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特開2023-109939改善された血清アルブミン結合性免疫グロブリン単一可変ドメイン
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023109939
(43)【公開日】2023-08-08
(54)【発明の名称】改善された血清アルブミン結合性免疫グロブリン単一可変ドメイン
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20230801BHJP
   C07K 16/18 20060101ALI20230801BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20230801BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230801BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/18 ZNA
C07K19/00
A61K39/395 D
A61K39/395 N
【審査請求】有
【請求項の数】21
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023085495
(22)【出願日】2023-05-24
(62)【分割の表示】P 2019530389の分割
【原出願日】2017-12-07
(31)【優先権主張番号】62/430,972
(32)【優先日】2016-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】505166225
【氏名又は名称】アブリンクス エン.ヴェー.
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】スターレンス,ステファニー
(72)【発明者】
【氏名】シュテッフェンゼン,ソレン
(72)【発明者】
【氏名】モリゾ,エリカ
(72)【発明者】
【氏名】ポンサーツ,ラーフ
(72)【発明者】
【氏名】オットヴェール,イングリット
(72)【発明者】
【氏名】セルドベル,アン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】改善された特性を有する血清アルブミン結合剤を提供する。
【解決手段】血清アルブミンに結合することのできるアミノ酸配列を開示する。特に、血清アルブミンに結合することのできる、免疫グロブリン単一可変ドメイン、特に重鎖免疫グロブリン単一可変ドメインに関する。本発明はまた、本明細書に記載されている血清アルブミンに結合する免疫グロブリン単一可変ドメインの少なくとも1つを含む、タンパク質、ポリペプチド、及び他の構築物、化合物、分子、又は化学的実体にも関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
-アミノ酸配列GLTFSSYAMG(配列番号12)又は配列番号12のアミノ酸配列に対して2つ又は1つのアミノ酸の相違(群)(本明細書に定義したような)を有するアミノ酸配列であるCDR1(Abmによる);及び
-アミノ酸配列SISRGGGYTY(配列番号13)又は配列番号13のアミノ酸配列に対して3つ、2つ、又は1つのアミノ酸の相違(群)(本明細書に定義したような)を有するアミノ酸配列であるCDR2(Abmによる);及び
-アミノ酸配列ARYWATGSEYEFDY(配列番号14)又は配列番号14のアミノ酸配列に対して3つ、2つ、又は1つのアミノ酸の相違(群)(本明細書に定義したような)を有するアミノ酸配列であるCDR3(Abmによる)
を有する、(ヒト血清アルブミン)に結合することのできる免疫グロブリン単一可変ドメインであるアミノ酸配列。
【請求項2】
-アミノ酸配列GLTFSSYAMG(配列番号12)であるCDR1(Abmによる);及び
-アミノ酸配列SISRGGGYTY(配列番号13)であるCDR2(Abmによる);及び
-アミノ酸配列ARYWATGSEYEFDY(配列番号14)であるCDR3(Abmによる)
を有する、請求項1記載のアミノ酸配列。
【請求項3】
ProteOnを使用して決定したところ、100nMよりも良好な、好ましくは50nMよりも良好な親和性でヒト血清アルブミンに結合することのできる、請求項1記載のアミノ酸配列。
【請求項4】
重鎖免疫グロブリン単一可変ドメインである、請求項1~3のいずれか記載のアミノ酸配列。
【請求項5】
VHH、ヒト化VHH、又はラクダ化VH(特に、ラクダ化ヒトVH)である、請求項1~4のいずれか記載のアミノ酸配列。
【請求項6】
-6時間を超える、好ましくは12時間を超える、より好ましくは24時間を超える、さらにより好ましくは72時間を超えるヒトにおける血清中半減期(t1/2βとして表現される)を有するような;
及び/又は
-治療用部分又は実体に連結されると、結果として得られた本発明のポリペプチドに、6時間を超える、好ましくは12時間を超える、より好ましくは24時間を超える、さらにより好ましくは72時間を超えるヒトにおける血清中半減期(t1/2βとして表現される)を付与するような、請求項1~5のいずれか記載のアミノ酸配列。
【請求項7】
-少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%の、配列番号15の配列に対する配列同一度(ここでの存在し得るCDR及び任意のC末端伸長は、配列同一度の決定の際に考慮されない)を有する;
及び/又は、
-配列番号15の配列に対して7以下、好ましくは5以下、例えばたったの3つ、2つ、又は1つの「アミノ酸の相違」(本明細書に定義されているような、そして存在し得るCDR及び任意のC末端伸長は考慮されない)を有する、請求項1~6のいずれか記載のアミノ酸配列。
【請求項8】
配列番号15の配列と比較して、既存の抗体による結合を低減させる1つ以上の突然変異を含有している、請求項1~7のいずれか記載のアミノ酸配列。
【請求項9】
VHHであり、そして配列番号15の配列と比較して、1つ以上のヒト化置換を含有している、請求項1~8のいずれか記載のアミノ酸配列。
【請求項10】
(ヒト)血清アルブミンに結合することができる免疫グロブリン単一可変ドメインであり、かつ配列番号15~77から選択される、アミノ酸配列。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか記載の少なくとも1つのアミノ酸配列を含む、タンパク質、ポリペプチド、又は他の構築物、化合物、分子、若しくは化学的実体。
【請求項12】
少なくとも1つの治療用部分又は実体を含む、請求項11記載のタンパク質、ポリペプチド、又は他の構築物、化合物、分子、若しくは化学的実体。
【請求項13】
融合タンパク質である、請求項11又は12記載のタンパク質、ポリペプチド、又は他の構築物、化合物、分子、若しくは化学的実体。
【請求項14】
6時間を超える、好ましくは12時間を超える、より好ましくは24時間を超える、さらにより好ましくは72時間を超えるヒトにおける血清中半減期(t1/2βとして表現される)を有する、請求項11~14のいずれか記載のタンパク質、ポリペプチド、又は他の構築物、化合物、分子、若しくは化学的実体。
【請求項15】
-そのC末端にISVDを有している場合、タンパク質、ポリペプチド、化合物、構築物(のC末端ISVD)が、そのC末端にC末端伸長(X)(本明細書にさらに記載されているような)を有し;及び/又は
-そのC末端にISVDを有している場合、少なくともC末端ISVDが、既存の抗体の結合を低減させる1つ以上の突然変異(本明細書にさらに記載されているような)を含有し;及び/又は
-そのN末端にISVDを有している場合、タンパク質、ポリペプチド、化合物、構築物(のN末端ISVD)が好ましくは、1位にDを含有し;及び/又は
-該ISVDにおいて、タンパク質、ポリペプチド、又は他の化合物が、そのN末端にもISVDを有し得、その場合には該N末端ISVDが好ましくは、1位にD又はE1Dを有し;及び/又は
-好ましくは、タンパク質、ポリペプチド、化合物、構築物に存在する実質的に全てのISVDが、既存の抗体の結合を低減させる1つ以上の突然変異を含有しているような、
請求項11~14のいずれか記載のタンパク質、ポリペプチド、又は他の構築物、化合物、分子、若しくは化学的実体。
【請求項16】
請求項11~15のいずれか記載のタンパク質、ポリペプチド、又は他の構築物、化合物、分子、若しくは化学的実体を含む、医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血清アルブミンに結合することのできるアミノ酸配列に関する。
【0002】
特に、本発明は、血清アルブミンに結合することのできる、免疫グロブリン単一可変ドメイン、特に重鎖免疫グロブリン単一可変ドメインに関する。
【0003】
本明細書に記載されているように、本発明によって提供される免疫グロブリン単一可変ドメインは好ましくは、ヒト血清アルブミンに(少なくとも)結合(特に特異的に結合)することができるようなものである。より好ましくは、本明細書にさらに記載されているように、これらの免疫グロブリン単一可変ドメインは好ましくはさらに、ヒト血清アルブミンと少なくとも1種の他の哺乳動物に由来する血清アルブミンとの間で交差反応性(本明細書に記載のような)であるようなものである。
【0004】
本発明はまた、本明細書に記載されている血清アルブミンに結合する免疫グロブリン単一可変ドメインの少なくとも1つを含む、タンパク質、ポリペプチド、及び他の構築物、化合物、分子、又は化学的実体に関する。
【0005】
免疫グロブリン単一可変ドメインはまた一般的には、本明細書において略称「ISV」又は「ISVD」(これは本明細書において互換的に使用されるだろう)を用いて言及されるだろう。
【0006】
本明細書に記載されている血清アルブミンに結合する免疫グロブリン単一可変ドメインはまた、本明細書において「本発明のアミノ酸配列」又は「本発明の血清アルブミン結合剤」と称されるだろう。本明細書にさらに記載されているように、本発明のアルブミン結合剤は特にナノボディーズ(本明細書にさらに記載されているような)であり得る。
【0007】
本発明の血清アルブミン結合剤の少なくとも1つを含むタンパク質、ポリペプチド、及び他の構築物、化合物、分子、又は化学的実体はまた、本明細書において「本発明の化合物」又は「本発明のポリペプチド」と称されるだろう。好ましくは、本発明の化合物はタンパク質又はポリペプチドであり、特に融合タンパク質であり得る。
【0008】
本発明の他の態様、実施態様、特色、用途、及び利点は、本明細書の開示に基づいて当業者には明らかであろう。
【0009】
本出願において、免疫グロブリン重鎖可変ドメイン内のアミノ酸残基/位置は、Kabatによる番号付けを用いて示されるだろう。簡便にするために、図1は、本明細書において具体的に言及されるであろういくつかのアミノ酸の位置、及びいくつかの代替的な番号付け体系によるその番号付けを列挙した表を示す(例えばAho及びIMGT。注記:特に明記しない限り、本説明及び特許請求の範囲では、Kabatの番号付けで決められ;他の番号付け体系は参照のためだけに示されている)。
【0010】
CDRに関しては、当技術分野において周知であるように、VH断片又はVHH断片のCDRを定義及び記載するための複数の慣習、例えばKabat定義(配列多様性に基づき、最もよく使用されている)及びChothia定義(これは構造ループ領域の位置に基づく)などがある。例えば、ウェブサイトhttp://www.bioinf.org.uk/abs/を参照する。本明細書及び特許請求の範囲の目的のために、KabatによるCDRも記載されていてもよいが、CDRは最も好ましくはAbm定義(オックスフォード分子Abm抗体モデリングソフトウェアに基づく)に基づいて定義されている。なぜなら、これは、Kabat定義とChothia定義との間の最適な妥協案であると考えられているからである。ここでも、ウェブサイトhttp://www.bioinf.org.uk/abs/を参照する。
【0011】
したがって、本明細書及び特許請求の範囲では、全てのCDRは、本明細書で特に明記されていない限り、Abmの慣習に従って定義される。
【0012】
血清アルブミンに結合することのできるISVD(特にナノボディーズ)及びその使用は、当技術分野において、例えば、血清アルブミン結合性ISVD、並びに治療用化合物、部分、及び実体の血清中半減期(下記の出願に定義されているような)を延長するためのその使用を記載した国際公開公報第2004/041865号、国際公開公報第2006/122787号、国際公開公報第2012/175400号、国際公開公報第2015/173325号、及びPCT/EP2016/077973号から周知である。例えば、国際公開公報第2006/122787号は、配列番号62として、Alb-8と呼ばれるヒト化血清アルブミン結合性ナノボディを開示している(本明細書の配列番号1を参照)。国際公開公報第2012/175400号は、配列番号6として、Alb-23Dと呼ばれるヒト化血清アルブミン結合性ナノボディを開示している(本明細書の配列番号2を参照)。Alb-8及びAlb-23D並びにそれらのCDR(Alb-8及びAlb-23Dについて同じである)のアミノ酸配列は、それぞれ、配列番号1、2及び3~8として以下の表Aに示されている。
【0013】
血清アルブミンに対するISVDを開示しているいくつかの他の参考文献としては、国際公開公報第2003/035694号、国際公開公報第2004/003019号、欧州特許第2139918号、国際公開公報第2011/006915号、及び国際公開公報第2014/111550号が挙げられる。
【0014】
図3A及び3Bは、Alb-8、Alb-23D、配列番号15、並びに基準物質である配列番号79及び80のアルブミン結合剤(これはそれぞれAlb-8及びAlb23に基づく)のアラインメントを示す。
【0015】
本発明は、改善された血清アルブミン結合剤、特に当技術分野において公知である血清アルブミン結合剤と比較して改善された特性を有する血清アルブミン結合剤を提供することを目的とする。
【0016】
【表1】
【0017】
【表2】
【0018】
一般的に、本発明によって提供される血清アルブミン結合性ISVDは、
-それらが配列番号15の配列と同じCDR(又は実質的に同じCDR)を有する;及び
-それらが、配列番号15の配列に対してある程度の配列同一度を有する(配列同一度は本明細書にさらに記載されている通りである)という点で、
配列番号15の配列の変異体である。
【0019】
特に、本発明によって提供される血清アルブミン結合性ISVDは一般的に、配列番号15の配列と比較して(限定された)数の「アミノ酸の相違」(本明細書に記載のような)を有するだろう。これらのアミノ酸の相違は、CDR内に存在し得る(結果として得られたアミノ酸配列が、本明細書に示されている本発明のアミノ酸配列のさらなる特性を保持している限り)及び/又はフレームワーク領域に存在し得、特にフレームワーク領域(Kabatに従って及び/又はAbmに従って定義されるような)に存在し得る。例えであって限定するものではないが、これらのアミノ酸の相違は、例えば、ヒト化置換、所望の宿主細胞又は宿主生物における発現を改善させる置換、分解及び/若しくはプロテアーゼに対する安定性を改善させる並びに/又は抵抗性を改善させる置換、既存の抗体による結合を低減させる突然変異、並びに/あるいは本発明のアミノ酸配列の配列を最適化させることを意図した他の突然変異;あるいは、このようなアミノ酸の相違の任意の適切な組合せであり得る。本明細書のさらなる開示を参照する。
【0020】
第一の態様では、本発明は、ヒト血清アルブミンに結合する(特に特異的に結合する)ことができ、
-アミノ酸配列SYAMG(配列番号9)又は配列番号9のアミノ酸配列に対して2つ又は1つのアミノ酸の相違(群)(本明細書に定義したような)を有するアミノ酸配列であるCDR1(Kabatによる);及び
-アミノ酸配列SISRGGGYTYYADSVKG(配列番号10)又は配列番号10のアミノ酸配列に対して3つ、2つ、又は1つのアミノ酸の相違(群)(本明細書に定義したような)を有するアミノ酸配列であるCDR2(Kabatによる);及び
-アミノ酸配列ARYWATGSEYEFDY(配列番号11)又は配列番号10のアミノ酸配列に対して3つ、2つ、又は1つのアミノ酸の相違(群)(本明細書に定義したような)を有するアミノ酸配列であるCDR3(Kabatによる)
を有する、ISVDに関する。
【0021】
特に、本発明のこの態様による血清アルブミン結合剤は、本明細書にさらに記載されている通りであり得る(好ましくはその通りである)。
【0022】
より具体的な態様では、本発明は、ヒト血清アルブミンに結合する(特に特異的に結合する)ことができ、
-アミノ酸配列SYAMG(配列番号9)であるCDR1(Kabatによる);及び
-アミノ酸配列SISRGGGYTYYADSVKG(配列番号10)であるCDR2(Kabatによる);及び
-アミノ酸配列ARYWATGSEYEFDY(配列番号11)であるCDR3(Kabatによる)
を有する、ISVDに関する。
【0023】
ここでも、本発明のこの態様による血清アルブミン結合剤は、本明細書にさらに記載されている通りであり得る(好ましくはその通りである)。
【0024】
別の態様では、本発明は、ヒト血清アルブミンに結合する(特に特異的に結合する)ことができ、
-アミノ酸配列GLTFSSYAMG(配列番号12)又は配列番号12のアミノ酸配列に対して2つ又は1つのアミノ酸の相違(群)(本明細書に定義したような)を有するアミノ酸配列であるCDR1(Abmによる);及び
-アミノ酸配列SISRGGGYTY(配列番号13)又は配列番号13のアミノ酸配列に対して3つ、2つ、又は1つのアミノ酸の相違(群)(本明細書に定義したような)を有するアミノ酸配列であるCDR2(Abmによる);及び
-アミノ酸配列ARYWATGSEYEFDY(配列番号14)又は配列番号14のアミノ酸配列に対して3つ、2つ、又は1つのアミノ酸の相違(群)(本明細書に定義したような)を有するアミノ酸配列であるCDR3(Abmによる)
を有する、ISVDに関する。
【0025】
特に、本発明のこの態様による血清アルブミン結合剤は、本明細書にさらに記載されている通りであり得る(好ましくはその通りである)。
【0026】
より具体的な態様では、本発明は、ヒト血清アルブミンに結合する(特に特異的に結合する)ことができ、
-アミノ酸配列GLTFSSYAMG(配列番号12)又は配列番号12のアミノ酸配列に対して2つ又は1つのアミノ酸の相違(群)(本明細書に定義したような)を有するアミノ酸配列であるCDR1(Abmによる);及び
-アミノ酸配列SISRGGGYTY(配列番号13)又は配列番号13のアミノ酸配列に対して3つ、2つ、又は1つのアミノ酸の相違(群)(本明細書に定義したような)を有するアミノ酸配列であるCDR2(Abmによる);及び
-アミノ酸配列ARYWATGSEYEFDY(配列番号14)又は配列番号14のアミノ酸配列に対して3つ、2つ、又は1つのアミノ酸の相違(群)(本明細書に定義したような)を有するアミノ酸配列であるCDR3(Abmによる)
を有する、ISVDに関する。
【0027】
ここでも、本発明のこの態様による血清アルブミン結合剤は、本明細書にさらに記載されている通りであり得る(好ましくはその通りである)。
【0028】
一般的に、本発明の様々な態様による血清アルブミン結合剤は好ましくは、
-少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%の、配列番号15の配列に対する配列同一度(ここでの存在し得るCDR及び任意のC末端伸長は、配列同一度の決定の際に考慮されない)を有するようなものである;
及び/又は、
-配列番号15の配列に対して7以下、好ましくは5以下、例えばたったの3つ、2つ、又は1つの「アミノ酸の相違」(本明細書に定義されているような、そして存在し得るCDR及び任意のC末端伸長は考慮されない)を有するようなものである。
【0029】
本発明の様々な態様による血清アルブミン結合剤は一般的には好ましくは、ProteOnを使用して決定したところ(実施例1を参照する)、10-5~10-12モル/リットル以下、好ましくは10-7~10-12モル/リットル以下、より好ましくは10-8~10-12モル/リットルの解離定数(KD)で、及び/又は、少なくとも10-1、好ましくは少なくとも10-1、より好ましくは少なくとも10-1、例えば少なくとも1012-1の結合親和性でヒト血清アルブミンに結合するようなものである。好ましくは、本発明の血清アルブミン結合剤は、ここでもProteOnを使用して決定したところ(ここでも実施例1を参照する)、500nM未満、好ましくは200nM未満、より好ましくは10nM未満、例えば500pM未満の親和性で所望の抗原に結合するだろう。
【0030】
本発明の様々な態様による血清アルブミン結合剤は好ましくはまた、(ヒト)血清アルブミンへの結合に関して配列番号15のアミノ酸配列と競合するようなものであり、及び/又は、(ヒト)血清アルブミンに対する配列番号15のアミノ酸配列の結合を「交差遮断」(本明細書に定義されているような)するようなものである。
【0031】
特に、本発明の1つの具体的な態様によると、本発明の様々な態様による血清アルブミン結合剤は好ましくは、ヒト血清アルブミンの一次配列内のアミノ酸残基のストレッチの以下の1つ以上のストレッチ内の1つ以上のアミノ酸残基を含むようである(少なくとも)非線形エピトープに結合するようなものであり:298~311位(特に、Met298、Pro299、Ala300、Asp301、Leu302、Pro303、Ser304、Leu305、Ala306及びGlu311の1つ以上);334~341位(特に、Tyr334、Arg337、His338、Pro339及び/又はAsp340の1つ以上)及び/又は374~381位(特に、Phe374、Asp375、Phe377、Lys378及びVal381の1つ以上)、ヒト血清アルブミン内のアミノ酸残基は、Meloun et al., FEBS Letters, 1975, 58, p. 134-137に示される番号付けに従って番号付けされる。以下の実施例7に示される結晶構造データを参照する。
【0032】
以下の実験部に示される結晶構造データに基づいた、任意の特定の仮説又は機序に限定するものではないが、ヒト血清アルブミン上のこれらのアミノ酸残基は、配列番号15の血清アルブミン結合剤が結合するエピトープの一部であり、そして、記載のアミノ酸の相互作用は、この結合に関与する最も重要な相互作用のいくつかであることが推定される。したがって、好ましくは、本発明のアルブミン結合剤は、配列番号15と実質的に同じヒト血清アルブミン上のアミノ酸残基及び/又はエピトープに結合するようなものであり、さらにより好ましくは、配列番号15と実質的に同じアミノ酸相互作用を共有するようなものである。この目的のために、具体的であるが非限定的な態様によると、本発明のアルブミン結合剤は好ましくは、配列番号15の配列と同じCDRを有するか、又は、配列番号15の配列と比較して、それらのCDR内に、配列番号15と同じか若しくは実質的に同じヒト血清アルブミンとのアミノ酸相互作用をそれらが受けることを依然として可能とするような突然変異のみ(例えば保存的アミノ酸置換)を好ましくは含有している。
【0033】
以下の実施例7に示される結晶構造データからも分かるように、ヒト血清アルブミン上の推定エピトープとの相互作用に特に重要な役割を果たしているようである配列番号15内のアミノ酸残基のいくつかは、以下に示される配列番号15の配列において太字/下線で示されているものである。
【0034】
【化1】
【0035】
結晶構造データに基づいてそれらの結合相互作用に関与していると推定される、それぞれ、ヒト血清アルブミン及び配列番号15上の他のアミノ酸残基のいくつか、並びに、それらのそれぞれの配列内のアミノ酸残基間のそれらの推定される相互作用のいくつかが図10に示されている(ここでもまた実施例7を参照)。
【0036】
本発明の様々な態様による血清アルブミン結合剤は一般的に好ましくはまた、ヒト血清アルブミンと、以下の哺乳動物(ラット、マウス、ウサギ、モルモット、ブタ、ヒツジ、ウシ、及びカニクイザル)の少なくとも1種、好ましくは少なくとも2種、より好ましくは少なくとも3種、最大で実質的に全ての種に由来する血清アルブミンとの間で交差反応性であるようなものである。特に、本発明の様々な態様による血清アルブミン結合剤は、ヒト血清アルブミンと、ラット血清アルブミン、マウス血清アルブミン、及びカニクイザル由来の血清アルブミンの少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、より好ましくは3つ全てとの間で(少なくとも)交差反応性であるようなものであり得る。これに関して、本発明の血清アルブミン結合剤は、Alb-11及び/又はAlb-23Dと(実質的に)同じCDRを有する血清アルブミン結合剤と比較して、改善された交差反応性(特に、一方のヒト血清アルブミンと、他方のラット及び/又はマウス血清アルブミンとの間で)を有し得る。
【0037】
参照のために、図11は、様々な種の哺乳動物由来の血清アルブミンのアラインメントを示す(出典:http://macromoleculeinsights.com/albumin.php、図11のアミノ酸の番号付けは、該ウェブページに使用される番号付けである)。簡便にするために、ヒト血清アルブミンの配列において、本発明のアミノ酸配列の推定エピトープの一部であることが推定されるアミノ酸のストレッチが強調されている。任意の特定の機序又は仮説に限定するものではないが、本発明のアミノ酸配列は、本発明のアミノ酸配列が交差反応する哺乳動物血清アルブミンのアミノ酸配列内に存在する対応するアミノ酸残基のストレッチ(内の1つ以上のアミノ酸残基)に(実質的に)結合することができると推定されている。
【0038】
一般的には、本発明の血清アルブミン結合剤は、ここでもProteOnを使用して両方共に決定したところ(ここでも実施例1を参照)、ヒト血清アルブミンに500nM未満、好ましくは200nM未満、より好ましくは10nM未満の親和性で;及びまた前記の種に由来する血清アルブミンに500nM未満、好ましくは200nM未満、より好ましくは10nM未満の親和性で結合することができる場合、ヒト血清アルブミンとこれらの種の1つに由来する血清アルブミンとの間で交差反応性であると考えられ得る。
【0039】
本発明の様々な態様による血清アルブミン結合剤は好ましくはまた、
-6時間を超える、好ましくは12時間を超える、より好ましくは24時間を超える、さらにより好ましくは72時間を超える;例えば、約1週間、2週間、及び最大でヒトにおける血清アルブミンの半減期(約19日間であると推定される)までの、ヒトにおける血清中半減期(t1/2βとして表現される)を有するような;
及び/又は
-治療用部分又は実体に連結されると、結果として得られた本発明のポリペプチドに、6時間を超える、好ましくは12時間を超える、より好ましくは24時間を超える、さらにより好ましくは72時間を超える;例えば、約1週間、2週間、及び最大でヒトにおける血清アルブミンの半減期(約19日間であると推定される)までの、ヒトにおける血清中半減期(t1/2βとして表現される)を付与するようなものである。
【0040】
ヒト以外の哺乳動物種の半減期は、他の因子の中でもとりわけ、該種のナイーブ血清アルブミンの半減期だけでなく、該哺乳動物種由来の血清アルブミンに対する本発明のアルブミン結合剤の結合特性(例えば親和性)に主に依存する。本発明の好ましい実施態様によると、本発明の血清アルブミン結合剤が、ヒト血清アルブミンと別の哺乳動物種由来の血清アルブミンとの間で交差反応性(本明細書に定義したような)である場合、該種において決定されるような、本発明の血清アルブミン結合剤(及び/又は該血清アルブミン結合剤を含む本発明の化合物)の半減期は好ましくは、該種のナイーブ血清アルブミンの半減期の少なくとも5%、例えば少なくとも10%、より好ましくは少なくとも25%、例えば約50%、おそらく最大で100%である。
【0041】
配列番号15の配列と比較して、本発明の血清アルブミン結合剤は好ましくはまた、
-1つ以上のヒト化置換;
及び/又は
-既存の抗体による結合を低減させる1つ以上の突然変異(すなわち、アミノ酸の置換、欠失、又は付加、特に置換)
を(少なくとも)含有し;
場合により、本明細書に記載のような1つ以上のさらなる突然変異を含有し得る。
【0042】
適切なヒト化置換(及びその適切な組合せ)については、例えば、国際公開公報第09/138519号(又は国際公開公報第09/138519号に引用されている従来技術)及び国際公開公報第08/020079号(又は国際公開公報第08/020079号に引用されている従来技術)並びに国際公開公報第08/020079号の表A-3からA-8(これは可能なヒト化置換を示すリストである)を参照する。このようなヒト化置換のいくつかの好ましいが非限定的な例は、Q108L及びA14P又はその適切な組合せである。このようなヒト化置換はまた、本明細書に記載のような1つ以上の他の突然変異(例えば、既存の抗体による結合を低減させる1つ以上の突然変異など)と適切に組合せ得る。
【0043】
既存の抗体による結合を低減させ得る適切な突然変異(及びこのような突然変異の適切な組合せ)については、例えば、国際公開公報第2012/175741号及び国際公開公報第2015/173325号並びにまた例えば国際公開公報第2013/024059号及び国際公開公報第2016/118733号を参照する。本明細書に記載のように、このような突然変異は、1つ以上のアミノ酸の置換、欠失、又は付加(特に置換)(の適切な組合せ)を含み得、該突然変異はしばしば、ISVのいわゆるC末端領域にあるだろう。例えば、このような突然変異は、11位、13位、14位、15位、40位、41位、42位、82位、82a位、82b位、83位、84位、85位、87位、88位、89位、103位、108位の1つ以上における突然変異(特に置換)及び/又はC末端VTVSS配列内の1つ以上の位置(すなわち、109位、110位、111位、112位及び113位)における突然変異を含み得、11位、89位、110位、及び/又は112位における1つ以上の突然変異が特に好ましい。このような突然変異のいくつかの好ましいが非限定的な例は、突然変異後に、指定された位置において、以下のアミノ酸残基(11L、11K、11V、14A、14P、41A、41L、41P、41S、41T、42E、42G、87A、87T、89A、89L、89T、108L、110K、110Q、112K及び/又は112Q)(11L、89A、89L、89T、110K、110Q、112K及び112Qが特に好ましい)の1つが存在するような適切な置換(必要である場合);又は、このような置換の任意の適切な組合せ、例えであって限定するものではないが、11Vと89L又は89Tの組合せ;11Vと110K又は110Qの組合せ;又は、11Vと、89L及び100K若しくは110Qとの組合せである。既存の抗体による結合を低減させるこのような突然変異はまた、本明細書に記載のような1つ以上の他の突然変異(例えば1つ以上のヒト化置換)と適切に組合せ得る。
【0044】
適切である場合(本明細書にさらに記載されているように、特に本発明の血清アルブミン結合剤が、それが存在する本発明の化合物のC末端に存在する及び/又はC末端を形成している場合)、既存の抗体による結合を低減させるために、本発明の血清アルブミン結合剤(及び、本明細書にさらに記載されているように、本発明の化合物も)はまた、C末端伸長を含んでいてもよい(例えばC末端アラニン残基)。国際公開公報第2012/175741号に記載のように、このようなC末端伸長は、既存の抗体による結合を低減させる。適切なC末端伸長は一般的に、本明細書にさらに記載され得、特に、式-(X)(式中、Xは、任意の天然アミノ酸であり得(しかし好ましくはシステインではない)、nは1、2、3、4、又は5であり得る)を有することができる。
【0045】
ここでも、国際公開公報第2012/175741号、また例えば国際公開公報第2015/173325号、国際公開公報第2013/024059号、及び国際公開公報第2016/118733号も参照する。このようなC末端伸長の存在はまた、本明細書に記載の他の突然変異の1つ以上と(例えば、1つ以上のヒト化置換及び/又は既存の抗体による結合を低減させる1つ以上の突然変異と)適切に組み合わせてもよい。
【0046】
本発明の血清アルブミン結合剤に存在し得る他の突然変異としては、例えであって限定するものではないが、所望の宿主細胞又は宿主生物における発現を改善させる1つ以上の突然変異(特に置換)、分解及び/若しくはプロテアーゼに対する安定性を改善させる並びに/又は抵抗性を改善させる1つ以上の突然変異(特に置換)、並びに/あるいは、本発明のアミノ酸配列の配列を最適化させることを意図とした1つ以上の他の突然変異(例えであって限定するものではないが、アルブミン結合剤が二量体を形成するあらゆる傾向を(さらに)低減させる1つ以上の突然変異);あるいは、このような突然変異の任意の適切な組合せが挙げられる。
【0047】
このような突然変異のいくつかの非限定的な例は、突然変異後に、指定された位置において、以下のアミノ酸残基(5V、74S、75K、76N、及び83R)の1つが存在するような適切な置換(必要である場合);又はこのような置換の任意の適切な組合せ(例えば、75位~76位にSKNモチーフを形成するような)である。また、適切である場合(本明細書にさらに記載されているように)、本発明の血清アルブミン結合剤は、特に本発明の血清アルブミン結合剤が、それが存在する本発明の化合物のN末端に存在する及び/又はN末端を形成している場合、1位にD(すなわち、配列番号15の配列と比較してE1D突然変異)を有し得る。このような突然変異は、ここでも、本明細書に記載のような1つ以上の他の突然変異(例えば、1つ以上のヒト化置換及び/又は既存の抗体による結合を低減させる1つ以上の突然変異)と適切に組合せてもよい。
【0048】
本発明のアミノ酸配列に存在し得る他の突然変異は、本明細書の開示に基づいて当業者には明らかであろう。
【0049】
また、単一の突然変異(又は突然変異の適切な組合せ)が複数の機能又は利点を与えることも可能である。例えであって限定するものではないが、ヒト化Q108L置換はまた、既存の抗体による結合を低減させ得る。
【0050】
本発明のアミノ酸配列に(すなわち、単独で、又は適切な組合せで)存在し得る、アミノ酸残基(すなわち、配列番号15のアミノ酸配列と比較した突然変異)のいくつかの好ましいが非限定的な例としては、11V(すなわちL11V)、14P(すなわちA14P)、47F(すなわちR47F)、49A(すなわちV49A)、74S(すなわちA74S)、75N(すなわちE75N)、83R(すなわちK83R)、89L(すなわちV89L)、89T(すなわちV89T)、110K(例えばT110K)、又は100Q(例えばT110Q);並びに、適切である場合(本明細書にさらに記載されているように)、1D(例えばE1D)及び/又は本明細書に定義されているようなC末端伸長(X)(例えば114A)が挙げられる。また、図4A及び4Bに示される配列及び突然変異も参照する。例えば、このようなアミノ酸残基(すなわち、配列番号15のアミノ酸配列と比較した突然変異)の適切な組合せのいくつかの好ましいが非限定的な例としては、
-L11V、A14P、A74S、K83R、V89L;
-L11V、A14P、R47F、A74S、K83R、V89L;
-L11V、A14P、V49A、A74S、K83R、V89L;
-L11V、A14P、A74S、E75K、K83R、V89L;
-L11V、A14P、R47F、V49A、A74S、K83R、V89L;
-L11V、A14P、R47F、V49A、A74S、K83R、V89L;
-L11V、A14P、V49A、A74S、E75K、K83R、V89L;又は
-L11V、A14P、R47F、V49A、A74S、E75K、K83R、V89Lが挙げられ、他の適切な組合せは、本明細書の開示に基づいて当業者には明らかであろう。
【0051】
本発明のアミノ酸配列のいくつかの好ましいが非限定的な例は、図2
-配列番号15~35(これは、C末端アラニン伸長を含まない本発明のアミノ酸配列の例である);
-配列番号36~56(これは、C末端伸長を含む本発明のアミノ酸配列の例である)(それぞれの場合において、C末端アラニン伸長を用いて例示され、これは一般的に好ましいC末端伸長である);及び
-配列番号57~77(これは、N末端E1D突然変異を含む本発明のアミノ酸配列の例である)
として示されている。
【0052】
本明細書のさらなる開示に基づいて、実際に、
-C末端伸長を含む本発明のアルブミン結合剤(例えば、配列番号36~56のそれ)がしばしば、それらが存在する(本明細書に定義されているような)本発明のポリペプチドのC末端として使用される/C末端に存在するだろう;
-E1D突然変異を含む本発明のアルブミン結合剤(例えば、配列番号57~77のそれ)がしばしば、それらが存在する本発明のポリペプチドのN末端として使用される/N末端に存在するだろう;
-C末端伸長を含まずかつE1D突然変異を含まない本発明のアルブミン結合剤(例えば配列番号15~35のそれ)がしばしば、本発明のポリペプチドの「中央部」の何処かに存在するだろう、
ことが当業者には明らかであろう。
【0053】
配列番号15~77の各アミノ酸配列、並びに、それを含むタンパク質、ポリペプチド、並びに他の化合物及び構築物(本明細書にさらに記載されているような)は、本発明のさらなる態様を形成する。
【0054】
さらなる態様では、本発明は、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号45、配列番号46、配列番号47、配列番号48、若しくは配列番号49のアミノ酸配列の1つ、又は、配列番号61、配列番号62、配列番号63、配列番号64、配列番号65、配列番号66、配列番号67、配列番号68、配列番号69、配列番号70、配列番号71、配列番号72、配列番号73、配列番号74、配列番号75、配列番号76、若しくは配列番号77のアミノ酸配列の1つであるアミノ酸配列に関し;本発明のこれらの各々のアミノ酸配列(並びに、本発明のこのようなアミノ酸配列を含む、本明細書に定義されているような、本発明のポリペプチド)は本発明のさらなる態様を形成する。
【0055】
本明細書にさらに記載されているように、本発明によって提供されるアミノ酸配列は、ヒト血清アルブミンに結合することのできる、特に特異的に(本明細書に記載のように)結合することのできるタンパク質である。したがって、それらは、例えば、治療用化合物、部分、又は実体に半減期(本明細書に定義されているような)の増加を付与するために、(ヒト)血清アルブミンに結合させるための、結合単位又は結合ドメインとして使用され得る。治療用化合物、部分、又は実体の半減期を増加するための血清アルブミン結合性ドメインの使用については、例えば、国際公開公報第2004/041865号、国際公開公報第2006/122787号、欧州特許第2139918号、国際公開公報第2011/006915号、国際公開公報第2012/175400号、及び/又は国際公開公報第2014/111550号を参照する。本発明の血清アルブミン結合剤は一般的に、これらの参考文献に記載されている血清アルブミン結合剤と同じ方法及び同じ目的で使用され得る。
【0056】
いくつかのさらなる非限定的な態様では、本発明は、
-本明細書に記載のような本発明の少なくとも1つの血清アルブミン結合剤(ここでも、本明細書において、「本発明の化合物」又は「本発明のポリペプチド」とも称される)を含むか又は実質的にからなる、タンパク質、ポリペプチド、及び他の構築物、分子、又は化学的実体;
-本発明の血清アルブミン結合剤及び/又は本発明の化合物を発現/産生するための方法;
-本発明の血清アルブミン結合剤及び/又は本発明の化合物を発現又は産生することのできる宿主細胞、宿主生物、又は他の(発現)系;
-本発明の血清アルブミン結合剤及び/又は本発明の化合物を含む組成物及び産物(例えば医薬組成物及び産物);
-本発明の血清アルブミン結合剤及び/又は本発明の化合物をコードしている、ヌクレオチド配列及び核酸、例えば(発現)ベクター;
-本発明の化合物及び/又は本発明の化合物の使用、例えば、治療用化合物、部分、又は実体の(血清中)半減期を増加させるための本発明の化合物の使用、並びに本発明の化合物の治療使用及び/又は予防使用
にも関する。
【0057】
本発明のこれらの態様及びさらなる態様、実施態様、利点、適用、並びに使用は、本明細書のさらなる説明から明らかとなろう。
【0058】
本明細書において、「免疫グロブリン単一可変ドメイン」(「ISV」又は「ISVD」とも称される)という用語は一般的に、別の可変ドメインとの相互作用を伴うことなく(例えば、慣用的な4本鎖のモノクローナル抗体のVHドメインとVLドメインとの間に必要とされるようなVH/VL相互作用を伴うことなく)、機能的な抗原結合部位を形成することのできる免疫グロブリン可変ドメイン(これは、VHドメイン、VHHドメイン、又はVLドメインをはじめとする、重鎖ドメイン又は軽鎖ドメインであり得る)を指すために使用される。ISVDの例は当業者には明らかであり、これには例えば、ナノボディーズ(VHH、ヒト化VHH及び/又はラクダ化VH、例えばラクダ化ヒトVH)、IgNARドメイン、VHドメインであるか若しくはVHドメインに由来する(単一ドメイン)抗体(例えばdAbs(商標))、及びVLドメインであるか若しくはVLドメインに由来する(単一ドメイン)抗体(例えばdAbs(商標))が挙げられる。本明細書において特に明記されない限り、重鎖可変ドメイン(例えばVHドメイン又はVHHドメイン)に基づいた及び/又はこれに由来するISVDが一般的に好ましい。最も好ましくは、本明細書において特に明記されない限り、ISVDはナノボディであろう。
【0059】
「ナノボディ」という用語は一般的に、国際公開公報第2008/020079号又は国際公開公報第2009/138519号に定義されている通りであり、したがって具体的な態様では一般的に、VHH、ヒト化VHH、又はラクダ化VH(例えばラクダ化ヒトVH)、又は一般的に配列の最適化されたVHH(例えば、化学的安定性及び/又は溶解性のために、公知のヒトフレームワーク領域と最大限にオーバーラップさせるために、及び最大限の発現のために最適化されている)を示す。ナノボディ又はナノボディーズという用語は、アブリンクス社の登録商標であり、したがって、ナノボディ(登録商標)及び/又はナノボディーズ(登録商標)とも称され得ることに留意する。
【0060】
一般的に、本明細書において特に明記されない限り、本明細書に言及されているISVD、ナノボディーズ、ポリペプチド、タンパク質、並びに他の化合物及び構築物は、ヒトにおける(及び/又は場合により、恒温動物、特に哺乳動物においても)疾患又は障害の予防又は治療に使用することを目的とするだろう。したがって、一般的に、本明細書に記載のISVD、ナノボディーズ、ポリペプチド、タンパク質、並びに他の化合物及び構築物は、好ましくは(生物学的)薬物又は他の薬学的若しくは治療的に活性な化合物、及び/又は医薬製品若しくは医薬組成物として使用されることができるような、並びに/あるいは、適切にはその一部であり得るようなものである。このような薬物、化合物、又は製品は好ましくは、例えばこのような予防若しくは治療の必要な被験者の予防若しくは治療のために、又は、例えば臨床試験の一部として、ヒトへの投与に適しているようなものである。本明細書にさらに記載されているように、この目的のために、このような薬物又は化合物は、本発明によって提供されるISVD以外に、他の部分、実体、又は結合単位(これは、これもまた本明細書において記載されているように、例えば、1つ以上の他のさらなる治療部分、及び/又は、ISVDに基づいた若しくはナノボディに基づいた生物学的製剤の薬力学的特性若しくは薬物動態特性、例えばその半減期に影響を及ぼす1つ以上の他の部分であり得る)を含有していてもよい。このようなさらなる治療部分又は他の部分の適切な例は当業者には明らかであり、例えば一般的には、任意の治療的に活性なタンパク質、ポリペプチド、又は他の結合ドメイン若しくは結合単位、並びに、例えば国際公開公報第2009/138159号の149~152頁に記載されているような改変を含み得る。ISVDに基づいた生物学的製剤又はナノボディに基づいた生物学的製剤は好ましくは治療剤であるか又は治療剤(これは予防及び診断を含む)として使用することを目的とし、この目的のためには好ましくは、治療に関連した標的(例えばRANK-L、vWF、IgE、RSV、CXCR4、IL-23、又は他のインターロイキンなど)に対する少なくとも1つのISVDを含有している。このようなISVDに基づいた又はナノボディに基づいた生物学的製剤のいくつかの具体的であるが非限定的な例については、実施例8~18及びまた例えばアブリンクス社による様々な出願(例えばであって限定するものではないが、国際公開公報第2004/062551号、国際公開公報第2006/122825号、国際公開公報第2008/020079号、及び国際公開公報第2009/068627号)、並びに、例えば(限定するものではないが)国際公開公報第2006/038027号、国際公開公報第2006/059108号、国際公開公報第2007/063308号、国際公開公報第2007/063311号、国際公開公報第2007/066016号、及び国際公開公報第2007/085814号などの出願を参照する。また、本明細書にさらに記載されているように、さらなる部分は、(ヒト)血清タンパク質、例えば(ヒト)血清アルブミンに対して指向される本明細書に記載のようなISVD又はナノボディであり得、このようなISVD又はナノボディは、特に本明細書に記載のTNF結合剤の半減期の延長において及び/又はその延長のために、治療用途を見い出し得る。例えば、国際公開公報第2004/041865号、国際公開公報第2006/122787号、及び国際公開公報第2012/175400号を参照し、これは一般的に半減期延長のための血清アルブミン結合性ナノボディーズの使用を記載している。また、本明細書では、本明細書において特に明記されない限り、本明細書に記載された全ての用語は、国際公開公報第2009/138519号(又は、国際公開公報第2009/138519号に引用された先行技術)又は国際公開公報第2008/020079号(又は国際公開公報第2008/020079号に引用された先行技術)に示された意味を有する。また、方法又は技術が本明細書において具体的に記載されていない場合には、国際公開公報第2009/138519号(又は、国際公開公報第2009/138519号に引用された先行技術)又は国際公開公報第2008/020079号(又は国際公開公報第2008/020079号に引用された先行技術)に記載の通りに実施され得る。また、本明細書に記載のように、本発明の任意のISVD又は化合物を含む任意の医薬製品又は医薬組成物はまた、医薬製品又は医薬組成物への使用においてそれ自体公知である1つ以上のさらなる成分(すなわち、目的とする剤形に応じて)及び/又は例えば治療に使用することを目的とした1つ以上の他の化合物又は活性成分(すなわち、組合せ製品を提供するために)も含み得る。
【0061】
また、本明細書又は特許請求の範囲において使用される場合、以下の用語は、国際公開公報第2009/138519号の62~75頁に示されているのと同じ意味を有し、及び/又は適用可能である場合には、国際公開公報第2009/138519号の62~75頁に記載されている方法で決定され得る:「アゴニスト」、「アンタゴニスト」、「逆アゴニスト」、「非極性の非荷電アミノ酸残基」、「極性非荷電アミノ酸残基」、「極性荷電アミノ酸残基」、「配列同一率」、「まさに同じ」及び「アミノ酸の違い」(2つのアミノ酸配列の配列比較に言及する場合)、「実質的に単離された(形)(で)」、「ドメイン」、「結合ドメイン」、「抗原決定基」、「エピトープ」、(抗原)「に対する」、又は「に対して指向される」、「特異性」、及び「半減期」。さらに、「改変している」及び「改変するために」、「相互作用部位」、「に対して特異的である」、「交差遮断する」、「交差遮断された」及び「交差遮断している」及び「pHとは実質的に非依存性である」という用語は、アブリンクス社の国際公開公報第2010/130832号の74~79頁に定義されている通りである(及び/又はそこに記載されている通りに決定され得る)。また、本発明の構築物、化合物、タンパク質、又はポリペプチドに言及する場合、「一価」、「二価」(又は「多価」)、「二重特異的」(又は「多重特異的」)及び「二重パラトープ性」(又は「多重パラトープ性」)のような用語は、国際公開公報第2009/138519号、国際公開公報第2010/130832号、又は国際公開公報第2008/020079号に示された意味を有し得る。
【0062】
本明細書に言及されているISVD、ナノボディ、ISVDに基づいた生物学的製剤、ナノボディに基づいた生物学的製剤、又は任意の他のアミノ酸配列、化合物、若しくはポリペプチドに関してここで使用される「半減期」という用語は一般的には、国際公開公報第2008/020079号の57頁のo)段落に記載のように定義され得、その中で記載されているように、例えば天然の機序による配列若しくは化合物の分解及び/又は配列若しくは化合物の排除若しくは捕獲に因り、インビボにおいて、アミノ酸配列、化合物、又はポリペプチドの血清中濃度が50%減少するのに要する時間を指す。本発明のアミノ酸配列、化合物、又はポリペプチドのインビボにおける半減期は、薬物動態分析によるなどのそれ自体公知の任意の方法で決定され得る。適切な技術は当業者には明らかであり、例えば一般的には国際公開公報第2008/020079号の57頁のo)段落に記載の通りであり得る。これもまた国際公開公報第2008/020079号の57頁のo)段落に記載のように、半減期は、t1/2α、t1/2β、及び曲線下面積(AUC)などのパラメーターを使用して表現され得る。これに関して、本明細書において使用する「半減期」という用語は特に、t1/2β又は終末相半減期を指すことに留意すべきである(t1/2α及び/又はAUCあるいはその両方を考慮しなくてもよい)。例えば、以下の実験部、並びに、標準的な参考書、例えばKenneth, A et al: Chemical Stability of Pharmaceuticals: A Handbook for Pharmacists and Peters et al, Pharmacokinetic analysis: A Practical Approach(1996)を参照する。また、Marcel Dekkerによって刊行された"Pharmacokinetics", M Gibaldi & D Perron、改訂版(1982)も参照する。同様に、「半減期の増加」又は「増加された半減期」という用語も、国際公開公報第2008/020079号の57頁のo)段落に定義されている通りであり、特にt1/2α及び/又はAUCあるいはその両方の増加を伴う又は伴わないのいずれかである、t1/2βの増加を指す。
【0063】
用語が本明細書において具体的に定義されていない場合、それは当技術分野におけるその通常の意味を有し、これは当業者には明らかであろう。例えば、標準的な参考書、例えばSambrook et al, "Molecular Cloning: A Laboratory Manual" (2nd.Ed.), Vols. 1-3, Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989); F. Ausubel et al, eds., "Current protocols in molecular biology", Green Publishing and Wiley Interscience, New York (1987); Lewin, “Genes II”, John Wiley & Sons, New York, N.Y., (1985); Old et al., “Principles of Gene Manipulation: An Introduction to Genetic Engineering”, 2nd edition, University of California Press, Berkeley, CA (1981); Roitt et al., “Immunology” (6th. Ed.), Mosby/Elsevier, Edinburgh (2001); Roitt et al., Roitt’s Essential Immunology, 10th Ed. Blackwell Publishing, UK (2001);及びJaneway et al., “Immunobiology” (6th Ed.), Garland Science Publishing/Churchill Livingstone, New York(2005)、並びに、本明細書に引用されている一般的な背景技術を参照する。
【0064】
また、本明細書においてすでに示されているように、ナノボディのアミノ酸残基は、Riechmann and Muyldermans, J. Immunol. Methods 2000 Jun 23; 240 (1-2): 185-195の論文におけるラクダ由来のVHHドメインに適用されているような;又は本明細書に言及されている、Kabat et al.(“Sequence of proteins of immunological interest”, 米国公衆衛生局、NIHベセスダ、MD州、刊行物番号91)によって示されるVHについての一般的な番号付けに従って番号付けられる。この番号付けによると、ナノボディのFR1は1位~30位にアミノ酸残基を含み、ナノボディのCDR1は31位~35位にアミノ酸残基を含み、ナノボディのFR2は36位~49位にアミノ酸を含み、ナノボディのCDR2は50位~65位にアミノ酸残基を含み、ナノボディのFR3は66位~94位にアミノ酸残基を含み、ナノボディのCDR3は95位~102位にアミノ酸残基を含み、ナノボディのFR4は103位~113位にアミノ酸残基を含む。[これに関して、VHドメイン及びVHHドメインについて当技術分野において周知であるように、各々のCDRにおけるアミノ酸残基の総数は変化し得、Kabat番号付けによって示されるアミノ酸残基の総数に対応していない場合もあることに留意すべきである(すなわち、Kabat番号付けによる1つ以上の位置が、実際の配列においては占有されていない場合があるか、又は、実際の配列が、Kabat番号付けによって許容される数よりも多くのアミノ酸残基を含有している場合もある)。このことは、一般的に、Kabatによる番号付けが、実際の配列内のアミノ酸残基の実際の番号付けに対応していても対応していなくてもよいことを意味する。しかしながら、一般的に、Kabatの番号付けによると、CDRにおけるアミノ酸残基の数に関係なく、Kabat番号付けによる1位はFR1の開始部に対応し、及びその逆も同様であり、Kabat番号付けによる36位はFR2の開始部に対応し、及びその逆も同様であり、Kabat番号付けによる66位はFR3の開始部に対応し、及びその逆も同様であり、Kabat番号付けによる103位はFR4の開始部に対応し、及びその逆も同様であると言うことができる]。
【0065】
VHドメインのアミノ酸残基を番号付けするための代替的な方法(該方法を、ラクダ由来のVHHドメイン及びナノボディーズにも同じように適用することができる)は、Chothia et al.(Nature 342, 877-883 (1989))によって記載されている方法、いわゆる「AbM定義」及びいわゆる「接触定義」である。しかしながら、本明細書、態様及び図面において、Riechmann and MuyldermansによってVHHドメインに適用されているようなKabatによる番号付けに、特記しない限り従うだろう。
【0066】
また、図面、任意の配列表、及び実験部/実施例は、本発明をさらに説明するためだけに示され、本明細書において特に明記されない限り、本発明の範囲及び/又は添付の特許請求の範囲を限定するものとしていかようにも解釈又は捉えられるべきではないことに留意すべきである。
【0067】
本明細書においてさらに記載されているように、本発明の血清アルブミン結合剤は、ポリペプチド、タンパク質、化合物(低分子を含むがこれに限定されない)又は他の治療用実体などの治療用化合物、部分、又は実体の半減期を増加させるための、部分、結合単位、又は融合対として有利に使用され得る。
【0068】
したがって、別の態様では、本発明は、本発明の血清アルブミン結合剤及び1つ以上の他のアミノ酸配列、(結合性)ドメイン、結合単位、又は他の部分若しくは化学的実体を含むか又は実質的にからなる、ポリペプチド、タンパク質、構築物、化合物、又は他の化学的実体を提供する。
【0069】
特に、本発明は、直接的に又は1つ以上の適切なリンカー若しくはスペーサーを介して互いに適切に連結されている、本発明の血清アルブミン結合剤及び1つ以上の(例えば1つ又は2つの)治療用部分(これは、同じでも異なっていてもよく、例えば同じ標的に対して指向されていても異なる標的に対して指向されていてもよく、それらが同じ標的に指向されている場合、該標的の同じ又は異なるエピトープ、部分、ドメイン、又はサブユニットに指向され得る)を含む、ポリペプチド、タンパク質、構築物、化合物、又は他の化学実体を提供する。このようなポリペプチド、タンパク質、又は構築物は例えば、本明細書にさらに記載されているような、融合タンパク質であり得るが、これに限定されない。
【0070】
本発明はさらに、このようなポリペプチド、タンパク質、構築物、又は化合物の治療的使用、及び、このようなポリペプチド、タンパク質、構築物、又は化合物を含む医薬組成物に関する。
【0071】
1つの態様では、少なくとも1つの治療用部分は、治療用タンパク質、ポリペプチド、化合物、因子、又は他の実体を含むか又は実質的にからなる。好ましい実施態様では、治療用部分は、所望の抗原若しくは標的に対して指向され、所望の抗原に結合することができ(特に、所望の抗原に特異的に結合することができ)、及び/又は、所望の標的と相互作用することができる。別の実施態様では、少なくとも1つの治療用部分は、治療用タンパク質又はポリペプチドを含むか又は実質的にからなる。さらなる実施態様では、少なくとも1つの治療用部分は、結合ドメイン又は結合単位、例えば免疫グロブリン又は免疫グロブリン配列(免疫グロブリンの断片を含むがこれに限定されない)、例えば抗体又は抗体断片(ScFv断片を含むがこれに限定されない)、又は別の適切なタンパク質骨格、例えばプロテインAドメイン(例えばアフィボディーズ(商標))、テンダミスタット、フィブロネクチン、リポカリン、CTLA-4、T細胞受容体、設計アンキリン反復配列、アビマー、及びPDZドメイン(Binz et al., Nat. Biotech 2005, Vol 23:1257)、並びにDNA又はRNAアプタマーを含むがこれらに限定されないDNA又はRNAに基づいた結合部分(Ulrich et al., Comb Chem High Throughput Screen 2006 9(8):619-32)を含むか又は実質的にからなる。
【0072】
さらに別の態様では、少なくとも1つの治療用部分は、抗体可変ドメイン、例えば重鎖可変ドメイン又は軽鎖可変ドメインを含むか又は実質的にからなる。
【0073】
好ましい態様では、少なくとも1つの治療用部分は、少なくとも1つの免疫グロブリン単一可変ドメイン、例えばドメイン抗体、単一ドメイン抗体、「dAb」又はナノボディ(例えばVHH、ヒト化VHH、又はラクダ化VHH)又はIgNARドメインを含むか又は実質的にからなる。
【0074】
具体的な実施態様では、少なくとも1つの治療用部分は、少なくとも1つの一価ナノボディ、又は二価、多価、二重特異的、若しくは多重特異的なナノボディ構築物を含むか又は実質的にからなる。
【0075】
本発明の血清アルブミン結合剤及び1つ以上の治療用部分を含む、ポリペプチド、(融合)タンパク質、構築物、又は化合物は一般的に、上記に引用されている従来技術(例えば国際公開公報第04/041865号、国際公開公報第06/122787号、国際公開公報第2012/175400号、及び国際公開公報第2015/173325号;また、例えば、国際公開公報第2004/003019号、欧州特許第2139918号、国際公開公報第2011/006915号、及び国際公開公報第2014/111550号も参照する)に記載されている通りであり得る(調製及び使用され得る)が、前記の半減期増加性部分の代わりに、本発明の血清アルブミン結合剤を用いる。
【0076】
本発明の血清アルブミン結合剤及び1つ以上の治療用部分を含む、ポリペプチド、(融合)タンパク質、構築物、又は化合物は一般的にかつ好ましくは、治療用部分又は治療用部分群単独と比較して、増加した半減期(本明細書に記載されているような、そして好ましくはt1/2βとして表現される)を有する。
【0077】
一般的に、本明細書に記載の化合物、ポリペプチド、構築物、又は融合タンパク質は好ましくは、(ヒト又は適切な動物、例えばマウス又はカニクイザルのいずれかで測定したところ)、対応する治療用部分単独の半減期の、少なくとも1.5倍、好ましくは少なくとも2倍、例えば少なくとも5倍、例えば少なくとも10倍、又は20倍超の半減期(ここでも、本明細書に記載されているような、そして好ましくはt1/2βとして表現される)を有する。
【0078】
また、好ましくは、あらゆるこのような化合物、ポリペプチド、融合タンパク質、又は構築物は、ヒトにおいて、対応する治療用部分単独の半減期と比較して、1時間超、好ましくは2時間超、より好ましくは6時間超、例えば12時間超増加した半減期(ここでも、本明細書に記載されているような、そして好ましくはt1/2βとして表現される)を有する。
【0079】
また、好ましくは、本発明の化合物又はポリペプチドは、ヒトにおいて、1時間超、好ましくは2時間超、より好ましくは6時間超、例えば12時間超、例えば約1日間、2日間、1週間、2週間、及び最大でヒトにおける血清アルブミンの半減期(約19日間と推定される)までの半減期(ここでも、本明細書に記載されているような、そして好ましくはt1/2βとして表現される)を有する。
【0080】
記載のように、1つの態様では、本発明の血清アルブミン結合剤は、(1つ以上の)免疫グロブリン単一可変ドメイン、例えばドメイン抗体、単一ドメイン抗体、「dAb」、VHH、又はナノボディーズ(例えばVHH、ヒト化VHH、又はラクダ化VH、例えばラクダ化ヒトVH)の半減期を延長させるために使用される。
【0081】
したがって、本発明の1つの実施態様は、直接的に又は場合により1つ以上の適切なリンカー若しくはスペーサーを介して互いに適切に連結されている、本発明の血清アルブミン結合剤及び1つ以上の(例えば1つ又は2つの)免疫グロブリン単一可変ドメイン配列を含む、ポリペプチド、構築物、又は融合タンパク質に関する。本明細書に記載のように、このようなポリペプチド、構築物、又は融合タンパク質に存在する各々のこのような免疫グロブリン単一可変ドメインは独立して、ドメイン抗体、単一ドメイン抗体、「dAb」又はナノボディ(例えばVHH、ヒト化VHH、又はラクダ化VH、例えばラクダ化ヒトVH)であり得;1つの具体的であるが非限定的な態様によると、少なくとも1つ(及び最大で全部の)これらの免疫グロブリン単一可変ドメインは、2つ又は3つのジスルフィド橋を含む。好ましくは、本発明のこのような化合物に存在する全てのISVDはナノボディーズである。
【0082】
本発明の化合物がそのC末端にISVDを有する場合(例えば、本発明の血清アルブミン結合剤、又は治療標的に対して指向されるISVD)、前記のC末端ISVD(したがって、伸長により、本発明の完全な化合物)は好ましくは、そのC末端にC末端伸長を有する。このC末端伸長は、ISVDの最後のC末端アミノ酸残基に直接連結され、これは通常、Kabatによる113位のアミノ酸残基であろう(ISVDの配列が113位の前で終了するような1つ以上のアミノ酸の欠失をISVDが含有してなければ)。したがって、一般的に、C末端伸長は、C末端ISVのC末端VTVSS配列(配列番号78)に(したがって、伸長により、本発明の化合物のC末端TVTSS配列に)、又は、C末端ISVD配列に相当するC末端ISVDのC末端配列に直接連結されているであろう(例えば、C末端ISVDの該C末端配列が、通常のVTVSS配列と比較して1つ以上の置換又は欠失、例えばT110K、T110Q、S112K、又はS112Kを含有している場合)。
【0083】
また、本発明の化合物がそのC末端に本発明の血清アルブミン結合剤を有する場合、本発明の血清アルブミン結合剤は該C末端伸長を有するであろうことが当業者には明らかであろう。
【0084】
一般的に、本明細書において使用される任意のC末端伸長(すなわち、本発明の化合物のC末端における及び/又は本発明の血清アルブミン結合剤のC末端における)は一般的に、国際公開公報第2012/174741号又は国際公開公報第2015/173325号に記載されている通りであり得る(例えば、国際公開公報第2103/024059号及び国際公開公報第2016/118733号も参照する)。特に、C末端伸長は、式(X)を有し得、式中、nは1~10、好ましくは1~5、例えば1、2、3、4、又は5(好ましくは1又は2、例えば1)であり;各Xは、天然アミノ酸残基(好ましい1つの態様によると、それはシステイン残基を全く含まないが)から独立して選択された、好ましくはアラニン(A)、グリシン(G)、バリン(V)、ロイシン(L)、又はイソロイシン(I)からなる群より独立して選択された(好ましくは天然)アミノ酸残基である。
【0085】
このようなC末端伸長のいくつかの好ましいが非限定的な態様によると、X()、X、及びnは、以下の通りであり得る:
(a)n=1、X=Ala;
(b)n=2、各X=Ala;
(c)n=3、各X=Ala;
(d)n=2、少なくとも1つのX=Ala(残りのアミノ酸残基(群)Xは、任意の天然アミノ酸から独立して選択されるが、好ましくはVal、Leu、及び/又はIleから独立して選択される);
(e)n=3、少なくとも1つのX=Ala(残りのアミノ酸残基(群)Xは、任意の天然アミノ酸から独立して選択されるが、好ましくはVal、Leu、及び/又はIleから独立して選択される);
(f)n=3、少なくとも2つのX=Ala(残りのアミノ酸残基(群)Xは、任意の天然アミノ酸から独立して選択されるが、好ましくはVal、Leu、及び/又はIleから独立して選択される);
(g)n=1、X=Gly;
(h)n=2、各X=Gly;
(i)n=3、各X=Gly;
(j)n=2、少なくとも1つのX=Gly(残りのアミノ酸残基(群)Xは、任意の天然アミノ酸から独立して選択されるが、好ましくはVal、Leu、及び/又はIleから独立して選択される);
(k)n=3、少なくとも1つのX=Gly(残りのアミノ酸残基(群)Xは、任意の天然アミノ酸から独立して選択されるが、好ましくはVal、Leu、及び/又はIleから独立して選択される);
(l)n=3、少なくとも2つのX=Gly(残りのアミノ酸残基(群)Xは、任意の天然アミノ酸から独立して選択されるが、好ましくはVal、Leu、及び/又はIleから独立して選択される);
(m)n=2、各X=Ala又はGly;
(n)n=3、各X=Ala又はGly;
(o)n=3、少なくとも1つのX=Ala又はGly(残りのアミノ酸残基(群)Xは、任意の天然アミノ酸から独立して選択されるが、好ましくはVal、Leu、及び/又はIleから独立して選択される);又は
(p)n=3、少なくとも2つのX=Ala又はGly(残りのアミノ酸残基(群)Xは、任意の天然アミノ酸から独立して選択されるが、好ましくはVal、Leu、及び/又はIleから独立して選択される);
態様(a)、(b)、(c)、(g)、(h)、(i)、(m)、及び(n)が特に好ましく、n=1又は2の態様が好ましく、n=1の態様が特に好ましい。
【0086】
また、好ましくは、本発明の血清アルブミン結合剤に存在するあらゆるC末端伸長が、(遊離)システイン残基を含有しないことに留意すべきである(該システイン残基が、例えばPEG化のためなどのさらなる官能基化のために使用されるか又はそれを目的としていない場合)。
【0087】
有用なC末端伸長のいくつかの具体的であるが非限定的な例は、以下のアミノ酸配列である:A、AA、AAA、G、GG,GGG、AG、GA、AAG、AGG、AGA、GGA、GAA、又はGAG。
【0088】
好ましくはまた、本発明の化合物がそのC末端にISVDを有する場合(本発明の血清アルブミン結合剤又は治療標的に対して指向されるISVDなど)、(少なくとも)該C末端ISVDは好ましくは、さらにより好ましくは本明細書に記載のようなC末端伸長に加えて、既存の抗体による結合を低減させる1つ以上の突然変異(すなわち、本発明の血清アルブミン結合剤について本明細書に記載のような、より一般的には国際公開公報第2012/175741号及び国際公開公報第2015/173325号並びにまた例えば国際公開公報第2013/024059号及び国際公開公報第2016/118733号に記載のような)を含有する。これに関して、本発明の化合物がそのC末端に本発明の血清アルブミン結合剤を有する場合、(少なくとも)本発明の該血清アルブミン結合剤は好ましくはこのような突然変異(すなわち好ましくはC末端伸長に加えて)を含有するであろうことは当業者には明らかであろう。
【0089】
より一般的には、本発明の具体的な態様によると、本発明の化合物が2つ以上のISVDを含有している場合(例えば、本発明の血清アルブミン結合剤、及び治療標的に対する1つ以上のISVD)、好ましくはこれら全てのISVDは、既存の抗体への結合を低減させる突然変異を含有する(ここでも、好ましくは本発明の化合物がそのC末端にISVDを有している場合、C末端ISVDに連結されているC末端伸長に加えて)。
【0090】
本発明の化合物がそのN末端にISVDを有する場合(例えば本発明の血清アルブミン結合剤、又は治療標的に対して指向されるISVD)、該N末端ISVD(したがって、伸長により、本発明の完全な化合物)は好ましくは、1位にDを含有している。これに関して、ここでも、本発明の化合物がそのN末端に本発明の血清アルブミン結合剤を有する場合、本発明の該血清アルブミン結合剤は好ましくは1位にD(例えば、配列番号57~77の本発明のアミノ酸配列などにおける、例えば配列番号15の配列と比較してE1D突然変異)を有するであろうことは当業者には明らかであろう。
【0091】
いくつかのさらなる態様では、本発明は、少なくとも1つの(好ましくはたった1つの)本発明の血清アルブミン結合剤及び少なくとも1つの(例えば1つ、2つ、又は3つの)治療用部分又は実体を含むか又は実質的にからなる、タンパク質、ポリペプチド、又は他の化合物、若しくは構築物に関し(ここでの該血清アルブミン結合剤及び1つ以上の治療用部分又は実体は、場合により1つ以上の適切なリンカーを介して適切に連結されている)、ここでのタンパク質、ポリペプチド、化合物、構築物は、以下のようなものである:
-それがそのC末端にISVDを有する場合、該タンパク質、ポリペプチド、化合物、構築物(のC末端ISVD)は、C末端伸長(X)(本明細書にさらに記載のような)をそのC末端に有し;及び/又は
-それがそのC末端にISVDを有する場合、少なくとも該C末端ISVDは、既存の抗体の結合を低減させる1つ以上の突然変異(本明細書にさらに記載のような)を含有し;-それがそのN末端にISVDを有する場合、該タンパク質、ポリペプチド、化合物、構築物(のN末端ISVD)は好ましくは、1位にDを含有し;及び/又は
-該ISVDにおいて、該タンパク質、ポリペプチド、又は他の化合物はまた、そのN末端にもISVDを有し得、この場合、該N末端ISVDは好ましくは1位にD又はE1Dを有し;
-好ましくは、該タンパク質、ポリペプチド、化合物、構築物に存在する実質的に全てのISVDは、既存の抗体の結合を低減させる1つ以上の突然変異(本明細書にさらに記載のような)を含有するようなものである。
【0092】
本発明の1つの具体的な態様によると、本発明の化合物に存在する全ての治療用部分は、ISVD(すなわち、治療標的に対するISVD)、特に重鎖ISVD、より特定するとナノボディーズ(すなわち、治療標的に対するナノボディーズ)である。
【0093】
例えであり限定するものではないが、本発明のこのような化合物は、
-1コピーの本発明の血清アルブミン結合剤及び治療標的に対する1つのISVD(好ましくはナノボディ);又は
-1コピーの本発明の血清アルブミン結合剤及び治療標的に対する2つのISVD(好ましくは2つのナノボディーズ)(該ISVDは同じでも異なっていてもよく、異なっている場合、同じ標的に対して、同じ標的上の異なるエピトープに対して、又は異なる治療標的に対して指向され得る);又は
-1コピーの本発明の血清アルブミン結合剤及び治療標的に対する3つのISVD(好ましくは3つのナノボディーズ)(該ISVDは同じでも異なっていてもよく、異なっている場合、同じ標的に対して、同じ標的上の異なるエピトープに対して、又は異なる治療標的に対して指向され得る)
を含み得る。
【0094】
本発明の構築物、融合タンパク質、又はポリペプチドのいくつかの非限定的な例は、以下のように図で示され得、「[Alb]」は本発明の血清アルブミン結合剤を示し、「[治療用部分1]」及び「[治療用部分2]」は治療用部分(これは記載のように、各々独立して、免疫グロブリン単一可変ドメインであり得る)を示し、「-」は適切なリンカー(これは任意選択であり;適切な例は9GS及び35GSリンカーである)を示し、N末端は左手側であり、C末端は右手側である:
[Alb]-[治療用部分1]
[治療用部分1]-[Alb]-X(n)
[Alb]-[治療用部分1]-[治療用部分1]
[治療用部分1]-[治療用部分1]-[Alb]-X(n)
[治療用部分1]-[Alb]-[治療用部分1]
[Alb]-[治療用部分1]-[治療用部分2]
[治療用部分1]-[治療用部分2]-[Alb]-X(n)
[治療用部分1]-[Alb]-[治療用部分2]。
【0095】
治療用部分が、治療標的に対するISVD(好ましくはナノボディーズ)である場合、本発明の好ましいが非限定的な構築物、融合タンパク質、又はポリペプチドは、以下のように図で示され得、「[Alb]」は本発明の血清アルブミン結合剤を示し、「[治療用ISVD1]」及び「[治療用ISVD2]」は治療標的に対するISVDを示し(該ISVDは同じでも異なっていてもよく、異なっている場合、同じ標的に対して、同じ標的上の異なるエピトープに対して、又は異なる治療標的に対して指向され得る)、「-」は適切なリンカー(これは任意選択である)を示し、X(n)は本明細書に記載のようなC末端伸長を示し、N末端は左手側であり、C末端は右手側である:
[Alb]-[治療用ISVD1]-X(n)
[治療用ISVD1]-[Alb]-X(n)
[Alb]-[治療用ISVD1]-[治療用ISVD1]-X(n)
[治療用ISVD1]-[治療用ISVD1]-[Alb]-X(n)
[治療用ISVD1]-[Alb]-[治療用ISVD1]-X(n)
[Alb]-[治療用ISVD1]-[治療用ISVD2]-X(n)
[治療用ISVD1]-[治療用ISVD2]-[Alb]-X(n)
[治療用ISVD1]-[Alb]-[治療用ISVD2]-X(n)
【0096】
したがって、別の態様では、本発明は、本発明の血清アルブミン結合剤、及び少なくとも1つの他のナノボディ(例えば1つ又は2つの他のナノボディーズ、これは同じであっても異なっていてもよい)(前記の少なくとも1つの他のナノボディは好ましくは、所望の標的(これは好ましくは治療標的である)に対して指向される)、並びに/又は治療目的、予防目的、及び/若しくは診断目的に有用であるか若しくは適切である別のナノボディを含む、多重特異的(特に二重特異的)ナノボディ構築物に関する。ここでも、本発明の血清アルブミン結合剤及び他のナノボディーズは、互いに直接的に又は場合により1つ以上の適切なリンカー若しくはスペーサーを介して適切に連結されていてもよい。
【0097】
1つ以上のナノボディーズを含有している多価及び多重特異的ポリペプチド並びにそれらの調製の一般的な説明については、Conrath et al., J. Biol. Chem., Vol. 276, 10. 7346-7350, 2001; Muyldermans, Reviews in Molecular Biotechnology 74 (2001), 277-302;並びに、例えば、国際公開公報第96/34103号、国際公開公報第99/23221号、国際公開公報第04/041862号、国際公開公報第2006/122786号、国際公開公報第2008/020079号、国際公開公報第2008/142164号、又は国際公開公報第2009/068627号も参照する。
【0098】
例示を用いて、本発明の化合物のいくつかの例が、抗標的ナノボディの代表例としての配列番号81の抗HER2ナノボディを使用して、配列番号82~88に示され、構成成分のナノボディーズは、本発明の化合物の異なる位置にある。配列番号82~85の化合物は、本発明の二価の二重特異的化合物を示した例であり、配列番号86~88の化合物は、本発明の三価の二重特異的な化合物を示した例である。それぞれの場合において、該化合物はE1D突然変異及びC末端アラニン残基を含有し、代表的であるが非限定的な適切なリンカーの使用例を含有する(すなわち、配列番号83における15GSリンカー、並びに/又は配列番号84及び85~88における35GSリンカー)。
【0099】
本発明のいくつかの具体的な多重特異的及び/又は多価ポリペプチドのいくつかの他の例は、本明細書に記載のアブリンクス社による出願に見られ得る。特に、半減期を増加するための血清タンパク質に対する少なくとも1つのナノボディを含む多価及び多重特異的構築物の、それをコードする核酸の、それを含む組成物の、前記の調製の、及び前記の使用の、一般的な説明については、上記の国際出願の国際公開公報第04/041865号及び国際公開公報第06/122787号(本明細書に記載の本発明の血清アルブミン結合剤は一般的に、Alb-8などのそこに記載されている半減期増加性ナノボディーズと同じように使用され得る)、並びに、例えば国際公開公報第04/041862号、国際公開公報第2006/122786号、国際公開公報第2008/020079号、国際公開公報第2008/142164号、又は国際公開公報第2009/068627号に示されたこのような構築物の一般的な説明及び具体例を参照する。
【0100】
本発明はまた、本発明のアルブミン結合剤、化合物、又はポリペプチドをコードしているヌクレオチド配列又は核酸にも関する。本発明はさらに、前記のヌクレオチド配列又は核酸及びそれ自体公知である遺伝子構築物のための1つ以上の配列を含む、遺伝子構築物を含む。遺伝子構築物は、プラスミド又はベクターの形態であり得る。ここでも、このような構築物は一般的に、例えば国際公開公報第04/041862号、国際公開公報第2006/122786号、国際公開公報第2008/020079号、国際公開公報第2008/142164号、又は国際公開公報第2009/068627号などのアブリンクス社の公開特許出願に記載されている通りであり得る。
【0101】
本発明はまた、このようなヌクレオチド配列若しくは核酸を含有している、及び/又は本発明のアルブミン結合剤、化合物、若しくはポリペプチドを発現する(又は発現することができる)、宿主又は宿主細胞に関する。ここでも、このような宿主細胞は一般的に、例えば国際公開公報第04/041862号、国際公開公報第2006/122786号、国際公開公報第2008/020079号、国際公開公報第2008/142164号、又は国際公開公報第2009/068627号などのアブリンクス社の公開特許出願に記載されている通りであり得る。
【0102】
本発明はまた、本発明のアルブミン結合剤、化合物、又はポリペプチドを調製するための方法に関し、該方法は、宿主細胞が、本発明のアルブミン結合剤、化合物、又はポリペプチドを産生又は発現するような条件下で本明細書に記載のような宿主細胞を培養又は維持する工程を含み、場合によりさらに、このようにして産生された本発明のアルブミン結合剤、化合物、又はポリペプチドを単離する工程を含む。ここでも、このような方法は、例えば国際公開公報第04/041862号、国際公開公報第2006/122786号、国際公開公報第2008/020079号、国際公開公報第2008/142164号、又は国際公開公報第2009/068627号などのアブリンクス社の公開特許出願に一般的に記載されている通りに実施され得る。
【0103】
本発明はまた、本発明の少なくとも1つの化合物又はポリペプチド、及び場合により少なくとも1つの薬学的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤を含む、医薬組成物に関する。このような調製物、担体、賦形剤、及び希釈剤は一般的に、例えば国際公開公報第04/041862号、国際公開公報第2006/122786号、国際公開公報第2008/020079号、国際公開公報第2008/142164号、又は国際公開公報第2009/068627号などのアブリンクス社の公開特許出願に記載された通りであり得る。
【0104】
しかしながら、本発明の化合物又はポリペプチドは増加された半減期を有するので、それらは好ましくは、血液循環中に投与される。したがって、それらは、血液循環に本発明の化合物又はポリペプチドが進入するのを可能とする任意の適切な様式で、例えば静脈内に、注射若しくは注入を介して、又は任意の他の適切な様式で(経口投与、皮下投与、筋肉内投与、皮膚を通した投与、鼻腔内投与、肺を介した投与などを含む)投与され得る。適切な投与法及び投与経路は、ここでも例えばまた、例えば国際公開公報第04/041862号、国際公開公報第2006/122786号、国際公開公報第2008/020079号、国際公開公報第2008/142164号、又は国際公開公報第2009/068627号などのアブリンクス社の公開特許出願の教義から当業者には明らかであろう。
【0105】
したがって、別の態様では、本発明は、本発明の化合物又はポリペプチドの使用によって予防又は治療され得る少なくとも1つの疾患又は障害の予防法及び/又は治療法に関し、該方法は、それを必要とする被験者に、薬学的に活性な量の、本発明の化合物若しくはポリペプチド及び/又はそれを含む医薬組成物を投与する工程を含む。本明細書に記載のような本発明の化合物又はポリペプチドの使用によって予防又は治療され得る疾患及び障害は一般的に、本発明の化合物又はポリペプチドである/本発明の化合物又はポリペプチドに存在する治療用部分又は治療部分群の使用によって予防又は治療され得る疾患及び障害と同じであろう。
【0106】
本発明の脈絡において、「予防及び/又は治療」という用語は、疾患の予防及び/又は治療を含むだけでなく、一般的に疾患の発症の予防、疾患の進行の緩徐化又は逆行、疾患に関連した1つ以上の症状の発症の予防又は緩徐化、疾患に関連した1つ以上の症状の低減及び/又は寛解、疾患及び/又はそれに関連したあらゆる症状の重症度及び/又は持続時間の低減、並びに/あるいは、疾患及び/又はそれに関連したあらゆる症状の重症度のさらなる増加の予防、疾患によって引き起こされたあらゆる生理学的傷害の低減又は逆行、並びに、一般的に、処置される患者にとって有益であるあらゆる薬理作用も含む。
【0107】
処置される被験者は、任意の恒温動物であり得るが、特に、哺乳動物、より特定するとヒトである。当業者には明らかであるように、処置される被験者は特に、本明細書に記載の疾患及び障害を患っているか又はリスクのある人であろう。
【0108】
別の実施態様では、本発明は、免疫療法のための、特に受動免疫療法のための方法に関し、該方法は、本明細書に記載の疾患及び障害を患っているか又はリスクのある被験者に、薬学的に活性な量の本発明の化合物若しくはポリペプチド及び/又はそれを含む医薬組成物を投与する工程を含む。
【0109】
本発明の化合物若しくはポリペプチド及び/又はそれを含む組成物は、予防又は治療しようとする疾患又は障害を予防及び/又は治療するのに適した処置処方計画に従って投与される。臨床医は一般的に、予防又は治療しようとする疾患又は障害、処置しようとする疾患の重症度及び/又はその症状の重症度、使用しようとする本発明の具体的なポリペプチド、具体的な投与経路、及び使用しようとする医薬製剤又は組成物、患者の年齢、性別、体重、食事、全般的な状態、並びに臨床医には周知である同様な因子などの因子に依存して、適切な処置処方計画を決定することができるだろう。
【0110】
一般的には、処置処方計画は、本発明の1つ以上の化合物若しくはポリペプチド、又はそれを含む1つ以上の組成物の、1回以上の薬学的に有効な量又は用量での投与を含む。投与しようとする具体的な量(群)又は用量は、ここでも上記に引用されている因子に基づいて臨床医によって決定され得る。
【0111】
一般的に、本明細書に記載の疾患及び障害の予防及び/又は治療のために、処置しようとする具体的な疾患又は障害、使用しようとする本発明の化合物又はポリペプチドの効力及び/又は半減期、具体的な投与経路、並びに使用される具体的な医薬製剤又は組成物に依存して、本発明の化合物又はポリペプチドは一般的に、1g~0.01μg/kg(体重)/日、好ましくは0.1g~0.1μg/kg(体重)/日、例えば約1、10、100又は1000μg/kg(体重)/日の量で、連続的に(例えば注入により)、1日1回量で、又は1日の間に複数回の分割用量で、のいずれかで投与されるだろう。臨床医は一般的に、本明細書に記載の因子に依存して、適切な1日量を決定することができるだろう。また、特定の場合では、臨床医は、例えば、上記に引用された因子及び臨床医の専門的な判断に基づいて、これらの量からの逸脱を選択し得ることが明らかであろう。一般的に、投与される量に関するいくつかの指針は、実質的に同じ経路を介して投与される同じ標的に対する同等な従来の抗体又は抗体断片の通常投与される量から、しかしながら親和性/結合力、効力、生体分布、半減期、及び当業者には周知である同様な因子における差異を考慮しながら得ることができる。
【0112】
また、本発明の化合物は、半減期増加性の本発明の血清アルブミン結合剤を含有するので、それらは実質的に連続的に(例えば注入によって)投与される必要はないが、それらは適切な間隔(当業者によって決定される)で投与され得る。例えば、それらは(適切な用量で)2日間毎に1回、4日間毎に1回、1週間に1回、2週間毎に1回、及び場合によっては4週間毎に1回、又はさらにはより低い頻度で、例えば注射又は注入によって投与され得る。
【0113】
本発明の1つの態様は、本発明の少なくとも1つの化合物又はポリペプチドを含む医薬組成物に関し、該組成物は、1週間に1回から4週間毎に1回、特に7日間毎に1回から21日間毎に1回、例えば7日間毎又は14日間毎に1回の間隔で投与されることを意図する。
【0114】
通常、上記の方法において、本発明の単一ポリペプチドが使用されるだろう。しかしながら、本発明の2つ以上のポリペプチドを組み合わせて使用することは本発明の範囲内である。
【0115】
本発明のポリペプチドはまた、1つ以上のさらなる薬学的に活性な化合物又は成分と組み合わせて、すなわち、組合せ処置処方計画として使用され得、これは相乗作用をもたらす場合もあるがもたらさない場合もある。ここでも、臨床医は、上記に引用された因子及び臨床医の専門的な判断に基づいて、このようなさらなる化合物又は成分、並びに、適切な組合せ処置処方計画を選択することができるだろう。
【0116】
特に、本発明のポリペプチドは、本発明の融合タンパク質又は構築物を用いて予防又は治療され得る疾患及び障害の予防及び/又は治療のために使用されるか又は使用され得る、他の薬学的に活性な化合物又は成分と組み合わせて使用され得、その結果として、相乗作用が得られる場合もあるが得られない場合もある。
【0117】
本発明に従って使用される処置処方計画の有効性は、臨床医には明らかであるような、関与する疾患又は障害についてそれ自体公知の任意の方法で決定及び/又は追跡され得る。臨床医はまた、適宜及び又は場合に応じて、特定の処置処方計画を変更若しくは改変することができ、これにより所望の治療効果を達成し、望ましくない副作用を回避、制限、若しくは低減し、及び/又は、一方で所望の治療効果を達成することと、他方で望ましくない副作用を回避、制限、若しくは低減することの間で適切なバランスをとることができるだろう。
【0118】
一般的に、処置処方計画は、所望の治療効果が達成されるまで及び/又は所望の治療効果を維持したい限り追跡されるだろう。ここでも、これは、臨床医によって決定され得る。
【0119】
本発明の他の態様、実施態様、利点及び適用は、本明細書のさらなる説明から明らかとなろう。
【0120】
本発明は、これから以下の非限定的な好ましい態様、実施例、及び図面を用いてさらに説明されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0121】
図1図1は、本明細書に具体的に言及されているいくつかのアミノ酸位置及びいくつかの代替的な番号付け体系(例えばAho及びIMGT)によるそれらの番号付けを列挙した表である。
図2-1】図2は、本明細書において言及されたアミノ酸配列を列挙する;
図2-2】図2は、本明細書において言及されたアミノ酸配列を列挙する;
図2-3】図2は、本明細書において言及されたアミノ酸配列を列挙する;
図2-4】図2は、本明細書において言及されたアミノ酸配列を列挙する;
図2-5】図2は、本明細書において言及されたアミノ酸配列を列挙する;
図2-6】図2は、本明細書において言及されたアミノ酸配列を列挙する;
図2-7】図2は、本明細書において言及されたアミノ酸配列を列挙する;
図2-8】図2は、本明細書において言及されたアミノ酸配列を列挙する;
図2-9】図2は、本明細書において言及されたアミノ酸配列を列挙する;
図2-10】図2は、本明細書において言及されたアミノ酸配列を列挙する;
図2-11】図2は、本明細書において言及されたアミノ酸配列を列挙する;
図3A図3A及び3Bは、配列番号15の配列(本発明)と、従来技術の配列番号1及び2の配列並びに配列番号79及び80の基準配列(これはそれぞれ配列番号1及び配列番号2に基づく)のアラインメントを示す。
図3B図3A及び3Bは、配列番号15の配列(本発明)と、従来技術の配列番号1及び2の配列並びに配列番号79及び80の基準配列(これはそれぞれ配列番号1及び配列番号2に基づく)のアラインメントを示す。
図4A図4Aは、配列番号15~56のアラインメントを示し、図4Bは配列番号15及び57~77のアラインメントを示す。
図4B図4Aは、配列番号15~56のアラインメントを示し、図4Bは配列番号15及び57~77のアラインメントを示す。
図5図5は、配列番号1の血清アルブミン結合剤(基準物質)、配列番号15の血清アルブミン結合剤(本発明)、及び実施例2で作製されたような無関係のナノボディ(cAblys3-Flag3His6)に対する競合的な結合を示したグラフである。
図6図6は、配列番号15の血清アルブミン結合剤の存在下におけるFcRnに対するヒト血清アルブミンの結合を示したグラフである。ヒトFcRn-ヒトβ2ミクログロブリンヘテロ二量体をCM5チップ上に固定した。50mM NaPO4+150mM NaCl+0.05%Tween-20(pH6.0)中2μMのナノボディの非存在下又は存在下における1μM HSAの結合をビアコアT100機器でモニタリングした。
図7図7は、ヒト血清アルブミンの結晶構造及び配列番号15のアミノ酸配列の結晶構造について結晶構造を決定/計算する際に実施例7で使用されたデータ収集及び処理の統計を示す。
図8図8は、ヒト血清アルブミンの結晶構造及び配列番号15のアミノ酸配列の結晶構造について結晶構造を決定/計算する際に実施例7で使用された精密統計を列挙する。
図9図9は、実施例5で決定されたような、それぞれ配列番号82(本発明)、配列番号89(基準物質)、及び配列番号90(基準物質)の構築物についての血清中濃度を示したグラフである。グラフ中の記号は、個々のデータ点を示し、線は平均濃度を示す。
図10図10は、実施例7で作成された結晶構造データに基づいて、ヒト血清アルブミンと配列番号15との間の結合相互作用に関与していると推定された、それぞれ、ヒト血清アルブミン上及び配列番号15上の最も重要な残基を示す。図10はまた、これらのそれぞれのアミノ酸残基間の主な結合相互作用を示す。
図11-1】図11は、哺乳動物の様々な種に由来する血清アルブミンのアラインメントを示す。ヒト血清アルブミンの配列において、配列番号15の推定エピトープの一部であると推定されるアミノ酸のストレッチ(図10も参照)が強調されている。
図11-2】図11は、哺乳動物の様々な種に由来する血清アルブミンのアラインメントを示す。ヒト血清アルブミンの配列において、配列番号15の推定エピトープの一部であると推定されるアミノ酸のストレッチ(図10も参照)が強調されている。
図11-3】図11は、哺乳動物の様々な種に由来する血清アルブミンのアラインメントを示す。ヒト血清アルブミンの配列において、配列番号15の推定エピトープの一部であると推定されるアミノ酸のストレッチ(図10も参照)が強調されている。
【0122】
本出願の全体を通して引用された全ての参考書(参考文献、発行された特許、公開された特許出願、及び同時係属中の特許出願を含む)の全内容は、特に本明細書で上記に言及されている教義のために、参照によりここに明白に組み入れられる。
【0123】
実験部
実施例1:血清アルブミンに対する親和性
ヒト(シグマ・アルドリッチ社A3782)、カニクイザル(社内で作製)、マウス(アルブミン・バイオサイエンス社2601)、ラット(シグマ・アルドリッチ社A4538)、ウサギ(シグマ・アルドリッチ社A0764)、モルモット(Gentaur社GPSA62)、ブタ(シグマ・アルドリッチ社A4414)、ヒツジ(シグマ・アルドリッチ社A3264)、及びウシ(シグマ・アルドリッチ社A3059)の血清アルブミン(SA)に対する配列番号15の血清アルブミン結合剤の親和性を、ProteOn XPR36(バイオラッド社)機器で表面プラズモン共鳴(spr)を介して測定した。血清アルブミンを、ProteOnアミンカップリングキット(バイオラッド社)を使用して、GLCProteOnチップ上に、アミンカップリングを介して固定した。HBS-P+pH7.4緩衝液(GEヘルスケア社)中、様々な濃度(300nM、100nM、33.3nM、11.1nM、3.7nM、及び1.23nM)の配列番号15の血清アルブミン結合剤を、45μL/分で120秒間注入し、その後、900秒間かけて解離した。ウサギ、ブタ、ヒツジ、及びウシのSAに対する配列番号15の血清アルブミン結合剤の結合は全く観察されなかったか又は非常に低い結合が観察された。ヒト、カニクイザル、ラット、マウス及びモルモットのSAに対する配列番号15の血清アルブミン結合剤の親和性は、別々の実験で決定したところ、配列番号1の血清アルブミン結合剤(基準物質)のそれぞれの親和性と比較してより高かった。結果を表1に示す。
【0124】
【表3】
【0125】
血中アルブミンの長い半減期は、主に2つの特徴によってもたらされる:(i)大きなサイズ(65kDa)のアルブミンは、その糸球体ろ過を制限し、(ii)アルブミンは低いpH(pH6)でFcRnに結合し、これは内皮細胞及び上皮細胞への受動エンドサイトーシス後に、初期エンドソームから細胞外環境へと戻りリサイクルすることによって、リソソーム内でアルブミンが分解されるのを保護する。アルブミンとの結合及びその後のリサイクルを通してアルブミン結合性ナノボディーズが長い血清中半減期を得るために、これらは、pH範囲5.0~7.4でアルブミンに結合したままであるべきである。HSAからの、基準物質としての配列番号1の血清アルブミン結合剤をはじめとする配列番号15の血清アルブミン結合剤の解離速度を、pH5、pH6、及びpH7.4において、上記のようにProteOn機器で測定した。HBS-P+pH7.4緩衝液中、それぞれ500nM及び300nMの、配列番号15の血清アルブミン結合剤及び配列番号1の血清アルブミン結合剤(基準物質)を注入した。解離用緩衝液は、それぞれ、50mM NaOAc/HOAc+150mM NaCl+0.05%Tween-20 pH5.0、50mM NaOAc/HOAc+150mM NaCl+0.05%Tween-20 pH6.0及びHBS-P+pH7.4であった。解離を2700秒間分析した。表2に示されるデータから分かるように、配列番号15の血清アルブミン結合剤の解離速度は、pH範囲5.0~7.4にかけて有意差はない。
【0126】
【表4】
【0127】
実施例2:エピトープ
エピトープビニングを、競合ELISAで分析した。ヒト血清アルブミンを、PBS中125ng/mlで4℃で一晩かけてコーティングした。PBS+1%カゼインで遮断した後、1.5nMの[配列番号1-cMycHis6]の血清アルブミン結合剤及び一連の濃度の競合物質である([His6Flag-配列番号15]、陽性対照としての[His6Flag3-配列番号1]又は陰性対照としての鶏卵リゾチーム結合性単一ドメイン抗体cAbly3-Flag3His6を加えた。結合した[配列番号1-cMycHis6]を、ヤギ抗cMyc抗体(アブカム社ab19234)及びHRP標識ウサギ抗ヤギ抗体(Genway社18-511-244226)を用いて検出した。
【0128】
結果を図5に示す。配列番号15の血清アルブミン結合剤及び配列番号1の血清アルブミン結合剤(基準物質)は、ヒト血清アルブミン上の同一のエピトープには結合しないことが判明した。
【0129】
実施例3:SAとFcRnとの間の相互作用への干渉
配列番号15の血清アルブミン結合剤が、アルブミンとの結合及びその後のリサイクルを介して長い半減期を得るためには、それは、FcRnに対するアルブミンの結合に干渉すべきではない。これは、ビアコアT100(GEヘルスケア社)機器でSPRで分析された。ヒトFcRn-ヒトβ2ミクログロブリンヘテロ二量体(シノバイオロジカル社CT009-H08H)を、標準的なアミンカップリング(ビアコアアミンカップリングキット)を介してCM5チップ上に固定した。50mM NaPO4+150mM NaCl+0.05% Tween-20(pH6.0)中の1μMのHSAと2μMのナノボディ([His6Flag3-配列番号15]、[His6Flag3-配列番号1](基準物質)又はcAblys-Flag3His6)の混合物を10μl/分で120秒間かけて注入し、その後、600秒間かけて解離した。結合曲線を、ナノボディの非存在下において1μM HSAの結合曲線と定性的に比較した。図6から分かるように、配列番号15の血清アルブミン結合剤は、FcRNに対するHSAの結合に干渉しなかった。
【0130】
実施例4:物理的安定性
配列番号15の血清アルブミン結合剤の安定性を、基準物質として配列番号1及び2の血清アルブミン結合剤を使用して評価した。融点(Tm)を、示差走査熱量測定(DSC)で決定した。さらに、物理的安定性を、D-PBS中40℃にて5mg/mlで保存する前後に以下のパラメーターを測定することによって分析した:濁度(OD500nm)、高分子量変異体率(SE-HPLC)、含量(OD280)、及び化学的変異体(RP-HPLC)。
【0131】
結果を表3に示す。全ての構築物について、40℃での保存により、SE-HPLCのプレピーク(高分子量変異体)が増加し、これは、配列番号1の血清アルブミン結合剤と比較して、配列番号15及び配列番号2の血清アルブミン結合剤の方が明らかに低かった。
【0132】
【表5】
【0133】
実施例5:ラットにおける配列番号15の血清アルブミン結合剤のPKプロファイル
1回の静脈内投薬後の配列番号15の血清アルブミン結合剤を含む本発明の代表的な化合物(配列番号82)の薬物動態を、Sprague Dawleyラットで研究し、それぞれ基準物質である配列番号79及び80の血清アルブミン結合剤を含む類似の構築物(配列番号89及び90)と比較した。配列番号1、2、79及び80の基準配列と配列番号15のアラインメントを図3A及び3Bに示す。配列番号82、89及び90の構築物は、35GSリンカーを介して代表的なナノボディ(配列番号81の抗HER2ナノボディ)に連結された妥当な血清アルブミン結合剤、並びに、E1D突然変異及びC末端アラニンを含み、ピキア・パストリスで産生された。
【0134】
二価ナノボディーズの放射ヨウ素化は、pH8.3の0.2Mのホウ酸緩衝液中のN-スクシンイミジル3-125I-ヨードベンゾエート(125I-SIB)を使用して実施された。ナノボディーズの標識が、HSAに対する結合に干渉したという徴候はなかった。ラットに、3.5~4mCi/mgのナノボディ構築物という比活性で、125Iで標識された構築物(1群あたり3匹のラット)20μgを投薬した。血液試料を、投与から5分後、1時間後、4時間後、8時間後、24時間後、48時間後、96時間後、168時間後、240時間後、336時間後、及び504時間後に採取した。各血液試料中の放射能を測定し、標識されたナノボディ構築物の比活性に基づいてタンパク質濃度に変換した。経時的な放射活性標識の崩壊を、計算の際に考慮に入れた。血液中で測定された構築物の経時的な濃度を、図9に示す。PKパラメーターを、ノンコンパートメント分析によって計算した:関連データを表4に列挙する。配列番号79及び89の基準物質と比較してラットSAに対して予想されるより高い親和性と一致して、より高い被爆及び低減したクリアランスが、配列番号15の血清アルブミン結合剤において観察された。
【0135】
【表6】
【0136】
実施例6:ラットにおける配列番号15の血清アルブミン結合剤のインビボにおける安全性
アルブミンは、ビリルビン、脂質、イオン、糖、代謝物などの多くの天然リガンドに対するキャリアタンパク質である。治療用化合物の半減期を延長するために配列番号15の血清アルブミン結合剤を使用するためには、それは天然リガンドの結合に置き換わるべきではない。これは、安全性研究でCrl:CD(SD)ラットにおいて評価された。動物に、1日目、4日目、及び7日目に100mg/kgの配列番号82の構築物又はビヒクル(D-PBS)を静脈内注射した。血液を4日目、7日目及び12日目に収集し、臨床パラメーターを測定した。本発明の化合物は十分な耐容性を示し、不都合な臨床的観察、食物摂取量、体重、又は臨床化学検査値の変化は全く起こらなかった。
【0137】
実施例7:結晶構造
配列番号15の血清アルブミン結合剤と複合体化したヒト血清アルブミンの結晶を瞬間凍結させ、100Kの温度で測定した。共結晶複合体の回折データは、SWISS LIGHT SOURCE(ビリゲン、スイス)で集められた。データ収集及び処理の統計を図7及び8に要約する。
【0138】
結果として得られた電子密度マップは、結晶が、1つのHSA:配列番号15の血清アルブミン結合剤の複合体を非対称単位で含有することを明らかとし、HSAのドメインIIに結合している配列番号15の血清アルブミン結合剤についての明瞭な結合モードを示す。構造モデルを構築し、2.80Åの最終分解能まで精密化した。モデルは、配列番号15の血清アルブミン結合剤の残基Glu1からSer123、及びHSAのLys4からLeu583を含む。HSAと配列番号15の血清アルブミン結合剤との相互作用に関与していることが判明した主な残基を図10に列挙する(図11も参照)。
図1
図2-1】
図2-2】
図2-3】
図2-4】
図2-5】
図2-6】
図2-7】
図2-8】
図2-9】
図2-10】
図2-11】
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11-1】
図11-2】
図11-3】
【配列表】
2023109939000001.app
【手続補正書】
【提出日】2023-06-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血清アルブミンに結合することができる免疫グロブリン単一可変ドメイン(ISVD)であって、
-アミノ酸配列GLTFSSYAMG(配列番号12)であるCDR1(Abmによる);及び
Kabat番号付けによる位置52aにR;
Kabat番号付けによる位置52にS;
Kabat番号付けによる位置55にG;
Kabat番号付けによる位置56にY;
Kabat番号付けによる位置58にYを含む、CDR2(Abmによる);及び
Kabat番号付けによる位置97にY;
Kabat番号付けによる位置98にW;
Kabat番号付けによる位置99にA;
Kabat番号付けによる位置100にT;
Kabat番号付けによる位置100bにS;
Kabat番号付けによる位置100cにE;及び
Kabat番号付けによる位置100dにYを含む、CDR3(Abmによる)
を含み、
場合により、血清アルブミンは、ヒト血清アルブミンであるISVD
【請求項2】
Kabat番号付けによる位置64にKをさらに含む、請求項1記載のISVD
【請求項3】
ProteOnを使用して決定したところ、100nMよりも良好な、又は50nMよりも良好な親和性でヒト血清アルブミンに結合することのできる、請求項1記載のISVD
【請求項4】
重鎖免疫グロブリン単一可変ドメインである、請求項記載のISVD
【請求項5】
VHH、ヒト化VHH、又はラクダ化VHであり、場合によりラクダ化VHは、ラクダ化ヒトVHである、請求項記載のISVD
【請求項6】
-6時間を超える、12時間を超える、24時間を超える、又は72時間を超えるヒトにおける血清中半減期(t1/2βとして表現される)を有する、請求項記載のISVD
【請求項7】
-少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%の、配列番号15の配列配列同一度を有する
は、
-配列番号15の配列7以下、5以下、3以下、2つ以下、又は1つ以下の「アミノ酸の相違」をし、
ここで、CDRが、配列同一度又はアミノ酸の相違を決定する際に考慮されない、請求項記載のISVD
【請求項8】
HHであり、そして配列番号15の配列と比較して、1つ以上のヒト化置換を含有している、請求項記載のISVD
【請求項9】
清アルブミンに結合することができる免疫グロブリン単一可変ドメイン(ISVD)であり、配列番号15~77から選択され、場合により、血清アルブミンは、ヒト血清アルブミンである、ISVD
【請求項10】
請求項記載の少なくとも1つのISVDを含む、ポリペプチド。
【請求項11】
少なくとも1つの治療用部分又は実体を含む、請求項10記載のポリペプチド。
【請求項12】
融合タンパク質である、請求項10記載のポリペプチド。
【請求項13】
6時間を超える、12時間を超える、24時間を超える、又は72時間を超えるヒトにおける血清中半減期(t1/2βとして表現される)を有する、請求項10記載のポリペプチド。
【請求項14】
ポリペプチドが、さらにC末端にISVDを含み、ここで、C末端ISVDポリペプチドが、C末端伸長(X) を含み、ここで、各Xが、天然に生じるアミノ酸残基から独立して選択されるアミノ酸残基であり、そしてここで、nが、1~10であり;及び/又は
ポリペプチドが、さらにN末端にISVDを含み、ここで、N末端ISVDポリペプチドが、位置1にDを含む
請求項10記載のポリペプチド。
【請求項15】
請求項10記載のポリペプチドを含む、医薬組成物。
【請求項16】
請求項1記載のISVDをコードする、核酸。
【請求項17】
請求項23記載の発現ベクターを含む、宿主細胞。
【請求項18】
宿主細胞がポリペプチドを産生又は発現するような条件で、請求項17記載の宿主細胞を培養又は維持すること、及び場合により、ポリペプチドをさらに単離することを含む、ポリペプチドの調製方法。
【請求項19】
6時間を超える、12時間を超える、24時間を超える、又は72時間を超えるヒトにおける血清中半減期(t1/2βとして表現される)を有する、請求項11記載のポリペプチド。
【請求項20】
ISVDが、配列番頭15のアミノ酸配列のヒト血清アルブミンへの結合を交差遮断する、請求項1記載のISVD。
【請求項21】
請求項16記載の核酸を含む、発現ベクター。
【手続補正書】
【提出日】2023-07-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】変更
【補正の内容】
【配列表】
2023109939000001.xml
【外国語明細書】