(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023110153
(43)【公開日】2023-08-09
(54)【発明の名称】異種金属接合材の圧延方法およびそれに用いる異種金属接合材
(51)【国際特許分類】
B21B 1/22 20060101AFI20230802BHJP
B21B 1/38 20060101ALI20230802BHJP
B23K 20/12 20060101ALI20230802BHJP
【FI】
B21B1/22
B21B1/22 A
B21B1/22 B
B21B1/38
B23K20/12 360
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022011400
(22)【出願日】2022-01-28
(71)【出願人】
【識別番号】596091956
【氏名又は名称】冨士端子工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】517132810
【氏名又は名称】地方独立行政法人大阪産業技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100109472
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 直之
(72)【発明者】
【氏名】長岡 亨
(72)【発明者】
【氏名】京田 猛
(72)【発明者】
【氏名】安東 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】三輪 哲司
【テーマコード(参考)】
4E002
4E167
【Fターム(参考)】
4E002AA07
4E002AA08
4E002AD05
4E002BB04
4E002BC02
4E002BD05
4E002BD06
4E002CA07
4E002CA08
4E002CB05
4E002CB08
4E167AA06
4E167AA08
4E167AA29
4E167BC07
(57)【要約】
【課題】両側に配置する金属板とそれらのあいだに配置する金属板の機械的特性の関係性を特定することにより、異種金属接合材を圧延したときの湾曲を防止する。
【解決手段】互いに種類が異なる2種類の金属板を幅方向に並べて接合した異種金属接合材を長手方向に圧延する方法であって、上記圧延にあたって、圧延時の伸び率が相対的に大きい第1の金属板10を両側に、上記伸び率が相対的に小さい第2の金属板20をそれらのあいだに配置して上記接合を行う。上記異種金属接合材を長手方向に圧延すると、相対的に大きく伸びる両側の第1の金属板10が、そのあいだに配置した上記第2の金属板20に対し、両側から長手方向に引張張力を与えながら圧延される。したがって、異種金属接合材を圧延したときの湾曲が効果的に防止される。従来に比べて厳重で煩雑な工程管理が不要で、工業的に容易に実現できる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに種類が異なる2種類の金属板を幅方向に並べて接合した異種金属接合材を長手方向に圧延する方法であって、
上記圧延にあたって、
圧延時の伸び率が相対的に大きい第1の金属板を両側に、上記伸び率が相対的に小さい第2の金属板をそれらのあいだに配置して上記接合を行う
ことを特徴とする異種金属接合材の圧延方法。
【請求項2】
互いに種類が異なる2種類の金属板を幅方向に並べて接合した異種金属接合材を長手方向に圧延する方法であって、
上記圧延にあたって、
圧延時の拡がり率が相対的に小さい第1の金属板を両側に、上記拡がり率が相対的に大きい第2の金属板をそれらのあいだに配置して上記接合を行う
ことを特徴とする異種金属接合材の圧延方法。
【請求項3】
互いに種類が異なる2種類の金属板を幅方向に並べて接合した異種金属接合材を長手方向に圧延する方法であって、
上記圧延にあたって、
圧延時の伸び率が相対的に小さい第2の金属板を両側に、上記伸び率が相対的に大きい第1の金属板をそれらのあいだに配置して上記接合を行う
ことを特徴とする異種金属接合材の圧延方法。
【請求項4】
互いに種類が異なる2種類の金属板を幅方向に並べて接合した異種金属接合材を長手方向に圧延する方法であって、
上記圧延にあたって、
圧延時の拡がり率が相対的に大きい第2の金属板を両側に、上記拡がり率が相対的に小さい第1の金属板をそれらのあいだに配置して上記接合を行う
ことを特徴とする異種金属接合材の圧延方法。
【請求項5】
上記接合は、上記第1の金属板に回転工具を挿入して行う摩擦攪拌接合である
請求項1~4のいずれか一項に記載の異種金属接合材の圧延方法。
【請求項6】
上記摩擦攪拌接合法の際に生成する第1の金属と第2の金属の化合物層を、上記圧延により砕いて上記第1の金属と上記第2の金属の直接接合部を生成する
請求項5記載の異種金属接合材の圧延方法。
【請求項7】
上記回転工具を挿入する側の上記第1の金属板を、上記第2の金属板よりも硬度の低い金属とする
請求項5または6記載の異種金属接合材の圧延方法。
【請求項8】
上記回転工具を挿入する側の上記第1の金属板を、上記第2の金属板よりも融点の低い金属とする
請求項5または6記載の異種金属接合材の圧延方法。
【請求項9】
互いに種類が異なる2種類の金属板を幅方向に並べて接合したものを、長手方向に圧延するための異種金属接合材であって、
圧延時の伸び率が相対的に大きい第1の金属板を両側に、上記伸び率が相対的に小さい第2の金属板をそれらのあいだに配置して上記接合による接合部が形成されている
ことを特徴とする異種金属接合材。
【請求項10】
互いに種類が異なる2種類の金属板を幅方向に並べて接合したものを、長手方向に圧延するための異種金属接合材であって、
圧延時の拡がり率が相対的に小さい第1の金属板を両側に、上記拡がり率が相対的に大きい第2の金属板をそれらのあいだに配置して上記接合による接合部が形成されている
ことを特徴とする異種金属接合材。
【請求項11】
互いに種類が異なる2種類の金属板を幅方向に並べて接合したものを、長手方向に圧延するための異種金属接合材であって、
圧延時の伸び率が相対的に小さい第2の金属板を両側に、上記伸び率が相対的に大きい第1の金属板をそれらのあいだに配置して上記接合による接合部が形成されている
ことを特徴とする異種金属接合材。
【請求項12】
互いに種類が異なる2種類の金属板を幅方向に並べて接合したものを、長手方向に圧延するための異種金属接合材であって、
圧延時の拡がり率が相対的に大きい第2の金属板を両側に、上記拡がり率が相対的に小さい第1の金属板をそれらのあいだに配置して上記接合による接合部が形成されている
ことを特徴とする異種金属接合材。
【請求項13】
上記接合部が、上記第1の金属板に回転工具を挿入して行う摩擦攪拌接合による接合部である
請求項9~12のいずれか一項に記載の異種金属接合材。
【請求項14】
上記回転工具が挿入される側の上記第1の金属板が、上記第2の金属板よりも硬度の低い金属である
請求項13記載の異種金属接合材。
【請求項15】
上記回転工具が挿入される側の上記第1の金属板が、上記第2の金属板よりも融点の低い金属である
請求項13記載の異種金属接合材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに種類が異なる2つの金属板を並べて接合した異種金属接合材の圧延方法およびそれに用いる異種金属接合材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
互いに種類が異なる2つの金属板を並べて接合した異種金属接合材を圧延する場合、2つの金属の機械的特性の相違から、圧延材が長手方向に湾曲してしまうことがある。このような湾曲を防止するため、異種金属接合材の両端部に治具を固定し、両端から引張張力を与えながら圧延することが行われる。ところが、このような方法では、治具や引張装置、治具を固定する作業などが余分に必要となってしまううえ、圧延できる異種金属接合材の長さにも限界がある。
【0003】
異種金属接合材の圧延に関する先行技術文献として、出願人は下記の特許文献1を把握している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【0005】
上記特許文献1は、並接合金板の製造方法に関するものであり、以下の記載がある。
[公報第1頁右欄第1行目~第7行目]
本発明は上記のような従来の欠点を除去するために成されたものであり、並接合金板の幅方向中心に対して対称的に配置した同一種の合金板を同一素材の同一長手方向位置から採取することにより、圧延工程における横曲りを防止することができる並接合金板の製造方法を提供することを目的とする。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1には、対称的に配置した同一種の合金板を同一素材の同一長手方向位置から採取し、両者の寸法特性をそろえることが記載されている。
【0007】
しかしながら、同一種の合金板を同一素材の同一長手方向位置から採取し、それらを対称的に配置するのは、厳重で煩雑な工程管理が必要で、工業的に実現するのは容易でない。また、上記特許文献1には、対称的に配置した同一種の合金板と、幅方向中心に配置する金属板との関係について言及がない。つまり、上記特許文献1は、両側に配置した合金板の寸法特性をそろえるだけで、両側の合金板と中央の金属板の関係についてなんら考慮されず、そのような技術思想は存在しない。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するため、つぎの目的をもってなされたものである。
両側に配置する金属板とそれらのあいだに配置する金属板の機械的特性の関係性を特定することにより、異種金属接合材を圧延したときの湾曲を防止する、異種金属接合材の圧延方法およびそれに用いる異種金属接合材を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の異種金属接合材の圧延方法は、上記目的を達成するため、下記の構成を採用した。
互いに種類が異なる2種類の金属板を幅方向に並べて接合した異種金属接合材を長手方向に圧延する方法であって、
上記圧延にあたって、
圧延時の伸び率が相対的に大きい第1の金属板を両側に、上記伸び率が相対的に小さい第2の金属板をそれらのあいだに配置して上記接合を行う。
【0010】
請求項2記載の異種金属接合材の圧延方法は、上記目的を達成するため、下記の構成を採用した。
互いに種類が異なる2種類の金属板を幅方向に並べて接合した異種金属接合材を長手方向に圧延する方法であって、
上記圧延にあたって、
圧延時の拡がり率が相対的に小さい第1の金属板を両側に、上記拡がり率が相対的に大きい第2の金属板をそれらのあいだに配置して上記接合を行う。
【0011】
請求項3記載の異種金属接合材の圧延方法は、上記目的を達成するため、下記の構成を採用した。
互いに種類が異なる2種類の金属板を幅方向に並べて接合した異種金属接合材を長手方向に圧延する方法であって、
上記圧延にあたって、
圧延時の伸び率が相対的に小さい第2の金属板を両側に、上記伸び率が相対的に大きい第1の金属板をそれらのあいだに配置して上記接合を行う。
【0012】
請求項4記載の異種金属接合材の圧延方法は、上記目的を達成するため、下記の構成を採用した。
互いに種類が異なる2種類の金属板を幅方向に並べて接合した異種金属接合材を長手方向に圧延する方法であって、
上記圧延にあたって、
圧延時の拡がり率が相対的に大きい第2の金属板を両側に、上記拡がり率が相対的に小さい第1の金属板をそれらのあいだに配置して上記接合を行う。
【0013】
請求項5記載の異種金属接合材の圧延方法は、請求項1~4のいずれか一項に記載の構成に加え、下記の構成を採用した。
上記接合は、上記第1の金属板に回転工具を挿入して行う摩擦攪拌接合である。
【0014】
請求項6記載の異種金属接合材の圧延方法は、請求項5記載の構成に加え、下記の構成を採用した。
上記摩擦攪拌接合法の際に生成する第1の金属と第2の金属の化合物層を、上記圧延により砕いて上記第1の金属と上記第2の金属の直接接合部を生成する。
【0015】
請求項7記載の異種金属接合材の圧延方法は、請求項5または6記載の構成に加え、下記の構成を採用した。
上記回転工具を挿入する側の上記第1の金属板を、上記第2の金属板よりも硬度の低い金属とする。
【0016】
請求項8記載の異種金属接合材の圧延方法は、請求項5または6記載の構成に加え、下記の構成を採用した。
上記回転工具を挿入する側の上記第1の金属板を、上記第2の金属板よりも融点の低い金属とする。
【0017】
請求項9記載の異種金属接合材は、上記目的を達成するため、下記の構成を採用した。
互いに種類が異なる2種類の金属板を幅方向に並べて接合したものを、長手方向に圧延するための異種金属接合材であって、
圧延時の伸び率が相対的に大きい第1の金属板を両側に、上記伸び率が相対的に小さい第2の金属板をそれらのあいだに配置して上記接合による接合部が形成されている。
【0018】
請求項10記載の異種金属接合材は、上記目的を達成するため、下記の構成を採用した。
互いに種類が異なる2種類の金属板を幅方向に並べて接合したものを、長手方向に圧延するための異種金属接合材であって、
圧延時の拡がり率が相対的に小さい第1の金属板を両側に、上記拡がり率が相対的に大きい第2の金属板をそれらのあいだに配置して上記接合による接合部が形成されている。
【0019】
請求項11記載の異種金属接合材は、上記目的を達成するため、下記の構成を採用した。
互いに種類が異なる2種類の金属板を幅方向に並べて接合したものを、長手方向に圧延するための異種金属接合材であって、
圧延時の伸び率が相対的に小さい第2の金属板を両側に、上記伸び率が相対的に大きい第1の金属板をそれらのあいだに配置して上記接合による接合部が形成されている。
【0020】
請求項12記載の異種金属接合材は、上記目的を達成するため、下記の構成を採用した。
互いに種類が異なる2種類の金属板を幅方向に並べて接合したものを、長手方向に圧延するための異種金属接合材であって、
圧延時の拡がり率が相対的に大きい第2の金属板を両側に、上記拡がり率が相対的に小さい第1の金属板をそれらのあいだに配置して上記接合による接合部が形成されている。
【0021】
請求項13記載の異種金属材は、請求項9~12のいずれか一項に記載の構成に加え、下記の構成を採用した。
上記接合部が、上記第1の金属板に回転工具を挿入して行う摩擦攪拌接合による接合部である。
【0022】
請求項14記載の異種金属材は、請求項13記載の構成に加え、下記の構成を採用した。
上記回転工具が挿入される側の上記第1の金属板が、上記第2の金属板よりも硬度の低い金属である。
【0023】
請求項15記載の異種金属材は、請求項13記載の構成に加え、下記の構成を採用した。
上記回転工具が挿入される側の上記第1の金属板が、上記第2の金属板よりも融点の低い金属である。
【発明の効果】
【0024】
請求項1記載の異種金属接合材の圧延方法は、上記圧延にあたって、圧延時の伸び率が相対的に大きい第1の金属板を両側に、上記伸び率が相対的に小さい第2の金属板をそれらのあいだに配置して上記接合を行う。この異種金属接合材を長手方向に圧延すると、両側に配置した上記第1の金属板が、それらのあいだに配置した上記第2の金属板よりも相対的に大きく伸びる。このため、上記異種金属接合材は、相対的に大きく伸びる両側の第1の金属板が、そのあいだに配置した上記第2の金属板に対し、両側から長手方向に引張張力を与えながら圧延される。したがって、異種金属接合材を圧延したときの湾曲が効果的に防止される。従来に比べて厳重で煩雑な工程管理が不要で、工業的に容易に実現できる。
【0025】
請求項2記載の異種金属接合材の圧延方法は、上記圧延にあたって、圧延時の拡がり率が相対的に小さい第1の金属板を両側に、上記拡がり率が相対的に大きい第2の金属板をそれらのあいだに配置して上記接合を行う。この異種金属接合材を長手方向に圧延すると、あいだに配置した上記第2の金属板が、その両側に配置した上記第1の金属板よりも相対的に大きく拡がる。このため、上記異種金属接合材は、相対的に大きく拡がるあいだの第2の金属板が、その両側に配置した上記第1の金属板に対し、真ん中から幅方向に圧縮応力を与えながら圧延される。したがって、異種金属接合材を圧延したときの湾曲が効果的に防止される。従来に比べて厳重で煩雑な工程管理が不要で、工業的に容易に実現できる。
【0026】
請求項3記載の異種金属接合材の圧延方法は、上記圧延にあたって、圧延時の伸び率が相対的に小さい第2の金属板を両側に、上記伸び率が相対的に大きい第1の金属板をそれらのあいだに配置して上記接合を行う。この異種金属接合材を長手方向に圧延すると、あいだに配置した上記第1の金属板が、両側の上記第2の金属板よりも相対的に大きく伸びる。このため、上記異種金属接合材は、両側に配置した相対的に伸び率の小さい第2の金属板が、そのあいだに配置した上記第1の金属板に対し、両側から長手方向に圧縮応力を与えながら圧延される。したがって、異種金属接合材を圧延したときの湾曲が効果的に防止される。従来に比べて厳重で煩雑な工程管理が不要で、工業的に容易に実現できる。
【0027】
請求項4記載の異種金属接合材の圧延方法は、上記圧延にあたって、圧延時の拡がり率が相対的に大きい第2の金属板を両側に、上記拡がり率が相対的に小さい第1の金属板をそれらのあいだに配置して上記接合を行う。この異種金属接合材を長手方向に圧延すると、両側に配置した上記第2の金属板が、それらのあいだに配置した上記第1の金属板よりも相対的に大きく拡がる。このため、上記異種金属接合材は、相対的に大きく拡がる両側の第2の金属板が、そのあいだに配置した上記第1の金属板に対して両側から幅方向に圧縮応力を与えながら圧延される。したがって、異種金属接合材を圧延したときの湾曲が効果的に防止される。従来に比べて厳重で煩雑な工程管理が不要で、工業的に容易に実現できる。
【0028】
請求項5記載の異種金属接合材の圧延方法は、上記接合は、上記第1の金属板に回転工具を挿入して行う摩擦攪拌接合である。上記第1の金属板に回転工具を挿入して行う摩擦攪拌接合は、構造的に薄板の接合が困難である。したがって薄板では、接合部の特性によって摩擦攪拌接合を選択したい場合でも、それができなかった。上記の圧延方法により、異種金属接合材を圧延して薄板を得ることが可能となる。つまり、接合部の特性に応じて摩擦攪拌接合を選択し、その後の圧延によって薄板を得ることができる。
【0029】
請求項6記載の異種金属接合材の圧延方法は、上記摩擦攪拌接合法の際に生成する第1の金属と第2の金属の化合物層を、上記圧延により砕いて上記第1の金属と上記第2の金属の直接接合部を生成する。上記摩擦攪拌接合法の際に第1の金属と第2の金属の化合物層が生成したとしても、上記圧延により砕いて上記第1の金属と上記第2の金属の直接接合部を生成することにより、接合部の接合特性を確保できる。
【0030】
請求項7記載の異種金属接合材の圧延方法は、上記回転工具を挿入する側の上記第1の金属板を、上記第2の金属板よりも硬度の低い金属とする。このため、回転工具への金属の付着も抑制される。したがって、回転工具に付着した金属を除去する、回転工具を交換する等のメンテナンスの頻度を減らすことができる。また、塑性流動を生じさせるために必要なエネルギーが小さくて済むため、動力の節減に有利である。
【0031】
請求項8記載の異種金属接合材の圧延方法は、上記回転工具を挿入する側の上記第1の金属板を、上記第2の金属板よりも融点の低い金属とする。仮に、回転工具を挿入する第1の金属板のほうが融点が高ければ、第1の金属板が塑性流動するまで高温になったころに相手材である第2の金属板が溶融しはじめ、接合不良や欠陥が生じるおそれがある。上記回転工具を挿入する第1の金属板を、第2の金属板よりも融点が低い金属とすることにより、上記のような不都合の発生を防止できる。
【0032】
請求項9記載の異種金属接合材は、圧延時の伸び率が相対的に大きい第1の金属板を両側に、上記伸び率が相対的に小さい第2の金属板をそれらのあいだに配置して上記接合による接合部が形成されている。この異種金属接合材を長手方向に圧延すると、両側に配置した上記第1の金属板が、それらのあいだに配置した上記第2の金属板よりも相対的に大きく伸びる。このため、上記異種金属接合材は、相対的に大きく伸びる両側の第1の金属板が、そのあいだに配置した上記第2の金属板に対し、両側から長手方向に引張張力を与えながら圧延される。したがって、異種金属接合材を圧延したときの湾曲が効果的に防止される。従来に比べて厳重で煩雑な工程管理が不要で、工業的に容易に実現できる。
【0033】
請求項10記載の異種金属接合材は、圧延時の拡がり率が相対的に小さい第1の金属板を両側に、上記拡がり率が相対的に大きい第2の金属板をそれらのあいだに配置して上記接合による接合部が形成されている。この異種金属接合材を長手方向に圧延すると、あいだに配置した上記第2の金属板が、その両側に配置した上記第1の金属板よりも相対的に大きく拡がる。このため、上記異種金属接合材は、相対的に大きく拡がるあいだの第2の金属板が、その両側に配置した上記第1の金属板に対し、真ん中から幅方向に圧縮応力を与えながら圧延される。したがって、異種金属接合材を圧延したときの湾曲が効果的に防止される。従来に比べて厳重で煩雑な工程管理が不要で、工業的に容易に実現できる。
【0034】
請求項11記載の異種金属接合材は、圧延時の伸び率が相対的に小さい第2の金属板を両側に、上記伸び率が相対的に大きい第1の金属板をそれらのあいだに配置して上記接合による接合部が形成されている。この異種金属接合材を長手方向に圧延すると、あいだに配置した上記第1の金属板が、両側の上記第2の金属板よりも相対的に大きく伸びる。このため、上記異種金属接合材は、両側に配置した相対的に伸び率の小さい第2の金属板が、そのあいだに配置した上記第1の金属板に対し、両側から長手方向に圧縮応力を与えながら圧延される。したがって、異種金属接合材を圧延したときの湾曲が効果的に防止される。従来に比べて厳重で煩雑な工程管理が不要で、工業的に容易に実現できる。
【0035】
請求項12記載の異種金属接合材は、圧延時の拡がり率が相対的に大きい第2の金属板を両側に、上記拡がり率が相対的に小さい第1の金属板をそれらのあいだに配置して上記接合による接合部が形成されている。この異種金属接合材を長手方向に圧延すると、両側に配置した上記第2の金属板が、それらのあいだに配置した上記第1の金属板よりも相対的に大きく拡がる。このため、上記異種金属接合材は、相対的に大きく拡がる両側の第2の金属板が、そのあいだに配置した上記第1の金属板に対して両側から幅方向に圧縮応力を与えながら圧延される。したがって、異種金属接合材を圧延したときの湾曲が効果的に防止される。従来に比べて厳重で煩雑な工程管理が不要で、工業的に容易に実現できる。
【0036】
請求項13記載の異種金属接合材は、上記接合部が、上記第1の金属板に回転工具を挿入して行う摩擦攪拌接合による接合部である。上記第1の金属板に回転工具を挿入して行う摩擦攪拌接合は、構造的に薄板の接合が困難である。したがって薄板では、接合部の特性によって摩擦攪拌接合を選択したい場合でも、それができなかった。上記の圧延方法により、異種金属接合材を圧延して薄板を得ることが可能となる。つまり、接合部の特性に応じて摩擦攪拌接合を選択し、その後の圧延によって薄板を得ることができる。
【0037】
請求項14記載の異種金属接合材は、上記回転工具が挿入される側の上記第1の金属板が、上記第2の金属板よりも硬度の低い金属である。このため、回転工具への金属の付着も抑制される。したがって、回転工具に付着した金属を除去する、回転工具を交換する等のメンテナンスの頻度を減らすことができる。また、塑性流動を生じさせるために必要なエネルギーが小さくて済むため、動力の節減に有利である。
【0038】
請求項15記載の異種金属接合材は、上記回転工具が挿入される側の上記第1の金属板が、上記第2の金属板よりも融点の低い金属である。仮に、回転工具を挿入する第1の金属板のほうが融点が高ければ、第1の金属板が塑性流動するまで高温になったころに相手材である第2の金属板が溶融しはじめ、接合不良や欠陥が生じるおそれがある。上記回転工具を挿入する第1の金属板を、第2の金属板よりも融点が低い金属とすることにより、上記のような不都合の発生を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】本発明の異種金属接合材の第1実施形態を説明する図である。
【
図3】本発明の異種金属接合材の圧延方法の第1実施形態を説明する図である。
【
図4】本発明の異種金属接合材およびその圧延方法の第2実施形態を説明する図である。
【
図7】実施例2の接合部附近の断面顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
つぎに、本発明を実施するための形態を説明する。
【0041】
◆第1実施形態
〔異種金属接合材〕
図1は、本発明の異種金属接合材の第1実施形態を説明する図である。(A)は平面図、(B)は正面図である。
【0042】
この異種金属接合材は、互いに種類が異なる2種類の金属板を幅方向(図示の矢印W)に並べて接合したものであり、長手方向(図示の矢印L1)に圧延するためのものである。したがって、各金属板の長手方向L1は、その後に圧延する際の圧延方向L2と平行である。
【0043】
上記2種類の金属板として、第1の金属板10と第2の金属板20を使用している。この例では、上記第1の金属板10と第2の金属板20はそれぞれ、上述した長手方向L1と幅方向Wを有する長方形である。また、上記第1の金属板10と上記第2の金属板20の厚みは、実質的に等しい。
【0044】
上記第1の金属板10は、圧延時の伸び率が相対的に大きい。つまり、圧延時に長手方向L1に伸びる率が、上記第1の金属板10のほうが上記第2の金属板20に比べて大きい。
【0045】
上記圧延時の伸び率eは、以下の式であらわされる数値である。
e=(V2-V1)/V1×100
(V1=金属板の入側速度、V2=金属板の出側速度)
【0046】
上記第1の金属板10は、圧延時の拡がり率が相対的に小さい。つまり、圧延時に幅方向Wに拡がる率が、上記第1の金属板10のほうが上記第2の金属板20に比べて小さい。
【0047】
上記圧延時の拡がり率gは、以下の式であらわされる数値である。
g=(b2-b1)/b1
(b1=金属板の入側板幅、b2=金属板の出側板幅)
【0048】
たとえば、上記第1の金属板10としてアルミニウム、上記第2の金属板20として銅を組み合わせたときに、上述した伸び率と拡がり率の関係となる。ただし、本発明は上記の組み合わせに限定するものではない。つまり本発明は、上述した伸び率の関係、拡がり率の関係であれば、各種の金属の組み合わせについて成立するのであり、各種の金属の組み合わせを包含する趣旨である。加えて、上記第1の金属板10を構成する金属、第2の金属板20を構成する金属は、純金属だけに限定されず、各種の合金も含む趣旨である。
【0049】
上記異種金属接合材は、圧延時の伸び率が相対的に大きい第1の金属板10を両側に、上記伸び率が相対的に小さい第2の金属板20をそれらのあいだに配置して上記接合による接合部30が形成されている。
また、圧延時の拡がり率が相対的に小さい第1の金属板10を両側に、上記拡がり率が相対的に大きい第2の金属板20をそれらのあいだに配置して上記接合による接合部30が形成されている。
【0050】
つまり、幅方向Wにおいて両側に第1の金属板10を配置し、そのあいだに第2の金属板20を配置している。その状態で、上記第2の金属板20の両側において長手方向L1に延びる、上記第1の金属板10と上記第2の金属板20との境界を接合し、上記接合部30が形成される。
【0051】
上記接合部30は、上記第1の金属板10に回転工具40を挿入して行う摩擦攪拌接合による接合部30である。
【0052】
〔接合方法〕
図2は、異種金属の接合方法を説明する図である。図では、摩擦攪拌接合による接合方法を説明している。
【0053】
本実施形態では、上記第1の金属板10と上記第2の金属板20を幅方向に並べ、実質的に隙間ができないように隣接して配置する。たとえば、2枚の金属板を突き合せたような状態である。図では、上記第1の金属板10と上記第2の金属板20をそれぞれ1枚ずつしか示していないが、本実施形態は、上述したように、幅方向Wにおいて両側に上記第1の金属板10を配置し、そのあいだに上記第2の金属板20を配置する。その場合、接合部30が2つ形成されることになるところ、両者の接合方法は同様なので、
図2では一方のみを示して説明する。
【0054】
上記第1の金属板10と上記第2の金属板20を幅方向に並べて配置した状態で、軸回転する回転工具40を上記第1の金属部材10の側に上面から挿入する。このとき、上記回転工具40の外周縁が上記第1の金属板10と上記第2の金属板20の境界に極めて近づくところに挿入する。つまり、上記回転工具40の外周縁が上記境界にほぼ一致し、かつ第2の金属板20に対しては接触しない程度である。上記外周縁とは、回転している回転工具40における最も外側の回転軌跡である。
【0055】
このときの挿入深さは、上記回転工具40の下端が第1の金属板10の下面に露出する程度である。つまり、上記回転工具40を上記第1の金属板10に対して貫通させる。
【0056】
上記回転工具40は、たとえば、長手方向L1の一方の端部に挿入し、その状態で上記境界にそって他方の端部まで移動させる。これにより、上記第1の金属板に塑性流動が生じ、上記境界において上記第1の金属板10を構成する金属と上記第2の金属板を構成する金属が密着し、上記第1の金属板10と上記第2の金属板20が接合される。つまり、上記回転工具40を長手方向L1に移動させることにより、上記長手方向L1に沿った接合部30が形成される。
【0057】
図において、符号32は、上記回転工具40による加工領域32である。上記加工領域32は、上記回転工具40が移動した軌跡で、帯状の領域である。上記加工領域32において、上記第1の金属板10に塑性流動が生じ、上記第1の金属板10と第2の金属板20の上記境界が摩擦攪拌接合により接合される。あるいは、上記第1の金属板10と第2の金属板20の上記境界は、固相拡散によっても接合される。
【0058】
本実施形態では、回転工具40を挿入する第1の金属板10が、あいだの第2の金属板20の両側に配置されている。したがって、両接合部30の外側に沿ってそれぞれ加工領域32が形成される。
【0059】
上述したように、回転工具40の外周縁が上記境界と略一致するよう上記第1の金属板10に挿入する。このようにすることにより、上記第1の金属板10だけに塑性流動が生じ、第2の金属板20では塑性流動がほとんど起こらない。したがって、2種類の金属の混在やボイド等の欠陥が少ない良好な接合部30を得ることができる。また、回転工具40を第1の金属板10の側にだけ挿入することにより、回転工具40にかかる垂直方向の力を大きく緩和し、工具の劣化を防止できる。
【0060】
上記回転工具40を挿入する側の上記第1の金属板10を、上記第2の金属板20よりも硬度の低い金属とすることができる。このようにすることにより、摩擦攪拌接合の塑性流動時の粘性が小さい第1の金属板10だけに回転工具40を挿入することになる。このため、回転工具40への金属の付着も抑制される。したがって、回転工具40に付着した金属を除去する、回転工具40を交換する等のメンテナンスの頻度を減らすことができる。また、塑性流動を生じさせるために必要なエネルギーが小さくて済むため、動力の節減に有利である。
【0061】
上記回転工具40を挿入する側の上記第1の金属板10を、上記第2の金属板20よりも融点の低い金属とすることができる。仮に、回転工具40を挿入する第1の金属板10のほうが融点が高ければ、第1の金属板10が塑性流動するまで高温になったころに相手材である第2の金属板20が溶融しはじめ、接合不良や欠陥が生じるおそれがある。上記回転工具40を挿入する第1の金属板10を、第2の金属板20よりも融点が低い金属とすることにより、上記のような不都合の発生を防止できる。
【0062】
このように、本実施形態の異種金属接合材は、上記第2の金属板20の両側において長手方向L1に延びる、上記第1の金属板10と上記第2の金属板20との境界を接合し、上記接合部30が形成されている。
【0063】
〔圧延方法〕
図3は、本発明の異種金属接合材の圧延方法の第1実施形態を説明する図である。(A)は平面図、(B)は正面図であり、入り口側から見た図である。したがって、
図3(A)では下が入り口側、上が出口側である。
【0064】
上記のようにして構成した異種金属接合材を、上下の圧延ロール50に挟んで圧延する。圧延方向L2は、異種金属接合材の長手方向L1に対して平行である。つまり、上記圧延方向L2は、上述した摩擦攪拌接合において上記回転工具40が移動する移動方向に対して平行である。
【0065】
本実施形態では、互いに種類が異なる2種類の金属板10,20を幅方向に並べて接合した異種金属接合材を、長手方向に圧延する。
【0066】
そして、上記圧延にあたって、圧延時の伸び率が相対的に大きい第1の金属板10を両側に、上記伸び率が相対的に小さい第2の金属板20をそれらのあいだに配置して上記接合を行う。
また、上記圧延にあたって、圧延時の拡がり率が相対的に小さい第1の金属板10を両側に、上記拡がり率が相対的に大きい第2の金属板20をそれらのあいだに配置して上記接合を行う。
【0067】
上記異種金属接合材を長手方向L1に圧延すると、両側に配置した上記第1の金属板10が、それらのあいだに配置した上記第2の金属板20よりも相対的に大きく伸びる。このため、上記異種金属接合材は、相対的に大きく伸びる両側の第1の金属板10が、そのあいだに配置した上記第2の金属板20に対し、両側から長手方向に引張張力を与えながら圧延される。
【0068】
また、上記異種金属接合材を長手方向L1に圧延すると、あいだに配置した上記第2の金属板20が、その両側に配置した上記第1の金属板10よりも相対的に大きく拡がる。このため、上記異種金属接合材は、相対的に大きく拡がるあいだの第2の金属板20が、その両側に配置した上記第1の金属板10に対し、真ん中から幅方向に圧縮応力を与えながら圧延される。
【0069】
したがって、上記異種金属接合材を圧延したときの湾曲が効果的に防止され、厳重で煩雑な工程管理が不要で、工業的に容易に実現できる。
【0070】
上記摩擦攪拌接合法の際に生成する第1の金属と第2の金属の化合物層を、上記圧延により砕いて上記第1の金属と上記第2の金属の直接接合部を生成することができる。上記摩擦攪拌接合法の際に第1の金属と第2の金属の化合物層が生成したとしても、上記圧延により砕いて上記第1の金属と上記第2の金属の直接接合部を生成することにより、接合部の接合特性を確保できる。
【0071】
〔第1実施形態の効果〕
第1実施形態の異種金属接合材を長手方向に圧延すると、両側に配置した上記第1の金属板10が、それらのあいだに配置した上記第2の金属板20よりも相対的に大きく伸びる。このため、上記異種金属接合材は、相対的に大きく伸びる両側の第1の金属板10が、そのあいだに配置した上記第2の金属板20に対し、両側から長手方向に引張張力を与えながら圧延される。したがって、異種金属接合材を圧延したときの湾曲が効果的に防止される。従来に比べて厳重で煩雑な工程管理が不要で、工業的に容易に実現できる。
【0072】
また、あいだに配置した上記第2の金属板20が、その両側に配置した上記第1の金属板10よりも相対的に大きく拡がる。このため、上記異種金属接合材は、相対的に大きく拡がるあいだの第2の金属板20が、その両側に配置した上記第1の金属板10に対し、真ん中から幅方向に圧縮応力を与えながら圧延される。したがって、異種金属接合材を圧延したときの湾曲が効果的に防止される。従来に比べて厳重で煩雑な工程管理が不要で、工業的に容易に実現できる。
【0073】
第1実施形態は、上記接合は、上記第1の金属板10に回転工具40を挿入して行う摩擦攪拌接合である。上記第1の金属板10に回転工具40を挿入して行う摩擦攪拌接合は、構造的に薄板の接合が困難である。したがって薄板では、接合部30の特性によって摩擦攪拌接合を選択したい場合でも、それができなかった。上記の圧延方法により、異種金属接合材を圧延して薄板を得ることが可能となる。つまり、接合部30の特性に応じて摩擦攪拌接合を選択し、その後の圧延によって薄板を得ることができる。
【0074】
◆第2実施形態
図4は、本発明の異種金属接合材およびその圧延方法の第2実施形態を説明する平面図である。
【0075】
〔異種金属接合材〕
第2実施形態の異種金属接合材は、圧延時の伸び率が相対的に小さい第2の金属板20を両側に、上記伸び率が相対的に大きい第1の金属板10をそれらのあいだに配置して上記接合による接合部30が形成されている。
【0076】
また、本実施形態の異種金属接合材は、圧延時の拡がり率が相対的に大きい第2の金属板20を両側に、上記拡がり率が相対的に小さい第1の金属板10をそれらのあいだに配置して上記接合による接合部30が形成されている。
【0077】
それ以外は、上記第1実施形態と同様である。
【0078】
〔接合方法〕
第2実施形態も、摩擦攪拌接合による接合方法を採用することができる。
【0079】
第2実施形態では、回転工具40を挿入する第1の金属板10が、両側の第2の金属板20のあいだに配置されている。したがって、両接合部30の内側に沿ってそれぞれ加工領域32が形成される。
【0080】
それ以外は、上記第1実施形態と同様である。
【0081】
〔圧延方法〕
第2実施形態でも、互いに種類が異なる2種類の金属板10,20を幅方向に並べて接合した異種金属接合材を、長手方向に圧延する。
【0082】
そして、上記圧延にあたって、圧延時の伸び率が相対的に小さい第2の金属板20を両側に、上記伸び率が相対的に大きい第1の金属板10をそれらのあいだに配置して上記接合を行う。
また、上記圧延にあたって、圧延時の拡がり率が相対的に大きい第2の金属板20を両側に、上記拡がり率が相対的に小さい第1の金属板10をそれらのあいだに配置して上記接合を行う。
【0083】
それ以外は、上記第1実施形態と同様である。
【0084】
〔第2実施形態の効果〕
第2実施形態の異種金属接合材を長手方向に圧延すると、あいだに配置した上記第1の金属板10が、両側の上記第2の金属板20よりも相対的に大きく伸びる。このため、上記異種金属接合材は、両側に配置した相対的に伸び率の小さい第2の金属板20が、そのあいだに配置した上記第1の金属板10に対し、両側から長手方向に圧縮応力を与えながら圧延される。したがって、異種金属接合材を圧延したときの湾曲が効果的に防止される。従来に比べて厳重で煩雑な工程管理が不要で、工業的に容易に実現できる。
【0085】
また、両側に配置した上記第2の金属板20が、それらのあいだに配置した上記第1の金属板10よりも相対的に大きく拡がる。このため、上記異種金属接合材は、相対的に大きく拡がる両側の第2の金属板20が、そのあいだに配置した上記第1の金属板10に対して両側から幅方向に圧縮応力を与えながら圧延される。したがって、異種金属接合材を圧延したときの湾曲が効果的に防止される。従来に比べて厳重で煩雑な工程管理が不要で、工業的に容易に実現できる。
【0086】
それ以外は、上記第1実施形態と同様の作用効果を奏する。
【実施例0087】
第2の金属板20として銅板を両側に、第1の金属板10としてアルミニウム板をそれらのあいだに配置して上記接合による接合部30を形成して異種金属接合材を得、以下の条件でそれを圧延した。
(圧延条件)
下記の条件で冷間圧延を行った。
圧延前の厚さ:4mm
圧延後の厚さ:0.8mm
圧下率:80%
【0088】
図5は、上記のようにして得た異種金属接合材の圧延材の外観写真である。異種金属接合材を圧延したときの湾曲が効果的に防止されていることがわかる。