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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023109922
(43)【公開日】2023-08-08
(54)【発明の名称】癌を治療する方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20230801BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230801BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20230801BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230801BHJP
   A61K 31/5377 20060101ALI20230801BHJP
   A61K 31/4412 20060101ALI20230801BHJP
   A61K 31/4545 20060101ALI20230801BHJP
   A61K 45/06 20060101ALI20230801BHJP
【FI】
A61K45/00
A61P35/00
A61P37/04
A61P43/00 121
A61K31/5377
A61K31/4412
A61K31/4545
A61K45/06
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023085033
(22)【出願日】2023-05-24
(62)【分割の表示】P 2021060376の分割
【原出願日】2015-10-16
(31)【優先権主張番号】62/064,948
(32)【優先日】2014-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/065,590
(32)【優先日】2014-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】513137330
【氏名又は名称】エピザイム,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100169904
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100117422
【弁理士】
【氏名又は名称】堀川 かおり
(72)【発明者】
【氏名】ハイク キールハック
(57)【要約】      (修正有)
【課題】癌を治療する方法を提供する。
【解決手段】本発明は、細胞を治療有効量のEZH2阻害剤に接触させることまたは被験体に治療有効量のEZH2阻害剤を投与することによる、それを必要とする細胞または被験体におけるZesteホモログ2のエンハンサー(EZH2)活性の異常、誤制御、または増大を特徴とする疾患、例えば、免疫回避、癌細胞誘導性免疫機能不全、免疫応答の減少、炎症の低下、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)の発現低下、または癌の症状を治療または緩和する方法を提供する。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)癌細胞が、SS18-SSX融合遺伝子を引き起こす染色体転座t(x;18)
(p11.2;q11.2)を含むか、または
(2)癌細胞が、INI1の機能及び/又は発現が減少しているか、または
(3)癌細胞が、異常な、誤制御されたまたは増加したEZH2活性を含む、
ヒトがん細胞を、がん細胞における主要組織適合複合体(MHC)の発現を増加させる
のに有効な量のEZH2阻害剤と接触させることを含む方法。
【請求項2】
前記癌細胞が、異常、誤調節されたまたは増加したEZH2活性を含む請求項1に記載
の方法。
【請求項3】
前記癌細胞が、SS18-SSX融合遺伝子を引き起こす染色体転座t(x;18)(
p11.2;q11.2)を含む請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記癌細胞が、INI1の機能及び/又は発現が減少している請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記EZH2阻害剤が以下の化合物またはその薬学的に許容される塩からなる群から選
択される化合物である請求項1~4のいずれか1つに記載の方法。
【化1】
【請求項6】
前記癌細胞を化学療法化合物と接触させることをさらに含む請求項1~5のいずれか1
つに記載の方法。
【請求項7】
前記化学療法化合物が、PD-1阻害剤、PD-L1阻害剤およびCTLA-4阻害剤
からなる群より選択される請求項6に記載の方法。
【請求項8】
癌細胞がヒトの細胞である請求項1~7のいずれか1つに記載の方法。
【請求項9】
前記EZH2阻害剤が以下の化合物またはその薬学的に許容される塩である請求項5に
記載の方法。
【化2】
【請求項10】
前記MECが、HLA-A、HLA B、HLA-C、HLA DMアルファ、HLA
DMベータ、HLA-DOアルファ、HLA DOベータ1、HLA DPアルファ1
、HLA DPベータ1、HLA DRアルファ、HLA-DRベータ1、HLA-DR
ベータ3、HLA DRベータ4、HLA E、HLA F、HLA G、HLA Kお
よびHLA L21からなる群より選択される請求項1~9のいずれか1つに記載の方法
【請求項11】
癌細胞の免疫機能不全を誘発する能力を阻害する方法であって、
(1)異常、誤調節または増加したEZH2活性を含むか、または
(2)SS18-SSX融合遺伝子を引き起こす染色体転座t(x;18)(p11.
2;q11.2)を含むか、または
(3)INI1の機能及び/又は発現が減少している細胞を治療的有効量のEZH2阻
害剤と接触させるステップを含む方法。
【請求項12】
前記細胞が、異常、誤調節又は増加したEZH2活性を含む請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記細胞が染色体転座t(x;18)(p11.2;q11.2)を含み、転座がSS
18-SSX融合遺伝子を引き起こす請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記細胞がINI1の機能または発現が低下している請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記EZH2阻害剤が、以下の式を有する化合物Aまたはその薬学的に許容される塩で
ある請求項11~14のいずれか1つに記載の方法。
【化3】
【請求項16】
前記EZH2阻害剤が、以下からなる群より選択される化合物又はその薬学的に許容さ
れる塩である請求項11~14のいずれか1つに記載の方法。
【化4】
【請求項17】
癌細胞がヒトの細胞である請求項11~16のいずれか1つに記載の方法。
【請求項18】
前記癌細胞の免疫機能不全を誘発する能力が、MHC、β2ミクログロブリン、腫瘍壊
死因子(TNF)受容体、低分子量ポリペプチド2(LMP2)、低分子質量ポリペプチ
ド7(LMP7)、抗原プロセッシングに関連するトランスポーター(TAP)および非
がん性細胞と比較した場合のがん細胞中のTAP関連糖タンパク質(タパシン)の1以上
の発現を低減することによって特徴づけられる請求項11~17のいずれか1つに記載の
方法。
【請求項19】
前記MHCが、ヒト白血球抗原(HLA)であり、
HLAが、HLA-A、HLA-B、HLA-C、HLDA-DMアルファ、HLA-
DMベータ、HLA-DOアルファ、HLA-DOベータ1、HLA-DPアルファ1、
HLA-DPベータ1、HLA-DRアルファ、HLA-DRベータ1、HLA-DRベ
ータ3、HLA-DRベータ4、HLA-E、HLA-F、HLA-G、HLA-Kおよ
びHLA-Lからなる群より選択される請求項18に記載の方法。
【請求項20】
さらに、化学療法化合物を与える請求項11~19のいずれか1つに記載の方法。
【請求項21】
前記化学療法化合物が、PD-1阻害剤、PD-L1阻害剤及びCTLA-4阻害剤か
らなる群から選択される請求項20に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2014年10月16日に出願された米国特許出願第62/064,948号
明細書および2014年10月17日に出願された米国特許出願第62/065,590
号明細書の利益および優先権を主張し、これらのそれぞれの内容を引用により全体として
本明細書に組み込む。
【背景技術】
【0002】
疾患に関連するクロマチン修飾酵素(たとえば、EZH2)は、増殖障害、代謝障害、
および血液障害などの疾患に関与している。したがって、EZH2の活性を調節すること
ができる小分子の開発が必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明は、それを必要とする細胞または被験体におけるZesteホモログ2のエンハ
ンサー(EZH2)の活性および/または発現の異常、誤制御、または増大を特徴とする
疾患、例えば、免疫回避、癌細胞誘導性免疫機能不全、免疫応答の減少、炎症の低下、主
要組織適合遺伝子複合体(MHC)の発現低下、または癌の症状を治療または緩和する方
法であって、細胞に治療有効量のEZH2阻害剤を接触させることまたは被験体に治療有
効量のEZH2阻害剤を投与することによる方法を提供する。
【0004】
ある種の態様では、方法は、細胞を治療有効量のEZH2阻害剤に接触させるステップ
を含む、癌細胞における免疫回避を阻害することに関する。
【0005】
ある種の態様では、方法は、被験体に治療有効量のEZH2阻害剤を投与するステップ
を含む、それを必要とする被験体における癌細胞誘導性免疫機能不全を治療および/また
は修正することに関する。
【0006】
ある種の態様では、方法は、被験体に治療有効量のEZH2阻害剤を投与するステップ
を含む、それを必要とする被験体における免疫応答を増強、増加、または誘導することに
関する。
【0007】
ある種の態様では、方法は、癌細胞を治療有効量のEZH2阻害剤と接触させるステッ
プを含む、癌細胞中の主要組織適合遺伝子複合体(MHC)の発現を増加させることに関
する。
【0008】
ある種の態様では、方法は、被験体に治療有効量のEZH2阻害剤を投与するステップ
を含む、それを必要とする被験体における炎症を増加させることに関する。
【0009】
ある種の態様では、本発明は、被験体に治療有効量のEZH2阻害剤を投与するステッ
プを含む、それを必要とする被験体における癌または細胞増殖性疾患を治療することに関
する。
【0010】
ある種の態様では、方法は、(1)被験体から生体学的サンプルを得るステップ;およ
び(2)対照試料と比較して主要組織適合遺伝子複合体(MHC)の発現の低下に関して
生体学的サンプルをアッセイするステップを含む、それを必要とする被験体におけるEZ
H2阻害剤を含む治療の有効性の見込みを決定することに関する。EZH2阻害剤を含む
治療は、生体学的サンプルが、対照試料と比べて低下したMHCの発現を有する場合、被
験体において有効である可能性がより高い。
【0011】
ある種の態様では、方法は、被験体から得られた生体学的サンプルを、対照試料と比べ
た試料中の主要組織適合遺伝子複合体(MHC)の発現低下に関してアッセイすることを
含む、それを必要とする被験体におけるEZH2阻害剤を含む治療の有効性の見込みを決
定することに関する。EZH2阻害剤を含む治療は、生体学的サンプルが、対照試料と比
べて低下したMHCの発現を有する場合、被験体において有効である可能性がより高い。
【0012】
ある種の態様では、方法は、(1)被験体から第1および第2の生体学的サンプルを得
ること;(2)第2の生体学的サンプルをEZH2阻害剤と接触させること;(3)第1
および第2の生体学的サンプルを、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)の発現に関して
アッセイすること;ならびに(4)第1の生体学的サンプル中のMHCの発現を、第2の
生体学的サンプル中のMHCの発現と比較することを含む、それを必要とする被験体にお
けるEZH2阻害剤を含む治療の有効性をスクリーニングすることに関する。EZH2阻
害剤を含む治療は、第2の生体学的サンプルが、第1の生体学的サンプルにおける発現に
比べて増加したMHCの発現を有する場合、被験体において有効である可能性がより高い
【0013】
上記態様の実施形態では、細胞または被験体は、EZH2活性の異常、誤制御、または
増大を含む。
【0014】
上記態様の実施形態では、細胞または被験体は、染色体転座t(x;18)(p11.
2;q11.2)を含む。
【0015】
上記態様の実施形態では、転座は、SS18-SSX融合遺伝子をもたらす。
【0016】
上記態様の実施形態では、細胞または被験体は、INI1(本明細書で、BAF47、
SNF5、またはSMARCB1とも呼ばれる)の低下した機能または発現を有する。
【0017】
上記態様の実施形態では、細胞または被験体は、INI1の低下した機能および発現を
有する。
【0018】
上記態様の実施形態では、EZH2阻害剤は、以下の式を有する化合物A(本明細書に
おいて、E7438またはEPZ-6438またはタゼメトスタット(tazemeto
stat)とも呼ばれる):
【化1】

およびその薬学的に許容できる塩またはその立体異性体である。
【0019】
上記態様の実施形態では、EZH2阻害剤は、
【化2】

の1つ以上、およびその薬学的に許容できる塩またはその立体異性体である。
【0020】
上記態様の実施形態では、方法は、化学療法化合物、例えば、PD-1阻害剤、PD-
L1阻害剤、またはCTLA-4阻害剤を投与することをさらに含む。
【0021】
上記態様の実施形態では、癌細胞は、被験体、例えば、ヒトの中にある。
【0022】
上記態様の実施形態では、免疫回避、癌細胞誘導性免疫機能不全、増強を必要とする免
疫応答、炎症、または癌は、非癌細胞と比べて癌細胞における、MHC、β2ミクログロ
ブリン、腫瘍壊死因子(TNF)受容体、低分子量ポリペプチド2、(LMP2)、低分
子量ポリペプチド7、(LMP7)、抗原プロセシング関連トランスポーター(TAP)
、およびTAP関連糖タンパク質(タパシン)の1つ以上の発現低下を特徴とする。MH
Cは、ヒト白血球抗原(HLA)、例えば、HLA-A、HLA-B、HLA-C、HL
A-DMα、HLA-DMβ、HLA-DOα、HLA-DOβ1、HLA-DPα1、
HLA-DPβ1、HLA-DRα、HLA-DRβ1、HLA-DRβ3.、HLA-
DRβ4、HLA-E、HLA-F、HLA-G、HLA-K、またはHLA-Lであり
得る。
【0023】
他に定義しない限り、本明細書で使用する技術用語および科学用語はすべて、本発明が
属する技術分野の当業者が一般に理解しているのと同じ意味を持つ。本明細書では、単数
形は、文脈上明らかに他の意味に解すべき場合を除き、複数形をさらに含む。特別に記述
されていない限りまたは文脈から明らかでない限り、本明細書で使用する場合、「1つの
(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」という用語は、単数または複
数であると理解される。特別に記述されていない限りまたは文脈から明らかでない限り、
本明細書で使用する場合、「または(or)」という用語は、包括的であると理解される
【0024】
特別に記述されていない限りまたは文脈から明らかでない限り、本明細書で使用する場
合、「約」という用語は、当該技術分野で通常許容される範囲内、たとえば、平均の2標
準偏差以内として理解される。「約」は、記述値の10%、9%、8%、7%、6%、5
%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.1%、0.05%または0.01%の範囲
内と理解することができる。他に文脈から明確でない限り、本明細書に提供する数値はす
べて、「約」という用語により修飾されている。
【0025】
本発明の実施または試験において、本明細書に記載されたものと類似または同等の方法
および材料を使用してもよいが、好適な方法および材料を下記に記載する。本明細書に記
載した刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献はすべて援用する。本明細書に引用
する参考文献は、特許請求の範囲に記載されている発明に対する従来技術と認めるもので
はない。矛盾がある場合、定義を含む本明細書が優先する。さらに、材料、方法、および
例は、単に例示のためのものであり、限定的であることを意図するものではない。
【0026】
上記の態様および実施形態のいずれも、任意の他の態様または実施形態と組み合わせる
ことができる。
【0027】
本発明の他の特徴と利点は、以下の詳細な説明および特許請求の範囲から明らかになる
であろう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は、HS-SY-II細胞株におけるSS18-SSX1の発現およびINI1(本明細書では、BAF47、SNF5、またはSMARCB1とも呼ばれる)のダウンレギュレーションを示す細胞溶解物のウェスタンブロットである。
図2A-2D】図2Aは、様々な細胞株における、H3K27のトリメチル化(H3K27me3)およびH3K27のジメチル化(H3K27me2)のレベルを示す、単離されたヒストンのウエスタンブロットを示す図である。図2B~2Dは、様々な細胞株における、定量的なH3K27me3/全H3(B)、H3K27me2/全H3(C)またはH3K27me3/H3K27me2(D)の比を示す一連のプロットを示す図である。これらの定量的データは、ウエスタンブロッティング解析により得られたタンパク質バンドの計算から得たものである。
図3A-3D】HS-SY-II細胞はEZH2阻害剤に高度に感受性があるが、一方SW982細胞はそうではないことを示す一連のプロットを示す図である。図3Aに示す細胞株HS-SY-IIおよび図3Bに示す細胞株SW982は化合物Eで処理した。図3Cに示す細胞株HS-SY-IIおよび図3Dに示す細胞株SW982は化合物A(本明細書ではE7438またはEPZ-6438とも呼ばれる)で処理した。各細胞型を表示濃度の化合物(化合物Eまたは化合物A)で7日間、前処理し、再度蒔き、さらに7日間処理した。細胞生存率を、CellTiter-Glo(登録商標)ルミネセンス細胞生存率アッセイにより決定した。
図4A-4F】軟部肉腫細胞株において、INI1レベルが低下すると、EZH2阻害剤(EZH2i)に対する感受性が付与されることを示す図である。図Aは、様々な腫瘍細胞株におけるINI1発現を示す、細胞溶解物のウエスタンブロットである。軟骨肉腫の腫瘍細胞株は、INI1のダウンレギュレーションを示した(たとえば、細胞株bおよびc)。図BおよびCは、細胞株b(グラフB)および細胞株c(グラフC)がEZH2阻害剤に感受性があることを示すグラフである。図Dは、様々な細胞株におけるINI1およびSS18の発現を示す細胞溶解物のウエスタンブロットである。図Eは、SSX-SS18陽性細胞がEZH2阻害剤に感受性があることを示すグラフである。図Fは、SSX-SS18陰性細胞がEZH2阻害剤に感受性がないことを示すグラフである。
図5A-5B】HS-SY-II細胞は化合物Aに高度に感受性があるが(図5A)、一方SW982細胞はそうではない(図5B)ことを示す一連のプロットを示す図である。各細胞型を表示濃度の化合物Aで処理した。7日目に細胞を再度蒔き、さらに7日間処理した。細胞生存率をCellTiter-Glo(登録商標)ルミネセンス細胞生存率アッセイにより決定した。
図6A-6B】図6Aは、HS-SY-II細胞およびSW982細胞において、化合物Aの処理後、H3K27me3/全H3の比(対照に対する比)が減少することを示す図である。細胞を化合物Aで96時間処理し、ヒストンを抽出した。ヒストンマークの変化を酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)により分析した。ヒストンマークの変化はHS-SY-IIとSW982との間で同等であり、これらの変化がSS18-SSX融合タンパク質の存在には無関係であることが示唆された。図6Bは、H3K27me3/全H3の比を50%阻害するのに必要な化合物の濃度(IC50)を示す。
図7A-7B】HS-SY-II異種移植モデルにおける、薬物動態学(PK)の値および薬力学的な(PD)変化をそれぞれ示す図である。図7Aは、化合物Aの血漿中濃度を示す。ここでは、化合物Aをマウスに1日2回、7日間経口投与した。最後の投与の約5分前および3時間後に、化合物A処置マウスから末梢血サンプルを採取した。化合物Aの血漿中濃度の分析を行った。濃度をプロットする(n=5)。各バーは、各群における血漿中濃度の平均値を表す。図7Bは、マウスのHS-SY-II異種移植片における、H3K27me3に対する化合物Aの阻害効果を示す。ここでは、化合物Aをマウスに1日2回、7日間経口投与した。腫瘍中のH3K27me3をプロットする(n=5)。各バーは、各群における、トリメチル化レベルの平均±SEMを表す。下記の表2および3は、図7Bに示すデータに関する統計解析を示す。統計解析の結果から用量依存的な変化が確認される。
図8】インビトロ実験における、HS-SY-IIおよびSW982の化合物A処理後の推定上のPDマーカーの発現変化を示す図である。ここで、各細胞型は、化合物AまたはEPZ-011989(これもEZH2阻害剤であり、本明細書で化合物Cとも呼ばれる)で処理した;濃度および期間(日)を示す。遺伝子発現変化をRT-PCRにより分析した。遺伝子発現レベルは、GAPDHレベルに対して規準化した。バーは、0μM処理の対照に対する比として示す。下記の表4は、図8に示すデータに関する統計解析を示す。アスタリスクは、0μM処理群のレベルに比較して有意な変化を意味する。
図9】インビボ実験における、HS-SY-IIの化合物A処理後の推定上のPDマーカーの発現変化を示す図である。ここでは、化合物Aをマウスに1日2回、7日間経口投与した。腫瘍サンプルを最後の投与の約3時間後に採取した。遺伝子発現変化をRT-PCRにより分析した。遺伝子発現レベルは、GAPDHレベルに対して規準化した。バーはビヒクル群のデータに対する比として示す。
図10A-10E】図10A~10Cは、ビヒクル(経口もしくはiv)、化合物A(経口)、ドキソルビシン(iv)または化合物A/ドキソルビシン併用のいずれかを、表示用量で28日間投与した無胸腺ヌードマウスが担持するHS-SY-II異種移植片の平均腫瘍容積を示す図である。腫瘍容積は週に2回測定した。2つの独立した試験を実施した。図10Aおよび10Bは第1の試験の結果を示し、図10Cは第2の試験の結果を示す。第2の試験の動物腫瘍は28日目(最後の投与の3時間後)に摘出し、ELISAによるH3K27me3分析(図10D)または増殖マーカーKi67に対する免疫組織化学(IHC)(図10E)に供した。
図11A-11D】滑膜肉腫腫瘍の2つの異なる患者由来異種移植片(PDX)を担持し、ビヒクル(経口)、化合物A(経口)またはドキソルビシン(iv)のいずれかを、表示濃度で35日間投与した無胸腺ヌードマウスの平均腫瘍容積およびパーセント生存率を示す図である。図11Aおよび11Bは、高グレードの紡錘細胞肉腫を有する57歳男性に由来するPDXを担持するマウスのデータを示す(CTG-0771)。図11Cおよび11Dは、16歳女性に由来するPDXを担持するマウスのデータを示す(CTG-0331)。腫瘍容積は週に2回測定した。35日目に投与を中止し、週に2回腫瘍を測定しながら、60日目まで動物を観察した。所与の動物の腫瘍容積が2000mmを超えたときに、マウスを安楽死させた(Kaplan-Meyerプロットで分析した)。
図12A-12B】図12Aおよび12Bは、35日目に収集され、RNA-seq解析により分析された、マウスのサブセットから得た滑膜肉腫PDX腫瘍のアレイデータを示す。図12Aは、57歳の男性からのPDXを有するマウスから得たデータである。図12Bは、16歳の女性からのPDXを有するマウスから得たデータである。ビヒクルか1日2回の400mg/kgの化合物(Compund)Aのいずれかにより処置されたマウスからの腫瘍におけるHLA遺伝子の発現が示される。図中で、青は低発現であり、赤は高発現である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明は、それを必要とする細胞または被験体におけるZesteホモログ2のエンハ
ンサー(EZH2)の活性または発現の異常、誤制御、または増大を特徴とする疾患、例
えば、免疫回避、癌細胞誘導性免疫機能不全、免疫応答の減少、炎症の低下、主要組織適
合遺伝子複合体(MHC)の発現低下、または癌の症状を治療または緩和する方法であっ
て、細胞を治療有効量のEZH2阻害剤に接触させることまたは被験体に治療有効量のE
ZH2阻害剤を投与することによる方法を提供する。EZH2は、ポリコーム抑制複合体
2(PRC2)、ヒストン3リジン27(H3K27)のメチル化を触媒する複合体の酵
素サブユニットである。ヒストン3リジン27(H3K27)メチル化は、いくつかの血
液癌および固形のヒト癌と因果関係がある転写抑制的なエピジェネティックマークである
。H3K27の過剰なトリメチル化状態をもたらすいくつかの分子機構が、ヒト癌の間で
報告されている。
【0030】
本発明は、EZH2阻害剤が、免疫回避、または癌細胞誘導性免疫機能不全、免疫応答
の減少、炎症の低下、MHCの発現低下を特徴とする、もしくは誘導される疾患を効果的
に治療し得るという発見に一部基づいている。
【0031】
ある種の実施形態では、EZH2活性の異常、誤制御、または増大を有する細胞、被験
体、腫瘍、または腫瘍細胞は、本発明のEZH2阻害剤に対して感受性がある。
【0032】
ヒト滑膜肉腫は、すべての軟部組織悪性腫瘍の8%~10%を占めており、若年層の四
肢に最も一般的に発生する。再発性染色体転座t(x;18))(p11.2;q11.
2)により、X染色体上の3つの密接に関連した遺伝子であるSSX1、SSX2、およ
びまれにSSX4のうちの1つに、染色体18上のSS18遺伝子が融合し、SS18の
8個のC末端アミノ酸がSSXのC末端の78アミノ酸で置き換わっているインフレーム
融合タンパク質が生じる。これにより、野生型SS18および腫瘍サプレッサーINI1
の両方を排除する(次いで、これらは分解される)SWI/SNF複合体に結合する腫瘍
形成性SS18-SSX融合タンパク質の発現がもたらされる。これは異常な遺伝子発現
および最終的には癌の発生をもたらす。
【0033】
本発明は、癌細胞における免疫回避を阻害する方法であって、細胞を治療有効量のEZ
H2阻害剤と接触させるステップを含む方法を提供する。
【0034】
本発明は、それを必要とする被験体における癌細胞誘導性免疫機能不全を治療または修
正する方法であって、被験体に治療有効量のEZH2阻害剤を投与するステップを含む方
法も提供し得る。
【0035】
本発明は、それを必要とする被験体における免疫応答を増強、増加、または誘導する方
法であって、被験体に治療有効量のEZH2阻害剤を投与するステップを含む方法も提供
し得る。
【0036】
本発明は、癌細胞中の主要組織適合遺伝子複合体(MHC)の発現または活性を増加さ
せる方法であって、癌細胞を治療有効量のEZH2阻害剤と接触させるステップを含む方
法も提供し得る。
【0037】
本発明は、それを必要とする被験体における炎症を増加させる方法であって、被験体に
治療有効量のEZH2阻害剤を投与するステップを含む方法も提供し得る。
【0038】
本発明は、それを必要とする被験体における癌または細胞増殖性疾患を治療する方法で
あって、被験体に治療有効量のEZH2阻害剤を投与するステップを含む方法も提供し得
る。
【0039】
本発明は、それを必要とする被験体におけるEZH2阻害剤を含む治療の有効性の見込
みを決定する方法であって、(1)被験体から生体学的サンプルを得るステップ;および
(2)対照試料と比較した主要組織適合遺伝子複合体(MHC)の発現の低下に関して生
体学的サンプルをアッセイするステップを含む方法も提供し得る。EZH2阻害剤を含む
治療は、生体学的サンプルが、対照試料と比較してMHCの低下した発現を有する場合に
、被験体において有効である可能性がより高い。
【0040】
本発明は、それを必要とする被験体におけるEZH2阻害剤を含む治療の有効性の見込
みを決定する方法であって、被験体から得られた生体学的サンプルを、対照試料と比較し
た試料中の主要組織適合遺伝子複合体(MHC)の発現の低下に関してアッセイすること
を含む方法も提供し得る。EZH2阻害剤を含む治療は、生体学的サンプルが対照試料と
比較してMHCの低下した発現を有する場合に、被験体において有効である可能性がより
高い。
【0041】
本発明は、それを必要とする被験体におけるEZH2阻害剤を含む治療の有効性をスク
リーニングする方法であって、(1)被験体から、第1および第2の生体学的サンプルを
得ること;(2)第2の生体学的サンプルをEZH2阻害剤と接触させること;(3)第
1および第2の生体学的サンプルを、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)の発現に関し
てアッセイすること;ならびに(4)第1の生体学的サンプルにおけるMHCの発現を、
第2の生体学的サンプルにおけるMHCの発現と比較することを含む方法も提供し得る。
EZH2阻害剤を含む治療は、第2の生体学的サンプルが、第1の生体学的サンプルにお
ける発現と比較してMHCの増加した発現を有する場合、被験体において有効である可能
性がより高い。
【0042】
本発明の実施形態では、細胞または被験体は、EZH2活性の異常、誤制御、または増
大を含む。
【0043】
本発明の実施形態では、細胞または被験体は、染色体転座t(x;18)(p11.2
;q11.2)を含む。
【0044】
本発明の実施形態では、転座は、SS18-SSX融合遺伝子をもたらす。
【0045】
本発明の実施形態では、細胞または被験体は、INI1(本明細書では、BAF47、
SNF5、またはSMARCB1とも呼ばれる)の低下した機能または発現を有する。本
発明の実施形態では、細胞または被験体は、INI1の低下した機能および発現を有する
。ある種の実施形態では、細胞または被験体は、INI1陰性またはINI1欠乏である
と考えられるか、または決定される。
【0046】
本発明の実施形態では、EZH2阻害剤は、以下の式を有する化合物A:
【化3】

およびその薬学的に許容できる塩である。
【0047】
本発明の実施形態では、EZH2阻害剤は
【化4】

の1つ以上およびその薬学的に許容できる塩である。
【0048】
本発明の実施形態では、方法は、化学療法化合物、例えば、PD-1阻害剤、PD-L
1阻害剤、またはCTLA-4阻害剤を投与することをさらに含む。
【0049】
本発明の実施形態では、癌細胞は、被験体、例えば、ヒトの中にある。
【0050】
本発明の実施形態では、免疫回避、癌細胞誘導性免疫機能不全、増強を必要とする免疫
応答、炎症、または癌は、非癌細胞と比較して癌細胞における、MHC、β2ミクログロ
ブリン、腫瘍壊死因子(TNF)受容体、低分子量ポリペプチド2、(LMP2)、低分
子量ポリペプチド7、(LMP7)、抗原プロセシング関連トランスポーター(TAP)
、およびTAP関連糖タンパク質(タパシン)の1つ以上の低下した発現を特徴とする。
MHCは、ヒト白血球抗原(HLA)、例えば、HLA-A、HLA-B、HLA-C、
HLA-DMα、HLA-DMβ、HLA-DOα、HLA-DOβ1、HLA-DPα
1、HLA-DPβ1、HLA-DRα、HLA-DRβ1、HLA-DRβ3.、HL
A-DRβ4、HLA-E、HLA-F、HLA-G、HLA-K、またはHLA-Lで
あり得る。
【0051】
したがって、本発明は、細胞に治療有効量の本発明の化合物、もしくはその薬学的に許
容できる塩、溶媒和物、もしくは多形を接触させることまたは被験体に治療有効量の本発
明の化合物、もしくはその薬学的に許容できる塩、溶媒和物、もしくは多形を投与するこ
とによる、細胞またはそれを必要とする被験体における免疫回避、癌細胞誘導性免疫機能
不全、免疫応答の減少、炎症の低下、MHCの発現低下の治療の方法を提供し得る。本発
明は、免疫回避、癌細胞誘導性免疫機能不全、免疫応答の減少、炎症の低下、MHCの発
現低下の治療に有用な医薬品の調製のための、本発明の化合物またはその薬学的に許容で
きる塩、溶媒和物、もしくは多形の使用をさらに提供し得る。
【0052】
実施形態では、疾患は、EZH2活性または発現の異常、誤制御、または増大を特徴と
する。本明細書での「異常なEZH2活性」は、細胞中のEZH2の誤った局在化または
タンパク質複合体との/タンパク質複合体内でのEZH2の誤った会合を指す。実施形態
では、異常なEZH2活性は、INI1の制御機能の低下から生じ得るが、それは種々の
遺伝子変異により起こった可能性があり、そのいくつかの例は本明細書でより詳細に議論
される。ある種の実施形態では、EZH2活性または発現の異常、誤制御、または増大は
、H3K27の増加したトリメチル化と関連するか、またはそれをもたらす。
【0053】
実施形態では、疾患は、染色体転座t(x;18)(p11.2;q11.2)を特徴
とする。そのような転座は、SS18-SSX融合遺伝子をもたらす。
【0054】
実施形態では、治療を必要とする被験体は、EZH2活性の異常、誤制御、または増大
を有する。
【0055】
実施形態では、治療を必要とする被験体は、INI1の低下した機能もしくは発現また
は両方を有する。実施形態では、被験体は、INI1の検出可能な機能もしくは発現また
は両方を有さない。
【0056】
本発明の実施形態では、滑膜肉腫はSSX1融合を特徴とする。別の実施形態では、滑
膜肉腫はSSX2融合を特徴とする。実施形態では、滑膜肉腫は、SSX4融合を特徴と
する。実施形態では、治療を必要とする被験体、治療レジメン、投与の投与量および頻度
は、検出されるSSX融合の種類により選択される。実施形態では、投与すべきEZH2
阻害剤も、癌と関連するSSX融合により選択される。
【0057】
本発明はまた、治療有効量の本明細書に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩
、溶媒和物もしくは多形を被験体に投与することにより、それを必要とする被験体におい
て癌を治療するための方法であって、治療を必要とする被験体が染色体転座t(x;18
)(p11.2;q11.2)またはSS18-SSX融合遺伝子を有する方法を提供す
ることができる。本発明はさらに、癌の治療に有用な薬物の調製のために、本発明の化合
物またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくは多形の使用を提供することができ
る。
【0058】
実施形態では、この方法は、投与するステップの前に、被験体由来のサンプル中の染色
体転座t(x;18)(p11.2;q11.2)またはSS18-SSX融合遺伝子の
存在を判定するステップを含む。
【0059】
サンプル中の染色体転座t(x;18)(p11.2;q11.2)の存在の判定は、
当該技術分野で公知の任意の方法で実施することができる。たとえば、それは、核型分析
およびSS18-SSX転写物に対するRT-PCRにより、またはFISH(蛍光イン
サイチューハイブリダイゼーション法)により判定することができる。SS18-SSX
融合遺伝子は、当該技術分野で公知の任意の方法により検出することができる。たとえば
、それは、RT-PCT、免疫組織染色アッセイまたは蛍光インサイチューハイブリダイ
ゼーション法(FISH)により検出することができる。
【0060】
治療できる癌は、DNAサイトメトリー、フローサイトメトリーまたはイメージサイト
メトリーにより評価してもよい。治療できる癌は、細胞の10%、20%、30%、40
%、50%、60%、70%、80%または90%が細胞分裂の合成期(たとえば、細胞
分裂のS期)にあるものとして型別にしてもよい。治療できる癌は、S期分画が低いまた
はS期分画が高いものとして型別にしてもよい。
【0061】
本発明の態様では、滑膜肉腫は単相型滑膜肉腫である。本発明の他の態様では、滑膜肉
腫は二相型滑膜肉腫である。
【0062】
本発明はまた、被験体由来のサンプル中に染色体転座t(x;18)(p11.2;q
11.2)またはSS18-SSX融合遺伝子の存在を検出するステップと、治療有効量
の化合物またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくは多形を投与することにより
、被験体を治療するステップとを含む方法を提供する。
【0063】
本発明は、候補被験体に治療有効量の化合物またはその薬学的に許容できる塩もしくは
溶媒和物を投与することを含む、治療レジメンを選択することを含む方法をさらに提供す
る。治療レジメンは、手術、化学療法、放射線療法、免疫療法、またはこれらのあらゆる
組み合わせも含み得る。
【0064】
実施形態では、本発明の方法は、治療有効量のEZH2阻害剤を被験体に投与すること
、手術、化学療法、放射線療法、鍼療法、免疫療法、またはこれらのあらゆる組み合わせ
を含む。化学療法(典型的には、ドキソルビシンおよび/またはイホスファミド)は、滑
膜肉腫、特に進行性または転移性疾患の治療において推奨されることがある。
【0065】
本発明は、それを必要とする被験体におけるEZH2活性の異常、誤制御、または増大
と関連する癌または細胞増殖性疾患を治療する方法であって、被験体に、治療有効量の本
発明の化合物、またはその薬学的に許容できる塩、溶媒和物、もしくは多形を投与するこ
とによる方法をさらに提供する。例えば癌は滑膜肉腫である。例えば、癌は、類上皮肉腫
、骨外性粘液型軟骨肉腫、悪性ラブドイド腫瘍、または異型脊索腫である。
【0066】
例えば、本明細書で使用できるEZH2阻害剤には、化合物A、B、C、D、またはE
がある。化合物Aは、本明細書でE7438またはEPZ-6438とも呼ばれる。
【0067】
本明細書では、「それを必要とする被験体」は、EZH2活性の異常、誤制御、または
増大と関連する癌を有する被験体または染色体転座t(x;18)(p11.2;q11
.2)により媒介される癌を有する被験体である。例えば、それを必要とする被験体は滑
膜肉腫を有する。
【0068】
実施形態では、それを必要とする被験体は、EZH2活性の異常、誤制御、または増大
と関連する疾患を治療する少なくとも1つの以前の療法を有した。
【0069】
実施形態では、被験体は、直近の療法で不応性の癌を有する。「不応性癌」は、治療に
反応しない滑膜肉腫を含む、本明細書に記載されるあらゆる癌を意味する。癌は、治療の
開始時に抵抗性であることも、治療の間に抵抗性になることもある。不応性癌は抵抗性癌
とも呼ばれる。実施形態では、それを必要とする被験体は、直近の療法での寛解の後に癌
の再発を有する。実施形態では、被験体は、被験体が患っている滑膜肉腫の全ての公知の
有効な療法を受け、奏功しなかった。
【0070】
実施形態では、被験体は、染色体転座t(x;18)(p11.2;q11.2)によ
り媒介される癌、たとえば滑膜肉腫を治療するために、別の療法でも同時に治療されてい
る。
【0071】
「被験体」には哺乳動物が含まれる。哺乳動物は、たとえば、任意の哺乳動物、たとえ
ばヒト、霊長類、トリ、マウス、ラット、イヌ、ネコ、雌ウシ、ウマ、ヤギ、ラクダ、ヒ
ツジまたはブタであってもよい。好ましくは、哺乳動物はヒトである。
【0072】
実施形態では、被験体は、ヒストンH3のLys27のトリメチル化(H3-K27m
e3)レベルが増大している。実施形態では、EZH2活性の異常、誤制御もしくは増大
または染色体転座t(x;18)(p11.2;q11.2)は、H3-K27meのト
リメチル化レベルの増大に関連する。
【0073】
本明細書で使用する場合、「被験体由来のサンプル」とは、被験体から得られたかまた
は被験体に由来する細胞または細胞成分を含有する任意の好適なサンプルをいう。たとえ
ば、実施形態では、サンプルは癌細胞を含む。実施形態では、サンプルは、たとえば軟部
組織(たとえば関節)から得られた生検サンプルである。実施形態では、サンプルは、軟
部組織以外の組織または軟部組織に追加した組織から得られた生検サンプルである。たと
えば、実施形態では、サンプルは、癌、たとえば癌細胞で構成される腫瘍からの生検であ
る。サンプル中の細胞は、当業者が精通する方法に従ってサンプルの他の成分から単離す
ることができる。たとえば、実施形態では、サンプルは、組織、器官、または全血、血漿
、血清、尿、唾液、生殖器分泌物、脳脊髄液、汗もしくは排泄物などの体液である。
【0074】
本明細書で使用する場合、「単独療法」とは、それを必要とする被験体に単一の活性化
合物または治療用化合物を投与することをいう。好ましくは、単独療法は、治療有効量の
単一の活性化合物の投与を含む。たとえば、本発明の化合物、またはその薬学的に許容さ
れる塩もしくは溶媒和物の1つを用いた、EZH2活性の異常、誤制御または増大に関連
した癌の治療を必要とする被験体への癌単独療法である。一態様では、単一の活性化合物
は、本発明の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくは多形である。
ある種の実施形態では、単一の活性化合物はタゼメトスタットである。
【0075】
本明細書で使用する場合、「治療すること」または「治療する」は、EZH2活性の異
常、誤制御または増大に関連した疾患、状態または障害の対処を目的とした患者の管理お
よびケアをいい、疾患、状態もしくは障害の症状または合併症を緩和するため、あるいは
疾患、状態もしくは障害を除去するため本発明の化合物、またはその薬学的に許容される
塩、溶媒和物もしくは多形を投与することを含む。
【0076】
本発明の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくは多形はまた、E
ZH2活性の異常、誤制御または増大に関連した疾患、状態または障害を予防するために
使用してもよい。本明細書で使用する場合、「予防すること」または「予防する」とは、
疾患、状態もしくは障害の症状、または合併症の発症を減少または除去することをいう。
【0077】
本明細書で使用する場合、「緩和する」という用語は、障害の徴候または症状の重症度
を低下させるプロセスを記載することを意図している。重要な点として、徴候または症状
は、除去することなく緩和することができる。好ましい実施形態では、本発明の医薬組成
物を投与すると徴候または症状が除去されるが、しかしながら、除去は必須ではない。効
果的な投薬量は徴候または症状の重症度を低下させると予想される。たとえば、複数の部
位で起こり得る癌などの障害の徴候または症状は、複数の部位の少なくとも1つで癌の重
症度が低下すると緩和される。
【0078】
本明細書で使用する場合、「症状」という用語は、疾患、疾病、障害または体内に適切
でないものがあることの兆しと定義される。症状は、症状を経験している個体が感じある
いは気付くものであるが、他人は容易に気付くことができない。他人は、非医療専門家と
定義される。
【0079】
本明細書で使用する場合、「徴候」という用語も、体内に適切でないものがあることの
兆しと定義される。ただし、徴候は、医師、看護師または他の医療専門家により確認する
ことができるものと定義される。
【0080】
EZH2活性の異常、誤制御、または増大と関連する癌または細胞増殖性疾患を、本明
細書に記載される化合物により治療することは、腫瘍の大きさもしくは体積の減少または
腫瘍成長もしくは再成長の減少または上記のあらゆる組み合わせをもたらし得る。腫瘍の
大きさまたは体積の減少は、「腫瘍退縮」とも称され得る。好ましくは、治療後に、腫瘍
の大きさは、治療前のその大きさに対して5%以上減少する。一層好ましくは、腫瘍サイ
ズは、10%以上減少し;一層好ましくは、20%以上減少し;一層好ましくは、30%
以上減少し;一層好ましくは、40%以上減少し;なお一層好ましくは、50%以上減少
し;最も好ましくは、75%超またはそれ以上減少する。腫瘍の大きさまたは体積は、再
現性のある任意の測定手段で測定できる。腫瘍の大きさまたは体積は、腫瘍の直径として
測定できる。
【0081】
EZH2の活性または発現の異常、誤制御、または増大と関連する癌または細胞増殖性
疾患を、本明細書に記載される化合物により治療することは、腫瘍の数の減少をもたらし
得る。好ましくは、治療後に、腫瘍数は、治療前の数に対して5%以上減少する。一層好
ましくは、腫瘍数は10%以上減少し;一層好ましくは、20%以上減少し;一層好まし
くは、30%以上減少し;一層好ましくは、40%以上減少し;なお一層好ましくは、5
0%以上減少し;最も好ましくは、75%超減少する。腫瘍の数は、再現性のある任意の
測定手段で測定できる。腫瘍の数は、肉眼でまたは明示される倍率で見える腫瘍を数える
ことにより測定できる。
【0082】
EZH2活性の異常、誤制御、または増大と関連する癌または細胞増殖性疾患を、本明
細書に記載される化合物により治療することは、治療されていない被験体またはキャリア
のみを投与された被験体の集団と比べて、治療された被験体の集団の平均生存時間の増加
もしくは死亡率の減少または両方をもたらし得る。ある種の実施形態では、治療された被
験体の集団は、本発明の化合物でない薬物または薬物の組み合わせによる療法を受けてい
る。好ましくは、平均生存時間は、10、20、または30日超増加し;一層好ましくは
、60日超;一層好ましくは、90日超;最も好ましくは、120日超増加する。集団の
平均生存時間の増加は、再現性のある任意の手段により測定できる。集団の平均生存時間
の増加は、例えば、ある集団に関して活性化合物による治療の開始後の平均の生存の長さ
を計算することにより測定できる。集団の平均生存時間の増加は、例えば、ある集団に関
して活性化合物による治療の第1期の完了後の平均の生存の長さを計算することによって
も測定できる。
【0083】
EZH2活性の異常、誤制御、または増大と関連する癌または細胞増殖性疾患を、本明
細書に記載される化合物により治療することは、キャリアのみを投与された集団と比べて
治療された被験体の集団の死亡率の減少をもたらし得る。EZH2活性の異常、誤制御、
または増大と関連する癌または細胞増殖性疾患を、本明細書に記載される化合物により治
療することは、治療されていない集団と比べて治療された被験体の集団の死亡率の減少を
もたらし得る。EZH2活性の異常、誤制御、または増大と関連する癌または細胞増殖性
疾患を、本明細書に記載される化合物により治療することは、本発明の化合物またはその
薬学的に許容できる塩もしくは溶媒和物でない薬物による単独療法を受けている集団と比
べて治療された被験体の集団の死亡率の減少をもたらし得る。好ましくは、死亡率は、2
%超減少し;一層好ましくは、5%超;一層好ましくは、10%超;最も好ましくは、2
5%超減少する。治療された被験体の集団の死亡率の減少は、再現性のある任意の手段に
より測定できる。集団の死亡率の減少は、例えば、ある集団に関して活性化合物による治
療の開始後の単位時間当たりの疾病関連死の平均数を計算することにより測定できる。集
団の死亡率の減少は、例えば、ある集団に関して活性化合物による治療の第1期の完了後
の単位時間当たりの疾病関連死の平均数を計算することによっても測定できる。
【0084】
EZH2活性の異常、誤制御、または増大と関連する癌または細胞増殖性疾患を、本明
細書に記載される化合物により治療することは、腫瘍成長速度の減少をもたらし得る。好
ましくは、治療後に、腫瘍成長速度は、治療前の数に対して少なくとも5%減少する。一
層好ましくは、腫瘍成長速度は、少なくとも10%減少し;一層好ましくは少なくとも2
0%減少し;一層好ましくは、少なくとも30%減少し;一層好ましくは、少なくとも4
0%減少し;一層好ましくは少なくとも50%減少し;なお一層好ましくは少なくとも5
0%減少し;最も好ましくは少なくとも75%減少する。腫瘍成長速度は、再現性のある
任意の測定手段により測定できる。腫瘍成長速度は、単位時間当たりの腫瘍直径の変化に
より測定できる。
【0085】
EZH2活性の異常、誤制御、または増大と関連する癌または細胞増殖性疾患を、本明
細書に記載される化合物により治療することは、腫瘍再成長の減少をもたらし得る。好ま
しくは、治療後に、腫瘍再成長は、5%未満である。一層好ましくは、腫瘍再成長は、1
0%未満;一層好ましくは、20%未満;一層好ましくは、30%未満;一層好ましくは
、40%未満;一層好ましくは、50%未満;なお一層好ましくは、50%未満;最も好
ましくは、75%未満である。腫瘍再成長は、再現性のある任意の測定手段により測定で
きる。腫瘍再成長は、例えば、治療後の先の腫瘍縮小後の腫瘍の直径の増加を測定するこ
とにより測定される。腫瘍再成長の減少は、治療を停止した後に、腫瘍が再び発生しない
ことにより示される。
【0086】
EZH2活性の異常、誤制御、または増大と関連する癌を、本明細書に記載される化合
物により治療または予防することは、異常な外観またはモルホロジーを有する細胞の数ま
たは比率の減少をもたらし得る。好ましくは、治療後に、異常なモルホロジーを有する細
胞の数は、治療前のその大きさに対して少なくとも5%減少し;一層好ましくは少なくと
も10%減少し;一層好ましくは少なくとも20%減少し;一層好ましくは少なくとも3
0%減少し;一層好ましくは、少なくとも40%減少し;一層好ましくは少なくとも50
%減少し;なお一層好ましくは、少なくとも50%減少し;最も好ましくは少なくとも7
5%減少する。異常な細胞の外観またはモルホロジーは、再現性のある任意の測定手段に
より測定できる。異常な細胞のモルホロジーは、例えば倒立組織培養顕微鏡を使用して、
顕微鏡法により測定できる。異常な細胞のモルホロジーは、核多形性(nuclear
pleiomorphism)の形態をとることがある。
【0087】
EZH2活性の異常、誤制御、または増大と関連する癌または細胞増殖性疾患を、本明
細書に記載される化合物により治療することは、細胞死をもたらすことがあり、好ましく
は、細胞死は、集団中の細胞数の少なくとも10%の減少をもたらす。一層好ましくは、
細胞死は、少なくとも20%の減少;一層好ましくは少なくとも30%の減少;一層好ま
しくは少なくとも40%の減少;一層好ましくは少なくとも50%の減少;最も好ましく
は少なくとも75%の減少を意味する。集団における細胞数は、任意の再現可能な手段に
より測定することができる。集団における細胞数は、蛍光活性化セルソーター(FACS
)、免疫蛍光顕微鏡および光学顕微鏡により測定してもよい。細胞死を測定する方法は、
Li et al.,Proc Natl Acad Sci U S A.100(5
):2674-8,2003に示される通りである。ある種の態様では、細胞死はアポト
ーシスにより起こる。
【0088】
本明細書で使用する場合、「選択的に」という用語は、ある集団において別の集団より
高頻度で起こる傾向があることを意味する。比較される集団は細胞集団であってもよい。
好ましくは、本発明の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくは多形
は、癌または前癌性細胞に選択的に作用するが、正常な細胞には作用しない。好ましくは
、本発明の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくは多形は、ある分
子標的(たとえば、標的タンパク質メチルトランスフェラーゼ)を調節するが、別の分子
標的(たとえば、非標的タンパク質メチルトランスフェラーゼ)をあまり調節しないよう
に選択的に作用する。本発明はまた、酵素、たとえばEZH2の活性を選択的に阻害する
ための方法を提供する。好ましくは、あるイベントが集団Bと比較して集団Aで2倍を超
える高い頻度で起こる場合、そのイベントは、集団Bに対して集団Aにおいて選択的に起
こる。あるイベントが集団Aで5倍を超える高い頻度で起こる場合、そのイベントは選択
的に起こる。あるイベントが集団Bと比較して集団Aで10倍を超える高い頻度で;一層
好ましくは50倍を超える;なお一層好ましくは100倍を超える;最も好ましくは10
00倍を超える高い頻度で集団Aで起こる場合、そのイベントは選択的に起こる。たとえ
ば、細胞死は、正常な細胞と比較して癌細胞で2倍を超える頻度で起こる場合、癌細胞で
選択的に起こるといえると考えられる。
【0089】
本発明の化合物、またはその薬学的に許容できる塩、溶媒和物、もしくは多形を、細胞
またはそれを必要とする被験体に投与することは、EZH2の活性の調節(すなわち阻害
)をもたらし得る。
【0090】
本発明の化合物、またはその薬学的に許容できる塩、溶媒和物、もしくは多形を、細胞
またはそれを必要とする被験体に投与することは、EZH2の調節(すなわち阻害)をも
たらす。
【0091】
活性化することは、組成物(例えば、タンパク質または核酸)を、所望の生物学的機能
を実施するのに好適な状態にすることを指す。活性化されることが可能な組成物は、不活
性化された状態も有する。活性化された組成物は、阻害性もしくは刺激性の生物学的機能
または両方を有し得る。
【0092】
上昇とは、組成物(たとえば、タンパク質または核酸)の所望の生物活性の増加をいう
。上昇は、組成物の濃度の増加により起きてもよい。
【0093】
本明細書に記載の任意の方法で使用することができる化合物(すなわち、EZH2阻害
剤)は、下記式I:
【化5】

(式中、
701は、H、F、OR707、NHR707、-(C≡C)-(CHn7-R
708、フェニル、5もしくは6員ヘテロアリール、C3~8シクロアルキルまたは1~
3個のヘテロ原子を含有する4~7員ヘテロシクロアルキルであり、フェニル、5もしく
は6員ヘテロアリール、C3~8シクロアルキルまたは4~7員ヘテロシクロアルキルは
各々独立に、ハロ、C1~3アルキル、OH、O-C1~6アルキル、NH-C1~6
ルキル、およびC3~8シクロアルキルまたは1~3個のヘテロ原子を含有する4~7員
ヘテロシクロアルキルで置換されたC1~3アルキルから選択される1つまたは複数の基
で任意選択的に置換されており、O-C1~6アルキルおよびNH-C1~6アルキルは
各々、ヒドロキシル、O-C1~3アルキルまたはNH-C1~3アルキルで任意選択的
に置換されており、O-C1~3アルキルおよびNH-C1~3アルキルは各々、O-C
1~3アルキルまたはNH-C1~3アルキルで任意選択的にさらに置換されており;
702およびR703は各々独立に、H、ハロ、C1~4アルキル、C1~6アルコ
キシルまたはC~C10アリールオキシであり、各々は1つまたは複数のハロで任意選
択的に置換されており;
704およびR705は各々独立にC1~4アルキルであり;
706はN(C1~4アルキル)で置換されたシクロヘキシルであり、C1~4
ルキルの一方または両方はC1~6アルコキシで置換されており;あるいはR706はテ
トラヒドロピラニルであり;
707は、ヒドロキシル、C1~4アルコキシ、アミノ、モノもしくはジC1~4
ルキルアミノ、C3~8シクロアルキル、および1~3個のヘテロ原子を含有する4~7
員ヘテロシクロアルキルから選択される1つまたは複数の基で任意選択的に置換されたC
1~4アルキルであり、C3~8シクロアルキルまたは4~7員ヘテロシクロアルキルは
各々独立に、C1~3アルキルでさらに任意選択的に置換されており;
708は、OH、ハロおよびC1~4アルコキシから選択される1つもしくは複数の
基で任意選択的に置換されたC1~4アルキル、1~3個のヘテロ原子を含有する4~7
員ヘテロシクロアルキルまたはO-C1~6アルキルであり、4~7員ヘテロシクロアル
キルは、OHまたはC1~6アルキルで任意選択的にさらに置換することができ;かつ
は、0、1または2である)
またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくは多形を有することができる。
【0094】
たとえば、R706は、N(C1~4アルキル)で置換されたシクロヘキシルであり
、C1~4アルキルの一方は置換されておらず、他方はメトキシで置換されている。
【0095】
たとえば、R706は、
【化6】

である。
【0096】
たとえば、化合物は、式II:
【化7】

である。
【0097】
たとえば、R702はメチルまたはイソプロピルであり、R703はメチルまたはメト
キシルである。
【0098】
たとえば、R704はメチルである。
【0099】
たとえば、R701はOR707であり、R707はOCHまたはモルホリンで任意
選択的に置換されたC1~3アルキルである。
【0100】
たとえば、R701はHまたはFである。
【0101】
たとえば、R701は、テトラヒドロピラニル、フェニル、ピリジル、ピリミジル、ピ
ラジニル、イミダゾリルまたはピラゾリルであり、その各々は、メチル、メトキシ、モル
ホリンで置換されたエチル、または-OCHCHOCHで任意選択的に置換されて
いる。
【0102】
たとえば、R708は、モルホリン、ピペリジン、ピペラジン、ピロリジン、ジアゼパ
ンまたはアゼチジンであり、その各々はOHまたはC1~6アルキルで任意選択的に置換
されている。
【0103】
たとえば、R708はモルホリンである。
【0104】
たとえば、R708はC1~6アルキルで置換されたピペラジンである。
【0105】
たとえば、R708はメチル、t-ブチルまたはC(CHOHである。
【0106】
本明細書に記載の任意の方法で使用することができる化合物(すなわち、EZH2阻害
剤)は、下記式III:
【化8】

またはその薬学的に許容される塩を有することができる。
【0107】
この式では:
801は、C1~6アルキル、C2~6アルケニル、C2~6アルキニル、C3~8
シクロアルキル、1~3個のヘテロ原子を含有する4~7員ヘテロシクロアルキル、フェ
ニルまたは5または6員ヘテロアリールであり、その各々は、O-C1~6アルキル-R
またはNH-C1~6アルキル-Rで置換されており、Rは、ヒドロキシル、O-
1~3アルキルまたはNH-C1~3アルキルであり、Rは、Rがヒドロキシルで
ある場合以外は、O-C1~3アルキルまたはNH-C1~3アルキルで任意選択的にさ
らに置換されており;あるいはR801は、-Q-Tで置換されたフェニルであり、
は、結合またはハロ、シアノ、ヒドロキシルもしくはC~Cアルコキシで任意選
択的に置換されたC~Cアルキルリンカーであり、Tは、任意選択的に置換された
4~12員ヘテロシクロアルキルであり;かつR801は任意選択的にさらに置換されて
おり;
802およびR803は各々独立に、H、ハロ、C1~4アルキル、C1~6アルコ
キシルまたはC~C10アリールオキシであり、各々は1つまたは複数のハロで任意選
択的に置換されており;
804およびR805は各々独立に、C1~4アルキルであり;かつ
806は、-Q-Tであり、Qは、結合またはC1~4アルキルリンカーであ
り、Tは、H、任意選択的に置換されたC1~4アルキル、任意選択的に置換されたC
~Cシクロアルキルまたは任意選択的に置換された4~14員ヘテロシクロアルキル
である。
【0108】
たとえば、QおよびQは各々独立に、結合またはメチルリンカーであり、Tおよ
びTは各々独立に、テトラヒドロピラニル、1、2もしくは3個のC1~4アルキル基
により置換されたピペリジニルまたはN(C1~4アルキル)(C1~4アルキルの一
方または両方がC1~6アルコキシで任意選択的に置換されている)により置換されたシ
クロヘキシルである。
【0109】
たとえば、R806はN(C1~4アルキル)により置換されたシクロヘキシルであ
るか、またはR806はテトラヒドロピラニルである。
【0110】
たとえば、R806は、
【化9】

である。
【0111】
たとえば、R801は、O-C1~6アルキル-Rで置換されたフェニルまたは5も
しくは6員ヘテロアリールであり、あるいはR801は、CH-テトラヒドロピラニル
で置換されたフェニルである。
【0112】
たとえば、本発明の化合物は、式IVaまたはIVb:
【化10】

であり、式中、Z’はCHまたはNであり、R807はC2~3アルキル-Rである。
【0113】
たとえば、R807は、-CHCHOH、-CHCHOCHまたは-CH
CHOCHCHOCHである。
【0114】
たとえば、R802はメチルまたはイソプロピルであり、R803はメチルまたはメト
キシルである。
【0115】
たとえば、R804はメチルである。
【0116】
本発明の化合物は、下記式(V):
【化11】

またはその薬学的に許容される塩もしくはエステルを有することができる。
【0117】
この式では:
、RおよびR12は各々独立に、C1~6アルキルであり;
は、C~C10アリールまたは5もしくは6員ヘテロアリールであり、その各々
は、1つまたは複数の-Q-Tで任意選択的に置換されており、Qは、結合または
ハロ、シアノ、ヒドロキシルもしくはC~Cアルコキシで任意選択的に置換されたC
~Cアルキルリンカーであり、Tは、H、ハロ、シアノ、-OR、-NR
、-(NR、-C(O)R、-C(O)OR、-C(O)NR
、-NRC(O)R、-NRC(O)OR,-S(O)、-S(O)
NRまたはRS2であり、R、RおよびRは各々独立にHまたはRS3
あり、Aは薬学的に許容されるアニオンであり、RS2およびRS3は各々独立に、C
~Cアルキル、C~Cシクロアルキル、C~C10アリール、4~12員ヘテ
ロシクロアルキルまたは5もしくは6員ヘテロアリールであり、あるいはRおよびR
は、それらが結合するN原子と共に互いに結合して、0または1個の追加のヘテロ原子を
有する4~12員ヘテロシクロアルキル環を形成し、RS2、RS3の各々、ならびにR
およびRにより形成された4~12員ヘテロシクロアルキル環は、1つまたは複数の
-Q-Tで任意選択的に置換されており、Qは、結合または各々がハロ、シアノ、
ヒドロキシルもしくはC~Cアルコキシで任意選択的に置換されたC~Cアルキ
ルリンカーであり、Tは、ハロ、シアノ、C~Cアルキル、C~Cシクロアル
キル、C~C10アリール、4~12員ヘテロシクロアルキル、5または6員ヘテロア
リール、OR、COOR、-S(O)、-NRおよび-C(O)NR
からなる群から選択され、RおよびRは各々独立にHまたはC~Cアルキル
であり、あるいは-Q-Tはオキソであり;あるいは任意の2つの隣接する-Q
は、それらが結合する原子と共に互いに結合して、N、OおよびSから選択される1
~4個のヘテロ原子を任意選択的に含有し、かつハロ、ヒドロキシル、COOH、C(O
)O-C~Cアルキル、シアノ、C~Cアルコキシル、アミノ、モノC~C
アルキルアミノ、ジC~Cアルキルアミノ、C~Cシクロアルキル、C~C
アリール、4~12員ヘテロシクロアルキルおよび5または6員ヘテロアリールからな
る群から選択される1つまたは複数の置換基で任意選択的に置換された5または6員環を
形成し;
は、-Q-Tであり、Qは、結合、C~CアルキルリンカーまたはC
~Cアルケニルリンカーであり、各リンカーは、ハロ、シアノ、ヒドロキシルまたはC
~Cアルコキシで任意選択的に置換されており、Tは、H、ハロ、シアノ、NR
、-OR、-C(O)R、-C(O)OR、-C(O)NR、-C(O
)NROR、-NRC(O)R、-S(O)またはRS4であり、R
よびRは各々独立に、HまたはRS5であり、RS4およびRS5は各々独立に、C
~Cアルキル、C~Cアルケニル、C~Cアルキニル、C~Cシクロアル
キル、C~C10アリール、4~12員ヘテロシクロアルキルまたは5もしくは6員ヘ
テロアリールであり、かつRS4およびRS5は各々、1つまたは複数の-Q-T
任意選択的に置換されており、Qは、結合、C(O)、C(O)NR、NRC(O
)、S(O)またはC~Cアルキルリンカーであり、Rは、HまたはC~C
アルキルであり、Tは、H、ハロ、C~Cアルキル、ヒドロキシル、シアノ、C
~Cアルコキシル、アミノ、モノC~Cアルキルアミノ、ジC~Cアルキルア
ミノ、C~Cシクロアルキル、C~C10アリール、4~12員ヘテロシクロアル
キル、5もしくは6員ヘテロアリールまたはS(O)であり、qは、0、1または
2であり、Rは、C~Cアルキル、C~Cアルケニル、C~Cアルキニル
、C~Cシクロアルキル、C~C10アリール、4~12員ヘテロシクロアルキル
または5もしくは6員ヘテロアリールであり、Tは、H、ハロ、ヒドロキシルまたはシ
アノである場合以外では、ハロ、C~Cアルキル、ヒドロキシル、シアノ、C~C
アルコキシル、アミノ、モノC~Cアルキルアミノ、ジC~Cアルキルアミノ
、C~Cシクロアルキル、C~C10アリール、4~12員ヘテロシクロアルキル
および5もしくは6員ヘテロアリールからなる群から選択される1つまたは複数の置換基
で任意選択的に置換されており;あるいは-Q-Tはオキソであり;かつ
は、H、ハロ、ヒドロキシル、COOH、シアノ、RS6、ORS6またはCOO
S6であり、RS6は、C~Cアルキル、C~Cアルケニル、C~Cアル
キニル、C~Cシクロアルキル、4~12員ヘテロシクロアルキル、アミノ、モノC
~CアルキルアミノまたはジC~Cアルキルアミノであり、かつRS6は、ハロ
、ヒドロキシル、COOH、C(O)O-C~Cアルキル、シアノ、C~Cアル
コキシル、アミノ、モノC~CアルキルアミノおよびジC~Cアルキルアミノか
らなる群から選択される1つまたは複数の置換基で任意選択的に置換されており;あるい
はRおよびRは、それらが結合するN原子と共に互いに結合して、0~2個の追加の
ヘテロ原子を有する4~11員ヘテロシクロアルキル環を形成し、かつRおよびR
より形成された4~11員ヘテロシクロアルキル環は、1つまたは複数の-Q-T
任意選択的に置換されており、Qは、結合、C(O)、C(O)NR、NRC(O
)、S(O)またはC~Cアルキルリンカーであり、Rは、HまたはC~C
アルキルであり、Tは、H、ハロ、C~Cアルキル、ヒドロキシル、シアノ、C
~Cアルコキシル、アミノ、モノC~Cアルキルアミノ、ジC~Cアルキルア
ミノ、C~Cシクロアルキル、C~C10アリール、4~12員ヘテロシクロアル
キル、5もしくは6員ヘテロアリールまたはS(O)であり、pは、0、1または
2であり、Rは、C~Cアルキル、C~Cアルケニル、C~Cアルキニル
、C~Cシクロアルキル、C~C10アリール、4~12員ヘテロシクロアルキル
または5もしくは6員ヘテロアリールであり、かつTは、H、ハロ、ヒドロキシルまた
はシアノである場合以外では、ハロ、C~Cアルキル、ヒドロキシル、シアノ、C
~Cアルコキシル、アミノ、モノC~Cアルキルアミノ、ジC~Cアルキルア
ミノ、C~Cシクロアルキル、C~C10アリール、4~12員ヘテロシクロアル
キルおよび5もしくは6員ヘテロアリールからなる群から選択される1つまたは複数の置
換基で任意選択的に置換されており;あるいは-Q-Tはオキソである。
【0118】
たとえば、Rは、C~C10アリールまたは5もしくは6員ヘテロアリールであり
、その各々は独立に、1つまたは複数の-Q-Tで任意選択的に置換されており、Q
は、結合またはC~Cアルキルリンカーであり、Tは、H、ハロ、シアノ、-O
、-NR、-(NR、-C(O)NR、-NR
(O)R、-S(O)またはRS2であり、RおよびRは各々独立に、Hま
たはRS3であり、RS2およびRS3は各々独立に、C~Cアルキルであり、ある
いはRおよびRは、それらが結合するN原子と共に互いに結合して、0または1個の
追加のヘテロ原子を有する4~7員ヘテロシクロアルキル環を形成し、かつRS2、R
、ならびにRおよびRにより形成された4~7員ヘテロシクロアルキル環は各々独
立に、1つまたは複数の-Q-Tで任意選択的に置換されており、Qは、結合また
はC~Cアルキルリンカーであり、Tは、ハロ、C~Cアルキル、4~7員ヘ
テロシクロアルキル、OR、-S(O)および-NRからなる群から選択
され、RおよびRは各々独立に、HまたはC~Cアルキルであり、あるいは-Q
-Tはオキソであり;あるいは任意の2つの隣接する-Q-Tは、それらが結合
する原子と共に互いに結合して、N、OおよびSから選択される1~4個のヘテロ原子を
任意選択的に含有する5もしくは6員環を形成する。
【0119】
たとえば、本発明の化合物は、式(VI):
【化12】

またはその薬学的に許容される塩であり、式中、Qは、結合またはメチルリンカーであ
り、Tは、H、ハロ、-OR、-NR、-(NRまたは-
S(O)NRであり、Rは、ピペリジニル、テトラヒドロピラン、シクロペン
チルまたはシクロヘキシルであり、各々は、1つの-Q-Tで任意選択的に置換され
ており、かつRは、エチルである。
【0120】
本発明の化合物は、下記式(VIa):
【化13】

(式中、
およびRは各々独立に、HまたはRS3であり、RS3は、C~Cアルキル
、C~Cシクロアルキル、C~C10アリール、4~12員ヘテロシクロアルキル
または5もしくは6員ヘテロアリールであり、あるいはRおよびRは、それらが結合
するN原子と共に互いに結合して、0または1個の追加のヘテロ原子を有する4~12員
ヘテロシクロアルキル環を形成し、かつRS3ならびにRおよびRにより形成された
4~12員ヘテロシクロアルキル環は各々、1つまたは複数の-Q-Tで任意選択的
に置換されており、Qは、結合、または各々がハロ、シアノ、ヒドロキシルもしくはC
~Cアルコキシで任意選択的に置換されたC~Cアルキルリンカーであり、T
は、ハロ、シアノ、C~Cアルキル、C~Cシクロアルキル、C~C10アリ
ール、4~12員ヘテロシクロアルキル、5もしくは6員ヘテロアリール、OR、CO
OR、-S(O)、-NRおよび-C(O)NRからなる群から選
択され、RおよびRは各々独立に、HまたはC~Cアルキルであり、あるいは-
-Tは、オキソであり;
は、-Q-Tであり、Qは、結合、C~CアルキルリンカーまたはC
~Cアルケニルリンカーであり、各リンカーは、ハロ、シアノ、ヒドロキシルまたはC
~Cアルコキシで任意選択的に置換されており、Tは、H、ハロ、シアノ、NR
、-OR、-C(O)R、-C(O)OR、-C(O)NR、-C(O
)NROR、-NRC(O)R、-S(O)またはRS4であり、R
よびRは各々独立に、HまたはRS5であり、RS4およびRS5は各々独立に、C
~Cアルキル、C~Cアルケニル、C~Cアルキニル、C~Cシクロアル
キル、C~C10アリール、4~7員ヘテロシクロアルキルまたは5もしくは6員ヘテ
ロアリールであり、かつRS4およびRS5は各々、1つまたは複数の-Q-Tで任
意選択的に置換されており、Qは、結合、C(O)、C(O)NR、NRC(O)
、S(O)またはC~Cアルキルリンカーであり、Rは、HまたはC~C
ルキルであり、Tは、H、ハロ、C~Cアルキル、ヒドロキシル、シアノ、C
アルコキシル、アミノ、モノC~Cアルキルアミノ、ジC~Cアルキルアミ
ノ、C~Cシクロアルキル、C~C10アリール、4~7員ヘテロシクロアルキル
、5もしくは6員ヘテロアリールまたはS(O)であり、qは、0、1または2で
あり、Rは、C~Cアルキル、C~Cアルケニル、C~Cアルキニル、C
~Cシクロアルキル、C~C10アリール、4~7員ヘテロシクロアルキルまたは
5もしくは6員ヘテロアリールであり、Tは、H、ハロ、ヒドロキシルまたはシアノで
ある場合以外では、ハロ、C~Cアルキル、ヒドロキシル、シアノ、C~Cアル
コキシル、アミノ、モノC~Cアルキルアミノ、ジC~Cアルキルアミノ、C
~Cシクロアルキル、C~C10アリール、4~7員ヘテロシクロアルキルおよび5
もしくは6員ヘテロアリールからなる群から選択される1つまたは複数の置換基で任意選
択的に置換されており;あるいは-Q-Tはオキソであり;ただし、RはHではな
く;かつ
は、H、ハロ、ヒドロキシル、COOH、シアノ、RS6、ORS6またはCOO
S6であり、RS6は、C~Cアルキル、C~Cアルケニル、C~Cアル
キニル、アミノ、モノC~CアルキルアミノまたはジC~Cアルキルアミノであ
り、かつRS6は、ハロ、ヒドロキシル、COOH、C(O)O-C~Cアルキル、
シアノ、C~Cアルコキシル、アミノ、モノC~CアルキルアミノおよびジC
~Cアルキルアミノからなる群から選択される1つまたは複数の置換基で任意選択的に
置換されており;あるいはRおよびRは、それらが結合するN原子と共に互いに結合
して、0~2個の追加のヘテロ原子を有し、かつ1つまたは複数の-Q-Tで任意選
択的に置換された4~11員ヘテロシクロアルキル環を形成し、Qは、結合、C(O)
、C(O)NR、NRC(O)、S(O)またはC~Cアルキルリンカーであ
り、Rは、HまたはC~Cアルキルであり、Tは、H、ハロ、C~Cアルキ
ル、ヒドロキシル、シアノ、C~Cアルコキシル、アミノ、モノC~Cアルキル
アミノ、ジC~Cアルキルアミノ、C~Cシクロアルキル、C~C10アリー
ル、4~7員ヘテロシクロアルキル、5もしくは6員ヘテロアリールまたはS(O)
であり、pは、0、1または2であり、Rは、C~Cアルキル、C~Cアル
ケニル、C~Cアルキニル、C~Cシクロアルキル、C~C10アリール、4
~7員ヘテロシクロアルキルまたは5もしくは6員ヘテロアリールであり、かつTは、
H、ハロ、ヒドロキシルまたはシアノである場合以外では、ハロ、C~Cアルキル、
ヒドロキシル、シアノ、C~Cアルコキシル、アミノ、モノC~Cアルキルアミ
ノ、ジC~Cアルキルアミノ、C~Cシクロアルキル、C~C10アリール、
4~7員ヘテロシクロアルキルおよび5もしくは6員ヘテロアリールからなる群から選択
される1つまたは複数の置換基で任意選択的に置換されており;あるいは-Q-T
オキソである)
を有することができる。
【0121】
たとえば、RおよびRは、それらが結合するN原子と共に互いに結合して、N原子
に加えて0または1個のヘテロ原子を有する4~7員ヘテロシクロアルキル環を形成し、
この環は、1つまたは複数の-Q-Tで任意選択的に置換されており、ヘテロシクロ
アルキルは、アゼチジニル、ピロリジニル、イミダゾリジニル、ピラゾリジニル、オキサ
ゾリジニル、イソキサゾリジニル、トリアゾリジニル、ピペリジニル、1,2,3,6-
テトラヒドロピリジニル、ピペラジニルまたはモルホリニルである。
【0122】
たとえば、Rは、C~Cシクロアルキルまたは4~7員ヘテロシクロアルキルで
あり、各々は、1つまたは複数の-Q-Tで任意選択的に置換されている。
【0123】
たとえば、Rは、ピペリジニル、テトラヒドロピラン、テトラヒドロ-2H-チオピ
ラニル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ピロリジニルまたはシクロヘプチルであり、
各々は、1つまたは複数の-Q-Tで任意選択的に置換されている。
【0124】
たとえば、Rは、H、またはハロ、ヒドロキシル、COOH、C(O)O-C~C
アルキル、シアノ、C~Cアルコキシル、アミノ、モノC~Cアルキルアミノ
およびジC~Cアルキルアミノからなる群から選択される1つまたは複数の置換基で
任意選択的に置換されたC~Cアルキルである。
【0125】
実施形態では、本明細書に示す任意の方法で使用することができる化合物は、
【化14】

(化合物A、E7438またはEPZ-6438とも呼ばれる)またはその薬学的に許容
される塩である。
【0126】
実施形態では、本明細書に示す任意の方法で使用することができる化合物は、
【化15】

およびその薬学的に許容される塩である。
【0127】
あるいは、EZH2阻害剤は、化合物BおよびC、それらの立体異性体、ならびにそれ
らの薬学的に許容される塩からなる群から選択される。
【0128】
実施形態では、本明細書に示す任意の方法で使用することができる化合物は、化合物F

【化16】

またはその薬学的に許容される塩である。
【0129】
実施形態では、本発明の方法で使用するのに適した化合物は、式(VII)の化合物:
【化17】

(式中、
は、NまたはCRであり、
は、NまたはCRであるが、VがNである場合、VはNであり、
XおよびZは独立に、水素、(C~C)アルキル、(C~C)アルケニル、(
~C)アルキニル、非置換または置換(C~C)シクロアルキル、非置換また
は置換(C~C)シクロアルキル-(C~C)アルキルまたは-(C~C
アルケニル、非置換または置換(C-C)シクロアルケニル、非置換または置換(C
-C)シクロアルケニル-アルキル(C~C)または-(C~C)アルケニ
ル、(C~C10)ビシクロアルキル、非置換または置換ヘテロシクロアルキル、非置
換または置換ヘテロシクロアルキル-(C~C)アルキルまたは-(C~C)ア
ルケニル、非置換または置換アリール、非置換または置換アリール-(C~C)アル
キルまたは-(C~C)アルケニル、非置換または置換ヘテロアリール、非置換また
は置換ヘテロアリール-(C~C)アルキルまたは-(C~C)アルケニル、ハ
ロ、シアノ、-COR、-CO、-CONR、-CONRNR
-SR、-SOR、-SO、-SONR、ニトロ、-NR、-
NRC(O)R、-NRC(O)NR、-NRC(O)OR、-NR
SO、-NRSONR、-NRNR、-NRNRC(O)
、-NRNRC(O)NR、-NRNRC(O)ORa、-OR
-OC(O)Rおよび-OC(O)NRからなる群から選択され;
YはHまたはハロであり;
は、(C~C)アルキル、(C~C)アルケニル、(C~C)アルキ
ニル、非置換または置換(C~C)シクロアルキル、非置換または置換(C~C
)シクロアルキル-(C~C)アルキルまたは-(C~C)アルケニル、非置換
または置換(C~C)シクロアルケニル、非置換または置換(C~C)シクロア
ルケニル-(C~C)アルキルまたは-(C~C)アルケニル、非置換または置
換(C~C10)ビシクロアルキル、非置換または置換ヘテロシクロアルキルまたは-
(C~C)アルケニル、非置換または置換ヘテロシクロアルキル-アルキル(C
)、非置換または置換アリール、非置換または置換アリール-(C~C)アルキ
ルまたは-(C~C)アルケニル、非置換または置換ヘテロアリール、非置換または
置換ヘテロアリール-(C~C)アルキルまたは-(C~C)アルケニル、-C
OR、-CO、-CONR、-CONRNR
は、水素、(C~C)アルキル、トリフルオロメチル、アルコキシ、またはハ
ロであり、前記(C~C)アルキルは、アミノおよび(C~C)アルキルアミノ
から選択される1~2個の基で任意選択的に置換されており;
は、水素、(C~C)アルキルまたはアルコキシであり;
は、水素、(C~C)アルキル、シアノ、トリフルオロメチル、-NR
またはハロであり;
は、水素、ハロ、(C~C)アルキル、(C~C)アルケニル、(C
)アルキニル、非置換または置換(C~C)シクロアルキル、非置換または置換
(C~C)シクロアルキル-(C~C)アルキル、非置換または置換(C~C
)シクロアルケニル、非置換または置換(C~C)シクロアルケニル-(C~C
)アルキル、(C~C10)ビシクロアルキル、非置換または置換ヘテロシクロアル
キル、非置換または置換ヘテロシクロアルキル-(C~C)アルキル、非置換または
置換アリール、非置換または置換アリール-(C~C)アルキル、非置換または置換
ヘテロアリール、非置換または置換ヘテロアリール-(C~C)アルキル、シアノ、
-COR、-CO、-CONR、-CONRNR、-SR、-
SOR、-SO、-SONR、ニトロ、-NR、-NRC(O
)R、-NRC(O)NR、-NRC(O)OR、-NRSO
-NRSONR、-NRNR、-NRNRC(O)R、-NR
NRC(O)NR、-NRNRC(O)OR、-OR、-OC(O)
、-OC(O)NRからなる群から選択され;
任意の(C~C)アルキル、(C~C)アルケニル、(C~C)アルキニ
ル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ビシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ア
リールまたはヘテロアリール基は、-O(C~C)アルキル(R1~2、-S(
~C)アルキル(R1~2、-(C~C)アルキル(R1~2、-(
~C)アルキル-ヘテロシクロアルキル、(C~C)シクロアルキル-ヘテロ
シクロアルキル、ハロ、(C~C)アルキル、(C~C)シクロアルキル、(C
~C)シクロアルケニル、(C~C)ハロアルキル、シアノ、-COR、-C
、-CONR、-SR、-SOR、-SO、-SONR
、ニトロ、-NR、-NRC(O)R -NRC(O)NR、-N
C(O)OR、-NRSO、-NRSONR、-OR、-O
C(O)R、OC(O)NR、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリー
ル、アリール(C~C)アルキルおよびヘテロアリール(C~C)アルキルから
なる群から独立に選択される1つ、2つまたは3つの基により任意選択的に置換されてお
り;
前記アリール、ヘテロアリール、アリール(C~C)アルキルまたはヘテロアリ
ール(C~C)アルキルの任意のアリールまたはヘテロアリール部分は独立に、ハロ
、(C~C)アルキル、(C~C)シクロアルキル、(C~C)シクロアル
ケニル、(C~C)ハロアルキル、シアノ、-COR、-CO、-CONR
、-SR、-SOR、-SO、-SONR、ニトロ、-NR
、-NRC(O)R、-NRC(O)NR、-NRC(O)OR
-NRSO2R、-NRSONR、-OR、-OC(O)Rおよび-
OC(O)NRからなる群から選択され;
およびRは各々独立に、水素、(C~C)アルキル、(C~C)アルケ
ニル、(C~C)アルキニル、(C~C)シクロアルキル、(C~C)シク
ロアルケニル、(C~C10)ビシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールま
たはヘテロアリールであり、前記(C~C)アルキル、(C~C)アルケニル、
(C~C)アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ビシクロアルキル、ヘ
テロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリール基は、ハロ、ヒドロキシル、(C
~C)アルコキシ、アミノ、(C~C)アルキルアミノ、((C~C)アルキ
ル)((C~C)アルキル)アミノ、-COH、-CO(C~C)アルキル
、-CONH、-CONH(C~C)アルキル、-CON((C~C)アルキ
ル)((C~C)アルキル)、-SO(C~C)アルキル、-SONH
-SONH(C~C)アルキルおよびSON((C~C)アルキル)((C
~C)アルキル)から独立に選択される1つ、2つまたは3つの基により任意選択的
に置換されており;
あるいはそれらが結合する窒素と共に互いに結合したRおよびRは、酸素、窒素お
よびイオウから選択される追加のヘテロ原子を任意選択的に含有する5~8員の飽和また
は不飽和環を表し、前記環は、(C~C)アルキル、(C~C)ハロアルキル、
アミノ、(C~C)アルキルアミノ、((C~C)アルキル)((C~C
アルキル)アミノ、ヒドロキシル、オキソ、(C~C)アルコキシおよび(C~C
)アルコキシ(C~C)アルキルから独立に選択される1つ、2つまたは3つの基
により任意選択的に置換されており、前記環は、(C~C)シクロアルキル、ヘテロ
シクロアルキル、アリールまたはヘテロアリール環に任意選択的に融合されており;
あるいはそれらが結合する窒素と共に互いに結合したRおよびRは、(C~C
)シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリール環に任意選択
的に融合した6~10員の架橋二環式環系を表し;
は各々独立に、(C~C)アルキルアミノ、-NRSO2R、-SOR
、-SO、-NRC(O)OR、-NRまたは-COである)
またはその塩を含む。
【0130】
式(I)の一般構造により包含される化合物のサブグループは、以下のように表される

式(VII)のサブグループA
XおよびZは、(C~C)アルキル、(C~C)シクロアルキル、ヘテロシク
ロアルキル、アリール、ヘテロアリール、-NRおよび-ORからなる群から選
択され;
YはHまたはFであり;
は、(C~C)アルキル、(C~C)シクロアルキル、ヘテロシクロアル
キル、アリールおよびヘテロアリールからなる群から選択され;
は、水素、(C~C)アルキル、トリフルオロメチル、アルコキシまたはハロ
であり、前記(C~C)アルキルは、アミノおよび(C~C)アルキルアミノか
ら選択される1~2個の基で任意選択的に置換されており;
は、水素、アルキル(C~C)またはアルコキシであり;
は、水素、(C~C)アルキル、シアノ、トリフルオロメチル,-NR
およびハロからなる群から選択され;
は、水素、ハロ、シアノ、トリフルオロメチル、アミノ、(C~C)アルキル
、(C~C)シクロアルキル;アリール、ヘテロアリール、アシルアミノ;(C
)アルキニル、アリールアルキニル、ヘテロアリールアルキニル;-SO;-
SONRおよび-NRSOからなる群から選択され;
任意の(C~C)アルキル、(C~C)シクロアルキル、(C~C)ア
ルキニル、アリールアルキニル、ヘテロアリールアルキニル基は、-O(C~C)ア
ルキル(R1~2、-S(C~C)アルキル(R1~2、-(C~C
アルキル(R1~2、-(C~C)アルキル-ヘテロシクロアルキル、(C
)シクロアルキル-ヘテロシクロアルキル、ハロ、(C~C)アルキル、(C
~C)シクロアルキル、(C~C)シクロアルケニル、(C~C)ハロアルキ
ル、シアノ、-COR、-CO、-CONR、-SR、-SOR、-
SO、-SONR、ニトロ、-NR、-NRC(O)R、-N
C(O)NR、-NRC(O)OR、-NRSO、-NRSO
NR、-OR、-OC(O)R、-OC(O)NR、ヘテロシクロア
ルキル、アリール、ヘテロアリール、アリール(C~C)アルキルおよびヘテロアリ
ール(C~C)アルキルから独立に選択される1つ、2つまたは3つの基により任意
選択的に置換されており;
およびRは各々独立に、水素、(C~C)アルキル、(C~C)アルケ
ニル、(C~C)アルキニル、(C~C)シクロアルキル、(C~C)シク
ロアルケニル、(C~C10)ビシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールま
たはヘテロアリールであり、前記(C~C)アルキル、(C~C)アルケニル、
(C~C)アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ビシクロアルキル、ヘ
テロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリール基は、ハロ、ヒドロキシル、(C
~C)アルコキシ、アミノ、(C~C)アルキルアミノ、((C~C)アルキ
ル)((C~C)アルキル)アミノ、-COH、-CO(C~C)アルキル
、-CONH、-CONH(C~C)アルキル、-CON((C~C)アルキ
ル)((C~C)アルキル)、-SO(C~C)アルキル、-SONH
-SONH(C~C)アルキルおよび-SON((C~C)アルキル)((
~C)アルキル)から独立に選択される1つ、2つまたは3つの基により任意選択
的に置換されており;
あるいはそれらが結合する窒素と共に互いに結合したRおよびRは、酸素、窒素お
よびイオウから選択される追加のヘテロ原子を任意選択的に含有する5~8員の飽和また
は不飽和環を表し、前記環は、(C~C)アルキル、(C~C)ハロアルキル、
アミノ、(C~C)アルキルアミノ、((C~C)アルキル)((C~C
アルキル)アミノ、ヒドロキシル、オキソ、(C~C)アルコキシおよび(C~C
)アルコキシ(C~C)アルキルから独立に選択される1つ、2つまたは3つの基
により任意選択的に選択され、前記環は、(C~C)シクロアルキル、ヘテロシクロ
アルキル、アリールまたはヘテロアリール環に任意選択的に融合しており;
あるいはそれらが結合する窒素と共に互いに結合したRおよびRは、(C~C
)シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリール環に任意選択
的に融合した6~10員の架橋二環式環系を表す。この特定のサブグループAのアリール
またはヘテロアリール基は、フラン、チオフェン、ピロール、オキサゾール、チアゾール
、イミダゾール、ピラゾール、オキサジアゾール、チアジアゾール、トリアゾール、テト
ラゾール、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、ベンゾキサゾール、ベンゾチアゾール、フ
ェニル、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン、テトラジン、キノ
リン、シンノリン、キナゾリン、キノキサリン、およびナフチリジン、または下記のよう
な別のアリールもしくはヘテロアリール基からなる群から独立に選択される:
【化18】

(1)では、
AはO、NHもしくはSであり;BはCHもしくはNであり、Cは水素もしくはC
アルキルであり;または
【化19】

(2)では、
Dは水素もしくはC~Cアルキルにより任意選択的に置換されたNもしくはCであ
り;または
【化20】

(3)では、
EはNHもしくはCHであり;FはOもしくはCOであり;GはNHもしくはCH
であり;または
【化21】

(4)では、
JはO、SもしくはCOであり;または
【化22】

(5)では、
QはCHもしくはNであり;
MはCHもしくはNであり;かつ
L/(5)は、水素、ハロ、アミノ、シアノ、(C~C)アルキル、(C~C
)シクロアルキル、-COR、-CO、-CONR、-CONRNR
、-SO、-SONR、-NR、-NRC(O)R、-N
SO、-NRSONR、-NRNR、-NRNRC(
O)R、-NRNRC(O)NRもしくは-ORであり、
任意の(C~C)アルキルもしくは(C~C)シクロアルキル基は、(C
~C)アルキル、(C~C)シクロアルキル、(C~C)シクロアルケニル、
(C~C)ハロアルキル、シアノ、-COR、-CO、-CONR
-SR、-SOR、-SO、-SONR、ニトロ、-NR、-
NRC(O)R、-NRC(O)NR、-NRC(O)OR、-NR
SO、-NRSONR、-OR、-OC(O)Rおよび-OC(O
)NRから独立に選択される1つ、2つもしくは3つの基により任意選択的に置換
されており;RおよびRは上記のように定義され;または
【化23】

(6)では、
L/(6)はNHもしくはCHであり;または
【化24】

(7)では、
M/(7)は、水素、ハロ、アミノ、シアノ、(C~C)アルキル、(C~C
)シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、-COR、-CO、-CONR
、-CONRNR、-SO、-SONR、-NR、-N
C(O)R、-NRSO、-NRSONR、-NRNR
、-NRNRC(O)R、-NRNRC(O)NRもしくは-OR
であり、
任意の(C~C)アルキル、(C~C)シクロアルキルもしくヘテロシクロア
ルキル基は、(C~C)アルキル、(C~C)シクロアルキル、(C~C
シクロアルケニル、(C~C)ハロアルキル、シアノ、-COR、-CO
-CONR、-SR、-SOR、-SO、-SONR、ニトロ
、-NR、-NRC(O)R、-NRC(O)NR、-NRC(O
)OR、-NRSO、-NRSONR、-OR、-OC(O)R
および-OC(O)NRから独立に選択される1つ、2つもしくは3つの基によ
り任意選択的に置換されており;RおよびRは上記のように定義され;または
【化25】

(8)では、
PはCH、NH、OもしくはSであり;Q/(8)はCHもしくはNであり;nは0
~2であり;または
【化26】

(9)では、
S/(9)およびT/(9)はCであるか、もしくはS/(9)はCでありかつT/(
9)はNであるか、もしくはS/(9)はNでありかつT/(9)はCであり;
Rは、水素、アミノ、メチル、トリフルオロメチルもしくはハロであり;
Uは、水素、ハロ、アミノ、シアノ、ニトロ、トリフルオロメチル、(C~C)ア
ルキル、(C~C)シクロアルキル、-COR、-CO、-CONR
、-SO、-SONR、-NR、-NRC(O)R、-NR
SO、-NRSONR、-NRNR、-NRNRC(O)
、-ORもしくは4-(1H-ピラゾール-4-y1)であり、
任意の(C~C)アルキルもしくは(C~C)シクロアルキル基は、(C
~C)アルキル、(C~C)シクロアルキル、(C~C)シクロアルケニル、
(C~C)ハロアルキル、シアノ、-COR、-CO、-CONR
-SR、SOR、-SO、-SONR、ニトロ、-NR、-N
C(O)R、-NRC(O)NR、-NRC(O)OR、-NR
、-NRSONR、-OR、-OC(O)Rおよび-OC(O)
NRから独立に選択される1つ、2つもしくは3つの基により任意選択的に置換さ
れており;RおよびRは上記のように定義される。
【0131】
式(VII)のサブグループB
XおよびZは、(C~C)アルキル、(C~C)シクロアルキル、ヘテロシク
ロアルキル、アリール、ヘテロアリール、-NRおよび-ORからなる群から独
立に選択され;
YはHであり;
は、(C~C)アルキル、(C~C)シクロアルキルまたはヘテロシクロ
アルキルであり;
は、水素、(C~C)アルキルまたはハロであり、前記(C~C)アルキ
ルは、アミノおよび(C~C)アルキルアミノから選択される1~2個の基により任
意選択的に置換されており;
は、水素、(C~C)アルキルまたはアルコキシであり;
は、水素、(C~C)アルキルまたはハロであり;
は、水素、ハロ、シアノ、トリフルオロメチル、アミノ、(C~C)アルキル
、(C~C)シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アシルアミノ;(C
)アルキニル、アリールアルキニル、ヘテロアリールアルキニル、-SO、-
SONRまたは-NRSOであり;
任意の(C~C)アルキル、(C~C)シクロアルキル、(C~C)ア
ルキニル、アリールアルキニルまたはヘテロアリールアルキニル基は、ハロ、(C~C
)アルキル、(C~C)シクロアルキル、(C~C)シクロアルケニル、(C
~C)ハロアルキル、シアノ、-COR、-CO、-CONR、-S
、-SOR、-SO、-SONR、ニトロ、-NR、-NR
C(O)R、-NRC(O)NR、-NRC(O)OR、-NRSO
、-NRSONR、-OR、-OC(O)R、-OC(O)NR
、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリール(C~C)アル
キルおよびヘテロアリール(C~C)アルキルから独立に選択される1つ、2つまた
は3つの基により任意選択的に置換されており;
およびRは各々独立に、水素、(C~C)アルキル、(C~C)アルケ
ニル、(C~C)アルキニル、(C~C)シクロアルキル、(C~C)シク
ロアルケニル、(C~C10)ビシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールま
たはヘテロアリールであり、前記(C~C)アルキル、(C~C)アルケニル、
(C~C)アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ビシクロアルキル、ヘ
テロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリール基は、ハロ、ヒドロキシル、(C
~C)アルコキシ、アミノ、(C~C)アルキルアミノ、((C~C)アルキ
ル)((C~C)アルキル)アミノ、-COH、-CO(C~C)アルキル
、-CONH、-CONH(C~C)アルキル、-CON((C~C)アルキ
ル)((C~C)アルキル)、-SO(C~C)アルキル、-SONH
-SONH(C~C)アルキルおよび-SON((C~C)アルキル)((
~C)アルキル)から独立に選択される1つ、2つまたは3つの基により任意選択
的に置換されており;
あるいはそれらが結合する窒素と共に互いに結合したRおよびRは、酸素、窒素お
よびイオウから選択される追加のヘテロ原子を任意選択的に含有する5~8員の飽和また
は不飽和環を表し、前記環は、(C~C)アルキル、(C~C)ハロアルキル、
アミノ、(C~C)アルキルアミノ、((C~C)アルキル)((C~C
アルキル)アミノ、ヒドロキシル、オキソ、(C~C)アルコキシおよび(C~C
)アルコキシ(C~C)アルキルから独立に選択される1つ、2つまたは3つの基
により任意選択的に選択されており、前記環は、(C~C)シクロアルキル、ヘテロ
シクロアルキル、アリールまたはヘテロアリール環に任意選択的に融合しており;
あるいはそれらが結合する窒素と共に互いに結合したRおよびRは、(C~C
)シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリール環に任意選択
的に融合した6~10員の架橋二環式環系を表す。この定義におけるアリールおよびヘテ
ロアリールは、フラン、チオフェン、ピロール、オキサゾール、チアゾール、イミダゾー
ル、ピラゾール、オキサジアゾール、チアジアゾール、トリアゾール、テトラゾール、ベ
ンゾフラン、ベンゾチオフェン、ベンゾキサゾール、ベンゾチアゾール、フェニル、ピリ
ジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン、テトラジン、キノリン、シンノ
リン、キナゾリン、キノキサリンおよびナフチリジン、または以下のような別のアリール
もしくはヘテロアリール基の化合物からなる群から選択される:
【化27】

(1)では、
AはO、NHもしくはSであり;BはCHもしくはNであり、Cは水素もしくはC
アルキルであり;または
【化28】

(2)では、
Dは、水素もしくはC~Cアルキルにより任意選択的に置換されたNもしくはCで
あり;または
【化29】

(3)では、
EはNHもしくはCHであり;FはOもしくはCOであり;GはNHもしくはCH
であり;または
【化30】

(4)では、
JはO、SもしくはCOであり;または
【化31】

(5)では、
QはCHもしくはNであり;
MはCHもしくはNであり;かつ
L/(5)は、水素、ハロ、アミノ、シアノ、(C~C)アルキル、(C~C
)シクロアルキル、-COR、-CO、-CONR、-CONRNR
、-SO、-SONR、-NR、-NRC(O)R、-N
SO、-NRSONR、-NRNR、-NRNRC(
O)R、-NRNRC(O)NRもしくは-ORであり、
任意の(C~C)アルキル、(C~C)シクロアルキル基は、(C~C
)アルキル、(C~C)シクロアルキル、(C~C)シクロアルケニル、(C
~C)ハロアルキル、シアノ、-COR、-CO、-CONR、-SR
、-SOR、-SO、-SONR、ニトロ、-NR、-NR
C(O)R、-NRC(O)NR、-NRC(O)OR、NRSO
、-NRSONR、-OR、-OC(O)Rおよび-OC(O)NR
から独立に選択される1つ、2つもしくは3つの基により任意選択的に置換されてお
り、
およびRは上記のように定義され;または
【化32】

(6)では、
L/(6)はNHもしくはCHであり;または
【化33】

(7)では、
M/(7)は、水素、ハロ、アミノ、シアノ、(C~C)アルキル、(C~C
)シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、-COR、-CO、-CONR
、-CONRNR、-SO、-SONR、-NR、-
NRC(O)R、-NRSO、-NRSONR、-NRNR
、-NRNRC(O)R、-NRNRC(O)NRもしくは-OR
であり、
任意の(C~C)アルキル、(C~C)シクロアルキル、ヘテロシクロアル
キル基は、(C~C)アルキル、(C~C)シクロアルキル、(C~C)シ
クロアルケニル、(C~C)ハロアルキル、シアノ、-COR、-CO、-
CONR、-SR、-SOR、-SO、-SONR、ニトロ、
-NR、-NRC(O)R、NRC(O)NR、-NRC(O)O
、-NRSO、-NRSONR、-OR、-OC(O)R
-OC(O)NRから独立に選択される1つ、2つもしくは3つの基により任意選
択的に置換されており;RおよびRは上記のように定義され;または
【化34】

(8)では、
PはCH、NH、OもしくはSであり;Q/(8)はCHもしくはNであり;nは0
~2であり;または
【化35】

(9)では、
S/(9)およびT/(9)はCであるか、もしくはS/(9)はCでありかつT/(
9)はNであるか、もしくはS/(9)はNでありかつT/(9)はCであり;
Rは、水素、アミノ、メチル、トリフルオロメチル、ハロであり;
Uは、水素、ハロ、アミノ、シアノ、ニトロ、トリフルオロメチル、(C~C)ア
ルキル、(C~C)シクロアルキル、-COR、-CO、-CONR
、-SO、-SONR、-NR、-NRC(O)R、-NR
SO、-NRSONR、-NRNR、-NRNRC(O)
、-ORもしくは4-(1H-ピラゾール-4-イル)であり、
任意の(C~C)アルキルもしくは(C~C)シクロアルキル基は、(C
~C)アルキル、(C~C)シクロアルキル、(C~C)シクロアルケニル、
(C~C)ハロアルキル、シアノ、-COR、-CO、-CONR
-SOR、-SO、-SONR、ニトロ、-NR、-NRC(
O)R、-NRC(O)NR、-NRC(O)OR、-NRSO
、-NRSO2NR、-OR、-OC(O)Rおよび-OC(O)NR
から独立に選択される1つ、2つもしくは3つの基により任意選択的に置換されており
、RおよびRは上記のように定義される。
【0132】
実施形態では、EZH2阻害剤は、化合物GまたはGSK-126:
【化36】

またはその立体異性体、もしくはその薬学的に許容できる塩、もしくは溶媒和物である。
【0133】
ある種の実施形態では、本明細書に示されるいずれの方法にも使用できるEZH2阻害
剤は、化合物H:
【化37】

またはその立体異性体、もしくはその薬学的に許容できる塩、もしくは溶媒和物である。
【0134】
ある種の実施形態では、本明細書に示されるいずれの方法にも使用できるEZH2阻害
剤は、化合物Ga~Gcのいずれか:
【化38】

またはその立体異性体、薬学的に許容できる塩、もしくは溶媒和物である。
【0135】
ある種の実施形態では、本明細書に示されるいずれの方法にも使用できるEZH2阻害
剤はCPI-1205またはGSK343である。
【0136】
一実施形態では、本明細書に開示される化合物(例えば、EZH2阻害剤)は、化合物
自体、すなわち遊離塩基または「裸の」分子である。別の実施形態では、化合物は、その
塩、例えば、裸の分子の一HCl塩または三HCl塩、一HBr塩または三HBr塩であ
る。
【0137】
本明細書に記載の化合物は、当該技術分野で周知の任意の方法に従って合成することが
できる。たとえば、式(VII)を有する化合物は、国際公開第2011/140325
号パンフレット;国際公開第2011/140324号パンフレット;および国際公開第
2012/005805号パンフレットに記載された方法に従って合成することができ;
その内容全体を各々参照により援用する。
【0138】
本明細書で使用する場合、「アルキル」、「C、C、C、C、CまたはC
アルキル」または「C~Cアルキル」は、C、C、C、C、CまたはC
直鎖(線状)飽和脂肪族炭化水素基、およびC、C、CまたはC分岐飽和脂肪族
炭化水素基を含むことを意図している。たとえば、C~Cアルキルは、Cアルキル
基、Cアルキル基、Cアルキル基、Cアルキル基、Cアルキル基およびCアル
キル基を含むことを意図している。アルキルの例として、以下に限定されるものではない
が、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、s-ブチル、t-ブチ
ル、n-ペンチル、s-ペンチルまたはn-ヘキシルなど1~6個の炭素原子を有する部
分が挙げられる。
【0139】
実施形態では、直鎖または分岐アルキルは6個以下の炭素原子(たとえば、直鎖のC
~C、分岐鎖のC-C)を有し、別の実施形態では、直鎖または分岐アルキルは4
個以下の炭素原子を有する。
【0140】
本明細書で使用する場合、「シクロアルキル」という用語は、3~30個の炭素原子(
たとえば、C~C10)を有する単環または多環系の飽和もしくは不飽和非芳香族炭化
水素(たとえば、縮合環、架橋環またはスピロ環)系をいう。シクロアルキルの例として
、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、
シクロオクチル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘプテニルおよびアダマ
ンチルがあるが、これに限定されるものではない。「ヘテロシクロアルキル」という用語
は、特に明記されない限り、1つまたは複数のヘテロ原子(たとえばO、N、SまたはS
e)を有する3~8員の単環式飽和もしくは不飽和非芳香族環系、7~12員の二環式飽
和もしくは不飽和非芳香族環系(縮合環、架橋環またはスピロ環)、または11~14員
の三環式飽和もしくは不飽和非芳香族環系(縮合環、架橋環またはスピロ環)をいう。ヘ
テロシクロアルキル基の例として、ピペリジニル、ピペラジニル、ピロリジニル、ジオキ
サニル、テトラヒドロフラニル、イソインドリニル、インドリニル、イミダゾリジニル、
ピラゾリジニル、オキサゾリジニル、イソキサゾリジニル、トリアゾリジニル、テトラヒ
ドロフラニル、オキシラニル、アゼチジニル、オキセタニル、チエタニル、1,2,3,
6-テトラヒドロピリジニル、テトラヒドロピラニル、ジヒドロピラニル、ピラニル、モ
ルホリニル、1,4-ジアゼパニル、1、4-オキサゼパニル、2-オキサ-5-アザビ
シクロ[2.2.1]ヘプタニル、2,5-ジアザビシクロ[2.2.1]ヘプタニル、
2-オキサ-6-アザスピロ[3.3]ヘプタニル、2,6-ジアザスピロ[3.3]ヘ
プタニル、1,4-ジオキサ-8-アザスピロ[4.5]デカニル等があるが、これに限
定されるものではない。
【0141】
「任意選択的に置換されたアルキル」という用語は、非置換アルキル、または炭化水素
骨格の1つまたは複数の炭素上の1つまたは複数の水素原子に置き換わる所定の置換基を
有するアルキルをいう。こうした置換基として、たとえば、アルキル、アルケニル、アル
キニル、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキ
シ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート
、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル
、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、
アルコキシル、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィナート、アミノ(アルキルアミノ
、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノおよびアルキルアリールアミノ
を含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カル
バモイルおよびウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、
アリールチオ、チオカルボキシレート、スルフェート、アルキルスルフィニル、スルホナ
ト、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、
ヘテロシクリル、アルキルアリール、または芳香族部分もしくは芳香族複素環部分を挙げ
ることができる。
【0142】
「アリールアルキル」または「アラルキル」部分とは、アリールで置換されたアルキル
(たとえば、フェニルメチル(ベンジル))である。「アルキルアリール」部分は、アル
キルで置換されたアリール(たとえば、メチルフェニル)である。
【0143】
本明細書で使用する場合、「アルキルリンカー」は、C、C、C、C、C
たはC直鎖(線状)飽和二価脂肪族炭化水素基、およびC、C、CまたはC
岐飽和脂肪族炭化水素基を含むことを意図している。たとえば、C~Cアルキルリン
カーは、Cアルキルリンカー基、Cアルキルリンカー基、Cアルキルリンカー基、
アルキルリンカー基、Cアルキルリンカー基およびCアルキルリンカー基を含む
ことを意図している。アルキルリンカーの例として、以下に限定されるものではないが、
メチル(-CH-)、エチル(-CHCH-)、n-プロピル(-CHCH
-)、i-プロピル(-CHCHCH-)、n-ブチル(-CHCHCH
CH-)、s-ブチル(-CHCHCHCH-)、i-ブチル(-C(CH
CH-)、n-ペンチル(-CHCHCHCHCH-)、s-ペンチル(
-CHCHCHCHCH-)またはn-ヘキシル(-CHCHCHCH
CHCH-)など1~6個の炭素原子を有する部分が挙げられる。
【0144】
「アルケニル」は、上述のアルキルと長さが類似し、上述のアルキルへの置換が可能で
あるが、少なくとも1つの二重結合を含む不飽和脂肪族基を含む。たとえば、「アルケニ
ル」という用語は、直鎖アルケニル基(たとえば、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペ
ンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル、デセニル)、および分岐ア
ルケニル基を含む。実施形態では、直鎖または分岐アルケニル基はその骨格に6個以下の
炭素原子(たとえば、直鎖に対してC~C、分岐鎖に対してC~C)を有する。
「C~C」という用語は、2~6個の炭素原子を含むアルケニル基を含む。「C
」という用語は、3~6個の炭素原子を含むアルケニル基を含む。
【0145】
「任意選択的に置換されたアルケニル」という用語は、非置換アルケニル、または1つ
または複数の炭化水素骨格の炭素原子上の1つまたは複数の水素原子に置き換わる所定の
置換基を有するアルケニルをいう。こうした置換基として、たとえば、アルキル、アルケ
ニル、アルキニル、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカル
ボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボ
キシレート、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノ
カルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカ
ルボニル、アルコキシル、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィナート、アミノ(アル
キルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノおよびアルキルアリ
ールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルア
ミノ、カルバモイルおよびウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アル
キルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、スルフェート、アルキルスルフィニル
、スルホナト、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ
、ヘテロシクリル、アルキルアリールまたは芳香族部分もしくは芳香族複素環部分を挙げ
ることができる。
【0146】
「アルキニル」は、上述のアルキルと長さが類似し、上述のアルキルへの置換が可能で
あるが、少なくとも1つの三重結合を含む不飽和脂肪族基を含む。たとえば、「アルキニ
ル」は、直鎖アルキニル基(たとえば、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、
ヘキシニル、ヘプチニル、オクチニル、ノニニル、デシニル)、および分岐アルキニル基
を含む。実施形態では、直鎖または分岐アルキニル基はその骨格に6個以下の炭素原子(
たとえば、直鎖に対してC~C、分岐鎖に対してC~C)を有する。「C~C
」という用語は、2~6個の炭素原子を含むアルキニル基を含む。「C~C」とい
う用語は、3~6個の炭素原子を含むアルキニル基を含む。
【0147】
「任意選択的に置換されたアルキニル」という用語は、非置換アルキニル、または1つ
または複数の炭化水素骨格の炭素原子上の1つまたは複数の水素原子に置き換わる所定の
置換基を有するアルキニルをいう。こうした置換基として、たとえば、アルキル、アルケ
ニル、アルキニル、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカル
ボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボ
キシレート、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノ
カルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカ
ルボニル、アルコキシル、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィナート、アミノ(アル
キルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノおよびアルキルアリ
ールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルア
ミノ、カルバモイルおよびウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アル
キルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、スルフェート、アルキルスルフィニル
、スルホナト、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ
、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリールまたは芳香族部分もしくは芳香族複素環部
分を挙げることができる。
【0148】
他の任意選択的に置換された部分(たとえば任意選択的に置換されたシクロアルキル、
ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリール)は、非置換部分、および1つま
たは複数の所定の置換基を有する部分の両方を含む。たとえば、置換されたヘテロシクロ
アルキルとして、1つまたは複数のアルキル基、たとえば2,2,6,6-テトラメチル
-ピペリジニルおよび2,2,6,6-テトラメチル-1,2,3,6-テトラヒドロピ
リジニルで置換されたものが挙げられる。
【0149】
「アリール」は、少なくとも1つの芳香環を有するが、環構造に任意のヘテロ原子を有
さない「結合された」環系、または多環系を含む、芳香族性を有する基を含む。例として
、フェニル、ベンジル、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレニル等が挙げられる。
【0150】
「ヘテロアリール」基は、環構造に1~4個のヘテロ原子を有すること以外は上記で定
義したようなアリール基であり、「複素環アリール」または「複素芳香族化合物」という
こともある。本明細書で使用する場合、「ヘテロアリール」という用語は、炭素原子と、
窒素、酸素および硫黄からなる群から独立に選択される1つまたは複数のヘテロ原子、た
とえば1個もしくは1~2個もしくは1~3個もしくは1~4個もしくは1~5個もしく
は1~6個のヘテロ原子、または、たとえば1個、2個、3個、4個、5個もしくは6個
のヘテロ原子とからなる安定な5員、6員もしくは7員単環式または7員、8員、9員、
10員、11員もしくは12員二環式芳香族複素環式環を含むことを意図している。窒素
原子は置換されていても、あるいは置換されていなくてもよい(すなわち、N、あるいは
、RがHまたは定義された他の置換基であるNR)。窒素ヘテロ原子および硫黄ヘテロ原
子は、任意選択的に酸化されていてもよい(すなわち、N→OおよびS(O)、式中、
p=1または2)。芳香族複素環のS原子およびO原子の総数は、1以下である点に留意
されたい。
【0151】
ヘテロアリール基の例として、ピロール、フラン、チオフェン、チアゾール、イソチア
ゾール、イミダゾール、トリアゾール、テトラゾール、ピラゾール、オキサゾール、イソ
キサゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、ピリミジンおよび同種のものが挙げられ
る。
【0152】
さらに、「アリール」および「ヘテロアリール」という用語は、多環式、たとえば、三
環式、二環式アリール基およびヘテロアリール基、たとえば、ナフタレン、ベンゾキサゾ
ール、ベンゾジキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾチオフェン
、メチレンジオキシフェニル、キノリン、イソキノリン、ナフトリジン、インドール、ベ
ンゾフラン、プリン、ベンゾフラン、デアザプリン、インドリジンを含む。
【0153】
多環式芳香環の場合、すべての環が芳香族(たとえば、キノリン)であってもよいが、
環の1つのみが芳香族(たとえば、2,3-ジヒドロインドール)であってもよい。また
第2の環は縮合していても、あるいは架橋していてもよい。
【0154】
シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリール環は、1つま
たは複数の環位置(たとえば、環形成炭素またはNなどのヘテロ原子)において上記のよ
うな置換基、たとえば、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロゲン、ヒドロキシル、
アルコキシ、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボ
ニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル
、アルキルアミノカルボニル、アラルキルアミノカルボニル、アルケニルアミノカルボニ
ル、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アラルキルカルボニル、アルケニルカル
ボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、ホスフェ
ート、ホスホネート、ホスフィナート、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ア
リールアミノ、ジアリールアミノおよびアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ
(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイルおよびウレイド
を含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカル
ボキシレート、スルフェート、アルキルスルフィニル、スルホナト、スルファモイル、ス
ルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキ
ルアリールまたは芳香族部分もしくは芳香族複素環部分で置換されていてもよい。アリー
ルおよびヘテロアリール基はさらに、多環式系(たとえば、テトラリン、メチレンジオキ
シフェニル)を形成するように、芳香族でない脂環式環または複素環式環と縮合していて
も、あるいは架橋していてもよい。
【0155】
本明細書で使用する場合、「炭素環(carbocycle)」または「炭素環(ca
rbocyclic ring)」は、そのいずれもが飽和でも、不飽和でも、あるいは
芳香族でもよい、特定の数の炭素を有する任意の安定な単環式、二環式または三環式環を
含むことを意図している。炭素環は、シクロアルキルおよびアリールを含む。たとえば、
~C14炭素環は、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、
12個、13個または14個の炭素原子を有する単環式、二環式または三環式環を含むこ
とを意図している。炭素環の例として、シクロプロピル、シクロブチル、シクロブテニル
、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、シクロヘプテニル、シクロヘプ
チル、シクロヘプテニル、アダマンチル、シクロオクチル、シクロオクテニル、シクロオ
クタジエニル、フルオレニル、フェニル、ナフチル、インダニル、アダマンチルおよびテ
トラヒドロナフチルがあるが、これに限定されるものではない。炭素環の定義には、架橋
環も含まれ、たとえば、[3.3.0]ビシクロオクタン、[4.3.0]ビシクロノナ
ン、[4.4.0]ビシクロデカンおよび[2.2.2]ビシクロオクタンがある。架橋
環は、1個または複数個の炭素原子が2個の隣接しない炭素原子を連結すると生じる。一
実施形態では、架橋環は、1個または2個の炭素原子である。架橋は常に単環式環を三環
式環に変換する点に注意されたい。環が架橋されると、当該環について記載された置換基
も架橋上に存在してもよい。さらに縮合環(たとえば、ナフチル、テトラヒドロナフチル
)およびスピロ環も含まれる。
【0156】
本明細書で使用する場合、「複素環」または「複素環基」は、少なくとも1つの環ヘテ
ロ原子(たとえば、N、OまたはS)を含む任意の環構造(飽和、不飽和、または芳香族
)を含む。複素環は、ヘテロシクロアルキルおよびヘテロアリールを含む。複素環の例と
して、モルホリン、ピロリジン、テトラヒドロチオフェン、ピペリジン、ピペラジンオキ
セタン、ピラン、テトラヒドロピラン、アゼチジン、およびテトラヒドロフランがあるが
、これに限定されるものではない。
【0157】
複素環式基の例として、アクリジニル、アゾシニル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾフラ
ニル、ベンゾチオフラニル、ベンゾチオフェニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾオキサゾ
リニル、ベンズチアゾリル、ベンズトリアゾリル、ベンズテトラゾリル、ベンゾイソオキ
サゾリル、ベンゾイソチアゾリル、ベンズイミダゾリニル、カルバゾリル、4aH-カル
バゾリル、カルボリニル、クロマニル、クロメニル、シンノリニル、デカヒドロキノリニ
ル、2H,6H-1,5,2-ジチアジニル、ジヒドロフロ[2,3-b]テトラヒドロ
フラン、フラニル、フラザニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリル、1
H-インダゾリル、インドレニル、インドリニル、インドリジニル、インドリル、3H-
インドリル、イサチノイル、イソベンゾフラニル、イソクロマニル、イソインダゾリル、
イソインドリニル、イソインドリル、イソキノリニル、イソチアゾリル、イソオキサゾリ
ル、メチレンジオキシフェニル、モルホリニル、ナフチリジニル、オクタヒドロイソキノ
リニル、オキサジアゾリル、1,2,3-オキサジアゾリル、1,2,4-オキサジアゾ
リル、1,2,5-オキサジアゾリル、1,3,4-オキサジアゾリル、1,2,4-オ
キサジアゾール5(4H)-オン、オキサゾリジニル、オキサゾリル、オキシンドリル、
ピリミジニル、フェナントリジニル、フェナントロリニル、フェナジニル、フェノチアジ
ニル、フェノキサチニル、フェノキサジニル、フタラジニル、ピペラジニル、ピペリジニ
ル、ピペリドニル、4-ピペリドニル、ピペロニル、プテリジニル、プリニル、ピラニル
、ピラジニル、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリドオキ
サゾール、ピリドイミダゾール、ピリドチアゾール、ピリジニル、ピリジル、ピリミジニ
ル、ピロリジニル、ピロリニル、2H-ピロリル、ピロリル、キナゾリニル、キノリニル
、4H-キノリジニル、キノキサリニル、キヌクリジニル、テトラヒドロフラニル、テト
ラヒドロイソキノリニル、テトラヒドロキノリニル、テトラゾリル、6H-1,2,5-
チアジアジニル、1,2,3-チアジアゾリル、1,2,4-チアジアゾリル、1,2,
5-チアジアゾリル、1,3,4-チアジアゾリル、チアントレニル、チアゾリル、チエ
ニル、チエノチアゾリル、チエノオキサゾリル、チエノイミダゾリル、チオフェニル、ト
リアジニル、1,2,3-トリアゾリル、1,2,4-トリアゾリル、1,2,5-トリ
アゾリル、1,3,4-トリアゾリルおよびキサンテニルがあるが、これに限定されるも
のではない。
【0158】
「置換された」という用語は、本明細書で使用する場合、指定された原子上の任意の1
つまたは複数の水素原子が、表記された基から選択された基で置き換えられていることを
意味する。ただし、指定された原子の通常の原子価を超えず、かつ置換の結果、安定な化
合物が得られるものとする。置換基がオキソまたはケト(すなわち、=O)である場合、
原子上の2個の水素原子が置き換えられる。ケト置換基は芳香族部分には存在しない。環
二重結合は、本明細書で使用する場合、隣接する2つの環原子間に形成される二重結合(
たとえば、C=C、C=NまたはN=N)である。「安定な化合物」および「安定な構造
」とは、ある化合物が、反応混合物から有用な程度の純度に単離されること、および有効
な治療薬として製剤化することに耐えるのに十分に強いことを示すことを意図する。
【0159】
置換基との結合が、環内の2つの原子を連結する結合を横切るように示される場合、そ
うした置換基は、環内のどの原子に結合してもよい。ある置換基について、そうした置換
基が所定の式の化合物の残部に結合している原子を示さずに記載される場合、そうした置
換基は当該式のどの原子を介して結合してもよい。置換基または可変基の組み合わせも許
容される(または両方)が、そうした組み合わせの結果、安定な化合物が得られる場合に
限られる。
【0160】
任意の可変基(たとえば、R)が、ある化合物の任意の構成要素または式に2回以上
存在する場合、その各存在時の定義は、その他のすべての存在時の定義と無関係である。
したがって、たとえば、ある基が0~2のR部分で置換されているように示される場合
、その基は、最大2つのR部分で任意選択的に置換されていてもよく、各存在時のR
は、Rの定義から独立に選択される。さらに、置換基または可変基の組み合わせも許容
される(または両方)が、そうした組み合わせの結果、安定な化合物が得られる場合に限
られる。
【0161】
「ヒドロキシ」または「ヒドロキシル」という用語は、-OHまたは-Oを有する基
を含む。
【0162】
本明細書で使用する場合、「ハロ」または「ハロゲン」は、フルオロ、クロロ、ブロモ
およびヨードをいう。「過ハロゲン化」という用語は一般に、ある部分においてすべての
水素原子がハロゲン原子で置き換えられていることをいう。「ハロアルキル」または「ハ
ロアルコキシル」という用語は、1つまたは複数のハロゲン原子で置換されたアルキルま
たはアルコキシルをいう。
【0163】
「カルボニル」という用語は、酸素原子に二重結合で連結された炭素を含む化合物およ
び部分を含む。カルボニルを含む部分の例として、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、ア
ミド、エステル、無水物等があるが、これに限定されるものではない。
【0164】
「カルボキシル」という用語は、-COOHまたはそのC~Cアルキルエステルを
いう。
【0165】
「アシル」は、アシルラジカル(R-C(O)-)またはカルボニル基を含む部分を含
む。「置換アシル」は、1つまたは複数の水素原子が、たとえば、アルキル基、アルキニ
ル基、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ
、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、
アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、
アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、ア
ルコキシル、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィナート、アミノ(アルキルアミノ、
ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノおよびアルキルアリールアミノを
含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバ
モイルおよびウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、ア
リールチオ、チオカルボキシレート、スルフェート、アルキルスルフィニル、スルホナト
、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘ
テロシクリル、アルキルアリールまたは芳香族部分もしくは芳香族複素環部分で置き換え
られているアシル基を含む。
【0166】
「アロイル」は、カルボニル基に結合したアリールまたは芳香族複素環部分を有する部
分を含む。アロイル基の例として、フェニルカルボキシ、ナフチルカルボキシ等が挙げら
れる。
【0167】
「アルコキシアルキル」、「アルキルアミノアルキル」および「チオアルコキシアルキ
ル」は、1つまたは複数の炭化水素骨格の炭素原子が酸素原子、窒素原子または硫黄原子
で置き換えられている上記のようなアルキル基を含む。
【0168】
「アルコキシ」または「アルコキシル」という用語は、酸素原子に共有結合した置換お
よび非置換アルキル基、アルケニル基およびアルキニル基を含む。アルコキシ基またはア
ルコキシルラジカルの例として、メトキシ基、エトキシ基、イソプロピルオキシ基、プロ
ポキシ基、ブトキシ基およびペントキシ基があるが、これに限定されるものではない。置
換アルコキシ基の例として、ハロゲン化アルコキシ基が挙げられる。アルコキシ基は、ア
ルケニル、アルキニル、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリール
カルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カ
ルボキシレート、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、ア
ミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチ
オカルボニル、アルコキシル、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィナート、アミノ(
アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノおよびアルキル
アリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニ
ルアミノ、カルバモイルおよびウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、
アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、スルフェート、アルキルスルフィ
ニル、スルホナト、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シ
アノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリール、または芳香族部分または芳香族複素
環部分などの基で置換されていてもよい。ハロゲン置換アルコキシ基の例として、フルオ
ロメトキシ、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、クロロメトキシ、ジクロロメ
トキシおよびトリクロロメトキシがあるが、これに限定されるものではない。
【0169】
「エーテル」または「アルコキシ」という用語は、2個の炭素原子またはヘテロ原子に
結合した酸素を含む化合物または部分を含む。たとえば、この用語は、アルキル基に共有
結合している酸素原子に共有結合したアルキル基、アルケニル基またはアルキニル基をい
う「アルコキシアルキル」を含む。
【0170】
「エステル」という用語は、カルボニル基の炭素に結合している酸素原子に結合した炭
素またはヘテロ原子を含む化合物または部分を含む。「エステル」という用語は、アルコ
キシカルボキシ基、たとえばメトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカル
ボニル、ブトキシカルボニル、ペントキシカルボニル等を含む。
【0171】
「チオアルキル」という用語は、硫黄原子と連結したアルキル基を含む化合物または部
分を含む。チオアルキル基は、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロゲン、ヒドロキ
シル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオ
キシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、カルボキシ酸、アルキルカ
ルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルア
ミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル
、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノおよ
びアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリー
ルカルボニルアミノ、カルバモイルおよびウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフ
ヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、スルフェート、アルキ
ルスルフィニル、スルホナト、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロ
メチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリール、または芳香族部分もしく
は芳香族複素環部分などの基で置換されていてもよい。
【0172】
「チオカルボニル」または「チオカルボキシ」という用語は、硫黄原子に二重結合で連
結された炭素を含む化合物および部分を含む。
【0173】
「チオエーテル」という用語は、2個の炭素原子またはヘテロ原子に結合した硫黄原子
を含む部分を含む。チオエーテルの例として、アルクチオアルキル、アルクチオアルケニ
ルおよびアルクチオアルキニルがあるが、これに限定されるものではない。「アルクチオ
アルキル」という用語は、アルキル基に結合している硫黄原子に結合したアルキル基、ア
ルケニル基またはアルキニル基を有する部分を含む。同様に、「アルクチオアルケニル」
という用語は、アルキル基、アルケニル基またはアルキニル基が、アルケニル基に共有結
合している硫黄原子に結合している部分をいう。アルクチオアルキニル」は、アルキル基
、アルケニル基またはアルキニル基が、アルキニル基に共有結合している硫黄原子に結合
している部分をいう。
【0174】
本明細書で使用する場合、「アミン」または「アミノ」は、非置換または置換NH
いう。「アルキルアミノ」は、-NHの窒素が少なくとも1つのアルキル基に結合して
いる化合物の基を含む。アルキルアミノ基の例として、ベンジルアミノ、メチルアミノ、
エチルアミノ、フェネチルアミノ等が挙げられる。「ジアルキルアミノ」は、-NH
窒素が少なくとも2つの別のアルキル基に結合している基を含む。ジアルキルアミノ基の
例として、ジメチルアミノおよびジエチルアミノがあるが、これに限定されるものではな
い。「アリールアミノ」および「ジアリールアミノ」はそれぞれ、窒素が少なくとも1つ
または2つのアリール基に結合している基を含む。「アミノアリール」および「アミノア
リールオキシ」は、アミノで置換されたアリールおよびアリールオキシをいう。「アルキ
ルアリールアミノ」、「アルキルアミノアリール」または「アリールアミノアルキル」は
、少なくとも1つのアルキル基および少なくとも1つのアリール基に結合しているアミノ
基をいう。「アルカミノアルキル」は、アルキル基にも結合している窒素原子に結合した
アルキル基、アルケニル基またはアルキニル基をいう。「アシルアミノ」は、窒素がアシ
ル基に結合している基を含む。アシルアミノの例として、アルキルカルボニルアミノ基、
アリールカルボニルアミノ基、カルバモイル基およびウレイド基があるが、これに限定さ
れるものではない。
【0175】
「アミド」または「アミノカルボキシ」という用語は、カルボニル基またはチオカルボ
ニル基の炭素に結合している窒素原子を含む化合物または部分を含む。この用語は、カル
ボニル基またはチオカルボニル基の炭素に結合しているアミノ基に結合したアルキル基、
アルケニル基またはアルキニル基を含む「アルカミノカルボキシ」基を含む。この用語は
さらに、カルボニル基またはチオカルボニル基の炭素に結合しているアミノ基に結合した
アリール部分またはヘテロアリール部分を含む「アリールアミノカルボキシ」基を含む。
「アルキルアミノカルボキシ」、「アルケニルアミノカルボキシ」、「アルキニルアミノ
カルボキシ」および「アリールアミノカルボキシ」という用語はそれぞれ、アルキル部分
、アルケニル部分、アルキニル部分およびアリール部分が窒素原子に結合し、その窒素原
子がカルボニル基の炭素に結合している部分を含む。アミドは、直鎖アルキル、分岐アル
キル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリールまたは複素環などの置換基で置換され
ていてもよい。アミド基上の置換基はさらに置換されていてもよい。
【0176】
本明細書では、化合物の構造式は、場合によっては便宜上、特定の異性体を表している
が、本発明は、すべての異性体、たとえば幾何異性体、不斉炭素に基づく光学異性体、立
体異性体、互変異性体および同種のものを含み、すべての異性体が必ずしも同レベルの活
性を有し得るものではないことを理解されたい。さらに、式で表される化合物の結晶多形
が存在してもよい。任意の結晶形、結晶形混合物またはその無水物もしくは水和物が本発
明の範囲に含まれる点に注意されたい。
【0177】
「異性」は、化合物が同一の分子式を有するものの、その原子の結合順序またはその原
子の空間配置が異なることを意味する。原子の空間配置が異なる異性体は「立体異性体」
と呼ばれる。互いに鏡像でない立体異性体は「ジアステレオ異性体」と呼ばれ、互いに重
ね合わせることができない鏡像である立体異性体は「エナンチオマー」と呼ばれ、光学異
性体と呼ばれることもある。逆のキラリティーの各エナンチオマー型を等量含む混合物は
「ラセミ混合物」と呼ばれる。
【0178】
同一でない4つの置換基に結合した炭素原子は「キラル中心」と呼ばれる。
【0179】
「キラル異性体」は、少なくとも1つのキラル中心を有する化合物を意味する。2つ以
上のキラル中心を有する化合物は、個々のジアステレオマーとして存在しても、あるいは
「ジアステレオマー混合物」と呼ばれるジアステレオマーの混合物として存在してもよい
。1つのキラル中心が存在する場合、立体異性体は、そのキラル中心の絶対配置(Rまた
はS)により特徴付けてもよい。絶対配置とは、キラル中心に結合した置換基の空間配置
をいう。検討対象のキラル中心に結合した置換基は、Sequence Rule of
Cahn,Ingold and Prelogに従いランク付けされる。(Cahn
et al.,Angew.Chem.Inter.Edit.1966,5,385
;errata 511;Cahn et al.,Angew.Chem.1966,
78,413;Cahn and Ingold,J.Chem.Soc.1951(L
ondon),612;Cahn et al.,Experientia 1956,
12,81;Cahn,J.Chem.Educ.1964,41,116)。
【0180】
「幾何異性体」は、存在する原因が二重結合またはシクロアルキルリンカー(たとえば
、1,3-シルコブチル)の周りの回転障壁であるジアステレオマーを意味する。これら
配置は、接頭辞シスおよびトランス、またはカーン-インゴルド-プレローグ順位則に従
い各基が分子の二重結合に関して同じ側または反対側にあることを示すZおよびEにより
、その名称により区別される。
【0181】
本発明の化合物は、異なるキラル異性体または幾何異性体として図示し得ることが理解
されよう。さらに、化合物がキラル異性体型または幾何異性体型を有する場合、すべての
異性体型が本発明の範囲に含まれることを意図しており、化合物の名称は任意の異性体型
を除外するものではないことも理解されるべきであり、すべての異性体が必ずしも同レベ
ルの活性を有し得るものではないことを理解されたい。
【0182】
さらに、こうした構造および本発明で考察された他の化合物は、そのすべてのアトロピ
ック(atropic)異性体を含み、すべてのアトロピック異性体が必ずしも同レベル
の活性を有し得るものではないことを理解されたい。「アトロピック異性体」は、2つの
異性体の原子が空間で異なって配置されている立体異性体の1種である。アトロピック異
性体が存在する原因は、中心結合の周りの大きな基の回転障壁により引き起こされる回転
の束縛である。こうしたアトロピック異性体は典型的には混合物として存在するが、クロ
マトグラフィー技術の最近の進歩の結果、特定の場合、2つのアトロピック異性体の混合
物を分離することが可能になっている。
【0183】
「互変異性体」は、2つ以上の構造異性体が平衡状態で存在し、ある異性体型から別の
異性体型に容易に変換される、それらの構造異性体の1つである。この変換の結果、水素
原子が、隣接する共役二重結合の変化を伴って形式的に移動する。互変異性体は、溶液中
で互変異性体のセットの混合物として存在する。互変異性が可能である溶液においては、
互変異性体の化学平衡に達する。互変異性体の正確な比率は、温度、溶媒およびpHを含
むいくつかの要因によって異なる。互変異性化により相互変換可能な互変異性体の概念は
、互変異性と呼ばれる。
【0184】
考えられる様々なタイプの互変異性のうち、2つが一般に観察される。ケト-エノール
互変異性では、電子および水素原子の同時移動が起こる。環鎖互変異性は、糖鎖分子のア
ルデヒド基(-CHO)が同じ分子のヒドロキシ基(-OH)の1つと反応して、分子に
グルコースに見られるような環式(環状)形態が生じた結果として起こる。
【0185】
一般的な互変異性のペアとして、ケトン-エノール、アミド-ニトリル、ラクタム-ラ
クチム、複素環式環における(たとえば、核酸塩基、たとえばグアニン、チミンおよびシ
トシンにおける)アミド-イミド酸互変異性、イミン-エナミンおよびエナミン-エナミ
ンがある。ケト-エノール平衡の一例として、下記に示すようなピリジン-2(1H)-
オンと対応するピリジン-2-オールとの間がある。
【化39】
【0186】
本明細書に記載の化合物では、
【化40】

の各存在は、
【化41】

として解釈されるべきである。
【0187】
本発明の化合物は、様々な互変異性体として図示し得ることが理解されよう。さらに、
化合物が互変異性形を有する場合、すべての互異性形が本発明の範囲に含まれることを意
図しており、化合物の名称は任意の互変異性体形を除外するものではないことも理解され
るべきである。特定の互変異性体は、他のものよりも高い活性レベルを有し得ることを理
解されよう。
【0188】
「結晶多形」、「多形」または「結晶形」という用語は、化合物(またはその塩または
溶媒和物)が様々な結晶のパッキング構造で結晶化することができ、そのすべてが同じ元
素組成を有する結晶構造を意味する。異なる結晶形は通常、X線回折パターン、赤外スペ
クトル、融点、密度 硬度、結晶形状、光学的特性および電気的特性、安定性ならびに溶
解性が異なる。再結晶溶媒、結晶化の速度、保存温度および他の要因により、1つの結晶
形が多くを占めるようにすることができる。化合物の結晶多形は、様々な条件下、結晶化
により調製することができる。
【0189】
本明細書に開示された式のいずれの化合物も、化合物自体のほか、妥当な場合、その塩
または溶媒和物を含む。塩は、たとえば、アニオンとアリールまたはヘテロアリール置換
ベンゼン化合物の正電荷を帯びた基(たとえば、アミノ)との間で形成することができる
。好適なアニオンとして、クロリド、ブロミド、ヨージド、スルフェート、ビスルフェー
ト、スルファメート、ニトレート、ホスフェート、シトレート、メタンスルホネート、ト
リフルオロアセテート、グルタメート、グルクロネート、グルタレート、マレート、マレ
エート、スクシネート、フマレート、タルトレート、トシレート、サリチレート、ラクテ
ート、ナフタレンスルホネート、およびアセテート(たとえば、トリフルオロアセテート
)が挙げられる。「薬学的に許容されるアニオン」という用語は、薬学的に許容される塩
の形成に好適なアニオンをいう。同様に、塩は、カチオンとアリールまたはヘテロアリー
ル置換ベンゼン化合物の負電荷を帯びた基(たとえば、カルボキシレート)との間でも形
成することができる。好適なカチオンとして、ナトリウムイオン、カリウムイオン、マグ
ネシウムイオン、カルシウムイオンおよびアンモニウムカチオン、たとえばテトラメチル
アンモニウムイオンが挙げられる。アリールまたはヘテロアリール置換ベンゼン化合物は
、第四級窒素原子を含む塩をさらに含む。
【0190】
加えて、本発明の化合物、たとえば、化合物の塩は、水和もしくは非水和(無水)形態
で存在しても、あるいは他の溶媒分子との溶媒和物として存在してもよい。水和物の非限
定的な例として、一水和物、二水和物等が挙げられる。溶媒和物の非限定的な例として、
エタノール溶媒和物、アセトン溶媒和物等が挙げられる。
【0191】
「溶媒和物」は、化学量論量あるいは非化学量論量の溶媒を含む溶媒付加形態を意味す
る。一部の化合物は、結晶性固体状態で一定のモル比の溶媒分子を捕捉する傾向があり、
したがって溶媒和物を形成する。溶媒が水の場合、形成される溶媒和物は水和物であり、
溶媒がアルコールの場合、形成される溶媒和物はアルコラートである。水和物は1つの物
質分子と1つまたは複数の水分子の組み合わせにより形成され、水はその分子状態をH
Oとして維持する。半水和物は、2つ以上の物質分子と1つの水分子の組み合わせにより
形成され、水はその分子状態をHOとして維持する。
【0192】
「生物学的等価体」という用語は、ある原子または原子団と、別の概ね類似した原子ま
たは原子団との交換により生じる化合物をいう。生物学的等価性置換の目的は、親化合物
に類似した生物学的特性を有する新しい化合物を作ることにある。生物学的等価性置換は
、物理化学をベースにしても、あるいは位相幾何学をベースにしてもよい。カルボン酸の
生物学的等価体の例として、アシルスルホンイミド、テトラゾール、スルホネートおよび
ホスホネートがあるが、これに限定されるものではない。たとえば、Patani an
d LaVoie,Chem.Rev.96,3147-3176,1996を参照され
たい。
【0193】
本発明は、本化合物に生じる原子の同位体をすべて含むことを意図している。同位体は
、同じ原子番号を有するが、異なる質量数を有する原子を含む。一般的な例として、限定
するものではないが、水素の同位体としてトリチウムおよびジュウテリウムがあり、炭素
の同位体としてC-13およびC-14がある。
【0194】
本発明は、本明細書に開示された任意の式の化合物の合成方法を提供する。本発明はま
た、実施例に示すような下記のスキームに従って、本発明の様々な開示化合物を合成する
ための詳細な方法も提供する。
【0195】
組成物が特定の成分を有する、それを含む(including)またはそれを含む(
comprising)ものとして記載される説明において、組成物はさらに、記載され
た成分から本質的になる、またはそれからなることも意図している。同様に、方法または
プロセスが特定のプロセスステップを有する、それを含む(including)または
それを含む(comprising)ものとして記載される場合、当該プロセスはさらに
、記載されたプロセスステップから本質的になる、またはそれからなる。さらに、ステッ
プの順序またはある行為を行う順序は、本発明が実施可能な状態である限り、重要でない
ことを理解すべきである。さらに、2つ以上のステップまたは行為を同時に行ってもよい
【0196】
本発明の合成プロセスは、多種多様な官能基に対応することができ、したがって様々な
置換出発材料を使用することができる。本プロセスは一般に、プロセス全体の終了時また
は終了時近くで所望の最終化合物を与えるが、場合によっては化合物をさらにその薬学的
に許容される塩、溶媒和物または多形体に変換することが望ましい場合がある。
【0197】
本発明の化合物は、当業者に公知のまたは本明細書の教示内容によって当業者に明らか
になる標準的な合成方法および手順を利用して、市販されている出発材料、文献で公知の
化合物を用いてまたは容易に調製される中間体から、種々の方法で調製することができる
。有機分子の調製と、官能基の変換および操作とのための標準的な合成方法および手順は
、当該分野に関連した科学文献または標準的な指導書から得ることができる。任意の1つ
または複数の資料に限定するものではないが、古典的な指導書、たとえば、本明細書に援
用するSmith,M.B.,March,J.,March’s Advanced
Organic Chemistry:Reactions,Mechanisms,a
nd Structure,5th edition,John Wiley & So
ns:New York,2001;Greene,T.W.,Wuts,P.G.M.
,Protective Groups in Organic Synthesis,
rd edition,John Wiley & Sons:New York,1
999;R.Larock,Comprehensive Organic Trans
formations,VCH Publishers(1989);L.Fieser
and M.Fieser,Fieser and Fieser’s Reagen
ts for Organic Synthesis,John Wiley and
Sons(1994);and L.Paquette,ed.,Encycloped
ia of Reagents for Organic Synthesis,Joh
n Wiley and Sons(1995)は、当業者に公知の、有機合成に関する
有用かつ認められた標準指導書である。合成方法に関する以下の記載は、本発明の化合物
の調製の一般的な手順の説明を目的とするものであり、限定を目的とするものではない。
【0198】
本発明の化合物は、当業者が精通した様々な方法により好都合に調製することができる
。本明細書で開示された任意の式を有する本発明の化合物は、市販の出発物質または文献
の手順を使用して調製することができる出発物質から、下記のスキーム1~10に図示さ
れた手順に従って調製することができる。スキーム1~10におけるZおよびRの基(た
とえば、R2、、R、R、R、RおよびR12)は、特に明記されない限り
、本明細書に開示された式のいずれかで定義された通りである。
【0199】
当業者であれば、本明細書に記載の反応順序および合成スキームにおいて、保護基の導
入および除去など特定のステップの順序が変わってもよいことに気付くであろう。
【0200】
当業者であれば、特定の基が、保護基の使用により反応条件からの保護を必要とし得る
こと認識するであろう。保護基はさらに、分子内の類似の官能基を区別するために使用し
てもよい。保護基のリストと、そうした基をどのように導入および除去するかとについて
は、Greene,T.W.,Wuts,P.G.M.,Protective Gro
ups in Organic Synthesis,3rd edition,Joh
n Wiley & Sons:New York,1999で確認することができる。
【0201】
好ましい保護基として、下記があるが、これに限定されるものではない。
ヒドロキシル部分には:TBS、ベンジル、THP、Ac
カルボン酸には:ベンジルエステル、メチルエステル、エチルエステル、アリルエステ

アミンには:Cbz、BOC、DMB
ジオールには:Ac(×2)TBS(×2)、あるいは同時に行う場合はアセトニド
チオールには:Ac
ベンゾイミダゾールには:SEM、ベンジル、PMB、DMB
アルデヒドには:ジ-アルキルアセタール、たとえばジメトキシアセタールまたはジエ
チルアセチル。
【0202】
本明細書に記載の反応スキームでは、複数の立体異性体を得られることがある。特定の
立体異性体が記載されていない場合、反応から生成され得るあらゆる可能な立体異性体を
意味することが理解されよう。当業者であれば、ある異性体を優先的に得るため反応を最
適化できること、または単一の異性体を得るため新しいスキームを考案できることを認識
するであろう。混合物が生成される場合、分取薄層クロマトグラフィー、分取HPLC、
分取キラルHPLC、または分取SFCなどの技術を用いて異性体を分離することができ
る。
【0203】
本明細書を通じて以下の略語を使用し、下記に定義する。
Ac アセチル
AcOH 酢酸
aq. 水性
BIDまたはb.i.d. bis in die(1日2回)
BOC tert-ブトキシカルボニル
Cbz ベンジルオキシカルボニル
CDCl 重水素化クロロホルム
CHCl ジクロロメタン
DCM ジクロロメタン
DMB 2,4ジメトキシベンジル
DMF N,N-ジメチルホルムアミド
DMSO ジメチルスルホキシド
EAまたはEtOAc 酢酸エチル
EDCまたはEDCI N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチルカルボジ
イミド
ESI- エレクトロスプレーネガティブモード
ESI+ エレクトロスプレーポジティブモード
EtOH エタノール
h 時間
O 水
HOBt 1-ヒドロキシベンゾトリアゾール
HCl 塩化水素または塩酸
HPLC 高速液体クロマトグラフィー
CO 炭酸カリウム
LC/MSまたはLC-MS 液体クロマトグラフィー質量スペクトル
M モル
MeCN アセトニトリル
min 分
NaCO 炭酸ナトリウム
NaSO 硫酸ナトリウム
NaHCO 炭酸水素ナトリウム
NaHMDs ナトリウムヘキサメチルジシラジド
NaOH 水酸化ナトリウム
NaHCO 炭酸水素ナトリウム
NaSO 硫酸ナトリウム
NMR 核磁気共鳴
Pd(OH) 二水酸化パラジウム
PMB パラ-メトキシベンジル
p.o. per os(経口投与)
ppm 百万分率
prep HPLC 分取高速液体クロマトグラフィー
PYBOP (ベンゾトリアゾール-1-イルオキシ)トリピロリジノホスホニウム・
ヘキサフルオロホスフェート
rtまたはRT 室温
TBME tert-ブチルメチルエーテル
TFA トリフルオロ酢酸
THF テトラヒドロフラン
THP テトラヒドロピラン
【0204】
本発明の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくは多形の有効量は
、正常な細胞に対してあまり細胞毒性を示さない。治療有効量の化合物の投与により細胞
死が正常な細胞の10%より多く誘導されない場合、治療有効量の化合物は正常な細胞に
対してあまり細胞毒性を示さない。治療有効量の化合物の投与により細胞死が正常な細胞
の10%より多く誘導されない場合、治療有効量の化合物は正常な細胞の生存率にあまり
影響を与えない。ある種の態様では、細胞死はアポトーシスにより起こる。
【0205】
本発明の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくは多形と細胞を接
触させると、癌細胞の細胞死を選択的に誘導または活性化することがある。それを必要と
する被験体に本発明の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくは多形
を投与すると、癌細胞の細胞死を選択的に誘導または活性化することがある。本発明の化
合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくは多形と細胞を接触させると、
細胞増殖性障害に冒された1つまたは複数の細胞の細胞死を選択的に誘導することがある
。好ましくは、それを必要とする被験体に本発明の化合物、またはその薬学的に許容され
る塩、溶媒和物もしくは多形を投与すると、細胞増殖性障害に冒された1つまたは複数の
細胞の細胞死が選択的に誘導される。
【0206】
当業者は、本明細書で考察した公知の技術または等価な技術の詳細な説明に関する一般
的な参考図書を参照してもよい。そうした図書として、Ausubel et al.,
Current Protocols in Molecular Biology,J
ohn Wiley and Sons,Inc.(2005);Sambrook e
t al.,Molecular Cloning,A Laboratory Man
ual(3rd edition),Cold Spring Harbor Pres
s,Cold Spring Harbor,New York(2000);Coli
gan et al.,Current Protocols in Immunolo
gy,John Wiley & Sons,N.Y.;Enna et al.,Cu
rrent Protocols in Pharmacology,John Wil
ey & Sons,N.Y.;Fingl et al.,The Pharmaco
logical Basis of Therapeutics(1975),Remi
ngton’s Pharmaceutical Sciences,Mack Pub
lishing Co.,Easton,PA,18th edition(1990)
が挙げられる。さらにこれらの図書は、本発明の態様の製造または使用の際に参照しても
よいことは、言うまでもない。
【0207】
本発明はまた、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤またはキャリアと組み合わ
せて、本発明の化合物(たとえば、化合物A、B、CまたはD)を含む医薬組成物も提供
することができる。
【0208】
「医薬組成物」は、被験体への投与に好適な形態で本発明の化合物を含む製剤である。
一実施形態では、医薬組成物はバルクまたは単位剤形である。単位剤形は、たとえば、カ
プセル、IVバッグ、錠剤、エアロゾル吸入器の単一ポンプまたはバイアルなど種々の形
態のいずれかである。単位用量の組成物における活性成分の量は有効量であり、関連する
個々の治療に応じて変化する。当業者であれば、患者の年齢および状態によって投薬量を
日常的に変える必要があることもあることを理解するであろう。投薬量はまた投与経路に
よって異なる。経口、経肺、直腸、非経口、経皮、皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内、吸入
、口腔内、舌下、胸膜内、髄腔内、鼻腔内および同種のものなど種々の経路を意図してい
る。本発明の化合物の局所投与または経皮投与用の剤形として、散剤、スプレー剤、軟膏
剤、ペースト剤、クリーム剤、ローション剤、ゲル剤、溶液剤、パッチ剤および吸入薬が
挙げられる。一実施形態では、活性化合物は、滅菌条件下で薬学的に許容されるキャリア
と、必要とされる任意の防腐剤、バッファーまたは噴霧剤と混合される。
【0209】
本明細書で使用する場合、「薬学的に許容される」という語句とは、化合物、材料、組
成物、キャリアまたは剤形が、適切な医学的判断の範囲内において、過剰な毒性、刺激、
アレルギー反応、または他の問題もしくは合併症を回避しつつ、合理的なベネフィット/
リスク比に見合ってヒトおよび動物の組織と接触させて使用するのに好適であることをい
う。
【0210】
「薬学的に許容される賦形剤」は、医薬組成物の調製に有用であり、かつ一般に安全で
無毒性であり、生物学的にもあるいは他の点でも望ましい賦形剤を意味し、動物用途のほ
か、ヒトの医薬用途に許容可能な賦形剤を含む。本明細書および特許請求の範囲に使用さ
れる「薬学的に許容される賦形剤」は、そうした賦形剤の1種および2種以上の両方を含
む。
【0211】
本発明の医薬組成物は、その目的の投与経路に適合するように製剤化される。投与経路
の例として、非経口投与、たとえば、静脈内投与、皮内投与、皮下投与、経口投与(たと
えば、吸入)、経皮投与(局所)、および経粘膜投与が挙げられる。非経口用途、皮内用
途または皮下用途に使用される溶液または懸濁液として、以下の成分:無菌希釈液、たと
えば食塩水溶液、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコ
ールまたは他の合成溶媒;抗菌薬、たとえばベンジルアルコールまたはメチルパラベン;
酸化防止剤、たとえばアスコルビン酸または重亜硫酸ナトリウム;キレート化剤、たとえ
ばエチレンジアミン四酢酸;バッファー、たとえばアセテート、シトレートまたはホスフ
ェート、および張度調整剤、たとえば塩化ナトリウムまたはブドウ糖を挙げることができ
る。pHは、酸または塩基、たとえば塩酸または水酸化ナトリウムで調整することができ
る。非経口調製物は、ガラスもしくはプラスチック製のアンプル、ディスポーザブルシリ
ンジまたはマルチドーズバイアルに封入してもよい。
【0212】
本発明の化合物または医薬組成物は、化学療法治療に現在使用されるよく知られた方法
の多くで被験体に投与することができる。たとえば、癌の治療では、本発明の化合物を腫
瘍に直接注射しても、血流中もしくは体腔に注射しても、あるいは経口投与しても、ある
いはパッチを用いて経皮適用してもよい。選択される用量は効果的な治療となるのに十分
であるが、許容できない副作用を引き起こすほど高くないようにすべきである。病状の状
況(たとえば、癌、前癌および同種のもの)および患者の健康については好ましくは、治
療中および治療後相当期間、詳細にモニターすべきである。
【0213】
「治療有効量」という用語は、本明細書で使用する場合、特定された疾患または状態を
治療、軽減または予防する、あるいは検出可能な治療効果または阻害効果を示す医薬剤の
量をいう。効果は、当該技術分野において公知の任意のアッセイ方法により検出すること
ができる。被験体の正確な有効量は、被験体の体重、大きさおよび健康;その状態の性質
および程度;ならびに投与のために選択した治療法によって異なる。ある状況に対する治
療有効量は、臨床医の技能および判断の範囲内にある通常の実験により決定することがで
きる。好ましい態様では、治療対象の疾患または状態は癌である。別の態様では、治療対
象の疾患または状態は細胞増殖性障害である。
【0214】
いずれの化合物でも、治療有効量は、たとえば、腫瘍性細胞の細胞培養アッセイ、また
は動物モデル、通常ラット、マウス、ウサギ、イヌもしくはブタを用いて最初に推定する
ことができる。動物モデルはさらに、適切な濃度範囲および投与経路を判定するのに使用
してもよい。次いでこうした情報を使用して、ヒトの投与に有用な用量および経路を判定
することができる。
【0215】
本発明の実施形態では、EZH2阻害剤は、100~1600mg/kgの用量で投与
される。実施形態では、用量は、100mg/kgまたは200mg/kgまたは400
mg/kgまたは800mg/kgまたは1600mg/kgである。ある種の実施形態
では、用量は1日1回または1日2回投与される。実施形態では、EZH2阻害剤は化合
物Aであり、用量は、1日2回、100mg/kgまたは200mg/kgまたは400
mg/kgまたは800mg/kgまたは1600mg/kgである。好ましい実施形態
では、EZH2阻害剤は化合物Aであり、用量は1日2回、800mg/kgである。
【0216】
投薬量および投与は、十分なレベルの活性剤(単数または複数)を与えるか、または所
望の効果を維持するように調整される。考慮に入れてもよい因子として、病状の重症度、
被験体の一般的な健康状態、被験体の年齢、体重および性別、食事、投与の時間および頻
度、薬剤相互作用(単数または複数)、反応感受性、ならびに治療に対する忍容性/反応
が挙げられる。長時間作用性医薬組成物は、特定の製剤の半減期およびクリアランス速度
によって3~4日毎、毎週あるいは2週に1回投与してもよい。
【0217】
本発明の活性化合物を含む医薬組成物は、一般に知られた方法で、たとえば、従来の混
合プロセス、溶解プロセス、造粒プロセス、糖衣錠製造プロセス、研和プロセス、乳化プ
ロセス、カプセル化プロセス、封入プロセスまたは凍結乾燥プロセスによって製造するこ
とができる。医薬組成物は、活性化合物を薬学的に使用することができる調製物に加工し
やすくする賦形剤もしくは助剤(または両方)を含む、1種もしくは複数種の薬学的に許
容されるキャリアを用いて従来の方法で製剤化してもよい。言うまでもなく、適切な製剤
は選択された投与経路によって異なる。
【0218】
注射用途に好適な医薬組成物は、無菌水溶液(水溶性の場合)または分散液、および必
要に応じて調製される無菌注射用溶液または分散液用の無菌粉末を含む。静脈内投与では
、好適なキャリアとして、生理食塩水、静菌水、Cremophor EL(商標)(B
ASF,Parsippany,N.J.)またはリン酸塩緩衝生理食塩水(PBS)が
挙げられる。すべての場合において、組成物は無菌でなければならず、シリンジ操作が容
易である程度の流動性があるべきである。組成物は、製造および保存条件下で安定でなけ
ればならず、細菌および真菌などの混入微生物の作用を防止しなければならない。キャリ
アは、たとえば、水、エタノール、ポリオール(たとえば、グリセロール、プロピレング
リコールおよび液体ポリエチレングリコールならびに同種のもの)およびこれらの好適な
混合物を含む溶媒または分散媒であってもよい。適切な流動性は、たとえば、レシチンな
どのコーティングの使用により、分散液の場合には、必要とされる粒度の維持により、お
よび界面活性剤の使用により維持することができる。微生物の作用の防止は、様々な抗菌
剤および抗真菌剤、たとえば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン
酸、チメロサールおよび同種のものの使用により達成することができる。多くの場合、組
成物中に等張剤、たとえば、糖、多価アルコール、たとえばマニトールおよびソルビトー
ル、ならびに塩化ナトリウムを含むことが好ましい。注射用組成物の吸収の持続化は、組
成物に吸収を遅らせる薬、たとえば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを含
ませることにより行うことができる。
【0219】
無菌注射溶液は、必要量の活性化合物を、必要に応じて上記に列挙した1つの成分また
は成分の組み合わせと共に適切な溶媒に加え、続いて濾過滅菌を行うことにより調製する
ことができる。一般に、分散液は、基本的な分散媒および上記に列挙したものから必要と
される他の成分を含む無菌ビヒクルに活性化合物を加えることにより調製される。無菌注
射溶液の調製用の無菌粉末の場合、調製方法は真空乾燥およびフリーズドライであり、こ
れにより活性成分と任意の所望の追加成分との、前もって滅菌濾過した溶液から、活性成
分と任意の所望の追加成分との粉末が得られる。
【0220】
経口組成物は一般に、不活性希釈剤または食用の薬学的に許容されるキャリアを含む。
経口組成物はゼラチンカプセルに封入しても、あるいは錠剤に圧縮してもよい。経口治療
投与の目的上、活性化合物を賦形剤と混合し、錠剤、トローチ剤またはカプセル剤の形態
で使用してもよい。経口組成物はさらに、洗口剤として使用される液体キャリアを用いて
調製してもよく、液体キャリア中の化合物は経口適用し、すすいで吐き出すかまたは飲み
込む。薬学的に適合する結合剤もしくは補助剤、または両方を組成物の一部として含めて
もよい。錠剤、丸剤、カプセル剤、トローチ剤および同種のものは、性質の類似した以下
の成分または化合物:バインダー、たとえば微結晶性セルロース、トラガントゴムまたは
ゼラチン;賦形剤、たとえばデンプンまたはラクトース、崩壊剤、たとえばアルギン酸、
Primogelまたはコーンスターチ;滑沢剤、たとえばステアリン酸マグネシウムま
たはSterotes;流動促進剤、たとえばコロイド状二酸化ケイ素;甘味剤、たとえ
ばスクロースまたはサッカリン;または着香剤、たとえばペパーミント、サリチル酸メチ
ルまたはオレンジ香味料のいずれかを含んでもよい。
【0221】
吸入による投与では、化合物は、好適な噴射剤、たとえば、二酸化炭素などのガスを含
む加圧容器もしくはディスペンサー、またはネブライザーからエアロゾルスプレーの形態
で送達される。
【0222】
全身投与はまた、経粘膜または経皮手段によるものでもよい。経粘膜または経皮投与で
は、透過対象のバリアに適した浸透剤を製剤に使用する。こうした浸透剤は一般に当該技
術分野において公知であり、たとえば、経粘膜投与の場合、界面活性剤、胆汁酸塩および
フシジン酸誘導体が挙げられる。経粘膜投与は、鼻スプレーまたは坐剤の使用により達成
することができる。経皮投与では、活性化合物を一般に当該技術分野において公知の軟膏
、膏薬、ゲルまたはクリームに製剤する。
【0223】
活性化合物は、化合物の身体からの急速な排除を防ぐ薬学的に許容されるキャリア、た
とえばインプラントおよびマイクロカプセル化送達系などの放出制御製剤と共に調製して
もよい。エチレン酢酸ビニル、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオル
トエステルおよびポリ乳酸などの生分解性生体適合性ポリマーを使用してもよい。こうし
た製剤を調製するための方法は、当業者に明らかであろう。こうした材料はさらに、Al
za CorporationおよびNova Pharmaceuticals,In
c.から市販品として入手することができる。リポソーム懸濁液(ウイルス抗原に対する
モノクローナル抗体を用いて感染細胞を標的としたリポソームを含む)も、薬学的に許容
されるキャリアとして使用することができる。これらは、たとえば米国特許第4,522
,811号明細書に記載されているような当業者に公知の方法に従い調製することができ
る。
【0224】
投与のしやすさおよび投薬量の均一性のため、経口または非経口組成物を投薬単位剤形
で製剤化すると特に有利である。投薬単位剤形とは、本明細書で使用する場合、単位投薬
量として治療対象の被験体に適した物理的に分離した単位をいい、各単位は、必要とされ
る薬学的キャリアと共に、所望の治療効果を発揮するように計算された所定量の活性化合
物を含む。本発明の投薬単位剤形の規格は、活性化合物の特有の特徴および達成されるべ
き個々の治療効果により決定され、それらに直接左右される。
【0225】
治療用途では、本発明に従い使用される医薬組成物の投薬量は、選択した投薬量に影響
を与える数ある要因の中でも、薬、レシピエント患者の年齢、体重および臨床状態、なら
びに治療を行う臨床医または開業医の経験および判断によって異なる。一般に、用量は、
腫瘍の増殖を遅延させる、そして好ましくは退縮させる、さらに好ましくは癌を完全に退
縮させるのに十分であるべきである。投薬量は、単回投与、分割投与または連続投与で約
0.01mg/kg/日~約5000mg/kg/日の範囲であってもよい。好ましい態
様では、投薬量は約1mg/kg/日~約1000mg/kg/日の範囲であってもよい
。ある種の態様では、用量は約0.1mg/日~約50g/日;約0.1mg/日~約2
5g/日;約0.1mg/日~約10g/日;約0.1mg~約3g/日;または約0.
1mg~約1g/日の範囲であってもよい(投与はkg単位の患者の体重、m単位の体
表面積および年齢に応じて調整してもよい)。医薬剤の有効量は、臨床医または他の適格
な観察者により認められる改善が客観的に特定できる量である。たとえば、患者の腫瘍の
退縮は、腫瘍の直径を基準に測定してもよい。腫瘍の直径の減少は退縮を示す。退縮はさ
らに、治療を中止した後に再発する腫瘍がないことによっても示される。本明細書で使用
する場合、「投薬量効果的方法」という用語は、活性化合物の量が被験体または細胞で所
望の生物学的作用を発揮することをいう。
【0226】
医薬組成物は、投与説明書と共に容器、パックまたはディスペンサーに含めてもよい。
【0227】
本発明の化合物はさらに塩を形成することができる。
【0228】
本明細書で使用する場合、「薬学的に許容される塩」は、親化合物がその酸性塩または
塩基性塩を作ることにより修飾された本発明の化合物の塩をいう。薬学的に許容される塩
の例として、アミンなどの塩基性残基の鉱酸塩または有機酸塩、カルボン酸などの酸性残
基のアルカリ塩または有機塩、および同種のものがあるが、これに限定されるものではな
い。薬学的に許容される塩は、たとえば、無毒性無機酸または有機酸から形成された親化
合物の従来の無毒性塩または第四級アンモニウム塩を含む。たとえば、そうした従来の無
毒性塩として、2-アセトキシ安息香酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、酢酸、アス
コルビン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、重炭酸、炭酸、クエン酸、エデト酸、エタ
ンジスルホン酸、1,2-エタンスルホン酸、フマル酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸
、グルタミン酸、グリコール酸、グリコリアルサニル酸、ヘキシルレゾルシン酸、ヒドラ
バム酸、臭化水素酸、塩酸、ヨウ化水素酸、ヒドロキシマレイン酸、ヒドロキシナフトエ
酸、イセチオン酸、乳酸、ラクトビオン酸、ラウリルスルホン酸、マレイン酸、リンゴ酸
、マンデル酸、メタンスルホン酸、ナプシル酸、硝酸、シュウ酸、パモ酸、パントテン酸
、フェニル酢酸、リン酸、ポリガラクツロン酸、プロピオン酸、サリチル酸、ステアリン
酸、サブ酢酸(subacetic)、コハク酸、スルファミン酸、スルファニル酸、硫
酸、タンニン酸、酒石酸、トルエンスルホン酸および一般に存在するアミン酸、たとえば
、グリシン、アラニン、フェニルアラニン、アルギニン等から選択される無機酸および有
機酸から得られるものがあるが、これに限定されるものではない。
【0229】
薬学的に許容される塩の他の例として、ヘキサン酸、シクロペンタンプロピオン酸、ピ
ルビン酸、マロン酸、3-(4-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、桂皮酸、4-クロロ
ベンゼンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、4-トルエンスルホン酸、カンファー
スルホン酸、4-メチルビシクロ-[2.2.2]-オクト-2-エン-1-カルボン酸
、3-フェニルプロピオン酸、トリメチル酢酸、第三級ブチル酢酸、ムコン酸および同種
のものが挙げられる。本発明はさらに、親化合物に存在する酸性プロトンが金属イオン、
たとえば、アルカリ金属イオン、アルカリ土類イオン、またはアルミニウムイオンに置き
換えられている場合、あるいは有機塩基、たとえばエタノールアミン、ジエタノールアミ
ン、トリエタノールアミン、トロメタミン、N-メチルグルカミンおよび同種のものと配
位している場合に形成される塩を包含する。
【0230】
化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくは多形は、経口投与、経鼻
投与、経皮投与、経肺投与、吸入投与、口腔内投与、舌下投与、腹腔内投与、皮下投与、
筋肉内投与、静脈内投与、直腸内投与、胸膜内投与、髄腔内投与および非経口投与される
。一実施形態では、化合物は経口投与される。当業者であれば、特定の投与経路の利点を
認識するであろう。
【0231】
化合物を利用する投与レジメンは、患者のタイプ、種、年齢、体重、性別および医学的
状態;治療対象の状態の重症度;投与経路;患者の腎機能および肝機能;ならびに利用さ
れる個々の化合物またはその塩など種々の因子に従い選択される。通常の知識を有する医
師または獣医師であれば、当該状態の進行を予防、防止または停止するのに必要な薬剤の
有効量を容易に判定し、処方することができる。
【0232】
開示した本発明の化合物の製剤および投与のための技術は、Remington:th
e Science and Practice of Pharmacy,19th
edition,Mack Publishing Co.,Easton,PA(19
95)で確認することができる。一実施形態では、本明細書に記載の化合物およびその薬
学的に許容される塩は、薬学的に許容されるキャリアまたは希釈薬と組み合わせて医薬調
製物に使用される。好適な薬学的に許容されるキャリアとして、不活性な固体充填剤また
は希釈薬、および無菌水溶液または有機溶液が挙げられる。本化合物は、本明細書に記載
の範囲の所望の投薬量を与えるのに十分な量でそうした医薬組成物中に存在する。
【0233】
本明細書に使用されるパーセンテージおよび比率はすべて、他に記載がない限り、重量
による。本発明の他の特徴と利点は様々な例から明らかである。提示した例は、本発明を
実施する際に有用な様々な要素および方法を説明するものである。こうした例は、特許請
求の範囲に記載されている発明を限定するものではない。本開示に基づき、当業者であれ
ば、本発明を実施するのに有用な他の要素および方法を特定し、利用することができる。
【0234】
本明細書に記載の合成スキームでは、簡潔にするため1つの特定の構造で化合物を描い
ていることがある。こうした特定の構造は、本発明を異性体、互変異性体、位置異性体ま
たは立体異性体のいずれかに限定するものと解釈してはならず、異性体、互変異性体、位
置異性体または立体異性体は、異性体、互変異性体、位置異性体または立体異性体の混合
物を排除するものでもない。
【0235】
本発明の方法に好適な追加の化合物、ならびに医薬組成物およびその使用について、国
際公開第12/142504号パンフレットおよび国際公開第12/142513号パン
フレットに記載されており、その内容全体を各々参照により本明細書に援用する。
【0236】
ヒストンタンパク質の翻訳後修飾およびATP依存性クロマチンリモデリングは、正常
な遺伝子発現の正確さを制御する重要なプロセスである。PRC2およびSWI/SNF
複合体など、これらのプロセスに関与するタンパク質は、癌において遺伝子変異している
ことが多い。重要なことだが、これらの2つの複合体は、通常、クロマチンへの結合およ
びクロマチンに対する影響において互いに競合しており、遺伝子変異が、この拮抗作用に
不均衡を起こし得る。例えば、INI1はSWI/SNF複合体のサブユニットであるが
、ほぼ全てのラブドイド腫瘍において失われており、それは、PRC2-EZH2メチル
トランスフェラーゼへの発癌性の依存性(oncogenic dependency)
をつくり、ラブドイド腫瘍モデルはEZH2小分子阻害剤に感受性がある。別のINI1
欠乏腫瘍タイプである滑膜肉腫において、再発性の染色体転座は、染色体18上のSS1
8遺伝子(SWI/SNFクロマチンリモデリング複合体のサブユニット)を、X染色体
上の3つの関連する遺伝子、SSX1、SSX2、および稀にはSSX4の1つに融合す
る。これは、発癌性のSS18-SSX融合タンパク質の発現をもたらすが、それはSW
I/SNF複合体に結合して、野生型SS18と腫瘍抑制因子INI1の両方を追い出し
、これらはその後に分解する。これは、異常な遺伝子発現をもたらし、最終的に癌が発生
する。
【0237】
化合物A(本明細書において、E7438またはEPZ-6438とも呼ばれる)、臨
床早期の選択的かつ経口的に生物学的利用可能な、EZH2酵素活性の小分子阻害剤が、
単剤としても化学療法との組み合わせでも滑膜肉腫の前臨床モデルにおいて抗増殖活性を
誘導することを示すデータが本明細書に記載される。化合物は、具体的には滑膜肉腫細胞
株(SS18-SSX1融合陽性である)において、インビトロで用量依存性の細胞成長
阻害および細胞死を誘導する。細胞株異種移植片か2つの患者由来異種移植片(PDX)
モデルのいずれかを有するマウスの処置は、EZH2特異的基質、ヒストンH3上のリジ
ン27のトリメチル化レベルの相関的阻害と共に、用量依存性腫瘍成長阻害をもたらす。
これらのデータは、異種移植片モデル中のEZH2酵素活性に対するSS18-SSX1
陽性滑膜肉腫の依存性を示し、適切なバイオマーカーを有するこれらの遺伝子により規定
された癌におけるEZH2標的薬の潜在的な有用性を示唆する。
【0238】
本明細書に引用された全刊行物および特許文書は、そのような刊行物または文書のそれ
ぞれが、具体的かつ個別に引用により本明細書に組み込まれると示されたかのように、引
用により本明細書に組み込まれる。刊行物および特許文書の引用は、いずれもが関係する
従来技術であることの承認として意図されず、その内容または日付に関する何らかの承認
を構成するものでもない。本発明は、書面での説明により説明されてきたので、当業者は
、本発明が種々の実施形態で実施でき、前記説明および以下の実施例が説明のためのもの
であり、以下の特許請求の範囲を限定するものでないことを認識するだろう。
【実施例0239】
実施例1:様々な細胞株におけるEZH2、INI1、SS18-SSX1およびローデ
ィング対照β-アクチンのタンパク質レベル
HS-SY-IIおよびSW982ヒト滑膜肉腫細胞、RDヒト横紋筋肉腫細胞、G4
01ヒトラブドイド腫瘍細胞ならびにHEK293ヒト胎児由来腎臓細胞を、1×プロテ
アーゼ阻害剤カクテル(Thermo Scientific,Rockford,IL
)を含有する1×細胞溶解バッファー(#9803,Cell Signaling T
echnology,Danvers,MA)で溶解した。サンプルを超音波処理し、4
℃で10分間、10,000×gの遠心分離により清澄化した。溶解物のタンパク質含量
を、BCAタンパク質アッセイキット(Thermo Scientific)を使用し
て測定した。2×ローディングバッファー(トリスSDS β-MEサンプル処理液,C
osmo bio,Tokyo,Japan)および水を細胞溶解物と混合することによ
りサンプル溶液を調製し、95℃で5分間インキュベートした。ウエスタンブロット分析
を以下のように行った。サンプル溶液を還元条件下で、SS18およびEZH2について
2~15%勾配ポリアクリルアミドゲルにて、またはINI1およびβ-アクチンについ
て4~20%勾配ポリアクリルアミドゲルにて分離し、ニトロセルロース膜(GE He
althcare,Waukesha,WI)に転写した。ブロットを以下のブロッキン
グ溶液を用いて室温で1時間ブロッキングした:EZH2、INI1およびSS18につ
いては1×Block Ace溶液(Yukijirushi,Sapporo,Jap
an)、またβ-アクチンについては0.5%ツイーン20および5%スキムミルクを含
有するTBS。ブロットを、以下の希釈条件を用いて、一次抗体と4℃で一晩インキュベ
ートした:0.5%ツイーン20および0.1×Block Ace溶液を含有するTB
S中で1:1000希釈のEZH2抗体(07-689,Millipore,Bill
erica,MA)、0.5%ツイーン20および0.1×Block Ace溶液を含
有するTBS中で1:1000希釈のINI1抗体(#8745,Cell Signa
ling Technology)、0.5%ツイーン20および0.1×Block
Ace溶液を含有するTBS中で1:500希釈のSS18抗体(sc-365170,
Santa Cruz,Santa Cruz,CA)、および0.5%ツイーン20お
よび5%スキムミルクを含有するTBS中で1:2000希釈のβ-アクチン抗体(A5
441,Sigma-Aldrich,St.Louis,MO)。0.5%ツイーン2
0を含有するTBSで洗浄後、ブロットを、西洋ワサビペルオキシダーゼをコンジュゲー
トした抗ラビットIgG(Cell Signaling Technology)また
は抗マウスIgG(Cell Signaling Technology)と以下の希
釈条件を用いて、室温で60分間さらにインキュベートした:EZH2、INI1および
SS18については、0.5%ツイーン20および0.1×Block Ace溶液を含
有するTBS中で1:1000希釈の抗ラビットIgG、またβ-アクチンについては、
0.5%ツイーン20および5%スキムミルクを含有するTBS中で1:2000希釈の
抗マウスIgG。0.5%ツイーン20を含有するTBSによる広範な洗浄後、ブロット
をImmobilon Western化学発光HRP基質(Millipore)で発
色させた。免疫反応性のバンドを、発光イメージアナライザーLAS-3000(Fuj
i Film,Tokyo,Japan)を用い、化学発光により可視化した。ウエスタ
ンブロットの代表的な画像を図1に示す。SS18-SSX1の発現がHS-SY-II
細胞で確認された。INI1のダウンレギュレーションもこの細胞株で観察された。一方
、別の滑膜肉腫株SW982は融合タンパク質を発現せず、RD細胞およびHEK293
細胞と同等のINI1の発現を示した。
【0240】
実施例2:様々な細胞株におけるH3K27のトリメチル化およびジメチル化のレベル
ヒトHS-SY-IIおよびSW982ヒト滑膜肉腫細胞、RDヒト横紋筋肉腫細胞、
G401ヒトラブドイド腫瘍細胞、WSU-DLCL2およびOCI-LY19ヒトびま
ん性大型B細胞リンパ腫細胞、ならびにHEK293ヒト胎児由来腎臓細胞を、500μ
Lの溶解バッファー(10mmol/LのMgCl、10mmol/Lのトリス-HC
l、25mmol/LのKCl、1%トリトンX-100、8.6%ショ糖および1×プ
ロテアーゼ阻害剤カクテル)中に懸濁させた。氷上で5分間インキュベートした後、4℃
で5分間、600×gの遠心分離により核を集め、氷冷PBSで1回洗浄した。4℃で5
分間、600×gで遠心分離した後、ペレットを、0.2mol/Lの氷冷硫酸100μ
L中に1時間再懸濁し、インキュベーション中に数回、ボルテックスした。上清を4℃で
10分間、10,000×gの遠心分離により清澄化し、回収した上清に1mLの氷冷ア
セトンを加えた。ヒストンを-20℃で1時間沈殿させ、4℃で10分間、10,000
×gの遠心分離によりペレットにし、100μLの水に再懸濁した。抽出したヒストンを
、BCAタンパク質アッセイキット(Pierce)を使用して定量した。2×ローディ
ングバッファー(トリスSDS β-MEサンプル処理液,Cosmo bio)および
水を細胞溶解物と混合することによりサンプル溶液を調製し、95℃で5分間インキュベ
ートした。ウエスタンブロット分析を以下のように行った。サンプル溶液を還元条件下で
、15~25%勾配ポリアクリルアミドゲルにて分離し、ニトロセルロース膜(GE H
ealthcare,Waukesha,WI)に転写した。ブロットを、以下のブロッ
キング溶液を用いて、室温で1時間ブロッキングした:H3K27me3およびH3K2
7me2については、1×Block Ace溶液、また全ヒストンH3については、0
.5%ツイーン20および5%スキムミルクを含有するTBS。ブロットを、以下の希釈
条件を用いて、一次抗体と4℃で一晩インキュベートした:0.5%ツイーン20および
0.1×Block Ace溶液を含有するTBS中で1:1000希釈のH3K27m
e3抗体(#9733,Cell Signaling Technology)および
H3K27me2抗体(#9728,Cell Signaling Technolo
gy)、ならびに0.5%ツイーン20および5%スキムミルクを含有するTBS中で1
:2000希釈の全ヒストンH3抗体(ab1791,Abcam,Cambridge
,MA)。0.5%ツイーン20を含有するTBSで洗浄後、ブロットを、H3K27m
e3およびH3K27me2について、0.5%ツイーン20および0.1×Block
Ace溶液を含有するTBS中で1:1000希釈した、または全ヒストンH3につい
て、0.5%ツイーン20および5%スキムミルクを含有するTBS中で1:2000希
釈した、西洋ワサビペルオキシダーゼをコンジュゲートした抗ラビットIgG(Cell
Signaling Technology)と室温で60分間さらにインキュベート
した。0.5%ツイーン20を含有するTBSによる広範な洗浄後、ブロットをImmo
bilon Western化学発光HRP基質(Millipore)で発色させた。
免疫反応性のバンドを、発光イメージアナライザーLAS-3000(Fuji Fil
m,Tokyo,Japan)を用い、化学発光により可視化した。ウエスタンブロット
の代表的な画像を図2Aに示す。タンパク質バンドのシグナルを、Multi Gaug
eバージョン3.0ソフトウェア(Fuji Film)を使用して定量した。様々な細
胞株における定量的なH3K27me3/全H3(図2B)、H3K27me2/全H3
図2C)またはH3K27me3/H3K27me2(図2D)の比を示す一連のプロ
ットを示す。Y646 EZH2突然変異を保持するWSU-DLCL2における高いH
3K27me3/H3K27me2状態とは対照的に、HS-SY-IIは高いH3K2
7me3/H3K27me2状態を示さなかった。
【0241】
実施例3:付着細胞株の長期間増殖アッセイ
プロトコール:
7日間アッセイのための96ウェルプレーティング:各付着細胞株について、化合物処
理の前に細胞をプレートに付着させるために、夜(翌日化合物で処理するように)または
朝(夜に化合物で処理するように)のいずれかに、三つ組で処理するように、96ウェル
プレート中に100μLの容量で細胞を蒔いた。
【0242】
7~14日間アッセイ用に分けられる6ウェルプレート:6ウェルプレートの各ウェル
中に正確な密度で2mLの細胞を蒔いた。96ウェルの密度を30倍することにより、9
6ウェルプレートの増殖曲線から正確な密度を計算した。係数30は、6ウェルプレート
の増殖面積を96ウェルプレートの増殖面積で除することから得られ(9.5cm/0
.32cm=29.7、切り上げて30にする)、これは、96ウェルプレートに対し
て6ウェルプレートの表面積が30倍大きいことに対応する。
【0243】
0日目:培地を除去し、正確に希釈した化合物/DMSOを含む、100μL(96ウ
ェルプレートに対して)または2mL(6ウェルプレートに対して)の培地を加えること
によって、化合物またはDMSOで処理した。表1に96ウェルプレートのマップの一例
を挙げる。プレートを96時間インキュベートした。
【0244】
【表1】
【0245】
0日目の読み取りのためにCellTiter-Glo(登録商標)を用いて96ウェ
ルプレートを読み取った(培地交換はこのプレートついて必要ない)。
【0246】
4日目:4日目の読み取りのためにCellTiter-Glo(登録商標)を用いて
96ウェルプレートを読み取った(読み取り前の培地交換はこのプレートついて必要ない
)。96ウェルプレートおよび6ウェルプレートにおいて、4日目に化合物を含有する新
鮮培地に培地を置き換えた。
【0247】
7日目:CellTiter-Glo(登録商標)を用いて96ウェルプレートを読み
取った。
【0248】
6ウェルプレートの個々のウェルをカウントし、上記に記載のように、開始プレーティ
ング密度になるように96ウェルプレートに細胞を再度蒔いた。
【0249】
増殖アッセイの7~14日目のために、0~7日目のステップを繰り返した。
【0250】
具体的には、化合物処理の約12時間前に、HS-SY-II細胞またはSW982細
胞をそれぞれ、24,000細胞/ウェルおよび7,500細胞/ウェルの密度で6ウェ
ルプレートに蒔いた。0日目に、DMSOまたは10μmol/Lから4倍希釈で希釈し
た化合物で細胞を処理した。7日目に、6ウェルプレートの細胞をトリプシン処理し、T
C10自動細胞カウンター(Bio-Rad,Richmond,CA)によりカウント
し、HS-SY-IIおよびSW982についてそれぞれ、800細胞/ウェルおよび2
50細胞/ウェルの密度で96ウェルプレートに三つ組で再度蒔いた。細胞をプレートに
一晩付着させ、0日目のように、DMSOまたは化合物のいずれかで処理した。0、7、
11および14日目に、EnVision 2103 Multilabel Read
er(Perkin-Elmer,Wellesley,MA)を用いて、CellTi
ter-Glo(登録商標)ルミネセンス細胞生存率アッセイ(Promega)により
細胞生存率を決定した。4および11日目に化合物/培地を新しいものと交換した。7日
目に対する7、11および14日目の測定値の比を用いて、7日目から14日目までの増
殖をプロットし、14日目のIC50値を計算した。化合物Eおよび化合物A(本明細書
ではE7438およびEPZ-6438とも呼ばれる)を使用する実験の代表的なグラフ
をそれぞれ、図3A、3Bおよび3C、3Dに示す。HS-SY-II細胞は、14日間
の長期間増殖アッセイにおいて化合物Eおよび化合物Aに高感受性を示したが、一方SW
982細胞は高感受性を示さなかった。
【0251】
実施例4:インビトロおよびインビボにおける化合物A処理
インビトロにおいて、HS-SY-II細胞は、化合物Aに高感受性であり、用量依存
的に細胞増殖の阻害を示す。一方、SW982細胞は化合物Aに感受性ではない(図5A
および5B)。
【0252】
H3K27me3の減少がEZH2阻害剤による処理により両方の細胞株で観察され(
図6A)、そのIC50値は互いに同等であった(図6B)。これから、EZH2阻害剤
を用いる処理によるヒストンマークの変化は、SS18-SSX融合タンパク質の存在と
は無関係であることが示唆される。
【0253】
PK値およびPD変化をHS-SY-II異種移植マウスモデルで分析した。最後の投
与の5分前および3時間後の化合物Aの血漿中濃度を測定した。用量依存的な暴露量が観
察された(図7A)。同時に、腫瘍組織中のH3K27me3レベルの用量依存的な低下
も観察された(図7B)。表2および3に、図7Bに示すデータに関する統計解析を示す
【0254】
【表2】
【0255】
【表3】
【0256】
化合物AまたはEPZ-011989(すなわち、化合物C)を用いる処理による遺伝
子発現変化を、インビトロ培養のHS-SY-IIおよびSW982で分析した。PRC
2複合体がTLE1によりSS18-SSX融合タンパク質に動員され、ATF2標的遺
伝子(EGR1、ATF3、MEIS2およびCDKN2A)を抑制することが報告され
ている(Cancer Cell 21,333-347,2012)。そこで、EGR
1、ATF3およびCDKN2Aの発現レベルを検査した。用量および時間依存的なCD
KN2AのアップレギュレーションがHS-SY-IIで観察されたが、一方SW982
では、CDKN2A遺伝子座がホモ接合性に欠失していることが知られている(図8)。
ATF3およびEGR1は、HS-SY-IIでは、化合物AおよびEPZ-01198
9を用いる処理によりアップレギュレートされたが、SW982ではアップレギュレート
されなかった。したがって、化合物Aは、滑膜肉腫病態形成に関与する遺伝子の発現変化
を誘導する。
【0257】
表4に、図8に示すデータに関する統計解析を示す。
【0258】
【表4】
【0259】
化合物Aを用いる処理による遺伝子発現変化はまたHS-SY-II異種移植モデルで
も分析した。CDKN2Aは、500mg/kgの化合物Aを投与したマウスで顕著にア
ップレギュレートされた(図9)。ここでも、化合物Aは、滑膜肉腫病態形成に関与する
遺伝子の発現変化を誘導する。
【0260】
図10A~10Cに、HS-SY-II異種移植片を担持する無胸腺ヌードマウスの平
均インビボ腫瘍容積を示す。第1の試験では、ビヒクル(28日間経口もしくは1日目お
よび22日目にiv)、化合物A(経口:28日間125mg/kg、250mg/kg
もしくは500mg/kg)またはドキソルビシン(iv:10mg/kg、1日目およ
び22日目)のいずれかをマウスに投与し、腫瘍容積を週に2回測定した(図10Aおよ
び10B)。第2の試験では、ビヒクル(28日間経口)、化合物A(経口:28日間2
50mg/kgまたは500mg/kg)、ドキソルビシン(iv:1日目および22日
目に10mg/kg)またはドキソルビシン(iv:1日目および22日目に10mg/
kg)と化合物A(経口:28日間250mg/kg)の併用のいずれかをマウスに投与
した(図10C)。第2の試験の動物腫瘍は28日目(最後の投与の3時間後)に摘出し
、ELISAによるH3K27me3分析(図10D)または増殖マーカーKi67に対
するIHC(図10E)に供した。
【0261】
2D細胞培養では、化合物Aに感受性であるが、HS-SY-II細胞株異種移植では
、マウス異種移植モデルは用量相関的な腫瘍容積の増加を示した;この観察の基礎となる
機構は検討中である。
【0262】
図11Aおよび11Cは、滑膜肉腫腫瘍の2つの異なるPDXの1つを担持する無胸腺
ヌードマウスの平均インビボ腫瘍容積を示す。図11Bおよび11Dは、PDXを担持す
るマウスのパーセント生存率を示す。ビヒクル(35日間経口)、化合物A(経口:35
日間125mg/kg、250mg/kgもしくは500/400mg/kg)またはド
キソルビシン(iv:3mg/kg、3週間週に1回)のいずれかをマウスに投与した。
図11Aおよび11Bは、高グレードの紡錘細胞肉腫を有する57歳男性に由来するPD
Xを担持するマウスのデータを示す。図11Cおよび11Dは、16歳女性に由来するP
DXを担持するマウスのデータを示す。HS-SY-II細胞株異種移植とは対照的に、
PDXマウスはインビボで用量相関的な腫瘍容積の減少を示した。
【0263】
図12Aおよび12Bは、35日目に収集しRNA-seq解析により分析した、マウ
スのサブセットから得た滑膜肉腫PDX腫瘍のアレイデータを示す。図12Aは、57歳
の男性からのPDXを有するマウスから得たデータであり;図2Bは、16歳の女性から
のPDXを有するマウスから得たデータである。HLA遺伝子、Fas、およびKLRD
1の発現は、ビヒクルにより処置されたマウスに対して400mg/kg化合物Aにより
処置されたマウスで増加した。図中で、青は低発現であり、赤は高発現である。
【0264】
材料および方法
細胞培養
HS-SY-II(RCB2231,RIKEN BioResource Cent
er)およびSW982(HTB-93、ATCC)を、37℃、5%COの条件下、
10%FBS含有RPMI1640中で増殖させた。HS-SY-II細胞はSS18-
SSX1融合体を有することを特徴とするが、SW982細胞は野生型SS18を有する
【0265】
化合物Aにより誘導される、H3K27メチル化の変化
HS-SY-IIおよびSW982細胞を、DMSOまたは40nmol/Lから4倍
希釈で希釈した化合物Aのいずれかで、96時間処理した。細胞を氷冷PBSにより洗浄
し、細胞スクレーパーにより回収し、100μlの核抽出バッファー(10mMのトリス
-HCl、10mMのMgCl、25mMのKCl、1%トリトンX-100、8.6
%スクロース+1×Halt Protease阻害剤カクテル(1861281,Th
ermo Scientific))で溶解した。4℃で5分間、600gの遠心分離に
より核を集め、氷冷PBSで1回洗浄した。上清を除去し、ヒストンを100μlの0.
4N冷硫酸で1時間抽出した。抽出物を4℃で10分間、10,000gの遠心分離によ
り清澄化し、1mLの氷冷アセトンを含有する新しい微小遠心管に移した。ヒストンを-
20℃で一晩沈殿させ、10,000×gで10分間の遠心分離によりペレットにし、1
00μlの水に再懸濁した。ヒストンを、BCAタンパク質アッセイ(23225,Pi
erce)を使用して定量した。希釈したヒストンを、Immulon 4HBXプレー
ト(3855,Thermo Scientific)上に一晩コーティングして、EL
ISAを行った。手短に言えば、0.05%ツイーン20および2%ウシ血清アルブミン
(BSA)を含有するPBSでブロッキングした後、プレートを、H3K27me3抗体
(#9733,Cell Signaling Technology)または全ヒスト
ンH3抗体(AB1791,Abcam)とインキュベートした。プレートをさらに、西
洋ワサビペルオキシダーゼをコンジュゲートした抗ラビットIgG(#7074,Cel
l Signaling Technology)とインキュベートした後、TMB基質
(TMBS-0100-01,BioFx Laboratories)とインキュベー
トした。次いで、ウェル中で発色した色を、プレート分光光度計(SpectraMax
250,Molecular Devices)を使用して、450nm(基準波長6
50nm)で測定した。H3K27me3レベルを全ヒストンH3に合わせて、DMSO
対照に対する比(fold change)として表現した。
【0266】
図6Aに代表的なプロットを示す。図6Bに示すIC50値(2つの独立した実験)の
範囲は、GraphPad Prism(GraphPad Software)により
決定した。ヒストンマークの変化は、HS-SY-IIとSW982との間で同等であり
、この変化はSS18-SSX融合タンパク質に無関係であった。
【0267】
HS-SY-II異種移植モデルにおけるPK値およびPD変化
HS-SY-II細胞を対数期増殖の中間時点で回収し、50%マトリゲル(BD B
iosciences)含有ハンク平衡塩類溶液中に再懸濁した。Balb/C-nuマ
ウス(Charles River Laboratories Japan)の右側腹
部に1×10細胞(0.1mLの細胞浮遊液)を皮下投与した。約200mm(注入
後31日目)の腫瘍を担持するマウスを、同様の平均腫瘍容積を有する処置群に選別した
。化合物Aまたはビヒクル(0.5%MC+0.1%ツイーン80の水溶液)を、経口の
胃管栄養法により7日間1日2回、指示用量で投与した。各用量を、0.2mL/20g
マウス(10mL/kg)の容量で送達し、個々の動物の最後に記録された体重に対して
調整した。最後の投与の約5分前および3時間後に、化合物A処置マウスから末梢血サン
プルを採取した。遠心分離により血漿サンプルを得た後、化合物Aの血漿中濃度分析を、
液体クロマトグラフィー・タンデム型質量分析(LC/MS/MS)法により行った。質
量分析計(Quattro premier,MICROMASS)を装備したUPLC
システム(Acquity,Waters)を使用して、化合物Aを定量した。濃度のプ
ロットを図7Aに示す(n=5)。各バーは、各群における血漿中濃度の平均値を表す。
【0268】
腫瘍サンプルを、PK値およびPD変化の分析に使用したマウスから、最後の投与の約
3時間後に採取した。腫瘍サンプルを、RNAlater(AM7020,Life t
echnologies)を使用して保存した。全RNAの単離および逆転写を、製造業
者の指示に従って、RNeasy Miniキット(74104,Qiagen)および
高容量cDNA逆転写キット(4368814,Life technologies)
により行った。このcDNAサンプルを、上記のようにリアルタイムPCRに使用した。
発現レベルは、GAPDHに合わせて、ビヒクル対照に対する比(fold chang
e)として表現した(図9)。
【0269】
図10Dの場合、腫瘍を液体窒素で瞬間凍結させた。凍結した腫瘍サンプルを20mg
の小片に切断し、500μlの氷冷核抽出バッファー(10mMのトリス-HCl、10
mMのMgCl、25mMのKCl、1%トリトンX-100、8.6%スクロース+
1×Halt Protease阻害剤カクテル(1861281,Thermo Sc
ientific))に入れ、簡便なミクロホモジナイザーでホモジナイズした。4℃で
5分間、600gの遠心分離により核を集め、氷冷PBSで1回洗浄した。上清を除去し
、ヒストンを100μlの0.4N冷硫酸で1時間抽出した。抽出物を4℃で10分間、
10,000gの遠心分離により清澄化し、1mLの氷冷アセトンを含有する新しい微小
遠心管に移した。ヒストンを-20℃で一晩沈殿させ、10,000×gで10分間の遠
心分離によりペレットにし、100μlの水に再懸濁した。ヒストンを、BCAタンパク
質アッセイ(23225,Pierce)を使用して定量した。希釈したヒストンを、I
mmulon 4HBXプレート(3855,Thermo Scientific)上
に一晩コーティングして、ELISAを行った。手短に言えば、0.05%ツイーン20
および2%ウシ血清アルブミン(BSA)を含有するPBSでブロッキングした後、プレ
ートを、H3K27me3抗体(#9733,Cell Signaling Tech
nology)または全ヒストンH3抗体(AB1791,Abcam)とインキュベー
トした。プレートをさらに、西洋ワサビペルオキシダーゼをコンジュゲートした抗ラビッ
トIgG(#7074,Cell Signaling Technology)とイン
キュベートした後、TMB基質(TMBS-0100-01,BioFx Labora
tories)とインキュベートした。次いで、ウェル中で発色した色を、450nm(
基準波長650nm)でプレート分光光度計(SpectraMax 250,Mole
cular Devices)を使用して測定した。H3K27me3レベルを全ヒスト
ンH3に合わせて、ビヒクル対照に対する比(fold change)として表現した
。これらの値のプロットを図10Dに示す(n=6)。各バーは、各群における値の平均
値を表す。H3K27me3レベルの顕著な低下が化合物A投与マウス由来の腫瘍で観察
された。ヒストンを抽出および定量し、上記のようにH3K27me3レベルを分析した
。腫瘍中のH3K27のトリメチル化レベルのプロットを図7Bに示す(n=5)。各バ
ーは、各群における、トリメチル化レベルの平均±SEMを表す。
【0270】
化合物A処理後のインビトロにおける遺伝子発現変化
HS-SY-II細胞およびSW982細胞をEZH2阻害剤(化合物AまたはEPZ
-011989)で処理し、指示時点で回収した。全RNAの単離およびcDNA合成を
、製造業者のプロトコールに従い、TaqManGene Expression Ce
lls-to-CTキット(4399002,Life technologies)を
使用して行った。ATF3、EGR1、CDKN2AおよびGAPDHの発現を、Taq
Man Gene Expression Assays(Life technolo
gies,4331182)およびTaqMan Probes(それぞれHs0023
1069_m1、Hs00152928_m1、Hs00233365_m1およびHs
99999905_m1)の使用により分析した。発現レベルは、GAPDHに合わせて
、DMSO対照に対する比(fold change)として表現した(図8)。
【0271】
化合物A処理後のインビボにおける遺伝子発現変化
腫瘍サンプルを、PK値およびPD変化の分析に使用したマウスから、最後の投与の約
3時間後に採取した。腫瘍サンプルを、RNAlater(AM7020,Life t
echnologies)を使用して保存した。全RNAの単離および逆転写を、製造業
者の指示に従って、RNeasy Miniキット(74104,Qiagen)および
高容量cDNA逆転写キット(4368814,Life technologies)
により行った。このcDNAサンプルを、上記のようにリアルタイムPCRに使用した。
発現レベルは、GAPDHに合わせて、ビヒクル対照に対する比(fold chang
e)として表現した(図9)。追加的または代替的に、全RNAを凍結した腫瘍サンプル
から単離した。TruSeq(商標)RNA Sample Prep Kit(Ill
umina)を使用して、Illumina HiSeq(Illumina TruS
eq RNA Sample Preparation Guideに詳述されている)
上でペアエンドシーケンシング(paired-end sequencing)用のc
DNAライブラリーを構築した。Standard Cluster Generati
on Kit v5は、cDNAライブラリーをフローセル表面に結合させる。1サンプ
ル当たり約50Mクラスターからのペアエンドリードを、Illumina HiSeq
上でTruSeq SBSキットを使用して生成させた。
【0272】
RNAseqデータ処理
FASTQ形式での生シーケンシングリードを、ヒトゲノムhg19およびマウスゲノ
ムmm10に対してアライメントした。トランスクリプトームの定量を、参照としてUS
CS KnownGeneトランスクリプトームを使用して、RSEM v1.1.13
プログラムで行った。RSEM発現計算は、Illumina50×50ペアエンドシー
ケンシング用に最適化されたパラメーターを用いて実行した。
【0273】
生物学的解釈のためのRNAseqトランスクリプトームデータの分析
両方のPDXモデル(各モデルについて5つのレプリケートによる処理)について、化
合物A対DMSO処理の2つのサンプル比較に関する遺伝子セット濃縮分析(Gene
Set Enrichment Analysis)(GSEA)を、GSEA Jav
a(登録商標)対応のデスクトップソフトウェア(バージョン2.0.13、ワールドワ
イドウェブ(www)broadinstitute.org/gsea/index.
jsp)を使用して行った。規準化後のRSEM生成遺伝子レベルのカウントをGSEA
入力に使用した。表現型ではなく遺伝子セットに対して並び替えを行って、小サンプルサ
イズを処理した。キュレーションされたKEGG経路およびワールドワイドウェブ(ww
w)broadinstitute.org/gsea/msigdb/index.j
spのMSigDBバージョン4.0からの転写因子結合モチーフ遺伝子セットを、すべ
てのGSEAデータ分析に使用した。
【0274】
図10Eの場合、集めた腫瘍をホルマリン固定に供し、パラフィン包埋した。パラフィ
ン切片を調製し、脱パラフィンし、ポリマーベースの方法(EnVision,DAKO
,Japan)に準拠した一般的な工程の後にIHC用に処理した。脱パラフィンした切
片を、標的検索溶液(DAKO、10%の最終濃度に希釈)中で、121℃で20分間、
2気圧下でオートクレーブ滅菌することにより抗原検索用に処理し、3%過酸化水素水で
5分間処理して内因性ペルオキシダーゼ活性を遮断した。市販の一次抗体を室温で約1時
間、Ki-67と反応させた(抗ヒトKi-67マウスモノクローナル抗体、DAKO,
Japan、1:50稀釈)。EnVisionシステムを使用する次のステップは、室
温で30分間の二次抗体による処理を含めて、製造業者の指示に従った;3,3’-ジア
ミノベンジジンをクロモゲンとして、またヘマトキシリンを対比染色として使用した。図
10Eでは、Aperio XT(商標)スキャナーを使用して、スライドをデジタル化
した。デジタル化されたスライドをAperio Image Scope(商標)ソフ
トウェアを使用して分析し、陽性細胞のパーセントを定量化した。Ki67のIHC染色
の定量化は、処置群における細胞増殖の変化を示さなかった。各バーは、各群の値の平均
を表す。(Ki67陽性細胞のパーセントの有意な差は、全投与群で観察されなかった)
【0275】
滑膜肉腫RNA-seq方法
患者由来異種移植片(PDX)モデルCTG-0331およびCTG-0771は、ヒ
ト滑膜肉腫を表す低継代のChampions TumorGraft(商標)モデルで
ある。免疫不全の雌のマウス(Taconic;NCrヌード)の一方の脇腹領域に、ド
ナー動物から収集した腫瘍断片(5mm×5mm×5mm)を移植したが、それぞれは、
特定の継代ロット(CTG-0331およびCTG-0771でP4)から移植した。腫
瘍がおよそ100~300mmに達すると、動物を腫瘍体積により調整して処置群と対
照群にして、投薬を開始した。ビヒクル(0.5%NaCMCプラス水中0.1%ツイー
ン80)または化合物A(CTG-0331には500mg/kgおよびCTG-077
1には500mg/kgを17日に400mg/kgに減らした)を、10μL/gの投
与体積で、35日間、1日2回経口投与した。腫瘍サイズを週に2回測定した。35日目
に、最大腫瘍量を有する5匹までのマウスを、最後の投与の3時間後に腫瘍収集のために
安楽死させ、急速冷凍した。ビヒクル群および最高の化合物A投与量群から得た冷凍され
た腫瘍試料(30mg)を、RNAプロセシングおよびRNA-seq解析のためにEx
pression Analysisに発送した。
【0276】
参照による援用
本明細書に言及した特許文書および科学論文の各々の開示内容全体は、あらゆる目的に
おいて援用する。
【0277】
均等物
本発明は、その精神または本質的な特徴を逸脱することなく他の特定の形態で実施する
ことができる。したがって、前述の実施形態は、あらゆる点で本明細書に記載の本発明に
関する限定ではなく、例示と見なすべきである。このため、本発明の範囲は、明細書本文
ではなく添付の特許請求の範囲により示され、特許請求の範囲の均等範囲に属するすべて
の変更をすべてその範囲内に包含することを意図している。
図1
図2A
図2B-2D】
図3A-3B】
図3C-3D】
図4A-4C】
図4D-4F】
図5A-5B】
図6A-6B】
図7A-7B】
図8
図9
図10A-10C】
図10D-10E】
図11A-11B】
図11C-11D】
図12A-12B】
【手続補正書】
【提出日】2023-06-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)癌細胞が、SS18-SSX融合遺伝子を引き起こす染色体転座t(x;18)(p11.2;q11.2)を含むか、または
(2)癌細胞が、INI1の機能及び/又は発現が減少しているか、または
(3)癌細胞が、異常な、誤制御されたまたは増加したEZH2活性を含む、
ヒトがん細胞を、がん細胞における主要組織適合複合体(MHC)の発現を増加させるのに有効な量のEZH2阻害剤と接触させることを含む方法。
【手続補正書】
【提出日】2023-07-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
EZH2阻害剤を含む治療の有効性を、それを必要とする被験体においてスクリーニングするための方法であって、
(1)被験体から第1および第2の生物学的サンプルを得る工程、
(2)第2の生物学的サンプルをEZH2阻害剤と接触させる工程、
(3)主要組織適合性複合体(MHC)の発現について、第1の生物学的試料および第2の生物学的試料をアッセイする工程および
(4)第1の生物学的試料におけるMHCの発現を、第2の生物学的試料におけるMHCの発現と比較する工程を含み、
第二の生物学的試料が、第一の生物学的試料における発現と比較して、MHCの発現が増加している場合、EZH2阻害剤を含む治療は、被験体において有効である可能性が高い、方法。
【請求項2】
被験体がEZH2活性の異常、誤調節または上昇を含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
被験体が染色体転座t(x;18)(p11.2;q11.2)を含む請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
転座がSS18-SSX融合遺伝子を引き起こす請求項3に記載の方法。
【請求項5】
被験体が、INI1の機能又は発現が低下している請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
被験体がINI1の機能低下及び発現低下を有する請求項5に記載の方法。
【請求項7】
EZH2阻害剤が、以下の式を有する化合物A又はその薬学的に許容される塩である請求項1~6のいずれか1つ記載の方法。
【化1】
【請求項8】
EZH2阻害剤が、以下の式を有する化合物B~E又はそれらの薬学的に許容される塩からなる群より選択される請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【化2】
又はそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される、請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
被験体に化学療法化合物を投与することをさらに含む請求項1~8のいずれか1つ記載の方法。
【請求項10】
化学療法化合物が、PD-1阻害剤、PD-L1阻害剤及びCTLA-4阻害剤からなる群より選択される請求項9に記載の方法。
【請求項11】
被験体がヒトである請求項1~10のいずれか1つ記載の方法。
【請求項12】
MHCがヒト白血球抗原(HLA)である請求項1~11のいずれか1つ記載の方法。
【請求項13】
HLAが、HLA-A、HLA B、HLA-C、HLA DMα、HLA DMβ、HLA-DOα、HLA DOβ1、HLA DPα1、HLA DPβ1、HLA DRα、HLA-DRβ1、HLA-DRβ3、HLA DRβ4、HLA E、HLA F、HLA G、HLA K及びHLA Lからなる群より選択される請求項12に記載の方法。