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特開2023-10992SSTR標的化コンジュゲートおよび粒子ならびにその製剤
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  • 特開-SSTR標的化コンジュゲートおよび粒子ならびにその製剤 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023010992
(43)【公開日】2023-01-20
(54)【発明の名称】SSTR標的化コンジュゲートおよび粒子ならびにその製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/537 20060101AFI20230113BHJP
   A61K 47/64 20170101ALI20230113BHJP
   A61K 47/14 20060101ALI20230113BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20230113BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230113BHJP
   A61K 51/02 20060101ALI20230113BHJP
   A61K 51/08 20060101ALI20230113BHJP
   A61P 1/08 20060101ALI20230113BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20230113BHJP
   A61P 1/10 20060101ALI20230113BHJP
   A61P 1/12 20060101ALI20230113BHJP
   A61P 7/06 20060101ALI20230113BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230113BHJP
   A61P 13/08 20060101ALI20230113BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20230113BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20230113BHJP
【FI】
A61K31/537
A61K47/64
A61K47/14
A61K47/26
A61K45/00
A61K51/02 200
A61K51/08 200
A61P1/08
A61P1/00
A61P1/10
A61P1/12
A61P7/06
A61P35/00
A61P13/08
A61P25/00
A61P11/00
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022187945
(22)【出願日】2022-11-25
(62)【分割の表示】P 2019522709の分割
【原出願日】2017-10-27
(31)【優先権主張番号】62/414,481
(32)【優先日】2016-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】522330762
【氏名又は名称】ティーブイエイ (エイビーシー) エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】TVA(ABC),LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】シンデ、ラジェシュ アール.
(72)【発明者】
【氏名】アラゴバ、ロシッツァ ジー.
(72)【発明者】
【氏名】イム ス、パトリック
(72)【発明者】
【氏名】スウェリダ-クラウィエック、ベアタ
(72)【発明者】
【氏名】アランド、レイラ
(72)【発明者】
【氏名】シアーズ、クリストファー
(57)【要約】
【課題】時間空間的薬物送達のための改良された化合物、組成物、および製剤を提供する
【解決手段】本開示の医薬組成物は、コンジュゲートと少なくとも1つの賦形剤とを含む。コンジュゲートは、リンカーによってソマトスタチン受容体(SSTR)標的化部分に結合された活性薬剤を含んでおり、当該活性薬剤はメルタンシン(DM1)である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、標的化リガンド、そのコンジュゲート、および薬剤送達のための粒子の分野に関する。より具体的には、本発明は、例えば、癌を治療するための、ソマトスタチン受容体を標的とする分子の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ナノメディシンの開発は、一般に、薬剤の薬学的特性を改良し、場合によっては、より細胞特異的に標的化送達を向上させることに向けられている。いくつかの細胞特異的薬剤が記載されており、モノクローナル抗体、アプタマー、ペプチド、および小分子を含む。このような薬剤の潜在的利点のいくつかにもかかわらず、サイズ、安定性、製造コスト、免疫原性、薬物動態の不良および他の要因を含むいくつかの問題が、それらの臨床的応用を制限している。ナノ粒子薬剤送達システムは、例えば、透過性・滞留性亢進(EPR:enhanced permeation and retention)効果によって、循環血液中の薬剤の半減期を延長し、薬剤の非特異的取り込みを減少させ、腫瘍における薬剤の蓄積を改善することが可能であり得るため、全身薬剤送達に魅力的である。ナノ粒子として送達用に製剤化された治療薬の例は限られており、ドキシル(DOXIL)(登録商標)(リポソーム封入ドキソルビシン)およびアブラキサン(ABRAXANE)(登録商標)(アルブミン結合パクリタキセルナノ粒子)が挙げられる。
【0003】
薬剤または薬剤候補を、特定の器官または組織中の特定の罹患細胞および組織、例えば、癌組織に時間空間的に制御された方法で有効に送達するためのナノテクノロジーの開発は、全身毒性などの治療上の課題を克服または改善することができる可能性がある。しかしながら、送達システムのターゲティングは、治療が必要な部位に優先的に薬剤を送達し得るが、ナノ粒子から放出される薬剤は、例えば、標的細胞の領域中に有効な量で留まらないことがあり、または治療効果をなお達成しながら治療の頻度を減らすかまたは投与される薬剤のより少ない量を可能にするのに十分な時間にわたって比較的非毒性の状態で血液循環中に留まらないことがある。抗体薬剤コンジュゲートは、抗体を含み、細胞傷害性ペイロードが設計されている。しかしながら、抗体のサイズは、より小さい標的化リガンドと比較して固形腫瘍浸透を制限する(内容全体が参照により本明細書に援用される(非特許文献1)を参照)。より小さい標的化リガンドはまた、固形腫瘍により速く浸透し、これは、高い腫瘍Cmaxを必要とするペイロードにとって重要である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】シャン(Xiang)ら著、セラノスティクス(Theranostics)、第5巻(10):1083~1097(2015)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、改良された薬剤ターゲティングおよび送達およびより深い固形腫瘍浸透を有する薬剤を設計することが、当該技術分野において必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本出願人は、ソマトスタチン受容体結合部分と、活性薬剤、例えば、白金含有薬剤などの癌治療用薬剤とのコンジュゲートである分子を生成した。さらに、このようなコンジュゲートは、粒子に封入され得る。コンジュゲートおよび粒子は、腫瘍細胞毒性薬などの活性薬剤を、ソマトスタチン受容体(SSTR:somatostatin receptor)を発現する細胞に送達するのに有用である。
【0007】
本出願人は、新規なコンジュゲートおよび粒子(ポリマーナノ粒子を含む)、ならびにその医薬製剤を開発した。治療用、予防用、または診断用薬剤などの活性薬剤のコンジュゲートは、ソマトスタチン受容体に結合し得る標的化部分に、リンカーを介して結合される。コンジュゲートおよび粒子は、活性薬剤単独の送達と比較して、活性薬剤の時間空間的送達の改善および/または生体内分布の改善を提供することができる。場合によっては、標的化部分は、治療用薬剤としても働き得る。ある実施形態において、標的化薬剤は、インビボでの治療用薬剤の有効性を実質的に妨げない。コンジュゲート、粒子、およびこのような粒子を含む製剤を作製する方法が、本明細書に記載される。このような粒子は、例えば、癌または感染症を治療または予防する活性薬剤に感受性である疾患を治療または予防するのに有用である。
【0008】
コンジュゲートは、リンカーによって結合された標的化リガンドと活性薬剤とを含み、コンジュゲートは、ある実施形態において、式:
(X-Y-Z)
(式中、Xは、ソマトスタチン受容体標的化部分であり;Yはリンカーであり;Zは活性薬剤である)で表される。一実施形態において、活性薬剤はDM1であり得る。
【0009】
本発明の一態様において、細胞の増殖を低下させ、アポトーシスを増加させ、または細胞の停止を増加させる方法が提供される。本方法は、コンジュゲートを細胞に投与することを含み、ここで、コンジュゲートは、リンカーによってソマトスタチン受容体(SSTR)標的化部分に結合された活性薬剤を含み、活性薬剤はメルタンシン(DM1)である。
【0010】
本発明の別の態様において、対象の腫瘍を治療し、腫瘍の容積を減少させ、またはDM1を腫瘍に送達する方法が提供される。本方法は、コンジュゲートを対象に投与することを含み、ここで、コンジュゲートは、リンカーによってソマトスタチン受容体(SSTR)標的化部分に結合された活性薬剤を含み、活性薬剤はメルタンシン(DM1)である。
【0011】
本発明のさらに別の態様において、神経内分泌癌を治療する方法が提供され、ここで、神経内分泌癌は、小細胞肺癌(SCLC:small cell lung cancer)、褐色細胞腫、神経芽細胞腫、神経節細胞腫、傍神経節腫、カルチノイド、ガストリノーマ、グルカゴノーマ、血管作動性腸管ポリペプチド分泌腫瘍、膵ポリペプチド分泌腫瘍、非機能性胃腸膵腫瘍、甲状腺髄様癌、皮膚メルケル細胞腫、下垂体腺腫、および膵臓癌から選択される。本方法は、コンジュゲートを細胞に投与することを含み、ここで、コンジュゲートは、リンカーによってソマトスタチン受容体(SSTR)標的化部分に結合された活性薬剤を含み、活性薬剤はメルタンシン(DM1)である。
【0012】
本発明のさらに別の態様において、コンジュゲートとさらなる活性薬剤とを含む医薬組成物が提供され、ここで、コンジュゲートは、リンカーによってソマトスタチン受容体(SSTR)標的化部分に結合された活性薬剤を含み、活性薬剤はメルタンシン(DM1)である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】ドレハー(Dreher)ら著、ジャーナル・オブ・ザ・ナショナル・キャンサー・インスティテュート(JNCI)、第98巻(5):335(2006)の図6である。
図2A】SSTR2受容体内在化強度を示す図。
図2B】異なる時点でのH524-MD腫瘍異種移植片におけるSSTR2内在化を示す図。
図2C】SSTR2内在化分布のレベルを示す図。
図2D】異なる時点でのH524腫瘍異種移植片におけるSSTR2内部細胞分布を示す図。
図3】コンジュゲート57で治療されたHCC-33異種移植片のTGI%を示す図。
図4】hERGイオンチャネル阻害についてのコンジュゲート57のインビトロ評価を示す図。破線は、ビヒクル対照ウェル(0.3%のDMSO)の平均効果を示す。
図5】様々な製剤のPKプロファイルを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
少なくとも5つのソマトスタチン受容体サブタイプが特徴付けられており、腫瘍は、様々な受容体サブタイプを発現し得る(例えば、シェア(Shaer)ら著、インターナショナル・ジャーナル・オブ・キャンサー(Int.3.Cancer)、70:530~537、1997を参照)。天然ソマトスタチンおよびその類似体は、受容体サブタイプへの異なる結合を示す。本出願人は、この特徴を利用して、活性薬剤を含むコンジュゲートの、疾患組織標的へのターゲティングを改善する新規な粒子を生成した。このようなターゲティングは、例えば、部位における活性薬剤の量を改善し、対象に対する活性薬剤毒性を低減し得る。本明細書において使用される際、「毒性」は、細胞、組織、生物または細胞環境にとって有害または有毒である物質または組成物の能力を指す。低い毒性は、細胞、組織、生物または細胞環境にとって有害または有毒である物質または組成物の低下した能力を指す。このような低下したまたは低い毒性は、標準測定値に対して、治療に対して、または治療がない場合に対してのものであり得る。
【0015】
毒性はさらに、対象の体重減少に対して測定されてもよく、ここで、体重の15%超、20%超または30%超の体重減少が毒性を示す。嗜眠および全身倦怠感を含む患者の症状呈示の測定基準などの毒性の他の測定基準も測定され得る。好中球減少症または血小板減少症も、毒性の測定基準であり得る。
【0016】
毒性の薬理学的指標としては、上昇したAST/ALTレベル、神経毒性、腎損傷、胃腸障害などが挙げられる。
コンジュゲートは、粒子の投与後に放出される。標的化薬剤コンジュゲートは、活性分子ターゲティングを、透過性・貯留性亢進効果(EPR)および粒子の全体的な生体内分布の改善と組み合わせて用いて、標的化粒子または封入された非標的化薬剤の投与と比較して、より高い有効性および忍容性を提供する。
【0017】
さらに、SSTRを発現しない細胞に対する活性薬剤に連結されたソマトスタチン標的化部分を含有するコンジュゲートの毒性は、活性薬剤単独の毒性と比較して低下されると予想される。いかなる特定の理論にも制約されるものではないが、本出願人は、この特徴が、コンジュゲートされた活性薬剤が細胞に入る能力が、活性薬剤単独の細胞に入る能力と比較して低下されることに起因すると考える。したがって、本明細書に記載されるような活性薬剤を含むコンジュゲートおよびコンジュゲートを含有する粒子は、一般に、活性薬剤単独と比較して、非SSTR発現細胞に対する低下した毒性、およびSSTR発現細胞に対する少なくとも同じかまたは増加した毒性を有する。
【0018】
本発明の目的は、時間空間的薬物送達のための改良された化合物、組成物、および製剤を提供することである。
さらに、本発明の目的は、時間空間的薬物送達のための改良された化合物、組成物、および製剤を作製する方法を提供することである。
【0019】
また、本発明の目的は、改良された化合物、組成物、および製剤を、それを必要とする個体に投与する方法を提供することである。
I.コンジュゲート
コンジュゲートは、標的化部分、例えば、SSTRに結合し得る分子に、リンカーによって結合された活性薬剤またはそのプロドラッグを含む。コンジュゲートは、単一の活性薬剤と単一の標的化部分との間のコンジュゲート、例えば、構造X-Y-Z(式中、Xは標的化部分であり、Yはリンカーであり、Zは活性薬剤である)を有するコンジュゲートであり得る。
【0020】
ある実施形態において、コンジュゲートは、2つ以上の標的化部分、2つ以上のリンカー、2つ以上の活性薬剤、またはそれらの任意の組合せを含有する。コンジュゲートは、任意の数の標的化部分、リンカー、および活性薬剤を有し得る。コンジュゲートは、構造X-Y-Z-Y-X、(X-Y)-Z、X-(Y-Z)、X-Y-Z、(X-Y-Z)、(X-Y-Z-Y)-Z(式中、Xは標的化部分であり、Yはリンカーであり、Zは活性薬剤であり、nは、1~50、2~20、例えば、1~5の整数である)を有し得る。X、Y、およびZは、出現するごとに、同じかまたは異なり得、例えば、コンジュゲートは、2つ以上のタイプの標的化部分、2つ以上のタイプのリンカー、および/または2つ以上のタイプの活性薬剤を含有し得る。
【0021】
コンジュゲートは、単一の活性薬剤に結合された2つ以上の標的化部分を含有し得る。例えば、コンジュゲートは、異なるリンカーを介してそれぞれ結合された複数の標的化部分を有する活性薬剤を含み得る。コンジュゲートは、構造X-Y-Z-Y-X(式中、各Xは、同じかまたは異なり得る標的化部分であり、各Yは、同じかまたは異なり得るリンカーであり、Zは活性薬剤である)を有し得る。
【0022】
コンジュゲートは、単一の標的化部分に結合された2つ以上の活性薬剤を含有し得る。例えば、コンジュゲートは、異なるリンカーを介してそれぞれ結合された複数の活性薬剤を有する標的化部分を含み得る。コンジュゲートは、構造Z-Y-X-Y-Z(式中、Xは標的化部分であり、各Yは、同じかまたは異なり得るリンカーであり、各Zは、同じかまたは異なり得る活性薬剤である)を有し得る。
【0023】
A.活性薬剤
本明細書に記載されるコンジュゲートは、少なくとも1つの活性薬剤(第1の活性薬剤)を含有する。コンジュゲートは、第1の活性薬剤と同じかまたは異なり得る2つ以上の活性薬剤を含有し得る。活性薬剤は、治療用、予防用、診断用、または栄養用薬剤であり得る。様々な活性薬剤が、当該技術分野において公知であり、本明細書に記載されるコンジュゲートに使用され得る。活性薬剤は、タンパク質またはペプチド、小分子、核酸または核酸分子、脂質、糖、糖脂質、糖タンパク質、リポタンパク質、またはそれらの組合せであり得る。ある実施形態において、活性薬剤は、抗原、アジュバント、放射性物質、イメージング剤(例えば、蛍光部分)またはポリヌクレオチドである。ある実施形態において、活性薬剤は、有機金属化合物である。
【0024】
抗癌剤
活性薬剤は、癌治療薬であり得る。癌治療薬としては、例えば、TNF関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL:TNF-related apotosis-inducing ligand)もしくはFasリガンドなどの細胞死受容体作動薬、または細胞死受容体に結合するかもしくはそれを活性化し、もしくは他の形でアポトーシスを誘導する任意のリガンドもしくは抗体が挙げられる。好適な細胞死受容体としては、限定はされないが、TNFR1、Fas、DR3、DR4、DR5、DR6、LTβRおよびそれらの組合せが挙げられる。
【0025】
化学療法剤、サイトカイン、ケモカイン、および放射線療法剤などの癌治療薬が、活性薬剤として使用され得る。化学療法剤としては、例えば、アルキル化剤、代謝拮抗剤、アントラサイクリン、植物アルカロイド、トポイソメラーゼ阻害剤、および他の抗腫瘍薬が挙げられる。このような薬剤は、典型的に、細胞分裂またはDNAの合成および機能に影響を与える。活性薬剤として使用され得る治療薬のさらなる例としては、モノクローナル抗体およびチロシンキナーゼ阻害剤、例えば、特定のタイプの癌(例えば、慢性骨髄性白血病、消化管間質腫瘍)の分子異常を直接標的にするメシル酸イマチニブが挙げられる。
【0026】
化学療法剤としては、限定はされないが、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、メクロレタミン、シクロホスファミド、クロラムブシル、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、ビンデシン、タキソールおよびその誘導体、イリノテカン、トポテカン、アムサクリン、エトポシド、リン酸エトポシド、テニポシド、エピポドフィロトキシン、トラスツズマブ、セツキシマブ、およびリツキシマブ、ベバシズマブ、およびそれらの組合せが挙げられる。これらのいずれも、コンジュゲート中の活性薬剤として使用され得る。
【0027】
ある実施形態において、活性薬剤は、20-epi-l,25ジヒドロキシビタミンD3、4-イポメアノール、5-エチニルウラシル、9-ジヒドロタキソール、アビラテロン、アシビシン、アクラルビシン、塩酸アコダゾール、アクロニン、アシルフルベン、アデシペノール、アドゼレシン、アルデスロイキン、all-tkアンタゴニスト、アルトレタミン、アンバムスチン、アンボマイシン、酢酸アメタントロン、アミドクス、アミホスチン、アミノグルテチミド、アミノレブリン酸、アムルビシン、アムサクリン、アナグレリド、アナストロゾール、アンドログラホリド、血管新生阻害剤、アンタゴニストD、アンタゴニストG、アンタレリクス、アントラマイシン、抗背側化形態形成タンパク質-1、抗エストロゲン薬、アンチネオプラストン、アンチセンスオリゴヌクレオチド、グリシン酸アフィディコリン、アポトーシス遺伝子モジュレータ、アポトーシス調節因子、アプリン酸、ARA-CDP-DL-PTBA、アルギニンデアミナーゼ、アスパラギナーゼ、アスペルリン、アスラクリン、アタメスタン、アトリムスチン、アキシナスタチン1、アキシナスタチン2、アキシナスタチン3、アザシチジン、アザセトロン、アザトキシン、アザチロシン、アゼテパ、アゾトマイシン、バッカチンIII誘導体、バラノール、バチマスタット、ベンゾクロリン、ベンゾデパ、ベンゾイルスタウロスポリン、βラクタム誘導体、β-アレチン、ベタクラマイシンB、ベツリン酸、BFGF阻害剤、ビカルタミド、ビサントレン、塩酸ビサントレン、ビサジリジニルスペルミン、ビスナフィド、ジメシル酸ビスナフィド、ビストラテンA、ビゼレシン、ブレオマイシン、硫酸ブレオマイシン、BRC/ABLアンタゴニスト、ブレフレート、ブレキナルナトリウム、ブロピリミン、ブドチタン、ブスルファン、ブチオニンスルホキシイミン、カバジタキセル、カクチノマイシン、カルシポトリオール、カルホスチンC、カルステロン、カンプトテシン、カンプトテシン誘導体、カナリア痘IL-2、カペシタビン、カラセミド、カルベチマー、カルボプラチン、カルボキサミド-アミノ-トリアゾール、カルボキシアミドトリアゾール、カレストM3(carest M3)、カルムスチン、アーン700(earn 700)、軟骨由来阻害剤、塩酸カルビシン、カルゼレシン、カゼインキナーゼ阻害剤、カスタノスペルミン、セクロピンB、セデフィンゴール、セトロレリクス、クロラムブシル、クロリン、クロロキノキサリンスルホンアミド、シカプロスト、シロレマイシン、シスプラチン、シス-ポルフィリン、クラドリビン、クロミフェン類似体、クロトリマゾール、コリスマイシンA、コリスマイシンB、コンブレタスタチンA4、コンブレタスタチン類似体、コナゲニン、クランベシジン816、クリスナトール、メシル酸クリスナトール、クリプトフィシン8、クリプトフィシンA誘導体、キュラシンA、シクロペンタンセラキノン、シクロホスファミド、シクロプラタム、シペマイシン、シタラビン、シタラビンオクホスファート、細胞溶解因子、サイトスタチン、ダカルバジン、ダクリキシマブ、ダクチノマイシン、塩酸ダウノルビシン、デシタビン、デヒドロジデムニンB、デスロレリン、デキシホスファミド、デキソルマプラチン、デクスラゾキサン、デクスベラパミル、デアザグアニン、メシル酸デアザグアニン、ジアジコン、ジデムニンB、ジドクス、ジエチルノルスペルミン、ジヒドロ-5-アザシチジン、ジオキサマイシン、ジフェニルスピロムスチン、ドセタキセル、ドコサノール、ドラセトロン、ドキシフルリジン、ドキソルビシン、塩酸ドキソルビシン、ドロロキシフェン、クエン酸ドロロキシフェン、プロピオン酸ドロモスタノロン、ドロナビノール、ジュアゾマイシン、デュオカルマイシンSA、エブセレン、エコムスチン、エダトレキサート、エデルホシン、エドレコロマブ、エフロルニチン、塩酸エフロルニチン、エレメン、エルサミトルシン、エミテフール、エンロプラチン、エンプロマート、エピプロピジン、エピルビシン、塩酸エピルビシン、エプリステリド、エルブロゾール、赤血球遺伝子療法ベクター系、塩酸エソルビシン、エストラムスチン、エストラムスチン類似体、リン酸エストラムスチンナトリウム、エストロゲン作動薬、エストロゲン拮抗薬、エタニダゾール、エトポシド、リン酸エトポシド、エトプリン、エキセメスタン、ファドロゾール、塩酸ファドロゾール、ファザラビン、フェンレチニド、フィルグラスチム、フィナステリド、フラボピリドール、フレゼラスチン、フロクスウリジン、フルアステロン、フルダラビン、リン酸フルダラビン、塩酸フルオロダウノルニシン、フルオロウラシル、フルロシタビン、ホルフェニメクス、ホルメスタン、ホスキドン、フォストリエシ、フォストリエシナトリウム、フォテムスチン、ガドリニウムテキサフィリン、硝酸ガリウム、ガロシタビン、ガニレリクス、ゼラチナーゼ阻害剤、ゲムシタビン、塩酸ゲムシタビン、グルタチオン阻害剤、ヘプスルファム、ヘレグリン、ヘキサメチレンビスアセトアミド、ヒドロキシウレア、ヒペリシン、イバンドロン酸、イダルビシン、塩酸イダルビシン、イドキシフェン、イドラマントン、イホスファミド、イルモホシン、イロマスタット、イミダゾアクリドン、イミキモド、免疫賦活剤ペプチド、インスリン様成長因子-1受容体阻害剤、インターフェロン作動薬、インターフェロンα-2A、インターフェロンα-2B、インターフェロンα-Nl、インターフェロンα-N3、インターフェロンβ-IA、インターフェロンγ-IB、インターフェロン、インターロイキン、ヨーベングアン、ヨードドキソルビシン、イプロプラチン、イリノテカン、塩酸イリノテカン、イロプラクト、イルソグラジン、イソベンガゾール、イソホモハリコンドリンB、イタセトロン、ジャスプラキノリド、カハラリドF、三酢酸ラメラリン-N、ランレオチド、ラロタキセル、酢酸ランレオチド、レイナマイシン、レノグラスチム、硫酸レンチナン、レプトルスタチン、レトロゾール、白血病阻害因子、白血球αインターフェロン、酢酸ロイプロリド、ロイプロリド/エストロゲン/プロゲステロン、リュープロレリン、レバミゾール、リアロゾール、塩酸リアロゾール、線状ポリアミン類似体、親油性二糖ペプチド、親油性白金化合物、リソクリナミド7、ロバプラチン、ロンブリシン、ロメトレキソール、ロメトレキソールナトリウム、ロムスチン、ロニダミン、ロソキサントロン、塩酸ロソキサントロン、ロバスタチン、ロキソリビン、ルルトテカン、ルテチウムテキサフィリン、リソフィリン、細胞溶解性ペプチド、マイタンシン、マンノスタチンA、マリマスタット、マソプロコール、マスピン、マトリライシン阻害剤、マトリックスメタロプロテアーゼ阻害剤、メイタンシン、メイタンシノイド、メルタンシン(DM1)、塩酸メクロレタミン、酢酸メゲストロール、酢酸メレンゲストロール、メルファラン、メノガリル、メルバロン、メルカプトプリン、メテレリン、メチオニナーゼ、メトトレキサート、メトトレキサートナトリウム、メトクロプラミド、メトプリン、メツレデパ、微細藻類プロテインキナーゼC阻害剤、MIF阻害剤、ミフェプリストン、ミルテホシン、ミリモスチム、ミスマッチ二本鎖RNA、ミチンドミド、ミトカルシン、ミトクロミン、ミトギリン、ミトグアゾン、ミトラクトール、ミトマルシン、マイトマイシン、マイトマイシン類似体、ミトナフィド、ミトスペル、ミトタン、マイトトキシン線維芽細胞成長因子-サポリン、ミトキサントロン、塩酸ミトキサントロン、モファロテン、モルグラモスチム、モノクローナル抗体、ヒト絨毛性ゴナドトロピン、モノホスホリルリピドA/マイコバクテリウム(myobacterium)細胞壁SK、モピダモール、多剤耐性遺伝子阻害剤、多発性腫瘍抑制因子1ベースの療法、マスタード抗癌剤、ミカペルオキシドB、マイコバクテリア細胞壁抽出物、ミコフェノール酸、ミリアポロン、n-アセチルジナリン、ナファレリン、ナグレスチプ、ナロキソン/ペンタゾシン、ナパビン、ナフテルピン、ナルトグラスチム、ネダプラチン、ネモルビシン、ネリドロン酸、中性エンドペプチダーゼ、ニルタミド、ニサマイシン、一酸化窒素モジュレータ、ニトロキシド抗酸化剤、ニトルリン、ノコダゾール、ノガラマイシン、n-置換ベンズアミド、06-ベンジルグアニン、オクトレオチド、オキセノン、オリゴヌクレオチド、オナプリストン、オンダンセトロン、オラシン、経口サイトカイン誘導因子、オルマプラチン、オサテロン、オキサリプラチン、オキサウノマイシン、オキシスラン、パクリタキセル、パクリタキセル類似体、パクリタキセル誘導体、パラウアミン、パルミトイルリゾキシン、パミドロン酸、パナキシトリオール、パノミフェン、パラバクチン、パゼリプチン、ペガスパルガーゼ、ペルデシン、ペリオマイシン、ペンタムスチン、ペントサンポリ硫酸ナトリウム、ペントスタチン、ペントロゾール、硫酸ペプロマイシン、ペルフルブロン、ペルホスファミド、ペリリルアルコール、フェナジノマイシン、フェニル酢酸塩、ホスファターゼ阻害剤、ピシバニール、塩酸ピロカルピン、ピポブロマン、ピポスルファン、ピラルビシン、ピリトレキシム、塩酸ピロキサントロン、プラセチンA、プラセチンB、プラスミノーゲン活性化因子阻害剤、白金(IV)錯体、白金化合物、白金-トリアミン錯体、プリカマイシン、プロメスタン、ポルフィマーナトリウム、ポルフィロマイシン、プレドニムスチン、塩酸プロカルバジン、プロピルビス-アクリドン、プロスタグランジンJ2、前立腺癌抗アンドロゲン薬、プロテアソーム阻害剤、プロテインAベースの免疫調節剤、プロテインキナーゼC阻害剤、タンパク質チロシンホスファターゼ阻害剤、プリンヌクレオシドホスホリラーゼ阻害剤、ピューロマイシン、塩酸ピューロマイシン、プルプリン、ピラゾフリン、ピラゾロアクリジン、ピリドキシル化ヘモグロビンポリオキシエチレンコンジュゲート、RAFアンタゴニスト、ラルチトレキセド、ラモセトロン、RASファルネシルタンパク質トランスフェラーゼ阻害剤、RAS阻害剤、RAS-GAP阻害剤、脱メチル化レテリプチン、エチドロン酸レニウムRE 186、リゾキシン、リボプリン、リボザイム、RIIレチンアミド、RNAi、ログレチミド、ロヒツキン、ロムルチド、ロキニメックス、ルビギノンBl、ルボキシル、サフィンゴール、塩酸サフィンゴール、サイントピン、sarCNU、サルコフィトールA、サルグラモスチム、SDI 1模倣体、セムスチン、老化由来阻害剤1、センスオリゴヌクレオチド、siRNA、シグナル伝達阻害剤、シグナル伝達モジュレータ、シムトラゼン、単鎖抗原結合タンパク質、シゾフィラン、ソブゾキサン、ボロカプテイトナトリウム、フェニル酢酸ナトリウム、ソルベロール(solverol)、ソマトメジン結合タンパク質、ソネルミン、スパルフォセートナトリウム、スパルホス酸、スパルソマイシン、スピカマイシンD、塩酸スピロゲルマニウム、スピロムスチン、スピロプラチン、スプレノペンチン、スポンジスタチン1、スクアラミン、幹細胞阻害剤、幹細胞分裂阻害剤、スチピアミド、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ストロメライシン阻害剤、スルフィノシン、スロフェヌル、超活性血管作動性腸管ペプチド拮抗薬、スラジスタ、スラミン、スウェインソニン、合成グリコサミノグリカン、タリソマイシン、タリムスチン、タモキシフェンメチオジド、タウロムスチン、タザロテン、テコガランナトリウム、テガフール、テルラピリリウム、テロメラーゼ阻害剤、塩酸テロキサントロン、テモポルフィン、テモゾロミド、テニポシド、テロキシロン、テストラクトン、テトラクロロデカオキシド、テトラゾミン、タリブラスチン、サリドマイド、チアミプリン、チオコラリン、チオグアニン、チオテパ、トロンボポエチン、トロンボポエチン模倣体、サイマルファシン、サイモポエチン受容体作動薬、チモトリナン、甲状腺刺激ホルモン、チアゾフリン、エチルエチオプルプリンスズ、チラパザミン、チタノセンジクロリド、塩酸トポテカン、トプセンチン、トレミフェン、クエン酸トレミフェン、全


能性幹細胞因子、翻訳阻害剤、酢酸トレストロン、トレチノイン、トリアセチルウリジン、トリシリビン、リン酸トリシリビン、トリメトレキサート、グルクロン酸トリメトレキサート、トリプトレリン、トロピセトロン、塩酸ツブロゾール、ツロステリド、チロシンキナーゼ阻害剤、チルホスチン、UBC阻害剤、ウベニメクス、ウラシルマスタード、ウレデパ、泌尿生殖洞由来成長阻害因子、ウロキナーゼ受容体拮抗薬、バプレオチド、バリオリンB、ベラレソール、ベラミン、ベルジン、ベルテポルフィン、硫酸ビンブラスチン、硫酸ビンクリスチン、ビンデシン、硫酸ビンデシン、硫酸ビネピジン、硫酸ビングリシナート、硫酸ビンレウロシン、ビノレルビン、酒石酸ビノレルビン、硫酸ビンロシジン、ビンキサルチン、硫酸ビンゾリジン、ビタキシン、ボロゾール、ザノテロン、ゼニプラチン、ジラスコルブ、ジノスタチン、ジノスタチンスチマラマー、または塩酸ゾルビシンであり得る。
【0028】
ある実施形態において、活性薬剤は小分子である。ある実施形態において、活性薬剤は、小分子細胞毒素である。一実施形態において、活性薬剤は、カバジタキセル、またはその類似体、誘導体、プロドラッグ、もしくは薬学的に許容される塩である。別の実施形態において、活性薬剤は、メルタンシン(DM1)またはDM4、またはその類似体、誘導体、プロドラッグ、もしくは薬学的に許容される塩である。DM1またはDM4は、チューブリンに結合することによって、微小管の集合を阻害する。DM1の構造が、以下に示される:
【0029】
【化1】

活性薬剤は、1つ以上の金属中心を含有する無機または有機金属化合物であり得る。ある場合には、化合物は、1つの金属中心を含有する。活性薬剤は、例えば、白金化合物、ルテニウム化合物(例えば、トランス-[RuCl(DMSO)]、またはトランス-[RuCl(イミダゾール)など)、コバルト化合物、銅化合物、または鉄化合物であり得る。
【0030】
特定の実施形態において、コンジュゲートの活性薬剤は、コンジュゲートの構成要素のモル重量パーセンテージの合計が100%になるように、約1%~約10%、または約10%~約20%、または約20%~約30%、または約30%~約40%、または約40%~約50%、または約50%~約60%、または約60%~約70%、または約70%~約80%、または約80%~約90%、または約90%~約99%の所定のモル重量パーセンテージを占める。コンジュゲートの活性薬剤の量はまた、標的化リガンドに対する比率として表され得る。例えば、本教示は、約10:1、9:1、8:1、7:1、6:1、5:1、4:1、3:1、2:1、1:1、1:2、1:3、1:4;1:5、1:6、1:7、1:8、1:9、または1:10の活性薬剤対リガンドの比率を提供する。
【0031】
B.標的化部分
本明細書に記載される標的化リガンド(標的化部分とも呼ばれる)は、1つ以上のSSTR、例えば、ヒトSSTR1、SSTR2、SSTR3、SSTR4、またはSSTR5に結合し得る任意の分子を含む。このような標的化リガンドは、ペプチド、抗体模倣体、核酸(例えば、アプタマー)、ポリペプチド(例えば、抗体)、糖タンパク質、小分子、炭水化物、または脂質であり得る。ある実施形態において、標的化部分は、ソマトスタチンまたはソマトスタチン類似体である。
【0032】
本発明の細胞傷害性または治療用コンジュゲートは、ソマトスタチン受容体に結合する任意のソマトスタチン類似体を用い得る。ある実施形態において、コンジュゲートのソマトスタチン類似体部分は、8~18のアミノ酸を含有し、コア配列:シクロ[Cys-Phe-D-Trp-Lys-Thr-Cys]またはシクロ[Cys-Tyr-D-Trp-Lys-Thr-Cys]を含む。例えば、この類似体のC末端は、Thr-NH2である。
【0033】
一実施形態において、標的化部分は、好ましくは、SSTR2に結合する。したがって、標的化部分を含むコンジュゲートは、好ましくは、SSTR2に結合する。SSTR2へのコンジュゲートの結合は、SSTR1、SSTR3、SSTR4またはSSTR5へのコンジュゲートの結合より強い。
【0034】
ある実施形態において、本明細書に記載されるコンジュゲートは、低い膜透過性を有する。膜透過性は、頂端側から側底側への方向および側底側から頂端側への方向の両方で低くなり得る。いかなる理論にも制約されることを望むものではないが、低い膜透過性は、非特異的透過性を低下させることによって、SSTRによる選択的取り込みを促進する。低い透過性は、SSTR2を発現しない細胞における低下した取り込みにつながり、非SSTR2発現細胞に対するより低い毒性につながる。膜透過性は、当該技術分野において公知の任意の方法によって決定され得る。例えば、それは、Caco-2単層において見かけの透過性(Papp)を測定することによって決定され得る。
【0035】
ある実施形態において、標的化部分、Xは、ソマトスタチン、オクトレオチド、ランレオチド、ルタセラ(177Lu-DOTATATE)、90Y-DOTATOC、Tyr-オクトレオテート(TATE)、バプレオチド、シクロ(AA-Tyr-DTrp-Lys-Thr-Phe)(ここで、AAは、α-N-MeリジンまたはN-Meグルタミン酸である)、パシレオチド、ランレオチド、セグリチド、またはソマトスタチン受容体結合リガンドの任意の他の例から選択され得る。ある実施形態において、標的化部分は、ソマトスタチン受容体2および/または5に結合するソマトスタチン受容体結合部分である。ある実施形態において、Xは、C末端においてリンカー部分Yに結合する。ある実施形態において、Xは、N末端においてリンカー部分Yに結合する。ある実施形態において、標的化部分Xは、少なくとも1つのD-Phe残基を含み、標的化部分XのD-Phe残基のフェニル環は、リンカー含有部分で置換されている。
【0036】
本発明において有用なペプチドであるソマトスタチン類似体の例は、本明細書に記載される。有用なソマトスタチン類似体のさらなる例は、以下に記載される刊行物(これらのそれぞれは、全体が参照により本明細書に援用される)に開示される:
PCT出願 国際公開第03/057214号(2003)
米国特許出願公開第20030191134号明細書(2003)
米国特許出願公開第20030083241号明細書(2003)
米国特許第6,316,414号明細書(2001)
PCT出願 国際公開第02/10215号(2002)
PCT出願 国際公開第99/22735号(1999)
PCT出願 国際公開第98/08100号(1998)
PCT出願 国際公開第98/44921号(1998)
PCT出願 国際公開第98/45285号(1998)
PCT出願 国際公開第98/44922号(1998)
欧州特許出願第P5164 EU号明細書(発明者:G.ケリ(G.Keri));
ファン・ビンスト・G(Van Binst,G.)ら著、ペプチド・リサーチ(Peptide Research)、1992、5:8;
ホルバートA.(Horvath,A.)ら著、抄録、「抗腫瘍活性を有するソマトスタチン類似体の配座(Conformations of Somatostatin Analogs Having Antitumor Activity)」、第22回ヨーロッパペプチドシンポジウム(22nd European Peptide Symposium)、1992年9月13日~19日、スイス国インターラーケン(Interlaken,Switzerland);
PCT出願 国際公開第91/09056号(1991);
欧州特許出願公開第0 363 589 A2号明細書(1990);
米国特許第4,904,642号明細書(1990);
米国特許第4,871,717号明細書(1989);
米国特許第4,853,371号明細書(1989);
米国特許第4,725,577号明細書(1988);
米国特許第4,684,620号明細書(1987);
米国特許第4,650,787号明細書(1987);
米国特許第4,603,120号明細書(1986);
米国特許第4,585,755号明細書(1986);
欧州特許出願公開第0 203 031 A2号明細書(1986);
米国特許第4,522,813号明細書(1985);
米国特許第4,486,415号明細書(1984);
米国特許第4,485,101号明細書(1984);
米国特許第4,435,385号明細書(1984);
米国特許第4,395,403号明細書(1983);
米国特許第4,369,179号明細書(1983);
米国特許第4,360,516号明細書(1982);
米国特許第4,358,439号明細書(1982);
米国特許第4,328,214号明細書(1982);
米国特許第4,316,890号明細書(1982);
米国特許第4,310,518号明細書(1982);
米国特許第4,291,022号明細書(1981);
米国特許第4,238,481号明細書(1980);
米国特許第4,235,886号明細書(1980);
米国特許第4,224,199号明細書(1980);
米国特許第4,211,693号明細書(1980);
米国特許第4,190,648号明細書(1980);
米国特許第4,146,612号明細書(1979);
米国特許第4,133,782号明細書(1979);
米国特許第5,506,339号明細書(1996);
米国特許第4,261,885号明細書(1981);
米国特許第4,728,638号明細書(1988);
米国特許第4,282,143号明細書(1981);
米国特許第4,215,039号明細書(1980);
米国特許第4,209,426号明細書(1980);
米国特許第4,190,575号明細書(1980);
欧州特許第0 389 180号明細書(1990);
欧州特許出願第0 505 680号明細書(1982);
欧州特許出願第0 083 305号明細書(1982);
欧州特許出願第0 030 920号明細書(1980);
PCT出願 国際公開第88/05052号(1988);
PCT出願 国際公開第90/12811号(1990);
PCT出願 国際公開第97/01579号(1997);
PCT出願 国際公開第91/18016号(1991);
英国特許出願第2,095,261号明細書(1981);
仏国特許出願第2,522,655号明細書(1983);および
PCT出願 国際公開第04/093807号(2004)。
米国特許第5,620,955号明細書(1997)
米国特許第5,723,578号明細書(1998)
米国特許第5,843,903号明細書(1998)
米国特許第5,877,277号明細書(1999)
米国特許第6,156,725号明細書(2000)
米国特許第6,307,017号明細書(2001)
PCT出願 国際公開第90/03980号(1990)
PCT出願 国際公開第91/06563号(1991)
PCT出願 国際公開第91/17181号(1991)
PCT出願 国際公開第94/02018号(1994)
PCT出願 国際公開第94/21674号(1994)
PCT出願 国際公開第04/093807号(2004)。
【0037】
ソマトスタチンペプチドおよび類似体を合成するための方法は、十分に実証されており、上に列挙される参考文献において例示されるように、当業者の能力の範囲内である。さらなる合成手順は、以下の実施例において提供される。以下の実施例は、本発明の標的化細胞傷害性化合物を合成するための方法も例示する。治療用または細胞毒性薬の特異的ターゲティングは、生物活性ペプチドに特異的な受容体を発現する腫瘍の選択的な破壊を可能にする。例えば、ソマトスタチン受容体を発現する腫瘍は、肺、乳房、前立腺、結腸、脳、胃腸管、神経内分泌軸、肝臓、または腎臓の新生物を含む(シェア(Schaer)ら著、インターナショナル・ジャーナル・オブ・キャンサー(Int.J.Cancer)、70:530~537、1997;シャーヴ(Chave)ら著、ブリティッシュ・ジャーナル・オブ・キャンサー(Br.J.Cancer)82(1):124~130、2000;エヴァンス(Evans)ら著、ブリティッシュ・ジャーナル・オブ・キャンサー(Br.J.Cancer)75(6):798~803、1997を参照)。
【0038】
ある実施形態において、標的化部分は、治療的特徴を有し、例えば、標的化部分は、細胞傷害性または抗血管新生性である。ある実施形態において、標的化部分は、腫瘍血管系、または血管新生性の血管、例えば、ソマトスタチン受容体を過剰発現するものに対するいくらか増加した親和性を有する(デンツラー(Denzler)およびリュービ(Reubi)著、キャンサー(Cancer)85:188~198、1999;グレック(Gulec)ら著、ジャーナル・オブ・サージカル・リサーチ(J.Surg.Res.)97(2):131~137、2001;ウォルタリング(Woltering)ら著、ジャーナル・オブ・サージカル・リサーチ(J.Surg.Res.)50:245、1991を参照)。
【0039】
ある実施形態において、本発明に使用される標的化部分、例えば、ソマトスタチン類似体は、親水性であり、したがって水溶性である。ある実施形態において、このようなコンジュゲートおよびこのようなコンジュゲートを含有する粒子は、例えば、疎水性類似体を含むコンジュゲートと比較して、この特徴が有用である治療パラダイムに使用される。本明細書に記載される親水性類似体は、血液、脳脊髄液、および他の体液、ならびに尿に可溶性であり得、それにより、腎臓による排泄が促進され得る。この特徴は、例えば、本来なら望ましくない肝毒性を示すであろう組成物の場合に有用であり得る。本発明は、様々なコンジュゲートされた細胞毒性薬、例えば、以下のコンジュゲート6の化学的および構造的性質を調整するために、類似体の親水性の調節を可能にする、ペプチド類似体への組み込みのための特異的親水性要素(例えば、PEGリンカーの組み込み、および当該技術分野における他の例)も開示する。
【0040】
ある実施形態において、標的化部分は、モノボディ、例えば、アドネクチン(ADNECTIN)(商標)(ブリストル・マイヤーズスクイブ(Bristol-Myers Squibb)、ニューヨーク州ニューヨーク(New York,New York))、アフィボディ(Affibody)(登録商標)(アフィボディAB(Affibody AB)、スウェーデン国ストックホルム(Stockholm,Sweden))、アフィリン(Affilin)、ナノフィチン(nanofitin)(国際公開第2012/085861号に記載されるものなどのアフィチン(affitin)、アンチカリン(Anticalin)(商標)、アビマー(アビディティ多量体)、ダルピン(DARPin)(商標)、フィノマー(Fynomer)(商標)、センチリン(Centyrin)(商標)およびクニッツドメインペプチドなどの抗体模倣体である。特定の場合には、このような模倣体は、約3~20kDaのモル質量を有する人工ペプチドまたはタンパク質である。核酸および小分子は、抗体模倣体であってもよい。
【0041】
別の例において、標的化部分は、アプタマーであり得、これは、一般に、ポリペプチドなどの、特定の標的に結合するオリゴヌクレオチド(例えば、DNA、RNA、またはその類似体もしくは誘導体)である。ある実施形態において、標的化部分は、ポリペプチド(例えば、腫瘍マーカに特異的に結合し得る抗体)である。特定の実施形態において、標的化部分は、抗体またはその断片である。特定の実施形態において、標的化部分は、抗体のFc断片である。
【0042】
特定の実施形態において、コンジュゲートの1つまたは複数の標的化部分は、コンジュゲートの構成要素のモル重量パーセンテージの合計が100%であるように、約0.1%~約10%、または約1%~約10%、または約10%~約20%、または約20%~約30%、または約30%~約40%、または約40%~約50%、または約50%~約60%、または約60%~約70%、または約70%~約80%、または約80%~約90%、または約90%~約99%の所定のモル重量パーセンテージで存在する。コンジュゲートの標的化部分の量はまた、例えば、約10:1、9:1、8:1、7:1、6:1、5:1、4:1、3:1、2:1、1:1、1:2、1:3、1:4;1:5、1:6、1:7、1:8、1:9、または1:10のリガンド対活性薬剤の比率で、活性薬剤に対する比率として表され得る。
【0043】
C.リンカー
コンジュゲートは、活性薬剤と標的化部分とを結合する1つ以上のリンカーを含有する。リンカー、Yは、1つ以上の活性薬剤および1つ以上の標的化リガンドに結合されて、コンジュゲートを形成する。リンカーYは、エステル結合、ジスルフィド、アミド、アシルヒドラゾン、エーテル、カルバメート、炭酸塩、および尿素から独立して選択される官能基によって標的化部分Xおよび活性薬剤Zに結合される。あるいは、リンカーは、チオールとマレイミドとの間、アジドとアルキンとの間のコンジュゲーションによって得られるような、切断不可能な基によって標的化リガンドまたは活性薬剤のいずれかに結合され得る。リンカーは、独立して、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、およびヘテロアリールからなる群から選択され、ここで、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、およびヘテロアリール基のそれぞれが、ハロゲン、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、カルボキシル、カルバモイル、エーテル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、アミド、カルバメート、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリルからそれぞれ独立して選択される1つ以上の基で任意選択的に置換され、ここで、カルボキシル、カルバモイル、エーテル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、アミド、カルバメート、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアリール、またはヘテロシクリルのそれぞれが、ハロゲン、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、カルボキシル、カルバモイル、エーテル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、アミド、カルバメート、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリルからそれぞれ独立して選択される1つ以上の基で任意選択的に置換される。
【0044】
ある実施形態において、リンカーは、切断可能である切断可能な官能基を含む。切断可能な官能基は、インビボで加水分解され得るか、または酵素的に、例えばカテプシンBによって加水分解されるように設計され得る。本明細書において使用される際の「切断可能な」リンカーは、物理的にまたは化学的に切断され得る任意のリンカーを指す。物理的切断の例は、光、放射線放射または熱による切断であり得る一方、化学的切断の例は、酸化還元反応による切断、加水分解、pH依存的切断または酵素による切断を含む。
【0045】
ある実施形態において、リンカーのアルキル鎖は、任意選択的に、-O-、-C(=O)-、-NR、-O-C(=O)-NR-、-S-、-S-S-から選択される1つ以上の原子または基によって介在され得る。リンカーは、コハク酸、グルタル酸またはジグリコール酸のジカルボキシレート誘導体から選択され得る。ある実施形態において、リンカーYは、X’-R-Y’-R-Z’であり得、コンジュゲートは、式Ia:
【0046】
【化2】

(式中、Xは、上で定義される標的化部分であり;Zは活性薬剤であり;X’、R、Y’、RおよびZ’は、本明細書に定義されるとおりである)で表される化合物であり得る。
【0047】
X’は、存在しないか、またはカルボニル、アミド、尿素、アミノ、エステル、アリール、アリールカルボニル、アリールオキシ、アリールアミノ、1つ以上の天然もしくは非天然アミノ酸、チオまたはスクシンイミドから独立して選択されるかのいずれかであり;RおよびRは、存在しないか、またはアルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、ポリエチレングリコール(2~30単位)で構成されるかのいずれかであり;Y’は、存在しないか、置換もしくは非置換1,2-ジアミノエタン、ポリエチレングリコール(2~30単位)またはアミドであり;Z’は、存在しないか、またはカルボニル、アミド、尿素、アミノ、エステル、アリール、アリールカルボニル、アリールオキシ、アリールアミノ、チオまたはスクシンイミドから独立して選択されるかのいずれかである。ある実施形態において、リンカーは、1つの活性薬剤分子を2つ以上のリガンドに連結させるか、または1つのリガンドを2つ以上の活性薬剤分子に連結させることを可能にし得る。
【0048】
ある実施形態において、リンカーYは、Aであり得、コンジュゲートは、式Ib:
【0049】
【化3】

(式中、Aは、本明細書に定義され、m=0~20である)で表される化合物であり得る。
【0050】
式Ia中のAは、スペーサー単位であり、存在しないか、または以下の置換基から独立して選択されるかのいずれかである。各置換基について、破線は、X、ZまたはAの別の独立して選択される単位による置換部位を表し、ここで、X、Z、またはAは、置換基:
【0051】
【化4】

(式中、z=0~40であり、Rは、Hまたは任意選択的に置換されるアルキル基であり、R’は、天然もしくは非天然アミノ酸のいずれかにおいて見られる任意の側鎖である)のいずれかの側に結合され得る。
【0052】
ある実施形態において、コンジュゲートは、式Ic:
【0053】
【化5】

(式中、Aは、上に定義され、m=0~40、n=0~40、x=1~5、y=1~5であり、Cは、本明細書に定義される分枝鎖状要素である)で表される化合物であり得る。
【0054】
式Ic中のCは、リジン、2,3-ジアミノプロパン酸、2,4-ジアミノ酪酸、グルタミン酸、アスパラギン酸、およびシステインなどのアミノ酸を含む、アミン、カルボン酸、チオール、またはスクシンイミドから選択される、スペーサー単位、リガンド、または活性薬剤を共有結合するための3~6つの官能基を含有する分枝鎖状単位である。
【0055】
本発明のコンジュゲートの非限定的な例としては、以下の化合物が挙げられる:
【0056】
【化6A】
【0057】
【化6B】

ある実施形態において、活性薬剤Zは、DM1であり、ソマトスタチン受容体結合剤Xは、ソマトスタチン、シクロ(AA-Tyr-DTrp-Lys-Thr-Phe)、バプレオチドまたはTATEから選択される。ある実施形態において、DM1は、リンカーYによりXのC末端に連結される。ある実施形態において、DM1は、リンカーYによりXのN末端に連結される。ある実施形態において、DM1は、リンカーYによりXに連結され、ここで、標的化部分Xは、少なくとも1つのD-Phe残基を含み、D-Phe残基のフェニル環は、リンカーYを含有する基で置換されている。
【0058】
本発明のDM1コンジュゲートと呼ばれる、DM1を含むコンジュゲートの非限定的な例としては、以下の化合物が挙げられる。
1)シクロ(AA-Tyr-DTrp-Lys-Thr-Phe)ベースのDM1コンジュゲート
ある実施形態において、シクロ(AA-Tyr-DTrp-Lys-Thr-Phe)は、ソマトスタチン受容体標的化部分として使用され、コンジュゲートは、
【化7】

の一般構造を有する。
【0059】
ある実施形態において、標的化部分は、アミド結合を形成することが可能なアミノ酸を含有する。ある実施形態において、リンカーは、アミド結合、すなわち、-NH-CO-、または-CO-NH-(窒素上の水素は、置換されていてもよい)を介して標的化部分に結合される。ある実施形態において、リンカーは、アミド結合を介して標的化部分に結合されない。ある実施形態において、リンカーは、アミド結合、すなわち、-NH-CO-、または-CO-NH-(窒素上の水素は、置換されていてもよい)を含む。
【0060】
シクロ(AA-Tyr-DTrp-Lys-Thr-Phe)およびDM1を含むコンジュゲートの非限定的な例が、内容が参照により本明細書に援用される、2015年6月30日に出願されたPCT出願PCT/US15/38569号明細書(国際公開第2016/004048号)の表1に示される。
【0061】
2)C末端DM1コンジュゲート:
ある実施形態において、ソマトスタチン受容体標的化部分は、ペプチドであり、リンカーは、ソマトスタチン受容体標的化部分のC末端に結合する。ある実施形態において、ソマトスタチン受容体標的化部分は、TATEまたはTATE誘導体であり、ここで、リンカーは、TATEまたはTATE誘導体のC末端に結合し、C末端TATEベースのDM1コンジュゲートと呼ばれる。C末端DM1コンジュゲートは、
【0062】
【化8】

の一般構造を有し、式中、Rは、H、アルキル、アリール、カルボニル、アミド、アルコール、またはアミン(1つ以上の基で任意選択的に置換される)から選択され;
ArおよびArは、独立して、ヘテロシクリル、アリール、およびヘテロアリール基(1つ以上の基で任意選択的に置換される)から選択される。
【0063】
ある実施形態において、ソマトスタチン受容体標的化部分のリンカーとC末端とを連結する共有結合は、アミド結合である。
リンカーがソマトスタチン受容体標的化部分のC末端に結合し、ソマトスタチン受容体標的化部分がTATEである、DM1コンジュゲートの非限定的な例が、内容が参照により本明細書に援用される、2015年6月30日に出願されたPCT出願PCT/US15/38569号明細書(国際公開第2016/004048号)の表2に示される。
【0064】
ある実施形態において、コンジュゲートは、コンジュゲート57である。
【0065】
【化9】
【0066】
【表1】

3)N末端DM1コンジュゲート
ある実施形態において、ソマトスタチン受容体標的化部分は、ペプチドであり、リンカーは、ソマトスタチン受容体標的化部分のN末端に結合する。ある実施形態において、標的部分は、オクトレオチド、バプレオチド、およびTATEから選択される。ある実施形態において、リンカーとソマトスタチン受容体標的化部分のN末端とを連結する共有結合は、アミド結合、すなわち、-NH-CO-である。ある実施形態において、リンカーは、アミン結合、すなわち、-NH-CH-(炭素上の水素は、置換されていてもよい)を介してソマトスタチン受容体標的化部分のN末端に結合する。ある実施形態において、リンカーは、尿素結合、すなわち-NH-CO-NH-を介してソマトスタチン受容体標的化部分のN末端に結合する。N末端DM1コンジュゲートは、
【0067】
【化10】

の一般構造を有し、式中、RおよびRは、独立して、H、OH、アルキル、アリール、カルボニル、エステル、アミド、エーテル、アルコール、またはアミン(1つ以上の基で任意選択的に置換される)から選択され;
Arは、ヘテロシクリル、アリール、およびヘテロアリール基(1つ以上の基で任意選択的に置換される)から選択される。ある実施形態において、R1またはR2のうちの少なくとも1つが、DM1を含む。
【0068】
リンカーがソマトスタチン受容体標的化部分のN末端に結合したDM1コンジュゲートの非限定的な例が、内容が参照により本明細書に援用される、2015年6月30日に出願されたPCT出願PCT/US15/38569号明細書(国際公開第2016/004048号)の表3に示される。
【0069】
4)D-Phe置換DM1コンジュゲート
ある実施形態において、ソマトスタチン受容体標的化部分は、オクトレオチドまたはTATEなどの標的化リガンドであり、ここで、標的化リガンドのD-Phe残基のフェニル環は、リンカー含有部分で置換されている。D-Phe置換DM1コンジュゲートは、
【0070】
【化11】

の一般構造を有し、式中、Rは、H、OH、アルキル、アリール、カルボニル、エステル、アミド、エーテル、アルコール、またはアミン(1つ以上の基で任意選択的に置換される)から選択される。ある実施形態において、Rは、DM1を含む。
【0071】
標的化リガンドのD-Phe残基のフェニル環がリンカー含有部分で置換されているDM1コンジュゲートの非限定的な例が、内容が参照により本明細書に援用される、2015年6月30日に出願されたPCT出願PCT/US15/38569号明細書(国際公開第2016/004048号)の表4に示される。
【0072】
II.粒子
1つ以上のコンジュゲートを含有する粒子は、ポリマー粒子、脂質粒子、固体脂質粒子、無機粒子、またはそれらの組合せ(例えば、脂質安定化ポリマー粒子)であり得る。ある実施形態において、粒子は、ポリマー粒子であるか、またはポリマーマトリクスを含有する。粒子は、本明細書に記載されるポリマーまたはその誘導体もしくはコポリマーのいずれかを含有し得る。粒子は、一般に、1つ以上の生体適合性ポリマーを含有する。ポリマーは、生分解性ポリマーであり得る。ポリマーは、疎水性ポリマー、親水性ポリマー、または両親媒性ポリマーであり得る。ある実施形態において、粒子は、さらなる標的化部分が結合された1つ以上のポリマーを含有する。
【0073】
粒子のサイズは、意図される用途に合わせて調整され得る。粒子は、ナノ粒子または微粒子であり得る。粒子は、約10nm~約10μm、約10nm~約1μm、約10nm~約500nm、約20nm~約500nm、または約25nm~約250nmの直径を有し得る。ある実施形態において、粒子は、約25nm~約250nmの直径を有するナノ粒子である。複数の粒子が、様々なサイズを有することが当業者によって理解され、直径は、粒径分布の中位径であることが理解される。
【0074】
様々な実施形態において、粒子は、ナノ粒子であってもよく、すなわち、粒子は、約1マイクロメートル未満の特性寸法を有し、ここで、粒子の特性寸法は、粒子と同じ体積を有する完全な球の直径である。複数の粒子は、平均直径(例えば、複数の粒子の平均直径)によって特徴付けられ得る。ある実施形態において、粒子の直径は、ガウス型分布を有し得る。ある実施形態において、複数の粒子は、約300nm未満、約250nm未満、約200nm未満、約150nm未満、約100nm未満、約50nm未満、約30nm未満、約10nm未満、約3nm未満、または約1nm未満の平均直径を有する。ある実施形態において、粒子は、少なくとも約5nm、少なくとも約10nm、少なくとも約30nm、少なくとも約50nm、少なくとも約100nm、少なくとも約150nm、またはそれ以上の平均直径を有する。特定の実施形態において、複数の粒子は、約10nm、約25nm、約50nm、約100nm、約150nm、約200nm、約250nm、約300nm、約500nmなどの平均直径を有する。ある実施形態において、複数の粒子は、約10nm~約500nm、約50nm~約400nm、約100nm~約300nm、約150nm~約250nm、約175nm~約225nmなどの平均直径を有する。ある実施形態において、複数の粒子は、約10nm~約500nm、約20nm~約400nm、約30nm~約300nm、約40nm~約200nm、約50nm~約175nm、約60nm~約150nm、約70nm~約130nmなどの平均直径を有する。例えば、平均直径は、約70nm~130nmであり得る。ある実施形態において、複数の粒子は、約20nm~約220nm、約30nm~約200nm、約40nm~約180nm、約50nm~約170nm、約60nm~約150nm、または約70nm~約130nmの平均直径を有する。一実施形態において、粒子は、40~120nmのサイズを有し、低いないしゼロイオン強度(1~10mM)でゼータ電位がほぼ0mVであり、+5~-5mVのゼータ電位値、およびゼロ/中性または小さい-ve表面電荷を有する。
【0075】
A.コンジュゲート
粒子は、上述される1つ以上のコンジュゲートを含有する。コンジュゲートは、粒子の内部、粒子の外部、または両方に存在し得る。粒子は、上述される1つ以上のコンジュゲートおよび対イオンによって形成される疎水性イオン対形成複合体または疎水性イオン対を含み得る。
【0076】
疎水性イオン対形成(HIP:hydrophobic ion-pairing)は、クーロン引力によって一緒に保持される一対の逆の電荷を帯びたイオンの間の相互作用である。本明細書において使用される際のHIPは、本発明のコンジュゲートとその対イオンとの間の相互作用を指し、ここで、対イオンは、HまたはHOイオンではない。本明細書において使用される際の疎水性オン対形成複合体または疎水性イオン対は、本発明のコンジュゲートおよびその対イオンによって形成される複合体を指す。ある実施形態において、対イオンは疎水性である。ある実施形態において、対イオンは、疎水性酸または疎水性酸の塩によって提供される。ある実施形態において、対イオンは、胆汁酸もしくは塩、脂肪酸もしくは塩、脂質、またはアミノ酸によって提供される。ある実施形態において、対イオンは、負の電荷を帯びている(アニオン性)。負の電荷を帯びた対イオンの非限定的な例としては、対イオンスルホコハク酸ナトリウム(AOT:sodium sulfosuccinate)、オレイン酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS:sodium dodecyl sulfate)、ヒト血清アルブミン(HSA:human serum albumin)、硫酸デキストラン、デオキシコール酸ナトリウム、コール酸ナトリウム、アニオン性脂質、アミノ酸、またはそれらの任意の組合せが挙げられる。いかなる理論にも制約されることを望むものではないが、ある実施形態において、HIPは、本発明のコンジュゲートの疎水性および/または親油性を増加させ得る。ある実施形態において、本発明のコンジュゲートの疎水性および/または親油性を増加させることは、粒子製剤にとって有益であり得、有機溶媒への本発明のコンジュゲートのより高い溶解度を提供し得る。いかなる理論にも制約されることを望むものではないが、HIP対を含む粒子製剤は、薬剤負荷および/または放出プロファイルなどの向上した製剤特性を有するものと考えられる。いかなる理論にも制約されることを望むものではないが、ある実施形態において、水溶液へのコンジュゲートの溶解度の低下により、粒子からの本発明のコンジュゲートの持続放出が起こり得る。さらに、いかなる理論にも制約されることを望むものではないが、コンジュゲートを大型の疎水性対イオンと複合体化すると、ポリマーマトリクス内のコンジュゲートの拡散を遅らせ得る。ある実施形態において、HIPは、本発明のコンジュゲートへの対イオンの共有結合的なコンジュゲーションなしで起こる。
【0077】
いかなる理論にも制約されることを望むものではないが、HIPの強度は、本発明の粒子の薬剤負荷および放出速度に影響を与え得る。ある実施形態において、HIPの強度は、本発明のコンジュゲートのpKaと、対イオンを提供する薬剤のpKaとの差の大きさを増加させることによって増加され得る。同様に、いかなる理論にも制約されることを望むものではないが、イオン対形成の条件は、本発明の粒子の薬剤負荷および放出速度に影響を与え得る。
【0078】
ある実施形態において、任意の好適な疎水性酸またはその組合せが、本発明のコンジュゲートとHIP対を形成し得る。ある実施形態において、疎水性酸は、カルボン酸(限定はされないが、モノカルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸など)、スルフィン酸、スルフェン酸、またはスルホン酸であり得る。ある実施形態において、好適な疎水性酸の塩またはその組合せが、本発明のコンジュゲートとHIP対を形成するのに使用され得る。疎水性酸、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、芳香族酸、胆汁酸、高分子電解質の例、それらの水中での解離定数(pKa)およびlogP値が、国際公開第2014/043,625号(この内容は、全体が参照により本明細書に援用される)に開示された。疎水性酸の強度、疎水性酸のpKaと本発明のコンジュゲートのpKaとの差、疎水性酸のlogP、疎水性酸の相転移温度、本発明のコンジュゲートに対する疎水性酸のモル比、および疎水性酸の濃度も、国際公開第2014/043,625号(この内容は、全体が参照により本明細書に援用される)に開示された。
【0079】
ある実施形態において、HIP複合体を含む、および/またはコンジュゲートとHIP複合体を形成する対イオンを提供する方法によって調製される本発明の粒子は、HIP複合体を含まないか、またはコンジュゲートとHIP複合体を形成する対イオンを提供しない方法によって調製される粒子より高い薬剤負荷を有し得る。ある実施形態において、薬剤負荷は、50%、100%、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、または10倍増加し得る。
【0080】
ある実施形態において、本発明の粒子は、37℃のリン酸緩衝溶液に入れたとき、少なくとも約1分間、少なくとも約15分間、少なくとも約1時間にわたってコンジュゲートを保持し得る。
【0081】
ある実施形態において、粒子におけるコンジュゲートの重量パーセンテージは、粒子の構成要素の重量パーセンテージの合計が100%であるように、少なくとも約0.05%、0.1%、0.5%、1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、または50%である。ある実施形態において、粒子におけるコンジュゲートの重量パーセンテージは、粒子の構成要素の重量パーセンテージの合計が100%であるように、約0.5%~約10%、または約10%~約20%、または約20%~約30%、または約30%~約40%、または約40%~約50%、または約50%~約60%、または約60%~約70%、または約70%~約80%、または約80%~約90%、または約90%~約99%である。
【0082】
ある場合には、コンジュゲートは、約50,000Da未満、約40,000Da未満、約30,000Da未満、約20,000Da未満、約15,000Da未満、約10,000Da未満、約8,000Da未満、約5,000Da未満、または約3,000Da未満の分子量を有し得る。場合によっては、コンジュゲートは、約1,000Da~約50,000Da、約1,000Da~約40,000Da、ある実施形態において、約1,000Da~約30,000Da、ある実施形態において、約1,000Da~約50,000Da、約1,000Da~約20,000Da、ある実施形態において、約1,000Da~約15,000Da、ある実施形態において、約1,000Da~約10,000Da、ある実施形態において、約1,000Da~約8,000Da、ある実施形態において、約1,000Da~約5,000Da、ある実施形態において、約1,000Da~約3,000Daの分子量を有し得る。コンジュゲートの分子量は、コンジュゲートの式中の各原子の原子量に、各原子の数を乗算した合計として計算され得る。分子量はまた、質量分析法、NMR、クロマトグラフィー、光散乱、粘度、および/または当該技術分野において公知の任意の他の方法によって測定され得る。分子量の単位が、g/mol、ダルトン(Da)、または原子質量単位(amu)であり得ることが当該技術分野において公知であり、ここで、1g/mol=1Da=1amuである。
B.ポリマー
粒子は、1つ以上のポリマーを含有し得る。ポリマーは、以下のポリエステルのうちのもう1つを含有し得る:本明細書において「PGA」と呼ばれる、グリコール酸単位を含むホモポリマー、および本明細書においてまとめて「PLA」と呼ばれる、ポリ-L-乳酸、ポリ-D-乳酸、ポリ-D,L-乳酸、ポリ-L-ラクチド、ポリ-D-ラクチド、およびポリ-D,L-ラクチドなどの乳酸単位を含むホモポリマー、および本明細書においてまとめて「PCL」と呼ばれる、ポリ(ε-カプロラクトン)などのカプロラクトン単位を含むホモポリマー;および本明細書においてまとめて「PLGA」と呼ばれる、乳酸:グリコール酸の比率によって特徴付けられる様々な形態のポリ(乳酸-コ-グリコール酸)およびポリ(ラクチド-コ-グリコリド)などの、乳酸およびグリコール酸単位を含むコポリマー;およびポリアクリレート、およびそれらの誘導体。例示的なポリマーは、本明細書においてまとめて「PEG化ポリマー」と呼ばれる、様々な形態のPLGA-PEGまたはPLA-PEGコポリマーなどの、ポリエチレングリコール(PEG)と上記のポリエステルとのコポリマーも含む。特定の実施形態において、PEG領域は、ポリマーと共有結合されて、切断可能なリンカーによって「PEG化ポリマー」を生じ得る。
【0083】
粒子は、1つ以上の親水性ポリマーを含有し得る。親水性ポリマーとしては、デンプンおよび多糖などのセルロース系ポリマー;親水性ポリペプチド;ポリ-L-グルタミン酸(PGS)、γ-ポリグルタミン酸、ポリ-L-アスパラギン酸、ポリ-L-セリン、またはポリ-L-リジンなどのポリ(アミノ酸);ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、およびポリ(エチレンオキシド)(PEO)などの、ポリアルキレングリコールおよびポリアルキレンオキシド;ポリ(オキシエチレン化ポリオール);ポリ(オレフィンアルコール);ポリビニルピロリドン);ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリルアミド);ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリレート);ポリ(サッカリド);ポリ(ヒドロキシ酸);ポリ(ビニルアルコール);ポリオキサゾリン;ならびにそれらのコポリマーが挙げられる。
【0084】
粒子は、1つ以上の疎水性ポリマーを含有し得る。好適な疎水性ポリマーの例としては、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、およびポリ(乳酸-コ-グリコール酸)などのポリヒドロキシ酸;ポリ3-ヒドロキシブチレートまたはポリ4-ヒドロキシブチレートなどのポリヒドロキシアルカノエート;ポリカプロラクトン;ポリ(オルトエステル);ポリ無水物;ポリ(ホスファゼン);ポリ(ラクチド-コ-カプロラクトン);チロシンポリカーボネートなどのポリカーボネート;ポリアミド(合成および天然ポリアミドを含む)、ポリペプチド、およびポリ(アミノ酸);ポリエステルアミド;ポリエステル;ポリ(ジオキサノン);ポリ(アルキレンアルキレート);疎水性ポリエーテル;ポリウレタン;ポリエーテルエステル;ポリアセタール;ポリシアノアクリレート;ポリアクリレート;ポリメチルメタクリレート;ポリシロキサン;ポリ(オキシエチレン)/ポリ(オキシプロピレン)コポリマー;ポリケタール;ポリホスフェート;ポリヒドロキシバレレート;ポリアルキレンオキサレート;ポリアルキレンスクシネート;ポリ(マレイン酸)、ならびにそれらのコポリマーが挙げられる。
【0085】
特定の実施形態において、疎水性ポリマーは、脂肪族ポリエステルである。ある実施形態において、疎水性ポリマーは、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、またはポリ(乳酸-コ-グリコール酸)である。
【0086】
粒子は、1つ以上の生分解性ポリマーを含有し得る。生分解性ポリマーは、体内で化学的にまたは酵素的に水溶性材料に変換される、水に不溶性または難溶性のポリマーを含み得る。生分解性ポリマーは、架橋ポリマーを水に不溶性または難溶性にするように、加水分解性架橋連結基によって架橋された可溶性ポリマーを含み得る。
【0087】
粒子中の生分解性ポリマーとしては、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアルキレン、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンオキシド、ポリアルキレンテレフタレート、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルエステル、ポリハロゲン化ビニル、ポリビニルピロリドン、ポリグリコリド、ポリシロキサン、ポリウレタンおよびそれらのコポリマー、アルキルセルロース、例えばメチルセルロースおよびエチルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、例えばヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシ-プロピルメチルセルロース、およびヒドロキシブチルメチルセルロース、セルロースエーテル、セルロースエステル、ニトロセルロース、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、カルボキシルエチルセルロース、三酢酸セルロース、セルロース硫酸ナトリウム塩、アクリル酸およびメタクリル酸エステルのポリマー、例えばポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリ(ブチルメタクリレート)、ポリ(イソブチルメタクリレート)、ポリ(ヘキシルメタクリレート)、ポリ(イソデシルメタクリレート)、ポリ(ラウリルメタクリレート)、ポリ(フェニルメタクリレート)、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(イソプロピルアクリレート)、ポリ(イソブチルアクリレート)、ポリ(オクタデシルアクリレート)、ポリエチレン、ポリプロピレンポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリスチレンおよびポリビニルピロリドン、それらの誘導体、それらの直鎖状および分枝鎖状コポリマーおよびブロックコポリマー、ならびにそれらのブレンドが挙げられる。例示的な生分解性ポリマーとしては、ポリエステル、ポリ(オルトエステル)、ポリ(エチレンイミン)、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(ヒドロキシアルカノエート)、ポリ(ヒドロキシバレレート)、ポリ無水物、ポリ(アクリル酸)、ポリグリコリド、ポリ(ウレタン)、ポリカーボネート、ポリリン酸エステル、ポリホスファゼン、それらの誘導体、それらの直鎖状および分枝鎖状コポリマーおよびブロックコポリマー、ならびにそれらのブレンドが挙げられる。ある実施形態において、粒子は、生分解性ポリエステルまたはポリ無水物、例えば、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、およびポリ(乳酸-コ-グリコール酸)を含有する。
【0088】
粒子は、1つ以上の両親媒性ポリマーを含有し得る。両親媒性ポリマーは、疎水性ポリマーブロックおよび親水性ポリマーブロックを含有するポリマーであり得る。疎水性ポリマーブロックは、上記の疎水性ポリマーの1つ以上またはその誘導体もしくはコポリマーを含有し得る。親水性ポリマーブロックは、上記の親水性ポリマーの1つ以上またはその誘導体もしくはコポリマーを含有し得る。ある実施形態において、両親媒性ポリマーは、疎水性ポリマーから形成される疎水性末端および親水性ポリマーから形成される親水性末端を含有するジブロックポリマーである。ある実施形態において、部分が、疎水性末端、親水性末端、または両方に結合され得る。粒子は、2つ以上の両親媒性ポリマーを含有し得る。
【0089】
C.脂質
粒子は、1つ以上の脂質または両親媒性化合物を含有し得る。例えば、粒子は、リポソーム、脂質ミセル、固体脂質粒子、または脂質-安定化ポリマー粒子であり得る。脂質粒子は、1つの脂質または異なる脂質の混合物から作製され得る。脂質粒子は、生理的pHで中性、アニオン性、またはカチオン性であり得る1つ以上の脂質から形成される。脂質粒子は、ある実施形態において、1つ以上の生体適合性脂質を組み込む。脂質粒子は、2つ以上の脂質の組合せを用いて形成され得る。例えば、荷電脂質は、生理的pHで非イオン性または非荷電の脂質と組み合わされ得る。
【0090】
粒子は、脂質ミセルであり得る。薬剤送達用の脂質ミセルは、当該技術分野において公知である。脂質ミセルは、例えば、脂質界面活性剤との油中水型エマルションとして形成され得る。エマルションは、2つの不混和相のブレンドであり、分散された液滴を安定させるために界面活性剤が加えられる。ある実施形態において、脂質ミセルは、マイクロエマルションである。マイクロエマルションは、1μm未満、約10nm~約500nm、または約10nm~約250nmの液滴径の透明な熱力学的に安定した系を生成する、少なくとも水、油および脂質界面活性剤から構成される熱力学的に安定した系である。脂質ミセルは、一般に、疎水性治療用薬剤、疎水性予防用薬剤、または疎水性診断用薬剤を含む疎水性活性薬剤を封入するのに有用である。
【0091】
粒子は、リポソームであり得る。リポソームは、球形の二層で配置された脂質に囲まれた水性媒体から構成される小さい小胞である。リポソームは、小さい単層小胞、大きい単層小胞、または多重膜小胞として分類され得る。多重膜リポソームは、複数の同心円状の脂質二重層を含有する。リポソームは、親水性薬剤を、水性の内部または二重層間に捕捉することによって、または疎水性薬剤を、二重層内に捕捉することによって、薬剤を封入するのに使用され得る。
【0092】
脂質ミセルおよびリポソームは、典型的に、水性の中心部を有する。水性の中心部は、水または水とアルコールとの混合物を含有し得る。好適なアルコールとしては、限定はされないが、メタノール、エタノール、プロパノール、(イソプロパノールなど)、ブタノール(n-ブタノール、イソブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノールなど、ペンタノール(アミルアルコール、イソブチルカルビノールなど)、ヘキサノール(1-ヘキサノール、2-ヘキサノール、3-ヘキサノールなど)、ヘプタノール(1-ヘプタノール、2-ヘプタノール、3-ヘプタノールおよび4-ヘプタノールなど)またはオクタノール(1-オクタノールなど)またはそれらの組合せが挙げられる。
【0093】
粒子は、固体脂質粒子であり得る。固体脂質粒子は、コロイドミセルおよびリポソームの代替となる。固体脂質粒子は、典型的に、サブミクロンサイズであり、すなわち、約10nm~約1μm、10nm~約500nm、または10nm~約250nmである。固体脂質粒子は、室温で固体である脂質で形成される。それらは、液体油を固体脂質に置き換えることによって、水中油型エマルションから得られる。
【0094】
好適な中性およびアニオン性脂質としては、限定はされないが、ステロールおよび脂質、例えばコレステロール、リン脂質、リゾ脂質、リゾリン脂質、スフィンゴ脂質またはPEG化脂質が挙げられる。中性およびアニオン性脂質としては、限定はされないが、ホスファチジルコリン(PC:phosphatidylcholine)(卵PC、ダイズPCなど)(1,2-ジアシル-グリセロ-3-ホスホコリンを含む);ホスファチジルセリン(PS:phosphatidylserine)、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール(PI:phosphatidylinositol);糖脂質;スフィンゴリン脂質、例えばスフィンゴミエリンおよびスフィンゴ糖脂質(1-セラミジルグルコシドとしても知られている)、例えばセラミドガラクトピラノシド、ガングリオシドおよびセレブロシド;脂肪酸、カルボン酸基を含有するステロール、例えば、コレステロール;1,2-ジアシル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(限定はされないが、1,2-ジオレイルホスホエタノールアミン(DOPE:1,2-dioleylphosphoethanolamine)、1,2-ジヘキサデシルホスホエタノールアミン(DHPE:1,2-dihexadecylphosphoethanolamine)、1,2-ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC:1,2-distearoylphosphatidylcholine)、1,2-ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC:1,2-dipalmitoyl phosphatidylcholine)、および1,2-ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC:dimyristoylphosphatidylcholine)を含む)が挙げられる。脂質は、脂質の様々な天然(例えば、組織由来L-α-ホスファチジル:卵黄、心臓、脳、肝臓、ダイズ)および/または合成(例えば、飽和および不飽和1,2-ジアシル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1-アシル-2-アシル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1,2-ジヘプタノイル-SN-グリセロ-3-ホスホコリン)誘導体も含み得る。
【0095】
好適なカチオン性脂質としては、限定はされないが、TAP脂質とも呼ばれるN-[1-(2,3-ジオレオイルオキシ)プロピル]-N,N,N-トリメチルアンモニウム塩、例えばメチル硫酸塩が挙げられる。好適なTAP脂質としては、限定はされないが、DOTAP(ジオレオイル-)、DMTAP(ジミリストイル-)、DPTAP(ジパルミトイル-)、およびDSTAP(ジステアロイル-)が挙げられる。リポソームにおける好適なカチオン性脂質としては、限定はされないが、ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド(DDAB:dimethyldioctadecyl ammonium bromide)、1,2-ジアシルオキシ-3-トリメチルアンモニウムプロパン、N-[1-(2,3-ジオレオイル(dioloyl)オキシ)プロピル]-Ν,Ν-ジメチルアミン(DODAP:N-[1-(2,3-dioloyloxy)propyl]-Ν,Ν-dimethyl amine)、1,2-ジアシルオキシ-3-ジメチルアンモニウムプロパン、N-[1-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル]-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA:N-[1-(2,3-dioleyloxy)propyl]-N,N,N-trimethylammonium chloride)、1,2-ジアルキルオキシ-3-ジメチルアンモニウムプロパン、ジオクタデシルアミドグリシルスペルミン(DOGS:dioctadecylamidoglycylspermine)、3-[N-(N’,N’-ジメチルアミノ-エタン)カルバモイル]コレステロール(DC-Chol:3-[N-(N’,N’-dimethylamino-ethane)carbamoyl]cholesterol);2,3-ジオレオイルオキシ-N-(2-(スペルミンカルボキサミド)-エチル)-N,N-ジメチル-1-プロパンアミニウムトリフルオロアセテート(DOSPA:2,3-dioleoyloxy-N-(2-(sperminecarboxamido)-ethyl)-N,N-dimethyl-1-propanaminium trifluoro-acetate)、β-アラニルコレステロール、臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB:cetyl trimethyl ammonium bromide)、ジC14-アミジン、N-ferf-ブチル-N’-テトラデシル-3-テトラデシルアミノ-プロピオンアミジン、N-(α-トリメチルアンモニオアセチル)ジドデシル-D-グルタメートクロリド(TMAG:N-(alpha-trimethylammonioacetyl)didodecyl-D-glutamate chloride)、ジテトラデカノイル-N-(トリメチルアンモニオ-アセチル)ジエタノールアミンクロリド、1,3-ジオレオイルオキシ-2-(6-カルボキシ-スペルミル)-プロピルアミド(DOSPER:1,3-dioleoyloxy-2-(6-carboxy-spermyl)-propylamide)、およびN,N,N’,N’-テトラメチル-、N’-ビス(2-ヒドロキシルエチル)-2,3-ジオレオイルオキシ-1,4-ブタンジアンモニウムヨージドが挙げられる。一実施形態において、カチオン性脂質は、1-[2-(アシルオキシ)エチル]2-アルキル(アルケニル)-3-(2-ヒドロキシエチル)-イミダゾリニウムクロリド誘導体、例えば、1-[2-(9(Z)-オクタデセノイルオキシ)エチル]-2-(8(Z)-ヘプタデセニル-3-(2-ヒドロキシエチル)イミダゾリニウムクロリド(DOTIM:1-[2-(9(Z)-octadecenoyloxy)ethyl]-2-(8(Z)-heptadecenyl-3-(2-hydroxyethyl)imidazolinium chloride)、および1-[2-(ヘキサデカノイルオキシ)エチル]-2-ペンタデシル-3-(2-ヒドロキシエチル)イミダゾリニウムクロリド(DPTIM:1-[2-(hexadecanoyloxy)ethyl]-2-pentadecyl-3-(2-hydroxyethyl)imidazolinium chloride)であり得る。一実施形態において、カチオン性脂質は、第四級アミンにヒドロキシアルキル部分を含有する2,3-ジアルキルオキシプロピル第四級アンモニウム化合物誘導体、例えば、1,2-ジオレオイル-3-ジメチル-ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DORI:1,2-dioleoyl-3-dimethyl-hydroxyethyl ammonium bromide)、1,2-ジオレイルオキシプロピル-3-ジメチル-ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DORIE:1,2-dioleyloxypropyl-3-dimethyl-hydroxyethyl ammonium bromide)、1,2-ジオレイルオキシプロピル-3-ジメチル-ヒドロキシプロピルアンモニウムブロミド(DORIE-HP:1,2-dioleyloxypropyl-3-dimetyl-hydroxypropyl ammonium bromide)、1,2-ジオレイル-オキシ-プロピル-3-ジメチル-ヒドロキシブチルアンモニウムブロミド(DORIE-HB:1,2-dioleyl-oxy-propyl-3-dimethyl-hydroxybutyl ammonium bromide)、1,2-ジオレイルオキシプロピル-3-ジメチル-ヒドロキシペンチルアンモニウムブロミド(DORIE-Hpe:1,2-dioleyloxypropyl-3-dimethyl-hydroxypentyl ammonium bromide)、1,2-ジミリスチルオキシプロピル-3-ジメチル-ヒドロキシルエチルアンモニウムブロミド(DMRIE:1,2-dimyristyloxypropyl-3-dimethyl-hydroxylethyl ammonium bromide)、1,2-ジパルミチルオキシプロピル-3-ジメチル-ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DPRIE:1,2-dipalmityloxypropyl-3-dimethyl-hydroxyethyl ammonium bromide)、および1,2-ジステリルオキシプロピル-3-ジメチル-ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DSRIE:1,2-disteryloxypropyl-3-dimethyl-hydroxyethyl ammonium bromide)であり得る。
【0096】
好適な固体脂質としては、限定はされないが、高級飽和アルコール、高級脂肪酸、スフィンゴ脂質、合成エステル、ならびに高級飽和脂肪酸のモノ-、ジ-、およびトリグリセリドが挙げられる。固体脂質としては、セトステアリルアルコールなどの、10~40個、例えば、12~30個の炭素原子を有する脂肪族アルコールが挙げられる。固体脂質としては、ステアリン酸、パルミチン酸、デカン酸、およびベヘン酸などの、10~40個、例えば、12~30個の炭素原子の高級脂肪酸が挙げられる。固体脂質としては、モノステアリン酸グリセリル、ベヘン酸グリセロール、パルミトステアリン酸グリセロール、グリセロールトリラウレート、トリカプリン、トリラウリン、トリミリスチン、トリパルミチン、トリステアリン、および硬化ヒマシ油などの、10~40個、例えば、12~30個の炭素原子を有する高級飽和脂肪酸のモノグリセリド、ジグリセリド、およびトリグリセリドを含むグリセリドが挙げられる。好適な固体脂質としては、パルミチン酸セチル、蜜ろう、またはシクロデキストリンが挙げられる。
【0097】
両親媒性化合物としては、限定はされないが、0.01~60(脂質重量/ポリマー重量)、例えば、0.1~30(脂質重量/ポリマー重量)の比率で組み込まれる、リン脂質、例えば1,2ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DSPE:1,2 distearoyl-sn-glycero-3-phosphoethanolamine)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC:dipalmitoylphosphatidylcholine)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC:distearoylphosphatidylcholine)、ジアラキドイルホスファチジルコリン(DAPC:diarachidoylphosphatidylcholine)、ジベヘノイルホスファチジルコリン(DBPC:dibehenoylphosphatidylcholine)、ジトリコサノイルホスファチジルコリン(DTPC:ditricosanoylphosphatidylcholine)、およびジリグノセロイルファチジルコリン(DLPC:dilignoceroylphatidylcholine)が挙げられる。使用され得るリン脂質としては、限定はされないが、ホスファチジン酸、飽和および不飽和脂質の両方を含むホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、リゾホスファチジル誘導体、カルジオリピン、およびβ-アシル-y-アルキルリン脂質が挙げられる。リン脂質の例としては、限定はされないが、ホスファチジルコリン、例えばジオレイルホスファチジルコリン、ジミリストイルホスファチジルコリン、ジペンタデカノイルホスファチジルコリン、ジラウロイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジアラキドイルホスファチジルコリン(DAPC)、ジベヘノイルホスファチジルコリン(DBPC)、ジトリコサノイルホスファチジルコリン(DTPC)、ジリグノセロイルファチジルコリン(DLPC);およびホスファチジルエタノールアミン、例えばジオレオイルホスファチジルエタノールアミンまたは1-ヘキサデシル-2-パルミトイルグリセロホスホエタノールアミンが挙げられる。不斉アシル鎖(例えば、6個の炭素の1つのアシル鎖および12個の炭素の別のアシル鎖)を有する合成リン脂質も使用され得る。
【0098】
D.さらなる活性薬剤
粒子は、コンジュゲート中の活性薬剤に加えて、1つ以上のさらなる活性薬剤を含有し得る。さらなる活性薬剤は、上に列挙される治療用、予防用、診断用、または栄養用薬剤であり得る。さらなる活性薬剤は、例えば、粒子の重量を基準にして、約0.5%~約90%、約0.5%~約50%、約0.5%~約25%、約0.5%~約20%、約0.5%~約10%、または約5%~約10%(w/w)の任意の量で存在し得る。一実施形態において、薬剤は、約0.5%~約10%の負荷w/wで組み込まれる。
【0099】
E.さらなる標的化部分
粒子は、コンジュゲートの標的化部分に加えて、粒子を特異的な器官、組織、細胞型、または細胞内コンパートメントに標的化させる1つ以上の標的化部分を含有し得る。さらなる標的化部分は、粒子の表面、粒子の内部、または両方に存在し得る。さらなる標的化部分は、粒子の表面に固定化され得、例えば、粒子中のポリマーまたは脂質に共有結合され得る。ある実施形態において、さらなる標的化部分は、標的化部分が粒子の表面に配向されるように、両親媒性ポリマーまたは脂質に共有結合される。
【0100】
III.製剤
ある実施形態において、組成物は、ヒト、ヒト患者または対象に投与される。本開示の趣旨では、「活性成分」という語句は、一般に、本明細書に記載されるような、送達されるコンジュゲートを含むコンジュゲートまたは粒子を指す。
【0101】
本明細書に提供される医薬組成物の説明は、主に、ヒトへの投与に好適な医薬組成物に向けられているが、このような組成物は、一般に、任意の他の動物、例えば、非ヒト動物、例えば非ヒト哺乳動物への投与に好適であることが、当業者によって理解されるであろう。組成物を様々な動物への投与に好適にするための、ヒトへの投与に好適な医薬組成物の改良は十分に理解されており、通常の技能を有する獣医薬理学者は、あったとしても単に通常の実験を用いて、このような改良を設計および/または実施することができる。医薬組成物の投与が想定される対象としては、限定はされないが、ヒトおよび/または他の霊長類;ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ネコ、イヌ、マウス、および/またはラットなどの商業的に関連する哺乳動物を含む哺乳動物;および/または家禽、ニワトリ、アヒル、ガチョウ、および/またはシチメンチョウなどの商業的に関連する鳥類を含む鳥類が挙げられる。
【0102】
本明細書に記載される医薬組成物の製剤は、薬理学の技術分野において公知のまたは今後開発される任意の方法によって調製され得る。一般に、このような調製方法は、活性成分を、賦形剤および/または1つ以上の他の補助的成分と合わせて、次に、必要な場合および/または望ましい場合、生成物を所望の単回または複数回投与単位に分割し、成形し、および/または包装する工程を含む。
【0103】
本発明に係る医薬組成物は、バルクで、単一単位用量として、および/または複数の単一単位用量として、調製、包装、および/または販売され得る。本明細書において使用される際、「単位用量」は、所定の量の活性成分を含む医薬組成物の個別の量である。活性成分の量は、一般に、対象に投与され得る活性成分の投与量および/またはこのような投与量の好都合な割合、例えばこのような投与量の2分の1または3分の1に等しい。
【0104】
本発明に係る医薬組成物中の活性成分、薬学的に許容される賦形剤、および/または任意のさらなる成分の相対量は、治療される対象のアイデンティティ(identity)、大きさ、および/または状態に応じて、さらには組成物を投与する経路に応じて変化する。例として、組成物は、0.1%~100%、例えば、0.5~50%、1~30%、5~80%、少なくとも80%(w/w)の活性成分を含み得る。
【0105】
本発明のコンジュゲートまたは粒子は、(1)安定性を向上させる;(2)(例えば、モノマレイミドのデポー製剤からの)持続または遅延放出を可能にする;(3)生体内分布を変化させる(例えば、モノマレイミド化合物を、特異的な組織または細胞型に標的化する);(4)インビボでのモノマレイミド化合物の放出プロファイルを変化させるために、1つ以上の賦形剤を用いて製剤化され得る。賦形剤の非限定的な例としては、あらゆる溶媒、分散媒、希釈剤、または他の液体ビヒクル、分散または懸濁助剤、表面活性剤、等張剤、増粘または乳化剤、および保存剤が挙げられる。本発明の賦形剤は、限定はされないが、リピドイド、リポソーム、脂質ナノ粒子、ポリマー、リポプレックス、コアシェルナノ粒子、ペプチド、タンパク質、ヒアルロニダーゼ、ナノ粒子模倣体およびそれらの組合せも含み得る。したがって、本発明の製剤は、それぞれが一緒になってモノマレイミド化合物の安定性を向上させる量で、1つ以上の賦形剤を含み得る。
【0106】
ある実施形態において、医薬組成物は、約4.0~約5.0のpHを有する本発明のコンジュゲートを含む。ある実施形態において、医薬組成物は、約4.0~約4.8のpHを有する酢酸緩衝液(酢酸ナトリウムおよび酢酸)を含む。ある実施形態において、医薬組成物は、マンニトールおよびポリオキシル15ヒドロキシステアレートをさらに含む。
【0107】
一実施形態において、注射用溶液のための組成物が提供される。この溶液は、コンジュゲート57、マンニトール、ポリオキシル15ヒドロキシステアレート、および水性酢酸緩衝液を含む。各投与量単位は、栓をした10mLの透明なガラスバイアル中に2.5mg/mLのコンジュゲート57(遊離塩基)、50mg/mLのマンニトール、20mg/mLのポリオキシル15ヒドロキシステアレートおよびpH4.0~4.8の酢酸緩衝液を含有する。透明なガラスバイアルに、20mmのフルロテック(FluroTec)(登録商標)灰色の凍結乾燥ストッパ(gray lyo stopper)で栓をして、20mmの濃い青色のフリップオフシール(flip-off seal)で密閉する。投与の前に、この溶液を、5%のマンニトール注射用水(Injection)USPで希釈する。得られた希釈された組成物は、静脈内に注入することができる。
【0108】
賦形剤
医薬製剤は、薬学的に許容される賦形剤をさらに含んでもよく、賦形剤は、本明細書において使用される際、所望の特定の剤形に適するように、あらゆる溶媒、分散媒、希釈剤、または他の液体ビヒクル、分散または懸濁助剤、表面活性剤、等張剤、増粘または乳化剤、保存剤、固体結合剤、滑沢剤などを含む。「レミントンの薬学の科学と実践(Remington’s The Science and Practice of Pharmacy)」、第21版、A.R.ジェナーロ(A.R.Gennaro)著(リッピンコット・ウィリアムズ・アンド・ウィルキンス(Lippincott,Williams & Wilkins)、メリーランド州ボルチモア(Baltimore,MD)、2006;全体が参照により本明細書に援用される)には、医薬組成物を製剤化するのに使用される様々な賦形剤およびその調製のための公知の技術が開示されている。任意の望ましくない生物学的影響を生じるか、または医薬組成物の任意の他の成分と有害な形で相互作用することなどによって、任意の従来の賦形剤媒体が、物質またはその誘導体と不適合である場合を除き、その使用は、本発明の範囲内であるものと考えられる。
【0109】
ある実施形態において、薬学的に許容される賦形剤は、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%純粋である。ある実施形態において、賦形剤は、ヒトへの使用および動物への使用が承認されている。ある実施形態において、賦形剤は、米国食品医薬品局(United States Food and Drug Administration)によって承認されている。ある実施形態において、賦形剤は医薬品グレードである。ある実施形態において、賦形剤は、米国薬局方(USP:United States Pharmacopoeia)、欧州薬局方(EP:European Pharmacopoeia)、英国薬局方(British Pharmacopoeia)、および/または国際薬局方(International Pharmacopoeia)の基準を満たす。
【0110】
医薬組成物の製造に使用される薬学的に許容される賦形剤としては、限定はされないが、不活性希釈剤、分散剤および/または造粒剤、表面活性剤および/または乳化剤、崩壊剤、結合剤、保存剤、緩衝剤、滑沢剤、および/または油が挙げられる。このような賦形剤は、任意選択的に、医薬組成物に含まれ得る。
【0111】
例示的な希釈剤としては、限定はされないが、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、リン酸カルシウム、リン酸二カルシウム、硫酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸ナトリウムラクトース、スクロース、セルロース、微結晶性セルロース、カオリン、マンニトール、ソルビトール、イノシトール、塩化ナトリウム、乾燥デンプン、トウモロコシデンプン、粉末糖など、および/またはそれらの組合せが挙げられる。
【0112】
例示的な造粒剤および/または分散剤としては、限定はされないが、ジャガイモデンプン、トウモロコシデンプン、タピオカデンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、粘土、アルギン酸、グアーガム、柑橘類パルプ、寒天、ベントナイト、セルロースおよび木産物、天然スポンジ、カチオン交換樹脂、炭酸カルシウム、ケイ酸塩、炭酸ナトリウム、架橋ポリ(ビニル-ピロリドン)(クロスポビドン)、ナトリウムカルボキシメチルデンプン(デンプングリコール酸ナトリウム)、カルボキシメチルセルロース、架橋ナトリウムカルボキシメチルセルロース(クロスカルメロース)、メチルセルロース、アルファデンプン(スターチ(starch)1500)、微結晶性デンプン、水不溶性デンプン、カルシウムカルボキシメチルセルロース、ケイ酸アルミウニムマグネシウム(ビーガム(VEEGUM)(登録商標))、ラウリル硫酸ナトリウム、第四級アンモニウム化合物など、および/またはそれらの組合せが挙げられる。
【0113】
例示的な表面活性剤および/または乳化剤としては、限定はされないが、天然乳化剤(例えば、アカシア、寒天、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、トラガカント、コンドラックス(chondrux)、コレステロール、キサンタン、ペクチン、ゼラチン、卵黄、カゼイン、羊毛脂、コレステロール、ワックス、およびレシチン)、コロイド粘土(例えばベントナイト[ケイ酸アルミニウム]およびビーガム(VEEGUM)(登録商標)[ケイ酸アルミウニムマグネシウム])、長鎖アミノ酸誘導体、高分子量アルコール(例えばステアリルアルコール、セチルアルコール、オレイルアルコール、モノステアリン酸トリアセチン、ジステアリン酸エチレングリコール、モノステアリン酸グリセリル、およびモノステアリン酸プロピレングリコール、ポリビニルアルコール)、カルボマー(例えばカルボキシポリメチレン、ポリアクリル酸、アクリル酸ポリマー、およびカルボキシビニルポリマー)、カラギーナン、セルロース誘導体(例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、粉末セルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース)、ソルビタン脂肪酸エステル(例えばポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート[トゥイーン(TWEEN)(登録商標)20]、ポリオキシエチレンソルビタン[トゥイーン(TWEENn)(登録商標)60]、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート[トゥイーン(TWEEN)(登録商標)80]、モノパルミチン酸ソルビタン[スパン(SPAN)(登録商標)40]、モノステアリン酸ソルビタン[スパン(SPAN)(登録商標)60]、トリステアリン酸ソルビタン[スパン(SPAN)(登録商標)65]、モノオレイン酸グリセリル、モノオレイン酸ソルビタン[スパン(SPAN)(登録商標)80])、ポリオキシエチレンエステル(例えばモノステアリン酸ポリオキシエチレン[ミルジ(MYRJ)(登録商標)45]、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリエトキシル化ヒマシ油、ステアリン酸ポリオキシメチレン、およびソルトール(SOLUTOL)(登録商標))、スクロース脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル(例えばクレモフォール(CREMOPHOR)(登録商標))、ポリオキシエチレンエーテル、(例えばポリオキシエチレンラウリルエーテル[ブリジ(BRIJ)(登録商標)30])、ポリ(ビニル-ピロリドン)、モノラウリン酸ジエチレングリコール、オレイン酸トリエタノールアミン、オレイン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム、オレイン酸エチル、オレイン酸、ラウリン酸エチル、ラウリル硫酸ナトリウム、プルロニック(PLUORINC)(登録商標)F 68、ポロキサマー(POLOXAMER)(登録商標)188、臭化セトリモニウム、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、ドキュセートナトリウムなど、および/またはそれらの組合せが挙げられる。
【0114】
例示的な結合剤としては、限定はされないが、デンプン(例えば、トウモロコシデンプンおよびデンプンペースト);ゼラチン;糖(例えばスクロース、グルコース、デキストロース、デキストリン、糖蜜、ラクトース、ラクチトール、マンニトール);天然および合成ゴム(例えば、アカシア、アルギン酸ナトリウム、アイリッシュモス(Irish moss)の抽出物、パンワールガム(panwar gum)、ガッティガム、イサポール皮(isapol husk)の粘液、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、微結晶性セルロース、酢酸セルロース、ポリ(ビニル-ピロリドン)、ケイ酸アルミウニムマグネシウム(ビーガム(Veegum)(登録商標))、およびカラマツのアラビノガラクタン(larch arabogalactan));アルギン酸塩;ポリエチレンオキシド;ポリエチレングリコール;無機カルシウム塩;ケイ酸;ポリメタクリレート;ワックス;水;アルコールなど;およびそれらの組合せが挙げられる。
【0115】
例示的な保存剤としては、限定はされないが、酸化防止剤、キレート剤、抗菌性保存剤、抗真菌性保存剤、アルコール保存剤、酸性保存剤、および/または他の保存剤が挙げられる。例示的な酸化防止剤としては、限定はされないが、αトコフェロール、アスコルビン酸、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、モノチオグリセロール、メタ重亜硫酸カリウム、プロピオン酸、没食子酸プロピル、アスコルビン酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、および/または亜硫酸ナトリウムが挙げられる。例示的なキレート剤としては、エチレンジアミン四酢酸(EDTA:ethylenediaminetetraacetic acid)、クエン酸一水和物、エデト酸二ナトリウム、エデト酸二カリウム、エデト酸、フマル酸、リンゴ酸、リン酸、エデト酸ナトリウム、酒石酸、および/またはエデト酸三ナトリウムが挙げられる。例示的な抗菌性保存剤としては、限定はされないが、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ベンジルアルコール、ブロノポール、セトリミド、塩化セチルピリジニウム、クロルヘキシジン、クロロブタノール、クロロクレゾール、クロロキシレノール、クレゾール、エチルアルコール、グリセリン、ヘキセチジン、イミド尿素、フェノール、フェノキシエタノール、フェニルエチルアルコール、硝酸フェニル水銀、プロピレングリコール、および/またはチメロサールが挙げられる。例示的な抗真菌性保存剤としては、限定はされないが、ブチルパラベン、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、安息香酸、ヒドロキシ安息香酸、安息香酸カリウム、ソルビン酸カリウム、安息香酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、および/またはソルビン酸が挙げられる。例示的なアルコール保存剤としては、限定はされないが、エタノール、ポリエチレングリコール、フェノール、フェノール化合物、ビスフェノール、クロロブタノール、ヒドロキシ安息香酸塩、および/またはフェニルエチルアルコールが挙げられる。例示的な酸性保存剤としては、限定はされないが、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンE、β-カロテン、クエン酸、酢酸、デヒドロ酢酸、アスコルビン酸、ソルビン酸、および/またはフィチン酸が挙げられる。他の保存剤としては、限定はされないが、トコフェロール、酢酸トコフェロール、デテロキシムメシレート(deteroxime mesylate)、セトリミド、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA:butylated hydroxyanisol)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT:butylated hydroxytoluened)、エチレンジアミン、ラウリル硫酸ナトリウム(SLS:sodium lauryl sulfate)、ラウリルエーテル硫酸ナトリウム(SLES:sodium lauryl ether sulfate)、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、メタ重亜硫酸カリウム、グリダント・プラス(GLYDANT PLUS)(登録商標)、フェノニップ(PHENONIP)(登録商標)、メチルパラベン、ジャーモール(GERMALL)(登録商標)115、ジャーマベン(GERMABEN)(登録商標)II、ネオロン(NEOLONE)(商標)、カトン(KATHON)(商標)、および/またはユーキシル(EUXYL)(登録商標)が挙げられる。
【0116】
例示的な緩衝剤としては、限定はされないが、クエン酸緩衝液、酢酸緩衝液、リン酸緩衝溶液、塩化アンモニウム、炭酸カルシウム、塩化カルシウム、クエン酸カルシウム、グルビオン酸カルシウム、グルセプト酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、D-グルコン酸、グリセロリン酸カルシウム、乳酸カルシウム、プロパン酸、レブリン酸カルシウム、ペンタン酸、リン酸水素カルシウム、リン酸、第三リン酸カルシウム、水酸化カルシウムリン酸塩(calcium hydroxide phosphate)、酢酸カリウム、塩化カリウム、グルコン酸カリウム、カリウム混合物、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸カリウム混合物、酢酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸ナトリウム混合物、トロメタミン、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、アルギン酸、発熱性物質除去蒸留水、等張食塩水、リンゲル液、エチルアルコールなど、および/またはそれらの組合せが挙げられる。
【0117】
例示的な滑沢剤としては、限定はされないが、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、シリカ、タルク、麦芽、ベヘン酸グリセリル、硬化植物油、ポリエチレングリコール、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、ロイシン、ラウリル硫酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウムなど、およびそれらの組合せが挙げられる。
【0118】
例示的な油としては、限定はされないが、扁桃油、杏仁油、アボカド油、ババス油、ベルガモット油、クロスグリ種子油、ルリヂサ油、カデ油、カモミール油、キャノーラ油、カラウェー油、カルナウバ、ヒマシ油、桂皮油、カカオ脂、ココナツ油、タラ肝油、コーヒー油、トウモロコシ油、綿実油、エミュー油、ユーカリ油、月見草油、魚油、亜麻仁油、ゲラニオール油、ゴード油、グレープシード油、ヘーゼルナッツ油、ヒソップ油、ミリスチン酸イソプロピル、ホホバ油、ククイナッツ油、ラバンジン油、ラベンダー油、レモン油、リツェアクベバ油、マカダミアナッツ油、ゼニアオイ油、マンゴー種子油、メドウフォーム種子油、ミンク油、ナツメグ油、オリーブ油、オレンジ油、オレンジラフィー油、パーム油、パーム核油、桃仁油、ピーナッツ油、ケシ種子油、カボチャ種子油、菜種油、米糠油、ローズマリー油、ベニバナ油、ビャクダン油、サザンカ(sasquana)油、セイボリー油、シーバックソーン油、ゴマ油、シアバター、シリコーン油、ダイズ油、ヒマワリ油、ティーツリー油、アザミ油、ツバキ油、ベチバー油、クルミ油、およびコムギ胚芽油が挙げられる。例示的な油としては、限定はされないが、ステアリン酸ブチル、カプリル酸トリグリセリド、カプリン酸トリグリセリド、シクロメチコン、セバシン酸ジエチル、ジメチコン360、ミリスチン酸イソプロピル、鉱油、オクチルドデカノール、オレイルアルコール、シリコーン油、および/またはそれらの組合せが挙げられる。
【0119】
配合者の判断にしたがって、カカオ脂および坐薬ワックス、着色剤、コーティング剤、甘味料、香味料、および/または芳香剤などの賦形剤が、組成物中に存在し得る。
投与
本発明のコンジュゲートまたは粒子は、治療的に有効な結果をもたらす任意の経路によって投与され得る。これらとしては、限定はされないが、経腸、胃腸、硬膜外、経口、経皮、硬膜外(硬膜周囲)、脳内(大脳の中に)、脳室内(脳室の中に)、経皮(皮膚への適用)、皮内(皮膚自体の中に)、皮下(皮膚の下に)、経鼻投与(鼻を通して)、静脈内(静脈の中に)、動脈内(動脈の中に)、筋肉内(筋肉の中に)、心臓内(心臓の中に)、骨内注入(骨髄の中に)、髄腔内(脊柱管の中に)、腹腔内(腹膜の中への注入または注射)、膀胱内注入、硝子体内(眼を通して)、陰茎海綿体内注射(陰茎の基部の中に)、腟内投与、子宮内、羊膜外投与、経皮(全身への分布のための無傷の皮膚を通した拡散)、経粘膜(粘膜を通した拡散)、通気(鼻からの通気)、舌下、唇下、かん腸剤、点眼薬(結膜上に)、または点耳薬が挙げられる。特定の実施形態において、組成物は、それらが血液脳関門、血管関門、または他の上皮性関門を渡ることを可能にする方法で投与され得る。
【0120】
本明細書に記載される製剤は、それを必要とする個体への投与に適した医薬担体中に有効量のコンジュゲートまたは粒子を含有する。製剤は、非経口的に(例えば、注射または注入によって)投与され得る。製剤またはその変形は、経腸的に、局所的に(例えば、眼に)、または経肺投与によるものを含む任意の方法で投与され得る。ある実施形態において、製剤は、局所的に投与される。
【0121】
A.非経口製剤
コンジュゲートまたは粒子は、溶液、懸濁液またはエマルションの形態で、注射または注入などの非経口送達用に製剤化され得る。製剤は、全身的に、局部的にまたは治療される器官または組織に直接投与され得る。
【0122】
非経口製剤は、当該技術分野において公知の技術を用いて、水性組成物として調製され得る。典型的に、このような組成物は、注射用製剤、例えば、溶液または懸濁液;注射前に再構成媒体を加えて溶液または懸濁液を調製するのに使用するのに好適な固体形態;エマルション、例えば油中水型(w/o)エマルション、水中油型(o/w)エマルション、およびそれらのマイクロエマルション、リポソーム、またはエマルソーム(emulsome)として調製され得る。
【0123】
担体は、例えば、水、エタノール、1つ以上のポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコール)、油、例えば植物油(例えば、ピーナッツ油、トウモロコシ油、ゴマ油など)、およびそれらの組合せを含有する溶媒または分散媒であり得る。適切な流動性は、分散液の場合に必要な粒径の維持によるか、および/または界面活性剤の使用による、例えば、レシチンなどのコーティングの使用によって、維持され得る。場合によっては、等張剤、例えば、1つ以上の糖、塩化ナトリウム、または当該技術分野において公知の他の好適な薬剤が含まれる。
【0124】
コンジュゲートまたは粒子の溶液および分散液は、限定はされないが、界面活性剤、分散剤、乳化剤、pH調節剤、およびそれらの組合せを含む、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤と好適に混合された水または別の溶媒または分散媒中で調製され得る。
【0125】
好適な界面活性剤は、アニオン性、カチオン性、両性または非イオン性表面活性剤であり得る。好適なアニオン性界面活性剤としては、限定はされないが、カルボン酸イオン、スルホン酸イオンおよび硫酸イオンを含有するものが挙げられる。アニオン性界面活性剤の例としては、長鎖アルキルスルホネートおよびアルキルアリールスルホネートのナトリウム、カリウム、アンモニウム、例えばドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム;ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、例えばドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム;ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、例えばナトリウムビス-(2-エチルチオキシル)-スルホスクシネート;および硫酸アルキル、例えばラウリル硫酸ナトリウムが挙げられる。カチオン性界面活性剤としては、限定はされないが、第四級アンモニウム化合物、例えば塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、臭化セトリモニウム、塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウム、ポリオキシエチレンおよびヤシアミンが挙げられる。非イオン性界面活性剤の例としては、モノステアリン酸エチレングリコール、ミリスチン酸プロピレングリコール、モノステアリン酸グリセリル、ステアリン酸グリセリル、オレイン酸ポリグリセリル-4、ソルビタンアシレート(sorbitan acylate)、スクロースアシレート(sucrose acylate)、ラウリン酸PEG-150、モノラウリン酸PEG-400、モノラウリン酸ポリオキシエチレン、ポリソルベート、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、PEG-1000セチルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリプロピレングリコールブチルエーテル、ポロキサマー(Poloxamer)(登録商標)401、ステアロイルモノイソプロパノールアミド、およびポリオキシエチレン水添タロウアミドが挙げられる。両性界面活性剤の例としては、N-ドデシル-β-アラニンナトリウム、N-ラウリル-β-イミノジプロピオン酸ナトリウム、ミリストアンホアセテート(myristoamphoacetate)、ラウリルベタインおよびラウリルスルホベタインが挙げられる。
【0126】
製剤は、微生物の増殖を防ぐための保存剤を含有し得る。好適な保存剤としては、限定はされないが、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、およびチメロサールが挙げられる。製剤は、活性薬剤または粒子の分解を防ぐための酸化防止剤も含有し得る。
【0127】
製剤は、典型的に、再構成時に非経口投与のために3~8のpHに緩衝される。好適な緩衝液としては、限定はされないが、リン酸緩衝液、酢酸緩衝液、およびクエン酸緩衝液が挙げられる。10%のスクロースまたは5%のデキストロースを使用する場合、緩衝液は不要であり得る。
【0128】
水溶性ポリマーは、非経口投与用の製剤に使用されることが多い。好適な水溶性ポリマーとしては、限定はされないが、ポリビニルピロリドン、デキストラン、カルボキシメチルセルロース、およびポリエチレングリコールが挙げられる。
【0129】
滅菌注射用溶液は、適切な溶媒または分散媒中の必要な量のコンジュゲートまたは粒子を、必要に応じて、上に列挙された賦形剤の1つ以上とともに組み込んだ後、ろ過滅菌することによって調製され得る。一般に、分散液は、様々な滅菌コンジュゲートまたは粒子を、基礎分散媒および上に列挙されるものからの必要な他の成分を含有する滅菌ビヒクルに組み込むことによって調製される。滅菌注射用溶液の調製のための滅菌粉末の場合、調製方法の例としては、予め滅菌ろ過されたその溶液から粒子の粉末および任意のさらなる所望の成分を生じさせる真空乾燥法および凍結乾燥法が挙げられる。粉末は、粒子の性質が多孔質になるように調製され得、それにより、粒子の溶解を向上させ得る。多孔質粒子を作製するための方法は、当該技術分野において公知である。
【0130】
非経口投与用の医薬製剤は、1つ以上のポリマー-薬剤コンジュゲートから形成されるコンジュゲートまたは粒子の滅菌水溶液または懸濁液の形態であり得る。許容される溶媒としては、例えば、水、リンゲル液、リン酸緩衝生理食塩水(PBS:phosphate buffer saline)、および等張塩化ナトリウム溶液が挙げられる。製剤はまた、1,3-ブタンジオールなどの、非毒性の非経口的に許容される希釈剤または溶媒中の滅菌溶液、懸濁液、またはエマルションであり得る。
【0131】
ある場合には、製剤は、液体形態で分配または包装される。あるいは、非経口投与用の製剤は、例えば、好適な液体製剤の凍結乾燥によって得られる固体として包装され得る。固体は、投与前に適切な担体または希釈剤で再構成され得る。
【0132】
非経口投与用の溶液、懸濁液、またはエマルションは、眼内投与に好適なpHを維持するのに必要な有効量の緩衝液で緩衝され得る。好適な緩衝液は、当業者に周知であり、有用な緩衝液のいくつかの例は、酢酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、炭酸緩衝液、クエン酸緩衝液、およびリン酸緩衝液である。
【0133】
非経口投与用の溶液、懸濁液、またはエマルションは、製剤の等張範囲を調整するための1つ以上の等張化剤も含有し得る。好適な等張化剤は、当該技術分野において周知であり、いくつかの例としては、グリセリン、スクロース、デキストロース、マンニトール、ソルビトール、塩化ナトリウム、および他の電解質が挙げられる。
【0134】
非経口投与用の溶液、懸濁液、またはエマルションは、点眼薬の細菌汚染を防ぐための1つ以上の保存剤も含有し得る。好適な保存剤は、当該技術分野において公知であり、ポリヘキサメチレンビグアニジン(PHMB:polyhexamethylenebiguanidine)、塩化ベンザルコニウム(BAK:benzalkonium chloride)、安定化オキシクロロ錯体(別名ピュライト(Purite)(登録商標)として知られている)、酢酸フェニル水銀、クロロブタノール、ソルビン酸、クロルヘキシジン、ベンジルアルコール、パラベン、チメロサール、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0135】
非経口投与用の溶液、懸濁液、またはエマルションは、分散剤、湿潤剤、および懸濁化剤などの、当該技術分野において公知の1つ以上の賦形剤も含有し得る。
B.粘膜用局所製剤
コンジュゲートまたは粒子は、粘膜表面への局所投与用に製剤化され得る。局所投与に好適な剤形としては、クリーム、軟膏(ointment)、軟膏(salve)、スプレー、ゲル、ローション、エマルション、液体、および経皮パッチが挙げられる。製剤は、経粘膜、経上皮、または経内皮投与用に製剤化され得る。組成物は、1つ以上の化学的浸透促進剤、膜透過剤、膜輸送剤、皮膚軟化剤、界面活性剤、安定剤、およびそれらの組合せを含有する。ある実施形態において、コンジュゲートまたは粒子は、溶液もしくは懸濁液などの液体製剤、ローションもしくは軟膏などの半固体製剤、または固体製剤として投与され得る。ある実施形態において、コンジュゲートまたは粒子は、点眼剤などの、溶液および懸濁液を含む液体として、または眼もしくは経腟的もしくは経直腸的になど、粘膜への半固体製剤として製剤化される。
【0136】
「界面活性剤」は、表面張力を低下させ、それによって、生成物の乳化、発泡、分散、展着および湿潤特性を向上させる表面活性薬剤である。好適な非イオン性界面活性剤としては、乳化ろう、モノオレイン酸グリセリル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリソルベート、ソルビタンエステル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、シクロデキストリン、モノステアリン酸グリセリン、ポロキサマー、ポビドンヨードおよびそれらの組合せが挙げられる。一実施形態において、非イオン性界面活性剤は、ステアリルアルコールである。
【0137】
「乳化剤」は、ある液体の別の液体中への懸濁を促進し、油および水の安定した混合物、またはエマルションの形成を促進する表面活性物質である。一般的な乳化剤は、金属せっけん、特定の動物油および植物油、ならびに様々な極性化合物である。好適な乳化剤としては、アカシア、アニオン性乳化ろう、ステアリン酸カルシウム、カルボマー、セトステアリルアルコール、セチルアルコール、コレステロール、ジエタノールアミン、パルミトステアリン酸エチレングリコール、モノステアリン酸グリセリン、モノオレイン酸グリセリル、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、ラノリン、含水ラノリンアルコール、レシチン、中鎖トリグリセリド、メチルセルロース、鉱油およびラノリンアルコール、リン酸二水素ナトリウム、モノエタノールアミン、非イオン性乳化ろう、オレイン酸、ポロキサマー、ポロキサマー類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ステアリン酸ポリオキシエチレン、アルギン酸プロピレングリコール、自己乳化型モノステアリン酸グリセリル、無水クエン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ソルビタンエステル、ステアリン酸、ヒマワリ油、トラガカント、トリエタノールアミン、キサンタンガムおよびそれらの組合せが挙げられる。一実施形態において、乳化剤は、ステアリン酸グリセロールである。
【0138】
浸透促進剤の好適なクラスは、当該技術分野において公知であり、限定はされないが、脂肪アルコール、脂肪酸エステル、脂肪酸、脂肪アルコールエーテル、アミノ酸、リン脂質、レシチン、コール酸塩、酵素、アミンおよびアミド、錯化剤(リポソーム、シクロデキストリン、変性セルロース、およびジイミド)、大環状化合物、例えば大環状ラクトン、ケトン、および無水物および環状尿素、界面活性剤、N-メチルピロリドンおよびその誘導体、DMSOおよび関連化合物、イオン性化合物、アゾンおよび関連化合物、ならびに溶媒、例えばアルコール、ケトン、アミド、ポリオール(例えば、グリコール)が挙げられる。これらのクラスの例は、当該技術分野において公知である。
【0139】
投与
本発明は、本明細書に記載されるコンジュゲートまたはコンジュゲートを含有する粒子を、それを必要とする対象に投与することを含む方法を提供する。本明細書に記載されるコンジュゲートまたはコンジュゲートを含有する粒子は、疾患、障害、および/または病態(例えば、作業記憶障害に関連する疾患、障害、および/または病態)を予防または治療またはイメージングするのに有効な任意の量および任意の投与経路を用いて、対象に投与され得る。必要とされる正確な量は、対象の種、年齢、および全身状態、疾患の重症度、具体的な組成物、その投与方法、その活性様式などに応じて、対象毎に変化する。
【0140】
本発明に係る組成物は、典型的に、投与の容易さおよび投与量の均一性から単位剤形に製剤化される。しかしながら、本発明の組成物の1日の総使用量が、妥当な医学的判断の範囲内で主治医によって判断され得ることが理解されるであろう。任意の特定の患者のための具体的な治療有効用量、予防有効用量、または適切なイメージング用量レベルは、治療される障害および障害の重症度;用いられる具体的な化合物の活性;用いられる具体的な組成物;患者の年齢、体重、全体的な健康、性別および食事;用いられる具体的な化合物の投与の時間、投与経路、および排せつ速度;治療期間;用いられる具体的な化合物と併用してまたは同時に使用される薬剤;および医学の技術分野で周知の同様の要因を含む様々な要因に応じて決まる。
【0141】
ある実施形態において、本発明に係る組成物は、所望の治療、診断、予防、またはイメージング効果を得るために、1日当たり、約0.0001mg/kg~約100mg/kg、約0.001mg/kg~約0.05mg/kg、約0.005mg/kg~約0.05mg/kg、約0.001mg/kg~約0.005mg/kg、約0.05mg/kg~約0.5mg/kg、約0.01mg/kg~約50mg/kg、約0.1mg/kg~約40mg/kg、約0.5mg/kg~約30mg/kg、約0.01mg/kg~約10mg/kg、約0.1mg/kg~約10mg/kg、または約1mg/kg~約25mg/kg(対象の体重)を送達するのに十分な投与量レベルで、1日1回以上投与され得る。所望の投与量は、1日3回、1日2回、1日1回、隔日、3日毎、毎週、2週間毎、3週間毎、または4週間毎に送達され得る。ある実施形態において、所望の投与量は、複数回の投与(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14回、またはそれ以上の投与)を用いて送達され得る。複数回の投与が用いられる場合、本明細書に記載されるものなどの分割投与計画が使用され得る。
【0142】
ある実施形態において、コンジュゲート57および/またはその薬学的に許容される塩は、約1mg~約50mg、例えば、約1mg、2mg、4mg、6mg、8mg、10mg、12mg、14mg、16mg、18mg、20mg、22mg、24mg、26mg、28mg、30mg、32mg、34mg、36mg、38mg、40mg、42mg、44mg、46mg、48mg、または50mgの投与量で投与される。ある実施形態において、コンジュゲート57および/またはその薬学的に許容される塩は、約18mg~約50mgまたは約25mg~約50mgの投与量で投与される。ある実施形態において、コンジュゲート57および/またはその薬学的に許容される塩は、約25mgの投与量で投与される。ある実施形態において、コンジュゲート57および/またはその薬学的に許容される塩は、25mgの投与量で投与される。
【0143】
本発明のコンジュゲートまたは粒子の濃度は、医薬組成物中で、約0.01mg/mL~約50mg/mL、約0.1mg/mL~約25mg/mL、約0.5mg/mL~約10mg/mL、または約1mg/mL~約5mg/mLであり得る。
【0144】
本明細書において使用される際、「分割投与」は、単一単位用量または1日総用量を2つ以上の用量、例えば、単一単位用量を2回以上の投与に分割することである。本明細書において使用される際、「単一単位用量」は、1つの用量/1回/単一経路/単一接触点、すなわち、単一投与イベントで投与される任意の治療薬の用量である。本明細書において使用される際、「1日総用量」は、24時間の期間に与えられるかまたは処方される量である。それは、単一単位用量として投与され得る。一実施形態において、本発明のモノマレイミド化合物は、分割投与で対象に投与される。モノマレイミド化合物は、緩衝液のみの中でまたは本明細書に記載される製剤中で製剤化され得る。
【0145】
剤形
本明細書に記載される医薬組成物は、局所、鼻腔内、気管内、または注射用(例えば、静脈内、眼内、硝子体内、筋肉内、心臓内、腹腔内、皮下)など、本明細書に記載される剤形に製剤化され得る。
【0146】
液体剤形
非経口投与用の液体剤形としては、限定はされないが、薬学的に許容されるエマルション、マイクロエマルション、溶液、懸濁液、シロップ、および/またはエリキシル剤が挙げられる。活性成分に加えて、液体剤形は、限定はされないが、水または他の溶媒、可溶化剤および乳化剤、例えばエチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油(特に、綿実油、落花生油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油、およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタンの脂肪酸エステル、およびそれらの混合物を含む、当該技術分野において一般的に使用される不活性希釈剤を含み得る。非経口投与のための特定の実施形態において、組成物は、クレモフォール(CREMOPHOR)(登録商標)、アルコール、油、変性油、グリコール、ポリソルベート、シクロデキストリン、ポリマー、および/またはそれらの組合せなどの可溶化剤と混合され得る。
【0147】
注射剤
注射用製剤、例えば、滅菌注射用水性または油性懸濁液は、公知の技術にしたがって製剤化され得、好適な分散剤、湿潤剤、および/または懸濁化剤を含み得る。滅菌注射用製剤は、非毒性の非経口的に許容される希釈剤および/または溶媒中の滅菌注射用溶液、懸濁液、および/またはエマルション、例えば、1,3-ブタンジオール中の溶液であり得る。用いられ得る許容されるビヒクルおよび溶媒の中でも、限定はされないが、水、リンゲル液(U.S.P.)、および等張塩化ナトリウム溶液が挙げられる。滅菌固定油は、従来、溶媒または懸濁媒として用いられている。このために、合成モノグリセリドまたはジグリセリドを含む任意の無刺激性固定油が用いられ得る。オレイン酸などの脂肪酸が、注射剤の調製に使用され得る。
【0148】
注射用製剤は、例えば、細菌保持フィルタに通したろ過によって、および/または使用前に滅菌水または他の滅菌注射用媒体に溶解または分散され得る滅菌固体組成物の形態の滅菌剤を組み込むことによって滅菌され得る。
【0149】
活性成分の効果を持続させるため、皮下または筋肉内注射からの活性成分の吸収を遅らせることが望ましいことがある。これは、難水溶性の結晶性または非晶質材料の液体懸濁液の使用によって達成され得る。その際、モノマレイミド化合物の吸収速度は、その溶解速度に応じて決まり、溶解速度は、ひいては、結晶サイズおよび結晶形態に応じて決まる。あるいは、非経口投与されるモノマレイミド化合物の遅延吸収は、モノマレイミドを油ビヒクル中で溶解または懸濁させることによって達成され得る。注射用デポー形態は、ポリラクチド-ポリグリコリドなどの生分解性ポリマー中のモノマレイミド化合物のマイクロカプセル化マトリックスを形成することによって作製される。モノマレイミド化合物対ポリマーの比率および用いられる具体的なポリマーの性質に応じて、モノマレイミド化合物放出の速度は、制御され得る。他の生分解性ポリマーの例としては、限定はされないが、ポリ(オルトエステル)およびポリ(無水物)が挙げられる。デポー注射用製剤は、生体組織と適合するリポソームまたはマイクロエマルション中にモノマレイミド化合物を封入することによって調製され得る。
【0150】
肺内
肺内送達に有用であると本明細書に記載される製剤は、医薬組成物の鼻腔内送達にも使用され得る。鼻腔内投与に好適な別の製剤は、活性成分を含み、かつ0.2μm~500μmの平均粒子を有する粗粉末であり得る。このような製剤は、鼻からの吸入を行うように、すなわち、鼻の近くに保持された粉末の容器から鼻腔を通した急速吸入によって、投与され得る。
【0151】
経鼻投与に好適な製剤は、例えば、約0.1%(w/w)程度から100%(w/w)もの活性成分を含んでもよく、本明細書に記載されるさらなる成分の1つ以上を含み得る。医薬組成物は、口腔投与に好適な製剤として調製、包装、および/または販売され得る。このような製剤は、例えば、従来の方法を用いて作製される錠剤および/またはトローチ剤の形態であってもよく、例えば、約0.1%~20%(w/w)の活性成分を含有してもよく、ここで、残りは、口腔内で溶解可能なおよび/または分解可能な組成物および、任意選択的に、本明細書に記載されるさらなる成分の1つ以上を含み得る。あるいは、口腔投与に好適な製剤は、活性成分を含む粉末および/またはエアロゾル化および/または霧化された溶液および/または懸濁液を含み得る。このような粉末状の、エアロゾル化、および/またはエアロゾル化された製剤は、分散されると、約0.1nm~約200nmの平均粒径および/または液滴径を有してもよく、本明細書に記載されるさらなる成分の1つ以上をさらに含み得る。
【0152】
医薬品の製剤化および/または製造の概説は、例えば、レミントン:薬学の科学と実践(Remington:The Science and Practice of Pharmacy)、第21版、リッピンコット・ウィリアムズ・アンド・ウィルキンス(Lippincott Williams & Wilkins)、2005(全体が参照により本明細書に援用される)に見られる。
【0153】
コーティングまたはシェル
錠剤、糖衣剤、カプセル、丸薬、および顆粒の固体剤形は、腸溶コーティングおよび医薬品製剤化の技術分野に周知の他のコーティングなどの、コーティングおよびシェルを用いて調製され得る。それらは、任意選択的に、乳白剤を含んでもよく、任意選択的に遅延するように、腸管の特定の部分の中で、活性成分のみを、またはそれを優先的に放出する組成物のものであり得る。使用され得る包埋組成物の例としては、ポリマー物質およびワックスが挙げられる。同様のタイプの固体組成物が、ラクトースまたは乳糖ならびに高分子量ポリエチレングリコールなどの賦形剤を用いた軟充填および硬充填ゼラチンカプセル中の充填剤として用いられ得る。
【0154】
IV.粒子を作製する方法
様々な実施形態において、粒子を作製する方法は、コンジュゲートを提供する工程;粒子を形成するためのPLA-PEGまたはPLGA-PEGなどのベース成分(base
component)を提供する工程;コンジュゲートおよびベース成分を、有機溶液中で組み合わせて、第1の有機相を形成する工程;および第1の有機相を第1の水溶液と組み合わせて、第2の相を形成する工程;第2の相を乳化して、エマルション相を形成する工程;および粒子を回収する工程を含む。様々な実施形態において、エマルション相は、さらに均質化される。
【0155】
ある実施形態において、第1の相は、約5~約50重量%、例えば約1~約40%の固体、または約5~約30%の固体、例えば約5%、10%、15%、および20%の、コンジュゲートおよびベース成分を含む。特定の実施形態において、第1の相は、約5重量%のコンジュゲートおよびベース成分を含む。様々な実施形態において、有機相は、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、イソプロピルアルコール、酢酸イソプロピル、ジメチルホルムアミド、塩化メチレン、ジクロロメタン、クロロホルム、アセトン、ベンジルアルコール、トゥイーン(TWEEN)(登録商標)80、スパン(SPAN)(登録商標)80、またはそれらの組合せを含む。ある実施形態において、有機相は、ベンジルアルコール、酢酸エチル、またはそれらの組合せを含む。
【0156】
様々な実施形態において、水溶液は、水、コール酸ナトリウム、酢酸エチル、またはベンジルアルコールを含む。様々な実施形態において、界面活性剤が、第1の相、第2の相、または両方に加えられる。界面活性剤は、ある場合には、本明細書に開示される組成物のための乳化剤または安定剤として働き得る。好適な界面活性剤は、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、または非イオン性界面活性剤であり得る。ある実施形態において、本明細書に記載される組成物を作製するのに好適な界面活性剤としては、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルおよびステアリン酸ポリオキシエチレンが挙げられる。このような脂肪酸エステル非イオン性界面活性剤の例は、ICI製のトゥイーン(TWEEN)(登録商標)80、スパン(SPAN)(登録商標)80、およびミルジ(MYJ)(登録商標)界面活性剤である。スパン(SPAN)(登録商標)界面活性剤としては、C12~C18ソルビタンモノエステルが挙げられる。トゥイーン(TWEEN)(登録商標)界面活性剤としては、ポリ(エチレンオキシド)C12~C18ソルビタンモノエステルが挙げられる。ミルジ(MYJ)(登録商標)界面活性剤としては、ステアリン酸ポリ(エチレンオキシド)が挙げられる。特定の実施形態において、水溶液は、ポリソルベートを含む界面活性剤(例えば、乳化剤)も含む。例えば、水溶液は、ポリソルベート80を含み得る。ある実施形態において、好適な界面活性剤としては、脂質ベースの界面活性剤が挙げられる。例えば、組成物は、1,2-ジヘキサノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1,2-ジヘプタノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、PEG化1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(PEG5000-DSPEを含む)、PEG化1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[メトキシ(ポリエチレングリコール)-5000](アンモニウム塩)を含む)を含み得る。
【0157】
第2の相を乳化して、エマルション相を形成することは、1つまたは2つの乳化工程で行われ得る。例えば、一次エマルションが調製され、次に、乳化されて、微細エマルションが形成される。一次エマルションは、例えば、単純混合、高圧ホモジナイザ、プローブソニケータ、撹拌子、またはロータステータホモジナイザーを用いて形成され得る。一次エマルションは、例えばプローブソニケータまたは高圧ホモジナイザの使用によって、例えばホモジナイザに1回(複数回)通過させることによって、微細エマルションに形成され得る。例えば、高圧ホモジナイザが使用される場合、使用される圧力は、約27.58MPa~約55.16MPa(約4000~約8000psi)、約27.58MPa~約34.47MPa(約4000~約5000psi)、または27.58MPa(4000psi)または34.47MPa(5000psi)であり得る。
【0158】
溶媒の抽出を完了させ、粒子を固化するために、溶媒蒸発または希釈のいずれかが必要とされ得る。抽出の反応速度のより良好な制御およびよりスケーラブルなプロセスのために、クエンチ水溶液による溶媒希釈が使用され得る。例えば、エマルションは、有機溶媒の全てを溶解させて、クエンチ相を形成するのに十分な濃度になるまで冷水中で希釈され得る。クエンチは、約5℃以下の温度で少なくとも部分的に行われ得る。例えば、クエンチに使用される水は、室温未満(例えば約0~約10℃、または約0~約5℃)の温度であり得る。
【0159】
様々な実施形態において、粒子は、ろ過によって回収される。例えば、限外ろ過膜が使用され得る。例示的なろ過は、タンジェンシャルフローろ過システムを用いて行われ得る。例えば、粒子を保持する一方、溶質、ミセル、および有機溶媒を通過させるのに好適な細孔径の膜を用いることによって、粒子が、選択的に分離され得る。約300~500kDa(-5~25nm)の分子量カットオフを有する例示的な膜が使用され得る。
【0160】
様々な実施形態において、粒子は、ある場合には、貯蔵寿命を延長するために、フリーズドライまたは凍結乾燥される。ある実施形態において、組成物は、リオプロテクタント(lyoprotectant)も含む。特定の実施形態において、リオプロテクタントは、糖、多価アルコール、またはその誘導体から選択される。ある実施形態において、リオプロテクタントは、単糖、二糖、またはそれらの混合物から選択される。例えば、リオプロテクタントは、スクロース、ラクツロース、トレハロース、ラクトース、グルコース、マルトース、マンニトール、セロビオース、またはそれらの混合物であり得る。
【0161】
1つ以上のコンジュゲートを含有する粒子を作製する方法が提供される。粒子は、ポリマー粒子、脂質粒子、またはそれらの組合せであり得る。本明細書に記載される様々な方法は、粒子のサイズおよび組成物を制御するために調整されてもよく、例えば、ある方法が、微粒子を調製するのに最適である一方、他の方法が、粒子を調製するのにより適している。記載される特性を有する粒子を調製するための方法の選択は、過度の実験なしに当業者によって行われ得る。
【0162】
i.ポリマー粒子
ポリマー粒子を作製する方法は、当該技術分野において公知である。ポリマー粒子は、当該技術分野において公知の任意の好適な方法を用いて調製され得る。一般的なマイクロカプセル化法としては、限定はされないが、噴霧乾燥、界面重合、ホットメルトカプセル化、相分離カプセル化(自然エマルションマイクロカプセル化、溶媒蒸発マイクロカプセル化、および溶媒除去マイクロカプセル化)、コアセルベーション、低温ミクロスフェア形成、および転相ナノカプセル化(PIN:phase inversion nanoencapsulation)が挙げられる。これらの方法の概要が以下に示される。
【0163】
1.噴霧乾燥
噴霧乾燥法を用いてポリマー粒子を形成するための方法が、米国特許第6,620,617号明細書に記載されている。この方法では、ポリマーは、塩化メチレンなどの有機溶媒または水に溶解される。粒子に組み込まれる公知の量の1つ以上のコンジュゲートまたはさらなる活性薬剤が、ポリマー溶液中で懸濁(不溶性活性薬剤の場合)または共溶解される(可溶性活性薬剤の場合)。溶液または分散液は、圧縮ガス流によって駆動される微粒子化ノズルに通して圧送され、得られたエアロゾルが、加熱されたエアサイクロン中で懸濁されて、溶媒を微液滴から蒸発させて、粒子を形成する。0.1~10μmの範囲のミクロスフェア/ナノスフェアが、この方法を用いて得られる。
【0164】
2.界面重合
界面重合も、1つ以上のコンジュゲートおよび/または活性薬剤を封入するのに使用され得る。この方法を用いて、モノマーおよびコンジュゲートまたは活性薬剤が、溶媒に溶解される。第2のモノマーが、第1の溶媒と不混和性の(典型的に水性の)第2の溶媒に溶解される。エマルションが、第1の溶液を、第2の溶液中で撹拌することによって懸濁することによって形成される。エマルションが安定化されたら、開始剤が水性相に加えられて、エマルションの各液滴の界面において界面重合を引き起こす。
【0165】
3.ホットメルトマイクロカプセル化
ミクロスフェアが、マチオウィッツ(Mathiowitz)ら著、リアクテイブ・ポリマーズ(Reactive Polymers)、6:275(1987)に記載されるホットメルトマイクロカプセル化方法を用いて、ポリエステルおよびポリ無水物などのポリマーから形成され得る。この方法を用いる、ある実施形態において、3,000~75,000ダルトンの分子量を有するポリマーが使用される。この方法では、まず、ポリマーが溶融され、次に、50μm未満に篩分けされた、組み込まれる1つ以上の活性薬剤の固体粒子と混合される。混合物が、非混和性溶媒(シリコン油のような)中で懸濁され、連続的に撹拌しながら、ポリマーの融点を5℃上回るまで加熱される。エマルションが安定化されたら、それは、ポリマー粒子が固化するまで冷却される。得られたミクロスフェアは、石油エーテルでデカントすることによって洗浄されて、自由流動性粉末が生成される。
【0166】
4.相分離マイクロカプセル化
相分離マイクロカプセル化法では、ポリマー溶液が、任意選択的に、封入される1つ以上の活性薬剤の存在下で撹拌される。撹拌によって材料を均一に懸濁させ続けながら、ポリマーに対する非溶媒が、溶液にゆっくりと加えられて、ポリマーの溶解度を低下させる。溶媒および非溶媒へのポリマーの溶解度に応じて、ポリマーは、沈殿するか、またはポリマー富化相とポリマー希薄相とに分離するかのいずれかである。適切な条件下で、ポリマー富化相中のポリマーは、連続相との界面に移動して、活性薬剤を、外側ポリマーシェルを有する液滴中に封入する。
【0167】
a.自然エマルションマイクロカプセル化
自然乳化は、温度を変化させるか、溶媒を蒸発させるか、または化学架橋剤を加えることによって、上で形成された乳化された液体ポリマー液滴を固化することを含む。カプセル材の物理的および化学的特性、ならびに新生粒子に任意選択的に組み込まれる1つ以上の活性薬剤の特性により、好適な封入方法が決まる。疎水性、分子量、化学安定性、および熱安定性などの要因が、封入に影響を与える。
【0168】
b.溶媒蒸発マイクロカプセル化
溶媒蒸発法を用いてミクロスフェアを形成するための方法が、マチオウィッツ(Mathiowitz)ら著、ジャーナル・スキャニング・マイクロスコピー(J.Scanning Microscopy)、4:329(1990);ベック(Beck)ら著、ファーティリティ・アンド・ステリリティ(Fertil.Steril.)、31:545(1979);ベック(Beck)ら著、アメリカン・ジャーナル・オブ・オブステトリクス・アンド・ガイネコロジー(Am.J.Obstet.Gynecol.)135(3)(1979);ベニータ(Benita)ら著、ジャーナル・オブ・ファーマシューティカル・サイエンシーズ(J.Pharm.Sci.)、73:1721(1984);および米国特許第3,960,757号明細書に記載されている。ポリマーは、塩化メチレンなどの揮発性有機溶媒に溶解される。組み込まれる1つ以上の活性薬剤が、任意選択的に、溶液に加えられ、混合物が、ポリ(ビニルアルコール)などの表面活性剤を含有する水溶液中で懸濁される。得られたエマルションが、有機溶媒の大部分が蒸発されるまで撹拌されると、固体微粒子/ナノ粒子が残る。この方法は、ポリエステルおよびポリスチレンのような比較的安定したポリマーに有用である。
【0169】
c.溶媒除去マイクロカプセル化
溶媒除去マイクロカプセル化法は、主に、ポリ無水物のために設計され、例えば、国際公開第93/21906号に記載されている。この方法では、組み込まれる物質は、塩化メチレンなどの揮発性有機溶媒中の選択されたポリマーの溶液中に分散または溶解される。この混合物は、シリコン油などの有機油中で撹拌することによって懸濁されて、エマルションが形成される。1~300μmの範囲のミクロスフェアが、この手順によって得られる。ミクロスフェアに組み込まれ得る物質としては、医薬品、殺有害生物剤、栄養素、イメージング剤、および金属化合物が挙げられる。
【0170】
5.コアセルベーション
コアセルベーション法を用いた様々な物質のための封入手順は、当該技術分野において、例えば、GB-B-929 406号明細書;GB-B-929 40 1号明細書;および米国特許第3,266,987号明細書、同第4,794,000号明細書、および同第4,460,563号明細書において公知である。コアセルベーションは、高分子の溶液を2つの不混和液相に分離させることを含む。一方の相は、高濃度のポリマーカプセル材(および任意選択的に1つ以上の活性薬剤)を含有する濃厚なコアセルベート相である一方、第2の相は、低濃度のポリマーを含有する。濃厚なコアセルベート相内で、ポリマーカプセル材は、ナノスケールまたはマイクロスケールの液滴を形成する。コアセルベーションは、温度変化、非溶媒の添加またはマイクロ塩(micro-salt)の添加によるか(単純コアセルベーション)、または別のポリマーの添加によって、ポリマー間複合体を形成することによって(複合コアセルベーション)誘導され得る。
【0171】
6.ミクロスフェアの低温キャスティング
制御放出粒子の低温キャスティングのための方法が、米国特許第5,019,400号明細書に記載されている。この方法では、ポリマーが、任意選択的に1つ以上の溶解または分散された活性薬剤とともに溶媒に溶解される。次に、混合物が、ポリマー液滴を凍結させる、ポリマー物質溶液の凝固点未満の温度の非溶媒液体を入れた容器中に霧化される。ポリマーの液滴および非溶媒が加温されると、液滴中の溶媒が融解し、非溶媒中に抽出されて、ミクロスフェアの硬化が生じる。
【0172】
7.転相ナノカプセル化(PIN)
粒子はまた、転相ナノカプセル化(PIN)方法を用いて形成さえ得、ここで、ポリマーが、「良好な」溶媒に溶解され、薬剤などの、組み込まれる物質の微粒子が、ポリマー溶液中に混合または溶解され、混合物が、ポリマーの強非溶媒に注がれて、好ましい条件下で、ポリマーミクロスフェアを自然に生じ、ここで、ポリマーが、粒子で被覆されるか、または粒子がポリマー中に分散される。例えば、米国特許第6,143,211号明細書を参照されたい。この方法を用いて、例えば、約100ナノメートル~約10μmを含む広範囲のサイズのナノ粒子および微粒子の単分散集団を生じることができる。
【0173】
有利には、エマルションが、沈殿前に形成される必要がない。このプロセスを用いて、熱可塑性ポリマーからミクロスフェアを形成することができる。
8.エマルション法
ある実施形態において、粒子が、乳化溶媒蒸発方法を用いて調製される。例えば、ポリマー材料が、水不混和性有機溶媒に溶解され、薬剤溶液または薬剤溶液の組合せと混合される。ある実施形態において、封入される治療用、予防用、または診断用薬剤の溶液が、ポリマー溶液と混合される。ポリマーは、限定はされないが、以下のもの:PLA、PGA、PCL、それらのコポリマー、ポリアクリレート、上記のPEG化ポリマーの1つ以上であり得る。薬剤分子は、上述される1つ以上のコンジュゲートおよび1つ以上のさらなる活性薬剤を含み得る。水不混和性有機溶媒は、限定はされないが、以下のもの:クロロホルム、ジクロロメタン、および酢酸アシルの1つ以上であり得る。薬剤は、限定はされないが、以下のもの:アセトン、エタノール、メタノール、イソプロピルアルコール、アセトニトリルおよびジメチルスルホキシド(DMSO:Dimethyl sulfoxide)の1つ以上に溶解され得る。
【0174】
水溶液が、得られたポリマー溶液に加えられて、乳化によってエマルション溶液を生じさせる。乳化法は、限定はされないが、プローブ超音波処理またはホモジナイザによる均質化であり得る。
【0175】
9.ナノ沈殿
別の実施形態において、ナノ粒子を含有するコンジュゲートが、ナノ沈殿方法またはマイクロ流体デバイスを用いて調製される。ポリマー材料を含有するコンジュゲートは、任意選択的にさらなるポリマーを含有する水混和性有機溶媒中で、薬剤または薬剤の組合せと混合される。さらなるポリマーは、限定はされないが、以下のもの:PLA、PGA、PCL、それらのコポリマー、ポリアクリレート、上記のPEG化ポリマーの1つ以上であり得る。水混和性有機溶媒は、限定はされないが、以下のもの:アセトン、エタノール、メタノール、イソプロピルアルコール、アセトニトリルおよびジメチルスルホキシド(DMSO)の1つ以上であり得る。次に、得られた混合物溶液は、水溶液などのポリマー非溶媒に加えられて、ナノ粒子溶液が得られる。
【0176】
10.マイクロフルイディクス
マイクロフルイディクスを用いて粒子を作製する方法が、当該技術分野において公知である。好適な方法としては、米国特許出願公開第2010/0022680 A1号明細書に記載されるものが挙げられる。一般に、マイクロ流体デバイスは、混合装置に合流する少なくとも2つのチャネルを含む。チャネルは、典型的に、ポリマー表面のリソグラフィ、エッチング、エンボス加工、または成形によって形成される。流体の供給源が各チャネルに取り付けられ、この供給源に圧力を加えると、チャネル中に流体の流れが生じる。圧力は、シリンジ、ポンプ、および/または重力によって加えられ得る。ポリマー、標的化部分、脂質、薬剤、ペイロードなどを含む溶液の流入流れが、合流し、混合され、得られた混合物が、ポリマー非溶媒溶液と組み合わされて、表面上に所望のサイズおよび密度の部分を有する粒子が形成される。流入チャネル中の圧力および流量ならびに流体供給源の性質および組成を変化させることによって、再現可能なサイズおよび構造を有する粒子が生成され得る。
【0177】
ii.脂質粒子
脂質粒子を作製する方法は、当該技術分野において公知である。脂質粒子は、当該技術分野において公知の任意の好適な方法を用いて調製される、脂質ミセル、リポソーム、または固体脂質粒子であり得る。活性薬剤を封入する脂質粒子の作製のための一般的な技術としては、限定はされないが、高圧均質化法、超臨界流体法、エマルション法、溶媒拡散法、および噴霧乾燥が挙げられる。これらの方法の概要が、以下に示される。
【0178】
1.高圧均質化(HPH:high pressure homogenization)方法
高圧均質化は、脂質ミセル、リポソーム、および固体脂質粒子を含む、狭いサイズ分布を有する小型脂質粒子の生成に使用される、確実で強力な技術である。高圧ホモジナイザは、高圧(10~200MPa(100~2000バール))で、微小ギャップ(数ミクロンの範囲)に液体を押し通す。流体は、室温で液体である脂質、または室温で固体である脂質の溶融物を含有し得る。流体は、非常に高速(1000Km/h超)で非常に短い距離で加速する。これにより、高せん断応力およびキャビテーション力が生じ、粒子を、概してサブミクロン範囲まで破壊する。一般に、5~10%の脂質含量が使用されるが、最大で40%の脂質含量も研究されている。
【0179】
HPHの2つの手法は、高温均質化および低温均質化であり、薬剤を、バルクの脂質溶液または溶融物中で混合するという同じ概念で機能する。
a.高温均質化:
高温均質化は、脂質の融点を超える温度で行われ、したがって、エマルションの均質化と見なされ得る。薬剤が負荷された脂質溶融物および水性乳化剤相のプレエマルションが、高せん断混合によって得られる。プレエマルションのHPHは、脂質の融点を超える温度で行われる。温度、圧力、およびサイクル数を含むいくつかのパラメータが、所望のサイズを有する脂質粒子を生成するために調整され得る。一般に、温度が高いほど、内相の粘度の低下のため、粒径がより小さくなる。しかしながら、高温は、薬剤および担体の分解速度を高める。均質化圧力またはサイクル数を増加させると、粒子の高い運動エネルギーのため、粒径が増加することが多い。
【0180】
b.低温均質化
低温均質化は、高温均質化の代替として開発された。低温均質化には、温度によって誘発される薬剤の分解または均質化中の水性相中での薬剤の分布などの問題がない。低温均質化は、固体脂質粒子に特に有用であるが、リポソームおよび脂質ミセルを生成するために、少しの修正を加えて適用され得る。この技術では、脂質溶融物を含有する薬剤が冷却され、固体脂質が粉砕されて脂質微粒子にされ、これらの脂質微粒子が、低温の界面活性剤溶液中に分散されて、プレ懸濁液を生じさせる。プレ懸濁液は、室温以下で均質化され、ここで、重力は、脂質微粒子を直接固体脂質ナノ粒子まで破壊するのに十分に強い。
【0181】
2.超音波処理/高速均質化方法
脂質ミセル、リポソーム、および固体脂質粒子を含む脂質粒子が、超音波処理/高速均質化によって調製され得る。超音波処理および高速均質化の両方の組合せが、より小さい脂質粒子の製造に特に有用である。リポソームは、このプロセスによって、10nm~200nm、例えば、50nm~100nmのサイズ範囲で形成される。
【0182】
3.溶媒蒸発方法
脂質粒子は、溶媒蒸発法によって調製され得る。親油性材料が、水性相中で乳化された水不混和性有機溶媒(例えばシクロヘキサン)に溶解される。溶媒を蒸発させると、粒子の分散液が、水性媒体中での脂質の沈殿によって形成される。温度、圧力、溶媒の選択などのパラメータを用いて、粒径および分布を制御することができる。溶媒蒸発速度は、圧力の増加/低下または温度の増加/低下によって調整され得る。
【0183】
4.溶媒乳化-拡散方法
脂質粒子は、溶媒乳化-拡散方法によって調製され得る。脂質が、まず、エタノールおよびアセトンなどの有機相に溶解される。酸性水性相を用いて、ゼータ電位を調整し、脂質コアセルベーションを誘発する。連続フローモードが、水およびアルコールの連続的な拡散を可能にし、脂溶性を低下させ、それにより、熱力学的な不安定性を生じさせ、リポソームを生成する。
【0184】
5.超臨界流体法
リポソームおよび固体脂質粒子を含む脂質粒子が、超臨界流体法から調製され得る。超臨界流体法は、他の調製方法に使用される有機溶媒の代替を用いるかまたはその量を減少させるという利点を有する。脂質、封入される活性薬剤、および賦形剤は、超臨界溶媒中で、高圧で溶媒和され得る。超臨界溶媒は、最も一般的なCOであるが、他の超臨界溶媒が当該技術分野において公知である。脂質の溶解度を増加させるために、少量の共溶媒が使用され得る。エタノールが、一般的な共溶媒であるが、製剤に安全であると一般に見なされる他の少量の有機溶媒が使用され得る。脂質粒子、脂質ミセル、リポソーム、または固体脂質粒子は、超臨界溶液の膨張によって、または非溶媒水性相中への注入によって得られる。粒子形成および粒径分布が、超臨界溶媒、共溶媒、非溶媒、温度、圧力などを調整することによって制御され得る。
【0185】
6.マイクロエマルションベースの方法
脂質粒子を作製するためのマイクロエマルションベースの方法は、当該技術分野において公知である。これらの方法は、多相系、通常二相系の希釈に基づいている。脂質粒子の生成のためのエマルション法は、一般に、少量の水性媒体を、脂質を含有するより多い量の不混和性有機溶液に加えることによる油中水型エマルションの形成を含む。混合物は、撹拌されて、有機溶媒全体にわたって水性媒体を微小な液滴として分散させ、脂質は、有機相と水性相との間の境界において自然に整列して単層になる。液滴のサイズは、圧力、温度、適用される撹拌および存在する脂質の量によって制御される。
【0186】
油中水型エマルションは、ダブルエマルションの形成によってリポソーム懸濁液に変換され得る。ダブルエマルションでは、水滴を含有する有機溶液が、大量の水性媒体に加えられ、撹拌されて、水中油中水型エマルションを生成する。形成される脂質粒子のサイズおよびタイプは、脂質、温度、圧力、共界面活性剤、溶媒などの選択および量によって制御され得る。
【0187】
7.噴霧乾燥方法
ポリマー粒子の作製について上述されるものと同様の噴霧乾燥方法を用いて、固体脂質粒子を生成することができる。典型的に、この方法は、70℃を超える融点を有する脂質で使用される。
【0188】
ある実施形態において、本発明のコンジュゲートは、単一の水中油型エマルション方法を用いて、ポリマー粒子に封入され得る。非限定的な例として、コンジュゲートおよび好適なポリマーまたはブロックコポリマーまたはポリマー/ブロックコポリマーの混合物が、限定はされないが、ジクロロメタン(DCM:dichloromethane)、酢酸エチル(EtAc:ethyl acetate)またはクロロホルムなどの有機溶媒に溶解されて、油相が形成される。限定はされないが、ジメチルホルムアミド(DMF:dimethyl formamide)、アセトニトリル(CAN:acetonitrile)またはベンジルアルコール(BA:benzyl alcohol)などの共溶媒を用いて、粒子のサイズを制御し、および/またはコンジュゲートを可溶化し得る。製剤に使用されるポリマーとしては、限定はされないが、PLA97-b-PEG5、PLA35-b-PEG5およびPLA16-b-PEG5コポリマーが挙げられる。
【0189】
ある実施形態において、粒子製剤は、本発明のコンジュゲートの親油性を変化させることによって調製され得る。親油性は、コンジュゲートと、様々な対イオンとの疎水性イオン対または疎水性イオン対形成(HIP)を用いて変化され得る。HIPは、本発明のコンジュゲートの溶解度を変化させる。水溶解度が低下し得、有機相への溶解度が増加し得る。
【0190】
任意の好適な薬剤を用いて、対イオンを提供して、本発明のコンジュゲートとのHIP複合体を形成し得る。ある実施形態において、HIP複合体は、粒子の製剤化の前に形成され得る。
【0191】
V.コンジュゲートおよび粒子を使用する方法
本明細書に記載されるコンジュゲートまたは粒子は、必要に応じて、任意の過剰増殖性疾患、代謝性疾患、感染症、または癌を治療するために投与され得る。製剤は、免疫付与に使用され得る。製剤は、注射によって、経口的に、または局所的に、典型的に粘膜表面に(肺内、鼻腔、経口、口腔、舌下、経膣的に、経直腸的に)または眼に(眼内にもしくは経眼的に)投与され得る。
【0192】
様々な実施形態において、癌に罹患した対象を治療するための方法が提供され、この方法は、治療有効量の、本明細書に記載されるコンジュゲートまたは粒子を、癌に罹患した、癌に罹患した疑いのある、または癌に罹患しやすい対象に投与することを含む。本発明によれば、癌は、無制御な細胞増殖、例えば、過剰増殖によって特徴付けられる任意の疾患または病気を包含する。癌は、腫瘍、例えば、固形腫瘍または任意の新生物によって特徴付けられ得る。
【0193】
ある実施形態において、癌は、固形腫瘍である。大型薬剤分子は、固形腫瘍における浸透が限られている。大型薬剤分子の浸透は遅い。一方、本発明のコンジュゲートなどの小分子は、迅速にかつより深く固形腫瘍に浸透し得る。薬剤の浸透深さに関して、大型の分子は、より耐久性の高い薬物動態を有するにもかかわらず、あまり浸透しない。本発明のコンジュゲートなどの小分子は、より深く浸透する。ドレハー(Dreher)ら(ドレハー(Dreher)ら著、ジャーナル・オブ・ザ・ナショナル・キャンサー・インスティテュート(JNCI)、第98(5)巻:335(2006)(この内容は、全体が参照により本明細書に援用される))は、様々なサイズを有するデキストランの、腫瘍異種移植片への浸透を研究した。ドレハー(Dreher)の図6(本出願の図1を参照)および表1に要約されるように、3.3kDaまたは10kDaの分子量を有するデキストランは、腫瘍組織への迅速で深い浸透を示した(腫瘍の血管表面から35um超)。しかしながら、40kDa、70kDaまたは2mDaのサイズのデキストランは、3.3kDaまたは10kDaのデキストランよりはるかに少なく浸透した。70kDaのデキストランは、腫瘍の血管表面から約15umに達したに過ぎなかった。本発明のコンジュゲートは、3.3kDaおよび10kDaのデキストランと同等の分子量を有する一方、抗体薬剤コンジュゲートは、少なくとも70kDaのデキストランと同程度に大きい分子量を有する。したがって、本発明のコンジュゲートは、固形腫瘍の中心/中央に深くかつ迅速に浸透し得る。
【0194】
一実施形態において、本発明のコンジュゲートは、腫瘍の血管表面から固形腫瘍中の少なくとも約25μm、約30μm、約35μm、約40μm、約45μm、約50μm、約75μm、約100μm、約150μm、約200μm、約250μm、約300μm、約400μm、約500μm、約600μm、約700μm、約800μm、約900μm、約1000μm、約1100μm、約1200μm、約1300μm、約1400μmまたは約1500μmまで達する。ゼロの距離は、腫瘍の血管表面として定義され、ゼロより大きい全ての距離は、最も近い血管表面までの三次元で測定された距離として定義される。
【0195】
別の実施形態において、本発明のコンジュゲートは、腫瘍の中心に浸透する。本明細書において使用される際の腫瘍の「中心」は、腫瘍の中央領域を指す。腫瘍の中心領域の任意の部分から腫瘍の血管表面までの距離は、腫瘍の長さまたは幅の約30%~約50%である。腫瘍の中心領域の任意の部分から腫瘍の中心点までの距離は、腫瘍の長さまたは幅の約20%未満である。腫瘍の中心領域は、およそ腫瘍の中心1/3である。
【0196】
別の実施形態において、本発明のコンジュゲートは、本発明のコンジュゲートは、固形腫瘍の中間に浸透する。本明細書において使用される際の腫瘍の「中間」は、腫瘍の中間領域を指す。腫瘍の中間領域の任意の部分から腫瘍の血管表面までの距離は、腫瘍の長さまたは幅の約15%~約30%である。腫瘍の中間領域の任意の部分から腫瘍の中心点までの距離は、腫瘍の長さまたは幅の約20%~約35%である。腫瘍の中間領域は、およそ腫瘍の中心1/3から腫瘍の外側1/3の間である。
【0197】
ある実施形態において、対象は、本来ならコンジュゲートまたは粒子による治療の適応がない対象であり得る。ある実施形態において、方法は、限定はされないが、哺乳動物癌細胞を含む癌細胞の使用を含む。ある場合には、哺乳動物癌細胞は、ヒト癌細胞である。
【0198】
ある実施形態において、本教示のコンジュゲートまたは粒子は、癌および/または腫瘍の成長を阻害することが分かっている。それらはまた、細胞増殖を含め、侵襲、および/または転移を低減することができ、それによって、それらは癌の治療に有用になる。
【0199】
ある実施形態において、本教示のコンジュゲートまたは粒子を用いて、腫瘍または癌の成長を防ぎ、および/または腫瘍または癌の転移を防ぎ得る。ある実施形態において、本教示の組成物を用いて、癌を縮小または破壊し得る。
【0200】
ある実施形態において、本明細書において提供されるコンジュゲートまたは粒子は、癌細胞の増殖を阻害するのに有用である。ある実施形態において、本明細書において提供されるコンジュゲートまたは粒子は、細胞増殖を阻害する、例えば、細胞増殖の速度を阻害する、細胞増殖を防ぐ、および/または細胞死を誘導するのに有用である。一般に、本明細書に記載されるコンジュゲートまたは粒子は、癌細胞の細胞増殖を阻害し得るか、または癌細胞の増殖を阻害し、および/または癌細胞の細胞死を誘導する両方を行い得る。ある実施形態において、細胞増殖は、治療なしの細胞と比較して、本発明のコンジュゲートまたは粒子による治療後に、少なくとも約25%、約50%、約75%、または約90%低減される。ある実施形態において、細胞周期停止マーカホスホヒストンH3(PH3またはPHH3)が、治療なしの細胞と比較して、本発明のコンジュゲートまたは粒子による治療後に、少なくとも約50%、約75%、約100%、約200%、約400%または約600%増加される。ある実施形態において、細胞アポトーシスマーカの切断型カスパーゼ-3(CC3)が、治療なしの細胞と比較して、本発明のコンジュゲートまたは粒子による治療後に、少なくとも50%、約75%、約100%、約200%、約400%または約600%増加される。
【0201】
さらに、ある実施形態において、本発明のコンジュゲートまたは粒子は、複数のタイプの腫瘍において、サイズ(重量、表面積または容積)の正味の値として測定されるかまたは経時的な速度として測定されるかにかかわらず、腫瘍成長を阻害するのに有効である。
【0202】
ある実施形態において、腫瘍のサイズは、本発明のコンジュゲートまたは粒子による治療後に、約60%以上減少される。ある実施形態において、腫瘍のサイズは、重量、および/または面積および/または容積の測定によって、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、少なくとも約100%減少される。
【0203】
本教示の方法によって治療可能な癌は、一般に、哺乳動物において発生する。哺乳動物としては、例えば、ヒト、非ヒト霊長類、イヌ、ネコ、ラット、マウス、ウサギ、フェレット、モルモット、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、およびウシが挙げられる。様々な実施形態において、癌は、肺癌、乳癌、例えば、変異BRCA1および/または変異BRCA2乳癌、非BRCA関連乳癌、大腸癌、卵巣癌、膵臓癌、大腸癌、膀胱癌、前立腺癌、子宮頸癌、腎臓癌、白血病、中枢神経系癌、骨髄腫、および黒色腫である。
【0204】
ある実施形態において、癌は、限定はされないが、小細胞肺癌(SCLC)、副腎髄質腫瘍(例えば、褐色細胞腫、神経芽細胞腫、神経節細胞腫、または傍神経節腫)、胃腸膵神経内分泌腫瘍(例えば、カルチノイド、ガストリノーマ、グルカゴノーマ、血管作動性腸管ポリペプチド分泌腫瘍、膵ポリペプチド分泌腫瘍、または非機能性胃腸膵腫瘍)、甲状腺髄様癌、皮膚メルケル細胞腫、下垂体腺腫、および膵臓癌などの神経内分泌癌である。ソマトスタチン受容体SSTR2は、神経内分泌癌の50~90%で過剰発現する。ある実施形態において、神経内分泌癌は、原発性神経内分泌癌である。ある実施形態において、神経内分泌癌は、神経内分泌転移である。神経内分泌転移は、対象の肝臓、肺、骨、または脳にあり得る。特定の実施形態において、癌は、脳腫瘍、ヒト肺癌、卵巣癌、膵臓癌または大腸癌である。
【0205】
一実施形態において、本明細書に記載されるコンジュゲートもしくは粒子または本明細書に記載されるコンジュゲートもしくは粒子を含有する製剤を用いて、小細胞肺癌を治療する。肺癌に罹患した患者の約12%~15%が、小細胞肺癌に罹患している。転移性小細胞肺癌の生存率は低い。診断後の5年生存率は、5%未満である。米国での小細胞肺癌の発生率は、約26K~30Kである。これらの患者の中でも、約40%~80%が、SSTR2陽性である。
【0206】
ある実施形態において、本明細書に記載されるコンジュゲートもしくは粒子または本明細書に記載されるコンジュゲートもしくは粒子を含有する製剤を用いて、ソマトスタチン受容体を発現または過剰発現する腫瘍を有する患者を治療する。このような患者は、限定はされないが、放射性核種イメージング剤、放射性標識ソマトスタチン類似体イメージング剤、SSTRシンチグラフィまたはSSTR陽電子放射断層撮影法(PET:positron emission tomography)を用いるなど、当該技術分野において公知の任意の方法で同定され得る。一実施形態において、111インジウム(インジウム111)標識ペンテトレオチドシンチグラフィ(オクトレオスキャン(OctreoScan)(商標))を用いて、SSTR発現腫瘍を有する患者を同定する。別の実施形態において、PETイメージングにおいて、68Ga-DOTA-TATE、68Ga-DOTA-TOC、または68Ga-DOTA-NOCなどの68Gaコンジュゲートを用いて、SSTR発現腫瘍を有する患者を同定する。インジウム111標識ペンテトレオチドシンチグラフィで検出された陽性スキャン結果を示す患者は、本発明のコンジュゲートまたは粒子で治療される。
【0207】
一実施形態において、本明細書に記載されるコンジュゲートもしくは粒子または本明細書に記載されるコンジュゲートもしくは粒子を含有する製剤を用いて、局所進行性または転移性の高悪性度神経内分泌癌(NEC:neuroendocrine carcinoma)に罹患していることが組織学的に証明された患者を治療する。ある実施形態において、患者は、原発部位不明または任意の肺外部位の小細胞および大細胞神経内分泌癌を有し得る。ある実施形態において、患者は、Ki-67>30%である場合、高分化型G3神経内分泌新生物を有し得る。ある実施形態において、患者は、小細胞または大細胞組織学の場合、前立腺の神経内分泌前立腺癌(デノボまたは治療中に発生した)を有し得る。ある実施形態において、高悪性度(小細胞または大細胞)NEC成分が、元の試料またはその後の生検の50%超を占める場合、患者は、混合腫瘍、例えば、複合型腺神経内分泌癌(MANEC:mixed adenoneuroendocrine carcinoma)または混合扁平上皮または腺房細胞NECを有し得る。ある実施形態において、患者は、去勢抵抗性前立腺癌(CRPC:castrate resistant prostate cancer)を有し得る。ある実施形態において、患者は、上記の病態のいずれかを有するか、または有さないかによって、選択または層別化され得る。
【0208】
ある実施形態において、コンジュゲート57またはその薬学的に許容される塩は、膵臓癌、消化管(GI)癌(小腸癌、胃癌、直腸癌、回腸癌、結腸癌、小腸癌、大腸癌、胃癌など)、肺癌(肺の大細胞神経内分泌癌(LCNEC:large-cell neuroendocrine carcinoma)、小細胞肺癌(SCLC)など)、または褐色細胞腫であると診断された患者に投与される。ある実施形態において、治療される患者は、このような治療の前に、上記の病態のいずれかを有するか、または有さないか、有すると診断された患者であり得る。
【0209】
ある実施形態において、患者は、転移性癌を有する。ある実施形態において、患者は、リンパ節、肝臓、肺、腹膜、背中、骨、子宮の外部の軟組織、腎臓、または脊柱への転移を有する。ある実施形態において、治療される患者は、このような治療の前に、上記の病態のいずれかを有するか、または有さないか、有すると診断された患者であり得る。
【0210】
ある実施形態において、患者は、以前に癌治療・療法を受けたことがある。ある実施形態において、患者は、ランレオチド、mTORキナーゼ阻害剤、ルタセラ(Lutathera)(ルテチウム-177(Lu-177)標識ソマトスタチン類似体ペプチド)、スニチニブ、シクロホスファミド、ビンクリスチン、ダカルバジン、オクトレオチド、カーボ(carbo)、ストレプトゾシン、FOLFIRI療法(フォリン酸(例えば、ロイコボリン)、フルオロウラシル(5-FU)、およびイリノテカン(例えば、カンプトサー(Camptosar))を含む併用療法)で以前に治療されたことがある。
【0211】
ある実施形態において、患者は男性である。ある実施形態において、患者は女性である。ある実施形態において、患者は、少なくとも18歳である。ある実施形態において、患者は、少なくとも40歳である。ある実施形態において、患者は、少なくとも60歳である。
【0212】
本発明のコンジュゲートまたは粒子の特徴は、腫瘍成長を阻害する、例えば遅延または停止させる有効性を維持しながら、生物に対して比較的低い毒性を有する。本明細書において使用される際、「毒性」は、細胞、組織、生物または細胞環境にとって有害または有毒である物質または組成物の能力を指す。低い毒性は、細胞、組織、生物または細胞環境にとって有害または有毒である物質または組成物の低下した能力を指す。このような低下したまたは低い毒性は、標準測定値に対するものであるか、治療に対するものであるかまたは治療がない場合に対するものであり得る。例えば、本発明のコンジュゲートまたは粒子は、単独で投与される活性薬剤部分Zより低い毒性を有し得る。DM1を含むコンジュゲートについては、それらの毒性は、単独で投与されるDM1より低い。
【0213】
毒性はさらに、対象の体重減少に対して測定されてもよく、ここで、体重の15%超、20%超または30%超の体重減少が毒性を示す。嗜眠および全身倦怠感を含む患者の症状呈示の測定基準などの毒性の他の測定基準も測定され得る。好中球減少症、血小板減少症、白血球(WBC:white blood cell)数、全血球(CBC:complete blood cell)数も、毒性の測定基準であり得る。毒性の薬理学的指標としては、アミノトランスフェラーゼ(AST/ALT)値の上昇、神経毒性、腎損傷、胃腸障害などが挙げられる。一実施形態において、本発明のコンジュゲートまたは粒子は、対象の体重の有意な変化を引き起こさない。対象の体重減少は、本発明のコンジュゲートまたは粒子による治療後、約30%、約20%、約15%、約10%、または約5%未満である。別の実施形態において、本発明のコンジュゲートまたは粒子は、対象のAST/ALT値の有意な増加を引き起こさない。対象のASTまたはALT値は、本発明のコンジュゲートまたは粒子による治療後、約30%、約20%、約15%、約10%、または約5%未満増加される。さらに別の実施形態において、本発明のコンジュゲートまたは粒子は、本発明のコンジュゲートまたは粒子による治療後、対象のCBCまたはWBC数の有意な変化を引き起こさない。対象のCBCまたはWBC値は、本発明のコンジュゲートまたは粒子による治療後、約30%、約20%、約15%、約10%、または約5%未満低下される。
【0214】
ある実施形態において、コンジュゲート57が、患者に投与され、患者の白血球(WBC)、赤血球(RBC:red blood cell)、ヘモグロビン、血小板、好中球、リンパ球、血中尿素窒素(BUN:blood urea nitrogen)、クレアチニン、グルコース、アルブミン、総タンパク量、カルシウム値、マグネシウム値、アルカリホスファターゼ、総ビリルビン、直接ビリルビン、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST:aspartate aminotransferase)、アラニンミノトランスフェラーゼ(ALT:alanine aminotransferase)、アミラーゼ、リパーゼ、国際標準比(INR:international normalized ratio)、プロトロンビン時間(PT:prothrombin time)、および/または活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT:activated partial thromboplastin time)のうちのいずれか1つ以上が測定される。
【0215】
ある実施形態において、コンジュゲート57を含む医薬組成物の治療に関連する有害作用(AE:adverse effect)としては、吐き気、疲労、アラニンミノトランスフェラーゼの増加、便秘、下痢、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼの増加、発熱、腹部膨満、腹痛、貧血、関節痛、血中アルカリホスファターゼの増加、血中クレアチニンの増加、食欲減退、消化不良、高血圧症、低アルブミン血症、低血圧症、不眠症、リパーゼの増加、四肢の疼痛、感覚異常、骨盤痛、および/または尿路感染症が挙げられる。
【0216】
ある実施形態において、患者集団の30%未満が、何らかの1つ以上の治療に関連する有害作用を有する。ある実施形態において、単一の患者に、全治療時間の30%未満において治療に関連する有害作用が生じる。
【0217】
ある実施形態において、コンジュゲート57で治療された患者は、より少ないか、減少された循環中の腫瘍細胞を有するか、または循環中の腫瘍細胞を有さない。
ある実施形態において、コンジュゲート57は、患者において約1.8時間の半減期を有する。
【0218】
ある実施形態において、本発明のコンジュゲートまたは粒子は、少なくとも1つのさらなる活性薬剤と組み合わされる。活性薬剤は、任意の好適な薬剤であり得る。それは、癌を治療するための薬剤などの、本明細書に記載される任意の活性薬剤から選択され得る。それはまた、癌症状緩和薬であり得る。症状緩和薬の非限定的な例としては、オクトレオチドまたはランレオチド;インターフェロン、シプロヘプタジンまたは任意の他の抗ヒスタミン剤が挙げられる。ある実施形態において、本発明のコンジュゲートまたは粒子は、さらなる活性薬剤との薬剤相互干渉作用を有さない。一実施形態において、本発明のコンジュゲートまたは粒子は、シトクロムP450(CYP)アイソザイムを阻害しない。CYPアイソザイムは、CYP3A4ミダゾラム(Midazolam)、CYP3A4テストステロン、CYP2C9、CYP2D6、CYP1A2、CYP2C8、CYP2B6、およびCYP2C19を含み得る。さらなる活性薬剤は、本発明のコンジュゲートまたは粒子と同時に投与され得る。
【0219】
ある実施形態において、さらなる活性薬剤は、任意のソマトスタチン受容体に結合しないことがある。一実施形態において、さらなる活性薬剤は、癌症状緩和薬である。症状緩和薬は、下痢または化学療法もしくは放射線治療の副作用を軽減し得る。一例において、本発明のコンジュゲートまたは粒子は、テロトリスタットまたはテロトリスタットエチプレート(LX1032、レキシコン(Lexicon)(登録商標))などのカルチノイド症候群の症状緩和薬と組み合わされ得る。テロトリスタットエチプレートは、チェン(Chen)らの国際公開第2013059146号(この内容は、全体が参照により本明細書に援用される)に開示されるテロトリスタットの結晶性馬尿酸塩である。テロトリスタット、その塩および結晶形態は、当該技術分野において公知の方法によって得られる(デバサガヤラジ(Devasagayaraj)らに付与された米国特許第7709493号明細書(この内容は、全体が参照により本明細書に援用される)を参照)。米国特許第7709493号明細書に開示される任意の他の化合物が、本発明のコンジュゲートまたは粒子と組み合わされ得る。
【0220】
【化12】

別の例において、本発明のコンジュゲートまたは粒子は、マイトマイシンC、ビンブラスチンおよびシスプラチンなどの中等量の化学療法剤と組み合わされ得る(エリス(Ellis)ら著、ブリティッシュ・ジャーナル・オブ・キャンサー(Br J Cancer)、第71巻(2):366~370(1995)(この内容は、全体が参照により本明細書に援用される)を参照)。
【0221】
本明細書に記載されるコンジュゲートもしくは粒子または本明細書に記載されるコンジュゲートもしくは粒子を含有する製剤は、それを必要とする個体または患者への、治療用、予防用、または診断用薬剤の選択的組織送達に使用され得る。例えば、本発明のDM1コンジュゲートまたは粒子を用いて、DM1を選択的組織に送達する。これらの組織は、腫瘍組織であり得る。投与計画は、最適な所望の反応(例えば、治療的または予防的反応)を提供するように調整され得る。例えば、単回ボーラスが投与されてもよく、数回の分割用量が、時間をかけて投与されてもよく、または用量が、治療状況の緊急性が示すのに応じて比例的に減少または増加され得る。本明細書において使用される際の単位剤形は、治療される哺乳動物対象への単位投与量として適した物理的に個別の単位を指し;各単位は、所望の治療薬を生成するように計算された所定の量の活性化合物を含有する。
【0222】
様々な実施形態において、粒子内に含まれるコンジュゲートが、制御された形で放出される。放出は、インビトロまたはインビボであり得る。例えば、米国薬局方(U.S.Pharmacopeia)およびそのバリエーションに規定されるものを含む、特定の条件下で粒子が放出試験に供され得る。
【0223】
様々な実施形態において、粒子内に含まれるコンジュゲートの約90%未満、約80%未満、約70%未満、約60%未満、約50%未満、約40%未満、約30%未満、約20%未満が、粒子が放出試験の条件に曝された最初の1時間以内に放出される。ある実施形態において、粒子内に含まれるコンジュゲートの約90%未満、約80%未満、約70%未満、約60%未満、または約50%未満が、粒子が放出試験の条件に曝された最初の1時間以内に放出される。特定の実施形態において、粒子内に含まれるコンジュゲートの約50%未満が、粒子が放出試験の条件に曝された最初の1時間以内に放出される。
【0224】
インビボで放出されるコンジュゲートに関して、例えば、対象に投与される粒子内に含まれるコンジュゲートは、対象の身体から保護されてもよく、身体はまた、コンジュゲートが粒子から放出されるまでコンジュゲートから隔離され得る。
【0225】
したがって、ある実施形態において、コンジュゲートは、粒子が対象の身体内に送達されるまで、実質的に粒子内に含まれ得る。例えば、総コンジュゲートの約90%未満、約80%未満、約70%未満、約60%未満、約50%未満、約40%未満、約30%未満、約20%未満、約15%未満、約10%未満、約5%未満、または約1%未満が、粒子が対象の身体、例えば治療部位に送達される前に、粒子から放出される。ある実施形態において、コンジュゲートは、長期間にわたってまたはバーストによって放出され得る(例えば、コンジュゲートの量が短期間で放出された後、実質的にコンジュゲートが放出されない期間が続く)。例えば、コンジュゲートは、6時間、12時間、24時間、または48時間にわたって放出され得る。特定の実施形態において、コンジュゲートは、1週間または1ヶ月間にわたって放出される。
【0226】
VI.キットおよびデバイス
本発明は、本発明の方法を好都合におよび/または有効に実施するための様々なキットおよびデバイスを提供する。典型的に、キットは、ユーザが対象の複数の治療を行う、および/または複数の実験を行うことを可能にするのに十分な量および/または数の構成要素を含む。
【0227】
一実施形態において、本発明は、本発明のコンジュゲートおよび/または粒子または本発明のコンジュゲートおよび/または粒子の組合せを、任意選択的に、任意の他の活性薬剤と組み合わせて含む、インビトロまたはインビボで腫瘍細胞成長を阻害するためのキットを提供する。
【0228】
キットは、包装および説明書および/または製剤組成物を形成するための送達剤(delivery agent)をさらに含み得る。送達剤は、生理食塩水、緩衝液、または本明細書に開示される任意の送達剤を含み得る。各成分の量は、一貫した再現可能な高濃度の生理食塩水または単純緩衝液製剤を可能にするように変化され得る。成分はまた、所定の期間にわたって、および/または様々な条件下で、緩衝液中のコンジュゲートおよび/または粒子の安定性を向上させるために変化され得る。
【0229】
本発明は、本発明のコンジュゲートおよび/または粒子を組み込み得るデバイスを提供する。これらのデバイスは、ヒト患者などの、それを必要とする対象に即時送達するように利用可能な安定した製剤を含有する。ある実施形態において、対象は、癌に罹患している。
【0230】
デバイスの非限定的な例としては、ポンプ、カテーテル、針、経皮パッチ、加圧嗅覚器官送達デバイス、イオントフォレシスデバイス、多層マイクロ流体デバイスが挙げられる。デバイスは、単回、複数回または分割投与計画にしたがって、本発明のコンジュゲートおよび/または粒子を送達するのに用いられ得る。デバイスは、本発明のコンジュゲートおよび/または粒子を、生体組織を通して、皮内に、皮下に、または筋肉内に送達するのに用いられ得る。
【0231】
VII.定義
本明細書において使用される際の「化合物」という用語は、示される構造の全ての立体異性体、幾何異性体、互変異性体、および同位体を含むことが意図される。本出願において、化合物は、コンジュゲートと同義的に使用される。したがって、本明細書において使用される際のコンジュゲートも、示される構造の全ての立体異性体、幾何異性体、互変異性体、および同位体を含むことが意図される。
【0232】
本明細書に記載される化合物は、不斉(例えば、1つ以上の立体中心を有する)であり得る。特に示されない限り、鏡像異性体およびジアステレオマーなどの全ての立体異性体が意図される。非対称に置換された炭素原子を含有する本開示の化合物は、光学活性形態またはラセミ体形態で分離され得る。ラセミ混合物の分割または立体選択的合成によるなどの、光学活性出発材料から光学活性形態をどのように調製するかに関する方法が、当該技術分野において公知である。オレフィン、C=N二重結合などの多くの幾何異性体も、本明細書に記載される化合物中に存在することができ、全てのこのような安定した異性体が、本開示において想定される。本開示の化合物のシスおよびトランス幾何異性体が記載され、異性体の混合物としてまたは別々の異性体として分離され得る。
【0233】
本開示の化合物は、互変異性体も含む。互変異性体は、単結合の、隣接する二重結合との交換、プロトンの同時の移動から生じる。互変異性体は、同じ実験式および全電荷を有する異性体プロトン化状態であるプロトトロピー互変異性体を含む。プロトトロピー互変異性体の例としては、ケトン-エノール対、アミド-イミド酸対、ラクタム-ラクチム対、アミド-イミド酸対、エナミン-イミン対、およびプロトンが複素環系の2つ以上の位置を占め得る環状形態、例えば、1H-および3H-イミダゾール、1H-、2H-および4H-1,2,4-トリアゾール、1H-および2H-イソインドール、ならびに1H-および2H-ピラゾールが挙げられる。互変異性体は、平衡状態であり得るか、または適切な置換によって一形態に立体的に固定され得る。
【0234】
本開示の化合物は、中間体または最終化合物中に存在する原子の同位体の全ても含む。「同位体」は、同じ原子数を有するが、核内の中性子の数が異なることから質量数が異なる原子を指す。例えば、水素の同位体は、トリチウムおよび重水素を含む。
【0235】
本開示の化合物および塩は、常法によって、溶媒和物および水和物を形成するように溶媒または水分子と組み合わせて調製され得る。
本明細書において使用される際の「対象」または「患者」という用語は、例えば、実験目的、治療目的、診断目的、および/または予防目的で、粒子を投与し得る任意の生物を指す。典型的な対象としては、動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウマ、イヌ、ネコ、ハムスター、ラマ、非ヒト霊長類、およびヒトなどの哺乳動物)が挙げられる。
【0236】
本明細書において使用される際の「治療する」または「予防する」という用語は、疾患、障害および/または病態に罹患しやすい可能性があるが、疾患、障害または病態に罹患しているとまだ診断されていない動物に疾患、障害または病態が発生しないように防ぐこと;疾患、障害または病態を阻害する、例えば、その進行を妨げること;ならびに疾患、障害、または病態を軽減する、例えば、疾患、障害および/または病態の退縮を生じさせることを含み得る。疾患、障害、または病態を治療することは、鎮痛薬が疼痛の原因を治療しないとしても、このような薬剤の投与によって対象の疼痛を治療するなど、根本的な病態生理が影響されないとしても、特定の疾患、障害、または病態の少なくとも1つの症状を改善することを含み得る。
【0237】
本明細書において使用される際の「標的」は、標的化された構築物が結合する部位を意味するものとする。標的は、インビボまたはインビトロのいずれかであり得る。特定の実施形態において、標的は、白血病または腫瘍(例えば、脳、肺(小細胞および非小細胞)、卵巣、前立腺、乳房および結腸の腫瘍ならびに他の癌および肉腫)に見られる癌細胞であり得る。さらに他の実施形態において、標的は、ハプテン、エピトープ、受容体、dsDNA断片、炭水化物または酵素などの、標的化部分またはリガンドが結合する分子構造を指し得る。標的は、あるタイプの組織、例えば、神経組織、腸組織、膵臓組織、肝臓、腎臓、前立腺、卵巣、肺、骨髄、または乳房組織であり得る。
【0238】
本方法またはコンジュゲートまたは粒子の標的として用いられ得る「標的細胞」は、一般に、動物細胞、例えば、哺乳類細胞である。本方法を用いて、インビトロで、すなわち、細胞培養物中で、または細胞が動物組織の一部を形成するかもしくは動物組織中で他の形で存在するインビボで、生細胞の細胞機能を改変し得る。したがって、標的細胞は、例えば、血液、リンパ組織、消化管の内側の細胞、例えば口腔粘膜および咽頭粘膜、小腸の絨毛を形成する細胞、大腸の内側の細胞、動物の呼吸器系(鼻道/肺)の内側の細胞(本発明の吸入によって接触され得る)、真皮/表皮細胞、腟および直腸の細胞、胎盤の細胞を含む内臓の細胞およびいわゆる血液脳関門などを含み得る。一般に、標的細胞は、少なくとも1つのタイプのSSTRを発現する。ある実施形態において、標的細胞は、SSTRを発現し、かつ本明細書に記載されるコンジュゲートによって標的化される細胞であり得、コンジュゲートの活性薬剤の放出によって影響される細胞の近傍にある。例えば、腫瘍に近接しているSSTRを発現する血管が標的であり得る一方、この部位で放出される活性薬剤は、腫瘍に影響を与えることになる。
【0239】
「治療効果」という用語は、当該技術分野において認識されており、薬理活性物質によって引き起こされる動物、特に哺乳動物、より具体的には、ヒトにおける局所または全身作用を指す。したがって、この用語は、動物、例えば、ヒトの望ましい身体または精神の発達および状態の向上における疾患、障害または病態の診断、治癒、緩和、治療または予防に使用することが意図される任意の物質を意味する。
【0240】
「調節(modulation)」という用語は、当該技術分野において認識されており、反応の上方制御(すなわち、活性化または刺激)、下方制御(すなわち、阻害または抑制)、またはこれら2つを組み合わせてもしくは別個に指す。調節は、一般に、治療された実体の内部または外部であり得るベースラインまたは基準と比較される。
【0241】
本明細書において使用される際の「非経口投与」は、消化管(経腸)または非侵襲性局所経路を介する以外の任意の方法による投与を意味する。例えば、非経口投与は、静脈内、皮内、腹腔内、胸膜内、気管内、骨内、脳内、髄腔内、筋肉内、皮下、結膜下への、注射によるか、および注入による患者への投与を含み得る。
【0242】
本明細書において使用される際の「局所投与」は、皮膚、開口部、または粘膜への非侵襲性投与を意味する。局所投与は、局所的に送達され得、すなわち、治療薬は、全身曝露なしにまたは最小限の全身曝露で、送達領域に局所作用を与えることができる。一部の局所製剤は、例えば、個体の血流への吸着によって、全身作用を与えることができる。局所投与としては、限定はされないが、皮膚および経皮投与、口腔投与、鼻腔内投与、腟内投与、膀胱内投与、眼投与、および直腸投与が挙げられる。
【0243】
本明細書において使用される際の「経腸投与」は、胃腸管を通した吸収による投与を意味する。経腸投与としては、経口および舌下投与、胃内投与、または直腸投与が挙げられる。
【0244】
本明細書において使用される際の「経肺投与」は、吸入または気管内投与による肺内への投与を意味する。本明細書において使用される際、「吸入」という用語は、肺胞への空気の取り込みを指す。空気の取り込みは、口または鼻を介して行われ得る。
【0245】
本明細書において同義的に使用される際の「十分な」および「有効な」という用語は、1つ以上の所望の結果を達成するのに必要とされる量(例えば、質量、容積、投与量、濃度、および/または期間)を指す。「治療有効量」は、少なくとも1つの症状または特定の病態もしくは障害の測定可能な改善または予防をもたらし、平均余命の測定可能な向上をもたらし、または患者のクオリティ・オブ・ライフを概して向上させるのに必要とされる少なくとも最小の濃度である。したがって、治療有効量は、特定の生物活性分子および治療される特定の病態または障害に応じて決まる。抗体などの多くの活性薬剤の治療有効量は、当該技術分野において公知である。例えば、特定の障害を治療するための、本明細書に記載される化合物および組成物の治療有効量は、十分に医師などの当業者の技能の範囲内である技術によって決定され得る。
【0246】
本明細書において同義的に使用される際の「生物活性薬剤」および「活性薬剤」という用語は、限定はされないが、身体内で局所的または全身的に作用する生理活性または薬理活性物質を含む。生物活性薬剤は、疾患または病気の治療(例えば、治療用薬剤)、予防(例えば、予防用薬剤)、診断(例えば、診断用薬剤)、治癒または緩和に使用される物質、身体の構造もしくは機能に影響を与える物質、または所定の生理学的環境に置かれた後に生物学的に活性になるかもしくはより活性になるプロドラッグである。
【0247】
「プロドラッグ」という用語は、インビトロおよび/またはインビボで生物学的に活性な形態に変換される、有機小分子、ペプチド、核酸またはタンパク質を含む薬剤を指す。プロドラッグは、ある状況において、親化合物(活性化合物)より投与が容易であり得るため、有用であり得る。例えば、プロドラッグは、経口投与によって生物学的に利用可能であり得るが、親化合物は生物学的に利用可能でない。プロドラッグはまた、親薬剤と比較して、医薬組成物への向上した溶解度を有し得る。プロドラッグはまた、親より毒性が低いことがある。プロドラッグは、酵素過程および代謝加水分解を含む、様々な機構によって親薬剤に変換され得る。ハーパーN.J.(Harper,N.J.)著(1962)薬物潜在化(Drug Latentiation)、ユッカー(Jucker)編、薬物研究の進歩(Progress in Drug Research)、4:221~294;モロゾウィッチ(Morozowich)ら著(1977)、プロドラッグ設計への身体有機成分の応用(Application of Physical Organic Principles to Prodrug Design)、E.B.ロシュ(E.B.Roche)編、プロドラッグおよび類似体によるバイオ医薬品特性の設計(Design of Biopharmaceutical Properties
through Prodrugs and Analogs)、米国薬剤師会(APhA);アカデミー・オブ・ファーマシューティカル・リサーチ・アンド・サイエンス(Acad.Pharm.Sci.);E.B.ロシュ(E.B.Roche)編(1977)、薬剤設計、理論および応用における薬剤の生物可逆性担体(Bioreversible Carriers in Drug in Drug Design,Theory and Application)、米国薬剤師会(APhA);H.バンドガード(H.Bundgaard)編(1985)、プロドラッグの設計(Design of Prodrugs)、エルゼビア(Elsevier);ワン(Wang)ら著(1999)、ペプチド薬剤の向上した送達のためのプロドラッグ手法(Prodrug approaches to the improved delivery of peptide drug)、カレント・ファーマシューティカル・デザイン(Curr.Pharm.Design.)5(4):265~287;パウレッティ(Pauletti)ら著(1997)、ペプチドバイオアベイラビリティの向上:ペプチドミメティクスおよびプロドラッグ戦略(Improvement in peptide bioavailability:Peptidomimetics and Prodrug Strategies)、アドバンスド・ドラッグ・デリバリー・レビューズ(Adv.Drug.Delivery Rev.)27:235~256;ミズン(Mizen)ら著(1998)、βラクタム系抗生物質の経口送達用プロドラッグとしてのエステルの使用(The Use of Esters as Prodrugs for Oral
Delivery of β-Lactam antibiotics)、ファーマシューティカル・バイオテクノロジー(Pharm.Biotech.)11:345~365;ガイニョー(Gaignault)ら著(1996)、プロドラッグおよび生体前駆体の設計I.担体プロドラッグ(Designing Prodrugs and Bioprecursors I.Carrier Prodrugs)、ザ・プラクティス・オブ・メディシナル・ケミストリー(Pract.Med.Chem.)671~696;M.アスガルネジド(M.Asgharnejad)著(2000)、プロドラッグによる経口薬剤輸送の改善(Improving Oral Drug Transport Via Prodrugs)、G.L.アミドン(G.L.Amidon)、P.I.リー(P.I.Lee)およびE.M.トップ(E.M.Topp)編、製剤系の輸送プロセス(Transport Processes in Pharmaceutical Systems)、マルセル・デッカー(Marcell Dekker)、p.185~218;バラント(Balant)ら著(1990)、様々の投与経路による薬剤吸収の改善のためのプロドラッグ(Prodrugs for the improvement of drug absorption via different
routes of administration)、ヨーロピアン・ジャーナル・オブ・ドラッグ・メタボリズム・アンド・ファーマコキネティクス(Eur.J.Drug Metab.Pharmacokinet.)、15(2):143~53;バリマネ(Balimane)およびシンコ(Sinko)著(1999)、ヌクレオシド類似体の経口吸収における複数のトランスポータの改善(Involvement of multiple transporters in the oral absorption of nucleoside analogues)、アドバンスド・ドラッグ・デリバリー・レビューズ(Adv.Drug Delivery Rev.)、39(1~3):183~209;ブラウン(Browne)著(1997)、ホスフェニトイン(Fosphenytoin)(セレビックス(Cerebyx))、クリニカル・ニューロファーマコロジー(Clin.Neuropharmacol.)20(1):1~12;バンドガード(Bundgaard)著(1979)、薬剤の生物可逆性誘導体化-原理および薬剤の治療効果を改善するための適用性(Bioreversible derivatization of drugs--principle and applicability to improve the therapeutic effects of drugs)、Arch.Pharm.Chemi.86(1):1~39;H.バンドガード(H.Bundgaard)編(1985)、プロドラッグの設計(Design of Prodrugs)、ニューヨーク:エルゼビア(New York:Elsevier);フライシャー(Fleisher)ら著(1996)、向上した経口薬剤送達:溶解度の制限がプロドラッグの使用によって克服される(Improved oral drug delivery:solubility limitations overcome by the use of prodrugs)、アドバンスド・ドラッグ・デリバリー・レビューズ(Adv.Drug Delivery Rev.)19(2):115~130;フライシャー(Fleisher)ら著(1985)、腸内酵素ターゲティングによる胃腸管吸収の改善のためのプロドラッグの設計(Design of prodrugs for improved gastrointestinal absorption by intestinal enzyme targeting)、メソッズ・イン・エンザイモロジー(Methods Enzymol.)112:360~81;ファークワーD(Farquhar D)ら著(1983)、生物学的に可逆的なホスフェート保護基(Biologically Reversible Phosphate-Protective Groups)、ジャーナル・オブ・ファーマシューティカル・サイエンシーズ(J.Pharm.Sci.)、72(3):324~325;ハンH.K.(Han,H.K.)ら著(2000)、薬剤送達を最適化するための標的化プロドラッグ設計(Targeted prodrug design to optimize drug delivery)、米国薬学会(AAPS)PharmSci.、2(1):E6;サヅカY.(Sadzuka Y.)著(2000)、有効なプロドラッグリポソームおよび活性代謝産物への変換(Effective prodrug liposome and conversion to active metabolite)、カレント・ドラッグ・メタボリズム(Curr.Drug Metab.)、1(1):31~48;D.M.ランバート(D.M.Lambert)著(2000)、プロドラッグ担体としての脂質の原理および応用(Rationale and applications of lipids as prodrug carriers)、ヨーロピアン・ジャーナル・オブ・ファーマシューティカル・サイエンシーズ(Eur.J.Pharm.Sci.)、11、補遺2:S15~27;ワンW.(Wang,W.)ら著(1999)、ペプチド薬剤の向上した送達のためのプロドラッグ手法(Prodrug approaches to
the improved delivery of peptide drugs)、カレント・ファーマシューティカル・デザイン(Curr.Pharm.Des.)、5(4):265~87。
【0248】
本明細書において使用される際の「生体適合性」という用語は、任意の代謝産物またはその分解産物とともに、レシピエントにとって一般に非毒性であり、レシピエントに顕著な有害作用を引き起こさない材料を指す。一般的に言えば、生体適合性材料は、患者への投与時に顕著な炎症反応または免疫反応を誘発しない材料である。
【0249】
本明細書において使用される際の「生分解性」という用語は、一般に、生理的条件下で、対象によって代謝、排出、または排泄可能なより小さい単位または化学種に分解または腐食する材料を指す。分解時間は、組成物および形態の関数である。分解時間は、数時間から数週間であり得る。
【0250】
本明細書において使用される際の「薬学的に許容される」という用語は、妥当な医学的判断の範囲内で、米国食品医薬品局(U.S.Food and Drug Administration)などの機関のガイドラインにしたがって、妥当なリスク・ベネフィット比に見合う、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、もしくは他の問題または合併症のない、ヒトおよび動物の組織と接触して使用するのに好適な化合物、材料、組成物、および/または剤形を指す。本明細書において使用される際の「薬学的に許容される担体」は、インビボで組成物の送達を促進する医薬製剤の全ての成分を指す。薬学的に許容される担体としては、限定はされないが、希釈剤、保存剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、膨潤剤、充填剤、安定剤、およびそれらの組合せが挙げられる。
【0251】
本明細書において使用される際の「分子量」という用語は、一般に、材料の質量または平均質量を指す。ポリマーまたはオリゴマーの場合、分子量は、バルクポリマーの相対的平均鎖長または相対的鎖質量を指し得る。実際には、ポリマーおよびオリゴマーの分子量は、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC:gel permeation chromatography)または毛細管粘度測定法を含む様々な方法で推定され、または特徴付けられ得る。GPC分子量は、数平均分子量(M)と対照的に重量平均分子量(M)として報告される。毛細管粘度測定法は、濃度、温度、および溶媒条件の特定の組合せを用いて希釈ポリマー溶液から決定される固有粘度として分子量の推定値を提供する。
【0252】
本明細書において使用される際の「小分子」という用語は、一般に、分子量が2000g/mol未満、1500g/mol未満、1000g/mol未満、800g/mol未満、また500g/mol未満の有機分子を指す。小分子は、非ポリマーおよび/または非オリゴマーである。
【0253】
本明細書において使用される際の「親水性」という用語は、水と容易に相互作用する強極性基を有する物質を指す。
本明細書において使用される際の「疎水性」という用語は、水に対する親和性を欠き;撥水して水を吸収しないだけでなく、水に溶解されず、水と混合されない傾向にある物質を指す。
【0254】
本明細書において使用される際の「親油性」という用語は、脂質に対する親和性を有する化合物を指す。
本明細書において使用される際の「両親媒性」という用語は、親水性および親油性(疎水性)特性を兼ね備えた分子を指す。本明細書において使用される際の「両親媒性材料」は、疎水性またはより疎水性のオリゴマーまたはポリマー(例えば、生分解性オリゴマーまたはポリマー)および親水性またはより親水性のオリゴマーまたはポリマーを含有する材料を指す。
【0255】
本明細書において使用される際の「標的化部分」という用語は、特定の場所に結合するかまたは局在化する部分を指す。部分は、例えば、タンパク質、核酸、核酸類似体、炭水化物、または小分子であり得る。場所は、組織、特定の細胞型、または細胞内コンパートメントであり得る。ある実施形態において、標的化部分は、選択された分子に特異的に結合し得る。
【0256】
本明細書において使用される際の「反応性カップリング基」という用語は、第2の官能基と反応して、共有結合を形成することが可能な任意の化学官能基を指す。反応性カップリング基の選択は、当業者の能力の範囲内である。反応性カップリング基の例としては、第一級アミン(-NH)およびアミン反応性連結基、例えば、イソチオシアネート、イソシアネート、アシルアジド、NHSエステル、塩化スルホニル、アルデヒド、グリオキサール、エポキシド、オキシラン、炭酸塩、ハロゲン化アリール、イミドエステル、カルボジイミド、無水物、およびフルオロフェニルエステルが挙げられる。これらの大部分は、アシル化またはアルキル化のいずれかによってアミンにコンジュゲートする。反応性カップリング基の例としては、アルデヒド(-COH)およびアルデヒド反応性連結基、例えば、ヒドラジド、アルコキシアミン、および第一級アミンが挙げられる。反応性カップリング基の例としては、チオール基(-SH)およびスルフヒドリル反応性基、例えば、マレイミド、ハロアセチル、およびピリジルジスルフィドが挙げられる。反応性カップリング基の例としては、光反応性カップリング基、例えば、アリールアジドまたはジアジリンが挙げられる。カップリング反応は、触媒、熱、pH緩衝液、光、またはそれらの組合せの使用を含み得る。
【0257】
本明細書において使用される際の「保護基」という用語は、特定の反応条件から所望の官能基を保護するために別の所望の官能基に加えられ、および/またはそれを置換し得、所望の官能基を脱保護または露出するために、選択的に除去および/または置換され得る官能基を指す。保護基は、当業者に公知である。好適な保護基としては、グリーン(Greene)およびワッツ(Wuts)著、有機合成における保護基(Protective Groups in Organic Synthesis)、(1991)に記載されるものが挙げられる。酸感受性保護基としては、ジメトキシトリチル(DMT:dimethoxytrityl)、tert-ブチルカルバメート(tBoc)およびトリフルオロアセチル(tFA)が挙げられる。塩基感受性保護基としては、9-フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)、イソブチリル(iBu)、ベンゾイル(Bz)およびフェノキシアセチル(pac)が挙げられる。他の保護基としては、アセトアミドメチル、アセチル、tert-アミルオキシカルボニル、ベンジル、ベンジルオキシカルボニル、2-(4-ビフェニリル)-2-プロピルオキシカルボニル、2-ブロモベンジルオキシカルボニル、tert-ブチル tert-ブチルオキシカルボニル、l-カルボベンゾキサミド-2,2.2-トリフルオロエチル、2,6-ジクロロベンジル、2-(3,5-ジメトキシフェニル)-2-プロピルオキシカルボニル、2,4-ジニトロフェニル、ジチアスクシニル、ホルミル、4-メトキシベンゼンスルホニル、4-メトキシベンジル、4-メチルベンジル、o-ニトロフェニルスルフェニル、2-フェニル-2-プロピルオキシカルボニル、α-2,4,5-テトラメチルベンジルオキシカルボニル、p-トルエンスルホニル、キサンテニル、ベンジルエステル、N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、p-ニトロベンジルエステル、p-ニトロフェニルエステル、フェニルエステル、p-ニトロカーボネート、p-ニトロベンジルカーボネート、トリメチルシリルおよびペンタクロロフェニルエステルが挙げられる。
【0258】
本明細書において使用される際の「活性化エステル」という用語は、アルキルが良好な脱離基であり、アミノ基を有する分子による求核攻撃に対する感受性をカルボニルに与える、カルボン酸のアルキルエステルを指す。したがって、活性化エステルは、アミノリシスを起こしやすく、アミンと反応してアミドを形成する。活性化エステルは、カルボン酸エステル基-COR(ここで、Rは脱離基である)を含有する。
【0259】
「アルキル」という用語は、直鎖状アルキル基、分枝鎖状アルキル基、シクロアルキル(脂環式)基、アルキル置換シクロアルキル基、およびシクロアルキル置換アルキル基を含む、飽和脂肪族基のラジカルを指す。
【0260】
ある実施形態において、直鎖状または分枝鎖状アルキルは、その骨格中に30個以下(例えば、直鎖状についてはC~C30、分枝鎖についてはC~C30)、20個以下、12個以下、または7個以下の炭素原子を有する。同様に、ある実施形態において、シクロアルキルは、それらの環構造中に3~10個の炭素原子を有し、例えば、環構造中に5、6または7個の炭素を有する。本明細書、実施例、および特許請求の範囲全体を通して使用される際の「アルキル」(または「低級アルキル」)という用語は、「非置換アルキル」および「置換アルキル」の両方を含むことが意図され、そのうちの後者は、炭化水素骨格の1つ以上の炭素上の水素を置換する1つ以上の置換基を有するアルキル部分を指す。このような置換基としては、限定はされないが、ハロゲン、ヒドロキシル、カルボニル(カルボキシル、アルコキシカルボニル、ホルミル、またはアシルなど)、チオカルボニル(チオエステル、チオアセテート、またはチオホルメートなど)、アルコキシル、ホスホリル、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィネート、アミノ、アミド、アミジン、イミン、シアノ、ニトロ、アジド、スルフヒドリル、アルキルチオ、サルフェート、スルホネート、スルファモイル、スルホンアミド、スルホニル、ヘテロシクリル、アラルキル、または芳香族もしくはヘテロ芳香族部分が挙げられる。
【0261】
炭素数が特に規定されない限り、本明細書において使用される際の「低級アルキル」は、その骨格構造中に1~10個の炭素、または1~6個の炭素原子を有する以外は上に定義されるとおりのアルキル基を意味する。同様に、「低級アルケニル」および「低級アルキニル」は、同様の鎖長を有する。ある実施形態において、アルキル基は、低級アルキルである。ある実施形態において、本明細書においてアルキルとして示される置換基は、低級アルキルである。
【0262】
炭化水素鎖上で置換された部分が、必要に応じて、それ自体置換され得ることが、当業者によって理解されるであろう。例えば、置換アルキルの置換基としては、ハロゲン、ヒドロキシ、ニトロ、チオール、アミノ、アジド、イミノ、アミド、ホスホリル(ホスホネートおよびホスフィネートを含む)、スルホニル(サルフェート、スルホンアミド、スルファモイルおよびスルホネートを含む)、およびシリル基、ならびにエーテル、アルキルチオ、カルボニル(ケトン、アルデヒド、カルボキシレート、およびエステルを含む)、-CF、-CNなどが挙げられる。シクロアルキルは、同じように置換され得る。
【0263】
本明細書において使用される際の「ヘテロアルキル」という用語は、少なくとも1個のヘテロ原子を含有する、直鎖状または分枝鎖状、または環状炭素を含有するラジカル、またはそれらの組合せを指す。好適なヘテロ原子としては、限定はされないが、O、N、Si、P、Se、B、およびSが挙げられ、ここで、リンおよび硫黄原子は、任意選択的に酸化され、窒素ヘテロ原子は、任意選択的に四級化される。ヘテロアルキルは、アルキル基について上に定義されるように置換され得る。
【0264】
「アルキルチオ」という用語は、硫黄ラジカルが結合された、上に定義されるアルキル基を指す。ある実施形態において、「アルキルチオ」部分は、-S-アルキル、-S-アルケニル、および-S-アルキニルのうちの1つによって表される。代表的なアルキルチオ基としては、メチルチオ、およびエチルチオが挙げられる。「アルキルチオ」という用語は、シクロアルキル基、アルケンおよびシクロアルケン基、およびアルキン基も包含する。「アリールチオ」は、アリールまたはヘテロアリール基を指す。アルキルチオ基は、アルキル基について上に定義されるように置換され得る。
【0265】
「アルケニル」および「アルキニル」という用語は、長さおよび可能な置換が上述されるアルキルと同様であるが、ただし、それぞれ少なくとも1つの二重結合または三重結合を含有する不飽和脂肪族基を指す。
【0266】
本明細書において使用される際の「アルコキシル」または「アルコキシ」という用語は、酸素ラジカルが結合された、上に定義されるアルキル基を指す。代表的なアルコキシル基としては、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、およびtert-ブトキシが挙げられる。「エーテル」は、酸素によって共有結合された2つの炭化水素である。したがって、アルキルをエーテルにするアルキルの置換基は、-O-アルキル、-O-アルケニル、および-O-アルキニルのうちの1つによって表され得るように、アルコキシルであるかまたはそれに類似している。アロキシ(aroxy)は、-O-アリールまたはO-ヘテロアリールによって表され得、ここで、アリールおよびヘテロアリールは、以下に定義されるとおりである。アルコキシおよびアロキシ基は、アルキルについて上述されるように置換され得る。
【0267】
「アミン」および「アミノ」という用語は、当該技術分野において認識されており、非置換および置換アミンの両方、例えば、一般式:
【0268】
【化13】

によって表され得る部分を指し、式中、R、R10、およびR’10はそれぞれ、独立して、水素、アルキル、アルケニル、-(CH-Rを表し、またはRおよびR10は、それらが結合されるN原子と一緒になって、環構造中に4~8個の原子を有する複素環を完成させ;Rは、アリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、複素環または多環を表し;mは、0または1~8の範囲の整数である。ある実施形態において、RまたはR10のうちの一方のみが、カルボニルであり得、例えば、R、R10および窒素は一緒になって、イミドを形成しない。さらに他の実施形態において、「アミン」という用語は、アミドを包含せず、例えば、ここで、RおよびR10のうちの一方がカルボニルを表す。さらなる実施形態において、RおよびR10(および任意選択的にR’10)はそれぞれ、独立して、水素、アルキルまたはシクロアルキル、アルケニルまたはシクロアルケニル、またはアルキニルを表す。したがって、本明細書において使用される際の「アルキルアミン」という用語は、置換(アルキルについて上述されるように)または非置換アルキルが結合された、上に定義されるアミン基を意味し、すなわち、RおよびR10のうちの少なくとも一方がアルキル基である。
【0269】
「アミド」という用語は、アミノ置換カルボニルとして当該技術分野において認識されており、一般式:
【化14】

(式中、RおよびR10は、上に定義されるとおりである)によって表され得る部分を含む。
【0270】
本明細書において使用される際の「アリール」は、C~C10員の芳香族、複素環式、縮合芳香族、縮合複素環式、二芳香族、または二複素環式環系を指す。本明細書において使用される際の広義の「アリール」は、0~4個のヘテロ原子、例えば、ベンゼン、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、トリアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジンおよびピリミジンなどを含み得る5-、6-、7-、8-、9-、および10員単環芳香族基を含む。環構造中にヘテロ原子を有するそれらのアリール基はまた、「アリール複素環」または「ヘテロ芳香族」と呼ばれ得る。芳香環は、1つ以上の環位置において、限定はされないが、ハロゲン、アジド、アルキル、アラルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヒドロキシル、アルコキシル、アミノ(または四級化アミノ)、ニトロ、スルフヒドリル、イミノ、アミド、ホスホネート、ホスフィネート、カルボニル、カルボキシル、シリル、エーテル、アルキルチオ、スルホニル、スルホンアミド、ケトン、アルデヒド、エステル、ヘテロシクリル、芳香族またはヘテロ芳香族部分、-CF、-CN;およびそれらの組合せを含む1つ以上の置換基で置換され得る。
【0271】
「アリール」という用語は、2つ以上の炭素が2つの隣接する環に共通する2つ以上の環式環(すなわち、「縮合環」)を有する多環式環系も含み、ここで、環のうちの少なくとも一方が、例えば芳香族であり、他方の環式環または環が、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリールおよび/または複素環であり得る。複素環の例としては、限定はされないが、ベンズイミダゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾチオフラニル、ベンゾチオフェニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾオキサゾリニル、ベンズチアゾリル、ベンズトリアゾリル、ベンズテトラゾリル、ベンズイソオキサゾリル、ベンズイソチアゾリル、ベンズイミダゾリニル、カルバゾリル、4aHカルバゾリル、カルボリニル、クロマニル、クロメニル、シンノリニル、デカヒドロキノリニル、2H,6H-1,5,2-ジチアジニル、ジヒドロフロ[2,3b]テトラヒドロフラン、フラニル、フラザニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリル、1H-インダゾリル、インドレニル、インドリニル、インドリジニル、インドリル、3H-インドリル、イサチノイル、イソベンゾフラニル、イソクロマニル、イソインダゾリル、イソインドリニル、イソインドリル、イソキノリニル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、メチレンジオキシフェニル、モルホリニル、ナフチリジニル、オクタヒドロイソキノリニル、オキサジアゾリル、1,2,3-オキサジアゾリル、1,2,4-オキサジアゾリル、1,2,5-オキサジアゾリル、1,3,4-オキサジアゾリル、オキサゾリジニル、オキサゾリル、オキシインドリル、ピリミジニル、フェナントリジニル、フェナントロリニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサチニル、フェノキサジニル、フタラジニル、ピペラジニル、ピペリジニル、ピペリドニル、4-ピペリドニル、ピペロニル、プテリジニル、プリニル、ピラニル、ピラジニル、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリドオキサゾール、ピリドイミダゾール、ピリドチアゾール、ピリジニル、ピリジル、ピリミジニル、ピロリジニル、ピロリニル、2H-ピロリル、ピロリル、キナゾリニル、キノリニル、4H-キノリジニル、キノキサリニル、キヌクリジニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロイソキノリニル、テトラヒドロキノリニル、テトラゾリル、6H-1,2,5-チアジアジニル、1,2,3-チアジアゾリル、1,2,4-チアジアゾリル、1,2,5-チアジアゾリル、1,3,4-チアジアゾリル、チアントレニル、チアゾリル、チエニル、チエノチアゾリル、チエノオキサゾリル、チエノイミダゾリル、チオフェニルおよびキサンテニルが挙げられる。環の1つ以上は、「アリール」について上に定義されるように置換され得る。
【0272】
本明細書において使用される際の「アラルキル」という用語は、アリール基(例えば、芳香族基またはヘテロ芳香族基)で置換されたアルキル基を指す。
本明細書において使用される際の「炭素環」という用語は、環の各原子が炭素である芳香環または非芳香環を指す。
【0273】
本明細書において使用される際の「複素環」または「複素環式」は、3~10個の環原子、例えば、5~6個の環原子を含有し、炭素と、非過酸化物酸素、硫黄、およびN(Y)(ここで、Yは、存在しないか、またはH、O、(C-C10)アルキル、フェニルもしくはベンジルである)からなる群からそれぞれ選択される1~4個のヘテロ原子とからなり、任意選択的に、1~3つの二重結合を含有し、任意選択的に、1つ以上の置換基で置換された、単環式または二環式環の環炭素または窒素を介して結合された環状ラジカルを指す。複素環の例としては、限定はされないが、ベンズイミダゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾチオフラニル、ベンゾチオフェニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾオキサゾリニル、ベンズチアゾリル、ベンズトリアゾリル、ベンズテトラゾリル、ベンズイソオキサゾリル、ベンズイソチアゾリル、ベンズイミダゾリニル、カルバゾリル、4aH-カルバゾリル、カルボリニル、クロマニル、クロメニル、シンノリニル、デカヒドロキノリニル、2H,6H-1,5,2-ジチアジニル、ジヒドロフロ[2,3-b]テトラヒドロフラン、フラニル、フラザニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリル、1H-インダゾリル、インドレニル、インドリニル、インドリジニル、インドリル、3H-インドリル、イサチノイル、イソベンゾフラニル、イソクロマニル、イソインダゾリル、イソインドリニル、イソインドリル、イソキノリニル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、メチレンジオキシフェニル、モルホリニル、ナフチリジニル、オクタヒドロイソキノリニル、オキサジアゾリル、1,2,3-オキサジアゾリル、1,2,4-オキサジアゾリル、1,2,5-オキサジアゾリル、1,3,4-オキサジアゾリル、オキサゾリジニル、オキサゾリル、オキセパニル、オキセタニル、オキシインドリル、ピリミジニル、フェナントリジニル、フェナントロリニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサチニル、フェノキサジニル、フタラジニル、ピペラジニル、ピペリジニル、ピペリドニル、4-ピペリドニル、ピペロニル、プテリジニル、プリニル、ピラニル、ピラジニル、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリドオキサゾール、ピリドイミダゾール、ピリドチアゾール、ピリジニル、ピリジル、ピリミジニル、ピロリジニル、ピロリニル、2H-ピロリル、ピロリル、キナゾリニル、キノリニル、4H-キノリジニル、キノキサリニル、キヌクリジニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロイソキノリニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロキノリニル、テトラゾリル、6H-1,2,5-チアジアジニル、1,2,3-チアジアゾリル、1,2,4-チアジアゾリル、1,2,5-チアジアゾリル、1,3,4-チアジアゾリル、チアントレニル、チアゾリル、チエニル、チエノチアゾリル、チエノオキサゾリル、チエノイミダゾリル、チオフェニルおよびキサンテニルが挙げられる。複素環式基は、1つ以上の位置において、アルキルおよびアリールについて上に定義される1つ以上の置換基、例えば、ハロゲン、アルキル、アラルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヒドロキシル、アミノ、ニトロ、スルフヒドリル、イミノ、アミド、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィネート、カルボニル、カルボキシル、シリル、エーテル、アルキルチオ、スルホニル、ケトン、アルデヒド、エステル、ヘテロシクリル、芳香族もしくはヘテロ芳香族部分、-CF3、および-CNで任意選択的に置換され得る。
【0274】
「カルボニル」という用語は、当該技術分野において認識されており、一般式:
【0275】
【化15】

によって表され得るような部分を含み、式中、Xは、結合であるか、または酸素もしくは硫黄を表し、R11は、水素、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、またはアルキニルを表し、R’11は、水素、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、またはアルキニルを表す。Xが酸素であり、R11またはR’11が水素でない場合、この式は、「エステル」を表す。Xが酸素であり、R11が上に定義されるとおりである場合、この部分は、本明細書においてカルボキシル基と呼ばれ、特に、R11が水素である場合、この式は、「カルボン酸」を表す。Xが酸素であり、R’11が水素である場合、この式は、「ホルメート」を表す。一般に、上記の式の酸素原子が、硫黄で置換される場合、この式は、「チオカルボニル」基を表す。Xが硫黄であり、R11またはR’11が水素でない場合、この式は、「チオエステル」を表す。Xが硫黄であり、R11が水素である場合、この式は、「チオカルボン酸」を表す。Xが硫黄であり、R’11が水素である場合、この式は、「チオホルメート」を表す。一方、Xが結合であり、R11が水素でない場合、上記の式は、「ケトン」基を表す。Xが結合であり、R11が水素である場合、上記の式は、「アルデヒド」基を表す。
【0276】
本明細書において使用される際の「モノエステル」は、ジカルボン酸の類似体を指し、ここで、カルボン酸の一方は、エステルとして官能化され、他方のカルボン酸は、遊離カルボン酸またはカルボン酸の塩である。モノエステルの例としては、限定はされないが、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、アゼライン酸、シュウ酸およびマレイン酸のモノエステルが挙げられる。
【0277】
本明細書において使用される際の「ヘテロ原子」という用語は、炭素または水素以外の任意の元素の原子を意味する。ヘテロ原子の例は、ホウ素、窒素、酸素、リン、硫黄およびセレンである。他の有用なヘテロ原子としては、ケイ素およびヒ素が挙げられる。
【0278】
本明細書において使用される際、「ニトロ」という用語は-NOを意味し;「ハロゲン」という用語は、-F、-Cl、-Brまたは-Iを示し;「スルフヒドリル」という用語は-SHを意味し;「ヒドロキシル」という用語は-OHを意味し;「スルホニル」という用語は-SO-を意味する。
【0279】
「置換された」という用語は、本明細書に記載される化合物の全ての許容される置換基を指す。最も広義には、許容される置換基としては、有機化合物の非環式および環式、分枝鎖状および非分枝鎖状、炭素環式および複素環式、芳香族および非芳香族置換基が挙げられる。例示的な置換基としては、限定はされないが、ハロゲン、ヒドロキシル基、または任意の数の炭素原子、例えば、1~14個の炭素原子を含有する任意の他の有機基が挙げられ、任意選択的に、直鎖状、分枝鎖状、または環状構造フォーマットの酸素、硫黄、または窒素基などの1つ以上のヘテロ原子が挙げられる。代表的な置換基としては、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、フェニル、置換フェニル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、ハロ、ヒドロキシル、アルコキシ、置換アルコキシ、フェノキシ、置換フェノキシ、アロキシ、置換アロキシ、アルキルチオ、置換アルキルチオ、フェニルチオ、置換フェニルチオ、アリールチオ、置換アリールチオ、シアノ、イソシアノ、置換イソシアノ、カルボニル、置換カルボニル、カルボキシル、置換カルボキシル、アミノ、置換アミノ、アミド、置換アミド、スルホニル、置換スルホニル、スルホン酸、ホスホリル、置換ホスホリル、ホスホニル、置換ホスホニル、ポリアリール、置換ポリアリール、C~C20環式、置換C~C20環式、複素環式、置換複素環式、アミノ酸、ペプチド、およびポリペプチド基が挙げられる。
【0280】
窒素などのヘテロ原子は、ヘテロ原子の原子価を満たす本明細書に記載される有機化合物の水素置換基および/または任意の許容される置換基を有し得る。「置換」または「置換された」は、このような置換が、置換原子および置換基の許容される原子価に応じたものであり、その置換により、安定した化合物、すなわち、例えば、転位、環化、または脱離による変換を自然に起こさない化合物が得られるという黙示的な条件を含むことが理解される。
【0281】
広義の態様において、許容される置換基としては、有機化合物の非環式および環式、分枝鎖状および非分枝鎖状、炭素環式および複素環式、芳香族および非芳香族置換基が挙げられる。例示的な置換基としては、例えば、本明細書に記載されるものが挙げられる。適切な有機化合物について、許容される置換基は、1つ以上であり得、同じかまたは異なり得る。窒素などのヘテロ原子は、ヘテロ原子の原子価を満たす本明細書に記載される有機化合物の水素置換基および/または任意の許容される置換基を有し得る。
【0282】
様々な実施形態において、置換基は、アルコキシ、アリールオキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミド、アミノ、アリール、アリールアルキル、カルバメート、カルボキシ、シアノ、シクロアルキル、エステル、エーテル、ホルミル、ハロゲン、ハロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、ヒドロキシル、ケトン、ニトロ、ホスフェート、スルフィド、スルフィニル、スルホニル、スルホン酸、スルホンアミド、およびチオケトンから選択され、これらのそれぞれは、任意選択的に、1つ以上の好適な置換基で置換される。ある実施形態において、置換基は、アルコキシ、アリールオキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミド、アミノ、アリール、アリールアルキル、カルバメート、カルボキシ、シクロアルキル、エステル、エーテル、ホルミル、ハロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、ケトン、ホスフェート、スルフィド、スルフィニル、スルホニル、スルホン酸、スルホンアミド、およびチオケトンから選択され、ここで、アルコキシ、アリールオキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミド、アミノ、アリール、アリールアルキル、カルバメート、カルボキシ、シクロアルキル、エステル、エーテル、ホルミル、ハロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、ケトン、ホスフェート、スルフィド、スルフィニル、スルホニル、スルホン酸、スルホンアミド、およびチオケトンのそれぞれは、1つ以上の好適な置換基でさらに置換され得る。
【0283】
置換基の例としては、限定はされないが、ハロゲン、アジド、アルキル、アラルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヒドロキシル、アルコキシル、アミノ、ニトロ、スルフヒドリル、イミノ、アミド、ホスホネート、ホスフィネート、カルボニル、カルボキシル、シリル、エーテル、アルキルチオ、スルホニル、スルホンアミド、ケトン、アルデヒド、チオケトン、エステル、ヘテロシクリル、-CN、アリール、アリールオキシ、パーハロアルコキシ、アラルコキシ、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアラルコキシ、アジド、アルキルチオ、オキソ、アシルアルキル、カルボキシエステル、カルボキサミド、アシルオキシ、アミノアルキル、アルキルアミノアリール、アルキルアリール、アルキルアミノアルキル、アルコキシアリール、アリールアミノ、アラルキルアミノ、アルキルスルホニル、カルボキサミドアルキルアリール、カルボキサミドアリール、ヒドロキシアルキル、ハロアルキル、アルキルアミノアルキルカルボキシ、アミノカルボキサミドアルキル、シアノ、アルコキシアルキル、パーハロアルキル、アリールアルキルオキシアルキルなどが挙げられる。ある実施形態において、置換基は、シアノ、ハロゲン、ヒドロキシル、およびニトロから選択される。
【0284】
本明細書において使用される際の「コポリマー」という用語は、一般に、2つ以上の異なるモノマーで構成される単一のポリマー材料を指す。コポリマーは、任意の形態のもの、例えば、ランダム、ブロック、またはグラフトコポリマーであり得る。コポリマーは、キャッピングされた末端基または酸性末端基を含む、任意の末端基を有し得る。
【0285】
本明細書において使用される際の「平均粒径」という用語は、一般に、組成物中の粒子の統計的平均粒径(直径)を指す。本質的に球形の粒子の直径は、物理的または流体力学的直径と呼ばれ得る。非球形の粒子の直径は、流体力学的直径を指し得る。本明細書において使用される際、非球形の粒子の直径は、粒子の表面上の2点間の最大の直線距離を指し得る。平均粒径は、動的光散乱などの、当該技術分野において公知の方法を用いて測定され得る。粒子の第1の集団の統計的平均粒径が、粒子の第2の集団の統計的平均粒径の20%以内;例えば、15%以内、または10%以内である場合、2つの集団は、「実質的に同等の平均粒径」を有するということができる。
【0286】
本明細書において同義的に使用される際の「単分散」および「均一な粒径分布」という用語は、粒子、微粒子、またはナノ粒子の集団が全て同じかまたはほぼ同じ粒径を有することを表す。本明細書において使用される際、単分散分布は、分布の90%が平均粒径の5%以内にある粒子分布を指す。
【0287】
「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」という用語は、一般に、アミノ酸残基のポリマーを指す。本明細書において使用される際、この用語は、1つ以上のアミノ酸が、対応する天然アミノ酸の化学的類似体もしくは修飾された誘導体であるか、または非天然アミノ酸であるアミノ酸ポリマーにも適用される。本明細書において一般に使用される際の「タンパク質」という用語は、三次および/または四次構造を生成するのに十分な鎖長のポリペプチドを形成するように、ペプチド結合によって互いに連結されたアミノ酸のポリマーを指す。「タンパク質」という用語は、定義によれば小さいペプチドを除外し、小さいペプチドは、タンパク質と見なされるのに必要な必須の高次構造を欠いている。
【0288】
「核酸」、「ポリヌクレオチド」、および「オリゴヌクレオチド」という用語は、線状または環状配座の、一本鎖または二本鎖形態のいずれかのデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドポリマーを指すために同義的に使用される。これらの用語は、ポリマーの長さに関する限定として解釈されるべきではない。これらの用語は、天然ヌクレオチドの公知の類似体、ならびに塩基、糖および/またはリン酸部分(例えば、ホスホロチオエート骨格)が修飾されたヌクレオチドを包含し得る。一般に、特に規定されない限り、特定のヌクレオチドの類似体は、同じ塩基対合特異性を有し;すなわち、Aの類似体は、Tと塩基対合し得る。「核酸」という用語は、一連の少なくとも2つの塩基-糖-リン酸モノマー単位を指す専門用語である。ヌクレオチドは、核酸ポリマーのモノマー単位である。この用語は、メッセンジャーRNA、アンチセンス、プラスミドDNA、プラスミドDNAの一部またはウイルスに由来する遺伝物質の形態のデオキシリボ核酸(DNA)およびリボ核酸(RNA)を含む。アンチセンス核酸は、DNAおよび/またはRNA配列の発現を妨げるポリヌクレオチドである。核酸という用語は、一連の少なくとも2つの塩基-糖-リン酸の組合せを指す。天然核酸は、リン酸骨格を有する。人工核酸は、他のタイプの骨格を含有し得るが、天然核酸と同じ塩基を含有し得る。この用語は、PNA(ペプチド核酸)、ホスホロチオエート、および天然核酸のリン酸骨格の他の変形例も含む。
【0289】
タンパク質、ポリペプチドまたは核酸の「機能的断片」は、完全長タンパク質、ポリペプチドまたは核酸と同一でないが、完全長タンパク質、ポリペプチドまたは核酸のような少なくとも1つの機能を保持する、タンパク質、ポリペプチドまたは核酸である。機能的断片は、対応する天然分子より多い、より少ない、または同じ数の残基を有することができ、および/または1つ以上のアミノ酸またはヌクレオチド置換を含有し得る。核酸の機能(例えば、コード機能、別の核酸にハイブリダイズする能力)を決定するための方法が、当該技術分野において周知である。同様に、タンパク質機能を決定するための方法が、周知である。例えば、ポリペプチドのDNA結合機能は、例えば、フィルタ結合、電気泳動移動度シフト、または免疫沈降アッセイによって決定され得る。DNA切断は、ゲル電気泳動によってアッセイされ得る。タンパク質が別のタンパク質と相互作用する能力が、例えば、免疫共沈降、ツーハイブリッドアッセイまたは例えば遺伝的もしくは生化学的相補性によって決定され得る。例えば、フィールズ(Fields)ら著(1989)ネイチャー(Nature)340:245~246;米国特許第5,585,245号明細書およびPCT国際公開第98/44350号を参照されたい。
【0290】
本明細書において使用される際、「リンカー」という用語は、ヘテロ原子(例えば、窒素、酸素、硫黄など)を含有し得、かつ1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15,16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50原子長であり得る炭素鎖を指す。リンカーは、限定はされないが、水素原子、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、トリアルキルアミノ、ヒドロキシル、アルコキシ、ハロゲン、アリール、複素環式、芳香族複素環式、シアノ、アミド、カルバモイル、カルボン酸、エステル、チオエーテル、アルキルチオエーテル、チオール、およびウレイド基を含む、様々な置換基で置換され得る。当業者は、これらの基のそれぞれが同様に置換され得ることを認識するであろう。リンカーの例としては、限定はされないが、pH感受性リンカー、プロテアーゼ切断性ペプチドリンカー、ヌクレアーゼ感受性核酸リンカー、リパーゼ感受性脂質リンカー、グリコシダーゼ感受性炭水化物リンカー、低酸素症感受性リンカー、光切断性リンカー、熱不安定性リンカー、酵素切断性リンカー(例えば、エステラーゼ切断性リンカー)、超音波感受性リンカー、およX線切断性リンカーが挙げられる。
【0291】
「薬学的に許容される対イオン」という用語は、薬学的に許容されるアニオンまたはカチオンを指す。様々な実施形態において、薬学的に許容される対イオンは、薬学的に許容されるイオンである。例えば、薬学的に許容される対イオンは、クエン酸塩、リンゴ酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、酸性リン酸塩、イソニコチン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、酒石酸塩、オレイン酸塩、タンニン酸塩、パントテン酸塩、酒石酸水素塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンチジン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、糖酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩およびパモ酸塩(すなわち、1,1’-メチレン-ビス-(2-ヒドロキシ-3-ナフトエート))から選択される。ある実施形態において、薬学的に許容される対イオンは、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、酸性リン酸塩、クエン酸塩、リンゴ酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、酢酸塩、および乳酸塩から選択される。特定の実施形態において、薬学的に許容される対イオンは、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、およびリン酸塩から選択される。
【0292】
「薬学的に許容される塩」という用語は、本組成物に使用される化合物中に存在し得る酸性または塩基性基の塩を指す。塩基性の性質の本組成物に含まれる化合物は、様々な無機および有機酸とともに様々な塩を形成することが可能である。このような塩基性化合物の薬学的に許容される酸付加塩を調製するのに使用され得る酸は、非毒性酸付加塩を形成するもの、すなわち、限定はされないが、硫酸塩、クエン酸塩、リンゴ酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、酸性リン酸塩、イソニコチン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、オレイン酸塩、タンニン酸塩、パントテン酸塩、酒石酸水素塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンチジン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、糖酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩およびパモ酸塩(すなわち、1,1’-メチレン-ビス-(2-ヒドロキシ-3-ナフトエート))を含む、薬理学的に許容されるアニオンを含有する塩を形成するものである。アミノ部分を含む本組成物に含まれる化合物は、上述される酸に加えて、様々なアミノ酸とともに薬学的に許容される塩を形成し得る。酸性の性質の本組成物に含まれる化合物は、様々な薬理学的に許容されるカチオンとともに塩基性塩を形成することが可能である。このような塩の例としては、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩、特に、カルシウム塩、マグネシウム塩、ナトリウム塩、リチウム塩、亜鉛塩、カリウム塩、および鉄塩が挙げられる。
【0293】
本明細書に記載される化合物が、酸付加塩として得られる場合、遊離塩基は、酸性塩の溶液を塩基性化することによって得られる。逆に、生成物が遊離塩基である場合、付加塩、特に、薬学的に許容される付加塩が、塩基化合物から酸付加塩を調製するための従来の手順にしたがって、遊離塩基を好適な有機溶媒に溶解させ、溶液を酸で処理することによって生成され得る。当業者は、非毒性の薬学的に許容される付加塩を調製するのに使用され得る様々な合成方法を認識するであろう。
【0294】
薬学的に許容される塩は、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、2,2-ジクロロ酢酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、2-オキソグルタル酸、4-アセトアミド安息香酸、4-アミノサリチル酸、酢酸、アジピン酸、アスコルビン酸、アスパラギン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、ショウノウ酸、カンファー-10-スルホン酸、カプリン酸(デカン酸)、カプロン酸(ヘキサン酸)、カプリル酸(オクタン酸)、炭酸、ケイ皮酸、クエン酸、シクラミン酸、ドデシル硫酸、エタン-1,2-ジスルホン酸、エタンスルホン酸、ギ酸、フマル酸、ガラクタル酸、ゲンチシン酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、グルクロン酸、グルタミン酸、グルタル酸、グリセロリン酸、グリコール酸、馬尿酸、臭化水素酸、塩酸、イセチオン酸、イソ酪酸、乳酸、ラクトビオン酸、ラウリン酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、粘液酸、ナフタレン-1,5-ジスルホン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、ニコチン酸、硝酸、オレイン酸、シュウ酸、パルミチン酸、パモ酸、パントテン酸、リン酸、プロピオン酸、ピログルタミン酸、サリチル酸、セバシン酸、ステアリン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、チオシアン酸、トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、およびウンデシレン酸から選択される酸から誘導され得る。
【0295】
「生物学的に利用可能」という用語は、当該技術分野において認識されており、それが、または投与される量の一部が、それを投与する対象または患者によって吸収され、組み込まれ、または他の形で生理学的に利用可能であることを可能にする本発明の一形態を指す。
【0296】
以下の実施例が、本発明を限定するのではなく、例示することが意図されることが理解されるであろう。上記の説明および例の様々な他の例および変更が、本発明の趣旨および範囲から逸脱せずに、本開示を読んだ後に当業者に明らかであり、全てのこのような例または変更が、添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図される。本明細書に引用される全ての刊行物および特許は、全体が参照により本明細書に援用される。
【0297】
(実施例)
実施例1:コンジュゲートの合成、HPLC分析および膜透過
本明細書に記載される化合物の合成およびHPLC分析は、2015年6月30日に出願されたPCT出願PCT/US15/38569号明細書(国際公開第2016/004048号)(この内容は、参照により本明細書に援用される)の実施例A、1~7、および14に開示される方法によって行った。
【0298】
実施例2:腫瘍細胞増殖に対するコンジュゲート57のインビトロ効果
コンジュゲート57は、腫瘍細胞の細胞増殖の阻害を評価するインビトロアッセイで評価した。様々な腫瘍細胞株は、報告されたSSTR2 mRNAレベルに基づいて選択した。細胞表面SSTR2受容体発現の特性評価は、ウエスタン染色アッセイによって行った。ウエスタン染色のレベルは、「非常に強い」から「弱い」または「染色なし」までの範囲であった。
【0299】
【表2】

増殖アッセイにおけるコンジュゲート57の活性およびIC50の程度は、ウエスタン染色によるSSTR2の観察された細胞表面発現と相関する。
【0300】
コンジュゲート57およびDM1によるインビトロでのSCLC細胞株の増殖の阻害
この試験の目的は、ソマトスタチンを標的にするコンジュゲートであるコンジュゲート57によるインビトロでの増殖の受容体依存的な阻害を決定し、ヒトSSTR2を発現する癌細胞株:NCI-H69、NCI-H82、NCI-H727およびHCC-33におけるDM1に対する感受性を決定することであった。細胞は、過剰なオクトレオチド、ソマトスタチン類似体の存在下または非存在下で、6時間にわたってコンジュゲート57とともにインキュベートした。合計で10の濃度点のために、コンジュゲート57の3倍連続希釈を使用した。処理の後、細胞は洗浄し、72時間または96時間のいずれかのさらなる期間にわたってインキュベートし、増殖は、セルタイター・グロー(CellTiter-Glo)(登録商標)発光細胞生存率アッセイ(Luminescent Cell Viability Assay)を用いて測定した。コンジュゲート57のIC50を用いて、増殖アッセイにおける阻害活性を決定した。DM1感受性を決定するために、コンジュゲート57アッセイと同様の方法を用いたが、30分、1、2、および4時間のさらなるインキュベーション時点が追加され、また、オクトレオチドによる前処理が除外された。最も感受性の高い細胞株から最も感受性の低い細胞株までのDM1の影響は、NCI-H69>HCC-33>NCI-H82>NCI-H727であると決定された(表5B)。細胞株の間の結果を、これらの条件下で比較したところ、コンジュゲート57は、NCI-H69およびNCI-H82において最も効力が強く、そのすぐ後にHCC-33が続き、NCI-H727において最も効力が弱かった(表5C)。過剰なオクトレオチド(100μM)の添加は、SSTR2受容体への結合を巡ってコンジュゲート57と競合する。オクトレオチドの存在下におけるコンジュゲート57の活性の低下は、コンジュゲート57の活性が、受容体へのその結合に依存することを示唆し得る。NCI-H82およびNCI-H727細胞株において、コンジュゲート57活性は、過剰なオクトレオチドの存在下で低下されず;このことは、これらの細胞株におけるコンジュゲート57活性が、高濃度のオクトレオチドを克服することができなかったことを示唆している。NCI-H69実験において、過剰なオクトレオチドを用いたプレインキュベーションが、アッセイ条件に応じて、コンジュゲート57の活性を、1.6および2.4倍だけやや低下させた。HCC-33細胞株において、コンジュゲート57の活性は、細胞をオクトレオチドとともにプレインキュベートした場合と比較して、単独で投与される場合に3.2(±1.4)倍高かった。NCI-H69およびHCC-33細胞株において見られる過剰なオクトレオチドの存在下におけるコンジュゲート57活性の小さいが測定可能な変化は、インビトロで見られるコンジュゲート57の抗増殖効果の受容体依存性を裏付ける。要約すれば、これらの実験において試験される全ての細胞株が、SSTR2タンパク質を発現するが、それらは、DM1感受性が寄与因子であり得るコンジュゲートであるコンジュゲート57に対する異なるレベルの感受性を有する。これらのデータは、コンジュゲート57に対する癌細胞の感受性;ペイロードDM1およびSSTR2結合および/または発現に対する感受性における2つの変数を同定する。
【0301】
【表3】
【0302】
【表4】

実施例3:コンジュゲート57によるSSTR2受容体内在化
SSTR2受容体内在化は、高度に発現するSSTR2陽性(SSTR2+)腫瘍異種移植片:H524_MD腫瘍異種移植片においてコンジュゲート57を用いて試験した。ビヒクル(0.1%のソルトール(Solutol)/5%のマンニトール)、2mg/kgのコンジュゲート57、2mg/kgのスクランブル化対照(scrambled control)(BT-984)、および1.4mg/kgのオクトレオチド(リガンド単独)は、SSTR2+H524-MD腫瘍異種移植片(n=3/群)に投与した。時点-0時間(ビヒクル)、15分、1時間、4時間、24時間および72時間。SSTR2スコアリングは、免疫組織化学(IHC:immunohistochemistry)染色によって行った。
【0303】
図2Aは、SSTR2受容体内在化強度を示す。図2Aに示されるように、コンジュゲート57治療の後、SSTR2受容体は、左上の図中において膜の上に位置し、右下の図においてほぼ細胞質になった。染色分析のこの強度において、コンジュゲート57治療は、1時間、4時間、および72時間の時点で、化合物57のスクランブル化されたペプチド形態(BT-984)およびナイーブと有意に異なる結果を生じた。さらに、72時間の時点で、コンジュゲート57治療は、オクトレオチドと有意に異なる結果を生じた。
【0304】
図2Cは、SSTR2内在化分布のレベルを示す。右下の画像において、SSTR2内在化は、66%超に達した。染色分析のこの分布において、コンジュゲート57治療は、4時間、24時間、および72時間の時点で、BT-984およびナイーブと有意に異なる結果を生じた。さらに、72時間の時点で、コンジュゲート57治療は、オクトレオチドと有意に異なる結果を生じた。
【0305】
図2Bは、異なる時点でのH524-MD腫瘍異種移植片におけるSSTR2内在化を示す。図2Dは、異なる時点でのH514-MD腫瘍異種移植片におけるSSTR2内部細胞分布を示す。図2Bおよび図2D中の「」は、ダンの多重比較検定でコンジュゲート57とBT-984およびナイーブとを比べて有意な差(p<0.05)があったことを示す。図2Bおよび図2D中の「+」は、ダンの多重比較検定でコンジュゲート57とオクトレオチドとを比べて有意な差(+p<0.05)があったことを示す。
【0306】
したがって、コンジュゲート57の治療は、有意な受容体内在化/分布を示し、このことは、化合物が(スクランブル化と異なり)インビボで受容体を能動的に標的化するという仮説を裏付けている。コンジュゲート57のオクトレオテートリガンドによるSSTR2受容体の結合は、SSTR2受容体の内在化を誘導し、DM-1ペイロードを内在化する。意外にも、コンジュゲート57は、オクトレオチド単独より高いSSTR2内在化を引き起こした。
【0307】
実施例4:SCLCの治療におけるコンジュゲート57の有効性
コンジュゲート57の有効性を試験するために、HCC-33(小細胞肺癌)異種移植片を選択した。一部の群では、コンジュゲート57は、30日間にわたって毎週1.0mg/kg、0.5mg/kgまたは0.33mg/kg、各動物につき合計で4用量を与えられた。一部の他の群では、コンジュゲート57はまた、30日間にわたって週2回0.5mg/kgまたは0.25mg/kg、各動物につき合計で8合計用量を与えられた。
【0308】
試験結果により、複数回用量が忍容性良好であったことが確立された。全ての群において体重は良好であった。腫瘍退縮結果は、以下の表6Aおよび図3に示した。
【0309】
【表5】

さらなるNCI-H69試験設計は、プロピレングリコール(PG)中に配合された1.0mg/kgで静脈内(iv)投与されるコンジュゲート57、ソルトール(Solutol)HS15中に配合された1.0mg/kg、週2回投与されるソルトール(Solutol)HS15中に配合された0.5mg/kg、および週3回投与されるソルトール(Solutol)HS15中に配合された0.33mg/kgを含んでいた。比較群には、週1回5.0mg/kgで静脈内(iv)投与されるSOCシスプラチン/週3回8.0mg/kgで腹腔内(ip)投与されるエトポシドを2週間にわたって与えた。陰性対照ビヒクルには、ソルトール(Solutol)HS 15ビヒクルを投与した。全ての群は、10匹の動物を含んでいた。
【0310】
SOC治療群(シスプラチンおよびエトポシド)では、5.9%の平均BW減少が、11日目に観察された。コンジュゲート57またはビヒクルで治療された動物に体重減少は見られなかった。ビヒクル、コンジュゲート57またはSOCで治療された動物における健康観察で、有害作用は記録されなかった。しかしながら、SOC群中の1匹の動物およびビヒクル群中の1匹の動物は、腫瘍潰瘍のため、14日目に試験から取り除いた。
【0311】
21日目に、PG中に配合された1.0mg/kgのコンジュゲート57による週2回の治療により、87%のTGIが得られた(2/10のマウスが、完全な腫瘍退縮を有していた)。ソルトール(Solutol)HS15中に配合されたコンジュゲート57の同じ用量およびスケジュールで、96%のTGIが観察された(3/10のマウスが、完全な腫瘍退縮を有していた)。93%のTGIが、ソルトール(Solutol)HS15中の0.5mg/kgのコンジュゲート57の週2回の投与で観察された(1/10のマウスが、完全な腫瘍退縮を有していた)。ソルトール(Solutol)HS15中の0.33mg/kgで週3回コンジュゲート57を投与すると、76%のTGIが得られ、完全な腫瘍退縮を有するマウスはいなかった。84%のTGIが、2週間にわたるシスプラチン/エトポシド(SOC)治療で観察され、完全な退縮を有するマウスはいなかった。コンジュゲート57およびSOC剤による治療は、全ての用量レベルおよび評価される全てのスケジュールで有意なTGIをもたらし、互いに統計的に異なっていなかった。全ての剤による腫瘍成長は、ビヒクル対照で治療されたマウスの腫瘍成長と有意に異なっていた(P<0.0001)。データが、表6Bにまとめられている。
【0312】
【表6】

要約すれば、高いレベルの、統計的に有意なTGIが、HCC-33モデルにおいて週1回0.33mg/kg程度の用量レベルのコンジュゲート57を用いて実証され、HCC-33モデルにおいて用量と有効性との間に明らかな関係があり(r2=0.81)、増加した用量レベルは、向上した有効性をもたらした。NCI-H69モデルにおいて、コンジュゲート57のPGおよびソルトール(Solutol)HS15製剤の両方に同様の有効性があった。
【0313】
実施例5:安全性薬理学
ヒトエーテル-ア-ゴー-ゴー-関連遺伝子(hERG:human Ether-a-go-go-Related Gene)イオンチャネルにおけるコンジュゲート57活性のインビトロ評価
この試験の目的は、イオンチャネル、ヒトエーテル-ア-ゴー-ゴー-関連遺伝子(hERG)の調節によってQT間隔を延ばすコンジュゲート57の可能性を評価することであった。コンジュゲート57によるイオンチャネル活性の阻害の可能性は、自動ハイスループットパッチクランプシステムであるイオンワークスクアトロ(IonWorks Quattro)電気生理学的プラットフォームを用いて試験した。コンジュゲート57は、10μMの高濃度および0.005μMの低濃度で開始する8つの異なる濃度で試験し、各濃度につき最小で5回の反復があった。hERG電流は、3パルスプロトコルによって誘発し、ここで、電圧は、まず、-80mVの保持電位から+40mVに2秒間にわたってステッピングして、hERGチャネルを不活性化した。次に、電圧は、2秒間にわたって-50mVにステップダウンして、テール電流を誘発してから、1秒間にわたって保持電位に戻した。この電圧プロトコルが適用され(プレ)、化合物が加えられ、600秒間インキュベートされ、この電圧プロトコルが、イオンワークスクアトロ(IonWorks Quattro)において最終時間に適用された(ポスト)。ジメチルスルホキシド(DMSO)は、陰性対照として使用し、シサプリドは、陽性対照として使用した。図4に示されるように、コンジュゲート57は、試験される全ての濃度で20%未満のhERG阻害を示した一方、シサプリドは、用量依存的に電流の誘発を阻害した。
【0314】
要約すれば、コンジュゲート57は、このインビトロアッセイにおいてhERGイオンチャネルを阻害しなかった。データが、図4に示される。
ビーグル犬の静脈内に投与されたコンジュゲート57のインビボ心血管および呼吸器評価
この試験は、意識のある自由運動ナイーブ雄ビーグル犬においてコンジュゲート57の可能な心血管および呼吸器作用を評価するために行った。試験設計が、表7Aにまとめられている。
【0315】
【表7】

心血管および呼吸器作用および一般毒性の評価は、死亡、臨床所見、体重、体温、心血管の評価、すなわち、血圧(最高血圧、最低血圧、および平均動脈圧)、心拍数、ECG(QRS時間およびRR、PR、QT、および補正QT[QTc]間隔)、および呼吸器評価(呼吸数、一回換気量、および分時拍出量)に基づいて行った。動物は、投与前少なくとも2時間および投与後24時間にわたって連続的にモニターした。
【0316】
0.16mg/kg、0.20mg/kg、および0.24mg/kgの用量レベルで雄ビーグル犬に6分間にわたって単回の静脈内(iv)注入として投与されるコンジュゲート57は、一般に、忍容性良好であり、臨床所見または死亡を生じなかった。試験される任意の用量レベルで、QRS時間、ECG形態、または一回換気量に対する被験物質に関連する影響はなかった。0.24mg/kgの用量レベルで、投与後1.5~2時間にわたる投与の時間から、コンジュゲート57は、血圧(表7B)、心拍数、および呼吸数の統計的に有意な増加、ならびにRR、PR、およびQT間隔の減少(心拍数変化を反映している)、ならびに統計的有意性に達しなかった体温の上昇を誘発した。投与の7~24時間後、呼吸数および分時拍出量のわずかな増加が、0.24mg/kgで観察された。投与の2~17時間後、血圧の用量に依存しない増加が、全ての被験物質治療について観察された。0.24mg/kgの治療後、それぞれ5または12時間の時点で開始する、PRおよびQT間隔の減少が観察され、24時間のモニタリング期間にわたって持続した。
【0317】
0.24mg/kgで観察される即時の作用の一時的性質および全ての用量レベルで観察される持続作用の比較的小さい程度を所与とすると、これらの変化は、有害であると見なされず;コンジュゲート57の静脈内(iv)投与は、最大で0.24mg/kg(0.24mg/kgを含む)の用量で雄ビーグル犬の心血管または呼吸器機能に対して有害作用を生じなかった。
【0318】
【表8】

要約すれば、hERGイオンチャネル阻害アッセイを用いたコンジュゲート57のインビトロ安全性薬理学評価は、10μMの濃度のコンジュゲート57による有意なインビトロ心毒性の証拠を示さなかった。コンジュゲート57のこのインビトロ安全性薬理学評価は、インビボ心血管および呼吸器試験に裏付けを与える。ナイーブ雄ビーグル犬におけるコンジュゲート57のインビボ心血管および呼吸器試験は、MTDの投与後の最初の2時間で、血圧、心拍数、および呼吸数の有害でない統計的に有意な増加ならびにRR、PR、およびQT間隔の減少(心拍数変化を反映している)をもたらした。他のよりわずかな、用量に依存しないが有意な変化が、2~17時間で、血圧上昇について全ての用量で示されるとともに、MTD治療後、それぞれ5または12時間の時点で開始するPRおよびQT間隔の低下が観察され、モニタリング期間にわたって持続した。
【0319】
実施例6:コンジュゲート57の安定性試験
安定性試験は、コンジュゲート57について行った。安定性プロトコルに含まれる試験は、製剤原料の外観、強度、純度、および水分に関連する変化が、製剤原料の貯蔵期間を通してモニターされることを確実にする。内毒素も、安定性プログラムのこれらの特性についての試験を毎年含めることによってモニターされる。加速および長期安定性試験の結果は、-20℃±5℃のラベル貯蔵条件で最大で3か月間貯蔵したときの、コンジュゲート57の化学的および物理的安定性を実証する。著しい分解が、5℃±3°および25℃/60%の相対湿度(RH)の両方で観察され、結果として、3か月後、これらの2つの条件における安定性評価を中断した。純度の有意な変化は、-20℃±5℃で3か月後に観察されなかった。
【0320】
別の安定性試験では、以下の条件を試験した:窒素下で5℃±3℃および窒素下で-20℃±5℃。酸化を防ぎ、貯蔵中の雰囲気制御を確実にするために、窒素を選択した。
安定性試験におけるコンジュゲート57の包装が、表8に列挙される。
【0321】
【表9】

異なる条件におけるロット1の安定性データが、表9Aおよび9Bに示される。
【0322】
【表10】
【0323】
【表11】

異なる条件におけるロット2の安定性データが、表10Aおよび10Bに示される。
【0324】
【表12】
【0325】
【表13】

コンジュゲート57が、-20℃で少なくとも3か月間安定していることが示された。
【0326】
実施例7:コンジュゲート57のための製剤開発
コンジュゲート57は、自由流動性粉末である。コンジュゲート57の製剤開発は、製剤溶液に安定性および張度を与え得るスクリーニング条件によって達成された。コンジュゲート57の安定性は、溶液のpH(目標範囲:4.0~4.8)に依存することが分かった。スクリーニング後、クエン酸およびリン酸緩衝液、酢酸緩衝液を含む様々な緩衝液が、4.0~4.8のpH範囲で最も高い安定性をコンジュゲート57に与えることが分かった。緩衝液は、酢酸ナトリウムおよび酢酸の組合せによって形成される。要約すれば、一般的に使用される非経口緩衝液である酢酸緩衝液を用いて、コンジュゲート57を溶解させ、4.0~4.8のpH範囲における安定性を確実にする。
【0327】
本明細書においてそれぞれ不純物AおよびBと呼ばれる、1.69および1.70のRRTでコンジュゲート57中に存在する2つの不純物は、コンジュゲート57付加物として同定された。これらの化合物の調査により、それらが所定の期間にわたって酸性酢酸緩衝液中で再びコンジュゲート57に転化することが示された。コンジュゲート57に戻るこれらの化合物の転化速度は、温度に依存する。データが、表11Aおよび表11Bに提供され、これらの表は、室温および40℃におけるこの転化を示す。コンジュゲート57および不純物AおよびBの合計は、±0.1%以内で一定に保たれ、これは、この治療が不純物AおよびBの両方を再びコンジュゲート57に効率的に転化することを実証する。
【0328】
【表14】
【0329】
【表15】

コンジュゲート57は、両親媒性分子であり、したがって、自己集合して、大きい構造になる傾向にある。賦形剤溶解度および適合性試験により、それが生理食塩水に可溶性でなく(1mg/ml未満の溶解度)、トコフェルソラン(TPGS:tocophersolan)、高度精製(super refined)PEG 300、PEG 400、エタノール、デキストロース、またはプルロニック(Pluronics)F68と適合しないことが示された。ポリソルベート80(トゥイーン(Tween)80)およびポリオキシル15ヒドロキシステアレート(ソルトール(solutol)、コリフォール(Kolliphor)HS 15)などの一般的に使用される非経口界面活性剤賦形剤は、再集合して、コンジュゲート57を安定化して、組織化ミセルにすることが評価された。コンジュゲート57は、トゥイーン(Tween)80およびソルトール(solutol)などの非イオン性界面活性剤と適合する。
【0330】
ろ過および凍結/融解安定性試験は、以下のプロトタイプ製剤(2.5mg/mlのコンジュゲート57):10%のソルトール(Solutol)/5%のマンニトール/5mMの酢酸緩衝液、pH4+;2%のソルトール(Solutol)/5%のマンニトール/5mMの酢酸緩衝液、pH4+;5%のトゥイーン(Tween)80/5%のマンニトール/5mMの酢酸緩衝液、pH4+;および2%のトゥイーン(Tween)80/5%のマンニトール/5mMの酢酸緩衝液、pH4+において行った。ろ過後および凍結/融解サイクル後の回収率および純度を測定した。全ての製剤プロトタイプは、4回の凍結/融解サイクル後に安定していた。滅菌ろ過後の損失は観察されず、これは、凝集が十分に軽減されたことを意味する。
【0331】
プロトタイプ製剤におけるコンジュゲート57凍結溶液の安定性も試験した。2つの異なる界面活性剤濃度(1%または2%)を有する2つの製剤プロトタイプを調製した。室温において、4つ全ての製剤が、少なくとも2週間安定している。4℃において、4つ全ての製剤が、少なくとも4週間安定している。-20℃において、4つ全ての製剤が、少なくとも4週間安定している。コンジュゲート57製剤は、-20℃で安定している。4つ全ての製剤が、明所および暗所の両方で少なくとも2週間安定している。4つ全ての製剤に、4回の凍結/融解サイクルを行い、それらの純度の変化がほとんどまたは全くない。
【0332】
【表16】
【0333】
【表17】

ラット血漿中でのPK比較
コンジュゲート57のための様々な製剤は、ラット血漿中で試験した。より高い界面活性剤濃度が、良好なPKプロファイルを示したことが分かった。図5および以下の表に示されるように、ソルトール(Solutol)を含む製剤は、トゥイーン(Tween)と比較して、わずかに良好なPK特性を示した。
【0334】
【表18】

2%のソルトール(solutol)HS 15製剤の臨床使用安定性は、様々な投与キット(容器およびライン(containers & lines))において試験した。それは、安定しており、臨床用量で容器および非ろ過投与セットと適合する。
【0335】
結論として、ポリオキシル15ヒドロキシステアレートは、高い安定性を、コンジュゲート57に与えたため、安定化および可溶化賦形剤として選択された。ポリオキシル15ヒドロキシステアレートは、難溶性の薬剤の製剤化にまたは薬剤を安定させるために典型的に使用される水溶性非イオン性界面活性剤である。コンジュゲート57溶液に使用されるポリオキシル15ヒドロキシステアレートの濃度は、1%~10%、1%~5%、または2%~5%(重量パーセンテージ)である。ある実施形態において、ポリオキシル15ヒドロキシステアレートの濃度は、約2%(重量パーセンテージ)である。
【0336】
注射用溶液のためのコンジュゲート57濃縮物に適切な張度を与えるために、マンニトール、スクロース、デキストロースおよび生理食塩水などの一連の薬剤を評価した。マンニトールは、コンジュゲート57に最良の安定性を与えたため、等張化剤賦形剤として選択された。マンニトールは、注入溶液に必要な張度を与えるのに使用される。バルク充填溶液中のマンニトールの濃度は5%である。
【0337】
コンジュゲート57は、温度感受性であるため、-20℃で貯蔵した。注射用溶液バイアルのためのコンジュゲート57濃縮物は、2.5mg/mLの濃度の2mLの溶液中、バイアル当たり5mgのコンジュゲート57の表示用量を有する。バイアルは、表示される2mLの一貫した取り出し(withdrawal)を確実にするために、0.15mLの過剰分(overfill)を有する。
【0338】
実施例8:コンジュゲート57を含む注射用溶液の調製
コンジュゲート57は、十分に特徴付けられ、高い化学的および立体化学的純度で得られる安定した化合物であるBT-976を、安定した、明確に定義され、十分に特徴付けられ、市販されている化合物であるDM1と反応させることによって合成した。BT-976は、オクトレオチドと類似するペプチドソマトスタチン類似体である。それは、フェニルアラニン(D-Phe)およびトリプトファン(D-Trp)を除いた天然L-アミノ酸からなる。ジスルフィド架橋が、CysおよびCysを結合する。ピリジルスルフィド(PYS)基が、Cysにおいてシステインアミドに結合される。BT-976ペプチドが、天然成分としていくらかの残留水とともにその酢酸塩形態で製造される。BT-976のアミノ酸配列は:
【0339】
【化16】

であり、BT-976の化学構造は:
【0340】
【化17】

である。
【0341】
BT-976およびDM1のカップリング反応は、酢酸および酢酸ナトリウムの存在下で、THFおよび水の混合物中で行われた。反応は、約20℃の温度で撹拌し、1日以内に完了した。反応は、HPLCによってモニターし、BT-976がコンジュゲート57ピークに対してNMT4%に達したときに完了したと見なした。
【0342】
THFのバルクは、浴温度を30℃未満に保ちながら、減圧下での酢酸エチルによる追い出し(chase)によって除去した。得られた溶液は、酢酸エチルで洗浄した。層を分離させた。コンジュゲート57は、下側の水性層中にあった。上層(酢酸エチル層)は、0.2Mの酢酸水溶液で抽出した。層を分離させた。下側の水性層は、上述される水性層と組み合わせて、次に、アセトニトリルおよび氷酢酸を加えて、コンジュゲート57を粗製溶液として得た。次に、コンジュゲート57粗製溶液は、逆相カラムクロマトグラフィーによって精製して、精製されたコンジュゲート57溶液を生成した。精製を待っている間、コンジュゲート57粗製溶液は、不活性雰囲気下で、4℃で貯蔵した。
【0343】
凍結乾燥:
精製されたコンジュゲート57溶液は、研磨ろ過して(polish filtered)、粒子状物質を除去した(全てのその後の溶媒負荷は、同様に研磨ろ過される)。得られた溶液は、3時間にわたって-40~-50℃で凍結した。凍結された溶液は、72~82時間にわたって26.66Pa(200mTorr)未満の減圧およびT<5℃で凍結乾燥させて、固体を生成した。この固体は、均質化して、凍結乾燥されたコンジュゲート57を得た。凍結乾燥されたコンジュゲート57は、残留アセトニトリル(アセトニトリルNMT1,500ppm)を制御するために試験した。この仕様が満たされない場合、アセトニトリルがNMT1,500ppmに達するまで、T<25℃で、減圧下で乾燥を続ける。残留アセトニトリル基準を満たした後、材料の純度は、HPLCによって制御した。仕様は、97.0%を超えるHPLC純度およびDM1 NMT0.10%である。HPLC仕様を満たす材料は、全収率を確立するために秤量した。全収率は、典型的に、BT-976に対して約70%または1Wtである。次に、秤量された材料は、次の工程に供した。純度基準を満たさない生成物は、再度精製される。
【0344】
注射用溶液:
コンジュゲート57は、窒素環境下で処理し、3.7~4.0のpH範囲を有する酢酸緩衝液に溶解させて、製剤原料中で同定される2つの不純物の制御を確実にした。不純物は、酢酸緩衝液中で不安定であり、コンジュゲート57に戻ることが示された。コンジュゲート57は、40℃の酢酸緩衝液に溶解させ、8~24時間保持した。次に、コンジュゲート57溶液は、ポリオキシル15ヒドロキシステアレートおよびマンニトールと混合した。溶液のpHは、4.0および4.8以内に制御し、必要に応じて、ストック酢酸または酢酸ナトリウム溶液で調整した。ある実施形態において、溶液のpHは、約4.0に制御した。最終工程として、さらなるWFIを、目標総体積の十分な量(q.s.)になるまで加えた。
【0345】
【表19】

バルク溶液は、2つの重複0.2μm滅菌等級フィルタに通したろ過によって滅菌した。フィルタは、滅菌保証を支持するために完全性試験を行った。バイアルに、溶液を充填し、完全に自動化された機器によって栓をした。バイアルは、完全に自動化された機器によって蓋をした。次に、蓋をしたバイアルは、100%目視検査を行い、-20℃(公称)で貯蔵した。バイアル検査が蓋をした直後に行われなかった場合、バイアルは、2~8℃で貯蔵される。
【0346】
生成物の滅菌を保証するために、以下の制御を用いた:無菌操作が、クラス100/グレードA領域で行われる;予め規定された場所における沈降プレートおよびアクティブエアサンプラによる環境中の生存微粒子モニタリング;予め規定された場所における環境中の非生存微粒子モニタリング;滅菌ろ過のすぐ上流のバルク溶液バイオバーデン試験;バルク溶液は、2つの重複0.2μm滅菌等級フィルタに通したろ過によって滅菌する;滅菌フィルタは、完全性試験を行う。無菌充填プロセスは、微生物学的培地(例えば、ダイズカゼイン消化培地)を用いたプロセス刺激によって実証した。
【0347】
コンジュゲート57製剤製造プロセスは、温度保持処理を含むように修正され、ここで、コンジュゲート57製剤原料は、40℃の酢酸緩衝液に溶解させ、8~24時間保持してから、製剤賦形剤を加え、バイアル中に分配する。
【0348】
注射用溶液のためのコンジュゲート57濃縮物は、静脈内(iv)投与のための滅菌生成物である。無菌充填の前に、溶液は、2つの重複滅菌0.2μmフィルタに通した。
実施例9:フェーズ1/フェーズ2a試験
フェーズ1の目的は、ソマトスタチン受容体2発現進行癌(胃腸膵もしくは肺もしくは胸腺もしくは他の神経内分泌腫瘍または肺の小細胞肺癌もしくは大細胞神経内分泌癌を含む)に罹患した患者に3週間毎のスケジュールで静脈内投与されるときの、コンジュゲート57の安全性および忍容性を評価し、コンジュゲート57の最大耐量および推奨フェーズ2用量を決定することである。それはまた、コンジュゲート57の急性および慢性毒性の両方を特性評価し、コンジュゲート57、DM1、およびコンジュゲート57からのペプチドの主な薬物動態パラメータを特性評価し、コンジュゲート57が抗薬物抗体を誘導する可能性を評価し、標準的な腫瘍縮小効果基準(RECIST 1.1)、ならびにクロモグラニンA(CgA:chromogranin A)、ニューロン特異的エノラーゼ(NSE:neuron-specific enolase)、および血液中に循環する腫瘍細胞(CTC:circulating tumor cell)、および尿中の5-ヒドロキシインドール酢酸(5-HIAA)を含む薬力学的(PDc:pharmacodynamic)バイオマーカ変化を用いることによって、予備的な抗腫瘍活性を評価する。さらに、試験は、複数のモダリティ(ソマトスタチン類似体放射性イメージング、免疫組織化学、CTC、またはエキソソーム分析)によって測定した際の腫瘍SSTR2発現、PK、有効性、安全性、抗コンジュゲート57抗体、および血液中のPDcバイオマーカ変化の間の関係を調査する。フェーズ1試験は、2つの部分:フェーズ1パートA(用量漸増)およびフェーズ1パートB(早期拡張)を有する。
【0349】
フェーズ1パートA(用量漸増)
フェーズ1パートAは、用量推奨を行い、最大耐量(MTD:maximum tolerated dose)を推定するために、過量投与制御を伴う用量漸増(EWOC:escalation with overdose control)原則によって導かれる2つのパラメータを用いた適応的ベイズロジスティック回帰モデル(BLRM:Bayesian logistic regression mode)を用いる。
【0350】
フェーズ1パートAの主な目的は、胃腸膵(GEP)もしくは肺もしくは胸腺もしくは他の神経内分泌腫瘍(NET)または肺の小細胞肺癌(SCLC)もしくは大細胞神経内分泌癌(LCNEC)を含むSSTR2発現進行癌に罹患した患者に3週間毎のスケジュールで静脈内(IV)投与されるときの、コンジュゲート57の安全性および忍容性を調べ、コンジュゲート57のMTD、および予備的な推奨フェーズ2用量(RP2D)を決定することである。
【0351】
フェーズ1パートAの副次的目的は、急性および慢性毒性の両方を含む、コンジュゲート57の安全性および忍容性を特性評価し;GEPもしくは肺もしくは胸腺もしくは他のNETまたは肺のSCLCもしくはLCNECを含むSSTR2発現進行癌に罹患した患者に静脈内(IV)投与されるときの、コンジュゲート57、DM1、およびコンジュゲート57からのペプチドのPKを特性評価し;GEPもしくは肺もしくは胸腺もしくは他のNETまたは肺のSCLCもしくはLCNECを含むSSTR2発現進行癌に罹患した患者に静脈内(IV)投与されるときの、コンジュゲート57が血清中の抗コンジュゲート57抗体を誘導する可能性を評価し;RECIST 1.1によって定義される腫瘍縮小効果基準、および奏功期間を用いて、GEPもしくは肺もしくは胸腺、他のNETまたは肺のSCLCもしくはLCNECを含むSSTR2発現進行癌に罹患した患者におけるコンジュゲート57の予備的な抗腫瘍活性を評価することである。
【0352】
フェーズ1パートAの探索的目的は、無増悪生存率、全生存率、ならびに限定はされないが、クロモグラニンA(CgA)、ニューロン特異的エノラーゼ(NSE)、および血液中に循環する腫瘍細胞(CTC)を含む、血液中のPDcバイオマーカ変化、および尿中の5-ヒドロキシインドール酢酸(5-HIAA)を評価することによって、GEPもしくは肺もしくは胸腺もしくは他のNETまたは肺のSCLCもしくはLCNECを含むSSTR2発現進行癌に罹患した患者、または前立腺癌に罹患した患者におけるコンジュゲート57の予備的な抗腫瘍活性を評価し;SSTR2レベル(ソマトスタチン類似体放射性同位体イメージング(SARI:somatostatin analog radioisotope imaging)、免疫組織化学[IHC]、CTCまたはエキソソームによって測定される)、PK、有効性、安全性、抗コンジュゲート57抗体、および血液中のPDcバイオマーカ変化の間の関係を調査することである。
【0353】
治療量以下の可能性がある用量レベルで治療される患者の数を最小限に抑えるために、第1の用量コホートは、2人の患者を登録する一方、その後のコホートは、最小で3人かつ最大で6人の患者を登録する。コホート1中の最初の患者に、3週間毎のサイクルで、1.0mgの開始用量で1時間にわたって静脈内(IV)投与されるコンジュゲート57を与える。この患者は、追加の患者がコンジュゲート57による治療を開始する前に、C1D8に予定される来院中の評価を含め、7日間追跡される。コンジュゲート57が、少なくとも7日間にわたって最初の患者に耐容される場合、第1のコホートが、1人の追加の患者の治療に使用可能になる。最初の2人の患者が、少なくとも3週間(C2D1投与前評価を含む)にわたって安全性および用量規定毒性(DLT:dose limiting toxicity)について評価された後、第2のコホートへの登録が開始し得る。
【0354】
フェーズ1パートA中、患者が、疾患進行の著しい証拠を伴わずに、コンジュゲート57に耐性がある場合、患者は、SRCの同意を得て、C3から開始して、SRCによって耐容可能として既に確立された用量に増加された用量を受けることができる。用量は、各患者につき1回のみ増加され得る。
【0355】
コンジュゲート57の開始用量は、1.0mgである。計画された用量レベルが、表12にまとめられている。
【0356】
【表20】

治療量以下の用量レベルで治療される患者の数を最小限に抑えるために、第1の用量コホートは、2人の患者を登録する一方、その後のコホートは、最小で3人かつ最大で6人の患者を登録する。最初の患者に、3週間毎のサイクルで、1.0mgの開始用量で1時間にわたって静脈内(IV)投与されるコンジュゲート57を与える。第1のコホート中のコンジュゲート57で治療された最初の患者は、追加の患者が、コンジュゲート57による治療を開始する前に、7日間にわたって観察される。コンジュゲート57が、最初の患者において少なくとも7日間にわたって耐容される場合、第1のコホートが、1人の追加の患者の治療に使用可能になる。最初の2人の患者が、少なくとも3週間(C2D1まで)にわたって安全性および用量規定毒性(DLT)について評価された後、第2のコホートへの登録が開始し得る。
【0357】
第1のコホートの完了後、安全性への懸念がある場合、患者のその後のコホートは、好適な患者が同定されるのにしたがい投与されることになる。しかしながら、第2のコホートにおいて投与をずらすよう選択することが可能であり得、その後のコホートについても同様である。
【0358】
第1のコホート後の各用量漸増コホートにおいて、コホート内の最小で3人の患者が、C1を完了していることが必要とされ、次のコホートへの登録が開始し得る前に少なくとも3週間(C2Day1まで)にわたって安全性および用量規定毒性(DLT)について評価された。コンジュゲート57用量コホートは、現在の用量レベルで登録された患者からC1中に収集された安全性データが登録された後、順次漸増される。
【0359】
用量コホート中の各患者は、C1においてコンジュゲート57を与えられ、DLTの評価によって評価可能である、C1の最終日までの追跡安全性評価を完了していなければならない。C1を完了する前にDLT以外の理由で試験を中止した患者は、交換されるべきである。
【0360】
DLTが、コホートへの追加の患者の登録を必要とする場合、全ての患者が、C1においてコンジュゲート57を与えられ、C1の最後までの追跡安全性評価を完了した後、そのコホートについての全ての安全性データが見直されなければならない。前の用量レベルの安全性および忍容性データの中間評価に基づいて、患者の参加確保(accrual)が中間用量レベルで行われることが決定されることもある。
【0361】
毒性は、アメリカ国立がん研究所(NCI:National Cancer Institute)有害事象共通用語規準(CTCAE:Common Terminology for Cancer Adverse Events)、第4.03版を用いて等級分けされる。
【0362】
用量漸増に関する決定は、C1からのデータの検討に基づいてなされるが、安全性データは、治療を継続している全ての患者からも収集され、これは、SRCによって定期的に見直されることになる。いずれの検出された蓄積毒性も、後の減量または必要に応じてRP2Dのさらなる微調整を含む他の措置を必要とし得る。
【0363】
フェーズ1パートB(早期拡張)
フェーズ1パートBにおいて、コンジュゲート57は、SRCによって特定された予備的な推奨フェーズ2用量(RP2D)を用いて評価される。
【0364】
フェーズ1パートBの主な目的は、用量漸増段階中に特定されたMTDを確認し、GEPもしくは肺もしくは胸腺、他のNETまたは肺のSCLCもしくはLCNECを含むSSTR2発現進行癌に罹患した患者、または前立腺癌に罹患した患者に静脈内(IV)投与されるときの、コンジュゲート57の推奨フェーズ2用量(RP2D)の安全性および忍容性ならびにスケジュールをさらに調べることである。
【0365】
フェーズ1パートBの副次的目的は、GEPもしくは肺もしくは胸腺、他のNETまたは肺のSCLCもしくはLCNECを含むSSTR2発現進行癌に罹患した患者、または前立腺癌に罹患した患者における、コンジュゲート57、DM1、およびコンジュゲート57からのペプチドのPKをさらに特性評価し;GEPもしくは肺もしくは胸腺、他のNETまたは肺のSCLCもしくはLCNECを含むSSTR2発現進行癌に罹患した患者、または前立腺癌に罹患した患者に静脈内(IV)投与されるときの、コンジュゲート57が血清中の抗コンジュゲート57抗体を誘導する可能性をさらに評価し;RECIST
1.1によって定義される腫瘍縮小効果基準、および奏功期間を用いて、GEPもしくは肺もしくは胸腺、他のNETまたは肺のSCLCもしくはLCNECを含むSSTR2発現進行癌に罹患した患者、または前立腺癌に罹患した患者におけるコンジュゲート57の予備的な抗腫瘍活性を評価することである。
【0366】
フェーズ1パートBの探索的目的は、無増悪生存率、全生存率、ならびに限定はされないが、CgA、NSE、血液中のCTC、および尿中の5-HIAAを含むPDc変化を評価することによって、GEPもしくは肺もしくは胸腺、他のNETまたは肺のSCLCもしくはLCNECを含むSSTR2発現進行癌に罹患した患者、または前立腺癌に罹患した患者におけるコンジュゲート57の予備的な抗腫瘍活性をさらに評価し;SSTR2レベル(SARI、IHC、CTCまたはエキソソームによって測定される)、PK、有効性、安全性、抗コンジュゲート57抗体、および血液中のPDcバイオマーカ変化の間の関係をさらに調査することである。
【0367】
フェーズ1パートBは、予備的なRP2Dが、試験のフェーズ1パートAにおいて特定された後、開始する。予備的なRP2Dは、フェーズ1パートA中のコンジュゲート57の安全性、忍容性、PK、およびPDcプロファイルの所見に基づいている。予備的な推奨フェーズ2用量は、MTDと同じであってもよく、またはMTD未満であってもよい。MTDが、投与の複数サイクル後に許容される安全性および忍容性プロファイルを有することがSRCによって決定された用量より多い場合、MTD未満の予備的なRP2Dが選択され得る。12人以下の患者が、各用量レベルで治療され(フェーズ1パートBにおいて同じ用量レベルで治療された患者を含む)、合計で18人以下の患者が、フェーズ1パートBにおいて治療される。
【0368】
フェーズ2a試験
フェーズ2aの主な目的は、標準的な腫瘍縮小効果基準(RECIST 1.1)、ならびにSSTR2発現腫瘍を有する患者:進行した低または中悪性度の膵臓NETを有する患者;進行した低または中悪性度の消化管または肺または胸腺NETを有する患者;進行した肺の小細胞肺癌または大細胞神経内分泌癌に罹患した患者;進行した傍神経節腫、褐色細胞腫、甲状腺髄様癌、メルケル細胞癌、または肺外神経内分泌癌に罹患した患者;および前立腺癌に罹患した患者の4つの腫瘍特異的コホートにおける奏功期間を用いて、単一の薬剤としてのコンジュゲート57の有効性を評価することである。さらに、患者の上記の腫瘍特異的コホートにおけるコンジュゲート57の安全性、忍容性、およびPKが評価されることになる。
【0369】
フェーズ2aはまた、クロモグラニンA(CgA)、ニューロン特異的エノラーゼ(NSE)、および血液中の循環腫瘍細胞(CTC)、および尿中の5-ヒドロキシインドール酢酸(5-HIAA)を含むPDcバイオマーカ変化を評価することによって、患者の上記の腫瘍特異的コホートにおけるコンジュゲート57の抗腫瘍活性を調査し、複数のモダリティ(ソマトスタチン類似体放射性イメージング、免疫組織化学、CTC、およびエキソソーム分析)によって測定した際の腫瘍SSTR2発現と、患者の上記の腫瘍特異的コホートにおけるコンジュゲート57の抗腫瘍活性との間の関係を調査する。SSTR2発現、PK、有効性、安全性、抗コンジュゲート57抗体および血液中のPDcバイオマーカ変化の間の関係も調査される。
【0370】
フェーズ2aは、治験依頼者の判断で、全ての患者が、フェーズ1パートBに登録し、C2D1まで(C2D1を含む)安全性について評価され、SRCが、全ての安全性データを見直し、フェーズ2aを継続することを推奨した後、開始し得る。
【0371】
コンジュゲート57は、フェーズ1パートBの完了時にSRCによって定義されるRP2Dを用いて評価される。合計で最大80人の患者が、4つの拡張コホートにおいて治療され、各コホートは、これらの異なる集団におけるコンジュゲート57の早期の有効性および安全性を評価するために、異なるサブセットのSSTR2発現固形腫瘍を有する患者からなる(それぞれn=20)。
【0372】
イベントのスケジュールが、以下の表13に示される。
【0373】
【表21A】
【0374】
【表21B】
【0375】
【表21C】

禁止される薬剤
以下の薬剤および治療は、試験参加中禁止される:
強力なCYP3A4阻害剤(ケトコナゾール、イトラコナゾール、クラリスロマイシン、アタザナビル、インジナビル、ネファゾドン、ネルフィナビル、リトナビル、サキナビル、テリスロマイシン、およびボリコナゾールなど)の併用。コンジュゲート57の細胞毒性成分であるDM1は、主にCYP3A4によってインビトロで、およびCYP3A5によってより低い程度に代謝される[(カドシラ(KADCYLA)(登録商標)(アド-トラスツズマブエムタンシン)添付文書、ジェネンテック社(Genentech,Inc.)、カリフォルニア州サウスサンフランシスコ(South San Francisco,CA)]。したがって、強力なCYP3A4阻害剤の併用は、DM1曝露および毒性の増加の可能性のため禁止される。アプレピタント(エメンド(EMEND)(登録商標))、CYP3A4の基質、中程度の阻害剤または誘導剤の使用は、許容されない。
【0376】
固形腫瘍の治療について研究中である、患者の固形腫瘍以外の適応症のために市販されている薬剤を含む、コンジュゲート57以外の任意の治験薬またはデバイス。
任意の放射線療法、化学療法、抗腫瘍薬治療または試験薬以外の治験薬。病巣部位における緩和のための放射線は、治験実施者と医療監視者との間の議論の後、許容されることがある。
【0377】
生ウイルスおよび細菌ワクチン、例えば、黄熱病、麻疹、インフルエンザ、風疹、おたふく風邪、腸チフス、ヒト型結核菌(Mycobacterium tuberculosis)(BCG)、ペスト菌(Yersinia pestis)(EV)は、投与されてはならない。これらのワクチンの投与による感染のリスクの増加が、従来の化学療法で観察されており、コンジュゲート57との作用は不明である。死菌ワクチンの投与は許容される。死菌ワクチンの例は、コレラ、腺ペスト、ポリオワクチン、A型肝炎および狂犬病である。
【0378】
患者の安全性および健康のために必要であると考えられる、上述されるもの以外の他の薬剤も与えられてもよい。
慎重に使用されるべき薬剤
以下の薬剤は、試験参加中に慎重に使用されるべきである:
血糖降下薬剤:ソマトスタチン類似体は、低血糖または高血糖をもたらし得る、インスリンおよびグルカゴンの分泌を阻害する。ソマトスタチンとコンジュゲート57のペプチド成分との間の類似性のため、併用する血糖降下薬の用量調整が、コンジュゲート57で治療される患者において必要であることがある。
【0379】
徐脈誘発薬:徐脈誘発薬(例えば、β遮断薬)の同時投与は、ソマトスタチン類似体に関連する心拍数の減少に対して相加効果を与え得る。ソマトスタチンとコンジュゲート57のペプチド成分との類似性のため、併用する徐脈誘発薬の用量調整が、コンジュゲート57で治療される患者において必要であることがある。
【0380】
経口投与される薬剤:ソマトスタチン類似体は、併用薬の腸管吸収を減少させ得る。ソマトスタチンとコンジュゲート57のペプチド成分との類似性のため、コンジュゲート57が併用薬の腸管吸収を減少させ得る可能性がある。
【0381】
許容される薬剤
患者は、限定はされないが、以下に概説される項目を含む、治療医師によって必要であると見なされる適切な支持療法措置を受けることが許容される:
吐き気/嘔吐:5-HT3受容体拮抗薬によるものなどの制吐治療薬が、研究センターのガイドラインにしたがって投与されるべきである。患者は、水分の自由な経口摂取を維持することを強く勧められるべきである。コンジュゲート57の第1のサイクル後、標準的な組織的実施にしたがって、予防的制吐治療薬の投与が強く考慮されるべきである。アプレピタント(エメンド(EMEND)(登録商標))、CYP3A4の基質、中程度の阻害剤または誘導剤の使用は、許容されない。
【0382】
下痢:下痢は、標準的な実施ガイドラインにしたがって、下痢止め薬の投与を含む適切な支持療法で即座に治療されるべきである。下痢止め薬は、予防的に摂取されてはならない。患者は、1)十分に形成されていないもしくは軟便、2)1日における通常より多い排便の発生、または3)異常に大量の便の最初の兆候時に下痢止め薬の摂取を開始するよう指示されるべきである。下痢止め薬は、血液または粘液が便中に存在する場合、または下痢に発熱が伴う場合、延期されるべきである。この状況では、適切な診断用微生物学的検体が、感染の原因を除外するために取得されるべきである。患者はまた、脱水を防ぐのを助けるためにかなりの量の透明な水分を摂取するよう勧められるべきである。
【0383】
便秘:便秘は、便軟化剤または滑沢剤で治療され得る。浸透物質(osmotics)の使用が、電解質の慎重なモニタリングを伴い、許容される。
貧血:輸血および/またはエリスロポエチンが、貧血の治療に臨床的に必要である際に使用され得るが、併用薬として明確に示されるべきである。試験のためのスクリーニングの時点でエリスロポエチンを既に投与されている患者は、試験治療が開始した時点で1か月超それを投与されている場合、それを継続し得る。予防的なエリスロポエチンは、試験のC1中に開始されてはならないが、C2中およびその後に開始されてもよい。
【0384】
好中球減少症:5日間以上続くグレード4好中球減少症;38.5℃以上の口腔体温を伴うグレード3/4好中球減少症;またはグレード3/4好中球減少症による感染を起こしている患者は、コロニー刺激因子による治療を受けてもよい。G-CSF、PEG化G-CSFまたはGM-CSFを含むコロニー刺激因子の予防的な使用は、コンジュゲート57治療の第1のサイクル後、組織的な標準にしたがって使用され得る。
【0385】
ソマトスタチン類似体:オクトレオチド、ランレオチド、パシレオチド、および他のソマトスタチン類似体などの薬剤は、それらの使用が、カルチノイド症状を制御する際の利益をもたらしている場合、許容される。
【0386】
ソマトスタチン類似体放射性同位体イメージング(SARI)
C1D1の180日以内に得られた以前の陽性SARIの実証された結果を有さない患者は、スクリーニングに参加する前およびコンジュゲート57を投与される前に、神経内分泌腫瘍がソマトスタチン受容体を確実に発現するように、この試験においてSARIによってプレスクリーニングされる。このプレスクリーニングは、ソマトスタチン受容体陽性腫瘍の検出および局在診断に使用される、地域の販売承認を有するSARIのみを用いて行われなければならない。販売承認を有する複数のキットが入手可能である場合、任意の方法が、治験実施者の判断で使用され得る。C1D1の180日以内の以前の陽性SARI(111In、68Ga、99mTc(テクネチウム-99m)、またはソマトスタチン類似体に連結される他の放射性同位体によって)の実証を有する患者は、SSTR2発現に陽性であると見なされ、この試験においてプレスクリーニング中にSARIを受けることが必要とされる。
【0387】
インジウム標識SARI
インジウムIn111ペンテトレオチド(ペンテトレオチドスキャン)の調製のためのオクトレオスキャン(Octreoscan)(商標)キット(マリンクロット・ニュークリア・メディシンLLC(Mallinckrodt Nuclear Medicine LLC)、米国ミズーリ州メリーランド・ハイツ(Maryland Heights MO USA))は、2つの部分:10mlの反応バイアルおよび10mlの111In塩化物のバイアルを含む。イメージング剤は、パッケージの指示にしたがって2つの成分を組み合わせて、111Inペンテトレオチドを生成することによって、使用前の6時間以内に調製される。校正の時点で、キットは、2.8日の半減期を有する111MBq/ml(3.0mCi/ml)の111Inを含有する。
【0388】
スキャンは、組織的なガイドラインおよび製造業者の指示にしたがって行われるべきである。FOCBPは、妊娠について検査されるべきであり、妊娠している場合、除外される。使用の直前、標識率(labeling yield)は、パッケージの指示にしたがって決定されなければならない。111Inペンテトレオチド投与の前の夜、ビサコジルまたはラクツロースなどの緩下剤が、与えられ、48時間にわたって続けられるべきである。投与前および投与後の両方で、患者は、十分な水分補給を行うべきであり、非結合薬剤を腎臓に通して流し出すことによって放射線量を減少させるとともに、適切な腸洗浄を確実にするために、自由に水分を取ることを勧められるべきである。イメージングは、平面および単一光子放射コンピュータ断層撮影法(SPECT)カメラの両方によって行われ得るが、SPECTイメージングのみが、その3D性能、優れた感度、およびコンピュータ断層撮影法(CT)またはMRIスキャンとの可能な比較のために腫瘍の局在診断をより正確に可能にする能力のために、この試験において行われるスキャンに使用されるべきである。SPECTイメージングのための推奨放射線量は、222MBq(6.0)mCiの111Inペンテトレオチドであり、予測される有効線量当量は、26mSvである。
【0389】
典型的に、イメージングは、111Inペンテトレオチドの投与の4時間後および24時間後に行われる。場合によっては、48時間後に撮影された画像も、解釈を助けるのに有用である。治験実施者および委任された者は、イメージング時点について標準的な実施にしたがうべきである。
【0390】
スキャンは、表14に列挙されるように、肝臓の非病変部位に関してスコアリングされるべきである。
【0391】
【表22】

患者は、表14からのスコアが3または4である場合、陽性オクトレオスキャン(Octreoscan)を有すると見なされる。
【0392】
製造業者によれば、111Inペンテトレオチドのホルモン作用は、オクトレオチドのホルモン作用の1/10である。イメージング用量は、ソマトスタチン類似体の治療量未満であるため、この物質は、大抵の場合、臨床的に有意なソマトスタチン効果を及ぼすことは予測されないが、深刻な低血糖が、インスリノーマを有する患者において発生することがある。IVグルコース溶液が、インスリノーマを有する疑いのある患者において投与の直前および投与中に投与されるべきである。
【0393】
臨床試験では、111Inペンテトレオチドの72時間以内にオクトレオチド治療を受けた87人中83人の患者(95%)が、首尾よくイメージングされた。それにもかかわらず、イメージング感度が、治療量の短時間作用型ソマトスタチン治療を同時に受けている患者において低下され得るため、これは、111Inペンテトレオチド投与の時間を調整する際に考慮されるべきである。
【0394】
111Inペンテトレオチドは、主に腎臓によって排出されるため、腎障害を有する患者における使用は、慎重に考慮されるべきである。
111Inペンテトレオチドに関連する有害反応(538人の患者の臨床試験において1%未満)には、目まい、発熱、発赤、頭痛、低血圧症、肝酵素の変化、関節痛、吐き気、発汗、脱力感、徐脈の単独症例、ならびにヘモグロビンおよびヘマトクリットの減少の単独症例が含まれていた。
【0395】
ガリウム標識SARI
ソマトスタチン類似体の68Ga誘導体を用いたSARIが、少なくとも2001年以来実施されている。68Ga-DOTATATE(GaTate)および68Ga-DOTATOCが一般的に使用される。DOTA-TATEまたはDOTA-オクトレオテートとしても知られているDOTATEは、放射性核種およびオクトレオチドの誘導体である(Tyr3)-オクトレオテートを結合する酸DOTAのアミドを含む。エドトレオチドとしても知られているDOTATOC、SMT487、または(DOTA-Phe-Tyr)オクトレオチドも、診断および治療のために放射性核種に結合され得るオクトレオチド誘導体である。コンジュゲート57と比較して、68Ga-DOTATATEおよび68Ga-DOTATOCは、様々なヒトソマトスタチン受容体に対する以下の親和性プロファイル(半数阻害濃度)を有する(表15)。
【0396】
【表23】

68Gaが、サイクロトロンから生成され、またはGe-Gaジェネレータから収集される。次に、それは、ソマトスタチン類似体と組み合わされる。得られたイメージング剤は、患者に投与され、そのほぼ直後に、同時の陽電子放射断層撮影法(PET)およびCTを用いてイメージングされる。
【0397】
病変は、標準化された取り込み値を割り当てられ得るが;患者は、表14に概説されるスキームを用いて全体的に陽性として分類され得る。
薬物動態評価
C1D1およびC3D1について、コンジュゲート57、コンジュゲート57のソマトスタチン類似体ペプチド成分(BT-979)、およびDM1(全ての、コンジュゲートされていない、および遊離スルフヒドリル)の決定のための静脈血試料(4~6ml)が、注入の開始前、試験薬注入の開始の0.5時間(±1分)後;正確に注入の終了時;ならびに試験薬注入の開始の1.5時間(±5分)、2時間(±5分)、4時間(±5分)、6時間(±5分)、8時間(±5分)、および10時間(±5分)後に採取される。10時間の時点で、センターで入院が必要とされる場合、10時間の時点で採取されない。各試料の採取の日時が記録される。
【0398】
バイオマーカおよび薬力学的評価
バイオマーカおよび薬力学的評価の理論的根拠
クロモグラニンA(CgA)は、NETの患者の血液中で一般的に上昇される十分に特徴付けられたバイオマーカである。それは、神経内分泌腫瘍を有する患者における腫瘍負荷、予後、治療反応、および疾患進行に関連することが示されている(バジェッタ(Bajetta)ら著、キャンサー(Cancer)、第86巻:858(1999))。それはまた、ソマトスタチン類似体の投与後に急速に低下することが示されている。したがって、CgAは、ベースラインでNETの患者の循環血液中で評価され、上昇される場合、それは、潜在的な予後マーカとして、治療に対する反応および疾患進行の潜在的な予測因子として、および急性のソマトスタチン経路特異的阻害の探索的バイオマーカとして、試験治療中に追跡される。
【0399】
ニューロン特異的エノラーゼ(NSE)も、SCLCおよびNETの患者の血液中で上昇することが分かっている。CgAほど広く試験されていないが、NSEの上昇したレベルが、SCLCおよびNETの患者における疾患の程度、予後および化学療法に対する反応に関連している(ヤオ(Yao)ら著、ジャーナル・オブ・クリニカル・オンコロジー(J Clin Oncol.)、第28巻:69(2010))。NSEは、ベースラインで全ての患者の循環血液中で評価され、上昇される場合、それは、潜在的な予後マーカとして、および治療に対する反応および疾患進行の潜在的な予測因子として、試験治療中に追跡される。
【0400】
治療前に患者において検出される循環中腫瘍細胞(CTC)の数は、SCLCの患者において予後的重要性を有することが示されている(ホウ(Hou)ら著、ジャーナル・オブ・クリニカル・オンコロジー(J Clin Oncol.)、第30巻:525(2012))およびNET(カン(Khan)ら著、ジャーナル・オブ・クリニカル・オンコロジー(J Clin Oncol.)、第31巻:365(2013))。さらに、CTCにおけるSSTR2発現が、NETの患者において測定された。CTC数は、ベースラインで全ての患者において評価され、潜在的な予後マーカとして、および反応および疾患進行の潜在的な予測因子として、試験治療中に評価される。CTCにおけるSSTR2発現が、CTCにおけるSSTR2発現とコンジュゲート57の臨床活性との間の関連を調査するために測定される。しかしながら、CTCが、C1D1試料において検出されない場合、CTC試料は、その後の来院時に採取されない。アポトーシスの定性的評価が、ベースラインでおよび試験治療中に採取されるCTCの視覚的分析によって行われ、汎サイトケラチン抗体で染色される。
【0401】
エキソソームは、多くのタイプの癌細胞によって活発に分泌され、癌についての分子情報を保有し、それによって、腫瘍生検の必要なしに臨床的診断ツールとして開発される可能性を有する膜結合リン脂質である。最近の技術の進歩は、エキソソーム由来癌に関連するタンパク質の向上した検出感度を有する(イム(Im)ら著、ネイチャー・バイオテクノロジー(Nat Biotechnol.)、第32巻:490(2014))。ソマトスタチン受容体発現癌に罹患した患者に由来するエキソソームタンパク質およびRNAの検出感度が不明である一方、この技術は、このような癌に罹患した患者におけるソマトスタチン受容体発現を確立するための血液に基づく診断ツールとして有望であり、コンジュゲート57および他の治療の将来の発展を助けるであろう。したがって、血液試料は、限定はされないが、ソマトスタチン受容体2および5を含む、エキソソーム由来タンパク質および/またはRNAマーカの分析のために、全ての患者からスクリーニング中に採取される。
【0402】
クロモグラニンA(CgA)
試料は、肺のSCLCまたはLCNEC患者におけるCgAのために採取されない。全ての他の患者において、試料は、表13に示されるように、投与前のC1D1および投与の6時間後に、CgAのために採取される。C1D1値が正常範囲内である場合、さらなる採取は行われない。C1D1値のいずれかまたは両方が正常範囲を超える場合、次に、試料は、C2D1、およびC4のD1に開始して3サイクル毎(C4、C7、C10など)、およびEOT時に引き続き採取される。
【0403】
ニューロン特異的エノラーゼ(NSE)
試料は、表13に示されるように、C1D1に投与前に全ての患者においてNSEのために採取される。C1D1における値が正常範囲内である場合、さらなる採取は行われない。値が正常範囲を超える場合、試料は、C2D1および次にC3のD1に開始して1サイクル置き(C3、C5、C7、C9など)およびEOT時に、肺のSCLCおよびLCNEC患者から引き続き採取され;C2D1および次にC4のD1に開始して3サイクル毎(C4、C7、C10など)、およびEOT時に、全ての他の患者から引き続き採取される。
【0404】
5-ヒドロキシインドール酢酸(5-HIAA)
この試験は、肺のSCLCまたはLCNEC患者において行われない。全ての他の患者において、この試験は必要とされない。試験される場合、それは、表13に示されるように採取される。完全な24時間試料が、試験薬投与前C1D1までの採取のために診療所に運ばれ得るように、5-HIAAの量は、C1D1前の任意の日の早朝に開始して24時間の蓄尿によって決定される。C1D1値が正常範囲内である場合、さらなる5-HIAA試料は採取されない。値が正常範囲を超える場合、試料は、治験実施者の判断で、C2D1における投与前24時間以内、およびC4のD1における投与前少なくとも24時間に開始して3サイクル毎(C4、C7、C10など)、およびEOT時に、引き続き採取される。
【0405】
保存腫瘍試料
入手可能なときはいつでも、コンジュゲート57による治療前の患者の腫瘍の保存されたホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE:formalin-fixed paraffin-embedded)試料を、IHCによるSSTR2発現のレトロスペクティブ分析のために採取する。
【0406】
任意選択の腫瘍生検
生検手順は、スクリーニング段階中に腫瘍生検を行うために、スクリーニングのインフォームドコンセント用紙(ICF:informed consent form)上の任意選択の腫瘍生検の提供にサインした患者のみに行われる。このような患者は、生検に利用しやすく、かつリスクが低くかつ生検手順を行うのに十分なサイズのものであると見なされる腫瘍の少なくとも1つの部位を有さなければならない。この腫瘍生検に対する同意は、自発的かつ任意である。この手順は、表13に示されるようにスクリーニング中(C1D1前の14日以内)に行い、患者の腫瘍検体のFFPE試料を、IHCによるSSTR2発現のレトロスペクティブ分析のために採取する。
【0407】
循環中の腫瘍細胞
CTCの分析のための全血試料は、表13に示される時点で採取される。これらの試料は、全ての患者において投与前にC1D1およびC2D1に採取される。肺のSCLCおよびLCNEC患者において、CTCは、C3のD1に開始して1サイクル置き((C3、C5、C7、C9など)およびEOT時に、引き続き採取される。全ての他の患者において、CTCは、C4のD1に開始して3サイクル毎(C4、C7、C10など)、およびEOT時に、引き続き採取される。CTCが、C1D1試料において検出されない場合、それらは、その後の来院時に採取されない。
【0408】
エキソソーム分析
限定はされないが、ソマトスタチン受容体2および5を含む、エキソソーム由来タンパク質および/またはRNAの分析のために、表13に示されるように、スクリーニング中、全血を採取する。
【0409】
有効性評価
腫瘍測定および疾患奏効(disease response)評価は、全ての患者に対して行う。腫瘍評価試験は、C1D1の前28日以内にスクリーニング中に行う。肺のSCLCまたはLCNECを有する患者について、疾患奏効評価は、C3前に開始して、1サイクル置きに第1の試験薬投与の7日以内に行う。全ての他の患者について、疾患奏効評価は、C4前に開始して、3サイクル毎に第1の試験薬投与の7日以内に行う。EOTの後、安定した疾患または奏効率(objective response)を有するかまたは腫瘍を評価されなかった患者は、疾患進行について追跡調査を行う。肺のSCLCおよびLCNEC患者が、約6週間毎に、または臨床的に必要なときに追跡調査される。他の患者は、約9週間毎に、または臨床的に必要なときに追跡調査される。
【0410】
このような患者について、疾患の全ての部位が、CTまたはMRIによってイメージングされるべきである。その後の評価は、スクリーニング中に使用されるのと同じ放射線透視法を使用するべきである。解剖学的計測(標的病変にわたって総合される)が、スクリーニングおよびその後の各評価中に実証される。ばらつきを減少させるために、可能であれば、同じ有資格医師が結果を解釈する。
【0411】
フェーズ1パートAの患者は、測定可能病変を有する必要がない。フェーズ1パートBおよびフェーズ2aの患者は、測定可能病変を有する必要がある。
スクリーニング中、腫瘍病変は、以下のように、測定可能対測定不能および標的対非標的と分類される。
【0412】
測定可能対測定不能
測定可能:少なくとも1つの次元でCTスキャンもしくは臨床検査による測径器測定によって10mm以上、または胸部X線によって20mm以上(最長径が記録される)であると正確に測定され得る病変。悪性リンパ節について、リンパ節は、CTスキャンによって短軸が15mm以上でなければならない。
【0413】
測定不能:小さい病変(10mm未満の最長径または10mm以上15mm未満の短軸を有する病理学的リンパ節)および全く測定不能な病変を含む全ての他の病変。
標的対非標的
標的:全ての病変臓器を代表する、臓器当たり最大で2つまでの病変および全体で5つまでの病変の全ての測定可能病変が、標的病変として同定され、スクリーニング時に測定され、記録される。標的病変は、それらのサイズ(すなわち、最長径を有する病変)および正確な反復測定に対する適合性に基づいて選択される。全ての標的病変についての最長径の和が、計算され、ベースライン最長径和としてeCRFにおいて記録される。
【0414】
非標的:標的病変(または疾患の部位)として分類されない全ての他の病変が、非標的病変として同定され、eCRFにおいて記録される。非標的病変の測定は必須ではない。
標的および非標的病変の疾患奏効は、表16に記載されるカテゴリーおよび基準にしたがって、RECIST 1.1を用いて治験実施者によって評価される。各患者についての最良総合効果が、表17中のカテゴリーおよび基準を用いて記録される一連の客観的状態にわたって実証された最良の奏功として報告される。
【0415】
【表24】
【0416】
【表25】

RECISTによりPRまたはCRのいずれの患者も、奏功を確認するために約6週間後に(および前の評価から4週間経過したら直ぐに)反復評価を受けた。確認評価の後、奏功評価スケジュールは、肺のSCLCまたはLCNEC患者について1サイクル置き、および全ての他の患者について3サイクル毎の間隔で再開する。
【0417】
本発明の範囲は、上記の説明に限定されることは意図されず、添付の特許請求の範囲に規定されるとおりである。
矛盾する記載がない限り、または文脈から他の意味が明らかでない限り、特許請求の範囲において、「a」、「an」、および「the」などの冠詞は、1つまたは2つ以上を意味し得る。矛盾する記載がない限り、または文脈から他の意味が明らかでない限り、群の1つ以上の構成要素間に「または」を含む請求項または説明は、群の構成要素の1つ、2つ以上、または全てが、所与のプロダクトまたはプロセスに存在するか、それに用いられるか、または他の形で関連する場合、満たされたと見なされる。本発明は、群のちょうど1つの構成要素が、所与のプロダクトまたはプロセスに存在するか、それに用いられるか、または他の形で関連する実施形態を含む。本発明は、群の構成要素の2つ以上、または全てが、所与のプロダクトまたはプロセスに存在するか、それに用いられるか、または他の形で関連する実施形態を含む。
【0418】
「を含む(comprising)」という用語は、オープンであることが意図され、さらなる要素または工程の包含を許容するが必須ではないことも留意される。したがって、「を含む」という用語が本明細書において使用される場合、「からなる(consisting of)」という用語も包含され、開示される。
【0419】
範囲が示される場合、両端値が含まれる。さらに、特に示されない限り、または文脈および当業者の理解から他の意味が明らかでない限り、範囲として表される値は、文脈上特に明記されない限り、範囲の下限の単位の10分の1までの、本発明の異なる実施形態において記載される範囲内の任意の規定の値または部分範囲を想定し得ることが理解されるべきである。
【0420】
さらに、先行技術に含まれる本発明の任意の特定の実施形態が、請求項のいずれか1つ以上から明示的に除外され得ることが理解されるべきである。このような実施形態は、当業者に公知であると見なされるため、それらは、除外が本明細書に明記されていない場合でも除外され得る。本発明の組成物のいずれかの特定の実施形態が、先行技術の存在に関連するか否かにかかわらず、何らかの理由で、いずれか1つ以上の請求項から除外され得る。
【0421】
全ての引用される出典、例えば、本明細書に引用される参考文献、刊行物、データベース、データベースエントリ、および技術は、引用に明記されていない場合でも、参照により本出願に援用される。引用される出典および本出願の記載が矛盾する場合、本出願の記載が優先されるものとする。
【0422】
節および表の見出しは、限定的であることは意図されない。
(付記)
上記実施形態及び変更例から把握できる技術的思想について記載する。
[項目1]
コンジュゲートと少なくとも1つの賦形剤とを含む医薬組成物であって、前記コンジュゲートが、リンカーによってソマトスタチン受容体(SSTR)標的化部分に結合された活性薬剤を含み、前記活性薬剤がメルタンシン(DM1)である医薬組成物。
[項目2]
前記コンジュゲートが、コンジュゲート57の構造を有する、項目1に記載の医薬組成物。
[項目3]
前記コンジュゲートが、約2.0~約5.0mg/mLの濃度を有する、項目2に記載の医薬組成物。
[項目4]
前記コンジュゲートが、約2.5mg/mLの濃度を有する、項目3に記載の医薬組成物。
[項目5]
前記組成物のpHが、約4.0~約5.0である、項目2に記載の医薬組成物。
[項目6]
前記組成物のpHが、約4.0~約4.8である、項目5に記載の医薬組成物。
[項目7]
前記組成物のpHが、約4.0である、項目6に記載の医薬組成物。
[項目8]
前記組成物が、酢酸緩衝液を含む、項目6に記載の医薬組成物。
[項目9]
前記組成物が、マンニトールをさらに含む、項目2に記載の医薬組成物。
[項目10]
前記マンニトールが、約25~約75mg/mLの濃度を有する、項目9に記載の医薬組成物。
[項目11]
前記マンニトールが、約50mg/mLの濃度を有する、項目10に記載の医薬組成物。
[項目12]
前記組成物が、ポリオキシル15ヒドロキシステアレートをさらに含む、項目2に記載の医薬組成物。
[項目13]
前記ポリオキシル15ヒドロキシステアレートが、約10~約50mg/mLの濃度を有する、項目12に記載の医薬組成物。
[項目14]
前記ポリオキシル15ヒドロキシステアレートが、約20mg/mLの濃度を有する、項目13に記載の医薬組成物。
[項目15]
前記組成物が、-20℃で貯蔵される、項目2に記載の医薬組成物。
[項目16]
前記組成物が、静脈内(IV)注入によって投与される、項目2に記載の医薬組成物。
[項目17]
対象の腫瘍を治療する方法であって、前記対象におけるソマトスタチン類似体放射性同位体イメージング(SARI)走査を行い、前記SARI結果が陽性である場合、コンジュゲートと少なくとも1つの賦形剤とを含む医薬組成物を前記対象に投与することを含み、前記コンジュゲートが、リンカーによってソマトスタチン受容体(SSTR)標的化部分に結合された活性薬剤を含み、前記活性薬剤がメルタンシン(DM1)である方法。
[項目18]
前記SARI走査が、ソマトスタチン類似体に連結された放射性同位体を使用することを含む、項目17に記載の方法。
[項目19]
前記放射性同位体が、111In、68Ga、または99mTcを含む、項目18に記載の方法。
[項目20]
前記SARI走査が、111Inペンテトレオチドを使用することを含む、項目18に記載の方法。
[項目21]
前記SARI走査が、ソマトスタチン類似体の68Ga誘導体を使用することを含む、項目18に記載の方法。
[項目22]
ソマトスタチン類似体の前記68Ga誘導体が、68Ga-DOTATATEまたは68Ga-DOTATOCを含む、項目21に記載の方法。
[項目23]
前記SARI走査が、単一光子放射コンピュータ断層撮影法(SPECT)または同時陽電子放射断層撮影法(PET)およびコンピュータ断層撮影法(CT)を用いて行われる、項目18に記載の方法。
[項目24]
少なくとも1つのさらなる活性薬剤を投与することをさらに含む、項目17に記載の方法。
[項目25]
前記さらなる活性薬剤が、吐き気、嘔吐、下痢、便秘、貧血、好中球減少症、またはソマトスタチン類似体を治療するための薬剤である、項目24に記載の方法。
[項目26]
前記腫瘍が、神経内分泌腫瘍(NET)である、項目17に記載の方法。
[項目27]
前記腫瘍が、胃腸膵(GEP)、肺、前立腺、および胸腺神経内分泌腫瘍からなる群から選択される、項目26に記載の方法。
[項目28]
前記腫瘍が、肺の小細胞肺癌(SCLC)または大細胞神経内分泌癌(LCNEC)である、項目27に記載の方法。
[項目29]
前記コンジュゲートが、コンジュゲート57である、項目17に記載の方法。
[項目30]
コンジュゲート57の投与量が、少なくとも約0.016mg/kgである、項目29に記載の方法。
[項目31]
コンジュゲート57の投与量が、少なくとも約1mg、2mg、4mg、8mg、12mg、18mg、24mg、30mg、36mg、42mg、または48mgである、項目29に記載の方法。
[項目32]
コンジュゲート57の投与量が、約25mgである、項目29に記載の方法。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3
図4
図5