(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023110085
(43)【公開日】2023-08-08
(54)【発明の名称】適応型多重パルスLIDARシステム
(51)【国際特許分類】
G01S 7/484 20060101AFI20230801BHJP
G01S 17/931 20200101ALI20230801BHJP
【FI】
G01S7/484
G01S17/931
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023096024
(22)【出願日】2023-06-12
(62)【分割の表示】P 2021576598の分割
【原出願日】2020-06-22
(31)【優先権主張番号】62/866,119
(32)【優先日】2019-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】518370091
【氏名又は名称】オプシス テック リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】マーク ドノバン
(57)【要約】
【課題】適応型多重パルスLIDARシステムの提供。
【解決手段】光検出および測距(LIDAR)の方法は、標的に向かって伝搬する第1の光パルスを発生させることと、発生させられた第1の光パルスから生じた標的から反射された光帰還信号を受信することとを含む。光帰還信号は、パフォーマンス基準を満たすために、標的に向かって伝搬されることが所望される追加の光パルスの数を決定するために処理される。決定された数の追加の光パルスが、次いで、発生させられ、標的に向かって伝搬される。標的から反射される追加の光帰還信号が、受信され、1つ以上のLIDAR測定値を取得するように処理される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本明細書で使用される節の見出しは、編成目的のみのためのものであり、いかようにも本願に説明される主題の限定として解釈されるべきではない。
(関連出願の相互参照)
本願は、2019年6月25日に出願され、「Adaptive Multiple-Pulse LIDAR System」と題された米国仮特許出願第62/866,119号の非仮特許出願である。米国仮特許出願第62/866,119号の全内容は、参照することによって本明細書に組み込まれる。
【0002】
(導入)
自律型、自動運転型、および半自律型自動車は、周囲の物体の検出および位置特定のためのレーダ、画像認識カメラ、およびソナー等、異なるセンサおよび技術の組み合わせを使用する。これらのセンサは、衝突警報、自動緊急制動、車線逸脱警報、車線維持支援、アダブティブクルーズコントロール、およびパイロット運転を含む、運転者の安全性における多数の改良を可能にする。これらのセンサ技術の中で、光検出および測距(LIDAR)システムは、重要となる役割を担い、周囲の環境のリアルタイムの高分解能3Dマッピングを可能にする。
【0003】
今日、自律車両のために使用される商業的に利用可能なLIDARシステムの大部分は、環境を機械的に走査するある方法と組み合わせられた少数のレーザを利用する。将来の自律自動車が、高信頼性および広い環境動作範囲を伴う固体半導体ベースのLIDARシステムを利用することが、多いに所望される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本教示は、概して、物体までの隔たり(距離)を測定するためにレーザ光を使用する、遠隔感知方法である、光検出および測距(LIDAR)に関する。LIDARシステムは、概して、光を反射する、および/または散乱させる、種々の物体または標的までの隔たりを測定する。自律車両は、LIDARシステムを使用し、高分解能を伴う、周囲環境の非常に正確な3Dマップを発生させる。本明細書に説明されるシステムおよび方法は、高レベルの信頼性を伴いながら、また、長い測定距離および低コストも維持する固体パルス飛行時間(TOF)LIDARシステムを提供することを対象とする。
【0005】
特に、本教示は、短持続時間レーザパルスを送出し、受信された帰還信号トレースの形態にある帰還パルスの直接的な検出を使用し、物体までのTOFを測定するLIDARシステムに関する。本教示のLIDARシステムは、種々のパフォーマンスメトリックを改良または最適化する方法において物体を検出するために、複数のレーザパルスを使用することができる。例えば、複数のレーザパルスが、信号対雑音比(SNR)を改良する方法において使用されることができる。複数のレーザパルスはまた、特定の物体の検出においてより高い信頼度を提供するためにも使用されることができる。レーザパルスの数が、特定のレベルのSNRおよび/または物体の検出に関連付けられた特定の信頼度値を与えるために選択されることができる。レーザパルスの数の本選択は、FOV内の照明の特定のパターンに関連付けられたレーザデバイスの個々のものまたは群の選択と組み合わせられることができる。
【0006】
本教示によるいくつかの方法では、レーザパルスの数が、動作の間に適応的に決定される。また、本教示によるいくつかの方法では、レーザパルスの数は、選択される決定基準に応じて、FOVを横断して変動する。本教示によるいくつかの方法において使用される複数のレーザパルスが、場面内のいかなるものも、予期される環境内で数mmを超えて移動し得ない十分に短い持続時間を有するように選定される。そのような短い持続時間を有することは、同じ物体が、複数回測定されることを確実にするために必要である。例えば、LIDARシステムおよび物体の相対速度が、幹線道路での運転シナリオ上での最高位のものの典型である150mphであると仮定すると、LIDARシステムおよび物体の相対スピードは、約67メートル/秒である。100マイクロ秒において、LIDARと物体との間の隔たりは、LIDARの典型的空間分解能と同じ規模である、6.7mmのみだけ変化することができる。また、その隔たりは、物体が、その速度においてLIDARシステムに対して垂直に移動している場合に、LIDARのビーム径と比較して、小さくなければならない。
本発明は、例えば、以下を提供する。
(項目1)
光検出および測距(LIDAR)の方法であって、前記方法は、
a)標的に向かって伝搬する第1の光パルスを発生させることと、
b)前記発生させられた第1の光パルスから生じた前記標的から反射された光帰還信号を受信することと、
c)パフォーマンス基準を満たすために、前記光帰還信号を処理し、前記標的に向かって伝搬されることが所望される追加の光パルスの数を決定することと、
d)前記決定された数の追加の光パルスを発生させ、前記発生させられた追加の光パルスを前記標的に向かって伝搬させることと、
e)前記発生させられた追加の光パルスから生じた前記標的から反射された追加の光帰還信号を受信することと、
f)前記受信された追加の光帰還信号を処理し、1つ以上のLIDAR測定値を取得することと
を含む、方法。
(項目2)
前記光帰還信号を処理することは、前記光帰還信号における帰還ピークの数を決定することを含む、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記光帰還信号を処理することは、前記光帰還信号のノイズレベルを決定することを含む、項目1に記載の方法。
(項目4)
前記光帰還信号を処理することは、決定木においてステップを実施することを含む、項目1に記載の方法。
(項目5)
前記決定木は、静的決定木である、項目4に記載の方法。
(項目6)
前記決定木は、動的決定木である、項目4に記載の方法。
(項目7)
前記決定木は、ピークの数を決定する決定ノードを備えている、項目4に記載の方法。
(項目8)
前記決定木は、周囲光レベルを決定する決定ノードを備えている、項目4に記載の方法。
(項目9)
前記光帰還信号を処理することは、飛行時間分析を実施することを含む、項目1に記載の方法。
(項目10)
前記受信された追加の光帰還信号を処理することは、受信信号フィルタリングを実施することを含む、項目1に記載の方法。
(項目11)
前記受信された追加の光帰還信号を処理することは、平均化を実施することを含む、項目1に記載の方法。
(項目12)
前記受信された追加の光帰還信号を処理することは、ヒストグラム化を実施することを含む、項目1に記載の方法。
(項目13)
前記処理された受信された追加の光帰還信号から3次元測定点データを発生させることをさらに含む、項目1に記載の方法。
(項目14)
前記処理された受信された追加の光帰還信号から帰還ピークの数を決定することをさらに含む、項目1に記載の方法。
(項目15)
前記処理された受信された追加の光帰還信号から飛行時間データを決定することをさらに含む、項目1に記載の方法。
(項目16)
前記処理された受信された追加の光帰還信号からの帰還ピークの振幅を決定することをさらに含む、項目1に記載の方法。
(項目17)
前記処理された受信された追加の光帰還信号から測定値誤差を決定することをさらに含む、項目1に記載の方法。
(項目18)
前記光帰還信号を処理することは、適応的に処理することを含む、項目1に記載の方法。
(項目19)
前記受信された追加の光帰還信号を処理し、前記決定された数の追加の光パルスを発生させ、それらを前記標的に向かって伝搬させるステップ、前記標的から反射された追加の光帰還信号を受信するステップ、前記光帰還信号を処理するステップは、複数のLIDAR測定値を取得するために、規則的間隔において、所定の回数繰り返される、項目1に記載の方法。
(項目20)
光検出および測距(LIDAR)の方法であって、前記方法は、
a)標的に向かって伝搬する第1の光パルスを発生させることと、
b)前記発生させられた第1の光パルスから生じた前記標的から反射された光帰還信号を受信することと、
c)環境条件情報を取得することと、
d)前記取得された環境条件情報に基づいて、前記標的に向かって伝搬されることが所望される追加の光パルスの数を決定することと、
e)前記決定された数の追加の光パルスを発生させ、それらを前記標的に向かって伝搬させることと、
f)前記発生させられた追加の光パルスから生じた前記標的から反射された追加の光帰還信号を受信することと、
g)前記受信された追加の光帰還信号を処理し、1つ以上のLIDAR測定値を取得することと
を含む、方法。
(項目21)
前記環境条件情報を取得することは、センサからの情報を決定することを含む、項目20に記載の方法。
(項目22)
前記環境条件情報を取得することは、周囲光強度レベルを決定することを含む、項目20に記載の方法。
(項目23)
前記環境条件情報を取得することは、天候条件を決定することを含む、項目20に記載の方法。
(項目24)
前記環境条件情報を取得することは、大気条件を決定することを含む、項目20に記載の方法。
(項目25)
光検出および測距(LIDAR)の方法であって、前記方法は、
a)標的に向かって伝搬する第1の光パルスを発生させることと、
b)前記発生させられた第1の光パルスから生じた前記標的から反射された光帰還信号を受信することと、
c)前記標的に向かって伝搬されるべき追加の光パルスの数を決定することと、
d)前記決定された数の追加の光パルスを発生させ、それらを前記標的に向かって伝搬させることと、
e)前記発生させられた追加の光パルスから生じた前記標的から反射された追加の光帰還信号を受信することと、
f)前記受信された追加の光帰還信号を処理し、1つ以上のLIDAR測定値を取得することと
を含む、方法。
(項目26)
前記追加の光パルスの数を決定することは、環境条件についての情報に基づいて決定することを含む、項目25に記載の方法。
(項目27)
前記追加の光パルスの数を決定することは、前記受信された光帰還信号の特性に基づいて決定することを含む、項目25に記載の方法。
(項目28)
前記追加の光パルスの数を決定することは、環境条件についての情報に基づいて、かつ前記受信された光帰還信号の特性に基づいて決定することを含む、項目25に記載の方法。
(項目29)
前記追加の光パルスの数を決定することは、パフォーマンス基準に基づいて決定することを含む、項目25に記載の方法。
(項目30)
前記パフォーマンス基準は、信号対雑音比である、項目29に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0007】
好ましい例示的実施形態によると、本教示は、そのさらなる利点とともに、付随の図面と併せて、以下の発明を実施するための形態においてより具体的に説明される。当業者は、下記に説明される図面が、例証の目的のためにすぎないことを理解するであろう。図面が、必ずしも、正確な縮尺ではなく、強調が、代わりに、概して、本教示の原理を図示することに応じて置かれている。図面は、いかようにも本出願人の教示の範囲を限定することを意図するものではない。
【0008】
【
図1】
図1は、車両内に実装される、本教示のLIDARシステムのある実施形態の動作を図示する。
【0009】
【
図2A】
図2Aは、本教示のLIDARシステムのある実施形態の伝送パルスを示すグラフを図示する。
【0010】
【
図2B】
図2Bは、本教示のLIDARシステムのある実施形態の帰還信号を示すグラフを図示する。
【0011】
【
図2C】
図2Cは、本教示のLIDARシステムのある実施形態の16個の帰還信号の平均を示すグラフを図示する。
【0012】
【
図3A】
図3Aは、本教示のLIDARシステムの受信機のある実施形態を図示する。
【0013】
【
図3B】
図3Bは、本教示のLIDARシステムのある実施形態によって発生させられる帰還信号のための時間の関数としての出力を示すグラフを図示する。
【0014】
【
図3C】
図3Cは、
図3Bに関連して説明されるLIDARシステムの実施形態のための16個の帰還信号の平均のグラフを図示する。
【0015】
【
図4】
図4は、本教示のLIDARシステム内で測定を開始するために使用されるレーザの発射を制御する方法のフローチャートを図示する。
【0016】
【
図5】
図5は、本教示のLIDARシステムのための平均すべきパルスの数を決定するための決定木を図示する。
【0017】
【
図6】
図6は、本教示のLIDARシステムのための平均すべきパルスの数を決定するための決定木を図示する。
【0018】
【
図7A】
図7Aは、本教示のLIDARシステムのある実施形態の特定の場面の単一のレーザショットのための帰還パルストレースを図示する。
【0019】
【
図7B】
図7Bは、
図7Aに関連して説明されるLIDARシステムの実施形態の同じ特定の場面の別の単一のレーザショットのための帰還パルストレースを図示する。
【0020】
【
図7C】
図7Cは、
図7Aに関連して説明されるLIDARシステムの実施形態の同じ特定の場面の別の単一のレーザショットのための帰還パルストレースを図示する。
【0021】
【
図7D】
図7Dは、
図7Aに関連して説明されるLIDARシステムの実施形態の同じ特定の場面の別の単一のレーザショットのための帰還パルストレースを図示する。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本教示は、ここで、付随の図面に示されるようなその例示的実施形態を参照して、さらに詳細に説明されるであろう。本教示は、種々の実施形態および例と併せて説明されるが、本教示がそのような実施形態に限定されることを意図するものではない。むしろ、本教示は、当業者によって理解されるであろうように、種々の代替、修正、および均等物を包含する。本明細書の教示へのアクセスを有する当業者は、本明細書に説明されるような本開示の範囲内である追加の実装、修正、および実施形態、および他の使用分野を認識するであろう。
【0023】
本明細書における「一実施形態」または「ある実施形態」の言及は、実施形態に関連して説明される特定の特徴、構造、または特性が、本教示の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。本明細書の種々の場所における語句「一実施形態では」の表出は、必ずしも、全てが同じ実施形態を指しているわけではない。
【0024】
本教示の方法の個々のステップは、本教示が動作可能のままである限り、任意の順序で、および/または同時に、実施され得ることを理解されたい。さらに、本教示の装置および方法が、本教示が動作可能なままである限り、説明される実施形態のうちの任意の数のものまたは全てを含み得ることを理解されたい。
【0025】
LIDARシステムのFOV内に、周囲の物体までのある範囲の隔たりが、存在する。例えば、LIDARシステムのより低い垂直FOVに、典型的に、道路の表面が見える。道路表面を越えて隔たりを測定するように試みることに、いかなる利益も、存在しない。また、本質的に、常時、FOV内の全ての測定点に関して均一な長い隔たり(>100m)まで測定する、LIDARシステムに関する効率のある損失が、存在する。より長い帰還パルスを待つこと、および複数のパルスを送信することの両方において喪失される時間は、フレームレートを改良する、および/または物体が、長い隔たりにある場合、FOVのそれらの面積により多くのパルスを送信するための追加の時間を提供するために使用され得る。より低いFOVに、ほぼ常時、近接した隔たりにおいて道路表面が見えることを把握すると、パルス間のタイミング(すなわち、より短い隔たり測定値に関してより短いタイミング)およびレーザパルスの数を適応的に変化させる、アルゴリズムが、実装され得る。
【0026】
車両の態勢(ピッチ、ロール、ヨー)を検出し得る高解像度マッピング、GPS、およびセンサの組み合わせも、LIDARシステムとの組み合わせにおいて使用され、既知の車道外形に対応する、視野の一部にわたる最大の測定隔たりを定義し得る車道配向の定量的な知識を提供するであろう。本教示によるLIDARシステムは、環境条件、およびFOVの関数として提供される隔たり要件に関するデータを使用し、SNR、測定信頼度、またはある他のメトリックに基づいて、パルス間のタイミングおよびレーザパルスの数の両方を適応的に変化させることができる。
【0027】
システムパフォーマンス全体における重要な要因は、時として、当技術分野において単一フレームと称される完全FOVのための単一シーケンス内でレーザの個々のものまたは群を発射するために使用される、パルスの数である。レーザアレイを使用する実施形態は、数百個またはさらに数千個の個々のレーザを含み得る。これらのレーザの全てまたはいくつかが、場面全体が照会されるために、時間の関数として、あるシーケンスまたはパターンにおいてパルス化され得る。ある回数(例えば、N回)発射されるレーザ毎に、測定時間が、少なくともNだけ増加する。したがって、測定時間は、所与のレーザまたはレーザの群からのパルスショットの数を増加させることによって増加し、それによって、フレームレートを低減させる。
【0028】
図1は、車両内に実装される、本教示のLIDARシステム100の動作を図示する。LIDARシステム100は、光源によって発生させられる光ビーム102を標的場面に向かって伝搬させる照明器とも称されるレーザプロジェクタ101と、その標的場面内では人物106として示される物体から反射される光104を受信する受信機103とを含む。いくつかの実施形態では、照明器は、レーザ伝送機と、種々の伝送光学系とを備える。
【0029】
LIDARシステムは、典型的に、また、反射された光から物体(人物106)についての隔たり情報を算出する、コントローラも含む。いくつかの実施形態では、所望の距離および視野(FOV)を横断して、静的パターンまたは動的パターンであり得る光の特定のパターンを走査または提供し得る要素も、存在する。物体(人物106)から反射された光の一部が、受信機内で受信される。いくつかの実施形態では、受信機は、受信光学系と、検出器のアレイであり得る検出器要素とを備える。受信機およびコントローラは、受信された信号光をLIDARシステム距離およびFOV内にある周囲環境の点毎の3Dマップを表す測定値に転換するために使用される。
【0030】
本教示によるLIDARシステムのいくつかの実施形態は、レーザアレイ内にある、レーザ伝送機を使用する。いくつかの具体的な実施形態では、レーザアレイは、VCSELレーザデバイスを含む。これらは、上面発光型VCSEL、底面発光型VCSELおよび種々のタイプの高出力VCSELを含み得る。VCSELアレイは、モノリシックであってもよい。レーザエミッタは全て、半導体基板またはセラミック基板を含む共通基板を共有し得る。
【0031】
いくつかの実施形態では、1つ以上の伝送器アレイを使用する実施形態内の個々のレーザおよび/またはレーザの群が、個々に制御されることができる。伝送器アレイ内の各個々のエミッタが、独立して発射されることができ、光学ビームは、全システム視野の一部のみに範囲を定める3D投影角に対応する各レーザエミッタによって放出される。そのようなLIDARシステムの一例が、本譲受人に譲渡されている米国特許公開第2017/0307736 A1号に説明されている。米国特許公開第2017/0307736 A1号の全内容は、参照することによって本明細書に組み込まれる。加えて、個々のレーザまたはレーザの群によって発射されるパルスの数は、LIDARシステムの所望のパフォーマンス目的に基づいて、制御されることができる。本シーケンスの持続時間およびタイミングも、種々のパフォーマンス目標を達成するために制御されることができる。
【0032】
本教示によるLIDARシステムのいくつかの実施形態は、また、個々に制御され得る検出器アレイ内の検出器および/または検出器の群を使用する。例えば、「Eye-Safe Long-Range Solid-State LIDAR System」と題された、米国仮出願第62/859,349号を参照されたい。米国仮出願第62/859,349号は、本譲受人に譲渡されており、参照することによって本明細書に組み込まれる。伝送器アレイ内の個々のレーザおよび/またはレーザの群、および/または検出器アレイ内の検出器および/または検出器の群の本独立的な制御が、システム視野、光出力レベル、および走査パターンの制御を含む、種々の望ましい動作特徴を提供する。
【0033】
図2Aは、本教示のLIDARシステムのある実施形態の伝送パルスのグラフ200を図示する。グラフ200は、LIDARシステム内の典型的伝送レーザパルスのための時間の関数として、光出力を示す。レーザパルスは、時間の機能としての形状が正規分布曲線状であり、典型的に、持続時間が約5ナノ秒である。種々の実施形態では、パルス持続時間は、種々の値をとる。一般に、パルス持続時間が短いほど、LIDARシステムのパフォーマンスが、より優れている。より短いパルスは、反射された帰還パルスの測定されたタイミングの不確実性を低減させる。より短いパルスはまた、眼の安全性が制約となるとき、典型的状況におけるより高いピーク出力を可能にする。これは、同じピーク出力に関して、より短いパルスが、より長いパルスより少ないエネルギーを有するためである。
【0034】
特定の場面についての情報を提供するために複数のパルスを平均することが可能であるために、パルス間の時間は、比較的に短くあるべきである。特に、パルス間の時間は、標的場面内での物体の運動より急速であるべきである。例えば、物体が、50m/秒の相対速度において進行している場合、それらの隔たりは、100μ秒内で5mmだけ変化するであろう。したがって、標的の隔たりおよび標的自体についての曖昧性を有しないために、LIDARシステムは、場面が、準定常であり、全てのパルス間の合計時間が、約100μ秒である場合、全てのパルス平均化を完了するべきである。確実に、これらの種々の制約間に、相互作用が、存在する。種々の所望のパフォーマンス目的を満たすために使用され得る特定のパルス持続時間、パルスの数、およびパルスまたはデューティサイクル間の時間の種々の組み合わせが、存在することを理解されたい。種々の実施形態では、レーザおよび検出器の具体的な物理的アーキテクチャおよびレーザ発射パラメータの制御スキームが、所望のパフォーマンスを達成するために組み合わせられる。
【0035】
図2Bは、本教示のLIDARシステムのある実施形態の帰還信号のグラフ230を図示する。本タイプのグラフは、時として、帰還信号トレースと称される。帰還信号トレースは、単一の伝送レーザパルスからの検出された帰還信号のグラフである。この特定のグラフ230は、検出された帰還パルスのシミュレーションである。検出された帰還信号のLOG
10(出力)が、時間の関数としてプロットされる。グラフ230は、システムから、および環境からのノイズ232を示す。約60ナノ秒において、明確な帰還パルスピーク234が、存在する。このピーク234は、LIDARシステムから9メートルの隔たりにおける物体からの反射に対応する。60ナノ秒は、物体が、LIDARシステムの伝送機/受信機から9メートル離れているときに、光が物体に向かって外に進み、検出器に戻るために要する時間である。システムは、ピークの特定の測定された時間が、特定の標的隔たりに関連付けられるように較正されることができる。
【0036】
図2Cは、本教示のLIDARシステムのある実施形態の16個の帰還信号の平均のグラフ250を図示する。グラフ250は、その中で、それぞれが、
図2Bのグラフ230内の帰還信号に類似する、16個の帰還のシーケンスが平均される、シミュレーションを図示する。16個の帰還のシーケンスは、16個の単一のパルス伝送のシーケンスを送出することによって、発生させられる。分り得るように、ノイズ252の発散が、平均を通して低減される。このシミュレーションでは、ノイズは、ランダムに変動している。このグラフ内のデータに関する場面(図示せず)は、FOV内の2つの物体であり、一方は、9メートルにおけるものであり、他方は、90メートルにおけるものである。60ナノ秒のあたりで見え得る第1の帰還ピーク254が、存在し、600ナノ秒のあたりで見え得る第2の帰還ピーク256が、存在することが、グラフ250において分り得る。本第2の帰還ピーク256は、LIDARシステムから90メートルの隔たりにおいて位置する、物体に対応する。したがって、各単一のレーザパルスは、LIDARシステムからの種々の隔たりに位置する、物体からの反射から生じた、複数の帰還ピーク254、256を生産することができる。一般に、強度ピークは、LIDARシステムからの隔たりの拡大に伴って、大きさが縮小する。しかしながら、ピークの強度は、物理的サイズおよび反射率特性等の多数の他の要因に依存する。
【0037】
図3Aは、本教示のLIDARシステムの受信機300のある実施形態を図示する。受信機300は、検出器アレイ304と、関連付けられるフロントエンド電子回路網(図示せず)とを含む、センサ302を含む。フロントエンド回路網は、例えば、低ノイズ増幅器を含むことができる。デジタルサンプリング回路306が、検出器信号をサンプリングする。パルス平均化回路308が、サンプリングされた検出信号を平均する。平均化は、信号対雑音比を改良する。受信された信号の信号対雑音比は、ノイズがガウスノイズであると仮定して、平均されたN個の信号に関するNの平方根として改良される。電気フィルタリング回路310が、平均された信号をフィルタリングする。受信された信号のフィルタリングは、ハードウェアベースのフィルタリングおよび/またはソフトウェアベースのフィルタリングを含む、種々のフィルタリングタイプを含むことができる。フィルタリングは、アナログおよび/またはデジタルフィルタリングを含むことができる。検出処理回路312は、フィルタリングされた信号を処理し、例えば、物体識別および測距情報を含み得る検出メトリックを決定する。
【0038】
受信機300はまた、インターフェースと、受信機300の動作を制御し、システムにデータを提供する、制御およびタイミング電子機器314とを含む。インターフェース314は、3D測定点群等の出力信号を提供する。提供され得る他の出力信号は、例えば、未加工のTOFデータおよび/または処理されたTOFデータを含む。インターフェース314はまた、システム内の他の回路およびデバイスから制御および/またはデータ信号を受信する。例えば、インターフェース314は、周囲光センサ、天候センサ、および/または大気条件センサ等の種々のセンサからデータを受信することができる。
【0039】
図3Bは、本教示のLIDARシステムによって発生させられる、帰還信号のための時間の関数としての出力のグラフ330を図示する。グラフ330は、ノイズ332および2つの明確な帰還パルスピーク334、336を示す。第1のピーク334は、100ナノ秒にあり、第2のピーク336は、200ナノ秒にある。本グラフ330は、単一のレーザ伝送パルス帰還信号に関するデータを表す。
【0040】
図3Cは、
図3Bに関連して説明されるLIDARシステムの実施形態のための16個の帰還信号の平均のグラフ350を図示する。本グラフ350は、16個の独立したレーザ伝送パルス帰還信号の平均を表す。グラフ350は、信号平均から結果として生じる、低減されたノイズ352を示す。2つの早期の強力なピーク、すなわち、100ナノ秒におけるピーク354および200ナノ秒におけるピーク356に加えて、300ナノ秒において可視のピーク358が、存在する。いくつかの帰還信号にわたる平均は、ノイズレベル352を低減させ、これは、より小さいピーク帰還信号が、識別および測定されることを可能にする。概して、さらなる隔たりにおける物体からの帰還信号は、類似の物体に関してより弱い。より多数の平均された帰還信号を使用することは、より遠くの物体が検出されることを可能にする。一般に、さらなる平均は、より弱い反射信号を伴う物体が検出されることを可能にする。
【0041】
また、一般に、平均化において使用される帰還信号の数は、平均された帰還信号トレース内の特定のSNRにも対応する。SNRは、次いで、特定の最大検出距離に関連付けられることができる。したがって、平均数が、特定のSNRを提供する、および/または特定の最大検出距離を提供するように選定され得る。
【0042】
図4は、本教示のLIDARシステム内で測定を開始するために使用される、レーザの発射を制御する方法400のフローチャートを図示する。第1のステップ402において、測定が、開始される。第2のステップ404において、選択されたレーザが、発射される。すなわち、個々のレーザが、光パルスを発生させることによって単一の測定を開始するように制御される。本教示による種々の方法では、レーザの選択された個々のものおよび/または群が、所望のパターンのレーザFOVが、所与の単一発射測定サイクル上で照明されるように、発射され、光の単一のパルスを発生させることを理解されたい。
【0043】
第3のステップ406において、反射された帰還信号が、LIDARシステムによって受信される。第4のステップ408において、受信された反射帰還信号が、処理される。いくつかの方法では、帰還信号の処理は、帰還ピークの数を決定する。いくつかの方法では、処理は、飛行時間(TOF)に基づいて物体までの隔たりを計算する。いくつかの方法では、処理は、帰還ピークの強度または疑似強度を決定する。これらの処理結果の種々の組み合わせが、提供されることができる。強度は、p型/真性/n型構造検出器(PIN)またはアバランシェ光検出器(APD)を用いて直接検出されることができる。また、強度は、同時にトリガされるピクセルの数に基づいて疑似強度を提供する、シリコン光電子増倍管(SiPM)または単一光子アバランシェダイオード検出器(SPAD)アレイを用いて検出されることもできる。いくつかの方法はさらに、帰還信号トレースのノイズレベルを決定する。種々の方法では、追加の情報、例えば、周囲光レベルおよび/または種々の他の環境条件および/または要因も、考慮される。環境条件は、例えば、温度、湿度、天候、大気条件(例えば、霧、煙の存在)等を含む。
【0044】
第5のステップ410において、レーザからの光の別のパルスを発生させるためにレーザを発射することについての決定が、行われる。決定が、「はい」である場合、方法は、第2のステップ404に戻る。種々の方法では、決定は、例えば、決定マトリクス、LIDARコントローラの中にプログラムされるアルゴリズム、および/またはルックアップテーブルに基づくことができる。特定の数のレーザパルスが、次いで、所望の数のレーザパルスが、発生させられ、レーザの発射を停止させるための決定を生じさせるまで、第2のステップ404と、第3のステップ406と、第4のステップ408とを含む、ループを通して循環することによって、発生させられる。所望の数は、パフォーマンス基準に基づいて、環境条件についての情報に基づいて、および/またはセンサから決定される情報等の決定された情報に基づいて、事前決定されることができる。
【0045】
全ての所望のレーザパルスが、発生させられた後、システムは、第6のステップ412において、複数の測定信号処理ステップのうちの1つ以上のものを実施する。種々の方法では、複数の測定信号処理ステップは、例えば、フィルタリング、平均化、および/またはヒストグラム化を含むことができる。複数の測定信号処理は、複数のパルス測定値の処理されたデータから、最終的な結果として生じる測定値をもたらす。これらの結果として生じる測定値は、未加工の信号トレース情報と、処理された情報との両方を含むことができる。未加工の信号情報は、データの確率または信頼レベルを示す、フラグまたは標識および第6のステップ412を処理することに関連するメタデータを用いて、増強されることができる。
【0046】
第7のステップ414において、複数の測定信号処理によって決定される情報が、次いで、報告される。報告されるデータは、例えば、3D測定点データおよび/または帰還ピークの数、飛行時間、帰還パルス振幅、誤差、および/または種々の較正結果を含む、種々の他のメトリックを含むことができる。第8のステップ416において、方法が、終了される。
【0047】
図4に関連して説明される方法400が、概して、単一のレーザを通電させる、または発射するために説明されることを理解されたい。多くの実践的な実施形態では、レーザのアレイおよび検出器のアレイが、使用される。方法400が、容易に、レーザのアレイおよび/または検出器のアレイに拡張され得ることをさらに理解されたい。レーザおよび/または検出器の個々のものおよび/または群を選択する、多くの方法が、存在する。例えば、両方とも「Solid-State LIDAR Transmitter with Laser Control」と題された、米国仮特許出願第62/831,668号および米国特許出願第16/841,930号を参照されたい。また、両方とも「Eye-Safe Long-Range Solid-State LIDAR System」と題された米国仮出願第62/859,349号および米国特許出願第16/895,588号、および「Noise Adaptive Solid-State LIDAR System」と題された、米国特許出願第16/366,729号も参照されたい。これらの特許出願は、本譲受人に譲渡されており、参照することによって本明細書に組み込まれる。レーザの群から
図4に関連して説明されるようなレーザを発射させることは、例えば、レーザの群内の各レーザに、その発射事象の間に単一のパルスを放出させるであろう。決定ステップ410が、継続することになる度に、レーザのその同じ群が、再度発射されるであろう。これは、測定のために所望の数のパルスが実装され、決定410が停止することになるまで、継続する。
【0048】
本教示の1つの特徴は、種々の方法が、発生させられるレーザパルスの数を決定するために使用され得ることである。決定基準は、動的または静的であることができる。動的決定基準を使用することによって、システムは、結果として生じる測定値を取得するために使用される、単一のパルス測定の数を変動させることができる。例えば、動的決定基準は、測定活動の間に生じる条件に基づくことができる。これは、LIDARシステムが、環境に対して動的に応答することを可能にする。代替として、本教示によるシステムは、静的または準静的であることができ、パフォーマンス能力の事前決定された組を用いて動作することができる。動的動作と静的動作との組み合わせも、可能である。
【0049】
図5は、本教示のLIDARシステムのための平均すべきパルスの数を決定するための決定木500を図示する。決定木500の本特定の例は、多くの場合に、結果として生じる測定値毎に、16個のレーザパルスの発生をもたらすであろう。しかしながら、近接する物体が、比較的に高いSNRを有する帰還信号とともに検出されると、使用されるパルスの数は、典型的に、低減するであろう。パルスの数を低減させることによって、システムフレームレート全体が、固定された数の16個のレーザパルスが、あらゆる測定のために使用されるような場合に考えられるであろうよりも急速になることができる。
【0050】
決定木500では、第1の決定ノード502が、帰還信号トレースにおいて検出されたピークの数に関する試験に基づいて、分岐504、506、508を発生させる。帰還ピーク(またはパルス)が、第1の決定ノード502において検出されない場合、第1の分岐504が、とられ、命令ノード510および選択された16個の伝送パルスにつながる。場面内の任意の物体が、システムの検出限界にあるため、本命令が、結果として生じ、そのため、帰還トレースの16個のセットの全体を平均することが、有利である。
【0051】
第1の決定ノード502が単一の帰還パルスをもたらす場合、分岐506が、決定ノード512まで辿られる。この決定ノード512は、検出された物体が、20メートルの隔たりを下回るかどうかを尋ねる。該当する場合、分岐514が、とられ、2つのレーザパルスの発生を開始する、命令ノード516につながる。決定ノード512が、トレースのTOF分析から、物体が20メートルを上回ることを決定した場合、決定木500は、分岐518を決定ノード520まで辿る。決定ノード520が、ピークのTOF分析から、測定された帰還が、80メートルを下回ることを決定した場合、分岐522が、結果として生じる4つの帰還トレースが平均され得るように4つのレーザパルスを発生し始める、命令ノード524まで辿られる。決定ノード520が、ピークのTOF分析から、帰還が、80メートルを上回る物体からのものであることを決定した場合、分岐526が、結果として生じる16個の帰還トレースが平均され得るように16個のレーザパルスを開始する、命令ノード528まで辿られる。
【0052】
決定ノード502が、帰還内のピークの数が、少なくとも2つであることを決定した場合、経路508が、決定ノード530まで辿られる。本決定ノード530は、最も近接する物体の存在が、40メートルを上回る、または下回るかどうかを決定する。40メートルを下回るものは、4つのレーザパルスの発生を開始する命令ノード534まで辿られている、経路532をもたらす。40メートルを上回るものは、16個のレーザパルスの発生を開始する命令ノード538まで辿られている、経路536をもたらす。したがって、2つの物体の場合では、ここで、再び、より近接する物体を伴う場面は、より少ない平均化の数を利点とし、したがって、さらなる物体を含む場面と比較して、より急速なフレームレートを利点とする。
【0053】
決定木500は、概して、ピーク数およびTOFベースの決定木として特徴付けられることができる。したがって、決定木500は、戻り内のピークの数および/またはそれらのピークのTOFに関連付けられる物体位置を決定し、それらの決定の結果に基づいて発射するための後続のレーザパルスの数を決定する、ノードを含む。
図5の決定木500は、本教示の概念を図示するための1つの単純な例にすぎない。本教示によるシステムおよび方法が、ピーク数およびTOFに基づいて、はるかにさらに複雑な決定木を有し得ることを理解されたい。種々の実施形態では、ピーク数およびTOFベースの決定木は、システムにとって利用可能な他の情報を考慮する。これらの追加の決定基準は、例えば、システム情報に基づく、帰還信号の強度、環境条件、物体場面条件、ノイズレベル、および種々の他の基準を含む。本追加の情報は、ピークの数、TOF閾値および/またはパルスの数に関連付けられる隔たり等、決定木の種々のノード内の値を変化させるために使用されることができる。
【0054】
本教示による決定木はまた、より複雑な分岐と、決定スキームとを含むことができる。種々の実施形態では、決定木命令ノードは、静的または動的である、または静的意思決定または動的意思決定の両方のいくつかの側面を有することができる。例えば、レーザパルスの数を設定する、ノード510、516、524、528、534、および538等の決定木ノードが、レーザの各後続の発射に基づいて、発射される異なる数のレーザパルスに更新され、新しい測定のために発射される第1のレーザパルスのみに基づいて固定されたものとして設定されることはできない。
【0055】
図6は、本教示のLIDARシステムのための平均すべきパルスの数を決定するための決定木600の別の実施形態を図示する。この決定木600は、TOFの計算を要求せず、したがって、時に、TOFを算出するステップが、時間およびリソース集約的であるとき、有用である。決定木600における第1の決定602は、受信されたパルスの強度が、受信機を飽和状態に置くほど十分に強力であるかどうかの決定である。例えば、APD検出器およびSPAD検出器の両方を用いると、センサからのピーク出力のレベルが、測定され、帰還レベルが、検出器を飽和させるほど十分に強力であるかどうかを決定するために使用されることができる。
【0056】
決定木600における決定ノード606、618内での第2の決定は、周囲光レベルに依存する。大部分のLIDARシステムは、周囲光レベルを監視するための能力を有する。例えば、周囲光は、伝送機パルスが送信されていないとき、受信機の背景ノイズレベルから容易に決定され得る。周囲光レベル値は、フレーム毎に一度等、ある適切な間隔において測定され、決定木600内での使用のために記憶されることができる。これらの2つの基準、すなわち、受信機が飽和状態にあるかどうかの決定、および周囲光レベルの決定に基づいて、異なる数のレーザパルスが、計算されたTOF測定値を取得するための平均/ヒストグラム化のために選定される。一般に、ともにとられたこれらの2つの決定は、帰還パルスの信号対雑音レベルのインジケーションである。これは、信号対雑音レベルがより高いとき、システムがより少ない数のパルスを使用することを可能にする。
【0057】
より具体的に、決定ノード602は、受信機が飽和状態にあるかどうかを決定する。例えば、飽和条件に関して監視している、受信機内のプロセッサが、本飽和情報を提供し得る。飽和条件が、決定された場合、経路604が、周囲光レベルが、明るい太陽光が存在することを示しているかどうかの決定が行われる、決定ノード606までとられる。周囲光レベルは、LIDAR内のモニタから得られ得る。代替として、この情報は、LIDARシステムの外側から提供され得る。周囲光レベルが、明るい太陽光を示さない場合、経路608が、辿られ、16個のパルスレーザ測定が、命令ノード610によって命令される。これは、高い周囲光レベルが、良好な信号対雑音比を提供するために、より多くの平均を要求するためである。周囲光レベルが、明るい太陽を示さない場合、経路612が、8つのレーザパルスの発生を開始する命令ノード614まで辿られる。周囲光レベルが、より低いため、より少ないパルスが、要求される。したがって、より高い背景光条件が、より低い背景光条件より多くの平均をもたらす。
【0058】
決定ノード602が、受信機が飽和状態にないことを決定した場合、経路616が、決定ノード618まで辿られる。決定ノード618は、周囲光レベルが、明るい太陽光を示しているかどうかを決定し、該当する場合、経路620を4つのレーザパルス発射シーケンスを開始する、命令ノード622まで辿る。決定ノード618が、明るい太陽周囲光レベルが、存在しないことを決定した場合、経路624が、辿られ、命令ノード626が、単一のパルスレーザシーケンスを開始する。受信機が、飽和状態になく、高い背景レベルが、存在しない場合、平均は、必要とされない。本明細書に説明されるように、単一のパルスのみを使用しながら、依然として、高い信号対雑音比および/または他の高品質の測定パフォーマンスを実現することは、より急速なフレームレートを可能にする。
【0059】
したがって、本教示によるいくつかの方法では、受信機が、飽和状態にある場合、より多数のレーザパルスが、発生させられ、検出器の出力におけるより多くの平均および/またはヒストグラム化を可能にする。測定毎により多数のレーザパルスを使用することは、より多くの平均を介して信号対雑音比を増大させる。その結果、明るい太陽光のインジケーションが、より低い周囲光条件が検出されるときより多くのパルス発射をもたらし、これは、明るい背景にわたって信号対雑音比を改良する。本例では、高い周囲は、16個のパルスを使用し、低い周囲は、8個のパルスを使用する。受信機が、飽和状態になく、周囲が、低いとき、単一のパルスが、使用され得る。受信機が、飽和状態にないが、周囲が、高いとき、4つのパルスが、使用される。したがって、本教示の一側面は、
図6の決定木600に関連して説明されるように、所望の信号対雑音比または他のパフォーマンスメトリックを提供するために必要とされる、最も少ない数のレーザパルスが、LIDARシステムを全般的により効率的にするために、採用され得ることである。例えば、適切であるときにより少数のパルスを発生させる、本教示による方法を使用することは、要求されるレーザパルスの平均数を低減させ、また、測定を完成させるために要する時間も短縮する。
【0060】
当業者は、
図5に関連して説明される決定木500と同様に、決定木600が、システム情報に基づく、帰還の強度、環境条件、物体場面条件、ノイズレベル、および/または種々の他の基準等の追加の情報および決定基準を利用するはるかにより複雑な決定木を有するように拡張され得ることを理解するであろう。本教示による決定木はまた、より複雑な決定分岐も含むことができる。
【0061】
種々の実施形態では、決定木命令ノードは、静的、動的、または静的と動的との組み合わせであることができる。例えば、決定木600において、レーザパルスの数を設定する、命令ノード610、614、622、626が、更新され、新しい測定のために発射される第1のレーザパルスのみに基づいて固定されることの代わりに、レーザの各後続の発射に基づいて、異なる数のレーザパルスの発生を開始することができる。命令ノード610、614、622、626のいずれかまたは全てにおいて発射されるレーザパルスの数は、例えば、測定の間の規則的な間隔において更新されることができる。命令ノードのいずれかまたは全てにおいて発射されるレーザパルスの数はまた、後処理された測定結果に基づくこともできる。同様に、飽和または周囲光レベルまたは他の基準のための閾値は、静的または動的のいずれかであることができる。
【0062】
したがって、本教示の決定木の種々の実施形態は、例えば、外部条件、内部条件、具体的な測定結果、またはこれらの要因の組み合わせに基づく決定閾値を含む、決定ノードを利用する。本教示の決定木の種々の実施形態は、結果として生じる測定内で使用されるパルスの数を定義する、命令ノードを利用する。他の命令は、例えば、ピーク出力、MPE閾値、照明パターン、FOV、および他の伝送機構成設定を含むことができる。
【0063】
本教示の1つの特徴は、複数のレーザパルス、および関連付けられる複数の帰還パルストレースの後続の処理を利用する、LIDARシステムがまた、比較的に高確率で誤警報を検出し得ることである。誤警報は、例えば、物体を有していない位置に対応する、ピークを検出することを含む。そのような誤警報イベントは、種々の原因から生じ得る。例えば、偽ノイズが、発生し得る。他のLIDARシステムからの干渉も、可能なノイズ源である。
図7A-Dは、これが起こる方法のある例を示す。
【0064】
図7A-Dは、FOV内の同じ測定点からの4つの帰還パルストレースを図示する。より具体的に、
図7Aは、本教示のLIDARシステムのある実施形態の特定の場面の単一のレーザショットのための帰還パルストレース700を図示する。
図7Bは、LIDARシステムの実施形態の同じ特定の場面の別の単一のレーザショットのための帰還パルストレース720を図示する。
図7Cは、LIDARシステムの実施形態の同じ特定の場面の別の単一のレーザショットのための帰還パルストレース740を図示する。
図7Dは、LIDARシステムの実施形態の同じ特定の場面の別の単一のレーザショットのための帰還パルストレース760を図示する。これらの帰還パルストレース700、720、740、760はそれぞれ、標的が、有意に移動しないように、十分に短時間において同じ標的と相互作用する、単一のレーザパルスからの結果である。例えば、これらの単一のレーザパルスは、典型的に、LIDAR測定の間に迅速に連続して発生させられる。
【0065】
4つの帰還パルストレース700、720、740、760の全てにおいて、ランダムノイズが、変動し、各測定値をわずかに異なるように見せることが分り得る。2つの物体、すなわち、100ナノ秒における、第1のものと、600ナノ秒における、第2のものが、4つの測定値の全ての中に見え得る。帰還パルストレース700では、これらの物体は、ピーク702およびピーク704を引き起こす。帰還パルストレース720では、これらの物体は、ピーク722およびピーク724を引き起こす。帰還パルストレース740では、これらの物体は、ピーク742およびピーク744を引き起こす。帰還パルストレース760では、これらの物体は、ピーク762およびピーク764を引き起こす。しかしながら、
図6Dの帰還パルストレース760では、強力な信号766が、300ナノ秒において発生する。
【0066】
LIDARシステムは、これらのトレースを種々の方法において処理することによって、この可能な虚偽物体の存在に対して適応的に反応することができる。例えば、システムは、別のレーザパルスを発射し、この最後の測定値である帰還パルストレース760を確認し、次いで、比較の後、誤ったデータを破棄し得る。すなわち、本帰還パルストレース760は、この状況において、ユーザに提供されることも、または次のシステム処理段階に報告されることもないであろう。代替方法では、システムは、ユーザにデータセットを提供するが、データが、逸脱値であり得ることを示す、フラグを設定し得る。別の代替方法では、システムは、ユーザにデータおよび物体検出結果を提供するが、この検出された物体が、低い確率を有しているものとして示されるであろうことのフラグを立て得る。いくつかの方法では、この確率は、ピークに関連付けられた物体が発生したショットの組内のショットの数に基づいて、定量化されることができる。この例では、ピークは、発射されたレーザパルスの4分の1のみにおいて検出された。
【0067】
本教示のパルス化TOF LIDARシステムのいくつかの実施形態は、クラス1の眼の安全性に関するMPE限界値またはそれをわずかに下回る光出力/エネルギーを伴う、コリメート伝送機レーザビームを使用し、従来のフラッシュLIDARシステムと比較して有意な距離の拡大を提供する。加えて、本教示のパルス化TOF LIDARシステムのいくつかの実施形態は、複数のレーザパルスのパルス平均化および/またはパルスヒストグラム化を使用し、信号対雑音比(SNR)を改良し、これはさらに、距離を改良する。これらのLIDARシステムは、100Hzを優に上回る、非常に高い単一のパルスフレームレートを採用する。例えば、2020年6月8日に出願され、「Eye-Safe
Long-Range Solid-State LIDAR System」と題された、米国特許出願第16/895,588号を参照されたい。米国特許出願第16/895,588号は、本譲受人に譲渡されており、参照することによって本明細書に組み込まれる。
【0068】
(均等物)
本出願人の教示は、種々の実施形態と併せて説明されるが、本出願人の教示がそのような実施形態に限定されることは意図していない。むしろ、本出願人の教示は、当業者によって理解されるであろうように、本教示の精神および範囲から逸脱することなく、その中に成され得る種々の代替、修正、および均等物を包含する。
【外国語明細書】