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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023001102
(43)【公開日】2023-01-04
(54)【発明の名称】植物性色素を含有する組成物
(51)【国際特許分類】
   A23L 5/43 20160101AFI20221222BHJP
   A23L 5/44 20160101ALI20221222BHJP
   A23L 33/10 20160101ALI20221222BHJP
【FI】
A23L5/43
A23L5/44
A23L33/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022098409
(22)【出願日】2022-06-17
(31)【優先権主張番号】P 2021100935
(32)【優先日】2021-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021144140
(32)【優先日】2021-09-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000125347
【氏名又は名称】学校法人近畿大学
(71)【出願人】
【識別番号】390019460
【氏名又は名称】稲畑香料株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】315001213
【氏名又は名称】三生医薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】財満 信宏
(72)【発明者】
【氏名】松村 晋一
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 百合
(72)【発明者】
【氏名】須見 友子
(72)【発明者】
【氏名】山田 和哉
(72)【発明者】
【氏名】望月 雄斗
(72)【発明者】
【氏名】野津 昌史
(72)【発明者】
【氏名】小林 崇典
【テーマコード(参考)】
4B018
【Fターム(参考)】
4B018LE02
4B018MA01
4B018MA02
4B018MB05
4B018MC01
4B018MD07
4B018MD08
4B018MD15
4B018MD42
4B018MD61
4B018MD66
4B018ME14
(57)【要約】
【課題】植物性色素の含有量と澄明性とのバランスに優れた組成物及び当該組成物を含有する飲食品を提供する。
【解決手段】植物性色素及び精油を含有し、前記植物性色素が、フラボノイド類化合物及びカロテノイド類化合物から選択される1種以上である組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物性色素及び精油を含有し、
前記植物性色素が、フラボノイド類化合物及びカロテノイド類化合物から選択される1種以上である組成物。
【請求項2】
前記植物性色素のHLBが、25以下である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記フラボノイド類化合物が、ポリメトキシフラボン、ノビレチン、エクオール、カルコン、グラブリジン、フィセチン、タキシフォリン、シリマリン、テアフラビン、ルテオリン、タンニン、カテキン、ナリンジン、ナリルチン、ルチン、ペスペリジン、アントシアニン、ケルセチン、ジヒドロミルセチン、クエルシトリン、イソクエルシトリン、イソサポナリン、イソビテキシン、ベルゲニン、クマリン、オイゲニン、アスパラチン、及びアピゲニンからなる群から選択される1種以上である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記カロテノイド類化合物が、キサントフィル類である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項5】
前記カロテノイド類化合物が、ルテイン及びゼアキサンチンからなる群から選択される1種以上である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項6】
前記精油が、フェニルプロパノイド、ビサボラン型セスキテルペンケトン及びメンタン型ケトンからなる群から選択される1種以上である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項7】
前記精油が、クローブオイル、ピメントベリーオイル、カッシャオイル、クミンシードオイル、ターメリックオイル、スペアミントオイル、ディルシードオイル、タイムオイル、バジルオイル、フェンネルオイル、スターアニスオイル、セージオイル、ブラックペッパーオイル、カレーリーフオイル、ローズマリーオイル、及びピメントリーフオイルからなる群から選択される1種以上である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物100質量%に対する前記植物性色素の含有量が、2~55質量%である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項9】
ホルマジン標準乳濁液を基準とした比濁法濁度単位が、3NTU以下である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項10】
カプセル剤の形態である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項11】
請求項1又は2に記載の組成物を含有する飲食品。
【請求項12】
請求項1又は2に記載の組成物を含有する、植物性色素の血中濃度向上用飲食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物性色素を含有する組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、フラボノイド類化合物、カロテノイド類化合物、ベタレイン類化合物、クロロフィル類化合物のような植物性色素の機能性に着目して、これらを含有する組成物が多く開発されている。
【0003】
フラボノイド類化合物は、酢酸-マロン酸経路由来のC6環とシキミ酸経路由来のC6-C3環とが縮合して形成された、フラバン(3,4‐ジヒドロ‐2-フェニル-2H‐1-ベンゾピラン)骨格を持つ化合物である。フラボノイド類化合物は主に植物の葉や茎などの表皮細胞に高濃度に存在し、花や果実の着色の色素としても知られ、配糖体も含めれば7000種類以上の化合物が知られている。
【0004】
フラボノイド類化合物の一般的な生理機能としては抗酸化作用が挙げられるが、例として抗菌作用、抗ウイルス作用、抗メタボリックシンドローム作用、体脂肪率低減作用、筋肉増加作用、脳機能改善作用、アイケア作用等、様々な作用が知られている。このような作用を期待して、錠剤、散剤、顆粒剤、飲料、ゼリー、ハードカプセル、ソフトカプセルなどの様々な製剤の製品に含有されている。
【0005】
フラボノイド類化合物は高度に酸化され複数の水酸基を持つ化合物が多く、また配糖体も多いため、一般的には水溶性であり油脂には溶解しない。
フラボノイド類化合物を溶解させる技術として、特許文献1には、イプリフラボンを、カルボニル基を有するモノテルペン誘導体に溶解させる組成物が記載されている。
【0006】
しかしながら、特許文献1のようにフラボノイド類化合物を配合した組成物を、内容液とする場合は、油脂を基材油とし、ワックスや乳化剤を任意成分として用いることが多い。ワックスや乳化剤を用いる場合、組成物は乳化懸濁液となり、その液滴径が可視光の波長より長いため散乱されてしまうことにより、その内容液を含有する組成物は不澄明になることが多かった。また、ソフトカプセルの内容液にフラボノイド類化合物を配合する例として、アントシアニン配合のカプセルが存在する。
【0007】
カロテノイド類化合物は、8個のイソプレン単位が結合したテトラテルペン骨格を持つ化合物である。カロテノイド類化合物は、微生物、動物、植物に含まれる色素として知られ、750種類以上の化合物が知られている。
カロテノイド類化合物の生理機能としては、光合成における補助集光作用、光保護作用、抗酸化作用が挙げられるが、例としてがんや心臓病の予防効果も報告されている。このような作用を期待して、錠剤、散剤、顆粒剤、飲料、ゼリー、ハードカプセル、ソフトカプセルなどの様々な製剤の製品に含有されている。
【0008】
カロテノイド類化合物は疎水性であるものの硬直な分子構造を持つため、油脂への溶解度が低い。
カロテノイド類化合物を溶解させる技術としては、成分(A)アスタキサンチン類、並びに、成分(B)シソ科コウスイハッカ属レモンバーム植物又はその抽出物を含有する組成物(特許文献2)、成分(A)アスタキサンチン類、並びに、 成分(B)フトモモ科フトモモ属チョウジノキ植物又はその抽出物を含有する組成物(特許文献3)が知られている。
【0009】
しかしながら、特許文献2~3のようにカロテノイド化合物を配合した組成物を内容液とする場合は、ワックスや乳化懸濁液を任意成分として用いることが多い。ワックスや乳化剤を用いる場合、組成物は乳化懸濁液となり、その液滴径が可視光の波長より長いため散乱されてしまうことにより、その内容液を含有する組成物は不澄明となることが多かった。また、カロテノイド類を配合する例として、ルテイン配合の不澄明なカプセルが存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2012-62248号公報
【特許文献2】特開2017-039666号公報
【特許文献3】特開2017-039667号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述のように、油脂を溶媒とし、植物性色素を溶解して含有する組成物においては、植物性色素を溶媒に溶解させることが困難である。そのため、植物性色素粉末を分散もしくは懸濁させて植物性色素を含有させた外観不透明な組成物とするか、あるいは1粒当たりの植物性色素含有量を減らして植物性色素を溶解させた澄明な組成物とするかのいずれかの方法を取らざるを得なかった。また、植物性色素の生物学的利用率の高い組成物は、生物学的利用率の低い組成物と比べてより少量で同等の効果を奏するため、植物性色素の生物学的利用率の高い組成物が求められていた。
本発明は、植物性色素の含有量と澄明性とのバランスに優れた組成物、好ましくはさらに植物性色素の生物学的利用率にも優れた(生物学的利用率の高い)組成物を提供することを課題とする。また、本発明は、当該組成物を含有する飲食品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を達成するため鋭意検討を重ねた結果、様々な溶媒のスクリーニングを実施したところ、植物性色素化合物を精油に溶解させることで、植物性色素の含有量と澄明性とのバランスに優れた組成物、好ましくはさらに植物性色素の生物学的利用率にも優れた(生物学的利用率の高い)組成物、例えばカプセル内容液を得ることができることを見出し、本発明を完成させた。
【0013】
すなわち、本発明は、下記の通りである。
(1)植物性色素及び精油を含有し、上記植物性色素が、フラボノイド類化合物及びカロテノイド類化合物から選択される1種以上である組成物。
(2)上記植物性色素のHLBが、25以下、好ましくは20以下、より好ましくは15以下、さらに好ましくは10以下である、(1)に記載の組成物。
(3)上記フラボノイド類化合物が、ポリメトキシフラボン、ノビレチン、エクオール、カルコン、グラブリジン、フィセチン、タキシフォリン、シリマリン、テアフラビン、ルテオリン、タンニン、カテキン、ナリンジン、ナリルチン、ルチン、ペスペリジン、アントシアニン、ケルセチン、ジヒドロミルセチン、クエルシトリン、イソクエルシトリン、イソサポナリン、イソビテキシン、ベルゲニン、クマリン、オイゲニン、アスパラチン、及びアピゲニンからなる群から選択される1種以上である、(1)又は(2)に記載の組成物。
(4)上記カロテノイド類化合物が、キサントフィル類である、(1)~(3)のいずれかに記載の組成物。
(5)上記カロテノイド類化合物が、ルテイン及びゼアキサンチンからなる群から選択される1種以上である、(1)~(4)のいずれかに記載の組成物。
(6)上記精油が、フェニルプロパノイド、ビサボラン型セスキテルペンケトン及びメンタン型ケトンからなる群から選択される1種以上であり、好ましくはフェニルプロパノイド、及びメンタン型ケトンからなる群から選択される1種以上である、(1)~(5)のいずれかに記載の組成物。
(7)上記精油が、クローブオイル、ピメントベリーオイル、カッシャオイル、クミンシードオイル、ターメリックオイル、スペアミントオイル、ディルシードオイル、タイムオイル、バジルオイル、フェンネルオイル、スターアニスオイル、セージオイル、ブラックペッパーオイル、カレーリーフオイル、ローズマリーオイル、及びピメントリーフオイルからなる群から選択される1種以上である、(1)~(6)のいずれかに記載の組成物。
(8)上記組成物100質量%に対する上記植物性色素の含有量が2~55質量%である、(1)~(7)のいずれかに記載の組成物。
(9)ホルマジン標準乳濁液を基準とした比濁法濁度単位が、3NTU以下である、(1)~(8)のいずれかに記載の組成物。
(10)カプセル剤の形態である、(1)~(9)のいずれかに記載の組成物。
(11)(1)~(9)のいずれかに記載の組成物を含有する飲食品。
(12)(1)~(9)のいずれかに記載の組成物を含有する、植物性色素の血中濃度向上用飲食品。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、植物性色素の含有量と澄明性とのバランスに優れた組成物、好ましくはさらに植物性色素の生物学的利用率にも優れた(生物学的利用率の高い)組成物を提供することができる。また、本発明によれば、当該組成物を含有する飲食品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の組成物は、植物性色素及び精油を含有する。
組成物に含有する植物性色素は、フラボノイド類化合物及びカロテノイド類化合物から選ばれる1種以上である。
精油はフラボノイド類化合物及びカロテノイド類化合物を高濃度に溶解することができる。そのため、本発明の組成物は、植物性色素の少なくとも一部が上記精油に高濃度に溶解した植物性色素を含有する。したがって、本発明の組成物は、植物性色素の含有量と澄明性とのバランスに優れる。
ここで、本発明において「上記植物性色素の少なくとも一部が上記精油に溶解して」における「少なくとも一部」とは、組成物において、精油に植物性色素の一部が溶解していればよく、植物性色素の全部が溶解していてもよいことを意味する。植物性色素が精油に溶解する割合は、精油に対する植物性色素の配合量、及び精油と植物性色素との組み合わせ等の複合的な要因に影響を受け変化する場合がある。そのため、本発明において、植物性色素が精油に溶解する割合を数値で規定することは困難であると考える。
また、本発明において「高濃度に溶解した」とは、実施例に記載の溶解性試験の評価が、△(溶解性は中程度である)以上であること、好ましくは〇(溶解性が高い)以上であること、より好ましくは◎(溶解性が大変高い)であることを意味する。
【0016】
また、本発明の実施形態において、組成物は、澄明性を有し得るため、組成物自体の見た目が良くなり、高級感が増し、偏析が起きにくくすることができる。また、当該組成物をソフトカプセルの内溶液に適用することで、カプセル製造時の粉末等のカプセルへの付着等を防ぐことができ、液漏れを減らすことができる。さらに従来の懸濁タイプ組成物を内容液としたソフトカプセルと比較して、本発明の組成物を内容液とした場合、製造工程を削減することが可能であるため、より一層のコストを削減することができる。
【0017】
<フラボノイド類化合物>
フラボノイド類化合物は、分子骨格で分類すると、アントシアニジン類、ロイコアントシアニジン(フラバン-3,4-ジオール)類、フラバノン類、フラバノール類、フラボン類、フラボノール類、フラバノノール類、カルコン類、イソフラボン類、イソフラバン類、イソフラバンジオール類、ネオフラボノイド類、ビフラボノイド類、オーロン類、プテロカルパン類や、これらの配糖体が挙げられる。これらの化合物は1種又は2種以上を含有することができる。
【0018】
アントシアニジン類の例としては、シアニジン、ペラルゴニジン、マルビジン、配糖体としてアントシアニン等が挙げられる。ロイコアントシアニジン類の例としては、ロイコシアニジン、ロイコデルフィニジン、メラカシジン等が挙げられる。フラバノン類の例としては、ヘスペリジン、ナリンゲニン等が挙げられる。フラバノール(フラバン-3-オール)類の例としては、テアフラビン、タンニン、カテキン等が挙げられる。フラボン類の例としては、ルテオリン、ノビレチン、3,5,7-トリメトキシフラボン、3,5,7,4’-テトラメトキシフラボン、5,7,4’-トリメトキシフラボン、5,7-ジメトキシフラボン、3,5,7,3’,4’-ペンタメトキシフラボン、5,7,3’,4’-テトラメトキシフラボン、配糖体としてナリンジン、ナリルチン等が挙げられる。フラボノール類の例としては、ケルセチン、フィセチン、配糖体としてはルチン等が挙げられる。フラバノノール類の例としては、タキシフォリン等が挙げられる。カルコン類の例としては、カルコン、キサントアンゲロール、4-ヒドロキシデリシン等が挙げられる。イソフラボン類の例としては、ゲニステイン、ダイゼイン、配糖体としてダイジン、プエラリン等が挙げられる。イソフラバン類の例としては、グラブリジン等が挙げられる。イソフラバンジオール類の例としては、エクオール等が挙げられる。ネオフラボノイド類の例としては、ネオフラバン、ネオフラボン、クタレアゲニン等が挙げられる。ビフラボノイド類の例としては、アメトフラボン、モレロフラボン、オクナフラボン等が挙げられる。オーロン類の例としては、オーレウシジン、レプトシジン等が挙げられる。プテロカルパン類の例としては、プテロカルパン、メジカルピン等が挙げられる。
【0019】
フラボノイド類化合物を含有するエキス末としては、メトキシフラボン類を含有するブラックジンジャーエキス末、キサントアンゲロール、4-ヒドロキシデリシンを含有する明日葉エキス末、グラブリジンを含有する甘草抽出物、ノビレチンを含有するシークヮーサー果皮抽出物、エクオールを含有する大豆胚芽抽出発酵物、シリマリンを含有するマリアアザミ果実抽出物、クマリンを含有するメリロートエキス末、フィセチンを含有するスモークツリーエキス末、タキシフォリンを含有するカラマツ形成層・木部抽出物、タキシフォリンを含有する黄杞葉エキスパウダー等が挙げられる。
【0020】
これらの中でも、フラボノイド類化合物が、ポリメトキシフラボン、ノビレチン、エクオール、カルコン、キサントアンゲロール、4-ヒドロキシデリシン、グラブリジン、フィセチン、タキシフォリン、シリマリン、テアフラビン、ルテオリン、タンニン、カテキン、ナリンジン、ナリルチン、ルチン、ペスペリジン、アントシアニン、ケルセチン、ジヒドロミルセチン、クエルシトリン、イソクエルシトリン、イソサポナリン、イソビテキシン、ベルゲニン、クマリン、オイゲニン、アスパラチン、及びアピゲニンからなる群から選択される1種以上であることが好ましく、ポリメトキシフラボン、ノビレチン、エクオール、カルコン、グラブリジン、フィセチン、タキシフォリン、シリマリン、テアフラビン、ルテオリン、タンニン、カテキン、ナリンジン、ナリルチン、ルチン、ペスペリジン、アントシアニン、ケルセチン、ジヒドロミルセチン、クエルシトリン、イソクエルシトリン、イソサポナリン、イソビテキシン、ベルゲニン、クマリン、オイゲニン、アスパラチン、及びアピゲニンからなる群から選択される1種以上であることがより好ましい。例えば、ポリメトキシフラボン、ノビレチン、エクオール、カルコン、グラブリジン、及びシリマリンからなる群から選択される1種以上であってもよい。
【0021】
<カロテノイド類化合物>
カロテノイド類化合物は、分子骨格で分類すると、炭素原子と水素原子のみで構成されているカロテン類、酸素原子を含むキサントフィル類や、これらの配糖体が挙げられる。これらの化合物は1種又は2種以上を含有することができる。
【0022】
カロテン類の例としては、α-カロテン、β-カロテン、γ-カロテン、δ-カロテン、リコペン、ε-カロテン等が挙げられる。キサントフィル類の例としては、ルテイン、ゼアキサンチン、カンタキサンチン、フコキサンチン、アスタキサンチン、アンテラキサンチン、ビオラキサンチン等が挙げられる。カロテノイド配糖体の例としては、ロドピングリコシド、ミクソール配糖体等が挙げられる。
カロテノイド類化合物を含有するエキス末としては、ルテインとゼアキサンチンを含有するローズマリーエキス末等が挙げられる。
【0023】
これらの中でも、カロテノイド類化合物が、キサントフィル類が好ましく、ルテイン及びゼアキサンチンからなる群から選択される1種以上であることがより好ましい。
【0024】
<HLB>
植物性色素のHLBは、好ましくは25以下、より好ましくは20以下、さらに好ましくは15以下、よりさらに好ましくは10以下である。
HLBの値が20以下では精油に溶解することができ、その値が小さくなることで、精油へより容易に溶解することができる。
【0025】
ここで、HLBは、ある化合物が水性(無機性)か油性(有機性)かを、分子構造から計算した値である(系統的有機定性分析(混合物編)(藤田 穆・赤塚政実著、風間書房))。有機性値及び無機性値は化合物の官能基毎に値が決まっており、それらを足し合わせることで化合物全体の有機性値、無機性値を計算することができる。官能基毎の有機性値、無機性値は以下の表1ように例示される。
【0026】
【表1】
【0027】
化合物全体の有機性値、無機性値を求めた後、無機性値/有機性値×10により、HLBを計算することができる。フラボノイド類化合物のHLBは以下の表2、カロテノイド類化合物のHLBは表3の通りである。
【0028】
【表2】
【0029】
【表3】
【0030】
<精油>
本発明において、植物性色素は精油に溶解して使用する。
精油は、フェニルプロパノイド、ビサボラン型セスキテルペンケトン及びメンタン型ケトンからなる群から選択される1種以上であることが好ましい。特に好ましくはフェニルプロパノイド及びメンタン型ケトンからなる群から選択される1種以上である。
【0031】
フェニルプロパノイドは、ヒドロキシル基で修飾されたベンゼン環を基本骨格とするため、同様にヒドロキシル基で修飾されたフラバンを基本骨格とするフラボノイド類化合物と分子構造が類似している。また、ポリエン構造を基本骨格とするカロテノイド類化合物は分子内にπ電子が多い共通点を持ち、π電子による相互作用が存在する。
メンタン型ケトンとビサボラン型セスキテルペンケトンは、フラボノイド類化合物やカロテノイド類化合物と類似した六員環構造を持つうえに、π電子を持つカルボニル基を持つため、π電子による相互作用が存在する。
したがって、精油がフェニルプロパノイド、ビサボラン型セスキテルペンケトンメンタン型ケトンの場合、フラボノイド類化合物又はカロテノイド類化合物を溶解させる際に相互作用等により結晶化を抑制することになり、これらの化合物を溶解した組成物は澄明性を有しつつ高濃度で溶解させることができる。
【0032】
フェニルプロパノイドは、フェニルアラニンを起源とする1-フェニルプロパンが複数縮合した化合物やそれらの誘導体である。例としてクマル酸、ケイ皮酸、シンナムアルデヒド、クミンアルデヒド、コーヒー酸、オイゲノール、アネトール、エストラゴール、チモール、アピオール、シナピルアルコール、フェルラ酸、セサミン等リグナン類化合物が挙げられる。それらを豊富に含有する精油としてカッシャリーフオイル、カッシャバークオイル、シナモンバークオイル、シナモンリーフオイル、クローブリーフオイル、クローブバッドオイル、クローブステムオイル、ピメントリーフオイル、ピメントベリーオイル、テジパットオイル、ベテルオイル、アニスオイル、マートル(アニシード)オイル、フェンネルオイル、タラゴンオイル、タイムオイル、オレガノオイル、パセリシードオイル、バジルオイル、トウシキミ(スターアニス)オイル、ペルーバルサムオイル、スタイラックスオイル、トルーバルサムオイル、クミンシードオイルが挙げられる。
【0033】
ビサボラン型セスキテルペンケトンはイソプレン三分子が縮合した単環式セスキテルペンの一部である。単環式セスキテルペンは環の形状と官能基の位置によってビサボラン型、ゲルマクラン型、エレマン型、フムラン型に分類されるが、ビサボラン型骨格は六員環を一つ有し、その環より2,6-ジメチルヘキシル基を有する。そのビサボラン型セスキテルペンのうちカルボニル基を有する化合物がビサボラン型セスキテルペンケトンである。例として、α-ビサボレン、β-ビサボレン、γ-ビサボレン、α-クルクメン、β-クルクメン、ジンギベレン、β-セスキフェランドレン、α-ターメロン、β-ターメロン、AR-ターメロン、β-アトラントン、キサントリゾールが挙げられる。それらを豊富に含有する精油としてターメリックオイル、ショウガオイル、ハルウコンオイル、ガジュツオイル、クスリウコンオイル、ムラサキガジュツオイル、オオウコンオイル、マンゴーガジュツオイル、マンゴージンジャーオイル、ポンツクショウガオイル、オオヤマショウガオイル、ニガショウガオイル、ナンキョウオイル、リョウキョウオイル、バンウコンオイルが挙げられる。
【0034】
メンタン型ケトンは、イソプレン二分子が縮合した単環式モノテルペンの一部である。メンタンは六員環のパラ位にメチル基とイソプロピル基を有する分子であり、メンタン型ケトンはメンタン骨格を分子構造の一部に持ち、さらにケトン基を少なくとも1個持つ化合物群である。例として、カルボン、ジヒドロカルボン、ツヨノン、α-ツヨン、β-ツヨン、カンファー、ピペリトン、ピペリテノン、プレゴンが挙げられる。それらを豊富に含有する精油としてペパーミントオイル、スペアミントオイル、ペニーロイヤルミントオイル、ウォーターミントオイル、コーンミントオイル、アジアンミントオイル、オーストラリアミントオイル、ニホンハッカオイル、ベルガモットミントオイル、マルバハッカオイル、ジンジャーミントオイル、カラミントオイル、セージオイル、ユーカリディベスオイル、キャラウェイオイル、ディルシードオイル、バーベナオイル、ディルウィードオイル、バルサマイトオイル、ウェスタンレッドシダーオイル、ジェニピオイル、ワームウッドオイル、ツージャオイル、セージオイル、ラニャーナオイル、マグワートオイル、タンジーオイル、ホーリーフオイル、ラベンダーオイル、フィーバーフューオイル、ローズマリーオイル、フィンガールートオイル、フェネグリークオイル、ユーカリオイルが挙げられる。
【0035】
また、フェニルプロパノイド、ビサボラン型セスキテルペンケトン及びメンタン型ケトン以外に、精油としてブラックペッパーオイル及びカレーリーフオイル等を用いることもできる。ブラックペッパーオイル及びカレーリーフオイルは、植物性色素の溶解性の観点から、フェニルプロパノイド、ビサボラン型セスキテルペンケトン及びメンタン型ケトンからなる群から選択される1種以上と混合して用いることが好ましい。
上記精油の中でも、クローブオイル、ピメントベリーオイル、カッシャオイル、クミンシードオイル、ターメリックオイル、スペアミントオイル、ディルシードオイル、タイムオイル、バジルオイル、フェンネルオイル、スターアニスオイル、セージオイル、ブラックペッパーオイル、カレーリーフオイル、ローズマリーオイル、及びピメントリーフオイルが好ましく、クローブオイル、ピメントベリーオイル、カッシャオイル、スペアミントオイル、ディルシードオイル、バジルオイル、フェンネルオイル、スターアニスオイルが特に好ましい。
【0036】
本発明の組成物において用いることができる精油は、その由来や形態、製造方法等によって、何ら制限されるものではない。
【0037】
例えば、クローブオイルはSyzygium aromaticumの葉や蕾を水蒸気蒸留して得られるが、同種の植物の異なる部位やフトモモ属の近種の植物から得られるオイルも含まれる。
ピメントベリーオイルはPimenta dioiaの果実を水蒸気蒸留して得られるが、同種の植物の異なる部位やオールスパイス属の近種の植物から得られるオイルも含まれる。
カッシャオイルはCinnamomum cassiaの樹皮や葉を水蒸気蒸留して得られるが、同種の植物の異なる部位やニッケイ属の近種の植物から得られるオイルも含まれる。
ターメリックオイルはCurcuma longaの地下茎を水蒸気蒸留して得られるが、同種の植物の異なる部位やショウガ科やウコン属の近種の植物から得られるオイルも含まれる。
クミンシードオイルはCuminum cyminumの種を水蒸気蒸留して得られるが、同種の植物の異なる部位やクミン属の近種の植物から得られるオイルも含まれる。
スペアミントオイルはMentha spicataの葉を水蒸気蒸留して得られるが、同種の植物の異なる部位やハッカ属の近種の植物から得られるオイルも含まれる。
ディルオイルはAnethum graveolensの種子を水蒸気蒸留して得られるが、同種の植物の異なる部位やイノンド属の近種の植物から得られるオイルも含まれる。
タイムオイルは、Thymus vulgarisの植物全体を水蒸気蒸留して得られるが、同種の植物の異なる部位やイブキジャコウソウ属の近種の植物から得られるオイルも含まれる。
バジルオイルは、Ocimum basilicumの植物全体を水蒸気蒸留して得られるが、同種の植物の異なる部位やメボウキ属の近種の植物から得られるオイルも含まれる。
フェンネルオイルはFoeniculum vulgareの種子を水蒸気蒸留して得られるが、同種の植物の異なる部位やウイキョウ属の近種の植物から得られるオイルも含まれる。
スターアニスオイルはIllicium verumの果実を水蒸気蒸留して得られるが、同種の植物の異なる部位やシキミ属の近種の植物から得られるオイルも含まれる。
セージオイルはSalvia officinalis Linnaeusの植物全体を水蒸気蒸留して得られるが、同種の植物の異なる部位やアキギリ属の近種の植物から得られるオイルも含まれる。
ブラックペッパーオイルはPiper nigrumの果実を水蒸気蒸留して得られるが、同種の植物の異なる部位やコショウ属の近種の植物から得られるオイルも含まれる。
カレーリーフオイルはMurraya koenigiiの葉を水蒸気蒸留して得られるが、同種の植物の異なる部位やゲッキツ属の近種の植物から得られるオイルも含まれる。
ローズマリーオイルはRosmarinus officinailsの茎を除く植物の先端を水蒸気蒸留して得られるが、同種の植物の異なる部位やマンネンロウ属の近種の植物から得られるオイルも含まれる。
【0038】
精油は一般的に植物の葉や茎、根、果実、種子、花を水蒸気蒸留して得られる親油性の組成物だが、本発明の組成物において用いるオイルは圧搾や抽出法を用いて得てもよい。また、抽出物を乾燥精製してアブソリュートにし、それを再び油に溶解してもよい。精油の産地は例としてインド産、インドネシア産、中華人民共和国産、フランス産、スペイン産が挙げられるが、他の国が産地であるものを用いてもよい。さらに、上記精油に含まれているフェニルプロパノイド、ビサボラン型セスキテルペンケトン及びメンタン型ケトンの内の少なくともいずれかを抽出精製したもの、又は合成した化合物を配合する合成精油を用いてもよい。精油は、複数の精油を混合して用いてもよい。
【0039】
本発明の組成物において、組成物100質量%に対する植物性色素の含有量が、好ましくは2~55質量%、より好ましくは5~50質量%、特に好ましくは10~40質量%である。
この範囲とすることで、各成分の効果を発揮するために十分な量の植物性色素を含有して、組成物を摂取することができる。
【0040】
本発明の組成物において、植物性色素と精油の合計の含有量は、好ましくは10~100質量%、より好ましくは40~100質量%、さらに好ましくは60~80質量%、よりさらに好ましくは80~100質量%、よりさらに好ましくは90~100質量%、よりさらに好ましくは95~100質量%である。
【0041】
本発明の組成物において、植物性色素と精油の割合は、質量比で、1:99以上、好ましくは5:95以上、さらに好ましくは10:90以上であってもよく、45:55以下、好ましくは40:60以下、さらに好ましくは35:65以下であってもよい。
【0042】
<組成物の調製方法>
フラボノイド類化合物の含有物(抽出物やエキス末等)、又はカロテノイド類化合物の含有物(抽出物やエキス末等)を、乳鉢にて粉砕後に精油に混合し、好ましくは75~100℃、5~15分、より好ましくは85℃、10分間で加熱しながら溶解させる。その後、得られた溶液を水で室温まで冷却し、一晩静置した後、静置後のサンプルについて15℃、10000rpmで5分間遠心分離し、得られた上清により組成物を得ることができる。
【0043】
この組成物に含まれるフラボノイド類化合物濃度(質量%)は、液体クロマトグラフ質量分析法(LC-MS)や紫外可視吸光光度計(UV-vis)により定量することができる。
【0044】
組成物は、所望の用途、摂取の形態等に応じて、適宜、製剤化してもよい。このような組成物(製剤)の形態(剤形、性状)としては、特に限定されず、例えば、錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、ドライシロップ剤、被覆錠剤、口腔内崩壊錠、チュアブル錠、カプセル剤、ソフトカプセル剤、シロップ剤、経口液剤、トローチ剤、ゼリー剤、吸入剤、坐剤、注射剤、軟膏剤、点眼剤、眼軟膏剤、点鼻剤、点耳剤、パップ剤、ローション剤、外用液剤、スプレー剤、外用エアゾール剤、クリーム剤、ゲル剤、テープ剤、バッカル錠、舌下錠、液剤、懸濁剤、乳剤、リニメント剤、シート剤等が挙げられる。これらの中でも、カプセル剤の形態が好ましい。
【0045】
本発明の組成物は、飲食品(機能性表示食品、健康補助食品、栄養機能食品、特別用途食品、特定保健用食品、栄養補助食品、食事療法用食品、健康食品、サプリメント等)の他に、医薬品、医薬部外品、化粧品等の形態で提供することが好適である。本発明の組成物を飲食品として提供する場合、その形態は、錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、ドリンク剤(溶液剤及び懸濁液剤が含まれる)等の健康食品の形態で提供することも、清涼飲料、茶飲料、ヨーグルトや乳酸菌飲料等の乳製品、調味料、加工食品、デザート類、菓子(例えば、ガム、キャンディ、ゼリー)等の形態で提供することも可能であるが、これらに限定されない。
【0046】
本発明の組成物は、その効果を損なわない限り、任意の所望成分を配合してもよい。例えば、セサミン、セサモリン、ビタミンD、ビタミンEなどのビタミン類、DHA、EPA、MCT、ゴマ油等の油脂類、ミネラル類、ホルモン、栄養成分、香料などの生理活性成分のほか、製剤化において配合される防腐剤、安定化剤、抗酸化剤等を適宜配合することができる。
また、本発明の組成物は、植物性色素を溶解する溶媒として精油を用いるのであって、油脂類を溶媒として用いる従来技術とは異なる組成物である。本発明において、澄明性の観点から、組成物100質量%に対する油脂類の含有量は、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましく1質量%以下であり、油脂類を含まない態様であってもよい。
また、澄明性の観点から、組成物は、ワックス及び乳化剤等を含まないことが好ましい。
【0047】
<澄明性評価>
本発明の組成物は、植物性色素を高濃度で溶解し、かつ澄明となり得る。
ここで、「澄明性」は、日本薬局方収載の澄明性試験法に準じて判定することができる。
澄明性の評価は全光線透過法、曇り度(ヘイズ)法、透視時計を用いる透視度法等、又は濁度より透過度を評価する手法を用いてもよい。
【0048】
本実施形態の組成物を用いることで、植物性色素の濃度を高く保ったうえで上記の手法で測定した澄明性が、既存の植物性色素の濃度が低い組成物と同程度とすることができる。また、例えば、植物性色素を含む組成物を内容液として、透明皮膜のソフトカプセルに充填する場合、内容液が澄明で外見が美しくなり、消費者への訴求が向上するという利点がある。本発明において澄明性は重要な要素となり得る。
【0049】
本実施形態の組成物は、紫外・可視吸光度測定を行い、上記バイアル瓶中の溶液及び溶媒の澄明性を定量した際に、ホルマジン標準乳濁液を基準とした比濁法濁度単位3NTU以下とすることが好ましい。
この値は、日本薬局方の「内径15mmの無色透明のガラス製平底試験管に液相が30mm又は40mmになるようにとり、散乱光中で黒色の背景を用い、上方から観察」した際に、3NTU以下であれば澄明であると判断されるものと同等である。
【0050】
以下、実施例に沿ってさらに説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【実施例0051】
1.材料の調製
<植物性色素>
ブラックジンジャー抽出物(ポリメトキシフラボン)は、稲畑香料株式会社より購入し用いた。
シークヮーサー果皮エキス末(ノビレチン)は、株式会社沖縄リサーチセンターより購入し用いた。
エクオールは、株式会社ダイセルより購入し用いた。
カルコンは、富士フィルム和光純薬株式会社より購入し用いた。
グラブリジンは、進栄化学株式会社より購入し用いた。
マリアアザミ乾燥エキス(シリマリン)は、アスク薬品株式会社より購入し用いた。
スモークツリーエキス末(フィセチン)は、興新物産株式会社より購入し用いた。
カラマツ形成層・木部抽出物(タキシフォリン)は、株式会社三旺コーポレーションより購入し用いた。
ルテイン結晶は、稲畑香料株式会社より購入し用いた。
ゼアキサンチン結晶は、稲畑香料株式会社より購入し用いた。
【0052】
<精油>
クローブオイルは、稲畑香料株式会社より、Eugenia caryophyllata Thunbergの葉の水蒸気蒸留品(商品名:AKY-2608)を購入し用いた。
ターメリックオイルは、稲畑香料株式会社より、Curcuma longaの地下茎の水蒸気蒸留品(商品名:AKY-1953)を購入し用いた。
カッシャオイルは、稲畑香料株式会社よりCinnamomum cassiaの葉の水蒸気蒸留品(商品名:AKY-2609)を購入し用いた。
クミンシードオイルは稲畑香料株式会社よりCuminum cyminumの種子の水蒸気蒸留品(商品名:AKY-2769)を購入し用いた。
スペアミントオイルは、稲畑香料株式会社よりMentha spicataの葉の水蒸気蒸留品(商品名:AKY-2238)を購入し用いた。
ディルオイルは、稲畑香料株式会社よりAnethum graveolensの種子の水蒸気蒸留品(商品名:AKY-2772)を購入し用いた。
バジルオイルは、稲畑香料株式会社よりOcimum basilicumの植物全体の水蒸気蒸留品(商品名:AKY-2780)を購入し用いた。
スターアニスオイルは、稲畑香料株式会社よりIllicium verumの果実の水蒸気蒸留品(商品名:AKY-2782)を購入し用いた。
セージオイルは、稲畑香料株式会社よりSalvia officinalis Linnaeusの葉の水蒸気蒸留品(商品名:AKY-2783)を購入し用いた。
タイムオイルは、稲畑香料株式会社よりThymus vulgarisの植物全体の水蒸気蒸留品(商品名:AKY-2774)を購入し用いた。
ブラックペッパーオイルは、稲畑香料株式会社よりPiper nigrumの果実の水蒸気蒸留品(商品名:AKY-2897)を購入し用いた。
カレーリーフオイルは、稲畑香料株式会社よりMurraya koenigiiの葉の水蒸気蒸留品(商品名:AKY-2104)を購入し用いた。
ピメントベリーオイルは、稲畑香料株式会社よりPimenta dioiaの果実の水蒸気蒸留品(商品名:AKY-2933)を購入し用いた。
ローズマリーオイルは、稲畑香料株式会社よりRosmarinus officcinailsの茎を除く植物の先端の水蒸気蒸留品(商品名:AKY-1966)を購入し用いた。
フェンネルオイルは、稲畑香料株式会社よりFoeniculum vulgareの種子の水蒸気蒸留品(商品名:AKY-2781)を購入し用いた。
混合精油1は、ブラックペッパーオイルとスペアミントオイルを1:1(wt/wt)で混合することで調製した。
混合精油2は、カレーリーフオイルとスペアミントオイルを1:1(wt/wt)で混合することで調製した。
混合精油3は、ピメントベリーオイルとスペアミントオイルを1:1(wt/wt)で混合することで調製した。
混合精油4は、ローズマリーオイルとスペアミントオイルを1:1(wt/wt)で混合することで調製した。
【0053】
<油脂等>
MCTは、英和トレーディング社(日本、東京)よりElaeis guineensisの果実圧搾品(商品名:MCT 70/30)を購入し用いた。
ゴマ油は、竹本油脂株式会社より購入した太白胡麻油を用いた。
サラダ油は、日清オイリオ株式会社より購入したサフラワーサラダ油を用いた。
【0054】
<その他>
ビタミンEは、タマ生化学株式会社から購入したd-α-トコフェロール1430を用いた。
ホルマジン標準液は、富士フィルム和光純薬株式会社より400NTUの製品を購入し用いた。
【0055】
(溶解性試験「LC-MS分析法」)
<サンプルの調製>
表5~16に示す実施例及び比較例において、組成物は、植物性色素(フラボノイド又はカロテノイド)を精油又は油脂等に混合し、85℃、10分間で加熱しながら溶解させた。その後、溶液を水で室温まで冷却し、一晩静置した後、静置後のサンプルについて15℃、10000rpmで5分間、多目的遠心機CAX-371(株式会社トミー精工)を用いて遠心分離し、上清をフラボノイド又はカロテノイド濃度の測定に用いた。
なお、各実施例において、植物性色素と精油又は油脂とは、下記混合比(質量比)にて混合した。
実施例1~11及び比較例1~2 :1:1
実施例12~16及び比較例3~4 :1:9
実施例17~30及び比較例5~6 :3:7
実施例31~42及び比較例7~8 :2:3
実施例43~56及び比較例9 :1:3
実施例57~59及び比較例10 :1:9
実施例60~71及び比較例11~12:1:9
実施例72~81及び比較例13~14:1:9
実施例82~83及び比較例23 :1:4
実施例84~87及び比較例24 :1:99
また、各実施例及び比較例において、植物性色素と油脂、ミツロウ、グリセリン脂肪酸エステルとは、下記混合比(質量比)にて混合した。
比較例15 :5:79:14:2
比較例16 :16.7:70.3:11:2
比較例17 :3.3:80.7:14:2
比較例18 :6:78:14:2
比較例19 :3:81:14:2
比較例20 :40:55:3:2
比較例21 :3.7:80.3:14:2
比較例22 :4.4:79.6:14:2
【0056】
<フラボノイド又はカロテノイド濃度の測定>
上記遠心分離後のすべてのサンプルの上清に含まれるフラボノイド又はカロテノイド濃度(質量%)を高速液体クロマトグラフィーにより定量した。
【0057】
〈1〉ポリメトキシフラボン、ノビレチン、エクオール、カルコン、タキシフォリン、タンゲレチン、及びグラブリジンの分析
分析装置は、HPLC(ClassVP、株式会社島津製作所)を用い、分析は以下の条件で行った。
カラムはYMC-PACK ODS-A(4.6mmI.D×150mm,particle size;5μm、株式会社ワイエムシィ)を用いた。移動相は水(A):メタノール(B)、流速は0.9mL/分、カラム温度は40℃とした。グラジエント条件は、0分(B66%)―10分(B66%)―12分(B84%)―20分(B100%)で行った。試料の希釈はメタノールで適宜実施し、試料注入量は20μLとした。検出器はPDAが用いられ、測定波長は190~800nmとした。各成分の保持時間及び検出波長は、表4に示した。
【0058】
〈2〉シリマリン及びフィセチンの分析
シリマリン及びフィセチンの分析は、上記方法と同様にHPLCで実施され、グラジエント条件以外は上記と同様の条件で実施した。グラジエント条件は、0分(B15%)―5分(B15%)―15分(B50%)―23分(B50%)―28分(B100%)で行った。検出器はPDAが用いられ、測定波長は190~800nmとした。各成分の保持時間及び検出波長は、表4に示した。
なお、シリマリンの濃度は、表4中におけるシリクリスチンA、ジリジアニン、シリクリスチンB、シリビンA、シリビンB、イソシリビンA、及びイソシリビンBの濃度の合計を意味する。
【0059】
〈3〉ルテイン及びゼアキサンチンの分析
分析装置はUPLC(Nexera X2、株式会社島津製作所)を用い、分析は以下の条件で行った。
カラムはL-Column 2 ODS(2.1mmI.D×150mm,particle size;2μm、株式会社島津製作所)を用いた。移動相はメタノール/THF/0.3%ギ酸水/TBHQ=45/35/20/0.1(A):THF(B)、流速は0.2mL/分、カラム温度は40℃とした。グラジエント条件は、0分(B66%)―10分(B66%)―20分(B100%)で行った。試料の希釈はTHF及びメタノールで適宜実施し、試料注入量は2μLとした。検出器はPDAが用いられ、測定波長は190~800nmとした。各成分の保持時間及び検出波長は、表4に示した。
【0060】
【表4】
【0061】
(澄明性評価試験)
1.澄明性評価試験の評価方法
溶解性試験で調製した組成物を、紫外・可視分光光度計(HITACHI U-3900 Spectrophotometer)を用いた紫外・可視吸光度測定を行い、上記バイアル瓶中の溶液及び溶媒の澄明性を定量した。濁度は750nmの透過度を用いて評価した。ベースラインは、ガラスセルの透過度とした。
また、ホルマジン標準乳濁液を希釈し3NTU、6NTU、18NTU、30NTU、50NTU、100NTU、200NTU、400NTUの乳濁液を作成した。これらの750nm透過度を測定し、以下の式1に示す検量線を得た。本数式を用い、NTU単位の澄明性を計算した。
【0062】
(式1)
Y=100×exp(-X/285.1851)
式1中、XはNTUを示し、Yは750nm透過度を示す。
【0063】
3NTUを濁りの比較液I、6NTUを濁りの比較液II、18NTU濁りの比較液III、30NTUを濁りの比較液IVとした。
組成物の澄明性評価は、以下に定める5段階(A、B、C、D、E)で行った。
なお、澄明性評価が18NTU未満(比較例IIIよりも大きい)場合、すなわち表決結果がA、B又はCである場合、澄明性に優れている(合格である)。
結果を表5~12に示す。
A(澄明性が大変高い):濁りの比較液Iより750nm透過度が高い
B(澄明性が高い):750nm透過度が濁りの比較液I以下であり、濁りの比較液IIより大きい
C(澄明性が中程度である):750nm透過度が濁りの比較液II以下であり、濁りの比較液IIIより大きい
D(澄明性が低い):750nm透過度が濁りの比較液III以下であり、濁りの比較液IVより大きい
E(澄明性が大変低い):750nm透過度が濁りの比較液IV以下
【0064】
[実施例1~11、比較例1,2]
<植物性色素:ブラックジンジャー抽出物>
上記遠心分離後の上清の溶解性試験の評価は、以下に定める4段階(◎、〇、△、×)で行った。
◎(溶解性が大変高い):ポリメトキシフラボン濃度が3質量%以上
〇(溶解性が高い):ポリメトキシフラボン濃度が1質量%以上3質量%未満
△(溶解性は中程度である):ポリメトキシフラボン濃度が0.5質量%以上1質量%未満
×(溶解性が低い):ポリメトキシフラボン濃度が0.5質量%未満
表5にブラックジンジャー抽出物の溶解濃度、及び組成物の澄明性を示す。
【0065】
【表5】
【0066】
表5のように、MCTや他の油脂と比較して、クローブオイル、カッシャオイル、スペアミントオイル、フェンネルオイル、バジルオイル、クミンシードオイル、タイムオイル、ピメントベリーオイル、ローズマリーオイル、混合精油3、混合精油4を使用した際は、ポリメトキシフラボンを高濃度に溶解でき、澄明性が高い組成物を得ることができた。
【0067】
[実施例12~16、比較例3,4]
<植物性色素:ノビレチン>
上記遠心分離後の上清の溶解性の評価は以下に定める4段階(◎、〇、△、×)で行った。
◎(溶解性が大変高い):ノビレチン濃度とタンゲレチン濃度の合計が20質量%以上
〇(溶解性が高い):ノビレチン濃度とタンゲレチン濃度の合計が5質量%以上20質量%未満
△(溶解性は中程度である):ノビレチン濃度とタンゲレチン濃度の合計が2質量%以上5質量%未満
×(溶解性が低い):ノビレチン濃度とタンゲレチン濃度の合計が2質量%未満
表6にノビレチンの溶解濃度、及び組成物の澄明性を示す。
【0068】
【表6】
【0069】
表6のように、MCTやサラダ油と比較して、クローブオイル、カッシャオイル、スペアミントオイル、ディルオイル、混合精油1、を使用した際は、ノビレチンを高濃度に溶解でき、澄明性が高い組成物を得ることができた。
【0070】
[実施例17~30、比較例5,6]
<植物性色素:エクオール>
上記遠心分離後の上清の溶解性の評価は以下に定める4段階(◎、〇、△、×)で行った。
◎(溶解性が大変高い):エクオール濃度が15質量%以上
〇(溶解性が高い):エクオール濃度が5質量%以上15質量%未満
△(溶解性は中程度である):エクオール濃度が1質量%以上5質量%未満
×(溶解性が低い):エクオール濃度が1質量%未満
表7にエクオールの溶解濃度、及び組成物の澄明性を示す。
【0071】
【表7】
【0072】
表7のように、MCTやサラダ油と比較して、クローブオイル、カッシャオイル、スペアミントオイル、ターメリックオイル、フェンネルオイル、バジルオイル、クミンシードオイル、ディルオイル、ピメントベリーオイル、ローズマリーオイル、混合精油1、混合精油2、混合精油3、混合精油4を使用した際は、エクオールを高濃度に溶解でき、澄明性が高い組成物を得ることができた。
【0073】
[実施例31~42、比較例7,8]
<植物性色素:カルコン>
上記遠心分離後の上清の溶解性の評価は以下に定める4段階(◎、〇、△、×)で行った。
◎(溶解性が大変高い):カルコン濃度が40質量%以上
〇(溶解性が高い):カルコン濃度が30質量%以上40質量%未満
△(溶解性は中程度である):カルコン濃度が20質量%以上30質量%未満
×(溶解性が低い):カルコン濃度が20質量%未満
表8にカルコンの溶解濃度、及び組成物の澄明性を示す。
【0074】
【表8】
【0075】
表8のように、MCTやサラダ油と比較して、クローブオイル、カッシャオイル、スペアミントオイル、ターメリックオイル、フェンネルオイル、バジルオイル、クミンシードオイル、ディルオイル、スターアニスオイル、セージオイル、ブラックペッパーオイル、混合精油1を使用した際は、カルコンを高濃度に溶解でき、澄明性が高い組成物を得ることができた。
【0076】
[実施例43~56、比較例9]
<植物性色素:グラブリジン>
上記遠心分離後の上清の溶解性の評価は以下に定める4段階(◎、〇、△、×)で行った。
◎(溶解性が大変高い):グラブリジン濃度が8質量%以上
〇(溶解性が高い):グラブリジン濃度が3質量%以上8質量%未満
△(溶解性は中程度である):グラブリジン濃度が2質量%以上3質量%未満
×(溶解性が低い):グラブリジン濃度が2質量%未満
表9にグラブリジンの溶解濃度、及び組成物の澄明性を示す。
【0077】
【表9】
【0078】
表9のように、MCTと比較して、クローブオイル、カッシャオイル、スペアミントオイル、ターメリックオイル、フェンネルオイル、バジルオイル、クミンシードオイル、ディルオイル、ピメントベリーオイル、ローズマリーオイル、混合精油1、混合精油2、混合精油3、混合精油4を使用した際は、グラブリジンを高濃度に溶解でき、澄明性が高い組成物を得ることができた。
【0079】
[実施例57~59、比較例10]
<植物性色素:シリマリン>
上記遠心分離後の上清の溶解性の評価は以下に定める4段階(◎、〇、△、×)で行った。
◎(溶解性が大変高い):シリマリン濃度が5質量%以上
〇(溶解性が高い):シリマリン濃度が1質量%以上5質量%未満
△(溶解性は中程度である):シリマリン濃度が0.5質量%以上1質量%未満
×(溶解性が低い):シリマリン濃度が0.5質量%未満
表10にシリマリンの溶解濃度、及び組成物の澄明性を示す。
【0080】
【表10】
【0081】
表10のように、MCTと比較して、カッシャオイル、クローブオイル、混合精油1を使用した際は、シリマリンを高濃度に溶解でき、澄明性が高い組成物を得ることができた。
【0082】
[実施例60~71、比較例11,12]
<植物性色素:ルテイン・ゼアキサンチン混合物(混合比91:9)>
ルテインを含む組成物の調製時は、安定性向上のためビタミンEを0.1質量%配合した。
上記遠心分離後の上清の溶解性の評価は以下に定める4段階(◎、〇、△、×)で行った。
◎(溶解性が大変高い):ルテイン濃度が1質量%以上
〇(溶解性が高い):ルテイン濃度が0.2質量%以上1質量%未満
△(溶解性は中程度である):ルテイン濃度が0.1質量%以上0.2質量%未満
×(溶解性が低い):ルテイン濃度が0.1量%未満
表11にルテイン及びゼアキサンチンの各溶解濃度、及び組成物の澄明性を示す。
【0083】
【表11】
【0084】
表11のように、MCTと比較して、クローブオイル、カッシャオイル、スペアミントオイル、ターメリックオイル、フェンネルオイル、クミンシードオイル、ピメントベリーオイル、ローズマリーオイル、混合精油1、混合精油2、混合精油3、混合精油4を使用した際は、ルテインを高濃度に溶解でき、澄明性が高い組成物を得ることができた。
【0085】
[実施例72~81、比較例13,14]
<植物性色素:ルテイン・ゼアキサンチン混合物(混合比79:21)>
ルテインの溶液調製時は、安定性向上のためビタミンEを0.1質量%配合した。
上記遠心分離後の上清の溶解性の評価は以下に定める4段階(◎、〇、△、×)で行った。
◎(溶解性が大変高い):ルテイン又はゼアキサンチン濃度が1質量%以上
〇(溶解性が高い):ルテイン又はゼアキサンチン濃度が0.2質量%以上1質量%未満
△(溶解性は中程度である):ルテイン又はゼアキサンチン濃度が0.1質量%以上0.2質量%未満
×(溶解性が低い):ルテイン又はゼアキサンチン濃度が0.1量%未満
表12にルテイン及びゼアキサンチンの各溶解濃度、及び組成物の澄明性を示す。
【0086】
【表12】
【0087】
表12のように、MCTと比較して、クローブオイル、スペアミントオイル、ターメリックオイル、フェンネルオイル、クミンシードオイル、ローズマリーオイル、混合精油1、混合精油2、混合精油3、混合精油4を使用した際は、ルテイン・ゼアキサンチン混合物(混合比79:21)を高濃度に溶解でき、澄明性が高い組成物を得ることができた。
【0088】
[比較例15~22]
植物性色素(有効成分)として、ブラックジンジャーエキス末、ノビレチン、エクオール、カルコン、グラブリジン、シリマリン、ルテイン、ゼアキサンチンをそれぞれ用い、懸濁タイプ組成物を調製した。
具体的に上記懸濁タイプ組成物は、植物性色素である粉末成分を基材液に含ませ、それを湿式粉砕に供することで調製した。湿式粉砕の方法として、2枚のディスクを回転させた間にスラリーを通す石臼式ミルであるミクロパウダー(グレードMP-015、有限会社ウエスト)を使用した。また、基材液には基材油としてMCT(中鎖脂肪酸トリグリセライド)を配合し、粉末が基材液中に安定した懸濁状態を確保するために、安定化剤(ミツロウ、グリセリン脂肪酸エステル)を配合した。
表14中のフラボノイド又はカロテノイド濃度は、懸濁タイプ組成物全体に含まれるフラボノイド又はカロテノイドの含有量(質量%)である。上述した各植物性色素を用いた実施例における評価基準に従い、4段階(◎、〇、△、×)で行った。
表13に有効成分の各溶解濃度、及び組成物の澄明性を示す。
【0089】
【表13】
【0090】
表13のように、懸濁タイプ組成物の場合は、ブラックジンジャーエキス末、ノビレチン、エクオール、カルコン、グラブリジン、シリマリン、ルテイン、ゼアキサンチンを高濃度に配合しているが、植物性色素のエキス末を溶解した状態で組成物に含有するものではない。そのため、750nm透過度が0.2%未満と非常に低く、澄明性は全くなかった。また、組成物中に植物性色素が溶解した状態ではなく、分散した状態で含まれていた。
【0091】
[実施例82~83、比較例23]
<植物性色素:タキシフォリン>
上記遠心分離後の上清の溶解性の評価は以下に定める4段階(◎、〇、△、×)で行った。
◎(溶解性が大変高い):タキシフォリン濃度が15質量%以上
〇(溶解性が高い):タキシフォリン濃度が15質量%以上10質量%未満
△(溶解性は中程度である):タキシフォリン濃度が10質量%以上5質量%未満
×(溶解性が低い):タキシフォリン濃度が5質量%未満
表14にタキシフォリンの溶解濃度を示す。
【0092】
【表14】
【0093】
表14のように、MCTと比較して、カッシャオイル、スペアミントオイルを使用した際は、タキシフォリンを高濃度に溶解した組成物を得ることができた。
【0094】
[実施例84~87、比較例24]
<植物性色素:フィセチン>
フィセチンとしては、フィセチンを98%以上含有するスモークツリーエキス末を用いた。
上記遠心分離後の上清の溶解性の評価は以下に定める4段階(◎、〇、△、×)で行った。
◎(溶解性が大変高い):フィセチン濃度が0.2質量%以上
〇(溶解性が高い):フィセチン濃度が0.02質量%以上0.2質量%未満
△(溶解性は中程度である):フィセチン濃度が0.01質量%以上0.02質量%未満
×(溶解性が低い):フィセチン濃度が0.01質量%未満
表15にフィセチンの溶解濃度を示す。
【0095】
【表15】
【0096】
表15のように、MCTと比較して、クローブオイル、カッシャオイル、スペアミントオイル、及びディルシードオイルを使用した際は、フィセチンを高濃度に溶解した組成物を得ることができた。
【0097】
[実施例88、比較例25]
(生物学的利用率評価法)
(概要)
実験は、タキシフォリンを含有するカラマツ形成層・木部抽出物とスペアミントオイルとを質量比で1:9の割合で溶解させたタキシフォリン・スペアミントオイル(飼料1)、又は当該カラマツ形成層・木部抽出物を10質量%濃度となるようにCMC(カルボキシメチルセルロース)2質量%溶液に分散してなる液(飼料2)を、マウスに経口投与し、血清のタキシフォリン濃度を測定することにより行った。
【0098】
(マウス血液サンプル調製法)
マウスは4週齢のSlc:ddY種をSLC社(静岡、日本)より購入した。飼育は25±1℃の室温で、12時間の明暗サイクルの元、餌(MF、オリエンタルイースト社、東京、日本)と水道水は自由に摂取できる環境で行った1週間の飼育で順化させたのち、実験に用いた。
飼料として、以下の2種を用意した。
(飼料1)
タキシフォリンを含有するカラマツ形成層・木部抽出物と当該スペアミントオイルとを、質量比で1:9の割合で溶解させてなるタキシフォリン・スペアミントオイル
(飼料2)
当該カラマツ形成層・木部抽出物とCMC2質量%溶液とを、質量比で1:9の割合で混合してなる、タキシフォリン含有CMC溶液
【0099】
マウスの単位体重当りの飼料の投与量が25mg/kgとなるように、飼料1又は飼料2をマウスに経口投与した。
飼料1又は飼料2を投与したマウスの血液を投与30分後に回収した。血液サンプルは、麻酔下で下大静脈から得た。採取された血液は3000Gで10分間遠心分離し、その上清として血清サンプル1~2を得た。
【0100】
(分析サンプル調製法)
血清サンプル(100μL)1~2とアセトニトリル(500μL)を混合してなる混合液を、3分間振盪することで、タキシフォリンをアセトニトリルに抽出した。その後、この混合液を加速度1040Gで3分間遠心分離し、上清を得た。当該上清中における溶媒を真空除去し、残渣を50μLのアセトニトリルに溶解させることで、LC-MSサンプル1~2とした。
【0101】
(分析法)
すべてのサンプルについて、上述の溶解性試験「LC-MS分析法」で記載した手法と同様の分析を行った。
LC-MSサンプル1~2の各々について、タキシフォリンに相当するUPLC-MSピーク面積の測定結果を表16に示す。
【0102】
【表16】
【0103】
表16に示すとおり、飼料1(タキシフォリン・スペアミントオイル)を与えた場合のタキシフォリン血中濃度は、飼料2(タキシフォリン含有CMC溶液)を与えた場合のタキシフォリン血中濃度と比べて、約1.32倍に向上した。
上記結果から、タキシフォリンの生物学的利用率は、溶媒としてスペアミントオイルを用いることにより大きく改善することが示された。
【産業上の利用可能性】
【0104】
上述の本発明の組成物は、例えば、カプセル皮膜であるシェル内に、当該組成物を充填することにより、カプセルを提供することができる。
また、本発明に係る組成物は、例えば、濃縮液状、ゲル状、ゼリー状、スラリー状等の液状の食品に含有させることもできるし、粉末状、顆粒状、錠状、棒状、板状、ブロック状等の固形状の食品に含有させることもできる。