(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023110306
(43)【公開日】2023-08-09
(54)【発明の名称】木製容器由来成分を含有する飲料
(51)【国際特許分類】
C12G 3/04 20190101AFI20230802BHJP
C12G 3/06 20060101ALI20230802BHJP
【ＦＩ】
C12G3/04
C12G3/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】ＯＬ
(21)【出願番号】P 2022011666
(22)【出願日】2022-01-28
(71)【出願人】
【識別番号】309007911
【氏名又は名称】サントリーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100129458
【弁理士】
【氏名又は名称】梶田 剛
(72)【発明者】
【氏名】神津 早希
(72)【発明者】
【氏名】吉弘 晃
【テーマコード（参考）】
4B115
【Ｆターム（参考）】
4B115LG02
4B115LH11
4B115LP02
4B115MA03
(57)【要約】
【課題】アルコール飲料において、木質成分が有する苦味又は渋味を低減する。
【解決手段】アルコール飲料のｐＨと酸度を特定の範囲にする。
【選択図】なし
【解決手段】アルコール飲料のｐＨと酸度を特定の範囲にする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器詰めアルコール飲料であって、
没食子酸、シリング酸、バニリン、及びシリングアルデヒドからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有し、当該化合物の含有量の合計が０．０１～１０ｐｐｍであり、
当該飲料のｐＨが３．２以上５．０未満であり、
当該飲料のクエン酸換算の酸度が０．２６ｇ／１００ｍＬ以上である、
前記アルコール飲料。
没食子酸、シリング酸、バニリン、及びシリングアルデヒドからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有し、当該化合物の含有量の合計が０．０１～１０ｐｐｍであり、
当該飲料のｐＨが３．２以上５．０未満であり、
当該飲料のクエン酸換算の酸度が０．２６ｇ／１００ｍＬ以上である、
前記アルコール飲料。
【請求項2】
没食子酸の含有量が０．０１～４ｐｐｍである、請求項１に記載の飲料。
【請求項3】
シリング酸の含有量が０．０１～３ｐｐｍである、請求項１又は２に記載の飲料。
【請求項4】
バニリンの含有量が０．０１～３ｐｐｍである、請求項１～３のいずれか一項に記載の飲料。
【請求項5】
シリングアルデヒドの含有量が０．０１～７ｐｐｍである、請求項１～４のいずれか一項に記載の飲料。
【請求項6】
アルコール含有量が、１～１６ｖ／ｖ％である、請求項１～５のいずれか一項に記載の容器詰め飲料。
【請求項7】
炭酸ガスを含有する、請求項１～６のいずれか一項に記載の容器詰め飲料。
【請求項8】
クエン酸を含有する、請求項１～７のいずれか一項に記載の飲料。
【請求項9】
没食子酸を含有する、請求項１～８のいずれか一項に記載の飲料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樽などの木製容器に由来する特定の成分、即ち没食子酸、シリング酸（ｓｙｒｉｎｇｉｃ ａｃｉｄ）、バニリン、及びシリングアルデヒド（ｓｙｒｉｎｇａｌｄｅｈｙｄｅ）からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有する飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
ブランデーのように、樽等の木製容器を用いて熟成される酒類には、木製容器由来の成分（木質成分）がアルコールにより溶出し、酒類に味の深みを与えることが知られている。このようにして得られた酒類は、そのまま飲用されることもあるが、氷とともに、または水で割るなどして、飲用されることもある。
【0003】
特許文献１には、リモネンや１－テルピネン－４－オールを含用いて、没食子酸及び／またはシナピルアルデヒドの奥深い香りや複雑な風味を残しつつ、それら成分の苦渋味を低減する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開２０１７－１７６１６２号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、アルコール飲料において、特定の木質成分、即ち没食子酸、シリング酸、バニリン、及びシリングアルデヒドからなる群から選択される少なくとも一種の化合物が有する渋味又は苦味を低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決する手段を見出すために検討したところ、飲料のｐＨと酸度を特定範囲に調整することが有効であることを見出した。すなわち、本発明は、これらに限定されないが、以下のものに関する。
１．容器詰めアルコール飲料であって、
没食子酸、シリング酸、バニリン、及びシリングアルデヒドからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有し、当該化合物の含有量の合計が０．０１～１０ｐｐｍであり、
当該飲料のｐＨが３．２以上５．０未満であり、
当該飲料のクエン酸換算の酸度が０．２６ｇ／１００ｍＬ以上である、
前記アルコール飲料。
２．没食子酸の含有量が０．０１～４ｐｐｍである、１に記載の飲料。
３．シリング酸の含有量が０．０１～３ｐｐｍである、１又は２に記載の飲料。
４．バニリンの含有量が０．０１～３ｐｐｍである、１～３のいずれか一項に記載の飲料。
５．シリングアルデヒドの含有量が０．０１～７ｐｐｍである、１～４のいずれか一項に記載の飲料。
６．アルコール含有量が、１～１６ｖ／ｖ％である、１～５のいずれか一項に記載の容器詰め飲料。
７．炭酸ガスを含有する、１～６のいずれか一項に記載の容器詰め飲料。
８．クエン酸を含有する、１～７のいずれか一項に記載の飲料。
９．没食子酸を含有する、１～８のいずれか一項に記載の飲料。
１．容器詰めアルコール飲料であって、
没食子酸、シリング酸、バニリン、及びシリングアルデヒドからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有し、当該化合物の含有量の合計が０．０１～１０ｐｐｍであり、
当該飲料のｐＨが３．２以上５．０未満であり、
当該飲料のクエン酸換算の酸度が０．２６ｇ／１００ｍＬ以上である、
前記アルコール飲料。
２．没食子酸の含有量が０．０１～４ｐｐｍである、１に記載の飲料。
３．シリング酸の含有量が０．０１～３ｐｐｍである、１又は２に記載の飲料。
４．バニリンの含有量が０．０１～３ｐｐｍである、１～３のいずれか一項に記載の飲料。
５．シリングアルデヒドの含有量が０．０１～７ｐｐｍである、１～４のいずれか一項に記載の飲料。
６．アルコール含有量が、１～１６ｖ／ｖ％である、１～５のいずれか一項に記載の容器詰め飲料。
７．炭酸ガスを含有する、１～６のいずれか一項に記載の容器詰め飲料。
８．クエン酸を含有する、１～７のいずれか一項に記載の飲料。
９．没食子酸を含有する、１～８のいずれか一項に記載の飲料。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、没食子酸、シリング酸、バニリン、及びシリングアルデヒドからなる群から選択される少なくとも一種の化合物がもたらす苦味又は渋味を低減することができる。
本発明のある態様は、さらに、当該木質成分の奥深い香りや複雑な風味を生かして、良好なお酒としての飲みごたえを実現することができる。本明細書における「飲みごたえ」とは、アルコール含有飲料の味わいが持つ複雑味や、アルコール由来の厚み、余韻の長さなどの、飲んだ際に満足感を与えるアルコール含有飲料の性質を意味する。
本発明のある態様は、さらに、当該木質成分の奥深い香りや複雑な風味を生かして、良好なお酒としての飲みごたえを実現することができる。本明細書における「飲みごたえ」とは、アルコール含有飲料の味わいが持つ複雑味や、アルコール由来の厚み、余韻の長さなどの、飲んだ際に満足感を与えるアルコール含有飲料の性質を意味する。
【0008】
また、本発明のある態様は、当該木質成分を含有するアルコール飲料において高いドリンカビリティーを実現することができる。本明細書における「ドリンカビリティー」とは、飲料が有する、飲みやすく、何杯でも飲みたくなる性質を意味する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のアルコール飲料は、特定の木質成分を含有し、特定範囲のｐＨと酸度を有する。
なお、特に断りがない限り、本明細書において用いられる「ｐｐｍ」は、重量／容量（ｗ／ｖ）のｐｐｍを意味し、これは「ｍｇ／Ｌ」と同義である。
なお、特に断りがない限り、本明細書において用いられる「ｐｐｍ」は、重量／容量（ｗ／ｖ）のｐｐｍを意味し、これは「ｍｇ／Ｌ」と同義である。
【0010】
（木質成分）
本発明のアルコール飲料は、没食子酸、シリング酸、バニリン、及びシリングアルデヒドからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有する。
本発明のアルコール飲料は、没食子酸、シリング酸、バニリン、及びシリングアルデヒドからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有する。
【0011】
当該飲料は、当該木質成分の内の一種類だけを含有してもよいし、二種類以上を含有してもよい。当該飲料中の当該木質成分の含有量の合計は、０．０１～１０ｐｐｍ、好ましくは０．０１～７ｐｐｍ、より好ましくは０．０１～４ｐｐｍ、より好ましくは０．０１～３ｐｐｍである。ある態様では、当該含有量は０．０５～２ｐｐｍである。
【0012】
一態様において、本発明のアルコール飲料は、没食子酸を含有する。当該態様の飲料における没食子酸の含有量の例は、０．０１～４ｐｐｍ、０．０１～３ｐｐｍ、０．０１～２ｐｐｍ、又は０．０５～２ｐｐｍである。
【0013】
別の態様において、本発明のアルコール飲料は、シリング酸を含有する。当該態様の飲料におけるシリング酸の含有量の例は、０．０１～７ｐｐｍ、０．０１～６、又は０．０１～３ｐｐｍである。
【0014】
別の態様において、本発明のアルコール飲料は、バニリンを含有する。当該態様の飲料におけるバニリンの含有量の例は、０．０１～７ｐｐｍ、０．０１～６ｐｐｍ、又は０．０１～３ｐｐｍである。
【0015】
別の態様において、本発明のアルコール飲料は、シリングアルデヒドを含有する。当該態様の飲料におけるシリングアルデヒドの含有量の例は、０．０１～７ｐｐｍ、０．０１～６ｐｐｍ、又は０．０１～３ｐｐｍである。
【0016】
別の態様において、本発明のアルコール飲料は、没食子酸及びシリング酸；没食子酸及びバニリン；没食子酸及びシリングアルデヒド；シリング酸及びバニリン；シリング酸及びシリングアルデヒド；バニリン及びシリングアルデヒド；没食子酸、シリング酸及びバニリン；没食子酸、シリング酸及びシリングアルデヒド；没食子酸、バニリン及びシリングアルデヒド；シリング酸、バニリン及びシリングアルデヒド；又は没食子酸、シリング酸、バニリン及びシリングアルデヒドを含有する。
【0017】
飲料中の没食子酸、シリング酸、バニリン及びシリングアルデヒドの含有量はＨＰＬＣやＬＣ－ＭＳなどの当業者に公知のいずれの方法を用いて測定してもよいが、例えば以下の条件のＨＰＬＣで測定することができる。
【0018】
＜木質成分の分析条件＞
測定機器：１２６０ Ｉｎｆｉｎｉｔｙ ＩＩ ＬＣシステム（Ａｇｉｌｅｎｔ Ｔｅｃｈｎｏｌｏｇｉｅｓ社製）
カラム：Ｌｕｎａ Ｃ１８（２） １５０×４．６ｍｍ，粒子径５μｍ（ｐｈｅｎｏｍｅｎｅｘ社製）
カラム温度：４０℃
検出波長：没食子酸 ２６０ｎｍ
シリング酸 ２８０ｎｍ
バニリン ２８０ｎｍ
シリングアルデヒド ３１０ｎｍ
移動相：
Ａ液 超純水：酢酸＝９８：２（酢酸ナトリウム３３ｍＭを含む）
Ｂ液 超純水：酢酸：メタノール：１－プロパノール＝４２：２：５０：６（酢酸ナトリウム３３ｍＭを含む）
送液条件：
測定機器：１２６０ Ｉｎｆｉｎｉｔｙ ＩＩ ＬＣシステム（Ａｇｉｌｅｎｔ Ｔｅｃｈｎｏｌｏｇｉｅｓ社製）
カラム：Ｌｕｎａ Ｃ１８（２） １５０×４．６ｍｍ，粒子径５μｍ（ｐｈｅｎｏｍｅｎｅｘ社製）
カラム温度：４０℃
検出波長：没食子酸 ２６０ｎｍ
シリング酸 ２８０ｎｍ
バニリン ２８０ｎｍ
シリングアルデヒド ３１０ｎｍ
移動相：
Ａ液 超純水：酢酸＝９８：２（酢酸ナトリウム３３ｍＭを含む）
Ｂ液 超純水：酢酸：メタノール：１－プロパノール＝４２：２：５０：６（酢酸ナトリウム３３ｍＭを含む）
送液条件：
【表A】
【0019】
注入量：５．０μＬ
（ｐＨ）
本発明の飲料のｐＨは、３．２以上５．０未満、好ましくは３．５以上５．０未満、より好ましくは３．５～４．５、より好ましくは３．６～４．２、より好ましくは３．７～４．１である。
（ｐＨ）
本発明の飲料のｐＨは、３．２以上５．０未満、好ましくは３．５以上５．０未満、より好ましくは３．５～４．５、より好ましくは３．６～４．２、より好ましくは３．７～４．１である。
【0020】
なお、本明細書において、飲料のｐＨは、炭酸ガス抜きの状態で測定されたｐＨを意味する。したがって、たとえば、飲料のガス抜きと振とうの工程を実施したのちにｐＨを測定することができる。酸度と共にｐＨを適切な範囲にすると、木質成分の苦味又は渋味を低減することができる。
【0021】
ｐＨの調整のためには、リンゴ酸、リン酸、乳酸、酒石酸、コハク酸、グルコン酸、フィチン酸、酢酸、フマル酸、重曹、炭酸水素ナトリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、炭酸カリウムなどのｐＨ調整剤を用いることができる。
【0022】
（酸度）
本発明の飲料の酸度は、０．２６ｇ／１００ｍＬ以上、好ましくは０．４１ｇ／１００ｍＬ以上、より好ましくは０．４１～０．６０ｇ／１００ｍＬである。ｐＨと共に
酸度を適切な範囲にすると、木質成分の苦味又は渋味を低減することができる。
本発明の飲料の酸度は、０．２６ｇ／１００ｍＬ以上、好ましくは０．４１ｇ／１００ｍＬ以上、より好ましくは０．４１～０．６０ｇ／１００ｍＬである。ｐＨと共に
酸度を適切な範囲にすると、木質成分の苦味又は渋味を低減することができる。
【0023】
本明細書において用いる「酸度」とは、炭酸ガス抜きの状態における酸の含有量の指標となる値であり、炭酸ガス抜きの状態で、一定量の飲料（試料）に水酸化ナトリウムなどのアルカリを加えて中和する際の、中和に要した（ｐＨ７．０）アルカリの量から計算により求めることができる。酸度の測定には、自動滴定装置（Ｍｅｔｔｌｅｒ ｔｏｌｅｄｏ ＤＬ５０など）を用いることができる。本発明において、酸度は、クエン酸量に換算した値（中和量から、飲料に含まれている酸が全てクエン酸であると仮定して計算して求める）を用いる。
【0024】
酸度の調整には、クエン酸、リンゴ酸、リン酸、乳酸、酒石酸、コハク酸、グルコン酸、フィチン酸、酢酸、フマル酸などの有機又は無機酸を用いることができる。
（アルコール含有量）
本発明の飲料は、アルコールを含有する。本明細書に記載の「アルコール」との用語は、特に断らない限りエタノールを意味する。
（アルコール含有量）
本発明の飲料は、アルコールを含有する。本明細書に記載の「アルコール」との用語は、特に断らない限りエタノールを意味する。
【0025】
本発明の飲料のアルコール含有量は、好ましくは１～１６ｖ／ｖ％であり、より好ましくは３～１６ｖ／ｖ％でありより好ましくは３～１２ｖ／ｖ％であり、より好ましくは３～１０ｖ／ｖ％である。
【0026】
アルコールはどのような手段で飲料に含有させてもよいが、本発明の特に好ましい態様の一つはチューハイなどのＲＴＤであるため、本発明の飲料は蒸留酒を含有することが好ましい。蒸留酒は、その原料や製造方法によって限定されない。当該蒸留酒としては、例えば、スピリッツ（例えば、ウオツカ、ラム、テキーラ、ジン、アクアビット、コルン）、醸造用アルコール、ニュートラルスピリッツ、リキュール類、ウイスキー、ブランデー、焼酎が挙げられる。またこれら蒸留酒に果実、野菜、お茶、スパイス、ハーブなどを浸漬させたものを使用しても良い。
【0027】
本明細書においては、飲料のアルコール含有量は、公知のいずれの方法によっても測定することができるが、例えば、振動式密度計によって測定することができる。具体的には、飲料から濾過又は超音波によって炭酸ガスを抜いた試料を調製し、そして、その試料を直火蒸留し、得られた留液の１５℃における密度を測定し、国税庁所定分析法（平１９国税庁訓令第６号、平成１９年６月２２日改訂）の付表である「第２表 アルコール分と密度（１５℃）及び比重（１５／１５℃）換算表」を用いて換算して求めることができる。
【0028】
本発明のアルコール飲料の種類は特に限定されないが、好ましくは、ハイボール、チューハイ（酎ハイ）、カクテル、サワーなどである。「ハイボール」、「チューハイ」との用語は、本発明の飲料との関連で用いられる場合、水と蒸留酒と炭酸とを含有する飲料を意味する。ハイボール、チューハイは、さらに果汁を含有してもよい。また、「サワー」との用語は、本発明の飲料との関連で用いられる場合、スピリッツと、柑橘類などの酸味のある果汁と、甘味成分と、炭酸とを含有する飲料を意味する。「カクテル」との用語は、本発明の飲料との関連で用いられる場合、ベースとなる酒に果汁等を混ぜて作られたアルコール飲料を意味する。
【0029】
（炭酸ガス）
本発明の飲料は、炭酸ガスを含んでもよい。炭酸ガスは、当業者に通常知られる方法を用いて飲料に付与することができ、例えば、これらに限定されないが、二酸化炭素を加圧下で飲料に溶解させてもよいし、ツーヘンハーゲン社のカーボネーター等のミキサーを用いて配管中で二酸化炭素と飲料とを混合してもよいし、また、二酸化炭素が充満したタンク中に飲料を噴霧することにより二酸化炭素を飲料に吸収させてもよいし、飲料と炭酸水
とを混合してもよい。これらの手段を適宜用いて炭酸ガス圧を調節する。
本発明の飲料は、炭酸ガスを含んでもよい。炭酸ガスは、当業者に通常知られる方法を用いて飲料に付与することができ、例えば、これらに限定されないが、二酸化炭素を加圧下で飲料に溶解させてもよいし、ツーヘンハーゲン社のカーボネーター等のミキサーを用いて配管中で二酸化炭素と飲料とを混合してもよいし、また、二酸化炭素が充満したタンク中に飲料を噴霧することにより二酸化炭素を飲料に吸収させてもよいし、飲料と炭酸水
とを混合してもよい。これらの手段を適宜用いて炭酸ガス圧を調節する。
【0030】
本発明の飲料が炭酸ガスを含有する場合、その炭酸ガス圧は、特に限定されないが、好ましくは０．７～４．５ｋｇｆ／ｃｍ２、より好ましくは０．８～２．８ｋｇｆ／ｃｍ２である。本発明において、炭酸ガス圧は、京都電子工業製ガスボリューム測定装置ＧＶＡ－５００Ａを用いて測定することができる。例えば、試料温度を２０℃にし、前記ガスボリューム測定装置において容器内空気中のガス抜き（スニフト）、振とう後、炭酸ガス圧を測定する。本明細書においては、特に断りがない限り、炭酸ガス圧は、２０℃における炭酸ガス圧を意味する。
【0031】
（果汁）
本発明の飲料は、果汁を含有してもよい。果汁は、果実を搾汁して得られる果汁をそのまま使用するストレート果汁、濃縮した濃縮果汁などのいずれの形態であってもよい。また、透明果汁、混濁果汁を使用することもでき、果実の外皮を含む全果を破砕し種子など特に粗剛な固形物のみを除いた全果果汁、果実を裏ごしした果実ピューレ、或いは、乾燥果実の果肉を破砕もしくは抽出した果汁を用いることもできる。
本発明の飲料は、果汁を含有してもよい。果汁は、果実を搾汁して得られる果汁をそのまま使用するストレート果汁、濃縮した濃縮果汁などのいずれの形態であってもよい。また、透明果汁、混濁果汁を使用することもでき、果実の外皮を含む全果を破砕し種子など特に粗剛な固形物のみを除いた全果果汁、果実を裏ごしした果実ピューレ、或いは、乾燥果実の果肉を破砕もしくは抽出した果汁を用いることもできる。
【0032】
果汁の種類は、特に限定されないが、例えば、柑橘類果汁（オレンジ果汁、うんしゅうみかん果汁、グレープフルーツ果汁、レモン果汁、ライム果汁、柚子果汁、いよかん果汁、なつみかん果汁、はっさく果汁、ポンカン果汁、シイクワシャー果汁、かぼす果汁等）、リンゴ果汁、ブドウ果汁、モモ果汁、熱帯果実果汁（パイナップル果汁、グァバ果汁、バナナ果汁、マンゴー果汁、アセロラ果汁、ライチ果汁、パパイヤ果汁、パッションフルーツ果汁等）、その他果実の果汁（ウメ果汁、ナシ果汁、アンズ果汁、スモモ果汁、ベリー果汁、キウイフルーツ果汁等）、イチゴ果汁、メロン果汁などが挙げられる。これらの果汁は、１種類を単独使用しても、２種類以上を併用してもよい。
【0033】
本発明の飲料における果汁の含有量は、特に限定されないが、典型的には、果汁率に換算して０～１００ｗ／ｗ％、１０ｗ／ｗ％未満、又は０～９ｗ／ｗ％である。
本発明では、飲料中の「果汁率」を飲料１００ｇ中に配合される果汁配合量（ｇ）を用いて下記換算式によって計算することとする。また濃縮倍率を算出する際はＪＡＳ規格に準ずるものとし、果汁に加えられた糖質、はちみつ等の糖用屈折計示度を除くものとする。
本発明では、飲料中の「果汁率」を飲料１００ｇ中に配合される果汁配合量（ｇ）を用いて下記換算式によって計算することとする。また濃縮倍率を算出する際はＪＡＳ規格に準ずるものとし、果汁に加えられた糖質、はちみつ等の糖用屈折計示度を除くものとする。
【0034】
果汁率（ｗ／ｗ％）＝＜果汁配合量（ｇ）＞×＜濃縮倍率＞／１００ｍＬ／＜飲料の比重＞×１００
（他の成分）
本発明における飲料には、他にも、本発明の効果を損なわない限り、飲料に通常配合する添加剤、例えば、香料、ビタミン、色素類、酸化防止剤、保存料、調味料、エキス類、品質安定剤等を配合することができる。
（他の成分）
本発明における飲料には、他にも、本発明の効果を損なわない限り、飲料に通常配合する添加剤、例えば、香料、ビタミン、色素類、酸化防止剤、保存料、調味料、エキス類、品質安定剤等を配合することができる。
【0035】
本発明の一態様の飲料においては、イソα酸の含有量の合計が０～０．０００１ｇ／Ｌである。また、本発明の別の態様の飲料においては、クエン酸含有量／酒石酸含有量の重量比が１．１以上である。
【0036】
（容器詰め飲料）
本発明の飲料は、容器詰めの形態で提供される。容器の形態には、缶等の金属容器、ペットボトル、紙パック、瓶、パウチなどが含まれるが、これらに限定されない。例えば、本発明の飲料を容器に充填した後にレトルト殺菌等の加熱殺菌を行う方法や、飲料を殺菌して容器に充填する方法を通じて、殺菌された容器詰め製品を製造することができる。
本発明の飲料は、容器詰めの形態で提供される。容器の形態には、缶等の金属容器、ペットボトル、紙パック、瓶、パウチなどが含まれるが、これらに限定されない。例えば、本発明の飲料を容器に充填した後にレトルト殺菌等の加熱殺菌を行う方法や、飲料を殺菌して容器に充填する方法を通じて、殺菌された容器詰め製品を製造することができる。
【0037】
（関連する方法）
本発明は、別の側面では、没食子酸、シリング酸、バニリン、及びシリングアルデヒドからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有し、当該化合物の含有量の合計が０．０１～１０ｐｐｍであるアルコール飲料において、当該化合物が有する苦味又は渋味を低減する方法である。当該方法は、以下の工程を含む：
当該飲料のｐＨを３．２以上５．０未満に調整する工程、及び
当該飲料の酸度（クエン酸換算）を０．２６ｇ／１００ｍＬ以上に調整する工程。
本発明は、別の側面では、没食子酸、シリング酸、バニリン、及びシリングアルデヒドからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有し、当該化合物の含有量の合計が０．０１～１０ｐｐｍであるアルコール飲料において、当該化合物が有する苦味又は渋味を低減する方法である。当該方法は、以下の工程を含む：
当該飲料のｐＨを３．２以上５．０未満に調整する工程、及び
当該飲料の酸度（クエン酸換算）を０．２６ｇ／１００ｍＬ以上に調整する工程。
【0038】
当該方法は、当該飲料中の木質成分の含有量の合計が０．０１～１０ｐｐｍとなるように原料を配合する工程を更に含んでもよい。
飲料中の成分の種類、その含有量、酸度、ｐＨ、炭酸ガス圧、及びそれらの好ましい範囲、並びにその調整方法については、本発明の飲料に関して上記した通りであるか、それらから自明である。そのタイミングも限定されない。例えば、上記工程をすべて同時に行ってもよいし、別々に行ってもよいし、それらの工程の順番を入れ替えてもよい。最終的に得られた飲料が、上記の条件を満たせばよい。
飲料中の成分の種類、その含有量、酸度、ｐＨ、炭酸ガス圧、及びそれらの好ましい範囲、並びにその調整方法については、本発明の飲料に関して上記した通りであるか、それらから自明である。そのタイミングも限定されない。例えば、上記工程をすべて同時に行ってもよいし、別々に行ってもよいし、それらの工程の順番を入れ替えてもよい。最終的に得られた飲料が、上記の条件を満たせばよい。
【0039】
（数値範囲）
明確化のために記載すると、本明細書における数値範囲は、その端点、即ち下限値及び上限値を含む。
明確化のために記載すると、本明細書における数値範囲は、その端点、即ち下限値及び上限値を含む。
【実施例0040】
以下に実施例に基づいて本発明の説明をするが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
（試験例１） 没食子酸の味と、それに対するｐＨと酸度の影響
アルコール含有量が７ｖ／ｖ％である複数のサンプル飲料を調製し、それらについて官能評価をした。
（試験例１） 没食子酸の味と、それに対するｐＨと酸度の影響
アルコール含有量が７ｖ／ｖ％である複数のサンプル飲料を調製し、それらについて官能評価をした。
【0041】
具体的には、アルコール含有量が７ｖ／ｖ％であるアルコール水溶液を調製し、そのｐＨ、クエン酸換算の酸度、没食子酸含有量を変動させた。酸度はクエン酸を用いて調整し、ｐＨ調整のために、少量のｐＨ調整剤を用いた。
【0042】
次いで、各サンプル飲料について専門パネル３名が以下の基準にしたがって官能評価し、そのスコアの平均値を求めた。
（苦味の無さ）
１点：苦味を強く感じられる
２点：苦味が感じられる
３点：苦味が少し感じられる
４点：苦味が余り感じられない
５点：苦味が感じられない
（渋味の無さ）
１点：渋味を強く感じられる
２点：渋味が感じられる
３点：渋味が少し感じられる
４点：渋味が余り感じられない
５点：渋味が感じられない
（お酒としての飲みごたえ）
１点：お酒としての飲みごたえが低い
２点：お酒としての飲みごたえがやや低い
３点：お酒としての飲みごたえがやや高い
４点：お酒としての飲みごたえが高い
５点：お酒としての飲みごたえがとても高い
（ドリンカビリティー）
１点：ドリンカビリティーが低い
２点：ドリンカビリティーがやや低い
３点：ドリンカビリティーがやや高い
４点：ドリンカビリティーが高い
５点：ドリンカビリティーがとても高い
（総合評価）
１点：好ましくない
２点：やや好ましくない
３点：やや好ましい
４点：好ましい
５点：とても好ましい
総合評価は、上記４項目とは別に、全体として好ましい味であるかを評価した。
（苦味の無さ）
１点：苦味を強く感じられる
２点：苦味が感じられる
３点：苦味が少し感じられる
４点：苦味が余り感じられない
５点：苦味が感じられない
（渋味の無さ）
１点：渋味を強く感じられる
２点：渋味が感じられる
３点：渋味が少し感じられる
４点：渋味が余り感じられない
５点：渋味が感じられない
（お酒としての飲みごたえ）
１点：お酒としての飲みごたえが低い
２点：お酒としての飲みごたえがやや低い
３点：お酒としての飲みごたえがやや高い
４点：お酒としての飲みごたえが高い
５点：お酒としての飲みごたえがとても高い
（ドリンカビリティー）
１点：ドリンカビリティーが低い
２点：ドリンカビリティーがやや低い
３点：ドリンカビリティーがやや高い
４点：ドリンカビリティーが高い
５点：ドリンカビリティーがとても高い
（総合評価）
１点：好ましくない
２点：やや好ましくない
３点：やや好ましい
４点：好ましい
５点：とても好ましい
総合評価は、上記４項目とは別に、全体として好ましい味であるかを評価した。
【0043】
官能評価で２点台の物が２項目以上、あるいは１点台の物が１項目以上の場合は好ましくない。また、総合評価が３点以上のものは合格である。この評価試験は、他の試験例でも用いた。
【0044】
なお、評価の個人差を少なくするために、専門パネルは、各スコアに対応した標準サンプルを用いて事前に各スコアと味との関係の共通認識を確立した。
結果を以下の表に示す。
結果を以下の表に示す。
【0045】
【表1】
【0046】
没食子酸の含有量上昇にともなって苦味と渋味が増加し、それに対してｐＨと酸度を共に適切な範囲に調整すると、苦味と渋味が低減された（サンプル１～６）。また、その効果は、没食子酸の濃度を高めても許容範囲であった（サンプル７）。
【0047】
（試験例２） ｐＨと酸度の影響
試験例１と同様にして、アルコール含有量が７ｖ／ｖ％である複数のサンプル飲料を調製し、それらについて官能評価をした。
試験例１と同様にして、アルコール含有量が７ｖ／ｖ％である複数のサンプル飲料を調製し、それらについて官能評価をした。
【0048】
サンプル飲料中の没食子酸の含有量を固定し、そのｐＨ又はクエン酸換算の酸度を変動させた。結果を以下の表に示す。
【0049】
【表2】
【0050】
特定のｐＨ範囲と比較的広い酸度範囲で好ましい効果が得られた。
（試験例３）
試験例１及び２に準じて、種々の条件を変更したサンプル飲料を調製した。
（試験例３）
試験例１及び２に準じて、種々の条件を変更したサンプル飲料を調製した。
【0051】
まず、サンプル６と同様のサンプル飲料を、クエン酸の代わりにリンゴ酸を用いて調製した（サンプル１３）。
また、アルコール含有量、没食子酸含有量、ｐＨ、酸度を変動させた（サンプル１４～１８）。この場合には、リンゴ酸でなくクエン酸を用いた。結果を以下の表に示す。
また、アルコール含有量、没食子酸含有量、ｐＨ、酸度を変動させた（サンプル１４～１８）。この場合には、リンゴ酸でなくクエン酸を用いた。結果を以下の表に示す。
【0052】
【表3】
【0053】
酸の種類を変更しても効果が認められた（サンプル１３）。また、広いアルコール含有量範囲及び酸度範囲、ならびに特定のｐＨ範囲及び没食子酸含有量範囲で、好ましい効果が認められた。
【0054】
（試験例４） シリング酸、バニリン、シリングアルデヒド
没食子酸の代わりにシリング酸、バニリン、又はシリングアルデヒドを用いて、試験例１及び２と類似の試験を行った。結果を以下の表に示す。
没食子酸の代わりにシリング酸、バニリン、又はシリングアルデヒドを用いて、試験例１及び２と類似の試験を行った。結果を以下の表に示す。
【0055】
【表4A】
【0056】
【表4B】
【0057】
シリング酸、バニリン、シリングアルデヒドのいずれを用いても、没食子酸を用いた場合と同様の傾向が認められた。また、四成分を同時に用いた場合にも好ましい効果が認められた。