(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023109966
(43)【公開日】2023-08-08
(54)【発明の名称】半導体封止用樹脂組成物および半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 23/29 20060101AFI20230801BHJP
C08G 59/40 20060101ALI20230801BHJP
【FI】
H01L23/30 R
C08G59/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087477
(22)【出願日】2023-05-29
(62)【分割の表示】P 2022529571の分割
【原出願日】2021-11-11
(31)【優先権主張番号】P 2020190154
(32)【優先日】2020-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.キュラストメーター
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】杉野 遼介
(72)【発明者】
【氏名】鵜木 君光
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 一史
(57)【要約】
【課題】高熱伝導性を有し、かつ低α線である封止用樹脂組成物、およびこれを用いて製造される信頼性に優れる半導体装置を提供する。
【解決手段】エポキシ樹脂と、フェノール樹脂硬化剤と、硬化促進剤と、アルミナ粉末と、を含む半導体封止用樹脂組成物であって、当該半導体封止用樹脂組成物の硬化物のα線量が、0.002count/cm
2・h以下であり、当該半導体封止用樹脂組成物の硬化物のレーザフラッシュ法により測定した場合の熱伝導率が、4.0W/m・K以上である、半導体封止用樹脂組成物。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂と、
フェノール樹脂硬化剤と、
硬化促進剤と、
アルミナ粉末と、を含む半導体封止用樹脂組成物であって、
当該半導体封止用樹脂組成物の硬化物のα線量が、0.002count/cm2・h以下であり、
当該半導体封止用樹脂組成物の硬化物のレーザフラッシュ法により測定した場合の熱伝導率が、4.0W/m・K以上である、半導体封止用樹脂組成物。
【請求項2】
前記アルミナ粉末が、当該半導体封止用樹脂組成物全体に対して、80質量%以上97質量%以下の量である、請求項1に記載の半導体封止用樹脂組成物。
【請求項3】
前記アルミナ粉末が、真球度が0.8以上である球状アルミナを含む、請求項1または2に記載の半導体封止用樹脂組成物。
【請求項4】
当該半導体封止用樹脂組成物の硬化物の、25℃における弾性率が、15,000MPa以上40,000MPa以下である、請求項1~3のいずれかに記載の半導体封止用樹脂組成物。
【請求項5】
前記アルミナ粉末において、
106μm以上250μm未満の粒径のアルミナ粉末が、前記アルミナ粉末全体に対して、5質量%以上15質量%以下の量であり、
250μm以上500μm未満の粒径のアルミナ粉末が、前記アルミナ粉末全体に対して、25質量%以上35質量%以下の量であり、
500μm以上710μm未満の粒径のアルミナ粉末が、前記アルミナ粉末全体に対して、20質量%以上25質量%以下の量であり、
710μm以上1mm未満の粒径のアルミナ粉末が、前記アルミナ粉末全体に対して、20質量%以上25質量%以下の量である、請求項1~4のいずれかに記載の半導体封止用樹脂組成物。
【請求項6】
離型剤をさらに含む、請求項1~5のいずれかに記載の半導体封止用樹脂組成物。
【請求項7】
半導体素子と、
前記半導体素子を封止する封止材と、を備える半導体装置であって、
前記封止材が、請求項1~6のいずれかに記載の半導体封止用樹脂組成物の硬化物からなる、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体封止用樹脂組成物、およびこれを用いて製造される半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置は、半導体素子等の電子部品の保護、電気絶縁性の確保、ハンドリングの容易化などの目的から、封止が行われる。半導体素子の封止は、生産性、コスト、信頼性等の点で好ましいことから、エポキシ樹脂組成物のトランスファー成形による封止が主流となっている。また、半導体装置の小型化、軽量化、高性能化という市場の要求に応えるべく、半導体素子の高集積化、小型化、高密度化のみならず、表面実装のような新たな接合技術が開発、実用化されてきた。こうした技術動向は、エポキシ樹脂組成物にも波及し、要求性能は年々高度化、多様化してきている。
【0003】
α線の影響を受け易いメモリー用半導体装置等の電子部品装置のデバイスにおける誤動作を防止するためには、封止材の構成材料中のウラン(U)、トリウム(Th)、その壊変物質から放出されるα線を低減することが必要であり、これに対応した封止材の開発が行われてきた(例えば、特許文献1)。特許文献1では、無機充填剤として用いるアルミナ粒子中に含まれるウラン、トリウムの合計量を10ppb未満とすることにより、封止材のα線量を低減する技術が提案されている。
【0004】
また、近年の電子機器の高機能化、高速化に伴い、その半導体素子回路の高密度配線化、多層配線化が進んでおり、半導体素子自身の発熱量が増大する傾向にある。これまで熱伝導が要求されなかったメモリー用半導体素子も高配線化に伴い、半導体素子の発熱量が増大するため、高熱伝導の要求が高まっている。
【0005】
さらに、システムインパッケージ(SiP)は、異なる機能を持つ複数の半導体素子の組み合わせであり、1つのユニットに組み立てられ、システムやサブシステムに関連する複数の機能を備える電子部品装置であるため、異なった動作保証温度をもつ半導体素子を積層した場合、最高動作保証温度が異なる。例えば、マイクロプロセッサの最高動作保証温度は一般に100℃であるが、メモリー用半導体装置等の電子部品装置の最高動作保証温度は一般に85℃である。SiPの熱設計を行う際には、すべてのチップの最高動作保証温度を考慮しなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は発熱量が大きく、かつα線の影響を受け易い1チップデバイスや発熱量の大きいロジック系の素子とα線の影響を受け易いメモリーが混在するシステムインパッケージなどにも対応することができる、高熱伝導性を有し、かつ低α線量の封止用樹脂組成物を提供するものであり、またこれを用いた半導体装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、
エポキシ樹脂と、
フェノール樹脂硬化剤と、
硬化促進剤と、
アルミナ粉末と、を含む半導体封止用樹脂組成物であって、
当該半導体封止用樹脂組成物の硬化物のα線量が、0.002count/cm2・h以下であり、
当該半導体封止用樹脂組成物の硬化物のレーザフラッシュ法により測定した場合の熱伝導率が、4.0W/m・K以上である、半導体封止用樹脂組成物が提供される。
【0009】
また本発明によれば、
半導体素子と、
前記半導体素子を封止する封止材と、を備える半導体装置であって、
前記封止材が、上記半導体封止用樹脂組成物の硬化物からなる、半導体装置が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、高熱伝導性を有し、かつ低α線の封止用樹脂組成物、およびこれを用いて製造される信頼性に優れる半導体装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態の樹脂組成物を用いて製造される、両面封止型の半導体装置の一例について、断面構造を示した図である。
【
図2】本実施形態の樹脂組成物を用いて製造される、片面封止型の半導体装置の一例について、断面構造を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。また、すべての図面はあくまで説明用のものである。図面中の各部材の形状や寸法比などは、必ずしも現実の物品と対応するものではない。本明細書中、数値範囲の説明における「a~b」との表記は、特に断らない限り、「a以上b以下」のことを表す。例えば、「5~90質量%」とは「5質量%以上90質量%以下」を意味する。
【0013】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本実施形態の封止用樹脂組成物(以下、単に「樹脂組成物」と称する場合がある)は、基板上に搭載された半導体素子を封止するための封止材として用いられる樹脂材料であり、エポキシ樹脂と、フェノール樹脂硬化剤と、硬化促進剤と、アルミナ粉末とを含む。本実施形態の樹脂組成物の硬化物のα線量は、0.002count/cm2・h以下である。また本実施形態の樹脂組成物の硬化物のレーザフラッシュ法により測定した場合の熱伝導率は、4.0W/m・K以上である。
【0014】
以下に、本実施形態の樹脂組成物に用いられる成分について説明する。
【0015】
(エポキシ樹脂)
本実施形態の半導体封止用樹脂組成物に用いられるエポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、テトラメチルビスフェノールF型エポキシ樹脂などのビスフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、ハイドロキノン型エポキシ樹脂等の結晶性エポキシ樹脂;クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;フェニレン骨格含有フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニレン骨格含有フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、フェニレン骨格含有ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、アルコキシナフタレン骨格含有フェノールアラルキルエポキシ樹脂等のフェノールアラルキル型エポキシ樹脂;トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂等の3官能型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂、テルペン変性フェノール型エポキシ樹脂等の変性フェノール型エポキシ樹脂;トリアジン核含有エポキシ樹脂等の複素環含有エポキシ樹脂等が挙げられ、これらは1種類を単独で用いても2種類以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、溶融粘度を最適範囲に維持することができ、成形性が良好であり、低コストであることから、ビフェニル型エポキシ樹脂が好ましい。前記エポキシ樹脂のエポキシ当量としては、90~300であることが好ましい。エポキシ当量が小さすぎると、硬化剤との反応性が低下する傾向がある。また、エポキシ当量が大きすぎると、樹脂組成物の硬化物の強度が低下する傾向がある。
【0016】
エポキシ樹脂の含有量は、特に限定されないが、樹脂組成物全体に対して、2質量%以上であることが好ましく、4質量%以上であることがより好ましい。配合割合の下限値が上記範囲内であると、封止工程において流動性の低下等を引き起こす恐れが少ない。また、樹脂組成物全体の配合割合の上限値についても、特に限定されないが、樹脂組成物全量に対して、22質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましい。配合割合の上限値が上記範囲内であると、樹脂組成物のガラス転移温度の低下が少ない。
【0017】
(フェノール樹脂硬化剤)
本実施形態の樹脂組成物に用いられるフェノール樹脂硬化剤としては、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールノボラック、フェノール‐ビフェニルノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂;ポリビニルフェノール;トリフェノールメタン型フェノール樹脂等の多官能型フェノール樹脂;テルペン変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂等の変性フェノール樹脂;フェニレン骨格及び/又はビフェニレン骨格含有フェノールアラルキル樹脂、フェニレン及び/又はビフェニレン骨格含有ナフトールアラルキル樹脂等のフェノールアラルキル型フェノール樹脂;ビスフェノールA、ビスフェノールFなどのビスフェノール化合物などが挙げられる。フェノール樹脂系硬化剤としては、上記具体例のうち、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。フェノール樹脂系硬化剤としては、上記具体例のうち、フェニレン骨格及び/又はビフェニレン骨格含有フェノールアラルキル樹脂を含むことが好ましい。これにより樹脂組成物において、エポキシ樹脂を良好に硬化することができる。
【0018】
フェノール樹脂硬化剤の配合割合の下限値については、特に限定されないが、樹脂組成物全体に対して、2質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましい。配合割合の下限値が上記範囲内であると、充分な流動性を得ることができる。また、硬化剤の配合割合の上限値についても、特に限定されないが、樹脂組成物全体に対して、16質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましい。配合割合の上限値が上記範囲内であると、樹脂組成物の流動性および融け性を所望の範囲とすることができる。
【0019】
また、エポキシ樹脂とフェノール樹脂系硬化剤との配合比率としては、エポキシ樹脂のエポキシ基数(EP)とフェノール樹脂系硬化剤のフェノール性水酸基数(OH)との当量比(EP)/(OH)が0.8以上、1.3以下であることが好ましい。当量比がこの範囲内であると、樹脂組成物の成形時に充分な硬化性を得ることができる。また、当量比がこの範囲内であると、樹脂組成物の流動性および融け性を所望の範囲とすることができる。
【0020】
(硬化促進剤)
本実施形態の樹脂組成物に用いられる硬化促進剤としては、上述のフェノール樹脂と上述のフェノール樹脂硬化剤との硬化反応を促進することができるものであれば、特に制限することなく使用することができ、例えば、オニウム塩化合物;トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリメチルホスフィン等の有機ホスフィン;テトラ置換ホスホニウム化合物;ホスホベタイン化合物;ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物;スホニウム化合物とシラン化合物との付加物;2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール(EMI24)、2-フェニル-4-メチルイミダゾール(2P4MZ)、2-フェニルイミダゾール(2PZ)、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシイミダゾール(2P4MHZ)、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール(1B2PZ)などのイミダゾール化合物;1,8-ジアザ-ビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7(DBU)、トリエタノールアミン、ベンジルジメチルアミン等の三級アミン等が挙げられる。これらは、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
硬化促進剤の含有量は、エポキシ樹脂とフェノール樹脂硬化剤との合計量に対して、0.1質量%以上2質量%以下であることが好ましい。硬化促進剤の含有量が上記下限値より少ないと、硬化促進効果を高めることができない場合がある。また、上記上限値より多いと、流動性や成形性に不具合を生じる傾向があり、また、製造コストの増加につながる場合がある。
【0022】
(アルミナ粉末)
本実施形態の樹脂組成物に用いられるアルミナ粉末は、樹脂組成物に熱伝導性を付与する作用を有する。アルミナ粉末は、例えば、シリカ粉末のような他の無機フィラーに比べ、熱伝導性が高く、封止材として用いる際に熱設計が容易である。また、アルミナ粉末は、シリカ粉末よりも熱伝導率が高い他の無機フィラー(例えば、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミ、ダイヤモンドなど)に比べて低コストであり、また真球度を高くしやすく、耐熱性に優れる。
【0023】
また、アルミナ粉末は、α線の影響を受け易いデバイスにおける誤動作を防止するため、本実施形態の樹脂組成物に配合される無機フィラー中のウラン、トリウム、その壊変物質から放出されるα線を低減する必要がある。本実施形態で用いられるアルミナ粉末は、好ましくは、ウラン含有量が0.1~9.0ppbである。好ましい実施形態において、アルミナ粉末に含まれるウランとトリウムの合計含有量は、10.0ppb以下である。このようなアルミナ粉末を用いることにより、得られる樹脂組成物の硬化物のα線量を、低減することができる。
【0024】
アルミナ粉末は、平均粒径が、例えば、0.5~40.0μmであり、好ましくは、1.0~30.0μmである。アルミナ粉末の平均粒径が0.5μm未満である場合、樹脂組成物の粘度が非常に高くなるため、充填性、封止工程における作業性が悪化する。また、アルミナ粉末の平均粒径が0.5μm未満である場合、樹脂組成物の硬化物の弾性率が下がり、結果として得られるパッケージの反りが生じる。一方、アルミナ粉末の平均粒径が40.0μmを超える場合、充填不良が発生するおそれがある。また充填できたとしても充填時にボイドを巻き込むため、不適切である。
【0025】
好ましくは、本実施形態で用いられるアルミナ粉末において、
106μm以上250μm未満の粒径のアルミナ粉末が、前記アルミナ粉末全体に対して、5質量%以上15質量%以下の量であり、
250μm以上500μm未満の粒径のアルミナ粉末が、前記アルミナ粉末全体に対して、25質量%以上35質量%以下の量であり、
500μm以上710μm未満の粒径のアルミナ粉末が、前記アルミナ粉末全体に対して、20質量%以上25質量%以下の量であり、
710μm以上1mm未満の粒径のアルミナ粉末が、前記アルミナ粉末全体に対して、20質量%以上25質量%以下の量である。
上記の粒径分布を有するアルミナ粉末を用いることにより、流動性が改善され、よって封止工程における作業性が良好であるとともに、充填不良が低減された、封止材として好適な樹脂組成物を得ることができる。
【0026】
アルミナ粉末の形状は特に限定されず、球状、鱗片状、粒状、粉末状、のいずれであってもよい。なお、アルミナ粉末の粒径は、アルミナフィラーの平均最大径を意味する。
【0027】
好ましい実施形態において、アルミナ粉末は、真球度が0.8以上、好ましくは0.9以上の球状アルミナ粉末を含むことが好ましい。このような球状アルミナ粉末は、封止材中で最密充填状態に近い状態で存在し、よって得られる封止材の熱伝導性が改善される。また、このような球状アルミナを含む樹脂組成物は、流動性が改善され、封止工程における取り扱い性が良好である。
【0028】
ここで、本明細書中において、「真球度」は、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した二次元像における「粒子の最大径に対する最小径の比」と定義する。すなわち、本実施形態において、アルミナ粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した二次元像における最大径に対する最小径の比が、0.8以上であることを指す。
【0029】
本実施形態で用いられる球状アルミナを含むアルミナ粉末は、ウラン含有量が少ない水酸化アルミニウム粉末を原料として、バイヤー法を用いて製造される。より具体的には、ボーキサイトを水酸化ナトリウムの220℃~260℃の熱溶液で洗浄し、ボーキサイトの含まれるアルミニウム成分を、塩基により溶解し、アルミン酸ナトリウムに変換する。次に、アルミン酸ナトリウム以外の成分を固形の不純物として除去して、溶液を冷却することで水酸化アルミニウムとして析出させる。その後、ボールミルを使用した粉砕機で処理することで水酸化アルミニウム粉末を得る。このとき、ウランおよびトリウムが塩基に不溶である特徴を考慮して、水酸化ナトリウムでの洗浄回数を2~4回くり返し、ウラン及びトリウムを含む不純物を繰り返し除去することで、水酸化アルミニウムに含有するウラン量及びトリウム量を所望の程度まで低減することができる。また、冷却時の温度を60~80℃で5~10時間かけて析出することで、得られる水酸化アルミニウムのナトリウム(Na)含有量を低減できる。
【0030】
本発明の球状アルミナを含むアルミナ粉末の製造は、上記の方法で得られる水酸化アルミニウム粉末を使用することが特徴である。溶融球状化の方法として、粉体供給装置、火炎バーナー、溶融帯、冷却帯、粉末回収装置及び吸引ファンから構成される設備を用いて処理する。球状化の概要として、供給装置から原料を供給して、キャリアガスにてバーナーを通して火炎中に噴射する。火炎中で溶融された原料は溶融帯と冷却帯を通過して、球状化する。得られた球状化物を排ガスと共に粉体回収装置に搬送して捕集する。火炎の形成は、水素、天然ガス、アセチレンガス、プロパンガス、ブタン等の可燃性ガスと、空気、酸素等の助燃ガスを、炉体に設定された火炎バーナーから噴射して行う。火炎温度は1800℃以上2300℃以下に保持することが好ましい。火炎温度が1800℃より低いと、生成する球状アルミナ粒子の球形度が悪くなる。火炎温度が2300℃よりも大きくなると、生成する球状アルミナ粒子同士が吸着しやすく、樹脂組成物した際に流動性が落ちる。原料粉末供給用のキャリアガスとしては、空気、窒素、酸素、二酸化炭素等を使用することができる。
【0031】
本実施形態の樹脂組成物中におけるアルミナ粉末の含有量は、樹脂組成物全体の質量に対して、80質量%以上97質量%以下である。アルミナ粉末の含有量の下限値は、好ましくは、82質量%以上であり、より好ましくは、85質量%以上であり、さらにより好ましくは、87質量%以上である。アルミナ粉末の含有量の上限値は、好ましくは、95質量%以下であり、より好ましくは、92質量%以下である。上記範囲でアルミナ粉末を用いることにより、得られる樹脂組成物の流動性を良好にできるとともに、得られる樹脂組成物の硬化物の熱伝導性を向上することができる。
【0032】
(その他の成分)
本実施形態の樹脂組成物は、必要に応じて、アルミナ粉末以外の無機フィラー、カップリング剤、流動性付与剤、離型剤、イオン捕捉剤、低応力剤、着色剤、難燃剤等の添加剤を含んでもよい。以下、代表成分について説明する。
【0033】
(無機フィラー)
本実施形態の樹脂組成物は、上述のアルミナ粉末に加え、他の無機フィラーを含んでもよい。無機フィラーとしては、溶融破砕シリカ、溶融球状シリカ、結晶性シリカ、2次凝集シリカ等のシリカ;窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、酸化チタン、炭化ケイ素、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、チタンホワイト、タルク、クレー、マイカ、ガラス繊維等が挙げられる。粒子形状は限りなく真球状であることが好ましく、また、粒子の大きさの異なるものを混合することにより充填量を多くすることができる。
【0034】
(カップリング剤)
カップリング剤としては、具体的には、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどのビニルシラン;2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシランなどのエポキシシラン;p-スチリルトリメトキシシランなどのスチリルシラン;3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシランなどのメタクリルシラン;3-アクリロキシプロピルトリメトキシシランなどのアクリルシラン;N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、フェニルアミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノシラン;イソシアヌレートシラン;アルキルシラン;3-ウレイドプロピルトリアルコキシシランなどのウレイドシラン;3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシランなどのメルカプトシラン;3-イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどのイソシアネートシラン;チタン系化合物;アルミニウムキレート類;アルミニウム/ジルコニウム系化合物などが挙げられる。カップリング剤としては、上記具体例のうち1種または2種以上を配合することができる。
【0035】
(流動性付与剤)
流動性付与剤は、リン原子含有硬化促進剤などの潜伏性を有さない硬化促進剤が樹脂組成物の溶融混練時に反応するのを抑制するように働く。これにより、樹脂組成物の生産性を向上できる。流動性付与剤としては、具体的には、カテコール、ピロガロール、没食子酸、没食子酸エステル、1,2-ジヒドロキシナフタレン、2,3-ジヒドロキシナフタレン及びこれらの誘導体などの芳香環を構成する2個以上の隣接する炭素原子にそれぞれ水酸基が結合した化合物などが挙げられる。
【0036】
(離型剤)
離型剤としては、具体的には、カルナバワックスなどの天然ワックス;モンタン酸エステルワックス、酸化ポリエチレンワックスなどの合成ワックス;ステアリン酸亜鉛等の高級脂肪酸及びその金属塩;パラフィン;エルカ酸アミドなどのカルボン酸アミドなどが挙げられる。離型剤としては、上記具体例のうち1種または2種以上を配合することができる。
【0037】
(イオン捕捉剤)
上記イオン捕捉剤は、具体的には、ハイドロタルサイト、ハイドロタルサイト状物質などのハイドロタルサイト類;マグネシウム、アルミニウム、ビスマス、チタン、ジルコニウムから選ばれる元素の含水酸化物などが挙げられる。イオン捕捉剤としては、上記具体例のうち1種または2種以上を配合することができる。
【0038】
(低応力剤)
低応力剤としては、具体的には、シリコーンオイル、シリコーンゴムなどのシリコーン化合物;ポリブタジエン化合物;アクリロニトリル-カルボキシル基末端ブタジエン共重合化合物などのアクリロニトリル-ブタジエン共重合化合物などを挙げることができる。低応力剤としては、上記具体例のうち1種または2種以上を配合することができる。
【0039】
(着色剤)
着色剤としては、具体的には、カーボンブラック、ベンガラ、酸化チタンなどを挙げることができる。着色剤としては、上記具体例のうち1種または2種以上を配合することができる。
【0040】
(難燃剤)
難燃剤としては、具体的には、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ホウ酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛、ホスファゼン、カーボンブラックなどを挙げることができる。難燃剤としては、上記具体例のうち1種または2種以上を配合することができる。
【0041】
(封止用樹脂組成物の製造)
本実施形態の樹脂組成物は、上記成分および必要に応じて用いられる添加剤を所定の含有量となるように、タンブラーミキサーやヘンシェルミキサー等のミキサーやブレンダー等で均一に混合した後、ニーダー、ロール、ディスパー、アジホモミキサー、及びプラネタリーミキサー等で加熱しながら混練することにより製造できる。なお、混練時の温度としては、硬化反応が生じない温度範囲である必要があり、エポキシ樹脂およびフェノール樹脂硬化剤の組成にもよるが、70~150℃程度で溶融混練することが好ましい。混練後に冷却固化し、混練物を、粉粒状、顆粒状、タブレット状、またはシート状に加工してもよい。
【0042】
粉粒状の樹脂組成物を得る方法としては、たとえば、粉砕装置により、混練物を粉砕する方法が挙げられる。混練物をシートに成形したものを粉砕してもよい。粉砕装置としては、たとえば、ハンマーミル、石臼式磨砕機、ロールクラッシャーを用いることができる。
【0043】
顆粒状または粉末状の樹脂組成物を得る方法としては、たとえば、混練装置の出口に小径を有するダイスを設置して、ダイスから吐出される溶融状態の混練物を、カッター等で所定の長さに切断するというホットカット法に代表される造粒法を用いることもできる。この場合、ホットカット法等の造粒法により顆粒状または粉末状の樹脂組成物を得た後、樹脂組成物の温度があまり下がらないうちに脱気を行うことが好ましい。
【0044】
上述の成分を所定の配合量で用い、上述の方法で製造された本実施形態の樹脂組成物は、その硬化物のα線量が、0.002count/cm2・h以下であり、好ましくは、0.001count/cm2・h以下である。これにより、本実施形態の樹脂組成物を封止材として用いた場合、α線の影響を受け易いデバイスにおける誤動作を防止できる。また、本実施形態の樹脂組成物は、硬化物におけるα線量が、0.0015count/cm2・h以下であることがより好ましく、0.0010count/cm2・h以下であることがさらに好ましい。
【0045】
上述の成分を所定の配合量で用い、上述の方法で製造された本実施形態の樹脂組成物は、その硬化物のレーザフラッシュ法により測定した場合の熱伝導率が、4.0W/m・K以上であり、好ましくは、4.2W/m・K以上であり、より好ましくは、4.4W/m・K以上であり、さらにより好ましくは、4.6W/m・K以上である。これにより、本実施形態の樹脂組成物を封止材として用いた場合の熱設計が容易であるとともに、半導体素子を封止して得られる半導体装置の高温環境下における信頼性を改善することができる。
【0046】
本実施形態の樹脂組成物の最低溶融粘度は、例えば、30kPa・s以下であり、好ましくは、20kPa・s以下であり、より好ましくは、15kPa・s以下である。上記値を超えると、充填性が低下し、ボイドや未充填部分が発生するおそれがある。上記範囲の最低溶融粘度を有する本実施形態の樹脂組成物は、封止工程においてキャピラリーフローによる注入性が良好であり、取扱い性に優れる。
【0047】
上述の成分を所定の配合量で用い、上述の方法で製造された本実施形態の樹脂組成物は、その硬化物の25℃における弾性率が、15,000MPa以上40,000MPa以下の範囲内である。これにより、得られるパッケージにおいて反りが生じず、信頼性に優れた半導体装置を得ることができる。
【0048】
上述の成分を所定の配合量で用い、上述の方法で製造された本実施形態の樹脂組成物は、キュラストメーターを用いて、測定温度175℃で当該半導体封止用樹脂組成物の硬化トルク値を経時的に測定した際、硬化トルク値の立ち上がりが、測定開始後50秒~100秒の間に観察される。このようなトルク変化の挙動を有する樹脂組成物は、効率よく封止工程を実施することができる。
【0049】
(半導体装置)
本実施形態に係る封止用樹脂組成物を封止剤として用いて製造される半導体装置の一例について説明する。
図1は本実施形態に係る両面封止型の半導体装置100を示す断面図である。
本実施形態の半導体装置100は、電子素子20と、電子素子20に接続されるボンディングワイヤ40と、封止材50と、を備えるものであり、当該封止材50は、前述の樹脂組成物の硬化物により構成される。
【0050】
より具体的には、電子素子20は、基材30上にダイアタッチ材10を介して固定されており、半導体装置100は、電子素子20上に設けられた図示しない電極パッドからボンディングワイヤ40を介して接続されるアウターリード34を有する。ボンディングワイヤ40は用いられる電子素子20等を勘案しながら設定することができるが、たとえばCuワイヤを用いることができる。
【0051】
図2は、本実施形態の樹脂組成物を用いて、回路基板に搭載した電子素子を封止して得られる片面封止型の半導体装置の一例について、断面構造を示した図である。回路基板408上にダイアタッチ材402を介して電子素子401が固定されている。電子素子401の電極パッド407と回路基板408上の電極パッド407との間はボンディングワイヤ404によって接続されている。本実施形態の樹脂組成物の硬化体で構成される封止材406によって、回路基板408の電子素子401が搭載された面が封止されている。回路基板408上の電極パッド407は回路基板408上の非封止面側の半田ボール409と内部で接合されている。
【0052】
以下に、本実施形態に係る封止用樹脂組成物を用いた半導体装置の製造方法について説明する。
本実施形態に係る半導体装置は、例えば、上述した封止用樹脂組成物の製造方法により、封止用樹脂組成物を得る工程と、基板上に電子素子を搭載する工程と、前記封止用樹脂組成物を用いて、前記電子素子を封止する工程とにより製造される。封止剤を形成するために用いられる手法として、例えば、トランスファー成形法、圧縮成形法、インジェクション成形法等を用いることができる。封止する工程は、樹脂組成物を、80℃から200℃程度の温度で10分から10時間程度の時間をかけて硬化させることにより実施される。
【0053】
封止される電子素子の種類としては、例えば、集積回路、大規模集積回路、トランジスタ、サイリスタ、ダイオード、固体撮像素子などの半導体素子が挙げられるが、これらに限定されない。得られる半導体装置の形態としては、例えば、デュアル・インライン・パッケージ(DIP)、プラスチック・リード付きチップ・キャリヤ(PLCC)、クワッド・フラット・パッケージ(QFP)、ロー・プロファイル・クワッド・フラット・パッケージ(LQFP)、スモール・アウトライン・パッケージ(SOP)、スモール・アウトライン・Jリード・パッケージ(SOJ)、薄型スモール・アウトライン・パッケージ(TSOP)、薄型クワッド・フラット・パッケージ(TQFP)、テープ・キャリア・パッケージ(TCP)、ボール・グリッド・アレイ(BGA)、チップサイズ・パッケージ(CSP)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0054】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【実施例0055】
以下、本発明を実施例および比較例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0056】
実施例、比較例で用いた成分を以下に示す。
(エポキシ樹脂)
・エポキシ樹脂1:ビフェニル型エポキシ樹脂(3,3',5,5'-テトラメチルビフェニルグリシジルエーテル)(三菱ケミカル社製、YX4000HK)
・エポキシ樹脂2:ビフェニレン骨格含有フェノールアラルキル型エポキシ樹脂(日本化薬社製、NC3000)
【0057】
(硬化剤)
・硬化剤1:フェノール・ヒドロキシベンズアルデヒド樹脂(明和化成株式会社製、MEH-7500)
・硬化剤2:トリフェノールメタン型樹脂とフェノールノボラック樹脂との共重合体型フェノール樹脂(エア・ウォーター株式会社製、HE910-20)
・硬化剤3:p-ビフェニレン変性フェノール樹脂(明和化成社製、MEH-7851SS)
【0058】
(硬化促進剤)
・硬化促進剤1:下記の化学式で表されるテトラフェニルホスホニウム・4,4'-スルフォニルジフェノラート
【0059】
【化1】
・硬化促進剤2:下記式で表される硬化促進剤(テトラフェニルホスホニウムビス(ナフタレン-2,3-ジオキシ)フェニルシリケート)
【0060】
【0061】
(アルミナ粉末)
・アルミナ粉末1:アルミナフィラー(デンカ社製、DAB-30FC、ウラン含有量:7ppb以上、トリウム含有量:1ppb未満、平均粒子径(D50):13μm)
・アルミナ粉末2:アルミナフィラー(日鉄ケミカル&マテリアル社製、低α線アルミナ、ウラン含有量:7ppb、トリウム含有量:1ppb未満、平均粒子径(D50):15μm)
・アルミナ粉末3:アルミナフィラー(アドマテックス社製、低α線アルミナ、ウラン含有量:1ppb未満、トリウム含有量:1ppb未満、平均粒子径(D50):0.2μm)
【0062】
(無機充填材)
・無機充填材1:シリカフィラー(アドマテックス社製、SD5500-SQ)
・無機充填材2:シリカフィラー(トクヤマ社製、レオロシール CP-102)
【0063】
(着色剤)
・着色剤1:カーボンブラック(三菱ケミカル社製、MA-600)
【0064】
(カップリング剤)
・カップリング剤1:N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(東レ・ダウコーニング株式会社製、CF-4083)
【0065】
(離型剤)
・離型剤1:カルナバワックス(東亜化成株式会社製、TOWAX-132)
【0066】
(イオン捕捉剤)
・イオン捕捉剤1:マグネシウム・アルミニウム・ハイドロオキサイド・カーボネート・ハイドレート(協和化学工業社製、DHT-4H)
【0067】
(低応力剤)
・低応力剤1:ジメチルシロキサン-アルキルカルボン酸-4,4'-(1-メチルエチリデン)ビスフェノール グリシジルエーテル共重合体(住友ベークライト株式会社製、M69B)
・低応力剤2:シリコーンレジン(信越ケミカル社製、KR-480)
【0068】
(実施例1~4、比較例1~2)
表1で示す配合の原料をスーパーミキサーにより5分間粉砕混合したのち、この混合原料を直径65mmのシリンダー内径を持つ同方向回転二軸押出機にてスクリュー回転数200rpm、100℃の樹脂温度で溶融混練した。次に、直径20cmの回転子の上方より溶融混練された樹脂組成物を2kg/hrの割合で供給し、回転子を3000rpmで回転させて得られる遠心力によって、115℃に加熱された円筒状外周部の複数の小孔(孔径1.2mm)を通過させた。その後、冷却することで顆粒状の封止用樹脂組成物を得た。得られた顆粒状の封止用樹脂組成物は、15℃で相対湿度を55%RHに調整した空気気流下3時間撹拌した。得られた封止用樹脂組成物を、以下の項目について、以下に示す方法により評価した。測定結果を表1に示す。
【0069】
(流動性(スパイラルフロー))
低圧トランスファー成形機(コータキ精機株式会社製、KTS-15)を用いて、EMMI-1-66に準じたスパイラルフロー測定用金型に、金型温度175℃、注入圧力6.9MPa、保圧時間120秒の条件で、樹脂組成物を注入し、流動長を測定した。スパイラルフローは、流動性の指標であり、数値が大きい方が、流動性が良好である。単位はcm。
【0070】
(硬化特性(ゲルタイム))
各例で得られた樹脂組成物のゲルタイムを測定した。ゲルタイムの測定は、120℃に加熱した熱板上で樹脂組成物を溶融した後、へらで練りながら硬化するまでの時間(ゲルタイム:秒)を測定することによりおこなった。
【0071】
(曲げ強度)
長さ80mm以上、高さ4mm、巾10mmの試験片を作製し、ポストキュア後にクロスヘッド速度2mm/min、支点間距離64mmの条件で曲げ応力を徐々に加えて、破断させて荷重―歪み曲線を求め、最大点応力から試験片の曲げ強度を計算した。N=2で測定を行い、その平均値を代表値とした。
【0072】
(室温(25℃)における弾性率)
長さ80mm以上、高さ4mm、巾10mmの試験片を作製し、ポストキュア後にクロスヘッド速度2mm/min、支点間距離64mmの条件で曲げ応力を徐々に加えて、荷重―歪み曲線を求め、試験片の曲げ弾性率を計算した。N=2で測定を行い、その平均値を代表値とした。
【0073】
(熱伝導性(熱伝導率))
長さ1cm、巾1cm、厚さ1mmの試験片を作成し、熱拡散率の測定を行った。パウダーを使って比熱測定を行った。得られた熱拡散率、比熱、比重から熱伝導率を求めた。
【0074】
(5μmスリットバリ)
トランスファ成形で高さ5μm、巾4mm、長さ72mmのキャビティを有する金型へ注入圧力10MPa、金型温度175℃、硬化時間120秒で樹脂組成物を成形して、樹脂組成物がキャビティに侵入した長さをノギスで測定して、5μmスリットバリの数値とした。
【0075】
(α線量)
樹脂組成物より、コンプレッション成形で金型温度175℃、硬化時間2分で試験片(140mm×120mm、厚さ2mm)を成形した。得られた試験片6枚(計1008cm2)を用いて低レベルα 線測定装置LACS-4000M(印加電圧1.9KV、PR-10ガス(アルゴン:メタン=9:1)100m/分、有効計数時間40h)でα線量を測定した。
【0076】
【0077】
実施例の樹脂組成物はいずれも、低α線量であるとともに、熱伝導性において優れ、あまた硬化特性および機械的特性においても半導体封止材として適切なものであった。
【0078】
この出願は、2020年11月16日に出願された日本出願特願2020-190154号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。