IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本ダイスチール株式会社の特許一覧

特開2023-110275ロータリーダイカッター及びシート加工方法
<>
  • 特開-ロータリーダイカッター及びシート加工方法 図1
  • 特開-ロータリーダイカッター及びシート加工方法 図2
  • 特開-ロータリーダイカッター及びシート加工方法 図3
  • 特開-ロータリーダイカッター及びシート加工方法 図4
  • 特開-ロータリーダイカッター及びシート加工方法 図5
  • 特開-ロータリーダイカッター及びシート加工方法 図6
  • 特開-ロータリーダイカッター及びシート加工方法 図7
  • 特開-ロータリーダイカッター及びシート加工方法 図8
  • 特開-ロータリーダイカッター及びシート加工方法 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023110275
(43)【公開日】2023-08-09
(54)【発明の名称】ロータリーダイカッター及びシート加工方法
(51)【国際特許分類】
   B26F 1/38 20060101AFI20230802BHJP
   B26F 1/00 20060101ALI20230802BHJP
   B31B 50/20 20170101ALI20230802BHJP
【FI】
B26F1/38 A
B26F1/00 E
B31B50/20
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022011625
(22)【出願日】2022-01-28
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-04-15
(71)【出願人】
【識別番号】000229184
【氏名又は名称】日本ダイスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100166796
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 雅至
(72)【発明者】
【氏名】中村 友康
【テーマコード(参考)】
3C060
3E075
【Fターム(参考)】
3C060AA01
3C060BA07
3C060BB08
3C060BD03
3C060BE08
3C060BG01
3E075AA12
3E075AA27
3E075AA28
3E075CA01
3E075DB02
3E075DB13
3E075DB14
3E075GA02
(57)【要約】
【課題】ロータリーダイカッターのダイボードでのシートの打抜・罫入加工に際し、シートに最初に当接する加工具の先端部を保護する。
【解決手段】ダイロール1とアンビルロール2とが相対し、ダイロール1の周面には、基板11に加工具12が取り付けられたダイボード10が固定され、ダイロール1とアンビルロール2との間に挟まれて送られるシートSに加工具12で加工を行うロータリーダイカッターにおいて、ダイボード10の基板11には、シートSに最初に当接する初期加工具12よりも、さらに先にシートSに当接して、アンビルロール2を押圧する押圧部材13が取り付けられ、押圧部材13でシートSが押圧されて、ダイロール1とアンビルロール2との間隔が拡大され、シートSが押圧部材13とアンビルロール2とで挟まれて送られる状態で、初期加工具12によるシートSへの加工が行われるようにする。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下に間隔をあけて互いに対向するように配置されたダイロール(1)とアンビルロール(2)は、それらの軸に対して直交する方向への遊びを有し機械本体に取り付けられた軸受により、互いに逆方向へ回転するように支持され、
前記ダイロール(1)のロール本体(1a)に、その周面に沿うようにダイボード(10)が固定され、前記ダイボード(10)の基板(11)には、前記アンビルロール(2)との間に送られてくるシート(S)に加工を行う加工具(12)が取り付けられ、
前記加工具(12)のうち、前記ダイロール(1)の回転方向に対し横切る方向に延びてシート(S)に最初に当接する初期加工具(121)により、シート(S)を前記アンビルロール(2)に押し付けて初期段階で加工を行うと共に、シート(S)の前端部に所定長さの端部代(Sg)を形成するロータリーダイカッターにおいて、
前記ダイボード(10)の基板(11)の周面には、前記初期加工具(121)の前方に間際で近接して、前記ダイロール(1)の周方向に長さを有し、シート(S)の端部代(Sg)を介して前記アンビルロール(2)を間接的に押圧する硬質性の押圧部材(13)を配置し、
前記端部代(Sg)の所定長さを前記初期加工具(121)の前端と前記押圧部材(13)の後端との間隔以上の大きさとすることにより、前記押圧部材(13)が端部代(Sg)を介して前記アンビルロール(2)を間接的に押圧するものとし、
前記押圧部材(13)での押圧によって、前記アンビルロール(2)がその軸を支持する軸受の遊びの範囲内の大きさで、その軸に対して直交する方向へ移動し、その移動に伴い、前記ダイロール(1)と前記アンビルロール(2)との間隔が拡大されると共に、前記端部代(Sg)が前記アンビルロール(2)と前記押圧部材(13)とで挟まれて送られる状態で、前記初期加工具(121)による加工が行われるようにしたことを特徴とするロータリーダイカッター。
【請求項2】
上下に間隔をあけて互いに対向するように配置されたダイロール(1)とアンビルロール(2)は、それらの軸に対して直交する方向への遊びを有し機械本体に取り付けられた軸受により、互いに逆方向へ回転するように支持され、
前記ダイロール(1)のロール本体(1a)に、その周面に沿うようにダイボード(10)が固定され、前記ダイボード(10)の基板(11)には、前記アンビルロール(2)との間に送られてくるシート(S)に加工を行う加工具(12)が取り付けられ、
前記加工具(12)のうち、前記ダイロール(1)の回転方向に対し横切る方向に延びてシート(S)に最初に当接する初期加工具(121)は、シート(S)に初期段階で加工を行うと共に、シート(S)の前端部に所定長さの端部代(Sg)を形成し、
前記ダイボード(10)の基板(11)の周面に、前記初期加工具(121)の前方に間際で近接して、前記ダイロール(1)の周方向に長さを有する硬質性の押圧部材(13)を備えたロータリーダイカッターおけるシート加工方法であって、
前記端部代(Sg)の所定長さを前記初期加工具(121)の前端と前記押圧部材(13)の後端との間隔以上の大きさとし、
前記押圧部材(13)の前端は、前記アンビルロール(2)に沿ったシート(S)に当接し始め、前記押圧部材(13)の後端は、前記初期加工具(121)のシート(S)への喰い込み量が最大となる時点までは、前記端部代(Sg)を介して前記アンビルロール(2)を間接的に押圧し続け、前記アンビルロール(2)を支持する軸受の遊びの範囲内の大きさで、その軸に対して直交する方向へアンビルロール(2)を移動させることにより、前記ダイロール(1)と前記アンビルロール(2)との間隔を拡大させ、
前記初期加工具(121)が回転移動しシート(S)へ徐々に喰い込んでいって、前記初期加工具(121)のシート(S)への喰い込み量が最大となる時点でシート(S)の加工が行われるまでは、前記押圧部材(13)の押圧による前記ダイロール(1)と前記アンビルロール(2)との間隔の拡大が継続した状態で、前記アンビルロール(2)と前記押圧部材(13)とで前記端部代(Sg)が挟まれて送られるようにしたことを特徴とするロータリーダイカッターにおけるシート加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、紙器等の製造に際し、段ボール、板紙等のシートに打抜・罫入加工を行うロータリーダイカッター及びこれを用いたシート加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のロータリーダイカッターにおける背景技術は以下のとおりである(下記特許文献1参照)。図9に示すように、従来のロータリーダイカッターは、ダイロール1のロール本体1aの軸とアンビルロール2のロール本体2aの軸とがそれぞれに対応して機械本体に装着された軸受(図示省略)によってその両側を回転可能に支持され、それぞれの軸を中心として相対して逆方向に回転し、その回転に伴い、シートS(ここでは複数層の紙から成る段ボールS)が上下に間隔をあけて互いに対向するように配置されたダイロール1とアンビルロール2との間に挟まれて次から次へと順次送られてくる。ダイロール1はそのロール本体1aの周面に固定されたダイボード10を備えており、このダイボード10でシートSに打抜・罫入加工を施す。
【0003】
ロール本体1a、2aの各軸を支持する上記軸受には、軸に対して直交する方向への元来固有の少しの遊びや余裕があり、その程度や大きさは機械によりまちまちである。なお、加工を施されたシートSが製品として問題のあるものとならない程度に、シートSのスリップ等によるその送り速度に誤差の生じることがある。
【0004】
ロータリーダイカッターの従来からの特徴としては、回転機械であるため、上下方向へ間欠的に往復動する平盤状の刃物台と受台とで打抜・罫入加工を行うプラテンダイカッターよりも生産性に優れている点が挙げられる。
【0005】
ロータリーダイカッターにおけるダイロール1を構成するダイボード10は、ダイロール1のロール本体1aの外周面に沿うように湾曲する半円筒状のベニヤ板等からなる基板11に、金属製の加工具12を植え込むように取り付けたものであり、加工具12には、先端部に刃を有する切刃部材12aと、先端部に罫線の形状に対応する形状を有する罫入部材12bとがある。加工具12が切刃部材12aである場合には、その先端部がアンビルロール2に接触するので、刃先の欠損防止を考慮して様々な硬度のものが適宜使用される。加工具12が罫入部材12bである場合には、その先端部はアンビルロール2の上方のシートSに接触・押圧して罫線を形成し、アンビルロール2に当接することはない。
【0006】
加工具12のうち、ダイロール1の回転方向に対し直交するように横切る方向であるダイロール1の幅方向に延びてシートSに最初に当接し、初期の段階でシートSの移動方向に対し横切る方向に喰い込んで加工を行う加工具12が初期加工具12である。
【0007】
なお、ロータリーダイカッターにおいては、基板11に取り付けられて高速度で回転移動している切刃部材12aを、ダイロール1及びアンビルロール2のロール本体1a,2aの軸をそれぞれ支持する軸受の遊びや余裕の範囲内で、アンビルロール2に瞬時に強く押し当てることにより、シートSが高速度で水平方向に移動している段ボールS等の剛性の大きいものであっても、一瞬で切断してシートSに打抜加工を施す。同様に、罫入部材12bにおいては、シートSに押圧に伴い罫入加工を施す。一方、プラテンダイカッターにおいては、走行停止中のシートSに対して切刃部材又は罫入部材を上下方向に移動させて、シートに打抜加工又は罫入加工を施す。
【0008】
ロータリーダイカッターにおけるアンビルロール2には、鋼製のロール本体2aである円筒状シリンダの表面に切刃部材12aの刃先が当たっても傷が付かないように、表層部に硬化処理を施して比較的硬度数の大きい層を形成したものや、切刃部材12aの刃先が欠損しないように、表層部にステンレス鋼のような比較的硬度数の小さい層を形成したものがあり、これらのように表層部に硬さを持たせた鋼製のものがハードカット方式と呼ばれるロータリーダイカッターに適用される。
【0009】
ハードカット方式の場合は、図8に示すように、切刃部材12aの刃先がシートSに接することにより切断を開始して徐々に喰い込んで行き、図9に示すように、その喰い込み量の最も大きくなる最下点でアンビルロール2の金属製の表面に接して、シートSは切断加工される。このとき、アンビルロール2の表面に接した切刃部材12aの刃先が、アンビルロール2のロール本体2aを支持する軸受の遊びや余裕の大きさの範囲内でアンビルロール2の表面を加重的に僅かに押圧して、シートSを確実に切断する。
【0010】
従って、ハードカット方式の場合、ダイボード10の基板11の表面からの切刃部材12aの突出高さは、ロール本体2aの軸受の上記遊びや余裕の大きさの範囲内でアンビルロール2を押圧できることも考慮し、機械個々の特性にも対応して微妙に適宜調整された高さに設定される。この突出高さが低過ぎるとシートSを適切に切断できず、また、高過ぎると軸受に負荷が掛かり過ぎて故障を起こしたり、アンビルロール2の表面を傷つけたり、切刃部材12aの刃先の破損を招いたりする。
【0011】
なお、このように切刃部材12aの突出高さを適宜調整しても、高速度で走行移動している剛性の大きいシートSの確実な切断のため高速度で回転移動している切刃部材12aが切断ごとに最下点でアンビルロール2に激しく接触し、強い負荷を受けることから、切刃部材12aの先端部が破損したり、その本体部分が折れ曲がったりすることがある。
【0012】
また、切刃部材12aでのシートSの切断過程において、アンビルロール2のロール本体2aを支持する軸受の上記遊びや余裕の大きさの範囲内で、アンビルロール2とその表面に接触するシートSは上下方向に動くので、シートSを正確な位置で切断できなかったり、シートSに綺麗な切断部を形成できなかったりすることがある。
【0013】
一方、アンビルロール2には、表層部が例えばウレタン層のような軟らかい層となっているものがあり、このようなアンビルロール2がソフトカット方式と呼ばれるロータリーダイカッターに適用される。
【0014】
ソフトカット方式の場合は、切刃部材12aの刃先が最下点に至った際に、その刃先はアンビルロール2のウレタン層に接し、ウレタン層の厚さ方向の中間部まで喰い込んで、ウレタン層の上にあるシートSを切断加工するため、シートSを比較的確実に切断でき、切刃部材12aの寿命は長くなるが、ウレタンが傷み易くなる。
【0015】
なお、アンビルロール2の表層部をウレタンとした場合、切刃部材12aの刃先の最下点でのウレタン層への喰い込み量は、通常1mm~3mm程度とするが、この喰い込み量は使用するウレタンの材質、柔軟度、層の厚さ等によって様々な大きさに調整される。このようなソフトカット方式の場合も、ダイボード10の基板11の表面からの罫入部材12bの突出高さは、アンビルロール2のロール本体2aの軸受の上記遊びや余裕の大きさの範囲内でアンビルロール2を押圧できることも考慮し、機械個々の特性にも対応して、微妙に適宜調整された高さに設定される。この突出高さが低過ぎるとシートSに適切な罫線の形成ができず、また、高過ぎると軸受に負荷が掛かり過ぎて故障を起こしたり、ウレタンの傷みがひどくなったりする。
【0016】
上記のようなハードカット方式又はソフトカット方式のいずれの方式のロータリーダイカッターにおいても、加工具12が切刃部材12aである場合には、切刃部材12aの先端が最下点で激しくアンビルロール2に接することにより、アンビルロール2の上方のシートSを切断して打抜加工を行う。また、加工具12が罫入部材12bである場合には、罫入部材12bの先端がアンビルロール2に接することなく、アンビルロール2の上方のシートSを最下点で激しく押圧して窪ませ、シートSに所要形状の罫線を鮮明に入れる罫入加工を行う。従って、ダイボード10の基板11の表面からの罫入部材12bの突出高さは、切刃部材12aの突出高さより低く設定されている。
【0017】
すなわち、ダイボード10の基板11の表面からの切刃部材12aの突出高さは、ハードカット方式の場合、切刃部材12aの刃先が最下点でアンビルロール2に激しく接し、アンビルロール2を軸受の上記遊びや余裕の範囲内で下方へ押圧して移動させることができ、シートSへの刃先の喰い込み量が最も大きくなる高さとされる。一方、ソフトカット方式の場合、刃先が最下点でアンビルロール2のウレタン等の軟らかい層の厚さ方向の中間部まで喰い込み、さらに、アンビルロール2を軸受の上記遊びや余裕の範囲内で下方へ押圧して移動させることができ、シートSへの刃先の喰い込み量が最も大きくなる高さとされる。
【0018】
また、ダイボード10の基板11の表面からの罫入部材12bの突出高さは、ハードカット方式及びソフトカット方式のいずれの場合においても、罫入部材12bの先端部がシートSへの喰い込みの最も大きくなる最下点でアンビルロール2の上方のシートSに激しく接し、アンビルロール2を軸受の上記遊びや余裕の範囲内で、その軸方向に対して直交する方向である下方へ押圧して移動させることができ、シートSに対するその先端部の喰い込み量が最も大きくなる高さとされる。
【0019】
以下の記載は、図8および図9に示すハードカット方式の従来の場合についてのものであるが、ソフトカット方式の従来の場合についても同様である。
【0020】
高速度で回転移動する加工具12が切刃部材12aである場合、ダイロール1の回転に伴い、切刃部材12aの先端はシートSに接触して喰い込み始め、高速度で走行移動しているシートSの切断を開始する。その後、シートSへの切刃部材12aの喰い込み量が増して行き、切刃部材12aは、シートSへの喰い込み量が最も大きくなる最下点を通過して、やがてシートSから抜け出し、シートSの切断加工が瞬時に完了する。
【0021】
ここで、切刃部材12a又は罫入部材12bは、最下点に至った際、アンビルロール2を、その軸を支持する軸受の上記遊びや余裕の範囲内で下方へ激しく押圧し、シートSが剛性の強いものであっても、シートSを完全に切断したり、シートSに鮮明な罫線を形成したりするが、アンビルロール2の上方のシートSは、高速度で回転移動するアンビルロール2と共に、軸受の上記遊びや余裕の範囲内で動くので、シートSを正規の位置で切断することや罫入れすることは困難である。
【0022】
また、ロータリーダイカッターには、ダイロール1が下方に配置され、アンビルロール2が上方に配置されるタイプのものもある。このタイプの場合も、ダイロール1が上方に配置され、アンビルロール2が下方に配置される上記タイプの場合と同様に、切刃部材12a又は罫入部材12bの先端部のシートSへの喰い込み量が最上点で最も大きくなり、アンビルロール2に激しく接して、アンビルロール2を支持する軸受の上記遊びや余裕の範囲内で、アンビルロール2の軸に対して直交する方向である上方へ押圧して移動させるので、このときの反力によって、切刃部材12a又は罫入部材12bは、アンビルロール2から一挙に強い負荷や激しく大きい衝撃を受ける。この負荷や衝撃は、アンビルロール2や、切刃部材12a及び罫入部材12bが高速度で回転している程、遠心力等の作用により大きいものとなる。
【0023】
さらに、いずれのタイプのロータリーダイカッターにおいても、切刃部材12a又は罫入部材12bの先端部の前後の両側部は、剛性の大きいシートSに喰い込んで挟まれた状態で移動するので負荷を大きく受ける。また、ダイロール1とアンビルロール2との間隔は狭いので、その間に送り込まれて挿入されるシートSの先端部が詰まってトラブルを起こすことがある。
【0024】
このようなロータリーダイカッターで加工したシートSの前端部は、所定長さの切断屑代(端部代)Sgとなる部分において、切刃部材12aで化粧断ちされて最終的には製品となる。ただし、切断屑代Sgとなる部分と製品となる部分は、少しの間、一体的に次の工程へ送られる。
【0025】
このとき、除去されることになる切断屑代Sgの部分の長さは短かくする方がシートSのロスを削減できるが、短くなり過ぎると化粧断ちが良好にできなくなって製品部が不良品となってしまうおそれがあるため、切断屑代Sgの所定長さは通常1mm~10mm程度とされ、シートSの性状、製品の形状、機械の仕様、客先の要望等によって適宜決められる。また、罫入加工を行う場合も屑となる端部代が生じる。
【0026】
上記ロータリーダイカッターにおけるシートSの送りに際しては、僅かな速度のむらが生じたり、シートSに僅かに無駄な動きが生じたりすることがある。
【0027】
なお、上方にアンビルロール2が配置され、下方にダイロール1が配置されて、ダイロール1とアンビルロール2とが上下に対向するタイプのロータリーダイカッターの場合には、下方のダイロール1のダイボード10に設けられた加工具12は、順次送られてくるシートSに最上点で最も大きく喰い込んで加工を行うものとなるが、その構成および作用等は、上方にダイロール1が配置され、下方にアンビルロール2が配置されたタイプのロータリーダイカッターの場合と実質的には同じである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0028】
【特許文献1】特開昭53-98590号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0029】
ところで、上記いずれのロータリーダイカッターにおいても、図8及び図9に示すように、高速回転するダイボード10の基板11に取り付けられた加工具12のうち、ダイロール1の回転方向に対し直交するように横切る方向であるダイロール1の幅方向に延びてシートSに最初に当接し、初期の段階でシートSの移動方向に対して横切る方向に喰い込んで加工を行う初期加工具12は、その先端部が高速度で回転移動しているアンビルロール2に、例えば最下点で激しく接してシートSへの喰い込み量が最も大きくなる際に、その長さ方向にわたって広くダイロール1の回転方向の前後に傾くような負荷を一挙に強く加えられて、曲がったり、破損したりすることがある。
【0030】
そして、アンビルロール2が高速度で回転する程、アンビルロール2を支持する軸受の上記遊びや余裕に起因してアンビルロール2が大きく動くため、初期加工具12は、シートSへの喰い込み量の大きくなる最下点のような部分を通過する際に、アンビルロール2から極めて激しい負荷を受けるという問題が生じる。
【0031】
また、アンビルロール2の上方のシートSも大きく動くことから、シートSに対して正規の位置での切断や罫入れができなくなるという問題が生じる。
【0032】
なお、加工形状によって、シートSに最初に当接する初期加工具12は、ダイロール1の回転方向に対し直交して横切る方向に延びている場合だけでなく、ダイロール1の回転方向に対し直交する方向から傾いて横切る方向に延びている場合があり、その場合においても、初期加工具12は、例えば最下点を通過する際に、側面部に上述のような強い負荷を受けることになる。
【0033】
このため、シートSに最初に当接する初期加工具12がダイロール1の回転方向に対し直交して横切る方向、或いは直交する方向から傾いて横切る方向に延びている場合、初期加工具12の長さ方向に延びている先端部に破損や曲折が生じやすく、また、先端部の位置ずれが生じて、打抜・罫入加工により製造される製品が不良品となったり、ダイボード10が使用できなくなったりすることがある。
【0034】
一方、加工具12がダイロール1の回転方向と同方向に延びるものである場合は、シートSに最初に当接する部分がダイロール1の周方向に延びる加工具12の長さ方向の先端部のみであるため、加工具12の側面部は上述のような負荷を受けない。
【0035】
また、ロータリーダイカッターにおいては、従来から0.5mm程度から8mm以上の厚さにも及ぶ剛性の大きい段ボールや0.5mm程度の厚さの剛性の大きい板紙等の様々な種類のシートSが加工処理されるところ、剛性の大きいシートSを完全に精度よく切断したり、剛性の大きいシートSに鮮明な罫線を形成するために、初期加工具12は、シートSへの喰い込み量の大きくなる最下点のような部分で、極めて激しくアンビルロール2やシートSに当たって強い負荷を受けるので、初期加工具12が折れ曲がったり、破損したりするという問題が生じる。
【0036】
さらに、ダイロール1とアンビルロール2との間隔は狭いので、その間に送り込まれて挿入されるシートSの先端部が詰まってトラブルを起こすこともある。
【0037】
そこで、この発明は、ロータリーダイカッターのダイボードでのシートの打抜・罫入加工に際し、シートの挿入時の詰まりによるトラブルを解消すると共に、シートに最初に当接する加工具において、その長さ方向に延びている先端部を保護し、正常なシート製品を生産することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0038】
上記課題を解決するため、この発明は、上下に間隔をあけて互いに対向するように配置されたダイロールとアンビルロールは、それらの軸に対して直交する方向への遊びを有し機械本体に取り付けられた軸受により、互いに逆方向へ回転するように支持され、
前記ダイロールのロール本体に、その周面に沿うようにダイボードが固定され、前記ダイボードの基板には、前記アンビルロールとの間に送られてくるシートに加工を行う加工具が取り付けられ、
前記加工具のうち、前記ダイロールの回転方向に対し横切る方向に延びてシートに最初に当接する初期加工具により、シートを前記アンビルロールに押し付けて初期段階で加工を行うと共に、シートの前端部に所定長さの端部代を形成するロータリーダイカッターにおいて、
前記ダイボードの基板の周面には、前記初期加工具の前方に間際で近接して、前記ダイロールの周方向に長さを有し、シートの端部代を介して前記アンビルロールを間接的に押圧する硬質性の押圧部材を配置し、
前記端部代の所定長さを前記初期加工具の前端と前記押圧部材の後端との間隔以上の大きさとすることにより、前記押圧部材が端部代を介して前記アンビルロールを間接的に押圧するものとし、
前記押圧部材での押圧によって、前記アンビルロールがその軸を支持する軸受の遊びの範囲内の大きさで、その軸に対して直交する方向へ移動し、その移動に伴い、前記ダイロールと前記アンビルロールとの間隔が拡大されると共に、前記端部代が前記アンビルロールと前記押圧部材とで挟まれて送られる状態で、前記初期加工具による加工が行われるようにしたのである。
【0039】
また、上下に間隔をあけて互いに対向するように配置されたダイロールとアンビルロールは、それらの軸に対して直交する方向への遊びを有し機械本体に取り付けられた軸受により、互いに逆方向へ回転するように支持され、
前記ダイロールのロール本体に、その周面に沿うようにダイボードが固定され、前記ダイボードの基板には、前記アンビルロールとの間に送られてくるシートに加工を行う加工具が取り付けられ、
前記加工具のうち、前記ダイロールの回転方向に対し横切る方向に延びてシートに最初に当接する初期加工具は、シートに初期段階で加工を行うと共に、シートの前端部に所定長さの端部代を形成し、
前記ダイボードの基板の周面に、前記初期加工具の前方に間際で近接して、前記ダイロールの周方向に長さを有する硬質性の押圧部材を備えたロータリーダイカッターおけるシート加工方法であって、
前記端部代の所定長さを前記初期加工具の前端と前記押圧部材の後端との間隔以上の大きさとし、
前記押圧部材の前端は、前記アンビルロールに沿ったシートに当接し始め、前記押圧部材の後端は、前記初期加工具のシートへの喰い込み量が最大となる時点までは、前記端部代を介して前記アンビルロールを間接的に押圧し続けて、前記アンビルロールを支持する軸受の遊びの範囲内の大きさで、その軸に対して直交する方向へアンビルロールを移動させることにより、前記ダイロールと前記アンビルロールとの間隔を拡大させ、
前記初期加工具が回転移動しシートへ徐々に喰い込んでいって、前記初期加工具のシートへの喰い込み量が最大となる時点でシートの加工が行われるまでは、前記押圧部材の押圧による前記ダイロールと前記アンビルロールとの間隔の拡大が継続した状態で、前記アンビルロールと前記押圧部材とで前記端部代が挟まれて送られるようにしたのである。
【発明の効果】
【0040】
この発明に係るロータリーダイカッターにおいては、初期加工具である切刃部材や罫入部材でシートに打抜加工や罫入加工を行う際、ダイボードの周面における初期加工具の前方に間際で近接して配置され、周方向に長さを有する硬質性の押圧部材は、アンビルロールをその軸を支持する軸受の遊びの範囲内の大きさで、その軸に対して直交する方向にシートの端部代を介して間接的に押圧する。
【0041】
このため、初期加工具がシートへの喰い込み量の最も大きい点に至って、シートを切断加工又は罫入加工を行う際に、送られてくるシートごとに初期加工具に対してアンビルロールやシートから作用する瞬間的で強い衝撃が大幅に緩和されるので、初期加工具の曲折や破損が防止され、シートが剛性の大きいものであっても確実な加工が行われる。
【0042】
また、初期加工具での加工時に、押圧部材でアンビルロールが上方又は下方へ押圧されているので、アンビルロールやアンビルロール上のシートの上下方向への不要な動きが抑制され、シートを正規の位置で鮮明に加工でき、さらに、ダイロールとアンビルロールとの間隔が拡大されるため、その間に送られて挿入されるシート先端部の詰まりによるトラブルを解消することができる。
【0043】
また、シートが押圧部材とアンビルロールとに強く挟まれて、スリップすることなく正確な速度で送られ、加工具でシートの正確な位置に鮮明な打抜・罫入加工が施される。
【0044】
さらに、押圧部材は、初期加工具がシートへ最も大きく喰い込む直前までの間、アンビルロールを、その軸を支持する軸受の遊びの範囲内の大きさで押圧して、その軸に対して直交する方向へ移動させるものとしたので、初期加工具がアンビルロールへの接触時に受ける衝撃がより確実に緩和される。
【0045】
従って、シートの詰まりによるトラブルが発生することもなく、初期加工具である切刃部材や罫入部材の精度を保った状態で、これらの長寿命化を図ることができ、また、打抜加工や罫入加工により製造される展開状態の平坦なシートは、切断のむらや罫線のむら等がなく、不良のない高精度のシート素材となり、このシート素材から優れた見栄えのよい箱などの最終製品が成形される。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1】この発明の実施形態に係るダイボードを備えたロータリーダイカッターによるシートの加工態様を示す斜視図
図2】同上のダイボードを平面に展開した加工具(切刃部材及び罫入部材)及び押圧部材の配置状態を示す平面図
図3】同上のダイボードを使用したハードカット方式による段ボールの加工初期の過程を示す概略断面図
図4】同上の段ボールの切断過程を示す概略断面図
図5】同上のダイボードを使用したソフトカット方式による板紙の加工初期の過程を示す概略断面図
図6】同上の板紙の切断過程を示す概略断面図
図7】(a)~(f)同上のダイボードの基板における押圧部材の他の配置例を示す平面図
図8】従来のダイボードを使用したハードカット方式のロータリーダイカッターにおいて最初の加工具がシートに突き当たる瞬間を示す概略断面図
図9】同上の段ボールの切断過程を示す概略断面図
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、この発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0048】
<ロータリーダイカッターの概要>
図1に示すように、この発明の実施形態に係るダイボード10が取り付けられるロータリーダイカッターにおいては、図8及び図9に示す従来のハードカット方式と同様、ダイロール1のロール本体1aとアンビルロール2のロール本体2aとが上下に間隔をあけて互いに対向するように配置されて機械本体に取り付けられている。ダイロール1とアンビルロール2のそれぞれのロール本体1a,2aの各軸は、従来のものと同様に、それぞれの軸に対して直交する方向へ元来固有の遊びや余裕が若干あり、機械本体に取り付けられている軸受(図示省略)によって、その両側を回転可能に支持され、ダイロール1とアンビルロール2は、それぞれの回転軸を中心として相対して逆方向に高速度で回転し、その回転に伴い、シートS(ここでは複数層の紙から成る段ボールS)が高速度で次から次へとダイロール1とアンビルロール2との間に順次送られてくる。
【0049】
段ボールSには、種々の厚さのものがあり、通常0.5mm程度から8mm程度の厚さのものが多用されている。これらの段ボールSは、複数層の紙から構成されて波状の構造体を有するために、何れも剛性は強いが、剛性の大きさは様々である。
【0050】
従来と同様に、ダイロール1を構成するダイボード10は、最終製品となる箱などに形成する前の展開状態の平坦なシート素材に加工するため、ダイロール1のロール本体1aの外周面に沿うように湾曲する半円筒状のベニヤ板等からなる基板11に、金属製の加工具12を植え込むように取り付けたものである。
【0051】
加工具12には、先端部に刃を有する切刃部材12aと先端部に罫線の形状に対応する形状を有する罫入部材12bとがあり、ダイボード10は図示省略した基板11の穴を介してボルトによりダイロール1の周面に沿って固定される。加工具12のうち、ダイロール1の回転方向に直交するように横切る方向であるダイロール1の幅方向に延びて、シートSに最初に当接し、初期の段階でシートSの移動方向に対して横切る方向に喰い込んで加工を行うものが初期加工具12である。
【0052】
そして、従来と同様、初期加工具12が切刃部材12aである場合、切刃部材12aの先端は、シートSへの喰い込み量が最大となってアンビルロール2の表面に接し、アンビルロール2の表面を押圧することによって、アンビルロール2の上方のシートSを切断して打抜加工を行う。また、初期加工具12が罫入部材12bである場合、罫入部材12bの先端は、シートSへの喰い込みを開始して最大の喰い込み量となるまでの間、アンビルロール2に直接接することなく、アンビルロール2の上方の厚みのあるシートSを押圧して窪ませ、シートSに所要形状の罫線を入れる罫入加工を行う。従って、従来と同様に、ダイボード10の基板11の表面からの罫入部材12bの突出高さは、切刃部材12aの突出高さより低く設定されている。
【0053】
<ハードカット方式>
ハードカット方式の場合、アンビルロール2の表層部は、従来のハードカット方式の場合と同様に鋼製で硬さを持たせたものである。このハードカット方式におけるシートSの加工に際しては、従来の場合と同様、図3および図4に示すように、切刃部材12aが回転移動し、切刃部材12aの刃先がシートSへ接することにより喰い込み始めて切断を開始し、シートSの厚み分まで徐々に喰い込んでいき、その喰い込み量の最も大きくなる点である最下点でアンビルロール2に接した時点で、シートSは切断加工される。ここで、アンビルロール2のロール本体2aの軸を支持する軸受は、その軸に対して直交する方向への遊びや余裕を元来有しており、その遊びや余裕の大きさの範囲内で、切刃部材12aの刃先が最下点でアンビルロール2を僅かに押圧して、シートSを確実に切断する。
【0054】
ダイボード10の基板11の表面からの切刃部材12aの突出高さは、アンビルロール2のロール本体2aの軸を支持する軸受の上記遊びや余裕の大きさの範囲内でアンビルロール2が移動することを考慮し、さらに機械個々の特性にも対応して微妙に調整される。この突出高さが低過ぎるとシートSを適切に切断できず、また、高過ぎると軸受に負荷が掛かり過ぎて故障を起こしたり、アンビルロール2の表面を傷つけたり、刃先の破損を招いたりする。
【0055】
図1乃至図4に示すように、ダイロール1を構成するダイボード10において、基板11には、加工具12のうち、ダイロール1の回転方向と直交するように横切る方向であるダイロール1の幅方向に延びてシートSに最初に当接し、初期の段階で打抜加工を行う初期加工具12としての切刃部材12aの前方に間際で近接して、ダイボード10の周面に沿うように、本発明による押圧部材13が取付具備されている。
【0056】
押圧部材13は、罫入部材12bと同様の金属製の短い帯材であり、初期加工具12よりも先に、アンビルロール2をその軸を支持する軸受が上記のように元来有する遊びや余裕の範囲内の大きさで、シートSを介して上方から間接的に押圧できる程度に、基板11の表面からの突出高さ寸法を有する。これによって、押圧部材13は、アンビルロール2とその表面に接するシートSを上下方向に動かない状態にして、シートSを正確な位置で切断することができる。
【0057】
図2において、仮想的に二点鎖線で示したシートSの外周寄りの切刃部材12aの内側に当たる部分が、打ち抜かれて製品のシート素材となる製品部であり、その外側に当たるシートSの前端部分は、所定長さの屑として除去される切断屑代としての端部代Sgとなり、端部代Sgは製品部と一体的になって次へ送られる。また、初期加工具12が罫入部材12bである場合も、シートSの前端部分に端部代Sgとしての屑代部は生じる。
【0058】
なお、図4に示すように、シートSの前端部の端部代Sgの長さは、初期加工具12が最下点に至る時点までは押圧部材13の後端で端部代Sgを押圧できるように、初期加工具12の前端と押圧部材13の後端との間隔以上の寸法を必要とするが、長過ぎるとシートSのロスが多くなり、また、短過ぎるとシートSの化粧断ちを適度に行えなくなるので、これらの点を考慮して、初期加工具12の前端と押圧部材13の後端との間隔以上であって、適度に化粧断ちできる長さであればよい。従って、端部代Sgの長さは、押圧部材13の長さよりも短くてもよい。すなわち、初期加工具12が最下点に至る時点までは押圧部材13の後端で端部代Sgを押圧できる長さであれば、押圧部材13の前端部分で端部代Sgを全く押圧できないような短い寸法であってもよい。
【0059】
ハードカット方式の場合におけるダイボード10の基板11の表面からの押圧部材13の突出高さは、高すぎるとアンビルロール2のロール本体2aを支持する軸受に負荷がかかり過ぎて故障を起こしたり、また、ダイロール1からアンビルロール2が離れすぎて加工具12でのシートSへの加工が適切に行われなかったりすることがあり、低すぎると、アンビルロール2のロール本体2aの軸受の遊びや余裕の大きさの範囲内でアンビルロール2を適切に押圧できなくなる恐れがある。
【0060】
また、押圧部材13は、シートSを介してアンビルロール2を押圧するので、シートSの厚さに起因する分だけ余分にアンビルロール2を押圧することになって、アンビルロール2が必要以上にダイボード10から離れて、加工具12でシートSを適切に加工できなくなる恐れがある。
【0061】
従って、ダイボード10の基板11の表面からの押圧部材13の突出高さは、アンビルロール2のロール本体2aを支持する軸受が元来有する固有の遊びや余裕の範囲内でアンビルロール2が軸方向に直交する方向に動くように、例えば加工具12である切刃部材12aの基板11の表面からの突出高さよりも少し低く設定し、その程度は、押圧部材13の材質や硬度、使用している間の変形による高さ寸法の変化、アンビルロール2のロール本体2aを支持する軸受の遊びや余裕、機械個々の特性等を、押圧部材13の破損防止の観点を含めて考慮し、適宜微妙に調整して決定する。
【0062】
このような押圧部材13は、ダイロール1の回転方向に対し、前端部から後端部にわたって周方向に所定の長さを有しており、シートSの前端側の端部代Sgを押圧し、アンビルロール2とで挟むように、ダイボード10の前後方向に対し傾いて「ハ」の字状に延びている。
【0063】
ここで、押圧部材13の前端は、初期加工具12である切刃部材12aがアンビルロール2へ激しく接触し、シートSへ最も大きく喰い込む点である最下点に至る直前までにアンビルロール2を押圧できる部位に位置している。なお、あまり早い時点でアンビルロール2を押圧する部位に位置していると、押圧部材13が長くなって、無駄な部分を有するものとなる。
【0064】
押圧部材13の長さは、初期加工具12が最下点に至る時点まではその後端が端部代Sgの押圧状態を維持できる寸法であれば、初期加工具12の前端と初期加工具12の間際に位置する押圧部材13の後端との間隔以上とされた端部代Sgの長さに対して相当程度短くてもよい。
【0065】
押圧部材13の後端は、初期加工具12に接触しない程度に、その前方の少し離れた間際に近接して位置している。押圧部材13の後端が初期加工具12に接していると、押圧部材13と初期加工具12とが一体となるため、初期加工具12がシートSに適切に食い込むことができなくなって、初期加工具12でのシートSへの適切な加工が行われなくなったり、また、押圧部材13が使用中に変形して初期加工具12に強く当たり、初期加工具12が変形したり破損したりすることがある。また、押圧部材13の後端が初期加工具12に接触するように押圧部材13をダイボード10の基板11に取り付けることは困難である。
【0066】
押圧部材13の後端と初期加工具12の前端との間隔は、それらの変形等によって押圧部材13の後端が初期加工具12の前端に接触しない程度とし、好ましくは、1mm~5mm程度の範囲として、押圧部材13の後端が初期加工具12の直前で少し離れた間際な位置となるように、押圧部材13の材質等に応じて適宜決定する。
【0067】
このように、押圧部材13の後端を、切刃部材12aに接触しない程度に前方の少し離れた間際に位置させると、押圧部材13は、切刃部材12aがシートSへの喰い込み量の最も大きくなる点である最下点に至るまでの間、シートSの端部代Sgを介してアンビルロール2をそのロール本体2aに対応する軸受が元来有する固有の遊びや余裕の範囲内において、下方へ押圧しているので、切刃部材12aがシートSへの当接時にシートSやアンビルロール2から受ける衝撃や負荷は大きく緩和される。
【0068】
従って、初期加工具12となる切刃部材12aの長寿命化を図ることができ、打抜加工により製造される展開状態の平坦なシートは、切断のむらや不良のない高精度のシート素材となり、このシート素材から優れた見栄えのよい箱などの最終製品が形成される。
【0069】
なお、シートSの端部代Sgの長さは、押圧部材13による押圧が可能な範囲で短い方が材料のロスを低減でき、また、押圧部材13の後端を初期加工具12としての切刃部材12aに間際までさらに近接させて、切刃部材12aがシートSへ最も大きく喰い込む最下点に至る直前までの間、押圧部材13でアンビルロール2を下方へ押圧できる。
【0070】
この実施形態においては、上述のとおり、図3に示すように、ダイロール1の周方向に所定の長さを有し、回転移動する押圧部材13は、回転移動する切刃部材12aがシートSへの喰い込みを開始する切断開始時点の前から、図4に示すように、切刃部材12aのシートSへの喰い込み量が最大となって、切刃部材12aがシートSを切断し最下点に至るまでの間に、その前端からアンビルロール2の上方に沿って接するシートSに当接し始め、シートSに最初に当接する初期加工具12としての切刃部材12aよりも先に、押圧部材13がシートSとしての段ボールSをアンビルロール2とで挟む状態でアンビルロール2に押し付ける。
【0071】
そして、押圧部材13の後端は、切刃部材12aがシートSへの喰い込み量の最大となる時点までは、シートSを介してアンビルロール2を間接的に押圧し続けて、段ボールSの中しん紙の段を押し潰すことにより、段ボールSの表面を圧縮変形させ、アンビルロール2をそのロール本体2aの軸受が元来有する固有の遊びや余裕の範囲内でその軸に対して直交する方向である下方へ押圧し続けて、高速度で回転しているアンビルロール2が上方へ動かないように抑制している。
【0072】
このとき、アンビルロール2は、押圧部材13によるシートSを介しての押圧によって下方へ移動して、ダイロール1とアンビルロール2の間隔が拡大しており、また、シートSはアンビルロール2と押圧部材13とで挟まれた状態で確実に送られているので、ダイロール1とアンビルロール2の間にシートSがスムーズに送り込まれ、詰まってトラブルを引き起こすことがない。
【0073】
そして、図4に示すように、押圧部材13が押し付けられた部分に続いて、下方へ窪むように圧縮変形した段ボールSの表面からアンビルロール2の表面へと初期加工具12としての切刃部材12aの刃先が当接していき、段ボールSが切断される。
【0074】
この加工において、押圧部材13によるアンビルロール2の上方の段ボールSへの押圧箇所は、ダイロール1の回転に伴い高速度で回転移動しながら、押圧部材13の前端側から後端側へと移動していき、切刃部材12aが最下点に至る直前まで、押圧部材13によるアンビルロール2に対する押圧力が維持されている。
【0075】
従って、段ボールSは、アンビルロール2と押圧部材13とに端部代Sgがしっかりと強く挟まれた状態で、スリップすることなく正確な速度で送られることになるので、正規の位置で鮮明に加工される。
【0076】
ここで、切刃部材12aが最下点に至った瞬間は、押圧部材13の後端が最下点を通過した後であって、押圧部材13によるアンビルロール2に対する押圧力は最大ではなく減少しているが、上述のとおり、押圧部材13の後端は、初期加工具12としての切刃部材12aの前方に間際で近接しているため、切刃部材12aが最下点に至る直前まで、アンビルロール2は押圧部材13により段ボールSを介してほぼ最大の押圧力で押圧されたままの状態であり、また、アンビルロール2は高速度で回転しているため、切刃部材12aが最下点に至った時点においては、下方へ一旦移動したアンビルロール2がすぐには元の位置に復帰せず、未だ下方へ移動したままの状態となっている。
【0077】
従って、切刃部材12aがシートSへの喰い込み量の最も大きい点である最下点に至ってシートSを切断する度ごとに、切刃部材12aに対してアンビルロール2やシートSから作用する瞬間的で強い衝撃や負荷が大幅に緩和されるので、切刃部材12aの曲折や破損が防止され、シートSが剛性の大きいものであっても、確実な切断加工が行われる。
【0078】
さらに、初期加工具12としての切刃部材12aでの加工時に、押圧部材13でアンビルロール2がシートSを介して下方へ押圧されているので、アンビルロール2やその上方に沿って接するシートSの上下方向への不要な動きが抑制され、加工精度に優れたシート素材が生産される。
【0079】
また、初期加工具12が罫入部材12bである場合においても、切刃部材12aの場合と同様、ダイボード10の基板11に、周方向に所定長さを有する押圧部材13をその後端が罫入部材12bの前方に間際で近接するように設け、罫入部材12bが最下点に至る直前までの間に押圧部材13がその前端からシートSに当接し始め、アンビルロール2をそのロール本体2aの軸受が元来有する固有の遊びや余裕の範囲内で下方へ間接的に押圧し、高速度で回転しているアンビルロール2が上方へ動かないように抑制されるようにする。
【0080】
この場合においても、押圧部材13によるアンビルロール2へのシートSを介した押圧は、ダイロール1の回転に伴い高速度で回転移動しながら、押圧部材13の前端側から後端側へと移動していき、罫入部材12bが最下点に至る直前まで、押圧部材13によるアンビルロール2に対する押圧力が維持されており、罫入部材12bがシートSへの当接時にシートSやアンビルロール2から受ける衝撃は大きく緩和される。
【0081】
なお、シートSに最初に当接する加工具12がダイロール1の回転方向と同方向に延びている場合には、その加工具12の側面部に上述のような負荷が加わることがないので、押圧部材13を設ける必要はない。
【0082】
<ソフトカット方式>
次に、図5及び図6は、上記のようなダイボード10を上方に位置するダイロール1に固定し、下方に位置するアンビルロール2の表面に軟らかいウレタン21を巻くように取り付けたソフトカット方式により、シートSとして剛性の強い板紙Sに打抜及び罫入加工を行う場合を示す。なお、板紙Sには、種々の厚さのものがあり、通常0.5mm程度の厚さのものが多用されている。
【0083】
このソフトカット方式の場合においても、ダイロール1のロール本体1aに固定されるダイボード10において、その基板11には、ダイロール1の回転方向と直交するように横切る方向に延びてシートSとしての板紙Sに最初に当接し、初期の段階で打抜加工を行う初期加工具12としての切刃部材12aには、前方に間際で近接してダイボード10の周面に沿うように、押圧部材13が取り付けられている。押圧部材13は、罫入部材12bと同様の金属製の短い帯材であり、初期加工具12よりも先にアンビルロール2の上方の板紙Sを押圧する。
【0084】
ソフトカット方式の場合、加工具12が切刃部材12aであれば、切刃部材12aの先端がアンビルロール2の表面層の軟らかいウレタン21に接し、少し喰い込むことによって、アンビルロール2の上方の板紙Sを切断する打抜加工を行う。
【0085】
なお、アンビルロール2の表層部を軟らかいウレタン21とした場合、切刃部材12aの先端部のウレタン21への喰い込み量は、従来と同様に1mm~3mm程度であるが、ウレタン21の材質、柔軟度、層の厚さ等に応じて適宜設定される。
【0086】
そして、ハードカット方式の場合と同様に、回転移動する切刃部材12aの刃先は、板紙Sへの喰い込みを開始した後、板紙Sを厚さ方向に貫通するまで徐々に喰い込んでいき、その喰い込み量の最も大きくなる点である最下点で板紙Sは切断加工される。
【0087】
この最下点での切断時には、切刃部材12aの刃先は、アンビルロール2の軟らかいウレタン21の層へ少し喰い込み、アンビルロール2のロール本体2aの軸を支持する軸受の遊びや余裕の大きさの範囲内で、板紙Sを僅かに押圧して確実に切断する。板紙Sの切断屑代となる端部代Sgは、製品部と一体にダイロール1とアンビルロール2の間から送り出されて除去される。
【0088】
図6に示すように、端部代Sgの長さは、ソフトカット方式の場合も、初期加工具12が最下点に至る時点までは押圧部材13の後端で端部代Sgを押圧できるように、初期加工具12の前端と押圧部材13の後端との間隔以上の寸法を必要とするが、長過ぎるとシートSのロスが多くなり、また、短過ぎるとシートSの化粧断ちを適度に行えなくなるので、これらの点を考慮して、初期加工具12の前端と押圧部材13の後端との間隔以上であって、適度に化粧断ちできる長さであればよい。従って、端部代Sgの長さは、押圧部材13の長さよりも短くてもよい。すなわち、初期加工具12が最下点に至る時点までは押圧部材13の後端で端部代Sgを押圧できる長さであれば、押圧部材13の前端部分で端部代Sgを全く押圧できないような短い寸法であってもよい。
【0089】
押圧部材13の前端は、初期加工具12である切刃部材12aが最下点に至る直前までにアンビルロール2を押圧できる部位に位置させればよい。あまり早い時点でアンビルロール2を押圧する部位に位置にさせると、押圧部材13が長くなって、無駄な部分を有するものとなる。
【0090】
押圧部材13の長さは、初期加工具12が最下点に至る時点まではその後端が端部代Sgの押圧状態を維持できる寸法であれば、初期加工具12の前端と初期加工具12の間際に位置する押圧部材13の後端との間隔以上とされた端部代Sgの長さに対して相当程度短くてもよい。
【0091】
押圧部材13の後端は、初期加工具12に接触しない程度に、その前方の少し離れた間際に近接して位置させる。押圧部材13の後端が初期加工具12に接していると、押圧部材13と初期加工具12とが一体的になるため、初期加工具12がシートSに適切に食い込むことができなくなって、初期加工具12でのシートSへの適切な加工が行われなくなったり、また、押圧部材13が使用中に変形して初期加工具12に強く当たり、初期加工具12が変形したり破損したりすることがある。また、押圧部材13の後端が初期加工具12に接触するように押圧部材13をダイボード10の基板11に取り付けることは困難である。
【0092】
押圧部材13の後端と初期加工具12の前端との間隔は、それらの変形等によって押圧部材13の後端が初期加工具12の前端に接触しない程度とし、押圧部材13の後端が初期加工具12の直前で少し離れた間際な位置となるようにする。好ましくは、1mm~5mm程度の範囲として、押圧部材13の材質等に応じて適宜決定する。
【0093】
シートSの切断加工に際しては、上述のハードカット方式の場合と同様、図5に示すように、ダイロール1の周方向に所定の長さを有し、回転移動する押圧部材13は、回転移動する切刃部材12aがシートSへの喰い込みを開始する切断開始時点の前から、図6に示すように、切刃部材12aのシートSへの喰い込み量が最大となり、切刃部材12aがシートSを切断し最下点に至るまでの間に、その前端からアンビルロール2の上方に沿って接するシートSに当接し始め、シートSに最初に当接する初期加工具12としての切刃部材12aよりも先に、押圧部材13がシートSをアンビルロール2とで挟む状態でアンビルロール2に押し付ける。
【0094】
そして、押圧部材13の後端は、切刃部材12aがシートSへの喰い込み量の最大となる時点までは、シートSを介してアンビルロール2を間接的に押圧し続けて、アンビルロール2をそのロール本体2aの軸受が元来有する固有の遊びや余裕の範囲内でその軸に対して直交する方向である下方へ押圧し続けて、高速度で回転しているアンビルロール2が上方へ動かないように抑制している。
【0095】
この加工において、押圧部材13によるアンビルロール2に対するシートSを介しての押圧箇所は、ダイロール1の回転に伴い高速度で回転移動しながら、押圧部材13の前端側から後端側へと移動していき、切刃部材12aが最下点に至る直前まで、押圧部材13によるアンビルロール2に対する押圧力が維持されている。
【0096】
そして、切刃部材12aが最下点に至った瞬間は、押圧部材13の後端が最下点を通過した後であって、押圧部材13によるアンビルロール2に対する押圧力は最大ではなく減少しているが、上述のとおり、押圧部材13の後端は、初期加工具12としての切刃部材12aの前方に間際で近接しているため、切刃部材12aが最下点に至る直前まで、アンビルロール2は押圧部材13により板紙Sを介してほぼ最大の押圧力で押圧されたままの状態であり、また、アンビルロール2は高速度で回転しているため、切刃部材12aが最下点に至った時点においては、下方へ一旦移動したアンビルロール2がすぐには元の位置に復帰せず、未だ下方へ移動したままの状態となっている。
【0097】
従って、切刃部材12aがシートSへの喰い込み量の最も大きい点である最下点に至ってシートSを切断する度ごとに、切刃部材12aに対してアンビルロール2やシートSから作用する瞬間的で強い衝撃や負荷が大幅に緩和されるので、切刃部材12aの曲折や破損が防止され、シートSが剛性の大きいものであっても、確実な切断加工が行われる。
【0098】
また、切刃部材12aでの加工時に、押圧部材13でアンビルロール2がシートSを介して下方へ押圧されているので、アンビルロール2やその上方のシートSの上下方向への不要な動きが抑制されて、シートSが精度よく加工され、高精度のシート素材から優れた見栄えのよい箱などの最終製品が形成される。
【0099】
さらに、このとき、アンビルロール2は、押圧部材13によるシートSを介しての押圧により下方へ移動して、ダイロール1とアンビルロール2の間隔が拡大しており、また、シートSは、アンビルロール2と押圧部材13とで挟まれた状態で確実に送られているので、ダイロール1とアンビルロール2の間にスムーズに送り込まれ、詰まることもなく、トラブルを引き起こすことがない。
【0100】
そして、シートSである板紙Sは、アンビルロール2と押圧部材13によりしっかりと強く挟まれて、スリップすることなく正確な速度で送られるので、正規の位置で鮮明に加工される。
【0101】
ところで、ソフトカット方式の場合、ダイボード10の基板11の表面からの押圧部材13の突出高さが高すぎると、ウレタン21の層を深く傷つけたり、アンビルロール2のロール本体2aの軸受に負荷が掛かりすぎて故障を起こしたりし、逆に、この突出高さが低すぎると、アンビルロール2のロール本体2aの軸受の遊びや余裕の大きさの範囲内でアンビルロール2を適切に押圧できなくなる恐れがある。
【0102】
また、押圧部材13は、シートSとウレタン21とを介してアンビルロール2を押圧するので、これに起因して、アンビルロール2を直接押圧する場合よりも、余分にアンビルロール2を押圧することになり、アンビルロール2が必要以上にダイボード10から離れてしまい、加工具12でシートSを適切に加工できなくなる恐れがある。
【0103】
従って、ダイボード10の基板11の表面からの押圧部材13の突出高さは、アンビルロール2のロール本体2aを支持する軸受が元来有する固有の遊びや余裕の範囲内でアンビルロール2を適切に押圧し軸方向に直交する方向に移動させて、加工具12により適切な加工を行うことができるように、押圧部材13の材質や硬度、アンビルロール2のロール本体2aを支持する軸受が元来有する固有の遊びや余裕、機械個々の特性等を、押圧部材13の破損防止の観点を含めて考慮し、切刃部材12aの基板11の表面からの突出高さより少し低くなる程度となるように、適宜微妙に調整して決定する。
【0104】
上記のようなダイボード10を備えたロータリーダイカッターによる打抜加工に際しては、図5に示すように、ダイロール1の回転方向と直交するように横切る方向に延びてダイボード10の基板11に取り付けられた加工具12のうち、板紙Sに最初に当接する初期加工具12としての切刃部材12aよりも先に、押圧部材13が板紙Sをアンビルロール2に押し付ける。その際、板紙Sはほとんど変形しないが、軟らかいウレタン21の表面が弾力的に下方へ圧縮されて変形する。
【0105】
そして、アンビルロール2が押圧部材13で押圧されて下方へ移動することにより、ダイロール1とアンビルロール2との間隔が拡大され、ダイロール1とアンビルロール2の回転に伴い、板紙Sは、押圧部材13とウレタン21の間に強く挟まれて送られ、初期加工具12としての切刃部材12aの先端部が板紙Sに当接する。
【0106】
このとき、初期加工具12としての切刃部材12aの側面部には、長さ方向にわたって広く瞬間的にダイロール1の回転方向に対し後方へ傾くような負荷が強く加わることがなく、切刃部材12aの先端部に作用する衝撃が緩和される。
【0107】
従って、初期加工具12となる切刃部材12aの先端部の破損や曲折が防止され、この切刃部材12aの長寿命化を図ることができる。
【0108】
また、シートSは、押圧部材13とアンビルロール2とで強く挟まれた状態で正確に送られ、図6に示すように、シートSに初期加工具12で加工が施されるので、シート素材における切断位置や罫線位置の精度も向上し、打抜加工により製造される展開状態の平坦なシートは、切断のむらや不良のない高精度のシート素材となり、上述のとおり、このシート素材から優れた見栄えの良い箱などの最終製品が成形される。
【0109】
ところで、打抜形状によっては、初期加工具12がダイロール1の回転方向に対し直交する方向よりやや傾いて横切る方向に延びている場合もあるが、その場合においても、上記と同様に、初期加工具12に近接した位置に沿うように押圧部材13を配置することによって、初期加工具12に作用する衝撃が緩和される。
【0110】
なお、上記実施形態では、初期加工具12が切刃部材12aである場合について例示したが、初期加工具12は、罫入部材12bであってもよく、この場合においても、初期加工具12となる罫入部材12bの前方に間際で後端が近接する位置に、押圧部材13を配置すればよい。
【0111】
<その他>
上記ハードカット方式及びソフトカット方式の各実施形態では、ダイボード10の基板11の表面からの押圧部材13の突出高さを、基板11の表面からの切刃部材12aの突出高さよりも少し低くし、基板11の表面からの罫入部材12bの突出高さと同程度に揃えているが、ハードカット方式のアンビルロール2の表層のステンレスやソフトカット方式のアンビルロール2の表層のウレタン21はある程度の柔軟性を有し、押圧部材13の取付位置は、シートSの切断屑代となる端部代Sgに対応する位置であるため、基板11の表面からの押圧部材13の突出高さは、シートSの性状やカット方式に応じて、適宜設定すればよい。
【0112】
また、図1及び図2に示すように、上記各実施形態に係る押圧部材13は、初期加工具12に対して、交互に逆となる斜め方向に延びるように、初期加工具12の長さ方向に沿って配置され、それぞれの両端がダイロール1の回転方向において前端及び後端となる「ハ」字状をなすように並んでいるが、押圧部材13は、加工具12の配置に応じて、基板11への取り付けの手間やコスト及びシートSの性状や加工形状を考慮し、初期加工具12に近接して沿うように適宜の形状及び配置とすればよい。
【0113】
例えば、押圧部材13の形状及び配置は、図7(a)に示すように、初期加工具12に断続的に平行するように延びる太い線状のものとしてもよい。また、図7(b)に示すように、初期加工具12に数本ずつ単位となって断続的に平行するように延びる線状のものとしてもよく、図7(c)に示すように、初期加工具12に数本ずつ単位となって直交するように延びる線状のものとしてもよい。そのほか、図7(d)、(e)、(f)に示すように、×状、〇状、△状のものが断続的に並ぶようにしてもよい。このように、押圧部材13は、ダイロール1の回転方向における前端と後端を有する形状及び構造のものであればよい。
【0114】
また、押圧部材13として、罫入部材12bと共通の金属製のものを例示したが、押圧部材13は、硬質材であれば、プラスチック樹脂等の他の材質から成るものであってもよい。例えば、アンビルロール2のロール本体2aの軸を支持する軸受の遊びや余裕の大きさの範囲内で、アンビルロール2を適度に押圧できる程度の硬度を有するものであれば、硬質のプラスチックやコルクのように非金属の硬質材から成るものであってもよい。
【0115】
なお、罫線を必要としない製品の加工に際しては、加工具12として罫入部材12bを設ける必要はなく、切刃部材12aのみを設ければよい。
【0116】
また、上記各実施形態では、上方にダイロール1が配置され、下方にアンビルロール2が配置されたロータリーダイカッターを例示しているが、その配置が上記のタイプとは逆転し、上方にアンビルロール2が配置され、下方にダイロール1が配置されて、ダイロール1とアンビルロール2とが上下に間隔をあけて対向するタイプのものにおいても、ダイロール1に固定されるダイボード10に、上記と同様に押圧部材13を設けると、順次送られてくるシートSに最上点で最も大きく喰い込んで加工を行う初期加工具12としての加工具12は、上記各実施形態に係るロータリーカッターの場合と同様の作用により、先端部が保護され、正常なシート製品を生産することができる。また、ダイロール1とアンビルロール2の間にシートSが詰まるトラブルも防止される。
【符号の説明】
【0117】
1 ダイロール
1a ロール本体
10 ダイボード
11 基板
12 加工具
12 初期加工具
12a 切刃部材
12b 罫入部材
13 押圧部材
2 アンビルロール
2a ロール本体
21 ウレタン
S シート
Sg 端部代(切断屑代)
段ボール
板紙
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9