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  • 特開-渋滞情報判定装置 図1
  • 特開-渋滞情報判定装置 図2
  • 特開-渋滞情報判定装置 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023011009
(43)【公開日】2023-01-20
(54)【発明の名称】渋滞情報判定装置
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/01 20060101AFI20230113BHJP
【FI】
G08G1/01 E
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022188294
(22)【出願日】2022-11-25
(62)【分割の表示】P 2018055805の分割
【原出願日】2018-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】柴▲崎▼ 裕昭
(57)【要約】
【課題】詳細な渋滞位置を精度良く判定することができる渋滞判定装置を提供する。
【解決手段】渋滞発生予測装置1の制御部3は、区間Z2における交通流速度V2を取得し、交通流速度V2に基づいて渋滞判定区間の長さを設定し、この渋滞判定区間において渋滞判定を行う。区間Z2の交通流速度が低い場合には渋滞判定区間を短く設定し、区間Z2の交通流速度が高い場合には渋滞判定区間を長く設定することにより、詳細な渋滞位置を精度良く判定することができる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定区間における渋滞発生予測度を取得する取得部と、
前記渋滞発生予測度に基づいて、前記所定区間の少なくとも一部を含む渋滞判定区間の長さを設定する設定部と、
前記渋滞判定区間の交通流情報に基づいて、当該渋滞判定区間における渋滞判定を行う判定部と、を備えることを特徴とする渋滞判定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、渋滞情報判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両(移動体)や路上のセンサ等から交通流に関する情報を取得することにより、渋滞している区間を特定し、利用者に提供するシステムが知られている。このようなシステムでは、なるべく最新の情報を提供することが好ましい。そこで、車載側システムが、走行状況に基づいて渋滞情報を収集し、センター側システムが、車両から渋滞情報を受信するようにした渋滞状況推定システムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載された渋滞状況推定システムでは、車載側システムで渋滞情報を収集することにより、サーバ側システムにおける処理負荷を低減し、情報提供に要する時間の短縮を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-133413号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
渋滞情報を提供するシステムにおいては、特許文献1に記載されたように情報提供に要する時間を短縮するだけでなく、詳細な情報を提供することも望まれていた。即ち、より狭い範囲において渋滞判定を行うことにより、渋滞の端部(末尾又は先頭)についての情報を提供することが好ましい。しかしながら、渋滞判定を行う範囲を単に狭くすると、交通流に関する情報の取得数(サンプル数)が少なくなってしまい、判定精度が低下してしまう。このように、詳細な渋滞位置を判定することと、判定精度を向上させることと、の両立は困難であった。
【0005】
したがって、本発明の課題は、詳細な渋滞位置を精度良く判定することができる渋滞判定装置を提供することが一例として挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した課題を解決し目的を達成するために、請求項1に記載の本発明の渋滞判定装置は、所定区間における渋滞発生予測度を取得する取得部と、前記渋滞発生予測度に基づいて、前記所定区間の少なくとも一部を含む渋滞判定区間の長さを設定する設定部と、前記渋滞判定区間の交通流情報に基づいて、当該渋滞判定区間における渋滞判定を行う判定部と、を備えることを特徴としている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の実施例に係る渋滞判定装置の概略を示すブロック図である。
図2】前記渋滞判定装置の判定対象の道路の一例を示す平面図である。
図3】前記渋滞判定装置が実行する渋滞判定処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態を説明する。本発明の実施形態に係る渋滞判定装置は、所定区間における渋滞発生予測度を取得する取得部と、渋滞発生予測度に基づいて、所定区間の少なくとも一部を含む渋滞判定区間の長さを設定する設定部と、渋滞判定区間の交通流情報に基づいて、当該渋滞判定区間における渋滞判定を行う判定部と、を備える。
【0009】
渋滞発生予測度が高い場合、この所定区間において移動体の移動速度が低い(又は移動体の台数が多い)可能性が高いことから、詳細な渋滞位置を判定するために渋滞判定区間を短く設定してもサンプル数を確保しやすく、精度が低下しにくい。一方、渋滞発生予測度が低い場合、この所定区間において移動体の移動速度が高い(又は移動体の台数が少ない)可能性が高いものの、詳細な渋滞位置を判定する必要がなく、渋滞判定区間を長く設定してサンプル数を確保することができる。従って、渋滞発生予測度が高い場合には渋滞判定区間を短く設定し、渋滞発生予測度が低い場合には渋滞判定区間を長く設定することにより、詳細な渋滞位置を精度良く判定することができる。
【0010】
設定部は、渋滞発生予測度が所定の閾値未満である場合に、渋滞判定区間の長さを第1長さに設定し、渋滞発生予測度が閾値以上である場合に、渋滞判定区間の長さを第1長さよりも短い第2長さに設定することが好ましい。
【0011】
このとき、設定部は、渋滞発生予測度が閾値未満である場合に、所定区間の長さを第1長さとし、渋滞発生予測度が閾値以上である場合に、所定区間を複数に分割して第2長さを設定してもよい。これにより、渋滞発生予測度が閾値以上である場合に、所定区間のうちどこで渋滞が発生しているかを判定することができる。尚、分割数は予め設定されていてもよいし、渋滞発生予測度に基づいて分割数を決定してもよい。
【0012】
さらに、設定部は、渋滞発生予測度が閾値以上である場合に、所定区間を等しい長さに分割して前記第2長さを設定してもよい。また、渋滞判定装置は、少なくとも所定区間を含む区間の渋滞傾向を取得する傾向取得部をさらに備え、設定部は、渋滞発生予測度が閾値以上である場合に、所定区間を渋滞傾向に応じた長さに分割して複数の第2長さを設定してもよい。これにより、所定区間のうち移動速度が低い(又は移動体の台数が多い)と予測される区間においてより短い第2長さを設定することができ、詳細な渋滞位置を精度良く判定することができる。
【0013】
取得部は、渋滞発生予測度として、所定区間における移動体の交通流に関する情報である交通流情報を取得することが好ましい。また、交通流情報は、交通流速度と交通流量とのうち少なくとも一方を含むものであればよい。尚、交通流速度とは、例えば所定区間における複数の移動体における移動速度の平均値や中央値、最頻値等であればよく、交通流量とは、例えばある瞬間に所定区間に存在する移動体の台数であればよい。
【0014】
また、取得部は、渋滞発生予測度として、所定区間の前方と後方とのうち少なくとも一方における交通状況についての情報を取得してもよい。
【0015】
これにより、所定区間以外の交通状況の情報を渋滞発生予測度とすることで、所定区間において実際に渋滞が発生するよりも先に渋滞発生予測度を取得することができ、実際の渋滞位置と、提供する渋滞位置の情報と、にタイムラグが生じにくい。例えば、所定区間の前方において渋滞が発生していたり、事故が発生していたり、落下物が存在していたりする場合には、その後、所定区間における渋滞発生が予測される。このような場合に所定区間において予め渋滞判定区間を短くすれば、実際に渋滞が発生してから渋滞判定区間を短くする方法と比較して、詳細な渋滞位置の情報を迅速に提供することができる。
【0016】
渋滞判定装置は、設定部が設定した渋滞判定区間の長さを記憶する記憶部をさらに備えることが好ましい。これにより、設定部が渋滞判定区間の長さを設定した際に、記憶部に記憶された情報を更新することができる。このように記憶部に記憶及び更新された情報を、次回以降の渋滞判定に利用することができる。例えば、渋滞が発生しやすく渋滞判定区
間を短く設定することが好ましい区間において、予め渋滞判定区間を短く設定しておくことができる。また、渋滞判定区間の長さと、これを設定した時間と、を関連付けて記憶させれば、特定の時間帯だけ渋滞が発生しやすくその時間帯だけは渋滞判定区間を短く設定することが好ましい区間において、その時間帯は予め渋滞判定区間を短く設定しておくことができる。
【0017】
また、本実施形態に係る渋滞判定方法は、所定区間における渋滞発生予測度を取得する取得工程と、渋滞発生予測度に基づいて、所定区間の少なくとも一部を含む渋滞判定区間の長さを設定する設定工程と、渋滞判定区間の交通流情報に基づいて、この渋滞判定区間における渋滞判定を行う判定工程と、を含む。本実施形態の渋滞判定方法によれば、上記の渋滞判定装置と同様に、所定区間の渋滞発生予測度に基づいて渋滞判定区間の長さを設定することにより、詳細な渋滞位置を精度良く判定することができる。
【0018】
また、上述した渋滞判定方法をコンピュータにより実行させる渋滞判定プログラムとしてもよい。これにより、コンピュータを用いて、詳細な渋滞位置を精度良く判定することができる。
【0019】
また、上述した渋滞判定プログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納してもよい。これにより、当該プログラムを機器に組み込む以外に単体でも流通させることができ、バージョンアップ等も容易に行える。
【実施例0020】
以下、本発明の実施例について具体的に説明する。本実施例の渋滞判定装置1は、図1に示すように、通信部2と、制御部3と、記憶部4と、を備えた情報収集処理装置である。渋滞判定装置1は、複数の車両(移動体)10から情報を収集し、この情報を処理し、処理後の情報を利用者(車両の搭乗者)に提供する。
【0021】
通信部2は、インターネットや公衆回線等のネットワークと通信するための回路やアンテナ等から構成され、車両10と通信して情報を送受信する。即ち、渋滞判定装置1は、通信部2によって車両10のプローブ情報を取得する。
【0022】
制御部3は、例えばRAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)などのメモリを備えたCPU(Central Processing Unit)で構成され、渋滞判定装置1の
全体制御を司る。
【0023】
記憶部4は、例えばハードディスクや不揮発性メモリなどで構成され、地図データが記憶されている。
【0024】
車両10は、プローブ情報を渋滞判定装置1に送信するプローブ情報生成装置20を備えたプローブカーであって、プローブ情報生成装置20は、通信部11と、制御部12と、現在位置推定部13と、走行状態情報取得部14と、を有する。
【0025】
通信部11は、インターネットや公衆回線等のネットワークと通信するための回路やアンテナ等から構成され、渋滞判定装置1と通信して情報を送受信する。即ち、プローブ情報生成装置20は、現在位置推定部13及び走行状態情報取得部14によって取得した情報(緯度経度情報及び移動速度情報)をプローブ情報として渋滞判定装置1に送信する。尚、プローブ情報生成装置20が送信するプローブ情報には、上記の情報以外に、ジャイロセンサや加速度センサによる測定結果や、ブレーキや方向指示器の操作に関する情報等、他の情報が含まれていてもよいし、緯度経度情報に代えてマップマッチング後の走行軌跡情報が含まれていてもよい。
【0026】
制御部12は、例えばRAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)などのメモリを備えたCPU(Central Processing Unit)で構成され、プローブ情報生
成装置20の全体制御を司る。
【0027】
現在位置推定部13は、車両10の現在位置(絶対位置)を推定するものであって、例えば複数のGPS(Global Positioning System)衛星から発信される電波を受信するG
PS受信部であればよい。現在位置推定部13は、車両10の現在位置として緯度経度情報を取得する。
【0028】
走行状態情報取得部14は、例えばCAN(Controller Area Network)であって、制
御部12が車両10の移動速度情報を取得することができるようになっている。
【0029】
渋滞判定装置1は、以下に説明するように渋滞判定区間を設定して渋滞判定を行う。
【0030】
[第1設定方法]
記憶部4に記憶された地図データでは、道路が所定の長さの区間に区切られている。尚、これらの区間の長さは、道路種別(高速道路又は一般道路)や制限速度に応じた長さであればよく、常に一定であってもよいし可変であってもよい。
【0031】
制御部3は、通信部2、11を介して、所定の時間間隔や所定の走行距離毎にプローブ情報生成装置20からプローブ情報を取得する。制御部3は、このプローブ情報に基づき、上記のように区切られた区間のそれぞれを走行する複数の車両10の移動速度の平均値を算出する。この平均値が交通流速度となり、交通流速度が低いほど、その区間において渋滞が発生している可能性が高いと予測することができる。即ち、制御部3は、渋滞発生予測度として、交通流速度を含む交通流情報(それぞれの区間における車両10の交通流に関する情報)を取得し、取得部として機能する。
【0032】
尚、本実施例では、複数の車両10の移動速度の平均値を交通流速度としたが、中央値や最頻値等を交通流速度としてもよい。また、制御部3は、渋滞発生予測度として、交通流量を含む交通流情報を取得してもよい。交通流量とは、例えばある瞬間にそれぞれの区間に存在する車両10の台数であればよい。
【0033】
制御部3は、交通流速度に基づき、それぞれの区間において渋滞判定区間の長さを設定する。即ち、制御部3は、交通流速度を速度閾値と比較し、速度閾値よりも高い(即ち、渋滞発生予測度が閾値未満である)場合には、渋滞判定区間の長さを第1長さに設定し、速度閾値以下(即ち、渋滞発生予測度が閾値以上である)場合には、渋滞判定区間の長さを第1長さよりも短い第2長さに設定し、設定部として機能する。制御部3は、このように設定した渋滞判定区間において、渋滞判定区間の交通流速度に基づいて渋滞判定を行い、判定部として機能する。尚、制御部3は、渋滞判定区間の交通流量に基づいて渋滞判定を行ってもよい。
【0034】
このように渋滞判定区間の長さの設定し、この渋滞判定区間において渋滞判定を行う方法の具体例について、図2、3を参照して説明する。図2に示す道路は制限速度が100km/hの高速道路であって、長さ100mの区間に分割されている。進行方向の後方側から前方側に向かって順に並んだ3つの区間Z1~Z3のうち、中央の区間Z2を所定区間とする。
【0035】
渋滞判定装置1の制御部3は、図3に示す渋滞判定処理を実行する。制御部3は、区間Z2における交通流速度V2を算出し(ステップS1)、交通流速度V2が第1の閾値V
01(例えば40km/h)以下となるか否かを判定する(ステップS2)。交通流速度V2が第1の閾値V01よりも高い場合(ステップS2でN)、制御部3は、区間Z2全体を渋滞判定区間とし、即ち渋滞判定区間の長さLを第1長さ(100m)とする(ステップS3)。一方、交通流速度V2が第1の閾値V01以下である場合(ステップS2でY)、制御部3は、区間Z2を2つに等分割してそれぞれを渋滞判定区間とし、即ち渋滞判定区間の長さLを第2長さ(50m)とする(ステップS4)。
【0036】
ステップS3、ステップS4に次いで、制御部3は、設定した全ての渋滞判定区間における交通流速度V2xを算出する(ステップS5)。即ち、ステップS3を経由した場合、1つの渋滞判定区間における交通流速度V21のみを算出し、ステップS4を経由した場合、2つの渋滞判定区間のそれぞれにおける交通流速度V21、V22を算出する。
【0037】
次に、制御部3は、それぞれの渋滞判定区間における交通流速度V2xが第2の閾値(例えば30km/h)V02以下となるか否かを判定する(ステップS6)。このとき、第2の閾値V02は、第1の閾値V01よりも低いことが好ましいが、同等であってもよいし、高くてもよい。複数の渋滞判定区間が設定されている場合、制御部3は、全ての渋滞判定区間の交通流速度V2xについて、第2の閾値V02以下となるか否かを判定する。尚、ステップS5、S6において、交通流速度に代えて交通流量を算出し、これを閾値と比較することで渋滞判定を行ってもよい。
【0038】
渋滞判定区間における交通流速度V2xが第2の閾値V02よりも高い場合(ステップS6でN)、制御部3は、この渋滞判定区間において渋滞が発生していないものと判断する(ステップS7)。一方、渋滞判定区間における交通流速度V2xが第2の閾値V02以下である場合(ステップS6でY)、制御部3は、この渋滞判定区間において渋滞が発生しているものと判断する(ステップS8)。
【0039】
ステップS7、ステップS8に次いで、制御部3は、通信部2によって渋滞判定結果を車両10に送信するとともに、記憶部4に記憶させ(ステップS9)、再びステップS1に戻る。即ち、記憶部には、区間Z2において設定された渋滞判定区間の長さLが記憶される。
【0040】
例えば、ステップS1において算出された区間Z2の交通流速度V2が35km/hであった場合、ステップS4において、区間Z2が2つに等分割されて渋滞判定区間が設定される。そして、ステップS5において、後方側の渋滞判定区間における交通流速度V21が45km/hと算出され、前方側の渋滞判定区間における交通流速度V22が25km/hと算出されたとする。この場合、後方側の渋滞判定区間においては渋滞が発生しておらず、前方側の渋滞判定区間においては渋滞が発生しているという渋滞判定結果が得られる。即ち、渋滞の末尾は、前方側の渋滞判定区間に位置するという情報が得られる。
【0041】
これに対し、常に区間Z2を渋滞判定区間として渋滞判定を行った場合(比較例)、区間Z2全体の交通流速度V2は第2の閾値(渋滞判定を行うための閾値)V02よりも高いため、区間Z2のうち前方側区間においては渋滞が発生しているにもかかわらず、区間Z2全体として渋滞が発生していないという渋滞判定結果となってしまう。即ち、渋滞の末尾は、区間Z2よりも前方に位置するという情報が得られてしまう。このように、本実施例の方法によれば、詳細な渋滞位置を判定することができる。
【0042】
また、ステップS4で区間Z2が2つに等分割されて渋滞判定区間が設定された場合、区間Z2において交通流速度が低い(車両10の移動速度が低い)ことから、渋滞判定区間を短く設定しても、当該渋滞判定区間内に滞留する車両数や、1台の車両が当該渋滞判定区間に滞留する時間が増加する傾向になるので、サンプル数を確保しやすく、精度が低下しにくい。一方、ステップS3で区間Z2全体を渋滞判定区間と設定した場合、区間Z2において交通流速度が高い(車両10の移動速度が高い)ものの、詳細な渋滞位置を判定する必要がなく、渋滞判定区間を長くしてサンプル数を確保することができる。
【0043】
上記の構成により、区間Z2における交通流速度に基づいて渋滞判定区間の長さを設定する、即ち、交通流速度が低い場合には渋滞判定区間を短く設定し、交通流速度が高い場合には渋滞判定区間を長く設定することにより、詳細な渋滞位置を精度良く判定することができる。
【0044】
また、交通流速度V2が第1の閾値V01以下である場合に、区間Z2を2つに等分割してそれぞれを渋滞判定区間とすることで、区間Z2のうちどこで渋滞が発生しているかを判定することができる。
【0045】
また、渋滞判定装置1が記憶部4を備えることで、制御部3が渋滞判定区間の長さを設定した際に、記憶部4に記憶された情報を更新することができる。このように記憶部4に記憶及び更新された情報を、次回以降の渋滞判定に利用することができる。例えば、渋滞が発生しやすく渋滞判定区間を短く設定することが好ましい区間において、予め渋滞判定区間を短く設定しておくことができる。また、渋滞判定区間の長さと、これを設定した時間と、を関連付けて記憶させれば、特定の時間帯だけ渋滞が発生しやすくその時間帯だけは渋滞判定区間を短く設定することが好ましい区間において、その時間帯は予め渋滞判定区間を短く設定しておくことができる。
【0046】
[第2設定方法]
上記の第1設定方法では、ステップS4において、交通流速度V2が第1の閾値V01以下である場合に、区間Z2を2つに等分割するものとしたが、第2設定方法では、少なくとも区間Z2を含む区間の渋滞傾向を取得し、区間Z2を渋滞傾向に応じた長さに分割する。
【0047】
制御部3は、区間Z1、Z3の交通流速度も取得することにより、区間Z1~Z3の交通流速度に基づいて渋滞傾向を決定し、傾向取得部として機能する。例えば、区間Z2の交通流速度よりも、その前方の区間Z3の交通流速度の方が低い場合、区間Z2内においても、前方側の方が後方側よりも交通流速度が低いという渋滞傾向であると判断でき、区間Z2の交通流速度よりも、その後方の区間Z1の交通流速度の方が低い場合、区間Z2内においても、後方側の方が前方側よりも交通流速度が低いという渋滞傾向であると判断できる。
【0048】
区間Z2において前方側の方が後方側よりも交通流速度が低い渋滞傾向の場合、制御部3は、前方側の渋滞判定区間の長さを後方側の渋滞判定区間の長さよりも短く設定する。区間Z2の長さが100mである場合、例えば前方側の渋滞判定区間の長さを30mとし、後方側の渋滞判定区間の長さを70mとすればよい。一方、区間Z2において後方側の方が前方側よりも交通流速度が低い渋滞傾向の場合、制御部3は、前方側の渋滞判定区間の長さを後方側の渋滞判定区間の長さよりも長く設定する。区間Z2の長さが100mである場合、例えば前方側の渋滞判定区間の長さを70mとし、後方側の渋滞判定区間の長さを30mとすればよい。
【0049】
尚、区間Z2の分割比は、一定であってもよいし、例えば区間同士の交通流速度の差又は比に応じて可変としてもよい。即ち、隣り合う区間同士の交通流速度の差又は比が大きいほど、分割比を大きくしてもよい。
【0050】
上記の構成により、第1設定方法と同様に、区間Z2における交通流速度に基づいて渋
滞判定区間の長さを設定することにより、詳細な渋滞位置を精度良く判定することができる。
【0051】
また、区間Z2を渋滞傾向に応じた長さに分割して渋滞判定区間の長さを設定することで、区間Z2のうち交通流速度が低い(又は交通流量が多い)と予測される区間においてより短い渋滞判定区間の長さを設定することができ、詳細な渋滞位置を精度良く判定することができる。
【0052】
[第3設定方法]
上記の第1設定方法では、制御部3が渋滞発生予測度として交通流情報を取得するものとしたが、第3設定方法では、渋滞発生予測度として、区間Z2の前方と後方とのうち少なくとも一方における交通状況についての情報を取得する。
【0053】
制御部3は、例えば、区間Z2の前方における渋滞発生の有無や、事故発生の有無、落下物の有無についての情報を取得する。区間Z2の前方において渋滞が発生していたり、事故が発生していたり、落下物が存在していたりする場合には、その後、区間Z2における渋滞発生が予測されることから、渋滞発生予測度が高くなる。
【0054】
区間Z2の前方において渋滞が発生するか、事故が発生しているか、落下物が存在しているかの3つの条件のうち少なくとも1つを満たす場合、制御部3は、第1設定方法又は第2設定方法と同様に、区間Z2を適宜に分割して渋滞判定区間の長さを設定する。一方、上記の3つの条件を全て満たさない場合、制御部3は、区間Z2全体を渋滞判定区間とする。
【0055】
上記の構成により、区間Z2における渋滞発生予測度に基づいて渋滞判定区間の長さを設定することにより、詳細な渋滞位置を精度良く判定することができる。
【0056】
また、区間Z2以外の交通状況の情報を渋滞発生予測度とすることで、区間Z2において実際に渋滞が発生するよりも先に渋滞発生予測度を取得することができ、実際の渋滞位置と、提供する渋滞位置の情報と、にタイムラグが生じにくい。区間Z2の前方において渋滞が発生していたり、事故が発生していたり、落下物が存在していたりする場合に、区間Z2において予め渋滞判定区間を短くすることにより、実際に渋滞が発生してから渋滞判定区間を短くする方法と比較して、詳細な渋滞位置の情報を迅速に提供することができる。
【0057】
[第4設定方法]
本実施例の第4設定方法は、複数車線を有する所定区間における渋滞発生予測度を取得する取得工程と、渋滞発生予測度に基づいて、所定区間における渋滞判定区間の車線数を設定する設定工程と、渋滞判定区間の交通流情報に基づいて、当該渋滞判定区間における渋滞判定を行う判定工程と、を含む。即ち、上記の第1~第3設定方法では、渋滞発生予測度が高い場合に、区間Z2を進行方向において分割するものであるのに対し、第4設定方法は、複数の車線を有する区間Z2において、車線毎に渋滞判定を行うことを目的としている。従って、以下に説明するように、渋滞発生予測度に応じて道路毎の(即ち複数車線をまとめて)渋滞判定を行うか又は車線毎の渋滞判定を行うかを設定する。
【0058】
制御部3は、第1~第3設定方法と同様に渋滞発生予測度を取得し、渋滞発生予測度が所定の閾値未満である場合に、区間Z2における渋滞判定区間の車線数を2に設定し、渋滞発生予測度が閾値以上である場合に、区間Z2における渋滞判定区間の車線数を1に設定する。
【0059】
尚、3以上の車線を有する区間を対象とする場合、車線数と等しい数の渋滞判定区間を設定してもよいし、車線数と異なる数の渋滞判定区間を設定してもよい。例えば、車線数が3の区間において渋滞判定区間を設定する場合、それぞれ1つの車線に対応した3つの渋滞判定区間を設定してもよいし、1つの車線に対応した渋滞判定区間と、2つの車線に対応した渋滞判定区間と、を設定してもよい。
【0060】
上記の構成により、区間Z2における渋滞発生予測度に基づいて渋滞判定区間の車線数を設定することにより、渋滞発生予測度が低い場合に区間Z2における渋滞判定区間の車線数を複数に設定すればサンプル数を増やすことができ、また渋滞発生予測度が高い場合に区間Z2における渋滞判定区間の車線数を少なく設定すれば詳細な渋滞判定が行えるので、詳細な渋滞位置を精度良く判定することができる。
【0061】
以上のように第1~第4設定方法について説明したが、これらは設定方法の一部であり、適宜に組み合わせた設定方法としてもよい。例えば、第1~第3設定方法のように区間Z2を進行方向において分割する方法と、第4設定方法のように複数の車線を有する区間Z2において車線毎に渋滞判定を行う方法と、を組み合わせてもよい。
【0062】
なお、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、本発明の目的が達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。
【0063】
例えば、前記実施例の第1設定方法及び第2設定方法では、交通流速度V2が第1の閾値V01以下である場合に、区間Z2を2つに分割して渋滞判定区間を設定するものとしたが、区間Z2の分割数は、3以上であってもよい。また、区間Z2を分割した後、分割後区間における渋滞発生予測度に基づいてさらに分割後区間を分割してもよい。また、渋滞発生予測度が閾値以上となる区間が連続する場合には、これらの区間全体を所定数に分割して渋滞判定区間を設定してもよい。例えば、区間Z1~Z3の全てにおいて渋滞発生予測度が閾値以上となる場合、これらの連続する300mの区間を10分割して渋滞判定区間を設定してもよい。
【0064】
また、渋滞発生予測度に基づいて渋滞判定区間の長さを設定すればよく、区間Z2を分割しなくてもよい。例えば、渋滞発生予測度が閾値未満の場合には区間Z2全体を渋滞判定区間とし、渋滞発生予測度が閾値以上の場合には渋滞判定区間の長さを短くして区間Z2の一部を渋滞判定区間としてもよい。また、渋滞判定区間全体が区間Z2に含まれていなくてもよく、渋滞判定区間は、区間Z2の少なくとも一部を含んでいればよい。即ち、区間Z1と区間Z2とに跨るように渋滞判定区間を設定してもよいし、区間Z2と区間Z3とに跨るように渋滞判定区間を設定してもよい。
【0065】
また、前記実施例では、渋滞判定装置1が記憶部4を備えるものとしたが、渋滞判定装置は記憶部を備えていなくてもよい。例えば、渋滞判定装置が判定結果を外部送信し、外部の記憶装置に判定結果を記憶させてもよいし、判定結果を記憶させず、履歴を利用しなくてもよい。
【0066】
また、渋滞発生予測度は、第1~第3設定方法において取得するものに限定されない。例えば、プローブ情報に、ブレーキや方向指示器の操作に関する情報、加速度に関する情報が含まれる場合、これらの情報を利用して渋滞発生予測度を取得してもよい。即ち、路上に障害物(低速車や事故車、落下物等)が存在している場合、他の走行車両は、これらを避けるために減速したり、車線変更したりすることがある。従って、車両が減速したという情報や、車線変更をした(方向指示器を操作した)という情報が得られた場合、その前後の区間において渋滞が発生していたり、その後渋滞が発生したりする可能性が高い。また、複数の車両が同様の挙動(減速や車線変更)を示した場合には、障害物が存在している可能性がより高いと判断することができる。
【0067】
その他、本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施例に関して特に図示され、且つ、説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施例に対し、形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。従って、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部、もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0068】
1 渋滞判定装置
3 制御部(取得部、設定部、判定部、傾向取得部)
4 記憶部
10 車両(移動体)
図1
図2
図3