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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023110302
(43)【公開日】2023-08-09
(54)【発明の名称】脂肪族アルコールを含有する飲料
(51)【国際特許分類】
   C12G 3/04 20190101AFI20230802BHJP
【FI】
C12G3/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022011658
(22)【出願日】2022-01-28
(71)【出願人】
【識別番号】309007911
【氏名又は名称】サントリーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100129458
【弁理士】
【氏名又は名称】梶田 剛
(72)【発明者】
【氏名】神津 早希
(72)【発明者】
【氏名】吉弘 晃
【テーマコード(参考)】
4B115
【Fターム(参考)】
4B115LH11
4B115LP02
(57)【要約】
【課題】アルコール飲料において、脂肪族アルコールが有する油っぽいような刺激のある臭いを低減する。
【解決手段】アルコール飲料のpHと酸度を特定の範囲にする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器詰めアルコール飲料であって、
イソブタノール、n-プロパノール、及びイソアミルアルコールからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有し、当該化合物の含有量の合計が0.05~30ppmであり、
当該飲料のpHが3.2以上5.0未満であり、
当該飲料のクエン酸換算の酸度が0.26g/100mL以上である、
前記アルコール飲料。
【請求項2】
アルコール含有量が、1~16v/v%である、請求項1に記載の飲料。
【請求項3】
炭酸ガスを含有する、請求項1又は2に記載の飲料。
【請求項4】
クエン酸を含有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の飲料。
【請求項5】
イソアミルアルコールを含有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の飲料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の脂肪族アルコール、即ちイソブタノール、n-プロパノール、及びイソアミルアルコールからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有する飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
アルコール発酵では、エタノールに加えて、イソブタノール、イソアミルアルコールなどの脂肪族アルコールが副産物として生成することが知られている。エタノールよりも沸点の高いこれらの脂肪族アルコールは、一般にフーゼル油と呼ばれている。フーゼル油は、各種酒類に特徴的な複雑で奥深い香味をもたらす成分の1つである一方で、油っぽいような刺激のある臭いを呈するものでもある。
【0003】
酒類のフーゼル油を低減させる方法として、特許文献1には、特定の酵母菌細胞を発酵において用いる方法が記載されている。
また、特許文献2には、リモネン及び/またはヌートカトンを含用いて、イソブタノール及び/またはイソアミルアルコールの奥深い香りや複雑な風味を残しつつ刺激的な臭いをマスキングする技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2002-509726号公報
【特許文献2】特開2017-176163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、アルコール飲料において、特定の脂肪族アルコール、即ちイソブタノール、n-プロパノール、及び/又はイソアミルアルコールが有する、油っぽいような刺激のある臭いを低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決する手段を見出すために検討したところ、飲料のpHと酸度を特定範囲に調整することが有効であることを見出した。すなわち、本発明は、これらに限定されないが、以下のものに関する。
1.容器詰めアルコール飲料であって、
イソブタノール、n-プロパノール、及びイソアミルアルコールからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有し、当該化合物の含有量の合計が0.05~30ppmであり、
当該飲料のpHが3.2以上5.0未満であり、
当該飲料のクエン酸換算の酸度が0.26g/100mL以上である、
前記アルコール飲料。
2.アルコール含有量が、1~16v/v%である、1に記載の飲料。
3.炭酸ガスを含有する、1又は2に記載の飲料。
4.クエン酸を含有する、1~3のいずれか一項に記載の飲料。
5.イソアミルアルコールを含有する、1~4のいずれか一項に記載の飲料。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、イソブタノール、n-プロパノール、及び/又はイソアミルアルコールがも
たらす油っぽいような刺激のある臭いを低減することができる。
本明細書における「油っぽいような刺激のある臭い」とは、ガソリンや油性マジックを開けた際に感じられる香りに似た、鼻にツンと感じる刺激のある香りのことを意味し、それには、バーニング感、油っこい後味が包含される。本明細書における「バーニング感」とは、アルコールの刺激で口の中でとげとげしく感じる様子のことを意味し、「油っこい後味」とは、癖のある不快な油様の香味が口の中に長時間にわたって残ることを意味する。したがって、本発明において油っぽいような刺激のある臭いを低減することには、バーニング感を低減すること、油っこい後味を低減すること、又はその両方が包含される。
【0008】
本発明のある態様は、さらに、当該脂肪族アルコールが有する酒らしい複雑で奥深い香味を維持することができ、良好なお酒としての飲みごたえを実現することができる。
本明細書における「飲みごたえ」とは、アルコール含有飲料の味わいが持つ複雑味や、アルコール由来の厚み、余韻の長さなどの、飲んだ際に満足感を与えるアルコール含有飲料の性質を意味する。
【0009】
また、本発明のある態様は、当該脂肪族アルコールを含有するアルコール飲料において高いドリンカビリティーを実現することができる。本明細書における「ドリンカビリティー」とは、飲料が有する、飲みやすく、何杯でも飲みたくなる性質を意味する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のアルコール飲料は、特定の脂肪族アルコールを含有し、特定範囲のpHと酸度を有する。
なお、特に断りがない限り、本明細書において用いられる「ppm」は、重量/容量(w/v)のppmを意味し、これは「mg/L」と同義である。
【0011】
(イソブタノール、n-プロパノール、イソアミルアルコール)
本発明のアルコール飲料は、イソブタノール、n-プロパノール、及びイソアミルアルコールからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有する。本明細書においては、これらの化合物をまとめて脂肪族アルコールと呼ぶことがある。
【0012】
当該飲料は、当該脂肪族アルコールの内の一種類だけを含有してもよいし、二種類以上を含有してもよい。当該飲料中の当該脂肪族アルコールの含有量の合計は、0.05~30ppm、好ましくは0.05~15ppmである。ある態様においては、当該含有量の合計は、0.05~10ppmである。
【0013】
一態様において、本発明のアルコール飲料は、イソアミルアルコールを含有する。当該態様の飲料におけるイソアミルアルコールの含有量の例は、0.05~30ppm、0.05~15ppm、又は0.05~10ppmである。
【0014】
別の態様において、本発明のアルコール飲料は、n-プロパノールを含有する。当該態様の飲料におけるn-プロパノールの含有量の例は、0.05~30ppm、0.05~15ppm、又は0.05~10ppmである。
【0015】
別の態様において、本発明のアルコール飲料は、イソブタノールを含有する。当該態様の飲料におけるイソブタノールの含有量の例は、0.05~30ppm、0.05~15ppm、又は0.05~10ppmである。
【0016】
別の態様において、本発明のアルコール飲料は、イソアミルアルコール及びn-プロパノール、イソアミルアルコール及びイソブタノール、n-プロパノール及びイソブタノール、又はイソアミルアルコール、n-プロパノール、及びイソブタノールを含有する。
【0017】
飲料中のイソブタノール、n-プロパノール、及びイソアミルアルコールの含有量は、当業者に公知のいずれの方法を用いて測定してもよいが、例えば以下の方法で測定することができる。
【0018】
<脂肪族アルコールの分析条件>
測定機器:GC 6890N(Agilent Technologies社製)
カラム:5% CARBOWAX 20M、80/120 Carbopack BAW,8FT x 1/4IN x 2mmID GLASS(Merck社製)
キャリアガス:窒素ガス
流量:18.8mL/min
注入口温度:200℃
カラム温度:70℃(0分間保持)~154℃(10分間保持)、昇温速度4℃/min注入量:1.0μL
検出器:FID
(pH)
本発明の飲料のpHは、3.2以上5.0未満、好ましくは3.3以上5.0未満、より好ましくは3.5以上5.0未満、より好ましくは3.5~4.5、より好ましくは3.6~4.2、より好ましくは3.7~4.1である。
【0019】
なお、本明細書において、飲料のpHは、炭酸ガス抜きの状態で測定されたpHを意味する。したがって、たとえば、飲料のガス抜きと振とうの工程を実施したのちにpHを測定することができる。酸度と共にpHを適切な範囲にすると、脂肪族アルコールが有する油っぽいような刺激のある臭いを低減することができる。
【0020】
pHの調整のためには、リンゴ酸、リン酸、乳酸、酒石酸、コハク酸、グルコン酸、フィチン酸、酢酸、フマル酸、重曹、炭酸水素ナトリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、炭酸カリウムなどのpH調整剤を用いることができる。
【0021】
(酸度)
本発明の飲料の酸度は、0.26g/100mL以上、好ましくは0.30g/100mL以上、より好ましくは0.41g/100mL以上であり、より好ましくは0.41~0.80g/100mLである。pHと共に酸度を適切な範囲にすると、脂肪族アルコールが有する油っぽいような刺激のある臭いを低減することができる。
【0022】
本明細書において用いる「酸度」とは、炭酸ガス抜きの状態における酸の含有量の指標となる値であり、炭酸ガス抜きの状態で、一定量の飲料(試料)に水酸化ナトリウムなどのアルカリを加えて中和する際の、中和に要した(pH7.0)アルカリの量から計算により求めることができる。酸度の測定には、自動滴定装置(Mettler toledo DL50など)を用いることができる。本発明において、酸度は、クエン酸量に換算した値(中和量から、飲料に含まれている酸が全てクエン酸であると仮定して計算して求める)を用いる。
【0023】
酸度の調整には、クエン酸、リンゴ酸、リン酸、乳酸、酒石酸、コハク酸、グルコン酸、フィチン酸、酢酸、フマル酸などの有機又は無機酸を用いることができる。
(アルコール含有量)
本発明の飲料は、アルコールを含有する。本明細書に記載の「アルコール」との用語は、特に断らない限りエタノールを意味する。
【0024】
本発明の飲料のアルコール含有量は、好ましくは1~16v/v%であり、より好まし
くは3~16v/v%であり、より好ましくは3~12v/v%であり、より好ましくは3~10v/v%である。
【0025】
アルコールはどのような手段で飲料に含有させてもよいが、本発明の特に好ましい態様の一つはチューハイなどのRTDであるため、本発明の飲料は蒸留酒を含有することが好ましい。蒸留酒は、その原料や製造方法によって限定されない。当該蒸留酒としては、例えば、スピリッツ(例えば、ウオツカ、ラム、テキーラ、ジン、アクアビット、コルン)、醸造用アルコール、ニュートラルスピリッツ、リキュール類、ウイスキー、ブランデー、焼酎が挙げられる。またこれら蒸留酒に果実、野菜、お茶、スパイス、ハーブなどを浸漬させたものを使用しても良い。
【0026】
本明細書においては、飲料のアルコール含有量は、公知のいずれの方法によっても測定することができるが、例えば、振動式密度計によって測定することができる。具体的には、飲料から濾過又は超音波によって炭酸ガスを抜いた試料を調製し、そして、その試料を直火蒸留し、得られた留液の15℃における密度を測定し、国税庁所定分析法(平19国税庁訓令第6号、平成19年6月22日改訂)の付表である「第2表 アルコール分と密度(15℃)及び比重(15/15℃)換算表」を用いて換算して求めることができる。
【0027】
本発明のアルコール飲料の種類は特に限定されないが、好ましくは、ハイボール、チューハイ(酎ハイ)、カクテル、サワーなどである。「ハイボール」、「チューハイ」との用語は、本発明の飲料との関連で用いられる場合、水と蒸留酒と炭酸とを含有する飲料を意味する。ハイボール、チューハイは、さらに果汁を含有してもよい。また、「サワー」との用語は、本発明の飲料との関連で用いられる場合、スピリッツと、柑橘類などの酸味のある果汁と、甘味成分と、炭酸とを含有する飲料を意味する。「カクテル」との用語は、本発明の飲料との関連で用いられる場合、ベースとなる酒に果汁等を混ぜて作られたアルコール飲料を意味する。
【0028】
(炭酸ガス)
本発明の飲料は、炭酸ガスを含んでもよい。炭酸ガスは、当業者に通常知られる方法を用いて飲料に付与することができ、例えば、これらに限定されないが、二酸化炭素を加圧下で飲料に溶解させてもよいし、ツーヘンハーゲン社のカーボネーター等のミキサーを用いて配管中で二酸化炭素と飲料とを混合してもよいし、また、二酸化炭素が充満したタンク中に飲料を噴霧することにより二酸化炭素を飲料に吸収させてもよいし、飲料と炭酸水とを混合してもよい。これらの手段を適宜用いて炭酸ガス圧を調節する。
【0029】
本発明の飲料が炭酸ガスを含有する場合、その炭酸ガス圧は、特に限定されないが、好ましくは0.7~4.5kgf/cm、より好ましくは0.8~2.8kgf/cmである。本発明において、炭酸ガス圧は、京都電子工業製ガスボリューム測定装置GVA-500Aを用いて測定することができる。例えば、試料温度を20℃にし、前記ガスボリューム測定装置において容器内空気中のガス抜き(スニフト)、振とう後、炭酸ガス圧を測定する。本明細書においては、特に断りがない限り、炭酸ガス圧は、20℃における炭酸ガス圧を意味する。
【0030】
(果汁)
本発明の飲料は、果汁を含有してもよい。果汁は、果実を搾汁して得られる果汁をそのまま使用するストレート果汁、濃縮した濃縮果汁などのいずれの形態であってもよい。また、透明果汁、混濁果汁を使用することもでき、果実の外皮を含む全果を破砕し種子など特に粗剛な固形物のみを除いた全果果汁、果実を裏ごしした果実ピューレ、或いは、乾燥果実の果肉を破砕もしくは抽出した果汁を用いることもできる。
【0031】
果汁の種類は、特に限定されないが、例えば、柑橘類果汁(オレンジ果汁、うんしゅうみかん果汁、グレープフルーツ果汁、レモン果汁、ライム果汁、柚子果汁、いよかん果汁、なつみかん果汁、はっさく果汁、ポンカン果汁、シイクワシャー果汁、かぼす果汁等)、リンゴ果汁、ブドウ果汁、モモ果汁、熱帯果実果汁(パイナップル果汁、グァバ果汁、バナナ果汁、マンゴー果汁、アセロラ果汁、ライチ果汁、パパイヤ果汁、パッションフルーツ果汁等)、その他果実の果汁(ウメ果汁、ナシ果汁、アンズ果汁、スモモ果汁、ベリー果汁、キウイフルーツ果汁等)、イチゴ果汁、メロン果汁などが挙げられる。これらの果汁は、1種類を単独使用しても、2種類以上を併用してもよい。
【0032】
本発明の飲料における果汁の含有量は、特に限定されないが、典型的には、果汁率に換算して0~100w/w%、10w/w%未満、又は0~9w/w%である。
本発明では、飲料中の「果汁率」を飲料100g中に配合される果汁配合量(g)を用いて下記換算式によって計算することとする。また濃縮倍率を算出する際はJAS規格に準ずるものとし、果汁に加えられた糖質、はちみつ等の糖用屈折計示度を除くものとする。
【0033】
果汁率(w/w%)=<果汁配合量(g)>×<濃縮倍率>/100mL/<飲料の比重>×100
(他の成分)
本発明における飲料には、他にも、本発明の効果を損なわない限り、飲料に通常配合する添加剤、例えば、香料、ビタミン、色素類、酸化防止剤、保存料、調味料、エキス類、品質安定剤等を配合することができる。
【0034】
本発明の一態様の飲料においては、イソα酸の含有量の合計が0~0.0001g/Lである。また、本発明の別の態様の飲料においては、クエン酸含有量/酒石酸含有量の重量比が1.1以上である。
【0035】
(容器詰め飲料)
本発明の飲料は、容器詰めの形態で提供される。容器の形態には、缶等の金属容器、ペットボトル、紙パック、瓶、パウチなどが含まれるが、これらに限定されない。例えば、本発明の飲料を容器に充填した後にレトルト殺菌等の加熱殺菌を行う方法や、飲料を殺菌して容器に充填する方法を通じて、殺菌された容器詰め製品を製造することができる。
【0036】
(関連する方法)
本発明は、別の側面では、イソブタノール、n-プロパノール、及びイソアミルアルコールからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有し、当該化合物の含有量の合計が0.05~30ppmであるアルコール飲料において、当該化合物が有する、油っぽいような刺激のある臭いを低減する方法である。当該方法は、以下の工程を含む:
当該飲料のpHを3.2以上5.0未満に調整する工程、及び
当該飲料の酸度(クエン酸換算)を0.26g/100mL以上に調整する工程。
【0037】
当該方法は、当該飲料中の脂肪族アルコールの含有量の合計が0.05~30ppmとなるように原料を配合する工程を更に含んでもよい。
飲料中の成分の種類、その含有量、酸度、pH、炭酸ガス圧、及びそれらの好ましい範囲、並びにその調整方法については、本発明の飲料に関して上記した通りであるか、それらから自明である。そのタイミングも限定されない。例えば、上記工程をすべて同時に行ってもよいし、別々に行ってもよいし、それらの工程の順番を入れ替えてもよい。最終的に得られた飲料が、上記の条件を満たせばよい。
【0038】
(数値範囲)
明確化のために記載すると、本明細書における数値範囲は、その端点、即ち下限値及び上限値を含む。
【実施例0039】
以下に実施例に基づいて本発明の説明をするが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(試験例1) イソアミルアルコールの味と、それに対するpHと酸度の影響
アルコール含有量が7v/v%である複数のサンプル飲料を調製し、それらについて官能評価をした。
【0040】
具体的には、アルコール含有量が7v/v%であるアルコール水溶液を調製し、そのpH、クエン酸換算の酸度、イソアミルアルコール含有量を変動させた。酸度はクエン酸を用いて調整し、pH調整のために、少量のpH調整剤を用いた。
【0041】
次いで、各サンプル飲料について専門パネル4名が以下の基準にしたがって官能評価し、そのスコアの平均値を求めた。
(バーニング感の弱さ)
1点:バーニング感を強く感じられる
2点:バーニング感が感じられる
3点:バーニング感が少し感じられる
4点:バーニング感が余り感じられない
5点:バーニング感が感じられない
(油っこい後味の弱さ)
1点:油っこい後味を強く感じられる
2点:油っこい後味が感じられる
3点:油っこい後味が少し感じられる
4点:油っこい後味が余り感じられない
5点:油っこい後味が感じられない
(お酒としての飲みごたえ)
1点:お酒としての飲みごたえが低い
2点:お酒としての飲みごたえがやや低い
3点:お酒としての飲みごたえがやや高い
4点:お酒としての飲みごたえが高い
5点:お酒としての飲みごたえがとても高い
(ドリンカビリティー)
1点:ドリンカビリティーが低い
2点:ドリンカビリティーがやや低い
3点:ドリンカビリティーがやや高い
4点:ドリンカビリティーが高い
5点:ドリンカビリティーがとても高い
(総合評価)
1点:好ましくない
2点:やや好ましくない
3点:やや好ましい
4点:好ましい
5点:とても好ましい
総合評価は、上記4項目とは別に、全体として好ましい味であるかを評価した。
【0042】
官能評価で2点台の物が2項目以上、あるいは1点台の物が1項目以上の場合は好ましくない。また、総合評価が3点以上のものは合格である。この評価試験は、他の試験例で
も用いた。
【0043】
なお、評価の個人差を少なくするために、専門パネルは、各スコアに対応した標準サンプルを用いて事前に各スコアと味との関係の共通認識を確立した。
結果を以下の表に示す。
【0044】
【表1】
【0045】
イソアミルアルコールの含有量上昇にともなって油っこい後味が増加し、それに対してpHと酸度を共に適切な範囲に調整すると、当該後味が低減された(サンプル1~6)。また、その効果は、イソアミルアルコールの濃度を高めても認められた(サンプル7)。
【0046】
(試験例2) pHと酸度の影響
試験例1と同様にして、アルコール含有量が7v/v%である複数のサンプル飲料を調製し、それらについて官能評価をした。
【0047】
サンプル飲料中のイソアミルアルコールの含有量を固定し、そのpH又はクエン酸換算の酸度を変動させた。結果を以下の表に示す。
【0048】
【表2】
【0049】
特定のpH範囲と比較的広い酸度範囲で好ましい効果が得られた。
(試験例3)
試験例1及び2に準じて、種々の条件を変更したサンプル飲料を調製した。
【0050】
まず、サンプル2及び5と類似のサンプル飲料を、クエン酸の代わりにリンゴ酸を用いて調製した(サンプル13及び14)。
また、アルコール含有量、イソアミルアルコール含有量を変動させた(サンプル15~20)。この場合には、リンゴ酸でなくクエン酸を用いた。結果を以下の表に示す。
【0051】
【表3】
【0052】
酸の種類を変更しても影響は認められなかった(サンプル13及び14)。また、広いアルコール含有量範囲と特定のイソアミルアルコール含有量範囲で、好ましい効果が認められた。
【0053】
(試験例4) n-プロパノール及びイソブタノール
イソアミルアルコールの代わりにn-プロパノール又はイソブタノールを用いて、試験例1及び2と類似の試験を行った。結果を以下の表に示す。
【0054】
【表4】
【0055】
n-プロパノール及びイソブタノールのいずれを用いても、イソアミルアルコールを用いた場合と同様の傾向が認められた。また、三成分を同時に用いた場合にも好ましい効果が認められた。