(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023110329
(43)【公開日】2023-08-09
(54)【発明の名称】除細動器及び除細動器管理システム
(51)【国際特許分類】
A61N 1/39 20060101AFI20230802BHJP
A61N 1/04 20060101ALI20230802BHJP
G06Q 10/20 20230101ALI20230802BHJP
【FI】
A61N1/39
A61N1/04
G06Q10/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022011702
(22)【出願日】2022-01-28
(71)【出願人】
【識別番号】000230962
【氏名又は名称】日本光電工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 寛知
(72)【発明者】
【氏名】井川 容士
(72)【発明者】
【氏名】岩井 史
【テーマコード(参考)】
4C053
5L049
【Fターム(参考)】
4C053BB02
4C053JJ01
4C053JJ18
5L049AA20
(57)【要約】
【課題】AED等の除細動器の構成部品に関連付けられた生データを有効的に活用可能とする除細動器及び除細動器管理システムを提供する。
【解決手段】AED1は、被検者の心臓に除細動用の電気ショックを与える除細動処理を実行するように構成されており、プロセッサと、コンピュータ可読命令を記憶するメモリとを備える。前記コンピュータ可読命令が前記プロセッサによって実行されると、AED1は、AED1を構成する複数の構成部品およびAED1の付属品のうちの少なくとも一つに関連付けられた生データを取得し、前記取得された生データとAED1の識別情報とを管理サーバに送信する。前記生データは、前記複数の構成部品および前記付属品のうちの少なくとも一つの異常の有無を判定するために使用される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者の心臓に除細動用の電気ショックを与える除細動処理を実行するように構成された除細動器であって、
前記除細動器は、プロセッサと、コンピュータ可読命令を記憶するメモリとを備え、
前記コンピュータ可読命令が前記プロセッサによって実行されると、前記除細動器は、
前記除細動器を構成する複数の構成部品および前記除細動器の付属品のうちの少なくとも一つに関連付けられた生データを取得し、
前記取得された生データと前記除細動器の識別情報とを管理サーバに送信し、
前記生データは、前記複数の構成部品および前記付属品のうちの少なくとも一つの異常の有無を判定するために使用される、
除細動器。
【請求項2】
前記除細動器は、
前記取得された生データに基づいて、前記複数の構成部品および前記付属品のうちの少なくとも一つの異常の有無を判定し、
前記生データ及び前記識別情報とともに、前記除細動器の異常の有無を示す情報を前記管理サーバに送信する、
請求項1に記載の除細動器。
【請求項3】
前記除細動器は、
前記生データと前記生データに関連付けられた閾値との間の比較に基づいて、前記複数の構成部品および前記付属品のうちの少なくとも一つの異常の有無を判定する、
請求項2に記載の除細動器。
【請求項4】
前記除細動器は、
各々が前記複数の構成部品及び前記付属品のうちの対応する一つに関連付けられた複数の生データを取得し、
前記複数の生データと前記除細動器の識別情報とを管理サーバに送信し、
前記複数の生データに基づいて、前記複数の構成部品及び前記付属品の異常の有無を判定し、
前記複数の構成部品および前記付属品のうちの少なくとも一つが異常である場合に、前記除細動器の異常を示す情報を前記管理サーバに送信する、
請求項1に記載の除細動器。
【請求項5】
前記複数の構成部品は、
前記除細動器に電力を供給するように構成されたバッテリーと、
前記除細動器の内部電子回路と、
を含み、
前記付属品は、前記被検者の心電図信号が入力されると共に、前記電気ショックを与えるための電気エネルギーが出力される電極パッドを含む、
請求項1から4のうちいずれか一項に記載の除細動器。
【請求項6】
前記生データは、前記複数の構成部品および前記付属品のうちの少なくとも一つに関連付けられた電圧、電流及び/又は時間を示す生データである、
請求項1から5のうちいずれか一項に記載の除細動器。
【請求項7】
前記複数の構成部品は、前記電気ショックを与えるための電気エネルギーを蓄積するように構成されたエネルギー蓄積部を含み、
前記生データは、前記電気エネルギーを前記エネルギー蓄積部に満充電するために必要な時間を示す生データを含む、
請求項1から6のうちいずれか一項に記載の除細動器。
【請求項8】
請求項1から7のうちいずれか一項に記載の除細動器と、
前記除細動器に通信可能に接続された管理サーバと、
を備えた除細動器管理システム。
【請求項9】
前記除細動器に近距離無線通信によって通信可能に接続された中継器をさらに備え、
前記中継器は、前記管理サーバに通信可能に接続されている、
請求項8に記載の除細動器管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、除細動器及び除細動器管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
心室細動によって突然の心停止を起こした患者の心臓に除細動用の強い電気ショックを与えることで患者の心臓の機能を回復させる自動体外式除細動器(以下、AEDという。)が、現在急速に普及している。また、AEDの故障等は心停止を起こした患者の生命の危機に直結するため、AEDと、当該AEDの状態を定期的に管理する管理サーバを備えたシステムが知られている。例えば、特許文献1には、AEDと、AEDに通信可能に接続された保守センタ装置を備えたリモートメンテナンスシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されたリモートメンテナンスシステムでは、AEDの異常の有無を示す情報がAEDから保守センタ装置に中継ユニットを介して送信された上で、保守センタ装置は、当該情報がAEDの異常を示す場合に、AEDの管理者宛に電子メールを送信している。このように、AEDの管理者は、保守センタ装置から送信された電子メールを通じてAEDの異常を把握することが可能となっている。
【0005】
しかしながら、上記保守センタ装置は、AEDから送信された情報に基づいてAEDに異常があるかどうかを検出できる一方で、AEDを構成する構成部品に関連する生データを用いた故障予測等の応用的なデータ解析には対応できていない。このような観点よりAED等の除細動器および除細動器管理システムを更に改善する余地がある。
【0006】
本開示は、AED等の除細動器の構成部品等に関連付けられた生データを有効的に活用可能とする除細動器及び除細動器管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る除細動器は、被検者の心臓に除細動用の電気ショックを与える除細動処理を実行するように構成され、プロセッサと、コンピュータ可読命令を記憶するメモリとを備える。
前記コンピュータ可読命令が前記プロセッサによって実行されると、前記除細動器は、
前記除細動器を構成する複数の構成部品および前記除細動器の付属品のうちの少なくとも一つに関連付けられた生データを取得し、
前記取得された生データと前記除細動器の識別情報とを管理サーバに送信する。
前記生データは、前記複数の構成部品および前記付属品のうちの少なくとも一つの異常の有無を判定するために使用される。
【0008】
上記構成によれば、除細動器を構成する複数の構成部品および付属品のうちの少なくとも一つに関連付けられた生データが管理サーバに送信される。このように、管理サーバ側において除細動器から送信された生データを有効的に活用することで除細動器の故障予測等のデータ解析を行うことが可能となる。この点において、除細動器と管理サーバとを含む従来のリモートメンテナンスシステムでは、管理サーバは、除細動器の異常の有無を示す情報に基づいて除細動器の異常を検出できるものの、除細動器の故障予測等の応用的なデータ解析を行うことはできなかった。一方で、本構成に係る除細動器では、複数の構成部品および付属品のうちの少なくとも一つに関連付けられた生データを管理サーバに送信することが可能となるため、管理サーバは、除細動器から送信された生データを有効的に活用することで除細動器の故障予測等のデータ解析を行うことが可能となる。このように、除細動器の構成部品等から生じる生データを有効的に活用可能とする除細動器を提供することができる。
【0009】
本開示の一態様に係る除細動器管理システムは、上記の除細動器と、前記除細動器に通信可能に接続された管理サーバと、を備える。
【0010】
上記構成によれば、複数の構成部品および付属品のうちの少なくとも一つに関連付けられた生データを管理サーバに送信することが可能となるため、管理サーバは、除細動器から送信された生データを有効的に活用することで除細動器の故障予測等のデータ解析を行うことが可能となる。このように、除細動器等から生じる生データを有効的に活用可能とする除細動器管理システムを提供することができる。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、AED等の除細動器の構成部品等に関連付けられた生データを有効的に活用可能とする除細動器及び除細動器管理システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本開示の実施形態に係る除細動管理システムの一例を示す図である。
【
図3】AEDによって実行されるセルフテスト処理を説明するためのフローチャートである。
【
図4】管理サーバに保存される除細動管理テーブルデータの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施形態について図面を参照しながら説明する。各図面に示された各部材の寸法は、説明の便宜上、実際の各部材の寸法とは異なる場合がある。
【0014】
最初に
図1を参照して本開示の実施形態(以下、本実施形態)に係る除細動管理システム100について以下に説明する。
図1は、本実施形態に係る除細動管理システム100の一例を示す図である。
図1に示すように、除細動管理システム100では、自動体外式除細動器1(以下、AED1)が無線通信を通じて中継器20と通信可能に接続されている。AED1と中継器20との間の無線通信は、例えば、Bluetooth(登録商標)やWi‐Fi(登録商標)等の近距離無線通信となる。
【0015】
中継器20は、無線基地局30と通信可能に接続されている。中継器20は、中継器20に周辺に存在するAED1と近距離無線通信を行うための無線通信モジュールと、LTEや5G等のX世代移動通信システムにより無線基地局30と無線通信を行うための無線通信モジュールとを備える。中継器20は、無線基地局30を介して通信ネットワーク40上に配置された管理サーバ50と通信可能に接続されている。通信ネットワーク40は、コアネットワークとインターネット等により構成されている。
【0016】
管理サーバ50は、AED1の状態を定期的に管理するサーバであって、中継器20を介してAED1に関連する情報をAED1から受信するように構成されている。管理サーバ50は、後述する除細動管理テーブルデータ120(
図4参照)を保存するように構成されている。また、管理サーバ50は、AED1から送信された構成部品等の生データに基づいて、AED1の故障予測等の応用的なデータ解析を自動的に行うように構成されている。
【0017】
管理サーバ50は、通信ネットワーク40を介して管理者端末60に通信可能に接続されている。管理者端末60は、AED1を保守管理する組織に属する担当者Kにより操作される端末である。例えば、AED1に異常がある場合には、管理サーバ50は、AED1の異常を示す情報を管理者端末60に送信する。なお管理サーバ50が除細動に関連する保守センター等に設置されている場合、管理サーバ50と接続または一体化されたディスプレイ等にAED1の異常を示す情報が表示されてもよい。
【0018】
図1に示す除細動管理システム100では、説明の便宜上、一つのAED1のみが図示されているが、中継器20の周辺には複数のAED1が配置されていてもよい。この場合、複数のAED1から送信された情報が中継器20を介して管理サーバ50に送信される。このように、複数のAED1が中継器20の周辺に配置されている場合では、LTEや5G等のSIM通信の機能を各AED1に設ける必要がないため、各AED1の通信コストを削減することができる。
【0019】
尚、本実施形態に係る除細動管理システム100では、AED1は、中継器20を介して管理サーバ50に通信可能に接続されているが、本実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、AED1は中継器20を介さずに管理サーバ50に通信可能に接続されてもよい。この場合、各AED1は、X世代移動通信システムにより無線基地局30と無線通信を行うための無線通信モジュールを備えていてもよい。
【0020】
次に、
図2を参照してAED1の構成について以下に説明する。
図2は、AED1の構成を示すブロック図である。
図2に示すように、AED1は、AED制御部10と、高電圧発生回路16と、エネルギー蓄積部17と、バッテリー15と、バッテリー制御部14と、記憶部13と、外部通信部12とを備える。AED1は、ECG処理回路18と、パッドコネクタ23と、音声出力部8と、電源操作部4と、表示部7と、インジケータ9とをさらに備える。
【0021】
AED1は、心室細動により心停止を起こした患者(被検者)の心電図を測定すると共に、被検者の心臓に除細動用の電気ショックを与える除細動処理を実行するように構成されている。
【0022】
AED制御部10は、AED1に設けられた各構成部品を制御するように構成されている。AED制御部10は、例えば、プロセッサとメモリとを含むマイクロコントローラと、AD変換部(アナログ-デジタル変換回路)を少なくとも含むアナログ電子回路とによって構成されている。プロセッサは、例えば、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)のうちの少なくとも一つを含む。メモリは、ROM(Read Only Memory)と、RAM(Random Access Memory)とを含む。プロセッサは、記憶部13又はROMに組み込まれた各種プログラムから指定されたプログラム(コンピュータ可読命令)をRAM上に展開し、RAMとの協働で各種処理(例えば、
図3に示す一連の処理)を実行するように構成されてもよい。
【0023】
高電圧発生回路16は、充電制御回路と放電制御回路とによって構成されている。充電制御回路は、除細動用の電気ショックを患者(被検者)に与えるための電気エネルギーをエネルギー蓄積部17に充電するように構成されている。放電制御回路は、エネルギー蓄積部17に蓄積された電気エネルギーを放電するように構成されている。エネルギー蓄積部17は、除細動用の電気ショックを患者に与えるための電気エネルギーを蓄積するように構成されており、例えば、複数の誘電体フィルムによって構成された高電圧のフィルムコンデンサであってもよい。エネルギー蓄積部17から放電された電気エネルギーは、高電圧発生回路16及びパッドコネクタ23を経由して一対の電極パッド5a,5bから出力される。
【0024】
バッテリー15は、バッテリー本体部とバッテリーメモリとを有する。バッテリー本体部は、AED1の各構成部品に電力を供給するように構成された電源として機能し、例えば、リチウム一次電池である。バッテリーメモリにはバッテリー残量等のバッテリーに関連する情報が保存されている。バッテリー15は、交換可能であってもよい。本例では、バッテリー15はAED1の構成部品として定義されているが、AED1とは別の構成部品(付属品)として定義されてもよい。
【0025】
バッテリー制御部14は、バッテリー15の電圧をAED1の各構成部品に必要な電圧に変換するように構成された回路(例えば、スイッチングレギュレータ又はシリーズレギュレータ)を備える。また、バッテリー制御部14は、バッテリー15の電圧データをAED制御部10に送信するように構成されている。AED制御部10は、バッテリー制御部14から送信された電圧データに基づいてバッテリー15の使用量を決定した上で、バッテリー15の使用量を積算することでバッテリー15の残量レベルを決定してもよい。
【0026】
記憶部13は、AED1を制御するための各種プログラム、表示部7に表示される画像データ、音声出力部8から出力される音声データ、患者の心電図データ、AED1の使用状態(バッテリ残量やAED1の異常の有無等)に関連するデータ等を保存するように構成されている。記憶部13は、例えば、フラッシュメモリやハードディスクにより構成されている。
【0027】
外部通信部12は、中継器20を介してAED1に関連する情報を管理サーバ50に送信するように構成されている。外部通信部12は、Bluetooth(登録商標)やWi‐Fi(登録商標)等の近距離無線通信規格に対応した無線通信モジュールであってもよい。無線通信モジュールは、送受信アンテナと、高周波回路と、信号処理回路とを有する。外部通信部12は、AED1を構成する複数の構成部品に関連付けられた電圧、電流及び/又は時間を示す生データを管理サーバ50に送信するように構成されている。
【0028】
ECG処理回路18は、患者に装着された一対の電極パッド5a,5bから出力された心電図信号を処理するように構成されている。例えば、ECG処理回路18は、一対の電極パッド5a,5bのうちの一方から出力された心電図信号と他方の電極パッドから出力された心電図信号とを差動増幅する差動増幅器と、差動増幅された心電図信号をアナログ信号からデジタル信号に変換するAD変換器とを有してもよい。
【0029】
一対の電極パッド5a,5bは、パッドケーブル6を介してパッドコネクタ23に接続されている。電極パッド5a,5bはAED1に着脱可能に取り付けられており、使い捨てであってもよい。AED1の使用前において電極パッド5a,5bは図示しないパッケージ内に収納されている。未使用の電極パッド5a,5bは、パッケージ内に収納された状態で導電性素子22を介して互いに電気的に接続されている。AED1の使用時において電極パッド5a,5bは患者の体表面に装着される。電極パッド5a,5bには患者の心電図信号が入力される一方で、患者の心臓に電気ショックを与えるための電気エネルギーが出力される。本例では、電極パッド5a,5bは、AED1の構成部品ではなく付属品として定義されているが、AED1の構成部品として定義されてもよい。
【0030】
音声出力部8(出力部の一例)は、AED1の操作や患者の処置に関連する音声ガイダンスおよび警告音を可聴的に出力するように構成されたスピーカである。電源操作部4は、操作者によるAED1の電源をオン又はオフにするための操作を受け付けるように構成されている。例えば、電源操作部4は、AED1の蓋部の開閉動作に伴って、電源オン操作又は電源オフ操作を受け付ける。
【0031】
表示部7(出力部の一例)は、AED1の操作や患者の処置に関連するガイダンスを表示画面上に表示するように構成されている。表示部7は、例えば、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等によって構成される。インジケータ9は、AED1の状態を表示するように構成されている。例えば、インジケータ9は、AED1が使用可能である場合に、第1表示色で点灯する一方で、AED1が使用不可である場合に、第1表示色とは異なる第2表示色で点灯してもよい。また、バッテリーの残量レベルを示すインジケータがAED1に設けられてもよい。
【0032】
次に、
図3を参照してAED1によって実行されるセルフテスト処理について以下に説明する。
図3は、AED1によって実行されるセルフテスト処理を説明するためのフローチャートである。
図3に示すように、ステップS1において、AED制御部10は、AED1の複数の構成部品及びAED1の付属品に関連付けられた電圧、電流及び/又は時間を示す生データを取得する。
【0033】
ここで、AED1の複数の構成部品は、バッテリー15、音声出力部8、AED1の内部電子回路等を含む。AED1の内部電子回路は、バッテリー制御部14、高電圧発生回路16、エネルギー蓄積部17、ECG処理回路18等を含む。AED1の付属品は、電極パッド5a,5b、パッドケーブル6等を含む。
【0034】
より具体的には、AED制御部10は、バッテリー15の電圧値に関連付けられた電圧データを生データAD1として取得してもよい。また、AED制御部10は、バッテリー制御部14内を流れる電流値に関連付けられた電流データを生データAD2として取得してもよい。生データAD1,AD2によりバッテリー15の異常の有無を検出することができる。
【0035】
AED制御部10は、電極パッド5a,5b、導電性素子22及びパッドコネクタ23を少なくとも通る電気経路の所定箇所での電圧値を示す電圧データを生データAD3として取得してもよい。生データAD3によりパッドケーブル6又は電極パッド5a,5bの異常の有無を検出することができる。AED制御部10は、音声出力部8とAED制御部10との間の電気経路の所定箇所での電圧値を示す電圧データを生データAD4として取得してもよい。生データAD4により音声出力部8の異常の有無を検出することができる。
【0036】
AED制御部10は、ECG処理回路18を構成する増幅器及びフィルター回路の時定数に関連する時間データを生データAD5として取得してもよい。生データAD5によりECG処理回路18の異常の有無を検出することができる。AED制御部10は、電気エネルギーをエネルギー蓄積部17に満充電するために必要な時間を示す時間データを生データAD6として取得してもよい。さらに、AED制御部10は、エネルギー蓄積部17から電気エネルギーを完全に放電するために必要な時間を示す時間データを生データAD7として取得してもよい。生データAD6,AD7によりエネルギー蓄積部17及び高電圧発生回路16の異常の有無を検出することができる。
【0037】
なお、AED制御部10にはAD変換器が内蔵されているため、AED制御部10は生データAD1~AD7をデジタルデータとして取得することができる。また、上記したAED制御部10によって取得される構成部品に関する生データの種類はあくまでも一例に過ぎない。AED制御部10は、AED1のその他の構成部品(例えば、インジケータ9や表示部7等)の異常の有無を検出するために、その他の構成部品に関連する生データをデジタルデータとして取得してもよい。また、一回のセルフテストによって取得される構成部品の生データの数も特に限定されるものではない。
【0038】
次に、ステップS2において、AED制御部10は、複数の構成部品及び付属品の異常を判定する。この点において、AED制御部10は、取得された構成部品又は付属品に関連する生データと所定の閾値との間の比較に基づいて、構成部品若しくは付属品の異常の有無を判定してもよい。例えば、AED制御部10は、バッテリー15の電圧値(生データAD1の値)が所定の閾値以上であるかどうかを判定した上で、当該判定結果に基づいてバッテリー15の異常の有無を判定してもよい。より具体的には、AED制御部10は、取得された電圧データが所定の閾値より小さい場合には、バッテリー15は異常であると判定してもよい。一方で、取得された電圧データが所定の閾値以上である場合には、バッテリー15は正常であると判定してもよい。AED制御部10は、バッテリー15が異常であると判定した場合に、インジケータ9の視覚的態様(例えば、発光色等)を変化させてもよい。このように、AED1を使用する使用者は、インジケータ9の視覚的態様の変化を見ることで、バッテリー15の異常を把握することが可能となる。
【0039】
また、AED制御部10は、電気エネルギーをエネルギー蓄積部17に満充電するために必要な時間(生データAD6の値)が所定の閾値以上であるかどうかを判定した上で、当該判定結果に基づいてエネルギー蓄積部17および高電圧発生回路16の異常の有無を判定してもよい。より具体的には、取得された時間が所定の閾値以上である場合には、AED制御部10は、エネルギー蓄積部17及び高電圧発生回路16のうち少なくとも一方に異常が発生していることを判定してもよい。その一方で、取得された時間が所定の閾値よりも小さい場合には、AED制御部10は、エネルギー蓄積部17及び高電圧発生回路16の両方は正常であることを判定してもよい。
【0040】
このように、AED制御部10は、生データの値とこれに対応する閾値との間の比較に基づいて構成部品又は付属品の異常の有無を判定することができる。AED制御部10は、複数の構成部品及び付属品(例えば、電極パッド等)のうちの少なくとも一つが異常である場合に、AED1に異常があると判定してもよい。また、全ての構成部品及び付属品が正常である場合に、AED制御部10は、AED1は正常であると判定してもよい。
【0041】
次に、ステップS3において、AED制御部10は、複数の構成部品及び付属品の生データ(例えば、生データAD1~AD7)と、AED1の識別情報と、AED1の状態を示す情報と、バッテリー残量情報とを中継器20を介して管理サーバ50に送信する。これらの情報は所定の周期(例えば、1日毎)でAED1から管理サーバ50に送信されてもよい。つまり、AED制御部10は、
図3に示す一連の処理を所定の周期(例えば、一日毎)で実行してもよい。また、AED制御部10は、AED1上に設けられたボタン(図示せず)に対する操作に応じて、
図3に示す一連の処理を実行してもよい。ここで、AED1の識別情報(ID情報)とは、AED1を識別するための情報である。AED1の状態を示す情報とは、AED1の異常の有無を示す情報である。例えば、ステップS2の判定結果として、AED制御部10がAED1に異常があると判定した場合には、AED1の異常を示す情報が管理サーバ50に送信される。一方で、AED制御部10がAED1は正常であると判定した場合には、AED1が正常であることを示す情報が管理サーバ50に送信される。バッテリー残量情報とは、バッテリー15の残量を示す情報である。AED制御部10は、バッテリー15のバッテリーメモリ内に保存されたバッテリー残量情報を取得した上で、当該バッテリー残量情報を管理サーバ50に送信する。バッテリー残量は、例えば、0%から100%の範囲内で示される。
【0042】
管理サーバ50は、これらの情報をAED1から受信した後に、これらの情報をテーブルデータとして記憶装置内に保存する。
図4には、管理サーバ50の記憶装置内に保存された除細動管理テーブルデータ120の一例が示されている。尚、
図4に示す除細動管理テーブルデータ120に含まれる各種情報は単なる一例である。
【0043】
管理サーバ50は、プロセッサと、メモリと、記憶装置と、ネットワーク通信部とを少なくとも備える。
【0044】
管理サーバ50は、AED1の異常を示す情報を受信した場合に、AED識別番号とAED1の異常を示す情報とを含む電子メールを担当者Kのメールアドレス宛に送信してもよい。このように、
図1に示す管理者端末60は、管理サーバ50から図示しない受信メールサーバを経由してAED1の異常を示す情報を取得することができる。また、管理サーバ50は、バッテリー残量が所定のレベル未満であることを示す情報を受信した場合に、AED識別番号とバッテリー残量が少ないことを示す情報とを含む電子メールを担当者Kのメールアドレス宛に送信してもよい。このように、管理者端末60は、管理サーバ50から受信メールサーバを経由してバッテリー残量が少ないことを示す情報を取得することができる。
【0045】
また、管理サーバ50は、生データAD1~AD7に基づいてAED1の故障予測等の応用的なデータ解析を自動的に行うことができる。例えば、管理サーバ50は、生データAD1~AD7を入力層とし、AED1の故障予測に関する情報(例えば、AED1の故障確率等)を出力層とした機械学習モデルに基づいて、生データAD1~AD7からAED1の故障を予測してもよい。また、管理サーバ50は、所定の故障予測アルゴリズムに基づいて、生データAD1~AD7からAED1の故障を予測してもよい。管理サーバ50は、故障予測解析の結果としてAED1の故障確率が高い場合には、AED識別番号とAED1の故障予測に関する情報とを含む電子メールを担当者Kのメールアドレス宛に送信してもよい。
【0046】
本実施形態によれば、AED1を構成する複数の構成部品および付属品に関連付けられた生データAD1~AD7が中継器20を介して管理サーバ50に送信される。このように、管理サーバ50側においてAED1から送信された生データAD1~AD7を有効的に活用することでAED1の故障予測等のデータ解析を行うことが可能となる。この点において、従来のリモートメンテナンスシステムでは、管理サーバは、AEDの異常の有無を示す情報に基づいてAEDの異常を検出できるものの、AEDの故障予測等の応用的なデータ解析を行うことはできなかった。一方で、本実施形態に係るAED1では、複数の構成部品および付属品に関連付けられた生データAD1~AD7を管理サーバ50に送信することが可能となるため、管理サーバ50は、AED1から送信された生データAD1~AD7を有効的に活用することでAED1の故障予測等のデータ解析を行うことが可能となる。このように、AED1の構成部品等(特に、バッテリー15、電極パッド5a,5b、内部電子回路等)から生じる生データを有効的に活用可能とするAED1及び除細動管理システム100を提供することができる。
【0047】
また、管理サーバ50が生データAD1~AD7に基づいてAED1の故障を予測した後に、AED1の故障予測に関する情報が通信ネットワーク40を介して管理者端末60に送信される。このように、AED1を保守管理する担当者Kは、管理者端末60を通じてAED1の故障予測に関する情報を把握することができるため、AED1が故障する前にAED1を点検することが可能となる。このように、AED1が実際に使用される場面においてAED1が故障により使用できないといった状況を未然に防止することが可能となる。
【0048】
また、本実施形態では、管理サーバ50ではなくAED1が複数の構成部品の生データに基づいて複数の構成部品の異常の有無を判定している。このため、AED1と管理サーバ50との間に通信障害が発生している場合であっても、AED1の異常の有無を確実に判定することが可能となる。また、管理サーバ50側においてAED1の異常の有無が判定される場合と比較して、AED1と管理サーバ50との間の通信状況に依存せずに、AED1の異常の有無を確実且つ迅速に判定することが可能となる。
【0049】
以上、本発明の実施形態について説明をしたが、本発明の技術的範囲が本実施形態の説明によって限定的に解釈されるべきではない。本実施形態は一例であって、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内において、様々な実施形態の変更が可能であることが当業者によって理解されるところである。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲に記載された発明の範囲及びその均等の範囲に基づいて定められるべきである。
【0050】
本実施形態では、AED制御部10がAED1の複数の構成部品の生データに基づいて複数の構成部品の異常の有無を判定しているが、当該判定処理は管理サーバ50側において実行されてもよい。この場合、AED1は、AED1の状態を示す情報を管理サーバ50に送信しなくてもよい。管理サーバ50は、AED1から送信された生データに基づいて各構成部品の異常の有無を判定した上で、AED1の異常の有無を判定してもよい。
【0051】
また、本実施形態では、本発明の除細動器の一例としてAEDが説明されているが、除細動器はAEDに限定されるものではない。例えば、病院に設置された除細動器(半自動の除細動器など)が本発明の除細動器として適用されてもよい。この場合も同様に、除細動器の構成部品の生データが管理サーバ50に送信される。
【符号の説明】
【0052】
1:AED(自動体外式除細動器)
4:電源操作部
5a,5b:電極パッド
6:パッドケーブル
7:表示部
8:音声出力部
9:インジケータ
10:AED制御部
12:外部通信部
13:記憶部
14:バッテリー制御部
15:バッテリー
16:高電圧発生回路
17:エネルギー蓄積部
18:ECG処理回路
20:中継器
22:導電性素子
23:パッドコネクタ
30:無線基地局
40:通信ネットワーク
50:管理サーバ
60:管理者端末
10:除細動管理システム
120:除細動管理テーブルデータ