(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023110250
(43)【公開日】2023-08-09
(54)【発明の名称】軸封装置及びゲート弁
(51)【国際特許分類】
F16K 41/08 20060101AFI20230802BHJP
F16J 15/24 20060101ALI20230802BHJP
【FI】
F16K41/08
F16J15/24 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022011584
(22)【出願日】2022-01-28
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100184859
【弁理士】
【氏名又は名称】磯村 哲朗
(74)【代理人】
【識別番号】100123386
【弁理士】
【氏名又は名称】熊坂 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100196667
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100130834
【弁理士】
【氏名又は名称】森 和弘
(72)【発明者】
【氏名】定塚 浩幸
【テーマコード(参考)】
3H066
3J043
【Fターム(参考)】
3H066AA03
3H066BA12
3H066BA19
3H066DA06
3J043AA16
3J043BA02
3J043CA12
3J043CB13
3J043CB14
3J043FA20
(57)【要約】
【課題】 グランドシール構造の軸封装置において、グランドパッキンが摩耗しても、増し締め作業を行うことなく、流体(ガス)の漏洩を防止することができる軸封装置を提供する。
【解決手段】 本発明に係る軸封装置1は、ゲート弁20の弁軸2をグランドパッキン5と接触させてシールする軸封装置であって、前記弁軸の周囲に設置される前記グランドパッキンと、前記軸封装置が設けられる前記ゲート弁の上蓋3に、グランドボルト7及びグランドナット8によって取り付けられる、前記グランドパッキンを押さえ付けるシール押さえ6と、前記グランドパッキンと前記シール押さえとの間に設置されるグランドパッキン押さえ用弾性部材9と、前記上蓋と前記シール押さえとの間に設置される第1のシール押さえ用弾性部材10と、前記シール押さえと前記グランドボルト及び前記グランドナットとの間に設置される第2のシール押さえ用弾性部材11と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲート弁の弁軸をグランドパッキンと接触させてシールする軸封装置であって、
前記弁軸の周囲に設置される前記グランドパッキンと、
前記軸封装置が設けられる前記ゲート弁の上蓋に、グランドボルト及びグランドナットによって取り付けられる、前記グランドパッキンを押さえ付けるシール押さえと、
前記グランドパッキンと前記シール押さえとの間に設置されるグランドパッキン押さえ用弾性部材と、
前記上蓋と前記シール押さえとの間に設置される第1のシール押さえ用弾性部材と、
前記シール押さえと前記グランドボルト及び前記グランドナットとの間に設置される第2のシール押さえ用弾性部材と、
を有する軸封装置。
【請求項2】
前記グランドパッキン押さえ用弾性部材が弗素ゴムである、請求項1に記載の軸封装置。
【請求項3】
前記第1のシール押さえ用弾性部材及び前記第2のシール押さえ用弾性部材がシリコンゴムである、請求項1または請求項2に記載の軸封装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の軸封装置を具備するゲート弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製鉄所などで使用するガス配管のゲート弁に具備される軸封装置、及び、この軸封装置を備えたゲート弁に関する。
【背景技術】
【0002】
製鉄所では、副生ガスと呼ばれる高炉ガス、コーク炉ガス、転炉ガス、及び、都市ガスを加熱源などの燃料ガスとして使用している。これらのガスを製鉄所内へ供給するためにブロアーによる圧送が行われる場合もある。
【0003】
ブロアーで圧送するガスの圧力制御には、ブロアーの入口または出口に設けられたゲート弁の開度を調整して行う方法がある。また、近年はガスの圧力の変動をモニタリングしながらゲート弁の開度を自動調整し、ガス圧を一定にする方法が一般的となっている。
【0004】
これらに使用されるゲート弁は、弁軸をグランドパッキンと呼ばれる部材と接触させて、圧送する流体の漏洩を防止するグランドシール構造の軸封装置を具備するゲート弁が使用されることが一般的である。
【0005】
図2に、グランドパッキンを備えた一般的なゲート弁の概略縦断面図を示す。
図2において、符号100は一般的なゲート弁であり、ゲート弁100の弁軸101には、下端に弁体102が取り付けられており、弁軸101が、弁軸101の上端に連結されたアクチュエータ(図示せず)によって上下動することにより、弁箱103内に形成された流路を開閉する。弁箱103には、弁軸101の支持部材として上蓋104が取り付けられており、その上蓋104の内部には、弁軸101を通すパッキン収容部104Aが形成されている。
【0006】
パッキン収容部104Aには、ネックブッシュ105、複数枚のグランドパッキン106、ランタンリング107、複数枚のグランドパッキン106及びパッキンホロワ108が、順次、嵌め込まれている。パッキンホロワ108の上側には、シール押さえとして、パッキンフランジ109が設けられている。上蓋104の上面には、パッキンフランジ109を貫通する複数のグランドボルト110が埋め込まれており、パッキンフランジ109を貫通するグランドボルト110に対するグランドナット111の締付力によって、パッキンフランジ109がパッキンホロワ108を下方に押し付ける。そして、グランドナット111を締め付けてパッキンホロワ108を下方に押し付けることにより、グランドパッキン106の内周面と弁軸101の外周面との間のシール面、及び、グランドパッキン106の外周面とパッキン収容部104Aの内周面との間のシール面に面圧を発生させて、流路内の流体を外部に漏洩させずにシールするように構成されている。つまり、軸封装置は、パッキン収容部104Aに嵌め込まれるグランドパッキン106、パッキンホロワ108などと、グランドパッキン106を押し付けるパッキンフランジ109及びグランドボルト110、グランドナット111とで構成されている。
【0007】
この型式の軸封装置では、グランドパッキンが弁軸と擦れることから、グランドパッキンの摩耗が生じる。グランドパッキンが摩耗すると、流体である副生ガスなどが漏洩してしまうので、その場合は、上蓋の上部にあるグランドボルトに対するグランドナットの増し締めにより、漏洩防止を行っている。
【0008】
但し、この方法は、副生ガスなどの漏洩が検知されてから、対応することになり、対応するまでの間は可燃性ガスである副生ガスなどが漏洩し続け、火災などの原因にもなりかねず、危険な状況を発生させるという問題がある。更に、グランドパッキンの摩耗が進行すると、グランドナットによる増し締めを実施しても、漏洩を防止できなくなるという問題もある。しかも、増し締めで漏洩を防止できない場合は、ブロアーを停止し、ゲート弁本体を交換することになる。この場合、予備のブロアーへの切り替え、ガス管の封止などの作業も行わねばならず、非常に大掛かりな工事となり、費用の面でも多額になってしまうという問題もある。
【0009】
そこで、特許文献1には、グランドボルトの増し締めを解消するために、グランドパッキンの上方に2枚のパッキンフランジを設置し、2枚のパッキンフランジの間に弾性部材を嵌め込み、この弾性部材によってグランドパッキンに常時圧縮力を与える軸封装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記従来技術には以下の問題がある。
【0012】
即ち、特許文献1で提案された方法は、シール押さえとしてのパッキンフランジを2枚設置し、2枚のパッキンフランジの間に弾性部材を嵌め込み、弾性部材によってグランドパッキンに常時圧縮力を与えるというものであり、グランドパッキンの緩みの進行速度を遅くすることができので、増し締め作業の頻度は低減するが、グランドシール構造の緩みを無くすことはできず、増し締め作業の解消までには至ってはおらず、ガス漏洩を完全に解消することはできない。
【0013】
更に、製鉄所で発生する副生ガスには腐食成分が含有されており、特許文献1に記載の弾性部材がこれらガスの腐食成分に対する耐腐食性を有するのか、有さないのか記載されておらず、製鉄所での適用が可能か否か、不明であるという問題もある。
【0014】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、グランドシール構造の軸封装置において、グランドパッキンが摩耗しても、増し締め作業を行うことなく流体(ガス)の漏洩を防止することができる軸封装置を提供することであり、また、この軸封装置を備えたゲート弁を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意検討を重ねた。その結果、グランドパッキンとシール押さえとの間に弾性部材を介挿するのに加え、ゲート弁本体に弁軸の支持部材として取り付けられる上蓋とシール押さえとの間、及び、シール押さえを取り付けるグランドボルト、グランドナットとシール押さえとの間に、弾性部材を挟み込むことにより、グランドパッキンの摩耗による流体の漏洩を防止するだけでなく、シール押さえの増し締め作業を解消できる軸封装置となることを見出した。
【0016】
本発明は上記知見に基づきなされたものであり、その要旨は以下のとおりである。
【0017】
[1] ゲート弁の弁軸をグランドパッキンと接触させてシールする軸封装置であって、
前記弁軸の周囲に設置される前記グランドパッキンと、
前記軸封装置が設けられる前記ゲート弁の上蓋に、グランドボルト及びグランドナットによって取り付けられる、前記グランドパッキンを押さえ付けるシール押さえと、
前記グランドパッキンと前記シール押さえとの間に設置されるグランドパッキン押さえ用弾性部材と、
前記上蓋と前記シール押さえとの間に設置される第1のシール押さえ用弾性部材と、
前記シール押さえと前記グランドボルト及び前記グランドナットとの間に設置される第2のシール押さえ用弾性部材と、
を有する軸封装置。
【0018】
[2] 前記グランドパッキン押さえ用弾性部材が弗素ゴムである、上記[1]に記載の軸封装置。
【0019】
[3] 前記第1のシール押さえ用弾性部材及び前記第2のシール押さえ用弾性部材がシリコンゴムである、上記[1]または上記[2]に記載の軸封装置。
【0020】
[4] 上記[1]から上記[3]のいずれかに記載の軸封装置を具備するゲート弁。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、グランドパッキンとシール押さえとの間、並びに、シール押さえとゲート弁の上蓋との間、及び、シール押さえとグランドボルト、グランドナットとの間に弾性部材を挟み込むことにより、弾性部材の元の形状に戻ろうとする復元力がグランドパッキンへの押し付け力として常に作用し、グランドパッキンが摩耗しても、増し締め作業を行うことなく流体の漏洩を防止することができ、更には、ゲート弁の交換周期も延長することができ、工業上有益な効果がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明に係る軸封装置の一例を具備するゲート弁の一部分を示す概略縦断面図である。
【
図2】グランドパッキンを具備する一般的なゲート弁の概略縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態の一例を説明する。
図1は、本発明に係る軸封装置の一例を具備するゲート弁の一部分を示す概略縦断面図である。
【0024】
製鉄所において、副生ガスや都市ガスを燃料ガスとして供給する際に、ブロアーで圧送する燃料ガスの圧力制御に使用されるゲート弁20には、弁軸2の支持部材として上蓋3が取り付けられており、上蓋3の上部に、軸封装置1が設置されている。以下、本明細書では、軸封装置1が設けられる上蓋3の上部を「軸封装置設置部4」と記す。軸封装置設置部4の内部には、グランドパッキン5を収容するための円筒状のパッキン収容部4aが形成されている。
【0025】
軸封装置1の中心を弁軸2が貫通し、弁軸2の周囲に、複数(
図1では7枚)のグランドパッキン5が設置されており、複数のグランドパッキン5によって、ゲート弁20の内部と外気とがシールされている。弁軸2には、下端に弁体(図示せず)が取り付けられており、弁軸2の上端にはアクチュエータ(図示せず)が取り付けられており、アクチュエータによって弁軸2が上下動するように構成されている。
【0026】
この軸封装置1には、複数のグランドボルト7と複数のグランドナット8とにより、軸封装置設置部4の上部に、シール押さえ6が取り付けられている。シール押さえ6は、中心部が開口し、且つ、開口した中心部の周囲に円筒状の突出部6aを有しており、この円筒状の突出部6aが、弁軸2の外周面と軸封装置設置部4のパッキン収容部4aの内周面とで形成される間隙に挿入するように構成されている。グランドボルト7をグランドナット8で締め付けることで、シール押さえ6にグランドパッキン5側への締め付け力が作用し、シール押さえ6がグランドパッキン5を押さえ付けるようになっている。
【0027】
グランドパッキン5とシール押さえ6の突出部6aとの間には、リング状のグランドパッキン押さえ用弾性部材9が挟み込まれている。また、軸封装置設置部4とシール押さえ6との間には、リング状の第1のシール押さえ用弾性部材10が挟み込まれ、シール押さえ6とグランドナット8との間、及び、軸封装置設置部4とグランドボルト7との間に、リング状の第2のシール押さえ用弾性部材11が挟み込まれている。
【0028】
軸封装置1の初期状態では、グランドナット8を適度に締め付けて、シール押さえ6の突出部6aでグランドパッキン押さえ用弾性部材9をグランドパッキン5側に押さえ付けることで、弁軸2の外周面とグランドパッキン5の内周面との間、及び、軸封装置設置部4のパッキン収容部4aの内周面とグランドパッキン5の外周面との間には隙間は無く、良好なシール状態を形成している。この場合、グランドパッキン押さえ用弾性部材9、第1のシール押さえ用弾性部材10及び第2のシール押さえ用弾性部材11は、それぞれの厚みを負荷が掛からない場合の厚みのおよそ1/4~1/2程度を減じて設置されている。
【0029】
ゲート弁20の使用を継続していくと、弁軸2の上下動によって弁軸2とグランドパッキン5とが擦れて、グランドパッキン5が摩耗していく。グランドパッキン5は、摩耗の進行によって容量が減少し、弁軸2との間に空隙が形成される。
【0030】
この空隙が生じることで、従来の軸封装置では、シール押さえ6とグランドナット8との間に緩みが生じるが、本発明に係る軸封装置1では、第1のシール押さえ用弾性部材10及び第2のシール押さえ用弾性部材11の復元力(反力)により、グランドボルト7に対してグランドナット8を増し締めすることなく、シール押さえ6がグランドパッキン5の方向へ押し付けられる。
【0031】
このようにして、シール押さえ6がグランドパッキン5の方向へ押し付けられることにより、シール押さえ6とグランドパッキン5との間に挟み込まれたグランドパッキン押さえ用弾性部材9もグランドパッキン5の方向へ押し付けられるとともに、弁軸2の断面方向に扁平変形する。更に、グランドパッキン5も弁軸2の断面方向に扁平変形して弁軸2との接触を継続し、初期状態と同等のシール状態を維持する。
【0032】
ここで、グランドパッキン押さえ用弾性部材9は、アンモニア、シアン、硫化水素などの腐食成分を含むガスと接触することから、耐腐食性を有する弾性部材であることが好ましい。耐腐食性を有する弾性部材としては、ステンレス鋼製のコイルバネや弗素ゴムを使用することができ、弗素ゴムであることがより好ましい。
【0033】
また、第1のシール押さえ用弾性部材10及び第2のシール押さえ用弾性部材11は、腐食性のガスとの接触は無いので、耐食性を有する必要はない。但し、反力を確保できる弾性部材であることが好ましい。その観点からシリコンゴムであることが望ましい。
【0034】
尚、
図1に示す軸封装置1には、軸封装置設置部4のパッキン収容部4aに、
図2に示すネックブッシュ、ランタンリング及びパッキンホロワなどが設置されていないが、これらの部材は、必要に応じて適宜、
図2に示す順序で、パッキン収容部4aに設置することができる。
【0035】
以上説明したように、本発明によれば、グランドパッキン5とシール押さえ6との間、並びに、シール押さえ6とゲート弁20の上蓋3との間、及び、シール押さえ6とグランドボルト7、グランドナット8との間に弾性部材を挟み込むことにより、弾性部材の元の形状に戻ろうとする復元力がグランドパッキン5への押し付け力として常に作用し、グランドパッキン5が摩耗しても、増し締め作業を行うことなく流体の漏洩を防止することができる。更には、ゲート弁20の交換周期も延長することが可能となる。
【符号の説明】
【0036】
1 軸封装置
2 弁軸
3 上蓋
4 軸封装置設置部
4a パッキン収容部
5 グランドパッキン
6 シール押さえ
6a 突出部
7 グランドボルト
8 グランドナット
9 グランドパッキン押さえ用弾性部材
10 第1のシール押さえ用弾性部材
11 第2のシール押さえ用弾性部材
20 ゲート弁