(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023110315
(43)【公開日】2023-08-09
(54)【発明の名称】弦楽器のエンドピンストッパー
(51)【国際特許分類】
G10D 3/01 20200101AFI20230802BHJP
G10G 5/00 20060101ALI20230802BHJP
G10D 1/02 20060101ALI20230802BHJP
【FI】
G10D3/01
G10G5/00
G10D1/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022011681
(22)【出願日】2022-01-28
(71)【出願人】
【識別番号】519106378
【氏名又は名称】京都ケミカル株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】592003463
【氏名又は名称】株式会社コスモジャパン
(72)【発明者】
【氏名】島田 元夫
【テーマコード(参考)】
5D002
5D182
【Fターム(参考)】
5D002AA01
5D002CC58
5D002DD07
5D182BB07
(57)【要約】
【課題】 床材が絨毯やラグなどの下地から繊維が出てきている繊維製床敷物であっても、エンドピンストッパーが滑らず安定した演奏ができる弦楽器のエンドピンストッパーを提供する。
【解決手段】床面に載置される弦楽器のエンドピンストッパーであって、前記エンドピンストッパーは、エンドピン受け部を有しエンドピンを支持する本体と前記床面との接触部からなり、前記エンドピンを支持する本体は、ウレタンエラストマーから形成され、前記床面との接触部はウレタンゲルで形成されてなることを特徴とする弦楽器用のエンドピンストッパーである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
床面に載置される弦楽器のエンドピンストッパーであって、
前記エンドピンストッパーは、エンドピン受け部を有しエンドピンを支持する本体と前記床面との接触部からなり、
前記エンドピンを支持する本体はウレタンエラストマーから形成され、前記床面との接触部はウレタンゲルで形成されてなることを特徴とする弦楽器用のエンドピンストッパー。
【請求項2】
前記ウレタンゲルの硬度がJISAで30以下であることを特徴とする請求項1記載の弦楽器用のエンドピンストッパー。
【請求項3】
前記ウレタンゲルの厚みが0.5mm以上10mm以下であることを特徴とする請求項1または2記載の弦楽器用のエンドピンストッパー。
【請求項4】
前記接触部が、床面側であって端部が中央部よりも厚くなっていることを特徴とする、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の弦楽器用のエンドピンストッパー。
【請求項5】
前記ウレタンエラストマーと前記ウレタンゲルが一体化されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の弦楽器用のエンドピンストッパー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弦楽器のエンドピンストッパーに関し、特に、チェロやコントラバスのように、エンドピンが構成要素とされている弦楽器を支持するエンドピンストッパーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
チェロやコントラバスなどの弦楽器は、床面に当接するエンドピンが構成要素とされている。エンドピンの先端を床面に当接させて演奏すると、楽器本体の振動を床材に伝達することにより、より豊かな音色(振動)効果を奏することができる。しかしながら、上記エンドピンを床材に当接させると、先端により床面が傷付いたり、床材がタイルやメラミン樹脂のように硬質の素材であると滑って位置ずれを起こすことがある。このためエンドピンストッパーの下面には滑り止め用のゴム板が貼付されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2007-139876号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、床材が硬い場合は下面がゴム板であると滑り止め機能が十分に発揮できるが、床材が絨毯やラグなどの下地から繊維が出てきている繊維製床敷物であるとゴム板は有効でなくエンドピンストッパーがずれて安定した演奏ができなくなるという問題がある。
本発明の目的は、床材が絨毯やラグなどの下地から繊維が出てきている繊維製床敷物であっても、エンドピンストッパーが滑らず安定した演奏ができる弦楽器のエンドピンストッパーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
発明者は、鋭意検討した結果、エンドピンストッパーの接触部が繊維でも侵入できるぐらいの非常に柔らかい素材であるウレタンゲルであると絨毯でも滑らないことを見出し本発明に至った。
すなわち、本発明は、床面に載置される弦楽器のエンドピンストッパーであって、
前記エンドピンストッパーは、エンドピン受け部を有しエンドピンを支持する本体と前記床面との接触部からなり、
前記エンドピンを支持する本体はウレタンエラストマーから形成され、前記床面との接触部はウレタンゲルで形成されてなることを特徴とする弦楽器用のエンドピンストッパーである。
【0005】
さらに本発明は、前記ウレタンゲルの硬度がJISAで30以下であることを特徴とする。
【0006】
さらに本発明は、前記ウレタンゲルの厚みが0.5mm以上10mm以下であることを特徴とする。
【0007】
前記接触部が、床面側であって端部が中央部よりも厚くなっていることを特徴とする。
【0008】
さらに本発明は、前記ウレタンエラストマーと前記ウレタンゲルが一体化されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、床材が絨毯やラグなどの下地から繊維が出てきている繊維製床敷物であっても、エンドピンストッパーが滑らず安定した演奏ができる弦楽器のエンドピンストッパーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態であるエンドピンストッパーの、中央を通る垂直面で切断したときの概念的な断面図である。
【
図2】本発明における一実施形態のエンドピンストッパーを製造する際の金型である。
【
図3】本発明の一実施形態である、端部が中央部より厚くなっているエンドピンストッパーの、中央を通る垂直面で切断したときの概念的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態につき、詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではない。本発明と同一および均等の範囲内において、以下の実施の形態に対して種々の変更を加えることが可能である。
【0012】
〔エンドピンストッパーの構造〕
エンドピンストッパーは、エンドピン受け部を有しエンドピンを支持する本体(以下、単に支持本体という)と床面との接触部(以下、単に接触部という)からなる。
エンドピンストッパーは、通常所定の厚みを有する円盤状の部材であるが、形状としては、平面的には円形状であっても矩形状であってもよい。エンドピンストッパーの大きさや厚みについても特に限定はないが、従来使用されているものと同じものが好ましい。大きさは、好ましくは2cm以上15cm以下であり、厚みは好ましくは10mm以上50mm以下である。
【0013】
エンドピンストッパーのほぼ中央にはエンドピン受け部(凹部や筒)が形成される。凹部については、たとえば登録実用第3210352号公報、特開2021-67854号公報に記載されているものが使用できる。凹部に替えて筒(貫通孔)であってもよいし、貫通孔については、たとえば特開2006-30436号公報に記載されているものが使用できる。貫通孔は垂直であっても傾斜してもよい。また、貫通孔には付勢する圧接ピンが設置されていてもよい。付勢する圧接ピンを利用するものは、たとえば特開2007-139876号公報に記載されているものが使用できる。弦楽器のエンドピンは支持本体のこれらの凹部や筒に支えられる。貫通孔の場合はエンドピンが床面まで到達するように形成されていてもよいし、到達しないように形成されていてもよい。凹部や貫通孔の径は一定でも、床面に近づくほど小さくなってもよい。
凹部または貫通孔の断面形状は円形が好ましい。径は好ましくは5mm以上30mm以下である。
【0014】
本発明においては、支持本体はウレタンエラストマーで形成される。ウレタンエラストマーであると弾力性があるがエンドピンを保持する硬さがあり、しかも支持本体の形状が自由に製造できる。
【0015】
支持本体の下側で床面と接触する接触部は、凹凸のないフラットな状態が好ましい。フラットであると床面との接触面が大きくなり、摩擦力は大きくなり滑りにくくなる。本発明においては、接触部はウレタンゲルで形成される。
接触部がウレタンゲルであると、床材が絨毯やラグなどの下地から繊維が出てきている繊維製床敷物であっても十分に滑り止め効果を発揮する。接触部が通常のゴム板であると粘着性があるが、粘着性によって繊維に付着しても繊維は下から出ており繊維は動くことが可能なので、それに粘着しているエンドピンストッパーも動いてしまう。ウレタンゲルのように粘着性に加えて柔らかさ、それも繊維でも侵入できるぐらいの非常に柔らかいものであれば、繊維の下の下地の箇所までも入ることができ、滑り止め効果を発揮することができる。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態であるエンドピンストッパーの、中央を通る垂直面で切断したときの概念的な断面図である。
エンドピンストッパー1は支持本体2と床材との接触部3から構成され、中央にエンドピンの受け部である筒状の空洞(凹部)4が形成されている。この凹部4に弦楽器のエンドピンが挿入される。
【0017】
エンドピンストッパーにはエンドピンによる損傷から床面を保護する役割のほかに楽器の位置や姿勢を安定させる役割がある。チェロやコントラバスのような低音弦楽器は演奏中の奏者の動きに伴って楽器の姿勢が前後左右に大きく変動する。低音弦楽器はエンドピンの先端とエンドピン受け部の接触点を支点として支えられているため、エンドピン受け部の形状によっては演奏中に支点の位置が大きく変動することがあり、奏者に不快感や不安感を与えることがある。エンドピンストッパーはエンドピン受け部によりしっかりと支えられていれば、楽器の姿勢による支点の位置の変動が極めて少なく、エンドピンストッパーも滑らなければ、奏者は楽器の安定感に気をとられることなく演奏に集中することができる。
【0018】
〔エンドピンストッパーの製造方法〕
次にエンドピンストッパーの製造方法について説明する。
本発明におけるエンドピンストッパーの支持本体はウレタンエラストマーから形成され、床面と接触する接触部はウレタンゲルから形成される。
ウレタンエラストマーとウレタンゲルは、どちらもポリオールまたはポリアミンとポリイソシアネートとの反応により形成され、どちらであるかは主としてポリオールのOH基またはポリアミンのNH基とポリイソシアネートのイソシアネート官能基との比率によって決る。その製造法については後述する。
【0019】
支持本体はウレタンエラストマーを形成してから、使用する形状に切り取ってもよいが、支持本体の金型にウレタンエラストマーの原料を流し込み、加熱して形成するのが、一定した形状のものができると同時に作業性がよいので好ましい。
ウレタンエラストマーとウレタンゲルは別々に形成して組み合わせてもよいが、ウレタンエラストマーをある程度形成し、その上にウレタンゲルを重ねておいて加熱するとウレタンエラストマーとウレタンゲルの接触面が反応して一体化するので好ましい。
ウレタンエラストマーとウレタンゲルは同じ原料を使ってもよいし、異なる原料を使ってもよい。
【0020】
ウレタンエラストマーとウレタンゲルは、どちらもポリオールもしくはポリアミンとイソシアネートを反応させて得られる。
ポリオールとしては、分子中にヒドロキシル基を2個以上有するものであれば特に限定されず、従来ウレタン樹脂で使用されてきたものが使用できる。たとえば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリラクトンポリオール、ポリオレフィンポリオール、アクリル系ポリオール、ヒマシ油系ポリオール、シリコーン系ポリオール、エチレン性不飽和単量体で変性された重合体ポリオールなどが挙げられ、これらを単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0021】
これらのポリオールの中でも、ウレタンエラストマーの耐久性の観点から、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオールが好ましく用いられ、さらに、製造時の作業性、経済性の観点から、ポリエーテルポリオールが特に好ましく用いられる。
【0022】
ポリアミンとしては、アルキレンジアミン、ポリアルキレンポリアミン、アルカノールアミンなどの脂肪族アミン、芳香族アミン、脂環式アミン、複素脂環式アミンなどの内でポリアミンが好ましく使用できるが、イソシアネートとの反応上芳香族ポリアミンがさらに好ましい。
【0023】
ウレタンエラストマーは軟質性を有し、軟質度は強度との観点から決められるのが好ましい。軟質度を調整するためには、ポリオールやイソシアネートの種類を選択したり、ポリオールの平均官能基数、水酸基価及び末端官能基と後述するイソシアネートの平均官能基数を調節したりすればよい。分子内に長鎖骨格を含むポリオールやイソシアネートが軟質性を付与しやすい。
【0024】
ポリオールの平均官能基数は、ウレタンエラストマーに軟質性を付与する観点から、好ましくは1.5ないし3.5であり、より好ましくは1.7ないし3.2であり、ポリオールの水酸基価は、好ましくは20ないし200mgKOH/gであり、より好ましくは28ないし160mgKOH/gである。
【0025】
また、ポリオールの末端水酸基の1級OH比率(すなわち、末端に位置する水酸基中の1級水酸基の比率)は、40ないし100%であり、引張強度の向上の観点から、好ましくは50ないし90%である。末端水酸基の1級OH比率が40%以上であると、ウレタンエラストマーの機械物性が良好となる。
【0026】
このようなものとしては、たとえば、ポリオキシプロピレンポリオールの末端水酸基にエチレンオキサイドが開環付加されたポリオキシプロピレン系ポリオールや、さらにそのエチレンオキサイドの付加モル分布が狭いポリオキシアルキレン系ポリオールが挙げられる。これらは特開2002-308811号公報、特開2003-135951号公報に開示されている技術が採用できる。
【0027】
イソシアネートとしては、末端にイソシアネート基を2つ以上有するものであれば特に限定されず、たとえば、2,4-トルエンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、粗製ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’-ジクロロ-4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネート及びその水素添加物;1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネートなどの脂環族ポリイソシアネート;テトラメチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ポリイソシアネート;イソシアヌレート結合、カルボジイミド結合、ウレタン結合、尿素結合、ビューレット結合、アロファネート結合などを1種以上有する前記ポリイソシアネート変性物などが挙げられ、これらを単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0028】
イソシアネートの平均官能基数は、架橋密度、軟質性の観点から、1.8ないし4.5である。
上記のウレタンエラストマーについて記載したことは、NCO/OH比を除いてウレタンゲルにもあてはまる。ウレタンエラストマーの場合、ポリイソシアネートのイソシアネートの官能基とポリオールのOH基との比率(NCO/OH比)は、好ましくは0.9以上1.5以下である。より好ましくは1.0以上1.2以下である。
ウレタンゲルの場合、NCO/OH比は好ましくは0.5以上1.0未満である。より好ましくは0.7以上0.9以下である。後記するように金型中で半硬化のウレタンエラストマーの上に所定量流し込み、加熱硬化しウレタンゲルを得る場合には、必ずウレタンゲルのNCO/OH比はウレタンエラストマーのNCO/OH比を小さくする。
【0029】
ウレタンエラストマーとウレタンゲルの製造法も限定されず、イソシアネートとポリオールの直接反応で製造しても、一旦イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを製造しておいて、そのイソシアネート基末端ウレタンプレポリマーにポリオールもしくはポリアミンを反応させて製造してもよい。
【0030】
エンドピンストッパーの製造法の具体的な一例を示せば、下記の通りである。
エンドピンストッパーはウレタンエラストマーとウレタンゲルから形成されるので、ウレタン反応が主体である。最初にウレタンエラストマーで支持本体の部分を製造する。まず、ポリオールもしくはポリアミンに、必要に応じてウレタン化触媒、消泡剤、乾燥剤、添加剤などを配合し、ポリオール配合液(以下、ポリアミン配合液も含むものとする)を作成する。同時に、イソシアネートに必要に応じて添加剤などを配合してイソシアネート配合液とする。次いで混合装置または発泡装置を使用し、ポリオール配合液とイソシアネート配合液とを急速混合する。エンドピンストッパーの所定の金型(通常、床面との接触面が上になる)に流し込み、加熱硬化しウレタンエラストマーからなる支持本体の部分を形成する。
【0031】
この時に温度または時間で制御して流動性が無くなるか表面がベタベタする半硬化の状態になるようにするのが好ましい。半硬化の状態にしておくと次のウレタンゲル製造時のウレタン反応の際にウレタンエラストマーの表面のNCOがウレタンゲルのOHと反応するのでウレタンエラストマーとウレタンゲルが一体化することができる。
【0032】
次に接触部の部分であるウレタンゲルを製造する。ウレタンゲルの組成の配合液をウレタンエラストマーの場合と同様にして準備し、上記のように金型中で硬化または半硬化のウレタンエラストマーの上に所定量流し込み、加熱硬化しウレタンゲルを得る。その後金型から取り出してエンドピンストッパーを得る。必要に応じて凹部又は貫通孔に金属製またはプラスチック製の筒を入れてこの部分を補強してもよい。
【0033】
図2は、本発明における一実施形態のエンドピンストッパーを製造する際の金型である。エンドピンストッパーの金型5は、エンドピンストッパーの中央の受け部(筒)を形成するために中央に突起部6が形成されている。金型5は床面が上になるように置かれて使用される。
【0034】
ウレタンエラストマーもウレタンゲルもウレタン樹脂であるので、基本的には硬化温度、時間は同じである。ウレタンエラストマーの場合は、硬化温度は、好ましくは80℃以上120℃以下である。硬化時間は、好ましくは30分以上2時間以下である。
ウレタンゲルの場合は、硬化温度は、好ましくは80℃以上120℃以下である。 硬化時間は。好ましくは30分以上2時間以下である。
【0035】
ウレタン反応を実施する場合には、ウレタン化反応を促進する通常のウレタン化触媒が使用でき、たとえば、トリエチレンジアミン、ビス(N,N-ジメチルアミノ-2-エチル)エーテル、N,N,N’,N’-テトラメチルヘキサメチレンジアミン、N,N-ジメチルアミノプロピルアミンのPO付加物などの3級アミンおよびそのカルボン酸塩、酢酸カリウム、オクチル酸カリウム、スタナスオクトエート等のカルボン酸金属塩、ジブチルチンジラウレートなどの有機金属化合物が挙げられる。
その他ウレタン化反応で使用される公知の添加剤を使用することができる。
【0036】
エンドピンストッパーの支持本体を構成するウレタンエラストマーは、硬度がJIS A35以上であり、エラストメリックでありながら形状を維持することができる。エンドピンを差し込んでもしっかりと保持することができる。
【0037】
エンドピンストッパーの床面との接触部を構成するウレタンゲルは、粘着性を有すると同時に非常に軟らかい樹脂である。床材が絨毯やラグなどの下地から繊維が出てきている繊維製床敷物表面であっても十分に滑り止め効果を発揮する。
ウレタンゲルの硬度はJIS Aで30以下10以上であるのが好ましい。JIS Aで30以下であると、ウレタンゲルは粘着性に加えて柔らかさ、それも繊維でも侵入できるぐらいの非常に柔らかいものであるので、繊維の下の下地の箇所までも入ることができ、滑り止め効果を発揮することができる。JIS Aで10以上であると、エンドピンストッパーとして取り扱いやすい。より好ましくは硬度がJIS Aで28以下15以上である。
【0038】
ウレタンゲルの硬度がJIS Aで30以下とするためには、上記にも記載があるが、たとえば、ウレタン化反応において次のことが挙げられる。
ポリオールまたはポリアミンとしては、ポリオールが好ましい。ポリオールとしては、凝集性の低いポリエーテル系ポリオールが好ましい。使用するポリオールの平均OH当量は1400以上が好ましく、1600以上がより好ましい。ポリオールやイソシアネートの平均官能基数は2.5以下が好ましく、2.2以下がより好ましい。NCO/OH比は好ましくは0.5以上1.0未満である。より好ましくは0.7以上0.9以下である。
【0039】
前記ウレタンゲルの厚みは0.5mm以上10mm以下であるのが好ましい。0.5mm以上であると繊維の下の下地まで入ることができ、10mm以下であると水平の応力が働いたときに形状の保持ができる。
【0040】
また、ウレタンゲルで構成されている接触部が、床面側であって端部が中央部よりも厚くなっているのが好ましい。接触部の床面側の端部が中央部よりも厚くなっていると、エンドピンストッパーを上から抑えたときに、接触部が抑えられ吸盤効果を発揮するので、平坦な床はもちろん絨毯やラグなどの下地から繊維が出てきている繊維製床敷物表面であってもさらに滑り止め効果が向上する。端部の幅や高さは特に限定はないが、幅は床面側が1mm以上1cm以下が好ましい。高さは1mm以上5mm以下が好ましい。
【0041】
図3は、本発明の一実施形態である、端部が中央部より厚くなっているエンドピンストッパーの、中央を通る垂直面で切断したときの概念的な断面図である。
図3において、中央を筒状の空洞部4が下まで突き抜けているが、外側の端部7と内側の端部7が中側の中央部8より厚くなっている。これによって、エンドピンストッパー1を抑えたときに吸盤効果を発揮することができる。
【0042】
ウレタンエラストマーとウレタンゲルは一体化されているのが好ましい。ウレタンエラストマーの製造工程において完全硬化の状態で、ウレタンゲルの配合液を流し込みウレタン化反応をする場合においても、ウレタンエラストマーのNCO/OH比が1.05以上であり、ウレタンゲルのNCO/OH比が0.90以下であると、ウレタンエラストマーとウレタンゲルとの境界でウレタン反応がおこり一体化される。
ウレタンエラストマーが半硬化の状態でウレタンゲルの配合液を流し込みウレタン化反応をさせると、ウレタンエラストマーとウレタンゲルとの境界でウレタン反応がおこり、ウレタンエラストマーとウレタンゲルはより一体化される。エンドピンストッパーに衝撃が加わった後に、エンドピンストッパーを取り外す際にウレタンゲルがウレタンエラストマーから離れることはない。一体化されていないとウレタンゲルがウレタンエラストマーから外れることがある。
【0043】
上記のウレタン化反応が終了して、金型からとりだしてエンドピンストッパーを得ることができるが、この時に中央の凹部(筒)に円筒形の金具、プラスチック成型品や付勢する圧接ピンなどを入れて仕上げてエンドピンストッパーが得られる。
【0044】
このようにして得られる本発明のエンドピンストッパーは、床面との接触部が粘着性を有すると同時に非常に軟らかい樹脂であるウレタンゲルであるので、床材が絨毯やラグなどの下地から繊維が出てきている繊維製床敷物表面であっても十分に滑り止め効果を発揮する。
【実施例0045】
以下実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
成型後に金具を挿入圧着できる空洞部を有する円錐台状成型品が成型できるシリコーン型として
図2の金型を用いた。このシリコーン型の上端から約2mm下まで、支持本体となる下記組成のウレタン樹脂混合液を注入した。110℃のオーブン内で 1時間キュアして、混合液の流動性が消失した時点(十分には硬化せず、ベタツキがある半硬化の状態)で、直ちに次の作業に移った。
金型内において半硬化したウレタンエラストマーの上にウレタンゲルとなる下記ウレタンゲルの組成のウレタン樹脂混合液を最上部まで注入した。その後全体を110℃のオーブン内で2時間キュアし、室温まで冷却した後、金型から硬化した樹脂を取り出した。この樹脂の空洞部分に、金具を圧入し、エンドピンストッパーを得た。ウレタンエラストマーの硬度はJIS Aで55であった。ウレタンゲルの硬度はJIS Aで23であった。
【0046】
1.ウレタンエラストマーの組成(NCO/OH比:1.05)
・サンニックス PL-910 100重量部
(三洋化成工業社製 二官能ポリエーテルポリオール:OH価 122)
・ライトンA(備北粉化工業社製 炭酸カルシウム粉末) 30重量部
・ネオスタンU-600(日東化成社製 ビスマス系触媒) 0.02重量部
・ミリオネート MR-200 31重量部
(東ソー社製 粗MDI NCO% 30.9)
2.ウレタンゲルの組成(NCO/OH比:0.8)
・サンニックス GP-5000 100重量部
(三洋化成工業社製 三官能ポリエーテルポリオール:OH価 34)
・ネオスタンU-600(日東化成社製 ビスマス系触媒) 0.02重量部
・ミリオネート MTL 7重量部
(東ソー社製 液状MDI NCO% 29)
【0047】
(比較例1)
実施例1で用いたエンドピンストッパーの金型に、上記ウレタンエラストマーの組成に替えて、下記組成のウレタンエラストマーの組成のウレタン樹脂混合液を流し込み、実施例1と同様にして、底の滑り止めがウレタンエラストマーであるエンドピンストッパー(硬度はJIS Aで55)を得た。
【0048】
(ウレタンエラストマーの組成)(NCO/OH比:1.0)
グリセリンのプロピレンオキサイドとエチレンオキサイド付加物 100重量部
(分子量5,000、末端EO割合13%)
メタノールのEO付加物(分子量600) 3.1重量部
トルエンジイソシアネート 19.1重量部
ジブチルチンラウレート0.1部
【0049】
(比較例2)
実施例1で得られたエンドピンストッパーと同型のエンドピンストッパーの底に、底と同型のゴム板を貼り、底の滑り止めがゴム板(硬度はJIS Aで40)である比較のエンドピンストッパーを得た。
【0050】
(比較例3)
実施例1で得られたエンドピンストッパーと同型のエンドピンストッパーの底に、底と同型の両面粘着テープを貼り、底の滑り止めが粘着剤である比較のエンドピンストッパーを得た。
【0051】
(滑り止め評価)
弦楽器であるチェロのエンドピンを上記の実施例1,比較例1ないし3のエンドピンストッパーの筒に入れ、絨毯の上に置いて、上下左右に動かしたところ、実施例1で得られたエンドピンストッパーを用いた場合のみ滑らなかった。比較例1、2、3のエンドピンストッパーの場合は滑った。床材が絨毯やラグなどの下地から繊維が出てきている繊維製床敷物の場合には、エンドピンストッパーの床との接触部は粘着性だけでなく、ウレタンゲルのような柔らかさが有効であることを確認できた。