に分析する。ガスクロマトグラフィーカラムによってピラジンが分離され、これらがカラムを出るときに主観的嗅覚試験を使用して、ヒトがピラジンを検出/評価した。同定したピラジンとしては、メチルピラジン;2,6-ジメチルピラジン;2,5-ジメチルピラジン;2-エチル-5-メチルピラジン;2-エチル-6-メチルピラジン;トリメチルピラジン;2,5-ジメチル-3-プロピルピラジン;3-エチル-2,5-ジメチルピラジン;2,5-ジメチル-3-イソプロピルピラジン;2-エチル-3,5-ジメチルピラジン;テトラメチルピラジン;2-メチル-5-プロピルピラジン;2,3,5-トリメチル-6-プロピルピラジン異性体1;2,3-ジエチル-5-メチルピラジン;2,3,5-トリメチル-6-エチルピラジン;3,5-ジメチル-2-プロピルピラジン;2,3,5-トリメチル-6-プロピルピラジン異性体2;2,3,5-トリメチル-6-プロピルピラジン異性体3;トリメチル-1-プロペニルピラジン(Z)-異性体1;5H-シクロペンタピラジン、6,7-ジヒドロ-2,5-ジメチルピラジン異性体1;5H-シクロペンタピラジン、6,7-ジヒドロ-2,5-ジメチルピラジン異性体2;トリメチル-1-プロペニルピラジン(Z)-異性体2;2,3-ジメチル-3-(1-プロペニル)ピラジン(Z)異性体1;トリメチル-1-プロペニルピラジン(Z)-異性体3;2,3-ジメチル-3-(1-プロペニル)ピラジン(Z);2-イソプロペニル-3,6-ジメチルピラジン;トリメチル-1-プロペニルピラジン(Z)-異性体4;トリメチル-1-プロペニルピラジン(Z)-異性体5;トリメチル-1-プロペニルピラジン(Z)-異性体6;トリメチル-1-プロペニルピラジン(E)-異性体1;トリメチル-2-プロペニルピラジン;トリメチル-1-プロペニルピラジン(E)-異性体2が挙げられる。メチルピラジン化合物は、存在するが、従来の糖炭素源反応に通例であるよりも少ない量で存在したことに留意されたい。
【0165】
風味分析者4名が、4回の個別のセッションでODPポータルからの個々の嗅覚特徴を評価する。4つの独立した評価に基づく個々のピラジンは、極めてポジティブである。置換ピラジンの香味について予想された記述子が見出される。ナッツ様、ロースト様、トースト様、チョコレート、ピーナッツ、かび臭い、褐色、複雑がよく使用される記述子である。これらはすべてポジティブな香味の特徴である。
【0166】
[実施例6]
α-ヒドロキシケトン(アセトール)は糖から生成され、最終的に糖アンモニア反応の炭素源として使用される。水酸化ナトリウムは、アセトールの収率を最大化するために、糖の種類、温度、反応時間、pH及び塩基濃度などの様々なパラメータを最適化する塩基として使用される。
【0167】
グルコース、フルクトース、1-OH-アセトン(アセトール)、1-OH-2-ブタノン(アセトイン)、水酸化ナトリウム、塩化ナトリウム、無水ナトリウムサルフェート、塩酸、メタノール及びジクロロメタンは、Sigma-Aldrich(ミズーリ州セントルイス)から入手する。合成反応は、40mLパール(Parr)容器又は開放された丸底フラスコで行う。pHが制御されているすべての反応では、反応は丸底フラスコで100℃の還流下で行う。各反応において異なる糖(グルコース、フルクトース又は両方の混合物)、0.25グラム、0.5グラム又は1.0グラムを0.025M、0.05M、0.1M、0.2M NaOH 25mLと混合する。各反応物を撹拌し、異なる温度(90~140℃)で1~12時間加熱する。大半の反応の初期pHレベルは約12であり、反応中に調整は行わない。しかし、pHレベルを9に調整する反応では、塩酸を使用する。工程中にpHを12に一定に保つ反応では、10M NaOHを10~40μL使用する。各反応の完了後、混合物を冷却し、1M HClを使用してpHを6.0~6.5に調整する。次に、アセトイン1mgを内部標準として反応混合物に添加する。混合物をジクロロメタン8~10mLで4回抽出する。4つの抽出溶媒すべてを合わせて、ナトリウムサルフェートで脱水する。
【0168】
すべてのGC/MS分析は、上記の実施例1で使用したものと同じ機器及び操作パラメータを使用して行う。MS Wileyライブラリを使用して、ピークを同定する。定量分析では、アセトールの濃度とアセトール/アセトインの応答係数比を使用して、検量線を作成する。重要なのは、ここで90℃、100℃及び120℃で行ったいずれの反応でもアセトインが検出されないことに留意することである。しかし、温度が140℃に設定されている反応では、アセトイン残留物が見出される。この目的のために、反応においてアセトイン濃度を求め、この値をすべての計算で考慮する。
【0169】
GC/FIDを使用して、すべての反応におけるアセトールの定量のための検量線を作成する。次に、以下のパラメータを変更して、アセトールの合成に最適な条件を決定する。
【0170】
最初に、2つの異なる種類の糖(グルコース、フルクトース及び両方の混合物)を使用して、より高い収率のアセトール与える糖を判定する。各反応において、糖0.5グラムを0.05M NaOH 25mLと混合する。各反応物を100℃にて60分間加熱する。以下の表1は、反応条件と、各反応から得られた対応するアセトールのmg数を示す。グルコースを反応に使用すると、グルコースによって大量のアセトールが生成されたことが認められる。
【0171】
【表1】
【0172】
検討のこの部分では、反応工程中にpHを調整する必要があるため、すべての反応は、密閉したパール(Parr)反応装置ではなく、開放された丸底フラスコ内で還流下にて行う。3つの異なる実験を行う。最初の実験では、pHを10分ごとに測定し、pHの調整は行わない。第2の実験では、10分ごとにpHを測定し、必要な場合は、10M NaOHを使用してpHを初期値(12.0)に調整する。第3の実験では、初期pHを9.0に調整し、次いで反応を開始し、pH測定を10分ごとに行う(調整なし)。
【0173】
pH測定の結果は、100℃における反応の最初の10分以内にpHが12.0から約9に低下することを示す。30分の終了時に、反応のpHは約7~8であり、残りの反応時間中は一定のままである。pHを約12.0に維持する実験では、10分ごとに約10M NaOH 15~20μLを反応に添加することが必要となる。40分後、pHはおよそ11~12で一定のままである。
【0174】
以下の表2は、反応条件と、様々なpH条件を使用して各反応から得られたアセトールのmg数を示す。pHがおよそ12で一定に維持されると、最大量のアセトールが得られる。
【0175】
【表2】
【0176】
糖濃度のアセトール生成に対する効果を判断するために、3つの異なる糖濃度の試験を行う。したがって、反応は、0.05M NaOH溶液25mL中でグルコース0.25グラム、0.5グラム及び1グラムを使用して行う。パール(Parr)反応装置を使用して、各反応を100℃にて60分間加熱する。以下の表3は、この検討の結果を示す。グルコース0.25グラムを反応に使用すると、最大量のアセトールが得られることが認められる。
【0177】
理論に制限されることなく、糖濃度が高い場合には、反応工程中の酸形成によりアセトールの生成が最小限に抑えられると考えられる。糖濃度が低い場合、pHがアセトールの形成を引き起こすのに十分な高さである間、酸の形成には時間がかかる。
【0178】
【表3】
【0179】
NaOHの4つの異なる濃度(0.2、0.1、0.05及び0.025M)をアセトールの調製に使用する。以下の表4は、この検討の結果を示す。認められるように、NaOH濃度が0.025Mの場合、最小量のアセトールが得られる。しかし、濃度が0.025Mから0.1Mに上昇すると、合成アセトールの質量も増加する。塩基の濃度が0.2Mに上昇すると、アセトールの量は減少する。塩基濃度がより低い他の反応と比較して、反応溶液は焦げた砂糖の臭いがすることに留意されたい。
【0180】
【表4】
【0181】
NaOHとグルコースを使用したアセトールの合成に対する温度の効果について調べる。この目的のために、90~140℃の様々な温度が検討されている。90℃、100℃、120℃の反応温度での結果は同様であるが、140℃での反応では、温度の低い他の反応よりもアセトールが約25%多く生成される。以下の表5は、この検討の結果を示す。
【0182】
【表5】
【0183】
アセトールの合成に対する反応時間の効果も検討する。反応時間を60~720分で変化させながら、同一の条件を使用して反応を行う。以下の表6は、この検討の結果を示す。結果は、反応時間の延長により、アセトールの収率に大きな変化がないことを示している。
【0184】
【表6】
【0185】
この検討の最後の部分では、以前の反応から得られた結果に基づいて、最適化された条件を使用して様々な反応を行う。反応Aでは、pHをおよそ11~12で一定に維持しながら、グルコース1グラムを100℃の還流下で0.05M NaOHと反応させる。この反応は、pHが一定のまま変化しなくなるまで120分間続く。アセトールの収率は6.7mgである。反応Bでは、パール(Parr)容器を100℃にて使用し、HFTS 0.5グラムを0.05M NaOH 25mLと60分間反応させる。アセトールの収率は3.42mgである。同じ反応を最適化条件下(0.1M NaOH及び140℃、60分間)で行うと、アセトールの収率は100%上昇して6.69mg(Rxn D)となる。グルコース0.5グラムに最適化条件を適用した場合(Rxn C)も、同様の結果が得られる。アセトール収率は8.2mgに増加する。同一の反応条件を使用するものの、グルコースの使用量を50%少なくすると(0.25グラム)、アセトールの収率は5.32mgに減少する。
【0186】
【表7】
【0187】
要約すると、糖の種類、反応温度、反応時間、pH、塩基濃度及び糖濃度などの様々なパラメータは、反応糖及び水酸化ナトリウムからアセトールを合成するために最適化されている。0.1M水酸化ナトリウム及びグルコース0.5グラムを使用して140℃にて60分間反応を行うと、アセトールの最高収率が得られることが示されている。塩基濃度が低い場合、又は糖濃度が高い場合、反応のpHは12から6.5に急速に(10分以内に)変化し得ることに注意されたい。また、高温(140℃)では、反応生成物が(アセトールと共に)少量のアセトインを含有することに留意されたい。重要なのは、ヒドロキシケトン(アセトイン)は、90%を超える収率でバイオ技術手法を使用してグルコースから調製されていることに留意することである。しかし、公開されているグルコースからヒドロキシケトンへの化学変換は、約9%とはるかに低い。
【0188】
[実施例7]
ピラジンは、グルコースを炭素源として使用して生成される。
【0189】
上記の実施例6に示すように、アセトールは、0.1N NaOHとグルコースを、最適条件を使用して反応させることによって合成できる(グルコース0.5グラムを0.1N NaOH 25mLと140℃にて60分間反応させる)。アセトールの収率は、グルコース重量に対して約2%であった。
【0190】
Nodzuによる刊行物(R.Nodzu,On the action of phosphate upon hexoses,The formation of acetol from glucose in acidic solution of potassium phosphate.Bull Chem.Soc.Japan,10,122-130,1935、参照により本明細書に組み入れられている。)は、pH6.5~6.8の40%ホスフェート緩衝溶液とグルコースとの、100~120℃の温度における反応から、収率4%(グルコースの重量に基づく)のアセトールを合成できることを示した。pH7.0~7.1においてより高い収率のアセトールが得られ、pHの低下にしたがって、アセトールの収率が低下することが示された。
【0191】
本実施例は、最初に、最適化条件下での0.1N NaOHとグルコースとの反応によるアセトールの調製について説明する。次に反応混合物からアセトールを単離する方法を示す。最後に、アセトールアセトインを単離せずに上記の混合物をNHOHと反応させて、異なる分枝ピラジンを合成できることを示す。
【0192】
グルコース、1-OH-アセトン(アセトール)、1-OH-2-ブタノン(アセトイン)、水酸化ナトリウム、水素二ナトリウムホスフェート/水酸化ナトリウム緩衝溶液pH=12、二塩基性カリウムホスフェート、一塩基性カリウムホスフェート、塩化ナトリウム、無水ナトリウムサルフェート、塩酸、メタノール及びジクロロメタンは、Sigma-Aldrich(ミズーリ州セントルイス)から入手する。
【0193】
アセトールの合成は、40mL又は1.5L パール(Parr)容器で行う。アセトールを合成するには、0.1N NaOH又は緩衝溶液25mLにつきグルコース0.5グラムを混合する。各反応物を撹拌し、140℃にて60分間の期間にわたって加熱する。すべての反応の初期pHレベルは約12であり、反応中に調整は行わない。各反応の完了後、混合物を冷却し、GCとHPLCを使用してアセトールと糖の両方の量を測定する。アセトールの定量では、溶液25mLに内部標準としてアセトイン1mgを添加し、DCM 30~35mLで抽出する。次に、抽出されたDCM溶液をナトリウムサルフェートで脱水し、GC/FIDで分析して定量する。
【0194】
ピラジンの合成は、同じパール(Parr)容器で行う。反応は、糖と0.1N NaOHの反応から合成したアセトールを反応させることで行う。この反応では、溶液25mLにつきNHOH 0.25、0.5又は1mLのいずれかと反応させる。反応物は120℃又は140℃にて17時間の期間で得る。次いで、各反応混合物を冷却し、ピラジンを抽出して定量する。各抽出において、d-2メチルピラジン0.25mgを内部標準として添加し、DCM 30~35mLを溶媒として溶液を抽出する。次に、DCM溶液をナトリウムサルフェートで脱水し、GC/MSによって分析して定量する。抽出したイオンを各ピラジンの定量に使用する。
【0195】
すべてのGC/MS分析は、上記の実施例1で使用したものと同じ機器及び操作パラメータを使用して行う。MS Wileyライブラリを使用して、各ピラジンを同定する。定量分析では、アセトールの濃度とアセトール/アセトインの応答係数比を使用して、検量線を作成する。ここでは90、100及び120℃で行ったいずれの反応でもアセトインが検出されないことに留意されたい。しかし、温度が140℃に設定されている反応では、アセトイン残留物が見出される。したがって、反応においてアセトイン濃度を求め、この値をすべての計算で考慮する。
【0196】
すべてのHPLC/RI分離は、Waters(マサチューセッツ州ミルフォード)のSugar-Pak(300×6.5mm)カラムを使用して行う。クォータナリポンプ、屈折率(RI)検出器、オートサンプラ及び80℃に設定したオーブンヒーターを装備したAgilent 1100シリーズHPLCを用いる。糖の分析のためのイソクラティック移動相は、0.005%EDTA二ナトリウム二水和物である。これらの分析では流量を0.5mL/分に設定する。
【0197】
最初に、緩衝溶液を使用してアセトールを合成する。アセトール合成のためのグルコースと0.1N NaOH溶液の反応における溶液のpHの急激な変化により、pHが12の緩衝溶液(Sigma Aldrichから購入)を0.1N NaOH溶液の代わりに、アセトールの合成で使用する。この検討において、25mLの水素二ナトリウムホスフェート/水酸化ナトリウム緩衝溶液pH=12を0.25又は0.5グラムのグルコースと、140℃にて60分間反応させる。結果は、合成を行うために緩衝溶液を使用する場合、反応生成物中のアセトールの濃度がはるかに高い(2×)ことを示している。以下の表8は、この検討の結果を示す。
【0198】
【表8】
【0199】
同様の緩衝剤(HO 100mLにNaHPO 7.1グラム及びNaOH 1グラムを混合、pH約12及び緩衝能0.05N)を調製して、140℃にて60分間グルコースと反応させると、反応混合物はアセトールの存在を示さなかった。この反応を3回反復すると、アセトールはいずれの反応生成物にも見られない。しかし、同じpHで緩衝能が低い(0.025N)の類似の緩衝剤を使用すると、反応生成物中にアセトールが見られ、濃度は、0.1N NaOHを使用した場合よりもはるかに高い。したがって、緩衝剤の種類、容量、pH及び反応温度は、グルコースを使用するアセトールの合成に効果を有する影響を与えることが判明する。
【0200】
次に、グルコースとpH6.5~7.0の40%リン酸緩衝液との反応におけるアセトール濃度を求める。40%カリウムリン酸緩衝液pH=6.5~6.8 25mLを、パール(Parr)反応装置を使用して140℃にて60分間、グルコース0.5又は1グラム反応させる。下の表9は、pH6.5~6.8の40%リン酸緩衝液(25mL)と様々な濃度のグルコースとの反応から得られたアセトールの質量を示す。ここで、3-OH-2-ブタノンや1-OH-2-ブタノンなどの他の種類のヒドロキシケトンもこの反応で形成されることに留意されたい。これらのヒドロキシケトンの量は測定しない。図3は、グルコースを140℃にて60分間リン酸緩衝液と反応させて、DCMで抽出したGC/MS分析を示す。
【0201】
【表9】
【0202】
次に、反応物300mL及び1Lのグルコース濃度及びアセトール濃度を測定する。グルコース6グラムを0.1N NaOH 300mLと140℃にて60分間反応させる。反応物の冷却された後、溶液中のアセトール濃度及びグルコース濃度の両方を得る。反応物中に少量(0.964mg/mL)のグルコースが検出される。これは約5%未満の、未反応のままであるグルコースに相当する。以下の表10は、この反応におけるアセトールの濃度を示す。アセトールの濃度は、25mLにつき約12mgであると判明する。高圧反応容器を使用して、0.1N NaOH 1リットル及びグルコース20グラムを使用して、2回の追加反応を行う。どちらの両方の反応も130~140℃にて60分間行う。グルコース濃度及びアセトール濃度の両方を測定する。両方の1リットルの反応で、グルコース濃度は1mg/mL未満(0.945及び0.958mg/mL)である。以下の表10は、各1リットルの反応におけるアセトールの濃度も示す。ここでも、アセトール濃度は25mLにつき約12mgである。
【0203】
【表10】
【0204】
次に、グルコースと0.1N NaOHの反応からアセトールを単離する。0.1N NaOHとグルコースの反応からアセトールを単離するために、様々な方法が使用される。蒸留によるピラジンの単離に関する以前の結果は、沸点が140℃のピラジンが反応混合物から単離されることを示した。したがって、120~140℃に設定した蒸留装置を使用して、反応混合物からアセトールを単離する。この目的のために、0.1N NaOHとグルコースの反応混合物100mLを140℃にて蒸留する。蒸留溶液40mLを収集した後、蒸留された物質と残存する物質の両方をDCMで抽出する。GC/FID分析によって、15~20%のみのアセトールが蒸留されるが、反応混合物中に80~85%のアセトールが残存していることが示される。
【0205】
グルコースと40%リン酸緩衝液の反応混合物を140℃にて60分間蒸留すると、同様の結果が得られる。この蒸留では、蒸留中にフラスコに水を連続的に添加して、蒸留溶液の体積を一定に保つ。蒸留により溶液約10mLを収集した後、HO約10mLを蒸留フラスコに添加して、失われた体積を補う。合計4×10mLの画分を収集する。アセトールは各画分中に認められる。DCMを用いた残存する反応混合物の分析により、溶液中にさらにアセトールが存在することが示される。この蒸留が数時間続けると、アセトールを単離することができる。
【0206】
第2の方法では、カラムクロマトグラフィーを使用して、反応混合物からアセトールを単離する。この目的のために、C18(粒径40~60μm及び細孔径90Å)を備えた30×2.0cmのガラス(又は金属)カラム(最大12~15cmのみ充填)を使用してアセトールを単離する。カラムをメタノール、続いて0.1%FA溶液で洗浄した後、アセトールを含有する反応混合物25mLをカラムに通過させる。この単離中に、溶液すべてを収集する。溶液をカラム(画分1、25mL)に押し通した後、脱イオンHO 25mLを使用してカラムから材料を洗い流す(画分2)。次に、清浄なHOがカラムから溶離されるまで(画分3)、カラムを追加のHO 25mLで洗浄する。次に、カラムをNで乾燥させ、カラムに捕捉された残存する分析物を100%MeOHで溶離させる(画分4)。すべての画分をDCMで抽出して、GC/FIDで分析する。結果は、大半のアセトールが画分1及び2によって溶離され、画分3及び4はアセトールを含有しないことを示す。ここで、反応混合物をC18充填材に通過させた後、充填材を別の反応混合物の洗浄に使用することは非常に困難であることに留意されたい。充填材を洗浄することは非常に困難である。要約すると、反応生成物からヒドロキシケトンを単離することは、適時であり、費用がかかり得る。
【0207】
次に、最初にヒドロキシケトンを単離せずに、グルコース及び水酸化ナトリウムとNHOHの反応生成物からピラジンを合成する。グルコース0.5グラム及び0.1N NaOH 25mLを140℃にて60分反応させてアセトールを調製した後、反応混合物がアセトール約10~12mg/25mL溶液を含有していたことが判明する。この目的のために、溶液25mLをNHOH 0.5又は1mLと120~140℃にて17~18時間反応させて、ピラジンの種類及びパーセント収率を求める。各反応を2回反復する。以下の表11は、GCカラムからの溶離時間を含む、検出されたピラジンの一覧を示す。NHOHの量を0.5mLから1mLに変更しても、結果は同様である。
【0208】
【表11】
【0209】
同様の反応を1リットル規模で行う。溶液1リットルを2バッチ準備する。各バッチにおいて、グルコース20グラムを0.1N NaOH溶液1000mLと140℃にて60分間反応させる。各溶液を冷却して、アセトール濃度を測定する。次に、一方の反応混合物にNHOH 20mLを添加して、第2の反応混合物にNHOH 40mLを添加する。各反応物を連続的に混合しながら、120~130℃にて17時間加熱する。反応物の冷却後、各反応物25mLに内部標準(d-2-メチルピラジン)を加え、DCMで抽出して各ピラジンの濃度及び分布を求める。残存する各反応溶液を蒸留し、個別に収集する。反応混合物500mLにつき約125mLの蒸留溶液を収集する。次に蒸留溶液(10mL)をDCMで抽出し、GC/MSで定量する。ピラジンの総質量は、溶液をDCMで抽出しなかった場合よりも大きくなり、これは蒸留溶液中のピラジンの濃度が高いためである。ピラジンの分布は、両方の抽出物でほぼ同じである。NHOHをグルコースと0.1N NaOHの反応混合物と反応させると、2-メチルピラジン及びピラジンの両方がすべての反応で大量に検出されることに留意されたい。蒸留後の残存する溶液の抽出物中には、ピラジンは検出されない。
【0210】
次に、最初にヒドロキシケトンを単離せずに、グルコース及びリン酸緩衝液とNHOHの反応生成物からピラジンを合成する。pH=6.5~6.8のリン酸緩衝液とグルコース(それぞれ0.5又は1グラム、溶液A及びB)の反応混合物25mLをNHOH 1mLと、140℃にて17時間反応させる。各反応物の冷却後、重水素化2-メチルピラジン(内部標準)0.25mgを各反応混合物に添加し、溶液をDCMで抽出する。GC/MSを使用して各抽出物を分析し、ピラジンの質量及びそのパーセント分布を計算する。これらの反応ではピラジンと2-メチルピラジンの両方が合成されるわけではないことに留意されたい。また、グルコース1グラムをリン酸緩衝液と反応させると、ピラジンの総質量は溶液Bで20%高くなる。理論に制限されないが、これは溶液Aと比較して溶液Bのアセトール濃度が高いためであると考えられる。図4は、140℃にて17時間の、溶液B(140℃にて60分間、40%リン酸緩衝液25mLと反応させたグルコース1グラム)とNHOH 1mLとの反応混合物から、DCMを使用して抽出したピラジンのGC/MS分析を示す。比較のために、図5は、グルコース0.5グラムと140℃にて60分間反応させた0.1N NaOHの反応混合物25mLから、DCMを使用して抽出して、次いでNH4OH 1mLと140℃にて反応させた、ピラジンのGC/MS分析を示す。この反応では、ピラジン及び2-メチルピラジンの両方が検出される。
【0211】
要約すると、アセトール(及び他のヒドロキシケトン)は、蒸留及びカラムクロマトグラフィーの両方を使用して、グルコース及び0.1N NaOHの反応混合物から単離することができる。蒸留は時間及びエネルギーを多く消費するし、同時にクロマトグラフィーは非常に費用がかかり得る。しかし、アセトールを単離せずにピラジンを合成することは可能である。0.1N NaOHとグルコースの反応から調製されたアセトールをNHOHと140℃にて17時間反応させると、一連のピラジンのアレイが生成された。ピラジンを蒸留によって単離した。この工程でピラジン及び2-メチルピラジンが合成されたことに留意されたい。しかし、グルコース及びリン酸緩衝液の混合物から調製したアセトールをNHOHと反応させると、同様のピラジンが同様の分布で生成されたが、反応混合物中にピラジン又は2-メチルピラジンは検出されなかった。
【0212】
上述の記載に示した教示の利点を有する本発明が関係する分野の当業者は、本発明の多くの変更及び他の実施形態に想到する。従って、本発明は開示した具体的な実施形態に限定されず、変更及び他の実施形態は添付する特許請求の範囲内に含まれるものであることが理解される。本明細書では具体的な用語が用いられているが、該用語は一般的及び説明的な意味のみで使用され、限定を目的とするものではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2023-06-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピラジンを形成する方法であって、
少なくとも1つの糖及び少なくとも1つの緩衝剤を含む炭素源溶液を入手すること、
前記炭素源溶液を少なくとも1つの窒素源と混合して、反応溶液を形成すること、並びに
前記反応溶液を反応温度まで加熱し、少なくとも1つの置換ピラジンを含む反応生成物が生成するのに十分な時間にわたって、前記反応溶液を該反応温度に保つことを含む、方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つの糖が、グルコース、フルクトース、ラムノース及びその組合せからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記緩衝剤が、水酸化ナトリウム、リン酸緩衝液及びその組合せからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記緩衝剤が、6.5~7.5のpH範囲で緩衝する、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つの窒素源が、アミノ酸、アンモニウムイオン及びその組合せからなる群から選択される、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つの置換ピラジンが、2置換されている、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つの置換ピラジンが、3置換されている、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つの置換ピラジンが、4置換されている、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つの置換ピラジンが、2個以上の炭素原子を有する少なくとも1個の置換基を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも1つの置換ピラジンが、3個以上の炭素原子を有する少なくとも1個の置換基を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記少なくとも1つの置換ピラジンが、
2,6-ジメチルピラジン;
2,5-ジメチルピラジン;
2-エチル-5-メチルピラジン;
2-エチル-6-メチルピラジン;
2,3,5-トリメチルピラジン;
2-エチル-3,5-ジメチルピラジン;
2-エチル-2,5-ジメチルピラジン;
2,3,5,6-テトラメチルピラジン;
2,3,5-トリメチル-6-エチルピラジン;
2,6-ジメチル-3-プロピルピラジン;
2,5-ジエチル-3,6-ジメチルピラジン;
2,6-ジメチル-3-(2-メチルブチル)ピラジン;
2,5-ジメチル-3-(2-メチルブチル)ピラジン;
2,5-ジメチル-3-(3-メチルブチル)ピラジン;
2,5-ジメチル-3-プロピルピラジン;
2,5-ジメチル-3-シス-プロペニルピラジン;
2-イソプロペニル-3,6-ジメチルピラジン;
2-(2-メチルプロピル)-3,5-ジメチルピラジン;
2,6-ジメチル-3-イソブチルピラジン;
2-(2-メチルプロピル)-3,5,6-トリメチルピラジン;
2,3-ジメチルピラジン;
トリメチルピラジン;
2,5-ジメチル-3-エチルピラジン;
テトラメチルピラジン;
2,3-ジエチル-5-メチルピラジン;
2,5-ジメチル-3-プロペニルピラジン;
2,3,5-トリメチル-6-イソプロピルピラジン;
2-アセチル-4,5-ジメチルピラジン;
3,5-ジメチル-2-メチルプロピルピラジン;
2,6-ジエチルピラジン;
2,5-ジエチルピラジン;
2-エチル-3,5,6-トリメチルピラジン;
3,5-ジメチル-2-(n-プロピル)ピラジン;
3,6-ジメチル-2-(n-プロピル)ピラジン;
2,5-ジエチル-3-メチルピラジン;
2,3-ジエチル-5,6-ジメチルピラジン;
トランス-3-メチル-2-(n-プロピル)-6(ブテニル)ピラジン;
2,5,7-トリメチル-6,7-ジヒドロ-5H-シクロペンタピラジン;及び
2,5-ジメチル-3-エチルピラジン;並びに
その組合せからなる群から選択される、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも1つの糖が、タバコ由来である、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも1つの窒素源が、タバコ由来である、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記反応生成物から前記少なくとも1つの置換ピラジンを単離することをさらに含む、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記反応生成物から前記少なくとも1つの置換ピラジンを単離するステップが、前記反応生成物の液液抽出、前記反応生成物の液固抽出及び前記反応生成物の単純蒸留のうちの少なくとも1つを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
反応温度が90℃~150℃である、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記反応生成物における、ピラジン分子及びメチルピラジン分子が、前記反応生成物の1.0%未満である、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記少なくとも1つの置換ピラジンをタバコ製品に組み入れることをさらに含む、請求項1~17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
前記タバコ製品が、喫煙品又は無煙タバコ製品である、請求項18に記載の方法。