(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023110223
(43)【公開日】2023-08-09
(54)【発明の名称】ピット点検方法およびエレベーター制御システム
(51)【国際特許分類】
B66B 5/00 20060101AFI20230802BHJP
【FI】
B66B5/00 G
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022011527
(22)【出願日】2022-01-28
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-06-19
(71)【出願人】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】杉本 幸大造
【テーマコード(参考)】
3F304
【Fターム(参考)】
3F304BA03
3F304BA22
3F304EB27
3F304ED12
(57)【要約】
【課題】 作業員以外の者や動物等がかご内に入ることを防止しつつ、安全にピット点検を行うことができる。
【解決手段】 昇降路のピットを点検するピット点検方法であって、エレベーターのかご内に設置され、ピット点検の際にピット点検運転を選択可能なピット点検支援スイッチが操作されると、ピット点検運転に移行し、乗場呼び登録を禁止するとともに、かごを最下階より上方の所定階に移動させ、移動階ではドアを開放しない戸開閉制御を実施し、ピット点検終了が検出されると、ピット点検運転から通常運転に復帰する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降路のピットを点検するピット点検方法であって、
エレベーターのかご内に設置され、ピット点検の際にピット点検運転を選択可能なピット点検支援スイッチが操作されると、ピット点検運転に移行し、
乗場呼び登録を禁止するとともに、かごを最下階より上方の所定階に移動させ、
移動階ではドアを開放しない戸開閉制御を実施し、
ピット点検終了が検出されると、ピット点検運転から通常運転に復帰する、ピット点検方法。
【請求項2】
前記ピット点検支援スイッチが操作されてから一定時間が経過されても点検動作が検出されない場合には、通常運転に復帰する、請求項1に記載のピット点検方法。
【請求項3】
前記ピット点検運転は、ピット点検後に最下階のドアが閉扉されると解除され、通常運転に復帰する、請求項1に記載のピット点検方法。
【請求項4】
ピット点検運転中は、各階の乗場に設置された乗場インジケータに点検中である旨を表示する請求項1~3の何れか1項に記載のピット点検方法。
【請求項5】
エレベーターかご内に設置され、ピット点検の際にピット点検運転モードを選択可能なピット点検支援スイッチと、
前記ピット点検支援スイッチによりピット点検運転モードが選択されている場合に、乗場呼び登録を禁止するとともに、かごの到着階のドアを開放しない戸開閉制御を実施する運行制御部と、を備えるエレベーター制御システム。
【請求項6】
前記ピット点検支援スイッチが操作されてから一定時間が経過されても点検動作が検出されない場合には、通常運転に復帰する、請求項5に記載のエレベーター制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、ピット点検方法およびエレベーター制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
エレベーターの昇降路において、最下階よりも下部に設置されているピットを点検する方法がいくつか知られている。例えば、作業員がエレベーターのかご内に進入防止用の柵を設置し、作業員がエレベーターのかご内で最下階よりも上の階の呼びを作る。そして、エレベーターを最下階から別の階へ移動させてから、作業員が最下階の乗場ドアを開放してピットに進入し、ピットを点検する方法がある。この方法は作業員が最上階に設置されているエレベーターを制御している制御盤まで行くことがなくピットの点検を行うようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6537539号
【特許文献2】特許第5874212号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述した従来方法は、点検運転ではなく、通常運転でピット点検を行うため、かご呼びを作成した階にエレベーターが到着するとエレベーターのドアが開いてしまう。かご内には進入防止用の柵を設置しているものの、ドアが開いた際に人物、特に柵を認識できない視覚障がい者、文字の読めない子供、もしくは動物などがかご内に進入してしまう可能性がある。
【0005】
本発明は上記事情に鑑み、作業員以外の者や動物等がかご内に入ることを防止しつつ、安全にピット点検を行うことができるピット点検方法およびエレベーター制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための実施形態は、昇降路のピットを点検するピット点検方法であって、エレベーターのかご内に設置され、ピット点検の際にピット点検運転を選択可能なピット点検支援スイッチが操作されると、ピット点検運転に移行し、乗場呼び登録を禁止するとともに、かごを最下階より上方の所定階に移動させ、移動階ではドアを開放しない戸開閉制御を実施し、ピット点検終了が検出されると、ピット点検運転から通常運転に復帰する、ピット点検方法である。
【0007】
また、エレベーターかご内に設置され、ピット点検の際にピット点検運転モードを選択可能なピット点検支援スイッチと、前記ピット点検支援スイッチによりピット点検運転モードが選択されている場合に、乗場呼びを禁止するとともに、かごの到着階のドアを開放しない戸開閉制御を実施する運行制御部と、を備えるエレベーター制御システムである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態のエレベーターの一例を示す構成図。
【
図2】実施形態のかご内操作盤の一例を示す構成図。
【
図3】実施形態のエレベーター制御システムの構成を示すブロック図。
【
図4】実施形態のピット点検方法の手順を示すフローチャート。
【
図5】実施形態のエレベーター制御システムの処理手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
《実施形態の構成》
図1は実施形態が適用されるエレベーターの構成を示す全体図である。本実施形態によるエレベーター1は1階が最下階で2階が最上階である2階建ての建物の昇降路2に設置されることを想定している。
【0010】
エレベーター1は、機械室4に設置された巻上機5およびエレベーター1を制御する制御盤3を備える。また、巻上機5に掛け渡されたメインロープ7の一端に吊り下げられ昇降路2内を上下走行するかご8と、メインロープ7の他端に吊り下げられ昇降路2内を上下走行するカウンターウエイト6とを備える。さらに、昇降路2の下部に設けられたピット9およびピット9内に設置されたピット安全スイッチ10を備える。さらに、1階乗場101に設置された1階乗場ドア101a、1階乗場ボタン101b、および1階乗場インジケータ101cと、2階乗場102に設置された2階乗場ドア102a、2階乗場ボタン102b、および2階乗場インジケータ102cと、かご8内に設置されたかご内操作盤11とを備える。
【0011】
【0012】
かご内操作盤11は、行先階ボタン12と、ドア開閉ボタン13と、かご内ディスプレイ14とを備える。また、本実施形態におけるかご内操作盤11のスイッチボックス15内には、ピット点検支援スイッチ16が設置されている。
【0013】
ピット点検支援スイッチ16は、ピット点検時に作業員により操作され、ピット点検信号を後述するエレベーター制御装置300へ出力する。
【0014】
図3は、実施形態のエレベーター制御システムの構成を示すブロック図である。
【0015】
エレベーター制御システム200を構成するエレベーター制御装置300は、ピット点検信号入力部301と、運行制御部302と、タイマー303とを備えている。
【0016】
ピット点検信号入力部301は、ピット点検支援スイッチ16がオンされた場合に出力されるピット点検信号を入力する。
【0017】
運行制御部302は、エレベーター1の運行を統括制御する。ピット点検支援スイッチ16がオンされた場合に出力されるピット点検信号が入力されるピット点検運転モードによりエレベーター1を運行する。
【0018】
タイマー303は、ピット点検信号が入力されるとタイマーカウントを開始し、所定時間が経過してタイムオーバーとなるその旨を出力する。
【0019】
《実施形態のピット点検方法》
図4はピット点検時の作業手順をエレベーター1と作業員の動作を中心に示すフローチャートである。
【0020】
先ず、作業員がエレベーター1の1階乗場101に到着してピット9の点検を開始する際、1階乗場101に到着した作業員は、かご8が最下階である1階に停止しているかを確認する(ステップS1)。かご8が停止していない場合には、1階乗場ボタン101bを操作して乗場呼びを作成し、かご8を1階に呼ぶ(ステップS2)。
【0021】
かご8が停止している状態で、作業員はかご8内に設置されたかご内操作盤11に設けられたピット点検支援スイッチ16を押下し、エレベーター1の運転モードを通常運転からピット点検運転に切り替える(ステップS3)。
【0022】
次いで、作業員はかご8内に設置されたかご内操作盤11の行先階ボタン12を押して、1階よりも上方の階への呼びを作成する(ステップS4)。この例では、2階が上方階となる。この操作により、作成した呼びの階(2階)にかご8が到着する(ステップS5)。このとき、2階乗場ドア102aは開くことはないので、人がかご8内に乗り込むことを防止できる。
【0023】
かご8が2階へ移動すると、作業員は1階乗場ドア101aをアンロックキーにより開く。なお、かご8が1階に呼ばれてから一定時間が経過したか否かが監視され(ステップS6)、一定時間が経過してもピット点検作業が開始されていない場合には通常運転に復帰する(ステップS10)。ピット点検作業が開始されたか否かの判断は、例えば、アンロックキーによりドア101aが開扉されたか否かで判断する。また、一定時間は、3~5分程度が好適である。
【0024】
ピット点検作業では、作業員が1階乗場ドア101aを開放状態にし、ピット9の安全を作業員が確認し、ピット安全スイッチ10をカットし、ピット9に進入し、ピット9内を点検する(ステップS7,S8)。
【0025】
作業員によるピット9の点検が終了すると、ピット安全スイッチ10をオンにする。作業員が乗場ドア101aを開放状態にしたとき、異臭などの異常が認められ、ピット9を点検せずに目視確認のみ行う場合は、ピット安全スイッチ10を操作せずに乗場ドア101aを閉じる。
【0026】
点検が終了してピット9から脱出した作業員が1階乗場ドア101aを閉じる、または目視確認を終えた作業員が乗場ドア101aを閉じると(ステップS9)、一連のピット9の点検を終了し、通常運転に復帰する(ステップS10)。
【0027】
《実施形態のエレベーター制御システムの処理手順》
図5はエレベーター制御システム200のエレベーター制御装置300で実施される制御手順を示すフローチャートである。
【0028】
先ず、運行制御部302は、現在の運転モードが通常運転モードか、ピット点検運転モードかを判断する(ステップS101)。点検運転モードに設定されていれば、通常の点検運転モードで点検が実施される(ステップS120)。点検運転でない場合には、ピット点検支援スイッチ16が操作されてピット点検運転に切り替わったか否かを判断する(ステップS102)。ピット点検運転になると、運行制御部302は乗場呼びを禁止する(ステップS103)。並行して、1階乗場インジケータ101cおよび2階乗場インジケータ102cに「点検中」を示す表示を点灯させ、エレベーター1を低速運転に切り替える(ステップS104,S105)。そして、タイマー303のカウントを開始する(ステップS106)。
【0029】
次いで、
図4のステップS4に示したように、作業員によりかご8内に設置されたかご内操作盤11の行先階ボタン12が押されて、1階よりも上方の階(2階)への呼びがあるか否かを判断する(ステップS107)。かご呼びが一定時間内にある場合には、2階乗場ドア102aの戸開を禁止する(ステップS115,S108)。
【0030】
次に、
図4のステップS4で作られたかご呼びの目的階にかご8が到着したかを判断する(ステップS109)。到着したら、1階乗場ドア101aが開いているか否かを判断する(ステップS110)。
【0031】
ステップS110において、1階乗場ドア101aが作業員により開けられず、ステップS106において設定したタイマー303がタイムオーバーしたことを確認した時は(ステップS111)、ステップS112に移行して戸開禁止を解除する。
【0032】
ステップS110において、1階乗場ドア101aが開けられると、
図4のステップS8に示したように、作業員がピット9内を点検もしくは目視確認を行う。次いで、1階乗場ドア101aを閉じたかどうかを判断し(ステップS113)、閉じられると最下階へのかご呼びを自動で登録する(ステップS114)。
【0033】
次に、戸開禁止を解除し(ステップS112)、1階乗場インジケータ101cおよび2階乗場インジケータ102cの「点検中」を示す表示を消灯させ(ステップS116)、乗場呼びの禁止を解除する(ステップS117)。そして、タイマー303のカウントをリセットし(ステップS118)、低速運転を解除して(ステップS119)、ピット点検運転を終了する。
【0034】
このように、本実施形態によれば、作業員以外の者や動物等がかご内に入ることを防止しつつ、安全にピット点検を行うことができる。また、1階乗場ドア101aを開放せず一定時間経過した場合、エレベーター1はピット点検運転から通常運転に自動で復旧する。これにより作業員が1階乗場ドア101aを開放する工具を持参し忘れた場合にエレベーター1の復旧が不可能になる事態を防ぐことができる。
【0035】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0036】
1…エレベーター、2…昇降路、3…制御盤、4…機械室、5…巻上機、6…カウンターウエイト、7…メインロープ、8…かご、9…ピット、10…ピット安全スイッチ、11…かご内操作盤、12…行先階ボタン、13…ドア開閉ボタン、14…かご内ディスプレイ、15…スイッチボックス、16…ピット点検支援スイッチ、101…1階乗場、101a…1階乗場ドア、101b…1階乗場ボタン、101c…1階乗場インジケータ、102…2階乗場、102a…2階乗場ドア、102b…2階乗場ボタン、102c…2階乗場インジケータ、200…エレベーター制御システム、300…エレベーター制御装置、301…ピット点検信号入力部、302…運行制御部、303…タイマー
【手続補正書】
【提出日】2023-02-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降路のピットを点検するピット点検方法であって、
エレベーターのかご内に設置され、ピット点検の際にピット点検運転を選択可能なピット点検支援スイッチが操作されると、ピット点検運転に移行し、
乗場呼び登録を禁止するとともに、かごを最下階より上方の所定階に移動させ、
移動階ではドアを開放しない戸開閉制御を実施し、
ピット点検終了が検出されると、ピット点検運転から通常運転に復帰し、
前記ピット点検支援スイッチが操作されてから一定時間が経過されても点検動作が検出されない場合には、通常運転に復帰する、ピット点検方法。
【請求項2】
昇降路のピットを点検するピット点検方法であって、
エレベーターのかご内に設置され、ピット点検の際にピット点検運転を選択可能なピット点検支援スイッチが操作されると、ピット点検運転に移行し、
乗場呼び登録を禁止するとともに、かごを最下階より上方の所定階に移動させ、
移動階ではドアを開放しない戸開閉制御を実施し、
ピット点検終了が検出されると、ピット点検運転から通常運転に復帰し、
前記ピット点検運転は、ピット点検後に最下階のドアが閉扉されると解除され、通常運転に復帰する、ピット点検方法。
【請求項3】
ピット点検運転中は、各階の乗場に設置された乗場インジケータに点検中である旨を表示する請求項1または2に記載のピット点検方法。
【請求項4】
エレベーターかご内に設置され、ピット点検の際にピット点検運転モードを選択可能なピット点検支援スイッチと、
前記ピット点検支援スイッチによりピット点検運転モードが選択されている場合に、乗場呼び登録を禁止するとともに、かごの到着階のドアを開放しない戸開閉制御を実施する運行制御部と、を備え、
前記ピット点検支援スイッチが操作されてから一定時間が経過されても点検動作が検出されない場合には、通常運転に復帰するエレベーター制御システム。