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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023110116
(43)【公開日】2023-08-09
(54)【発明の名称】核酸測定装置及び核酸測定方法
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20230802BHJP
   G01N 21/64 20060101ALI20230802BHJP
【FI】
C12M1/00 A
G01N21/64 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020110222
(22)【出願日】2020-06-26
(71)【出願人】
【識別番号】518180319
【氏名又は名称】野村メディカルデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002697
【氏名又は名称】めぶき弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100104709
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 誠剛
(71)【出願人】
【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002697
【氏名又は名称】めぶき弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】松島 文明
(72)【発明者】
【氏名】篠原 亨
(72)【発明者】
【氏名】中田 守
(72)【発明者】
【氏名】森 昭雄
(72)【発明者】
【氏名】松田 和之
【テーマコード(参考)】
2G043
4B029
【Fターム(参考)】
2G043AA01
2G043BA16
2G043CA03
2G043DA02
2G043DA08
2G043EA01
2G043FA03
2G043GA06
2G043GA07
2G043GA08
2G043GA14
2G043GB07
2G043GB21
2G043HA01
2G043JA02
2G043JA03
2G043KA02
2G043LA01
2G043MA01
4B029AA07
4B029AA23
4B029BB20
4B029FA15
4B029GA03
(57)【要約】
【課題】温度サイクル短縮、装置の小型化が可能であり、かつ、高い検出精度が可能な核酸測定装置を提供すること。
【解決手段】核酸試料及び該核酸試料を増幅させるための反応溶液52を格納する容器51の側方に配置され、核酸試料を増幅させて蛍光標識を有する増幅物を得るため容器51に対し所定の温度サイクルを与える温度サイクル付与部材33と、容器51の上方に配置され、蛍光標識の励起光の波長を含む光を発光する発光素子11と、容器51の下方に配置され、容器51の側からの蛍光を受光する受光素子12と、を備える核酸測定装置1であって、当該核酸測定装置は、更に、容器51及び発光素子11の間に配置され、発光素子11からの発光光を集光して容器の内部に照射する第1集光レンズ13を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
核酸及び核酸増幅用試薬を含む核酸検査液を格納する容器の側方に配置され、前記核酸を増幅させて蛍光標識を有する増幅物を得るため、前記容器に対し所定の温度サイクルを与える温度サイクル付与部材と、
前記容器の上方に配置され、前記蛍光標識の励起光の波長を含む光を発光する発光素子と、
前記容器の下方に配置され、前記容器の側から出る蛍光を受光する受光素子と、
を備え、前記受光素子で受光した蛍光により核酸増幅量を測定する核酸測定装置であって、
前記核酸測定装置は、更に、
前記容器及び前記発光素子の間に配置され、前記発光素子からの発光光を集光して前記容器の内部に照射する第1集光レンズ
を備えることを特徴とする核酸測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の核酸測定装置において、
前記第1集光レンズは、前記容器に前記核酸検査液が標準量格納された場合の標準液面より上方に焦点が位置するように構成されている
ことを特徴とする核酸測定装置。
【請求項3】
請求項2に記載の核酸測定装置において、
前記第1集光レンズの前記焦点で集光された光束が広がって前記標準液面を照射する面積が、前記標準液面の面積とほぼ等しくなるように構成されている
ことを特徴とする核酸測定装置。
【請求項4】
請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の核酸測定装置において、
前記容器は、縦長で、下部が漸次細くなるチューブ形状をなし、上部に容器開口部を有しており、
前記容器は、更に、前記容器開口部を塞ぐキャップを有し、
前記キャップは上面が略平面であり、下面側に環状凸部を有し、前記容器開口部を塞ぐ際に、前記環状凸部の外周面が前記容器開口部の内周面と密着するように構成されており、
前記核酸測定装置は、更に、ヒーターを備え、
前記ヒーターは、前記容器開口部の少なくとも一部にヒーター開口部を有するように前記キャップに積層されている
ことを特徴とする核酸測定装置。
【請求項5】
請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の核酸測定装置において、
前記核酸測定装置は、更に、
前記発光素子の発光光を平行光にして前記第1集光レンズの側に出射する第1平行光レンズと、
前記発光素子及び前記容器の間に配置され、前記蛍光標識を励起する波長の励起光を通過させる第1フィルターと、
前記容器の側から出射される蛍光を平行光に変換する第2平行光レンズと、
前記第2平行光レンズから出る平行光を集光して前記受光素子の側に出射する第2集光レンズと、
前記容器及び前記受光素子の間に配置され、所定波長の蛍光を通過させる第2フィルターと、
前記発光素子、前記第1平行光レンズ、前記第1集光レンズ及び前記第1フィルターが上下方向に配置された状態でこれらを保持する第1光学筒と、
前記第2平行光レンズ、前記第2集光レンズ、前記第2フィルター及び前記受光素子が上下方向に配置された状態でこれらを保持する第2光学筒と、
を備えることを特徴とする核酸測定装置。
【請求項6】
請求項5に記載の核酸測定装置において、
前記発光素子は、下側に凸部を有する釣り鐘形状のLED素子であり、
前記第1平行光レンズは、平凸レンズであり、当該平凸レンズの焦点が前記発光素子の上記凸部の先端部より上方に位置するように構成されている
ことを特徴とする核酸測定装置。
【請求項7】
請求項5又は請求項6に記載の核酸測定装置において、
前記第2集光レンズは、前記受光素子より上方に焦点が位置するように構成されている
ことを特徴とする核酸測定装置。
【請求項8】
核酸及び核酸増幅用試薬を含む核酸検査液を格納し、前記核酸を増幅させて蛍光標識を有する増幅物を得るための容器を準備する工程と、
前記容器に、前記核酸及び前記核酸増幅用試薬を格納する工程と、
前記容器の側方から前記容器に温度サイクルを与える工程と、
前記容器の上方から前記蛍光標識の励起光を照射する工程と、
前記容器の下方で前記容器の側からの蛍光を受光する工程と、
前記受光した蛍光により核酸増幅量を測定する工程と、
を含む核酸測定方法であって、
前記励起光を照射する工程では、前記励起光を集光して前記容器の上方から前記容器の内部に照射することを特徴とする核酸測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、核酸測定装置及び核酸測定方法に関する。特に、検体から抽出したDNA等の核酸及び核酸増幅用試薬を含む核酸検査液を容器に格納してPCR(Polymerase Chain Reaction、ポリメラーゼ連鎖反応)増幅(増殖)し、その量を蛍光量としてリアルタイムに検出するリアルタイムPCRで好適な核酸測定装置及び核酸測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、PCR増幅法によるDNA(DeoxyriboNucleic Acid、デオキシリボ核酸)の核酸増幅が知られている。その方法として、PCR増幅した核酸量をリアルタイムに測定しそれを解析して検体から抽出した核酸を定量するリアルタイムPCRがある。リアルタイムPCRはリアルタイムで定量できる点で優れている。このリアルタイムPCRについては更なる改良を目指して様々な提案がされている。
リアルタイムPCRについて開示した文献としては例えば特許文献1がある。特許文献1では、反応溶液(試料)を格納する容器(同文献の図3、試料プレート305)の下方に、温度サイクルを与えるためのペルチェ素子(315)を配置する構成が開示されている。また、図5Cには、液体金属、ペルチェ素子等を用いる構成が開示されている。また、図6には、二色性ミラー(611)を使用する構成が開示されている。このように特許文献1にはリアルタイムPCRについて種々の構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2009-537152号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
リアルタイムPCRにおいて温度サイクル短縮ができると、一般的に長時間に及んでいる核酸測定の時間を短縮できる。また、核酸測定装置(リアルタイムPCR装置)が小型化できると、利便性が向上する。
ここで、特許文献1のように、試料プレート(同文献の図3、305)の下に、ペルチェ素子(315)を配置する構成とすると、試料プレート(305)上に多数の試料を置くことにより、一度に多数の試料に対し温度サイクルを与えることができる一方、試料プレート及びその上の試料の加熱冷却がしにくく温度サイクルを短縮することが難しい。
また、液体金属を使って試料に対し温度サイクルを与える(上記文献の図5C、要約欄等参照)と、核酸測定装置の小型化が難しい。
また、二色性ミラー(上記文献の図6、611)を使用すると、試料に励起光の入る方向(入射方向)と、励起された蛍光の出る方向(出射方向)とを逆方向にすることで、発光部と受光部とを同じ側にすることができるが、光学系が複雑になり核酸測定装置の小型化が難しい。
そこで、本発明は、温度サイクル短縮や装置の小型化が可能であり、かつ、高い検出精度を有する核酸測定装置及び核酸測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[1]本発明の核酸測定装置は、核酸及び核酸増幅用試薬を含む核酸検査液を格納する容器の側方に配置され、前記核酸を増幅させて蛍光標識を有する増幅物を得るため、前記容器に対し所定の温度サイクルを与える温度サイクル付与部材と、前記容器の上方に配置され、前記蛍光標識の励起光の波長を含む光を発光する発光素子と、前記容器の下方に配置され、前記容器の側から出る蛍光を受光する受光素子と、を備え、前記受光素子で受光した蛍光により核酸増幅量を測定する核酸測定装置であって、前記核酸測定装置は、更に、前記容器及び前記発光素子の間に配置され、前記発光素子からの発光光を集光して前記容器の内部に照射する第1集光レンズを備えることを特徴とする。
【0006】
ここで、「核酸」とは、例えば、DNA(標的DNA、DNA鋳型、検出対象DNA、検出対象DNA領域)や、RNA(RiboNucleic Acid、リボ核酸)をいう。RNAの場合は、逆転写反応でRNAを変換したDNAを用いる。
「核酸増幅用試薬」とは、検出対象DNAに対するプライマー及び蛍光物質、酵素(耐熱性DNAポリメラーゼ)、dNTP等を含み、核酸増幅用に用いられる試薬をいう。
「蛍光標識」とは、増幅された核酸(標的DNAの増幅物)に結合等させることにより、当該増幅物が有する標識で、励起光により蛍光を発する標識、所謂蛍光物質をいう。
蛍光物質としては、例えば、アニーリングの段階(ステップ)で、蛍光色素とクエンチャー(消光物質)を結合したDNAプローブを鋳型DNAに結合させ、伸長(反応)の段階でこのDNAプローブが切断し、クエンチャーによって抑制されていた蛍光色素からの蛍光を検出する方法(プローブ法)で用いる蛍光物質(蛍光色素及び消光物質)がある。その他、二本鎖DNAの鎖間に入り込み蛍光を発する色素を用いる方法(インターカレーター法)等で用いる色素(蛍光色素)がある。
核酸検査液(又は核酸増幅用試薬)には、試薬を安定化させる溶媒であるバッファーや、Mg等が必要に応じて適宜含有される。
「核酸増幅量」とは、増幅された核酸(標的DNA)の量(DNA量)をいう。
「核酸測定装置」は、主として、リアルタイムPCR装置を意味する。
【0007】
[2]本発明の核酸測定装置においては、前記第1集光レンズは、前記容器に前記核酸検査液が標準量格納された場合の標準液面より上方に焦点が位置するように構成されていることが好ましい。
【0008】
[3]本発明の核酸測定装置においては、前記第1集光レンズの前記焦点で集光された光束が広がって前記標準液面を照射する面積が、前記標準液面の面積とほぼ等しくなるように構成されていることが好ましい。
【0009】
[4]本発明の核酸測定装置においては、前記容器は、縦長で、下部が漸次細くなるチューブ形状をなし、上部に容器開口部を有しており、前記容器は、更に、前記容器開口部を塞ぐキャップを有し、前記キャップは上面が略平面であり、下面側に環状凸部を有し、前記容器開口部を塞ぐ際に、前記環状凸部の外周面が前記容器開口部の内周面と密着するように構成されており、前記核酸測定装置は、更に、ヒーターを備え、前記ヒーターは、前記容器開口部の少なくとも一部にヒーター開口部を有するように前記キャップに積層されていることが好ましい。
【0010】
[5]本発明の核酸測定装置においては、前記核酸測定装置は、更に、前記発光素子の発光光を平行光にして前記第1集光レンズの側に出射する第1平行光レンズと、前記発光素子及び前記容器の間に配置され、前記蛍光標識を励起する波長の励起光を通過させる第1フィルターと、前記容器の側から出射される蛍光を平行光に変換する第2平行光レンズと、前記第2平行光レンズから出る(出射させる)平行光を集光して前記受光素子の側に出射する第2集光レンズと、前記容器及び前記受光素子の間に配置され、所定波長の蛍光を通過させる第2フィルターと、前記発光素子、前記第1平行光レンズ、前記第1集光レンズ及び前記第1フィルターが上下方向に配置された状態でこれらを保持する第1光学筒と、前記第2平行光レンズ、前記第2集光レンズ、前記第2フィルター及び前記受光素子が上下方向に配置された状態でこれらを保持する第2光学筒と、を備えることが好ましい。
なお、本明細書においては、「A及びBの間」を「A・B間」と記載する場合がある。
【0011】
[6]本発明の核酸測定装置においては、前記発光素子は、下側に凸部を有する釣り鐘形状のLED素子であり、前記第1平行光レンズは、平凸レンズであり、当該平凸レンズの焦点が前記発光素子の上記凸部の先端部より上方に位置するように構成されていることが好ましい。
【0012】
[7]本発明の核酸測定装置においては、前記第2集光レンズは、前記受光素子より上方に焦点が位置するように構成されていることが好ましい。
【0013】
[8]本発明の核酸測定方法は、核酸及び核酸増幅用試薬を含む核酸検査液を格納し、前記核酸を増幅させて蛍光標識を有する増幅物を得るための容器を準備する工程と、前記容器に、前記核酸及び前記核酸増幅用試薬を格納する工程と、前記容器の側方から前記容器に温度サイクルを与える工程と、前記容器の上方から前記蛍光標識の励起光を照射する工程と、前記容器の下方で前記容器の側からの蛍光を受光する工程と、前記受光した蛍光により核酸増幅量を測定する工程と、を含む核酸測定方法であって、前記励起光を照射する工程では、前記励起光を集光して前記容器の上方から前記容器の内部に照射することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、核酸検査液を格納する容器の側方に温度サイクル付与部材が配置されるため、加熱冷却しやすく、温度サイクルの短縮が可能となる。また、容器の上方に発光素子、下方に受光素子が配置されるため、光学系が複雑化せず、核酸測定装置の小型化が可能となる。また、容器及び発光素子の間に第1集光レンズが配置され、発光素子からの発光光が集光されて容器内部に照射されるため、蛍光標識が励起しやすく、高い検出精度を有する核酸測定装置(乃至核酸測定方法)を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態1に係る核酸測定装置1の概要説明図である。
図2】実施形態1に係る核酸測定装置1の分解説明図である。
図3】実施形態1に係る核酸測定装置1における温度サイクル説明図である。
図4】実施形態1に係る核酸測定装置1における蛍光量検出の説明図である。
図5】実施形態1に係る核酸測定装置1における核酸検査液52への励起光の照射についての説明図である。
図6】実施形態1に係る核酸測定装置1における発光素子11近傍の説明図である。
図7】実施形態1に係る核酸測定装置1における受光素子12近傍の説明図である。
図8】実施形態2に係る核酸測定装置における温度サイクル説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の核酸測定装置及び核酸測定方法について、図1図8を参照して説明する。なお、以下に説明する各図は、実際の形状、構成、特性等を簡略化して表した模式図である。
【0017】
[実施形態1]
図1図7を用いて、実施形態1に係る核酸測定装置1について説明する。
図1は実施形態1に係る核酸測定装置1の概要説明図であり、図2は当該核酸測定装置1の分解説明図である。核酸測定装置1は、8連とした容器51(ウェル)を備える(図2参照)。8連とした容器51は図1紙面の垂直方向(図2では左右方向)に連なっている。図1は、核酸測定装置1の断面を8連とした容器51のうちの1つの容器51の断面(図2の容器51の中心軸A-A‘方向と、8連とした容器51のつながっている方向に垂直なB-B‘方向と、で決まる断面)に沿って図示している(但し、図1は容器51をキャップ54で密封した状態を示す図であるのに対し、図2は、核酸測定装置1概要の理解を容易にするため、キャップ54を開放した状態を示す図である)。
【0018】
核酸測定装置1は、図1左側に図示するハード構成部2(ハードウエア構成部)と、右側に図示する制御部3とを有する。
ハード構成部2は、容器51の側方に配置された温度サイクル付与部材33を含む温度サイクル付与部と、容器51の上方に配置された発光素子11を含む発光側光学系と、容器51の下方に配置された受光素子12を含む受光側光学系とを備える。
制御部3は、発光素子11及び受光素子12の受発光を制御する受発光素子制御手段41と、温度サイクル付与部材33の温度を制御する温度サイクル制御手段42と、蛍光を受光した受光素子12の出力を変換するA/D変換手段45(Analog-Digital変換手段)と、その出力を演算する演算手段44と、演算結果を記憶する記憶手段43と、核酸測定装置1全体を制御する全体制御手段46と、を備える。
【0019】
核酸測定の概要を説明すると、制御部3による制御により、温度サイクル付与部材33が加熱冷却されることにより、容器51(標的DNAを含む核酸検査液52)が加熱冷却される(温度サイクルを与えられる)。すると、容器51(核酸検査液52)内の核酸(標的DNA)が増幅される。制御部3による制御により、発光素子11が駆動されて発光し、フィルタリングされた所定波長の光(蛍光励起光)が核酸検査液52に照射されると、増幅された標的DNAの量(核酸増幅量、DNA量)に対応する光量の蛍光が励起される。制御部3により受光素子12が駆動され、励起された蛍光を受光する。核酸検査液52中に標的DNAがあれば所定の温度サイクルで増幅されるため、増幅量(核酸増幅量、DNA量)に対応する光量の蛍光が受光される。標的DNAがない場合には蛍光は受光されない。このようにして少量の標的DNAを増幅し測定(検出)することが可能となる。
【0020】
[温度サイクル付与部]
まず、温度サイクル付与部について説明する。
容器51(の置かれる場所)の側方には、導熱部材31及びペルチェ素子32で構成される温度サイクル付与部材33と、その外側の放熱フィン34と、その外側の冷却ファン35(放熱ファン)と、が配置されている。導熱部材31及び放熱フィン34は、例えばアルミニウム、銅等伝熱性に優れた金属又は当該金属を主成分とする材料からなる。放熱フィン34は、凹凸形状を有し、それにより伝熱面積を広くして熱交換効率を上げている。
【0021】
上記温度サイクル付与部材33であるが、ペルチェ素子32の一方の面、例えば放熱面(又は冷却面)を導熱部材31に接して配置し、他方の面、例えば冷却面(又は放熱面)を放熱フィン34に向けて配置する。温度サイクル制御手段42によりペルチェ素子32が駆動され加熱(放熱)又は冷却されると、隣接する導熱部材31が加熱(放熱)又は冷却される。すると、容器51(及びその中の核酸検査液52)に温度サイクル(図3参照)が与えられ、核酸検査液52中の核酸が増幅する。ここで、ペルチェ素子32は駆動電流の流れる方向を逆転させることにより放熱面と冷却面(吸熱面)とを逆転させることができる。
なお、温度サイクル制御手段42は、温度センサー57を導熱部材31に設置して導熱部材31の温度を検出し、その検出結果に従って、容器51(及びその中の核酸検査液52)に所定の温度サイクルを与えるように、ペルチェ素子32を駆動してもよい。
【0022】
[発光側光学系]
次に発光側光学系について説明する。
容器51の上方には、発光素子11を含む発光側光学系が形成され、容器51内部(核酸検査液52)を励起光(蛍光励起光)で照射することにより、温度サイクルにより増幅された核酸増幅物(当該核酸増幅物は蛍光標識を有する)の増幅量(核酸増幅量、DNA量)に対応する蛍光を励起させる。
【0023】
図1図2に沿って説明すると、容器51の上方には、蛍光標識の励起光の波長を含む光を発光する発光素子11(LED素子)と、発光素子11側からの発光光を平行光に変換して第1集光レンズ13側に出射する第1平行光レンズ15と、第1平行光レンズ15側からの平行光を集光して容器51内部に向けて照射(出射)する第1集光レンズ13と、発光素子11・容器51(核酸検査液52)間に配置され、蛍光標識を励起する波長の励起光を通過させる第1フィルター16と、が配置されている。第1光学筒21は、発光素子11、第1平行光レンズ15、第1集光レンズ13及び第1フィルター16が、筒内部で上下方向に配置された状態でこれらを保持する。
この実施形態では、第1光学筒21の内周面に、光学筒軸を中心として円周方向に沿った形成した凹部21Aを設け、そこに、発光素子11(その回路基板61)、第1平行光レンズ15、第1フィルター16、及び第1集光レンズ13の外周部をはめ込むことにより、これら(これらは上から見たときに円形形状をしている)が筒内部で上下方向に配置された状態でこれらを保持している。
【0024】
発光素子11は、蛍光標識の励起光の波長(蛍光を励起させる波長、490nm以下の波長)を含む光を発光するLED素子である。発光素子11は、受発光素子制御手段41により、各温度サイクルの終了時(後述する図3の伸長ステップ終了時)毎、あるいは常時駆動され、発光する。
第1平行光レンズ15及び第1集光レンズ13は、いずれも、一方の面が平面(略平面も含む)で他方の面が凸面の平凸レンズである。第1平行光レンズ15においては平面側が発光素子11方向に、第1集光レンズ13においては平面側が容器51方向に、向いている。
第1フィルター16は、励起光の波長の光を通過させる第1フィルター16(490nm以下の波長の光を通過させるローパスフィルター)である。図1図2では、第1フィルター16は、第1平行光レンズ15・第1集光レンズ13間に配置されているが、発光素子11・容器51(核酸検査液52)間であれば、例えば、発光素子11・第1平行光レンズ15間、第1集光レンズ13・容器51(核酸検査液52)間等、どこに配置されていてもよい。
【0025】
[受光側光学系]
次に受光側光学系について説明する。
容器51の下方には、受光素子12等を含む受光側光学系が形成され、容器51内部(核酸検査液52)で励起された蛍光を受光する。蛍光量を検出することにより、核酸を検出(特定)する。
【0026】
図1図2に沿って説明すると、容器51の下方には、容器51(核酸検査液52)の側(蛍光放出口31B)から散乱して出る(出射される)蛍光を平行光に変換して第2集光レンズ14側に出射する第2平行光レンズ17と、第2平行光レンズ17から出た(出射された)平行光を集光して受光素子12側に出射する第2集光レンズ14と、第2集光レンズ14で集光された光を受光する受光素子12と、容器51・受光素子12間に配置され、容器51(核酸検査液52)の側から下方に出た(出射された)光のうち特定波長の光を通過させる第2フィルター18と、が配置されている。第2光学筒22は、第2平行光レンズ17、第2集光レンズ14、第2フィルター18及び受光素子12が、筒内部で上下方向に配置された状態でこれらを保持する。
この実施形態では、第2光学筒22の内周面に、光学筒軸を中心として円周方向に沿った形成した凹部22Aを設け、そこに、第2平行光レンズ17、第2フィルター18、第2集光レンズ14、及び受光素子12(受光素子12の回路基板62)の外周部をはめ込むことにより、これら(これらは上から見たときに円形形状をしている)が筒内部で上下方向に配置された状態でこれらを保持している。
【0027】
第2フィルター18は、蛍光の波長の光を通過させるバンドパスフィルターであり、515nm~535nmの波長の光を通過させ、それ以外の波長の光の通過を遮断する。図1図2では、第2フィルター18は、第2平行光レンズ17・第2集光レンズ14間に配置されているが、発光素子11・容器51(核酸検査液52)・受光素子12間であれば、例えば、容器51(核酸検査液52)・第2平行光レンズ17間、第2集光レンズ14・受光素子12間等、どこに配置されていてもよい。
【0028】
第2平行光レンズ17及び第2集光レンズ14は、いずれも、一方の面が平面(略平面も含む)で他方の面が凸面の平凸レンズである。第2平行光レンズ17においては平面側が容器51方向に、第2集光レンズ14においては平面側が受光素子12方向に、向いている。
【0029】
受光素子12は、励起された蛍光(中心波長約525nm)を受光(検出)するフォトダイオード素子である。受光素子12は、受発光素子制御手段41により、各温度サイクルの終了時毎、あるいは常時駆動され蛍光を受光し、受光量に対応するアナログ電気信号を出す。このアナログ電気信号は、A/D変換手段45に入力され、デジタル電気信号に変換される(図1参照)。このデジタル信号は、CPU(Central Processing Unit)等の演算手段44によって演算され蛍光量に換算される。換算された蛍光量データは半導体メモリー、ハードディスク等の記憶手段43に格納される。
なお、全体制御手段46は、図1の各手段(41、42、・・)を含め核酸測定装置1全体の制御をする。
【0030】
なお、第1光学筒21及び第2光学筒22は、光が反射するように内面が鏡面加工されている。鏡面加工した第1光学筒21及び第2光学筒22は、例えば、内面に対応相当する面を鏡面加工したアルミニウム、銀、ステンレス等の金属板、内面に対応相当する面にアルミニウム、銀等の金属膜をメッキ、スパッタリング等で形成して鏡面加工したプラスチック成型品等で構成することができる。
【0031】
[容器51]
核酸検査液52を格納する容器51及びその周辺部を説明する(図1図2図5参照)。
容器51(ウェル)及びそのキャップ54は、ポリプロピレン製で略透明である。本明細書において「透明」とは光をよく通過させる(通す)ことをいう。「略透明」とは、光を完全に通過させる場合の他、完全な通過ではないが大部分の光を通過させる場合も含む趣旨である。無色の他、光の通過を妨げない程度の色(白も含む)がついている場合も含む。実際の工業製品では、透明とされていても光を完全に通過させることは困難で大部分の光を通過させるに留まる場合が多いが略透明にはそのようなものも含む。
容器51は、縦長で、下部が漸次細くなるチューブ形状をなしている。詳しく言うと、容器51の上側は円筒形で、下側はすり鉢形を有する。容器51は、上部に容器開口部を有し、ここから核酸検査液52を出し入れする。測定時(温度サイクルによるDNA増幅時を含む)には、容器開口部はキャップ54で塞がれる。
【0032】
本核酸測定装置1は、容器51が導熱部材31の容器格納穴31A(後述)に格納されたとき、キャップ54の上にキャップ54を加熱するヒーター56が積層される構成となっている。ヒーター56は、例えば、抵抗を印刷した絶縁フィルムを銅板、ステンレス板等に張り付けて構成されている。ヒーター56自体は光の通過を遮断するが、容器開口部に対応する箇所にはヒーター開口部が設けられ、光が通過できるようにされている。ヒーター56は、例えば常時100~105℃でキャップ54を加熱するように、制御部3により制御される。容器51内で蒸発した核酸検査液52がキャップ54等で結露するのを防ぐためである。キャップ54の上面は略平面である。本明細書において、「略平面」とは、完全な平面の他、多少の凹凸、湾曲等がある平面を含む趣旨である。下面側には環状凸部54Aを有し、容器開口部を塞ぐ際には、環状凸部54Aの外周面を容器開口部の内周面と密着させる。なお、キャップ54と容器51内面との密着性を上げるため、キャップ54の上面の厚さ(上下方向)に比べ、環状凸部54Aの環状円の中心から放射状方向の厚さ(左右方向)は、厚く形成されている。容器51への入射光は、全部又は大部分がキャップ54上面を通過するようにすることが好ましい。また、全部又は大部分が環状凸部54Aに当たらないようにすることが好ましい。
【0033】
各容器51の最大容量は、200μl(マイクロリットル)である。しかし、核酸検査液52は最大容量まで格納されるのではなく、標準的な格納量(標準量、推奨格納量)は20μl(最大容量の10%)である。核酸検査液52の加熱冷却の迅速化等のためである。
【0034】
上記した導熱部材31には、容器形状(すり鉢形状)に対応した形状(凹形状)の容器格納穴31Aが形成されており、容器51が容器格納穴31Aに入るとすり鉢形状部に嵌って容器51は自立する。容器格納穴31Aの大きさや形状から、自ずから、一定の形状の容器51(標準容器、又は標準容器に準じた形状の容器)が使用されることとなる。
容器格納穴31Aの上部は、容器51の形状にほぼ沿った形状をしているが、その穴径は容器51の外径より大きく、容器格納穴31Aの内面・容器51間には隙間36(空間)が形成されている(本明細書では「径」は直径を意味する)。隙間36は空間でもよいが、そこに発砲スチロールのような断熱部材を配設してもよい。
容器格納穴31Aの下部は、上記したように、すり鉢形状になっているが、底には蛍光を下方に出射する蛍光放出口31Bが設けられている。蛍光放出口31Bの径73(内径)は、例えば、容器51の上部円筒部の内径71の0.5倍程度とする。0.4~0.6倍程度でもよい。容器51は蛍光放出口31Bを除く容器格納穴31Aの下部(すり鉢形状部)と接する(すり鉢形状部に連続する円筒部の一部を含んで接してもよい)。容器格納穴31Aの容器51側の面は鏡面加工されており、容器51に入射した励起光や核酸検査液52の蛍光が当たると反射するようになっている。
【0035】
第1光学筒21の内径72は、容器上部の内径71とほぼ同じである(図1参照)。また、第2光学筒22の内径74は、容器上部の内径71の内径71とほぼ同じであるが、少し小さくしてもよい(図1参照)。
このようにすると、容器51が8連のように所定ピッチで連なっている場合、第1光学筒21及び第2光学筒22を容器51のピッチに従って配置しても、第1光学筒21相互間や、第2光学筒22相互間で、それらが干渉する(重なりあう)ことがない状態で、第1光学筒21の径(外径及び内径)及び第2光学筒22の径(外径及び内径)を大きくとることができる。また、第1光学筒21の内径72が大きいと、発光光量の大きい、外径の大きな発光素子11を第1光学筒21に入れて使用することができる。また、第2光学筒22の内径74が大きいと、容器51の側(蛍光放出口31B側)からの蛍光を広く集めることが容易である。
【0036】
[温度サイクル]
図3は、実施形態1に係る核酸測定装置1の温度サイクル説明図である。核酸測定装置1では、制御部3で、温度サイクル付与部材33を温度制御して、容器51(核酸検査液52)に温度サイクルを与えることによりDNAを大量に増幅させる。温度サイクル中の1周期Tは、図3に示すように、熱変性、アニーリング及び伸長の各ステップ(工程、ステージ)を有する。
【0037】
熱変性ステップでは、容器51(核酸検査液52)を95℃に加熱することにより2本鎖DNAを分離して2つの1本鎖DNAとする。
アニーリングステップでは、容器51(核酸検査液52)を55℃に冷却して、プライマーを標的DNAの隣接領域に結合させるとともに、蛍光色素とクエンチャー(消光物質)を結合したDNAプローブを鋳型DNAに結合させる(プローブ法)。
伸長ステップでは、容器51(核酸検査液52)を72℃に再加熱して、DNAポリメラーゼ(鋳型となる核酸に対して相補的な DNA 鎖を合成する酵素)により、プライマーを起点にDNAを伸長させ、DNAの相補鎖(相補的配列)を合成する。伸長ステップでDNAプローブが切断され、クエンチャーによって抑制されていた蛍光色素からの蛍光が出る。なお、受光素子12はこの蛍光を受光し、A/D変換手段45は受光素子12の出力をA/D変換する。
伸長ステップの後、再び熱変性ステップに移行する。
このような温度サイクルを25回~40回繰り返すと、標的DNAは指数関数的に増幅する。
【0038】
ここで、熱変性(ステップ)からアニーリング(ステップ)への移行時間TA、アニーリング(ステップ)から伸長(ステップ)への移行時間TB、及び伸長(ステップ)から熱変性(ステップ)への移行時間TCは短縮してもよく、これらの移行時間を短縮すると、蛍光量が飽和するまで25回~40回繰り返す温度サイクルのトータル時間を短縮することが可能となる。
実施形態1の核酸測定装置1では、容器51の側方に、導熱部材31とペルチェ素子32(温度サイクル付与部材33)が配置されているため、これらを容器51の下部にのみ配置した場合に比べ、容器51の加熱冷却の移行時間TA、TB、及びTCを短縮できる。そのため、温度サイクルのトータル時間の短縮が可能となる。
【0039】
[蛍光測定]
図4は実施形態1に係る核酸測定装置1における蛍光量検出(蛍光量検出曲線)の説明図である。横軸が温度サイクルの回数、縦軸が検出された蛍光量(蛍光光量)である。蛍光量検出曲線は、各温度サイクル毎に検出した蛍光量をつなげた曲線である。ここでの例では、温度サイクル(数)が20回前後で核酸増幅量(DNA量)に対応して蛍光量が増加しはじめ、25回~40回で飽和する。
核酸測定装置1の測定精度について説明する。
図4のA曲線は、ある核酸(DNA)及び核酸増幅用試薬を含む核酸検査液52(標準量)を使用して、予め測定した蛍光量検出曲線(標準曲線)である。
A曲線の左右の、A1及びA2曲線、B1及びB2曲線、並びにC1及びC2曲線は、A曲線の場合と同じ核酸検査液52を8個の容器51にそれぞれ標準量格納し、同時に同じ温度サイクルを与えて測定したときの、A曲線(標準曲線)に対するばらつきを示す、蛍光量検出曲線である。A1及びA2曲線はA曲線の近傍にあるが、B1及びB2曲線はA曲線から離れており、C1及びC2曲線は更に離れている。
8個の容器51に対応する8つの蛍光量検出曲線の、A曲線(標準曲線)に対するばらつきの程度から、核酸測定装置1の測定精度を次のように評価する。
8つの上記曲線が、A曲線(標準曲線)近傍のA1曲線・A2曲線範囲に収まっている場合には、検出精度は「優れる」。これに対し、8つの上記曲線が、A1曲線・A2曲線範囲に収まらず、A曲線から離れたB1曲線・B2曲線範囲まで広がっている場合には、検出精度は上記場合より「劣る」。8つの上記曲線が、A1曲線・A2曲線範囲、及びB1曲線・B2曲線範囲に収まらず、C1曲線・C2曲線範囲まで広がっている場合には、これらの場合と比較すると「大変劣る」。
【0040】
[焦点F1]
図5は、核酸検査液52への励起光(蛍光励起光)の照射についての説明図である。具体的には、第1集光レンズ13(焦点F1)がある場合やない場合の核酸検査液52への励起光の照射について説明するための図である。励起光が照射される液面は、標準量の核酸検査液52が格納された場合の液面(標準液面53)である。
【0041】
図5(a)は、核酸測定装置1が、第1集光レンズ13を備え、その焦点F1が標準液面53より上方に位置する場合を示す図である。第1集光レンズ13の焦点F1で集光された光束が再び広がって標準液面53を照射するが、その照射面積は標準液面53の面積とほぼ等しい。
【0042】
図5(b)は、核酸測定装置が第1集光レンズ13を備えているが、その焦点F1が標準液面53に位置する場合(比較例1)を示す図である。この場合は、標準液面53の1点にのみ、集光された強い光が照射される。
【0043】
図5(c)は、核酸測定装置が第1平行光レンズ15及び第1集光レンズ13(図1参照)を備えておらず、散乱光が標準液面53を照射するような場合(比較例2)を示す図である。第1平行光レンズ15及び第1集光レンズ13がないため、第1光学筒21内の光のうちキャップ54を通過した散乱光(集光しない光)が標準液面53を照射する。
【0044】
図5(d)は、核酸測定装置が第1集光レンズ13(図1参照)を備えておらず、平行光が標準液面53を照射する場合(比較例3)を示す図である。第1平行光レンズ15はあるが第1集光レンズ13がないため、第1平行光レンズ15から出た平行光のうち、キャップ54を通過した平行光だけが標準液面53を照射する。
【0045】
[実施例、比較例]
表1は、8つの容器51に、同じ核酸及び核酸増幅用試薬を含む核酸検査液52を標準量格納して検出精度を評価した比較表(実施例1、比較例1~3)である。
なお、表1に記載した条件(「焦点F1」欄参照)以外の条件(温度サイクル等)については、実施例1及び比較例1~3で同じである。
【表1】
表1の「参照図」は、核酸測定装置が図5のいずれに対応するかを示す。「焦点F1」は、核酸測定装置が第1集光レンズ13を備えている場合にはその焦点F1がどこに位置するかを示し、第1集光レンズ13を備えていない場合には(焦点F1)「なし」としている。
「8個の容器51の8つの曲線」は、8個の容器51に対する8つの蛍光量検出曲線の、A曲線(標準曲線、図4参照)に対するばらつきの度合いを示す。例えば、「A1曲線・A2曲線範囲」は、8つの曲線が「A1曲線・A2曲線範囲」(内)にあることを示す。
「検出精度」は、「8個の容器51の8つの曲線」に基づく検出精度を示す。「○:優れる」、「△:劣る」、「X:大変劣る」で示している([蛍光測定]参照)。「検出精度」については、実施例1の核酸測定装置1は「○:優れる」。これに対し、比較例1の核酸測定装置は「△:劣る」、比較例2及び3の核酸測定装置は「X:大変劣る」。
【0046】
[焦点F3]
図6は、実施形態1に係る核酸測定装置1における発光素子11近傍の説明図である。発光素子11は、LED素子であり、LEDチップ11A(半導体)と、当該LEDチップ11Aを搭載する基板11Bと、LEDチップ11Aを封止する略透明なモールド樹脂11Dと、リード端子11Cと、を有する。LEDチップ11Aは、その電極がワイヤーボンディング等で基板11B上の配線に接続され、当該配線はハンダ等でリード端子11Cに接続されている。回路基板61は、リード端子11Cを介して、発光素子11(LED素子)と電気的に接続される。発光素子11(LED素子)は、下側に凸部を有する釣り鐘形状乃至砲弾型をしている。発光素子11(LED素子)の外径は、第1光学筒21の内径72とほぼ同じである。
モールド樹脂11Dは、エポキシ等の樹脂で略透明である。LEDチップ11Aから発光した光は、モールド樹脂11Dを通って大部分が外に放射されるが、一部の光はモールド樹脂11D表面で反射される。
第1平行光レンズ15(平凸レンズ)は、発光素子11(LED素子)から出射(放射)される光を入射して平行光に変えて出射する。
ここで、第1平行光レンズ15(平凸レンズ)の焦点F3が、発光素子11の先端部11E(発光素子11の凸部の先端部)より上方に位置すると、検出精度をより一層高めることが可能となる。発光素子11から出射した光をより一層多く捉えることができるためと思われる。なお、焦点F3はLEDチップ11Aより上方に位置することが更に好ましい。
【0047】
[焦点F2]
図7は、実施形態1に係る核酸測定装置1における受光素子12近傍の説明図である。
図7(a)は、図1の受光素子12近傍の拡大図である。受光素子12は、フォトダイオード素子であり、光起電力発生領域12G(後述する図7(b)参照)のある面が上側の上から見て正方形のフォトダイオードチップ12A(半導体)と、上記チップ12Aを囲むシールド用金属板12Cと、上記チップ12A上方に置かれ上記チップ12Aを封止する略透明なガラス板12Dと、上記チップ12Aを搭載する基板12Bと、リード端子12Eと、を有する。フォトダイオードチップ12Aは、その電極がワイヤーボンディング等で基板12B上の配線に接続され、当該配線はハンダ等でリード端子12Eと接続されている。シールド用金属板12Cは、上記チップ12A上面(光起電力発生領域12Gのある面)より高くなるように上記チップ12Aを囲んでいる。
図7(a)に示すように、第2集光レンズ14は、受光素子12(フォトダイオードチップ12A)より上方に焦点F2が位置することが好ましい。このようにすると、第2集光レンズ14の焦点F2で集光された光束が広がって受光素子12を照射するため、光束を受光素子12(フォトダイオードチップ12A)に集めやすい。
なお、シールド用金属板12Cが、チップ12A上面(光起電力発生領域12Gのある面)より高くなるようにチップ12Aを囲んでいる場合、第2集光レンズ14からの光を焦点F2を通る前にチップ12Aに直接照射させようとするとチップ12Aの縁への照射光はシールド用金属板12Cで遮られやすくなる。これに対し、第2集光レンズ14からの光を焦点F2で一旦集光して焦点F2を通った光で照射するようにすると、チップ12Aの縁であってもシールド用金属板12Cで遮られることなく照射することが容易になる。
【0048】
図7(b)は、フォトダイオードチップ12Aの光起電力発生領域12G(多数のフォトダイオードが形成され、光で照射されると、自由電子や自由正孔が生じて電流や電圧が発生する光起電力効果の生じる領域。フォトダイオードチップ12Aの出力はこれらの多数のフォトダイオーからの出力を集めたもの)に、蛍光が照射される様子を示す。光起電力発生領域12Gがチップ12A上面のほぼ全面領域(正方形の領域)であるのに対し、実際の照射領域12Hはこの正方形の受光可能な領域(光起電力発生領域12G)内の円形の領域である。
なお、光起電力発生領域12G中で蛍光光が照射される照射領域12H以外の領域は蛍光光とは関係ない領域であるが、照射領域12H以外の領域をマスキングして受光光を遮断するようにすると、光起電力発生領域12Gと照射領域12Hとがほぼ同じ領域となるため、マスキングがない場合に比べてSN比(信号雑音比、Signal Noise Ratio)をより一層大きくすることがで能となる。
【0049】
上記の実施形態1に係る核酸測定装置1及び核酸測定方法によれば、核酸試料を含む核酸検査液52を格納する容器51の側方に温度サイクル付与部材33(31、32)が配置されるため、加熱冷却しやすく、温度サイクルの短縮が可能となる。また、発光素子11が容器51の上方に、受光素子12が下方に配置されるため、光学系が複雑化せず、装置の小型化が可能となる。また、容器51及び発光素子11の間に第1集光レンズ13が配置され、発光素子11からの発光光が集光されて容器51内部に照射されるため、蛍光標識が励起しやすく、高い検出精度を有する核酸測定装置1(乃至核酸測定方法)の提供が可能となる。
【0050】
[実施形態2]
実施形態2に係る核酸測定装置(及び核酸測定方法)は、基本的には実施形態1と同じであるが、温度サイクルを図3の温度サイクルの代わりに図8のようにした点が異なる。
実施形態2では、図8に示すように、1周期T中のアニーリングと伸長とを60℃前後の同じ温度で行う。核酸検査液52に入れる酵素等を変更することでこれらを同じ温度とすることができる。1周期T中の温度移行期間は、熱変性からアニーリングに移行する期間TA1と、伸長から熱変性に移行する期間TC1である。
実施形態2に係る核酸測定装置(及び核酸測定方法)は、温度サイクルを図3の温度サイクルの代わりに図8のようにした以外の点については、実施形態1と同様であるため、実施形態1の核酸測定装置1(及び核酸測定方法)が有する効果のうち該当する効果を有する。
【0051】
なお、本明細書においては、「上方」「下方」を、それぞれ「発光素子方向」「受光素子方向」と言い換えてもよい。
【0052】
[変形例]
以上、本発明を上記の実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。その趣旨を逸脱しない範囲において実施することが可能であり、例えば、次のような変形も可能である。
【0053】
(1)上記実施形態において記載した材質、形状、位置、大きさ、波長、温度などは例示であり、本発明の効果を損なわない範囲において変更することが可能である。
【0054】
(2)上記実施形態においては、第1集光レンズ13及び第2集光レンズ14として平凸レンズを用いたが、これは例示であり、例えば、少なくとも一方を、凸レンズ、フレネルレンズ等の集光レンズとすることも可能である。
【0055】
(3)上記実施形態においては、第1集光レンズ13及び第2集光レンズ14として固定焦点レンズ(平凸レンズ)を用いたが、少なくとも一方を焦点距離を変化させることができる可変焦点レンズ(バリフォーカルレンズ、ズームレンズ等)とすることも可能である。
【0056】
(4)上記実施形態においてはプローブ法を用いた蛍光によりPCR増幅物を検出したが、二本鎖DNAに結合することで蛍光を発する試薬(インターカレーター:TB Greenなど)を核酸検査液52に含有させるインターカレーター法、あるいはその他の方法を用いた蛍光によりPCR増幅物を検出してもよい。
【0057】
(5)上記実施形態においては蛍光標識を励起する波長の励起光を通過させる第1フィルター16を用いたが、その代わりに、モールド樹脂11Dに所定波長の光を吸収する物質を混ぜた発光素子11(LED素子)を用いたり、所定波長の光を吸収する物質を混ぜたキャップ54を用いるようにしてもよい。
また、所定波長の蛍光を通過させる第2フィルター18の代わりに、所定波長の光を吸収する物質を混ぜた略透明なガラス板12D(フォトダイオードチップ12Aの封止用)(又はガラス板12Dの代わりに使用する、所定波長の光を吸収する物質を混ぜた略透明な封止用樹脂)を用いるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0058】
1…核酸測定装置、2…ハード構成部、3…制御部、11…発光素子、11A…LEDチップ、11B…基板、11C…リード端子、11D…モールド樹脂、11E…先端部、12…受光素子、12A…フォトダイオードチップ、12B…基板、12C…シールド用金属板、12D…ガラス板、12E…リード端子、12G…光起電力発生領域、12H…照射領域、13…第1集光レンズ、14…第2集光レンズ、15…第1平行光レンズ、16…第1フィルター、17…第2平行光レンズ、18…第2フィルター、21…第1光学筒、21A…凹部、22…第2光学筒、22A…凹部、31…導熱部材、31A…容器格納穴、31B…蛍光放出口、32…ペルチェ素子、33…温度サイクル付与部材、34…放熱フィン、35…冷却ファン、36…隙間、41…受発光素子制御手段、42…温度サイクル制御手段、43…記憶手段、44…演算手段、45…A/D変換手段、46…全体制御手段、51…容器、52…核酸検査液、53…標準液面、54…キャップ、54A…環状凸部、56…ヒーター、57…温度センサー、61,62…回路基板、71…容器上部の内径、72…第1光学筒の内径、73…蛍光放出口の径、74…第2光学筒の内径、F1…第1集光レンズの焦点、F2…第2集光レンズの焦点、F3…第1平行光レンズの焦点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8