(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023109899
(43)【公開日】2023-08-08
(54)【発明の名称】少なくとも1つのスプライソソームモジュレーターと、BCL2阻害剤、BCL2/BCLXL阻害剤及びBCLXL阻害剤から選択される少なくとも1つの阻害剤とを含む組合せ、並びに使用の方法
(51)【国際特許分類】
A61K 45/06 20060101AFI20230801BHJP
A61K 31/496 20060101ALI20230801BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230801BHJP
A61K 31/5377 20060101ALI20230801BHJP
A61K 31/4725 20060101ALI20230801BHJP
A61K 31/495 20060101ALI20230801BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230801BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20230801BHJP
【FI】
A61K45/06 ZNA
A61K31/496
A61P43/00 121
A61K31/5377
A61K31/4725
A61K31/495
A61P35/00
A61P35/02
【審査請求】有
【請求項の数】84
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023082991
(22)【出願日】2023-05-19
(62)【分割の表示】P 2020521320の分割
【原出願日】2018-10-30
(31)【優先権主張番号】62/579,666
(32)【優先日】2017-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/580,364
(32)【優先日】2017-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
2.SPAN
(71)【出願人】
【識別番号】506137147
【氏名又は名称】エーザイ・アール・アンド・ディー・マネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100126653
【弁理士】
【氏名又は名称】木元 克輔
(72)【発明者】
【氏名】エアード, ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】コーソン, ローラ
(72)【発明者】
【氏名】ジュウ, ピン
(72)【発明者】
【氏名】ウォームス, マーカス
(72)【発明者】
【氏名】ブオナミーチ, シルヴィア
(72)【発明者】
【氏名】スミス, ピーター ジェラルド
(72)【発明者】
【氏名】フェッケス, ピーター
(57)【要約】 (修正有)
【課題】がんを治療するための医薬的組合せ、およびがんを治療する方法を提供する。
【解決手段】本開示は、少なくとも1つのスプライソソームモジュレーター、並びにBCL2阻害剤、BCL2/BCLxL阻害剤及びBCLxL阻害剤から選択される少なくとも1つの阻害剤を含む医薬的組合せを提供する。また、治療有効量の少なくとも1つのスプライソソームモジュレーター、並びにBCL2阻害剤、BCL2/BCLxL阻害剤及びBCLxL阻害剤から選択される治療有効量の少なくとも1つの阻害剤を投与することを含む、がんを治療する方法も提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)治療有効量の少なくとも1つのスプライソソームモジュレーター、並びに(ii)BCL2阻害剤、BCL2/BCLxL阻害剤及びBCLxL阻害剤から選択される治療有効量の少なくとも1つの阻害剤を含む、医薬組成物。
【請求項2】
前記少なくとも1つのスプライソソームモジュレーターが、プラジエノライド誘導体から選択される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記少なくとも1つのスプライソソームモジュレーターが、E7107、H3B-8800及びそれらの薬学的に許容できる塩から選択される、請求項1又は請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記少なくとも1つのスプライソソームモジュレーターが、E7107及びその薬学的に許容できる塩から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記少なくとも1つのスプライソソームモジュレーターが、H3B-8800及びその薬学的に許容できる塩から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記少なくとも1つのスプライソソームモジュレーターが、立体異性的に純粋である、請求項1~5のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記少なくとも1つのスプライソソームモジュレーターが、約80重量%を超える1つの立体異性体を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記少なくとも1つのスプライソソームモジュレーターが、約90重量%を超える1つの立体異性体を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記少なくとも1つのスプライソソームモジュレーターが、約95重量%を超える1つの立体異性体を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記少なくとも1つのスプライソソームモジュレーターが、約97重量%を超える1つの立体異性体を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記少なくとも1つの阻害剤が、HA14-1、BH3I-1、アンチマイシンA、ケレリトリン、ゴシポール(NSC19048)、アポゴシポール(NSC736630)、TW-37、4-(3-メトキシ-フェニルスルホニル)-7-ニトロ-ベンゾフラン-3-オキシド(MNB)、TM12-06、オバトクラクス(GX15-070)、ベネトクラクス(ABT199)、ナビトクラクス(ABT263)、A-1331852、ABT737及びそれらの薬学的に許容できる塩から選択される、請求項1~10のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記少なくとも1つの阻害剤が、ベネトクラクス(ABT199)、ナビトクラクス(ABT263)、A-1331852、ABT737及びそれらの薬学的に許容できる塩から選択される、請求項1~11のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記少なくとも1つの阻害剤が、ベネトクラクス(ABT199)及びその薬学的に許容できる塩から選択される、請求項1~12のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記少なくとも1つの阻害剤が、ナビトクラクス(ABT263)及びその薬学的に許容できる塩から選択される、請求項1~12のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記少なくとも1つの阻害剤が、ABT737及びその薬学的に許容できる塩から選択される、請求項1~12のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記少なくとも1つの阻害剤が、A-1331852及びその薬学的に許容できる塩から選択される、請求項1~12のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記少なくとも1つのスプライソソームモジュレーターが、静脈内、経口、皮下又は筋肉内の投与のために製剤化されている、請求項1~16のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記少なくとも1つのスプライソソームモジュレーターが、経口投与のために製剤化されている、請求項1~17のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記少なくとも1つの阻害剤が、静脈内、経口、皮下又は筋肉内の投与のために製剤化されている、請求項1~18のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記少なくとも1つの阻害剤が、経口投与のために製剤化されている、請求項1~19のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項21】
(i)少なくとも1つのスプライソソームモジュレーター、並びに(ii)BCL2阻害剤、BCL2/BCLxL阻害剤及びBCLxL阻害剤から選択される少なくとも1つの阻害剤を含む、がんの治療における使用のための組合せであって、前記少なくとも1つのスプライソソームモジュレーターが、前記少なくとも1つの阻害剤と同時に、別々に、又は連続的に投与される、使用のための組合せ。
【請求項22】
前記少なくとも1つのスプライソソームモジュレーターが、プラジエノライド誘導体から選択される、請求項21に記載の使用のための組合せ。
【請求項23】
前記少なくとも1つのスプライソソームモジュレーターが、E7107、H3B-8800及びそれらの薬学的に許容できる塩から選択される、請求項21又は請求項22に記載の使用のための組合せ。
【請求項24】
前記少なくとも1つのスプライソソームモジュレーターが、E7107及びその薬学的に許容できる塩から選択される、請求項21~23のいずれか一項に記載の使用のための組合せ。
【請求項25】
前記少なくとも1つのスプライソソームモジュレーターが、H3B-8800及びその薬学的に許容できる塩から選択される、請求項21~23のいずれか一項に記載の使用のための組合せ。
【請求項26】
前記少なくとも1つのスプライソソームモジュレーターが、立体異性的に純粋である、請求項21~25のいずれか一項に記載の使用のための組合せ。
【請求項27】
前記少なくとも1つのスプライソソームモジュレーターが、約80重量%を超える1つの立体異性体を含む、請求項21~25のいずれか一項に記載の使用のための組合せ。
【請求項28】
前記少なくとも1つのスプライソソームモジュレーターが、約90重量%を超える1つの立体異性体を含む、請求項21~25のいずれか一項に記載の使用のための組合せ。
【請求項29】
前記少なくとも1つのスプライソソームモジュレーターが、約95重量%を超える1つの立体異性体を含む、請求項21~25のいずれか一項に記載の使用のための組合せ。
【請求項30】
前記少なくとも1つのスプライソソームモジュレーターが、約97重量%を超える1つの立体異性体を含む、請求項21~25のいずれか一項に記載の使用のための組合せ。
【請求項31】
前記少なくとも1つの阻害剤が、HA14-1、BH3I-1、アンチマイシンA、ケレリトリン、ゴシポール(NSC19048)、アポゴシポール(NSC736630)、TW-37、4-(3-メトキシ-フェニルスルホニル)-7-ニトロ-ベンゾフラン-3-オキシド(MNB)、TM12-06、オバトクラクス(GX15-070)、ベネトクラクス(ABT199)、ナビトクラクス(ABT263)、A-1331852、ABT737及びそれらの薬学的に許容できる塩から選択される、請求項21~30のいずれか一項に記載の使用のための組合せ。
【請求項32】
前記少なくとも1つの阻害剤が、ベネトクラクス(ABT199)、ナビトクラクス(ABT263)、A-1331852、ABT737及びそれらの薬学的に許容できる塩から選択される、請求項21~31のいずれか一項に記載の使用のための組合せ。
【請求項33】
前記少なくとも1つの阻害剤が、ベネトクラクス(ABT199)及びその薬学的に許容できる塩から選択される、請求項21~32のいずれか一項に記載の使用のための組合せ。
【請求項34】
前記少なくとも1つの阻害剤が、ナビトクラクス(ABT263)及びその薬学的に許容できる塩から選択される、請求項21~32のいずれか一項に記載の使用のための組合せ。
【請求項35】
前記少なくとも1つの阻害剤が、ABT737及びその薬学的に許容できる塩から選択される、請求項21~32のいずれか一項に記載の使用のための組合せ。
【請求項36】
前記少なくとも1つの阻害剤が、A-1331852及びその薬学的に許容できる塩から選択される、請求項21~32のいずれか一項に記載の使用のための組合せ。
【請求項37】
前記少なくとも1つのスプライソソームモジュレーターが、静脈内、経口、皮下又は筋肉内の投与のために製剤化されている、請求項21~36のいずれか一項に記載の使用のための組合せ。
【請求項38】
前記少なくとも1つのスプライソソームモジュレーターが、経口投与のために製剤化されている、請求項21~37のいずれか一項に記載の使用のための組合せ。
【請求項39】
前記少なくとも1つの阻害剤が、静脈内、経口、皮下又は筋肉内の投与のために製剤化されている、請求項21~38のいずれか一項に記載の使用のための組合せ。
【請求項40】
前記少なくとも1つの阻害剤が、経口投与のために製剤化されている、請求項21~39のいずれか一項に記載の使用のための組合せ。
【請求項41】
前記少なくとも1つのスプライソソームモジュレーターが、前記少なくとも1つの阻害剤と同時に投与される、請求項21~40のいずれか一項に記載の使用のための組合せ。
【請求項42】
前記少なくとも1つのスプライソソームモジュレーターが、前記少なくとも1つの阻害剤と連続的に投与される、請求項21~40のいずれか一項に記載の使用のための組合せ。
【請求項43】
前記少なくとも1つのスプライソソームモジュレーターが、前記少なくとも1つの阻害剤と別々に投与される、請求項21~40のいずれか一項に記載の使用のための組合せ。
【請求項44】
前記がんが、骨髄異形成症候群、多発性骨髄腫、慢性リンパ性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性骨髄単球性白血病、急性骨髄性白血病、結腸がん、膵臓がん、子宮内膜がん、卵巣がん、乳がん、ブドウ膜黒色腫、胃がん、胆管癌及び肺がんから選択される、請求項21~43のいずれか一項に記載の使用のための組合せ。
【請求項45】
前記がんが、肺がんである、請求項44に記載の使用のための組合せ。
【請求項46】
前記肺がんが、非小細胞肺癌及び小細胞肺癌から選択される、請求項45に記載の使用のための組合せ。
【請求項47】
前記がんが、血液がんから選択される、請求項21~43のいずれか一項に記載の使用のための組合せ。
【請求項48】
前記血液がんが、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性骨髄単球性白血病、急性単球性白血病、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、骨髄異形成症候群及び多発性骨髄腫から選択される、請求項47に記載の使用のための組合せ。
【請求項49】
前記がんが、固形腫瘍から選択される、請求項21~43のいずれか一項に記載の使用のための組合せ。
【請求項50】
前記固形腫瘍が、乳がん、膵臓がん、前立腺がん、結腸又は結腸直腸がん、肺がん、胃がん、子宮頸がん、子宮内膜がん、卵巣がん、胆管癌、神経膠腫及び黒色腫から選択される、請求項49に記載の使用のための組合せ。
【請求項51】
前記がんが、MCL1依存性がんから選択される、請求項21~43のいずれか一項に記載の使用のための組合せ。
【請求項52】
前記MCL1依存性がんが、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性骨髄単球性白血病、急性単球性白血病、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、骨髄異形成症候群、多発性骨髄腫、肺がん、乳がん、膵臓がん、前立腺がん、結腸又は結腸直腸がん、胃がん、子宮頸がん、子宮内膜がん、卵巣がん、胆管癌、神経膠腫及び黒色腫から選択される、請求項51に記載の使用のための組合せ。
【請求項53】
前記がんが、スプライソソーム遺伝子又はタンパク質の1つ又は複数の突然変異について陽性である、請求項21~43のいずれか一項に記載の使用のための組合せ。
【請求項54】
前記スプライソソーム遺伝子又はタンパク質が、スプライシング因子3Bサブユニット1(SF3B1)、U2核内低分子RNA補助因子1(U2AF1)、セリン/アルギニンリッチスプライシング因子2(SRSF2)、ジンクフィンガー(CCCH型)RNA結合モチーフ及びセリン/アルギニンリッチ2(ZRSR2)、プレmRNAプロセシングスプライシング因子8(PRPF8)、U2核内低分子RNA補助因子2(U2AF2)、スプライシング因子1(SF1)、スプライシング因子3aサブユニット1(SF3A1)、PRP40プレmRNAプロセシング因子40ホモログB(PRPF40B)、RNA結合モチーフタンパク質10(RBM10)、ポリ(rC)結合タンパク質1(PCBP1)、クルックドネックプレmRNAスプライシング因子1(CRNKL1)、DEAH(Asp-Glu-Ala-His)ボックスヘリカーゼ9(DHX9)、ペプチジル-プロリルシス-トランスイソメラーゼ様2(PPIL2)、RNA結合モチーフタンパク質22(RBM22)、核内低分子リボヌクレオタンパク質Sm D3(SNRPD3)、推定ATP依存性RNAヘリカーゼDDX5(DDX5)、プレmRNAスプライシング因子ATP依存性RNAヘリカーゼDHX15(DHX15)及びポリアデニル酸結合タンパク質1(PABPC1)から選択される、請求項53に記載の使用のための組合せ。
【請求項55】
前記スプライソソーム遺伝子又はタンパク質が、スプライシング因子3Bサブユニット1(SF3B1)である、請求項54に記載の使用のための組合せ。
【請求項56】
がんの治療のための薬剤の製造における、(i)少なくとも1つのスプライソソームモジュレーター、並びに(ii)BCL2阻害剤、BCL2/BCLxL阻害剤及びBCLxL阻害剤から選択される少なくとも1つの阻害剤を含む組合せの使用であって、前記少なくとも1つのスプライソソームモジュレーターが、前記少なくとも1つの阻害剤と同時に、別々に、又は連続的に投与される、使用。
【請求項57】
前記少なくとも1つのスプライソソームモジュレーターが、プラジエノライド誘導体から選択される、請求項56に記載の使用。
【請求項58】
前記少なくとも1つのスプライソソームモジュレーターが、E7107、H3B-8800及びそれらの薬学的に許容できる塩から選択される、請求項56又は請求項57に記載の使用。
【請求項59】
前記少なくとも1つのスプライソソームモジュレーターが、E7107及びその薬学的に許容できる塩から選択される、請求項56~58のいずれか一項に記載の使用。
【請求項60】
前記少なくとも1つのスプライソソームモジュレーターが、H3B-8800及びその薬学的に許容できる塩から選択される、請求項56~58のいずれか一項に記載の使用。
【請求項61】
前記少なくとも1つのスプライソソームモジュレーターが、立体異性的に純粋である、請求項56~58のいずれか一項に記載の使用。
【請求項62】
前記少なくとも1つのスプライソソームモジュレーターが、約80重量%を超える1つの立体異性体を含む、請求項56~58のいずれか一項に記載の使用。
【請求項63】
前記少なくとも1つのスプライソソームモジュレーターが、約90重量%を超える1つの立体異性体を含む、請求項56~58のいずれか一項に記載の使用。
【請求項64】
前記少なくとも1つのスプライソソームモジュレーターが、約95重量%を超える1つの立体異性体を含む、請求項56~58のいずれか一項に記載の使用。
【請求項65】
前記少なくとも1つのスプライソソームモジュレーターが、約97重量%を超える1つの立体異性体を含む、請求項56~58のいずれか一項に記載の使用。
【請求項66】
前記少なくとも1つの阻害剤が、HA14-1、BH3I-1、アンチマイシンA、ケレリトリン、ゴシポール(NSC19048)、アポゴシポール(NSC736630)、TW-37、4-(3-メトキシ-フェニルスルホニル)-7-ニトロ-ベンゾフラン-3-オキシド(MNB)、TM12-06、オバトクラクス(GX15-070)、ベネトクラクス(ABT199)、ナビトクラクス(ABT263)、A-1331852、ABT737及びそれらの薬学的に許容できる塩から選択される、請求項56~65のいずれか一項に記載の使用。
【請求項67】
前記少なくとも1つの阻害剤が、ベネトクラクス(ABT199)、ナビトクラクス(ABT263)、A-1331852、ABT737及びそれらの薬学的に許容できる塩から選択される、請求項56~66のいずれか一項に記載の使用。
【請求項68】
前記少なくとも1つの阻害剤が、ベネトクラクス(ABT199)及びその薬学的に許容できる塩から選択される、請求項56~67のいずれか一項に記載の使用。
【請求項69】
前記少なくとも1つの阻害剤が、ナビトクラクス(ABT263)及びその薬学的に許容できる塩から選択される、請求項56~67のいずれか一項に記載の使用。
【請求項70】
前記少なくとも1つの阻害剤が、ABT737及びその薬学的に許容できる塩から選択される、請求項56~67のいずれか一項に記載の使用。
【請求項71】
前記少なくとも1つの阻害剤が、A-1331852及びその薬学的に許容できる塩から選択される、請求項56~67のいずれか一項に記載の使用。
【請求項72】
前記少なくとも1つのスプライソソームモジュレーターが、静脈内、経口、皮下又は筋肉内の投与のために製剤化されている、請求項56~71のいずれか一項に記載の使用。
【請求項73】
前記少なくとも1つのスプライソソームモジュレーターが、経口投与のために製剤化されている、請求項56~72のいずれか一項に記載の使用。
【請求項74】
前記少なくとも1つの阻害剤が、静脈内、経口、皮下又は筋肉内の投与のために製剤化されている、請求項56~73のいずれか一項に記載の使用。
【請求項75】
前記少なくとも1つの阻害剤が、経口投与のために製剤化されている、請求項56~74のいずれか一項に記載の使用。
【請求項76】
前記少なくとも1つのスプライソソームモジュレーターが、前記少なくとも1つの阻害剤と同時に投与される、請求項56~75のいずれか一項に記載の使用。
【請求項77】
前記少なくとも1つのスプライソソームモジュレーターが、前記少なくとも1つの阻害剤と連続的に投与される、請求項56~75のいずれか一項に記載の使用。
【請求項78】
前記少なくとも1つのスプライソソームモジュレーターが、前記少なくとも1つの阻害剤と別々に投与される、請求項56~75のいずれか一項に記載の使用。
【請求項79】
前記がんが、骨髄異形成症候群、多発性骨髄腫、慢性リンパ性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性骨髄単球性白血病、急性骨髄性白血病、結腸がん、膵臓がん、子宮内膜がん、卵巣がん、乳がん、ブドウ膜黒色腫、胃がん、胆管癌及び肺がんから選択される、請求項56~78のいずれか一項に記載の使用。
【請求項80】
前記がんが、肺がんである、請求項79に記載の使用。
【請求項81】
前記肺がんが、非小細胞肺癌及び小細胞肺癌から選択される、請求項80に記載の使用。
【請求項82】
前記がんが、血液がんから選択される、請求項56~78のいずれか一項に記載の使用。
【請求項83】
前記血液がんが、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性骨髄単球性白血病、急性単球性白血病、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、骨髄異形成症候群及び多発性骨髄腫から選択される、請求項82に記載の使用。
【請求項84】
前記がんが、固形腫瘍から選択される、請求項56~78のいずれか一項に記載の使用。
【請求項85】
前記固形腫瘍が、乳がん、膵臓がん、前立腺がん、結腸又は結腸直腸がん、肺がん、胃がん、子宮頸がん、子宮内膜がん、卵巣がん、胆管癌、神経膠腫及び黒色腫から選択される、請求項84に記載の使用。
【請求項86】
前記がんが、MCL1依存性がんから選択される、請求項56~78のいずれか一項に記載の使用。
【請求項87】
前記MCL1依存性がんが、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性骨髄単球性白血病、急性単球性白血病、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、骨髄異形成症候群、多発性骨髄腫、肺がん、乳がん、膵臓がん、前立腺がん、結腸又は結腸直腸がん、胃がん、子宮頸がん、子宮内膜がん、卵巣がん、胆管癌、神経膠腫及び黒色腫から選択される、請求項86に記載の使用。
【請求項88】
前記がんが、スプライソソーム遺伝子又はタンパク質の1つ又は複数の突然変異について陽性である、請求項56~78のいずれか一項に記載の使用。
【請求項89】
前記スプライソソーム遺伝子又はタンパク質が、スプライシング因子3Bサブユニット1(SF3B1)、U2核内低分子RNA補助因子1(U2AF1)、セリン/アルギニンリッチスプライシング因子2(SRSF2)、ジンクフィンガー(CCCH型)RNA結合モチーフ及びセリン/アルギニンリッチ2(ZRSR2)、プレmRNAプロセシングスプライシング因子8(PRPF8)、U2核内低分子RNA補助因子2(U2AF2)、スプライシング因子1(SF1)、スプライシング因子3aサブユニット1(SF3A1)、PRP40プレmRNAプロセシング因子40ホモログB(PRPF40B)、RNA結合モチーフタンパク質10(RBM10)、ポリ(rC)結合タンパク質1(PCBP1)、クルックドネックプレmRNAスプライシング因子1(CRNKL1)、DEAH(Asp-Glu-Ala-His)ボックスヘリカーゼ9(DHX9)、ペプチジル-プロリルシス-トランスイソメラーゼ様2(PPIL2)、RNA結合モチーフタンパク質22(RBM22)、核内低分子リボヌクレオタンパク質Sm D3(SNRPD3)、推定ATP依存性RNAヘリカーゼDDX5(DDX5)、プレmRNAスプライシング因子ATP依存性RNAヘリカーゼDHX15(DHX15)及びポリアデニル酸結合タンパク質1(PABPC1)から選択される、請求項88に記載の使用。
【請求項90】
前記スプライソソーム遺伝子又はタンパク質が、スプライシング因子3Bサブユニット1(SF3B1)である、請求項89に記載の使用。
【請求項91】
がんを治療する方法であって、(i)治療有効量の少なくとも1つのスプライソソームモジュレーター、並びに(ii)BCL2阻害剤、BCL2/BCLxL阻害剤及びBCLxL阻害剤から選択される治療有効量の少なくとも1つの阻害剤を、それを必要とする対象に投与することを含み、前記少なくとも1つのスプライソソームモジュレーターが、前記少なくとも1つの阻害剤と同時に、別々に、又は連続的に投与される、方法。
【請求項92】
前記少なくとも1つのスプライソソームモジュレーターが、プラジエノライド誘導体から選択される、請求項91に記載の方法。
【請求項93】
前記少なくとも1つのスプライソソームモジュレーターが、E7107、H3B-8800及びそれらの薬学的に許容できる塩から選択される、請求項45又は請求項92に記載の方法。
【請求項94】
前記少なくとも1つのスプライソソームモジュレーターが、E7107及びその薬学的に許容できる塩から選択される、請求項91~93のいずれか一項に記載の方法。
【請求項95】
前記少なくとも1つのスプライソソームモジュレーターが、H3B-8800及びその薬学的に許容できる塩から選択される、請求項91~93のいずれか一項に記載の方法。
【請求項96】
前記少なくとも1つのスプライソソームモジュレーターが、立体異性的に純粋である、請求項91~95のいずれか一項に記載の方法。
【請求項97】
前記少なくとも1つのスプライソソームモジュレーターが、約80重量%を超える1つの立体異性体を含む、請求項91~95のいずれか一項に記載の方法。
【請求項98】
前記少なくとも1つのスプライソソームモジュレーターが、約90重量%を超える1つの立体異性体を含む、請求項91~95のいずれか一項に記載の方法。
【請求項99】
前記少なくとも1つのスプライソソームモジュレーターが、約95重量%を超える1つの立体異性体を含む、請求項91~95のいずれか一項に記載の方法。
【請求項100】
前記少なくとも1つのスプライソソームモジュレーターが、約97重量%を超える1つの立体異性体を含む、請求項91~95のいずれか一項に記載の方法。
【請求項101】
前記少なくとも1つの阻害剤が、HA14-1、BH3I-1、アンチマイシンA、ケレリトリン、ゴシポール(NSC19048)、アポゴシポール(NSC736630)、TW-37、4-(3-メトキシ-フェニルスルホニル)-7-ニトロ-ベンゾフラン-3-オキシド(MNB)、TM12-06、オバトクラクス(GX15-070)、ベネトクラクス(ABT199)、ナビトクラクス(ABT263)、A-1331852、ABT737及びそれらの薬学的に許容できる塩から選択される、請求項91~100のいずれか一項に記載の方法。
【請求項102】
前記少なくとも1つの阻害剤が、ベネトクラクス(ABT199)、ナビトクラクス(ABT263)、A-1331852、ABT737及びそれらの薬学的に許容できる塩から選択される、請求項91~101のいずれか一項に記載の方法。
【請求項103】
前記少なくとも1つの阻害剤が、ベネトクラクス(ABT199)又はその薬学的に許容できる塩である、請求項91~102のいずれか一項に記載の方法。
【請求項104】
前記少なくとも1つの阻害剤が、ナビトクラクス(ABT263)及びその薬学的に許容できる塩から選択される、請求項91~102のいずれか一項に記載の方法。
【請求項105】
前記少なくとも1つの阻害剤が、ABT737及びその薬学的に許容できる塩から選択される、請求項91~102のいずれか一項に記載の方法。
【請求項106】
前記少なくとも1つの阻害剤が、A-1331852及びその薬学的に許容できる塩から選択される、請求項91~102のいずれか一項に記載の方法。
【請求項107】
前記スプライソソームモジュレーターが、静脈内、経口、皮下又は筋肉内の投与のために製剤化されている、請求項91~106のいずれか一項に記載の方法。
【請求項108】
前記スプライソソームモジュレーターが、経口投与のために製剤化されている、請求項91~107のいずれか一項に記載の方法。
【請求項109】
前記少なくとも1つの阻害剤が、静脈内、経口、皮下又は筋肉内の投与のために製剤化されている、請求項91~108のいずれか一項に記載の方法。
【請求項110】
前記少なくとも1つの阻害剤が、経口投与のために製剤化されている、請求項91~109のいずれか一項に記載の方法。
【請求項111】
前記少なくとも1つのスプライソソームモジュレーター及び前記少なくとも1つの阻害剤が、連続的に投与される、請求項91~110のいずれか一項に記載の方法。
【請求項112】
前記少なくとも1つのスプライソソームモジュレーター及び前記少なくとも1つの阻害剤が、別々に投与される、請求項91~110のいずれか一項に記載の方法。
【請求項113】
前記少なくとも1つのスプライソソームモジュレーター及び前記少なくとも1つの阻害剤が、同時に投与される、請求項91~110のいずれか一項に記載の方法。
【請求項114】
前記がんが、骨髄異形成症候群、多発性骨髄腫、慢性リンパ性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性骨髄単球性白血病、急性骨髄性白血病、結腸がん、膵臓がん、子宮内膜がん、卵巣がん、乳がん、ブドウ膜黒色腫、胃がん、胆管癌及び肺がんから選択される、請求項91~113のいずれか一項に記載の方法。
【請求項115】
前記がんが、肺がんである、請求項91~114のいずれか一項に記載の方法。
【請求項116】
前記がんが、非小細胞肺癌及び小細胞肺癌から選択される、請求項91~115のいずれか一項に記載の方法。
【請求項117】
前記がんが、血液がんである、請求項91~113のいずれか一項に記載の方法。
【請求項118】
前記血液がんが、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、骨髄異形成症候群、多発性骨髄腫、慢性リンパ性白血病、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性骨髄単球性白血病及び急性骨髄性白血病から選択される、請求項117に記載の方法。
【請求項119】
前記がんが、固形腫瘍である、請求項91~113のいずれか一項に記載の方法。
【請求項120】
前記固形腫瘍が、結腸又は結腸直腸がん、膵臓がん、子宮内膜がん、卵巣がん、乳がん、黒色腫、胃がん、胆管癌、前立腺がん、子宮頸がん、神経膠腫及び肺がんから選択される、請求項119に記載の方法。
【請求項121】
前記黒色腫が、ブドウ膜黒色腫である、請求項120に記載の方法。
【請求項122】
前記がんが、MCL1依存性がんである、請求項91~113のいずれか一項に記載の方法。
【請求項123】
前記MCL1依存性がんが、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性骨髄単球性白血病、急性単球性白血病、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、骨髄異形成症候群、多発性骨髄腫、肺がん、乳がん、膵臓がん、前立腺がん、結腸又は結腸直腸がん、胃がん、子宮頸がん、子宮内膜がん、卵巣がん、胆管癌、神経膠腫及び黒色腫から選択される、請求項122に記載の方法。
【請求項124】
前記がんが、スプライソソーム遺伝子又はタンパク質の1つ又は複数の突然変異について陽性である、請求項91~113のいずれか一項に記載の方法。
【請求項125】
前記スプライソソーム遺伝子又はタンパク質が、スプライシング因子3Bサブユニット1(SF3B1)、U2核内低分子RNA補助因子1(U2AF1)、セリン/アルギニンリッチスプライシング因子2(SRSF2)、ジンクフィンガー(CCCH型)RNA結合モチーフ及びセリン/アルギニンリッチ2(ZRSR2)、プレmRNAプロセシングスプライシング因子8(PRPF8)、U2核内低分子RNA補助因子2(U2AF2)、スプライシング因子1(SF1)、スプライシング因子3aサブユニット1(SF3A1)、PRP40プレmRNAプロセシング因子40ホモログB(PRPF40B)、RNA結合モチーフタンパク質10(RBM10)、ポリ(rC)結合タンパク質1(PCBP1)、クルックドネックプレmRNAスプライシング因子1(CRNKL1)、DEAH(Asp-Glu-Ala-His)ボックスヘリカーゼ9(DHX9)、ペプチジル-プロリルシス-トランスイソメラーゼ様2(PPIL2)、RNA結合モチーフタンパク質22(RBM22)、核内低分子リボヌクレオタンパク質Sm D3(SNRPD3)、推定ATP依存性RNAヘリカーゼDDX5(DDX5)、プレmRNAスプライシング因子ATP依存性RNAヘリカーゼDHX15(DHX15)及びポリアデニル酸結合タンパク質1(PABPC1)から選択される、請求項124に記載の方法。
【請求項126】
前記スプライソソーム遺伝子又はタンパク質が、スプライシング因子3Bサブユニット1(SF3B1)である、請求項125に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つのスプライソソームモジュレーターと、BCL2阻害剤、BCL2/BCLXL阻害剤及びBCLXL阻害剤から選択される少なくとも1つの阻害剤とを含む組合せ、並びに使用の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
[0001]本出願は、2017年10月31日に出願された米国特許仮出願第62/579,666号及び2017年11月1日に出願された米国特許仮出願第62/580,364号の優先権を主張し、該米国特許仮出願のそれぞれは、その全体において、参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
[0002]BCL2ファミリー遺伝子は、アポトーシスの制御に特に重要な役割を果たす、BHドメイン含有抗アポトーシス性/生存促進性タンパク質をコードする。少なくとも5つのBCL2タンパク質である、BCL2、BCL2L1、BCL2L2、BCL2A1及びMCL1があり、これらは様々ながんの種類における腫瘍細胞の生存に関与している(例えば、Delbridge ARDら、2016年、Nat.Rev.Cancer 16、99~109;Czabotar PEら、2014年、Nat.Rev.Mol.Cell Bio.15、49~63参照)。BCL2ファミリータンパク質を阻害するために、例えば、ABT199(ベネトクラクス)、ABT263(ナビトクラクス)、A-1331852及びABT737を含む、いくつかの化合物が開発されている。BCL2阻害剤は、細胞毒性剤として有望とされているが、これらの化合物は、MCL1の抗アポトーシス性作用を阻害することができない。特に、MCL1は多くのがんの種類で局所的に増幅される(Zack TIら、2013年、Nature Genet 45、1134~1140)。BCL2L1(BCLxL)の高発現は、MCL1抑制に耐性を付与し、且つMCL1増幅/過剰発現は、BCL2阻害剤、BCL2/BCLxL阻害剤及びBCLxL阻害剤に耐性を付与する主要なメカニズムであることが報告されている(例えば、Wei Gら、2012年、Cancer Cell 21(4):547~562、Lin Xら、2007年、Oncogene 26(27):3972~3979、Teh TCら、2017年、Leukemia.doi:10.1038/leu.2017.243参照)。BCL2阻害剤、BCL2/BCLxL阻害剤及びBCLxL阻害剤への耐性を克服するための効果的な療法が必要とされている。
【0004】
[0003]併用療法が、がんの単剤治療の不完全な応答及び治療耐性を克服するのに役立つ証拠が相次いで示されている(Sellers WR、2011年、Cell 147(1):26~31)。例えば、MAPK経路阻害剤であるベムラフェニブ(RAF阻害剤)とコビメチニブ(MEK阻害剤)との組合せは、B-RAF変異を有する黒色腫患者の治療に対してFDAによって承認されている(Flaherty KTら、2012年、N Engl J Med 367:1694~1703)。しかし、効果的な併用療法の開発は、特に証拠に基づく薬物の組合せには、臨床的な組み合わせ活性を予測する効率的な前臨床的アプローチが欠如しているために一部困難をきたしている。メカニズムに基づく薬物の組み合わせ戦略は、基礎研究からの標的及び経路関連の生物学的所見に頼ることによって、前臨床及び臨床の場で適用されている。作用メカニズムの複雑さを考えると、細胞毒性剤に効果的な組合せを同定するためには、多くの障害が存在している。
【発明の概要】
【0005】
[0004]本開示は、ある特定のスプライソソームモジュレーター(例えば、プラジエノライド化合物)と、BCL2阻害剤、BCL2/BCLxL阻害剤又はBCLxL阻害剤との組合せが、抗がん効果の改善(例えば、相乗的)を示すという観察結果に基づく。スプライソソーム及びその突然変異を標的化するプラジエノライド化合物は、特に有用である。したがって、本明細書で提供されるのは、治療有効量の少なくとも1つのプラジエノライドスプライソソームモジュレーター(例えば、E7107及び/又はH3B-8800)、並びにBCL2阻害剤、BCL2/BCLxL阻害剤及びBCLxL阻害剤から選択される治療有効量の少なくとも1つの阻害剤を投与することを含む、がんを治療するための併用療法である。
【0006】
[0005]治療有効量の少なくとも1つのプラジエノライドスプライソソームモジュレーター(例えば、E7107及び/又はH3B-8800)と、BCL2阻害剤、BCL2/BCLxL阻害剤及びBCLxL阻害剤から選択される治療有効量の少なくとも1つの阻害剤との組合せを使用する、がんを治療するための方法、併用療法、医薬組成物及びキットもまた提供される。
【0007】
[0006]本開示の他の特徴は、以下の詳細な説明、図面及び特許請求の範囲から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】MCL1過剰発現及びMCL1依存性の非小細胞肺癌(NSCLC)細胞株の同定を示す図である。
図1は、MCL1L(全長MCL1)及びGAPDH(ローディング対照)のウエスタンブロット分析を示す図である。ライセート希釈を半定量標準として使用した。
【
図2】MCL1過剰発現及びMCL1依存性の非小細胞肺癌(NSCLC)細胞株の同定を示す図である。
図2は、shRNAによるMCL1のノックダウン時の細胞株の増殖阻害を示す図である。CNTRL:対照のshRNA;Dox:ドキシサイクリン。
【
図3】E7107が、NCIH1568細胞においてMCL1のスプライシングモジュレーションを誘導することを示す図である。
図3は、MCL遺伝子スプライシングの概略図である。
【
図4】E7107が、NCIH1568細胞においてMCL1のスプライシングモジュレーションを誘導することを示す図である。
図4は、MCL1のmRNAである、MCL1L:エクソン1、2及び3を含有する長い形態、MCL1S:エクソン1及び3を含有する短い形態、MCL1のプレmRNA:イントロン1保持のmRNAの定量的RT-PCR検出を示す図である。
【
図5】E7107が、NCIH1568細胞においてMCL1のスプライシングモジュレーションを誘導することを示す図である。
図5は、E7107で6時間の処理後のMCL1L(全長)、トランケート型MCL1、切断型PARP、及びチューブリン(ローディング対照)のウエスタンブロット分析を示す図である。
【
図6】E7107誘導性細胞毒性がMCL1及びBCLxL依存性であることを示す図である。
図6は、NCIH1568細胞におけるMCL1Lの誘導性cDNA発現を示す図である。ウエスタンブロット分析では、MCL1L及びGAPDH(ローディング対照)の発現を示した。CNTRL:対照ベクター。
【
図7】E7107誘導性細胞毒性がMCL1及びBCLxL依存性であることを示す図である。
図7は、空ベクター(対照)及びMCL1LのcDNA過剰発現を伴うNCIH1568細胞株の増殖阻害を示す図である。
【
図8】E7107誘導性細胞毒性がMCL1及びBCLxL依存性であることを示す図である。
図8は、A549細胞における(BCL2L1によりコードされる)BCLxLの誘導性shRNA媒介ノックダウンを示す図である。ウエスタンブロット分析では、BCLxL及びGAPDH(ローディング対照)の発現を示した。
【
図9】E7107誘導性細胞毒性がMCL1及びBCLxL依存性であることを示す図である。
図9は、BCLxLのDox誘導性ノックダウン時のA549細胞株の増殖阻害を示す図である。Dox:ドキシサイクリン。
【
図10A】4つのNSCLC細胞株におけるE7107及びABT263による処理の相乗効果を示す図である。この試験は、ベクター対照又はBCLxLのshRNAで実施された。
【
図10B】4つのNSCLC細胞株におけるE7107及びABT263による処理の相乗効果を示す図である。この試験は、ベクター対照又はBCLxLのshRNAで実施された。
【
図10C】4つのNSCLC細胞株におけるE7107及びABT263による処理の相乗効果を示す図である。この試験は、ベクター対照又はBCLxLのshRNAで実施された。
【
図10D】4つのNSCLC細胞株におけるE7107及びABT263による処理の相乗効果を示す図である。この試験は、ベクター対照又はBCLxLのshRNAで実施された。
【
図11】A549細胞株におけるE7107及びABT199による処理の相乗効果を示す図である。この試験は、ベクター対照又はBCLxLのshRNAで実施された。
【
図12A】2つの多発性骨髄腫細胞株であるU266B1及びRPMI8226におけるH3B-8800及びABT263による処理の相乗効果を示す図である。
【
図12B】2つの多発性骨髄腫細胞株であるU266B1及びRPMI8226におけるH3B-8800及びABT263による処理の相乗効果を示す図である。
【
図12C】2つの多発性骨髄腫細胞株であるU266B1及びRPMI8226におけるH3B-8800及びABT263による処理の相乗効果を示す図である。
【
図12D】2つの多発性骨髄腫細胞株であるU266B1及びRPMI8226におけるH3B-8800及びABT263による処理の相乗効果を示す図である。
【
図13A】2つの多発性骨髄腫細胞株であるJJN3及びRPMI8226におけるH3B-8800及びABT199による処理の相乗効果を示す図である。
【
図13B】2つの多発性骨髄腫細胞株であるJJN3及びRPMI8226におけるH3B-8800及びABT199による処理の相乗効果を示す図である。
【
図13C】2つの多発性骨髄腫細胞株であるJJN3及びRPMI8226におけるH3B-8800及びABT199による処理の相乗効果を示す図である。
【
図13D】2つの多発性骨髄腫細胞株であるJJN3及びRPMI8226におけるH3B-8800及びABT199による処理の相乗効果を示す図である。
【
図14A】2つの多発性骨髄腫細胞株であるRPMI8226及びMM1SにおけるH3B-8800及びA-1331852による処理の相乗効果を示す図である。
【
図14B】2つの多発性骨髄腫細胞株であるRPMI8226及びMM1SにおけるH3B-8800及びA-1331852による処理の相乗効果を示す図である。
【
図14C】2つの多発性骨髄腫細胞株であるRPMI8226及びMM1SにおけるH3B-8800及びA-1331852による処理の相乗効果を示す図である。
【
図14D】2つの多発性骨髄腫細胞株であるRPMI8226及びMM1SにおけるH3B-8800及びA-1331852による処理の相乗効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[0015]特に明記されていない限り、本明細書で使用される場合、以下の定義が適用される。
【0010】
[0016]「異性体」とは、同じ数及び種類の原子を有し、したがって同じ分子量を有するが、原子の配置又は構成に関して異なる化合物を指す。「立体異性体」とは、同じ原子の接続性を有するが、空間でのそれらの原子の配置が異なる化合物を指す。「ジアステレオ異性体」又は「ジアステレオマー」とは、鏡像異性体ではない立体異性体を指す。「鏡像異性体」とは、互いに重ね合わせることができない鏡像である立体異性体を指す。「幾何異性体」とは、二重結合又は環若しくは中心原子に対して基の位置が異なるシス-トランス異性体を指す。
【0011】
[0017]本明細書にて教示される鏡像異性体は、例えば、特定の1つ又は複数の非対称中心において、単一の鏡像異性体の90%、92%、95%、98%又は99%以上、又は100%に等しい、単一の鏡像異性体を本質的に含む「鏡像異性的に純粋な」異性体を含むことができる。「非対称中心」又は「キラル中心」とは、4つの異なる置換基を含む四面体炭素原子を指す。
【0012】
[0018]本明細書で使用される場合、「立体異性的に純粋な」とは、化合物の1つの立体異性体を含み、且つその化合物の他の立体異性体を本質的に含まない化合物又はその組成物を意味する。例えば、1つのキラル中心を有する化合物の立体異性的に純粋な組成物は、該化合物の対する鏡像異性体を本質的に含まないことになる。2つのキラル中心を有する化合物の立体異性的に純粋な組成物は、該化合物の、ジアステレオマーを本質的に含まず、且つ対する鏡像異性体を本質的に含まないことになる。一般的な立体異性的に純粋な化合物は、化合物の約80重量%を超える1つの立体異性体及び化合物の約20重量%未満の他の立体異性体を含み、さらに好ましくは、化合物の約90重量%を超える1つの立体異性体及び化合物の約10重量%未満の他の立体異性体を含み、なおさらに好ましくは、化合物の約95重量%を超える1つの立体異性体及び化合物の約5重量%未満の他の立体異性体を含み、最も好ましくは、化合物の約97重量%を超える1つの立体異性体及び化合物の約3重量%未満の他の立体異性体を含む。例えば、米国特許第7,189,715号を参照。
【0013】
[0019]異性体を示す用語としての「R」及び「S」とは、非対称置換炭素原子における立体化学構造の記述子である。「R」又は「S」のような非対称置換炭素原子の指定は、当業者に周知であり、且つ国際純正応用化学連合(IUPAC)命名法の有機化学、E項、立体化学に記載されているとおり、カーン-インゴルド-プレローグ順位則の適用によって行われる。
【0014】
[0020]がんの「治療」、がんを「治療する(treat)」又は「治療すること(treating)」とは、本明細書に記載される場合、がんを後退させること(例えば、細胞の分化遮断を克服すること)、がんを緩和すること(例えば、貧血、血球数低下などによる疲労などの1つ又は複数の症状を緩和すること)、及び/又はがんの進行を遅らせること(例えば、AMLへの転換などの状態の進行を遅らせること)を指す。
【0015】
[0021]本明細書で使用される場合、「対象」とは、動物対象、好ましくは哺乳類の対象、特にヒトを意味する。
【0016】
[0022]本明細書で使用される場合、「薬学的に許容できる担体」とは、製剤化される化合物の薬理学的活性を破壊しない非毒性の担体、アジュバント又はビヒクルを指す。本発明の組成物で使用することができる薬学的に許容できる担体、アジュバント又はビヒクルは、これらに限定されないが、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、ヒト血清アルブミンなどの血清タンパク質、リン酸などの緩衝物質、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩又は電解質、例えば、硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイドシリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロース由来物質、ポリエチレングリコール、シクロデキストリン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレン-ポリオキシプロピレン-ブロックポリマー、ポリエチレングリコール、及びウール脂肪などが含まれる。
【0017】
[0023]「薬学的に許容できる塩」とは、親化合物の所望の生物活性を保持し、且つ望まない毒性作用を与えない塩である。そのような塩の例は、(a)例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、硝酸などの無機酸で形成される酸付加塩、及び例えば、酢酸、シュウ酸、酒石酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルコン酸、クエン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、安息香酸、タンニン酸、パルミチン酸、アルギン酸、ポリグルタミン酸、ナフタレンスルホン酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、ポリガラクツロン酸などの有機酸で形成される塩、並びに(b)塩素、臭素及びヨウ素などの元素アニオンから形成される塩である。例えば、Haynesら、「Commentary:Occurrence of Pharmaceutically Acceptable Anions and Cations in the Cambridge Structural Database」、J.Pharmaceutical Sciences、94巻、10号(2005年)、及びBergeら、「Pharmaceutical Salts」、J.Pharmaceutical Sciences、66巻、1号(1977年)を参照。これらは参照により本明細書に組み込まれる。
【0018】
[0024]特に明記されていない限り、本明細書で示される化合物は、本明細書で示される化合物の混合物、並びに鏡像異性体、ジアステレオマー及び/又は幾何異性体(又は立体配座)の構造形態のいずれか、例えば、各非対称中心のR及びSの構成、(Z)及び(E)の二重結合異性体、並びに(Z)及び(E)の配座異性体を含む。特に明記しない限り、本明細書に示される、互変異性形態と共存する化合物は、本発明の範囲内である。さらに、特に明記しない限り、本明細書に示される構造は、1つ又は複数の同位体濃縮原子の存在においてのみが異なる化合物を含むことも意味する。例えば、重水素若しくは三重水素による水素の置き換え、又は13C若しくは14C濃縮炭素による炭素の置き換えを除いて、本構造を有する化合物は、本発明の範囲内である。このような化合物は、例えば、生物学的アッセイにおける分析ツール又はプローブとして有用であることがある。
【0019】
[0025]がんの治療用のスプライシングモジュレーターとして、様々なプラジエノライド化合物が開発されており、以下の特許出願で開示されたものを含む。国際公開第2002/060890号、国際公開第2004/011459号、国際公開第2004/011661号、国際公開第2004/050890号、国際公開第2005/052152号、国際公開第2006/009276号、国際公開第2008/126918号及び国際公開第2015/175594号。これらのそれぞれは、参照により本明細書に組み込まれる。例えば、プラジエノライド化合物である(8E,12E,14E)-7-((4-シクロヘプチルピペラジン-1-イル)カルボニル)オキシ-3,6,16,21-テトラヒドロキシ-6,10,12,16,20-ペンタメチル-18,19-エポキシトリコサ-8,12,14-トリエン-11-オリドは、E7107としても知られ、天然産物プラジエノライドDの半合成誘導体であり、その第I相試験の結果が報告されている:
【化1】
【0020】
[0026]別の例として、プラジエノライドピリジン化合物である(2S,3S,6S,7R,10R,E)-7,10-ジヒドロキシ-3,7-ジメチル-12-オキソ-2-((R,2E,4E)-6-(ピリジン-2-イル)ヘプタ-2,4-ジエン-2-イル)オキサシクロドデク-4-エン-6-イル4-メチルピペラジン-1-カルボキシレート(別名「(2S,3S,4E,6S,7R,10R)-7,10-ジヒドロキシ-3,7-ジメチル-12-オキソ-2-((2E,4E,6R)-6-(ピリジン-2-イル)ヘプタ-2,4-ジエン-2-イル)オキサシクロドデク-4-エン-6-イル4-メチルピペラジン-1-カルボキシレート」)は、H3B-8800としても知られ、ある特定の血液がんの治療の希少疾病用医薬品の指定を受けており、次の構造を有する:
【化2】
【0021】
[0027]いくつかの実施形態では、併用療法に使用する少なくとも1つのプラジエノライドスプライソソームモジュレーターは、化学式1(「E7107」):
【化3】
及びその薬学的に許容できる塩から選択される。
【0022】
[0028]いくつかの実施形態では、併用療法に使用する少なくとも1つのプラジエノライドスプライソソームモジュレーターは、化学式2(「H3B-8800」):
【化4】
及びその薬学的に許容できる塩から選択される。
【0023】
[0029]本明細書で使用される場合、BCL2阻害剤、BCL2/BCLxL阻害剤及びBCLxL阻害剤から選択される少なくとも1つの阻害剤は、これらに限定されないが、HA14-1、BH3I-1、アンチマイシンA、ケレリトリン、ゴシポール(NSC19048)、アポゴシポール(NSC736630)、TW-37、4-(3-メトキシ-フェニルスルホニル)-7-ニトロ-ベンゾフラン-3-オキシド(MNB)、TM12-06、オバトクラクス(GX15-070)、ベネトクラクス(ABT199)、ナビトクラクス(ABT263)、A-1331852及びABT737を含む。
【0024】
[0030]いくつかの実施形態では、BCL2阻害剤、BCL2/BCLxL阻害剤及びBCLxL阻害剤から選択される少なくとも1つの阻害剤は、ベネトクラクス(ABT199)、ナビトクラクス(ABT263)、A-1331852、ABT737及びそれらの薬学的に許容できる塩から選択される。
【0025】
[0031]本明細書に開示されている方法は、血液学的悪性腫瘍及び固形腫瘍を含む、様々な種類のがんを治療するために使用することができる。
【0026】
[0032]血液学的悪性腫瘍は、血液のがん(例えば、白血病)、若しくはリンパ節のがん(例えば、リンパ腫)、又は他の関連するがんを含むことができる。白血病は、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性骨髄単球性白血病(CMML)、急性単球性白血病(AMoL)などを含むことができる。リンパ腫は、ホジキンリンパ腫及び非ホジキンリンパ腫を含むことができる。他の血液学的悪性腫瘍は、骨髄異形成症候群(MDS)及び多発性骨髄腫(MM)を含むことができる。
【0027】
[0033]固形腫瘍は、例えば、乳がん、膵臓がん、前立腺がん、結腸又は結腸直腸がん、肺がん(非小細胞肺癌(NSCLC)及び小細胞肺癌(SCLC)を含む)、胃がん、子宮頸がん、子宮内膜がん、卵巣がん、胆管癌、神経膠腫、黒色腫など、腺癌などのがんを含むことができる。
【0028】
[0034]本明細書に開示されている方法は、スプライソソーム遺伝子又はタンパク質、例えば、SF3B1を標的化する薬剤に応答することができるがんを治療するために使用されることも可能である。このようながんの例には、これらに限定されないが、骨髄異形成症候群、多発性骨髄腫、慢性リンパ性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性骨髄単球性白血病、急性骨髄性白血病、結腸がん、膵臓がん、子宮内膜がん、卵巣がん、乳がん、ブドウ膜黒色腫、胃がん、胆管癌、又は肺がん(非小細胞肺癌(NSCLC)及び小細胞肺癌(SCLC)を含む)を含む。例示的なスプライソソーム遺伝子又はタンパク質は、これらに限定されないが、スプライシング因子3Bサブユニット1(SF3B1)、U2核内低分子RNA補助因子1(U2AF1)、セリン/アルギニンリッチスプライシング因子2(SRSF2)、ジンクフィンガー(CCCH型)RNA結合モチーフ及びセリン/アルギニンリッチ2(ZRSR2)、プレmRNAプロセシングスプライシング因子8(PRPF8)、U2核内低分子RNA補助因子2(U2AF2)、スプライシング因子1(SF1)、スプライシング因子3aサブユニット1(SF3A1)、PRP40プレmRNAプロセシング因子40ホモログB(PRPF40B)、RNA結合モチーフタンパク質10(RBM10)、ポリ(rC)結合タンパク質1(PCBP1)、クルックドネックプレmRNAスプライシング因子1(CRNKL1)、DEAH(Asp-Glu-Ala-His)ボックスヘリカーゼ9(DHX9)、ペプチジル-プロリルシス-トランスイソメラーゼ様2(PPIL2)、RNA結合モチーフタンパク質22(RBM22)、核内低分子リボヌクレオタンパク質Sm D3(SNRPD3)、推定ATP依存性RNAヘリカーゼDDX5(DDX5)、プレmRNAスプライシング因子ATP依存性RNAヘリカーゼDHX15(DHX15)、及びポリアデニル酸結合タンパク質1(PABPC1)を含む。
【0029】
[0035]本明細書に開示されている方法は、MCL1依存性がんを治療するために使用されることも可能である。MCL1依存性がんの例としては、これらに限定されないが、多発性骨髄腫、白血病、リンパ腫、及び固形腫瘍を含むことができる。MCL1依存性白血病は、これらに限定されないが、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性骨髄単球性白血病、及び急性単球性白血病を含むことができる。MCL1依存性リンパ腫は、これらに限定されないが、ホジキンリンパ腫及び非ホジキンリンパ腫を含むことができる。MCL1依存性固形腫瘍は、これらに限定されないが、肺がん(例えば、非小細胞肺癌及び小細胞肺癌)、乳がん、膵臓がん、前立腺がん、結腸又は結腸直腸がん、胃がん、子宮頸がん、子宮内膜がん、卵巣がん、胆管癌、神経膠腫及び黒色腫を含むことができる。
【0030】
[0036]MCL1の高発現を伴うがんは、直接的な標的阻害又は遺伝子レベルの摂動、例えば、転写阻害若しくはスプライシング阻害のいずれかによるMCL1阻害に感受性であることが示されている(Gao Y、Koide K、2013年、ACS Chem Biol、8(5):895~900;Wei Gら、2012年、Cancer Cell 21(4):547~562)。また、BCL-xLの高発現が、MCL1抑制に対する耐性を付与すること、そしてMCL1増幅/過剰発現が、BCL2/xL阻害剤に対する耐性を付与する主要なメカニズムであることも示されている(例えば、Wei Gら、2012年、Cancer Cell 21(4):547~562;Lin Xら、2007年、Oncogene 26(27):3972~3979;Teh TCら、2017年、Leukemia、doi:10.1038/leu.2017.243を参照)。本明細書に記載されるとおり、いずれかの特定の理論に縛られることは望まないが、プラジエノライド誘導体のE7107及びH3B-8800は、MCL1遺伝子の強力なスプライシングモジュレーションを誘導することができ、機能的完全長タンパク質の発現の低下へ導くことができる。MCL1タンパク質の減少は、がん細胞株で強い細胞死を引き起こすことができる。少なくとも1つのプラジエノライド誘導体(例えば、E7107及び/又はH3B-8800)と、BCL2阻害剤、BCL2/BCLxL阻害剤及びBCLxL阻害剤から選択される少なくとも1つの阻害剤との組合せは、がん細胞の相乗的な成長阻害を誘導することができる。したがって、少なくとも1つの小分子スプライシングモジュレーターと、BCL2阻害剤、BCL2/BCLxL阻害剤及びBCLxL阻害剤から選択される少なくとも1つの阻害剤との組合せは、抗アポトーシス遺伝子に依存するがんなどのがんを治療するために使用することができる。
【0031】
[0037]また、少なくとも1つのプラジエノライドスプライソソームモジュレーター、並びにBCL2阻害剤、BCL2/BCLxL阻害剤及びBCLxL阻害剤から選択される少なくとも1つの阻害剤を含む医薬組成物も本明細書に開示されている。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、少なくとも1つの薬学的に許容できる担体をさらに含む。少なくとも1つの薬学的に許容できる担体は、意図される投与経路に従って選択することができる。
【0032】
[0038]本明細書に開示されている医薬組成物は、非経口、経口、吸入スプレー、局所、直腸、経鼻、頬側、経膣又は埋め込み式リザーバーなどの投与のために製剤化することができる。本明細書で使用される場合、「非経口」という用語は、皮下、静脈内、筋肉内、関節内、滑膜内、胸骨内、くも膜下腔内、肝内、病巣内及び頭蓋内の注射技術又は点滴技術を含む。特定の実施形態では、併用療法の化合物は、静脈内、経口、皮下、又は筋肉内の投与を介し、投与される。本開示の組成物の無菌の注射可能な形態は、水性又は油性の懸濁液であってもよい。これらの懸濁液は、適切な分散剤又は湿潤剤、及び懸濁剤を使用して当業者に周知の技術に従い製剤化することができる。無菌の注射可能な調製物はまた、例えば、1,3-ブタンジオールの溶液のように、非毒性の非経口的に許容できる希釈剤又は溶媒の無菌の注射可能な溶液又は懸濁液であってもよい。使用されることが可能な許容できるビヒクル及び溶媒には、水、リンガー溶液及び等張塩化ナトリウム溶液がある。さらに、無菌の固定油は、溶媒又は懸濁媒体として従来使用されている。
【0033】
[0039]この目的のために、合成モノグリセリド又はジグリセリドを含む任意の無刺激性固定油を使用することができる。オレイン酸及びそのグリセリド誘導体などの脂肪酸は、オリーブ油又はヒマシ油、特にポリオキシエチル化型、などの天然の薬学的に許容できる油と同様に、注射可能な調製物に有用である。これらの油性の溶液又は懸濁液はまた、エマルジョン及び懸濁液を含む薬学的に許容できる剤形の製剤において一般的に使用されるカルボキシメチルセルロース又は類似の分散剤などの長鎖アルコールの希釈剤又は分散剤を含有することができる。薬学的に許容できる固体、液体又は他の剤形の製造において一般的に使用される、ツイーン(Tween)、スパン(Span)及び他の乳化剤又は生物学的利用能増強剤などの他の一般的に使用される界面活性剤も、製剤化の目的で使用することができる。
【0034】
[0040]経口投与には、少なくとも1つのプラジエノライドスプライソソームモジュレーター並びに/又はBCL2阻害剤、BCL2/BCLxL阻害剤及びBCLxL阻害剤から選択される少なくとも1つの阻害剤を、カプセル、錠剤、水性の懸濁液又は溶液を含むがこれらに限定されない、許容できる経口的剤形で提供することができる。経口使用の錠剤の場合、担体は、例えば、ラクトース及びコーンスターチから選択することができる。ステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤もまた添加することができる。カプセル形態での経口投与には、有用な希釈剤は、ラクトース及び乾燥コーンスターチを含む。水性懸濁液が経口使用に必要な場合、活性成分が、乳化剤及び/又は懸濁剤と合わせられる。所望に応じて、ある特定の甘味料、着香料又は着色料も添加することができる。
【0035】
[0041]いくつかの実施形態では、本明細書に開示されている、少なくとも1つのプラジエノライドスプライソソームモジュレーター、並びにBCL2阻害剤、BCL2/BCLxL阻害剤及びBCLxL阻害剤から選択される少なくとも1つの阻害剤が、各活性剤の単一の剤形で又は別々若しくは連続の投与によって対象に投与される。
【0036】
[0042]いくつかの実施形態では、少なくとも1つのプラジエノライドスプライソソームモジュレーター、並びにBCL2阻害剤、BCL2/BCLxL阻害剤及びBCLxL阻害剤から選択される少なくとも1つの阻害剤が、錠剤、ピル、カプセル又は溶液に製剤化される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのプラジエノライドスプライソソームモジュレーター、並びに/又はBCL2阻害剤、BCL2/BCLxL阻害剤及びBCLxL阻害剤から選択される少なくとも1つの阻害剤が、非経口投与の溶液に製剤化される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのプラジエノライドスプライソソームモジュレーター、並びにBCL2阻害剤、BCL2/BCLxL阻害剤及びBCLxL阻害剤から選択される少なくとも1つの阻害剤が、1つのカプセル内に格納される分離領域又は異なるカプレットに製剤化される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのプラジエノライドスプライソソームモジュレーター、並びにBCL2阻害剤、BCL2/BCLxL阻害剤及びBCLxL阻害剤から選択される少なくとも1つの阻害剤が、1つの錠剤中の分離層に製剤化される。
【0037】
[0043]いくつかの実施形態では、医薬組成物が、治療有効量の少なくとも1つのプラジエノライドスプライソソームモジュレーター、BCL2阻害剤、BCL2/BCLxL阻害剤及びBCLxL阻害剤から選択される治療有効量の少なくとも1つの阻害剤、並びに少なくとも1つの薬学的に許容できる担体を含む。
【0038】
[0044]いくつかの実施形態では、医薬組成物が、治療有効量のE7107、BCL2阻害剤、BCL2/BCLxL阻害剤及びBCLxL阻害剤から選択される治療有効量の少なくとも1つの阻害剤、並びに少なくとも1つの薬学的に許容できる担体を含む。
【0039】
[0045]いくつかの実施形態では、医薬組成物が、治療有効量のH3B-8800、BCL2阻害剤、BCL2/BCLxL阻害剤及びBCLxL阻害剤から選択される治療有効量の少なくとも1つの阻害剤、並びに少なくとも1つの薬学的に許容できる担体を含む。
【0040】
[0046]いくつかの実施形態では、少なくとも1つのプラジエノライドスプライソソームモジュレーター、並びにBCL2阻害剤、BCL2/BCLxL阻害剤及びBCLxL阻害剤から選択される少なくとも1つの阻害剤を、別々の組成物として、任意選択で異なる形態、例えば、別々の錠剤又は溶液として投与することができる。さらに、非限定的な例として、少なくとも1つのプラジエノライドスプライソソームモジュレーター、並びにBCL2阻害剤、BCL2/BCLxL阻害剤及びBCLxL阻害剤から選択される少なくとも1つの阻害剤の両方を、経口錠剤として、別々に投与することができる。
【0041】
[0047]いくつかの実施形態では、少なくとも1つのプラジエノライドスプライソソームモジュレーター、並びにBCL2阻害剤、BCL2/BCLxL阻害剤及びBCLxL阻害剤から選択される少なくとも1つの阻害剤は、別々の組成物:
BCL2阻害剤、BCL2/BCLxL阻害剤及びBCLxL阻害剤から選択される治療有効量の少なくとも1つの阻害剤、並びに少なくとも1つの薬学的に許容できる担体を含む医薬組成物;及び
治療有効量の少なくとも1つのプラジエノライドスプライソソームモジュレーター、及び少なくとも1つの薬学的に許容できる担体を含む医薬組成物
として投与される。
【0042】
[0048]いくつかの実施形態では、キットが本明細書で提供され、キットは、治療有効量の少なくとも1つのプラジエノライドスプライソソームモジュレーターを含む第1の医薬組成物、BCL2阻害剤、BCL2/BCLxL阻害剤及びBCLxL阻害剤から選択される治療有効量の少なくとも1つの阻害剤を含む第2の医薬組成物、並びにがんの治療におけるキットの使用説明書を含む。
【0043】
[0049]いくつかの実施形態では、少なくとも1つのプラジエノライドスプライソソームモジュレーター、並びにBCL2阻害剤、BCL2/BCLxL阻害剤及びBCLxL阻害剤から選択される少なくとも1つの阻害剤が、同時に投与される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのプラジエノライドスプライソソームモジュレーター、並びにBCL2阻害剤、BCL2/BCLxL阻害剤及びBCLxL阻害剤から選択される少なくとも1つの阻害剤が、連続的に投与される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのプラジエノライドスプライソソームモジュレーター、並びにBCL2阻害剤、BCL2/BCLxL阻害剤及びBCLxL阻害剤から選択される少なくとも1つの阻害剤が、間欠的に投与される。少なくとも1つのプラジエノライドスプライソソームモジュレーターと、BCL2阻害剤、BCL2/BCLxL阻害剤及びBCLxL阻害剤から選択される少なくとも1つの阻害剤との投与の間の時間の長さは、所望の治療効果を達成するように調整することができる。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのプラジエノライドスプライソソームモジュレーター、並びにBCL2阻害剤、BCL2/BCLxL阻害剤及びBCLxL阻害剤から選択される少なくとも1つの阻害剤が、わずか数分間隔で投与される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのプラジエノライドスプライソソームモジュレーター、並びにBCL2阻害剤、BCL2/BCLxL阻害剤及びBCLxL阻害剤から選択される少なくとも1つの阻害剤が、数時間(例えば、約2、4、6、10、12、24又は36時間)間隔で投与される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのプラジエノライドスプライソソームモジュレーター、並びにBCL2阻害剤、BCL2/BCLxL阻害剤及びBCLxL阻害剤から選択される少なくとも1つの阻害剤のうちの一方の複数回の投薬を、残りの治療剤の投与の間に行うことが有益であることがある。例えば、一方の治療剤を1時に投与し、次いでもう一方の治療剤を投与した後11時に再度投与することができる。いくつかの実施形態では、併用療法の全体的な治療効果が、併用療法の併用効果又は相乗効果に部分的に起因することができるように、プラジエノライドスプライソソームモジュレーター、及びBCL2阻害剤、BCL2/BCLxL阻害剤又はBCLxL阻害剤それぞれの治療効果が、持続期間の少なくとも一部の間、重なることが必要である。
【0044】
[0050]本明細書で開示されている、少なくとも1つのプラジエノライドスプライソソームモジュレーター、並びにBCL2阻害剤、BCL2/BCLxL阻害剤及びBCLxL阻害剤から選択される少なくとも1つの阻害剤は、治療有効(treatment effective)又は治療有効(therapeutically effective)量で、対象に投与することができる。少なくとも1つの薬学的に許容できる担体と合わせて単一の剤形を生成することができる、少なくとも1つのプラジエノライドスプライソソームモジュレーター、並びにBCL2阻害剤、BCL2/BCLxL阻害剤及びBCLxL阻害剤から選択される少なくとも1つの阻害剤のそれぞれの量は、治療される対象及び意図される投与経路に応じて可変となる。
【0045】
[0051]いくつかの実施形態では、少なくとも1つのプラジエノライドスプライソソームモジュレーター、並びにBCL2阻害剤、BCL2/BCLxL阻害剤及びBCLxL阻害剤から選択される少なくとも1つの阻害剤のそれぞれが、0.01~100mg/体重kg/日の投薬量で、対象に投与されるように、医薬組成物が製剤化される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのプラジエノライドスプライソソームモジュレーター、並びにBCL2阻害剤、BCL2/BCLxL阻害剤及びBCLxL阻害剤から選択される少なくとも1つの阻害剤のそれぞれが、1~100mg/体重kg/日の範囲の投薬量で、対象に投与される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのプラジエノライドスプライソソームモジュレーター、並びにBCL2阻害剤、BCL2/BCLxL阻害剤及びBCLxL阻害剤から選択される少なくとも1つの阻害剤のそれぞれが、0.01mg~50mgの範囲の投薬量で、対象に投与される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのプラジエノライドスプライソソームモジュレーター、並びにBCL2阻害剤、BCL2/BCLxL阻害剤及びBCLxL阻害剤から選択される少なくとも1つの阻害剤のそれぞれが、1mg~50mg、0.1mg~25mg、又は5mg~40mgの範囲の投薬量で提供される。
【0046】
[0052]いくつかの実施形態では、少なくとも1つのプラジエノライドスプライソソームモジュレーターが、1mg/kg~10mg/kgの投薬量範囲で投与される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのプラジエノライドスプライソソームが、1mg/kg、1.25mg/kg、2mg/kg、2.5mg/kg、3mg/kg、4mg/kg、5mg/kg、6mg/kg、7mg/kg、8mg/kg、9mg/kg、又は10mg/kgの投薬量で投与される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのプラジエノライドスプライソソームが、5mg/kgの投薬量で投与される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのプラジエノライドスプライソソームが、8mg/kgの投薬量で投与される。
【0047】
[0053]いくつかの実施形態では、E7107が、5mg/kgの投薬量で5日間連続して静脈内に投与される。いくつかの実施形態では、H3B-8800が、8mg/kgの投薬量で5日間連続して経口投与された後、9日間休止する。
【0048】
[0054]当業者は、任意の特定の患者のための特定の投薬量及び治療レジメンが、使用される特定の化合物の活性、年齢、体重、全般的な健康状態、性別、食事、投与時間、排泄率、薬物の組合せ、治療する医師の判断、及び治療されている特定の疾患の重症度を含む様々な要因に依存することを理解するであろう。併用療法の各活性剤の量は、組成物中の特定の化合物/塩にも依存することになる。
【0049】
[0055]以下の実施例は、本明細書に記載される実施形態及びその使用がより十分に理解されるように記載される。これらの実施例は説明の目的のみのためであり、いかなる方法においても制限するように解釈されるものではないことを理解する必要がある。
【実施例0050】
A.材料及び方法
1.細胞株及び細胞培養プロトコル
[0056]非小細胞肺がん(NSCLC)細胞株のA549、NCI-H23、NCI-H1568、NCI-H1650、NCI-H1975及びNCI-H2110を、米国培養細胞系統保存機関(ATCC)から入手し、製造元の指示のとおりに培養した。レンチウイルス形質導入により生成される誘導性shRNA株及び誘導性cDNA株を、標準の血清ではなくTetシステム仕様FBS(Clontech)を利用して製造元の指示に従って培養した。LentiX-293T(Clontech)を、感染用のshRNA及びcDNA過剰発現ウイルスの生成に使用し、製造元の指示に従って培養した。マイコプラズマ汚染についてこれらの細胞株を試験し、細胞同一性の確認を認証した。ピューロマイシン(0.25~1.25μg/ml、Thermo Fisher Scientific)を、shRNA発現細胞の選択に使用した。G418(0.5~2mg/mL、Thermo Fisher Scientific)を、誘導性cDNA発現細胞の選択に使用した。ドキシサイクリンハイクレート(Sigma)(Dox)を、shRNA及びcDNAの誘導に使用した。
【0051】
[0057]NKM1細胞及びKO52細胞を、国立研究開発法人医薬基盤健康栄養研究所JCRB細胞バンクから入手する。HNT34細胞、MONOMAC6細胞及びMUTZ3細胞を、ドイツ細胞バンク(Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen)から入手する。HNT34細胞及びNKM1細胞を、10%ウシ胎児血清を有するRPMI(ATCC)で維持する。KO52細胞を、10%ウシ胎児血清を有するAlpha-MEM(ATCC)で維持する。MONOMAC6細胞を、20%ウシ胎児血清を有するRPMI(ATCC)で維持する。MUTZ3細胞を、20%ウシ胎児血清及び20%5637条件培地を有するAlpha-MEM(ATCC)で維持する。これらの細胞株を、加湿インキュベーターにおいて、37℃、5%CO2でインキュベートする。
【0052】
2.MCL1及びBCLxLのウエスタンブロット分析プロトコル
[0058]細胞株を、プロテアーゼ阻害剤カクテル(ミニコンプリート、EDTAフリー、Roche)及びホスファターゼ阻害剤のPhosSTOP(Roche)を加えたRIPA緩衝液(Boston BioProducts)に溶解した。ライセートを、4倍LDS試料用緩衝液(Nupage、Thermo Fisher Scientific)及び10倍還元試薬(Nupage、Thermo Fisher Scientific)を有するRIPA緩衝液に希釈し、5分間煮沸した。1ウェルあたり、25マイクログラムのタンパク質を、4~12%ビス-トリスSDS Pageゲル(Novex、Thermo Fisher Scientific)に充填した。ゲルを、iBlotシステム(Thermo Fisher Scientific)を使用してニトロセルロース膜に転写した。膜を、ブロッキング緩衝液(1倍トリス緩衝生理食塩水+0.1%ツイーン-20(Boston Bioproducts)+5%脱脂粉乳(Bio-Rad))で1時間ブロックし、次いで裁断した。それぞれの裁断片を、ブロッキング緩衝液中で、以下の各タンパク質に対する抗体で別々にプローブした。1:500希釈のMCL1(Cell Signaling Technologies 5453)(D35A5)ウサギモノクローナル抗体、1:500希釈のBCL-xL(Cell Signaling Technologies 2764)(54H6)ウサギモノクローナル抗体、1:500希釈の切断型Parp(Cell Signaling Technologies 5625)(D64P10)ウサギモノクローナル抗体、及び100ng/mLのGAPDH(Sigma G8795)マウスモノクローナル抗体。ブロットを一次抗体希釈液で一晩4℃にて振とうしながらインキュベートした。次に、ウエスタンブロットをOdyssey Licor又はHRP二次抗体のどちらかでブロットした。次いで、ブロットを、洗浄緩衝液(1倍トリス緩衝生理食塩水+0.1%ツイーン-20)を使用して4回洗浄した。Licorを用いてイメージングしたブロットは、Licor IR標識二次抗体である、IRダイ(IRDye)(登録商標)800CWヤギ抗ウサギIgG(Odyssey 925-32211)及びIRダイ(登録商標)680LTヤギ抗マウスIgG(Odyssey 925-68020)をブロッキング緩衝液に1:10,000希釈したものを用いて、室温で1時間振とうしてプローブした。次いで、ブロットを、洗浄緩衝液で3回洗浄した。IR色素検出を、製造元の指示に従ってLicorイメージングシステム(Odyssey)を使用して実施した。HRPを使用してイメージングしたブロットを、抗マウスIgG、HRP結合抗体(Cell Signaling Technologies 7076)及び抗ウサギIgG、HRP結合抗体(Cell Signaling Technologies 7074)をブロッキング緩衝液に1:5000希釈したものを用いて、室温で1時間振とうしてプローブした。次いで、ブロットを、洗浄緩衝液で3回洗浄した。HRP検出を、製造元の指示に従って、SuperSignal West Femto Maximum Sensitivity Substrate(Thermo Fisher Scientific)を使用して実施し、イメージクウォント(ImageQuant)(商標)LAS4000生体分子撮像装置(GE Healthcare Life Sciences)を用いてイメージングした。
【0053】
3.MCL1の定量的リアルタイムPCRプロトコル
[0059]RNAライセートを、化合物で処理される細胞から96ウェルプレートに単離し、製造元の指示に従ってTaqMan Gene Expression Cells-to-CT Kit(Thermo Fisher Scientific)を使用して逆転写した。定量PCRを、18S rRNA VIC-PL(Thermo Fisher Scientific assay ID Hs99999901_s1)で二重化されるMCL1転写プローブ(Integrated DNA technologies FAM-ZEN/IBFQ)を用いてTaqMan Gene Expression Master Mix(Thermo Fisher Scientific)を使用して実施し、そしてΔΔCt法を使用して定量した。
【0054】
MCL1Lのプローブセット
プライマー ATATGCCAAACCAGCTCCTAC
プライマー AAGGACAAAACGGGACTGG
プローブ AGAACTCCACAAACCCATCCCAGC
MCL1Sのプローブセット
プライマー AAAGCCAATGGGCAGGT
プライマー CCACCTTCTAGGTCCTCTACAT
プローブ TCCACAAACCCATCTTGGAAGGCC
MCL1のプレmRNAイントロン1-エクソン2のプローブセット
プライマー GACAAAGGAGGCCGTGAGGA
プライマー GTTTGTTACGCCGTCGCTGAAA
プローブ TCAGGCATGCTTCGGAAACTGGA
【0055】
4.誘導性のshRNA及びcDNAプロトコル
[0060]BCL-xLのshRNA1(GCTCACTCTTCAGTCGGAAAT)(Wei Gら、2012年、Cancer Cell 21(4):547~562)を、Tet誘導性レンチウイルスのpLKO-iKD-H1 puroベクターのAgeI及びEcoRIにクローニングした(Wiederschain Dら、2009年、Cell Cycle8(3):498~504)。MCL1のshRNA48(GCATCGAACCATTAGCAGAAA)(Wei Gら、2012年、Cancer Cell 21(4):547~56)を、Tet誘導性レンチウイルスのpLKO-iKD-U6 puroベクターのAgeI及びEcoRIにクローニングした。MCL1-LのpENTR-D-TOPOを、pINDUCER20にゲートウェイクローニングした(LRクロナーゼ、Thermo Fisher Scientific)(Meerbrey KLら、2011年、Proc Natl Acad Sci USA、108(9):3665~3670)。レンチウイルスを、LentiX-293T細胞で調製した。10cm Biocoat Collagen IIディッシュ(Corning)中の2.5Mの細胞を、TransIT試薬(Mirus)を使用して、2.4μgのpΔ8.91(パッケージング)及び0.6μgのVSVG(エンベロープ)に加えて、2.4μgの標的pLKO-shRNA又はpINDUCER20プラスミドでトランスフェクトした。pINDUCER20+MCL1-L、pINDUCER20ベクター、pLKO-iKD-U6 puro+MCL1 shRNA48及びpLKO-iKD-U6 puroベクターのウイルスを使用して、A549、NCI-H23、NCI-H1568、NCI-H1650、NCI-H1975及びNCI-H2110を感染させた。pLKO-iKD-H1 puro+BCL-xL shRNA1及びpLKO-iKD-H1 puroのウイルスを使用して、A549、NCI-H23、NCI-H1568、及びNCI-H2110を感染させた。ポリブレン(Millipore)を使用して、スピン感染あり又はなしに細胞を感染させた。感染の1~3日後に、ジェネティシン(Geneticin)(pINDUCER20)又はピューロマイシン(pLKO shRNA)で細胞を培養した。選択した細胞を、Dox(300ng/ml)の存在下又は非存在下で培養した。細胞を、誘導後3~5日にタンパク質及びRNAについて回収した。MCL1のリアルタイムPCRの項と同様に、RNAを単離した。上記のMCL1及びBCL-xLウエスタンブロット手順の項と同様に、タンパク質抽出物を調製した。
【0056】
5.細胞生存及びMCL1救済プロトコル
[0061]誘導性shRNA実験には、300ng/mL Doxあり又はなしで72時間、96ウェルにて細胞を培養し、次いで、製造元の指示に従ってCellTiter-Glo発光細胞生存アッセイ(Promega)を用いて溶解し、Perkin-Elmer Envisionを使用して分析した。Doxで処理されたウェルを、細胞株のそれぞれの処理なしに正規化した。
【0057】
[0062]化合物の用量応答実験には、細胞を1ウェルあたり50μlに1,000細胞で、96又は384ウェルプレートに載せた。化合物は、90%DMSOの11ポイントの段階希釈系列から、音響分注により培地中の細胞に添加した。最終的なDMSO濃度は0.1%であった。プレートに蓋をして、37℃及び5%CO2で細胞を増殖させた。t=0で、未処理の細胞を、CellTiter-Gloを用いて溶解し、Envisionプレートリーダーにて測定した。t=72(化合物の添加後72時間)で、化合物で処理された細胞をCellTiter-Gloを用いて溶解し、Envisionにて分析した。それぞれの処理試料の発光値を、各DMSO対照の平均値に正規化した。
【0058】
[0063]MCL1救済実験には、細胞株を、300ng/mLのdoxで72時間培養した後、継代培養し、300ng/mLのdoxを有する96又は384ウェルプレートに播種した。
【0059】
6.組み合わせ試験
[0064]スプライシングモジュレーター(例えば、E7107又はH3B-8800)、並びにBCL2阻害剤、BCL2/BCLxL阻害剤又はBCLxL阻害剤(例えば、ABT263、ABT199又はA-1331852)に化合物段階希釈を実施し、細胞を、細胞生存及びMCL1救済プロトコルで述べたとおりに処理した。BCL-xLノックダウンには、細胞を、細胞生存及びMCL1救済プロトコルに従って、384ウェルプレートに播種する前に300ng/mLのdoxで処理した。最終DMSO濃度は0.2%であった。CellTiter-Gloを、細胞生存及びMCL1救済プロトコルに従って実施した。Chalice Bioinformaticsソフトウェア(Horizon Discovery、ケンブリッジ、英国)を使用してデータを分析した。スプライシングモジュレーター(例えば、E7107又はH3B-8800)、並びにBCL2阻害剤、BCL2/BCLxL阻害剤又はBCLxL阻害剤(例えば、ABT263、ABT199又はA-1331852)の化合物の相乗効果を見積もるために、Horizon Discoveryのロエベ相加性モデルを使用し、ロエベ過剰を、用量応答マトリックスからロエベモデル(化合物の自己交差に基づく純粋な相加性)を差し引くことによって計算した。
【0060】
7.動物試験
[0065]有効性試験の組み合わせ群に使用する許容用量を同定するために、マウスにスプライソソームモジュレーター(例えば、E7107又はH3B-8800)を、1日1回、連続5日間(QDx5)、十分な許容用量レベル(例えば、E7107の場合は1.25、2.5及び5mg/kg)で静脈内に、又はBCL2阻害剤、BCL2/BCLxL阻害剤若しくはBCLxL阻害剤を、1日1回(QD)、許容用量(100、50及び25mg/kg)で経口にて、単独又は組合せで投与する。投与後は、健康上の問題が発症するまで(例えば、麻痺又は体重の過剰な減少)、動物を監視する。各化合物の最大に許容される組み合わせ用量及びそれぞれの単一用量を、腫瘍を有する動物の有効性試験において使用する。
【0061】
[0066]E7107と、BCL2阻害剤、BCL2/BCLxL阻害剤又はBCLxL阻害剤との組合せによる抗腫瘍活性を、A549及びNCIH1568の皮下モデルにおいてインビボで評価する。細胞(H1568 5x106細胞及びA549 10x106細胞)を、ヌードマウスの脇腹に皮下移植する。動物に、スプライソソームモジュレーター、及びBCL2阻害剤、BCL2/BCLxL阻害剤又はBCLxL阻害剤を以前の試験で同定された用量に基づき投与する。
【0062】
B.結果
1.MCL1過剰発現及びMCL1依存性のNSCLC細胞株の同定
[0067]プラジエノライドスプライソソームモジュレーターと、BCL2阻害剤、BCL2/BCLxL阻害剤又はBCLxL阻害剤との組合せによる活性を評価するための細胞株モデルを同定するために、MCL1増幅を伴う又は伴わない6つの非小細胞肺癌(NSCLC)細胞株を、以前の報告に基づいて選択した(Wei Gら、2012年、Cancer Cell 21(4):547~562)。これらの細胞株におけるMCL1タンパク質発現についてウエスタンブロット分析を行った。
図1に示すとおり、MCL1遺伝子増幅のNCIH1568、NCIH23及びNCIH2110は、非増幅細胞株のNCIH1650、NCIH1975及びA549と比較して、より高いMCL1タンパク質発現レベルを示す。次に、MCL1を特異的にダウンレギュレートする誘導性shRNAを使用して、MCL1への依存性をこれらの細胞株で試験した。MCL増幅細胞株で選択的MCL依存性を示したが、非増幅細胞株では示さなかった(
図2)。MCL1過剰発現及びMCL1依存性のNSCLC細胞株モデルを、さらなる機能性試験で使用するために同定した。
【0063】
2.E7107は、MCL1のスプライシングモジュレーションを誘導する
[0068]プラジエノライド誘導体E7107によるMCL1遺伝子のスプライシングモジュレーションを試験した。MCL1遺伝子は、3つのエクソン及び2つのイントロンを含有し、3つのエクソン及び2つのイントロンは、2つの主要な転写産物である、機能性全長タンパク質をコードするMCL1L及び推定上の機能喪失タンパク質をコードするMCL1Sに選択的にスプライシングされ得る(
図3)。試験の一部として、E7107がスプライシング機構を混乱させた後のMCL1のイントロン保持を測定した。NCIH1568細胞をE7107で6時間、処理することで、MCL1LのmRNAの強固な減少、MCL1SのmRNAの一時的発現、及びイントロン保持を伴うMCL1のプレmRNAの継続的な誘導を誘発した(
図4)。
【0064】
[0069]MCL1のタンパク質発現を、NCIH1568細胞においてさらに試験した。mRNAのデータと一致して、E7107は、全長MCL1タンパク質の用量依存的なダウンレギュレーションを引き起こしたが、トランケートされた短縮型タンパク質産物は、用量依存的な様式で増加した。MCLタンパク質レベルの変化は、アポトーシスの指標である切断型PARPタンパク質の誘導に関連しており、E7107によるMCL1のスプライシングモジュレーションが、NCIH1568細胞において細胞死を引き起こす可能性があることを示唆した(
図5)。
【0065】
3.E7107誘導性細胞死は、MCL1及びBCLxLに依存性である
[0070]MCL1のE7107誘導性ダウンレギュレーションが細胞死の原因であることを確認するために、MCL1LのcDNAを、ウエスタンブロット分析によって示されるとおり、NCIH1568細胞において過剰発現させた(
図6)。MCL1LのcDNA過剰発現は、MCL1依存性細胞株においてE7107によって誘導される細胞死を救済した(
図7)。E7107処理MCL1非依存性A549細胞における(BCL2L1でコードされる)BCLxLの役割についてさらに検討した。予測のとおり、E7107のみ細胞増殖阻害を誘導し、一方で、BCLxLの誘導性ノックダウン(
図8)は、E7107処理時に明らかな細胞死をもたらした(
図9)。要約すると、これらのデータは、MCL1とBCLxLとの両方の阻害により相乗活性をもたらし、MCL1依存性と非依存性との両方のがん細胞で細胞毒性を導くことを裏付ける。
【0066】
4.E7107と、BCL2阻害剤、BCL2/BCLxL阻害剤又はBCLxL阻害剤との組合せは相乗効果を示す
[0071]E7107はMCL1をモジュレーションすることができるが、他のBCL2タンパク質は、MCL1阻害によって誘導される細胞毒性に対抗することができるため、E7107と、BCL2阻害剤、BCL2/BCLxL阻害剤又はBCLxL阻害剤との組合せは、すべての抗アポトーシスBCL2タンパク質の広範な標的化を介して、細胞死の増強をもたらすことができる。
【0067】
[0072]BCL2/BCLxL/BCLw汎阻害剤である、ABT263(ナビトクラクス)を、8×8の用量マトリックスモードで、E7107との組合せにおいて試験した(
図10)。確かに、この2つの阻害剤の組合せは、MCL1依存性のNCIH23(相乗効果スコア=50.8)、NCIH2110(相乗効果スコア=50.2)、NCIH1568(相乗効果スコア=35.2)及びMCL1非依存性A549細胞(相乗効果スコア=85.4)を含む4つの異なる空ベクター発現細胞株モデルで、ロエベ相加性モデル(
図10、左パネル)を大幅に超える強い相乗効果を示した。さらに、BCLxLのshRNA枯渇は、E7107とABT263との間の相乗効果を大幅に減少させ(
図10、右パネル)、shRNAの遺伝子操作及び薬理学的阻害剤(ABT263)が、同じノードのBCLxLに影響を与えて、相乗効果を達成することが確認された。特に、相乗効果スコアが、NCIH23(7.42)、NCIH2110(7.03)、NCIH1568(12.7)及びA549(28.3)に、大幅に低下する。
【0068】
[0073]ABT199(ベネトクラクス)もまた、E7107との組合せにおいて試験した。ABT199は、BCLxLに活性である、よりBCL2選択的な阻害剤である。MCL1非依存性A549細胞におけるE7107とABT199との組合せは、相乗活性を示し(スコア=32.6)、一方で、BCLxLのノックダウンは相乗性を大幅に減少させた(スコア=16.4)(
図11)。
【0069】
5.H3B-8800と、BCL2阻害剤、BCL2/BCLxL阻害剤又はBCLxL阻害剤との組合せは相乗効果を示す
[0074]別のSF3b標的化スプライシングモジュレーターであるH3B-8800もまた、すべての抗アポトーシス性BCL2タンパク質を広範囲に標的化することで細胞死の増強をもたらすことができるBCL2/BCLxL阻害剤との相乗活性の可能性について評価した。
【0070】
[0075]BCL2/BCLxL/BCLw汎阻害剤である、ABT263(ナビトクラクス)を、12×12の用量マトリックスモードで、H3B-8800との組合せにおいて試験した。この2つの阻害剤の組合せは、U266B1(相乗効果スコア=41.3)及びRPMI8226(相乗効果スコア=40.1)を含む2つの異なる多発性骨髄腫細胞株モデルにおいて、ロエベ相加性モデル(
図12)を大幅に超える強い相乗効果を示した。
【0071】
[0076]ABT199(ベネトクラクス)もまた、H3B-8800との組合せにおいて試験した。ABT199は、BCLxLに活性である、よりBCL2選択的な阻害剤である。H3B-8800とABT199との組合せもまた、JJN3(相乗効果スコア=26.1)及びRPMI8226(相乗効果スコア=19)の2つの試験された多発性骨髄腫細胞株モデルにおいて相乗活性を示した(
図13)。
【0072】
[0077]さらに、A-1331852もまた、H3B-8800との組合せにおいて試験した。A-1331852は、よりBCLxL選択的な阻害剤である。H3B-880とA-1331852との組合せは、RPMI8226(相乗効果スコア=68.3)及びMM1S(相乗効果スコア=56.8)の2つの試験された多発性骨髄腫細胞株モデルにおいて実質的な相乗活性を示した(
図14)。
【0073】
[0078]まとめると、これらのデータは、プラジエノライド由来のスプライシングモジュレーター(例えば、E7107又はH3B-8800)と、BCL2阻害剤、BCL2/BCLxL阻害剤又はBCLxL阻害剤(例えば、ABT263、ABT199又はA-1331852)との組合せが、様々ながん細胞において相乗的な細胞毒性を誘導することを示す。したがって、このデータは、プラジエノライドスプライシングモジュレーターと、BCL2阻害剤、BCL2/BCLxL阻害剤又はBCLxL阻害剤との組合せを、がんの治療において使用することを支持する。
前記少なくとも1つの阻害剤が、HA14-1、BH3I-1、アンチマイシンA、ケレリトリン、ゴシポール(NSC19048)、アポゴシポール(NSC736630)、TW-37、4-(3-メトキシ-フェニルスルホニル)-7-ニトロ-ベンゾフラン-3-オキシド(MNB)、TM12-06、オバトクラクス(GX15-070)、ベネトクラクス(ABT199)、ナビトクラクス(ABT263)、A-1331852、ABT737及びそれらの薬学的に許容できる塩から選択される、請求項1~8のいずれか一項に記載の医薬組成物。
前記少なくとも1つの阻害剤が、ベネトクラクス(ABT199)、ナビトクラクス(ABT263)、A-1331852、ABT737及びそれらの薬学的に許容できる塩から選択される、請求項1~9のいずれか一項に記載の医薬組成物。
前記少なくとも1つの阻害剤が、HA14-1、BH3I-1、アンチマイシンA、ケレリトリン、ゴシポール(NSC19048)、アポゴシポール(NSC736630)、TW-37、4-(3-メトキシ-フェニルスルホニル)-7-ニトロ-ベンゾフラン-3-オキシド(MNB)、TM12-06、オバトクラクス(GX15-070)、ベネトクラクス(ABT199)、ナビトクラクス(ABT263)、A-1331852、ABT737及びそれらの薬学的に許容できる塩から選択される、請求項19~26のいずれか一項に記載の使用のための組合せ。
前記少なくとも1つの阻害剤が、ベネトクラクス(ABT199)、ナビトクラクス(ABT263)、A-1331852、ABT737及びそれらの薬学的に許容できる塩から選択される、請求項19~27のいずれか一項に記載の使用のための組合せ。
前記がんが、骨髄異形成症候群、多発性骨髄腫、慢性リンパ性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性骨髄単球性白血病、急性骨髄性白血病、結腸がん、膵臓がん、子宮内膜がん、卵巣がん、乳がん、ブドウ膜黒色腫、胃がん、胆管癌及び肺がんから選択される、請求項19~39のいずれか一項に記載の使用のための組合せ。
前記血液がんが、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性骨髄単球性白血病、急性単球性白血病、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、骨髄異形成症候群及び多発性骨髄腫から選択される、請求項43に記載の使用のための組合せ。
前記固形腫瘍が、乳がん、膵臓がん、前立腺がん、結腸又は結腸直腸がん、肺がん、胃がん、子宮頸がん、子宮内膜がん、卵巣がん、胆管癌、神経膠腫及び黒色腫から選択される、請求項45に記載の使用のための組合せ。
前記MCL1依存性がんが、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性骨髄単球性白血病、急性単球性白血病、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、骨髄異形成症候群、多発性骨髄腫、肺がん、乳がん、膵臓がん、前立腺がん、結腸又は結腸直腸がん、胃がん、子宮頸がん、子宮内膜がん、卵巣がん、胆管癌、神経膠腫及び黒色腫から選択される、請求項47に記載の使用のための組合せ。
前記スプライソソーム遺伝子又はタンパク質が、スプライシング因子3Bサブユニット1(SF3B1)、U2核内低分子RNA補助因子1(U2AF1)、セリン/アルギニンリッチスプライシング因子2(SRSF2)、ジンクフィンガー(CCCH型)RNA結合モチーフ及びセリン/アルギニンリッチ2(ZRSR2)、プレmRNAプロセシングスプライシング因子8(PRPF8)、U2核内低分子RNA補助因子2(U2AF2)、スプライシング因子1(SF1)、スプライシング因子3aサブユニット1(SF3A1)、PRP40プレmRNAプロセシング因子40ホモログB(PRPF40B)、RNA結合モチーフタンパク質10(RBM10)、ポリ(rC)結合タンパク質1(PCBP1)、クルックドネックプレmRNAスプライシング因子1(CRNKL1)、DEAH(Asp-Glu-Ala-His)ボックスヘリカーゼ9(DHX9)、ペプチジル-プロリルシス-トランスイソメラーゼ様2(PPIL2)、RNA結合モチーフタンパク質22(RBM22)、核内低分子リボヌクレオタンパク質Sm D3(SNRPD3)、推定ATP依存性RNAヘリカーゼDDX5(DDX5)、プレmRNAスプライシング因子ATP依存性RNAヘリカーゼDHX15(DHX15)及びポリアデニル酸結合タンパク質1(PABPC1)から選択される、請求項49に記載の使用のための組合せ。
前記少なくとも1つの阻害剤が、HA14-1、BH3I-1、アンチマイシンA、ケレリトリン、ゴシポール(NSC19048)、アポゴシポール(NSC736630)、TW-37、4-(3-メトキシ-フェニルスルホニル)-7-ニトロ-ベンゾフラン-3-オキシド(MNB)、TM12-06、オバトクラクス(GX15-070)、ベネトクラクス(ABT199)、ナビトクラクス(ABT263)、A-1331852、ABT737及びそれらの薬学的に許容できる塩から選択される、請求項52~59のいずれか一項に記載の使用。
前記少なくとも1つの阻害剤が、ベネトクラクス(ABT199)、ナビトクラクス(ABT263)、A-1331852、ABT737及びそれらの薬学的に許容できる塩から選択される、請求項52~60のいずれか一項に記載の使用。
前記がんが、骨髄異形成症候群、多発性骨髄腫、慢性リンパ性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性骨髄単球性白血病、急性骨髄性白血病、結腸がん、膵臓がん、子宮内膜がん、卵巣がん、乳がん、ブドウ膜黒色腫、胃がん、胆管癌及び肺がんから選択される、請求項52~72のいずれか一項に記載の使用。
前記血液がんが、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性骨髄単球性白血病、急性単球性白血病、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、骨髄異形成症候群及び多発性骨髄腫から選択される、請求項76に記載の使用。
前記固形腫瘍が、乳がん、膵臓がん、前立腺がん、結腸又は結腸直腸がん、肺がん、胃がん、子宮頸がん、子宮内膜がん、卵巣がん、胆管癌、神経膠腫及び黒色腫から選択される、請求項78に記載の使用。
前記MCL1依存性がんが、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性骨髄単球性白血病、急性単球性白血病、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、骨髄異形成症候群、多発性骨髄腫、肺がん、乳がん、膵臓がん、前立腺がん、結腸又は結腸直腸がん、胃がん、子宮頸がん、子宮内膜がん、卵巣がん、胆管癌、神経膠腫及び黒色腫から選択される、請求項80に記載の使用。
前記スプライソソーム遺伝子又はタンパク質が、スプライシング因子3Bサブユニット1(SF3B1)、U2核内低分子RNA補助因子1(U2AF1)、セリン/アルギニンリッチスプライシング因子2(SRSF2)、ジンクフィンガー(CCCH型)RNA結合モチーフ及びセリン/アルギニンリッチ2(ZRSR2)、プレmRNAプロセシングスプライシング因子8(PRPF8)、U2核内低分子RNA補助因子2(U2AF2)、スプライシング因子1(SF1)、スプライシング因子3aサブユニット1(SF3A1)、PRP40プレmRNAプロセシング因子40ホモログB(PRPF40B)、RNA結合モチーフタンパク質10(RBM10)、ポリ(rC)結合タンパク質1(PCBP1)、クルックドネックプレmRNAスプライシング因子1(CRNKL1)、DEAH(Asp-Glu-Ala-His)ボックスヘリカーゼ9(DHX9)、ペプチジル-プロリルシス-トランスイソメラーゼ様2(PPIL2)、RNA結合モチーフタンパク質22(RBM22)、核内低分子リボヌクレオタンパク質Sm D3(SNRPD3)、推定ATP依存性RNAヘリカーゼDDX5(DDX5)、プレmRNAスプライシング因子ATP依存性RNAヘリカーゼDHX15(DHX15)及びポリアデニル酸結合タンパク質1(PABPC1)から選択される、請求項82に記載の使用。