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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023110117
(43)【公開日】2023-08-09
(54)【発明の名称】プラズマ生成装置
(51)【国際特許分類】
   H05H 1/24 20060101AFI20230802BHJP
【FI】
H05H1/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020110338
(22)【出願日】2020-06-26
(71)【出願人】
【識別番号】000129471
【氏名又は名称】株式会社クメタ製作所
(71)【出願人】
【識別番号】304023318
【氏名又は名称】国立大学法人静岡大学
(74)【代理人】
【識別番号】100136674
【弁理士】
【氏名又は名称】居藤 洋之
(72)【発明者】
【氏名】河村 尚寿
(72)【発明者】
【氏名】永津 雅章
【テーマコード(参考)】
2G084
【Fターム(参考)】
2G084AA02
2G084AA03
2G084AA05
2G084AA07
2G084AA25
2G084BB02
2G084BB05
2G084BB06
2G084BB07
2G084BB37
2G084CC03
2G084CC07
2G084CC08
2G084CC19
2G084CC25
2G084CC34
2G084DD01
2G084DD12
2G084DD15
2G084DD22
2G084DD25
2G084DD32
2G084DD61
2G084DD66
2G084FF02
2G084FF15
(57)【要約】
【課題】主プラズマの局所的な形成を抑えて均一な面状に形成することができるプラズマ生成装置を提供する。
【解決手段】プラズマ生成装置100は、第1予備放電電極120を備える第1主放電電極110と第2予備放電電極140を備える第2主放電電極130との間に主放電用誘電体150を備えている。第1予備放電電極120は、導体121をガラス管製の予備放電用誘電体122内に収容した長尺の棒状に形成されている。第1主放電電極110は、第1予備放電電極120に沿って延びる板状体で構成されている。第1主放電電極110の主電極対向面111には、第1予備放電電極120を露出した状態で収容する溝状の予備放電電極収容部112が形成されている。主放電用誘電体150は、シート状の不導体で構成されており、第1予備放電電極120に隣接した位置に配置されている。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体で構成された第1主放電電極および第2主放電電極が互いに対向配置された一対の主放電電極と、
前記第1主放電電極に誘電体を介して隣接して設けられた第1予備放電電極と、
前記第1主放電電極と前記第1予備放電電極とに交流電圧を印加する第1電源と、
前記第2主放電電極に前記第1電源に対して位相がずれた交流電圧を印加する第2電源と、
前記第1主放電電極と前記第2主放電電極との間に配置されてこれらの一対の主放電電極に沿って平面状に延びる誘電体からなる主放電用誘電体とを備え、
前記主放電用誘電体は、
前記第1予備放電電極に隣接配置されていることを特徴とするプラズマ生成装置。
【請求項2】
請求項1に記載したプラズマ生成装置において、さらに、
前記第2主放電電極に誘電体を介して隣接して設けられた第2予備放電電極を備え、
前記第2電源は、
前記第2主放電電極と前記第2予備放電電極とに交流電圧を印加することを特徴とするプラズマ生成装置。
【請求項3】
請求項2に記載したプラズマ生成装置において、
前記第1予備放電電極および前記第2予備放電電極は、
前記一対の主放電電極に沿って複数の導体がそれぞれ間隔を空けて配置されて構成されており、
前記第1予備放電電極を構成する前記複数の導体と前記第2予備放電電極を構成する前記複数の導体とが互いに対向し合わないように互いにずれた位置にそれぞれ配置されていることを特徴とするプラズマ生成装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のうちのいずれか1つに記載したプラズマ生成装置において、さらに、
前記第1主放電電極と前記主放電用誘電体との間にプラズマガスを供給する第1プラズマガス噴出口を備えることを特徴とするプラズマ生成装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項3のうちのいずれか1つに記載したプラズマ生成装置において、さらに、
前記第2主放電電極と前記主放電用誘電体との間にプラズマガスを供給する第2プラズマガス噴出口を備えることを特徴とするプラズマ生成装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項3のうちのいずれか1つに記載したプラズマ生成装置において、さらに、
前記第1主放電電極と前記主放電用誘電体との間にプラズマガスを供給する第1プラズマガス噴出口と、
前記第2主放電電極と前記主放電用誘電体との間にプラズマガスを供給する第2プラズマガス噴出口とを備えることを特徴とするプラズマ生成装置。
【請求項7】
請求項6に記載したプラズマ生成装置において、
前記第1プラズマガス噴出口から噴出される前記プラズマガスは、前記第2プラズマガス噴出口から噴出される前記プラズマガスよりもプラズマが発生し易いガスであることを特徴とするプラズマ生成装置。
【請求項8】
請求項6または請求項7に記載したプラズマ生成装置において、さらに、
前記第1プラズマガス噴出口および前記第2プラズマガス噴出口からそれぞれ噴出される前記プラズマガスの流量を制御する制御装置を備え、
前記制御装置は、
前記第2プラズマガス噴出口よりも先に前記第1プラズマガス噴出口から前記プラズマガスを噴出させることを特徴とするプラズマ生成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大気圧下でも生成可能なプラズマ生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、アッシング、エッチングまたは被膜形成などの表面処理、接着性や濡れ性の改善または表面硬化などの表面改質、および医療器具や食べ物の洗浄や殺菌などの洗浄殺菌処理にプラズマ生成装置が用いられている。例えば、下記特許文献1には、主放電電極に対向配置される共通放電電極に予備放電電極を配置することで予備プラズマを発生させて主プラズマを発生させ易くしたプラズマ生成装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-87395号公報
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に示されたプラズマ生成装置においては、主プラズマの局所的な形成を抑えて均一な面状に形成することは常に求められる課題である。
【発明の概要】
【0005】
本発明は上記問題に対処するためなされたもので、その目的は、主プラズマの局所的な形成を抑えて均一な面状に形成することができるプラズマ生成装置を提供することにある。
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の特徴は、導体で構成された第1主放電電極および第2主放電電極が互いに対向配置された一対の主放電電極と、第1主放電電極に誘電体を介して隣接して設けられた第1予備放電電極と、第1主放電電極と第1予備放電電極とに交流電圧を印加する第1電源と、第2主放電電極に第1電源に対して位相がずれた交流電圧を印加する第2電源と、第1主放電電極と第2主放電電極との間に配置されてこれらの一対の主放電電極に沿って平面状に延びる誘電体からなる主放電用誘電体とを備え、主放電用誘電体は、第1予備放電電極に隣接配置されていることにある。ここで、第1予備放電電極に対して隣接配置とは、第1予備放電電極に発生させた予備プラズマに主放電用誘電体の表面が接する程度に予備放電電極に接近した位置に配置されている位置関係であり、主放電電極が予備放電電極に接触している状態も含むものである。
【0007】
このように構成した本発明の特徴によれば、プラズマ生成装置は、第1予備放電電極に主放電用誘電体が隣接配置されているため、本発明者らの実験によれば、主プラズマの局所的な形成を抑えて均一な面状に形成することができる。これは、主放電用誘電体における第1主放電電極側の面に、第1予備放電電極による予備プラズマの生成によって生成された電荷が均一に分布するためと考えられる。
【0008】
また、本発明の他の特徴は、前記プラズマ生成装置において、さらに、第2主放電電極に誘電体を介して隣接して設けられた第2予備放電電極を備え、第2電源は、第2主放電電極と第2予備放電電極とに交流電圧を印加することにある。
【0009】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、プラズマ生成装置は、第2予備放電電極が誘電体を介して第2主放電電極にも隣接して設けられているため、主プラズマの生成のための放電開始電圧の低減または2つの主放電電極間の距離を拡大することができる。この場合、放電開始電圧の低減と電極間距離の拡大とは、トレードオフの関係にある。すなわち、本発明に係るプラズマ生成装置によれば、従来と同じ放電開始電圧であれば電極間距離を拡大することができる、または従来と同じ電極間距離であれば放電開始電圧を低減することができる。本発明者らの実験によれば、第1主放電電極と第2主放電電極との間の間隔を10mm以上かつ20mm以下まで広げることができることを確認した。
【0010】
また、本発明の他の特徴は、前記プラズマ生成装置において、2つの予備放電電極は、一対の主放電電極に沿って複数の導体がそれぞれ間隔を空けて配置されて構成されており、2つの予備放電電極のうちの一方の複数の導体と他方の複数の導体とが互いに対向し合わないように互いにずれた位置にそれぞれ配置されていることにある。
【0011】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、プラズマ生成装置は、2つの予備放電電極のうちの一方を構成する複数の導体と他方を構成する複数の導体とが互いに対向し合わないように互いにずれた位置にそれぞれ配置されているため、均一な面状の主プラズマを効果的に形成することができる。
【0012】
また、本発明の他の特徴は、前記プラズマ生成装置において、さらに、第1主放電電極と主放電用誘電体との間にプラズマガスを供給する第1プラズマガス噴出口を備えることにある。
【0013】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、プラズマ生成装置は、さらに、主放電用誘電体が隣接配置された第1予備放電電極に隣接する位置にプラズマガスを噴出させる第1プラズマガス噴出口を備えているため、平面状の主放電用誘電体における一方の面(第1予備放電電極が隣接配置された側の面)側に沿ってより密度の濃い均一な予備プラズマを生成させることができ、均一な主プラズマを低い放電開始電圧または広い電極間距離で生成することができる。
【0014】
また、本発明の他の特徴は、前記プラズマ生成装置において、さらに、第2主放電電極と主放電用誘電体との間にプラズマガスを供給する第2プラズマガス噴出口を備えることにある。
【0015】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、プラズマ生成装置は、さらに、第2主放電電極と主放電用誘電体との間にプラズマガスを供給する第2プラズマガス噴出口を備えているため、平面状の主放電用誘電体における他方の面(第1予備放電電極が隣接配置された側に対して反対側の面)側に沿って主プラズマの生成を促すプラズマガスを供給することができ、均一な主プラズマを低い放電開始電圧または広い電極間距離で生成することができる。
【0016】
また、本発明の他の特徴は、前記プラズマ生成装置において、さらに、第1主放電電極と主放電用誘電体との間にプラズマガスを供給する第1プラズマガス噴出口と、第2主放電電極と主放電用誘電体との間にプラズマガスを供給する第2プラズマガス噴出口とを備えることにある。
【0017】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、プラズマ生成装置は、さらに、第1主放電電極と主放電用誘電体との間にプラズマガスを供給する第1プラズマガス噴出口を備えるとともに、第2主放電電極と主放電用誘電体との間にプラズマガスを供給する第2プラズマガス噴出口を備えている。これにより、プラズマ生成装置は、平面状の主放電用誘電体における一方の面(第1予備放電電極が隣接配置された側の面)により密度の濃い均一な予備プラズマを生成させることができるとともに、他方の面に主プラズマの生成を促すプラズマガスを供給することができ、均一な主プラズマを低い放電開始電圧または広い電極間距離で生成することができる。
【0018】
また、本発明の他の特徴は、前記プラズマ生成装置において、第1プラズマガス噴出口から噴出されるプラズマガスは、第2プラズマガス噴出口から噴出されるプラズマガスよりもプラズマが発生し易いガスであることにある。
【0019】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、プラズマ生成装置は、第1プラズマガス噴出口から噴出されるプラズマガスは、第2プラズマガス噴出口から噴出されるプラズマガスよりもプラズマが発生し易いガスであるため、平面状の主放電用誘電体における一方の面(第1予備放電電極が隣接配置された側の面)側に沿ってより密度の濃い均一な予備プラズマを生成させることができ、均一な主プラズマを低い放電開始電圧または広い電極間距離で生成することができる。また、プラズマの発生を促すプラズマガスは、一般に高価であるため、第1主放電用誘電体に対して離れた位置に設けられる第2プラズマガス噴出口から噴出させるプラズマガスを安価にすることでプラズマ処理全体を低コスト化することができる。
【0020】
また、本発明の他の特徴は、前記プラズマ生成装置において、さらに、第1プラズマガス噴出口および第2プラズマガス噴出口からそれぞれ噴出されるプラズマガスの流量を制御する制御装置を備え、制御装置は、第2プラズマガス噴出口よりも先に第1プラズマガス噴出口からプラズマガスを噴出させることにある。
【0021】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、プラズマ生成装置は、制御装置が第2プラズマガス噴出口よりも先に第1プラズマガス噴出口からプラズマガスを噴出させるように制御しているため、平面状の主放電用誘電体における一方の面(第1予備放電電極が隣接配置された側の面)側に予備プラズマが生成されるまでの間における第2プラズマガス噴出口からのプラズマガスの噴出量を抑えて効率的に主プラズマを生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明に係るプラズマ生成装置の構成の概略を模式的に示した正面図である。
図2図1に示すプラズマ生成装置のシステム構成を示すブロック図である。
図3図1に示すプラズマ生成装置における第1予備放電電極を備えた第1主放電電極の外観構成を模式的に示した平面図である。
図4図1に示すプラズマ生成装置における第1主放電電極と第1予備放電電極との間に交流電圧を印加して予備プラズマを生成した状態を模式的に示した正面図である。
図5図4に示すプラズマ生成装置における第2主放電電極と第2予備放電電極との間に交流電圧を印加して予備プラズマを生成した状態を模式的に示した正面図である。
図6図4に示すプラズマ生成装置における第1主放電電極と第2主放電電極との間に主プラズマを生成した状態を模式的に示した正面図である。
図7】(A),(B)は図1に示すプラズマ生成装置に対して主放電用誘電体の面上に感熱紙をセットして、第1予備放電電極および第2予備放電電極のうちのいずれか一方のみに通電した場合における主プラズマの生成状態を明らかにする実験結果を示しており、(A)は第1予備放電電極のみに通電した場合における主プラズマの生成状態の結果を示す写真画像であり、(B)は第2予備放電電極のみに通電した場合における主プラズマの生成状態の結果を示す写真画像である。
図8】本発明の第2実施形態に係るプラズマ生成装置の構成の概略を模式的に示した正面断面図である。
図9】(A)~(C)は、図8に示すプラズマ生成装置における第1予備放電電極の外観構成の概略を模式的に示しており、(A)は第1予備放電の平面図であり、(B)は(A)に示すB-B線から見た第1予備放電電極の側面断面図であり、(C)は(B)に示すC1-C1,C2-C2線から見た第1予備放電電極の側面断面図である。
図10図8に示すプラズマ生成装置の構成の概略を模式的に示した側面断面図である。
図11図10に示すプラズマ生成装置における第1予備放電電極に予備プラズマを生成して噴出させた状態を模式的に示す側面断面図である。
図12図11に示すプラズマ生成装置における第1主放電電極と第2主放電電極との間に主プラズマを生成した状態を模式的に示す側面断面図である。
図13】本発明の変形例に係るプラズマ生成装置の構成の概略を模式的に示した正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
<第1実施形態>
以下、本発明に係るプラズマ生成装置の一実施形態である第1実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係るプラズマ生成装置100の構成の概略を模式的に示した正面図である。また、図2は、図1に示すプラズマ生成装置100のシステム構成を示すブロック図である。また、図3は、図1に示すプラズマ生成装置100における第1予備放電電極120を備えた第1主放電電極110の外観構成を模式的に示した平面図である。なお、本明細書において参照する図は、本発明の理解を容易にするために一部の構成要素を誇張して表わすなど模式的に表している。このため、各構成要素間の寸法や比率などは異なっていることがある。このプラズマ生成装置100は、標準大気圧の大気に開放された環境下でプラズマを生成して食品からなる被処理物WKに照射して殺菌する機械装置である。
【0024】
(プラズマ生成装置100の構成)
プラズマ生成装置100は、第1主放電電極110および第2主放電電極130をそれぞれ備えている。第1主放電電極110は、後述する第1予備放電電極120と対を構成して予備プラズマPを発生させるとともに第2主放電電極130と対を構成して主プラズマPを発生させるための部品であり、アルミニウム材などの導電性を有する材料を長尺に延ばして形成されている。
【0025】
より具体的には、第1主放電電極110は、長尺状の第1予備放電電極120を収容するとともに第2主放電電極130に対して対向する平面視で長方形状の板状体で構成されている。この第1主放電電極110には、第2主放電電極130に対向する側の面に主電極対向面111に予備放電電極収容部112が形成されているとともにこの予備放電電極収容部112に沿って第1プラズマガス噴出口114が形成されている。また、第1主放電電極110には、主電極対向面111および予備放電電極収容部112の裏側にプラズマガスジャケット115が形成されている。
【0026】
主電極対向面111は、第2主放電電極130に面して主プラズマPを発生させるための部分であり、第2主放電電極130と平行な平面状に形成されている。この場合、主電極対向面111は、第1主放電電極110の長手方向および同長手方向に直交する幅方向の各端部および予備放電電極収容部112が開口する縁部分がそれぞれ丸みを帯びた曲面形状に形成されて局所的な放電が発生すること防止している。
【0027】
予備放電電極収容部112は、4つの第1予備放電電極120をそれぞれ収容する部分であり、これらの各第1予備放電電極120に沿って凹状に窪んで延びる溝状に形成されている。より具体的には、予備放電電極収容部112は、第1予備放電電極120における第2主放電電極130側の外表面を露出させた状態でその他の部分を覆う深さの溝状に形成されている。この場合、各予備放電電極収容部112は、第1予備放電電極120の両側面に対して僅かな空隙を介して収容する形状に形成されている。
【0028】
また、予備放電電極収容部112は、本第1実施形態においては、第1主放電電極110の長手方向に直交する幅方向に4つ形成されている。この場合、4つの予備放電電極収容部112は、主プラズマPが均一に生成されるように第1主放電電極110の幅方向に等間隔でかつ互いに平行に延びて形成されている。そして、各予備放電電極収容部112内には、それぞれ1つずつ第1予備放電電極120がセラミック接着剤113によって固着された状態で収容され支持されている。
【0029】
第1プラズマガス噴出口114は、予備プラズマPを発生し易くさせるとともに発生させた予備プラズマPを第2主放電電極130側に導いて主プラズマPを発生および維持させるためのプラズマガスを噴出させる部分であり、一方(図示上方)の端部がプラズマガスジャケット115に連通するとともに他方の端部(図示上端部)が主電極対向面111に開口する貫通孔で形成されている。この第1プラズマガス噴出口114は、予備放電電極収容部112内に収容される第1予備放電電極120に隣接する位置に同第1予備放電電極120が延びる長手方向に沿って複数の貫通孔が等間隔に配置されて構成されている。
【0030】
この場合、第1プラズマガス噴出口114は、第1予備放電電極120を挟むように第1予備放電電極120の両側にそれぞれ一列に並んで形成されている。ここで、第1予備放電電極120の両側とは、主電極対向面111上において第1予備放電電極120が延びる長手方向に直交する幅方向である。また、この場合、主電極対向面111の幅方向に互いに隣接する2つの第1プラズマガス噴出口114をそれぞれ構成する一列の貫通孔は、幅方向において互いに隣接し合わないように第1予備放電電極120の長手方向にずれて配置されている。
【0031】
この第1プラズマガス噴出口114は、本第1実施形態においては、直径1mmの円筒形に形成されているが、直径、ピッチ、形状および数はプラズマ生成装置100の仕様に応じて適宜設定されることは当然である。なお、図1図2においては、第1プラズマガス噴出口114の大きさを誇張して示している。
【0032】
プラズマガスジャケット115は、第1プラズマガス噴出口114から噴射させるプラズマガスを一時的に貯留するための部分であり、第1主放電電極110の裏面側を凹状に切り欠いた空洞部で構成されている。本第1実施形態においては、プラズマガスジャケット115は、第1主放電電極110の裏面側から見た平面視で略長方形状に形成されている。このプラズマガスジャケット115内には、2つのパンチングプレート116a,116bがそれぞれ設けられている。
【0033】
パンチングプレート116a,116bは、プラズマガスジャケット115内に導入されたプラズマガスの流れを緩衝するための部品であり、金属製、樹脂製またはセラミック製の板状体に多数の貫通孔を形成してそれぞれ構成されている。これらのパンチングプレート116aおよびパンチングプレート116bは、互いの板面が隙間を介して対向するように重ねられた状態でプラズマガスジャケット115内に設けられている。この場合、パンチングプレート116aおよびパンチングプレート116bは、互いの貫通孔同士が互いに対向し合わない位置にそれぞれ形成されている。
【0034】
このプラズマガスジャケット115は、ジャケット覆い体117によって気密的に塞がれている。ジャケット覆い体117は、プラズマガスをプラズマガスジャケット115内に導きつつプラズマガスジャケット115の図示下方に向かって開口する開口部を覆ってプラズマガスジャケット115内を密閉するとともに、第1主放電電極110を第1電源170に電気的に接続するための部品であり、導電性を有する金属材料を平面視で第1主放電電極110と同じ大きさの方形の板状に形成して構成されている。
【0035】
この場合、ジャケット覆い体117には、プラズマガスジャケット115内に連通する状態で導入路117a,117bがそれぞれ設けられている。導入路117a,117bは、後述するプラズマガス供給設備から延びる図示しない配管が連結されてプラズマガスをプラズマガスジャケット115内に導くための流路を構成している。なお、ジャケット覆い体117は、本第1実施形態においては導電性を有する金属材料で構成されているが、第1主放電電極110が直接第1電源170に電気的に接続される場合には必ずしも導電性を有する材料で構成する必要はなく樹脂材またはセラミック材で構成することもできる。
【0036】
この第1主放電電極110は、電極支持体118上に支持されている。電極支持体118は、第1主放電電極110が第2主放電電極130に対して所定の距離を介した位置に対向するように第1主放電電極110を支持するための部品であり、フッ素樹脂などの絶縁体を板状に形成して構成されている。この電極支持体118は、プラズマ生成装置100に固定的に設けられている。そして、第1主放電電極110は、ジャケット覆い体117を介して第1電源170に電気的に接続されているとともにこの第1電源170を介して第2電源171に電気的に接続されている。
【0037】
第1予備放電電極120は、図4に示すように、予備プラズマPを発生させるための部品であり、長尺に延びる棒状に形成されている。具体的には、第1予備放電電極120は、導体121が予備放電用誘電体122に覆われて構成されている。
【0038】
導体121は、第1主放電電極110と対を構成する電極であり、導電性を有する材料を長尺に延ばして形成されている。本第1実施形態においては、導体121は、直径1.8mmで長さが250mmの銅線で構成されている。なお、導体121は、導電性を有する材料であれば良く、例えば、銀、金、チタンまたはアルミニウム材など銅以外の材料で構成することもできる。この導体121は、後述する第1電源170に電気的に接続されているとともにアース172を介して接地されている。
【0039】
予備放電用誘電体122は、導体121を覆うとともに導体121と第1主放電電極110との間で両者を電気的に絶縁するための部品であり、導体121を覆う大きさの不導体で構成されている。本第1実施形態においては、予備放電用誘電体122は、石英材を直径が4mm、内径が2mmおよび長さが230mmの有底円筒状に形成した透明な石英管で構成されている。
【0040】
なお、予備放電用誘電体122は、導体121を覆う不導体であれば良く、例えば、半透明または不透明のガラス、ガラス以外のセラミック材、樹脂材またはゴム材などで構成することもできる。また、導体121および予備放電用誘電体122からなる第1予備放電電極120の大きさは、予備プラズマPを生成する必要性に応じて適宜設計されるものであり、本第1実施形態に限定されるものではないことは当然である。また、第1予備放電電極120を設ける数は、本第1実施形態においては4つ設けるようにしたが、この数についても予備プラズマPを生成する必要性に応じて適宜設定されればよく、少なくとも1つ備えていればよい。この第1予備放電電極120は、導体121における第1電源170に接続される端部を露出させた状態で同端部以外の部分を予備放電用誘電体122内に収容された状態で第1主放電電極110に支持されている。
【0041】
第2主放電電極130は、第2予備放電電極140と対を構成して予備プラズマPを発生させるとともに第1主放電電極110と対を構成して主プラズマPを発生させるための部品であり、アルミニウム材などの導電性を有する材料を長尺に延ばして形成されている。この第2主放電電極130は、前記した第1主放電電極110と同様に構成されているため、その説明は省略する。
【0042】
すなわち、第2主放電電極130は、第1主放電電極110における主電極対向面111、予備放電電極収容部112、セラミック接着剤113、第1プラズマガス噴出口114、プラズマガスジャケット115、パンチングプレート116a,116b、ジャケット覆い体117および導入路117a,117bにそれぞれ対応する主電極対向面131、予備放電電極収容部132、セラミック接着剤133、第2プラズマガス噴出口134、プラズマガスジャケット135、パンチングプレート136a,136b、ジャケット覆い体137および導入路137a,137bを備えて構成されている。
【0043】
この場合、第2主放電電極130は、第1主放電電極110と同じ大きさに形成されているが、予備放電電極収容部132が予備放電電極収容部112とは異なり、主電極対向面131上に5つ形成されている。このため、第2主放電電極130は、主電極対向面131の面積が第1主放電電極110における主電極対向面111よりも広く形成されている。また、5つの予備放電電極収容部132は、4つの予備放電電極収容部112に対して互いに対向し合わないように互いに隣接する2つの予備放電電極収容部112の間に位置するように主電極対向面131上に形成されている。
【0044】
また、この第2主放電電極130は、電極支持体138に下垂した状態で支持されている。電極支持体138は、電極支持体118と同様に、第2主放電電極130が第1主放電電極110に対して所定の距離を介した位置に対向するように第2主放電電極130を支持するための部品であり、フッ素樹脂などの絶縁体を板状に形成して構成されている。この電極支持体138は、プラズマ生成装置100に固定的に設けられている。
【0045】
そして、この第2主放電電極130は、ジャケット覆い体137を介して第2電源171に電気的に接続されているとともにこの第2電源171を介して第1電源170に電気的に接続されている。なお、第1主放電電極110および第2主放電電極130は、導電性を有する材料で構成されていれば良く、例えば、銀、金、チタンまたは銅などアルミニウム材以外の材料で構成することもできる。
【0046】
第2予備放電電極140は、図5に示すように、予備プラズマPを発生させるための部品であり、長尺に延びる棒状に形成されている。具体的には、第1予備放電電極120は、導体121が予備放電用誘電体122に覆われて構成されている。この第2予備放電電極140は、前記した第1予備放電電極120と同様に構成されているため、その説明は省略する。なお、第2予備放電電極140を設ける数は、本第1実施形態においては5つ設けるようにしたが、この数についても予備プラズマPを生成する必要性に応じて適宜設定されればよく、第2予備放電電極140を設ける場合には少なくとも1つ備えていればよい。
【0047】
すなわち、第2予備放電電極140は、第1予備放電電極120における導体121および予備放電用誘電体122にそれぞれ対応する導体141および予備放電用誘電体142を備えて構成されている。この第2予備放電電極140は、前記した5つの予備放電電極収容部132にそれぞれ1つずつ収容されている。これにより、5つの第2予備放電電極140は、4つの第1予備放電電極120に対して互いに対向し合わないように互いに隣接する2つの第1予備放電電極120の間に位置するように主電極対向面131上に配置される。そして、これらの第2予備放電電極140は、第2電源171に電気的に接続されている。これらの第1主放電電極110と第2主放電電極130との間には、主放電用誘電体150が設けられている。
【0048】
主放電用誘電体150は、第1主放電電極110および第1予備放電電極120と第2主放電電極130および第2予備放電電極140との間で両者を電気的に絶縁するとともに被処理物WKを支持するための部品であり、主電極対向面111と主電極対向面131との間で両者を覆う大きさの不導体で構成されている。より具体的には、主放電用誘電体150は、主電極対向面111と主電極対向面131の各長手方向および各幅方向の長さよりも長い長さのフッ素樹脂製のシート材を環状の無端ベルト状に形成して構成されている。本第1実施形態においては、主放電用誘電体150は、厚さが1mmのフッ素樹脂製のシートを用いている。
【0049】
この主放電用誘電体150は、幅広の帯体の両端部が連結された円環状の無端ベルトで構成されており、誘電体駆動装置151が備える図示しない駆動ローラと従動ローラとの間に水平方向に張られた状態で架設されて駆動ローラの回転駆動によって無限軌道状に送られる。すなわち、主放電用誘電体150は、ベルトコンベアである誘電体駆動装置151における搬送ベルトを構成している。なお、本第1実施形態における主放電用誘電体150は、無端ベルトの周方向に沿って柔軟に屈曲する不導体で構成されていればよく、フッ素樹脂材以外の樹脂材(例えば、ポリアミド樹脂材など)からなるシート材であってもよい。
【0050】
この主放電用誘電体150は、第1予備放電電極120に隣接配置されている。より具体的には、主放電用誘電体150は、第1予備放電電極120と第1主放電電極110との間に発生させた予備プラズマPに接する程度に接近した位置に配置されている。
【0051】
プラズマガス供給装置160,161は、第1プラズマガス噴出口114および第2プラズマガス噴出口134からそれぞれ噴出させるプラズマガスを第1主放電電極110および第2主放電電極130にそれぞれ供給する機械装置である。具体的には、プラズマガス供給装置160,161は、プラズマガスを貯留するタンク、このタンクから導入路117a,117b,137a,137bにプラズマガスを導く配管およびこの配管上に設けられて配管内を流通するプラズマガスの流量を規定する電磁弁などを備えて構成されている。これらのプラズマガス供給装置160,161は、制御装置180によって作動が制御されることにより、第1主放電電極110および第2主放電電極130にそれぞれ供給されるプラズマガスの流量が制御される。
【0052】
プラズマガスは、予備プラズマPを発生させ易くするとともに生成された予備プラズマPを主放電用誘電体150側に導いて主プラズマPを発生および維持させるための気体であり、窒素、アルゴンおよびヘリウムなどの空気よりも電離電圧の低い気体を単体でまたはこれらを混合して、さらには、これらに水蒸気またはアンモニアなどのガスを添加して構成されている。
【0053】
この場合、窒素、アルゴンおよびヘリウムは、窒素よりもアルゴンの方がプラズマを発生させ易いガスであり、アルゴンよりもヘリウムの方がプラズマを発生させ易いガスである。そして、本第1実施形態においては、プラズマガス供給装置160は、アルゴンを主成分とするプラズマガスを第1主放電電極110に供給する。また、プラズマガス供給装置161は、窒素を主成分とするプラズマガスを第1主放電電極110に供給する。この場合、主成分とは、プラズマガスを構成する複数の成分のうち、最も含有率が高い成分をいう。
【0054】
第1電源170は、第1主放電電極110と第1予備放電電極120とに対して交流電圧を印加するための電気機器である。本第1実施形態においては、第1電源170は、一般家庭用電源(100V)から電力供給を受けて第1主放電電極110および第1予備放電電極120に対して電圧が±1kV~±20kVの範囲でかつ周波数が100Hz~30kHzの範囲で所望の電圧および周波数の交流電圧を印加することができる。この場合、第1電源170は、出力電圧の位相を変化させる図示しない移相器を備えている。また、第1電源170は、矩形波、正弦波、台形波および三角波のうちのいずれの交流電圧を連続的または間欠的に出力するものであってもよい。
【0055】
第2電源171は、第2主放電電極130と第2予備放電電極140とに対して交流電圧を印加するための電気機器である。本第1実施形態においては、第2電源171は、一般家庭用電源(100V)から電力供給を受けて第2主放電電極130および第2予備放電電極140に対して電圧が±1kV~±20kVの範囲でかつ周波数が100Hz~30kHzの範囲で所望の電圧および周波数の交流電圧を印加することができる。この場合、第2電源171は、出力電圧の位相を変化させる図示しない移相器を備えている。また、第2電源171は、矩形波、正弦波、台形波および三角波のうちのいずれの交流電圧を連続的にまたは間欠的に出力するものであってもよいが、第1電源170と同じ波形でかつ逆位相など位相をずらして出力するように調整される。
【0056】
なお、これらの第1電源170および第2電源171の出力電圧および周波数は、生成する予備プラズマPおよび主プラズマPに応じて適宜設定されるものであって本第1実施形態に限定されるものでないことは当然である。
【0057】
アース172は、第1主放電電極110と第1予備放電電極120との間で交流電圧を印加する予備放電回路および第2主放電電極130と第2予備放電電極140との間で交流電圧を印加する予備放電回路をそれぞれ接地するための電気回路である。本第1実施形態においては、アース172は、第1予備放電電極120および第2予備放電電極140にそれぞれ接続された状態で設けられている。
【0058】
なお、アース172は、第1主放電電極110および第2主放電電極130にそれぞれ接続された状態で設けられていてもよい。また、アース172は、第1主放電電極110と第1予備放電電極120との間で交流電圧を印加する予備放電回路および第2主放電電極130と第2予備放電電極140との間で交流電圧を印加する予備放電回路ごとにそれぞれ別々に設けてもよい。さらに、アース172は、省略してもよい。
【0059】
制御装置180は、直方体状の筐体の内部にCPU、ROM、RAMなどからなるマイクロコンピュータを備えて構成されており、プラズマ生成装置100の全体の作動を総合的に制御するとともに、記憶装置に予め記憶された図示しないプラズマ処理プログラムを実行することにより被処理物WKに対してプラズマ処理を行う。具体的には、制御装置180は、誘電体駆動装置151、プラズマガス供給装置160,161、第1電源170および第2電源171の各作動を制御して主放電用誘電体150上の被処理物WKに対してプラズマ処理を実行する。
【0060】
この制御装置180には、作業者からの指示を受け付けて制御装置180に入力するスイッチ群からなる入力装置および制御装置180の作動状況を表示する表示ランプおよび液晶表示装置をそれぞれ備えた操作盤181を備えている。なお、このプラズマ生成装置100は、外部電源か電力を受けて電力を必要とする機器、具体的には、誘電体駆動装置151、プラズマガス供給装置160,161、第1電源170、第2電源171および制御装置180にそれぞれ電力を供給する電源部を備えているが本発明に直接関わらないため、その説明は省略する。
【0061】
そして、このプラズマ生成装置100は、被処理物WKにプラズマを照射する作業を行う屋内または屋外に設けられる。この場合、プラズマ生成装置100は、単体で設置されてもよいが被処理物WKに対して各種の加工を行う加工ライン内に組み込まれて設けられてもよい。
【0062】
(プラズマ生成装置100の作動)
次に、上記のように構成したプラズマ生成装置100の作動について説明する。本第1実施形態においては、プラズマ生成装置100は、豆、小麦、ゴマ、胡椒または茶葉(碾茶や抹茶を含む)などの粉状または粒状の食品の製造加工ラインに組み込まれてこれらを被処理物WKとして殺菌消毒処理を行う場合について説明する。この場合、プラズマ生成装置100は、標準大気圧の大気中に直接露出した状態で設置される。
【0063】
プラズマ生成装置100を使用して被処理物WKにプラズマ照射を行う作業者は、まず、制御装置180を起動させてプラズマ処理に関する初期設定を行う。具体的には、作業者は、操作盤181を操作して第1電源170の電圧、電流、および周波数、第2電源171の電圧、電流、および周波数、被処理物WKの搬送速度およびプラズマガスの供給量をそれぞれ設定する。
【0064】
この場合、第1電源170および第2電源171の各電圧、電流および周波数は、主プラズマPを発生させるために必要な予備プラズマPを発生させるための電圧、電流および周波数である。これらの第1電源170および第2電源171がそれぞれ出力する各電圧、電流および周波数は、発生させる主プラズマPに応じて予め実験的に求めることができる。
【0065】
本第1実施形態においては、作業者は、制御装置180に対して第1電源170および第2電源171の各出力として、例えば、電圧が±15kV、電流が20mAおよび周波数が5kHzの交流電圧を設定する。また、作業者は、制御装置180に対して第1電源170の出力電圧を第2電源171の出力電圧とは逆位相の交流電圧を設定する。
【0066】
また、被処理物WKの搬送速度とは、主放電用誘電体150に載置した被処理物WKを第1主放電電極110と第2主放電電極130との間に形成される主プラズマP空間内を通過させる速度であり、誘電体駆動装置151の駆動ローラの回転速度である。本第1実施形態においては、作業者は、制御装置180に対して被処理物WKの搬送速度として、例えば、毎分500mmの速度を設定する。
【0067】
また、プラズマガスの供給量とは、第1プラズマガス噴出口114および第2プラズマガス噴出口134からそれぞれ噴出させるプラズマガスの流量である。このプラズマガスの供給量は、第1主放電電極110および第2主放電電極130の各形状および大きさ、第1電源170および第2電源171の各出力に応じて予め実験的に求めることができる。本第1実施形態においては、作業者は、制御装置180に対して第1プラズマガス噴出口114から噴出させるプラズマガスの供給量として毎分1Lを設定するとともに、第1プラズマガス噴出口114から噴出させるプラズマガスの供給量として毎分2Lを設定する。
【0068】
次に、作業者は、操作盤181を操作して制御装置180に対して主プラズマPの生成を指示する。この主プラズマPの生成処理は、制御装置180が以下のサブステップ1~3を実行することによって行われる。
【0069】
サブステップ1:第1主放電電極110に予備プラズマPを生成する。
具体的には、制御装置180は、図4に示すように、プラズマガス供給装置160の作動を制御することによって第1主放電電極110に対してプラズマガスを供給することで第1主放電電極110の第1プラズマガス噴出口114からプラズマガスを噴出させる(破線矢印参照)。
【0070】
次に、制御装置180は、第1電源170の作動を制御することによって第1主放電電極110と第1予備放電電極120との間に交流電圧を印加する。これにより、第1主放電電極110と第1予備放電電極120との間では、図4に示すように、両者間に存在するプラズマガスおよび大気の一部が電離するとともに活性化されて予備プラズマPが発生する。
【0071】
この場合、予備プラズマPは、4つの第1予備放電電極120にそれぞれ沿って4つの線状に生成される。すなわち、予備プラズマPは、大気圧下における誘電体バリア放電によって生成される。なお、図4においては、予備プラズマPを薄いハッチングで示している。
【0072】
この予備プラズマPの生成に際しては、主電極対向面111上においてプラズマガスの噴出量のムラが抑えられるとともにプラズマガスの散逸が防止される。具体的には、主電極対向面111上においては、プラズマガスジャケット115およびパンチングプレート116a,116bによって複数の第1プラズマガス噴出口114間におけるプラズマガスの噴出量のムラが抑えられる。また、主電極対向面111上においては、主放電用誘電体150が近接配置されているため、第1プラズマガス噴出口114から噴出したプラズマガスの散逸が抑制される。
【0073】
これらにより、主電極対向面111上においては、4つの第1予備放電電極120の長さ方向および幅方向に沿った平面視で方形の面状に迅速に均一で安定的な予備プラズマPが発生するとともに発生した予備プラズマPの成長および維持が安定的に行われる。なお、均一な予備プラズマPとは、少なくとも人が目視で均一と確認できるレベルである。また、図1および図6においては、プラズマガスの流れを破線矢印で示している。
【0074】
サブステップ2:第2主放電電極130に予備プラズマPを生成する。
具体的には、制御装置180は、図5に示すように、プラズマガス供給装置161の作動を制御することによって第2主放電電極130に対してプラズマガスを供給することで第2主放電電極130の第2プラズマガス噴出口134からプラズマガスを噴出させる(破線矢印参照)。
【0075】
次に、制御装置180は、第2電源171の作動を制御することによって第2主放電電極130と第2予備放電電極140との間に交流電圧を印加する。これにより、第2主放電電極130と第2予備放電電極140との間では、図5に示すように、両者間に存在するプラズマガスおよび大気の一部が電離するとともに活性化されて予備プラズマPが発生する。
【0076】
この場合、予備プラズマPは、5つの第2予備放電電極140にそれぞれ沿って5つの線状に生成される。すなわち、予備プラズマPは、大気圧下における誘電体バリア放電によって生成される。なお、図5においては、予備プラズマPを薄いハッチングで示している。
【0077】
この予備プラズマPの生成に際しては、主電極対向面131においてプラズマガスの噴出量のムラが抑えられる。具体的には、主電極対向面131においては、プラズマガスジャケット135およびパンチングプレート136a,136bによって複数の第2プラズマガス噴出口134間におけるプラズマガスの噴出量のムラが抑えられる。
【0078】
これにより、主電極対向面131においては、第2予備放電電極140の長さ方向に沿って迅速に均一で安定的な予備プラズマPが発生するとともに発生した予備プラズマPの成長および維持が促進される。
【0079】
サブステップ3:第1主放電電極110と第2主放電電極130との間に主プラズマPを生成する。
この主プラズマPの生成は、第2主放電電極130における予備プラズマPの生成後、直ちに行われる。具体的には、第2主放電電極130は、第2プラズマガス噴出口134から第1主放電電極110に向けてプラズマガスを噴出している。
【0080】
これにより、第2主放電電極130に生成された予備プラズマPは、図6に示すように、第1主放電電極110側に成長することで第2主放電電極130と主放電用誘電体150との間に存在するプラズマガスおよび大気の一部が第2主放電電極130から延びる予備プラズマPによって発生した電子または活性種をトリガとして電離するとともに活性化されて主プラズマPが発生する。なお、図6においては、主プラズマPを予備プラズマPよりも濃いハッチングで示している。
【0081】
この場合、第2主放電電極130と主放電用誘電体150との間においては、第2主放電電極130から噴出されるプラズマガスによって第2主放電電極130と主放電用誘電体150との間の空間内におけるプラズマガスの濃度のムラが抑えられる。また、主放電用誘電体150においては、第1予備放電電極120による予備プラズマPの生成によって生成された電荷が第1主放電電極110側の面に均一に帯電している。
【0082】
これらにより、主プラズマPは、5つの線状に形成された予備プラズマPのうちの外側に形成された2つの予備プラズマP間における方形の面状の領域内で放電が一様で柱状に延びて形成される。すなわち、本発明に係るプラズマ生成装置100は、第1主放電電極110と第2主放電電極130との間で均一な放電が面状に広がって柱状に立ち上る主プラズマPを短時間に精度良く成形できるとともに安定期に維持することができる。なお、第1主放電電極110と第2主放電電極130との間で均一な放電が面状に広がって柱状に立ち上る主プラズマPとは、少なくとも人が目視で均一と確認できるレベルである。
【0083】
次に、作業者は、主放電用誘電体150を回転駆動させる。具体的には、作業者は、操作盤181を操作して制御装置180に対して誘電体駆動装置151における駆動ローラの回転駆動の開始を指示することで主放電用誘電体150を回転駆動させることができる(図6における破線矢印参照)。
【0084】
次に、作業者は、被処理物WKへのプラズマ照射処理を行う。具体的には、作業者は、主放電用誘電体150上に被処理物WKを連続的に供給するワーク供給装置(図示せず)の作動を開始させることによって主放電用誘電体150上に被処理物WKを連続的に供給する。これにより、主放電用誘電体150上に載置された被処理物WKは、第1主放電電極110と第2主放電電極130との間に形成された主プラズマP中を通過することでプラズマ照射されて殺菌処理が行なわれる。なお、主プラズマPが照射された被処理物WKは、図示しない被処理物WKの回収装置によって回収される。
【0085】
次に、作業者は、被処理物WKへのプラズマ照射処理を終了する場合には、被処理物WKを主放電用誘電体150上に供給するワーク供給装置の作動を停止させた後、操作盤181を操作して制御装置180に対して誘電体駆動装置151、第1電源170、第2電源171およびプラズマガス供給装置160,161の各作動の停止を指示する。これにより、プラズマ生成装置100は、予備プラズマPおよび主プラズマPがそれぞれ消滅するとともに主放電用誘電体150の回転駆動が停止して被処理物WKへのプラズマ照射処理を終了することができる。
【0086】
ここで、本発明者らが行った実験結果について図7(A),(B)を用いて説明する。図7(A)は、プラズマ生成装置100における第2主放電電極130から第2予備放電電極140を省略した構成の主放電用誘電体150上に感熱紙を載置した状態で上記主プラズマPを発生させて所定時間(60秒)経過した後の感熱紙の状態を示している。この場合、第2主放電電極130は、予備放電電極収容部132が不要であるため主電極対向面131は平坦面に形成されている。一方、図7(B)は、プラズマ生成装置100における第1主放電電極110から第1予備放電電極120を省略した構成の主放電用誘電体150上に感熱紙を載置した状態で上記主プラズマPを発生させて所定時間(60秒)経過した後の感熱紙の状態を示している。この場合、第1主放電電極110は、予備放電電極収容部112が不要であるため主電極対向面111は平坦面に形成されている。
【0087】
本第1実施形態に係るプラズマ生成装置100においては、図7(A)に示されるように、感熱紙上に方形状に黒色部分が均等に形成されており、主プラズマPが均等に形成されたことを意味している。一方、第1予備放電電極120を省略した構成のプラズマ生成装置100においては、図7(B)に示されるように、感熱紙上に断続的な線状に黒色部分が形成されており、主プラズマPが第2予備放電電極140に沿って形成されたことを意味している。これらの図7(A),(B)に示されるように、本第1実施形態に係るプラズマ生成装置100によれば、第1予備放電電極120に主放電用誘電体150が隣接配置されているため、主プラズマPの局所的な形成を抑えて主プラズマPを均一な面状に形成することができる。
【0088】
<第2実施形態>
次に、本発明に係るプラズマ生成装置の一実施形態である第2実施形態について図8図12を参照しながら説明する。この第2実施形態に係るプラズマ生成装置200は、上記第1実施形態に対して種々相違する部分があるが、第1実施形態における第1予備放電電極120に対して第1予備放電電極201が異なる構成である点が最も相違する部分である。したがって、この第2実施形態におけるプラズマ生成装置200においては、上記第1実施形態におけるプラズマ生成装置100と異なる部分を中心に説明して、両実施形態において共通する部分または対応する部分についての説明を適宜省略する。
【0089】
(プラズマ生成装置200の構成)
プラズマ生成装置100は、第1予備放電電極201を備えている。第1予備放電電極201は、予備プラズマPを発生させるための部品であり、平面視で長方形状に延びる板状体で構成されている。この第1予備放電電極201は、主として、第1導体202、第2導体203および被覆体204をそれぞれ備えて構成されている。
【0090】
第1導体202は、第2導体203との間で予備プラズマPを発生させるための電極であり、導電性を有する材料を長尺に延ばして形成されている。本第2実施形態においては、第1導体202は、銅材を幅が2mm、厚さが0.1mm、長さが100mmの平面視で長方形状で帯状に延びるシート状に形成して構成されている。
【0091】
なお、第1導体202は、導電性を有する材料であれば良く、例えば、銀、金、チタンまたはアルミニウム材など銅以外の材料で構成することもできる。また、第1導体202は、断面形状が方形のシート状以外にシート状よりも厚く剛性を有する板状、シート状よりも薄くより柔軟なフィルム状に形成することができる。また、第1導体202は、断面形状が方形以外の形状、例えば、円形(楕円形を含む)または多角形(三角形状、五角形、六角形など)の形状であってもよいが扁平な形状が好ましい。
【0092】
この第1導体202は、長尺に延びる複数(本実施形態においては、5つ)の導体が被覆体204内における同一平面内で互いに平行に並べられて配置されている。そして、第1導体202は、第1導体202を構成する前記複数の各導体が後述する第1電源240にそれぞれ電気的に接続されている。
【0093】
第2導体203は、第1導体202との間で予備プラズマPを発生させるための電極であり、導電性を有する材料を長尺に延ばして形成されている。本実施形態においては、第2導体203は、銅材を幅が2mm、厚さが0.1mm、長さが100mmの平面視で長方形状で帯状に延びるシート状に形成して構成されている。すなわち、第2導体203は、第1導体202と同じ材料、同じ形状および同じ大きさで形成されている。
【0094】
なお、第2導体203は、第1導体202と同様に、導電性を有する材料であれば良く、例えば、銀、金、チタンまたはアルミニウム材など銅以外の材料で構成することもできる。また、第2導体203は、断面形状が方形のシート状以外にシート状よりも厚く剛性を有する板状、シート状よりも薄くより柔軟なフィルム状に形成することができる。また、第2導体203は、断面形状が方形以外の形状、例えば、円形(楕円形を含む)または多角形(三角形状、五角形、六角形など)の形状であってもよいが扁平な形状が好ましい。
【0095】
この第2導体203は、第1導体202と同様に、長尺に延びる複数(本実施形態においては、5つ)の導体が被覆体204内における同一平面内で互いに平行に並べられて配置されている。この場合、第2導体203は、第1導体202に対して被覆体204を介した所定の間隔で互いに対向する位置に配置されている。ここで、所定の間隔は、生成する予備プラズマPに応じて適宜決定されるが、0.5mm以上かつ10mm以下が好ましい。
【0096】
そして、この第2導体203は、第2導体203を構成する前記複数の各導体が第2電源242にそれぞれ電気的に接続されている。すなわち、互いに対向し合う第1導体202と第2導体203とは一対の予備放電用の電極を構成している。本実施形態においては、第1予備放電電極201は、5つの一対の電極を備えて構成されている。
【0097】
被覆体204は、第1導体202および第2導体203をそれぞれ覆って両者を電気的に絶縁するとともに第1導体202と第2導体203との間に生じた予備プラズマPを外部に噴出させるための部品であり、第1導体202と第2導体203との間を介しつつ第1導体202および第2導体203の全体を覆う大きさの不導体で構成されている。本第2実施形態においては、被覆体204は、アルミナなどのセラミック材を幅が34mm、厚さが3.2mmおよび長さが100mmの平面視で長方形状の板状に成形して構成されている。
【0098】
これにより、被覆体204の端面には、第1導体202および第2導体203の各端面が露出しており、これらの各露出部分に第1電源240および第2電源242がそれぞれ電気的に接続されている。この被覆体204には、第1プラズマガス噴出口205が形成されている。
【0099】
第1プラズマガス噴出口205は、第1導体202と第2導体203との間で予備プラズマPを発生させるとともに発生させた予備プラズマPを外部に噴出させるための部分であり、被覆体204の厚さ方向に貫通する貫通孔で構成されている。この第1プラズマガス噴出口205は、互いに対を構成する第1導体202および第2導体203に隣接する位置に第1導体202および第2導体203の長手方向に沿って複数(本実施形態においては8つまたは7つ)形成されている。本第2実施形態においては、第1プラズマガス噴出口205は、前記5つの一対の電極における互いに隣接し合う一対の電極間にそれぞれ形成されている。
【0100】
この場合、第1プラズマガス噴出口205は、内周面に第1導体202および第2導体203を露出させることなく第1導体202および第2導体203に隣接する位置に形成される。すなわち、第1導体202および第2導体203は、第1プラズマガス噴出口205の内周面に露出することなく同内周面に隣接配置されている。この場合、第1プラズマガス噴出口205の内周面から第1導体202および第2導体203までの各最短距離は、第1導体202と第2導体203とで異なっていてもよいが、第1導体202と第2導体203とで同一の距離に形成することでプラズマジェットの生成を安定化することができる。また、第1プラズマガス噴出口205は、両端部の開口部間の長さである全長は、被覆体204の厚さである3.2mmに形成されている。
【0101】
なお、第1プラズマガス噴出口205の大きさは、第1導体202および第2導体203の大きさおよび両電極に印加する電圧の大きさによって適宜決定される。本実施形態においては、第1プラズマガス噴出口205の内径は2mmに形成されている。また、第1プラズマガス噴出口205の形成密度は、発生させる予備プラズマPの仕様に応じて適宜設定される。すなわち、第1プラズマガス噴出口205は、その形成密度が高いほど均一な予備プラズマPを精度良く安定的に生成させることができる。また、第1プラズマガス噴出口205は、内周面に第1導体202および第2導体203のうちの少なくとも一方を露出させた状態で形成することもできる。
【0102】
また、第1プラズマガス噴出口205は、第1予備放電電極201の幅方向(図9において上下方向)に互いに隣接する第1プラズマガス噴出口205を構成する各貫通孔が幅方向において互いに隣接し合わないように第1予備放電電極201の長手方向(図9において左右方向)にずれて配置(千鳥状に配置)されている。また、第1プラズマガス噴出口205の断面形状は、本実施形態においては円形に形成されているが、円形(楕円を含む)以外の形状、例えば、方形(長孔などのスリット状を含む)または多角形であってもよいことは当然である。
【0103】
なお、被覆体204は、第1導体202および第2導体203をそれぞれ覆う不導体であれば良く、例えば、アルミナ以外のセラミック材、樹脂材またはゴム材などで構成することもできる。また、第1導体202、第2導体203および被覆体204の大きさは、予備プラズマPを生成する必要性に応じて適宜設計されるものであり、本第2実施形態に限定されるものではないことは当然である。この被覆体204は、第1主放電電極210に支持されている。
【0104】
第1主放電電極210は、プラズマガスを供給しつつ第1予備放電電極201を支持するとともに第2主放電電極220と対を構成して主プラズマPを発生させるための部品であり、導電性を有する材料を長尺に延ばして形成されている。より具体的には、第1主放電電極210は、第1予備放電電極201に沿って長尺に延びるとともに第2主放電電極220に対して対向する板状体で構成されている。本実施形態においては、第1主放電電極210は、アルミニウム材を長さが100mm、幅が50mmおよび厚さが15mmの板状体に図示上方に向かって開口する凹部を形成して構成されている。この第1主放電電極210は、保持部211と電極部216とで構成されている。
【0105】
保持部211は、主として、第1予備放電電極201を支持する部分であり、平面視で長方形の枠状に形成されている。この保持部211は、第2主放電電極220に対向する側が内側に屈曲して方形枠状の平面部が形成されており、この方形枠状の平面部に第1予備放電電極201が絶縁性のセラミック接着剤(図示せず)で固着されている。
【0106】
また、保持部211には、前記方形枠状の平面部の内側に開口部211aが形成されるとともに、保持部211における電極部216側にプラズマガスジャケット212が形成されている。開口部211aは、プラズマガスジャケット212内に導かれたプラズマガスを第1予備放電電極201における第1プラズマガス噴出口205に導くために開口した部分である。
【0107】
プラズマガスジャケット212は、電極部216の導入路217a,217b,217cから導かれるプラズマガスを一時的に貯留して第1予備放電電極201に導くための部分であり、保持部211を貫通する空洞部で構成されている。本第2実施形態においては、プラズマガスジャケット212は、保持部211の裏面側から見た平面視で略長方形状に形成されている。このプラズマガスジャケット212内には、パンチングプレート213,214およびスペーサ215がそれぞれ設けられている。
【0108】
パンチングプレート213,214は、プラズマガスジャケット212内に導入されたプラズマガスの流れを緩衝するための部品であり、上記第1実施形態におけるパンチングプレート116a,116bと同様に構成されている。スペーサ215は、パンチングプレート213,214が互いに密着して重なること防止するとともに、パンチングプレート213,214の各板面がプラズマガスジャケット212および電極部216にそれぞれ密着することを防止してこれらの各間に隙間を形成するための部品である。
【0109】
このスペーサ215は、金属材、樹脂材またはセラミック材を平板リング状に形成して構成されている。本実施形態においては、スペーサ215は、プラズマガスジャケット212の底部部分とパンチングプレート213との間、パンチングプレート213とパンチングプレート214との間、パンチングプレート214と電極部216の図示上面との間にそれぞれ配置されている。なお、上記第1実施形態においては、説明を省略したが、上記第1実施形態においてもスペーサ215に相当するスペーサが設けられている。
【0110】
電極部216は、第1主放電電極210において主として電極として機能しつつプラズマガスジャケット212における図示上方側の開口部を覆ってプラズマガスジャケット212内を密閉するとともにプラズマガスジャケット212内にプラズマガスを導くための部品であり、導電性を有する金属材料を平面視で保持部211と同じ大きさの方形の板状に形成して構成されている。この電極部216は、第2主放電電極220に対向する主電極対向面216aは平面状に形成されているとともに、この主電極対向面216aに開口した状態で導入路217a,217b,217cがそれぞれ形成されている。
【0111】
導入路217a,217b,217cは、上記第1実施形態における導入路117a,117bに相当する部分であり、プラズマガスジャケット212内にプラズマガスを導く。これらの3つの導入路217a,217b,217cは、上記第1実施形態におけるプラズマガス供給装置160に相当するプラズマガス供給装置(図示せず)に接続されている。
【0112】
この第1主放電電極210は、第1電源240に電気的に接続された状態で第2主放電電極220に対して所定の距離を介した位置に電極支持体218によって支持されている。電極支持体218は、上記第1実施形態における電極支持体118に相当する部品であり、プラズマ生成装置200に固定的に設けられている。
【0113】
第2主放電電極220は、第1主放電電極210と対を構成して主プラズマPを発生させるための部品であり、導電性を有する材料を長尺に延ばして形成されている。より具体的には、第2主放電電極220は、第1主放電電極210に保持された第1予備放電電極201に主放電用誘電体230を介して対向する主電極対向面221を有した板状体で構成されている。本実施形態においては、第2主放電電極220は、アルミニウム材を長さが100mm、幅が50mmおよび厚さが10mmの板状体に形成して構成されている。この第2主放電電極220は、第1予備放電電極201および第1主放電電極210に対して所定の距離を介した位置に電極支持体222によって支持された状態で第2電源242に電気的に接続されている。
【0114】
主電極対向面221は、第1主放電電極210における主電極対向面216aに面して主プラズマPを発生させるための部分であり、主電極対向面216aと平行な平面に形成されている。この場合、主電極対向面221は、第2主放電電極220の長手方向および同長手方向に直交する幅方向の各端部がそれぞれ丸みを帯びた曲面形状に形成されて局所的な放電が発生すること防止している。なお、第2主放電電極220は、導電性を有する材料であれば良く、例えば、銀、金、チタンまたは銅などアルミニウム材以外の材料で構成することもできる。また、電極支持体222は、上記第1実施形態における電極支持体138に相当する部品であり、プラズマ生成装置200に固定的に設けられている。
【0115】
主放電用誘電体230は、第1主放電電極210と第2主放電電極220との間で両者を電気的に絶縁するとともに被処理物WKを支持するための部品であり、第1予備放電電極201と第2主放電電極220の主電極対向面221との間で両者を覆う大きさの不導体で構成されている。すなわち、主放電用誘電体230は、上記第1実施形態における主放電用誘電体150に相当する。
【0116】
この主放電用誘電体230は、第1予備放電電極201および主電極対向面221の各長手方向および各幅方向の長さよりも長い長さのフッ素樹脂製のシート材を環状の無端ベルト状に形成されており、上記第1実施形態における誘電体駆動装置151に相当する誘電体駆動装置(図示せず)における駆動ローラと従動ローラとの間に水平状態で架設されている。
【0117】
この場合、主放電用誘電体230は、第1予備放電電極201に隣接配置されている。より具体的には、主放電用誘電体230は、第1予備放電電極201で発生して第1プラズマガス噴出口205から噴出する予備プラズマPに接する程度に接近した位置に配置されている。なお、本第2実施形態においては、主放電用誘電体230は、厚さが1mmのフッ素樹脂製のシートを用いている。また、本第2実施形態における主放電用誘電体230は、無端ベルトの周方向に沿って柔軟に屈曲する不導体で構成されていればよく、フッ素樹脂材以外の樹脂材(例えば、ポリアミド樹脂材など)からなるシート材であってもよい。
【0118】
第1電源240および第2電源242は、第1予備放電電極201に予備プラズマPを発生させるとともに第1主放電電極210と第2主放電電極220との間で主プラズマPを発生させるための電気機器である。
【0119】
第1電源240は、第1予備放電電極201を構成する2つの電極である第1導体202および第2導体203のうちの一方と第1主放電電極210とに対して交流電圧を印加するための電気機器である。本実施形態においては、第1電源240は、一般家庭用電源(100V)から電力供給を受けて第1導体202および第1主放電電極210に対して電圧が±1kV~±20kVの範囲でかつ周波数が100Hz~30kHzの範囲で所望の電圧および周波数の交流電圧を印加することができる。
【0120】
この場合、第1電源240は、出力電圧の位相を変化させる図示しない移相器を備えている。また、第1電源240は、矩形波、正弦波、台形波および三角波のうちのいずれの交流電圧を連続的または間欠的に出力するものであってもよい。すなわち、第1電源240は、上記第1実施形態における第1電源170に相当する。そして、この第1電源240は、アース241を介して接地されている。
【0121】
第2電源242は、第1予備放電電極201を構成する2つの電極である第1導体202および第2導体203のうちの他方と第2主放電電極220とに対して交流電圧を印加するための電気機器である。本実施形態においては、第2電源242は、前記第2電源171と同様に、一般家庭用電源(100V)から電力供給を受けて第2導体203および第2主放電電極220に対して電圧が±1kV~±20kVの範囲でかつ周波数が100Hz~30kHzの範囲で所望の電圧および周波数の交流電圧を印加することができる。
【0122】
この場合、第2電源242は、出力電圧の位相を変化させる図示しない移相器を備えている。また、第2電源242は、矩形波、正弦波、台形波および三角波のうちのいずれの交流電圧を連続的または間欠的に出力するものであってもよい。この第2電源242は、上記第1実施形態における第2電源171に対して第2主放電電極220と第1予備放電電極201とに接続されている点で異なっている。そして、この第2電源242は、アース243を介して接地されている。
【0123】
なお、アース241,243は、第1電源240と第2電源242とで共通の1つのアースで構成してもよい。また、これらの第1電源240および第2電源242の出力電圧および周波数は、生成する予備プラズマPおよび主プラズマPに応じて適宜設定されるものであって本実施形態に限定されるものでないことは当然である。また、このプラズマ生成装置200は、被処理物WKにプラズマを照射する作業を行う屋内または屋外の作業台上に直接載置または取り付けて設けられるほか、被処理物WKにプラズマを照射する作業を含む被処理物WKの加工装置や搬送装置の一部に組み込んで設けられる。
【0124】
(プラズマ生成装置200の作動)
次に、上記のように構成したプラズマ生成装置200の作動について説明する。このプラズマ生成装置200は、上記第1実施形態におけるプラズマ生成装置100と同様に、食品の製造加工ラインに組み込まれてこれらを被処理物WKとして殺菌消毒処理を行う。この場合、プラズマ生成装置200は、標準大気圧の大気中に直接露出した状態で設置される。
【0125】
プラズマ生成装置200を使用して被処理物WKにプラズマ照射を行う作業者は、まず、プラズマ処理に関する初期設定を行う。具体的には、作業者は、プラズマ生成装置200における第1電源240および第2電源242をそれぞれ操作して各電源が出力する電圧、電流、周波数および位相をそれぞれ設定する。この場合、作業者は、第1電源240が出力する交流の出力電圧と第2電源242が出力する交流の出力電圧とが互いに同じ周波数でかつ位相が互いに180°だけずれた逆位相となるように設定する。
【0126】
また、第1電源240および第2電源242をそれぞれ操作して各電源が出力する電圧、電流および周波数は、主プラズマPを発生させるための電圧、電流および周波数であり、プラズマ処理内容に応じて予め実験的に求められる。本実施形態においては、作業者は、第1電源240および第2電源242に対して、例えば、それぞれ電圧が±9kV、電流が20mAおよび周波数が10kHzで互いに逆位相の交流電圧を設定する。なお、第1電源240および第2電源242の各出力電圧を互いに同じ値に設定してもよいが、互いに異なる出力電圧値に設定することもできる。
【0127】
次に、作業者は、第1主放電電極210と第2主放電電極220との間に主プラズマPを発生させる。具体的には、作業者は、第1電源240および第2電源242をそれぞれ操作して交流電圧を出力させるとともに、プラズマガス供給装置(図示せず)を操作してプラズマガスジャケット212内にプラズマガスの供給を開始させる。
【0128】
これにより、第1予備放電電極201においては、図11に示すように、第1導体202と第2導体203との間に印加された交流電圧によって第1プラズマガス噴出口205内の大気の一部が電離するとともに活性化されて予備プラズマPが発生する。すなわち、予備プラズマPは、大気圧下における誘電体バリア放電によって生成される。なお、図11においては、予備プラズマPを薄いハッチングで示している。また、図11においては、第1電源240および第2電源242が第1導体202および第2導体203にそれぞれ接続されている状態を示すため、第1電源240から延びる配線の一部を想像線(二点鎖線)で示すとともに、第2電源242から延びる配線の一部を隠れ線(破線)で示す。
【0129】
一方、プラズマガスジャケット212内に導入されたプラズマガスは、2つのパンチングプレート213,214に遮られながら通過して蛇行しながら第1プラズマガス噴出口205に進入する。これにより、第1プラズマガス噴出口205内にいては、予備プラズマPの生成が促進される。そして、第1プラズマガス噴出口205内で生成されたに予備プラズマPは、第1プラズマガス噴出口205内に連続的に供給されるプラズマガスによって第1予備放電電極201から第2主放電電極220に向かって噴出する。この場合、第1プラズマガス噴出口205から噴出したプラズマガスは、主放電用誘電体230に衝突することで主放電用誘電体230における第1予備放電電極201側のプラズマガスの濃度が向上する。
【0130】
これにより、第1予備放電電極201と第2主放電電極220との間においては、図12に示すように、第1主放電電極210と第2主放電電極220との間に印加された交流電圧によって第1予備放電電極201と第2主放電電極220との間に存在する大気および第1プラズマガス噴出口205内から噴出したプラズマガスの各一部が前記予備プラズマPによって発生した電子または活性種をトリガとして電離するとともに活性化されて主プラズマPが発生する。
【0131】
この場合、主プラズマPは、30個の第1プラズマガス噴出口205の外縁に対応する略方形の平面状の領域内でプラズマが柱状に延びて形成される。すなわち、本発明に係るプラズマ生成装置200は、第1予備放電電極201と第2主放電電極220との間で均一な柱状の主プラズマPを形成することができる。この場合、作業者は、プラズマガス供給設備(図示せず)を操作してプラズマガスの供給量を増加または減少させることで主プラズマPの生成を促進または減退させて主プラズマPが生成される領域を広げまたは狭めることができる。
【0132】
なお、図8図9図11および図12においては、プラズマガスの流れを破線矢印で示している。また、図12においては、主プラズマPを予備プラズマPよりも濃いハッチングで示している。また、第1予備放電電極201と第2主放電電極220との間で均一な放電が面状に広がって柱状に立ち上る主プラズマPとは、少なくとも人が目視で均一と確認できるレベルである。
【0133】
次に、作業者は、主放電用誘電体230を回転駆動させる。具体的には、作業者は、誘電体駆動装置(図示せず)を操作することで主放電用誘電体230を回転駆動させる(図8における破線矢印参照)。
【0134】
次に、作業者は、被処理物WKへのプラズマ照射処理を行う。具体的には、作業者は、主放電用誘電体230上に被処理物WKを連続的に供給する供給装置(図示せず)の作動を開始させることによって主放電用誘電体230上に被処理物WKを連続的に供給する。これにより、主放電用誘電体230上に載置された被処理物WKは、第1予備放電電極201と第2主放電電極220との間に形成された主プラズマP中を通過することでプラズマ照射されて殺菌処理が行なわれる。そして、主プラズマPが照射された被処理物WKは、図示しない被処理物WKの回収装置によって回収される。
【0135】
次に、作業者は、被処理物WKへのプラズマ照射処理を終了する場合には、被処理物WKを主放電用誘電体230上に供給するワーク供給装置の作動を停止させた後、第1電源240および第2電源242の各作動を停止させて第1予備放電電極201、第1主放電電極210および第2主放電電極220への交流電圧の印加を停止させる。これにより、プラズマ生成装置200は、予備プラズマPおよび主プラズマPが消滅するため、被処理物WKへのプラズマ照射処理を終了することができる。この場合、作業者は、予備プラズマPおよび主プラズマPの消滅とともに、プラズマガス供給設備(図示せず)を操作してプラズマガスの供給を停止させる
【0136】
なお、作業者は、プラズマガス供給設備(図示せず)を操作してプラズマガスの供給を停止させることによっても予備プラズマPおよび主プラズマPを消滅させることができる。これの場合、作業者は、予備プラズマPおよび主プラズマPの消滅とともに、第1電源240および第2電源242の各作動を停止させる。
【0137】
上記作動説明からも理解できるように、上記第2実施形態によれば、プラズマ生成装置200は、第1予備放電電極201が一対の主放電電極を構成する第1主放電電極210に隣接して設けられているとともに、この第1予備放電電極201に主放電用誘電体230が隣接配置されている。これにより、プラズマ生成装置200においては、第1予備放電電極201が隣接する第1主放電電極210との間におけるプラズマガスの電離または活性化を促進して予備プラズマPを積極的に生成させることでこの予備プラズマPを起因として第2主放電電極220との間でより大きな主プラズマPを発生させることができる。
【0138】
さらに、本発明の実施にあたっては、上記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。なお、下記変形例の説明においては、参照する各図における上記実施形態と同様の構成部分に同じ符号または対応する符号を付すとともに直接関わらない部分については説明を省略する。
【0139】
例えば、上記第1実施形態においては、第1予備放電電極120および第2予備放電電極140は、導体121,141と予備放電用誘電体122,142とを一体的に組み付けて構成した。しかし、第1予備放電電極120および第2予備放電電極140は、少なくとも導体121,141を備えて構成されていればよい。したがって、第1予備放電電極120および第2予備放電電極140は、導体121,141のみで構成することができる。この場合、導体121,141のみで構成された第1予備放電電極120および第2予備放電電極140は、別体で設けた誘電体(例えば、セラミック接着剤など)を介して予備放電電極収容部112,132に収容すればよい。
【0140】
また、上記第1実施形態においては、プラズマ生成装置100は、第1予備放電電極120および第2予備放電電極140をそれぞれ備えて構成した。しかし、本発明に係るプラズマ生成装置は、第1予備放電電極を備えて構成されればよい。したがって、プラズマ生成装置100は、第2実施形態のように、第2予備放電電極140を省略して構成することができる。この場合、第2電源171は、第2主放電電極130と第1予備放電電極120との間に交流電圧を供給するように接続されればよい。
【0141】
また、上記第1実施形態においては、複数の第1予備放電電極120と複数の第2予備放電電極140とが互いに対向し合わないようにずれ位置にそれぞれ配置されている。これにより、プラズマ生成装置100は、均一な面状の主プラズマPを効果的に形成することができる。しかし、複数の第1予備放電電極120と複数の第2予備放電電極140とは、互いに対向し合うように配置されていても主プラズマPを効果的に形成するができるものである。
【0142】
また、上記第1実施形態においては、プラズマ生成装置100は、第1予備放電電極120および第2予備放電電極140にそれぞれプラズマガスを供給するように構成した。しかし、プラズマ生成装置100は、第1予備放電電極120および第2予備放電電極140に対して必ずしもプラズマガスを供給する必要はない。したがって、プラズマ生成装置100は、第1予備放電電極120および第2予備放電電極140にそれぞれプラズマガスを供給しないように構成することもできる。
【0143】
この場合、プラズマ生成装置100は、プラズマガスジャケット115,135、導入路117a,117b,137a,137bおよびプラズマガス供給装置160,161もそれぞれ省略することができる。この場合、ジャケット覆い体117も省略することができる。なお、プラズマ生成装置100は、第1予備放電電極120および第2予備放電電極140に対してプラズマガスを供給する場合であっても、プラズマガスジャケット115,135は必ずしも必要ではなく、導入路117a,117b,137a,137bを介してプラズマガスを供給することができる。また、プラズマ生成装置100は、第1予備放電電極120および第2予備放電電極140を設ける場合においては、第1予備放電電極120に対してのみプラズマガスを供給するように構成することもできる。
【0144】
また、上記第1実施形態においては、プラズマ生成装置100は、第1主放電電極110に第1プラズマガス噴出口114を設けるとともに第2主放電電極130に第2プラズマガス噴出口134を設けて構成した。しかし、第1プラズマガス噴出口114は、第1予備放電電極120と主放電用誘電体150との間にプラズマガスを供給するように構成すればよい。また、第2プラズマガス噴出口134は、第2予備放電電極140と主放電用誘電体150との間にプラズマガスを供給するように構成すればよい。
【0145】
したがって、例えば、プラズマ生成装置300は、図13に示すように、第1主放電電極110および第2主放電電極130の周囲から第1予備放電電極120と主放電用誘電体150との間および第2予備放電電極140と主放電用誘電体150との間にそれぞれプラズマガス(図示破線矢印参照)を供給するノズルを第1プラズマガス噴出口114および第2プラズマガス噴出口134として設けることもできる。この場合、第1プラズマガス噴出口114および第2プラズマガス噴出口134をそれぞれ構成する各ノズルは、プラズマガス供給装置160,161にそれぞれ接続される。
【0146】
また、上記第1実施形態においては、第1プラズマガス噴出口114から噴出させるプラズマガスを第2プラズマガス噴出口134から噴出させるプラズマガスよりもプラズマが発生させ易いプラズマガスを選択した。これにより、プラズマ生成装置100は、平面状の主放電用誘電体150における一方の面(第1予備放電電極120が隣接配置された側の面)側に沿ってより密度の濃い均一な予備プラズマPを生成させることができ、均一な主プラズマPを低い放電開始電圧または広い電極間距離で生成することができる。また、プラズマの発生を促すプラズマガスは、一般に高価であるため、主放電用誘電体150に対して離れた位置に設けられる第2プラズマガス噴出口134から噴出させるプラズマガスを安価にすることでプラズマ処理全体を低コスト化することができる。
【0147】
また、第1プラズマガス噴出口114からプラズマが発生させ易いプラズマガスを噴出させるとともに、第2プラズマガス噴出口134からプラズマ処理に機能を付加することができるプラズマガスを噴出させてプラズマ処理を機能化することができる。例えば、プラズマ生成装置100は、プラズマ処理とともに被処理物WKに対してクリーニング処理または酸化処理を行う場合には、プラズマガスに酸素などの機能性ガスを混合することができ、OH基修飾処理を行う場合には、プラズマガスに水蒸気などの機能性ガスを混合することができる。この場合、プラズマ生成装置100は、機能性ガスを含むことで主プラズマPが生成し難くなることおよび放電開始電圧が高くなることを抑制することができる。また、プラズマ生成装置100は、被処理物WKに対して薄膜形成処理を行う場合には、プラズマガスにメタンガスまたはアセチレンガスを添加した機能性ガスを用いることができる。
【0148】
一方、第1プラズマガス噴出口114から噴出させるプラズマガスと第2プラズマガス噴出口134から噴出させるプラズマガスとは、同種のプラズマガスであってもよいことは当然である。また、第2プラズマガス噴出口134から噴出させるプラズマガスを第1プラズマガス噴出口114から噴出させるプラズマガスよりもプラズマが発生させ易いプラズマガスを選択することもできる。
【0149】
また、上記第1実施形態においては、制御装置180は、第1プラズマガス噴出口114からプラズマガスを噴出させて予備プラズマPを生成した後に第2プラズマガス噴出口134からプラズマガスを噴出するようにプラズマガスの噴出制御を行った。しかし、制御装置180は、第1プラズマガス噴出口114からのプラズマガスの噴出と第2プラズマガス噴出口134からのプラズマガスの噴出を同時行うように制御してもよい。また、第2プラズマガス噴出口134からプラズマガスを噴出させ後に第1プラズマガス噴出口114からプラズマガスを噴出するようにプラズマガスの噴出制御を行ってもよい。
【0150】
また、上記第1実施形態においては、プラズマ生成装置100は、制御装置180を備えて構成した。これにより、プラズマ生成装置100は、誘電体駆動装置151、プラズマガス供給装置160,161、第1電源170および第2電源171をそれぞれ自動制御することができる。しかし、プラズマ生成装置100は、制御装置180を省略して誘電体駆動装置151、プラズマガス供給装置160,161、第1電源170および第2電源171をそれぞれ手動で操作するようにしてもよい。
【0151】
また、上記第1実施形態においては、第1主放電電極110に第1プラズマガス噴出口114を設けるとともに第2主放電電極130に第2プラズマガス噴出口134を設けた。しかし、第1プラズマガス噴出口114は、第1主放電電極110および第1予備放電電極120のうちの少なくとも一方に設けることができる。また、第2プラズマガス噴出口134は、第2主放電電極130および第2予備放電電極140のうちの少なくとも一方に設けることができる。したがって、第1プラズマガス噴出口114および第2プラズマガス噴出口134は、第2実施形態のように、第1予備放電電極201に設けることもできる。なお、第2実施形態における導入路217a~217cは、第1プラズマガス噴出口205とともに本発明に係る第1プラズマガス噴出口に相当する。
【0152】
また、上記第2実施形態においては、プラズマ生成装置200は、プラズマガスジャケット212を備えて構成した。しかし、プラズマ生成装置200は、プラズマガスジャケット212を省略して構成することもできる。この場合、プラズマ生成装置200は、第1予備放電電極201における第1プラズマガス噴出口205毎に導入路217a~217cに相当する導入路を備えればよい。
【0153】
また、上記各実施形態においては、主放電用誘電体150,230は、無端ベルト状に形成した。しかし、主放電用誘電体150,230は、誘電体で構成されていればよい。したがって、主放電用誘電体150,230は、ガラスを含むセラミック材、樹脂材またはゴム材などの不導体を環状に形成されていない単なる平面状のシート状、剛性または可撓性を有する板状に形成して構成することができる。
【0154】
また、上記各実施形態においては、主放電用誘電体150,230を第1予備放電電極120,201に近接配置した。この場合、主放電用誘電体150,230は、第1予備放電電極120,201に対して第1予備放電電極120,201が発生させる予備プラズマPに接する程度の位置に配置されるとよい。この場合、主放電用誘電体150,230と第1予備放電電極120,201との間隔は、0mm以上かつ10mm以下が好適であり、0mm以上かつ5mm以下が更に好適である。すなわち、主放電用誘電体150,230と第1予備放電電極120,201とは、互いに接触する位置関係であってもよい。また、主放電用誘電体150,230と第1予備放電電極120,201との間隔は、主放電用誘電体150と第2予備放電電極140または第2主放電電極130,220との間隔よりも狭く設定してもよい。
【0155】
また、上記各実施形態においては、プラズマ生成装置100,200は、食品からなる被処理物WKに対して主プラズマPを照射して殺菌消毒するように構成した。しかし、プラズマ生成装置100,200は、食品以外の被処理物WK(例えば、医療器具など)に対して主プラズマPを照射して殺菌消毒するように構成してもよいし、殺菌挿毒以外の目的で被処理物WKに対して主プラズマPを照射してもよい。プラズマ生成装置100,200は、例えば、アッシング、エッチングまたは被膜形成などの表面処理、接着性や濡れ性の改善または表面硬化などの表面改質に用いることができる。
【符号の説明】
【0156】
WK…被処理物、P…予備プラズマ、P…主プラズマ、
100…プラズマ生成装置、
110…第1主放電電極、111…主電極対向面、112…予備放電電極収容部、113…セラミック接着剤、114…第1プラズマガス噴出口、115…プラズマガスジャケット、116a,116b…パンチングプレート、117…ジャケット覆い体、117a,117b…導入路、118…電極支持体、
120…第1予備放電電極、121…導体、122…予備放電用誘電体、
130…第2主放電電極、131…主電極対向面、132…予備放電電極収容部、133…セラミック接着剤、134…第2プラズマガス噴出口、135…プラズマガスジャケット、136a,136b…パンチングプレート、137…ジャケット覆い体、137a,137b…導入路、138…電極支持体、
140…第2予備放電電極、141…導体、142…予備放電用誘電体、
150…主放電用誘電体、151…誘電体駆動装置、
160,161…プラズマガス供給装置、
170…第1電源、171…第2電源、172…アース、
180…制御装置、181…操作盤、
200…プラズマ生成装置、
201…第1予備放電電極、202…第1導体、203…第2導体、204…被覆体、205…第1プラズマガス噴出口、
210…第1主放電電極、211…保持部、211a…開口部、212…プラズマガスジャケット、213,214…パンチングプレート、215…スペーサ、216…電極部、216a…主電極対向面、217a,217b,217c…導入路、218…電極支持体、
220…第2主放電電極、221…主電極対向面、222…電極支持体、
230…主放電用誘電体、
240…第1電源、241…アース、242…第2電源、243…アース。
300…プラズマ生成装置。
図1
図2
図3
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図5
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図7
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図9
図10
図11
図12
図13