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特開2023-110433溝形鋼、溝形鋼の接合構造、フレーム部材、パネル部材、溝形鋼の製造方法、及び、溝形鋼の接合構造の製造方法
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  • 特開-溝形鋼、溝形鋼の接合構造、フレーム部材、パネル部材、溝形鋼の製造方法、及び、溝形鋼の接合構造の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023110433
(43)【公開日】2023-08-09
(54)【発明の名称】溝形鋼、溝形鋼の接合構造、フレーム部材、パネル部材、溝形鋼の製造方法、及び、溝形鋼の接合構造の製造方法
(51)【国際特許分類】
   E04C 3/07 20060101AFI20230802BHJP
   E04B 1/58 20060101ALI20230802BHJP
   E04C 2/38 20060101ALI20230802BHJP
   B21D 5/01 20060101ALI20230802BHJP
   B21D 19/08 20060101ALN20230802BHJP
【FI】
E04C3/07
E04B1/58 504F
E04C2/38 A
B21D5/01 E
B21D19/08 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022011875
(22)【出願日】2022-01-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 圭一
(72)【発明者】
【氏名】久積 綾那
(72)【発明者】
【氏名】藤橋 一紀
(72)【発明者】
【氏名】松本 英明
(72)【発明者】
【氏名】小西 健夫
(72)【発明者】
【氏名】西野 浩一
【テーマコード(参考)】
2E125
2E162
2E163
4E063
【Fターム(参考)】
2E125AB05
2E125CA02
2E125CA05
2E125CA95
2E162BA02
2E162BB03
2E163FB04
4E063AA01
4E063BB05
4E063BC02
4E063CA05
4E063MA09
(57)【要約】
【課題】接合作業の負担を抑制しつつ、断面寸法の小型化と曲げ抵抗の確保との両立を図ることができる、溝形鋼、溝形鋼の接合構造、フレーム部材、パネル部材、溝形鋼の製造方法、及び、溝形鋼の接合構造の製造方法を提供する。
【解決手段】溝形鋼10は、一枚の鋼板から形成され、ウェブ12と一対のフランジ14を有する長尺状の溝形鋼であって、少なくとも一方のフランジ14は、ウェブ12に連続する帯状の基部14Aと、基部14Aのウェブ12と反対側の端部に位置する折り返し部14Bと、フランジ14の長手方向Lの端部を除いた部分における基部14Aの外面側に配置され、折り返し部14Bからウェブ12に向かって基部14Aと並んで延びる帯状の外層部14Cと、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一枚の鋼板から形成され、ウェブと一対のフランジを有する長尺状の溝形鋼であって、少なくとも一方のフランジは、
前記ウェブに連続する帯状の基部と、
前記基部のウェブと反対側の端部に位置する折り返し部と、
前記フランジの長手方向の端部を除いた部分における前記基部の外面側に配置され、前記折り返し部から前記ウェブに向かって前記基部と並んで延びる帯状の外層部と、
を備える溝形鋼。
【請求項2】
前記外層部の幅は、フランジ幅の50%以上、100%以下である、
請求項1に記載の溝形鋼。
【請求項3】
一枚の鋼板から形成され、ウェブと一対のフランジを有する長尺状の第1溝形鋼と、前記一枚の鋼板とは別の一枚の鋼板から形成され、ウェブと一対のフランジを有する長尺状の第2溝形鋼とが、それぞれの長手方向が直交した状態で接合された接合構造であって、
前記第1溝形鋼の一対のフランジは、
前記ウェブに連続する帯状の基部と、
前記基部のウェブと反対側の端部に位置する折り返し部と、
前記フランジの長手方向の端部を除いた部分における前記基部の外面側に配置され、前記折り返し部から前記ウェブに向かって前記基部と並んで延びる帯状の外層部と、を備え、
前記第2溝形鋼の一対のフランジは、前記第1溝形鋼の一対のフランジの長手方向の端部におけるそれぞれの前記基部の外面上に接合される、
溝形鋼の接合構造。
【請求項4】
前記第1溝形鋼のフランジの前記基部の厚みと、前記第2溝形鋼のフランジの厚みとは、同じである、
請求項3に記載の溝形鋼の接合構造。
【請求項5】
前記第1溝形鋼のフランジの前記基部と、前記第2溝形鋼のフランジとの接合方式は、乾式接合である、
請求項3又は4に記載の溝形鋼の接合構造。
【請求項6】
前記乾式接合が施される接合位置の個数は、1つの前記フランジの前記基部について、2つ以上である、
請求項5に記載の溝形鋼の接合構造。
【請求項7】
前記一枚の鋼板及び前記別の一枚の鋼板のうち少なくとも一方は、めっき鋼板である、
請求項3~6のいずれか一項に記載の溝形鋼の接合構造。
【請求項8】
一枚の鋼板から形成され、ウェブと一対のフランジを有する長尺状の第1溝形鋼を含む縦材であって、互いに間を空けて平行に配置された一組の縦材と、
前記一枚の鋼板とは別の一枚の鋼板から形成され、ウェブと一対のフランジを有する長尺状の第2溝形鋼を含む横材であって、前記一組の縦材の一端と他端とのそれぞれの位置で、長手方向が前記縦材の長手方向と直交した状態で接合された一組の横材と、を有し、
前記縦材と前記横材との接合部の少なくとも1つに、請求項3~7のいずれか一項に記載の溝形鋼の接合構造が形成された、
フレーム部材。
【請求項9】
請求項8に記載のフレーム部材と、
前記フレーム部材に設けられた面材と、
を備えるパネル部材。
【請求項10】
ウェブと一対のフランジを有する長尺状の溝形鋼の製造方法であって、
前記ウェブを形成するウェブ予定領域と前記一対のフランジを形成するフランジ予定領域とを有する一枚の鋼板において、少なくとも一方の前記フランジ予定領域を、前記ウェブ予定領域に連続する帯状の基部予定領域と、前記基部予定領域の前記ウェブ予定領域と反対側に位置する帯状の外層部予定領域と、に区分けした際、
前記鋼板における前記外層部予定領域の長手方向の端部を取り除く工程と、
前記外層部予定領域を前記ウェブ予定領域側に折り返すことによって、折り返された前記外層部予定領域を前記基部予定領域の上側に外層部として配置すると共に、上側に前記外層部が配置された前記基部予定領域を基部として形成する工程と、
前記基部を前記外層部と反対側に折り曲げることで前記ウェブ予定領域と直交させることによって、前記ウェブ予定領域を前記溝形鋼の前記ウェブとして形成すると共に、前記基部及び前記外層部を前記溝形鋼の前記フランジとして形成する工程と、
を含む、溝形鋼の製造方法。
【請求項11】
一枚の鋼板から形成され、ウェブと一対のフランジを有する長尺状の第1溝形鋼と、前記一枚の鋼板とは別の一枚の鋼板から形成され、ウェブと一対のフランジを有する長尺状の第2溝形鋼とが、それぞれの長手方向が直交した状態で接合された溝形鋼の接合構造の製造方法であって、
請求項10に記載の溝形鋼の製造方法を用いて製造した前記第1溝形鋼の一対のフランジの前記基部の外面上に、前記第2溝形鋼の一対のフランジをそれぞれ接合する、
溝形鋼の接合構造の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、溝形鋼、溝形鋼の接合構造、フレーム部材、パネル部材、溝形鋼の製造方法、及び、溝形鋼の接合構造の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建築材料として、鋼製のフレーム部材と、内外装面材と、断熱材等の機能材料とが一体化されたパネル部材が知られている。パネル部材は、例えば、屋根材や壁面材等の建築部材である。パネル部材に用いられる鋼製のフレーム部材としては、断面形状がC字状であって、ウェブと一対のフランジとを有する長尺状の溝形鋼が用いられる場合が多い。
【0003】
具体的には、フレーム部材は、例えば、垂直方向に延びる縦材としての複数の溝形鋼と、水平方向に延びる横材としての複数の溝形鋼とが、互いに交差した状態で、製造工場で溶接やビス止め等によって一体化されることで製造できる。また、例えば、一体化されたフレーム部材の溝形鋼のフランジの板面部分に、内外装面材のような部材や、機能材料等を接合することによって、パネル部材を構成できる。製造されたパネル部材は、建築物の施工現場に搬入され、施工現場で、建物の躯体に取り付けることができる。
【0004】
ここで、パネル部材又はフレーム部材の寸法は、比較的大きくなるため、取り付け作業が行われる施工現場での現場作業の負担の軽減が求められている。また、特に建築分野においては、熟練技能労働者の減少や高齢化が問題となりつつある。このため、パネル部材又はフレーム部材の取り扱いに関し、現場作業の負担をより軽減する目的で、フレーム部材を構成する溝形鋼の断面寸法の小型化が求められている。
【0005】
溝形鋼の断面寸法の小型化は、ウェブ高さ又はフランジ幅のうち少なくとも一方を短くすることで行うことができる。しかし、断面寸法が小さくなると、溝形鋼の曲げ抵抗が低下するという問題が生じる。すなわち、断面寸法の小型化と曲げ抵抗の確保との両立は、容易ではない。なお、本明細書では「曲げ抵抗」とは、曲げに対する剛性と強度とを含む、部材の性能を意味する。
【0006】
断面寸法の小型化と曲げ抵抗の確保に関し、例えば先行文献1には、フランジのウェブと反対側の端部に、ヘミング折り返し成形加工が施されることによって、フランジが2重以上に重ねられた軽溝形鋼が開示されている。先行文献1では、フランジの折り返された部分は、フランジのウェブに連続する部分の内面上に重ねられている。先行文献1の技術によれば、ウェブ部分を含まずフランジ部分の断面積のみを部分的に大きくすることが可能になるため、外径寸法が同じ軽溝形鋼に比べ、断面2次モーメント等の断面性能の大きい軽溝形鋼を得ることができるとされている。
【0007】
また、先行文献2には、構造用鋼材として、フランジのウェブと反対側の端部が、折り返しによって、フランジのウェブに連続する部分の外面上に重ねられることによって、フランジ部分の厚みがウェブより2倍に厚くされた溝形鋼が開示されている。重ねられたフランジのウェブに連続する部分と折り返された部分とは、溶接によって接合されている。
【0008】
先行文献2では、フランジの総板厚は、ウェブの板厚の(折り返し回数+1)倍になる。例えば、折り返しが1回である場合、フランジの総板厚は、ウェブの板厚の2倍になる。先行文献2の技術によれば、フランジの板が2重に重ねられることによって、ウェブより厚い厚みを有するフランジを、2種類の鋼板を必要とすることなく、1枚の鋼板によって製作できるので、柱又は梁等の構造用部材を、加工の工程数の増加を抑え、経済的に製作できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許5382798号公報
【特許文献2】特開平2-296952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、先行文献1では、軽溝形鋼のフランジ外面と、軽溝形鋼に直交配置される溝形鋼の中央部のフランジ外面とを揃えて接合するには、直交配置される溝形鋼の端部を、軽溝形鋼の2重のフランジの内側の層の厚みの分、中央部より窄ませる必要が生じる。このため、直交配置される部材の溝形鋼等の端部に対して、例えば絞り加工等の追加作業が別途生じる。
【0011】
また、例えば、ヘミング曲げによって軽溝形鋼のフランジが2重に重ねられる際、ヘミング曲げの精度が低いと、板厚が大きい場合や高強度鋼板等のスプリングバックの大きな鋼板が使われる場合、折り返されたフランジの境界部分に膨らみが生じる懸念がある。又は、折り返されたフランジの板部分の間に隙間が形成される懸念がある。このため、接合部において、軽溝形鋼と軽溝形鋼に直交配置される部材とのそれぞれのフランジ表面の間に段差が生じ、結果、フランジ表面が揃わない懸念がある。よって、ヘミング曲げ作業の後、例えば表面加工等の再調整作業が、別途必要になる。
【0012】
また、先行文献2の溝形鋼の場合、折り返し成形加工が、長手方向の全体に亘って施されるため、フランジの総板厚は、長手方向の全体に亘って大きくなる。このため、フランジの折り返し部に他の構造部材を接合する場合、大きくなった肉厚の分、接合部を挿入する際、大きな圧力を加える必要が生じる。結果、接合作業の負担が大きくなるという問題が生じてしまう。また、先行文献2では、柱又は梁といった、強度が比較的高い構造用部材を製造するため、重ねられたフランジのウェブに連続する部分と折り返された部分とを溶接する作業の負担も生じる。
【0013】
本開示は、上記の問題に鑑み、接合作業の負担を抑制しつつ、断面寸法の小型化と曲げ抵抗の確保との両立を図ることができる、溝形鋼、溝形鋼の接合構造、フレーム部材、パネル部材、溝形鋼の製造方法、及び、溝形鋼の接合構造の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本開示の第1の態様に係る溝形鋼は、一枚の鋼板から形成され、ウェブと一対のフランジを有する長尺状の溝形鋼であって、少なくとも一方のフランジは、前記ウェブに連続する帯状の基部と、前記基部のウェブと反対側の端部に位置する折り返し部と、前記フランジの長手方向の端部を除いた部分における前記基部の外面側に配置され、前記折り返し部から前記ウェブに向かって前記基部と並んで延びる帯状の外層部と、を備える。
【0015】
第1の態様に係る溝形鋼では、フランジの長手方向の端部では、基部の外面側に外層部が配置されていないことによって、基部の外面が露出する。フランジの長手方向の端部は、他の構造部材との接合部として機能する。例えば、別の溝形鋼を用意し、用意された別の溝形鋼のフランジを、端部において、基部の外面上に接合すれば、2つの溝形鋼が接合された接合構造を得ることができる。すなわち、接合構造において接合部が形成される端部の位置では、フランジの板厚が大きくされないため、例えばフランジの一部が折り重ねられることによって、接合部となる端部の位置の板厚が大きくされる場合と比べ、接合作業の負担を抑制できる。
【0016】
また、第1の態様では、フランジの長手方向の端部を除いた部分では、ウェブ側に向かって折り返された部分である外層部が、並んで延びた状態で、基部の外面側に配置される。このため、外層部を有する溝形鋼の端部を除いた部分の厚みは、外層部を有さない端部の厚みより厚い。例えば、溝形鋼が、厚みが略一様な一枚の鋼板から形成される場合、外層部を有する、端部を除いた部分では、フランジの厚みを、基部のみからなる端部におけるフランジの厚みの2倍に肥厚できる。
【0017】
すなわち、溝形鋼の端部を除いた部分では、曲げ抵抗の向上に有効な断面の外縁部であるフランジの位置に、材料である鋼材が、集中配置される。このため、断面寸法を小型化しても、単位重量あたりの曲げ抵抗を、外層部を有さない溝形鋼の場合より強化することができる。換言すると、断面寸法の小型化によって曲げ抵抗が低下しないように、端部を除いた部分の外層部によって曲げ抵抗を補強できる。
【0018】
よって、第1の態様に係る溝形鋼によれば、接合作業の負担を抑制しつつ、断面寸法の小型化と曲げ抵抗の確保との両立を図ることができる溝形鋼を提供できる。
【0019】
また、本開示の第2の態様に係る溝形鋼の接合構造は、一枚の鋼板から形成され、ウェブと一対のフランジを有する長尺状の第1溝形鋼と、前記一枚の鋼板とは別の一枚の鋼板から形成され、ウェブと一対のフランジを有する長尺状の第2溝形鋼とが、それぞれの長手方向が直交した状態で接合された接合構造であって、前記第1溝形鋼の一対のフランジは、前記ウェブに連続する帯状の基部と、前記基部のウェブと反対側の端部に位置する折り返し部と、前記フランジの長手方向の端部を除いた部分における前記基部の外面側に配置され、前記折り返し部から前記ウェブに向かって前記基部と並んで延びる帯状の外層部と、を備え、前記第2溝形鋼の一対のフランジは、前記第1溝形鋼の一対のフランジの長手方向の端部におけるそれぞれの前記基部の外面上に接合される。
【0020】
第2の態様に係る溝形鋼の接合構造では、第1の態様の溝形鋼と同様に構成された第1溝形鋼が第2溝形鋼と接合されるので、接合作業の負担を抑制しつつ、断面寸法の小型化と曲げ抵抗の確保との両立を図ることができる接合構造を提供できる。
【0021】
本開示の第3の態様に係るフレーム部材は、一枚の鋼板から形成され、ウェブと一対のフランジを有する長尺状の第1溝形鋼を含む縦材であって、互いに間を空けて平行に配置された一組の縦材と、前記一枚の鋼板とは別の一枚の鋼板から形成され、ウェブと一対のフランジを有する長尺状の第2溝形鋼を含む横材であって、前記一組の縦材の一端と他端とのそれぞれの位置で、長手方向が前記縦材の長手方向と直交した状態で接合された一組の横材と、を有し、前記縦材と前記横材との接合部の少なくとも1つに、第2の態様に係る溝形鋼の接合構造が形成される。
【0022】
第3の態様に係るフレーム部材は、第1の態様の場合と同様に、接合作業の負担を抑制しつつ、断面寸法の小型化と曲げ抵抗の確保との両立を図ることができる第1溝形鋼が、第2溝形鋼と接合された接合構造を含む。このため、第3の態様では、フレーム部材自体の断面寸法の小型化と、曲げ抵抗の確保との両立を図ることができる。
【0023】
本開示の第4の態様に係るパネル部材は、第3の態様に係るフレーム部材と、前記フレーム部材に設けられた面材と、を備える。
【0024】
第4の態様に係るパネル部材は、第1の態様の場合と同様に、接合作業の負担を抑制しつつ、断面寸法の小型化と曲げ抵抗の確保との両立を図ることができる第1溝形鋼が、第2溝形鋼と接合されたフレーム部材を含む。このため、第4の態様では、パネル部材自体の断面寸法の小型化と、曲げ抵抗の確保との両立を図ることができる。また、フレーム部材が小型化又は軽量化される分、フレーム部材以外の部材をパネル部材に追加し易い。よって、面材の機能を多様化できる。また、パネル部材の運搬効率の向上、すなわち物流の良好化を図ることができると共に、パネル部材の現場施工性を向上できる。
【0025】
本開示の第5の態様に係る溝形鋼の製造方法は、ウェブと一対のフランジを有する長尺状の溝形鋼の製造方法であって、前記ウェブを形成するウェブ予定領域と前記一対のフランジを形成するフランジ予定領域とを有する一枚の鋼板において、少なくとも一方の前記フランジ予定領域を、前記ウェブ予定領域に連続する帯状の基部予定領域と、前記基部予定領域の前記ウェブ予定領域と反対側に位置する帯状の外層部予定領域と、に区分けした際、前記鋼板における前記外層部予定領域の長手方向の端部を取り除く工程と、前記外層部予定領域を前記ウェブ予定領域側に折り返すことによって、折り返された前記外層部予定領域を前記基部予定領域の上側に外層部として配置すると共に、上側に前記外層部が配置された前記基部予定領域を基部として形成する工程と、前記基部を前記外層部と反対側に折り曲げることで前記ウェブ予定領域と直交させることによって、前記ウェブ予定領域を前記溝形鋼の前記ウェブとして形成すると共に、前記基部及び前記外層部を前記溝形鋼の前記フランジとして形成する工程と、を含む。
【0026】
第5の態様に係る溝形鋼の製造方法では、第1の態様の場合と同様に、接合作業の負担を抑制しつつ、断面寸法の小型化と曲げ抵抗の確保との両立を図ることができる溝形鋼を製造できる。
【0027】
また、第5の態様では、面外方向の外力によって生じる曲げモーメントが溝形鋼で受け止められる際、基部と外層部とが全体に亘って密着する。密着によって、曲げモーメントが生じる区間、すなわちフランジ中で材軸方向に沿って圧縮応力と引張応力とが分布する領域全体では、基部と外層部とが、面外方向に相互拘束しつつ、曲げモーメントに抵抗するため、前記圧縮応力による座屈が抑制される。また、フランジ中では、面外方向の外力そのものの直接的な作用の結果、外層部が、部分的に押し込まれる。この押し込まれた部分では、外力の作用が付加されるため、前記曲げモーメントの作用によって生じる基部と外層部との相互拘束状態が、局所的に更に助長される。結果、相互拘束による座屈抑制の効果を高めることができるので、基部と外層部とを溶接等によって予め一体化しておく作業が不要である。
【0028】
本開示の第6の態様に係る溝形鋼の接合構造の製造方法は、一枚の鋼板から形成され、ウェブと一対のフランジを有する長尺状の第1溝形鋼と、前記一枚の鋼板とは別の一枚の鋼板から形成され、ウェブと一対のフランジを有する長尺状の第2溝形鋼とが、それぞれの長手方向が直交した状態で接合された溝形鋼の接合構造の製造方法であって、第5の態様に係る溝形鋼の製造方法を用いて製造した前記第1溝形鋼の一対のフランジの前記基部の外面上に、前記第2溝形鋼の一対のフランジをそれぞれ接合する。
【0029】
第6の態様に係る溝形鋼の接合構造の製造方法では、第2の態様の場合と同様に、接合作業の負担を抑制しつつ、断面寸法の小型化と曲げ抵抗の確保との両立を図ることができる溝形鋼の接合構造を実現できる。
【発明の効果】
【0030】
本開示によれば、接合作業の負担を抑制しつつ、断面寸法の小型化と曲げ抵抗の確保との両立を図ることができる、溝形鋼、溝形鋼の接合構造、フレーム部材、パネル部材、溝形鋼の製造方法、及び、溝形鋼の接合構造の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本開示の実施形態に係る溝形鋼を説明する斜視図である。
図2】本実施形態に係る溝形鋼を長手方向に沿って見た場合の側面図である。
図3図3(A)は、第1変形例に係る外層部を有する溝形鋼の側面図であり、図3(B)は、第2変形例に係る外層部を有する溝形鋼の側面図である。
図4図4(A)は、第3変形例に係る外層部を有する溝形鋼の側面図であり、図4(B)は、第4変形例に係る外層部を有する溝形鋼の側面図である。
図5】第5変形例に係る外層部を有する溝形鋼の側面図である。
図6】本実施形態に係る溝形鋼の製造方法を、溝形鋼の素材である鋼板の板面を正面から見て説明する図である(その1)。
図7】本実施形態に係る溝形鋼の製造方法を説明する側面図である(その2)。
図8】本実施形態に係る溝形鋼を第1溝形鋼として用いたフレーム部材を説明する正面図である。
図9】本実施形態に係る溝形鋼の接合構造が形成された、図8中のフレーム部材の1つのコーナー部の拡大図である。
図10図8中のフレーム部材の1つのコーナー部を、第1溝形鋼のウェブの板面を正面から見て説明する図である。
図11図9中の11-11線断面図である。
図12】フレーム部材に面材が設けられた本実施形態に係るパネル部材を、図11の断面図と同じ位置で切断した場合の断面図である。
図13】本実施形態に係る溝形鋼の接合構造の製造方法を説明する斜視図である。
図14図14(A)は、フランジの板面側からウェブの板面に沿って曲げを受けた場合の本実施形態に係る溝形鋼を説明する側面図であり、図14(B)は、曲げを受けた場合の本実施形態に係る溝形鋼の挙動を模式的に説明する側面図である。
図15図15(A)は、フランジの板面側からウェブの板面に沿って曲げを受けた場合の比較例に係る溝形鋼を説明する側面図であり、図15(B)は、曲げを受けた場合の比較例に係る溝形鋼の挙動を模式的に説明する側面図である。
図16】第1比較例に係るフレーム部材を、図11の断面図と同じ位置で切断した場合の断面図である。
図17】本実施形態に係る溝形鋼を用いて行われた等曲げ試験の方法を、等曲げが行われる試験区間と試験区間以外の補剛された部分とを有する試験体の溝形鋼のウェブの板面を正面から見て説明する図である。
図18】等曲げ試験によって外層部に局部座屈が生じた溝形鋼の写真である。
図19】等曲げ試験の結果を説明するグラフである。
図20】本実施形態に係る溝形鋼の接合構造に対して行われた、曲げせん断試験の方法を、第1溝形鋼の外層部の板面を正面から見て説明する図である。
図21図21(A)は、曲げせん断試験によって破壊された、実施例に係る接合構造の接合部の最終的な状態を説明する写真であり、図21(B)は、第2比較例に係る接合構造の接合部の最終的な状態を説明する写真である。
図22】曲げせん断試験の結果を説明するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下に本開示の実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一の部分及び類似の部分には、同一の符号又は類似の符号を付している。ただし、図面における厚みと平面寸法との関係、各装置や各部材の厚みの比率等は現実のものとは異なる。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判定すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。
【0033】
<溝形鋼>
まず、本実施形態に係る溝形鋼を、図1図4を参照して説明する。図1に示すように、本実施形態に係る溝形鋼10は、一枚の鋼板から形成され、ウェブ12と一対のフランジ14を有する長尺状の溝形鋼10である。溝形鋼10は、具体的には、ロールフォーミング装置やベンダー装置等によって、一枚の鋼板を折り曲げ成形することによって形成できる。
【0034】
溝形鋼10の一対のフランジ14は、いずれも、基部14Aと、基部14Aのウェブ12と反対側の端部に位置する折り返し部14Bと、外層部14Cと、を備える。なお、本開示では、溝形鋼の一対のフランジの両方が、基部と折り返し部と外層部とを備えることは必須ではない。本開示では、少なくとも一方のフランジが、基部と、折り返し部と、外層部と、を備えればよい。
【0035】
本実施形態では、一対のフランジ14は、図2中のウェブ12を通る水平な中心線Cを挟んで対称的に構成される。このため、図2中の上側の一方のフランジ14の構成と、下側の他方のフランジ14の構成とは、同じである。よって、本明細書では、一方のフランジ14における基部14Aと折り返し部14Bと外層部14Cとについてのみ具体的に説明し、他方のフランジ14についての重複説明を省略する。
【0036】
(基部)
基部14Aは、一対のフランジ14のそれぞれにおいて、ウェブ12に連続する、帯状の平坦な部分である。基部14Aの外面は、図1に示したように、長手方向L1の端部において露出する。なお、本明細書では「溝形鋼の長手方向」は、一対のフランジ14の対向方向(図1中の上下方向)に直交し、かつ、ウェブ12の板面に沿って平行に延びる方向(図1中の左下と右上との間で延びる方向)を意味する。
【0037】
(外層部)
外層部14Cは、図1に示したように、フランジ14の長手方向L1の端部を除いた部分における基部14Aの外面側に配置される。外層部14Cは、フランジ14において、折り返し部14Bに連続し、折り返し部14Bからウェブ12に向かって基部14Aと並んで延びる、帯状の平坦な部分である。
【0038】
なお、本実施形態では、外層部14Cは、長手方向L1の両端部のいずれにも配置されない場合が例示されたが、本開示では、これに限定されない。本開示では、長手方向の両端部のうちのいずれか一方の端部に外層部が配置されると共に、他方の端部に外層部が配置されなくてもよい。また、「基部14Aの外面側」とは、溝形鋼10の開口部16と反対側を意味する。
【0039】
本実施形態では、長手方向L1の長さは、例えば、約2800mm~約3000mmに設定できる。また、図2中で水平な左右方向に沿って測ったフランジ幅WFは、約33mm、図2中で垂直な上下方向に沿って測ったウェブ方向高さHWは、約60mm、溝形鋼10の板厚は、約1.2mmにそれぞれ設定できる。すなわち、本実施形態に係る溝形鋼10は、いわゆる薄板で形成された軽溝形鋼である。なお、本開示では、溝形鋼は、薄板軽量形鋼に限定されず、任意の板厚を有する形鋼であってよい。
【0040】
本実施形態の「ウェブ方向高さHW」は、溝形鋼の矩形状の断面形状の外縁を規定する寸法要素の一つであり、外層部を有さない一般的な溝形鋼における「ウェブ高さ」に相当する。また、本開示では、長手方向の長さ、フランジ幅、ウェブ方向高さ及び板厚は、適宜変更できる。
【0041】
ここで、ウェブ12の板面を正面から見たときの板面の縦横のアスペクト比を、(長手方向L1の長さ)/(ウェブ方向高さHW)によって定義する。本実施形態では、溝形鋼10のアスペクト比は、例えば4~5倍程度に設定できる。具体的には例えば、ウェブ方向高さHWが、60mm~75mm程度である場合、長手方向L1の長さは、300mm程度に設定できる。本実施形態では「長尺状」とは、溝形鋼のアスペクト比が4倍以上である場合を意味する。なお、本開示では、アスペクト比は、4~5倍に限定されず、任意の値に設定できる。
【0042】
また、本実施形態では、図2中で左右方向に沿って測った、折り返し部14Bの右端から外層部14Cの左端までの長さを「外層部14Cの幅WC」として説明する。外層部14Cの幅WCは、フランジ幅WFの50%以上、100%以下に設定されることが好ましい。外層部14Cの幅WCがフランジ幅WFの50%未満である場合、溝形鋼10の曲げ抵抗を確保し難い。また、外層部14Cの幅WCがフランジ幅WFの100%を超える場合、溝形鋼10の小型化が阻害され易いと共に、溝形鋼10を製造し難い。
【0043】
本実施形態では、外層部14Cの幅WCは、フランジ幅WFの約90%である。また、本開示では、外層部14Cの幅WCは、任意に設定できる。
【0044】
(外層部の他の例:第1変形例)
本実施形態では、外層部14Cが基部14Aの外面上に重ねられることによって、基部14Aの外面側で基部14Aの上に配置された外層部14Cが構成された場合が例示されたが、本開示では、これに限定されない。本開示では、例えば、外層部14Cは、図3(A)中に例示された第1変形例のように、基部14Aと僅かな隙間Gを開けて略平行に配置されてもよい。図3(A)中の上下方向に沿って測った隙間Gの幅としては、少なくとも1.5mm以下であることが、構造体の組立時の精度確保の観点から好ましい。
【0045】
隙間Gの幅が1.5mmを超えると、高さ方向(ウェブ高さ方向)の寸法の変動幅が大きくなるため、溝形鋼10の組み立てによって構造体を製造する際の精度確保が難しくなる。また、隙間Gの幅は、1.0mm以下であることが、精度確保の観点からより好ましい。
【0046】
第1変形例の外層部14Cは、本開示の「基部の外面側に配置された外層部」に含まれる。基部14Aと僅かな隙間Gを開けて略平行に配置された外層部14Cであっても、溝形鋼10の断面寸法の小型化と曲げ抵抗の確保とを両立できる。
【0047】
(外層部の他の例:第2変形例)
また、本開示では、図3(B)中に例示された第2変形例のように、折り返し部14Bが、溝形鋼10の開口部16側に延びることによって、開口部16側に張り出してもよい。張り出した折り返し部14Bは、溝形鋼10において、いわゆるリップ溝形鋼のリップ部分のように機能し得る。図3(B)中に例示された溝形鋼10の場合、他の構造部材との接合部は、外層部14Cが配置されていない部分の端部に形成されるので、折り返し部14Bが張り出しても、外層部14Cの外面と他の構造部材のフランジの外面との間に段差が生じない。
【0048】
換言すると、板厚が大きい場合や高強度鋼板等のスプリングバックの大きな鋼板が使われる際には、例えばヘミング曲げの精度が低いことによって、フランジ14の折り返し部14Bに膨らみが生じる場合がある。しかし、第2変形例の構成を適用することによって、外層部14Cの外面と他の構造部材のフランジの外面との間に段差が生じることを回避できる。
【0049】
第2変形例に係る外層部14Cは、本開示の「基部の外面側に配置された外層部」に含まれる。基部14Aと部分的に接触する外層部14Cであっても、溝形鋼10の断面寸法の小型化と曲げ抵抗の確保とを両立できる。
【0050】
また、本実施形態では、外層部14Cが略180度で折り返された場合が例示されたが、本開示では、これに限定されない。図3(B)中の外層部14Cの状態から分かるように、折り返し角度は、180度以外であってもよく、適宜変更可能である。
【0051】
(外層部の他の例:第3変形例)
本実施形態では、外層部14Cが基部14Aの外面上に1枚重ねられた場合が例示されたが、本開示では、これに限定されない。本開示では、外層部14Cは、基部14Aの外面上に複数枚重ねられてもよい。図4(A)中の第3変形例では、基部14Aの外面上に2枚重ねられた場合が例示されている。第3変形例によれば、外層部14Cが1枚である場合に比べて、フランジ14の総板厚が大きくなるため、曲げ抵抗を更に強化することができる。
【0052】
(外層部の他の例:第4変形例)
また、図4(B)中に例示された第4変形例のように、外層部14Cの折り返し部14B側と反対側(図4(B)中の左側)の先端の領域が、ウェブ12を超えて、溝形鋼10の外側(図4(B)中の左側)に延びてもよい。外層部14Cの先端の領域がウェブ12を超えて延びることによって、例えば、他の建築部材との接合に活用可能な部分の面積を拡大できる。
【0053】
(外層部の他の例:第5変形例)
また、図5中に例示された第5変形例のように、外層部14Cの折り返し部14B側と反対側(図5中の左側)の先端のウェブ12を超えた部分が、ウェブ12の板面に沿って、約90度曲げられる。また、外層部14Cの曲げられた先端部分の内面は、ウェブ12の外面と接触する。
【0054】
ここで、基部14Aの外面上に重ねられる外層部14Cが1枚の場合、外層部14Cが基部14Aから設計範囲以上に浮く、すなわち基部14Aから離れる場合がある。第5変形例では、ウェブ12の外面と外層部14Cの先端との接触面の摩擦抵抗を用いて、外層部14Cの浮き状態を抑制できるので、外層部14Cの浮き状態が、外観上、目立ち難くなる。
【0055】
<溝形鋼の製造方法>
次に、本実施形態に係る溝形鋼の製造方法を、図6及び図7を参照して説明する。本実施形態では、素材である一枚の鋼板100に折り曲げ加工を施して、溝形鋼10を製造する場合を例示的に説明する。
【0056】
図6に示すように、まず、平面視で矩形状の一枚の鋼板100を用意し、用意された一枚の鋼板100を、1つのウェブ予定領域120と、ウェブ予定領域120の左右両端に位置する2つのフランジ予定領域140とに区分けする。ウェブ予定領域120は、鋼板100が溝形鋼10へ成形された状態で、ウェブ12を形成する。2つのフランジ予定領域140は、鋼板100が溝形鋼10へ成形された状態で、一対のフランジ14を形成する。
【0057】
また、一枚の鋼板100において、2つのフランジ予定領域140を、ウェブ予定領域120に連続する帯状の基部予定領域140Aと、基部予定領域140Aのウェブ予定領域120と反対側に位置する帯状の外層部予定領域140Cと、に区分けする。基部予定領域140Aと外層部予定領域140Cとの間の境界領域は、折り曲げ部予定領域140Bとして区分けされる。なお、本開示では、一枚の鋼板の中で、2つのフランジ予定領域のうち少なくとも一方のフランジ予定領域が、基部予定領域と外層部予定領域とに区分けされればよい。
【0058】
次に、鋼板100における外層部予定領域140Cの長手方向L1の端部を、切断装置等を用いて取り除く。図6中には、鋼板100の4隅に位置し、取り除かれる4つの除去予定領域Xが、見易さのため、斜線が付された矩形状の領域によって例示されている。
【0059】
次に、図7に示すように、折り曲げ部予定領域140Bに沿って、左右の2つの外層部予定領域140Cをウェブ予定領域120側に折り返す。図7中には、折り返し前の外層部予定領域140Cが点線で、また、折り返し後の折り返された外層部予定領域140Cが実線で、それぞれ例示されている。折り返された外層部予定領域140Cは、基部予定領域140Aの上側に外層部として配置される。上側に外層部が配置された基部予定領域140Aは、基部として形成される。
【0060】
次に、上側に外層部予定領域140Cが配置された状態の基部予定領域140Aを、外層部予定領域140Cと反対側、すなわちウェブ側(図7中の左右方向の中央側)に折り曲げることで、ウェブ予定領域120と直交させる。図7中には、折り返し後の基部予定領域140Aと外層部予定領域140Cとが、1点鎖線で例示されている。
【0061】
直交して折り曲げることによって、ウェブ予定領域120は、図1中の溝形鋼10のウェブ12として形成される。また、基部予定領域140Aは、図1中の溝形鋼10のフランジ14の基部14Aとして形成される。また、折り曲げ部予定領域140B、図1中の溝形鋼10のフランジ14の折り返し部14Bとして形成される。また、外層部予定領域140Cは、図1中の溝形鋼10のフランジ14の外層部14Cとして形成される。上記の一連の工程によって、本実施形態に係る溝形鋼10を得ることができる。
【0062】
なお、本開示では、一枚の鋼板100から4つの除去予定領域Xを取り除いた後、まず、ウェブ予定領域120と基部予定領域140Aとの境界で鋼板100を約90度折り曲げることによって、溝形鋼10を成形してもよい。そして、外層部予定領域140Cを、折り曲げ部予定領域140Bに沿って、鋼板100を略180度で折り曲げることによって、外層部14Cを形成することもできる。
【0063】
また、本開示では、例えば、ロールフォーミング等によって、まず、断面形状がC字状の外径を有し、長手方向L1の端部を含む全体に亘って外層部予定領域140Cが重ねられたフランジを有する形鋼を成形してもよい。すなわち、除去予定領域Xを取り除くことなく、断面形状がC字状の形鋼を成形する。
【0064】
そして、成形された形鋼の長手方向L1の4つの端部の外層部予定領域140Cから、除去予定領域Xに対応する部分をそれぞれ、切断装置等を用いて部分的に取り除くことによって、外層部14Cを有する溝形鋼10を製造してもよい。ただし、まず、4つの除去予定領域Xを切断装置等によって取り除く場合、切断時の位置合わせの正確性が求められる等、作業負担が大きくなる場合が生じ得る。このため、先に一枚の鋼板100の4つの除去予定領域Xを取り除いた後、鋼板100を成形する方法の方が、全体の製造コストを抑制し易い。
【0065】
<溝形鋼の接合構造>
次に、本実施形態に係る溝形鋼の接合構造を、図8図12を参照して説明する。
【0066】
(フレーム部材)
本実施形態に係るフレーム部材300は、図8に示すように、一組の縦材310と、一組の横材320と、を有する。一組の縦材310は、図8中の左右方向の両端に配置され、上下方向に沿ってそれぞれ延びる。また、本実施形態では、図8中の左右方向の中央にも、本開示の一組の縦材310以外に、縦材310が副次的に配置される。なお、本開示では、縦材310が副次的に配置されることは必須ではない。また、副次的に配置される縦材310の個数は、1つに限定されず、2個以上であってもよく、任意に設定できる。
【0067】
また、一組の横材320は、図8中の上下方向の両端に配置される。一組の縦材310と一組の横材320とによって、フレーム部材300の枠部分が形成される。なお、本開示では、一組の縦材は、一組の縦材の配列方向の両端に配置される必要はなく、フレーム部材を構成できる限り、一組のうちの1つ又は2つの縦材が、配列方向において端部から中央側に一定距離変位した位置に配置されてもよい。同様に、本開示では、一組の横材は、一組の横材の配列方向の両端に配置される必要はなく、一組のうちの1つ又は2つの横材が、配列方向において端部から中央側に一定距離変位した位置に配置されてもよい。
【0068】
(縦材)
図8中の左右両端のそれぞれの縦材310と、中央に副次的に配置された縦材310とは、互いに間を空けて平行に配置される。縦材310としては、図1中に例示された溝形鋼10が採用される。縦材310は、本開示の第1溝形鋼を構成する。なお、本開示では、縦材310は、第1溝形鋼以外の部材が縦材310に取り付けられてもよく、第1溝形鋼のみに限定されない。
【0069】
なお、本実施形態では、以下、縦材310に第1溝形鋼が用いられると共に、横材320に第2溝形鋼が用いられる場合を例示的に接続するが、本開示では、横材に第1溝形鋼が用いられると共に、縦材に第2溝形鋼が用いられてもよい。本開示では、第1溝形鋼と第2溝形鋼とが一本ずつ用いられる場合、各溝形鋼が、縦材と横材とのいずれに配置されるかについては限定されない。
【0070】
(横材)
一組の横材320は、第1溝形鋼用の一枚の鋼板100とは別の一枚の鋼板100から形成され、ウェブ12と一対のフランジ14を有する。横材320は、本開示の第2溝形鋼を構成する。本開示では、横材320も縦材310と同様に、第2溝形鋼以外の部材が横材320に取り付けられてもよく、第2溝形鋼のみに限定されない。
【0071】
横材320は、すべての縦材310の一端(例えば図8中の上端)と他端(例えば図8中の下端)とのそれぞれの位置で、横材320の長手方向L2が縦材310の長手方向L1と直交した状態で、縦材310と接合される。なお、本開示では少なくとも、一組の横材320が、一組の縦材310の一端と他端とのそれぞれの位置で、横材320の長手方向L2が縦材310の長手方向L1と直交した状態で、一組の縦材310と接合されればよい。
【0072】
本実施形態では、縦材310としての第1溝形鋼を構成する一枚の鋼板100と、横材320としての第2溝形鋼を構成する別の一枚の鋼板100との両方が、予めめっきが施されためっき鋼板、すなわち、プレめっき鋼板である。なお、本開示では、一枚の鋼板100及び別の一枚の鋼板100のうち少なくとも一方が、めっき鋼板であればよい。
【0073】
(接合構造)
次に、本実施形態に係る溝形鋼の接合構造を具体的に説明する。本実施形態では、図8に示したように、溝形鋼の接合構造は、縦材310と横材320との6つの接合部のすべてにおいて形成される。このため、以下の説明では、図8中の左下のコーナー部Aに対応する接合部を代表として例示的に説明する。なお、本開示では、縦材と横材との接合部のすべてに、図8中のコーナー部Aと同様の溝形鋼の接合構造が形成される必要はなく、少なくとも1つに形成されればよい。
【0074】
図9に示すように、溝形鋼の接合構造では、長尺状の第1溝形鋼としての縦材310と、長尺状の第2溝形鋼としての横材320とが、縦材310の長手方向L1と横材320の長手方向L2とが互いに直交した状態で接合される。
【0075】
なお、本実施形態では、図9に示すように、第1溝形鋼としての縦材310と第2溝形鋼としての横材320とが直交する場合として、縦材310の平坦なウェブ312の板面と横材320の平坦なウェブ322の板面との交差角度が90度である場合が例示された。しかし、本開示では「直交」とは、交差角度が厳密に90度である場合に限定されない。縦材の平坦なウェブの板面と横材の平坦なウェブの板面との交差角度が、85度以上、95度以下であれば、「直交」と見做すことができる。
【0076】
図10及び図11に示すように、本実施形態では、第2溝形鋼としての横材320の一対のフランジ324は、第1溝形鋼としての縦材310の一対のフランジ314の長手方向L1の端部におけるそれぞれの基部314Aの外面上に接合される。
【0077】
本実施形態では、縦材310のフランジ314の基部314Aの厚みと横材320のフランジ324の厚みとは、同じである。また、一枚の鋼板から形成される縦材310においては、フランジ314の外層部314Cの厚みと、基部314Aの厚みとも、同じである。このため、図10に示すように、縦材310のフランジ314の外層部314Cの外側面と、横材320のフランジ324の外側面とは、上下方向で面一である。結果、本実施形態に係る溝形鋼の接合構造では、接合部の外面と不陸が生じない。なお、本開示では、縦材のフランジの基部の厚みと横材のフランジの厚みとは、互いに異なってもよい。
【0078】
(接合具)
本実施形態では、第1溝形鋼としての縦材310のフランジ314の基部314Aと、第2溝形鋼としての横材320のフランジ324との接合方式は、接合具30が用いられた乾式接合である。具体的には、1つのフランジ314の基部314Aについて、接合具30として2つのビスが用いられる。
【0079】
なお、本実施形態では、接合具30としてのビスの接合位置の個数は、1つのフランジ14の基部14Aについて、2つの場合が例示されたが、本開示では、接合位置の個数は、これに限定されない。本開示では、1つのフランジ14の基部14Aについての接合位置の個数は、接合の方法に応じて1つであってもよいし、或いは2つ以上等、任意の個数であってよい。
【0080】
また、本実施形態では、乾式接合の具体的な方法として、接合具30としてビスが用いられる方法が例示されたが、本開示ではこれに限定されない。本開示では、例えばボルト及びナット等、他の乾式接合の接合具が用いられる方法であってもよい。また、本開示では「かしめ」によって接合構造が形成されてもよい。なお、本開示では、接合方式としては乾式接合に限定されず、湿式接合であってもよい。
【0081】
図11に示すように、接合具30としてのビスが延びる左右方向において対向するフランジ14のそれぞれに、ビスが同一直線上で打たれる際には、図9に示したように接合具30のビスの頭部を正面から見た場合、それぞれのビスが重ならないように配置される。
【0082】
例えば、図9中の仮想線V1は、図9の紙面の正面側に円形状に表れる2本の接合具30のビスの頭部の中心を結ぶ、一点鎖線で描かれた線である。また、図9中の仮想線V2は、図9の紙面の裏面側に円形状に表れる2本の接合具30のビスの頭部の中心を結ぶ、二点鎖線で描かれた線である。対向するフランジ14のそれぞれに打たれるビスは、仮想線V1と仮想線V2とが交差するように配置される。
【0083】
なお、例えば、横材320のフランジ324の外面上における、接合具30のビスの予定配置位置の周囲に、エンボス加工等によって表面の高さが低くされた領域を形成することによって、ビスの頭部の突出を抑制してもよい。ビスの頭部の突出を抑制することによって、横材320のフランジ324の外面と縦材310のフランジ314の外層部314Cの外面とを、更に面一に整えることができる。
【0084】
また、縦材310のフランジ314と横材320のフランジ324とのみを接合するだけでなく、図12に示すように、縦材310のフランジ314と横材320のフランジ324と面材40とを一体化させることもできる。本実施形態に係るフレーム部材300に面材40が設けられることによって、フレーム部材300と面材40とを備えるパネル部材400を実現できる。
【0085】
また、図12に示したように、フレーム部材300に1つ以上の部材を例えばビス等を用いて一体化させる場合、縦材310のフランジ314と横材320のフランジ324とに、ビスを打つ際の負担を軽減するためのスルーホールを予め形成することが好ましい。
【0086】
なお、図12中の左側に位置する縦材310の基部314Aと横材320のフランジ324と面材40との接合状態のように、ビス等の接合具30を接合部の内側の開口部16側から打ち込む場合、打ち込み作業に必要な空間を十分に確保し難い場合がある。すなわち、打ち込み作業ではドライバー等の棒状の工具が必要であるため、接合部の外側からしか、作業を行えない場合がある。
【0087】
このため、例えば、図12中の右側に位置する縦材310の基部314Aと横材320のフランジ324とに設けられた貫通孔TH1,TH2のように、予め工具を差し込むための貫通孔を、工具孔として厚み方向に沿って形成する。縦材310の基部314Aの貫通孔TH1と横材320のフランジ324の貫通孔TH2とは、縦材310と横材320とが重ねて位置合わせされた場合に、横材320のフランジ324の板面を正面から見て、1つの工具孔として働く。
【0088】
また、図示を省略するが、縦材310の基部314Aと横材320のフランジ324とのそれぞれにおいて、貫通孔TH1,TH2で構成される第1の工具孔とは別の第2の工具孔が形成される。第2の工具孔は、例えば、図9中の仮想線V2上の左下のビスの頭部の中心位置に対応する位置に、第1の工具孔と同様に形成できる。すなわち、図12中の右側の一方のフランジ側には、全体として2つの工具孔が配置される。
【0089】
2つの工具孔は、横材320のフランジ324の板面を正面から見た場合、それぞれの中心を結んだ仮想線(図9中の仮想線V2参照)が、図12中の右側に配置される接合具30の2つのビスの頭部を結ぶ仮想線(図9中の仮想線V1参照)と交差する。そして、施工現場で、縦材310と横材320とを重ねて位置合わせすることによって、図12中で一方のフランジ側となる右側の縦材310と横材320との接合部に、2つの工具孔を形成する。そして、2つの工具孔にドライバー等の棒状の工具を差し込んで、工具の先端を図12中で他方のフランジ側となる左側の接合部の位置まで到達させれば、右側の接合部のビス止めの前に、左側の接合部に、内側の開口部16側からビスを打ち込むことが可能になる。
【0090】
<溝形鋼の接合構造の製造方法>
本実施形態に係る溝形鋼の接合構造の製造方法としては、図6及び図7を用いて説明した上記の「溝形鋼の製造方法」によって、本実施形態に係る溝形鋼10を、縦材310として製造する。また、外層部を有さない一般的な溝形鋼を横材320として用意する。次に、図13に示すように、製造された縦材310の一対のフランジ314の長手方向L1の端部に露出した基部314Aの外面上に、横材320の一対のフランジ324の内面を重ね合わせる。
【0091】
本実施形態では、縦材310の長手方向L1と横材320の長手方向L2とが直交するように、縦材310と横材320とが重なる。なお、図13中では、横材320のフランジ324の中に、ビスが打たれる位置に対応する接合位置30Aが、点線の楕円形によって例示されている。そして、互いに重なった縦材310のフランジ314と横材320のフランジ324とを、例えばビス止め等によって、それぞれ接合すればよい。上記の一連の工程によって、本実施形態に係る溝形鋼の接合構造の製造方法が構成される。
【実施例0092】
(溝形鋼の挙動)
次に、本実施形態の実施例に係る溝形鋼10の挙動について、図14及び図15を参照して説明する。なお、図15中に例示された第1比較例に係る溝形鋼10Zの構成は、図1中に例示された本実施形態に係る溝形鋼10の長手方向の寸法、ウェブ高さ、及びフランジ幅は、実施例に係る溝形鋼10のそれぞれの値と同様である。また、第1比較例に係る溝形鋼10Zは、実施例に係る溝形鋼10と同様に、基部14A及び折り返し部14Bを有する。ただし、第1比較例では、基部14Aに連続する、フランジ14のウェブ12と反対側の部分が、内層部14Zとして、開口部16側で基部14Aの内面上に重ねられている点が、実施例と異なる。
【0093】
まず、図14(A)に示すように、実施例に係る溝形鋼10では、例えば上側のフランジ14の外層部14Cに、上側から下側に垂直に向かう外力により、溝形鋼10に曲げモーメントが作用する場合を考える。このとき、溝形鋼10の上側のフランジ14には断面直交方向(溝形鋼10の材軸方向)の圧縮応力が、また、下側のフランジ14には断面直交方向の引張応力が、それぞれ作用する。そのため、過大な曲げモーメントが作用すると、前記圧縮応力を受ける上側のフランジ14(特に外層部14C)が面外方向に座屈してしまい、曲げ抵抗が低下する虞がある。また、溝形鋼10は、前記曲げモーメントによって、下側にたわむように変形する。このとき、溝形鋼10の断面は、図14(B)に示すように、圧縮応力を受ける上側の外層部14Cと、その下に位置する基部14Aが、下側の開口部16へ向かって押されるように変形する。なお、図14(B)中では、説明の便宜上、力を受けた後の溝形鋼10のフランジ14の変形の挙動が、点線で例示されている。
【0094】
すなわち、実施例では、外部からの曲げモーメントが溝形鋼10で受け止められる際、基部14Aと外層部14Cとは、フランジ幅方向(図14(B)中の左右方向)の略全体に亘って密着する。密着によって、曲げモーメントが生じる区間、すなわちフランジ14中で材軸方向に沿って圧縮応力と引張応力とが分布する領域全体では、基部14Aと外層部14Cとが、面外方向に相互拘束しつつ、曲げモーメントに抵抗するため、前記圧縮応力による座屈が抑制される。
【0095】
また、フランジ14中では、面外方向の外力そのものの直接的な作用の結果、外層部14Cが、部分的に押し込まれる。この押し込まれた部分では、外力の作用が付加されるため、前記曲げモーメントの作用によって生じる基部14Aと外層部14Cとの相互拘束状態が、局所的に更に助長される。結果、相互拘束による座屈抑制の効果を高めることができるので、例えば基部14Aと外層部14Cとを溶接等によって予め一体化しておく作業が不要である。
【0096】
一方、図15(A)に示すように、第1比較例に係る溝形鋼10Zでも、例えば上側のフランジ14の基部14Aに、上側から下側に垂直に向かう外力によって、溝形鋼10Zに曲げモーメントが作用する場合を考える。このとき、実施例と同様に溝形鋼10Zの上側のフランジ14には断面直交方向の圧縮応力が、下側のフランジ14には断面直交方向の引張応力が作用する。
【0097】
このとき、溝形鋼10Zの断面は、図15(B)に示すように、圧縮応力を受ける側の内層部14Zと基部14Aは、互いに離れながら下側の開口部16へ向かって押されるように変形する。結果、基部14Aと内層部14Zとの間に隙間が形成される。なお、図15(B)中では、図14(B)と同様、力を受けた後の溝形鋼10Zのフランジ14の変形の挙動が、点線で例示されている。
【0098】
すなわち、第1比較例では、基部14Aと内層部14Zとの相互拘束は生じない。このため、外部からの曲げモーメントが溝形鋼10Zで受け止められる際、内層部14Zと離れる基部14Aは、圧縮応力に対して、ほぼ単独で抵抗する。結果、第1比較例では、上側のフランジ14(特に内層部14Z)が面外方向に座屈することを抑制することが難しく、実施例の場合に得られる程度の曲げ抵抗を実現することが難しい。
【0099】
また、図16中には、第1溝形鋼としての第1比較例に係る溝形鋼10Zと、第2溝形鋼としての溝形鋼20とが接合された接合構造が例示されている。図16中に例示された接合構造では、第1比較例の溝形鋼10Zの内層部14Zと、溝形鋼20のフランジ24とが接合される。なお、図16中における接合位置は、接合具30によって把握できる。また、第1比較例の溝形鋼10Zの基部14Aの接合具30に対応する位置には、座掘孔14A1が設けられている。接合具30は、座掘孔14A1の内側に配置されると共に、内層部14Zと、第2溝形鋼としての溝形鋼20のフランジ24とを貫通する。
【0100】
ここで、第1比較例の溝形鋼10Zでは、内層部14Zは、ウェブに直接連続せず、基部14Aを介してウェブに繋がる。また、第1比較例の溝形鋼10Zでは、接合具30は、基部14Aに直接接触しない。このため、溝形鋼10Zと溝形鋼20との接合位置から溝形鋼10Zのウェブまでの板要素に沿った距離が遠くなる。
【0101】
一方、図10及び図11中に例示したように、本実施形態では、第2溝形鋼としての横材320は、第1溝形鋼としての溝形鋼10の外層部14Cではなく、ウェブ12に直接連続する基部14Aと接合される。すなわち、内層部14Zがウェブに直接連続せず、基部14Aを介してウェブに繋がる第1比較例では、接合部に作用した力がフランジの板部分からウェブの板部分へと流れる際、板部分によって形成される力の伝導経路の全体の長さが、本実施形態より長くなる。
【0102】
換言すると、例えば、1枚の鋼板から折り曲げ成形された溝形鋼を、再度展開して1枚の鋼板に戻したと仮定した場合、1枚の鋼板の中では、第1比較例におけるウェブの板部分と接合位置との間の最短距離は、本実施形態の場合の最短距離より長くなる。このため、本実施形態に係る溝形鋼の接合構造が構成される、実施例に係る溝形鋼10の接合構造の場合、接合位置は、第1比較例の場合より、ウェブ12に近い。結果、実施例に係る溝形鋼10の接合構造の接合強度を、第1比較例に係る溝形鋼10Zを用いた接合構造の接合強度より高めることができる。一方、第1比較例では、力の伝導経路の全体の長さが本実施形態より長くなる分だけ、応力伝達の効率が低下し、結果、不要な変形を誘起してしまう可能性がある。
【0103】
(溝形鋼の等曲げ試験)
次に、実施例に係る溝形鋼10の等曲げ試験について、図17図19を参照して説明する。図17に示すように、等曲げ試験では、実施例に係る溝形鋼10の中央で一定の長さを有する試験区間Rに対して等曲げ状態が生じるように、試験区間Rにおける長手方向L1の両端に荷重を載荷した。なお、本実施例では、試験区間R以外の部分は、試験区間Rに先行して崩壊しないように補剛したが、本開示では、補剛の有無は限定されない。
【0104】
そして、風圧力のような面外の曲げの力が溝形鋼10に加えられた際の、曲げ抵抗の大きさを測定した。具体的には、曲げの力を加え始めた後からフランジ14が座屈して部材強度が低下するまでの間における、初期弾性剛性、降伏強度、及び最大強度を測定した。図18中には、フランジ14の外層部14Cが、座屈によって波打つように変形した状態が例示されている。
【0105】
そして、測定された初期弾性剛性、降伏強度、及び最大強度のそれぞれの値を、設計上の必要性からそれぞれについて設定された目標値で除した値を算出した。なお、等曲げ試験中、フランジ14は、それぞれの値について目標値に到達するまで座屈しなかった。すなわち、初期弾性剛性、降伏強度、及び最大強度の値がそれぞれの目標値を超えた後で、外層部14Cが図18に示したように座屈した。
【0106】
図19中の縦軸の値は、目標達成率として、測定値を目標値で除した値である。図19に示すように、初期弾性剛性の目標達成率は、1.06であった。また、降伏強度の目標達成率は、1.48であった。また、最大強度の目標達成率は、1.03であった。
【0107】
等曲げ試験の結果、実施例に係る溝形鋼10では、初期弾性剛性、降伏強度、及び最大強度のいずれも、目標値を満たすことが分かった。すなわち、曲げ抵抗としての、剛性と強度との両方について、実施例に係る溝形鋼10は、パネル部材用のフレームとしての必要性能を満たすことを確認できた。
【0108】
(溝形鋼の接合構造を用いた曲げせん断試験)
次に、本実施形態の実施例に係る溝形鋼の接合構造を用いた曲げせん断試験について、図20図22を参照して説明する。まず、図20に示すように、第1溝形鋼としての1本の溝形鋼10と、第2溝形鋼としての1本の溝形鋼20との接合構造を有するL字形の試験体を、実施例に係る溝形鋼の接合構造として作製した。実施例では、溝形鋼10と溝形鋼20とを、乾式接合としてのビス接合によって接合した。
【0109】
次に、作製された実施例に係る試験体の溝形鋼20を、反力床50の上に固定され、平坦な上面を有する固定治具52に固定した。具体的には、固定治具52の上面上に、溝形鋼20のウェブの板面を接触させ、溝形鋼20のウェブと固定治具52の上部とをボルト締めした。また、溝形鋼10を溝形鋼10の長手方向が垂直であるように配置し、溝形鋼10の上部に、水平力を載荷可能な油圧ジャッキを載荷装置54として取り付けた。
【0110】
固定治具42の上面から載荷装置54としての油圧ジャッキの取り付け位置の中心までの高さHAは、500mmであった。また、溝形鋼20の長手方向の長さDは、250mmであった。
【0111】
そして、試験体の溝形鋼10に水平力を載荷し、水平力を徐々に大きくしながら、地震力のような面内の曲げせん断に対する溝形鋼の接合構造の変形追従性を、接合部が崩壊するまでの間、確認した。具体的には、水平力の載荷中、接合構造における接合部の耐力が劣化するまでの間に、載荷位置における溝形鋼10の変形量を測定した。
【0112】
また、第2比較例に係る試験体の溝形鋼の接合構造の試験体を作製した。第2比較例では、互いに同じ形状及び寸法を有するリップ溝形鋼が接合された。接合部では、一方のリップ溝形鋼における一対のフランジのリップの板面に、他方のリップ溝形鋼における長手方向の端面を突き合わせた状態で、湿式接合である溶接を用いて、2つのリップ溝形鋼が接合された。
【0113】
第2比較例のリップ溝形鋼のウェブ高さ及び板厚は、実施例に係る試験体の溝形鋼10と同じであった。また、第2比較例のリップ溝形鋼のリップ長は、10mmであり、実施例における溝形鋼10と強軸回りの断面二次モーメントが同じとなるように、第2比較例のリップ溝形鋼のフランジ幅を設定した。そして、第2比較例についても、実施例の場合と同様に水平力の載荷位置における変形量を測定した。
【0114】
図21(A)中には、第2比較例において接合部が崩壊した状態が例示されている。第2比較例では、接合部の溶接部が破断している。また、図21(B)中には、実施例において接合部が崩壊した状態が例示されている。実施例では、接合部のビスがはし抜けしている。
【0115】
図22に示すように、第2比較例の場合、水平力の載荷位置における最大変形量は、27.1mmであった。また、実施例に係る溝形鋼の接合構造の場合、水平力の載荷位置における最大変形量は、26.0mmであった。すなわち、乾式接合による2箇所の接合位置を有する実施例においても、接合構造の変形追従性を、溶接の湿式接合による第2比較例の接合構造の変形追従性と略同程度に実現できることが分かった。
【0116】
(作用効果)
本実施形態に係る溝形鋼10では、フランジ14の長手方向L1の端部では、基部14Aの外面側に外層部14Cが配置されていないことによって、基部14Aの外面が露出する。フランジ14の長手方向L1の端部は、他の構造部材との接合部として機能する。例えば、別の溝形鋼10を用意し、用意された別の溝形鋼10のフランジ14を、端部において、基部14Aの外面上に接合すれば、2つの溝形鋼10が接合された接合構造を得ることができる。すなわち、接合構造において接合部が形成される端部の位置では、フランジ14の板厚が大きくされないため、例えばフランジ14の一部が折り重ねられることによって、接合部となる端部の位置の板厚が大きくされる場合と比べ、接合作業の負担を抑制できる。
【0117】
また、本実施形態では、フランジ14の長手方向L1の端部を除いた部分、すなわち中央部では、ウェブ12側に向かって折り返された部分である外層部14Cが、並んで延びた状態で、基部14Aの外面側に配置される。このため、外層部14Cを有する溝形鋼10の端部を除いた部分の厚みは、外層部14Cを有さない端部の厚みより厚い。例えば、溝形鋼10が、厚みが略一様な一枚の鋼板100から形成される場合、外層部14Cを有する、端部を除いた部分では、フランジ14の厚みを、基部14Aのみからなる端部におけるフランジ14の厚みの2倍に肥厚できる。
【0118】
すなわち、溝形鋼10の端部を除いた部分では、曲げ抵抗の向上に有効な断面の外縁部であるフランジ14の位置に、材料である鋼材が、集中配置される。このため、断面寸法を小型化しても、単位重量あたりの曲げ抵抗を、外層部14Cを有さない溝形鋼10の場合より強化することができる。換言すると、断面寸法の小型化によって曲げ抵抗が低下しないように、端部を除いた部分の外層部14Cによって曲げ抵抗を補強できる。
【0119】
よって、本実施形態によれば、接合作業の負担を抑制しつつ、断面寸法の小型化と、曲げ抵抗の確保との両立を図ることができる溝形鋼10を提供できる。
【0120】
また、本実施形態では、外層部14Cの幅WCは、フランジ幅WFの50%以上、100%以下である。このため、曲げ抵抗、すなわち剛性と強度の確保と断面寸法の小型化とを、より効率的に両立できる。
【0121】
本実施形態に係る溝形鋼の接合構造では、図1中に例示された溝形鋼10と同様に構成された第1溝形鋼が第2溝形鋼と接合されるので、接合作業の負担を抑制しつつ、断面寸法の小型化と曲げ抵抗の確保との両立を図ることができる接合構造を提供できる。
【0122】
また、本実施形態では、第1溝形鋼のフランジ14の基部14Aの厚みと、第2溝形鋼のフランジ14の厚みとは、同じである。このため、第1溝形鋼の端部を除いた部分のフランジ14の外面と第2溝形鋼のフランジ14の外面とを、面一に揃え易い。すなわち、接合部の外面の不陸を解消できる。結果、接合部に対し、例えば面材等の他の部材を、納まりよく、密に接合できるので、接合構造を含む構造部材の強度を高めることができる。
【0123】
また、本実施形態では、第1溝形鋼の端部を除いた部分のフランジ14の外面と第2溝形鋼のフランジ14の外面とを面一に揃えるに際し、第1溝形鋼にのみ加工を施すだけで済み、第2溝形鋼の形状を第1溝形鋼のように加工する手間がかからない。この点、第1比較例の第1溝形鋼を用いた接合構造の場合、第2溝形鋼の端部が第1溝形鋼のC字の溝の内側に差し込まれるため、外面同士を面一に揃えるには、第2溝形鋼の端部を、端部を除いた部分より窄むように幅を狭める加工が必要になる。
【0124】
また、本実施形態では、第1比較例のように、第2溝形鋼の形状を加工する手間がかからないため、溝形鋼の接合構造を含むフレーム部材300を容易に製造できる。
【0125】
また、本実施形態では、同じ厚みを有する1種類の鋼板100を、第1溝形鋼用の鋼板100として使用できるだけでなく、第2溝形鋼用の鋼板100としても使用できるので、材料コストを抑えることができる。
【0126】
また、本実施形態では、例えばビス等を用いた乾式接合によって、第1溝形鋼としての縦材310と第2溝形鋼としての横材320とが一体化される。すなわち、熟練の技能が求められる、湿式接合としての溶接作業において生じる負担が必要とならない。このため、製造負担を抑えて、必要な構造性能の確保を図ることができる。
【0127】
また、本実施形態では、接合位置の個数が、1つのフランジ314の基部314Aについて2つである。ここで、接合位置の個数が1つである場合、例えば接合位置において1つのビスを用いて接合された際、接合具30のビスを中心として、第1溝形鋼としての縦材310と第2溝形鋼としての横材320が、回転し易い。本実施形態では、接合位置の個数が、1つのフランジ314の基部314Aについて2つであるため、1つである場合のような回転の発生が抑制される。このため、接合部での曲げモーメントを、第1溝形鋼と第2溝形鋼との間で伝達し易い。結果、安定した構造性能を得ることができる。
【0128】
また、本実施形態では、第1溝形鋼を構成する一枚の鋼板100と、第2溝形鋼を構成する別の一枚の鋼板100との両方が、プレめっき鋼板である。プレめっき鋼板から形成された溝形鋼10を接合することで、めっき無しの溝形鋼同士を接合した後で、電着等によって接合構造に対してめっきや塗装等の表面処理をする手間を省くことができる。
【0129】
また、溝形鋼の接合構造における接合方式が湿式方式の溶接である場合、溶接によってめっき部分に損傷が生じるため、溶接後、損傷部分を補修する必要が生じる。このため、溶接が用いられない乾式接合が使用される本実施形態の場合、湿式方式の溶接が使用される場合に比べ、損傷部分を補修する負担が生じない。
【0130】
本実施形態に係るフレーム部材300は、本実施形態のように、接合作業の負担を抑制しつつ、断面寸法の小型化と曲げ抵抗の確保との両立を図ることができる第1溝形鋼が、第2溝形鋼と接合された接合構造を含む。このため、フレーム部材300自体の断面寸法の小型化と、曲げ抵抗の確保との両立を図ることができる。
【0131】
本実施形態に係るパネル部材400は、本実施形態のように、接合作業の負担を抑制しつつ、断面寸法の小型化と曲げ抵抗の確保との両立を図ることができる第1溝形鋼が第2溝形鋼と接合されたフレーム部材300を含む。このため、パネル部材400自体の断面寸法の小型化と、曲げ抵抗の確保との両立を図ることができる。また、フレーム部材300が小型化又は軽量化される分、フレーム部材300以外の部材をパネル部材400に追加し易い。よって、面材40の機能を多様化できる。また、パネル部材400の運搬効率の向上、すなわち物流の良好化を図ることができると共に、パネル部材400の現場施工性を向上できる。
【0132】
本実施形態に係る溝形鋼の製造方法では、本実施形態のように、接合作業の負担を抑制しつつ、断面寸法の小型化と曲げ抵抗の確保との両立を図ることができる溝形鋼10を製造できる。
【0133】
また、図14を用いた実施例で説明したように、本開示では、面外方向の外力によって生じる曲げモーメントが溝形鋼10で受け止められる際、基部14Aと外層部14Cとが全体に亘って密着する。密着によって、曲げモーメントが生じる区間では、基部14Aと外層部14Cとが、面外方向に相互拘束しつつ、曲げモーメントに抵抗するため、前記圧縮応力による座屈が抑制される。また、フランジ14中では、面外方向の外力そのものの直接的な作用の結果、外層部14Cが、部分的に押し込まれる。この押し込まれた部分では、外力の作用が付加されるため、前記曲げモーメントの作用によって生じる基部14Aと外層部14Cとの相互拘束状態が、局所的に更に助長される。結果、相互拘束による座屈抑制の効果を高めることができるので、基部14Aと外層部14Cとを溶接等によって予め一体化しておく作業が不要である。
【0134】
また、本実施形態に係る溝形鋼の接合構造の製造方法では、接合作業の負担を抑制しつつ、断面寸法の小型化と曲げ抵抗の確保との両立を図ることができる溝形鋼の接合構造を実現できる。
【0135】
<その他の実施形態>
本開示は、上記の実施形態によって説明されたが、この説明は、本開示を限定するものではない。本開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかになると考えられるべきである。
【0136】
例えば、本実施形態では、図1に示したように、外層部14Cがフランジ14の長手方向L1の端部を除いた部分における基部14Aの外面側に配置された場合が例示された。しかし、本開示では、これに限定されない。本開示では、外層部は、フランジの長手方向の端部以外の位置、例えば中央部分における任意の位置に、1箇所以上、任意の個数で配置できる。外層部が任意の位置に配置されることによって、接合構造を形成する位置を任意に設定可能になる。すなわち、多様な仕様の溝形鋼を実現できる。また、フレーム部材又はパネル部材に本開示の溝形鋼の接合構造が適用されることによって、フレーム部材又はパネル部材の種類も多様化できる。
【0137】
また、図1図22中に示した構成を部分的に組み合わせて、本開示を構成することもできる。本開示は、上記に記載していない様々な実施の形態等を含むと共に、本開示の技術的範囲は、上記の説明から妥当な特許請求の範囲の発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0138】
10 溝形鋼(第1溝形鋼)
10Z 溝形鋼
12 ウェブ
14 フランジ
14A 基部
14A1 座堀孔
14B 折り返し部
14C 外層部
14Z 内層部
16 開口部
20 溝形鋼(第2溝形鋼)
30 接合具
40 面材
42 固定治具
50 反力床
52 固定治具
54 載荷装置
100 鋼板
120 ウェブ予定領域
140 フランジ予定領域
140A 基部予定領域
140B 折り返し部予定領域
140C 外層部予定領域
300 フレーム部材
310 縦材(第1溝形鋼)
312 ウェブ
314 フランジ
314A 基部
314C 外層部
320 横材(第2溝形鋼)
322 ウェブ
324 フランジ
400 パネル部材
A コーナー部
C 中心線
G 隙間
HA 取り付け位置の高さ
HW ウェブ方向高さ
L1 長手方向
L2 長手方向
R 試験区間
TH1 貫通孔
TH2 貫通孔
V1 仮想線
V2 仮想線
WF フランジ幅
WC 外層部の幅
X 除去予定領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22