(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023110199
(43)【公開日】2023-08-09
(54)【発明の名称】光デバイスパッケージ
(51)【国際特許分類】
H01L 23/12 20060101AFI20230802BHJP
H01L 33/62 20100101ALI20230802BHJP
【FI】
H01L23/12 G
H01L23/12 501P
H01L33/62
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022011491
(22)【出願日】2022-01-28
(71)【出願人】
【識別番号】518078142
【氏名又は名称】上海天馬微電子有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100183955
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 悟郎
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100180334
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 洋美
(74)【代理人】
【識別番号】100177149
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 浩義
(74)【代理人】
【識別番号】100174067
【弁理士】
【氏名又は名称】湯浅 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100136342
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 成美
(72)【発明者】
【氏名】藤田 明
(72)【発明者】
【氏名】中西 太
(72)【発明者】
【氏名】西郷 伸吾
(72)【発明者】
【氏名】世古 暢哉
【テーマコード(参考)】
5F142
【Fターム(参考)】
5F142AA03
(57)【要約】
【課題】生産性に優れる光デバイスパッケージを提供する。
【解決手段】光デバイスパッケージ100は、ガラス基板10と、反り制御膜20と、再配線層30と、半導体素子40と、を備える。反り制御膜20は、ガラス基板10に直接または間接的に形成される。再配線層30は、配線層31および絶縁層32を有し、配線層31と絶縁層32の少なくとも一部が反り制御膜20上に形成されている。半導体素子40、再配線層30に取り付けられる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス基板と、
前記ガラス基板に直接または間接的に形成された反り制御膜と、
配線層および絶縁層を有し、前記配線層と前記絶縁層の少なくとも一部が前記反り制御膜上に形成された再配線層と、
前記再配線層に取り付けられた半導体素子と、
を備える光デバイスパッケージ。
【請求項2】
前記再配線層の総厚T、前記反り制御膜の厚さtとし、t/T3≧7.38×10-5を満たす、
請求項1に記載の光デバイスパッケージ。
【請求項3】
前記反り制御膜は、窒化ケイ素を含む、
ことを特徴とする、請求項1または2に記載の光デバイスパッケージ。
【請求項4】
前記ガラス基板の厚さは0.3mm以上1.1mm以下である、
請求項1から3の何れか1項に記載の光デバイスパッケージ。
【請求項5】
前記ガラス基板において、前記反り制御膜が形成された面の裏面に光学機能膜を有する、
請求項1から4の何れか1項に記載の光デバイスパッケージ。
【請求項6】
前記半導体素子は、前記ガラス基板を介して発光または受光する光学素子を含む、
請求項1から5の何れか1項に記載の光デバイスパッケージ。
【請求項7】
前記ガラス基板は、前記光学素子の発光領域または受光領域に対向する部分において、前記反り制御膜および前記再配線層を有さない、
請求項6に記載の光デバイスパッケージ。
【請求項8】
前記ガラス基板上に酸化ケイ素膜と前記反り制御膜としての窒化ケイ素膜とが順次積層され、
前記窒化ケイ素膜は、前記配線層が形成される領域に形成され、前記配線層は前記窒化ケイ素膜上に形成され、前記絶縁層は前記酸化ケイ素膜上に形成される、
請求項1から7の何れか1項に記載の光デバイスパッケージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光デバイスパッケージに関する。
【背景技術】
【0002】
光デバイスパッケージの高機能化を目的に、発光または受光する光学素子を実装し、マザーボード間を繋ぐ中間基板として再配線層(RDL:Redistribution Layer)を有する様々なFan-Out構造を有するパッケージが用いられている。Fan-Out構造を有するパッケージの製造方法として一般的に、(1)プリント基板製造技術をベースとし、サイズの大きな基板を用いて回路パターン幅や回路間スペース幅が比較的ラフな再配線層回路パターンを形成するパッケージ、(2)半導体ウェハの微細配線製造技術をベースとし、ウェハサイズ基板を用いて回路パターン幅や回路間スペース幅が微細な再配線層を形成するFOWLP(Fan Out Wafer Level Package)および(3)(1)と(2)との間の中間的な技術のFOPLP(Fan-Out Panel Level Package)が知られている。ところが、光デバイスパッケージの高機能化に伴い、プリント基板技術ベースでは作れないレベルの微細配線化が進む一方、FOWLPではウェハサイズ制約でパッケージの収量(取り数)が少なく、高コストで生産性が低下してしまう問題がある。そこで大きな基板サイズで一定程度の微細配線パターンが製造可能で、収量(取り数)が大きく、生産性に優れ、低コストな半導体パッケージを提供できるFOPLP技術が注目されている。こうした観点から、支持基板となるガラス基板上で複数のパッケージの一構成部分である再配線層を一括製造し、半導体素子実装やモールド封止し、支持基板を分離した後に各パッケージをダイシングして個片化する方法が提案されている。一方、ガラス基板によるFan-Out構造を有するパッケージの製造においては、再配線層等の形成時に支持基板であるガラス基板と、再配線層を構成する材料との熱膨張差等によって、ガラス基板等に反りが発生するという問題があり、特に基板サイズが大きくなるほど反りが大きくなるため、製造工程で様々な不具合を生じ、製造ライン停止や不良品等が発生し、生産性が低下してしまう問題がある。
【0003】
特許文献1は、撮像チップと、撮像チップに対向して配置されたガラス基板と、ガラス基板のうち撮像チップに対向する面に撮像領域を覆うように形成されたシリコン酸化膜と、撮像チップの端子と電気的に接続され、ガラス基板に積層された金属配線層と、を備える撮像素子を開示する。この撮像素子は、ガラス基板等に反りを抑えるため、シリコン基板上に形成したシリコン酸化膜と配線層をガラス基板に転写することにより作成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
引用文献1に開示された撮像素子は、転写後、シリコン基板を除去するので、材料の無駄が発生するという問題がある。また、シリコンウェハの大きさは概ね決まっており、撮像素子のサイズによって取り数の制約を受けやすいという問題がある。このため、製造コスト、生産性に優れる光デバイスパッケージが求められている。
【0006】
本開示は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、生産性に優れる光デバイスパッケージを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の目的を達成するため、本開示に係る光デバイスパッケージの一態様は、
ガラス基板と、
前記ガラス基板に直接または間接的に形成された反り制御膜と、
配線層および絶縁層を有し、前記配線層と前記絶縁層の少なくとも一部が前記反り制御膜上に形成された再配線層と、
前記再配線層に取り付けられた半導体素子と、
を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、生産性に優れる光デバイスパッケージを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】(A)は、実施の形態に係る光デバイスパッケージを示す図であり、(B)は、
図1(A)のA-A断面図である。
【
図2】実施の形態に係る光デバイスパッケージの製造方法を示すフローチャートである。
【
図3】実施の形態に係る再配線層形成工程を示すフローチャートである。
【
図4】実施の形態に係る光デバイスパッケージの製造方法を説明する図である。
【
図5】実施の形態に係る光デバイスパッケージの製造方法を説明する図である。
【
図6】実施の形態に係る光デバイスパッケージの製造方法を説明する図である。
【
図7】実施の形態に係る光デバイスパッケージの製造方法を説明する図である。
【
図8】実施の形態に係る光デバイスパッケージの製造方法を説明する図である。
【
図9】実施の形態に係る光デバイスパッケージの製造方法を説明する図である。
【
図10】実施の形態に係る光デバイスパッケージの製造方法を説明する図である。
【
図11】実施の形態に係る光デバイスパッケージの製造方法を説明する図である。
【
図12】実施の形態に係る光デバイスパッケージの製造方法を説明する図である。
【
図13】変形例に係る光デバイスパッケージを示す図である。
【
図14】変形例に係る光デバイスパッケージを示す図である。
【
図15】ガラス基板に窒化ケイ素膜が形成される領域を示す図である。
【
図16】ガラス基板の反り量と窒化ケイ素膜の厚さの関係を示す図である。
【
図17】窒化ケイ素膜の厚さtと再配線層の総厚Tの3乗値の関係を示す図である。
【
図18】(A)は、ガラス基板の最大たわみを説明する図であり、(B)は、断面2次モーメントを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示を実施するための形態に係る光デバイスパッケージについて図面を参照しながら説明する。
【0011】
実施の形態に係る光デバイスパッケージ100は、
図1に示すように、ガラス基板10と、反り制御膜20と、再配線層30と、半導体素子40と、を備える。光デバイスパッケージ100は、再配線層30が半導体素子40とマザーボード間を繋ぐ中間基板として機能するFOPLP(Fan-Out Panel Level Package)技術で製造される。この実施の形態では、半導体素子40が中央部分に矩形形状の受光領域41を有する光学素子である例について説明する。
【0012】
ガラス基板10は、受光領域41の面積より大きく、受光領域41の全体を覆う保護板であり、半導体素子40と略同一の線膨張係数を持つ無アルカリのガラス基板であってもよく、半導体素子40よりも線膨張係数の大きいガラス基板であってもよい。特に製造ラインとして例えば、液晶ディスプレイ等のTFT(Thin Film Transistor)基板製造と同一ラインで共用する場合は、ガラス基板からのアルカリ成分溶出がTFT基板の特性に悪影響を与えることがあるため、無アルカリガラス(=一般的にアルカリ成分を含まない、もしくは含んでいても微量であるガラス基板)であることが望ましい。また、ガラス基板10は半導体素子40の受光領域41に入射する光に影響を与えないよう、透明性の高いガラス基板が望ましく、例えば波長が400nm~1000nmの透過率が60%以上のものが使用できる。ガラス基板10の厚さT1は、好ましくは、0.3mm以上1.1mm以下である。また、ガラス基板10は、受光領域41に対向する部分において、反り制御膜20および再配線層30を有さない。
【0013】
反り制御膜20は、ガラス基板10に形成され、ガラス基板10の反りを抑制するためのものであり、窒化ケイ素(SiNx)を含む。反り制御膜20は、CVD(Chemical Vapor Deposition)法、蒸着法、スパッタ法などにより成膜される。反り制御膜20の厚さT2は、好ましくは、再配線層30の総厚T3とし、T2/(T3)3≧7.38×10-5を満たす。これにより、ガラス基板10の反りを適切に抑制することができるため、製造工程での反りに起因する工程トラブルを抑制でき、生産性を低下させることがない。反り制御膜20の厚さT2は、好ましくは、0μm超5μm以下であり、より好ましくは、0.3μm以上1.1μm以下である。
【0014】
再配線層30は、反り制御膜20の上に形成され、少なくとも1層の配線層31および少なくとも1層の絶縁層32を有する。配線層31は、銅配線層、アルミニウム配線層または銀配線層を含む金属配線層を含む。配線層31の厚みは、例えば5μmである。配線層31には、マザーボードなどと電気的に接続されるために用いられるバンプ51が設けられている。絶縁層32は、例えば、ポリイミド絶縁層を含む。絶縁層32の厚みは、配線層31を適切に被覆するために厚く、例えば、8μmである。また、再配線層30の総厚T3は、好ましくは、0μm超40μm以下であり、より好ましくは、8μm以上24μm以下である。
【0015】
半導体素子40は、再配線層30に取り付けられ、受光領域41にガラス基板10を介して受光する光学素子を含む。半導体素子40は、受光した被写体像を光電変換する複数の画素を含む。半導体素子40は、受光領域41の領域外に、配線層31と電気的に接続するために用いられるバンプ52を有する。半導体素子40は、バンプ52に電気的に接続された信号線に加え、受光領域41から出力されるアナログ信号を受信してデジタル信号に変換するAD(Analog Digital)変換器を含んでもよい。AD変換器は、受光領域41の領域外に形成される。さらに、受光領域41の領域外には、AD変換器に加えて、受光領域41で生成されたアナログ信号を読み出す読み出し回路、読み出し回路を駆動するタイミング制御回路、読み出した信号のノイズを除去するための除去回路等が形成されていてもよい。
【0016】
つぎに、上記構成を有する光デバイスパッケージ100の製造方法について説明する。
【0017】
光デバイスパッケージ100の製造方法は、
図2に示すように、反り制御膜形成工程(ステップS101)と、反り制御膜パターニング工程(ステップS102)と、再配線層形成工程(ステップS103)と、半導体素子実装工程(ステップS104)と、バンプ取り付け工程(ステップS105)と、切断工程(ステップS106)と、を備える。再配線層形成工程(ステップS103)は、
図3に示すように、配線層形成工程(ステップS201)と、絶縁層形成工程(ステップS202)と、を備える。
【0018】
ここでは、1枚のガラス基板10に複数の光デバイスパッケージ100を作成し、その後、切断して個片化する光デバイスパッケージ100の製造方法について説明する。
【0019】
反り制御膜形成工程(ステップS101)では、
図4に示すガラス基板10に、
図5に示すように、窒化ケイ素を含む反り制御膜20を形成する。ガラス基板10としては、例えば、370mm×470mm×0.7mmのサイズのものを用いる。反り制御膜20は、CVD法、蒸着法、スパッタ法などにより成膜される。この段階で、ガラス基板10は、反り制御膜20が成膜された面を凸とする向きの反り(凸反り)になる。凸反りになってもガラス基板10の自重で凸反りは緩和するため、製造工程上問題になる虞は少ない。
【0020】
反り制御膜パターニング工程(ステップS102)では、
図6に示すように、反り制御膜20が成膜されたガラス基板10から、少なくとも受光領域41に対向する部分において、反り制御膜20を除去する。反り制御膜20を除去する方法は、特に限定されない。例えば、反り制御膜20を除去しない部分にレジストを塗布し、エッチング等でレジストが塗布されていない部分の反り制御膜20を除去し、その後、レジストを剥離する。なお、反り制御膜20の一部を除去したとしても、受光領域41相当程度の範囲であれば基板全体の0~15%程度の範囲でしかなく、ガラス基板10全体としては、凸反りが維持され、反り制御膜20の効果を得られる。言い換えると、反り制御膜20の除去量によって凸反りレベルを制御することが可能である。加えて、受光領域41に対向する部分の反り制御膜20を除去することで、透過する光の波長によっては光量を減衰させてしまう反り制御膜20の影響がないため半導体素子40の受光性能に影響を与えない。
【0021】
再配線層形成工程(ステップS103)では、反り制御膜20上に、少なくとも1層の配線層31および少なくとも1層の絶縁層32を含む再配線層30を形成する。
【0022】
図3に示す配線層形成工程(ステップS201)では、反り制御膜20が形成されたガラス基板10に配線層31を形成する。詳細には、銅を含む配線層31を形成する場合、
図7に示すように、表面に銅シード層(不図示)をスパッタ成膜し、配線層31を形成しない部分にレジスト60を塗布し、配線層31となる銅を例えば電解メッキ法によりメッキする。なお、銅シード層(不図示)は配線層31を電解メッキする際の下地であり、メッキ析出される電極層である。その後、レジスト60を剥離し、回路パターンとして不要な部分(レジスト60下にあった部分)の銅シード層(不図示)をエッチングして除去する。この結果、
図8に示す配線層31が形成されたガラス基板10が得られる。
【0023】
絶縁層形成工程(ステップS202)では、配線層31が形成されたガラス基板10に絶縁層32を形成する。絶縁層32は、例えば、ポリイミド絶縁層を含む。絶縁層32がポリイミド絶縁層である場合、ポリイミドを塗布し、露光/現像し、その後焼成することで、
図9に示す絶縁層32が形成されたガラス基板10が得られる。この時点で、例えばポリイミドの硬化収縮と銅の再結晶化等とによりガラス基板10や再配線層30を含む基板全体に対し、再配線層30を形成した面側を凹とする向きの反り(凹反り)方向の応力が発生するが、反り制御膜20による凸反り方向応力と相殺することで全体反り量は軽減される。その後、さらに配線層31および絶縁層32を形成する場合(ステップS203;NO)、ステップS201に戻って、ステップS201からステップS203を繰り返す。なお、工程繰り返しの際は配線層形成工程(ステップS201)完了で終了してもよい。配線層31および絶縁層32が積層される毎に凹反りが増加するが、反り制御膜20がない場合に比べて反りは抑制され、工程上の許容反り量まで積層が可能である。ここでいう工程上の許容反り量とは、例えば各種製造装置が吸着保持可能な反り量や、基板搬送吸着、あるいは所定のカセット収納等、一定の反り量以下であれば製造工程を正常に経ることができる、つまり製品を流動できる反り量の許容値を言う。配線層31および絶縁層32の形成が終了した場合(ステップS203;YES)、再配線層形成工程(ステップS103)を終了する。これにより、
図10に示す再配線層30が形成されたガラス基板10が得られる。再配線層形成工程(ステップS103)完了後のガラス基板10は多少の反りがあっても、つぎの、半導体素子実装工程(ステップS104)では支障がないレベルである。
【0024】
半導体素子実装工程(ステップS104)では、
図11に示すように、再配線層30が形成されたガラス基板10に半導体素子40をフリップチップ実装する。実装方法は例えば、リフロー接続、超音波接続などいずれの方法でも構わない。
なお、半導体素子実装工程(ステップS104)後に、半導体素子40を保護するため必要に応じてモールド封止工程(不図示)があってもよく、この際に再配線層30面側に凹反り方向応力が発生することもあるが、反り制御膜20による凸反り方向応力と相殺することができる。
【0025】
バンプ取り付け工程(ステップS105)では、
図1(A)および
図1(B)に示すように、マザーボードなどと電気的に接続されるために用いられるバンプ51を取り付ける。
【0026】
切断工程(ステップS106)は、
図12に示すように、ガラス基板10に形成された複数の光デバイスパッケージ100を切断線71、72に沿って切断する。これにより、
図1(A)および
図1(B)に示す光デバイスパッケージ100が得られる。この例では、縦方向において、光デバイスパッケージ100の間にスペースが設けられているが、光デバイスパッケージ100が縦方向に隣接して形成され、縦方向における光デバイスパッケージ100の間のスペースは無くてもよい。
【0027】
以上のように、本実施の形態の光デバイスパッケージ100および光デバイスパッケージ100の製造方法によれば、反り制御膜20を備えることで、製造工程におけるガラス基板10の反りによる不具合が低減され、生産性に優れる。詳細には、反り制御膜20によって凸反りするガラス基板10に対し、再配線層30の積層時の反りは凹方向のため、全体的な反り量が緩和され、製造工程で反り起因の流動不可を抑制することができ、FOWLPのウェハよりも大きな面積を有するガラス基板を使って多数の光デバイスパッケージを一括形成できるためである。また、反り制御膜20の厚さT2が、再配線層30の総厚T3とし、T2/(T3)3≧7.38×10-5を満たすことにより、ガラス基板10の反りを適切に抑制することができる。また、本実施の形態の光デバイスパッケージ100は、ガラス基板10を再配線層30の製造時の支持基板(キャリアガラス)として使用し、ガラス基板10を剥離せずに半導体素子40の保護カバーとして流用することでも生産性に優れる。また、ガラス基板10上に形成された再配線層30に半導体素子40がフリップチップ実装される。また、半導体素子40の受光領域41に対向する領域には、反り制御膜20および再配線層30が形成されていないため、反り制御膜20および再配線層30が受光領域41に入光する光を減衰させることがなく、センサ機能に影響を与えない。また、半導体素子40の受光領域41に対向する領域に反り制御膜20が形成されていないが、反り相殺効果は大きく低下しない。また、少なくとも最下層の配線層31と窒化ケイ素を含む反り制御膜20が界面で接触することにより、配線層31と接する膜が窒化ケイ素であるため、密着性が向上する。なお、反り制御膜20を形成しない代わりに、凸反りしたガラス基板を用いることも考えられるが、凸反りしたガラス基板を作成または入手することは困難であり生産性に劣る。
【0028】
上述の実施の形態では、ガラス基板10に反り制御膜20が形成される例について説明した。ガラス基板10は、反り制御膜20により反りが低減されればよく、
図13に示すように、ガラス基板10と反り制御膜20の間に酸化ケイ素(SiOx)層81をさらに設けてもよい。このようにすることで、反り制御膜パターニング工程(ステップS102)において、例えば、酸化ケイ素層81は窒化ケイ素からなる反り制御膜20よりもエッチングレートが低いためESL(Etching Stop Layer)として機能し、ガラス基板10がエッチングされて光学機能低下することを防止することができる。また、酸化ケイ素層81は、α線遮蔽膜としての効果を有するため、パッケージ外部やガラス基板10からのα線放出があってもこれを遮蔽し、半導体素子40の受光領域41にα線が照射されて電気特性に影響を与えることを防止できる。また、ガラス基板10において、再配線層30を形成した面の裏面の全面、あるいは受光領域41に相当する領域に光学機能膜である反射防止層82をさらに設けてもよい。このようにすることで、半導体素子40に入光する光のうち、検出を阻害するノイズ成分の光侵入を抑制することができる。
【0029】
また、上述の実施の形態では、ガラス基板10に再配線層30が形成される領域に反り制御膜20が形成される例について説明した。反り制御膜21は、
図14に示すように、再配線層30の配線層31が形成される領域に選択的に形成されてもよい。この場合、ガラス基板10に酸化ケイ素層81を全面に形成し、酸化ケイ素層81の表面であって、再配線層30の配線層31が形成される領域にパターニングして反り制御膜21が形成される。これにより、再配線層30の配線層31は、反り制御膜21上に形成され、絶縁層32は、酸化ケイ素層81上に形成される。銅と窒化ケイ素の密着性は、酸化ケイ素よりよいが、絶縁層32と酸化ケイ素との密着性が悪いことがあるため、積層する層に適切な界面を選択的に形成することにより、配線層31および絶縁層32の良好な密着性を得ることができる。また、反り制御膜21のパターニングは、反り制御膜パターニング工程(ステップS102)において実施することが可能であるので、工程数の増加にはならない。
【0030】
また、上述の実施の形態では、半導体素子40が受光領域41を有する例について説明した。半導体素子40は、LED(Light Emitting Diode)または有機EL(Electro Luminescence)素子などの発光領域を有するものであってもよい。この場合であっても、半導体素子40の発光領域に対向する領域には、反り制御膜20および再配線層30が形成されていないため、反り制御膜20および再配線層30が発光領域から発光した光の透過特性に影響を与えない。
【0031】
また、上述の実施の形態では、反り制御膜20が窒化ケイ素を含む例について説明した。反り制御膜20は、ガラス基板10を、反り制御膜20が成膜された面を凸反りにできればよく、反り制御膜20が窒化ケイ素以外の成分を含んでもよい。このようにしたとしても、反り制御膜20が窒化ケイ素を含む場合と同様の効果を得られる材料であればこれに限定されない。
【実施例0032】
以下、光デバイスパッケージ100が備える反り制御膜20の効果を実施例により実証した。この実施例は、本開示の一実施態様を示すものであり、本開示は何らこれらに限定されるものではない。
【0033】
(反りの抑制効果)
ガラス基板に窒化ケイ素膜を形成することで、ガラス基板の反りを低減できるか実施例1のガラス基板および比較例1のガラス基板を作成してガラス基板の反りの抑制効果を確認した。
【0034】
実施例1のガラス基板は、370mm×470mm×0.7mmのガラス基板に300nmの窒化ケイ素膜を形成し、厚さ15μmのポリイミド膜を全面積層したものであった。これに対して、比較例1のガラス基板は、370mm×470mm×0.7mmのガラス基板に窒化ケイ素膜を形成せず、厚さ15μmのポリイミド膜を全面積層したものであった。
【0035】
比較例1のガラス基板は、0.5mm~0.6mmの凹反りが発生した。これに対して、実施例1のガラス基板は、0.05mm以下の反りに抑制することができ、比較例1のガラス基板に対して90%以上反りを低減することができた。従って、窒化ケイ素膜を形成することでポリイミド膜を形成したガラス基板の凹反りを抑制できることがわかった。
【0036】
(窒化ケイ素膜の形成領域)
窒化ケイ素膜をガラス基板に全面に形成し再配線層30を1層形成した場合と、
図15に示すように、開口部23を除いて、窒化ケイ素膜22をガラス基板に形成し、再配線層30を1層形成した場合と、を比較した。開口部23の総面積和がガラス基板の総面積の12.3%以下であれば、反りに有意差はなかった。なお、開口部23の総面積和とガラス基板の総面積の比率は開口形状や位置、窒化ケイ素膜22の膜厚等によって変動するため上記範囲に限定されるものではない。
【0037】
(反り制御膜の厚さ)
つぎに、反り制御膜20の最適な厚さについて検討した。表1に示すように、370mm×470mm×0.7mmのガラス基板に窒化ケイ素膜を形成して、窒化ケイ素膜の厚さとガラス基板の反り量との関係を計測した。
【0038】
【0039】
窒化ケイ素膜の厚さとガラス基板の反り量との計測結果を
図16に示す。これまでの実験で工程上、最も小さい反り量でトラブルが発生する装置の許容可能なガラス基板の凹反り量は0.75mm以下であることがわかっており、再配線層30を3層形成の場合は窒化ケイ素膜の厚さを1000nm程度にすれば許容可能になることがわかった。また、再配線層30を形成したガラス基板の反りがほぼ無い状態を求める場合、例えば再配線層30が2層である場合、窒化ケイ素膜900mmで実現できるが、ガラス基板全体の反りがある程度あっても個片化した光デバイスパッケージにはほとんど影響ないので、工程流動させる上で許容可能な反り量まで低減できる程度で構わない。これは、無駄に窒化ケイ素膜を厚くすると成膜に時間がかかり、工程の所要時間が長くなって生産性が低下してしまうためである。
【0040】
つぎに、370mm×470mm×0.7mmのガラス基板において、反り制御膜である窒化ケイ素膜の厚さtに対して、再配線層(≒配線層+絶縁層)の総厚Tの3乗値をパラメータとして
図17に示すようにプロットした。再配線層の総厚T、反り制御膜の厚さtとし、t/T
3≧7.38×10
-5を満たすと、工程上、許容可能なガラス基板の反り量に収まることがわかった。具体的には、総厚Tが16μmである場合、窒化ケイ素膜の厚さtが0.4μm以上、総厚Tが24μmである場合窒化ケイ素膜の厚さtが1.02μm以上、総厚Tが32μmである場合窒化ケイ素膜の厚さtが2.5μm以上、で工程上、許容可能なガラス基板の反り量に収まることがわかった。なお、
図17中、T=32μmは推定値である。
【0041】
つぎに、再配線層30の総厚T、反り制御膜の厚さtとし、t/T3≧7.38×10-5を満たすと、工程上、許容可能なガラス基板の反り量に収まるといえる理由について説明する。
【0042】
図18(A)に示すように、ガラス基板の両端A、Bが支持された状態で、自重による等分布荷重が作用した場合の最大たわみ(反り)y
maxは、以下の式(1)で近似できる。
y
max=5×w×s
4/384×E×I ・・・(1)
なお、y
max:最大たわみ量、w:加重(N/m)、s:両端間の距離、E:ヤング率、I:断面2次モーメントである。
【0043】
ここで、断面2次モーメントIは、材料の曲げ難さ(曲げ力に対する抵抗力)であり、物体の断面形状により変化する。
図18(B)に示す、断面幅b、断面高さhの長方形(平板)における断面2次モーメントIは、以下の式(2)で算出できる。
I=b×h
3/12 ・・・(2)
【0044】
したがって、式(1)および式(2)より、たわみ量(反り)は、断面高さ(h)の3乗で効くことがわかる。そこで、窒化ケイ素膜の厚さ(t)と再配線層30の総厚の3乗値(T3)の相関を取ったところ、実験結果より、t/T3値を境界値に設定できることがわかった。なお、単にt/T、(t/T)3、またはt3/Tである場合、境界条件を得ることができなかった。
【0045】
(密着性)
つぎに、ガラス基板に形成された酸化ケイ素膜および窒化ケイ素膜と、銅シード膜(銅スパッタ膜)およびポリイミド絶縁層とのそれぞれの密着性評価をした。
【0046】
酸化ケイ素膜を100nm積層したガラス基板と、酸化ケイ素膜100nmに窒化ケイ素膜300nmを積層したガラス板を準備し、それぞれに銅シード膜200nmおよびポリイミド絶縁層を形成した。銅シード膜およびポリイミド絶縁層の表面にそれぞれカッターで傷を付け、その面上に粘着テープを貼り付けて剥がすことにより、膜剥がれの有無をチェックした(クロスカット法 JIS-K5600-5-6相当)。その結果を表2に示す。表2中、「○」は膜剥がれ無しであり、「×」は膜剥がれ有りである。
【0047】
【0048】
この結果、銅シード膜は、酸化ケイ素膜より窒化ケイ素膜との密着性が良好であることがわかった。また、ポリイミド膜は、銅シード膜とは逆に酸化ケイ素との密着性の方が優れる結果となった。従って、銅シード膜およびポリイミド膜が、それぞれ接する界面を窒化ケイ素と酸化ケイ素とを選択的に配置することにより、再配線層30の密着性をさらに向上させることができることがわかった。
【0049】
以上のように、370mm×470mm×0.7mmのガラス基板に300nmの窒化ケイ素膜を形成し、厚さ15μmのポリイミド膜を全面積層した実施例1のガラス基板は、0.05mm以下の反りに抑制することができた。これは、窒化ケイ素膜を形成せず、厚さ15μmのポリイミド膜を全面積層した比較例1のガラス基板が0.5mm~0.6mmの凹反りが発生したのと比較して、90%以上反りを低減することができたことがわかった。また、再配線層30の総厚T、反り制御膜の厚さtとし、t/T3≧7.38×10-5を満たすと、工程上、許容可能なガラス基板の反り量に収まることがわかった。また、銅シード膜は、酸化ケイ素膜より窒化ケイ素膜との密着性が良好であり、ポリイミド膜は、銅シード膜とは逆に酸化ケイ素との密着性の方が優れることから、銅シード膜およびポリイミド膜が、それぞれ接する界面を窒化ケイ素と酸化ケイ素とを選択的に配置することにより、再配線層30の密着性をさらに向上させることができることがわかった。
【0050】
本開示は、開示の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施の形態は、この開示を説明するためのものであり、本開示の範囲を限定するものではない。すなわち、本開示の範囲は、実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内及びそれと同等の開示の意義の範囲内で施される様々な変形が、この開示の範囲内とみなされる。