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特開2023-110413情報処理システム、情報処理装置、情報処理方法、及び情報処理プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023110413
(43)【公開日】2023-08-09
(54)【発明の名称】情報処理システム、情報処理装置、情報処理方法、及び情報処理プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/02 20120101AFI20230802BHJP
【FI】
G06Q50/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022011836
(22)【出願日】2022-01-28
(71)【出願人】
【識別番号】306020818
【氏名又は名称】トヨタテクニカルディベロップメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002516
【氏名又は名称】弁理士法人白坂
(72)【発明者】
【氏名】岡田 幸泰
(72)【発明者】
【氏名】西岡 孝司
(72)【発明者】
【氏名】川口 晃
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】センサ設置されていない位置の環境を推定する情報処理システム、情報処理装置、情報処理方法及び情報処理プログラムを提供する。
【解決手段】情報処理システムにおいて、情報処理装置100は、固定の位置に設置された複数の固定センサから、時刻情報と測定対象のセンシングデータを、固定されていない移動体センサから、時刻情報とセンシングデータと位置情報を、取得する取得部131、センシングデータとセンシングデータが対応する時刻情報とから、各固定センサにおけるセンシングデータの経時的変化の特性を特定する特定部132、移動体センサから取得したセンシングデータと時刻情報と位置情報とを基準に、最も近い位置に存在する固定センサの測定対象の経時的変化の特性に基づいて、当該位置情報で示される位置における測定対象の経時的変化を推定する推定部133及び推定した測定対象の経時的変化を出力する出力部150を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定の位置に設置された複数の固定センサから、時刻情報と当該時刻情報で示される時間において測定対象をセンシングしたセンシングデータ、及び、固定されていない移動体センサから、時刻情報と当該時刻情報で示される時間においてセンシングしたセンシングデータと位置情報、を取得する取得部と、
前記複数の固定センサから取得したセンシングデータとセンシングデータが対応する時刻情報とから、各固定センサにおけるセンシングデータの経時的変化の特性を特定する特定部と、
前記移動体センサから取得したセンシングデータと、当該センシングデータが対応する時刻情報と位置情報とを基準に、少なくとも当該位置情報で示される位置に最も近い位置に存在する固定センサの測定対象の経時的変化の特性に基づいて、当該位置情報で示される位置における測定対象の経時的変化を推定する推定部と、
推定した測定対象の経時的変化を出力する出力部と、
を備える情報処理装置。
【請求項2】
前記推定部は、前記移動体センサの位置情報から所定距離内に存在する固定センサの測定対象の経時的変化の特性を利用して、当該位置情報が示す位置における測定対象の経時的変化を推定する
ことを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記推定部は、前記移動体センサの位置情報から所定距離内に複数の固定センサが存在する場合に、各固定センサの測定対象の経時的変化の特性に、重み付けを行って、当該位置情報で示される位置における測定対象の経時的変化を推定する
ことを特徴とする請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記推定部は、前記移動体センサから取得したセンシングデータと、当該センシングデータが対応する位置情報と同じ位置情報を有するセンシングデータと、を基準に、当該位置情報で示される位置に最も近い位置に存在する固定センサの測定対象の経時的変化の特性に基づいて、複数のセンシングデータ間を線形補間することにより、当該位置情報における測定対象の経時的変化を推定する
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記固定センサのうち、いずれか一つを親機とし、残りの固定センサ及び移動体センサを子機とし、
前記取得部は、前記親機から前記各子機のセンシングデータ及び前記親機のセンシングデータと対応する位置情報及び時刻情報を取得する
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
固定の位置に設置された複数の固定センサと、固定されていない移動体センサと、サーバと、を含む環境に係る情報を処理する情報処理システムであって、
前記複数の固定センサ各々は、
測定対象をセンシングして第1センシングデータを生成する第1センサと、
前記第1センシングデータと、当該第1センシングデータを取得したときの時間を示す第1時刻情報とを前記サーバに送信する第1通信部と、を備え、
前記移動体センサは、
前記測定対象をセンシングして第2センシングデータを生成する第2センサと、
自機の位置を示す位置情報を取得する取得部と、
前記第2センシングデータと、第2センシングデータをセンシングした時の位置情報と、第2センシングデータを取得したときの時間を示す第2時刻情報とを前記サーバに送信する第2通信部と、を備え、
前記サーバは、
前記固定センサ各々から前記第1センシングデータと当該第1センシングデータに対応する第1時刻情報とを受信し、前記移動体センサから前記第2センシングデータと当該第2センシングデータに対応する第2時刻情報と位置情報とを受信する第3通信部と、
前記第1センシングデータと前記第1時刻情報とから、固定センサの測定対象の経時的変化の特性を特定する特定部と、
前記移動体センサから取得した第2センシングデータと、当該第2センシングデータが対応する第2時刻情報と位置情報とを基準に、少なくとも当該位置情報で示される位置に最も近い位置に存在する固定センサの測定対象の経時的変化の特性に基づいて、当該位置情報で示される位置における測定対象の経時的変化を推定する推定部と、
推定した測定対象の経時的変化を出力する出力部と、を備える
情報処理システム。
【請求項7】
コンピュータが、
固定の位置に設置された複数の固定センサから、時刻情報と当該時刻情報で示される時間において測定対象をセンシングしたセンシングデータ、及び、固定されていない移動体センサから、時刻情報と当該時刻情報で示される時間においてセンシングしたセンシングデータと位置情報、を取得する取得ステップと、
前記複数の固定センサから取得したセンシングデータとセンシングデータが対応する時刻情報とから、各固定センサにおけるセンシングデータの経時的変化の特性を特定する特定ステップと、
前記移動体センサから取得したセンシングデータと、当該センシングデータが対応する時刻情報と位置情報とを基準に、少なくとも当該位置情報で示される位置に最も近い位置に存在する固定センサの測定対象の経時的変化の特性に基づいて、当該位置情報で示される位置における測定対象の経時的変化を推定する推定ステップと、
推定した測定対象の経時的変化を出力する出力ステップと、
を実行する情報処理方法。
【請求項8】
コンピュータに、
固定の位置に設置された複数の固定センサから、時刻情報と当該時刻情報で示される時間において測定対象をセンシングしたセンシングデータ、及び、固定されていない移動体センサから、時刻情報と当該時刻情報で示される時間においてセンシングしたセンシングデータと位置情報、を取得する取得機能と、
前記複数の固定センサから取得したセンシングデータとセンシングデータが対応する時刻情報とから、各固定センサにおけるセンシングデータの経時的変化の特性を特定する特定機能と、
前記移動体センサから取得したセンシングデータと、当該センシングデータが対応する時刻情報と位置情報とを基準に、少なくとも当該位置情報で示される位置に最も近い位置に存在する固定センサの測定対象の経時的変化の特性に基づいて、当該位置情報で示される位置における測定対象の経時的変化を推定する推定機能と、
推定した測定対象の経時的変化を出力する出力機能と、
を実現させる情報処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所望の位置の環境変化を推定することができる情報処理システム、情報処理装置、情報処理方法及び情報処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、温室等において、センサを設置して、温室内の環境を取得し、温室における温度や湿度、水やり等の制御を行っている。特許文献1は、ドローンにセンサを搭載し、圃場上空を飛行させることで圃場の環境を取得する技術を開示している。特許文献2は、ビニールハウス内にセンサノードを設置し、ビニールハウス内の環境を把握する技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-38148号公報
【特許文献2】特開2018-151265号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1に記載の技術では、ドローンを始終飛行させておくわけにはいかないため、ドローンが飛行していない時の情報は取得できないという問題がある。また、特許文献2に記載の技術では、センサノードを設置するとはいえ、センサノードを設置していない場所の情報は取得できないので、より正確な環境の制御を行うには不十分であるという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、センサが常時設置されていない位置であっても、その位置における環境の推移を推定することができる情報処理装置、情報処理方法、及び、情報処理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る情報処理装置は、固定の位置に設置された複数の固定センサから、時刻情報と当該時刻情報で示される時間において測定対象をセンシングしたセンシングデータ、及び、固定されていない移動体センサから、時刻情報と当該時刻情報で示される時間においてセンシングしたセンシングデータと位置情報、を取得する取得部と、複数の固定センサから取得したセンシングデータとセンシングデータが対応する時刻情報とから、各固定センサにおけるセンシングデータの経時的変化の特性を特定する特定部と、移動体センサから取得したセンシングデータと、当該センシングデータが対応する時刻情報と位置情報とを基準に、少なくとも当該位置情報で示される位置に最も近い位置に存在する固定センサの測定対象の経時的変化の特性に基づいて、当該位置情報で示される位置における測定対象の経時的変化を推定する推定部と、推定した測定対象の経時的変化を出力する出力部と、を備える。
【0007】
また、本発明の一態様に係る情報処理システムは、固定の位置に設置された複数の固定センサと、固定されていない移動体センサと、サーバと、を含む環境に係る情報を処理する情報処理システムであって、複数の固定センサ各々は、測定対象をセンシングして第1センシングデータを生成する第1センサと、第1センシングデータと、当該第1センシングデータを取得したときの時間を示す第1時刻情報とをサーバに送信する第1通信部と、を備え、移動体センサは、測定対象をセンシングして第2センシングデータを生成する第2センサと、自機の位置を示す位置情報を取得する取得部と、第2センシングデータと、第2センシングデータをセンシングした時の位置情報と、第2センシングデータを取得したときの時間を示す第2時刻情報とをサーバに送信する第2通信部と、を備え、サーバは、固定センサ各々から第1センシングデータと当該第1センシングデータに対応する第1時刻情報とを受信し、移動体センサから第2センシングデータと当該第2センシングデータに対応する第2時刻情報と位置情報とを受信する第3通信部と、第1センシングデータと第1時刻情報とから、固定センサの測定対象の経時的変化の特性を特定する特定部と、移動体センサから取得した第2センシングデータと、当該第2センシングデータが対応する第2時刻情報と位置情報とを基準に、少なくとも当該位置情報で示される位置に最も近い位置に存在する固定センサの測定対象の経時的変化の特性に基づいて、当該位置情報で示される位置における測定対象の経時的変化を推定する推定部と、推定した測定対象の経時的変化を出力する出力部と、を備える。
【0008】
また、本発明の一態様に係る情報処理方法は、コンピュータが、固定の位置に設置された複数の固定センサから、時刻情報と当該時刻情報で示される時間において測定対象をセンシングしたセンシングデータ、及び、固定されていない移動体センサから、時刻情報と当該時刻情報で示される時間においてセンシングしたセンシングデータと位置情報、を取得する取得ステップと、複数の固定センサから取得したセンシングデータとセンシングデータが対応する時刻情報とから、各固定センサにおけるセンシングデータの経時的変化の特性を特定する特定ステップと、移動体センサから取得したセンシングデータと、当該センシングデータが対応する時刻情報と位置情報とを基準に、少なくとも当該位置情報で示される位置に最も近い位置に存在する固定センサの測定対象の経時的変化の特性に基づいて、当該位置情報で示される位置における測定対象の経時的変化を推定する推定ステップと、推定した測定対象の経時的変化を出力する出力ステップと、を実行する。
【0009】
また、本発明の一態様に係る情報処理プログラムは、コンピュータに、固定の位置に設置された複数の固定センサから、時刻情報と当該時刻情報で示される時間において測定対象をセンシングしたセンシングデータ、及び、固定されていない移動体センサから、時刻情報と当該時刻情報で示される時間においてセンシングしたセンシングデータと位置情報、を取得する取得機能と、複数の固定センサから取得したセンシングデータとセンシングデータが対応する時刻情報とから、各固定センサにおけるセンシングデータの経時的変化の特性を特定する特定機能と、移動体センサから取得したセンシングデータと、当該センシングデータが対応する時刻情報と位置情報とを基準に、少なくとも当該位置情報で示される位置に最も近い位置に存在する固定センサの測定対象の経時的変化の特性に基づいて、当該位置情報で示される位置における測定対象の経時的変化を推定する推定機能と、推定した測定対象の経時的変化を出力する出力機能と、を実現させる。
【0010】
また、上記情報処理装置において、推定部は、移動体センサの位置情報から所定距離内に存在する固定センサの測定対象の経時的変化の特性を利用して、当該位置情報が示す位置における測定対象の経時的変化を推定することとしてもよい。
【0011】
また、上記情報処理装置において、推定部は、移動体センサの位置情報から所定距離内に複数の固定センサが存在する場合に、各固定センサの測定対象の経時的変化の特性に、重み付けを行って、当該位置情報で示される位置における測定対象の経時的変化を推定することとしてもよい。
【0012】
また、上記情報処理装置において、推定部は、移動体センサから取得したセンシングデータと、当該センシングデータが対応する位置情報と同じ位置情報を有するセンシングデータと、を基準に、当該位置情報で示される位置に最も近い位置に存在する固定センサの測定対象の経時的変化の特性に基づいて、複数のセンシングデータ間を線形補間することにより、当該位置情報における測定対象の経時的変化を推定することとしてもよい。
【0013】
また、上記情報処理装置において、固定センサのうち、いずれか一つを親機とし、残りの固定センサ及び移動体センサを子機とし、取得部は、親機から各子機のセンシングデータ及び親機のセンシングデータと対応する位置情報及び時刻情報を取得することとしてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一実施例に係る情報処理装置は、移動体センサが通過した箇所の実際の測定対象の測定値(センシングデータ)と、その測定値が対応する時間において最も近い位置に存在する固定センサにおける測定対象の経時的変化の特性から、その位置における測定対象の経時的変化を推定することができるので、固定センサが設置されていない位置において、確度の高い情報を取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、情報処理システムの構成例を示すシステム図である。
図2図2は、センサの構成例を示すブロック図である。
図3図3は、情報処理装置の構成例を示すブロック図である。
図4図4は、センサデータの一構成例を示すデータ概念図である。
図5図5は、情報処理システムにおける各装置間のやり取りの例を示すシーケンス図である。
図6図6は、子機となるセンサの動作例を示すフローチャートである。
図7図7は、親機となるセンサの動作例を示すフローチャートである。
図8図8は、情報処理装置の動作例を示すフローチャートである。
図9図9(a)は、固定センサのセンシングデータの一例であり、図9(b)は、移動体センサのセンシングデータの一例であり、図9(c)は、補完された移動体センサのセンシングデータの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施態様に係る情報処理システムおよび情報処理装置について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0017】
<実施形態1>
<概要>
図1は、情報処理システムのシステム構成例を示すシステム図である。図1に示すように情報処理システム1は、情報処理装置100と、複数の固定センサ200a~200fと、移動体センサ200mとを含んで成る。情報処理システム1は、一例として、ビニールハウス10内の環境を推定するための環境推定システムであり、更には、環境制御システムであってもよい。また、情報処理システム1は、ビニールハウス内の環境を推定するものに限定するものではなく、工場やテーマパーク、所定範囲の街(例えば、ショッピングモールやスマートシティなど)における環境を推定するためのものであってもよい。
【0018】
各固定センサ200a~200fは、設置されている周辺の情報をセンシングする。ここで、センシングの測定対象は、一例として、温度であってもよいし、湿度であってもよいし、照度であってもよいし、二酸化炭素濃度であってもよいし、その他の情報であってもよい。移動体センサ200mも同様に、その場その場における周辺の情報をセンシングし、測定対象は、固定センサと同様である。固定センサ200a~200fの内の一台(ここでは、固定センサ200a)は親機として機能し、その他の固定センサ200b~200f及び移動体センサ200mは子機として機能する。親機として機能する固定センサ200aは、子機である各固定センサ200b~200f、移動体センサ200mからセンシングデータを受信し、自身のセンシングデータと合わせて、ネットワーク300を介して、情報処理装置100に送信する。
【0019】
図1に示されるように、ビニールハウス10内には、固定センサ200a~200fが設置されている。ビニールハウス10内において、作業者であるユーザは、移動体センサ200mを保持したまま、例えば、図1の矢印で示されるようにビニールハウス10内を移動する。したがって、ユーザが移動した経路上であって、各位置において存在した時間において、移動体センサ200mが測定したセンシングデータは、確定した値となる。その一方で、経路上であっても、存在していない時間においては、確定した情報は得られないこととなる。
【0020】
そこで、情報処理装置100は、受信した各固定センサ200a~200fのセンシングデータを用いて、移動体センサ200mから取得したセンシングデータを補間することによって、固定センサが設置されていない位置の測定対象の経時的変化を推定する。
【0021】
以下、詳細に説明する。なお、ネットワーク300は、各種の機器との間を相互に接続させるためのネットワークであり、例えば、無線ネットワークや有線ネットワークである。具体的には、ネットワークは、ワイヤレスLAN(wireless LAN:WLAN)や広域ネットワーク(wide area network:WAN)、ISDNs(integrated service digital networks)、無線LANs、LTE(long term evolution)、LTE-Advanced、第4世代(4G)、第5世代(5G)、CDMA(code division multiple access)、WCDMA(登録商標)、イーサネット(登録商標)などである。また、ネットワークは、これらの例に限られず、例えば、公衆交換電話網(Public Switched Telephone Network:PSTN)やブルートゥース(Bluetooth(登録商標))、ブルートゥースローエナジー(Bluetooth Low Energy)、光回線、ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)回線、衛星通信網などであってもよく、どのようなネットワークであってもよい。ネットワークは、ユーザの住居に備えられる場合には、ホームネットワークと呼称されることもある。また、ネットワークは、例えば、NB-IoT(Narrow Band IoT)や、eMTC(enhanced Machine Type Communication)であってもよい。なお、NB-IoTやeMTCは、IoT向けの無線通信方式であり、低コスト、低消費電力で長距離通信が可能なネットワークである。また、ネットワークは、これらの組み合わせであってもよい。また、ネットワークは、これらの例を組み合わせた複数の異なるネットワークを含むものであってもよい。例えば、ネットワークは、LTEによる無線ネットワークと、閉域網であるイントラネットなどの有線ネットワークとを含むものであってもよい。
【0022】
<構成>
<センサの構成例>
図2は、センサ200の構成例を示すブロック図である。固定センサ200a~200f、移動体センサ200mは、いずれも同じ構成を有するので、ここでは総称してセンサ200として説明する。図2に示すように、センサ200は、通信部210と、センサ群220と、位置情報取得部230と、計時部240と、制御部250と、記憶部260と、を備える。センサ200は、測定対象を逐次センシングして、所定の装置に送信する装置である。センサ200の各部は接続線270によりデータ通信可能に接続されてよく、無線によりデータ通信可能に構成されていてもよい。
【0023】
通信部210は、他の装置と通信を実行するための機能を有する通信インターフェースである。通信部210は、他の装置と通信可能であれば、いずれの通信プロトコルにより通信を行ってもよく、有線、無線のいずれでの通信であってもよい。通信部210は、制御部250からの指示にしたがって、センサ200が計測した測定対象に関する情報、その情報を取得したときの時刻情報、その情報を取得したときの位置情報を、送信する。通信部210は、センサ200が子機である場合には、これらの情報(センシングデータ、時刻情報、位置情報)を親機である固定センサ200aに送信する。また、センサ200が親機である場合には、各子機が送信してきたセンシングデータ並びに自機のセンシングデータを集約した情報(各センサのセンシングデータ、時刻情報、位置情報)を、情報処理装置100に送信する。また、通信部210は、センサ200が親機である場合には、子機から送信されたセンシングデータ、時刻情報、位置情報を受信して、制御部250に伝達する。
【0024】
通信部210は、他のセンサと通信するための近距離無線機能と、情報処理装置100と通信するための無線機能とを含んでよく、それぞれ個別に実装されていてもよい。通信部210と情報処理装置100との通信は、例えば、携帯電話網を利用することとしてもよい。
【0025】
センサ群220は、測定対象の情報をセンシングして、センシングデータとして制御部250に伝達する。ここで、センサ群と記載しているが、測定対象が1つである場合は、1つのセンサであってよい。センサ群220は、測定対象に応じたセンサである。センサ群220は、温度センサ、湿度センサ、照度センサ、二酸化炭素濃度センサのうちのいずれかであってもよいし、複数であってもよく、これらのセンサ以外のセンサを含んでよい。例えば、その他のセンサとしては赤外線センサなどであってよいがこれに限定するものではない。ただし、各センサが測定する測定対象は同一のものである。
【0026】
位置情報取得部230は、センサ200の位置を取得し、制御部250に伝達する。位置情報取得部230は、GNSSにより実現されるが、これに限定するものではなく、GPSなどであってもよい。センサ200が固定センサ200である場合には、固定の位置に設置されることから、位置情報取得部230は、同じ位置を測定し続けるが、センサ200が移動体センサ200mである場合には、作業者の位置に応じた位置情報を測定することになる。
【0027】
計時部240は、現在時刻を計時し、制御部250に伝達する。なお、位置情報取得部230は、正確な時刻情報を保持する測位衛星と通信する関係上、位置情報取得部230が計時部240としての機能を果たすこととしてもよいし、別個の水晶発振子等を利用した計時機能により実現されてもよい。
【0028】
制御部250は、センサ200の各部を制御する機能を有するプロセッサである。制御部250は、記憶部260に記憶されている各種プログラムを実行することにより、センサ200として果たすべき機能を実現する。制御部250は、センサ群220からセンシングデータを取得すると、その時に位置情報取得部230が取得した位置情報と、計時部240が計時した時刻情報と、に対応付けて記憶部260に記憶する。また、制御部250は、センシングデータと、当該センシングデータに対応する位置情報と、時刻情報と、を通信部210を介して、情報処理装置100または、親機であるセンサ200aに送信する。制御部250は、記憶部260に記憶されているセンシングデータと位置情報と時刻情報との組み合わせであって、未送信の情報を通信部210を介して、送信する。
【0029】
記憶部260は、センサ200が動作上必要とする各種のプログラム及びデータを記憶する機能を有する。記憶部140は、例えば、HDD(Hard Disc Drive)、SSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ等により実現することができるがこれらに限定するものではない。
【0030】
以上が、センサ200の構成例である。なお、ここでは、固定センサと移動体センサとを同じ構成としたが、同じ構成にしなくてもよい。例えば、固定センサは、固定される位置と、その位置情報が予め分かっている場合には、位置情報取得部を備えなくてもよい。
【0031】
<情報処理装置の構成例>
図3は、情報処理装置100の構成例を示すブロック図である。図3に示すように、情報処理装置100は、通信部110と、入力部120と、制御部130と、記憶部140と、出力部150と、を備える。情報処理装置100は、プロセッサ及びメモリを備えるコンピュータシステムである。情報処理装置100は、サーバ装置やPC、タブレット端末等により実現されるものであるが、これらに限定するものではない。
【0032】
通信部110は、外部の装置と通信するための通信インターフェースである。通信部110は、固定センサ200aと通信して、各センサのセンシングデータを受信し、制御部130に伝達する。
【0033】
入力部120は、情報処理装置100のオペレータ等からの入力を受け付ける入力インターフェースである、入力部120は、例えば、マウスやキーボード等により実現されてよいが、これらに限定するものではない。入力部120は、例えば、センサ200がセンシングしたデータ(数値)を直接入力して、制御部130に伝達してもよい。また、入力部120は、例えば、測定対象の変化を見たい場所(位置)の情報の入力を受け付けて制御部130に伝達する。
【0034】
制御部130は、情報処理装置100の各部を制御する機能を有するプロセッサである。制御部130は、記憶部140に記憶されている各種プログラムを実行することにより、情報処理装置100として果たすべき機能を果たす。
【0035】
制御部130は、取得部131と、特定部132と、推定部133と、を備える。
【0036】
取得部131は、固定の位置に設置された複数の固定センサ200a~200fから、時刻情報と当該時刻情報で示される時間において測定対象をセンシングしたセンシングデータ、及び、固定されていない移動体センサ200mから、その時刻情報と当該時刻情報で示される時間においてセンシングしたセンシングデータと位置情報、を取得する。取得部131は、固定センサ200a~200fの情報及び移動体センサ200mの情報を記憶部140に記憶されているセンサ情報141から取得する。
【0037】
特定部132は、複数の固定センサ200a~200fから取得したセンシングデータとセンシングデータが対応する時刻情報とから、各固定センサ200について、センシングデータの経時的変化の特性を特定する。特定部132は、例えば、測定対象が温度である場合には、温度の経時的変化の特性を特定したり、例えば、測定対象が二酸化炭素濃度である場合には、二酸化炭素濃度の経時的変化の特性を特定したりする。なお、測定対象の経時的変化の特性とは、測定対象の経時的変換のデータそのものであってもよいし、それに何らかのフィルターをかけた情報であってもよい。
【0038】
推定部133は、移動体センサ200mから取得したセンシングデータと、当該センシングデータが対応する時刻情報と位置情報とを基準に、少なくとも当該位置情報で示される位置に最も近い位置に存在する固定センサの測定対象の経時的変化の特性に基づいて、当該位置情報で示される位置における測定対象の経時的変化を推定する。推定部133は、ビニールハウス10内のある位置において、その位置を通過したときに、移動体センサ200mにより測定されたセンシングデータと時刻情報を記憶部140から取得する。そして、推定部133は、当該位置において、センシングデータがない時間帯について、最寄りの固定センサ200のセンシングデータの経時的変化の特性を利用して、一例として、線形補間により補間する。なお、補間の手法は線形補間に限定するものではない。その他の一例として、近似曲線を用いた補間を行ってもよいし、複数の固定センサの各位置と、その位置における測定対象の経時的変化を学習した学習モデルを用いて、当該学習モデルに所望の位置を入力することで補間することとしてもよい。
【0039】
制御部130は、補間により得られた測定対象の経時的変化をグラフとして、出力部150に出力させてもよいし、通信部110を介して外部の他の装置に送信してもよい。
【0040】
記憶部140は、情報処理装置100が動作上必要とする各種のプログラム及びデータを記憶する機能を有する。記憶部140は、例えば、HDD(Hard Disc Drive)、SSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ等により実現することができるが、これらに限定するものではない。記憶部140は、センサ情報141を記憶している。センサ情報141は、各センサがセンシングした情報の集合である。センサ情報141の詳細については後述する。また、記憶部140は、固定センサ200が設置されていない位置の測定対象の経時的変化を推定するための情報処理プログラムを記憶している。
【0041】
出力部150は、制御部130からの指示にしたがって、指定された情報を出力する。出力部150は、画像や文字により情報を出力することとしてもよいし、音声により情報を出力することとしてもよい。出力部150は、例えば、制御部130からの指示にしたがって、測定対象の所望の位置における経時的変化を示す情報を画像として、情報処理装置100に備えられた、又は、接続されたモニターに表示することとしてよい。
【0042】
以上が情報処理装置100の構成である。
【0043】
<センサ情報>
図4は、センサ情報141の構成例である。図4の例では、各センサ毎に個別に情報を保持している例を示しているが、これは、一纏まりの情報であってもよい。図4に示すようにセンサ情報141は、センサID401と、日時情報402と、位置情報403と、センシングデータ404と、が対応付けられた情報である。
【0044】
センサID401は、固定センサ200a~200f、移動体センサ200mのうちのいずれのセンサの情報であるかを特定する情報であって、センサ各々を情報処理システム1上で一意に特定するための識別子である。
【0045】
日時情報402は、センシングを行った日時を示す情報である。
【0046】
位置情報403は、日時情報402に対応し、センシングを行った位置を示す情報である。当該位置は、一例として、経度緯度情報として記憶されていてよい。位置情報403は、固定センサ200a~200fの場合は、基本的に変動せず、移動体センサ200mの場合は、適宜作業者の移動に応じて変動する。
【0047】
センシングデータ404は、対応する日時情報402で示される日時において、対応する位置情報403で示される位置において、測定対象を測定したときの測定値を示す情報である。前述の通り、センシングデータ404は、温度、湿度、照度、二酸化炭素濃度などであってよいが、これらに限定するものではない。なお、図4においては、二酸化炭素については、CO2と記載している。
【0048】
情報処理装置100は、センサ情報141があることにより、移動体センサ200mが各位置でセンシングしたデータを基準に、その時に最も近い位置に存在する固定センサ200を特定して、その固定センサが測定した測定対象の経時的変化を利用して、移動体センサが測定により得られたセンシングデータを補間することができる。
【0049】
<動作>
図5は、情報処理システム1における各装置のやり取りの例を示すシーケンス図である。図5においては、子機となる固定センサ200bと、親機となる固定センサ200aと、移動体センサ200mと、情報処理装置100との間のやり取りを示しているが、固定センサ200bには、固定センサ200c~200fも含まれるものとする。
【0050】
図5に示すように、固定センサ200bを含む異なる各固定センサ200は、所定タイミングで測定対象の計測を実行する(ステップS501)。この所定のタイミング、即ち、測定を行うタイミングは、全センサ200において同時に逐次行うこととしてよい。同様に、子機となる移動体センサ200mも測定対象の計測を実行する(ステップS502)。また、親機となる固定センサ200aも測定対象の計測を実行する(ステップS503)。各センサが測定する所定タイミングは、基本的に同じタイミングであってよい。また、各センサが測定する測定対象は同じである。
【0051】
子機である固定センサ200b(固定センサ200c~200f)は、計測により得られたセンシングデータを親機である固定センサ200aに送信する(ステップS504)。また、同様に子機である移動体センサ200mも、計測により得られたセンシングデータを固定センサ200aに送信する(ステップS505)。ここで、センシングデータとともに、センシングされた時刻を示す時刻情報、センシングした場所を示す位置情報も送信される。
【0052】
固定センサ200b~200fによるセンシングデータの送信、及び、移動体センサ200mによるセンシングデータの送信は基本的にほぼ同時になるが、同時である必要はなく、通信トラフィックスの混雑度合いに応じて、ずらして送信することとしてもよい。
【0053】
固定センサ200aは、各子機から送信されたセンシングデータを受信し、受信したセンシングデータと、自機で測定したセンシングデータとを集約する(ステップS506)。ここで集約とは、どのセンシングデータと時刻情報と位置情報とが、どのセンサに対応するか明確にして送信用にパッケージ化することであってよい。
【0054】
固定センサ200aは、集約した各センサのセンシングデータを情報処理装置100に送信する(ステップS507)。
【0055】
情報処理装置100は、受信したセンシングデータを記憶部140に記憶する(ステップS508)。
【0056】
情報処理装置100は、受信した移動体センサ200mのセンシングデータを基準に、その時々で最も近い位置に存在する固定センサ200における測定対象の経時的変化の特性に基づいて、センシングデータの補間を実行し(ステップS509)、終了する。
【0057】
以上のように情報処理システム1は、情報処理装置100が、固定センサ200a~200fが設置されていない位置において、測定対象の経時的変化を推定するために必要な情報が効率的に各センサ200から情報処理装置100に伝達される。
【0058】
情報処理システム1においては、図5に示すやり取りが逐次実行される。ここで、逐次とは、所定時間毎であり、例えば、1秒毎であってよいが、1秒に限定するものではなく、10秒毎、1分毎、10分毎などであってもよい。
【0059】
図6は、図5におけるやり取りを実現するための子機となる固定センサ200b~200fと、移動体センサ200mの動作例を示すフローチャートである。
【0060】
図6に示すように、子機となる固定センサ200b~200f、移動体センサ200mのセンサ群220は、測定対象となる各種の情報をセンシングする(ステップS601)。センサ群220は、センシングしたセンシングデータを制御部250に伝達する。
【0061】
位置情報取得部230は、自機の位置情報を取得する(ステップS602)。位置情報取得部230は、取得した位置情報を制御部250に伝達する。
【0062】
計時部240は、現在時刻を取得する(ステップS603)。そして、計時部240は取得した現在時刻を制御部250に伝達する。
【0063】
制御部250は、通信部210を介して、親の固定センサ200aに、伝達されたセンシングデータと、位置情報と、現在時刻と、を送信し(ステップS604)、処理を終了する。このとき、制御部250は、センシングデータと、位置情報と、現在時刻とを記憶部260に記憶する。
【0064】
以上が、子機となる固定センサ200b~200f、あるいは、移動体センサ200mの動作例である。これにより、子機となる各センサは、親機となる固定センサ200aにセンシングデータを送信することができる。
【0065】
図7は、図5におけるやり取りを実現するための親機となる固定センサ200aの動作例を示すフローチャートである。
【0066】
図7に示すように、親機となる固定センサ200aのセンサ群220は、測定対象となる各種の情報をセンシングする(ステップS701)。センサ群220は、センシングしたセンシングデータを制御部250に伝達する。
【0067】
固定センサ200aの位置情報取得部230は、自機の位置情報を取得する(ステップS702)。位置情報取得部230は、取得した位置情報を制御部250に伝達する。
【0068】
固定センサ200aの計時部240は、現在時刻を取得する(ステップS703)。そして、計時部240は取得した現在時刻を制御部250に伝達する。このとき、制御部250は、伝達されたセンシングデータと、位置情報と、時刻情報とを、対応付けて記憶部260に記憶してよい。
【0069】
固定センサ200aの通信部210は、子機である固定センサ200b~200f、移動体センサ200mから、各センサ200のセンシングデータを受信する(ステップS704)。通信部210は、受信したセンシングデータを制御部250に伝達する。
【0070】
制御部250は、伝達された自機のセンシングデータと、各子機のセンシングデータを集約する(ステップS705)。そして、制御部250は、通信部210を介して、集約したセンシングデータを情報処理装置100に送信し(ステップS706)、処理を終了する。
【0071】
これにより、全てのセンサのセンシングデータが、その測定の場所と時刻とが対応付けられて、情報処理装置100に伝達される。
【0072】
図8は、図5におけるやり取りを実現するための情報処理装置100の動作例を示すフローチャートである。
【0073】
情報処理装置100の通信部110は、親機である固定センサ200aから、全てのセンサ200がセンシングしたセンシングデータを受信する(ステップS801)。各センシングデータには、どのセンサが、いつ(時刻情報)、どこ(位置情報)で測定したものであるかの情報が対応付けられている。通信部110は、受信したセンシングデータを制御部130に伝達する。
【0074】
制御部130は、各センサに対応づけて(センサID401に対応付けて)、伝達されたセンシングデータを、記憶部140のセンサ情報141に記憶する(ステップS802)。
【0075】
制御部130の特定部132は、センシングデータの位置情報に最寄りの固定センサを特定する(ステップS803)。特定部132は、ビニールハウス10内の環境の変化を特定したい所望の位置から最も距離が短い位置に存在する固定センサ200を、センサ情報141の位置情報を参照して特定する。なお、環境の変化を特定したい所望の位置は、入力部120を介して情報処理装置100のオペレータから指定されてもよいし、情報処理装置100が、ビニールハウス10内の環境の制御も実行する場合に、その制御のためにプログラム上必要となる情報の位置として指定されてもよい。
【0076】
移動体センサ200mが所望の場所で計測した測定対象の実測値であるセンシングデータを基準に、特定した最寄りの固定センサ200のセンシングデータの経時的変化の特性を用いて、所望の場所における測定対象の経時的変化を推定する。即ち、推定部133は、移動体センサ200mが所望の場所で計測した測定対象のセンシングデータの実測値がない時間帯を、最寄りの固定センサ200のセンシングデータの経時的変化の特性を用いて補間する(ステップS804)。
【0077】
そして、制御部130は、補間された所望の位置におけるセンシングデータの経時的変化を示すグラフを生成して、出力部150に出力させ(ステップS805)、処理を終了する。
【0078】
これにより、情報処理装置100は、ビニールハウス10内の固定センサ200a~200fが設置されていない場所であっても、移動体センサ200が通過した箇所の実測値を基準に、最も近い位置の固定センサ200の測定対象の経時的変化を利用して補間することで、測定対象の経時的変化の情報を得ることができる。
【0079】
<移動体センサのセンシングデータの補間例>
図9を用いて、推定部133による推定(補間)の例を説明する。図9(a)から図9(c)の各グラフにおいて、横軸は時間であり、縦軸は温度を示している。
【0080】
図9(a)は、固定センサ200により測定されたセンシングデータの経時的変化の一例を示すグラフである。図9(a)に示す例では、温度を測定対象としたときの経時的変化をグラフで示している。図9(a)に示すように、固定センサ200から得られる測定対象の経時的変化を示すグラフは、全て実測値となるため、固定センサ200が設置されている位置の環境の変化の情報としては確度の高い情報として利用することができる。
【0081】
一方、移動体センサ200mを保持する作業者は、ビニールハウス10内で作業者が作業した場所に都度移動する。したがって、図9(b)に示すように、ビニールハウス10内のある場所(以下、場所Aと記載する)、即ち、移動体センサ200mの移動経路上のある場所Aのセンシングデータとしては、その場所から作業者が動かない間測定された情報のみとなる。したがって、これだけでは、図9(b)に示すように、場所Aでの測定対象の経時的変化を示す情報としては、歯抜けの情報となる。
【0082】
そこで、本実施形態においては、図9(b)に示す歯抜けの部分を、場所Aから最も近い位置にある固定センサ200の測定対象の経時的変化の特性を利用して、補間する。これは、場所Aから最も近い位置にある固定センサ200の周辺の環境変化は、場所Aの環境変化と類似するであろうことが類推できるためである。
【0083】
したがって、仮に、図9(b)に示す情報が、例えば、図1の移動体センサ200mの位置の情報であるとしたとき、移動体センサ200から最も近い位置に存在する固定センサは、固定センサ200fとなる。このとき、図9(a)に示す測定対象の経時的変化が、固定センサ200fのものであるとすると、図9(b)を基準に、図9(a)の経時的変化を用いて(当てはめて)補間することで、推定部133は、図9(c)に示す測定対象の経時的変化を推定することができる。図9(c)において、実線部分は移動体200mによる実測値であり、点線部分は、補間した部分を示している。
【0084】
このように、情報処理装置100は、固定センサ200が設置されていない位置の測定対象の経時的変化を推定することができる。
【0085】
<まとめ>
上記実施の形態に係る情報処理装置100によれば、固定センサ200が設置されていない位置における測定対象の経時的変化を移動体センサ200mがその位置を通過したときに計測した実測値を基準に、最も近い位置に存在する固定センサ200の測定対象の経時的変化を利用して、線形補間することで、固定センサ200がない位置における確度の高い、測定対象の経時的変化の情報を得ることができる。
【0086】
したがって、所定の場所(例えば、ビニールハウス10内)の任意の位置における環境の経時的変化の推定を行うことができるので、推定した情報に基づいて、所定の場所の制御を行うことができる。例えば、測定対象が温度であれば、所定の場所の空調の制御を行うことができ、測定対象が湿度であれば、所定の場所における加湿や乾燥等の制御や植物等に対する給水の制御を行うことができる。
【0087】
<補足>
上記実施形態に係る情報処理装置は、上記実施形態に限定されるものではなく、他の手法により実現されてもよいことは言うまでもない。以下、各種変形例について説明する。
【0088】
(1)上記実施形態において、移動体センサ200mのある時点のセンシングデータを基準に、その時の位置に最も近い固定センサ200a~200fを特定して、特定した固定センサ200の測定対象の経時的変化の特性を利用することとしたが、これは、最も近い固定センサに限定しなくてもよい。
【0089】
例えば、移動体センサ200mから、所定距離内に存在する固定センサ200の特性を利用してもよい。このとき、移動体センサ200mから所定距離内に存在する固定センサ200までの距離に応じて、利用する特性に対して重み付けを行ってよい。例えば、移動体センサ200mから所定距離内に存在する固定センサが固定センサ200d~200fの3つであり、それぞれまでの距離がL1、L2、L3としたときに、固定センサ200dの特性に対する重み値を、一例としてL1/(L1+L2+L3)とし、固定センサ200eの特性に対する重み値を、一例としてL2/(L1+L2+L3)とし、固定センサ200fの特性に対する重み値を、一例としてL3/(L1+L2+L3)とする。そして、推定部133は、移動体センサ200mがセンシングしたデータを基準に、他の時刻(同じ位置のセンシングできていない時刻)を、その重み値を用いて推定するようにしてもよい。なお、重み値は一例であり、その他の計算式により算出されてよく、例えば、上述の式に何らかの係数を乗じたり、加算したりしたものであってもよい。
【0090】
(2)上記実施形態においては、固定センサ200aが親機として機能し、その他の固定センサ200b~200f及び移動体センサ200mが子機として機能し、固定センサ200aが全てのセンシングデータを集約して、情報処理装置100に送信する例を示したが、これはその限りではない。
【0091】
各センサ(固定センサ200b~200f、移動体センサ200m)が個別に情報処理装置100に、センシングデータを送信するように構成してもよい。このように構成すると、親機である固定センサ200aが何らかの理由で故障したとしても、各固定センサ200b~200f、移動体センサ200mによるセンシングデータを、情報処理装置100にアップロードすることができる。
【0092】
なお、上記実施形態に示したように、親機である固定センサ200aが全ての子機の情報を集めて情報処理装置100に送信すれば、センサ200と情報処理装置100との間の通信数を抑制することができ、仮にセンサ200と情報処理装置100間の通信を携帯電話網を利用する場合に通信料を抑制することができる。
【0093】
(3)上記実施形態において、親機である固定センサ200aが故障した場合には、他の固定センサ200が子機から親機に切り替わって、センシングデータを集約して、情報処理装置100に送信するように構成してもよい。
【0094】
各子機である固定センサ200は、親機である固定センサ200aに適宜、センシングデータを送信する。このとき、親機200aは、センシングデータを受信した場合に、送信してきた子機にACKを返す構成とする。したがって、センシングデータの送信後、所定時間が経過してもACKがない場合には、子機は、親機である固定センサ200aが何らかの理由で故障したと推定することができる。あるいは、情報処理装置100が、固定センサ200aから所定時間、集約したセンシングデータを受信しなかった場合に、情報処理装置100は、固定センサ200aが故障したと推定することができる。
【0095】
このような場合に、子機200同士で、相互に通信を行って、予め定めた基準(例えば、優先順位であってもよいし、通信感度の高さであってもよいが、これらに限定するものではない)にしたがって、次の親機を決定することとしてもよい。また、あるいは、情報処理装置100が、親機となる固定センサ200を指定することとしてもよい。
【0096】
こうすることで、情報処理システム1は、センシングデータが情報処理装置100にアップロードされないという事態を防ぐことができる。
【0097】
(4)上記実施形態において、固定センサ200a~200fが設置されていない位置、かつ、移動体センサ200mが通過していない位置の測定対象の経時的変化は、推定部133が推定した移動体センサ200mが通過したことがある位置における測定対象の経時的変化と、固定センサ200a~200fが測定した測定対象の経時的変化とを利用して、線形補間、近似曲線、学習モデル等により推定することとしてよい。これにより、情報処理装置100は、ビニールハウス10内の全ての位置の測定対象の経時的変化を得ることができる。
【0098】
(5)上記実施形態において、補間処理は、図5のステップS509のタイミングにおいて必ず実行しなければいけない処理ではない。補間処理は、必要となるセンシングデータがあれば、適宜、任意のタイミングで実行することができる。
【0099】
(6)上記実施形態において、最寄りの固定センサ200を特定する手法として、移動体センサ200mがセンシングを行った位置情報と、固定センサ200の位置情報と、を利用する例を示したが、最寄りの固定センサ200の特定手法はこれに限定するものではなく、その他の手法を利用してもよい。移動体センサ200mから最寄りの固定センサ200を特定する手法の一例としては両センサ間で信号のやり取りを行った際に測定できる受信強度を利用することとしてもよい。即ち、移動体センサ200mと固定センサ200各々との間で、所定の信号を送受信し、その際に受信強度が最も高かった信号のやり取りを行った固定センサ200を最も近距離に存在する固定センサ200として特定することができる。
【0100】
また、上記実施形態においては、実施形態を理解しやすくするために平面的な位置についてのみ説明したが、固定センサ200及び移動体センサ200mについて、それぞれの高さ情報も位置情報として利用することとしてよい。このとき、移動体センサ200は、例えば、加速度センサ等を利用することで作業者の状態(しゃがんでいる、立っているなど)を推定し、高さ方向で複数の固定センサ200が備えられている場合に、高さ方向で最も近い固定センサを特定するように構成されてもよい。また、移動体センサ200として加速度センサ以外に、気圧センサを用いて、移動体センサ200mあるいは固定センサ200a~200fの高さを特定し、平面と高さを併せた3次元距離を算出して、移動体センサ200mから固定センサ200までの距離を特定するように構成してもよい。
【0101】
(7)上記実施形態においては、固定センサ200a~200f、移動体センサ200m、情報処理装置100に含まれるプロセッサが情報処理プログラム等を実行することにより、所定の領域内の環境を推定するためのそれぞれの装置に望まれる機能を果たすこととしているが、これは装置に集積回路(IC(Integrated Circuit)チップ、LSI(Large Scale Integration))等に形成された論理回路(ハードウェア)や専用回路によって実現してもよい。また、これらの回路は、1または複数の集積回路により実現されてよく、上記実施形態に示した複数の機能部の機能を1つの集積回路により実現されることとしてもよい。LSIは、集積度の違いにより、VLSI、スーパーLSI、ウルトラLSIなどと呼称されることもある。
【0102】
また、上記情報処理プログラムは、プロセッサが読み取り可能な記録媒体に記録されていてよく、記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、上記情報処理プログラムは、当該情報処理プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して上記プロセッサに供給されてもよい。本発明は、上記情報処理プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
【0103】
なお、上記情報処理プログラムは、例えば、C言語、C++言語、Basic言語等のプログラミング言語の他、ActionScript、JavaScript(登録商標)などのスクリプト言語、Objective-C、Java(登録商標)などのオブジェクト指向プログラミング言語、HTML5などのマークアップ言語などを用いて実装できる。
【0104】
(8)上記実施形態及び各補足に示した構成は、適宜組み合わせることとしてもよい。また、最終的に得られる結果が同じであれば、各フローチャートに示した処理の実行順序は、それぞれのフローチャートに示した順序とは異なる順序で実行してもよい。例えば、図6に示したステップS601~S603の処理は任意の順序で実行されてよく、例えば、ステップS602、S601、S603という順序で実行されてもよいし、ステップS601、S602、S603は同時に並列処理により実行されてもよい。
【符号の説明】
【0105】
1 情報処理システム
10 ビニールハウス
100 情報処理装置
110 通信部
120 入力部
130 制御部
131 変換部
132 配置部
133 判定部
140 記憶部
150 出力部
200 センサ
200a~200f 固定センサ
200m 移動体センサ
210 通信部
220 センサ群
230 位置情報取得部
240 計時部
250 制御部
260 記憶部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9