IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大和グラビヤ株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-液体収納袋 図1
  • 特開-液体収納袋 図2
  • 特開-液体収納袋 図3
  • 特開-液体収納袋 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023110121
(43)【公開日】2023-08-09
(54)【発明の名称】液体収納袋
(51)【国際特許分類】
   B65D 77/06 20060101AFI20230802BHJP
【FI】
B65D77/06 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022011355
(22)【出願日】2022-01-28
(71)【出願人】
【識別番号】000208226
【氏名又は名称】大和グラビヤ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】弁理士法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今井 一元
【テーマコード(参考)】
3E067
【Fターム(参考)】
3E067AA03
3E067AA04
3E067AB99
3E067AC01
3E067BA03C
3E067BA12B
3E067BB14C
3E067BB15B
3E067BB16B
3E067BB25B
3E067BB26B
3E067CA04
3E067CA07
3E067CA12
3E067CA13
3E067CA21
3E067CA24
3E067EB01
3E067EB15
3E067EB32
3E067EE40
3E067EE56
3E067EE59
3E067FA04
3E067FC01
3E067GD01
(57)【要約】
【課題】容器の液体取り出し口から下方に突出するニードルが袋の底部に突き刺さる液体収納袋に於いて、袋内部の液体を最後まで取り出すことができ、また容器が倒れても袋内部の液体が容器内で漏れることがなく、且つリサイクル性に優れた液体収納袋を提供する。
【解決手段】液体収納袋10は、内部に液体を収納して、ポンプ部材23を上端に備える容器20内に上下逆さに収容され、ポンプ部材23から下方に突出するニードル24が袋の底部13に突き刺さるものである。袋の底部13は、ポリエチレン系樹脂フィルムからなる底材14によって構成される。底材14は、少なくとも基材層と止水層とを有する。前記基材層は、縦方向及び横方向の少なくとも一方向の破断伸度が300%以下である。前記止水層は、縦方向及び横方向の少なくとも一方向の引裂き強度が3N以上であり、且つ縦方向と横方向との引裂強度の比(縦方向/横方向)が0.5以上2以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に液体を収納して、液体取り出し口を上端に備える容器の内部に上下逆さに収容され、前記液体取り出し口から下方に突出するニードルが袋の底部に突き刺さる液体収納袋であって、
前記袋の底部は、ポリエチレン系樹脂フィルムからなる底材によって構成され、
前記底材は、少なくとも基材層と止水層とを有し、
前記基材層は、縦方向及び横方向の少なくとも一方向の破断伸度が300%以下であり、
前記止水層は、縦方向及び横方向の少なくとも一方向の引裂き強度が3N以上であり、且つ縦方向と横方向との引裂強度の比(縦方向/横方向)が0.5以上2以下であること
を特徴とする液体収納袋。
【請求項2】
前記袋の胴部がポリエチレン系樹脂フィルムからなる胴材によって構成されること
を特徴とする請求項1に記載の液体収納袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗剤などの液体を収納する液体収納袋に関するものであり、特に、利便性とリサイクル性に優れた液体収納袋に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から家庭などで使用される液状の洗剤などは、合成樹脂製の容器に詰められて販売されているが、例えば、容器内の洗剤がなくなると、合成樹脂製の袋の中に入った詰め替え用洗剤を空の容器に詰め替えていた。
【0003】
しかしながら、上記のように詰め替え用洗剤を空の容器内に詰め替える場合には、合成樹脂製の柔軟な袋を手に持って詰め替え作業を行うこととなるため、袋の口部の位置が不安定となる。そのため、容器の口部と袋の口部を合わせて詰め替え作業を行なうのに手間がかかり、容器の外に洗剤がこぼれるという問題があった。
【0004】
この問題を解決するために、例えば、特許文献1に示すように、容器の上端に備えてなる液体取り出し部となるポンプ部材と、ポンプ部材から下方に突出する吸い込み用ニードルと、を有する空の容器内に、詰め替え用洗剤が入った合成樹脂製袋(液体収納袋)を入れ、吸い込み用ニードルを前記袋に突き刺し、前記ポンプ部材の上下操作によって、袋内の洗剤を吸い込み用ニードルから取り出すように構成したものが知られている。
【0005】
特許文献1に示すような液体収納袋は、前記吸い込み用ニードルが突き刺さる部分のみならず、袋全体が延伸ナイロンフィルムとポリオレフィン系フィルムを積層してなるラミネートフィルムによって構成されている。延伸ナイロンフィルムは、吸い込み用ニードルが突き刺さるときの力によって吸い込み用ニードルの先端で裂ける方向に力が掛かることで裂けやすいという性質を有する。
【0006】
しかしながら、特許文献1に示すような液体収納袋では、延伸ナイロンフィルムにラミネートされたポリオレフィン系フィルムも、吸い込み用ニードルを袋に突き刺すときの力によって、延伸ナイロンフィルムと同調し、吸い込み用ニードルの先端でラミネートフィルムに裂け目が生じる。そのため、吸い込み用ニードルが貫通した孔部周囲の裂け目から袋内部に空気が入る。それゆえに、袋内部の洗剤が少量になってくると、前記ポンプ部材を操作しても吸い込み用ニードルから空気を吸い込み、袋内部の洗剤を最後まで取り出すことができないという問題があった。また、容器が倒れたりしたときに、前記裂け目から袋内部の洗剤が容器内で漏れ、この漏れた洗剤によって容器内が汚れ、さらには容器外にも洗剤が漏れるという問題があった。
【0007】
そこで、上記問題を解決する手段として、例えば、特許文献2に示すように、内部に洗剤などの液体が収納される液体収納袋であって、袋全体にバリア性のある材料からなる層を有するとともに、この袋の少なくとも一部に於いて未延伸ナイロンフィルムとポリオレフィン系フィルムとを積層接着してなるラミネートフィルムの層を前記バリア層に接着させずに重ねて設けたことを特徴とする液体収納袋が知られている。特許文献2に示す液体収納袋では、ラミネートフィルムに裂け目が生じることなく、袋内部の洗剤を最後まで取り出すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3526626号公報
【特許文献2】特許第2527529号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献2に示すような液体収納袋では、使用後に、それぞれの層(未延伸ナイロンフィルム、ポリオレフィン系フィルム及びバリア性を有する層)を分離することが困難である。そのため、特許文献2に示すような液体収納袋では、使用後に回収した液体収納袋はリサイクルに適しておらず、積極的にはリサイクルされていないという現状がある。
【0010】
本発明は、上記課題を解決するもので、容器の液体取り出し口から下方に突出するニードルが袋の底部に突き刺さる液体収納袋に於いて、袋内部の液体を最後まで取り出すことができ、また容器が倒れても袋内部の液体が容器内で漏れることがなく、且つリサイクル性に優れた液体収納袋を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明に係る液体収納袋は、内部に液体を収納して、液体取り出し口を上端に備える容器の内部に上下逆さに収容され、前記液体取り出し口から下方に突出するニードルが袋の底部に突き刺さる液体収納袋であって、前記袋の底部は、ポリエチレン系樹脂フィルムからなる底材によって構成され、前記底材は、少なくとも基材層と止水層とを有し、前記基材層は、縦方向及び横方向の少なくとも一方向の破断伸度が300%以下であり、前記止水層は、縦方向及び横方向の少なくとも一方向の引裂き強度が3N以上であり、且つ縦方向と横方向との引裂強度の比(縦方向/横方向)が0.5以上2以下のものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。すなわち、本発明に係る液体収納袋は、液体取り出し口を備える容器のニードルを袋の底部に突き刺した場合であっても、袋に於けるニードルの突き刺し部が裂けることがなくニードルに密着することから、袋内部に空気が入ることが無い。そのため、袋内部の液体が少量になった場合であっても袋を真空状態に保つことができ、袋内部の液体を殆ど最後まで取り出すことができる。また、容器が倒れても袋内部の液体が容器内で漏れることがない。さらに、ポリエチレン系樹脂としてリサイクル性に優れた液体収納袋を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る液体収納袋を収容する容器の分解斜視図である。
図2】本発明に係る液体収納袋を収容する容器の斜視図である。
図3】本発明に係る液体収納袋の斜視図である。
図4】本発明に係る液体収納袋を製袋する際の胴材用の積層フィルム(胴材用となる前後の壁面の積層フィルム)と、底材用の積層フィルムとの配置状態を説明する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の実施例に係る液体収納袋10について説明する。但し、本発明はその要旨を越えない限り、これらに限定されるものではない。図1は、本発明に係る液体収納袋10を収容する容器20の分解斜視図である。図2は、本発明に係る液体収納袋10を収容する容器20の斜視図である。図3は、本発明に係る液体収納袋10の斜視図である。図4は、本発明に係る液体収納袋10を製袋する際の胴材15用の積層フィルム(胴材用となる前後の壁面の積層フィルム)と、底材14用の積層フィルムとの配置状態を説明する斜視図である。
【0015】
図1及び図2に示すように、液体収納袋10は、液体取り出し口を上端に備える容器20の内部に上下逆さに収容される。より具体的には、液体収納袋10は、底部13が上端となるように、底部13を上方に向けた状態で容器本体21に入れられ、容器本体21の上方から蓋体22が嵌められることで、容器20の内部に収容される。
【0016】
蓋体22には、液体取り出し口となるポンプ部材23が装着されている。ポンプ部材23には、下方に突出するニードル24が設けられている。ニードル24は、その先端部が、容器本体21に入れられた液体収納袋10の底部13に突き刺さり、液体収納袋10の下端近傍に位置するように、液体収納袋10に挿入される。
【0017】
図3に示すように、液体収納袋10は、対向する両側の2辺にヒートシールによるシール部11を備える胴部12と、下端に膨らんだ底部13と、を有するスタンディングパウチである。図4に示すように、液体収納袋10は、例えば、二つ折りの底材14と、底材14とは別体の2枚の胴材15とを所定の箇所でヒートシールすることによって製造される。
【0018】
胴部12を形成する胴材15は、ポリエチレン系樹脂フィルムによって構成される。同様に、底部13を形成する底材14は、ポリエチレン系樹脂フィルムによって構成される。このように、液体収納袋10は、ポリエチレン系樹脂フィルムによって構成される。
【0019】
底材14は、少なくとも基材層及び止水層を有する。
【0020】
本発明の底材14に用いられる基材層は、縦方向或いは横方向の少なくともどちらかの方向の破断伸度が300%以下である。底材14の基材層の破断伸度が300%を超えた場合、容器20に付随する液体取出し用のニードル24を底部13に突き刺す際に、底材14を構成するフィルムに伸びが生じ、ニードル24が底部13に突き刺さらなくなる。
【0021】
底材14の基材層の破断伸度を300%以下とするには、底材14を構成するフィルムが延伸されていることが好ましい。底材14を構成するフィルムの延伸処理は、一軸延伸であっても二軸延伸であっても良く、より好ましくは二軸延伸である。当該フィルムを二軸延伸することによって、フィルムの剛性が上がる。さらに、印刷加工、貼り合わせ加工或いは製袋加工に於いて、インキや接着剤の乾燥時の熱工程に於ける張力によるフィルムの伸びが無くなり、加工性が改善される。また、一軸延伸の場合は、加工時の張力に対する剛性が高くなる縦方向に延伸されたフィルムであることが好ましい。
【0022】
底材14の基材層の縦方向及び横方向への延伸倍率は、一軸延伸の場合には2倍以上10倍以下であることが好ましく、二軸延伸の場合には縦倍率と横倍率の積(面積倍率)が4倍以上16倍以下であることが好ましい。底材14の基材層の縦方向及び横方向への延伸倍率を、2倍以上(一軸延伸の場合)或いは4倍以上(二軸延伸の場合)とすることによって、底材14の基材層の破断伸度を300%以下とすることができ、且つ強度及び耐熱性をより向上することができる。また、底材14の基材層の縦方向及び横方向への延伸倍率が、10倍(一軸延伸の場合)或いは16倍(二軸延伸の場合)を超える場合には、底材14の基材層のフィルムの製造時に破断しやすくなり実用的ではない。
【0023】
底材14の基材層としては、高密度ポリエチレンや中密度ポリエチレンの未延伸フィルム、或いは高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、及び直鎖状低密度ポリエチレン等の延伸フィルムを用いることができる。
【0024】
さらに、底材14の基材層は、2種類以上の上記ポリエチレンを混合して形成しても良い。例えば、高密度ポリエチレンに直鎖状低密度ポリエチレンを配合することで、製膜性に優れ、フィルム剛性が高く、透明性に優れた底材14の基材層のフィルムとして好適に用いることが可能なフィルムを形成することができる。
【0025】
本発明の底材14に用いられる止水層は、縦方向或いは横方向の少なくとも一方向の引裂き強度が3N以上であり、且つ縦方向と横方向との引裂強度の比(縦方向/横方向)が0.5以上2以下であることが好ましい。
【0026】
底材14の止水層に於ける縦方向及び横方向の引裂強度が共に3N未満の場合、容器20のニードル24を突き刺した際に底材14のフィルムに裂けが生じ、液漏れや空気の混入を招くこととなる。そのため、本発明の特徴である液体収納袋10内を真空に保つことができず、液体収納袋10内の内容液を最後まで吸い出すことができなくなる。
【0027】
また、底材14の止水層に於ける引裂強度の縦方向と横方向の比(縦方向/横方向)を0.5以上、2.0以下とすることによって、優れた止水性を有する底材14を得ることができる。
【0028】
すなわち、本発明に於いて底材14の止水性は、容器20のニードル24が液体収納袋10の底部13に突き刺さった際に伸びた底材14のフィルムが、円周状に均等に容器20のニードル24に巻付くことで発現する。この際、底材14のフィルムの伸びが円周状に均等に生じることで、より止水性が高まることが分っている。今回の発明の範囲である底材14の止水層に於ける引裂強度の縦方向と横方向の比(縦方向/横方向)が0.5以上、2.0以下の場合、底材14のフィルムの伸びが均等であり、優れた止水性が得られる。
【0029】
しかしながら、底材14の止水層に於ける引裂強度の比(縦方向/横方向)が0.5未満或いは2.0を超える場合、フィルムが一方向へ裂けやすくなることから、伸びが円周状で均一でなくなり、且つフィルムが裂けることによって引裂強度が高い方向への伸びも抑制されることで、全体的に伸びが少なく、伸びに長短のバラツキが生じるものとなる。それによって伸びが少ない部位の巻付き長さがより短くなることで、その部位の止水性が不充分なものとなり、その部位から液漏れが生ずる。より好ましくは、底材14の止水層に於ける引裂強度の縦方向と横方向の比(縦方向/横方向)が0.7以上、1.5以下であり、1.0により近いほど止水性に優れたものとなる。
【0030】
底材14の止水層としては、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン等の未延伸フィルムを用いることができ、特に低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンの未延伸フィルムが好ましく、さらに好ましくは直鎖状低密度ポリエチレンからなるインフレーション成型による未延伸フィルムである。
【0031】
一般的に、インフレーション成型による直鎖状低密度ポリエチレンフィルムは、Tダイ方式による直鎖状低密度ポリエチレンフィルムに比べて原料となるポリエチレンの分子量が大きい為、フィルムの引裂強度が高い。さらに、樹脂の流れから生じる異方性を小さくすることが可能であることから、本発明の底材14の止水層に求められる引裂強度が高く且つ縦方向と横方向の比が1に近いという特性を有しており、本発明の底材14の止水層として好適に用いることができる。
【0032】
本発明の底材14の貼り合わせに当たっては、公知のドライラミネーション法、無溶剤型ラミネーション法又は押し出しラミネーション法を用いることができ、より好ましくは押し出しラミネーション法である。
【0033】
一般的に押出ラミネーション法に用いられるポリエチレン系樹脂は、本発明の底材14の基材層及び止水層に用いられるポリエチレン系樹脂に比べて低分子量のポリエチレン系樹脂が用いられている。その為、押出ラミネーション法を用いることで、容器20のニードル24を液体収納袋10の底部13に突刺した際に、底材14の止水層が底材14の基材層に伴って引き裂かれることを、押出ラミネーションに用いられるポリエチレン系樹脂層が緩衝層となることによって防止でき、且つ液体収納袋10のリサイクルの際に、異物となりうる接着剤の混入を低減することができる。
【0034】
本発明の底材14の作成に当たっては、少なくとも基材層/止水層の2層構成であればよく、例えば、基材層/止水層/シーラント層のように別途シーラント層のような機能性を持った層を積層することができる。
【0035】
底材14が基材層/止水層の場合、止水層がシーラント層を兼ねることになるが、基材層と止水層に融点差が少ない場合、製袋工程に於いて基材同士の融着や熱シワが発生しやすくなる。その場合に於いては、基材層/止水層/シーラント層のように別途シーラント層を設けることが好ましい。
【0036】
この場合に用いられる底材14のシーラント層に於いては、フィルムの破断伸度や引裂強度に特に制限は無く、任意のシーラントフィルムを用いることができるが、好ましくはインフレーション成型法による超低温タイプの直鎖状低密度ポリエチレンフィルムである。
【0037】
本発明に於いて、底材14の基材層と止水層とのラミ強度が、3.0N/15mm以下であることが好ましく、さらに好ましくは2.0N/15mm以下である。
【0038】
底材14の基材層と止水層とのラミ強度を3.0N/15mm以下とすることで、容器20のニードル24を液体収納袋10の底部13に突刺した場合に、ニードル24の先端が底部13に突き刺さる際は、底材14の基材層と止水層とが貼り合わされているが、ニードル24が底材14に突き刺さるにつれて、底材14の基材層と止水層とがデラミを起こしながらニードル24が底部13に刺さっていく。それによって、底材14の止水層が破れることなく伸び、ニードル24に巻付く底材14の止水帯が形成され、優れた止水性を得ることができる。
【0039】
底材14の基材層と止水層とのラミ強度が3.0N/15mmを超える場合、容器20のニードル24を液体収納袋10の底部13に突き刺す際に底材14の止水層が破れやすくなり、止水性が劣る場合があり好ましくない。
【0040】
また、底材14の基材層と止水層とのラミ強度に特に下限は無いが、加工のし易さや使用時に落下させたり、圧力を加えるといった外力による剥がれを防止する点から1.5N/15mm以上であることが好ましい。
【0041】
底材14の基材層と止水層とのラミ強度を3.0N/15mmとするには、例えば、ドライラミネーション法、無溶剤型ラミネーション法の場合は、二液硬化型ポリエーテルウレタン系の接着剤を用いる、或いは接着剤の塗布量を減らすといった方法をとることで可能となる。また、押し出しラミネーション法の場合は、押出樹脂の温度やMFR(分子量)を調整することで可能となる。
【0042】
本発明による液体収納袋10は、ポリエチレン系樹脂の含有量が80質量%以上であり、90質量%以上であることがより好ましい。液体収納袋10では、底部13を形成する底材14をポリエチレン系樹脂フィルムによって構成するとともに、胴部12を形成する胴材15をポリエチレン系樹脂フィルムによって構成することで、ポリエチレン系樹脂の含有量を80質量%以上としている。これによって、液体収納袋10をリサイクルする際に、底材14及び胴材15を構成するポリエチレン系樹脂フィルムを好適に利用することができる。ポリエチレン系樹脂の含有量が80%未満の場合に於いては、液体収納袋10をリサイクルする際に、底材14及び胴材15を構成するポリエチレン系樹脂フィルムを、相溶化剤、分散剤等を用いて処理しなければならず、コストアップすると共に良好な品質を得ることが困難となる。
【0043】
また、本発明の特性を損なわない範囲に於いて、底材14の各層(基材層、止水層)は添加剤を含むことができ、例えば、架橋剤、酸化防止剤、アンチブロッキング剤、滑(スリップ)剤、紫外線吸収剤、光安定剤、充填剤、補強剤、帯電防止剤などが挙げられる。
【0044】
さらに、液体収納袋10に対して遮光性やバリア性を付与する為に、底材14及び胴材15にコーティングや印刷、或いは蒸着を施すこともできる。例えば、液体収納袋10に対する遮光性は、酸化チタンやカーボンブラックが配合されたコート剤をコーティングによって付与できる。液体収納袋10に対するバリア性を付与する方法としては、ポリビニルアルコール(PVAL)系、酢酸ビニル(PVAc)系、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)系、或いはポリ塩化ビニリデン(PVDC)系のコーティング剤をコートすることが挙げられる。また、蒸着に於いては、シリカ、アルミナ、酸化亜鉛、酸化マグネシウムなどの無機酸化物やアルミニウム、錫などの金属の蒸着によって、液体収納袋10に対して遮光性やバリア性を付与することができる。
【0045】
次に、以上のような胴材15及び底材14のフィルムを用いて製造する本発明の液体収納袋10について、実施例、比較例を挙げて具体的に説明する。
【実施例0046】
(胴材15の作成)
胴材15の基材層として、密度0.932g/cmの直鎖状低密度ポリエチレンからなるTダイ方式にて製膜された無延伸直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(40μm)を用いた。胴材15のシーラント層として、密度0.912g/cmの直鎖状低密度ポリエチレンからなるインフレーション方式にて製膜された無延伸直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(40μm)を用いた。上記胴材15の基材層のフィルムと上記胴材15のシーラント層のフィルムとを二液硬化型ポリエステルウレタン系接着剤を用いてドライラミネート法(乾燥時の塗布量3.5g)にて貼り合わせを行い、さらに、40℃にて24時間エージングを行うことで胴材15を得た。
【0047】
(底材14の作成)
底材14の基材層として、直鎖状低密度ポリエチレンからなる二軸延伸ポリエチレンフィルム(40μm)を用いた。当該フィルムの破断伸度は、縦方向260%、横方向100%であった。ここで、フィルムの破断伸度は、「JIS K7127:1999(ISO527‐3:1995)プラスチック-引張特性の試験方法- 第3部:フィルム及びシートの試験条件」によって求めた(なお、以下に説明するフィルムの破断伸度についても同様の方法によって求めた)。
【0048】
底材14の止水層として、インフレーション方式にて製膜された無延伸直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(80μm)を用いた。当該フィルムの破断伸度は、縦方向650%、横方向750%であった。また、当該フィルムの引裂強度は、縦方向6.0N、横方向10.4Nであり、当該フィルムの引裂強度に於ける縦/横の比(縦方向/横方向)は、0.58であった。ここで、フィルムの引裂強度は、「JIS K7128‐3:1998 プラスチック-フィルム及びシートの引裂強さ試験方法」によって求めた(なお、以下に説明するファイルの引裂強度についても同様の方法によって求めた)。
【0049】
これらの基材層フィルム及び止水層フィルムを、LDPE(低密度ポリエチレン)を用いた押出ラミネート法にて貼り合わせを行うことによって、底材14を作成した。この時のLDPEの押出温度は320℃、厚みは15μmであった。
【0050】
(液体収納袋10の作成)
得られた底材14及び胴材15を用いて液体収納袋10を作成した。液体収納袋10の外形寸法は、幅145mmで、長さが240mmとし、底部ガセット部の幅、即ち、液体収納袋10の底辺から底材14のフィルムの折り返し部までの長さは45mmとした。
【0051】
得られた液体収納袋10に水500mlを充填し、ポンプ部材23(液体取り出し口)を上端に備えてなる容器20に底部13を上向きにセットした。容器20に付随する液体取出し用のニードル24を底部13に突き刺したところ、簡単にニードル24を底部13に突き刺すことができた。
【0052】
ニードル24を底部13に突き刺した状態で、液体取出し口となるポンプ部材23を操作し、液体収納袋10が空になるまで水を吐出したところ、液体収納袋10に空気が入ることは無く、液体収納袋10に残った水の量は5.6gであった。
【実施例0053】
実施例2では、フィルムの破断伸度が縦方向650%、横方向750%であり、フィルムの引裂強度が縦方向3.0N、横方向5.2Nであり、フィルムの引裂強度の縦/横の比が0.58であるインフレーション方式にて製膜された無延伸直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(40μm)を、底材14の止水層として用いた以外は、実施例1と同様に実施例2の液体収納袋10を作成し、吐出試験を行った。実施例2の液体収納袋10は、底部13(底材14)に於けるニードル24の突刺し性、ポンプ部材23からの水の吐出性に問題なく、液体収納袋10に残った水の量は4.8gであった。
【実施例0054】
実施例3では、直鎖状低密度ポリエチレンからなる二軸延伸ポリエチレンフィルム(20μm)を、底材14の基材層として用いた以外は、実施例1と同様に実施例3の液体収納袋10を作成し、吐出試験を行った。底材14の基材層のフィルムに於ける破断伸度は、縦方向228%、横方向46%であった。実施例3の液体収納袋10は、底部13(底材14)に於けるニードル24の突刺し性、ポンプ部材23からの水の吐出性に問題なく、液体収納袋10に残った水の量は6.1gであった。
【0055】
(比較例1)
比較例1では、フィルムの破断伸度が縦方向620%、横方向760%であるTダイ方式にて製膜された無延伸直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(40μ)を、底材の基材層として用いた以外は、実施例1と同様にして比較例1の液体収納袋を得た。
【0056】
得られた比較例1の液体収納袋に水を充填し、ポンプ部材23(液体取り出し口)を上端に備えてなる容器20に、当該液体収納袋の底部を上向きにセットした。容器20に付随する液体取出し用のニードル24を当該液体収納袋の底部に突き刺したところ、底材が伸びてしまい、ニードル24を当該液体収納袋の底部(底材)に突刺すことができなかった。
【0057】
(比較例2)
比較例2では、フィルムの破断伸度が縦方向650%、横方向750%であり、フィルムの引裂強度が縦方向2.3N、横方向3.9Nで、フィルムの引裂強度の縦/横の比が0.59であるインフレーション方式にて製膜された無延伸直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(30μm)を、底材の止水層として用いた以外は、実施例1と同様にしてヒアリングの液体収納袋を得た。
【0058】
得られた比較例2の液体収納袋を実施例1と同様に吐出試験を行ったところ、当該液体収納袋の底部に於けるニードル24の突刺し口から空気を吸い込んでしまい、最後まで液体収納袋内の水を吸い出すことができなかった。
【0059】
比較例2の液体収納袋の底部に於けるニードル24の突刺し口を観察したところ、底材の止水層のフィルムに於ける伸びが不充分であり、隙間が出来ていたことが確認された。
【0060】
(比較例3)
比較例3では、フィルムの破断伸度が縦方向760%、横方向830%であり、フィルムの引裂強度が縦方向1.8N、横方向5.6Nであり、フィルムの引裂強度の縦/横の比が0.32となる直鎖状低密度ポリエチレンフィルムを、底材の止水層として用いた。
【0061】
得られた比較例3の液体収納袋を実施例1と同様に吐出試験を行ったところ、液体収納袋の底部に於けるニードル24の突刺し口から空気を吸い込んでしまい、最後まで液体収納袋内の水を吸い出すことができなかった。
【0062】
比較例3の液体収納袋の底部に於けるニードル24の突刺し口を観察したところ、底材の止水層のフィルムに於ける伸びが不充分であり、隙間が出来ていたことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明の液体収納袋は、洗剤などの液体を収納する用途に対して、詰め替えが不要で内容物を空気に触れさせることなくほぼ全て使いきることが可能であり、使用後の液体収納袋はポリエチレンとしてリサイクル可能な環境負荷の低減につながる液体収納袋として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0064】
10 液体収納袋
13 底部
14 底材
20 容器
23 ポンプ部材(液体取り出し口)
24 ニードル
図1
図2
図3
図4