(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023110266
(43)【公開日】2023-08-09
(54)【発明の名称】固定構造及び固定方法
(51)【国際特許分類】
F16B 19/00 20060101AFI20230802BHJP
F16H 25/22 20060101ALI20230802BHJP
F16H 25/24 20060101ALI20230802BHJP
F16B 3/00 20060101ALI20230802BHJP
【FI】
F16B19/00 F
F16H25/22 Z
F16H25/24 A
F16B3/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022011611
(22)【出願日】2022-01-28
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂井 幹史
【テーマコード(参考)】
3J036
3J062
【Fターム(参考)】
3J036AA01
3J036AA04
3J036BA01
3J036BB03
3J036CA06
3J036DA02
3J036DA06
3J036DB06
3J062AA01
3J062AB22
3J062BA01
3J062BA16
3J062CD04
3J062CD23
3J062CD45
(57)【要約】
【課題】軸部材の抜けを抑制しつつより容易に軸部材を固定することが可能な固定構造及び固定方法を提供する。
【解決手段】固定構造は、金属材料を用いて形成され、挿入穴が設けられた固定対象物と、金属材料を用いて形成され、本体部と当該本体部から軸方向に延び出して挿入穴に圧入される延出部とを有し、延出部が径方向に突出する突出部を有すると共に本体部よりも径方向の内側に弾性変形しやすくなるように形成され、挿入穴から抜ける方向への延出部の移動を規制するように突出部が固定対象物に係止された軸部材とを備える。
【選択図】
図3A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属材料を用いて形成され、挿入穴が設けられた固定対象物と、
金属材料を用いて形成され、本体部と当該本体部から軸方向に延び出して前記挿入穴に圧入される延出部とを有し、前記延出部が径方向に突出する突出部を有すると共に前記本体部よりも径方向の内側に弾性変形しやすくなるように形成され、前記挿入穴から抜ける方向への前記延出部の移動を規制するように前記突出部が前記固定対象物に係止された軸部材と
を備える固定構造。
【請求項2】
前記軸部材は、前記延出部の少なくとも一部が筒状に形成される
請求項1に記載の固定構造。
【請求項3】
前記軸部材は、前記延出部の少なくとも一部に軸方向に延びるスリットを有する
請求項2に記載の固定構造。
【請求項4】
前記固定対象物及び前記軸部材は、前記軸部材が前記固定対象物に圧入された状態において、前記固定対象物と前記軸部材との間の軸回り方向への相対的な回転移動を規制する回転規制機構を有する
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の固定構造。
【請求項5】
前記回転規制機構は、前記軸部材に設けられ前記軸方向に延びるスリットと、前記固定対象物に設けられ前記スリットに嵌合される嵌合部とを有する
請求項4に記載の固定構造。
【請求項6】
前記回転規制機構は、前記軸部材及び前記固定対象物の一方に設けられるキーと、他方に設けられ前記キーに対応するキー溝とを有する
請求項4に記載の固定構造。
【請求項7】
前記突出部は、前記固定対象物と前記軸部材との間に配置され、前記固定対象物及び前記軸部材の軸方向への相対移動を規制するリング部材を有する
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の固定構造。
【請求項8】
前記固定対象物及び前記軸部材は、それぞれ前記リング部材の一部を収容する収容溝を有し、
前記リング部材は、一部が前記収容溝から露出した状態で配置され、前記収容溝から露出した露出部分が軸方向について前記収容溝の外側にはみ出した状態で設けられる
請求項7に記載の固定構造。
【請求項9】
前記固定対象物は、圧入された状態で前記軸部材の前記本体部に当接する当接面と、当該当接面の一部に設けられる凸部とを有し、
前記軸部材は、前記延出部のうち前記本体部側の端部に前記径方向の内側に凹む凹部を有し、
前記固定対象物は、圧入により前記当接面が前記本体部に当接することで前記凸部が変形して前記凹部に収容された状態で配置される
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の固定構造。
【請求項10】
前記軸部材は、ボールネジ装置を構成するネジ軸である
請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の固定構造。
【請求項11】
前記固定対象物は、ピストンである
請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の固定構造。
【請求項12】
前記固定対象物は、ギアである
請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の固定構造。
【請求項13】
前記軸部材は、前記軸方向について前記突出部と前記本体部との間に、前記固定対象物と、軸受部とを挟持する
請求項12に記載の固定構造。
【請求項14】
金属材料を用いて形成され本体部と当該本体部から軸方向に延び出す延出部とを有し、前記延出部が径方向に突出する突出部を有すると共に前記本体部よりも径方向の内側に弾性変形しやすくなるように形成される軸部材の前記延出部を、金属材料を用いて形成され挿入穴が設けられた固定対象物の前記挿入穴に圧入する圧入工程と、
前記延出部が前記挿入穴から抜ける方向への移動を規制するように前記突出部を前記固定対象物に係止させる係止工程と
を含む固定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定構造及び固定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のブレーキブースタ等に適用されるアクチュエータとして、例えばネジ軸の先端にピストンを固定したボールネジ装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記構成においては、ピストンに設けられる挿入穴にネジ軸の先端を圧入することでネジ軸をピストンに固定する。圧入の際には、ネジ軸が抜けないように圧入締め代や圧入長さを管理する必要があり、コントロールが難しい。このように、ネジ軸等の金属の軸部材をピストンのような金属の固定対象物に固定する際、軸部材の抜けを抑制しつつより容易に作業を行うことが可能な構成が求められている。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、軸部材の抜けを抑制しつつより容易に軸部材を固定することが可能な固定構造及び固定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る固定構造は、金属材料を用いて形成され、挿入穴が設けられた固定対象物と、金属材料を用いて形成され、本体部と当該本体部から軸方向に延び出して前記挿入穴に圧入される延出部とを有し、前記延出部が径方向に突出する突出部を有すると共に前記本体部よりも径方向の内側に弾性変形しやすくなるように形成され、前記挿入穴から抜ける方向への前記延出部の移動を規制するように前記突出部が前記固定対象物に係止された軸部材とを備える。
【0007】
この構成によれば、延出部が本体部よりも径方向の内側に弾性変形しやすくなるように形成されるため、固定対象物の挿入穴に容易に圧入することができる。また、延出部には径方向の外側に突出する突出部が設けられ、当該突出部が固定対象物に係止される。したがって、延出部が挿入穴に圧入された状態において、挿入穴から抜ける方向への移動が規制される。このため、圧入締め代、圧入長さ等の管理を行わなくても、軸部材の抜けを抑制することができる。これにより、軸部材の抜けを抑制しつつより容易に軸部材を固定することが可能となる。
【0008】
上記の固定構造の好ましい態様として、前記軸部材は、前記延出部の少なくとも一部が筒状に形成される。この構成によれば、延出部の少なくとも一部を筒状とすることにより、本体部に比べて径方向の内側に弾性変形しやすい構成とすることができる。
【0009】
上記の固定構造の好ましい態様として、前記軸部材は、前記延出部の少なくとも一部に軸方向に延びるスリットを有する。この構成によれば、スリットが設けられることにより、本体部に比べて径方向の内側に弾性変形しやすい構成とすることができる。
【0010】
上記の固定構造の好ましい態様として、前記固定対象物及び前記軸部材は、前記軸部材が前記固定対象物に圧入された状態において、前記固定対象物と前記軸部材との間の軸回り方向への相対的な回転移動を規制する回転規制機構を有する。この構成によれば、軸部材を挿入穴に圧入することで、軸部材の抜けを抑制しつつ、回転についても抑制することができる。
【0011】
上記の固定構造の好ましい態様として、前記回転規制機構は、前記軸部材に設けられ前記軸方向に延びるスリットと、前記固定対象物に設けられ前記スリットに嵌合される嵌合部とを有する。この構成によれば、軸部材に形成されるスリットを利用して、固定対象物と軸部材との軸回り方向への相対的な回転移動を規制することができる。
【0012】
上記の固定構造の好ましい態様として、前記回転規制機構は、前記軸部材及び前記固定対象物の一方に設けられるキーと、他方に設けられ前記キーに対応するキー溝とを有する。この構成によれば、軸部材及び固定対象物に設けられるキー及びキー溝を利用して、固定対象物と軸部材との軸回り方向への相対的な回転移動を規制することができる。
【0013】
上記の固定構造の好ましい態様として、前記突出部は、前記固定対象物と前記軸部材との間に配置され、前記固定対象物及び前記軸部材の軸方向への相対移動を規制するリング部材を有する。この構成によれば、突出部としてリング部材を用いることにより、固定対象物及び軸部材の軸方向への相対移動をより確実に規制することができる。
【0014】
上記の固定構造の好ましい態様として、前記固定対象物及び前記軸部材は、それぞれ前記リング部材の一部を収容する収容溝を有する。この構成によれば、リング部材が収容溝に収容されることで、固定対象物及び軸部材の両方に係止された状態を形成できる。これにより、固定対象物及び軸部材の軸方向への位置ズレを抑制できる。
【0015】
上記の固定構造の好ましい態様として、前記リング部材は、一部が前記収容溝から露出した状態で配置され、前記収容溝から露出した露出部分が軸方向について前記収容溝の外側にはみ出した状態で設けられる。この構成によれば、リング部材の全体が収容溝に埋没することを抑制できる。このため、リング部材が固定対象物及び軸部材の両方に係止された状態を維持することができる。
【0016】
上記の固定構造の好ましい態様として、前記固定対象物は、圧入された状態で前記軸部材の前記本体部に当接する当接面と、当該当接面の一部に設けられる凸部とを有し、前記軸部材は、前記延出部のうち前記本体部側の端部に前記径方向の内側に凹む凹部を有し、前記固定対象物は、圧入により前記当接面が前記本体部に当接することで前記凸部が変形して前記凹部に収容された状態で配置される。この構成によれば、圧入により凸部が凹部に収容されることで、固定対象物と軸部材との間における軸方向への相対的な移動を規制することができる。
【0017】
上記の固定構造の好ましい態様として、前記軸部材は、ボールネジ装置を構成するネジ軸である。この構成によれば、ネジ軸を固定対象物に固定する場合に、ネジ軸の抜けを抑制しつつより容易にネジ軸を固定することが可能となる。
【0018】
上記の固定構造の好ましい態様として、前記固定対象物は、ピストンである。この構成によれば、軸部材をピストンに固定する場合に、軸部材の抜けを抑制しつつより容易に軸部材を固定することが可能となる。
【0019】
上記の固定構造の好ましい態様として、前記固定対象物は、ギアである。この構成によれば、軸部材をギアに固定する場合に、軸部材の抜けを抑制しつつより容易に軸部材を固定することが可能となる。
【0020】
上記の固定構造の好ましい態様として、前記軸部材は、前記軸方向について前記突出部と前記本体部との間に、前記固定対象物と、軸受部とを挟持する。この構成によれば、軸受部の配置についての選択の幅を広げることができる。
【0021】
本発明の一態様に係る固定構造は、金属材料を用いて形成され本体部と当該本体部から軸方向に延び出す延出部とを有し、前記延出部が径方向に突出する突出部を有すると共に前記本体部よりも径方向の内側に弾性変形しやすくなるように形成される軸部材の前記延出部を、金属材料を用いて形成され挿入穴が設けられた固定対象物の前記挿入穴に圧入する圧入工程と、前記延出部が前記挿入穴から抜ける方向への移動を規制するように前記突出部を前記固定対象物に係止させる係止工程とを含む。
【0022】
この構成によれば、延出部が本体部よりも径方向の内側に弾性変形しやすくなるように形成されるため、固定対象物の挿入穴に容易に圧入することができる。また、突出部を固定対象物に係止させることで、挿入穴から抜ける方向への移動を容易に規制することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の態様によれば、軸部材の抜けを抑制しつつより容易に軸部材を固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る固定構造が用いられた直動アクチュエータを軸方向に切った断面図である。
【
図2】
図2は、本実施形態に係る固定構造の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、固定構造の一例を示す斜視図である。
【
図6】
図6は、ピストンの一例を示す斜視図である。
【
図7】
図7は、本実施形態に係る固定方法の一例を模式的に示す工程図である。
【
図8】
図8は、本実施形態に係る固定方法の一例を模式的に示す工程図である。
【
図9】
図9は、本実施形態に係る固定方法の一例を模式的に示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係る固定構造及び固定方法の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。下記実施形態で開示した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0026】
図1は、本実施形態に係る固定構造が用いられた直動アクチュエータを軸方向に切った断面図である。直動アクチュエータ100は、車両に搭載され、ブレーキペダルの踏み込み量に対応した液圧を生成するブレーキブースタである。
図1に示すように、直動アクチュエータ100は、モータ101と、伝達装置102と、ハウジング103と、ボールネジ装置110と、ピストン120と、を備えている。
【0027】
以下、ボールネジ装置110のネジ軸112の軸心Oと平行な方向を軸方向と称する。また、軸方向のうち、ボールネジ装置110のナット111から視てピストン120が配置される方向を第1方向X1と称し、第1方向X1と反対方向を第2方向X2と称する。
【0028】
モータ101は、ステータ(不図示)と、ロータ(不図示)と、出力軸101aと、を備える。モータ101は、電源(不図示)から電力が供給されてロータ及び出力軸101aが回転する。モータ101は、ハウジング103に支持され、出力軸101aがネジ軸112と平行となっている。
【0029】
伝達装置102は、モータ101の出力軸101aに嵌合する第1歯車104と、ナット111の外周側に嵌合する第2歯車105と、を備える。第2歯車105は、第1歯車104よりも大径の歯車である。よって、伝達装置102は、モータ101で生成された回転運動を減速してナット111に伝達する。
【0030】
ボールネジ装置110は、ナット111と、ネジ軸112と、複数のボール113と、を備える。ナット111は、軸心Oを中心に円筒状を成している。ナット111の内周面には、内周軌道面111aが設けられている。ナット111は、ハウジング103の内周面に嵌合する軸受106に支持されている。これにより、ナット111は、ネジ軸112の軸心Oを中心に回転自在となっている。
【0031】
ネジ軸112は、ナット111を貫通する中実の軸部品である。ネジ軸112は、外周面に外周軌道面114aが設けられた本体部114と、本体部114の第1方向X1の端面から第1方向X1に延出する延出部115と、を備えている。特に図示しないが、本体部114は、軸方向に移動自在であり、かつ軸心O回りに回転不能にハウジング103に支持されている。ネジ軸112には、不図示の回り止め部材が設けられてもよい。
【0032】
内周軌道面111aと外周軌道面114aとの間は、螺旋状の軌道となっている。この螺旋状の軌道に複数のボール113が配置されている。ナット111が回転すると、内周軌道面111aは、ボール113を介して外周軌道面114aを軸方向に押圧する。これにより、ネジ軸112が軸方向に移動する。また、本実施形態では、ナット111が軸心Oを中心とする一の回転方向に回転した場合、ネジ軸112が第1方向X1に移動する。一方、ナット111が軸心Oを中心とする他の回転方向に回転した場合、ネジ軸112が第2方向X2に移動する。
【0033】
延出部115は、本体部114よりも小径となっている。よって、延出部115と本体部114との境界には、第1方向X1を向く環状段差面114bが設けられている。
【0034】
ピストン120は、軸心Oと同軸状に配置された円柱状の部品である。ピストン120は、鍛造により製造されることが好ましいが、切削加工などの公知の加工方法で形成してもよい。ピストン120は、シリンダ107の内部であって第2方向X2の端寄りに配置されている。なお、本実施形態のシリンダ107は、ハウジング103に一体的に設けられているが、本開示においては、シリンダ107とハウジング103とが別体となっていてもよい。シリンダ107の内部には、図示しないブレーキフルードが入っている。ピストン120は、第1方向X1を向く第1端面121と、第2方向X2を向く第2端面122と、を備えている。
【0035】
第1端面121には、第2方向X2に窪む凹面121aが設けられている。凹面121aは、シリンダ107の底面107bと対向している。凹面121aと底面107bとの間には、図示しないコイルばねが配置されている。ピストン120が第1方向X1へ押圧された場合、ピストン120は、図示しないコイルばねに抗って移動する。なお、本開示のピストンは、凹面121aが設けられていないものであってもよい。
【0036】
第2端面122の中央部には、第2方向X2に開口する挿入穴123が設けられている。挿入穴123には、延出部115が挿入されている。挿入穴123の内径は、延出部115の外径よりも僅かに小さく、締め代が設けられている。よって、ピストン120は、ネジ軸112と分離することなく、ネジ軸112と一体に軸方向に移動する。挿入穴123は、開口部がテーパ状に面取りされている。
【0037】
以下、ピストン120のうち延出部115と嵌合する部分(挿入穴123の外周側を囲む筒状の壁部)を内筒部124と称する。
図1に示すように、内筒部124の第2方向X2の端面124aは、ネジ軸112の環状段差面114bと当接している。
【0038】
ピストン120の外周面は、シリンダ107の内周側のシール部材108と摺動自在に当接している。これにより、図示しないブレーキフルードがナット111やネジ軸112の方に流動しないように封止される。
【0039】
ピストン120の外径は、ナット111の外径よりも大きい。ピストン120の第2端面122には、第2方向X2に突出してナット111の外周側を囲む環状の外筒部125が設けられている。つまり、ピストン120の外周面は、外筒部125によって第2方向X2に拡張されている。よって、ピストン120が第1方向X1に移動しても、外筒部125とシール部材108とが摺接し、シール性が保持される。
【0040】
次に、実施形態1の直動アクチュエータ100の動作について説明する。モータ101が駆動すると、伝達装置102を介して、ナット111に回転運動が伝達する。これにより、ナット111が回転する。また、ナット111の回転方向が軸心Oを中心とする一の回転方向の場合、ネジ軸112は第1方向X1に移動する。これに伴い、ピストン120も第1方向X1に移動し、ブレーキフルードの液圧が高まる。この結果、ブレーキフルードの液圧が貫通孔107aを通じて外部の装置に伝達される。
【0041】
一方、ナット111が軸心Oを中心とする他の回転方向に回転すると、ネジ軸112が第2方向X2に移動する。これに伴い、ピストン120が第2方向X2に移動し、ブレーキフルードの液圧が低下する。
【0042】
図2は、本実施形態に係る固定構造150の一例を示す図である。
図3Aは、
図2におけるA-A断面に沿った構成を示す図である。
図4は、固定構造150の一例を示す斜視図である。
図4において、ピストン120の一部を切り欠いた状態で示している。
【0043】
図2から
図4に示すように、固定構造150は、固定対象物であるピストン120と、軸部材であるネジ軸112とを備える。ピストン120は、例えばアルミニウム合金等の金属材料を用いて形成される。ピストン120を構成する材料については、他の金属材料であってもよい。
【0044】
ピストン120は、挿入穴123を有する。挿入穴123は、第1方向X1の端部に拡径部127を有する。拡径部127は、挿入穴123の他の部分に比べて穴の径が拡大された状態となっている。拡径部127が設けられることにより、挿入穴123との間に段差面128が形成される。拡径部127は、軸方向の長さが突出部116よりも長くなっている。
【0045】
ネジ軸112は、例えばクロムモリブデン鋼等の金属材料を用いて形成される。ネジ軸112を構成する材料については、他の金属材料であってもよい。ネジ軸112は、ナット111、ボール113(
図6参照)と共にボールネジ機構110を構成する。なお、
図4に示すように、ナット111には、ギア160が設けられてもよい。ネジ軸112は、第1方向X1の端部に円柱状の延出部115を有する。延出部115は、先端に突出部116を有する。突出部116は、延出部115の外周面115aから径方向の外側に突出する。
【0046】
延出部115は、第1方向X1の端面115bから第2方向X2に向けて形成される凹部117を有する。凹部117は、第2方向X2から見て円形状である。当該凹部117が設けられることにより、延出部115の先端側の一部が筒状に形成される。この構成により、延出部115は、本体部114に比べて径方向の内側に弾性変形しやすい構成となっている。延出部115は、第1方向X1側の先端がテーパ状に面取りされている。
【0047】
延出部115は、ピストン120の挿入穴123に圧入された構成となっている。延出部115は、挿入穴123に圧入された状態において、ピストン120の内筒部124により隙間なく締め付けられた状態となっている。このため、延出部115と内筒部124との間のガタつきが抑制される。また、延出部115が挿入穴123に圧入された状態において、突出部116が拡径部127に収容された状態となる。突出部116が拡径部127に収容された状態において、延出部115は、径方向の内側に弾性変形した状態となっている。
【0048】
突出部116が拡径部127に収容された状態において、当該突出部116は、第2方向X2について段差面128に対して係止された状態となっている。この構成により、延出部115の第2方向X2への移動が規制される。つまり、挿入穴123から抜ける方向へのネジ軸112の移動が規制される。
【0049】
図3Bは、固定構造の他の例を示す断面図である。
図3Bに示す固定構造150Aは、ネジ軸112の延出部115に段部115cが設けられた構成である。段部115cは、第1方向X1側が端面114bに接続され、第2方向X2側が端面114cに接続される。また、ピストン120は、段部115cに対応する段部123cを有する。段部123cは、第1方向X1側が端面124aに接続され、第2方向X2側が端面124bに接続される。
【0050】
固定構造150Aにおいて、ネジ軸112は、段部115cが段部123cに圧入された状態である。ネジ軸112側の端面114cと、ピストン120側の端面124bとが接触した状態である。また、ネジ軸112側の端面114bとピストン120側の端面124aとの間には、隙間が形成される。また、ネジ軸112側の外周面115aとピストン120側の挿入穴123を囲う内周面123aとの間には、隙間が形成される。
【0051】
図3Cは、固定構造の他の例を示す断面図である。
図3Cに示す固定構造150Bは、延出部115の端面115bに凸部117Aが設けられた構成である。凸部117Aは、端面115bから第2方向X2に向けて突出する。凸部117Aは、端面115bから第2方向X2側に円柱状に延び、第2方向X2側の先端が湾曲した形状(いわゆる砲弾型の形状)を有する。凸部117Aの径は、ねじ軸112の突出部116が挿入可能となるように寸法が設定される。固定構造150Bにおいて、凸部117Aは、ねじ軸112の延出部115の内側に挿入される。凸部117Aが延出部115の内側に挿入されることにより、ねじ軸112が抜けにくくなる。
【0052】
図5は、ネジ軸112の一例を示す斜視図である。
図5に示すように、延出部115には、軸方向に延びるスリット115sが設けられる。スリット115sは、延出部115の端面115bから第2方向X2に沿って直線状に形成される。スリット115sは、軸回り方向に所定の間隔を空けて複数形成される。延出部115は、スリット115sが設けられることにより、径方向の内側により弾性変形しやすい構成となっている。
【0053】
図6は、ピストン120の一例を示す斜視図である。
図6に示すように、ピストン120の拡径部127には、嵌合部129が設けられる。嵌合部129は、突出部116が拡径部127に収容された状態において、スリット115sに嵌合される。嵌合部129は、例えば全てのスリット115sに嵌合する位置に配置されてもよいし、少なくとも1つのスリット115sに嵌合する位置に配置されてもよい。この構成により、ピストン120とネジ軸112とが軸回り方向に係止されるため、ピストン120とネジ軸112との間の軸回り方向への相対的な回転移動が規制される。このように、スリット115s及び嵌合部129は、ネジ軸112がピストン120に圧入された状態においてピストン120とネジ軸112との間の軸回り方向への相対的な回転移動を規制する回転規制機構151を構成する。ピストン120にストッパが配置されている構成では、回転規制機構151が設けられることで、ピストン120とネジ軸112との間にトルク伝達が可能となる。また、例えばシリンダ107に軸方向に延びる溝が設けられ、ピストン120の外周面に当該溝に挿入されるキーが設けられる等、シリンダ107とピストン120との間で軸回り方向への相対的な回転移動が規制される回り止め(アンチローテーション)の構成が設けられる場合には、回転規制機構151を有することで、ピストン120及びネジ軸112がナット111の回転に対して連れ回りすることを抑制できる。
【0054】
図7から
図9は、本実施形態に係る固定方法の一例を模式的に示す工程図である。
図7に示すように、ネジ軸112をピストン120に固定する場合、ネジ軸112の延出部115をピストン120の挿入穴123に対向させる。
【0055】
この状態から、ネジ軸112に対して第1方向X1に力を作用させ、延出部115を挿入穴123に圧入する(圧入工程)。圧入工程では、
図8に示すように、延出部115が径方向に弾性変形した状態で挿入穴123に圧入される。本実施形態では、また延出部115は、第1方向X1側の先端がテーパ状に面取りされているため、挿入穴123に挿入しやすくなる。また、挿入穴123は、開口部がテーパ状に面取りされているため、延出部115を挿入しやすくなる。更に、延出部115が本体部114に比べて径方向の内側に弾性変形しやすい構成となっているため、延出部115を容易に圧入することができる。
【0056】
ネジ軸112に対して第1方向X1に力を作用させ続けることにより、
図9に示すように、環状段差面114bが内筒部の端面124aに当接し、突出部116が拡径部127に収容される。突出部116が挿入穴123から拡径部127に収容される際、穴径が広がるため、延出部115の弾性変形が小さくなる。拡径部127の穴径を適宜調整することにより、延出部115が弾性変形の状態から復帰する状態(弾性変形していない状態)とすることもできるし、延出部115が弾性変形したままの状態とすることもできる。突出部116が拡径部127に収容されることで、突出部116が第2方向X2について段差面128に係止される。このため、ネジ軸112がピストン120に対して第2方向X2に移動すること、つまり、ネジ軸112がピストン120から抜けることを抑制できる。
【0057】
以上のように、本実施形態に係る固定構造150は、金属材料を用いて形成され、挿入穴123が設けられたピストン120と、金属材料を用いて形成され、本体部114と当該本体部114から軸方向に延び出して挿入穴123に圧入される延出部115とを有し、延出部115が径方向に突出する突出部116を有すると共に本体部114よりも径方向の内側に弾性変形しやすくなるように形成され、挿入穴123から抜ける第2方向X2への延出部115の移動を規制するように突出部116がピストン120に係止されたネジ軸112とを備える。
【0058】
この構成によれば、延出部115が本体部114よりも径方向の内側に弾性変形しやすくなるように形成されるため、ピストン120の挿入穴123に容易に圧入することができる。また、延出部115には径方向の外側に突出する突出部116が設けられ、当該突出部116がピストン120に係止される。したがって、延出部115が挿入穴123に圧入された状態において、挿入穴123から抜ける方向への移動が規制される。このため、圧入締め代、圧入長さ等の管理を行わなくても、ネジ軸112の抜けを抑制することができる。これにより、ネジ軸112の抜けを抑制しつつより容易にネジ軸112を固定することが可能となる。
【0059】
固定構造150において、ネジ軸112は、延出部115の少なくとも一部が筒状に形成される。この構成によれば、延出部115の少なくとも一部を筒状とすることにより、本体部114に比べて径方向の内側に弾性変形しやすい構成とすることができる。
【0060】
固定構造150において、ネジ軸112は、延出部115の少なくとも一部に軸方向に延びるスリット115sを有する。この構成によれば、スリット115sが設けられることにより、本体部114に比べて径方向の内側に弾性変形しやすい構成とすることができる。
【0061】
固定構造150において、ピストン120及びネジ軸112は、ネジ軸112がピストン120に圧入された状態において、ピストン120とネジ軸112との間の軸回り方向への相対的な回転移動を規制する回転規制機構151を有する。この構成によれば、ネジ軸112を挿入穴に圧入することで、ネジ軸112の抜けを抑制しつつ、回転についても抑制することができる。
【0062】
固定構造150において、回転規制機構151は、ネジ軸112に設けられ軸方向に延びるスリット115sと、ピストン120に設けられスリット115sに嵌合される嵌合部129とを有する。この構成によれば、ネジ軸112に形成されるスリット115sを利用して、ピストン120とネジ軸112との軸回り方向への相対的な回転移動を規制することができる。
【0063】
固定構造150において、軸部材は、ボールネジ装置を構成するネジ軸112である。また、固定構造150において、固定対象物は、ピストン120である。この構成によれば、ネジ軸112をピストン120に固定する場合に、ネジ軸112の抜けを抑制しつつより容易にネジ軸112を固定することが可能となる。
【0064】
本実施形態に係る固定方法は、金属材料を用いて形成され本体部114と当該本体部114から軸方向に延び出す延出部115とを有し、延出部115が径方向に突出する突出部116を有すると共に本体部114よりも径方向の内側に弾性変形しやすくなるように形成されるネジ軸112の延出部115を、金属材料を用いて形成され挿入穴123が設けられたピストン120の挿入穴123に圧入する圧入工程と、延出部115が挿入穴123から抜ける方向への移動を規制するように突出部116をピストン120に係止させる係止工程とを含む。
【0065】
この構成によれば、延出部115が本体部114よりも径方向の内側に弾性変形しやすくなるように形成されるため、ピストン120の挿入穴123に容易に圧入することができる。また、突出部116をピストン120に係止させることで、挿入穴123から抜ける方向への移動を容易に規制することができる。
【0066】
図10及び
図11は、固定構造の他の例を示す斜視図である。
図10はネジ軸の他の例を示し、
図11はピストンの他の例を示している。
図10に示すネジ軸212は、本体部214と、延出部215と、突出部216とを有する。ネジ軸212は、延出部215の外周面215aにキー215kを構成する突出部が設けられる。これに対して、
図11に示すピストン220は、挿入穴223の内周面にキー215kに対応するキー溝223kが設けられる。ネジ軸212の延出部215をピストン220の挿入穴223に挿入する際には、キー215kをキー溝223kに挿入されるようにする。この構成により、キー215kとキー溝223kとが軸回り方向に係止される。このため、ピストン220とネジ軸212との間の軸回り方向への相対的な回転移動が規制される。
【0067】
このように、キー215k及びキー溝223kは、ネジ軸212がピストン220に圧入された状態においてピストン220とネジ軸212との間の軸回り方向への相対的な回転移動を規制する回転規制機構251を構成する。この構成によれば、ネジ軸212に設けられるキー215kとピストン220に設けられるキー溝223kとを利用して、ピストン220とネジ軸212との軸回り方向への相対的な回転移動を規制することができる。なお、キー215kは、突出部216に設けられてもよい。また、この場合、キー溝223kは、拡径部217に設けられてもよい。
【0068】
図12は、固定構造の他の例を示す断面図である。
図12に示すように、固定構造350は、ネジ軸312と、ピストン320と、リング部材351とを有する。固定構造350は、ネジ軸312の延出部315の外周面315aに、リング部材351を収容可能な収容溝315bが設けられる。リング部材351は、収容溝315bに径方向の一部が収容された状態で設けられる。リング部材351は、径方向に弾性変形することで収容溝315bに全体が収容可能となっている。リング部材351は、止め輪を含む。
【0069】
挿入穴323の内周面323aには、リング部材351の外周側の一部を収容する収容溝323bが設けられる。延出部315の外周面315aには、リング部材351の内周側の一部を収容する収容溝315bが設けられる。リング部材351は、収容溝323b、315bに収容されることにより、軸方向への位置ずれが抑制される。
【0070】
固定構造350を形成する場合、収容溝315bにリング部材351を配置し、リング部材351を弾性変形させて収容溝315bに収容させた状態として、延出部315をピストン320の挿入穴323に圧入する。圧入によりリング部材351が第1方向X1に移動し、収容溝323bに到達すると、弾性変形が復元されて外周部がピストン320側の収容溝323bに収容され、内周部がネジ軸312側の収容溝315bに収容される。これにより、リング部材351を介してネジ軸312とピストン320との軸方向への移動が規制される。
【0071】
このように、固定構造350は、ピストン320とネジ軸312との間に配置され、ピストン320及びネジ軸312の軸方向への相対移動を規制するリング部材351を更に備える。この構成によれば、リング部材351を用いることにより、ピストン320及びネジ軸312の軸方向への相対移動をより確実に規制することができる。
【0072】
また、固定構造350において、ピストン320及びネジ軸312は、リング部材351の一部を収容する収容溝323b、315bを有する。この構成によれば、リング部材351が収容溝323b、315bに収容されることで、リング部材351の軸方向への位置ズレを抑制できる。
【0073】
図13は、固定構造の他の例を示す断面図である。
図13に示すように、固定構造450は、ネジ軸412の延出部415がピストン320の挿入穴423を軸方向に貫通し、突出部416が凹面421a側に突出した構成である。挿入穴423の内周面423aと延出部415の外周面415aとの間には、Oリング452が配置される。Oリング452が設けられることにより、シール性が確保される。挿入穴423の内周面423a及び外周面415aの少なくとも一方には、Oリング452を保持する溝部が設けられてもよい。
【0074】
突出部416と凹面421aとの間には、リング部材451が配置される。延出部415の外周面415aには、リング部材451の内周側の一部を収容する収容溝415bが設けられる。リング部材451は、内周部が収容溝415bに収容され、外周部が凹面421aに当接することにより、軸方向への位置ずれが抑制される。
【0075】
このように、ネジ軸412は、延出部415がピストン420の挿入穴423を貫通し、リング部材451がピストン420の凹面421aとネジ軸412の収容溝415bとの間に係止される。この構成により、ネジ軸412の抜けをより確実に抑制することができる。
【0076】
図14は、
図13に示す固定構造の変形例を示す断面図である。
図14に示すように、リング部材451Aは、外周部の一部が収容溝415bから露出した状態で配置され、収容溝415bから露出した露出部分451sが軸方向について収容溝415bの外側にはみ出した状態で設けられる。リング部材451Aは、露出部分451sがいわゆるカシメ加工された構成である。
【0077】
このように、固定構造450において、リング部材451Aは、一部が収容溝415bから露出した状態で配置され、収容溝415bから露出した露出部分451sが軸方向について収容溝415bの外側にはみ出した状態で設けられる。この構成によれば、リング部材451Aの外周部が収容溝415bに収容されてしまうことを抑制できるため、リング部材451Aがネジ軸412とピストン420との間に係止された状態をより確実に維持することができる。
【0078】
図15及び
図16は、固定構造の他の例を示す断面図である。
図15及び
図16に示す固定構造550は、ピストン520及びネジ軸512を有する。ピストン520は、挿入穴523と、端面524aと、凸部525とを有する。挿入穴523は、ネジ軸512が圧入される。端面524aは、ネジ軸512が圧入された状態でネジ軸512の環状段差面514aに当接する。凸部525は、端面524aの一部に設けられる。
【0079】
ネジ軸512は、本体部514と、延出部515と、凹部517とを有する。延出部515は、本体部514から第2方向X2に延びる部分である。延出部515は、ピストン520の挿入穴523に圧入される。本体部514は、第2方向X2の端部に環状段差面514aを有する。環状段差面514aは、ネジ軸512の延出部515が挿入穴523に圧入された状態において、ピストン520の内筒部524の端面(当接面)524aに当接する。
【0080】
凹部517は、延出部515のうち環状段差面514a側の端部に設けられ、径方向の内側に凹んだ形状を有する。
図16に示すように、延出部515が挿入穴523に圧入されることにより、ピストン520側の凸部525が弾性変形して凹部517に収容される。凸部525が凹部517に収容されることで、軸方向について凸部525が凹部517に係止される。
【0081】
このように、固定構造550において、ピストン520は、圧入された状態でネジ軸512の本体部514に当接する端面524aと、当該端面524aの一部に設けられる凸部525とを有し、ネジ軸512は、延出部515のうち本体部514側の端部に径方向の内側に凹む凹部517を有し、ピストン520は、圧入により端面524aが本体部514に当接することで凸部525が変形して凹部517に収容された状態で配置される。この構成によれば、凸部525は、弾性変形して凹部517に収容されることで、径方向の内側に突出する突出部を構成する。圧入により凸部525が凹部517に収容されることで、ピストン520とネジ軸512との間における軸方向への相対的な移動を規制することができる。
【0082】
図17は、固定構造の他の例を示す斜視図である。
図18は、
図17に示す固定構造の分解斜視図である。
図17及び
図18に示す固定構造650は、ギア620と、ネジ軸612とを有する。固定構造650は、上記した各構成とは異なり、ネジ軸612が回転する構成である。固定構造650において、固定対象物は、ギア620である。ギア620は、円板状であり、中心部に円形状の挿入穴621を有し、外周部に複数の歯622を有する。挿入穴621は、軸方向にギア620を貫通する。ギア620は、挿入穴621を囲う内周面623を有する。内周面623には、キー623aが設けられる。
【0083】
ネジ軸612は、上記したネジ軸112と同様の構成を有し、本体部614と、延出部615と、突出部616とを有する。延出部615は、第1方向X1の先端側が円筒状であり、第1方向X1の端面615bから第2方向X2に沿ってスリット615sが設けられる。この構成により、延出部615は、本体部614よりも径方向の内側に弾性変形しやすい構成となっている。また、延出部615が挿入穴621に挿入された状態において、ギア620の内周面623のキー623aがスリット615sに挿入される。これにより、ネジ軸612とギア620との間の軸回り方向への相対的な回転が規制され、いわゆる回り止めが形成される。延出部615は、挿入穴621に圧入され、挿入穴621を貫通した状態で配置される。突出部616は、本体部614に対してギア620の反対面側に配置される。突出部616は、ギア620の第1面620aに係止される。この構成により、ネジ軸612をギア620に固定する場合に、ネジ軸612の抜けを抑制しつつより容易にネジ軸612を固定することが可能となる。
【0084】
このように、固定構造650において、固定対象物は、ギア620である。この構成によれば、ネジ軸612をギア620に固定する場合に、ネジ軸612の抜けを抑制しつつより容易にネジ軸612を固定することが可能となる。
【0085】
図19は、固定構造の他の例を示す斜視図である。
図20は、
図19に示す固定構造の一例を示す側面図である。
図21は、
図19におけるB-B断面に沿った構成を示す図である。
図19から
図21に示す固定構造750は、ギア720と、ネジ軸712と、軸受部730とを有する。ネジ軸712は、ナット711及び複数のボール713と共にボールネジ装置710を構成する。固定構造750は、ネジ軸712が回転する構成である。ネジ軸712は、上記したネジ軸112と同様の構成を有し、本体部714と、延出部715と、突出部716とを有する。延出部715は、第1方向X1の先端側が円筒状であり、第1方向X1の端面715bから第2方向X2に沿ってスリット715sが設けられる。ギア720は、内周面723を有する。内周面723には、上記したキー623aと同様の構成であるキー723aが設けられる。また、延出部715が内周面723で囲まれる挿入孔に挿入された状態において、ギア720の内周面723のキー723aがスリット715sに挿入される。これにより、ネジ軸712とギア720との間の軸回り方向への相対的な回転が規制され、いわゆる回り止めが形成される。
【0086】
軸受部730は、ギア720とネジ軸712の本体部714との間に挟持される。つまり、軸方向についてネジ軸712の突出部716と本体部714との間には、ギア720と軸受部730とが挟持される。
【0087】
このように、固定構造750において、ネジ軸712は、軸方向について突出部716と本体部714との間に、ギア720と、軸受部730とを挟持する。この構成によれば、軸受部730の配置についての選択の幅を広げることができる。
【0088】
なお、ネジ軸612、712は、延出部615の外周面にキーを構成する突出部が設けられた構成であってもよい。この場合、ギア620、720は、挿入穴623、723の内周面にキーに対応するキー溝が設けられる。ネジ軸612、712の延出部615、715をギア620、720の挿入穴623、723に挿入する際には、キーをキー溝に挿入されるようにする。この構成により、キーとキー溝とが軸回り方向に係止され、ギア620、720とネジ軸612、712との間の軸回り方向への相対的な回転移動が規制される。
【0089】
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。例えば、上記実施形態では、軸部材として、ネジ軸を例に挙げて説明したが、これに限定されない。軸部材は、ネジ軸以外の構成であってもよい。同様に、固定対象物として、ピストン及びギアを例に挙げて説明したが、これに限定されない。固定対象物は、ピストン及びギア以外の構成であってもよい。
【符号の説明】
【0090】
O 軸心
X1 第1方向
X2 第2方向
100 直動アクチュエータ
101 モータ
101a 出力軸
102 伝達装置
103 ハウジング
104 第1歯車
105 第2歯車
106 軸受
107 シリンダ
107a 貫通孔
107b 底面
108 シール部材
110,710 ボールネジ装置
111,711 ナット
111a 内周軌道面
111a,115b,124a,615b,715b 端面
112,212,312,412,512,612,712 ネジ軸
113,713,733 ボール
114,514,614,714 本体部
114a 外周軌道面
114b 環状段差面
115,215,315,415,515,615,715 延出部
115a,215a,315a,415a 外周面
115s,615s,715s スリット
116,316,416,616,716 突出部
117,517 凹部
120,220,320,420,520 ピストン
121 第1端面
121a,421a 凹面
122 第2端面
123,223,323,423,523,621 挿入穴
124 内筒部
125 外筒部
126 対向面
127 拡径部
128,328,428 段差面
129 嵌合部
150,350,450,550,650,750 固定構造
151,251 回転規制機構
215k キー
223k キー溝
315b,323b,415b 収容溝
323a,423a 内周面
351,451,451A リング部材
451s 露出部分
452 Oリング
514a 環状段差面
516,524 当接面
525 凸部
620,720 ギア
620a 第1面
622 歯
730 軸受部
731 内周部
732 外周部