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特開2023-109948アゴニストおよびアンタゴニストとしての循環置換により修飾されるリガンド
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023109948
(43)【公開日】2023-08-08
(54)【発明の名称】アゴニストおよびアンタゴニストとしての循環置換により修飾されるリガンド
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/62 20060101AFI20230801BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20230801BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20230801BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20230801BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20230801BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20230801BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230801BHJP
   C07K 14/715 20060101ALI20230801BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20230801BHJP
   C12N 15/24 20060101ALI20230801BHJP
   C07K 14/54 20060101ALI20230801BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20230801BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230801BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230801BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20230801BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20230801BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20230801BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20230801BHJP
   A61P 7/00 20060101ALI20230801BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20230801BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20230801BHJP
   A61P 19/00 20060101ALI20230801BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20230801BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20230801BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230801BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20230801BHJP
   A61P 37/00 20060101ALI20230801BHJP
【FI】
C12N15/62 Z
C07K19/00 ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C07K14/715
C12N15/12
C12N15/24
C07K14/54
A61K38/16
A61P35/00
A61P43/00 111
A61P3/00
A61P9/00
A61P1/00
A61P11/00
A61P7/00
A61P15/00
A61P17/00
A61P19/00
A61P21/00
A61P27/02
A61P29/00
A61P31/00
A61P37/00
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023085990
(22)【出願日】2023-05-25
(62)【分割の表示】P 2021195887の分割
【原出願日】2019-06-19
(31)【優先権主張番号】61/657,378
(32)【優先日】2012-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/723,081
(32)【優先日】2012-11-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/657,264
(32)【優先日】2012-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/778,575
(32)【優先日】2013-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/657,285
(32)【優先日】2012-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/778,812
(32)【優先日】2013-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】512177263
【氏名又は名称】アルカーメス ファーマ アイルランド リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】アルヴァレス,フアン
(72)【発明者】
【氏名】シャムーン,ジーン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】循環置換により修飾され、少なくとも1つのポリペプチド融合相手と融合されるポリペプチドリガンドを含む、改善されたまたは増強された生物学的機能または活性を有する融合ポリペプチドを提供する。
【解決手段】FLAG-IL-15Rα(sushi)-CP-IL-15である、特定のアミノ酸配列の11~194のアミノ酸またはそれに対して少なくとも85%のアミノ酸レベルでの配列同一性を持つアミノ酸配列を含む融合ポリペプチドであって、融合ポリペプチドが細胞上のIL-2Rβγを選択的に刺激する、融合ポリペプチドである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号28の11~194のアミノ酸またはそれに対して少なくとも85%のアミノ酸レベルでの配列同一性を持つアミノ酸配列を含む融合ポリペプチドであって、前記融合ポリペプチドが細胞上のIL-2Rβγを選択的に刺激する、融合ポリペプチド。
【請求項2】
細胞を、体外で請求項1記載の融合ポリペプチドと接触させることを含む、細胞上のIL-2Rβγを選択的に刺激する方法
【請求項3】
請求項1記載の融合ポリペプチドおよび製薬上許容可能な担体を含む医薬組成物。
【請求項4】
請求項1記載の融合ポリペプチドをコードする単離または組換え核酸。
【請求項5】
請求項4記載の核酸を含む組換えベクター。
【請求項6】
請求項5記載のベクターを含む宿主細胞。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、米国特許仮出願第61/657,378号(2012年6月8日出願);第61/723,081号(2012年11月6日出願);第61/657,264号(2012年6月8日出願);第61/778,575号(2013年3月13日出願);第61/657,285号(2012年6月8日出願)および第61/778,812号(2013年3月13日出願)の利益を主張する。上記出願の全教示は、参照により本明細書中で援用される。
【0002】
配列表
本出願は、EFS-Webを介してASCIIフォーマットで提示された配列表を含有し、その記載内容はすべて、参照により本明細書中に組み入れられる。上記のASCIIコピー(2013年5月31日作成)は、4000.3059WO_SL.txtと命名され、そのサイズは66,878バイトである。
【背景技術】
【0003】
リガンド-受容体相互作用は、多数の細胞シグナル伝達経路にとって不可欠である。増殖因子、サイトカインおよびその他の調節タンパク質は、これらの相互作用を用いて、細胞応答を媒介する。これらの過程を抑制するかまたは促進するタンパク質は、治療薬としての可能性を有する。
【0004】
費用を要する製造、大きなサイズ、限定された組織への浸透、ならびに望ましくない副作用といったような、リガンド-受容体機能を抑制することに対するモノクローナル抗体アプローチの欠点のいくつかを考えて、研究者は、治療薬としての非抗体タンパク質の使用に集中してきた。さらに、治療的抗体戦略は、一般的に、シグナル伝達経路を抑制することまたは拮抗することであり、経路を増強するかまたは刺激するための戦略と競合しない。したがって、抗体戦略に代わるものとして、臨床的に重要な標的のアゴニストおよびアンタゴニストとしてのリガンドおよび受容体を開発するために、新規のタンパク質工学処理アプローチが探求されているところである。
【0005】
循環置換は、タンパク質のネイティブアミノおよびカルボキシ末端と、一般的にリンカーとを連結すること、そしてタンパク質配列内の新規部位、一般的にはループでの切断により新規アミノおよびカルボキシ末端を作成することを包含する;その結果生じるタンパク質の一次配列は再配列され、一方、二次構造(および活性)は保持される。したがって、新規末端の作成は、ネイティブ末端に比して融合相手の付着のためのより良好な位置を提供し得る。
【0006】
タンパク質リガンドの循環置換は、そのネイティブ型に比して、その標的に関する変更タンパク質リガンドの特異性および結合親和性を減少させることなく、新規カルボキシルおよびアミノ末端を生成するようタンパク質が変更され得る手段を提供する。付加的には、新規末端は、融合ポリペプチド中に循環置換リガンドを組み入れるために優先的な位置に優先的に移動され、ネイティブ(非循環置換)リガンドを含有する融合ポリペプチドと比較してより良好な活性を実証する。
【0007】
本発明は、シグナル伝達経路のアゴニスト、スーパーアゴニストまたはアンタゴニストとして機能する循環置換により修飾されるリガンドを含む融合ポリペプチドを提供する。このような融合ポリペプチドは、リガンド-受容体相互作用およびシグナル伝達に依存する多数の障害、症状および疾患の処置に有益である。例えば、標的受容体のアンタゴニストとして作用するこのような融合ポリペプチドは、癌および自己免疫障害のための治療薬としての可能性を有する。シグナル伝達経路のアゴニストまたはスーパーアゴニストとして作用するこのような融合ポリペプチドは、例えば癌または再生医療における可能性を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、循環置換により修飾され、少なくとも1つのポリペプチド融合相手と融合されるポリペプチドリガンドを有する融合ポリペプチドを提供するが、この場合、このような融合ポリペプチドは、ネイティブ(非循環置換化)リガンドを有する類似の融合タンパク質に比して、新規の、改良されたまたは増強された生物学的機能または活性を有する。このような改良としては、結合親和性増大、活性増大、アゴニスト(スーパーアゴニスト)活性増大、アンタゴニスト活性増大、利用可能性増大、活性部位の柔軟性増大、安定性増大、より広くおよび/または変更された基質特異性、組織ターゲッティング増強、タンパク質結合増強、膜ターゲッティング増強、薬物動態パラメーター改善、物理的特性改善、ならびにその組合せが挙げられるが、これらに限定されない。
【0009】
一実施形態では、循環置換リガンドは、それらのネイティブポリペプチド鎖の全部または一部分からなり、任意にリンカーを含み得る。本発明の循環置換リガンドは、その標的に対する修飾リガンドの結合親和性といったような活性を危うくすることなく、それらが少なくとも1つの所望のポリペプチド融合相手と融合されるよう、最適に配向されるべく設計される。一実施形態では、融合ポリペプチドの循環置換(修飾)リガンドは、それらの対応するネイティブタンパク質と比較して少なくとも同じく活性であるか、好ましくはより活性である。一実施形態では、本発明の融合タンパク質は、それらの標的タンパク質に対するより大きな結合親和性を有する。一実施形態では、その標的タンパク質に対する融合タンパク質の結合親和性は、タンパク質標的に対するネイティブリガンドの親和性の少なくとも5倍、好ましくは少なくとも10倍、好ましくは少なくとも20倍またはそれ以上である。一実施形態では、本発明の融合ポリペプチドは、少なくとも10倍より大きい受容体に対する結合親和性を有する。
【0010】
一実施形態では、リガンドは、サイトカイン、リンフォカイン、ケモカイン、アディポカイン、増殖因子、ホルモン、細胞接着分子および神経伝達物質からなる群から選択されるが、これらに限定されない。ポリペプチド融合相手は、ネイティブタンパク質に対する増強を提供する任意のポリペプチドであり得る。例えば融合相手は、以下の:糖タンパク質、プロテオグリカン、細胞シグナル伝達分子、補助タンパク質、可溶性受容体、膜結合受容体、膜貫通受容体、抗体、酵素、ターゲッティングポリペプチド(ナノボディ)、ムチンまたはムチン様ペプチド、合成ポリペプチドまたはその任意の組合せのうちの全部または一部分からなる群から選択されるが、これらに限定されない。増強としては、親和性の改良、活性化作用、拮抗作用、相乗的機能活性の付加、組織ターゲッティング、タンパク質ターゲッティング、膜ターゲッティング、薬物動態パラメーター(例えば、半減期)または物理的特性(例えば、溶解性)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0011】
好ましい一実施形態では、少なくとも1つのポリペプチド融合相手は、その天然シグナル伝達経路に関与する標的受容体または別の分子のサブユニットの全部または一部分を含む。ポリペプチド融合相手は、シグナル伝達経路に関与する標的受容体または別の分子のサブユニットの全部または一部分と少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%または少なくとも90%相同であるポリペプチドを含み得る、と理解される。
【0012】
一実施形態では、本発明は、修飾リガンド、および第二融合相手とさらに連結されるポリペプチド融合相手を含む融合ポリペプチドを提供する。第二融合相手の例としては、抗体の全部または任意の部分(例えば、抗体のFc領域)、および上記の第一融合相手として適したポリペプチドの型のいずれかが挙げられる。
【0013】
好ましい一実施形態では、本発明の融合ポリペプチドは、細胞シグナル伝達経路のシグナル伝達に関与する細胞受容体のような受容体の新規の、改良されたアゴニスト(スーパーアゴニスト)またはアンタゴニストとして機能する。好ましい一実施形態では、本発明の融合ポリペプチドは、単量体、二量体または多量体標的受容体を結合し得るし、受容体の二量体化、三量体化または多量体化を抑制するかまたは増強し得るし、および/またはシグナル伝達および細胞経路の下流シグナル伝達を抑制するかまたは増強し得る。
【0014】
一実施形態では、本発明は、標的受容体に特異的なネイティブリガンドに対応する修飾リガンドと連結される第一ポリペプチド融合相手を含む融合ポリペプチドであって、前記修飾リガンドが、ネイティブリガンドと比較して新規N末端および新規C末端を作成するために循環置換されており、前記修飾リガンドの前記新規N末端または新規C末端が第一ポリペプチド融合相手と連結されて、受容体に関するネイティブリガンドと比較して標的受容体に対する増大された親和性を任意に有する融合ポリペプチドを形成し、融合ポリペプチドと標的受容体との会合時に、融合ポリペプチドが標的受容体の活性を超刺激するかまたは拮抗する融合ポリペプチドを提供する。一実施形態では、修飾リガンドの新規C末端および新規N末端は、標的受容体に関する修飾リガンドのいかなる結合ドメインも分断しない。
【0015】
一実施形態では、標的受容体は、多量体活性化複合体の段階的形成により機能して、シグナル伝達細胞経路のシグナル伝達を誘発し、そして融合ポリペプチドと受容体との結合時に、シグナル伝達は超刺激されるかまたは拮抗される。
【0016】
一実施形態では、融合ポリペプチドは受容体を結合し、多量体活性化複合体の段階的形成を増強し、それにより、標的受容体によるシグナル伝達を超刺激する。
【0017】
一実施形態では、融合ポリペプチドは受容体を結合し、多量体複合体の段階的形成を立体障害して、それにより標的受容体によるシグナル伝達を拮抗する。
【0018】
一実施形態では、融合ポリペプチドは、修飾リガンドおよび第一融合相手を含み、この場合、修飾リガンドの第一融合相手は、タンパク質の全部または一部分に由来し、それと標的受容体のネイティブリガンドとは、受容体の多量体活性化複合体の段階的形成の第一ステップで会合している。一実施形態では、融合ポリペプチドは、修飾タンパク質および融合相手を含み、この場合、修飾タンパク質の融合相手は、タンパク質の全部または一部分に由来し、それと標的受容体のネイティブタンパク質とは、受容体の多量体活性化複合体の段階的形成の下流ステップで会合している。
【0019】
一実施形態では、ヘテロ二量体の第一融合相手は、受容体の多量体活性化複合体の段階的形成を増強するよう配向される位置で、修飾リガンドと融合される。
【0020】
一実施形態では、ヘテロ二量体の第一融合相手は、受容体の多量体活性化複合体の形成を立体障害するよう配向される位置で、修飾リガンドと融合される。
【0021】
一実施形態では、融合ポリペプチドは、修飾タンパク質および融合相手を含むホモ二量体であり、この場合、修飾リガンドの融合相手は、同一リガンドの全部または一部分に由来し、ここで、ホモ二量体化が、受容体の多量体活性化複合体の形成のために必要とされる。
【0022】
一実施形態では、本発明は、本発明の融合ポリペプチドおよび製薬上許容可能な担体を含む医薬組成物を提供する。
【0023】
一実施形態では、本発明は、本発明の融合ポリペプチドをコードする単離または組換え核酸;本発明の融合ポリペプチドをコードする核酸を含む組換えベクターおよび本発明のベクターを含む宿主細胞を提供する。
【0024】
一実施形態では、本発明は、標的受容体を超刺激する方法であって、受容体を本発明の融合ポリペプチドと接触させるステップを包含する方法を提供する。
【0025】
一実施形態では、本発明は、受容体を拮抗する方法であって、受容体を本発明の融合ポリペプチドと接触させるステップを包含する方法を提供する。
【0026】
一実施形態では、本発明は、本発明の融合ポリペプチドの作製方法であって、以下の:a)受容体と結合するネイティブリガンドを選択するステップ(この場合、前記受容体は、多量体活性化複合体の段階的形成により機能して、シグナル伝達細胞経路のシグナル伝達を誘発する);b)循環置換により修飾リガンドを作成して、ステップ(a)のネイティブリガンドと比較して新規のN末端および新規のC末端を有する修飾リガンドを提供するステップ;ならびにc)第一ポリペプチド融合相手をステップ(b)の修飾リガンドのN-またはC-末端と連結して、融合ポリペプチドを作製するステップ(この場合、前記修飾リガンドの前記新規N-またはC-末端は、前記融合ポリペプチドと前記標的受容体との結合時に前記標的受容体の機能を拮抗するかまたは超刺激するよう配向される位置で前記第一融合相手を前記修飾リガンドと連結させるよう配置される)を包含する方法を提供する。一実施形態では、当該方法は、第二融合相手をステップ(b)の修飾リガンドと融合することをさらに含み、この場合、第二融合相手は、タンパク質に付加的増強、例えばin vivoでの融合ポリペプチドの半減期を延長することを提供する。ステップ(c)を介して工学処理され得る他の増強としては、相乗的機能的活性の付加、器官ターゲッティング、組織ターゲッティング、タンパク質ターゲッティング、膜ターゲッティング、生物学的マトリクスターゲッティング、薬物動態(例えば、生物学的利用能パーセント)または物理的特性(例えば、溶解性)が挙げられるが、これらに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】ヒトIL6-六量体シグナル伝達複合体の構造(PDB:1P9M)。2つのIL-6分子(暗灰色)、2つの可溶性IL-6Rα分子(IL-6受容体サブユニットαのD2-D3、黒色)および2つの可溶性gp130分子(D1-D2-D3、明灰色)からなる六量体複合体の側面図(上部)および上面図(底部)。
図2】4-らせん束タンパク質IL-6を利用する循環置換の過程の図。IL-6結晶構造(PDB 1P9M、上部左)の、そして循環置換IL-6のモデル化構造(RDB1503、上部右)のリボン表示。NおよびC末端は、標準IL-6命名法に従って、らせんA、B、C、Dであるとして標識される。ネイティブ末端を連結し、ネイティブIL-6のらせんCおよびD間に新規末端を作成することにより、循環置換タンパク質を工学処理した。循環置換の最終結果は、IL-6の反対面への末端の再配置である。IL-6(配列番号3の残基47-212)およびRDB1503(配列番号1)に関するアミノ酸配列(それぞれ、中段および下段)は、並び替え配列を強調している。RDB1503の新規N末端は、らせんDの直前にある。リボン表示内の陰影部およびRDB1503のタンパク質配列は、ネイティブIL-6NおよびC末端を連結するよう作成されるリンカーを強調している。
図3】IL-6(図3A)およびRDB1503(図3B)と融合されて、それぞれ融合タンパク質RDB1529およびRDB1527を生じる場合のD1(gp130のドメイン1)の相対的配向を示す分子モデル。D1ドメインは、目立たせる目的のために陰影をつけられている。活性六量体複合体におけるgp130およびIL-6Rαの部分は、参照のために含まれている。RDB1529のD1ドメインは、六量体活性複合体におけるgp130結合界面から離れたポインティングであり、したがってシグナルを有効に拮抗できないと予測される(図3A)。これに対比して、RDB1527のD1ドメインは、IL-6Rαとの結合に参加し、六量体複合体中の第二gp130分子が占める空間を占め、したがって、シグナルを有効に拮抗する(図3B)。
図4】HEK-Blue(商標)細胞検定におけるIL-6(▲)およびRDB1503(◆)に関する用量-応答曲線。EC50は、IL-6およびRDB1503に関してそれぞれ、1pMおよび0.6pMで概算される。
図5】HEK-Blue(商標)細胞検定におけるRDB1527によるIL6シグナル伝達の抑制。抑制の非存在下でのその濃度の一関数としてのIL6(×)の活性。RDB1527(▲)およびRDB1529(●)による抑制を、12.5pMのIL6の存在下で測定した。測定はすべて、二重反復試験でなされた。RDB1527に関するIC50の概算値は、0.22nMである。RDB1529は、確固たる抑制活性を示さなかった。
図6】固定化IL-6(図6A)、RDB1529(図6B)およびRDB1527(図6C)と結合する可溶性IL-6Rαの表面プラズモン共鳴(SPR)測定。センサーグラムおよび適合曲線は、それぞれ灰色および黒色で示されている。データから算定される動的パラメーターは、挿入表に示されている。
図7】ヒトIL-1βシグナル伝達複合体の構造(PDB:4DEP;図7A)およびRDB1538により媒介される潜在的複合体形成のモデル化表示(CP_IL-1β_IL-1RI(D1-D2);図7B)。IL-1β(構造中で矢印で強調)は、受容体IL-1RI(黒色、平面から出ている)およびIL-1RAcP(明灰色、平面から離れている)と結合する。IL-1βのネイティブNおよびC末端は、IL-1RIのD1-D2ドメインのC末端にごく近接していない。工学処理済み循環置換IL-1βの末端は、ここで、IL-1RIのD1-D2ドメインのC末端に近接しており、したがって、融合タンパク質の生成を助長する。陰影区域は、循環置換化IL-1β変異体をIL-1RI受容体に連結するリンカーを強調している。
図8】ヒトIL2シグナル伝達複合体(PDB:2ERJ;図8A)およびRDB1405により媒介されるモデル化シグナル伝達複合体(CP_IL-2_IL-2Rα;図8B)の構造。IL2(構造中で矢印で強調)は、受容体IL2Rα(灰色、複合体における上部左)、IL2Rβ(明灰色、複合体における底部左)およびγ(黒色、複合体における底部右)と結合する。IL-2Rαは、IL-2の立体配座を安定化して、IL-2Rβに対するその結合親和性を増強する。IL-2のネイティブNおよびC末端は、IL-2/IL-2Rα界面に対して遠位の面上に存在する。工学処理循環置換IL-2の末端は、今度は、IL-2/IL-2Rα界面に近位であり、したがって、融合タンパク質の生成を助長する。陰影区域は、循環置換IL-2変異体をIL-2R<<受容体に連結するリンカーを強調している。
図9】サイトカインおよび増殖因子に関する代表的シグナル伝達複合体を示す略図であって、活性化をもたらす多量体アセンブリを例証する。
図10】Picasso3_D1による拮抗作用の機序を示す略図である。IL-6およびD1(gp130のドメイン)の両方からの結合決定因子は、ハイブリッド融合タンパク質中に存在して、IL-6Rαとの高い親和性結合を生じる。一旦Picasso3_D1_FcがIL-6Rαと結合されると、IL-6のシグナル伝達複合体のアセンブリは進行できず、拮抗作用を生じる。
図11A】野生型IL-2(プロロイキン)および工学処理IL-2変異体に対するHH細胞(左)およびCTLL-2細胞(右)の応答。
図11B】野生型IL-2(プロロイキン)および工学処理IL-2変異体に対するHH細胞(左)およびCTLL-2細胞(右)の応答。
図12A】野生型IL-15および工学処理IL-15変異体に対するHH細胞(左)およびCTLL-2細胞(右)の応答。
図12B】野生型IL-15および工学処理IL-15変異体に対するHH細胞(左)およびCTLL-2細胞(右)の応答。
図13】IL-2第三シグナル伝達複合体構造(2ERJ.pdb)からのIL-RβおよびIL-2Rγ鎖上へのIL-15/IL-15Rα複合体(2Z3Q.pdb)の塁重により生成されるCP-IL-15-IL-15Rα融合タンパク質に関するモデル化IL-15シグナル伝達複合体の構造。IL-15のネイティブ末端を結合して、循環置換IL-15変異体を作成する「リンカー」、ならびにCP-IL-15-IL-15Rα融合を生じるための「スペーサー」は、矢印で強調されている。IL-15のネイティブ末端(本来、「リンカー」部位に配置される)は、IL-15Rα結合界面からはるか遠位に配向され、したがってリガンドの循環置換の必要性を生じる、ということに留意されたい。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の詳細な説明
本発明の好ましい実施形態の説明を以下に示す。例証のために、gp130の一部分と融合される循環置換IL-6リガンドを特徴づける本発明のポリペプチド融合タンパク質は、本発明の例示的融合ポリペプチドとして用いられる。記載される実施形態の生物学的機能、活性およびその他の特徴は、一般的に、ポリペプチド融合相手と融合される循環置換により修飾されるリガンドを含む本発明の他の融合ポリペプチドに適用可能である、と理解される。
【0029】
本明細書および添付の特許請求の範囲で用いられる場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、別記しない限り、複数の指示物を含む。したがって、例えば、「1つのポリペプチド融合相手」への言及は、複数のポリペプチド融合相手を包含する。本明細書中、ならびに下記の特許請求の範囲では、別記しない限り、以下の意味を有すると定義される多数の用語が言及される。
【0030】
定義
「循環置換」および「循環置換される」、「(CP)」という用語は、本明細書中で用いる場合、線状タンパク質またはその同族核酸配列を得て、ネイティブN-およびC-末端を融合して(直接的に、あるいはリンカーを介して、タンパク質または組換えDNA法を用いて)、環状分子を形成し、次いで、異なる位置で環状分子を切断(開環?)して、元の分子における末端とは異なる末端を有する新規の線状タンパク質または同族核酸分子を生成するという概念的過程を指す。したがって循環置換は、(任意のリンカー以外の)タンパク質の配列、構造および機能を保存する一方で、本発明の一態様に従って、元のリガンドと比較して、所望のポリペプチド融合相手を融合するための改良された配向を生じる異なる位置での新規C-およびN-末端を生成する。循環置換は、本明細書中で定義されるような循環置換された直鎖分子を生じる任意の過程も包含する。概して、循環置換分子は、線状分子としてde novoに発現され、形式的に、環状化および開環ステップを経ない。分子の特定の循環置換は、本明細書中では、循環置換タンパク質の場合、その間のペプチド結合が排除されるアミノ酸残基を含有する部類により指示される。例えば、IL6(Q182/Q180)という呼称は、開環部位IL6(ペプチド結合が排除される位置)が非置換または非修飾化ネイティブIL6の残基Q182とQ180の間で生じ、したがって新規作成N-末端は以前は残基182であったグルタミンであり、そして新規作成C-末端は以前は残基180であったグルタミンである。
【0031】
「スペーサー」は、本明細書中で用いる場合、融合タンパク質を含むタンパク質を結合するペプチドを指す。一般的には、スペーサーは特異的生物学的活性を有さず、その目的は、単に、タンパク質を結合すること、あるいはそれらの間の最小距離または空間的関係を保存することである。しかしながら、スペーサーの構成アミノ酸は、リンカーの、またはその結果生じる分子のいくつかの特性、例えば柔軟性、親水性、正味電荷、あるいはタンパク質分解的感受性またはその欠如、ならびに免疫原性の欠如に基づいて選択され得る。
【0032】
「非置換化」、「ネイティブ」、「野生型」または「非修飾化」リガンド、ポリペプチド、タンパク質、サイトカインまたは増殖因子という用語は、本明細書中で用いる場合、上記のような循環置換化分子へのその再配列前のリガンド、サイトカイン、増殖因子またはタンパク質に関する参照点を提供する。典型的には、非修飾化リガンド、増殖因子またはタンパク質は、それが一般的にin vivoで生じる場合の、リガンド、増殖因子またはタンパク質のアミノおよびカルボキシ末端ならびにアミノ酸配列、あるいはタンパク質の個々のドメインに実質的に対応するアミノおよびカルボキシ末端ならびにアミノ酸配列を有する。非修飾化リガンド、増殖因子またはタンパク質は、完全成熟形態または成熟形態の前駆体(例えば、プロタンパク質)であり得る。
【0033】
「リガンド」という用語は、本明細書中で用いる場合、一般的に、第二タンパク質または受容体と結合し、生化学的経路の構成成分である任意のポリペプチド(ネイティブであれ、内因性であれ、あるいは本発明に従って修飾されるにせよ)を意味する。リガンドは、直接または間接的に、受容体活性(例えば、シグナル伝達、接着)に影響を及ぼし得る(例えば、誘導する、抑制する)。
【0034】
「修飾リガンド」という用語は、本明細書中で用いる場合、対応するネイティブリガンドと比較して、循環置換により修飾されているリガンドを示す。
【0035】
「活性」または「生物学的活性」は、in vitroまたはin vivoの生物学的機能または作用、例えば受容体結合、アンタゴニスト活性、アゴニスト活性あるいは細胞または生理学的応答(これらに限定されない)を指す。
【0036】
「アゴニスト」は、活性化受容体複合体を生じるために所望の受容体との結合を可能にする本発明の融合ポリペプチドである。「スーパーアゴニスト」は、標的受容体を結合することができる、そして標的受容体に関するネイティブリガンドと比較して、受容体複合体の活性化増大を提供する本発明の融合ポリペプチドである。本発明の融合ポリペプチドスーパーアゴニストによる活性化は、ネイティブリガンドによる標的受容体の活性化と比較して、少なくとも2倍、好ましくは少なくとも5倍、好ましくは少なくとも10倍または好ましくは少なくとも20倍以上、増強され得る。「アゴニスト活性を有する」本発明の融合ポリペプチドとは、融合ポリペプチドが少なくとも1つの受容体と結合し、活性化し、または超刺激し得る、という事実を指す。
【0037】
「アンタゴニスト」は、所望の受容体との結合を可能にするが、しかし、活性化複合体を生じるために必要な受容体分子の正確な立体配座的または分子アセンブリ変化を媒介することができず、それによりネイティブリガンド媒介性受容体活性化が実質的に抑制される本発明の融合ポリペプチドである。適切なリガンドの結合時の受容体活性化は、一般的に、受容体における立体配座的変化、あるいは受容体の会合状態、例えば受容体サブユニットのオリゴマー化、あるいは付加的タンパク質または受容体の動員における差異を包含する。
【0038】
「受容体」という用語は、リガンドが結合する細胞表面上に存在するタンパク質(あるいは、細胞表面に存在しないが、しかし片方の細胞表面受容体を有するかまたはそれと会合する可溶性受容体)を示す、と理解される。細胞表面受容体は、典型的には、異なる機能を有する異なるドメインまたはサブユニット、例えばリガンドが相互作用する領域を含有する細胞外ドメイン(単数または複数)、膜貫通ドメイン、または細胞膜に受容体を固定するドメイン(または、いくつかの場合、固定脂質)で構成される。いくつかの場合、リガンド結合に応答して細胞シグナルを開始する(シグナル伝達)細胞内エフェクタードメインも存在する。可溶性受容体は、典型的には、膜固定領域からのタンパク質分解性切断に起因する細胞外ドメインのうちの1つ以上で構成される。
【0039】
本発明による「標的受容体」または「標的リガンド」は、本発明の融合ポリペプチドが直接的に結合するよう設計される分子である。一実施形態では、本発明による「標的受容体」は、シグナル伝達細胞経路のシグナル伝達を誘発するに際して、シグナル伝達分子(例えばリガンド)を最終的に結合するか、そうでなければそれと会合することができる。
【0040】
「多量体活性化複合体の段階的形成」により活性化される受容体は、細胞シグナル伝達経路のシグナル伝達を完全に達成するために、1つ以上のリガンドの結合のほかに、二量体化、三量体化、多量体化、錯形成またはオリゴマー化(当該技術分野では「クラスター形成」とも呼ばれる)として既知の過程における1つ以上の付加的タンパク質サブユニットの相互作用を要する受容体である。受容体は、リガンド結合前にすでに二量体または多量体の形態であり得るし、リガンド結合時に、付加的可溶性または膜固定タンパク質を段階的に動員して、完全に機能する多量体活性化複合体を作り得る。
【0041】
「流体力学的半径」は、拡散特性から算定される溶液中の分子の見かけの半径(R(nm))である。タンパク質の流体力学的半径は、その分子量により、ならびにその構造、例えば形状および緊密性、およびその水和状態により影響を及ぼされる。流体力学的半径の決定方法は、当該技術分野で周知であり、例えばDLSおよびサイズ排除クロマトグラフィーの使用による。大半のタンパク質は、これが最も緊密な三次元構造である球状構造を有し、タンパク質は、最小流体力学的半径を有し得る。いくつかのタンパク質は、無作為および開環、非構造化または「線状」立体配座を取り、その結果、類似の分子量を有する典型的球状タンパク質と比較して、非常に大きな流体力学的半径を有する。
【0042】
「ムチン-ドメインポリペプチド」は、「ムチンドメイン」を含む任意のタンパク質、と本明細書中で定義される。ムチンドメインは、潜在的グリコシル化部位に富み、高含量のセリンおよび/またはトレオニンおよびプロリンを有し、これがアミノ酸の40%より多くを構成する。ムチンドメインは、主にO結合型グリカンで大いにグリコシル化される。
【0043】
「リンカー」または「リンカー配列」という用語は、本明細書中で用いる場合、タンパク質のアミノおよびカルボキシ末端(あるいは、当該タンパク質をコードするその対応する核酸配列)を、共有結合を介して、アミノおよびカルボキシ末端の両方に結合するために用いられるペプチド配列を指す。いくつかの実施形態では、循環置換タンパク質は、対応するDNAまたはRNA配列の末端を連結して、環化核酸配列を切断することで種々の循環置換体を形成し、その後、核酸配列を翻訳して循環置換タンパク質を形成することにより、生成される。
【0044】
「残基」という用語は、本明細書中で用いる場合、ペプチド中に組み入れられるアミノ酸を指す。アミノ酸は天然アミノ酸であり、そうでないと限定されない限り、天然アミノ酸と同様に機能し得る天然アミノ酸の既知の類似体を包含し得る。
【0045】
「開環部位」という用語は、本明細書中で用いる場合、タンパク質操作によっても、核酸操作によっても、循環置換に言及する場合、ペプチド結合が排除されて、新規のアミノおよびカルボキシ末端を形成する位置を指す。開環部位は、循環置換タンパク質の新規のアミノおよびカルボキシ末端になる非循環置換(ネイティブ)タンパク質のアミノおよびカルボキシ末端間に位置するアミノ酸の対の位置により示される。例えば、IL6(Q182/Q180)では、新規に作成されるN-末端(循環置換IL-6の新規出発点)はネイティブIL-6のQ182と等価(構造的に)であり、新規作成C-末端(循環置換IL-6の最終残基)はネイティブIL-6のQ180と等価(構造的に)である。開環部位を作成するときに、ネイティブIL-6の残基181は削除された。
【0046】
「ポリペプチド」および「タンパク質」という用語は、本明細書中で互換的に用いられ、タンパク質およびその断片を包含する。ポリペプチドは、アミノ酸残基配列として本明細書中で開示される。それらの配列は、アミノ末端からカルボキシ末端の方向に左から右に書き表される。標準命名法に従って、アミノ酸残基配列は、以下に示されるように三文字または一文字で命名される:アラニン(Ala、A)、アルギニン(Arg、R)、アスパラギン(Asn、N)、アスパラギン酸(Asp、D)、システイン(Cys、C)、グルタミン(Gln、Q)、グルタミン酸(Glu、E)、グリシン(Gly、G)、ヒスチジン(His、H)、イソロイシン(Ile、I)、ロイシン(Leu、L)、リシン(Lys、K)、メチオニン(Met、M)、フェニルアラニン(Phe、F)、プロリン(Pro、P)、セリン(Ser、S)、トレオニン(Thr、T)、トリプトファン(Trp、W)、チロシン(Tyr、Y)およびバリン(Val、V)。
【0047】
本明細書中に記載されるアミノ酸位置はすべて、ネイティブタンパク質に関する参照配列のフレームとして用いる。例えば、配列表に提示されているように、ネイティブIL-1β(配列番号19)、ネイティブIL-6(配列番号3)、ネイティブIL-2(配列番号20)、ネイティブgp130(配列番号21)、ネイティブIL-1RI(配列番号22)およびネイティブIL-2Rα(配列番号23)。例えば、「アミノ酸47~212を含む」IL-6分子は、配列番号3におけるそれらの位置に実質的に対応するアミノ酸を有する分子を指す。参照配列として用いる配列に対する欠失または置換を示すために、他の共通参照が本明細書中で用いられ、配列表で参照されるようなそれぞれのネイティブ配列、またはそのGenBank寄託番号が本明細書中で提供される。アミノ酸置換は、括弧により示され、例えば「(Ser287)」は、アミノ酸位置287にセリンを有する分子を指す。循環置換分子は、ネイティブ分子と、その後の開環部位を含むアミノ酸位置を囲む括弧により示される。したがって、例えばIL6(182/180)は、循環置換IL6を示し、この場合、新規アミノ末端は非循環置換ネイティブIL6のアミノ酸残基182にあり、そして新規カルボキシ末端はアミノ酸残基180にある。いくつかの置換、付加または欠失は、領域の生物学的活性を変更しない本明細書中に記載される任意の配列に対してなされ得る、と理解される。実際、いくつかのこのような修飾は、特定のタンパク質の発現を達成するために必要とされ得る。したがって、例えばメチオニンは、イニシエーターを提供するために配列に付加され得る。
【0048】
「変異体」は、参照ポリペプチドと異なるが、しかし必須の特性を保持するポリペプチドを指す。ポリペプチドの典型的変異体は、その一次アミノ酸配列が別の参照ポリペプチドとは異なる。一般的に、差異は限定され、したがって参照ポリペプチドおよび変異体の配列が全体的に非常によく似ており、多くの領域で同一である。変異体および参照ポリペプチドは、1つ以上の修飾(例えば、置換、付加および/または欠失)によりアミノ酸配列が異なり得る。置換または挿入アミノ酸残基は、遺伝暗号によりコードされるものであり得るし、そうでないこともある。ポリペプチドの変異体は、例えば対立遺伝子変異体のように天然に生じ得るし、あるいは天然に生じることが既知でない変異体であり得る。さらに、「変異体」という用語は、本明細書中で用いる場合、タンパク質およびペプチドの循環置換を包含する。
【0049】
「抗体」という用語は、本明細書中で用いる場合、種々の型の修飾されたまたは変更された抗体、例えば無傷免疫グロブリン、重鎖の定常領域を含むFc断片、軽鎖および重鎖可変領域の実を含有するFv断片、ジスルフィド結合により連結されるFv断片、可変領域と定常領域の一部とを含有するFabまたは(Fab)’断片、一本鎖抗体等を包含する。
【0050】
本明細書中で用いる場合、「処置」または「処置すること」、あるいは「緩和すること」または「改善すること」は、本明細書中で互換的に用いられる。これらの用語は、有益なまたは所望の結果、例えば、治療利益および/または予防利益(これらに限定されない)を得るためのアプローチを指す。治療利益とは、処置されている根本的障害の根絶または改善を意図する。さらにまた、被験体が依然として基本的障害に苦しめられているにもかかわらず、被験体において改善が観察されるよう、基本的障害に関連した生理学的症候のうちの1つ以上の根絶または改善を伴って、治療利益は達成される。予防的利益に関しては、特定の疾患を発症する危険がある被験体に、あるいは疾患の生理学的症候のうちの1つ以上を報告している被験体に、この疾患の診断が下されていなくても、組成物が投与され得る。
【0051】
「治療的効果」は、本明細書中で用いる場合、生理学的効果、例えば活性タンパク質により保有される抗原エピトープに対する抗体の産生を誘導する能力以外の本発明の融合タンパク質により引き起こされるヒトまたは他の動物における疾患の治癒、軽減、改善または防止を、あるいはそうでなければヒトまたは動物の身体的または精神的福利を増強すること(これらに限定されない)を指す。治療的有効量の決定は、特に本明細書中で提供される詳細な開示にかんがみて、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0052】
「治療的有効量」および「治療的有効用量」という用語は、本明細書中で用いる場合、被験体に1回または反復用量投与で投与される場合、任意の症候、態様、測定パラメーターあるいは疾患状態または症状の特質に及ぼす任意の検出可能な有益な作用を有し得る、単独での、または融合タンパク質組成物の一部としての、活性タンパク質の量を指す。このような作用は、有益であることが絶対である必要はない。
【0053】
「治療的有効用量投与レジメン」という用語は、本明細書中で用いる場合、単独での、または融合タンパク質組成物の一部としての、活性タンパク質の連続投与用量投与のためのスケジュールを指すが、この場合、用量投与は、治療的有効量で与えられて、任意の症候、態様、測定パラメーターあるいは疾患状態または症状の特質に及ぼす持続的有益作用を生じる。
【0054】
本明細書中で用いる場合、「用量」という用語は、一度にすべて(単位用量)、あるいは限定時間間隔に亘って2回以上の投与で、被験体に投与される本発明の融合ポリペプチドの量を指す。例えば、用量は、1日(24時間)(1日用量)、2日、1週間、2週間、3週間、あるいは1か月以上(例えば、単一回投与による、または2回以上の投与による)の経過に亘って、被験体に投与される融合ポリペプチドの量を指す。用量投与間の感覚は、任意の所望時間量であり得る。
【0055】
「半減期」という語句は、例えば天然機序によるリガンドの分解および/または二重特異性リガンドのクリアランスまたは隔離のために、in vivoで融合ポリペプチドの血清濃度が50%低減するのに要する時間を指す。生物学的マトリクス(血液、血清、血漿、組織)中の存在が、適切な対照と比較して、in vivoで長期間存続する場合、融合ポリペプチドの半減期は増大される。半減期は、適切な対照と比較して、10%、20%、30%、40%、50%またはそれ以上増大され得る。
【0056】
本明細書中に開示される配列と類似の、または相同(例えば、少なくとも約70%の配列同一性)の配列も、本発明の一部である。いくつかの実施形態では、アミノ酸レベルでの配列同一性は、約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上であり得る。核酸レベルでは、配列同一性は、約70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上であり得る。代替的には、実質的同一性は、核酸セグメントが、選択的ハイブリダイゼーション条件(例えば、非常に高い緊縮ハイブリダイゼーション条件)下で、鎖の補体とハイブリダイズする場合に存在する。核酸は、全細胞中に、細胞溶解物中に、あるいは部分精製形態または実質的に純粋な形態で、存在し得る。
【0057】
2つの配列間の「相同性」または「配列同一性」または「類似性」(当該用語は、本明細書中では互換的に用いられる)の算定は、以下のように実施される。配列は、最適比較目的のために一列に並べられる(例えば、最適アラインメントのためにギャップが第一および第二アミノ酸または拡散配列の一方または両方に導入され得るし、比較のために非相同配列は無視され得る)。好ましい一実施形態では、比較のために整列される参照配列の長さは、参照配列の長さの少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%、さらに好ましくは少なくとも50%、さらに好ましくは少なくとも60%、さらに好ましくは少なくとも70%、80%、90%、100%である。対応するアミノ酸位置またはヌクレオチド位置でのアミノ酸残基またはヌクレオチドが、次に比較される。第一配列中の位置が第二配列における対応する位置と同一のアミノ酸残基またはヌクレオチドにより占められる場合には、分子はその位置で同一である(本明細書中で用いる場合、アミノ酸または核酸「相同性」は、アミノ酸または核酸「同一性」と等価である)。2つの配列間の同一性パーセントは、2つの配列の最適アラインメントのために導入される必要があるギャップの数および各ギャップの長さを考慮して、配列により共有される同一位置の数の一関数である。循環的関連タンパク質の場合、相手のうちの1つ配列は、適切に分割され、2つのセクションに整列されて、同一性パーセントを算定するために必要な機能的に等価の残基の最適アラインメントを達成する必要がある。
【0058】
本明細書中で定義されるようなアミノ酸およびヌクレオチド配列のアラインメントおよび相同性、類似性または同一性は、好ましくは、デフォルトパラメーターを用いて、アルゴリズムBLAST 2 Sequencesを用いて調製され、決定される(Tatusova,T.A.et al.,FEMS Microbiol Lett,174:187-188(1999))。代替的には、BLASTアルゴリズム(バージョン2.0)は、デフォルト値に対するパラメーター組とともに、配列アラインメントのために用いられる。BLAST(Basic Local Alignment Search Tool)は、プログラムblastp、blastn、blastx、tblastnおよびtblastxにより用いられる発見的探索アルゴリズムである;これらのプログラムは、Karlin and Altschul, 1990, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87(6):2264-8の統計学的方法を用いるそれらの知見に意義があるとする。
【0059】
別記しない限り、本明細書中で用いられる技術用語および科学用語はすべて、当業者により一般に理解されているものと同一の意味を有する(例えば、細胞培養、分子遺伝学、核酸化学、ハイブリダイゼーション技術および生化学において)。分子、遺伝子および生化学的方法(一般的に、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2d ed. (1989) Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y.およびAusubel et al., Short Protocols in Molecular Biology (1999) 4th Ed, John Wiley & Sons, Inc.参照(これらの記載内容は参照により本明細書中で援用される))ならびに化学的方法に関して、標準技法が用いられる。
【0060】
参照リガンドの循環置換

循環置換は、直鎖分子を得て、末端を融合して環状分子を形成し、次いで、異なる位置で環状分子を切断して、異なる末端を有する新規の直鎖分子を生成することと機能的に等価である。したがって循環置換は、異なる位置に新規末端を生成しながら、タンパク質のアミノ酸の配列および同一性を本質的に保存するという作用を有する。
【0061】
工学処理融合タンパク質は、2つのポリペプチドの有益な特性を単一タンパク質中に併合することを目指すが、しかしながら、融合タンパク質の構築は、種々の難題および危険を伴う。しばしば、おそらくは、タンパク質の三次構造の完全性に及ぼす、あるいはその生物学的機能を引き出すために(例えば立体障害のための)同族相手と結合するタンパク質能力に及ぼす融合相手の負の作用のため、融合タンパク質の機能的活性は、非修飾タンパク質の機能的活性に比して危うくされる。さらに、融合相手間のスペーサーの含入は、タンパク質分解に対する感受性に関する可能性を増大し得るし、あるいは治療用タンパク質の場合、免疫原性に関する可能性も増大する;スペーサーが長いほど、危険性は大きい。したがって、融合タンパク質を生成するに際しては、融合タンパク質の構造的完全性を保存すること、必要な同族相手との結合のための非閉塞性アクセスを保持すること、そしてスペーサー配列の長さを最小にすることが重要な設計目標である。これらの目標に向けて、本明細書中に記載されるようなリガンドの循環置換を利用して、第二タンパク質との融合のための優先的位置が提供される。
【0062】
新規末端のための優先的位置は、所望のポリペプチド融合相手の融合のために、幾何学的に、構造的に、ならびに機能的に好ましく(ネイティブ末端に比して)、そして必要なスペーサーの長さを低減する。一実施形態では、新規末端の位置は、細胞受容体活性化複合体の段階的形成中に、リガンドが普通は会合する潜在的融合相手のネイティブ位置により近位である。融合ポリペプチド中の修飾リガンドおよび融合相手の配向は、受容体活性化複合体に対するリガンドの刺激的活性を増強するか、あるいは活性化複合体の段階的形成の立体障害を提供し、それにより活性化複合体の拮抗作用を提供するために最適であり得る。
【0063】
IL6に関する循環置換の過程は、図2に模式的に示されている。ネイティブIL6タンパク質の構成アミノ酸残基は、アミノ末端からカルボキシル末端に、47から212まで順次番号を付されている。
【0064】
IL6を循環置換するために、IL6のネイティブアミノおよびカルボキシ末端がリンカー配列により結合されて、新規アミノおよびカルボキシ末端がそれぞれアミノ酸残基182および180で工学処理されるよう、組換え構築物は工学処理される(図2)。したがって、循環置換は、新規の線状タンパク質(IL-6(182/180)、aka Picasso3)を生じ、これは、アミノ末端からカルボキシ末端に向けて、残基182から212(ここでは1~31)に対応する元のタンパク質のセグメント、その後にリンカー、その後に残基49~180(ここでは39~107)に対応する元のタンパク質のセグメントを含む(図2)。
【0065】
所望のポリペプチド融合相手を融合するための最適末端を提供しながら、ネイティブ型のリガンドの生物学的活性を保持するネイティブリガンドの循環置換を作成することは重要である。新規末端がネイティブタンパク質の重要領域を遮断する場合、活性は失われ得る。同様に、元の末端を連結することが活性を破壊する場合には、循環置換は生物学的活性を保持しない。したがって、活性循環置換タンパク質の作成のためには、2つの要件が存在する:1)ネイティブタンパク質における末端は、好ましくは、連結の作成が生物学的活性を破壊しないよう、位置決定されなければならない;そして2)タンパク質フォールディングおよび所望の生物学的活性のために重要な領域を分断することなく新規末端が形成され得る「開環部位」が存在しなければならない。
【0066】
一実施形態では、修飾リガンドの新規のN-末端およびC-末端は、標的受容体に関する修飾リガンドのいかなる結合ドメインも分断しない。
【0067】
一実施形態では、修飾リガンドは、元のリガンドと同様完全に活性である。一実施形態では、修飾リガンドは、元のリガンドと比較して、増強された活性を有する。一実施形態では、増強された活性は、標的受容体に対する増大された結合親和性である。
【0068】
したがって、概して循環置換のための良好な候補は、元のタンパク質の末端が非常に近接して存在し、好ましくは配向される。一実施形態では、元のタンパク質の末端は、20Å以下の距離で離れて存在する。末端が天然に一緒に密接して位置する場合、末端が互いと直接融合することが可能であり、リンカーの導入は相対的にほとんど効果を有さない、と予測される。しかしながら、リンカーは任意の長さを有し得るため、ネイティブ末端の密接な近接は、絶対要件であるというわけではない。
【0069】
好ましい一実施形態では、非置換化またはネイティブ分子において見出されるアミノおよびカルボキシ末端間の空間的配置を保存する置換済みタンパク質中のリンカー配列を用いることが望ましい。好ましい一実施形態では、リンカー配列は、それ自体、少なくとも約1個のアミノ酸~約10個のアミノ酸の間であり得る。好ましい一実施形態では、いずれかの末端からの少数のアミノ酸が除去されて(切断低減されて)、末端をともにより近づかせる。例えば、IL-6とIL-6Rおよびgp130との結晶複合体では、サイトカインIL6の末端は16Å離れている(Brevnova et al. (2003) Science 300:2102)。構造的または機能的に必要とされない最初の2つのN-末端残基の除去は、末端間の距離を10.2Åに低減する。この空間的配置を本質的に保存する連結は、ペプチド配列SGGSGGG(配列番号14)を伴ってなされる。同様に、循環置換IL-1βおよびIL-2に関する好ましいリンカーは、それぞれGGSGGSGおよびGG(それぞれ、配列番号15および配列番号16)である。
【0070】
解放部位の選択は、多数の因子により決定され得る。タンパク質の三次元立体配座が既知であるかまたは予測される場合、好ましい解放部位は、高度に規則的な三次元構造を示さない結合ループまたは領域に置かれ得る。したがって、開環部位は、限定二次構造、例えばアルファらせん、β鎖等を含有しないタンパク質の領域で選択される、ということが好ましい。アミノ酸配列に基づいた限定二次構造の領域の同定方法は、ワールド・ワイド・ウェブで広範に利用可能である。さらに、タンパク質の三次元構造を予測するために、種々のプログラムが利用可能である(近年、Nayeem et al., Protein Science, 808-24 (2006)で再検討されている)。
【0071】
ネイティブ分子の生体活性の保持または増強が循環置換分子において所望される場合、開環部位はそのタンパク質相手との相互作用に直接または間接的に関与しない、というのが好ましい。一実施形態では、新規開環部位の選択は、その標的受容体に関するネイティブリガンドの結合親和性に直接または間接的に関与するネイティブリガンド中に存在する結合ドメインを分断しない。
【0072】
代替的には、あるアミノ酸の置換またはあるアミノ酸の側鎖の修飾がタンパク質の活性を変えない場合、それらのアミノ酸はタンパク質の活性に重要でない、と予測される。したがって、タンパク質の活性にほとんど影響を及ぼすことなく、(in vitroで)突然変異化され得るかまたはin vivoで実際に修飾され得るアミノ酸は、開環部位のための潜在的に良好な候補である。IL-6における好ましい解放部位は、残基131と135の間、および残基180と182の間である。IL-1βにおける好ましい解放部位は、残基179と180の間、さらにまた残基223と224の間である。IL-2における好ましい解放部位は、残基94と95の間である。
【0073】
タンパク質が一種内の関連タンパク質の一ファミリーの一成員である場合、高度保存配列は生物学的活性に重要であると推測され得るが、一方、可変領域は存在しない。同様に、哺乳動物種中で機能的に保存されるタンパク質の高度保存配列は、特に異種間薬理学的活性が存在する場合、生物学的活性にとって重要である。次に、種内または種間のいずれかでの、タンパク質ファミリーの種々の成員間の高度保存配列同一性を示さないタンパク質の領域において、好ましい解放部位が選択される。代替的には、タンパク質において同定される好ましい解放部位は、同種タンパク質における開環部位のための良好な候補位置を提供する。配列同一性を決定する方法は、当業者に周知であり、上記されている。
【0074】
他の修飾がなされ得る、と当業者は理解する。したがって、例えば、循環置換により修飾されるリガンドの特異性または結合親和性を増大するアミノ酸置換がなされ得る。したがって、それ自体リガンドの活性に関与しないリガンドの領域が存在する場合、それらの領域は排除されるか、あるいはリガンドと会合するよう意図されるタンパク質との間の正確な特定の関係を保持するために役立つだけの短いセグメントと置き換えられ得る。
【0075】
多数のネイティブリガンド(例えば、増殖因子、サイトカインおよびその他のタンパク質)に関しては、第二ポリペプチドまたは分子をネイティブリガンドのいずれかの末端に結合することにより融合ポリペプチドが形成される場合、第二ポリペプチドの所望の下流活性が有意に減少されるかまたは存在しないよう、カルボキシおよびアミノ末端は位置する。異所性タンパク質フォールディングまたは立体障害は、しばしば、第二ポリペプチドの活性の減少または非存在を説明するための原因とされる。他の場合、第二ポリペプチドとネイティブタンパク質のいずれかの末端との融合は耐容される(すなわち、ネイティブタンパク質の機能的活性は有意に影響されない)が、しかしながら、下流シグナル伝達分子が活性シグナル伝達複合体のアセンブリ中で占める空間を融合ポリペプチドの位置が占める立体的干渉を通して伝達複合体の形成を妨害することを融合ポリペプチドが意図される場合のように、融合ポリペプチドの配向は融合タンパク質に所望の活性を付与しない。
【0076】
これに対比して、ここで記載されるようなリガンドの循環置換は、ネイティブ型に比して、変更されたリガンドの特異性および結合親和性を減少させることなく第二分子またはポリペプチドの融合を可能にする、そしてさらにまた、例えばシグナル伝達活性化複合体の超刺激作用または拮抗作用を融合第二分子またはポリペプチドに付与させる新規のカルボキシおよびアミノ末端を生じるようリガンドが変更され得る手段を提供する。一実施形態では、本発明の融合ポリペプチドは、標的シグナル伝達活性化複合体のアゴニストであるネイティブリガンドをシグナル伝達活性化複合体のアゴニストに変換する。これは、図1~5において、サイトカイン、IL-6に関連して例証されている。
【0077】
本発明の特徴の1つは、融合相手と融合される循環置換化リガンドからなる融合ポリペプチドが、そのネイティブ受容体に関するネイティブ(非融合化、非修飾化、非置換化)リガンドの結合親和性に比して、ネイティブリガンドのネイティブ受容体に対する融合ポリペプチドの結合親和性を増強する。例えば、実施例3は、以下の:1)膜貫通シグナル伝達分子gp130のうちの1つのドメインと融合される循環置換IL6からなる融合ポリペプチドのIL6受容体との結合親和性を、2)ネイティブIL-6と比較する。融合ポリペプチドの結合親和性は、IL6受容体に対するネイティブIL6の結合親和性より200倍以上大きいことがわかる(図6Aおよび6C)。
【0078】
融合ポリペプチド
本発明は、循環置換(修飾)リガンドおよび少なくとも1つのポリペプチド融合相手を含む新規の融合ポリペプチドを提供するが、この場合、融合ポリペプチドは、任意に、そのネイティブ標的受容体に関するネイティブ(非置換化)リガンドの特異性および結合親和性より大きい特異性および結合親和性を保有する。付加的には、融合ポリペプチドは、例えば、ネイティブリガンドが本明細書中に記載されるような標的受容体を結合することによりアゴニストとして機能した経路のアンタゴニストを生成するようさらに工学処理され得る。
【0079】
多くの受容体は、それらのネイティブリガンド(二量体または多量体受容体)の結合時に、ネイティブリガンドおよびクラスターを結合し、すなわち、二量体、三量体または多量体を形成する。例えば、IL-1ファミリーサイトカイン、繊維芽細胞増殖因子および4-らせんサイトカインは、種々の数のリガンドおよび受容体を組み入れることからなる多量体シグナル伝達複合体を形成する(図9)。リガンド誘導クラスター化(例えば、二量体化、多量体化)は、しばしば、高親和性複合体をもたらし、シグナル伝達を開始する。したがって、本発明の融合ポリペプチドは、例えば、ネイティブリガンドの結合を抑制するか、あるいは受容体クラスター化(例えば、二量体化、三量体化、多量体化)を抑制することにより、例えばシグナル伝達を拮抗し得るが、ネイティブリガンド結合を抑制することも、しないこともある(図10)。代替的には、本発明の融合ポリペプチドは、例えば、標的受容体に関するより大きい親和性を有するリガンドの生成、あるいはシグナル伝達複合体をもたらす構成成分の前会合により、クラスター化の進行を助長することによりシグナル伝達を増強し得る。好ましい一実施形態では、本発明の融合ポリペプチドは、多量体リガンドまたは受容体、あるいは二量体または多量体複合体を結合し得るし、シグナル伝達複合体のアセンブリにおける1つ以上のステップを抑制するかまたは増強し、それにより細胞経路のシグナル伝達を抑制するかまたは増強し得る。
【0080】
例えば、スキーム1に記述されるような最終活性複合体をもたらす高次複合体の段階的構築において(これは、IL-2によるシグナル伝達をもたらす経路を代表するものであって、この場合、IL-2は「A」であり、IL-2Rαは「B」であり、IL-2Rβは「C」であり、そしてγcは「D」である):
スキーム1:A+B→AB(ステップ1);
AB+C→ABC(ステップ2);
ABC+D→ABCD(ステップ3);
(式中、ABCDはシグナル伝達複合体であり、そしてシグナル伝達は、CおよびDを互いに近位にすることにより開始される。)シグナル伝達複合体は図9に示されており、複合体の細胞外構成成分の構造は図8である。
【0081】
組立済み一本鎖「AB」は、それがAまたはBよりCに対してより高い親和性を保有し、したがってより低い濃度でABCDのアセンブリを助長する場合、スーパーアゴニストであると予測される。「A」のネイティブ末端が融合タンパク質を可能にするよう配置されない場合、「B」と融合されるよう最適に配向されるべく本発明に従って循環置換により修飾されたリガンド「A」の融合タンパク質は、一本鎖「AB」タンパク質の生成を可能にする。図8は、工学処理IL-2スーパーアゴニスト(RDB1405;配列番号12(タンパク質)および配列番号13(DNA))の場合に関してこれを示している。活性化T細胞において、IL-2、IL-2Rα(CD25とも呼ばれる)、IL-2Rβおよびγcからなる「高親和性」第四級複合体を介して、IL-2はシグナルを送る(図8A)。IL-2はIL-2Rαの非存在下でIL-2Rβと非常に弱く結合し得るが、しかしIL-2RαとIL-2との結合は、はるかに大きい親和性を有するIL-2Rβに対する提示のためにIL-2の立体配座を安定化する。次にγcは、IL-2/IL-2Rβ複合体により形成される合成表面に動員される。IL-2末端は、IL-2Raが相互作用する極性対面に存在して、50オングストロームより大きく広がるスペーサーを要し、同様に融合タンパク質が結合する能力を破壊するため、IL-2RαとのネイティブIL-2の融合タンパク質の発現は挑戦中である(図8A、IL-2末端は、上部でのIL-2Rαから離れて示している底部にある)。実際、長いスペーサーを有するIL-2/IL-2Rα融合タンパク質が近年記載されており、それは、リンカーのプロテアーゼ媒介性切断とその後のIL-2の放出の非存在下でシグナルを助長することができない(Puskas et al.,Immunology,133(2),206-220(2011))。循環置換IL-2(95/94)の末端は、IL-2Rαとの結合界面に近位の面上に存在するよう工学処理されて、活性化複合体として集合し得る、そしてスーパーアゴニストとして機能し得る融合タンパク質を生成するために必要とされるスペーサーの長さを有意に低減する(図8B)。(循環置換IL-2の工学処理C-末端とIL-2RαのN-末端との間の距離は、約11オングストロームである;図の融合構築物RDB1405は、IL-2とIL-2Rαとの間に6アミノ酸スペーサーを含有する)。
【0082】
代替的には、シグナル伝達のための多量体活性化複合体の段階的構築は、強力なアゴニストを作り出す機会を提供する。この場合、リガンドは循環置換により修飾されてN-またはC-末端を提供し、これが、標的受容体の多量体活性化複合体の段階的形成を立体障害する配向で融合相手を結合することを助長し、いくつかの場合には、融合相手はさらに、例えば、融合相手が、それ自体、標的受容体に対する結合決定因子を含有するタンパク質またはドメインである場合、標的受容体に対する結合親和性を増大し得る。この後者の場合は、図1~5および10にサイトカイン、IL-6の状況で例証されている。この例では、融合ポリペプチドは、六量体IL-6シグナル伝達複合体の天然構成成分である膜貫通受容体gp130のD1ドメインを含むポリペプチドと融合される循環置換インターロイキン6(IL-6)を含む。循環置換リガンド(RDB1503)(図2)は、融合相手の非存在下で、野生型IL-6と同一のアゴニスト活性を保持し(図4)、したがって、IL-6Rαおよびgp130との必要な相互作用を保持する。IL-6の六量体シグナル伝達複合体は、各々2分子のIL-6、IL-6Rαおよびgp130から成る(図1)。シグナルは、2つのgp130分子の細胞質ドメインを介して、2つのヘテロ三量体(各々、1分子のIL-6、IL-6Rαおよびgp130を有する)が一緒になると開始される(図1)。複合体形成における最終ステップに関する駆動力は、1つのヘテロ三量体からのgp130のD1ドメインと他のヘテロ三量体のIL-6およびIL-6Rαとの間の対称的相互作用である。gp130のD1ドメインとネイティブIL-6との融合は、D1ドメインをgp130界面から離れて配向し(図3A)、IL-6媒介性シグナル伝達を拮抗しないタンパク質(RDB1529)を生じる(図5)。これに対比して、D1ドメインと循環置換IL-6(RDB1527)との融合は、六量体複合体と同様にIL-6Rαと相互作用し得るよう、さらに重要なことは、第二ヘテロ三量体からのD1ドメインの結合を立体的に防止し得るよう(図3B)、D1を配向し、したがってIL-6媒介性シグナル伝達の強力なアゴニストである(図5)。ここで、CP_IL-6_D1融合タンパク質は、単一ポリペプチド中に非修飾IL-6およびネイティブgp130-D1ドメインの併合IL-6Rα結合決定因子を保有するので、融合ポリペプチドの結合親和性は、40pMであると測定され、これはIL-6Rαに対するネイティブIL-6の結合親和性の200倍より高い(図6Aおよび6C)。
【0083】
一実施形態では、本発明は、修飾リガンドおよび第一融合相手を含む融合ポリペプチドを提供するが、この場合、修飾リガンドの第一融合相手は、例えば、天然多量体シグナル伝達複合体の一構成成分であるタンパク質またはドメインの場合と同様に、標的受容体に対する付加的結合決定因子を有するタンパク質の全部または一部に由来し、そして第一融合相手は完全シグナル伝達複合体のアセンブリを立体的に阻止し、それによりアンタゴニストとして作用する。
【0084】
本発明の融合ポリペプチドを含む循環置換により修飾されるリガンドは、細胞表面受容体とのその結合がシグナル伝達カスケードを開始するかまたはシグナル伝達カスケードの天然ネガティブ調節物質(例えば、アンタゴニスト)として役立つ可溶性タンパク質を包含し、その例としては、サイトカイン、ケモカイン、アディポカイン、増殖因子、ホルモン、可溶性受容体、サイトカイン結合タンパク質(例えば、IL-18bp)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0085】
本発明の融合ポリペプチドを含む循環置換により修飾される好ましいリガンドおよびタンパク質としては、らせん束タンパク質およびサイトカイン(例えば、増殖因子、ホルモン、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-10、IL-22、IL-23p19、IL-11、IL-13、IL-15、IL-12p35、IL-21、IL-30(IL27p28)、IL-34、IL-35、IL-35p35、IFN-β、IFNγ、LIF、CNTF、オンコスタチンM、CLCF-1、GCSF、GM-CSF、EPO、フェリチン、レプチン、胎盤性ラクトジェン、プロラクチン、アポリポタンパク質eが挙げられるが、これらに限定されない)、b-トレフォイルタンパク質(例えば、IL-1α、IL-1β、IL-1Ra、IL18、IL-33、IL-36Ra、IL-36a、IL-36b、IL-36g、IL-37、IL-38、IL1Hy2、FGF-1、FGF-2、FGF-3、FGF-4、FGF-5、FGF-6、FGF-7、FGF-8a、FGF-8b、FGF-8e、FGF-8f、FGF-9、FGF-10、FGF-11、FGF-12、FGF-13、FGF-14、FGF-16、FGF-17、FGF-18、FGF-19、FGF-20、FGF-21、FGF-22、FGF-23が挙げられるが、これらに限定されない)、α/β(TIM)バレルタンパク質(例えば、トリオ-スリン酸イソメラーゼが挙げられるが、これに限定されない)、ベータサンドイッチタンパク質(例えば、ガレクチン-1、ガレクチン-3、TNF-ベータ、7β-プロペラタンパク質、クラス1 MHC α1α2ドメイン、インテグリンIドメイン、GYFドメイン、C1ドメイン、C2ドメイン(例えば、cPLA2、PKC、シナプトタグミンから)、PDZドメイン、C3d、C5aが挙げられるが、これらに限定されない)が挙げられる。
【0086】
最も好ましい実施形態では、本発明の融合ポリペプチドを含む循環置換により修飾されるリガンドは、IL-6、IL-2、IL-15、IL-1α、IL-1β、IL-1Ra、IL-18、FGF-19、FGF-21、FGF-23から選択される。
【0087】
本発明の融合ポリペプチドを含む循環置換により修飾されるリガンドは、受容体に関する、または以下の一覧におけるネイティブリガンドを結合する受容体に関する結合特異性を有し得る:ApoE、Apo-SAA、BDNF、カルジオトロフィン-1、EGF、EGF受容体、ENA-78、エオタキシン、エオタキシン-2、エキソダス-2、FGF-酸性、FGF-塩基性、繊維芽細胞増殖因子-10、FLT3リガンド、フラクタルキン(CX3C)、GDNF、G-CSF、GM-CSF、GF-β1、インスリン、IFN-γ、IGF-I、IGF-II、IL-1α、IL-1β、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8(72a.a.)、IL-8(77a.a.)、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、IL-13、IL-15、IL-16、IL-17、IL-18(IGIF)、インヒビンα、インヒビンβ、IP-10、ケラチノサイト増殖因子-2(KGF-2)、KGF、レプチン、LIF、リンホタクチン、ミュラー管抑制物質、単球コロニー抑制因子、単球誘引物質タンパク質、M-CSF、MCP-1(MCAF)、MCP-2、MCP-3、MCP-4、MDC(67a.a.)、MDC(69a.a.)、MIG、MIP-1α、MIP-1β、MIP-3α、MIP-3β、MIP-4、骨髄前駆細胞抑制因子-1(MPIF-1)、NAP-2、ニュールツリン、神経増殖因子、β-NGF、NT-3、NT-4、オンコスタチンM、PDGF-AA、PDGF-AB、PDGF-BB、PF-4、RANTES、SDF1α、SDF1β、SCF、SCGF、幹細胞因子(SCF)、TARC、TGF-α、TGF-β、TGF-β2、TGF-β3、腫瘍壊死因子(TNF)、TNF-α、TNF-β、TNF受容体I、TNF受容体II、TNIL-1、TPO、VEGF、VEGF受容体1、VEGF受容体2、VEGF受容体3、GCP-2、GRO/MGSA、GRO-β、GRO-γ、HCC1、1-309、HER1、HER2、HER3およびHER4。
【0088】
修飾リガンドが結合特異性を有し得る付加的受容体としては、以下の一覧における受容体、または以下の一覧中に含まれるネイティブリガンドを結合する受容体が挙げられる:EpoR、TACE認識部位、TNF BP-I、TNF BP-II、IL-1R1、IL-6R、IL-10R、IL-18R、IL-1、IL-19、IL-20、IL-21、IL-23、IL-24、IL-25、IL-27、IFN-γ、IFN-α/β、CD4、CD89、CD19、HLA-DR、CD38、CD138、CD33、CD56、CEAおよびVEGF受容体。
【0089】
本発明の融合ポリペプチドの修飾リガンドが結合特異性を有し得るさらなる受容体としては、ガストリン放出ペプチド受容体、ニューロテンシン受容体、アドレノモジュリン受容体、H2ヒスタミン受容体、HCG受容体、MET受容体、スフィンゴシン1-ホスフェート受容体、CD126、CD213a1およびKDR等が挙げられる。
【0090】
本発明のポリペプチド融合タンパク質の修飾リガンドは、ネイティブリガンドとの結合時に二量体化する受容体(二量体受容体)、あるいはネイティブリガンドとの結合時に多量体、例えば三量体を形成する受容体(多量体受容体)に関する結合特異性を有し得る。多数のサイトカイン受容体および増殖因子受容体、例えばTNF受容体スーパーファミリーの成員(例えば、TNFR1、TNFR2)、ならびに受容体チロシンキナーゼファミリーの成員(例えば、EGFR、PDGFR、M-CSF受容体(c-Fms))は、それらのネイティブリガンドを結合する時に、二量体または多量体を形成する。TNF受容体スーパーファミリーは、当該技術分野で認識されたタンパク質群であって、例としては、TNFR1(p55、CD120a、p60、TNF受容体スーパーファミリー成員1A、TNFRSF1A)、TNFR2(p75、p80、CD120b、TNF受容体スーパーファミリー成員1B、TNFRSF1B)、CD(TNFRSF3、LTβR、TNFR2-RP、TNFR-RP、TNFCR、TNF-R-III)、OX40(TNFRSF4、ACT35、TXGP1L)、CD40(TNFRSF5、p50、Bp50)、Fas(CD95、TNFRSF6、APO-1、APTI)、DcR3(TNFRSF6B)、CD27(TNFRSF7、Tp55、S152)、CD30(TNFRSF8、Ki-1、D1S166E)、CD137(TNFRSF9、4-1BB、ILA)、TRAILR-1(TNFRSF10A、DR4、Apo2)、TRAIL-R2(TNFRSF10B、DR5、KILLER、TRICK2A、TRICKB)、TRAILR3(TNFRSF10C、DcR1、LIT、TRID)、TRAILR4(TNFRSF10D、DcR2、TRUNDD)、RANK(TNFRSF11A)、OPG(TNFRSF11B、OCIF、TR1)、DR3(TNFRSF12、TRAMP、WSL-1、LARD、WSL-LR、DDR3、TR3、APO-3)、DR3L(TNFRSF12L)、TAC1(TNFRSF13B)、BAFFR(TNFRSF13C)、HVEM(TNFRSF14、ATAR、TR2、LIGHTR、HVEA)、NGFR(TNFRSF16)、BCMA(TNFRSF17、BCM)、AITR(TNFRSF18、GITR)、TNFRSF19、FLJ14993(TNFRSF19L、RELT)、DR6(TNFRSF21)、SOBa(TNFRSF22、Tnfrh2、2810028K06Rik)およびmSOB(THFRSF23、Tnfrh1)が挙げられる。受容体チロシンキナーゼファミリーは、当該技術分野で認識済みのタンパク質群であって、例としては、EGFR(ERBB1、HER1)、PDGFR、c-Fms、FGFR1、FGFR2、FGFR3、FGFR4、インスリン受容体およびインスリン様増殖因子受容体(IGF1R、IGF2R)が挙げられる。Grassot et al.,Nucleic Acids Research, 31(1):353-358 (2003)参照。
【0091】
一実施形態では、第一ポリペプチド融合相手は、成長ホルモン、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-10、IL-11、IL-12、IL-13、IL-15、IL-21、IL-22、IL-23、IL-30(IL27p28)、IL-34、IL-35、IFN-β、IFNγ、LIF、CNTF、オンコスタチンM、CLCF-1、GCSF、GM-CSF、EPO、胎盤性ラクトジェン、プロラクチン、アポリポタンパク質、IL-1α、IL-1β、IL-1Ra、IL18、IL-33、IL-36Ra、IL-36a、IL-36b、IL-36g、IL-37、IL1Hy2、FGF-1、FGF-2、FGF-3、FGF-4、FGF-5、FGF-6、FGF-7、FGF-8a、FGF-8b、FGF-8e、FGF-8f、FGF-9、FGF-10、FGF-11、FGF-12、FGF-13、FGF-14、FGF-16、FGF-17、FGF-18、FGF-19、FGF-20、FGF-21、FGF-22、FGF-23、TNF-ベータに関する天然受容体または補助タンパク質の細胞外ドメインの全部または任意の部分を含む。
【0092】
最も好ましい実施形態では、融合相手は、gp130(最も好ましくは、D1ドメイン)、IL-2Rα、IL-15Rα、IL-1RI、IL-1RII、IL-18Rα、IL-18Rβ、IL1RAcP、FGFR1b、FGFR1c、FGFR2b、FGFR2c、FGFR3b、FGFR3c、FGFR4、α-Klothoおよびβ-Klothoから選択される細胞外ドメインまたはその一ドメインである。
【0093】
一実施形態では、本発明の融合ポリペプチドおよび融合相手を含む循環置換により修飾されるタンパク質は、融合が一本鎖「ホモ二量体」を生成するよう、同一の元のタンパク質から生じ得る。
【0094】
一実施形態では、循環置換ポリペプチドに対する融合相手も、融合を可能にするために循環置換を必要とし得る。したがって、本発明の融合タンパク質の両相手は、必要に応じて、循環置換され得る。
【0095】
一実施形態では、ポリペプチド融合相手は、融合ポリペプチドに対してその他の新規のまたは改良された/増強された機能または振る舞いを提供する。加えて、または代替的には、第二融合相手が本発明の融合ポリペプチドに付加されて、本発明の融合ポリペプチドに対するその他の新規のまたは改良された/増強された機能または振る舞いを提供し得る。例えば、融合相手は、本発明の融合ポリペプチドに対して半減期延長を提供し得る。in vivo半減期を延長するための融合相手の付加は、本発明の融合ポリペプチドが、身体から迅速に除去されるサイズである場合、特に有用であり、これが臨床的使用を限定し得る。
【0096】
例えばポリマーまたは炭水化物(例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、コロミン酸またはヒドロキシエチルデンプン)とのカップリング、N-グリコシル化部位の組み入れにより、あるいは長い柔軟性ポリペプチド配列(例えば米国特許2010/0239554A1に記載されたもの)の融合により生成される組換えPEG模倣物を介して、より大きい流体力学的サイズを有するよう、本発明のポリペプチドは修飾され得る。本発明のポリペプチド融合タンパク質の流体力学的サイズは、当該技術分野で周知の方法を用いて決定され得る。例えばゲル濾過クロマトグラフィーを用いて、流体力学的サイズを決定し得る。架橋アガロースマトリクスのようなリガンドの流体力学的サイズを決定するための適切なゲル濾過マトリクスは周知であり、容易に入手可能である。
【0097】
好ましい一実施形態では、本発明の融合ポリペプチドは、USSN 61/657,264[表題「Fusion Polypeptides Comprising an Active Protein Linked to a Mucin-Domain Polypeptide」](本発明と同一日に出願;代理人整理番号4000.3058 US)(この記載内容は各々、参照により本明細書中で援用される)に記載されているようなムチン-ドメインポリペプチドを組み入れるよう意図される。
【0098】
一実施形態では、本発明の融合ポリペプチドは、FcRn媒介性再循環を介して血清半減期を増強するタンパク質、タンパク質ドメインまたはペプチド、例えば免疫グロブリン、免疫グロブリンのFcドメイン(最も注目すべきはIgG1およびIgG2)、血清アルブミン、血清アルブミンドメイン(最も注目すべきはDIII)、FcRnに対する結合親和性を有するペプチド、あるいは免疫グロブリンまたは血清アルブミン(例えば、ナノボディ)に対する結合親和性を有するタンパク質またはペプチドと融合され得る。
【0099】
薬物動態分析およびリガンド半減期の決定のための方法は、当業者によく知られている。詳細は、Kenneth,A et al:Chemical Stability of Pharmaceuticals: A Handbook for Pharmacistsに、そしてPeters et al,Pharmacokinetc analysis:A Practical Approach(1996)に見出され得る。”Pharmacokinetics”, M Gibaldi & D Perron,published by Marcel Dekker,2nd Rev.ex edition(1982)(これは、薬物動態パラメーター、例えばアルファおよびベータ半減期、ならびに曲線下面積(AUC)を記載する)も参照される。
【0100】
一実施形態では、本発明の融合ポリペプチドは、身体の特定の領域において本発明の融合ポリペプチドを局在化し、分布させ、または保持するための手段として、特定の器官、組織、細胞または生理学的マトリクス(例えばコラーゲン)、炭水化物または脂質を標的にする(すなわち、それらに対する親和性を有する)タンパク質、タンパク質ドメインまたはペプチドと融合され得る。
【0101】
付加的配列、例えば、当該技術分野で既知のもののような融合ポリペプチドの精製または単離を助長するために提供され得る親和性タグ配列も、融合ポリペプチドの一部として含まれ得る。安定性配列も、融合ポリペプチドに付加されて、分子が(例えばプロテアーゼにより)分解しないようにし得る。適切な安定性配列としては、ユビキチン化から融合分子を保護するために開始メチオニンの後に組み入れられるグリシン分子(例えば、MG(配列番号17)またはMGG(配列番号18));C末端に組み入れられる2つのプロリン(カルボキシペプチダーゼ作用に対する保護を付与する)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0102】
本発明の融合ポリペプチドの生物学的活性、結合特異性および結合親和性を試験するために、適切な生物学的検定が用いられ得る。種々の種類の生物学的活性に関する検定は、当業者に周知である。特定の検定は、分子の特別な活性によって決まる。
【0103】
循環置換タンパク質の調製
循環置換タンパク質は、当業者に既知の多数の手段により作製され得る。これらの例としては、化学合成、既存のタンパク質の修飾、ならびに組換えDNA法を用いた循環置換タンパク質の発現が挙げられる。タンパク質が相対的に短い(すなわち、約50アミノ酸未満)場合、循環置換タンパク質は、標準化学ペプチド合成技法を用いて合成され得る。リンカーがペプチドである場合、それは合成中に組み入れられ得る。配列のC-末端アミノ酸が不溶性支持体に付着され、その後、配列中の残りのアミノ酸を逐次付加する固相合成は、本発明の循環置換リガンドおよび融合タンパク質の化学合成のための好ましい方法である。固相合成に関する技法は、Barany and Merrifield, Solid-Phase Peptide Synthesis; pp. 3-284 in The Peptides:Analysis,Synthesis,Biology. Vol. 2: Special Methods in Peptide Synthesis, Part A.,Merrifield,et al.J.Am.Chem.Soc.,85:2149-2156(1963)およびStewart et al., Solid Phase Peptide Synthesis, 2nd ed. Pierce Chem. Co.,Rockford,Ill.(1984)(これらの記載内容は参照により本明細書中で援用される)により記載されている。
【0104】
代替的には、循環置換タンパク質は、ネイティブタンパク質を化学的に修飾することにより作製され得る。一般的には、これは、リンカーの存在下でネイティブタンパク質を反応させて、リンカーとタンパク質のカルボキシルおよびアミノ末端との間に共有結合を形成し、したがって環状タンパク質を形成することを必要とする。次に、別の場所のアミノ酸を結合するペプチド結合を開くことにより、新規末端が形成される。これは、例えばペプチダーゼを用いて、化学的に、または酵素的に成し遂げられ得る。
【0105】
好ましい実施形態では、循環タンパク質、または少なくとも1つの融合相手と融合される循環置換タンパク質を含む融合ポリペプチドは、組換えDNA法を用いて合成される。一般的に、これは、循環置換リガンド(または循環置換リガンドおよび融合相手を含有する全融合ポリペプチド)をコードするDNA配列を作成すること、特定のプロモーターの制御下で発現ベクター中にDNAを配置すること、宿主中でタンパク質を発現すること、発現タンパク質を単離すること、そして必要な場合、タンパク質を再生することを包含する。
【0106】
循環置換リガンドをコードするDNAは、遺伝子合成により、またはDNA増幅方法、例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)および逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を用いることにより、生成され得る。適正に処理された循環置換融合タンパク質が細胞から分泌されるよう、シグナル配列をコードするDNAが、任意に付加され得る。
【0107】
本発明の融合ポリペプチドを含む循環置換リガンドおよびその他の分子は、任意の順序で一緒に結合され得る、と当業者は理解する。したがって、第二分子は、好ましくは、循環置換リガンドのアミノ(N-末端融合)またはカルボキシ(C-末端融合)末端と結合される。
【0108】
循環置換リガンドおよびそれらの融合タンパク質は、種々の宿主細胞中で、例えば大腸菌、その他の細菌宿主、酵母、ならびに種々の高等真核生物細胞、例えばCOS、CHOおよびHeLa細胞株および骨髄腫細胞株で発現され得る。組換えタンパク質遺伝子は、各宿主に関する適切な発現制御配列と操作可能的に連結される。大腸菌に関しては、これは、プロモーター、例えばT7、trpまたはラムダプロモーター、リボソーム結合部位、好ましくは転写終結シグナルを含む。真核生物細胞に関しては、制御配列は、プロモーター、好ましくは免疫グロブリン遺伝子、SV40、サイトメガロウィルス等に由来するエンハンサー、ならびにポリアデニル化配列を含み、スプライスドナーおよびアクセプター配列を含み得る。
【0109】
本発明のプラスミドは、周知の方法、例えば大腸菌に関する塩化カルシウム形質転換、ならびに哺乳動物に関するリン酸カルシウム処理、電気穿孔、リポフェクタミン処理またはPEI処理により、選定宿主細胞中に移され(トランスフェクトされ)得る。プラスミドにより形質転換される細胞は、プラスミド内に含有される遺伝子、例えばamp、gpt、neoおよびhyg遺伝子により付与される抗生物質に対する耐性により選択され得る。
【0110】
一旦発現されると、組換え融合タンパク質は、当該技術分野の標準手法、例えば硫酸アンモニウム沈澱法、アフィニティークロマトグラフィー、イオン性または疎水性樹脂を用いるカラムクロマトグラフィー、ゲル電気泳動法等に従って精製され得る(一般的に、R.Scopes,Protein Purification,Springer-Verlag,N.Y.(1982),Deutscher,Methods in Enzymology Vol.182:Guide to Protein Purification.,Academic Press,Inc.N.Y.(1990)参照)。少なくとも約90~95%の純度の実質的に純粋な組成物が好ましく、98~99%またはそれ以上の純度が、薬学的使用のために最も好ましい。一旦精製されると、ポリペプチドは、前臨床モデルで試験され、臨床的に試験され、あるいは治療的に用いられ得る。
【0111】
その生物学的活性を減少させることなく、環状化タンパク質配列に対して修飾がなされ得る、と当業者は理解する。いくつかの修飾は、クローニング、発現または融合タンパク質中への感情置換リガンドの組み入れを助長するためになされ得る。このような修飾は、当業者に周知であり、例としては、残基の付加、例えば開始部位を提供するためにアミノ末端に付加されるメチオニン、あるいはエキソペプチダーゼからタンパク質を保護するためにどちらかの末端に配置される付加的アミノ酸が挙げられる。例えば、循環置換IL6は、任意に、翻訳に関する開始部位を提供するためにアミノ末端に付加的メチオニン(Met)コドンを有し得る。
【0112】
他の修飾がなされ得る、と当業者は理解する。したがって、例えば、循環置換タンパク質の特異性または結合親和性を増大する等といったようなアミノ酸置換がなされ得る。代替的には、分子の非必須領域は短縮されるかまたは完全に排除され得る。したがって、それ自体、分子の活性に関与しない分子の領域が存在する場合、それらは排除されるか、または分子の活性構成成分間の正しい空間的関係を保持するために役立つだけのより短いセグメントに取り替えられ得る。
【0113】
2つのタンパク質は、直接的に一緒に融合され得るか、あるいはペプチドスペーサーにより結合され得る。ペプチドスペーサーは、約1~40残基長の範囲であり得る。好ましい一実施形態では、ペプチドスペーサーは20Å長またはそれ以下である。
【0114】
一般的に、スペーサーはそれ自体、生物学的活性を有さず、融合タンパク質を含む2つの活性タンパク質間の連結し、多少の距離を提供するためにのみ機能する。しかしながら、スペーサーの残基は融合タンパク質の特性を最適化するために選択され得る、と当業者は理解する。例えば、スペーサー中に極性または荷電残基を含有するスペーサーは、水溶液中の溶解度を増強し得る。同様に、スペーサー残基は、融合タンパク質のフォールディングに及ぼすそれらの作用のために選択され得る。
【0115】
本発明は、本発明の融合ポリペプチドをコードする上記核酸、例えば組換えDNA法により生成される組換え核酸、ならびに本発明の核酸を含む発現ベクターおよび本発明のベクターを含む宿主細胞を包含する、と理解される。
【0116】
治療的使用
本明細書中に記載される本発明の組成物の融合ポリペプチドは、in vivoでの当該細胞(すなわち標的細胞)をターゲッティングする治療薬として特によく適しているが、それは、それらが、他の特性の中でも、ネイティブリガンドより高いネイティブ受容体に対する結合親和性、ならびにスーパーアゴニストおよびアンタゴニスト活性を示すためである。したがって、本発明の融合ポリペプチドを含有する組成物および医薬組成物は、治療的処置を必要とする患者に投与され得る。治療的適用において、循環置換リガンドを含む本発明の融合ポリペプチドおよびこれらの分子を含有する種々の組成物は、治療的有効量で、疾患または障害に罹患している患者に投与される。
【0117】
本発明は、本発明の融合ポリペプチドおよび製薬上許容可能な担体、希釈剤または賦形剤を含む組成物、ならびに本発明のリガンドまたは組成物を用いる治療および診断方法を提供する。
【0118】
本発明のリガンドの治療的および予防的使用は、レシピエント哺乳動物、例えばヒトへの本発明によるリガンドの投与を伴う。本発明の融合ポリペプチドは、好ましくは、高親和性および/または結合力で標的と結合する。少なくとも90~95%の均質性を有する実質的に純粋なリガンドが、哺乳動物への投与のために選択され、98~99%またはそれ以上の均質性が、特に哺乳動物がヒトである場合、薬学的使用のために最も好ましい。所望により部分的にまたは均質に一旦精製されると、本発明の融合ポリペプチドは、診断的にまたは治療的に(例えば体外的に)、あるいは検定手法、免疫蛍光染色法等の開発および実施に、用いられ得る。
【0119】
例えば、本発明の融合ポリペプチドは、典型的には、疾患状態を防止し、抑止し、または処置することに用途を見出す。例えば、融合ポリペプチドは、受容体活性により引き起こされる、あるいは受容体の発現または過剰発現により特性化される疾患または障害、例えば炎症または慢性炎症性疾患、心臓血管性疾患、代謝性疾患(例えば、肥満症、II型糖尿病、代謝性症候群)、呼吸器疾患(例えば、喘息、COPD)、眼性疾患(例えば、AMD、緑内障)、造血障害、免疫抑制、臓器移植片拒絶、移植片対宿主疾患、骨および軟骨疾患(骨粗鬆症、骨関節炎)、アレルギー性過敏症、癌、細菌またはウィルス感染症、自己免疫障害(例えば、I型糖尿病、喘息、多発性硬化症、関節リウマチ、若年性関節リウマチ、乾癬性関節炎が挙げられるが、これらに限定されない)、脊椎関節症(例えば、強直性脊椎炎)、自己炎症性障害、全身性紅斑性狼瘡、炎症性腸疾患(例えば、クローン病、潰瘍性大腸炎)、重症筋無力症およびベーチェット症候群)、乾癬、子宮内膜症、ならびに腹部癒着(例えば、後腹部手術)を処置し、抑止し、または防止するために投与され得る。
【0120】
好ましい一用途は、IL-2Rαと融合される循環置換IL-2(IL-2スーパーアゴニストを生じる)の使用による、癌の、または自己免疫症状、例えば移植片対宿主疾患、臓器移植片拒絶の処置である。
【0121】
別の好ましい用途は、gp130のD1ドメインと融合される循環置換IL-6(非常に強力なIL-6アンタゴニストを生じる)の使用による、慢性炎症性疾患、自己免疫疾患(例えば、関節リウマチ、乾癬、乾癬性関節炎、若年性関節リウマチ、クローン病、炎症性腸症候群が挙げられるが、これらに限定されない)、癌(例えば、多発性骨髄腫)およびキャッスルマン病の処置である。実施例2および3に記載されているように、本発明の循環置換リガンド-gp130融合タンパク質(RDB1527)は、ネイティブリガンドと比較して、ネイティブIL6受容体に対するより大きい特異的結合親和性(図6A対6C)および標的細胞抑制(図5)を示す。循環置換IL6-gp130融合ポリペプチドの増大された結合親和性および増殖抑制は、同一の治療的効力を達成しながら、IL6シグナル伝達の他の阻害薬と比較して、より低い投薬量でこれらの融合タンパク質を投与させ得る。代替的には、有意の効力を示すことを終える前に、融合タンパク質は、より低濃度に循環から取り除かれなければならないので、同一投薬量での投与は、治療効力延長を生じる。さらに、治療効力増大は、非特異的結合および細胞傷害性のための望ましくない副作用の増大により、成し遂げられない。
【0122】
別の好ましい用途は、IL-1RI、IL-1RIIまたはIL-1RAcPのドメインと融合される循環置換IL-1(非常に強力なIL-1アンタゴニストを生じる)の使用による、自己炎症性疾患、I型糖尿病、慢性炎症性疾患、自己免疫疾患(例えば、関節リウマチ、乾癬、乾癬性関節炎、若年性関節リウマチ、クローン病、炎症性腸症候群が挙げられるが、これらに限定されない)、癌、痛風および骨関節炎の処置である。
【0123】
別の好ましい用途は、IL-15αと融合される循環置換IL-15(IL-15スーパーアゴニストを生じる)の使用による、癌の、自己免疫症状、例えば移植片対宿主疾患、臓器移植片拒絶の、または感染症の処置である。
【0124】
融合ポリペプチドの循環置換リガンド部分は、意図された使用に従って選択される。循環置換リガンドに関する標的として役立ち得るタンパク質としては、シグナル伝達分子、例えば、増殖因子、あるいはその生物学的活性断片または突然変異体が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、増殖因子は、サイトカイン(例えば、インターロイキンまたはケモカイン)であり得る。分子がシグナル伝達分子であるか否か(すなわち、第一細胞型により産生され、分泌され、そして通常は、受容体を特異的に結合することにより、それ自体に(自己分泌)及ぼす、または第二細胞型(傍分泌)に及ぼす作用を発揮するか否か)を当業者は容易に決定し得るが、一方、種々の特定のシグナル伝達分子が2つ以上の部類に適正に配置され得る。例えば、IL-1は、サイトカインまたはインターロイキンとして適正に言及され得るし、エリスロポエチンは増殖因子またはホルモンとして適正に言及され得る。
【0125】
サイトカインとしては、IL-1α、IL-1β、IL-1Ra、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、IL-12p35、IL-13、IL-15、IL-17ファミリー成員、IL18、IL-21、IL-22、IL-23、IL-23p19、IL-30(IL27p28)、IL-33、IL-34、IL-35、IL-35p35、IL-36Ra、IL-36a、IL-36b、IL-36g、IL-37、IL-38、LIF、CNTF、オンコスタチンM、CLCF-1、GCSF、GM-CSF、フェリチン、胎盤性ラクトジェン、アポリポタンパク質e、インターフェロン-アルファ(IFNα)、インターフェロン-ベータ(IFNβ)またはインターフェロン-ガンマ(IFNγ)が挙げられるが、これらに限定されない。ケモカインは、アルファサブファミリーの一成員であり得るし、および/またはCXCR1、CXCR2、CXCR3、CXCR4またはCXCR5受容体を結合し得る;それは、βサブファミリーの一成員であり得るし、および/またはCCR1、CCR2、CCR3、CCR4、CCR5、CCR6、CCR7、CCR8、CCR9、CCR10またはCCR11分子を結合し得る。ケモカインは、XCR1受容体を結合するリンホタクチンまたは別のケモカインでもあり得る;ケモカインは、フラクタルキンでもあり得るし、あるいはCXCR1受容体を結合し得る。例えば、ケモカインは、CCL7、CCL23、CCL27、CCL28、CXCL12、CXCL14またはCXCL15であり得る。
【0126】
増殖因子としては、腫瘍壊死因子(TNF)ファミリーの成員、神経増殖因子(NGF)ファミリーの成員、形質転換増殖因子(TGF)ファミリーの成員、GDFファミリーの成員、BMPファミリーの成員、繊維芽細胞増殖因子(FGF)ファミリーの成員(例えば、FGF-1、FGF-2、FGF-3、FGF-4、FGF-5、FGF-6、FGF-7、FGF-8a、FGF-8b、FGF-8e、FGF-8f、FGF-9、FGF-10、FGF-11、FGF-12、FGF-13、FGF-14、FGF-16、FGF-17、FGF-18、FGF-19、FGF-20、FGF-21、FGF-22、FGF-23、インスリン様増殖因子(IGF)ファミリーの成員、上皮細胞増殖因子(EGF)ファミリーの成員または血小板由来増殖因子(PDGF)ファミリーの成員が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、増殖因子は、TNF、EGF、TGFα、TGFβ、FGF、NGF、エリスロポエチン、IGF-1またはIGF-2であり得る。
【0127】
ホルモンは、副腎、上皮小体、脳下垂体または甲状腺により産生されるホルモンであり得る;それは、視床下部、卵巣、精巣、膵臓、松果体または胸腺によっても産生され得る。例えば、ホルモンは、甲状腺刺激ホルモン、濾胞刺激ホルモン、黄体形成ホルモン、プロラクチン、成長ホルモン、副腎皮質刺激ホルモン、抗利尿ホルモン、オキシトシン、地路トロピン放出ホルモン、ゴナドトロピン放出ホルモン、成長ホルモン放出ホルモン、コルチコトロピン放出ホルモン、ストマトスタチン、ドーパミン、メラトニン、チロキシン、カルシトニン、上皮小体ホルモン、糖質コルチコイド、鉱質コルチコイド、アンドロゲン、アドレナリン、エストロゲン、プロゲステロン、ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン、インスリン、グルカゴン、ソマトスタチン、エリスロポエチン、カルシトリオール、心房性ナトリウム利尿ペプチド、ガストリン、セクレチン、コレシストキニン、ソマトスタチン、神経ペプチドY、グレリン、PYY3-36、インスリン様増殖因子-1、アンギオテンシノーゲン、トロンボポエチンまたはレプチンであり得る。
【0128】
神経伝達物質としては、アセチルコリン、ドーパミン、ノルエピネフリン、セロトニン、ヒスタミンまたはエピネフリンが挙げられる。神経伝達物質は、向神経活性ペプチド(例えば、ブラディキニン、コレシストキニン、ガストリン、セクレチン、オキシトシン、睡眠ペプチド、ゴナドトロピン放出ホルモン、ベータエンドルフィン、エンケファリン、サブスタンスP、ソマトスタチン、プロラクチン、ガラニン、成長ホルモン放出ホルモン、ボンベシン、ダイノルフィン、ニューロテンシン、モチリン、チロトロピン、神経ペプチドY、黄体形成ホルモン、カルシトニンまたは血管作用性腸ペプチド)でもあり得る。適切な共刺激分子としては、B7-1およびB7-2が挙げられる。
【0129】
医薬組成物
本発明は、本発明の融合タンパク質を含む医薬組成物を提供する。一実施形態では、医薬組成物は、融合タンパク質および少なくとも1つの製薬上許容可能な担体を含む。本発明の融合タンパク質は、既知の方法に従って処方されて、薬学的に有用な組成物を調製し、それによりポリペプチドは製薬上許容可能な担体ビヒクル、例えば水溶液または緩衝液、製薬上許容可能な懸濁液および乳濁液と併合され得る。非水性溶媒の例としては、プロピルエチレングリコール、ポリエチレングリコールおよび植物油が挙げられる。治療用処方物は、Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition, Osol, A. Ed. (1980)に記載されているように、所望の純度を有する活性成分を任意の生理学的に許容可能な担体、賦形剤または安定化剤と混合することにより、凍結乾燥処方物または水溶液の形態で、貯蔵のために調製される。
【0130】
さらに特定的には、本発明の医薬組成物は、任意の適切な経路により、例えば皮下、皮下またはくも膜下腔内に注入ポンプにより、筋肉内、静脈内、皮内、硝子体内、鼻および肺動脈に、治療のために投与され得る。さらにまた、好ましい経路は、治療薬、レシピエントの状態および年齢、ならびに処置されている疾患に伴って変わる、と理解される。
【0131】
一実施形態では、医薬組成物は、皮下に投与される。この実施形態では、組成物は、投与前に再構成されるべき凍結乾燥粉末として供給され得る。組成物は、液体形態でも供給され得るが、これは、患者に直接投与され得る。一実施形態では、組成物は、患者が容易に組成物を自己投与し得るよう、充填済みの注射器中の液体として供給される。
【0132】
別の実施形態では、本発明の組成物はリポソーム中に封入され、これは、長時間に亘って制御されたやり方で有益な活性作用物質を送達するに際して実証された有用性を有する。リポソームは、包括された水性容積を含有する閉鎖二重層膜である。リポソームはさらにまた、単一膜二重層を保有する単層小胞、または多重膜二重層を伴う多層小胞であり得るし、各々、水性層により次のものから分離されている。その結果生じる膜二重層の構造は、脂質の疎水性(非極性)尾部が二重層の中心に向かって配向されるが、一方、親水性(極性)頭部が水性層に向かって配向する。一実施形態では、リポソームは、単核食細胞系の器官、主に肝臓および脾臓による取り込みを回避する柔軟性水溶性ポリマーで被覆され得る。リポソームを取り囲むための適切な親水性ポリマーとしては、米国特許第6,316,024号;第6,126,966号;第6,056,973号および第6,043,094号(これらの記載内容は参照により本明細書中で援用される)に記載されているような、PEG、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、ポリメチルオキサゾリン、ポリエチルオキサゾリン、ポリヒドロキシプロピルオキサゾリン、ポリヒドロキシプロピルメタクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリジメチルアクリルアミド、ポリヒドロキシプロピルメタクリレート、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリアスパルタミドおよび親水性ペプチド配列が挙げられるが、これらに限定されない。
【0133】
リポソームは、当該技術分野で既知の任意の脂質または脂質組合せで構成され得る。例えば、小胞形成脂質は、天然または合成脂質、例えば米国特許第6,056,973号および第5,874,104号に開示されているような、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジン酸、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトールおよびスフィンゴミエリンであり得る。小胞形成脂質は、米国特許第6,056,973号にさらにまた開示されているような、糖脂質、セレブロシドまたは陽イオン性脂質、例えば1,2-ジオレイルオキシ-3-(トリメチルアミノ)プロパン(DOTAP);N-[1-(2,3,-ジテトラデシルオキシ)プロピル]-N,N-ジメチル-N-ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DMRIE);N-[1-(2,3,-ジオレイルオキシ)プロピル]-N,N-ジメチル-N-ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DORIE);N-[1-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル]-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA);3[N-(N′,N′-ジメチルアミノエタン)カルバモイル]コレステロール(DC-Chol);またはジメチルジオクタデシルアンモニウム(DDAB)でもあり得る。コレステロールは、さらにまた、米国特許第5,916,588号および第5,874,104号に開示されているように、小胞に安定性を付与するために適正な範囲で存在し得る。
【0134】
液体処方物に関しては、所望の特性は、静脈内、筋肉内、関節内または皮下投与のために、25、28、30、31、32ゲージ針を通過し得る形態で、処方物が供給されるというものである。
【0135】
他の実施形態では、組成物は、嗅覚路を通ってCNSに活性作用物質を移動させ、全身投与を低減するために、鼻内を経て送達され得る。この投与経路のために一般に用いられる装置は、米国特許第6,715,485号に包含されている。この経路を介して送達される組成物は、CNS用量投与増大または総身体負担量低減を可能にして、ある薬剤に関連した全身性毒性の危険を低減し得る。真皮下に埋め込み可能な装置中での送達のための医薬組成物の調製は、当該技術分野で既知の方法、例えば米国特許第3,992,518号;第5,660,848号;および第5,756,115号に記載された方法を用いて実施され得る。
【0136】
非経口投与のための典型的医薬組成物は、約0.1~3mg/kg/患者/日である。非経口投与可能な組成物の調製方法は当業者に既知であるか明らかであり、Remington’s Pharmaceutical Science, 15th ed.,Mack Publishing Company,Easton,Pa.(1980)のような出版物にさらに詳細に記載されている。
【0137】
組成物の単一回または多数回投与は、必要に応じて投薬量および頻度によって投与され、患者により耐容され得る。任意の事象において、組成物は、患者を有効に処置するのに十分な量の本発明のタンパク質を提供すべきである。
実施例
【0138】
以下の実施例は、本発明の例証であって、いかなる点でも特許請求の範囲のように本発明を限定するよう意図されない。
【0139】
実施例1.Picasso融合構築物の設計、調製、発現および精製
1.循環置換IL-6の設計およびgp130受容体のドメインD1との融合
六量体IL-6シグナル伝達複合体(1P9M.pdb;図1)の結晶構造を利用して、工学処理C-末端が、短いスペーサーを介して複合体中のgp130のD1ドメインのN-末端と融合され得るよう、picasso3(図2;RDB1503;配列番号1(タンパク質)および配列番号2(核酸))と呼ばれるヒトIL6の循環置換変異体を設計した。要するに、picasso3における工学処理NおよびC末端は、野生型IL-6(配列番号3)の残基182および180に対応し、ネイティブIL-6末端を7アミノ酸リンカーを介して結合した。それが六量体形成を立体的に妨げるだけでなく、複合体中に存在するネイティブ相互作用を介したIL-6Rに対する結合親和性の増強もするよう、gp130のD1ドメインを融合相手として選択した(図3B)。picasso3の工学処理C-末端を、2つのアミノ酸スペーサーを介してD1ドメインと融合させて、RDB1527(図3B;配列番号4(タンパク質)および配列番号5(核酸))を形成した。対照として、D1と融合されるネイティブIL6からなる類似の融合タンパク質(RDB1529)を設計した(図3A;配列番号6(タンパク質)および配列番号7(核酸))。
【0140】
2.遺伝子合成
標準方法を用いて、設計された構築物の発現のための遺伝子の合成を実行した。
【0141】
3.哺乳動物発現ベクター中への合成遺伝子のサブクローニング
A)発現ベクターpcDNA(商標)(Invitrogen)の調製
5μgのpcDNAを、37℃で2時間、BamHIおよびHindIIIで消化した。消化物をウシアルカリ性ホスファターゼで処理して、5’リン酸塩を除去し、したがって、それ自体に関するベクターの再結紮を防止した。緩衝液を交換して、ウシアルカリ性ホスファターゼ反応から塩を除去した。QiagenのPCRクリーンアップキットを、メーカーの示唆プロトコールに従って用いた。DNAを30μlのH20中に溶離した。
【0142】
B)当該遺伝子の調製
当該遺伝子を、37℃で2時間、BamHIおよびHindIIIで消化した。0.8%SYBR Greenを用いて、E-ゲル(登録商標)クローンウェル(商標)装置(Invitrogen)で消化反応を実行した。当該遺伝子に対応する断片を、ゲル上の第二列のウェルから単離した。
【0143】
C)pcDNAへの遺伝子の結紮反応
調製pcDNA(ステップA)を、室温で30分間、T4リガーゼの存在下でステップBからのDNAと混合した。結紮後、生成物をTOP10細胞(Invitrogen;大腸菌の化学的コンピテント株)中で形質転換して、正確なクローンを精選して、-80℃でグリセロールストックとして保存した。
【0144】
4.RDB1503、RDB1527およびRDB1529の発現
メーカーのプロトコールに従ってFreeStyle(商標)Max試薬(Invitrogen)を用いて、タンパク質すべてをCHO細胞中で発現した。要するに、トランスフェクション前日、細胞を0.5×10細胞/mLで植え付けて、トランスフェクション当日、それらを、メーカーの推奨通り、1×10細胞/mLに調整した。1リットルトランスフェクションのために、培地(OptiPRO(商標)、Invitrogen)の2本の試験管(AおよびB)を、約19mlを含入して調製し、1mgのDNAを試験管Aに付加し、そして1mlのFreeStyle(商標)Max試薬を試験管Bに付加した。直ちに両試験管の内容物を混合し、室温で15分間インキュベートした。インキュベーション期間後、混合物を1リットルのCHO細胞に徐々に付加した。トランスフェクション後、細胞を6~7日間放置して、次いで上清を収集した。
【0145】
5.RDB1527およびRDB1529の精製
上清中の発現タンパク質をプロテインAカラム上に捕捉して、融合タンパク質のFc部分を結合した。タンパク質を結合後、カラムを5カラム容積までのPBSで洗浄した。ランニング緩衝液のpHを下げることにより、タンパク質をカラムから溶離し、トリス緩衝液pH=7で直接中和した。次いで、精製タンパク質を、PBSに対して一晩透析した。
【0146】
実施例2.循環置換IL6融合タンパク質のin vitro活性
HEK-Blue(商標)IL-6細胞(Invitrogen)は、STAT3誘導性分泌胚性アルカリ性ホスファターゼ(SEAP)レポーター遺伝子のIL-6誘導性発現をモニタリングすることによりin vitroで生物活性IL-6を検出するよう特異的に設計されたヒト胚性腎細胞である。SEAP検出培地QUANTI-Blue(商標)(Invitrogen)を用いる場合、SEAPは容易にモニタリングされ得る。ヒト細胞株および検出培地を用いて、IL-6誘導性SEAPを刺激するかまたは拮抗する循環置換IL6およびIL6融合タンパク質構築物RDB1503、RDB1527およびRDB1529の能力を試験した。
【0147】
HEK-Blue(商標)IL-6細胞を含有する培地100μLを、96ウェル顕微滴定プレート中に入れて、最終濃度を50,000細胞/ウェルとした。アゴニスト活性を測定するために、IL6およびRDB1503を初期濃度200pMで調製して、次に連続希釈し、二重反復試験試料中でHEK-Blue(商標)IL-6細胞に付加した。アンタゴニスト潜在力を測定するために、RDB1527およびRDB1529を3.3nMの初期濃度で調製し、次いで、連続希釈し、12.5pMの一定濃度のIL6の存在下で、二重反復試験試料中でHEK-Blue(商標)IL-6細胞に付加した。試料を、37℃、5%CO2で20~24時間、インキュベートし、次いで、40μLの各試料を、各ウェル中に160μLのQUANTI-Blue(商標)を含有する新規の96ウェルプレートに移して、37℃、5%CO2でインキュベートした。インキュベーションの3時間後、630nmで吸光度を読み取った。
【0148】
循環置換IL-6(RDB1503)は、IL-6に匹敵するEC50を有するアゴニスト活性を実証した(図4)。RDB1527(CP_IL-6_D1_Fc)は、用量依存的に、IL-6誘導性SEAP発現を抑制し、IC50値は0.22nMであった(図5)。これに対比して、RDB1529(非修飾IL-6_D1_Fc)は、アゴニスト作用を示さなかった(図5)。
【0149】
以下の結論を得た:1)IL-6の循環置換は、結合親和性の損失を生じない;2)gp130のD1ドメインと野生型IL-6のC-末端との融合は、IL-6を強力なアンタゴニストに転換しないが、一方、gp130のD1ドメインと循環置換IL-6のC-末端との融合は、IL-6媒介性シグナル伝達の強力な拮抗作用を生じる。
【0150】
実施例3.wtIL6、RDB1527およびRDB1529の動力学測定
野生型IL6-Fc(wtIL6)、RDB1527およびRDB1529を、メーカーのプロトコールに従ってヒト抗体捕捉キット(GE Healthcare)を用いて、Biacore(商標)センサーチップ上に固定した。段階モデルにおけるチップの表面でIL-6Rを通過させた。IL-6Rを、5つの濃度で調製した:3.0nM、1.0nM、0.33nM、0.11nMおよび0.03nM。第一サイクルにおいて、0.03nM濃度のIL-6Rを、チップの表面の結合リガンド上を180秒間流動させて、その後、ブランク溶液を表面上に通して、IL-6Rを解離させた。0.03から3nMまでの漸増濃度の6Rを用いて、同一手順をさらに4回反復した。その結果生じたセンサーグラムを、ネイティブインストゥルメントソフトウェアで解析して、構築物の結合親和性を算定した。
【0151】
IL-6Rに対するRDB1527の結合親和性を40pMと算定した(図6C)が、これは、対照wtIL6の親和性(9nM、図6A)と比較した場合、200倍を上回る増大を示している。RDB1529に関するセンサーグラム(図6B)は、不十分な適合を生じ、したがって、算定結合親和性は信頼できない。これは、IL-6およびIL-6R間、ならびに独立したD1およびIL-6Rの混合結合のためであり得る。
【0152】
結果に基づいて、IL-6Rに対するRDB1527の結合親和性は、40pMであり、あるいはwtIL6の結合親和性の200倍より高い、と結論づけた。このデータは、強力なアンタゴニスト活性と組合せて、IL-6に関する、そしてD1に関する結合決定因子は、意図されたように、IL-6Rと同時的に結合しており、シグナル伝達複合体の会合を防止している、ということを強く示唆している。
【0153】
実施例4.IL-1RIのドメインD1-D2に融合される循環置換IL1βの設計(RDB1538)
ヘテロ三量体IL-1βシグナル伝達複合体(4DEP.pdb;図7A)の結晶構造を利用して、工学処理N末端が、短いスペーサーを介してIL-1RIのD1-D2ドメインのC-末端と融合され得るよう、IL-1β(RDB1515;配列番号8(タンパク質)および配列番号9(核酸))の循環置換変異体を設計した。要するに、野生型IL-1βにおいて、工学処理NおよびC末端は、それぞれ残基224および223に対応し、ネイティブIL-1β末端を7アミノ酸リンカーを介して結合した。新規作成N-末端を、5アミノ酸スペーサーを伴ってRIのドメインD1-D2と融合し、FLAGタグをRIのN-末端に付加して、RDB1538(図7B;配列番号10(タンパク質)および配列番号11(核酸))を生じた。その結果生じた融合タンパク質は、IL-1RAcPと結合し、完全シグナル伝達複合体が集合するのを防止することにより、IL-1β媒介性シグナル伝達のアンタゴニストであるよう意図される。
【0154】
実施例5.IL-2Rαと融合される循環置換IL-2の設計(RDB1405)
IL-2Rα結合時に、IL-2の結合立体配座は、高親和性複合体がIL-2βおよびγを用いて形成されるよう安定化される。RDB1405は、細胞関連IL-2Rαとの結合を必要とせずに、高親和性複合体を形成することができるので、特にIL-2Rαを欠く細胞において、IL-2媒介性シグナル伝達のスーパーアゴニストであるよう意図される。IL-2の第四級シグナル伝達複合体(2B5I.pdb;図8A)の結晶構造を利用して、工学処理C末端が、短いスペーサーを介してIL-2RαのN-末端と融合され得るよう、IL-2の循環置換変異体を設計した。要するに、野生型IL-2において、工学処理NおよびC末端は、それぞれ残基95および94に対応する。ネイティブIL-2のC末端を2アミノ酸リンカーを介してIL-2の残基4と結合した。最後に、新規作成C-末端を、6アミノ酸スペーサーを介してIL-2RαのN-末端と融合し、IL-2RαのC-末端をヒトIgG1 Fcと融合して、RDB1405(図8B;配列番号12(タンパク質)および配列番号13(核酸))を生じた。
【0155】
実施例6.循環置換融合タンパク質の設計
野生型IL-2(野生型IL-2は、IL-2Rαβγを発現する細胞に関する高選択性を有する)に比してIL-2Rαβγを発現する細胞を上回る、IL-2Rβγ(しかしIL-2Rαではない)を発現する細胞に関する改良された選択性を有するIL-2またはIL-15融合タンパク質を、設計した。IL-2RαをIL-2またはまたはIL-15RαをIL-15と融合することにより、その結果生じる融合タンパク質は、ネイティブリガンドと比較して、それぞれのアルファ鎖(IL-2RαまたはIL-15Rα)を欠く細胞に関してより大きい活性を有し、それぞれのアルファ鎖を発現する細胞に関する選択性は低減される。したがって、活性の比 EC50(IL-2Rαβγ)/EC50(IL-2RαIL-2Rβγ)は、CP-IL-2-IL-2Rα融合タンパク質に関して増大し、野生型IL-2に比して低い。同様の結果は、CP-IL-15-IL-15Rα融合タンパク質に関して予期される。ネイティブ末端はシグナル伝達複合体においてアルファ鎖に遠位に配向されるので、サイトカインの循環置換は、融合のための最適な場所に末端を適切に配向するために必要とされる。
【0156】
結果:IL-2Rαを欠いているが、しかしIL-2Rβγを発現する細胞(HH細胞株)では、工学処理構築物は、STAT5リン酸化を促進するに際して、プロロイキンと同様に有効(実際、2~5倍良好)である(図11A、左パネル)。これに対比して、ヘテロ三量体高親和性受容体複合体IL-2Rαβγを発現する細胞株(CTLL-2細胞株)iiでは、工学処理構築物のうちの2つ(RDB1411、RDB1413)は、細胞増殖により測定した場合、プロロイキンより活性が100~300分の1である。全体的に、工学処理構築物は、野生型IL-2に比して、IL-2Rαを欠く細胞に関する400~600倍大きい選択性を示し、したがって、改善された治療プロフィルを送達する可能性を有する。予測通り、活性の比の増大が観察されたが、しかし、比の増大に及ぼすより大きい作用が、IL-2Rαを欠く細胞に関する活性の増強(2~5倍に過ぎない)というよりむしろ、IL-2Rαを含有する細胞における活性の劇的損失(100~300倍)である、ということは意外であった。
【0157】
IL-2Rαを欠いているが、しかしIL-2Rβγを発現する細胞(HH細胞株)では、工学処理構築物は、STAT5リン酸化の強力な活性化因子であるが、しかし野生型IL-15より効力は約10分の1である(図12A、左パネル)。ヘテロ三量体高親和性受容体複合体IL-2Rαβγを発現する細胞株(CTLL-2細胞株)iiでは、工学処理構築物(RDB1408、RDB1416)は、細胞増殖により測定した場合、野生型IL-15より活性が低く、2000~6000分の1である。全体的に、工学処理構築物は、野生型IL-15に比して、IL-2Rαを欠く細胞に関する200~600倍大きい選択性を示す。予測通り、活性の比の増大が観察されたが、しかし、比の増大に及ぼすより大きい作用が、IL-2Rαを含有する細胞における活性の劇的損失(2000~6000倍)であったということ、そして活性の10倍の損失がIL-2Rαを欠く細胞に関して観察された、ということは意外であった。
【0158】
構築物:
RDB1409:CP-IL-2(C145S)-FLAG;循環置換IL-2。C145S突然変異は、タンパク質の物理的特性を改良するためのプロロイキン(rhIL-2)におけるものと類似する。精製を容易にするために、FLAGタグを付加する。
SKNFHLRPRDLISNINVIVLELKGSETTFMCEYADETATIVEFLNRWITFSQSIISTLTGGSSSTKKTQLQLEHLLLDLQMILNGINNYKNPKLTRMLTFKFYMPKKATELKHLQCLEEELKPLEEVLNLAQGSDYKDDDDK (配列番号24)
【0159】
RDB1411:CP-IL-2(C145S)-IL-2Rα-Fc;IL-2Rαと融合される循環置換IL-2。C145S突然変異は、タンパク質の物理的特性を改良するためのプロロイキン(rhIL-2)におけるものと類似する。精製を容易にするために、Fcを付加する。
SKNFHLRPRDLISNINVIVLELKGSETTFMCEYADETATIVEFLNRWITFSQSIISTLTGGSSSTKKTQLQLEHLLLDLQMILNGINNYKNPKLTRMLTFKFYMPKKATELKHLQCLEEELKPLEEVLNLAQGSGGGSELCDDDPPEIPHATFKAMAYKEGTMLNCECKRGFRRIKSGSLYMLCTGNSSHSSWDNQCQCTSSATRNTTKQVTPQPEEQKERKTTEMQSPMQPVDQASLPGHCREPPPWENEATERIYHFVVGQMVYYQCVQGYRALHRGPAESVCKMTHGKTRWTQPQLICTGGGGSEPKSSDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK (配列番号25)。
【0160】
RDB1413:CP-IL-2(C145S)-IL-2Rα-FLAG;IL-2Rαと融合される循環置換IL-2。C145S突然変異は、タンパク質の物理的特性を改良するためのプロロイキン(rhIL-2)におけるものと類似する。精製を容易にするために、FLAGタグを付加する。RDB1411と類似の構築物(Fcの代わりにFLAG)。
SKNFHLRPRDLISNINVIVLELKGSETTFMCEYADETATIVEFLNRWITFSQSIISTLTGGSSSTKKTQLQLEHLLLDLQMILNGINNYKNPKLTRMLTFKFYMPKKATELKHLQCLEEELKPLEEVLNLAQGSGGGSELCDDDPPEIPHATFKAMAYKEGTMLNCECKRGFRRIKSGSLYMLCTGNSSHSSWDNQCQCTSSATRNTTKQVTPQPEEQKERKTTEMQSPMQPVDQASLPGHCREPPPWENEATERIYHFVVGQMVYYQCVQGYRALHRGPAESVCKMTHGKTRWTQPQLICTGDYKDDDDK (配列番号26)。
【0161】
RDB1408:Fc-IL-15Rα(sushi)-CP-IL-15;IL-15Rαのsushiドメインと融合される循環置換IL-15。精製を容易にするために、Fcを付加する。
EPKSSDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGKGSITCPPPMSVEHADIWVKSYSLYSRERYICNSGFKRKAGTSSLTECVLNKATNVAHWTTPSLKCIRDGGSELEEKNIKEFLQSFVHIVQMFINGGGSNWVNVISDLKKIEDLIQSMHIDATLYTESDVHPSCKVTAMKCFLLELQVISLESGDASIHDTVENLIILANNSLSSNGNVTESGCKEC (配列番号27)。
【0162】
RDB1416:FLAG-IL-15Rα(sushi)-CP-IL-15;IL-15Rαのsushiドメインと融合される循環置換IL-15。精製を容易にするために、FLAGタグを付加する。RDB1408と類似の構築物(Fcの代わりにFLAG)。
DYKDDDDKGSITCPPPMSVEHADIWVKSYSLYSRERYICNSGFKRKAGTSSLTECVLNKATNVAHWTTPSLKCIRDGGSELEEKNIKEFLQSFVHIVQMFINGGGSNWVNVISDLKKIEDLIQSMHIDATLYTESDVHPSCKVTAMKCFLLELQVISLESGDASIHDTVENLIILANNSLSSNGNVTESGCKEC (配列番号28)。
【0163】
本明細書中で言及される特許および科学文献は、当業者に利用可能な知識を確立する。本明細書中で引用される米国特許および公開済みまたは非公開米国特許出願はすべて、参照により本明細書中で援用される。本明細書中で引用される公開済み外国特許および特許出願はすべて、参照により本明細書中で援用される。本明細書中で引用される他の出版された参考文献、文書、原稿および科学文献はすべて、参照により本明細書中で援用される。
【0164】
本発明を、その好ましい実施形態を参照しながら特定的に示し、記載してきたが、添付の特許請求の範囲に包含される本発明の範囲から逸脱しない限り、継代および詳細における種々の変更がなされ得る、と当業者は理解する。本明細書中に記載される実施形態は、相互排除的でなく、種々の実施形態からの特徴は本発明に従って全部または一部で組み合わされ得る、ということも理解されるべきである。
【0165】
本発明は、以下の発明をも含む。
(1)
標的受容体のネイティブリガンドの全部または一部に対応する修飾リガンドと連結される第一ポリペプチド融合相手を含む融合ポリペプチドであって、前記修飾リガンドが、ネイティブリガンドと比較して新規N末端および新規C末端を作成するために循環置換されており、前記修飾リガンドの前記新規N末端または新規C末端が第一ポリペプチド融合相手と連結されて融合ポリペプチドを形成し、前記修飾リガンドの前記新規C末端および前記N末端が前記標的受容体に関する修飾リガンドのいかなる結合ドメインも分断せず、前記修飾リガンドが、前記受容体に関する前記ネイティブリガンドと比較して前記標的受容体に関する親和性を増大し、前記標的受容体が、シグナル伝達細胞経路のシグナル伝達を誘発するために多量体活性化複合体の段階的形成により機能し、そして、前記融合ポリペプチドが受容体を結合する場合、それは前記多量体活性化複合体の段階的形成を増強し、それにより前記標的受容体によるシグナル伝達を高度に刺激するか、または多量体複合体の段階的形成を立体障害し、それにより前記標的受容体によるシグナル伝達を拮抗する融合ポリペプチド。
(2)
前記ネイティブリガンドがアゴニストであり、前記融合ポリペプチドがアンタゴニストである、(1)記載の融合ポリペプチド。
(3)
前記融合ポリペプチドの前記修飾リガンドが、以下の:サイトカイン、リンフォカイン、ケモカイン、アディポカイン、増殖因子またはホルモンからなる群から選択される、(1)記載の融合ポリペプチド。
(4)
前記第一ポリペプチド融合相手が、以下の:前記標的受容体の多量体活性化複合体の全部または一部、あるいは補助タンパク質からなる群から選択される、(1)記載の融合ポリペプチド。
(5)
前記修飾リガンドが、IL-6、IL-2、IL-15、IL-1α、IL-1β、IL-1Ra、IL-18、FGF-19、FGF-21、FGF-23の循環置換修飾である、(1)記載の融合ポリペプチド。
(6)
前記融合相手が、gp130、IL-2Rα、IL-15Rα、IL-1RI、IL-1RII、IL-18Rα、IL-18Rβ、IL1RAcP、FGFR1b、FGFR1c、FGFR2b、FGFR2c、FGFR3b、FGFR3c、FGFR4、α-Klothoおよびβ-Klothoの全部または任意の部分である、(1)記載の融合ポリペプチド。
(7)
前記受容体に対する前記融合ポリペプチドの親和性が前記受容体に対するネイティブリガンドの親和性より少なくとも10倍高い、(1)記載の融合ポリペプチド。
(8)
前記融合相手が前記融合ポリペプチドのin vivo半減期を延長することができる、(1)記載の融合ポリペプチド。
(9)
前記融合ポリペプチドのin vivo半減期を延長することができる第二ポリペプチド融合相手をさらに含む、(1)記載の融合ポリペプチド。
(10)
前記第二融合相手がムチンドメインポリペプチドである、(9)記載の融合ポリペプチド。
(11)
前記第一融合相手が前記非修飾リガンドの全部または任意の部分を含む、(1)記載の融合ポリペプチド。
(12)
(1)記載の融合ポリペプチドおよび製薬上許容可能な担体を含む医薬組成物。
(13)
(1)記載の融合ポリペプチドをコードする単離または組換え核酸。
(14)
(13)記載の核酸を含む組換えベクター。
(15)
(14)記載のベクターを含む宿主細胞。
(16)
前記受容体を(1)記載の融合ポリペプチドと接触させるステップを包含する標的受容体の超刺激方法。
(17)
前記受容体を(1)記載の融合ポリペプチドと接触させるステップを包含する標的受容体の拮抗方法。
(18)
以下の:
a.受容体と結合するネイティブリガンドを選択するステップ(この場合、前記受容体は、多量体活性化複合体の段階的形成により機能して、シグナル伝達細胞経路のシグナル伝達を誘発する);
b.循環置換により修飾リガンドを作成して、ステップ(a)のネイティブリガンドと比較して新規のN末端および新規のC末端を有する修飾リガンドを提供するステップ;ならびに
c.第一ポリペプチド融合相手をステップ(b)の修飾リガンドのN-またはC-末端と連結して、融合ポリペプチドを作製するステップ(この場合、前記修飾リガンドの前記新規N-またはC-末端は、前記融合ポリペプチドと前記標的受容体との結合時に前記標的受容体の機能を拮抗するかまたは超刺激するよう配向される位置で前記第一融合相手を前記修飾リガンドと連結させるよう配置される)
を包含する融合ポリペプチドの製造方法。
(19)
第二融合相手をステップ(b)の前記修飾リガンドと融合させることをさらに包含し、前記第二融合相手がin vivoで前記融合ポリペプチドの半減期を延長する、(18)に記載の方法。
(20)
前記第二融合相手がムチンポリペプチドドメインである、(19)記載の方法。
(21)
前記ネイティブリガンドがアゴニストであり、前記融合ポリペプチドがアンタゴニストである、(18)記載の方法。
(22)
前記融合相手がムチン-ドメインポリペプチドである、(8)記載の融合ポリペプチド。
【0166】
本発明は、以下の発明をも含む。
(1)
標的受容体のネイティブリガンドに対して少なくとも85%の同一性を持つアミノ酸配列に対応する循環置換された修飾リガンドと連結される第一ポリペプチド融合相手を含む融合ポリペプチドであって、前記ネイティブリガンドに対して少なくとも85%の同一性を持つアミノ酸配列が、ネイティブリガンドと比較して新規N末端および新規C末端を含む前記循環置換された修飾リガンドを作成するために循環置換されており、前記修飾リガンドの前記新規N末端または新規C末端が第一ポリペプチド融合相手と任意のリンカーを介して連結されて融合ポリペプチドを形成し、前記修飾リガンドの前記新規C末端および前記N末端が前記標的受容体に関する修飾リガンドのいかなる結合ドメインも分断せず、前記ネイティブリガンドが、IL-2またはIL-15であるか、または、ネイティブのIL-2またはIL-15に対して少なくとも85%の同一性を持つアミノ酸配列であり、
ここで、
ネイティブリガンドがネイティブのIL-2に対して少なくとも85%の同一性を持つときには前記第一ポリペプチド融合相手がIL-2Rαの全部または一部であり、
または
ネイティブリガンドがIL-15に対して少なくとも85%の同一性を持つときには前記第一ポリペプチド融合相手がIL-15Rαの全部または一部である、
融合ポリペプチド。
(2)
細胞を、体外で(1)記載の融合ポリペプチドと接触させることを含む、細胞上のIL-2Rβγを選択的に刺激する方法。
(3)
融合タンパク質が、IL-15Rαのsushiドメインまたはそれに対して少なくとも85%のアミノ酸配列の同一性を持つ任意のアミノ酸配列相同物へと任意のリンカーを介して融合された循環置換されたIL-15またはそれに対して少なくとも85%のアミノ酸配列の同一性を持つ任意のアミノ酸配列相同物を含む、(1)記載の融合ポリペプチド。
(4)
i)配列番号26の1~303のアミノ酸またはそれに対して少なくとも85%の同一性を持つアミノ酸配列、ならびに
ii)配列番号28の11~194のアミノ酸またはそれに対して少なくとも85%の同一性を持つアミノ酸配列
からなる群より選択される融合ポリペプチド。
(5)
細胞を、体外で(4)記載の融合ポリペプチドと接触させることを含む、細胞上のIL-2Rβγを選択的に刺激する方法。
(6)
(4)記載の融合ポリペプチドおよび製薬上許容可能な担体を含む医薬組成物。
(7)
(4)記載の融合ポリペプチドをコードする単離または組換え核酸。
(8)
(7)記載の核酸を含む組換えベクター。
(9)
(8)記載のベクターを含む宿主細胞。
(10)
前記融合ポリペプチドが、IL-2Rαまたはそれに対して少なくとも85%のアミノ酸配列の同一性を持つ任意のアミノ酸配列相同物へと任意のリンカーを介して融合される循環置換されたIL-2またはそれに対して少なくとも85%のアミノ酸配列の同一性を持つ任意のアミノ酸配列相同物を含む、(1記載の融合ポリペプチド。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11A
図11B
図12A
図12B
図13
【配列表】
2023109948000001.app
【手続補正書】
【提出日】2023-05-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】変更
【補正の内容】
【配列表】
2023109948000001.xml
【手続補正書】
【提出日】2023-06-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号28の~194のアミノ酸またはそれに対して少なくとも90%の同一性を持つアミノ酸配列を含む融合ポリペプチド。
【請求項2】
第ニポリペプチド融合相手をさらに含む、請求項1に記載の融合ポリペプチド。
【請求項3】
前記第ニポリペプチド融合相手が、前記融合ポリペプチドのin vivo半減期を延長する、請求項2に記載の融合ポリペプチド。
【請求項4】
前記第ニポリペプチド融合相手が、前記融合ポリペプチドの流体力学的サイズを増大させる、請求項3に記載の融合ポリペプチド。
【請求項5】
前記第ニポリペプチド融合相手が、ムチン-ドメインポリペプチドを含む、請求項4に記載の融合ポリペプチド。
【請求項6】
前記第ニポリペプチド融合相手が、免疫グロブリンのFc領域を含む、請求項4に記載の融合ポリペプチド。
【請求項7】
前記免疫グロブリンが、IgG1またはIgG2である、請求項6に記載の融合ポリペプチド。
【請求項8】
請求項1記載の融合ポリペプチドおよび製薬上許容可能な担体を含む医薬組成物。
【請求項9】
請求項1記載の融合ポリペプチドをコードする単離または組換え核酸。
【請求項10】
請求項9に記載の核酸を含む組換えベクター。
【請求項11】
請求項10に記載のベクターを含む宿主細胞。