(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023109835
(43)【公開日】2023-08-08
(54)【発明の名称】連続的採取を行い細胞流出を行わない強化灌流による細胞培養法
(51)【国際特許分類】
C12P 21/00 20060101AFI20230801BHJP
C12M 3/00 20060101ALI20230801BHJP
C12N 5/071 20100101ALN20230801BHJP
C07K 1/16 20060101ALN20230801BHJP
C12M 3/06 20060101ALN20230801BHJP
【FI】
C12P21/00 A
C12M3/00 Z
C12N5/071
C07K1/16
C12M3/06
【審査請求】有
【請求項の数】26
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023077345
(22)【出願日】2023-05-09
(62)【分割の表示】P 2021523777の分割
【原出願日】2019-09-29
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2018/113776
(32)【優先日】2018-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2019/089993
(32)【優先日】2019-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】518330176
【氏名又は名称】ウーシー バイオロジクス アイルランド リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヂョウ,ウェイチャン
(72)【発明者】
【氏名】ヂョウ,ハン
(72)【発明者】
【氏名】ファン,ミンユエ
(72)【発明者】
【氏名】タン,スーユエン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】バイオリアクタでの細胞培養物の灌流培養によって生体物質を製造する方法を提供する。
【解決手段】(a)細胞培地と細胞とを含む細胞培養物を培養すること、(b)前記細胞培養物を基礎培地および流加培地とともにバイオリアクタにて灌流させること、および(c)生体物質を採取することを含む生体物質の製造方法であって、前記基礎培地が、0.1から2.0以下の1日当たりのワーキングボリューム(VVD)の灌流速度で供給され、前記流加培地の前記灌流が、前記基礎培地の前記灌流速度の0.1%から20%の範囲の速度であり、前記細胞培養物を分離システムに連続的に通して前記生体物質を採取し、前記細胞を、流出させずに前記バイオリアクタに保持する方法とする。
【選択図】
図16
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)細胞培地と細胞とを含む細胞培養物を培養すること、
(b)前記細胞培養物を基礎培地および流加培地とともにバイオリアクタにて灌流させること、および
(c)生体物質を採取すること
を含む生体物質の製造方法であって、
前記基礎培地および前記流加培地を異なる速度で前記細胞培養物に供給し、前記細胞培養物を分離システムに連続的に通し、前記細胞を、流出させずに前記バイオリアクタに保持する方法。
【請求項2】
前記分離システムが、交互接線流(ATF)装置または接線流ろ過(TFF)装置である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記分離システムが、中空繊維フィルタを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記中空繊維フィルタの分画分子量(MWCO)が、前記生体物質の分子量より大きい、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記中空繊維フィルタの孔径が、約0.08μmから約0.5μmである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記中空繊維フィルタの前記孔径が、約0.1μmから約0.5μmである、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記孔径が、約0.2μmまたは約0.45μmである、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記基礎培地が、約0.1から約2.0以下の1日当たりのワーキングボリューム(VVD)の灌流速度で供給される、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記基礎培地が、約0.1から約1.5(VVD)の灌流速度で供給される、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記基礎培地が、約0.3から約1.2(VVD)の灌流速度で供給される、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記基礎培地が、約0.5から約1.0(VVD)の灌流速度で供給される、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記流加培地の前記灌流が、前記基礎培地の前記灌流速度の約0.1%から約20%の範囲の速度である、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記流加培地の灌流が、前記基礎培地の前記灌流速度の約1%から約15%の範囲の速度である、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記流加培地の灌流が、前記基礎培地の前記灌流速度の約1%から約10%の範囲の速度である、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記流加培地の灌流が、前記基礎培地の前記灌流速度の約1%から約9%の範囲の速度である、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記細胞が、約35℃から約37℃の範囲で培養される、請求項1から15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記細胞培養物を約28℃から約33℃の範囲の温度に温度変化させることをさらに含む、請求項1から16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記温度変化が、所定の最大生存細胞密度(VCD)に対応する、請求項1から17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
最大VCDが達成される前に前記温度を低下させる、請求項1から18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記バイオリアクタに脱泡剤を加える、請求項1から19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記脱泡剤が、油系脱泡剤、粉末脱泡剤、水系脱泡剤、シリコーン系脱泡剤、EO/PO系脱泡剤、アルキルポリアクリレート、およびそれらの組合せから選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
マイクロスパージャを使用する、請求項1から21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記マイクロスパージャが、約0.2から約0.5VVMの範囲の流速で酸素を送達する、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記細胞が、哺乳動物の細胞を含む、請求項1から23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記哺乳動物の細胞が、CHO(チャイニーズハムスター卵巣)細胞、ハイブリドーマ、BHK(ベビーハムスター腎臓)細胞または骨髄腫細胞を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記生体物質が、受容体、酵素、融合タンパク質、血液タンパク質、多機能タンパク質、ウイルスまたは細菌タンパク質および免疫グロブリンから選択される、請求項1から25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記血液タンパク質が、血液凝固カスケードによるものである、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記多機能タンパク質が、エリスロポエチンである、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記ウイルスまたは細菌タンパク質が、ワクチンに使用される、請求項26に記載の方法。
【請求項30】
前記免疫グロブリンが、抗体または多重特異性抗体である、請求項26に記載の方法。
【請求項31】
前記抗体が、IgGまたはIgMである、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記多重特異性抗体が、二重特異性抗体である、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
約10g/L以上の累積体積生産性(Pv)を達成する、請求項1から32のいずれか
1項に記載の方法。
【請求項34】
約15g/L以上の累積体積生産性(Pv)を達成する、請求項1から33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
約20g/L以上の累積体積生産性(Pv)を達成する、請求項1から34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
採取された前記生体物質に少なくとも1つのクロマトグラフィー工程による連続的な生成物獲得処理を施すことをさらに含む、請求項1から35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
採取された前記生体物質に少なくとも2個のクロマトグラフィーカラムを用いた連続的な生成物獲得処理を施すことをさらに含む、請求項1から36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
採取された前記生体物質に2から16個のクロマトグラフィーカラムを用いた連続的な生成物獲得処理を施すことをさらに含む請求項1から37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
採取された前記生体物質に3から8個のクロマトグラフィーカラムを用いた連続的な生成物獲得処理を施すことをさらに含む請求項1から38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
採取された前記生体物質に少なくとも3個のクロマトグラフィーカラムを用いた連続的な生成物獲得処理を施すことをさらに含む請求項1から39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
請求項1から40のいずれか1項により製造された生体物質。
【請求項42】
(a)細胞培養物を基礎培地および流加培地とともにバイオリアクタにて灌流させるためのモジュールと、
(b)生体物質を連続的に採取するためのモジュールであって、ある孔径または前記生体物質の分子量より大きい分画分子量(MWCO)を有する中空繊維フィルタを含むモジュールと
を含む生体物質製造システム。
【請求項43】
前記採取物から前記生体物質を連続的に獲得するためのモジュールをさらに含む請求項42に記載のシステム。
【請求項44】
前記生体物質を連続的に採取するための前記モジュールが、交互接線流(AFT)装置または接線流ろ過(TFF)装置である、請求項42に記載のシステム。
【請求項45】
前記基礎培地および前記流加培地が、異なる速度で供給される、請求項42に記載のシステム。
【請求項46】
前記中空繊維フィルタの前記孔径が、約0.08μmから0.5μmである、請求項42に記載のシステム。
【請求項47】
前記中空繊維フィルタの前記孔径が、約0.1μmから0.5μmである、請求項42に記載のシステム。
【請求項48】
前記孔径が、約0.2μmである、請求項42に記載のシステム。
【請求項49】
前記孔径が、約0.45μmである、請求項42に記載のシステム。
【請求項50】
細胞培養用バイオリアクタおよび/またはマイクロスパージャをさらに含む、請求項42に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本出願は、2018年11月2日に出願された国際特許出願第PCT/CN2018/113776号、および2019年6月4日に出願された国際特許出願第PCT/CN2019/089993号の優先権を主張するものである。両出願の内容全体が、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
発明の分野
本開示は、細胞を培養し、生体物質を採取する方法およびシステムに関する。より詳細には、本開示は、連続的採取を行い細胞流出を行わない強化灌流による細胞培養法に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
1980年代にバイオ医薬の製造が始まって以来、治療用組換えタンパク質の量の増大化の要望が高まり続けている。組換えタンパク質または他の生体生成物を製造する製造法の開発は、多くの可変要素のバランスを取らなければならない複雑な企てである。
【0004】
典型的な灌流法では、細胞に新鮮な培地を連続的に供給し、細胞を流出させて高い細胞生存率を維持することによって長時間にわたり細胞を培養する。典型的には、連続的な製造でバイオリアクタから細胞を定期的に流出させることが求められるが、それは、細胞および対象となる生体生成物の損失を招くため非効率的である。
【0005】
典型的な細胞培養法では、細胞が分泌する生体生成物を、使用する保持システムに応じて細胞培養時に保持または採取する。特定の状況では、細胞および生体生成物が、培養処理時にバイオリアクタに残留する。例えば、米国特許第9,469,865号には、生体物質および細胞培養物を含む細胞培養物を分離システムに還流させる灌流法であって、培養が終了したときに生体物質をリアクタに保持し、またはリアクタに戻し、生成物を採取する灌流法が開示されている。充填細胞量が多いと、採取時に、細胞と生体生成物の両方の混合物を浄化するのが困難になり、全体収率が低下する。他の特定の状況では、細胞と生体生成物が培養処理時にバイオリアクタにて分離される。
【0006】
より高い生成物の収率をもたらすことができる細胞培養法へと向上させ、生成物の品質を向上させ、コストを低減することがなお要望されている。本開示は、連続的採取を行い細胞流出を行わない強化灌流による細胞培養方法およびシステムを提供することによって、これらの要望の少なくとも1つを満たす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
概要
本開示は、バイオリアクタでの細胞培養物の灌流培養によって生体物質を製造する方法であって、基礎培地および流加培地を異なる速度で細胞培養物に供給し、細胞培養物を分離システムに通して生体物質を連続的に採取する方法を対象とする。培養処理時に、細胞を流出させずにバイオリアクタに保持する。本開示の方法は、PVCD(最大生存細胞密度)およびQp(細胞特異的生産性)の点で大きな利点をもたらす。その結果、本方法によって、所望の生体物質の生産性を向上させることができる。
【0008】
基礎培地および流加培地を異なる速度で細胞培養物に供給すること、培養時に温度を変化させること、および細胞培養物を流出させないことによって、初期段階ではバイオマスの量を多くし、後段階では生産性を高めることができることを見いだした。また、生体物質を連続的に採取する調和的分離システムも、高いQp、生体物質のより良好な品質および/または高い精製収率を達成するのに役立つ。本開示の方法は、灌流法を連続採取法と調和させ、流出法を除外した強化灌流培養(IPC)法と称する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
具体的には、本開示は、(a)細胞培地と細胞とを含む細胞培養物を培養すること、(b)細胞培養物を基礎培地および流加培地とともにバイオリアクタにて灌流させること、および(c)生体物質を採取することを含む生体物質の製造方法であって、基礎培地および流加培地を異なる速度で細胞培養物に供給し、細胞培養物を分離システムに連続的に通し、細胞を、培養処理全体を通じて流出させずにバイオリアクタに保持する方法を提供する。
【0010】
少なくとも1つの実施形態において、細胞培養物は、対象となる生体物質を発現する細胞をバイオリアクタに接種することによって確立される。別の実施形態において、細胞培養物は、少なくとも0.1×106個/mLの生存細胞をバイオリアクタに接種することによって確立される。別の実施形態において、細胞培養物は、約0.7~0.8×106個/mLの生存細胞、約0.8~1.0×106個/mLの生存細胞、または約1.0~4.0×106個/mLの生存細胞を接種することによって確立される。別の実施形態において、細胞培養物は、約0.1~4.0×106個/mLの生存細胞、約0.1~0.5×106個/mLの生存細胞、約0.5~1.0×106個/mLの生存細胞、約1.0~1.5×106個/mLの生存細胞、約1.5~2.0×106個/mLの生存細胞、約2.0~2.5×106個/mLの生存細胞、約2.5~3.0×106個/mLの生存細胞、約3.0~3.5×106個/mLの生存細胞、約3.5~4.0×106個/mLの生存細胞、約0.2~0.4×106個/mLの生存細胞、約0.4~0.6×106個/mLの生存細胞、約0.6~0.8×106個/mLの生存細胞、約0.8~1.0×106個/mLの生存細胞、約1.0~1.2×106個/mLの生存細胞、約1.2~1.4×106個/mLの生存細胞、約1.4~1.6×106個/mLの生存細胞、約1.6~1.8×106個/mLの生存細胞、または約1.8~2.0×106個/mLの生存細胞を接種することによって確立される。
【0011】
細胞培養は、基礎培地および流加培地を異なる速度で灌流することによって維持される。本開示の少なくとも1つの実施形態において、流加培地の灌流速度は、基礎培地の灌流速度の約0.1~20%、例えば基礎培地の灌流速度の約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、または約20%である。流加培地の灌流速度は、細胞密度、生存率およびオスモル濃度に応じて調整される。いくつかの実施形態において、基礎培地は、2.0VVD以下、例えば約0.1から2.0VVD以下、約0.1から1.5VVD、約0.3から1.2VVD、または約0.5から1.0VVDの灌流速度で供給される。いくつかの実施形態において、基礎培地は、2.0VVD以下、例えば約0.1から2.0VVD、約0.1から0.3VVD、約0.3から0.6VVD、約0.6から0.9VVD、約0.9から1.2VVD、約1.2から1.5VVD、約1.5から1.8VVD、約1.8から2.0VVD、約0.5から1.0VVD、約0.7から1.2VVD、または約1.0~1.5VVDの灌流速度で供給される。いくつかの実施形態において、流加培地の灌流速度は、基礎培地の灌流速度の約1~15%、好ましくは約1~10%、より好ましくは約1~9%である。いくつかの実施形態において、流加培地の灌流速度は、基礎培地の灌流速度の約1~15%、約1~14%、約1~13%、約1~12%、約1~11%、約1~10%、約1~9%
、約1~8%、約1~7%、約1~6%、約1~5%、約1~4%、約1~3%、約1~2%、約2~9%、約3~9%、約4~9%、約5~9%、約6~9%、または約7~9%である。基礎培地の供給速度は、細胞密度の増加に従って増大されてもよく、細胞密度が最大に達する前に(例えば3日目から6日目に)目標供給速度に達してもよく、その後目標供給速度は、培養終了まで一定であってもよい。本開示の少なくとも1つの実施形態において、基礎培地の供給速度は、培養処理の1日目、2日目、3日目、4日目、5日目、6日目、7日目、または8日目に増大される。流加培地の供給速度は、通常2日目から4日目に、十分な栄養を供給するために、細胞密度の増加に従って増大されてもよく、6日目から10日目に最大に達してもよく、場合によっては細胞密度または生存率の低下に従って細胞培養時に低減されてもよい。本開示の少なくとも1つの実施形態において、流加培地の供給速度は、培養処理の1日目、2日目、3日目、4日目、5日目、6日目、7日目、または8日目に増大される。別の実施形態において、流加培地の供給速度は、3日目、4日目、5日目、6日目、7日目、8日目、9日目、10日目、11日目、12日目、13日目、または14日目に最大に達する。
【0012】
少なくとも1つの実施形態において、本明細書に開示した方法は、細胞培養物を温度変化させることをさらに含む。温度変化の目的は、VCDが最大に達する前に細胞の過剰増殖を抑制することである。本開示の少なくとも1つの実施形態において、温度変化は、最大VCDなどの所定のパラメータに応答する。別の実施形態において、温度変化は、3日目、4日目、5日目、6日目、7日目、8日目、9日目、10日目、11日目、12日目、13日目、または14日目に生じる。少なくとも1つの実施形態において、温度変化は、例えば35~37℃付近から28~33℃付近、または34~36℃付近から27~34℃付近、または36~38℃付近から29~34℃付近、または36~39℃付近から30~35℃付近、または33~35℃付近から26~31℃付近への温度変化であってもよい。
【0013】
少なくとも1つの実施形態において、製造された生体物質は、中空繊維フィルタを有する分離システムによって連続的に採取される。少なくとも1つの実施形態において、中空繊維フィルタの孔径または分画分子量は、中空繊維フィルタが対象となる生体物質を保持せず、細胞を保持するように選択される。したがって、細胞によって製造された生体物質は採取され、細胞は培養物に保持される。いくつかの実施形態において、中空繊維フィルタの孔径は、約0.08μmから約0.5μm、好ましくは約0.1μmから約0.5μm、より好ましくは約0.2μmまたは約0.45μmである。少なくとも1つの実施形態において、中空繊維フィルタの孔径は、約0.08μmから約1.0μm、例えば約0.1μmから約0.8μm、約0.1μmから約0.6μm、約0.1μmから約0.5μm、約0.1μmから約0.4μm、約0.1μmから約0.3μm、約0.2μmから約0.8μm、約0.2μmから約0.8μm、約0.3μmから約0.8μm、約0.4μmから約0.8μm、約0.2μmから約0.6μm、または約0.2μmから約0.5μmである。少なくとも1つの実施形態において、中空繊維フィルタの孔径は、約0.2μmまたは約0.45μmである。
【0014】
少なくとも1つの実施形態において、中空繊維フィルタを有する分離システムは、交互接線流(ATF)または接線流ろ過(TFF)装置である。
【0015】
少なくとも1つの実施形態において、細胞は、培養処理全体を通じて流出することなくバイオリアクタに保持される。流出システムを除くことによって高度の細胞密度を得ることが可能であることを見いだした。
【0016】
少なくとも1つの実施形態において、採取物は、クロマトグラフィー工程による連続的な生成物獲得処理が施された。意外にも、連続的な生成物獲得処理を採用することによっ
て、高生産性(例えば超高生産性)細胞培養を達成できることを見いだした。
【0017】
a)細胞培養物を基礎培地と流加培地とともにバイオリアクタにて異なる速度で灌流するためのモジュールと、(b)生体物質を連続的に採取するためのモジュールであって、対象となる生体物質を、保持せず細胞を保持するようにある孔径、または生体物質の分子量より大きな分画分子量(MWCO)を有する中空繊維フィルタを含むモジュール(好ましくは、生体物質を連続的に採取するためのモジュール交互接線流(ATF)装置であるモジュール)と、(c)場合により、採取物から生体物質を連続的に獲得するためのモジュールとを含む生体物質製造システムをも本明細書に提供する。いくつかの実施形態において、該システムは、細胞培養用バイオリアクタおよび/またはマイクロスパージャをさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1a】本開示の少なくとも1つの実施形態に係る培養システムの概略図である。
【
図1b】本開示の少なくとも1つの実施形態に係る連続的生成物獲得システムの概略図である。
【
図2】実施例1における処理A(従来の流加)、処理B(強化灌流培養)および処理C(集中流加)についての生存細胞密度(10
6個/mL)対処理時間(日)のグラフを示す。
【
図3】実施例1における処理A(従来の流加)、処理B(強化灌流培養)および処理C(集中流加)についての生存率(%)対処理時間(日)のグラフを示す。
【
図4】実施例1における処理A(従来の流加)、処理B(強化灌流培養)および処理C(集中流加)についての累積体積生産性(Pv)(g/L)対処理時間(日)のグラフを示す。
【
図5】実施例1における処理A(従来の流加)、処理B(強化灌流培養)および処理C(集中流加)についてのグルコース濃度を示す。
【
図6】実施例1における処理A(従来の流加)、処理B(強化灌流培養)および処理C(集中流加)についての乳酸の生成または蓄積を示す。
【
図7】実施例1における処理A(従来の流加)、処理B(強化灌流培養)および処理C(集中流加)についてのcIEF(キャピラリ等電点電気泳動)の結果を示す。
【
図8】実施例1における処理A(従来の流加)、処理B(強化灌流培養)および処理C(集中流加)についてのSECおよびSDS_キャリパ_NRの結果を示す。
【
図9】実施例2における実験IPC-1からIPC-8についての生存細胞密度(10
6個/mL)対処理時間(日)のグラフを示す。
【
図10】実施例2における実験IPC-1からIPC-8についての細胞の生存率を示す。
【
図11】実施例2における実験IPC-1からIPC-8についての累積体積生産性(Pv)を示す。
【
図12】実施例2における実験IPC-1からIPC-8についてのグルコース濃度を示す。
【
図13】実施例2における実験IPC-1からIPC-8についての乳酸濃度を示す。
【
図14】実施例3における処理A(従来の流加)、処理B(強化灌流培養)および処理C(灌流細胞培養)についての生存細胞密度(10
6個/mL)対処理時間(日)のグラフを示す。
【
図15】実施例3における処理A(従来の流加)、処理B(強化灌流培養)および処理C(灌流細胞培養)についての生存率(%)対処理時間(日)のグラフを示す。
【
図16】実施例3における処理A(従来の流加)、処理B(強化灌流培養)および処理C(灌流細胞培養)についての累積Pv(g/L)対処理時間(日)のグラフを示す。
【
図17】実施例3における処理A(従来の流加)、処理B(強化灌流培養)および処理C(灌流細胞培養)についてのグルコース濃度を示す。
【
図18】実施例3における処理A(従来の流加)、処理B(強化灌流培養)および処理C(灌流細胞培養)についての乳酸の生成または蓄積を示す。
【
図19】実施例4における処理AとBについての生存細胞密度(10
6個/mL)対処理時間(日)のグラフを示す。
【
図20】実施例4における処理AとBについての生存率(%)対処理時間(日)のグラフを示す。
【
図21】実施例4における処理AとBについての累積Pv(g/L)対処理時間(日)のグラフを示す。
【
図22】実施例4における処理AとBについてのグルコース濃度を示す。
【
図23】実施例4における処理AとBについての乳酸濃度を示す。
【
図24】異なるスケールでの処理A(従来の流加)と処理B(強化灌流培養)についての生存細胞密度(10
6個/mL)と処理時間(日)とのグラフを示す。
【
図25】異なるスケールでの処理A(従来の流加)と処理B(強化灌流培養)についての生存率(%)対処理時間(日)のグラフを示す。
【
図26】異なるスケールでの処理A(従来の流加)と処理B(強化灌流培養)についての細胞平均直径対処理時間(日)のグラフを示す。
【
図27】異なるスケールでの処理A(従来の流加)と処理B(強化灌流培養)についての培養物のグルコース濃度対処理時間(日)のグラフを示す。
【
図28】異なるスケールでの処理A(従来の流加)と処理B(強化灌流培養)についての培養物の乳酸濃度対処理時間(日)のグラフを示す。
【
図29】異なるスケールでの処理A(従来の流加)と処理B(強化灌流培養)についての培養物のアンモニウム濃度対処理時間(日)のグラフを示す。
【
図30】異なるスケールでの処理A(従来の流加)と処理B(強化灌流培養)についての培養物のオンラインpH対処理時間(日)のグラフを示す。
【
図31】異なるスケールでの処理A(従来の流加)と処理B(強化灌流培養)についての培養物のオフラインpH対処理時間(日)のグラフを示す。
【
図32】異なるスケールでの処理A(従来の流加)と処理B(強化灌流培養)についての培養物のpCO2レベル対処理時間(日)のグラフを示す。
【
図33】異なるスケールでの処理A(従来の流加)と処理B(強化灌流培養)についての培養物のオスモル濃度対処理時間(日)のグラフを示す。
【
図34】異なるスケールでの処理A(従来の流加)と処理B(強化灌流培養)についての累積Pv(g/L)対処理時間(日)のグラフを示す。
【
図35】実験4における15Lと250Lのスケールでの処理B(強化灌流培養)についてのSECの結果および獲得工程の収率を示す。
【
図36】実験4における15Lと250Lのスケールでの処理B(強化灌流培養)についてのcIEF(キャピラリ等電点電気泳動)の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
詳細な説明
I 定義
他に特に規定がなければ、本明細書に用いられている全ての技術用語および科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者が一般に理解するものと同様の意味を有する。本明細書で参考にされる全ての特許、出願、公開出願および他の出版物は、その全体が参照により組み込まれている。本項に記載の定義が、参照により本明細書に組み込まれている特許、出願、公開出願および他の出版物に記載の定義と矛盾するか、さもなければ整合性がとれていない場合は、本項に記載の定義が、参照により本明細書に組み込まれている定義に優先する。
【0020】
本明細書に用いられているように、単数形(「a」、「an」および「the」)は、他に特に指定がなければ、複数形を包含する。例えば、「単数の」生体物質は、1つまたは複数の生体物質を包含する。
【0021】
本明細書に用いられている「バイオリアクタ」は、細胞培養物を含むことができるシステムであり、一方、細胞培養物は、細胞および細胞培地を含む。いくつかの実施形態において、エアフィルタなどの無菌バリアを設けて、他の細胞が所望の細胞を汚染することを防止する。いくつかの実施形態において、混合、温度、pH、酸素濃度等の培養条件を好適にすることによって細胞にとって良好な環境を維持する。
【0022】
「細胞培養」または「培養」とは、多細胞生物または組織の外部で細胞を増殖および繁殖させることを意味する。「細胞培養物」は、細胞培地、細胞および生体物質を含む液体を含み、液体は、細胞をリアクタにて細胞培地中で培養する処理の結果であり、細胞によって生体物質が製造される。哺乳動物細胞の好適な培養条件は、当該技術分野で公知である。例えば、Animal cell culture: A Practical Approach, D.Rickwood編, Oxford University Press, New York(1992年)を参照されたい。哺乳動物細胞を懸濁液中で、または固体基質に付着させて培養してもよい。
【0023】
「細胞」は、対象となる生体物質を製造する細胞、例えば生成物をコードする遺伝子を発現する能力を有する細胞などを意味する。生成物をコードする遺伝子を発現する能力を有する細胞は、例えば、細胞生成物をコードする遺伝子および適切な選択マーカーをコードする遺伝子を含有するプラスミドを細胞にトランスフェクトすることによって調製してもよい。生成物の製造に使用可能な細胞は、原則として、生体生成物を製造する能力を有することが当業者に公知の全ての細胞である。細胞は、動物細胞、特に哺乳動物細胞であってもよい。哺乳動物細胞の例として、CHO(チャイニーズハムスター卵巣)細胞、ハイブリドーマ、BHK(ベビーハムスター腎臓)細胞、骨髄腫細胞、ヒト細胞(例えばHEK-293細胞)、ヒトリンパ芽球様細胞、E1不死化HER細胞、マウス細胞(例えばNS0細胞)が挙げられる。
【0024】
本明細書に用いられている、「細胞培地」(「培地(culture medium)」「細胞培地(cell culture media)」とも呼ばれる)という用語は、細胞(例えば動物細胞または哺乳動物細胞など)の増殖に使用され、一般的に次に挙げる少なくとも1つまたは複数の成分を提供する栄養溶液を指す:エネルギー源(通常は例えばグルコースなどの炭水化物の形態を取る);全ての必須アミノ酸の1種または複数種、および一般的に20種類の塩基性アミノ酸に加え、システイン;典型的に低濃度で要求されるビタミン類および/または他の有機化合物;脂質または遊離脂肪酸;および微量元素、例えば、典型的に超低濃度、通常はミクロモルの範囲で要求される無機化合物または天然元素。
【0025】
「基礎細胞培地」は、典型的には細胞培養を開始するのに使用され、細胞培養物を支持するのに十分完成された細胞培地を指す。市販の基礎培地を使用することができ、例として、CD OptiCHO AGT(Invitrogen)、CD CHO AGT(Invitrogen)、Dynamis AGT Medium(Invitrogen)、SFM4CHO ADCF(Hyclone)、HyCell CHO Medium(Hyclone)、CDM4MAB(Hyclone)、DPM Hyclone
ActiPro(Hyclone)、Advanced CHO Fed-batch
Medium(Sigma)が挙げられるが、それらに限定されない。
【0026】
「流加」細胞培地または流加培地は、典型的に指数増殖期、すなわち「増殖期」に細胞培養に使用され、この期間中に細胞培養物を支持するのに十分完成された細胞培地を指す
。増殖細胞培地は、宿主細胞株に組み込まれた選択可能マーカーに抵抗力または生存力を与える1種または複数種の選択剤を含有してもよい。そのような選択剤の例として、ジェネティシン(G4118)、ネオマイシン、ハイグロマイシンB、ピューロマイシン、ゼオシン、メチオニンスルホキシミン、メトトレキサート、グルタミンフリー細胞培地、グリシン欠乏細胞培地、ヒポキサンチン/チミジン、または単独のチミジンなどが挙げられるが、それらに限定されない。市販の流加培地を使用することができ、例として、CHO
CD Efficient FeedA(Invitrogen)、CHO CD Efficient FeedB(Invitrogen)、CHO CD Efficient FeedC(Invitrogen)、Sheff-CHO PLUS PF ACF(FM012)(Kerry)、CHO CD Efficient Feed A+(Invitrogen)、CHO CD Efficient Feed B+(Invitrogen)、CHO CD Efficient Feed C+(Invitrogen)、DPM-Cell Boost 7a(Hyclone)、DPM-
Cell Boost 7b(Hyclone)、またはFAA01A(Hyclone)が挙げられるが、それらに限定されない。
【0027】
細胞培地は、特定の実施形態において、血清を含有しない、および/または動物由来の生成物もしくは構成要素を含有しない。細胞培地は、特定の実施形態において、化学的に定義され、化学成分の全てが公知である。市販の培地を使用することができ、それらは当業者に公知である、または当業者が常套的技量を用いて実践すると予想されるとおり、任意選択の成分を含め、適切な濃度または量の補完的な成分または構成要素を必要または要望に応じて添加してもよい。
【0028】
本開示に関して、「生成物」、「生体物質(biologic)および「生体物質(biological
substance)」という用語は、互換可能である。したがって、例えば、(組換え)遺伝子符号化を発現することによって細胞により製造されてもよい生成物は、例えば(組換え)タンパク質、特に、受容体、酵素、融合タンパク質、血液凝固カスケードによるタンパク質などの血液タンパク質、例えばワクチンに使用されるエリスロポエチン、ウイルスまたは細菌タンパク質などの多機能タンパク質、抗体、例えばIgGまたはIgMなどの免疫グロブリン、二重特異性抗体などの多重特異性抗体等である。好ましくはタンパク質が、より好ましくは抗体が細胞によって製造される。
【0029】
「抗体」という用語は、アイソタイプもしくはサブクラスを問わないグリコシル化免疫グロブリンおよび非グリコシル化免疫グロブリンの両方への言及、または、特異的結合について無傷の抗体(別段に指定される場合を除き、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、多重特異性抗体、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、およびオリゴマーまたはそれらの抗原結合性フラグメントを含む)と競合する、それらの抗原結合性領域への言及を包含する。また、抗原結合性のフラグメントまたは領域を有するタンパク質、例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、ダイアボディ、Fd、dAb、マキシボディ、一本鎖抗体分子、相補性決定領域(CDR)フラグメント、scFv、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディおよび標的ポリペプチドに特異的抗原結合性を与えるのに十分である免疫グロブリンの少なくとも一部を含有するポリペプチドなどのも含まれる。「抗体」という用語は、例えば抗体を発現させるためにトランスフェクトされた宿主細胞から単離された抗体など、組み換え手段によって調製、発現、創出または単離された抗体を包含するが、それらに限定されない。
【0030】
抗体の例として、上述のタンパク質および/または次に挙げる抗原を含む(ただしそれらに限定されない)タンパク質のいずれか1つまたは組合せを認識する抗体が挙げられるが、それらに限定されない:CD2、CD3、CD4、CD8、CD11a、CD14、CD18、CD20、CD22、CD23、CD25、CD33、CD40、CD44、
CD52、CD80(B7.1)、CD86(B7.2)、CD147、IL-1α、IL-1β、IL-2、IL-3、IL-7、IL-4、IL-5、IL-8、IL-10、IL-2受容体、IL-4受容体、IL-6受容体、IL-13受容体、IL-18受容体サブユニット、FGL2、PDGF-βおよびそれらの類似体(米国特許第5,272,064号および第5,149,792号を参照されたい)、VEGF、TGF、TGF-β2、TGF-β1、EGF受容体(米国特許第6,235,883号を参照されたい)、VEGF受容体、肝細胞増殖因子、破骨細胞分化抑制因子リガンド、インターフェロンガンマ、Bリンパ球刺激因子(BlyS、BAFF、THANK、TALL-1、およびzTNF4としても公知である(Do and Chen-Kiang(2002年), Cytokine Growth Factor Rev.13(1): 19-25を参照されたい))、C5補体、IgE、腫瘍抗原CA125、腫瘍抗原MUC1、PEM抗原、LCG(肺がんに伴って発現する遺伝子生成物)、HER-2、HER-3、腫瘍関連糖タンパク質TAG-72、SK-1抗原、結腸がんおよび/または膵臓がんの患者の血清で濃度が増大する腫瘍関連エピトープ、胸部、結腸、扁平上皮、前立腺、膵臓、肺および/または腎臓のがん細胞および/または黒色腫、神経膠腫または神経芽腫細胞に発現するがん関連のエピトープまたはタンパク質、腫瘍の壊死性コア、インテグリンアルファ4ベータ7、インテグリンVLA-4、B2インテグリン、TRAIL受容体1、2、3および4、RANK、RANKリガンド、TNF-α、接着分子VAP-1、上皮細胞接着分子(EpCAM)、細胞間接着分子-3(ICAM-3)、ロイコインテグリン付着因子、血小板糖タンパク質gpIIb/IIIa、心臓ミオシン重鎖、副甲状腺ホルモン、rNAPc2(第VIIa因子/組織因子の阻害剤)、MHC I、がん胎児性抗原(CEA)、アルファフェトプロテイン(AFP)、腫瘍壊死因子(TNF)、CTLA-4(細胞傷害性Tリンパ球関連抗原)、Fc-γ-1受容体、HLA-DR10ベータ、HLA-DR抗原、スクレロスチン、L-セレクチン、呼吸器合胞体ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、ミュータンス連鎖球菌、および黄色ブドウ球菌。本開示の方法を用いて製造可能な公知の抗体の具体例として、アダリムマブ、ベバシズマブ、インフリキシマブ、アブシキシマブ、アレムツズマブ、バピネウズマブ、バシリキシマブ、ベリムマブ、ブリアキヌマブ、カナキヌマブ、セルトリズマブペゴル、セツキシマブ、コナツムマブ、デノスマブ、エクリズマブ、ゲムツズマブオゾガマイシン、ゴリムマブ、イブリツモマブチウキセタン、ラベツズマブ、マパツムマブ、マツズマブ、メポリズマブ、モタビズマブ、ムロモナブ-CD3、ナタリズマブ、ニモツズマブ、オファツムマブ、オマリズマブ、オレゴボマブ、パリビズマブ、パニツムマブ、ペムツモマブ、ペルツズマブ、ラニビズマブ、リツキシマブ、ロベリズマブ、トシリズマブ、トシツモマブ、トラスズマブ、ウステキヌマブ、ベドリゾマブ、ザルツムマブ、およびザノリムマブが挙げられるが、それらに限定されない。
【0031】
いくつかの実施形態において、細胞によって製造されるタンパク質またはワクチンなどの生成物を、医薬調製物の活性成分として使用することができる。生成物の非限定的な例として以下が挙げられる:抗hTNFα(アダリムマブ(Humira(商標))、融合タンパク質標的VEGF(アフリベルセプト(EYLEA(商標))、エリスロポエチンアルファ(Epogen(登録商標))、リンパ芽球様インターフェロンα-n1(Wellferon(商標))、(組換え)凝固因子(NovoSeven(商標))、エタネルセプト(Enbrel(商標))、トラスツズマブ(Herceptin(商標))、インフリキシマブ(Remicade(商標))、バシリキシマブ(Simulect(商標))、ダクリズマブ(Zenapaz(商標))、(組換え)凝固因子IX(Benefix(商標))、グルコセレブロシダーゼ(Cerezyme(商標))、インターフェロンベータ1b(Betaseron(登録商標))、G-CSF(Neupogen(登録商標)Filgrastim)、インターフェロンアルファ-2b(Infergen(登録商標))、組換えインスリン(Humulin(登録商標))、インターフェロンベータ1a(Avonex(登録商標))、第VIII因子(KoGENate
(登録商標))、テネクテプラーゼ(TNKase(商標))、(組換え)抗血友病因子(ReFacto(商標))、TNFアルファ受容体(Enbrel(登録商標))、卵胞刺激ホルモン(Gonal-F(登録商標))、Mabアブシキシマブ(Synagis(登録商標)、ReoPro(登録商標))、Mabリツキシマブ(Rituxan(登録商標))、組織プラスミノゲン活性化因子(Activase(登録商標)、Actilyase(登録商標))、ヒト成長ホルモン(Protropin(登録商標)、Norditropin(登録商標)、GenoTropin(商標))。さらに、「抗体コンストラクト」という用語の定義は、一価、二価および多価のコンストラクトを包含し、したがって、2個の抗原性構造に限り特異的に結合する二重特異性コンストラクト、ならびに3個以上の、例えば3個、4個またはそれ以上の抗原性構造に特徴的な結合性ドメインを介して特異的に結合する多重特異性コンストラクトを包含する。加えて、「抗体コンストラクト」という用語の定義は、1個のポリペプチド鎖だけから成る分子、ならびに同一の鎖(ホモ二量体、ホモ三量体またはホモオリゴマー)または異なる鎖(ヘテロ二量体、ヘテロ三量体またはヘテロオリゴマー)のいずれであってもよい複数のポリペプチド鎖から成る分子を包含する。上記で特定された抗体およびそれらの変形または誘導体の例は、特に、Harlow and Lane, Antibodies a laboratory manual, CSHL Press(1988年)およびUsing Antibodies: a laboratory manual, CSHL Press(1999年), Kontermann and Dubel, Antibody Engineering, Springer, 第2版, 2010年およびLittle, Recombinant Antibodies for Immunotherapy, Cambridge University Press 2009年に記載されている。
【0032】
本明細書に用いられている「ポリペプチド」という用語は、アミド結合(ペプチド結合としても公知である)によって直線的に連結されたモノマー(アミノ酸)から構成された分子を指す。「ポリペプチド」という用語は、2個以上のアミノ酸から成る鎖を指し、特定の長さの生成物を指さない。したがって、2個以上のアミノ酸から成る鎖を指すために使用される、ペプチド、ジペプチド、トリペプチド、オリゴペプチド、「タンパク質」、「アミノ酸鎖」または他の用語は、「ポリペプチド」の定義の範囲に含まれ、「ポリペプチド」という用語はこれらの用語のいずれかの代わりに、またはこれらの用語のどれとでも互換的に使用可能である。「ポリペプチド」という用語は、公知の保護/ブロック基によるグリコシル化、アセチル化、リン酸化、アミド化、誘導体化、タンパク質分解的切断、または非天然アミノ酸による修飾を制限なく含め、ポリペプチドの発現後修飾の生成物を指す目的でも使用される。ポリペプチドは、自然な生物学的起源から導出、または組み換え技術によって製造され得るが、必ずしも、指定された核酸配列から翻訳されるわけではない。ポリペプチドは、化学合成を含め、どのような形で生成されてもよい。本開示のポリペプチドのサイズは、約3個以上、5個以上、10個以上、20個以上、25個以上、50個以上、75個以上、100個以上、200個以上、500個以上、1,000個以上、または2,000個以上のアミノ酸であってもよい。ポリペプチドは、定義された三次元構造を有し得るが、必ずしもそのような構造を有するとは限らない。定義された三次元構造を有するポリペプチドは折り畳み型と呼ばれ、定義された三次元構造を有さず、むしろ多数の異なる配座を導入し得るポリペプチドは非折り畳み型と呼ばれる。
【0033】
「凝集」という用語は一般的に、分子間における、例えばファンデルワールス力または化学結合を介した直接相互誘引を指す。特に、凝集は、タンパク質が蓄積し一体的に集塊した状態、すなわち「凝集体」および「フラグメント」として理解される。凝集体は不定形の凝集体、オリゴマーおよびアミロイド線維を含む場合があり、典型的に高分子量(HMW)種、すなわち、本明細書では低分子量(LMW)種またはモノマーと呼ばれる非凝集分子である純粋な生成物分子より分子量が高い分子と呼ばれる。
【0034】
「マイクロスパージャ」という用語は一般的に、バイオリアクタタンク内の細胞培養物に酸素および/または他の気体を提供するよう構成されたスパージャを指す。曝気装置またはマイクロスパージャは、酸素または他の気体の発生源に連結してもよく、また、細胞培養物中で気体が泡立ち、それによって細胞培養物を曝気するよう、気体を細胞培養物に仕向けてもよい。いくつかの実施例において、マイクロスパージャを穿孔チューブスパージャと組み合わせて使用してもよい。
【0035】
本明細書に記載のとおり調製される生体物質を、例えば高性能液体クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル電気泳動、親和性クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィーなどの当該技術分野において公知の技法によって精製してもよい。特定のタンパク質の精製に用いられる実際の条件は、部分的に、正味荷電、疎水性、親水性などの要因に左右されるが、当業者にとっては明白である。親和性クロマトグラフィー精製の場合、抗体、リガンド、受容体または抗原を、生体物質の結合対象として使用してもよい。例えば、本開示の生体物質(例えば免疫複合体)の親和性クロマトグラフィー精製の場合、マトリックスをタンパク質Aまたはタンパク質Gとともに使用してもよい。例えば実施例に記載のように、例えば免疫複合体などの生体物質を単離させるために連続的なタンパク質AまたはGの親和性クロマトグラフィーおよびサイズ排除クロマトグラフィーを用いてもよい。生体物質(例えば免疫複合体)の純度を、ゲル電気泳動、高圧液体クロマトグラフィーおよび類似の方法を含め、多様な周知の分析方法のいずれかによって判定することができる。
【0036】
II 灌流培養処理
「灌流」培養処理は、細胞培養物が新鮮な培地の添加を受け入れ、使用済み培地がバイオリアクタから除去される処理である。灌流は、連続的、段階的、断続的、またはこれらのいずれかの一部もしくは全部の組合せであってもよい。
【0037】
様々な実施形態において、細胞培養物は、対象となる生体物質を発現する細胞をバイオリアクタにて、例えば、少なくとも0.1×106個/mLの生存細胞、例えば、約0.7~0.8×106個/mLの生存細胞、約0.8~1.0×106個/mLの生存細胞、約1.0~4.0×106個/mLの生存細胞で接種することによって確立される。少なくとも1つの実施形態において、細胞培養物は、対象となる生体物質を発現する細胞をバイオリアクタにて、例えば少なくとも0.1×106個/mLの生存細胞、例えば、約0.1~4.0×106個/mLの生存細胞、0.1~0.5×106個/mLの生存細胞、約0.5~1.0×106個/mLの生存細胞、約1.0~1.5×106個/mLの生存細胞、約1.5~2.0×106個/mLの生存細胞、約2.0~2.5×106個/mLの生存細胞、約2.5~3.0×106個/mLの生存細胞、約3.0~3.5×106個/mLの生存細胞、約3.5~4.0×106個/mLの生存細胞、約0.2~0.4×106個/mLの生存細胞、約0.4~0.6×106個/mLの生存細胞、約0.6~0.8×106個/mLの生存細胞、約0.8~1.0×106個/mLの生存細胞、約1.0~1.2×106個/mLの生存細胞、約1.2~1.4×106個/mLの生存細胞、約1.4~1.6×106個/mLの生存細胞、約1.6~1.8×106個/mLの生存細胞、または約1.8~2.0×106個/mLの生存細胞で接種することによって確立される。
【0038】
細胞培養は、基礎培地および流加培地を供給することによって維持される。培地を供給する前に、細胞を基礎培地中で1日間培養してもよい。例えば、基礎培地の灌流を2日目から開始し、流加培地の灌流を3日目から開始してもよい。あるいは、基礎培地の灌流を1日目から開始してもよい。別の例として、基礎培地の灌流を1日目、2日目、3日目、4日目、5日目、6日目、または7日目に開始し、流加培地の灌流を2日目、3日目、4
日目、5日目、6日目、または7日目に開始してもよい。
【0039】
「灌流速度」という用語は、バイオリアクタから通される(添加および除去される)培地の量であり、典型的に、所定の時間内でのワーキングボリュームの割合または倍数として表される。「ワーキングボリューム」は、細胞培養に使用されるバイオリアクタの容積の量を指す。少なくとも1つの実施形態において、基礎培地の灌流速度は、2.0ワーキングボリューム/日(VVD)以下、例えば約0.1から1.5VVD、約0.3から1.2VVD、または約0.5から1.0VVDであってもよい。
【0040】
培養物への細胞培地添加速度は、細胞の生存率および密度に影響を及ぼし得る。意外にも、基礎培地と流加培地の供給速度を調整し、それらを異なる段階で供給することによって、高い生存細胞密度(VCD)および生存率を達成できることを見いだした。「生存細胞密度」という用語は、所定の体積の培地における、標準的な生存率アッセイ(例えばトリパンブルー色素排除法)によって判定される生細胞の数を指す。
【0041】
様々な実施形態において、基礎培地および流加培地は異なる灌流速度で細胞培地に供給され、ただし、流加培地の灌流速度は基礎培地の灌流速度の約0~20%、例えば流加培地の灌流速度は基礎培地の灌流速度の約0.1~20%、例えば基礎培地の灌流速度の約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、または約20%である。本開示の少なくとも1つの実施形態において、基礎培地の灌流速度は、約2.0VVD以下、例えば約0.1から1.5VVD、約0.3から1.2VVD、または約0.5から1.0VVDである。例えば、基礎培地の灌流を1日目から約0.4VVDの速度で開始してもよく、速度を3日目に約1.5VVDに増大し、培養終了まで約1.5VVDに維持してもよい。流加培地の灌流を4日目から基礎培地の約2.0%の速度で開始し、7日目に基礎培地の約4.0%に増大し、8日目から徐々に低下させ、17日目に約1%になるようにしてもよい。別の実施形態において、基礎培地の灌流を1日目から約0.4VVDの速度で開始してもよく、速度を4日目に約1.5VVDに増大し、培養終了まで約1.5VVDに維持してもよい。流加培地の灌流を5日目から基礎培地の約2.0%の速度で開始し、12日目に基礎培地の約9%に増大し、18日目に約7%に低下させ、19日目から終了まで約6%に維持してもよい。別の実施形態において、基礎培地の灌流を2日目から約0.6VVDの速度で開始してもよく、速度を6日目に約0.88VVDに増大し、培養終了まで約0.88VVDに維持してもよい。流加培地の灌流を2日目から基礎培地の約6.7%の速度で開始し、12日目に基礎培地の約16%に増大し、終了まで約16%に維持してもよい。
【0042】
III 細胞培養制御
本開示の方法に適する細胞培養条件は、細胞の灌流培養向けに典型的に採用される公知の条件、またはそれらの方法の任意の組合せであり、pH、溶解酸素(O2)と二酸化炭素(CO2)、撹拌と曝気、および温度に注意が払われる。
【0043】
組換えタンパク質または生体物質の製造時には、細胞が所望の期間にわたり、または所望の密度まで増殖し、その後、細胞の生理学的状態が増殖制限型に切り替わるまたは抑止され、細胞が細胞密度の増大に有利な形で組換えタンパク質を製造するためにエネルギーと基質を使用する高生産性状態になる、制御型システムを有することが望ましいと考えられる。商業的規模の細胞培養および生物学的治療薬製造の場合、細胞増殖を制限または抑止する能力および製造期に細胞を増殖制限または抑止の状態に維持する能力が非常に望ましい。そのような方法の例として温度変化が挙げられる。
【0044】
増殖を制限または抑止するためのそのようなメカニズムの1つは、細胞培養時に温度を
変化させることである。例えば、増殖期は比較的高い温度で発生してもよく、より低い温度への変化が製造段階の開始および/または維持の契機となってもよい。例えば、増殖期は約35℃から約37℃の第1の温度設定点で発生してもよく、製造期は約28℃から約33℃の第2の温度設定点で発生してもよい。関連する実施形態において、温度変化は、最大VCDなどの所定のパラメータに応答する。少なくとも1つの実施形態において、温度変化は、例えば35~37℃付近から28~33℃付近への温度変化であってもよい。少なくとも1つの実施形態において、増殖期は、約30℃から約38℃の範囲、例えば約31℃から約37℃、約32℃から約36℃、約33℃から約35℃、約33℃から約34℃、約32℃から約35℃、または約31℃から約34℃の範囲の第1の温度設定点で発生してもよい。少なくとも1つの実施形態において、製造期は、約25℃から約35℃の範囲、例えば25℃から約30℃、30℃から約35℃、26℃から約31℃、27℃から約32℃、28℃から約33℃、または29℃から約34℃の第2の温度設定点で発生してもよい。別の実施形態において、温度変化は、最大VCDなどの所定のパラメータに応答する。少なくとも1つの実施形態において、温度変化は、例えば35~37℃付近から28~33℃付近の範囲、例えば34~36℃付近から27~34℃付近、36~38℃付近から29~34℃付近、36~39℃付近から30~35℃付近、または33~35℃付近から26~31℃付近への温度変化であってもよい。
【0045】
温度設定点の切り替えは手動で行ってもよい、またはバイオリアクタ制御システムの活用によって自動で行ってもよい。温度設定点は、所定の時点で切り替える、あるいは細胞密度、滴定濃度、または1種もしくは複数種の培地成分の濃度などの1つまたは複数の細胞培養パラメータに応答する形で切り替えてもよい。
【0046】
本開示の処理における1つの利点は、流出工程が不要ということである。意外にも、基礎培地および流加培地を異なる速度で細胞培養物に供給し、温度変化戦略を採用すること、および細胞流出を除くことによって、初期段階ではバイオマスの量を多くし、後段階では生産性を高めることができることを見いだした。流出工程を除くことによって、細胞は非定常状態に維持され、細胞密度は非常に高いレベルに押し上げられる。高いVCDと生存率を維持するため、本開示の処理では温度変化および基礎培地と流加培地とで異なる供給速度を活用する。
【0047】
本開示の少なくとも1つの実施形態において、細胞を接種する前に、脱泡剤をバイオリアクタに添加する。本開示の少なくとも1つの実施形態において、細胞を接種する前に、約5から20ppm、約8から15ppm、約9から12ppm、または約10ppmの脱泡剤をバイオリアクタに添加する。本開示の少なくとも1つの実施形態において、培養時に、約5から200ppm、約8から150ppm、約9から120ppm、約10から100ppmの脱泡剤を培地に添加する。脱泡剤は、毎日、2日毎、3日毎、4日毎、または1回だけ添加してもよい。
【0048】
本開示に関して、「脱泡剤(anti-foaming agent)」および「脱泡剤(defoamer)」という用語は、互換的に使用可能である。本開示の少なくとも1つの実施形態において、脱泡剤は、培養物における泡の形成を低減および阻害するどのような物質であってもよい。本開示では、接種前の脱泡剤の添加によって、培養時の気泡破裂に起因する細胞損傷が軽減される。本開示の少なくとも1つの実施形態において、本出願の技術的効果を達成し得るどのような脱泡剤を使用してもよい。本開示の少なくとも1つの実施形態において、脱泡剤の例として、油系脱泡剤、粉末脱泡剤、水系脱泡剤、シリコーン系脱泡剤、EO/PO系脱泡剤、またはアルキルポリアクリレートが挙げられるが、それらに限定されない。本開示のさらなる実施形態において、油系脱泡剤中の油は、シリコーン油を除き、発泡性培地に不溶性である鉱物油、植物油、ホワイトオイルまたは他の油であってもよい。本開示のさらなる実施形態において、油系脱泡剤は、性能を引き上げるワックスおよび/また
は疎水性シリカも含有する。典型的なワックスは、エチレンビスステアラミド(EBS)、パラフィンワックス、エステルワックスおよび脂肪アルコールワックスである。本開示の少なくとも1つの実施形態において、粉末脱泡剤は原則として、シリカなどの粒子担体に担持させた油系脱泡剤をである。これらはセメント、石膏および洗剤などの粉末状製品に添加される。本開示の少なくとも1つの実施形態において、水系脱泡剤は、異なる種類の油およびワックスを水ベース中で分散させたものであり、油は多くの場合、鉱物油または植物油であり、ワックスは長鎖脂肪アルコール、脂肪酸石鹸またはエステルである。本開示の少なくとも1つの実施形態において、シリコーン系脱泡剤は、シリコーンバックボーンを有するポリマーであり、シリコーン化合物は、疎水性シリカをシリコーン油中で分散させたものから成り、シリコーングリコールおよび他の変性シリコーン流体を含有してもよい。本開示の少なくとも1つの実施形態において、EO/PO系脱泡剤は、良好な分散特性を有し、また堆積が問題となる場合に十分に適することが多い、ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールコポリマーを含有する。本開示の少なくとも1つの実施形態において、アルキルポリアクリレートは、表面の泡の破壊より排気が重要である非水溶液系における脱泡剤としての使用に適する。
【0049】
本開示の少なくとも1つの実施形態において、マイクロスパージャを、本開示の方法に使用する。本開示のさらなる実施形態において、要求される酸素流速が約0.2VVMに達する場合、マイクロスパージャを使用する。本開示では、マイクロスパージャの実装によって、培養時の気泡破裂に起因する細胞損傷が軽減される。
【0050】
IV 連続採取
様々な実施形態において、細胞は培養物中に保持される一方、対象となる、細胞によって製造される生体物質は細胞培養物から連続的に採取される。これに関して、中空繊維フィルタを有する分離システムを灌流システムに接続する。中空繊維フィルタの孔径または分画分子量は、中空繊維フィルタが対象となる生体物質を保持せず、細胞を保持するように選択される。細胞培養物が、細胞培地、細胞(例えば全細胞および溶解細胞)、可溶性の発現組換えタンパク質、宿主細胞タンパク質、老廃物などを含め、フィルタに導入される際、中空繊維材料は、内腔側の特定の細胞培養成分を保持し、対象となる生体物質がフィルタを通過できるようにし得る。保持された細胞はバイオリアクタに戻される。細胞培養物を中空繊維の内腔側に通すポンピングシステムによって、細胞培養物をバイオリアクタから引き出してフィルタに送り込んでもよい。
【0051】
様々な実施形態において、対象となる生体物質ではなく細胞が保持されるように孔径または分画分子量(MWCO)が選択される限り、どのようなフィルタでも分離システムとして使用してもよい。本開示での使用に適するフィルタの非限定的な例として、膜フィルタ、セラミックフィルタおよび金属フィルタが挙げられる。フィルタはどのような形状で使用してもよく、例えば、フィルタは渦巻き状または管状であってもよく、またはシートの形で使用してもよい。様々な実施形態において、使用するフィルタは膜フィルタである。少なくとも1つの実施形態において、フィルタは中空繊維フィルタである。少なくとも1つの実施形態において、中空繊維フィルタの孔径は、約0.08μmから約0.5μm、約0.1μmから約0.5μm、約0.2μmまたは約0.45μmである。少なくとも1つの実施形態において、中空繊維フィルタの孔径は、約0.08μmから約1.0μm、例えば約0.1μmから約0.8μm、約0.1μmから約0.6μm、約0.1μmから約0.5μm、約0.1μmから約0.4μm、約0.1μmから約0.3μm、約0.2μmから約0.8μm、約0.2μmから約0.8μm、約0.3μmから約0.8μm、約0.4μmから約0.8μm、約0.2μmから約0.6μm、または約0.2μmから約0.5μmである。少なくとも1つの実施形態において、中空繊維フィルタの孔径は、約0.2μmまたは約0.45μmである。中空繊維を含むフィルタモジュールは、例えばRefine Technologyから市販されている。
【0052】
生体物質、細胞および細胞培地を含む細胞培養物を分離システム上で循環させることによって、細胞はリアクタに保持され、対象となる生体物質が採取される。細胞培養物の循環は、灌流処理の開始時、例えば2日目または3日目に開始してもよい。
【0053】
フィルタ上での細胞培養物の循環は、フィルタ表面に対して実質的に直角の流動(終端流としても公知である)またはフィルタ表面に対して実質的に平行な流動(接線流としても公知である)、例えば一方向接線流(TFF)または交差流であってもよい。交差流の好適な一例は交互接線流(ATF)であり、ATFに関しては、たとえ細胞密度が非常に高くてもフィルタの目詰まりが(素早く)発生しないことを見いだした。
【0054】
「交互接線流」とは、フィルタ表面と同じ方向(すなわち接線方向)に、往復する1つの流れが存在すること、および前記フィルタ表面に対して実質的に直角の方向に別の流れが存在することを意味する。交互接線流は、当業者に公知の方法に従って達成可能である(例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれている米国特許第6,544,424号に記載)。
【0055】
少なくとも1つの実施形態において、細胞によって製造された生体物質は、孔径が約0.08μmから0.5μm、約0.1μmから0.5μm、約0.2μmまたは約0.45μmである中空繊維フィルタを有する分離システムによって連続的に採取される。少なくとも1つの実施形態において、細胞によって製造された生体物質は、孔径が約0.08μmから約1.0μm、例えば、約0.1μmから約0.8μm、約0.1μmから約0.6μm、約0.1μmから約0.5μm、約0.1μmから約0.4μm、約0.1μmから約0.3μm、約0.2μmから約0.8μm、約0.2μmから約0.8μm、約0.3μmから約0.8μm、約0.4μmから約0.8μm、約0.2μmから約0.6μm、または約0.2μmから約0.5μmの中空繊維フィルタを有する分離システムによって連続的に採取される。少なくとも1つの実施形態において、中空繊維フィルタの孔径は、約0.2μmまたは約0.45μmである。
【0056】
V 下流精製
本開示の処理において製造される生体物質を、いわゆる下流処理において採取物からさらに獲得することができる。下流処理は通常、組合せや順序が異なる複数の精製工程を包含する。下流処理における精製工程の非限定的な例は、分離工程(例えば、親和性クロマトグラフィーおよび/またはイオン交換クロマトグラフィーおよび/または水性二相系による抽出および/または例えば硫酸アンモニウムによる沈殿)、生体物質を濃縮する工程(例えば限外ろ過または透析ろ過による)、緩衝液を交換する工程および/またはウイルスを除去または不活性化する工程(例えばウイルスろ過、pH変化または溶媒洗浄剤処理による)である。
【0057】
本開示の少なくとも1つの実施形態において、ATF装置からの採取物は、クロマトグラフィー工程による連続的な生成物獲得処理を施される。例えば、疑似移動床(SMB)、周期的向流クロマトグラフィー(PCC)および2カラムクロマトグラフィー(TCC)などの多カラムクロマトグラフィーシステムを、連続的生成物獲得に用いてもよい。本開示のいくつかの実施形態において、ATF装置からの採取物は、獲得する生成物の性質に応じて適切な樹脂(タンパク質A、IEX、HIC、混合モード、IMACなどの異なる官能性リガンドを有する)を充填された、例えば2~16個のカラム、好ましくは3~8個のカラム、より好ましくは3個のカラムを使用するクロマトグラフィー工程による連続的な生成物獲得処理を施される。負荷段階および負荷後洗浄段階では、2個以上(2~15個)のカラムを縦一列に接続する一方、他の段階では、残りのカラムを異なる段階によって異なる緩衝液で処理する。特に、2カラム処理の場合、開始時に1個のカラムを使
用して採取物を収集する一方、2個目のカラムを非負荷段階に使用する。非負荷段階を行う際、第2のカラムを第1のカラムの出口に接続して、負荷段階および負荷後洗浄段階の分画を通じて流れを捕捉する。これらのラインは全て、BioSMB(Pall)、AKTA pcc(GE Healthcare)、BioSC(Novasep)、Contichrom(ChromaCon)などの連続クロマトグラフィーシステム上で並行して処理される。本開示の少なくとも1つの実施形態において、ATF装置からの採取物は、例えば、MabSelect PrismA樹脂を充填された1.1/5cm(内径/床高)の3個のカラムを使用する連続的生成物獲得処理を施される。負荷段階および負荷後洗浄段階では、2個のカラムを縦一列に接続する一方、他の段階では、1個のカラムのみ処理する。これら2つの流路はBioSMB PDシステム上で並行して処理され、3個のカラム間で自動的に切り替わる。連続直接生成物獲得処理は、従来のバッチ処理よりはるかに効率的である。
【実施例0058】
VI 実施例
以上概略説明した本開示は、以下の実施例を参照することによって、より容易に理解される。これらの実施例は、例示を目的として示されるもので、本開示を限定することを意図するものではない。
【0059】
A 細胞株および培養条件
クローンXについて、CHO-K1宿主細胞をATCC(ATCC番号:CCL61)から購入し、バイアルを解凍し、100バイアルのマスターセルバンク(MCB)を生成した後に、136バイアルのワーキングセルバンク(WCB)を生成した。次いで、WCBバイアルを解凍し、無血清培地を有する懸濁培養物に適応させた。懸濁物適応クローンCHO-K1-A4を含む60バイアルのPCB、170バイアルのMCBおよび230バイアルのWCBを生成した。CHO-K1宿主細胞(CHO-K1-A4)の1本のWCBバイアルを、安定なトランスフェクションのために解凍した。
【0060】
米国特許第6,090,382号に開示されているとおり、抗hTNFαを発現するcDNA配列を2つのベクターに分けてクローン化し、これらはそれぞれBlasticidinおよびZeocinの耐性マーカーを含有した。安定なトランスフェクションを、リポソームを使用して実施した。トランスフェクション後、プール選択のために細胞を選択培地(9μg/mLのBlasticidinおよび400μg/mLのZeocinを含有するCD CHO培地)に通した。プール選択の約2週間後、FACS選別によってプールをクローン化した。クローンを、スピンチューブ内の流加培地によってスクリーニングした。1つの高生産クローンを選択し、クローンXと命名した。
【0061】
クローンYについて、CHO-K1宿主細胞をATCC(ATCC番号:CCL61)から購入し、バイアルを解凍し、100バイアルのMCBを生成した後に、136バイアルのWCBを生成した。次いで、WCBバイアルを解凍し、無血清培地を有する懸濁培養物に適応させた。懸濁物適応クローンCHO-K1-A4を含む60バイアルのPCB、170バイアルのMCBおよび230バイアルのWCBを生成した。CHO-K1宿主細胞(CHO-K1-A4)の1本のWCBバイアルを、安定なトランスフェクションのために解凍した。
【0062】
米国特許第7,070,959B1号に開示されているとおり、融合タンパク質標的VEGFを発現するcDNA配列を2つのベクターに分けてクローン化し、これらはそれぞれBlasticidinおよびZeocinの耐性マーカーを含有した。安定なトランスフェクションを、リポソームを使用して実施した。トランスフェクション後、ミニプール選択のため、細胞を96ウェルプレートに収めて選択培地(9μg/mLのBlast
icidinおよび400μg/mLのZeocinを含有するCD CHO培地)に入れた。ミニプール選択の約2週間後、高生産ミニプールを拡張および混合した。混合したミニプールを2回にわたりClonePixによってクローン化し、クローンを、スピンチューブ内の流加培地によってスクリーニングした。1つの高生産クローンを選択し、クローンYと命名した。
【0063】
クローンZについて、CHO-K1宿主細胞をATCC(ATCC番号:CCL61)から購入し、バイアルを解凍し、100バイアルのMCBを生成した後に、136バイアルのWCBを生成した。次いで、WCBバイアルを解凍し、無血清培地を有する懸濁培養物に適応させた。懸濁物適応クローンCHO-K1-A4を含む60バイアルのPCB、170バイアルのMCBおよび230バイアルのWCBを生成した。CHO-K1宿主細胞(CHO-K1-A4)の1本のWCBバイアルを、安定なトランスフェクションのために解凍した。
【0064】
国際公開2019/057124A1に開示されているとおり、二重特異性抗CD3xCD19抗体を発現するcDNA配列を2つのベクターに分けてクローン化し、これらはそれぞれBlasticidinおよびZeocinの耐性マーカーを含有した。安定なトランスフェクションを、リポソームを使用して実施した。トランスフェクション後、ミニプール選択のため、細胞を96ウェルプレートに収めて選択培地(9μg/mLのBlasticidinおよび400μg/mLのZeocinを含有するCD CHO培地)に入れた。ミニプール選択の約2週間後、高生産ミニプールを個別に拡張した。ミニプールを1回のFACSによってクローン化し、クローンを、スピンチューブ内の流加培養によってスクリーニングした。1つの高生産クローンを選択し、クローンZと命名した。
【0065】
B 実施例1
この実施例では、クローンXを使用して、強化灌流培養処理(B)の性能を、従来の流加処理(A)および集中流加処理(C)の性能と直接比較した。
【0066】
従来の流加処理A:
処理Aを、振とうフラスコ内で実行した。従来の流加処理Aを、容積250mLの容器における初期ワーキングボリュームを50mLで実行した。細胞を、4.0mMのLグルタミンを補ったCDM4培地(Hyclone)に0.40×106個/mLにて接種し、その後、14日間培養した。培養中、3.00%の基礎培地CB7aおよび0.30%の流加培地CB7bを別々に、3日目、6日目、8日目および10日目に供給した。5日目に温度を36.5℃から31.0℃に変化させた。培養処理全体にわたり400g/kgのグルコース貯蔵液を供給することによって、グルコース濃度を4.0g/L超に維持した。
【0067】
強化灌流培養処理B:
処理Bを、3LのApplikon容器内で、デルタV制御装置を使用して温度を36.5℃、pHを約7.2から6.8の範囲、およびDOを40%の空気飽和度に制御しながら実施した。ATF-2Hシステム(Refine Technology)と併せてATFフローモードで操作する0.2μmの分画の中空繊維ろ過(Spectrum labs)を使用して、細胞を保持した。
【0068】
培養を、4.0mMのLグルタミンを補ったCDM4培地(Hyclone)中で0.80~1.00×106個/mLの条件で開始した。3日目から毎日、約10~100ppmの脱泡剤を添加した。基礎培地(CDM4、Hyclone)の灌流を1日目から0.4VVDの速度で開始し、速度を3日目に1.5VVDに増大した。流加培地(CB7a/CB7b)の灌流を4日目に基礎培地の2.0%の速度で開始し、7日目に速度を基
礎培地の4.0%に増大した。8日目から、細胞の密度と生存率が低下したため、流加培地の灌流速度を徐々に減少させ、17日目に1%まで減少させた。
【0069】
3日目から培養終了まで、CDM4培地の灌流速度を1.5VVDに維持した。マイクロスパージャを使用して、酸素を流速0.5VVMで送達した。5日目に温度を36.5℃から31.0℃に変化させ、培養終了まで31.0℃に維持した。細胞培養物をATF経由で連続的に採取した。培養処理全体にわたり、細胞を流出させずにバイオリアクタに保持した。
【0070】
集中流加処理C:
処理Cを、デルタV制御装置を使用して温度を36.5℃、pHを約7.2から6.8の範囲、およびDOを40%の空気飽和度に制御しながら実施した。集中流加処理の操作は処理Bと整合的であったが、例外として、分画中空繊維ろ過(Spectrum labs)の孔は、細胞と生体生成物の両方を培養液中に保持するよう50KDであった。
【0071】
処理の比較:
図2は、より高い最大生存細胞密度が処理BおよびCで達成され、従来の流加処理Aと比較すると3倍近くであったことを示す。
【0072】
図3は、細胞の生存率を、処理BおよびCでより長く維持できることを示し、処理Bおよび処理Cは19日間にわたり稼働状態を維持した。
【0073】
図4は、処理Bからの累積Pvが、処理Aおよび処理Cと比較すると最も高いことを示す。処理Bからの累積Pvは、従来の流加処理Aおよび集中流加処理Cそれぞれの最終濃度と比べ、約9.41倍および1.29倍である。ここでの集中流加処理Cにおける最終濃度は、充填細胞量によって調整される。
【0074】
図5は、処理Bおよび集中流加処理Cにおいて、従来の流加処理Aと比べ、よりスムーズなグルコース濃度制御が達成されることを示す。
【0075】
図6は、処理Bおよび処理Cでは乳酸の生成または蓄積に明白な問題が観察されない一方、処理Aの乳酸濃度が10日目から上昇傾向を示したことを示す。
【0076】
図7は、処理Bでは処理Aおよび処理Cと比べ、酸性ピークの減少に伴うcIEFの主ピークの増大が達成されることを示す。
【0077】
図8は、処理Bおよび他の2つの処理AとCによって生じる凝集体およびフラグメントの比較を示す。処理BからのSECの主ピークは集中流加処理Cと同等で、いずれも従来の流加処理Aより高い。処理BからのSDS_キャリパ_NRの純度は、処理Aおよび処理Cと比較しても明白な差がない。
【0078】
処理Bからの採取物を9日目から21日目にかけて収集し、3つの袋に分けてそれぞれ9日目から13日目まで、13日目から17日目まで、および17日目から21日目まで保存した。各採取プールについて、小型カラム上でのバッチモード評価向けに約100mLの試料を取得し、残りをBioSMBシステムによって連続モードで処理した。従来のバッチ処理および連続処理の収率および生産性を比較した一方、生成物の品質属性、SEC純度およびHCP含有量も評価した。
【0079】
従来のバッチ直接生成物獲得処理:
バッチモードクロマトグラフィーを、AKTAピュアシステム上で、0.5/5.6c
m(内径/床高)のカラムにMabSelect PrismA樹脂を充填した状態で実施した。表1は、クロマトグラフィーの各工程の処理パラメータを示す。
【0080】
負荷容量は65g/Lの樹脂、負荷滞留時間は5分間であった。クロマトグラフィー工程は室温(18℃から26℃)で行った。負荷体積をクロマトグラフィーシステムの体積合計装置によって判定した一方、溶出プール体積は収集試料の正味重量によって判定した。溶出プール中の生成物量を負荷プール中の生成物量で割った値に基づいて、収率を計算した。溶出プールの濃度を波長280nmのUV吸光度によって判定した一方、負荷プールの濃度をタンパク質AのHPLCによって判定した。処理後の生成物量を処理時間および樹脂体積で割った値に基づいて、生産性を計算した。
【0081】
溶出プールをpH5.5に中和し、次いで溶出後に0.2μmのPESシリンジフィルタでろ過した。中和後のプールのSEC純度およびHCP含有量を、それぞれSEC HPLCおよび市販のCHO細胞用ELISAキットによって判定した。
【0082】
連続直接生成物獲得処理:
連続モードクロマトグラフィーを、BioSMB PDシステム上で、3個の1.1/5cm(内径/床高)のカラムにMabSelect PrismA樹脂を充填した状態で実施した。表3は、クロマトグラフィーの各工程の詳細な処理パラメータを示す。負荷段階および負荷後洗浄段階では、2個のカラムを縦一列に接続した一方、他の段階では、1個のカラムのみ処理した。これら2つの流路をBioSMB PDシステム上で並行処理し、3個のカラム間で自動的に切り替えた。
【0083】
連続処理の負荷容量および滞留時間を、異なる滞留時間および負荷濃度での漏出曲線に基づいて計算し、結果は表4に記載のように、材料の滴定濃度の違いによって異なった。指定のない他の操作条件は、上述のバッチ処理と同様であった。
【0084】
バッチ処理および連続処理それぞれの収率、生産性、SEC純度およびHCP含有量を、表2および表4に示すように要約した。培養時間にまたがって一貫した収率および生成物品質属性データは、強化灌流培養処理Bからの出発物質の変化は下流処理に及ぼす影響が軽微であり、連続生成物獲得処理はバッチ処理と同等であることを明らかにするものである。77%高い生産性は、連続直接生成物獲得処理が従来のバッチ処理と比べ、獲得工程の生産性を著しく改善し得ることを意味する。強化灌流培養処理Bは安定性があると捉えられ、連続直接生成物獲得処理は、従来のバッチ処理よりはるかに効率的である。
【0085】
【0086】
【0087】
【0088】
【0089】
C 実施例2
この実施例では、クローンXを使用し、強化灌流培養処理(B)の性能を評価した。
強化灌流培養処理
実験IPC-1からIPC-8を、デルタV制御装置を使用して温度を約36.5℃、pHを約7.2から6.8の範囲、およびDOを約40%の空気飽和度に制御しながら実施した。ATF-2Hシステム(Refine Technology)と併せてATFフローモードで操作する全ての処理について(分画中空繊維ろ過の孔が0.45μmであった処理5を除く)、0.2μmの分画の中空繊維ろ過(Spectrum labs)を使用して、細胞を保持した。
【0090】
実験IPC-1、IPC-2およびIPC-3を、7LのApplikon容器内で実施し、実験IPC-4、IPC-5、IPC-6、IPC-7およびIPC-8を、3LのApplikon容器内で実施した。
【0091】
実験IPC-1からIPC-8における培養を、4.0mMのLグルタミンを補ったCDM4培地(Hyclone)に約0.90~1.10×106個/mLで開始し、0日目から毎日、約10~100ppmの脱泡剤を添加した。
【0092】
実験IPC-1、IPC-4およびIPC-5では、基礎培地(CDM4、Hyclone)の灌流を2日目に0.4VVDの速度で開始し、速度を4日目に1.0VVDに増大した。実験IPC-2およびIPC-3では、基礎培地(CDM4、Hyclone)の灌流を1日目に0.4VVDの速度で開始し、速度を2日目に1.0VVDに増大した。実験IPC-6では、基礎培地(CDM4、Hyclone)の灌流を2日目から0.4VVDの速度で開始し、速度を4日目に1.5VVDに増大した。実験IPC-7およびIPC-8では、基礎培地(CDM4、Hyclone)の灌流を1日目から0.4VVDの速度で開始し、速度を3日目に1.5VVDに増大した。実験IPC-1からIPC-5では、CDM4培地の灌流速度を5日目から培養終了まで1.0VVDに維持した。実験IPC-6からIPC-8では、CDM4培地の灌流速度を5日目から培養終了まで1.5VVDに維持した。
【0093】
実験IPC-1、IPC-2、IPC-3、IPC-4、IPC-5、IPC-6およびIPC-8では、6日目に温度を約36.5℃から約31.0℃に変化させ、培養終了まで約31.0℃に維持した。実験IPC-7では、6日目に温度を約36.5℃から約33.0℃に変化させ、培養終了まで約33.0℃に維持した。
【0094】
実験IPC-1からIPC-8では、流加培地(CB7a/CB7b)の灌流を3日目から開始し、灌流速度を毎日、前日のグルコース活用状況に応じて調整して、最も低い供給速度でもグルコース濃度が2.0g/Lを超える状態を維持した。マイクロスパージャを使用して、酸素を流速0.5VVMで送達した。細胞培養物をATF経由で連続的に採取した。培養処理全体にわたり、細胞を流出させずにバイオリアクタに保持した。
【0095】
図9は、全ての処理が高い最大生存細胞密度(30×10
6個/mL超)を達成し、また5~6日間にわたり高いレベルを維持可能であることを示す(ただし6日目以後に温度を33.0℃に維持した処理7を除く)。
【0096】
図10は、全ての処理における細胞生存率を、20日間近くに及ぶ培養全体にわたり50%超に維持可能であることを示す(ただしエンドポイント生存率が40%である処理7を除く)。
【0097】
図11は、全ての処理からの累積体積生産性(Pv)が12g/Lを超え、最高が23g/Lであることを示す。
【0098】
図12は、ほとんどの処理のグルコース濃度が培養期間全体にわたり2g/L超に制御されていることを示す。
【0099】
図13は、指数増殖期における典型的な乳酸生成期間とそれに続く乳酸消費が全ての処理において観察されることを示す。
【0100】
D 実施例3
この実施例では、クローンYを使用して、強化灌流培養処理(B)の性能を、従来の流加処理(A)および灌流処理(C)の性能と直接比較した。
【0101】
従来の流加処理A:
処理Aを、振とうフラスコ内で、容積250mLの容器における初期ワーキングボリュームを50mLとして実行した。細胞を、6mMのLグルタミンを補ったExcell Advanced CHO培地(Sigma)に0.40×106個/mLにて接種し、その後、14日間培養した。培養中、3.00%の基礎培地CB7aおよび0.30%の流加培地CB7bを別々に、3日目、6日目、8日目および10日目に供給した。5日目に温度を36.5℃から33.0℃に変化させた。400g/kgのグルコース貯蔵液を供給することによって、グルコース濃度を2.0g/L超に維持した。
【0102】
強化灌流培養処理B
処理Bを、デルタV制御装置を使用して温度を約36.5℃、pHを約7.2から6.8の範囲、およびDOを約40%の空気飽和度に制御しながら実施した。処理Bを、3LのApplikon容器内で実施し、ATF-2Hシステム(Refine Technology)と併せてATFフローモードで操作する0.2μmの分画の中空繊維ろ過(Spectrum labs)を使用して、細胞を保持した。培養を、6.0mMのLグルタミンを補ったExcell Advanced CHO培地(Sigma)中で0.70~0.80×106個/mLの条件で開始した。5日目から培養処理終了まで毎日、約10から100ppmの脱泡剤を添加した。基礎培地(Excell Advanced CHO培地、Sigma)の灌流を1日目から0.4VVDの速度で開始し、速度を4日目に1.5VVDに増大した。流加培地(CB7a/CB7b)の灌流を5日目に基礎培地の2.0%の速度で開始し、12日目に速度を基礎培地の9.0%に増大した。18日目に、流加培地の灌流速度を基礎培地の7%に減少させ、19日目から培養終了まで基礎培地の6%に維持した。4日目から培養終了まで、基礎培地の灌流速度を1.5VVDに維持した。マイクロスパージャを使用して、酸素を流速0.5VVMで送達した。5日目に温度を約36.5℃から約33.0℃に変化させ、培養終了まで33.0℃に維持した。細胞培養物をATF経由で連続的に採取した。培養処理全体にわたり、細胞を流出させずにバイオリアクタに保持した。
【0103】
灌流細胞培養処理C:
灌流処理Cを、デルタV制御装置を使用して温度を34.5℃、pHを約7.1から6.7の範囲、およびDOを40%の空気飽和度に制御しながら探究した。処理Cを、7LのApplikon容器内で実施し、ATF-2Hシステム(Refine Technology)と併せてATFフローモードで操作する0.2μmの分画の中空繊維ろ過(Spectrum labs)を使用して、細胞を保持した。培養を、6.0mMのLグルタミンおよび追加の2.5g/Lのグルコースを補ったExcell Advanced CHO培地(Sigma)中で約0.50~0.60×106個/mLの条件で開始した。4日目から毎日、約10~100ppmの脱泡剤を添加した。基礎培地(Exce
ll Advanced CHO培地、Sigma)の灌流を2日目から0.5VVDの速度で開始し、速度を5日目に1.5VVDに増大した。流加培地(CB7a/CB7b)の灌流を37日目に基礎培地の2.0%の速度で開始し、この速度を培養終了まで維持した。5日目から培養終了まで、基礎培地の灌流速度を1.5VVDに維持した。マイクロスパージャを使用して、酸素を流速0.5VVMで送達した。培養処理全体にわたり、温度を34.5℃に設定した。細胞培養物をATF経由で連続的に採取した。培養処理全体にわたり、余分な細胞を除去する流出によって、VCDの目標を50.00×106個/mLとした。
【0104】
図14は、より高い最大生存細胞密度が処理Bで達成され、従来の流加処理Aと比較すると7倍近くであったことを示す。処理Bは灌流処理Cと比べ、同じ培養期間中により多くのバイオマスを得ることができる。
【0105】
図15は、期間が14日間である従来の流加処理Aと比べ、処理Bはより長い21日間にわたり、より高い生存率を維持可能であることを示す。
【0106】
図16は、処理Bからの累積Pvが、処理Aおよび処理Cそれぞれの最終濃度と比べ、約18.49倍および1.39倍高いことを示す。1日当たりのワーキングボリューム単位当たりの生産性によって定義される容量を考察すると、処理B(2.48g/L/日)は灌流処理C(0.83g/L/日)より3倍近く高い。
【0107】
図17は、グルコース制御戦略が異なる別々の処理において、グルコースプロファイルも異なることを示す。
【0108】
図18は、指数増殖期における典型的な乳酸生成期間とそれに続く乳酸消費が、処理Bでは処理AおよびCと比べ、培養の後段階で乳酸濃度が上昇する状態で観察されることを示す。
【0109】
E 実施例4
この実施例では、クローンZを使用して、強化灌流培養処理(B)の性能を、従来の流加処理(A)の性能と直接比較した。
【0110】
従来の流加処理A:
従来の流加処理を3Lのスケールで開発し、15Lにスケールアップした。従来の流加処理Aを、3LのApplikon容器における初期ワーキングボリュームを2.0Lとして実行した。細胞を、4mMのLグルタミン、1%(v/v)のヒポキサンチンモノナトリウムおよび1%(v/v)のチミジンを補ったActipro培地(Hyclone)に0.60×106個/mLにて接種し、その後、14日間培養した。培養中、3.00%、5.00%、5.00%および5.00%の流加培地CB7aを0.30%、0.50%、0.50%および0.50%の流加培地CB7bと組み合わせたものを、別々に3日目、5日目、7日目および10日目に供給した。5日目に温度を36.5℃から31.0℃に変化させた。400g/kgのグルコース貯蔵液を供給することによって、グルコース濃度を1g/L超に維持した。
【0111】
強化灌流培養処理B:
処理Bを3Lのスケールで開発し、15Lおよび250Lにスケールアップした。3Lのスケールの処理について、1.5Lのワーキングボリュームを3LのApplikon容器で培養した。15Lのスケールの処理について、10Lのワーキングボリュームを15LのApplikon容器で培養した。250Lのスケールについて、150LのワーキングボリュームをSUB 250Lの使い捨てバイオリアクタで培養した。ATFシス
テム(Refine Technology)と併せてATFフローモードで操作する0.2μmの中空繊維ろ過(Spectrumlabs/Refine Technology)を使用して、細胞を保持した。処理Bを、デルタV制御装置を使用して温度を約36.5℃、pHを約7.2から6.8の範囲、およびDOを約40%の空気飽和度に制御しながら実施した。
【0112】
3Lのスケールの実験について、培養を、4mMのLグルタミン、1%(v/v)のヒポキサンチンモノナトリウムおよび1%(v/v)のチミジンを補ったActipro培地(Hyclone)に1.10~1.30×106個/mLの条件で開始した。2日目から毎日、約10~100ppmの脱泡剤を添加した。基礎培地(Actipro、Hyclone)の灌流を2日目から0.6VVDの速度で開始し、速度を6日目に0.88VVDに増大した。流加培地CB7aの灌流を2日目に基礎培地の6.7%の速度で開始し、基礎培地の15.9%に増大した。流加培地CB7bの灌流を2日目に開始し、0.005VVDの速度を培養終了まで維持した。6日目から培養終了まで、基礎培地の灌流速度を0.88VVDに維持した。マイクロスパージャを使用して、酸素を流速0.33VVMで送達した。5日目に温度を36.5℃から31.0℃に変化させ、培養終了まで31.0℃に維持した。細胞培養物をATF経由で連続的に採取した。培養処理全体にわたり、細胞を流出させずにバイオリアクタに保持した。
【0113】
250Lのスケールの実験について、培養を、4mMのLグルタミン、1%(v/v)のヒポキサンチンモノナトリウムおよび1%(v/v)のチミジンを補ったActipro培地(Hyclone)に0.80~1.40×106個/mLの条件で開始した。2日目から毎日、約10~100ppmの脱泡剤を添加した。基礎培地(Actipro、Hyclone)の灌流を2日目から0.6VVDの速度で開始し、速度を6日目に0.88VVDに増大した。流加培地CB7aの灌流を2日目に基礎培地の6.7%の速度で開始し、基礎培地の15.9%に増大した。流加培地CB7bの灌流を2日目に開始し、0.005VVDの速度を培養終了まで維持した。6日目から培養終了まで、基礎培地の灌流速度を0.88VVDに維持した。マイクロスパージャを使用して、4日目から酸素を送達した。5日目に温度を36.5℃から31.0℃に変化させ、培養終了まで31.0℃に維持した。細胞培養物をATF経由で連続的に採取した。培養処理全体にわたり、細胞を流出させずにバイオリアクタに保持した。
【0114】
同じ処理を15Lのバイオリアクタおよび250Lのバイオリアクタにそれぞれスケールアップした。15Lのバイオリアクタでの培養について、2つのATF-2Hシステム(Refine Technology)と併せてATFフローモードで操作する0.2μmの分画の中空繊維ろ過(Spectrumlabs)を使用して、細胞を保持した。250Lのバイオリアクタでの培養について、2つのATF-6システム(Refine
Technology)と併せてATFフローモードで操作する0.2μmの分画の中空繊維ろ過(Spectrumlabs)を使用して、細胞を保持した。
【0115】
図19は、より長い指数増殖期および2倍近く高い最大生存細胞密度が、処理Bにおいて、同じ3Lのスケールの従来の流加処理Aと比較すると実証されることを示す。
【0116】
図20は、処理Bは同じ3Lのスケールにおいて、14日目より前に処理Aと同等の細胞生存率を持続可能であることを示す。
【0117】
図21は、処理Bからの累積Pvが、同じ3Lのスケールの従来の流加処理Aにおける最終濃度と比べ、約6.56倍高いことを示す。
【0118】
図22は、同じ3Lのスケールにおいて、処理Aおよび処理Bについてグルコース濃度
制御が同等であることを示す。
【0119】
図23は、指数増殖期における典型的な乳酸生成期間とそれに続く乳酸消費が、同じ3Lのスケールの処理AとBの両方で観察されることを示す。
【0120】
図24は、より長い指数増殖期および2倍近く高い最大生存細胞密度が、処理Bにおいて、従来の流加処理Aと比較すると実証されることを示す。処理Bの生存細胞密度の結果は、15Lおよび250Lのスケールにスケールアップしても3Lのスケールと同等であった。
【0121】
図25は、処理Bが処理Aと同等の細胞生存率を持続可能であることを示す。処理Bの生存率の結果は、15Lおよび250Lのスケールにスケールアップしても3Lのスケールと同等であった。
【0122】
図26は、処理Bの細胞平均直径が従来の流加処理の場合より大きかったことを示す。
図27は、グルコース制御戦略の違いを背景に、異なる処理間でグルコースプロファイルも異なることを示す。
【0123】
図28は、指数増殖期における典型的な乳酸生成期間とそれに続く乳酸消費が、処理Aと処理Bの両方で観察されることを示す。
【0124】
図29は、処理Bのアンモニウム濃度が従来の流加処理の場合より高かったことを示す。
【0125】
図30と31は、処理Aと処理Bの両方でpHが適切に制御され、処理をスケールアップするとpHが若干低くなったことを示す。
【0126】
図32は、処理BのpCO
2プロファイルは同じスケールの処理Aと同等であったことを示す。pCO
2レベルは処理をスケールアップすると増大する。
【0127】
図33は、処理Bのオスモル濃度は処理Aより若干高かったが、400mOsm/kgの条件下で適切に制御されたことを示す。
【0128】
図34は、処理Bからの累積Pvが、従来の流加処理Aにおける最終濃度と比べ、約4.5倍高いことを示す。処理Bの累積Pvは、スケールが異なっても全て、20g/L超に達した。
【0129】
図35は、15Lのスケールおよび250Lのスケールで処理Bによって生じる凝集体およびフラグメントの比較を示す。処理BのSECの主ピークは、両方のスケールで同等である。
【0130】
図36は、処理Bでは処理Aおよび処理Cと比べ、酸性ピークの減少に伴うcIEFの主ピークの増大が達成されることを示す。
【0131】
次に、強化灌流培養処理Bからの材料の直接生成物獲得処理について、連続処理を評価した。処理Bからの採取物を7日目から18日目にかけて収集し、4つの袋に分けてそれぞれ7日目から10日目まで、10日目から13日目まで、13日目から16日目まで、および16日目から18日目まで保存した。連続処理の収率および生産性を計算した一方、生成物の品質属性、SEC純度およびHCP含有量も評価した。
【0132】
連続直接生成物獲得処理:
連続モードクロマトグラフィーを、3個の1.1/5.0cm(内径/床高)カラムを使用するBioSMB PDシステムおよび3個の10.0/5.2cm(内径/床高)カラムを使用するBioSMB Processシステム上で、それぞれ15Lのスケールと250Lのスケールで実施した。両方のカラムにMabSelect PrismA樹脂を充填した。負荷段階および負荷後洗浄段階では、2個のカラムを縦一列に接続した一方、他の段階では、1個のカラムのみ処理した。これら2つの流路をBioSMBシステム上で並行処理し、3個のカラム間で自動的に切り替えた。
【0133】
連続処理の負荷容量および滞留時間を、異なる滞留時間および負荷濃度での漏出曲線に基づいて計算した。クロマトグラフィー工程は室温(18℃~26℃)で行った。溶出プール中の生成物量を負荷プール中の生成物量で割った値に基づいて、収率を計算した。溶出プールの濃度を波長280nmのUV吸光度によって判定した一方、負荷プールの濃度をタンパク質AのHPLCによって判定した。負荷体積をクロマトグラフィーシステムの体積合計装置によって判定した一方、溶出プール体積は収集試料の正味重量によって判定した。処理後の生成物量を処理時間および樹脂体積で割った値に基づいて、生産性を計算した。
【0134】
溶出プールをpH5.5に中和し、次いで溶出後に0.2μmのPESシリンジフィルタでろ過した。中和後のプールのSEC純度およびHCP含有量を、それぞれSEC HPLCおよび市販のCHO細胞用ELISAキットによって判定した。これら2回の処理における収率および生成物品質属性(SEC純度、cIEF純度およびHCP含有量を含む)を表6に要約した。培養時間およびスケールにまたがって一貫した収率および生成物品質属性データは、強化灌流培養処理Bが頑健であることを明らかにするものである。
【0135】
【0136】
前記生体物質が、受容体、酵素、融合タンパク質、血液タンパク質、多機能タンパク質、ウイルスまたは細菌タンパク質および免疫グロブリンから選択される、請求項1から16のいずれか1項に記載の方法。