(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023110383
(43)【公開日】2023-08-09
(54)【発明の名称】光デバイス、基板型光導波路素子、光通信装置及び導波路間遷移方法
(51)【国際特許分類】
G02B 6/12 20060101AFI20230802BHJP
【FI】
G02B6/12 321
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022011793
(22)【出願日】2022-01-28
(71)【出願人】
【識別番号】309015134
【氏名又は名称】富士通オプティカルコンポーネンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡 徹
【テーマコード(参考)】
2H147
【Fターム(参考)】
2H147AA01
2H147AB29
2H147BA02
2H147BA05
2H147BB02
2H147BB09
2H147EA12A
2H147EA12B
2H147EA13A
2H147EA14A
2H147EA14B
2H147EA25B
2H147GA25
(57)【要約】
【課題】異なる導波路間の間接遷移による光損失を抑制できる光デバイス等を提供する。
【解決手段】光デバイスは、第1の材料屈折率を有する第1の導波路と、第2の材料屈折率を有する第2の導波路との間で垂直モードの光が間接遷移する。光デバイスは、第1の導波路を導波する垂直モードの実効屈折率と第2の導波路を導波する垂直モードの実効屈折率との大小関係が入出力で逆転するように、第1の導波路及び第2の導波路が離間した状態で重ねて配置する遷移部を有する。遷移部は、入力では、第2の導波路を、実効屈折率が最大の垂直モードの光のみが導波するシングルモード導波路とし、出力では、第2の導波路を、最大の垂直モード及び高次モードの光が導波するマルチモード導波路とする。光デバイスは、第2の導波路を、遷移部からの垂直モードの光から高次モードを除去して最大の垂直モードの光のみが導波するシングルモード導波路とする除去部を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の材料屈折率を有する第1の導波路と、前記第1の材料屈折率よりも低い第2の材料屈折率を有する第2の導波路との間で垂直モードの光が間接遷移する光デバイスであって、
前記第1の導波路を導波する前記垂直モードの実効屈折率と前記第2の導波路を導波する前記垂直モードの実効屈折率との大小関係が入出力で逆転するように、前記第1の導波路及び前記第2の導波路が離間した状態で重ねて配置することで、入力では、前記第2の導波路を、前記垂直モードの内、実効屈折率が最大の垂直モードの光のみが導波するシングルモード導波路とし、出力では、前記第2の導波路を、前記最大の垂直モード及び、前記垂直モードの高次モードの光が導波するマルチモード導波路とする遷移部と、
前記第2の導波路を、前記遷移部からの前記垂直モードの光から前記高次モードを除去して前記最大の垂直モードの光のみが導波する前記シングルモード導波路とする除去部と、
を有することを特徴とする光デバイス。
【請求項2】
前記第1の導波路は、
前記光の進行方向に応じて導波路幅が徐々に狭くなる第1のテーパ導波路を有し、
前記第2の導波路は、
前記第1のテーパ導波路と間接遷移で光結合し、前記光の進行方向に応じて導波路幅が徐々に広くなる第2のテーパ導波路と、
前記第2のテーパ導波路と光結合し、前記光の進行方向に応じて導波路幅が徐々に狭くなる第3のテーパ導波路と、を有し、
前記遷移部は、
前記第1のテーパ導波路の入力部と前記第2のテーパ導波路の入力部とが離間した状態で重なると共に、前記第1のテーパ導波路の出力部と前記第2のテーパ導波路の出力部とが離間した状態で重なるように配置して、前記第1のテーパ導波路を導波する前記垂直モードの実効屈折率と前記第2のテーパ導波路を導波する前記垂直モードの実効屈折率との大小関係が前記遷移部の入出力で逆転することで、前記第2のテーパ導波路の入力部を前記シングルモード導波路とし、前記第2のテーパ導波路の出力部を前記マルチモード導波路とすると共に、
前記除去部は、
前記遷移部からの前記垂直モードの光が前記第3のテーパ導波路を導波することで、前記第3のテーパ導波路を、前記垂直モードの光から前記高次モードを除去して前記最大の垂直モードの光のみが導波する前記シングルモード導波路とすることを特徴とする請求項1に記載の光デバイス。
【請求項3】
前記遷移部は、
前記第1のテーパ導波路が孤立導波路とみなした場合の前記第1のテーパ導波路を導波する前記垂直モードの実効屈折率と、前記第2のテーパ導波路が孤立導波路とみなした場合の前記第2のテーパ導波路を導波する前記垂直モードの実効屈折率との大小関係が前記遷移部の入出力で逆転することを特徴とする請求項2に記載の光デバイス。
【請求項4】
前記遷移部は、
前記遷移部の出力部にある前記第2のテーパ導波路の導波路幅を、前記遷移部の入力部にある前記第1のテーパ導波路の導波路幅に比較して広くする構造を有し、前記入力部では、前記第2のテーパ導波路を前記シングルモード導波路とし、前記出力部では、前記第2のテーパ導波路を前記マルチモード導波路とすることを特徴とする請求項2又は3に記載の光デバイス。
【請求項5】
基板上にクラッドで被覆する前記第1の導波路は、
Si(Silicon)を含む材料で形成され、
前記基板上にクラッドで被覆する前記第2の導波路は、
SiN(Silicon Nitride)を含む材料で形成され、
前記クラッドは、
SiO2を含む材料で形成されることを特徴とする請求項1~4の何れか一つに記載の光デバイス。
【請求項6】
前記第1の導波路及び前記第2の導波路は、
リブ導波路であることを特徴とする請求項1~5の何れか一つに記載の光デバイス。
【請求項7】
第1の材料屈折率を有する第1の導波路と、前記第1の材料屈折率よりも低い第2の材料屈折率を有する第2の導波路との間で垂直モードの光が間接遷移する基板型光導波路素子であって、
前記第1の導波路を導波する前記垂直モードの実効屈折率と前記第2の導波路を導波する前記垂直モードの実効屈折率との大小関係が入出力で逆転するように、前記第1の導波路及び前記第2の導波路が離間した状態で重ねて配置することで、入力では、前記第2の導波路を、前記垂直モードの内、実効屈折率が最大の垂直モードの光のみが導波するシングルモード導波路とし、出力では、前記第2の導波路を、前記最大の垂直モード及び、前記垂直モードの高次モードの光が導波するマルチモード導波路とする遷移部と、
前記第2の導波路を、前記遷移部からの前記垂直モードの光から前記高次モードを除去して前記最大の垂直モードの光のみが導波する前記シングルモード導波路とする除去部と、
を有することを特徴とする基板型光導波路素子。
【請求項8】
光源と、
送信信号を用いて光源からの光を光変調して送信光を送信する光送信器と、
前記光源からの光を用いて受信光から受信信号を受信する光受信器と、
前記光送信器及び前記光受信器内で前記光を導波路する基板型光導波路素子と、を有する光通信装置であって、
前記基板型光導波路素子は、
第1の材料屈折率を有する第1の導波路と、前記第1の材料屈折率よりも低い第2の材料屈折率を有する第2の導波路との間で垂直モードの光が間接遷移する基板型光導波路素子であって、
前記第1の導波路を導波する前記垂直モードの実効屈折率と前記第2の導波路を導波する前記垂直モードの実効屈折率との大小関係が入出力で逆転するように、前記第1の導波路及び前記第2の導波路が離間した状態で重ねて配置することで、入力では、前記第2の導波路を、前記垂直モードの内、実効屈折率が最大の垂直モードの光のみが導波するシングルモード導波路とし、出力では、前記第2の導波路を、前記最大の垂直モード及び、前記垂直モードの高次モードの光が導波するマルチモード導波路とする遷移部と、
前記第2の導波路を、前記遷移部からの前記垂直モードの光から前記高次モードを除去して前記最大の垂直モードの光のみが導波する前記シングルモード導波路とする除去部と、
を有することを特徴とする光通信装置。
【請求項9】
第1の材料屈折率を有する第1の導波路と、前記第1の材料屈折率よりも低い第2の材料屈折率を有する第2の導波路との間で垂直モードの光が間接遷移する導波路間遷移方法であって、
前記第1の導波路を導波する前記垂直モードの実効屈折率と前記第2の導波路を導波する前記垂直モードの実効屈折率との大小関係が入出力で逆転するように、前記第1の導波路及び前記第2の導波路が離間した状態で重ねて配置することで、入力では、前記第2の導波路を、前記垂直モードの内、実効屈折率が最大の垂直モードの光のみが導波するシングルモード導波路とし、出力では、前記第2の導波路を、前記最大の垂直モード及び、前記垂直モードの高次モードの光が導波するマルチモード導波路とし、
前記第2の導波路を、前記マルチモード導波路からの前記垂直モードの光から前記高次モードを除去して前記最大の垂直モードの光のみが導波するシングルモード導波路とする
処理を実行することを特徴とする導波路間遷移方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光デバイス、基板型光導波路素子、光通信装置及び導波路間遷移方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、通信容量の増加に伴って、光ファイバ通信の需要が増大しているため、電気信号を光信号に変換する小型の光デバイスが使用されている。そこで、近年、シリコンフォトニクスに代表される超小型の基板型光導波路素子(単に、光デバイスと称する)の開発が盛んに行われている。光デバイスでは、同じチップ上に異なる材料から成る2つ以上の導波路を集積することが可能である。
【0003】
光デバイスを構成する光部品は、例えば、材料屈折率によって得られる特性が異なるため、光部品毎に適切な材料の導波路を使用することで、光デバイスの特性の向上を図ることができる。そこで、異なる材料の導波路を使用する光デバイスでは、異なる導波路間で光を間接遷移する導波路間遷移構造を有する。
【0004】
また、光デバイスでは、通信容量を増加させるために、直交する2偏波成分に異なる信号を乗せて伝送する偏波伝送技術が採用されている。直交する2偏波成分には、基板に水平な電界成分が主となるTE-likeモード(単に、TEモードと称する)及び、基板に垂直な電界成分が主となるTM-likeモード(単に、TMモード、もしくは垂直モードと称する)を有する。
【0005】
TMモードは、TEモードに比較してコアへの光閉じ込めが弱いため、異なる導波路間の間接遷移で光損失が大きくなる。そこで、導波路間遷移構造では、異なる導波路間の間接遷移によるTMモードの光損失を抑制することが求められている。
【0006】
図9は、従来の導波路間遷移構造200の一例を示す説明図である。
図9に示す導波路間遷移構造200では、SiO
2のクラッドで被覆された、例えば、Siの導波路(単に、Si導波路と称する)201と、クラッドで被覆された、例えば、Si
3N
4の導波路(単に、SiN(Silicon Nitride)導波路と称する)202とを有する。導波路間遷移構造200では、TEモードの内、実効屈折率が最も大きいモードであるTE0モードの光をSi導波路201とSiN導波路202との間で間接遷移する。
【0007】
導波路間遷移構造200では、Si導波路201の途中から、その上方にSiN導波路202が配置され、光の進行方向に沿って、Si導波路201の導波路幅が徐々に狭くなり、同時にSiN導波路202の導波路幅が徐々に広くなる。そして、導波路間遷移構造では、最後に、Si導波路201は途切れてSiN導波路202だけとなる構造である。そして、導波路間遷移構造200では、Si導波路201とSiN導波路202との間でSi導波路201に局在していた電界Eが断熱的にSiN導波路202へと徐々に遷移することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2016-180865号公報
【特許文献2】特開2015-191110号公報
【特許文献3】国際公開第2008/114624号
【特許文献4】米国特許第7397995号明細書
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】WESLEY D. SACHER, et al., “Monolithically Integrated Multilayer Silicon Nitride-on-Silicon Waveguide Platforms for 3-D Photonic Circuits and Devices,” PROCEEDINGS OF THE IEEE, Vol. 106, No. 12, December 2018
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、従来の導波路間遷移構造200では、Si導波路201上部に導波路幅の狭いSiN導波路202が不連続的に生じる第1の断面部分X1を有する。更に、従来の導波路間遷移構造200では、SiN導波路202の下部に導波路幅の狭いSi導波路201が無くなる第2の断面部分X2を有する。つまり、従来の導波路間遷移構造200では、2か所の不連続な断面部分を有する。導波路間遷移構造200では、不連続な断面部分X1,X2によって、遷移する光が散乱して光損失が発生する。
【0011】
また、例えば、光の波長が1.55μmとした場合、Siの材料屈折率が約3.5、Si3N4の材料屈折率が約2.0であるため、Siの材料屈折率の方が大きい。一般的に、材料屈折率が高いコアの方が電界をコアに閉じ込められる。従って、SiN導波路202の下部にある導波路幅の狭いSi導波路201が途切れる第2の断面部分X2では、途切れる方のSi導波路201のコアに電界Eが局在する方が不連続性によるロスが増加することになる。その結果、不連続性によるロスの増加でSi導波路201が途切れる第2の断面部分X2での光損失の影響が顕著となる。Si導波路201が途切れる第2の断面部分X2での光損失の影響は、Si導波路201とSiN導波路202との間の間接遷移の場合に限らず、材料屈折率に大小関係がある導波路を採用した導波路間遷移構造であれば同様に生じる。しかも、不連続な断面部分での光散乱による光損失の増加は、TE0モードの光に比較してTM0モードの光の方が顕著となる。
【0012】
従来の導波路間遷移構造200では、Si導波路201を導波するTM0モードの光が、SiN導波路202を導波するTM0モードの光へ、断熱的に遷移する。TM0モードの光が遷移するためには、Si導波路201を導波するTM0モードの実効屈折率とSiN導波路202を導波するTM0モードの実効屈折率とが徐々に一致するようにSi導波路201及びSiN導波路202を配置する必要がある。そして、Si導波路201を導波するTM0モードとSiN導波路202を導波するTM0モードとが相互作用することでTM0モードの電界はSi導波路201及びSiN導波路202に分布することになる。
【0013】
導波路間遷移構造200の入力部200A及び出力部200Bでは、外部の孤立した導波路と効率よく接続できることが好ましい。尚、外部の孤立した導波路とは、例えば、Si導波路201上にSiN導波路202がないSi導波路201単体の導波路や、SiN導波路202下にSi導波路201がないSiN導波路202単体の導波路である。
【0014】
しかしながら、入力部200A及び出力部200Bでは、Si導波路201及びSiN導波路202の両方に電界が分布する相互作用は好ましくない。入力部200A及び出力部200Bでは、両方の導波路に電界が分布した場合、外部の孤立した導波路と接続する際にモード分布のミスマッチによる光損失やモード変換、反射等が発生することになる。
【0015】
一つの側面では、異なる導波路間の間接遷移による光損失を抑制できる光デバイス等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
一つの態様の光デバイスは、第1の材料屈折率を有する第1の導波路と、第1の材料屈折率よりも低い第2の材料屈折率を有する第2の導波路との間で垂直モードの光が間接遷移する。光デバイスは、第1の導波路を導波する垂直モードの実効屈折率と第2の導波路を導波する垂直モードの実効屈折率との大小関係が入出力で逆転するように、第1の導波路及び第2の導波路が離間した状態で重ねて配置する遷移部を有する。遷移部は、入力では、第2の導波路を、垂直モードの内、実効屈折率が最大の垂直モードの光のみが導波するシングルモード導波路とし、出力では、第2の導波路を、最大の垂直モード及び、垂直モードの高次モードの光が導波するマルチモード導波路とする。光デバイスは、第2の導波路を、遷移部からの垂直モードの光から高次モードを除去して最大の垂直モードの光のみが導波するシングルモード導波路とする除去部を有する。
【発明の効果】
【0017】
一つの側面によれば、異なる導波路間の間接遷移による光損失を抑制できる光デバイス等を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、本実施例の基板型光導波路素子の一例を示す説明図である。
【
図3A】
図3Aは、従来の導波路間遷移構造の出力部でのSiN導波路の導波路幅(コアの厚さ0.4μm)に応じた各モードの実効屈折率の関係の一例を示す説明図である。
【
図3B】
図3Bは、遷移部の出力部でのSiN導波路の導波路幅(コアの厚さ0.3μm)に応じた各モードの実効屈折率の関係の一例を示す説明図である。
【
図4】
図4は、遷移部の断面位置毎に伝搬するTE0モード及びTM0モードの実効屈折率の計算結果の一例を示す説明図である。
【
図5】
図5は、本実施例の基板型光導波路素子を内蔵した光通信装置の一例を示す説明図である。
【
図6】
図6は、比較例の基板型光導波路素子の一例を示す説明図である。
【
図8】
図8は、遷移部の断面位置毎に伝搬するTE0モード及びTM0モードの実効屈折率の計算結果の一例を示す説明図である。
【
図9】
図9は、従来の導波路間遷移構造の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図6は、比較例の基板型光導波路素子100の一例を示す説明図である。尚、説明の便宜上、
図6では、クラッド103の図示は省略するものとする。
図6に示す基板型光導波路素子100は、Si導波路101と、SiN導波路102と、Si導波路101及びSiN導波路102を被覆する、クラッド103とを有する。更に、基板型光導波路素子100は、Si導波路101とSiN導波路102との間を間接遷移で光結合する遷移部104を有する。Si導波路101は、例えば、Siで形成し、光波長が1.55μmとした場合のSiの材料屈折率は3.48である。SiN導波路102は、例えば、Si
3N
4(以下、単にSiNと称する)で形成し、光波長が1.55μmとした場合のSiNの材料屈折率は1.99である。クラッド103は、例えば、SiO
2で形成し、光波長が1.55μmとした場合のSiO
2の材料屈折率は1.44である。
【0020】
Si導波路101は、第1の直線導波路110と、第1の直線導波路110と光結合する第1のテーパ導波路120とを有する。第1のテーパ導波路120は、光の進行方向に応じて第1の直線導波路110の出力からSiN導波路102の入力に向けて導波路幅が徐々に狭くなるテーパ構造を有する。第1の直線導波路110の導波路幅は、例えば、0.48μmとする。また、第1のテーパ導波路120の入力部120Aの導波路幅は、例えば、0.48μm、第1のテーパ導波路120の出力部120Bの導波路幅は、例えば、0.09μmとする。第1の直線導波路110及び第1のテーパ導波路120のコアの厚みは、例えば、0.22μmとする。
【0021】
SiN導波路102は、第2のテーパ導波路130と、第2のテーパ導波路130と光結合する第2の直線導波路140とを有する。第2のテーパ導波路130は、第1の直線導波路110の出力から第2の直線導波路140の入力に向けて導波路幅が徐々に広くなるテーパ構造を有する。第2のテーパ導波路130の入力部130Aの導波路幅は、例えば、0.25μm、第2のテーパ導波路130の出力部130Bの導波路幅は、例えば、WSiNとする。第2の直線導波路140の導波路幅も、例えば、WSiNとする。第2の直線導波路140及び第2のテーパ導波路130のコアの厚みは、例えば、0.3μmとする。
【0022】
基板型光導波路素子100は、第1のテーパ導波路120と第2のテーパ導波路130との間を離間した状態で第1のテーパ導波路120上に第2のテーパ導波路130の一部を重ねて配置することで構成する遷移部104を有する。尚、第1のテーパ導波路120と第2のテーパ導波路130との間の間隔は、例えば、0.3μmとする。
【0023】
遷移部104は、入力部104Aと、出力部104Bと、入力部104Aと出力部104Bとの間である中間部104Cとを有する。
図7Aは、
図6に示すA-A線の略断面部分の一例を示す説明図である。
図7Aに示すA-A線の略断面部分は、Si導波路101内の第1の直線導波路110の略断面部分である。尚、第1の直線導波路110の導波路幅は、例えば、0.48μm、コアの厚みは、例えば、0.22μmとする。
【0024】
図7Bは、
図6に示すB-B線の略断面部分の一例を示す説明図である。
図7Bに示すB-B線の略断面部分は、遷移部104の入力部104Aの略断面部分であって、第1のテーパ導波路120の入力部120Aの導波路幅が第2のテーパ導波路130の入力部130Aの導波路幅に比較して広い構造である。第1のテーパ導波路120の入力部120Aの導波路幅は、例えば、0.48μm、第2のテーパ導波路130の入力部130Aの導波路幅は、例えば、0.25μmとする。第1のテーパ導波路120のコアの厚みは、例えば、0.22μm、第2のテーパ導波路130のコアの厚みは、例えば、0.3μmとする。第1のテーパ導波路120と第2のテーパ導波路130との間の間隔は、例えば、0.3μmとする。
【0025】
図7Cは、
図6に示すC-C線の略断面部分の一例を示す説明図である。
図7Cに示すC-C線の略断面部分は、遷移部104の中間部104Cの略断面であって、第1のテーパ導波路120の導波路幅が第2のテーパ導波路130の導波路幅に比較して狭くなる構造である。第1のテーパ導波路120のコアの厚みは、例えば、0.22μm、第2のテーパ導波路130のコアの厚みは、例えば、0.3μmとする。第1のテーパ導波路120と第2のテーパ導波路130との間の間隔は、例えば、0.3μmとする。
【0026】
図7Dは、
図6に示すD-D線の略断面部分の一例を示す説明図である。
図7Dに示すD-D線の略断面部分は、遷移部104の出力部104Bの略断面部分であって、第2のテーパ導波路130の出力部130Bの導波路幅が第1のテーパ導波路120の出力部120Bの導波路幅に比較して広い構造である。第1のテーパ導波路120の出力部120Bの導波路幅は、例えば、0.09μm、第2のテーパ導波路130の出力部130Bの導波路幅はW
SiNとする。第1のテーパ導波路120のコアの厚みは、例えば、0.22μm、第2のテーパ導波路130のコアの厚みは、例えば、0.3μmとする。第1のテーパ導波路120と第2のテーパ導波路130との間の間隔は、例えば、0.3μmとする。
【0027】
図7Eは、
図6に示すE-E線の略断面部分の一例を示す説明図である。
図7Eに示すE-E線の略断面部分は、SiN導波路102内の第2の直線導波路140の略断面部分である。尚、第2の直線導波路140の導波路幅はW
SiN、コアの厚みは、例えば、0.3μmである。
【0028】
遷移部104の入力部104Aは、第1のテーパ導波路120の入力部120Aと第2のテーパ導波路130の入力部130Aとが重なる部分で第1の直線導波路110からの光が不連続となる第1の断面部分を有する。入力部120Aの導波路幅は、入力部130Aの導波路幅と異なるので、第1のテーパ導波路120と第2のテーパ導波路130との間で光の不連続箇所を構成することになる。
【0029】
遷移部104の出力部104Bは、第1のテーパ導波路120の出力部120Bと第2のテーパ導波路130の出力部130Bとが重なる部分で第2の直線導波路140への光が不連続でなくなる第2の断面部分を有する。出力部120Bの導波路幅は、出力部130Bの導波路幅と異なるので、第1のテーパ導波路120と第2のテーパ導波路130との間で光の不連続箇所を構成することになる。
【0030】
遷移部104の入力部104Aでは、第1のテーパ導波路120の導波路幅が広く、第2のテーパ導波路130の導波路幅が狭く、出力部104Bでは、第1のテーパ導波路120の導波路幅が狭く、第2のテーパ導波路130の導波路幅が広くなる構造である。つまり、第1のテーパ導波路120の導波路幅が入力部120Aから出力部120Bに向けて徐々に狭く、第2のテーパ導波路130の導波路幅が入力部130Aから出力部130Bに向けて徐々に広くなる構造にした。一般的に、導波路の導波路幅が広いほど、コアへの光閉じ込めが強くなるため、コアの材料屈折率の影響を受けて実効屈折率は大きくなる。
【0031】
遷移部104の入力部104A及び出力部104Bでは、第1のテーパ導波路120を導波するTM0モードの実効屈折率と、第2のテーパ導波路130を導波するTM0モードの実効屈折率との間に大きな差を備える構造となる。その結果、遷移部104の入力部104A及び出力部104Bでは、Si導波路101及びSiN導波路102の両方に電界が分布するような相互作用を低減できる。例えば、SiN導波路102の下部にある導波路幅の狭いSi導波路101が途切れる断面部分である遷移部104の出力部104Bでは、SiN導波路102のコアに電界Eが局在することになるため、不連続性によるロスが抑制することができる。
【0032】
更に、遷移部104の中間部104Cでは、第1のテーパ導波路120を導波するTM0モードの実効屈折率と、第2のテーパ導波路130を導波するTM0モードの実効屈折率とが近付いて一致する構造となる。その結果、Si導波路101及びSiN導波路102の両方に電界が分布する相互作用が強まることになる。
【0033】
比較例の遷移部104では、Si導波路101を導波するTM0モードの実効屈折率と、SiN導波路102を導波するTM0モードの実効屈折率との間に大きな差を設けることで、不連続な断面部分での光散乱による光損失を抑制できる。
【0034】
しかしながら、異なる導波路を導波するTM0モードの実効屈折率に差を設けることは次の検証結果から困難である。
図8は、遷移部104の断面位置毎に伝搬するTE0モード及びTM0モードの実効屈折率の計算結果の一例を示す説明図である。
【0035】
図8は、遷移部104のSi導波路101及びSiN導波路102の断面位置毎に伝搬するTE0モード及びTM0モードの実効屈折率の計算結果を示すグラフ化したものである。第1の断面位置“0”は、遷移部104の入力部104Aに相当し、
図7Bに示すB-B線の断面部位である。第2の断面位置“1”は、遷移部104の出力部104Bに相当し、
図7Dに示すD-D線の断面部位である。第3の断面位置“0.5”は、遷移部104の中間部104Cに相当し、
図7Cに示すC-C線の断面部位である。Si導波路101及びSiN導波路102を導波する光の波長は1.55μmとする。実効屈折率の計算は有限要素法を使用した。計算では、Si導波路101及びSiN導波路102が孤立した場合の実効屈折率を計算するものとする。尚、“孤立した”とは、対象とする導波路とは異なる方の導波路を無限遠まで離間したものである。
【0036】
SiN導波路102の最大の導波路幅W
SiN=1.0umでは、後述する
図3Bに示す通り、シングルモード条件を満たしているものとする。すなわち、SiN導波路102は、TEモードの高次モードであるTE1やTMモードの高次モードであるTM1は導波しないものとする。
【0037】
Si導波路101が途切れる第2の断面位置“1”では、
図8に示す通り、Si導波路101を導波するTE0モードの実効屈折率とSiN導波路102を導波するTE0モードの実効屈折率との差が0.126である。これに対して、Si導波路101を導波するTM0モードの実効屈折率とSiN導波路102を導波するTM0モードの実行屈折率との差が0.056である。従って、TM0モードの方がSi導波路101とSiN導波路102との間で実効屈折率の差をつけるのが難しいことが分かる。
【0038】
また、遷移部104の入力部104A及び出力部104Bは、導波路が不連続になる影響を小さくするために、TM0モードの場合、TE0モードに比較して大きな導波路幅の差が必要となる。特に、不連続な断面部分が高屈折率のSi導波路101の場合には、より顕著となる。そこで、Si導波路101からSiN導波路102に光が間接遷移する際には、Si導波路101の不連続な断面部分の上部にあるSiN導波路102の導波路幅を広げる必要がある。しかしながら、SiN導波路102の導波路幅を広げ過ぎると、シングルモード導波路としての条件を満たさず、高次モードが導波されてしまう。その結果、高次モードが伝搬してしまうと、製造時に生じる導波路内の側壁荒れの影響等で高次モードが発生し、高次モードの発生によって、不要な干渉等が生じて光信号の特性劣化に繋がる。
【0039】
そこで、このような事態を解消する基板型光導波路素子1の実施の形態につき、図面を参照して詳細に説明する。なお、この実施の形態により本発明が限定されるものではない。また、以下に示す各実施例は、矛盾を起こさない範囲で適宜組み合わせても良い。
【実施例0040】
図1は、本実施例の基板型光導波路素子1の一例を示す説明図である。
図1に示す基板型光導波路素子1は、Si(Silicon)導波路2と、SiN(Silicon Nitride)導波路3と、Si導波路2及びSiN導波路3を被覆するクラッド4とを有する。基板型光導波路素子1は、Si導波路2とSiN導波路3との間を断熱的な間接遷移で光を遷移する。Si導波路2は、例えば、Siで形成する第1の導波路である。光波長を1.55μmとした場合のSiの材料屈折率は3.48である。Siの材料屈折率は第1の材料屈折率である。SiN導波路3は、例えば、Si
3N
4(以下、単にSiNと称する)で形成する第2の導波路である。光波長を1.55μmとした場合のSiNの材料屈折率は1.99である。SiNの材料屈折率は、第1の材料屈折率よりも小さい第2の材料屈折率である。クラッド4は、例えば、SiO
2で形成する層である。光波長を1.55μmとした場合のSiO
2の材料屈折率は1.44である。
【0041】
Si導波路2は、第1の直線導波路10と、第1の直線導波路10と光結合する第1のテーパ導波路20とを有する。第1のテーパ導波路20は、第1の直線導波路10の出力部からSiN導波路3内の第2の直線導波路40の入力部に向けて導波路幅が徐々に狭くなるテーパ構造を有する。第1の直線導波路10の導波路幅は、例えば、0.48μmとする。また、第1のテーパ導波路20の入力部20Aの導波路幅は、例えば、0.48μm、第1のテーパ導波路20の出力部20Bの導波路幅は、例えば、0.09μmとする。第1の直線導波路10及び第1のテーパ導波路20のコアの厚みは、例えば、0.22μmとする。
【0042】
SiN導波路3は、第2のテーパ導波路30と、第2のテーパ導波路30と光結合する第2の直線導波路40と、第2の直線導波路40と光結合する第3のテーパ導波路50と、第3のテーパ導波路50と光結合する第3の直線導波路60とを有する。第2のテーパ導波路30は、第1の直線導波路10の出力部から第2の直線導波路40の入力部に向けて導波路幅が徐々に広くなるテーパ構造を有する。第2のテーパ導波路30の入力部30Aの導波路幅は、例えば、0.25μm、第2のテーパ導波路30の出力部30Bの導波路幅は、例えば、1.8μmとする。第2の直線導波路40の導波路幅は、例えば、1.8μmとする。
【0043】
第3のテーパ導波路50は、第2の直線導波路40の出力部から第3の直線導波路60の入力部に向けて導波路幅が徐々に狭くなるテーパ構造を有する。第3のテーパ導波路50の入力部50Aの導波路幅は、例えば、1.8μm、第3のテーパ導波路50の出力部50Bの導波路幅は、例えば、1μmとする。第3の直線導波路60の導波路幅は、例えば、1μmとする。第2のテーパ導波路30、第2の直線導波路40、第3のテーパ導波路50及び第3の直線導波路60のコアの厚みは、例えば、0.3μmとする。
【0044】
基板型光導波路素子1は、遷移部5と、除去部6とを有する。遷移部5は、Si導波路2内の第1のテーパ導波路20と、SiN導波路3内の第2のテーパ導波路30とを有する。遷移部5は、第1のテーパ導波路20と第2のテーパ導波路30とが離間した状態で第1のテーパ導波路20上に第2のテーパ導波路30の一部が重ねて配置することで、第1のテーパ導波路20を導波するTM0モードが、第2のテーパ導波路30を導波するTM0モードに遷移する。遷移部5の入力では、第2のテーパ導波路30を、TMモードの内、実効屈折率が最大のTM0モードの光のみが導波するシングルモード導波路とする。遷移部5の出力では、第2のテーパ導波路30を、TM0モード及び、TMモードの高次モードの光が導波するマルチモード導波路とする。尚、第1のテーパ導波路20と第2のテーパ導波路30との間の間隔は、例えば、0.3μmとする。
【0045】
遷移部5は、Si導波路2の第1のテーパ導波路20の導波路幅に比較してSiN導波路3の第2のテーパ導波路30の導波路幅が広くなるため、SiN導波路3の光電界が閉じ込められる領域が、相対的にSi導波路2の領域に比較して大きくなる。その結果、第1のテーパ導波路20が途切れる第2の断面部位である出力部5Bで不連続による光散乱の影響を低減できる。しかしながら、マルチモード導波路は、製造時の導波路の側壁荒れによるランダムな導波路の不連続性等の影響で、TM0とTMの高次モードとが干渉して、波長スペクトル領域でリップルが生じ、光デバイス特性が劣化することになる。そこで、除去部6でTMの高次モードを除去する構成にした。
【0046】
除去部6は、第3のテーパ導波路50を、遷移部5からのTM0モードの光から高次モードを除去してTM0モードの光のみが導波するシングルモード導波路とする。除去部6は、第2の直線導波路40と、第3のテーパ導波路50とを有する。第2の直線導波路40は、TM1モード以上の高次のTMモードが導波するマルチモード導波路である。第3のテーパ導波路50は、第2の直線導波路40からの高次のTMモードを除去してTM0モードのみが導波するシングルモード導波路である。第3のテーパ導波路50は、第2の直線導波路40からのマルチモードから高次のTMモードを除去することで、TM0モードの光損失を抑制したまま、高次モードとの干渉を回避できる。
【0047】
遷移部5は、入力部5Aと、出力部5Bと、中間部5Cとを有する。尚、遷移部5の入力部5Aと出力部5Bとの間の導波路長は、例えば、80μmとする。遷移部5の入力部5Aでは、第2のテーパ導波路30を、TMモードの内、実効屈折率が最大のTM0モードの光のみが導波するシングルモード導波路とする。更に、遷移部5の出力部5Bでは、第2のテーパ導波路30を、TM0モード及び、TMモードの高次モードの光が導波するマルチモード導波路とする。除去部6は、入力部6Aと、出力部6Bとを有する。尚、除去部6内の第2の直線導波路40の導波路長は、例えば、2μmとする。更に、除去部6内の第3のテーパ導波路50の導波路長は、例えば、20μmとする。
【0048】
図2Aは、
図1に示すA-A線の略断面部分の一例を示す説明図である。
図2Aに示すA-A線の略断面部分は、Si導波路2内の第1の直線導波路10の断面部分である。尚、第1の直線導波路10の導波路幅は、例えば、0.48μm、コアの厚みは、例えば、0.22μmとする。
【0049】
図2Bは、
図1に示すB-B線の略断面部分の一例を示す説明図である。
図2Bに示すB-B線の略断面部分は、遷移部5の入力部5Aの略断面部分であって、第1のテーパ導波路20の入力部20Aの導波路幅が第2のテーパ導波路30の入力部30Aの導波路幅に比較して広い構造である。第1のテーパ導波路20の入力部20Aの導波路幅は、例えば、0.48μm、第2のテーパ導波路30の入力部30Aの導波路幅は、例えば、0.25μmとする。第1のテーパ導波路20のコアの厚みは、例えば、0.22μm、第2のテーパ導波路30のコアの厚みは、例えば、0.3μmとする。第1のテーパ導波路20と第2のテーパ導波路30との間の間隔は、例えば、0.3μmとする。
【0050】
図2Cは、
図1に示すC-C線の略断面部分の一例を示す説明図である。
図2Cに示すC-C線の略断面部分は、遷移部5の中間部5Cの略断面部分であって、第1のテーパ導波路20の導波路幅が第2のテーパ導波路30の導波路幅に比較して狭くなる構造である。第1のテーパ導波路20のコアの厚みは、例えば、0.22μm、第2のテーパ導波路30のコアの厚みは、例えば、0.3μmとする。第1のテーパ導波路20と第2のテーパ導波路30との間の間隔は、例えば、0.3μmとする。
【0051】
図2Dは、
図1に示すD-D線の略断面部分の一例を示す説明図である。
図2Dに示すD-D線の略断面部分は、遷移部5の出力部5Bの略断面部分であって、第2のテーパ導波路30の出力部30Bの導波路幅が第1のテーパ導波路20の出力部20Bの導波路幅に比較して広い構造である。第1のテーパ導波路20の出力部20Bの導波路幅は、例えば、0.09μm、第2のテーパ導波路30の出力部130Bの導波路幅は、例えば、1.8μmとする。第1のテーパ導波路20のコアの厚みは、例えば、0.22μm、第2のテーパ導波路30のコアの厚みは、例えば、0.3μmとする。第1のテーパ導波路20と第2のテーパ導波路30との間の間隔は、例えば、0.3μmとする。
【0052】
図2Eは、
図1に示すE-E線の略断面部分の一例を示す説明図である。
図2Eに示すE-E線の略断面部分は、除去部6内の第2の直線導波路40の略断面部分である。尚、第2の直線導波路40の導波路幅は、例えば、1.8μm、コアの厚みは、例えば、0.3μmとする。
【0053】
図2Fは、
図1に示すF-F線の略断面部分の一例を示す説明図である。
図2Fに示すF-F線の略断面部分は、除去部6の出力部6Bである第3のテーパ導波路50の略断面部分であって、第3のテーパ導波路50の出力部50Bの導波路幅が第2の直線導波路40の導波路幅に比較して狭い構造である。第3のテーパ導波路50の出力部50Bの導波路幅は、第3の直線導波路60の導波路幅と同一である。第3のテーパ導波路50の出力部50Bの導波路幅は、例えば、1μm、第3の直線導波路60の導波路幅は、例えば、1μmとする。第3のテーパ導波路50及び第3の直線導波路60のコアの厚みは、例えば、0.3μmとする。
【0054】
遷移部5の入力部5Aは、第1のテーパ導波路20の入力部20Aと第2のテーパ導波路30の入力部30Aとが重なる部分で第1の直線導波路10からの光が不連続となる第1の断面部分を有する。入力部20Aの導波路幅は、入力部30Aの導波路幅と異なるので、第1のテーパ導波路20と第2のテーパ導波路30との間で信号光の不連続箇所を構成することになる。
【0055】
遷移部5の出力部5Bは、第1のテーパ導波路20の出力部20Bと第2のテーパ導波路30の出力部30Bとが重なる部分で第2の直線導波路40への光が不連続でなくなる第2の断面部分を有する。出力部20Bの導波路幅は、出力部30Bの導波路幅と異なるので、第1のテーパ導波路20と第2のテーパ導波路30との間で光の不連続箇所を構成することになる。
【0056】
遷移部5の入力部5Aでは、第1のテーパ導波路20の導波路幅が広く、第2のテーパ導波路30の導波路幅が狭く、出力部5Bでは、第1のテーパ導波路20の導波路幅が狭く、第2のテーパ導波路30の導波路幅が広く。つまり、第1のテーパ導波路20の導波路幅が入力部20Aから出力部20Bに向けて徐々に狭く、第2のテーパ導波路30の導波路幅が入力部30Aから出力部30Bに向けて徐々に広くなる構造にした。
【0057】
遷移部5の入力部5A及び出力部5Bでは、第1のテーパ導波路20を導波するTM0モードの実効屈折率と、第2のテーパ導波路30を導波するTM0モードの実効屈折率との間に大きな差を備える構造となる。遷移部5の入力部5Aでは、第1のテーパ導波路20を導波するTM0モードの実効屈折率が第2のテーパ導波路30を導波するTM0モードの実効屈折率に比較して高くなる。つまり、Si導波路2及びSiN導波路3の両方に電界が分布するような相互作用を低減できる。更に、遷移部5の出力部5Bでは、第2のテーパ導波路30を導波するTM0モードの実効屈折率が第1のテーパ導波路20を導波するTM0モードの実効屈折率に比較して高くなる。つまり、Si導波路2及びSiN導波路3の両方に電界が分布するような相互作用を低減できる。その結果、遷移部5の入力部5A及び出力部5Bでは、Si導波路2及びSiN導波路3の両方に電界が分布するような相互作用を低減できる。
【0058】
更に、遷移部5の中間部5Cでは、第1のテーパ導波路20を導波するTM0モードの実効屈折率と、第2のテーパ導波路30を導波するTM0モードの実効屈折率とが近付いて一致する構造となる。その結果、Si導波路2及びSiN導波路3の両方に電界が分布する相互作用が強まることになる。
【0059】
入力部5Aでは、第1のテーパ導波路20を孤立導波路とした際の第1のテーパ導波路20を導波するTM0モードの実効屈折率が、第2のテーパ導波路30を孤立導波路とした際の第2のテーパ導波路30を導波するTM0モードの実効屈折率よりも大きくなる。出力部5Bでは、第2のテーパ導波路30を孤立導波路とした際の第2のテーパ導波路30を導波するTM0モードの実効屈折率が、第1のテーパ導波路20を孤立導波路とした際の第1のテーパ導波路20を導波するTM0モードの実効屈折率よりも大きくなる。つまり、遷移部5の入力部5A及び出力部5Bでは、導波するTM0モードの実効屈折率の大小関係が逆転する構造、すなわち、TM0モードの実効屈折率間に大きな差を設けることで、不連続な断面部分での光散乱による光損失を抑制できる。
【0060】
遷移部5では、TM0モードに対する不連続部分による影響を極力抑制すべく、SiN導波路3(第2のテーパ導波路30)の導波路幅を広くする構造、例えば、1.8μmにしたので、TM0モードに対する不連続部分による影響を抑制できる。しかしながら、遷移部5では、SiN導波路3(第2のテーパ導波路30)の導波路幅を広くする構造にしたので、TMモードの高次モードが導波されてしまう。
【0061】
そこで、遷移部5後段の除去部6では、遷移部5からのTMモードから高次モードを除去してTM0モードのみを導波するため、高次モードとの干渉を回避できる。
【0062】
図3Aは、従来の導波路間遷移構造200の出力部200BでのSiN導波路202の導波路幅(コアの厚さ0.4μm)に応じた各モードの実効屈折率の関係の一例を示す説明図である。尚、実効屈折率は有限要素法で算出するものとする。
【0063】
先ず、従来の導波路間遷移構造200では、Cバンド内の1.55μmにおけるSiN導波路202のコアの厚さを0.4μm、Si導波路201が途切れるSiN導波路202の部分の導波路幅を0.9μmとする。従来の導波路間遷移構造200のSiN導波路202の導波路幅は0.9μmであるため、
図3Aを参照すると、TM0モード及びTE0モードが導波し、TM1、TE1以上の高次モードが導波しない導波路であることが分かる。つまり、従来の導波路間遷移構造200内のSiN導波路202は、例えば、TM0モードが導波するシングルモード導波路である。
【0064】
図3Bは、遷移部5の出力部5BでのSiN導波路3の導波路幅(コアの厚さ0.3μm)に応じた各モードの実効屈折率の関係の一例を示す説明図である。尚、実効屈折率は有限要素法で算出するものとする。
【0065】
先ず、比較例の遷移部104では、Cバンド内の1.55μmにおけるSiN導波路102のコアの厚さを0.3μm、Si導波路101が途切れるSiN導波路102の部分の導波路幅を1.0μmとする。比較例の遷移部104のSiN導波路102の導波路幅は1.0μmであるため、
図3Bを参照すると、TM0モード及びTE0モードが導波し、TM1、TE1以上の高次モードが導波しない導波路であることが分かる。つまり、比較例の遷移部104内のSiN導波路102は、例えば、TM0モードが導波するシングルモード導波路である。
【0066】
これに対して、本実施例の遷移部5の出力部5Bである第2のテーパ導波路30の内、第1のテーパ導波路20が途切れる第2のテーパ導波路30の導波路幅は、例えば、1.8μmである。従って、遷移部5の出力部5Bは、
図3Bを参照すると、TM0、TE0、TM1及びTE1以上の高次モードが導波するマルチモード導波路である。これに対して、従来の導波路間遷移構造200内のSiN導波路202がシングルモード導波路である。従って、本実施例の遷移部5の出力部5BのSiN導波路3がマルチモード導波路であるため、従来のSiN導波路202と本実施例のSiN導波路3とは異なるものと言える。
【0067】
また、本実施例の除去部6内の第3のテーパ導波路50の出力部50Bの導波路幅が1μmであるため、
図3Bを参照すると、第3のテーパ導波路50はTM1の高次モードを導波しないシングルモード導波路となる。従って、第3のテーパ導波路50は、マルチモードから高次モードを除去してTM0モードを導波することになる。
【0068】
図4は、遷移部5の断面位置毎に伝搬するTE0モード及びTM0モードの実効屈折率の計算結果の一例を示す説明図である。第1の断面位置”0”は、遷移部5の入力部5Aの断面部分に相当し、
図2Bに示すB-B線の断面部位である。第2の断面位置”1”は、遷移部5の出力部5Bの断面部分に相当し、
図2Dに示すD-D線の断面部位である。第3の断面位置”0.5”は、遷移部5の中間部5Cの断面部分に相当し、
図2Cに示すC-C線の断面部位に相当する。Si導波路2及びSiN導波路3を導波する光の波長は1.55μmとする。実効屈折率の計算は、有限要素法を使用した。尚、計算では、それぞれの導波路が孤立した場合の実効屈折率を計算している。
【0069】
遷移部5のSi導波路2が途切れる第2の断面位置”1”である出力部5Bでは、
図4を参照すると、Si導波路2を導波するTM0モードの実効屈折率とSiN導波路3を遷移するTM0モードの実効屈折率との差が0.087である。尚、
図8に示す通り、比較例の遷移部104の出力部104Bの実効屈折率差が0.056である。つまり、本実施例の遷移部5での出力部5Bの実効屈折率差は、比較例の遷移部104の出力部104Bでの実効屈折率差に比較して大きな差が得られる。その結果、遷移部5では、実効屈折率差を大きくすることで、不連続な断面部分での光散乱による光損失を確実に抑制できる。
【0070】
また、比較例の遷移部104の出力部104BでのTM0モードの垂直方向の電界成分と、本実施例の遷移部5の出力部5BでのTM0モードの垂直方向の電界成分とを比較する。垂直方向の電界成分は、有限要素法で算出する。尚、比較例の遷移部104内のSiN導波路102のコア厚を0.3μm、出力部104BでのSiN導波路102の導波路幅を1.0μmとする。本実施例の遷移部5内のSiN導波路3のコア厚を0.3μm、出力部5BでのSiN導波路3の導波路幅を1.8μmとする。
【0071】
比較例の遷移部104の出力部104BでのSi導波路101に局在するパワーの割合は1.0%であるのに対し、本実施例の遷移部5の出力部5BでのSi導波路2に局在するパワーの割合は0.7%である。つまり、本実施例の遷移部5の出力部5Bでは、比較例の遷移部104の出力部5Bに比較してSiN導波路3に多くの光パワーが局在することになる。その結果、遷移部5の出力部5Bでは、Si導波路2が不連続的に無くなった場合でも、大部分のパワーがSiN導波路3に局在するため、第2の直線導波路40との間で低ロスな接続が可能となる。
【0072】
更に、有限差分時間領域法で、比較例の基板型光導波路素子100及び本実施例の基板型光導波路素子1にTM0モードを入力した場合の遷移損失を計算した。遷移損失は、-10log10(TM0として出力されるパワー/入力したTM0のパワー)で算出できる。比較例の基板型光導波路素子100の遷移損失は、0.051dBであるのに対し、本実施例の基板型光導波路素子1の遷移損失は、0.013dBである。尚、基板型光導波路素子1内の遷移部5の遷移損失は0.012dB、除去部6の遷移損失は0.001dBである。
【0073】
その結果、遷移部5は、マルチモード導波路であるため、遷移損失が大幅に改善している。例えば、基板型光導波路素子1(100)を内蔵する光通信装置の光回路では、基板型光導波路素子1(100)を複数個、例えば、10個内蔵した場合を想定する。比較例の基板型光導波路素子100を内蔵した通信装置の遷移損失は0.51dBである。これに対して、本実施例の基板型光導波路素子1を内蔵した通信装置の遷移損失は0.13dBとなる。その結果、本実施例の基板型光導波路素子1を内蔵した通信装置では、比較例の基板型光導波路素子100を内蔵した通信装置に比較して、遷移損失が0.38dB分低減できることになる。
【0074】
また、基板型光導波路素子1(100)は、ウェハ面内に均一に形成されたSiをリソグラフィ及びエッチングでSi導波路2(101)を形成することになる。そして、例えば、Si導波路2(101)上に離間した状態でSiN導波路3(102)を形成する際にマスクを用いてリソグラフィを実行することで、Si導波路2(101)上にSiN導波路3(102)を形成することになる。しかしながら、マスクシフトによってSi導波路2(101)とSiN導波路3(102)との位置関係がズレてしまう場合がある。
【0075】
Si導波路2(101)とSiN導波路3(102)との間でマスクシフトが発生した場合、比較例の基板型光導波路素子100の遷移部104の出力部104Bでの電界の分布が変動するため、遷移損失が増加することになる。これに対して、本実施例の基板型光導波路素子1の遷移部5の出力部5Bでは、SiN導波路3の導波路幅(1.8μm)が比較例に比較して広いため、マスクシフトのズレの影響を小さくしてSiN導波路3に電界を集中できる。
【0076】
この影響を検証するため、マスクシフトの発生で、SiN導波路3が、Si導波路2に対して、光の進行方向とは垂直な方向に0.12μmだけシフトした場合を想定した。そして、有限差分時間領域法で、遷移部5の入力部5AにTM0モードが入力した場合の遷移損失を計算した。遷移損失は、-10log10(TM0として出力されるパワー/入力したTM0のパワー)で算出できる。
【0077】
比較例の基板型光導波路素子100である遷移部104の遷移損失は、0.106dBであるのに対し、本実施例の基板型光導波路素子1の遷移損失は、0.015dBである。基板型光導波路素子1内の遷移部5の遷移損失は0.014dB、除去部6の遷移損失は0.001dBである。その結果、本実施例の遷移部5内のSiN導波路3は、導波路幅が広いマルチモード導波路であるため、マスクシフトが生じたとしても、比較例に比較して、遷移損失を大幅に改善できる。
【0078】
また、マスクシフトが発生した場合には、導波路に左右非対称が生じる。このとき、偏波面が傾くため、不連続部分でTE0モードとTM0モードとの間の偏波変換が生じる。異なる信号をTE0モードとTM0モードとに付与して伝送容量を増加させる場合に、偏波変換が生じると、偏波間のクロストークが生じて信号品質の劣化(ビット誤りの増加)が起こる。また、2か所に導波路遷移があると、一度偏波変換した後、再度、変換前の偏波に戻る際に、偏波変換を起こしていない電界と干渉するため波長リップルが生じることになる。
【0079】
しかしながら、本実施例の基板型光導波路素子1では、遷移部5の不連続部分の出力部5Bでは、SiN導波路3に電界を局在化することが可能なため、Si導波路2との相対位置のずれによる影響を小さくできる。この影響を検証するため、マスクシフトの発生で、SiN導波路3が、Si導波路2に対して、光の進行方向とは垂直な方向に0.12umだけシフトした場合を想定する。そして、有限差分時間領域法で、遷移部5にTM0モードが入力した場合のTE0モードへの透過率を計算した。透過率は、10log10(TE0として出力されるパワー/入力したTM0のパワー)で算出できる。
【0080】
比較例の基板型光導波路素子100である遷移部104の透過率は、-18.93dBであるのに対し、本実施例の基板型光導波路素子1の透過率は、-39.47dBである。その結果、本実施例の基板型光導波路素子1は、比較例に比較して偏波変換の影響を大幅に抑制することができる。
【0081】
また、本実施例では、不連続部分において、SiN導波路3に電界を局在化させることが可能なため、不連続なSi部分で生じる反射も低減することができる。
【0082】
本実施例の遷移部5では、導波路幅を変えて実効屈折率の差を確保する場合を例示したが、電界の境界条件の影響で、導波路幅を変えた時の実効屈折率の変化は、TE0モードに比較してTM0モードの方が小さい。TE0モードでは、Si導波路2とクラッド4との間の境界及びSiN導波路3とクラッド4との間の境界となる導波路の側壁に電界が不連続的に溜まるため、導波路幅を変えると、不連続な電界分布の影響を強く受ける。これに対して、TM0モードでは、導波路の厚さ方向に不連続な電界分布を有するものの、導波路の幅方向は連続的な電界分布を有するため、幅方向での不連続な電界分布の影響は小さい。従って、TM0は、導波路幅を変えることで実効屈折率の差を確保することがTE0よりも困難である。そのため、本実施例では、TM0でも十分な実効屈折率差を確保するために、TMについてマルチモード導波路となる程度まで導波路幅を広げている。更に、除去部6の効果により、マルチモード導波路で生じるTM0モードへの影響を回避できる。
【0083】
また、本実施例の基板型光導波路素子1では、ウェハ面内に均一に形成されたコア材料の膜をリソグラフィとエッチングによりSi導波路2やSiN導波路3を形成するのが一般的である。従って、導波路の幅を調整することで済むため、導波路を形成する工程を簡易化できる。
【0084】
遷移部5の遷移先の第2の導波路及び遷移元の第1の導波路としては、コア、クラッド4がともにSiO2であるPLC(Planar Lightwave Circuit)や、InP導波路、GaAs導波路でもよい。コアがSiやSi3N4、下部クラッドがSiO2、上部クラッドがSiO2もしくは空気等であってもよい。尚、遷移先の導波路の材料屈折率が遷移元の導波路の材料屈折率よりも高い場合には適用可能である。例えば、PLCの場合、ガラスの導波路のドーピング量を変えることで遷移元と遷移先の材料屈折率を変えることで適用可能である。
【0085】
PLCの場合、コアへのドーピング量を変えることで、材料屈折率を変えることが可能である。SiN導波路3、Si導波路2の場合、比屈折率差が大きいことから、光の閉じ込めが強く、それによって小さいRでも低損失な曲げ導波路が実現することで、基板型光導波路素子1を小型化できる。
【0086】
Si導波路2及びSiN導波路3の構造は、リブ導波路、リッジ導波路、チャネル導波路でも良く、適宜変更可能である。Si導波路2及びSiN導波路3の構造がリブ導波路の場合、スラブ部分にも光が染み出すため、コアの側壁荒れの影響が小さく、光損失を抑制できる。Si導波路2及びSiN導波路3の構造がチャネル導波路の場合、光閉じ込めが強いことから、導波路の急峻な曲げが可能となり、基板型光導波路素子1の小型化を図る。クラッド4は、コアより材料屈折率が小さければ、任意の材料でも良く、適宜変更可能である。
【0087】
本実施例の基板型光導波路素子1は、Si導波路2の材料をSi、クラッド4の材料をSiO2で形成するシリコン光導波路を例示した。しかしながら、Si導波路2及びクラッド4の材料がSiO2であるPLC、InP導波路、GaAs導波路にも適用可能である。
【0088】
図5は、本実施例の基板型光導波路素子1を内蔵した光通信装置80の一例を示す説明図である。
図5に示す光通信装置80は、出力側の光ファイバ及び入力側の光ファイバと接続する。光通信装置80は、DSP(Digital Signal Processor)81と、光源82と、光送信器83と、光受信器84とを有する。DSP81は、デジタル信号処理を実行する電気部品である。DSP81は、例えば、送信データの符号化等の処理を実行し、送信データを含む電気信号を生成し、生成した電気信号を光送信器83に出力する。また、DSP81は、受信データを含む電気信号を光受信器84から取得し、取得した電気信号の復号等の処理を実行して受信データを得る。
【0089】
光源82は、例えば、レーザダイオード等を備え、所定の波長の光を発生させて光送信器83及び光受信器84へ供給する。光送信器83は、DSP81から出力される電気信号によって、光源82から供給される光を変調し、得られた送信光を光ファイバに出力する光デバイスである。光送信器83は、光源82から供給される光が導波路を伝搬する際に、この光を光変調器へ入力される電気信号によって変調することで、送信光を生成する。
【0090】
光受信器84は、光ファイバから光信号を受信し、光源82から供給される光を用いて受信光を復調する。そして、光受信器84は、復調した受信光を電気信号に変換し、変換後の電気信号をDSP81に出力する。光送信器83及び光受信器84内では、光を導波路する基板型光導波路素子1を内蔵する。
【0091】
光通信装置80内の基板型光導波路素子1内の遷移部5では、SiN導波路3(第2のテーパ導波路30)の導波路幅を広くする構造、例えば、1.8μmにしたので、TM0モードに対する不連続部分による影響を抑制できる。
【0092】
更に、光通信装置80内の基板型光導波路素子1内の除去部6では、遷移部5からのTMモードから高次モードを除去してTM0モードのみを導波するため、高次モードとの干渉を回避できる。
【0093】
尚、説明の便宜上、本実施例の除去部6は、第2の直線導波路30及び第3のテーパ導波路50を有する場合を例示した。しかしながら、除去部6は、第3のテーパ導波路50のみでも良く、この場合、遷移部5の出力部5B内の第2のテーパ導波路30と第3のテーパ導波路50とが光結合しても良く、適宜変更可能である。
第1の材料屈折率を有する第1の導波路と、前記第1の材料屈折率よりも低い第2の材料屈折率を有する第2の導波路との間で垂直モードの光が間接遷移する光デバイスであって、
前記第1の導波路を導波する前記垂直モードの実効屈折率と前記第2の導波路を導波する前記垂直モードの実効屈折率との大小関係が入出力で逆転するように、前記第1の導波路及び前記第2の導波路が離間した状態で重ねて配置することで、入力では、前記第2の導波路を、前記垂直モードの内、実効屈折率が最大の垂直モードの光が導波するシングルモード導波路とし、出力では、前記第2の導波路を、前記最大の垂直モード及び、前記垂直モードの高次モードの光が導波するマルチモード導波路とする遷移部と、
前記第2の導波路を、前記遷移部からの前記垂直モードの光から前記高次モードの光を除去して前記最大の垂直モードの光が導波する前記シングルモード導波路とする除去部と、
を有することを特徴とする光デバイス。
第1の材料屈折率を有する第1の導波路と、前記第1の材料屈折率よりも低い第2の材料屈折率を有する第2の導波路との間で垂直モードの光が間接遷移する基板型光導波路素子であって、
前記第1の導波路を導波する前記垂直モードの実効屈折率と前記第2の導波路を導波する前記垂直モードの実効屈折率との大小関係が入出力で逆転するように、前記第1の導波路及び前記第2の導波路が離間した状態で重ねて配置することで、入力では、前記第2の導波路を、前記垂直モードの内、実効屈折率が最大の垂直モードの光が導波するシングルモード導波路とし、出力では、前記第2の導波路を、前記最大の垂直モード及び、前記垂直モードの高次モードの光が導波するマルチモード導波路とする遷移部と、
前記第2の導波路を、前記遷移部からの前記垂直モードの光から前記高次モードの光を除去して前記最大の垂直モードの光が導波する前記シングルモード導波路とする除去部と、
を有することを特徴とする基板型光導波路素子。
第1の材料屈折率を有する第1の導波路と、前記第1の材料屈折率よりも低い第2の材料屈折率を有する第2の導波路との間で垂直モードの光が間接遷移する導波路間遷移方法であって、
前記第1の導波路を導波する前記垂直モードの実効屈折率と前記第2の導波路を導波する前記垂直モードの実効屈折率との大小関係が入出力で逆転するように、前記第1の導波路及び前記第2の導波路が離間した状態で重ねて配置することで、入力では、前記第2の導波路を、前記垂直モードの内、実効屈折率が最大の垂直モードの光が導波するシングルモード導波路とし、出力では、前記第2の導波路を、前記最大の垂直モード及び、前記垂直モードの高次モードの光が導波するマルチモード導波路とし、
前記第2の導波路を、前記マルチモード導波路からの前記垂直モードの光から前記高次モードの光を除去して前記最大の垂直モードの光が導波するシングルモード導波路とする
処理を実行することを特徴とする導波路間遷移方法。