(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023109837
(43)【公開日】2023-08-08
(54)【発明の名称】幹細胞培養および療法のための誘導培地および方法
(51)【国際特許分類】
A61K 35/28 20150101AFI20230801BHJP
C12N 5/0775 20100101ALI20230801BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20230801BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20230801BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20230801BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20230801BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20230801BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20230801BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20230801BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20230801BHJP
【FI】
A61K35/28
C12N5/0775 ZNA
A61P29/00
A61P37/06
A61P29/00 101
A61P19/02
A61P1/04
A61P27/02
A61P11/00
A61P25/00
C12N15/12
【審査請求】有
【請求項の数】28
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023077664
(22)【出願日】2023-05-10
(62)【分割の表示】P 2021068586の分割
【原出願日】2015-09-24
(31)【優先権主張番号】14/504,399
(32)【優先日】2014-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】503235673
【氏名又は名称】サンバイオ,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ベタンコート,アリーン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】炎症性または自己免疫性疾患の処置のための間葉系幹細胞を含む医薬組成物を製造する方法を提供する。
【解決手段】医薬組成物を製造する方法は、(a)以下の成分:(i)Toll様受容体3(TLR3)リガンド、(ii)エリスロポエチン、および(iii)低酸素模倣物、を含む培地において、間葉系幹細胞を培養すること;(b)前記細胞を前記培地から取り出すこと;及び(c)(b)の細胞と医薬担体とを組み合わせること、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無刺激の間葉系幹細胞の集団から免疫学的に極性化された間葉系幹細胞の集団を作り出すための誘導培地であって、該誘導培地は、
a.Toll様受容体3(TLR3)リガンド、
b.エリスロポエチン、および
c.0.5-2%の酸素または低酸素模倣物を含み、
ここで、免疫学的に極性化された間葉系幹細胞の集団は、抗炎症性または免疫抑制性のメディエーターの発現によって特徴づけられた抗炎症性の特徴を有する、誘導培地。
【請求項2】
Toll様受容体3(TLR3)リガンドがポリ(I:C)である、請求項1に記載の誘導培地。
【請求項3】
Toll様受容体3(TLR3)リガンドがポリ(A:U)である、請求項1に記載の誘導培地。
【請求項4】
エリスロポエチンが、10ng/mL未満の濃度で存在する、請求項1に記載の誘導培地。
【請求項5】
低酸素模倣物が塩化コバルトである、請求項1に記載の誘導培地。
【請求項6】
塩化コバルトが、5μMと500μMの間の濃度で存在する、請求項5に記載の誘導培地。
【請求項7】
インターロイキン4(IL-4)をさらに含む、請求項1に記載の誘導培地。
【請求項8】
インターロイキン13(IL-13)をさらに含む、請求項1に記載の誘導培地。
【請求項9】
ヒトまたは動物由来の血清を含まない、請求項1に記載の誘導培地。
【請求項10】
濃縮溶液である、請求項1に記載の誘導培地。
【請求項11】
請求項1の誘導培地で処置された間葉系幹細胞の集団。
【請求項12】
請求項1の誘導培地で処置されたヒト間葉系幹細胞の集団。
【請求項13】
請求項1の誘導培地で処置されたイヌ、ネコ、またはウマの間葉系幹細胞の集団。
【請求項14】
請求項1の誘導培地で処置された間葉系幹細胞の集団であって、間葉系幹細胞が多能性
幹細胞に由来する、間葉系幹細胞の集団。
【請求項15】
請求項1の誘導培地で処置された間葉系幹細胞の集団であって、間葉系幹細胞が、無刺激の間葉系幹細胞の集団と比較して、CXCL9 mRNAの発現の増加によって特徴づけられる、間葉系幹細胞の集団。
【請求項16】
請求項1の誘導培地で処置された間葉系幹細胞の集団であって、間葉系幹細胞が、無刺激の間葉系幹細胞の集団と比較して、OAS1 mRNAの発現の増加によって特徴づけられる、間葉系幹細胞の集団。
【請求項17】
請求項1の誘導培地で処置された間葉系幹細胞の集団であって、間葉系幹細胞が、無刺激の間葉系幹細胞の集団と比較して、ISG15 mRNAの発現の増加によって特徴づけられる、間葉系幹細胞の集団。
【請求項18】
請求項1の誘導培地で処置された間葉系幹細胞の集団を含む疾患の処置のための組成物であって、該疾患は、炎症性または自己免疫性の疾患である、組成物。
【請求項19】
炎症性または自己免疫性の疾患が、関節リウマチである、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
炎症性または自己免疫性の疾患が、炎症性腸疾患である、請求項18に記載の組成物。
【請求項21】
炎症性または自己免疫性の疾患が、急性視神経炎である、請求項18に記載の組成物。
【請求項22】
炎症性または自己免疫性の疾患が、クラッベ病である、請求項18に記載の組成物。
【請求項23】
炎症性または自己免疫性の疾患が、糖尿病性網膜症である、請求項18に記載の組成物。
【請求項24】
炎症性または自己免疫性の疾患が、クローン病である、請求項18に記載の組成物。
【請求項25】
炎症性または自己免疫性の疾患が、急性肺障害である、請求項18に記載の組成物。
【請求項26】
無刺激の間葉系幹細胞の集団から免疫学的に極性化された間葉系幹細胞の集団を作り出すための誘導培地であって、該誘導培地は、
a.Toll様受容体4(TLR4)リガンド、
b.エリスロポエチン、および
c.0.5-2%の酸素または低酸素模倣物を含み、
ここで、免疫学的に極性化された間葉系幹細胞の集団が、炎症誘発性メディエーターの発現によって特徴づけられる炎症誘発性の特徴を有する、誘導培地。
【請求項27】
Toll様受容体4(TLR4)リガンドが、リポ多糖(LPS)である、請求項26に記載の誘導培地。
【請求項28】
Toll様受容体4(TLR4)リガンドが、アミノアルキルグルコサミニド4-リン酸塩である、請求項26に記載の誘導培地。
【請求項29】
エリスロポエチンが、10ng/mL未満の濃度で存在する、請求項26に記載の誘導培地。
【請求項30】
低酸素模倣物が塩化コバルトである、請求項26に記載の誘導培地。
【請求項31】
塩化コバルトが、5μMと500μMの間の濃度で存在する、請求項30に記載の誘導培地。
【請求項32】
インターフェロンをさらに含む、請求項26に記載の誘導培地。
【請求項33】
腫瘍壊死因子アルファ(TNFα)をさらに含む、請求項26に記載の誘導培地。
【請求項34】
ヒトまたは動物由来の血清を含まない、請求項26に記載の誘導培地。
【請求項35】
濃縮溶液である、請求項26に記載の誘導培地。
【請求項36】
請求項26の誘導培地で処置された間葉系幹細胞の集団。
【請求項37】
請求項26の誘導培地で処置されたヒト間葉系幹細胞の集団。
【請求項38】
請求項26の誘導培地で処置されたイヌ、ネコ、またはウマの間葉系幹細胞の集団。
【請求項39】
請求項26の誘導培地で処置された間葉系幹細胞の集団であって、間葉系幹細胞が、多能性幹細胞に由来する、間葉系幹細胞の集団。
【請求項40】
請求項26の誘導培地で処置された間葉系幹細胞の集団であって、間葉系幹細胞が、無刺激の間葉系幹細胞の集団と比較して、TNFSF10(TRAIL)mRNAの発現の増加によって特徴づけられる、間葉系幹細胞の集団。
【請求項41】
請求項26の誘導培地で処置された間葉系幹細胞の集団を含む疾患の処置のための組成物であって、該疾患は癌である、組成物。
【請求項42】
請求項26の誘導培地で処置された間葉系幹細胞の集団を含む疾患の処置のための組成物であって、該疾患は卵巣癌である、組成物。
【請求項43】
請求項26の誘導培地で処置された間葉系幹細胞の集団を含む疾患の処置のための組成物であって、該疾患はブドウ膜黒色腫である、組成物。
【請求項44】
請求項26の誘導培地で処置された間葉系幹細胞の集団を含む疾患の処置のための組成物であって、該疾患はウイルス性疾患である、組成物。
【請求項45】
請求項26の誘導培地で処置された間葉系幹細胞の集団を含む疾患の処置のための組成物であって、該疾患は細菌感染である、組成物。
【請求項46】
無刺激の間葉系幹細胞の集団から免疫学的に極性化された間葉系幹細胞の集団を作り出すための誘導培地であって、該誘導培地は、
a.0.1μg/mLと100μg/mLの間の濃度でのポリ(I:C)、
b.10ng/mL未満の濃度でのエリスロポエチン、および
c.5μMと500μMの間の濃度での塩化コバルトを含み、
ここで、免疫学的に極性化された間葉系幹細胞の集団が、抗炎症性の特徴を有し、無刺激の間葉系幹細胞の集団と比較して、CXCL9、OAS1およびISG15 mRNAの発現の増加によって特徴づけられる、誘導培地。
【請求項47】
無刺激の間葉系幹細胞の集団から免疫学的に極性化された間葉系幹細胞の集団を作り出すための誘導培地であって、該誘導培地は、
a.0.1ng/mLと1μg/mLの間の濃度でのLPS、
b.10ng/mL未満の濃度でのエリスロポエチン、および
c.5μMと500μMの間の濃度での塩化コバルトを含み、
ここで、免疫学的に極性化された間葉系幹細胞の集団が、炎症誘発性の特徴を有し、無刺激の間葉系幹細胞の集団と比較して、TNFSF10(TRAIL)の発現の増加によって特徴づけられる、誘導培地。
【請求項48】
無刺激の間葉系幹細胞の集団から免疫学的に極性化された間葉系幹細胞の集団を作り出す方法であって、該方法は、
無刺激の間葉系幹細胞の集団を、Toll様受容体3(TLR3)リガンド、エリスロポエチン、および低酸素または低酸素模倣物を含む、組成物と接触させる工程を含み、ここで、免疫学的に極性化された間葉系幹細胞の集団が、抗炎症性または免疫抑制性のメディエーターの発現によって特徴づけられた抗炎症性の特徴を有する、方法。
【請求項49】
Toll様受容体3(TLR3)リガンドがポリ(I:C)である、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
Toll様受容体3(TLR3)リガンドがポリ(A:U)である、請求項48に記載の方法。
【請求項51】
エリスロポエチンが、10ng/mL未満の濃度で存在する、請求項48に記載の方法。
【請求項52】
低酸素模倣物が塩化コバルトである、請求項48に記載の方法。
【請求項53】
塩化コバルトが、5μMと500μMの間の濃度で存在する、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
組成物がさらに、インターロイキン4(IL-4)を含む、請求項48に記載の方法。
【請求項55】
組成物がさらに、インターロイキン13(IL-13)を含む、請求項48に記載の方法。
【請求項56】
組成物が、ヒトまたは動物由来の血清を含まない、請求項48に記載の方法。
【請求項57】
組成物が濃縮溶液である、請求項48に記載の方法。
【請求項58】
無刺激の間葉系幹細胞の集団が、Toll様受容体3(TLR3)リガンド、エリスロポエチン、および低酸素または低酸素模倣物と同時に接触される、請求項48に記載の方法。
【請求項59】
組成物が、8時間未満ではあるが、少なくとも30分間、無刺激の間葉系幹細胞の集団と接触している、請求項48に記載の方法。
【請求項60】
RNAまたはタンパク質いずれかのレベルでCXCL9の発現をモニタリングする工程をさらに含む、請求項48に記載の方法。
【請求項61】
RNAまたはタンパク質いずれかのレベルでOAS1の発現をモニタリングする工程をさらに含む、請求項48に記載の方法。
【請求項62】
RNAまたはタンパク質いずれかのレベルでISG15の発現をモニタリングする工程をさらに含む、請求項48に記載の方法。
【請求項63】
請求項48の方法によって処置された間葉系幹細胞の集団。
【請求項64】
請求項48の方法によって処置されたヒト間葉系幹細胞の集団。
【請求項65】
請求項48の方法によって処置されたイヌ、ネコ、またはウマの間葉系幹細胞の集団。
【請求項66】
請求項48の方法によって処置された間葉系幹細胞の集団であって、間葉系幹細胞が、多能性幹細胞に由来する、間葉系幹細胞の集団。
【請求項67】
請求項48の方法によって処置された間葉系幹細胞の集団であって、間葉系幹細胞が、無刺激の間葉系幹細胞の集団と比較して、CXCL9 mRNAの発現の増加によって特徴づけられる、間葉系幹細胞の集団。
【請求項68】
請求項48の方法によって処置された間葉系幹細胞の集団であって、間葉系幹細胞が、無刺激の間葉系幹細胞の集団と比較して、OAS1 mRNAの発現の増加によって特徴づけられる、間葉系幹細胞の集団。
【請求項69】
請求項48の方法によって処置された間葉系幹細胞の集団であって、間葉系幹細胞が、無刺激の間葉系幹細胞の集団と比較して、ISG15 mRNAの発現の増加によって特徴づけられる、間葉系幹細胞の集団。
【請求項70】
請求項48の方法によって処置された間葉系幹細胞の集団を含む疾患の処置のための方法であって、該疾患が、炎症性または自己免疫性の疾患である、方法。
【請求項71】
炎症性または自己免疫性の疾患が、関節リウマチである、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
炎症性または自己免疫性の疾患が、炎症性腸疾患である、請求項70に記載の方法。
【請求項73】
炎症性または自己免疫性の疾患が、関節リウマチである、請求項70に記載の方法。
【請求項74】
炎症性または自己免疫性の疾患が、急性視神経炎である、請求項70に記載の方法。
【請求項75】
炎症性または自己免疫性の疾患が、クラッベ病である、請求項70に記載の方法。
【請求項76】
炎症性または自己免疫性の疾患が、糖尿病性網膜症である、請求項70に記載の方法。
【請求項77】
炎症性または自己免疫性の疾患が、クローン病である、請求項70に記載の方法。
【請求項78】
炎症性または自己免疫性の疾患が、急性肺障害である、請求項70に記載の方法。
【請求項79】
無刺激の間葉系幹細胞の集団から免疫学的に極性化された間葉系幹細胞の集団を作り出す方法であって、該方法は、無刺激の間葉系幹細胞の集団を、Toll様受容体4(TLR4)リガンド、エリスロポエチン、および酸素または低酸素模倣物を含む、組成物と接触させる工程を含み、ここで、免疫学的に極性化された間葉系幹細胞の集団が、炎症誘発性メディエーターの発現によって特徴づけられた炎症誘発性の特徴を有する、方法。
【請求項80】
Toll様受容体4(TLR4)リガンドが、リポ多糖(LPS)である、請求項79に記載の方法。
【請求項81】
Toll様受容体4(TLR4)リガンドが、アミノアルキルグルコサミニド4-リン酸塩である、請求項79に記載の方法。
【請求項82】
エリスロポエチンが、10ng/mL未満の濃度で存在する、請求項79に記載の方法。
【請求項83】
低酸素模倣物が塩化コバルトである、請求項79に記載の方法。
【請求項84】
塩化コバルトが、5μMと500μMの間の濃度で存在する、請求項83に記載の方法。
【請求項85】
組成物がさらに、インターフェロンを含む、請求項79に記載の方法。
【請求項86】
組成物がさらに、腫瘍壊死因子アルファ(TNFα)を含む、請求項79に記載の方法。
【請求項87】
組成物が、ヒトまたは動物由来の血清を含まない、請求項79に記載の方法。
【請求項88】
組成物が濃縮溶液である、請求項79に記載の方法。
【請求項89】
無刺激の間葉系幹細胞の集団が、Toll様受容体4(TLR4)リガンド、エリスロポエチン、および低酸素または低酸素模倣物と同時に接触される、請求項79に記載の方法。
【請求項90】
組成物が、8時間未満ではあるが、少なくとも30分間、無刺激の間葉系幹細胞の集団と接触している、請求項79に記載の方法。
【請求項91】
RNAまたはタンパク質いずれかのレベルでTNFSF10(TRAIL)の発現をモニタリングする工程をさらに含む、請求項79に記載の方法。
【請求項92】
請求項79の方法によって処置された間葉系幹細胞の集団。
【請求項93】
請求項79の方法によって処置されたヒト間葉系幹細胞の集団。
【請求項94】
請求項79の方法によって処置されたイヌ、ネコ、またはウマの間葉系幹細胞の集団。
【請求項95】
請求項79の方法によって処置された間葉系幹細胞の集団であって、間葉系幹細胞が、多能性幹細胞に由来する、間葉系幹細胞の集団。
【請求項96】
請求項79の方法によって処置された間葉系幹細胞の集団であって、間葉系幹細胞が、無刺激の間葉系幹細胞の集団と比較して、TNFSF10(TRAIL)mRNAの発現の増加によって特徴づけられる、間葉系幹細胞の集団。
【請求項97】
請求項79の方法によって処置された間葉系幹細胞の集団を含む疾患の処置のための方法であって、該疾患が癌である、方法。
【請求項98】
請求項97の方法によって処置された間葉系幹細胞の集団を含む疾患の処置のための方法であって、癌が卵巣癌である、方法。
【請求項99】
請求項97の方法によって処置された間葉系幹細胞の集団を含む疾患の処置のための方法であって、癌がブドウ膜黒色腫である、方法。
【請求項100】
請求項79の方法によって処置された間葉系幹細胞の集団を含む疾患の処置のための方法であって、該疾患がウイルス性疾患である、方法。
【請求項101】
請求項79の方法によって処置された間葉系幹細胞の集団を含む疾患の処置のための方法であって、該疾患が細菌感染である、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<連邦政府資金による研究の記載>
本発明は、NIH 1R43AR061902-01および1P20RR20152-01;またDepartment of Defense OC073102およびOC110218の下で、アメリカ政府の支援とともになされた。アメリカ政府は、本発明において特定の権利を有している。
【発明の概要】
【0002】
本発明は、新規の幹細胞培養および療法の方法、および分離した均一な細胞表現型を誘導する、活性化する、またはプライミングして、炎症および免疫を選択的に促進または抑制するための培養培地組成物を提供し、これは、細胞療法で使用される既知の培養培地および方法よりも有意な利点をもたらしている。本発明は、細胞療法に使用することができる、より均一且つ予測可能な、エスクビボで増殖且つ誘導された、プライミングされた、または活性化された間葉系幹細胞(MSC)の集団を提供するために使用され得る。当該技術分野において、細胞療法に必要とされる均一且つ効果的な多数の幹細胞を提供するための方法の改善が長年必要とされている。本発明の様々な実施形態の利点は、それらが、間葉系幹細胞の培養物を、患者への導入後に予測可能な方法で挙動する、均一且つ分離した表現型へと誘導する、活性化する、またはプライミングするために使用され得るということである。
【0003】
特定の実施形態において、本明細書には、無刺激の間葉系幹細胞の集団から免疫学的に極性化された間葉系幹細胞の集団を作り出すための誘導培地が開示され、該誘導培地は、Toll様受容体3(TLR3)リガンド、エリスロポエチン,および0.5-2%の酸素または低酸素模倣物を含み、ここで、免疫学的に極性化された間葉系幹細胞の集団は、抗炎症性または免疫抑制性のメディエーターの発現によって特徴づけられた(marked)抗炎症性の特徴を有する。特定の実施形態では、Toll様受容体3(TLR3)リガンドは、ポリ(I:C)である。特定の実施形態では、Toll様受容体3(TLR3
)リガンドは、ポリ(A:U)である。特定の実施形態では、エリスロポエチンは、10ng/mL未満の濃度で存在する。特定の実施形態では、低酸素模倣物は塩化コバルトである。特定の実施形態では、塩化コバルトは、5μMと500μMの間の濃度で存在する。特定の実施形態では、誘導培地はさらに、インターロイキン4(IL-4)を含む。特定の実施形態では、誘導培地はさらに、インターロイキン13(IL-13)を含む。特定の実施形態では、誘導培地は、ヒトまたは動物由来の血清を含まない。特定の実施形態では、誘導培地は濃縮溶液である。特定の実施形態において、本明細書には、誘導培地で
処置された間葉系幹細胞の集団が開示される。特定の実施形態において、本明細書には、誘導培地で処置されたヒト間葉系幹細胞の集団が開示される。特定の実施形態において、本明細書には、誘導培地で処置されたイヌ、ネコ、またはウマの間葉系幹細胞の集団が開示される。特定の実施形態において、本明細書には、誘導培地で処置された間葉系幹細胞の集団が開示される。特定の実施形態において、本明細書には、誘導培地で処置された間葉系幹細胞の集団が開示され、ここで、細胞は、無刺激の間葉系幹細胞の集団と比較して、CXCL9 mRNAの発現の増加によって特徴づけられる。特定の実施形態において
、本明細書には、誘導培地で処置された間葉系幹細胞の集団が開示され、ここで、細胞は、無刺激の間葉系幹細胞の集団と比較して、OAS1 mRNAの発現の増加によって特徴づけられる。特定の実施形態において、本明細書には、誘導培地で処置された間葉系幹細胞の集団が開示され、ここで、細胞は、無刺激の間葉系幹細胞の集団と比較して、ISG15 mRNAの発現の増加によって特徴づけられる。特定の実施形態において、本明細書には、誘導培地で処置された間葉系幹細胞の集団を含む疾患の処置のための組成物が開示され、ここで、該疾患は炎症性または自己免疫性の疾患である。特定の実施形態では
、炎症性または自己免疫性の疾患は関節リウマチである。特定の実施形態では、炎症性または自己免疫性の疾患は炎症性腸疾患である。特定の実施形態では、炎症性または自己免疫性の疾患は急性視神経炎である。特定の実施形態では、炎症性または自己免疫性の疾患はクラッベ病である。特定の実施形態では、炎症性または自己免疫性の疾患は糖尿病性網膜症である。特定の実施形態では、炎症性または自己免疫性の疾患はクローン病である。特定の実施形態では、炎症性または自己免疫性の疾患は急性肺障害である。
【0004】
特定の実施形態において、本明細書には、無刺激の間葉系幹細胞の集団から免疫学的に極性化された間葉系幹細胞の集団を作り出すための誘導培地が開示され、該誘導培地は、Toll様受容体4(TLR4)リガンド、エリスロポエチン、および0.5-2%の酸素または低酸素模倣物を含み、ここで、免疫学的に極性化された間葉系幹細胞の集団は、炎症誘発性メディエーターの発現によって特徴づけられた炎症誘発性の特徴を有する。特定の実施形態では、Toll様受容体4(TLR4)リガンドは、リポ多糖(LPS)である。特定の実施形態では、Toll様受容体4(TLR4)リガンドは、アミノアルキ
ルグルコサミニド4-リン酸塩である。特定の実施形態では、エリスロポエチンは、10ng/mL未満の濃度で存在する。特定の実施形態では、低酸素模倣物は塩化コバルトである。特定の実施形態では、塩化コバルトは、5μMと500μMの間濃度で存在する。特定の実施形態では、誘導培地はさらに、インターフェロンを含む。特定の実施形態では、誘導培地はさらに、腫瘍壊死因子アルファ(TNFα)を含む。特定の実施形態では、誘導培地は、ヒトまたは動物由来の血清を含まない。特定の実施形態では、誘導培地は濃縮溶液である。特定の実施形態において、本明細書には、誘導培地で処置された間葉系幹細胞の集団が開示される。特定の実施形態において、本明細書には、誘導培地で処置されたヒト間葉系幹細胞の集団が開示される。特定の実施形態において、本明細書には、誘導培地で処置されたイヌ、ネコ、またはウマの間葉系幹細胞の集団が開示される。特定の実施形態において、本明細書には、誘導培地で処置された間葉系幹細胞の集団が開示され、ここで、間葉系幹細胞は多能性幹細胞に由来した。特定の実施形態において、本明細書には、誘導培地で処置された間葉系幹細胞の集団が開示され、ここで、細胞は、無刺激の間葉系幹細胞の集団と比較して、TNFSF10(TRAIL)mRNAの発現の増加によって特徴づけられる。特定の実施形態において、本明細書には、誘導培地で処置された間葉系幹細胞の集団を含む疾患の処置のための組成物が開示され、ここで、該疾患は癌である。幾つかの実施形態では、癌は卵巣癌である。特定の実施形態では、癌はブドウ膜黒色腫である。特定の実施形態において、本明細書には、誘導培地で処置された間葉系幹細胞の集団を含む疾患の処置のための組成物が開示され、ここで、該疾患はウイルス性疾患である。特定の実施形態において、本明細書には、誘導培地で処置された間葉系幹細胞の集団を含む疾患の処置のための組成物が開示され、ここで、該疾患は細菌感染である。
【0005】
特定の実施形態において、本明細書には、無刺激の間葉系幹細胞の集団から免疫学的に極性化された間葉系幹細胞の集団を作り出すための誘導培地が開示され、該誘導培地は、0.1μg/mLと100μg/mLの間の濃度でのポリ(I:C)、10ng/mL未満の濃度でのエリスロポエチン、および5μMと500μMの間の濃度での塩化コバルトを含み、ここで、免疫学的に極性化された間葉系幹細胞の集団は、抗炎症性の特徴を有し、無刺激の間葉系幹細胞の集団と比較して、CXCL9、OAS1およびISG15 mRNAの発現の増加によって特徴づけられる。
【0006】
特定の実施形態において、本明細書には、無刺激の間葉系幹細胞の集団から免疫学的に極性化された間葉系幹細胞の集団を作り出すための誘導培地が開示され、該誘導培地は、0.1ng/mLと1μg/mLの間の濃度でのLPS、10ng/mL未満の濃度でのエリスロポエチン、および5μMと500μMの間の濃度での塩化コバルトを含み、ここで、免疫学的に極性化された間葉系幹細胞の集団は、炎症誘発性の特徴を有し、無刺激の間葉系幹細胞の集団と比較して、TNFSF10(TRAIL)の発現の増加によって特徴づけられる。
【0007】
特定の実施形態において、本明細書には、無刺激の間葉系幹細胞の集団から免疫学的に極性化された間葉系幹細胞の集団を作り出すための方法が開示され、該方法は、無刺激の間葉系幹細胞の集団を、Toll様受容体3(TLR3)リガンド、エリスロポエチン、および低酸素または低酸素模倣物を含む、組成物と接触させる工程を含み、ここで、免疫学的に極性化された間葉系幹細胞の集団は、抗炎症性または免疫抑制性のメディエーターの発現によって特徴づけられた抗炎症性の特徴を有する。特定の実施形態では、TLR3リガンドはポリ(I:C)である。特定の実施形態では、TLR3リガンドはポ
リ(A:U)である。特定の実施形態では、エリスロポエチンは、10ng/mL未満の濃度で存在する。特定の実施形態では、低酸素模倣物は塩化コバルトである。特定の実施形態では、塩化コバルトは、5μMと500μMの間の濃度で存在する。特定の実施形態では、組成物はさらに、インターロイキン4(IL-4)を含む。特定の実施形態では、組成物はさらに、インターロイキン13(IL-13)を含む。特定の実施形態では、組成物は、ヒトまたは動物由来の血清を含まない。特定の実施形態では、組成物は濃縮溶液である。特定の実施形態では、無刺激の間葉系幹細胞の集団は、Toll様受容体3リガンド、エリスロポエチン、および低酸素または低酸素模倣物と同時に接触される。特定の実施形態では、組成物は、8時間未満ではあるが、少なくとも30分間、無刺激の間葉系幹細胞の集団と接触している。特定の実施形態では、該方法はさらに、RNAまたはタンパク質いずれかのレベルでCXCL9の発現をモニタリングする工程を含む。特定の実施形態では、該方法はさらに、RNAまたはタンパク質いずれかのレベルでOAS1の発現をモニタリングする工程を含む。特定の実施形態では、該方法はさらに、RNAまたはタンパク質いずれかのレベルでISG15の発現をモニタリングする工程を含む。特定の実
施形態において、本明細書には、該方法によって処置された間葉系幹細胞の集団が提供される。特定の実施形態において、本明細書には、該方法によって処置されたヒト間葉系幹細胞の集団が提供される。特定の実施形態において、本明細書には、該方法によって処置されたイヌ、ネコ、またはウマの間葉系幹細胞の集団が提供される。特定の実施形態において、本明細書には、該方法によって処置された間葉系幹細胞の集団が提供され、ここで、間葉系幹細胞は多能性幹細胞に由来した。特定の実施形態において、本明細書には、該方法によって処置された間葉系幹細胞の集団が提供され、ここで、細胞は、無刺激の間葉
系幹細胞の集団と比較して、CXCL9 mRNAの発現の増加によって特徴づけられる。特定の実施形態において、本明細書には、該方法によって処置された間葉系幹細胞の集団が提供され、ここで、細胞は、無刺激の間葉系幹細胞の集団と比較して、OAS1 mRNAの発現の増加によって特徴づけられる。特定の実施形態において、本明細書には、該方法によって処置された間葉系幹細胞の集団が提供され、ここで、細胞は、無刺激の間葉系幹細胞の集団と比較して、ISG15 mRNAの発現の増加によって特徴づけられる。特定の実施形態において、本明細書には、該方法によって処置された間葉系幹細胞の集団を含む疾患の処置のための組成物が提供され、ここで、該疾患は炎症性または自己免疫性の疾患である。特定の実施形態では、炎症性または自己免疫性の疾患は、関節リウマチである。特定の実施形態では、炎症性または自己免疫性の疾患は、炎症性腸疾患である。特定の実施形態では、炎症性または自己免疫性の疾患は、急性視神経炎である。特定の実施形態では、炎症性または自己免疫性の疾患は、クラッベ病である。特定の実施形態では、炎症性または自己免疫性の疾患は、糖尿病性網膜症である。特定の実施形態では、炎症性または自己免疫性の疾患は、クローン病である。特定の実施形態では、炎症性または自己免疫性の疾患は、急性肺障害である。
【0008】
特定の実施形態において、本明細書には、無刺激の間葉系幹細胞の集団から免疫学的に極性化された間葉系幹細胞の集団を作り出すための方法が開示され、該方法は、無刺激の間葉系幹細胞の集団を、Toll様受容体4(TLR4)リガンド、エリスロポエチン、および低酸素または低酸素模倣物を含む、組成物と接触させる工程を含み、ここで、免疫学的に極性化された間葉系幹細胞の集団は、炎症誘発性または免疫抑制性のメディエーターの発現によって特徴づけられた炎症誘発性の特徴を有する。特定の実施形態では、TLR4リガンドは、リポ多糖(LPS)である。特定の実施形態では、TLR4リガンドは、アミノアルキルグルコサミニド4-リン酸塩である。特定の実施形態では、エリスロポエチンは、1ng/mLの濃度で存在する。特定の実施形態では、低酸素模倣物は塩化コバルトである。特定の実施形態では、塩化コバルトは、5μMと500μMの間の濃度で存在する。特定の実施形態では、組成物はさらに、インターフェロンを含む。特定の実施形態では、組成物はさらに、腫瘍壊死因子アルファ(TNFα)を含む。特定の実施形態では、組成物は、ヒトまたは動物由来の血清を含まない。特定の実施形態では、組成物は濃縮溶液である。特定の実施形態では、無刺激の間葉系幹細胞の集団は、Toll様受容体4リガンド、エリスロポエチン、および低酸素または低酸素模倣物と同時に接触される。特定の実施形態では、組成物は、8時間未満ではあるが、少なくとも30分間、無刺激の間葉系幹細胞の集団と接触している。特定の実施形態では、該方法はさらに、RNAまたはタンパク質いずれかのレベルでTNFSF10(TRAIL)の発現をモニタリングする工程を含む。特定の実施形態において、本明細書には、該方法によって処置された間葉系幹細胞の集団が提供される。特定の実施形態において、本明細書には、該方法によって処置されたヒト間葉系幹細胞の集団が提供される。特定の実施形態において、本明細書には、該方法によって処置されたイヌ、ネコ、またはウマの間葉系幹細胞の集団が提供される。特定の実施形態において、本明細書には、該方法によって処置された間葉系幹細胞の集団が提供され、ここで、間葉系幹細胞は多能性幹細胞に由来した。特定の実施形態において、本明細書には、該方法によって処置された間葉系幹細胞の集団が提供され、ここで、細胞は、無刺激の間葉系幹細胞の集団と比較して、TNFSF10(TRAIL)mRNAの発現の増加によって特徴づけられる。特定の実施形態において、本明細書には、該方法によって処置された間葉系幹細胞の集団を含む疾患の処置のための組成物が提供され、ここで、該疾患は癌である。幾つかの実施形態では、癌は卵巣癌である。特定の実施形態では、癌はブドウ膜黒色腫である。特定の実施形態において、本明細書には、該方法によって処置された間葉系幹細胞の集団を含む疾患の処置のための組成物が提供され、ここで、該疾患はウイルス性疾患である。特定の実施形態において、本明細書には、該方法によって処置された間葉系幹細胞の集団を含む疾患の処置のための組成物が提供され、ここで、該疾患は細菌感染である。
【0009】
<本発明の有用性>
様々な成体の組織に由来する、均一なMSCの集団(幹細胞、間葉系幹細胞、骨髄間質細胞、多能性間質細胞、多能性幹細胞)を誘導する、活性化する、またはプライミングするための改善された治療方法および改善された細胞培養方法および培地が必要とされている。MSCの臨床応用は、適切な質および一貫した治療効果を有する十分な数の細胞を提供する、再現可能な細胞培養方法および細胞増殖方法を必要とする。異なる培養培地および方法は、成功の程度が様々である。MSC培養培地および方法に対する更なる改善がまだ必要であり、これによって、安全および一貫して再現可能な治療効果を有する細胞療法で使用される、プライミングされた、活性化された、または誘導された細胞の収量の増加が確かなものとなる。
【0010】
誘導されていない従来のMSCと比較した、誘導された、活性化された、またはプライミングされたMSCの治療効果の効力が、疾患の前臨床モデルにおいて実証されてきた。抗炎症性誘発の(Anti-inflammatory induced)MSC治療は、従来のMSC治療と比べて有意に改善された方法で、痛みを伴う糖尿病性末梢神経障害、関節リウマチ、炎症性腸疾患、および急性肺障害のモデルにおいて痛み及び炎症を緩和した。さらに、抗炎症性誘発のMSC治療は、多発性硬化症(EAE)およびクラッベ病の前臨床モデルにおいて臨床スコア、歩行運動、および運動機能を改善した。ネズミの免疫適格性の卵巣癌モデルにおいて、免疫促進性の抗腫瘍性誘発のMSC細胞ベースの免疫療法は、腫瘍の増殖および拡大の緩和につながり、一方で従来のMSC治療は、腫瘍の増殖および拡大を促進させた。
【0011】
<本発明の科学的根拠>
特異的なToll様受容体(TLR)の刺激は、MSCの免疫調節応答に影響する。Toll様受容体は「危険」信号を認識し、それらの活性化は、先天性および適応性の宿主免疫細胞を動員する、深在性の(profound)細胞および全身性の応答をもたらす。TLRを引き起こす危険信号は、ほとんどの組織病変に続いて放出される。危険信号が免疫細胞を損傷の部位に動員するため、本発明者は、MSCが同様の方法で動員されるかもしれないと論じた。本発明者は、MSCが幾つかのTLR(例えば、当該技術分野で既知のTLR3およびTLR4)を発現すること、およびそれらの免疫調節因子の遊走、侵入、および分泌が、特異的なTLRアゴニスト結合(engagement)によって大幅に影響されることを観察した。特に、本発明者は、低レベルの短期のTLR-プライミングプロトコルによって、TLR4と比較したときのTLR3の刺激に続くMSCに対する多様な結果を観察した。これらの発見に基づいて、本発明者は、単球の文献から手掛かりを得たMSCに対する新しいパラダイムを提案した。具体的には、MSCは、MSC1およびMSC2として分類された2つの均質に作用する表現型への下流のTLRシグナル伝達によって、極性化され得る(誘導される、活性化される、またはプライミンングされ
る)。TLR4プライミンングされたMSC、すなわちMSC1は、大抵の場合、免疫促進性の炎症メディエーターを発現し、一方で、TLR3プライミンングされたMSC、すなわちMSC2は、大抵の場合、抗炎症性または免疫抑制性のメディエーターを発現する。さらに、本発明者は、末梢血単核細胞(PBMC)とのTLRプライミンングされたMSCの同種異系間(非自己)の共培養が、予想通り、MSC2共培養後のTリンパ球活性
化の抑制およびMSC1との共培養におけるTリンパ球活性化の許容をもたらすことを実証した。TLR4活性化による免疫促進性のMSC1表現型またはTLR3活性化による抗炎症性MSC2表現型へのMSCの誘導は、均一且つ定義された細胞を確かなものとし、細胞療法の応用における使用のための定義された且つ予測可能な細胞を提供することによって、産業上の障害が解決される。
【0012】
EPOとしても知られるエリスロポエチンは、赤血球生成、すなわち赤血球の産生を制御する糖タンパク質ホルモンである。それは、骨髄中の赤血球(erythropoiesis)(赤血球(red blood cell))前駆体のためのサイトカインまたは細胞シグナル伝達分子である。ヒトEPOは、34kDaの分子量を有し、ヘマトポイエチンまたはヘモポイエチンとも呼ばれる。EPOは、尿細管周囲毛細血管および尿細管上皮の小管と密接に関連している腎臓における間質線維芽細胞および肝臓中の類洞周囲細胞によって生成される。肝臓生成は、発達における初期(胎児期および出生期)に優位を占めているが、腎臓は、成人における優位なEPO生成部位である。赤血球生成に加えて、エリスロポエチンはまた、他の既知の生物学的機能を有している。例えば、それは、生存促進性の抗アポトーシス(プログラム細胞死)シグナルを提供することによって、ニューロン損傷に対する脳の反応に重要な役割を果たす。EPOはまた創傷治癒プロセスに関係する。細胞培養中の組み換えDNA技術によって、合成エリスロポエチンも生成される。さらに、幾つかの異なる薬学的なEPO様の薬剤が、様々なグリコシル化パターンで入手可能であり、赤血球生成促進剤(ESA)と総称されている。EPOは、本発明において、早熟な細胞死を防ぐための、および細胞療法で使用される、産出された、プライミング、活性化、または誘導された細胞の生存を延長するための手段として使用される。
【0013】
一貫した酸素供給は、生存、増殖、分化、および遊走を含む、細胞生物学のすべての主要な態様に影響を与える重要な因子である。典型的には、哺乳動物細胞(幹細胞ではない)は、強いエネルギー生産を維持する、および正常な細胞機能および細胞生存を保持するために、一貫した酸素の供給を必要とする。対照的に、哺乳動物幹細胞は、骨髄の(0.5%から7%の範囲の酸素分圧を有する)低酸素環境において繁殖且つ存続するように見える。幾つかの研究は、低酸素環境が、骨髄中で幹細胞の増殖および自己再生能力を維持するために必要とされることを示した。特に、低下された酸素分圧の効果は、MSCの短期培養の後のものであっても、細胞療法でそれらの生着能力を改善する一般法と記載されてきた。低酸素環境は、本発明において、細胞療法の中で使用される、産出された、プライミング、活性化、または誘導された細胞の自己再生および増殖の潜在能力を維持するための手段として使用される。
【0014】
<定義および好ましい値>
明確な理解のために、用語が定義され、好ましい値が、本明細書で、および必要に応じてテキストの全体にわたって明示される。
【0015】
用語「癌」は、身体の一部における細胞の無制御な分裂によって引き起こされた疾患を意味する。癌は、限定されないが、白血病、リンパ腫、黒色腫、癌腫、肉腫、腺腫、あるいは遺伝、環境、確率的な機構によって引き起こされた他の悪性の腫瘍または新生物を含む。
【0016】
用語「幹細胞」は、複数の異なるタイプの細胞を生じさせることができる細胞を意味する。用語「間葉系幹細胞」または「MSC」は、間葉に元来由来する幹細胞を意味する。該用語は、骨芽細胞、軟骨細胞、脂肪細胞、または筋細胞の少なくとも2つ以上に分化することができる細胞を指す。MSCは、あらゆるタイプの成体組織から分離され得る。典型的に、MSCは、骨髄、脂肪組織、臍帯、または末梢血から分離される。本発明の好ましい態様では、MSCは、骨髄または吸引脂肪組織から得られ、これら自体は脂肪組織から得られる。
【0017】
用語「分化多能性」および代替的な用語「多能性」は、異なる組織系列の複数のタイプの細胞を生じさせることができる細胞を意味する。用語「分化多能性」または「多能性」はまた、誘導分化多能性幹細胞または誘導多能性幹細胞、あるいは任意の化学的または遺伝的な手段を使用して多能性段階に誘導された細胞を包含する。特定の実施形態では、本開示の分化多能性または多能性幹細胞は、間葉系幹細胞である。
【0018】
本開示の細胞は、ヒト、霊長類、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、およびブタを含む、あらゆる哺乳類種のあらゆる細胞に由来する。細胞は、初代細胞または不死化細胞株である。
【0019】
用語「細胞療法(cellular therapy)」または「細胞療法(cell-based therapy)」は、限定されないが、損傷した組織または臓器の交換
または修復、免疫反応の調節、および炎症症状および癌の低減などの、疾患または障害に関連する1つ以上の症状を予防する、処置する、または改善するためのヒトまたは動物の細胞の移植を意味する。
【0020】
用語「被験体」は、動物、好ましくは非霊長類(例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ネコ、イヌ、ラット、またはマウス)または霊長類(例えば、サル、またはヒト)を含む、哺乳動物を指す。好ましい実施形態では、被験体はヒトである。
【0021】
患者また被験体に関して直接使用されるときの用語は「処置する」、「処置」、および「処置する工程」は、限定されないが、あらゆる癌、あらゆる腫瘍または新生物、炎症性障害、自己免疫性疾患または移植器官および組織の拒絶を含む免疫介在性疾患を含む、障害に関連する1つ以上の症状の改善を意味し、ここで、改善は、本発明によって産出された免疫調節細胞、または本発明によって産出された免疫調節細胞を含む医薬組成物の、そのような処置を必要とする被験体への投与に起因する。
【0022】
用語「無刺激の」は、本開示の方法によって処置されていない、極性化されていない、または誘導されていない細胞集団に言及している。新鮮である又は冷凍された主要な分離された間葉系幹細胞は、無刺激であると考えられる。Toll様受容体リガンド、エリスロポエチン、低酸素または低酸素模倣物の少なくとも1つを欠く化合物または組成物で前に処置された細胞は、無刺激であると考えられる。
【0023】
損傷した組織に関して直接使用されるときの用語「修復する」および「修復する工程」は、損傷した組織の再生などの直接の機構による、および間接の機構、例えば、縮小化炎症を低減することによって組織形成を可能にすることによる、そのような損傷の改善を意味する。
【0024】
「同種異系」は、同じ種の異なる個体からのものを意味する。個体は、1つ以上の遺伝子座で異なる遺伝子を有するとき、それらは同種異系であると言われる。対照的に、「自己(autologous)」は、同じ個体からのものを意味する。
【0025】
用語「免疫疾患」は、被験体の免疫反応によって引き起こされた細胞、組織及び/又は臓器の損傷を特徴とする被験体の疾病を指す。
【0026】
用語「自己免疫性疾患」は、被験体の自身の細胞、組織及び/又は臓器に対する免疫反応によって引き起こされた、細胞、組織及び/又は臓器の損傷を特徴とする被験体の疾病を指す。本発明によって産出された免疫調節細胞で処置することができる自己免疫性疾患の実例となる限定しない例は、円形脱毛症、強直性脊椎炎、抗リン脂質症候群、自己免疫性のアジソン病、副腎の自己免疫性疾患、自己免疫溶血性貧血、自己免疫性肝炎、自己免疫性の卵巣炎および精巣炎、自己免疫性血小板減少症、ベーチェット病、水疱性類天疱瘡、心筋症、セリアック病-皮膚炎、慢性疲労免疫機能不全症候群(CF1DS)、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー、チャーグ-ストラウス症候群、瘢痕性類天疱瘡、CREST症候群、寒冷凝集素症、円板状ループス、本態性混合型クリオグロブリン血症、結合組織炎-線維筋炎、糸球体腎炎、グレーブス病、ギラン・バレー症候群、橋本甲状腺炎、特発性肺線維症、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、IgAニューロパチー、若年性関節炎、扁平苔癬、メニエール病、混合性結合組織病、多発性硬化症、1型糖尿病または免疫介在性糖尿病、重症筋無力症、尋常性天疱瘡、悪性貧血、結節性多発動脈炎、多発性軟骨炎、多腺性症候群、リウマチ性多発性筋痛、多発性筋炎および皮膚筋炎、原発性無ガンマグロブリン血症、原発性胆汁性肝硬変症、乾癬、乾癬性関節炎、レイノー現象、ライター症候群、サルコイドーシス、強皮症、進行性全身性硬化症、シェーグレン症候群、グッドパスチャー症候群、スティッフマン症候群、全身性紅斑性狼瘡、紅斑性狼瘡、高安動脈炎、 側頭動脈炎/巨細胞性動脈炎、潰瘍性大腸炎、ブドウ膜炎、疱疹状皮膚炎の脈管炎などの脈管炎、白斑、ヴェーゲナー肉芽腫症、抗糸球体基底膜抗体病、抗リン脂質症候群、神経系の自己免疫性疾患、家族性地中海熱、ランバート・イートン症候群、交感性眼
炎、多内分泌症、乾癬などを含む。
【0027】
「免疫障害」は、自己免疫性疾患および免疫介在性の炎症性疾患を含む。
【0028】
「免疫介在性の炎症性疾患」は、正常な免疫反応の調節異常に起因する、関係する、またはそれによって引き起こされる、慢性炎または急性炎を特徴とするあらゆる疾患;例えば、クローン病、1型糖尿病、関節リウマチ、炎症性腸疾患、乾癬、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、全身性紅斑性狼瘡、橋本病、移植片対宿主疾患、シェーグレン症候群、悪性貧血、アジソン病、強皮症、グッドパスチャー症候群、潰瘍性大腸炎、自己免疫溶血性貧血、不妊症、重症筋無力症、多発性硬化症、バセドー病、血小板減少性紫斑病、ギラン・バレー症候群、アレルギー、喘息、アトピー性疾患、動脈硬化症、心筋炎、心筋症、糸球体腎炎、再生不良性貧血、および臓器移植後の拒絶、を意味する。
【0029】
用語「免疫調節」は、限定されないが、免疫反応のダウンレギュレーション、免疫反応の増強、サイトカインプロファイルの変化によって媒介された炎症状態の変化、細胞毒性活性および抗体産生、並びに免疫および免疫関連の細胞に対するそれらの効果を含む、免疫系の1つ以上の生物活性の変更、増幅、阻害または低下を指す。
【0030】
用語「炎症性障害」は、炎症、例えば慢性炎症を特徴とする被験体の疾病を指す。炎症性障害の実例となる限定しない例は、限定されないが、急性視神経炎、糖尿病性神経障害、クラッベ病、急性肺障害、クローン病、セリアック病、関節リウマチ(RA)、炎症性腸疾患(IBD)、喘息、脳炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、炎症性骨溶解症、アレルギー障害、敗血症性ショック、肺線維症(例えば、特発性肺線維症)、炎症性脈管炎(例えば、 結節性多発動脈炎、ウェーグナー肉芽腫症、高安動脈炎、側頭動脈炎、およびリンパ腫様肉芽腫症、外傷後の脈管の血管形成術(例えば、血管形成術後の再狭窄)、未分化脊椎関節症、未分化関節症、関節炎、炎症性骨溶解症、慢性肝炎、および慢性のウイルスまたは細菌感染に起因する慢性炎症を含む。
【0031】
用語「ウイルス性疾患」は、ウイルスによって引き起こされた疾患を指す。適切な疾患は、限定されないが、インフルエンザ、アデノウイルス感染、呼吸器合胞体疾患(Respiratory Syncytial Disease)、ライノウイルス感染症、単純疱疹、水疱瘡(水痘)、麻疹(はしか(Rubeola))、風疹(風疹(Rubella))、耳下腺炎(流行性耳下腺炎)、 天然痘(痘瘡)、川崎病、黄熱病、デング熱、
A型肝炎、B型肝炎、NANB肝炎、ウイルス性胃腸炎、ウイルス熱、サイトメガロウィルス病、エイズ(HIV)、狂犬病、ポリオ、エボラウイルス、出血熱、エプスタイン-バー、および前の疾患のいずれか引き起こすウイルスによって引き起こされる癌を含む疾患、を含む。
【0032】
用語「細菌感染」は、限定されないが、百日咳、任意の感染に、引き起こす、によって、1つの、医学的に関連する細菌、ハンセン病、結核、トキシックショック症候群、食中毒、サルモネラ菌、大腸菌中毒、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus au
reus)、クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)、敗血症、ライム病、コレラ、赤痢などを含む。
【0033】
「分離された細胞集団」は、インビボまたはインビトロでの細胞集団に通常関連する1つ以上の他の細胞集団が実質的にない、ヒトまたは動物の身体から分離された、細胞集団を意味する。
【0034】
用語「リガンド誘導剤」は、そのようなリガンドの生成の増加を結果としてもたらす薬剤を意味する。Toll様受容体(TLR)リガンドのためのリガンド誘導剤は、増加したTLRリガンドを産出し、それ故、TLRリガンド自体と本質的に同等である。
【0035】
用語「MHC」(主要組織適合複合体)は、細胞表面抗原を提示するタンパク質をコード化する遺伝子のサブセットを指す。ヒトにおいて、これらの遺伝子は、ヒト白血球抗原(HLA)遺伝子と呼ばれる。略語、MHCかHLAは交換可能に使用される。
【0036】
用語「細胞の集団」は、1を超える任意数の細胞であるが、少なくとも1×103の細胞、少なくとも1×104の細胞、少なくとも1×105の細胞、少なくとも1×106の細胞、少なくとも1×107の細胞、少なくとも1×108の細胞、少なくとも1×109の細胞、またはそれ以上の細胞を意味する。細胞の集団はまた、大量の細胞を培養するように意図されたバイオリアクターにおいて又は他の産業上の方法で育てられたバッチ形成(batch formation)での細胞を指す。
【0037】
本発明の好ましい実施形態において、始原細胞の集団における幹細胞の少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%または少なくとも95%(細胞数による%)は、未分化MSCである。
【0038】
細胞表面マーカーに関連して使用されるときの用語「有意な発現」またはその同義語「陽性」および「+」は、次のことを意味する、細胞集団において、20%を超える、好ましくは30%、40%、50%、60%、70%、80%、90% 95% 98% 99%、または100%をも超える細胞が、細胞表面マーカーを発現することを意味する。
細胞表面マーカーの発現は、例えば、従来の方法および装置を使用するバックグラウンドシグナル(background signal)を超える、フローサイトメトリーにおける特定の細胞表面マーカーに対するシグナルを示す従来の方法および装置(例えば、市販の抗体および当該技術分野で既知の標準プロトコルとともに使用されるBECKMAN COULTER EPICS XL FACSのシステム)を使用する特定の細胞表面マーカーのためのフローサイトメトリーによって判定され得る。バックグラウンドシグナルは、従来のFACS分析において各表面マーカーを検出するために使用される特異抗体と同じアイソタイプの非特異的抗体によって与えられたシグナル強度として定義される。マーカーが陽性であると考えられるように、観察される特定のシグナルは、従来の方法および装置を使用するバックグラウンドシグナルの強度より、20%強い、好ましくは、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、500%、1000%、5000%、10000%より強い、またはそれ以上である。さらに、前記細胞表面マーカー(例えば、細胞受容体および膜貫通タンパク質)に対する市販の及び既知のモノクローナル抗体は、関連する細胞を特定するために使用され得る。
【0039】
mRNAの発現は、限定されないが、遺伝子発現アレイ(遺伝子チップ)、mRNA-SEQ、ノーザンブロット、または逆転写酵素の使用を含んでいる定量的PCR(qPCR)方法を含むポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を含む、任意の適切な技術によって判定される。qPCR方法は、限定されないが、プローブベースの定量化、例えばTaqMan(登録商標);色素ベースの定量化、例えばSYBRグリーン;デジタルPCRを含む。qPCR方法は、絶対的な定量化方法、またはアクチン、GAPDH、またはリボソームサブユニットなどのハウスキーピング遺伝子への正規化を必要とする相対的な定量化方法を使用する方法であり得る。
【0040】
<参照による組み込み>
本明細書で挙げられるすべての出願、特許、特許出願は、個々の出願、特許、特許出願がそれぞれ参照により組み込まれるように具体的且つ個別に示される程度に、参照によって本明細書に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】
図1は、TLR3リガンドポリ(I:C)を使用して抗炎症性の特徴を有するように極性化されたMSCからPCRアレイを使用して生成された遺伝子発現データを示す。灰色は、遺伝子発現の少なくとも2倍の誘導を示し;黒色は、遺伝子発現の2倍の低下を示し;および二重の(thick)ボックスは、2倍を超えてアップギュレートされ、
図2における更なる検証(少なくとも2倍低下されたPIAS2を除く)のために選択された、遺伝子を示す。
【
図2】
図2は、qPCR(AとB)を使用して
図1の実験から選択された遺伝子の検証を示す。エラーバーはSEMを示す。
【
図3】
図3は、TLR4リガンド(MSC1)またはTLR4リガンド+EPOおよび塩化コバルト(MSC1
*)による処置後のMSC細胞におけるIL-6およびIL-8の分泌の誘導を示す。
【
図4】
図4は、TLR3リガンド(MSC2)またはTLR3リガンド+EPOおよび塩化コバルト(MSC2
*)による処置後のMSC細胞におけるCCL5およびCXCL10の分泌の誘導を示す。
【
図5】
図5は、TLR4リガンド(no
*)またはTLR4リガンド+EPOおよび塩化コバルト(with
*)による処置後の、異なるヒトドナーからのMSC細胞のTNFSF10(TRAIL)の発現による、MSC1表現型の誘導を示す。
【
図6】
図6は、TLR3リガンド(no
*)またはTLR3リガンド+EPOおよび塩化コバルト(with
*)による処置後の、異なるヒトドナーからのMSC細胞のCXCL9の発現による、MSC2表現型の誘導を示す。
【
図7】
図7は、TLR4リガンド(MSC1)またはTLR4リガンド+EPOおよび塩化コバルト(MSC1
*)による処置後の、MSCからのMSC細胞におけるTNFSF10(TRAIL)発現の誘導の時間的経過を示す。
【
図8】
図8は、TLR3リガンド(MSC2)またはTLR3リガンド+EPOおよび塩化コバルト(MSC2
*)による処置後の、MSCからのMSC細胞におけるCXCL9発現の誘導の時間的経過を示す。
【
図9】
図9は、TLR4リガンド(MSC1)、TLR4リガンド+EPOおよび塩化コバルト(MSC1
*)、TLR3リガンド(MSC2)、およびTLR3リガンド+EPOおよび塩化コバルト(MSC2
*)で刺激されたMSCと比較した、無刺激の(陰性対照)MSCのトランスウェル遊走アッセイ(transwell migration assay)を示す。エラーバーはSEMを示す。
【
図10】
図10は、TLR4リガンド(MSC1)、TLR4リガンド+EPOおよび塩化コバルト(MSC1
*)、TLR3リガンド(MSC2)、およびTLR3リガンド+EPOおよび塩化コバルト(MSC2
*)で刺激されたMSCと比較した、無刺激の(陰性対照)MSCの細胞増殖/生存率アッセイを示す。エラーバーはSEMを示す。
【
図11】
図11は、TNFSF10(TRAIL)発現を測定するためのqPCRアッセイの検証を示し:TNFSF10(TRAIL)のプライマーPCR増幅産物のアガロースゲルを示す。
【
図12】
図12の(A)は、MSC2に極性化されたMSCにおけるCXCL9発現の時間的経過を示し;(B)は、CXCL9のプライマーPCR増幅産物のアガロースゲルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本発明の実施は、(発明自体を除いて)当業者の技術範囲内にある、細胞培養、分子生物学、および微生物学の従来の技術を利用する。
【0043】
本発明は、エリスロポエチン(EPO)と組み合わせた、および低酸素または低酸素模倣物にさらされた、Toll様受容体(TLR)リガンドまたはTLRリガンド誘導剤に加えて、当該技術分野に既知の及び本明細書に記載される細胞培養培地の追加の標準成分を含む、間葉系幹細胞の集団のための誘導する、活性化する、極性化する、またはプライミングする培養誘導培地を提供する。
【0044】
本発明はまた、エリスロポエチン(EPO)と組み合わせた、および低酸素または低酸素模倣物にさらされた、Toll様受容体(TLR)リガンドまたはTLRリガンド誘導剤を含む、培地誘導サプリメント(culture-medium induction supplement)を提供し、これは、他の既存の培養培地に加えられ得る。そのようなサプリメントは、異常な成分または他の成分の異常な濃度が特定の状況に適切である場合に適切であるかもしれない。
【0045】
本発明はまた、本発明の培養誘導培地または培地誘導サプリメントを含む密封された培養容器を提供する。
【0046】
本発明はまた、本明細書に開示されるような培養誘導培地を調製する方法を提供し、該方法は、(a)培養培地を得る工程;および(b)エリスロポエチン(EPO)と組み合わせた、および低酸素または低酸素模倣物にさらしたToll様受容体(TLR)リガンドかTLRリガンド誘導剤を、培養培地に加える工程を含む。
【0047】
本発明はまた、組成物を提供し、該組成物は、(a)本発明による培養培地;および(b)幹細胞を含む。
【0048】
本発明はまた、組成物を提供し、該組成物は、(a)本発明による培養培地;および(b)固体表面を含む。特定の実施形態では、固体表面は、2D細胞培養に使用される任意のサイズの組織培養プレート、フラスコおよび瓶を含む、組織培養適合性表面である。特定の実施形態では、固体表面は、マイクロキャリアまたは3D培養に使用される細胞用の任意の他の支持マトリックスである。
【0049】
本発明はまた、間葉系幹細胞の集団を誘導する、活性化する、またはプライミングするための本発明の培養培地の使用を提供する。
【0050】
本発明はまた、間葉系幹細胞の集団を誘導する、活性化する、またはプライミングするエスクビボでの方法を提供し、該方法は、(a)間葉系幹細胞の集団を提供する工程;(b)本発明の培養培地を提供する工程;(c)幹細胞を培養培地と接触させる工程;および(d)適切な条件下で細胞を培養する工程を含む。
【0051】
一態様では、本発明は、細胞療法剤の製造における、エリスロポエチンと組み合わせた、および低酸素または低酸素模倣物にさらしたToll様受容体(TLR)リガンドまたはTLRリガンド誘導剤の使用を提供する。したがって、一実施形態では、本発明はまた、細胞療法剤の製造の方法を提供し、該方法は、(a)間葉系幹細胞の集団を提供する工程;(b)本発明の培養培地を提供する工程;(c)幹細胞を培養培地と接触させる工程;および(d)適切な条件下で細胞を培養する工程を含む。本発明はまた、組成物の使用を提供し、該組成物は、(a)本発明による培養培地;および(b)細胞療法剤を製造するための幹細胞を含む。本発明はまた、組成物の使用を提供し、該組成物は、(a)本発明による培養培地;および(b)細胞療法剤を製造するための固体表面を含む。
【0052】
前記細胞療法剤は、損傷した組織、あるいは限定されないが、自己免疫性疾患、炎症性障害、および移植器官と組織の拒絶を含む免疫介在性疾患などの炎症性及び/又は免疫性の障害に関連する1つ以上の症状、および癌の処置、修復、予防、及び/又は改善に使用するものである。本発明の細胞療法剤は、予防的に又は治療上有効な量の幹細胞および医薬担体を含む。特に好ましいのは、間葉由来の幹細胞である。これらの細胞タイプの各々のための投薬および投与レジメンの例は、当該技術分野で既知である。適切な医薬担体は、当該技術分野で既知であり、好ましくは、米国連邦政府または州政府の規制当局によって承認された、またはUS Pharmacopeia、またはEuropean Pharmacopeia、あるいは動物および特にヒトにおいて使用するための他の一般に認識された薬局方にリストされた医薬担体である。用語「担体」は、治療薬とともに投与される、希釈剤、アジュバント、賦形剤、またはビヒクルを指す。組成物は、望まれる場合、少量のpH緩衝剤を含有することもできる。適切な医薬担体の例は、E W Martinによって「Remington’s Pharmaceutical Science」に記載されている。そのような組成物は、被験体への適切な投与のための形態を提供するように、適切な量の担体と一緒に、好ましくは精製された形態で予防的に又は治療上有効な量の予防薬または治療薬を含有する。製剤は投与の様式に合わせるべきである。好ましい実施形態では、薬剤は、滅菌されており、被験体、好ましくは動物被験体、より好ましくは哺乳動物被験体、および最も好ましくはヒト被験体への投与のための適切な形態にある。
【0053】
特定の実施形態では、本開示の方法、細胞および誘導培地は、急性疼痛または慢性疼痛の処置のためのものである。特定の実施形態では、疼痛は具体的な診断に関連付けられていない。特定の実施形態では、疼痛は外傷に関連付けられている。特定の実施形態では、疼痛は背痛である。特定の実施形態では、疼痛は、椎間板ヘルニアまたは椎間板変性症に関連付けられている。特定の実施形態では、疼痛は神経障害性である。特定の実施形態では、疼痛は坐骨神経痛が原因である。
【0054】
特定の実施形態では、本開示の方法、細胞および誘導培地は、癌の処置のためのものである。特定の実施形態では、本開示の方法、細胞および誘導培地は、腫瘍の処置のためのものである。特定の実施形態では、本開示の方法、細胞および誘導培地は、癌の処置を増強するためのものである。特定の実施形態では、癌は以下である:成人急性リンパ芽球性白血病;小児期急性リンパ芽球性白血病;成人急性骨髄白血病;小児期急性骨髄白血病;副腎皮質癌;エイズ関連の癌;エイズ関連のリンパ腫;肛門癌;虫垂癌;星状細胞腫;非定型奇形腫様/横紋筋肉腫様腫瘍;基底細胞癌;肝外胆管癌;膀胱癌;骨肉腫、骨肉腫および悪性線維性組織球腫;脳幹神経膠腫;脳腫瘍;中枢神経系胚芽腫;星状細胞腫;頭蓋咽頭腫;上衣芽細胞腫;脳腫瘍、上衣腫;髄芽腫;髄様上皮腫;中間的な分化を示す松果体実質腫瘍;テント上原始神経外胚葉腫瘍および松果体芽腫;脳および脊髄の腫瘍;乳癌;男性乳癌;気管支腫瘍;バーキットリンパ腫;類癌腫;中枢神経系非定型奇形腫様/横紋筋肉腫様腫瘍;中枢神経系胚芽腫;中枢神経系(CNS)リンパ腫、子宮頸癌;一次;子宮頚癌;小児癌;脊索腫;慢性リンパ球性白血病;慢性骨髄性白血病;慢性骨髄増殖症候群;結腸癌;結腸直腸癌;頭蓋咽頭腫;悪性皮膚T細胞リンパ腫;中枢神経系胚芽腫;子宮内膜癌;上衣芽細胞腫;上衣腫;食道癌;感覚神経芽腫;ユーイング肉腫ファミリー腫瘍;頭蓋外胚細胞腫瘍;性腺外胚細胞腫瘍;肝臓外胆管癌;眼癌、眼内黒色腫;眼癌、網膜芽細胞腫;胆嚢癌;胃(Gastric)(胃(Stomach))癌;消化管カルチノイド腫瘍;消化管間質腫瘍(GIST);頭蓋外胚細胞腫;性腺外胚細胞腫;卵巣胚細胞腫;妊娠性絨毛腫瘍;神経膠腫;ヘアリーセル白血病;頭頸部癌;心臓癌;肝細胞(肝臓)癌、成人(一次);肝細胞(肝臓)癌;組織球増殖症、ランゲルハンス細胞;成人ホジキンリンパ腫;小児期ホジキンリンパ腫;下咽頭癌;眼内黒色腫;島細胞腫(内分泌膵);カポジ肉腫;腎臓(腎細胞)癌;腎臓癌;ランゲルハンス細胞組織球症;喉頭癌;小児期喉頭癌;白血病、急性リンパ芽球性、成人;白血病、急性リンパ芽球性、小児期;白血病、急性骨髄性、成人;白血病、急性骨髄性、小児期;白血病、慢性リンパ球性;白血病、慢性骨髄性;白血病、毛様細胞;口唇および口腔の癌;肝臓癌、成人(一次);肝臓癌;肺癌、非小細胞性;肺癌、小細胞性;リンパ腫、エイズ関連;リンパ腫、バーキット;リンパ腫、皮膚T細胞;リンパ腫、ホジキン、成人;リンパ腫、ホジキン、小児期;リンパ腫、非ホジキン、成人;リンパ腫、非ホジキン、小児期;リンパ腫、原発性中枢神経系(CNS);マクログロブリン血症、ワルデンシュトレーム;骨および骨肉腫の悪性線維性組織球腫;髄芽腫;髄様上皮腫;黒色腫;黒色腫、眼内(目);メルケル細胞癌;中皮腫、成人悪性腫瘍;中皮腫;原発不明の転移性頸部扁平上皮癌;口腔癌;多発性内分泌腺腫症;多発性骨髄腫/形質細胞腫瘍;菌状息肉腫;骨髄異形成症候群;骨髄異形成/骨髄増殖性腫瘍;骨髄性白血病、慢性;骨髄性白血病、成人急性;骨髄性白血病、小児期急性;多発性骨髄腫;骨髄増殖症候群、慢性;鼻腔および副鼻腔の癌;鼻咽腔癌;神経芽細胞腫;非ホジキンリンパ腫、成人;非ホジキンリンパ腫、小児期;非小細胞肺癌;口腔癌;口腔癌、口唇および口腔咽頭の癌;骨肉腫および骨の悪性線維性組織球腫;卵巣癌;卵巣上皮癌;卵巣胚細胞腫瘍;卵巣低悪性度腫瘍;膵臓癌;膵臓癌、島細胞腫;乳頭腫症;副鼻腔および鼻腔の癌;副甲状腺癌;陰茎癌;咽頭癌;中間的な分化を示す松果体実質腫瘍;下垂体腫瘍;形質細胞腫瘍/多発性骨髄腫;胸膜肺芽腫;妊娠および乳癌;原発性中枢神経系(CNS)リンパ腫;前立腺癌;直腸癌;腎細胞(腎臓)癌;腎盂および尿管、移行上皮癌;第15染色体の変化が伴う呼吸器癌(Respiratory Tract Cancer);網膜芽細胞腫;横紋筋肉腫;唾液腺癌;唾液腺癌;肉腫、ユーイング肉腫ファミリー腫瘍;肉腫、カポジ;肉腫、軟部組織、成人;肉腫、軟部組織、小児期;肉腫、子宮;セザリー症候群;皮膚癌(非黒色腫);皮膚癌;皮膚癌(黒色腫);皮膚癌、メルケル細胞;小細胞肺癌;小腸癌;軟部組織肉腫、成人;軟部組織肉腫、小児期;扁平上皮癌;原発不明の頸部扁平上皮癌、転移性;胃癌;テント上原始神経外胚葉腫瘍;T細胞性リンパ腫、皮膚;精巣癌;咽喉癌;胸腺腫および胸腺癌;甲状腺癌;腎盂および尿管の移行上皮癌;絨毛腫瘍、妊娠性;原発不明部位、腎盂および尿管の癌腫、移行上皮癌;尿道癌;子宮癌、子宮内膜;子宮肉腫;ブドウ膜黒色腫;膣癌;外陰癌;ワルデンシュトレームマクログロブリン血症またはウィルムス腫瘍。
【0055】
特定の実施形態では、本開示の方法、細胞および誘導培地は、癌、自己免疫性疾患または炎症性障害のための処置を必要とする被験体への投与のためのものである。特定の実施形態では、本開示の方法、細胞および誘導培地は、異なる投与経路を包含する。特定の実施形態では、投与経路は、皮下、頭頂間、筋肉内、静脈内、腫瘍内、眼内、網膜内、硝子体内、または頭蓋内である。
【0056】
特定の実施形態では、本開示の方法、細胞および誘導培地は、癌、自己免疫性疾患あるいは免疫介在性の炎症性疾患のための処置を必要とする被験体への投与のためのものである。特定の実施形態では、本開示の方法、細胞および誘導培地は、異なる投薬頻度を包含する。特定の実施形態では、本開示の細胞および薬剤は、1日1回、1週間に1回、1か月に1回、または1年に1回投与される。特定の実施形態では、本開示の細胞および方法は、1日2回、1週間に2回、1か月に2回、または1年に2回の投与のためのものである。特定の実施形態では、本開示の細胞および方法は、1日3回、1週間に3回、1か月に3回、または1年に3回の投与のためのものである。特定の実施形態では、本開示の細胞および方法は、1日4回、1週間に4回、1か月に4回、または1年に4回の投与のためのものである。特定の実施形態では、一次治療の後に、維持量が1年に1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12回投与される。特定の実施形態では、維持量が、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10年間またはそれ以上の間継続される。特定の実施形態では、少なくとも1x106の細胞が、1回の投与当たりに投与される。特定の実施形態では、少なくとも2x106の細胞が、1回の投与当たりに投与される。特定の実施形態では、少なくとも3x106の細胞が、1回の投与当たりに投与される。特定の実施形態では、少なくとも4x106の細胞が、1回の投与当たりに投与される。特定の実施形態では、少なくとも5x106の細胞が、1回の投与当たりに投与される。特定の実施形態では、少なくとも6x106の細胞が、1回の投与当たりに投与される。特定の実施形態では、細胞が投与される。特定の実施形態では、少なくとも7x106の細胞が、1回の投与当たりに投与される。特定の実施形態では、少なくとも8x106の細胞が、1回の投与当たりに投与される。特定の実施形態では、少なくとも9x106の細胞が、1回の投与当たりに投与される。特定の実施形態では、少なくとも1x107の細胞が、1回の投与当たりに投与される。特定の実施形態では、少なくとも2x107の細胞が、1回の投与当たりに投与される。特定の実施形態では、少なくとも3x107の細胞が、1回の投与当たりに投与される。特定の実施形態では、少なくとも4x107の細胞が、1回の投与当たりに投与される。特定の実施形態では、少なくとも5x107の細胞が、1回の投与当たりに投与される。特定の実施形態では、少なくとも6x107の細胞が、1回の投与当たりに投与される。特定の実施形態では、少なくとも7x107の細胞が、1回の投与当たりに投与される。特定の実施形態では、少なくとも8x107の細胞が、1回の投与当たりに投与される。特定の実施形態では、少なくとも9x107の細胞が、1回の投与当たりに投与される。特定の実施形態では、少なくとも1x108の細胞が、1回の投与当たりに投与される。特定の実施形態では、少なくとも2x108の細胞が、1回の投与当たりに投与される。特定の実施形態では、少なくとも3x108の細胞が、1回の投与当たりに投与される。特定の実施形態では、少なくとも4x108の細胞が、1回の投与当たりに投与される。特定の実施形態では、少なくとも5x108の細胞が、1回の投与当たりに投与される。特定の実施形態では、少なくとも6x108の細胞が、1回の投与当たりに投与される。特定の実施形態では、少なくとも7x108の細胞が、1回の投与当たりに投与される。特定の実施形態では、少なくとも8x108の細胞が、1回の投与当たりに投与される。特定の実施形態では、少なくとも9x108の細胞が、1回の投与当たりに投与される。特定の実施形態では、少なくとも1x109の細胞が、1回の投与当たりに投与される。特定の実施形態では、少なくとも2x109の細胞が、1回の投与当たりに投与される。特定の実施形態では、少なくとも3x109の細胞が、1回の投与当たりに投与される。
【0057】
本発明の薬剤は、様々な形態であり得る。これらは、例えば、凍結乾燥された調剤、液体溶液または懸濁液、注射可能且つ注入可能な溶液などの、半固形、および液体の剤形を含み、薬剤は注射可能であることが好ましい。
【0058】
特定の実施形態では、薬剤は、損傷した組織(好ましくは間葉組織)の処置または修理のため、及び/又は炎症性及び/又は免疫性の障害に関連する1つ以上の症状の処置、調節、予防、及び/又は改善のためのものである。したがって、本発明の方法および細胞は、前記症状のいずれか又はすべてを特徴とするあらゆる障害の処置に使用するものである。そのような障害の代表的な包括的でないリストは、定義のセクションで提供されている。特に好ましいのは、免疫介在性の炎症性疾患の処置のための薬剤である。さらに好ましいのは、糖尿病、関節リウマチ(RA)、炎症性腸疾患(クローン病及び/又は潰瘍性大腸炎を含むIBD)および多発性硬化症(MS)の処置のための薬剤である。本発明はまた、間葉系幹細胞の培養のための、エリスロポエチンと組み合わせた、および低酸素または低酸素模倣物にさらした、Toll様受容体(TLR)リガンドまたはTLRリガンド誘導剤の使用を提供する。
【0059】
本発明の培養培地、サプリメントおよび組成物の具体的な成分および成分の割合は、特定のニーズおよび応用に従って様々であり得る。同様に、本発明の方法の正確な工程は、特定のニーズおよび応用に従って様々であり得る。本発明による、培養培地、サプリメント、方法、組成物、および使用は、日常の実験によって最適化され得る。これは、例えば、望ましい転帰が抗炎症性の治療効果である場合、培養培地、サプリメントまたは組成物が、エリスロポエチンと組み合わせた、および低酸素または低酸素模倣物(塩化コバルトまたはデスフェリオキサミン)にさらした、TLR3リガンドまたはTLRリガンド誘導剤を明確に含有している場合、対照的に、望ましい転帰が免疫促進性の治療効果である場合、培養培地、サプリメントまたは組成物が、エリスロポエチンと組み合わせた、および低酸素または低酸素模倣物にさらした、TLR4リガンドまたはTLRリガンド誘導剤を明確に含有している場合である。本明細書に記載される成分の各々の量は、日常の最適化によって他の成分とは無関係に最適化され得るか、あるいは1つ以上の成分が加えられ得るか又は除去され得る。培養培地は、既知の培養培地または方法とともに又はそれらの代わりに、間葉系幹細胞の誘導、活性化またはプライミングを試験することによって、それらを支持するその能力に関して試験され得る。本発明の培養培地、サプリメント、方法、組成物および使用は、より詳細に以下に記載される。
【0060】
本発明の誘導培地は、エリスロポエチンと組み合わせた、および低酸素または低酸素模倣物にさらした、Toll様受容体(TLR)リガンドまたはTLRリガンド誘導剤を含む。一態様では、本発明の誘導培地は、Toll様受容体(TLR)リガンドまたはTLRリガンド誘導剤を含む。代替的な態様では、本発明の誘導培地は、エリスロポエチンを含み、低酸素または低酸素模倣物にさらされる。さらなる態様では、本発明の誘導培地は、エリスロポエチンと組み合わせた、および低酸素または低酸素模倣物にさらした、Toll様受容体(TLR)リガンドまたはTLRリガンド誘導剤を含む。特定の実施形態では、TLRリガンドはTLR4リガンドである。特定の実施形態では、TLRリガンドはTLR3リガンドである。
【0061】
本発明の誘導培地は、エリスロポエチン(EPO)と組み合わせた、および低酸素または低酸素模倣物にさらした、Toll様受容体(TLR)リガンドまたはTLRリガンド誘導剤の2以上、3以上、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上の組み合わせを含み得る。
【0062】
本発明の誘導培地は、約10ミクロモルから約1mMの濃度で、約0.5mU/mLと約100mU/mLの間のエリスロポエチン(EPO)と組み合わせた、および塩化コバルトまたはデスフェリオキサミンなどの約0.5から約2%の酸素条件(低酸素)または低酸素模倣物にさらした、約0.10ピコモル(pM)と約100ミリモル(mM)のTLRリガンドまたはTLRリガンド誘導剤、あるいは上記のTLRリガンドまたはTLRリガンド誘導剤、エリスロポエチンおよび低酸素の他の組み合わせを含み得る。
【0063】
誘導培地中で使用されるTLR3リガンドは、IL4、IL13、ポリ(A:U)、ポリ(I:C)、およびそれらの組み合わせであり得、インキュベーション、トランスフェクション、形質導入によって、担体分子によって、またはそれらの組み合わせによって送達され得る。好ましくは、TLR3リガンドまたはアゴニストは、ポリ(I:C)である。
【0064】
誘導培地中で使用されるTLR4リガンドは、アミノアルキルグルコサミニド 4-リン酸塩、インターフェロン、TNF-アルファ、GM-CSF、リポ多糖(LPS)、およびそれらの組み合わせであり得、インキュベーション、トランスフェクション、形質導入によって、担体分子によって、またはそれらの組み合わせによって送達され得る。好ましくは、TLR4リガンドまたはアゴニストは、LPSである。
【0065】
TLR3リガンドまたはアゴニストは、上に留意されるような培養培地またはサプリメントにおいて、約10pg/mLから約100μg/mL、約100pg/mLから約100μg/mL、約1ng/mLから約100μg/mL、約5ng/mLから約100μg/mL、約10ng/mLから約100μg/mL、約100ng/mLから約100μg/mL、約0.1μg/mLから約50μg/mL、約0.1μg/mLから約10μg/mL、約0.25μg/mLから約7.5μg/mL、約0.5μg/mLから約5μg/mL、約1μg/mLから約2.5μg/mL、および好ましくは約1μg/mLから約1.5μg/mLの量で提供され得る。
【0066】
特定の実施形態では、TLR3リガンドは、ポリ(I:C)であり、約10pg/mLから約100μg/mL、約100pg/mLから約100μg/mL、約1ng/mLから約100μg/mL、約5ng/mLから約100μg/mL、約10ng/mLから約100μg/mL、約100ng/mLから約100μg/mL、約0.1μg/mLから約50μg/mL、約0.1μg/mLから約10μg/mL、約0.25μg/mLから約7.5μg/mL、約0.5μg/mLから約5μg/mL、約1μg/mLから約5μg/mL、および約1μg/mLから約2.5μg/mLまでの量で提供される。特定の実施形態では、ポリ(I:C)は、約1μg/mLの量で提供される。特定の実施形態では、ポリ(I:C)は、約2μg/mLに量で提供される。特定の実施形態では、ポリ(I:C)は、約3μg/mLの量で提供される。特定の実施形態では、ポリ(I:C)は、約4μg/mLの量で提供される。特定の実施形態では、ポリ(I:C)は、約5μg/mLの量で提供される。特定の実施形態では、ポリ(I:C)は、約6μg/mLの量で提供される。特定の実施形態では、ポリ(I:C)は、約7μg/mLの量で提供される。特定の実施形態では、ポリ(I:C)は、約8μg/mLの量で提供される。特定の実施形態では、ポリ(I:C)は、約9μg/mLの量で提供される。特定の実施形態では、ポリ(I:C)は、約10μg/mLの量で提供される。特定の実施形態では、ポリ(I:C)は、約100ng/mL未満の量で提供される。特定の実施形態では、ポリ(I:C)は、約50ng/mL未満の量で提供される。特定の実施形態では、ポリ(I:C)は、約20ng/mL未満の量で提供される。特定の実施形態では、ポリ(I:C)は、約10ng/mL未満の量で提供される。特定の実施形態では、ポリ(I:C)は、約50ng/mL未満の量で提供される。
【0067】
TLR4リガンドまたはアゴニストは、上に留意されるような培養培地またはサプリメントにおいて、約10pg/mLから約10μg/mL、約100pg/mLから約10μg/mL、約1ng/mLから約1μg/mL、約5ng/mLから約1μg/mL、約10ng/mLから約1μg/mL、約100ng/mLから約1μg/mL、好ましくは約5ng/mLから約50ng/mL、およびまた好ましくは約5ng/mLから約25ng/mLまでの量で提供され得る。
【0068】
特定の実施形態では、TLR4リガンドはLPSである。特定の実施形態では、LPSは、約10pg/mLから約10μg/mL、約100pg/mLから約10μg/mL、約1ng/mLから約1μg/mL、約5ng/mLから約1μg/mL、約10ng/mLから約1μg/mL、約100ng/mLから約1μg/mL、好ましくは約5ng/mLから約50ng/mL、およびまた好ましくは約5ng/mLから約25ng/mLまでの量で存在する。特定の実施形態では、LPSは、約5ng/mLの濃度で存在する。特定の実施形態では、LPSは、約10ng/mLの濃度で存在する。特定の実施形態では、LPSは、約15ng/mLの濃度で存在する。特定の実施形態では、LPSは、約20ng/mLの濃度で存在する。特定の実施形態では、LPSは、約25ng/mLの濃度で存在する。特定の実施形態では、LPSは、約30ng/mLの濃度で存在する。特定の実施形態では、LPSは、約35ng/mLの濃度で存在する。特定の実施形態では、LPSは、約40ng/mLの濃度で存在する。特定の実施形態では、LPSは、約45ng/mLの濃度で存在する。特定の実施形態では、LPSは、約50ng/mLの濃度で存在する。特定の実施形態では、LPSは、約100ng/mL未満の濃度で存在する。特定の実施形態では、LPSは、約50ng/mL未満の濃度で存在する。特定の実施形態では、LPSは、約20ng/mL未満の濃度で存在する。特定の実施形態では、LPSは、約10ng/mL未満の濃度で存在する。
【0069】
特定の実施形態では、本発明の誘導培地は、低酸素または酸素欠乏の環境におけるインキュベーションを含む。特定の実施形態では、低酸素環境は、2%未満の酸素を有する。特定の実施形態では、低酸素環境は、1.5%未満の酸素を有する。特定の実施形態では、低酸素環境は、1.0%未満の酸素を有する。特定の実施形態では、低酸素環境は、0.5%未満の酸素を有する。特定の実施形態では、低酸素環境は、0%の酸素を有効に有する。特定の実施形態では、低酸素環境は、0.5%と2.0%の間の酸素を有する。特定の実施形態では、低酸素環境は、0.5%と1.5%の間の酸素を有する。特定の実施形態では、低酸素環境は、0.5%と1.0%の間の酸素を有する。特定の実施形態では、低酸素環境は、1.0%と2.0%の間の酸素を有する。特定の実施形態では、低酸素環境は、1.5%と2.0%の間の酸素を有する。
【0070】
特定の実施形態では、本発明の誘導培地は、塩化コバルトを含む。特定の実施形態では、塩化コバルトは、約50μMの濃度で存在する。特定の実施形態では、塩化コバルトは、約100μMの濃度で存在する。特定の実施形態では、塩化コバルトは、約200μMの濃度で存在する。特定の実施形態では、塩化コバルトは、約300μMの濃度で存在する。特定の実施形態では、塩化コバルトは、約400μMの濃度で存在する。特定の実施形態では、塩化コバルトは、約500μMの濃度で存在する。特定の実施形態では、塩化コバルトは、約600μMの濃度で存在する。特定の実施形態では、塩化コバルトは、約700μMの濃度で存在する。特定の実施形態では、塩化コバルトは、約800μMの濃度で存在する。特定の実施形態では、塩化コバルトは、約900μMの濃度で存在する。特定の実施形態では、塩化コバルトは、約1mMの濃度で存在する。特定の実施形態では、塩化コバルトは、約10μMから約1mMの濃度で存在する。特定の実施形態では、塩化コバルトは、約10μMから約800μMの濃度で存在する。特定の実施形態では、塩化コバルトは、約10μMから約500μMの濃度で存在する。特定の実施形態では、塩化コバルトは、約10μMから約400μMの濃度で存在する。特定の実施形態では、塩化コバルトは、約10μMから約300μMの濃度で存在する。特定の実施形態では、塩化コバルトは、約50μMから約300μMの濃度で存在する。特定の実施形態では、塩化コバルトは、約100μMから約300μMの濃度で存在する。特定の実施形態では、塩化コバルトは、約150μMから約300μMの濃度で存在する。
【0071】
特定の実施形態では、本発明の誘導培地は、デスフェリオキサミンを含む。特定の実施形態では、デスフェリオキサミンは、約50μMの濃度で存在する。特定の実施形態では、デスフェリオキサミンは、約200μMの濃度で存在する。特定の実施形態では、デスフェリオキサミンは、約300μMの濃度で存在する。特定の実施形態では、デスフェリオキサミンは、約400μMの濃度で存在する。特定の実施形態では、デスフェリオキサミンは、約500μMの濃度で存在する。特定の実施形態では、デスフェリオキサミンは、約600μMの濃度で存在する。特定の実施形態では、デスフェリオキサミンは、約700μMの濃度で存在する。特定の実施形態では、デスフェリオキサミンは、約800μMの濃度で存在する。特定の実施形態では、デスフェリオキサミンは、約900μMの濃度で存在する。特定の実施形態では、デスフェリオキサミンは、約1mMの濃度で存在する。特定の実施形態では、デスフェリオキサミンは、約10μMから約1mM濃度で存在する。特定の実施形態では、デスフェリオキサミンは、約10μMから約800μMの濃度で存在する。特定の実施形態では、デスフェリオキサミンは、約10μMから約500μMの濃度で存在する。特定の実施形態では、デスフェリオキサミンは、約10μMから約400μMの濃度で存在する。特定の実施形態では、デスフェリオキサミンは、約10μMから約300μMの濃度で存在する。特定の実施形態では、デスフェリオキサミンは、約50μMから約300μMの濃度で存在する。特定の実施形態では、デスフェリオキサミンは、約100μMから約300μMの濃度で存在する。特定の実施形態では、デスフェリオキサミンは、約150μMから約300μMの濃度で存在する。
【0072】
特定の実施形態では、本発明の誘導培地は、エリスロポエチンを含む。特定の実施形態では、本発明の誘導培地は、組み換えエリスロポエチンを含む。特定の実施形態では、本発明の誘導培地は、ヒト組み換えエリスロポエチンを含む。特定の実施形態では、エリスロポエチンの量は、約0.1ng/mLと約1.0mg/mLの間である。特定の実施形態では、エリスロポエチンの量は、約0.1ng/mLと約100ng/mLの間である。特定の実施形態では、エリスロポエチンの量は、約0.1ng/mLと約50ng/mLの間である。特定の実施形態では、エリスロポエチンの量は、約0.1ng/mLと約10ng/mLの間である。特定の実施形態では、エリスロポエチンの量は、約0.1ng/mLと約1.0ng/mLの間である。特定の実施形態では、エリスロポエチンの量は、約0.2ng/mLと約0.8ng/mLの間である。特定の実施形態では、エリスロポエチンの量は、約0.3ng/mLと約0.6ng/mLの間である。特定の実施形態では、エリスロポエチンの量は、10mg/mL未満である。特定の実施形態では、エリスロポエチンの量は、5mg/mL未満である。特定の実施形態では、エリスロポエチンの量は、1mg/mL未満である。特定の実施形態では、エリスロポエチンの量は、100ng/mL未満である。特定の実施形態では、エリスロポエチンの量は、30ng/mL未満である。特定の実施形態では、エリスロポエチンの量は、10ng/mL未満である。特定の実施形態では、エリスロポエチンの量は、5ng/mL未満である。特定の実施形態では、エリスロポエチンの量は、4ng/mL未満である。特定の実施形態では、エリスロポエチンの量は、1ng/mL未満である。特定の実施形態では、エリスロポエチンの量は、0.8ng/mL未満である。特定の実施形態では、エリスロポエチンの量は、1ng/mL未満である。特定の実施形態では、エリスロポエチンの量は、5U/mL未満である。特定の実施形態では、エリスロポエチンの量は、1U/mL未満である。特定の実施形態では、エリスロポエチンの量は、0.5U/mL未満である。特定の実施形態では、エリスロポエチンの量は、0.1U/mL未満である。特定の実施形態では、エリスロポエチンの量は0.05U/mL未満である。
【0073】
細胞誘導培地、典型的に、多数の成分を含有し、これらは培養細胞の維持を支持するために必要とされる。それ故、本発明の誘導培地は、通常、エリスロポエチンと組み合わせた、および低酸素または低酸素模倣物(塩化コバルトまたはデスフェリオキサミン)にさらした、Toll様受容体(TLR)リガンドまたはTLRリガンド誘導剤に加えて、他の多くの成分を含有している。適切な成分の組み合わせは、以下の開示を考慮に入れて、当業者によって容易に製剤され得る。本発明による誘導培地は、一般に、より詳細に以下に記載されるように、アミノ酸、ビタミン、微量金属、無機塩類、炭素エネルギー源、および緩衝液などの、標準の細胞培養成分を含む栄養液となる。
【0074】
本発明の誘導培地は、血清を含有し得る。血清は、生存率および増殖に必要であり得る細胞因子、非細胞因子、および成分を含有している。ウシ胎児血清(FBS)、ウシ血清(BS)、子ウシ血清(CS)、ウシ胎仔血清(FCS)、ウシ新生仔血清(NCS)、ヤギ血清(GS)、ウマ血清(HS)、ブタ血清、ヒツジ血清、ウサギ血清、ラット血清(RS)などを含む、任意の適切な源から得られた血清が使用され得る。前記MSCがヒト起源である場合、細胞誘導培地が、好ましくは自己由来のヒト血清を補足されることも、本発明の範囲内にある。血清が、補体カスケードの成分を不活性化するために必要であると考えられる場合、55-65℃で熱失活され得ることが理解される。血清代替物は、使用される場合、従来の技術に従って、培地の約2容量%と約40容量%の間で使用され得る。
【0075】
他の実施形態では、本発明の誘導培地は、血清代替物を含有し得る。限定されないが、インスリン、血小板由来増殖因子(PDGF)、および塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)を含む、限定されないが、血清アルブミン、血清トランスフェリン、セレニウム、および組み換えタンパク質などの、様々な異なる血清代替製剤(serum replacement formulations)が、市販で入手可能であり、当業者に知られている。血清代替物は、使用される場合、従来の技術に従って、培地の約2容量%と約40容量%の間で使用され得る。他の実施形態では、本発明の誘導培地は、無血清であり得る及び/又は血清代替物なしであり得る。無血清培地は、いずれのタイプの動物血清も含有しない培地である。無血清培地は、幹細胞の異物汚染(xeno-contamination)の可能性を回避することが好ましい。血清代替物なしの培地は、商用の血清代替製剤を補足されていない培地である。
【0076】
本発明の誘導培地は、通常、脱イオン化された蒸留水中で製剤される。本発明の誘導培地は、典型的に、例えば、紫外線、加熱、照射または濾過・BR>ノよって、汚染を防ぐために使用前に滅菌される。誘導培地はまた、保存または輸送のために(例えば-20℃または-80℃で)凍結され得る。抗菌剤も、典型的に、細菌、マイコプラズマ、および菌による汚染を軽減するために、培地中で使用される。培地は、汚染を防ぐために、1つ以上の抗菌剤または抗生物質を含有し得る。典型的に、使用される抗生物質または抗真菌化合物は、ペニシリン/ストレプトマイシンの混合物であるが、限定されないが、アンフォテリシン(ファンギゾン(登録商標))、アンピシリン、ゲンタマイシン、ブレオマイシン、ハイグロマイシン、カナマイシン、マイトマイシンなども含むことができる。
【0077】
本発明の一実施形態では、誘導培地は、エリスロポエチンと組み合わせた、および低酸素または低酸素模倣物(塩化コバルトまたはデスフェリオキサミン)にさらした、Toll様受容体(TLR)リガンドまたはTLRリガンド誘導剤によって誘導された細胞の追加によって調整された培地である。調整培地は、培地を調整するのに十分な時間の間、誘導培地中で前記細胞の集団を培養し、その後、調整培地を採取することによって生成される。調整培地は、使用される場合、哺乳動物細胞、例えばマウス細胞またはヒト細胞上で調整され得る。間葉系幹細胞の誘導に適した調整培地を生成するために、様々な異なるタイプの哺乳動物細胞が使用され得る。
【0078】
誘導培地は、1x製剤、または濃縮製剤、例えば2xから250x濃縮した培地製剤であり得る。1x製剤では、培地中の各成分は、細胞誘導を意図した濃度である。濃縮製剤では、成分の1つ以上は、細胞誘導を意図した濃度よりも高い濃度で存在する。誘導培地は、既知の方法、例えば塩沈澱または選択的な濾過を使用して濃縮することができる。濃縮培地は、水(好ましくは脱イオン化され、蒸留された)、または任意の適切な溶液、例えば、水性の食塩水、水性の緩衝液、または培養培地)との使用のために希釈され得る。
【0079】
本明細書に開示されるような誘導培地は、適切な条件下において、単一継代または集団倍加に対する分化多能性、未分化、および増殖の状態で、幹細胞の集団を誘導する、活性化する、プライミングすることが可能であり得る。幹細胞は、本明細書でより詳細に別記されるような特性を示す場合、分化多能性、未分化、および増殖の状態にあると考えられる。適切な条件は、間葉系幹細胞の培養に通常使用される条件から当業者によって選択され得る。
【0080】
本明細書で別記留意されるように、本発明はまた、本発明の誘導培地を含有している密封された容器を提供する。密封された容器は、汚染を防ぐために、誘導培地の輸送または保存に好ましい。容器は、バイオリアクター、フラスコ、プレート、瓶、ジャー、バイアル、またはバッグなどの、任意の適切な容器であり得る。本明細書で別記留意されるように、本発明はまた、誘導培地を調製する方法を提供し、該方法は、(a)培養培地を得る工程;および(b)エリスロポエチン(EPO)と組み合わせた、および低酸素または低酸素模倣物(塩化コバルトまたはデスフェリオキサミン)にさらした、Toll様受容体(TLR)リガンドまたはTLRリガンド誘導剤を培養培地に加える工程を含む。誘導培地に含められる具体的な成分に依存して、誘導培地を調製するための様々な異なる方法が想定される。例えば、誘導培地を調製する方法は、(a)培養培地を得る工程;および(b)エリスロポエチン(EPO)と組み合わせた、および低酸素または低酸素模倣物(塩化コバルトまたはデスフェリオキサミン)にさらした、TLRリガンドまたはTLRリガンド誘導剤を培養培地に加える工程を含み得る。一実施形態では、誘導培地を調製する方法は、(a)培養培地を得る工程;および(b)TLRリガンド、EPOおよび塩化コバルトを培養培地に加える工程を含み得る。
【0081】
本発明の誘導培地は、間葉系幹細胞の集団を誘導する、活性化する、またはプライミングするために使用され得る。したがって、本発明は、間葉系幹細胞の集団を細胞療法のための分離した均一な表現型へと誘導する、活性化する、またはプライミングするための本明細書に開示されるような誘導培地の使用を提供する。
【0082】
特定の実施形態では、本明細書に開示される誘導培地は、限定されないが、以下を含む、当業者に既知の方法によって測定され得る特定の遺伝子の発現を誘導するか又は減少させる:PCR;qPCR;qRT-PCR;半定量的RT-PCR;デジタルPCR;ノーザンブロット;mRNA-SEQ;マイクロアレイなど。特定の実施形態では、本明細書に開示される誘導培地は、限定されないが、以下を含む、当業者に既知の方法によって測定され得るタンパク質レベルを増大または低下させる:抗体ベースのアッセイ;酵素結合抗体免疫吸着アッセイ(ELISA);免疫ブロットまたはウエスタンブロット;フローサイトメトリー、質量分析法など。特定の実施形態では、本明細書に開示される誘導培地は、限定されないが、以下を含む、当業者に既知の方法によって測定され得る細胞シグナル伝達経路の活性化または緩和を誘導する:キナーゼアッセイ;タンパク質リン酸化/脱リン酸化測定;タンパク質ユビキチン化/脱ユビキチン化測定;タンパク質アセチル化/脱アセチル化測定;タンパク質分解/安定性測定;カルシウムまたはジアシルグリセロールなどの二次メッセンジャーの測定;または不活性形態から活性形態への開裂のモニタリング。
【0083】
特定の実施形態では、本明細書に開示される誘導培地は、細胞集団の、遺伝子発現、タンパク質レベル、または細胞シグナル伝達経路の測定可能な変化をもたらす。特定の実施形態では、変化は、遺伝子発現、タンパク質レベルあるいは細胞シグナリングの増加である。特定の実施形態では、変化は、無刺激または対照のサンンプルと刺激または試験のサンプルとの間で測定された統計学的に有意な変化である。特定の実施形態では、無刺激または対照のサンンプルと刺激または試験のサンプルとの間の変化は、少なくとも2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、またはそれ以上の増加である。特定の実施形態では、無刺激または対照のサンンプルと刺激または試験のサンプルとの間の変化は、少なくとも100倍またはそれ以上の増加である。特定の実施形態では、無刺激または対照のサンンプルと刺激または試験のサンプルとの間の変化は、少なくとも2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、またはそれ以上の減少である。特定の実施形態では、無刺激または対照のサンンプルと刺激または試験のサンプルとの間の変化は、少なくとも100倍またはそれ以上の減少である。
【0084】
特定の実施形態では、TLR3リガンドを含む誘導培地は、無刺激の細胞の集団と比較したときに、少なくとも2倍、以下の遺伝子のいずれかのmRNA発現を誘導する:CXCL9;EGFR;IRF1;A2M;FAS;IL2RG;MMP3;GBP1;ISG15;FCGR1;NFKB1;NOS2A;USF1;YY1;JAK2;STA2、STAT4;STAT5;SOCS1;またはIRF1。特定の実施形態では、TLR3リガンドを含む誘導培地は、無刺激の細胞の集団と比較したときに、少なくとも2倍、以下の遺伝子のいずれかのmRNA発現を減少させる:EPOR;F2R;STAM;PDGFRA;PIAS2;MYC;SH2B1;またはCSF2RB。特定の実施形態では、TLR3リガンドを含む誘導培地は、無刺激の細胞の集団と比較したときに、少なくとも10倍、以下の遺伝子のいずれかのmRNA発現を誘導する:CXCL9;GBP1;ISG15;SOCS1;MMP3;JAK2またはIRF1。特定の実施形態では、TLR3リガンドを含む誘導培地は、無刺激の細胞の集団と比較したときに、少なくとも20倍、以下の遺伝子のいずれかのmRNA発現を誘導する:CXCL9;GBP1;ISG15;またはSOCS1。特定の実施形態では、TLR3リガンドを含む誘導培地は、無刺激の細胞の集団と比較したときに、少なくとも100倍、CXCL9のmRNA発現を誘導する。
【0085】
特定の実施形態では、TLR4リガンドを含む誘導培地は、無刺激の細胞の集団と比較したときに、少なくとも2倍、10倍、100倍または1000倍、TNFSF10(TRAIL)のmRNA発現を誘導する。
【0086】
本発明はまた、間葉系幹細胞の集団を誘導する、活性化する、プライミングするエスクビボでの方法を提供し、該方法は、(a)間葉系幹細胞の集団を提供する工程;(b)本明細書に開示されるような誘導培地を提供する工程;(c)幹細胞を誘導培地と接触させる工程;および(d)適切な条件下で幹細胞を培養する工程を含む。
【0087】
特定の実施形態では、本明細書に開示される間葉系幹細胞の集団を誘導する、活性化する、プライミングするエスクビボでの方法は、限定されないが、以下を含む当業者に既知の方法によって測定され得る特定の遺伝子の発現を誘導するか又は減少させる:PCR;qPCR;qRT-PCR;半定量的RT-PCR;デジタルPCR;ノーザンブロット;mRNA-SEQ;マイクロアレイ;など。特定の実施形態では、本明細書に開示される誘導培地は、限定されないが、以下を含む当業者に既知の方法によって測定され得るタンパク質レベルを増大または低下させる:抗体ベースのアッセイ;酵素結合抗体免疫吸着アッセイ(ELISA);免疫ブロットまたはウエスタンブロット;フローサイトメトリー、質量分析法など。特定の実施形態では、本明細書に開示される間葉系幹細胞の集団を誘導する、活性化する、プライミングするエスクビボでの方法は、限定されないが、以下を含む当業者に既知の方法によって測定され得る細胞シグナル伝達経路の活性化または緩和を誘導する:キナーゼアッセイ;タンパク質リン酸化/脱リン酸化測定;タンパク質ユビキチン化/脱ユビキチン化測定;タンパク質アセチル化/脱アセチル化測定;タンパク質分解/安定性測定;カルシウムまたはジアシルグリセロールなどの二次メッセンジャーの測定;または不活性形態から活性形態への開裂のモニタリング。
【0088】
特定の実施形態では、本明細書に開示された間葉系幹細胞の集団を誘導する、活性化する、またはプライミングするエクスビボでの方法は、幹細胞集団の遺伝子発現、タンパク質レベル、または細胞シグナル伝達経路の、測定可能な変化をもたらす。特定の実施形態では、変化は、遺伝子発現、タンパク質レベル、または細胞シグナル伝達の増加である。特定の実施形態では、変化は、無刺激のまたは対照のサンプルと、刺激のまたは試験のサンプルとの間で測定した、統計学的に優位な変化である。特定の実施形態では、無刺激のまたは対照のサンプルと、刺激のまたは試験のサンプルとの間の変化は、少なくとも2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、またはそれ以上の増加である。特定の実施形態では、無刺激のまたは対照のサンプルと、刺激のまたは試験のサンプルとの間の変化は、少なくとも100倍またはそれ以上の増加である。特定の実施形態では、無刺激のまたは対照のサンプルと、刺激のまたは試験のサンプルとの間の変化は、少なくとも2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、またはそれ以上の減少である。特定の実施形態では、無刺激のまたは対照のサンプルと、刺激のまたは試験のサンプルとの間の変化は、少なくとも100倍またはそれ以上の減少である。
【0089】
特定の実施形態では、TLR3リガンドを含む本明細書に開示された間葉系幹細胞の集団を誘導する、活性化する、またはプライミングするエクスビボでの方法は、無刺激細胞集団と比較して、以下の遺伝子のいずれかのmRNA発現を少なくとも2倍誘導する:CXCL9;EGFR;IRF1;A2M;FAS;IL2RG;MMP3;GBP1;ISG15;FCGR1;NFKB1;NOS2A;USF1;YY1;JAK2;STA2、STAT4;STAT5;SOCS1;またはIRF1。特定の実施形態では、TLR3リガンドを含む本明細書に開示された間葉系幹細胞の集団を誘導する、活性化する、またはプライミングするエクスビボでの方法は、無刺激細胞集団と比較して、以下の遺伝子のいずれかのmRNA発現を少なくとも2倍減少させる:EPOR;F2R;STAM;PDGFRA;PIAS2;MYC;SH2B1;またはCSF2RB。特定の実施形態では、TLR3リガンドを含む本明細書に開示された間葉系幹細胞の集団を誘導する、活性化する、またはプライミングするエクスビボでの方法は、無刺激細胞集団と比較して、以下の遺伝子のいずれかのmRNA発現を少なくとも10倍誘導する:CXCL9;GBP1;ISG15;SOCS1;MMP3;JAK2;またはIRF1。特定の実施形態では、TLR3リガンドを含む本明細書に開示された間葉系幹細胞の集団を誘導する、活性化する、またはプライミングするエクスビボでの方法は、無刺激細胞集団と比較して、以下の遺伝子のいずれかのmRNA発現を少なくとも20倍誘導する:CXCL9、GBP1、ISG15、またはSOCS1である。特定の実施形態では、TLR3リガンドを含む本明細書に開示された間葉系幹細胞の集団を誘導する、活性化する、またはプライミングするエクスビボでの方法は、無刺激細胞集団と比較して、CXCL9のmRNA発現を少なくとも100倍誘導する。
【0090】
特定の実施形態では、TLR4リガンドを含む本明細書に開示された間葉系幹細胞の集団を誘導する、活性化する、またはプライミングするエクスビボでの方法は、無刺激細胞集団と比較して、TNFSF10(TRAIL)のmRNA発現を少なくとも2倍、10倍、100倍または1000倍誘導する。
【0091】
本発明は、細胞治療の方法も提供し、当該方法は、(a)間葉系幹細胞の集団を提供する工程、(b)本発明の誘導媒体を提供する工程、(c)幹細胞集団を誘導媒体と接触させる工程、および(d)適切な条件下で細胞を培養する工程、を含む。
【0092】
本発明の方法は、本明細書に別記される通り、固体表面に接している細胞を培養することを含んでもよい。例えば、(a)間葉系幹細胞の集団を提供する工程、(b)本明細書に開示されるような誘導媒体を提供する工程、(c)幹細胞を誘導媒体と接触させる工程、および(d)適切な条件下で固体表面に接している細胞を培養する工程、を含む工程を提供する。本発明は、間葉系幹細胞の集団を拡大する(expand)ために、本明細書に開示されるような誘導媒体および個体表面の使用も提供する。間葉系幹細胞は、支持体上に接着し、付着し、播種されることもある。典型的に、細胞は、幹細胞の誘導、活性化、またはプライミングを行う前に、例えば約100cells/cm2から約100,000cells/cm2の間(例えば、約500cells/cm2から約50,000cells/cm2、または、より具体的には、約1,000cells/cm2から約20,000cels/cm2の間)などの、望ましい密度で蒔かれる。特定の実施形態では、細胞密度は200-10,000cells/cm2の間である。
【0093】
本明細書に開示される方法の工程は、適切な順序で、または同時に、適切に実施することができ、そして、記載された順に実施する必要がないことが認識されよう。例えば、上記方法で、間葉系幹細胞の集団を提供する工程は、誘導媒体を提供する工程の前、後、または同時に実行してもよい。
【0094】
本発明の方法および使用は、本明細書に開示されるような誘導媒体またはサプリメントを含んでもよい。したがって、いくつかの実施形態では、本発明の方法は、無清方法および/または血法代替物なしの方法であり得る。いくつかの実施形態では、本発明の方法は、フィーダー細胞の層との接触無しで細胞を誘導するために、使用されてもよい。
【0095】
本発明の好ましい方法および使用は、細胞が増殖してから、冷凍保存されるかつ細胞療法に使用される前に生じる、間葉系幹細胞の集団を、誘導する、活性化する、またはプライミングするためのものである。
【0096】
骨髄由来または脂肪組織由来細胞のように、前記の幹細胞集団が成体由来であることが好ましく、幹細胞が間葉系幹細胞の集団であることがさらに好ましい。
【0097】
幹細胞培養のための条件は、当業者に既知である。培養は、間葉系幹細胞の付着に適切な、固体支持体の存在下で実行されることが好ましい。
【0098】
製造の方法は、(a)、(b)、(c)の工程を随意にさらに含み得る。(a)本明細書に開示されるように、培養培地へ細胞を継代する方法(b)適切な条件下でさらに細胞を培養する方法(c)細胞を誘導する、活性化する、またはプライミングする方法
【0099】
分化を誘導することのないMSCのエクスビボでの増加が、例えば、特別にスクリーニングされた多くの適切な血清(ウシ胎児血清またはヒト血清など)を使用して、長期間の間に達成され得ることが示されてきた。生存率および収率を測定する方法は、当該技術分野(例えばトリパンブルー排除)で知られている。
【0100】
もし必要であれば、本発明の細胞集団の細胞を分離するための、工程および手順のいずれかを手動で実行することができる。代替的に、そのような細胞の分離プロセスは、1以上の適切な装置によって、容易化および/または自動化することができ、例は、当該技術分野において知られている。
【0101】
本発明の実施を、適切な細胞培養容器を支持体として使用して、実行してもよい。様々な形状や大きさ(例えば、フラスコ、シングルまたはマルチウェルプレート、シングルまたはマルチウェルディッシュ、瓶、ジャー、バイアル、バッグ、バイオリアクター)、および様々な異なる材料(例えば、プラスチックまたはガラス)から作られた細胞培養容器は、当該技術分野において知られている。適切な細胞培養容器は、当業者により容易に選択され得る。
【0102】
本発明は、本明細書に開示されるように培養誘導媒体を生成するために使用され得る培養培地誘導サプリメントも提供する。「培養培地誘導サプリメント」は、それ自体、間葉系幹細胞を支持できないが、他の細胞培養培地成分と組み合わせた時に、間葉系幹細胞の培養を可能にするまたは向上させる成分の混合物である。したがって、サプリメントは、適切な媒体製剤を生成する目的で、サプリメントと他の細胞培養成分と組み合わせることにより、本発明の機能的細胞培養培地を生成するために、使用することができる。培養培地サプリメントの使用は、当該技術分野で周知である。本発明は、エリスロポエチン(EPO)と組み合わせた、および低酸素または低酸素模倣物(塩化コバルトまたはデスフェリオキサミン)にさらした、TLRリガンドまたはTLRリガンド誘導剤を加える工程を含む、培養培地誘導サプリメントを提供する。サプリメントは、本明細書に開示されたリガンドを含有してもよい。サプリメントは、1以上の追加の細胞培養成分、例えば、アミノ酸、ビタミン、無機塩類、微量元素、炭素エネルギー源および緩衝液から成る群から選択された1以上の細胞培養成分も含んでもよい。
【0103】
培養培地誘導サプリメントは、濃縮液体サプリメント(例えば、2倍から250倍濃縮された液体サプリメント)でもよく、または乾燥したサプリメントでもよい。液体および乾燥型のサプリメント両方が、当該技術分野で周知である。サプリメントは凍結乾燥されてもよい。
【0104】
本発明の培養培地誘導サプリメントは、典型的に汚染を防ぐために、例えば、紫外線、加熱、照射または濾過によって、使用前に滅菌されるだろう。培養培地誘導サプリメントは、保存または輸送のために(例えば、-20℃または-80℃で)凍結してもよい。
【0105】
本発明は、本発明の培養培地サプリメントを包含している、密封された容器も提供する。密封された容器は、汚染を防ぐために、本明細書に開示された培養培地サプリメントの輸送または保存にとって好ましい。容器は、バイオリアクター、フラスコ、プレート、瓶、ジャー、バイアルまたはバッグのような、適切な容器でもよい。
【0106】
様々な物質が、接着幹細胞の培養のための表面として使用されており、そして、適切な材料は当業者によって容易に選択され得る。好ましくは、固体表面はプラスチックで構成されるか、代わりにガラスまたは細胞外マトリックスで構成されてもよい。表面は、平面状、管状、スキャフォールド状、ビーズ状、または繊維状でもよい。
【0107】
本発明の組成物は、血清を含んでもよいし、または本明細書に別記されるように、無血清でおよび/または血清代替物無しでもよい。
【0108】
本発明で使用される間葉系幹細胞は、周知の方法を使用して得ることができる(以下を参照)。様々な種類の間葉系幹細胞は、生体組織源から得られることが好ましいが、胚、胎児、または生体組織から得られるか否かに関わらず、本発明と共に使用されることが想定される。
【0109】
本明細書に開示された誘導媒体は、哺乳類幹細胞、特にヒト成体幹細胞を培養するために使用してもよい。本発明と共に使用され得るヒト成体幹細胞は、間葉系幹細胞が好ましい。マウスまたは霊長類の幹細胞も使用され得る。好ましい実施形態では、幹細胞はヒト骨髄由来の幹細胞(MSC)である。
【0110】
間葉系幹細胞は、例えば、3つ全ての胚葉に特異的なマーカーの、検知可能な発現を示す細胞へと分化する、細胞の能力を判定することによって、3つ全ての胚葉の細胞へと分化する能力を用いて、特定され得る。文脈が他に必要としない限り、単数(例えば、「細胞(a cell)」および同等な言及)の言及は、複数(例えば「細胞(cells)」)を包含する。
【0111】
本発明の誘導媒体は、間葉系幹細胞の集団を誘導する、活性化する、またはプライミングするために使用することができる。したがって、本発明は、細胞療法のために間葉系幹細胞の集団を分離した均一な表現型へと誘発する、活性化する、またはプライミングするための、本明細書に開示されるような誘導媒体の使用を提供する。分離した均一な表現型は、抗炎症のMSC表現型(MSC2)、そして均一な分離した免疫促進性の抗腫瘍MSC表現型(MSC1)になり得る。
【0112】
均一な分離した抗炎症MSC表現型(MSC2)のための好ましい誘導方法は、70-90%コンフルエント培養になって1時間、エリスロポエチン(1mU/mLまたは5ng/mL)との組み合わせた、および低酸素(1%酸素)または低酸素模倣物(塩化コバルトまたはデスフェリオキサミン、どちらか200μM)にさらした、ポリイノシン・ポリシチジン酸(または、ポリ(I:C);1μg/mL)のようなToll様受容体3(TLR3)リガンドを含有している、培養培地を用いたMSCのインキュベーションである。
【0113】
均一な分離した免疫促進性抗腫瘍MSC表現型(MSC1)のための好ましい誘導方法は、70-90%コンフルエント培養になって1時間、エリスロポエチン(1mU/mLまたは5ng/mL)との組み合わせた、および低酸素(1%酸素)または低酸素模倣物(塩化コバルトまたはデスフェリオキサミン、どちらか200μM)にさらした、リポ多糖(LPS、エンドトキシン10ng/mL)のような、Toll様受容体4(TLR3)リガンドを含有している、培養培地を用いたMSCのインキュベーションである。
【0114】
エリスロポエチンと組み合わせた、および低酸素または低酸素模倣物(塩化コバルトまたはデスフェリオキサミン)にさらしたTLRリガンドは、新鮮な培養培地に加えられるか、または培養サプリメントとして加えられ、1時間細胞を用いてインキュベートされる。この誘導工程に続いて、MSCは、細胞および培養物の残骸を除去するために、TLRリガンドなしで、培養培地または適切な緩衝生理食塩水中で2度洗浄される。理論にも縛られることなく、上記した濃度(またはそれ未満)での短いインキュベーション時間(<1時間)および最小限のTLRリガンドの暴露は、望ましい表現型を達成するために重要であり、さらにプロトコルが、内因性のMSCが損傷の部位からの距離で直面し、応答する危険信号の勾配を模倣する。誘発、活性化、またはプライミングされたMSCは、一度洗浄されると従来の方法で、例えば、37℃での5秒から15分間トリプシンとEDTA、またはトリプシン代用物(例えばインビトロゲンからのTrypLE)、コラゲナーゼ、ディスパーゼ、アキュターゼ、または当業者に知られている他の試薬を用いて採取することができる。細胞採取の後、プライミング、活性化、または誘導されたMSCは、標準的な方法で凍結保存することができる。
【0115】
TLR3アゴニストまたはTLR4アゴニストは、インキュベーション、トランスフェクション、担体分子による形質導入によって、または当業者に知られる他の技術によって、送達され得る。
【0116】
細胞は、約1分から約480分、約5分から約475分、約10分から約470分、約15分から約400分、約20分から約120分、約25分から約90分、約30分から約80分、約35分から約70分、約40分から約65分、約45分から約60分、約55分から約60分、および好ましくは約60分間、エリスロポエチン(EPO)と組み合わせた、および低酸素または低酸素模倣物(塩化コバルトまたはデスフェリオキサミン)にさらした、TLRリガンドまたはアゴニストリガンドでインキュベーションしてもよい。
【実施例0117】
実施例1
ヒト一次MSCからの、MSC2遺伝子発現シグネチャーの誘導この実験のために、ヒト一次MSCを、2μg/mLのポリ(I:C)を含有する無血清培養培地内で、37℃および5%CO2下で6時間インキュベートされた。続いて、細胞を2度洗浄し、RNeasy Mini Kit(Qiagen、valencia、CA)を用いてRNAを抽出し、その後、TURBO DNA-Free Kit(Ambion、Austin、TX)を用いて処理した。RNAを逆転写し、結果として生じたcDNAを、iCycler iQ5 Real-Time PCR Detection System(Bio-rad、Hercules、CA)の製造業者の指示に従って、JAK/STAT Signaling Pasthway RT2 ProfilerTM PCR Array(SuperArrayBioscience、Frederick、MD)において使用した。未処理および処理群からの生データを、GEarray Analyzerのソフトウェア(SuperArray、Bethesda、MD)を用いて、分析した。このアレイは、JAK/STAT Signaling Pathwayにおいて、84の異なる遺伝子のRNA発現レベルを測定する。結果は
図1に示され、2倍以上の誘導を示す遺伝子を灰色で囲んで示し、2倍以上の減少を示す遺伝子を黒色で囲んで示し、および2倍以上誘導され、さらなる検証に選ばれた遺伝子を二重に囲んで(2倍以上に減少したPIAS2を除く)示した。
図2は、
図1で選ばれた遺伝子のさらなるqPCR検証を示す。検証を、
図1で分析された同じサンプル上で、遺伝子特異的なプライマーをもちいて、SYBR green Master Mixを使用して、qPCRによって実行した。
【0118】
実施例2
ヒト一次MSCからの、MSC1およびMSC2極性化ヒト一次MSCドナーは、MSC1またはMSC2に極性化された。ヒトMSCを、欠如下(MSC1)または0.5ng/mLのヒト組み換えエリスロポエチン、および200μMの塩化コバルト存在下(MSC1*)のどちらかにおいて、10ng/mLのLPSを含有している培養培地を使用して、極性化した。MSC2細胞を、欠如下(MSC2)または0.5ng/mLのヒト組み換えエリスロポエチン、および200μMの塩化コバルトの存在下(MSC2*)のどちらかにおいて、2μg/mLのPoly(I:C)を含有している培養培地を使用して、極性化した。培養した上清を採取し、その後、前に記載されたように、Bio-Plexによってケモカイン/サイトカイン発現の分析を行った。簡潔に言えば、MSCを24-ウェルプレートにおいて50,000cellsの密度で蒔き、一晩接着させ、それから示されるように、1時間かけてTLRアゴニストをプライミングした。調整培養培地を、48時間後に収集し、製造業者の指示に従ってBio-Plex Cytokine Assays (Human Group I & II; Bio-Rad, Hercules, CA)を用いて分析した。これらの実験を、3つの個別のMSCドナープール上で、少なくとも3回実行した。MSC1誘導は、処方に関わらず、IL6およびIL8を含有するサイトカインの著しい分泌をもたらす一方(
図3)、MSC2誘導は、処方に関わらず、IP10(CXCL10)およびRANTES(CCL5)の著しい分泌をもたらす(
図4)。エラーバーは、+/-平均値の標準誤差(SEM)を示す。
【0119】
実施例3
MSC1およびMSC2の極性化は、多数のMSC源にわたって均一である。3つの異なる商用源からのヒトMSCドナー、および6つまでの異なるドナーを、MSC1に極性化した。ヒトMSCを欠如下(MSC1)または0.5ng/mLのヒト組み換えエリスロポエチン、および200μMの塩化コバルト存在下(MSC1*)のどちらかにおいて、10ng/mLのLPSを含有している培養培地を使用して、極性化した。全RNAをcDNAへ、単離、精製、および逆転写した。定量的リアルタイムPCRを、SYBR Green Master Mixを用いて、実行した。データを比較定量CT法を用いて分析し、18S rRNAハウスキーピング遺伝子への標的遺伝子発現を標準化し、データを未処理の対照に対する倍率増加として示した。TRAIL遺伝子の発現は、MSC1誘導後に、組み合わせたドナーを含む全てのドナーにおいて、著しく増加した(
図5)。エラーバーは、+/-SEMを表す。1:95℃ for 0:30、2:95℃ for 0:10、3:68℃ for 0:30、Plate Read、4:GOTO2、39回さらに実施する、プロトコルを用いる、使用されるヒトcDNAプライマー:Cxcl9 フォワード-CTT TCCTGG CTA CTC CAT GTT リバース-GTT GGT CACTGG CTG ATC TAT AA; Trail フォワード-CTT CAC AGT GCT CCT GCA GT リバース-TTA GCC AACTAA AAA GGC CCC; 18Sr RNA フォワード-GAGGGAGCCTGAGAAACGG、リバース-GTCGGGAGTGGGTAATTTGC。
【0120】
3つの異なる商用源からのヒトMSCドナー、および6つまでの異なるドナーを、MSC2に極性化した。ヒトMSCを、欠如下(MSC2)または0.5ng/mLのヒト組み換えエリスロポエチン、および200μMの塩化コバルトの存在下(MSC2*)のどちらかにおいて、2μg/mLのpoly(I:C)を含有している培養培地を使用して、極性化した。全RNAをcDNAへ、単離、精製、および逆転写した。定量的リアルタイムPCRをSYBR Green Master Mixを用いて、実行した。データを、比較定量CT法を用いて分析し、18S rRNAハウスキーピング遺伝子への標的遺伝子発現を標準化し、データを未処理の対照に対する倍率増加として示した。CXCL9遺伝子の発現は、MSC2誘導後に、組み合わせたドナーを含む全てのドナーにおいて、著しく増加した(
図6)。エラーバーは、+/-SEMを表す。
【0121】
実施例4MSC1およびMSC2の極性化の時間経過。ヒトMSCドナーは、MSC1に極性化された。ヒトMSCを欠如下(MSC1)または0.5ng/mLのヒト組み換えエリスロポエチン、および200μMの塩化コバルト存在下(MSC1*)のどちらかにおいて、10ng/mLのLPSを含有している培養培地を使用して、極性化した。細胞を示したように異なる時間で採取した。全RNAをcDNAへ、単離、精製、および逆転写した。定量的リアルタイムPCRをSYBR Green Master Mixを用いて、実行した。データを、比較定量CT法を用いて分析し、18S rRNAハウスキーピング遺伝子への標的遺伝子発現を標準化し、データを未処理の対照に対する倍率増加として示した。TRAIL遺伝子の発現は、MSC1誘導の4時間後に、著しく増加した(
図7)。エラーバーは、+/-SEMを表す。
【0122】
ヒトMSCドナーは、MSC2に極性化された。ヒトMSCを欠如下(MSC2)または0.5ng/mLのヒト組み換えエリスロポエチン、および200μMの塩化コバルトの存在下(MSC2*)のどちらかにおいて、2μg/mLのpoly(I:C)を含有している培養培地を使用して、極性化した。細胞を示したように異なる時間で採取した。全RNAをcDNAへ、単離、精製、および逆転写した。定量的リアルタイムPCRをSYBR Green Master Mixを用いて、実行した。データを、比較定量CT法を用いて分析し、18S rRNAハウスキーピング遺伝子への標的遺伝子発現を標準化し、データを未処理の対照に対する倍率増加として示した。CXCL9遺伝子の発現は、MSC2誘導の4時間後に、著しく増加した(
図8)。エラーバーは、+/-SEMを表す。
【0123】
実施例5MSC1およびMSC2の細胞の生体内分布。ナイーブMSCと比較した、極性化したMSCのインビボ効果を判定する実験を行った。この実験のために、ヒトナイーブMSC、MSC1およびMSC2(100万個の細胞)を、腹腔内(IP)注射によって、野性型マウスへと投与し、4時間後にすべての臓器を採取した。続いて、抽出したRNAを、ヒトGAPDHについて分析し、組織ホーミングを判定するために、マウスGAPDH DNAと比較した。その結果を下の表1に示す。
【0124】
【0125】
実施例6
MSC極性化の間のエリスロポエチンおよび塩化コバルトを用いるインキュベーションは、MSC1およびMSC2細胞の遊走および増殖/生存能力を増大させる。エリスロポエチンおよび低酸素を用いて、または用いないで培養されたMSCの遊走能力を判定するために、ヒトナイーブMSC細胞、およびMSC1またはMSC2に極性化された細胞のどちらかを、個別のトランスウェルインサート(8μM細孔、50,000個の細胞/インサート)に加えた。MSC1細胞を、欠如下(MSC1)または0.5ng/mLのヒト組み換えエリスロポエチン、および200μMの塩化コバルト存在下(MSC1*)のどちらかにおいて、10ng/mLのLPSを含有している培養培地を使用して、極性化した。MSC2細胞を、欠如下(MSC2)または0.5ng/mLのヒト組み換えエリスロポエチン、および200μMの塩化コバルトの存在下(MSC2*)のどちらかにおいて、2μg/mLのPoly(I:C)を含有している培養培地を使用して、極性化した。陰性対照の無血清培養培地(SFM)、陽性対照の血清含有成長培養培地(CCM)、または示されるような対応する誘導培養培地のいずれかを含有する24-ウェルコンパニオンプレート内に、膜を入れた。Nikon Eclipse TE300倒立型蛍光顕微鏡を用いて、16時間のインキュベーション後に、顕微鏡写真を撮影した。
図9は、3回繰り返し行った(n=3)、3を超える独立して実行された実験の、4つの代表的な四分円写真から数えられた、遊走したMSCの代表的なデータを示す。エラーバーは、SEMを示す。
【0126】
増殖アッセイは、エリスロポエチンおよび低酸素を用いて、または用いないで培養されたMSCの、増殖能力および生存率を判定するために用いた。ヒトMSCを欠如下(MSC1)または0.5ng/mLのヒト組み換えエリスロポエチン、および200μMの塩化コバルト存在下(MSC1*)のどちらかにおいて、10ng/mLのLPSを含有している培養培地を使用して、極性化した。MSC2細胞を欠如下(MSC2)または0.5ng/mLのヒト組み換えエリスロポエチン、および200μMの塩化コバルトの存在下(MSC2*)のどちらかにおいて、2μg/mLのPoly(I:C)を含有している培養培地を使用して、極性化した。細胞を48時間、特定の培養培地と共にインキュベートした。各サンプルからの細胞増殖および生存率をそれぞれ、CyQUANT assay(Life Technologies、CA)およびトリパンブルー分析で分析した。細胞増殖のために、細胞を96ウェルプレートにおいて、ウェルあたり50μ中に1×103cellsで3通り播種し、37℃、5%CO2で培養した。サンプルを処置の0、24、48、72および96時間後に採取し、製造業者によって記載されたように(CyQUANT assay、Life Technologies、CA)処理した。示されるデータは、未処理の対照に対して表される。細胞増殖アッセイを、96-ウェルプレートの8つのウェルに沿って繰り返される各サンプル
を用いて、少なくとも3つ別々の実験で実施した(n=3)。エラーバーは、SEMを示す。その結果を(
図10)に示す。
【0127】
実施例7
CXCL9およびTNFSF10のための、qPCRアッセイの検証ヒトMSCを、MSC1へと誘導した。全RNAをcDNAへ、単離、精製、および逆転写した。定量的リアルタイムPCRをSYBR Green Master Mixを用いて、実行した。データを、比較定量CT法を用いて分析し、18S rRNAハウスキーピング遺伝子への標的遺伝子発現を標準化し、データを未処理の対照に対する倍率増加として示した。TRAIL遺伝子の発現は、MSC1誘導後に、著しく増加した。エラーバーは、+/-SEMを表す。プライマーの効率および生成物特異性(
図11)を確立した。
【0128】
ヒトMSCを、MSC2へと誘導した。全RNAをcDNAへ、単離、精製、および逆転写した。定量的リアルタイムPCRをSYBR Green Master Mixを用いて、実行した。データを、比較定量CT法を用いて分析し、18S rRNAハウスキーピング遺伝子への標的遺伝子発現を標準化し、データを未処理の対照に対する倍率増加として示した。CXCL9遺伝子の発現は、MSC2誘導後に、著しく増加した。エラーバーは、+/-SEMを表す。遺伝子発現の時間経過(
図12のA)、および生成物特異性(
図12のB)を確立した。
【0129】
本発明は、好ましい実施形態に特に関連して、詳細に記載されているが、本発明を実施する原理および様式もまた、本明細書に記載されている。本発明は、開示される特定の形式に限定されるものとして解釈するべきではなく、限定的であるというよりむしろ実例である。以下の請求項によって記載されるような、本発明の趣旨および範囲から逸脱せずに、修正、変動および変更が、当業者によって行われてもよい。
【0130】
本明細書に、本発明の好ましい実施形態が示され、記載されているが、そのような実施形態は、ほんの一例としてのみ提供されることは、当業者にとって明らかだろう。多くの変更、変化および置換が、本発明から逸脱することなく、当業者に想到されるであろう。本明細書に記載される本発明の実施形態の様々な代案が、本発明の実施において利用されるかもしれないことを理解されたい。以下の請求項は本発明の範囲を定義するものであり、これらの請求項の範囲内の方法および構造、ならびにそれらの均等物が、それによって包含されるものであるということが意図されている。