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  • 特開-気体溶解液生成装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023110186
(43)【公開日】2023-08-09
(54)【発明の名称】気体溶解液生成装置
(51)【国際特許分類】
   B01F 25/10 20220101AFI20230802BHJP
   B01F 21/00 20220101ALI20230802BHJP
   B01F 23/23 20220101ALI20230802BHJP
   B01F 25/21 20220101ALI20230802BHJP
   B01F 35/75 20220101ALI20230802BHJP
【FI】
B01F5/00 G
B01F1/00 A
B01F3/04 A
B01F5/02 A
B01F15/02 C
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022011469
(22)【出願日】2022-01-28
(71)【出願人】
【識別番号】517205435
【氏名又は名称】穂栄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【弁理士】
【氏名又は名称】南瀬 透
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100182567
【弁理士】
【氏名又は名称】遠坂 啓太
(74)【代理人】
【識別番号】100219483
【弁理士】
【氏名又は名称】宇野 智也
(72)【発明者】
【氏名】手柴 一郎
(72)【発明者】
【氏名】田仲 康矢
(72)【発明者】
【氏名】宮田 雅文
(72)【発明者】
【氏名】中村 圭史
【テーマコード(参考)】
4G035
4G037
【Fターム(参考)】
4G035AA01
4G035AB15
4G035AC15
4G035AC44
4G035AE13
4G037AA11
4G037EA01
(57)【要約】
【課題】大量の気体が溶解した液体を効率良く、安定的に生成することができる気体溶解液生成装置を提供する。
【解決手段】酸素溶解水生成装置100は、酸素溶解水OWを収容可能な気液接触槽1と、気液接触槽1内に配置され気液接触槽1外から供給される水Wと酸素O2とを混合して気液接触槽1内に微細気泡MB混じりの水MBWを吐出する微細気泡発生器2と、気液接触槽1外から微細気泡発生器2に水Wを供給する液体導入経路3と、気液接触槽1外から微細気泡発生器2に酸素O2を供給する気体導入経路4と、微細気泡発生器2から気液接触槽1内に吐出された微細気泡MB混じりの水MBWから形成された酸素溶解水OWを気液接触槽1外へ排出する排液経路5と、を備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を収容可能な気液接触槽と、前記気液接触槽内に配置され前記気液接触槽の外部から供給される液体と気体とを混合して前記気液接触槽内に微細気泡混じりの液体を吐出する微細気泡発生器と、前記気液接触槽外から前記微細気泡発生器に液体を供給する液体導入経路と、前記気液接触槽外から前記微細気泡発生器に気体を供給する気体導入経路と、前記微細気泡発生器から前記気液接触槽内に吐出された微細気泡混じりの液体から形成された気体溶解液を前記気液接触槽外へ排出する排液経路と、を備え、
前記微細気泡発生器が、気液が旋回可能な筒状空間を有する気液旋回室と、前記液体導入経路を経由して供給される液体を前記気液旋回室内に噴出する液体噴出口と、前記気体導入経路を経由して供給される気体を前記気液旋回室内に噴出する気体噴出口と、前記気液旋回室内の微細気泡混じりの液体を前記気液接触槽内に吐出する気液吐出口と、を備えた気体溶解液生成装置。
【請求項2】
前記微細気泡発生器の気液旋回室の中心軸に対し捻じれの位置をなす方向へ液体を噴出する位置に前記液体噴出口を設けた請求項1記載の気体溶解液生成装置。
【請求項3】
前記微細気泡発生器の気液噴出口を重力方向に向けて配置した請求項1または2記載の気体溶解液生成装置。
【請求項4】
前記排液経路の上流側の開口部を、反重力方向に向けた状態で前記気液接触槽内に配置した請求項1~3の何れかの項に記載の気体溶解液生成装置。
【請求項5】
前記気液接触槽を気密構造とし、且つ、前記気液接触槽内の上部に滞留する未溶解気体を前記気液接触槽外に排出する排気手段を設けた請求項1~4の何れかの項に記載の気体溶解液生成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水やその他の液体に酸素や空気などの気体を溶解させて気体溶解液を生成する気体溶解液生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明に係る気体溶解液生成装置と同様、酸素や空気などの気体を水に溶解させて気体溶解水を生成する機能を有する装置として、例えば、特許文献1に記載された「微細気泡発生装置」が知られている。
【0003】
特許文献1に記載された「微細気泡発生装置」は、気液が旋回可能な筒状空間を有する気液旋回室と、前記気液旋回室内へ液体を導入して前記気液旋回室内に液体旋回流を発生させるため前記気液旋回室の基端側に配置された液体導入手段と、前記気液旋回室へ気体を供給するため前記気液旋回室に連通して設けられた気体導入手段と、前記気液旋回室内の気液を吐出するため前記気液旋回室の先端側に配置された気液吐出口と、前記気液吐出口から吐出される気液を導入する気液接触室と、前記気液接触室内の気液を排出する気液排出口と、を備えたことを特徴とする。
【0004】
特許文献1に記載された「微細気泡発生装置」を使用することにより、空気や酸素などの気体が溶解した気体溶解水を生成することができ、この気体溶解水は植物栽培用水や魚介類養殖用水などの用途に広く利用することができ、植物の成長や魚介類の生育に良い影響を与えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3765759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された「微細気泡発生装置」は、微細気泡が溶解した液体(気体溶解液)を効率良く生成することができ、設置に要するスペースや配管資材を大幅に削減することができるなどの長所を有しているが、気体溶解液の生成効率の向上は、今後も引き続き重要な課題である。
【0007】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、大量の気体が溶解した液体を効率良く、安定的に生成することができる気体溶解液生成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る気体溶解液生成装置は、液体を収容可能な気液接触槽と、前記気液接触槽内に配置され前記気液接触槽の外部から供給される液体と気体とを混合して前記気液接触槽内に微細気泡混じりの液体を吐出する微細気泡発生器と、前記気液接触槽外から前記微細気泡発生器に液体を供給する液体導入経路と、前記気液接触槽外から前記微細気泡発生器に気体を供給する気体導入経路と、前記微細気泡発生器から前記気液接触槽内に吐出された微細気泡混じりの液体から形成された気体溶解液を前記気液接触槽外へ排出する排液経路と、を備え、
前記微細気泡発生器が、気液が旋回可能な筒状空間を有する気液旋回室と、前記液体導入経路を経由して供給される液体を前記気液旋回室内に噴出する液体噴出口と、前記気体導入経路を経由して供給される気体を前記気液旋回室内に噴出する気体噴出口と、前記気液旋回室内の微細気泡混じりの液体を前記気液接触槽内に吐出する気液吐出口と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
前記気体溶解液生成装置においては、前記微細気泡発生器の気液旋回室の中心軸に対し捻じれの位置をなす方向へ液体を噴出する位置に前記液体噴出口を設けることができる。
【0010】
前記気体溶解液生成装置においては、前記微細気泡発生器の気液噴出口を重力方向に向けて配置することができる。
【0011】
前記気体溶解液生成装置においては、前記排液経路の上流側の開口部を、反重力方向に向けた状態で前記気液接触槽内に配置することができる。
【0012】
前記気体溶解液生成装置においては、前記気液接触槽を気密構造とし、且つ、前記気液接触槽内の上部に滞留する未溶解気体を前記気液接触槽外に排出する排気手段を設けることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、大量の気体が溶解した液体を効率良く、安定的に生成することができる気体溶解液生成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態である酸素溶解水生成装置を示す一部省略垂直断面図である。
図2図1中のA-A線における一部省略水平断面図である。
図3図1に示す酸素溶解水生成装置の使用状態を示す一部省略概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図1図3に基づいて、本発明に係る気体溶解液生成装置の実施形態の一つである酸素溶解水生成装置100について説明する。
【0016】
図1に示すように、酸素溶解水生成装置100は、酸素溶解水OWを収容可能な気液接触槽1と、気液接触槽1内に配置され気液接触槽1外から供給される水Wと酸素O2とを混合して気液接触槽1内に微細気泡MB混じりの水MBWを吐出する微細気泡発生器2と、気液接触槽1外から微細気泡発生器2に水Wを供給する液体導入経路3と、気液接触槽1外から微細気泡発生器2に酸素O2を供給する気体導入経路4と、微細気泡発生器2から気液接触槽1内に吐出された微細気泡MB混じりの水MBWから形成された酸素溶解水OWを気液接触槽1外へ排出する排液経路5と、を備えている。気液接触槽1外に露出する液体導入経路3の途中には逆止弁7が配置され、気液接触槽1外に露出する排液経路5の途中には流量調整バルブ8が配置されている。
【0017】
気液接触槽1は、円筒状の周壁部1aと、周壁部1aの下面を閉塞する底板部1bと、周壁部1aの上面を閉塞する天板部1cと、を備え、気密構造をなしている。気液接触槽1の周壁部1aの天板部1c寄りの部分には、エルボー形状の排気管6aが接続され、排気管6aの起立部の上方に排気手段6が設けられている。排気手段6は排気管6aを介して、気液接触槽1の内部と連通している。後述するように、排気手段6は、気液接触槽1内の上部(天板部1c寄りの部分)に滞留する未溶解気体を気液接触槽1外に排出する機能を有している。
【0018】
微細気泡発生器2は、気液が旋回可能な筒状空間を有する気液旋回室21と、液体導入経路3を経由して供給される水Wを気液旋回室21内に噴出する複数の液体噴出口22と、気体導入経路4を経由して供給される酸素O2を気液旋回室21内に噴出する気体噴出口4aと、気液旋回室21内に形成された微細気泡混じりの水MBWを気液接触槽1内に吐出する気液吐出口23と、を備えている。
【0019】
微細気泡発生器2は、円筒状のケーシング20と、ケーシング20の上面を閉塞する上部隔壁20aを貫通して気液旋回室21内に垂下するように配置された円筒状の液体導入部24と、を備えている。ケーシング20の下面は下部隔壁20bで閉塞され、下部隔壁20bの中心に気液吐出口23が開設されている。ケーシング20の内径は液体導入部24の外径より大であり、液体導入部24の中心軸(図示せず)は気液旋回室21の中心軸21cと同一であり、液体導入部24はケーシング20と同軸をなすように配置されている。
【0020】
液体導入部24の下面は下部隔壁24bで閉塞され、液体導入部24の上方は、気液接触槽1の周壁部1aを貫通して気液接触槽1内に配設された液体導入経路3のエルボー部3aに接続されている。円筒状をなす液体導入部24の周壁部24aの下部隔壁24b寄りの部分には複数の液体噴出口22が開設されている。図2に示すように、複数の液体噴出口22は、微細気泡発生器2の気液旋回室21の中心軸21cに対し捻じれの位置をなす方向に沿って液体を噴出する位置に開設されている。
【0021】
気体導入経路4は、気液接触槽1の天板部1cを貫通して気液接触室1内に垂下し、液体導入経路3の周壁部3bを貫通して液体導入部24内に入り、気液旋回室21の中心軸21cと同軸をなすように配置され、気体導入経路4の下端部側(気体噴出口4a側)は液体導入部24の下部隔壁24bを貫通して気液旋回室21内に突出し、気体噴出口4aは気液旋回室21内の中心軸21c上に位置している。
【0022】
図1に示すように、酸素溶解水生成装置100においては、微細気泡発生器2は気液接触槽1内の底板部1b寄りの部分に、気液吐出口23を重力方向(底板部1b方向)に向けた状態で配置されている。また、酸素溶解水生成装置100においては、排液経路5の上流側を気液接触槽1内に垂直起立状に配置するとともに、排液経路5の開口部5aを気液接触槽1内の天板部1c寄りの部分に反重力方向(天板部1c方向)に向いた状態で配置することにより下向流気泡分離経路を形成している。
【0023】
次に、図3に基づいて、図1に示す酸素溶解水生成装置100の使用事例について説明する。図3に示すように、酸素溶解水生成装置100の液体導入経路3の上流側は送水ポンプ9を介して灌漑用水や井戸などの水源(図示せず)に接続され、排液経路5の下流側は所定の灌漑設備(図示せず)に延設されている。また、気体導入経路4の上流側は酸素ガス調整器11を経由して酸素ボンベ10に接続されている。
【0024】
図3中に示す酸素溶解水生成装置100に対し、送水ポンプ9を稼働させて液体導入経路3を経由して水Wを供給するとともに、酸素ガス調整器11を調整して酸素ボンベ10から気体導入経路4を経由して酸素O2を供給すると、図1図2に示すように、水Wは微細気泡発生器2の液体導入部24内に流入した後、複数の液体噴出口22を通過して気液旋回室21内に噴出し、酸素O2は気体導入経路4の下端部分の気体噴出口4aから気液旋回室21内に噴出する。
【0025】
このとき、複数の液体噴出口22から噴出する水Wは気液旋回室21の中心軸21cに対し捻じれの位置をなす方向に沿って噴出するので、気液旋回室21内にはその中心軸21cの周りを回転する旋回流Sが形成され、気体噴出口4aから噴出する酸素O2は旋回流Sの中心付近に供給される。
【0026】
このように、気液旋回室21内に形成された旋回流Sに対して気体噴出口4aから酸素O2が供給されると、気液旋回室21内を旋回しながら下方へ移動した水W及び酸素O2が、気液旋回室21の下部隔壁20bの気液吐出口23を通過するときに水W中に酸素O2を含む大量の微細気泡MBが発生し、これによって形成された微細気泡MB混じりの水MBWが気液接触槽1内へ流入する。
【0027】
気液接触槽1内へ流入した微細気泡MB混じりの水MBWは気液接触槽1内を上昇していくが、この過程において微細気泡MB中の酸素O2が水Wに溶解していくことにより酸素溶解水OWとなり、排液経路5の上端の開口部5aから排液経路5内に流入し、排液経路5内を下降して気液接触槽1外の排液経路5内を流動していき、所定の灌漑設備(図示せず)などに送給される。
【0028】
酸素溶解水生成装置100で生成された酸素溶解水OWの用途は限定されないので、植物栽培用水や魚介類養殖用水などの用途に広く利用することができ、植物の成長を促進させたり、魚介類の生育状態を向上させたりすることができる。
【0029】
微細気泡MB混じりの水MBWが気液接触槽1内を流動するとき、余剰な酸素O2ガスは浮力を有する大型気泡12となり、排液経路5内を下降する酸素溶解水OWから分離して上昇していき、気液接触槽1の天板部1cの下面の気体溜り1dに貯留される。気体溜り1dに貯留されていく未溶解の酸素O2ガスの体積が増加して気液接触槽1内の水面13が、排気管6aと周壁部1aとの接続部分より低くなると、気体溜り1dに存在する未溶解の酸素O2ガスは排気管6aを通過して排気手段6から大気中に排出される。
【0030】
このように、気体溜り1dに存在する未溶解の酸素O2ガスが一定量を超えると排気管6aを通過して排気手段6から大気中に排出されるので、気体溜り1dに貯留された未溶解の酸素O2ガスが気体塊となって排液経路5の開口部5aから排出されるのを防止することができる。
【0031】
酸素溶解水生成装置100においては、液体導入経路3の途中に逆止弁7を配置しているので、酸素ボンベ10から気体導入経路4を経由して加圧状態で微細気泡発生器2に供給される酸素O2ガスが液体導入経路3の上流側へ逆流するのを防止することができる。
【0032】
酸素溶解水生成装置100においては、排液経路5の途中に流量調整バルブ8を配置しているので、流量調整バルブ8で排液経路5内の流量を調整することにより、気液接触槽1内の水圧を一定値に保持することができ、これにより酸素溶解水OWの酸素溶解率を一定に維持することができる。このように、酸素溶解水生成装置100を使用することにより、大量の酸素が溶解した酸素溶解水OWを効率良く、安定的に生成することができる。
【0033】
なお、酸素溶解水生成装置100は、酸素O2ガスを水Wに溶解させて酸素溶解水OWを生成する機能を有しているが、これに限定するものではなく、酸素O2ガス以外の気体を水W以外の液体に溶解して気体溶解水を生成することもできる。また、図1図3に基づいて説明した酸素溶解水生成装置100は、本発明に係る気体溶解水生成装置の一例を示すものであり、本発明に係る気体溶解水生成装置は、前述した酸素溶解水生成装置100に限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明に係る気体溶解水生成装置は、農林業、畜産業、水産業などの産業分野において、広く利用することができる。
【符号の説明】
【0035】
1 気液接触槽
1a,3b,24a 周壁部
1b 底板部
1c 天板部
1d 気体溜り
2 微細気泡発生器
3 液体導入経路
3a エルボー部
4 気体導入経路
4a 気体噴出口
5 排液経路
5a 開口部
6 排気手段
6a 排気管
7 逆止弁
8 流量調整バルブ
9 送水ポンプ
10 酸素ボンベ
11 酸素ガス調整器
12 大型気泡
13 水面
20 ケーシング
20a 上部隔壁
20b,24b 下部隔壁
21 気液旋回室
21c 中心軸
22 液体噴出口
23 気液吐出口
24 液体導入部
100 酸素溶解水生成装置
MB 微細気泡
MBW 微細気泡混じりの水
OW 酸素溶解水
S 旋回流
W 水
図1
図2
図3