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特開2023-109976液体材料または液体様材料を与える配合物を使用する付加製造プロセス
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023109976
(43)【公開日】2023-08-08
(54)【発明の名称】液体材料または液体様材料を与える配合物を使用する付加製造プロセス
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/40 20170101AFI20230801BHJP
   B33Y 80/00 20150101ALI20230801BHJP
【FI】
B29C64/40
B33Y80/00
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088306
(22)【出願日】2023-05-30
(62)【分割の表示】P 2020504382の分割
【原出願日】2018-07-27
(31)【優先権主張番号】62/538,018
(32)【優先日】2017-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】513131464
【氏名又は名称】ストラタシス リミテッド
【住所又は居所原語表記】1 Holtzman Street, Science Park, P.O. Box 2496, 7612401 Rehovot, Israel
(74)【代理人】
【識別番号】100103816
【弁理士】
【氏名又は名称】風早 信昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120927
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 典子
(72)【発明者】
【氏名】ディコフスキー, ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ベロコン, ボリス
(72)【発明者】
【氏名】フェファー, アミット
(72)【発明者】
【氏名】ビガン, ガル
(72)【発明者】
【氏名】ブレスラー, ヨアフ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】付加製造方法によって製造された中空構造を提供する。
【解決手段】付加製造方法によって製造された三次元アセンブリであって、前記三次元アセンブリは、空洞を有しかつ造形用材料Mから作られた硬化された中空構造と、前記空洞中の支持材料Sから作られた硬化された中空犠牲物体と、前記硬化された中空犠牲物体によって封入された材料Lとを含み、前記材料Lが、硬化されていないか又は部分的に硬化されている、三次元アセンブリ。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
付加製造方法によって製造された三次元アセンブリであって、前記三次元アセンブリは、空洞を有しかつ造形用材料Mから作られた硬化された中空構造と、前記空洞中の支持材料Sから作られた硬化された中空犠牲物体と、前記硬化された中空犠牲物体によって封入された材料Lとを含み、前記材料Lが、硬化されていないか又は部分的に硬化されている、三次元アセンブリ。
【請求項2】
前記中空構造は、管状構造、分岐管状構造、および相互に交絡した複数の管状構造から選択される、請求項1に記載の三次元アセンブリ。
【請求項3】
前記材料Lは、1バール以下の正圧に曝されたときに流動性を有する、請求項1に記載の三次元アセンブリ。
【請求項4】
前記材料Lは10000センチポアズ以下の粘度を具備する、請求項1に記載の三次元アセンブリ。
【請求項5】
前記材料Lは、1より大きい剪断損失弾性率対剪断貯蔵弾性率比を具備する、請求項1に記載の三次元アセンブリ。
【請求項6】
前記材料Lは、20kPa未満の剪断貯蔵弾性率を具備する、請求項1に記載の三次元アセンブリ。
【請求項7】
前記材料Lは、2000グラム/モル未満の分子量を有するポリ(アルキレングリコール)を含む、請求項1に記載の三次元アセンブリ。
【請求項8】
前記材料Lは、硬化された材料を含む、請求項1に記載の三次元アセンブリ。
【請求項9】
前記硬化された材料は、単官能硬化性材料を硬化することによって得ることができる、請求項8に記載の三次元アセンブリ。
【請求項10】
前記硬化された材料は、親水性の単官能硬化性材料を硬化することによって得ることができる、請求項8に記載の三次元アセンブリ。
【請求項11】
前記硬化された材料は、剪断減粘性材料である、請求項8に記載の三次元アセンブリ。
【請求項12】
前記硬化された材料は、チキソトロピー性材料である、請求項8に記載の三次元アセンブリ。
【請求項13】
前記硬化された材料は、熱減粘性材料である、請求項8に記載の三次元アセンブリ。
【請求項14】
前記材料L中の前記硬化された材料の量は、10%~25%の範囲である、請求項8に記載の三次元アセンブリ。
【請求項15】
前記材料Lは水溶性または水混和性である、請求項1に記載の三次元アセンブリ。
【請求項16】
前記支持材料Sは水溶性または水混和性である、請求項1に記載の三次元アセンブリ。
【請求項17】
前記支持材料Sは、1未満の剪断損失弾性率G’’対剪断貯蔵弾性率G’比を具備する、請求項1に記載の三次元アセンブリ。
【請求項18】
前記支持材料Sは、0.5バールより高い液圧に曝されたときに流動性および/または分解性である、請求項1に記載の三次元アセンブリ。
【請求項19】
前記支持材料Sは、少なくとも0.5バールの圧力の液体噴流に曝されることにより、除去可能である、請求項1に記載の三次元アセンブリ。
【請求項20】
前記支持材料Sは洗浄液に接触することにより除去可能である、請求項1に記載の三次元アセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、米国仮特許出願No.62/538003,62/538006,62/538015、及び62/538026と同時に出願された、2017年7月28日出願の米国仮特許出願No.62/538018の優先権の利益を主張する。
【0002】
上記出願の内容は、本明細書においてそれらの全体が完全に述べられているかのように、参考としてそれらの全体をここに組み入れる。
【0003】
技術分野
本発明は、その一部の実施形態では、付加製造(AM)に関し、さらに詳しくは、付加製造に使用可能であり、一部分に液体材料または液体様材料を有する三次元物体を与える配合物、方法、およびシステムに関するが、それらに限定されない。
【背景技術】
【0004】
付加製造は、一般的に、三次元(3D)物体が物体のコンピューターモデルを利用して製造される方法である。かかる方法は、視覚化、デモンストレーション及び機械的試作、並びに迅速生産(RM)の目的のためにデザイン関連分野のような様々な分野で使用されている。
【0005】
いかなるAMシステムの基本操作も、三次元コンピューターモデルを薄い横断面にスライスし、結果を二次元位置データに変換し、データを、三次元構造を層状に製造する制御装置に供給することからなる。
【0006】
様々なAM技術が存在し、その中にはステレオリソグラフィー、デジタルライトプロセッシング(DLP)、及び三次元(3D)印刷(特に3Dインクジェット印刷)がある。かかる技術は、一種以上の構築材料、一般的には光重合性(光硬化性)材料の層ごとの堆積、及び凝固によって実施されることが一般的である。
【0007】
三次元印刷プロセスでは、例えば構築材料が、一組のノズルを有する吐出ヘッドから吐出され、支持構造上に層を堆積する。構築材料に依存して、層は、次いで好適な装置を使用して硬化又は凝固(固化)されることができる。
【0008】
様々な三次元印刷技術が存在し、例えば米国特許第6,259,962号、第6,569,373号、第6,658,314号、第6,850,334号、第7,183,335号、第7,209,797号、第7,225,045号、第7,300,619号、第7,479,510号、第7,500,846号、第7,962,237号及び第9,031,680号に開示される。それらは、出願人が全て同じであり、その内容は、参考としてここに組み入れられる。
【0009】
付加製造に使用される印刷システムは、受容媒体及び一つ以上の印刷ヘッドを含むことができる。受容媒体は、例えば印刷ヘッドから吐出された材料を担持するための水平面を含むことができる製作トレイであることができる。印刷ヘッドは、例えば印刷ヘッドの長手方向軸に沿った一つ以上の列の配列で配置された複数の吐出ノズルを有するインクジェットヘッドであることができる。印刷ヘッドは、その長手方向軸が指示方向と実質的に平行になるように位置されることができる。印刷ヘッドは、予め規定された走査計画(ステレオリソグラフィー(STL)フォーマットに変換されかつコントローラにプログラムされたCAD構成)に従った印刷ヘッドの動きを含む、印刷プロセスを制御するマイクロプロセッサーのようなコントローラをさらに含むことができる。印刷ヘッドは、複数の噴射ノズルを含むことができる。噴射ノズルは、材料を受容媒体上に吐出し、3D物体の横断面を表わす層を作る。
【0010】
印刷ヘッドに加えて、吐出された構築材料を硬化するために、硬化条件の源が存在してもよい。硬化条件は、一般的には硬化エネルギーを含み、一般的には放射線、例えばUV放射線である。
【0011】
加えて、印刷システムは、堆積後かつ少なくとも部分的な凝固後で続く層の堆積前に各層の高さをレベリング及び/又は確立するためのレベリング装置を含むことができる。
【0012】
構築材料は、造形用材料及び支持材料を含むことができ、それらは、物体、及び物体が構築されるように物体を支持する一時的な支持構造を形成する。
【0013】
造形用材料(それは、一種以上の配合物に含まれる、一種以上の材料を含むことができる)は、希望の物体を生成するために堆積される。
【0014】
当業界で「支持材料(支持体材料)」としても知られる支持体材料(1つ以上の材料を含んでよい)は、造形用材料要素と共にあるいはそれ無しで使用され、構築中に物体の特定の領域を指示するために、かつ後続の物体層の適切な垂直配置を確実にするために使用される。例えば物体が張り出した特徴または形状、例えば湾曲したジオメトリ、負角、空隙等を含む場合、物体は通常、印刷中に使用される隣接支持構造を使用して構築される。
【0015】
全ての場合に、支持体材料は、造形用材料に近接して堆積され、複雑な物体のジオメトリの形成および物体の空隙の充填を可能にする。
【0016】
現在実施されている技術の全てにおいて、堆積された支持体材料及び造形用材料は、一般的に硬化条件(例えば硬化エネルギー)にさらすと硬化され、必要な層形状を形成する。印刷完了後、支持体構造は、除去され、製作された3D物体の最終形状を出現する。
【0017】
インクジェット印刷ヘッドのような現在市販されている印刷ヘッドを使用する場合、支持体材料は、それを噴射することができるように、動作温度、すなわち噴射温度で比較的低い粘度(約10~20cP)を有する必要がある。さらに、支持体材料は、後続の層の構築を可能にするために、急速に硬化する必要がある。加えて、硬化した支持体材料は、造形用材料を適切な位置に保持するために充分な機械的強度と、幾何学的欠陥を回避するために低歪みとを有する必要がある。
【0018】
支持体材料を除去するための公知の方法としては、機械的衝撃(ツールまたはウォータージェットによって加えられる)のみならず、加熱しながらまたは加熱することなく溶媒に溶解するなどの化学的方法もある。機械的方法は労働集約的であり、小型の複雑な部品には往々にして適さない
【0019】
支持体材料を溶解するために、製作された物体はしばしば水中に、または支持体材料を溶解することのできる溶媒中に浸漬される。支持体材料を溶解するために利用される溶液は、本明細書および当業界では「洗浄液」とも呼ばれる。しかし、多くの場合、支持体除去プロセスは、有害物質、手作業、および/または訓練を受けた人員を必要とする特別な機器、防護服、および高価な廃棄物処理を含む。加えて、溶解プロセスは通常、拡散動力学によって制限され、特に支持構造が大きくて嵩張る場合、非常に長い時間を要する場合がある。さらに、物体表面の「混合層」の痕跡を除去するために、後処理が必要になる場合がある。用語「混合層」とは、造形用材料および支持体材料がそれらの界面で相互に混入することによって、製作中の物体の表面の2つの材料間の界面に形成された、混合硬化した造形用材料と支持体材料の残留層を指す。
【0020】
加えて、ワックスおよび特定の可撓性材料など,感温性の造形用材料が存在するため、支持体除去中に高温を必要とする方法には問題がある場合がある。支持体材料を除去するための機械的方法および溶解方法は両方とも、使い易さ、清潔さ、および環境安全性が主要な考慮事項であるオフィス環境で使用する場合には、特に問題がある。
【0021】
3D構築用の水溶性材料は、例えば米国特許第6228923号明細書に記載されている。そこでは、水溶性熱可塑性ポリマーであるポリ(2‐エチル‐2‐オキサゾリン)が、選択された材料の帯状体をプレート上に高温高圧で押し出すことを含む3D構築プロセスにおける支持体材料として教示されている。
【0022】
可融性結晶水和物を含む含水支持体材料は、米国特許第7255825号明細書に記載されている。
【0023】
3D物体の構築において硬化支持体材料を形成するのに適した配合物は、全て本願譲受人の例えば米国特許第7479510号明細書、第7183335号明細書、および第6569373号明細書に記載されている。一般的に、これらの特許に開示された組成物は、少なくとも1つのUV硬化性(反応性)成分、例えばアクリル成分と、少なくとも1つの非UV硬化性成分、例えばポリオール成分またはグリコール成分と、光開始剤とを含む。照射後、これらの組成物は、水、アルカリ性もしくは酸性溶液、または洗剤水溶液への曝露により溶解または膨潤することが可能な半固体またはゲル状の材料を提供する。
【0024】
膨潤に加えて、そのような支持体材料の別の特性は、支持体材料が親水性成分からできているため、水、アルカリ性もしくは酸性溶液、または洗剤水溶液への曝露中に分解する能力であろう。膨潤プロセス中に、内力が硬化支持体の破砕および破壊を引き起こす。さらに、支持体材料は、水に曝露すると気泡を放出する物質、例えば酸性溶液と接触するとCOに変化する重炭酸ナトリウムを含有することができる。気泡はモデルから支持体を除去するプロセスを助ける。
【0025】
複数の付加製造プロセスは、一種より多い造形用材料を使用する物体の付加形成を可能にする。例えば、本出願人の公開No.2010/0191360を有する米国特許出願は、複数の吐出ヘッドを有する固体自由形状製作装置、複数の構築材料を製作装置に供給するように構成された構築材料供給装置、及び製作装置及び供給装置を制御するために構成された制御ユニットを含むシステムを開示する。システムは、複数の操作モードを持つ。一つのモードでは、全ての吐出ヘッドが製作装置の単一構築走査サイクル時に作動する。別のモードでは、吐出ヘッドの一つ以上が単一構築走査サイクル又はその一部の時に作動しない。
【0026】
Polyjet(商品名)(Stratasys Ltd.、イスラエル)のような3Dインクジェット印刷プロセスでは、構築材料は、一つ以上の印刷ヘッドから選択的に噴射され、ソフトウェアファイルによって規定されるような予め決定された構成に従って連続層で製作トレイの上に堆積される。
【発明の概要】
【0027】
現在実施されている付加製造方法論は、典型的には、硬化条件に曝されるとゲル状硬化材料を形成する硬化性支持体材料を利用し、それを物理的および/または機械的手段によって除去することで、最終物体が現れる。
【0028】
しかし、これらの方法論は非効率的である場合があり、例えば薄肉かつ/または分岐かつ/または交絡中空構造、例えばトンネルや管、および/または内部包封容積および/または何らかの他の空洞もしくは穴など、硬化した支持体材料を除去するために必要な手段の利用可能性が制限される、複雑なジオメトリを具備する物体の場合、物体にとって有害になることさえあり得る。
【0029】
本発明者らは、硬化条件に曝されたときに液体として挙動することを具備し、したがって温和な条件下で流動性を有し、例えば圧力を加えることによって物体からの流出を誘発することにより除去することのできる材料を利用する方法論を設計し、実施することに成功した。
【0030】
これらの材料は、特に本明細書に記載する複雑なジオメトリを有する物体において、かつ/またはゲル状支持体材料の除去のために典型的に適用される条件が物体の最終形状を損傷するおそれのある物体において、支持体材料として有利に使用可能である。これらの材料はさらに、流体材料を含む最終物体を製作するのに有利に使用可能である。
【0031】
本発明の一部の実施形態の態様によれば、三次元物体の付加製造方法が提供され、この方法は、物体の形状に対応する構成パターンで複数の層を連続的に形成し、それによって物体を形成することを含み、
複数の層のうちの少なくとも少数の層の形成は、少なくとも2つの構築材料配合物を吐出することを含み、少なくとも2つの構築材料配合物は、造形用材料配合物を含む第一構築材料配合物であって、本明細書で互換可能に単に造形用材料配合物、または造形用配合物M、または配合物Mとも呼ばれ、硬化条件に曝されたとき、本明細書で互換可能に第一材料、第一硬化造形用材料、第一造形用材料、または単に造形材料、または材料M、または造形用材料M、または硬化造形用材料Mとも呼ばれる硬化造形用材料を形成する第一構築材料配合物と、配合物を含む第二構築材料配合物であって、本明細書で互換可能に液体配合物、または配合物Lとも呼ばれ、硬化条件に曝されると、本明細書で互換可能に液体材料、液体もしくは液体様材料、または材料Lとも呼ばれる第二材料を形成する第二構築材料配合物とを含み、
第二材料すなわち材料Lは、
10000センチポアズ以下の粘度;
1より大きい剪断損失弾性率対剪断貯蔵弾性率比;
20kPa未満の剪断弾性率;
1バール以下の正圧に曝されたときの流動性;
剪断減粘挙動および/またはチキソトロピー挙動;ならびに
熱減粘挙動;
のうちの少なくとも1つを具備し、
複数の層のうちの少なくとも少数の層の形成は、
吐出された構築材料配合物を硬化条件に曝し、それによって第一硬化造形用材料を形成することをさらに含む。
【0032】
本明細書に記載する実施形態のいずれかのうちの一部によれば、吐出は、第一硬化造形用材料すなわち材料Mが少なくとも1つの中空構造を形成し、かつ第二材料すなわち材料Lが中空構造内に少なくとも部分的に封入されるように行われる。
【0033】
本明細書に記載する実施形態のいずれかのうちの一部によれば、物体の形状は、コンピュータ物体入力データによって記述され、方法はさらに、中空構造の空洞を記述するコンピュータ物体データを生成することと、収縮形状の空洞を記述するコンピュータ物体データを生成することと、コンピュータ物体入力データと収縮形状の空洞を記述するコンピュータ物体データとを結合して、中空構造の内面と中空構造によって包封された芯の最外表面との間に間隙が存在するように芯と中空構造とを記述する結合コンピュータ物体データを提供することとを含む。
【0034】
本明細書に記載する実施形態のいずれかのうちの一部によれば、中空構造は、管状構造、分岐管状構造、および相互に交絡した複数の管状構造から選択される。
【0035】
本明細書に記載する実施形態のいずれかのうちの一部によれば、少なくとも1つの管状構造の直径は1cm未満である。
【0036】
本明細書に記載する実施形態のいずれかのうちの一部によれば、第二材料すなわち材料Lは中空構造内に完全に封入される。
【0037】
本明細書に記載する実施形態のいずれかのうちの一部によれば、第二材料すなわち材料Lは、1バール以下、または0.5バール以下、または0.3バール以下の正圧に曝されたときに流動性を有する。
【0038】
本明細書に記載する実施形態のいずれかのうちの一部によれば、第二材料すなわち材料Lは、10000センチポアズ以下の粘度を具備し、かつ第二構築材料配合物すなわち配合物Lは、第二材料の粘度との差がわずか10%以下の粘度を具備する。
【0039】
本明細書に記載する実施形態のいずれかのうちの一部によれば、第二構築材料配合物すなわち配合物Lは非硬化性材料を含む。
【0040】
本明細書に記載する実施形態のいずれかのうちの一部によれば、非硬化性材料は2000グラム/モル未満の分子量を有するポリ(アルキレングリコール)を含む。
【0041】
本明細書に記載する実施形態のいずれかのうちの一部によれば、第二構築材料配合物、配合物Lは非硬化性材料および硬化性材料を含む。
【0042】
本明細書に記載する実施形態のいずれかのうちの一部によれば、硬化性材料は単官能硬化性材料を含む。
【0043】
本明細書に記載する実施形態のいずれかのうちの一部によれば、硬化性材料は親水性である。
【0044】
本明細書に記載する実施形態のいずれかのうちの一部によれば、硬化性材料は、硬化したときに、剪断減粘性かつ/またはチキソトロピー性材料をもたらす。
【0045】
本明細書に記載する実施形態のいずれかのうちの一部によれば、硬化性材料は、硬化したときに、熱減粘性材料をもたらす。
【0046】
本明細書に記載する実施形態のいずれかのうちの一部によれば、硬化性材料は、硬化したときに、水溶性または水不混和性材料をもたらす。
【0047】
本明細書に記載する実施形態のいずれかのうちの一部によれば、第二構築材料配合物すなわち配合物L中の硬化性材料の量は、10%~25%の範囲である。
【0048】
本明細書に記載する実施形態のいずれかのうちの一部によれば、第二材料すなわち材料Lは水溶性または水混和性である。
【0049】
本明細書に記載する実施形態のいずれかのうちの一部によれば、第二材料すなわち材料Lは、剪断減粘性材料、チキソトロピー性材料、または熱減粘性材料である。
【0050】
本明細書に記載する実施形態のいずれかのうちの一部によれば、方法は、硬化条件に曝した後、材料L(第二材料)を除去することをさらに含む。
【0051】
本明細書に記載する実施形態のいずれかのうちの一部によれば、除去は、材料L(第二材料)が流動性を有する条件を適用することによる。
【0052】
本明細書に記載する実施形態のいずれかのうちの一部によれば、条件は、1バール以下、または0.5バール以下、または0.3バール以下の正圧を含む。
【0053】
本明細書に記載する実施形態のいずれかのうちの一部によれば、正圧は、空気圧、液圧、またはそれらの組合せを含む。
【0054】
本明細書に記載する実施形態のいずれかのうちの一部によれば、条件は熱エネルギーを含む。
【0055】
本明細書に記載する実施形態のいずれかのうちの一部によれば、条件は剪断力を含む。
【0056】
本明細書に記載する実施形態のいずれかのうちの一部によれば、少なくとも2つの構築材料配合物は、本明細書で互換可能に支持体材料配合物、支持体配合物、ゲル材料配合物、または配合物Sとも呼ばれる第三構築材料配合物を含み、第三構築材料配合物は硬化条件に曝されると第三材料を形成し、第三材料は硬化支持体材料であり、本明細書で材料Sとも呼ばれる。
【0057】
本明細書に記載する実施形態のいずれかのうちの一部によれば、吐出は、第一硬化造形用材料すなわち材料Mが少なくとも1つの中空構造を形成し、第三材料すなわち材料Sが中空構造内に少なくとも部分的に封入され、かつ第二材料すなわち材料Lが材料S(第三材料)内に少なくとも部分的に封入されるように行われる。
【0058】
本明細書に記載する実施形態のいずれかのうちの一部によれば、吐出は、材料L(第二材料)が材料S(第三材料)を少なくとも部分的に封入し、それによって中空構造の内面と材料S(第三材料)との間に中間鞘が形成されるように行われる。
【0059】
本明細書に記載する実施形態のいずれかのうちの一部によれば、材料S(第三材料)は水溶性または水混和性である。
【0060】
本明細書に記載する実施形態のいずれかのうちの一部によれば、材料S(第三材料)は、少なくとも0.5バールまたは少なくとも1バールの圧力の液体噴流に曝されることにより、除去可能である。
【0061】
本明細書に記載する実施形態のいずれかのうちの一部によれば、材料S(第三材料)は洗浄液に接触することにより除去可能である。
【0062】
本明細書に記載する実施形態のいずれかのうちの一部によれば、方法は、材料S(第三材料)を除去することをさらに含む。
【0063】
本明細書に記載する実施形態のいずれかのうちの一部によれば、除去は、材料S(第三硬化材料)を少なくとも0.5バールまたは少なくとも1バールの圧力での液体噴流に接触させることによる。
【0064】
本明細書に記載する実施形態のいずれかのうちの一部によれば、除去は、材料S(第三硬化材料)を洗浄液に接触させることによる。
【0065】
本明細書に記載する実施形態のいずれかのうちの一部によれば、材料S(第三材料)の除去は、材料L(第二材料)を除去した後に行われる。
【0066】
本発明の一部の実施形態の態様では、本明細書に記載するそれぞれの実施形態のいずれか1つの方法およびそれらの任意の組合せによって製作された三次元造形物体を提供する。
【0067】
本明細書に記載する実施形態のいずれかのうちの一部によれば、三次元物体は少なくとも1つの中空構造を含む。
【0068】
本明細書に記載する実施形態のいずれかのうちの一部によれば、三次元物体は、少なくとも1つの中空構造内に少なくとも部分的に封入された材料L(第二材料)を含む。
【0069】
本発明の一部の実施形態の態様では、付加製造プロセスによって製作された三次元造形物体であって、
1より大きい剪断損失弾性率対剪断貯蔵弾性率比(タンデルタ);
剪断減粘挙動および/またはチキソトロピー挙動;
熱減粘挙動;
20kPa未満の剪断貯蔵弾性率;ならびに
中空構造内に少なくとも部分的に封入された、1バール未満または0.5バール未満の正圧に曝されたときの流動性;
のうちの少なくとも1つを具備する、少なくとも1つの中空構造および本明細書に記載する材料Lなどの材料を含む、三次元造形物体を提供する。
【0070】
本発明の一部の実施形態の態様では、三次元物体の付加製造で犠牲材料(例えば支持体材料)または犠牲構造または犠牲物体を形成するために使用可能な配合物系であって、
硬化条件に曝されたとき、
1より大きい剪断損失弾性率対剪断貯蔵弾性率比(タンデルタ);
剪断減粘挙動および/またはチキソトロピー挙動;
熱減粘挙動;
20kPa未満の剪断貯蔵弾性率;ならびに
1バール未満または0.5バール未満の正圧に曝されたときの流動性;
のうちの少なくとも1つを具備する液体材料または液体様材料(本明細書で材料Lとも呼ばれる)をもたらす配合物L(本明細書で第二配合物とも呼ばれる)と、
硬化条件に曝されたときに、
1未満の剪断損失弾性率G’’対剪断貯蔵弾性率G’比;
0.5バールより高い、または1バールより高い液圧に曝されたときの流動性および/または分解性;および
水溶性または水不混和性;
のうちの少なくとも1つを具備するゲル状物質をもたらす配合物Sと、
を含む配合物系を提供する。
【0071】
本明細書に記載する実施形態のいずれかのうちの一部によれば、配合物Lは、10000センチポアズ未満の粘度を具備する非硬化性材料を含む。
【0072】
本明細書に記載する実施形態のいずれかのうちの一部によれば、配合物Lは、2000グラム/モル以下の分子量を有するポリ(アルキレングリコール)を含む。
【0073】
本明細書に記載する実施形態のいずれかのうちの一部によれば、配合物Lは、非硬化性材料および硬化性材料を含み、配合物は、硬化されたときまたは硬化条件に曝されたとき、20kPa以下の剪断抵抗を具備する。
【0074】
本明細書に記載する実施形態のいずれかのうちの一部によれば、配合物Lは、硬化条件に曝されたとき、連続的に除去可能な材料(例えば材料L)を形成するためのものである。
【0075】
本発明の一部の実施形態の態様では、空洞を有する三次元物体の付加製造方法を提供する。この方法は、物体および犠牲物体を組み合わせた形状に対応する構造パターンで、犠牲物体が空洞内に封入されるように、複数の層を連続的に形成することを含む。この方法は、空洞から犠牲物体を除去することをさらに含む。本発明の一部の実施形態によれば、空洞の壁と犠牲物体との間に間隙が存在する。
【0076】
本発明のこの態様の実施形態のいずれかのうちの一部によれば、物体の形状はコンピュータ物体入力データによって記述され、方法は、空洞を記述するコンピュータ物体データを生成することと、収縮形状の空洞を記述するコンピュータ物体データを生成することと、コンピュータ物体入力データを収縮形状の空洞を記述するコンピュータ物体データと結合して、物体、犠牲物体、および間隙を記述する結合コンピュータ物体データを提供することとを含む。
【0077】
本発明のこの態様の実施形態のいずれかのうちの一部によれば、物体は、硬化材料(例えば本明細書に記載する材料Mおよび/または材料S)から形成され、層の形成は、少なくとも1つの犠牲層を形成して、硬化材料とは異なる追加材料によって間隙を充填することを含み、追加材料は例えば、それぞれの実施形態のいずれかにおいて、本明細書に記載する材料L、本明細書に記載する材料S、または本明細書に記載する材料Lと材料Sとの組合せとすることができる。
【0078】
本発明の一部の実施形態によれば、追加材料は材料L、例えば10000センチポアズ以下の粘度;1より大きい剪断損失弾性率対剪断貯蔵弾性率比;20kPa未満の剪断弾性率;1バール以下の正圧に曝されたときの流動性;剪断減粘挙動および/またはチキソトロピー挙動;ならびに熱減粘挙動;のうちの少なくとも1つを具備する材料である。
【0079】
本発明の一部の実施形態の態様では、付加製造プロセスによって製作された三次元アセンブリを提供する。アセンブリは、空洞を有する硬化物体、空洞内の硬化犠牲物体、ならびに犠牲物体と空洞の壁との間の非硬化材料または部分的硬化材料、例えば本明細書に記載する材料Lおよび/または材料Sを含み、硬化犠牲物体および非硬化材料または部分的硬化材料(例えば材料Lおよび/または材料S)は空洞から除去可能である。硬化材料は任意選択的にかつ好ましくは、それぞれの実施形態のいずれかにおいて、本明細書に記載する材料M、材料S、またはそれらの組合せである。
【0080】
別途定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術的用語および/または科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載される方法および材料と類似または同等である方法および材料を本発明の実施または試験において使用することができるが、例示的な方法および/または材料が下記に記載される。矛盾する場合には、定義を含めて、本特許明細書が優先する。加えて、材料、方法および実施例は例示にすぎず、限定であることは意図されない。
【0081】
本発明の実施形態の方法および/またはシステムを実行することは、選択されたタスクを、手動操作で、自動的にまたはそれらを組み合わせて実行または完了することを含んでいる。さらに、本発明の方法および/またはシステムの実施形態の実際の機器や装置によって、いくつもの選択されたステップを、ハードウェア、ソフトウェア、またはファームウェア、あるいはオペレーティングシステムを用いるそれらの組合せによって実行できる。
【0082】
例えば、本発明の実施形態による選択されたタスクを実行するためのハードウェアは、チップまたは回路として実施されることができる。ソフトウェアとして、本発明の実施形態により選択されたタスクは、コンピューターが適切なオペレーティングシステムを使って実行する複数のソフトウェアの命令のようなソフトウェアとして実施されることができる。本発明の例示的な実施形態において、本明細書に記載される方法および/またはシステムの例示的な実施形態による1つ以上のタスクは、データプロセッサ、例えば複数の命令を実行する計算プラットフォームで実行される。任意選択的に、データプロセッサは、命令および/またはデータを格納するための揮発性メモリ、および/または、命令および/またはデータを格納するための不揮発性記憶装置(例えば、磁気ハードディスク、および/または取り外し可能な記録媒体)を含む。任意選択的に、ネットワーク接続もさらに提供される。ディスプレイおよび/またはユーザ入力装置(例えば、キーボードまたはマウス)も、任意選択的にさらに提供される。
【図面の簡単な説明】
【0083】
本明細書では本発明のいくつかの実施形態を単に例示し添付の図面を参照して説明する。特に詳細に図面を参照して、示されている詳細が例示として本発明の実施形態を例示考察することだけを目的としていることを強調するものである。この点について、図面について行う説明によって、本発明の実施形態を実施する方法は当業者には明らかになるであろう。
【0084】
図1A-1B】図1Aは、本発明の一部の実施形態に従って製作された、環境への小さい開口を持つ湾曲薄肉トンネルの形状の中空構造を特徴とする、例示的印刷物体を表す画像である。
【0085】
図1Bは、本実施形態に従って液体材料(例えば材料L)が充填された印刷容器を示す、容器の形の例示的物体を表す画像である。
【0086】
図2図2は、本発明の一部の実施形態による例示的方法を記述するフローチャートである。
【0087】
図3図3は、本発明の一部の実施形態による、インタレース造形用材料を含む領域の概略図である。
【0088】
図4A図4Aは、本発明の一部の実施形態による構造の代表的な非限定的実施例の概略図である。
図4B-4E】図4B-4Eは、本発明の一部の実施形態による構造の代表的な非限定的実施例の概略図である。
図4F-4H】図4F-4Gは、本発明の一部の実施形態による構造の代表的な非限定的実施例の概略図である。
【0089】
図4Hは、本発明の一部の実施形態による、芯を封入する中間鞘を少なくとも部分的に封入する中空構造を有する物体の一部分の代表的実施例の概略図である。
【0090】
図5図5は、本発明の一部の実施形態による吐出層の概略図である。
【0091】
図6A図6Aは、本発明の一部の実施形態による付加製造システムの概略図である。
図6B-6C】図6B-6Cは、本発明の一部の実施形態による付加製造システムの概略図である。
図6D図6Dは、本発明の一部の実施形態による付加製造システムの概略図である。
【0092】
図7A-7C】図7A-7Cは、本発明の一部の実施形態による印刷ヘッドの概略図である。
【0093】
図8A-8B】図8A及び8Bは、本発明の一部の実施形態による座標変換を実証する概略図である。
【0094】
図9図9は、芯及び中間鞘の寸法を選択するための本発明の一部の実施形態に従って使用されることができるパラメーターを示す。
【0095】
図10A図10Aは、中空物体を記述するコンピュータ物体データを生成するために好適な例示的手順を記載する概略図である。
図10B図10Bは、中空物体を記述するコンピュータ物体データを生成するために好適な例示的手順を記載する概略図である。
図10C図10Cは、中空物体を記述するコンピュータ物体データを生成するために好適な例示的手順を記載する概略図である。
図10D図10Dは、中空物体を記述するコンピュータ物体データを生成するために好適な例示的手順を記載する概略図である。
図10E図10Eは、中空物体を記述するコンピュータ物体データを生成するために好適な例示的手順を記載する概略図である。
図10F図10Fは、中空物体を記述するコンピュータ物体データを生成するために好適な例示的手順を記載する概略図である。
図10G図10Gは、中空物体を記述するコンピュータ物体データを生成するために好適な例示的手順を記載する概略図である。
図10H図10Hは、中空物体を記述するコンピュータ物体データを生成するために好適な例示的手順を記載する概略図である。
図10I図10Iは、中空物体を記述するコンピュータ物体データを生成するために好適な例示的手順を記載する概略図である。
図10J図10Jは、中空物体を記述するコンピュータ物体データを生成するために好適な例示的手順を記載する概略図である。
【0096】
図11A図11Aは、コンピュータ物体データを取得するために、本発明の一部の実施形態に従って使用することのできる例示的手順を記載するフローチャート図である。
図11B図11Bは、コンピュータ物体データを取得するために、本発明の一部の実施形態に従って使用することのできる例示的手順を記載するフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0097】
本発明は、その一部の実施形態では、付加製造(AM)に関し、さらに詳しくは、付加製造に使用可能であり、一部分に液体材料または液体様材料を有する三次元物体を与える配合物、方法、およびシステムに関するが、それらに限定されない。
【0098】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳しく説明する前に、本発明は、その適用において、下記の説明に示されるか、および/または図面および/または実施例において例示される構成要素および/または方法の組み立ておよび構成の細部に必ずしも限定されないことを理解しなければならない。本発明は、他の実施形態が可能であり、または様々な方法で実施または実行されることが可能である。
【0099】
本発明者らは、三次元物体を作成するための現在公知の付加製造プロセスを実施しながら、複雑なジオメトリ、例えば、狭い開口を具備するかあるいは完全に封入された、空洞、封入容積、薄肉かつ/または交絡かつ/または分岐中空管状構造(例えばパイプ、トンネル)、および海綿状構造などの中空構造を含むジオメトリを有する部分の形成およびクリーニングに問題が観察されることに気付いた。そのような複雑なジオメトリを具備する非限定的な例示的物体として、血管、骨の内部、および心臓などの身体器官の構造を具備する物体がある。
【0100】
さらに詳しくは、本発明者らは、例えば3Dインクジェット印刷を使用してそのような物体を製作する場合、空洞、封入容積、交絡かつ分岐した管、パイプ、および/またはトンネルシステムなど、物体の複雑な部分には典型的には支持体材料、典型的にはゲルの特性を具備する材料が充填され、そのため物体の製作後に従来の機械的かつ/または化学的技術により支持体材料を除去することは実行が難しく、非効率的であり、かつ時間がかかり、その上、複雑な部分および/または物体全体に損傷をもたらすことに気付いた。
【0101】
水噴流および圧縮空気など、支持体材料除去のための機械的技術は、密閉または部分的に密閉された中空構造の場合、支持体材料への噴流の物理的アクセス性が制限されるため、非効率的であり、また、支持体材料の完全な除去のために必要になる加圧力は、物体を損傷するおそれがある。洗浄液に接触させて支持体材料を分解させることを含む、支持体材料除去のための化学的技術は、密閉または部分的に密閉された中空構造の場合、物体のこれらの部分に洗浄液を拡散させる必要があるので、非効率的である。
【0102】
上述の通り、現在実施されている支持体材料配合物は典型的には硬化性材料および非硬化性材料を含み、それらは硬化したときにゲルまたはゲル状材料を形成する。
【0103】
本明細書及び業界において、用語「ゲル」は、半固体材料としても言及されることが多い材料であり、それは、一般的に三次元固体ネットワークを含み、それは、一般的にそれらの間で化学的又は物理的に連結された繊維構造、及びこのネットワーク内で係合される液相から作られる。ゲルは、一般的に固体(例えば非流体)の稠度によって特徴づけられ、相対的に低い引張強度、例えば100kPa未満の相対的に低い剪断弾性率、及び1未満の剪断損失弾性率対剪断貯蔵弾性率(tanδ, G′′/G)を具備する。ゲルは、少なくとも0.5バール、好ましくは少なくとも1バールの正圧を受けたときに流動可能であるとして、又は1バール未満もしくは0.5バール未満もしくは0.3バール以下の圧力を受けたときに流動不可能であるとして特徴づけられることができる。
【0104】
本実施形態によるゲル状材料は、一般的に軟らかい材料であり、それは、ゲル又は固体であることができ、それは、本明細書に記載されるように、ゲルの機械特性及び流動特性を具備する。
【0105】
現在実施されている支持体材料配合物は、典型的には硬化性材料と非硬化性材料との混合物を含み、硬化されたとき、本明細書ではゲル状支持体材料またはゲル支持体材料(例えば材料S)とも呼ばれる硬化支持体材料を形成する。
【0106】
現在実施されている硬化支持体材料は、本明細書に記載されるように、典型的には水混和性または水分散性または水溶性である。
【0107】
本発明者らは、本明細書に記載する複雑な部分を具備する3D物体の製作に非硬化性液体材料を利用することを思いついた。そのような液体材料は、硬化条件に曝された後も液体のままであり、AMプロセスの完了後に、低い正圧を加えるなど、非攻撃的な手段によって容易に除去することができる。
【0108】
従って、複雑なジオメトリおよび/または狭い開口を持つ空洞、トンネル、パイプ、包封容積、および他の部分には、非硬化性液体材料を完全に充填することができ、あるいは非硬化性液体材料を、任意選択的にゲルを形成する従来の硬化性支持体材料と組み合わせて、部分的に充填することができる。製作の完了後に、液体材料は除去することができ、ゲル支持体材料が存在しており、除去する必要がある場合には、一般的な機械的および/または化学的手段によってそれを除去することができる。液体材料は容易に除去され、従ってもし必要ならば支持体材料の全体的な除去、および中空構造の曝露が容易になる。ゲル状支持体材料と組み合わされた場合、液体材料の容易かつ即時の除去は、物理的アクセスまたは拡散誘導アクセスのいずれでも、残留ゲル状支持体材料へのより容易なアクセスを可能にする。液体材料の除去は、化学的除去技術における拡散障壁を排除し、かつ物理的除去技術における圧力の蓄積を低減し、したがって圧力解放チャネルとして働く。
【0109】
本発明を実施に移しながら、本発明者らは、小さい中空構造を有する物体の製作中に容易に除去可能な材料として;典型的にはより大きい中空構造内における硬化性材料から作られたゲル状支持体材料をさらに含む犠牲構造の部分として;かつ本明細書でさらに詳しく後述するように、流体材料の収容を目的とする物体を製作する場合に、最終物体の封入容積内の内部液体材料として;ポリ(アルキレングリコール)などの非硬化性液体材料を利用することに成功した。
【0110】
本発明者らはさらに、近接材料に適用される硬化手順に曝されたときに、液体材料の特性を具備し(本明細書に定義する液体様材料であり)、従って、任意選択的にゲル状支持体材料と組み合わせて、容易に除去可能な材料として機能することのできる、非硬化性材料を利用することを思いついた。
【0111】
本発明者らはさらに、本明細書に記載する液体様材料を使用するのに適したシステムおよび方法であって、付加製造によって製作される物体に液体材料または液体様材料を含めることによって引き起こされる問題を克服するシステムおよび方法を設計し、かつ実施することに成功した。
【0112】
本発明の一部の実施形態では、方法は、最小寸法に沿った幅が4mm未満の空洞を充填するために液体支持体材料を使用し、かつ最小寸法に沿った幅が約4mmを超える空洞を充填するために、液体および一般的(例えばゲルまたはゲル状)支持体材料の組合せを使用する。液体または液体様支持体が吐出され、かつ矯正されるときに、AMシステムは、新たに吐出された層が静止空気環境にあることを確実にすることが好ましい。
【0113】
本明細書で使用する場合、「静止空気環境」とは、空気の流れが存在しない環境、または空気が3m/s未満の速度で流れる環境を指す。
【0114】
それゆえ、本発明の実施形態は、三次元物体の付加製造プロセスにおける液体又は液体様材料の使用に関する。
【0115】
本明細書全体を通して、かつ当業界において、用語「液体」とは、応力に応答してその体積が変わらない流体を表す。液体材料は、流動度すなわち分子が次々に通過することで移動するときに流動する能力、粘度すなわち剪断応力に対する抵抗、非常に低いかあるいはゼロの剪断弾性率(G)、および1より高く、典型的には10より高い剪断損失弾性率対剪断貯蔵弾性率比(G’’/G’またはタンデルタ)によって特徴付けられる。
【0116】
本明細書において、「液体様(液体状)材料」とは、例えば本明細書に記載されるように低い剪断弾性率(例えば100kPa未満または50kPa未満または10kPa未満)、および/または1より高い(任意選択的に5より高い、又は10より高い)剪断損失弾性率対剪断貯蔵弾性率比(タンデルタ)、または剪断減粘挙動を具備することにより、液体と同様の特性を具備する材料を表し、従ってその流動度、粘度、および流動性は液体のものと類似している。
【0117】
一部の実施形態では、液体様材料は、剪断力を加えられたとき、上述した液体の性質を具備する。これらの実施形態の一部では、液体様材料は、断減粘性材料またはチキソトロピー性材料であり、すなわちそれぞれ剪断減粘挙動またはチキソトロピー挙動を具備する材料である。
【0118】
一部の実施形態では、液体様材料は、熱エネルギーを加えられたとき、上述した液体の特性を具備する。これらの実施形態の一部では、液体様材料は、熱減粘性材料であり、すなわち熱減粘挙動を具備する材料である。
【0119】
これらの実施形態のいずれかのうちの一部では、液体様材料は、ゲルまたはペーストの粘稠度および/またはレオロジー特性を有することができる。
【0120】
本発明の一部の実施形態では、液体材料および液体様材料は、以下の性質の1つ以上を具備する。
10000センチポアズ以下の粘度;および/または
1より大きい剪断損失弾性率対剪断貯蔵弾性率比(タンデルタ);および/または
剪断減粘性および/またはチキソトロピー挙動;および/または
熱減粘挙動;および/または
20kPaより低い剪断貯蔵弾性率;および/または
1バール未満または0.5バール未満の正圧に曝されたときの流動性。
【0121】
剪断貯蔵弾性率G’は本明細書では互換可能に「貯蔵剪断弾性率」とも呼ばれ、材料の弾性挙動を反映する。液体材料は典型的には非弾性であり、したがって低い剪断貯蔵弾性率を特徴とする。
【0122】
剪断損失弾性率G’’は本明細書では互換可能に「損失剪断弾性率」とも呼ばれ、材料の粘性挙動を反映する。
【0123】
貯蔵剪断弾性率および損失剪断弾性率は、任意選択的に、剪断レオメータ、例えば歪み制御回転レオメータを使用して、指定された温度および頻度で(例えば当業界で周知の手順を用いて)決定することができる。
【0124】
「タンデルタ(tan delta)」としても知られる剪断損失弾性率対剪断貯蔵弾性率比G’’/G’は、材料の粘弾性挙動を反映する。液体材料は典型的にはより粘性であり、かつ非弾性であるため、液体材料または液体様材料の場合、この比は1より高い。ゲルは典型的には弾性であり、したがってゲルまたはゲル状材料の場合、この比は1より低い。
【0125】
本明細書全体を通して、用語「剪断減粘性(shear-thinning)」とは、(剪断歪み下で)剪断力を加えたときのその粘度の低下(その流動度の増加)に反映される流体化合物または材料の性質を表す。本実施形態の一部では、剪断減粘性材料とは、剪断歪みの約1%~50%超の増加時に、その剪断弾性率の顕著な、例えば少なくとも100%の低下を示すような材料である。
【0126】
本明細書全体を通して、用語「チキソトロピー(thixotropic)」とは、時間依存剪断減粘に反映される流体化合物または材料の性質を表す。すなわち、その粘度は、剪断力が加えられる時間と相関して低下し、剪断力の適用が停止すると元の値に戻る。本実施形態の一部では、チキソトロピー材料とは、50%の歪み下で剪断弾性率の顕著な、例えば少なくとも100%の低下を示すような材料である。
【0127】
本明細書全体を通して、用語「熱減粘(thermal-thinning)」とは、熱エネルギーが加えられたとき(温度が上昇したとき)、その粘度の低下(その流動度の増加)に反映される流体化合物または材料の性質を表す。本実施形態の一部では、熱減粘材料は、40~95℃の温度に(それらの間の任意の中間値および部分範囲を含めて)加熱されたときに、粘度または剪断弾性率の少なくとも20%、または少なくとも50%、または100%もの低下を特徴とする。
【0128】
本明細書全体を通して、用語「印刷物体」又は「製作物体」は、付加製造プロセスの製造物を記載する。この用語は、支持体材料の除去前の、本明細書に記載される方法によって得られた製造物に関する。それゆえ、印刷物体は、硬化(例えば固化)造形用材料及び硬化(例えば固化)支持体材料から作られる。
【0129】
本明細書において使用される用語「印刷物体」は、印刷物品の全体又はその一部に関する。
【0130】
本明細書に使用される用語「造形物体」、「最終物体」、「物体」及び「モデル」は、製造プロセスの最終製造物を記載する。この用語は、支持体材料の除去後の、本明細書に記載される方法によって得られた製造物に関する。それゆえ、モデルは、他に示さない限り、硬化(凝固、固化)造形用材料から本質的になる。
【0131】
本明細書において使用される用語「モデル」、「造形物体」、「最終物体」、及び「物体」は、物品全体又はその一部を示す。
【0132】
物体の「中空構造」とは、物体が、その中に空洞(非中実部分)を有する1つ以上の部分を含むことを意味する。空洞は、固体材料によって完全にまたは部分的に密閉することができる。部分的に密閉される場合、空洞は、物体の最外表面への狭い開口(例えば10mm未満の直径)を具備することができる。空洞は、任意の形状とすることができ、例えば管状、球状、円筒状、立方体状、ピラミッド状、および例えば交絡かつ/または分岐形状(例えば交絡かつ/または分岐トンネルおよび/またはパイプ)を含む非単純接続形状など、より複雑な形状とすることができるが、それらに限定されない。
【0133】
一部の実施形態では、空洞は、少なくとも1つの寸法がミリメートル規模であり、すなわち0.1mm~10mm、または0.1mm~8mm、または0.1mm~5mm、または1mm~5mmである。
【0134】
例示的中空構造は、管、パイプ、およびトンネルなど、薄肉管状構造を含むが、それらに限定されない。それらは分岐または交絡することができ、かつそれらの少なくとも一部分は、本明細書で定義するミリメートル規模の直径を有する。
【0135】
一部の実施形態では、空洞は完全に密閉される。すなわち、それは、物体を取り囲む環境に曝露されない物体内の内部中空構造である。そのような内部中空構造は、本明細書に記載するように任意の形状/ジオメトリとすることができ、その寸法は本明細書に定義するミリメートル規模から数センチメートル(例えば1~20cm、または1~10cm、または1~5cm)、および上は30cm、40cm、50cm、およびそれ以上の範囲にさえすることができる。
【0136】
例示的なそのような物体として、密封された瓶、カップ、および任意の他の密封容器が挙げられるが、それらに限定されない。
【0137】
図1Aは、環境への小さい開口を持つ湾曲薄肉トンネルの形状の中空構造を具備する例示的印刷物体を表す画像である。図1Bは、本実施形態に従って液体材料が充填された印刷容器を示す容器の形の例示的物体を表す画像である。
【0138】
本明細書全体を通して、語句「未硬化構築材料」とは、本明細書に記載するように、連続的に層を形成するために製作プロセス中に吐出される材料を集合的に表すものである。この語句は、印刷物体を形成するために吐出される未硬化材料(本明細書では構築材料配合物とも呼ばれる)、すなわち1つ以上の未硬化造形用材料配合物、および支持体を形成するために吐出される未硬化材料、すなわち未硬化支持体材料配合物、および本実施形態によれば、本明細書に記載されるような液体又は液体様材料を与える配合物を包含する。
【0139】
本明細書全体を通して、互換可能に使用される語句「硬化造形用材料」および「固化造形用材料」とは、本明細書で規定する通り、吐出された構築材料が硬化し、支持体材料(もし存在するなら)が除去された後、造形物体又はその一部を形成する構築材料の部分を表すものである。硬化または固化造形用材料は、本明細書に記載する方法で使用される造形用材料配合物に応じて、単一の硬化材料または2つ以上の硬化材料の混合物とすることができる。
【0140】
本明細書において全体を通して、表現「造形用材料配合物」(それはまた、交換可能に、「造形用配合物」として示される)は、本明細書に記載されるように、造形物体又はその一部を形成するように吐出される未硬化の構築材料の一部を記載する。造形用材料配合物は、(特に他で示さない限り)未硬化の造形用配合物であり、それは、硬化条件にさらすと最終物体又はその一部を形成する。
【0141】
未硬化の構築材料は、一つ又はそれより多い造形用配合物を含むことができ、造形物体の異なる部分が異なる造形用配合物を硬化して作られ、従って異なる硬化された造形用材料又は硬化された造形用材料の異なる混合物から作られるように吐出されることができる。
【0142】
本明細書全体を通して、語句「硬化支持体材料」は、本明細書では互換可能に「硬化支持体材料」または単に「支持体材料」とも呼ばれ、製作された最終物体を製作プロセス中に支持するように意図された構築材料の部分を表すものであり、それは、ひとたびプロセスが完了し、硬化造形用材料が得られると除去される。
【0143】
本明細書全体を通して、本明細書では互換可能に「支持体配合物」または単に「配合物」とも呼ばれる語句「支持体材料配合物」は、本明細書に記載する支持体材料を形成するために吐出される未硬化構築材料の部分を記述するものである。支持体材料配合物は未硬化配合物である。支持体材料配合物が硬化性配合物である場合、それは、硬化条件に曝されると硬化支持体材料を形成する。
【0144】
液体材料もしくは液体様材料または硬化した典型的にはゲル材料もしくはゲル状材料のいずれかとすることのできる支持体材料は、本明細書では犠牲材料とも呼ばれ、それは、層が吐出され硬化エネルギーに曝された後、除去可能であり、それによって最終物体の形状が現れる。
【0145】
本明細書中全体を通して、用語「水混和性(の)」は、少なくとも一部が水に溶解可能である、または分散可能である(すなわち、分子の少なくとも50%が混合時に水中に移動する)物質を記載する。この用語は用語「水溶性(の)」および用語「水分散性(の)」を包含する。
【0146】
本明細書中全体を通して、用語「水溶性(の)」は、等しい体積または重量での水と混合されたとき、均一な溶液が形成される物質を記載する。
【0147】
本明細書中全体を通して、用語「水分散性(の)」は、等しい体積または重量での水と混合されたとき、均一な分散物を形成する物質を記載する。
【0148】
本明細書全体を通して、語句「溶解速度」とは、物質が液体媒体に溶解する速度を表す。溶解速度は、本実施形態の文脈で、一定量の支持体材料が溶解するために要する時間によって決定することができる。測定された時間を本明細書では「溶解時間」という。
【0149】
本明細書全体を通して、語句「重量百分率」が配合物(例えば構築材料配合物)の実施形態の文脈で示される場合、それは、本明細書に記載するそれぞれの配合物または配合システムの総重量の重量百分率を意味する。
【0150】
語句「重量百分率」は「重量%」または「%wt」とも呼ばれる。
【0151】
本明細書全体を通して、本発明の一部の実施形態は、付加製造が3Dインクジェット印刷であるという文脈で説明される。しかし、例えばSLAおよびDLPなど、それらに限定することなく、他の付加製造プロセスも企図される。
【0152】
未硬化の構築材料は、一つ又はそれより多い造形用配合物を含むことができ、硬化されると物体の異なる部分が異なる硬化された造形用配合物又はその異なる組み合わせから作られ、従って異なる硬化された造形用材料又は硬化された造形用材料の異なる混合物から作られるように吐出されることができる。
【0153】
構築材料を形成する配合物(造形用材料配合物及び支持材料配合物)の少なくとも一部は、一種以上の硬化性材料を含み、それは、硬化エネルギーにさらされるとき、固化(硬化)材料を形成する。
【0154】
本明細書中全体を通して、「硬化性材料」は、本明細書に記載されるように硬化条件(例えば硬化エネルギー)にさらされるとき、凝固又は固化して硬化材料を形成する化合物(一般的にはモノマー又はオリゴマー化合物、しかし任意選択的にポリマー化合物)である。硬化性材料は、一般的に重合可能な材料であり、それは、好適な条件、一般的にエネルギー源にさらされるときに重合及び/又は架橋を受ける。
【0155】
本実施形態に係る硬化性材料は、硬化エネルギーとすることのできる硬化条件、および/または化学試薬との接触もしくは環境への曝露など別の硬化条件にさらされている間に、硬化または凝固(固化)することができる。
【0156】
本明細書で使用される用語「硬化性(硬化可能)」及び「凝固性(凝固可能)」は、交換可能に使用される。
【0157】
重合は、例えばフリーラジカル重合、カチオン重合、又はアニオン重合であることができ、各々は、本明細書に記載されるように、例えば放射線、熱などの硬化エネルギーにさらすと誘導されることができる。
【0158】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部において、硬化性材料は、光重合可能な材料であり、それは、本明細書に記載されるように、放射線にさらすと重合するか、及び/又は架橋を受けるものであり、一部の実施形態では、硬化性材料は、UV硬化性材料であり、それは、本明細書に記載されるように、UV放射線にさらすと重合するか、及び/又は架橋を受けるものである。
【0159】
一部の実施形態では、本明細書に記載されるような硬化性材料は、光誘導性フリーラジカル重合を介して重合する光重合可能な材料である。あるいは、硬化性材料は、光誘導されたカチオン重合によって重合する光重合可能な材料である。
【0160】
本明細書に記載される実施形態のいずれかの一部において、硬化性材料は、モノマー、オリゴマー、又は短鎖ポリマーであることができ、各々は、本明細書に記載されるように重合可能及び/又は架橋可能である。
【0161】
本明細書に記載される実施形態のいずれかの一部において、硬化性材料が硬化条件(例えば放射線)にさらされるとき、それは、鎖延長及び架橋のいずれか一つ又はそれらの組み合わせによって固化(凝固、硬化)する。
【0162】
本明細書に記載される実施形態のいずれかの一部において、硬化性材料は、重合反応が起こる硬化エネルギーにさらすとき、重合反応で重合材料を形成することができるモノマー又はモノマーの混合物である。かかる硬化性材料はまた、本明細書においてモノマー硬化性材料として言及される。
【0163】
本明細書に記載される実施形態のいずれかの一部において、硬化性材料は、重合反応が起こる硬化エネルギーにさらすとき、重合反応で重合材料を形成することができるオリゴマー又はオリゴマーの混合物である。かかる硬化性材料はまた、本明細書においてオリゴマー硬化性材料として言及される。
【0164】
本明細書に記載される実施形態のいずれかの一部において、硬化性材料は、モノマーであるか又はオリゴマーであるかにかかわらず、単官能硬化性材料又は多官能硬化性材料であることができる。
【0165】
本明細書では、単官能硬化性材料は、硬化エネルギー(例えば放射線)にさらすときに重合を受けることができる一つの官能基を含む。
【0166】
多官能硬化性材料は、硬化エネルギーにさらすと重合を受けることができる、二つ又はそれより多い、例えば2つ、3つ、4つ又はそれより多い官能基を含む。多官能硬化性材料は、例えば二官能、三官能、又は四官能硬化性材料であることができ、それらは、それぞれ重合を受けることができる2つ、3つ又は4つの基を含む。多官能硬化性材料における二つ以上の官能基は、一般的に本明細書に規定されるように、結合部分によって互いに結合される。結合部分がオリゴマー又はポリマー部分であるとき、多官能基は、オリゴマー又はポリマー多官能硬化性材料である。多官能硬化性材料は、硬化エネルギーを受けるときに重合を受けることができ、及び/又は架橋剤として作用することができる。
【0167】
本実施形態の方法は、本明細書に記載されるように、物体の形状に対応する構成パターンで複数の層を形成することによって、三次元物体を1層ずつ製作する。
【0168】
最終的な三次元物体は、造形用材料、または造形用材料の組合せ、または造形用材料と支持体材料の組合せもしくはそれらの変性物(例えば硬化後)から作られる。これらの作業は全て、立体自由造形の当業者にはよく知られている。
【0169】
本発明の一部の実施形態では、最終的三次元物体は中空管状構造であり、それは分岐せずかつ交絡せず、分岐するが交絡せず、分岐しないが交絡し、あるいは分岐しかつ交絡するものであってよい。
【0170】
一部の実施形態では、最終的三次元物体は、約1mm~約100mmの内径、その内径より大きく、約2mm~約120mmの外径、および約50mm~約500mmの全長を有する。
【0171】
本発明の一部の実施形態の態様では、本明細書に定義する1つ以上の中空構造を含む物体の付加製造で利用可能な、三次元物体の付加製造方法を提供する。
【0172】
この方法は一般的に、物体の形状に対応する構成パターンで複数の層を連続的に形成することによって達成され、それは、前記層のうちの少なくとも少数の層の各々の形成または前記層の各々の形成は、1つ以上の造形用材料配合物(本明細書では「第一構築材料配合物」という)と、本明細書で定義する硬化条件に曝されたとき、液体材料または液体様材料(本明細書で「第二構築材料配合物」という)をもたらす1つ以上の配合物とを含む、2つ以上の構築材料配合物を吐出することと、本明細書でさらに詳しく後述するように、吐出された造形用材料を硬化条件(例えば硬化エネルギー)に曝し、それによって少なくとも硬化(固化)造形用材料を形成することとを含むように行われる。
【0173】
本発明の一部の例示的実施形態では、物体は、2つ以上の異なる造形用材料配合物を吐出することによって製造され、各造形用材料配合物は、AMの異なる吐出ヘッドから吐出される。造形用材料配合物は、任意選択的にかつ好ましくは、吐出ヘッドの同一パス中に層状に堆積される。層内の造形用材料配合物および/または配合物の組合せは、物体の所望の特性に従って、以下にさらに詳細に記載されるように選択される。かかる方法論はまた、「複数材料」として本明細書に言及される。
【0174】
本明細書及び業界で使用される表現「デジタル材料(DMと略す)」は、特定の材料の印刷された領域が2,3個のボクセルのレベルで又は1個のボクセルのレベルであるように微視的なスケール又はボクセルレベルで二種以上の材料の組み合わせを記載する。かかるデジタル材料は、材料のタイプ及び/又は二種以上の材料の比率及び相対的な空間分布の選択によって影響される新しい特性を示すことができる。
【0175】
例示的なデジタル材料では、硬化で得られた、各ボクセル又はボクセルブロックの造形用材料は、硬化で得られた、隣接ボクセル又はボクセルブロックの造形用材料から独立しており、従って各ボクセル又はボクセルブロックは、異なる造形用材料をもたらし、全体の部分の新しい特性は、複数の異なる造形用材料のボクセルレベルでの空間組み合わせの結果である。
【0176】
本明細書において全体を通じて、表現「ボクセルレベルで」が異なる材料及び/又は特性の文脈において使用されるときはいつでも、ボクセルブロック間の差、並びに複数のボクセル又は2,3個のボクセルのグループの間の差を含むことが意味される。好ましい実施形態では、全体の部分の特性は、複数の異なる造形用材料のボクセルブロックレベルでの空間組み合わせの結果である。
【0177】
方法:
本発明の一部の実施形態によれば、三次元物体の付加製造方法が提供され、この方法は、物体の形状に対応する構成パターンで複数の層を逐次形成し、それによって物体を形成することを含む。
【0178】
他に規定されない限り、以下に記載される操作は、多くの実施の組み合わせ又は順序で同時に又は連続して実施されることができることが理解されるべきである。特に、フローチャート図の順序は、限定として考えられるべきではない。例えば、特定の順序でフローチャート図に又は以下の記載に現われる二つ以上の操作は、異なる順序で(例えば逆の順序で)又は実質的に同時に実施されることができる。さらに、以下に記載される複数の操作は、任意であり、実施されなくてもよい。
【0179】
本実施形態の方法を実現するコンピュータプログラムは、一般的に、フロッピーディスク、CD‐ROM、フラッシュメモリデバイス、およびポータブルハードドライブなど、しかしそれらに限らない配布媒体でユーザに配布することができる。コンピュータプログラムは配布媒体から、ハードディスクまたは同様の中間記憶媒体にコピーすることができる。コンピュータプログラムは、それらの配布媒体またはそれらの中間記憶媒体のいずれかからコンピュータの実行メモリにコンピュータ命令をロードし、本発明の方法に従って動作するようにコンピュータを構成することによって、実行することができる。これらの操作は全て、コンピュータシステムの分野の熟練者には周知である。
【0180】
本実施形態のコンピュータ実現方法は、多くの形で具現化することができる。例えばそれは、方法動作を実行するためのコンピュータなどの有形媒体上で具現化することができる。それは、方法動作を実行するためのコンピュータ可読命令を含むコンピュータ可読媒体上で具現化することができる。それはまた、コンピュータプログラムを有形媒体上で実行するように、あるいはコンピュータ可読媒体上で命令を実行するように構成された、デジタルコンピュータ処理能力を有する電子デバイスで具現化することもできる。
【0181】
各層は、二次元表面を走査してそれをパターン化する付加製造装置によって形成される。走査中に、装置は、二次元の層または表面上の複数の目標位置を訪れ、各目標位置または1群の目標位置について、目標位置または目標位置群が構築材料配合物によって占有されるべきか否か、かつどのタイプの構築材料配合物をそこに送達すべきかを決定する。決定は、表面のコンピュータ画像に従って行われる。
【0182】
本発明の好ましい実施形態では、AMは、三次元印刷を、より好ましくは三次元インクジェット印刷を含む。これらの実施形態では、2種以上の構築材料配合物は、各々が1組のノズルを有する1つ以上の吐出ヘッド、好ましくは2つ以上の吐出ヘッドから吐出され、構築材料配合物を支持体構造上に層状に堆積する。AM装置はこうして、占有すべき目標位置に構築材料配合物を吐出し、かつ他の目標位置を空所のままにする。装置は通常、複数の吐出ヘッドを含み、各吐出ヘッドは、異なる構築材料配合物を吐出するように構成されることができる。従って、異なる目標位置を異なる構築材料配合物が占有することができる。構築材料配合物の種類は主に、造形用材料配合物(例えば本明細書に記載される第一構築材料配合物、例えば配合物M)、支持体材料配合物(例えば本明細書に記載される第三材料配合物、例えば配合物S)、及び本明細書に記載される第二構築材料配合物(例えば配合物L)の主なカテゴリに分類されることができる。第二構築材料配合物は、本発明の一部の実施形態によれば、支持体材料配合物として分類されることができ、物体が液体材料を含む実施形態によれば、造形用材料配合物として分類されることができる。支持体材料配合物は、製作プロセス中に物体もしくは物体の一部分を支持するため、かつ/または他の目的で、例えば中空物体もしくは多孔質物体を提供するために役立つ。固体又は半固体(例えばゲル状)支持体を使用するとき、構造は、例えば支持強度を高めるために、さらに造形用材料配合物要素を含んでよい。
【0183】
造形用材料配合物は一般的に、付加製造用に配合された組成物であり、それ自体で、すなわち他の物質と混合されたりまたは組み合わされたりする必要なく、三次元物体を形成することができる。
【0184】
最終的な三次元物体は、それぞれ造形用材料配合物(配合物M)または任意選択的に造形用材料配合物Mの組み合わせから作られる硬化造形用材料配合物または任意選択的に複数の硬化造形用材料(材料M又は複数の材料M)、および本明細書に記載されるように、配合物Lから形成された液体または液体様材料L、または任意選択的に造形用材料配合物M、液体もしくは液体様材料配合物Lおよび支持体材料配合物Sもしくはそれらの変性物(例えば硬化後)のさらなる組み合わせから作られる。これらの作業は全て、立体自由造形の当業者にはよく知られている。
【0185】
本発明の一部の例示的実施形態では、物体は、2つ以上の異なる造形用材料配合物を吐出することによって製造され、各材料配合物は、AMの異なる吐出ヘッドから吐出される。造形用材料配合物は、任意選択的にかつ好ましくは、印刷ヘッドの同一パス中に層状に堆積される。層内の造形用材料配合物および造形用材料配合物の組合せは、物体の所望の特性に従って選択される。
【0186】
本明細書に記載する実施形態のいずれかのうちの一部によれば、複数の層のうちの少なくとも少数の層の形成は、
硬化条件に曝されると硬化造形用材料M(本明細書で第一造形用材料または第一材料とも呼ばれる)を形成する、1種以上の造形用材料配合物を含む配合物M(本明細書で第一構築材料配合物とも呼ばれる)と、
前記硬化条件に曝されると、
1より大きい剪断損失弾性率対剪断貯蔵弾性率比(タンデルタ);
剪断減粘挙動および/またはチキソトロピー挙動;
熱減粘挙動;
20kPa未満の剪断貯蔵弾性率;ならびに
1バール未満または0.5バール未満の正圧に曝されたときの流動性;
のうちの少なくとも1つを具備する、本明細書に記載する液体材料または液体様材料である材料L(本明細書で第二材料とも呼ばれる)を形成する配合物L(本明細書で第二構築材料配合物とも呼ばれる)と、
の少なくとも2種の構築材料配合物を含む、未硬化構築材料を吐出することを含む。
【0187】
本明細書に記載する実施形態のいずれかのうちの一部によれば、層の各々を吐出した後、方法は、吐出された構築材料配合物を硬化条件に曝し、それにより少なくとも硬化造形用材料すなわち材料Mを形成することによって進行する。
【0188】
本明細書に記載する実施形態のいずれかのうちの一部によれば、吐出された層の全部を硬化条件に曝した後、液体材料または液体様材料すなわち材料Lを含む1つ以上の領域を特徴とする印刷物体が得られる。
【0189】
本明細書に記載する実施形態のいずれかのうちの一部によれば、吐出は、硬化造形用材料Mが少なくとも1つの中空構造を形成し、かつ材料Lが少なくとも部分的に中空構造内に封入されるように行われる。
【0190】
本明細書に記載する実施形態のいずれかのうちの一部によれば、吐出された層の全部を硬化条件に曝した後、硬化造形用材料Mによって密閉または部分的に密閉された液体材料または液体様材料Lは、本明細書で後述するように除去され、それにより物体の最終形状が現れる。
【0191】
図2は、本発明の一部の実施形態による例示的方法を記述するフローチャートを提示する。
【0192】
方法は200で開始し、任意選択的にかつ好ましくは、201へと続き、そこで物体の形状に対応するコンピュータ物体データ(例えば3D印刷データ)を入手する。コンピュータ物体データは、本明細書に記載するコンピュータ物体データフォーマットのいずれかとすることができる。コンピュータ物体データを入手するための例示的技術については、図11Aおよび図11Bに関連して後述する。
【0193】
方法は202に進み、そこで、本明細書に記載する未硬化構築材料(例えば、本明細書に記載する材料Mをもたらす本明細書に記載する1つ以上の造形用材料配合物M、硬化条件に曝されたときに液体または液体様(第二)材料Lをもたらす1つ以上の配合物L、および任意選択的に、硬化条件に曝されたときに支持体(第三)材料Sをもたらす1つ以上の支持体材料配合物S)の液滴が、コンピュータ物体データ(例えば印刷データ)に従って、かつ本明細書に記載するように、任意選択的にかつ好ましくは、下述するシステム110またはシステム10など、しかしそれらに限らないAMシステムを使用して、受容媒体上に層状に吐出される。本明細書に記載する実施形態のいずれかで、吐出202は、少なくとも2つの異なるマルチノズルインクジェット印刷ヘッドによって行われる。受容媒体は、本明細書に記載するように、AMシステムのトレー(例えば下述するシステム110のトレー360、または下述するシステム10のトレー12)、または前に吐出された層とすることができる。
【0194】
本発明の一部の実施形態では、吐出202は周囲環境下で達成される。
【0195】
任意選択的に、吐出される前に、未硬化構築材料またはその一部(例えば構築材料の1つ以上の配合物)は吐出前に加熱される。これらの実施形態は、3Dインクジェット印刷システムの作業チャンバの動作温度で比較的高い粘度を有する未硬化構築材料配合物の場合、特に有用である。配合物の加熱は、それぞれの配合物を3Dインクジェット印刷システムの印刷ヘッドのノズルから噴射させることのできる温度まで行われることが好ましい。本発明の一部の実施形態では、加熱はそれぞれの配合物がXセンチポアズ以下の粘度を示す温度まで行われ、Xは約30センチポアズ、好ましくは約25センチポアズ、より好ましくは約20センチポアズ、または18センチポアズ、または16センチポアズ、または14センチポアズ、または12センチポアズ、または10センチポアズ、またはそれ以下でさえある。
【0196】
加熱は、それぞれの配合物をAM(例えば3Dインクジェット印刷)システムの印刷ヘッドに装填する前に、あるいは配合物が印刷ヘッド内に存在する間に、あるいは組成物が印刷ヘッドのノズルを通過する間に実行することができる。
【0197】
一部の実施形態では、粘度が高すぎる場合に配合物による吐出(例えばインクジェット印刷)ヘッドの目詰まりを防止するために、加熱はそれぞれの配合物を吐出(例えばインクジェット印刷)ヘッドに装填する前に行われる。
【0198】
一部の実施形態では、加熱は、少なくとも造形用材料配合物が吐出(例えばインクジェット印刷)ヘッドのノズルを通過する間、吐出(例えばインクジェット印刷)ヘッドを加熱することによって実行される。
【0199】
一部の実施形態では、最終物体で液体または液体様状態に留まる構築材料配合物(例えば本明細書に記載する第二構築材料配合物;配合物L)の吐出中に、静止空気環境を維持するために、下述する冷却システムの動作は一時的に停止される。
【0200】
203で、新たに吐出された層は、例えば下述するレベリング装置32または132を使用して矯正され、レベリング装置は任意選択的にかつ好ましくは回転自在である。新たに吐出された層が、最終物体で液体または液体様状態を維持する配合物(本明細書に記載する第二構築配合物;配合物L)を含む場合、レベリング装置の回転速度は、他の層を矯正する場合のその速度と比較して、変えることが好ましく、典型的には減速される。レベリング装置の回転速度の制御は、コントローラ(例えばコントローラ20またはコントローラ340)によって行うことができる。
【0201】
本明細書に記載する実施形態のいずれかのうちの一部では、方法は、第三構築材料配合物を吐出することをさらに含み、それは、それぞれの実施形態のいずれかにおいて、本明細書に記載する硬化性支持体材料配合物すなわち配合物Sである。
【0202】
コンピュータ物体データ(例えば印刷データ)に従って未硬化構築材料配合物が受容媒体上に吐出されると、方法は、任意選択的にかつ好ましくは204に進み、そこで吐出された層に対し、例えば本明細書に記載する放射源によって硬化条件(例えば硬化エネルギー)が適用される。好ましくは、個々の各層に対し、層の堆積後、および続く層の堆積前に、硬化が適用される。任意選択的に、堆積された(吐出された)層は、本明細書に記載するように、硬化エネルギー以外の硬化条件に曝される。
【0203】
一部の実施形態では、硬化エネルギー(または硬化条件)の適用は、本明細書に記載するように、略乾燥した不活性環境下で達成される。
【0204】
この段階で、硬化造形用材料(材料M)から作られ、かつ本明細書で定義するように、少なくとも1つの中空構造を特徴とする印刷物体は、本明細書で定義するように、液体または液体様(第二)材料すなわち材料Lを充填される。
【0205】
一部の実施形態では、方法は205に進み、そこで、本明細書に記載するように、印刷物体からの液体または液体様(第二)材料Lの除去が達成され、それによって最終物体が現れる。液体材料または液体様材料Lの除去は、任意選択的にかつ好ましくは、本明細書に記載するように、液体材料または液体様材料Lが充填された単数または複数の空洞内に圧力を加えることによる。圧力は、任意選択的にかつ好ましくは、空洞を密閉する単数または複数の鞘に圧力誘導損傷を生じることなく、液体材料または液体様材料Lを空洞から流出させるのに充分な圧力である。任意選択的にかつ好ましくは、材料Lが熱減粘挙動を具備する場合、液体材料または液体様材料Lの除去前に、印刷物体は例えば約40℃~約95℃の温度に加熱される。
【0206】
方法は206で終了する。
【0207】
一部の実施形態では、方法は、それぞれの実施形態のいずれでも、かつそれらの任意の組合せにおいても、本明細書に記載する例示的システムを用いて実行される。
【0208】
造形用材料配合物M、液体配合物L、および支持体材料配合物Sの各々は、もし存在する場合、立体自由形状造形装置の特定の容器またはカートリッジに収容することができ、あるいは造形用材料配合物の組合せを装置の異なる容器から堆積することができる。
【0209】
一部の実施形態では、層のうちの少なくとも1つ、または少なくとも少数(例えば少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも80、またはそれ以上)は、202にある通り、それぞれの実施形態のいずれかにおいて、本明細書に記載するように、単一の造形用材料配合物Mの液滴を吐出することによって形成される。
【0210】
一部の実施形態では、層のうちの少なくとも1つ、または少なくとも少数(例えば少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも80、またはそれ以上)は、202にある通り、それぞれの実施形態のいずれかにおいて、本明細書に記載するように、各々異なる吐出(例えばインクジェット印刷)ヘッドから2つ以上の造形用材料配合物Mの液滴を吐出することによって形成される。
【0211】
これらの実施形態は、とりわけ、所与の数の材料から材料を選択し、かつ選択された材料およびそれらの特性の所望の組合せを定義する能力を提供する。本実施形態によれば、異なる材料による異なる三次元空間位置の占有を達成するか、あるいは2つ以上の異なる造形用材料Mによる略同一の三次元位置または隣接三次元位置の占有を達成するように、層による各材料の堆積の空間位置が定義されるため、層内の材料の堆積後の空間的組合せが可能になり、それによりそれぞれの単数または複数の位置に複合材料を形成することが可能になる。
【0212】
造形用材料Mの任意の堆積後の組合せまたは混合が構想される。例えば、特定の材料Mが吐出された後、それはその元の特性を維持することができる。しかし、それが別の造形用材料または他の吐出材料と同時に、同一位置または近接位置に吐出された場合、吐出された材料とは異なる単数または複数の特性を有する複合材料が形成される。
【0213】
したがって実施形態の一部では、広範囲の材料の組合せを堆積することが可能になり、かつ物体の各部分を特徴付ける所望の特性に応じて、物体の異なる部分を複数の異なる材料の組合せから構成することのできる物体を製作することが可能になる。
【0214】
これらの実施形態の一部では、2つ以上の造形用材料配合物がボクセル方式で吐出され、前記造形用材料配合物のうちの1つ配合物のボクセルは、少なくとも1つの別の造形用材料配合物のボクセルとインタレースされる。
【0215】
一部の実施形態では、層のうちの少なくとも1つ、または少なくとも少数(例えば少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも80、またはそれ以上)は、202にあるように、2つ以上の構築材料配合物の液滴を吐出することによって形成され、一部の実施形態では、構築材料配合物は、造形用材料配合物M(または本明細書に記載する2つ以上の造形用配合物Mの組合せ)と、それぞれの実施形態のいずれかにおいて本明細書に記載する第二構築材料配合物すなわち液体配合物Lとを含み、2つ以上の造形用材料配合物について本明細書に記載する実施形態に従って、各構築材料配合物は異なる吐出(例えばインクジェット印刷)ヘッドから吐出される。
【0216】
一部の実施形態では、層のうちの少なくとも1つ、または少なくとも少数(例えば少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも80、またはそれ以上)は、202にあるように、2つ以上の構築材料配合物の液滴を吐出することによって形成され、一部の実施形態では、構築材料配合物は、造形用材料配合物M(または本明細書に記載する2つ以上の造形用配合物Mの組合せ)と、それぞれの実施形態のいずれかにおいて本明細書に記載する支持体材料配合物Sである第三構築材料配合物とを含み、2つ以上の造形用材料配合物について本明細書に記載する実施形態に従って、各構築材料配合物は異なる吐出(例えばインクジェット印刷)ヘッドから吐出される。
【0217】
一部の実施形態では、層のうちの少なくとも1つ、または少なくとも少数(例えば少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも80、またはそれ以上)は、202にあるように、2つ以上の構築材料配合物の液滴を吐出することによって形成され、一部の実施形態では、構築材料配合物は、支持体材料配合物S(または本明細書に記載する2つ以上の支持体材料配合物Sの組合せ)と、それぞれの実施形態のいずれかにおいて本明細書に記載する液体配合物Lとを含み、2つ以上の造形用材料配合物について本明細書に記載する実施形態に従って、各構築材料配合物は異なる吐出(例えばインクジェット印刷)ヘッドから吐出される。
【0218】
一部の実施形態では、層のうちの少なくとも1つ、または少なくとも少数(例えば少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも80、またはそれ以上)は、202にあるように、3つ以上の構築材料配合物の液滴を吐出することによって形成され、一部の実施形態では、構築材料配合物は、造形用材料配合物M(または本明細書に記載する2つ以上の造形用配合物Mの組合せ)と、それぞれの実施形態のいずれかにおいて本明細書に記載する液体配合物Lと、支持体材料配合物S(または本明細書に記載する2つ以上の支持体材料配合物Sの組合せ)とを含み、2つ以上の造形用材料配合物について本明細書に記載する実施形態に従って、各構築材料配合物は異なる吐出(例えばインクジェット印刷)ヘッドから吐出される。
【0219】
これらの実施形態のいずれかのうちの一部では、2つ以上の構築材料配合物はボクセル方式で吐出され、前記構築材料配合物のうちの1つの配合物のボクセルは、少なくとも1つの別の構築材料配合物のボクセルとインタレースされる。インタレーシングは2つ以上の(第一)造形用材料配合物M、造形用(第一)配合物Mおよび支持体材料配合物S(第三配合物)、本明細書に記載する(第二)液体配合物Lおよび1つ以上の(第一)造形用材料配合物M、本明細書に記載する(第二)液体配合物Lおよび1つ以上の(第三)支持体材料配合物S、または少なくとも1つの(第一)造形用材料配合物Mおよび少なくとも1つの(第三)支持体材料配合物Sおよび本明細書に記載する少なくとも1つの(第二)液体配合物Lを含むことができる。
【0220】
したがって、一部の実施形態は三次元物体の層状製作の方法を提供する。この方法では、層のうちの少なくとも少数(例えば少なくとも2つ、または少なくとも3つ、または少なくとも10、または少なくとも20、または少なくとも40、または少なくとも80)の層の各々、または全ての層に対し、任意選択的にかつ好ましくは、下述するシステム10またはシステム110を使用して、2つ以上の構築材料配合物が吐出される。各構築材料配合物は好ましくは、それを印刷ヘッド(例えば下述するヘッド16)の複数のノズルから噴射することによって吐出される。吐出はボクセル方式で行われ、前記構築材料配合物のうちの1つの配合物のボクセルは、所定のボクセル比に従って、少なくとも1つの別の構築材料配合物のボクセルとインタレースされる。
【0221】
所定のボクセル率での2つの構築材料配合物のそのような組合せは、デジタル材料(DM)と呼ばれる。デジタル材料の代表例を図3に示し、1つの層の領域全体にわたってボクセル方式でインタレースされた材料AおよびBを示す。
【0222】
一部の実施形態では、2つの造形用材料配合物を所定のボクセル比で吐出することにより、所望の機械的特性を特徴とするゴム様材料を得ることが可能になる。例えば、ボクセル比を操作することによって、様々なショアA硬度値を特徴とする一連のゴム様デジタル材料を、制御可能なデジタル方式で得ることができる。
【0223】
任意の予め定められた比率の材料に対し、例えば整然とまたはランダムにインタレースすることによって、デジタル材料を形成することができる。また、インタレースがセミランダムである実施形態、例えば各部分領域がランダムインタレースを含む部分領域の繰り返しパターンも構想される。
【0224】
本明細書に記載する実施形態のいずれかのうちの一部では、本明細書に記載するように、2つ以上の構築材料配合物の液滴が少なくとも少数の層の各々で吐出される場合、吐出は、芯領域および前記芯領域を少なくとも部分的に包囲する1つ以上のエンベロープ領域を形成するように行われる。そのような吐出の結果、複数の層、芯領域を構成する層状芯、およびエンベロープ領域を構成する層状鞘から構成された物体が製作される。本発明の一部の実施形態では、(第二)構築材料配合物すなわち液体配合物Lは、芯領域として(第二)液体材料または液体様材料Lを形成するように吐出され、造形用材料配合物Mまたは造形用材料配合物Mの組合せ(例えばDMを形成する組合せ)は、芯領域を少なくとも部分的に包囲する1つ以上のエンベロープ領域を形成するように吐出される。任意選択的にかつ好ましくは、硬化性支持体材料(第三)配合物Sもまた吐出される。例えば、本発明の一部の実施形態では、硬化性支持体材料(第三)配合物Sは、(第二)材料Lから作られた芯と、造形用材料配合物Mまたは造形用材料配合物Mの組合せから作られた外側エンベロープ領域との間の中間エンベロープ領域を形成するように吐出される。
【0225】
これらの実施形態の一部に係る構造は、2つ以上の材料から作られた鞘付き構造である。この構造は典型的には、1つ以上の層状鞘によって少なくとも部分的に被覆された層状芯を含む。芯の少なくとも1つの層が鞘の少なくとも1つの層と同じ平面で係合する。本実施形態はまた、芯が鞘を形成する複数の層に及ぶように、1つ以上の層状鞘によって少なくとも部分的に被覆された芯を含む鞘付き構造を構想する。これらの実施形態は、芯が材料Lの形態から作られ、層が硬化することなく接合する場合に、特に有利である。
【0226】
構造の表面に対し垂直に測定した各鞘の厚さは、典型的には少なくとも10μmである。様々な例示的実施形態では、芯および鞘はそれらの熱機械的特性が互いに異なる。これは、芯および鞘を異なる構築材料配合物または異なる構築材料配合物の組合せから製作することによって、容易に達成される。芯および鞘の熱機械的特性は、本明細書ではそれぞれ「芯熱機械的特性」および「鞘熱機械的特性」と呼ばれる。
【0227】
本発明の一部の実施形態に係る構造の代表的な非限定実施例を、図4A~Gに示す。
【0228】
図4Aは、構造60の概略斜視図であり、図4Bは、構造60が層状芯を含む実施形態における図4Aの線A-Aに沿った、構造60の断面図であり、図4Cは、構造60が(材料Lから作られた)液体または液体様芯を含む実施形態における図4Aの線A-Aに沿った構造60の断面図である。図示説明を明確にするために、デカルト座標系も示す。
【0229】
構造60は、z方向に沿って積み重ねられた複数の層62を含む。構造60は典型的には、例えば下述するシステム10または110を使用して、AM技術によって製作され、それにより層が連続的に形成される。したがって、z方向は本明細書で、構造の「構築方向」とも呼ばれる。したがって、層62は構築方向に対し垂直である。構造60は円筒として示されているが、本実施形態の構造はどんな形状も取ることができるので、これは必ずしも当てはまらない。
【0230】
構造60の鞘および芯はそれぞれ64および66で示される。芯が層状芯である場合(図4B)、芯66の層および鞘64の層は同一平面上に存在する。芯が液体材料または液体様材料Lである場合(図4C)、芯は鞘64の複数の層にまたがる。AM技術は鞘64および芯66の同時製作を可能にし、それにより特定の形成層について、層の内側部分は芯の一部を構成し、層の周縁部またはその一部は鞘の層を構成する。
【0231】
鞘64に寄与する層の外周部は、本明細書では層の「エンベロープ領域」と呼ばれる。図4A~Cの非限定実施例では、層62の各々はエンベロープ領域を有する。すなわち、図4Aおよび図4Bの各層は、芯および鞘の両方に寄与する。しかし、用途によっては、芯を幾つかの領域で環境に露出させることが望ましい場合があるので、これは必ずしも当てはまらない。これらの用途では、層の少なくとも幾つかはエンベロープ領域を含まない。そのような構成の代表的な例を、図4Dおよび図4Eの断面図に示す。芯には寄与するが、鞘には寄与しない幾つかの層68、および芯および鞘の両方に寄与する幾つかの層70が示されている。図4Dは層状芯を含む構造に適した構成を示し、図4Dは、(本明細書に記載する液体材料または液体様材料Lから作られた)液体または液体様芯66aおよび任意選択的にかつ好ましくは層状芯66bをも有する構造に適した構成を示す。
【0232】
一部の実施形態では、1つ以上の層が芯熱機械的特性を持つ領域を含まず、鞘熱機械的特性を持つ領域のみを備える。これらの実施形態は、構造が1つ以上の薄肉部分を有する場合に特に有用であり、構造のこれらの部分を形成する層は、芯領域を持たないことが好ましい。また、1つ以上の層が鞘熱機械的特性を持つ領域を含まず、芯熱機械的特性を持つ領域のみを備える実施形態も構想される。
【0233】
鞘は、任意選択的にかつ好ましくは、z方向に対して上および/または下から構造60を被覆することもできる。これらの実施形態では、構造60の最上部および/または最下部の幾つかの層は、芯66とは異なる少なくとも1つの材料特性を有する。本発明の様々な例示的実施形態では、構造60の最上部および/または最下部は、鞘64と同一の材料特性を有する。この実施形態の代表的実施例を図4Fおよび図4Gに示す。例えば頂部または底部鞘が構造の上または下の層を備えており、したがって物体を形成する層に要求されるのと同じ厚さを有する場合、構造60の頂部/底部鞘は、側部鞘より薄く(例えば2倍薄く)することができる。図4Fは、層状芯66bを備えた構造に適する構成を示し、図4Dは、液体または液体様(材料L)芯66aを有する構造に適した構成を示す。
【0234】
芯および鞘がどちらも同一造形用材料配合物から構成されたDMから作られる場合、芯の造形用材料のいずれかの相対面密度は、鞘またはエンベロープ領域の材料の相対面密度とは異なる。しかし、一部の実施形態では、芯はDMから形成され、鞘は単一の造形用材料配合物から形成され、あるいはその逆も然りである。
【0235】
本発明の様々な例示的実施形態では、(構築方向zに対し垂直な)x-y面で測定した鞘の厚さは、構築方向に不均一である。換言すると、構造における異なる層は異なる幅のエンベロープ領域を有することがある。例えばx-y面に平行な方向に沿った鞘の厚さは、その方向に沿ったそれぞれの層の直径の百分率として計算することができ、こうして厚さを層の大きさに依存させる。本発明の様々な例示的実施形態では、鞘の厚さは、鞘の外面に対する接線方向でありかつ構築方向に垂直な方向に不均一である。構造の層に関して、これらの実施形態は、それぞれの層の外周に沿って不均一な幅を有するエンベロープ領域に対応する。
【0236】
本発明の一部の実施形態では、構造の鞘またはその一部分はそれ自体、エンベロープ領域以上のものを備えた「鞘付き」構造である。特に、これらの実施形態では、構造は、少なくとも1つの中間エンベロープ領域によって少なくとも部分的に包囲された内部芯を備え、中間エンベロープは外側エンベロープ領域によって包囲される。構築方向に対し垂直に測定した中間エンベロープ領域の厚さは、任意選択的にかつ好ましくは、最外エンベロープ領域の厚さより大きい(例えば10倍大きい)が、必須ではない。これらの実施形態では、中間エンベロープ領域は構造の鞘として働き、したがって上でさらに詳述したように、鞘の特性を有することができる。
【0237】
代替的に、中間エンベロープ領域は支持鞘として働くことができ、その場合、中間エンベロープ領域は好ましくは、硬化性支持体材料(第三)配合物S、または2つ以上の硬化性支持体材料(第三)配合物Sの組合せ(例えばDMを形成するため)、または少なくとも1つの硬化性支持体材料(第三)配合物Sと少なくとも1つの硬化性造形用材料配合物Mとの組合せ(例えばDMを形成するため)、または少なくとも1つの硬化性支持体材料(第三)配合物Sと少なくとも1つの液体配合物Lとの組合せ(例えばDMを形成するため)を吐出することによって形成される。
【0238】
さらに代替的に、中間エンベロープ領域は、内層芯と外層鞘との間の液体または液体様緩衝体として働くことができ、その場合、中間エンベロープ領域は好ましくは液体配合物Lを吐出することによって形成され、芯は好ましくは、(第三)硬化性支持体材料配合物S、または2つ以上の硬化性支持体材料(第三)配合物Sの組合せ(例えばDMを形成するため)、または少なくとも1つの硬化性支持体材料(第三)配合物Sと少なくとも1つの硬化性造形用材料(第一)配合物Mとの組合せ(例えばDMを形成するため)を吐出することによって形成される。
【0239】
最外エンベロープ鞘はまた、中間エンベロープの荷重下の破損を防止するためにも役立つことができる。
【0240】
本実施形態の構造は、上述の通り層毎に、例えば下述するシステム10またはシステム110を使用して形成することができる。本発明の様々な例示的実施形態では、コンピュータ実現方法が自動的に、構造の特定の要素に対する鞘の動的適応を実行する。方法は、任意選択的にかつ好ましくは、ユーザ入力を使用して構造の各領域の鞘を計算し、それぞれの造形用材料または造形用材料の組合せに対し外面のボクセルを割り当てることができる。コンピュータ実現方法は、データプロセッサ(例えば下述するデータプロセッサ154または24)を介して、立体自由形状造形装置を制御する制御ユニット(例えば下述する制御ユニット152または20)によって実行することができる。
【0241】
本発明の一部の実施形態では、構造の最上部および/または最下部にも鞘を形成するために、1つ以上の追加鞘層が吐出される。これらの層は、芯を上からまたは下から覆うように働くので、芯領域が無いことが好ましい。芯を上から覆うことを希望する場合、追加鞘層は、他の全ての層の上に吐出され、芯を下から覆うことを希望する場合、追加層は作業面(例えば下述するトレイ360または12)上に吐出され、他の全ての層はその後で吐出される。
【0242】
エンベロープ領域はいずれも、任意選択的に少なくとも10μmの幅を有する。全てのエンベロープ領域は少なくとも10μmの幅を有することが好ましい。
【0243】
芯領域およびエンベロープ領域はいずれも、かつ任意選択的に最上部および/または最下部の追加層もまた、造形用材料配合物、または造形用材料配合物の組合せ、または本明細書に記載する造形用材料配合物と硬化性支持体材料配合物との組合せ(例えばデジタル材料)を使用して製作することができる。本発明の一部の実施形態では、1つ以上の芯領域は、本明細書に記載する(第二)液体構築材料配合物Lを使用して、または液体Lと支持体材料配合物Sとの組合せ(例えばデジタル材料)を使用して製作される。
【0244】
本発明の一部の実施形態では、構造の様々な領域で選択的に鞘を製作し、他の領域の機械的特性に影響を及ぼすことなく、選択された領域またはエリアだけで材料特性を変化させる。
【0245】
本発明の実施形態のいずれかのうちの一部では、本明細書に記載するように層が吐出された後、本明細書に記載する硬化エネルギーへの曝露が達成される。一部の実施形態では、硬化性材料はUV硬化性材料であり、硬化エネルギーは放射源から放射されるUV放射線である。(第二)液体構築材料配合物Lが吐出されると、それは一部の実施形態では、硬化エネルギーに曝された後、本明細書に記載する液体材料または液体様材料Lをもたらすことが好ましい。
【0246】
本発明の実施形態のいずれかのうちの一部では、中空構造を特徴とする物体を有することを希望する場合、吐出された層が全て硬化条件(例えば硬化エネルギー)に曝された後、本明細書に定義する液体材料または液体様材料である材料Lの除去を達成することができる。
【0247】
液体材料または液体様材料Lの除去204は、物体の形状および機能、中空構造の形状およびサイズ、ならびに/または材料L(第二材料)の特性に応じて、様々な方法によって達成することができる。
【0248】
一部の実施形態では、材料L204の除去は、材料Lが流動可能になる条件を適用することによる。
【0249】
中空構造の容積が大きく(例えば数センチメートル)、かつその開口が大きく(例えば少なくとも1センチメートル)、かつ材料Lが周囲条件で流動可能である場合、材料L204の除去は、単に開口を介してそれを廃棄させるだけで達成することができる。
【0250】
代替的に、特に中空構造が小さい開口を特徴とする場合、液体材料または液体様材料L204の除去は、低い正圧、好ましくは一定圧力を加えることによって達成することができる。
【0251】
圧力は、例えば空気圧、または例えば水溶液(例えば水)の噴流の形の液体圧力とすることができる。
【0252】
圧力は1バール以下、または0.5バール以下、または0.3バール以下であることが好ましく、例えば0.1バール、0.2バール、または0.3バールとすることができる。
【0253】
さらに代替的に、かつ任意選択的に上記に加えて、特に、材料Lが周囲条件で充分に流動可能でない場合、液体材料または液体様材料L204の除去は、材料Lを流動可能にする条件を適用することによって達成される。そのような条件は、例えば剪断力を加えること(例えば第二材料が剪断減粘性材料である場合)、および/または熱エネルギーを加えること(例えば材料Lが熱減粘性材料である場合)を含む。
【0254】
一部の実施形態では、未硬化構築材料は、硬化条件に曝されると硬化支持体材料Sである第三材料を形成する、第三構築材料配合物を含む。
【0255】
これらの実施形態の一部では、層のうちの少なくとも少数の層で、吐出は、第一硬化造形用材料Mが少なくとも1つの中空構造を形成する間、芯領域および中間鞘の一部の実施形態に対し本明細書に記載するように、材料Sが少なくとも部分的に中空構造内に封入され、かつ材料Lが少なくとも部分的に硬化支持体材料S内に封入されるように行われる。
【0256】
これは、まず本明細書に記載する材料Lを除去し、その後、物体を材料Sが除去可能になる条件に、例えば、硬化した支持体材料(例えばゲルまたはゲル状支持体材料)を除去するために付加製造で一般的に使用されているような、かつどんな当業熟練者にも認識されるような、機械的および/または化学的手段に曝すことによって、硬化支持体材料(第三硬化材料、材料S)を除去することを可能にする。
【0257】
これらの実施形態の一部では、吐出は、材料M(硬化造形用材料)が例えば約1~約100mmの内径を持つ本明細書に記載する中空構造を形成し、支持体材料Sが、中空構造内に約0.1~約10mmの厚さを有する中間鞘、任意選択的にかつ好ましくは層状中間鞘を形成し、かつ中空構造の残部に材料Lが充填されて、中間鞘により密閉された芯を形成するように、行われる。
【0258】
これらの実施形態の別の一部では、吐出は、材料M(硬化造形用材料)が本明細書に記載する中空構造を形成し、材料Sが芯を形成し、かつ第二構築材料配合物Lを吐出することにより、材料Mから作られた中間液体または液体様鞘が、任意選択的にかつ好ましくは、芯と中空構造との間に形成されるように行われる。
【0259】
芯76を密閉する中間鞘74を少なくとも部分的に封入する中空構造72を有する物体112の一部分の代表的実施例を図4Hに示す。中間鞘74が材料Lから作られる液体または液体様鞘である場合、芯76は層状芯(例えば材料Sから作られたゲルまたはゲル状芯)であることが好ましく、芯76が材料Lから作られた液体または液体様芯である場合、中間鞘74は層状鞘(例えば材料Sから作られたゲルまたはゲル状芯)であることが好ましい。本発明の様々な例示的実施形態では、芯および中間層は両方とも犠牲物体であり、すなわち(第一)造形用材料Mから形成された構造に本質的に影響しない条件下で除去可能である。鞘、犠牲中間鞘、および犠牲芯を有する管状構造など、しかしそれに限らない物体の製作を可能にする、コンピュータ物体データを操作するのに適した手順の代表的実施例を以下の実施例の節で提供する。
【0260】
図5は、本発明の一部の実施形態に係る製作プロセス中に形成することのできる単一の層80を示す。層80は芯領域82、芯領域82を包囲するエンベロープ領域84を含む。したがって、層80と同様の幾つかの層が互いに重ね合わせて堆積される場合、芯領域は、層80の厚さより大きい厚さを有する芯を形成し、エンベロープ領域は層状鞘を形成するので、領域82は構造の芯に寄与し、領域84は構造の鞘に寄与する。
【0261】
任意選択的にかつ好ましくは、芯領域82とエンベロープ領域84との間に中間エンベロープ領域86も存在する。したがって、層80と同様の幾つかの層が互いに重ね合わせて堆積される場合、エンベロープ領域86は、層の厚さより大きい厚さを有する中間鞘を形成するので、領域86は構造の中間鞘に寄与する。
【0262】
中間エンベロープ領域86は、芯領域82と外側エンベロープ領域84との間の液体または液体様緩衝体として働くことができる。これらの実施形態では、中間エンベロープ領域86は配合物Lを吐出することによって形成されることが好ましく、芯領域82および外側エンベロープ領域84の各々は、硬化性材料配合物または2つ以上の硬化性材料配合物の組合せ(例えばDMを形成するため)を吐出することによって形成されることが好ましい。これらの実施形態で芯領域82および外側エンベロープ領域84を形成するために使用される硬化性材料配合物はいずれも、硬化性支持体材料(第三)配合物Sまたは造形用材料(第一)配合物Mのいずれかとすることができる。
【0263】
本発明の一部の実施形態では、中間エンベロープ領域は、中間鞘が層状鞘となるように硬化される。これらの実施形態では、中間エンベロープ領域86は、硬化性支持体材料(第三)配合物S、または2つ以上の硬化性支持体材料(第三)配合物Sの組合せ(例えばDMを形成するため)、または少なくとも1つの硬化性支持体材料(第三)配合物Sおよび少なくとも1つの硬化性造形用材料(第一)配合物Mの組合せ(例えばDMを形成するため)を吐出することによって形成されることが好ましい。
【0264】
図5に示すように、エンベロープ領域84および86の幅は、層の外周全体にわたって必ずしも均一ではない。エンベロープ領域の幅は、層の外周に沿っても、かつ構築方向にわたっても、両方とも変動することができる。
【0265】
これらの実施形態の一部では、吐出は、本明細書に定義するミリメートル規模の少なくとも1つの寸法を特徴とする小さい中空構造には、液体材料をもたらす(第二)構築材料配合物すなわち液体配合物Lが充填され、かつより大きい中空構造には、液体様材料をもたらす配合物が充填されるように行われる。
【0266】
一部の実施形態では、硬化支持体材料S(第三材料)は、本明細書に定義するように水溶性または水混和性であり、接触時に溶解可能または分散可能な水溶液(例えば洗浄液;溶液の約1重量%~約3重量%の量のアルカリ性物質を含む水溶液)と接触することによって除去される。
【0267】
一部の実施形態では、硬化支持体材料S(第三材料)は、0.5バールより高く、あるいは1バールより高い圧力の空気または液体噴流などの物理的手段を適用することで除去される。
【0268】
特定の正圧(例えば1バール未満または0.5バール未満)を加えることで材料Lが除去される場合、硬化支持体材料Sは、より高い圧力(例えば、それぞれ0.5バールより高く、あるいは1バールより高い)を加えることで除去可能であることが注目される。
【0269】
本発明者らは、液体が充填された立体管状構造を作成する技術を考案した。本発明者らは、管状構造の内壁を覆工する中間鞘が、内側に倒壊する可能性を大幅に低減することを発見した。したがって、本発明の一部の実施形態によれば、製作された管状構造は、硬化性支持体材料配合物を吐出することにより作られた中間鞘(硬化(第三)支持体材料Sから作られた鞘)によって包囲された液体または液体様芯領域と、材料Mを形成するように第一造形用材料配合物Mを吐出することによって、またはデジタル材料である材料Mを形成するように2つ以上の造形用材料配合物Mを吐出することによって作られた外側鞘とを含む。中間鞘は芯と外側鞘との間の緩衝層として働き、任意選択的にかつ好ましくは、(材料Lから作られた)液体または液体様芯と中実鞘との間の接触を防止する。
【0270】
管状構造が製作された後、例えば本明細書に記載するように管の内部に圧力加えることによって、液体または液体様芯を除去することができる。芯の除去後に、中間鞘は典型的には管内に残る。次いで中間鞘は、中間鞘を溶解することのできる溶液を管状構造内に循環させることによって、除去することができる。例えば硬化支持体材料が1%のNaOH溶液により溶解可能である場合、中間鞘は、そのような溶液を管状構造内に循環させることによって除去することができる。
【0271】
芯および中間鞘の寸法は、任意選択的にかつ好ましくは、管状構造の所望の内径に基づいて選択される。図9は、芯および中間鞘の寸法を選択するために本発明の一部の実施形態に従って使用することのできるパラメータを示す。最大芯径パラメータLMAX、中間層の最小厚さパラメータcMIN、および2つの閾値径パラメータDおよびDが示されている。例えばDは、LMAXとcMINの線形結合として、例えばD=LMAX+2*K*cMINで計算することができる。ここでKは1より大きく、典型的には約2~約5である。DはLMAXの線形関数として、例えばD=LMAX*Kで計算することができる。ここでKは典型的には0.8~約1.2である。本発明の一部の実施形態では、係数KとKの比は4cMIN未満、または3cMIN未満、または2cMIN未満である。
【0272】
MAXは典型的には、必須ではないが10mm未満であり、cMINは典型的には、必須ではないが20mm未満かつ0.4mm超であり、あるいは2mm未満かつ0.4mm超である。閾値DおよびDは任意選択的にかつ好ましくは、LMAXおよびcMINならびに容器のジオメトリに基づいて計算される。
【0273】
本発明の一部の実施形態において、外側鞘の内径が第一閾値径Dと等しいかそれより大きい管状構造の領域では、芯の直径は略一定の直径を有することが好ましく、例えばLMAXパラメータと同一である。本発明の一部の実施形態において、外側鞘の内径が第二閾値径D2と等しいかそれより小さい管状構造の領域では、(管の長手軸に垂直な半径方向に沿った)中間鞘の厚さは、略一定の直径であることが好ましく、例えばcMINパラメータと同一である。本発明の一部の実施形態において、外側鞘の内径が第二閾値径Dと第一閾値径Dとの間である管状構造の領域では、芯の直径はLMAXより小さく、かつ中間鞘の厚さはcMINより大きい。これらの領域では、芯の直径および中間鞘の厚さは、管状構造に沿って必ずしも一定ではない。例えば、外側鞘の内径が変動する領域が管状構造に含まれる場合、芯の直径の増大が同時に中間鞘の厚さの減少を伴うように、芯の直径と中間鞘の厚さは相反的に変化し得る。芯の直径および中間鞘の厚さの変化は、任意選択的にかつ好ましくは単調であり、例えば線形変化である。
【0274】
構築材料配合物:
本実施形態によれば、未硬化構築材料は少なくとも2種類の構築材料配合物、すなわち、1つ以上の造形用材料配合物(本明細書では総称して第一構築材料配合物と呼ばれ、あるいは互換可能に、配合物M、または造形用材料配合物Mと呼ばれる)と、本明細書に記載する液体または液体様(第二)材料をもたらす配合物(本明細書では総称して第二構築材料配合物と呼ばれ、あるいは互換可能に、配合物L、もしくは液体配合物L、または単に液体配合物もしくは液体構築材料配合物と呼ばれる)とを含む。
【0275】
1つ以上の造形用材料配合物Mは、任意選択的に1つ以上の非硬化性材料と組み合わせて、さらに任意選択的に、本明細書に記載する開始剤、表面活性剤、衝撃改質剤、着色剤、増粘剤などと組み合わせて、1つ以上の硬化性材料を含む。
【0276】
好ましくは、1つ以上の造形用材料配合物は、造形用材料配合物の総重量の少なくとも50重量%の量の硬化性材料を含む。
【0277】
一部の実施形態では、硬化性材料はUV硬化性材料であり、配合物は、1つ以上の光開始剤をさらに含む。
【0278】
一部の実施形態では、UV硬化性材料はアクリレートまたはメタクリレートであり、モノマー、オリゴマー、またはポリマーアクリレートおよび/またはメタクリレートを含むことができる。
【0279】
造形用材料配合物Mは、硬化条件(例えばUV照射)に曝されると、硬化性材料が重合し、硬化(固化;凝固)材料、または複数の硬化材料(例えばデジタル材料)をもたらすものであり、それらは、本明細書ではまとめて第一材料として言及される。
【0280】
造形用材料配合物の成分およびそれら配分は、最終物体の所望の特徴によって決定される。
【0281】
それぞれの実施形態のいずれかにおいて本明細書に記載される付加製造(例えば三次元インクジェット印刷)に使用可能ないかなる造形用材料配合物も本実施形態の文脈において使用可能である。例示的配合物は、Polyjet(商標)方法論で使用可能な当業界で知られているものである。
【0282】
第二構築材料配合物、配合物Lは、1種以上の配合物を含むことができ、各配合物は、第二構築材料配合物の総重量の少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも60重量%、または少なくとも70重量%、または少なくとも80重量%、または少なくとも90重量%、または100重量%の量の1種以上の非硬化性材料を含む。
【0283】
配合物Lは、本明細書に規定されるように、液体または液体様材料を与えるようなものであり、それらは、まとめて本明細書において交換可能に第二材料、液体材料L又は材料Lとして言及される。
【0284】
配合物Lは、主に非硬化性材料から構成されるので、それが硬化条件に曝されたとき、それが受ける硬化は最小限または本質的にゼロであり(例えば材料の20重量%以下、または10重量%以下が硬化し、例えば重合し)、したがって吐出された配合物と本質的に同じ流動度または粘度を維持するので、硬化条件に曝されて得られる(第二)材料は、本明細書で定義する液体材料または液体様材料である。
【0285】
本明細書に記載する実施形態のいずれかの一部では、第二材料構築配合物中の1つ以上の配合物は、硬化条件に曝されたとき、10000センチポアズ以下、または1000センチポアズ以下、または100センチポアズ以下、例えば10~50センチポアズの粘度を具備する液体又は液体様材料をもたらすような配合物である。
【0286】
本明細書に記載する実施形態のいずれかの一部では、(第二)液体構築材料配合物Lは、材料Lの粘度との相違が20%以下、好ましくは10%以下の粘度を具備する。したがって、硬化条件に曝されたときの配合物Lの粘度または流動度の変化は最小限(例えば10%以下)またはゼロである。
【0287】
第二構築材料配合物Lの場合、本明細書に記載する実施形態のいずれかの一部では、非硬化性材料はポリマー材料であるか、あるいはそれを含み、一部の実施形態では、ポリマー材料は1つ以上の両親媒性および/または親水性ポリマーであるか、あるいはそれを含む。
【0288】
第二構築材料配合物Lの場合、本明細書に記載する実施形態のいずれかの一部では、非硬化性材料は本明細書に定義するポリ(アルキレングリコール)であるか、あるいはそれを含む。非硬化性材料はポリ(アルキレングリコール)自体とすることができ、あるいは1つ以上のポリ(アルキレングリコール)鎖またはブロックを含むことができる。
【0289】
本明細書に記載する実施形態のいずれかの一部では、非硬化性材料は2000グラム/モル未満の分子量を有するポリ(アルキレングリコール)を含み、一部の実施形態では、ポリ(アルキレングリコール)は200~2000、または200~1000、または200~800、または200~600、または400グラム/モルの分子量を有するポリマーである。
【0290】
本明細書に記載する実施形態のいずれかの一部では、ポリ(アルキレングリコール)はポリ(エチレングリコール)である。代替的に、それはポリ(プロピレングリコール)である。
【0291】
本明細書に記載するポリ(アルキレングリコール)の代わりに、またはそれに加えて、配合物Lに含めるのに適した他の非硬化性材料として、1つ以上のポリ(アルキレングリコール)ブロックを含むブロックコポリマー、例えば商品名Pluronic(登録商標)で市販されているようなポリ(エチレングリコール)およびポリ(プロピレングリコール)のブロックコポリマー、ジオール(例えばプロパンジオール)、グリセロール、および高級ポリオールなどのポリオールがあるが、それらに限定されない。
【0292】
配合物Lに含めるのに適した追加の非硬化性材料は、植物油、合成油、炭化水素油、シリコーン油、脂肪酸、鉱油、およびパラフィン油のうちの1つ以上のような、しかしそれらに限定されない1つ以上の油を含む。一部の実施形態では、油は、粘度、または材料Lを特徴付けるものとして本明細書で記載する特性のいずれかを具備する。
【0293】
本明細書に記載する実施形態のいずれかの一部では、液体配合物Lは、水をさらに含む。
【0294】
本明細書に記載する実施形態のいずれかの一部では、液体配合物Lは、任意選択的に非硬化性材料と組み合わせて硬化性材料を含むが、硬化性材料の硬化(例えば重合)を促進する触媒または開始剤が欠如している。そのような実施形態では、硬化条件に曝されたときの液体配合物Lの硬化は最小限であるかゼロであり、形成された材料Lは、本明細書に記載する配合物Lと同様の流動特性を具備する。
【0295】
(第二)液体材料Lが本明細書に記載されるように10000センチポアズ未満の粘度及び/又は液体配合物Lの粘度と同様の粘度を具備する本明細書に記載する実施形態のいずれかの一部では、物体は、中空構造の少なくとも一部分において、本明細書に記載されるように、ミリメートル規模の少なくとも一つの寸法を有する中空構造を含む。
【0296】
本明細書に記載する実施形態のいずれかの一部では、材料Lは、20kPa未満、または15kPa未満、または10kPa未満、または5kPa未満の剪断弾性率を具備し、したがって非常に軟質で流動可能なゲルの粘稠度を具備する。そのような材料をもたらす配合物は、本明細書では、液体様材料Lをもたらす配合物Lとも呼ばれる。
【0297】
これらの実施形態の一部では、配合物Lは、任意選択的に、かつ好ましくは、本明細書でそれぞれの実施形態のいずれかに記載する非硬化性材料と組み合わせて、硬化性材料を含む。
【0298】
これらの実施形態の一部によれば、硬化性材料は、本明細書で定義する単官能硬化性材料であるか、あるいはそれを含む。
【0299】
好ましくは、硬化性材料は、配合物Lの総重量の50重量%以下、好ましくは40重量%以下、または30重量%以下、または20重量%以下、および15重量%、10重量%以下もの量である。一部の実施形態では、配合物L中の硬化性材料の量は10~25重量パーセントの範囲である。
【0300】
本明細書に記載する実施形態のいずれかの一部によれば、硬化性材料は、両親媒性または親水性である。
【0301】
本明細書に記載する実施形態のいずれかの一部によれば、硬化性材料は、硬化時に、本明細書で定義する水溶性または水混和性の材料をもたらすような材料である。
【0302】
本明細書に記載する実施形態のいずれかの一部によれば、硬化性材料は、硬化時に、本明細書で定義する剪断減粘性材料および/またはチキソトロピー材料および/または熱減粘材料をもたらすような材料である。
【0303】
例示的な液体配合物Lは、少なくとも50重量%および最大100重量%までの量の本明細書に記載するポリ(アルキレングリコール)を、任意選択的に総量で10~25重量%の本明細書に記載する1種以上の硬化性材料と組み合わせて、かつさらに任意選択的に本明細書に記載する追加成分と組み合わせて含む配合物を含む。
【0304】
例示的な液体配合物Lは、少なくとも50重量%および最大100重量%までの量の本明細書に記載する1種以上の油を、任意選択的に総量で10~25重量%の本明細書に記載する1種以上の硬化性材料と組み合わせて、かつさらに任意選択的に本明細書に記載する追加成分と組み合わせて含む配合物を含む。
【0305】
一般的に、一部の実施形態では、液体配合物Lは、材料L(第二材料)が本明細書に定義する水溶性または水混和性であるように選択される。
【0306】
一部の実施形態では、液体材料は、水混和性であり、液体様材料は、水溶性である。
【0307】
一般的に、一部の実施形態では、第二構築材料配合物Lは、材料Lが本明細書に定義する剪断減粘性材料であるように選択される。
【0308】
一般的に、一部の実施形態では、第二構築材料配合物は、材料Lが本明細書に定義するチキソトロピー材料であるように選択される。
【0309】
一般的に、一部の実施形態では、第二構築材料配合物は、材料Lが本明細書に定義する熱減粘材料であるように選択される。
【0310】
本明細書に記載する実施形態のいずれかの一部では、未硬化構築材料は、本明細書に記載する2種以上の液体配合物L、例えば、本明細書に記載する未硬化配合物と略同一の粘度を具備し、かつ非硬化性材料を含む液体材料Lをもたらす1種以上の配合物、および本明細書に記載する20kPa以下の剪断応力を具備し、かつ本明細書に記載する硬化性材料および非硬化性材料を含む液体様材料Lをもたらす1種以上の配合物を含む。
【0311】
これらの実施形態の一部では、吐出は、本明細書に定義するようにミリメートルスケールの少なくとも1つの寸法を特徴とする小さい中空構造には、液体材料Lをもたらす配合物Lが充填され、かつより大きい中空構造には、液体様材料Lをもたらす配合物Lが充填されるように行われる。
【0312】
本明細書に記載する実施形態のいずれかのうちの一部では、未硬化構築材料は、本明細書に記載する造形用材料配合物Mおよび液体配合物Lに加えて、本明細書で互換可能に配合物S、または支持体配合物、または支持体材料配合物とも呼ばれる、第三の種類の1種以上の構築材料配合物を含み、それらは、硬化条件に曝されると、本明細書で互換可能に材料Sとも呼ばれる硬化支持体(第三)材料をもたらす、硬化性配合物である。
【0313】
当業界で公知の硬化支持体材料をもたらす配合物のいずれか、典型的には、硬化したときに水溶性または水混和性または水分解性であり、かつ/または物理的手段(例えばウォータージェット)もしくは化学的手段(例えば洗浄液)によって除去可能である材料S(第三材料)をもたらす配合物は、これらの実施形態の文脈において使用可能である。
【0314】
一部の実施形態によれば、(第三)構築材料配合物Sは、(第三材料;材料Sとして)ゲルまたはゲル状硬化支持体材料をもたらすようなものである。
【0315】
実施形態によれば、配合物Sは、
1未満の剪断損失弾性率G’’と剪断貯蔵弾性率G’との比(タンデルタ);および/または
0.5バールより高いかあるいは1バールより高い液圧に曝されたときの流動性および/または分解性;および/または
本明細書に定義する水溶性または水不混和性;
の少なくとも1つを特徴とする、硬化(第三)支持体材料、材料Sをもたらす。
【0316】
例示的な支持体材料配合物Sは、1種以上の硬化性材料、好ましくは親水性または両親媒性硬化性材料、さらに好ましくは単官能硬化性材料と、1種以上の非硬化性材料、好ましくは親水性または両親媒性ポリマー材料と、硬化性材料の硬化を促進するための1種以上の開始剤とを含む。
【0317】
本明細書を通じて使用される用語「親水性」は、一般的に水素結合によって、水分子との結合の一時的な形成の役割をする化合物又は化合物の一部(例えば化合物中の化学基)の物理特性を記載する。
【0318】
親水性化合物又は化合物の一部(例えば化合物中の化学基)は、一般的に電荷分極されかつ水素結合することができるものである。
【0319】
親水性化合物又は基は、一般的に、水分子と強い水素結合を形成する一つ以上の電子供与ヘテロ原子を含む。かかるヘテロ原子は、限定されないが、水素及び窒素を含む。好ましくは、親水性化合物又は基中の炭素原子の数とヘテロ原子の数の比は、10:1又はそれより小さく、例えば8:1、より好ましくは7:1、6:1、5:1又は4:1又はそれより小さい。化合物及び基の親水性はまた、化合物又は化学基中の疎水性と親水性部分の間の比からもたらされ、上で示した比のみに依存しないことに注意すべきである。
【0320】
親水性化合物は、油又は他の疎水性溶媒中より水中において容易に溶解する。親水性化合物は、例えばLogPがオクタノール及び水相で決定されるとき、0.5未満のLogPを有するものとして決定されることができる。
【0321】
親水性化合物は、化合物を親水性にする一つ以上の親水性基を有することができる。かかる親水性基は、一般的に極性基であり、それは、水素及び窒素のような一つ以上の電子供与ヘテロ原子を含む。親水性基は、例えばモノマー単官能硬化性材料の一つ以上の置換基又はオリゴマー単官能硬化性材料の二つ以上の置換基もしくは中断基であることができる。親水性基は、例えばモノマー多官能硬化性材料の一つ以上の置換基又はモノマー多官能硬化性部分の連結部分の一つ以上の置換基もしくは中断基であることができる。親水性基は、例えばオリゴマー多官能硬化性材料中のオリゴマー連結部分の二つ以上の置換基又は中断基であることができる。
【0322】
例示的な親水性基は、限定されないが、電子供与ヘテロ原子、カルボキシレート、チオカルボキシレート、オキソ(=O)、線状アミド、ヒドロキシ、(C1-4)アルコキシ、(C1-4)アルコール、ヘテロ脂環式(例えば本明細書に規定されたような炭素原子対ヘテロ原子の比を持つ)、ラクトンのような環状カルボキシレート、ラクタムのような環状アミド、カルバメート、チオカルバメート、シアヌレート、イソシアヌレート、チオシアヌレート、ウレア、チオウレア、アルキレングリコール(例えばエチレングリコール又はプロピレングリコール)、及び親水性ポリマー又はオリゴマー部分(これらの用語は、以下に規定される)、及びそれらの組み合わせ(例えば示された親水性基の二つ以上を含む親水性基)を含む。
【0323】
一部の実施形態では、親水性基は、電子供与ヘテロ原子、カルボキシレート、ヘテロ脂環式、アルキレングリコール、及び/又は親水性オリゴマー部分であるか、又はそれらを含む。
【0324】
本明細書で使用される親水性ポリマー又はオリゴマー部分は、本明細書に規定される親水性基を含むポリマー鎖を含む。親水性基は、例えばポリ(アルキレングリコール)又は親水性ペンダント基のようにポリマー部分の主鎖内のヘテロ原子であることができる。本発明の一部の実施形態によるポリマー又はオリゴマー部分は、好ましくは10~40の繰り返し主鎖単位、より好ましくは10~20の繰り返し主鎖単位を有する。
【0325】
本明細書を通じて使用される用語「両親媒性」は、親水性化合物について本明細書に記載されるような親水性と、疎水性又は親油性の両方を組み合わせた化合物の特性を記載し、後者は、水分子との結合の一時的な形成の不足、従って水不混和性の原因となり、炭化水素中で混和性又は溶解性である化合物又は化合物の一部(例えば化合物中の化学基)の物理的特性に関する。
【0326】
両親媒性材料は、一般的に、本明細書に規定されるような親水性基と、本明細書に規定されるような、炭化水素のような疎水性基の両方を含み、水と水不混和性溶媒(油)の両方に実質的に溶解可能である。
【0327】
第三構築材料配合物として使用可能な例示的支持体材料配合物は、SUP705、SUP706、およびSUP707として市販されているものを含むが、それらに限定されない。そのような配合物Sを硬化条件(典型的にはUV放射線)に曝して得られた硬化(第三)材料Sは、これらの配合物に推奨される洗浄液および/または物理的手段を用いて除去することができる。
【0328】
本実施形態によれば、第二構築材料配合物すなわち配合物Lは、付加製造で支持体材料、犠牲材料、または犠牲構造、または物体を提供するために、任意選択的に、本明細書に記載するように、第三構築材料配合物すなわち配合物Sと一緒に、それぞれ配合物または配合物系として使用可能である。
【0329】
本発明の一部の実施形態の態様では、三次元物体の付加製造で支持体材料、犠牲材料、犠牲構造、または犠牲物体を形成するために使用可能な配合物系を提供する。この配合物系は、
硬化条件に曝されたとき、
1より大きい剪断損失弾性率対剪断貯蔵弾性率比(タンデルタ);
剪断減粘挙動および/またはチキソトロピー挙動;
熱減粘挙動;
20kPa未満の剪断貯蔵弾性率;ならびに
1バール未満または0.5バール未満の正圧に曝されたときの流動性;
のうちの少なくとも1つを特徴とする液体材料または液体様材料すなわち材料Lをもたらす、本明細書に記載する配合物Lと、
硬化条件に曝されたときに、
1未満の剪断損失弾性率G’’対剪断貯蔵弾性率G’比;
0.5バールより高い、または1バールより高い液圧に曝されたときの流動性および/または分解性;ならびに
本明細書に記載する水溶性または水不混和性;
のうちの少なくとも1つを具備するゲル状物質をもたらす配合物Sと、
を含む。
【0330】
配合物系の配合物Lは、それぞれの実施形態のいずれかで、かつそれらの任意の組合せで、第二構築材料配合物について本明細書に記載する通りである。
【0331】
配合物系の配合物Sは、それぞれの実施形態のいずれかで、かつそれらの任意の組合せで、第三材料配合物について本明細書に記載する通りである。
【0332】
そのような配合物系は、硬化条件に曝されたとき、順次除去可能な犠牲材料または犠牲構造を形成し、配合物Lによってもたらされた材料Lが、液体または液体様材料Lについて本明細書に記載する通り最初に除去され、その後、硬化条件に曝されたとき配合物Sによってもたらされた材料Sが、硬化支持体材料について本明細書に記載する通り除去されるようにすることによって、例えば付加製造で使用可能である。
【0333】
本発明の一部の実施形態の態様では、適切な硬化条件に曝されることで液体様材料Lをもたらすために使用可能な配合物Lであって、液体様材料を含めることが有利である場合に3D物体の付加製造で使用することのできる配合物Lを提供する。配合物は、支持体材料配合物として、または中空物体が形成されるときに本明細書に記載する支持体材料配合物系の一部として、かつ/または3D物体の一部分に(例えば物体内の1つ以上の空洞に)流体材料を含む3D物体を提供するための造形用材料配合物として、使用可能である。
【0334】
そのような配合物は、液体材料または液体様材料Lをもたらす提供する配合物の文脈で、それぞれの実施形態のいずれかで本明細書に記載する第二構築材料配合物に対応する。
【0335】
一部の実施形態では、そのような配合物Lは、
本明細書に記載するように、少なくとも50重量%の量の、10000セチポアズ以下の粘度を特徴とする非硬化性材料と、
50重量%未満の量の、単官能性、親水性、剪断減粘性、チキソトロピー性、熱減粘性、水溶性、または水不混和性のうちの少なくとも1つを特徴とする硬化性材料と、
を含む。
【0336】
一部の実施形態によれば、本明細書に記載する配合物はいずれも、1つ以上の追加成分をさらに含むことができる。そのような成分は、例えば安定剤、界面活性剤、重合防止剤、着色剤(例えば染料、顔料)、剪断減粘剤、チキソトロピー剤等を含む。そのような成分は典型的には、それを含有する配合物の総重量の0.1~2重量%、または0.1~1重量%の量が含まれる。
【0337】
硬化性材料を含む一部の配合物は、本明細書に記載するように本実施形態に従って、硬化性材料の硬化(固化、例えば重合)を促進するための開始剤をさらに含むことができる。光重合性(例えばUV硬化性)材料の場合、開始剤は光開始剤(例えば放射線に曝露したとき遊離基を生成する材料または材料の組合せ)である。
【0338】
開始剤は典型的には、それを含有する配合物または配合物系の総重量の1~5重量%または1~3重量%の量が含まれる。
【0339】
システム:
本発明の一部の実施形態による、物体112のAMに適したシステム110の代表的かつ非限定的実施例を、図6Aに示す。システム110は、複数の吐出ヘッドを含む吐出ユニット16を有する付加製造装置114を備える。各ヘッドは、下述する図7A図7Cに示すように、液状(未硬化)構築材料配合物124が吐出される1つ以上のノズル122のアレイを含むことが好ましい。
【0340】
装置114は、三次元印刷装置であることが好ましいが、必須ではない。その場合、吐出ヘッドは、印刷ヘッドであり、構築材料配合物は、インクジェット技術によって吐出される。用途によっては、付加製造装置は、三次元印刷技術を採用する必要がない場合があるので、これは必ずしも該当しない。本発明の様々な例示的実施形態に従って構想される付加製造装置の代表的実施例は、熱溶解積層造形装置および熱溶解材料配合物堆積装置を含むが、それらに限定されない。
【0341】
各吐出ヘッドは、任意選択的にかつ好ましくは構築材料配合物リザーバを介して供給され、リザーバは、任意選択的に、温度制御ユニット(例えば温度センサおよび/または加熱装置)および材料レベルセンサを含んでもよい。構築材料配合物を吐出するために、例えば圧電式インクジェット印刷技術の場合のように、吐出ヘッドノズルを介して材料配合物の液滴が選択的に堆積されるように、電圧信号が吐出ヘッドに印加される。各ヘッドの吐出率は、ノズルの個数、ノズルの種類、および印加電圧の信号レート(周波数)に依存する。そのような吐出ヘッドは、立体自由造形の当業者には知られている。
【0342】
吐出ノズルまたはノズルアレイの総数は、吐出ノズルの半数が支持体材料配合物を吐出するように設計され、かつ吐出ノズルの半数が造形用材料配合物を吐出するように設計され、すなわち造形用材料配合物を噴出するノズルの個数が支持体材料配合物を噴出するノズルの個数と同数になるように、選択されることが好ましいが、必須ではない。図6Aの代表的実施例には4つの吐出ヘッド16a、16b、16c、および16dが示される。ヘッド16a、16b、16c、および16dの各々がノズルアレイを有する。この実施例では、ヘッド16aおよび16bは造形用材料配合物用に設計することができ、ヘッド16cおよび16dは支持体材料配合物用に設計することができる。こうして、ヘッド16aは第一造形用材料配合物を吐出することができ、ヘッド16bは第二造形用材料配合物を吐出することができ、ヘッド16cおよび16dは両方とも支持体材料配合物を吐出することができる。あるいは、ヘッド16bは、支持体材料配合物を吐出することができる。代替的実施形態では、例えばヘッド16cおよび16dは、支持体材料配合物を吐出するための2つのノズルアレイを有する単一のヘッドに組み合わされてよい。
【0343】
それにも関わらず、それは本発明の範囲を限定することを意図するものではなく、造形用材料配合物吐出ヘッド(造形用ヘッド)の個数および支持体材料配合物吐出ヘッド(支持体用ヘッド)の個数は異なってもよいことを理解されたい。一般的に、造形用ヘッドの個数、支持体用ヘッドの個数、およびそれぞれのヘッドまたはヘッドアレイの各々におけるノズルの個数は、支持体材料配合物の最大吐出率と造形用材料配合物の最大吐出率との間に所定の比率αがもたらされるように選択される。所定の比率αの値は、形成される各層における造形用材料配合物の高さが支持体材料配合物の高さに等しいことを確実にするように選択されることが好ましい。αの典型値は約0.6~約1.5である。
【0344】
例えばα=1の場合、全ての造形用ヘッドおよび支持体用ヘッドが作動しているときに、支持体材料配合物の総吐出率は造形用材料配合物の総吐出率と略同一である。
【0345】
好適な実施形態では、ノズルp個のアレイk個を各々有する造形用ヘッドH個、およびノズルq個のアレイu個を各々有する支持体用ヘッドH個が存在するので、H×k×p=H×u×qとなる。H×k個の造形用アレイおよびH×u個の支持体用アレイの各々は、別個の物理ユニットとして製造することができ、それをアレイ群に組み立てたり、そこから分解したりすることができる。この実施形態では、そのようなアレイの各々は、任意選択的にかつ好ましくは、それ自体の温度制御ユニットおよび材料配合物レベルセンサを含み、かつその動作のために個々に制御された電圧を受け取る。
【0346】
装置114は、凝固装置324をさらに含むことができ、それは、堆積された材料配合物を硬化させる光、熱などを放出するように構成された任意の装置を含むことができる。例えば凝固装置324は、1つ以上の放射源を含むことができ、それは、使用される造形用材料配合物に応じて、例えば紫外線もしくは可視光もしくは赤外線ランプ、または他の電磁放射源、または電子ビーム源とすることができる。本発明の一部の実施形態では、凝固装置324は、造形用材料配合物を硬化または凝固させるように働く。
【0347】
本発明の一部の実施形態では、装置114は、一つ以上のファンなどの冷却システム134を含む。
【0348】
吐出ヘッドおよび放射源は、作業面として働くトレイ360上を往復運動するように動作することが好ましいフレームまたはブロック128に取り付けられることが好ましい。本発明の一部の実施形態では、放射源は、吐出ヘッドによって吐出されたばかりの材料配合物を少なくとも部分的に硬化または凝固するために、放射源が吐出ヘッドの後に追従するようにブロックに取り付けられる。トレイ360は水平に配置される。一般的な取決めに従って、X‐Y‐Zデカルト座標系はX‐Y面がトレイ360と平行になるように選択される。トレイ360は、垂直方向に(Z方向に沿って)、通常は下方に移動するように構成されることが好ましい。本発明の様々な例示的実施形態では、装置114は、1つ以上のレベリング装置132、例えばローラ326をさらに備える。レベリング装置326は、新たに形成された層の厚さを、その上に次の層が形成される前に矯正し、平準化し、かつ/または確立するように働く。レベリング装置326は、レベリング中に発生した余分な材料配合物を回収するために、廃棄物回収装置136を含むことが好ましい。廃棄物回収装置136は、廃棄物タンクまたは廃棄物カートリッジに材料配合物を送達する何らかの機構を含んでよい。廃棄物回収については後でさらに詳述する。
【0349】
使用中に、ユニット16の吐出ヘッドは、本書ではX方向と呼ぶ走査方向に移動し、それらがトレイ360上を通過する過程で所定の構成に構築材料配合物を選択的に吐出する。構築材料は通常、1種類以上の支持体材料配合物および1種類以上の造形用材料配合物を含む。ユニット16の吐出ヘッドの通過に続いて、放射源126による造形用材料配合物の硬化が行われる。堆積されたばかりの層のためのヘッドの出発点に戻るヘッドの逆方向の通過中に、所定の構成に従って構築材料配合物の追加吐出が実行されてよい。吐出ヘッドの順方向または逆方向の通過中に、こうして形成された層は、レベリング装置の順方向および/または逆方向の移動中に好ましくは吐出ヘッドの経路に従うレベリング装置326によって矯正される。吐出ヘッドがX方向に沿ってそれらの出発点に戻ると、吐出ヘッドは、本書ではY方向と呼ぶ割出し方向に沿って別の位置に移動し、X方向に沿った往復運動によって同じ層を構築し続けてよい。代替的に、吐出ヘッドは、順方向および逆方向の移動の間に、または2回以上の順方向‐逆方向移動の後に、Y方向に移動してよい。単一の層を完成させるために吐出ヘッドによって実行される一連の走査は、本書で単一走査サイクルと呼ばれる。
【0350】
層が完成すると、次に印刷される層の所望の厚さに応じて、トレイ360は、Z方向に所定のZレベルまで下降する。この手順は、三次元物体112が層毎に形成されるように繰り返される。
【0351】
別の実施形態では、トレイ360は、層内で、ユニット16の吐出ヘッドの順方向および逆方向の通過の間に、Z方向に変位されてよい。そのようなZ変位は、レベリング装置を1方向に表面と接触させ、かつ他の方向の接触を防止するために実行される。
【0352】
システム110は、任意選択的にかつ好ましくは、構築材料配合物容器またはカートリッジを含みかつ複数の構築材料配合物を製造装置114に供給する構築材料配合物供給システム330を備える。
【0353】
制御ユニット340は、製造装置114および任意選択的にかつ好ましくは供給システム330をも制御する。制御ユニット340は通常、制御動作を実行するように構成された電子回路を含む。制御ユニット340は、コンピュータ物体データ、例えば標準テッセレーション言語(STL)フォーマットなどの形式でコンピュータ可読媒体に表されたCAD構成に基づいて、製作命令に関するデジタルデータを送信するデータプロセッサ154と通信することが好ましい。通常、制御ユニット340は、各吐出ヘッドまたはノズルアレイに印加される電圧、およびそれぞれの印刷ヘッドの構築材料配合物の温度を制御する。
【0354】
製造データが制御ユニット340にロードされると、制御ユニットは、ユーザの介入なしに動作することができる。一部の実施形態では、制御ユニット340は、例えばデータプロセッサ154を用いて、あるいはユニット340と通信するユーザインタフェース116を用いて、オペレータから追加の入力を受信する。ユーザインタフェース116は、例えばキーボード、タッチスクリーンなど、しかしそれらに限らず、当業界で公知の任意の種類とすることができる。例えば制御ユニット340は、追加の入力として、1つ以上の構築材料配合物の種類および/または属性、例えば色、特性歪み、および/または転移温度、粘度、電気特性、磁気特性などを受信することができるが、それらに限定されない。他の属性および属性群も考えられる。
【0355】
本発明の一部の実施形態に係る物体のAMに適したシステム10の別の代表的かつ非限定的実施例を図6B図6Dに示す。図6B図6Dは、システム10の上面図(図6B)、側面図(図6C)、および等角図(図6D)を示す。
【0356】
本実施形態では、システム10は、トレイ12と、各々が複数の分離したノズルを有する複数のインクジェット印刷ヘッド16とを備える。トレイ12は、円板の形状を有することができ、あるいは環状とすることができる。垂直軸線を中心に回転することができることを前提として、非円形の形状も考えられる。
【0357】
トレイ12およびヘッド16は、任意選択的にかつ好ましくは、トレイ12とヘッド16との間の相対的回転運動ができるように取り付けられる。これは、(i)トレイ12がヘッド16に対して垂直軸線14を中心に回転するようにトレイを構成することによって、(ii)ヘッド16がトレイ12に対して垂直軸線14を中心に回転するようにヘッドを構成することによって、または(iii)トレイ12およびヘッド16の両方が垂直軸線14を中心に、しかし異なる回転速度で回転(例えば逆方向に回転)するように構成することによって、達成することができる。以下の実施形態は、トレイが、ヘッド16に対して垂直軸線14を中心に回転するように構成された回転トレイである構成(i)を特に重点的に記載するが、本願は構成(ii)および(iii)をも企図していることを理解されたい。本書に記載する実施形態はいずれも、構成(ii)および(iii)のいずれかに適用できるように調整することができ、本書に記載する詳細を前提として、そのような調整をどのように行うかが当業者には分かるであろう。
【0358】
以下の説明では、トレイ12と平行で軸線14から外向きの方向を半径方向rと呼び、トレイ12と平行で半径方向rに垂直な方向をここでは方位角方向φと呼び、トレイ12に直角な方向をここでは垂直方向zと呼ぶ。
【0359】
本書で使用する用語「半径方向位置」とは、軸線14から特定の距離にあるトレイ12上またはトレイ12より上の位置を指す。この用語が印刷ヘッドに関連して使用される場合、この用語は、軸線14から特定の距離にあるヘッドの位置を指す。この用語がトレイ12上の点に関連して使用される場合、この用語は、半径が軸線14から特定の距離にあってその中心が軸線14にある円を描く点の軌跡に属する任意の点に対応する。
【0360】
本書で使用する用語「方位角位置」は、所定の基準点に対して特定の方位角にあるトレイ12上またはトレイ12より上の位置を指す。したがって、半径方向位置は、基準点に対して特定の方位角を形成する直線を描く点の軌跡に属する任意の点を指す。
【0361】
本書で使用する用語「垂直位置」は、特定の点で垂直軸線14と交差する面全体の位置を指す。
【0362】
トレイ12は、三次元印刷のための支持体構造として働く。1つ以上の物体が印刷される作業領域は通常、トレイ12の総面積より小さいが、必ずしもそうである必要はない。本発明の一部の実施形態では、作業領域は、環状である。作業領域は、符号26で示される。本発明の一部の実施形態では、トレイ12は、物体の形成中ずっと、同一方向に連続的に回転し、本発明の一部の実施形態では、トレイは、物体の形成中に少なくとも1回(例えば振動するように)回転方向を逆転する。トレイ12は、任意選択的にかつ好ましくは取外し可能である。トレイ12の取外しは、システム10の保守のために、あるいは希望する場合には、新しい物体を印刷する前にトレイを交換するために、行うことができる。本発明の一部の実施形態では、システム10には1つ以上の異なる交換トレイ(例えば交換トレイのキット)が提供され、2つ以上のトレイが異なる種類の物体(例えば異なる重量)、異なる動作モード(例えば異なる回転速度)等のために設計される。トレイ12の交換は希望通り手動または自動にすることができる。自動交換が採用された場合、システム10は、トレイ12をヘッド16の下にあるその位置から取り外して、それを交換トレイ(図示せず)と交換するように構成されたトレイ交換装置36を含む。図6Bの代表図では、トレイ交換装置36は、トレイ12を引っ張るように構成された可動アーム40を持つドライブ38として示されるが、他の種類のトレイ交換装置も考えられる。
【0363】
印刷ヘッド16の例示的実施形態を図7A図7Cに示す。これらの実施形態は、システム110およびシステム10を含め、それらに限らず、上述したAMシステムのいずれかに採用することができる。
【0364】
図7A図7Bは、1つ(図7A)および2つ(図7B)のノズルアレイ22を持つ印刷ヘッド16を示す。アレイにおけるノズルは直線に沿って線状に並ぶことが好ましい。特定の印刷ヘッドが2つ以上のリニア・ノズル・アレイを有する実施形態では、ノズルアレイは、任意選択的にかつ好ましくは、相互に平行にすることができる。
【0365】
システム110と同様のシステムが使用される場合、全ての印刷ヘッド16は、任意選択的にかつ好ましくは、走査方向に沿ったそれらの位置が互いにずらされ、割出し方向に沿って向き付けられる。
【0366】
システム10と同様のシステムが使用される場合、全ての印刷ヘッド16は、任意選択的にかつ好ましくは、それらの方位角位置が互いにずらされ、放射状に(放射方向と平行に)向き付けられる。したがって、これらの実施形態では、異なる印刷ヘッドのノズルアレイは互いに平行ではなく、むしろ互いに角度を成しており、その角度はそれぞれのヘッド間の方位角のずれに略等しい。例えば1つのヘッドは放射状に向き付け、かつ方位角位置φに配置することができ、別のヘッドは放射状に向き付け、かつ方位角位置φに配置することができる。この実施例では、2つのヘッド間の方位角のずれはφ-φであり、2つのヘッドのリニア・ノズル・アレイ間の角度もまたφ-φである。
【0367】
一部の実施形態では、2つ以上の印刷ヘッドを組み立てて、1ブロックの印刷ヘッドにすることができる。その場合、そのブロックの印刷ヘッドは一般的に、互いに平行である。幾つかのインクジェット印刷ヘッド16a、16b、16cを含むブロックが図7Cに示される。
【0368】
一部の実施形態では、システム10は、トレイ12が支持体構造30とヘッド16との間にくるように、ヘッド16の下に位置する支持体構造30を含む。支持体構造30は、インクジェット印刷ヘッド16が作動している間発生することのあるトレイ12の振動を防止または低減するように働く。印刷ヘッド16が軸線14を中心に回転する構成では、支持体構造30が常にヘッド16の真下にくるように(トレイ12と共にヘッド16とトレイ12の間で)支持体構造30も回転することが好ましい。
【0369】
トレイ12および/または印刷ヘッド16は、任意選択的にかつ好ましくは、トレイ12と印刷ヘッド16との間の垂直距離が変動するように垂直方向zに沿って垂直軸線14と平行に移動するように構成される。トレイ12を垂直方向に沿って移動させることによって垂直距離が変動する構成では、支持体構造30もトレイ12と共に垂直方向に移動することが好ましい。トレイ12の垂直位置は固定されたままで、垂直距離がヘッド16によって垂直方向に沿って変動する構成では、支持体構造30もまた固定垂直位置に維持される。
【0370】
垂直移動は、垂直駆動装置28によって確立することができる。ある層が完成すると、次に印刷される層の所望の厚さに応じて所定の垂直間隔だけ、トレイ12とヘッド16との間の垂直距離を増大させることができる(例えばヘッド16に対してトレイ12を下降させる)。この手順は、三次元物体112が層毎に形成されるように繰り返される。
【0371】
インクジェット印刷ヘッド16の向き、および任意選択的にかつ好ましくは、システム10の1つ以上の他の構成部品の向き、例えばトレイ12の移動の向きも、コントローラ20によって制御される。コントローラは、電子回路および回路によって読出し可能な不揮発性記憶媒体を有することができ、記憶媒体は、回路によって読み出されたときに、以下でさらに詳述するように制御動作を回路に実行させるプログラム命令を格納する。
【0372】
コントローラ20はまた、例えば標準テッセレーション言語(STL)またはステレオリソグラフィ輪郭(SLC)フォーマット、仮想現実モデリング言語(VRML)、付加製造ファイル(AMF)フォーマット、図面交換フォーマット(DXF)、ポリゴン・ファイル・フォーマット(PLY)、またはコンピュータ支援設計(CAD)、例えばウェーブフロントファイルフォーマット(OBJ)に適したいずれかの他のフォーマットの形のコンピュータ物体データに基づいて、製作命令に関するデジタルデータを送信するホストコンピュータ24と通信することもできる。物体データフォーマットは一般的に、デカルト座標系に従って構成される。このような場合、コンピュータ24は、コンピュータ物体データにおける各スライスの座標をデカルト座標系から極座標系に変換するための手順を実行することが好ましい。コンピュータ24は、任意選択的にかつ好ましくは、変換された座標系で製作命令を送信する。代替的に、コンピュータ24は、コンピュータ物体データによって提供された元の座標系で、製作命令を送信することができ、その場合、座標の変換はコントローラ20の回路によって実行される。
【0373】
座標の変換は、回転トレイ上の三次元印刷を可能にする。従来の三次元印刷では、印刷ヘッドは、静止トレイ上を直線に沿って往復運動する。そのような従来のシステムでは、ヘッドの吐出率が均一であることを前提として、印刷解像度はトレイ上のどの点でも同じである。従来の三次元印刷とは異なり、ヘッド点の全てのノズルが同時にトレイ12全体で同一距離をカバーするわけではない。座標の変換は、任意選択的にかつ好ましくは、異なる半径方向位置における過剰な材料配合物の均等な量が確保されるように実行される。本発明の一部の実施形態に係る座標変換の代表的実施例が、物体の3つのスライスを示す図8A図8Bに提示される(各スライスは物体の異なる層の製作命令に対応する)。図8Aは、スライスをデカルト座標系で示し、図8Bは、座標変換手順がそれぞれのスライスに適用された後の同じスライスを示す。
【0374】
通常、コントローラ20は、製作命令に基づき、かつ下述する格納されたプログラム命令に基づいて、システム10のそれぞれの構成部品に印加される電圧を制御する。
【0375】
一般的に、コントローラ20は、トレイ12の回転中に、トレイ12上で三次元物体を印刷するために構築材料配合物の液滴を層状に吐出するように、印刷ヘッド16を制御する。
【0376】
システム10は、任意選択的にかつ好ましくは、1つ以上の放射源18を備え、それは、使用する造形用材料配合物に応じて、例えば紫外線もしくは可視光もしくは赤外線ランプ、または他の電磁放射源、または電子ビーム源とすることができる。放射源は、発光ダイオード(LED)、デジタル・ライト・プロセシング(DLP)システム、抵抗ランプ等をはじめ、それらに限らず、任意の種類の放射線放出素子を含むことができる。放射源18は、造形用材料配合物を硬化または凝固させるように働く。本発明の様々な例示的実施形態では、放射源18の動作はコントローラ20によって制御され、それは、放射源18を作動させたり停止させたりすることができ、かつ任意選択的に放射源18によって発生する放射線の量も制御することができる。
【0377】
本発明の一部の実施形態では、システム10は、ローラまたはブレードとして製造することのできる1つ以上のレベリング装置32をさらに備える。レベリング装置32は、新たに形成された層を、次の層がその上に形成される前に矯正するのに役立つ。一部の実施形態では、レベリング装置32は、円錐ローラの形状を有し、その対称軸線34がトレイ12の表面に対して傾斜し、かつその表面がトレイの表面と平行になるように配置される。この実施形態をシステム10の側面図に示す(図6C)。
【0378】
円錐ローラは、円錐または円錐台の形状を有することができる。
【0379】
円錐ローラの開き角は、その軸線34に沿った任意の位置における円錐の半径と、その位置と軸線14との間の距離との比率が一定になるように選択されることが好ましい。ローラが回転する間、ローラの表面上の点pはどれも、点pの鉛直下方に位置する点のトレイの線速度に比例する(例えば同一の)線速度を有するので、この実施形態は、ローラ32が層を効率的に平準化することを可能にする。一部の実施形態では、ローラは高さh、軸線14から最も近い距離位置における半径R、および軸線14から最も遠い距離位置における半径Rを有する円錐台の形状を有する。ここでパラメータh、R、およびRは、R/R=(R-h)/hの関係を満たし、ここでRは軸線14からのローラの最遠距離である(例えばRはトレイ12の半径とすることができる)。
【0380】
レベリング装置32の動作は、任意選択的にかつ好ましくは、コントローラ20によって制御される。コントローラは、レベリング装置32を作動させたり停止させたりすることができ、かつ任意選択的に、垂直方向(軸線14と平行)に沿ったその位置、および/または放射方向(トレイ12と平行に、軸線14に近づくかまたはそれから離れる方向)に沿ったその位置をも制御することができる。
【0381】
本発明の一部の実施形態では、システム10は、一つ以上のファンなどの冷却システム(図示せず、図6A参照)を含む。
【0382】
本発明の一部の実施形態では、印刷ヘッド16は、径方向rに沿ってトレイに対して往復運動するように構成される。これらの実施形態は、ヘッド16のノズルアレイ22の長さがトレイ12上の作業領域26の径方向に沿った幅より短いときに、有用である。径方向に沿ったヘッド16の運動は、任意選択的にかつ好ましくはコントローラ20によって制御される。
【0383】
一部の実施形態は、異なる吐出ヘッドから異なる材料配合物(例えば構築材料配合物)を吐出することによって物体を製作することを企図している。これらの実施形態は、とりわけ、所与の数の材料配合物から材料配合物を選択し、かつ選択された材料配合物およびそれらの性質の所望の組合せを画定する能力を提供する。本実施形態によれば、異なる材料配合物による異なる三次元空間位置の占有を達成するか、あるいは2つ以上の異なる材料配合物による略同一の三次元位置または隣接する三次元位置の占有を達成するように、層における各材料配合物の堆積の空間位置が画定され、層内の材料配合物の堆積後の空間的組合せが可能になり、それによってそれぞれの位置(単数または複数)で複合材料配合物を形成することが可能になる。
【0384】
造形用材料配合物の任意の堆積後の組合せまたは混合が企図される。例えば特定の材料配合物が吐出された後、それはその元の性質を維持することができる。しかし、別の造形用材料配合物または他の吐出材料配合物と同時に、同じ位置あるいは近傍位置で吐出された場合、吐出された材料配合物とは異なる性質を有する複合材料配合物が形成される。
【0385】
こうして本実施形態は、広範囲の材料配合物の組合せの堆積を可能にし、かつ物体の各部分を特徴付けるために望ましい特性に応じて、物体の異なる部分を複数の異なる材料配合物の組合せから構成することのできる物体の製作を可能にする。
【0386】
本実施形態に適したAMシステムの原理および動作のさらなる詳細は米国公開出願第20100191360号に見られ、その内容を参照によって本書に援用する。
【0387】
物体:
本発明の実施形態は、それぞれの実施形態のいずれかおよびそのいずれかの組合せで、本明細書に記載する方法によって得られる三次元物体を提供する。
【0388】
一部の実施形態では、物体は、本明細書に記載する少なくとも1つの中空構造を含む。
【0389】
一部の実施形態では、中空構造には空気が充填される。
【0390】
一部の実施形態では、中空構造には、それぞれの実施形態のいずれかで本明細書に記載する材料Lなどの液体または液体様(第二)材料が少なくとも部分的に充填される(少なくとも部分的に封入される)。
【0391】
一部の実施形態では、物体は、二種以上の造形用材料配合物、例えば配合物Mから作られ、これらの実施形態の一部では、物体の少なくとも一部は、本明細書に記載されるように、デジタル材料から作られる。一部の実施形態では、物体は、それぞれの実施形態のいずれかにおいて本明細書に記載されるように芯鞘構造を含み、選択された材料及び構造に従った特性を具備する。
【0392】
本実施形態による物体は、その少なくとも一部又は部分が本明細書に記載されるような中空構造を含むようなものである。物体は、複数の部分又はその一部が中空構造を含むようなものであることができる。中空構造は、同じ又は異なることができる(例えばサイズ及び/又は形状に関して)。
【0393】
本明細書に記載する実施形態のいずれかのうちの一部では、物体は、身体構造を模倣するものである。
【0394】
これらの実施形態の一部では、身体構造(例えば身体組織または身体器官または身体系)は、本明細書に定義する1つ以上の中空構造を含む。
【0395】
本明細書に記載する実施形態のいずれかのうちの一部では、本明細書に記載する物体は、医療装置、例えば訓練または教育目的に使用される医療装置の一部分であり、あるいはそれを形成する。
【0396】
本明細書に記載する実施形態のいずれかのうちの一部によれば、物体は、身体器官、身体構造、または身体系のそれぞれの構造に似せた構造、例えば中空管状構造を有する。
【0397】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部では、物体は、本明細書に記載されるように、生物材料を欠いている。
【0398】
本明細書を通じて、例えば構造、器官、組織又は材料の文脈で使用される用語「身体(bodily)」は、対象、好ましくは生きている対象の身体の部分であるとして、示された構造、器官、組織又は材料を記載する。この用語は、生物学的システム、器官、組織、細胞及び材料を包含する。
【0399】
本明細書を通じて、用語「対象(subject)」は、あらゆる年齢の動物、好ましくは哺乳類、より好ましくは人間を包含する。この用語は、病気を進行するリスクがあるか又は病気を患っている個体を包含する。
【0400】
用語「身体構造」は、本明細書に記載されているように、系、器官、組織、細胞、及びそれらのいずれかの周囲環境を含む、対象の身体の一部を示す。身体の構造は、例えば生体中に一緒に活動する複数の器官、例えば胃腸管、心臓血管系、呼吸器管などを含むことができる。構造は、これらの系の一部を形成する器官及び組織に加えて、病態に関する構造、例えば腫瘍細胞又は組織も含むことができる。身体構造は、代替的に、例えば心臓及びそれと関連する血管を含むことができる。身体構造は、代替的に、例えば腕又は前腕、又は脚のような器官を含むことができ、関連する骨系及び筋肉組織、血管系、腫瘍組織(もし存在するなら)及び/又はその周囲の皮膚組織を包含することができる。
【0401】
用語「組織」は、機能(単数又は複数)を実施するように設計された細胞からなる有機体の一部を記載する。例としては、脳組織、網膜、皮膚組織、肝臓組織、膵臓組織、骨、軟骨、結合組織、血管組織、筋肉組織、心臓組織、脈管組織、腎臓組織、肺組織、生殖腺組織、造血組織を含むが、これらに限定されない。
【0402】
本明細書に使用される「生物材料」は、本明細書に規定されるように生きている対象に固有に存在する有機材料を意味する。かかる材料は、例えば細胞及び細胞構成要素、タンパク質(酵素、ホルモン、レセプターリガンドなどを含む)、ペプチド、核酸、アミノ酸を包含する。
【0403】
「欠いている」は、物体の全重量の1重量%未満又は0.5~又は0.1~又は0.05~又は0.01~又は0.005~又は0.001重量%未満を意味し、0を含む。
【0404】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部によれば、物体は、細胞化されておらず、即ち生物細胞又は細胞構成要素を欠いている。
【0405】
本実施形態は、材料Lの一部として水を収容する物体を構想していることを理解されたい。本明細書に記載する実施形態のいずれかのうちの一部では、構築材料配合物および配合物および配合物系に含まれる硬化性材料および特に非硬化性材料は、無毒であり、環境的に無害であり、かつしたがって使用および廃棄に安全である。
【0406】
本明細書に記載する実施形態のいずれかのうちの一部によれば、未硬化の構築材料配合物は、本明細書に定義する生物学的物質および/または生体細胞もしくは細胞成分を含まない。
【0407】
本明細書中で使用される用語「約」は、±5%又は±10%を示す。
【0408】
用語「含む/備える(comprises、comprising、includes、including)」、「有する(having)」、およびそれらの同根語は、「含むが、それらに限定されない(including but not limited to)」ことを意味する。
【0409】
用語「からなる(consisting of)」は、「含み、それらに限定される(including and limited to)」ことを意味する。
【0410】
表現「から本質的になる(consisting essentially of)」は、さらなる成分、工程および/または部分が、主張される組成物、方法または構造の基本的かつ新規な特徴を実質的に変化させない場合にだけ、組成物、方法または構造がさらなる成分、工程および/または部分を含み得ることを意味する。
【0411】
本明細書中で使用される場合、単数形態(「a」、「an」および「the」)は、文脈がそうでないことを明確に示さない限り、複数の参照物を包含する。例えば、用語「化合物(a compound)」または用語「少なくとも1つの化合物」は、その混合物を含めて、複数の化合物を包含し得る。
【0412】
本出願の全体を通して、本発明の様々な態様が範囲形式で提示され得る。範囲形式での記載は単に便宜上および簡潔化のためであり、本発明の範囲に対する柔軟性のない限定として解釈すべきでないことを理解しなければならない。従って、範囲の記載は、具体的に開示された可能なすべての部分範囲、ならびに、その範囲に含まれる個々の数値を有すると見なさなければならない。例えば、1~6などの範囲の記載は、具体的に開示された部分範囲(例えば、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6など)、ならびに、その範囲に含まれる個々の数値(例えば、1、2、3、4、5および6)を有すると見なさなければならない。このことは、範囲の広さにかかわらず、適用される。
【0413】
数値範囲が本明細書中で示される場合には常に、示された範囲に含まれる任意の言及された数字(分数または整数)を含むことが意味される。第1の示された数字および第2の示された数字「の範囲である/の間の範囲」という表現、および、第1の示された数字「から」第2の示された数「まで及ぶ/までの範囲」という表現は、交換可能に使用され、第1の示された数字と、第2の示された数字と、その間のすべての分数および整数とを含むことが意味される。
【0414】
本明細書中で使用される用語「方法またはプロセス(methodまたはprocess)」は、所与の課題を達成するための様式、手段、技術および手順を示し、これには、化学、物理および工学の技術分野の実施者に知られているそのような様式、手段、技術および手順、または、知られている様式、手段、技術および手順から、化学、物理および工学の技術分野の実施者によって容易に開発されるそのような様式、手段、技術および手順が含まれるが、それらに限定されない。
【0415】
本明細書中全体を通して、用語「(メタ)アクリル」は、アクリル及びメタクリル化合物を包含する。
【0416】
本明細書中全体を通して、表現「連結部分」又は「連結基」は、化合物中の二つ以上の部分又は基を接続する基を記載する。連結部分は、一般的に二又は三官能化合物から誘導され、二つ又は三つのラジカル部分として見なされることができ、二つ又は三つのラジカルは、それぞれ、その二つ又は三つの原子を介して二つ又は三つの他の部分に接続される。
【0417】
例示的な連結部分は、本明細書に規定されるように、一つ以上のヘテロ原子によって任意選択的に中断される、炭化水素部分又は鎖、及び/又は連結基として規定されるとき、以下に挙げられる化学基のいずれかを含む。
【0418】
化学基が本明細書において「末端基」として言及されるとき、それは、置換基として中断され、置換基は、その一つの原子によって別の基に接続される。
【0419】
本明細書中全体を通して、用語「炭化水素」は、主として炭素及び水素原子から構成される化学基を集合的に記載する。炭化水素は、アルキル、アルケン、アルキン、アリール、及び/又はシクロアルキルからなることができ、各々は、置換されても置換されなくてもよく、一つ以上のヘテロ原子によって中断されてもよい。炭素原子の数は、2~20の範囲であり、好ましくはそれより低く、例えば1~10、又は1~6、又は1~4の範囲であることができる。炭化水素は、連結基又は末端基であることができる。
【0420】
ビスフェノールAは、2つのアリール基及び1つのアルキル基から構成される炭化水素の一例である。
【0421】
本明細書で使用される用語「アミン」は、-NR’R”基および-NR’-基の両方を記載し、ここでR’およびR”はそれぞれ独立して水素、アルキル、シクロアルキル、またはアリールであり、これらの用語は本明細書中下記で定義される。
【0422】
従って、アミン基は、第一級アミン(ここでR’およびR”の両方は水素である)、第二級アミン(ここでR’は水素でありかつR”はアルキル、シクロアルキル、もしくはアリールである)、または第三級アミン(ここでR’およびR”はそれぞれ独立してアルキル、シクロアルキルもしくはアリールである)であることができる。
【0423】
代替的に、R’およびR”は、それぞれ独立してヒドロキシアルキル、トリハロアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、複素脂環、アミン、ハリド、スルホネート、スルホキシド、ホスホネート、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、シアノ、ニトロ、アゾ、スルホンアミド、カルボニル、C-カルボキシレート、O-カルボキシレート、N-チオカーバメート、O-チオカーバメート、尿素、チオ尿素、N-カーバメート、O-カーバメート、C-アミド、N-アミド、グアニル、グアニジン、またはヒドラジンであることができる。
【0424】
用語「アミン」は、アミンが末端基である場合には、本明細書中下記で定義されるように、-NR’R”基を表すために本明細書中では使用され、また、アミンが連結基または連結部分の一部である場合には-NR’-基を表すために本明細書中では使用される。
【0425】
用語「アルキル」は、直鎖基および分枝鎖基を含む飽和した脂肪族炭化水素を記載する。好ましくは、アルキル基は1個~3個又は1個~20個の炭素原子を有する。数値範囲、例えば「1個~20個」が本明細書で述べられる場合は常に、それは基(この場合はアルキル基)が1個の炭素原子、2個の炭素原子、3個の炭素原子などの20個までの炭素原子を含むということを意味する。アルキル基は、置換または非置換であり得る。置換されたアルキルは一つ以上の置換基を有することができ、それぞれの置換基は独立して、例えば、ヒドロキシアルキル、トリハロアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、複素脂環、アミン、ハリド、スルホネート、スルホキシド、ホスホネート、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、シアノ、ニトロ、アゾ、スルフォンアミド、C-カルボキシレート、O-カルボキシレート、N-チオカーバメート、O-チオカーバメート、尿素、チオ尿素、N-カーバメート、O-カーバメート、C-アミド、N-アミド、グアニル、グアニジン、またはヒドラジンであることができる。
【0426】
アルキル基は、単一の隣接原子に結合された末端基(この用語は本明細書中上記で定義される通りである)、またはその鎖中の少なくとも二つの炭素を介して二つ以上の部分を連結する連結基(この用語は本明細書中上記で定義される通りである)であることができる。アルキルが連結基であるとき、それはまた、「アルキレン」または「アルキレン鎖」として本明細書中に言及される。
【0427】
本明細書において、本明細書に規定されるように、親水性基によって置換されるC(1-4)アルキルは、本明細書において表現「親水性基」の下に含まれる。
【0428】
本明細書中で使用されるアルケンおよびアルキンは、一つ以上の二重結合または三重結合をそれぞれ含む、本明細書中で定義されるアルキルである。
【0429】
用語「シクロアルキル」基は、環の1つまたは複数が完全共役のπ電子系を有しない、すべて炭素からなる単環基または縮合環(すなわち、隣接炭素原子対を共有する環)基を記載する。例示は、限定されないが、シクロヘキサン、アダマチン、ノルボルニル、イソボルニル、及びその類似物を含む。シクロアルキル基は、置換または非置換であることができる。置換されたシクロアルキルは一つ以上の置換基を有することができ、それぞれの置換基は独立して、例えば、ヒドロキシアルキル、トリハロアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、複素脂環、アミン、ハリド、スルホネート、スルホキシド、ホスホネート、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、シアノ、ニトロ、アゾ、スルフォンアミド、C-カルボキシレート、O-カルボキシレート、N-チオカーバメート、O-チオカーバメート、尿素、チオ尿素、N-カーバメート、O-カーバメート、C-アミド、N-アミド、グアニル、グアニジン、またはヒドラジンであることができる。シクロアルキル基は、単一の隣接原子に結合された末端基(この用語は本明細書中上記で定義される通りである)、またはその鎖中の少なくとも二つの炭素を介して二つ以上の成分を連結する連結基(この用語は本明細書中上記で定義される通りである)であることができる。
【0430】
本明細書に規定されるように、二つ以上の親水性基によって置換される、1~6個の炭素原子のシクロアルキルは、本明細書において表現「親水性基」の下に含まれる。
【0431】
用語「複素脂環(ヘテロ脂環)」基は、例えば、窒素、酸素およびイオウなどの1個または複数個の原子を環(1つまたは複数)に有する単環基または縮合環基を記載する。環はまた、1つまたは複数の二重結合を有することができる。しかしながら、環は、完全共役のπ電子系を有しない。代表的な例は、ピペリジン、ピペラジン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、モルホリノおよびその類似物である。
【0432】
複素脂環は、置換または非置換であることができる。置換された複素脂環は、一つ以上の置換基を有することができ、それぞれの置換基は、独立して、例えば、ヒドロキシアルキル、トリハロアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、複素脂環、アミン、ハリド、スルホネート、スルホキシド、ホスホネート、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、シアノ、ニトロ、アゾ、スルフォンアミド、C-カルボキシレート、O-カルボキシレート、N-チオカーバメート、O-チオカーバメート、尿素、チオ尿素、N-カーバメート、O-カーバメート、C-アミド、N-アミド、グアニル、グアニジン、またはヒドラジンであることができる。複素脂環基は、単一の隣接原子に結合された末端基(この用語は本明細書中上記で定義される通りである)、またはその鎖中の少なくとも二つの炭素を介して二つ以上の成分を連結する連結基(この用語は本明細書中上記で定義される通りである)であることができる。
【0433】
窒素又は酸素のような一つ以上の電子供与原子を含み、かつ炭素原子対複素原子の数値比が5:1又はそれより低い複素脂環基は、本明細書において表現「親水性基」の下に含まれる。
【0434】
用語「アリール」基は、完全共役のπ電子系を有する、すべて炭素からなる単環基または縮合多環(すなわち、隣接炭素原子対を共有する環)基を記載する。アリール基は、置換または非置換であることができる。置換されたアリールは、一つ以上の置換基を有することができ、それぞれの置換基は独立して、例えば、ヒドロキシアルキル、トリハロアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、複素脂環、アミン、ハリド、スルホネート、スルホキシド、ホスホネート、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、シアノ、ニトロ、アゾ、スルフォンアミド、C-カルボキシレート、O-カルボキシレート、N-チオカーバメート、O-チオカーバメート、尿素、チオ尿素、N-カーバメート、O-カーバメート、C-アミド、N-アミド、グアニル、グアニジン、またはヒドラジンであることができる。アリール基は、単一の隣接原子に結合された末端基(この用語は本明細書中上記で定義される通りである)、またはその鎖中の少なくとも二つの炭素を介して二つ以上の成分を連結する連結基(この用語は本明細書中上記で定義される通りである)であることができる。
【0435】
用語「ヘテロアリール」基は、例えば、窒素、酸素およびイオウなどの1個または複数個の原子を環(1つまたは複数)に有し、さらには完全共役のπ電子系を有する単環基または縮合環(すなわち、隣接炭素原子対を共有する環)基を記載する。ヘテロアリール基の非限定的な例には、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピリミジン、キノリン、イソキノリンおよびプリンが含まれる。ヘテロアリール基は、置換または非置換であることができる。置換されたヘテロアリールは、一つ以上の置換基を有することができ、それぞれの置換基は独立して、例えば、ヒドロキシアルキル、トリハロアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、複素脂環、アミン、ハリド、スルホネート、スルホキシド、ホスホネート、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、シアノ、ニトロ、アゾ、スルフォンアミド、C-カルボキシレート、O-カルボキシレート、N-チオカーバメート、O-チオカーバメート、尿素、チオ尿素、N-カーバメート、O-カーバメート、C-アミド、N-アミド、グアニル、グアニジン、またはヒドラジンであり得る。ヘテロアリール基は、単一の隣接原子に結合された末端基(この用語は本明細書中上記で定義される通りである)、またはその鎖中の少なくとも二つの炭素を介して二つ以上の成分を連結する連結基(この用語は本明細書中上記で定義される通りである)であることができる。代表的な例はピリジン、ピロール、オキサゾール、インドール、プリンおよびその類似物である。
【0436】
用語「ハリド(ハライド)」および「ハロ」は、フッ素、塩素、臭素、または沃素を記載する。
【0437】
用語「ハロアルキル」は、1つまたは複数のハリドによってさらに置換された、上記で定義されるアルキル基を記載する。
【0438】
用語「スルファート」は、-O-S(=O)-OR’末端基または-O-S(=O)-O-連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、R’は本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0439】
用語「チオスルファート」は、-O-S(=S)(=O)-OR’末端基または-O-S(=S)(=O)-O-連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、R’は本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0440】
用語「スルファイト」は、-O-S(=O)-O-R’末端基または-O-S(=O)-O-連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、R’は本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0441】
用語「チオスルファイト」は、-O-S(=S)-O-R’末端基または-O-S(=S)-O-連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、R’は本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0442】
用語「スルフィナート」は、-S(=O)-OR’末端基または-S(=O)-O-連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、R’は本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0443】
用語「スルホキシド」または「スルフィニル」は、-S(=O)R’末端基または-S(=O)-連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、R’は本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0444】
用語「スルホネート」は、-S(=O)-R’末端基または-S(=O)-連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、R’は本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0445】
用語「S-スルホンアミド」は、-S(=O)-NR’R”末端基または-S(=O)-NR’-連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、R’およびR”は本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0446】
用語「N-スルホンアミド」は、R’S(=O)-NR”末端基または-S(=O)-NR’-連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、R’およびR”は本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0447】
用語「ジスルフィド」は、-S-SR’末端基またはS-S-連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、R’は本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0448】
用語「ホスホナート」は、本明細書中で定義されるようなR’およびR”を有する-P(=O)(OR’)(OR”)末端基または-P(=O)(OR’)(O)-連結基を表す(これらの表現は本明細書中上記で定義される通りである)。
【0449】
用語「チオホスホナート」は、本明細書中で定義されるようなR’およびR”を有する-P(=S)(OR’)(OR”)末端基または-P(=S)(OR’)(O)-連結基を表す(これらの表現は本明細書中上記で定義される通りである)。
【0450】
用語「ホスフィニル」は、本明細書中上記で定義されるようなR’およびR”を有する-PR’R”末端基または-PR’-連結基を表す(これらの表現は本明細書中上記で定義される通りである)。
【0451】
用語「ホスフィンオキシド」は、本明細書中で定義されるようなR’およびR”を有する-P(=O)(R’)(R”)末端基または-P(=O)(R’)-連結基を表す(これらの表現は本明細書中上記で定義される通りである)。
【0452】
用語「ホスフィンスルフィド」は、本明細書中で定義されるようなR’およびR”を有する-P(=S)(R’)(R”)末端基または-P(=S)(R’)-連結基を表す(これらの表現は本明細書中上記で定義される通りである)。
【0453】
用語「ホスファイト」は、本明細書中で定義されるようなR’およびR”を有する-O-PR’(=O)(OR”)末端基または-O-PH(=O)(O)-連結基を表す(これらの表現は本明細書中上記で定義される通りである)。
【0454】
用語「カルボニル」または用語「カルボネート」は、本明細書中で使用される場合、本明細書中で定義されるようなR’を有する-C(=O)-R’末端基または-C(=O)-連結基を表す(これらの表現は本明細書中上記で定義される通りである)。
【0455】
用語「チオカルボニル」は、本明細書中で使用される場合、本明細書中で定義されるようなR’を有する-C(=S)-R’末端基または-C(=S)-連結基を表す(これらの表現は本明細書中上記で定義される通りである)。
【0456】
用語「オキソ」は、本明細書中で使用される場合、(=O)基を表し、この場合、酸素原子が、示された位置における原子(例えば、炭素原子)に二重結合によって連結される。
【0457】
用語「チオオキソ」は、本明細書中で使用される場合、(=S)基を表し、この場合、イオウ原子が、示された位置における原子(例えば、炭素原子)に二重結合によって連結される。
【0458】
用語「オキシム」は、=N-OH末端基または=N-O-連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0459】
用語「ヒドロキシル」は、-OH基を記載する。
【0460】
用語「アルコキシ」は、本明細書中で定義される通り-O-アルキル基および-O-シクロアルキル基の両方を記載する。
【0461】
用語「アリールオキシ」は、本明細書中で定義される通り-O-アリール基および-O-ヘテロアリール基の両方を記載する。
【0462】
用語「チオヒドロキシ」は、-SH基を記載する。
【0463】
用語「チオアルコキシ」は、本明細書中で定義される通り-S-アルキル基および-S-シクロアルキル基の両方を記載する。
【0464】
用語「チオアリールオキシ」は、本明細書中で定義される通り-S-アリール基および-S-ヘテロアリール基の両方を記載する。
【0465】
「ヒドロキシアルキル」は、本明細書中で「アルコール」としても言及され、ヒドロキシ基によって置換される、本明細書中で定義されるアルキルを記載する。
【0466】
用語「シアノ」は、-C≡N基を記載する。
【0467】
用語「イソシアネート」は、-N=C=O基を記載する。
【0468】
用語「イソチオシアネート」は、-N=C=S基を記載する。
【0469】
用語「ニトロ」は、-NO基を記載する。
【0470】
用語「アシルハリド」は、-(C=O)R””基(式中、R””は本明細書中上記で定義される通りハリドである)を記載する。
【0471】
用語「アゾ」または「ジアゾ」は、-N=NR’末端基または-N=N-連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、R’は本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0472】
用語「パーオキソ」は、-O-OR’末端基または-O-O-連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、R’は本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0473】
用語「カルボキシレート」は、本明細書中で使用される場合、C-カルボキシレートおよびO-カルボキシレートを包含する。
【0474】
用語「C-カルボキシレート」は、-C(=O)-OR’末端基または-C(=O)-O-連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、R’は本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0475】
用語「O-カルボキシレート」は、-OC(=O)R’末端基または-OC(=O)-連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、R’は本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0476】
カルボキシレートは直鎖または環状であることが可能である。環状であるとき、R’と炭素原子とが一緒に連結されて、C-カルボキシレートで環を形成し、この基はまた、ラクトンとして示される。あるいは、R’とOとが一緒に連結されて、O-カルボキシレートで環を形成する。環状カルボキシレートは、例えば、形成された環における原子が別の基に連結されるときには、連結基として機能することができる。
【0477】
用語「チオカルボキシレート」は、本明細書中で使用される場合、C-チオカルボキシレートおよびO-チオカルボキシレートを包含する。
【0478】
用語「C-チオカルボキシレート」は、-C(=S)OR’末端基または-C(=S)-O-連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、R’は本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0479】
用語「O-チオカルボキシレート」は、-OC(=S)R’末端基または-OC(=S)-連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、R’は本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0480】
チオカルボキシレートは直鎖または環状であることが可能である。環状であるとき、R’と炭素原子とが一緒に連結されて、C-チオカルボキシレートで環を形成し、この基はまた、チオラクトンとして示される。あるいは、R’とOとが一緒に連結されて、O-チオカルボキシレートで環を形成する。環状チオカルボキシレートは、例えば、形成された環における原子が別の基に連結されるときには、連結基として機能することができる。
【0481】
用語「カーバメート(カルバメート)」は、本明細書中で使用される場合、N-カーバメートおよびO-カーバメートを包含する。
【0482】
用語「N-カーバメート」は、R”OC(=O)-NR’-末端基または-OC(=O)-NR’-連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、R’およびR”は本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0483】
用語「O-カーバメート」は、-OC(=O)-NR’R”末端基または-OC(=O)-NR’-連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、R’およびR”は本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0484】
カーバメートは、直鎖または環状であることが可能である。環状であるとき、R’と炭素原子とが一緒に連結されて、O-カーバメートで環を形成する。あるいは、R’とOとが一緒に連結されて、N-カーバメートで環を形成する。環状カーバメートは、例えば、形成された環における原子が別の基に連結されるときには、連結基として機能することができる。
【0485】
用語「カーバメート」は、本明細書中で使用される場合、N-カーバメートおよびO-カーバメートを包含する。
【0486】
用語「チオカーバメート」は、本明細書中で使用される場合、N-チオカーバメートおよびO-チオカーバメートを包含する。
【0487】
用語「O-チオカーバメート」は、-OC(=S)-NR’R”末端基または-OC(=S)-NR’-連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、R’およびR”は本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0488】
用語「N-チオカーバメート」は、R”OC(=S)NR’-末端基または-OC(=S)NR’-連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、R’およびR”は本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0489】
チオカーバメートは、カーバメートについて本明細書中に記載したように、直鎖または環状であることが可能である。
【0490】
用語「ジチオカーバメート」は、本明細書中で使用される場合、S-ジチオカーバメートおよびO-チオジチオカーバメートを包含する。
【0491】
用語「S-ジチオカーバメート」は、-SC(=S)-NR’R”末端基または-SC(=S)NR’-連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、R’およびR”は本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0492】
用語「N-ジチオカーバメート」は、R”SC(=S)NR’-末端基または-SC(=S)NR’-連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、R’およびR”は本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0493】
用語「尿素(ウレア)」(「ウレイド」とも称される)は、-NR’C(=O)-NR”R”’末端基または-NR’C(=O)-NR”-連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、R’およびR”は本明細書中上記で定義される通りであり、R”’はR’およびR”について本明細書中で定義される通りである)を記載する。
【0494】
用語「チオ尿素(チオウレア)」(「チオウレイド」とも称される)は、-NR’C(=S)-NR”R”’末端基または-NR’-C(=S)-NR”-連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、R’,R”およびR”’は本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0495】
用語「アミド」は、本明細書中で使用される場合、C-アミドおよびN-アミドを包含する。
【0496】
用語「C-アミド」は、-C(=O)-NR’R”末端基または-C(=O)-NR’-連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、R’およびR”は本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0497】
用語「N-アミド」は、R’C(=O)-NR”-末端基またはR’C(=O)-N-連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、R’およびR”は本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0498】
アミドは、直鎖または環状であることが可能である。環状であるとき、R’と炭素原子とが一緒に連結されて、C-アミドで環を形成し、この基はまた、ラクタムとして示される。環状アミドは、例えば、形成された環における原子が別の基に連結されるときには、連結基として機能することができる。
【0499】
用語「グアニル」は、R’R”NC(=N)-末端基または-R’NC(=N)-連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、R’およびR”は本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0500】
用語「グアニジン」は、-R’NC(=N)-NR”R”’末端基または-R’NC(=N)-NR”-連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、R’,R”およびR”’は本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0501】
用語「ヒドラジン」は、-NR’-NR”R”’末端基または-NR’-NR”-連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、R’,R”およびR”’は本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0502】
本明細書中で使用される場合、用語「ヒドラジド」は、R’、R”およびR”’が本明細書中で定義される通りである-C(=O)-NR’-NR”R”’末端基または-C(=O)-NR’-NR”-連結基を表す(これらの表現は本明細書中上記で定義される通りである)。
【0503】
本明細書中で使用される場合、用語「チオヒドラジド」は、R’、R”およびR”’が本明細書中で定義される通りである-C(=S)-NR’-NR”R”’末端基または-C(=S)-NR’-NR”-連結基を表す(これらの表現は本明細書中上記で定義される通りである)。
【0504】
本明細書中で使用される場合、用語「アルキレングリコール」は-O-[(CR’R”)-O]-R”’末端基または-O-[(CR’R”)-O]-連結基を表し、ただし、式中、R’、R”およびR”’は本明細書中で定義される通りであり、zは1~10の整数であり、好ましくは2~6の整数であり、より好ましくは2または3の整数であり、yは1またはそれ以上の整数である。好ましくは、R’およびR”はともに水素である。zが2であり、かつ、yが1であるとき、この基はエチレングリコールである。zが3であり、かつ、yが1であるとき、この基はプロピレングリコールである。yが2~4であるとき、アルキレングリコールは、本明細書ではオリゴ(アルキレングリコール)として言及される。
【0505】
yが4よりも大きいとき、このアルキレングリコールは本明細書中ではポリ(アルキレングリコール)として示される。本発明の一部の実施形態において、ポリ(アルキレングリコール)基またはポリ(アルキレングリコール)部分は、zが1~200であるように、好ましくは1~100であるように、より好ましくは10~50であるように、1個~20個の繰り返しアルキレングリコールユニットを有することができる。
【0506】
用語「シラノール」は、-Si(OH)R’R”基又は-Si(OH)R’基又は-Si(OH)基を記載し、R’及びR”は本明細書中で定義される通りである。
【0507】
用語「シリル」は、-SiR’R”R”’基を記載し、R’,R”及びR”’は本明細書中で定義される通りである。
【0508】
本明細書で使用される場合、用語「ウレタン」又は「ウレタン部分」又は「ウレタン基」は、R-O-C(=O)-NR’R”末端基又は-R-O-C(=O)NR’連結基を記載し、R’及びR”は本明細書中で定義される通りであり、Rはアルキル、シクロアルキル、アリール、アルキレングリコール又はそれらのいずれかの組み合わせである。好ましくは、R’及びR”は両方とも水素である。
【0509】
用語「ポリウレタン」又は「オリゴウレタン」は、繰り返し骨格ユニット中に本明細書に記載されるようなウレタン基を少なくとも一つ含むか、又は繰り返し骨格ユニット中にウレタン結合-O-C(=O)NR’-を少なくとも一つ含む部分を記載する。
【0510】
明確にするため別個の実施形態の文脈で説明されている本発明の特定の特徴が、単一の実施形態に組み合わせて提供されることもできることは分かるであろう。逆に、簡潔にするため単一の実施形態で説明されている本発明の各種の特徴は別個にまたは適切なサブコンビネーションで、あるいは本発明の他の記載される実施形態において好適なように提供することもできる。種々の実施形態の文脈において記載される特定の特徴は、その実施形態がそれらの要素なしに動作不能である場合を除いては、それらの実施形態の不可欠な特徴であると見なされるべきではない。
【0511】
本明細書中上記に描かれるような、および、下記の請求項の部分において特許請求されるような本発明の様々な実施形態および態様のそれぞれは、実験的裏付けが下記の実施例において見出される。
【実施例0512】
次に下記の実施例が参照されるが、下記の実施例は、上記の説明と一緒に、本発明を非限定様式で例示する。
【0513】
実施例1
コンピュータ物体データを得るための例示的手順
本発明者らは、鞘付きの中空物体など、しかしそれに限らない物体を製作するのに特に有用なコンピュータ物体データを作成する技術を考案した。手順は、システム10またはシステム110で使用するためのコンピュータ物体データを得るのに特に有用である。この実施例に記載する例示的手順は、鞘、中間鞘、および芯を有する管状構造など、しかしそれに限らない鞘物体、さらに詳しくは芯および中間鞘が両方とも本明細書に記載する犠牲物体である鞘付き物体を製作するのに有用である。本発明の一部の実施形態では、この実施例に記載する手順は、非生物学的物質から、本明細書に記載する身体構造の特性を具備する物体を製作するのに使用される。これらの実施形態では、この実施例に記載する手順は、任意選択的かつ好ましくは、下の実施例2に記載する手順と組み合わされる。
【0514】
図10Aは、上の操作201を実施するために本発明の一部の実施形態に従って使用されることができる例示的な方法のフローチャート図である。方法は、データプロセッサー154又は24のような限定されないデータプロセッサーによって実施されることができる。
【0515】
方法は、750で始まり、751に続き、そこで空洞として以下に言及される一つ以上の間隙を有する物体を記述するコンピュータ物体データが方法への入力として受けとられる。そのようなコンピュータ物体データを得るのに適した技術は、以下の実施例2に記載する。751におけるデータは、任意選択的にかつ好ましくは、物体の単数または複数の空洞を包封する鞘だけを含む中空物体を記述する。したがって、751におけるデータは、任意選択的にかつ好ましくは、鞘内の芯または中間鞘に関するデータを含まない。
【0516】
方法は752へと続き、そこで、空洞について記述するが、鞘については記述しないコンピュータ物体データが生成される。方法は753へと続き、そこで、収縮形状の空洞について記述するコンピュータ物体データが生成される。753でデータによって記述される空洞は、それらの最外表面が、入力として受け取った空洞の容積と比較して低減された容積を包囲するという意味で、収縮している。換言すると、753でデータによって記述される空洞は、入力データによって記述された中空物体の内表面の面積より小さい最外表面の総面積を有する。753で実行するのに適した技術の代表的実施例について下述する。
【0517】
方法は754へと続き、そこで、751で得たコンピュータ物体データは、753で得たコンピュータ物体データと結合される。この結合は、最外鞘の内表面と芯の最外表面との間に間隙が存在するように芯を包封する最外鞘について記述する、結合コンピュータ物体データを提供する。
【0518】
方法は755で終了する。
【0519】
鞘付きの中空物体のAM製造のためにこの方法を使用する利点は、それが、芯、鞘、および鞘の内表面と芯の最外表面との間の間隙内の中間鞘に吐出するための充分な情報をAMシステムに提供することである。
【0520】
本発明の一部の実施形態では、ユーザインタフェース116など、しかしそれに限らないユーザインタフェースは、1組のコントロールを介してオペレータから命令を受け取り、かつ方法の実行中に様々な種類の情報およびグラフィカルな記述を表示するために使用される。データプロセッサは、任意選択的にかつ好ましくは、進捗メッセージを表示し、かつ/または進捗メッセージをログファイルに送信する。
【0521】
図10Bは、本発明の一部の実施形態に従って使用することのできるグラフィカルユーザインタフェース(GUI)のスクリーンショットである。図10Bにおいて、GUIは、入力されたコンピュータ物体データがSTLファイルであること、およびこの入力がスライスされる場合、その期待サイズは0.29974GBであることを示す。GUIは幾つかのコントロールを含む。例えば、GUIは、作動させるとデータプロセッサに入力コンピュータ物体データ(本実施例ではSTLファイル)をロードさせるコントロールを含む。このコントロールは、図10Bに「STL」と表記されている。GUIはまた、作動させるとデータプロセッサにコンピュータ物体データの回転可能かつズーム可能なプレビューを計算させ、かつGUIにそれを表示させるコントロールをも含むことができる。このコントロールは図10Bに「show」と表示されている。図10Cは、コンピュータ物体データが中空ラビリンスを記述している場合の「show」コントロールの作動の結果を示す。
【0522】
GUIはまた、データプロセッサに動作752および753を実行させる1組のコントロールをも含むことができる。例えば、1つのコントロールはデータプロセッサに最外鞘のスライスを計算させることができ、別のコントロールはデータプロセッサに空洞のコンピュータ物体データを生成させることができる。これらのコントロールは、図10Bに「slice」および「fill」と表記されている。
【0523】
図10Dは、「STL」、「slice」,および「fill」コントロールの作動後のGUIを示す。この実施例では、空洞について記述するコンピュータ物体データは、48248の面を含む。「fill」コントロールは、データプロセッサに、スライスされた面上で、X、Y、およびZの3つの次元の各々に1回ずつ、3回の別個のパスを実行させる。
【0524】
スライシング動作は、AM技術分野で公知のいずれかの技術によることができる。典型的には、各面毎にプロセッサは、任意選択的にかつ好ましくは整数に丸められた面上の全ての一意の点を見つけ出し、全ての面から全ての点位置を収集し、かつ任意選択的に点位置を三次元体積ラスタ表現に変換する。本実施形態に適した別の技術は、下の実施例2でさらに詳述するように、距離フィールド値の使用を含む。
【0525】
動作752は、三次元メッシュを縮小する技術分野で公知のいずれかの技術によることができる。例えば、本発明の一部の実施形態では、Matlab(登録商標)ソフトウェアの「imfill」機能が、任意選択的にかつ好ましくはこの機能の「holes」オプションと共に使用される。任意選択的にGUIを使用して、スライスされたラスタをプレビューすることができる。これは、「show」コントロールを作動させることによって行うことができる。図10Eは、コンピュータ物体データが中空ラビリンスを記述している場合について、「fill」コントロールの作動後の「show」コントロールの作動結果を示す。この作動は、任意選択的にかつ好ましくは、点群に示すべき点の数など、しかしそれに限らない入力パラメータを受け取ることができる。
【0526】
GUIはまた、データプロセッサに動作753を実行させる1組のコントロールをも含むことができる。このコントロールの組には、アクセスコントロールによって、例えば図10Bに「Erode」と表記されたタブ選択コントロールによってアクセスすることができる。図10Fは、図10Bの「Erode」タブを作動させた後のGUIを示す。この実施例では、コントロールの組は、データプロセッサが動作753を実行するために使用するべきパラメータをオペレータに選択させる、3つのコントロールを含む。代替的に、または追加的に、これらのパラメータは、データプロセスによってアクセス可能なコンピュータ可読媒体に格納されたデフォルト値を持つことができる。これらのパラメータは、浸食動作に含めるべき隣接点の数、浸食方法、および終端部として使用すべき軸線を示す浸食連結性を含む。浸食連結性は、6~約30、または約10~約26、または約14~約26、または約18~約26の隣接点とすることができる。浸食方法は、ユークリッド、都市ブロック、チェス盤、および擬似ユークリッドから成る群から選択することができ、終端部に使用すべき軸線はX、Y、およびZから成る群から選択することができる。選択される浸食連結性を限定するものとはみなされないが、図10Fにおいて、選択された腐食連結性は26の隣接点であり、選択された浸食方法はユークリッドであり、選択された軸線はYである。
【0527】
アクセス制御下のコントロールの組は、データプロセッサに三次元体積ラスタ表現における最内点を見つけさせるコントロールをも含むことができる。このコントロールは図10Fに「erode」と表記されている。典型的には約15メガボクセルの三次元体積ラスタ表現で約2000個の浸食点が生成される。この動作は、Matlab(登録商標)ソフトウェアの「bwulterode」機能など、しかしそれに限らず、当該技術分野で公知のいずれかの技術によって行うことができる。アクセス制御下のコントロールの組は、作動させたときにデータプロセッサに浸食点を表示させるコントロールをも含むことができる。このコントロールは、図10Fに「show」と表記されている。図10Gは、コンピュータ物体データが中空ラビリンスについて記述している場合の「Erode」内の「erode」コントロールの作動後の「Erode」タブ内の「show」コントロールの作動結果を示す。この作動は、任意選択的にかつ好ましくは、点群に示すべき点の数など、しかしそれに限らない入力パラメータを受け取る。
【0528】
アクセス制御下のコントロールの組は、データプロセッサに浸食点をソートさせて線を形成させるコントロールをも含むことができる。このコントロールは図10Fに「Sort」と表記されている。この動作中に、データプロセッサは典型的には点の対を連結させる連結性リストを生成する。各対の点は最も近い隣接点であり、対の点間で塗りつぶされたラスタを通る直線などの連結線が存在し、点が3つ以上の他の点に接続される点が無いことを確実にしながら、連結線を形成する。
【0529】
アクセス制御下のコントロールの組は、どの接続点が物体の終端点であるべきかをデータプロセッサに特定させるコントロールをも含むことができる。このコントロールは、図10Fで「terminals」と表記されている。代替的に、データプロセッサは、例えば終端点が所定の方向に沿って最も遠くにあり、かつ孤立しているため、終端点を自動的に特定することができる。
【0530】
アクセス制御下のコントロールの組は、ソート動作中に得られた線をデータプロセッサに結合させるコントロールをも含むことができる。このコントロールは、図10Fに「Join」と表記されている。入力されたコンピュータ物体データがラビリンスを記述している場合、この動作は、任意選択的にかつ好ましくは、入力されたラビリンスに対して収縮したラビリンスを形成するように実行される。本発明の様々な例示的実施形態では、終端点はこの動作から除外される。この動作では、線の数をLで表し、かつ終端点の数をTで表して、データプロセッサは2L-T個の点を結合しようとする。典型的には、1本の線につき約100個の点が存在するので、ソート動作後に全部でN個の点が存在する場合、これらの点は約L=N/100本の線および約T=N/200個の終端点を形成する。ソート後に2000個の点が存在する例示的な状況の場合、結合すべき点は約30個存在する。
【0531】
一部の実施形態によれば、データプロセッサは、これらの点における各点pに対し、点pの近くにあり、かつソート動作後に接続される場合と同様の仕方で接続された、別の線に属する別の点qを見つけ出す。データプロセッサが2個のそのような点pおよびqを見つけた場合、データプロセッサはこれらの点を接続し、それによって接続されたラビリンスを形成することが好ましい。
【0532】
線が依然として何らかの他の線に接続されていないままである場合、データプロセッサは、任意選択的にかつ好ましくは、線の非終端点のいずれかを他の線に属する点に接続しようと試み、かつ任意選択的に、接続される点間の距離を最小化しようとも試みる。
【0533】
データプロセッサは、任意選択的にかつ好ましくは、図10Hに示されるように、別個であるが接続された線に結合された点を示し、かつ終端点をも示す、回転可能な表示画面を生成することができる。データプロセッサはまた、線に対しソートされた点をリストする表ファイルをも生成することができる。
【0534】
GUIはまた、データプロセッサに動作754の結果に関する出力を生成させる、1組のコントロールを含むこともできる。この組のコントロールは、アクセスコントロールによって、例えば図10Bに「Output」と表記されたタブ選択コントロールによって、アクセスすることができる。
【0535】
図10Iは、図10Bの「出力」タブを作動させた後にGUIを示す。この実施例では、コントロールの組は、データプロセッサに各線の個々の点を補間させて、連続線を形成させるコントロールを含む。このコントロールは、図10Iに「Continue」と表記されている。補間は、整数に丸めながら、点位置に対する線形補間とすることができる。非線形補間も構想され、例えば線形補間の結果、外れ値の線または点が生じる場合に有用である。この実施例では、コントロールの組は、データプロセッサに、空洞を含むボリュームと共に距離マップを生成させるコントロールを含む。このコントロールは図10Iに「Peel」と表記されている。この工程は、任意選択的にかつ好ましくは、並列処理によって実行される。距離マップの距離は、空洞を記述するコンピュータ物体データ内の点と、計算された線内のその最近点との間の距離であり、また、任意選択的にかつ好ましくは、空洞を記述するコンピュータ物体データと同等であるラスタのエッジからの距離でもある。この実施例では、コントロールの組はまた、動作753を実行するためにデータプロセッサが使用するべきジオメトリックパラメータをオペレータに選択させるコントロールをも含む。これらのパラメータは、例えば液体(第二)材料のための最大半径(これは上述のLMAXパラメータの半分であるO)、および中間層の最小厚さcMINを含むことができる。コントロールの組は、任意選択的にかつ好ましくは、データプロセッサにジオメトリックパラメータによって指定される量だけ線を拡張させるコントロールを含む。このコントロールは、図10Iに「Finalize」と表記されている。拡張された線は、Marching Cubesアルゴリズムなど、しかしそれに限らず、当業界で公知のいずれかの技術でメッシュに変換することができる。生成されたメッシュは次いで、コンピュータ可読媒体に例えばSTLファイルとして出力することができる。
【0536】
結果的に得られた連結コンピュータ物体データは、市販のユーティリティによって表示することができる。代替的に、データプロセッサはそれを、以前に計算された何らかのデータと共に、同時に表示することができる。図10Jは、コンピュータ物体データが中空ラビリンスを記述している場合について、「Finalize」コントロールの作動の結果を示す。
【0537】
実施例2
身体構造の特性を具備する物体についてのコンピュータ物体データを得るための例示的手順
本発明者らは、鞘付き物体、より好ましくは鞘付きの中空物体など、しかしそれに限らない物体を製作するのに特に有用なコンピュータ物体データを作成する技術を考案した。手順は、システム10またはシステム110で使用するためのコンピュータ物体データを得るのに特に有用である。この実施例に記載する例示的手順は、鞘、中間鞘、および芯を有する管状構造など、しかしそれに限らない鞘物体、さらに詳しくは芯および中間鞘が両方とも本明細書に記載する犠牲物体である鞘付き物体を製作するのに有用である。この実施例に記載する例示的手順はまた、他の物体、例えば鞘なし物体、又は中間鞘を含まない鞘付き物体、又は芯及び中間鞘がいずれも本明細書に記載のように犠牲していない鞘付き物体を製作するのに有用である。本発明の一部の実施形態では、この実施例に記載する手順は、非生物学的材料から、中空身体構造(これに限定されない)のような身体構造の特性を具備する物体を製作するのに使用される。これらの実施形態では、この実施例に記載する手順は、任意選択的かつ好ましくは、以下の実施例2に記載する手順と組み合わされる。
【0538】
図11Aは、上の操作201を実施するために本発明の一部の実施形態に従って使用されることができる例示的な方法のフローチャート図である。他に規定されない限り、以下に記載される操作は、多くの実施の組み合わせ又は順序で同時に又は連続して実施されることができることが理解されるべきである。特に、フローチャート図の順序は、限定として考えられるべきではない。例えば、特定の順序でフローチャート図に又は以下の記載に現われる二つ以上の操作は、異なる順序で(例えば逆の順序で)又は実質的に同時に実施されることができる。さらに、以下に記載される複数の操作は、任意であり、実施されなくてもよい。
【0539】
方法は、700で始まり、任意選択的にかつ好ましくは701に続き、そこでDigital Imaging and Communications in Medicineのために好適なフォーマットのデータ(以下、DICOMデータ)が受けとられる。
【0540】
DICOMデータは、MRIシステム、CT撮影システム、ヘリカルCTシステム、陽電子放出断層撮影(PET)システム、2D又は3D透視撮影システム、2D,3D又は4D超音波撮影システム、内視鏡システム、ベッドサイドモニターシステム、X線システム、及びCT,MR,PET、超音波又は他の撮影技術のハイブリッド撮像システムを含む限定されない取得コンソールから受けとることができる。DICOMデータは、好ましくは生物組織要素の形状を有する一つ以上の構造を記載する一つ以上のデジタル画像データを含む。本発明の一部の実施形態では、DICOMデータは、好ましくは一つ以上の骨を記載する一つ以上のデジタル画像データを含み、本発明の一部の実施形態では、DICOMデータは、好ましくは骨以外の生物組織要素の形状を有する一つ以上の構造を記載する一つ以上のデジタル画像データを含み、本発明の一部の実施形態では、DICOMデータは、好ましくは、一つ以上の骨を記載する一つ以上のデジタル画像データ、及び骨以外の生物組織要素の形状を有する一つ以上の構造を記載する一つ以上のデジタル画像データを含む。
【0541】
方法は、任意選択的にかつ好ましくは702に続き、そこでDICOMデータがコンピューター物体データに変換される。DICOMデータからコンピューター物体データへの変換は、任意選択的にかつ好ましくはしきい値化、領域形成法、ダイナミック領域形成法などからなる群から選択される一つ以上の区分法を含む。
【0542】
しきい値化法は、規定されたしきい値に等しい又はそれより大きい値を有する画像ピクセル(画素)を選択するために異なる組織の濃度の差を利用する。例えば、しきい値化法の規定されたしきい値は、硬い組織に関する画像ピクセルがしきい値化法をパスし、他の画像ピクセル関連がフィルターされるように選択されることができる。しきい値化法は、異なる組織タイプに対して別個のデータセットを得るように、異なるしきい値を使用して各回に複数回適用されることができる。
【0543】
領域形成法は、一般的に同じ濃度範囲を有する領域を分離するためにしきい値化後に適用される。領域形成法は、初期シード点の隣接ピクセルを検査することができ、隣接ピクセルが領域に属するかどうかを決定する。この方法は、任意選択的にかつ好ましくは、画像をセグメント化するために反復して実施される。例えば、シード点は、異なる組織タイプに従って選択されることができ、領域形成セグメント化技術は、これらの組織タイプの一つに属するような画像ピクセルを分離するために反復して実施されることができる。ダイナミック領域形成法では、画像パラメーターの領域は、シード点に加えて選択される。これらのパラメーターは、シード点と同じ画像ピクセルを認識することを可能にするように選択される。
【0544】
一般的に、しかし必須ではなく、初期背景セグメント化法は、関心のある組織タイプのいずれにも属さないDICOMデータ要素から除去するために適用される。続くセグメント化法は、異なるセグメント化技術を使用することによって対象の解剖学的構造の一つ以上のより洗練された領域のより洗練されたセグメント化のために適用されることができる。
【0545】
セグメント化後、DICOMデータからコンピューター物体データへの変換はまた、DICOMデータ内のアーチファクトを補償するためにスムージング、ラッピング及び/又はホールフィリングを含むことができる。フォーマット変換法は、そのとき上述のフォーマットのいずれかにおいてコンピューター物体データを与えるようにセグメント化DICOMデータに適用されることができる。
【0546】
本発明の一部の実施形態では、入力データは、コンピューター物体データとしてコンピューター可読媒体から受けとられ、その場合においては、DICOMデータを得て変換する必要はない。これらの実施形態では、操作701及び702を実施することは必要でない。
【0547】
いずれにしても、コンピューター物体データは、上でさらに詳述されるように生物組織要素の形状を有する一つ以上の構造の形状に関するデータを含むことが好ましい。DICOMデータの変換によって得られるか又はそのように直接受けとられるかにかかわらず、コンピューター物体データは、任意選択的にかつ好ましくは、各々が異なる組織タイプに関する多数のファイルに配置される。
【0548】
身体構造が中空物体(例えば血管、これに限定されない)を含むとき、方法は、上でさらに詳述されるように752,753及び754に続く。あるいは、これらの操作は、スキップされることができる。
【0549】
703において、付加製造される物体によって模倣される身体構造のタイプ(例えば、骨、筋組織、平滑組織、骨腫瘍、軟骨、椎間板、神経/脊髄、体液管)は、各データファイルのために決定される。決定は、それぞれのコンピューター物体データファイルに存在する情報、又はそれぞれのDICOMデータファイル、又はそれぞれのデータファイルと関連した情報を抽出することによってなされることができる。
【0550】
704において、それぞれの身体構造と関連した一組の規則が選択される。このAM規則の組は、任意選択的にかつ好ましくは、吐出される構築材料配合物、並びに吐出パラメーター及び条件(例えば温度、インターレーシング比率、インターレーシングテキスチャー)を含む。このAM規則の組は、身体構造の各タイプに対する入力、及びかかる入力の各々と関連した一組のパラメーターを有するルックアップテーブルから得られることができる。本発明の一部の実施形態では、対象プロファイルが受けとられる。対象プロファイルは、一般的に、重量、性別、年齢、民族性、家系、病歴などを含む。本発明の一部の実施形態では、対象プロファイルはまた、遺伝子プロファイルを含み、それは、対象のゲノム全体中の遺伝子を含むことができ、又はそれは、遺伝子の特定のサブセットを含むことができる。遺伝子プロファイルは、ゲノムプロファイル、プロテオームプロファイル、エピゲノムプロファイル、及び/又はトランスクリプトームプロファイルを含むことができる。対象プロファイルが受けとられる実施形態では、ルックアップテーブルはまた、異なるプロファイルパラメーターに対する入力を含む。特に、ルックアップテーブルは、各プロファイルパラメーターに対して一つの入力で身体構造の各タイプに対して複数の入力を含むことができる。限定されない代表例として、ルックアップテーブルは、海綿骨構造に対して複数の入力を含むことができ、そこでは各年齢グループに対して一つの入力である。
【0551】
本発明の一部の実施形態では、AM規則の組は、オペレーターによって、例えばユーザーインターフェース(例えばユーザーインターフェース116)を介して選択される。ルックアップテーブルとユーザーインターフェースの両方が使用される実施形態もまた、考えられる。例えば、ルックアップテーブルは、オペレーターに与えられる選択肢の数を少なくするために使用されることができ、ユーザーインターフェースは、AM規則の最終組を選択するために使用されることができる。
【0552】
さらに、規則の組がコンピューター物体データとともに受けとられる実施形態が考えられる。例えば、各コンピューター物体データファイルは、一つ以上のAM規則を含むことができ、又は一つ以上のAM規則を含むAM規則ファイルと関連付けられることができ、AM規則は、それぞれのコンピューター物体データに対応する。
【0553】
705において、スライス化操作が、任意選択的にかつ好ましくは各コンピューター物体データファイルに対して別々に、適用される。スライス化は、一般的に、異なる鉛直座標(例えば上述のz座標)によって特徴づけられる平面(その平面は、身体構造を模倣する各物体の層に対応する)の2Dボクセルマップを各々記載する一組の画像ファイルをコンピューター物体データファイルに対して発生することによって実施される。画像ファイルは、ビットマップファイル(BMP)、ポータブルネットワークグラフィックス(PNG)などの限定されない従来公知のいずれかの2Dフォーマットであることができる。好ましいスライス化技術は、図11Bを参照して以下に与えられる。
【0554】
706において、画像ファイルの二つ以上の組が組み合わされて単一の画像ファイルにされる。例えば、同じ鉛直座標に対応するが異なる身体構造を模倣する物体に対応する画像ファイルを組み合わせて、いったん印刷されると、それぞれ二つ以上の身体構造を模倣する二つ以上の物体のスライス化された区域を含む層を記載する画像ファイルを与えることができる。707において、画像ファイルは、身体構造に似た非生物物体を製作するために、システム10又はシステム110のような限定されないAMシステムにアップロードされる。
【0555】
この方法は、708で終了する。
【0556】
図11Bは、本発明の一部の実施形態による例示的なスライス化法のフローチャート図である。この方法は、図11Aのスライス化操作705を実施するために特に有用である。この方法は、720で開始し、任意選択的にかつ好ましくはコンピューター物体データにおける各ボクセルに対して適用される。
【0557】
決定721において、3D物体に対する距離フィールド値が、それぞれのボクセルに対して決定される。距離フィールド値は、ボクセルが印刷される身体構造を模倣する物体の内側又は外側であるかどうかを示す。例えば、負の距離フィールド値は、身体構造を模倣する物体の外側のボクセルに割り当てられ、正の距離フィールド値は、身体構造を模倣する物体の内側のボクセルに割り当てられ、ゼロ距離フィールド値は、身体構造を模倣する物体の最も外側の表面上のボクセルに割り当てられることができる。
【0558】
ボクセルが身体構造を模倣する物体の最も外側の表面の内側又はその表面上であるとき(例えば、距離フィールド値が正であるとき)、この方法は、722に続き、そこで構築材料配合物は、それぞれのボクセルに対して割り当てられる。構築材料配合物は、造形用材料(第一)配合物、硬化性支持体材料(第三)配合物、又は本明細書に記載される第二構築材料配合物であることができ、任意選択的にかつ好ましくはボクセルの位置、及び上の704で得られたAM規則に基づいて決定される。722から、この方法は、724に続き、そこで方法は、割り当てられた構築材料配合物に対応するピクセル値を選択する。ピクセル値は、割り当てられた構築材料配合物を独自に表わすいずれの値であってもよい。例えば、ピクセル値は、グレースケールレベル又は色値(例えばRGB値)であることができる。
【0559】
ボクセルが身体構造を模倣する物体の外側であるとき(例えば、距離フィールド値が負であるとき)、この方法は、決定723に続き、そこで方法は、ボクセルが占有されるべきか又は空白のままであるべきかを決定する。もしボクセルが空白のままであるべきなら、この方法は、726に続き、方法は、空白ピクセルを独自に表わすピクセル値を選択する。例えば、この方法は、空白ピクセルを表わすためにヌル値を選択することができる。あるいは、ボクセルが身体構造を模倣する物体の外側であるとき、この方法は、723から728に続き、そこでそれは終了する。その場合においていずれの値も割り当てられなかったピクセルは、ボクセルを空白にする命令として考えられるべきである。
【0560】
もしボクセルが占有されるなら、方法は、725に続き、そこで構築材料は、ボクセルに割り当てられ、次いで724に続き、そこで方法は、上でさらに詳述したように割り当てられた構築材料配合物に対応するピクセル値を選択する。
【0561】
場合によって、724,725又は726から、方法は、727に続き、そこで選択されたピクセル値が2D画像においてピクセルに割り当てられ、そこでは2D画像におけるピクセルの位置は、2D画像によって表わされる層内のボクセルの位置に対応する。
【0562】
この方法は、728で終了する。
【0563】
本発明はその特定の実施態様によって説明してきたが、多くの別法、変更および変形があることは当業者には明らかであることは明白である。従って、本発明は、本願の請求項の精神と広い範囲の中に入るこのような別法、変更および変形すべてを包含するものである。
【0564】
本明細書で挙げた刊行物、特許および特許出願はすべて、個々の刊行物、特許および特許出願が各々あたかも具体的にかつ個々に引用提示されているのと同程度に、全体を本明細書に援用するものである。さらに、本願で引用または確認したことは本発明の先行技術として利用できるという自白とみなすべきではない。節の見出しが使用されている程度まで、それらは必ずしも限定であると解釈されるべきではない。
図1A-1B】
図2
図3
図4A
図4B-4E】
図4F-4H】
図5
図6A
図6B-6C】
図6D
図7A-7C】
図8A-8B】
図9
図10A
図10B
図10C
図10D
図10E
図10F
図10G
図10H
図10I
図10J
図11A
図11B