(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023110192
(43)【公開日】2023-08-09
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/336 20060101AFI20230802BHJP
【FI】
H01L29/78 301X
H01L29/78 301H
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022011480
(22)【出願日】2022-01-28
(71)【出願人】
【識別番号】316005926
【氏名又は名称】ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140958
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 学
(74)【代理人】
【識別番号】100137888
【弁理士】
【氏名又は名称】大山 夏子
(74)【代理人】
【識別番号】100154036
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 毅
【テーマコード(参考)】
5F140
【Fターム(参考)】
5F140AA05
5F140AA19
5F140AA29
5F140AB01
5F140AB03
5F140BA01
5F140BA02
5F140BA05
5F140BA06
5F140BA20
5F140BB02
5F140BB05
5F140BC12
5F140BC15
5F140BD05
5F140BD07
5F140BD09
5F140BD11
5F140BD13
5F140BE07
5F140BF04
5F140BF05
5F140BF07
5F140BH06
5F140BK17
5F140CB04
5F140CE07
(57)【要約】
【課題】フィン構造の微細化に依らずに駆動能力をより高める。
【解決手段】基板の主面から前記主面の法線方向に延在するチャネル層と、前記主面の面内の一方向に前記チャネル層に跨って設けられたゲート電極と、前記チャネル層及び前記ゲート電極の間に介在するゲート絶縁膜と、を備え、前記チャネル層は、前記一方向の両側面から、前記一方向の切断面においてそれぞれ角を成すように突出する少なくとも一対の凸構造と、前記一対の凸構造と前記基板との間に設けられた一対の凹構造とを有する、半導体装置。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の主面から前記主面の法線方向に延在するチャネル層と、
前記主面の面内の一方向に前記チャネル層に跨って設けられたゲート電極と、
前記チャネル層及び前記ゲート電極の間に介在するゲート絶縁膜と、
を備え、
前記チャネル層は、前記一方向の両側面から、前記一方向の切断面においてそれぞれ角を成すように突出する少なくとも一対の凸構造と、前記一対の凸構造と前記基板との間に設けられた一対の凹構造とを有する、半導体装置。
【請求項2】
前記凸構造の前記角の大きさは、60°以上150°以下である、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記凸構造の前記角の大きさは、60°以上90°以下である、請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記ゲート電極は、前記凸構造の前記角を形成する2面にて前記チャネル層と前記ゲート絶縁膜を介して接する、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記凸構造の前記角は、面取りされている、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記一対の凸構造は、前記法線方向に複数設けられる、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記一対の凸構造の各々は、前記一方向の両側面の同一の高さから突出する、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記一対の凸構造の各々は、前記一方向の両側面の互いに異なる高さから突出する、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記チャネル層の前記法線方向の端部は、平坦である、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記チャネル層の前記一方向と直交する方向の両側面で前記チャネル層とそれぞれ接するソース層及びドレイン層をさらに備える、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記チャネル層は、単結晶の半導体で構成される、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記半導体は、Si、SiGe、SiC、又はIII-V族化合物半導体を含む、請求項11に記載の半導体装置。
【請求項13】
前記凸構造の前記角を形成する2面は、前記半導体の結晶面である、請求項11に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プレーナ型のMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)よりも駆動能力を高めることが可能な三次元構造のFinFET(Fin Field-Effect Transistor)が実用化されている。FinFETは、チャネルの2面以上をゲートで三次元的に囲み、チャネルに対するゲート支配力を強めることで、電流駆動能力を向上させることができる。
【0003】
例えば、下記の特許文献1には、六角形の断面形状を有するチャネルの5面をゲートで囲んだFinFETが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようなFinFETは、チャネルであるフィン構造の幅をより狭くすることで、より高い駆動能力を得ることができる。しかしながら、フィン構造のさらなる微細化は、FinFETの製造プロセスの難度及びコストをより増大させてしまう。
【0006】
そこで、本開示では、フィン構造の微細化に依らずに駆動能力を向上させることが可能な、新規かつ改良された半導体装置を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示によれば、基板の主面から前記主面の法線方向に延在するチャネル層と、前記主面の面内の一方向に前記チャネル層に跨って設けられたゲート電極と、前記チャネル層及び前記ゲート電極の間に介在するゲート絶縁膜と、を備え、前記チャネル層は、前記一方向の両側面から、前記一方向の切断面においてそれぞれ角を成すように突出する少なくとも一対の凸構造と、前記一対の凸構造と前記基板との間に設けられた一対の凹構造とを有する、半導体装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の一実施形態に係る半導体装置の全体構成を示す透過斜視図である。
【
図2】
図1に示す半導体装置の断面構成を示す縦断面図である。
【
図3】チャネル層の凸構造に設定された領域の各々を説明する模式図である。
【
図4】
図3に示した各領域の電界を表す数式の導出方法を説明する模式図である。
【
図5】凸構造の頂角の角度と、凸構造に印加される電界強度との対応関係を示すグラフ図である。
【
図6】チャネル層の形状に依存する電界強度を表す形状因子αと、凸構造の頂角の角度との対応関係を示すグラフ図である。
【
図7】第1の変形例に係る半導体装置のチャネル幅方向の断面構成を示す縦断面図である。
【
図8】第2の変形例に係る半導体装置のチャネル幅方向の断面構成を示す縦断面図である。
【
図9】第3の変形例に係る半導体装置のチャネル幅方向の断面構成を示す縦断面図である。
【
図10】第4の変形例に係る半導体装置のチャネル幅方向の断面構成を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0010】
なお、説明は以下の順序で行うものとする。
1.構成例
2.作用効果
3.変形例
【0011】
<1.構成例>
まず、
図1及び
図2を参照して、本開示の一実施形態に係る半導体装置の構成例について説明する。
図1は、本実施形態に係る半導体装置100の全体構成を示す透過斜視図である。
図2は、
図1に示す半導体装置100の断面構成を示す縦断面図である。なお、
図2に示す断面は、チャネル幅(又は、フィン幅)方向に半導体装置100を切断した断面である。
【0012】
図1に示すように、半導体装置100は、例えば、基板110と、チャネル層120と、ゲート電極140と、ゲート絶縁膜130と、ソース層150Sと、ドレイン層150Dとを備える。
【0013】
基板110は、半導体装置100の支持体である。基板110は、例えば、Si、SiGe、SiC、又はIII-V族化合物半導体にて構成された基板であってもよい。また、
図2に示すように、基板110には、絶縁性材料で構成された素子分離層111が設けられる。素子分離層111は、基板110の一部に絶縁性材料を埋め込むことで設けられ、半導体装置100と、他の素子とを電気的に分離することができる。
【0014】
チャネル層120は、半導体材料で構成され、基板110の主面から該主面の法線方向に延在して設けられる。チャネル層120は、例えば、導電型不純物を導入したSi、SiGe、SiC、又はIII-V族化合物半導体にて構成されてもよい。チャネル層120は、格子欠陥を低減するためには、基板110を構成する半導体材料と格子定数が近い半導体材料で構成されることが好ましい。例えば、チャネル層120は、基板110を構成する半導体材料と同一の半導体材料で構成されてもよい。
【0015】
図2に示すように、本実施形態に係る半導体装置100では、チャネル層120は、チャネル幅方向の両側面から角を成すように突出する少なくとも一対の凸構造121を有する。凸構造121は、基板110との間に凹構造122が形成されるようにチャネル層120の側面から突出して設けられることで、基板110の主面の法線方向に傾斜した2面による稜線を有する。
【0016】
すなわち、凸構造121のチャネル幅方向の切断面の形状(
図2に示す断面形状)は、チャネル層120の側面から突出する頂角が鋭角、直角、又は鈍角となる三角形形状となる。また、凸構造121のチャネル幅方向と直交するチャネル長方向の形状は、上記三角形形状を底面とする三角柱形状となる。
【0017】
このような場合、凸構造121では、凸構造121を形成する傾斜した2面でチャネル層120にゲート電極140から電界が印加される。これによれば、凸構造121では、傾斜した2面からの電界が重ね合わされてチャネル層120に印加されるため、同じゲート電圧であっても、より強い電界をチャネル層120に印加することができる。したがって、半導体装置100は、チャネル層120に対するゲート支配力を向上させることができるため、電流駆動能力を向上させることができる。
【0018】
凸構造121のチャネル幅方向の三角形形状の頂角は、60度以上150度以下の角度であることが好ましく、60度以上90度以下の角度であることがより好ましい。このような場合、半導体装置100は、後段の作用効果の項で詳述するように、同じゲート電圧であっても、チャネル層120にさらに強い電界を印加することができるため、電流駆動能力を向上させることができる。
【0019】
また、一対の凸構造121は、基板110の主面の法線方向に重なって、チャネル層120の両側面から複数突出して設けられてもよい。このような場合、チャネル層120のチャネル幅方向の切断面の外形は、複数の凸構造121によってジグザグ形状(すなわち、鋸刃状の形状)となる。これによれば、半導体装置100は、複数対の凸構造121の各々でより強い電界をチャネル層120に印加することができるため、形成された凸構造121の数に比例して駆動能力を向上させることができる。
【0020】
なお、一対の凸構造121は、チャネル層120の両側面から同一の高さで突出してもよい。このような場合、半導体装置100は、一対の凸構造121をチャネル層120の両側面に同一工程で同時に形成することができるため、一対の凸構造121を有するチャネル層120をより容易に形成することができる。
【0021】
このようなチャネル層120は、例えば、上述した半導体材料を単結晶としてエピタキシャル成長させることで形成されてもよい。具体的には、チャネル層120は、凸構造121を形成する2面が半導体材料の結晶面となるように結晶成長を制御して、上述した半導体材料をエピタキシャル成長させることで形成されてもよい。
【0022】
例えば、凸構造121は、凸構造121の下面が結晶面となるように半導体材料をエピタキシャル成長させた後、プロセス条件を変更して、凸構造121の上面が結晶面となるように半導体材料をエピタキシャル成長させることで形成されてもよい。また、
図2に示す複数対の凸構造121は、一対の凸構造121を形成した後のチャネル層120の上端部をCMP(Chemical Mechanical Polishing)等で平坦化した後、上記のエピタキシャル成長を繰り返し行うことで形成されてもよい。
【0023】
ただし、上記のチャネル層120は、結晶面方位を用いたエピタキシャル成長以外の方法で形成されてもよい。例えば、チャネル層120は、リソグラフィ、CVD(Chemical Vapor Deposition)又はALD(Atomic Layer Deposition)などの蒸着、及びエッチングなどの各種の微細加工プロセスを用いて形成されてもよい。
【0024】
ゲート電極140は、導電性材料で構成され、チャネル層120のチャネル幅方向(すなわち、チャネル層120の凸構造121が突出する方向)にてチャネル層120を跨ぐように設けられる。ゲート電極140は、例えば、Si、poly-Si、Al、Cu、Au、W、Ta、Ti、Mo、又はRuなどの単体又は化合物を含む導電性材料で構成されてもよい。ゲート電極140は、チャネル層120の凸構造121の角を形成する2面にてチャネル層120とゲート絶縁膜130を介して接することで、チャネル層120の凸構造121に上面及び下面の2面から電界を印加することができる。
【0025】
ゲート絶縁膜130は、絶縁性材料で構成され、チャネル層120及びゲート電極140の間に介在して設けられる。具体的には、ゲート絶縁膜130は、チャネル層120のチャネル幅方向の表面を覆うように設けられてもよい。ゲート絶縁膜130は、例えば、SiOx、SiN、又はSiONで構成されてもよく、HfOx、HfAlON、Y2O3、ZrOx、Al2O3、又はNbOxなどの高誘電率材料(High-k材料)で構成されてもよい。
【0026】
他の例として、ゲート絶縁膜130は、チャネル層120を構成する半導体材料の酸化物にて構成されてもよい。このような場合、半導体装置100は、チャネル層120の表面酸化によってゲート絶縁膜130を容易に形成することができるため、製造工程をより簡略化することができる。
【0027】
ソース層150S及びドレイン層150Dは、チャネル層120のチャネル長方向(すなわち、チャネル幅方向と直交する方向)の両側面でチャネル層120とそれぞれ接するように設けられる。また、ソース層150S及びドレイン層150Dと、ゲート電極140とは、間隙又は絶縁層が間に設けられることで、電気的に絶縁される。例えば、ソース層150S及びドレイン層150Dは、チャネル層120とは異なる導電型の不純物を導入してエピタキシャル成長させたSi、SiGe、又はGeなどの半導体材料で構成されてもよい。
【0028】
<2.作用効果>
続いて、
図3~
図7を参照して、本実施形態に係る半導体装置100の作用効果についてより詳細に説明する。
【0029】
まず、
図3及び
図4を参照して、チャネル層120の凸構造121に印加される電界について説明する。
図3は、チャネル層120の凸構造121に設定された領域の各々を説明する模式図である。
図4は、
図3に示した各領域の電界を表す数式の導出方法を説明する模式図である。
【0030】
図3に示すように、チャネル層120の側面から突出する凸構造121に印加される電界は、A領域、B領域、及びC領域の3つの領域に分けて考えることができる。C領域は、凸構造121を形成する上面のa電極の垂直方向に広がる領域と、凸構造121を形成する下面のb電極の垂直方向に広がる領域とが重なり合う領域である。A領域は、凸構造121を形成する上面のa電極の垂直方向に広がる領域からC領域を除いた領域である。B領域は、凸構造121を形成する下面のb電極の垂直方向に広がる領域からC領域を除いた領域である。
【0031】
ここで、FinFETでは、チャネル層120における導電型不純物の濃度が低いため、チャネル層120中の導電型不純物の電荷が発生させる電界は近似的に無視することができる。したがって、ゲート電極140から発生する電界は、1つの平行平板電極が発生させる、深さ方向一定の電界とみなすことができる。
【0032】
図4に示すように座標及び変数を設定すると、a電極から発生する電界は、以下の数式1で表すことができる。なお、Lはゲート長であり、Qはゲート電極140に与えられた電荷であり、εは誘電率である。
【0033】
【0034】
したがって、a電極が発生させる電界の等電位面での電界強度Ea’は、近似的に以下の数式2で表すことができる。
【0035】
【0036】
よって、A領域とC領域との合算領域(Y<X*tan(θ/2),Y>-X/tan(θ/2))では、a電極が発生させる電界強度(Eax,Eay)は以下の数式3で表される。
【0037】
【0038】
また、B領域(Y>-X*tan(θ/2),Y<-X/tan(θ/2))では、a電極が発生させる電界強度(Eax,Eay)は以下の数式4で表される(ただし、d=√(x^2+y^2))。
【0039】
【0040】
b電極が発生させる電界強度についても同様に考えることができる。したがって、|Ea|=|Eb|=E0として、a電極及びb電極が発生させる電界強度を合成すると、A領域(Y<X*tan(θ/2),Y>X/tan(θ/2))では、a電極及びb電極が発生させる電界強度の合計(Ex,Ey)は、以下の数式5で表される(ただし、d=√(x^2+y^2))。
【0041】
【0042】
また、B領域(Y>-X*tan(θ/2),Y<-X/tan(θ/2))では、a電極及びb電極が発生させる電界強度の合計(Ex,Ey)は、以下の数式6で表される(ただし、d=√(x^2+y^2))。
【0043】
【0044】
さらに、C領域(Y<X/tan(θ/2),Y>-X/tan(θ/2))では、a電極及びb電極が発生させる電界強度の合計(Ex,Ey)は、以下の数式7で表される(ただし、d=(X*tan(θ/2)-Y)/cos(θ/2))。
【0045】
【0046】
上記の数式5~7に基づいて算出された凸構造121に印加される電界強度と、チャネル層120の側面から突出する凸構造121の頂角の角度との関係を
図5に示す。
図5は、凸構造121に印加される電界強度と、凸構造121の頂角の角度との対応関係を示すグラフ図である。なお、
図5の縦軸の電界強度は、角度180°の場合(すなわち、凸構造121が形成されない場合)の電界強度を1とした相対値で表す。
【0047】
なお、角度0°超90°以下の範囲では、凸構造121全体がチャネルとして機能するため、チャネルに作用する電界強度は、数式7で表されるC領域の電界強度である。一方、角度90°超180°以下の範囲では、凸構造121の最表面がチャネルとして機能するため、チャネルに作用する電界強度は、数式5で表されるA領域の電界強度と、数式6で表されるB領域の電界強度との合計となる。
【0048】
図5に示すように、凸構造121に作用する電界強度は、凸構造121の頂角の角度が60°以上150°以下の範囲において、角度180°の場合(凸構造121が形成されない場合)よりも高くなることがわかる。したがって、半導体装置100は、凸構造121の頂角の角度が60°以上150°以下の範囲で、ゲート支配力をより高めることができる。特に、凸構造121の頂角の角度が60°以上90°以下の範囲では、半導体装置100は、凸構造121全体をチャネルとして機能させることができるため、さらに、チャネル層120におけるオン抵抗を減少させることも可能である。
【0049】
また、半導体装置100のオン状態時に流れる電流Iは、形状に依存するチャネル層120への電界印加の様態を形状因子αとして表現すると、以下の数式8のようにモデル化することができる。なお、μは電荷の移動度であり、Cはゲート容量であり、Wはゲート幅であり、Lはゲート長である。Vgはゲート電圧であり、Vthはスレッショルド電圧であり、Vdはドレイン電圧である。
【0050】
【0051】
上記の数式8によれば、半導体装置100では、ゲート電圧に対するドレイン電流の変化量を表す相互コンダクタンスgmは、(Vg-Vth-Vd/2)の係数として、gm=μCW/L*α*Vdと表される。一方、通常のFinFET(すなわち、凸構造の頂角の角度が180°の場合)の相互コンダクタンスgm0は、gm0=μCW/L*Vdである。よって、半導体装置100の相互コンダクタンスgmは、通常のFinFETの相互コンダクタンスgm0を用いて、gm=gm0*αと表される。
【0052】
すなわち、チャネル層120の形状に依存する電界強度を表す形状因子αと、上述した凸構造121の頂角の角度との対応関係は、
図6に示すグラフのようになる。
図6は、チャネル層120の形状に依存する電界強度を表す形状因子αと、凸構造121の頂角の角度との対応関係を示すグラフ図である。
【0053】
図6に示すように、形状因子α(gm/gm
0)は、凸構造121の頂角の角度が60°以上150°以下の範囲において、角度180°の場合(凸構造121が形成されない、通常のFinFETの場合)よりも高くなることがわかる。したがって、半導体装置100は、凸構造121の頂角の角度が60°以上150°以下の範囲で、通常のFinFETよりも相互コンダクタンスを高めることができるため、通常のFinFETよりも高い電流駆動能力を得られることがわかる。
【0054】
上述したように、本実施形態に係る半導体装置100は、チャネル層120の幅を微細化せずとも凸構造121を形成することで、電流駆動能力を向上させることが可能である。本実施形態に係る半導体装置100は、例えば、CMOSイメージセンサなどの固体撮像装置において、画素のアンプトランジスタに用いられることで、画素をより高速で駆動させることが可能である。
【0055】
<3.変形例>
次に、
図7~
図10を参照して、本実施形態に係る半導体装置100の第1~第4の変形例について説明する。
【0056】
(第1の変形例)
図7は、第1の変形例に係る半導体装置101のチャネル幅方向の断面構成を示す縦断面図である。
図7に示すように、半導体装置101では、チャネル層120は、凸構造121を一対だけ有してもよい。このような場合でも、半導体装置101は、凸構造121の各々で強い電界をチャネル層120に印加することができるため、チャネル層120に対するゲート支配力を向上させることで、電流駆動能力を向上させることができる。
【0057】
チャネル層120に設けられる一対の凸構造121の数は、要求される電流駆動能力と、チャネル層120の形成プロセスのコストとのバランスによって適宜選択され得る。例えば、チャネル層120に設けられる一対の凸構造121の数が増加するほど、チャネル層120に対するゲート支配力を向上させることができる一方で、チャネル層120の形成プロセスの工程数が増加することでコストが増加してしまう。そのため、チャネル層120の形成プロセスのコストをより抑制するためには、一対の凸構造121の数は、1つとしてもよい。一方で、チャネル層120に対するゲート支配力をより向上させるためには、一対の凸構造121の数は、3つとしてもよい。
【0058】
(第2の変形例)
図8は、第2の変形例に係る半導体装置102のチャネル幅方向の断面構成を示す縦断面図である。
図8に示すように、半導体装置102では、チャネル層120の延在方向の上端部は、平坦化されておらず、角を成して突出する稜線部123として設けられてもよい。具体的には、チャネル層120の延在方向の上端部は、一方の側面から突出する凸構造121の傾斜した上面と、他方の側面から突出する凸構造121の傾斜した上面とによって刑された稜線を含む稜線部123として設けられてもよい。このような場合、稜線部123では、一対の凸構造121の両上面から成る稜線がチャネル長方向に延在することになる。
【0059】
第2の変形例によれば、半導体装置102は、一対の凸構造121を有するチャネル層120を形成した後に、チャネル層120の上端部をCMP等で平坦化する工程を省略することができる。したがって、半導体装置102は、チャネル層120の形成プロセスのコストをより低減することができる。
【0060】
(第3の変形例)
図9は、第3の変形例に係る半導体装置103のチャネル幅方向の断面構成を示す縦断面図である。
図9に示すように、半導体装置103では、凸構造121は、チャネル層120の側面から突出する頂角が面取りされて(すなわち、角を丸められて)設けられてもよい。例えば、凸構造121は、結晶面方位を用いたエピタキシャル成長によってチャネル層120を形成した後に、エッチング又は熱酸化されることで角を丸められることで設けられてもよい。
【0061】
第3の変形例によれば、半導体装置103は、チャネル層120の側面から突出する凸構造121の頂角に過度の電界集中が生じることを抑制することができる。したがって、半導体装置103は、過度の電界集中によるゲート絶縁膜130の破壊等を抑制することができるため、動作時の信頼性をより向上させることができる。
【0062】
(第4の変形例)
図10は、第4の変形例に係る半導体装置104のチャネル幅方向の断面構成を示す縦断面図である。
図10に示すように、半導体装置104では、一対の凸構造121は、チャネル層120の両側面から異なる高さで突出してもよい。このような場合であっても、半導体装置104は、同様に、凸構造121の各々で強い電界をチャネル層120に印加することができるため、電流駆動能力を向上させることができる。
【0063】
以上、添付図面を参照しながら本開示の好適な実施形態について詳細に説明したが、本開示の技術的範囲はかかる例に限定されない。本開示の技術分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0064】
また、本明細書に記載された効果は、あくまで説明的または例示的なものであって限定的ではない。つまり、本開示に係る技術は、上記の効果とともに、または上記の効果に代えて、本明細書の記載から当業者には明らかな他の効果を奏しうる。
【0065】
なお、以下のような構成も本開示の技術的範囲に属する。
(1)
基板の主面から前記主面の法線方向に延在するチャネル層と、
前記主面の面内の一方向に前記チャネル層に跨って設けられたゲート電極と、
前記チャネル層及び前記ゲート電極の間に介在するゲート絶縁膜と、
を備え、
前記チャネル層は、前記一方向の両側面から、前記一方向の切断面においてそれぞれ角を成すように突出する少なくとも一対の凸構造と、前記一対の凸構造と前記基板との間に設けられた一対の凹構造とを有する、半導体装置。
(2)
前記凸構造の前記角の大きさは、60°以上150°以下である、前記(1)に記載の半導体装置。
(3)
前記凸構造の前記角の大きさは、60°以上90°以下である、前記(2)に記載の半導体装置。
(4)
前記ゲート電極は、前記凸構造の前記角を形成する2面にて前記チャネル層と前記ゲート絶縁膜を介して接する、前記(1)~(3)のいずれか一項に記載の半導体装置。
(5)
前記凸構造の前記角は、面取りされている、前記(1)~(4)のいずれか一項に記載の半導体装置。
(6)
前記一対の凸構造は、前記法線方向に複数設けられる、前記(1)~(5)のいずれか一項に記載の半導体装置。
(7)
前記一対の凸構造の各々は、前記一方向の両側面の同一の高さから突出する、前記(1)~(6)のいずれか一項に記載の半導体装置。
(8)
前記一対の凸構造の各々は、前記一方向の両側面の互いに異なる高さから突出する、前記(1)~(6)のいずれか一項に記載の半導体装置。
(9)
前記チャネル層の前記法線方向の端部は、平坦である、前記(1)~(8)のいずれか一項に記載の半導体装置。
(10)
前記チャネル層の前記一方向と直交する方向の両側面で前記チャネル層とそれぞれ接するソース層及びドレイン層をさらに備える、前記(1)~(9)のいずれか一項に記載の半導体装置。
(11)
前記チャネル層は、単結晶の半導体で構成される、前記(1)~(10)のいずれか一項に記載の半導体装置。
(12)
前記半導体は、Si、SiGe、SiC、又はIII-V族化合物半導体を含む、前記(11)に記載の半導体装置。
(13)
前記凸構造の前記角を形成する2面は、前記半導体の結晶面である、前記(11)又は(12)に記載の半導体装置。
【符号の説明】
【0066】
100,101,102,103、104 半導体装置
110 基板
111 素子分離層
120 チャネル層
121 凸構造
122 凹構造
123 稜線部
130 ゲート絶縁膜
140 ゲート電極
150D ドレイン層
150S ソース層