(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023110331
(43)【公開日】2023-08-09
(54)【発明の名称】可逆熱変色性マスク
(51)【国際特許分類】
A41D 13/11 20060101AFI20230802BHJP
C09K 9/02 20060101ALI20230802BHJP
A62B 18/02 20060101ALI20230802BHJP
【FI】
A41D13/11 Z
C09K9/02 C
A62B18/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022011704
(22)【出願日】2022-01-28
(71)【出願人】
【識別番号】000111890
【氏名又は名称】パイロットインキ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】浅井 菜緒
【テーマコード(参考)】
2E185
【Fターム(参考)】
2E185AA07
2E185CC32
2E185CC73
(57)【要約】
【課題】 感冒や病気による発熱を、マスクの使用者と観察者の双方が把握することのできる可逆熱変色性マスクを提供する。
【解決手段】 マスク本体2に第一の可逆変色性材料を含む可逆熱変色体3と、第二の可逆熱変色性材料を含む可逆熱変色体4とを備え、可逆熱変色性材料は、発色状態から温度が上昇する過程では、消色開始温度t
3に達すると消色し始め、完全消色温度t
4以上の温度域で完全に消色状態となり、消色状態から温度が下降する過程で発色開始温度t
2に達すると発色し始め、完全発色温度t
1以下の温度域で完全に発色状態となるヒステリシス特性を示し、第一の可逆熱変色性材料は温度t
3が37~42℃であり、3℃以下のヒステリシス幅を示す材料であり、第二の可逆熱変色性材料は温度t
4が37~42℃であり、10℃以上のヒステリシス幅を示す材料である可逆熱変色性マスク1。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスクに第一の可逆変色性材料を含む可逆熱変色体と、第二の可逆熱変色性材料を含む可逆熱変色体とを備えてなり、前記可逆熱変色性材料は、(イ)電子供与性呈色性有機化合物と、(ロ)電子受容性化合物と、(ハ)前記(イ)、(ロ)の呈色反応をコントロールする反応媒体とから少なくともなる可逆熱変色性組成物を内包した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料、又は、前記可逆熱変色性組成物を熱可塑性又は熱硬化性樹脂中に分散した可逆熱変色性樹脂粒子であり、色濃度-温度曲線に関してヒステリシス特性を示して発色状態と消色状態の互変性を呈し、発色状態から温度が上昇する過程では、消色開始温度t3に達すると消色し始め、温度t3より高い完全消色温度t4以上の温度域で完全に消色状態となり、消色状態から温度が下降する過程では、発色開始温度t2に達すると発色し始め、温度t2より低い完全発色温度t1以下の温度域で完全に発色状態となるヒステリシス特性を示し、第一の可逆熱変色性材料は消色開始温度t3が37~42℃であり、色濃度-温度曲線に関して3℃以下のヒステリシス幅(ΔH)を示す材料であり、第二の可逆熱変色性材料は完全消色温度t4が37~42℃であり、色濃度-温度曲線に関して10℃以上のヒステリシス幅(ΔH)を示す材料である可逆熱変色性マスク。
【請求項2】
マスクの一方の面に第一の可逆変色性材料を含む可逆熱変色体を備え、他方の面に第二の可逆熱変色性材料を含む可逆熱変色体を備えてなる請求項1記載の可逆熱変色性マスク。
【請求項3】
マスク自体が第一の可逆変色性材料を含む可逆熱変色体、又は、第二の可逆熱変色性材料を含む可逆熱変色体のいずれか一方であり、マスク表面に他方の可逆熱変色体を備えてなる請求項1記載の可逆熱変色性マスク。
【請求項4】
前記第一の可逆熱変色性材料は消色開始温度t3が37.5~40℃であり、第二の可逆熱変色性材料は完全消色温度t4が37.5~40℃である請求項1乃至3のいずれか一項に記載の可逆熱変色性マスク。
【請求項5】
前記第二の可逆熱変色性材料は色濃度-温度曲線に関して20℃以上のヒステリシス幅(ΔH)を示す材料である請求項1乃至4のいずれか一項に記載の可逆熱変色性マスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可逆熱変色性マスクに関する。更に詳細には、温度変化より色変化する可逆熱変色性マスク関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マスクの外表面に温度変化により色変化する熱変色像を設け、呼気、体熱、環境温度によって熱変色像を変色させる熱変色性マスクが開示されている(例えば、特許文献1、2参照)。
前記熱変色性マスクは、温度変化により像が変色する面白さや意外性を付与することができるとしても、使用者自身が感冒や病気による発熱をマスクの変色で確認したり、第三者がマスクの変色により使用者の発熱を適切に把握することが困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実願昭60-200850号(実開昭62-107849号)のマイクロフィルム
【特許文献2】実願平2-127200号(実開平4-83262号)のマイクロフィルム
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、前記した従来の問題点を解決しようとするものであって、即ち、感冒や病気による発熱を、マスクの使用者と観察者の双方が適切に把握することのできる可逆熱変色性マスクを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、マスクに第一の可逆変色性材料を含む可逆熱変色体と、第二の可逆熱変色性材料を含む可逆熱変色体とを備えてなり、前記可逆熱変色性材料は、(イ)電子供与性呈色性有機化合物と、(ロ)電子受容性化合物と、(ハ)前記(イ)、(ロ)の呈色反応をコントロールする反応媒体とから少なくともなる可逆熱変色性組成物を内包した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料、又は、前記可逆熱変色性組成物を熱可塑性又は熱硬化性樹脂中に分散した可逆熱変色性樹脂粒子であり、色濃度-温度曲線に関してヒステリシス特性を示して発色状態と消色状態の互変性を呈し、発色状態から温度が上昇する過程では、消色開始温度t3に達すると消色し始め、温度t3より高い完全消色温度t4以上の温度域で完全に消色状態となり、消色状態から温度が下降する過程では、発色開始温度t2に達すると発色し始め、温度t2より低い完全発色温度t1以下の温度域で完全に発色状態となるヒステリシス特性を示し、第一の可逆熱変色性材料は消色開始温度t3が37~42℃であり、色濃度-温度曲線に関して3℃以下のヒステリシス幅(ΔH)を示す材料であり、第二の可逆熱変色性材料は完全消色温度t4が37~42℃であり、色濃度-温度曲線に関して10℃以上のヒステリシス幅(ΔH)を示す材料である可逆熱変色性マスクを要件とする。
更には、前記マスクの一方の面に第一の可逆変色性材料を含む可逆熱変色体を備え、他方の面に第二の可逆熱変色性材料を含む可逆熱変色体を備えてなること、前記マスク自体が第一の可逆変色性材料を含む可逆熱変色体、又は、第二の可逆熱変色性材料を含む可逆熱変色体のいずれか一方であり、マスク表面に他方の可逆熱変色体を備えてなること、前記第一の可逆熱変色性材料は消色開始温度t3が37.5~40℃であり、第二の可逆熱変色性材料は完全消色温度t4が37.5~40℃であること、前記第二の可逆熱変色性材料は色濃度-温度曲線に関して20℃以上のヒステリシス幅(ΔH)を示す材料であること等を要件とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、感冒や病気による発熱を、マスクの使用者と観察者の双方が適切に把握できる利便性に富む可逆熱変色性マスクを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】加熱消色型の可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の変色挙動を示す説明図である。
【
図2】色彩記憶性を有する加熱消色型の可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の変色挙動を示す説明図である。
【
図3】本発明の可逆熱変色性マスクの一実施例を示す縦断面説明図である。
【
図4】本発明の可逆熱変色性マスクの他の実施例を示す縦断面説明図である。
【
図5】本発明の可逆熱変色性マスクの他の実施例を示す縦断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
前記マスクは、第一の可逆変色性材料を含む可逆熱変色体(以下、第一可逆熱変色体と称す)と、第二の可逆熱変色性材料を含む可逆熱変色体(以下、第二可逆熱変色体と称す)とを備えてなる。
マスクは、フィルター機能を有するマスク本体と、必要によりマスク本体を装着するための耳掛け紐とからなる。
マスク本体の材質は特に限定されるものではなく、織布、不織布、編布などの布帛を用いることができ、不織布が好適に用いられる。
【0009】
前記可逆変色性材料としては、(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、及び(ハ)前記両者の呈色反応の生起温度を決める反応媒体の必須三成分を少なくとも含む加熱により消色する可逆熱変色性組成物をマイクロカプセルに内包させた可逆熱変色性マイクロカプセル顔料が用いられる。
前記可逆熱変色性マイクロカプセル顔料としては、特開昭61-9488号公報等に記載された、所定の温度(変色点)を境としてその前後で変色し、高温側変色点以上の温度域で消色状態、低温側変色点以下の温度域で発色状態を呈し、前記両状態のうち常温域では特定の一方の状態しか存在せず、もう一方の状態は、その状態が発現するのに要した熱又は冷熱が適用されている間は維持されるが、前記熱又は冷熱の適用がなくなれば常温域で呈する状態に戻る、ヒステリシス幅(ΔH)が3℃以下の加熱消色型(加熱により消色し、冷却により発色する)の可逆熱変色性組成物を内包した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料を適用できる(
図1参照)。
【0010】
また、特開昭60-264285号公報、特開平7-179777号公報、特開平8-39936号公報、国際公開第2014/200053号等に記載されているヒステリシス幅(ΔH)が10℃以上であり、温度変化による着色濃度の変化をプロットした曲線の形状が、温度を変色温度域より低温側から上昇させていく場合と逆に変色温度域より高温側から下降させていく場合とで大きく異なる経路を辿って変色し、完全発色温度(t
1)以下の低温域での発色状態、又は完全消色温度(t
4)以上の高温域での消色状態が、特定温度域〔t
2~t
3の間の温度域(実質的二相保持温度域)〕で色彩記憶性を有する加熱消色型(加熱により消色し、冷却により発色する)の可逆熱変色性組成物を内包した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料も適用できる(
図2参照)。
【0011】
前記可逆熱変色性組成物の色濃度-温度曲線におけるヒステリシス特性について説明する。
図2において、縦軸に色濃度、横軸に温度が表されている。温度変化による色濃度の変化は矢印に沿って進行する。ここで、Aは完全消色状態に達する温度t
4(以下、完全消色温度と称す)における濃度を示す点であり、Bは消色を開始する温度t
3(以下、消色開始温度と称す)における濃度を示す点であり、Cは発色を開始する温度t
2(以下、発色開始温度と称す)における濃度を示す点であり、Dは完全発色状態に達する温度t
1(以下、完全発色温度と称す)における濃度を示す点である。
変色温度域は前記t
1とt
4間の温度域であり、着色状態と消色状態のいずれかの状態を呈することができ、色濃度の差の大きい領域であるt
2とt
3の間の温度域が実質二相保持温度域である。
また、線分EFの長さが変色のコントラストを示す尺度であり、線分EFの中点を通る線分HGの長さがヒステリシスの程度を示す温度幅(以下、ヒステリシス幅ΔHと記す)であり、このΔH値が小さいと変色前後の両状態のうち常温域では特定の一方の状態しか存在しえない。また、前記ΔH値が大きいと変色前後の各状態の保持が容易となる。
前記可逆熱変色性組成物は、温度t3以上、温度t4未満に温度が上昇して降温する過程で元に戻る変色挙動を示す。
即ち、体温により温度t3に達すると可逆熱変色性組成物は消色し始め、加温が続くと更に消色し、温度t4未満の温度で加温を止めると発色した状態に戻る。
また、体温により温度t3に達すると消色し始め、加温が続くと更に消色し、温度t4を超える温度迄加温すると消色状態になる。
よって、第一可逆熱変色体中の可逆熱変色性材料は、消色開始温度t
3が37~42℃であることにより、温度t4を越えるか越えないにかかわらず第三者は使用者のマスクが消色と発色を繰り返す状態を目視で確認することができ、第二可逆熱変色体中の可逆熱変色性材料は、完全消色温度t
4が37~42℃であることにより、使用者はマスクを外して変色が維持されていることによって発熱の有無を目視により確認することができる。
【0012】
第一可逆熱変色体中の可逆熱変色性材料は消色開始温度t3が発熱により生じる温度である37~42℃、好ましくは37.5~40℃であり、色濃度-温度曲線に関して3℃以下、好ましくは2℃以下、より好ましくは1℃以下のヒステリシス幅(ΔH)を示す材料である。
前記可逆熱変色性材料は、色濃度-温度曲線に関して3℃以下の狭いヒステリシス幅(ΔH)を示して鋭敏に熱変色するため、消色し始める温度t3を人間が感冒(風邪)や病気で発熱する温度の37~42℃に設定することにより、平熱より高い体温を有するマスク使用者の吐く息により、可逆熱変色性材料は有色から無色に変色する。その後、息を吐くことを止めると可逆熱変色性材料は無色から有色に変色するため、第三者は使用者のマスクが消色と発色を繰り返す状態を目視で確認することができる。
なお、より鋭敏に熱変色するためには、消色開始温度t3と完全消色温度t4の温度差が5℃以下であることが好ましく、より好ましくは4℃以下、よりより好ましくは3℃以下である。
【0013】
第二可逆熱変色体中の可逆熱変色性材料は完全消色温度t4が37~42℃、好ましくは37.5~40℃であり、色濃度-温度曲線に関して10℃以上、好ましくは20℃以上、より好ましくは40℃以上のヒステリシス幅(ΔH)を示す材料である
前記可逆熱変色性材料は、色濃度-温度曲線に関して10℃以上の広いヒステリシス幅(ΔH)を示して熱変色するため、色彩記憶性を有する。よって、完全に消色する温度t4を人間が感冒(風邪)や病気で発熱する温度の37~42℃に設定することにより、平熱より高い体温を有するマスク使用者の吐く息や顔に接することにより、可逆熱変色性材料は有色から無色に変色し、その状態は保持されるため、使用者はマスクを外して発熱の有無を目視により確認することができる。
前記第一可逆熱変色体中の可逆熱変色性材料は消色開始温度t3と、第二可逆熱変色体中の可逆熱変色性材料は完全消色温度t4の温度差は小さいことが好ましく、1℃以下、より好ましくは0.5℃以下である。
【0014】
以下に前記(イ)、(ロ)、(ハ)の各成分について具体的に化合物を例示する。
(イ)成分、即ち電子供与性呈色性有機化合物は、色を決める成分であって、顕色剤である(ロ)成分に電子を供与し、発色する化合物である。
電子供与性呈色性有機化合物としては、フタリド化合物、フルオラン化合物、スチリノキノリン化合物、ジアザローダミンラクトン化合物、ピリジン化合物、キナゾリン化合物、ビスキナゾリン化合物等が挙げられる。
フタリド化合物としては、例えば、ジフェニルメタンフタリド化合物、フェニルインドリルフタリド化合物、インドリルフタリド化合物、ジフェニルメタンアザフタリド化合物、フェニルインドリルアザフタリド化合物、及びそれらの誘導体等が挙げられ、これらの中でも、フェニルインドリルアザフタリド化合物、及びそれらの誘導体が好ましい。
また、フルオラン化合物としては、例えば、アミノフルオラン化合物、アルコキシフルオラン化合物、及びそれらの誘導体が挙げられる。
以下に(イ)成分に用いることができる化合物を例示する。
3,3-ビス(4-ジメチルアミノフェニル)-6-ジメチルアミノフタリド、
3-(4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)フタリド、
3,3-ビス(1-n-ブチル-2-メチルインドール-3-イル)フタリド、
3,3-ビス(2-エトキシ-4-ジエチルアミノフェニル)-4-アザフタリド、
3-(2-エトキシ-4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド、
3-(2-n-ヘキシルオキシ-4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド、
3-〔2-エトキシ-4-(N-エチルアニリノ)フェニル〕-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド、
3-(2-アセトアミド-4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-プロピル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド、
3,6-ビス(ジフェニルアミノ)フルオラン、
3,6-ビス(N-フェニル-N-p-トリルアミノ)フルオラン、
3,6-ジメトキシフルオラン、
3,6-ジ-n-ブトキシフルオラン、
2-メチル-6-(N-エチル-N-p-トリルアミノ)フルオラン、
3-クロロ-6-シクロヘキシルアミノフルオラン、
2-メチル-6-シクロヘキシルアミノフルオラン、
2-クロロアミノ-6-ジ-n-ブチルアミノフルオラン、
2-(2-クロロアニリノ)-6-ジ-n-ブチルアミノフルオラン、
2-ジベンジルアミノ-6-ジエチルアミノフルオラン、
2-N-メチルアニリノ-6-(N-エチル-N-p-トリルアミノ)フルオラン、
1,3-ジメチル-6-ジエチルアミノフルオラン、
2-クロロ-3-メチル-6-ジエチルアミノフルオラン、
2-アニリノ-3-メチル-6-ジエチルアミノフルオラン、
2-アニリノ-3-メトキシ-6-ジエチルアミノフルオラン、
2-アニリノ-3-メチル-6-ジ-n-ブチルアミノフルオラン、
2-アニリノ-3-メトキシ-6-ジ-n-ブチルアミノフルオラン、
2-キシリジノ-3-メチル-6-ジエチルアミノフルオラン、
2-アニリノ-3-メチル-6-(N-エチル-N-p-トリルアミノ)フルオラン、
6-ジエチルアミノ-1,2-ベンゾフルオラン、
6-(N-エチル-N-イソブチルアミノ)-1,2-ベンゾフルオラン、
6-(N-エチル-N-イソペンチルアミノ)-1,2-ベンゾフルオラン、
2-(3-メトキシ-4-ドデコキシスチリル)キノリン、
2-ジエチルアミノ-8-ジエチルアミノ-4-メチルスピロ[5H-[1]ベンゾピラノ[2,3-d]ピリミジン-5,1′(3′H)-イソベンゾフラン]-3′-オン、
2-ジ-n-ブチルアミノ-8-ジ-n-ブチルアミノ-4-メチルスピロ[5H-[1]ベンゾピラノ[2,3-d]ピリミジン-5,1′(3′H)-イソベンゾフラン]-3′-オン、
2-ジ-n-ブチルアミノ-8-ジエチルアミノ-4-メチルスピロ[5H-[1]ベンゾピラノ[2,3-d]ピリミジン-5,1′(3′H)-イソベンゾフラン]-3′-オン、
2-ジ-n-ブチルアミノ-8-(N-エチル-N-イソアミルアミノ)-4-メチルスピロ[5H-[1]ベンゾピラノ[2,3-d]ピリミジン-5,1′(3′H)-イソベンゾフラン]-3′-オン、
2-ジ-n-ブチルアミノ-8-ジ-n-ペンチルアミノ-4-メチルスピロ[5H-[1]ベンゾピラノ[2,3-d]ピリミジン-5,1′(3′H)-イソベンゾフラン]-3′-オン、
4,5,6,7-テトラクロロ-3-(4-ジメチルアミノ-2-メトキシフェニル)-3-(1-n-ブチル-2-メチルインドール-3-イル)-1(3H)-イソベンゾフラノン、
4,5,6,7-テトラクロロ-3-(4-ジエチルアミノ-2-エトキシフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-1(3H)-イソベンゾフラノン、
4,5,6,7-テトラクロロ-3-(4-ジエチルアミノ-2-エトキシフェニル)-3-(1-n-ペンチル-2-メチルインドール-3-イル)-1(3H)-イソベンゾフラノン、
4,5,6,7-テトラクロロ-3-(4-ジエチルアミノ-2-メチルフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-1(3H)-イソベンゾフラノン、
3′,6′-ビス〔フェニル(2-メチルフェニル)アミノ〕スピロ[イソベンゾフラン-1(3H),9′-[9H]キサンテン]-3-オン、
3′,6′-ビス〔フェニル(3-メチルフェニル)アミノ〕スピロ[イソベンゾフラン-1(3H),9′-[9H]キサンテン]-3-オン、
3′,6′-ビス〔フェニル(3-エチルフェニル)アミノ〕スピロ[イソベンゾフラン-1(3H),9′-[9H]キサンテン]-3-オン、
2,6-ビス(2′-エトキシフェニル)-4-(4′-ジメチルアミノフェニル)ピリジン、
2,6-ビス(2′,4′-ジエトキシフェニル)-4-(4′-ジメチルアミノフェニル)ピリジン、
2-(4′-ジメチルアミノフェニル)-4-メトキシキナゾリン、
4,4′-エチレンジオキシ-ビス〔2-(4-ジエチルアミノフェニル)キナゾリン〕
なお、フルオラン類としては、キサンテン環を形成するフェニル基に置換基を有する化合物のほか、キサンテン環を形成するフェニル基に置換基を有すると共にラクトン環を形成するフェニル基にも置換基(例えば、メチル基等のアルキル基、塩素原子等のハロゲン原子)を有する青色や黒色を呈する化合物であってもよい。
【0015】
前記(ロ)成分、即ち電子受容性化合物は、(イ)成分から電子を受け取り、(イ)成分の顕色剤として機能する化合物である。
前記電子受容性化合物としては、活性プロトンを有する化合物群及びその誘導体、偽酸性化合物群(酸ではないが、組成物中で酸として作用して(イ)成分を発色させる化合物群)、電子空孔を有する化合物群等から選択される化合物があり、これらの中でも活性プロトンを有する化合物群から選択される化合物が好ましい。
活性プロトンを有する化合物及びその誘導体としては、例えばフェノール性水酸基を有する化合物及びその金属塩、カルボン酸及びその金属塩、好ましくは、芳香族カルボン酸、炭素数2~5の脂肪族カルボン酸及びそれらの金属塩、酸性リン酸エステル及びその金属塩、並びにアゾ-ル系化合物及びその誘導体、1、2、3-トリアゾール及びその誘導体が挙げられ、これらの中でも、有効な熱変色特性を発現させることができることから、フェノール性水酸基を有する化合物が好ましい。
前記フェノール性水酸基を有する化合物はモノフェノール化合物からポリフェノール化合物まで広く含まれ、更にビス型、トリス型フェノール等およびフェノール-アルデヒド縮合樹脂等もこれに含まれる。フェノール性水酸基を有する化合物の中でも、少なくともベンゼン環を2以上有するものが好ましい。また、これら化合物は置換基を有していてもよく、置換基としてアルキル基、アリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシ基及びそのエステル又はアミド基、ハロゲン基等が挙げられる。
前記活性プロトンを有する化合物の金属塩が含む金属としては、例えばナトリウム、カリウム、カルシウム、亜鉛、ジルコニウム、アルミニウム、マグネシウム、ニッケル、コバルト、スズ、銅、鉄、バナジウム、チタン、鉛およびモリブデン等が挙げられる。
【0016】
以下に具体例を挙げる。
フェノール、o-クレゾール、ターシャリーブチルカテコール、ノニルフェノール、n-オクチルフェノール、n-ドデシルフェノール、n-ステアリルフェノール、p-クロロフェノール、p-ブロモフェノール、o-フェニルフェノール、p-ヒドロキシ安息香酸n-ブチル、p-ヒドロキシ安息香酸n-オクチル、レゾルシン、没食子酸ドデシル、4,4-ジヒドロキシジフェニルスルホン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ブタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ヘプタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-オクタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ノナン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-デカン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ドデカン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2-メチルプロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3-メチルブタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3-メチルペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2,3-ジメチルペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2-エチルブタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2-エチルヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,7-ジメチルオクタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1-フェニル-1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ペンタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ヘキサン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-へプタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-オクタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ノナン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-デカン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ドデカン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エチルプロピオネート、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4-メチルペンタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4-メチルヘキサン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン、1,1-ビス[2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-プロピル]ベンゼン、ビス(2-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、3,3-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)ブタン等がある。
前記フェノール性水酸基を有する化合物が最も有効な熱変色特性を発現させることができるが、芳香族カルボン酸及び炭素数2~5の脂肪族カルボン酸、カルボン酸金属塩、酸性リン酸エステル及びそれらの金属塩、1、2、3-トリアゾール及びその誘導体から選ばれる化合物等であってもよい。
【0017】
前記(イ)、(ロ)成分による電子授受反応を特定温度域において可逆的に生起させる反応媒体の(ハ)成分について説明する。前記(ハ)成分としては、アルコール類、エステル類、ケトン類、エーテル類、酸アミド類を挙げることができる。
前記化合物を以下に例示する。
アルコール類としては、炭素数10以上の脂肪族一価の飽和アルコールが有効であり、具体的にはデシルアルコール、ウンデシルアルコール、ドデシルアルコール、トリデシルアルコール、テトラデシルアルコール、ペンタデシルアルコール、ヘキサデシルアルコール、ヘプタデシルアルコール、オクタデシルアルコール、エイコシルアルコール、ドコシルアルコール等が挙げられる。
【0018】
エステル類としては、炭素数10以上のエステル類が有効であり、脂肪族及び脂環或いは芳香環を有する一価カルボン酸と、脂肪族及び脂環或いは芳香環を有する一価アルコールの任意の組み合わせから得られるエステル類、脂肪族及び脂環或いは芳香環を有する多価カルボン酸と、脂肪族及び脂環或いは芳香環を有する一価アルコールの任意の組み合わせから得られるエステル類、脂肪族及び脂環或いは芳香環を有する一価カルボン酸と、脂肪族及び脂環或いは芳香環を有する多価アルコールの任意の組み合わせから得られるエステル類が挙げられ、具体的にはカプリル酸エチル、カプリル酸オクチル、カプリル酸ステアリル、カプリン酸ミリスチル、カプリン酸ドコシル、ラウリン酸2-エチルヘキシル、ラウリン酸n-デシル、ミリスチン酸3-メチルブチル、ミリスチン酸セチル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸ネオペンチル、パルミチン酸ノニル、パルミチン酸シクロヘキシル、ステアリン酸n-ブチル、ステアリン酸2-メチルブチル、ステアリン酸3,5,5-トリメチルヘキシル、ステアリン酸n-ウンデシル、ステアリン酸ペンタデシル、ステアリン酸ステアリル、ステアリン酸シクロヘキシルメチル、ベヘン酸イソプロピル、ベヘン酸ヘキシル、ベヘン酸ラウリル、ベヘン酸ベヘニル、安息香酸セチル、p-tert-ブチル安息香酸ステアリル、フタル酸ジミリスチル、フタル酸ジステアリル、シュウ酸ジミリスチル、シュウ酸ジセチル、マロン酸ジセチル、コハク酸ジラウリル、グルタル酸ジラウリル、アジピン酸ジウンデシル、アゼライン酸ジラウリル、セバシン酸ジ-(n-ノニル)、1,18-オクタデシルメチレンジカルボン酸ジネオペンチル、エチレングリコールジミリステート、プロピレングリコールジラウレート、プロピレングリコールジステアレート、ヘキシレングリコールジパルミテート、1,5-ペンタンジオールジステアレート、1,2,6-ヘキサントリオールトリミリステート、1,4-シクロヘキサンジオールジデシル、1,4-シクロヘキサンジメタノールジミリステート、キシレングリコールジカプリネート、キシレングリコールジステアレート等が挙げられる。
また、飽和脂肪酸と分枝脂肪族アルコールのエステル、不飽和脂肪酸又は分枝もしくは置換基を有する飽和脂肪酸と分岐状であるか又は炭素数16以上の脂肪族アルコールのエステル、酪酸セチル、酪酸ステアリル及び酪酸ベヘニルから選ばれるエステル化合物も有効である。
具体的には、酪酸2-エチルヘキシル、ベヘン酸2-エチルヘキシル、ミリスチン酸2-エチルヘキシル、カプリン酸2-エチルヘキシル、ラウリン酸3,5,5-トリメチルヘキシル、パルミチン酸3,5,5-トリメチルヘキシル、ステアリン酸3,5,5-トリメチルヘキシル、カプロン酸2-メチルブチル、カプリル酸2-メチルブチル、カプリン酸2-メチルブチル、パルミチン酸1-エチルプロピル、ステアリン酸1-エチルプロピル、ベヘン酸1-エチルプロピル、ラウリン酸1-エチルヘキシル、ミリスチン酸1-エチルヘキシル、パルミチン酸1-エチルヘキシル、カプロン酸2-メチルペンチル、カプリル酸2-メチルペンチル、カプリン酸2-メチルペンチル、ラウリン酸2-メチルペンチル、ステアリン酸2-メチルブチル、ステアリン酸2-メチルブチル、ステアリン酸3-メチルブチル、ステアリン酸1-メチルヘプチル、ベヘン酸2-メチルブチル、ベヘン酸3-メチルブチル、ステアリン酸1-メチルヘプチル、ベヘン酸1-メチルヘプチル、カプロン酸1-エチルペンチル、パルミチン酸1-エチルペンチル、ステアリン酸1-メチルプロピル、ステアリン酸1-メチルオクチル、ステアリン酸1-メチルヘキシル、ラウリン酸1,1-ジメチルプロピル、カプリン酸1-メチルペンチル、パルミチン酸2-メチルヘキシル、ステアリン酸2-メチルヘキシル、ベヘン酸2-メチルヘキシル、ラウリン酸3,7-ジメチルオクチル、ミリスチン酸3,7-ジメチルオクチル、パルミチン酸3,7-ジメチルオクチル、ステアリン酸3,7-ジメチルオクチル、ベヘン酸3,7-ジメチルオクチル、オレイン酸ステアリル、オレイン酸ベヘニル、リノール酸ステアリル、リノール酸ベヘニル、エルカ酸3,7-ジメチルオクチル、エルカ酸ステアリル、エルカ酸イソステアリル、イソステアリン酸セチル、イソステアリン酸ステアリル、12-ヒドロキシステアリン酸2-メチルペンチル、18-ブロモステアリン酸2-エチルヘキシル、2-ケトミリスチン酸イソステアリル、2-フルオロミリスチン酸2-エチルヘキシル、酪酸セチル、酪酸ステアリル、酪酸ベヘニル等が挙げられる。
【0019】
また、色彩記憶性を有する可逆熱変色性組成物を得るための(ハ)成分としては、5℃以上50℃未満のΔT値(融点-曇点)を示すカルボン酸エステル化合物、例えば、分子中に置換芳香族環を含むカルボン酸エステル、無置換芳香族環を含むカルボン酸と炭素数10以上の脂肪族アルコールのエステル、分子中にシクロヘキシル基を含むカルボン酸エステル、炭素数6以上の脂肪酸と無置換芳香族アルコール又はフェノールのエステル、炭素数8以上の脂肪酸と分岐脂肪族アルコール又はエステル、ジカルボン酸と芳香族アルコール又は分岐脂肪族アルコールのエステル、ケイ皮酸ジベンジル、ステアリン酸ヘプチル、アジピン酸ジデシル、アジピン酸ジラウリル、アジピン酸ジミリスチル、アジピン酸ジセチル、アジピン酸ジステアリル、トリラウリン、トリミリスチン、トリステアリン、ジミリスチン、ジステアリン等が用いられる。
【0020】
また、炭素数9以上の奇数の脂肪族一価アルコールと炭素数が偶数の脂肪族カルボン酸から得られる脂肪酸エステル化合物、n-ペンチルアルコール又はn-ヘプチルアルコールと炭素数10乃至16の偶数の脂肪族カルボン酸より得られる総炭素数17乃至23の脂肪酸エステル化合物も有効である。
具体的には、酢酸n-ペンタデシル、酪酸n-トリデシル、酪酸n-ペンタデシル、カプロン酸n-ウンデシル、カプロン酸n-トリデシル、カプロン酸n-ペンタデシル、カプリル酸n-ノニル、カプリル酸n-ウンデシル、カプリル酸n-トリデシル、カプリル酸n-ペンタデシル、カプリン酸n-ヘプチル、カプリン酸n-ノニル、カプリン酸n-ウンデシル、カプリン酸n-トリデシル、カプリン酸n-ペンタデシル、ラウリン酸n-ペンチル、ラウリン酸n-ヘプチル、ラウリン酸n-ノニル、ラウリン酸n-ウンデシル、ラウリン酸n-トリデシル、ラウリン酸n-ペンタデシル、ミリスチン酸n-ペンチル、ミリスチン酸n-ヘプチル、ミリスチン酸n-ノニル、ミリスチン酸n-ウンデシル、ミリスチン酸n-トリデシル、ミリスチン酸n-ペンタデシル、パルミチン酸n-ペンチル、パルミチン酸n-ヘプチル、パルミチン酸n-ノニル、パルミチン酸n-ウンデシル、パルミチン酸n-トリデシル、パルミチン酸n-ペンタデシル、ステアリン酸n-ノニル、ステアリン酸n-ウンデシル、ステアリン酸n-トリデシル、ステアリン酸n-ペンタデシル、エイコサン酸n-ノニル、エイコサン酸n-ウンデシル、エイコサン酸n-トリデシル、エイコサン酸n-ペンタデシル、ベヘニン酸n-ノニル、ベヘニン酸n-ウンデシル、ベヘニン酸n-トリデシル、ベヘニン酸n-ペンタデシル等を挙げることができる。
【0021】
ケトン類としては、総炭素数が10以上の脂肪族ケトン類が有効であり、2-デカノン、3-デカノン、4-デカノン、2-ウンデカノン、3-ウンデカノン、4-ウンデカノン、5-ウンデカノン、2-ドデカノン、3-ドデカノン、4-ドデカノン、5-ドデカノン、2-トリデカノン、3-トリデカノン、2-テトラデカノン、2-ペンタデカノン、8-ペンタデカノン、2-ヘキサデカノン、3-ヘキサデカノン、9-ヘプタデカノン、2-ペンタデカノン、2-オクタデカノン、2-ノナデカノン、10-ノナデカノン、2-エイコサノン、11-エイコサノン、2-ヘンエイコサノン、2-ドコサノン、ラウロン、ステアロン等を挙げることができる。
また、総炭素数が12乃至24のアリールアルキルケトン類、例えば、n-オクタデカノフェノン、n-ヘプタデカノフェノン、n-ヘキサデカノフェノン、n-ペンタデカノフェノン、n-テトラデカノフェノン、4-n-ドデカアセトフェノン、n-トリデカノフェノン、4-n-ウンデカノアセトフェノン、n-ラウロフェノン、4-n-デカノアセトフェノン、n-ウンデカノフェノン、4-n-ノニルアセトフェノン、n-デカノフェノン、4-n-オクチルアセトフェノン、n-ノナノフェノン、4-n-ヘプチルアセトフェノン、n-オクタノフェノン、4-n-ヘキシルアセトフェノン、4-n-シクロヘキシルアセトフェノン、4-tert-ブチルプロピオフェノン、n-ヘプタフェノン、4-n-ペンチルアセトフェノン、シクロヘキシルフェニルケトン、ベンジル-n-ブチルケトン、4-n-ブチルアセトフェノン、n-ヘキサノフェノン、4-イソブチルアセトフェノン、1-アセトナフトン、2-アセトナフトン、シクロペンチルフェニルケトン等を挙げることができる。
【0022】
エーテル類としては、総炭素数10以上の脂肪族エーテル類が有効であり、ジペンチルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジヘプチルエーテル、ジオクチルエーテル、ジノニルエーテル、ジデシルエーテル、ジウンデシルエーテル、ジドデシルエーテル、ジトリデシルエーテル、ジテトラデシルエーテル、ジペンタデシルエーテル、ジヘキサデシルエーテル、ジオクタデシルエーテル、デカンジオールジメチルエーテル、ウンデカンジオールジメチルエーテル、ドデカンジオールジメチルエーテル、トリデカンジオールジメチルエーテル、デカンジオールジエチルエーテル、ウンデカンジオールジエチルエーテル等を挙げることができる。
【0023】
酸アミド類としては、ヘキサン酸アミド、ヘプタン酸アミド、オクタン酸アミド、ノナン酸アミド、デカン酸アミド、ウンデカン酸アミド、ラウリル酸アミド、トリデカン酸アミド、ミリスチン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ドコサン酸アミド等を挙げることができる。
【0024】
また、前記(ハ)成分として、下記一般式(1)で示される化合物を用いることもできる。
【化1】
〔式中、R
1は水素原子又はメチル基を示し、mは0~2の整数を示し、X
1、X
2のいずれか一方は-(CH
2)
nOCOR
2又は-(CH
2)
nCOOR
2、他方は水素原子を示し、nは0~2の整数を示し、R
2は炭素数4以上のアルキル基又はアルケニル基を示し、Y
1及びY
2は水素原子、炭素数1~4のアルキル基、メトキシ基、又は、ハロゲンを示し、r及びpは1~3の整数を示す。〕
前記式(1)で示される化合物のうち、R
1が水素原子の場合、より広いヒステリシス幅を有する可逆熱変色性組成物が得られるため好適であり、更にR
1が水素原子であり、且つ、mが0の場合がより好適である。
なお、式(1)で示される化合物のうち、より好ましくは下記一般式(2)で示される化合物が用いられる。
【化2】
式中のRは炭素数8以上のアルキル基又はアルケニル基を示すが、好ましくは炭素数10~24のアルキル基、更に好ましくは炭素数12~22のアルキル基である。
前記化合物として具体的には、オクタン酸-4-ベンジルオキシフェニルエチル、ノナン酸-4-ベンジルオキシフェニルエチル、デカン酸-4-ベンジルオキシフェニルエチル、ウンデカン酸-4-ベンジルオキシフェニルエチル、ドデカン酸-4-ベンジルオキシフェニルエチル、トリデカン酸-4-ベンジルオキシフェニルエチル、テトラデカン酸-4-ベンジルオキシフェニルエチル、ペンタデカン酸-4-ベンジルオキシフェニルエチル、ヘキサデカン酸-4-ベンジルオキシフェニルエチル、ヘプタデカン酸-4-ベンジルオキシフェニルエチル、オクタデカン酸-4-ベンジルオキシフェニルエチルを例示できる。
【0025】
更に、前記(ハ)成分として、下記一般式(3)で示される化合物を用いることもできる。
【化3】
(式中、Rは炭素数8以上のアルキル基又はアルケニル基を示し、m及びnはそれぞれ1~3の整数を示し、X及びYはそれぞれ水素原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、ハロゲンを示す。)
前記化合物として具体的には、オクタン酸1,1-ジフェニルメチル、ノナン酸1,1-ジフェニルメチル、デカン酸1,1-ジフェニルメチル、ウンデカン酸1,1-ジフェニルメチル、ドデカン酸1,1-ジフェニルメチル、トリデカン酸1,1-ジフェニルメチル、テトラデカン酸1,1-ジフェニルメチル、ペンタデカン酸1,1-ジフェニルメチル、ヘキサデカン酸1,1-ジフェニルメチル、ヘプタデカン酸1,1-ジフェニルメチル、オクタデカン酸1,1-ジフェニルメチルを例示できる。
【0026】
更に、前記(ハ)成分として下記一般式(4)で示される化合物を用いることもできる。
【化4】
(式中、Xは水素原子、炭素数1乃至4のアルキル基、メトキシ基、ハロゲン原子のいずれかを示し、mは1乃至3の整数を示し、nは1乃至20の整数を示す。)
前記化合物としては、マロン酸と2-〔4-(4-クロロベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステル、こはく酸と2-(4-ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、こはく酸と2-〔4-(3-メチルベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステル、グルタル酸と2-(4-ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、グルタル酸と2-〔4-(4-クロロベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステル、アジピン酸と2-(4-ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、ピメリン酸と2-(4-ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、スベリン酸と2-(4-ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、スベリン酸と2-〔4-(3-メチルベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステル、スベリン酸と2-〔4-(4-クロロベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステル、スベリン酸と2-〔4-(2,4-ジクロロベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステル、アゼライン酸と2-(4-ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、セバシン酸と2-(4-ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、1,10-デカンジカルボン酸と2-(4-ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、1,18-オクタデカンジカルボン酸と2-(4-ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、1,18-オクタデカンジカルボン酸と2-〔4-(2-メチルベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステルを例示できる。
【0027】
更に、前記(ハ)成分として下記一般式(5)で示される化合物を用いることもできる。
【化5】
(式中、Rは炭素数1乃至21のアルキル基又はアルケニル基を示し、nは1乃至3の整数を示す。)
前記化合物としては、1,3-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとカプリン酸とのジエステル、1,3-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとウンデカン酸とのジエステル、1,3-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとラウリン酸とのジエステル、1,3-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとミリスチン酸とのジエステル、1,4-ビス(ヒドロキシメトキシ)ベンゼンと酪酸とのジエステル、1,4-ビス(ヒドロキシメトキシ)ベンゼンとイソ吉草酸とのジエステル、1,4-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼンと酢酸とのジエステル、1,4-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとプロピオン酸とのジエステル、1,4-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼンと吉草酸とのジエステル、1,4-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとカプロン酸とのジエステル、1,4-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとカプリル酸とのジエステル、1,4-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとカプリン酸とのジエステル、1,4-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとラウリン酸とのジエステル、1,4-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとミリスチン酸とのジエステルを例示できる。
【0028】
更に、前記(ハ)成分として下記一般式(6)で示される化合物を用いることもできる。
【化6】
(式中、Xは水素原子、炭素数1乃至4のアルキル基、炭素数1乃至4のアルコキシ基、ハロゲン原子のいずれかを示し、mは1乃至3の整数を示し、nは1乃至20の整数を示す。)
前記化合物としては、こはく酸と2-フェノキシエタノールとのジエステル、スベリン酸と2-フェノキシエタノールとのジエステル、セバシン酸と2-フェノキシエタノールとのジエステル、1,10-デカンジカルボン酸と2-フェノキシエタノールとのジエステル、1,18-オクタデカンジカルボン酸と2-フェノキシエタノールとのジエステルを例示できる。
【0029】
更に、前記(ハ)成分として下記一般式(7)で示される化合物を用いることもできる。
【化7】
(式中、Rは炭素数4乃至22のアルキル基、シクロアルキルアルキル基、シクロアルキル基、炭素数4乃至22のアルケニル基のいずれかを示し、Xは水素原子、炭素数1乃至4のアルキル基、炭素数1乃至4のアルコキシ基、ハロゲン原子のいずれかを示し、nは0又は1を示す。)
前記化合物としては、4-フェニル安息香酸デシル、4-フェニル安息香酸ラウリル、4-フェニル安息香酸ミリスチル、4-フェニル安息香酸シクロヘキシルエチル、4-ビフェニル酢酸オクチル、4-ビフェニル酢酸ノニル、4-ビフェニル酢酸デシル、4-ビフェニル酢酸ラウリル、4-ビフェニル酢酸ミリスチル、4-ビフェニル酢酸トリデシル、4-ビフェニル酢酸ペンタデシル、4-ビフェニル酢酸セチル、4-ビフェニル酢酸シクロペンチル、4-ビフェニル酢酸シクロヘキシルメチル、4-ビフェニル酢酸ヘキシル、4-ビフェニル酢酸シクロヘキシルメチルを例示できる。
【0030】
更に、前記(ハ)成分として下記一般式(8)で示される化合物を用いることもできる。
【化8】
(式中、Rは炭素数3乃至18のアルキル基、炭素数3乃至18の脂肪族アシル基のいずれかを示し、Xは水素原子、炭素数1乃至3のアルキル基、炭素数1又は2のアルコキシ基、ハロゲン原子のいずれかを示し、Yは水素原子、メチル基のいずれかを示し、Zは水素原子、炭素数1乃至4のアルキル基、炭素数1又は2のアルコキシ基、ハロゲン原子のいずれかを示す。)
前記化合物としては、4-ブトキシ安息香酸フェノキシエチル、4-ペンチルオキシ安息香酸フェノキシエチル、4-テトラデシルオキシ安息香酸フェノキシエチル、4-ヒドロキシ安息香酸フェノキシエチルとドデカン酸とのエステル、バニリン酸フェノキシエチルのドデシルエーテルを例示できる。
【0031】
更に、前記(ハ)成分として下記一般式(9)で示される化合物を用いることもできる。
【化9】
(式中、Rは炭素数4乃至22のアルキル基、炭素数4乃至22のアルケニル基、シクロアルキルアルキル基、シクロアルキル基のいずれかを示し、Xは水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子のいずれかを示し、Yは水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子のいずれかを示し、nは0又は1を示す。)
前記化合物としては、p-ヒドロキシ安息香酸オクチルの安息香酸エステル、p-ヒドロキシ安息香酸デシルの安息香酸エステル、p-ヒドロキシ安息香酸ヘプチルのp-メトキシ安息香酸エステル、p-ヒドロキシ安息香酸ドデシルのo-メトキシ安息香酸エステル、p-ヒドロキシ安息香酸シクロヘキシルメチルの安息香酸エステルを例示できる。
【0032】
更に、前記(ハ)成分として下記一般式(10)で示される化合物を用いることもできる。
【化10】
(式中、Rは炭素数3乃至18のアルキル基、炭素数6乃至11のシクロアルキルアルキル基、炭素数5乃至7のシクロアルキル基、炭素数3乃至18のアルケニル基のいずれかを示し、Xは水素原子、炭素数1乃至4のアルキル基、炭素数1乃至3のアルコキシ基、ハロゲン原子のいずれかを示し、Yは水素原子、炭素数1乃至4のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、ハロゲン原子のいずれかを示す。)
前記化合物としては、p-ヒドロキシ安息香酸ノニルのフェノキシエチルエーテル、p-ヒドロキシ安息香酸デシルのフェノキシエチルエーテル、p-ヒドロキシ安息香酸ウンデシルのフェノキシエチルエーテル、バニリン酸ドデシルのフェノキシエチルエーテルを例示できる。
【0033】
更に、前記(ハ)成分として下記一般式(11)で示される化合物を用いることもできる。
【化11】
(式中、Rは炭素数3乃至8のシクロアルキル基又は炭素数4乃至9のシクロアルキルアルキル基を示し、nは1乃至3の整数を示す。)
前記化合物としては、1,3-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとシクロヘキサンカルボン酸とのジエステル、1,4-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとシクロヘキサンプロピオン酸とのジエステル、1,3-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとシクロヘキサンプロピオン酸とのジエステルを例示できる。
【0034】
更に、前記(ハ)成分として下記一般式(12)で示される化合物を用いることもできる。
【化12】
(式中、Rは炭素数3乃至17のアルキル基、炭素数3乃至8のシクロアルキル基、炭素数5乃至8のシクロアルキルアルキル基を示し、Xは水素原子、炭素数1乃至5のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、ハロゲン原子を示し、nは1乃至3の整数を示す。)
前記化合物としては、4-フェニルフェノールエチレングリコールエーテルとシクロヘキサンカルボン酸とのジエステル、4-フェニルフェノールジエチレングリコールエーテルとラウリン酸とのジエステル、4-フェニルフェノールトリエチレングリコールエーテルとシクロヘキサンカルボン酸とのジエステル、4-フェニルフェノールエチレングリコールエーテルとオクタン酸とのジエステル、4-フェニルフェノールエチレングリコールエーテルとノナン酸とのジエステル、4-フェニルフェノールエチレングリコールエーテルとデカン酸とのジエステル、4-フェニルフェノールエチレングリコールエーテルとミリスチン酸とのジエステルを例示できる。
【0035】
前記可逆熱変色性組成物の各成分の割合は、濃度、変色温度、変色形態や各成分の種類に左右されるが、一般的に所望の特性が得られる成分比は、(イ)成分1に対して、(ロ)成分0.1~100、好ましくは0.1~50、より好ましくは0.5~20、(ハ)成分1~800、好ましくは5~200、より好ましくは10~100の範囲である(前記割合はいずれも質量部である)。
ここで、前記可逆熱変色性マイクロカプセル顔料中に非熱変色性の染料、顔料等の着色剤を配合して、有色(1)から有色(2)への互変的色変化を呈することもできる。
【0036】
なお、各成分は各々2種以上の化合物の混合であってもよく、更には機能に支障のない範囲で光安定剤を添加することができる。
前記光安定剤としては、(イ)成分の光反応による励起状態によって生ずる光劣化を防止する紫外線吸収剤、可視光線吸収剤、赤外線吸収剤、酸化防止剤、カロチン類、色素類、アミン類、フェノール類、ニッケル錯体類、スルフィド類等の一重項酸素消光剤、オキシドジスムスターゼとコバルト、及びニッケルの錯体等のスーパーオキシドアニオン消光剤、オゾン消光剤等、酸化反応を抑制する化合物が挙げられ、0.3~24質量%、好ましくは0.8~16重量%の割合で配合される。なかでも、前記紫外線吸収剤と、酸化防止剤及び/又は一重項酸素消光剤を併用した系にあっては、耐光性の向上に特に効果的である。
更には、一般染料や顔料(非熱変色性)を配合することもできる。
前記一般染料、顔料としては、酸性染料、塩基性染料、直接染料、無機顔料、有機顔料、着色樹脂顔料、二酸化チタン等が挙げられる。
【0037】
前記可逆熱変色性組成物は、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂中に分散したり、或いは、マイクロカプセルに内包することによって可逆熱変色性材料として用いられる。
なお、マイクロカプセル化は、公知の界面重合法、in Situ重合法、液中硬化被覆法、水溶液からの相分離法、有機溶媒からの相分離法、融解分散冷却法、気中懸濁被覆法、スプレードライング法等があり、用途に応じて適宜選択される。
前記カプセルの材質としては、エポキシ樹脂、尿素樹脂、ウレタン樹脂、イソシアネート樹脂等が挙げられる。
更にマイクロカプセルの表面には、目的に応じて二次的な樹脂皮膜を設けて耐久性を付与したり、表面特性を改質させて実用に供することもできる。
前記マイクロカプセル顔料は、内包物/壁膜=7/1~1/1(質量比)の範囲であることが好ましく、壁膜の比率が前記範囲内にあることにより、発色時の色濃度及び鮮明性の低下を防止することができ、より好適には、内包物/壁膜=6/1~1/1(質量比)である。
【0038】
前記可逆熱変色性組成物を内包した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料は、粒子径0.1~30μm、好ましくは0.5~20μm、より好ましくは0.5~10μmの範囲が実用性を満たす。
なお、粒子径および平均粒子径の測定は、マウンテック社製の画像解析式粒度分布測定ソフトウェア「マックビュー」を用いて粒子の領域を判定し、粒子の領域の面積から投影面積円相当径(Heywood径)を算出し、その値による等体積球相当の粒子の粒子径および平均粒子径として測定した値である。また、全ての粒子或いは大部分の粒子の粒子径が0.2μmを超える場合には、粒度分布測定装置(ベックマン・コールター株式会社製、製品名:Multisizer 4e)を用いてコールター法により等体積球相当の粒子の粒子径および平均粒子径として測定することも可能である。
さらに、コールター法による測定装置を用いて計測した数値を基にしてキャリブレーションしたレーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(装置名:LA-960V2、株式会社堀場製作所製)を用いて、体積基準の粒子径および平均粒子径(メジアン径)を測定しても良い。
【0039】
前記可逆熱変色性材料は、バインダー樹脂を含む水性又は油性ビヒクル中に分散させてインキ、塗料などの色材として適用され、汎用の印刷乃至塗布手段、例えば、スクリーン印刷、オフセット印刷、プロセス印刷、グラビヤ印刷、コーター、タンポ印刷、インクジェット印刷等の印刷手段、刷毛塗り、スプレー塗装、静電塗装、電着塗装、流し塗り、ローラー塗り、浸漬塗装等の手段によりマスク本体に可逆熱変色体(可逆熱変色層)を形成することができる。
前記可逆熱変色体は、ベタ印刷されたものに限らず、文字、数字、記号、図柄等の可逆熱変色像であってもよい。
前記可逆熱変色性マイクロカプセル顔料は、バインダー樹脂中に0.5~40重量%、好ましくは1~30重量%含有させることができる。0.5重量%未満の配合量では鮮明な熱変色効果を視覚させ難いし、40重量%を越えると過剰であり、消色状態にあって残色がみられることがある。
また、可逆熱変色体は接着層を介してマスクに貼着することもできる。
【0040】
更に、前記可逆熱変色体上には透明性を損なわない範疇で透明性金属光沢性、虹彩性、ホログラム性等の光学的性状を示す光輝層や保護層を設けたり、光安定剤層を設けることもできる。
前記光安定剤層は紫外線吸収剤、酸化防止剤、老化防止剤、一重項酸素消光剤、スーパーオキシドアニオン消光剤、オゾン消光剤、可視光線吸収剤、赤外線吸収剤から選ばれる光安定剤を分散状態に固着した層である。
なお、老化防止剤、帯電防止剤、極性付与剤、揺変性付与剤、消泡剤等を必要に応じて各層に添加して機能を向上させることもできる。
【0041】
前記第一可逆熱変色体と、第二可逆熱変色体は、マスクの一方の面に第一可逆熱変色体と第二可逆熱変色体を共に設けることもできるが、マスクの一方の面に第一可逆熱変色体を設け、他方の面に第二可逆熱変色体を設けることが好ましい。それは、使用者は第一可逆熱変色体を設けた側を外側(外気と接する側)、第二可逆熱変色体を設けた側を内側(顔と接する側)にして着用することが好ましく、第一可逆熱変色体の変色を第三者が明瞭に視認することができ、第二可逆熱変色体の変色を使用者が的確に視認することができるからである。
【0042】
更に、マスク自体が第一可逆熱変色体、又は、第二可逆熱変色体である場合は、マスク表面に他方の可逆熱変色体を備えることにより、同様の効果を奏することができる。
マスク自体が可逆熱変色体である構成とは、マスクを可逆熱変色性材料を含むインキや塗料に浸漬したり、マスクの繊維自体が可逆熱変色性材料を用いて形成された繊維であることが挙げられる。
【0043】
更に、マスクの一方の面に第一可逆熱変色体を設け、マスクの耳掛け紐に第二可逆熱変色体を設けたり(紐に可逆熱変色性材料を含むインキや塗料を浸漬したものを含む)、マスク自体が第一可逆熱変色体であり、マスクの耳掛け紐に第二可逆熱変色体を設けることにより、耳掛け紐の変色を使用者が的確に視認することができる構成であってもよい。
【実施例0044】
以下に本発明の可逆熱変色性マスクの実施例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
なお、実施例中の部は質量部を示す。
実施例1
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料Aの調製
(イ)成分として、1,3-ジメチル-6-ジエチルアミノフルオラン2.5部と、(ロ)成分として、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン5.0部と、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-デカン3.0部と、(ハ)成分として、ベヘン酸-3-メチルブチル40.0部と、ベヘン酸-2-メチルペンチル10.0部とからなる可逆熱変色性組成物を、界面重合法によりマイクロカプセルに内包し、マイクロカプセル懸濁液を得た。懸濁液を遠心分離して可逆熱変色性マイクロカプセル顔料Aを単離した。
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料Aは、完全発色温度t1が29℃、発色開始温度t2が39℃、消色開始温度t3が37℃、完全消色温度t4が40℃、ヒステリシス幅ΔHが1℃であり、温度変化により橙色から無色に色変化した。
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料Bの調製
(イ)成分として、3,3-ビス(2-エトキシ-4-ジエチルアミノフェニル)-4-アザフタリド1.0部と、(ロ)成分として、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-デカン8.0部と、(ハ)成分として、ステアリン酸n-ノニル50.0部とからなる可逆熱変色性組成物を、界面重合法によりマイクロカプセルに内包し、マイクロカプセル懸濁液を得た。懸濁液を遠心分離して色彩記憶性を有する可逆熱変色性マイクロカプセル顔料Bを単離した。
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料Bは、完全発色温度t1が19℃、発色開始温度t2が26℃、消色開始温度t3が31℃、完全消色温度t4が38℃、ヒステリシス幅ΔHが12℃であり、温度変化により青緑色から無色に色変化した。
【0045】
可逆熱変色性マスクの作製(
図3参照)
不織布からなるマスク本体2の外面(外気と接する側)の中央部分に、可逆熱変色性マイクロカプセル顔料A30部、ウレタン系エマルジョン62部、増粘剤2部、レベリング剤0.5部、消泡剤0.5部、架橋剤5部を均一に分散してなる可逆熱変色性インキを120メッシュのスクリーン版を用いてベタ印刷を行い、乾燥硬化させて第一可逆熱変色体3(可逆熱変色層)を設けた。
次いで、マスク本体2の内面(顔面と接する側)の中央部分に、可逆熱変色性マイクロカプセル顔料B30部、ウレタン系エマルジョン62部、増粘剤2部、レベリング剤0.5部、消泡剤0.5部、架橋剤5部を均一に分散してなる可逆熱変色性インキを120メッシュのスクリーン版を用いてベタ印刷を行い、乾燥硬化させて第二可逆熱変色体4(可逆熱変色層)を設けて、可逆熱変色性マスク1を得た。
なお、マスク両側面には伸縮性の耳掛け紐を設けてなる(図示せず)。
【0046】
前記可逆熱変色性マスクは、発熱により体温が38℃の使用者が着用すると、第一可逆熱変色体はマスク使用者の吐く息により、可逆熱変色性材料が橙色から無色に変色し、息を吐くことを止めると可逆熱変色性材料は無色から橙色に変色するため、第三者は使用者のマスクが消色と発色を繰り返す状態を目視で確認することができ、発熱を把握することができた。
また、第二可逆熱変色体はマスク使用者の吐く息により、可逆熱変色性材料が青緑色から無色に変色し、その状態は保持されるため、使用者はマスクを外して発熱の有無を目視により確認することができ、発熱を把握することができた。
【0047】
実施例2
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料Aの調製
(イ)成分として、3-ジブチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン9-エチル(3-メチルブチル)アミノ-スピロ[12H-ベンゾ(a)キサンテン-12,1′(3′H)イソベンゾフラン]-3′ -オン2.5部と、(ロ)成分として、2,2-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン8.0部と、(ハ)成分として、ベヘン酸-3-メチルブチル50.0部とからなる可逆熱変色性組成物を、界面重合法によりマイクロカプセルに内包し、マイクロカプセル懸濁液を得た。懸濁液を遠心分離して可逆熱変色性マイクロカプセル顔料Aを単離した。
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料Aは、完全発色温度t1が30℃、発色開始温度t2が40℃、消色開始温度t3が38℃、完全消色温度t4が41℃、ヒステリシス幅ΔHが1℃であり、温度変化により黒色から無色に色変化した。
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料Bの調製
(イ)成分として、1,2-ベンツ-6-(N-エチル-N-イソブチルアミノ)フルオラン1.0部と、(ロ)成分として、2,2-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン8.0部と、(ハ)成分として、p-tert-ブチル安息香酸ステアリル50.0部とからなる可逆熱変色性組成物を、界面重合法によりマイクロカプセルに内包し、マイクロカプセル懸濁液を得た。懸濁液を遠心分離して色彩記憶性を有する可逆熱変色性マイクロカプセル顔料Bを単離した。
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料Bは、完全発色温度t1が8℃、発色開始温度t2が15℃、消色開始温度t3が32℃、完全消色温度t4が39℃、ヒステリシス幅ΔHが24℃であり、温度変化によりピンク色から無色に色変化した。
【0048】
可逆熱変色性マスクの作製(
図4参照)
不織布からなるマスク本体2の外面(外気と接する側)の中央部分に、可逆熱変色性マイクロカプセル顔料A30部、赤色顔料1部、ウレタン系エマルジョン61部、増粘剤2部、レベリング剤0.5部、消泡剤0.5部、架橋剤5部を均一に分散してなる可逆熱変色性インキを120メッシュのスクリーン版を用いてベタ印刷を行い、乾燥硬化させて第一可逆熱変色体3(可逆熱変色層)を設けた。
次いで、マスク本体2の内面(顔面と接する側)の周囲部分に、可逆熱変色性マイクロカプセル顔料B30部、ウレタン系エマルジョン62部、増粘剤2部、レベリング剤0.5部、消泡剤0.5部、架橋剤5部を均一に分散してなる可逆熱変色性インキを120メッシュのスクリーン版を用いてベタ印刷を行い、乾燥硬化させて第二可逆熱変色体4(可逆熱変色層)を設けて、可逆熱変色性マスク1を得た。
なお、マスク両側面には伸縮性の耳掛け紐を設けてなる(図示せず)。
【0049】
前記可逆熱変色性マスクは、発熱により体温が39℃の使用者が着用すると、第一可逆熱変色体はマスク使用者の吐く息により、可逆熱変色性材料が黒色から赤色に変色し、息を吐くことを止めると可逆熱変色性材料は赤色から黒色に変色するため、第三者は使用者のマスクが変色を繰り返す状態を目視で確認することができ、発熱を把握することができた。
また、第二可逆熱変色体はマスク使用者の顔面の体温により、可逆熱変色性材料がピンク色から無色に変色し、その状態は保持されるため、使用者はマスクを外して発熱の有無を目視により確認することができ、発熱を把握することができた。
【0050】
実施例3
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料Aの調製
(イ)成分として、3-シクロヘキシルアミノ-7-メチルフルオラン9-エチル(3-メチルブチル)アミノ-スピロ[12H-ベンゾ(a)キサンテン-12,1′(3′H)イソベンゾフラン]-3′ -オン2.5部と、(ロ)成分として、2,2-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン8.0部と、(ハ)成分として、ベヘン酸-n-ブチル20.0部と、ベヘン酸-3-メチルブチル30.0部とからなる可逆熱変色性組成物を、界面重合法によりマイクロカプセルに内包し、マイクロカプセル懸濁液を得た。懸濁液を遠心分離して可逆熱変色性マイクロカプセル顔料Aを単離した。
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料Aは、完全発色温度t1が32℃、発色開始温度t2が42℃、消色開始温度t3が40℃、完全消色温度t4が43℃、ヒステリシス幅ΔHが1℃であり、温度変化により橙色から無色に色変化した。
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料Bの調製
(イ)成分として、9-エチル(3-メチルブチル)アミノ-スピロ[12H-ベンゾ(a)キサンテン-12,1′(3′H)イソベンゾフラン]-3′-オン3.0部と、(ロ)成分として、2,2-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン6.0部と、(ハ)成分として、ネオペンチルグリコールジパルミテート50.0部とからなる可逆熱変色性組成物を、界面重合法によりマイクロカプセルに内包し、マイクロカプセル懸濁液を得た。懸濁液を遠心分離して色彩記憶性を有する可逆熱変色性マイクロカプセル顔料Bを単離した。
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料Bは、完全発色温度t1が11℃、発色開始温度t2が18℃、消色開始温度t3が34℃、完全消色温度t4が41℃、ヒステリシス幅ΔHが23℃であり、温度変化により赤色から無色に色変化した。
【0051】
可逆熱変色性マスクの作製(
図5参照)
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料A30部、ウレタン系エマルジョン62部、増粘剤2部、レベリング剤0.5部、消泡剤0.5部、架橋剤5部を均一に分散してなる可逆熱変色性インキ中に、不織布からなるマスク本体2を浸漬した後、乾燥させた。
次いで、マスク本体2の内面(顔面と接する側)の周囲部分に、可逆熱変色性マイクロカプセル顔料B30部、青色顔料0.5部、ウレタン系エマルジョン61.5部、増粘剤2部、レベリング剤0.5部、消泡剤0.5部、架橋剤5部を均一に分散してなる可逆熱変色性インキを用いてベタ印刷を行なったラベルを貼着して第二可逆熱変色体4(可逆熱変色層)を設けて、可逆熱変色性マスク1を得た。
なお、マスク両側面には伸縮性の耳掛け紐を設けてなる(図示せず)。
【0052】
前記可逆熱変色性マスクは、発熱により体温が41℃の使用者が着用すると、可逆熱変色性マイクロカプセル顔料Aを含むマスク本体はマスク使用者の吐く息により、可逆熱変色性材料が橙色から無色に変色し、息を吐くことを止めると可逆熱変色性材料は無色から橙色に変色するため、第三者は使用者のマスクが消色と発色を繰り返す状態を目視で確認することができ、発熱を把握することができた。
また、第二可逆熱変色体はマスク使用者の顔面の体温により、可逆熱変色性材料が紫色から青色に変色し、その状態は保持されるため、使用者はマスクを外して発熱の有無を目視により確認することができ、発熱を把握することができた。
【0053】
実施例4
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料Aの調製
(イ)成分として、1,3-ジメチル-6-ジエチルアミノフルオラン2.5部と、(ロ)成分として、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン5.0部と、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-デカン3.0部と、(ハ)成分として、ベヘン酸-n-ブチル20.0部と、ベヘン酸-3-メチルブチル30.0部とからなる可逆熱変色性組成物を、界面重合法によりマイクロカプセルに内包し、マイクロカプセル懸濁液を得た。懸濁液を遠心分離して可逆熱変色性マイクロカプセル顔料Aを単離した。
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料Aは、完全発色温度t1が32℃、発色開始温度t2が42℃、消色開始温度t3が40℃、完全消色温度t4が43℃、ヒステリシス幅ΔHが1℃であり、温度変化により橙色から無色に色変化した。
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料Bの調製
(イ)成分として、3,3-ビス(2-エトキシ-4-ジエチルアミノフェニル)-4-アザフタリド1.0部と、(ロ)成分として、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-デカン8.0部と、(ハ)成分として、2-アセトナフトン50.0部とからなる可逆熱変色性組成物を、界面重合法によりマイクロカプセルに内包し、マイクロカプセル懸濁液を得た。懸濁液を遠心分離して色彩記憶性を有する可逆熱変色性マイクロカプセル顔料Bを単離した。
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料Bは、完全発色温度t1が-15℃、発色開始温度t2が-8℃、消色開始温度t3が-2℃、完全消色温度t4が40℃、ヒステリシス幅ΔHが22℃であり、温度変化により青緑色から無色に色変化した。
【0054】
可逆熱変色性マスクの作製(
図3参照)
不織布からなるマスク本体2の外面(外気と接する側)の中央部分に、可逆熱変色性マイクロカプセル顔料A30部、ウレタン系エマルジョン62部、増粘剤2部、レベリング剤0.5部、消泡剤0.5部、架橋剤5部を均一に分散してなる可逆熱変色性インキを120メッシュのスクリーン版を用いてベタ印刷を行い、乾燥硬化させて第一可逆熱変色体3(可逆熱変色層)を設けた。
次いで、マスク本体2の内面(顔面と接する側)の中央部分に、可逆熱変色性マイクロカプセル顔料B30部、ウレタン系エマルジョン62部、増粘剤2部、レベリング剤0.5部、消泡剤0.5部、架橋剤5部を均一に分散してなる可逆熱変色性インキを120メッシュのスクリーン版を用いてベタ印刷を行い、乾燥硬化させて第二可逆熱変色体4(可逆熱変色層)を設けて、可逆熱変色性マスク1を得た。
なお、マスク両側面には伸縮性の耳掛け紐を設けてなる(図示せず)。
【0055】
前記可逆熱変色性マスクは、発熱により体温が41℃の使用者が着用すると、第一可逆熱変色体はマスク使用者の吐く息により、可逆熱変色性材料が橙色から無色に変色し、息を吐くことを止めると可逆熱変色性材料は無色から橙色に変色するため、第三者は使用者のマスクが消色と発色を繰り返す状態を目視で確認することができ、発熱を把握することができた。
また、第二可逆熱変色体はマスク使用者の吐く息により、可逆熱変色性材料が青緑色から無色に変色し、その状態は保持されるため、使用者はマスクを外して発熱の有無を目視により確認することができ、発熱を把握することができた。
【0056】
実施例5
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料Aの調製
(イ)成分として、3-ジブチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン9-エチル(3-メチルブチル)アミノ-スピロ[12H-ベンゾ(a)キサンテン-12,1′(3′H)イソベンゾフラン]-3′ -オン2.5部と、(ロ)成分として、2,2-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン8.0部と、(ハ)成分として、ベヘン酸-3-メチルブチル50.0部とからなる可逆熱変色性組成物を、界面重合法によりマイクロカプセルに内包し、マイクロカプセル懸濁液を得た。懸濁液を遠心分離して可逆熱変色性マイクロカプセル顔料Aを単離した。
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料Aは、完全発色温度t1が30℃、発色開始温度t2が40℃、消色開始温度t3が38℃、完全消色温度t4が41℃、ヒステリシス幅ΔHが1℃であり、温度変化により黒色から無色に色変化した。
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料Bの調製
(イ)成分として、1,2-ベンツ-6-(N-エチル-N-イソブチルアミノ)フルオラン1.0部と、(ロ)成分として、2,2-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン8.0部と、(ハ)成分として、4-ビフェニル酢酸ヘキシル50.0部とからなる可逆熱変色性組成物を、界面重合法によりマイクロカプセルに内包し、マイクロカプセル懸濁液を得た。懸濁液を遠心分離して色彩記憶性を有する可逆熱変色性マイクロカプセル顔料Bを単離した。
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料Bは、完全発色温度t1が-30℃、発色開始温度t2が-22℃、消色開始温度t3が29℃、完全消色温度t4が39℃、ヒステリシス幅ΔHが60℃であり、温度変化によりピンク色から無色に色変化した。
【0057】
可逆熱変色性マスクの作製(
図4参照)
不織布からなるマスク本体2の外面(外気と接する側)の中央部分に、可逆熱変色性マイクロカプセル顔料A30部、赤色顔料1部、ウレタン系エマルジョン61部、増粘剤2部、レベリング剤0.5部、消泡剤0.5部、架橋剤5部を均一に分散してなる可逆熱変色性インキを120メッシュのスクリーン版を用いてベタ印刷を行い、乾燥硬化させて第一可逆熱変色体3(可逆熱変色層)を設けた。
次いで、マスク本体2の内面(顔面と接する側)の周囲部分に、可逆熱変色性マイクロカプセル顔料B30部、ウレタン系エマルジョン62部、増粘剤2部、レベリング剤0.5部、消泡剤0.5部、架橋剤5部を均一に分散してなる可逆熱変色性インキを120メッシュのスクリーン版を用いてベタ印刷を行い、乾燥硬化させて第二可逆熱変色体4(可逆熱変色層)を設けて、可逆熱変色性マスク1を得た。
なお、マスク両側面には伸縮性の耳掛け紐を設けてなる(図示せず)。
【0058】
前記可逆熱変色性マスクは、発熱により体温が39℃の使用者が着用すると、第一可逆熱変色体はマスク使用者の吐く息により、可逆熱変色性材料が黒色から赤色に変色し、息を吐くことを止めると可逆熱変色性材料は赤色から黒色に変色するため、第三者は使用者のマスクが変色を繰り返す状態を目視で確認することができ、発熱を把握することができた。
また、第二可逆熱変色体はマスク使用者の顔面の体温により、可逆熱変色性材料がピンク色から無色に変色し、その状態は保持されるため、使用者はマスクを外して発熱の有無を目視により確認することができ、発熱を把握することができた。
【0059】
比較例1
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の調製
(イ)成分として、1,3-ジメチル-6-ジエチルアミノフルオラン2.5部と、(ロ)成分として、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン5.0部と、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-デカン3.0部と、(ハ)成分として、ベヘン酸-3-メチルブチル40.0部と、ベヘン酸-2-メチルペンチル10.0部とからなる可逆熱変色性組成物を、界面重合法によりマイクロカプセルに内包し、マイクロカプセル懸濁液を得た。懸濁液を遠心分離して可逆熱変色性マイクロカプセル顔料を単離した。
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料は、完全発色温度t1が29℃、発色開始温度t2が39℃、消色開始温度t3が37℃、完全消色温度t4が40℃、ヒステリシス幅ΔHが1℃であり、温度変化により橙色から無色に色変化した。
【0060】
可逆熱変色性マスクの作製
不織布からなるマスク本体の外面(外気と接する側)の中央部分に、可逆熱変色性マイクロカプセル顔料30部、ウレタン系エマルジョン62部、増粘剤2部、レベリング剤0.5部、消泡剤0.5部、架橋剤5部を均一に分散してなる可逆熱変色性インキを120メッシュのスクリーン版を用いてベタ印刷を行い、乾燥硬化させて可逆熱変色体(可逆熱変色層)を設けた。
なお、マスク両側面には伸縮性の耳掛け紐を設けてなる。
【0061】
前記可逆熱変色性マスクは、発熱により体温が38℃の使用者が着用すると、第一可逆熱変色体はマスク使用者の吐く息により、可逆熱変色性材料が橙色から無色に変色し、息を吐くことを止めると可逆熱変色性材料は無色から橙色に変色するため、第三者は使用者のマスクが消色と発色を繰り返す状態を目視で確認することができ、発熱を把握することができるものの、使用者自身は変色する状態を確認することができないため、発熱を把握することができなかった。