(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023109931
(43)【公開日】2023-08-08
(54)【発明の名称】スケーラブルでプログラム可能なコヒーレント波形発生器
(51)【国際特許分類】
G06N 10/40 20220101AFI20230801BHJP
G06F 9/00 20180101ALI20230801BHJP
G06F 7/38 20060101ALI20230801BHJP
G06F 1/10 20060101ALI20230801BHJP
【FI】
G06N10/40
G06F9/00
G06F7/38 510
G06F1/10 511
【審査請求】有
【請求項の数】24
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023085227
(22)【出願日】2023-05-24
(62)【分割の表示】P 2022503991の分割
【原出願日】2020-07-24
(31)【優先権主張番号】62/877,979
(32)【優先日】2019-07-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/936,755
(32)【優先日】2020-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】520132894
【氏名又は名称】イオンキュー インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【弁理士】
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】アピスドルフ ジョエル ズヴィ
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアムズ ジェームズ マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ソロモン フィリップ ダグラス
(72)【発明者】
【氏名】アミニ ジェイソン マディディ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】量子情報処理(QIP)システム用に実装されたスケーラブルでプログラム可能なデジタル・アナログ変換(DAC)カード、ネットワーク等を提供する。
【解決手段】QIPシステムのネットワークで使用されるDACカードは、入力SYNCピンを有するクロック分周器/複製器装置と、デジタル論理コンポーネントと、1つ以上のDACコンポーネント470と、を有し、DACコンポーネントの各出力は、QIPシステムの別個の量子ビットのための光ビームを制御するために使用される。ネットワークは、クロック分周器/複製器装置にクロック信号を提供する第一の分配ネットワークと、DACカードに起動信号を提供する第二の分配ネットワークを含む。起動信号は、デジタル論理コンポーネントによって使用され、起動信号がアサートされているときに、起動信号がデジタル論理コンポーネントによってマスクされない限り、入力SYNCピンをアサートする。
【選択図】
図4A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
量子情報処理(QIP)システムで複数のデジタル・アナログ変換器(DAC)カードを同期するためのネットワークであって、
前記複数のDACカードであって、各DACカードが、
入力SYNCピンを有するクロック分周器/複製器装置と、
デジタル論理コンポーネントと、
1つ以上のDACコンポーネントであって、前記DACコンポーネントの出力のそれぞれが、前記QIPシステムの別個の量子ビットのための1つ以上の光ビームを制御するために使用される、1つ以上のDACコンポーネントと、
を含む、複数のDACカードと、
前記複数のDACカードのそれぞれのクロック分周器/複製器装置にクロック信号を提供するための第一の分配ネットワークと、
前記複数のDACカードのそれぞれに起動信号を提供するための第二の分配ネットワークと、
を備え、
前記複数のDACカードのそれぞれについて、前記起動信号は、前記DACカード内の前記デジタル論理コンポーネントによって使用され、前記起動信号がアサートされていることに応答して、前記起動信号が前記デジタル論理コンポーネントによってマスクされない限り、前記DACカードの前記クロック分周器/複製器装置の前記入力SYNCピンをアサートする、ネットワーク。
【請求項2】
前記複数のDACカードのそれぞれが単一の集積回路として実装され、前記クロック分周器/複製器装置、前記デジタル論理コンポーネント、及び前記1つ以上のDACコンポーネントが前記集積回路の一部である、請求項1に記載のネットワーク。
【請求項3】
前記複数のDACカードのうちの2つ以上が単一の集積回路として実装され、これらのDACカードのそれぞれの前記クロック分周器/複製器装置、前記デジタル論理コンポーネント、及び前記1つ以上のDACコンポーネントが前記単一の集積回路の一部である、請求項1に記載のネットワーク。
【請求項4】
前記複数のDACカードのそれぞれの前記クロック分周器/複製器装置、前記デジタル論理コンポーネント、及び前記1つ以上のDACコンポーネントのうちの1つ以上が単一の集積回路として実装される、請求項1に記載のネットワーク。
【請求項5】
各DACカードは、前記デジタル論理コンポーネントを前記1つ以上のDACコンポーネントに接続するインターフェース論理をさらに含む、請求項1に記載のネットワーク。
【請求項6】
各DACカード内の前記デジタル論理コンポーネントは、非同期論理を含み、前記非同期論理は、前記起動信号を受信し、そのDACカード内の前記クロック分周器/複製器装置の前記入力SYNCピンをアサートするために別の信号を生成する、請求項1に記載のネットワーク。
【請求項7】
前記第一の分配ネットワークは、受動スプリッタを含み、前記受動スプリッタで前記クロック信号を受信するように構成され、前記受動スプリッタは、次いで、前記複数のDACカードのそれぞれの前記クロック分周器/複製器装置に前記クロック信号を提供するように構成される、請求項1に記載のネットワーク。
【請求項8】
前記第一の分配ネットワークは、同じ長さの複数の同軸ケーブルを含み、前記クロック信号は、前記複数の同軸ケーブルのそれぞれによって、前記受動スプリッタから前記複数のDACカードのそれぞれに提供される、請求項7に記載のネットワーク。
【請求項9】
前記第一の分配ネットワークは、乗算器論理を含み、前記乗算器論理で基準クロック信号を受信するように構成され、前記乗算器論理は、1つ以上の乗算器ステージを使用して前記基準クロック信号から前記クロック信号を生成するように構成される、請求項1に記載のネットワーク。
【請求項10】
前記第二の分配ネットワークは、スプリッタを含み、前記スプリッタで前記起動信号を受信するように構成され、前記スプリッタは、次いで、前記複数のDACカードに前記起動信号を提供するように構成される、請求項1に記載のネットワーク。
【請求項11】
前記第二の分配ネットワークは、シールドされた二軸ケーブルを介した複数の低電圧差動信号(LVDS)を含み、前記起動信号は、シールドされた二軸ケーブルを介して前記複数のLVDSのそれぞれによって前記スプリッタから前記複数のDACカードのそれぞれに提供される、請求項10に記載のネットワーク。
【請求項12】
制御されている前記QIPシステムの各別個の量子ビットは、前記QIPシステムのトラップ内の原子又は原子イオンに対応する、請求項1に記載のネットワーク。
【請求項13】
量子情報処理(QIP)システムで量子ビットを制御するためのデジタル・アナログ変換器(DAC)カードであって、
デジタル論理コンポーネントであって、
前記DACカードの各出力用の1つ以上のダイレクトデジタルシンセサイザ(DDS)であって、各出力が、前記QIPシステムの別個の量子ビットのための1つ以上の光ビームを制御する、1つ以上DDSと、
1つ以上のDDSにコマンドを集合的に提供する表のペアであって、表の前記ペアの第一の表は関数表であり、表の前記ペアの第二の表は命令表であり、前記関数表は、前記1つ以上のDDSによって生成されたパラメータ化関数を定義し、前記命令表は、前記関数表へのサブルーチンコール又は前記関数表の条件付きループ命令を定義する、表のペアと、
を有する、デジタル論理コンポーネントと、
1つ以上のDACコンポーネントであって、各DACコンポーネントは、前記DACカードの前記出力の1つ以上を提供し、各DACコンポーネントは、前記1つ以上のDDSによって生成されたパラメータ化関数を受け取り、前記1つ以上の出力を生成し、前記パラメータ化関数はデジタル形式であり、前記1つ以上の出力はアナログ形式である、1つ以上のDACコンポーネントと、
を備える、DACカード。
【請求項14】
前記関数表によって定義されるパラメータ化関数はスプライン曲線であり、前記スプライン曲線の各セグメントのパラメータは、振幅、位相、又は周波数のうちの1つ以上を含む、請求項12に記載のDACカード。
【請求項15】
前記振幅は、開始点又はゼロ次、勾配又は一次、加速度又は二次、あるいはジャーク又は三次のうちの1つ以上によって定義される、請求項13に記載のDACカード。
【請求項16】
前記関数表によって定義されるパラメータ化関数はスプライン曲線であり、前記関数表が複数のスプラインノードを含み、各スプラインノードが前記スプライン曲線のそれぞれのセグメントを定義するためのパラメータを含む、請求項12に記載のDACカード。
【請求項16】
各スプラインノードは、1つ以上の連続する行を含み、各行は、前記スプライン曲線の前記それぞれのセグメントの異なるパラメータを指定する、請求項15に記載のDACカード。
【請求項17】
各行は、前記行によって定義されている前記異なるパラメータを識別する識別子を有する、請求項16に記載のDACカード。
【請求項18】
前記識別子は、前記行によって定義されている2つ以上の異なるパラメータを識別する、請求項17に記載のDACカード。
【請求項19】
各スプラインノードの端部が、前記スプラインノードの前記1つ以上の連続する行の最後の行で明示的に識別される、請求項16に記載のDACカード。
【請求項20】
前記スプライン表の各行は、タイムスタンプフィールドを含み、前記最後の行の前記明示的な識別は、前記最後の行のそれぞれの前記タイムスタンプフィールドで行われる、請求項19に記載のDACカード。
【請求項21】
前記スプラインノードの1つ以上の行で指定されていない前記スプライン曲線の前記それぞれのセグメントの1つ以上の異なるパラメータが、デフォルトで静的な値になるか、又は直前のスプラインノードの端部からの値を保持する、請求項15に記載のDACカード。
【請求項22】
前記関数表で定義されたパラメータ化関数はスプライン曲線であり、前記スプライン曲線の各セグメントのパラメータは、振幅、位相、又は周波数の1つ以上を含み、
前記命令表は、振幅又は位相パラメータの一方又は両方を変更するための命令を含む、
請求項12に記載のDACカード。
【請求項23】
前記命令表は、1つ以上のジャンプ命令を含み、各ジャンプ命令は、N個のカウンタのうちの1つを定数と比較し、前記定数以上の場合、次の命令にフォールスルーし、前記定数未満の場合、前記カウンタをインクリメントして、前記命令表のユーザ定義された行にジャンプする、請求項12に記載のDACカード。
【請求項24】
前記1つ以上のジャンプ命令は、予約ビットを有することによって、又は特別な値を使用することによって、命令表の他の命令と区別可能である、請求項23に記載のDACカード。
【請求項25】
前記命令表の行は、実験ショットの開始以降の追跡操作のためのグローバルタイムスタンプフィールドを含み、前記関数表の行は、パラメータ化関数のそれぞれのセグメントを定義するスプラインノードに関連付けられた操作を追跡するための相対的なタイムスタンプを含む、請求項12に記載のDACカード。
【請求項26】
前記スプラインノードが実行される現在の時刻は、前記グローバルタイムスタンプの値と前記相対タイムスタンプの値との合計である、請求項25に記載のDACカード
【請求項27】
前記ジャンプ命令とは異なる命令表内の命令について、ビットフラグ再同期は、前記命令表に関連する前記1つ以上のDDSに、前記パラメータ化関数の境界で内部位相アキュムレータをリセットさせるように構成される、請求項12に記載のDACカード。
【請求項28】
前記内部位相アキュムレータの前記リセットは、前記命令表内のグローバルタイムスタンプフィールドの値と、前記関数表内の相対タイムスタンプフィールドの値が現在の時刻と一致するときに発生する、請求項27に記載のDACカード。
【請求項29】
各DACコンポーネントの前記1つ以上の出力の振幅を制御するように構成された1つ以上の増幅器をさらに備える、請求項12に記載のDACカード。
【請求項30】
前記デジタル論理コンポーネントは、プログラム可能な集積回路に実装され、前記関数表及び前記命令表は、前記プログラム可能な集積回路内の別個のメモリに実装される、請求項12に記載のDACカード。
【請求項31】
前記DACカードは、2つ以上の出力を有し、
前記DACカードの各出力の前記デジタル論理コンポーネントに対して、DDSのペアがあり、
DDSの各ペアに対して、表のペアがある、
請求項12に記載のDACカード。
【請求項32】
制御されている前記QIPシステムの各別個の量子ビットは、前記QIPシステムのトラップ内の原子又は原子イオンに対応する、請求項12に記載のDACカード。
【請求項33】
前記デジタル論理コンポーネントを前記1つ以上のDACコンポーネントに接続するインターフェース論理をさらに備える、請求項12に記載のDACカード。
【請求項34】
入力SYNCピンを有するクロック分周器/複製器装置をさらに備え、前記デジタル論理コンポーネントは、起動信号を受信するように構成され、前記起動信号は、前記起動信号が前記デジタル論理コンポーネントによってマスクされない限り、前記クロック分周器/複製器装置の入力SYNCピンをアサートするために使用される、請求項12に記載のDACカード。
【請求項35】
前記デジタル論理コンポーネントは、前記起動信号を受信し、前記クロック分周器/複製器装置の前記入力SYNCピンをアサートするために別の信号を生成するように構成される非同期論理コンポーネントを含む、請求項12に記載のDACカード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2019年7月24日に出願された米国仮特許出願第62/877,979号の優先権を主張するものであり、当該仮特許出願の開示はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示の態様は、一般に、波形又は信号発生器に関し、より具体的には、量子情報処理(QIP)システム用に実装されたスケーラブルでプログラム可能なコヒーレント波形発生器に関する。
【背景技術】
【0003】
トラップされた原子(又は原子イオン)は、量子情報処理の主要な実装の1つであり、超電導デバイスも別の可能な実装である。原子ベースの量子ビットは、量子メモリとして、量子コンピュータ及びシミュレータの量子ゲートとして使用でき、量子通信ネットワークのノードとして機能することができる。これらの原子又は原子イオンは、QIPシステムにおいて、量子アルゴリズム/計算及び量子シミュレーションの実行を含む様々な操作の間に、変調された光ビームを適用することによって、少なくとも部分的に制御される。これらの光ビームは、光ビームを変調するために使用される音響光学変調器(AOM)に提供される無線周波数(RF)信号によって少なくとも部分的に制御される。システム内の複数の量子ビット間で正しい動作を保証するために、RF信号を駆動する電子機器が十分に同期され、厳密に制御された位相関係を有することが重要である。QIPシステムで利用可能なトラップされた原子又は原子イオンの数がスケールアップする(例えば、増加する)場合、QIPシステムは、処理するためにより多くの電子機器が必要な場合でも、トラップされた原子又は原子イオンの数を増やすための追加のRF信号及び光ビームをRF信号の同期と位相関係を維持できる必要がある。
【0004】
さらに、これらの電子機器は、RF信号が光ビームを使用してトラップされた原子又は原子イオンに適用される適切な波形を有することを保証するために、効率的な方法で動作する必要がある。RF信号の波形は通常、デジタル・アナログ変換器(DAC)によって生成されるため、これらのDACは、スケーラビリティのためだけでなく、ネットワークホストからのストリーミングによって波形情報を有することによって導入されるような遅延を克服するように動作するように構成されていることが望ましい。
【0005】
したがって、QIPシステムを含む様々なタイプのシステムで使用するためのコヒーレント波形又は信号発生器(DDSなど)をスケーラブルでプログラム可能にできる技術を開発して、実装することが望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以下では、1つ以上の態様の簡略化された発明の概要を提示し、そのような態様の基本的な理解を提供する。この概要は、全ての企図された態様の広範な概観ではなく、全ての態様の主要又は重要な要素を識別することも、任意の又は全ての態様の範囲を線引きすることも意図するものでもない。その目的は、後に提示されるより詳細な説明の前置きとして、1つ以上の態様のいくつかの概念を簡略化された形態で提示することである。
【0007】
本開示は、波形又は信号発生器(例えば、ダイレクトデジタルシンセサイザ(DDS))のスケーリング及びプログラミングに関連する技術を説明する。より具体的には、本開示は、量子情報処理(QIP)システムのための波形又は信号発生器のスケーリング及びプログラミングに関連する技術を説明する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様では、QIPシステムにおいて複数のデジタル・アナログ変換器(DAC)カードを同期するためのネットワークを説明する。ネットワークは、DACカードを含み、各DACカードが、入力SYNCピンを有するクロック分周器/複製器装置と、デジタル論理コンポーネントと、1つ以上のDACコンポーネントであって、DACコンポーネントの出力のそれぞれが、QIPシステムの別個の量子ビットのための1つ以上の光ビームを制御するために使用される、1つ以上のDACコンポーネントと、を有する。ネットワークは、複数のDACカードのそれぞれのクロック分周器/複製器装置にクロック信号を提供するための第一の分配ネットワークと、複数のDACカードのそれぞれに中央起動信号を提供するための第二の分配ネットワークをさらに含む。複数のDACカードのそれぞれについて、中央起動信号は、DACカード内のデジタル論理コンポーネントによって使用され、中央起動信号がアサートされていることに応答して、中央起動信号がデジタル論理コンポーネントによってマスクされない限り、DACカードのクロック分周器/複製器装置の入力SYNCピンをアサートする。
【0009】
本開示の別の態様では、QIPシステムにおいて量子ビットを制御するためのDACカードを説明する。DACカードは、デジタル論理コンポーネントを含むことができ、デジタル論理コンポーネントは、DACカードの各出力用の1つ以上のダイレクトデジタルシンセサイザ(direct digital synthesizer:DDS)であって、各出力が、QIPシステムの別個の量子ビットのための1つ以上の光ビームを制御する、1つ以上DDSと、1つ以上のDDSにコマンドを集合的に提供する表のペアであって、表の前記ペアの第一の表は関数表であり、表の前記ペアの第二の表は命令表であり、関数表は、1つ以上のDDSによって生成されたパラメータ化関数を定義し、命令表は、前記関数表へのサブルーチンコール又は前記関数表の条件付きループ命令を定義する、表のペアと、を有する。DACカードは、1つ以上のDACコンポーネントをさらに含むことができ、各DACコンポーネントは、DACカードの1つ以上の出力を提供し、各DACコンポーネントは、1つ以上のDDSによって生成されたパラメータ化関数を受け取り、1つ以上の出力を生成し、パラメータ化関数はデジタル形式であり、1つ以上の出力はアナログ形式である。
【0010】
本明細書で説明されるのは、波形又は信号発生器のスケーリング及びプログラミングのための技術の実装に関連する様々な態様のための方法、装置、及びコンピュータ可読記憶媒体である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
添付の図面は、いくつかの実施態様のみを示しており、したがって、範囲を限定するものと見なされるべきではない。
【0012】
【
図1A】本開示の態様に従って、原子イオンを結晶にトラップするための電極を収容する真空チャンバの図を示す。
【
図1B】本開示の態様に従って、状態初期化のためのレーザ放射(例えば、光ビーム)の印加を示す低減エネルギー準位図の一例を示すダイアグラムである。
【
図1C】本開示の態様に従って、蛍光を介した量子ビット状態検出のためのレーザ放射(例えば、光ビーム)の印加を示す低減エネルギー準位図の一例を示すダイアグラムである。
【
図2A】本開示の態様に従うラマンビーム幾何学形状の一例を示すダイアグラムである。
【
図2B】本開示の態様に従って、量子ビット状態を結合するコヒーレント誘導ラマン遷移を示すエネルギー準位図を示すダイアグラムである。
【
図3】本開示の態様に従って、音響光学変調器(AOM)を使用する回折レーザ又は光ビームの周波数依存性の一例を示すダイアグラムである。
【
図4A】本開示の態様に従って、デジタル・アナログ変換(DAC)カードの一例を示す。
【
図4B】本開示の態様に従って、DACカードに複数のダイレクトデジタルシンセサイザ及び命令及びスプライン表を実装する一例を示す。
【
図4C】本開示の態様に従って、量子ビットとして使用されるトラップされた原子イオンの動作を制御するために複数のDACカードを使用する一例を示す。
【
図5A】本開示の態様に従って、複数のDACカードのための起動信号分配ネットワークの一例を示す。
【
図5B】本開示の態様に従って、複数のDACカードのためのクロック分配ネットワークの一例を示す。
【
図6】本開示の態様に従って、命令表と関数又はスプライン表とを組み合わせた動作の一例を示す。
【
図7】本開示の態様に従うコンピュータ装置の一例を示すダイアグラムである。
【
図8】本開示の態様に従うQIPシステムの一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
添付の図面に関連して以下に記載される詳細な説明は、様々な構成の説明として意図されるもので、本明細書で説明される概念が実施され得る唯一の構成を表すことを意図していない。詳細な説明は、様々な概念の完全な理解を提供する目的で、特定の詳細を含む。しかしながら、これらの概念は、これらの特定の詳細なしに実施され得ることは、当業者には明らかであろう。場合によっては、そのような概念を曖昧にしないようにするために、周知のコンポーネントがブロック図の形態で示される。
【0014】
上述したように、トラップイオンは、量子情報処理システムを実装するために使用されてもよい。原子ベースの量子ビットは、量子メモリ、量子コンピュータやシミュレータの量子ゲート、量子通信ネットワークのノードなど、様々なタイプの装置として使用できる。トラップされた原子イオンに基づく量子ビットは、非常に良好なコヒーレンス特性を有することができ、ほぼ100%の効率で準備して、測定することができ、光場及びマイクロ波場などの適切な外部制御場とのクーロン相互作用を変調することによって、互いに容易にもつれさせることができる。本開示で使用されるように、用語「原子イオン」、「原子」、及び「イオン」は、結晶、又は同様の配列もしくは構成を形成するためにトラップ内に閉じ込められることになるか、又は実際に閉じ込められている粒子で、量子計算やシミュレーションで量子ビットとして使用されるものを説明するために互換的に使用されることがある。本開示は、QIPシステムを含む、原子量子ビットに基づく異なるタイプのシステムで使用するためのコヒーレント波形又は信号発生器(例えば、DDS)をスケーラブルでプログラム可能なものにすることのできる技術を説明する。
【0015】
量子情報及び計測目的に使用される典型的なイオントラップの幾何学的形状又は構造は、線形無線周波数(RF)パウルトラップ(Paul trap)(RFトラップ、表面トラップ、又は単にパウルトラップとも呼ばれる)であり、ここで、近くの電極層は、イオンの効果的で不均一な高調波閉じ込めにつながる静的及び動的電位を保持する。RFパウルトラップは、荷電粒子を特定の領域、位置、又は場所にトラップするために、又は閉じ込めるために電場を使用するタイプのトラップである。原子イオンがこのようなトラップで非常に低温までレーザ冷却されると、原子イオンは量子ビットの静止結晶(例えば、量子ビットの構造化配列)を形成し、クーロン斥力が外部閉じ込め力と釣り合う。十分なトラップ異方性のために、イオンは、閉じ込めの弱い方向に沿って結晶を形成することができ、これは、量子情報及び計測学における用途で典型的に採用される配列である。
【0016】
図1Aは、例えば、線形RFパウルトラップなどの線形トラップを使用して(真空チャンバ内の電極を使用して)、結晶110内の原子イオンのトラップを表すダイアグラム100を示す。結晶110は、例えば、線形結晶又は線形格子であり得る。
図1Aに示す例では、量子システムの真空チャンバは、結晶110に閉じ込められたN(N≧1)個の原子イッテルビウムイオン(例えば、
171Yb
+イオン)120を電極のセットを含むことができ、レーザ冷却して、ほぼ静止させることができる。トラップされる原子イオンの数は、構成可能であり得る。原子は、
171Yb
+の共鳴に調整されたレーザ放射で照射され、原子イオンの蛍光がカメラに画像化される。一例として、原子イオンは、互いに約5マイクロメートル(μm)の距離215だけ離れており、これは、蛍光によって確認できる。原子イオンの分離は、外部閉じ込め力とクーロン反発力との間のバランスによって決定される。
【0017】
個々のトラップ原子イオンの強い蛍光は、光子の効率的なサイクルに依存し、したがって、イオンの原子構造は、運動のレーザ冷却、量子ビット状態の初期化、及び効率的な量子ビット読み出しを可能にする強い閉じた光学遷移を有さなければならない。これによって、アルカリ土類(Be
+、Mg
+、Ca
+、Sr
+、Ba
+)及び特定の遷移金属(Zn
+、Hg
+、Cd
+、及びYb
+)のように外殻電子が1つしかないシンプルな原子イオン以外の、多くの原子イオンが除外される可能性がある。これらの原子イオン内で、量子ビットは、2つの安定な電子準位によって表し、しばしば、2つの状態|↑>及び|↓>、又は等価である|1>及び|0>の有効スピンによって特徴付けることができる。
図1B及び
図1Cは、原子イオン
171Yb
+に対する低減エネルギー準位
図125及び155をそれぞれ示し、ここで、量子ビットレベル│↑>及び│↓>130は、基底電子状態における安定な超微細準位によって表され、周波数ω
0/2π=12.64GHzだけ分離される。
171Yb
+の励起電子状態│e>及び│e’>140は、より小さな超微細結合によってそれら自身が分割され、369.53nmの光波長に対応するエネルギーを有する光間隔だけ基底状態から隔てられている。
【0018】
これらの光学遷移における共鳴の直下で調整されたレーザ放射は、ドップラーレーザ冷却によってトラップの底部近くに原子イオンを閉じ込めることが可能になる。他のより洗練された形態のレーザ冷却は、原子イオンをトラップ内でほぼ静止させることができる。
【0019】
二色性レーザ又は光ビーム(例えば、光変調から生じる側波帯によって生成される2つのトーンを有する光ビーム)が、│↑>⇔│e>遷移及び│↓>⇔│e’>遷移の両方と共鳴して原子に印加されると、それは、速やかに状態│↓>になり、もはや光場と相互作用せず、本質的に100%の忠実度で量子ビットの初期化を可能にする(例えば、
図1B参照)。
【0020】
│↑>⇔│e>遷移と共鳴する単一のレーザビームが印加されると、閉サイクル光学遷移により、│↑>状態のイオンが強く蛍光を発するが、│↓>状態のイオンは、レーザ周波数がその共鳴から離れているので、暗いままである(例えば、
図1C参照)。この蛍光のごくわずかな部分の収集ですら、ほぼ完全な効率又は精度で原子量子ビット状態の検出を可能にする。他の原子種も同様の初期化/検出スキームを有することができる。
【0021】
図1B及び
図1Cでは、励起電子状態│e>及び│e’>140からの許容される全ての遷移が、下向きの波打った矢印として示されている。一方、印加されたレーザ放射(上向きの直線矢印として示されている)は、これらの遷移を駆動して、
図1Bに示されているように状態│↓>に初期化し、また
図1Cに示されているように量子ビット状態の蛍光(│↑>=蛍光あり、│↓>=蛍光なし)を検出する。
【0022】
図1A~
図1Cに記載されたタイプの量子ビットを使用して量子処理を実行するには、量子ビット内の量子情報の位相、周波数、振幅、及び/又は偏光を制御するために、レーザ又は光ビームを使用する必要がある。
【0023】
もつれ多重量子ビット操作に関しては、多くのトラップイオンの運動は、バネによって接続された振り子のアレイのように、クーロン相互作用を介して結合される。結晶内の原子イオン間で量子論理ゲートをもつれさせる自然な方法は、
図2Aに示すように、その運動を仲介物として使用することである。
図2Aは、ラマンビーム幾何学形状の一例を示すダイアグラム200と、光ビームの印加によって量子ビット内に運動が生成される場所を示している。ダイアグラム200には、原子イオン量子ビットを有する線形格子又は結晶110に向けられた光ビーム210及び220がある。同じ方向の光ビームは、共伝播光ビームと呼ばれることもあり、反対方向の光ビームは、非共伝播光ビーム又は対向伝播光ビームと呼ばれることもある。ビーム210(共伝搬する)は、集束ビーム又は個々にアドレス指定されたビームであるが、(ビーム210に対して対向伝搬する)ビーム220は、集束しないグローバルビームである。本明細書で使用する場合、レーザビーム、レーザ放射、光ビーム、光放射、ビーム、光フィールド、及びフィールドという用語は、同じ意味で使用されることがある。
図1A~
図1C及び
図2Bに関連して、
図2Bのダイアグラム230は、量子ビットレベルがエネルギーにおいて分離されており、量子ビットレベルの遷移を可能にするための異なるアプローチがあり得ることを示している。
【0024】
上述の光ビームの周波数、位相、振幅、及び/又は偏光を操作又は制御するために、音響光学変調器(AOM)が、量子計算及びシミュレーションのアプリケーションで使用される。1つ以上のRF信号及びレーザビームがAOMに印加され、RF信号がレーザビームの一部分にインプリントされる。その一部分は、影響を受けていないビームからAOMによって偏向(「回折」)され、空間的に分離することができる。
【0025】
量子情報の必要な操作を生成するために、しばしば、変調ビームのペアを、同じ原子に同時に照射する必要がある。AOMは、各RF信号特定の周波数(例えば、f1、f2など)に関連付けられている2つ以上のRF信号の和を適用することによって、複数の操作されたレーザビームを生成することができる。しかしながら、2つ以上のレーザビームが異なる周波数を有する場合、2つの変調ビームは、AOMによって回折された後は、重なり合わない。レーザビームは、両方のビームが原子で重なり合うように、原子又はイオン上に「再集束」(又は再結像)することができる。
【0026】
図3は、上述した回折レーザ又は光ビームの周波数依存性の一例を示すダイアグラム300を示す。この例では、第一のRF信号(例えば、変調信号)は、周波数又はトーンf1に基づいてRF発生装置310aによって生成され、第二のRF信号は、周波数又はトーンf2に基づいてRF発生装置310bによって生成される。これらの2つの信号は、加算器2315によって結合され、AOM320aに印加される。RF制御信号(第一のRF信号及び第二のRF信号)は、典型的には、デジタル波形をRF制御信号に表されるアナログ波形に変換するアナログ・デジタル変換器(DAC)によって生成されるアナログ信号である。
【0027】
AOM320aは、入射レーザビーム325を受け取るが、その一部は回折されない(例えば、ゼロ次回折によって生成される非回折レーザビーム330)。一方、2つの変調レーザビームは、AOM320aでの回折によって入射レーザビーム325から生成される(例えば、トーンf1については回折レーザビーム335aで、トーンf2については回折レーザビーム335bであり、いずれも一次回折によって生成される高次回折ビームを空間的にフィルタリングすることができる)。この2つの回折レーザビームは、異なる角度で回折し、共伝搬しない。したがって、2つの回折レーザビームは、光学素子340(例えば、f1については集束レーザビーム345a、及びf2については集束レーザビーム345b)によって、量子処理のためにイオントラップ内に形成された格子又は結晶110内のそれぞれのイオン又は原子120上に集束される必要がある(例えば、
図1A参照)。再集束レーザビームは、同じ伝搬方向でイオン又は原子120に到達しない(例えば、共伝搬しない)場合があり、これは量子状態動作に誤差を生じさせないように技術を適用することができる。
【0028】
量子情報処理システムがスケールアップするにつれて、すなわち、原子又はイオン120の数が増加するにつれて、上述の光ビームの周波数、位相、振幅、及び/又は偏光を操作又は制御するときに、同期及び位相関係を維持するように、様々な原子又はイオン120内のRF信号(例えば、RF制御信号)の同期及び位相関係を維持できることが重要である。
【0029】
図1A~
図3に関連して上述したように、例えば、量子コンピュータなどのトラップイオン量子情報処理システムは、結晶又は格子110内の原子又は原子イオン120のそれぞれに衝突するために、2つの非平行ラマンレーザビームを必要とし、同じトラップ内の他の原子又は原子イオン120に衝突する同様のレーザビームとの既知で安定な位相関係を有する。上述のように、レーザビームは、量子ビットに使用される原子種が
171Yb
+である場合、355ナノメートルであり得る。1つのグローバルビーム(例えば、
図2Aのダイアグラム200におけるグローバルビーム220)は、全ての量子ビットによって共有される。
【0030】
レーザ又は光ビームは、AOMを使用することによって、電子信号(例えば、
図3のダイアグラム300のRF制御信号)から、それらにインプリントされた位相を有することができ、それによって、位相制御が純粋な光学ドメインからほとんど電子ドメインになる。量子ビットに使用されるのが
171Yb
+の場合、レーザ又は光ビームを生成するために、355nm(例えば、紫外線)の光源を使用することができる。場合によっては、光源は、市販の半導体フォトリソグラフィのために使用され、トラップイオン量子情報処理に適応又は転用される光源であってもよい。光源によって生成された元のレーザ又は光ビームは、原子又は原子イオン120の各々を別々にアドレス指定するために、単一のグローバルビーム(例えば、
図2Aのダイアグラム200のグローバルビーム220)及び複数の個々のビーム(例えば、
図2Aのダイアグラム200のビーム210)に分割されてもよい。次いで、これらの光ビームは、
図3のダイアグラム300に示すように、1つ以上のAOMを通過させてもよく、そこでは、光学系を使用して、全部の原子又は原子イオン120に広がることができ、個々のビームを、そのそれぞれの原子又は原子イオン120上に狙い又は焦点を合わせることができるように、全グローバルビーム広げることができる。いくつかの例では、結晶又は格子110は、32個又はそれ以上の原子又は原子イオン120(例えば、100個又はそれ以上の原子又は原子イオン120まで)を含むことができ、必要とされる光ビームの数(及びそれらのそれぞれの電子信号、例えば、RF制御信号)は、原子又は原子イオン120の数に比例する。
図3のダイアグラム300に示される例は、各光ビームに対して1つのAOMのためのものであるが、マルチチャネルAOMを使用することも可能であり、この場合、単一セットの光学系は、マルチチャネルAOMによって生成される光ビームを操作するのに十分であり得る。量子ビットが
171Yb
+を含み、典型的なAOMが使用される場合、必要とされる電子信号は、例えば、150MHz~250MHzの間の周波数を有するであろう。
【0031】
上述したように、AOMへの電気入力を駆動するRF信号を生成するために使用される電子機器(例えば、制御信号の信号発生器)が、緊密に制御された位相関係を有することが重要である。これらの電子機器は、互いに対して特定の位相(例えば、16°又は567ピコ秒)を有する必要はないが、位相は、適用される較正が変化しないように、一組の実験又は計算の持続時間の間、実質的に固定される必要がある。好ましい動作では、信号発生器が最終的に電源オフ又はリセットされる前に発生した較正は、同じ信号発生器に電源が再投入されるか、又はリセットが解除される後の時点でも有効である。
【0032】
厳密に制御された位相関係を達成するために本開示で説明される態様は、複数の信号発生器が、RF制御信号をいくつかのAOM(又はマルチチャネルAOM)に提供するために使用されるとき、信号発生器は、共通ソースからそれらのデジタルクロックを導出するように構成され、その結果、同じ周波数で始まる良好な発振器でさえ、同じ期間にわたって異なる量をドリフトする傾向があるので、それらの出力は、より長い期間にわたって、所定の位相に留まることができる。
【0033】
本開示の別の態様では、量子情報処理システムによる実験(例えば、量子計算又はアルゴリズム)又はシミュレーションの過程中に、結晶又は格子内の各量子ビットを制御するために生成される電気信号(例えば、波形)の1つ以上のパラメータを個別に変更する必要があり得る(例えば、
図1Aのダイアグラム100の結晶又は格子110を参照)。量子ビットがどのように相互作用して進むべきかを示す特定の量子アルゴリズム又は量子シミュレーションのためのステートメント又は命令は、それに応じてパラメータを変化させるために、信号発生器に対する特定のコマンドセットにコンパイルされる必要がある。
【0034】
トラップイオン量子情報処理システムでは、使用され、制御する必要のあるレーザ又は光ビームには、いくつかの異なるタイプがあり得る。(1)運動を情報に伝達するためのパルスレーザ、
171Yb
+量子ビットの場合、これは紫外線(UV)光(例えば、355nm)を含み得る、(2)情報を走査又は削除するための連続波(CW)レーザ(ドップラー冷却)、
171Yb
+量子ビットの場合、これは369nm+14GHzのUV光を含み得る)、(3)量子ビット状態を準備するためのCWレーザ、
171Yb
+量子ビットの場合、これは369nm+2.105GHz光を含み得る、及び(4)量子ビット状態を検出するためのCWレーザ、
171Yb
+量子ビットの場合、これは369nmの光を含み得る。一例では、369nm(又は約370nm)のレーザ又は光ビームを、
2S
1/2と
2P
1/2との間で、
図2Bのダイアグラム230に示される遷移において使用してもよい。
【0035】
さらに、トラップイオン量子情報処理システムでは、アルゴリズム又はシミュレーションは、典型的には、以下のフェーズ:(1)粗いドップラー冷却、(2)パルスレーザとCWレーザとを交互にすることによる微細(側波帯)冷却、(3)全ての原子又は原子イオン(量子ビット)の既知の状態への準備、(4)パルスレーザを使用するアルゴリズム又はシミュレーションのための量子ビットもつれ(これは複数のステップを含むことができる)、及び(5)状態検出のうちの1つ以上のフェーズを含む。そのようなアルゴリズム又はシミュレーションでは、用語「ショット」は、上述のフェーズのそれぞれを実行することを指すことができ、用語「実験」は、多数のショット、例えば、100ショット~10,000ショットとの間のいずれかのショットを実行することを指すことができ、用語「パルス」は、単一量子ビット又はマルチ量子ビットコヒーレント演算を引き起こすためのアルゴリズム又はシミュレーションにおいて量子ビットもつれ中の信号発生器の動作を指すことができ、用語「パルス持続時間」は、単一量子ビット演算のための約10マイクロ秒(μs)の持続時間、及び二量子ビット演算のための約100μsの持続時間、(また3つ以上の量子ビットが含まれる場合には、おそらく、より長くなる)を指すことができ、用語「もつれ」は、2つ以上の量子ビット相互作用を有することを指すことができ、コヒーレント演算のみが量子ビット上で実行される限り、一つの量子ビットでの演算が他の量子ビットの演算に影響を及ぼすように依然として接続されることになる。
【0036】
状態検出(上述のフェーズ(5))の間、│0>状態と│1>状態との任意の重ね合わせにあり得る原子又は原子イオン(量子ビット)は、「0」又は「1」(明るい又は暗い)古典的状態に折り畳まれる。「0」又は「1」を検出する確率は、元の量子重ね合わせによって制御されるが、各ショットは量子ビットあたり1つのサンプルしか提供しないため、実験では、所望のレベルの精度で元の重ね合わせを推定するのに十分な大きさの統計母集団を得るために、多くのショットを必要とする。
【0037】
上述のように、信号発生器は、量子演算(例えば、アルゴリズム/計算又はシミュレーション)で使用されるレーザ又は光ビームを制御する電気信号(例えば、RF信号制御信号)を提供するために使用される。これらの電気信号は、AOMを使用することによってレーザ又は光ビームを制御することができる。本開示に記載されたタイプの信号発生器は、例えば、上述のフェーズ(2)及び(4)(微細(側波帯)冷却及びもつれ)に関連して使用されてもよい。
【0038】
いくつかの実験では、実験の過程にわたる信号発生器の挙動(例えば、生成/提供される波形又は信号、あるいは波形又は信号を生成するために使用されるパラメータ)は、実験が始まる前でさえ知られている。他の種類の実験では、実験自体からのフィードバックに基づいて、信号発生器の挙動が実験中に変化することが必要な場合がある。量子情報処理システムは、どちらのタイプの実験も処理するように構成されてもよい。
【0039】
任意の波形発生器(AWG)は、量子情報処理システムの信号発生器として使用されてきた。AWGは、典型的には、実験が実行される限り、対応するデジタル・アナログ変換器(DAC)が経時的に出力する全ての出力を記憶するように構成される。これは、多くのデータであり得るので、サンプルをコンピュータからAWGに転送するために長時間を消費し得る。この「アップロード時間」は、実験時間、実験が連続して何度も繰り返されてもよいかどうか、又は実験の各実行が短いか制限されているかどうかを支配することができる。したがって、AWGに依存するシステムは、特に、AWGに提供されるサンプルを生成するための情報がホスト又はネットワークからシステムにストリーミングされるときに、動作速度が制限される可能性がある。
【0040】
別のアプローチが提案されており、(例えば、Artiq project、https://m-labs.hk/artiq/を参照)、このアプローチでは、使用する波形又は信号の各サンプルを生成する代わりに、波形又は信号パラメータを明示的に指定している。すなわち、生成されるべき各アナログ電圧を指定するのではなく、ある期間にわたって信号又は波形を記述するために、いくつかのパラメータが指定される。この利点は、瞬間的なアナログ電圧よりもパラメータを指定するために必要なデータが少ないことである。パラメータが所与の間隔で変化する必要がない(例えば、振幅を優位に変化しても周波数が変化しない)場合、信号発生器ハードウェアは、外部の助けなくても、その周波数を自由に実行する方法を知っているので、空間を節約するために記述から省くことができる。
【0041】
さらに、信号パラメータに対する予測可能な変化(例えば、Tμs毎にNHzずつ周波数が増加する、又はTμs毎にフルスケール振幅のM千分の1ずつ振幅が増加する)も簡潔に記述することができる。したがって、信号発生器は、ある期間、新たな入力がなくても、正しいことを行うことができる。これらのタイプの変化が、所与の時間間隔の間、信号発生器の所望の挙動を完全に記述するのに十分である可能性は低く、したがって、追加のパラメータを設ける必要があるかもしれないが、利点は、これらの追加のパラメータ/変化が、しばしば提供される必要がないことであり、そのため、ここでも、信号発生器に押し込むデータが少なくて済むことである。
【0042】
一般に、「時間TにわたるNステップによる変化パラメータP」のようなステートメントによって示される変化は、信号発生器に線形方程式を伝える。波形又は信号に記述する必要のある形状に応じて、二乗又は三乗など、あるいはそれ以上の高次の項を有する複雑な方程式も役立つ。これらのパラメータの変化を記述する方法は、「スプライン」と呼ばれるか、又は称される。三次方程式の場合は、「三次スプライン」と呼ばれるか、又は称される。
【0043】
信号パラメータ及び/又は信号パラメータの変化を示すことによって波形又は信号を制御するために使用することができるハードウェアのタイプ(例えば、信号発生器)の一例は、ダイレクトデジタルシンセサイザ又はDDSとも呼ばれるダイレクトデジタル合成装置である。例えば、DDSは、要求された周波数を無限に生成することができる。DDSは、周波数及び/又は位相がいつでも指定されることを可能にし、DACに供給され得るサンプルを、新たに指定されたパラメータに一致するように、非常に迅速に変更する。振幅は、DDSが(典型的にはフルスケール振幅で動作することがあるように)本質的に変化を可能にするパラメータではなくてもよいが、振幅パラメトリック変調は、DDSの出力とDACの入力との間にデジタル乗算ユニットを挿入することによって、DDSの外部で容易に取り扱うことができる。内部的には、DDSは、正弦波DACサンプルのルックアップ表(LUT)と、精度を高めるためのいくつかの数学的能力とを含むことができる。DDSの数学的能力のいくつかの例には、テイラー級数(展開)、直線補間、及びローパスフィルタリングが含まれるが、これらに限定される必要はない。DDS装置又はDDSの典型的な動作に関するさらなる詳細は、一般に利用可能である(例えば、https://www.analog.com/en/analog-dialogue/articles/all-about-direct-digital-synthesis.html, https://en.wikipedia.org/wiki/Direct_digital_synthesisを参照)。
【0044】
DDSは、スタンドアロン集積回路(「チップ」)として、又は他の処理ブロックを有する集積回路に挿入するための知的財産(IP)ブロックとして実装することができ、通常、DDSのデジタル論理が内部又は外部DACに供給される。このようなIPブロックは、例えば、システムオンチップ(SOC)ソリューションを実装するために、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)又は特定用途向け集積回路(ASIC)で使用できる。例えば、上記のArtiq projectでは、DDS soft IPを無料で使用できる。さらに、XilinxやIntel/AlteraなどのFPGAメーカーもDDS IPブロックを販売しており、チップメーカーのAnalog DevicesもオープンソースのDDS IPブロックを有する。
【0045】
場合によっては、DACによって出力されるサンプルよりも遅いクロックレートでFPGA(又はASIC)のデジタル論理を実行することが望ましい。例えば、DACチャネルは、デジタル論理(例えば、DDS)から毎秒10億サンプルを受け入れることができるが、例えば、250MHzよりも速く動作しないように、FPGA上にデジタル論理を実装し、動作させることが望ましい場合がある。
【0046】
1つのアプローチは、より遅いクロックレートでDDSの並列コピーを実行することであり得る。例えば、単一のDDSの代わりに、DDS(又はサブDDS)の4つのインスタンスを実装し、毎秒10億サンプルを生成するために使用することができるが、各DDSは、実際には250MHzでクロックされる。複数のサブDDSは、0度、90度、180度、及び270度の位相オフセットで開始され、全て同じ周波数が与えられる。次に、それらは、通常、シリアライザ・デシリアライザ(SERDES)のような高速でデータをオフチップで供給するように特別に設計されたFPGA又はASICのある小さな部分を使用して、4つのサンプル(各サブDDSから1つ)が1クロック当たりDACに供給されるように、波形の異なる1/4部分をそれぞれ掃引する。
【0047】
この例では、FPGA又はASIC内部の論理、ランダムアクセスメモリ(RAM)、及びクロックリソースの約4倍を使用するDDSの4つのインスタンス(例えば、4つのDDS IPブロック)があるので、より高速のクロックレートでより少ないインスタンスを実行することが好ましい場合がある。この場合も、4つのサブDDSを使用する代わりに、毎秒10億個のDACサンプルの例を使用して、333MHzで3つのインスタンス、又は500MHzで2つのインスタンスを使用することが好ましい場合がある。上述のアプローチは、3つのインスタンスに対して(0、120、240)度、2つのインスタンスに対して(0、180)度の異なる位相オフセットを用いて、依然として使用される。クロックドメインを使用するゲートが少ない場合、チップ全体よりも高速に動作することが多いことに留意されたい。デュアル変化率先入れ先出し(FIFO)を使用して、小さい高速変化率ドメインと、より遅いクロックレート(おそらく250MHz)で動作するチップの多数との間でデータを通信することができる。
【0048】
量子情報処理システムの文脈において生じる可能性のある別の問題は、例えば、
図1Aのダイアグラム100内の結晶又は格子110内の全ての量子ビットを制御するのに十分な信号を生成するのに十分なDACチップを駆動できる単一のFPGA又はASICを見つけることができない可能性があることである。あるいは、1つのそのようなFPGAが利用可能である場合、そのコストは法外に高くなる可能性がある。さらに、そのようなFPGAを使用して基板を構築するのに必要な時間又はコストも、法外なものとなり得る。これらの場合の全てにおいて、システム中の原子又は原子イオン(量子ビット)の全体を制御するために、おそらくは別個の基板上で、多くの別個のFPGAを使用することが望ましい場合がある。システムはスケーラブルであり得る(例えば、量子ビットの数が増加され得る)ので、モジュール式又はスケーラブルなアプローチを有することは、システムが容易に展開されることを可能にし得る。全ての基板にわたる全てのDACの出力は同期される必要があり、その結果、これらの出力の相対位相は、好ましくは、電源投入とリセットの間で静的に保たれる。
【0049】
上述の問題に鑑みて、本開示は、スケーラブルな数の量子ビットを制御するのにQIPシステムで使用するために、物理的に別個のDACカードにわたってクロックを同期させる様々な態様又は技術を説明する。1つのそのような態様では、中央又は共通クロックは、受動スプリッタ(例えば、1:Nスプリッタ)を介して実行され、QIPシステム内の各DACカードに分配され、その結果、DACカードは、同時にクロックの立ち上がりエッジを見ることができる(例えば、
図5Bを参照)。DACカードは、また、DACボードと呼ばれてもよく、量子ビットを操作するためにレーザ又は光ビームを制御するのに使用されるDAC出力(例えば、アナログ電気信号)を提供する1つ以上のDACコンポーネント(例えば、DAC集積回路又はモジュール)を含んでもよい。全てのDACカードにクロックの立ち上がりエッジを同時に見せることを達成する1つの方法は、全て同じ長さの同軸ケーブルを使用することである。別のそのような態様では、DACカード上で、クロックは、クロック分周器/複製器装置を通って実行され、その結果、関連するクロック(例えば、DACカード上のローカルクロック)が、DACコンポーネントと、1つ以上のDDSが実装され得るFPGA又はASICのような接続されたデジタル論理との両方に到達することができる(例えば、
図4A及び
図4Bを参照)。クロック分周器/複製器装置は、全ての出力を既知の値に保持し、その出力のいくつかを駆動することができるカウンタをクリアする入力SYNCピンを有する。さらに別のそのような態様では、中央又は共通の起動信号も、QIPシステム内の全てのDACカードに分配される。この起動信号は、DACコンポーネントを駆動するために使用され、したがって、DACカードが同時に起動信号を得ることが望ましい。良好な信号完全性と高速の立ち上がり時間で起動信号を分配する1つの方法は、シールドされた二軸ケーブルを介する低電圧差動信号(LVDS)を使用することである(例えば、
図5Aを参照)。一例は、Samtec C28Sケーブルである(例えば、https://www.samtec.com/rf/components/original/bayonet-twinaxを参照)。さらに別のそのような態様では、分周器/複製器装置のSYNC入力ピンは、起動信号がアサートするたびに、(起動信号がマスクされない限り)アサートするようにプログラムされたデジタル論理(FPGA/ASICなど)の出力から駆動できる(例えば、
図4A参照)。この場合のFPGA/ASICは、DDSが実装されるものと同じであってもよい。
【0050】
DDSを搭載するデジタル論理(FPGA又はASICなど)で遅いクロックを優先する理由の1つは、入力クロックレートを1GHzから250MHzに下げた後、多くの分周器/複製器装置を全て同じクロックサイクルでクリアする(したがって、出力間の位相がゼロになる)方が簡単なためである。
【0051】
DACカード及びそれらの出力を同期させることに関する上記の態様及び技法を、
図4A~
図5Bに関連して以下でさらに詳細に説明する。
【0052】
図4Aは、本開示の態様に従うDACボード又はカード410の一例を示すダイアグラム400aを示す。個々の動作、装置、又は要素がDACカードを使用して制御され得るQIPシステム、又は他の何らかの同様のシステムは、DACカード410のうちの1つ以上を含むことができる。DACカード410の出力480の各々は、QIPシステム内の特定の量子ビットとともに使用される別個のレーザ又は光ビームを制御するために使用される。例えば、出力480の各々は、
図3のダイアグラム300において上述したように、AOMに印加されるRF制御信号のような、1つ以上の波形又は信号を含むことができる。この例におけるDACカード410は、8つの出力480を提供し、その結果、この単一のDACカード410がQIPシステムにおいて、8つまでの量子ビットを操作又は制御するために使用され得る。より多数の量子ビットの場合、追加のDACカード410をシステムに追加することができる。
【0053】
各DACカード410は、SYNC入力を有する分周器/複製器装置420と、デジタル論理コンポーネント430と、インターフェース論理460と、1つ以上のDACコンポーネント470(例えば、DAC-1、…、DAC-n)とを含む。DACコンポーネント470の各々は、サンプル、すなわち、デジタル波形又は信号を表すデジタル電圧を受け取り、サンプルを対応するアナログ波形又は信号(例えば、RF制御信号)を表すアナログ電圧に変換するように構成される。デジタル波形又は信号は、パラメータ化関数に基づいてデジタル論理コンポーネント430によって生成され、DACコンポーネント470への入力との互換性のためにインターフェース論理コンポーネント460によって適合される。
【0054】
分周器/複製器装置420は、上述の中央又は共通クロックに対応し得るクロック信号421を受信するように構成される。分周器/複製器装置420は、クロック信号421の変化率を分周するように構成されてもよく(例えば、クロック分周器として動作してもよく)、又はローカルクロック信号425を生成するときに、クロック信号421の変化率を単に複製するか、又は維持するように構成されてもよい。ローカルクロック信号425は、同期動作のために、デジタル論理コンポーネント430、インターフェース論理460、及び/又はDACコンポーネント470に供給される。
【0055】
デジタル論理コンポーネント430は、インターフェース論理コンポーネント460を介してDACコンポーネント470に提供されるサンプルを生成するように構成され得る。デジタル論理コンポーネント430は、非同期論理コンポーネント435、DDSコンポーネント440、及び表コンポーネント450を含むことができる。
【0056】
非同期論理コンポーネント435は、上述の中央起動信号又は共通起動信号に対応し得る起動信号436を受信し得、起動信号436が非同期論理コンポーネント435によってマスクされない限り、起動信号436がアサートされることに応答して、起動信号436を使用して、クロック分周器/複製器装置420の入力SYNCピンをアサートし得る。起動信号436は、また、複数のDACカード410にわたってDACコンポーネント470を同期させるために使用される。言い換えれば、起動信号436は、2つの目的に役立ち、システム内の全てのDACカード410に対して調整された起動を提供し、この場合、起動信号436は、非同期論理コンポーネント435によってマスクされ、分周器/複製器装置420に提供されないか、あるいはクロック分周器/複製器装置420の入力SYNCピンをアサートするために使用され得、この場合、起動信号436は、非同期論理コンポーネント435によってクロック分周器/複製器装置420からマスクされない。非同期論理コンポーネント435は、起動信号436に基づいて、クロック分周器/複製器装置420の入力SYNCピンをアサートするための別個の信号を生成することができる。
【0057】
DDSコンポーネント440は、DACカード410(例えば、
図4B参照)の各出力480に対して1つ以上の直接デジタル合成又はシンセサイザ(DDS)を実装するように構成される。上述したように、DDSは、一旦、位相及び周波数パラメータが与えられれば、無限にサンプルを構成することができる一種の信号発生器であってもよい。特定の出力480に対するDDSの各々は、出力480によってアナログ形式で提供されるべき波形又は信号のデジタル版に対応するパラメータ化関数を生成する。例えば、出力480は、
図3のダイアグラム300に例示されているように、AOMに印加される2つのトーン(f1、f2)に関連付けられた2つのRF制御信号を提供することができる。そのような場合、DDSコンポーネント440は、各出力480について2つのDDS、すなわち、第一のトーン(f1)に関連するRF制御信号に変換されるパラメータ化関数を生成する1つのDDSと、第二のトーン(f2)に関連するRF制御信号に変換されるパラメータ化関数を生成するもう1つのDDSとを含むことができる。DACカード410の異なる出力480に対して、異なるDDSのセットを実装することもできる。
【0058】
表コンポーネント450は、DACカード410の各出力に表のペアを記憶するように構成され、表のペアは、まとめて、その出力480のためにDDSコンポーネント440内の1つ以上のDDSにコマンドを提供する。表のペアは、関数表である第一の表と、命令表である第二の表とを含み、関数表は、各DDSによって生成されるパラメータ化関数(例えば、波形又は信号のデジタルサンプル)を定義し、命令表は、関数表に対するサブルーチンコール又は関数表に対する条件付きループ命令を定義する。いくつかの態様では、関数表によって定義されるパラメータ化関数は、スプライン曲線である。振幅、位相、又は周波数のうちの1つ以上を含む、スプライン曲線の複数のセグメントのそれぞれを定義又は特徴付けるために、様々なパラメータを使用することができる。
図4Aのダイアグラム400aに示すように、デジタル論理コンポーネント430は、パラメータ/構成情報431を受信することができ、パラメータ/構成情報431は、表コンポーネント450に記憶された様々な表内のパラメータをポピュレート及び/又は更新するために使用され得、DDSによってパラメータ化関数を生成するための基礎として使用される、
【0059】
デジタル論理コンポーネント430は、FPGA又はASICを用いて実装されるものとして上述されているが、DACカード410の部品又はコンポーネントのいくつかは、同じ集積回路(例えば、FPGA又はASIC)内に実装されてもよいことが理解されるべきである。例えば、デジタル論理コンポーネント430は、分割器/複製器装置420、インターフェース論理コンポーネント460、又はDACコンポーネント470のうちの1つ以上とともに、単一の集積回路内に実装することができる。また、DACカード410全体を単一の集積回路に実装することも可能であり、場合によっては、2つ以上のDACカード410を単一の集積回路に実装してもよい。
【0060】
図4Bは、DACカード410のようなDACカード内に複数のDDS及び命令及びスプライン表を実装する例を示すダイアグラム400bを示す。この例では、DACカード410は、2つのDACコンポーネント470(例えば、DAC-1及びDAC-2)を含むと仮定され、DACコンポーネント470のそれぞれは、DACカード410に対する合計8つの出力480のための4つの出力480を提供する。デジタル論理コンポーネント430内のDDSコンポーネント440は、8つの出力480をサポートするために複数のDDSを含む。例えば、DDS441の第一のセットは、第一のDACコンポーネント470の4つの出力480の各々に対して2つずつ、8つのDDSを含むことができ、DDS442の第二のセットは、第二のDACコンポーネント470の4つの出力480のそれぞれに対して2つずつ、8つのDDSを含むこともできる。セット441内のサブセット443は、第一のDACコンポーネント470の4つの出力440のうちの1つに対応する。サブセット443は、第一のトーン(f1)に関連する第一のRF制御信号を生成するために使用されるパラメータ化関数を生成するための第一のDDS444(DDS1A)と、第二のトーン(f2)に関連するRF制御信号を生成するために使用されるパラメータ化関数を生成するための第二のDDS445(DDS1B)とを含む。同様に、DDS2A及びDDS2Bは、第一のDACコンポーネントの異なる出力480とともに使用され、DDS3A及びDDS3Bも、DDS4A及びDDS4Bも同様である。上述と同様の構成は、DDS442の第二のセットにも使用され、これは、DDS5A及びDDS5B、DDS6A及びDDS6B、DDS7A及びDDS7B、ならびにDDS8A及びDDS8Bのペアを含む。これらのペアは、第二のDACコンポーネント470の4つの出力480においてRF制御信号を生成するために使用されるパラメータ化関数を生成する、
【0061】
デジタル論理コンポーネント430内の表コンポーネント450は、DDSコンポーネント440内のDDSをサポートするために複数の表を含む。例えば、表451の第一のセットは、第一のDACコンポーネント470の4つの出力480に関連するDDSの各ペアに対して2つずつ、8つの表を含むことができ、表452の第二のセットも、第二のDACコンポーネント470の4つの出力480に関連するDDSの各ペアに対して2つずつ、8つの表を含むことができる。セット451内のサブセット453は、DDSコンポーネント440内のDDS(DDS1A及びDDS1B)のサブセット443とともに使用される2つの表に対応する。この例では、サブセット453は、第一の表454(表1A)と第二の表455(表1B)とを含み、ここで、第一の表454は関数表であり、第二の表455は命令表である。同様に、セット451内の残りの表については、表2A(関数表)及び表2B(命令表)がDDS2A及びDDS2Bとともに使用され、表3A(関数表)及び表3B(命令表)がDDS3A及びDDS3Bとともに使用され、表4A(関数表)及び表4B(命令表)がDDS4A及びDDS4Bとともに使用される。上記と同様の配置は、表452の第二のセットでも使用され、この表452は、DDS5A及びDDS5Bで使用される表5A(関数表)及び表5B(命令表)、DDS6A及びDDS6Bで使用される表6A(関数表)及び表6B(命令表)、DDS7A及びDDS7Bで使用される表7A(関数表)及び表7B(命令表)、ならびにDDS8A及びDDS8Bで使用される表8A(関数表)及び表8B(命令表)を含む。関数表によって定義されるパラメータ化関数は、スプライン曲線であってもよいので、関数表は、例えば、スプライン表と呼ばれることもある。
【0062】
DDSコンポーネント440に示されるDDSのそれぞれは、FPGA又はASICにおけるDDS IPブロックの別個の異なるインスタンス化であってもよく、一方、表コンポーネント450における表のそれぞれは、FPGA又はASICにおけるメモリの別個の異なる部分に実装されてもよい。
【0063】
図4Cは、本開示の態様に従って、量子ビットとして使用されるトラップされた原子又は原子イオン(例えば、
図1Aのダイアグラム100における原子又は原子イオン120)の動作を制御するために複数のDACカード410を使用する例を示すダイアグラム400cを示す。この例では、QIPシステムで使用されるN個のDACカード410(例えば、DACカード410-1、…、DACカード410-N)があり、ここでN≧1である。DACカード410のそれぞれは、
図4Aのダイアグラム400aに示すように実装又は構成されてもよく、DACカード410の各々は、8つの出力480を有してもよい。次いで、出力480は、原子又は原子イオン120に印加されるレーザ又は光ビームを変調するために、それぞれのAOM又はマルチチャネルAOMに供給される。QIPシステムが32個までの原子又は原子イオン120をサポートする場合、4つのDACカード410(N=4)を使用して、必要とされる32個の出力480を提供することができる。QIPシステムがスケーラブルであり、原子又は原子イオン120の数が増加する場合、追加のDACカード410を使用して、適切な数の出力480を提供することができる。
【0064】
上述のように、DACカード410の各々は、クロック信号421(中央又は共通クロック信号とも呼ばれる)及び起動信号436(中央又は共通起動信号とも呼ばれる)を受信する。複数のDACカード410にわたる適切な同期を可能にするために、これらの信号は、QIPシステム全体の一部である分配ネットワークによって提供される。
【0065】
図5Aは、本開示の態様に従って、複数のDACカード410のための起動信号分配ネットワークの一例を示すダイアグラム500aを示す。ダイアグラム500aは、主制御信号512をデジタル論理コンポーネント515と交換する起動信号分配ネットワークの頂部にある主制御システム510を示す。主制御信号512は、主制御システム510からデジタル論理コンポーネント515へのSTART1信号及びSTART2信号と、デジタル論理コンポーネント515から主制御システム510へのDONE信号とを含む。START1信号及びSTART2信号は、デジタル論理コンポーネント515によって使用され、START+信号及びSTART-信号を有する差動スタート信号436を生成する。デジタル論理コンポーネント515は、FPGAを使用して実装されてもよい。一例では、デジタル論理コンポーネント515は、Xilinx Kintex7 FPGAを使用して実装され得る。
【0066】
起動信号436は、デジタル論理コンポーネント515によってスプリッタ520に提供され、スプリッタ520は、起動信号436を分割して、QIP装置で使用されるDACカード410(例えば、DACカード410-1、…、DACカード410-N)のそれぞれに、さらに提供されるように構成される。ここで、N≧1である。起動信号436は、
図4Aのダイアグラム400aに記載されているように、DACカード410のそれぞれに提供される。QIPシステムにはN個までのDACカード410が存在し得るので、スプリッタ520は、1:Nスプリッタと呼ばれ得る。上述したように、良好な信号完全性及び高速立ち上がり時間で起動信号436を分配する1つの方法は、シールドされた二軸ケーブルを介してLVDSのようなLVDSケーブル配線を使用することである。ダイアグラム500aに示すケーブル530(破線)のそれぞれは、起動信号436が種々のDACカード410に同時に到着するようにするのに必要な信号完全性と立ち上がり時間の種類を達成するために、LVDSベースのケーブルであってもよい。
【0067】
図5Bは、本開示の態様に従って、複数のDACカード410のためのクロック分配ネットワークの一例を示すダイアグラム500bを示す。ダイアグラム500bは、基準クロック信号541を乗算器コンポーネント(multiplier component)545に提供するクロック分配ネットワークの最上部にある基準クロック源540を示す。基準クロック源540は、クロック分配ネットワークの一部でなくてもよいが、基準クロック信号541を提供するためにクロック分配ネットワークに接続されてもよい。
【0068】
乗算器コンポーネント545は、基準クロック信号541を受信し、1つ以上の乗算器ステージを使用して基準クロック信号541からクロック信号421を生成するように構成されてもよい。一例では、乗算器コンポーネント545は、例えば、200MHz~12GHzの範囲の信号を生成するために、1つ以上の低ノイズ乗算器ステージを有するWenzel Associates社のゴールデン逓倍水晶発振器(GMXO-PLD)であってもよい。
【0069】
一例において、基準クロック源540は原子時計源であり、基準クロック信号541は10MHzの信号であり、乗算器コンポーネント545によって生成されるクロック信号421は250MHzの信号である。
【0070】
クロック信号421は、乗算器コンポーネント515によってスプリッタ550に提供され、このスプリッタは、クロック信号421を分割して、QIPシステムで使用されるDACカード410(例えば、DACカード410-1、…、DACカード410-N)のそれぞれにさらに提供されるように構成され、ここで、N≧1である。クロック信号421は、
図4Aのダイアグラム400aに記載されているように、DACカード410のそれぞれの分周器/複製器装置420に提供される。QIPシステムにはN個までのDACカード410が存在し得るので、スプリッタ550は、1:Nスプリッタと呼ばれ得る。上述のように、全てのDACカード410にクロック信号421の立ち上がりエッジを同時に見せることを達成する1つの方法は、全て同じ長さである同軸ケーブルの使用を通じてである。ダイアグラム500bに示すケーブル560(破線)のそれぞれは、同じ長さの同軸ケーブルであってもよい。
【0071】
DACカード及びそれらの出力を同期させることに関する上記の態様及び技術に加えて、本開示は、スプライン曲線の表現を強化するための態様及び技術も説明する。このスプライン曲線は、次いで、パラメータ化関数を生成するためにDDSによって使用される。この強化されたスプライン曲線表現は、シーケンスを再使用する2つの方法、(1)サブルーチン呼出しによる方法と、(2)条件付きループ命令による方法がある。
【0072】
これを達成するために、1つの表を使用する代わりに、上述のように2つの表(スプライン又は関数表及び命令表)を使用する(例えば、
図4Bを参照)。スプライン又は関数表内の列は、振幅、位相、周波数と、それらが発生すべき相対時間などのパラメータを指定する。命令表の列は、通常、スプライン表の一部のサブセクションに対する「サブルーチンコール」として機能するが、代わりに、ループ反復子として機能することもできる。
【0073】
空間を節約するために、単一のスプライン行(例えば、スプライン表内の単一の行)は、全てのパラメータを指定することができない。各行は、例えば、周波数勾配、初期位相、又は振幅加速度などの既知のパラメータセットのうちのどれを含むかを記述するためのオペコードフィールドを有する。スプライン表では、「スプラインノード」は、多くの連続したスプライン行からなる。スプラインノードの最後ではない行は、何らかの方法でマークされる。おそらく、常に存在する特殊なビット、又は通常は何らかの他の目的を持つフィールドの特殊な値、例えば、相対タイムスタンプフィールドにある全ての「1」である。さらに、全てのフィールドが、通常、ほとんどのスプラインノードで指定されるわけではない。指定されていないフィールドは、デフォルトでゼロ(「0」)のような静的値になるか、又は前のスプラインノードの端部に有していた値を保持する。これは、空間圧縮を達成するのに役立つ。例えば、振幅スプラインのゼロ次と二次の係数に対してゼロ以外の値を指定したいだけで、一次と三次の係数がゼロ(「0」)であるように完全に微細であるとき、一次と三次の2つの係数は省略することができる。別の例では、単一のスプラインオペコードが同じ行に2つ以上のパラメータを指定できる場合、パラメータが共通に使用されると、スペースを節約することができる。
【0074】
別の態様では、命令行(例えば、命令表内の行)は、スプライン行が指定できる振幅又は位相に対するモディファイア(modifiers)などの追加情報を有することが、時には有用である。
【0075】
別の態様では、命令表内の命令は、N個のカウンタのうちの1つを定数と比較する代替の「ジャンプ」変形例を有することができる。定数以上であれば、オペレーションは次の命令に進む。それ以外の場合は、カウンタをインクリメントしてから、命令表のユーザ定義の行にジャンプする。ジャンプ命令は、スプライン表への「サブルーチンコール」を引き起こさない。さらに、ジャンプ命令は、その目的のための全ての命令に予約ビットを有することによって、又は特別な値を使用することによって、非ジャンプ命令と区別することができる。
【0076】
さらに別の態様では、関数又はスプライン表及び命令表に関連して使用される2種類のタイムスタンプが存在し得る。例えば、各命令行は、グローバルタイムスタンプ(例えば、実験ショットが始まってからの時間の追跡に関連するタイムスタンプ)を使用することができ、一方、各スプライン行は、より狭い相対タイムスタンプ(例えば、スプラインサブルーチンが始まってからの時間の追跡に関連するタイムスタンプ)を有する。ただし、最後の行のタイムスタンプのみが、実行時間を制御するために使用できる。最後の行以外の行は、タイムスタンプのフィールドを使用して、例えば、最後の行ではないなど、他のことを示すことができる。グローバルタイムスタンプと相対タイムスタンプとの合計は、スプラインサブルーチンの第一の部分が実行されるために、実験ショットが開始されたときに、ワイドカウンタがクリアされるときである現在の時間に正確に対応する必要がある。
【0077】
上述の技法は、スプライン又は関数表に加えて、スプライン表をどのように再使用するかを示す命令表を使用することによって、スプライン関数を生成するときに、あるレベルの間接化を提供する。
【0078】
図6は、本開示の態様に従って、命令表610と関数又はスプライン表620との組み合わせ動作の一例を示すダイアグラム600を示す。命令表610は、表コンポーネント450内の命令表(例えば、
図4Aのダイアグラム400a及び
図4Bのダイアグラム400bを参照)に対応することができ、一方、スプライン表620は、表コンポーネント450内のスプライン表に対応することができる。
【0079】
この例の命令表610は、「コール(call)」と「ジャンプ(jump)」の2つのパラメータを有する。上述したように、「ジャンプ」は、命令表内で繰り返すために使用され、任意の数のカウンタを命令内にある値と比較し、ジャンプして繰り返す場合に、インクリメントすることができる。この例では、プログラム命令に1つの「コール」、1つの「ジャンプ」、及び1つの「終了」がある。「終了」は、タイムスタンプフィールド(例えば、絶対タイムスタンプ)内の「0」によって示されているが、他のフィールド又は特別な値を使用して、命令表610内の「終了」を示すことも可能である。
【0080】
「コール」と「ジャンプ」との違いは、フィールド内の特別な値によって示される。フィールドは、「ジャンプ先」フィールドと呼ばれてもよく、例えば、12ビットフィールドであってもよい。一例では、「ジャンプ先」フィールドの最大値は、「コール」ではなく「ジャンプ」であることを示すために予約され得る。
【0081】
この例の「コール」は、スプライン表620内の位置「123」を呼び出し、3行後にスプライン表620から戻るように意図されている。したがって、スプライン表620において明示的なリターンを使用するのではなく、命令表610内の「コール」において、サブルーチンがどれくらいの長さであるかを示すことが可能である。
【0082】
命令表610の右側には、対応するタイムスタンプ(絶対タイムスタンプ)があり、これは「コール」が発生する時刻である。それが現在時刻でない場合、この例では、それが値「11」になるまで、大きなカウンタを待つ。この値「11」は、使用される値ではなく、むしろ、これらの表の操作を実行しているエンジンは、命令表610内の値「11」を使用し、スプライン表620内の相対タイムスタンプフィールド(例えば、スプライン表620内の第三の列又は右の列)から対応する値をフェッチする。スプライン表620の第三の列の数「4」が「11」に加算されて「15」が得られ、これは、絶対タイムスタンプと相対タイムスタンプとによって与えられる組み合わされた時間値であり、実行を開始するためにシステムによって使用される値である(例えば、実行は「15」ティックで始まる)。
【0083】
スプライン表620は、どのパラメータが指定されているかを示す「Opコード」フィールド(スプライン表620の第一の列又は左の列)を有する。このアプローチは、ホストからのストリーミングによって定義されるスプライン関数又は波形を有することとは対照的であり、大量のメモリが必要とされる。ここでの意図は、表内のコンテンツをできるだけ圧縮して、共通の操作、パラメータなどを表すために使用されるメモリのビットを少なくすることである。例えば、スプライン表620について示される第一の行(例えば、ライン「123」)では、単一の行を使用して、周波数値、この場合は「200MHz」を指定することができる。別の例では、スプライン表620について示される第二の行(例えば、ライン「124」)では、単一の行を使用して、利得パラメータのゼロ次及び三次の値を指定することができる。ゲインパラメータの場合、ゼロ次は開始点と呼ばれ、一次は勾配と呼ばれ、二次は加速度と呼ばれ、三次はジャークと呼ばれる。この例では、第二の行は、ゼロ次又は開始点の値を「32k」として識別し、三次又はジャークを「0」(例えば、ジャークがない)として識別する。別の例では、スプライン表620の第三の行も「48°」の位相値が指定される。スプライン表620の第一の行及び第二の行の右列(例えば、相対タイムスタンプ)の「-1」は、これらの行がサブルーチンの最後の行ではないことを示す。行が最後の行ではないことを示すために、ビットフィールド又は何らかの特殊な値も使用されている可能性がある。
【0084】
一般に、一緒に行われる多くの行グループがあり、それらはスプライン表620内で同時に起こる何かの一部である。つまり、同じ行グループで行われる複数の修正は、同じクロックサイクルで行われる。したがって、全てのコマンドは、最後のコマンドにフラット化される。
【0085】
タイミングに関して関連するこれらの行のうちの唯一の行は、値「4」を有する最後の行(例えば、ライン「125」)である。表操作を実線しているエンジンは、相対タイムスタンプで「-1」のない1つの行であるライン「125」に到達するまで、様々な行を介して実行する。エンジンは、最後の行まで全てのコマンドを累積し、適切な時間に行われる全てのコマンド操作を展開する。様々な行で指定されていないパラメータは、システムがどのように動作するように設定されているかに応じて、デフォルトでゼロ値及び/又は以前の値に設定される可能性がある。
【0086】
上述の様々な態様に加えて、本開示の別の態様は、埋め込まれたDDS(例えば、DDSコンポーネント430内のDDS)を細かい粒度でリセットすることを可能にする関数を命令表に追加することを含む。これは、パルス境界を実現する場合に有用であり得る。例えば、各非ジャンプ命令位置は、命令のグローバルタイムスタンプと相対タイムスタンプとが現在の時刻と一致するときに、DDSにその内部位相アキュムレータをリセットするように命令させるビットフラグ(例えば、「再同期」ビットフラグ)を有することができる。
【0087】
この点に関して、命令表610は、別の列、例えば、単一ビットフィールドを含むことができ、これは、実行時間に達したときに表を実行するエンジンによって番号付けし直されることができ、実行され得ることのうちの1つは、DDSのための位相アキュムレータをクリアすることである。すなわち、実行時間が最終的に到達すると(例えば、
図6のダイアグラム600の例では、加算値が「15」である)、エンジンは、その内部位相を「0°」にクリアするようにそれぞれのDDSに指示するだけでなく、ライン「125」に示す位相に設定する、すなわち、代わりに、その位相を「48°」に設定するように指示してもよい。
【0088】
さらに別の態様では、特定の原子又は原子イオンの信号発生器(例えば、DDS)のための新たなスプラインをダウンロード又は更新する必要なしに、パラメータをグローバルにスケーリングすることができるように、上記で概説したスプライン機構以外のいくつかのパラメータを修正することも可能であり得る。そのような修正の一例は、原子又は原子イオンによって見られる光パワーを較正することであってもよい。あらゆる実験の「ショット」毎に電気的振幅を変化させることが望ましい場合があり、できるだけ遅れを少なくして明るさへの変化を追跡することができる。制御ループ内の帯域幅を増加させる技法を使用して、レイテンシを低下させることができ、その結果、明るさの急速な変化を、見逃すことなく追跡することができる。
【0089】
例えば、DDSは、通常、フルスケールで動作するので、パラメータ化関数がDDSによって提供された後に、乗算又はスケーリングによって、任意のより小さい値を達成することができる。DDSがFPGA又はASICに実装される場合、DDSは、そのような関数を実行するための乗算器を含むことができる。そうでない場合には、外部乗算器が必要とされてもよい。いずれの場合も、命令表610内のパラメータを調整するために乗算器を使用することができ、スプライン表620内のパラメータを調整するために異なる乗算器を使用することができ、及び/又はいずれか又は両方の表からのパラメータを調整するためにグローバル乗算器を使用することができる。
【0090】
図6Aのダイアグラム600に示される例は、DDSによって生成される波形又はパラメータ化関数のためのパラメータに関連して説明されたが、表の各ペア(例えば、命令表610及びスプライン表620)は、2つ以上のDDSの操作を制御するために使用され得る。このような場合、追加のフィールド又は列を使用して、サポートされている複数のDDSのどれが制御されているかを示すことができる。
【0091】
図7は、本開示の態様に従うコンピュータ装置705の一例を示すダイアグラム700である。コンピュータ装置705は、QIPシステムのためのスケーラブルでプログラム可能なコヒーレント波形発生器の態様を実装するために使用され得る。一例では、コンピュータ装置700は、本明細書で説明する特徴のうちの1つ以上に関連する処理機能を実行するためのプロセッサ710を含むことができる。例えば、コンピュータ装置705は、
図4A~
図6に関連して上述したDACカード410、ダイアグラム500a及び500bの分配ネットワーク、及び/又は表610及び620の動作を制御及び/又は管理するために使用され得る。プロセッサ710は、単一又は複数セットのプロセッサ又はマルチコアプロセッサを含んでもよい。さらに、プロセッサ710は、統合処理システム及び/又は分散処理システムとして実装されてもよい。プロセッサ710は、中央処理ユニット(CPU)、量子処理ユニット(QPU)、グラフィックス処理ユニット(GPU)、又はこれらのタイプのプロセッサの組合せを含むことができる。一態様では、プロセッサ710は、コンピュータ装置700の一般的なプロセッサを意味することができ、一般的なプロセッサには、より具体的な機能を実行する追加のプロセッサ710を含むこともできる。
【0092】
一例では、コンピュータ装置705は、本明細書に記載する機能を実行するために、プロセッサ710によって実行可能な命令を記憶するメモリ720を含んでもよい。一つの実装では、例えば、メモリ720は、本明細書に記載する1つ以上の機能又は操作を実行するためのコード又は命令を記憶するコンピュータ可読記憶媒体に対応することができる。一例では、メモリ720は、命令表及びスプライン表を含むことができる。プロセッサ710と同様に、メモリ720は、コンピュータ装置705の汎用メモリを指すことができ、このメモリは、より特定機能のための命令及び/又はデータを記憶する追加のメモリ720を含むこともできる。
【0093】
さらに、コンピュータ装置705は、ハードウェア、ソフトウェア、及びサービスを利用する1つ以上のパーティとの通信を確立して、維持するために提供する通信コンポーネント730を含んでもよい。通信コンポーネント730は、コンピュータ装置705上のコンポーネント間でも、コンピュータ装置705と、通信網を介して配置された装置及び/又はコンピュータ装置705にシリアル又はローカルに接続された装置のような外部装置との間でも通信を実行することができる。例えば、通信コンポーネント730は、1つ以上のバスを含むことができ、外部装置とインターフェースするために操作可能な送信機及び受信機にそれぞれ関連する送信鎖コンポーネント及び受信鎖コンポーネントをさらに含むことができる
【0094】
さらに、コンピュータ装置705は、データストア740を含むことができ、本明細書で説明する実装に関連して使用される情報、データベース、及びプログラムの大容量記憶を提供するハードウェア及び/又はソフトウェアの任意の適切な組合せとすることができる。例えば、データストア740は、オペレーティングシステム760(例えば、従来OS、又は量子OS)のためのデータリポジトリであってもよい。一つの実装では、データストア740は、メモリ720を含んでもよい。
【0095】
コンピュータ装置705は、また、コンピュータ装置705のユーザから入力を受信するように操作可能であり、さらにユーザに提示するための出力を生成するように、又は異なるシステムに(直接的又は間接的に)提供するように操作可能なユーザインタフェースコンポーネント750を含むことができる。ユーザインタフェースコンポーネント750は、1つ以上の入力装置を含むことができる。入力装置には、キーボード、ナンバーパッド、マウス、タッチセンシティブディスプレイ、デジタイザ、ナビゲーションキー、ファンクションキー、マイクロフォン、音声認識コンポーネント、ユーザからの入力を受信することができる任意の他の機構、又はそれらの任意の組合せが含まれるが、これらに限定されない。さらに、ユーザインタフェースコンポーネント750は、1つ以上の出力装置を含むことができる。出力装置には、ディスプレイ、スピーカ、触覚フィードバック機構、プリンタ、ユーザに出力を提示することができる任意の他の機構、又はそれらの任意の組合せが含まれるが、これらに限定されない。
【0096】
一つの実装では、ユーザインタフェースコンポーネント750は、オペレーティングシステム760の操作に対応するメッセージを送信及び/又は受信することができる。さらに、プロセッサ710は、オペレーティングシステム760及び/又はアプリケーション、プログラム、又はアルゴリズムを実行することができ、メモリ720又はデータストア740は、それらを格納することができる。
【0097】
コンピュータ装置705がクラウドベースのインフラ解決策の一部として実装される場合、ユーザインタフェースコンポーネント750を使用して、クラウドベースのインフラ解決策のユーザがコンピュータ装置705とリモートで対話できるようにすることが可能になる。
【0098】
図8は、本開示の態様に従うQIPシステム605の一例を示すブロック図である。QIPシステム805は、量子計算システム、量子コンピュータ、コンピュータ装置などと呼ばれることもある。一態様では、QIPシステム805は、
図7のコンピュータ装置705の量子コンピュータ実装の複数部分に対応し得る。
【0099】
QIPシステム805は、原子種(例えば、中性原子のフラックス)を、イオントラップ870を有するチャンバ850に提供するソース860を含むことができ、イオントラップ870は、光学コントローラ820によって一旦イオン化された(例えば、光イオン化された)原子種をトラップする。イオントラップ870は、(
図1Aのダイアグラム100aに図示されているように)結晶内にイオンをトラップするために使用されてもよい。光学コントローラ820内の光源830は、1つ以上のレーザ又は光ビーム源を含むことができ、これは、原子種のイオン化、原子イオンの制御(例えば、位相制御)のために、光学コントローラ820内の撮像システム840内で操作する画像処理アルゴリズムによって監視し、追跡することができる原子イオンの蛍光のために、及び/又は上述の技術と関連する他の光学制御機能を実行するために使用することができる。一態様では、光源830は、光学コントローラ820とは別個に実装することができる。
【0100】
撮像システム840は、イオントラップに提供されている間、又はイオントラップ870に提供された後に、原子イオンを監視するための高分解能撮像装置(例えば、CCDカメラ)を含んでもよい。一態様では、撮像システム840は、光学コントローラ820とは別個に実装することができるが、画像処理アルゴリズムを使用して原子イオンを検出し、識別し、ラベル付けするための蛍光の使用は、光学コントローラ820と調整する必要がある場合もある。
【0101】
音響光学変調器(AOM)845は、光源830によって生成されるレーザ又は光ビームの変調を実行するために使用されてもよい。これに関して、光学コントローラ820は、また、上記のDACカード410の例となり得るDACカード846を含むことができ、これは、AOM845を変調するために無線周波数(RF)源847を駆動するための出力を生成するために使用することができる。
【0102】
QIPシステム805は、またアルゴリズムコンポーネント810も含むことができ、アルゴリズムコンポーネント810は、QIPシステム805の他の部分(図示せず)とともに操作して、単一量子ビット演算又はマルチ量子ビット演算及び拡張量子計算を含む量子アルゴリズム又は量子演算を実行することができる。そのように、アルゴリズムコンポーネント810は、量子アルゴリズム又は量子演算の実装を有効にするために、QIPシステム805の様々なコンポーネント(例えば、光学コントローラ820)に命令を提供し、その結果、本明細書に記載される様々な技法を実装することができる。
【0103】
QIPシステム805は、また分配ネットワーク880を含むことができ、分配ネットワーク880は、
図5Bのダイアグラム500bに関連して上述した分配ネットワークに対応するクロック信号ネットワーク882と、
図5Aのダイアグラム500aに関連して上述した分配ネットワークに対応する起動信号ネットワーク883とを含み得る。分配ネットワーク880は、複数のDACカード486及び/又はQIPシステム805の他の部分に共通の信号を提供するために使用され得る。
【0104】
本開示は、図示された実装に従って提供されたが、当業者は、実施形態にバリエーションがあり得ることも、それらのバリエーションも本開示の範囲内にあることも容易に認識するであろう。したがって、添付の特許請求の範囲から逸脱することなく、当業者は多くの修正を行うことができる。
【手続補正書】
【提出日】2023-05-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
量子情報処理(QIP)システムで量子ビットを制御するためのデジタル・アナログ変換器(DAC)カードであって、
デジタル論理コンポーネントであって、
前記DACカードの各出力用の1つ以上のダイレクトデジタルシンセサイザ(DDS)であって、各出力が、前記QIPシステムの別個の量子ビットのための1つ以上の光ビームを制御する、1つ以上DDSと、
1つ以上のDDSにコマンドを集合的に提供する表のペアであって、表の前記ペアの第一の表は関数表であり、表の前記ペアの第二の表は命令表であり、前記関数表は、前記1つ以上のDDSによって生成されたパラメータ化関数を定義し、前記命令表は、前記関数表へのサブルーチンコール又は前記関数表の条件付きループ命令を定義する、表のペアと、
を有する、デジタル論理コンポーネントと、
1つ以上のDACコンポーネントであって、各DACコンポーネントは、前記DACカードの前記出力の1つ以上を提供し、各DACコンポーネントは、前記1つ以上のDDSによって生成されたパラメータ化関数を受け取り、前記1つ以上の出力を生成し、前記パラメータ化関数はデジタル形式であり、前記1つ以上の出力はアナログ形式である、1つ以上のDACコンポーネントと、
を備える、DACカード。
【請求項2】
前記関数表によって定義されるパラメータ化関数はスプライン曲線であり、前記スプライン曲線の各セグメントのパラメータは、振幅、位相、又は周波数のうちの1つ以上を含む、請求項1に記載のDACカード。
【請求項3】
前記振幅は、開始点又はゼロ次、勾配又は一次、加速度又は二次、あるいはジャーク又は三次のうちの1つ以上によって定義される、請求項2に記載のDACカード。
【請求項4】
前記関数表によって定義されるパラメータ化関数はスプライン曲線であり、前記関数表が複数のスプラインノードを含み、各スプラインノードが前記スプライン曲線のそれぞれのセグメントを定義するためのパラメータを含む、請求項1に記載のDACカード。
【請求項5】
各スプラインノードは、1つ以上の連続する行を含み、各行は、前記スプライン曲線の前記それぞれのセグメントの異なるパラメータを指定する、請求項4に記載のDACカード。
【請求項6】
各行は、前記行によって定義されている前記異なるパラメータを識別する識別子を有する、請求項5に記載のDACカード。
【請求項7】
前記識別子は、前記行によって定義されている2つ以上の異なるパラメータを識別する、請求項6に記載のDACカード。
【請求項8】
各スプラインノードの端部が、前記スプラインノードの前記1つ以上の連続する行の最後の行で明示的に識別される、請求項4に記載のDACカード。
【請求項9】
スプライン表の各行は、タイムスタンプフィールドを含み、前記最後の行の前記明示的な識別は、前記最後の行のそれぞれの前記タイムスタンプフィールドで行われる、請求項8に記載のDACカード。
【請求項10】
前記スプラインノードの1つ以上の行で指定されていない前記スプライン曲線の前記それぞれのセグメントの1つ以上の異なるパラメータが、デフォルトで静的な値になるか、又は直前のスプラインノードの端部からの値を保持する、請求項4に記載のDACカード。
【請求項11】
前記関数表で定義されたパラメータ化関数はスプライン曲線であり、前記スプライン曲線の各セグメントのパラメータは、振幅、位相、又は周波数の1つ以上を含み、
前記命令表は、振幅又は位相パラメータの一方又は両方を変更するための命令を含む、
請求項1に記載のDACカード。
【請求項12】
前記命令表は、1つ以上のジャンプ命令を含み、各ジャンプ命令は、N個のカウンタのうちの1つを定数と比較し、前記定数以上の場合、次の命令にフォールスルーし、前記定数未満の場合、前記カウンタをインクリメントして、前記命令表のユーザ定義された行にジャンプする、請求項1に記載のDACカード。
【請求項13】
前記1つ以上のジャンプ命令は、予約ビットを有することによって、又は特別な値を使用することによって、前記命令表の他の命令と区別可能である、請求項12に記載のDACカード。
【請求項14】
前記命令表の行は、実験ショットの開始以降の追跡操作のためのグローバルタイムスタンプフィールドを含み、前記関数表の行は、前記パラメータ化関数のそれぞれのセグメントを定義するスプラインノードに関連付けられた操作を追跡するための相対タイムスタンプを含む、請求項1に記載のDACカード。
【請求項15】
前記スプラインノードが実行される現在の時刻は、グローバルタイムスタンプの値と前記相対タイムスタンプの値との合計である、請求項14に記載のDACカード。
【請求項16】
ジャンプ命令とは異なる、前記命令表内の命令について、ビットフラグ再同期は、前記命令表に関連する前記1つ以上のDDSに、前記パラメータ化関数の境界で内部位相アキュムレータをリセットさせるように構成される、請求項1に記載のDACカード。
【請求項17】
前記内部位相アキュムレータの前記リセットは、前記命令表内のグローバルタイムスタンプフィールドの値と、前記関数表内の相対タイムスタンプフィールドの値が現在の時刻と一致するときに発生する、請求項16に記載のDACカード。
【請求項18】
各DACコンポーネントの前記1つ以上の出力の振幅を制御するように構成された1つ以上の増幅器をさらに備える、請求項1に記載のDACカード。
【請求項19】
前記デジタル論理コンポーネントは、プログラム可能な集積回路に実装され、前記関数表及び前記命令表は、前記プログラム可能な集積回路内の別個のメモリに実装される、請求項1に記載のDACカード。
【請求項20】
前記DACカードは、2つ以上の出力を有し、
前記DACカードの各出力の前記デジタル論理コンポーネントに対して、DDSのペアがあり、
DDSの各ペアに対して、表のペアがある、
請求項1に記載のDACカード。
【請求項21】
制御されている前記QIPシステムの各別個の量子ビットは、前記QIPシステムのトラップ内の原子又は原子イオンに対応する、請求項1に記載のDACカード。
【請求項22】
前記デジタル論理コンポーネントを前記1つ以上のDACコンポーネントに接続するインターフェース論理をさらに備える、請求項1に記載のDACカード。
【請求項23】
入力SYNCピンを有するクロック分周器/複製器装置をさらに備え、前記デジタル論理コンポーネントは、起動信号を受信するように構成され、前記起動信号は、前記起動信号が前記デジタル論理コンポーネントによってマスクされない限り、前記クロック分周器/複製器装置の入力SYNCピンをアサートするために使用される、請求項1に記載のDACカード。
【請求項24】
前記デジタル論理コンポーネントは、前記起動信号を受信し、前記クロック分周器/複製器装置の前記入力SYNCピンをアサートするために別の信号を生成するように構成される非同期論理コンポーネントを含む、請求項23に記載のDACカード。
【外国語明細書】