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特開2023-109883癌診断に有用なクローディン18.2に対する抗体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023109883
(43)【公開日】2023-08-08
(54)【発明の名称】癌診断に有用なクローディン18.2に対する抗体
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20230801BHJP
   C07K 16/30 20060101ALI20230801BHJP
   C12N 15/06 20060101ALI20230801BHJP
   G01N 33/574 20060101ALI20230801BHJP
   C12P 21/08 20060101ALN20230801BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/30 ZNA
C12N15/06 100
G01N33/574 A
G01N33/574 D
C12P21/08
【審査請求】有
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023081407
(22)【出願日】2023-05-17
(62)【分割の表示】P 2021075743の分割
【原出願日】2013-05-06
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2012/001991
(32)【優先日】2012-05-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
2.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】000006677
【氏名又は名称】アステラス製薬株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】515123258
【氏名又は名称】トロン- トランスラショナル オンコロジー アン デア ウニヴェリジテーツメディツィン デア ヨハネス グーテンベルク-ウニヴェルシテート マインツ ゲマインニューツィゲ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】TRON- Translationale Onkologie an der Universitaetsmedizin der Johannes Gutenberg-Universitaet Mainz gemeinnuetzige GmbH
【住所又は居所原語表記】Freiligrathstr. 12 55131 Mainz Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】サヒン, ウグル
(72)【発明者】
【氏名】テューレヒ, エズレム
(72)【発明者】
【氏名】ミットナハト-クラウス, リタ
(72)【発明者】
【氏名】ウォール, シュテファン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】癌の診断、及び/又は癌細胞がCLDN18.2を発現するか否かの判定に有用な抗体を提供する。
【解決手段】(i)特定のアミノ酸配列を有するペプチドに結合する、及び/又は(ii)クローディン18.2(CLDN18.2)に結合し、抗体又はその抗原結合性フラグメントが、特定のアミノ酸配列を有するCLDN18.2内のエピトープに少なくとも結合することによって、CLDN18.2に結合する、抗体又はその抗原結合性フラグメントを提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗体又はその抗原結合性フラグメントであって、
(i)TEDEVQSYPSKHDYV(SEQ ID NO:5)、又はEVQSYPSKHDYV(SEQ ID NO:6)のアミノ酸配列を有するペプチドに結合する、及び/又は
(ii)クローディン18.2(CLDN18.2)に結合し、前記抗体又はその抗原結合性フラグメントが、TEDEVQSYPSKHDYV(SEQ ID NO:5)、又はEVQSYPSKHDYV(SEQ ID NO:6)のアミノ酸配列を有するCLDN18.2内のエピトープに少なくとも結合することによって、CLDN18.2に結合する、抗体又はその抗原結合性フラグメント。
【請求項2】
前記CLDN18.2が、細胞表面膜結合性CLDN18.2である、請求項1に記載の抗体又はその抗原結合性フラグメント。
【請求項3】
前記CLDN18.2が癌細胞上に存在する、請求項1又は2に記載の抗体又はその抗原結合性フラグメント。
【請求項4】
前記癌細胞が、CLDN18.2発現癌細胞である、請求項3に記載の抗体又はその抗原結合性フラグメント。
【請求項5】
前記癌細胞が、胃癌細胞、食道癌細胞、膵臓癌細胞、肺癌細胞、卵巣癌細胞、結腸癌細胞、肝癌細胞、頭頸部癌細胞および胆嚢癌細胞からなる群より選ばれる、請求項3又は4に記載の抗体又はその抗原結合性フラグメント。
【請求項6】
胃上皮細胞以外の非癌性細胞に結合しない、請求項1~5のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合性フラグメント。
【請求項7】
非癌性肺細胞に結合しない、請求項1~6のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合性フラグメント。
【請求項8】
キメラ抗体、ヒト抗体又はヒト化抗体である、請求項1~5のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項9】
モノクローナル抗体である、請求項1~8のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項10】
(i)アクセッション番号DSM ACC3144(muAB 43-14A)もしくはDSM ACC3143(muAB 35-22A)下に寄託されたクローンより生成されるか又は得られる抗体、
(ii)(i)の抗体のキメラ化形態又はヒト化形態である抗体、
(iii)(i)の抗体の特異性を有する抗体、及び
(iv)(i)の抗体の抗原結合部分又は抗原結合部位を含む抗体、からなる群より選ばれる抗体、あるいは
(i)~(iv)のいずれか一つの抗体の抗原結合性フラグメント。
【請求項11】
前記(i)の抗体の抗原結合部分又は抗原結合部位が、前記(i)の抗体の可変領域を含む、請求項10に記載の抗体。
【請求項12】
少なくとも一つの検出可能な標識と結合している、請求項1~11のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合性フラグメントを含む、コンジュゲート。
【請求項13】
請求項1~11のいずれか一項に記載の抗体を産生可能なハイブリドーマ。
【請求項14】
アクセッション番号DSM ACC3144(muAB 43-14A)又はDSM ACC3143(muAB 35-22A)下に寄託されたハイブリドーマ。
【請求項15】
試料中のCLDN18.2を検出する或いはCLDN18.2の量を決定する方法であって、
(i)試料を、請求項1~11のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合性フラグメント、或いは請求項12に記載のコンジュゲートと接触させるステップと、
(ii)前記抗体、前記抗原結合性フラグメント、又は前記コンジュゲートと、CLDN18.2との間における複合体の形成を検出する或いは複合体の量を決定するステップと、を含む、方法。
【請求項16】
細胞がCLDN18.2を発現するか否かを判定する方法であって、
(i)、細胞試料を、請求項1~11のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合性フラグメント、或いは請求項12に記載のコンジュゲートと接触させるステップと、
(ii)前記抗体、前記抗原結合性フラグメント、又は前記コンジュゲートと、前記試料における細胞によって発現されたCLDN18.2との間における複合体の形成を検出するステップと、を含む、方法。
【請求項17】
癌を診断、検出又は観測する方法であって、
(i)生体試料を、請求項1~11のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合性フラグメント、或いは請求項12に記載のコンジュゲートと接触させるステップと、
(ii)前記抗体、前記抗原結合性フラグメント、又は前記コンジュゲートと、CLDN18.2との間における複合体の形成を検出する、及び/又は複合体の量を決定するステップと、を含む、方法。
【請求項18】
CLDN18.2を標的とする癌療法により癌を治療可能であるか否かを判定する方法であって、
(i)癌細胞を含む試料を、請求項1~11のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合性フラグメント、或いは請求項12に記載のコンジュゲートと接触させるステップと、
(ii)前記抗体、前記抗原結合性フラグメント、又は前記コンジュゲートと、CLDN18.2との間における複合体の形成を検出するステップと、を含む、方法。
【請求項19】
請求項1~11のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合性フラグメント、或いは請求項12に記載のコンジュゲートを含む、診断テストキット。
【請求項20】
前記CLDN18.2が、配列表のSEQ ID NO:2に従うアミノ酸配列、又は前記アミノ酸配列の変異体を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合性フラグメント、請求項12に記載のコンジュゲート、請求項13又は14に記載のハイブリドーマ、或いは請求項15~18のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
クローディンは、上皮と内皮との密着結合部に位置する内在性膜タンパク質である。クローディンは、二つの細胞外ループを持つ四つの膜貫通領域、並びに細胞質に位置するN及びC末端を有すると予測されている。膜貫通タンパク質のクローディン(CLDN)ファミリーは、上皮及び内皮の密着結合部の維持において重要な役割を果たしており、細胞骨格の維持および細胞情報伝達にも関与している可能性がある。
【0002】
クローディン18(CLDN18)分子は、四つの疎水性膜貫通領域と二つの細胞外ループ(疎水性領域1及び疎水性領域2に取り囲まれるループ1、並びに疎水性領域3及び疎水性領域4に取り囲まれるループ2)を備える、統合膜貫通タンパク質(テトラスパニン)である。CLDN18は、二つの異なるスプライス変異体中に存在することが、マウスとヒトにおいて記述されている、(Niimi,Mol.Cell.Biol.21:7380-90,2001)。これらのスプライス変異体(Genbankアクセッション番号:スプライス変異体1(CLDN18.1):NP_057453、NM_016369、並びにスプライス変異体2(CLDN18.2):NM_001002026、NP_001002026)は、およそ27,9/27,72kDの分子量を有する。スプライス変異体のCLDN18.1及びCLDN18.2は、第1膜貫通(TM)領域及びループ1を含むN末端部において異なる一方、C末端の一次タンパク質配列は同一である:図1参照。
【0003】
CLDN18.1は正常肺の細胞で選択的に発現するが、CLDN18.2は胃細胞でのみ発現する。しかしながら、正常胃におけるCLDN18.2の発現は、胃の上皮における分化短寿命細胞に限られる。CLDN18.2の発現は、様々な腫瘍組織にて確認されている。例えば、膵臓癌、食道癌、胃癌、気管支癌、乳癌、ENT腫瘍などにおいてCLDN18.2の発現が見つかっている。CLDN18.2は、胃癌、食道癌、膵臓癌、非小細胞肺癌(NSCLC)などの肺癌、卵巣癌、結腸癌、肝癌、頭頸部癌、胆嚢癌のような原発腫瘍、及びこれらの転移、特にクルーケンベルグ腫瘍、腹膜転移、リンパ節転移などの胃癌転移に対する予防、及び/又は治療のための重要な標的である。
【0004】
CLDN18.2の癌および正常細胞間における差次的発現、膜への局在、毒性関連正常組織の大半に存在していない点、胃の可欠細胞集団に対する発現の制限、胃の非標的(target-negative)幹細胞により補充することができる分化胃細胞の点から、CLDN18.2は癌免疫療法のための格好の標的となり、癌治療においてCLDN18.2を標的とする抗体系治療法を用いることによって、高い治療特異性が期待される。
【0005】
CLDN18.2標的抗体の臨床応用は、ヒトCLDN18.2がヒトCLDN18.1と相同であるという障害に直面している。ヒトCLDN18.2とヒトCLDN18.1の配列に違いがあるCLDN18.2のN末端細胞外領域を標的とするCLDN18.2特異抗体の構築には成功した。しかしながら、CLDN18.2のN末端部を標的とし、診断、例えば癌組織切片の細胞におけるCLDN18.2発現の検出を目的とする臨床応用に用いられる特性を有する抗体を生成しようとする試みは、失敗してしまった。
【0006】
驚くべきことに、本発明者等は、CLDN18.2のC末端部内に位置する特定のエピトープに対する抗体が抗体の診断応用基準、特にCLDN18.2発現細胞の検出及び特定に関する基準を満たすということを発見するに到った。更に驚くべきことには、これらの抗体は、CLDN18.1及びCLDN18.2で同一の配列に対するものであっても、非癌性肺細胞を標的としない。
【0007】
本発明の抗体は、例えば癌の診断、及び/又は癌細胞がCLDN18.2を発現しているか否かの判定に有用である。好ましくは、癌又は癌細胞はCLDN18.2の表面に発現するという特徴を有する。CLDN18.2を発現する癌細胞は、CLDN18.2に対する抗体を用いる治療など、CLDN18.2を標的とする療法に適した標的である。一態様において、癌細胞がCLDN18.2を発現するか異常に発現するのに対して、正常細胞はCLDN18.2を発現しないか少量のCLDN18.2のみを発現する。CLDN18.2発現細胞は、好ましくは胃癌細胞、食道癌細胞、膵臓癌細胞、肺癌細胞、卵巣癌細胞、結腸癌細胞、肝癌細胞、頭頸部癌細胞、胆嚢癌細胞からなる群より選ばれる。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、抗体又はその抗原結合性フラグメントであって、
(i)TEDEVQSYPSKHDYV(SEQ ID NO:5)、又はEVQSYPSKHDYV(SEQ ID NO:6)のアミノ酸配列を有するペプチドに結合する、及び/又は
(ii)クローディン18.2(CLDN18.2)に結合し、TEDEVQSYPSKHDYV(SEQ ID NO:5)、又はEVQSYPSKHDYV(SEQ ID NO:6)のアミノ酸配列を有するCLDN18.2内のエピトープに少なくとも結合することによって、前記抗体又はその抗原結合性フラグメントがCLDN18.2に結合する、抗体又はその抗原結合性フラグメントに関する。
【0009】
一態様において、前記CLDN18.2は細胞表面膜結合性CLDN18.2である。一態様において、前記CLDN18.2は癌細胞上に存在し、前記癌細胞は、好ましくは、CLDN18.2発現癌細胞である。一態様において、前記癌細胞は、胃癌細胞、食道癌細胞、膵臓癌細胞、肺癌細胞、卵巣癌細胞、結腸癌細胞、肝癌細胞、頭頸部癌細胞、胆嚢癌細胞からなる群より選ばれるものである。一態様において、本発明の抗体又は抗原結合性フラグメントは胃上皮細胞を除いて、非癌性細胞には結合しない。一態様において、本発明の抗体又は抗原結合性フラグメントは非癌性肺細胞に結合しない。一態様において、本発明の抗体は、キメラ抗体、ヒト抗体、又はヒト化抗体である。一態様において、本発明の抗体は、モノクローナル抗体である。
【0010】
これら、及び他の態様において本発明は、
(i)SEQ ID NO:7の抗体重鎖配列、又はその変異体を含む、
(ii)SEQ ID NO:7の抗体重鎖配列又はその変異体のCDR配列の少なくとも一つ、好ましくは二つ、更に好ましくは三つ全部を含む、或いは
(iii)SEQ ID NO:10のCDR3配列もしくはその変異体を含み、好ましくはSEQ ID NO:8のCDR1配列もしくはその変異体、及び/又はSEQ ID NO:9のCDR2配列もしくはその変異体を更に含む、
(I)抗体重鎖、
及び/又は、
(i)SEQ ID NO:11の抗体軽鎖配列、又はその変異体を含む、
(ii)SEQ ID NO:11の抗体軽鎖配列又はその変異体のCDR配列の少なくとも一つ、好ましくは二つ、更に好ましくは三つ全部を含む、或いは
(iii)SEQ ID NO:14のCDR3配列もしくはその変異体を含み、好ましくはSEQ ID NO:12のCDR1配列もしくはその変異体、及び/又はSEQ ID NO:13のCDR2配列もしくはその変異体を更に含む、
(II)抗体軽鎖
を含む抗体に関する。
【0011】
前記の、及び他の態様において本発明はまた、
(i)SEQ ID NO:15の抗体重鎖配列、又はその変異体を含む、
(ii)SEQ ID NO:15の抗体重鎖配列又はその変異体のCDR配列の少なくとも一つ、好ましくは二つ、更に好ましくは三つ全部を含む、或いは
(iii)SEQ ID NO:18のCDR3配列もしくはその変異体を含み、好ましくはSEQ ID NO:16のCDR1配列もしくはその変異体、及び/又はSEQ ID NO:17のCDR2配列もしくはその変異体を更に含む、
(I)抗体重鎖、
及び/又は、
(i)SEQ ID NO:19の抗体軽鎖配列、又はその変異体を含む、
(ii)SEQ ID NO:19の抗体軽鎖配列又はその変異体のCDR配列の少なくとも一つ、好ましくは二つ、更に好ましくは三つ全部を含む、或いは
(iii)SEQ ID NO:22のCDR3配列もしくはその変異体を含み、好ましくはSEQ ID NO:20のCDR1配列もしくはその変異体、及び/又はSEQ ID NO:21のCDR2配列もしくはその変異体を更に含む、
(II)抗体軽鎖
を含む抗体に関する。
【0012】
好ましい態様において、本発明の抗体は、γ-1重鎖定常領域、好ましくはヒトγ-1重鎖定常領域を含む抗体重鎖、及び/又はκ軽鎖定常領域を含む抗体軽鎖を含む。
【0013】
前記の、及び他の態様において本発明は、DSMZ(Inhoffenstr. 7B, 38124 Braunschweig, Germany)に寄託されたものであり、下記の記号及びアクセッション番号のうち一つを有するハイブリドーマ細胞から生成される又は得られる抗体に関する。
1.muAB 43-14A、アクセッション番号DSM ACC3144、2011年10月6日に寄託
2.muAB 35-22A、アクセッション番号DSM ACC3143、2011年10月6日に寄託
【0014】
本発明の抗体は、当該抗体の記号を参照することにより、及び/又は当該抗体を産生するクローン、例えばmuAB 43-14Aを参照することにより、ここに特定される。
【0015】
更に好ましい抗体は、上記のハイブリドーマから生成されて得られる抗体の特異性を有するものであり、特に、抗体結合部分又は抗体結合部位、特に上記のハイブリドーマから生成されて得られる抗体のそれと同一であるか又は高い相同性を示す可変領域を含むものである。好ましい抗体は、上記のハイブリドーマから生成されて得られる抗体のCDR領域と同一又は高い相同性を示すCDR領域を有するものであると考えられる。「高い相同性を示す」場合、各CDR領域において、1~5回、好ましくは1~4回、例えば1~3回、或いは1回又は2回の置換が生じていると考えられる。特に好ましい抗体は、上記のハイブリドーマから生成されて得られる抗体のキメラ化形態又はヒト化形態である。
【0016】
従って、本発明の抗体は、(i)アクセッション番号DSM ACC3144(muAB 43-14A)又はDSM ACC3143(muAB 35-22A)下に寄託されたクローンより生成されるか又は得られる抗体、(ii)(i)の抗体のキメラ化形態又はヒト化形態である抗体、(iii)(i)の抗体の特異性を有する抗体、並びに(iv)(i)の抗体の抗原結合部分又は抗原結合部位を含む抗体、からなる群より選ばれてもよい。(i)の抗体の抗原結合部分又は抗原結合部位は、(i)の抗体の可変領域を含んでもよい。更に、前記抗体の抗原結合性フラグメントも本発明の範疇に含まれる。
【0017】
本発明の抗体は、天然状態、つまり天然由来の状態又は非変性状態において、あるいは変性状態において、CLDN18.2と結合することができることが好ましい。
【0018】
一態様において、本発明の抗体は、SEQ ID NO:5又はSEQ ID NO:6のアミノ酸配列を含み、好ましくは前記アミノ酸配列からなるペプチド、免疫学的に等価のペプチド、或いは前記ペプチドを発現する核酸又は宿主細胞で動物に免疫性を与えるステップを含む方法によって取得することができる。前記ペプチドは、110個以下、100個以下、90個以下、80個以下、70個以下、60個以下、50個以下、40個以下、30個以下或いは20個以下のCLDN18.2における連続アミノ酸を含むことが好ましい。
【0019】
一態様において、本発明の抗体は、SEQ ID NO:24又はSEQ ID NO:25のアミノ酸配列を含み、好ましくは前記アミノ酸配列からなるペプチド、免疫学的に等価のペプチド、或いは前記ペプチドを発現する核酸又は宿主細胞で動物に免疫性を与えるステップを含む方法によって取得することができる。前記ペプチドは、110個以下、100個以下、90個以下、80個以下、或いは75個以下のCLDN18.2における連続アミノ酸を含むことが好ましい。
【0020】
本発明の抗体又は抗原結合性フラグメントは、例えば検出可能な標識など、他の部分に結合、つまり共有結合又は非共有結合していてもよい。
【0021】
本発明は、本明細書に記載の抗体を産生するハイブリドーマ細胞などの細胞にも関する。
【0022】
好ましいハイブリドーマ細胞は、DSMZ(Inhoffenstr. 7B, 38124 Braunschweig, Germany)に寄託されたものであり、下記の記号及びアクセッション番号のうち一つを有する。
1.muAB 43-14A、アクセッション番号DSM ACC3144、2011年10月6日に寄託
2.muAB 35-22A、アクセッション番号DSM ACC3143、2011年10月6日に寄託
【0023】
本発明はまた、SEQ ID NO:5又はSEQ ID NO:6のアミノ酸配列を含み、好ましくは前記アミノ酸配列からなるペプチド、或いは免疫学的に等価のペプチドに関する。前記ペプチドは、110個以下、100個以下、90個以下、80個以下、70個以下、60個以下、50個以下、40個以下、30個以下、或いは20個以下のCLDN18.2における連続アミノ酸を含むことが好ましい。
【0024】
本発明はまた、SEQ ID NO:24又はSEQ ID NO:25のアミノ酸配列を含み、好ましくは前記アミノ酸配列からなるペプチド、免疫学的に等価のペプチド、或いは前記ペプチドを発現する核酸又は宿主細胞に関する。前記ペプチドは、110個以下、100個以下、90個以下、80個以下、或いは75個以下のCLDN18.2における連続アミノ酸を含むことが好ましい。
【0025】
本発明はまた、本明細書中に記載の抗体やその一部、例えば抗体鎖又は抗原結合性フラグメント、或いはペプチドをエンコードする遺伝子又は核酸配列を含む核酸に関する。好ましくは、本発明の核酸は、真核細胞又は原核細胞における発現を可能とする発現制御要素と作動可能に付着している。真核細胞又は原核細胞における発現を確保する制御要素は、当業者に周知のものである。
【0026】
本発明の核酸は、例えばプラスミド、コスミッド、ウイルス、バクテリオファージ等のベクター、または、従来遺伝子工学で用いられていたもの等の他のベクターに含まれるものであってもよい。当該ベクターは、相応の条件下で相応の宿主細胞におけるベクターを選べるようにする標識遺伝子などのさらなる遺伝子を含んでもよい。また、ベクターは、相応の宿主においてコード領域が適切に発現するようにできる発現制御要素を含んでもよい。当該制御要素は当業者にとって公知のものであり、プロモーター、スプライスカセット、翻訳開始コドンを含む。
【0027】
核酸分子の構築、核酸分子を含むベクターの構築、ベクターの適合に選択した宿主細胞への導入、又は、核酸分子の発現の誘導もしくは達成のための方法は、当技術分野で公知である。
【0028】
本発明の更なる態様は、本明細書に開示の核酸又はベクターを含む宿主細胞に関する。
【0029】
本発明の更なる態様は、本発明の抗体又は抗原結合性フラグメントを用いたCLDN18.2もしくはCLDN18.2発現細胞の検出、又はCLDN18.2もしくはCLDN18.2発現細胞の量の決定に関する。CLDN18.2と、本発明の抗体又は抗原結合性フラグメントとの間における複合体を検出するまたはその量を決定することにより、CLDN18.2もしくはCLDN18.2発現細胞を検出すること、又はCLDN18.2もしくはCLDN18.2発現細胞の量を決定することができる。複合体の形成は、CLDN18.2又はCLDN18.2を発現する細胞の存在を示唆する。前記の検出又は量の決定は様々な方式で行うことができる。本発明の抗体又は抗原結合性フラグメントを用いた免疫検出もその一つであるがこれに限られない。抗体を用いてペプチド又はタンパク質を検出する方法はよく知られており、ELISA、競合的結合アッセイなどを含む。通常、こうしたアッセイには、検出用の標識、例えば指標酵素、放射性標識、蛍光色素分子或いは常磁性粒子などと直接的、又は間接的に結合している標的ペプチド又はタンパク質に特異的に結合する抗体又は抗体フラグメントを用いる。本発明の方法は、CLDN18.2のレベル又はCLDN18.2発現細胞のレベルに対する定量的及び/又は定性的評価、例えば絶対評価及び/又は相対評価を可能にする。
【0030】
一態様において本発明は、試料中のCLDN18.2を検出する方法、又はCLDN18.2の量を決定する方法であって、
(i)試料を、本発明の抗体又は抗原結合性フラグメント、或いは本発明のコンジュゲートと接触させるステップと、
(ii)抗体、抗原結合性フラグメント、もしくはコンジュゲートと、CLDN18.2との間における複合体の形成を検出する、又は複合体の量を決定するステップと、を含む方法に関する。
【0031】
一態様において、前記試料は細胞試料、つまり癌細胞などの細胞を含む試料である。本実施形態において、複合体は、抗体、抗原結合性フラグメントもしくはコンジュゲートと、当該試料中の細胞によって発現されたCLDN18.2との間で形成されるのが好ましい。
【0032】
一態様において本発明は、細胞がCLDN18.2を発現するか否かを判定する方法であって、
(i)細胞試料を、本発明の抗体又は抗原結合性フラグメント、或いは本発明のコンジュゲートと、接触させるステップと、
(ii)抗体、抗原結合性フラグメント、或いはコンジュゲートと、前記試料中の細胞によって発現されたCLDN18.2との間における複合体の形成を検出するステップと、を含む方法に関する。
【0033】
一態様において、当該試料の細胞は癌細胞である。複合体は、抗体、抗原結合性フラグメント或いはコンジュゲートと、当該試料中の細胞により発現されたCLDN18.2との間で形成されるのが好ましい。
【0034】
本発明の更なる態様は、本発明の抗体又は抗原結合性フラグメントを用いてCLDN18.2を標的とすることにより、疾患を診断又は分類する方法に関する。これらの方法は、CLDN18.2を発現する細胞の選択的検出を提供し、これにより、当該細胞を、CLDN18.2を発現しない正常細胞やCLDN18.2を発現しない異常細胞と区別する。CLDN18.2を発現する異常細胞によって特徴付けられる疾患は、CLDN18.2を標的とする療法、例えばCLDN18.2に対する治療用抗体を用いる療法により治療することができる。療法又は診断の対象となる好ましい疾患としては、CLDN18.2が発現するか異常に発現する疾患、特には本明細書に記載した種類の癌が挙げられる。
【0035】
一態様において本発明は、癌の診断、検出或いは観測、つまり軽減、進行、経過及び/又は発病の判定のための方法であって、本発明の抗体又は抗原結合性フラグメントを用いて、患者から単離した生体試料におけるCLDN18.2又はCLDN18.2発現細胞を検出すること、及び/又はCLDN18.2又はCLDN18.2発現細胞の量の決定すること、を含む方法に関する。当該方法は、被験者が癌を患っているか又は患者に癌の発病のリスクがある(増加している)か否かを、或いは、治療計画が有効であるか否かを検出するために用いてもよい。
【0036】
従って、一態様において本発明は、癌を診断、検出又は観測する方法であって、
(i)生体試料を、本発明の抗体又は抗原結合性フラグメント、或いは本発明のコンジュゲートと接触させるステップと、
(ii)抗体、抗原結合性フラグメント、或いはコンジュゲートと、CLDN18.2との間における複合体の形成を検出、及び/又は複合体の量を決定するステップと、を含む方法に関する。
【0037】
一態様において、当該生体試料は、細胞試料、つまり癌細胞などの細胞を含む試料である。本実施形態において、複合体は、抗体、抗原結合性フラグメント或いはコンジュゲートと、当該試料中の細胞によって発現されたCLDN18.2との間で形成されるのが好ましい。
【0038】
本発明による観測方法は、好ましくは、第1時点にて第1試料中の、続いて第2時間にて更なる試料中の、CLDN18.2又はCLDN18.2発現細胞の検出及び/又は量の決定を行うことを含む。ここで、腫瘍性疾患の退行、進行、経過及び/又は発病は、両方の試料を比較して判定することができる。
【0039】
通常、生体試料におけるCLDN18.2のレベル又はCLDN18.2発現細胞のレベルを基準レベルと比較する。基準レベルからのずれは、被験者における癌疾患の存在及び/又は病期を指し示す。基準レベルは、対照試料(例えば健康な組織もしくは健康な被験者、特に癌を患っていない患者からのもの)にて決定したレベル、又は、健康な被験者から得た平均レベルであってもよい。当該基準レベルからの「ずれ」とは、著しい変化、例えば少なくとも10%、20%又は30%の増加、好ましくは少なくとも40%又は50%、或いはそれ以上の増加を指す。
【0040】
好ましくは、CLDN18.2又はCLDN18.2発現細胞の存在、及び/又は、基準レベル、例えば癌を患っていない患者と比べて増加しているCLDN18.2又はCLDN18.2発現細胞の量は、被験者に癌が発病するリスク(つまり発症の潜在性)があることを示唆する。
【0041】
被験者からより早期に採取した生体試料と比較した結果、CLDN18.2又はCLDN18.2発現細胞の量が減少している場合は、被験者において癌が、軽減、良好な経過、例えば治療の成功、或いは発病のリスクの減少の可能性を示している。
【0042】
被験者からより早期に採取した生体試料と比較した結果、CLDN18.2又はCLDN18.2発現細胞の量が増加している場合は、被験者において癌が、進行、悪化の経過、例えば治療の不成功、再発又は転移挙動、発病又は発病のリスクの可能性を示している。
【0043】
一態様において本発明は、CLDN18.2を標的とする癌療法により癌を治療可能であるか否かを判定する方法であって、
(i)癌細胞を含む試料を、本発明の抗体又は抗原結合性フラグメント、或いは本発明のコンジュゲートと、接触させるステップと、
(ii)抗体、抗原結合性フラグメント、或いはコンジュゲートと、CLDN18.2との間における複合体の形成を検出するステップと、を含む方法に関する。
【0044】
当該複合体は、抗体、抗原結合性フラグメント、或いはコンジュゲートと、当該試料における癌細胞によって発現されたCLDN18.2との間で形成されるのが好ましい。
【0045】
当該方法は、CLDN18.2発現細胞を標的とする療法、例えば免疫エフェクター機能を一つ以上もたらす抗体、たとえばCLDN18.2に特異的な細胞毒性のある抗体(具体的には、毒素や放射性標識などの細胞毒性成分で標識されている抗体、或いはCDC又はADCCなどの殺細胞機構を誘導する抗体)を用いる療法が患者に適切であるか否かを検出するために用いることができる。CLDN18.2を発現する異常細胞によって特徴付けられる疾患、例えば癌、特に本明細書に記載のものは、CLDN18.2を標的とする療法により治療することができる。
【0046】
上記態様のいずれかの一実施形態において、試料、細胞試料又は生体試料は、癌を患っている患者、癌もしくはその罹患が疑われる患者、又は、癌の潜在性を持つ患者から採取する。一実施形態において、試料、細胞試料、又は生体試料は、組織又は器官が癌を患っていないとき、細胞が実質的にCLDN18.2を発現しない組織又は器官から採取する。当該組織は、胃組織以外の組織であることが好ましい。当該組織は、肺、食道、膵臓又は乳房の組織であるのが好ましく、組織又は器官は、例えば肉眼検査又は当該組織又は器官の細胞培養試験により癌の影響を受けているとの診断が既に下されたものであってもよい。本実施形態において、CLDN18.2又はCLDN18.2発現細胞の存在、及び/又は、基準レベル、例えば腫瘍性疾患を患っていない患者と比べて増加しているCLDN18.2又はCLDN18.2発現細胞の量は、当該患者がCLDN18.2発現細胞を標的とすることを含む療法に適している可能性を示す。
【0047】
一態様において、本発明は、本明細書に記載の抗体もしくは抗原結合性フラグメント、又は抗体及び/又は抗原結合性フラグメントの組み合わせを含む組成物、例えば診断用組成物もしくはキットを提供する。かかる診断用組成物又はテストキットは、本発明の方法、たとえば本発明の診断、検出又は観測方法に有用である。当該キットは、必要によって、検出可能な標識、例えば指標酵素、放射性標識、蛍光色素分子或いは常磁性粒子を含んでもよい。キットは、情報提供用小冊子、例えば試薬を用いて本明細書に記載の方法を実施する手順を知らせる小冊子を含んでもよい。
【0048】
本発明の他の特徴及び利点は、下記の詳細な説明と請求項にて説明するものとする。
【発明を実施するための形態】
【0049】
本発明を下記で詳細に説明するが、本発明は、本明細書に記載の特定の方法論、手順又は試薬に限定されるものではなく、変更も可能である。また、本明細書に用いられる専門用語は、特定の実施形態を説明するためのみ用いられるものであって、本発明の範囲を限定しようとするものではなく、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ規定される。別途の定義がない限り、本明細書に用いられる技術用語及び科学用語は、当業者が一般的に理解している意味と同様の意味を持つ。
【0050】
下記に、本発明の構成要素を説明する。当該要素を特定の実施形態と共に記載するが、これらを任意の方法でおよび任意の数組み合わせて他の実施形態を構成することも可能である。各種の実施例、及び好ましい実施形態は、明確に記述した実施形態に本発明を限定するものとして解釈されるべき。本記述は、明白に記述した実施形態を、任意の数の開示要素及び/又は好ましい要素と組み合わせた実施形態を支持し、網羅するものであると理解されるべきである。更に、本願に記載されているすべての要素の変更及び組み合わせは、別途の記述がない限り、本願の記述により開示されているとされるべきである。
【0051】
好ましくは、本明細書に用いられる用語は、「A multilingual glossary of biotechnological terms:(IUPAC Recommendations)」,H.G.W.Leuenberger,B.Nagel,H.Kolbl,Eds.,Helvetica Chimica Acta,CH-4010Basel,Switzerland(1995)の記載のように定義される。
【0052】
本発明の実施には、別途の指定がない限り、当該分野の文献に説明されている、化学、生化学、細胞生物学、免疫学、及び組換えDNA技術における従来方法を採用するものとする(たとえば、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd Edition,J.Sambrookら eds.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,1989を参照)。
【0053】
本明細書及び請求項を通じて、別途の要求がない限り、「~を含む(comprise)」及びその変形表現(「~を含む(comprises)」「~を含む(comprising)」)は、記載された要素、整数、ステップ、又は要素、整数もしくはステップの群を含むことを意味するが、ある実施形態において、主題が指定された要素、整数、ステップ、又は要素、整数もしくはステップの群を含んでなり、他の要素、整数、ステップ、又は要素、整数もしくはステップの群を含まなくてよいとしても、当該他の要素、整数、ステップ、又は要素、整数もしくはステップの群を排除する訳ではないことを意味すると理解される。本発明の記述において(特に、特許請求の範囲の文脈において)用いられる用語「a」「an」「the」及び類似の表現は、別途の指定がなく、明らかに文脈に矛盾するものでない限り、単数と複数の両方を網羅するものとして解釈する。数値範囲の記載列挙は、単に、それぞれの範囲に含まれる個々の値を参照できる簡単な方法としての役割を果たすものである。別途の指定がない限り、個々の値は本明細書中に取り入れられ、本明細書中に個別に引用されるものとする。本明細書に記載のすべての方法は、別途の指定がなく、明らかに文脈に矛盾するものでない限り、任意の相応の手順で実施することができる。本明細書に記載されている任意のおよびすべての実施例又は例示表現(「例えば(such as)」)は、単に本発明を良く例示するにするためのものであって特許請求の範囲の項に規定する本発明の範囲を限定するものではない。本明細書の文言は、いずれも、本発明の実施に必須不可欠のであって特許請求の範囲に規定されていない要素を提示しているものと解釈されてはいけない。
【0054】
本明細書には幾つかの文献を引用している。引用文献(すべての特許、特許出願、科学出版物、製造者の仕様、指示などを含む)はそれぞれ、上記や下記を問わず、本明細書に全文を援用されている。これらはいずれも、本発明が先行発明に基づく開示に先行するものではないことへの立証として用いられてもいけない。
【0055】
本発明との関係においては、「組換え」とは、「遺伝子工学を通じて作り上げたもの」を意味する。好ましくは、本発明との関係における「組換え対象物」つまり組換え細胞は、自然発生的なものではない。
【0056】
本明細書における「自然発生的な(naturally occurring)」とは、対象物が自然界にみられることを指し示す。例えば、生命体(ウイルスを含む)に存在し、天然源から分離でき、実験室にて人間の手により意図的に変更されていないペプチド又は核酸は、自然発生のものである。
【0057】
「抗原」は、エピトープを含み、当該エピトープに対して免疫応答を誘導及び/又は発成する物質に関する。本発明との関係における抗原は、必要に応じては処理済であり、免疫反応、好ましくは抗原に対して特異の免疫反応を誘導する分子である。「抗原」の用語は、特定のタンパク質、ペプチド、多糖、核酸、特にRNA及びDNA、並びにヌクレオチドを含む。
【0058】
「エピトープ」とは、分子における抗原決定基、つまり、分子中の、免疫機構によって認識される部分であり、例えば抗体によって認識される部分である。例えばエピトープは、抗原上の、免疫機構によって認識される不連続の3次元部位である。エピトープは通常、アミノ酸や糖側鎖などの化学的に活性な表面分子集団から構成され、通常、特定の3次元構造特性や特定の電荷特性を有している。立体構造エピトープと非立体構造エピトープは、変性溶媒の存在下において、前者との結合は失われるが後者との結合は失われないことで区別される。CLDNなどのタンパク質のエピトープは、当該タンパク質の連続部分又は不連続部分を含むことが好ましく、好ましくは5~100個、また好ましくは5~50個、より好ましくは8~30個、最も好ましくは10~25個のアミノ酸を長さ方向に持つ。例えば、エピトープは、長さ方向に8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、又は25個のアミノ酸であるのが好ましい。
【0059】
本明細書における「不連続エピトープ」の用語は、タンパク質抗原上の立体構造エピトープであって、タンパク質の一次配列における少なくとも二つの分離された領域から形成されているものを指す。
【0060】
好ましい実施形態において、抗原はCLDN18.2などの腫瘍関連抗原、つまり細胞質、細胞表面及び細胞核に由来する癌細胞の構成物質であり、特に、細胞内にて産生される、好ましくは大量にされる抗原、又は癌細胞上の表面抗原である。
【0061】
本発明との関係において、「腫瘍関連抗原」又は「腫瘍抗原」は、通常の条件下で、限られた数の組織及び/又は器官、あるいは特定の発達段階で特に発現するタンパク質に関する。例えば、腫瘍関連抗原は、通常の条件下で、胃組織、好ましくは胃粘膜、精巣などの生殖器官、胎盤などの栄養膜組織、又は、生殖系列細胞で特異的に発現し、更に、1種以上の腫瘍性組織又は癌組織にて発現、或いは異常に発現してもよい。ここにおいて、「限られた数」は3以下が好ましく、2以下が更に好ましい。本発明との関係において、腫瘍関連抗原は、例えば分化抗原、好ましくは細胞型特異性分化抗原、つまり通常の条件下で、所定の分化段階にて所定の細胞型で特異的に発現するタンパク質、癌-精巣抗原、つまり通常の条件下で、精巣で、時には胎盤で特異的に発現するタンパク質、並びに、生殖細胞特異性抗原を含む。本発明との関係において、腫瘍関連抗原は癌細胞の細胞表面と関連付けられるのが好ましく、更には、正常組織においては発現しないか、発現しても極稀であるのが好ましい。好ましくは、腫瘍関連抗原、或いは腫瘍関連抗原の非正常発現は、癌細胞を特定する。本発明との関係において、被験者、例えば癌を患っている患者の癌細胞によって発現された腫瘍関連抗原は、当該被験者における自己タンパク質であるのが好ましい。好ましい実施形態において、本発明との関係での腫瘍関連抗原は、通常の条件下で、非必須の組織又は器官、つまり免疫機構により損傷を受けても被験者が死に至らない組織又は器官、或いは免疫機構が到達できない、若しくは到達し難い器官又は身体構造において特異的に発現する。腫瘍関連抗原のアミノ酸配列は、正常組織で発現した腫瘍関連抗原と、癌組織で発現した腫瘍関連抗原との間で同一であるのが好ましい。
【0062】
腫瘍免疫療法、具体的には腫瘍予防接種の標的構造としての腫瘍関連抗原の基準を理想的に満たす分化抗原の例として、CLDN18.2などのクローディンファミリーの細胞表面タンパク質が挙げられる。クローディンは密着結合部の最も重要な構成要素であるタンパク質のファミリーであり、上皮組織の細胞間隙で分子の流れを制御する傍細胞バリヤーを形成する。クローディンは、4回膜を貫通し、N末端及びC末端がいずれも細胞質中に位置する、膜貫通タンパク質である。
【0063】
「クローディン18」又は「CLDN18」という用語は、好ましくはヒトCLDN18に関し、CLDN18のCLDN18.1及びCLDN18.2のような任意のスプライス変異体を含む。CLDN18.1及びCLDN18.2は、第1膜貫通(TM)領域とループ1とを含むN末端部で異なり、C側末端の一次タンパク質配列は同一である。
【0064】
「CLDN18.1」という用語は、好ましくはヒトCLDN18.1、特に、配列表のSEQ ID NO:1によるアミノ酸配列、或いは当該アミノ酸配列の変異体を含むタンパク質に関する。
【0065】
「CLDN18.2」という用語は、好ましくはヒトCLDN18.2、特に、配列表のSEQ ID NO:2によるアミノ酸配列、或いは当該アミノ酸配列の変異体を含むタンパク質に関する。
【0066】
本発明による「変異体」という用語は、具体的には、突然変異体、スプライス変異体、配座、アイソフォーム、対立遺伝子多型、変種及び同族体を指し、さらに具体的には、その中でも天然のものを指す。対立遺伝子多型は遺伝子の標準配列における変化に関するものであるが、但しその優位性は、明白でないことが多い。遺伝子配列解明技術が完全であれば、ある遺伝子に対して多数の対立遺伝子多型を特定することができる。同族体は、ある核酸又はアミノ酸配列の起源種と異なる起源種からの核酸又はアミノ酸配列である。
【0067】
「CLDN」、「CLDN18」、「CLDN18.1」および「CLDN18.2」の用語は、翻訳後修飾変異体と配座変異体の両方を網羅する。
【0068】
CLDN18.2は、胃粘膜の分化上皮細胞における正常組織で選択的に発現する。CLDN18.2は様々な器官の癌で発現し、その選択的発現(毒性関連正常組織で発現しない)及び細胞膜への局在のために、抗体媒介癌免疫療法の開発のための標的構造として特に相応しい。CLDN18.2の発現は、例えば、膵臓癌、食道癌、胃癌、気管支癌、乳癌、ENT腫瘍などにおいてCLDN18.2の発現が確認されている。CLDN18.2は、原発腫瘍、例えば胃癌、食道癌、膵臓癌、非小細胞肺癌(NSCLC)などの肺癌、卵巣癌、結腸癌、肝癌、頭頸部癌、胆嚢癌のような原発腫瘍、及びこれらの転移、その中でも特にクルーケンベルグ腫瘍、腹膜転移、リンパ節転移などの胃癌転移に対する予防、及び/又は治療のための重要なターゲットである。
【0069】
本発明によると、CLDN18.2発現細胞は、好ましくは細胞表面膜結合性CLDN18.2であることを特徴とし、つまりCLDN18.2は、細胞表面と関連付けられるものである。更に、本発明によると、細胞性CLDN18.2は、好ましくは細胞表面膜結合性CLDN18.2である。CLDN18.2発現細胞、又は、細胞表面にCLDN18.2が結合することにより特徴付けられる細胞は、好ましくは癌細胞、より好ましくは本明細書に記載の癌の癌細胞である。
【0070】
「細胞表面と関連付けられる」という用語は、CLDN18.2などの腫瘍関連抗原が細胞の原形質膜と関連付けられ、そこに位置していることを意味し、前記腫瘍関連抗原の少なくとも一部は前記細胞の細胞外空間に対向し、前記細胞の外部から、例えば前記細胞の外部に位置する抗体により、アクセス可能であること意味する。これに関連して、一部とは、好ましくは、少なくとも4、好ましくは少なくとも8、好ましくは少なくとも12、より好ましくは少なくとも20個のアミノ酸である。会合は直接的又は間接的であってもよい。例えば、関連づけは、1つ以上の膜貫通ドメイン、1つ以上の脂質アンカーによる、又は、細胞の原形質膜の外葉で見られる任意の他のタンパク質、脂質、糖質もしくは他の構造との相互作用によるものであってもよい。例えば、細胞の表面と関連付けられている腫瘍関連抗原は、細胞外部分を有する膜貫通タンパク質であってもよく、又は、膜貫通タンパク質である他のタンパク質と相互作用することによって細胞表面と関連付けられているタンパク質であってもよい。
【0071】
「細胞表面」又は「細胞の表面」という用語は、当該技術分野における通常の意味として用いられるものであり、よって、タンパク質及び他の分子による結合に利用される細胞の外側を含む。
【0072】
本発明によると、CLDN18.2は、発現及び関連付けのレベルが、胃以外の非癌性組織における発現及び関連付けのレベルを2倍以下、好ましくは1.5倍以下で超える場合、また好ましくは前記非癌性組織における発現及び関連付けのレベルを超えない場合、実質的に細胞内で発現されず、実質的に細胞表面と関連付けられない。好ましくは、CLDN18.2は、発現又は関連付けのレベルが検出限界より低く、及び/又は、発現又は関連付けのレベルが、細胞に添加されたCLDN18.2特異性抗体を結合可能とするに低すぎる場合は、実質的に細胞内で発現されず、実質的に細胞表面と関連付けられない。
【0073】
本発明によると、CLDN18.2は、発現及び関連付けのレベルが、胃以外の非癌性組織における発現及び関連付けのレベルを、好ましくは2倍より大きく、また好ましくは10倍より大きく、100倍より大きく、1000倍より大きく、又は10000倍より大きく超える場合は、細胞内で発現されかつ細胞表面と関連付けられる。好ましくは、CLDN18.2は、発現及び関連付けのレベルが検出限界より高く、及び/又は、発現及び関連付けのレベルが、細胞に添加されたCLDN18.2特異性抗体を結合可能とするに十分に高い場合は、細胞内で発現されかつ細胞表面と関連付けられる。
【0074】
「抗体」という用語は、ジスルフィド結合によって相互接続した少なくとも2つの重(H)鎖と2つの軽(L)鎖とを含む糖タンパク質を指し、その抗原結合部分を有する任意の分子を含む。「抗体」という用語は、モノクローナル抗体及び抗体のフラグメント又は誘導体を含み、これらは非制限的に、例えば、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、scFv's等の一本鎖抗体、並びに、Fab及びFabフラグメントなどの抗原結合抗体フラグメントを含み、また、本明細書に記載されたように、原核生物によって発現された抗体等の抗体のすべての組換え形態、非グリコシル化抗体、並びに、任意の抗原結合抗体フラグメント及び誘導体を含む。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではVHと略記する。)および重鎖定常領域を含む。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではVLと略記する。)および軽鎖定常領域を含む。前記VH及びVL領域は、更に、相補性決定領域(CDR)という超可変領域と、これを散在させている、より保存的な領域であるフレームワーク領域(FR)とに分けられる。各VH及びVLは、アミノ末端からカルボキシ末端に向かって、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順に並んだ3つのCDRと4つのFRとから構成されている。重鎖及び軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。抗体の定常領域は、免疫系の種々の細胞(例えば、エフェクター細胞)及び古典的補体系の第1成分(C1q)を含む宿主組織又は因子への免疫グロブリンの結合を媒介してもよい。
【0075】
本明細書に記載の抗体はヒト抗体であってもよい。本明細書で用いられている「ヒト抗体」という用語は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域及び定常領域を有する抗体を含むものとする。本発明のヒト抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列によってエンコードされないアミノ酸残基を含んでもよい(例えば、インビトロでランダム若しくは部位特異的に導入された変異、又は、インビボでの体細胞変異)。
【0076】
「ヒト化抗体」という用語は、実質的に非ヒト種からの免疫グロブリンに由来する抗原結合部位を有する分子を指し、分子の残りの免疫グロブリン構造は、ヒト免疫グロブリンの構造及び/又は配列に基づく。抗原結合部位は、定常ドメインに融合された完全な可変ドメイン、又は、可変ドメイン内の適切なフレームワーク領域にグラフトされた前記相補性決定領域(CDR)のみのいずれであってもよい。抗原結合部位は、野生型、又は1つ以上のアミノ酸置換によって修飾されていてもよく、例えば、よりヒト免疫グロブリンに類似するように修飾されてもよい。ヒト化抗体のいくつかの形態は、すべてのCDR配列を保持する(例えば、マウス抗体からの6つのCDRをすべて含むヒト化マウス抗体。)。他の形態は、元の抗体に対して変更された1つ以上のCDRを有している。
【0077】
「キメラ抗体」という用語は、重鎖及び軽鎖のアミノ酸配列のそれぞれの一部分が、特定の種に由来するか、又は特定のクラスに属する抗体の対応する配列に相同であるそれらの抗体を指し、一方、前記鎖の残りのセグメントは、別の対応する配列に相同である。典型的に、軽鎖及び重鎖の両可変領域は、1つの哺乳動物種に由来する抗体の可変領域と類似しており、一方、定常部分は別の種に由来する抗体の配列と相同である。そのようなキメラ形態の1つの明らかな利点は、可変領域は、非ヒト宿主生物から容易に入手可能なB細胞又はハイブリドーマを用いて、ヒト細胞調製物等に由来する定常領域と組み合わせて容易に現在公知の供給源に由来することができることである。一方、可変領域は調製の容易さという利点を有し、特異性が供給源によって影響されないが、ヒトの定常領域である場合、非ヒト供給源からの定常領域であるときより、抗原が注入されるときに、ヒト被験体から免疫反応を誘導されにくい。しかし、定義はこの特定例に限定されない。
【0078】
抗体の「抗原結合部分」(又は単に「結合部分」)或いは抗体の「抗原結合フラグメント」(又は単に「結合フラグメント」)という用語は、抗原に特異的に結合する能力を有する1つ以上の抗体のフラグメントを指す。抗体の抗原結合機能は、全長抗体のフラグメントにより行われることができることが示されてきた。抗体の「抗原結合部分」という用語内に、結合フラグメントを含む例としては、(i)Fabフラグメント、VL、VH、CL及びCHドメインからなる一価のフラグメント;(ii)F(ab')フラグメント、ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された2つのFabフラグメントを含む二価フラグメント;(iii)VH及びCHドメインからなるFdフラグメント;(iv)抗体の単一アームのVL及びVHドメインからなるFvフラグメント、(v)VHドメインからなるdAbフラグメント(Wardら、(1989)Nature 341:544-546);(vi)単離された相補性決定領域(CDR)、及び(vii)必要に応じて合成リンカーにより連結されてもよい2つ以上の単離したCDRsの組み合わせ;を含む。更に、Fvフラグメントの2つのドメインであるVL及びVHは、別々の遺伝子によってコードされるが、これらは、VL及びVH領域が組み合わって一価の分子を形成する単一のタンパク質鎖として作製することができる合成リンカーにより、組換え法を用いて連結することができる(単一鎖Fv(scFv)として知られている。たとえば、Birdら(1988)Science242:423-426;及びHustonら(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879-5883を参照)。このような一本鎖抗体も、抗体の「抗原結合フラグメント」という用語に含まれるものとする。他の例において、結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質は、(i)免疫グロブリンヒンジ領域ポリペプチドに融合される結合ドメインポリペプチド、(ii)ヒンジ領域に融合された免疫グロブリン重鎖CH2定常領域、及び(iii)前記CH2定常領域に融合された免疫グロブリン重鎖CH3定常領域を含む。結合ドメインポリペプチドは、重鎖可変領域又は軽鎖可変領域であってもよい。結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質は、更に、US 2003/0118592及びUS 2003/0133939に開示されている。これらの抗体フラグメントは、当業者に公知の従来技術を用いて得られ、フラグメントは無傷抗体と同一の方法により有用性についてスクリーニングされる。
【0079】
本明細書に記載の抗体はモノクローナル抗体であってもよい。本明細書で用いられる「モノクローナル抗体」という用語は、単一分子組成の抗体分子の調製物をいう。モノクローナル抗体は、単一の結合特異性及び親和性を示す。一実施形態において、モノクローナル抗体は、不死化細胞に融合された、例えばマウスのような非ヒト動物から得られたB細胞を含むハイブリドーマによって産生される。
【0080】
本明細書に記載の抗体は組換え抗体であってもよい。本明細書で用いられる「組換え抗体」という用語は、以下のような組換え手段により、調製、発現、生成もしくは単離されたすべての抗体を含に、たとえば:(a)免疫グロブリン遺伝子又はそれから調製されたハイブリドーマに対してトランスジェニック又はトランス染色体の、動物(例えば、マウス)から単離された抗体(b)当該抗体を発現するように、例えばトランスフェクトーマから形質転換された、宿主細胞から単離された抗体は(c)組換え体やコンビナトリアル抗体ライブラリーから単離された抗体、及び(d)免疫グロブリン遺伝子配列の他のDNA配列へのスプライシングを伴う任意の他の手段によって調製、発現、生成、単離された抗体。
【0081】
本明細書で用いられる「トランスフェクトーマ」という用語は、例えば、CHO細胞、NS/0細胞、HEK293細胞、HEK293T細胞、植物細胞、又は酵母細胞を含む真菌などの、抗体を発現する組換え真核生物宿主細胞を含む。
【0082】
本明細書で用いられる「異種抗体」という用語は、こうした抗体を産生するトランスジェニック生物に関連して定義されている。この用語は、トランスジェニック生物からならず、かつ一般にトランスジェニック生物以外の種に由来する生物に見られるものに対応するアミノ酸配列、又はエンコードする核酸配列を有する抗体を指す。
【0083】
本明細書で用いられる「ヘテロハイブリッド抗体」とは、異なる生物起源の軽鎖と重鎖を有する抗体を指す。例えば、マウス軽鎖に関連付けられているヒト重鎖を有する抗体は、ヘテロハイブリッド抗体である。
【0084】
本発明は、本明細書に記載された「抗体」という用語により本発明の目的のために包含されるすべての抗体及び抗体の誘導体を含む。「抗体誘導体」という用語は、抗体の任意の修飾形態、例えば抗体と別の物質もしくは抗体、又は抗体フラグメントとのコンジュゲートを指す。
【0085】
本明細書に記載の抗体は、好ましくは単離されている。本明細書で用いられる「単離抗体」は、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない抗体を指す。更に、単離された抗体は、他の細胞物質及び/又は化学物質を実質的に含まなくてもよい。
【0086】
本発明によると、抗体は、所定の標的に対する有意な親和性を有し、標準アッセイにより前記所定の標的に結合する場合、当該所定の標的に結合することが可能である。多くの場合、「親和性」又は「結合親和性」は平衡解離定数(K)によって測定される。好ましくは、「有意な親和性」という用語は、10-5M以下、10-6M以下、10-7M以下、10-8M以下、又は10-9M以下、10-10M以下、10-11M以下、又は10-12M以下の解離定数(K)で所定の標的に結合することを意味する。
【0087】
抗体は、標的に対して有意な親和性を有しておらず、有意に結合しておらず、 かつ特に、標準アッセイで前記標的を検出可能に結合しない場合、(実質的に)標的に結合できない。好ましくは、抗体は、濃度が2μg/ml以上、好ましくは10μg/ml以上、より好ましくは20μg/ml以上、特に好ましくは50μg/ml以上又は100μg/ml以上で存在する場合、前記標的に検出可能に結合しない。好ましくは、抗体は、それが結合できる所定の標的に対して結合するためのKより少なくとも10倍、100倍、10倍、10倍、10倍、又は10倍大きいKで当該標的に結合する場合は、標的に対する有意な親和性を有さず、。例えば、抗体が結合できる標的に結合するためのKが10-7Mであれば、有意な親和性を有さない抗体を標的に結合するためのKは、少なくとも10-6M、10-5M、10-4M、10-3M、10-2M、又は10-1Mである。
【0088】
抗体は、それが他の標的に結合することができなくても、つまり、それが他の標的に対する有意な親和性を有しておらず、標準アッセイにより有意に他の標的に結合しなくても、それが前記所定の標的に結合することが可能である場合、所定の標的に対して特異的である。本発明によると、抗体は、それがCLDN18.2に結合することは可能であるが、(実質的に)他の標的、特にクローディンタンパク質以外のタンパク質、好ましくはCLDN18以外のタンパク質、特にCLDN18.2以外のタンパク質に結合することは可能でない場合、CLDN18.2に対して特異的である。好ましくは、抗体は、他の標的に対する親和性及び結合性が、クローディンに無関係なタンパク質(例えば、ウシ血清アルブミン(BSA)、カゼイン、ヒト血清アルブミン(HSA)、あるいは、MHC分子もしくはトランスフェリン受容体又は他の任意の特定のポリペプチドなどの非クローディン膜貫通タンパク質)に対する結合性又は親和性を有意に超えない場合は、CLDN18.2に対して特異的である。好ましくは、抗体は、それが前記標的に非特異的標的に結合するためのKより少なくとも10倍、100倍、10倍、10倍、10倍、又は10倍低いKで当該標的に結合する場合、所定の標的に対して特異的である。例えば、特異的標的への抗体の結合のためのKが10-7Mである場合、非特異的標的に結合するためのKは、少なくとも10-6M、10-5M、10-4M、10-3M、10-2M、又は10-1Mである。
【0089】
標的に対する抗体の結合は、任意の適切な方法により実験的に決定することができる:例えば、Berzofskyら、基本免疫学における「抗体-抗原相互作用」、Paul, W. E.編、 Raven Press New York, N Y (1984)、Kuby, Janis Immunology, W. H. Freeman and Company New York, N Y (1992)、及び本明細書に記載の方法を参照。親和性は、例えば、平衡透析法によるか、BIAcore2000装置を用いてメーカーにより概説された一般手順を用いることによるか、放射性標識された標的抗原を用いた放射免疫測定法によるか、又は当業者における公知の別の方法により、従来の技術を用いて容易に決定することができる。親和性データは、例えば、Scatchardら、Ann N.Y. Acad. ScL、51:660(1949)の方法によって分析することができる。測定された特定の抗体-抗原相互作用の親和性は、異なる条件下(例えば、塩濃度、pH)で測定した場合は変化し得る。従って、親和性及び他の抗原結合パラメータ(例えば、K、IC50)の測定は、好ましくは抗体及び抗原の標準化溶液、及び標準化された緩衝液を用いて行われる。
【0090】
本明細書で用いられる「アイソタイプ」とは、重鎖定常領域遺伝子によってエンコードされる抗体クラス(例えば、IgM又はIgG1)を指す。本発明による抗体は、ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体を含み、IgG2a(例えばIgG2a、κ、λ)、IgG2b(例えば、IgG2b、κ、λ)、IgG3(例えば、IgG3、κ、λ)及びIgM抗体を含む。しかし、IgG1、IgA1、IgA2、分泌型IgA、IgD及びIgE抗体を含む他の抗体アイソタイプも、本発明に包含される。
【0091】
本明細書で用いられる「アイソタイプスイッチング」とは、それにより、抗体のクラスまたはアイソタイプがあるIgクラスから他の1つのIgクラスへと変化する現象を指す。
【0092】
本明細書で用いられる「再配列」という用語は、重鎖又は軽鎖免疫グロブリン遺伝子座の構成を指し、Vセグメントは、完全なVH又はVLドメインを本質的にエンコードするコンフォメーションにおいて、それぞれ、D-J又はJセグメントに直接隣接して位置する。再配列された免疫グロブリン(抗体)遺伝子座は、生殖細胞系列DNAとの比較により同定することができ、再配列された遺伝子座は少なくとも1つの組換えられた7量体/9量体の相同要素を有することになる。
【0093】
Vセグメントに関して本明細書中で用られる「再配列されない」又は「生殖細胞系列構成」という用語は、D又はJセグメントに直ちに隣接するようにVセグメントが組換えられていない構成を指す。
【0094】
本発明によると、抗体は、マウス、ラット、ウサギ、モルモット及びヒトなどの異なる種に由来してもよいが、これらに限定されない。また、抗体は、1つの種(好ましくはヒト)に由来する抗体の定常領域が別の種に由来する抗原結合部位と結合したキメラ分子を含む。更に、抗体は、非ヒト種に由来する抗体の抗原結合部位がヒト起源の定常領域及びフレームワーク領域と結合したヒト化分子を含む。
【0095】
抗体は、従来のモノクローナル抗体方法論(例えば、KohlerおよびMilsteinの標準体細胞ハイブリダイゼーション技術、Nature 256:495(1975))を含む種々の技術により産生され得る。体細胞ハイブリダイゼーション技術が好ましいが、原則的に、モノクローナル抗体を産生するための他の技術が用いられてもよい(例えば、Bリンパ球のウイルス性或いは発癌性形質転換、又は、抗体遺伝子ライブラリーを用いるファージディスプレイ技術)。
【0096】
モノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマを調製するための好ましい動物系はマウス系である。マウスにおけるハイブリドーマ産生は非常によく確立された方法である。融合用の免疫化脾細胞の単離のための免疫化プロトコール及び技術は、当該分野で公知である。融合パートナー(例えば、マウス骨髄腫細胞)及び融合の手順も公知である。
【0097】
モノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマを調製するための他の好ましい動物系は、ラット及びウサギの系である(例えば、Spieker-Poletら、Proc.Natl.Acad.Sci. U.S.A. 92:9348(1995)に記載。Rossiら、Am.J.Clin.Pathol.124:295(2005)も参照)。
【0098】
更に他の好ましい実施形態において、CLDN18.2に対するヒトモノクローナル抗体は、マウス系よりは、ヒト免疫系の一部を保持するトランスジェニック又はトランスクロモソミックマウスを用いて産生することができる。このようなトランスジェニック及びトランスクロモソミックマウスは、HuMAbマウス及びKMマウスとしてそれぞれ知られるマウスを含み、本明細書ではこれらをまとめて「トランスジェニックマウス」という。このようなトランスジェニックマウスにおけるヒト抗体の産生は、WO2004 035607中にCD20について詳細に記載されたように行うことができる。
【0099】
モノクローナル抗体を産生する更に他の方法は、特定の特異性を有する抗体を産生するリンパ球から、抗体をエンコードする遺伝子を直接単離することである:Babcockら、1996;特定の特異性を有する抗体を産生する、単一の、単離されたリンパ球からモノクローナル抗体を生成するための新規方法を参照、組換え抗体工学の詳細についてはWelschofとKraus、癌治療用組換え抗体 ISBN-0-89603-918-8、および、Benny K.C. Lo 抗体工学 ISBN 1-58829-092-1を参照。
【0100】
CLDN18.2に対する抗体を生成するために、本明細書に記載の通り、マウスは、担体に結合したCLDN18.2配列に由来するペプチド、組換え的に発現したCLDN18.2抗原又はそのフラグメントの濃縮物、及び/又は、CLDN18.2を発現する細胞又はそのフラグメントで免疫化することができる。或いは、マウスは、それらのヒトCLDN18.2の全長をエンコードするDNA又はそのフラグメントで免疫化することができる。CLDN18.2抗原の精製若しくは濃縮製剤を用いた免疫処置によっても抗体が生じない場合、マウスは、更に免疫応答を促進するために、CLDN18.2を発現する細胞(例えば、細胞株)で免疫化できる。
【0101】
免疫反応を、尾静脈又は後眼窩採血によって得られる血漿及び血清試料について、免疫化プロトコールの過程にわたって観察することができる。抗CLDN18.2免疫グロブリンの十分な力価を有するマウスを融合のために用いることができる。 特異的抗体を分泌するハイブリドーマの割合を高めるため、マウスに対し、実験を行い脾臓を除去する3~5日前に、CLDN18.2発現細胞を腹腔内又は静脈内にブーストさせることができる。
【0102】
CLDN18.2に対するモノクローナル抗体産生ハイブリドーマを生成するために、免疫化したマウスから得られたリンパ節、脾臓又は骨髄由来の細胞は、単離又はマウス骨髄腫細胞株のような適切な不死化細胞株と融合され得る。得られたハイブリドーマを抗原特異的抗体の産生のためにスクリーニングすることができる。また、個々のウェルを抗体分泌ハイブリドーマ用のELISAによってスクリーニングすることができる。CLDN18.2発現細胞を用いた免疫蛍光法及びFACS分析によって、CLDN18.2に対する特異性を有する抗体を同定することができる。抗体分泌ハイブリドーマを、再配置して再スクリーニングすることができ、仮に、抗CLDN18.2モノクローナル抗体に対してまだ陽性である場合、限界希釈によってサブクローニングすることができる。そして、キャラクタリゼーション用の組織培養培地中で安定なサブクローンをインビトロで培養し、抗体を生成することができる。
【0103】
また、本発明の抗体は、宿主細胞トランスフェクトーマ中で、例えば、当技術分野において公知のように、組換えDNA技術及び遺伝子導入法の組み合わせを用いて産生することができる(Morrison, S. (1985) Science 229:1202)。
【0104】
例えば、一実施形態において、目的の遺伝子(例えば、抗体遺伝子)は、発現ベクターに連結することができ、発現ベクターは例えば、WO 87/04462、WO 89/01036及びEP 338841に開示されたGS遺伝子発現系又は当該技術分野で周知の他の発現系で用いられるような真核生物発現プラスミドである。クローニングされた抗体遺伝子を有する精製済みのプラスミドは、例えば、CHO細胞、NS/0細胞、HEK293T細胞、又はHEK293細胞、あるいは、植物由来細胞、真菌もしくは酵母細胞などの、他の真核細胞のような、真核宿主細胞中に導入され得る。これらの遺伝子を導入するために用いられる方法は、電気穿孔法、リポフェクチン、リポフェクタミンなどの技術において記載される方法であってもよい。前記宿主細胞内にこれらの抗体遺伝子を導入した後、抗体を発現する細胞を同定して選択することができる。これらの細胞は、その発現レベルを増幅し、抗体の産生を増加させることができるトランスフェクトーマを表す。組換え抗体は、これらの培養上清及び/又は細胞から単離及び精製することができる。
【0105】
或いは、クローニングした抗体遺伝子は、微生物(例えば、大腸菌)のような原核細胞を含む他の発現系で発現されることができる。更に、抗体は、ヒツジ及びウサギの乳又は雌鳥の卵のように、トランスジェニック非ヒト動物、或いはトランスジェニック植物から産生され得る(たとえばVerma,R.ら、(1998) J.Immunol.Meth. 216:165-181;Pollockら、(1999) J.Immunol.Meth. 231:147-157;及びFischer, Rら、(1999) Biol.Chem. 380:825-839参照)。
【0106】
キメラ抗体は、その異なる部分が異なる動物種に由来する抗体であり、例えば、これらはマウス抗体に由来する可変領域とヒト免疫グロブリン定常領域とを有する。抗体のキメラ化は、ヒト重鎖及び軽鎖の定常領域とマウス抗体の重鎖及び軽鎖の可変領域とを連結することによって達成される(例えば、Krausら、分子生物学の方法シリーズ、癌治療用組換え抗体 ISBN-0-89603-918-8参照)。好ましい実施形態において、キメラ抗体は、マウス軽鎖可変領域とヒトκ軽鎖定常領域とを結合することによって生成され得る。他の好ましい実施形態において、キメラ抗体は、マウス軽鎖可変領域とヒトλ軽鎖定常領域とを結合することによって生成され得る。キメラ抗体の産生のための好ましい重鎖定常領域は、IgG1、IgG3及びIgG4である。キメラ抗体の産生のための他の好ましい重鎖定常領域は、IgG2、IgA、IgD及びIgMである。
【0107】
抗体は、大部分、6個の重および軽鎖の相補性決定部位(CDR)に位置するアミノ酸残基を通じて標的抗原と相互作用する。このような理由より、それぞれの抗体間の相補性決定部位内のアミノ酸配列は、相補性決定部位外の配列よりも多様である。相補性決定部位(CDR)の配列は、大部分の抗体-抗原相互作用が発生する主な役割をするため、他の特性を有する他の抗体のフレームワーク配列に、自然発生された特異的抗体の相補性決定部位の配列を含む発現ベクターを移植する構成によって、自然発生された特異抗体の特性を模倣した組換え抗体の発現が可能である(たとえば、以下参照、Riechmann,L.ら(1998)Nature 332:323-327;Jones,P.ら(1986)Nature 321:522-525;及びQueen,C.ら(1989)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A. 86:10029-10033)。このようなフレームワーク配列は、胚芽抗体遺伝子配列を含む公共のDNA情報のデータベースから得ることができる。これらの胚芽配列は、B細胞の成熟時期の間V(D)J接合によって形成された完全に組み立てられた可変性遺伝子を含んでいないため、成熟した抗体遺伝子配列とは異なる。胚芽配列は、可変性部位の全領域にわたる個々の位置において、親和性の高い二次レパートリー抗体の配列とも異なる。例えば、体細胞突然変異がフレームワーク領域1のアミノ末端部位およびフレームワーク領域4のカルボキシ末端部位で起こることは比較的稀である。更に、体細胞突然変異の多くは抗体の結合特性を大きく変化させない。このような理由により、元の抗体の結合特性と類似した結合特性を有する完全な組換え抗体を再生成するために特定抗体のDNA配列全体を得る必要はない(参照WO99/45962)。そのためには、通常、相補性決定部位にかけて分布する一部の重鎖と軽鎖配列のみでも十分である。一部の配列は、胚芽抗体のある可変遺伝子断片と接合遺伝子断片が組換え抗体可変遺伝子に寄与するか否かを決めるのに用いられる。胚芽配列は、その後、可変部位の欠損部分を埋めるために用いられる。重鎖と軽鎖の先導配列は、タンパク質突然変異が発生する中に開裂し、最終的な抗体の特性に寄与しない。欠損した配列に追加するため、クローン化DNA配列はライゲイション(結紮)又はPCR増幅により合成されたオリゴヌクレオチドと結合され得る。または、可変部全体は、短く重複するオリゴヌクレオチドのセットとして合成され、PCR増幅によって結合されて完全に合成された可変部位のクローンを作製することができる。本処理は、特定の制限部位の除去又は内包、或いは、特定コドンの最適化などの利点がある。
【0108】
前記ハイブリドーマから転写された重鎖と軽鎖のヌクレオチド配列は、自然配列とアミノ酸暗号化能力が同一である合成V配列を作製するために、合成オリゴヌクレオチドの重複するセットを設計するのに用いられてもよい。前記合成重鎖とκ鎖配列は、下記3つの面で自然配列と異なることができる:一連の繰り返すヌクレオチド塩基がオリゴヌクレオチド合成とPCR増幅を妨害する;最適の翻訳開始部位がKozakの規則によって編入される(Kozak、1991、J.Biol.Chem.266:19867-19870);HindIII部位は翻訳開始部位の上流側に変更される。
【0109】
前記重鎖及び軽鎖の両可変部位において、最適化されたコードおよび対応する非コード鎖配列が、前記対応する非コードのオリゴヌクレオチドのおよそ中間部位で、30~50のヌクレオチドに分解される。よって、それぞれの鎖において、前記オリゴヌクレオチドは、150~400のヌクレオチド断片に及び、重複する二重鎖のセットに組み立てられてもよい。プールは鋳型として用いられて、150~400のヌクレオチドのPCR増幅産物を生産するのに用いられる。通常、単一可変領域オリゴヌクレオチドセットは、2つのプールに分解され、これらは別々に増幅されて2つの重複するPCR産物を生産する。その後、このような重複産物は、PCR増幅によって結合して完全な可変部位を形成する。PCR増幅時に、重鎖と軽鎖の定常領域の重複断片が含まれることも好ましく、これは、発現ベクターの構造体中で容易に複製され得る断片を生成するためである。
【0110】
再構成されたキメラ化又はヒト化された重鎖と軽鎖の可変部位は、複製されたプロモーター、リーダー配列、翻訳開始部位、定常領域、3'非翻訳領域、ポリアデニル化および転写終結配列と結合して発現ベクター構造体を形成する。前記重鎖と軽鎖の発現構造体は、単一のベクター中で結合してもよく、宿主細胞に同時にトランスフェクション、順次トランスフェクション、又は個別にトランスフェクションされて融合された後、2つの鎖を発現する宿主細胞を形成する。ヒトのIgGκの発現ベクターの構成に用いられるプラスミドに対して記述する。プラスミドは、PCR増幅された可変部(V)重鎖と可変部(V)κ軽鎖のcDNA配列が完全な重鎖および軽鎖のミニ遺伝子を再構成するのに用いられるように構成され得る。これらのプラスミドは、ヒト、又はキメラIgG1、κ或いはIgG4、κ抗体を完全に発現するために用いることができる。類似プラスミドは、他の重鎖アイソタイプ(同形体)の発現、又はλ軽鎖を含む抗体の発現のために構成され得る。
【0111】
従って、本発明の他の態様において、ここに記述された抗-CLDN18.2抗体の構造的特徴は、CLDN18.2との結合などの本発明の抗体の少なくとも1つの機能的特性を維持する、構造的に連関されたヒト化抗-CLDN18.2抗体を作製するのに用いられる。より具体的に、マウスモノクロン抗体の1つ以上のCDR領域は、公知のヒトのフレームワーク領域およびCDR領域と組換え技術によって結合し、更に組換え操作されたさらなるヒト化抗-CLDN18.2抗体を作製することができる。
【0112】
CLDN18.2に結合するための抗体の能力は、標準的な結合分析法、例えば、ELISA、ウエスタンブロット法、免疫蛍光法、フローサイトメトリー分析を用いて決定することができる。
【0113】
ELISAは、免疫されたマウスの血清における抗体の存在又はCLDN18.2タンパク質或いはペプチドに対するモノクローナル抗体の結合を示すのに用いることができる。免疫化に用いられるペプチド又はタンパク質は、ハイブリドーマ上清液の特異性を決めるか、血清力価を分析するのに用いられてもよい。
【0114】
免疫されたマウスの血清における抗体の存在又は生細胞に対するモノクローナル抗体の結合を実証するためにフローサイトメトリー分析を用いることができる。天然にまたは抗原トランスフェクション後に発現する細胞系、および、抗原発現の損失した陰性対照(標準成長条件下における成長)は、ハイブリドーマ上清液又はFBSを1%含むPBS中で多様な濃度のモノクローナル抗体と混合され、4℃で30分間インキュベートすることができる。洗浄後にAPC-又はAlexa647-標識された抗IgG抗体は、一次抗体染色として同じ条件下で、抗原結合されたモノクローナル抗体に結合することができる。試料は、光および側面散乱特性を用いて単一の生細胞についてゲートするFACS器具を用いたフローサイトメトリーによって分析することができる。単一測定において、抗原特異的モノクローナル抗体を非特異的バインダーと分別するために、同時導入法を用いることができる。抗原をコードするプラスミドで一時的にトランスフェクトされた細胞と蛍光マーカーは、前述のように染色することができる。トランスフェクトされた細胞は、抗体が染色された細胞とは異なる蛍光経路で検出され得る。両方の導入遺伝子を発現する多くの形質転換された細胞として、抗原特異的モノクローナル抗体は蛍光標識発現細胞に優先的に結合する一方、非特異的抗体はトランスフェクトされていない細胞に同等の比率で結合される。蛍光顕微鏡を用いた代替分析法は、フローサイトメトリー分析に加えて、又はその代わりに用いてもよい。細胞は、上述のように正確に染色することができ、蛍光顕微鏡によって分析されてもよい。
【0115】
免疫化されたマウスの血清中の抗-CLDN18.2抗体の存在、又は、CLDN18.2を発現する生細胞に対するモノクローナル抗体の結合を実証するため、免疫蛍光顕微鏡分析を用いることができる。例えば、自然発生的にまたはトランスフェクション後にCLDN18.2を発現する細胞系、および、CLDN18.2発現の損失した陰性対照は、チャンバスライド中で、10%ウシ胎児血清 (FCS)、2mMのL-グルタミン、100IU/mlのペニシリンと100μg/mlのストレプトマイシンが添加されたDMEM/F12培地中、標準成長条件下で、成長する。その後、細胞はメタノール又はパラホルムアルデヒドで固定されるか、無処理状態としてもよい。細胞は、その後、25℃で30分の間、CLDN18.2に対するモノクローナル抗体と反応させることができる。洗浄後に細胞は同一の条件下で、Alexa555標識された抗マウスIgG 二次抗体(分子プローブ)と反応させることができる。細胞は蛍光顕微鏡で分析することができる。
【0116】
細胞内の総CLDN18.2レベルは、細胞がメタノール又はパラホルムアルデヒドで固定され、Triton X-100で透過処理すると、観察可能である。生細胞および非透過性細胞において、パラホルムアルデヒドで固定された細胞表面のCLDN18.2の局在性が分析され得る。加えて、タイトジャンクションに対するCLDN18.2のターゲティングが、ZO-1などのタイトジャンクションマーカーで同時に染色することによって分析され得る。また、細胞膜内における抗体結合およびCLDN18.2の局在化の影響が分析され得る。
【0117】
抗-CLDN18.2IgGは、ウエスタンブロット法によりCLDN18.2抗原との反応性について試験することができる。手短には、CLDN18.2発現細胞からの細胞抽出物、および、適切な陰性対照が調製され、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)ポリアクリルアミドゲル電気泳動の対象となり得る。電気泳動の後、単離された抗原はニトロセルロース膜に転写されて固定され、試験されるモノクローナル抗体にプローブされる。IgG結合は、抗-マウスIgGペルオキシダーゼを用いて検出され、ECL基質で展開される。
【0118】
抗-CLDN18.2マウスIgGsは、当業者に公知の方法で免疫組織化学によりCLDN18.2抗原との反応性試験の対象となり得る。例えば、通常の外科手術時に患者から得られた非癌性組織または癌性組織試料から、あるいは、自然発生的にまたはトランスフェクション後にCLDN18.2が発現される細胞系が注入された、異種移植腫瘍を有するマウスから得られた、パラホルムアルデヒド或いはアセトンで固定された凍結切片、若しくはパラホルムアルデヒドで固定されたパラフィン包埋組織切片を用いることができる。免疫染色法においては、CLDN18.2に反応する抗体をインキュベートし、続いて販売者の指針に従って西洋ワサビペルオキシダーゼが結合したヤギの抗マウスもしくはヤギの抗ウサギ抗体を用いる。
【0119】
本発明の方法におけるCLDN18.2の分析に特に好ましい方法は、免疫組織化学すなわちIHCである。免疫組織化学すなわちIHCは、組織切片の細胞内の抗原(例:タンパク質)を検出する過程をいい、例えば、ここに言及した細胞組織が挙げられる。免疫組織化学染色は、悪性腫瘍(癌)で発見される異常細胞のような異常細胞の診断に広く用いられる。抗原-抗体相互作用の可視化は、多様な方法によりなされる。最もよく用いられる例では、抗体をペルオキシダーゼなどの発色反応を触媒する酵素に結合するまた、抗体をフルオレセイン又はロダミンなどの蛍光物質で標識してもよい。
【0120】
試料の調剤は、細胞形態学、組織様式、そして標的抗原決定部の抗原性を維持するのに重要である。これには、適切な組織採取、固定化および切片化が求められる。パラホルムアルデヒドは固定化に主に用いられる。目的と実験試料の厚さに応じて、関心のある組織から薄片(4~40μm)がスライスされて用いられるか、又は組織があまり厚くなくかつ透過性のある場合は、全体が用いられてもよい。切片化は主にマイクロトームを用いて行われ、切片はスライドに取り付けられる。
【0121】
試料に対し、脱パラフィン化および抗原回復を含む、抗体結合に用いられるエピトープを作製する追加工程が求められてもよい。Triton X-100のような界面活性剤は、一般的に免疫組織化学に用いられて表面張力を減らし、少ない試薬量で試料の表面をより良好に一様に被覆するのに用いられる。
【0122】
免疫組織化学染色の直接的な方法は、染色される抗原に直接結合する1つの標識された抗体を用いることである。免疫組織化学染色の間接的な方法は、より一般的であり、プローブ化される抗原に対する1つの抗体と、第一の抗体に対する標識された二次抗体を用いる。
【0123】
IHCにおけるバックグランドの染色を減らすため、一次或いは二次抗体の反応部位をブロックする緩衝液で試料をインキュベートする。一次抗体は親和性のある抗原に対応し、通常未接合される(未標識)一方、二次抗体は、一次抗体種の免疫グロブリンに対応する。二次抗体は通常ビオチンなどの連結分子に接合し、この連結分子がレポーター分子を召集するか、二次抗体が直接レポーター分子自体に結合したりする。一般的なブロッキング緩衝剤には正常血清、脱脂粉乳、ウシ血清アルブミン(BSA)、又はゼラチン、そして市販中の遮断緩衝剤がある。
【0124】
レポーター分子は検出法の特性によって多様であり、最もよく用いられる検出法は、酵素媒介性の発色検出と、蛍光物質媒介性の蛍光検出である。発色レポーターと共に、酵素標識は、基質と反応して通常の光学顕微鏡で分析され得る強い発色産物を生成する。酵素基質は、その種類が非常に幅広いが、アルカリフォスファターゼ(AP)、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)がタンパク質検出ラベルとして最も幅広く用いられる。発色基質、蛍光基質、化学発光基質のアレイは、DAB又はBCIP/NBTを含む酵素と共に使用可能である。蛍光レポーターはIHC検出に用いられる小さな有機分子である。発色検出と蛍光検出法においてシグナルの濃度分析は、レポーターシグナルとタンパク質発現又は局在化のレベルの連関性を示すために、半定量的データと全定量的データとを提供することができる。
【0125】
標的抗原の免疫組織化学の染色後、しばしば二次染色が適用され、一次染色を際立たせるのに役立つ対比をもたらす。これらの染色は、大部分細胞区画、又は抗原を区別する特異性を示す一方、他の染色は細胞全体を染色する。発色性および蛍光性染料のいずれもIHCに適用可能であり、すべての実験設計に適用されるために非常に多様な試薬が用いられる。ヘマトキシリン、ヘキスト染色とDAPIは、最もよく用いられる。
【0126】
抗体により認識されるエピトープのマッピングは「Epitope Mapping Protocols(Methods in Molecular Biology)」 by Glenn E.Morris ISBN-089603-375-9と「Epitope Mapping:A Practical Approach」 Practical Approach Series,248 by Olwyn M.R.Westwood,Frank C.Hayに詳しく記述されている。
【0127】
本発明の文脈上「免疫エフェクターの機能」という用語は、腫瘍の成長および/または転移の進行の抑制につながる免疫系の構成要素が媒介するいずれの機能も含み、腫瘍の播種および転移の抑制を含む。好ましくは、免疫エフェクターの機能は癌細胞の殺傷につながる。好ましくは、本発明の文脈における免疫エフェクターの機能は、抗体がするエフェクターの機能である。このような機能は補体依存性毒性(CDC)、抗体依存性細胞媒介性毒性(ADCC)、抗体依存性細胞媒介性食菌作用(ADCP)、腫瘍関連抗原を有する細胞のアポトーシス誘導、例えば表面抗原に対する抗体結合にるもの、例えば抗体のCD40受容体やCD40リガンド(CD40L)への結合によるCD40L媒介シグナル伝達、及び/又は腫瘍関連抗原を有する細胞の増殖抑制などを含むが、ADCC及び/又はCDCが好ましい。よって、1つ以上の免疫エフェクターの機能を媒介することができる抗体は、CDC媒介細胞溶解、ADCC媒介細胞溶解、細胞のアポトーシス、同型性接着、及び/又は食細胞作用を誘導ことによって細胞死を媒介することが好ましく、その中で、CDC媒介細胞溶解及び/又はADCC媒介細胞溶解を誘導することによるものが好ましい。抗体は、癌細胞表面で腫瘍関連抗原に単に結合することによって効果を発揮し得る。例えば、抗体は腫瘍関連抗原の機能を遮断するか、癌細胞表面で単に腫瘍関連抗原に結合することによって細胞のアポトーシスを誘導したりする。
【0128】
ADCCはエフェクター細胞の細胞殺傷能力を表し、特に、抗体によって標識される標的細胞を要するリンパ球を表す。ADCCは、好ましくは、抗体が癌細胞上の抗原に結合し、抗体のFcドメインが免疫エフェクター細胞の表面にあるFc受容体(FcR)にかみあうときに起こる。いくつかのFc受容体グループが確認されており、特異的細胞群は確定したFc受容体を特徴的に発現する。ADCCは、様々な程度での即刻の腫瘍破壊を直接的に誘導するメカニズムとして見られ、それは、抗原の表出と腫瘍をターゲットとするT細胞応答の誘導にもつながる。好ましくは、in vivoでのADCCの誘導は、腫瘍をターゲットとするT細胞応答およびさらに宿主誘導抗体反応にもつながる。
【0129】
CDCは抗体により導かれる更に他の細胞殺傷方法である。IgMは、補体活性に最も効果的なアイソタイプである。IgG1とIgG3のいずれもまた、古典的な補体活性経路を通じてCDCに導くのに非常に効果的である。好ましくは、このカスケード反応において、抗原-抗体複合体の形成は、IgG分子などの抗体分子が参加するC2ドメインにごく近接する多数のC1q結合部位の露出(uncloaking)につながる(C1qは、補体C1の3つの下位構成要素中の1つである)。好ましくは、このようにクローキングされていないC1q結合部位は、もともと親和性の低かったC1q-IgG相互作用を高い親和性へと変換し、これは一連の他の補体タンパク質を関与させるカスケードを誘発し、エフェクター細胞化学走化性/活性化作用剤C3aとC5aの加水分解的な放出を導く。好ましくは、補体カスケードの結果、膜侵襲複合体が形成され、この複合体は、水と溶質を細胞の内外部に自由に移動することを促進するように細胞膜に穴を形成し、細胞のアポトーシスに至るようにすることもできる。
【0130】
本発明の文脈における「免疫エフェクター細胞」という用語は、免疫反応時にエフェクター機能を発揮する細胞に関する。例えば、このような細胞はサイトカイン及び/又はケモカインを分泌し、微生物を殺し、抗体を分泌し、癌性細胞を認識し、任意に癌性細胞は除去する。例えば、免疫エフェクター細胞は、T細胞(毒性T細胞、ヘルパーT細胞、腫瘍浸潤T細胞)、B細胞、ナチュラルキラー細胞、好中球、マクロファージ、樹状細胞を含む。
【0131】
本発明による核酸は、デオキシリボ核酸(DNA)又はリボ核酸(RNA)、更に好ましくは、RNA、最も好ましくはin vitro転写RNA(IVT RNA)である。本発明による核酸は、ゲノムDNA、cDNA、mRNA、組換え的に調製されて化学的に合成された分子を含む。本発明による核酸は一本鎖又は二本鎖であり、線状、又は環状を形成するために強く共有結合された分子の形態である。核酸は、例えば、DNAを鋳型にして体外転写によって調製され得るRNAの形で細胞の導入などに用いられてもよい。RNAは配列の安定化、キャッピング(capping)、ポリアデニル化によって適用前に更に修飾されてもよい。
【0132】
ここに記述された核酸はベクターに含まれてもよい。本文に用いられる「ベクター」という用語は、当業者に公知の任意のベクターを含み、プラスミドベクター、コスミドベクター、λファージなどのファージベクター、アデノウイルスベクター、バキュロウイルスベクターなどのウイルスベクター、又はバクテリア人工染色体(BAC)、酵母人工染色体(YAC)、或いはP1人工染色体(PAC)などの人工染色体ベクターを含む。このようなベクターは、クローニングベクターであるだけでなく、発現ベクターである。発現ベクターはウイルスベクターだけでなくプラスミドを含み、一般的に所望の暗号化配列と、特定の宿主器官(例えば、バクテリア、酵母、植物、昆虫、哺乳類)においてまたはin vitroの発現系において作動可能に連結されている暗号化配列の発現に必要な適切なDNA配列を含む。クローニングベクターは、一般的に一定の所望のDNA断片を操作して増殖するのに用いられ、所望のDNA断片の発現に必要な機能的配列を欠いていてもよい。
【0133】
抗体の発現のためのベクターとして、抗体鎖が互いに異なるベクターに存在するベクタータイプ、又は抗体鎖が同じベクター内に存在するベクタータイプのいずれも用いることができる。
【0134】
ここに記載する「RNA」という用語は、少なくとも1つのリボヌクレオチド残基を含む一分子である。「リボヌクレオチド」は1つの水酸基をベータ-D-リボ-フラノース部分の2'-位に有する1つのヌクレオチドを意味する。上記の用語は、付加、欠損、置換、及び/又は1つ以上のヌクレオチドの変更などによって自然発生的に生成されたRNAとは異なる、変形されたRNAだけでなく、二本鎖RNA、一本鎖RNA、部分精製されたRNAなどの単離されたRNA、実質的に純粋なRNA、合成RNA、組換え生産されたRNAを含む。このような変更は、RNAの末端において、又はこのRNAの1つ以上のヌクレオチドで内部的に非ヌクレオチド物質を付加することを含んでもよい。RNAにおけるヌクレオチドは自然発生的なヌクレオチドでないか、又は化学的に合成されたヌクレオチド、或いはジオキシヌクレオチドなど、非標準ヌクレオチドを含んでもよい。このような変更RNAは相同体又は自然発生RNAの相同体という。
【0135】
本発明により、「RNA」という用語は、「メッセンジャーRNA」を意味する「mRNA」に関し好ましくはこれを含み、また、DNAを鋳型として生産されてもよい「転写物」に関し、また、ペプチド又はタンパク質をエンコードする。mRNAは通常、5'-非翻訳領域、タンパク質或いはペプチド暗号化領域と、3'-非翻訳領域とを備える。mRNAは、細胞内及びin vitroで制限されたハーフタイムを有する。
【0136】
本発明の文脈上、「転写」という用語は、DNA配列内の遺伝的暗号をRNAに転写する過程に関する。
【0137】
本発明によって記述された核酸は単離されていることが好ましい。本発明において「単離された核酸」という用語は、核酸が例えば、(i)in vitroでポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって増殖され、(ii)クローニングによって組換え的に生産され、(iii)たとえば切断およびゲル-電気泳動分別によって精製され、(iv)たとえば化学合成によって合成されたことを意味する。単離された核酸は組換えDNA技術による操作に利用できる核酸である。
【0138】
本発明に係る核酸は、単独で存在するか、又は相同或いは異形である他の核酸と組み合わせられてもよい。好ましい実施形態において、核酸は、前記核酸に対して相同或いは異形である発現調節配列と機能的に連結されている。「相同」と言う用語は、核酸が天然で機能的にも連結されることを意味し、「異形」という用語は、天然で核酸が機能的に連結されていないことを意味する。
【0139】
前記核酸の発現又は転写が前記発現調節配列によって調節されるかまたはその影響下にあるときのように、核酸および発現調節配列が互いに共有結合している場合、核酸と発現調節配列は「機能的に」互いに連結されている。核酸が転写されて機能性タンパク質になると、暗号配列に機能的に連結されている発現調節配列と共に、前記発現調節配列を誘導して前記核酸の転写につながり、前記暗号配列内におけるフレームシフト、または、タンパク質又はペプチドに転写されないようにする暗号配列を生じない。
【0140】
「発現調節配列」或いは、「発現調節因子」という用語は、本発明によると、プロモーター、リボソーム結合部位、エンハンサー及びmRNAの転写或いは遺伝子の転写を調節する他の調節因子を含む。特に、本発明の実施形態においては、発現調節配列が調節され得る。発現調節配列の正確な構造は、種の機能と細胞タイプによって多様である。しかし、一般的にTATAボックス、キャッピング(capping)配列、CAAT配列など転写と翻訳の開始にそれぞれ連関された5'-非転写領域、及び5'-と3'-の非翻訳領域配列も含む。更に具体的には、5'-非転写領域発現調節配列は、機能的に連結された核酸の転写調節用プロモーター配列を含むプロモーター領域を含む。発現調節配列はエンハンサー配列又は、上流側活性剤配列も含んでもよい。
【0141】
本発明による用語である「プロモーター」或いは「プロモーター領域」は、発現される核酸配列の上流(5')側に位置し、RNAポリメラーゼの認識および結合部位を与えることによってその配列の発現を調節する核酸配列に関する。「プロモーター領域」は、遺伝子転写調節に関与する追加因子の認識及びその結合部位を含んでもよい。プロモーターは、原核生物または真核生物の遺伝子の転写を調節してもよい。また、プロモーターが「誘導性」であれば、誘導因子に対応して転写を開始するか、又は転写が誘導因子によって調節されない場合、プロモーターは「構成的」であってもよい。遺伝因子がない場合、誘導性プロモーターの調節下において遺伝子が発現されないか、又は少しだけ発現される。誘導因子の存在下において、遺伝子のスイッチが入るか、または転写の水準が増加する。この過程は一般的に、特定転写因子の結合によって媒介される。
【0142】
本発明による好ましいプロモーターは、SP6、T3とT7重合酵素用プロモーター、ヒトのU6 RNAプロモーター、CMVプロモーター、および、一部又は多くの部分を他の細胞タンパク質、例えば、ヒトのグリセルアルデヒド-3-リン酸ジヒドロゲナーゼ(GAPDH)の遺伝子のプロモーターの一部又は多くの部分と融合され、付加イントロンを含むか、或いは含んでいないCMVプロモーターの人工ハイブリッドプロモーターである(例えば、CMV)。
【0143】
ここに用いられる「発現」という用語は最も広義として用いられ、RNAの生産、又はRNAおよびタンパク質或いはペプチドの生産を含む。RNAについて、「発現」或いは「翻訳」という用語は特にペプチド、又はタンパク質の生産に関する。発現は一時的であっても、安定的であってもよい。本発明によると、発現という用語は、「非正常発現」又は「異常発現」を含む。
【0144】
本発明によると、「非正常発現」又は「異常発現」は1つの参照、例えば、腫瘍関連抗原などのあるタンパク質の非正常又は異常発現と連関づけられた疾患を有していない対象の状態と比較して変形され、好ましくは増加された発現を意味する。発現の増加とは、少なくとも10%、特に少なくとも20%、少なくとも50%又は少なくとも100%、またはこれより大きいものを意味する。一実施形態において、健康な組織では発現が抑制された一方、疾患組織でのみ発現がみられる。
【0145】
「特異的に発現」という用語は、根本的に特異組織又は器官でのみタンパク質が発現されることを意味する。例えば、胃粘膜で特異的に発現される腫瘍関連抗原は、前記タンパク質が胃粘膜で優先的に発現され、他の組織では発現されないか、又は他の組織や器官タイプでは目立つ程度に発現されないことを意味する。よって、胃粘膜の細胞でのみ特に発現され、他の組織では非常に少ない量が発現されるタンパク質は、胃粘膜の細胞で特異的に発現される。他の実施形態においては、腫瘍関連抗原が特異的に1つ以上の組織タイプ、又は器官、例えば、2つ又は3つの組織タイプ又は器官、しかし好ましくは3つを超えない互いに異なる組織や器官タイプにおいて正常条件下に発現されることもある。このような場合、腫瘍関連抗原はこれらの器官で特異的に発現される。
【0146】
本発明による「翻訳」という用語は、細胞のリボソームで起こり、一本のメッセンジャーRNAがタンパク質又はペプチドを作製するためにアミノ酸配列の組み立てを導く過程に関する。
【0147】
本発明によると、「核酸のエンコーディング」という用語は、核酸が適切な環境、好ましくは細胞内に存在すると、それを発現できてそれがエンコードするタンパク質又はペプチドを生産することを意味する。
【0148】
「ペプチド」という用語は、オリゴペプチドとポリペプチドを含み、2個以上の、好ましくは3個以上の、好ましくは4個以上の、好ましくは6個以上の、好ましくは8個以上の、好ましくは9個以上の、好ましくは10個以上の、好ましくは13個以上の、好ましくは16個以上の、好ましくは21個以上の、そして好ましくは、8、10、20、30、40、50個まで、特に100個のアミノ酸がペプチド結合によって共有結合していることを含む基質を意味する。「タンパク質」という用語は巨大ペプチドを意味し、好ましくは100より多いのアミノ酸残基を備えるペプチドを意味する。しかし、一般的に、「ペプチド」と「タンパク質」は同義語であり、本明細書では互換的に用いられる。
【0149】
好ましくは、本発明によって記述されたタンパク質およびペプチドは単離されている。「単離されたタンパク質」、又は「単離されたペプチド」という用語は、タンパク質又はペプチドが自然環境から単離されていることを意味する。単離されたタンパク質、又はペプチドは本質的に精製された状態であってもよい。「本質的に精製された」という用語は、タンパク質、又はペプチドがinvivo又は自然状態において関連づけられる他の基質を実質的に含まないことを意味する。
【0150】
特定のアミノ酸配列、たとえば配列リストに示すものに関する本明細書中での教示は、前記特定の配列に機能的に等価な配列が、たとえば前記特定の配列の特性と一致又は類似した特性を示すアミノ酸配列などが得られる前記特定の配列の変更、例えば変異に関するものとしても理解される。1つの重要な特性は、抗体のその標的への結合を維持することである。好ましくは、特定の配列に対して変形された配列は、それが抗体内の特定の配列を置換するとき、標的と前記抗体の結合が維持される。
【0151】
当業者は、特に、相補性決定部位(CDR)の配列、超可変領域、可変領域が標的に結合する能力を損することなく変化され得るという点を理解するであろう。例えば、相補性決定部位(CDR)の配列は、本明細書中で例示される相補性決定部位(CDR)の配列と同一であるか、非常に類似している。
【0152】
「非常に類似している」ものによって、1~5、好ましくは1~4、1~3、1~2などの置換が行われることも好ましいことが期待される。
【0153】
本発明による「変異体」という用語は、ミュータント、スプライス変異体、立体配座、アイソフォーム、対立遺伝子変異体、種変異体、種相同体を含み、特に、天然に存在するものも含む。対立遺伝子変異体は、遺伝子の正常な配列における変形に関し、その重要性は多くの場合、不明である。完全な遺伝子シークエンシングは与えられた遺伝子に対して多数の対立遺伝子変異体で鑑別する。種相同体は、与えられた核酸又はアミノ酸配列とは起源の異なる種に由来する当該核酸又はアミノ酸配列である。
【0154】
本発明の目的のため、アミノ酸配列の「変異」は、アミノ酸挿入変異、アミノ酸付加変異、アミノ酸欠損変異、及び/又はアミノ酸置換変異を含む。タンパク質のN末端及び/又はC末端での欠損を含むアミノ酸欠損変異は、N末端及び/又はC末端切断変異ともいう。
【0155】
アミノ酸挿入変異は、特定のアミノ酸配列への1つ又は2つ以上のアミノ酸の挿入を含む。挿入のあるアミノ酸配列変異の場合、1つ以上のアミノ酸残基がアミノ酸配列の特定部位に挿入されるが、ランダム挿入して結果物を適切にスクリーニングすることも可能である。
【0156】
アミノ酸追加変異は、1つ以上のアミノ酸、例えば、1、2、3、5、10、20、30、50個又はそれ以上のアミノ酸のアミノ及び/又はカルボキシ末端融合を含む。
【0157】
アミノ酸欠損変異は、1つ以上のアミノ酸、例えば、1、2、3、5、10、20、30、50個又はそれ以上のアミノ酸が配列から除去されることである。欠損はタンパク質の任意の部位で起こる。
【0158】
アミノ酸置換変異は配列内の少なくとも1つの残基が除去され、他の残基がその部位を補うものである。相同タンパク質又はペプチドの間に保存的でないアミノ酸配列中の部位で変更が起こるのが好ましく、及び/又は、類似特性を有する他のアミノ酸と置換されることが好ましい。好ましくは、タンパク質変異体におけるアミノ酸の変化は、保存的アミノ酸変化、例えば、同様の荷電又は非荷電アミノ酸への置換である。保存的アミノ酸変化は、側鎖と関連するアミノ酸の分類で一グループの1つのアミノ酸を置換することを含む。天然に発生したアミノ酸は一般的に4つのファミリーに分けられる:酸性(アスパラギン酸、グルタミン酸)、塩基性(リジン、アルギニン、ヒスチジン)、非極性(アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、及び電荷を帯びていない極性(グリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、トレオニン、チロシン)アミノ酸。フェニルアラニン、トリプトファン及びチロシンはまとめて芳香族アミノ酸に分類されることもある。
【0159】
好ましくは類似性、好ましくは与えられたアミノ酸配列と、上記与えられたアミノ酸配列が変異されたアミノ酸配列との間の同一性が少なくとも約60%、65%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%である。類似性又は同一性は、参照されるアミノ酸配列の全長の少なくても10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%又は約100%のアミノ酸領域が類似、又は一致することが好ましい。例えば、参照されるアミノ酸配列が200のアミノ酸でからなる場合、それに対して少なくても20、少なくとも40、少なくとも60、少なくとも80、少なくとも100、少なくとも120、少なくとも140、少なくとも160、少なくとも180、又は約200のアミノ酸が類似又は一致することが好ましく、連続するアミノ酸であることが好ましい。好ましい実施形態においては、類似性又は同一性は、参照されるアミノ酸配列の全長に対するものである。配列類似性、好ましくは配列同一性を決めるアラインメントは、関連分野における公知のツールを用いて実行されてもよい。好ましくは、最もよい配列アラインメントを用いて、例えば、アラインを用いて、標準設定、好ましくはEMBOSS::ニードル、マトリックス:Blosum62、ギャップオープン10.0、ギャップ イクステンド0.5を用いて行う。
【0160】
「配列類似性」という用語は、互いに同一であるか、又は保存的アミノ酸置換を示すアミノ酸の百分率を意味する。2つのアミノ酸配列の間の「配列相同性」は配列間に一致するアミノ酸の百分率を意味する。
【0161】
「百分率相同性」の用語は、最適なアラインメントの後に得られた、比較対象となる2つの配列の間で一致するアミノ酸残基の百分率を意味する。この百分率は純粋な統計値であり、それぞれの全長においてランダムに分配される2つの配列の間の差異を意味する。2つのアミノ酸配列の配列比較は、通常、最適に整列された後に、これらの配列を比較することによって行われ、上記比較は、配列類似性のある局所領域を比較して確認するため、断片単位で行われるか、または、「比較ウインドウ(window of comparison)」によって行われる。比較のための配列の最適整列が作られ、また手動以外では、Smith and Waterman、1981、Ads App.Math.2、482の局所相同アルゴリズム、Neddleman and Wunsch,1970,J.Mol.Biol.48,443の局所相同アルゴリズム、Pearson and Lipman、1988、Proc.Natl Acad.Sci.USA 85、2444の類似検索方法、又はこのようなアルゴリズムを用いるコンピュータープログラム(GAP,BESTFIT,FASTA,BLAST P,BLAST N and TFASTA in Wisconsin Genetics Software Package、Genetics Computer Group,575 Science Drive,Madison,Wis.)を用いて作ることができる。
【0162】
2つの配列の間の百分率相同性を得るため、比較される2つの配列の間の同一位置の個数を決定し、その個数を比較した位置の数で割り、その結果に100を掛けることにより、百分率相同性が計算される。
【0163】
本発明によると、相同アミノ酸配列は、少なくとも40%、特に少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、少なくとも98%、又は少なくとも99%のアミノ酸残基の同一性を示す。
【0164】
本明細書で記述したアミノ酸配列変異は、当業者により、例えば組換えDNA操作によって、容易に行われるであろう。置換、付加、挿入、又は欠損を有するタンパク質およびペプチドを調製するためのDNA配列の操作は、例えば、Sambrookら(1989)に詳しく記述されている。更に、本明細書で記述されたペプチドおよびアミノ酸変異体は、公知のペプチド合成技術を用いて、例えば固相合成及びそれと同様の方法によって、容易に調製されるであろう。
【0165】
本発明は、明細書中において「ペプチド」と「タンパク質」という用語に含まれる、ペプチド又はタンパク質の誘導体を含む。本発明によると、タンパク質とペプチドの「誘導体」は、タンパク質とペプチドの修飾された形態である。このような修飾は、任意の化学修飾を含み、1つの若しくは複数の、置換、欠損、及び/又は、炭水化物、脂質、及び/又は、タンパク質或いはペプチドのように当該タンパク質又はペプチドと関連する任意の分子の添加を含む。一実施形態においては、タンパク質又はペプチドの「誘導体」は、グリコシル化、アセチル化、リン酸化、アミド化、パルミチル化、ミリストイル化、イソプレニル化、脂質化、アルキル化、誘導体化、保護/ブロック基の導入、タンパク質分解的切断、又は抗体又は他の細胞リガンドとの結合によって生じる類似体を含む。「誘導体」という用語は、更に前記タンパク質およびペプチドと機能的、化学的に等価なすべてのものまで拡大される。好ましくは、変形されたペプチドが増加された安全性及び/又は増加された免疫原性を有する。
【0166】
本発明によると、変異、誘導体、修飾形態、断片、又はアミノ酸配列、ペプチド、又はタンパク質の一部或いは部分は、それぞれ、それが誘導された、つまり機能的に同等な、アミノ酸配列、ペプチド、又はタンパク質の機能的特性を有する。一実施形態においては、変異、誘導体、修飾形態、断片、又はアミノ酸配列、ペプチド、又はタンパク質の一部又は部分が、それぞれ、それが誘導された、アミノ酸配列、ペプチド、又はタンパク質と免疫学的に同等である。一実施形態においては、機能的特性は免疫学的特性である。
【0167】
本発明によると、「誘導された」という用語は、特定の実体が、特に特定の配列が、誘導された対象中に、特に有機体又は分子中に存在するということを意味する。アミノ酸配列、特に特定の配列領域の場合、「誘導された」とは、特に、関連アミノ酸配列が存在するアミノ酸配列から誘導されたことを意味する。
【0168】
「細胞」又は「宿主細胞」は、好ましくは完全な細胞、すなわち酵素、オルガネラ、又は遺伝物質のような一般的な細胞内成分が放出されていない完全な膜を有する細胞である。完全な細胞は、好ましくは生細胞、すなわち正常な代謝機能を行うことができる、生きている細胞である。本発明によると、「細胞」という用語は、原核細胞(例えば、大膓菌)又は真核細胞(例えば、樹状細胞、B細胞、CHO細胞、COS細胞、K562細胞、HEK293細胞、HELA細胞、酵母細胞、昆虫細胞)を含む。ヒト、マウス、ハムスター、豚、山羊、霊長類の細胞のような哺乳動物細胞が特に好ましい。細胞は、多くの数の組織種類から誘導され、一次細胞と細胞株を含む。「細胞」という用語は、ここに記載された癌種類の細胞のような癌細胞と非癌性細胞を含む。
【0169】
核酸分子を含む細胞は好ましくは当該核酸によってエンコードされたペプチド又はタンパク質を発現する。
【0170】
「標的細胞」は、抗体のような免疫反応のための標的の細胞を意味する。本明細書で記述したように、標的細胞は、癌細胞のような、任意の望ましくない細胞を含む。好ましい実施形態においては、標的細胞はCLDN18.2発現細胞である。CLDN18.2発現細胞は一般的に癌細胞を含む。
【0171】
「形質転換動物」という用語は1つ又はそれ以上の導入遺伝子、好ましくは抗体重鎖及び/又は軽鎖導入遺伝子、又はトランスクロモソーム(動物の自然的なゲノムDNAに統合されるか又は統合されない)を含み、好ましくは導入遺伝子を発現できるゲノムを有している動物を示す。例えば、トランスジェニックマウスは、ヒト軽鎖導入遺伝子とヒト重鎖導入遺伝子もしくはヒト重鎖トランスクロモソームを有することができ、CLDN18.2抗原、及び/又はCLDN18.2発現細胞で免疫した際に、ヒト抗CLDN18.2抗体を作る。形質転換マウス、例えばHCo7又はHCol2マウスのようなHuMAbマウスの場合のように、ヒト重鎖導入遺伝子はマウスの染色体DNAに統合されるか、或いはWO02/43478に記載されたようにトランス染色体(例えばKM)マウスの場合のように、ヒト重鎖導入遺伝子は染色体外的に維持され得る。このような遺伝子導入マウスとトランス染色体マウスは、V-D-J組換えと同型転換により、CLDN18.2に対するヒトモノクローナル抗体(例えば、IgG、IgA及び/又はIgE)の多くのアイソタイプを作ることもできる。
【0172】
「免疫学的に同等な」という用語は、免疫学的に同等なアミノ酸配列のような免疫学的に同等である分子が、同一であるか又は本質的に同一の免疫学的特性を示し、及び/又は、例えば、体液の免疫反応の誘導のような免疫学的効果の種類、誘導された免疫反応の強度及び/又は持続期間、或いは免疫反応の特異性に対して同一であるか又は本質的に同一の免疫学的効果を発揮する。本発明の文脈では、「免疫学的に同等な」という用語は、好ましくは免疫又は抗体に用いられる、ペプチド又はペプチド変異の免疫学的効果又は特性に関して用いられる。特定の免疫学的特性は、抗体に結合する能力であって、適切であれば、好ましくは抗体の生成を刺激することで免疫反応が生じる。例えば、被験者の免疫系にさらされるとき、免疫反応、好ましくは、CLDN18.2における参照アミノ酸配列形成部位のような、参照されるアミノ酸配列と反応する特異性を有する抗体を誘導するものであれば、アミノ酸配列が参照されるアミノ酸配列に免疫学的に同等である。
【0173】
本発明は、試料中の、CLDN18.2抗原の存在を検出するまたはCLDN18.2抗原の量を測定する方法であって、抗体とCLDN18.2との間の複合体の形成を許容する条件下で、試料を、任意には対照試料を、CLDN18.2に結合する本発明の抗原と接触させることを含む方法を提供する。複合体の形成はその後に検出され、複合体形成についての対照試料と試料とを比較した差異は、試料内のCLDN18.2抗原の存在を示す。
【0174】
上で記述したような方法は、特に癌疾患のようなCLDN18.2と係わる疾患の診断に有用である。好ましくは、基準又は対照試料内のCLDN18.2の量よりも多い試料内のCLDN18.2の量は、試料を生成した被験者、特にヒト内にCLDN18.2と係わる疾患の存在を示す。
【0175】
上で記述したような方法が用いられるとき、本明細書で記述された抗体は、(i)検出可能なシグナルを提供し、(ii)第2の標識と相互作用し、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)のような、第1又は第2標識により提供される検出可能なシグナルを修飾し、(iii)例えば、電荷、疎水性、形態、又は他の物理的パラメータによって、移動性、例えば電気泳動移動度に影響を及ぼすか、あるいは、(iv)捕獲部分を、例えば親和性、抗体/抗原、又はイオン性複合化を提供する機能を有する標識とともに提供される。標識として適切なものは、蛍光性標識、発光性標識、発色団標識、放射性同位体標識、同位体標識、好ましくは安定した同位体標識、同重体標識、酵素標識、粒子標識、特に金属粒子標識、磁性粒子標識、ポリマー粒子標識のような構造;又はビオチン、細胞付着タンパク質又はレクチンのような、受容体のリガンド又は結合分子のような小さな有機分子;結合剤の使用により検出可能な核酸及び/又はアミノ酸残基を含む標識配列;などがある。標識の種類に制限はなく、硫酸バリウム、イオセタム酸、イオパノ酸、カルシウムイポデート、ジアトリゾ酸ナトリウム、メグルミンジアトリゾエート、メトリザミド、チロパノ酸ナトリウム;フッ素-18や炭素-11のような放射線診断法、ヨウ素-123、テクネチウム-99m、ヨウ素-131、インジウム-111のようなγ放出体、フッ素やガドリニウムのような、核磁気共鳴のための核種を含む。
【0176】
本発明によると、参照試料又は参照有機体のような「基準」は、テスト試料又はテスト有機体より本発明の方法で得られた結果を相互に関連づけて比較するために用いられる。一般的に、基準有機体は健康な有機体、特に癌疾患のような疾患に罹患していない有機体である。「基準値」又は「基準レベル」は、十分に多くの数の参照を測定することによる経験に基づいた基準から決められる。好ましくは、基準値は少なくとも2個、好ましくは少なくとも3個、好ましくは少なくとも5個、好ましくは少なくとも8個、好ましくは少なくとも12個、好ましくは少なくとも20個、好ましくは少なくとも30個、好ましくは少なくとも50個、又は好ましくは少なくとも100個の参照を測定することで決められる。
【0177】
本明細書で用いられた「減少する」又は「抑制する」という用語は、全般的な減少を、そのレベルにおいて、好ましくは5%以上、10%以上、20%以上、更に好ましくは50%以上、最も好ましくは75%以上を惹起させる能力を意味する。「抑制する」という用語又は類似する表現は、抑制の完了又は本質的な完了、すなわち0又は本質的に0までの減少を含む。
【0178】
「増加する」又は「強化する」という用語は、少なくとも約10%、好ましくは少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%、更に好ましくは少なくとも40%、更に好ましくは少なくとも50%、更により好ましくは少なくとも80%、最も好ましくは少なくとも100%程度までの増加又は強化に好ましくは関連がある。
【0179】
本明細書で記述した薬剤、組成物、方法は、疾患を有する被験者を診断するために用いられることができる。診断可能な疾患はCLDN18.2を発現するすべての疾患を含む。特に好ましい疾患は、本明細書で記述した癌疾患のような癌疾患である。
【0180】
本発明によると、「疾患」という用語は任意の病理的状態を指し、癌疾患を、特に本明細書で記述した癌疾患の形態を含む。
【0181】
「正常組織」又は「正常状態」で用いられるような「正常」という用語は、健康な被験者内の健康な組織又は状態、すなわち非病理的状態を指し、本明細書で「健康な」とは、好ましくは癌でないことを意味する。
【0182】
本発明によると、「CLDN18.2を発現する細胞を伴う疾患」は、疾患に罹患している組織又は器官の細胞内におけるCLDN18.2の発現が、健康な組織また器官内の状態と比較して好ましく増加するということを意味する。増加とは、少なくとも10%、特に少なくとも20%、少なくとも50%、少なくとも100%、少なくとも200%、少なくとも500%、少なくとも1000%、少なくとも10000%又はそれ以上位の増加を示す。一実施形態において、発現は疾患に罹患している組織でのみ発見される一方、健康な組織での発現は抑圧される。本発明によると、CLDN18.2を発現する細胞を伴うまたはこれに関連づけられる疾患は、癌疾患、特に本明細書で記述した癌の形態を含む。
【0183】
本発明によると、「腫瘍」又は「腫瘍疾患」という用語は、細胞(腫瘍性新生細胞又は腫瘍細胞と呼ばれるもの)の異常増殖により形成される腫れ又は病変を示す。「腫瘍細胞」が意味するのは、急激でかつ制御されない細胞増殖によって増殖する異常細胞であり、新しい増殖停止を開始する刺激後に増殖し続ける。腫瘍は、構造的組織、および、正常組織との機能的な共同作用の部分的又は完全な欠如を示し、通常、良性、前癌状態、悪性のいずれかの組織の明らかな塊を形成する。
【0184】
良性腫瘍は、癌の悪性特性の3種がすべて欠如している腫瘍である。定義によると、良性腫瘍は非制御的で攻撃的な方法により増殖せず;周囲の組織に浸潤せず;隣接していない組織に拡散(転移)しない。良性腫瘍の一般的な例としては、ほくろおよび子宮筋腫がある。
【0185】
「良性」という用語は、軽くかつ非進行性疾患を暗示し、実際、多くの種類の良性腫瘍は健康に無害である。しかし、癌の浸湿性特性が欠如しているため「良性腫瘍」として定義された一部の腫瘍(Neoplasm)は、依然として健康に否定的な影響を及ぼしうる。こうした例としては「質量効果」(血管のような重要な期間の圧迫)、または、あるホルモンを過剰生産する内分泌組織の「機能性」腫瘍(例えば、甲状腺腺腫、副腎皮質腺腫、下垂体腺腫)を作る腫瘍が挙げられる。
【0186】
良性腫瘍は、一般的に悪性のように振る舞うそれらの能力を抑制する外部表面により取り囲まれている。いくつかの場合において、ある「良性」腫瘍は、後で悪性癌を誘発し、これは腫瘍の新生物細胞の亜集団における追加の遺伝的変化に起因することがある。この現状の顕著な例は管状腺腫であり、これは結腸癌の主な前駆体である大腸ポリープの一般的な種類である。管状腺腫内の細胞は、よく癌に進行する大部分の腫瘍のように、総括的に異形成症として知られている細胞の成熟と外観の特定の異常を示す。これらの細胞異常は珍しく変わるか、絶対に癌性に変わらない良性腫瘍では見られないが、子宮頸部の前癌病変のような、明らかな離散塊を形成しない他の前癌組織異常で見られる。一部の有識者は、「前癌状態」のような異形腫瘍を参照し、稀に、又は決して癌を起こさない腫瘍のために「良性」という用語を保留することを好む。
【0187】
腫瘍は、腫瘍形成の結果としての組織の異常塊である。腫瘍形成(ギリシャ語で「new growth」)は、細胞の異常増殖である。細胞増殖が過度であり、その周りの正常組織の成長と同調しない。その増殖は刺激の中断後にも同様に過度な方法で持続する。これは、主にしこり又は腫瘍を惹起させる。腫瘍は、良性、前癌状態、又は悪性であってもよい。
【0188】
本発明によると、「腫瘍の成長」と「腫瘍成長」とは、腫瘍のサイズが増加する傾向及び/又は腫瘍細胞が増殖する傾向と関連がある。
【0189】
癌(医学用語:悪性新生物)は、細胞群が、統制されない増殖(一般的な限界を越えて分裂)、浸潤(隣接する組織への侵入と破壊)、又は時には転移(リンパ液や血液を通じて体内の他の位置に拡散)を示す疾患の部類である。癌のこのような3種の悪性の特性は自己制限されており、浸潤又は転移しない良性腫瘍からこれらを区分する。大部分の癌は腫瘍を形成するが、白血病のような一部の癌は腫瘍を形成しない。本発明によると、「癌」と「腫瘍」、又は「癌疾患」と「腫瘍疾患」という用語は、本明細書で一般的に互換可能に用いられ、細胞が統制されない増殖、および任意に浸潤及び/又は導入を示す疾患を示す。
【0190】
好ましくは、本発明において、「癌疾患」は、CLDN18.2を発現する細胞によって特徴付けられる。CLDN18.2を発現する細胞は、好ましくは癌細胞であり、好ましくは本明細書で記述した腫瘍および癌の癌細胞である。好ましくは、このような細胞は胃細胞以外の細胞である。
【0191】
癌は腫瘍と類似した細胞の種類別で分類されるので、その組織は腫瘍の起源と推測される。これらはそれぞれ組織学および位置である。
【0192】
本発明によると、「癌」という用語は、白血病、精上皮腫、黒色腫、奇形腫、リンパ腫、神経芽細胞腫、神経膠腫、直膓癌、子宮内膜癌、腎臓癌、副腎癌、甲状腺癌、血液癌、皮膚癌、脳癌、子宮頸部癌、膓癌、肝臓癌、結腸癌、胃癌、膓癌、頭頸部癌、消化管癌、リンパ節癌、食道癌、結腸直腸癌、膵膓癌、耳鼻咽喉(ENT)癌、乳房癌、前立腺癌、子宮癌、卵巣癌、肺癌、及びそれらの癌の転移を含む。これらの例として、肺癌種、乳房癌腫、前立腺癌腫、結腸癌腫、腎臓癌腫、子宮頸部癌腫、又は上記で記述した癌種類又は腫瘍の転移がある。癌という用語は本発明によると、癌の転移も含む。
【0193】
肺癌の主な種類としては、小細胞肺癌(SCLC)と非小細胞肺癌(NSCLC)がある。非小細胞肺癌の主な三種の下位種類は、肺扁平上皮癌、腺癌、大細胞肺癌である。腺癌が肺癌の約10%を占めている。いずれもより中央部に位置している小細胞肺癌と肺扁平上皮癌の両方とは対照的に、この癌は主に肺内の周辺部で見られる。
【0194】
本発明によると、「癌」は上皮細胞由来の悪性腫瘍である。その群は乳癌、前立腺癌、肺癌、結腸癌の一般的な形態を含む、最も一般的な癌を代表する。
【0195】
「転移」が意味するのは、本来の部位から身体の他の部分に癌細胞が拡散することである。転移の形成は非常に複雑な過程であり、一次腫瘍から悪性細胞の単離、細胞外マトリクスの浸潤、体腔と管に入る内皮の基底膜の貫通、そして、血液による輸送後の標的器官への浸透による。最終的に、標的部位における新しい腫瘍の、すなわち二次腫瘍又は転移性腫瘍の成長は、血管新生による。腫瘍の転移は腫瘍細胞又は成分が残っており、転移潜在力が発達され得るため、一次腫瘍の除去後にも発生することがある。一実施形態においては、本発明によると「転移」という用語は、一次腫瘍と局所リンパ節系から離れている転移と関連する「遠隔転移」と関連がある。
【0196】
二次又は転移性腫瘍の細胞は、本来の腫瘍に似ている。これは、例えば、卵巣癌が肝臓に転移した場合、異常肝細胞でない二次腫瘍は、異常卵巣細胞で構成されていることを意味する。そして、肝臓の腫瘍は肝臓癌でなく、転移性卵巣癌と呼ばれる。
【0197】
再発(relapseまたはrecurrence)は、ヒトが過去に侵された状態に再度侵される場合に発生する。例えば、患者が癌疾患に罹患したことがあり、前記疾患の治療が成功したが、再度前記疾患が発達したら、新しく発達した前記疾患は再発と考えることができる。しかし、本発明によると、癌疾患の再発は、必ずしも本来の癌疾患の部位で発生しなくてもよい。そのため、例えば、患者が卵巣腫瘍に罹患し、成功的に治療を受けたら、再発は卵巣腫瘍が発生することであっても、卵巣とは異なる部位で腫瘍が発生することであってもよい。腫瘍の再発は、本来の腫瘍の部位でだけでなく、本来の腫瘍部位と異なる部位で腫瘍が発生する状況も含む。好ましくは、患者が治療を受けた本来の腫瘍が一次腫瘍であり、本来腫瘍の部位と異なる部位における腫瘍が二次又は転移性腫瘍である。
【0198】
「治療」が意味するのは、被験者における腫瘍のサイズ又は腫瘍の数の減少を含む、被験者における疾患の阻止又は鈍化;被験者における新しい疾患の展開の抑制又は鈍化;現在疾患に罹患している又は以前に疾患に罹患していた被験者における症状及び/又は再発の頻度又は深刻性の減少;及び/又は延長、すなわち被験者の寿命の延長を含む、疾患の予防又は解消のために、化合物又は組成物を被験者に投与することである。
【0199】
特に、「疾患の治療」という用語は、治癒、持続期間の短縮、改善、予防、進行又は悪化の鈍化又は抑制、疾患又はその疾患の症状の発症を予防又は遅延することを含む。
【0200】
「リスクがある」とは、一般的な集団と比較して、疾患、特に癌の発達の可能性が一般的な可能性よりも高いことが確認されている被験者、すなわち患者を意味する。更に、疾患に、特に癌に罹患しているか又は罹患していた被験者は、疾患が発達し続ける被験者のように、疾患の発達のリスクが高い被験者である。癌罹患していたか又は現在罹患している被験者もまた、高い癌転移のリスクを有する。
【0201】
「免疫療法」は、特定の免疫反応に関与する治療に関連する。本発明の文脈では、「保護する」、「予防する」、「予防のための」、「予防の」、「保護の」のような用語は、被験者の疾患の予防もしくは治療、または、発生及び/又は伝播に関連し、特に被験者にて疾患が発達する可能性を最小化するか、又は疾患の発達を遅延することに関連する。例えば、上述のように、腫瘍へのリスクを有する人物は、腫瘍の予防のための療法の候補者となりうる。免疫療法は、患者からの抗原-発現細胞を除去するように機能する多様な技術のいずれを用いて行ってもよい。
【0202】
一実施形態において、免疫療法は能動免疫療法であってもよく、これは、内因性宿主免疫系のin vivoでの刺激により、免疫反応-修飾剤(免疫反応性ペプチドと核酸のような)の投与によって疾患に罹患している細胞に対抗する治療である。
【0203】
他の実施形態において、免疫療法は受動免疫療法であってもよく、これは、坑癌効能を直接的又は間接的に媒介することができ、完全な宿主免疫系に必ずしも依存しない、確立された腫瘍-免疫反応性(抗体のような)を有する薬剤の導入による治療である。
【0204】
「in vivo」という用語は被験者の状況に関連する。
【0205】
「被験者」、「個人」、「生命体」、「患者」という用語は、互換可能に用いられ、脊椎動物に、好ましくは哺乳動物に関連する。例えば、本発明の文脈において哺乳動物は、ヒト、非ヒト霊長類、犬、猫、羊、牛、山羊、豚、馬などの家畜、マウス、ラット、ラビット、モルモットなどの実験用動物はもちろん、動物園の動物のような捕獲飼育されている動物も該当する。本明細書で用いられる「動物」という用語にはヒトも含まれる。「被験者」という用語は、疾患、好ましくは本明細書で記述した疾患に罹患している患者、すなわち動物、好ましくはヒトも含む。
【0206】
本発明によると、「試料」は、本発明において有用な任意の試料であってもよく、特に体液を含む組織試料のような生物学的試料、及び/又は、細胞試料であってもよい。試料は、パンチ生検を含む組織生検により、又は、血液、気管支吸引液、痰、尿、糞便、又は他の体液を採取して、従来の方法で得ることができる。本発明によると、「試料」という用語は、生物学的試料のフラクション又は単離物のような加工試料も含み、核酸およびペプチド/タンパク質単離体が例示される。好ましくは、試験される細胞又は組織、たとえば例えば、癌を診断する器官の細胞または試料を試料は含有する。例えば、診断する癌が肺癌であれば、試料は肺より得られた細胞又は組織を含むことができる。
【0207】
本発明によると、試料は、腫瘍又は癌細胞を含んでいるか、又は含んでいると予想される患者に由来する身体試料のような試料であってもよい。身体試料は、血液、一次腫瘍又は腫瘍の転移から得られる組織試料のような、任意の組織細胞であってもよいし、又は、腫瘍或いは癌細胞を含んでいる任意の他の試料であってもよい。
【0208】
本発明は下記の図面と実施例によって詳しく記述され、これらは単に実例の目的として用いられ、これらに制限されることはない。説明と実施例によって、本発明に含まれているものに類似するさらなる実施形態を、当業者が用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0209】
図1図1はクローディン18タンパク質(ヒト/マウス)の配列アライメントである。この配列アライメントは、ヒトおよびマウスのクローディン18.2間、および、ヒトのクローディン18.1とクローディン18.2との間の高い相同性を示す。
図2図2はマウス免疫化に用いられたCLDN18.2のC末端部分(aa191-261)を含む組換えタンパク質である。
図3図3は43-14Aおよび35-22A抗体の配列分析を示す。
【実施例0210】
本明細書で用いられた技術と方法はここに記述されているか、そのものとして知られており、例えば、Sambrookら、分子クローニング:実験室マニュアル、2版(1989)コールドスプリングハーバー研究所プレス、コールドスプリングハーバー,N.Yで記述したような方法で行われる。キットと試薬の使用を含むすべての方法は、特別に指示がない限り製造者の情報によって行われる。
【0211】
(実施例1:モノクローナル抗体の生成)
このプロジェクトの目的は、胃のCA、食道のCA、膵膓のCAおよび肺のCA FFPE組織中に腫瘍細胞を発現するCLDN18.2を検出できるマウスのモノクローナルCLDN18-特異抗体を生成することであった。
【0212】
特異性が高く親和性の高い診断用CLDN18.2抗体を生成するため、他の免疫原とアジュバントを大きく変えて免疫プロトコルを開始することが必須である。プロジェクトにおいて、α-CLDN18免疫反応を誘発するために多様な免疫戦略を用いて、約100匹のマウス(C57Bl/6 and Balb/c)に接種された。
【0213】
マウス免疫系を誘発し免疫寛容を克服するため、ウイルス類似粒子(VLP)、ペプチド-コンジュゲート、他の発現パートナー(タグ)を有する組換え融合タンパク質として発現されるヒトCLDN18.2の他の一部をコードする組換えタンパク質を用いた。
【0214】
13の異なる免疫戦略の中で、最良の結果は、多様なアジュバント(下記表1を参照、融合35)の組み合わせ下でHIS-タグ化CLDN18 C-末端組換えタンパク質(図2を参照;免疫#20)でマウスを治療することによって達成された。
【0215】
一つの候補(35-22A)は、4段階-免疫戦略(30日)により生じた。さらなる候補(43-14A)は、7段階-免疫プロトコル(79日)により生じた。(下記表1を参照、融合43)
【0216】
脾臓を摘出する2日前に、マウスは標的B-細胞を活性化するためにブーストされた。
【0217】
融合の日に、マウスの脾細胞を単離し、マウス骨髄種細胞株Ag8.653と融合した。マウス細胞を骨髄種に融合させるため、KohlerおよびMilstein(1975)の標準プロトコルに従って行った。HATを選択した後、免疫化に用いられた抗原を認識する抗体の分泌のために、上清をELISAにてテストした。
【0218】
ELISA陽性上清のハイブリドーマ細胞を、モノクローナルハイブリドーマを生成するためにサブクローニングし、サブクローニングされたハイブリドーマ細胞の上清をELISAにて再スクリーニングした。陽性クローンのハイブリドーマ細胞は増殖され、上清を更に分析した。
【0219】
(実施例2:モノクローナルハイブリドーマ上清のウエスタンブロットスクリーン)
上清中のELISA-陽性抗体が、組換えクローディン18、又はHEK293細胞を発現する、安定に導入されたクローディン18からのタンパク質溶解物のいずれかに結合することが可能であるかという問いに答えるために、ウエスタンブロット分析が行われた。ウエスタンブロット分析においてクローディン18に特異的に結合可能な抗体が増殖された。細胞は凍結保存され、抗体はMABselect(FPLC)によって精製された。ウエスタンブロットスクリーンにより選択された抗体を精製し、免疫組織化学によってホルマリンに固定されたパラフィン包埋組織(FFPE)内でそれらの抗原を結合する能力について評価した。
【0220】
(実施例3:組織学分析-ウエスタンブロット陽性抗体の第1スクリーン)
この実験の目的は、CLDN18の特異性と抗体の感度を確認することであった。これはFFPE正常な胃組織を発現するCLDN18を用いて行われた。
【0221】
第1実験において、ウエスタンブロットテストが行われ、精製された抗体はヒトの胃FFPE断片上に0.5μg/mlの濃度で分析された。効能に優れ、多くの量のバックグラウンドを生産しなかった抗体は、更に感度と特異性をテストするため、多様な正常な胃組織上に0.2μg/mlおよび0.1μg/mlで滴定した。最良の抗体が既に0.2μg/mlで非常に優れた効能を発揮し、基準(benchmark)としての役割を果たしたため、以後の開発段階では、新たに生成された抗体は0.2μg/mlの濃度で直接テストされた。テストが行われたヒトの胃組織の粘膜上皮上に強いシグナルを生成し、隣接した粘膜組織上にはバックグラウンドを生成しない抗体が、さらなる滴定実験と特異性分析のために選択された。2個の抗体は優れた効能を発揮した:35-22Aと43-14A;下記表2および表3を参照。
【0222】
テストが行われた正常な胃組織上で強いシグナルを生産する抗体が更に癌組織上で分析された。対応するハイブリドーマ細胞を無血清培地に適用させた。mumAb 43-14Aを用いて生産されるシグナルは、mumAb 35-22Aを用いて生産されるシグナルより僅かに強かった;下記表4を参照。
【0223】
(実施例4:組織学的深層分析と抗体の特性)
無血清で生産された抗体を、胃のCA組織マイクロアレイ(TMA)を染色させるために用いられた。染色された場合の量、シグナルの強度、陽性腫瘍細胞の量を分析した。
【0224】
mumAbs35-22Aと43-14Aは染色強度に優れた。テストが行われた抗体35-22Aと43-14Aとの間では、染色パターンにおける明らかな差異はなく、僅かな差異のみ検出された。
【0225】
(実施例5:正常組織パネルを用いた抗体特異性の分析)
選択された抗体は、高いCLDN18標的特異性を確保するために多様で関連のある組織上でテストされた;下記表5Aおよび表5Bを参照。
【0226】
抗体35-22Aと43-14Aの染色パターンと染色強度において明らかな差異がないということが以前の実験で認められた。従って、抗体を、より臨床的に指向されたプロトコルの染色実験に供した。標準病理学実験室で適用可能な染色過程をシミュレートするため、短期間(1時間)の一次抗体培養ステップを有する1日-プロトコルが確立された。
【0227】
分析されたすべての場合において、mumAb 43-14Aが非常に優れた効能を発揮し、mumAb 35-22Aと比較しても更に優れた効能を発揮した;下記表6を参照。
【0228】
(実施例6:関連する組織に関する深層分析-気道上皮)
mumAb 43-14Aは、特に肺/気管支の通路(lung/bronchial tract)の標的組織内において、それらの特異性を確かにするために多様な関連する気道組織上で更に分析された。このような組織についてCLDN18.1の発現が報告された。診断抗体が、CLDN18.1の肺/気管支発現アイソフォームと交差反応するか否かを分析するため、利用可能なすべての肺/気管支組織をスクリーンした。肺と気管支組織において何らのシグナルも検出されなかった;下記表7を参照。このような気道組織で発現されるCLDN18アイソフォームは抗体43-14Aにより認識されない。
【0229】
(実施例7:mumAbs 43-14Aおよび35-22Aのエピトープマッピング)
ペプチドELISAは、CLDN18.2上の抗体結合エピトープを同定するため行われた。各精製された抗体は、CLDN18.2のC-端末配列をカバーする重複ペプチド上でテストされた。35-22Aと43-14AはいずれもペプチドTEDEVQSYPSKHDYVに対するエピトープマッピングに対して特定の結合を示した。下記の配列が反応配列として決定された:EVQSYPSKHDYV。
【0230】
(実施例8:mumAbs 43-14Aおよび35-22Aの配列分析)
抗体43-14Aおよび35-22Aの配列分析を図3に示す。
【0231】
(実施例9:他の癌組織の染色)
4%緩衝ホルマリンに固定されたパラフィン包埋試料のスライド上で免疫組織化学(IHC)を行った。パラフィン包埋は標準プロトコルによって行われた。
【0232】
脱パラフィンした後に、すべてのスライドは、0.05% Tween-20(pH6.0)が添加された10mMクエン酸中で120℃にて10分間煮沸し、その後(2% H2O2により)クエンチしてブロックし、一晩の間4℃で0.2μg/mlから0.5μg/mlまでの診断モノクローナルマウス抗-CLNDN18.2抗体43-14A又は35-22Aと共に培養することにより、抗原不活化された。抗体結合は、ポリマーベースのパワービジョン抗体(Power vision HRP goat-a-mouse;Immunologic、ダイフェン、オランダ)と基質-色素溶液(VectorRed;Vector Labs、バーリンゲーム、USA)を用いて西洋ワサビペルオキシダーゼが標識された二次抗体によって可視化された。断片は順にMayerのヘマトキシリン(Carl Roth GmbH,Karlsruhe,ドイツ)を用いて対比染色され、評価者による評価に供した。
【0233】
組織学的評価
各断片で可視化されたすべての腫瘍細胞に対する陽性に染色された腫瘍細胞の相対比率について、すべての試料を分析した。染色の強度は、陰性(-)、弱い陽性(1+)、中度陽性(2+)、強い陽性(3+)に分類された。膜染色のみが陽性と認められた。ヒトの胃組織は、各染色に対して陽性対照として用いた。PanIN(膵上皮内腫瘍性病変)は強い陽性としてしばしば見られることから、これらの領域についても強い陽性(3+)に関する内部の染色強度の基準として検討された。
【0234】
強い膜シグナルは、膵膓、食道及び胃の癌性組織(表8)内で両抗体について、又は、肺癌性組織(表9)内で抗体43-14Aについて生じた。陽性腫瘍細胞の数は異なる腫瘍症例の間でそれぞれ異なる。分析された試料において最も大きい部分は2+陽性から3+陽性である。
【0235】
【表1】
【0236】
【表2】
【0237】
【表3】
【0238】
【表4】
【0239】
【表5A】
【0240】
【表5B】
【0241】
【表6】
【0242】
【表7】
【0243】
【表8】
【0244】
【表9】
図1
図2
図3
【配列表】
2023109883000001.app
【手続補正書】
【提出日】2023-06-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クローディン18スプライス変異体2(CLDN18.2)に結合する抗体又はその抗原結合性フラグメントであって、
前記抗体が、重鎖可変領域を含む抗体重鎖と、軽鎖可変領域を含む抗体軽鎖とを含み、
(A)前記重鎖可変領域は、SEQ ID NO:7の45~52、70~77および116~123番目と少なくとも92%の配列相同性を有するアミノ酸の非連続配列を含み、前記軽鎖可変領域はSEQ ID NO:11の47~57、75~77および114~122番目と少なくとも92%の配列相同性を有するアミノ酸の非連続配列を含み;
ただし、前記重鎖可変領域は、SEQ ID NO:7の45~52、70~77および116~123番目と異なる1つ以下のアミノ酸残基を含むとし;
ただし、前記軽鎖可変領域は、SEQ ID NO:11の47~57、75~77および114~122番目と異なる1つ以下のアミノ酸残基を含むとする、又は
(B)前記重鎖可変領域はSEQ ID NO:15の45~52、70~77および116~129番目と少なくとも92%の配列相同性を有するアミノ酸の非連続配列を含み、前記軽鎖可変領域は、SEQ ID NO:19の47~52、70~72および109~117番目と少なくとも92%の配列相同性を有するアミノ酸の非連続配列を含み;
ただし、前記重鎖可変領域はSEQ ID NO:15の45~52、70~77および116~129番目と異なる1つ以下のアミノ酸残基を含むとし;
ただし、前記軽鎖可変領域はSEQ ID NO:19の47~52、70~72および109~117番目と異なる1つ以下のアミノ酸残基を含むとする、抗体又はその抗原結合性フラグメント。
【請求項2】
前記CLDN18.2が、細胞表面膜結合性CLDN18.2である、請求項1に記載の抗体又はその抗原結合性フラグメント。
【請求項3】
前記CLDN18.2が癌細胞上に存在する、請求項1又は2に記載の抗体又はその抗原結合性フラグメント。
【請求項4】
前記癌細胞が、CLDN18.2発現癌細胞である、請求項3に記載の抗体又はその抗原結合性フラグメント。
【請求項5】
前記癌細胞が、胃癌細胞、食道癌細胞、膵臓癌細胞、肺癌細胞、卵巣癌細胞、結腸癌細胞、肝癌細胞、頭頸部癌細胞および胆嚢癌細胞からなる群より選ばれる、請求項4に記載の抗体又はその抗原結合性フラグメント。
【請求項6】
胃上皮細胞以外の非癌性細胞に検出可能に結合せず免疫組織化学分析の条件下、0.5μg/mlまたは0.2μg/mlの抗体濃度で結合を試験する、請求項1~5のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合性フラグメント。
【請求項7】
非癌性肺細胞に検出可能に結合せず免疫組織化学分析の条件下、0.5μg/mlまたは0.2μg/mlの抗体濃度で結合を試験する、請求項1~のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合性フラグメント。
【請求項8】
モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト抗体又はヒト化抗体である、請求項1~のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項9】
SEQ ID NO:7、11、15又は19の可変領域を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項10】
SEQ ID NO:7、11、15又は19のアミノ酸配列を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項11】
少なくとも一つの検出可能な標識と結合している、請求項1~10のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合性フラグメントを含む、コンジュゲート。
【請求項12】
請求項1~10のいずれか一項に記載の抗体を産生可能なハイブリドーマ。
【請求項13】
試料中のCLDN18.2を検出する或いはCLDN18.2の量を決定する方法であって、
(i)試料を、請求項1~10のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合性フラグメント、或いは請求項11に記載のコンジュゲートと接触させるステップと、
(ii)前記抗体、前記抗原結合性フラグメント、又は前記コンジュゲートと、CLDN18.2との間における複合体の形成を検出する或いは複合体の量を決定するステップと、を含む、方法。
【請求項14】
細胞がCLDN18.2を発現するか否かを判定する方法であって、
(i)細胞試料を、請求項1~10のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合性フラグメント、或いは請求項11に記載のコンジュゲートと接触させるステップと、
(ii)前記抗体、前記抗原結合性フラグメント、又は前記コンジュゲートと、前記試料における細胞によって発現されたCLDN18.2との間における複合体の形成を検出するステップと、を含む、方法。
【請求項15】
癌を診断、検出又は観測する方法(ヒトに対する医療行為を除く。)であって、
(i)生体試料を、請求項1~10のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合性フラグメント、或いは請求項11に記載のコンジュゲートと接触させるステップと、
(ii)前記抗体、前記抗原結合性フラグメント、又は前記コンジュゲートと、CLDN18.2との間における複合体の形成を検出する、及び/又は複合体の量を決定するステップと、を含
前記癌はCLDN18.2を発現する癌細胞によって特徴付けられる、方法。
【請求項16】
CLDN18.2を標的とする癌療法により癌を治療可能であるか否かを判定する方法(ヒトに対する医療行為を除く。)であって、
(i)癌細胞を含む試料を、請求項1~10のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合性フラグメント、或いは請求項11に記載のコンジュゲートと接触させるステップと、
(ii)前記抗体、前記抗原結合性フラグメント、又は前記コンジュゲートと、CLDN18.2との間における複合体の形成を検出するステップと、を含
前記癌はCLDN18.2を発現する癌細胞によって特徴付けられる、方法。
【請求項17】
請求項1~10のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合性フラグメント、或いは請求項11に記載のコンジュゲートを含む、CLDN18.2を発現する細胞を伴う疾患を診断するための診断テストキット。
【請求項18】
前記CLDN18.2が、配列表のSEQ ID NO:2に従うアミノ酸配列を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合性フラグメント、請求項11に記載のコンジュゲート、請求項15または16に記載の方法、或いは請求項17に記載の診断テストキット
【請求項19】
当該方法は免疫組織化学分析であり、抗体濃度は0.5μg/ml以下または0.2μg/ml以下である、請求項13から16のいずれか一項に記載の方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0208
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0208】
本発明は下記の図面と実施例によって詳しく記述され、これらは単に実例の目的として用いられ、これらに制限されることはない。説明と実施例によって、本発明に含まれているものに類似するさらなる実施形態を、当業者が用いることができる。
以下、参考形態の例を付記する。
1. 抗体又はその抗原結合性フラグメントであって、
(i)TEDEVQSYPSKHDYV(SEQ ID NO:5)、又はEVQSYPSKHDYV(SEQ ID NO:6)のアミノ酸配列を有するペプチドに結合する、及び/又は
(ii)クローディン18.2(CLDN18.2)に結合し、前記抗体又はその抗原結合性フラグメントが、TEDEVQSYPSKHDYV(SEQ ID NO:5)、又はEVQSYPSKHDYV(SEQ ID NO:6)のアミノ酸配列を有するCLDN18.2内のエピトープに少なくとも結合することによって、CLDN18.2に結合する、抗体又はその抗原結合性フラグメント。
2. 前記CLDN18.2が、細胞表面膜結合性CLDN18.2である、1.に記載の抗体又はその抗原結合性フラグメント。
3. 前記CLDN18.2が癌細胞上に存在する、1.又は2.に記載の抗体又はその抗原結合性フラグメント。
4. 前記癌細胞が、CLDN18.2発現癌細胞である、3.に記載の抗体又はその抗原結合性フラグメント。
5. 前記癌細胞が、胃癌細胞、食道癌細胞、膵臓癌細胞、肺癌細胞、卵巣癌細胞、結腸癌細胞、肝癌細胞、頭頸部癌細胞および胆嚢癌細胞からなる群より選ばれる、3.又は4.に記載の抗体又はその抗原結合性フラグメント。
6. 胃上皮細胞以外の非癌性細胞に結合しない、1.~5.のいずれか一つに記載の抗体又はその抗原結合性フラグメント。
7. 非癌性肺細胞に結合しない、1.~6.のいずれか一つに記載の抗体又はその抗原結合性フラグメント。
8. キメラ抗体、ヒト抗体又はヒト化抗体である、1.~5.のいずれか一つに記載の抗体。
9. モノクローナル抗体である、1.~8.のいずれか一つに記載の抗体。
10. (i)アクセッション番号DSM ACC3144(muAB 43-14A)もしくはDSM ACC3143(muAB 35-22A)下に寄託されたクローンより生成されるか又は得られる抗体、
(ii)(i)の抗体のキメラ化形態又はヒト化形態である抗体、
(iii)(i)の抗体の特異性を有する抗体、及び
(iv)(i)の抗体の抗原結合部分又は抗原結合部位を含む抗体、からなる群より選ばれる抗体、あるいは
(i)~(iv)のいずれか一つの抗体の抗原結合性フラグメント。
11. 前記(i)の抗体の抗原結合部分又は抗原結合部位が、前記(i)の抗体の可変領域を含む、10.に記載の抗体。
12. 少なくとも一つの検出可能な標識と結合している、1.~11.のいずれか一つに記載の抗体又は抗原結合性フラグメントを含む、コンジュゲート。
13. 1.~11.のいずれか一つに記載の抗体を産生可能なハイブリドーマ。
14. アクセッション番号DSM ACC3144(muAB 43-14A)又はDSM ACC3143(muAB 35-22A)下に寄託されたハイブリドーマ。
15. 試料中のCLDN18.2を検出する或いはCLDN18.2の量を決定する方法であって、
(i)試料を、1.~11.のいずれか一つに記載の抗体又は抗原結合性フラグメント、或いは12.に記載のコンジュゲートと接触させるステップと、
(ii)前記抗体、前記抗原結合性フラグメント、又は前記コンジュゲートと、CLDN18.2との間における複合体の形成を検出する或いは複合体の量を決定するステップと、を含む、方法。
16. 細胞がCLDN18.2を発現するか否かを判定する方法であって、
(i)、細胞試料を、1.~11.のいずれか一つに記載の抗体又は抗原結合性フラグメント、或いは12.に記載のコンジュゲートと接触させるステップと、
(ii)前記抗体、前記抗原結合性フラグメント、又は前記コンジュゲートと、前記試料における細胞によって発現されたCLDN18.2との間における複合体の形成を検出するステップと、を含む、方法。
17. 癌を診断、検出又は観測する方法であって、
(i)生体試料を、1.~11.のいずれか一つに記載の抗体又は抗原結合性フラグメント、或いは12.に記載のコンジュゲートと接触させるステップと、
(ii)前記抗体、前記抗原結合性フラグメント、又は前記コンジュゲートと、CLDN18.2との間における複合体の形成を検出する、及び/又は複合体の量を決定するステップと、を含む、方法。
18. CLDN18.2を標的とする癌療法により癌を治療可能であるか否かを判定する方法であって、
(i)癌細胞を含む試料を、1.~11.のいずれか一つに記載の抗体又は抗原結合性フラグメント、或いは12.に記載のコンジュゲートと接触させるステップと、
(ii)前記抗体、前記抗原結合性フラグメント、又は前記コンジュゲートと、CLDN18.2との間における複合体の形成を検出するステップと、を含む、方法。
19. 1.~11.のいずれか一つに記載の抗体又は抗原結合性フラグメント、或いは12.に記載のコンジュゲートを含む、診断テストキット。
20. 前記CLDN18.2が、配列表のSEQ ID NO:2に従うアミノ酸配列、又は前記アミノ酸配列の変異体を含む、1.~11.のいずれか一つに記載の抗体又は抗原結合性フラグメント、12.に記載のコンジュゲート、13.又は14.に記載のハイブリドーマ、或いは15.~18.のいずれか一つに記載の方法。