(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023110038
(43)【公開日】2023-08-08
(54)【発明の名称】ワクチンを使用して癌または皮膚病変を治療するための方法および組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 39/12 20060101AFI20230801BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230801BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230801BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20230801BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230801BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20230801BHJP
【FI】
A61K39/12
A61K45/00
A61P35/00
A61P17/00
A61P43/00 121
A61P37/04
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023092142
(22)【出願日】2023-06-05
(62)【分割の表示】P 2021108667の分割
【原出願日】2017-02-24
(31)【優先権主張番号】62/455,434
(32)【優先日】2017-02-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/300,785
(32)【優先日】2016-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/338,183
(32)【優先日】2016-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/328,487
(32)【優先日】2016-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/444,576
(32)【優先日】2017-01-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】517142945
【氏名又は名称】エイチピーブイヴァックス,リミテッド ライアビリティー カンパニー.
【氏名又は名称原語表記】HPVVAX,LLC.
【住所又は居所原語表記】140 SW Chamber Court,Suite 200,Port St. Lucie,Florida 34986,U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100169904
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100117422
【弁理士】
【氏名又は名称】堀川 かおり
(72)【発明者】
【氏名】ティム アイオナイデス
(57)【要約】 (修正有)
【課題】患者に1以上の用量のHPV組換えワクチンを投与することによって、皮膚癌、および特に扁平上皮癌(SCC)および基底細胞癌を含めた、癌、良性腫瘍、またはHPVと関係がある病変を治療するまたは再発率を低下させるための方法を提供する。
【解決手段】少なくとも1種の精製されたウイルスL1タンパク質またはその断片、第2の活性な医薬成分および薬学的に許容し得る担体を含む医薬組成物とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の精製されたウイルスL1タンパク質またはその断片、
第2の活性な医薬成分および
薬学的に許容し得る担体を含む医薬組成物。
【請求項2】
前記第2の活性な医薬成分が、局所麻酔剤である請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記局所麻酔剤が、プロカイン、ベンゾカイン、クロロプロカイン、コカイン、シクロ
メチカイン、ジメトカイン/ラロカイン、ピペロカイン、プロポキシカイン、プロカイン
、プロパラカインおよびテトラカイン、リドカイン、アルチカイン、ブピバカイン、シン
コカイン、エチドカイン、レボブピバカイン、リグノカイン、メピバカイン、プリロカイ
ン、ロピバカイン並びにトリメカインからなる群から選択される請求項2に記載の医薬組
成物。
【請求項4】
前記局所麻酔剤が、リドカインである請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記第2の活性な医薬成分が、ビタミンD、ビタミンD類似体、ビタミンA、ビタミン
A類似体、シロリムス、インターフェロン、インターフェロン類似体、イミキモド、イン
ゲノールメブテート、T4エンドヌクレアーゼ、代謝拮抗剤およびシクロオキシゲナーゼ
阻害剤からなる群から選択される免疫調節剤である請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記代謝拮抗剤が、5-フルオロウラシルまたはメトトレキサートである請求項5に記
載の医薬組成物。
【請求項7】
前記シクロオキシゲナーゼ阻害剤が、ジクロフェナクである請求項5に記載の医薬組成
物。
【請求項8】
注射用形態である請求項1から7のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
局所用形態である請求項1から7のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記少なくとも1種の精製されたウイルスL1タンパク質またはその断片が、ヒトパピ
ローマウイルス(HPV)L1タンパク質またはその断片である請求項1から9のいずれ
か1項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
HPV6、11、16および18型のそれぞれから得られる精製されたウイルスL1タ
ンパク質またはその断片を含む請求項10記載の医薬組成物。
【請求項12】
HPV16、18、31、33、45、52および58型のそれぞれから得られる精製
されたウイルスL1タンパク質またはその断片を含む請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記少なくとも1種の精製されたウイルスL1タンパク質またはその断片が、ウイルス
様粒子(VLP)内に存在する請求項1から12のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚癌を含めた癌、または良性もしくは悪性腫瘍を治療することに、より具
体的には、治療薬としてのワクチンの局所的投与を含めたワクチンの投与を含む、癌また
は腫瘍の治療のためのまたは再発率を低下させるための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚癌は、3つの主要な型、すなわち、基底細胞癌(BCC)、扁平上皮癌(SCC)
、およびメラノーマからなり、また、世界的に最も一般的な形態の癌である。当然のこと
ながら、長年の間、これらの型の皮膚癌を治療する、およびひょっとしたら治癒させるた
めの有効な方法を探索する研究が進行中である。
【0003】
ヒトパピローマウイルス(HPV)が、ある種の型の皮膚癌、特に扁平上皮癌(SCC
)を引き起こすことと関係があることは、一般に認められている。HPVは、ヒトにおけ
るある種の種類の組織に感染することができるDNAウイルスである。30を超えるHP
Vのサブタイプが存在し、HPV16およびHPV18を含めたこれらのサブタイプのい
くつかは、子宮頸癌と関係がある。HPVが、基底細胞癌(BCC)もしくはメラノーマ
の原因である、またはこれらと関係があることは知られていない。
【0004】
ワクチンが開発され、女性における子宮頸癌、および、HPV感染によって引き起こさ
れるまたはHPV感染と関係がある他の状態を予防することが示されている。GARDA
SIL(登録商標)は、HPV(6、11、16、および18型)に対する活性を有する
、市販品として入手できるワクチンである。
【0005】
GARDASIL(登録商標)9は、HPV(16、18、31、33、45、52、
および58型)の予防のために市販されている、別の市販品として入手できるワクチンで
ある。GARDASIL(登録商標)は、9~26歳の女子および男子における使用につ
いて示されており、GARDASIL(登録商標)9はまた、9~26歳の女子および9
~15歳の男子における使用について示されている。
【0006】
HPVのサブタイプ、特にHPV16およびHPV18を治療するために、他のワクチ
ンも産生されている。ある種のHPV感染および関係する癌を予防するために予防的に投
与されるGARDASIL(登録商標)および他の知られているワクチンは、本明細書で
は「予防ワクチン」と称される。これらの予防ワクチンは、一般的に、全身性の作用のた
めに投与される、すなわち、子宮頸部などのいずれかの特定の標的から離れた患者の皮下
または筋肉(例えば三角筋)内に注射される。さらに、これらは一般に、HPVへの曝露
前に有効であると認められ、HPVへの曝露または感染後の治療に有効であるとは一般的
に知られていない。
【0007】
他の予防ワクチンとしては、例えば、HPVのある種のL1タンパク質(GARDAS
IL(登録商標)と同様)と、追加のHPV特異的成分とを含む、中国特許出願第101
890160(CN’160)号明細書に記載されている通りの改良されたワクチン組成
物が挙げられる。HPV16および18型タンパク質を含む予防ワクチンも、米国特許出
願公開第2005/0287161号明細書に記載されている通り、他のHPV型に対す
る交差防御を提供することが示唆されている。
【0008】
治療のために使用されるワクチン(本明細書では「治療ワクチン」と称される)は、記
載されている。しかし、これらの治療ワクチンは、GARDASIL(登録商標)などの
市販品として入手できる予防ワクチンを含むHPV L1タンパク質などの、より多くの
ウイルス特異的成分を必要とする。
【0009】
米国特許出願公開第2007/0218074号明細書は、HPV感染細胞由来の宿主
細胞ペプチドを含むワクチン組成物の使用を記載している。宿主細胞ペプチド、例えば、
HPVに感染した細胞の表面に存在する早期抗原、E6またはE7は、宿主細胞タンパク
質の断片である。ある種の癌タイプを治療するのに使用されるワクチンにおけるポリペプ
チドE6またはE7の重要性は、「Development of HPV vacci
nes for HPV-associated head and neck squ
amous cell Carcinoma」Devaraj,et al.,Crit
Rev Oral Biol Med.2003;14(5):345-62に記載さ
れている。宿主細胞タンパク質(BAX)を含む別のワクチンは、米国特許第8,399
,610号明細書に記載されている。
【0010】
HPV-16ペプチドと組み合わせて他のまたは追加の抗原を含むさらに別のワクチン
組成物は、米国特許出願公開第2011//0070252号明細書に記載されているワ
クチン組成物(これはTrojan抗原をさらに必要とする)である。
【0011】
米国特許出願公開第2011/0110979(US‘979)号明細書および米国特
許出願公開第2012/0288538(US‘538)号明細書は、E6またはE7ポ
リペプチド(HPVに感染した宿主細胞由来のペプチド断片)を含むHPVワクチンの治
療的使用を開示している。US‘538号明細書は、E6およびE7が、HPV感染細胞
への形質転換を誘発するのに不可欠であることを記載しており、また、E6またはE7を
含まないワクチン組成物が、E6またはE7を有しない細胞、すなわち、HPV感染して
いないBCCなどの細胞上で働くことは期待できないであろうことを記述している。US
‘979公報に記載された方法は、免疫賦活薬またはアジュバントをさらに必要とする。
【0012】
US‘979およびUS‘538公報は、SCCまたは上皮性SCCなどの皮膚癌に対
する治療ワクチンの使用を記載しているが、これらは、BCCおよびメラノーマがHPV
感染と関係しないという条件におそらく基づいて、BCCまたはメラノーマなどの他の皮
膚癌に対するワクチンの使用は記載していない。
【0013】
ワクチンの上述の使用の制限および欠点は、対象発明に従う方法の使用によって克服す
ることができる。医療および健康分野における、患者および医療関係者にとって便利であ
る、安全かつ効果的な癌治療(一般的に、HPV感染と関係がない皮膚癌または癌が含ま
れる)の必要性が存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
対象発明は、皮膚癌、良性もしくは悪性腫瘍(ヒトパピローマウイルス(HPV)感染
に関係または関連するかどうかにかかわらず)、または他の皮膚病変を有する患者を治療
するための方法であって、治療的に有効な用量の市販品として入手できるHPVワクチン
を、腫瘍、癌、もしくは他の皮膚病変を有するまたは治療の必要がある患者に投与するス
テップを含む前記方法に関する。このワクチンは、腫瘍または病変への直接的(局所)適
用によって、または、腫瘍または病変への直接的注射によって、癌または病変に直接的に
投与することができる。あるいは、このワクチンは、全身注射によって、治療的使用のた
めに投与することができる。対象発明による治療の方法は、局所適用、直接的または全身
注射の任意の組み合わせを含むこともできる。治療的に有効な用量は、ワクチンのそのラ
ベル表示ごとの従来の承認された用量であり得る。
【0015】
一実施態様では、前記方法は、
a)宿主細胞ペプチド、ポリペプチド、もしくはタンパク質、またはこれらの分解産物を
含まない第1の用量のHPVワクチンを、27歳以上の患者、またはHPVワクチンで以
前に免疫されていない患者に投与するステップと;
b)第1の投与の約1か月から約3か月後に、第2の用量のHPVワクチンを、患者に投
与するステップと;
c)任意で、第1の用量の約5か月から約7か月後に、第3の用量のHPVワクチンを、
患者に投与するステップと
を含む。
【0016】
上のステップa)によるワクチンの最初の従来の投与の後の、上のステップb)および
c)による第2または第3の投与は、ワクチンを含む組成物の注射によるものでもよいし
、局所投与によるものでもよい。あるいは、ステップb)またはc)の第2または第3の
投与は、注射と局所投与の両方を含むことができる。
【0017】
一実施態様では、第2の用量のHPVワクチンは、第1の用量を投与した約2か月後に
投与され、かつ、第3の用量のHPVワクチンは、第1の用量を投与した約6か月後に投
与される。
【0018】
HPVワクチンは、HPV L1タンパク質を含むHPV四価(6、11、16、およ
び18型)組換えワクチン、およびHPV L1タンパク質を含むHPV多価(16、1
8、31、33、45、52、および58型)組換えワクチンから選択することができ、
好ましくは、宿主細胞早期抗原、例えばE6またはE7を含まないまたは実質的に含まな
い。
【0019】
ある好ましい実施態様では、前記方法は、追加のまたは他の免疫賦活薬またはアジュバ
ントを投与することを含まないまたは投与を行わない。
【0020】
ある好ましい実施態様では、前記方法は、免疫賦活薬またはアジュバントなどの、追加
または他の免疫調節剤を投与することを含む。
【0021】
前記方法を実施することによって、癌またはHPV関連の病変のサイズを、実質的に低
下させる、または完全に消失させることができる。さらに、癌またはHPV関連の病変の
再発率を低下させることができる。前記方法は、扁平上皮癌、基底細胞癌、メラノーマ、
尋常性疣贅、または尖圭コンジローマなどの、癌、良性腫瘍、またはHPV関連の病変を
治療する、またはこれらの再発率を低下させるのに有効であり得る。
【0022】
一実施態様では、前記方法は、単回投与のワクチンを含むことができる。例えば、単回
投与のワクチンを、腫瘍のサイズを低下させるまたは消失させるために、局所的に、また
は腫瘍への直接的な注射によって、または全身的に投与することができる。医師または医
療従事者は、必要とされる、または医師または医療従事者によって決定される、第2のま
たは後続の用量を投与することができる。
【0023】
一実施態様では、治療の必要がある患者は、ワクチンで以前に免疫された人であり得る
。別の実施態様では、治療の必要がある患者は、ワクチンで以前に免疫されていない人で
あり得る。
【0024】
上の方法ステップで投与されるHPVワクチンの各用量は、好ましくは約0.5mlで
あり、より好ましくは0.5mlである。
【0025】
前記方法は、第1の用量のHPVワクチンを投与する前に、癌、良性腫瘍、またはHP
V感染の陽性診断を確定することをさらに含むことができる。
【0026】
対象発明による方法の代替実施態様は、癌、良性腫瘍、またはヒトパピローマウイルス
関連の(HPV関連の)病変を有する患者を治療することを含み、ここでは、この方法は
、ある用量のHPVワクチンを、癌、腫瘍、もしくは病変に、または腫瘍もしくは病変を
直接取り囲む範囲に、直接的に投与することを含む。
【0027】
対象発明による方法の、この代替実施態様は、
第1の用量を投与した約1か月から約3か月後に、第2の用量のHPVワクチンを、腫
瘍もしくは病変に、または腫瘍もしくは病変を直接取り囲む範囲に、直接的に投与するス
テップと;
第1の用量を投与した約5か月から約7か月後に、第3の用量のHPVワクチンを、腫
瘍もしくは病変に、または腫瘍もしくは病変を直接取り囲む範囲に、直接的に、任意で投
与するステップ
をさらに含むことができる。
【0028】
ワクチンを含む組成物の、これらの直接的な第2のまたは第3の投与は、局所適用であ
ってもよいし、病変への注射によるものであってもよい。
【0029】
対象方法の、この代替実施態様では、第2の用量のHPVワクチンは、第1の用量を投
与した約2か月後に投与することができ、かつ、第3の用量のHPVワクチンは、第1の
用量を投与した約6か月後に投与することができる。
【0030】
対象発明による方法の代替実施態様を実施することによって、癌、腫瘍、またはHPV
関連の病変のサイズを、実質的に低下または完全に消失させることができる。さらに、癌
、腫瘍、またはHPV関連の病変の再発率を低下させることができる。
【0031】
HPVワクチンの各後続の投与の好ましい用量は、存在するならば、0.5mlである
。
【0032】
本発明のいずれかの実施態様による方法は、限定はされないが、HPV感染と関係があ
るまたは関係がない良性腫瘍、扁平上皮癌、基底細胞癌、メラノーマ、尋常性疣贅、およ
び尖圭コンジローマを含めた、癌、良性腫瘍、またはHPV関連の病変を治療するために
使用することができる。
【0033】
この方法は、第1の用量のHPVワクチンを投与する前に、癌、良性腫瘍、またはHP
V感染の陽性診断を確定することをさらに含むことができる。
【0034】
1つの好ましい実施形態では、ワクチンの直接的または局所的投与は、注射によって施
され、より好ましくは、この方法は、ワクチンの投与と共に、または投与中に、または投
与後に、追加のまたは他の免疫賦活薬またはアジュバントを投与することを含まない。
【0035】
あるいは、対象方法は、ワクチンの投与と共に、または投与中に、または投与後に、追
加のまたは他の免疫調節剤、例えば免疫賦活薬またはアジュバントを投与することを含み
得る。
【0036】
別の好ましい実施態様では、ワクチンは、局所投与のために製剤化し、局所用溶液また
は懸濁液、例えば、液体またはスプレー、ゲル、クリーム、膏薬(salve)、軟膏(
ointment)、フォーム、またはムースなどの形態で、病変に直接的に適用するこ
とができる。
【0037】
対象発明は、具体的には、腫瘍を治療するための方法であって、腫瘍を有する患者に、
少なくとも一用量の市販品として入手できるHPVワクチンを投与することを含む方法に
関することができる。好都合なことに、対象方法は、乳房、下垂体(例えば、浸潤性下垂
体腺腫)、前立腺、または膵臓などの腺組織における腫瘍を治療するのに有効であること
が判明している。この実施態様は、腫瘍自体に直接的に、少なくとも一用量のワクチンを
投与することを含むことができる。
【0038】
対象発明は、全身的に、例えば、筋肉内(IM)注射によって、少なくとも一用量のワ
クチンを、単独で、または腫瘍へのワクチンの直接的投与と組み合わせて(同時に、また
は直前に、または後に)投与することを含むことができる。
【0039】
あるいは、ある種の場合では、例えば、腫瘍が体の表面上または近くに存在する場合、
この方法は、単独での、または腫瘍への直接的注射と組み合わせた、または全身注射と組
み合わせた、または直接的注射と全身注射の両方と組み合わせた、少なくとも一用量のH
PVワクチンの局所投与をさらに含むことができる。
【0040】
ワクチンを含む組成物も、本発明の一部として含められる。例えば、HPVワクチンは
、患者に対する投与のために、1種以上の追加の活性な医薬成分と共に製剤化することが
できる。追加の活性な医薬成分は、ワクチンの効果を調節するための1種以上の免疫調節
剤、または注射中の患者の不快感を軽減するための1種以上の局所麻酔剤、例えばリドカ
イン(エピネフリンを伴うまたは伴わない)であり得る。
【0041】
本発明の組成物の一例は、0.5mlの市販品として入手できるHPVワクチンと0.
5mlの市販品として入手できるリドカイン溶液(例えば、0.5%(w/v)、1%(
w/v)、または2%(w/v))との1:1(v/v)比率の混合物を含む。この組成
物は、十分に混合し、治療のために患者に注射することができる。当技術分野で理解され
るであろう通り、1:10(v/v)ワクチン:麻酔液から、10:1(v/v)ワクチ
ン:麻酔液までの範囲の比率を使用することができる。
【0042】
HPVワクチンはまた、患者に対する投与のために、1種以上の賦形剤または希釈剤と
共に製剤化することもできる。賦形剤および希釈剤は、限定はされないが、クリーム、皮
膚軟化薬、ゲル、ローション、膏薬などを調製するための基剤を含めた、局所調製物を製
剤化するのに有用な1種以上の従来の薬学的に許容し得る成分を含むことができ、また、
浸透促進剤、保存剤、放出制御剤、可溶化剤、安定剤、増粘剤、または薄め液などを任意
で含むことができる。
【0043】
注射のための液剤はまた、1種以上の緩衝液、皮膚軟化薬、希釈剤、pH調整剤、保存
剤、可溶化剤、安定剤などを含むことができる。
【0044】
これらの組成物は、後の時点を含めて随時、出荷、保管、および使用することができる
製品として調製することもできるし、ポイントオブケアの時点で、または早急の頓用治療
のために離れた場所で、調合することもできる。
【0045】
本発明の組成物は、賦形剤も希釈剤も伴わずに1種以上の追加の活性な医薬成分を含む
こともできるし、1種以上の活性な医薬成分と、1種以上の賦形剤または希釈剤を含むこ
ともできる。
【0046】
本発明の組成物は、追加の活性な医薬成分を伴わずに1種以上の賦形剤または希釈剤を
含むこともできるし、1種以上の賦形剤または希釈剤と、1種以上の活性な医薬成分を含
むこともできる。
【0047】
本発明者の知る限りでは、皮膚癌、良性もしくは悪性腫瘍、またはHPVと関係がある
病変ではない他の皮膚病変を消失させるまたは再発率を低下させるための、以前に免疫さ
れていない患者または27歳以上の成人患者へのHPV抗原のみを含む(宿主細胞ペプチ
ドを含まない)HPVワクチンの投与は、これまでに記載されていない。病変を消失させ
るおよびその再発の発生率を低下させるための、病変または腫瘍への局所適用によるまた
は直接的注射によるワクチンの直接的または局所的注射も、これまでに記載されていない
。
【発明を実施するための形態】
【0048】
本発明は、癌、良性腫瘍、皮膚癌、例えば扁平上皮癌(SCC)など、またはヒトパピ
ローマウイルス(HPV)感染と関係があるまたは関係がない皮膚病変を治療する方法を
対象とし、乳房、下垂体、前立腺、または膵臓組織などの腺組織に由来する腫瘍を治療す
ることが含まれる。対象発明による方法の一実施態様は、癌または腫瘍を有する患者への
、HPV四価(6、11、16、および18型)組換えワクチンなどの、市販品として入
手できるHPVワクチンの投与を含む。
【0049】
ある好ましい実施態様では、対象方法は、HPVワクチンで以前に免疫されていない患
者への、または27歳以上の成人患者への、少なくとも一用量のHPVワクチンの投与を
含む。対象発明の目的では、HPVワクチンで以前に免疫されていない患者は、その患者
が他の状態や疾患に対する他の免疫を受けている可能性があるかどうかに関係なく、「未
免疫患者」と呼ばれる。
【0050】
投薬レジメンは、直接的注射、全身注射、もしくは局所適用、またはこれらの投与経路
のいずれかの組み合わせによる単回投与であり得る。あるいは、対象方法は、ワクチンの
直接的注射、全身注射、または局所適用による、反復(2回以上の)投与、または反復(
同時)投与を含むことができる。
【0051】
対象方法は、ワクチンのための慣例的に認められた投薬系列に従って投与することを含
むこともできる。例えば、HPVワクチンは、一般的に、第1の用量、第1の用量の約2
か月後の第2の用量、および第1の用量の約6か月後の第3の用量を含む投薬レジメンを
使用して投与される。これらの第2、第3、または後続投与は、全身注射、例えば、従来
の筋肉内注射であってもよいし、病巣内注射によるまたは局所投与による、病変に対する
直接的投与であってもよい。
【0052】
本発明の方法実施態様は、驚いたことに、基底細胞癌(BBC)またはメラノーマなど
の、HPV感染と関係がない癌病変または良性腫瘍の、発生、再発、および/または進行
を治療することまたは最小限にすることにおける有益な結果をもたらすことが判明した。
【0053】
いかなる特定の理論にも制限されないが、対象方法が、患者の免疫応答を増大させて、
すなわち後押しして(これは、皮膚細胞における免疫監視の向上として臨床的に明らかに
することができる)、皮膚癌、特に、限定的ではないがSCCを生じる異常な皮膚細胞の
発生および進行の可能性を低下させることができることが提案される。
【0054】
あるいは、本発明の方法は、他の機構によって、ウイルスのおよびウイルス様のタンパ
ク質の固有の機能活性を妨げることができる。この妨害は、紫外線などの外因性および/
または環境的因子によって変化または活性化されるウイルスのおよびウイルス様のタンパ
ク質の、完全なまたは部分的な機能不活性化を含むであろう。
【0055】
本明細書で使用する場合、用語「HPV」および「ヒトパピローマウイルス」は、パピ
ローマウイルスファミリーの非エンベロープ型二本鎖DNAウイルスを指す。そのゲノム
は、環状で、サイズがおよそ8キロ塩基対である。ほとんどのHPVは、6つは「初期」
領域(E1-E2)に、2つは「後期」領域(L1(メジャーカプシドタンパク質)およ
びL2(マイナーカプシドタンパク質))に位置する、8つの主要タンパク質をコードす
る。120を超えるHPV型が同定されており、これらは、数字によって称されている(
例えば、HPV-16、HPV-18など)。
【0056】
一実施態様では、対象発明のHPVワクチンは、1、2、3、4、5、6、7、8、9
、10、またはそれ以上の様々なHPV型由来の1種以上のタンパク質(例えば、組換え
型L1タンパク質)を含む。HPV L1タンパク質を発現させる方法、およびHPVワ
クチンを作製する方法は、当技術分野で公知であり、例えば、あらゆる目的でその全体が
参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,820,870号明細書および第6,
251,678明細書に記載されている。
【0057】
一実施態様では、対象方法において用いられるHPVワクチンは、HPV四価(6、1
1、16、および18型)組換えワクチンである市販品として入手できるGARDASI
L(登録商標)、またはGARDASIL(登録商標)9、すなわちHPV多価(16、
18、31、33、45、52、および58型)組換えワクチンなどの、精製された不活
性なウイルスのおよびウイルス様のタンパク質を含有する。別の実施態様では、HPVワ
クチンは、HPV二価(16および18型)組換えワクチンである、市販品として入手で
きるCERVARIX(登録商標)である。対象方法のこの実施態様に従う有用なワクチ
ンは、好ましくは、宿主細胞および/または非L1HPVペプチド、ポリペプチド、また
はタンパク質、例えば、HPV感染細胞の表面上に存在する宿主細胞ペプチドの断片であ
る早期抗原、E6もしくはE7などを含まない。
【0058】
該ワクチンは、未免疫患者における、HPV感染と関係がない癌病変を含めた癌性また
は良性腫瘍、HPV感染と関係がある癌(腫瘍または病変)、HPV感染と関係がない良
性腫瘍、または非癌性のHPV関連の病変を治療するために投与することができる。
【0059】
あるいは、該ワクチンは、未免疫患者における、癌、良性腫瘍、またはHPV関連の病
変の再発率を低下させるために投与することができる。別の実施態様では、該ワクチンは
、27歳以上の成人患者における、癌、良性腫瘍、またはHPV関連の病変を治療する、
またはこれらの再発率を低下させるために投与することができる。
【0060】
より具体的には、本発明の、ある好ましい実施態様は、未免疫である患者または27歳
以上の成人患者における、癌、良性腫瘍、またはHPV関連の病変の治療のための方法で
あって:
i.宿主細胞ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質を含まない第1の用量のHPV
組換えワクチンを、患者に投与するステップ;
ii.第1の用量の約1か月から約3か月後に、宿主細胞ペプチド、ポリペプチド、また
はタンパク質を含まない第2の用量のHPV組換えワクチンを、患者に投与するステップ
;および
iii.任意で第1の用量を投与した約5か月から約7か月後に、宿主細胞ペプチド、ポ
リペプチド、またはタンパク質を含まない第3の用量のHPVワクチンを、患者に投与す
るステップ
を含む前記方法を含む。
【0061】
ワクチン用量の第2もしくは第3または後続の投与は、全身的、例えば、筋肉内注射で
あってもよいし、病変に対する直接的投与によるものであってもよい。病変に対するワク
チン組成物の直接的投与は、病巣内注射によるものであってもよいし、病変に対して局所
的に適用されてもよい。さらなる実施態様では、第2、第3、または後続投与は、全身的
であるものと、病変に対するワクチンの直接的適用によるものとの両方である。病変に対
するこうした直接的投与は、局所投与のために製剤化されたワクチン組成物の、病巣内注
射によるまたは局所適用によるものであり得る。
【0062】
ワクチンの後続投与のタイミングに対する言及には、幅があり、日または週によって変
動し得ることが、医療関係者によって理解されるであろう。この変動は、患者の投薬スケ
ジュールに対する遵守または非遵守、治療している医師(後続投与を医学的理由から進め
る(より積極的な治療のために)または遅らせることに決めることができる)による臨床
的知見に起因する可能性がある。しかし、一般に、第2の用量が第1の用量の約2か月後
に投与され、かつ第3の用量が第1の用量の約6か月後に投与される投薬スケジュールに
従うことによって、有効な結果を得ることができる。医師が、後続投与が患者への利益を
提供できると考えるならば、追加の(第4または第5の)用量も投与することができる。
【0063】
対象発明の方法による各投与のための典型的な総用量は、約0.5mlのワクチンであ
り、好ましくは、0.5mlの市販品として入手できるHPVワクチンである。
【0064】
用語「癌」、「癌性の」、または「悪性の」は、典型的には、制御されない細胞増殖を
特徴とする、哺乳類における生理的状態を指すまたは説明する。癌の例としては、限定は
されないが、心臓:肉腫(血管肉腫、線維肉腫、横紋筋肉腫、脂肪肉腫)、粘液腫、横紋
筋腫、線維腫、脂肪腫、および奇形腫;肺:気管支原性肺癌(扁平細胞、未分化小細胞、
未分化大細胞、腺癌)、肺胞(細気管支)癌、気管支腺腫、肉腫、リンパ腫、軟骨腫性過
誤腫、中皮腫;胃腸:食道(扁平上皮癌、腺癌、平滑筋肉腫、リンパ腫)、胃(癌腫、リ
ンパ腫、平滑筋肉腫)、膵臓(膵管腺癌、インスリノーマ、グルカゴノーマ、ガストリノ
ーマ、カルチノイド腫瘍、VIP産生腫瘍)、小腸(腺癌、リンパ腫、カルチノイド腫瘍
、カポジ肉腫、平滑筋腫、血管腫、脂肪腫、神経線維腫、線維腫)、大腸(腺癌、管状腺
腫、絨毛腺腫、過誤腫、平滑筋腫) 結腸直腸;尿生殖器:腎臓(腺癌、ウィルムス腫瘍
(腎芽腫)、リンパ腫、白血病)、膀胱および尿道(扁平上皮癌、移行上皮癌、腺癌)、
前立腺(腺癌、肉腫)、精巣(精上皮腫、奇形腫、胚性癌腫、奇形癌腫、絨毛癌、肉腫、
間質細胞腫、線維腫、線維腺腫、腺腫様腫瘍、脂肪腫);肝臓:ヘパトーマ(肝細胞癌)
、胆管細胞癌、肝芽腫、血管肉腫、肝細胞腺腫、血管腫;骨:骨原性肉腫(骨肉腫)、線
維肉腫、悪性線維性組織球腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、悪性リンパ腫(細網肉腫)、
多発性骨髄腫、悪性巨細胞腫脊索腫、骨軟骨腫(骨軟骨外骨腫)、良性軟骨腫、軟骨芽細
胞腫、軟骨粘液性線維腫、類骨骨腫および巨細胞腫;神経系:頭蓋(骨腫、血管腫、肉芽
腫、黄色腫、変形性骨炎)、髄膜(髄膜腫、髄膜肉腫、神経膠腫症)、脳(星細胞腫、髄
芽腫、神経膠腫、上衣腫、胚細胞腫(松果体腫)、多形神経膠芽腫、乏突起神経膠腫、シ
ュワン細胞腫、網膜芽細胞腫、先天性腫瘍)、脊髄(神経線維腫、髄膜腫、神経膠腫、肉
腫);婦人科:子宮(子宮内膜癌)、子宮頚部(子宮頚癌、前腫瘍性(pre tumo
r)子宮頚部異形成)、卵巣(卵巣癌[漿液性嚢胞腺癌、粘液性嚢胞腺癌、分類不能癌]
、顆粒膜卵胞膜細胞腫、セルトリ・ライディッヒ細胞腫、未分化胚細胞腫、悪性奇形腫)
、外陰部(扁平上皮癌、上皮内癌、腺癌、線維肉腫、メラノーマ)、膣(明細胞癌、扁平
上皮癌、ブドウ状肉腫(胎児性横紋筋肉腫)、卵管(癌腫)、乳房;血液系:血液(骨髄
性白血病(急性および慢性)、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、骨髄増殖性疾
患、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群)、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫(悪性リンパ
腫);皮膚:悪性黒色腫、基底細胞癌、扁平上皮癌、カポジ肉腫、ほくろ、異形成母斑、
脂肪腫、血管腫、皮膚線維腫、ケロイド、乾癬;および副腎:神経芽腫が挙げられる。別
の実施態様では、癌は、癌腫、リンパ腫、白血病、芽腫、および肉腫である。こうした癌
のより具体的な例としては、扁平上皮癌、骨髄腫、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、神経膠腫
、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、急性骨髄性白血病(AML)、多発性骨髄腫
、胃腸癌、腎癌、卵巣癌、肝癌、リンパ芽球性白血病、リンパ球性白血病、結腸直腸癌、
子宮内膜癌、腎癌、前立腺癌、甲状腺癌、メラノーマ、軟骨肉腫、神経芽腫、膵癌、多形
神経膠芽腫、子宮頸癌、脳癌、胃癌、膀胱癌、ヘパトーマ、乳癌、結腸癌、および頭頸部
癌が挙げられる。ある種の例示的実施態様では、癌は、HPVと関係がある癌である。
【0065】
癌の具体例としては、皮膚癌、例えば、公知の皮膚癌の中で特に、基底細胞癌および/
または扁平上皮癌が挙げられる。癌の別の例としては、乳癌が挙げられる。癌のさらに別
の例としては、前立腺癌が挙げられる。さらに別の例としては、陰茎癌が挙げられる。癌
のさらに別の例としては、卵巣、子宮頚部、膣、および/または外陰癌が挙げられる。癌
のさらに別の例としては、膀胱癌が挙げられる。癌のさらに別の例としては、結腸直腸お
よび/または肛門癌が挙げられる。癌のさらに別の例としては、中咽頭癌(例えば、咽頭
、軟口蓋、舌底、咽頭扁桃、および/または扁桃の癌)が挙げられる。癌のさらに別の例
としては、腎癌が挙げられる。癌のさらに別の例としては、肝癌が挙げられる。
【0066】
ある種の例示的実施態様では、癌は、Bcl-2結合Xタンパク質(BAX)および/
またはBcl-2相同拮抗性/キラー(BAK1)の発現低下と関係がある。他の例示的
実施態様では、癌は、1つ以上の異常なミトコンドリア活性と関係がある。ある種の例示
的実施態様では、本発明のHPVワクチンは、腫瘍細胞におけるBAXおよび/またはB
AK1発現を増大させる、および/または腫瘍細胞のアポトーシスを促進する。他の態様
では、ビタミンDと本発明のHPVワクチンとの組み合わせは、腫瘍細胞におけるBAX
および/またはBAK1発現を増大させる、および/または腫瘍細胞のアポトーシスを促
進する。別の実施態様では、本発明のHPVワクチンは、腫瘍細胞における1つ以上のミ
トコンドリア活性を調節する。
【0067】
本発明の治療方法の上記実施形態は、患者における皮膚癌、および特に扁平上皮癌を治
療するのに効果的であり得、ここでは、皮膚癌病変は、ワクチンの3回の投与後に、サイ
ズが低下するまたは消失する。
【0068】
対象発明による治療方法はまた、患者における良性腫瘍または癌腫瘍または病変(皮膚
癌を含む)の再発率を低下させることができる。
【0069】
特に、対象発明による治療方法は、乳房の癌性腫瘍を消失させる、またはサイズもしく
は再発率を低下させること、前立腺の癌性腫瘍を消失させる、またはサイズもしくは再発
率を低下させること、膵臓の癌性腫瘍を消失させる、またはサイズもしくは再発率を低下
させること、または、脳下垂体の癌性腫瘍、例えば浸潤性下垂体腺腫を消失させる、また
はサイズもしくは再発率を低下させることを含む。
【0070】
対象発明の方法に従うHPVワクチンを使用する治療から恩恵を受けることができる、
他の特定の型の癌または腫瘍には、限定はされないが、子宮頸癌、肛門癌、中咽頭癌(咽
頭、軟口蓋、舌底、または扁桃)、膣癌、外陰癌、陰茎癌、結腸直腸癌、膀胱癌、肺癌、
腎癌、肝癌、卵巣癌、膵臓の粘液性嚢胞腫瘍、胃(gastricまたはstomach
)癌が含まれる。
【0071】
本発明の方法はまた、HPVと関係があるが非癌性の病変、例えば性器疣贅を含めた疣
贅など、例えば尋常性疣贅または尖圭コンジローマのサイズを低下させる、または消失さ
せるのに有効であり得る。
【0072】
HPV四価(6、11、16、および18型)組換えワクチン(ここでは、このワクチ
ンは、感染細胞の表面上に存在する、細胞のHPV感染の結果としての、宿主細胞ペプチ
ド、ポリペプチド、またはタンパク質を実質的に含まない)の1回以上の注射の投与後に
、皮膚癌、および特に扁平上皮癌の再発率を低下させる方法を提供することが、本発明の
さらなる予想外の結果である。
対象となる治療方法のさらなる予想外の結果は、基底細胞癌またはメラノーマなどの、
HPV感染と関係がない皮膚病変の、サイズを低下させること、消失させること、または
再発率を低下させることを含む。
【0073】
本発明は、癌の治療的処置のための、上に述べた薬剤の使用に関する。したがって、本
発明のHPVワクチン組成物は、投与に適した医薬組成物に組み込まれる。こうした組成
物は、典型的には、HPVウイルスタンパク質またはウイルス様タンパク質と、薬学的に
許容し得る担体とを含む。本明細書で使用する場合、用語「薬学的に許容し得る担体」に
は、医薬投与と適合性のある、ありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング、抗菌および
抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などが含まれるものとする。薬学的に活性な物質のた
めの、こうした媒体および薬剤の使用は、当技術分野で周知である。いずれの従来の媒体
または薬剤も、活性な化合物と不適合である場合を除き、前記組成物中でのその使用が予
想される。追加の活性な化合物も、前記組成物に組み込むことができる。
【0074】
本発明の医薬組成物は、その意図される投与経路と適合性であるように製剤化される。
投与経路の例としては、非経口、例えば、静脈内(IV)、皮内、皮下(SCまたはSQ
)、腹腔内、筋肉内、経口(例えば吸入)、経皮(局所)、および経粘膜投与が挙げられ
る。非経口、皮内、または皮下適用のために使用される液剤または懸濁剤は、次の成分を
含むことができる:無菌の希釈剤、例えば、注射用水、生理食塩水、不揮発性油、ポリエ
チレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、または他の合成溶媒;抗菌剤、
例えば、ベンジルアルコールまたはメチルパラベン;酸化防止剤、例えば、アスコルビン
酸または亜硫酸水素ナトリウム;キレート剤、例えば、エチレンジアミン四酢酸;緩衝液
、例えば、酢酸塩、クエン酸、またはリン酸塩、および浸透圧の調整のための薬剤、例え
ば、塩化ナトリウムまたはデキストロース。pHは、塩酸または水酸化ナトリウムなどの
酸または塩基で調整することができる。非経口調製物は、ガラスまたはプラスチック製の
アンプル、使い捨て注射器、または複数回投与バイアルに封入することができる。
【0075】
注射用途に適した医薬組成物としては、無菌の水溶液(水溶性の場合)または分散系、
および無菌の注射用溶液または分散系の即時調製のための無菌の粉末が挙げられる。静脈
内投与については、好適な担体としては、生理食塩水、静菌水、Cremophor E
(商標)(BASF,Parsippany,N.J.)、またはリン酸緩衝生理食塩水
(PBS)が挙げられる。すべての場合において、前記組成物は、無菌でなければならず
、かつ、容易な注射器通過性が存在する程度に流動性であるべきである。前記組成物は、
製造および保管の条件下で安定でなければならず、かつ、細菌および真菌などの微生物の
混入作用から保護されなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール
(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールな
ど)、ならびに好適なそれらの混合物を含有する、溶媒または分散媒であり得る。適切な
流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用によって、または分散の場合には
、必要とされる粒径の維持によって、または界面活性剤の使用によって、維持することが
できる。微生物の作用の防止は、様々な抗菌および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロ
ブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどによって実現することがで
きる。多くの場合、組成物中に、等張剤、例えば、糖、多価アルコール、例えばマンニト
ール、ソルビトール、塩化ナトリウムを含めることが好ましいこととなる。注射用組成物
の持続的吸収は、吸収を遅らせる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼ
ラチンを、組成物中に含めることによってもたらすことができる。
【0076】
無菌注射液は、必要に応じて上に列挙した1種の成分または成分の組み合わせと共に、
適切な溶媒中に、必要とされる量の活性な化合物を組み込み、それに続いて濾過滅菌を行
うことによって調製することができる。一般に、分散系は、基本分散媒および上に列挙し
たものからの必要とされる他の成分を含有する無菌ビヒクルに、活性な化合物を組み込む
ことによって調製される。無菌注射液の調製のための無菌粉末の場合には、調製の好まし
い方法は、あらかじめ滅菌濾過したその溶液から、活性成分+いずれかの追加の所望の成
分の粉末をもたらす、真空乾燥および凍結乾燥である。
【0077】
経口用組成物は、一般に、不活性な希釈剤または食用の担体を含む。これらは、ゼラチ
ンカプセルに封入する、または、錠剤に圧縮することができる。経口の治療的投与の目的
のために、活性な化合物を、賦形剤と共に組み込み、錠剤、トローチ、またはカプセル剤
の形態で使用することができる。経口用組成物はまた、液剤または懸濁剤として飲み込ま
れるまたは摂取される、または口腔洗浄薬としての使用のための、流体担体を使用して調
製することができる。ここでは、流体担体中の前記化合物は、経口的に適用され、口内を
回り、吐出されるまたは飲み込まれる。薬学的に適合性のある結合剤および/または補助
材料を、組成物の一部として含めることができる。錠剤、丸剤、カプセル剤、トローチな
どは、以下の成分のいずれか、または類似の性質の化合物を含有することができる:結合
剤、例えば微結晶セルロース、トラガカントガムもしくはゼラチン;賦形剤、例えばデン
プンもしくはラクトース、崩壊剤、例えばアルギン酸、プリモゲル(Primogel)
、もしくはコーンスターチ;滑沢剤、例えばステアリン酸マグネシウムもしくはステロー
ト(Sterote);流動化剤、例えばコロイド状二酸化ケイ素;甘味剤、例えばスク
ロースもしくはサッカリン;または着香料、例えばペパーミント、サリチル酸メチル、ま
たはオレンジフレーバー。
【0078】
吸入による投与については、前記化合物は、好適な噴射剤、例えば、二酸化炭素などの
気体を含有する、加圧された容器またはディスペンサーからのエアロゾルスプレー、また
はネブライザーの形態で送達される。
【0079】
全身投与はまた、経粘膜または経皮手段によるものであり得る。経粘膜または経皮投与
については、製剤中に、浸透させるべき障壁に適した浸透剤が使用される。こうした浸透
剤は、一般に、当技術分野で公知であり、例えば、経粘膜投与のためには、界面活性剤、
胆汁酸塩、およびフシジン酸誘導体が挙げられる。経粘膜投与は、鼻内スプレーまたは座
剤の使用を通して実現することができる。経皮投与については、前記活性な化合物は、当
技術分野で一般に公知の軟膏(ointment)、膏薬(salve)、ゲル、または
クリームに製剤化される。
【0080】
前記化合物は、直腸内送達のための、(例えば、従来の座剤基剤、例えばカカオ脂およ
び他のグリセリドを用いる)座剤、または停留浣腸の形態で調製することができる。
【0081】
一実施態様では、HPVウイルスタンパク質またはウイルス様タンパク質は、植込錠お
よびマイクロカプセル化送達システムを含めた制御放出製剤など、化合物を体からの急速
な排出から保護することとなる担体と共に調製される。エチレン酢酸ビニル、ポリ酸無水
物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸などの、生分
解性の生体適合性ポリマーを使用することができる。こうした製剤の調製のための方法は
、当業者に明らかであろう。これらの材料はまた、Alza Corporationお
よびNova Pharmaceuticals,Inc.から、市販品として入手する
ことができる。リポソーム懸濁液(ウイルス抗原に対するモノクローナル抗体を伴う、感
染細胞に標的化されるリポソームが含まれる)も、薬学的に許容し得る担体として使用す
ることができる。これらは、例えば米国特許第4,522,811号明細書に記載されて
いる通りの、当業者に公知の方法に従って調製することができる。
【0082】
投与の容易さおよび投薬量の均一性のために、経口または非経口組成物を投薬単位形で
製剤化することが、特に好都合である。投薬単位形は、本明細書で使用する場合、治療さ
れることとなる対象のための単位投薬量として適合された、物理的に分離した単位を指し
;各単位は、必要とされる医薬担体と共に所望の治療効果をもたらすように算出された、
あらかじめ決定された量の活性な化合物を含有する。本発明の投薬単位形についての詳細
は、活性な化合物の独自の特性および達成されるべき特定の治療効果、ならびに個人の治
療のためにこうした活性な化合物を調合する際の当技術分野に固有の制限によって決定さ
れ、また、直接的に依存する。
【0083】
こうした化合物の毒性および治療有効性は、例えば、LD50(母集団の50%に対し
て致死的な用量)およびED50(母集団の50%において治療的に有効な用量)を決定
するために、細胞培養または実験動物における標準の医薬的手順によって決定することが
できる。毒性効果と治療効果との用量比率は、治療指数であり、これは、比率LD50/
ED50として表すことができる。大きい治療指数を呈する化合物が好ましい。毒性の副
作用を呈する化合物も使用することができるが、非感染細胞へのダメージの可能性を最小
限にし、それによって副作用を軽減するために、こうした化合物を罹患した組織の部位に
標的化する送達システムを設計するように注意を払うべきである。
【0084】
細胞培養分析および動物研究から得られたデータを、ヒトにおける使用のための投薬量
の範囲を策定するのに使用することができる。こうした化合物の投薬量は、好ましくは、
毒性をほとんどまたはまったく伴わない、ED50を含めた循環濃度の範囲内にある。投
薬量は、用いられる剤形および利用される投与経路に応じて、この範囲内で変動し得る。
本発明の方法において使用されるあらゆる化合物について、治療的に有効な用量は、細胞
培養分析から、最初に推定することができる。用量は、細胞培養において決定されるEC
50(すなわち、最大反応の半分を達成する試験化合物の濃度)を含めた循環血漿濃度範
囲を得るための動物モデルにおいて策定することができる。こうした情報を使用して、ヒ
トにおける有用な用量を、より正確に決定することができる。血漿中のレベルは、例えば
、高速液体クロマトグラフィーによって測定することができる。
【0085】
前記医薬組成物は、投与のための任意の指示書と共に、容器、パック、またはディスペ
ンサーに入れることができる。
【0086】
送達の経路は、患者の障害に依存し得る。ある種の例示的実施態様では、皮膚癌と診断
された対象に、局所投与によって、本発明のHPVワクチン組成物を投与することができ
る。患者には、本発明のHPVワクチン組成物に加えて、第2の治療法、例えば、緩和療
法および/または疾患特異的な療法を施すことができる。第2の治療法は、例えば、対症
的(例えば、症状を緩和するためのもの)、予防的(例えば、疾患進行を遅らせるまたは
停止させるためのもの)、または回復的(例えば、疾患過程を逆転させるためのもの)で
あり得る。癌の治療については、例えば、対症的治療法が、本明細書でさらに記載した併
用療法として使用される別の化学療法剤をさらに含むことができる。
【0087】
一般に、本発明のHPVワクチン組成物は、任意の好適な方法によって投与することが
できる。本明細書で使用する場合、局所送達は、目、粘膜、体腔の表面を含めた体のいず
れかの表面への、またはいずれかの内部表面への、HPVワクチン組成物の直接的適用を
指すことができる。局所投与のための製剤としては、経皮貼付剤、軟膏、ローション、ク
リーム、ゲル、液滴、スプレー、およびリキッドが含まれ得る。従来の医薬担体、水性の
、粉末、または油性の基剤、増粘剤などが、必須または望ましい可能性がある。局所投与
は、HPVワクチン組成物を、対象の表皮もしくは真皮に、またはその特定の層に、また
は下層組織に選択的に送達するための手段として使用することもできる。
【0088】
非経口投与のための製剤としては、緩衝液、希釈剤、および他の好適な添加剤も含有す
ることができる無菌の水性液剤が含まれ得る。心室内注射は、例えばリザーバーを取り付
けた心室カテーテルによって容易に行うことができる。静脈内使用については、溶質の総
濃度は、調製物の等張性を与えるように制御されるべきである。
【0089】
本発明のHPVワクチン組成物は、肺送達によって、対象に投与することができる。肺
送達組成物は、分散内の組成物が、肺(ここでは、組成物は、直ちに、肺胞領域を通して
、直接的に血液循環に吸収されることが可能である)に到達できるように、分散系の吸入
によって送達することができる。肺送達は、肺の疾患を治療するための、全身送達と限局
性送達のどちらにとっても有効であり得る。
【0090】
肺送達は、霧状、エアロゾル化、ミセル状、およびドライパウダーをベースとする製剤
の使用を含めた様々な手法によって実現することができる。送達は、液体ネブライザー、
エアロゾルをベースとする吸入器、およびドライパウダー分散装置を用いて実現すること
ができる。定量吸入装置が好ましい。アトマイザーまたは吸入器を使用することの利点の
一つは、装置が自己完結型なので、汚染の可能性が最小限になることである。ドライパウ
ダー分散装置は、例えば、ドライパウダーとして容易に製剤化することができる薬物を送
達する。HPVワクチン組成物は、それ自体で、または好適な粉末担体と組み合わせて、
凍結乾燥されたまたはスプレードライした粉末として、安定的に保管することができる。
吸入のための組成物の送達は、投薬タイミング要素が介在することができる。投薬タイミ
ング要素には、装置に組み込まれた場合に、エアロゾル医薬品の投与中の患者に対する、
用量追跡、服薬遵守監視、および/または投与始動を可能にする、タイマー、ドーズカウ
ンター、時間測定装置、または時間表示器が含まれ得る。
【0091】
担体として有用である医薬賦形剤の種類としては、ヒト血清アルブミン(HSA)など
の安定剤、炭水化物、アミノ酸およびポリペプチドなどの充填剤;pH調整剤または緩衝
液;塩化ナトリウムなどの塩;などが挙げられる。これらの担体は、結晶または非結晶形
態であってもよいし、2つの混合物であってもよい。
【0092】
特に価値ある充填剤としては、適合性のある炭水化物、ポリペプチド、アミノ酸、また
はこれらの組み合わせが挙げられる。好適な炭水化物としては、単糖、例えば、ガラクト
ース、D-マンノース、ソルボースなど;二糖、例えば、ラクトース、トレハロースなど
;シクロデキストリン、例えば、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン;お
よび多糖、例えば、ラフィノース、マルトデキストリン、デキストランなど;アルジトー
ル、例えば、マンニトール、キシリトールなどが挙げられる。炭水化物の好ましい群とし
ては、ラクトース、トレハロース、ラフィノース、マルトデキストリン、およびマンニト
ールが挙げられる。好適なポリペプチドとしては、アスパルテームが挙げられる。アミノ
酸としては、アラニンおよびグリシンが挙げられ、グリシンが好ましい。
【0093】
好適なpH調整剤または緩衝液としては、有機酸および塩基から調製される有機塩、例
えば、クエン酸ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウムなどが挙げられ;クエン酸ナトリ
ウムが好ましい。
【0094】
本発明の1種以上のHPVウイルスタンパク質またはウイルス様タンパク質(すなわち
、HPVワクチン)は、経口または経鼻送達によって投与することができる。例えば、こ
れらの膜を通して投与される薬物は、速やかに作用を開始し、治療的血漿濃度を提供し、
肝代謝の初回通過効果を回避し、過酷な胃腸(GI)環境への薬物の曝露を回避する。追
加の利点としては、薬物を容易に適用、局在化、および除去できるような、膜部位への容
易な接触が挙げられる。
【0095】
対象発明による別の実施態様は、皮膚病変または皮膚病変を取り囲む範囲への直接的ま
たは局所的投与、例えば注射によって患者に投与されるHPVワクチンを投与することを
含む。この直接的投与方法は、癌、特に皮膚癌を患う患者において有用であり得る。該方
法のこの実施態様はまた、非癌性の(良性)腫瘍、またはHPVと関係がある非癌性の病
変、例えば疣贅、例えば尋常性疣贅または尖圭コンジローマなどを治療するのに有用であ
り得る。
【0096】
病変への、病変の周囲への直接的注射を含む一実施態様では、投薬レジメンは、単回投
与または複数回投与を含むことができる。例えば、上述の通り、第3の投与の投薬シリー
ズを続けることができる。あるいは、医師は、病変にまたは病変の周囲に直接的に、最初
の用量の後に、必要に応じて(prn)後続用量を投与することができる。任意の特定の
単一の時点についてのワクチンの分割投薬は、単回投与とみなされる。
【0097】
本発明のこの直接的投与実施態様は、基底細胞癌(BBC)またはメラノーマなどの、
HPV感染と関係がない癌病変もしくは腫瘍、または非癌性の(良性の)腫瘍の、発生、
再発、および/または進行を治療することまたは最小限にすることにおける有益な結果を
もたらすことができる。
【0098】
対象発明の一実施態様では、前記方法は、本発明の治療方法と同時の、または治療方法
中の、または治療方法後の、追加のまたは他の免疫賦活薬またはアジュバントの投与を伴
わずに実施される。
【0099】
あるいは、対象方法は、ワクチンの投与と同時に、または投与中に、または投与後に、
追加のまたは他の免疫調節剤、例えば免疫賦活薬またはアジュバントを投与することを含
むことができる。対象方法の一部として有用な免疫調節剤の非限定的な例としては、以下
が挙げられる:
1)ビタミンDおよびその類似体;
2)シロリムス;
3)インターフェロンおよびその類似体;
4)ビタミンAおよびその類似体、例えばSoriatane(レチノイド)
5)イミキモド;
6)インゲノールメブテート;および
7)T4エンドヌクレアーゼ
8)代謝拮抗剤、例えば5フルオロウラシル、メトトレキサート
9)シクロオキシゲナーゼ阻害剤、例えばジクロフェナク
【0100】
これらの薬剤は、治療の効果を高めるために、本明細書に記載した通りのHPVワクチ
ンと組み合わせて局所的または全身的に、または本明細書に記載した通りのHPVワクチ
ンと同時に与えることができる。例えば、腫瘍(皮膚、肺など)を有する、以前にHPV
で免疫された患者においては、インターフェロンとHPV抗原ワクチンとの組み合わせが
、局所的に与えられる可能性がある。インターフェロンはまた、全身的に同時に与えるこ
ともできるし、しなくともよい。この投与は、インターフェロンに伴う全身性副作用を伴
わずに、腫瘍または他の病変の局所的破壊を促進することができる。
【0101】
本発明の別の態様では、本発明は、個人における癌を治療するための方法であって、H
PVワクチンと、HPVワクチン以外の1種以上の追加の化学療法剤とを含む併用療法を
、個人に施すことを含む方法を提供する。追加の治療薬の具体的な投薬量および投薬スケ
ジュールは、さらに変動する可能性があり、最適用量、投薬スケジュールおよび投与経路
は、使用される具体的な治療薬に基づいて決定されることとなる。
【0102】
化学療法剤の例としては、アルキル化剤、例えば、チオテパおよびシクロスホスファミ
ド(cyclosphosphamide);スルホン酸アルキル、例えば、ブスルファ
ン、インプロスルファン、およびピポスルファン;アジリジン、例えば、ベンゾドーパ(
benzodopa)、カルボコン、メツレドーパ(meturedopa)、およびウ
レドーパ(uredopa);エチレンイミンおよびメチラメラミン(methylam
elamine)(アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド
、トリエチレンチオホスホラミド、およびトリメチロロメラミン(trimethylo
lomelamine)が含まれる);アセトゲニン(特に、ブラタシンおよびブラタシ
ノン);カンプトテシン(合成類似体トポテカンが含まれる);ブリオスタチン;カリス
タチン;CC-1065(そのアドゼレシン、カルゼルシン、およびビセレシン合成類似
体が含まれる);クリプトフィシン(特にクリプトフィシン1およびクリプトフィシン8
);ドラスタチン;デュオカルマイシン(合成類似体、KW-2189およびCBI-T
MIが含まれる);エリュテロビン;パンクラチスタチン;サルコジクチイン(sarc
odictyin);スポンギスタチン(spongistatin);ナイトロジェン
マスタード例えば、クロラムブシル、クロルナファジン、チョロホスファミド(chol
ophosphamide)、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、塩
酸メクロレタミンオキシド、メルファラン、ノベンビシン(novembichin)、
フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタード;ニトロソ
ウレア、例えば、カルムスチン、クロロゾトシン、ホテムスチン、ロムスチン、ニムスチ
ン、ラニムスチン;抗生物質、例えば、エンジイン抗生物質(例えば、カリケアミシン、
特に、カリケアミシンγIIおよびカリケアミシンφII(例えば、Agnew,Che
m.Intl.Ed.Engl.,33:183-186(1994)を参照のこと);
ジネミシン(ジネミシンAが含まれる);ビスホスホネート、例えば、クロドロン酸;エ
スペラミシン;ならびにネオカルジノスタチンクロモフォアおよび関連する色素タンパク
質エンジイン抗生物質クロモモフォア(chromomophore))、アクラシノマ
イシン、アクチノマイシン、アウスラマイシン(authramycin)、アザセリン
、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン(carabicin)、カミノマイ
シン(caminomycin)、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシ
ン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキ
ソルビシン(モルホリノ-ドキソルビシン、シアノモルホリノ-ドキソルビシン、2-ピ
ロリノ-ドキソルビシン、およびデオキシドキソルビシンが含まれる)、エピルビシン、
エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシン、例えば、マイトマイ
シンC、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフ
ィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、クエラマイシン(qu
elamycin)、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン、
ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン;代謝拮抗
剤、例えば、メトトレキサートおよび5-フルオロウラシル(5-FU);葉酸類似体、
例えば、デノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキセート;プリ
ン類似体、例えば、フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン
;ピリミジン類似体、例えば、アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモ
フール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクス
ウリジン;アンドロゲン、例えば、カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピ
チオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン;抗副腎剤(anti-adrena
l)、例えば、アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン;葉酸補給剤(reple
nisher)、例えば、フロリン酸(frolinic acid);アセグラトン;
アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン;ベ
ストラブシル;ビスアントレン;エダトラキサート(edatraxate);デフォフ
ァミン(defofamine);デメコルチン;ジアジクオン;エルフォルミチン(e
lformithine);酢酸エリプチニウム;エポチロン;エトグルシド;硝酸ガリ
ウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダミン;マイタンシノイド、例えば、マイタン
シンおよびアンサマイトシン;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダモール;ニトラ
クリン;ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ロソキサントロン;ポドフィリ
ン酸;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;ラゾキサン;リゾキシン;シゾフラン(
sizofuran);スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジコン;2,2’,
2’’-トリクロロトリエチルアミン;トリコテシン(特にT-2トキシン、ベラキュリ
ン(verracurin)A、ロリジンA、およびアングイジン);ウレタン;ビンデ
シン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマ
ン;ガシトシン(gacytosine);アラビノシド(「Ara-C」);シクロホ
スファミド;チオテパ;タキソイド、例えばパクリタキセルおよびドキセタキセル(do
xetaxel);クロラムブシル;ゲムシタビン;6-チオグアニン;メルカプトプリ
ン;メトトレキサート;白金類似体、例えば、シスプラチンおよびカルボプラチン;ビン
ブラスチン;白金;エトポシド(VP-16);イホスファミド;ミトキサントロン;ビ
ンクリスチン;ビノレルビン;ノバントロン;テニポシド;エダトレキサート;ダウノマ
イシン;アミノプテリン;ゼローダ;イバンドロネート;CPT-11;トポイソメラー
ゼ阻害剤RFS 2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイド、例
えば、レチノイン酸;カペシタビン;および上述のもののいずれかの薬学的に許容し得る
塩、酸、または誘導体が挙げられる。また、腫瘍に対するホルモン作用を調節または阻害
するように作用するホルモン拮抗剤(anti-hormonal agent)、例え
ば、抗エストロゲン薬および選択的エストロゲン受容体調節薬(SERM)(例えば、タ
モキシフェン、ラロキシフェン、ドロロキシフェン、4-ヒドロキシタモキシフェン、ト
リオキシフェン、ケオキシフェン、LY117018、オナプリストン、およびトレミフ
ェン(フェアストン)が含まれる);副腎におけるエストロゲン産生を調節する酵素アロ
マターゼを阻害するアロマターゼ阻害剤(例えば、4(5)-イミダゾール、アミノグル
テチミド、酢酸メゲストロール、エキセメスタン、ホルメスタン、ファドロゾール、ボロ
ゾール、レトロゾール、およびアナストロゾールなど);ならびに抗アンドロゲン薬、例
えば、フルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、ロイプロリド、およびゴセレリン;なら
びに上述のもののいずれかの薬学的に許容し得る塩、酸、または誘導体も挙げられる。
【0103】
本発明の併用療法における各治療薬は、標準の医薬的慣例に従って、単独で、または治
療薬と1種以上の薬学的に許容し得る担体、賦形剤、および希釈剤とを含む医薬品(本明
細書では医薬組成物とも称する)で投与することができる。
【0104】
本発明の併用療法における各治療薬は、同時に(すなわち、同一医薬品中で)、並行し
て(すなわち、いずれかの順序で一方の後すぐに他方が投与される別の医薬品中で)、ま
たはいずれかの順序で連続的に投与することができる。連続的投与は、併用療法における
治療薬が、異なる剤形である(ある薬剤が錠剤またはカプセル剤であり、別の薬剤が無菌
の液体である)、かつ/または異なる投薬スケジュールで投与される(例えば、少なくと
も毎日投与される化学療法薬と、より低頻度、例えば週1回、2週に1回、または3週に
1回投与されるHPVワクチン)場合に、特に有用である。
【0105】
いくつかの実施態様では、HPVワクチンは、化学療法剤の投与前に投与されるのに対
し、他の実施態様では、HPVワクチンは、化学療法剤の投与後に投与される。別の実施
態様では、HPVワクチンは、化学療法剤と並行して投与される。
【0106】
いくつかの実施態様では、併用療法における治療薬の少なくとも1種は、薬剤が同じ癌
を治療するために単独療法として使用される場合に典型的に用いられるのと同じ投薬レジ
メン(治療の用量、頻度、および期間)を使用して投与される。他の実施態様では、患者
は、併用療法において、薬剤が単独療法として使用される場合よりも低い総量の、治療薬
の少なくとも1種を与えられる(例えば、より少ない用量、より頻度の低い投与、および
/またはより短い治療期間)。
【0107】
本発明の併用療法における各治療薬は、投与の静脈内、筋肉内、腹腔内、皮下、直腸内
、局所、および経皮経路を含めて、経口的または非経口的に投与することができる。
【0108】
本発明の併用療法は、腫瘍を除去するための手術の前または後に使用することができ、
また、放射線療法の前、放射線療法中、または放射線療法後に使用することができる。
【0109】
いくつかの実施態様では、本発明の併用療法は、生物学的薬物または化学療法剤で以前
に治療されていない、すなわち、治療未経験である患者に投与される。他の実施態様では
、併用療法は、生物学的薬物または化学療法剤での前治療後に持続的な反応が得られなか
った、すなわち、治療経験のある患者に施される。
【0110】
本発明の併用療法は、典型的には、触診、目視観察によって、またはMRI、超音波、
またはCATスキャンなどの当技術分野で周知のイメージング技術によって発見されるほ
ど大きい腫瘍を治療するために使用される。
【0111】
癌またはHPV関連の病変への直接的投与のために、あらゆる市販品として入手できる
HPVワクチンを用いることができる。例えば、対象方法の、この実施態様は、HPV四
価(6、11、16、および18型)組換えワクチンである市販品として入手できるGA
RDASIL(登録商標)、またはGARDASIL(登録商標)9、すなわちHPV多
価(16、18、31、33、45、52、および58型)組換えワクチン、またはCE
RVARIX(登録商標)、すなわちHPV二価(16および18型)組換えワクチンな
どの、精製された不活性なウイルスタンパク質またはウイルス様タンパク質を含むワクチ
ンを、病変にまたは病変の周囲に直接的に投与することを含むことができる。
【0112】
対象方法の、この実施態様による有用なワクチンは、宿主細胞ペプチド、ポリペプチド
、またはタンパク質、例えば早期抗原E6またはE7などを含むこともできるし、宿主細
胞ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質、例えば早期抗原E6またはE7などを排
除するまたは含まないことも可能である。該ワクチンは、未免疫患者であろうが、HPV
ワクチンで以前に免疫された患者であろうが、あらゆる年齢の患者における良性腫瘍、ま
たはHPV関連の病変を治療するために投与することができる。
【0113】
該ワクチンは、患者における癌、良性腫瘍、またはHPV関連の病変の再発率を低下さ
せるために、病変または腫瘍にまたは病変または腫瘍の周囲に直接的にまたは局所的に投
与することができる。
【0114】
別の実施態様では、該ワクチンは、26歳までの患者(例えば、幼児、子供、青年また
は若い大人)、あるいは27歳以上の成人患者における、癌、良性腫瘍、またはHPV関
連の病変を治療するために、あるいはこれらの再発率を低下させるために投与することが
できる。
【0115】
より具体的には、本発明の、ある好ましい実施態様は、患者における癌性または非癌性
の腫瘍または病変の治療のための方法であって、ある用量のHPV組換えワクチンを、病
変、腫瘍、または非癌性のHPV関連の病変に直接的に、患者に投与するステップを含む
方法を含む。
【0116】
あるいは、該方法は、次の任意のステップを含むことができる:
i.第1の用量の約1か月から約3か月後に、第2の用量のHPVワクチンを、患者の癌
病変、良性腫瘍、または非癌性のHPV関連の病変に直接的に投与するステップ;
ii.第1の用量を投与した約5か月から約7か月後に、後続の用量のHPVワクチンを
、患者の癌病変、良性腫瘍、または非癌性のHPV関連の病変に直接的に投与するステッ
プ;または
iii.第1の用量の約1か月から約3か月後に、第2の用量のHPVワクチンを、患者
の癌病変、良性腫瘍、または非癌性のHPV関連の病変に直接的に投与し、かつ第1の用
量を投与した約5か月から約7か月後に、後続の用量のHPVワクチンを、患者の癌病変
、良性腫瘍、または非癌性のHPV関連の病変に直接的に投与するステップ。
【0117】
ワクチンの後続投与のタイミングに対する言及には、幅があり、日または週によって変
動し得ることが、医療関係者によって理解されるであろう。この変動は、患者の投薬スケ
ジュールに対する遵守または非遵守、治療している医師(後続投与を医学的理由から進め
る(より積極的な治療のために)または遅らせることに決めることができる)による臨床
的知見に起因する可能性がある。しかし、一般に、第2の用量が第1の用量の約2か月後
に投与され、かつ第3の用量が第1の用量の約6か月後に投与される投薬スケジュールに
従うことによって、有効な結果を得ることができる。医師が、後続投与が患者への利益を
提供できると考えるならば、追加の(第4または第5の)用量も投与することができる。
【0118】
投薬レジメン(本明細書では投与レジメンとも称する)を選択することは、治療される
個人における、物質の血清または組織代謝回転速度、症状の度合い、物質の免疫原性、お
よび標的細胞、組織、または器官の到達性を含めたいくつかの因子に依存する。投薬レジ
メンは、許容し得るレベルの副作用と両立しながら、患者に送達される治療薬の量を最大
にすることが好ましい。したがって、投与量および投薬頻度は、特定の治療薬、治療され
る癌の重症度、および患者の特徴に、ある程度依存する。適切な用量の抗体、サイトカイ
ン、および小分子を選択する際に、ガイドラインが利用可能である。例えば、Wawrz
ynczak(1996)Antibody Therapy,Bios Scient
ific Pub.Ltd,Oxfordshire,UK;Kresina(ed.)
(1991)Monoclonal Antibodies,Cytokines an
d Arthritis,Marcel Dekker,New York,NY;Ba
ch(ed.)(1993)Monoclonal Antibodies and P
eptide Therapy in Autoimmune Diseases,Ma
rcel Dekker,New York,NY;Baert et al.(200
3)New Engl.J.Med.348:601-608;Milgrom et
al.(1999)New Engl.J.Med.341:1966-1973;Sl
amon et al.(2001)New Engl.J.Med.344:783-
792;Beniaminovitz et al.(2000)New Engl.J
.Med.342:613-619;Ghosh et al.(2003)New E
ngl.J.Med.348:24-32;Lipsky et al.(2000)N
ew Engl.J.Med.343:1594-1602;Physicians’D
esk Reference 2003(Physicians’Desk Refer
ence,57th Ed);Medical Economics Company;
ISBN:1563634457;57th edition(November 20
02)を参照のこと。適切な投薬レジメンの決定は、例えば、治療に影響を与えることが
当技術分野で知られているもしくは思われている、または治療に影響を与えることが予測
される、パラメータまたは因子を使用して、臨床医によって行うことができ、また、例え
ば、患者の臨床歴(例えば、以前の治療法)、治療されることとなる癌の種類およびステ
ージ、および併用療法における1種以上の治療薬に対する応答のバイオマーカーよって決
まることとなる。
【0119】
本発明のHPVウイルスタンパク質またはウイルス様タンパク質は、持続注入によって
、または、例えば、毎日、1日おき、週3回、または週1回、2週に1回、3週に1回、
月1回、2か月に1回などの間隔での投与によって投与することができる。1週の総用量
は、一般に、少なくとも0.05μg/kg、0.2μg/kg、0.5μg/kg、1
μg/kg、10μg/kg、100μg/kg、0.2mg/kg、1.0mg/kg
、2.0mg/kg、10mg/kg、25mg/kg、50mg/kg(体重)、また
はそれ以上である。例えば、Yang et al.(2003)New Engl.J
.Med.349:427-434;Herold et al.(2002)New
Engl.J.Med.346:1692-1698;Liu et al.(1999
)J.Neurol.Neurosurg.Psych.67:451-456;Por
tielji et al.(20003)Cancer Immunol.Immun
other.52:133-144を参照のこと。
【0120】
いくつかの実施態様では、投薬レジメンは、治療レジメンの過程全体を通して、約14
日(±2日)もしくは約21日(±2日)もしくは約30日(±2日)、または約1週(
±2日)、2週(±2日)、3週(±2日)、もしくは4週(±2日)の間隔で、1、2
、3、5、または10mg/kgの用量で、HPVワクチンを投与することを含むことと
なる。
【0121】
他の実施態様では、投薬レジメンは、患者内用量漸増を用いて、約0.005mg/k
gから約10mg/kgまでの用量で、HPVワクチンを投与することを含むこととなる
。他の漸増用量実施態様では、投与間の間隔は、次第に短くなる、例えば、第1の用量と
第2の用量の間は約30日(±2日)、第2の用量と第3の用量の間は約14日(±2日
)であることとなる。ある種の実施態様では、投薬間隔は、第2の用量の後続の用量につ
いて、約14日(±2日)であることとなる。対象発明の方法によるそれぞれの直接的ま
たは局所的投与のための典型的な総用量は、約0.5mlのワクチン、例えば市販品とし
て入手できるワクチンである。各0.5ml用量を、例えば、全0.5mlのボーラスと
して病巣内注射によって投与することもできるし、病変、病変を取り囲む範囲、またはこ
れらの両方への、複数回の0.1~0.2mlの部分投与としての分割された用量として
投与することもできる。
【0122】
ある種の実施態様によれば、反復用量のHPVワクチンを、定義された時間経過にわた
って、対象に投与することができる。この方法は、例えば、反復用量のHPVワクチンを
、対象に連続的に投与することを含む。本明細書で使用する場合、「連続的に投与するこ
と」は、各用量のHPVワクチンが、異なる時点で、例えば、あらかじめ決定された間隔
(例えば、時間、日、週、または月)だけ離れた別の日に、対象に投与されることを意味
する。本発明は、単回の初回用量のHPVワクチン、それに続く1種以上の第2の用量の
HPVワクチン、および任意でそれに続く1種以上の第3の用量のHPVワクチンを、患
者に連続的に投与することを含む方法を含む。
【0123】
用語「初回用量」、「第2の用量」、および「第3の用量」は、HPVワクチンの投与
の時系列を指す。したがって、「初回用量」は、治療レジメンの最初に投与される用量で
あり(「ベースライン用量」とも称する);「第2の用量」は、初回用量後に投与される
用量であり;「第3の用量」は、第2の用量後に投与される用量である。初回、第2の、
および第3の用量は、すべて、同じ量のHPVワクチン(例えば、1種以上のHPVウイ
ルスタンパク質またはウイルス様タンパク質)を含有することができるが、一般に、投与
の頻度の点で互いに異なることとなる。しかし、ある種の実施態様では、初回、第2の、
および/または第3の用量に含有されるHPVワクチン(例えば、1種以上のHPVウイ
ルスタンパク質またはウイルス様タンパク質)の量は、治療の過程において互いに異なる
(例えば、必要に応じて上方または下方調整される)こととなる。
【0124】
ある例示的実施態様では、各第2のおよび/または第3の用量は、直前の用量の、1か
ら14週(例えば、1、1と1/2、2、2と1/2、3、3と1/2、4、4と1/2
、5、5と1/2、6、6と1/2、7、7と1/2、8、8と1/2、9、9と1/2
、10、10と1/2、11、11と1/2、12、12と1/2、13、13と1/2
、14、14と1/2週、またはそれ以上)後に投与される。別の例示的実施態様では、
各第2のおよび/または第3の用量は、直前の用量の、1から14か月(例えば、1、1
と1/2、2、2と1/2、3、3と1/2、4、4と1/2、5、5と1/2、6、6
と1/2、7、7と1/2、8、8と1/2、9、9と1/2、10、10と1/2、1
1、11と1/2、12、12と1/2、13、13と1/2、14、14と1/2か月
、またはそれ以上)後に投与される。語句「直前の用量」は、本明細書で使用する場合、
一連の反復投与における、その間の用量を伴わない順序で、まさにその次の用量の前に患
者に投与されるHPVワクチンの用量を意味する。
【0125】
これらの方法は、任意の数の第2のおよび/または第3の用量のHPVワクチンを患者
に投与することを含むことができる。例えば、ある種の実施態様では、1回のみの第2の
用量が、患者に投与される。他の実施態様では、2回以上(例えば、2、3、4、5、6
、7、8回、またはそれ以上)の第2の用量が、患者に投与される。同様に、ある種の実
施態様では、1回のみの第3の用量が、患者に投与される。他の実施態様では、2回以上
(例えば、2、3、4、5、6、7、8回、またはそれ以上)の第3の用量が、患者に投
与される。
【0126】
複数の第2の用量を伴う実施態様では、各第2の用量は、他の第2の用量と同じ頻度で
投与することができる。例えば、各第2の用量は、直前の用量の1から3か月後に患者に
投与することができる。同様に、複数の第3の用量を伴う実施態様では、各第3の用量は
、他の第3の用量と同じ頻度で投与することができる。例えば、各第3の用量は、直前の
用量の1から3か月後に患者に投与することができる。あるいは、第2のおよび/または
第3の用量が患者に投与される頻度は、治療レジメンの過程を通じて変動し得る。投与の
頻度は、臨床検査後の個々の患者の必要性に応じて、医師によって、治療の過程中に調整
することもできる。
【0127】
ある種の実施態様では、初回用量(例えば「負荷用量」)は、第2のおよび第3の用量
のいずれか、またはこれらの両方よりも高い。例えば、初回用量は、第2の用量よりも1
.5×、2×、2.5×、3×、またはそれ以上大きい負荷用量であり得る。
【0128】
上の治療方法は、患者における皮膚癌、および特に扁平上皮癌を治療するのに効果的で
あり得、ここでは、皮膚癌病変は、ワクチンの3回の投与後に、サイズが低下するまたは
消失する。
【0129】
対象発明による直接的または局所的投与治療方法はまた、患者における皮膚癌を含めた
癌の再発率を低下させることができる。
【0130】
直接的または局所的投与方法はまた、良性腫瘍(HPV感染と関係があるかどうかにか
かわらず)、またはHPVと関係があるが非癌性の病変、例えば性器疣贅を含めた疣贅な
ど、例えば尋常性疣贅または尖圭コンジローマのサイズを低下させる、または消失させる
のに有効であり得る。
【0131】
直接的または局所的投与方法はまた、良性腫瘍(HPV感染と関係があるかどうかにか
かわらず)、またはHPVと関係があるが非癌性の病変、例えば性器疣贅を含めた疣贅な
ど、例えば尋常性疣贅または尖圭コンジローマの再発率を低下させるのに有効であり得る
。
【0132】
HPV二価(16および18型)組換えワクチン、HPV四価(6、11、16、およ
び18型)組換えワクチンまたはHPV多価(16、18、31、33、45、52、お
よび58型)組換えワクチンの1回以上の注射の直接的または局所的投与後に、皮膚癌、
および特に扁平上皮癌を消失させるまたはサイズを低下させる方法を提供することが、本
発明のさらなる予想外の結果である。
【0133】
治療の直接的または局所的な対象となる投与方法のさらなる予想外の結果は、基底細胞
癌またはメラノーマなどの、HPV感染と関係がない皮膚病変の、サイズを低下させるこ
と、消失させること、または再発率を低下させることを含む。
【0134】
対象発明の一実施態様では、直接的または局所的投与方法は、追加のまたは他の免疫賦
活薬またはアジュバントの投与を伴わずに実施される。
【0135】
ある種の実施態様では、対象方法は、ワクチンの投与と同時に、または投与中に、また
は投与後に、追加のまたは他の免疫調節剤、例えば免疫賦活薬またはアジュバントを投与
することを含むことができる。対象方法の一部として有用な免疫調節剤の非限定的な例と
しては、以下が挙げられる:
1)ビタミンDおよびその類似体;
2)シロリムス;
3)インターフェロンおよびその類似体;
4)ビタミンAおよびその類似体、例えばSoriatane(レチノイド)
5)イミキモド;
6)インゲノールメブテート;および
7)T4エンドヌクレアーゼ
8)代謝拮抗剤、例えば5フルオロウラシル、メトトレキサート
9)シクロオキシゲナーゼ阻害剤、例えばジクロフェナク
【0136】
これらの薬剤は、治療の効果を高めるために、本明細書に記載した通りのHPVワクチ
ンと組み合わせて局所的または全身的に、または本明細書に記載した通りのHPVワクチ
ンと同時に与えることができる。例えば、腫瘍(皮膚、肺など)を有する、以前にHPV
で免疫された患者においては、インターフェロンとHPV抗原ワクチンとの組み合わせが
、局所的に与えられ可能性がある。インターフェロンはまた、全身的に同時に与えること
もできるし、しなくともよい。この投与は、インターフェロンに伴う全身性副作用を伴わ
ずに、腫瘍または他の病変の局所的破壊を促進することができる。
【0137】
局所適用は、注射によって引き起こされる感染症リスクの排除を含めたいくつかの理由
で有益であり得るが、前癌性(光線角化症)ならびに悪性腫瘍を治療するために、広い面
積にわたる広範適用によるものも好都合であり得る。さらに、局所投与は、その色素むら
(pigment irregularity)、多形皮膚萎縮症、および鱗屑化の外見
を軽減させることによって、皮膚の美容的向上を提供することができる。
【0138】
したがって、対象発明の一目的は、SCC、BCC、またはメラノーマ腫瘍または病変
などの皮膚癌病変を含めた癌腫瘍または病変の成長またはサイズを低下または寛解するた
めの、費用効果が高く安全で効果的で簡便な治療を提供することである。対象発明の別の
目的は、皮膚癌病変を治癒させるための、費用効果が高く効果的で簡便な治療を提供する
ことであり、本発明のさらに別の目的は、皮膚癌病変を含めた癌の再発率を低下させるた
めの、費用効果が高く効果的で簡便な方法を提供することである。
【0139】
皮膚癌を治療するまたは再発率を低下させる対象方法は、患者に1以上の用量でHPV
ワクチンを投与することを含む。一実施態様では、該方法は、患者への第1の用量のHP
V四価(6、11、16、および18型)組換えワクチン、そのおよそ2か月後の第2の
用量のHPV四価(6、11、16、および18型)組換えワクチン、および第2の用量
のおよそ4か月後の第3の用量のHPV四価(6、11、16、および18型)組換えワ
クチンの投与を含む。好ましい実施態様では、各用量は、0.5mlである。
【0140】
対象方法は、その予防ワクチンとしての使用ではなくまたはその予防ワクチンとしての
としての使用に加えて、治療薬としての市販品として入手できるHPV二価(16および
18型)組換えワクチン、HPV四価(6、11、16、および18型)ワクチンまたは
HPV多価(16、18、31、33、45、52、および58型)組換えワクチンを使
用して実施できるという点で好都合であり得る。
【0141】
予防ワクチンは、ヒトパピローマウイルス(HPV)などの因子への曝露または感染の
前に投与されるワクチン組成物であると理解されている。HPV感染および関係する癌か
らの保護または予防のための予防ワクチンは、市販品として入手でき、したがって、安全
であることが知られている。GARDASIL(登録商標)は、アメリカ合衆国でMer
ck&Co.,Inc.Whitehouse Station,NJ 08889 U
SAによって予防ワクチンとして現在販売されている、HPV四価(6、11、16、お
よび18型)組換えワクチンであり、GARDASIL(登録商標)9は、HPV多価(
16、18、31、33、45、52、および58型)組換えワクチンである。CERV
ARIX(登録商標)は、GlaxoSmithKline(Brentford、En
gland)から入手できるHPV二価(16および18型)組換えワクチンである。
【0142】
市販品として入手できるワクチンの使用によって、ワクチンは、医師または医療関係者
によって容易に利用することが可能である。さらに、対象方法に従うHPV二価(16お
よび18型)組換えワクチン、HPV四価(6、11、16、および18型)組換えワク
チンまたはHPV多価(16、18、31、33、45、52、および58型)組換えワ
クチンの使用は、第2のまたは追加の免疫賦活薬またはアジュバントを必要としない。こ
れらの市販品として入手できるHPV二価(16および18型)、HPV四価(6、11
、16、および18型)またはHPV多価(16、18、31、33、45、52、およ
び58型)組換えワクチンは、宿主細胞および/または非L1ウィルスペプチド、ポリペ
プチド、またはタンパク質、例えば抗原、E6またはE7などを含まない、または実質的
に含まない。
【0143】
好都合なことに、本明細書に記載する通りの対象方法を使用して、HPV感染と関係が
ある、癌、良性腫瘍、もしくはHPV関連の皮膚病変(皮膚癌を含む)、またはHPV感
染と関係がない皮膚癌を治療する、予想外の結果を実現することができる。
【0144】
対象発明の別の実施態様は、記載した通りの治療の方法を実施するための組成物を含む
。ワクチンと、追加成分-例えば、1種以上の活性な医薬成分、賦形剤、または希釈剤-
とを含む組成物も、本発明の一部として含められる。本発明の組成物においては、HPV
ワクチンは、患者に対する投与のために、1種以上の追加の活性な医薬成分と共に製剤化
することができる。追加の活性な医薬成分は、ワクチンの効果を調節するための1種以上
の免疫調節剤、または注射中の患者の不快感を軽減するための1種以上の局所麻酔剤、例
えばリドカイン(エピネフリンを伴うまたは伴わない)であり得る。
【0145】
対象発明の組成物の一実施態様は、1種以上の免疫調節剤と共に製剤化された市販品と
して入手できるHPVワクチンを含む。1種以上の免疫調節剤は、以下からなる群から選
択することができる:
1)ビタミンDおよびその類似体;
2)シロリムス;
3)インターフェロンおよびその類似体;
4)ビタミンAおよびその類似体、例えばSoriatane(レチノイド)
5)イミキモド;
6)インゲノールメブテート;および
7)T4エンドヌクレアーゼ
8)代謝拮抗剤、例えば5フルオロウラシル、メトトレキサート
9)シクロオキシゲナーゼ阻害剤、例えばジクロフェナク
【0146】
HPVワクチンと、少なくとも1種の免疫調節剤とを含む組成物は、好都合なことに、
HPVワクチンの抗癌治療活性の効果増強を提供することができる。
【0147】
対象発明の組成物の一実施態様は、1種以上の局所麻酔剤と共に製剤化された市販品と
して入手できるHPVワクチンを含む。1種以上の局所麻酔剤は、以下からなる群から選
択することができる:エステル型局所麻酔薬、すなわちプロカイン、ベンゾカイン、クロ
ロプロカイン、コカイン、シクロメチカイン、ジメトカイン/ラロカイン、ピペロカイン
、プロポキシカイン、プロカイン、プロパラカイン、およびテトラカイン、またはアミド
型局所麻酔薬、すなわち、リドカイン、アルチカイン、ブピバカイン、シンコカイン、エ
チドカイン、レボブピバカイン、リグノカイン、メピバカイン、プリロカイン、ロピバカ
イン、およびトリメカイン。
【0148】
本発明の組成物の一例は、0.5mlの市販品として入手できるHPVワクチンと、0
.5mlの市販品として入手できるリドカイン溶液(例えば、0.5%(w/v)、1%
(w/v)、または2%(w/v))との1:1(v/v)比率の混合物を含む。この組
成物は、十分に混合し、治療のために患者に注射することができる。当技術分野で理解さ
れるであろう通り、1:10(v/v)ワクチン:麻酔液から10:1(v/v)ワクチ
ン:麻酔液までの範囲の比率を使用することができる。
【0149】
HPVワクチンはまた、患者に対する投与のために、1種以上の賦形剤または希釈剤と
共に製剤化することもできる。賦形剤および希釈剤は、限定はされないが、クリーム、皮
膚軟化薬、ゲル、ローション、膏薬などを調製するための基剤を含めた、局所調製物を製
剤化するのに有用な1種以上の従来の薬学的に許容し得る成分を含むことができ、また、
浸透促進剤、保存剤、放出制御剤、可溶化剤、安定剤、増粘剤、または薄め液などを任意
で含むことができる。
【0150】
注射のための液剤はまた、1種以上の緩衝液、皮膚軟化薬、希釈剤、pH調整剤、保存
剤、可溶化剤、安定剤などを含むことができる。対象発明に従う有用なワクチンを含む局
所用組成物は、医薬分野で慣例的に公知のように製剤化することができ、1種以上の追加
の成分または賦形剤、例えば、有機または無機溶媒(水性もしくは非水性)、安定化剤、
浸透促進剤、緩衝液、ゲル化剤、高分子剤、滑沢剤、流動化剤、クリーム、ワックス、懸
濁化剤、界面活性剤などを含むことができる。前記製剤は、DMSOなどの浸透促進剤を
、さらに含むことができる。前記製剤は、局所用液剤、ローションもしくは懸濁性ローシ
ョン(shake lotion)、軟膏、クリーム、ゲル、フォーム、経皮貼付剤、生
体周波数(biofrequency)チップ、散剤、固形剤、スポンジ剤、テープ、パ
スタ剤、チンキ、ミセル、またはリポソームなどとして提供することができる。
【0151】
これらの組成物は、後の時点を含めて随時、出荷、保管、および使用することができる
製品として調製することもできるし、ポイントオブケアの時点で、または早急の頓用治療
のために離れた場所で、調合することもできる。
【0152】
本発明の組成物は、賦形剤も希釈剤も伴わずに1種以上の追加の活性な医薬成分を含む
こともできるし、1種以上の活性な医薬成分と、1種以上の賦形剤または希釈剤を含むこ
ともできる。
【0153】
本発明の組成物は、追加の活性な医薬成分を伴わずに1種以上の賦形剤または希釈剤を
含むこともできるし、1種以上の賦形剤または希釈剤と、1種以上の活性な医薬成分を含
むこともできる。
【実施例0154】
実施例1-皮膚癌
次の表は、扁平上皮癌(SCC)および基底細胞癌を含めた皮膚癌の、比較的に高頻度
の再発率を経験している3群の患者において実施された治療の対象方法による結果を提供
する。
【0155】
以下に示すデータは、本明細書に記載する治療の方法を受ける前と後の期間の、1か月
あたりの皮膚癌の特徴的な再発の平均数を表す。
【0156】
A. 患者1
患者1に、第1の0.5ml用量、2か月後の第2の0.5ml用量、および第2の用
量の4か月後の第3の0.5ml用量を含めた、3回の0.5ml用量を投与した。HP
V四価(6、11、16、および18型)組換えワクチンの第3の用量の投与の3か月後
のフォローアップ検査では、患者1は、3か月の期間の間、SCC型とBCC型との両方
を含めた皮膚癌の再発がなかった。治療方法の開始前に、患者1は、生存期間中に皮膚癌
の300を超える特徴的な発生が起こった。
【0157】
【0158】
B. 患者2
患者2に、第1の0.5ml用量、2か月後の第2の0.5ml用量、および第2の用
量の4か月後の第3の0.5ml用量を含めた、3回の0.5ml用量のHPV四価(6
、11、16、および18型)組換えワクチンを投与した。
【0159】
【0160】
C. 患者3
患者3に、第1の0.5ml用量、2か月後の第2の0.5ml用量、および第2の用
量の8か月後の第3の0.5ml用量を含めた、3回の0.5ml用量のHPV四価(6
、11、16、および18型)組換えワクチンを投与した。
【0161】
【0162】
集団としては、HPV四価(6、11、16、および18型)組換えワクチンを使用す
る治療の方法を受けた患者はそれぞれ、皮膚癌再発の数が有意に低下し、また、落屑の減
少および全身の皮膚柔軟性の向上を伴い、皮膚のきめおよび外見が改善した。
【0163】
概して、本明細書に記載する治療の方法は、皮膚癌を生じる異常な皮膚細胞の発生の可
能性を低下させるために、皮膚細胞における患者の免疫監視を有効に増大させる、すなわ
ち後押しするのに役立つ。本発明の方法は、SCCの再発を治療および予防する、また、
BCCの再発を有意に低下させることが示されている。治療方法の結果としての免疫監視
の向上が、悪性黒色腫の発生率も同時に低下させることとなる可能性もある。
【0164】
一実施態様では、皮膚癌を消失させるまたは再発率を低下させるための治療の方法には
、注射の形態のHPV四価(6、11、16、および18型)組換えワクチンを、癌組織
、または癌組織を直接取り囲む組織の範囲に直接的に投与することが含まれる。
【0165】
実施例2-乳癌
以前にHPVワクチン接種を受けた32歳の女性(乳癌歴なし、家族歴なし、危険因子
なし)が、転移性乳癌と診断された。彼女の主腫瘍は、超音波によって、直径約4.1セ
ンチメートルであると測定された。これらの転移性腫瘍は、約12週で、サイズが2倍に
なる可能性がある。
【0166】
患者の十分に説明された同意と理解を得て、標準の初回用量(約0.5ml)の市販品
として入手できるHPVワクチンを、腫瘍に直接的に注射した。生理食塩水およびリドカ
インで約3mlに希釈した第2の用量0.5mlを、第1の注射の約2週後に、腫瘍に直
接的に投与した。その時点で、注射するために腫瘍を見つけることが、より困難であり、
サイズが低下していると考えられた。
【0167】
追跡の超音波は、腫瘍のサイズが直径約2.7センチメートルに低下していることを最
近示し、これは、直径のおよそ35%低下および腫瘍体積(球についての体積は、4/3
π×半径3として算出する)の75%低下に相当していた。
【0168】
サイズが2倍になるという予測を用いると、腫瘍は、約40%増大し、約4.6センチ
メートルの腫瘍直径となるはずである。
【0169】
実施例3-転移性基底扁平細胞癌
99歳の女性が、下肢に転移性基底扁平細胞癌を呈した。転移性基底扁平細胞癌は、彼
女が緩和療法のために皮膚科に紹介されるほど重症であり、癌のさらなる拡散を予防する
ための肢の切断以外のさらなる選択肢は利用可能ではなかった。
【0170】
この患者に、従来の用量(約0.5ml)の市販品として入手できるHPVワクチンの
単回注射を、筋肉内に(全身的に)施した。追加の標準用量のHPVワクチンを、より大
きな病変の2つ以上の部位のそれぞれに注射した。
【0171】
HPVワクチンでの治療から4週以内に、これらの病変は、視覚的に実質的に向上し、
癌の下肢へのさらなる拡散は見られなかった。この患者は現在、病変のそれ以上のまたは
増大したサイズの病変からの寛解期である。
【0172】
実施例4-陰茎癌
45歳のHIV陽性の男性(様々な局所的および外科的方法での治療に対して不応性で
あった陰茎の扁平上皮癌の2年の病歴あり)を、ラベルの指示に従って、筋肉内への3回
の等用量のGARDASIL(登録商標)で治療した。
【0173】
4日以内に、患者の疼痛は軽減され始め、数週の間に、10スケール評価に対する9~
10の疼痛スケール評価から0まで軽減した。
【0174】
共焦点顕微鏡での最新の検査は、悪性所見なしを示す。共焦点写真を使用して、生検の
必要なく皮膚上の癌を検出することができる。
【0175】
実施例5-侵襲性扁平上皮癌
高齢男性(腎細胞癌の病歴、および化学療法歴あり)の下肢上の侵襲性の急速増殖性の
再発性扁平上皮癌を、エピネフリンを含むリドカイン1%と混合したGARDASIL(
登録商標)の2回の病巣内注射で治療した。
【0176】
この患者は、以前にGARDASIL(登録商標)を筋肉内に接種されていた。
【0177】
この腫瘍は、第1の治療後すぐに完全に退縮および消失し、さらなる悪性所見なしであ
った。
【0178】
実施例6-前立腺癌
前立腺癌治療は、患者を筋肉内HPVで治療することを含むであろう。また、前立腺へ
の直接的注射も含むことができる。
【0179】
実施例7-多形神経膠芽腫
多形神経膠芽腫治療は、患者を筋肉内HPV、次いで多形神経膠芽腫の腫瘍への直接的
注射で治療することを含むであろう。
【0180】
実施例8-子宮頸癌
子宮頸癌治療は、患者を筋肉内HPVで治療することを含むであろう。また、子宮頚部
への直接的注射も含むことができる。
【0181】
実施例9-肛門癌
肛門癌治療は、患者を筋肉内HPVで治療することを含むであろう。また、肛門に対す
る直接的注射または局所適用も含むことができる。
【0182】
本明細書に記載した方法に従って癌または腫瘍を治療することにおける他のHPVワク
チンの使用も、十分に予想され、本発明の範囲内である。
【0183】
本発明を、そのいくつかの好ましいかつ実用的な実施態様に従って示してきたが、本開
示からの逸脱が、十分に本発明の趣旨および範囲の範囲内であると考えられることが認識
されよう。