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  • 特開-紙送りロール 図1
  • 特開-紙送りロール 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023110422
(43)【公開日】2023-08-09
(54)【発明の名称】紙送りロール
(51)【国際特許分類】
   B65H 3/06 20060101AFI20230802BHJP
   B65H 5/06 20060101ALI20230802BHJP
   F16C 13/00 20060101ALI20230802BHJP
【FI】
B65H3/06 330A
B65H5/06 A
F16C13/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022011856
(22)【出願日】2022-01-28
(71)【出願人】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154483
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 和寛
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 大輝
(72)【発明者】
【氏名】加藤 郁
(72)【発明者】
【氏名】今村 渉
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 里志
(72)【発明者】
【氏名】作田 学
【テーマコード(参考)】
3F049
3F343
3J103
【Fターム(参考)】
3F049AA03
3F049CA02
3F049CA04
3F049LA02
3F049LA05
3F049LA07
3F049LB03
3F343FA02
3F343FB02
3F343FB03
3F343FC01
3F343FC22
3F343JA02
3F343JA11
3F343KB04
3F343LA02
3J103AA02
3J103AA13
3J103AA23
3J103AA64
3J103AA72
3J103AA85
3J103FA30
3J103GA02
3J103GA33
3J103HA03
3J103HA05
3J103HA12
3J103HA31
3J103HA32
3J103HA33
3J103HA37
3J103HA41
3J103HA53
(57)【要約】
【課題】ロールの寿命の判断が容易となる紙送りロールを提供する。
【解決手段】軸体12と、軸体12の外周面上に形成された弾性体層14と、を備え、弾性体層14の外径が、10mm以上50mm以下であり、弾性体層14の外周面には、軸方向に延びる溝16が周方向に1以上8以下の数で形成されており、溝16は、深さ方向に沿って一定の溝幅Wを有する溝であり、または、深さ方向に沿って漸次小さくなる溝幅Wを有する溝であり、溝16の溝幅Wが、0.2mm以上1.0mm以下であり、溝16の溝深さDが、0.2mm以上1.0mm以下である、紙送りロール10とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸体と、前記軸体の外周面上に形成された弾性体層と、を備え、
前記弾性体層の外径が、10mm以上50mm以下であり、
前記弾性体層の外周面には、軸方向に延びる溝が周方向に1以上8以下の数で形成されており、
前記溝は、深さ方向に沿って一定の溝幅を有する溝であり、または、深さ方向に沿って漸次小さくなる溝幅を有する溝であり、
前記溝の溝幅が、0.2mm以上1.0mm以下であり、
前記溝の溝深さが、0.2mm以上1.0mm以下である、紙送りロール。
【請求項2】
前記溝は、深さ方向に沿って漸次小さくなる溝幅を有する溝である、請求項1に記載の紙送りロール。
【請求項3】
前記周方向における溝の数は、2以上6以下である、請求項1または請求項2に記載の紙送りロール。
【請求項4】
前記溝の底面の平均面からの高さの最大値で表される面粗さSpが、20μm以上150μm以下である、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の紙送りロール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式を採用する複写機、プリンター、ファクシミリなどの電子写真機器において好適に用いられる紙送りロールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
紙送りロールは、ゴムなどの弾性材料によってロール状に形成されている。この紙送りロールの外周面と用紙との間に生じる摩擦力によって、用紙は搬送されている。紙送りロールにより多くの用紙が搬送されると、用紙の搬送不良が発生しやすくなる。用紙の搬送不良が多くなると、ユーザーはサービスマンに連絡する。そして、サービスマンにより、紙送りロールの寿命(交換時期)が判断されている。ユーザーが紙送りロールの寿命(交換時期)を判断することは難しいという実情がある。
【0003】
このような実情に対し、例えば特許文献1では、ロール表面に凹溝を設け、ロール表面の摩耗により凹溝が消えたときをロールの寿命の目安とする紙送りロールが提案されている。これによれば、ユーザーは、ロール表面の凹溝が消えたときにロール交換の判断をすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平07-172614号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ロールの寿命(交換時期)は、ロール表面の摩耗量だけで判断することはできない。例えば、用紙から発生する紙粉などがロール表面に堆積することでロール表面の摩擦係数が低下すると、ロール表面の摩耗が少なくても用紙の搬送不良が生じる場合があるからである。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、ロールの寿命の判断が容易となる紙送りロールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らが鋭意検討した結果、ロールの摩耗量とロールの寿命は必ずしも関係するものではないこと、ロールの摩耗量よりもロール表面への紙粉の付着量のほうがロールの寿命との関係を見出しやすいこと、そして、ロール表面に特定の形状の溝を設け、特定の形状の溝とその溝に堆積する紙粉の量との関係からロールの寿命を判断することができることを突き止め、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明に係る紙送りロールは、軸体と、前記軸体の外周面上に形成された弾性体層と、を備え、前記弾性体層の外径が、10mm以上50mm以下であり、前記弾性体層の外周面には、軸方向に延びる溝が周方向に1以上8以下の数で形成されており、前記溝は、深さ方向に沿って一定の溝幅を有する溝であり、または、深さ方向に沿って漸次小さくなる溝幅を有する溝であり、前記溝の溝幅が、0.2mm以上1.0mm以下であり、前記溝の溝深さが、0.2mm以上1.0mm以下であることを要旨とするものである。
【0009】
前記溝は、深さ方向に沿って漸次小さくなる溝幅を有する溝であると特によい。前記周方向における溝の数は、2以上6以下であるとよい。前記溝の底面の平均面からの高さの最大値で表される面粗さSpが、20μm以上150μm以下であるとよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る紙送りロールによれば、軸体と、前記軸体の外周面上に形成された弾性体層と、を備え、前記弾性体層の外径が、10mm以上50mm以下であり、前記弾性体層の外周面には、軸方向に延びる溝が周方向に1以上8以下の数で形成されており、前記溝は、深さ方向に沿って一定の溝幅を有する溝であり、または、深さ方向に沿って漸次小さくなる溝幅を有する溝であり、前記溝の溝幅が、0.2mm以上1.0mm以下であり、前記溝の溝深さが、0.2mm以上1.0mm以下であり、前記溝に堆積する紙粉の量との関係からロールの寿命を判断することができるため、ロールの寿命の判断が容易である。
【0011】
前記溝が、深さ方向に沿って漸次小さくなる溝幅を有する溝であると、紙粉が溜まりやすい形状であり、また、目視により紙粉が溜まっていることが分かりやすい形状であるため、溝に堆積する紙粉の量との関係からロールの寿命を特に判断しやすくなる。
【0012】
そして、前記周方向における溝の数が2以上6以下であると、溝に堆積する紙粉の量との関係からロールの寿命を特に判断しやすくなる。
【0013】
そして、前記溝の底面の平均面からの高さの最大値で表される面粗さSpが20μm以上150μm以下であると、溝に紙粉を留める効果に優れ、紙粉が溝内からロール表面の他の部位に移動しにくくなる。そうすると、紙粉によるロール表面の摩擦係数の低下が抑えられるため、溝に紙粉が溜まることでロールの寿命の判断をする判断の正確性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る紙送りロールの外観模式図(a)と、そのA-A線断面図(b)である。
図2】紙送りロールの弾性体層の外周面側の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る紙送りロールについて詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る紙送りロールの外観模式図(a)と、そのA-A線断面図(b)である。図2は、紙送りロールの弾性体層の外周面側の拡大断面図である。
【0016】
本発明の一実施形態に係る紙送りロール10は、軸体12と、軸体12の外周面上に形成された弾性体層14と、を備える。弾性体層14は、紙送りロール10のベースとなる層(基層)である。弾性体層14は紙送りロール10の表面に現れる層となっている。
【0017】
軸体12は、金属製または樹脂製の中実体、中空体(円筒体)のものなどが挙げられる。金属材料としては、鉄、ステンレス、アルミニウムなどが挙げられる。弾性体層14は、接着剤層(プライマー層)を介して軸体12に接着されていてもよい。接着剤、プライマーなどには、必要に応じて導電化を行っても良い。
【0018】
弾性体層14は、弾性材料によって軸体12の外周面上にロール状に形成されている。弾性体層14の外周面には、軸方向に延びる溝16が周方向に1以上8以下の数で形成されている。溝16は、特定の形状を有しており、溝16に堆積する紙粉の量との関係からロールの寿命を判断することができるようになっている。溝16は、弾性体層14の外周面において、軸方向の端から端まで連続して形成されていてもよいし、軸方向の一部に形成されていてもよい。なお、ここでいう紙粉とは、用紙から排出されるゴミや屑、繊維などであり、用紙に配合される炭酸カルシウム、カオリンなども含まれる。紙粉は、特に海外産の用紙において出やすいことがある。炭酸カルシウム、カオリンは、不定形で粒子径は1~3μm程度である。
【0019】
図2には、溝16の形状の一例を示している。図2は、弾性体層14の径方向断面のうち外周面の一部を示したものである。図2(a)の溝16は、断面形状がコ字状であり、深さ方向に沿って一定の溝幅Wを有する溝である。図2(b)の溝16は、断面形状がコ字状であり、深さ方向に沿って一定の溝幅Wを有する溝である。図2(b)の溝16は、溝16の底の角が丸められている。図2(c)の溝16は、断面形状がV字状であり、深さ方向に沿って漸次小さくなる溝幅Wを有する溝である。溝16の底面は平面となっている。図2(c)の溝16においては、図2(b)の溝16のように、溝16の底の角が丸められていてもよい。
【0020】
図2に示すように、弾性体層14の外周面に形成されている溝16は、深さ方向に沿って一定の溝幅Wを有する溝である、または、深さ方向に沿って漸次小さくなる溝幅Wを有する溝であるため、紙粉が溜まりやすく、また、目視により紙粉が溜まっていることが分かりやすい。このため、溝16に堆積する紙粉の量との関係からロールの寿命を判断しやすくなる。特に、弾性体層14の外周面に形成されている溝16が、深さ方向に沿って漸次小さくなる溝幅を有する溝であると、紙粉の溜まりやすさや目視のしやすさから、溝16に堆積する紙粉の量との関係からロールの寿命を特に判断しやすくなる。
【0021】
溝16の溝幅Wは、0.2mm以上1.0mm以下であり、溝16の溝深さDは、0.2mm以上1.0mm以下である。溝幅W、溝深さDのいずれか一方でも0.2mm未満であると、紙粉を溜める溝16の容量が小さすぎて、用紙の搬送不良が生じる前に紙粉が溝いっぱいに溜まり、溝16に堆積する紙粉の量との関係からロールの寿命を判断することができない。また、溝幅W、溝深Dさのいずれか一方でも1.0mm超であると、紙粉を溜める溝16の容量が大きすぎて、用紙の搬送不良が多く生じるときにも溝16に紙粉が十分に堆積しているか目視で判別がつきにくく、溝16に堆積する紙粉の量との関係からロールの寿命を判断することができない。溝幅W、溝深さDのいずれも、0.2mm以上1.0mm以下であることで、溝16に堆積する紙粉の量との関係からロールの寿命を判断することができる。
【0022】
溝16の溝幅Wは、より好ましくは0.3mm以上、さらに好ましくは0.4mm以上である。また、より好ましくは0.9mm以下、さらに好ましくは0.8mm以下である。溝16の溝深さDは、より好ましくは0.3mm以上、さらに好ましくは0.4mm以上である。また、より好ましくは0.9mm以下、さらに好ましくは0.8mm以下である。
【0023】
溝16は、周方向に1以上8以下の数で形成されている。溝16の数が8超であると、溝16が用紙の搬送性に与える影響が大きく、搬送性が悪化する。特に、弾性体層14の外径φが小さいと、ロールの回転時にロールが跳ねてばたつく(バンディングする)ことがあり、用紙を搬送することができなくなる。そして、溝16に堆積する紙粉の量との関係からロールの寿命を特に判断しやすくなるなどの観点から、溝16の数は、周方向に2以上6以下であるとよい。周方向に複数の溝16が形成される場合には、溝16は等間隔で周方向の均等な位置に形成されるとよい。
【0024】
溝16の底面は、径方向の外側に凸となる突起が形成されていたり、径方向の内側に凹となる微小な凹部が形成されていたりすることで、適度な粗さを有しているとよい。これにより、溝16に紙粉を留める効果に優れ、紙粉が溝16内からロール表面の他の部位に移動しにくくなる。そうすると、紙粉によるロール表面の摩擦係数の低下が抑えられるため、溝16に紙粉が溜まることでロールの寿命の判断をする判断の正確性が向上する。溝16の底面の粗さは、溝16の底面の平均面からの高さの最大値で表される面粗さSpで表すことができる。溝16の底面の面粗さSpは、20μm以上150μm以下であるとよい。溝16の底面の面粗さSpは、より好ましくは30μm以上、さらに好ましくは50μm以上である。また、溝16の底面の面粗さSpは、より好ましくは120μm以下、さらに好ましくは100μm以下である。
【0025】
弾性体層14の外径φは、10mm以上50mm以下である。弾性体層14の外径が10mm未満であると、用紙とのニップが小さく、紙粉の発生量が少ないため、溝16に入ってくる紙粉の量が少なくなり、用紙の搬送不良が多く生じるときにも溝16に紙粉が十分に堆積しているか目視で判別がつきにくく、溝16に堆積する紙粉の量との関係からロールの寿命を判断することができない。また、弾性体層14の外径が50mm超であると、用紙とのニップが大きく、紙粉の発生量が多いため、溝16に入ってくる紙粉の量が多くなり、用紙の搬送不良が生じる前に紙粉が溝いっぱいに溜まり、溝16に堆積する紙粉の量との関係からロールの寿命を判断することができない。弾性体層14の外径は、より好ましくは15mm以上、さらに好ましくは20mm以上である。また、弾性体層14の外径は、より好ましくは45mm以下、さらに好ましくは40mm以下である。
【0026】
弾性体層14は、用紙とのニップなどの観点から、JIS-A硬度が25度以上85度以下であるとよい。より好ましくは30度以上80度以下である。
【0027】
弾性体層14は、ゴム、エラストマー、樹脂などの弾性材料で構成されている。ゴム状の弾性材料であればその材料は特に限定されるものではない。例えば、ウレタンゴム、ヒドリンゴム、シリコーンゴム、EPDMなどの公知の材料を用いることができる。
【0028】
弾性体層14には、必要に応じて、各種添加剤を適宜添加しても良い。添加剤としては、滑剤、加硫促進剤、老化防止剤、光安定剤、粘度調整剤、加工助剤、難燃剤、可塑剤、充填剤、分散剤、消泡剤、顔料、離型剤などを挙げることができる。
【0029】
弾性体層14の厚さは、特に限定されるものではなく、2~25mmの範囲内などで適宜設定すればよい。
【0030】
弾性体層14は、成形金型による成形などによって形成することができる。例えば、芯材をロール成形金型の中空部に同軸的に設置し、未架橋のゴム組成物を注入して、加熱・硬化(架橋)させた後、脱型するなどにより、チューブ状の弾性体層14を形成することができる。成形金型は、その内周面に溝16に対応する形状の凸部が形成されたものを用いることができる。弾性体層14の溝16は、例えば、成形金型による型転写によって形成することができる。 成形金型の内周面の凹凸は、放電加工、エッチング、ショットブラスト、研磨などの各種凹凸形成方法によって形成することができる。紙送りロール10は、筒状に形成された弾性体層14に軸体12を挿入して形成することができる。
【0031】
以上の構成の紙送りロール10によれば、弾性体層14の外周面に形成された溝16が、軸方向に延びる溝であり、深さ方向に沿って一定の溝幅Wを有する溝であり、または、深さ方向に沿って漸次小さくなる溝幅Wを有する溝であることから、紙粉が溜まりやすく、また、目視により紙粉が溜まっていることが分かりやすいものとなっている。そして、その溝16の溝幅Wが0.2mm以上1.0mm以下であり、溝16の溝深さDが0.2mm以上1.0mm以下であるため、紙粉を溜める溝16の容量が適切で、溝16に堆積する紙粉の量との関係からロールの寿命を判断することができるようになる。そして、その溝16が弾性体層14の外周面の周方向に1以上8以下の数で形成されているため、溝16が用紙の搬送性に与える影響は小さく、搬送性が悪化することもない。そして、弾性体層14の外径が10mm以上50mm以下であることで、用紙とのニップも適切となり、溝16に入ってくる紙粉の量も適切となるため、溝16に堆積する紙粉の量との関係からロールの寿命を判断することができるようになる。以上により、溝16に堆積する紙粉の量との関係からロールの寿命を判断することができるため、ロールの寿命の判断が容易である。
【0032】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。
【実施例0033】
以下、実施例および比較例を用いて本発明を詳細に説明する。
【0034】
軸方向に沿って延びる突条を内周面に有する筒状成形金型を用い、芯材(φ6、SUS304製)の外周にウレタンゴム組成物の弾性体層を形成した。これにより、弾性体層の外周面に所定の溝を有する紙送りロールを得た。溝の形状は、図2(d)に示すように、深さ方向に沿って漸次小さくなる溝幅を有する形状である。表において、φは弾性体層の外径であり、nは溝の数であり、幅Wは溝幅であり、Dは溝深さである。作製した紙送りロールの弾性体層の径方向断面を観察することで、溝幅W、溝深さDを計測した。
【0035】
作製した紙送りロールを用い、紙送り不良が発生するまで印刷を繰り返し行い、紙送り不良が発生したところで紙送りロールの弾性体層の径方向断面を観察し、溝に溜まっている紙粉の量を計測した。表において、10~90の数字は、溝の体積に占める紙粉の量(充填率)である。紙送り不良が発生する前に充填率が100%を超えたものは「-」の評価とした。また、紙送り不良が発生したところでの充填率が、50%以上100%以下の場合を良好「〇」、20%超50%未満の場合を不良「△」、20%以下の場合を不良「×」とした。実験結果を以下の表1~表8に示す。
【0036】
【表1】
【0037】
【表2】
【0038】
【表3】
【0039】
【表4】
【0040】
【表5】
【0041】
【表6】
【0042】
【表7】
【0043】
【表8】
【0044】
表2、表3、表6、表7から、n=1~8、φ10mm以上φ50mm以下の範囲内において、溝幅W0.2mm以上1.0mm以下、溝深さD0.2mm以上1.0mm以下の場合に、紙送りの不良発生時における紙粉の溝への充填率が50%以上100%以下となり、紙送りの不良発生時に目視にて紙粉が溜まっていることがはっきりと確認できるものとなっており、溝に堆積する紙粉の量との関係からロールの寿命を判断することができることがわかる。
【0045】
表1に示すように、φ5mmであると、用紙とのニップが小さいため、溝幅Wや溝深さDをいろいろ変えても、溝に入ってくる紙粉の量が少なく、紙送りの不良発生時における紙粉の溝への充填率が50%未満で少なく、溝に紙粉が十分に堆積しているか目視で判別がつきにくい。このため、溝に堆積する紙粉の量との関係からロールの寿命を判断することができなかった。また、表4に示すように、φ60mmであると、用紙とのニップが大きいため、溝幅Wや溝深さDをいろいろ変えても、溝に入ってくる紙粉の量が多くなり、用紙の搬送不良が生じる前に紙粉が溝いっぱいに溜まり、溝に堆積する紙粉の量との関係からロールの寿命を判断することができなかった。
【0046】
表5から、n=9、φ5mmのときには、紙送り時にロールが跳ねてばたつく現象が見られ、紙送りができない(NG)ものであった。また、表8から、n=9、φ60mmのときには、用紙とのニップが大きいため、溝幅Wや溝深さDをいろいろ変えても、溝に入ってくる紙粉の量が多くなり、用紙の搬送不良が生じる前に紙粉が溝いっぱいに溜まり、溝に堆積する紙粉の量との関係からロールの寿命を判断することができなかった。
【0047】
また、表2、表3、表6、表7から、n=1~8、φ10mm以上φ50mm以下であっても、溝幅W0.2mm以上1.0mm以下、溝深さD0.2mm以上1.0mm以下から外れている場合には、紙送り不良が発生する前に充填率が100%を超えるか、紙送りの不良発生時における紙粉の溝への充填率が50%未満となり、溝に堆積する紙粉の量との関係からロールの寿命を判断することができないことがわかる。
【0048】
なお、上記実施例は、図2(d)に示す溝形状で実施したものを示しているが、図2(a)、(b)に示す溝形状のものについても同様の結果が得られている。
【0049】
以上、本発明の実施形態・実施例について説明したが、本発明は上記実施形態・実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。
【符号の説明】
【0050】
10 紙送りロール
12 軸体
14 弾性体層
16 溝
W 溝幅
D 溝深さ
図1
図2