IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社セイバンの特許一覧

特開2023-110217背負い鞄の背当ての製造方法および背負い鞄の製造方法
<>
  • 特開-背負い鞄の背当ての製造方法および背負い鞄の製造方法 図1
  • 特開-背負い鞄の背当ての製造方法および背負い鞄の製造方法 図2
  • 特開-背負い鞄の背当ての製造方法および背負い鞄の製造方法 図3
  • 特開-背負い鞄の背当ての製造方法および背負い鞄の製造方法 図4
  • 特開-背負い鞄の背当ての製造方法および背負い鞄の製造方法 図5
  • 特開-背負い鞄の背当ての製造方法および背負い鞄の製造方法 図6
  • 特開-背負い鞄の背当ての製造方法および背負い鞄の製造方法 図7
  • 特開-背負い鞄の背当ての製造方法および背負い鞄の製造方法 図8
  • 特開-背負い鞄の背当ての製造方法および背負い鞄の製造方法 図9
  • 特開-背負い鞄の背当ての製造方法および背負い鞄の製造方法 図10
  • 特開-背負い鞄の背当ての製造方法および背負い鞄の製造方法 図11
  • 特開-背負い鞄の背当ての製造方法および背負い鞄の製造方法 図12
  • 特開-背負い鞄の背当ての製造方法および背負い鞄の製造方法 図13
  • 特開-背負い鞄の背当ての製造方法および背負い鞄の製造方法 図14
  • 特開-背負い鞄の背当ての製造方法および背負い鞄の製造方法 図15
  • 特開-背負い鞄の背当ての製造方法および背負い鞄の製造方法 図16
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023110217
(43)【公開日】2023-08-09
(54)【発明の名称】背負い鞄の背当ての製造方法および背負い鞄の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A45F 3/04 20060101AFI20230802BHJP
【FI】
A45F3/04 400B
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022011519
(22)【出願日】2022-01-28
(71)【出願人】
【識別番号】391043756
【氏名又は名称】株式会社セイバン
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松浦 奈美
(72)【発明者】
【氏名】足集利 啓
【テーマコード(参考)】
3B045
【Fターム(参考)】
3B045AA24
3B045CB03
3B045FC04
(57)【要約】
【課題】クッション材が押し潰されることを抑制することによりクッション材の柔らかさを保つことができる背負い鞄の背当ての製造方法および背負い鞄の製造方法を提供する。
【解決手段】背負い鞄の背当ての製造方法は、次の工程を備えている。平面部5aから突出する凸部5bを形成するように外装生地5が熱成型される。平面部5aおよび凸部5bに沿う形状にクッション材6が熱成型される。凸部5bにクッション材6が嵌合するように外装生地5と背板4とでクッション材6を挟み込んだ状態で外装生地5および背板4が溶断される。
【選択図】図15
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面部から突出する凸部を形成するように外装生地を熱成型する工程と、
前記平面部および前記凸部に沿う形状にクッション材を熱成型する工程と、
前記凸部に前記クッション材が嵌合するように前記外装生地と背板とで前記クッション材を挟み込んだ状態で前記外装生地および前記背板を溶断する工程とを備えた、背負い鞄の背当ての製造方法。
【請求項2】
前記外装生地を熱成型する工程において、前記凸部は前記平面部に向けて外側に広がりながら湾曲するように形成される、請求項1に記載の背負い鞄の背当ての製造方法。
【請求項3】
前記溶断する工程において前記凸部に前記クッション材が嵌合する前には、前記クッション材を熱成型する工程で熱成型された前記クッション材の前記凸部に沿う形状の体積は、前記外装生地を熱成型する工程で熱成型された前記外装生地の前記凸部の内容積よりも大きい、請求項1または2に記載の背負い鞄の背当ての製造方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の背負い鞄の背当ての製造方法で製造された背当てと、一対の肩ベルトが取り付けられた取付具と、収容部と、蓋部とを準備する工程と、
前記背当てに、前記一対の肩ベルトが取り付けられた前記取付具、前記収容部および前記蓋部を取り付ける工程とを備えた、背負い鞄の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、背負い鞄の背当ての製造方法および背負い鞄の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ランドセルなどの背負い鞄の背当てにスポンジ等の発泡体よりなるクッション材が用いられている。このような背負い鞄は、たとえば特開2016-146936号公報(特許文献1)に記載されている。この公報では、背負い鞄の背当てが製造される際に、外装生地と背板との間にクッション材が挟み込まれた状態で型押しプレスが行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-146936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記公報では、背負い鞄の背当てが製造される際に、フラット状の外装生地が立体形状のクッション材に載せられた状態で型押しプレスが行われる。このため、クッション材が押し潰されることによりクッション材が硬くなる。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的はクッション材が押し潰されることを抑制することによりクッション材の柔らかさを保つことができる背負い鞄の背当ての製造方法および背負い鞄の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の背負い鞄の背当ての製造方法は、次の工程を備えている。平面部から突出する凸部を形成するように外装生地が熱成型される。平面部および凸部に沿う形状にクッション材が熱成型される。凸部にクッション材が嵌合するように外装生地と背板とでクッション材を挟み込んだ状態で外装生地および背板が溶断される。
【発明の効果】
【0007】
本発明の背負い鞄の背当ての製造方法によれば、クッション材が押し潰されることを抑制することによりクッション材の柔らかさを保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態に係る背負い鞄の構成を概略的に示す斜視図である。
図2】実施の形態に係る背負い鞄の背当ての構成を概略的に示す斜視図である。
図3】実施の形態に係る背負い鞄の背当ての製造方法の外装生地を熱成型する工程における外装生地用金型の下型の構成を概略的に示す斜視図である。
図4】実施の形態に係る背負い鞄の背当ての製造方法の外装生地を熱成型する工程における外装生地用金型の上型の構成を概略的に示す斜視図である。
図5】実施の形態に係る背負い鞄の背当ての製造方法の外装生地を熱成型する工程における外装生地を概略的に示す斜視図である。
図6】実施の形態に係る背負い鞄の背当ての製造方法の外装生地を熱成型する工程を概略的に示す図3のVI-VI線に沿う断面位置に対応する断面図であり、図3に示される外装生地用金型の下型と図4に示される外装生地用金型の上型とが型締めされた状態を示している。
図7】実施の形態に係る背負い鞄の背当ての製造方法の外装生地を熱成型する工程を概略的に示す図3のVII-VII線に沿う断面位置に対応する断面図であり、図3に示される外装生地用金型の下型と図4に示される外装生地用金型の上型とが型締めされた状態を示している。
図8】実施の形態に係る背負い鞄の背当ての製造方法のクッション材を熱成型する工程におけるクッション材用金型の下型の構成を概略的に示す斜視図である。
図9】実施の形態に係る背負い鞄の背当ての製造方法のクッション材を熱成型する工程におけるクッション材用金型の上型の構成を概略的に示す斜視図である。
図10】実施の形態に係る背負い鞄の背当ての製造方法のクッション材を熱成型する工程におけるクッション材を概略的に示す斜視図である。
図11】実施の形態に係る背負い鞄の背当ての製造方法のクッション材を熱成型する工程を概略的に示す図8のXI-XI線に沿う断面位置に対応する断面図であり、図8に示されるクッション材用金型の下型と図9に示されるクッション材用金型の上型とが型締めされた状態を示している。
図12】実施の形態に係る背負い鞄の背当ての製造方法の溶断する工程における溶断用金型の下型の構成を概略的に示す斜視図である。
図13】実施の形態に係る背負い鞄の背当ての製造方法の溶断する工程における溶断用金型の上型の構成を概略的に示す斜視図である。
図14】実施の形態に係る背負い鞄の背当ての製造方法の溶断する工程における外装生地、クッション材および背板を概略的に示す分解斜視図である。
図15】実施の形態に係る背負い鞄の背当ての製造方法の溶断する工程を概略的に示す図12のXV-XVに沿う断面位置に対応する断面図であり、図12に示される溶断用金型の下型と図13に示される溶断用金型の上型とが型締めされた状態を示している。
図16】実施の形態に係る背負い鞄の背当ての製造方法により製造された背当ての斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について図に基づいて説明する。本実施の形態の背負い鞄はランドセルを例として説明される。以下においては、同一または相当する部分に同一の符号を付すものとし、重複する説明は繰り返さない。
【0010】
図1および図2を参照して、本実施の形態の背負い鞄Rの構成について説明する。
【0011】
図1を参照して、本実施の形態の背負い鞄Rは、背当て1と、一対の肩ベルト2と、取付具3と、収容部Bと、蓋部Cとを主に有している。
【0012】
背当て1は、背負い鞄Rを使用者が背負ったときに使用者の背中に接する部分である。一対の肩ベルト2は、背負い鞄Rを使用者が背負ったときに使用者の両肩に装着されるように構成されている。背当て1に一対の肩ベルト2が取付具3によって取り付けられている。
【0013】
取付具3は、背当て1の上下方向の上端部において左右方向の中央部に固定されている。取付具3は、一対の肩ベルト2の各々の上端部を受け入れ可能な取付部3aを有している。取付具3は、取付部3aが上方に向けられた状態で、背当て1に固定されている。一対の肩ベルト2の各々の上端部は、取付部3aに受け入れられることにより、背当て1の上端部に接続されている。したがって、肩ベルト2は、背負い鞄Rから上方に向くように取付部3aに取り付けられている。
【0014】
このため、使用者が背負い鞄Rを背負ったときに、背負い鞄Rが常に斜め上方に引っ張られた状態となり、肩ベルト2が使用者の肩に沿うように曲がるため、背当て1が使用者の背中に程良く密着することが可能である。
【0015】
収容部Bは、側面部B1と、正面部B2と、底面部B3と、開口部B4とを有している。側面部B1は、背当て1の左右両側にそれぞれ接続されている。正面部B2は、背当て1と対向している。正面部B2の左右両側は側面部B1に接続されている。底面部B3は、背当て1、側面部B1および正面部B2のそれぞれの下端に接続されている。開口部B4は、背当て1、側面部B1および正面部B2のそれぞれの上端に設けられている。
【0016】
蓋部Cは、開口部B4を開閉可能に背当て1の上端に接続されている。蓋部Cは、開口部B4および正面部B2を覆うことが可能に設けられている。また、一対の肩ベルト2の各々の下端部は、底面部B3に設けられた止め具(図示せず)に接続可能に構成されている。一対の肩ベルト2の各々は、厚手の皮革地や合成樹脂地からなっている。
【0017】
図2を参照して、背当て1の構成についてさらに詳しく説明する。
【0018】
背当て1は、背板4と、外装生地5と、クッション材6とを主に有している。背板4は、たとえば、プラスチックなどの剛性を有する素材から構成されている。背板4は、好ましくは弾力性を有する素材から構成されている。本実施の形態では、背板4は、四角形状の板から構成されている。
【0019】
外装生地5は背板4に固定されている。外装生地5は、たとえば合成樹脂材からなる人工皮革の生地の裏面に不織布を貼り合わせたものから構成されている。合成樹脂材は、たとえばポリウレタンである。外装生地5は、好ましくは伸縮性の高い素材から構成されている。この伸縮性としては伸度5%以上が好ましい。外装生地5は、好ましくは通気性の高い素材から構成されている。外装生地5の厚みは、例えば1mm以上2mm以下である。
【0020】
外装生地5と背板4との間にクッション材6が挟み込まれている。クッション材6は、背板4上に配置されている。クッション材6は背板4に対して外装生地5側に突出するように構成されている。つまり、クッション材6は、使用者が背負い鞄Rを背負った状態で背板4から使用者の背中側に突出するように構成されている。
【0021】
クッション材6は背板4の上部から下部に向かって厚みが大きくなるように構成されている。クッション材6は背板4の左右の両側の厚みが中央の厚みよりも大きくなるように構成されている。
【0022】
クッション材6は、1つの発泡体で構成されている。本実施の形態では、クッション材6はEVA(エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂)から構成されている。なお、クッション材6はポリウレタン発泡体から構成されていてもよい。なお、クッション材6は、スポンジなど背当て1を適宜の形状に隆起させるのに好ましい素材であれば限定されない。クッション材6の最大厚みは、たとえば30mm以上50mm以下である。クッション材6の最大厚みは、たとえば40mmが好ましい。
【0023】
図3図16を参照して、本実施の形態の背負い鞄Rの背当て1の製造方法について説明する。本実施の形態の背負い鞄Rの背当て1の製造方法は、外装生地5を熱成型する工程と、クッション材6を熱成型する工程と、溶断する工程とを備えている。
【0024】
図3図7を参照して、外装生地5を熱成型する工程について説明する。外装生地5を熱成型する工程では、外装生地用金型M1が用いられる。外装生地用金型M1は、外装生地用下型M11および外装生地用上型M12を有している。外装生地用下型M11および外装生地用上型M12は互いに型締めされるように構成されている。
【0025】
図3を参照して、外装生地用下型M11は、外装生地用下型割面M11aを有している。外装生地用下型割面M11aは、外装生地用下型M11の上面を構成している。外装生地用下型割面M11aは、外装生地用下型平面部M11a1と、外装生地用下型凸部M11a2と、外装生地用下型突出部M11a3とを有している。外装生地用下型平面部M11a1は、平面状に構成されている。外装生地用下型凸部M11a2は、外装生地用下型平面部M11a1から上側に突き出している。外装生地用下型凸部M11a2は、上方から見たときに外装生地用下型M11の上面の中央に配置されている。外装生地用下型突出部M11a3は、外装生地用下型平面部M11a1から上側に突き出している。外装生地用下型突出部M11a3は、上方から見たときに外装生地用下型凸部M11a2を取り囲むように構成されている。
【0026】
図4を参照して、外装生地用上型M12は、外装生地用上型割面M12aを有している。なお、図4では、説明の便宜のため、外装生地用上型M12の下面が上側に配置されている。外装生地用上型割面M12aは、外装生地用上型M12の下面を構成している。外装生地用上型割面M12aは、外装生地用上型平面部M12a1と、外装生地用上型凹部M12a2と、外装生地用上型窪み部M12a3とを有している。外装生地用上型平面部M12a1は、平面状に構成されている。外装生地用上型凹部M12a2は、外装生地用上型平面部M12a1から下側に凹んでいる。外装生地用上型凹部M12a2は、下方から見たときに外装生地用上型M12の下面の中央に配置されている。外装生地用上型窪み部M12a3は、外装生地用上型平面部M12a1から下側に窪んでいる。外装生地用上型窪み部M12a3は、下方から見たときに外装生地用上型凹部M12a2を取り囲むように構成されている。
【0027】
図5を参照して、外装生地5は、シート状に構成されている。外装生地5は、一つの部材で構成されている。
【0028】
図6を参照して、外装生地用下型M11および外装生地用上型M12は、外装生地5を挟み込んだ状態で、互いに型締めされる。外装生地5は、外装生地用下型割面M11aおよび外装生地用上型割面M12aを覆っている。外装生地用下型M11および外装生地用上型M12が互いに型締めされたときに、外装生地用上型凹部M12a2は、外装生地用下型凸部M11a2を受け入れる。外装生地用金型M1によって外装生地5に熱および圧力が加えられることにより、外装生地5が熱成型される。これにより、外装生地5に、平面部5aと、平面部5aから突出する凸部5bとが形成される。平面部5aは、外装生地用下型平面部M11a1および外装生地用上型平面部M12a1に挟み込まれた外装生地5の部分により形成される。凸部5bは、外装生地用下型凸部M11a2および外装生地用上型凹部M12a2に挟み込まれた外装生地5の部分により形成される。
【0029】
熱成型はたとえば大気圧で行われる。熱成型の温度は例えば120℃である。熱成型の時間はたとえば45秒である。
【0030】
本実施の形態では、外装生地用下型M11および外装生地用上型M12が互いに型締めされたときに、外装生地用上型窪み部M12a3は、外装生地用下型突出部M11a3を受け入れる。このため、外装生地用上型窪み部M12a3と外装生地用下型突出部M11a3との間に外装生地5が挟み込まれる。これにより、外装生地5が内側に引っ張られることを抑制することができる。
【0031】
図7を参照して、外装生地用下型凸部M11a2は、外装生地用下型平面部M11a1に向けて外側に広がりながら湾曲するように形成されている。外装生地用上型凹部M12a2は、外装生地用上型平面部M12a1に向けて外側に広がりながら湾曲するように形成されている。このため、外装生地5を熱成型する工程において、凸部5bは、平面部5aに向けて外側に広がりながら湾曲するように形成される。
【0032】
図8図11を参照して、クッション材6を熱成型する工程について説明する。クッション材6を熱成型する工程では、クッション材用金型M2が用いられる。クッション材用金型M2は、クッション材用下型M21およびクッション材用上型M22を有している。クッション材用下型M21およびクッション材用上型M22は互いに型締めされるように構成されている。
【0033】
図8を参照して、クッション材用下型M21は、クッション材用下型割面M21aを有している。クッション材用下型割面M21aは、クッション材用下型M21の上面を構成している。クッション材用下型割面M21aは、クッション材用下型平面部M21a1と、クッション材用下型凹部M21a2とを有している。クッション材用下型平面部M21a1は、平面状に構成されている。クッション材用下型凹部M21a2は、クッション材用下型平面部M21a1から下側に凹んでいる。クッション材用下型凹部M21a2は、上方から見たときにクッション材用下型M21の上面の中央に配置されている。
【0034】
図9を参照して、クッション材用上型M22は、クッション材用上型割面M22aを有している。なお、図9では、説明の便宜のため、クッション材用上型M22の下面が上側に配置されている。クッション材用上型割面M22aは、クッション材用上型M22の下面を構成している。クッション材用上型割面M22aは、平面状に構成されている。
【0035】
図10を参照して、クッション材6は、クッション材用下型凹部M21a2の形状に近づけられている。クッション材6は、一つの部材で構成されている。
【0036】
図11を参照して、クッション材用下型M21およびクッション材用上型M22は、クッション材6を挟み込んだ状態で、互いに型締めされる。クッション材用金型M2によってクッション材6に熱および圧力が加えられることにより、クッション材6が熱成型される。これにより、図6に示される外装生地5の平面部5aおよび凸部5bに沿う形状にクッション材6が形成される。外装生地5の形状と同じ形状にクッション材6が形成されることが好ましい。つまり、外装生地5の平面部5aおよび凸部5bに隙間なく沿うようにクッション材6が形成されることが好ましい。
【0037】
熱成型はたとえば大気圧で行われる。熱成型の温度は例えば230℃である。熱成型の時間はたとえば120秒である。
【0038】
図12図16を参照して、溶断する工程について説明する。溶断する工程では、溶断用金型M3が用いられる。溶断用金型M3は、溶断用下型M31および溶断用上型M32を有している。溶断用下型M31および溶断用上型M32は互いに型締めされるように構成されている。
【0039】
図12を参照して、溶断用下型M31は、溶断用下型割面M31aを有している。なお、溶断用下型割面M31aは、溶断用下型M31の上面を構成している。溶断用下型割面M31aは、平面状に構成されている。
【0040】
図13を参照して、溶断用上型M32は、溶断用上型割面M32aを有している。なお、図13では、説明の便宜のため、溶断用上型M32の下面が上側に配置されている。溶断用上型割面M32aは、溶断用上型M32の下面を構成している。溶断用上型割面M32aは、溶断用上型平面部M32a1と、溶断用上型凹部M32a2とを有している。溶断用上型平面部M32a1は、平面状に構成されている。溶断用上型凹部M32a2は、溶断用上型平面部M32a1から上側に凹んでいる。溶断用上型凹部M32a2は、下方から見たときに溶断用上型M32の下面の中央に配置されている。
【0041】
図14を参照して、背板4、クッション材6、外装生地5の順に重ねられる。外装生地5の凸部5bにクッション材6の突起部6aをあわせるように、外装生地5にクッション材6が重ねられる。外装生地5は、背板4およびクッション材6を覆っている。本実施の形態では、溶断前に背板4にクッション材6がのせられるときに、クッション材6は外装生地5の凸部5bの外縁にあわせて裁断される。裁断されたクッション材6が背板4に位置決めされ、背板4およびクッション材6に外装生地5がのせられる。
【0042】
溶断する工程において凸部5bにクッション材6が嵌合する前には、クッション材6を熱成型する工程で熱成型されたクッション材6の凸部5bに沿う形状の体積は、外装生地5を熱成型する工程で熱成型された外装生地5の凸部5bの内容積よりも大きい。熱成型されたクッション材6の凸部5bに沿う形状は、熱成型された外装生地5の凸部5bよりも、縦方向および横方向にそれぞれ例えば3.5%大きくてもよい。
【0043】
図15を参照して、凸部5bにクッション材6が嵌合するように外装生地5と背板4とでクッション材6を挟み込んだ状態で外装生地5および背板4が溶断される。外装生地5の下面にクッション材6の上面が接していることが好ましい。
【0044】
図16を参照して、必要に応じて、背板4からはみ出した外装生地5が切除される。このようにして、背当て1が製造される。
【0045】
図1および図16を参照して、本実施の形態の背負い鞄Rの製造方法について説明する。
【0046】
背負い鞄Rの背当て1の製造方法で製造された背当て1と、一対の肩ベルト2が取り付けられた取付具3と、収容部Bと、蓋部Cとが準備される。背当て1に、一対の肩ベルト2が取り付けられた取付具3、収容部Bおよび蓋部Cが取り付けられる。これにより、背負い鞄Rが製造される。
【0047】
次に、本実施の形態の作用効果について説明する。
【0048】
本実施の形態の背負い鞄Rの背当て1の製造方法によれば、外装生地5の凸部5bにクッション材6が嵌合するように外装生地5と背板4とでクッション材6を挟み込んだ状態で外装生地5および背板4が溶断される。クッション材6が押し潰されることを抑制することによりクッション材6の柔らかさを保つことができる。
【0049】
本実施の形態の背負い鞄Rの背当て1の製造方法では、外装生地5の凸部5bの形状と同じ形状にクッション材6を熱成型することにより外装生地5の形状にクッション材6を隙間なくあわせることができる。このため、外装生地5およびクッション材6の形状が違うことによる外装生地5とクッション材6との間の隙間のばらつきおよび隙間による皺の発生を抑えることができる。これにより、外観差による不良率を下げるとともに検品の時間および検品の手間を短縮することができる。
【0050】
本実施の形態の背負い鞄Rの背当て1の製造方法では、あらかじめ凸部5bを形成するように外装生地5が熱成型されている。フラット状の外装生地5が立体形状のクッション材6に載せられた状態で型押しプレスが行われると、外装生地5にクッション材6および背板4が引っ張られる。これにより、背当て1が外装生地5側に反る。本実施の形態では、あらかじめ凸部5bを形成するように外装生地5が熱成型されているため、外装生地5および背板4が溶断された状態で背当て1が外装生地5側に反ることを抑制することができる。
【0051】
本実施の形態の背負い鞄Rの背当て1の製造方法では、あらかじめクッション材6が熱成型される。このため、クッション材6が切削されただけのスポンジなどの場合よりも、クッション材6はなめらかな曲線の丸みを持った外観を有することができる。また、クッション材6が切削されただけのスポンジなどの場合よりも、クッション材6は高いところと低いところの高低差を持った外観を有することができる。したがって、クッション材6の設計の自由度を向上させることができる。
【0052】
本実施の形態の背負い鞄Rの背当て1の製造方法では、あらかじめクッション材6が熱成型されるため、クッション材6が一つの部材で構成されている場合でも、クッション材6の厚みを十分に確保することができる。
【0053】
本実施の形態の背負い鞄Rの背当て1の製造方法では、クッション材6が一つの部材で構成されているため、クッション材6が複数の部材で構成されている場合よりも、背当て1の組み立てが容易となる。
【0054】
本実施の形態の背負い鞄Rの背当て1の製造方法によれば、外装生地5を熱成型する工程において、凸部5bは平面部5aに向けて外側に広がりながら湾曲するように形成される。凸部5bが平面部5aから垂直に立ち上がるように形成されると、凸部5bと平面部5aとの境に加工線が形成される。本実施の形態では、凸部5bは平面部5aに向けて外側に広がりながら湾曲するように形成されるため、凸部5bと平面部5aとの境に加工線が形成されることを抑制することができる。これにより、外観差による不良率を下げるとともに検品の時間および検品の手間を短縮することができる。
【0055】
本実施の形態の背負い鞄Rの背当て1の製造方法によれば、溶断する工程において凸部5bにクッション材6が嵌合する前には、クッション材6を熱成型する工程で熱成型されたクッション材6の凸部5bに沿う形状の体積は、外装生地5を熱成型する工程で熱成型された外装生地5の凸部5bの内容積よりも大きい。熱成型されたクッション材6は熱成型後に冷めることにより収縮する。そのため、熱成型されたクッション材6の凸部5bに沿う形状の体積が熱成型された外装生地5の凸部5bの内容積と同じ大きさである場合には、クッション材6と外装生地5との間に大きな隙間が生じる。本実施の形態では熱成型されたクッション材6の凸部5bに沿う形状の体積が熱成型された外装生地5の凸部5bの内容積よりも大きいため、クッション材6と外装生地5との間の隙間を抑制することができる。
【0056】
本実施の形態の背負い鞄Rの製造方法によれば、上記の製造方法で製造された背当て1に、一対の肩ベルト2が取り付けられた取付具3、収容部Bおよび蓋部Cが取り付けられる。このため、クッション材6が押し潰されることを抑制することによりクッション材6の柔らかさを保つことができる背負い鞄Rを提供することができる。
【0057】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることを意図される。
【符号の説明】
【0058】
1 背当て、2 肩ベルト、3 取付具、4 背板、5 外装生地、5a 平面部、5b 凸部、6 クッション材、M1 外装生地用金型、M2 クッション材用金型、M3 溶断用金型、R 背負い鞄。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
【手続補正書】
【提出日】2023-06-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面部から突出する凸部を形成するように外装生地を熱成型する工程と、
前記平面部および前記凸部に沿う形状にクッション材を熱成型する工程と、
前記凸部に前記クッション材が嵌合するように前記外装生地と背板とで前記クッション材を挟み込んだ状態で前記外装生地および前記背板を溶断する工程とを備え
前記外装生地を熱成型する工程において、外装生地用下型および外装生地用上型が前記外装生地を挟み込んだ状態で互いに型締めされたときに、前記外装生地用上型の外装生地用上型窪み部は、前記外装生地用下型の外装生地用下型突出部を受け入れる、背負い鞄の背当ての製造方法。
【請求項2】
前記外装生地を熱成型する工程において、前記凸部は前記平面部に対して外側に広がりながら湾曲するように形成される、請求項1に記載の背負い鞄の背当ての製造方法。
【請求項3】
前記溶断する工程において前記凸部に前記クッション材が嵌合する前には、前記クッション材を熱成型する工程で熱成型された前記クッション材の前記凸部に沿う形状の体積は、前記外装生地を熱成型する工程で熱成型された前記外装生地の前記凸部の内容積よりも大きい、請求項1または2に記載の背負い鞄の背当ての製造方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の背負い鞄の背当ての製造方法で製造された背当てと、一対の肩ベルトが取り付けられた取付具と、収容部と、蓋部とを準備する工程と、
前記背当てに、前記一対の肩ベルトが取り付けられた前記取付具、前記収容部および前記蓋部を取り付ける工程とを備えた、背負い鞄の製造方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
本発明の背負い鞄の背当ての製造方法は、次の工程を備えている。平面部から突出する凸部を形成するように外装生地が熱成型される。平面部および凸部に沿う形状にクッション材が熱成型される。凸部にクッション材が嵌合するように外装生地と背板とでクッション材を挟み込んだ状態で外装生地および背板が溶断される。外装生地を熱成型する工程において、外装生地用下型および外装生地用上型が外装生地を挟み込んだ状態で互いに型締めされたときに、外装生地用上型の外装生地用上型窪み部は、外装生地用下型の外装生地用下型突出部を受け入れる。