(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023110131
(43)【公開日】2023-08-09
(54)【発明の名称】超音波流量計
(51)【国際特許分類】
G01F 1/66 20220101AFI20230802BHJP
H04R 17/00 20060101ALI20230802BHJP
【FI】
G01F1/66 A
G01F1/66 101
H04R17/00 330J
H04R17/00 330Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022011373
(22)【出願日】2022-01-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003166
【氏名又は名称】弁理士法人山王内外特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】勝亦 敦
(72)【発明者】
【氏名】廣江 泰昭
【テーマコード(参考)】
2F035
5D019
【Fターム(参考)】
2F035DA05
2F035DA08
2F035DA09
2F035DA14
5D019BB08
5D019BB17
5D019GG03
(57)【要約】
【課題】従来に対し、小口径配管へのトランスデューサの取付けに対して設計自由度を柔軟化可能とする。
【解決手段】配管2における上流側に取付けられ、当該配管2における下流側との間で超音波の送受信を行うトランスデューサ101aと、配管2における下流側に取付けられ、当該配管2における上流側との間で超音波の送受信を行うトランスデューサ101bと、トランスデューサ101aによる送受信結果及びトランスデューサ101bによる送受信結果に基づいて、超音波の伝搬時間差から配管2を流れる流体に関するパラメータを算出する演算部102とを備え、トランスデューサ101a及びトランスデューサ101bによる超音波の焦点位置が、超音波パスにおける中間点に一致する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管における上流側に取付けられ、当該配管における下流側との間で超音波の送受信を行う第1の集束超音波トランスデューサと、
配管における下流側に取付けられ、当該配管における上流側との間で超音波の送受信を行う第2の集束超音波トランスデューサと、
第1の集束超音波トランスデューサによる送受信結果及び第2の集束超音波トランスデューサによる送受信結果に基づいて、超音波の伝搬時間差から配管を流れる流体に関するパラメータを算出する演算部とを備え、
前記第1の集束超音波トランスデューサ及び前記第2の集束超音波トランスデューサによる超音波の焦点位置が、超音波パスにおける中間点に一致する
ことを特徴とする超音波流量計。
【請求項2】
前記第1のトランスデューサは、第1のウェッジ材を有し、
前記第2のトランスデューサは、第2のウェッジ材を有し、
前記第1のウェッジ材、前記第2のウェッジ材、前記配管及び前記配管を流れる流体は、超音波を透過する媒質により構成された
ことを特徴とする請求項1記載の超音波流量計。
【請求項3】
前記第1の集束超音波トランスデューサ及び前記第2の集束超音波トランスデューサのうち、一方のトランスデューサは、超音波パスから求めた超音波に屈折がない場合での仮想焦点に集束するように設計され、他方のトランスデューサは、当該超音波パスにおける反射点を通る垂直線に対して当該一方のトランスデューサと対称となるように設計された
ことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の超音波流量計。
【請求項4】
前記第1の集束超音波トランスデューサ及び前記第2の集束超音波トランスデューサは、湾曲圧電素子型の集束超音波トランスデューサである
ことを特徴とする請求項1から請求項3のうちの何れか1項記載の超音波流量計。
【請求項5】
前記第1の集束超音波トランスデューサ及び前記第2の集束超音波トランスデューサは、音響レンズ型の集束超音波トランスデューサである
ことを特徴とする請求項1から請求項3のうちの何れか1項記載の超音波流量計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、超音波の斜角入射による伝搬時間差法を用いた超音波流量計に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、超音波流量計として、クランプオン式の超音波流量計が知られている(例えば特許文献1参照)。このクランプオン式の超音波流量計では、設置の際に配管を切断する必要がないため、設置が容易であり、後付けも可能である。また、このクランプオン式の超音波流量計では、配管に危険な薬液を流している場合に課題となる漏液を考慮する必要がない。また、このクランプオン式の超音波流量計では、配管が劣化した場合には、その配管だけを交換すればよく、超音波流量計自体の交換は必要ない。
【0003】
そして、このクランプオンを実現する方法として、特許文献1に開示された超音波流量計のように、超音波の斜角入射による伝搬時間差法が知られている。この伝搬時間差法を用いた超音波流量計では、配管における上流側及び下流側に設置された1対のトランスデューサによって互いに超音波の送受信を行い、その超音波の伝搬時間差から配管を流れる流体に関するパラメータを計測可能としている。なお、流体に関するパラメータとしては、流速又は流量のうちの少なくとも一方が挙げられる。
【0004】
なお、従来の超音波流量計として、振動吸収体を用い、計測に不適な外面反射波を抑制するように構成されたものが知られている(例えば特許文献2参照)。
一方、以下に示す超音波流量計では、外面反射波を用いて計測を行うものが対象とされる。
【0005】
この超音波流量計が有する一対のトランスデューサの配置例としては、例えば
図7及び
図8に示すような配置が挙げられる。
なお、
図7及び
図8において、太い矢印は配管を流体が流れる方向を示し、細い矢印は超音波の伝搬方向を示している。また、
図7及び
図8において、破線で囲まれた領域は、超音波の伝搬領域を示している。
【0006】
図7Aは、超音波パスが1トラバース(Z法)である場合を示している。なお、
図7Aでは、左側に超音波流量計及び配管の正面図を示し、右側に超音波流量計及び配管の側面図(配管部分は断面図)を示している。
また、
図7Bは、超音波パスが2トラバース(V法)である場合を示している。
また、
図8Aは、超音波パスが3トラバースである場合を示している。
また、
図8Bは、超音波パスが4トラバース(W法)である場合を示している。
なお、トラバース数は、超音波が配管の軸方向に対して斜めに横断する回数を指す。
【0007】
また、
図7及び
図8において、符号2は配管を示し、符号5は超音波流量計を示している。また、
図7及び
図8において、符号501aは一対のトランスデューサのうちの一方のトランスデューサを示し、符号501bは一対のトランスデューサのうちの他方のトランスデューサを示している。
【0008】
なお、実際の超音波の伝搬では、異なる物質(音速、音響インピーダンス)の境界面において、反射及び屈折が生じる。
図7及び
図8において、トランスデューサが有するウェッジ材(樹脂)、配管(樹脂)、及び、配管を流れる流体(水)は、同程度の音速(音響インピーダンス)であり、超音波は透過するものとしている。また、超音波流量計が取付けられた配管の周囲は空気であり、超音波は反射するものとしている。
よって、
図7及び
図8に示す構成では、反射波が配管の外面で発生する。
【0009】
そして、この超音波流量計では、配管を流れる流体に関するパラメータを計測するために、超音波の伝搬時間差を求める。
ここで、上流側のトランスデューサから下流側のトランスデューサに超音波が伝搬する場合、音速は流速により早くなり、逆では遅くなる。この伝搬時間差を精度良く求めるためには、時間差が大きくなるように、流体中の超音波の伝搬距離を長くすることが望ましい(
図7及び
図8における細い矢印の長さの合計)。すなわち、トラバース数が増えると、伝搬距離が長くなり、計測上有利であることがわかる。例えば、W法(4トラバース)を用いると、一般的に用いられているZ法(1トラバース)に比べて、4倍の伝搬時間差を得ることができる。
【0010】
また、超音波は、媒質の音速(音響インピーダンス)の差が大きい場合には反射が大きくなり、音速の差が小さいと透過することが知られている。今回想定している材質の音響インピーダンスは、空気の音響インピーダンスは他に比べて圧倒的に小さく、差が大きくなるため反射する。
【0011】
材質の違いによる超音波の伝搬の違い(音響インピーダンス及び音速の違い)について、例えば
図9の通りである。また、超音波の屈折角と透過及び反射については、例えば
図10の通りである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特許第5812734号
【特許文献2】特開2010-181321号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
一方、従来の超音波流量計ではトランスデューサを小型化することは困難であり、超音波流量計の計測対象が小口径配管(直径数ミリ程度の径の小さい配管)を流れる流体である場合、トランスデューサの大きさを変更しないで対応する必要がある。
従来の超音波流量計において、トランスデューサを小型化することが困難である理由としては、以下の事項が挙げられる。
【0014】
まず、トランスデューサに用いられる圧電素子は、任意の周波数の振動を発生する。この周波数は、対象となる配管の材料、厚さ及び配管を流れる流体等により適切な値がある。よって、小口径配管に対応させるために、圧電素子を小さくすること及び薄くすることはできない。
【0015】
また、トランスデューサに用いられる圧電素子は、様々な振動モードが存在する。ここで、圧電素子を厚みモードで振動させる場合、基本的に圧電素子の厚さが周波数を決定するため、薄くすることができない。例えば、1MHzの周波数では厚さ(t)は、圧電素子の厚みは2mm程度となる。
【0016】
また、トランスデューサに用いられる圧電素子を厚みモードで振動させる場合、圧電素子の長さ(l)及び幅(w)は厚さ(t)に対して十分大きい必要がある(板状の形状)(
図11参照)。例えば、圧電素子の長さ及び幅は、厚さの10倍程度、最低でも3倍程度が必要となる。圧電素子は、最小サイズでも、6mm(長さ)x6mm(幅)x2mm(厚さ)となる。
なお、
図11では、左側にトランスデューサの正面図を示し、右側にトランスデューサの側面図を示している。また、
図11において、符号5011aは圧電素子を示し、符号5012aはウェッジ材を示している。
【0017】
また、トランスデューサに用いられる圧電素子を小さくすると、超音波を送受信する面積が小さくなる。この場合、トランスデューサは、送信する超音波の出力が小さくなり、また、受信する超音波も弱くなる。すなわち、超音波信号が小さくなるので、性能に影響が悪化する。したがって、圧電素子は、最小サイズよりも長さと幅が大きいことが望ましい。
【0018】
そして、配管が小口径配管である場合でのトランスデューサの配置例としては、例えば、
図12,
図13及び
図14に示すような配置が挙げられる。
【0019】
図12Aは、超音波パスが1トラバース(Z法)であり、配管が1/2配管(基準径の配管(
図7及び
図8に示す配管)に対して径が1/2である配管)である場合を示している。
また、
図12Bは、超音波パスが1トラバース(Z法)であり、配管が1/4配管(基準径の配管に対して径が1/4である配管)である場合を示している。
また、
図12Cは、超音波パスが1トラバース(Z法)であり、配管が1/8配管(基準径の配管に対して径が1/8である配管)である場合を示している。
【0020】
ここで、超音波パスが1トラバースである場合、超音波の干渉等は発生しないため、従来の超音波流量計は小口径配管にも対応可能である。但し、配管を流れる流体中における超音波の伝搬距離(
図12における細い矢印の長さ)が短いため、伝搬時間差が小さくなり、従来の超音波流量計では計測が困難になる。
【0021】
また、
図13Aは、超音波パスが2トラバース(V法)であり、配管が1/2配管である場合を示している。
また、
図13Bは、超音波パスが2トラバース(V法)であり、配管が1/4配管である場合を示している。
図13Bの場合には、2つのトランスデューサが有するウェッジ材が干渉してしまうため配置できず、実現不可能である。また、干渉している部分の形状を変更すると、一部の超音波の伝搬エリアが無くなってしまう。
また、
図13Cは、超音波パスが2トラバース(V法)であり、配管が1/4配管である場合を示している。
図13Cのように、2つのトランスデューサが有するウェッジ材を干渉しないように離すと、一方のトランスデューサが送信した超音波が正しく他方のトランスデューサに到達しないため、正しく機能しない。
【0022】
図14Aは、超音波パスが3トラバースであり、配管が1/2配管である場合を示している。
図14Aの場合には、トランスデューサを正しく配置可能であり、超音波の送受信が可能である。
また、
図14Bは、超音波パスが3トラバースであり、配管が1/4配管である場合を示している。ここで、
図14Bにおける符号141は、配管で反射せずに送信したトランスデューサに入ってきてしまう超音波を示している。また、
図14Bにおける符号142は、1トラバースで直接入ってきてしまう超音波を示している。また、
図14Bにおける符号143は、3トラバースで入ってくる超音波(正しい超音波)を示している。このように、
図14Bの場合には、正しく反射した超音波をとらえることはできない。
【0023】
なお、
図15Aは、
図12Bに示す構成の場合での超音波の受信波形の一例を示す図であり、
図15Bは、
図13Cに示す構成の場合での超音波の受信波形の一例を示す図である。
この
図15Aに示すように、
図12Bに示す構成の場合には、超音波の受信波形として、伝搬時間差の演算に適したピーク波形が得られている。一方、
図15Bに示すように、
図13Cに示す構成の場合には、明確なピークがなく、伝搬時間差の演算に適していない。
【0024】
このように、従来の超音波流量計を小口径配管に適用する場合、トラバース数が少ないと超音波の伝搬時間差が微小となるため計測が困難となり、トラバース数が多いとトランスデューサの取付けが困難となる。
【0025】
なお、超音波の伝搬時間差が微小となる場合、計測精度の向上のために超音波流量計における電気回路又は処理アルゴリズムに工夫を凝らすことが一般的であるが、その性能(対応可能な配管径、最小流量、又は、安定した計測等)には限界がある。
【0026】
本開示は、上記のような課題を解決するためになされたもので、従来に対し、小口径配管へのトランスデューサの取付けに対して設計自由度を柔軟化可能な超音波流量計を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本開示に係る超音波流量計は、配管における上流側に取付けられ、当該配管における下流側に対して超音波の送受信を行う第1の集束超音波トランスデューサと、配管における下流側に取付けられ、当該配管における上流側に対して超音波の送受信を行う第2の集束超音波トランスデューサと、第1の集束超音波トランスデューサによる送受信結果及び第2の集束超音波トランスデューサによる送受信結果に基づいて、超音波の伝搬時間差から配管を流れる流体に関するパラメータを算出する演算部とを備え、第1の集束超音波トランスデューサ及び第2の集束超音波トランスデューサによる超音波の焦点位置が、超音波パスにおける中間点に一致することを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
本開示によれば、上記のように構成したので、従来に対し、小口径配管へのトランスデューサの取付けに対して設計自由度を柔軟化可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】実施の形態1に係る超音波流量計の構成例を示す図である。
【
図2】実施の形態1におけるトランスデューサの構成例を示す図である。
【
図3】
図3A~
図3Bは、実施の形態1におけるトランスデューサの配置例を示す図であって、
図3Aは、超音波パスが2トラバース(V法)であり、配管が1/4配管である場合を示し、
図3Bは、超音波パスが2トラバース(V法)であり、配管が1/8配管である場合を示す図である。
【
図4】
図4A~
図4Bは、実施の形態1におけるトランスデューサの配置例を示す図であって、
図4Aは、超音波パスが3トラバースであり、配管が1/4配管である場合を示し、
図4Bは、超音波パスが4トラバース(W法)であり、配管が1/4配管である場合を示す図である。
【
図5】実施の形態1におけるトランスデューサの設計方法を説明するための図である。
【
図6】実施の形態1におけるトランスデューサの別の構成例を示す図である。
【
図7】
図7A~
図7Bは、従来のトランスデューサの配置例を示す図であって、
図7Aは、超音波パスが1トラバース(Z法)である場合を示し、
図7Bは、超音波パスが2トラバース(V法)である場合を示す図である。
【
図8】
図8A~
図8Bは、従来のトランスデューサの配置例を示す図であって、
図8Aは、超音波パスが3トラバースである場合を示し、
図8Bは、超音波パスが4トラバース(W法)である場合を示す図である。
【
図9】媒質の違いによる超音波の伝搬の違いの一例を示す図である。
【
図10】超音波の屈折角と透過及び反射を説明するための図である。
【
図11】従来のトランスデューサの構成例を示す図である。
【
図12】
図12A~
図12Cは、配管が小口径配管である場合での従来のトランスデューサの配置例を示す図であって、
図12Aは、超音波パスが1トラバース(Z法)であり、配管が1/2配管である場合を示し、
図12Bは、超音波パスが1トラバース(Z法)であり、配管が1/4配管である場合を示し、
図12Cは、超音波パスが1トラバース(Z法)であり、配管が1/8配管である場合を示す図である。
【
図13】
図13A~
図13Cは、配管が小口径配管である場合での従来のトランスデューサの配置例を示す図であって、
図13Aは、超音波パスが2トラバース(V法)であり、配管が1/2配管である場合を示し、
図13Bは、超音波パスが2トラバース(V法)であり、配管が1/4配管である場合を示し、
図13Cは、超音波パスが2トラバース(V法)であり、配管が1/4配管である場合を示す図である。
【
図14】
図14A~
図14Bは、配管が小口径配管である場合での従来のトランスデューサの配置例を示す図であって、
図14Aは、超音波パスが3トラバースであり、配管が1/2配管である場合を示し、
図14Bは、超音波パスが3トラバースであり、配管が1/4配管である場合を示す図である。
【
図15】
図15A~
図15Bは、従来の超音波流量計を小口径配管に適用した場合での超音波の受信波形の一例を示す図であって、
図15Aは、
図12Bに示す構成の場合での超音波の受信波形の一例を示す図であり、
図15Bは、
図13Cに示す構成の場合での超音波の受信波形の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
実施の形態1.
図1は実施の形態1に係る超音波流量計1の構成例を示す図である。
超音波流量計1は、対象となる配管2を流れる流体に関するパラメータを計測する。流体に関するパラメータとしては、流速又は流量のうちの少なくとも一方が挙げられる。なお、超音波流量計1は、超音波の斜角入射による伝搬時間差法を用いた、クランプオン式の超音波流量計である。
【0031】
この超音波流量計1は、
図1に示すように、トランスデューサ(第1の集束超音波トランスデューサ)101a、トランスデューサ(第2の集束超音波トランスデューサ)101b及び演算部102(不図示)を備えている。
【0032】
なお、
図1では、超音波流量計1(トランスデューサ101a及びトランスデューサ101b)が配管2に取付けられた状態を示している。この配管2は、例えばPFAのような樹脂から成る。また、この配管2は、主に、小口径配管(直径数ミリ程度の径の小さい配管)であることを想定している。また、配管2を流れる流体は水等の液体である。
【0033】
また、
図1において、符号11は、トランスデューサ101a及びトランスデューサ101bによる超音波の焦点位置を示している。
また、
図1において、太い矢印は配管内を流体が流れる方向を示し、細い矢印は超音波の伝搬方向を示している。また、
図1において、破線で囲まれた領域は、超音波の伝搬領域を示している。
【0034】
トランスデューサ101aは、配管2における上流側に取付けられ、当該配管2における下流側(トランスデューサ101b)との間で超音波の送受信を行う集束超音波トランスデューサである。
【0035】
図1に示すトランスデューサ101aでは、
図2に示すように、湾曲圧電素子型の集束超音波トランスデューサが用いられた場合を示している。この集束超音波トランスデューサは、湾曲した圧電素子により集束する超音波を発生させる集束超音波トランスデューサである。この集束超音波トランスデューサとしては既存のものを使用することができる。
【0036】
このトランスデューサ101aは、
図1,2に示すように、圧電素子1011a及びウェッジ材1012aを有する。
圧電素子1011aは、湾曲状に構成され、任意の周波数の振動を発生することで、集束する超音波を発生する。
ウェッジ材1012aは、圧電素子1011aを配管2に取付けるための部材である。このウェッジ材1012aは、例えばアクリルのような樹脂から成る。
【0037】
なお、
図2において、符号21は超音波の進行方向を示している。また、符号22は超音波の波面を示している。
【0038】
そして、このトランスデューサ101aは、配管2における下流側(トランスデューサ101b)に超音波を送信し、当該下流側(トランスデューサ101b)からの超音波を受信する。
【0039】
トランスデューサ101bは、配管2における下流側に取付けられ、当該配管2における上流側(トランスデューサ101a)との間で超音波の送受信を行う集束超音波トランスデューサである。
【0040】
図1に示すトランスデューサ101bでは、湾曲圧電素子型の集束超音波トランスデューサが用いられた場合を示している。この集束超音波トランスデューサは、湾曲した圧電素子により集束する超音波を発生させる集束超音波トランスデューサである。この集束超音波トランスデューサとしては既存のものを使用することができる。
【0041】
このトランスデューサ101bは、
図1に示すように、圧電素子1011b及びウェッジ材1012bを有する。
圧電素子1011bは、湾曲状に構成され、任意の周波数の振動を発生することで、集束する超音波を発生する。
ウェッジ材1012bは、圧電素子1011bを配管2に取付けるための部材である。このウェッジ材1012bは、例えばアクリルのような樹脂から成る。
【0042】
そして、このトランスデューサ101bは、配管2における上流側(トランスデューサ101a)に超音波を送信し、当該上流側(トランスデューサ101a)からの超音波を受信する。
【0043】
このトランスデューサ101a及びトランスデューサ101bはそれぞれ、送信する超音波の焦点位置が超音波パス(伝搬パス)の中間点に一致(略一致の意味を含む)するように、構成されている。すなわち、トランスデューサ101a及びトランスデューサ101bは、上記のような焦点を持つ集束超音波トランスデューサが使用され、正しい位置に設置される。
【0044】
また、このトランスデューサ101a及びトランスデューサ101bは、例えば
図3及び
図4に示すような超音波パスを形成するように配置される。
図3Aは、超音波パスが2トラバース(V法)であり、配管2が1/4配管である場合を示している。
また、
図3Bは、超音波パスが2トラバース(V法)であり、配管2が1/8配管である場合を示している。
また、
図4Aは、超音波パスが3トラバースであり、配管2が1/4配管である場合を示している。
また、
図4Bは、超音波パスが4トラバース(W法)であり、配管2が1/4配管である場合を示している。
なお、トラバース数は、超音波が配管2の軸方向に対して斜めに横断する回数を指す。
【0045】
なお、
図1に示す超音波流量計1では、ウェッジ材1012a、ウェッジ材1012b、配管2、及び、配管2を流れる流体は、同程度の音速(音響インピーダンス)であり、超音波が透過する媒質により構成されている。
一方、超音波流量計1が取付けられた配管2の周囲は空気であり、上記超音波は当該空気との境界面で反射する。
【0046】
演算部102は、トランスデューサ101aによる送受信結果及びトランスデューサ101bによる送受信結果に基づいて、超音波の伝搬時間差から配管2を流れる流体に関するパラメータを算出する。ここで、演算部102は、上記流体に関するパラメータとして、流体の流速を算出してもよい。また、演算部102は、上記算出した流体の流速及び配管2の径に基づいて、上記流体に関するパラメータとして、流体の流量を算出してもよい。
この演算部102による演算方法については、従来方法を適用可能であり、その詳細については省略する。
【0047】
なお、演算部102は、システムLSI(Large Scale Integration)等の処理回路、又はメモリ等に記憶されたプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)等により実現される。
【0048】
次に、トランスデューサ101a及びトランスデューサ101bの設計方法について、
図5を参照しながら説明する。
トランスデューサ101a及びトランスデューサ101bのうち、一方のトランスデューサは、超音波パスから求めた超音波に屈折がない場合での仮想焦点に集束するように設計され、他方のトランスデューサは、当該超音波パスにおける反射点を通る垂直線に対して当該一方のトランスデューサと対称となるように設計される。トランスデューサ101a及びトランスデューサ101bのより具体的な設計方法を以下に示す。
【0049】
なお以下では、トランスデューサ101aの設計を行った後にトランスデューサ101bの設計を行う場合について示すが、設計の順序は逆であってもよい。
前提として、
図9及び
図10に示すように、異なる媒質間での超音波の伝搬に関して、屈折角は、材質の音速(音響インピーダンス)によって求めることができる。
また、ウェッジ材1012a,1012bから配管2への超音波の入射角は、様々な条件により最適値は異なっていると考えられ、任意の角度でよいものとする。
【0050】
また、
図5において、圧電素子1011aの中央から入射角(θ1)で送信され、屈折を考慮した超音波の超音波パスを実線矢印で示す。また、圧電素子1011aについて、中央と両端からの仮想パス(屈折を考慮しないパス)を破線矢印で示す。なお、各仮想パスは、全て符号52で示す仮想焦点に収束するものとする。また、配管2を流れる流体の流速は0であるとする。また、
図5において、符号51は超音波の反射点を示している。
【0051】
この場合、まず、圧電素子1011aから送信される超音波の入射角(θ1)、及び、当該超音波が透過する各媒質の音速から求められた屈折角に基づいて、圧電素子1011aの中央からの超音波パス(実線矢印)を設計する。
ここで、
図5に示す超音波パス(実線矢印)のうち、ウェッジ材1012aの部分の超音波パスの距離をx1とし、配管2の部分(トランスデューサ101aが取付けられる側の配管2の部分)の超音波パスの距離をx2とし、流体の部分の超音波パスの距離をx3とし、配管2の部分(トランスデューサ101aが取付けられる側とは反対側の配管2の部分)の超音波パスの距離をx4とする。
【0052】
次に、屈折による異なる入射角を持つ超音波パス(x1~x4)に基づいて、圧電素子1011aから超音波の送受信の中間点(配管2の外壁による反射点)までの距離(r1)を求める(r1=x1+x2+x3+x4)。この距離(r1)は、
図5に示す破線矢印の距離である仮想焦点距離に相当する。
【0053】
次に、求めた距離(r1)から、屈折がない場合での仮想焦点を求める。なお、屈折がないので、θ1で距離(r1)分の位置が仮想焦点となる。
【0054】
そして、この仮想焦点に超音波が収束するようにトランスデューサ101aを設計する。この際、仮想焦点から、半径(r1)の円弧となるように圧電素子1011aを設計する。
【0055】
次に、トランスデューサ101bを、超音波パスにおける反射点を通る垂直線に対して、トランスデューサ101aと対称になるように設計する。これにより、トランスデューサ101aとトランスデューサ101bとの間の間隔(ピッチ)も決定する。
【0056】
なお、ウェッジ材1012a及びウェッジ材1012bの上面は、仮想焦点に向かうように設計することで、必要な超音波パスの領域が確保できる。この際、ウェッジ材1012a及びウェッジ材1012bは重なって配置することはできないので、
図5に示すy1は0以上である必要がある。
仮に、ウェッジ材1012a及びウェッジ材1012bが重なってしまう設計になった場合には、r1を小さくする、θ1を大きくする、或いは、圧電素子1011a,1011b又はウェッジ材1012a,1012bの円弧を小さくする等といった調整を行うことで、トランスデューサ101aを小型化し、重なりをなくす。
【0057】
なお、トランスデューサ101a及びトランスデューサ101bの幅は、配管2との接触面よりも十分大きな幅であればよい。一方で、樹脂製の配管2では変形が想定され接触面積も異なってくるため、トランスデューサ101a及びトランスデューサ101bの幅は、配管2の内径以上の幅(d1)であることが望ましい。
【0058】
なお上記では、超音波パスが2トラバースである場合を示したが、超音波パスがその他(3トラバース又は4トラバース)である場合についても、焦点(トランスデューサ101a及びトランスデューサ101bによる超音波パスの中点)までの超音波パスの伝搬距離の合計から、同様の手法で設計可能である。
【0059】
ここで、ウェッジ材1012a,1012b(樹脂)、配管2(樹脂)、及び、配管2を流れる流体(水等の液体)は、同様の超音波特性(音速)を有している。そのため、これらを密着させることでその境界面で屈折及び反射がほとんど発生せずに透過することになる。
一方、超音波流量計1が取付けられた配管2の周囲は空気等のように上記とは超音波特性(音速)が大きく異なることを想定しており、周囲との境界面で上記超音波は反射する。これにより、上記のような超音波パスが構成される。
【0060】
そして、超音波流量計1における計測を、上流から下流への超音波の伝播時間差、及び、下流から上流への超音波の伝搬時間差から求める場合、小口径配管である配管2では流体中を通る超音波パスが短い(上記細い実線矢印の長さの合計)ことにより時間差を検出し難く、ウェッジ材1012a,1012bを含むトランスデューサ101a,101bの小型化が困難である。
【0061】
そこで、実施の形態1に係る超音波流量計1では、トランスデューサ101a及びトランスデューサ101bとして集束超音波トランスデューサが用いられ、その超音波の焦点が超音波パスの中間点に一致するように構成されている。
これにより、実施の形態1に係る超音波流量計1では、トランスデューサ101a及びトランスデューサ101bによる超音波ビームの幅を最小限にしつつ(超音波の伝搬領域を焦点に向かって集束するように狭めつつ)も、十分な大きさの圧電素子1011a,1011bを用いて、計測対象である液体をできるだけ多く通過する超音波パスを構成することが可能となる。結果として、実施の形態1に係る超音波流量計1では、従来に対し、小口径配管である配管2に対する超音波を用いた伝搬時間差法による計測を、任意のトラバース数で実現することが容易となる。
【0062】
なお上記では、トランスデューサ101a及びトランスデューサ101bとして、湾曲圧電素子型の集束超音波トランスデューサが用いられた場合を示した。しかしながら、トランスデューサ101a及びトランスデューサ101bとしては、これに限らず、例えば
図6に示すように音響レンズ型の集束超音波トランスデューサが用いられてもよい。
なお
図6では、トランスデューサ101aが音響レンズ型の集束超音波トランスデューサである場合の構成例を示しているが、トランスデューサ101bが音響レンズ型の集束超音波トランスデューサである場合についても
図6と同様に構成される。この集束超音波トランスデューサとしては既存のものを使用することができる。
【0063】
図6に示すトランスデューサ101aは、圧電素子1011a、音響レンズ1013a及びウェッジ材1012aを有する。なお
図6では、ウェッジ材1012aの図示を省略している。
圧電素子1011aは、板状に構成され、任意の周波数の振動を発生することで、超音波を発生する。
音響レンズ1013aは、一方の面に圧電素子1011aが取付けられ、当該圧電素子1011aにより発生された超音波を集束して他方の面から出射する。
ウェッジ材1012aは、圧電素子1011a及び音響レンズ1013aを配管2に取付けるための部材である。
【0064】
なお、
図6において、符号61は超音波の進行方向を示している。また、符号62は超音波の波面を示している。
【0065】
以上のように、この実施の形態1によれば、超音波流量計1は、配管2における上流側に取付けられ、当該配管2における下流側との間で超音波の送受信を行うトランスデューサ101aと、配管2における下流側に取付けられ、当該配管2における上流側との間で超音波の送受信を行うトランスデューサ101bと、トランスデューサ101aによる送受信結果及びトランスデューサ101bによる送受信結果に基づいて、超音波の伝搬時間差から配管2を流れる流体に関するパラメータを算出する演算部102とを備え、トランスデューサ101a及びトランスデューサ101bによる超音波の焦点位置が、超音波パスにおける中間点に一致する。これにより、実施の形態1に係る超音波流量計1は、従来に対し、小口径配管へのトランスデューサ101a,101bの取付けに対して設計自由度を柔軟化可能となる。
【0066】
なお、実施の形態の任意の構成要素の変形、若しくは実施の形態の任意の構成要素の省略が可能である。
【符号の説明】
【0067】
1 超音波流量計
2 配管
101a トランスデューサ(第1の集束超音波トランスデューサ)
101b トランスデューサ(第2の集束超音波トランスデューサ)
102 演算部
1011a 圧電素子
1011b 圧電素子
1012a ウェッジ材
1012b ウェッジ材
1013a 音響レンズ