(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023110419
(43)【公開日】2023-08-09
(54)【発明の名称】道路拡幅用床版と道路拡幅構造
(51)【国際特許分類】
E01C 1/00 20060101AFI20230802BHJP
【FI】
E01C1/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022011851
(22)【出願日】2022-01-28
(71)【出願人】
【識別番号】501047173
【氏名又は名称】株式会社ライテク
(71)【出願人】
【識別番号】508112852
【氏名又は名称】株式会社トーエス
(71)【出願人】
【識別番号】512077273
【氏名又は名称】株式会社T.クリエーションセンター
(74)【代理人】
【識別番号】110003063
【氏名又は名称】弁理士法人牛木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北島 幹士
(72)【発明者】
【氏名】山中 大樹
【テーマコード(参考)】
2D051
【Fターム(参考)】
2D051AF03
2D051AF12
2D051BA05
2D051BA07
2D051DA18
(57)【要約】
【課題】曲線道路への対応が容易な道路拡幅用床版を提供する。
【解決手段】山側傾斜面と谷側傾斜面の間の道路に設けられ、谷側端部を谷側に張り出して道路1を拡幅するプレキャストコンクリート製の道路拡幅用床版11である。道路長さ方向の一側端面22に長さ調整用の凸部23を設け、道路長さ方向の他側端面25に、凸部23の下面23Kに対応する上面32Jを有する捨て型枠31を設けたから、隣り合う床版11,11の凸部23と捨て型枠31の重ね合わせ代と調整し、捨て型枠31上にコンクリートを打設することにより、現場で床版11の下方に型枠を組むことなく、床版11,11の間隔を調整することができると共に、曲線道路に対応することが可能となる。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
山側傾斜面と谷側傾斜面の間の道路に設けられ、谷側端部を谷側に張り出して道路を拡幅するプレキャストコンクリート製の道路拡幅用床版において、道路長さ方向端面の一方に調整用の凸部を設け、道路長さ方向端面の他方に、前記凸部の下面に対応する上面を有する捨て型枠を設けたことを特徴とする道路拡幅用床版。
【請求項2】
前記凸部の道路長さ方向端面の一方から一方のループ筋を突設し、この一方のループ筋に対応して道路長さ方向端面の他方から他方のループ筋を突設したことを特徴とする請求項1記載の道路拡幅用床版。
【請求項3】
前記一方及び他方のループ筋を道路幅方向に間隔を置いて複数配置すると共に、道路幅方向に隣り合う前記一方のループ筋の間の位置に、前記他方のループ筋を配置したことを特徴とする請求項2記載の道路拡幅用床版。
【請求項4】
前記捨て型枠は、前記上面を有する本体部と、道路長さ方向端面に取り付ける取付部と、前記本体部と前記取付部に固定したリブ部とを備えることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の道路拡幅用床版。
【請求項5】
山側傾斜面と谷側傾斜面の間の道路にプレキャストコンクリート製の床版を設け、この床版の谷側端部を谷側に張り出して拡幅する道路拡幅構造において、前記床版の道路長さ方向端面に調整用の凸部を設け、前記床版と道路長さ方向に隣り合う床版の長さ方向端面に、前記凸部の下面に対応する上面を有する捨て型枠を設け、この捨て型枠上にコンクリートを打設して形成された打設コンクリート部を備えることを特徴とする道路拡幅構造。
【請求項6】
前記凸部の道路長さ方向端面から一方のループ筋を突設し、この一方のループ筋に対応して前記隣り合う床版の道路長さ方向端面から他方のループ筋を突設し、それら一方及び他方のループ筋に道路幅方向の補強筋を挿通し、前記一方及び他方のループ筋並びに前記補強筋を前記打設コンクリート部に埋設したことを特徴とする請求項5記載の道路拡幅構造。
【請求項7】
前記凸部と前記捨て型枠の重なり代を調整して隣り合う床版の間隔が山側と谷側で異なるように床版を敷設したことを特徴とする請求項5又は6記載の道路拡幅構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、山側と谷側が傾斜面をなす道路を拡幅する道路拡幅用床版と道路拡幅構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のものとして、既設道路の拡幅側に沿って所定間隔をおいて支持杭を打設し、山側には所定間隔をおいて反力アンカーを構築し、前記既設道路上には道路進行方向と直交する方向の中空部を有する中空プレストレストコンクリート板を載置して一部は既設道路より谷側へ張り出させ、前記支持杭によって中空プレストレストコンクリート板を支持し、前記反力アンカーを緊張、定着して中空プレストレストコンクリート板の山側端部に下方へプレストレス力を与えた道路拡幅構造(例えば特許文献1)がある。
【0003】
上記特許文献1の道路拡幅構造では、プレキャスト製のコンクリート板を用いることにより現場打ちコンクリートを用いる場合に比べた施工性を向上することができる。しかし、曲線道路に用いた場合、プレストレストコンクリート板を1枚1枚曲線道路に対応した形状に成形する必要がある。一方、同一形状のコンクリート板を曲線道路の曲線に沿って敷設する場合、コンクリート板の間の間隙に現場でコンクリートを打設するには、谷側に足場を設けて型枠を組む必要があり、特に、コンクリート板が谷側に張り出した部分では、型枠作業が煩雑となる。
【0004】
また、路側縁が擁壁で構築された道路を擁壁外側方向に拡幅するために用いられる張出車道ブロックであって、概略平板状をした本体の長辺方向一端側を張出部、他端側をウエイト部とし、既存道路における拡幅側車道のみを掘削し、掘削箇所に前記他端側を取り付ける張出車道ブロック(例えば特許文献2)がある。
【0005】
上記特許文献2の張出車道ブロックでは、既存道路における拡幅側車道のみを掘削して据え付けるものであるため、拡幅できる幅に限界があり、また、曲線道路への対応も難しかった。
【0006】
これらに対して、曲線道路に対応可能としたものとして、重石載置板の外端に立設した立壁の上端に外方に向けて歩道板を突設してなる本体ブロックと、該本体ブロックの重石載置板に載設状態に固定される重石ブロックとからなるコンクリート製の張出歩道ブロックであって、前記重石載置板を、その外端から内端に向かって幅が小さくなるテーパの付いた台形板状を呈するように構成した張出歩道ブロック(例えば特許文献3)がある。
【0007】
上記特許文献3の張出鋪道ブロックでは、前記重石載置板を、その外端から内端に向かって幅が小さくなるテーパの付いた台形板状にすることにより、隣接する台形板状重石載置板間に形成される間隙を所要に調節し、外端側に位置する歩道板の外周縁が重石載置板側を中心に円弧を描くように張出歩道ブロックを並べると、車道等の所要のカーブに沿った張出歩道を形成できる。
【0008】
しかし、上記張出鋪道ブロックでは、重石載置板間に形成される間隙を調整すると、隣り合う歩道板の間隔が開き、隙間が発生するため、これを塞ぐために現場で型枠を組み、コンクリートを打設する必要がある。また、歩道板は方形に形成されているため、逆方向のカーブの車道等には対応できないという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭61-14303号公報
【特許文献2】特開2006-10480号公報
【特許文献3】実用新案登録第2518390号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明は上記した問題点に鑑み、曲線道路への対応が容易な道路拡幅用床版と道路拡幅構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、山側傾斜面と谷側傾斜面の間の道路に設けられ、谷側端部を谷側に張り出して道路を拡幅するプレキャストコンクリート製の道路拡幅用床版において、道路長さ方向端面の一方に調整用の凸部を設け、道路長さ方向端面の他方に、前記凸部の下面に対応する上面を有する捨て型枠を設けたことを特徴とする。
【0012】
請求項2に係る発明は、前記凸部の道路長さ方向端面の一方から一方のループ筋を突設し、この一方のループ筋に対応して道路長さ方向端面の他方から他方のループ筋を突設したことを特徴とする。
【0013】
請求項3に係る発明は、前記一方及び他方のループ筋を道路幅方向に間隔を置いて複数配置すると共に、道路幅方向に隣り合う前記一方のループ筋の間の位置に、前記他方のループ筋を配置したことを特徴とする。
【0014】
請求項4に係る発明は、前記捨て型枠は、前記上面を有する本体部と、道路長さ方向端面に取り付ける取付部と、前記本体部と前記取付部に固定したリブ部とを備えることを特徴とする。
【0015】
請求項5に係る発明は、山側傾斜面と谷側傾斜面の間の道路にプレキャストコンクリート製の床版を設け、この床版の谷側端部を谷側に張り出して拡幅する道路拡幅構造において、前記床版の道路長さ方向端面に調整用の凸部を設け、前記床版と道路長さ方向に隣り合う床版の長さ方向端面に、前記凸部の下面に対応する上面を有する捨て型枠を設け、この捨て型枠上にコンクリートを打設して形成された打設コンクリート部を備えることを特徴とする。
【0016】
請求項6に係る発明は、前記凸部の道路長さ方向端面から一方のループ筋を突設し、この一方のループ筋に対応して前記隣り合う床版の道路長さ方向端面から他方のループ筋を突設し、それら一方及び他方のループ筋に道路幅方向の補強筋を挿通し、前記一方及び他方のループ筋並びに前記補強筋を前記打設コンクリート部に埋設したことを特徴とする。
【0017】
請求項7に係る発明は、前記凸部と前記捨て型枠の重なり代を調整して隣り合う床版の間隔が山側と谷側で異なるように床版を敷設したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1構成によれば、隣り合う床版の凸部と捨て型枠の重ね合わせ代と調整し、捨て型枠上にコンクリートを打設することにより、現場で床版の下方に型枠を組むことなく、床版の間隔を調整することができると共に、曲線道路に対応することが可能となる。
【0019】
請求項2構成によれば、隣り合う床版の一方と他方のループ筋に補強筋を挿通し、コンクリートを打設することにより、隣り合う床版同士を一体化することができる。
【0020】
請求項3構成によれば、一方と他方のループ筋が干渉することなく、曲線道路に対応して隣り合う床版を敷設することができる。
【0021】
請求項4構成によれば、軽量で、コンクリートが硬化するまでに必要な強度を備えた捨て型枠が得られる。
【0022】
請求項5構成によれば、隣り合う床版の凸部と捨て型枠の重ね合わせ代を調整し、捨て型枠上にコンクリートを打設することにより、現場で床版の下方に型枠を組むことなく、床版の間隔を調整することができると共に、曲線道路に対応可能となる。
【0023】
請求項6構成によれば、隣り合う床版の一方と他方のループ筋に補強筋を挿通し、コンリートを打設することにより、隣り合う床版が一体化される。
【0024】
請求項7構成によれば、曲線道路に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の実施例1を示す道路拡幅構造の縦断面図である。
【
図2】同上、シースの配置を説明する床版の正面説明図である。
【
図3】同上、シースの配置を説明する床版の道路幅方向両端側を拡大した正面説明図である。
【
図4】同上、ループ筋を図示省略した床版の側面図である。
【
図6】同上、
図6(A)はスターラップ筋、
図6(B)図は一方のループ筋、
図6(C)は他方のループ筋の正面図である。
【
図7】同上、配筋状態を説明する床版の正面説明図である。
【
図8】同上、配筋状態を説明する床版の平面説明図である。
【
図9】同上、道路長さ方向に隣り合う床版の最大間隔接続構造の断面図である。
【
図10】同上、道路長さ方向に隣り合う床版の最小間隔接続構造の断面図である。
【
図13】同上、曲線道路に対応して道路長さ方向に隣り合う床版の平面説明図である。である。
【
図14】同上、曲線道路に対応して道路長さ方向に隣り合う床版の道路幅方向一側の平面説明図である。
【
図15】同上、曲線道路に対応して道路長さ方向に隣り合う床版の道路幅方向他側の平面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明における好適な実施の形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。尚、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を限定するものではない。また、以下に説明される構成の全てが、本発明の必須要件であるとは限らない。
【実施例0027】
以下、本発明の実施例を添付図面を参照して説明する。
図1~
図15は本発明の実施例1を示し、同図に示すように、既設の道路1は、谷側の下向きの傾斜面2と山側の上向きの傾斜面3との間に挟まれている。
【0028】
拡張工事において、前記道路1にプレキャストコンクリート製の床版11を敷設する。この床版11は道路1の長さ方向に所定幅を有し、道路1の幅員方向にこれより長く形成され、道路1の長さ方向に複数並設され、該床版11の谷側端部11Tを、谷側に張り出して設けられている。
【0029】
道路1には、床版11の山側端部11Yを支持するコンクリート製の山側基礎4を設け、この山側基礎4より谷側において床版11の谷側下面を支持するコンクリート製の谷側基礎5が設けられている。そして、複数並んだ床版11,11・・・により路面12が構成され、それら床版11,11・・・の谷側基礎5より谷側が張り出し部分12Hである。
【0030】
また、前記床版11の山側端部11Yと前記山側基礎4に、連結手段たる縦方向のアンカー筋13を挿通し、このアンカー筋13の下端を地山に固定すると共に、アンカー筋13の上部をナットなどの定着手段13Aにより床版11に定着する。
【0031】
また、既設の道路1の谷側Tに矢板や杭などの杭構造14を形成し、この杭構造14の上に前記谷側基礎5を設けてなる。前記山側基礎4及び谷側基礎5は、プレキャストコンクリート部材を並べて形成し、或いは現場打ちコンクリートにより形成される。そして、前記谷側基礎5により床版11の谷側が支持されている。
【0032】
図1では、杭構造14として、鋼管杭を示している。尚、支持力が得られる場合は、谷側基礎5には杭構造14を用いなくてもよい。また、前記山側基礎4及び谷側基礎5の上面と床版11の下面との間には、板状の弾性支承体たるゴム支承15が配置されている。
【0033】
図4及び
図5などに示すように、前記床版11は、床版本体21と、この床版本体21の道路長さ方向の端面の一方である一側端面22の上部に突設された凸部23とを一体に備え、前記凸部23の下部には凹部24が形成され、前記凸部23の下面23Kは床版本体21の下面21Kより高く形成されると共に、該凸部23の上面は床版本体21の上面21Jと面一に形成されている。
【0034】
また、凸部23の下面23Kは床版本体21の上面21Jと平行である。尚、凸部23の高さ(厚さ)寸法は、凹部24の高さ寸法より小さい。また、この例では床版本体21の厚さは凸部23の厚さの2倍以上である。尚、床版11の道路長さ方向は床版11の幅方向であり、床版11の道路幅方向は床版11の長さ方向である。
【0035】
また、平面視で床版11及び床版本体21は道路幅方向に長い長方形形状をなす。尚、前記凸部23及び捨て型枠31の本体部32は、道路幅方向の全長に渡って、道路長さ方向の寸法が略同一寸法に形成されている。
【0036】
前記床版11は、その道路長さ方向の他方の端面である他側端面25に、合成樹脂製や金属製などの捨て型枠31が設けられている。この捨て型枠31は、上面が前記凸部23の下面23Kより僅かに低い横方向の本体部32と、この本体部32の基端側に一体に設けられ、前記他側端面25の下部に固定される縦方向の取付部33と、前記本体部32の先端側から垂設された先端縦部34と、前記本体部32の下面と前記取付部33と前記先端縦部34に取り付けられた縦板状のリブ部35とを備える。尚、この例では、本体部32,取付部33,先端縦部34及びリブ部35は板状をなす。また、合成樹脂製とすれば、捨て型枠31の軽量化が図られる。
【0037】
前記本体部32の上面は平坦に形成されている。また、前記取付部33の下端は、床版本体21の下面21Kまで延設されており、取付部33に比べて先端縦部34は高さ寸法が短く形成され、前記リブ部35の下縁部35Fは床版11から先端側に向かって高くなるように形成されている。また、リブ部35は床版11の道路幅方向に間隔を置いて複数設けられている。そして、前記取付部33は、固定手段たる複数のインサートボルト36により床版11に固定されている。
【0038】
図2及び
図3などに示すように、前記床版11内には、道路幅方向のシース41が複数配置され、このシース41はPC鋼材42を挿通する鞘管であり、前記シース41は上下複数段(2段)で、道路長さ方向に等間隔で複数本(5本)配置されている。また、床版11の道路幅方向の両端部には、凹所43,43が設けられ、この凹所43の底面44に、各シース41に対応して定着板45が設けられ、この定着板45にはPC鋼材42を挿通する挿通孔45Tが穿設されている。
【0039】
山側基礎4と谷側基礎5で支持された床版11は、等分布荷重を受けた際、谷側基礎5の道路幅方向の中心位置5Cにおけるモーメントが最大となり、床版11の断面上部側に引張荷重が加わり、谷側基礎5位置における引張荷重が最大となる。この引張荷重に対抗するため、谷側基礎5の中心位置5Cにおいて、シース41はその高さ位置が最上部に来るように配置されている。
【0040】
定着板45の大きさを確保するためや、PC鋼材42の定着作業に適した位置に定着板45を配置するためや、PC鋼材42の定着位置を床版11の上面から所定寸法だけ離す必要があるため、凹所43における前記挿通孔45Tの位置を中央側より低く設定している。さらに、PC鋼材42の端部に後述する定着具を定着するため、凹所43における上下のシース41,41の上下間隔を広く、谷側基礎5の中心位置5Cにおけるシース41,41の上下間隔を狭くし、下のシース41が上のシース41に近付いて床版本体21の断面の上側に位置するように配置している。
【0041】
この例では、定着板45における上下の挿通孔45T,45Tの間隔Hは170mm、床版11の道路幅方向の中央における上下のシース41,41の間隔hは80mmで、間隔hは間隔Hの2分の1以下である。
【0042】
また、床版11の道路幅方向両端の凹所43の底面44の位置に比べて谷側基礎5の中心位置5Cで下のシース41を上のシース41に近付けるために、底面44における上下のシース41の水平に対する角度を一例として以下のように設定している。谷側端部11Tにおいては、上のシース41の水平に対する角度θが1度30分、下のシース41の角度θ1が10度であり、下のシース41の角度θ1を上のシース41の角度θより大きくすることにより、前記中心位置5Cにおいて前記間隔hとなる。
【0043】
また、山側端部11Yにおいては、上のシース41の角度が0度、即ち上のシース41は水平であり、下のシース41の角度θ1´が5度30分であり、下のシース41の角度θ1´を上のシース41の角度より大きくすることにより、中心位置5Cで前記間隔hとなる。尚、山側及び谷側の底面44,44から中心位置5Cに向かって、シース41は水平部分を除けば、上向きに配置されていると共に、間隔Hから間隔hになるように間隔が狭まっていくように配置されている。
【0044】
さらに、底面44における水平に対する下のシース41の角度θ,θ1,θ1´に対応して、底面44に傾斜面部44K,44K1,44K1´を形成し、これら傾斜面部44K,44K1,44K1´は垂直に対して角度θ,θ1,θ1´をなす。このように傾斜面部44K,44K1,44K1´の角度を設定し、傾斜面部44K,44K1,44K1´に定着板45,45,45を配置することにより、シース41,41,41が傾斜面部44K,44K1,44K1´に対し、直交して配置される。尚、山側の凹所43の底面44の上側は、垂直に形成され、水平なシース41の端部が連結されている。
【0045】
次に、床版11の道路幅方向にポストテンション方式により緊張力を付与する例を説明する。床版成形用の図示しない型枠内に、PC鋼材42を挿通したシース41を配置し、前記型枠内にコンクリートを打設する。コンクリートが硬化したら、PC鋼材42の両端部を引っ張り、引っ張った状態で端部を定着具(図示せず)により定着板45に定着する。尚、シース41内にはグラウト材(図示せず)を充填し、硬化したグラウト材がPC鋼材42に付着する。これによりPC鋼材42が収縮しようとする力によって、コンクリートに圧縮力が付与され、床版11に加わる引張力に対抗することができる。尚、床版11の成形において、コンクリート硬化後に定着板45を底面44に取り付ける。このようにポストテンション方式を用いることにより、プレテンション方式に比べて製造が容易となる。
【0046】
図9及び
図10などに示すように、ループ継手50は、一方と他方のループ筋51,61を備え、前記床版11の凸部23の道路長さ方向の端面から一方のループ筋51を突設し、前記床版11の前記他側端面25から他方のループ筋61を突設している。一方のループ筋51は、一対の上,下横鉄筋部52,53の先端に半円形の屈曲部54を有し、同様に、他方のループ筋61は、一対の上,下横鉄筋部62,63の先端に半円形の屈曲部64を有する。尚、隣り合うループ筋51,51の間隔と隣り合うループ筋61,61の間隔は等しく、複数のループ筋51,61は道路幅方向に等間隔で設けられている。
【0047】
ループ筋51,61の端面22,25からの突出寸法は同一であり、前記上,下横鉄筋部52,53,62,63の基端側は前記床版11内に埋設固定されている。また、上横鉄筋部52は凸部23の上部に埋設され、下横鉄筋部53は凸部23の下部に埋設されている。
【0048】
また、
図8に示すように、一方及び他方のループ筋51,61は、床版11の道路幅方向において略等間隔に配置され、且つ、隣り合う一方のループ筋51,51の中央に、他方のループ筋61が位置する方に配置されている。これにより、
図13に示すように、隣り合う床版11,11を斜めに配置しても、一方と他方のループ筋51,61が干渉しないように構成し、曲線道路への対応を可能としている。尚、一方と他方のループ筋51,61の床版11から突出した部分は同一形状である。
【0049】
図5及び
図6などに示すように、前記一方のループ筋51は、上横鉄筋部52の基端52Tが床版本体21の道路長さ方向中央位置より他側(他側端面25側)に位置し、上横鉄筋部52の基端側は前記シース41と上面21Jとの間に埋設されている。また、下横鉄筋部53の基端側には屈曲部により一側端面22と平行な縦方向の縦鉄筋部53Aが下向きに設けられ、この縦鉄筋部53Aの下端には屈曲部により下面21Kと平行な横方向の下横鉄筋部53Bが設けられている。
【0050】
前記他方のループ筋61は、上横鉄筋部62の基端62Tが床版本体21の道路長さ方向中央位置より一側(一側端面22側)に位置し、上横鉄筋部62の基端側は前記シース41と上面21Jとの間に埋設されている。また、下横鉄筋部63の基端側には屈曲部により他側端面25と平行な縦方向の縦鉄筋部63Aが下向きに設けられ、この縦鉄筋部63Aの下端には屈曲部により下面21Kと平行な横方向の下横鉄筋部63Bが設けられている。
【0051】
前記床版本体21には道路幅方向に間隔を置いて複数のスターラップ筋66が埋設され、このスターラップ筋66は前記一方のループ筋51に添って配置され、道路幅方向に重ね合わせて配置されている。尚、スターラップ筋66は鉄筋を方形の枠状にしてなる。そして、床版本体21内において、スターラップ筋66は、上横鉄筋部52,縦鉄筋部53A及び下横鉄筋部53Bに接して設けられる。
【0052】
また、床版本体21には、補強筋たる道路幅方向の幅方向鉄筋67が複数埋設され、これら幅方向鉄筋67は、前記スターラップ筋66内で、該スターラップ筋66の角部に近接して、上横鉄筋部52,62の下部と、下横鉄筋部53B,63Bの上部に沿って配筋されている。
【0053】
また、前記凸部23には、補強筋たる道路幅方向の幅方向鉄筋67Aが複数埋設され、これら幅方向鉄筋67Aは、前記上横鉄筋部52の下部と前記下横鉄筋部53の上部に沿って配筋されている。
【0054】
また、
図9及び
図11などに示すように、前記凸部23の端面を粗面仕上げた粗面部23Sを形成し、前記凸部23の高さに対応して前記他側端面25の上部を粗面仕上げした粗面部25Sを形成している。
【0055】
図9及び
図11は、隣り合う床版11,11の間隔を最大としたループ継手50の最大間隔接続構造68を示す。
図10及び
図12は、ループ継手50の隣り合う床版11,11の間隔を最小としたループ継手50の最小間隔接続構造69を示す。尚、この例では最大間隔接続構造68を直線道路における標準接続構造としている。尚、標準接続構造とは、例えば1つの道路区画において、最大多数用いられる接続構造である。
【0056】
ループ継手50の最大間隔接続構造68において、一方のループ筋51の屈曲部54内の上中下に、道路幅方向の補強筋71,71,71を挿通し、これら補強筋71,71,71は他方のループ筋61内にも挿通される。同様に、他方のループ筋61の屈曲部64内の上中下に、道路幅方向の補強筋71A,71A,71Aを挿通し、これら補強筋71A,71A,71Aは一方のループ筋51内にも挿通される。即ち、補強筋71,71Aは両ループ筋51,61の重複部55に挿通されている。尚、重複部55は、山側又は谷側から見て屈曲部54,64と上横鉄筋部52,62と下横鉄筋部53,63に囲まれた部分である。
【0057】
また、ループ筋51,61の先端側である屈曲部54以外に、道路幅方向の補強筋72,72S,73,73Sが両ループ筋51,61内に挿通され、補強筋72,73は上横鉄筋部52,62の下部に配置され、補強筋72S,73Sは下横鉄筋部53,63の上部に配置されている。尚、上下一対の前記内側補強筋72,72Sがループ筋51,61の先端側に配置され、上下一対の前記外側補強筋73,73Sがループ筋51,61の基端側に配置されている。このように補強筋72,72S,73,73Sは、ループ筋51,61の一方に挿通されている。
【0058】
尚、最大間隔接続構造68で床版本体21,21の間隔を狭める場合は、補強筋72,72S,73,73Sの道路長さ方向の間隔を調整すればよい。具体的には、
図11の状態から隣り合う床版11,11同士を近付ける共に、内側補強筋72,72Sと外側補強筋73,73Sの間隔を狭めればよい。
【0059】
図9に示すように、標準接続構造である最大間隔接続構造68において、捨て型枠31の本体部32の先端を凸部23の下面23Kに僅かに重ね合わせ、この重ね合わせ部分を止水材75で止水する。
【0060】
具体的には捨て型枠31と凸部23との隙間に、打設コンクリートの漏れを防止するためにブチルゴムなどの止水材75を配置しており、配筋が完了したら、捨て型枠31の本体部32上に現場打ちコンクリートを打設し、これが硬化して打設コンクリート部76が形成される。
【0061】
上記のように床版11の他側端面25に捨て型枠31を設けているため、現場で床版11,11間の下側に型枠を組む必要がなく、端面22,25間で捨て型枠31上にコンクリートを打設することにより、打設コンクリート部76を形成するができる。しかも、打設コンクリート部76を有するループ継手50により、隣り合う床版11,11同士を一体化することができる。この際、ループ筋51,61の屈曲部54,64内には道路長さ方向の補強筋71,71Aが複数挿通されているため、それら補強筋71,71Aによりコンクリートが拘束され、引張力に対する耐力が向上し、隣り合う床版11,11が剛結される。
【0062】
また、床版本体21は凸部23より厚く、道路幅方向にポストテンション方式でPC鋼材42により緊張力を付与し、道路1の構造においてそれら床版本体21のみで基礎4,5の上において、輪荷重などの設計荷重に対して、強度を有するものであり、ループ筋51,61に補強筋を挿通すると共に、打設コンクリート部76に埋設したループ継手50は、床版本体21,21間において加わる荷重に対して、強度を有するものであるから、床版本体21より薄い凸部23と複数のループ筋51,61を埋設した打設コンクリート部76により、所定の強度を有する床版11の継ぎ目部分の施工が可能となる。
【0063】
また、据え付け後、プレキャスト製の床版11,11・・・上面には舗装層77を設けることができる。
【0064】
さらに、前記山側の傾斜面3に人工構造物であるコンクリート製などの擁壁78を設け、この擁壁78は、床版11のカウンターウエイトであって、その下部たる下面78Kの一部が前記コンクリート床版11の山側端部11Y上に位置するように形成されており、下面78Kが床版11に接する部分が押さえ部である。尚、擁壁78は床版11の上に設ける場合と、舗装層77の上に設ける場合のどちらでも良い。また、前記アンカー筋13により所定の据付強度が得られる場合は、カウンターウエイトとしての擁壁78を設けなくてもよい。
【0065】
上記のように、谷側の例えば基礎5を支点として、山側に離れた位置でコンクリート床版11の山側端部11Yを押えるため、梃子の原理を最大限活用することができ、山側Yに設ける人工構造物たる擁壁78が小さく軽量なもので済む。また、山側Yに設置される78は、床版11に加わる荷重に対して床版11の山側端部11Yの浮き上がりを防止する押さえ込みの役割を果たすと共に、山側傾斜面3の安定処理を兼用するので、信頼性の高い拡幅工事を提供できる。
【0066】
前記凸部23と前記捨て型枠31の重ね代を調整することにより、隣り合う床版11,11の間隔が調整可能になり、重ね代を山側と谷側で異なるように調整することにより、曲線道路への対応が可能となる。
【0067】
図13~
図15は曲線対応した道路拡幅構造を示し、一例として、曲線道路外側(谷側)は、床版11,11間をループ継手50の最大間隔接続構造68にして最大とし、曲線道路内側(谷側)は、床版11,11間をループ継手50の最小間隔接続構造69とて最小にしている。
【0068】
図12に示すように、最小間隔接続構造69では、一方のループ筋51の屈曲部54を凸部23の端面に近接すると共に、他方のループ筋61の屈曲部64を他側端面25に近接し、捨て型枠31の本体部32を凸部23の下面23Kに重ね合わせ代を大きくし、凸部23の先端側と本体部32とを止水材75で止水する。
【0069】
また、
図12などに示すように、最小間隔接続構造69においては、上下一対の内部補強筋たる補強筋81,81Sを両ループ筋51,61内に挿通すると共に、前記補強筋71,71Aと離れた位置で、道路長さ方向に間隔を置いて二対設け、上の補強筋81,81は上横鉄筋部52,62の下に配置され、下の補強筋81S,81Sは下横鉄筋部53,63の上に配置されている。尚、屈曲部54,64が端面25,22に近接しているため、補強筋72,72S,73,73は用いていない。
【0070】
図13~
図15は、平面説明図であり、ループ継手50における配筋を示す。尚、同図においては、上中下の3本の補強筋71,71,71及び補強筋71,71,71を1本の線で示している。
図13などに示すように、それら補強筋71,71Aは床版11の道路幅方向の略全長に設けられ、補強筋71,71Aの山側端71Y,71Yが山側端部11Yのループ筋51に位置し、補強筋71,71Aの谷側端71T,71Tが谷側端部11Tのループ筋51に位置する。このように補強筋71,71Aは道路幅方向の略全長に設けられている。
【0071】
また、内側補強筋72,72Sは谷側端部11Tから谷側基礎5の道路幅方向中心位置5Cを越えて延設され、内側補強筋72,72Sの山側端72Y,72Yは谷側基礎5の道路幅方向の中心位置5Cより山側に位置する(
図14及び
図15)。さらに、外側補強筋73,73Sは山側端部11Yから山側基礎4位置に近接する位置まで延設され、外側補強筋73,73Sの山側端73Y,73Yは、前記擁壁78の下部まで延設されている(
図15)。また、凸部23側の外側補強筋73,73Sは、凸部23の端面と平行に配置され、他側端面25側の外側補強筋73,73Sは、他側端面25と平行に配置されている。
【0072】
また、補強筋81,81Sは、その谷側端81T,81Tが補強筋73,73Sの山側端73Y,73Yより谷側に位置し、谷側端81T,81Tと山側端73Y,73Yの間で、補強筋81,81Sと補強筋73,73Sが重複している(
図15)。また、道路長さ方向に隣り合う上下一対の補強筋81,81Sと上下一対の補強筋81,81Sとは、最小間隔接続構造69から最小間隔接続構造69側に向かって間隔が狭まるように配置されている(
図15)。
【0073】
さらに、内側補強筋72,72Sの山側端72Y,72Yと補強筋81,81Sの谷側端81T,81Tの間は、補強筋71,71,71,71A,71A,71A,73,73,73S,73Sが10本であり、他より補強筋の数が少ないから、道路方向中央に中央補強筋たる上下の補強筋82,82Sを配置し、上の補強筋81,82は上横鉄筋部52,62の下部に配置され、下の補強筋82Sは下横鉄筋部53,63の上部に配置されている。
【0074】
また、補強筋82,82Sの谷側端82T,82Tは、谷側端部11Tと谷側基礎5との間に位置し(
図14)、また、補強筋82,82Sの山側端82Y,82Yは、山側端81Yと山側端部11Yとの間に位置する(
図15)。尚、谷側端82Tと山側端72Yとの間が、補強筋82,82Sと補強筋72,72Sの長さ方向重複部であり、谷側端81Tと山側端82Yとの間が、補強筋81,81Sと補強筋82,82Sの長さ方向重複部である。
【0075】
上記のように、床版11の接続構造であるループ継手50は、道路幅方向の一方である谷側に最大間隔接続構造68を有し、道路幅方向の他方である山側に最小間隔接続構造69を有し、それら接続構造68,69は複数のループ筋51,61と、ループ筋51,61の屈曲部54,64内に挿通する屈曲部用の補強筋71,71Aを有し、これら補強筋71,71Aは道路長さ方向の略全長に設けられると共に、道路幅方向の一方から他方に向かって間隔が狭まり、それらループ筋51,61及び補強筋71,71Aを打設コンクリート部76内に埋設したから、隣り合う床版11,11の間隔が道路幅方向で異なる曲線道路において、ループ継手50により所定の強度で床版11,11同士を連結することができる。尚、補強筋71,71Aなどの補強筋は直線状に形成されている。
【0076】
また、重複部55を挟んでループ筋51,61に挿入した内側補強筋72,72Sと内側補強筋72,72Sの間隔が、道路幅方向の一方から他方に向かって狭まり、重複部55を挟んでループ筋51,61に挿入した外側補強筋73,73Sと外側補強筋73,73Sの間隔が道路幅方向の一方から他方に向かって狭まり、重複部55内の上下で対をなす一方の補強筋81,81Sと他方の補強筋81,81Sの間隔が、道路幅方向の一方から他方に向かって狭まるから、曲線道路の対応が可能となる。
【0077】
さらに、床版11,11間の中央には、最大間隔接続構造68と最小間隔接続構造69との間(山側端72Yと谷側端81Tとの間)に補強筋82,82Sを配筋し、これら補強筋82,82Sの両端側が最大間隔接続構造68と最小間隔接続構造69に重複するから、接続構造68,69間の強度を確保することができる。
【0078】
このように本実施形態では、請求項1に対応して、山側傾斜面3と谷側傾斜面2の間の道路1に設けられ、谷側端部11Tを谷側に張り出して道路1を拡幅するプレキャストコンクリート製の道路拡幅用床版11において、道路長さ方向端面の一方である一側端面22に長さ調整用の凸部23を設け、道路長さ方向端面の他方である他側端面25に、凸部23の下面23Kに対応する上面32Jを有する捨て型枠31を設けたから、隣り合う床版11,11の凸部23と捨て型枠31の重ね合わせ代と調整し、捨て型枠31上にコンクリートを打設することにより、現場で床版11の下方に型枠を組むことなく、床版11,11の間隔を調整することができると共に、曲線道路に対応することが可能となる。
【0079】
このように本実施形態では、請求項2に対応して、凸部23の道路長さ方向端面の一方である一側端面22から一方のループ筋51を突設し、この一方のループ筋51に対応して道路長さ方向端面の他方である他側端面25から他方のループ筋61を突設したから、隣り合う床版11,11の一方と他方のループ筋51,61に補強筋71,71Aを挿通し、コンクリートを打設することにより、隣り合う床版11,11同士を一体化することができる。
【0080】
このように本実施形態では、請求項3に対応して、一方及び他方のループ筋51,61を道路幅方向に間隔を置いて複数配置すると共に、道路幅方向に隣り合う前記一方のループ筋51,51の間の位置に、前記他方のループ筋61を配置したから、一方と他方のループ筋51,61が干渉することなく、曲線道路に対応して隣り合う床版11,11を敷設することができる。
【0081】
このように本実施形態では、請求項4に対応して、捨て型枠31は、上面32Jを有する本体部32と、道路長さ方向端面たる他側端面25に取り付ける取付部33と、本体部32と取付部33に固定したリブ部35とを備えるから、軽量で、コンクリートが硬化するまでに必要な強度を備えた捨て型枠31が得られる。
【0082】
このように本実施形態では、請求項5に対応して、山側傾斜面3と谷側傾斜面2の間の道路1にプレキャストコンクリート製の床版11を設け、この床版11の谷側端部11Tを谷側に張り出して拡幅する道路拡幅構造において、床版11の道路長さ方向端面たる一側端面22に長さ調整用の凸部23を設け、床版11と道路長さ方向に隣り合う床版11の長さ方向端面たる他側端面25に、凸部23の下面23Kに対応する上面32Jを有する捨て型枠31を設け、この捨て型枠31上にコンクリートを打設して形成された打設コンクリート部76を備えるから、隣り合う床版11,11の凸部23と捨て型枠31の重ね合わせ代を調整し、捨て型枠31上にコンクリートを打設することにより、現場で床版11の下方に型枠を組むことなく、床版11,11の間隔を調整することができると共に、曲線道路に対応可能となる。
【0083】
このように本実施形態では、請求項6に対応して、凸部23の道路長さ方向端面たる一側端面22から一方のループ筋51を突設し、この一方のループ筋51に対応して隣り合う床版11の道路長さ方向端面たる他側端面25から他方のループ筋61を突設し、それら一方及び他方のループ筋51,61に道路幅方向の補強筋71,71Aを挿通し、一方及び他方のループ筋51,61並びに補強筋71,71Aを打設コンクリート部76に埋設したから、隣り合う床版11,11が一体化される。
【0084】
このように本実施形態では、請求項7に対応して、凸部23と捨て型枠31の重なり代を調整して隣り合う床版11,11の間隔が山側と谷側で異なるように床版11,11を敷設したから、曲線道路に対応することができる。
【0085】
以下、実施例上の効果として、曲線道路において、ループ継手50は、山側と谷側の一方に最大間隔接続構造68を有すると共に、他側に最小間隔接続構造69を有し、ループ筋51の先端の屈曲部54内に挿通する補強筋71とループ筋61の先端の屈曲部64内に挿通する補強筋71Aとを、道路幅方向の略全長に設け、最大間隔接続構造68は、重複部55の外側でループ筋51,61内に、上下一対の内側補強筋72,72Sと上下一対の外側補強筋73,73Sの少なくとも一方を有し、最小間隔接続構造69は、重複部55内に、上下一対の内側補強筋81,81Sを少なくとも一方を有するから、配筋が連続した接続構造が得られ、曲線道路に対応できる。
【0086】
また、谷側基礎5の中心位置5CのPC鋼材42の高さ位置が最上部に来るように配置し、PC鋼材42に緊張力を付与したから、床版11に加わる引張力に効果的に対抗することができる。また、床版11の道路幅方向両端の凹所43の底面44の位置に比べて山側基礎4の位置で下のPC鋼材42を上のPC鋼材42に近付けたから、上下2段のPC鋼材42により床版11の断面上部に効果的に緊張力を付与することができる。
【0087】
床版本体21において、PC鋼材42を道路幅方向両端より中央側の谷側基礎5の中心位置5Cで高くなるように配置したから、使用時に引張力を受ける箇所に効果的に緊張力を付与することができる。また、上下の定着板45の挿通孔45T,45Tの間隔Hに比べて道路幅方向の中央における上下のシース41,41の間隔hを小さくしたから、下側のPC鋼材42を床版本体21の断面上部に近付けて緊張力を付与することができる。
【0088】
また、底面44における水平に対する下のシース41の角度θ1,θ1´に対応して、底面44に傾斜面部44K,44K´を形成し、下のシース41,41が傾斜面部44K,44K´に対して直交するように配置したから、PC鋼材42の端部を定着する定着具の力を傾斜面部44K,44K´に直交して均一に加えることができる。
【0089】
凸部23には、ループ筋51の上下の横鉄筋部52,53に添う道路幅方向の幅方向鉄筋67Aが複数埋設されているから、凸部23の強度を確保できる。また、前記床版本体21には道路幅方向に間隔を置いて複数のスターラップ筋66が埋設され、床版本体21内において、スターラップ筋66は、ループ筋51の上横鉄筋部52,縦鉄筋部53A及び下横鉄筋部53Bに重ね合わせて設けられるから、スターラップ筋66とループ筋51を一体化して強度を確保できる。
【0090】
また、前記凸部23の端面を粗面仕上げた粗面部23Sを形成し、前記凸部23の高さに対応して前記他側端面25の上部を粗面仕上げした粗面部25Sを形成したから、打設コンクリート部76との密着性を向上することができる。
【0091】
曲線道路において、山側と谷側の一方に最大間隔接続構造68を設けると共に、他方に最小間隔接続構造69を設け、道路幅方向の全長に補強筋71,71Aを設けたから、曲線道路に対応できる。
【0092】
また、曲線道路において、山側と谷側の一方の最大間隔接続構造68は、重複部55の外側でループ筋51,61内に複数(4本)の重複部外の補強筋72,72S,73,73Sを設け、重複部55内に補強筋71,71Aを設け、山側と谷側の他方の最小間隔接続構造69は、ループ筋51,61の重複部55内に、補強筋71,71Aと複数(4本)の重複部内の補強筋81,81S,81,81Sを設けたから、山側と谷側の一方の最大間隔接続構造68と他方の最小間隔接続構造69を組み合わせ、重複部55の屈曲部54,64の間隔と重複部55内と重複部55外の補強筋の数と間隔を調整して曲線道路に対応することができる。
【0093】
また、曲線道路において、ループ継手50は、道路幅方向の略全長に補強筋71,71Aと配置し、道路幅方向端部で間隔が広い側は、上下一対、この例では二対の重複部55外の補強筋72,72S,73,73Sを設け、道路幅方向端部で間隔が狭い側は、上下一対、この例では二対の重複部55内の補強筋81,81S,81,81Sを設け、山側端72Yと谷側端81Tの間で、且つ補強筋72,72S及び補強筋81,81Sと一部重複するように、補強筋82,82Sを設けたから、補強筋72,72S,82,82S,81,81Sが連続すると共に、他より補強筋が大幅に少なくなる箇所がなく、所定の強度を有する接続構造を形成することができる。
【0094】
尚、本発明は上記各実施例に限定されるものではなく、本発明の容易の範囲内において、種々の変形実施が可能である。例えば、曲線道路の曲率が小さい場合は、道路幅方向全長を最大間隔接続構造にしたり、最小間隔接続構造にしたりすることができる。また、最小間隔接続構造を直線道路の標準接続構造としてもよい。さらに、実施例では、道路長さ方向端面の一方に長さ調整用の凸部を設け、道路長さ方向端面の他方に捨て型枠を設けた床版を示したが、請求項5~7においては、道路長さ方向端面の一方及び他方に長さ調整用の凸部を設けた床版と、道路長さ方向端面の一方と他方に捨て型枠を設けた床版とを接続するようにしてもよい。