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特開2023-110220シリンジ外筒のノズル部を解除自在に封鎖するための封鎖具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023110220
(43)【公開日】2023-08-09
(54)【発明の名称】シリンジ外筒のノズル部を解除自在に封鎖するための封鎖具
(51)【国際特許分類】
   A61C 9/00 20060101AFI20230802BHJP
【FI】
A61C9/00 Z
A61C9/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022011524
(22)【出願日】2022-01-28
(71)【出願人】
【識別番号】391003576
【氏名又は名称】株式会社トクヤマデンタル
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100202692
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 吉文
(72)【発明者】
【氏名】人見 美希
(72)【発明者】
【氏名】山崎 達矢
(72)【発明者】
【氏名】豊田 真奈
(72)【発明者】
【氏名】山口 能利
(72)【発明者】
【氏名】寺岡 誠也
(57)【要約】
【課題】非架橋樹脂を主成分とする粉材とラジカル重合性単量体を主成分とする液材とを混合してペーストを生成する際に好都合に使用することができ、排出初期から粉材と液材との混合比率が適正であり且つ粉材と液材とが充分良好に混合されたペーストを排出することを可能にする、シリンジ外筒のノズル部を解除自在に封鎖するための封鎖具を提供する。
【解決手段】 封鎖具はエラストマーから成形され且つ軸部と軸部の先端部に配設された先端フランジ部とを含む。軸部はシリンジ外筒のノズル部の内径よりも小さい外径を有し、先端フランジ部の外周縁は該シリンジ外筒の該ノズル部の内径と同一又はこれより大きいも外径を有する円形状である。封鎖具はシリンジ外筒のノズル部の先端から挿入され、先端フランジ部がノズル部の基端を封鎖する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒形状である主部と該主部の先端から延出し且つ内周面は円筒形状又は先細円錐台形状であるノズル部とを備え、該ノズル部の内径は該主部の内径よりも小さく、該主部の先端と該ノズル部の基端とは環状接続壁によって接続されているシリンジ外筒の該ノズル部を解除自在に封鎖するための封鎖具にして、
エラストマーから成形され且つ軸部と該軸部の先端部に配設された先端フランジ部とを含み、
該軸部は該シリンジ外筒の該ノズル部の内径よりも小さい外径を有し、該先端フランジ部の外周縁は該シリンジ外筒の該ノズル部の内径と同一又はこれより大きいも外径を有する円形状であり、
該シリンジ外筒の該ノズル部の先端から挿入され、該先端フランジ部が該ノズル部の該基端を封鎖する、
ことを特徴とする封鎖具。
【請求項2】
該先端フランジ部の外径は該ノズル部の内径よりも大きく、該先端フランジ部は該ノズル部の該基端を超えて該主部内に進入し、該先端フランジ部の後面が該環状接続壁の内面に密接される、請求項1記載の封鎖具。
【請求項3】
該エラストマーのショアA硬度は10乃至70である、請求項1又は2記載の封鎖具。
【請求項4】
該エラストマーはシリコーンゴムである、請求項3記載の封鎖具。
【請求項5】
該先端フランジ部の前面は円錐台形状である、請求項1から4までのいずれかに記載の封鎖具。
【請求項6】
該軸部の後端部に配設された規制フランジ部を含み、該規制フランジ部の外周縁は該ノズル部の先端の内径よりも大きい円形状であり、該規制フランジ部の前面は該軸部に対して垂直である平坦面であり、該規制フランジ部の該前面が該ノズル部の先端に当接されることによって該ノズル部への挿入が規制される、請求項1から5までのいずれかに記載の封鎖具。
【請求項7】
該軸部の後端に配設された張出把持部を含む、請求項1から6までのいずれかに記載の封鎖具。
【請求項8】
該軸部の後端には張出把持部が配設されており、
該軸部の後端部には該張出把持部よりも前方に位置する規制フランジ部が配設されており、該規制フランジ部の外周縁は該ノズル部の先端の内径よりも大きい円形状であり、該規制フランジ部の前面は該軸部に対して垂直な平坦面であり、該規制フランジ部の該前面が該ノズル部の先端に当接されることによって該ノズル部への挿入が規制され、
該張出把持部の後面は該軸部に垂直な平坦面であり、該張出把持部の前面は円錐台形状であり、
該規制フランジ部の後面は逆円錐台形状であり、
該張出把持部の該前面と該規制フランジ部の該後面とによって環状凹部が形成されている、
請求項1から5までのいずれかに記載の封鎖具。
【請求項9】
該軸部には該先端フランジ部から後方に間隔をおいて少なくとも1個の付加フランジ部が付設されており、該付加フランジ部の外周縁は該先端フランジ部の外径よりは小さく該シリンジ外筒の該ノズル部の内径に対応した外径を有する円形状である、請求項1から8までのいずれかに記載の封鎖具。
【請求項10】
該付加フランジ部の前面は円錐台形状である、請求項9記載の封鎖具。
【請求項11】
該軸部には剛性心材が内蔵されている、請求項1から10までのいずれかに記載の封鎖具。
【請求項12】
該シリンジ外筒の該本体内には、粉液混合型義歯床用裏装材を生成するための、非架橋樹脂を主成分とする粉材とラジカル重合性単量体を主成分とする液材が投入され混合される、請求項1から11までのいずれかに記載の封鎖具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンジ外筒のノズル部を解除自在に封鎖するための封鎖具、更に詳しくは、筒形状である主部とこの主部の先端から延出し且つ内周面は円筒形状又は先細円錐台形状であるノズル部とを備え、ノズル部の内径は主部の内径よりも小さく、主部の先端とノズル部の基端とは環状接続壁によって接続されているシリンジ外筒のノズル部を解除自在に封鎖するための封鎖具に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、基準義歯から義歯を形成する際に、ポリエチルメタクリレートの如き非架橋樹脂を主成分とする粉材とメタクリレート系モノマーの如きラジカル重合性単量体を主成分とする液材とを混合して、粉液混合型義歯床用裏装材として使用されるペーストを生成し、基準義歯に適用することが開示されている。また、下記特許文献2及び3には、非架橋樹脂を主成分とする粉材とラジカル重合性単量体を主成分とする液材の好適例が詳述されている。
【0003】
本発明者等は、粉材と液材とを混合してペーストを生成し便宜に使用するために、シリンジを利用することを検討した。詳述すると、シリンジ外筒のノズル部を封鎖具によって封鎖した状態で粉材と液材とをシリンジ外筒内に投入し、混合ヘラの如き適宜の混合具をシリンジ外筒内に挿入して粉材と液材とを混合してペーストを生成する。しかる後に、シリンジ外筒に押し子を組み合わせると共に封鎖具を除去してシリンジ外筒のノズル部の封鎖を解除し、押し子を操作してノズル部の先端からペーストを排出して基準義歯の所要部位に適用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021―187780号公報
【特許文献2】再公表特許WO2018/016602号公報
【特許文献3】特開2020―45459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
而して、本発明者等は、当初、シリンジ外筒のノズル部を解除自在に封鎖する封鎖具として、ノズル部の先端部に被嵌する形態、従ってノズル部の先端のみを封鎖する形態の封鎖具を使用して実験を遂行した。しかしながら、かような封鎖具を使用した場合には、シリンジ外筒内に粉材と液材とを投入し混合する際に、シリンジ外筒のノズル部においては粉材と液材とが所要比率で進入されず、そしてまた充分良好に混合されず、ノズル部の先端からの排出初期においては粉材と液材の混合比率が適切でなく且つ混合が不充分な使用に供し得ないペーストが排出されてしまうことが判明した。そしてまた、シリンジ外筒の主部においても、上述したとおりノズル部に粉材と液材とが所定比率で進入されないため、粉材と液材との混合比率が適切でないという不具合が生じることが判明した。
【0006】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術的課題は、特にそれに限定されるものではないが、非架橋樹脂を主成分とする粉材とラジカル重合性単量体を主成分とする液材とを混合してペーストを生成する際に好都合に使用することができ、排出初期から粉材と液材との混合比率が適正であり且つ粉材と液材とが充分良好に混合されたペーストを排出することを可能にする、シリンジ外筒のノズル部を解除自在に封鎖するための封鎖具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、鋭意検討及び実験の結果、上記主たる技術的課題を達成するためには、シリンジ外筒内に粉材と液材とを投入して混合する際に、ノズル部の先端を封鎖することに代えて、ノズル部の基端を封鎖してノズル部内に粉材及び液材が進入するのを阻止することが重要であることを知得した。そして、かかる知得を踏まえて、軸部と先端フランジ部とを備えた独特な封鎖具によって上記主たる技術的課題を達成することができることを見出した。
【0008】
即ち、本発明によれば、上記主たる技術的課題を達成する封鎖具として、
筒形状である主部と該主部の先端から延出し且つ内周面は円筒形状又は先細円錐台形状であるノズル部とを備え、該ノズル部の内径は該主部の内径よりも小さく、該主部の先端と該ノズル部の基端とは環状接続壁によって接続されているシリンジ外筒の該ノズル部を解除自在に封鎖するための封鎖具にして、
エラストマーから成形され且つ軸部と該軸部の先端部に配設された先端フランジ部とを含み、
該軸部は該シリンジ外筒の該ノズル部の内径よりも小さい外径を有し、該先端フランジ部の外周縁は該シリンジ外筒の該ノズル部の内径と同一又はこれより大きいも外径を有する円形状であり、
該シリンジ外筒の該ノズル部の先端から挿入され、該先端フランジ部が該ノズル部の該基端を封鎖する、
ことを特徴とする封鎖具が提供される。
シリンジ外筒の主部の内周面が円筒形状ではなくて多角形状或いは楕円形状等の場合、語句「主部の内径」は主部の内周面に内接する仮想上の円筒形の内径を意味する。
【0009】
好ましくは、該先端フランジ部の外径は該ノズル部の内径よりも大きく、該先端フランジ部は該ノズル部の該基端を超えて該主部内に進入し、該先端フランジ部の後面が該環状接続壁の内面に密接される。該エラストマーのショアA硬度は10乃至70であるのが好適である。該エラストマーはシリコーンゴムであるのが好ましい。該先端フランジ部の前面は円錐台形状であるのが望ましい。好ましくは、該軸部の後端部に配設された規制フランジ部を含み、該規制フランジ部の外周縁は該ノズル部の先端の内径よりも大きい円形状であり、該規制フランジ部の前面は該軸部に対して垂直である平坦面であり、該規制フランジ部の該前面が該ノズル部の先端に当接されることによって該ノズル部への挿入が規制される。該軸部の後端に配設された張出把持部を含むのが好適である。該張出把持部の後面は該軸部に垂直な平坦面であり、該張出把持部の前面は円錐台形状であり、該規制フランジ部の後面は逆円錐台形状であり、該張出把持部の該前面と該規制フランジ部の該後面とによって環状凹部が形成されているのが望ましい。該軸部には該先端フランジ部から後方に間隔をおいて少なくとも1個の付加フランジ部が付設されており、該付加フランジ部の外周縁は該先端フランジ部の外径よりは小さく該シリンジ外筒の該ノズル部の内径に対応した外径を有する円形状であるのが好ましい。該付加フランジ部の前面は円錐台形状であるのが望ましい。好ましくは、該軸部には剛性心材が内蔵されている。該シリンジ外筒の該本体内には、粉液混合型義歯床用裏装材を生成するための、非架橋樹脂を主成分とする粉材とラジカル重合性単量体を主成分とする液材が導入され混合されるのが好都合である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の封鎖具によれば、先端フランジ部によってシリンジ外筒のノズル部の基端が封鎖され、これによってシリンジ外筒の主部に投入される粉材及び液材がノズル部内に進入することが阻止される。かくして、非架橋樹脂を主成分とする粉材とラジカル重合性単量体を主成分とする液材とを混合してペーストを生成する際に適用した場合、排出初期から粉材と液材との混合比率が適正であり且つ粉材と液材とが充分良好に混合されたペーストを排出することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に従って構成された封鎖具が適用されるシリンジの典型例を、一部を断面で示す分解正面図。
図2】本発明に従って構成された封鎖具の好適実施形態を示す正面図。
図3図2に示す封鎖具の平面図。
図4図2に示す封鎖具の底面図。
図5図1に示すシリンジのシリンジ外筒のノズル部に図2乃至図4に示す封鎖具を挿入してノズル部の基端を封鎖した状態を示す部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に従って構成された封鎖具の好適実施形態と共にこれが適用されるシリンジの典型例を示している添付図面を参照して、更に詳述する。
【0013】
シリンジの典型例を図示している図1を参照して説明すると、全体を番号2で示すシリンジはシリンジ外筒4と押し子6とから構成されている。シリンジ外筒4及び押し子6はポリエチレン又はポリプロピレンの如き適宜の合成樹脂から形成することができる。シリンジ外筒4及び押し子6、特にシリンジ外筒4は、透明乃至半透明であるのが好都合である。
【0014】
シリンジ外筒4は主部8とこの主部8の先端(図1において下端)から延出するノズル部10とを備えている。図示のシリンジ外筒4における主部8は円筒形状であり、円筒形状の内周面と円筒形状の外周面とを有する。主部8の内周面と外周面とは、円筒形状に限られるものではなく、六角筒の如き多角形状或いは楕円形状でもよく、そしてまた内周面と外周面とが同一形状ではなく、例えば内周面が円筒形状であり外周面が多角筒形状であってもよい。主部8の基端(図1において上端)には略楕円形状でよい張出フランジ11が付設されている。図示のシリンジ外筒4におけるノズル部10は円筒形状であり、円筒形状の内周面と円筒形状の外周面を有する。所望ならば、ノズル部10の内周面及び/又は外周面を先細円錐台形状(即ち逆円錐台形状)にすることもできる。ノズル部10は、主部8の先端から主部8と同心状に延出しており、主部8の先端とノズル部10の基端(図1において上端)とは円環状である接続壁12によって接続されている。ノズル部10は、必ずしも主部8と同心状である必要はなく、主部8に対して偏心して主部8の先端から延出することもできる。
【0015】
図示の押し子6は、先端(図1において下端)に位置する押し部14、基端(図1において上端)に位置する操作部16、及び押し部14と操作部16とを接続する接続部18を有する。押し部14は、上記シリンジ外筒4の主部8の内周面に対応した外周面、従って図示の押し子6においては円筒形状の外周面を有する薄円板形状である。押し部14の外径はシリンジ外筒4の主部8の内径と実質上同一或いはこれより若干小さい。図示の押し子6においては、操作部16も薄円板形状であり、その外径は上記シリンジ外筒4の主部8の外径よりも幾分大きい外径を有する。接続部18は90度の角度間隔をおいて配設された4個の細長薄板片20(図1には3個の細長薄板片20のみが図示されている)から形成されており、かかる4個の細長薄板片20の内側縁は相互に接続され、下端縁は押し部14の上面に接続され、上端縁は操作部16の下面に接続されている。4個の細長薄板片20の外側縁は押し部14の外周縁よりも半径方向内側に位置する。
【0016】
上述したとおりのシリンジ2は、本発明に従って構成された封鎖具が適用されるシリンジの典型例であり、それ自体は当業者には周知の形態であるので、その詳細な説明は本明細書においては省略する。
【0017】
次に、図2乃至図4を参照して、本発明に従って構成された封鎖具の好適実施形態に付いて説明する。全体を番号22で示す図示の封鎖具は、実質上真直に延在する軸部24を含んでいる。細長丸棒形状でよい軸部24の外径は上記シリンジ外筒4のノズル部10の内径よりも小さい外径を有する。軸部24の先端部(図2において上端部)には径方向に延出する先端フランジ部26が配設されている。先端フランジ部26の外周縁は、上記シリンジ外筒4のノズル部10の内径よりも大きい外径を有する円形状である(後に更に言及する如く、先端フランジ部26の外径は上記シリンジ外筒4のノズル部10の内径と同一でもよい)。先端フランジ部26の前面(図2において上面)は前方に向かって直径が漸次低減する円錐台形状であるのが好ましい。先端フランジ部26の後面(図2において下面)は軸部24に対して垂直に延在する平面でよい。
【0018】
軸部24には、上記先端フランジ部26から後方(図2において下方)に間隔をおいて少なくとも1個、図示の実施形態においては2個の付加フランジ部28及び30も配設されている。付加フランジ部28及び30の外周縁は、先端フランジ部26の外径よりは小さく上記シリンジ外筒4のノズル部10内径に対応する(即ちノズル部10の内径と同一或いはこれより若干大きい又は小さい)外径を有する。付加フランジ部28及び30の前面(図2において上面)は前方に向かって直径が漸次低減する円錐台形状であるのが好ましく、付加フランジ部28及び30の後面(図2において下面)は軸部24に対して垂直に延在する平端面でよい。
【0019】
軸部24には、更に、その後端(図2において下端)に張出把持部32が配設され、張出把持部32よりも前方(図2において上方)に位置する規制フランジ部34が配設されている。張出把持部32は外周面が円筒形状である基部を有し、その前面は前方に向かって外径が漸次低減する円錐台形状であり、その後面は軸部24に対して垂直に延在する平端面であるのが好適である。規制フランジ部34は円筒形状である基部を有し、この基部の外周縁はノズル部10の先端の内径よりも大きい外径を有する。規制フランジ部34の前面(図2において上面)は軸部24に対して垂直に延在する平坦面であり、後面(図2において下面)は後方に向かって外径が漸次低減する逆円錐台形状であるのが好都合である。張出把持部32の円錐台形状の前面と規制フランジ部34の逆円錐台形状の後面とによって環状凹部が形成されている。
【0020】
上述したとおりの封鎖具22のおける軸部24、先端フランジ部26、付加フランジ部28及び30、張出把持部32並びに規制フランジ部34は、適宜のエラストマー、好ましくは加硫ゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム及びフッ素ゴムの如き熱硬化性エラストマー或いはポリスチレン系樹脂、オレフィン/アルケン系樹脂ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂及びポリアミド系樹脂の如き熱可塑性エラストマー、特に好ましくはシリコーンゴム、から形成されていることが重要である。エラストマーのショアA硬度は10乃至70であるのが好ましい。
【0021】
封鎖具22の軸部24には、軸部24の所謂腰の強さを増大するために軸部24内を長手方向に延びる剛性心材36が配設されているのが望ましい。この剛性心材36はステンレス鋼の如き剛性材料から形成された細長丸棒でよい。軸部24内に剛性心材36を内蔵する封鎖具22は、剛性心材36を所謂中子としてエラストマーを所要形状に射出成形することによって好都合に形成することができる。
【0022】
次に、上述したとおりの封鎖具22をシリンジ2と共に使用する一例として、粉材と液材とを混合して粉液混合型義歯床用裏装材を生成し排出する様式を説明する。
【0023】
上記裏装材を生成する際には、シリンジ外筒4から押し子6を分離する。そして、図5に示す如く、シリンジ外筒4のノズル部10に封鎖具22を挿入する。更に詳しくは、封鎖具22の張出把持部32を指で把持して、ノズル部22の先端(図5において下端)に封鎖具22の前端(図5において上端)を位置させて封鎖具22を前進させ、封鎖具22の規制フランジ部34の前面がノズル部10の先端面に当接するまでノズル部10に封鎖具22を挿入する。張出把持部32の把持は環状凹部の存在によって助長され、張出把持部32の外径が5乃至8mm程度の小さいものであっても、充分確実に張出把持部32を指で把持することができる。また、封鎖具22をノズル部10に挿入して前進させる際には、軸部24に内蔵されている剛性心材36によって軸部24の撓みが抑制され、そしてまた先端フランジ部26並びに付加フランジ部28及び30の前面は円錐台形状であるので、先端フランジ部26並びに付加フランジ部28及び30は充分容易に後方(図5において下方)に向かって弾性的に撓み、かくしてノズル部10を通して充分容易に封鎖具22を前進させることができる。封鎖具22が図5に図示する位置まで、即ち規制フランジ部34の前面がノズル部10の先端面に当接する位置まで前進されると、封鎖具22の先端フランジ部26はノズル部10の基端(図5において上端)を超えてシリンジ外筒4の主部8内に進入し、先端フランジ部26の後面が接続壁12の内面に密接され、これによってノズル部10の基端(図5において上端)が封鎖される。所望ならば、規制フランジ部34の前面がノズル部10の先端面に当接する位置まで封鎖具22をノズル部10に挿入した状態において、先端フランジ部26はノズル部10の基端に位置し、先端フランジ部34の前面が環状接続壁12の内面と実質上面一をなし、これによってノズル部10の基端が封鎖されるようになすこともできる(この場合には、封鎖具22の先端フランジ部26の外径をノズル部10の内径と同一或いはこれより若干大きくすることができる)。
封鎖具22の付加フランジ部28及び30はノズル部10の内周面に密接乃至近接して位置してノズル部10を補足的に封鎖し、そしてまたノズル部10に対して封鎖具22が傾動することを防止する。
【0024】
本発明に従って構成された封鎖具22はエラストマー、好ましくはショアA硬度が10乃至70であるエラストマーから構成されている故に、シリンジ外筒4のノズル部材10が先細円錐台形状である場合でも、シリンジ外筒4のノズル部10内に封鎖具22を(過大又は過少でない)適切な力で挿入することができ、そして封鎖具22をノズル部材10に所要位置まで挿入した際には封鎖具22の先端フランジ部26がシリンジ外筒4の接続壁12の内面或いはノズル部10の基端内周面に所要とおりに密接されてノズル部10の基端が確実に封鎖され、更に後述する如くノズル部10から封鎖具22を離脱する際にも(過大又は過少でない)適切な力で封鎖具22を後方(図5において下方)に移動することができる。
【0025】
次いで、シリンジ外筒4の主部8の基端に位置する開口を通して主部8内に所要量の粉材及び液材(図示していない)をこの順序で或いは逆順序で順次に投入する。上記裏装材を生成するための粉材はポリエチルメタクリレートの如き非架橋樹脂を主成分とする粉材であり、液材はメタクリレート系モノマーの如きラジカル重合性単量体を主成分とする液材である。かような粉材及び液材の詳細は、上記特許文献2及び3に詳細に記載されているのでかかる記載を引用し、本明細書においては説明を省略する。シリンジ外筒4のノズル部10の基端は封鎖具22によって封鎖されている故に、主部8に投入された粉材及び液材がノズル部10内に進入することは確実に防止される。次に、混合ヘラの如き適宜の混合具(図示していない)をシリンジ外筒4の主部8内に挿入して投入された粉材と液材とを混合する。かくして、シリンジ外筒4の主部8内にペースト即ち裏装材が生成される。
【0026】
しかる後に、押し子6の先端部をシリンジ外筒4内に進入させて、シリンジ外筒4に押し子6を組み合わせると共に、封鎖具22の張出把持部32を把持して封鎖具22を後方(図5において下方)に強制してノズル部10から離脱し、ノズル部10の封鎖を解除する。そして、シリンジ外筒4の張出フランジ11に人差し指及び中指を掛けると共に押し子6の操作部16に親指を係合させ、押し子6に押圧力を加えてシリンジ外筒4の主部8内に押し子6を漸次進行させ、これによって押し子6の押し部14によって主部8内のペーストを押圧しノズル部10を通して所要部位、例えば基準義歯の床面(裏面)上、に排出する。
【符号の説明】
【0027】
2:シリンジ
4:シリンジ外筒
6:押し子
8:シリンジ外筒の主部
10:シリンジ外筒のノズル部
12:シリンジ外筒の接続壁
22:封鎖具
24:封鎖具の軸部
26:封鎖具の先端フランジ部
28:封鎖具の付加フランジ部
30:封鎖具の付加フランジ部
32:封鎖具の張出把持部
34:封鎖具の規制フランジ部
36:封鎖具の剛性心材
図1
図2
図3
図4
図5