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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023109843
(43)【公開日】2023-08-08
(54)【発明の名称】LIDAR及びレーザ用測定手法
(51)【国際特許分類】
   G01S 17/34 20200101AFI20230801BHJP
   G01S 17/89 20200101ALI20230801BHJP
   G02F 1/03 20060101ALI20230801BHJP
   G02B 26/10 20060101ALI20230801BHJP
【FI】
G01S17/34
G01S17/89
G02F1/03 505
G02B26/10 109Z
G02B26/10 Z
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023077976
(22)【出願日】2023-05-10
(62)【分割の表示】P 2020544563の分割
【原出願日】2018-11-02
(31)【優先権主張番号】62/581,267
(32)【優先日】2017-11-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】520155044
【氏名又は名称】アクロノス インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】AQRONOS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100202326
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 大佑
(72)【発明者】
【氏名】シュ-ウェイ フアン
(72)【発明者】
【氏名】ペイジ リ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】デュアルコム測定システムを提供する。
【解決手段】デュアルコム測定システムは、双方向モードロック型フェムト秒レーザと、高速回転台と、ファイバ結合器とを含み得る。高速回転台は、励起ダイオードに結合されていることができる。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
デュアルコム測定システムであって、
双方向モードロックフェムト秒レーザと、
高速回転台であって、
前記高速回転台は励起ダイオードに結合されている、高速回転台と、
ファイバ結合器とを備えるデュアルコム測定システム。
【請求項2】
請求項1に記載のデュアルコム測定システムにおいて、前記双方向モードロックフェム
ト秒レーザは前記高速回転台上に配置されている、デュアルコム測定システム。
【請求項3】
請求項1に記載のデュアルコム測定システムにおいて、前記双方向モードロックフェム
ト秒レーザは2つのレーザ出力を生成し得る、デュアルコム測定システム。
【請求項4】
請求項3に記載のデュアルコム測定システムにおいて、前記2つのレーザ出力は組み合
わされることができる、デュアルコム測定システム。
【請求項5】
請求項4に記載のデュアルコム測定システムにおいて、前記2つのレーザ出力は標準的
なファイバ結合器をもって組み合わされることができる、デュアルコム測定システム。
【請求項6】
請求項3に記載のデュアルコム測定システムにおいて、前記2つのレーザ出力はキャビ
ティを共有できる、デュアルコム測定システム。
【請求項7】
請求項3に記載のデュアルコム測定システムにおいて、前記2つのレーザ出力は本来的
に相互にコヒーレントたり得る、デュアルコム測定システム。
【請求項8】
請求項1に記載のデュアルコム測定システムにおいて、前記高速回転台はファイバ回転
ジョイントを含む、デュアルコム測定システム。
【請求項9】
請求項8に記載のデュアルコム測定システムにおいて、前記ファイバ回転ジョイントは
励起ファイバをキャビティ回転から切り離すことを容易にする、デュアルコム測定システ
ム。
【請求項10】
請求項1に記載のデュアルコム測定システムにおいて、前記測定システムはSagnac効果
を活用する、デュアルコム測定システム。
【請求項11】
請求項1に記載のデュアルコム測定システムにおいて、前記高速回転台の速さは10,
000rpmとされる、デュアルコム測定システム。
【請求項12】
請求項1に記載のデュアルコム測定システムにおいて、前記高速回転台の速さは50,
000rpmとされる、デュアルコム測定システム。
【請求項13】
デュアルサイドバンドFMCW LiDARシステムであって、
調光生成ユニットと、
送受信ユニットと、
制御及び処理ユニットとを備える、デュアルサイドバンドFMCW LiDARシステ
ム。
【請求項14】
請求項13に記載のデュアルコム測定システムにおいて、前記調光生成ユニットは連続
波長ダイオードレーザをさらに備える、デュアルコム測定システム。
【請求項15】
請求項14に記載のデュアルコム測定システムにおいて、前記連続波長ダイオードレー
ザは電気光学的振幅モジュレータに入力される、デュアルコム測定システム。
【請求項16】
請求項13に記載のデュアルコム測定システムにおいて、前記送受信ユニットはビーム
エキスパンダをさらに備える、デュアルコム測定システム。
【請求項17】
請求項13に記載のデュアルコム測定システムにおいて、前記送受信ユニットは偏光ビ
ームスプリッタをさらに備える、デュアルコム測定システム。
【請求項18】
請求項13に記載のデュアルコム測定システムにおいて、前記制御及び処理ユニットは
2次元走査ユニットをさらに備える、デュアルコム測定システム。
【請求項19】
請求項18に記載のデュアルコム測定システムにおいて、前記2次元走査ユニットはガ
ルバノミラーをさらに備える、デュアルコム測定システム。
【請求項20】
請求項18に記載のデュアルコム測定システムにおいて、前記2次元走査ユニットは八
角形ミラーをさらに備える、デュアルコム測定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は一般的にLiDAR及びレーザの分野に関するのであり、より具体
的にはデュアルコム(dual comb)測定手法互換な双方向レーザに関するのであり、また
、デュアルサイドバンド周波数変調連続波(FMCW、frequency-modulated continuous
-wave)測定手法にも関する。
【背景技術】
【0002】
デュアルコム分光法は新たに出現した分光ツールであり、周波数解像力、周波数正確性
、広帯域性、及び周波数コムの輝度を活用して超高解像・高感度な広帯域分光法をもたら
す。デュアルコム分光法は、2つのコヒーレント周波数コムを用いることによって、コム
の歯毎に試料の分光応答を迅速に測定することができ、従来型の分光器のサイズ制約や機
材応答制限を伴わずにしてこれをなし得る。
【0003】
デュアルコム系の手法は、高解像分光法、精密測距、及び3次元イメージングについて
興味深い応用法をもたらす。伝統的な手法との比較でデュアルコム手法がもたらし得る主
たる利点について述べる。例えば、デュアルコム分光法では、高解像性能を保ったまま、
標準的なフーリエ変換分光法に比して数オーダー改善した読み取り速度をもたらす。もっ
とも、該手法の広範な採用は、複雑であり且つ高価な超高速レーザシステムを要すること
によって妨げられてきた。
【0004】
フーリエ変換分光法は、科学的研究や化学及び製薬業界における化学サンプル解析用の
手段である。近年においては、その測定速度、感度、及び精度は、デュアル周波数コムを
用いることによって著しく向上させることができるものと示されている。また、極短パル
スを用いて非線形効果を惹起する近年の例により、デュアルコム分光法の利便性が強化さ
れたといえる。もっとも、該手法が2つの周波数コムを要し、また、それらのコムがアク
ティブ安定化を要するがために、該手法が広範に採用されることが妨げられている。
【0005】
リモートセンシングにおける最も基本的な測定事項の1つとしては、物体の絶対距離を
決定する能力を挙げることができる。高精度測距は大規模製造分野及び将来における密陣
形航行人工衛星ミッションの両方において重要な役割を果たすのであり、個々の人工衛星
の相対的な向き及び位置を維持するために絶対距離に関して迅速且つ正確な測定が肝要で
ある。既知な手法について述べるに、2つのコヒーレント広帯域ファイバレーザ周波数コ
ム光源を用いるとして、飛行時間(ToF、time-of-flight)手法及び干渉手法の利点を
組み合わせるコヒーレントレーザ測距システムを用いて絶対距離測定をもたらすのであっ
て、複数のリフレクタから低出力を伴いつつそれがなされる。パルスToFは精度3mm
をもたらし、曖昧性レンジは200msにおいて1.5mとなる。光学キャリアフェーズ
を介して精度は60msにおいて5nmより良いものに改善され、無線周波数フェーズを
介して曖昧性レンジは30kmに拡張されるのであり、場合によっては長距離において1
0^13における2のレベルでの測距(2 parts in 10^13 ranging)をもたらし得る。も
っとも、一般的には、物体の距離又は物体の速度のどちらか一方だけを一時に決定し得る
【0006】
デュアルコム系測定法は、精密分光法やコヒーレントLIDAR等の精度及び安定性を
要する用途において卓越した有望性をみせている。もっとも、必要とされる相互コヒーレ
ンスをもたらすためには2つのモードロックされたフェムト秒レーザ周波数コム及び高速
位相ロックループ電子部品が必要とされるが故に、デュアルコム測定法は現在広範に用い
られるにまでは至っていない。したがって、より良いレーザ周波数コムが必要とされてい
る。また、物体の距離及び物体の速度を1回の測定だけで明瞭に決定できる測定手法が必
要とされている。
【0007】
FMCW LiDARもまた有望なレーザ測距手法である。FMCW LiDARシス
テムにおいては、物体の距離は測定された電気的周波数として線形的にエンコードされて
いる。伝統的には、物体の速さは測定された電気的周波数にオフセットをもたらし、この
ため、物体速度に関して別の独立な測定をなさない限り、距離に関して不確定性がもたら
される。本明細書中の様々な実施形態との関係で説明されているデュアルサイドバンド方
法をもちいることによってこの問題は解決されるのであって、たった1回の測定だけで物
体距離及び物体速さの両方を曖昧性を伴わずにして決定できる。
【発明の概要】
【0008】
本発明の実施形態はデュアルコム測定システムを含む。デュアルコム測定システムは、
双方向モードロック型フェムト秒レーザと、高速回転台と、ファイバ結合器とを含み得る
。高速回転台は、励起ダイオードに結合されていることができる。
【0009】
この概要及び後述の詳細な説明は単に例示的/図示的/説明的なものに過ぎず、限定的
なものとして意図されてはおらず、権利付与請求されている発明についてさらなる説明を
与えるに過ぎない。当業者ならば続く図面及び詳細な説明を参照することによって他のシ
ステム、方法、特徴、及び例示的実施形態についての利点について把握できよう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図面は略図であり縮尺通りには図示されていない。図示の実施形態からの変形は想定内
である。このため、図面中の図案は本発明の範疇を限定することは意図していない。
【0011】
図1】本発明の1つの実施形態による、高速回転台上の双方向モードロックフェムト秒レーザについての概略図である。
図2図2Aは、測距をなすために正サイドバンドのみが用いられる場合のグラフである。図2Bは、時間の関数としての、正サイドバンドについての光学周波数グラフである。 図2Cは、弱反射及び強反射を伴う物体についてのFMCW LiDAR結果についての標準的なグラフである。
図3図3Aは、本発明の例示的実施形態による、デュアルサイドバンドFMCW LiDARのキャリアのみが抑制された場合のグラフである。図3Bは、本発明の例示的実施形態による、時間の関数としての、両サイドバンドについての光学周波数グラフである。図3Cは、本発明の例示的実施形態による、弱反射及び強反射を伴う物体についてのFMCW LiDAR結果についてのグラフである。
図4】本発明の例示的実施形態による、デュアルサイドバンドFMCW LiDARシステムについての概略図である。
図5】本発明の例示的実施形態による、デュアルサイドバンドFMCW LiDARシステムについての概略図である。
図6】本発明の実施形態による、LiDARシステムにて用いられる送受信端末についての概略図である。
図7】本発明の例示的実施形態による、LiDARシステムにて用いられる制御データ処理センタについての概略図である。
図8】本発明の例示的実施形態による、デュアルサイドバンドFMCW LiDARシステムについての概略図である。
図9】本発明の例示的実施形態による、2次元走査ユニットについての概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の開示は、本発明の様々な実施形態及びその使用方法について、少なくとも好適な
最良モードの実施形態を説明するのであり、以下の詳細な説明にて詳述する。当業者なら
ば、本明細書中に説明されている事項の精神及び範疇から逸脱せずそれに変更及び改造を
加えることができよう。本発明は異なる形式の異なる実施形態としてもたらされ得るもの
であるも、図面及び明細書中にて説明するように本発明の好適な実施形態について詳述す
るのであり、本開示は本発明の諸原理についての例示であると解されるべきものであり、
説明された実施形態にほんはつめいの広い範囲を限定することは意図されていない。別段
の規定なき限り、開示した実施形態との関連で説明した任意の特徴、要素、コンポーネン
ト、機能、及びステップは、任意の他の実施形態のそれらと自由に組み合わせたりそれら
と代替させることができるものとなることが意図されている。したがって、例示されてい
る事項は例示の目的のみで示されているものと理解されるべきであり、本発明の範囲を限
定するものとして理解してはならない。
【0013】
以下の説明及び図面においては、同様の要素は同様の参照符合をもって特定される。「
例えば」、「等」、及び「又は」を用いた場合、別段の定めなき限り、非排他的な代替案
を非限定的に示していることになる。「~を含んでいる」又は「~を含む」との語の使用
は、別段の定めなき限り、「~を含んでいるがこれらには限定されていない」又は「~を
含むがこれらには限定されない」を意味する。
【0014】
図1に転じるに、双方向レーザが示されており、これは追加のレーザを必要とせずにデ
ュアルコム測定手法100Aに本質的に向いている。図示のように、一部の実施形態では
、双方向レーザは、Sagnac効果を活用して、双方向レーザ出力120,130間で反復レ
ート差を作出できる。反復レート差を作出するための他の原理も利用できる。開店中の単
一周波数レーザジャイロに関しては、Sagnac効果故に、時計回りにおけるレージング周波
数と反時計回りにおけるレージング周波数とは次の差をもつ:Δfopt=α・fopt・Ω 。こ
こで、αはレーザキャビティの設計に依存する定数であり、foptはジャイロが静止中のレ
ージング周波数であり、Ωは回転の角速度である。
【0015】
同様に、図1で示されるように、励起ダイオード140に結合された高速回転台110
上に双方向モードロックフェムト秒レーザを置いた場合、Sagnac効果故に時計回り方向と
反時計回り方向とについてレーザ出力120,130間に反復レート差が招来され得る。
反復レート差は回転台110の角速度に比例していることができ、Δf_rep=α・f_rep・
Ωとして表すことができ、ここで、αは同一キャビティ設計依存係数であり、f_repはシ
ステム静止時の反復レートである。図1に示すように、2つのモードロックフェムト秒レ
ーザを作成することを要さない。一部の実施形態では、2つのレーザ出力120,130
図1に示すように標準的なファイバ結合器を用いて組み合わせることができ、そしてこ
れによってデュアルコム測定用の光源を得たことになる。また、2つのレーザ出力120
,130を組み合わせる任意の他の方法を用いることもできる。デュアルコム測定の標準
的な2レーザ型の実施形態では、2つのレーザキャビティは独立に変動し、それらのノイ
ズは全く無相関である。よって、何もしない場合には独立している2つのキャビティをロ
ックし、また、2つのレーザ間で相互コヒーレンスを担保するために高速フィードバック
電子機器が必要となり得る。追加の情報は付録A及びBに記載されており、それらの全体が
参照によって取り込まれる。一部の実施形態では、双方向レーザ出力120,130は同
じキャビティを共有しており、したがってどの線形キャビティゆらぎについても2つの双
方向レーザ出力120,130は等しく影響を受ける。この共通ノイズ特性故に、高速位
相ロックループ電子部品すら必要とせずに、2つのレーザ出力120,130は本来的に
互いにコヒーレントたり得る。回転台110は、ポンプファイバをキャビティ回転から分
離するためのファイバ回転ジョイント150をも含み得る。
【0016】
システム複雑性の削減及びコスト削減の観点から、近時においては、双方向レーザをデ
ュアルコム測定システムに適用することに関して興味が示されている。2つのモードロッ
クされたフェムト秒レーザ周波数コム及び高速位相ロックループ電子部品が必要とされる
が故に、デュアルコム測定法は現在広範に用いられるにまでは至っていない。一部の実施
形態では、2モードロックレーザを双方向レーザで代替することによって、レーザの費用
を半減し得る。また、先の段落で述べたように、高速位相ロックループ電子部品は最早不
要となり得るのであり、システム複雑性及びコストをさらに減らせる。現代においては、
既存技術はファイバレーザキャビティは静止しているものとされており、故にキャビティ
は非対称であることが要求される。さらに、2方向における反復レートを相違させるため
には、等しくない非線形性を導入することを要する。非対称なキャビティ及び要求される
非線形性故に、2つの方向において被るキャビティノイズは最早完全に相殺できない(線
形キャビティ揺らぎのみが2方向において等しくもたらされる)。したがって、双方向レ
ーザ出力は互いから徐々に離れていくのであり、低速フィードバックが実装されない限り
相互コヒーレンスは喪失される。また、レーザ安定性を担保するために、非対称性及び非
線形性あまり高度に設定できず、故に反復レート差は通常は100Hz未満に制限され、
結果としてデュアルコム測定システムのデータ取得頻度が制約に服する。
【0017】
他方で一部の実施形態では、デュアルコム測定システムを用いる双方向レーザは、Sagn
ac効果を利用でき、これは回転台の速さによって線形的に制御可能である。反復レート差
は最早キャビティ非対称性及び非線形性に依存しなくなり得る故に、一部の実施形態では
、相互コヒーレンスが徐々に失われること及びデータ取得頻度の増大を克服し得る。一部
の実施形態では、容易に入手可能なモーター付き回転台(速さ:10,000rpm(Ω
))を用いることができ、反復レート差(Δfrep)を2kHz(即ち、従来技術に比べて1
オーダー以上優れた値)とすることができる。任意の他の種類の回転台を用いることもで
きる。回転速度が50,000rpmとされる高速回転台をもってすれば反復レート差は
10kHzレベルへとさらに上げることができる。また、反復レートは回転速さに線形的に
比例するため、回転台の速さを変えるだけでチューニングをなし得るのであり、また、モ
ーターの回転の速さを追跡することによって再較正できる。(Δfrep=α・frep・Ω)な
お、高速回転によりシステムの慣性モーメントが増大するのであり、故に環境からの任意
の外乱に対してシステム全体がより安定的なものたり得る(回転を付された弾丸がより安
定した飛翔体となることを想起されたい)。
【0018】
図2A~2Cは、標準搬送波について単一のサイドバンドを抑制した場合と関連するグ
ラフであって、伝統的なFMCW LiDAR原理を示すグラフである。図2Aでは、キ
ャリア及び負のサイドバンドが抑制されて、測距をなすために正のサイドバンドのみが活
用される、とのことを示すグラフ200Aが示されている。図2Bでは、正のサイドバン
ドを時間の関数として示している光学周波数グラフ200Bが示されており、周波数スイ
ープ(Δ/T)は正の傾きを示している。図2Cでは、弱反射をもたらす物体が3m(L
=3m)にあり強反射をもたらす物体が5m(L=5m)にある場合の標準的なFMCW
LiDAR結果グラフ200Cが示されている。FMCW LiDARシステムにおい
ては、物体の距離は測定された電気的周波数として線形的にエンコードされており、次式
のとおり:
【数1】
ここで、cは光速であり、f_Dは物体の速さによって生じるドップラー周波数である。
上述の式から分かるように、物体の速さは測定される電気的周波数にオフセットをもたら
し、その結果、別の独立な物体の速さ測定を行わない限り、距離に関して曖昧性がもたら
される。
【0019】
図3A~3Cではキャリア抑制デュアルサイドバンドと関連するグラフが示されており
、例示的なデュアルサイドバンドFMCW LiDAR原理がそこにて示されている。図
3Aは、デュアルサイドバンドFMCW LiDARにおいてキャリアだけ抑制された場
合のグラフ300Aについて示す。測距をなすためには、正負両方のサイドバンドを活用
することができる。図3Bは、時間の関数として両方のサイドバンドについての光学周波
数グラフ300Bについて示す。周波数スイープについて正の傾きがあると同時に周波数
スイープについて負の傾きもあり得る。図3Cは、例示的なデュアルサイドバンドFMC
W LiDARについての例示的な結果グラフ300Cについて示すのであり、弱反射を
もたらす物体が3m(L=3m)にあり強反射をもたらす物体が5m(L=5m)にある
場合についてのグラフである。各物体について2つの測定された電気的周波数がもたらさ
れ得る、即ち、1つはドップラー周波数でアップシフトされたfM,uであり、1つはド
ップラー周波数でダウンシフトされたfM,dである。一部の実施形態では、デュアルサ
イドバンド手法を用いて、たった1つの測定で、物体距離及び物体速さの両方を、同時に
且つ明確に決定できる。物体距離及び速さは、2つの電気的周波数(即ち、fM,u及び
M,d)の各々を平均及び差分することによって算出できる。
【0020】
図4は、デュアルサイドバンドFMCW LiDARシステムv400Aについての概
略図である。単一周波数ダイオードレーザ410を電気光学的振幅モジュレータ(EOM
、electro-optic amplitude modulator)420に入力することができる。EOM420
を用いて単一周波数ダイオードレーザ410から2つのサイドバンドを作成することがで
きる。EOM420のバイアス電圧は、キャリア周波数を抑制するものとなるように慎重
に選ばれる。そして、エルビウムドープ光増幅器430を用いて、光学出力を3Wにブー
ストすることができる。2次元走査ユニット450はコンピューティングシステム460
によって制御されることができ、光を興味対象領域へと導くことができ、やがてLiDA
R画像を形成できる。バランス型手法440もまた統合して測定感度を向上させることが
できるのであり、デュアルサイドバンドFMCW LiDARシステム400Aが距離1
20mにある反射率10%の物体について測定できるようになる。
【0021】
現在入手可能な例示的なLiDARシステムについて言及するとすれば、Velodyne社の
ものを挙げることができる。Velodyne社のLiDARシステムは、機械的な回転を伴う。
該システムは、64個のレーザと64個の検出器とを用いて様々な垂直アングルを包括す
る。16個のレーザと32個の検出器が1つのグループに含まれている。もっとも、この
LiDARシステムの大きな欠点は、より遅い回転速度とLiDARシステムの複雑な設
計とにあると言えよう。別の利用可能なLiDARシステムについて言及するに、Quanen
ergy社のものを挙げることができる。該システムは、光学位相アレイを用いて物体につい
て走査するのであり、各アンテナの位相を制御することによって光を導く。もっとも、こ
のシステムの大きな欠点としては次のことを挙げることができる:スポットの質が低いた
め、長距離での物体検出が困難となること。図5は、本発明の例示的実施形態による、デ
ュアルサイドバンドFMCW LiDARシステム500についての概略図である。Li
DARシステムは主として次ぎの3つの部分を含む:調光生成ユニット、送受信ユニット
505、並びに制御及び処理ユニット550。
【0022】
送受信ユニット505は、1つ以上の送受信端末510及び520を有する。それは、
レーザ及び制御信号530並びにデータリンク540を有し得る。また、それは、制御及
び信号処理ユニット550を有することもできる。制御及び信号処理ユニット550は、
送受信ユニット505から分離されることができるのであり、これによって、LiDAR
システム500の車両内システムレイアウトがより柔軟になる。送受信ユニット505は
、車両の天辺に配置でき、制御及び信号処理ユニット550は車内に配置できる。そして
、制御信号は長い電気ケーブルを介して送受信ユニットへと伝達できるのであり、受信光
信号は長いSMF-28ファイバを介して信号処理ユニット550へと戻される。
【0023】
図6は、本発明の実施形態による、LiDARシステムにて用いられる送受信端末につ
いて示す。送受信端末は、x軸制御ミラー610とy軸制御ミラー620とを有する2軸
制御ミラーシステムを用い得るのであり、これによって高速3次元走査と走査角度の高速
調整とを達成することができる。送受信端末610は、検出モジュール630をも有し得
る。レーザ及び制御信号640は、2軸制御ミラーシステムを用いて物体660へと偏向
できる。データリンク650は、検出モジュールを通って物体660へと届き得る。
【0024】
図7は、本発明の例示的実施形態による、LiDARシステムにて用いられる制御デー
タ処理センタ700について示す。センタ700は、高次元情報を伝統的レーザ信号にエ
ンコードするために用い得るのであり、例えば速度等の物体についてより多くの情報をも
たらすことができる。LiDARシステムからのこのような高次元情報によって、より少
ない推測や憶測で、複雑な環境に置かれた人工知能ユニットが自己が置かれた状況を認識
することができる。換言するに、本発明のLiDARシステムの強化されたセンシング能
力故に、人工知能ユニットの演算負荷を軽減できる。
【0025】
図8は、調光生成ユニットと送受信ユニット505と制御及び処理ユニット550とを
有するデュアルサイドバンドFMCW LiDARシステムについての概略図800を示
す。調光生成ユニット内では、1550nmにセンタリングされた連続波長(CW、cont
inuous wavelength)ダイオードレーザ810を、20GHzの電気光学振幅モジュレー
タ(EOM、electro-optic amplitude modulator)820に入力する。無線周波(RF
)信号をEOM820内へと送ることによって、EOM820は、2つの等強度サイドバ
ンドをCWダイオードレーザ810から生成する。電圧制御オシレータ(VCO、voltag
e-controlled oscillator)830をここで適用して、CWレーザの周波数変調のための
RF信号を生成する。VCO830の駆動信号は、電圧出力が3.5Vから5.5Vとさ
れる500kHzの疑似のこぎり信号であり、5GHzから6GHzでスイープするRF
信号がもたらされる。最大検出射程が論理的には300mに達するようにするために、5
00kHzとした。システムは、スイープ周波数を200kHzから100MHzの間で
変更して、同じ解像力を維持しつつ異なる検出射程をもたらし得る。本明細書にて説明す
る特徴を補完する限りにおいて、波長及び帯域を選ぶことができる。mVレベルにて慎重
に電源からのバイアス電圧を選定することによって、キャリア周波数を最大限に抑制でき
、2つのサイドバンドが最大強度を達成できる。そして、変調された光学信号は、エルビ
ウムドープのファイバ前増幅器840を用いて20mWに増幅でき、50:50ファイバ
結合器によって2つの経路へと分割される。一方の経路は高出力エルビウムドープファイ
バ増幅器(EDFA、Erbium-doped fiber amplifier)860へと供給され、そして10
Wにブーストされる。他方の経路は、2×2 50:50ファイバ結合器870へと供給
されて、測距のためのローカル基準として用いられる。EDFA860の出力は、車両の
下部から天辺までへと長いSMF-28ファイバを介して送受信ユニットに接続され、コ
リメータを介して自由空間ビームに変換される。そして、光ビームは、最大限の信号収集
のために直径2cmのビームにビームエキスパンダによって拡張される。ビームが大きけ
れば大きい程に良い。偏光ビームスプリッタ(PBS、polarization beam splitter)8
70は、コリメータ検出のために実装される。そして、出力信号は、半波長板(HWP、
half wave plate)を介して、強度を最大限活用するために電気的横方向(TE、transve
rse electric)偏光に最適化される。そして、光は、制御及び処理ユニットによって制御
される2次元走査ユニット880へと導かれる。2次元走査ユニット900は、図9に示
されているように、次の2つのコンポーネントからなる:即ち、光の垂直偏向のためのガ
ルバノミラー910及び光の水平偏向のための回転する八角形ミラー920。ガルバノミ
ラーの回転角は、20°の垂直視野角までをもたらすように構成されている。また、遠距
離物体検出のためのズームイン機能をも有していることができ、ガルバノミラー920の
回転角範囲を変えることによってこれを達成できる。ガルバノミラー920及び八角形ミ
ラー910の位置は、90°の水平視野角をもたらすように慎重に設定されている。ガル
バノミラー920の走査レートは、10Hzから2Hzの範囲に入るグローバルトリガレ
ートによって決定される。八角形ミラー910の回転速度は3000rpmとされ、合計
で毎秒400本の水平走査線がもたらされる。そして、トリガレートを10Hzから2H
zに変えることによって、レンダリング画像の解像度は40ライン/フレームから200
ライン/フレームに変えることができる。解像度が200ライン/フレームである場合、
ライン毎に1500ポイントを取ることができ、垂直空間分解能は0.1°となり得るの
であり、水平空間分解能は0.06°となり得るため、画像の鮮明度を向上させることが
できる。
【0026】
図8に示すように、制御及び処理ユニットは次のものを含み得る:バランス型光検出器
(BPD、balanced photodetector)892、高速DAQカード、高速プロセッサ、2チ
ャンネル任意形状波形生成器、及び2チャンネル信号生成器。バランス型手法を統合して
測定感度を向上させることができるのであり、デュアルサイドバンドFMCW LiDA
Rシステムが距離120mにある反射率10%の物体について測定できるようになる。バ
ランス型検出器は、2つの信号経路を受信して共通ノイズを相殺できる。BPDは、2つ
の経路間の信号差の検出のみをなし得る。LiDARシステムは、距離120mにある反
射率10%の物体からは-70dBmのパワーを受信できるのであり、これはバランス型
光検出器のノイズ等価パワーに達する。受信信号は2×2 50:50ファイバ結合器8
94を介してローカル基準信号と結合されるのであり、1GHzの帯域を有するBPD8
92によって検出されるのであり、レーザの周波数変調範囲に合致している。帯域と変調
周波数とが合致する任意の他のペアも用い得る。ローカル基準経路の偏光はファイバ偏光
コントローラの3つの回転パドルを介して最適化されるのであり、BPDの2つの入力の
パワーは完全にイコライズされるように調整されるのであって最適信号対ノイズ比を得る
ためにファイバ可変光減衰器を挿入することによってこれをなす。そして、信号は300
MHzのサンプリングレートでDAQカードによって取得され、そして、グラフィックカ
ードによって支援されたリアルタイム高速フーリエ変換(FFT、fast Fourier transfo
rm)を適用して、両方のサイドバンドの2つの電気周波数ピークを検出する。
【数2】
及び
【数3】

ここで、Δ=VCOスイープ範囲×VCOスイープレート。そして、2つの周波数につい
てそれぞれ平均及び差分を取ることによって物体の距離及び速さを同時に且つ明確に算出
できる。最後に述べるに、処理済み信号は、興味対象領域におけるポイントオブクラウド
(point of cloud)生成のため、及び、車両内インタフェース上でのリアルタイムレンダ
リングのために用いられ得る。アレイ導波路回折格子(AWG、arrayed-waveguide grat
ing)は、VCO830及びガルバノミラーに関して制御信号をもたらす。VCO830
用の信号はVCOの非線形スイープを補うために高次項を伴うカスタム化のこぎり信号と
することができ、ガルバノミラー用の信号は傾斜三角形波形とすることができる。後処理
において較正される限り、信号の形状は何でも良い。2チャンネル信号生成器は、5%パ
ルス持続を伴う2~10Hzパルス信号をDAQカードにもたらしてデータ取得をなすの
であり、また、50%デューティ比及び最大2V出力を伴う300HzのTTL信号をも
って八角形ミラーを制御する。したがって、一部の実施形態では、本願明細書にて説明さ
れた車両(或いは例えば飛行機や船等の任意の他の輸送装置)内にて実装された光生成ユ
ニット並びに制御及び信号処理ユニットは、座席の下かその他の場所に置かれ得るのであ
り、送受信ユニットは車両の天辺にマウントされることができる。光は、長いファイバケ
ーブルを介して送受信ユニットへと伝送され得るのであり、受信信号は長いファイバを介
して制御及び信号処理ユニットへと送り戻され得る。2次元走査ユニットは、長いBNC
ケーブルを介して制御ユニットによって制御されている。2次元走査においては、受信信
号はリアルタイム3次元ポイントオブクラウドへとレンダリングでき、これをインタフェ
ース上で表示でき、運転者に対しての表示装置ネットを伴い得る。輸送装置は、現在利用
可能な特徴を有しておりこれによって音声及び動画の両方で情報を運転者へと伝達し得る
【0027】
ここで用いる場合、「及び/又は」との用語は、第1の概念と第2の概念との間に配置
した場合、次のことのどれか1つを意味する:(1)第1の概念、(2)第2の概念、及
び(3)第1及び第2の概念。「及び/又は」を伴って列挙された複数の概念についても
同様に解されるべきであり、即ち、諸概念の「1つ以上」が結合されていることになる。
「及び/又は」構文部分で具体的に特定された概念の他にも他の概念も随意的には含まれ
得るので有り、具体的に特定された概念に関連しているか否かは問われない。したがって
、非限定的な例を述べるに、「A及び/又はB」について非排他的な構文(例えば、「備
える」)を用いて言及する場合、1つの実施形態ではAのみの場合(随意的にはB以外の
概念を含み得る)を指し得る。別の実施形態では、Bのみの場合(随意的にはA以外の概
念を含み得る)を指し得る。さらに別の実施形態では、A及びBの両方(随意的には他の
概念を含み得る。)を指し得る。これらの概念は、構成要素、動作、構造、ステップ、操
作、値等を指し得る。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2023-06-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
デュアルサイドバンドFMCW LiDARシステムであって、
調光生成ユニットと、
送受信ユニットと、
制御及び処理ユニットとを備える、デュアルサイドバンドFMCW LiDARシステム。
【請求項2】
請求項に記載のデュアルコム測定システムにおいて、前記調光生成ユニットは連続波長ダイオードレーザをさらに備える、デュアルコム測定システム。
【請求項3】
請求項に記載のデュアルコム測定システムにおいて、前記連続波長ダイオードレーザは電気光学的振幅モジュレータに入力される、デュアルコム測定システム。
【請求項4】
請求項に記載のデュアルコム測定システムにおいて、前記送受信ユニットはビームエキスパンダをさらに備える、デュアルコム測定システム。
【請求項5】
請求項に記載のデュアルコム測定システムにおいて、前記送受信ユニットは偏光ビームスプリッタをさらに備える、デュアルコム測定システム。
【請求項6】
請求項に記載のデュアルコム測定システムにおいて、前記制御及び処理ユニットは2次元走査ユニットをさらに備える、デュアルコム測定システム。
【請求項7】
請求項に記載のデュアルコム測定システムにおいて、前記2次元走査ユニットはガルバノミラーをさらに備える、デュアルコム測定システム。
【請求項8】
請求項に記載のデュアルコム測定システムにおいて、前記2次元走査ユニットは八角形ミラーをさらに備える、デュアルコム測定システム。
【外国語明細書】