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  • 特開-ポリアミド4繊維の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023110109
(43)【公開日】2023-08-09
(54)【発明の名称】ポリアミド4繊維の製造方法
(51)【国際特許分類】
   D01F 6/60 20060101AFI20230802BHJP
   D01D 5/06 20060101ALI20230802BHJP
   C08G 69/24 20060101ALI20230802BHJP
【FI】
D01F6/60 341B
D01F6/60 301M
D01D5/06 Z
C08G69/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020105823
(22)【出願日】2020-06-19
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)令和1年11月9日に、一般社団法人 繊維学会が発行した「繊維学会予稿集2019 74巻2号(秋季研究発表会)」にて発表 (2)令和1年11月10日に、2019年繊維学会秋季研究発表会のポスター発表にて発表
(71)【出願人】
【識別番号】504255685
【氏名又は名称】国立大学法人京都工芸繊維大学
(71)【出願人】
【識別番号】000004307
【氏名又は名称】日本曹達株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182305
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100102255
【弁理士】
【氏名又は名称】小澤 誠次
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【弁理士】
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100113860
【弁理士】
【氏名又は名称】松橋 泰典
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【弁理士】
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100198074
【弁理士】
【氏名又は名称】山村 昭裕
(74)【代理人】
【氏名又は名称】富田 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100221958
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 真希恵
(72)【発明者】
【氏名】山根 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 慧
(72)【発明者】
【氏名】高橋 栄治
【テーマコード(参考)】
4J001
4L035
4L045
【Fターム(参考)】
4J001DA01
4J001DB01
4J001EA04
4J001GD00
4J001JA10
4J001JB01
4J001JB03
4J001JB21
4J001JC04
4L035AA04
4L035AA07
4L035BB03
4L035BB07
4L035BB11
4L035BB18
4L035BB69
4L035BB76
4L035BB89
4L035BB91
4L035EE08
4L035EE09
4L035EE20
4L035HH01
4L035HH04
4L035LC04
4L045AA02
4L045BA03
4L045DA41
(57)【要約】      (修正有)
【課題】残留する成分の除去操作を行う必要がない湿式紡糸方法により、ポリアミド4繊維を製造する方法を提供する。また、高価な資材を用いる必要がない湿式紡糸法により、ポリアミド4繊維を製造する方法を提供する。
【解決手段】ポリアミド4を溶媒に溶解させ、紡糸用溶液を得る工程と、前記紡糸用溶液を用いて湿式紡糸し、未延伸繊維を得る工程と、前記未延伸繊維を延伸し、ポリアミド4繊維を得る工程と、を含み、前記ポリアミド4は、重量平均分子量(Mw)が400,000以上であり、かつ、分子量分布(Mw/Mn)が1.0~4.5であり、前記溶媒は、塩化メチレンを含まず、かつ、ギ酸を含む溶媒であり、前記紡糸用溶液は、溶解している前記ポリアミド4の濃度が10重量%以上であり、前記湿式紡糸に用いる凝固浴は、酢酸アルキル溶媒を含む有機溶媒である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミド4を溶媒に溶解させ、紡糸用溶液を得る工程と、
前記紡糸用溶液を用いて湿式紡糸し、未延伸繊維を得る工程と、
前記未延伸繊維を延伸し、ポリアミド4繊維を得る工程と、
を含み、
前記ポリアミド4は、重量平均分子量(Mw)が400,000以上であり、かつ、分子量分布(Mw/Mn)が1.0~4.5であり、
前記溶媒は、塩化メチレンを含まず、かつ、ギ酸を含む溶媒であり、
前記紡糸用溶液は、溶解している前記ポリアミド4の濃度が10重量%以上であり、
前記湿式紡糸に用いる凝固浴は、酢酸アルキル溶媒を含む有機溶媒であり、
前記延伸する工程における延伸温度が160℃以上240℃以下であり、かつ、延伸倍率が2倍以上である、ことを特徴とするポリアミド4繊維の製造方法。
【請求項2】
ポリアミド4繊維の引張強度が、3cN/dtex以上であることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
ポリアミド4繊維が、ポリアミド4マルチフィラメントである請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
ポリアミド4マルチフィラメントのフィラメント数が、5~200本である請求項3に記載の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湿式紡糸によるポリアミド4繊維の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2-ピロリドンを重合して得られるポリアミド4は、機械的特性に優れた材料として期待されている。また、生分解性を示すことから、マイクロプラスチック問題の解決に貢献し得る材料として注目されている。ポリアミド4を紡糸して得られる繊維は、ポリアミド4の物性を活かすことができる用途と考えられており、古くから研究開発がなされてきた。しかし、ポリアミド4は、融点と分解温度が近いため、溶融紡糸法による繊維化は困難とされている。そこで、より熱虐待の少ない繊維化方法として、湿式紡糸法が検討されてきた。
【0003】
特許文献1には、ギ酸および塩化メチレンにポリアミド4を溶解させて紡糸溶液を調製し、湿式紡糸する技術が記載されている。特許文献2には、ギ酸および塩化メチレンにポリアミド4を溶解させて紡糸溶液を調製し、低級アルキルエステルで構成される凝固浴を用いて、湿式紡糸する技術が記載されている。特許文献3には、ギ酸およびギ酸と水との混合物から選ばれる溶媒にポリアミド4を溶解させて紡糸溶液を調製し、少なくとも1種のギ酸塩の水溶液からなる凝固浴を用いて、湿式紡糸する技術が記載されている。特許文献4には、塩化亜鉛水溶液または塩化亜鉛を主成分とする他の無機塩との混合水溶液に溶解して紡糸溶液を調製し、湿式紡糸する技術が記載されている。特許文献5の比較例2には、重量平均分子量が564,335であり数平均分子量が270,234であるポリアミド4と、ギ酸からなる紡糸用溶液を用い、メタノールからなる凝固浴を用いて、湿式紡糸方法によりポリアミド4の未延伸繊維を得たことが記載されている。しかし、その未延伸繊維は延伸不可であったことが記載されている。特許文献6には、イオン液体にポリアミド4を溶解させて紡糸溶液を調製し、湿式若しくは乾湿式紡糸またはゲル紡糸により、ポリアミド4繊維を得る技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第4,094,945号
【特許文献2】特開昭53-24420号
【特許文献3】特開昭57-25413号
【特許文献4】特公昭36-5165号
【特許文献5】特開2019-137934号
【特許文献6】国際公開第2015/186364号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1や2に記載されている方法は、残留する塩化メチレンが問題となる場合があり、除去操作をおこなう必要がある。また、特許文献3や4に記載されている方法は、塩成分を除去する必要があり、操作が煩雑となる。特許文献5に記載されている方法は、未延伸繊維の延伸をおこなうことができないようである。特許文献6に記載されている方法は、高価なイオン液体を使用するため、工業化が困難であった。本発明の課題は、残留する成分の除去操作を行う必要がない湿式紡糸方法により、ポリアミド4繊維を製造する方法を提供することにある。また、本発明の課題は、高価な資材を用いる必要がない湿式紡糸法により、ポリアミド4繊維を製造する方法を提供することにもある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、本発明を完成するに至った。
本発明は、以下の態様を包含する。
(1)ポリアミド4を溶媒に溶解させ、紡糸用溶液を得る工程と、
前記紡糸用溶液を用いて湿式紡糸し、未延伸繊維を得る工程と、
前記未延伸繊維を延伸し、ポリアミド4繊維を得る工程と、
を含み、
前記ポリアミド4は、重量平均分子量(Mw)が400,000以上であり、かつ、分子量分布(Mw/Mn)が1.0~4.5であり、
前記溶媒は、塩化メチレンを含まず、かつ、ギ酸を含む溶媒であり、
前記紡糸用溶液は、溶解している前記ポリアミド4の濃度が10重量%以上であり、
前記湿式紡糸に用いる凝固浴は、酢酸アルキル溶媒を含む有機溶媒であり、
前記延伸する工程における延伸温度が160℃以上240℃以下であり、かつ、延伸倍率が2倍以上である、ことを特徴とするポリアミド4繊維の製造方法。
(2)ポリアミド4繊維の引張強度が、3cN/dtex以上であることを特徴とする(1)に記載の製造方法。
(3)ポリアミド4繊維が、ポリアミド4マルチフィラメントである(1)または(2)に記載の製造方法。
(4)ポリアミド4マルチフィラメントのフィラメント数が、5~200本である(3)に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明のポリアミド4繊維の製造方法によれば、湿式紡糸後に不純物成分を除去するために煩雑な操作をおこなう必要がない。また、本発明のポリアミド4繊維の製造方法によれば、高価な資材を用いる必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の湿式紡糸の一態様を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のポリアミド4繊維の製造方法は、ポリアミド4を溶媒に溶解させ、紡糸用溶液を得る工程(以下、工程Aと記載することがある)と、前記紡糸用溶液を用いて湿式紡糸し、未延伸繊維を得る工程(以下、工程Bと記載することがある)と、前記未延伸繊維を延伸し、ポリアミド4繊維を得る工程(以下、工程Cと記載することがある)と、を含む限り特に制限されない。本発明のポリアミド4繊維の製造方法によれば、高い引張強度を有するポリアミド4繊維を製造することができる。
【0010】
(工程A)
本発明の工程Aは、ポリアミド4を溶媒に溶解させ、紡糸用溶液を得る工程である。
【0011】
<ポリアミド4>
本発明の工程Aで用いるポリアミド4とは、2-ピロリドンを重合させて得られるポリマーである。ポリアミド4の重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、ポリアミド4の重量平均分子量(Mw)の下限は、400,000、450,000、500,000などを選択することができる。重量平均分子量(Mw)が400,000より小さいと、得られるポリアミド4繊維の引張強度が低下する傾向がある。また、ポリアミド4の重量平均分子量(Mw)の上限は、1,000,000、900,000、800,000、700,000などを選択することができる。重量平均分子量(Mw)が1,000,000より大きいと、ポリアミド4の紡糸性が低下する傾向がある。
【0012】
ポリアミド4の分子量分布(Mw/Mn)は、特に限定されないが、1.0~4.5、1.0~4.0、1.0~3.5、1.0~3.0の範囲などを選択することができる。分子量分布の値が小さいポリアミド4から得られたポリアミド4繊維は、引張強度が高い傾向がある。なお、重量平均分子量および数平均分子量は、トリフルオロ酢酸ナトリウムをヘキサフルオロイソプロパノールに10mMの濃度で溶解させた溶液を溶媒とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて測定したデータを標準ポリメタクリル酸メチルの分子量にて換算することにより算出することができる。
【0013】
ポリアミド4は、公知の重合方法により、2-ピロリドンを重合することによって製造することができる。例えば、特開2019-137934号公報に記載された方法を参考にして製造することができる。
【0014】
原料として用いる2-ピロリドンは、石油から生産されるもの、微生物由来の酵素を用いてγ-アミノ酪酸等のバイオ由来資源から生産されるもの、などがある。石油から生産された市販品を容易に入手することができる。
【0015】
<紡糸用溶液>
本発明の工程Aでポリアミド4を溶解させる溶媒は、ギ酸を含む溶媒である。ギ酸を含む溶媒としては、ギ酸のみからなる溶媒、ギ酸と他の溶媒からなる溶媒を挙げることができる。前記他の溶媒としては、特に限定されないが、水、ヘキサフルオロイソプロパノール、トリフルオロ酢酸などを挙げることができる。これらは、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。ギ酸と他の溶媒からなる溶媒中のギ酸の濃度は、40重量%以上、50重量%以上、60重量%以上、70重量%以上、80重量%以上、90重量%以上、95重量%以上などから選択することができる。本発明の工程Aでポリアミド4を溶解させる溶媒は、塩化メチレンを含まない溶媒であるのが好ましい。
【0016】
紡糸用溶液におけるポリアミド4濃度は、特に制限されないが、ポリアミド4濃度の下限は、10重量%、12重量%、14重量%、16重量%、18重量%、20重量%などから選択することができる。ポリアミド4濃度の上限は、60重量%、50重量%、40重量%などから選択することができる。
【0017】
紡糸用溶液は、ポリアミド4と溶媒を混合し、ポリアミド4を溶媒に溶解することにより調製することができる。ポリアミド4を溶媒に溶解させる温度は、特に制限されないが、通常は、0℃~40℃、0℃~30℃の範囲を選択することができる。
【0018】
(工程B)
本発明の工程Bは、工程Aで得られた紡糸用溶液を用いて湿式紡糸し、未延伸繊維を得る工程である。本発明において湿式紡糸とは、凝固浴中に、1つまたは複数の穴から紡糸用溶液を押し出して、繊維状(未延伸糸)に加工する工程を含む紡糸方法をいう。
【0019】
本発明の湿式紡糸の一態様を図1に示して説明する。
工程Aで得られた紡糸用溶液をタンクに入れる。紡糸用溶液(図1のspinning dope)タンクから窒素圧をかけてノズル(図1のnozzle)に送り、ノズル孔から、凝固浴(図1のcoagulation bath)中に押し出す。押し出されて生成した繊維を、巻き取りローラーで巻き取る。巻き取った繊維を減圧下にて乾燥することにより、未延伸繊維を得ることができる。
【0020】
工程Bの湿式紡糸に用いる凝固浴は、酢酸アルキル溶媒を含む有機溶媒であるのが好ましい。酢酸アルキル溶媒としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸n-ブチルなどを挙げることができる。これらは、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0021】
ノズル孔の大きさは、特に限定されないが、内径0.001mm~10mm、内径0.01mm~10mm、内径0.01mm~1mm、内径0.01mm~0.5mmなどの範囲で適宜設定することができる。
ノズル孔の数は、1つであってもよいし、複数であってもよい。ノズル孔の数が1つのとき、得られる繊維はモノフィラメントであり、ノズル孔の数が複数のとき、得られる繊維はマルチフィラメントとなる。本発明のポリアミド4繊維としては、マルチフィラメントであるのが好ましい。マルチフィラメントのフィラメント数は、特に限定されないが、5~200本、20~200本、50~200本、50~150本などを選択することができる。
【0022】
(工程C)
本発明の工程Cは、工程Bで得られた未延伸ポリアミド4繊維を延伸して、ポリアミド4繊維を得る工程である。未延伸ポリアミド4繊維を延伸することにより、高い引張強度を有するポリアミド4繊維を製造することができる。
【0023】
<延伸>
延伸の操作としては、特に制限されず、従来用いられている一軸延伸装置により、未延伸繊維を延伸することができる。
延伸温度の下限は、160℃、170℃、180℃、190℃などを選択することができる。延伸温度が160℃より低くなると、引張強度が低下する傾向がある。延伸温度の上限は、240℃、230℃、220℃、210℃などを選択することができる。延伸温度が、240℃より高くなるとポリアミド4が分解しやすくなる傾向がある。
延伸倍率は、特に制限されないが、2.0倍以上、2.5倍以上などから選択することができる。延伸倍率を2.0倍以上とすることにより引張強度が高いポリアミド4繊維を得ることができる。
【0024】
(他の工程D)
本発明のポリアミド4繊維の製造方法は、工程A、工程B、工程C以外に他の工程Dを含んでいてもよい。他の工程Dとしては、本発明の目的を損なわない限り特に制限されないが、例えば、紡糸用溶液の脱気工程や、未延伸繊維の乾燥工程などを挙げることができる。
【0025】
(ポリアミド4繊維)
本発明の製造方法で得られたポリアミド4繊維は、3cN/dtex以上の高い引張強度を示す。本発明の製造方法で得られたポリアミド4繊維は、衣料、ロープ、タイヤコード等の幅広い用途に適用可能である。
【実施例0026】
以下、実施例を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明は、実施例の範囲に限定されない。
【0027】
実施例1 ポリアミド4繊維aの製造
<紡糸用溶液の調製>
重量平均分子量(Mw)が505,000、分子量分布(Mw/Mn)が2.37であるポリアミド4を15g秤量し、ギ酸(99%ギ酸)60gと混合した。目視で溶け残りがなくなるまで室温で静置し、ポリアミド4濃度が20重量%である紡糸用溶液を得た。
【0028】
<湿式紡糸>
湿式紡糸装置の概略は前記図1に示される通りである。
上記で得られた紡糸用溶液を、タンクに移し替え室温で12時間静置することで、溶液内の気泡を除去した。タンク中の紡糸用溶液に0.2MPaの窒素圧をかけ、白金ノズル(内径0.09mm、孔数100個)から、酢酸エチル凝固浴(凝固浴長:2m)中に押出し、巻き取ローラーで巻き取った。巻き取った未延伸繊維を40℃減圧下にて2時間乾燥した。
【0029】
<延伸>
上記の湿式紡糸により得られた未延伸繊維の一端を固定し、200℃に調整したホットプレス上で10mm/sの速度で、もう一端を引っぱった。未延伸繊維を2.5倍の長さまで延伸し(延伸倍率:2.5倍)、ポリアミド繊維aを得た。
【0030】
実施例2 ポリアミド4繊維bの製造
重量平均分子量(Mw)が687,000であり、分子量分布(Mw/Mn)が2.98であるポリアミド4を用いたこと、湿式紡糸の際に窒素圧を0.5MPaとしたこと、延伸の際に、延伸温度を180℃とし、延伸倍率を4倍としたこと以外は実施例1と同様にして、ポリアミド4繊維bを得た。
【0031】
比較例1 ポリアミド4繊維cの製造
重量平均分子量(Mw)が615,000であり、分子量分布(Mw/Mn)が5.40であるポリアミド4を用いたこと、湿式紡糸の際に窒素圧を0.05MPaとしたこと、延伸の際に、延伸速度を1mm/秒とし、延伸倍率を3倍としたこと以外は実施例1と同様にして、ポリアミド4繊維cを得た。
【0032】
比較例2 ポリアミド4繊維dの製造
重量平均分子量(Mw)が653,000であり、分子量分布(Mw/Mn)が5.03であるポリアミド4を用いたこと、湿式紡糸の際に窒素圧を0.15MPaとしたこと、延伸の際に、延伸温度を180℃とし、延伸倍率を3倍としたこと以外は実施例1と同様にして、ポリアミド4繊維dを得た。
【0033】
比較例3 ポリアミド4繊維eの製造
重量平均分子量(Mw)が378,000であり、分子量分布(Mw/Mn)が2.04であるポリアミド4を用いたこと、湿式紡糸の際に窒素圧を0.15MPaとしたこと、延伸の際に、延伸温度を180℃とし、延伸倍率を2.5倍としたこと以外は実施例1と同様にして、ポリアミド4繊維eを得た。
【0034】
実施例および比較例で得られたポリアミド4繊維a~eについて以下の測定をおこなった。結果を表1に示す。
【0035】
<繊度>
繊度(dtex)は、試料の単位長さあたりの重さを電子天秤(SHIMADZU社製LIBRORAEG-455M)により測定し、算出した。
【0036】
<弾性率>
繊維の弾性率は、ORIENTEC社製の引張試験器(STA-1150)を用いて、試験片長20mm、引張速度30mm/分、の条件で室温下で引張試験を行い、応力-歪み曲線を求めた。そして、曲線初期の直線部分の傾きを計算し、弾性率(GPa)を求めた。
【0037】
<引張強度>
繊維の引張強度は、ORIENTEC社製の引張試験器(STA-1150)を用いて、試験片長20mm、引張速度30mm/分の条件で、室温下、引張試験を行い、この引張試験における破断強力(cN)を求めた。そして、上記で測定した繊度を用いて算出される強度(単位:cN/dtex)を、引張強度とした。
【0038】
【表1】
【0039】
表1から本発明のポリアミド4繊維の製造方法で製造したポリアミド4繊維aとbは、ポリアミド4繊維c~eと比べて、高い引張強度(3cN/dtex以上)を示すことがわかる。
図1